衆議院

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第2号 平成24年6月18日(月曜日)

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平成二十四年六月十八日(月曜日)

    午後二時三分開議

 出席委員

   委員長 首藤 信彦君

   理事 岡島 一正君 理事 小宮山泰子君

   理事 高松 和夫君 理事 浜本  宏君

   理事 宮島 大典君 理事 武田 良太君

   理事 中谷  元君 理事 赤松 正雄君

      相原 史乃君    石井  章君

      石井登志郎君    磯谷香代子君

      岡本 充功君    金森  正君

      岸本 周平君    熊田 篤嗣君

      小山 展弘君    斉木 武志君

      瑞慶覧長敏君    橘  秀徳君

      玉木雄一郎君    長島 一由君

      萩原  仁君    橋本  勉君

      早川久美子君    藤田 憲彦君

      三村 和也君    三宅 雪子君

      山崎  誠君    稲田 朋美君

      岩屋  毅君    江渡 聡徳君

      佐藤  勉君    徳田  毅君

      丹羽 秀樹君    西村 康稔君

      浜田 靖一君    松浪 健太君

      石井 啓一君    赤嶺 政賢君

      渡辺 義彦君    服部 良一君

      山内 康一君

    …………………………………

   外務大臣         玄葉光一郎君

   国土交通大臣       羽田雄一郎君

   防衛大臣         森本  敏君

   政府参考人

   (内閣官房総合海洋政策本部事務局長)       小野 芳清君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            松富 重夫君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ審議官)      草賀 純男君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  森  雅人君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難部長)            佐藤 雄二君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  松本隆太郎君

   衆議院調査局海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別調査室長           湯澤  勉君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十八日

 辞任         補欠選任

  川口  博君     磯谷香代子君

  空本 誠喜君     相原 史乃君

  田中美絵子君     橘  秀徳君

  中野渡詔子君     橋本  勉君

  中林美恵子君     藤田 憲彦君

  藤田 大助君     金森  正君

  谷川 弥一君     丹羽 秀樹君

  望月 義夫君     佐藤  勉君

  渡辺浩一郎君     渡辺 義彦君

同日

 辞任         補欠選任

  相原 史乃君     空本 誠喜君

  磯谷香代子君     川口  博君

  金森  正君     藤田 大助君

  橘  秀徳君     田中美絵子君

  橋本  勉君     中野渡詔子君

  藤田 憲彦君     中林美恵子君

  佐藤  勉君     望月 義夫君

  丹羽 秀樹君     谷川 弥一君

  渡辺 義彦君     渡辺浩一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する件


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     ――――◇―――――

首藤委員長 これより会議を開きます。

 この際、羽田国土交通大臣・海洋政策担当、森本防衛大臣及び玄葉外務大臣から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。羽田国土交通大臣。

羽田国務大臣 国土交通大臣・海洋政策担当大臣の羽田雄一郎でございます。

 本特別委員会の開催に当たり、一言御挨拶を申し上げさせていただきます。

 我が国は四方を海に囲まれた海洋国家であり、海上において主権を確保し、治安と安全を守るとともに、海洋権益の保全、海洋資源の活用等を図っていくことが極めて重要であります。

 近年の世界全体における海賊事案は、世界各国や海事関係者の懸命な取り組みにもかかわらず、引き続き多発しており、発生海域も拡大するという憂慮すべき状況にあります。一方で、我が国は主要な資源や物資の輸出入のほとんどを海上運送に依存するなど、外国貿易の重要度が非常に高く、海上を航行する船舶の安全確保は、経済社会及び国民生活の安定にとって不可欠であります。

 このため、ソマリア周辺海域における海賊対策については、海賊対処のために派遣されている海上自衛隊護衛艦への海上保安官の同乗等を通じ、関係各国等とも連携しつつ、引き続き適切に対処してまいります。加えて、日本関係船舶のみならず、外国船社の船舶も含め、護衛対象船舶として選定するなど、護衛活動が円滑に実施されるよう支援してまいります。

 また、マラッカ・シンガポール海峡を含む東南アジア海域における海賊対策として、沿岸国の海上保安機関に対する支援や巡視船派遣による連携訓練を行ってきたところでありますが、ソマリア周辺海域における海賊対策についても、こうした東南アジアでの取り組みの経験を生かし、沿岸国の海上保安機関の法執行能力の向上のための支援のほか、国際海事機関及び関係国との連携強化等、広域化する海賊問題に対して、関係省庁と連携して推進してまいります。

 テロ対策については、各国が協調して取り組みを進めているにもかかわらず、依然として各地でテロ事件が続いており、我が国においても、その未然防止は引き続き重要な課題であります。具体的には、原子力発電所等の臨海部における重要施設の警戒監視を強化するため、海上保安庁において、情報収集体制の強化等、引き続き体制の整備を進め、内外の関係機関と緊密な連携をとりつつ、テロ対策に取り組んでまいります。また、航空においては、引き続き国際民間航空機関及び関係国との連携のもと、航空保安対策の強化に取り組むとともに、国際港湾を含めた水際対策に万全を期します。

 首藤委員長を初め、理事、委員各位の格別の御指導をよろしくお願い申し上げます。(拍手)

首藤委員長 次に、森本防衛大臣。

森本国務大臣 防衛大臣の森本敏でございます。本日は、首藤委員長を初め、委員の皆様に防衛大臣としての御挨拶を申し上げます。

 今日、国際社会を概観すると、東アジアは厳しい安全保障環境下にありますが、さらに、テロや海賊などの非対称脅威に対し、国際社会が協力して対処する必要に迫られています。その中で、我が国は、こうした国際社会の不安定要因に各国と協力して取り組む重要な責務を負っていると確信します。

 海賊行為は、海上における安全と秩序の維持に対する重大な脅威であり、特に、海洋国家として資源や食料の多くを海上輸送に依存している我が国にとっては看過できず、この海賊問題に適切に対処する必要があると考えます。さらに、国際社会全体での取り組みが進む中、我が国としても国際的な責任を積極的に果たしていくことが必要です。

 特に近年、ソマリア沖・アデン湾の海域において、機関銃などで武装した海賊による事案が多発、急増し、その活動海域も広がりつつあり、我が国の事業者が運航する船舶も海賊の被害を受けております。

 このため、自衛隊においては、平成二十一年三月より、自衛隊法第八十二条による海上警備行動を開始し、同年七月の海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律の施行を受け、海賊対処行動を実施しており、自衛隊が海賊対処を開始してから既に三年を超えています。

 海賊対処のための部隊として、護衛艦二隻から成る水上部隊及びP3C哨戒機二機等から成る航空隊を派遣しており、約五百八十名の自衛隊員が現地で任務に当たっております。

 水上部隊は、最長で約千百キロメートルにわたる航路において船舶の護衛を行っており、本年六月十日現在、護衛回数三百六十二回、護衛隻数二千六百八十六隻に達しております。また、P3C哨戒機は、同海域を警戒監視して情報を収集し、我が国及び外国の艦船に情報提供しております。本年一月一日には任務飛行六百回目を達成し、六月十日現在、飛行回数六百九十四回、飛行時間五千三百七十時間、情報提供六千二百回に達しております。

 なお、昨年六月には、航空隊の活動拠点をジブチ国際空港に整備したところです。

 ソマリア沖・アデン湾では、海賊行為や日本関係船舶に対する襲撃事案が発生していることから、昨年七月に、海賊対処行動を引き続き一年間継続することを閣議決定しております。

 ソマリア沖・アデン湾における自衛隊の活動は、日本関係船舶のみならず、外国の船舶の安全な航海のために極めて大きな役割を果たしております。防衛省・自衛隊としては、国際的にも重大な問題である海賊行為に対して、我が国の断固たる姿勢を示すとともに、当該海域の安全な航行を確保するため、引き続き海賊対処行動に着実に取り組んでまいりたいと考えております。

 首藤委員長を初め、委員各位の一層の御指導と御鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 以上でございます。(拍手)

首藤委員長 次に、玄葉外務大臣。

玄葉国務大臣 衆議院海賊・テロ特別委員会の開催に当たり、委員各位に御挨拶を申し上げ、海賊対策及び国際テロ対策に関する政策について、所信を申し述べたいと思います。

 海洋国家である我が国にとって、海上航行の安全確保は極めて重要な課題です。ソマリア沖の海賊事案は、不安定なソマリア情勢や脆弱な周辺国の取り締まり能力、法執行能力の不備を背景に、依然として高い水準で発生しており、その活動もインド洋西部全体に拡大するなど、我が国だけでなく国際社会にとって引き続き大きな脅威となっています。

 二〇〇九年から実施されている自衛隊及び海上保安庁による海賊対処行動は、日本国民の生命及び財産の保護、海上輸送の安全確保の観点から、極めて重要な役割を果たしています。こうした活動は、我が国の海運関係者及び各国からも高い評価を受けており、今後とも継続していくことが必要です。

 昨年整備されたジブチの自衛隊の新活動拠点を安定的に運営していくことが重要です。ジブチとの良好な関係の構築を含め、外務省としても引き続き協力していく考えです。

 また、我が国は、国際的な海賊対策の枠組みであるコンタクトグループや国際海事機関を初めとする国際社会の海賊対策に積極的に参加しています。我が国は、海賊問題の根本的な解決を重視しており、明年六月のTICAD5に向けて、ソマリア周辺国の海上取り締まり能力の向上や不安定なソマリア情勢の安定化のための支援等の多層的な取り組みを強化していく考えです。

 国際テロ対策についても、継続的な努力と国際的な協力が引き続き必要です。現在、アルカイダ本体は、相次ぐ幹部の死亡でテロの実行能力が弱まってきていると見られていますが、引き続き注意が必要です。アフリカでは、イスラム・マグレブ諸国のアルカイダなどのアルカイダ関連組織によるテロや誘拐も多発しています。このように、国際的なテロの脅威は依然として深刻です。

 中東・アフリカ地域においても、アフガニスタン、イエメン、イラク等で引き続きテロ事案が発生し、多数の無辜の市民が犠牲になっており、地域の大きな不安定要因となっています。また、南スーダンについては、スーダンとの平和的共存が不可欠であり、我が国は両国の和平努力を支援し続ける考えです。

 我が国は、引き続き、入国管理やテロ資金対策等の国際テロ対策における国際社会の取り組みに積極的に貢献してまいります。また、多国間、二国間の枠組みにおいて、情報交換や途上国のテロ対処能力の強化等の幅広い国際テロ対策協力を推進してまいります。

 以上のような諸課題に、私は、関係省庁と連携して全力を尽くして取り組む考えです。首藤委員長を初め、委員各位の御支援と御協力をお願い申し上げます。

 以上です。(拍手)

首藤委員長 これにて発言は終わりました。大臣は御退席いただいて結構です。

     ――――◇―――――

首藤委員長 次に、海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房総合海洋政策本部事務局長小野芳清君、外務省中東アフリカ局長松富重夫君、外務省中東アフリカ局アフリカ審議官草賀純男君、国土交通省海事局長森雅人君、海上保安庁警備救難部長佐藤雄二君及び防衛省運用企画局長松本隆太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

首藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

首藤委員長 この際、海賊対策の現状等について、政府から順次説明を聴取いたします。

 まず、海賊事案の発生状況及び海上保安庁における海賊対策について国土交通省から説明を聴取いたします。森海事局長。

森政府参考人 海事局の森でございます。

 それでは、お手元の国土交通省のクレジットの入った海賊事案の発生状況についての資料に基づき御説明をしたいと思います。

 まず、一ページ目の左下の棒グラフをごらんいただきたいと思いますけれども、二〇一一年の海賊発生件数は、世界全体の発生件数が四百三十九件とやや頭打ち傾向が見られる中で、ソマリア沖・アデン湾、これは赤の棒グラフでございますけれども、二百三十七件と過去最高の水準に達しております。

 直近の数字でございますが、その上の表のところにございますが、二〇一二年の六月十一日までのソマリア沖・アデン湾の発生件数は六十二件と、特に多かった二〇一一年の上半期と比べると相当減ってはいるものの、その前年の二〇一〇年の上半期から比べるとやや減っているという程度で、まだ相当数のレベルに達しております。

 乗っ取られた船舶は、この間、十二隻でございます。六月十一日時点での拘束中の人質は百七十八名。乗っ取り率というのがその表の中にございますが、乗っ取り率は、昨年二〇一一年に一二%と減少傾向が見られたんですけれども、二〇一二年は再び二割ということで、上昇をしております。

 発生海域でございますが、その横の分布図を見ていただければわかるとおり、防衛省が護衛活動を実施しておりますソマリア沖・アデン湾のほか、紅海、あるいはオマーン沖のアラビア海やホルムズ海峡、あるいはアフリカと広域化している状況が見てとれます。

 二ページに移ります。

 まず、この地域で日本関係船舶がどういう航行実態かということを下の図のところに示してございますけれども、日本関係船舶、これはいわゆる日本籍船、外国籍船を含む日本の海運会社が運航している船舶でございまして、そこに書いてある隻数は片航を一隻とカウントしたものでございます。

 それをごらんいただきますと、アデン湾の航路が千六百八十四隻、ペルシャ湾航路が三千七百二隻でございます。そのうち、日本籍船でございますが、アデン湾航路が百十五隻、それからペルシャ湾航路が四百八十隻でございます。

 その下にちょっと船種ごとの内訳が書いてございますけれども、アデン湾航路については、欧州に向かう自動車専用船ですとか大型のコンテナ船等、比較的スピードが速くて海面から上甲板までの高い、比較的海賊に襲われにくい船種が多いのに対して、ペルシャ湾については、中東に向かいます日本籍船の油タンカーが多数航行しているのが特徴でございます。油タンカーは、御存じのとおり、満載時には船のスピードが遅くなり、海面から上甲板までの高さが低くなりますので、海賊のターゲットになりやすいということが言えます。

 それから、その上に主な日本関係船舶の海賊事案をまとめてございますが、一〇年十月にアフリカ沖で乗っ取られたイズミ号以降、船員が人質になり身の代金を要求されたような事案は発生しておりません。

 一一年三月にアラビア海で乗っ取られたグアナバラ号については、これは後ほど海上保安庁さんの方から御説明があるかもしれませんけれども、海運会社の方で船内に、いわばパニックルームみたいな、シタデルと呼んでおりますけれども、これを設けておりまして、そこに乗組員が逃げ込み、その間に駆けつけた米軍により海賊四名が拘束されております。後ほど、海運事業者が実施しております自衛措置を御説明しますけれども、こういう自衛措置の徹底等により、一一年十月以降は、日本関係船舶の海賊被害はございません。

 ただ、本年も、箱の一番下に書いてございますように、アデン湾・紅海、オマーン沖のアラビア海、ホルムズ海峡南方で、それぞれ二件計六件の追跡事案が発生しております。

 その次に、護衛活動について簡単に御説明します。四ページを先にごらんいただきたいと思います。

 海賊対処法の制定以降、平成二十一年七月から本年五月末までに計三百十八回の護衛活動が実施されております。護衛対象船舶は二千五百五十一隻、一回平均約八隻でございまして、このうち、日本関係船舶は六百十九隻、その他の外国船舶が千九百三十二隻となっております。世界の五十を超える国の船籍の船、約六万人の船員がこの護衛活動で守られておりまして、護衛対象船舶に対しての海賊被害は一切発生をしておりません。大きな効果を上げていると思います。

 三ページに戻っていただきまして、私どもがこの護衛活動の中で実施している業務でございますけれども、日本関係船舶に対して、アデン湾を航行する場合には護衛活動に参加するよう指導するとともに、護衛活動に係る種々の受付窓口を私どもが実施しております。日本関係船舶のみならず、外国船社の船舶からの護衛の事前登録でありますとか、毎回ごとの護衛についてリクエストを受け付け、護衛スケジュールの希望、調整、取りまとめの上、防衛省に連絡をいたしております。

 続きまして、海運会社の自助努力について御説明をしたいと思います。

 五ページをごらんいただきたいと思います。

 日本の海運会社は、国際海運業界がまとめましたベストマネジメントプラクティスと言われるベストプラクティス集、これに基づきまして、さまざまな海賊対策を実施しております。

 五ページに掲げておりますのはその一例でございますけれども、例えば、大手三社のタンカーでは、左下にございますレーザーワイヤー、これはかみそり状の有刺鉄線、なかなか日本の国内では見かけないんですけれども、非常に鋭利な、レーザーワイヤーと呼ばれる有刺鉄線ですとか、その右にあります高圧放水装置等の乗り込み防止装置、それから、その上にございます、先ほどちょっと触れましたが、シタデルと言われるパニックルーム、こういったものを三月末までに一〇〇%措置をしております。

 そのほか、ブリッジに上がるステップの引き上げ構造化ですとか、ブリッジや船室の窓からの侵入防止装置とか、さまざまな自衛措置をとっております。

 御参考までに理事会室の方にパネルを展示しておりますので、この委員会終了後、もしお時間があれば、ごらんをいただきたいと思います。

 それと、特に海賊発生頻度が高いアデン湾からアラビア海を航海する外国籍のタンカーについては、約八割に民間武装警備員を既に乗船させております。これらの自衛努力によりまして、我が国関係船舶については、先ほど見ていただきましたように、海賊被害が比較的少なく抑えられております。

 ただ、これに要する費用も非常に多額に及んでおりまして、例えば、先ほど申し上げたいろいろなハード的な自衛措置にかかるコストは、業界全体で約五十億、それから民間武装ガード、これは一回乗船させますと六百万円ほどかかりますけれども、トータルで約十六億。それから、その航行しているエリアについては、とにかく早く抜けるということで、いわゆる機関全速で走ることになっております。そういった燃料費の増加が約百四十億ということで、相当なお金と手間をかけて自衛措置を講じているというのが実態でございます。

 その次のページでございますが、こういった広域化、悪質化する海賊に対処するため、武装警備員を乗船させて自衛する船舶が世界的に増加しております。二〇一一年のグラフがございますけれども、中東地域を航行する船の約四分の一以上が民間武装警備員を乗船させております。また、民間もしくは公的な武装警備員の乗船を認める国も増加しております。その右にございますように、一番上が公的武装警備員の乗船を認めている国、それから、真ん中が民間武装警備員の乗船を容認している国、一番下が、日本のように、いずれも認めていない国ということでございます。このうち、ドイツについては、現在、民間警備員の乗船を認める法改正中というふうに聞いております。こういった武装ガードを乗船させた船舶に関しては、海賊被害が発生しておりません。海賊件数は二〇一一年の後半以降、減少傾向となっておりますけれども、こういった民間武装警備員の乗船の急速な普及も一部寄与しているものと思われます。

 七ページでございますけれども、これら民間武装ガードの一般化を受けまして、従来、武装警備員の乗船にやや消極的な姿勢をとっていたIMOにおいても、本年五月にハイレベル会合を実施いたしました。我が国からも国交省の吉田副大臣が出席いたしております。本会合前の五月三日にも、ドイツで開催されました国際交通大臣会合において、海賊問題に対するラウンドテーブル会合というのが開催されまして、各国の閣僚級が民間武装ガードのあり方を含む海賊問題について議論を実施しております。

 IMOにおいては、この五月十六日のハイレベル会合に引き続きまして、海上安全委員会において、その右にございます民間武装警備会社に関する暫定ガイドラインを議論いたしまして、暫定のガイドラインを策定いたしました。民間警備会社の要件でございますとか、警備員のバックグラウンドチェックですとか訓練の必要性、武器の使用の考え方、あるいは船長との権限関係等について指針がまとめられております。

 以上、民間武装ガードの効果が非常に上がっている一方で、現行法制においては、日本籍船舶は民間武装警備員を乗船させられません。日本船主協会では、特にペルシャ湾に就航する日本籍大型タンカーについて、海賊リスクの高い、いわゆる満載状態で走っている、日本向け、いわゆる東に走る航海、これについて、民間武装警備員または公的武装警備員の乗船を可能とするような措置を要望しております。

 このため、海洋政策本部が中心になりまして、国交省を含む全ての関係省庁が参加して、我が国による武装警備員の乗船について制度のあり方や問題点を詰めている最中でございます。詰めるべき点は多々ございますけれども、海洋政策本部主導のもと関係省庁が参加し、本格的な取り組みが始まりまして、非常に議論も加速してまいりました。IMOのガイダンスもまた参考にしながら、こういった措置を加速していきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

首藤委員長 次に、佐藤警備救難部長。

佐藤政府参考人 海上保安庁の警備救難部長、佐藤です。

 お手元に配りました海上保安庁の海賊対策について御説明申し上げます。

 まず、資料一をごらんください。

 我が国は、ソマリア周辺海域における海賊に対処するため、二〇〇九年三月から防衛省が海上自衛隊の護衛艦二隻等をアデン湾周辺海域に派遣しておりますが、海上保安庁でも、海賊行為に対する捜査等を実施するため、当初から、これら護衛艦二隻に司法警察権を有する海上保安官をそれぞれ四名ずつ、計八名を同乗させております。現在、アデン湾周辺海域では第十二次隊が活動中でございます。

 護衛艦に同乗している海上保安官の主な任務は、海賊を拘束した場合の逮捕や証拠収集などの司法警察活動でございまして、そのほかにも、自衛官とともに海賊行為の監視、警戒、情報収集などを行っております。

 これまでのところ、護衛艦により護衛した船舶については一件の海賊被害も許していませんが、昨年三月に、護衛対象海域から東方に離れたアラビア海で日本の海運会社が運航するバハマ籍船オイルタンカー、グアナバラ号を襲撃したソマリア海賊を海上保安官が逮捕し、日本に護送するという事件が発生しております。この事件についての詳細は資料二のとおりでございます。

 グアナバラ号の乗組員は、先ほど海事局長からお話がありましたように、シタデルという退避区画に避難していたことから無事でしたが、救助信号を受信したパトロール中の米海軍の軍艦が駆けつけ、四名の海賊を拘束し、この四名の海賊をアデン湾において米海軍から護衛艦に引き取り、同乗していた海上保安官が逮捕し、ジブチに派遣した海上保安庁の航空機で日本まで護送いたしました。現在、東京地方裁判所で公判のための準備手続を行っているところでございます。

 このような海賊の護送ミッションに備え、本年三月には、海上保安庁のジェット機をジブチに派遣し、沿岸警備隊を初め、関係当局と海賊護送訓練などを実施しております。

 次に、資料の三枚目でございますが、東南アジアにおける海賊対策を初めとする海上保安庁の国際的な取り組みについて御説明いたします。

 二〇〇〇年当時の東南アジアでは、海賊や武装強盗が横行しており、世界でも最も危険な海域でございました。このため、海上保安庁では巡視船を定期的に東南アジア海域へ派遣して連携訓練や乗船研修を行い、海上保安能力の向上を図ってまいりました。二〇〇六年には外務省のリードによりアジア海賊対策地域協力協定が発効し、シンガポールに情報共有センター、ReCAAP、ISCが設立されたところであります。同センターには当庁からも職員を出向させているところであります。このような取り組みにより、東南アジアの海賊発生件数は大幅に減少しております。

 最後に、資料の四枚目をごらんください。

 海上保安庁ではこうした東南アジアでの海賊対策の経験を踏まえ、ソマリア周辺沿岸国の海上保安機関の法執行能力向上のため、国際協力機構、JICAなどの関係機関と協力し、ソマリア周辺沿岸国のジブチ、オマーン等の海上保安機関の職員を招聘して、海上犯罪の監視、取り締まりを対象とした研修を初め、実務者会合やフォーラムなどを開催しております。また、海上保安庁は、国際海事機関、IMOが推進しておりますソマリア海賊対策に関する各種プロジェクトにも職員を派遣するなど、積極的に参画しております。

 諸外国の海上保安機関との国際的な連携協力体制の強化につきましても積極的に推進しておりまして、インド沿岸警備隊とは、二〇〇〇年からほぼ毎年、長官級会合や巡視船の相互派遣を継続しております。今年度も当庁の巡視船を合同訓練のため、一月にインド・チェンナイに派遣したところでございます。長官級会合は原則年一回行うこととしておりまして、巡視船の派遣は合計で五回目となります。

 今回の長官級協議では、特にソマリア海賊の活動が最近西インド洋全域にまで拡大していることに鑑み、インド西方海域におけるパトロールの強化や、同海域での日本関係船舶が海賊に襲撃された場合にインド沿岸警備隊に救助を要請するための窓口を明確化するなど、当該海域を航行する日本関係船舶の安全確保をするための連携強化の具体策について合意しております。

 以上が、海上保安庁の海賊対策でございます。

首藤委員長 以上が、国土交通省、海上保安庁の海賊対策でございます。

 次に、海賊対処部隊及び南スーダンPKO派遣部隊の活動状況について防衛省から説明を聴取いたします。松本運用企画局長。

松本政府参考人 防衛省の松本でございます。

 お手元に、ソマリア沖・アデン湾における自衛隊の海賊対処という横長のペーパーがございますが、こちらに基づきまして御説明させていただきたいと思います。

 一ページ目を開いていただきますと、先ほど国交省からの御説明とも重なりますが、二〇〇九年から二〇一一年、三カ年におきますソマリア沖・アデン湾における海賊の発生状況を、下側に月別の件数、上側にそれを図示したものでございますけれども、先ほどもちょっと御説明がありましたけれども、二〇〇九年から二〇一一年の三カ年にかけて……

首藤委員長 ちょっとマイクの方へ向いて話してください。

松本政府参考人 済みません。

 数は増加しているわけでございますが、真ん中に、二〇一二年五月末現在の数字で恐縮でございますけれども、この数が五十七件ということで、昨年同時期に比して大幅に減っているというのが一つの特徴かなというふうに思っております。これは先ほども説明がありましたが、船主側の自主的努力でありますとか、あるいは海賊対処部隊の活動によって、こういった減少が図られたというふうに考えております。

 二ページ目でございますけれども、海賊対処は、これは日本だけでなく、世界各国約二十カ国の協力に基づいて行われているわけでございまして、真ん中の商船護衛、これは自国枠組み等ということで、アデン湾において航路帯を設定いたしまして護衛をやっているのが、私ども日本、それから中国、インド等ということでございます。

 そのほかに、これは米英等を中心とするものでございますけれども、CTF151でありますとか、あるいは、EUNAVFORというふうに呼んでおりますけれども、フランス、ドイツ、イタリー等の部隊、あるいはNATOからも艦船を出しまして、そういったものはゾーンディフェンスをやっている。また、WFPの船舶の護衛もこういった部隊がやっているというような状況でございます。

 それから、次のページ、三ページ目でございますけれども、今までの経緯でございますけれども、防衛省の場合、平成二十一年の三月、海上警備行動でこれをスタートさせております。七月に海賊対処法が成立されたものですから、海賊対処行動命令を発令いたしまして以降、これを一年ごと更新しているということでございます。

 活動状況、四ページ目でございますけれども、先ほどもちょっと申し上げましたが、アデン湾の真ん中に約一千百キロにわたります航路帯を設定いたしまして、上にちょっとありますけれども、護衛対象船舶を中に、前後に護衛艦を二隻配備する。また、その航路帯の上にP3Cを飛ばしまして情報収集をして、情報提供等を各国の海軍あるいは商船等に行っているという状況でございます。

 活動の実績は、護衛艦の方は、平成二十一年三月以降、約二千七百隻の民間船舶を護衛いたしました。また、P3Cは約七百回の任務飛行を実施している。

 結果として、何回か御説明がありましたが、護衛対象船舶については、過去、襲撃を受けたことはございません。また、P3Cについては、情報提供等を行って、各国から高い評価を受けているというふうに承知しております。

 五ページ目、自衛隊の派遣部隊の編成でございますけれども、大きく二つに分かれておりまして、水上部隊と航空部隊ということでございまして、水上部隊は、先ほど申し上げましたように、護衛艦二隻で約四百名ということで、ここに海上保安官の方が八名同乗している。また、P3Cの方は約百八十名ということで、P3C二機で飛行を行っているという状況でございます。

 六ページ目、これは昨年の六月、P3Cの部隊の活動の拠点というのをジブチ政府から土地を借り上げて設置したものでございます。従来、この真ん中にあります滑走路を挟んで居住施設と駐機場が分かれていたものですから効率が悪いということで、左上のピンク色の活動拠点でございますけれども、ここに十二ヘクタールの土地を借りて、いろいろな施設を整備したということでございます。

 七ページ目、その施設の概要でございます。十二ヘクタールの土地を借りて、そこに事務所、隊舎、駐機場、食堂等を備えているという状況でございます。

 時間の関係もございまして、次に南スーダンのPKOの状況でございますけれども、これも横長のペーパーがございますが、まず一ページ目を見ていただきますと、自衛隊につきましては、一月から施設部隊一次隊、約二百十名を派遣しているところでございます。下側に活動内容ということで写真がついておりますけれども、一次隊は、まずは宿営地整備、あるいは簡単な、軽易な施設整備活動を行っているという状況でございます。

 また、今般、現地支援調整所というのを新たに設けまして、この現地支援調整所が、UNMISS、これは国連当局でございますが、そういったものでありますとか、あるいは南スーダン政府との間で、自後の施設部隊の活動、業務内容について調整を行うような形にしております。

 今月、六月に入りまして、一次隊から二次隊に部隊を交代させるというようなことで進んでおります。二次隊は、人数が一次隊の二百十名から三百三十名にふえまして、装備、人員等もふやして、いよいよこれから施設整備活動を本格化していくというものでございます。

 二ページ目、この施設部隊の編成の概要でございますけれども、先ほどもちょっと申し上げましたが、一次隊が二百十名でございましたが、これが三百三十名ということで、装備品でありますとか人員をふやしまして、本格的にこれから施設整備活動を行っていくということを予定しております。

 それから三ページ目、部隊の展開、輸送計画でございますけれども、基本的には、日本から隣国のウガンダのエンテベ空港に、まず大型の民航機で装備品、人員を輸送いたしまして、それからさらに、南スーダンの首都たるジュバに、民間の中型の輸送機で人員なり装備品を運ぶ。また、大型の装備品については、エンテベからジュバまで七百キロの道を陸路運んだというような状況でございます。

 それから四ページ目でございますけれども、先ほどもちょっと申し上げましたとおり、派遣部隊を、まさに今一次隊から二次隊に交代途上でございまして、ここに書いてありますように、一日から二十二日にかけて、逐次、二次隊部隊を派遣している状況でございます。

 五ページ目でございますけれども、まず宿営地の状況でございますけれども、何もなかったところに、当初は天幕を建てておりました。これは左上の写真でございます。ただ、天幕は、これは冷房をつけても中は四十度ということで、酷暑ということもありまして、現在は居住地区については少なくともコンテナを設置して、この中で居住するような形になってございます。

 それから、その左下でございますけれども、隊員の厚生という観点からすると、家族との連絡、これは無料で電話等ができるというような形になってございます。また、洗濯コンテナ等の整備もやっているという状況でございます。

 六ページ目でございますけれども、左上から、トイレ、それから入浴セット。また、食事も、当初はレトルト食品だったんですが、現在、温食と我々は呼んでおりますが、調理、自炊しているということでございます。

 それから七ページ目でございますけれども、特に、これはマラリア等もありまして、毎週一回、朝礼で抗マラリア薬を服用している。あとは、これは一次隊の隊員に対して、国連の方からメダルが授与されているという状況でございます。

 それから八ページ目、これ以下が具体的にどんな施設整備活動を行っているかということでございますけれども、基本的には、左上あるいは左下の、こういった泥濘の道路を、これはマラムという赤土の砂利なんですが、そういった砂利を敷き詰めて、ローラーで圧縮して道路等を整備していくということでございまして、下の写真を見ていただくとわかりますけれども、ある程度整地ができて車の通行がスムーズになるという状況でございます。

 それから九ページ目でございますけれども、そのほかにも、これは雨季対策という観点も兼ねて、国連の施設内の排水溝を掘る、こういうことをやっているということでございます。また、ジュバ空港の中にあります国連のエプロンの整備でございますとか、国連機関の敷地造成等を行っている。

 先ほどちょっと申し上げましたマラムという赤土の砂利でございますが、それは右上の写真に出ているものでございます。

 そのほかに、現地支援調整所、これが国連なり現地政府との仕事の内容を調整していくというふうに申し上げましたが、ここに書いてあるとおり、いろいろな国際機関なり政府との間の調整を行っているという状況でございます。

 それから十一ページ、安全確保の問題でございますけれども、自衛隊が駐屯している、あるいは整備活動を行っているジュバ及びその周辺は、治安はおおむね安定して平穏を維持しております。

 ただ、そうはいっても、治安状況というか、一般犯罪は東京に比べて非常に多いわけで、そういった観点から自隊の防護というのはやっております。ただ、自隊の防護というのは、一義的にはみずからの責任で実施する。必要に応じて地域における全般警備を担任する、日本の場合にはルワンダでございますが、ルワンダの歩兵部隊の支援を受けることは可能というような状況でございます。

 防衛省としては、国連等関係機関との情報交換を緊密にやっているということでございます。

 十二ページ目、最後でございますけれども、UNMISSの全体でございますけれども、実は六十六カ国、約六千二百名の人間が属しております。これは主要な派遣国の展開を書いてございますけれども、治安状況が問題とされている国境付近にも、ケニア、モンゴル、インド等の歩兵部隊等が展開しております。この展開計画あるいは仕事の内容に、特に南北国境付近の紛争が影響を与えるというお話は聞いてございません。

 日本はジュバのところでございますけれども、ジュバのところで施設部隊を配備して、施設整備活動を行っているということでございます。

 簡単ですが、以上で終わります。

首藤委員長 ただいまは、防衛省の説明でございます。

 次に、中東・アフリカ地域におけるテロ・海賊に関する地域情勢について外務省から説明を聴取いたします。松富中東アフリカ局長。

松富政府参考人 中東アフリカ局長の松富でございます。

 お手元の地域情勢の資料の二ページから始めたいと思います。中東・アフリカ諸国の中でテロ問題を抱えている国別の個別の情勢でございます。

 まず第一に、二ページ目、アフガニスタンでございます。

 アフガニスタンは、現在、治安面の事案件数は増大してございます。一つには、二〇〇九年十二月にオバマ大統領が三万人の米兵増派というものを決めて集中的に治安対処を行ったということが一点。この増派分の三万人は既に撤兵してございます。さらには、二〇一四年末に向けて、多国籍軍からアフガン治安部隊に対して治安権限の移譲が行われているプロセスにあるという、この二点が主たる理由でございます。

 この情勢の悪化の中で、例えば、アフガン政府のタリバーンとの和平の責任者であったラバニ議長に対する暗殺が行われたり、さらに、本年の四月には、首都カブールで複数の同時テロが行われる等、重大事案も発生してございます。特に後者については、我が方、日本大使館も被害を受けました。

 他方で、いい方向としては、まず、昨年五月にウサマ・ビンラディンが殺害されたということ、さらには、先ほど申し上げた、アフガン治安部隊の能力は徐々に向上しつつあるという点が看取されると思います。

 今後の治安の改善の鍵は、やはりタリバーンとの和解、再統合と、さらにはアフガン治安部隊のさらなる能力向上がポイントだと考えてございます。この和解、再統合については、現在、アフガン政府を中心にタリバーン側との水面下の接触は継続している模様でございます。

 他方で、アメリカとパキスタン関係の悪化が懸念材料ということになります。

 この治安部隊の育成については、先月のNATO首脳会議で、治安権限移譲後、一五年以降もNATOとして協力していこう、国際社会としても支援していこうということで合意が見られてございます。

 さらに、来月、東京において、経済開発分野で国際会議を行います。これも、二〇一四年を超えた支援の継続の枠組みを含めて、国際社会としての支援のあり方を協議するという予定でございます。

 次に、イエメンでございます。同じページ下段でございます。

 イエメンは、紅海、アデン湾、さらにはアラビア海をへいげいする重要な国でございます。この国は、実は、アラビア半島のアルカイダというものが存在しますし、さらに言うと、治安面では、南部の分離主義、あと、北部においては、恐らくイランの支援も受けたスンニ派の一派であるホーシー派の反乱ということで、治安面で多くの難しい問題を抱えている国でございます。

 さらに、昨年来のいわゆるアラブの春の影響で大統領が退陣するという事態に至ってございますけれども、この政治的混乱に乗じて、アラビア半島のアルカイダは南部州の都市を制圧するまでに伸長してございました。さらに、親大統領派と反大統領派に軍が分裂したということもございます。

 こういう状況の中で、ハーディーさんという方が新しい大統領になられたわけですけれども、これは南部出身の方で、地元部族の協力も得つつ、現在アルカイダの掃討に注力しているということで、前進が見られるということでございます。

 他方で、アルカイダ側も反撃に出てございまして、首都で自爆テロを敢行するなど、緊張が高まってございます。このアルカイダについては、ソマリア等から難民に紛れて過激派分子が侵入しているという情報がございます。

 現在、イエメンは、国際社会の仲介の中で、一四年二月の総選挙というものを目指して国民対話プロセスに入ってございます。日本も、人道支援、民主化支援等で主要ドナー国になってございます。

 次に、三ページ、北アフリカ、マグレブ諸国のアルカイダというものが存在いたします。

 これは、もともとはアルジェリアを拠点とするイスラム過激派組織でしたが、二〇〇六年ごろにアルカイダのネットワークに参加したということでございます。それに伴って、活動範囲もアルジェリア国内からサヘル広域に広がってございます。アルジェリア政府は掃討に尽力していますけれども、まだ根絶できていません。欧米人の誘拐が中心ということになってございます。

 問題なのは、二〇一一年以降、リビアの混乱に乗じて、リビアのカダフィ大佐の兵器庫が開放された関係で、武器がサヘル地域に拡散いたしました。さらに、カダフィ大佐の傭兵と言われていたトゥアレグ族、これはリビアの南部とかニジェール、マリに広域に広がっていますけれども、このトゥアレグ族の動きがやや不穏になっているということが要注意でございます。

 同じく、そのお隣のチュニジアでも、最近アルカイダ本体の活発な動きが見られます。

 六月十日、アルカイダの首領のザワヒリが声明を出して、チュニジア新政権に対してイスラム過激派は立ち上がるべきだという檄を飛ばしました。これは、一つには、チュニジアではムスリム同胞団を背景にした穏健イスラム勢力が政権をとってございますけれども、この穏健ぶりがアルカイダとしては気に入らないということ、さらに、この新しい政権が、憲法制定がマンデートなんですけれども、経済政策面でさしたる前進が見られず国民の不満が高まっているというところに着目したアルカイダの動きだと思います。

 もともとザワヒリはエジプト人でございまして、チュニジアの動静を細かく見ているなということが看取されるとございます。

 このチュニジア、実は十日から一部過激派が暴れて、夜間外出禁止令が出ていました。十五日には解除されましたが、この暴動の動きとアルカイダ本体との直接的な関連性を挙げるような物証はまだ出てきてございません。

 次は、シリア、四ページですが、シリアでは、アサド政権の人民の弾圧とは別に、首都等で一連の大型爆破テロが発生してございます。政権側は、全ての戦闘は全てテロリストなんだ、特にアルカイダなんだ、こう強弁していますけれども、一部事案についてはヌスラ戦線と名乗る団体が犯行声明を出してございますけれども、実際誰がこのような爆破テロをやっているのかについては、証拠は何も挙がってきていません。

 他方で、六月十二日には、AQ本体がシリアにおけるイスラム戦闘員にビデオメッセージを流して、アサド政権を倒せという声明が出てございます。イラク戦争のときには、シリア国境を伝わってシリアからイラクにたくさんのアルカイダ要員が流れ込んだと言われています。今現在その反対の方向に動いているというふうに考えるのは、想像にかたくないと思います。

 シリアについては、リビアの例と同じく、武器の拡散が懸念されてございます。特に、シリアは化学兵器を持っていると言われてございまして、これがテロリストの手に渡ることが国際社会の懸念の一つでございます。

 我が国は、シリアについては、難民支援とともに、支援国会合に出るほか、実は反体制派諸派の会合等にも出席してございまして、細かくフォローしてございます。

 あとはイラクの問題ですけれども、イラクについては、昨年末に米軍が完全撤収いたしました。その後、宗派、党派をめぐる事案が多発してございます。

 現在、シーア派のマリキ首相の暗殺を企てたとしてスンニ派の副大統領に逮捕状が出ている、こういう状況になってございます。しかし、三月末にアラブ・サミットをバグダッドで開催いたしまして、それを機に徐々に治安は安定しつつあると考えています。他方、アルカイダと見られるテロ事案は、月に一回ないしは二回程度、散発的に発生していると考えています。

 最後に、直接テロというわけではございませんが、イランの問題ということなんですけれども、イランについては、テロ絡みではサウジの駐米大使暗殺未遂計画、さらに、インドやタイなどでイスラエルの外交官を狙った事案などでイランの関与が疑われている状況でございます。

 核問題については、現在、国際社会は制裁と対話ということで、制裁を強化しながらEU3プラス3のチャネルでイランとの協議が始まっている。特に、本日からモスクワで第三ラウンドということでございます。

 結果については、実は楽観視できるようないい材料はございません。そうなると、今後、六月二十八日からはアメリカの金融制裁、七月一日からはヨーロッパの石油禁輸、さらには保険、再保険の禁止ということで、本格制裁が稼働するという予定でございます。

 日本については、イランの原油は減らしていくものの、我が国のエネルギー事情や経済への影響を見きわめながら、急激な途絶は回避するというスタンスでございまして、先般、衆議院の方には、イラン石油の輸送をめぐる特別措置法について採決いただいたところでございます。

 とりあえず私の方からは以上で、あとはアフリカの説明にかわらせていただきます。

首藤委員長 次に、草賀中東アフリカ局アフリカ審議官。

草賀政府参考人 外務省アフリカ審議官の草賀でございます。

 続きまして、資料では南北スーダンのテロ情勢と書いていますが、テロというわけでは必ずしもなくて、むしろ南北スーダンの地域情勢ということで御説明申し上げます。

 これまでの経緯ですけれども、南北両スーダンの間では、昨年七月に南スーダンが独立をいたしましたが、それ以前から、アフリカ連合の仲介によりまして、南北両スーダンの間での国境線の画定、それから、アビエ地域という油田地域が国境付近にございますが、その帰属、それから石油収入の配分の問題等をめぐりまして、南北間で合意がされていないという状態がございまして、それに関する交渉が続いておりました。

 しかしながら、本年四月中旬になりまして、南スーダンの国軍が、油田地帯でありますスーダン領と言われるヘグリグという場所を占拠いたしまして、これによって南北国境付近において軍事的な緊張が高まりまして、南北交渉が一時中断することになりました。

 その後、危機感を抱いたアフリカ連合平和・安全保障理事会の声明それから国連安保理決議の採択等を含める国際社会の働きかけが行われまして、五月末から南北交渉が再び再開されております。

 南北両スーダン間の主な争点でございますが、まず、南スーダンが石油の大宗を産出しておりますが、それを輸出するためには、スーダンが保有するパイプライン等の施設を利用する必要がございます。この施設利用料の価格づけをめぐりまして、南北間で主張が鋭く対立しております。それをめぐって、本年一月以降、南スーダンは石油の生産、輸出を一切停止するということに至っております。その結果として、現在、南北両スーダンの経済困難が深刻化してございます。

 また、南北両スーダン間では、両国の間の国境線の画定、それから安全な非武装地帯の設定をめぐって対立が続いております。

 さらに、南北各国境に位置しておりますアビエ地域の帰属についても、領土問題として、南北双方が領有権をともに主張し、対立してございます。

 さて、南スーダンの治安情勢でございますが、南北スーダン間の軍事的緊張につきましては、AU、先ほど申し上げたアフリカ連合と国連安保理を含む国際社会の働きかけもございまして、五月以降は小康状態にございます。ただし、国境付近での小競り合いは散発的に発生しているという状況でございます。

 南スーダンの内部に至りますと、独立前から反政府武装勢力というものが存在しておりました。独立以降、南スーダン国軍がおおむねこれは制圧しておりますけれども、北部の方においては、この勢力との間で限定的な衝突が時折発生してございます。

 それからもう一つ、南スーダンにおきましては、ジョングレイ州というのが地図の中に書いてございますが、ここを中心に伝統的な部族間の対立というものがございまして、これは家畜泥棒とかそういうことをめぐっての衝突でございますが、散発的に発生しております。ただし、最近に至りまして、南スーダン政府がこれら部族から武器を回収するという作業を実施しておりまして、一定の効果を上げつつございます。

 これらの衝突事案の首都ジュバに対する影響でございますが、これはいずれもジュバからは遠隔地で発生してございますので、直接これらの衝突事案がジュバに波及する可能性は低いと考えております。

 他方、先ほどもお話がありましたように、ジュバにおける一般犯罪は経済困難も背景に増加の傾向にございます。

 日本の取り組みといたしましては、南北スーダンの安定がアフリカ全体の安定に直結するという認識に基づきまして、我が国は、平和構築の重点国として位置づけて、南北双方にバランスよく七億三千万ドル以上の支援を実施してきております。また、国連PKO活動の協力としても、国連スーダン・ミッションに対して司令部要員、それから、現在の南スーダン共和国ミッションに対して司令部要員及び施設部隊を派遣している、以上でございます。

 それから、最後にソマリアでございますが、これもソマリアのテロ情勢となっていますが、ソマリアの地域情勢といいますか、治安も含めた全般ということで御説明をさせていただきます。

 ソマリアは一九九一年以来、二十年余りにわたりまして、全土を統一的に支配する政府が存在しない状態が続いております。イスラム過激派勢力のアルシャバブによる攻勢が続くということで、情勢は依然として不安定で、これがソマリア沖の海賊やテロの温床になってございます。

 海賊問題ですけれども、我が国を含む各国は、海賊に対する海上護衛活動を実施してございます。ソマリアの情勢不安や周辺国の脆弱な取り締まり能力、あるいは法執行能力の不備を背景に、ソマリア沖海賊は依然として脅威となっておるということでございます。

 それから、アルシャバブ、イスラム過激派の問題ですけれども、最近に至りまして、アルシャバブは、アフリカ連合の部隊、ソマリア・ミッション、AMISOMと呼んでおりますが、この活動の結果、昨年八月、首都のモガディシュから撤退をいたしました。

 昨年十月以降は、近隣国のケニア軍とエチオピア軍が、ソマリアにございます暫定連邦政府、TFGと呼んでおりますが、このTFG軍や、先ほど申し上げたアフリカ連合のAMISOM部隊と協力して、ソマリアの内部のアルシャバブ拠点を攻撃したり奪取して、今、TFGの支配地域が拡大するということで、軍事情勢はソマリアにおいては好転しつつございます。

 それから、AMISOMへの支援の拡充の必要性が増しているところでございます。

 政治プロセスにつきましては、今、TFGは国際社会の協力を得ております。二〇一二年、本年八月までにその暫定期間を終了させるべく、つまり、より民主的な手続によって、憲法を制定して、議会を設立して、大統領を選任するということを定めるロードマップというのがございまして、その履行に現在努めております。現在のところ、ソマリアにおいては、過去二十年間で初めて国家統一に向けた期待が高まっておるところでございます。

 日本の取り組みですが、日本は、ソマリアにおける海賊やテロの問題の根本的な解決のためには、ソマリア国内の情勢安定化が不可欠であるという観点から、二〇〇七年以降、治安面の強化と人道支援、インフラ整備といった分野で総額二億ドル強の支援を実施してございます。

 今後とも、海上自衛隊の護衛活動やソマリア周辺国の海上保安能力とあわせ、ソマリア情勢の安定化に向けて最大限努力する考えでございます。

 以上でございます。

首藤委員長 これにて政府からの説明聴取は終わりました。

    ―――――――――――――

首藤委員長 これより政府参考人に対する質疑を行います。

 政府参考人に対する質疑は、理事会の協議に基づきまして、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 この際、委員各位に申し上げます。

 質疑を希望される委員は、お手元にあるネームプレートをお立ていただき、委員長の指名を受けた後、御発言ください。発言が終わりましたら、ネームプレートは戻していただくようお願いいたします。

 また、発言の際は、着席のまま、所属会派及び氏名を述べた上、答弁を求める政府参考人を御指名いただくようお願いいたします。

 なお、理事会の協議によりまして、一回の発言時間は、答弁を含めおおむね五分以内を目安とすることとなっておりますので、委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 それでは、質疑を希望される委員は、ネームプレートをお立てください。

中谷委員 外務省に質問いたします。

 テロの状況について御説明いただきましたが、このアルカイダという組織は、中東を中心に各国に広がって活動しているようなんですが、これはネットワークされた組織的なものなのかどうかということを伺いたい。オサマ・ビンラディンが殺害されましたが、では、その殺害後、誰がどこでこの組織を動かしているのか、本部はどこの辺にあって、何かの目的で連動してやっているかどうか、そのアルカイダという組織についてどういう認識を持っているかということを伺います。

 それから、アフガニスタンにおいては、タリバーンが昔はアルカイダと関連していましたが、今はタリバーンとアルカイダはどういう関係にあるのか。また、シリアやイエメンも反政府活動をしていますが、こういったものはアルカイダとして一つの目的を持って、今の政府や体制を打倒しようとしている意思を持っているかという点が一つです。

 もう一点は、ソマリアのアルシャバブにおいてはアルカイダと関連しているんでしょうか。海賊の温床となっているということですが、人質の解放などを見ますと、アルカイダなどと接触しているかもしれませんが、その辺の情報があったら教えていただきたいと思います。

首藤委員長 なお、委員の皆様にあらかじめお断りしたいと思いますが、時間が限られておりますので、なるべく一人、一問一答というような形で進めさせていただければと思います。

松富政府参考人 アルカイダ本体の性格づけについては、必ずしも私の所掌ではございませんが、私の所掌に関する限りについての限定的な段階でお話しいたしたいと思います。

 アルカイダについては、一時はゆっくりとしたネットワーク体というふうに言われていましたが、その後、相互の通信の難しさから、徐々に、このネットワークを結びつける集合力と言われるものが弱くなっているというふうに評価されています。

 特に、ウサマ・ビンラディン後、ザワヒリが選出されるまでのプロセスにおいて随分時間がかかったこと。さらには、その後、単発的に、中東の域内諸国の不安定に乗じた形でステートメントが出されるということから、その適時性等についていろいろな評価が行われていると考えています。

 したがって、中谷委員からのお答えについては、性格については、ネットワークはネットワークなんだけれども、そのネットワークの力は徐々に弱くなっているという評価でございます。

 二番目に、タリバーンとアルカイダとの関係はどうするかということでございますが、アフガン政府がタリバーンと協議するに当たって幾つか条件をつけてございまして、タリバーンも将来的にアフガンの一部として和解、再統合に応じる場合には、アルカイダとイスラム過激派との手は切りなさい、アフガン憲法を遵守しなさい、こういうような条件をつけてございます。現在、タリバーンは分かれている、割れているというふうに考えてございまして、そのような条件をのんで、アフガンの中で一定の地位と影響力を占めようという一派がいるということでございます。

 さらに、シリア、イエメンの反政府活動家との関係については、国によって違いはあると思いますけれども、イエメンについては、アラビア半島のアルカイダはかなり独自的に動いている。力もあるし、そういう活動を示していると考えています。

 しかしながら、そういう活動をするに当たっては、地元の有力者、部族等の協力が必要なわけで、現在、イエメンで政権交代が起きて、アラビア半島のアルカイダは随分押し込められていますが、これの一因は、新しいハーディー大統領が南部出身で、自分の出身の部族の協力を得てアラビア半島のアルカイダの掃討を行っているということで、かなり強いことができているということがあるのだというふうに考えております。

 他方、シリアにおいては、どれだけアルカイダが具体的な存在として存在するかについては確たる証拠はないということで、他方、過去のイラクとの交流から考えて、イラクから相当数が流れ込んでいる可能性は高いのではないかというふうに評価しているという状況でございます。

草賀政府参考人 三番目の御質問のソマリアにおけるアルシャバブがアルカイダと関係があるかどうかという中谷委員の御質問ですけれども、これは、以前から両者の関係はうわさでいろいろ出ておりましたが、ことしに入りまして、アルシャバブ自身がアルカイダと関係があるということを明言しておりますので、そういう意味では、これは確認をされたものだと思います。

 モガディシュでアルカイダ系の人間が捕まったこともございます。そういう点から、関係が明らかにあるんだろうということでございます。

 海賊とのアルシャバブの関係については、これは確認をされておりません。

 以上でございます。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 先ほど三大臣が所信的な挨拶を行ったわけですが、その後、政府参考人の説明があり、その質疑に入るというあり方について、一言私の意見を申し上げたいと思います。

 やはり、特別委員会であったにせよ、大臣の所信的挨拶が行われたならば、大臣に対する質疑が行われるのが委員会のあり方であるし、筋でありますし、先ほど理事会で申し上げたこの筋については、理事会でもそのとおりだということになりました。会期末のここに来て、大臣質疑のめどがないからこういう形で審議をやろうという審議のあり方は間違っていますし、私はきょうの日程の設置の仕方にも反対をしてまいりました。

 まず冒頭、このことを申し上げた上で、質問を行いたいと思います。

 アメリカのオバマ政権が、テロ組織の掃討を目的に、無人機による空爆を世界各地で実行しています。パキスタン、アフガニスタン、イラク、イエメンを初め、昨年六月からソマリアでも攻撃を開始しました。なぜこのような行動が許されるのか、国際的に大きな問題となっています。

 海賊対策については、ことし五月、EUの海軍部隊がソマリア沿岸部にある海賊の拠点に対する軍事攻撃を初めて行いました。ヘリや偵察機を使った空爆で、スピードボート五隻を破壊したと報じられています。

 政府はこれまで、ソマリア沖・アデン湾で行われている各国軍隊による活動は警察活動だと説明をしてきましたが、なぜこのような行動が許されるのか、何ら説明はされていません。それぞれテロ対策、海賊対策のあり方にかかわる極めて重大な問題だと思いますが、なぜこのような軍事行動が認められるのか、その国際法上の根拠について、アメリカ政府、EUはそれぞれどのような説明を行っているのか、この点について説明していただきたいと思います。

首藤委員長 赤嶺君、どの参考人を指名されますか。

赤嶺委員 アメリカ政府の担当ですね、外務省。

首藤委員長 外務省より、専門的知見に基づいて御説明ください。

松富政府参考人 米国がどういうふうに考えているか、特にソマリアでの行動についての法的性格については、残念ながら地域局の人間はお答えできないという整理でございます。

首藤委員長 EUの部隊について、海賊対策についてはいかがですか。

草賀政府参考人 先月、五月の半ば、EUが、おっしゃるとおり、ソマリアにおける海賊の兵たんの集積所を混乱させるための攻撃を行ったという発表がなされております。これは国連安保理決議に従ってなされたということでございまして、国連安保理では、海賊を抑止することを目的として、ソマリア領海内及び陸上での強制力行使を承認する決議が採択されておりまして、EUの発表によりますれば、今回のEUの行動は、関連するその国連安保理決議に従い実施されたということでございます。

山内委員 みんなの党の山内康一と申します。

 海上保安庁に質問をさせていただきます。

 東南アジアの海賊対策というのは非常にうまくいった例だと思います。日本の海上保安庁も中心になって、東南アジアの各国と協力して成功した。JICAのスキームも含めて、ずっと長年、海上保安庁が協力してきた成果だと思うんですが、同じことをインド洋でやろうとすると、なかなか難しいのじゃないかなと思います。

 東南アジアの場合は、マレーシアとかシンガポールとかインドネシアとか、それなりに海上保安機関がしっかりしている国が多かったと思いますし、インドネシアには、ODAで巡視艇も供与したといったようなことがありました。

 ただ、同じことを東アフリカあたりでできるかというと難しいと思うので、違うアプローチが必要になると思うんですが、長期的には、どうやってそういった海上保安機関をインド洋の沿岸で強化していくことができるでしょうか。

佐藤政府参考人 ソマリア沖・アデン湾において海賊対策をして、今現在、さまざまな形で我が国として対策を講じているわけですけれども、もう一つの方策として、沿岸国の海賊対処能力を高めていくということも、これはまた大事な方策の一つではなかろうか、このように考えております。

 そういう意味で、我々海上保安庁としましても、東南アジアで行ってまいりました経験を踏まえて、何とか沿岸国の海上保安能力の向上のために、さまざまな形で我々としてできることを今後ともやっていきたい、このように考えております。

石井(登)委員 民主党の石井登志郎です。

 国土交通省にお伺いをいたします。

 先ほど御説明いただいた資料の六ページ目のところで、武装警備員乗船率及び各国の武装警備の状況というところで、ドイツが法改正中だということでございました。これに関して、私はこの分野は相当不案内なので教えていただきたいんですが、どういう外的要因があって、つまり、何かドイツの船籍がこういう海賊行為に大変多く遭っているからこうした法改正があるのか。

 いずれにせよ、ドイツの状況を教えていただきたいのと、あと、我が国に関しても、民間ないし公的な警備員を仮に乗船を認めるような法改正がなされると安全性というのは高まるのかということについて、可能な限りで御所見をお聞かせください。

森政府参考人 ドイツの法改正の背景については、私どもで詳細に承知しているわけではございませんけれども、先ほど申し上げたとおり、民間あるいは公的な武装警備が非常に普及をしてまいりまして、結局、脆弱な船がやはり狙われることになるということで、ドイツについても、ほかの国同様、ドイツの場合は民間武装でございますけれども、民間武装の法整備をすることによって、自国籍の船舶あるいは船員の安全を確保しようという狙いではないかというふうに想像いたします。

 日本にとっても全く同じような状況でございまして、日本籍の船舶のみが武装をせずに航行をしていることによって、当然のことながら海賊に狙われる可能性は高くなるわけでございますから、先ほど申し上げましたとおり、日本の法制度の中でそういったことが可能かどうかということで、海洋政策本部を中心に、関係省庁が総力を挙げて今検討しているところでございます。

瑞慶覧委員 民主党の瑞慶覧長敏です。

 同じく、国土交通省にお聞きします。

 資料の一ページ目、二〇一一年は乗っ取り率が一二%と減っていますが、二〇一二年は、途中経過ではあるんですけれども、一九%にまた上がったという説明でした。民間武装警備の率も向上している中、それから自助努力も上がっていると思うんですけれども、なぜまた上がってしまったのか、そこをもうちょっと詳しくお伺いしたいと思います。

森政府参考人 乗っ取り率が一旦下がったものがまた上がった原因については、いろいろな見方があって私どももどれが正解かよくわからないんですが、よく言われているのが、いわゆる海賊側も、狙いやすい船と言うとおかしいんですけれども、成功しやすい船を選び出したというふうに言われております。それがどの程度真実なのかどうかというのは、我々は確認すべき由もないわけですけれども、そういったことを言われている。

 海賊対策で、いろいろな意味で効果を上げているのは事実ですので、海賊側もいろいろと考え出したということではないでしょうか。これは私の個人的な感想でございますので、いわゆる公式な見解かどうかと問われると、本当にこれは正しいかと言われると自信がございませんけれども、そういったことをよく聞くことがございます。

相原委員 民主党の相原史乃と申します。

 外務省さんにお聞きしたいと思います。

 南北のスーダンの紛争状態というのが、まさにその治安の維持がアフリカ全体の治安に大変重要であるというお話がございました。南のスーダンの方に石油などの資源が多くとれるところがあって、逆にその精製工場などが北のスーダン共和国の方にあるというふうに承知しております。

 こういう状況の中で、いかに日本が、合計七億三千万ドルという多額の資金援助を、バランスよくというふうにおっしゃっておりましたけれども、具体的にどのような基準で行っているのかを教えていただければというふうに思います。よろしくお願いいたします。

草賀政府参考人 南北スーダンは、まさに委員御指摘のとおり、南に石油が四分の三ぐらいありまして、北に四分の一しかない。しかしながら、そのパイプラインは南から北を抜けて紅海に出ている、そこから輸出されているということでございまして、精製工場もそちらの方にある、こういうことでございます。

 これまでのところ、スーダンは、アメリカの制裁対象国になったこともあって、欧米諸国がかなり引いてございまして、中国とかインドとかマレーシアとか、そういう諸国の石油関係企業が出ていって権益をとる、こういうようなことになってございます。

 しかるところ、昨年七月、南スーダンが独立したということで、これまで私どもは、南北双方のニーズがそれぞれございますので、それをにらみながら、どちらか一方に余り著しい偏りを生じないように考えながら南北両スーダンに対する支援をやってきたということで、そのこと自体は、南北両方からも、それから国際社会からもかなりの評価をいただいているところでございます。

 まさにこれから南も本格的な国づくりが始まるところでもございますし、そういう中にあって、日本に対する期待もだんだん高まってございます。先ほどのパイプラインも、今度はケニアの方に出ないかとか、そういうようなアプローチを日本企業も受けておりますので、それはこれまでの日本の南北スーダンに対する姿勢が評価されている結果だろうと思っております。

 以上でございます。

長島(一)委員 民主党の長島一由です。

 防衛省にお伺いしたいんですが、護衛艦の油の調達で、過去、決算の特別委員会で問題になりましたけれども、湾岸諸国で現地調達をしている割には購入価格が高い。その要因としては、結果随契になって、その随契になった会社に防衛省のOBが天下っている。

 なぜ随契になってしまうかというところがポイントで、バージ船を使ってわざわざ油を積みかえなきゃいけない。要は、そのまま護衛艦が接岸すると治安上危険があるということで、それはしようがないのかなと思ったりもしたんですが、フランスの海軍省に照会したら、フランスは、同じ場所で油を調達するにも、バージ船を使っていないんですね。ですから、その辺の整合性とかを考えた上で、なるべく安く油を調達して、細かいことを言うようですけれども、こういった節約した金額をぜひ海外で働いている自衛官のために使っていただきたい。

 そこで質問しますけれども、私も二年前に現地に行かせていただきましたが、現地も、本当に五十度を超えるような灼熱地獄の中で長期間労働しているわけで、こういった隊員のための環境改善に使っていただきたいと思うんですけれども、お尋ねは、この間の、少なくともこの二年間で、海外で働く自衛隊員の自殺者がいないかどうか、心の病の件数とかをちゃんと把握しているのかどうか、お尋ねいたします。

首藤委員長 委員の皆さん、もう時間がだんだん迫ってまいりましたので、なるべく質問は質問の内容だけでよろしくお願いいたします。

松本政府参考人 今御質問の自殺者の件数でありますとか心の病の件というのは、申しわけありませんけれども、私の担当ではございませんので、手元にちょっと数字がございませんので、お答えを差し控えさせていただきます。

首藤委員長 それでは、その問題に関しましては、防衛省、後ほどまた個別に説明をよろしくお願いいたします。

斉木委員 民主党の斉木武志でございます。

 先ほどの石井委員の質問の関連なんですけれども、これは国土交通省ですかね、海賊行為がアラビア海全域に、アデン湾から東の方へと拡散をしてきている。これを防いでいかなければいけないわけですけれども、やはり民間警備会社の同乗というものは、業界からも今要望が強くあるようですので、これは認めていくべきではないかというふうに思います。

 先ほど、現行法上でそれが可能なのかどうか、今解釈を詰めているということなんですけれども、どのあたりが現行法上課題があって、やるつもりなのかというところをちょっとお聞かせ願いたいんですが。

森政府参考人 いわゆる日本籍の船舶の上は日本領土でございますので、当然のことながら、銃刀法の規制がかかります。

 したがって、現行法では、民間人に関しては銃の保持あるいは使用が認められませんので、そういった意味で、民間の武装警備を認めるためには、法律の改正が必要でございます。

橘(秀)委員 外務省さんにお伺いいたします。

 海賊事案の中で、日本人及び日本の関係者が人質になった際の対処方針、諸外国との比較の上でいかがかということをお答えいただければと思います。

 中国は割合身の代金の支払いに応じているようですが、英国、米国については割合強気に出て、ただ、二〇一〇年十一月十四日には、イギリス人のチャンドラー夫妻は三百八十日間拘束されて無事に解放されたんですが、一方で、ヨットで同様に航海中に拘束されたアメリカの二組の夫婦は去年の二月二十三日にソマリア海賊から殺害をされたということがありました。

 こうした状況を受けて、何かアメリカや英国でも変化があったのか、そうしたことをお伺いさせてください。

首藤委員長 どの政府参考人に求めますか。

橘(秀)委員 外務省さんに。

首藤委員長 外務省、お願いします。

草賀政府参考人 本件につきましては、残念ながら、私どもの所掌でございませんので、お答えは差し控えさせていただきます。もし必要であれば、また個別に何か御報告するようにいたします。済みません。

首藤委員長 わかりました。残念ながら、質問がいろいろな多岐にわたっておりますので、直接担当でない部分もあると思います。御不満だと思いますけれども、個別に御説明をよろしくお願いします。

橋本(勉)委員 民主党の橋本勉でございます。

 海上保安庁さんに、もう質問は短いので。

 グアナバラ号、六日に米軍が、シタデルに避難していた間にアメリカ軍が四名を拘束した。これは日本とか他の国でないという理由は、これはなぜアメリカ軍だったのか、ちょっとお答えいただきたいです。

 それから、ちょっといいですか、外務省に。簡単です。

 一つは、TFG、ソマリアの方ですけれども、TFGが今、無政府状態から、一つの、ある程度政府的な働きをしつつあるという中で、国連軍というものを今の段階で呼べないのかということでちょっと質問をさせていただきます。

 二点です。

佐藤政府参考人 ただいまのグアナバラ号の事件に関して。

 当時は、海域の方が少し、我が方は東寄りの方におりまして、米軍の方がグアナバラ号の海賊事件の近くにいたということでございまして、そのために米軍の方が対応した、このように伺っております。

草賀政府参考人 ソマリアのTFGの話でございますけれども、確かに、ソマリアのTFG、統一的な政府の設立に向けて今やっておるんですけれども、今ワークしているやり方がアフリカを前面に立てるというやり方で、ですからアフリカの部隊がもう一万数千人おりまして、これがアルシャバブを追い詰めつつある、こういう現状でございます。それを国連は後ろからサポートするというふうに今やっておりまして、おっしゃることは、結局、最終的には国連安保理で議論して決定しなければならないと思いますが、今現在、この方式がそれなりにワークしつつあるということではないかと思います。

 以上でございます。

首藤委員長 これにて政府参考人に対する質疑は終わりました。

 このような方式は余り今まで例がないことでございますけれども、非常に専門的な説明、そして重要な質疑が行われたと思っております。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十二分散会


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