衆議院

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第1号 平成24年6月8日(金曜日)

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平成二十四年六月八日(金曜日)

    午後一時二十分開議

 出席委員

  環境委員会

   委員長 生方 幸夫君

   理事 大谷 信盛君 理事 川越 孝洋君

   理事 近藤 昭一君 理事 矢崎 公二君

   理事 横山 北斗君 理事 田中 和徳君

   理事 吉野 正芳君 理事 江田 康幸君

      岡本 英子君    柿沼 正明君

      菊池長右ェ門君    工藤 仁美君

      篠原  孝君    空本 誠喜君

      高邑  勉君    高山 智司君

      玉置 公良君    森岡洋一郎君

      山花 郁夫君    横光 克彦君

      吉川 政重君    井上 信治君

      近藤三津枝君    柴山 昌彦君

      福井  照君    古川 禎久君

      斎藤やすのり君    佐藤ゆうこ君

  経済産業委員会

   委員長 中山 義活君

   理事 石関 貴史君 理事 稲富 修二君

   理事 川口  博君 理事 近藤 洋介君

   理事 田嶋  要君 理事 梶山 弘志君

   理事 菅原 一秀君 理事 佐藤 茂樹君

      井戸まさえ君    磯谷香代子君

      大畠 章宏君    加藤  学君

      木村たけつか君    櫛渕 万里君

      斉木 武志君    柴橋 正直君

      平  智之君    高野  守君

      高松 和夫君    花咲 宏基君

      藤田 大助君    松岡 広隆君

      山崎  誠君    山本 剛正君

      小泉進次郎君    近藤三津枝君

      高市 早苗君    谷畑  孝君

      西野あきら君    西村 康稔君

      額賀福志郎君    江田 康幸君

      吉井 英勝君    内山  晃君

      中後  淳君    柿澤 未途君

      山内 康一君    園田 博之君

      平山 泰朗君

    …………………………………

   議員           塩崎 恭久君

   議員           柴山 昌彦君

   議員           吉野 正芳君

   議員           江田 康幸君

   議員           阿部 知子君

   議員           石川 知裕君

   経済産業大臣       枝野 幸男君

   環境大臣

   国務大臣

   (原発事故の収束及び再発防止担当)        細野 豪志君

   環境副大臣        横光 克彦君

   環境大臣政務官      高山 智司君

   政府参考人

   (内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室長)   森本 英香君

   政府参考人

   (内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室副室長) 櫻田 道夫君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      糟谷 敏秀君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     深野 弘行君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   伊藤 哲夫君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  鈴木 正規君

   参考人

   (原子力安全委員会委員長)            班目 春樹君

   参考人

   (原子力委員会委員長)  近藤 駿介君

   経済産業委員会専門員   綱井 幸裕君

   環境委員会専門員     高梨 金也君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)

 原子力安全調査委員会設置法案(内閣提出第一二号)

 地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件(内閣提出、承認第一号)

 原子力規制委員会設置法案(塩崎恭久君外三名提出、衆法第一〇号)


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     ――――◇―――――

生方委員長 これより環境委員会経済産業委員会連合審査会を開会いたします。

 先例によりまして、私が委員長の職務を行います。

 内閣提出、原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案、原子力安全調査委員会設置法案及び地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件並びに塩崎恭久君外三名提出、原子力規制委員会設置法案の各案件を議題といたします。

 各案件の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付してあります資料をもって説明にかえさせていただきますので、御了承願います。

 これより質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。空本誠喜君。

空本委員 民主党の空本誠喜でございます。

 きょうは、発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 早速でございますので、質問させていただきます。

 今回、原子力規制委員会、原子力安全調査委員会、そして原子力規制庁の組織、人材を中心に質問させていただければと思います。

 現状、許認可や定期検査などの審査を受ける場合、受ける側はプロである、審査、規制をする側はアマチュアであるというふうに私は今感じております。原子炉を設計、開発、運転、定期検査、そういう実務経験がないアマチュアの方々が規制をしているというふうに私は感じておりまして、やはりそうなると重箱の隅をつつくような規制になっている、私もそういうふうに感じております。

 まず、原子力安全・保安院長の深野さんの方に、現状、保安院には中途採用の専門性を持つ方がいらっしゃいますけれども、どの程度専門性を有する方がいて、それは十分なのかどうか、お聞かせください。

深野政府参考人 お答えをいたします。

 現在、保安院は原子力関係をやっております者が三百七十名ほどおりますが、そのうち、いわゆる工学系、技術系の者は三百二十人程度でございます。

 そのうち、いわゆる中途採用者、メーカー等でいろいろなことを経験されてこられた方がおおむね百名程度いらっしゃいます。あとは二百二十名程度でございますけれども、一番多いのが機械工学系の方でございまして、ほかに、電気、建築土木、原子力工学等の専門の方を中心に、二百二十人ぐらいの方が大学を卒業して入っておられる、そういうことでございます。

 こういった方について、私ども、研修をやったり、あるいは各ポストごとにどういう能力が必要かということを管理しているところでございます。

空本委員 ありがとうございます。

 しかしながら、私の方は、やはり若干、規制の本当のプロという方、実務経験をもう少し有する方がいなければならないかなと思います。アメリカに比べれば全然それは人員も少ないですし、そういった意味で強化しなきゃいけない。

 今、このパネル、皆さんの配付資料の右下の方に、原子力工学というのは幅広い分野、エンジニアリング、原子炉物理から放射線計測、電気、機械、また建築土木、本当にたくさんの方が要ります。そういった中の全体を網羅できるような人材が絶対要るんですよね。そういう全体を網羅する中でも、原子炉の主任技術者なり核燃料の取扱主任者、こういった方々がやはり要る。こういう方々がまだまだ不十分であると私は感じていますので、そういった方々を中心とした規制庁、原子力技術庁をつくるべきではないかなと思っております。

 そこで、法案の提出者の皆さんにお聞きしたいんですけれども、事務局組織として原子力規制庁の組織構造、原子力規制委員会の下にありますけれども、どういう構造になっていて、どういう規模、資格要件になっているか、お聞かせいただきたいと思います。

吉野議員 空本先生にお答え申し上げます。

 空本先生は原子力の専門家として、特にSPEEDIを国会の中で一番最初に言い出したのは空本先生です。本当にありがとうございます。

 原子力規制庁の内部組織の構成については、下位法令より定められることになりますが、提案者としては、人事、予算等の官房機能をつかさどる部局のほか、原子力規制委員会の所掌事務に応じた二、三の大きなセクションのもとに、所掌事務を分掌する複数の部課が設けられるものと考えております。

 また、人員規模につきましては、政府案では五百人であります。しかし、自公案では、文科省の保障措置、またJNESの統合等々で約千人規模になるものと思います。

 原子力規制庁の職員は、原子力安全規制の質的向上を図る上において、原子力利用に関する国際的な動向に精通するとともに、高い専門知識を有していること、また原子力利用における安全の確保に使命感を持っていることが求められるとともに、原子炉主任技術者などの資格を有することが望まれると思います。

 以上です。

空本委員 ありがとうございます。

 今おっしゃっていただいたような、まだまだ規制を強化するに当たっては人材というものが大事でありまして、特に専門性を有するけれどもマネジメントもできなければならないというところもございますので、そういった点も配慮いただきたいなと思っております。

 そこで、新しい規制庁に移す際に、やはり規制の混乱をなくす必要があるだろう。そういうときには、アメリカのNRCなども参考にしながら、異議申し立てや不服審査制度、司法的な面の整備も必要かと思っておりまして、そういった点を組み込むことができるかどうか、まず、細野大臣と法案提出者の方、両方にお聞きしたいと思います。

細野国務大臣 原子力安全規制の執行につきましては、一般的な規制と同様、行政不服審査法に基づく異議申し立てというのが制度としてございます。そして、異議申し立ての決定に不服がある場合には、行政事件訴訟法に基づいて処分の取り消しを裁判所に提訴することが可能となっております。

 恐らく、空本委員の御質問は、一般的な制度以外にこの問題に関して特化をして何か制度が必要なのではないか、そういう御発言かというふうに思いますが、その点については、この制度にのっとったさまざまな取り組みがしっかりとできるかどうかということも検証する中で、制度の運用改善等の検討をこれからしていきたいというふうに考えております。

柴山議員 お答え申し上げます。

 私たちの議員立法案では、新しい原子力規制組織は、独立行政委員会、三条委員会となります。今、例えば公正取引委員会におきましては、不服申し立ては審判制度というものがありまして、そこで従前の裁判手続とは違った迅速、簡潔な処理をしているわけでありますけれども、もう既に御案内のとおり、この公正取引委員会の審判制度も今見直しの対象となっております。

 そういうわけで、私たちの議員立法におきましても、原子力規制委員会による原子炉等規制法等に基づく処分についての不服申し立てについては、今、細野大臣がお答えになられたとおり、一般原則による行政不服審査法あるいは行政事件訴訟法に基づく取り消し訴訟の対象になるというように整理をしております。

 ただ、公正取引委員会の場合は、実質的証拠ルールなどでその専門的な判断を尊重するという形に恐らくなっておりますので、現実の訴訟における運用は、やはり専門家の判断というものが非常に大きなウエートを占めてくるのかなというように思っております。

 以上です。

空本委員 ありがとうございました。

 やはり、アメリカのNRCの組織のあり方、中身のつくり方、こういったものを参考にすることが大事であろうと思いますし、また、そういう方々を日本に招聘し、そしてその中で助言をいただく、そういうことも一つの案かなと思いますので、その辺、御検討いただけたらありがたいと思います。

 次に、今回の災害は、オンサイトの対策、細野大臣、また当時の枝野官房長官は一生懸命やっておられましたけれども、オフサイトについての対応がやはり遅かったと私は感じております。特に、原災法がございますし、関連のマニュアルがございます。さらには、関連の指針、安全委員会が出しているものがあります。そういったものに忠実に正しく行政が動いていれば、それほど大きな被曝の拡大はなかったのかな、汚染の広がりはなかったのかなというふうに私は感じています。

 そこで、SPEEDIの問題もございますけれども、やはり原子力防災の基本に戻って忠実に対応することが大事であって、また、災害対策の本部のあり方も、しっかり機能していなかったところを改善する。さらには、官邸の正しい、強いリーダーシップが必要であって、さらには原子力安全委員会、私は、今回は、申しわけないけれども能力不足であって、機能不全に陥ったというふうに感じていますし、助言すべきところが全く助言していなかったというところがございました。

 あと、縦割り行政、押しつけ合い行政、旧科技庁系、旧通産系の綱引きがありました。ここら辺が一番問題でありまして、ここを大きく改善しなければならない。また、先ほど申し上げましたが、安全委員会が的確な助言をしていれば、総理も間違った判断をすることはなかったと私は感じています。

 そういった意味でも、やはり単なる看板のかけかえ、中身を変えず看板のかけかえだけでは、これはもう危ないと思いますし、そこを何とか変えなきゃいけない。

 また、パネルの方、配付資料にございますけれども、組織、人材、やはりここは完全独立な技術行政庁としていただきたい。プラス職員が若いうちから安全研究や炉の運転ができるような体制づくり、実務の経験を行ってその中で規制に行く、さまざまなローテーションをしていただく。その中で、きょうの環境委員会の参考人の質疑でもやりましたが、組織を硬直させないようにモチベーションを高めるための研究開発というものも当たってもらう、そういった人事を回していく。そうならば、ノーリターン制度、ルール、これも問題、支障がないと思います。

 専門家集団が情熱を持って安全行政に携わるという体制をつくっていただきたいと思っておりますが、その点、体制、人材育成はどうあるべきか、大臣並びに法案提出者の皆様にお聞きしたいと思います。

細野国務大臣 まず、体制でございますけれども、空本委員が御指摘をされたとおり、オフサイトの体制についても、必ずしも一元化をされておらず、迅速な対応ができなかったという反省をしなければならないというふうに考えております。

 まずは、御指摘がありましたとおり、防災計画であるとかマニュアルは改定をして、オフサイトセンターのあり方そのものについても、これもしっかりと見直していく。これが、恐らく新しく誕生する原子力の規制組織の最初の仕事になるのではないかというふうに思っております。

 特にオフサイトについては、新しい組織におきましては、原子力地域安全総括官というのを設けまして、常にオフサイトの防災について取り組む専門のチームをつくって、そこが全国をそれこそ見て回る中で、対応ができていない地域がないかどうか、対応ができていない自治体がないかどうかということについても確認をしていくことが必要ではないかと思っております。

 また、後段の部分で御指摘がありました人材につきましては、先ほど議員立法を出されている答弁者の方からもお話がございましたが、やはり専門性について、私も一緒に作業をやっておりましたけれども、まだ課題が特に規制側にあったというふうに思っています。

 したがって、空本委員も御指摘をされたとおり、原子炉主任技術者であるとか核燃料取扱主任者などのそういう資格制度をしっかりととってやっていくと同時に、国際的な訓練も積んで、相当レベルを上げていかないと、これからの原子力安全規制というのはやり得ない、そういう危機感を持って当たってまいりたいと考えております。

塩崎議員 体制につきましては、事前に決めておかなければいけないことを十分決めておられず、また、訓練そして準備もよくできていなかったということでありますので、これからは、あらゆることを事前に決め、そして、裁量の余地をできる限りなくして透明な行政をやっていくということが大事だろうと思います。

 そのときの担い手が、先生今おっしゃったような、今回は、独立性のある組織の中における安全に特化した専門プロ集団、この人材をどう育てていくかということがとても大事だろうというふうに思っておりまして、我々も、このノーリターンルールというのは先生今御賛同いただきましたけれども、別に、島流しにしていじめようというわけじゃなくて、むしろ、本当にちゃんと育てていく、あるいは育っていただくためには、ほかのことをやっている余裕がないぐらい難しい技術を学ばなきゃいけないということなので、ノーリターンできっちりやっていきたいと思っております。

 我々は、先生おっしゃったように、資格制度をフルに活用して、次から次へと自分がチャレンジをしていく、そういう中でみずからの能力を上げていくということであるとともに、国内外のいろいろな研究機関を初め専門家との交流や採用、日本に来てもらう、それから国際機関や大学との人事交流、あるいはNRCやONR、ASN、そういったところにも人事交流でどんどん行って、学ぶべきものを学んで、新しい空気を吸ってきて、日本でそれをまた花を咲かせてもらう、あるいは研修体制もしっかりとやっていくという、今までとは違って、やはりしっかり専門の人を育てる体制をどう組んでいくかということだと思います。

 ウェートマンさんやあるいはメザーブさんから聞いても、相当、人を育てるということを長期的に計画しながらやっているということを私も感じました。

空本委員 ありがとうございます。

 しっかりとした体制づくり、専門家集団、技術行政庁をしっかりつくり込むというのが大事でございます。

 一点、最後に申し上げますが、今、研究開発の炉がございません、なくなっています。人材育成するには研究炉が必要になります。東大炉も今廃止措置の方に向かっておりまして、やはりそういったものを復活させることも大事であって、プラスJAEAとか、今、文科省とまた新しい規制庁で共通の管理をする、共管するというふうなことになっておりますが、やはりこれも、一元管理が要って、全て規制庁の下に持ってくる。その方が管理しやすく、また、その中にいらっしゃる方のモチベーションもさらに上がっていくと思いますので、保障措置等も含めて、RIも含めて、また原賠法も含めて規制庁に全て集約する、これが一番私は後でもめないと思いますので、ぜひとも御検討いただきたいと思います。

 ありがとうございました。

生方委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 質問に先立ちまして、きょうは、環境委員会また経済産業委員会の各理事の皆さん、また当事者である民主党の山本委員の御理解をいただきまして、我々小さな政党でございますが、順番を繰り上げて先に質問させていただく機会をいただきましたことに、まず御礼と感謝を申し上げたいと思います。

 私ども公明党としては、今回の規制組織については、本会議でも質問の中で申し上げたんですけれども、一つは独立性、一つは専門性、三つ目に中立性、さらに、強い規制権限が必要であって、内閣から独立した独立行政委員会として設置すべきだ、そういう主張をしてまいりました。

 そういう観点から、今、民主、また自民、公明の三党協議が行われているというように報道ベースでは聞いております。ただ、担当者からは、非常にこれはきちっと閉ざされておりますので、内容は聞いておりません。

 しかし、その辺の話を聞いておりますと、一つは、報道ベースで聞く限りでは、一昨日現在で、独立性の高い三条委員会にすること、さらに、職員のノーリターンルールというものをほぼ徹底するという形にする、さらには、専門性という意味では、独立行政法人であります原子力安全基盤機構、JNES、これを統合していくという方向で大体決まっていた。

 昨日のことがけさの報道にも出ておりますけれども、一つは、最大の懸案である総理の指示権、これも一定の制限を設けた上で、一定程度認めるという方向になっているという報道になっております。

 さらに、きのうあったのは、平時のオフサイト対策ですね。防災体制を強めるために、原子力防災・放射能汚染対策会議(仮称)の新設で合意した、さらに、規制委員会の弱点と言われました合議制、これを乗り越えるために、緊急のときには規制委員長が単独で意思決定権を持つということも認めるというような報道になっております。

 多分、お答えはなかなか難しいんだと思うんですが、吉野先生、また柴山先生、江田先生は協議されている方々だと思うんですが、議論の前提として、今の報道ベースで言われていることは、一〇〇%正確じゃないけれども、ほぼその方向で間違いない、そういうものなんでしょうか。御答弁できたら、今の段階での大体の方向性をお聞きしたいと思います。

吉野議員 報道も、各社によって論調が大分違います。全く正反対の報道をしている新聞社もありますので、報道は報道として、我々、鋭意今協議中でございます。

佐藤(茂)委員 私も実は、我が党の江田委員が出ておりますが、全く聞いておりません、こんなに毎日の結果については。ただ、報道ベースの話を今させていただいたわけです。

 いずれにしましても、独立性、専門性については、私は話が相当煮詰まってきているなという印象を持っておりまして、もう一つ、我が党が従前から言っております観点でいうと、中立性というものをいかに確保していくのか、ここが大事ではないか。

 そういうことで、最初に何点かお聞きをさせていただきたいんですが、まず衆法提出者に伺います。

 衆法では原子力規制委員会に高い独立性が与えられる以上、委員長及び委員の中立性というのは、私は一段と重要になってくると考えるんですね。なるべく中立性を高めるために、法案上、この衆法を出す段階でどのように工夫されたのか、まず公明党の提出者にお尋ねをしたいと思います。

江田(康)議員 公明党の佐藤先生にお答えいたします。

 御指摘のように、原子力規制委員会の委員長、委員につきましては、中立公正の立場から、みずからの専門知識及び経験のみに基づいて、独立した規制上の決定と判断ができる者でなければならない。また、今般の原子力事故を受けまして、原子力利用における安全の確保が喫緊の課題であります。また、国民からも強く望まれております。そういう中で、人格の高潔性や高い使命感が求められるところでございます。

 そこで、我々の自公案では、原子力規制委員会の委員長及び委員の資格要件としては、人格が高潔であることを設けるとともに、委員長の任免について天皇が認証することとしているところでございます。

佐藤(茂)委員 そこで、人格が高潔というのは極めて抽象的な表現だと思うんですが、今強調された人格が高潔というのは具体的にどういうことを指しているのか、ぜひ御答弁いただきたいと思います。

江田(康)議員 人格が高潔であるというのは、これは、より高い人格に基づく誠実性、また廉直性といいますか、清廉潔白であるということを意味するものでございます。

 人格が高潔であるということは、先ほど述べましたように、原子力規制委員会の委員長、委員の中立性を確保する上で、また原子力規制組織に対する国民の信頼に応える上で非常に重要な要件であると思っております。

佐藤(茂)委員 私は本当に、今、衆法提出者が答弁されていましたけれども、清廉潔白であるかどうかというようなことが、原子力の安全規制をつかさどるそういう規制組織においては、委員長また委員にとっては極めて大事なことであると。いやしくも事業者から金銭の授受等を受けている、そういう疑いを持たれているような人が安全規制をもし担当するということになると、これはもう国民からの信頼というのは非常に低くなる。

 そのような観点から、本会議でも政府に質問をさせていただいて、総理から答弁をいただきました。総理は、その中でも特に利益相反を生じさせない、そういう視点から、次のように述べられておりました。

 「このため、政府が提出している法案においては、原子力規制庁の原子力安全調査委員会の委員に係る要件を法定しています。これに加え、原子炉等規制法に基づく許認可等に当たって意見を聞く審査専門委員についても、利益相反について厳格なルールを設定し、中立性を確保する必要があると考えております。」

 こういうふうに言われておりまして、一つは、原子力安全調査委員会の委員に係る要件については、今回の設置法の第六条四項で、こういう人はつけてはだめだという不適格要件を決定しておられます。衆法の原子力規制委員会の方も、第七条五項で不適格要件というものを法定されているんですね。

 しかし、この総理の答弁にありますように、今回、政府案では、もう一つ、原子炉等規制法を改正して新たに設置される審査専門委員、これは第六十七条の三で今度規定されるんですが、この方々については、委員に係る要件というのは全く法定されておりません。ですから、この方をどういう人を選ぶのか、どういう人を選んじゃいけないのかということについては、早急に私は決めなければいけないことだろうと思うんです。

 政府案によると、この審査専門委員というのは、原子炉の設置の許可等に当たって、高度な専門技術的知見を踏まえ適切な判断を行うため意見を聞く委員だということで、原子炉の設置等において極めて大事な役割を果たす方でございます。だから、私は、利益相反について、今抜けている部分についても厳格なルールを法律上きちっと設置して、中立性を確保するということがまず必要ではないか、そのように思うんですね。

 あわせて、ぜひ、「利益相反について厳格なルール」というのは、総理が答弁されているんですけれども、具体的にどのようなものを想定しているのか、細野大臣の御答弁をいただきたいと思います。

細野国務大臣 今、佐藤委員御指摘をされたとおり、審査専門委員というのは、原子力安全委員会の委員とあわせて非常に重要な役割を果たすと考えております。

 ただ、若干性格が異なりますのは、審査専門委員の場合には常勤ではございません。さらには、五名と限定をされているということではなくて、もう少し柔軟に、さまざまな方に入っていただけるようなイメージを持っております。

 したがいまして、今おっしゃったような形で、厳格な、やはり実質的なルールというのをつくっていくことが必要であるというふうに考えておりますけれども、例えば審査の中身であるとか兼職の実態なども含めて柔軟に対応することも、ある面で必要ではないかということで、法定化はしていないということであります。

 ただ、少なくとも、こういったことについては厳格なルールが必要であると思っています。委員に就任できない場合であるとか、個別の許認可の審査に参加できない場合を明確に決めておくこと、さらには、原子力事業者との関係について情報公開を徹底すること。この審査専門委員の場合は、事業者とのかかわりが全くない人だけを選ぶと、むしろ専門性をどうしても確保できないという可能性がありますので、それは一定の範囲で場合によっては認めた上で、厳格な、きちっとした情報公開をするというのも一つの考え方ではないかというふうに、今のところ私どもとしては考えています。

 御指摘いただきましたので、この法律を成立させていただいた暁には、発足するまでの間、若干時間がある可能性がございます。その間に、発足する前に、今私が申し上げたような考え方の一定の方向のもとで厳格なルールをあらかじめつくっておくということが必要ではないかと考えているところでございます。

佐藤(茂)委員 ぜひ厳格なルールをつくっていただきたいのと、私は、情報公開程度でいいのかどうかということについては、もうちょっと突き詰めて検討していただきたいと思うんですね。

 これは、今言いました具体的な審査専門委員だけではございません。本会議でも指摘したんですけれども、政府にかかわる原子力専門家の中に、寄附金とか研究費の名目で、いわゆる事業者との間で多額の金銭授受が行われている、そういう方が結構いらっしゃるという問題がありました。具体的には、原子力発電所を製造した事業者や電力会社等から奨学寄附金がそれぞれ支出されている、そういう問題があったんですね。

 私は、今の委員に限らず、新しい原子力規制組織において、国民に不信を抱かせるようなこうした事業者等からの寄附等について、情報公開だけではなくて、もっと厳格なルールをつくって、こういう人たちが安全規制にかかわっているのなら信用できるというような方が、やはりきちっと委員に選ばれるべきだと思うんです。もう一段厳格なルールをつくって、国民が中立性の意味でもしっかりと信頼できる、特に金銭面ですね、そういうものをやはり私はつくるべきじゃないかと思うんですけれども、細野大臣、もう一度御答弁いただきたいと思います。

細野国務大臣 特に金銭の授受による利益相反の問題というのは、これまでもたびたび指摘をされてまいりましたので、厳格なルールが必要であるというふうに思っております。

 先ほどの答弁でも少し申し上げましたけれども、例えば個別の許認可の審査のような場合には、それこそそうした金銭の授受であるとか企業との関係という面においては、相当厳格な前提が必要だというふうに考えられますので、そういったところについて、今御指摘のような、情報公開だけということではなくて、そもそもそういったことには関与しない、そういうルールを設けることも一つの考え方だというふうに思います。

 ただ、一方で、規制機関はさまざまなことについて検討します。例えば、場合によっては放射線防護であるとか健康の問題なども含めて、そういった分野においてもいろいろなことについてルールをこれからつくっていかなければならないというようなことがありますので、そういったところまで全て、それこそ金銭授受一切なし、すなわち企業とは一切関係のない人だけを選ぶということがいいのかどうかというのは、いろいろな議論の余地があるというふうに思います。

 したがいまして、役割に応じた公正なルールというのをきっちりつくっていくことが大切ではないかというふうに考えております。

佐藤(茂)委員 ぜひ役割に応じた公正なルールをしっかりつくっていっていただきたいんですが、それに関連して、本会議でも指摘したんですけれども、内閣府の原子力委員会のあり方でございます。

 私の質問に対して、要は、内閣府原子力委員会が原発推進側だけを集め、勉強会と称する秘密会議を開いていた問題、この問題を本会議で取り上げたところ、総理は、「コストや廃棄物量などのデータ提供等を受けるため、事業者を含めた関係者を集めた会合を開いた」と。これは、私は、この時点では、原子力委員会が言いわけをされていた話をそのまま総理が答弁されたというようにしか思えないので到底承服できないんですが、その本会議の後にも、さらに新たな事実が出てまいりました。

 要は、十一月十七日の第一回の会議に原子力委員会の五人全員が出席していた、その秘密会議に。そういうことも明らかになりました。さらに、秘密会議では、核燃料サイクルの問題だけではなくて、原子力の憲法と言われている原子力政策大綱を論議する新大綱策定会議で使う議案の原案も事前に示していた、こういう問題も明らかになってきたんですね。それで、事業者から意見を聞いていた。こういう、二重三重に、この秘密会議というものに対しての疑惑が出てきているわけであります。

 私は、特に新聞でいうと毎日新聞なんかが一生懸命取材しているんですけれども、報道で明らかになればなるほど、極めて重大な問題だ、そのように思うんですね。最初は原子力委員長も、これは小委員会の問題だ、そういうふうに言われていたんですが、本体の五人そのものが最初から秘密会議に出ておられる。さらに、小委員会で議論していた核燃料サイクルだけではなくて、原子力大綱そのものの議案を既に秘密会議に提示していたという、原子力委員会そのものの問題になってきているわけであります。

 今回は、安全規制ということで、今までの原子力安全委員会、さらには経産省の原子力安全・保安院については組織改編が行われるんですけれども、これだけ疑惑が出てきた原子力委員会についても、私は、組織のあり方を今抜本的に、やはり政府としてしっかり主導権を持って改めるべきときに来ているんじゃないのか、そのように思うんですが、細野大臣の答弁をいただきたいと思います。

細野国務大臣 総理が本会議の答弁で言われましたコストや廃棄物量などのデータの提供を受ける必要があるというのは、これは実はどうしても必要な部分なものですから、そこは御理解をいただきたいと思います。

 つまり、核燃料サイクルというのは、日本の場合には、日本原燃という民間の事業者が六ケ所村で再処理工場をやっている、そういう状況があるわけです。したがいまして、政府として、どれぐらい廃棄物が出るのかであるとか、どういったコストになっているのかということについて最新のデータを得るためには、どうしても日本原燃と接触をしなければならないということになるわけですね。

 日本原燃という会社は、電力会社が実質的な経営というかオーナーでありますから、全て電力会社が株を持っていますから、そうなってくると、電力会社からも情報を得なければならないということなんです。したがって、接触すること自体を禁止してしまうと核燃サイクルそのものの議論ができないという我が国の仕組み上の問題があるということは、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

 ただ、その一方で、佐藤委員が御指摘をされたように、小委員会の議論であるとか大綱策定会議の議論の中身をあらかじめそうした方々に見せて、あたかも了承を得てから本当の会議を開くかのようなこの運営は、これは極めて不適切でありますので、そこは根本的に改めていかなければならないというふうに思っております。

 きょう発表させていただいたんですが、この小委員会及び勉強会の検討状況を調査する検証チームを十一日に後藤副大臣のもとに設けまして、七月中をめどに検証結果を取りまとめることとしております。

 また、こうした問題が出てくる前後から、私も原子力委員会の中の事務局の問題についても若干の懸念を持っておったものですから、改めてこういう指摘を受けたことも踏まえて、原子力委員会のもとにいる電力会社からの出向者につきましては、既にそれぞれの会社に帰っていただくという準備を進めておりまして、六月中にはそうした状態は解消するということになります。

 したがいまして、原子力委員会そのもののあり方について今さまざま疑問を呈されて、今後のあり方については、まだ政府内で具体的な検討が始まっているという状況ではございませんけれども、原子力委員会のさまざまな中での運営のあり方そのものについては、相当根本的に変えるべきところはしっかりとやっていくという必要があるというふうに考えております。

佐藤(茂)委員 ぜひ私は、その第三者の検証委員会、これは本会議でも訴えたんですけれども、しっかりとしたものを、包み隠さず、やはり実態を調べて発表していただきたいし、大臣が言われた最初の、コストであるとか廃棄物量のデータの提供を受けるというのは、そんな秘密でやる話じゃないと思うんですよ。本当に必要なら、きちっと表に出して、こうこうこういう理由からそういうところにきちっと確認をしました、またデータをもらいましたというような手続を本来委員会としてやるべきものであって、それを秘密会議と称されるような勉強会でやる筋合いのものじゃないと思うので、今後、ぜひその辺のあり方も含めて見直していただきたいと思うわけであります。

 続いて、私ども公明党として大事にしておりますのは、従業者の申告制度の実効性向上ということを党内の議論でも大事にしてまいりました。原子力規制行政がしっかりと安全の確保を図るためには、公益通報制度の充実も有意義だと私は考えております。

 ちょうど二〇〇二年に、旧通産省に対する内部告発によって東京電力の原子力発電所ひび割れ隠しが発覚して、翌年に東電の全原発十七基が停止した事件がありました。残念なことに、これを告発したのは、東電の社員でもなく、関連企業の社員でもなく、GE関連会社のエンジニアだったんですね。しかも、旧通産省によって告発者の身元は東電からGEにリークされて、告発者は脅迫や圧力を受けたわけであります。

 私は、今回、全国五十基の原子炉を初めとする原子力施設の安全を確保することは、全ての原子力関係に携わっている、仕事に携われている方々の関係者の使命だと思うし、今回の事故に悔しい思いをしている関係者も非常に多いと思うんですね。私は、公務員を含め、そうした関係者が公益のために行動することは極めて倫理的であって、非難されるべきものではないと。

 そういう前提の上に立って、我が国の法体制の中においても、原子炉等規制法第六十六条には、原子力事業者等の従業者が法令違反の事実を主務大臣や原子力安全委員会に申告することができ、その申告を理由に解雇や不利益な取り扱いをしてはならない、そういう規定がございます。

 しかし、この規定は限界がございまして、一つは、申告者に退職者が含まれないこと、また、マスコミ等への通報が保護されないというような、一般法である公益通報者保護法と比べても、現段階で見劣りしております。しかし、炉規制法にこういう制度が規定されていること自体は意義があるので、実効性は高めるべきだと思います。

 具体的には、通報者に退職者を含めること、あるいは、通報を受けた行政機関の通報者保護義務、調査義務、回答義務、こういうものをしっかり設ける、あるいは、違反への制裁、通報者の民事、刑事責任の免責規定、原子力規制庁職員らの通報先の確保などが私は必要になってくると思うんです。

 自公案、衆法の方では、今回、附則第六条四項で、原子炉等規制法の第六十六条の規定による申告制度をより実効的なものとする方策について検討し、必要な措置を講ずることを政府に求めております。

 ぜひここで、今るる申し上げましたけれども、衆法提出者と細野大臣に、この申告制度の意義、実効的なものにする方策の方向性についてどう考えておられるのか、お伺いしたいと思います。

江田(康)議員 御指摘のいわゆる公益通報者の保護に関しましては、原子力事業者等の従業者については原子炉規制法第六十六条の二に規定されておりまして、また、一般法としては公益通報者保護法があると承知しております。

 しかし、先ほども御指摘のように、二〇〇二年に発覚した東電の原子力施設のトラブル隠し事件からも明らかなように、この制度が十分に機能しているとは言えないと思っております。そこで、自公案において、公明党の強い主張もあり、政府の措置として、政府は、原子炉規制法第六十六条の二の規定による申告に係る制度をより実効的なものとする方策について検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずるものとするとの規定を設けたところでございます。

 この規定は、公益通報者の保護について、その実効性を一層確保する観点から、まず運用強化が図られて、なお不十分であると認められれば、公益通報保護制度全般の見直しを踏まえた上で、この原子炉等規制法の改正も視野に入れたものとなっております。その際、御指摘のような措置の導入も検討されるのではないかと考えております。

細野国務大臣 通報の制度でありますけれども、現状において、申告者はどちらかを選択できる形になっております。つまり、一般法の方の公益通報制度を選択するか、もしくは原子炉等規制法の方の申告制度を選択するかということになるわけです。

 確かに、御指摘のように、公益通報の制度の方が後にできておりますので、幾つかすぐれた点がございます。一方で、原子炉等規制法の方は、原子力安全委員会にも申告ができる、専門家に見てもらえるという面とか、あとは罰則がついているとか、より厳しい面も実は含まれておりまして、これをどう改善していくのかというのは、我々、大いに改善の余地があるのではないかというふうに思っております。

 既に、運用ベースでいいますと、外部の有識者で構成される申告調査委員会の監督のもとで調査を行う、そういったことが行われておりましたり、個人情報が確実に保護されるような運用要領に従うこととなっておりましたり、情報の公開についても、個別の案件の内容をホームページで公開していくということになっておったりするわけであります。

 これを運用ベースでやっていくことでしっかりとした申告制度がこれから発展をしていくということなのか、もしくは、必要があればそれを法的な部分で充実していくべきなのか、そこはこれからのさまざまな検討の中でしっかりと議論した上で、よりいいものをしっかりと探していくということが重要だと考えております。

佐藤(茂)委員 わかりました。

 それでは、本題、今までのは本題じゃなかったのかというようになりますが、総理の指示権のことをちょっとお伺いしておきたいと思うんですね。

 やはり、原子力規制組織と緊急事態対応ということは、最後の最後まできちっと詰めないといけない話だと思うんですが、今の原子力災害対策特別措置法第二十条三項、ここで言われる総理の指示権は、阪神・淡路大震災を教訓とした災害対策基本法の改正、これは平成七年に行いましたけれども、それで創設された総理の指示権、災害対策基本法では第二十八条の六でございますが、それの原子力災害対策版でございます。危機対策の最後の手段としてそういうものが必要だと。

 そもそも、災害対策基本法を平成七年に改正したときにも、私は野党でしたけれどもかかわっておりました、古い話で申しわけないんですけれども。

 十七年前に、当時、自社さ政権で、もたもたしていたわけですね、初動の対応が。そのときに我々、当時、もうなくなりましたが新進党という政党で、今は自民党におられる二階先生、あるいは参議院に行った小坂先生、民主党では高木義明先生、私などが答弁に回った覚えがあるんですね。

 そういう中で、最終的に、国家の命運がかかるような事態のときに、やはり総理の指示権というのは必要だろう、そういう議論を与野党を超えてした覚えがございます。

 問題は、それを原子力災害にそのまま持ってきていいのかどうか。原子炉の中身のことについて、本当に、その前の日まで素人だった総理が、ある大学を出たからといって、さも専門家ぶって指示するということがいいのかどうか、そういう問題がやはり大事になってくると思うんですね。

 先日の環境委員会の七時間十五分の議論、そこにおられる塩崎委員や、あるいは江田委員なんかも議論をしておりまして、大臣とも相当詰まった議論をされてきているのではないか、そのように思うんです。

 原災法第二十条三項では、原子力災害対策本部長は、「特に必要があると認めるときは、その必要な限度において、関係指定行政機関の長」「並びに原子力事業者に対し、必要な指示をすることができる。」そのようにあるんですね。

 まず、もう一度、この前の環境委員会の議論なんかも含めて整理しておきたいのは、この「特に必要があると認めるとき」及び「必要な限度において、」をどう考えるのか、どのような基準を設けるかということが極めて私は大事だと思うんですね。

 「必要があると認めるとき」というのは、ぜひ、細野大臣、今の段階で答えられる範囲でお答えいただきたいんですが、具体的にどういうケースに指示権を絞り込んで行使していくという形で考えておられるのか。ここが一つポイントになると思うんです。どういう絞り込みをされるのか、ぜひ今の政府のお考え方を伺いたいと思います。

細野国務大臣 御指摘のとおり、先日の委員会での質疑で、衆法提出者の皆さんのお考えと政府が今考えていることというもののすり合わせというか、お互いの共通認識がかなりできてきたのかなというふうに思っております。

 私が具体的に一つ前回の委員会の中でも例として挙げましたのは、三月の十六日、十七日以降数日間、政府そして東京電力が共通の作業として最も大切で重大な問題として直面をしたのは、プールへの放水でございました。

 これは、東京電力だけではとてもやり切れませんし、また、専門的、技術的というよりは、どちらかというと、国のさまざまな実力部隊を使って力わざでやらなければならない場面でございまして、縦割りもございましたのでなかなかうまくいきませんでした。そこで、総理が指示権を発動して、指示をして、自衛隊の総合調整のもとに警察と自衛隊が入るという形にして、ようやく放水が安定をしてきたという経緯がございました。

 こういったところにおいては、事業者に対してもそうでありますし、各省に対しても、指示権を持っている総理の権限というのは極めて重要な意味を持ちます。

 そこで、そういった例もお示しをした上で、先日、委員会の中で、私の中でほぼ整理がついてきたかなと思っておりますのは、オフサイトについては、これは政府が責任を持ってやっていく必要がありますので、それについてはやはり総理がさまざまな面で指示する場面が出てくるであろうということ。オンサイトについては、これは基本的には極めて抑制的、限定的であるべきだと考えますが、今私が例を挙げたような事例では、総理が指示権を発動する余地はあるのではないかということですね。

 一方で、いわゆる科学的な、そして専門的、技術的な問題をどういうふうに絞り込むか、どういうふうに考えるかというのは、これは非常に難しい面があろうかと思うんですが、そういった問題についてまで、専門家ではない総理が指示権を持っているからといって立ち入ってさまざまな判断をすることは、これは厳に慎むべきだろうというふうに思うわけです。

 ですから、その辺はかなり共通認識ができたかなというふうに思っておりますものですから、それをどううまく法律に反映をしていくかというあたりが重要ではないかというふうに思っております。

佐藤(茂)委員 それで、本会議の答弁でも、総理は、「国としての、危機管理上最低限の、かつ最後の手段であり、抑制的に行使されるものとして、本部長たる総理の指示権が存在することが不可欠と考えております。」と。

 この抑制的に行使されることを担保する基準を曖昧にしておくと、私はやはり、時の総理によって、乱暴な総理が出てきたときには全然抑制的でない、そういうケースがあり得ると思うんですね。ですから、こういう行使の仕方をしますので時の総理の過剰介入というのは防止できます、過度な濫用は防止できるんですというような、抑制的な行使の仕方についての考え方を政府として示すべきだと私は思うんですね。要するに、こういうように限定的に行使するんだ、ただ抑制的にやるんだというだけではなくて、具体的にこういう枠がはまっているんだ、そういうようなものを、やはりこの議論の中で政府の見解を示すべきじゃないかと私は思うんですが、大臣の見解を伺いたいと思います。

細野国務大臣 今、答弁の中で、政府の中で検討していることを、若干ざっくりした表現になってしまいましたけれども申し上げました。その考え方というのはできるだけきっちり整理をして、例えば提出者の皆さんにお示しをするということはぜひやらせていただきたいというふうに思います。

佐藤(茂)委員 ぜひ、提出者の皆さんにも示していただいた上で、政府の見解として、この合同の連合審査会あるいは環境委員会の審議の中で、政府の答弁としてきちっと残していただきたいな、そのように思います。

 続いて、きょうも新聞の紙面を最初に御紹介いたしましたが、平時のオフサイト対策というのは、私はやはり非常に大事だろうと。今の制度では、原発事故などの緊急時に原子力災害対策本部、緊急とつくのかどうかは別にして、そういう対策本部が立ち上がるという形になっているんですけれども、平時の防災体制をやはりしっかりとつくって、平時からの十分な備えが重要であるということも今回の事故の教訓の一つではないかと思うんですね。平時に関係省庁、地方自治体と連絡をとり、万が一のための準備を進めるための体制が別途必要だろうと私は思うんです。

 きょうは、さっき言いましたけれども、総理をトップとする原子力防災・放射能汚染対策会議(仮称)を新設するようなことで合意したというような報道になっておりますが、この報道と関係なく、現段階で、ぜひ政府及び衆法提出者に、平時のオフサイト対策を推進する責任主体はどこなのか、また事務局はどこが務めるのかということも含めて、平時のオフサイト対策についてそれぞれどのような構想、考え方をお持ちなのか、伺っておきたいと思います。

細野国務大臣 初めに、私から説明をさせていただきます。

 平時から関係省庁そして地方自治体と連携をとりながらオフサイト対策を講じていくということについては、これは従来は十分な準備がなされてこなかったと考えています。そのことが緊急時の対応を難しくしたという面がありますので、根本的にそこは強化をしていかなければならないと考えております。具体的には、防災基本計画やマニュアルの策定、地方自治体による地域防災計画、国や地方で合同でやる防災訓練などを通じまして、密接な連携を深めて準備を万端にしていくということが重要であると考えております。

 そうした取り組みにおいては、これは政府を挙げての対策が重要であるというふうに思っておりまして、また、専門的な人材をしっかりと育てていく必要もございます。したがいまして、原子力規制庁の中に原子力地域安全総括官、これは従来の原子力行政の枠を超えて相当しっかりやらなければなりませんので、専門的な能力を有する省庁、具体的には危機管理の省庁からということで考えておるんですが、ここは人事ですので私の口から具体的には申し上げません。そういったところからできれば来ていただいて、常に防災についてきちっと対応できるような仕組みをつくっておく必要があるというふうに思っております。

 そして、事務局という意味では、原子力規制庁の中で防災に関するそういうチームをつくって対応するということになるわけですが、もう一つ重要なのは、それだけ政府を挙げての取り組みが必要でありますので、やはり政務の、政治の関与が一切ない中でそれをやっていくのは、これはなかなか難しいのではないかというふうに考えられるわけです。

 そこで、環境大臣を初めとした政務三役が、オフサイトのことに関しては、政府全体として取り組む、実質的なこの役割を担い、そして、さまざまな、例えば原災本部のようなものが、災害があってはならぬわけですが、万が一起こった場合には、その場合の事務局機能も担っていくというのが政府の考え方でございます。

塩崎議員 佐藤先生の御質問にお答えいたしたいと思います。

 今お話がありましたように、緊急時に備えるためにはふだんからきちっと体制を組んでおくということが一番大事であって、関係するあらゆるところとの連携を組んでおくということだろうと思います。それがうまくできていなかったというのが今回の失敗の教訓だと思うわけであります。

 自公案では、これらの事務を原子力規制委員会の所掌といたしておりまして、原子力規制庁がその中心となって事務を担うということになっております。

 そもそも、災害時において政府が講ずべき措置の基本は同じである以上は、実は、原子力災害であろうと一般の自然災害であろうと、それを問わずに、災害全てに共通した対策の枠組みと、それから、災害発生時には、人的、物的体制を直ちに整えて、包括的かつ一貫した対応を指揮命令系統のもとでできるという組織を構築すべきじゃないかと我々自公では考えております。

 附則の第六条第五項で、原子力災害を含む大規模災害へのより機動的かつ効果的な対処が可能となるように、大規模災害への対処に当たる政府の組織のあり方について抜本的な見直しをしようということを政府にお願いしているわけであります。

 アメリカでいえばFEMAのような組織や、あるいはイギリスに行きますとコマンドストラクチャーというのがあって、ゴールドコマンド、シルバーコマンド、ブロンズコマンド、こうなっておりまして、あらゆる災害に対応でき、原子力の災害のときには、それぞれの専門機関がインプットして体制を組んでいくという格好でありますので、これをぜひ早急に取り上げていただいて、しっかりと構築してもらいたい、このように考えております。

佐藤(茂)委員 以上、時間も参りましたのでこれで終わりますが、今質疑の中でも煮詰まるところは相当煮詰まってきていると思いますので、ぜひ、政府・与党、さらに衆法提出者、自公の間でしっかりとしたさらに建設的な協議もしていただいて、きちっと修正を実らせて、この国会で成立を図っていただくことを最後にお願いしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

生方委員長 次に、梶山弘志君。

梶山委員 自由民主党の梶山弘志でございます。

 新たな原子力規制組織設置に関する法案ということで、いよいよ今週から議論が始まったわけでありますが、六月五日の環境委員会、そしてこの連合審査、これまでの議論で、政府案、そして自公案の相違点、そして論点も絞られてきた、はっきりしてきたと思っておりますけれども、同じ言葉、同じ表現であっても、きょうお見えになっている委員の方々の抱くイメージというのはそれぞれに違うと思うんですね。より議論を深めて、共通のイメージを抱けるような答弁をお願いしたいと思っております。

 それでは、質問に入ります。

 自公案では、平時のオフサイト対策を原子力規制委員会が担うこととされておりますが、これに対して、自治体や防衛、警察を含む関係省庁との調整を委員会が担うのは難しいのではないか、また、平時と緊急時でオフサイト対策の責任者が異なっていては対応が円滑にできないのではないか等の懸念が示されておりますけれども、もう一度、自公案の考え方について明確にお答えをいただきたいと思います。

    〔生方委員長退席、中山委員長着席〕

塩崎議員 先ほど公明党の佐藤先生にもお答え申し上げましたけれども、何しろ、緊急時にきちっと対応できるには、ふだんからちゃんとした体制を組んでおく、こういうことだろうと思います。先ほど申し上げたように、自公案ではこれらの事務を原子力規制委員会の所掌としております。

 大臣がいる、いないの話がさっきちょっとありましたけれども、法律によって事務を分掌された以上は、その事務の遂行に十分な体制をもって当たるのであれば、それは大臣がいようといまいと余り関係がない。アメリカの場合のFEMAも大臣はおりません。それから、NRCも大臣がいるわけではありません。しかし、そこがプロ集団としてしっかりと組んでやっているということであるわけであります。

 緊急時のオフサイト対策は原子力災害対策本部。ですから、総理をヘッドとしてそこはちゃんと責任を持つということでありまして、緊急時の際の対応については関係省庁との調整を含めてあらかじめ定められたことを実行するのが原則であるわけでありますけれども、これは安全委員会で中間取りまとめがございました。この中でも示されておりまして、一般災害でも原子力でも同じ傘の中でやるということであります。

 そういうことで、平時から関係省庁との調整を含む体制の整備を行っていくのは極めて重要でありますけれども、責任者が異なったとしても、それは特に問題があるとは思えないということであります。

 さっき附則六条のことを申し上げましたけれども、六条の六項に、我々は自公案として、「政府は、東日本大震災における原子力発電所の事故を踏まえ、速やかに、原子力災害が発生した場合における国、地方公共団体、原子力事業者等の間及び関係行政機関間のより緊密な連携協力体制を整備するため必要な措置を講ずるもの」と規定しておりまして、緊急時の対策を実効的に機能させるための平時からの備えに関する措置についても言及をしております。

梶山委員 先ほど公明党の佐藤委員からも質問がありましたけれども、新聞報道によれば、自公案をベースに修正協議が進められるという話が巷間伝わっております。もしそうであれば、環境大臣が平時のオフサイト対策を担うという政府案よりは、私は自公案を採用していただければなと思っているんです。また、けさの新聞では、先ほどもありましたように、新たな組織をつくって、そこが平時のオフサイト対策を担うということも書かれております。

 先ほど細野大臣からも御答弁をいただきましたけれども、政府案の原案、そしてまた調整に関する報道も含めて、どうお思いか所見をお伺いいたしますとともに、その次に自公案の提出者からもお伺いしたいと思います。

細野国務大臣 今回、私、政府の中で災害を経験いたしまして、オフサイトについての対応にかなりかかわりました。

 専門家がいることは大事ですので、そこは体制を抜本的に強化する必要があると思いますが、今、塩崎先生が答弁をされたのと若干私は感覚が違うのは、オフサイトの作業というのは、現地の自治体の首長の皆さん、住民の皆さんに向き合って、大変なエネルギーが必要なんですね。このエネルギーのかかる作業を政治家が一切かかわらない形でできるかというと、そこは正直非常に難しいと思います。

 きょう田嶋さんが理事で来られていますが、田嶋議員が初期の段階に現地対策本部長をやって、首長の方々と相当綿密な連携をしていただきました。オフサイトのそこの部分についてのあり方というのは、私は、少なくともFEMAのような組織が今存在をしていない我が国において、政務のかかわりというのはどうしても必要なのではないかというふうに感じています。

 もう一つ私が感じておりますことは、確かに津波や地震と原発災害というのは共通する部分もあります。しかし、原発災害というのは極めて特殊な要素があって、そこは専門的にいろいろと取り組んでいかなければならないところがあるわけです。

 現実的に、今回、去年の災害の後、緊急災害対策本部と原子力災害対策本部が二つ立ち上がりましたが、これがやっていたことは随分違います。原子力災害対策本部の場合は、モニタリングをどうするかとか、区域をどのようにしていくか、さらには放射線と健康の問題をどのように取り組むか、そういう部分に相当特化をして検討しなければならない場所でありました。

 ですから、そこはやはり性質がかなり異なりますので、専門的な部隊がそこでしっかりと機能することが重要なのではないかというふうに考えます。

 そこで、今回、そういう政府の仕組みとして、規制庁のもとに、モニタリングであるとか、さまざまな機能を集約し、健康問題についてもやるということになりますので、やはりそこが事務局としてしっかりと機能していくことが重要なのではないかというふうに思います。

 もう一度話がもとに戻りますが、一つだけ申し上げると、専門家がきっちりやることは大事です。ですから、本当に専門家が、例えば、衆法の皆さんがおっしゃっておられるような原子力規制委員会ができて、その専門家が機能されるというのは、一つの考え方として私どももしっかり耳を傾けていかなければならないと思います。

 ただ、専門家が幾ら専門的な知識を持っていて人格的にもすぐれていたとしても、オフサイトのそういう、自治体の皆さんとの交渉とか、本当に総合的な政府としての対応というのをこういう方がやり切るというのは多分難しかろうと思うんです。そこをやり切るのは、今の議院内閣制においてはやはり政務の仕事ではないかと私自身は考えておるところでございます。

塩崎議員 まず第一に、連携をしなきゃいけないところに政治家をいろいろ入れたりすることも十分あるわけでありますから、別に政治家を排除しているわけじゃないんですね。

 先ほど申し上げたように、内閣府の安全委員会のこの間の災害に関する中間取りまとめの中で、一般災害の中で原子力災害に係る公衆の防護も一緒にやるべきだ、こういうことになっているわけであります。これは多分、今防災担当大臣というのがおりますけれども、そこを中心にFEMA的な体制を組んで、ふだんから、いかなる災害があろうとも、竜巻であろうと台風であろうと、そして原子力災害であろうと、きちっと対応ができるようにするということだろうというふうに思うんですね。

 きょう、新聞に出て、私も見て唖然としたわけでありますが、原子力災害何とか何とか対策会議というものなんですけれども、我々は、さっき申し上げたように、オフサイト対策に係る事務は原子力規制委員会に所掌をさせていくということで、この自公案をベースにしていく限りは環境大臣というのはこれらの事務に関して何ら権限を有するものではございませんから、平時のオフサイト対策について環境大臣が担う、もしくは対策会議の、言ってみれば中心的な役割を環境大臣が担うというのは、全く論理的にも整合性がなくて、およそあり得ない話だと思っています。

 むしろ、さっき申し上げたように、既にいる防災担当大臣、ここのところをちゃんと膨らませて、そして放射線からの公衆の防護というものを一緒にやっていくというのが大事でありますので、我々がつくらなきゃいけないと言っているのが附則の六条五項であって、いかなる災害であろうとも大規模災害にちゃんと対応できる仕組みをつくって、そこに専門家の人たちがインプットできるようにしようじゃないか、こういうふうに言っているわけであります。

 この中間取りまとめについては、この間、私の質問に対して環境委員会で班目委員長も、さっき申し上げたように、一般災害と、それから原子力災害を分け隔てることなく全部カバーするものでやるべきで、両方実施するというのが合理的であるというふうに明言をされておられました。

梶山委員 平時のオフサイト対策というのは非常に重要なことだと思っております。今回の事故を踏まえて、その後も踏まえて、しっかりと修正協議の中ですり合わせができて、実際に機能するような仕組みをぜひつくっていただきたいと思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 自公案の提出者は、緊急時においてもオンサイトの専門技術的事項は原子力規制委員会、それ以外は原災本部長、総理のことですね、と説明されていますけれども、条文を見ますと、規制委員会の所掌事務として原子力災害の防止に関することが規定されております。

 そして、他方、自公案が原災法第二十条第二項の本部長の指示から規制委員会の所掌に属する事務に係るものを除くとしているために、およそ原子力災害防止全般について本部長の指示権が及ばないように読めるわけなんですけれども、この点について、この前の議論を聞いていても、政府が不安に思っているようでありまして、五日の議論でもそういうことが繰り返し細野大臣からも御発言がありました。

 自公案をどのように理解をすればいいのか、自公案の提出者からより詳細に御説明をいただきたいと思います。

塩崎議員 ここは、さっき細野大臣もおっしゃったように、かなり委員会の審議の中でお互いの理解が深まってきていると思います。したがって、細野大臣にはちょっとよく聞いていただきたい、さらに理解を深めていただきたい、こう思うわけであります。

 何度も申し上げますけれども、自公案では、規制委員会の所掌事務として原子力災害の防止に関することが規定されております。これは四条一項七号というところでありますが、これによって、規制委員会は平時において原子力災害対策指針の策定や原子力防災に係る原子力事業者の監督などを行うというふうになっています。

 しかし、緊急事態が発せられて原子力災害対策本部が立ち上がった、こういう場合には、原災法の第三章、四章の対策本部の所掌事務、権限等の規定に従って関係機関が行動するということになるわけでありますが、本部長は当然内閣総理大臣で、本部の事務を統括するほか、二十条にこの本部長の権限が列挙されて、その中に、二十条の二項で主務大臣の命令の指示、これは炉規法の六十四条三項に基づく主務大臣の命令の指示、あるいは緊急事態応急対策を的確迅速に実施するための、これは二十条三項の関係者への指示、この方が総理が全体的に、ストレートにできるわけでありますね。それから、これは四項でありますが、自衛隊の派遣要請などが本部長の権限として規定されております。

 自公案の提案者としては、炉規法上の権限行使は、緊急時であってもオンサイトの情報が集約されて、専門的な知見がある規制委員会が責任を持って判断することが、国民の生命、健康の保護、環境保全のために最も適切である、つまり、プロが判断をするということがこういった緊急事態には大事だろう、ここに政治家の介入を認めることはできないし、これは細野大臣もおっしゃったことであります。ですから、二十条の二項はもう削除していいだろう、こういうことになったわけであります。

 さらに、オンサイトの専門技術的事項に関する規制委員会の権限について、現行法の二十条三項を根拠として本部長が介入することを排除するために、委員会の所掌事務を除くとしたわけでありますが、ここで確かに、細野大臣が御懸念をなさっておられるように、形式的には原子力防災体制全般が本部長の所掌事務から除外される、そして規制委員会が全てを取り仕切るかのようにも読めるかもしれない。しかし、それでは、そもそも、原災本部を設置して、総理を本部長として関係機関が一丸となって原子力緊急事態応急対策を実施するという原災本部のスキーム自体が無意味になってしまう。ですから、そのような解釈は、自公案、我々としては全く意図するところではないということであります。

 提案者の改正意図は、あくまでも、オンサイトの専門技術的事項については規制委員会が明確な役割分担と責任を持って行うべきということに尽きるのであって、もう一つ大事なことは、役割は緊急時でも混同してはいけないけれども、しかし、政府と、それからプロ集団である規制委員会の緊密な協力も非常に大事であって、一体不離で総理と規制委員会は難問に立ち向かっていくということが我々は大事だというふうに思っております。

梶山委員 ちょっと、大臣には通告していないんですけれども、今の自公案の提出者に対して、大臣から一言あれば。

細野国務大臣 この点は、ほぼ共通認識に達したというふうに思います。

 私が自公案、衆法を読んでおりまして懸念を持ちましたのは、原子力規制委員会が原子力防災全般について担当するという書き方になっていますので、そこの部分がごっそり指示権から少なくとも形式的に抜かれてしまうと、総理は一切オンサイトのことについては、先ほど例として挙げたような力わざが必要なことについては何もできないということになってしまうということを懸念したわけです。

 ですから、そこの部分について実質的に解決できる、そういう方法があるのであれば全く問題はないというふうに考えます。

梶山委員 六月五日の環境委員会の議論で、我が党の井上委員の質問に対しまして、細野大臣が、国家の命運がかかっているときに、規制機関の判断と異なる判断を本部長がしなければならない場面を想定すべきという答弁をされておいでになります。

 専門家の判断を政治家が覆すということが本当にあり得るのか、あっていいのかということなんですけれども、この点について、自公案の提出者から答弁をお願いいたします。

塩崎議員 技術的な判断について、総理がその判断を覆すということはやはりあってはならないことだろうと思いますが、先ほどの放水をするというようなことは、当然、専門的な原子炉の状況についての判断と、決断を持ってやるべきことを決めて、それを総理がやっていただくように委員会の方からお願いするという格好になるんだろうと思うんですね。

 ですから、あくまでも、そこのところ、根っこの部分で判断した専門技術的なことを政治家がひっくり返してしまうと、全てが危うい方向に行ってしまうということになるので、それはまずいだろうということだと思うんですね。

梶山委員 この件に関しても、細野大臣の答弁をお願いできればと思います。

細野国務大臣 今、塩崎先生の方から御答弁があったものと、その点については共通認識であります。

 一点だけ私が懸念として申し上げますと、これは本当に想定をしてはいかぬし、そうならないようにしなきゃいかぬと思うんですけれども、やはり撤退問題というようなものが議論されることが現実にあったわけですね。

 これは万々が一ですけれども、さらにシビアなケースが現実となって、サイトの中の放射線量が高まって、もうぎりぎりこれだと法律のいっぱいいっぱいで作業ができないというようなケースになるということが例えば想定できるとしますね。そうしますと、そこは技術的、専門的な判断からすると、これは危険なのでという話にならないとも限らないわけですね、そういう情勢が万が一あった場合は。しかし、そこは国家の命運をかけて、いやいや、しっかりやらなければいかぬのだというようなことで、そごがあるとは思いませんが、そこまでの決断をやはり技術者、専門家ができない場合に、政治家の出る余地というのはあるのではないか。

 そういったことも含めて、技術的、専門的なことには政治家は口を出さないんだけれども、国家の命運を左右するようなケースについては出ていくことができるという、そこのバランスをとっていく必要があるのではないかと考えております。

塩崎議員 今の御発言も受けて、さらにちょっと加えておきたいと思うんですけれども、今のような感じでいくと、例えば前回の本会議だったでしょうか、国家の命運なる、こういう抽象的な言葉が出てきたり、伝家の宝刀とか、いろいろ指示権を残すべきと主張されているわけでありますし、前回の環境委員会だったですけれども、規制機関の専門技術的判断と逆の判断を総理がすることもあり得るということをおっしゃったわけで、今もややそれに近いことをおっしゃいました。我々としては、やはりそれは受け入れられないなというふうに思っております。

 例えば、今、一時退避の話がちょっと出ましたけれども、とるべき手段を尽くした上での必要やむを得ないものかどうかいうこと、あるいは原子力施設がどの程度危険な状態になっているのかなどを検討した結果として、すぐれて専門技術的に決定されるべきことだと思うんです。それを覆そうということを今おっしゃっているので、それはどうだろうか。

 このような決定は、やはり最もオンサイトの情報を持っているということ、それから知見を一番持っているということが一番リスクの低い判断をするということになるので、ここは政治的決断とか判断とかいうものに任せるわけにはいかないのではないのか。専門技術的判断を無視して行われる政治的な判断というのが正しいという根拠はないだろうということで、さっきの場合でも、ややそういった、何が本当に技術的なのかとか、そういうことがちょっと抜けているような感じがいたします。

 現行法では、専門技術的な事項に関しての線引きもないままに、原子力災害対策本部長による指示が認められております。ですから、現場レベルでの混乱が起きたわけで、これは国会事故調査委員会における政治家の証言あるいは東京電力の方のヒアリングでも、我々は目の当たりで、お互い矛盾することが言われるということがわかったわけで、海水注入の停止をめぐる混乱等々、いろいろとそういうことがよくわかった。こういう混乱を起こさないように、我々は、総理の指示権から専門技術的な事項である規制委員会の所掌に属することは除くということにしているんです。

 もちろん、自公案でも、本部長に一切の関与を認めないというようなことを言うつもりは全くありませんで、規制委員会が原子力事業者に対して応急措置を継続せよと既に命令しているにもかかわらず事業者がちゅうちょしているというような場合には、本部長が事業者に実施を促すことまでも否定するようなことは我々は考えていません。

 また、規制委員会が必要な手当てを実行すべきでありながらなかなか実行に移さないと思われるようなときには、災害対策全般に責任を有する本部長として、規制委員会と緊密に協議をして、早急に決断するように督励するというようなことも当然やることだろうと思いますし、このように、緊密な協力のもとで、規制委員会に対して本部長としての考え方を述べる、そして、一体不離となって原子炉の鎮圧に向けて共同歩調をとることは言うまでもないことだというふうに思っています。

梶山委員 ここは非常に大切なところだと思うんですね。非常に抽象的な言葉でお互いに漠然と理解し合うのではなくて、さまざまなケースを想定した上での実務者の協議をして、合意を得ていただきたいと思います。

 では、次の質問に移らせていただきます。

 自公案では、JNES、独立行政法人原子力安全基盤機構も原子力規制庁に吸収することになっております。専門性の高い実効的な規制組織になることが期待をされるわけであります。

 JNESの統合につきましては、公務員化をするということになります。より柔軟な人事管理、処遇ができなくなるのではないかという懸念もあるわけでありますが、例えばベテランの専門家の処遇が悪化するなどといったことがあれば、真の安全文化に根差した原子力規制行政を強力に推進しようという自公案の趣旨に反する結果となりかねないわけであります。

 提出者としてどのような構想をお持ちか、お聞かせいただきたいと思います。

柴山議員 ありがとうございます。

 今御指摘になられた件ですけれども、原子力安全規制に関しては、その企画の立案から実施に至るまで統合的に行わなければならないということから、これまで原子力安全委員会、原子力保安院、JNESに分散していた事務及び人員を、今回私たちが提言している原子力規制委員会の発足時から全て一体化する必要があると考えているわけです。

 そして、これまでも、原子炉規制に係る専門技術的な事務については実質的にJNESが担ってきたことを踏まえると、高い専門的知識と能力を備えたJNESの職員は原子力規制庁の職員として不可欠の存在であるということで一体化するわけですから、公務員化によって、今御指摘になったように、これらの者の処遇が悪化するようなことがあってはならないというように私たちも思っております。

 この点、私たち自公案では、附則の第六条第一項第一号において、政府に対して、専門的な知識及び経験を要する職務と責任に応じ、資格等の取得の状況も考慮した給与の体系の整備その他の処遇の充実を図ることを義務づけております。この措置が講じられる前においても、規制組織としての高い能力を維持強化するため、例えば今お話があったようなベテランの専門家の処遇については、例えば再任用をしたり、専門的な知識経験等を有する者の改めての任期つき採用、こういったことの制度を活用しまして、適切な処遇がなされなければいけないというように考えております。

梶山委員 政府案の原子力規制庁の規模は約五百人と聞いております。自公案では、これに加えて、文科省の保障措置等の事務移管、そしてJNESの統合に伴って、約千人規模になるものと思われます。

 同じく三条委員会である公正取引委員会の事務総局は約八百人、官房と経済取引局、審査局の二つの局から成り立っているわけですけれども、原子力規制庁の内部組織について、提案者としてはどのようなイメージをお持ちなのか、より具体的に御説明をいただければと思います。

柴山議員 私たちは原子力規制委員会の事務局を原子力規制庁というように位置づけているわけなんですけれども、この内部組織の構成については、基本的には下位法令によって定められることとなります。

 私たち提案者といたしましては、人事、予算などの官房機能をつかさどる部局、そして、原子力規制委員会の所掌事務に応じて、今、公取のことを例にお出しいただきましたけれども、二つか三つの大きなセクションのもとに、所掌事務を分掌する複数の部課を設けることとなるんじゃないかなというように考えております。

梶山委員 今、柴山提出者からお話がありましたけれども、委員会が主体で原子力規制庁というのは事務局だということで、公取に当てはめればそういう対照になるという理解でよろしいかと思います。

 次の質問ですけれども、自公案には、三条委員会という合議体としての原子力規制委員会が、緊急時に指示権を持ってスピーディーに意思決定ができるかどうかという懸念が各方面から寄せられています。

 この点につきまして、自公案の第十一条第四項におきましては、「原子力規制委員会は、原子炉の運転等による事故が生じた場合において、これに迅速かつ適切に対処することができるよう、様々な事態を想定した上で、会議の開催及び議決の方法その他委員長及び委員が遵守すべき行動指針を内容とする内部規範を定め、これを適正に運用しなければならない。」と規定をしているわけですけれども、この自公案の部分、この考え方について、提出者からより具体的に、イメージが湧くような説明をお願いできればと思います。

柴山議員 今の私どもの第十一条第四項についてのイメージなんですけれども、アメリカでは、スリーマイルアイランドの原発事故の反省から、緊急時にはNRCの委員長が単独でNRCの権限を行使することができるとする制度改正が行われたと承知しています。

 この点、私たちの提案ですと、三条委員会ということで合議制の機関だということで、きょうの午前中の参考人質疑でも懸念が示されたところなんですけれども、まさしく今委員が御指摘になられたこの条項の中で、委員長及び委員が遵守すべき行動指針を内容とする内部規範を定める、そして、これを適正に運用しなければならないという条文の中で、そういうアメリカの運用も参考にして、適切に対応できるようにするということを想定しているわけです。

 具体的には、委員長などが、要するに、全ての委員が一堂に会する必要のない会議運営方法、あるいはそのほかの行動規範として、実質的に委員長単体で委員会としての判断をすることができるような手続、あるいは緊急時においてテレビ会議を行うこと、また所在が把握できるよう平時から衛星電話の携行を委員に義務づけることなどを内部指針として定めることを想定しています。

梶山委員 大体イメージが湧いてきたと思うんですけれども。

 これまでも、昨年の三・一一以前も、原発の立地地域からは推進と規制の分離ということをずっと言われてまいりました。そして、さらに、より独立性を持ったものということで今議論がされているわけですけれども、自公案の三条委員会をベースにぜひしっかりとした修正の協議をしていただきたいと思っております。細野大臣もうなずいて聞いておられる、私の感想ですけれども。大筋、大体形が見えてきたのかなという気がいたしますけれども、ぜひ、譲るべきところは譲って、そして、みんなが安心できる、信頼できる規制組織をつくる、そういう趣旨でこれからもこの議論を進めていただければと思います。

 最後に細野大臣の御所見を一言お伺いして、質問を終わりにしたいと思います。

細野国務大臣 これだけの事故が起こったわけですから、できるだけ幅広い党派、会派の皆さんのお知恵もいただいて、いいものをつくることが最も重要であると考えております。そういった意味で、政府としては、柔軟に対応してまいりたいと考えております。

梶山委員 質問を終わります。ありがとうございました。

中山委員長 次に、吉野正芳君。

吉野委員 自民党の吉野正芳です。

 私のふるさと福島は、まだ災害が継続中であります。原子炉はまだ収束されておりません。

 細野大臣、また政府の皆様方には、連日福島にお越しいただいて、いろいろ御尽力を願っております。本当に、この場をかりて感謝を申し上げます。

 今度の東京電力の原発事故は、私は、ある意味で人災だと思っています。特に、我々政治家が怠慢だったということです。

 先ほど質問した梶山弘志先生と私は同期です。国会議員になってから十年たちます。ずっと保安院の分離を言い続けてきました。十年たって、やっと原子力大綱に一行入りました。保安院の分離独立を検討する。これが本当に分離され、独立されて、誰の圧力も、どんなしがらみもない規制当局、安全しか考えない、そういう規制当局であったならば今度の事故は防げたと思います。全部の電気がなくなる、このことをきちんと想定して。

 実は私、第二に入ってきました。ここも、津波でディーゼルエンジンは全部だめです。配電盤もだめです。モーターもだめです。でも、鉄塔が残っていて、外部電源が来ていました。死に物狂いで、キャブタイヤ、これは重いんです、延べ九キロにわたって電線をつないで、そしてメルトダウン一歩寸前で大きな事故にならないように頑張ったんです。電気さえあれば第一だって防げたんです。

 そういう中で、安全委員会にお尋ねをします。

 六月四日、産経新聞です、こういう大きな記事が出ていました。それは、平成三年に全交流電源喪失事象検討ワーキンググループをつくった、そして平成三年、平成四年、平成五年、三年間かけて勉強して、全部の電気がなくなった事象について勉強した、でも、自分たちにこの勉強をする能力がなかったから、最後は東京電力に作文を依頼して、東京電力から作文が返ってきて、自分たちの最終報告書には全くそれと同じような中身が網羅されていた。

 私は、国会議員になって、東電代行という言葉を双葉町で聞いてきました。何だい、それはと。検査する側に能力がないから東京電力が検査を代行することだ、これがまかり通っていたんです。

 まさに、今の事象は東電代行そのものだと思います。せっかく全部の電気がなくなった場合を検討した。三年もかけて検討したのに、どうして安全指針に書かれなかったのか。委員長、お答えください。

班目参考人 御指摘の点につきましてはまさに吉野議員のおっしゃるとおりでございまして、この点については全く言いわけができません。安全委員会を代表しましておわび申し上げたいと思います。

 なお、なぜ反映できなかったかの背景はいろいろあると思いますが、第一に、このような会議が全く非公開で行われており、その経緯等々も全く知らされていなかった、そのためにそういうせっかくの検討の結果というのが公にならずに放置された、このあたりに一番大きな問題があると思います。

 したがいまして、現在では、原子力安全委員会としては透明性を確保するために審議は原則公開としておりますし、それによって透明性であるとか、あるいは独立性であるとか、中立性であるとかを確保するようにしております。ぜひ、これからもしっかりと御指導をお願いしたいと思っております。

吉野委員 報告書の最後にこう書いてあります。「アクシデントマネージメント等の整備に向けて、その検討に努めていくことが重要である。」アクシデントマネジメントを検討していく、それが重要だ。

 どういう検討をしたんですか。

班目参考人 原子力安全委員会では、平成四年、ちょうどこの検討が行われている直前でございますけれども、アクシデントマネジメントについては事業者が自主的に整備することという方針を打ち出しております。それがそのまま放置されたということは大変残念なことでございまして、この点についても再びおわび申し上げたいと思っております。

 せっかくアクシデントマネジメントというものをしっかり整備するという議論が行われている。一方で、SBO、全交流電源喪失が起こったらどうなるかということについていろいろ検討している。この二つの議論というのが全くお互いに交流がないといいますか、全交流電源喪失の方の検討というのが秘密裏に行われてしまったために、実際問題として東京電力が定めていたアクシデントマネジメント対策なるものが交流電源が失われたら役に立たないものであった、これはまさに事実でございまして、こういうあたり、何でも秘密にするという姿勢そのものが全ての根源であったというふうに原子力安全委員会としては反省しているところでございます。

吉野委員 反省されても、事故で今避難している、特にふるさとを避難している方々の思いを見ると、本当に情けないと思います。正直、坊主になって、そのくらいのやはり責任をとっていただきたいと思います。

 次に、これもなんです、原子力安全・保安院。二〇〇一年に九・一一のテロがアメリカで起こりました。これは原子力発電所も狙われる、テロ対策をやらねばならない、こういうことでアメリカはいろいろ対策をとりました。日本にも教えてあげるから来なさい。二〇〇六年と二〇〇八年の二回にわたって教えていただきました。そして、本気になって議論したのが二〇〇九年です。八年もたってからです。そして、二〇〇九年の末に一つの評価結果を出しました。この評価結果を出しても、またアメリカに行って聞かなければ本当の評価をすることができない。アメリカに行く前に今度の事故が起きたんです。何だかんだ十年かかっているんです。何をやっていたんですか。それだけ能力がないんですか、保安院は。

深野政府参考人 今先生から御指摘がございましたように、二〇〇六年と二〇〇八年に、アメリカの方から、航空機衝突についての対策についてブリーフィングをするということでお話をいただきまして、私どもの担当者が現地に行っております。

 この中身につきましては、事柄の性格上、一切メモ取り禁止、内容は公表不可、そういう条件でございました。

 ただ、これを受けて、保安院の方でこれを日本の制度に落としていく、そういったことについての対応が大変おくれてしまったというのは御指摘のとおりでございます。

 この中身といたしましては、給水あるいは電源確保、そういったことに関係するものがあったわけでございまして、そういったことについてより早い段階で対応しなかったということについては、まことに申しわけなく思っております。

吉野委員 安全規制を担う安全委員会と保安院がこのざまです。だから、私たちは、自公は、誰からのしがらみも受けない、どんな人の圧力も受けない、真の独立を保った規制当局をつくりたい、こういうことで自公案を提出したところであります。

 さて、細野大臣に伺います。

 規制庁長官への委任の問題です。

 政府では、原子炉等規制法改正の中で、七十二条の三に、「環境大臣は、この法律による権限(政令で定めるものを除く。)を原子力規制庁長官に委任する。」という長官への委任の規定がございます。

 それでは、「(政令で定めるものを除く。)」と書いてありますので、政令で定めるものとはどういうものなんでしょうか。

細野国務大臣 吉野委員におかれましては、福島が御地元ということで大変御迷惑をおかけしております。そういう中で、地元の声を常に代弁されている、そういう方でございますので、改めて心より敬意と感謝を申し上げたいと思います。至りませんが、私どもも一生懸命やらせていただきます。

 御質問の件でございますが、政府案の考え方は、専門家である原子力規制庁長官に対して法的に委任をする、そのことによって、客観的な判断をしっかりとしていただけるような体制をつくるということでありました。その例外でございますので、法案提出時には、事業者に緊急時の措置を命ずる権限を限定的に定めることを想定しておりました。しかし、今回の国会での議論を受けまして、特に炉規制法というのは技術的、専門的な分野が多うございます、そういったところにおいて政治家の関与を定める、これが例外ということになりますものですから、より長官の独立性を重視する観点から、当面は政令を定めないということが適切ではないかと考えております。

吉野委員 原子力安全委員会防災指針検討ワーキンググループがことしの三月二十二日に出した、これは公式文書です、そこのところに、こう書かれています。

 「一般災害に対応する組織が、一般災害対応と原子力災害に係る「公衆の防護」の対応の両方を実施することが合理的である。」これが安全委員会の中間取りまとめで、こう政府に対して提言をしているところです。

 六月五日の環境委員会で、塩崎委員がこのことを言いました。そして、オフサイト対策は一般災害に対応する組織でやる、すなわち、災害対策本部がこれに当たるべきだと指摘をしたんですけれども、細野大臣は、それは無理だと大臣席でつぶやきました。そして、強く否定しておられました。

 原子力規制庁が原子力災害対策本部の事務局を担うという政府案は、この安全委員会の中間取りまとめで提言しているものに反するのみならず、そもそも規制機関の独立性を定めたIAEAの安全基準にも反すると思うんですけれども、細野大臣の見解はいかがでしょうか。

細野国務大臣 まず、この防災の中間取りまとめは、班目委員長の指導力のもとで、三月末までにということで、非常に精力的に作業をしていただいてつくられたものですので、そのことに対しては、本当に心より敬意を表したいというふうに思います。

 この中間取りまとめの主要な部分というのは、例えばUPZをつくることによって範囲を拡大するであるとか、そういったところがメーンでございまして、そういった考え方そのものは、これはしっかりと尊重して、新しい規制組織のもとで充実した防災対策をしていく必要があると考えております。

 この意味を大いに評価した上で、この部分に関して言いますと、私は、これは大事な部分ですので率直に申し上げますが、やはりそこは、原子力災害に対応する事務局と通常の災害に対応する事務局は分けた方がいいと思っております。

 といいますのは、今回二つの本部が立ち上がりました。緊急災害対策本部は、当初は例えば、どう食料を供給するか、おにぎりを配るかとか、行方不明者をどう捜索するか、これをやっておりました。そしてすぐに、仮設住宅をどうつくるか、これをやっております。そして今は、復旧復興をどうやっていくか、移転の問題も含めて、そういうのに対応しているわけですね。

 一方で、原子力災害対策本部は何をやっていたかというと、避難範囲の問題にかかわっていたり、そして、例えば、さまざまな食料品の基準をつくっていたり、モニタリングをやっていたり、全く違うことをやっているわけですね。

 ですから、もちろん共通する要素もありますけれども、そもそも、もともとやるべき中身が全く違うこの組織を一緒にやるというのは、今回の事故を経験しているだけに、複合災害を経験しているだけに、むしろ違う性格を持っているということを強く申し上げたいと思います。

 その上で、先ほど塩崎先生が答弁をされましたこの考え方についても、私、一言申し上げたいと思います。

 つまり、オフサイトの、今私が申し上げたような放射線防護に対する考え方とか、モニタリングであるとか、SPEEDIであるとか、そういったものについては原子力規制庁でやるわけですね。原子力規制庁でやっておきながら、有事になったら内閣府から防災の部門が出てきて、そして事務局を担うというのは、これは極めて非現実的だと思います。ですから、そこはぜひお考えください。現実がこれですから。

 そして、そのことを考えたときに、先ほど緊密な連携という言葉がありました。この言葉は非常に、確かに魅力的な言葉に聞こえるんですが、私は、緊密な連携という関係のもとで機能しなかった組織を一年半ずっと見てきました。やはり、どこが責任を持ってやるかという、事務局は極めて重要なんです。

 そのことを考えれば、オンサイトとオフサイトのことについて原子力規制庁が責任を持ってやる、そして、その上で原子力規制委員会がやられる、そういう衆法のたてつけを前提とした場合も、やはり原子力災害対策本部の事務局は、きちっと専門家が当たるべき、専門的なチームを持っている原子力規制庁が当たるべきであると考えます。

吉野委員 自然災害と原子力災害は、時間がたてば中身は違ってきます。でも、最初は、いかに避難させるか、こういう意味では同じなんです。

 ですから、いろいろな報告書で述べられているように、やはりFEMAみたいな、ああいう組織は私は必要だと思います。今大臣のおっしゃることは、FEMAは要らないんだということと同じだと思うんですね。そこのところは、やはりちょっとこれから議論していかなきゃならないと思います。

細野国務大臣 吉野委員のおっしゃった指摘は重要だと思います。つまり、FEMAのような組織ができて、原発に対する災害も含めて、あらゆる災害に総合的に対応できるような組織ができたときに融合するというのは一つの考え方だと思うんです。

 ただし、原子力災害という極めて特殊な、そして、さまざまな備えを平時からしておかなければならないという事態に対して、今の内閣府のもとで全部対応するというのは現実的ではないと思うんです。

 ですから、そこは現実的な対応として、今どういう組織が実質的に機能し得るのかということをぜひ御検討いただきたいなというふうに思います。

吉野委員 その点についてはこれから、特に修正協議の場でいろいろ議論していきたいと思います。

 緊急時の総理の指示権について伺います。

 これまでの細野大臣のいろいろな答弁を聞いていますと、政府案においても、規制組織が海水注入すべき、ベントをすべきとしているケースでは、総理が規制庁長官や事業者に対して、海水注入をやめろ、ベントをやめろという指示をすることはない、そう理解しているんですけれども、それでよろしいでしょうか。

細野国務大臣 原子炉への海水注入であるとか、またベントというのは、文字どおり、技術的、専門的な事項であると考えるべきであると思います。したがいまして、そういったことについては、総理が指示をするべき対象には加えるべきでないというふうに思います。

吉野委員 今の答弁で、技術的なことに関しては政治は原則として口出しをしない、介入をしないというのであれば、二十九日の本会議の大臣の答弁で、国家の命運を誰に託すか、これが問題の本質だというふうに御答弁をなさいました。

 国家の命運を脅かす脅威とは、原子力の事故の場合は、原子炉の破損など原子炉自体の事象変化による被害、そして、それに伴って出る放射能の拡散の問題、これらですよね。これら以外にないんです。これらはいずれも技術的な問題なんです。それであっても、総理は覆すことがあるというふうに言っているんですけれども、技術的なことなんですけれども、どうなんでしょうか。

細野国務大臣 先ほど、ベント、海水注入について、総理の指示権は行使すべきではないということを申し上げましたが、あえてもう少し踏み込んで申し上げると、そういう判断というのは、現実に目の当たりにしますと、どんなに専門的、技術的な知識がある人間でもちゅうちょするケースというのはあり得ます。数々の専門家といろいろな事態に対応してまいりましたけれども、個人的な性格というのもどうしても出てくることがあります。そういったときに判断すべきなのであれば、そこは、判断をちゅうちょしているのに対して総理が踏み込むというような余地は、私はあると思います。それは、塩崎先生も先ほど同様の答弁をされました。

 それに加えて、私が例として挙げましたのは、例えば四号機のプールが万々が一空になると、これは大変なことになります。そうならないように、三月の十六日、十七日から一週間、我々は、とにかくあらゆる手段を尽くして海水注入すべきということで、総理の指示権を発動したわけです。これは、国家の命運がかかった事態であったというふうに思います。そして、技術的、専門的には、もちろんこれはプールですから、水を入れなきゃなりませんよという判断は専門家が当然しているわけですね。その上で、実際にそれをやる手段として、総理の判断として指示権を行使する余地はあるということです。

 つまり、専門的な判断と総理の指示権というのは、きちっと連携をするのが最も望ましいわけですね。しかし、望ましいんだけれども、そういう形でちゅうちょするとか、専門家の判断をはるかに超えたというか、幅の広い、政府全体としてのさまざまな取り組みが求められるような場面において、総理の指示権が必要になる場面があるのではないかということを申し上げさせていただいております。

吉野委員 総理の指示権の中で、例えの例で、撤退の話、そういうシチュエーションを取り出して言っていますけれども、撤退はあり得ないんです。そこの地域に人が住んでいるんです。そして、近くに大都会もあるんです。撤退という例えを言って、最後の最後の最後の場面であるんですけれども、前進、後退、これは戦いですから、あるんです。前進、後退はありますけれども、撤退というのはないんです。そこのところを大臣の方できちんと御意見を伺いたいと思います。

細野国務大臣 福島の皆さんのお気持ちは、今生活をしておられる環境を考えたときに、撤退はあり得ないと思います。ですから、そういう状況をまずつくってはなりませんし、そういう状態になっても撤退は絶対あり得ない、炉の鎮圧をするんだ、そういう専門家、そういう方についていただかなければならないし、そして、そういう取り組みを政府全体でできるような体制をつくらなければならないと考えております。

吉野委員 これからもいろいろ議論が続こうかと思いますけれども、絶対撤退はあり得ないという今の答弁のところから、そういう形で投げかけてきたらば、そんなことはあり得ないんだというところでこれから議論をお願いしたいと思います。

 次に、原子力安全調査委員会であります。

 政府は、原子力規制庁の規制についてチェックする第三者機関として調査委員会を設置し、仮に問題がある場合は委員会が勧告を行うことにより是正を促す仕組みとしております、原子力規制庁の規制が不当な影響によってゆがめられることはこれで排除される、こう本会議で大臣は答弁をされております。

 そのような調査委員会を設けなければ、独立した規制判断ができないということをみずから自白しているようなものだと思います。こんな調査委員会は、全く不要な組織です。そして、独立性のない政府の方の原子力規制庁をさも独立性があるかのように見せかけるためのごまかしの組織というふうに私は思うんですけれども、大臣、この点についていかがでしょうか。

細野国務大臣 原子力規制庁の長官は法的に判断を大臣から委任されておりますので、その意味において、独立性は制度として担保されていると考えております。

 ただ、そういう独立性が確保されているという形になっていてもなお、人事や予算も含めて大臣が権限を持っているという面がありますので、その大臣が、例えば専門家の判断をねじ曲げるようなことがあってはもちろんならないし、疑いを持たれること自体も非常に問題があるということで、原子力安全調査委員会がチェックをするという仕組みを私どもとしては提案させていただいているということであります。

 もう一つ申し上げますと、原子力安全調査委員会は事故についてのさまざまな調査も行い得る形にしております。これは、昨年の事故を受けまして、やはり、事故が起こったときにそれをしっかりと検証し原因を究明する、そういう形をどこかのところに残しておいた方がいいだろう、そういう考えでこういった組織をつくらせていただいております。

 したがいまして、確かに衆法と仕組みが違うのはよく承知をしておりますけれども、私どもの考え方としては、こういった機能は少なくとも何らかの形で残しておく必要があるのではないか、そのように考えているところでございます。

吉野委員 今、調査委員会に事故調査も担わせるという大臣の答弁がありました。

 規制庁の本来業務は何ですか。レベル1からレベル7までの事故、レベル1は年間八件くらいあるそうです。ここを調査委員会、いわゆる事故調査委員会に下請して、自分は何にもしないんですか。まさに私は、規制庁そのものが、いろいろな細かいトラブル、事故、事故とも言えないトラブル、こういうものを検証して、そして安全対策をとるのが本来業務だと思うんですけれども、なぜ下請に出すんでしょうか。

細野国務大臣 そこは国会の同意人事もある八条委員会ですので、下請ということではございません。

 そして、現実的に、私の中で一つイメージがありましたのは、東京電力の福島第一原発の事故の最終的な廃炉までは三十年とか、場合によっては四十年近くかかるかもしれない、それぐらいの長期間かかります。そこを、例えば廃炉に至るプロセスの中で一つ一つ事実が明らかになってきたときに、恒久的な形でそれを常に情報として蓄積をしていく場所というのが必要なのではないかというふうに考えました。

 もちろん、原子力の規制組織は安全に廃炉に向かうために関与するわけですけれども、そういう事項調査そのものをやることがこれまで少なくとも本来業務というふうには位置づけられておりませんでしたので、そこにしっかりと目を行き届かせることが難しいのではないかというふうに考えたんです。

 ですから、そういう機能としての原子力安全調査委員会を提案させていただいているということは、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

吉野委員 それでは、最後の質問をやらせていただきます。

 これが、政府事故調の中間報告です。去年の十二月二十六日に出ました。本物はこんな分厚いものです。概要版です。

 十四ページに「原子力安全規制機関の在り方」、こう書いてあります。そして「当委員会は、政府に対し、以下の事項に留意しつつ、新組織の設置に向けた検討を進めることを要望する。」はっきりと、新しい組織をこういう基準に従ってつくってくださいと。去年の十二月です。まだ政府案が出る前です。にもかかわらず、この政府事故調の示した基準とはかけ離れているんです。

 やはりここは、IAEA基準にのっとって「独立性と透明性の確保」、これが一番に来ています。IAEA基準と同じ言葉を使っています。必要な権限、十分な権限、十分な財源、十分な人材、これはありますか。どうしてこれにのっとった政府案が出てこなかったんでしょうか。

細野国務大臣 独立性につきましては、推進サイドからの独立というのがまず大前提になりますので、そこは長年の課題で、吉野先生が長年主張されてこられたことでもあり、今回の組織でしっかりと確保できていると考えております。

 多分、疑念を持たれているのは政治からの独立性というところだというふうに考えますが、そこは法的な委任によって専門家としての判断ができる原子力規制庁の長官、そしてそれをチェックできる委員会の存在、そういう体制で独立性が確保できているというのが私どもの考えです。ただ、そこは厳しい御指摘があるのは重々承知をしております。

 その上で、もう一つの鍵は、今御指摘をされたように透明性であります。これは幾ら法律に書いたとか理念として掲げたといっても、全く意味はありません。むしろ、透明性の確保というのは、日々のさまざまな検討であるとか、また日々のさまざまな国民に対する説明であるとか、そこで信頼を取り戻していかなければ透明性の確保ということにならないわけですね。

 ですからそこは、新しい組織が誕生したときに、これで日本の原子力の安全規制は変わったんだ、そういうスタートを切れるような準備はしていかなければならないというふうに思っています。ですから、非常に重要な御指摘を最後にいただいたと思いますので、心より感謝申し上げます。ありがとうございます。

吉野委員 政府事故調もきちんとした提言を出していますので、その意を酌んですばらしいものをつくっていただきたいと思います。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

中山委員長 次に、山本剛正君。

山本(剛)委員 民主党の山本剛正でございます。

 きょうは、質問の機会をいただきまして、ありがとうございました。

 二番バッターだったのが五番バッターになりまして、クリーンアップになりましたのでかっ飛ばしていきたいところなんですけれども、しっかりと議論しなければならない問題でございます。

 きょうは原子力規制庁設置関連の質疑でございますけれども、私は、再稼働を初めとした今後の原発の取り扱いというものについては、待ったなしの喫緊の課題であるというふうに認識をしておりますし、今後、我が国の国民生活の行方を大きく左右する問題であるとも認識をいたしております。

 永田町の中にはいらっしゃらないと思いますけれども、この問題を政争の具にしようとしている人間がいたり、ましてや自分の利益のため、そしてそのために世論を誘導しようとしたりする人間がいるとするならば、私はこれを決して許さないという思いを持って、今ここに立たせていただいております。

 政治は、たとえ今支持されなくとも、批判を浴びようとも、正しき道を示し、進めていかなければならないことは、過去この場に立たれた偉大な先輩方が実践され、現在の我が国の礎を築いていただきました。その大先輩方に敬意と感謝の念を持って、その先輩方に私は到底及ばない者でございますけれども、国家百年の計を持って、ここに、政治家としての信念のきわみを言霊にして御質問を申し上げたいというふうに思っておりますので、ぜひ、信念のお答えをいただきたいというふうに思います。

 まず、法案の内容に入る前に、幾つか御質問させていただきます。

 安全性についてでございますけれども、原子力安全・保安院は、原子力事業者に対して、平成二十三年三月三十日には緊急安全対策、そして六月七日にはシビアアクシデントへの対応に関する措置の実施を求めて、この措置に加えて、ストレステスト一次評価を停止中の原発再稼働の条件とするなど、福島第一原発の事故を踏まえて、一年以上の時間をかけて原発の安全性を検査してまいりました。

 ストレステストについては、原子力安全委員会のほかにIAEAからの助言も求め、最終的に原発の再稼働は、総理と官房長官、そして、きょうお越しの経産大臣と原発担当大臣の四閣僚の政治判断によって決定することとなっております。

 今、大きな関心事項となっている関西電力の大飯発電所三号機、四号機の再稼働問題については、今述べた検査は、政治判断を除いて全てクリアしているわけであります。

 政府は、四月上旬から六回にわたって原発再稼働にかかわる四大臣会合を開催いたしました。いまだに再稼働の是非について判断ができていない、きょう総理の記者会見があるようでございますけれども。

 そもそも、ストレステストを初め今まで実施してきた対策は、原発の安全性を確認するための対策ではなかったんでしょうか。その安全対策を全てクリアした大飯原発の再稼働を判断できない理由とは何か。それに対してどういう取り組みをされてきたのかをお答えいただきたいと思います。

枝野国務大臣 従来から、安全性については、既存の仕組みのもとでありますけれども、最大限しっかりと確認をする、同時に、その安全性について、周辺住民の皆さんを初めとする国民の皆さんの一定の理解を得ることが必要であるということを申し上げてまいりました。

 この間、周辺住民の皆さんを初めとする国民の皆さんの一定の理解を得るべく努力を重ねてきているところでございますが、特に、まさに万が一の場合に最も影響を受ける、また長年にわたって原子力発電所の安全性について最も厳しい目でさまざまな積み重ねをされてこられた立地自治体には、きちっとした最終的な御理解をいただかなければならないということで、この大飯原発については、福井県とおおい町の御理解を得るべく最後の努力をしているというところでございます。

山本(剛)委員 ありがとうございます。

 周辺自治体、立地自治体の件についてはまた後ほど触れさせていただきますが、再稼働の重要性について、ちょっとお話をさせていただきたいと思います。

 枝野大臣は、四大臣会合において、原発の再稼働を判断するための要件として、安全性のほかに必要性を挙げられました。私もそこは全く異存がございません。

 しかしながら、政府が示した今夏の電力需給が国民に受け入れられなかったのは、非常に残念なことではありました。根拠乏しく、十分足りる、政府は信用できないとメディアなどを通じて世論をあおっていた方々は論外でありますけれども、いわれなき言葉を受け取るかのごとく、結局、有識者による検証委員会によって、電力需給の検証が行われたわけでございます。結果はさほど変わらず、ただ判断をおくらせただけのものになってしまったのではないでしょうか。

 一方、このような検証をするのであれば、なぜもっと早くに準備をされなかったのか。安全性の判断は、専門家ではない政治家にはなかなか難しい話でございますし、安全性のほかに再稼働の判断に必要な要素があれば、明示的かつ事前にお示しをするべきではなかったのか。

 また、必要性の観点から見れば、経済性、エネルギー安全保障という点を抜きには考えられないと私は思います。なぜ電力需給だけがあれほどクローズアップをされたんでしょうか。

 政府は、最近になって、ようやく原子力の重要性を主張するようになってきました。コスト等検証委員会では、原子力の発電コストが高まり、化石燃料と比べてもべらぼうに安い電源ではなくなったという検証結果もあるわけであります。

 では、なぜ原子力が日本と日本経済にとって重要であるのか、お答えをいただきたい。また、コスト等検証委員会の検証結果に誤解を招く点があるならば、その点についても御説明をいただきたいと思います。

枝野国務大臣 必要性についての議論を早目にやっておくべきではなかったかという御指摘は、一つの御見解として真摯に受けとめなければならないと思っておりますが、私は、まず安全性の確認が優先であって、安全性が確認されていない段階で必要性の議論をするというのは、そうではないにもかかわらず、まだ再稼働ありきではないかという誤解をされているぐらいでありますので、再稼働ありきではないかという誤解を今以上に大きく生むおそれもありましたし、必要性を幾ら議論しても、安全性が確認されなければ再稼働しないわけですから、いずれにしろ安全性の確認から先行しなきゃならないと思っておりましたので、その点は御理解をいただければというふうに思っております。

 それから、どうしてもこの夏の需給の問題だけがクローズアップされた、クローズアップをしてくれということでこちらからお願いをしたわけではありませんが。確かに、経済全体に与える影響その他、電力構成についてのさまざまな議論はありますが、これについては、むしろ中長期的に原発依存度をどう下げていくのかという議論の中で、実は一義的には議論がされるべきテーマではないだろうか。特に、今回、この夏の電力需給の議論が注目をされましたのは、まさにその需給の問題が逼迫をしているという、むしろその必要性の観点から多くの皆さんが特に注目をされたのではないかというふうに思っております。

 中長期的には原発依存からの脱却を目指しますが、それに際して、化石燃料の場合は、少なくとも短期的に見れば国富が流出をする、日本の国民の皆さんがさまざまな形で稼いだお金が原油代金という形で海外に出ていく、現象的に見れば貿易収支の赤字ということにつながっていくというようなさまざまな問題があります。

 中長期的に脱原発依存を進めていく上でこれをどう考慮するのかということは大変大事な問題でありますし、短期的な再稼働の必要性の観点においても重要なことであると思っておりますが、それより、まず直近にこの夏の需給という問題が迫っておりましたので、どうしてもそこに多くの皆さんの御関心もいかれたのではないだろうかというふうに思っているところです。

山本(剛)委員 ありがとうございます。

 丁寧にやはり安全性を説明されてというところは、私も共感をするところでございます。安全があっての話でございます。今回の法案も安全をより強く担保するためのものであるというふうに私は認識をしておりますので、枝野大臣の御労苦というものは大変なものであったろうというふうに思っております。

 それでは次に、停止中の原発の危険性について、ちょっとお話をさせていただきたいんです。

 再稼働の是非が大きな議論となっていますけれども、この論点は、再稼働すれば危険で、とめていれば安全のように考えておられる方も少なからず私はいらっしゃるような気がするんですね。もちろん、そうではないという方もいらっしゃると思いますが。ただ、原子力発電所は、一たび事故が起これば言うまでもなく深刻な事態へと発展してしまうわけでありますが、このリスクは、原子力発電所の中に使用済み核燃料が存在している限りは、稼働しているか否かを問わず、含まれているものだというふうに私は理解をしております。政府はこの点についてどのような見解を持っておられるのか。

 また、技術というものは幾らマニュアル化しても、最終的には人材が持つ技術力が鍵となることは言うまでもありません。育成の話は、先ほど空本先生の話にもありましたけれども。例えば「もんじゅ」を動かすとかそういうのは別として、十数年以上も運転を停止した状態であったために、運転に関する技術を持つ人材が不足する事態に直面しているというふうに私は聞いております。

 このような視点から、我が国として原子力発電所を安全に廃止するという結論が出ておらず、少なくとも運転させる可能性が残っている状況下であれば、長期にわたって原子力発電所を停止させたままにするということは、むしろその後のリスクを上昇させることにつながるのではないかというふうに考えているんですけれども、いかがでしょうか。

枝野国務大臣 まず、前段のお尋ねでございますが、原子力発電所といいますか、燃料は、使用した後でありますと、停止中であっても崩壊熱を有しております。したがいまして、動いていようがとまっていようが、崩壊熱を有する状況でありますと、万が一福島原発のように炉心冷却ができない状況になれば、炉心損傷の可能性が出てくる。

 もちろん、運転をしていたもの、そしてとまった直後のものと、とまってから時間がたったものでは崩壊熱の熱さが違いますので、例えば冷却停止から炉心損傷に至るまでの時間の余裕度が大きく違います。したがって、同じリスクだと言うつもりはありませんが、質的には同じリスクを抱えている、停止しているか動いているかとはかかわりがないということは間違いございません。

 したがいまして、今停止中の原子力発電所、全ての原発がとまっているわけでありますが、とまっているから安全だという立場には全く立たずに、新規制組織ができるまでの間、原子力安全・保安院においては、三・一一の反省を踏まえて厳しくチェック、対応をするよう指示しているところでございます。

 それから、後段のお尋ねでございますが、原子力発電所を例えば動かすなどのさまざまな技術あるいは保守点検をする技術等については、もちろんさまざまな蓄積等が大きな意味を持つことは否定するものではございません。したがって、仮に原子力発電への依存をこれから低減させていって、いずれなくなるにしても、その間安全に運転をさせていく、あるいは、廃炉をしていくというのはこれまた違った意味で、原子力に関連するさまざまな高度な技術、これはこれからむしろ高めなければならないという部分がございます。

 そうした意味では、いずれにしろ、日本は原子力発電とつき合ってきた以上は、これから恐らく四十年、五十年にわたって、どういう選択をとるにしても、原子力に関するすぐれた技術者を抱え続けなければならない、あるいは育て続けなければならないというふうに思っております。

 その間のプロセスについては、安全性や安全性に対する国民の皆さんの理解、あるいはこれからの原発依存からの脱却のプログラムによって変わっていきますが、どういったプログラムをとるにしても、こうした人材がしっかり確保されるように、これは規制機関としての安全確認の規制の必要性のところからも人材はしっかり養成していただかなければいけないと思います。

 経済産業省は決して推進でも促進でもありませんが、利用をする機関を監督する立場として、こうした人材をしっかりと確保していくということについては、さらに、むしろ三・一一以前以上に努力をしてまいりたいと思っております。

山本(剛)委員 ありがとうございます。

 私も、これから先、永遠に原発に依存をしてこの社会を続けていくことをよしとしているわけではないわけであります。ただ、原発の依存をどんどん下げていくということは、技術者が少なくなっていくという側面も、やはり私はこれは否定できないことだと思います。

 今、枝野大臣には力強くおっしゃっていただきました。やはり廃炉をするということに関してまた違う難しい技術があるということも、これは、余り国民の皆さんに深い理解をまだまだ私は得られていないと思うんですね。要するに、原発が運転をしていなくても抱えているリスクがあるということについても、やはりもっともっと国民の皆さんには理解をしていただかなければいけないし、この安全性ということについて、国民全体で共有できるものが私はあるというふうに思っております。

 通告はしていないんですが、細野大臣、ぜひここについて、どういう決意を持たれているのか、もしお答えいただけるならば。

細野国務大臣 山本委員が指摘をされた人材育成に私は一番危機感を持っております。原発の依存度を下げていくという意味では、これは政府としては方針を決めておりますし、ことしの夏、またしっかりと議論を経て、方向性も出していかなければならないと思うんです。

 ただ、先ほど枝野大臣がおっしゃったとおり、これから廃炉ということでいうならば、何十年にもわたって原子力とつき合っていかなければならないわけです。その間の人材が本当にしっかり確保できなければ、やり切ることはできませんし、特に東京電力の福島第一原発という一番難しいものを抱えていますから、そこを廃炉に持っていく高度な人材を育てていかなければならないわけですね。それと同時に、実は規制機関の人材も養成していかなければならないんです。

 ふと自分で周りを見て感じますのは、例えば今の十代の若者が、原子力を専門にして夢を持って入ってくるかというと、極めて悲観的にならざるを得ないですね。でも、彼らに何らかの形でかかわってもらって、高い技術を身につけていただかなければ、何十年もそれをやり切ることは難しいんですね。このパラドックスをどう解決するかというのは、本当に国家的な課題だというふうに思います。

 したがって、脱原発という方向性ではあるけれども、これだけ大きな事故を経験し、そして使用済み燃料の処理も含めて課題を抱えている我が国としては、そういう人材を国家として前面に立って育てていく、これぐらいの決意がなければいかぬのではないかと考えております。

山本(剛)委員 ありがとうございます。

 やはり安全のための人材を育成する、そのための規制庁でなければならないというふうに私は思っております。この法案の意義の大きなものにそれがあるというふうに思っておりますので、ぜひしっかりとした議論をこれからも重ねてまいりたいというふうに思っております。

 続きまして、立地自治体の意見について、先ほど枝野大臣からもお言葉がありましたけれども、福島の原発事故以来、広範囲の周辺の自治体からさまざまな意見が出されているわけであります。私も、福岡の人間でございまして、福岡も周辺自治体でございますから、さまざまな意見を頂戴することがございます。どの意見も傾聴に値するものでありますし、今さまざまな情報が交錯する中では、やはり大きな不安を抱えられている方も多いのは、これはもう当然であるというふうに私は思っております。

 しかし、最も技術的な分析や知見に裏づけられているのは、まさに長きにわたって原子力と向き合ってきた立地自治体であるというふうに私は考えております。その歴史は闘いの歴史であり、葛藤の歴史でもあったというふうに思います。地元で産業が興るという喜びの一方で、常に不安と背中合わせの毎日、この交錯した御辛苦の日々、歴史が現在の日本の繁栄を築き、支えてくれたわけであります。

 再稼働に当たっては、周辺自治体の意見もありましょうけれども、それよりも、この歴史を重ねてこられた立地自治体の御意見こそ尊重されるべきなのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

 また、国家のエネルギー安全保障は、言うまでもなく国の根幹の基本政策であります。再稼働に当たっては、原子力発電所の周辺地域の理解を求めて意見も尊重するも、最終的には国が判断するべきではないのでしょうか。お答えをいただきたいと思います。

枝野国務大臣 まず、原子力発電にかかわることについては、これは国が判断をしなければならないことである、最終的な判断は国が国の責任で行わなければならないことであるというふうに思っております。

 ただ、昨年の福島の事故を踏まえれば、国民の皆さんの一定の理解というものを前提にしなければ、単に、客観的に安全ですよと言うだけでは物事は進めるべきではないというふうに思っておりまして、その際には、今回の福島の一つの反省、教訓として、かなり広範な地域の皆さんにさまざまな影響をお与えしたということがございますので、幅広く、周辺自治体の皆さんの御意見というものは耳を傾けなければならないと思っておりますし、また、この間、その努力をしてきているところでございます。

 同時に、御指摘のとおり、立地自治体、大飯原発について言えば、おおい町であり、福井県の皆さんは、まさに、万が一の場合、最も大きな影響を受ける皆さんであり、だからこそ、これまでの間も、大飯の場合ですと約四十年にわたるでしょうか、本当に安全なのかということを、事故が起きたらこんなに広範な影響を与える可能性があるんだということを余り多くの皆さんが認識していない三・一一以前においても、まさに当事者でございますから、大変厳しい目で積み重ねてこられたというふうに承知をしております。

 原子力工学など幅広い分野の方々から成る委員会で、原子力に対するさまざまな課題について県では検討されてきているということも承知をいたしております。

 やはりこうした皆さんには、きちっとした御説明と、そして理解を得なければいけないというふうに思っております。

山本(剛)委員 ありがとうございます。

 本当に長きにわたって原発と向き合ってこられた立地自治体の皆様、我々はもう一回そこに思いをはせなければなりませんし、もちろん、三月の十一日以降、これだけの広範囲にわたってその影響が出るということ、これをやはり教訓としなければなりませんから、私は、これはもう本当に我が国の国民のみならず、世界の原発を有する国の人間で幅広く共有するべき問題なんだろうなというぐらいに思います。

 それの発信をぜひしていかなければならないと思いますし、それにも増して、我が国の原発は安全なんだということをぜひ確立していきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 それでは、法案についてお尋ねを申し上げますけれども、一日も早く原子力規制庁を設置して国民の理解を深めることが重要であることは、もうこれは一致しているところでございます。

 その中で、規制庁設置に当たっては、現在の原子力安全・保安院と原子力安全委員会の機能を一元化するということでございますけれども、保安院と安全委員会はそれぞれ、これまでダブルチェックを行ってきたわけでありますね。

 このダブルチェック体制をどのように評価されているか、それで、これを今後どういうふうに反映させていこうというふうに思われているか、保安院と安全委員会からお伺いをしたいと思います。

深野政府参考人 お答えをいたします。

 現行の原子力安全規制制度の中では、まず原子力安全・保安院が法律に基づいて規制を行いまして、その結果についてさまざまな形で、法律上、原子力安全委員会がチェックをする、こういう体制がとられております。

 これにつきましては、原子力安全委員会が客観、中立的な立場からチェックをされるということでございまして、現在の安全規制の体制のもとではこれは必要でございますし、一定の効果を上げてきたのではないか、そのように考えております。

班目参考人 お答えします。

 ダブルチェック機能というのは今回の一元化である意味ではなくなるということでございますけれども、これにつきましては、今回まさに審議していただいている法案の中身そのものでございますので、検討の俎上に上っている原子力安全委員会としては、大変申しわけないんですけれども、コメントは差し控えさせていただきたいと思っております。

 以上でございます。

山本(剛)委員 今までの評価もお答えをいただけないということになりますか。

班目参考人 深野保安院長の方からも御返事がありましたように、法律に基づいて、行政庁の方から諮問があった場合には粛々と答申してきたというのが実態でございます。その効果というのがどういうものであるのかというのをぜひこういう場でもしっかり議論していただいて、それで新しい体制をつくっていただきたい、これが原子力安全委員会の立場でございます。

山本(剛)委員 わかりました。

 もちろん、当然一元化をするわけですから議論はするわけでありますけれども、私は、やはりこのダブルチェック機能というのはそれなりに当然機能はしていたと思いますし、これが決して悪かった制度だというふうに思ってはおりません。ただ、これから一元化するに当たっては、新しいものをこれから構築していこうということですから、こういった場を通じて、こういった場でなくても、議論を深めてまいりたいというふうに思っております。

 細野大臣にちょっとお聞きをいたしますけれども、規制庁の発足後に、現在行われているストレステストはどのように引き継いでいこうと思われているのか、お答えをいただきたいと思います。

細野国務大臣 ストレステストは、昨年の菅政権のときに、現状の規制の状況では国民的な理解はなかなか得られないという状況の中で、これは行政指導として導入をされた、そういう経緯がございます。そして、それを実質的な再稼働の条件として取り扱ってきたということでございます。

 このストレステストを新しい規制機関のもとでどのように取り扱うのかというのは、まさに専門家が判断をすべきところなのではないかというふうに考えます。

 もちろん、ストレステスト的なものというのは、旧来ヨーロッパを中心に長年導入されてきたのに我が国では導入されてこなかったということで、この発想自体は、つまりストレスをかけていってどれぐらい安全裕度があるかというのを見るというこの手法自体は、何らかの形でこれからも活用する余地はあると思うんです。ただ、これを再稼働のあり方も含めてどのように活用していくのかというのは、これはまさに新しい組織の専門家の皆さんがしっかりと御判断いただく必要があるのではないかと考えております。

山本(剛)委員 ありがとうございます。

 これから原子力の安全性をより高めていくわけでございますから、現在までに行われているストレステストというものよりも、形がどうなるかは別として、これからの話として、これよりも基準が高くなるということは十分にあり得るんであろう。それがなければ、当然、安全性というものは担保されない。

 また、ストレステスト云々いかんにかかわらず、やはり国民の皆さんに御理解をいただくための安全性の向上というものは貪欲に追求をしていっていただきたいと思いますし、これは専門家の皆さんに委ねるところでありますけれども、ここが、まさにこれからの原子力行政をどのように扱っていくのかというところの肝になっていくのではないかというふうに思いますので、ぜひ真摯な議論を進めていきたいというふうに思います。

 先ほども人材のことを細野大臣にも突然質問をいたしまして、お答えをいただきました。この重要性というものは認識をしているところでございますけれども、原子力安全規制を着実に遂行していって国民の信頼に応えていくためには、やはり欠かせないこの人材育成であり、確保であります。先細り感のあるこの分野で、先ほども大臣もおっしゃられましたけれども、夢を持ってこの世界に入り込んできてくれる方たちがなかなか得にくいのではないか、これはまさにおっしゃるとおりだと思います。

 しかしながら、細野大臣は、人こそ命とおっしゃっておられます。これは私はすばらしいことだと思いますが、これは理念だけでなく、では、これをどうやって具体的に対策にしていくのかということをぜひお聞かせいただきたいと思います。

細野国務大臣 幾つか視点があるというふうに思うんですが、一つは、原子力の安全規制というのは、極めて実務的な、原子炉そのものの構造にどれぐらい詳しいかということにかなり依存する部分があるんです。したがって、これまでの原子力安全・保安院で若干欠けていたとすれば、そこを徹底的にOJTでレベルを高めていくという、実務的な訓練みたいなものはもっと強化をしていいんだろうというふうに思っています。

 一方で、そういう専門家、技術者と話をしていますと感じますのは、それだけだとどうしても煮詰まるという面があるわけですね。むしろもっと広い視野で、例えば資格制度をとっていくというようなこともいいでしょうけれども、それをはるかに超えて、世界では何をやっているのかとか、放射性物質の取り扱いそのものはどのようなものであるべきなのかとか、IAEAはどういうルールをつくっているのかとか、そういったまた違う大きな視点で物事を捉えていくというのがなければ、本当に日々の業務に追われるだけで終わってしまうということがあるわけですね。

 ですから、そういったものを解決するためには、国際機関に派遣をしていくであるとか、思い切ってしばらくはしっかりと勉強してもらうであるとか、そういったことも必要なのではないかと思っています。

 そういう視点で考えたときに、さまざまな研究機関を活用していくべきだというふうに思っていますが、政府としても人材育成の専門的な機関をつくるべきではないかと考えております。具体的には、国際原子力安全研修院、そういう仮称をつけさせていただいておりますが、そういった専門的な機関をみずから政府がつくって、そこで専門的な知識、そしてモチベーションの高い形での訓練、そういったものをできるような体制もあわせて必要なのではないかと考えているところでございます。

山本(剛)委員 ありがとうございます。

 やはり技術者の方たちに幅広い視野を持っていただくこと、それから海外の交流とかも含めて、そういった観点というのは私は非常に重要だというふうに思っておりますので、ぜひお願いをしたいと思います。

 新たな安全基準についてなんですが、現在、大飯原発三号機、四号機以外に二十基の原発ストレステスト一次評価が提出されて、審査待ちの状態となっているわけであります。再稼働が進まなければ、燃料費などによる電気料金の大幅な値上げが懸念されて、産業界からも、安全確認ができた原発は速やかに動かさなければ、日本企業、ひいては日本経済が衰退してしまうなどの意見も出されているわけであります。

 現在、原子力の安全性については、四月六日の四大臣会合で安全性に関する判断基準が策定されて、ストレステスト一次評価を含めて緊急安全対策及びシビアアクシデント対策から構成される基準、そして事業者によるさらなる安全性向上対策の実施計画、新規制への迅速な対応及び自主的な安全確保という姿勢の三つの基準から成っているわけであります。

 この安全基準で大飯原発再稼働の道筋が立ったわけですが、日本経済のためにも大飯原発以外の再稼働も待たれる今日、安全には十分な配慮が必要なことは無論ではありますけれども、一方で、悠長に新たな規制を待つわけにはいかない側面もあるわけでございます。

 政府は、原子力規制庁法案の成立後、八月から九月ごろまでには発足を目指して、新たな安全基準の策定は発足後十カ月以内を目安とされているわけでありますけれども、これでは今から一年後ということになってしまって、今後の再稼働に向けた幅広い国民の理解を得るために、原子力規制庁は、これは一年と言わず、やはり一日も早く設置をして、その確立をしていただきたいというのが私の思いでございます。

 もちろん、安全を第一とした形の中で、また稼働中に新たな基準が策定されれば、その基準に照らしながら再稼働を待つ原子力発電所を動かしていくことも重要だと考えていますが、いかがお考えでございましょうか。

細野国務大臣 新しい基準でありますけれども、これは、新しい組織を誕生させた後に、専門家の意見聴取であるとか意見の公募なども手続を踏んでしっかりとやる、その上でつくらなければならないということですので、主要なものについてはどうしても十カ月以内というかなりの期間を想定してやらなければならない、そういうことになるわけです。ただ、これをできるだけ早める必要があるであろうというふうに思います。

 一方で、新しい基準ができなければ何もできないかといえば、そうではなくて、例えば地域の防災計画などはもう本当にできるだけ早くつくって、防災訓練などもやっていただく。これはもう、動いていようが動いていまいが、燃料棒があるわけですから、できるだけしっかりやることが重要です。

 あわせて、今政府がやっておる基準がストレステストも含めて正しいものかどうかというのも、新しい規制機関が誕生したら、そこでさまざまな判断が当然なされるわけですね。

 ですから、確かに基準をつくるまでには一定の時間がかかりますが、それまでにもやれることは相当ありますから、それをしっかりと専門家の皆さんにやっていただける体制を早急につくりたいと考えております。

山本(剛)委員 ありがとうございます。

 再稼働を待つ原発をしっかり動かしていかなければならないというのも事実でございますので、やれることをやっていただいて、その道筋を立てていただきたいと思います。

 最後に、期間限定の原発再稼働、停止によるコスト増について、これは、先ほどコスト増については枝野大臣に触れていただきました。

 大阪の橋下市長は、大飯原発再稼働に対して、事実上の容認であると発言をされました。なぜ容認する権限を持っているのか、私にはちょっとわかりかねるところなんですけれども、この容認とは期間限定であるとも述べられております。あげくの果てには、フル稼働ではないとまでおっしゃったそうでございますが。

 この発言についてですが、私は、橋下市長の行動力、突破力、そういったものは政治家としてうらやましいな、すばらしいなと思うところはあるんですが、この発言についてだけは、稼働させるために一カ月以上もの時間を費やすとされる原子力の性質を考慮すれば、短期間のうちに稼働と停止を繰り返すことは極めて危険なことであります。もしそんなことをすれば、人為的に事故のリスクを高めることにつながるわけで、このような行為は私は言語道断だと思っておりますし、国民、市民の生活の安全を無視した無責任きわまりない発言であるというふうに捉えております。

 政府としても、この期間限定という提案に対しては否定的な見解であると認識をしておりますけれども、期間限定の再稼働がいかに問題があるのか、技術的な側面も含めて政府の認識を問いたいというふうに思います。

 原発の再稼働を考える上でも、夏の需給もさることながら、原発の停止によって三兆円もの国富が流出していることこそが最大の問題である。このような国富の流出は、日本経済、国民生活、ひいては重要課題でありますデフレ脱却にどのような悪影響を及ぼすのか、端的にお答えをいただきたいと思います。

枝野国務大臣 まず、稼働して、またすぐとめてということの技術的リスクは、これはいろいろな見方があるようでございます。ただ、少なくとも、大きな事故になるかどうかはともかくとして、人為的に動かし始めたりとめたりというときにはいろいろな作用が働きますから、大きなリスクであるかどうかは別として、できるだけ物事を動かさない方がいいということはあるだろうと思いますが、先ほど申しましたとおり、一度稼働させれば、とめてもその直後は稼働中と同じぐらい崩壊熱があるということはきちっと考慮に入れなきゃならないと思っています。

 私は、むしろ本質的には、消費地の都合だけ言えば、一番足りないときだけという話はわからない話ではないかもしれませんが、これは、実際、万が一の場合最も影響を受ける立地自治体の立場からすれば、いや、危険かもしれないけれども足りないから動かせという話になるわけですから、そんな話、政府として福井県やおおい町に申し上げることはとてもできません。

 それはいろいろな違った御意見も一部ありますが、政府としては安全であるという判断をしたので再稼働をお願いしているわけでありまして、安全ではないけれども足りないから動かさせてくれということを申し上げるつもりは全くありません。

 それから、もちろん経済に与える影響はさまざまなところがありますが、これはむしろ、再稼働問題とダイレクトというよりは、先ほど申しましたとおり、中長期的な原発依存からの脱却をどういうプロセスで進めていくかということに当たって、もちろん原発のコストについては、事故の場合のコストであるとか、そこが一番大きいと思いますが、それをどう読み込むかによっていろいろ変わってまいりますが、少なくとも、現にでき上がっている原発がある中では、その分を火力で補えば、当然その分日本の国富が産油国のところに移って貿易赤字になる、貿易赤字が拡大をする、こういうことで、日本の国富が失われて日本全体が貧しくなるということは間違いない。

 それをどの程度やむを得ないものとして脱原発依存を急ぐのかということは、まさにこれは、今の内閣限りで決めるというよりは、国民の皆さんにも大いに御検討いただいた上で、それを踏まえて判断をしたいと思っております。

山本(剛)委員 ありがとうございました。

中山委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 きょうは規制機関の問題について質問したいと思いますが、しかし、それに先立って、規制機関と電力やメーカーとの関係の問題についても、少し政府参考人の方に最初に伺っておきたいと思います。

 福島第一事故の検証を行って、それを生かした原子力規制の方向を今考えなければいけないときですが、しかし、福島以前から多くの事故があり、検証はあったはずです。そこで、今、大飯原発再稼働に合わせて、福島のBWRとは異なるタイプのPWRの美浜原発二号が一九九一年に起こした蒸気発生器細管破断事故について、改めて伺っておきたいと思うんです。

 これは実は、一九七五年から八〇年にかけて、もう随分前になりますが、当時の通産省が財団法人発電設備技術検査協会に、六十二億一千六百万円、当時の金ですから今は物すごいものになりますが、補助金を出して、財団法人発電用熱機関協会にここから丸投げして、実際には、関西電力など電力とPWRメーカーである三菱重工業が、三菱重工業の中に実証実験プラントをつくって、それで、当時の原子力安全委員会の委員長代理だった都甲泰正教授の指導のもとに、蒸気発生器細管の健全性実証試験というのをやりました。

 このデータをもとにして、実は、蒸気発生器においては、高サイクル金属疲労や減肉などを生じるような三つの要件全てについて、日本の原発では大丈夫なんだというふうに結論を出していたと思うんですが、このことを最初に確認しておきたいと思います。

深野政府参考人 お答えをいたします。

 御指摘ございましたのは、蒸気発生器信頼性実証試験のことではないかと思います。

 これにつきましては、一九七五年から八〇年にかけて、先生御指摘のところで行われたものでございますけれども、当時、蒸気発生器の細管の表面で腐食と減肉が発生をしておりました。この原因というのが、二次系の水処理のために燐酸塩を使ったことによるものではないかということで、これを使わない水処理方法の導入が行われておりまして、その効果が実際にあるかどうかというのをモックアップ等を用いて実証試験したものでございます。

吉井委員 日本では大丈夫だと言った後、一九八二年に報告書が出ておりますが、その五年後の一九八七年七月に、アメリカのバージニア州にあるノースアンナ原発一号機では、やはり蒸気発生器のギロチン破断事故をやっていると思うんです。

 これは間違いないですね。

深野政府参考人 御指摘のとおり、一九八七年の七月十五日に、熱交換器の伝熱管が破断する事故がアメリカのノースアナ原子力発電所の一号機で起こっております。

吉井委員 それで、このときにNRCの方は、全米の全てのPWR型原発について蒸気発生器を調べて、四十五日以内に直ちに報告書を提出せよと指示したんですよね。

 ところが、日本の原子力安全規制官庁、これは原子力安全委員会を含めてですが、日本国内のPWRについては、実は、さっき言っておりましたように、一九七五年から八〇年にもう実験済みだ、日本は水質管理がしっかりしているから大丈夫なんだ、大丈夫だ大丈夫だと言って、直ちに調査して報告をせよということはしなかったんですね。

 それどころか、原子力委員長代理であった都甲さんが指示して、一九八二年に蒸気発生器細管の健全性実証試験を行って日本の原発は大丈夫だというふうに言ったために、NRCの報告を全く無視してしまう。この蒸気発生器細管健全性実証試験報告を出した後に、美浜原発二号機で、一九九一年二月九日、大丈夫だ大丈夫だとしてきた蒸気発生器細管でギロチン破断事故をやってしまった、これが事実じゃないですか。

深野政府参考人 先ほどのノースアナ原子力発電所の事故の後、当時、この原因というのは水質の問題であるというふうに考えたようでございまして、日本ではこういった問題の起こるリスクは低いということで評価をしておったようでございます。

 その後、御指摘のように、美浜の原子力発電所二号機におきまして細管破断事故が起こったわけでございますが、これにつきましては、細管をとめる揺れどめ金具の入り方にふぐあいがあって、その結果、高サイクル疲労になったということでございまして、ちょっと原因は別でございますけれども、この揺れどめ金具についての点検がきちんと行われていなかったということでございます。

吉井委員 実は、一九九一年の国会でそれは議論したんですけれども、ノースアンナの事故のときに、フレッティングとかデンティングとか、それから水力学的振動の問題とか、全部わかっていて、水質の問題だけじゃないんだということが既にこのときにわかっていたんですね。

 ところが、それをNRCは注意したけれども、日本の規制当局は全く無視して通ってしまった。なぜ通ってしまったかといったら、結局、規制官庁であるはずのところが、推進側の電力や原発メーカーと、しかも、規制官庁の安全委員会の委員長代理が指導して一緒に実験をやっちゃったものだから、だから、出てきた答えは大丈夫だから大丈夫だと。こういうことで突っ走ってしまったのが一番の問題であったというふうに思うわけです。

 次に、私は枝野大臣に伺っておきたいんですが、規制側の原子力安全委員会の責任ある人が、規制を受ける側の電力、原発メーカーを指導して、日本の原発は大丈夫という結論を出したというのは今やりましたけれども、やはりここに規制と推進の癒着というものが、美浜二号、後の美浜三号もそうですが、福島原発まで、次々と重大な事故を引き起こしてきた問題だというふうに思うわけです。

 二〇〇四年八月九日には、美浜原発三号機で、タービンを回した後の二次冷却水が蒸気発生器に戻る前の配管で、減肉が進んで破裂して、約十気圧、百四十度の高圧熱水が爆発的に噴き出して、五人の下請労働者が犠牲となり、六人が大やけどを負いました。この事故の十八年前の一九八六年十二月九日に、実は、アメリカのバージニア州のサリー原発二号機、これもPWRですが、二次冷却水配管の破断事故で四人が死亡するという事故があったわけですね。

 アメリカ側は、そのとき直ちに取り組んだのですが、日本の方は、実は、電気事業連合会のPWRを扱っている電力各社と当時の通産省が検討会を持って、まとめていたものがあるんですね。これが通産省事故報告書で、その中では、サリー原発のような事故は日本では起こり得ないという結論を出したんですね。

 だから、事故を起こす四年前に関西電力が国に提出した、美浜原発三号機の二〇〇〇年五月に出した定期安全レビュー報告書というのでは、サリー原発事故の原因が配管の減肉にあった、サリーの原因は配管減肉だと明記していたんです。ところが、その通産省報告は非常に楽観的なものだったので、日本は水質管理がしっかりしているからサリー原発のような事故は起こり得ない、こういう結論を出していたものですから、結局、外国で事故が起こってもちゃんとした教訓を学ばない。この結果、ああいう事故になったわけです。

 政府が電力会社の自主点検任せにして、関電などは配管減肉の検査を今度は原発メーカーである三菱重工に任せてしまう、三菱重工は下請、孫請に任せてしまう、こういうやり方が、美浜二号、三号、福島第一事故など相次ぐ事故の最大の原因の一つというのは、事業者による安全評価、この事業者任せというあり方そのものがやはり今問われていると私は思うんです。

 これは枝野大臣に伺っておきたいと思います。

枝野国務大臣 特に二〇〇四年の美浜三号機の事故については、御通告がありましたので調べてまいりましたが、御指摘のとおり、配管の点検リストへの記載漏れが不適切な減肉管理をもたらした、メーカーによる点検不備を関西電力が適切に発見し改善できなかった、なおかつ、それについて当時の原子力安全・保安院が見逃したということでございます。

 原子力の性質上、全部、規制当局が直接検査をするというやり方がリアリティーがあるのかどうかということは、これは新規制機関ができましたらそこで御検討いただくことだとは思いますが、少なくとも、メーカーあるいは電気事業者が行う検査について、規制当局がきちっとしたチェックをしてこなかった、そのことが二〇〇四年の美浜三号機事故の遠因であったということは、私もそう思います。

 今、そういったことが少なくとも新規制庁発足までの間に起こらないように、特に電気事業者と安全規制の観点が癒着と指摘を受けることがないように、私自身がこの立場についてからは、さまざまなところから電気事業者や電事連を排除するようにという指示をしております。もし見落としがあって、そういったことが今もあれば、御指摘いただければ排除させます。

吉井委員 八六年十二月九日に、さっき言いましたサリー原発二号機の事故があったんですね。しかし、定期安全レビューの中でサリーのようなことは起こらないということを書いてきたのは、一九九四年八月の美浜原発一号機以来、定期安全レビューというのは十年に一回やっていますから、ずっと繰り返し同じ文言が載っているんですよ、定期安全レビューを見たら。だからこれは、電気事業者が出してきても、政府はきちんと、規制当局が目を通すということが必要で、私は、こういう点では、規制当局がきちんとしてこなかったということが重大な問題だと思うんです。

 ですから、今度はこういうやり方をしちゃならないわけなんですが、ところが、今やっているストレステスト、お手元に資料を配付させていただきましたが、各電力が出してきたテストというのは、さっきの話と一緒なんですよ。電力は原発メーカーに丸投げし、原発メーカーは下請に丸投げするというその構造の中で、今度のストレステストはどこがやったかといったら、原発メーカーがこのストレステストをやっているんですよ。それで、電力は、大丈夫だ大丈夫だという評価報告書を国に上げてくる。国の方は、保安院で、一次評価で大丈夫でしたという答えを出している。

 一体こういうことで本当に大丈夫と言えるのかという今根本が問われていると私は思うんですが、これは一言でいいですから、枝野大臣のお考えを聞いておきます。

枝野国務大臣 三・一一までの原子力規制に問題があったことは、私もそのとおりだというふうに思っております。

 ストレステストの一次評価についても、御指摘のとおり、メーカーが行ったものを電力会社が提出してくるという形でございます。これは率直に申し上げて、このストレステストを実際に行う能力がどこにあるのかという観点からしたときに、残念ながらと言うべきかもしれませんが、メーカーに基本的にはその能力があるということでございます。

 ただ、これは全くそこに丸投げをしているわけではありませんで、私のところには重要なことしか報告は、さすがに全部細かいところまではさせておりませんが、私のところにまで上がってきている重要な案件だけでも、ストレステストのプロセスの中にこういう問題があったのでやり直させるとか、こういうところについては直接保安院が行ってチェックをしているというような報告等はさせてきておりまして、少なくとも丸投げをしているという状況ではない。

 こういうところをもうちょっと厳しく保安院においてチェックするべきではないかという具体的な御指摘があれば、新規制庁発足までの間、そういった御指摘も踏まえて、さらに直接的に、ここも見落としはないかということの指摘には対応したいと思います。

吉井委員 今度、法律改正の中でもうたっているわけですけれども、要するに事業者に指示するわけですね。今度の場合は、重大事故、二千八百度ぐらいの炉心溶融に至るようなものまで含めてちゃんと調べなさいと言うにしても、先ほど来言ってきましたように、電気事業者にテストをやらせる、電気事業者はメーカーにやらせる、メーカーは今までから使ってきた下請を使ってやっている。要するに、事業者任せというやり方を続けておったのでは、結局、原子力安全・保安院が原子力規制庁などと名前を変えても、こういう事態は変わらないんじゃないか。

 私は、これを細野大臣に伺っておきたいんですけれども、やはり名前を変えただけでは変わらないんじゃないですか。

細野国務大臣 御指摘のように、事業者任せのこのやり方を変えていかなければ、名前を変えただけと言われても仕方がない、意味がないと思います。

 具体的には、例えばシビアアクシデントなどもこれまで事業者に任されておりまして、それを半ば追認するような形になっていました。今度はシビアアクシデントについても法制化をいたしますので、そういう対応ができないような事業者は原発を運営できない、そういう厳しい規制になるわけですね。

 バックフィットも導入いたしますが、幾らバックフィットしたところで、検査能力がなかったり、自主的に任せていたりということではいけませんので、それについてもきちっと適用できる、そういう規制だけではなくて技術面も含めた能力を身につけていく必要があるというふうに考えております。

吉井委員 当然、能力をつけるのは当たり前の話なんですが、名前を変えて、経産省保安院が環境省という、原発推進を今も法律で出しているわけですけれども、推進の別な名前のついた官庁に規制庁を移しただけでは、これは根本的な変更にはなっていかないというふうに思うんです。

 政府案でノーリターンルールということを言っていますが、管理職だけですね。今、一部修正協議の中で伝えられている話では、一般職まで広げてということですが、現在、原子力安全委員会や原子力委員会では、専門的、技術的知見を有する非常勤職員として、公募によらず、電力会社や原子炉メーカーなどが、そういう原発を推進するところから在籍出向させて、霞が関出張所というのを築いています。

 官庁と電力は癒着している。これでは、原発の審査や検査が中立公正な観点から行われるのかどうかという点では、当然疑惑の目で見られることになってきます。この癒着を断つために、新しい規制組織の専門的知見を有する非常勤職員について、政府案における原子力規制庁の技術参与や審査専門委員、原子力安全調査委員会の専門委員には、電力、原子炉メーカーなどの原発利益共同体の構成員を在籍出向させないということをきちんと守られるかどうか。

 そして、非常勤として採用する場合には、出向元を退職させてもとの会社との関係を断ち切るのは当然のこととして、もとの原発関連企業には帰らせない、その企業の下請であっても天下りさせない、そういう立場で、ノーリターンと言うからにはきちんと臨んでいくのかどうか、伺っておきたいと思います。

細野国務大臣 きちっとそこにけじめをつけていくということは、極めて大事であるというふうに思います。

 まず、大原則といたしまして、新たに誕生する原子力の規制組織においては、事業者やメーカーから在籍出向という形での人材を入れることはいたしません。中立性、公正性に疑問を持たれる可能性があるからです。

 一方で、技術参与のような非常勤職員についてでありますけれども、これについても、まず、きちっと退職をしていただいて来ていただく以外のやり方というのはとるべきではないというふうに思います。つまり、現役出向のような形で、非常勤とはいえ中でかかわるということは、疑念を持たれかねませんので、これはいたしません。

 一方で、この非常勤の技術参与の場合は任期が一年でございまして、一年ごとの更新になるわけですね。三年ぐらいいる人が多いようでありますが、そういう人について、一旦退職して入っていただくわけですが、この規制組織から離れたときに、その後の就職先まで全部、一年の方について縛るということが果たして適正かどうか、ここは若干考えるところがあるかなというふうに思っております。

中山委員長 簡潔にお願いします。

吉井委員 時間が来たという札が回ってきましたので、一言だけ言っておきます。

 やはり一年の非常勤とか任期つきのやり方である限り、技術の蓄積とか本当にすぐれた人材を集めるということは大変難しいわけで、ですから、総定員法ということを言い出してから、どうも本来的に必要な人材がなかなか集められないという形になっているから、そこをきちっと正していくこととか、例えば、動燃は切り離してでも、もとの原子力研究所のような、本当に研究や技術の専門家集団が附属研究機関として配置されるような組織を考えない限り、いざというときには間に合う組織にならない。そこを根本的に考えなきゃいかぬということを申し上げて、時間となりましたので、質問を終わります。

中山委員長 次に、斎藤やすのり君。

斎藤(や)委員 新党きづなの斎藤やすのりと申します。

 福島原発の事故はまだまだ続いております。私も、週末帰りますと、せっかくシイタケをつくったのにもうこれは出荷できないという農家の方々とか、それから、引き続き子供の放射能のリスクについて心配しているお母さん方の意見を聞くことがいまだに多いです。

 ですから、津波それから地震については復旧復興が進んでおりますけれども、この原発の災害についてはまだまだ続いているという認識をぜひ皆様にお持ちになっていただきたいというふうに思います。何といっても、先祖が大事にしていた大地、そして川、海、空気、これがいまだに広範囲で汚染され続けているということが、今も継続中であるということを何よりも示しているというふうに思っております。その原因となった福島原発事故の調査結果がいまだに出ていません。

 きのう、実は私、公明党の加藤参議院議員、社民党の阿部知子衆議院議員、共産党の笠井衆議院議員とともに官邸に行きました。そして、齋藤副官房長官と面会させていただきまして、大飯原発の再稼働は拙速だと思います、見直してくださいということを改めて言わせていただきました。

 細野大臣にお聞きします。

 この原発再稼働、この大飯の再稼働については二つのなぜがあります。きょうのここまで、なぜ大飯原発を再稼働させなければいけないのか、明確な理由というのが国民に語られていません。きょう夕方、野田総理が会見をして皆様に言われるのかもしれませんが、これが明確ではないような気がします。そして、もう一つ。なぜ大飯原発の再稼働を急ぐのか、その理由。この二つの理由を教えてください。

    〔中山委員長退席、生方委員長着席〕

細野国務大臣 まず、東京電力の福島原発の事故の影響、これがなくなるどころか、依然として、むしろ非常に広範囲に広がっている、そういう御認識は私も共有をいたします。したがいまして、その原因究明というのは、これは重ねてやっていかなければなりません。

 ただ、原因究明ということで申し上げますと、既に六月の時点でIAEAには初めの報告書を出しています。九月に二回目の報告書を出しております。そういった政府としてのさまざまな検証の中で、津波の影響による炉心損傷、そしてその原因が電源と水源にあった、このことは我々としては確認をして、それに基づいた対策をやっているということであります。

 なぜ再稼働が必要なのか、なぜ急ぐのかという御質問に関しては、私は安全についての説明をする立場でございますので、東京電力の福島原発を襲ったものと同じ津波が襲ったとしても、炉心を損傷することはないということが確認できたので、その安全性については繰り返し繰り返し説明をさせていただいているということであります。

 必要性や緊急性についてということに関して御質問であれば、ちょっと私から言うのもなんでございますが、枝野大臣もおられますので、御質問をいただくのも一つの考え方かなというふうに思います。

斎藤(や)委員 それでは、済みません、枝野大臣、お願いします。

枝野国務大臣 まず、大飯原発の再稼働は急いでおりません。

 昨年の七月、当時の三大臣で、原子力発電所の再稼働について、原子力事業者からすれば何の法的根拠もなく、行政指導によってストレステストという、法律に基づかない安全チェックのための手段を課した上で、そうしたものをクリアしなければ再稼働しないということを、福島原発事故を踏まえて行政指導によって課しました。

 そこから一年近くかかって、大飯についてはたしか昨年の秋だったと思いますが、ストレステストの報告書が上がり、それについて、しっかりと保安院や安全委員会がチェックをし、同時に、この間積み重ねられてきた新たな知見も踏まえた中で、最終的にこのストレステストのプロセスを経たものについての安全性を確認し、それを踏まえて周辺住民の皆さんに向けて理解を求めるプロセスをとってきているということでございまして、昨年の七月から時間をかけてやってきているものであります。決して急いではおりません。

斎藤(や)委員 急いでいないということであれば、やはり事故調査の結果を見て、そして再稼働の判断というものを決めていただきたいなと思います。

 それから、今お話はありませんでしたけれども、夏の供給不足、そういうリスクがあるということを考えておられるのならば、きょうの午前中、参考人の質疑で私も質問しましたけれども、ピーク時の節電一五%目標を設定し、他社融通すればクリアできる問題であるといった発言をされた方もいました。さらには、ことしの予想最大需要ですけれども、これは一昨年の百年に一度の暑さをベースにつくられているということがございます。

 私は気象予報士ですから、毎週のように長期予報のデータを見ています。ことしは、平年並みの暑さというのがコンピューターでは出ておりますけれども、冷夏になる可能性がここのところ十分出てきている。この点からいえば、ことしの夏を乗り切れなくなるから再稼働というのは私は的確ではないのではと思いますので、もっとゆっくりこれは精査していただきたいというふうに思います。

枝野国務大臣 ですから、ことしの夏に間に合わせようと思ってこのプロセスを踏んできたことは全くありません。

 たまたまこういう時期になって、そして、もちろん、必要性がないのに安全性が確認されたからといって再稼働する必要はないわけですから、必要性についても十分精査をした上で説明もして、必要性について、一番直近では電力需給の観点からすれば必要性があるということを特に強調して受けとめられているかというふうに思いますが、別にそれに合わせてこのタイミングで物事が進んできたわけではない、たまたま一年かかってきたプロセスがこのタイミングになっているということであります。

 それから、もう一つ申し上げると、確かに、この夏、一昨年並みの猛暑になるかどうかはわかりません。わかりませんが、なる可能性を否定できません。原子力発電所の事故のリスクを何%と見るのかというのはいろいろな見方があるかもしれませんが、例えば百年に一度ということであれば、百分の一ぐらいの、一%ぐらいの可能性があるとしたときに、もしそのときに突然急な停電というようなことになれば、これはやはり人の命にもかかわることでございますので、もちろん、原子力発電所の安全性についても楽観論は許されないと思いますが、電力不足についてもこれも楽観論は許されない。結果的に冷夏であったら電力が余ってよかったねということだというふうに私は思っています。

斎藤(や)委員 安全性のことをおっしゃられておりましたけれども、私が今回問題だと感じていますのは、先ほども言っております政府の事故調の結果が出ていないということもあるんですが、一方で、事故を起こした責任のある保安院がつくった三十の安全基準から十三項目だけを取り出して、わずか二日でつくった暫定基準で動かそうとしているというところでございます。

 私は、新たな規制機関の下で新たなルールに基づいて再稼働を決めるべきだと考えますけれども、衆法提出者の方はどう思われますでしょうか。

柴山議員 お答え申し上げます。

 安全基準は、科学的知見に基づいて、国民に開かれた形で、しかも、しっかりとプロセスを踏んで行われなければいけないというように思っております。

 野田内閣の再稼働の進め方は、今委員も御指摘のとおり、余りにも稚拙であるというように考えております。まず安全というふうに言っておきながら、先ほど報告書の提出についても言及がありましたけれども、極めて不十分な基準により、また、たび重なる方針変更や専門的知識に欠ける閣僚が再稼働判断を行ったということもあります。したがって、政府の原子力政策に対する国民の信頼を私はいまだに全く回復できていないというふうに思っております。

 したがって、今般の原子力事故を受けて、原子力利用における安全の確保に関し、国民の不安を払拭してその信頼に応えるものとすることが必要であることを鑑みると、再稼働のためには、御指摘のとおり、適切なプロセスのもとで科学的知見に適合した新たな基準が定められることが望ましいというように考えております。

 以上です。

斎藤(や)委員 私も賛成です。ぜひ、その思いで、今回の修正のときに意見を述べていただければというふうに思います。よろしくお願いします。

 そして、班目委員長に質問です。

 福島の事故の発生前と後では、安全確保のあり方というのは全く別物でなくてはいけないと思っております。ストレステストの一次評価というのは、核燃料の融解を防ぐ対策のみです。二次評価は、核燃料が融解する深刻な事故の対策までを対象としております。今、原発の安全性の判断というのは一次で足りるんでしょうか。二次テストをクリアしなければ、私は安全とは言えないんじゃないかと思うんですけれども、班目さん、どうでしょうか。

班目参考人 御質問の総合的安全評価、いわゆるストレステストでございますけれども、これにつきましては、昨年の七月に原子力安全委員会の方から経産大臣宛てに要請したものでございます。

 そのときに、やり方として、一次と二次に分けてやるという提案が保安院の方からありまして、これについてはもちろん安全委員会としても了承したわけでございますが、原子力安全委員会としては、あくまでも一次評価と二次評価はセットであると考えております。したがいまして、ぜひともこれは二次評価までやっていただきたいというのが原子力安全委員会の立場でございます。

斎藤(や)委員 という答弁がありました。安全委員会に再稼働の可否を判断する権限というものはないと思うんですけれども、行政に対して勧告権を有している安全委員会のトップが、安全を確保するには、深刻な事故対策、広範囲の事故対策をしなければ安全とは言えないよと言っているわけでございますので、私は、今回の大飯原発の再稼働については、政治的な正当性も、そして安全性もないのではないか、やはり動かしてはいけないものなのではないかなというふうに考えております。

 四十年ルールのことをお伺いします。

 今回の政府案で、運転期間は原則四十年と明記されていて、例外として、二十年以内で一度に限り運転の延長を許可することができると明記されております。このことについて、細野大臣に先日質問をいたしました。

 ところが、この法案もまだ全く議論をされているさなかで、こんな報道がありました。美浜原発二号機について、経産省原子力安全・保安院は六日、今後十年間運転を延長しても安全性は確保できるとした関電の老朽化対策をおおむね妥当とする審査書案をまとめたという報道がありました。

 私は、これを見て、おいおい、ちょっと待てよ、法案の審議もまだやっていますよと。細野大臣は、たしか私に、例外中の例外として安全基準をクリアしたもののみ認めますと言いました。それにもかかわらず、こんな報道が出ております。

 大臣、この報道は真実でしょうか。

枝野国務大臣 間違っています。

 今、原子力安全・保安院がやっておりますのは、保安についての確認をいたしております。これは、いずれにしても、稼働しようが稼働しなかろうが、原子力発電所についてはしっかりと保安、安全を確保しなければなりません。三十年以降、四十年、五十年という十年節目、きちっとその老朽化のことも踏まえた保安についてのチェックを受けることになっている。この手続に基づいて、稼働するとか、いつ廃炉にするとか、そういうことにかかわらず、いずれにしろ現時点で間もなく四十年になるわけですから、四十年のところで、この十年間の老朽化を踏まえてどういう安全確保をするかということについてしっかりと審査をしなければならない、その審査を行うものでございます。

 そして、今回御審議いただいている法案の中にも、これは細野大臣から言った方が筋かもしれませんが、四十年を法の施行の時点で超えている原子力発電所については、三年以内にちゃんともう一回チェックをして、そこでだめになるかもしれないという仕組みを組んでおります。

 なおかつ、今回取り上げられている原子力発電所は、まだストレステストの一次評価も出ていない状況でございますから、国会で早期に法案を通していただいて施行していただければ、施行の時点で恐らく稼働していない原子力発電所でしょう、そこから先は規制機関の判断でありますが、普通に考えれば、その時点で稼働していないもので、三年間の間に本当に延長していいのかどうかをもう一回チェックするということですから、稼働させた上で三年間以内のチェックをするということは普通は考えられないというふうに思っております。

斎藤(や)委員 言うまでもなく、原発というのは、古くなればなるほど事故のリスクが高くなります。四十年ルールというのも、そもそも本当に大丈夫かというふうに私は疑わざるを得ません。

 美浜二号機というのは、実は、運転年数分の事故回数、これを事故率といいますけれども、全国五十四の原発のうち十番目に高い。金属の場合、劣化が進むと、ある温度より低くなりますと、まるで陶磁器がぱかっと割れるように、小さな力であっさりと割れてしまいます。この温度を脆性遷移温度というそうでございますけれども、原発の脆性遷移温度を見ますと、やはり新しいものは低い温度でございまして、運転から七年の女川三号機はマイナス四十五度。今回ニュースに出た美浜二号機は七十四度です。熱湯をかけないと冷えないというような状況で、これは全国の原発の中で二番目に高い温度です。ですから、美浜二号機というのは全国の原発の中でも大規模事故になるリスクが非常に高い原発だと言えると思います。

 こういったぐあいに、古い原発ほど高い事故リスクがあるということなんですけれども、経産省に質問です。世界の原発の平均稼働年数というのはどれぐらいなんでしょうか。

糟谷政府参考人 IAEAの統計によりますと、現在運転中の世界の原子力発電所、合計四百三十五基ございます。このうち、四十年超が三十二基、全体の七%でございます。三十年以上四十年未満が百四十六基、三四%。二十年以上三十年未満が百七十五基、四〇%。十年以上二十年未満が五十基、一二%。十年未満が三十二基、七%でございます。

斎藤(や)委員 済みません、平均稼働年数というのを率直に聞きたいと言ったんですが、平均稼働年数はどれぐらいなんでしょうか。何かちょっとごまかされた気分なんですが。

糟谷政府参考人 単純平均をいたしますと、二十七年ということになります。

斎藤(や)委員 二十七年ということで、五十年以上稼働した原発もないというふうに聞いております。米国では、コストに合わなかった四十年以上の原発というのは大半が運転をとめているはずです。

 ですから、私は、この政府案の四十年廃炉というのはぜひ削除してほしいと思います。原発のあり方、それから存在というのは事故前と事故後で大きく変わっているということをやはり強く認識してほしいんです。先日、衆法提案者の吉野先生が、この基準については新たな規制機関でつくるべきだというふうに発言されておりましたけれども、私もこの考えに賛成でございます。ぜひ、四十年廃炉ルールは修正案から外していただければというふうに思います。

 最後、ちょっと時間がないんですが、細野大臣に質問です。

 福島原発四号機プールのことを質問します。

 四号機プールが危ないという報道がされている中で、一昨日、プールを冷やす冷却システムが故障してプールの温度が上がってしまいました。

 細野大臣、大丈夫でしょうか。

細野国務大臣 まず四十年なんですけれども、斎藤委員にぜひここは認識していただきたいんですけれども、今、運転制限制度はないんです。無制限なんですね。ですから、この条文を抜くということは再び無制限になるということです。それでいいとお考えなんでしょうか。四十年より前にバックフィットで動かなくなる可能性がありますが、大原則はどこかで確立をしないと、本当に無制限になりますよ。そこはもう一度お考えをいただきたいと思います。

 その上で、四号機プールでありますけれども、確かに、ポンプが故障いたしまして、一旦水が入らなくなりました。ただ、代替のポンプがございましたので、それが稼働いたしまして、冷却をすることができたということです。

 今の設備は完璧ではありません。完璧ではないからこそ、代替性をしっかりと確保して、多重な対策をすることで四号機のプールをしっかりと健全な状態で維持をしていきたいと考えております。

斎藤(や)委員 なぜ今のことを聞いたのかといいますと、先日、私は、細野大臣に、四号機の燃料プールは大丈夫ですかという質問をして、プールの耐震は震度六強まで耐えられます、冷却水は入り続ける、大丈夫だということを述べられました。この事故は、実はその日の夜です。メーンの冷却システム、それからバックアップの冷却システムまで壊れてしまったわけでございます。

 これまで政府は、危険なものを危険としてではなく、危険なものを安全と言って世論を誘導して、これで国民は完全に疑いの目で皆さんのことを見ているわけです。信用が全くなくなってしまった。次にこの四号プールで最悪のことがあれば、もう東北はおろか、首都圏も住めなくなってしまいます。

 本当に、安全だ安全だと言って、すぐに事故が起こるということの繰り返しです。情報公開と、それから考えられるリスクを事前にきちんと国民に伝える努力をぜひしていただきたいと思います。しっかりお願いいたします。

 私の質問は以上でございます。

生方委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 先日の環境委員会の質疑において、暫定的な安全基準に基づく大飯原発再稼働の政治判断というのが何ら法的根拠に基づかないものであるということがはっきりしました。そして、暫定的な安全基準についても、本来、原子炉規制のうち、安全確保に関することについて、原子力安全委員会が企画し、審議し、及び決定すると原子力委員会及び原子力安全委員会設置法十三条に書かれているにもかかわらず、原子力安全委員会は基準作成に何ら直接的役割を果たしていない。全く法的正当性のない形で暫定的な安全基準はつくられ、それに基づく大飯原発再稼働が行われようとしているわけであります。

 法的正当性のない形で、アドホックに安全基準をつくり、政府首脳が、私が決めたからいいんだ、こういう形で再稼働を進めていく。これは、原子力安全に職位の障害なし、こういう基本原則への重大なチャレンジだと私は思います。野田総理は、私の責任でということを繰り返し言っておられるわけですけれども、専門家でない政治家が責任を持つ、こういうことを言って、それが何の安全性の担保になるんでしょうか。

 まず、枝野大臣にお伺いします。

枝野国務大臣 法的な裏づけのないという御指摘ですが、そういたしますと、原発は再稼働してしまうんです。今、法律に基づかずに再稼働をとめています。行政指導です。法律では今とめられないんです。

 今、各定期検査が終わった原子力発電所事業者から審査書が提出されてくれば、法律上はそれを拒否できません。拒否できる根拠を与えられていません。したがって、今、行政指導に基づいて出すなと各電力事業者に言って、なおかつ、法律に基づかないストレステストというコストのかかることをやらせています。

 その上で、確かに、法律に基づいた基準が明確にあればいいんですが、まさにそれを先取りする形での暫定基準に基づいて、しかし、内容的には、しっかりとこの一年近くかけて積み重ねられてきた基準に基づいて判断をしている。この判断については、政治家が判断をしてはおりません。

 政治家が判断をしたのは、その基準といいますか、その基準への適合性をチェックしてきたプロセスと、それからそれについての説明が専門家ではない政治家にも理解できるものかどうかということを確認したものであって、この間は、例えば三十項目を初めとして、昨年の事故以来積み重ねられてきた、それについては保安院が安全委員会に諮問をした上で積み重ねられてきた安全についての基準を踏まえて、それに適合しているということを専門家が判断したものを整理、わかりにくいところを整理させたものが四大臣会合で行ったものであって、安全そのものについて、専門家ではありませんから、私どもは判断をしておりません。

 専門家がこの間積み重ねてきたものについて、わかりにくいからわかりやすく整理しろということはやりましたが、それだけです。

柿澤委員 あえて前段のお話に申し上げるとすれば、そもそも、保安院の安全点検、こうしたものに対して疑問の声が大きい、こうしたことが三大臣文書によるストレステストの導入の前提として書かれていたわけです。それがめぐりめぐって、最終的に保安院が安全基準をつくる形でこの再稼働が進められている、このこと自体に私は非常に矛盾があるというふうに思っています。

 もう一点。

 ストレステストは、ある種、行政指導によって稼働を停止させている、こういうお話でありましたけれども、原子炉等規制法を読むと、主務大臣の権限として、この原子炉の運転を停止させる、こういう条文があるではありませんか。こうした法律の条文を適用しないで、なぜ行政指導でやったのか、こうした点についても、いささかの疑問を覚えるところがあるわけであります。

枝野国務大臣 通告がございませんでしたから正確ではありませんが、経済産業大臣が原子力発電所の稼働をとめる権限の条文はありますが、これについては、まさに安全などについての具体的な危険があるという場合しか使えません。

 ですから、昨年の浜岡の原発について、これをとめるのに法律上の根拠はないか、その規定も使えないかということがありましたが、具体的な危険が生じているわけではない中での停止を求めるということなので、行政指導しかできなかったということです。ですから、今回も、網羅的に、原子力発電所の再稼働をとめるのにはこの規定は使えないと思います。

柿澤委員 いずれにしても、今回の、とめたこともそうでしょうが、しかし、再稼働を認めるというプロセスの中で、法的根拠を持って何かを判断している、こういうものはないわけです。

 さらに加えて言えば、民主党の百十七議員ですか、五日、再稼働に慎重な判断を求める政府への申し入れをされておられますね。先日、環境委員会の質疑で、衆法提出者の自民党の柴山議員、再稼働のためには新たな原子力規制組織のもとで新たな基準が定められるのが望ましい、現時点での再稼働に反対の意思が表明をされています。続く質疑でも、公明党の江田議員からも同趣旨の発言がありました。

 民主党も百人以上が反対、自民党も反対、公明党も反対、共産党も社民党もみんなの党も大地も反対。この状況の中で再稼働しようというのは、私はこれは民意にかなっているんだろうかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

枝野国務大臣 繰り返しになりますが、今稼働をとめているのは、行政指導でないととめられないんです。ですから、行政指導を解除することについて、行政的に基準をつくるしかない。法律に基づいてとめているんだったら法律に基づく解除をつくらなければなりませんし、つくるのは当然ですけれども、とめていることについてが行政指導なんですから、それについての解除が法律の根拠がないということは、整合性はないというふうに思います。

 それから、国会を含めて、国民の皆さんの中にさまざまな意見があり、再稼働について慎重な意見があることは十分に承知をいたしております。それぞれ、どう慎重であるべきかということについて、いろいろな御意見、お立場があるんだろうというふうに思いますが、あえて申し上げれば、私もこの間、一貫して慎重な立場で対応してきております。

柿澤委員 現実にこの局面において、きょう総理大臣が記者会見を行おうという局面において、枝野さんが、四大臣の会合の構成メンバーの一人として、現時点において慎重な立場をこれまでもとってきたところだ、こう答弁されるのは正直いかがなものかというふうに思います。

 民主党の百人以上の議員も反対、自民党も反対、公明党も反対。もう繰り返しませんけれども、国会内で大多数と言ってもいいでしょう。そうした方々が反対ないしは慎重な対応を求めている中で、しかしなおこの再稼働を枝野大臣もコミットして進めていく、こうしたことについてどう考えているのか、もう一度御答弁いただきたいと思います。

枝野国務大臣 反対と慎重は違うと思います。私は一貫して慎重な立場でこの問題に対応してきておりますし、現時点でも慎重な立場から対応しております。

柿澤委員 これを聞いた方がどういうふうにお感じになられるかということだろうと思います。

 さて、原子力政策の見直しが進められていますが、エネルギー・環境会議に原子力政策大綱を提出する予定の原子力委員会の原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会、ひいては新大綱策定会議もそのようですけれども、その裏側で、推進側だけを集めた秘密会議を開いていた、そこで決定前の報告書の原案が示されて、さらには、再処理に有利になるように、事業者側の意向に沿って結論部分の総合評価が書きかえられていた、このように報じられています。

 ゼロベースの見直しを言いながら、インナーサークルだけで秘密会議を開いて、近藤原子力委員長以下、原子力委員会メンバーもコミットしていたとなると、これは報告書の中立性及び議論のプロセスの正当性が疑われる事態だというふうに思います。こんなことが報じられた上で出された報告書なんて、誰も信じないというふうに思うんです。

 核燃サイクルに関する原子力委員会小委員会の評価報告は、これはもう白紙に戻すべきではないかと思います。そして、近藤委員長は、この秘密会議の設置を鈴木委員長代理に提案していたというんですから、もはやこの議論に参加をすることはできないはずであります。責任をとっておやめになるのが当然だというふうに考えますが、原子力委員長、御答弁をお願いします。

近藤参考人 お答えいたします。

 原子力委員会の会の運営に係る透明性、公正性の重要性にかかわる小生の認識と監督の至らなさにより、原子力行政に深刻な影響をもたらしていることを重く受けとめ、深く反省しております。

 この小委員会ですが、これは再処理事業という我が国に一社しかない企業の取り組みの経済性の評価等を行う関係で、会議資料の準備には当事者から情報提供をいただき、関連組織の専門家にも御参集いただき、資料の評価を行い、会議資料に反映することが必要ですから、こうした作業を行っていることを、私としては、本来は小委員会に報告、了承を得るべきだった、会議の資料の準備プロセスについても透明性を確保するべきであったと考えて、反省しているところでございます。

 そして、こうしたことが起こりましたので、会議資料準備プロセスについて検証を受けるべきと判断いたしまして、細野大臣にお願いしましたところ、大臣の御指示により、後藤副大臣のもとに検証チームが設けられることになったと伺っておりますので、この後はこの作業に全面的に協力してまいる所存でございます。

 御質問の報告ですが、この小委員会の座長をお願いしました鈴木原子力委員長代理は、終始責任を持って会議資料を取りまとめられ、透明性の高い、公正かつ丁寧な審議を行ってこれを取りまとめられました。全ての会合は公開で行われ、その様子は来場したマスコミ関係者によりましてインターネットを通じて報じられもいたしました。

 そして、今週五日に開会の原子力委員会定例会におきまして、座長から、小委員会の全員から、総合評価は全ての委員の意見を反映した妥当な内容であるとの確認を得たことも付言してこれを報告いただきましたので、委員会としては、この報告は適切に作成されたものとして受領いたしました。私としましては、この報告を白紙に戻す必要はないものと考えております。

 しかし、改めて透明性の確保、たとえ資料の準備段階についても透明性の確保は重要ということ、そしてその不手際の責任を痛感していることを申し上げ、お答えといたします。

柿澤委員 近藤委員長、監督の至らなさを痛感している、監督の至らなさとおっしゃいますけれども、この秘密会議に近藤委員長は御出席になられているではありませんか。監督の至らなさを痛感している。御自分に対する監督の至らなさを、どういうふうに責任をとられるんですか。御答弁ください。

近藤参考人 ただいま申し上げましたように、こうした関係者を集めて情報をとり、技術情報を集め、資料を作成するという作業は必要な作業であります。(柿澤委員「何で秘密でやったんですか」と呼ぶ)ですから、それを私が指示したということでございます。

 ただ、問題は、そこで、御指摘のように、作業のプロセスとして、会議の資料の中に、報告書の案というか報告書のドラフト、素案も含めてばさっと配って作業したということであったところ、そこのところについては行き過ぎではないかということで、そのことについて、私が作業における行動規範をきちんとするということができなかったことについて、監督責任があると申し上げているところでございます。

柿澤委員 先ほど申し上げました、こういうプロセスでつくられた報告書、大綱、こういうものに関して、国民の誰が信じることができるのか、こういう問題だと思うんです。

 細野大臣、近藤委員長のことについて、私は、この際、おやめになるのが当然だと思いますけれども、細野大臣はどうお考えか、御答弁ください。

細野国務大臣 まず、制度として申し上げると、八条委員会の委員というのは、委員長を含めて国会での同意がなされておりますので、担当大臣を含め総理といえども罷免をする権限はございません。ですから、それについて意見を言う立場にはないし、そういう制度になっているということであります。

 委員長の発言にもありましたが、核燃サイクルというのは民間がやっていますから、そこから情報を得ない限り、コストもわからないし、廃棄物の量もわからないわけですね。ですから、そういった意味で、民間の皆さんから話を聞く機会は必ずつくらなければならないんです。ただ、一方で、そこで小委員会や大綱策定会議で出す資料をわざわざ出して、いかにも諮ったかのようなとられ方をしたことは極めて不適切ですから、その部分を検証するということであります。

 もう一つ申し上げますと、核燃サイクルの議論について、非常に批判的な御意見の方が小委員会のメンバーに入っています。そういった方々も含めて、中身についてはみんなの意見を反映したものだというふうに言っておられるわけですから、その中身そのものについては、そういう幅広い意見を踏まえて選択肢を三つ出したものというふうに私は考えております。

柿澤委員 プロセスに正当性がなければ国民は誰も信頼できない、このことはきょうの質疑を通した一貫したテーマだというふうにも思います。

 終わります。

生方委員長 次に、阿部知子君。

阿部議員 社会民主党の阿部知子です。

 いただきましたお時間は十五分でありますので、御答弁も端的にお願い申し上げます。

 原子力の規制にかかわります委員会は、自公民の三党の皆さんで大分修正協議が進まれて、恐らく三条委員会という形で、独立性が高いものとして発足するやに聞いております。そして、その委員長並びに委員の人事は、今御答弁にもあった同意人事ということになろうかと思いますが、閣法においても衆法においても、この人選にかかわります欠格事由というか、こういう方は委員長や委員にはなってはいけないというものの明示がございます。私は、これは今までの同意人事の中では一定の進歩と思います。と同時に、今、柿澤委員とのやりとりを聞いていて、幾つか明らかにしなければならないことがあるなと思いました。

 まず、閣法の方の細野大臣に伺いますが、今回、三条委員会になったとしても、閣法に挙げられたこの欠格事由についての取り扱いは同じなのであるかどうか。

 そして、実は、私がこの欠格事由を見ますと、もしかして一点抜けているのは、ここには原子力関係事業者を広く対象にして欠格事由に挙げてございますが、例えばある原子力事業者が電気事業連合会などに行かれた後、大学の教授になって、その後またここの委員になられるような、すなわち、その方の前歴を見れば、電力会社や原子炉メーカーに長く所属され、しかしごく短時間であれ大学の教授などの職につかれた場合、これは欠格事由になるのかどうかであります。

 同じ質問を塩崎議員にもお願いします。

細野国務大臣 阿部委員からは、こうした委員の欠格事由のあり方であるとか条件であるとか、そういったことについては再三、非常に建設的に御提案をいただいておりまして、ありがとうございます。

 一つ目の御質問の、政府が出しております原子力安全調査委員会のものと、今、与野党で修正を考えているものと、原子力規制委員会が同じかというのは、これはちょっと国会の中での話ですので、できれば衆法提出者の皆さんに聞いていただければと思います。

 御質問の要件でございますけれども、法律に書かれているとおりのこういう書き方にさせていただいた上で、それに加えまして、委員の任命について御審議いただく際に、寄附金の受領状況を含め、原子力事業者との関係について委員の候補の方に自己申告をしていただく形で、その情報を積極的に公開することが重要であるというふうに思っております。

 したがって、これまでの考え方というのは、国会の同意人事の場合はまさに国会の判断になりますから、それをとにかく尊重するということで余り要件を課していなかったわけです。

 ただ、今回は考え方を改めて、欠格事由を法律で定めた上で、なおかつ、情報公開も徹底をして皆様に御判断いただく、そういう環境を整えるというのがこの政府案の趣旨でございます。

塩崎議員 阿部先生にお答え申し上げますが、法律に書いてあるとおり、欠格事由を、今回、例えば原子力施設の設置者とか製錬事業者あるいは原子炉等規制法による規制対象者、これらは委員長や委員になることはできないというふうに明示をさせていただいたわけでありますが、まさに利益相反を排除するということです。

 先ほど来、ずっと議論も聞いていて、また今回、我々がこういう法案を出すに至る過程でわかったことは、やはり一番大事なのは国民からの信頼というのがこの規制組織には大事だ。これは、例えばメザーブさんにしてもウェートマンさんにしても、繰り返し信頼と信認、これが一番大事だということでありました。

 我々、国会事故調をつくるときも十人のメンバーを選びましたけれども、このときにも同じような問題を考えたわけでありまして、今お話がありましたような電力会社からの献金等々についても我々調べましたけれども、どこまで詳しくやるかはやはりスタートしてこの事務局が細かく決めていけばいいのかなと思いますけれども、いずれにしても、長年にわたって献金を受けているとかそういうことはあり得ない話であります。

 それから、電力会社から大学へ行って、今度この委員になるということをどうするかということですけれども、それはやはり、事故調のときも実は、例えば十年よりもっと前だったらどうなるかというようなこともあって、これは何人かと相談をして大体の目安を持って決めてまいりました。

 そんなことで、具体的なところはあれですけれども、国会同意人事ということでありますから、これはお互いに、今回、我々の案でいけば、必ず皆さんと一緒に考えていかなきゃいけない、当然のことながら、そういったことについても一緒に考えていくんじゃないかなというふうに思います。

阿部議員 金銭の授受は、例えばミカン一個ももらわないと私どもは医者で言っていますけれども、本当に微妙なものですから、やはりこれは全部をクリアにして、そしてその判断も国民とともに考えていくということが重要だと思います。また、その方のキャリアについても全てオープンにして同意人事にかけていくということだと思います。

 あわせて、もしもなられた方が、例えば委員長として、先ほど来近藤委員長とのやりとりを聞いておりましたが、そのなさったことがもし大きく国民の信頼を損ねるような事態が生じた場合です、これは仮定です、その場合に、それは罷免の理由になりますか。これは、政府案にも、あるいは衆法にも罷免というところがあって、欠格事由に当たる人は罷免になると。例えば寄附が発覚したとかいうことだと思いますが、でも、寄附だけでなく、原子力行政というのは、例えば原子力大綱をつくられるときも、近藤委員長が十回以上にわたって秘密会議をなさったのではないかと言われております。これから調査でしょう。

 しかし、私は、国民との信頼を損ねるということも大きな欠格事由に当たると思うのです。この点について、罷免の条項が両方ありますので、細野さんと塩崎さん、おのおのお願いします。

細野国務大臣 八条で掲げております罷免の要件というのは、現在の原子力委員会、そして原子力安全委員会の委員の罷免の条件と基本的には同じでございます。

 つまり、国会同意人事というのは極めて重いですから、心身のさまざまな故障であるとか、または職務上の義務違反以外のことで政府の判断で罷免をするということにはそぐわないのが国会同意人事、そういうことを前提としてつくられた条文でございます。

塩崎議員 我々の法律、九条の二項に、委員たるに適しない行為があると認めるときにはというふうになっておりますので、そういう行為があった場合はそういうふうになるということでありますけれども、それぞれケース・バイ・ケースだと思います。

阿部議員 もう既に、抽象的なことではなくて、例えばこの間、何回かの秘密会議があったり、あるいは多額の献金があったり、そういうことを一つ一つ国民は見ているわけです。それが原子力行政の不信の塊になっています。

 塩崎さんの今の御答弁の方が幅がありますので、行為とは何か、そこまで含めて、これはよりオープンに検証していく、決めていく必要が、その都度ですけれども、例えばガイドライン的なものをつくるのか、あるいは事態に即して検証委員会を設けながら、しかし、やはり余りにこれは問題だという場合には罷免ということもきちんと携えないと、私は、国民から見た透明性は担保されないと思います。指摘をしておきますから、よろしく御検討ください。

 それから、今度は、各審議会や有識者の御意見を伺うときにも、ここにも利益相反が生じておる。この点については、細野大臣も随分これまでも前向きに御答弁いただきましたが、これまでの仕組みの中では、その方がいろいろ寄附をもらっていても、それを申告はするけれども公開は国民にはしないというシステムでした。

 今度新たな規制庁ができた場合に、やはり審議会とかもつくられますでしょう。そこの委員になられた方は、いただかれた寄附をきちんと公開するということ。そして、あわせて、例えば厚生労働省で、特に薬剤の認可などとかかわっておりますので、ある関係する寄附を受けた方は審査に加わらないとか、それなりのガイドラインをつくること。公表とガイドライン、もう一つあわせて、アメリカでは諮問委員会法というのがあって、これは、そのときの議事録を公開して、そしてプラス寄附も公開するという仕組みになっております。

 細野大臣にまず聞いて、そして、特にアメリカの状況、塩崎さんはNRCも見てこられましたし、この諮問委員会のあり方、公開性と、そして国民から見て疑念を抱かせないような議事録の公表ということについての御意見を伺います。

細野国務大臣 今御指摘のものの典型的なものが、政府案では審査専門委員ということになります。これは非常勤ですが、さまざまな判断に実質的にかかわることになりますので、そこにおいてしっかりとしたルールを厳格につくった上で運用するということが重要だと考えております。

 先ほども答弁で申し上げたんですが、法案の審議が終わりましてから、できるだけ早く、できれば発足する前に、どういう基準で選ぶかということをつくった方がいいのではないかと考えております。

 そして、その大前提は、まずは公開、つまり、原子力事業者との関係については情報公開を徹底すること、これは非常に重要だというふうに思います。そしてもう一つは、これはどういう役割を担うかによるわけですけれども、例えば、個別の許認可の審査に参加するような方の場合は、それは個別の企業からお金を何らかの形でもらっているということになると適正な判断ができない可能性がありますから、そもそも、そういう方についてはこういう審査委員にはなっていただかない。ですから、どういう役割を担うかによって、そもそもそういう前提をつけるという考え方もあり得るかというふうに思います。

 とにかく、国民の皆さんから疑念を持たれないスタートを切らなければなりませんので、できれば発足する前にルール化してまいりたいと考えております。

塩崎議員 今回、独立性の高い組織をつくろうということでありましたけれども、この過程で学んだことは、独立性というのは孤立を意味するわけではないということと、独立性を与えるためには透明性を与えないといけない、それでないと独立するわけにはいかないということになっておりまして、恐らく、NRCとかONRとかそういうところは皆、独立をしているけれども透明にしているということだろうと思います。

 例えば、アメリカのNRCは、五人の委員のうち三人が会うと、これはもう全て公開をしないといけない、何を議論するか。委員会は、オンサイトというか、その場でみんながこうやって見られるし、ネットでももちろん見られるということになっています。

 それに対して、この間の大飯のときの暫定基準は、たった二日でつくったというのでぶったまげましたけれども、それよりも、全く公開しないでつくったというのも、これはまたびっくりすることで、保安院でこちょこちょっとつくって、引き出しから出してきたみたいなことになっていますから、そういうことではいけないんだろうと思うのです。

 先ほど、いろいろな委員の方々についてもどうするかということですけれども、明文化はしていませんが、これも実は、国会事故調査委員会をつくったときに、委員については、かなりそういうことでやりましたけれども、スタッフについても、実はほぼ同じぐらいの感じで、それぞれ、電力会社からお金をもらっていないかとかそういうことを、正直言ってチェックさせていただきました。独立した我々の調査委員会ですけれども、それを信頼してもらうためには、そういうところもきっちりやっていくということだったと思います。

阿部議員 くれぐれも、今後、秘密会議と呼ばれるようなものが現実に行われないよう、また、国民から見て、その方のキャリアや、あるいはお金の授受が明確になるという仕組みをつくっていただきたい。

 申しわけありません。枝野大臣には次回どこかで伺わせていただきます。時間がなくなりました。

 ありがとうございます。

生方委員長 次に、石川知裕君。

石川議員 新党大地・真民主の石川知裕です。

 本来であれば、松木議員が質問に立つ予定だったんですが、松木議員の奥さんのお母さんが、大熊町在住だったんですが、去年の事故で今避難先に避難して、おとつい亡くなられたので、きょう葬儀ということで、私がかわりに質問に立つことになりましたので、よろしくお願い申し上げます。

 質問通告していた質問の前に、一点、衆法の提出者と細野大臣にそれぞれ質問したいと思います。

 きょうの夕方、総理が大飯原発の再稼働に関して記者会見をするというような情報が流れておりますし、先ほど山本議員もそのようなお話をしておられました。

 けさの福井新聞で、「大飯原発下の断層「再度評価を」」ということで、先ほどまで班目委員長がいらっしゃいましたが、「関西電力大飯原発で敷地内を走る軟弱な断層が動いて地表がずれる可能性があるとの専門家の分析について、原子力安全委員会の班目春樹委員長は七日の記者会見で「最新の知見が出たなら、原子力安全・保安院で評価をしっかりやり直すべきだ」」と見解を示しました。

 安全委の方で、「大飯三、四号機の再稼働の条件となる安全評価の一次評価を妥当とした三月二十三日付の文書で、常に最新の知見に基づき継続的に安全性の向上に努めるよう求めていた。保安院の森山善範原子力災害対策監は七日「破砕帯の活動性はないと判断しているが、情報収集を続けたい」とした。」こう記事が出ております。

 今回の原子力規制組織、新しいものをつくるということになっておりまして、衆法の場合、通常、野党案というのはそんなに重要視されないわけでありますけれども、今回の場合はねじれ国会下でありますから、大変野党案にも注目が集まっておりますし、聞いていないということですけれども、けさの報道だと、もう三党の合意になって、ほぼ決まりかけているというような報道が出ておりました。

 衆法提出者にお尋ねを申し上げますけれども、もし、新しい組織、そのまま今の自公案でいった場合に、原子力規制委員会の方で、例えば危険性があると専門家の判断で規制委員会が勧告をした場合に、再稼働は行わないんでしょうか。

塩崎議員 それは、委員会がだめだという場合は、当然、再稼働するしないの判断にまでいかないと思います。まず、その安全性をちゃんとただして、安全になるまで規制委員会の手を離れないということになるんじゃないかと思います。

石川議員 それでは、細野大臣にお尋ねをいたします。

 同様の状況で、政府案では、原子力安全調査委員会で、例えばこれは活断層で非常に問題があるので危険だという指摘がなされた場合、その場合にはどうされるのか、お尋ねをしたいと思います。

細野国務大臣 班目委員長の発言は、私は記者会見のメモを全て見たんですけれども、委員長の発言は二段階になっていまして、まず第一段階として、大飯三、四号機のことについては情報がないということを明確に言っているんですね。ですから、お答えになっていないんです。答えられない、そういう発言があって、それでもなお記者から同様の質問があったので、一般論として、班目委員長は、そういう知見が出てきたならば、しっかり確認すべきだということを言っているわけですね。これは、安全神話に陥らずに、常に新しいものが出てきた場合はそれをバックチェックしていくというこの考え方とも全く一致をしていますので、そういう考え方を班目委員長は説明されたというふうに、私は正確に読んだ上で承知をしています。

 ですので、新しい規制機関が誕生した後に、そこで新たな知見が出てきた場合に、そして、そこの判断がなされた場合には、当然それが適用されることになるわけであります。

 ですから、今、石川委員がおっしゃったようなことが確認をされるということになれば、それは規制機関として適正に判断するのは当然のことだというふうに思います。

石川議員 夕方には総理が記者会見をされるということで、来週には大きな判断が下される可能性が高いということになるのかもしれませんけれども、先ほど何人かの委員から、再稼働に慎重であるべきだという意見がなされました。多くの国民が大変不安を持っておりますので、確かに電力需給の問題等々ありますけれども、少なくても、きちんと精査をしてもう一度判断をしていただきたい、改めてお願いを申し上げるところでございます。

 次に、原発のテロ対策について御質問したいと思います。

 今回、三・一一の事件が起きまして、私も自分自身の言動というものを振り返ってみました。国会図書館で、前回の総選挙、各議員がこの原発の問題に関してどういう質問項目でどうお答えをしているのかというのを少し調べてみました。

 私自身は、北海道新聞の公示になってからの質問項目を見てみたんですけれども、公示になってからの質問項目に原子力行政に対しての質問というのはありませんでした。原発を設置している、北海道も設置はしているんですが、私の選挙区からはちょっと離れておりますので、例えば青森ですとか福島ですとか、そういった地域の議員には地元の新聞から、地元で設置してある原子力施設に関しての、または今後どうしていくかという質問がなされておりました。

 私も、当時は原子力の怖さというのをよく知りませんでしたので、当然、過渡的なエネルギーとして必要であるというふうに選挙戦では述べておりました。

 しかしながら、今回、通常ではこうした事故、地震というのはあり得ないと思っておりましたけれども、あり得ないことが実際起こって、一時的になるのか、これからどれぐらいの期間になるのかわかりませんが、国土の一部を今失っているという状況は、大変重い状況だと思います。

 そうしたことから、推進と規制を分けるという意味、また、これからきちんと原子力を管理していくという意味で今議論されていると思うんですけれども、一方で、では、果たしてこの地震、事故以外に危険がどういうものがあるかというと、現実的かどうかはまだわかりませんけれども、今回、あり得ないことが起こりましたから、テロ対策についてどれぐらい政府がきちんと行っているのかということについてちょっと御質問をしたいと思います。

 三月二十七日に野田総理がソウルに行って、核安全保障サミットで、これから強化するということを申しておりました。その後、今日までどのような強化を行ったのかということを細野大臣にお答えいただきたいと思います。

細野国務大臣 御指摘のとおり、ソウルの核セキュリティーサミットにおいて野田総理が、テロリストによる攻撃に対する備えも含めてメッセージを出しておられます。

 この三月の核セキュリティーサミット以降という話でありますが、去年の三・一一以降、テロ対策についてはさまざまな検討を進めてまいりまして、そしてより高いレベルを目指してやっております。

 私も、かつて、それこそ九・一一の直後に、野党時代ですが、こういう核のセキュリティーの問題に強い関心を持った時期がありまして、その時期からどういう政策がなされたかということも見てまいりました。そこで言うならば、課題はさまざまあるというふうに思っています。

 まず、当面の対応として、去年からなされたものとしては、いわゆるセーフティーの対策に当たることによりまして、例えば水源であるとか電源であるとか、そういったものが多重化しましたので、これは核セキュリティーにも大きく寄与するものであるというふうに思っています。

 加えまして、昨年十二月に炉規制法に基づく環境省令が改正をされておりまして、具体的には、立ち入り制限区域の設定、建屋の外にある重要な施設の防護、これはこれまで十分ではありませんでした。さらにはサイバー攻撃に対する対策を事業者に義務づけております。

 加えて、昨年の二月に公開をされたIAEAの核物質防護勧告というのがございまして、それを、本年の三月中に炉規制法に基づく環境省令を改正するという形で、一年越しで対応いたしまして、幾つか施策をやっております。

 具体的には、防護本部の二重化、これも極めて重要であります。そして二人ルールの実施。極めて大事な施設に入る場合に、一人が入って、その人間が万が一のことがあった場合に、そういう人物であった場合に、何もできないということになりかねませんので、それを二人ルール化するというのもIAEAが義務づけて勧告しておりました。そういったことについて対応することも既にしております。

 まだまだ課題がございまして、原子力規制庁ができたら、自衛隊そして警察からも人を出していただくことになっていますので、そういう体制を一日も早く整えて、さらなる核セキュリティー対策に努めてまいりたいと考えております。

石川議員 それでは、衆法提出者に同じことをお尋ねしたいんですけれども、今のままの案でいくと、テロ対策についてはどういうことをお考えなのか、時間がないので簡潔で結構ですので、お願いいたします。

塩崎議員 先ほど、先生、ねじれ国会だから野党案が脚光を浴びているようなことをおっしゃいましたが、お言葉でございますけれども、これは、我々の法案の方がいいから脚光を浴びているし、また、問題は我々の時代に起きた問題もたくさんあって、その反省を込めて、何が問題だったかという分析からどうすべきかということを出してまいりました。

 そういう意味で、我々の方がきちっとしたことを言っているので、こちらを中心にやっていただいていると私たちは思っていますので、あしからず申し上げたいと思います。

 例えばその一つは、実は、いろいろお話がありましたが、言うだけじゃだめなので、やはりやらないといけないので、我々は今回、炉規法の目的規定も改正をいたしまして、大規模な自然災害及びテロリズムその他の犯罪行為の発生も想定した必要な規制を行うことを明記しております。

 つまり、今まではそういうことをほとんど考えずに、原子炉は原子炉、安全なものだというようなことで来てしまった。これもやはり反省せないかぬし、そもそも九・一一のときにもっともっとやることがあったことはもう先生御案内のとおりでありますけれども、それをやってこなかったということで、炉規法そのものに、目的規定の中にこういうようなものを入れさせていただいて、先生の問題意識がここに生かされている、そういう意味でも我々の案に御賛成をいただきたいと思います。

石川議員 表現が間違っておりましたので、大変失礼しました。

 今、塩崎先生、自分たちの案がいいからということでお話しされました。

 もう時間がないので端的にお聞きしますけれども、法案を拝読させていただいて、国会同意人事について少し不安を持ちました。以前、自民党が与党で民主党が野党のときに、日銀総裁の人事というものがありました。

 きのう、法案の担当者、官僚が来て、これは、一応、最初、始まった後は、当然、新しい委員長や委員が決まるまで、任期満了後もその方々が引き続き行うということになっておりましたけれども、もし国会の中で、いや、これはちょっと我が党の考え方にそぐわないということで同意人事が得られないときも、可能性としてないわけではないと思います。前の委員長が、もしくは前の委員長や委員長代理が、そのまま決まらないでずっといっているときに事故が起こらないとも、これもまた限らないわけでありまして、せめて、この国会同意人事の中で、もちろん参議院の同意というのも必要ですけれども、衆議院の優越性なり、両院協議会を経て優越性なりという規定を設けた方がいいのではないかという提案なんですが、いかがでしょうか。

柴山議員 石川議員にお答え申し上げます。

 御指摘のとおり、国会同意人事におきまして、特に日銀総裁において、さんざんあのような形で紛糾をしたことは記憶に新しいところであります。しかし、命がかかっているこういった原子力規制機関のトップの問題と日銀総裁の問題、これは、やはり党派を超えて重要性というものは認識ができるのではないかというように思っております。

 あくまで専門技術的な事務を遂行するのに必要な知識と経験を有しているかどうかという観点から判断をされなければいけないということも加味しますと、政府も、適切な判断のもとに原子力規制委員会の委員長及び委員の人選案を提示することになりましょうし、また、その場合に、国会同意人事案件が今申し上げたような形での政争の具となることは極めて考えづらいというように思っております。

 私たちも、閉会中の緊急な指定ということについては政府ができるというように条文立てしておりますけれども、開会中においてはしっかりと適切な判断がなされるものと確信をしております。

 以上でございます。

石川議員 本当はもっと議論したいんですけれども、時間なので。

 政争の具以外でも、いろいろな理由というのはもしかしたら考えられるかもしれませんので、また御検討いただきたいと思います。

 終わります。

生方委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午後五時三十二分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

 原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案

 原子力安全調査委員会設置法案

 地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件

 原子力規制委員会設置法案

は環境委員会議録第三号に掲載


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