衆議院

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第5号 平成23年5月20日(金曜日)

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平成二十三年五月二十日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 川内 博史君

   理事 阿知波吉信君 理事 稲見 哲男君

   理事 熊谷 貞俊君 理事 空本 誠喜君

   理事 津村 啓介君 理事 馳   浩君

   理事 松野 博一君 理事 遠藤 乙彦君

      石田 三示君    石津 政雄君

      石森 久嗣君    小川 淳也君

      太田 和美君    柿沼 正明君

      金森  正君    川島智太郎君

      岸本 周平君    熊田 篤嗣君

      阪口 直人君    菅川  洋君

      平  智之君    高井 崇志君

      橘  秀徳君    道休誠一郎君

      豊田潤多郎君    中川  治君

      本多 平直君    水野 智彦君

      森岡洋一郎君    山崎  誠君

      柚木 道義君    河井 克行君

      河村 建夫君    佐田玄一郎君

      塩谷  立君    吉野 正芳君

      斉藤 鉄夫君    吉井 英勝君

      阿部 知子君

    …………………………………

   参考人

   (原子力安全委員会委員) 久住 静代君

   参考人

   (琉球大学名誉教授)   矢ヶ崎克馬君

   参考人

   (高木学校)

   (元放射線医学総合研究所主任研究官)

   (医学博士)       崎山比早子君

   参考人

   (中部大学教授)     武田 邦彦君

   衆議院調査局科学技術・イノベーション推進特別調査室長           上妻 博明君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十日

 辞任         補欠選任

  勝又恒一郎君     橘  秀徳君

  阪口 直人君     岸本 周平君

  竹田 光明君     水野 智彦君

  玉置 公良君     道休誠一郎君

  野木  実君     森岡洋一郎君

  本多 平直君     柿沼 正明君

  柚木 道義君     高井 崇志君

同日

 辞任         補欠選任

  柿沼 正明君     本多 平直君

  岸本 周平君     阪口 直人君

  高井 崇志君     柚木 道義君

  橘  秀徳君     勝又恒一郎君

  道休誠一郎君     玉置 公良君

  水野 智彦君     竹田 光明君

  森岡洋一郎君     野木  実君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件(放射線の健康影響について)


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     ――――◇―――――

川内委員長 これより会議を開きます。

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件、特に放射線の健康影響について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として、原子力安全委員会委員久住静代君、琉球大学名誉教授矢ヶ崎克馬君、高木学校・元放射線医学総合研究所主任研究官・医学博士崎山比早子君及び中部大学教授武田邦彦君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言委員会を代表してごあいさつを申し上げさせていただきます。

 本日は、御多用のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人からそれぞれ十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に簡潔、端的にお答えを願いたいと存じます。

 なお、念のために申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず久住参考人にお願い申し上げます。

久住参考人 皆様、おはようございます。原子力安全委員会の久住でございます。

 本日は、このような発言の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。委員長初め皆様にお礼申し上げます。

 それでは、私は、御用意いたしました、パワポ形式になっておりますが、資料に基づきまして御説明をさせていただければと思います。

 内容は三つございまして、原子力災害時の安全委員会の対応、二番目に安全委員会の助言の活動について、それから三番目に放射線防護に関する助言の基本的考え方、私ども安全委員会の基本的考え方について御説明申し上げたいと思います。

 お開きいただきまして、パワーポイントの三ページ目でございますが、まず、原子力災害発生時の対応といたしまして、私ども原子力安全委員会では、原子力災害対策特別措置法に規定する原子力災害が発生した際には、緊急助言組織を立ち上げるとともに、同法に基づき、原子力災害対策本部長、内閣総理大臣に対し、技術的助言を行うこととされてございます。

 技術助言組織とはということで下に書いてございますが、私どもは約四十名の専門調査委員の方々に御協力いただくようにしております。

 それから、次の四枚目、原子力防災体制でございますが、私どもは、右上の方にございますように、原子力災害対策本部に対して技術的助言をさせていただきますとともに、総理官邸にございます緊急時参集チームに参画しております。

 五枚目でございます。

 原子力安全委員会が行う技術的助言についてでございますが、一番最初は緊急事態応急対策の実施に関する技術的事項、二番目に緊急事態応急対策を実施すべき区域の変更に関する事項、三番目に緊急事態応急対策を実施すべき区域内の居住者等に対し周知させるべき事項の変更に関する事項、四番目に原子力緊急事態の解除に関する事項が主なものでございます。

 六枚目でございますが、私どもは、この助言をさせていただくために、日ごろからいろいろな指針を用意してございます。

 主に、一つは「原子力施設等の防災対策について」という、通常防災指針と言っております指針でございます。この防災指針は、放射性物質の放出の態様、緊急時環境放射線モニタリング、周辺住民に対する防護対策等の原子力防災対策の技術的、専門的事項について基本的な考えを示したものでございます。下半分に主な目次を示してございます。

 おめくりいただきまして七ページでございますが、この防災指針に関連いたします指針といたしましては、私どもは、環境放射線モニタリング指針等々七つの指針あるいは報告書を用意いたしまして、それらに従って助言を申し上げているところでございます。

 八枚目でございます。

 二番目に、助言活動について申し上げます。

 三月十一日十六時に、原災法十条に至ったとの認識のもと、第十六回原子力安全委員会臨時会議が開催され、緊急助言組織の立ち上げが決定されました。

 また、地震等による交通や通信の渋滞から、関係者への情報伝達や参集困難が予測されるため以後の委員会は実効的に、かつ柔軟に開催することを決定いたしました。

 以来、原子力安全委員会は、緊急技術助言組織の調査委員や専門委員の協力を得て二十四時間体制で、原子力対策本部や原子力災害対策現地本部等に対して助言を発出してまいりました。

 九ページ目でございますが、発出いたしました助言の主なものは右半分にございますが、避難区域の見直し、計画的避難区域の設定等々でございます。左半分にございますのは、これは私ども安全委員会のホームページでございますが、このような形でホームページに、公開された助言ということで一覧表を出してございます。今後、整い次第、さらにこれは追加していく予定でございます。

 最後に、三番目でございますが、これらの助言をさせていただく際に、私どもが基本的にはどういうことを考えて助言していたかということを、この助言活動の公表に伴いまして、私どもの説明責任を果たすという意味でも、公表させていただきました。

 ちょっとここは読み上げさせていただきます。

 「放射線防護に関する助言に関する基本的考え方について」これは、きのうの第三十三回安全委員会臨時会議において安全委員五人の合意事項として取りまとめたものでございます。

 「はじめに 平成二十三年三月十一日に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴い、原子力安全委員会は、直ちに緊急技術助言組織を立ち上げて以降、これまで、緊急事態応急対策調査委員、専門委員等の専門家の協力を受け、政府の原子力災害対策本部や関係行政機関等への助言を行ってきた。同発電所の状況は、安定化の方向にあるとはいえ依然として予断を許さず、また事故の長期化に伴って、また、事故の影響が広い範囲に及んでいることによって、周辺住民等の放射線防護に関わりをもつ社会的課題が数多く生じている。原子力安全委員会は、今後とも必要に応じ、政府の原子力災害対策本部や関係行政機関等による総合的な判断に資するため、放射線防護に関する技術的助言を行っていくこととしているが、この際、これまでの助言について、当委員会として、いかなる考え方に基づいて行ってきたのかを広く示すことは、自らの説明責任を果たす上で意味のあることであるとの認識のもと、以下にその基本的考え方を示すこととする。」といたしております。

 おめくりいただきまして十一枚目でございますが、基本的考え方の柱が四つございまして、まず一つが「放射線防護を踏まえた総合的判断の必要性」「東京電力福島第一原子力発電所の事故に関し、今後の周辺住民(避難を余儀なくされている方々を含む。)の生活支援、産業活動、土地利用等に向けた判断を行うに当たっては、周辺住民の生活や社会活動を過度に制限することを避けつつ、放射線被ばくによる健康影響に対する適切な防護を担保することが必要である。このためには、最新の科学的知見や国際的な基準を踏まえた放射線防護の考え方に基づき、さらに環境、健康、社会、経済、政治、倫理等に配慮した判断を行うことが重要である。」

 二番目でございます。「放射線防護の対象としての現状の特殊性(ICRPのいう緊急被ばく状況、現存被ばく状況、計画被ばく状況の併存と移行)」「今回の事故においては、事故が収束に至らない状態が今後ともある程度の期間にわたり継続する可能性がある。また、施設の周辺では、地域によってさまざまなレベルでの環境放射線の測定結果が得られているが、これらの地域では、通常どおり、または通常に近い態様での生活や社会活動が維持されている。このことにより、汚染レベルの異なる地域間での物流や人の移動が生じている。すなわち、状況が異なる地域が明確に隔てられることなく隣接するとともに、それぞれの状況が時間とともに変化しており、これによって問題が複雑化しているともいえるので、放射線防護に関わりをもつ判断においては、この点について十分留意することが必要である。」

 三番目でございます。「異なる被ばく状況が併存する状況での最適化の努力」「周辺住民の生活支援、産業活動、土地利用等に向けた判断においては、避難を始めとする生活や社会活動への制限と、健康に影響を及ぼすには至らないものの平常時を上回る放射線被ばくの受容という、個々人にとっての異なる負担の間のトレードオフを扱うこととなる。生活や社会活動を過度に制限することなく、放射線防護における最適化を達成するため、適切な管理や除染・改善措置等による線量の低減が考慮されるべきである。今後、施設の安定化や事故収束に伴って、周辺住民にとって「通常」と考えられる生活状態が回復し、社会的・経済的活動が再開される地域が拡大されていくためには、とくに除染・改善措置が果たす役割が大きいといえる。」

 四番目でございます。「利害関係者の関与、透明性、総合的判断」「このような総合的な判断においては、地元自治体や地元住民との情報交換や意見交換、ならびに協議を充分に図ることが望ましい。さらに、放射線による人への健康影響(晩発影響)を考慮する一方で、防護措置や除染・改善措置を講ずることに伴う経済的影響、心理的影響および社会的影響を含めたあらゆる側面に対しての配慮が必要である。」

 おめくりいただきまして十五枚目でございます。

 これはICRPの緊急被曝状況、現存状況、計画状況についての定義を引用してございます。

 また十六枚目には、先ほどお示ししました参考レベルのバンドについて御説明させていただいております。

 緊急被曝状況というのは二十より大きく百までということで事故の直後。それから、現存被曝状況というのは一より二十ということで、これは非常にいろいろな御議論があるかと思いますけれども、私どもは通常の計画被曝状況では一ミリ以下ということで公衆の方々の安全を管理してございますが、今回は残念ながら年間一ミリシーベルトということで管理が難しいところが生じております。そのときに、それでは日常生活、あるいはそこは避難の区域にして全く何もできないのかというと、そうではないのではないかというのがICRPの一番新しい二〇〇七年勧告、特にチェルノブイリの教訓を生かした勧告でございました。

 これが一より二十ミリシーベルト以下ということで、現存被曝状況ということで、特に事故の復興段階としておりますが、福島の場合は緊急事態があって復興段階ということではなく、初めから放射性物質のフォールアウトによりまして復興段階と称するところからスタートせざるを得ないところも生じているのではないか、先ほど複雑化しておるということを申し上げさせていただきましたが、このようなことではないかと思っております。

 それから、最後の十七枚目ですが、これは、我が国の放射線防護に関する法令等と国際基準の関係ということで、釈迦に説法でございますが、まず、UNSCEARと申します国連科学委員会の報告書、それから、それを受けた国際放射線防護委員会の防護の枠組みの勧告、さらに、それを受けて、IAEAによる国際安全基準の策定、それを各国のそれぞれの放射線防護の法令、規則等々に適用させていくのが現状でございます。

 我が国におきましても、放射線審議会を含め安全委員会もこのような体系で放射線防護に対する考え方を示させていただいております。

 以上でございます。

川内委員長 久住参考人、ありがとうございました。

 次に、矢ヶ崎参考人にお願いいたします。

矢ヶ崎参考人 委員の先生の皆さん、おはようございます。矢ヶ崎克馬でございますが、私は、本日は、放射線の人体に影響を及ぼすということに関しまして、その基礎になる物理的な考察をさせていただきます。

 私の大学での専門というのは物性物理学といいまして、磁石や超電導や半導体、そういったことを基礎科学的に扱ってまいりましたが、本日は、一般科学の立場でこの現象についてお話ししたいと思います。

 一般科学というのは、現象と本質を論じる、科学の倫理を論じる、測定と背後の実態等を論じる、そういう分野の科学でございますけれども、すべての科学の基礎に一般科学が位置しております。

 自己紹介はこれで終わりますが、私の発言はレジュメに趣旨が書かれておりますが、きょうはプレゼンテーションで、絵を見ていただきながら御説明したいと思っております。

 まず、今、私どもが放射線、放射能、そういったことを盛んに議論しておりますが、これを、どんなところからの言葉の意味があるかということをまず確認させていただきたいと思っております。

 一番左側には原子の姿がありまして、原子というのは一番ど真ん中に原子核がありまして、その周りを電子が回っております。この電子の数は、真ん中に含まれているプラスの電気量と同じものがありますけれども、今、放射能というのは、この原子核にかかわることでございます。

 ある種の原子核で、すべての原子核ではありませんが、核分裂で出てくる原子はすべてこれから説明する性質を持っておりますけれども、ここの原子核がエネルギーが高いものですから、余分なエネルギーを外に捨てようといたします。そのときに三種類の放射線と呼ばれるものを放出します。原子核から捨てられるもの、これが、例えばベータ線というのは電子が速いスピードで出てまいりますけれども、そういう非常にエネルギーを持った状態のもので、これが放射線と呼ばれるものです。

 放射能というのは、原子核から放射線を出す能力というような意味で放射能、そういう言葉が使われております。このアルファ、ベータ、ガンマというのはかなり性質の違うものでございますが、まずは、放射線が作用するのは、今度は、こちらを、作用される方の、体を構成しているような原子で例えますと、この一番外側の電子が影響を受けます。でも、私どもの体は、原子が孤立しているということはありません。すべて分子になっております。

 次をお願いいたします。

 これは、一番単純な水素原子が水素の分子になる、そこの絵をかいておりますが、水素の原子は、プラス一価の原子核に電子が一個回っている、そういう状態でございます。

 ところが、日常は水素分子として燃料に使われておりますが、この分子、重い原子同士がつながるのは、電子がペアをつくる、これが決定的なポイントでございます。それなものですから、放射線がこの分子を構成しているペアの電子にどう作用するか。これが後、生物的にどんな影響が出てくるかというようなことの一番基本になります。

 次をお願いいたします。

 放射線は、この分子に衝突をいたします。衝突するとき、一番外回りの電子というのは、もうすべてと言い切っていいんですが、ペアの電子のつがいになって、原子と原子をつなげている役割を持っております。これが、放射線がぶつかると、ここにある電子が原子の外に飛び出してしまう、吹き飛ばされてしまうわけです。このときに、この電子がここにいたのが、原子から離されてしまうという意味で、電離という言葉を使います。

 それで、私ども生物が受けても、鉄やその他の無生物が受けても、すべて放射線の基本作用は分子がちょん切られる、これがまず押さえておくべき基本的なプロセスでございます。

 次をお願いいたします。

 これは、私どもの体を構成する分子はたくさんの種類があります。いっぱいありますが、一番典型的に健康に害を与えるものは、DNAの分子を切断する、これがどういう結果をもたらすか、ここを考察することがポイントになります。

 まず、ここにかいてある、DNAというのは、二本のたくさんつながった分子が全く同じものが二つ用意されております。これが細胞分裂などできちっと同じ遺伝子を伝えていくために、一本では同じものがコピーできない、二本用意されているというのがDNAの姿ですが、まず、この絵は、DNAの一本だけ分子切断が行われてしまう、二本目は大丈夫である、そういう絵をかいてありますけれども、この場合、分子が切断されても生物学的な修復作用で、もとに戻りたいという再結合が起こります。再結合が、周囲に健全なものがずっと並んでいますと、比較的高い確率できちっともとどおりになります。

 このタイプの切断をするのはガンマ線といいまして、相互作用が非常に弱いものですから、ところどころ分子切断をして、エネルギーを余らせて我々の体を突き抜けて外に出てしまう。それで、外部被曝が主にこういうタイプの分子切断をすると判断しております。

 次をお願いいたします。

 ところが、アルファ線、ベータ線というのは非常に相互作用が強いものでありまして、アルファ線というのは、体の中ではたった四十マイクロメートルという距離しか進みません。四十マイクロメートルというのは、この紙の厚さぐらいが四十マイクロメートルというものでありますが、でも、この四十マイクロメートルの間で全部エネルギーを使い切るということで、ちょっとしか飛ばないという結果になっております。それで、四十マイクロメートルのところに何と十万個も分子切断を行っていきます。そうすると、DNAの二本の分子は両方とも切られてしまう。それで、この場合には、生物学的に、もとに戻ろうとしても、間違ってつながってしまう。間違ってつながってしまったものが生き延びると、遺伝子の変性ということにつながりまして、これから生物学的に非常に大きな影響が出てくるところでございます。

 次をお願いいたします。

 今、福島の原発での放射能というのは、原子炉から放射性のほこりが舞い散って出ているものでございます。この絵にかいてある一粒一粒が放射能のほこりと考えていただきますと、ほこりですから、体の中に吸い込んだり飲み込んだりしてしまう。これが内部被曝ということの原因なんですが、この放射性のほこり、例えば一マイクロメートル、一マイクロメートルというのは一ミリメートルの千分の一の大きさでございますけれども、これが目には見えない。目には見えないけれども、原子の数でいくと一兆個の原子が詰まっております。そうすると、その放射性原子がそれだけあるものですから、飲み込んだほこりが体の中に入って、体の中で放射線がばんばん出てくる、それが内部被曝でございます。

 実は、内部被曝は、アルファ線もベータ線も、短くしか飛ばないものも全部、体にきいてくるものですから、外部被曝よりもはるかに高い被曝量を与えます。

 次をお願いいたします。

 これは放射性のほこりが体の外にあるときですが、例えば、ベータ線はたかだか一メートルしか飛ばない、一メートル以上離れたところにほこりが存在すると、体に当たるのはガンマ線だけだ。ですから、外部被曝というパターンをここに示しておりますけれども、外部被曝はガンマ線だけにやられる、そういう理解が近似的に成り立ちます。

 ガンマ線もあらゆる方向に飛んでいくんですが、体の方向に向かったものだけが被曝に当たります。ところが、このほこりが体の中に入ってしまいますと、あらゆる方向に出た放射線、それから、短いものも長いものも全部、先ほどの分子切断にきいてきてしまいます。

 そういう意味で、内部被曝というのは、外部被曝というものよりも非常に大きな被曝を考慮しなきゃいけない。これが、実は日本では、内部被曝ということが決定的に無視されているというのが学会の姿でございまして、大変困った状態であると私は思っております。

 次をお願いいたします。

 これが、チェルノブイリ事故の後の子供の甲状腺疾患それから甲状腺腫、そういったものがどんなふうに年々あらわれているかということですけれども、特徴的なものは、一九八六年にチェルノブイリの爆発がありましたが、この五年後あるいは六年後に子供の疾患が急激にふえております。

 それで、千人当たりの数で示しておりますが、何と、九五年以後は、十人に一人、千人に百人の割合で子供の疾患があらわれております。これは現場の病院などでしっかり確認できることなんですけれども、これをどんなふうに放射線と結びつけるかということに関しては、いろいろ見解が分かれるというような情けない状況でございます。

 次をお願いします。

 これは実は、被爆者の方々が現在どういう健康不良状態を持っているかというようなことで、ちょっと読みにくいところがありますが、上は腰痛、二番目が高血圧、視覚障害、神経痛など、ずっと二十項目にわたって、一九八五年から一九九〇年、千二百三十二人の被爆者の方の健康状態を調べたものでございます。一般国民という白い枠、これは厚労省のデータでありますけれども、何と、そのいずれの項目も数倍しております。

 これで、やはり、私がまず物理的にお話し申し上げました、こういうプロセスがある以上、福島県を中心にして、子供たちにも大人にも、今お見せしたようなそういう症状、疾患が必ず出てまいります。それに対して、私どもの社会がどういうふうに保障していくか、どういうふうに健康管理をしていくか、これが一番大事なことで、かつ、今きちっと被曝を防止することが将来の莫大な医療費、そういうものを軽減しつつ、健康を保持するという意味で大変重要な課題となっております。

 準備した絵は、皆さんに全部お話しすることができませんでしたが、基本的なことは、私がお話ししたいことはそれでございますので、どうぞよろしくお願いします。(拍手)

川内委員長 矢ヶ崎参考人、ありがとうございました。

 次に、崎山参考人にお願いいたします。

崎山参考人 皆さん、おはようございます。崎山です。よろしくお願いします。

 私は、この絵を、二つかいてあるんですが、それを全部説明しますと時間がありませんので、体の設計図であるDNA、体に一番重要な分子のDNAに放射線がどう影響するかということをお話ししたいと思います。

 私たちの体は、成人は約六十兆個の細胞からできています。この六十兆個の細胞も、初めは一つの受精卵から始まっているわけです。この受精卵が分裂して、分化して、最終的にいろいろな体の器官をつくる。この最終分化した細胞は、それぞれ形や機能も全然違いますけれども、この一番初めにあった受精卵と全く同じものを一分子だけ持っています。それがDNAなんですね。

 DNAがなぜそのように変わらないかということを、次にお話ししたいと思います。

 これは、DNAの模型図です。DNAというのは二重らせん構造をとっていて、このようにリボンのようにかいたバックボーンの真ん中に向けて塩基が飛び出しています。その塩基は、アデニン、チミン、グアニン、シトシンという四種類で、この対のつくり方としては、アデニンは必ずチミンと、グアニンは必ずシトシンとしか対をつくりません。

 ですから、人間のDNAは三十二億塩基対ありますけれども、その対というのは、A―T、G―C、その二種類しかないわけです。それが延々と配列されているわけですけれども、この塩基の三つが一つのアミノ酸を決めるということになっています。

 ですから、DNAというのは、どういうアミノ酸がどういう順序で並んでいるか、言いかえれば、どういうたんぱく質をつくるかという情報がDNAの中に組み込まれているわけです。

 DNAは、細胞が分裂するときに必ず二倍になります。そのときに、この結合が切れて、これが一つの鋳型になって新しいものができるということになっていまして、これは巻き戻した図ですけれども、古いDNAの片一方が鋳型になって新しいものがここにできる。これもそうです。ですから、新しくできた二対のDNAは必ずもとのDNAと同じ配列を持っている。

 次のスライドをお願いします。

 こういうふうに複製が同じというか、正しくできるということが、何回DNAが複製されても、もともとの一代目のDNAと同じ配列を持っているということで、DNAが変わらない。六十兆個の細胞になってもDNAの配列は変わらないということです。そのDNAの配列が変わらないということが、体の恒常性を保つために非常に重要なことなんです。

 次のスライドをお願いします。

 こういう重要なDNAに放射線はどういう影響を与えるかということですけれども、まず、影響は放射線の量に比例してふえます。一ミリシーベルトというのを盛んにマスコミでも言われるようになりましたけれども、一ミリシーベルトを被曝するということは一体どういうことなのかということですが、一つ一つの体を構成する細胞の核、この中にDNAが入っているわけですけれども、平均して一本放射線が通る、そういうものが一ミリシーベルトです。ですから、皆さん、一ミリシーベルト被曝したということになりますと、全身の細胞の核に一本ずつ放射線が通ったことになります。千ミリシーベルト被曝しても、千本通るわけですが、一ミリシーベルトで起きたことが千倍になるだけです。その傷の質というのは変わりません。ですから、量的な差だということです。これが放射線に安全量がないと言われるもとなんですね。

 次のスライドをお願いします。

 これはDNAの化学構造をかいたものですけれども、ここに先ほどのリボンのような背骨、この五炭糖と燐酸がずっと延々続いているわけですけれども、その中心に向かって塩基が飛び出しています。相手方もそうです。この結合の仕方は、化学結合のエネルギーで結合しています。このエネルギーというのは弱いわけですけれども、例えば診断用エックス線のエネルギーといいますと、この結合のエネルギーの一万五千倍から二万倍ぐらいのエネルギーを持っています。

 ですから、そういうものがDNAの上を通りますと、簡単にDNAは切れてしまいます。その切れ方が、エネルギーが大きいので、単純に切れるわけではなくて、DNAの周りにはたくさんの酵素があります、たんぱく質があります、そういうものも巻き込んで傷をつけますので、非常に複雑な傷になります。

 自然にもDNAというのは毎日切れていますけれども、それを体は治しているわけです。ところが、放射線のような高エネルギーで切れた複雑な傷というのは、正しく治すことが難しい。間違えやすい傷が起きるわけです。そういうところでこの配列が変わって、違うアミノ酸がここへ入ると、ここに変異が起きるわけです。それが子孫に伝わって、がんの原因になっていくわけです。

 次のスライドをお願いします。

 がんになるのは低線量ですけれども、たくさんの放射線を一度に全身に浴びると、例えば六千から七千ミリシーベルトを一度に浴びると、ほとんど一〇〇%の人が死亡します。五〇%の人が死亡するのは、大体三千から四千ミリシーベルト浴びると五〇%が死にます。

 こういう大量の放射線を一度に浴びた場合に、比較的短時間の間に、皮下出血とか脱毛とかいろいろな症状が出てきます。この症状は、時間的に急性なので、急性障害というふうにいいます。その急性障害は、放射線を浴びた人だれかれなしにあらわれるので、確定的影響とも呼ばれています。

 この急性障害のあらわれる一番軽い症状というのは、リンパ球や白血球の一時的減少です。これが起こる線量というのは、百から二百五十ミリシーベルト。この線量以下ですと、直ちに健康に影響を与える量ではありませんという説明がよく出てきますけれども、そういう線量になるわけです。低線量域ですね。

 この低線量域が安全、安心でないということは、これが原因になって、数年から数十年後にがんになる、発がんが起こるということで、それで安心、安全ではないということなんです。この発がんというのは、だれかれなしではなくて確率的に出てくるので、遅く出てくるから晩発障害、確率的影響ということで、確率的に出てくるのでそういう影響だということになっています。

 次のスライドをお願いします。

 がんは一つの遺伝子の変化によって起こるものではありません。たくさんの遺伝子が変化して、それでがんになるということ、これは、がん研究者の間でも定説となっているがんの多段階説です。

 ここで放射線によるがん遺伝子の活性化がありますと、放射線によって遺伝子の不安定化ということも起こりますので、環境にあるほかの放射線とか化学物質なんかによって変化が起きて、だんだんこの階段を上っていくという感じで、ここには時間がかかりますから、老人にがんが多いというのは、この階段を上る時間が多いということなんですね。

 次のスライドをお願いします。

 それでは、どういう線量でどのぐらいの発がんが起こるかということなんですが、一ミリシーベルトを一万人の人が浴びると、その中で一人がんになる。十ミリシーベルトを浴びると十人ががんになる。百ミリだと百人。これは、これ以下の線量だと安全だ、がんが出ない、そういう閾値はないという閾値なし直線説です。

 このモデルは国際放射線防護委員会が出しているわけですけれども、もとになったのは広島、長崎の被爆者です。その被爆者のリスクに二分の一を掛けたのが、この防護委員会のモデルです。

 次、お願いします。

 今の発がんの閾値なし直線説を採用している機関というのは米国科学アカデミーで、これから出ているBEIR7という報告書があります。それにもはっきり書いてあります。それから国連科学委員会、UNSCEARに書いてありますし、今の国際放射線防護委員会、ICRP、それから欧州の放射線リスク委員会、ECRRも、こういうところの機関は閾値なし直線説を採用しています。

 ということは、放射線には安全量はないということが国際的な合意事項になっているということなんです。ですから、防護というのは、その前提に立って行わなければならないというのが国際放射線防護委員会の見解だと思いますので、これからも、防護のことについて、国会議員の皆さん、よろしくお願いいたします。

 どうもありがとうございました。(拍手)

川内委員長 崎山参考人、ありがとうございました。

 最後に、武田参考人にお願いいたします。

武田参考人 武田でございます。

 きょうの朝のテレビを見ておりましたら、福島県の小学校は、二十ミリシーベルトという基準を文部科学省が出している、それから計算して、ややいかがわしい計算でありますが、一時間に三・八マイクロシーベルトまでいいと。これを下回っても御父兄が納得しない、だから運動させることができないんだというようなニュースが出ていました。

 こういった御父兄の気持ちはどこから出てくるかといいますと、原子力発電所が何か事故を起こしますと、漏れる放射線量、放射線量というのは不安定なものがいっぱいあるんですけれども、公開するような場合にベクレルというのを使うんですけれども、大体、億単位、数億ベクレルが普通の放射線が漏れたときの値であります。

 数億ベクレル漏れますと、社会にはどういうことが起こるかというと、新聞には一面にでかでかと出て、原子力発電所から数億ベクレルの放射性物質が出たと。国は大騒ぎをして、研究員を派遣したり、原子炉がとまったり、再開するのに三年かかったり、こういうふうにするわけですね。それが数億ベクレルなんですよ。

 今回福島原発から出た量は、それの一億倍なんですね。数京ベクレルから数十京ベクレルですね。ですから、通常新聞が大騒ぎし、国家が大騒ぎする量が数億ベクレルに対して、今回福島原発から出た量は何十京ベクレルなんですね。ということは、何十億倍なんですよ。通常国家が大騒ぎするレベルの例えば二十億倍、そういった量が今回の福島原発から出たわけですね。

 ふだん、数億ベクレルが出たときに、大変危険だというので原発を数年とめてやるということをやる政府が、それの一億倍出たら安全だと言ったわけですね。これを理解するというのは、普通には到底できません。ですから、普通の心境としては、これはうそだというふうに思うのが当然であります。

 したがって、現在、福島県を中心とした方々、特にお母さん方が非常に強い不安感を持っておられるということは、政府発表を中心としたものがつくり出した非常に強い不信感というか、そういうものであろうと私は思います。

 例えは難しいんですけれども、一円でも節約しなきゃならないと言っていた人が、突然、十億円を前にして捨てなさいと言っているようなものですから、それを庶民が理解するということはもう無理であります。

 もう一つ、テレビでこういうふうに言っていました。

 御父兄に二十ミリシーベルトが安全であるという説明ができないというんですね。それは当然できないわけです。二十ミリシーベルトは一ミリシーベルトよりも発がんリスクが二十倍になるということですから、二十倍になると言わなきゃいけないということですね。しかし、二十倍になるのをどうして我慢させるのか、私たちの将来を担っている子供たちになぜ我慢をさせるのかということをしっかりと説明しないと、お上が二十ミリと決めたからそのとおり信じなさいなんていうのは、江戸時代じゃないので、皆さんが納得しないのも当然であります。

 ここのところも非常に大きな問題があって、実際にお子さんを育てておられて、福島の小学校に通わせているお母さんたちの気持ちをわかって、今までの政府がやってきたものとの整合性をとってもらわないと、これは解消しない問題であるというふうに思います。

 それから、論点の第二点なんですけれども、ちょっと科学的に振りまして、私は、ずっと科学の分野で原子力をやってきて、こんなになって深く反省しておりまして、自分は原子力をやってきたのは本当によかったのか、こんな結果になるような技術をやってきたのかという非常に深い自責の念があるのでありますが、これはどこにあるかというと、一年一ミリシーベルト以上は危険であるということに基づいているわけですね。

 最近、一年百ミリシーベルトまで大丈夫だと言われる人がいて、私が非常に残念に思うのは、原子力の技術体系全体が一年に一ミリシーベルト以上は危険だということによって原子炉は設計され、研究がなされ、すべての法体系がそろっているわけですね。

 技術というのは、技術自身が独立して存在するわけじゃなくて、もし一年に百ミリシーベルトまで大丈夫ならば、現在の原発は安全なんです。福島原発ですら、もしも一年百ミリシーベルトという基準に変えるんだったら、あれは化学工場の火災事故と変わらないんですよ。原子力発電所の事故が危険なのは、そこから放射線が漏れて一ミリシーベルト以上の被曝をするからこそ、国家としても乗り出すような大事件なわけですね。

 ですから、今回、一年に二十ミリシーベルトとか一年に百ミリシーベルトとかは大丈夫であるということになりますと、原子力技術全体を全部変えなきゃいけませんし、原子力の安全基準から設計基準からを全部変えなきゃいけません。そして、今エネルギー議論なんかがありますが、もしも一年に二十ミリシーベルトとか百ミリシーベルトが安全であれば、別に自然エネルギーとかなんとか言わなくても原子力をやればいいわけですね。

 ですから、一年に何ミリシーベルトぐらいまでが日本人としての被曝として安全であるということをどこに定めるかによって、原子力政策から、エネルギー政策から、現在の被曝に対する補償から、全部変わるということですね。

 ですから、そこについて私は、今ほかの参考人から御説明があったように、現在の国際的に一年一ミリシーベルトと決まっているものを今さら変えることはないと。それを変えていたら、私たちは何のために放射線とか原子力をやるときに防御をしてきたか、何のために設計してきたのかといえば、私は原子力の仕事をずっとやってきましたけれども、原子力の機器を発注すると、普通の機器の五倍ぐらい値段がするんです。それはなぜするかといったら、一年一ミリシーベルトだから高いんですね。それで重工の会社はもうけてきたわけです。だけれども、突然今、百ミリシーベルトまでいいというのだったら、普通の、五分の一の安い機械を買えばいいわけですから、全部の体系が変わるわけですね。

 その中で、文部科学省が一年二十ミリというふうに変えたということは極めて大きな影響もあり、それが主に子供に対して適用されているということは非常に大きな問題であろうと思います。

 これは忌憚なく述べさせていただけば、私の技術論というのは、人間は空を飛ぶべきではないから飛行機はいけないというような議論はとらないんです。もちろん人間が空を飛ぶべきじゃないかもしれません、初期の飛行機は次々と墜落しましたから。だけれども、それがクリアされて安全な飛行機になれば飛べるということですね。

 原子力発電所もそうで、原子力自体をやるべきではないという議論、私はそういう考えではありません。原子力発電所が社会に対してよい影響を与え、悪いことをしないというのであれば、墜落しない飛行機になるわけですから、それは科学技術として採用すべきだ。

 しかし、そこのところをはっきりしておかないと、あいまいにして事柄をやると、今度の原子力発電所の事故は、原子力発電所がエネルギー政策上必要であるから原子力発電所は安全だというような論理の逆転が今度の事故を招き、多くの人を苦しめたんじゃないかというふうに思います。

 最後の論点ですけれども、現在、福島原発から放射性物質が残念ながら出たわけですね。一応、一年一ミリシーベルトを守るということを前提にお話ししますと、もやもやっとした放射性物質が出て、これは国が一番最初に間違ったことを言いましたから、多くの人が間違っていますが、放射線は距離の自乗に反比例するなんておっしゃったものですから、皆さんが原子炉から離れれば大丈夫だと思っておられますけれども、放射線自体は光ですから、自分の目で福島原発が見えなくなったら放射線は来ません。現在、中性子は出ていませんからね。

 ですから、放射線というのは、福島原発の見えないところ、自分の目で見えないところには来ません。現在来ている放射線というのは、福島原発からどかんと爆発したときに、火山の灰のように風に流れてずっと行ったものですね。これはだから、今度の場合、西北に流れました。

 これは例えば、政府でいえば、気象庁が全力を挙げて風向きを予測しなきゃいけなかったのに、気象庁は、SPEEDIがあるから、これは原子力安全委員会が持っているんだからそっちがやれ、こう言った。今度はSPEEDIの方は、余り放射線が大きいからこれを発表しないんだという。国民は、税金を払ってSPEEDIをつくり、気象庁を持っているにもかかわらず、どこに放射性物質が飛んでくるか全くわからない状態で最初の被曝をしてしまったわけですね。

 私は、しようがないから、ブログを書くとき、これはもうブログを書いて付近にいる人を逃がさなきゃいけないと思ったものですから、そのときに私が参考にしたのはドイツ気象庁のデータだったんです。

 私はとても悲しい思いをしました。日本が科学技術立国でありながら、気象庁が、細かく花粉の状況とか火山の噴火の状況の予想図を出しているにもかかわらず、国民の命に極めて重要なことになると引いてしまったわけですね。原子力委員会のSPEEDIもそうです。

 だから、まず第一に、私たち技術者は、原子力をやっている人たちは、国民の命を原子力から守るのが第一ですから、起こってしまった事故は仕方ないので、それに対して最大に損害を少なくする行為をすべきだった。そういう意味では、極めて大きな不作為による被曝を福島の人たちにさせてしまったという感じがいたします。

 ところで、ふわっと飛んでいくわけですから、単なる粉なんですよね。放射性物質というのは単なる粉なんです。粉と言ってもいいし、ちりと言ってもいいし、ごみと言ってもいいし、何でもいいんですけれども、そういったものなんです。大きさは大体花粉みたいなもので、重さは黄砂ぐらいのものだ。

 そうすると、飛んでいきますから、三月はどうだったかというと、空間の線量が高いわけです。それで、福島原発から放射線が来たんじゃなくて、この部屋でも結構今ありますけれども、ここの部屋に福島原発から飛んできた放射性物質が何億とあるわけですね。そこのちっちゃいところから我々は弱い放射線の合計を受けて、それで現在ここは、自然放射線〇・〇二に対してその十倍であるとか、そういった量になっているわけですね。

 だから、三月の最初は空気が汚れているわけです。四月の初旬になりますと、私のブログの読者から寄せられるデータをずっと整理しますと、地面に落ちますから、地面が非常に高くなる。そのころ、私は、お子さんを外出させるときは手を引かないで、だっこしてくださいと言ったんですね。やはり下よりか上に行かなきゃいけません。

 四月の下旬から連休になりますとそれが流れまして、屋根に乗った放射性物質は、といに出てきます。それから、散ったものは吹きだまりに集まります。それから、現在は、側溝からさらに進んで升のところに移っています。

 この前、福島県に行って測定してきましたら、普通のところが〇・九マイクロシーベルト・一時間に対して、側溝の溝をはかりますと九マイクロシーベルトでした。九マイクロというと物すごく多くの被曝をしますから、絶対に子供を近づけちゃいけない。だから、僕はそこの人に、黄色い枠をしてくださいと言ったんですね、子供が近づかないように。

 このことは何を言っているかというと、放射線を防御しなきゃならない国としては、時々刻々、正しくやらなきゃいけない。ところが、自治体なんかで放射線の量をはかっているんですよ。それで、地上十五メートル、五階なんかではかっているところがあるんです。それに文句を言いますと、いや、機械が高いから、壊されるといけないから五階ではかっているんだというんですよ。五階なんかに人はいませんからね。赤ちゃんは特に危ないわけですけれども、〇・五メートルぐらいではかってくれなきゃいけない。だから、公表されるデータ自身がいいかげんなわけですね。これは命にかかわることだから、そんな機器の値段なんか言っていないで、やはりちゃんとしたデータを国民に提供するということが非常に重要だと思います。

 それから最後に、粉でありますから、除けるんですね。それで、校庭だったら校庭の表土を取る。チェルノブイリのデータを見ますと、はっきりはわかりませんが、二十年で二十センチ沈んでいますので、一年に一センチの割合。だけれども、日本は雨が降るので、もうちょっと進行するとします。ですから、梅雨の前に、福島県の汚染されたところをとにかくのけてほしいんですよ。これはぜひ先生方のお力で、のけてほしい。

 今は逆の方向に行っているんです。要するに、汚いものがもうそこにある。もしもお母さんが放射性物質が目で見えれば、絶対にふきます。ふいて取ろうと思います、だって、そこに毒があるわけですから。なぜそれをどけないのか。

 それをどける努力をせずに、基準を二十ミリに上げたり、放射性物質が入っている野菜が基準以下だから安全宣言なんかしたって、無駄なんですね。問題は被曝の量を減らすということですから、そのためには、現在立入禁止になっているような高いところは自衛隊なんかの協力も得てできるだけ早く除染しないと、もう一回風が吹きますと、道路に落ちている粉は、舞い上がってほかに行きます。ですから、早くとめなきゃいけない。

 それから、もちろん福島市のある程度のところは汚れておりますから、これの表土を一番早いうちに取ればいいんですよ。この前福島に行ったら、残念ながら、もう稲を準備しちゃっているところがあるんです。土をまぜちゃったら下の方に行きますから、これはもう二十年ということになるわけですね。ですから、できるだけ早くやらなきゃならない。

 それから、小学校の土をひっくり返すというのがあるんですけれども、何をやっているのという感じですね。ひっくり返せば、低レベル廃棄物というか、そういう放射線を帯びたものが土の中に入ります。雨が降れば地下水に行きますね。セシウムは土とのなじみが深いからすぐには移動しないかもしれませんが、ずっと移動していくわけですね。地下水に移動したらとても厄介なことになるわけです。ですから、この際、非常に強い決意を持って福島のところを除く。

 これは私の論で、違った御意見もあると思いますが、科学技術は原発をつくる技術だけじゃないんです。原発の技術というのは、原発が壊れたときに、それを速やかに除染して、何でもなかったことのように生活できるようにするというのも技術なわけですね。これも原子力発電所をやる上においては極めて重要な技術なわけです。

 日本は科学技術立国でありますし、経済力も非常に強いのですから、世界に先駆けて、私は、原発が爆発したら多少困るけれども、きちっと住民を避難させて速やかにそこを除染したら、除染したらというのは放射性物質を除いたら、一年以内に必ずそこで普通に住めるようになる、そういう国であるということを示してもらいたい、それも実は原子力をやる上での技術の一つじゃないかというふうに思います。

 それからもう一つ、先ほど別の参考人から御説明がありましたように、一年一ミリシーベルトを上げると、日本はもう既に汚染された国なんですね。我々が自由に海外旅行に行き、海外のレストランで安心して食べ、海外から輸入される水を安心して飲むのは、世界じゅうがICRPの基準で一年一ミリだからなんです。

 それを日本だけが一年二十ミリにしたら、日本の農産物ばかりでなく、すべての製品、テレビに至るまで輸入禁止がかけられても文句は言えないわけですね、赤ちゃんを抱いて日本に旅行に来たら二十倍の被曝をするということを国際的に宣言しているわけですから。もちろん、健康にも影響がありますし、日本に与える経済的な影響は極めて高いというふうに思います。

 私は技術者ですので、いろいろ政治的なことは別にいたしまして、ぜひ、できるだけ早く日本の技術力を動員して、まず第一に梅雨の前、第二には風が吹く台風の前に、すべて除いて、木なんかに、葉っぱなんかにはつきますから、適当に、夏ぐらいには雑草も葉っぱも全部切って、回収できるフィルターのついた焼却装置で焼却すれば、福島を一年以内に安全に住めるところに戻すということが極めて重要なことではないかというふうに思います。(拍手)

川内委員長 武田参考人、ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

川内委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 参考人に対する質疑は、理事会の協議に基づき、まず、各会派を代表する委員が順次質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。空本誠喜君。

空本委員 おはようございます。民主党の空本誠喜でございます。

 本日は、参考人の皆様におかれましては、本当にお忙しい中御出席いただきまして、ありがとうございます。

 貴重なお時間でございます。早速質問をさせていただきます。

 まず、福島県、そしてその近郊における汚染の問題についてお聞きしたいと思います。

 現在、かなりの地域、また私も、東北自動車道もしくは東北新幹線を、線量計を持って測定をしながら動いたことがございます。最近も、先週福島に行ってまいりました。その中で、やはりいろいろな地域で点在してホットスポットが今あるようでございます。そういった中で、これから、今福島県の方々が避難されておりますが、そういった方々がいつ戻れるのか、そういったことを考えていかなければならないかと思います。

 菅総理が五月四日、埼玉県で避難されている双葉町の町長さんの方に、年明けにはもう一度モニタリングを行って、それで結果を出して、帰れるかという判断をするというふうなことをおっしゃっておりますが、チェルノブイリのときに強制移住ということがございました。九一年に強制移住の正式な法律がウクライナとかでできたりしております。そのときには、年間五ミリシーベルトで強制移住という形をとっております。

 また、八六年、チェルノブイリ事故があってすぐは、旧ソ連邦においては若干甘い数値がありまして、しかし、これは国際的な非難を相当浴びました。さらに、これが一因となってソ連邦の崩壊にもつながっていった、国の崩壊につながっていったということもございます。

 そういった中で、今、線量マップ、汚染マップと言われておりますけれども、かなりの地域で高濃度の汚染がされている。五ミリシーベルト・年間、こういったものではなく、その数十倍、数百倍でございます。そういった地域において、これから移住、もしくはリエントリー、もう一回戻れるか、そういったことをどういうふうに判断されるかお聞きしたいと思います。

 まず、久住先生から御意見をいただければと思います。

久住参考人 お答え申し上げます。

 先生おっしゃるとおり、チェルノブイリにおきましては、事故の五年後に、五ミリシーベルトということで強制移住ということが法律上も決められたと承知しております。

 現在、福島県におきましては、関連の地域でそれより高い地域がございますが、先ほど来、別の参考人の方もおっしゃいましたけれども、非常に計画性を持ってうまくその汚染された地域を除染、改善措置をしていくということで、できるだけ広い地域に対して、住民の方々が帰れるような努力をするということがまず第一に必要ではないかと思います。

 では、その限度をどうするかということでございますけれども、私は先ほど、チェルノブイリの教訓も生かしてということで、その後国際的に議論された数字を示しましたが、私ども安全委員会といたしましては、国際的な基準に沿って、放射線の防護に対する助言を申し上げます。ただ、それをどのように判断され、総合的な判断が必要ということを先ほど申し上げましたけれども、どのように総合的に判断されていくかということは、議員の皆様初め行政の判断ではないかと思っております。

空本委員 大変厳しい状況に今福島はございます。そういった中で、特に発電所近くの地域においては、除染をしても大変厳しい。ということならば、早い時期に、避難されている方々に対して正しい情報、そして、移住が必要ならば、そういった地域に移住していただくような対策を早期に提示すべきだと思うのですが、武田先生、そういった点で御意見をいただければありがたいのですが。

武田参考人 日本の技術力、工業力、財力をもとにして、福島原発の近くも含めて一年一ミリシーベルトに下げて、数字をいじくるのではなくて、一年一ミリシーベルトに下げるということが不可能であるということは、私は全然そう思っていません。きちっと動員をして予算をかけてやれば、私は大地を取り戻すことができると思いますし、日本は国土が非常に大切ですから。

 今は、例えば年明けまでに帰れることを検討すると言っておられますけれども、何をして下げるのかということが全く示されておりません。これこそ、国が真っ先にやる。どうしても三ミリシーベルトぐらいまでしか下がらないというのであれば、その具体的な方法と時期を示して、そして説明をすべきだというふうに私は思います。

空本委員 ありがとうございます。

 その中で、小学生の校庭の使用についての二十ミリシーベルトという値、先ほど申し上げましたが、チェルノブイリで強制移住が年間五ミリシーベルトです。これで二十、文部科学省の方は九・九九というような数字を出してきておりますけれども、大変厳しい状況にあることは間違いございません。そういった中で二十ミリシーベルトを与える。

 そして、そういった中でもう一点気になるのは、先ほど先生方からDNAに対する影響というのがございました。放射線を百ミリシーベルト以上与えると、顕著な、有意な、見えてきやすいと。本当は、レス百ミリシーベルトでも実際はその確率はありますということがございます。

 そのときに、一点お聞きしたいのは、年間百ミリ当たった場合と、例えば十年で百ミリ当たった場合、年間十ミリずつ当たった場合、そういったときの健康影響について、どのような影響があるか、どのような違いがあるか、崎山先生にお聞きしたいのですが。

崎山参考人 それは線量率の問題で、例えば百ミリシーベルトを一遍に浴びる場合と一年かけて浴びる場合とは違う、そういう実験データはあります。

 そのために、ICRPは、六十年近く追跡調査した広島、長崎のデータ、そのリスクに二分の一を掛けているんです。二分の一を掛けて、先ほどお示ししましたような結果が出ているわけです。

 二分の一を掛けることが妥当かどうかということには議論がありまして、例えばヨーロッパの放射線リスク委員会は、それは掛ける必要はない、二分の一は多過ぎる、一でいいと。それから、アメリカの科学委員会は一・五分の一でいいと。だから、ICRPは一番過小評価して二分の一にしているわけです。ですから、あのデータはもう既に、分割というか遷延照射を考慮に入れたリスクであるということなんです。

空本委員 ありがとうございます。

 年間の線量と、そして逆に累積の線量の考え方。線量、浴びた全量と浴びている率、これの考え方がやはり私たちはなかなかわかりづらいと思うんです。そこをしっかり理解しながらといいながらも、人工的に浴びる放射線というのは、発がんのリスク、確率的な影響のリスクを必ず持っているということを考えるならば、校庭の年間二十ミリシーベルト適用というのは、子供たちにとって、また妊婦さん、胎児にとってやはり影響を及ぼす可能性があるというふうに考えてよろしいでしょうか。崎山先生。

崎山参考人 もちろんそうなんですが、特に胎児とか小児は細胞分裂が盛んですから、放射線に対する感受性は大人よりもずっと高いわけです。

 研究者によっては、年齢にもよりますけれども、ゼロ歳から九歳までで被曝した場合と、四十歳で被曝した場合では、そのリスクが十倍ぐらい違うと。これは広島、長崎の傷害調査でもそういうふうに言われています。ですから、特に子供の場合は注意しなければいけないということです。

空本委員 ありがとうございます。

 本当に、子供さん、また妊婦さん、胎児の問題というのは大変重要な問題でありまして、感受性が高いということは間違いございません。その中で、今、年間二十ミリシーベルトを基準にしながら学校の、暫定的、夏休みまでと言っておりますけれども、これはやはり危険であるということは間違いないと思います。

 そういった観点で、即刻、安全委員会の方、しっかりと文部科学省に意見をいただきたいので、最後、久住先生からお願いしたいんですが。

久住参考人 ただいま先生言われましたとおり、文部科学省は夏休み明けまでということを言っておりますが、先ほど私が一から二十ミリのバンドで、現存被曝状況と放射線防護的に申しますけれども、考えたということを申し上げました。あの場合は、必ずしも二十にしなければいけないというものではもちろんないわけです、先生御存じのとおり。もちろん、一から十の間、ただ、十といったときは十から一を目指す、できるだけ努力をして目指すという精神が入っておりまして、たとえ二十にしても、二十からできるだけ早く一を目指すという精神は入ってございます。

 私どもが文部科学省から事前に御相談を受けましたときには、いろいろ文部科学省のモニタリングデータ等を見せていただきますと、セシウムと沃素の割合が半々のところまで、フォールアウトが初めのときは、沃素が十でセシウムが一だったというように割合を記憶しておりますが、沃素の方は半減期が短いので、一対一まで減衰しておりました。その時点で一対一であるということは、沃素の影響というのは間もなく消えるであろう、計算上は一カ月では消えるであろうという計算をいたしました。

 それから、室内と室外ではかってみますと、室内では校庭の十分の一の線量であるということを確認いたしました。ということで、私どもは、文部科学省は一から二十ということを言ってこられましたけれども、そのとき私どもは、多分、二分の一になり十分の一になるという見込みでもって、そのバンドで開始されることは支障はないのではないでしょうかという御返事を申し上げたという趣旨でございます。それも、一年間そのまま累積してしまうということではなくて、あくまで、夏休みの終わるまでにいろいろな手段をとってくださいよという精神を込めて申し上げたつもりでございます。

空本委員 ありがとうございます。

 とにかく、安全委員会から強く言っていただかなければこれは動きませんので、お願いいたします。

 そして、最新のパブリケーション一一一、二〇〇九年版では、一から二十の低い方でとれというふうに勧告されております。それをとるべきでありまして、また、一から二十のバンドの上は、九〇年勧告においては二十は職業人です。全くもって理解の仕方が違っております。そういった意味でも、正しい助言そして指導をお願いいたします。

 ありがとうございました。

川内委員長 次に、松野博一君。

松野(博)委員 自由民主党の松野博一でございます。

 参考人の皆さん、よろしくお願いいたします。

 私たちが政治の場で判断、決断をしなければいけませんことは、放射線被曝がもたらす影響と生活や社会活動の制限のバランス、放射線防護の最適化という言葉もいただきました、まさにこの点でございます。

 生活や社会活動の価値に関しては、個々の議員が自分たちの価値観に応じて判断をするしかありません。また、放射線の被曝量に関しては、情報の開示が正確に迅速に行われているということを前提にすれば、客観的な数値であります。もちろん、今このことが問題があるというふうには認識をしておりますが、私たち素人が一番わからない問題というのは、放射線被曝量が与える具体的な健康被害というのがわからない。ですから、放射線防護の最適化に対する判断が混乱をしているということだと思います。

 そして、専門家の方々にさまざまな御意見をお伺いしても、専門家の中でもこのことに対する評価にかなりばらつきがあるように感じておりますので、この点を中心にお話をお伺いしたいというふうに思います。

 まず、久住参考人に質問をさせていただきます。

 学校の生徒の被曝量の話が続きました。一ミリシーベルトから二十ミリシーベルト以下に努めるという表現だと思いますが、これは学校生活での被曝量だというふうに思います。その生徒が例えば通学ですとか家庭生活で受ける被曝量を加えると、この数値を上回る可能性があるという認識でよろしいんでしょうか。

久住参考人 その件に関しましては、先日文部科学省が、学校での影響は十数%、それ以外は自宅といいますか、学校以外であるという計算をされましたけれども、それはそのようであるかと思います。

松野(博)委員 そうしますと、上限を超えてくる可能性もあるということだと思います。

 崎山参考人にお伺いをしたいと思うんです。

 先ほどの説明の中で、細胞一個のDNAの放射線による切断に関するお話をいただきました。上限が二十ミリシーベルトを超えてくる可能性があるということは、細胞一個に年間平均二十回放射線が通り、二十回切断が起こるというふうなことでよろしいんでしょうか。

崎山参考人 細胞一個に放射線が通っても、必ずしもDNAに傷がつくわけではないわけです、ほかを通るかもしれませんから。傷がついたとしても、重要な遺伝子が傷がつかなければそれでいいわけなんですね。

 ですから、そういうのは全部確率の問題で、公衆が、大人全部含めて、二十ミリシーベルトを浴びると一万人に二十人ががんになるということがICRPの勧告であるわけです。ですから、二十回通ったとしても、必ず二十個傷ができるということではない。一ミリシーベルト通った場合は、大体三十個の細胞に一つの割合で複雑な損傷が出る、そういうような実験結果はあります。

松野(博)委員 もう一度、崎山参考人にお聞きをします。

 そうしますと、具体的な、将来の発がん性以外の面で、年間二十ミリシーベルトを超える被曝量を生徒が受けた場合にどのような健康被害が出るか、手短に教えていただければと思います。

崎山参考人 一般に知られているのは発がんですね。広島、長崎の人は、発がん年齢になったときに、被爆していない人に比べて余計がんが出る。それが、計算だとICRPのあのグラフなわけです。

 そのほかに、広島、長崎の人の健康をずっと追跡調査していますと、虚血性心疾患とか脳梗塞とか消化器疾患、気管支疾患、そのようながん以外の非がん疾患というのも線量に比例してふえているということはわかっています。

松野(博)委員 久住参考人にお伺いをします。

 今、崎山参考人がお話しをいただいた二十ミリシーベルトレベルの健康被害に関しては、久住参考人はどのように評価をされていますでしょうか。

久住参考人 崎山参考人は、高線量被曝である原爆被爆者に対して、今回は低線量率の被曝でございますけれども、それが影響としては二分の一であるということで二分の一にしているというお話でございますが、私といたしましては、がんにつきましては、国際的に認識されておりますことは、百ミリシーベルト以下では明らかな影響は検出できないということでございます。

 ICRPは、御存じのとおり、千ミリシーベルト受けたときに五%がんになる、今、崎山参考人もおっしゃったとおりですけれども、五%がんになると言っておりますので、百ミリシーベルトでは〇・五%ということになります。

 ただ、その〇・五%が、今、日本の半分ぐらいの方ががんになるという状況を考えますと、それを検出できるかというと、なかなかそこは検出が難しい。確かに、DNAが傷ついたり修復が難しかったりということは放射線の影響としてございますが、それが病気として出てくるまでにはかなりのステップが、これはほかの参考人もおっしゃいましたけれども、必要です。

 ですから、私どもは、本当に臨床的な影響として出てくるかということを考えますと、二十ミリでは影響は明らかなものは検出できないであろうと思っております。ただ、お子さんの場合は、とはいえども、これから長い人生があるわけですから、いろいろなことを考えなきゃいけませんので、できるだけ低い線量に保つ努力をするということは非常に重要であると考えております。

松野(博)委員 それぞれに立派な見識をお持ちの参考人の方々からお聞きをしても、それぞれ、放射線の健康被害に関する認識は大分違いがあるんだろうというふうに思います。

 例示として、学校での被曝線量の制限を考えますと、一方の相対する生活や社会活動の面で考えられますことは、一つは、子供たちが教育を受ける権利、これから上がってくる個人の利益と子供たちに教育を受けさせるという社会的な利益があります。その利益と子供たちの受ける健康被害のバランスで判断をしていくということでありますが、これが全く危険であるという判断であれば、学校を休校するか、もしくは放射線の影響がない地域で学校を再開するしかありません。この判断を私たちはしなければいけないわけであります。

 参考人の皆さんに最後にお聞きしたいのは、これは政治家が判断をすることだという答えかもしれませんが、この一ミリから二十ミリシーベルトという制限の中で学校を続ける、授業を運営していくという判断に関して、久住参考人はお立場でなかなか発言が大変かと思いますので、他の三人の先生方にそれぞれ、個人的にはどう御判断をされるかについて御所見をお伺いしたいと思います。

矢ヶ崎参考人 まず、報告しておかなければならないことは、福島市内の一つの小学校の原発事故の際の避難マニュアル、それを拝見させていただきましたけれども、これは全く、地震のときの避難様式とさして変わりないものでありました。ということは、放射性のほこりがどんどん舞ってくるのに、事故だといったときに子供たちにさせるマスクもない、ほこりが来るから帽子をかぶせてビニールかっぱでもやらなきゃいけない、そういう、実際に子供をプロテクトするという考え方が一切ないんですね。

 安全神話というのは、単なる原子炉のやり方ではなくて、人権に対する無視、これが決定的ではないかと判断いたしました。今、日本のような文化国家で、被曝している人たち一人一人に放射線のバッジも与えられない、そういう人権無視というような基本行政が現実にあったということで非常に愕然としております。

 二十ミリの問題も、こういうきめ細かい住民、子供たちに対する視点があるならば、被曝を二十ミリまで上げて、それでたくさん被曝してもその場しのぎをしようというような考え方は絶対出てこないはずです。

 被曝ということに関しては、私はICRPの基準そのものに異議を唱えて、科学そのもの、人間の健康自体をきちっと第一に上げた基準ではない、原子力発電所を運営していくために、この程度までしないと運営できないから、みんなが得られる利益のために犠牲になっても我慢してくれ、そういう考え方で構成されています。要約の十四番目にそういうようなことが明記されておりますけれども、そういう考え方そのものをきちっと改めて、主権在民といいますけれども、それを基本に見直して、あらゆる手で今すぐ除染に当たる、そういうことを行政が踏まえて、全部国でやっていかなきゃいけない。

 それで、小学生のことなんですけれども、安全な場所で教育を受けさせるということを国家的な意味できちっとやるべきであると思います。今のように、二十ミリという数字遊びをして、それで、やるかやらないかだなんという時期ではない。即刻、安全なところで教育をする手だてをきちっと講じなきゃいけない。今そこに住んでいる人の健康を守るという、いろいろな具体的な手だてがあるわけなんですけれども、それを実施しながら、子供たちに対しても、例えばバスで通学できる範囲に安全なところが獲得できるならば、朝一時間目は犠牲にしてでもみんなで行って、夕方最後の時間を犠牲にしてでもみんなで帰ってくる、そういう安全なところで教育させる。高学年ならば、まとめて集団疎開みたいなこともする。本当に、住民主権のそういう施策をしないと、数字遊びをしている限り住民は救われないと思います。

崎山参考人 チェルノブイリの事故があってから二十五年ですけれども、現在のチェルノブイリの状況というのが福島の二十年後だと考えていいと思うんですね。一番汚れているところは強制移住区域よりも汚れているところがあるわけですから、そこにずっといるということはほとんど考えられないぐらいだと思います。

 それで、原子力は危険だということをずっと反対してきた人は言っていて、危険であるということを安心、安全と言いくるめて原子力行政というのは進んできたわけです。それで、この事故が起こって、そのツケを次世代に回すという構図が今の二十ミリシーベルトを強制する構造だというふうに思っています。

 ですから、こういうことになった責任者は、もちろん政府も含めてですけれども、将来の世代の健康ということを一番考えてできる限りのことをやるべきだ、命が一番大切なんですから、何をおいても彼らを安全なところに移住させるなり、すべての努力をそのために尽くさせるべきだ、二十ミリシーベルトを押しつけるべきではないと私は思います。

武田参考人 私は原子力に反対なわけでもないし、今まで私の研究もそうでありましたが、それはどこにその信念があるかといったら、一年一ミリシーベルトを守るというところにあります。

 先ほど陳述のときに申し上げましたように、技術というのは完全なものではありませんが、ある合意をなしてそれを実施するのが技術者としての責務でありますから、一ミリを二十ミリにするということを決めることはできません。なぜできないかというと、再三述べられているように、百ミリ以下は明確な学問的な結論が出ないわけであります。明確な学問的な結果が出ていないのに、二十ミリが安全であるということは科学者としては言えません。それは、二十ミリはわからないということしか言えません。

 それから、社会的な合意では一年一ミリですから、もちろんその範囲にとどめるべきである。しかし、この問題は、原子力発電所をつくったときに、それに対して被曝するときにどうするか、例えば水はちゃんと国家が用意するのか電力会社が用意するのか、子供たちが被曝したら疎開の小学校は用意しておくのかしておかないのかといった、原子力発電所を世の中に置くということに対して日本社会がどのような対応をするかということが、法律上も電力会社の倫理上も我々技術者の側もほとんど抜け落ちていたということなので、それにさらに輪をかけて、子供たちに二十ミリシーベルトというのが安全であると。これはいろいろな人が安全であるとは言っていないとか言っていますけれども、現場では父兄に対して、父兄が安全ですかと聞くことに対して安全ですと答えざるを得ないわけですね。だって、そこで児童を遊ばせるわけですから。

 ですから、そういうような小手先のことではなくて、もう少しがっちりとした、反省すべきところは反省して、今被曝している人たちをどうするかということを非常に早急に、もう二カ月もたちましたから、私は、決めて行動していかなければいけないと思います。

松野(博)委員 ありがとうございました。

川内委員長 次に、斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。

 きょうは参考人の先生方、本当にありがとうございます。

 それでは、時間も十分と限られておりますので、四人の先生方に質問を最初にだっとさせていただいて、あとお一人ずつ答えていただければと思います。

 まず、久住原子力安全委員ですけれども、ちょっときょうの本題からそれますけれども、今ごろになってメルトダウン、かなり初期の段階から起こっていたということを我々知らされて、愕然としております。もしそうであれば、住民の安全を守るためのいろいろな措置等、別な手を打つべきだったのかもしれません。そういう中で、原子力安全委員会が、初期の段階で時々刻々と出てくるいろいろなデータを見て、メルトダウンという事象を想定しなかったのか、どのような議論があって、燃料の炉心溶融は起きていないというふうに判断されたのか、そのことをお聞きしたいと思います。

 それから、矢ヶ崎先生には、お話の中で、チェルノブイリの後の子供の甲状腺障害やがんのお話をしていただきました。そのときに先生が、いろいろな意見があって、大変情けないことにという言葉をおっしゃいました。どんな意見があって、何が情けないのか、そこをお話しいただきたいと思います。

 それから、崎山比早子先生には、大変勉強になりました。ありがとうございました。地球ができて四十五億年、生命が生まれて三十五億年と言われておりますけれども、その三十五億年の間、地球上、表面はある意味で放射線場だったと思うわけです。そういう中で、生命の進化に放射線がどのような影響を与えてきたのか、また放射線がどのように地球上で変化してきたのか。また、高等生物になってからの放射線影響というと、当然、初期のころの放射線影響とは違ってくるということも考えなくてはなりません。そういうことも、現在の科学の最先端の知見を教えていただければ、このように思います。

 それから、武田先生、私も技術者でございまして、そういう意味では、まさにじくじたる思いでございますけれども、これもきょうのテーマからちょっと外れるかもしれませんが、今回、総理が浜岡原子力発電所の停止を要請されました。このことについての先生の御見解。それから、日本の技術の粋を集めて除染をすべきだ、まさにそのとおりだと思います。ただ、想像しますに、大半を占める山岳地帯、山、それから野原、こういうところでの除染をどうするかというのが一番大変だと思うんですが、それについてのお考えがあれば教えていただければと思います。

久住参考人 非常に難しい、私の専門外のところでございますが、メルトダウンに関する事実関係だけをお答えさせていただきます。

 私ども安全委員会は、保安院が東電に対する規制を行いますが、その保安院から、現状についてもどのようにそれを評価したかという報告を受けるという立場にございます。

 メルトダウンに関しましては、先般、保安院が今現状の炉心の状況という図を持ってまいりましたときに、私どもの安全委員長、班目委員長は、非常に不正確な図というような表現で保安院に対する強い意見を言われたと思います。

 私ども安全委員会では、いろいろな状況を判断いたしまして、委員会の中では、メルトダウンが起きているのではないかということは早い段階から想定しておりました。ただ、ではそれがどうやって確認できたのか、東電がどのように、あるいは保安院がどのようにそれを確認できるのかということは私どもはわかりませんので、今回のメルトダウンの報告というのは、実態が確認できた段階での報告と思っておりますが、想定はいたしておりましたというのが正直なところでございます。

 お答えになっておりますかどうか。失礼します。

矢ヶ崎参考人 実は今、世界で、被曝をどういうふうに見るかという見方に、大きく分けて二つ存在してしまっております。一つはICRPで、率直に申し上げますと、これは、内部被曝を全く見ない尺度でいろいろ計算やその他見方をやっております。もう一つはヨーロッパ放射線リスク委員会、これは、内部被曝をきちっと科学的に見てどういう結果があるか、そういうことを見ている集団がございます。

 日本では、特に内部被曝を見ないということで、チェルノブイリの結果も原爆症認定集団訴訟などで示されましたけれども、被爆者の見方も随分違うものがあります。

 具体的には、私も著書に書きましたが、アメリカが原爆を投下したすぐ後、アメリカと日本の科学者を動員して内部被曝を隠すようにいたしました。これは目的からすると、核兵器を通常兵器と同じように見せて、放射線で長期的に人々に病害を与えるということはないという姿を描こうとしたわけです。

 具体的な手段は、非常に単純なんですけれども、枕崎台風という物すごく大きな台風で、広島なんかは床上一メートルの大洪水に見舞われた後で測定をやらせて、ほこりですから大部分洗われちゃったけれども、辛うじて土の中に残っているその量で、この量しか初めからなかった、そういう極めて複雑な計算をしていますけれども、そういう科学操作をいたしました。

 この結果が、被爆者の認定基準、一九五七年に原爆医療法が定められましたけれども、このときに、直接被爆といって、核分裂が六百メートル上空で起こりますけれども、そのときに地上に放射線が降り注いでおりますが、爆心地から二キロメートルまではその影響がある。この二キロメートル以上遠いところの人は一切放射線は浴びていない、そういう基準で今の被爆者認定基準がつくられております。

 これが実は住民の実態と全く離れているものですから、二〇〇三年から三百六人の原爆症認定集団訴訟というものが起こったわけです。そのときに、集団訴訟で訴えた人たちは、がんにかかっている、健康被害を受けている。それで、基本的には、二キロよりも遠い、原子雲、キノコ雲が広がった範囲に住んでいた人たちが中心ですけれども、原子雲があるということは、実は、放射線が雲のところにあるものだから、雲ができて雨が降る、そういうところで、非常に濃い放射能のほこりがまき散らされた領域なんですが、そこに住んでいる方が、自分の病気は放射線のせいだからということで訴訟を起こしたわけなんです。

 裁判所は、何が本質であったか、そういうことを一生懸命追求しました。十九回裁判がありましたが、すべて内部被曝を認めて原告勝訴ということにいたしました。これをきちっと集団として認知していないのが、日本の放射線化学の人たちでございます。

 チェルノブイリを見るときも、現実にはいろいろな疾病がたくさん出ている。ただ、患者さんあるいは亡くなった方の原因がまさにこのチェルノブイリの放射能でつくられた、そういう側面の追求ができないんですね。それだものですから、放射線が原因と考えることはできないということで、いろいろな疾病の患者さんがいるということは抜きにして、認められない、それがないんだ、そういう表現までしてしまっている状況でございます。

 ECRR、ヨーロッパ放射線リスク委員会が、一九四五年から八九年までの間に放射線で亡くなった世界の人の数が六千五百万人と推定しております。それに対して、ICRPの基準でいうと百十七万人しかありません。この差が内部被曝の、みんな世界じゅうでほこりを散らされたものがカウントされていない、そういう状況です。

 さらに一言つけ加えますと、今、何ミリシーベルトというような数字というのはすべて外部被曝で、外から放射線が飛んでくる基準で語っておりますけれども、内部被曝は、体の中に入った物質の量で被害が決まってきます。例えば沃素131だったら、一千万分の一グラム体の中に入っただけで一シーベルトというような大きな被害が与えられる。このことに関してきちっと議論できている日本の科学の現状ではありません。

崎山参考人 生物は発生のときからずっと放射線にさらされて生きている、だから放射線は危険じゃないというような教育がずっとやられてきました。文科省とか電力会社が子供たちに配付する教材には、ずっとそういうふうに書いてあります。

 でも、生命が生まれたのは、宇宙線が全然届かない深海です。それで、だんだん進化していって浅い海に出てきた。それが浅くまで生きられるようになったのは、バンアレン帯というものができて地球に降り注ぐ宇宙線が少なくなった。だから、深海から上の方に出てきても生物は生きられたわけです。それで爆発的に生命がふえて、陸上に上がったのはなぜかというと、紫外線があって、紫外線がずっと強かったら生物は生きていられないわけです。オゾン層ができて紫外線が遮られたので生物は陸上に上がれた、そういう経緯があるわけです。

 ですから、逆に言ってみれば、生物というのは、そういう宇宙線とか紫外線とかが少なくなったところにずっとふえていった、そういうふうな見方もできるわけですね。

 そういう見方をしないで、生物は生まれたときからずっと放射線にさらされている、だから安全だというような教育、文科省や電力会社がやった教育というのは全く間違えているんだろうと。

 それで、放射線というのは、一ミリシーベルトが安全というわけではないわけです。安全量は存在しないというのが国際的な合意なんです。なぜ一ミリシーベルトとしたかというと、それは、それより低くしたらもう原子力産業は成り立たない、そういうことなんですね。

 それで、放射線作業者が五年間で百ミリシーベルト、一年間で五十ミリシーベルトというふうに決めているのも、放射線作業者が何も一般の人たちよりも放射線に感受性が低い、彼らにがんができにくいというわけではないわけです。そういうふうに設定しないと産業が成り立たない。

 だから、暫定基準とか規制値とかいうものは、生物学的とか学問的な基準で決めたのではなくて、社会的、経済的な理由からそういうものが設定された、そういうふうに認識した方がいいと思います。

武田参考人 私は、現在、福島原発は壊れていますけれども、日本の原発の中で一番安全なのは福島原発だと思います、もう壊れていますから。

 一番危険なのは、私は「もんじゅ」だと思います。「もんじゅ」の危険性の第一は、「もんじゅ」の事故を隠しているということですね。そういう体制の中では巨大技術を安全に運行することはできません。

 それから、二番目は浜岡原発で、これはとまりましたけれども、まだ二、三年は燃料がありますので、十分に気をつけなきゃならない。ただ、福島原発が津波でやられたから浜岡原発は防波堤をつくるなんというつまらない議論で浜岡原発が議論されている限りは、やはり技術的には危ないと思います。

 次に危ないのが日本のほかの原発で、原子炉を除いて、システムとして全体を考えれば、青森県の東通原発が震度四で全電源を失いましたけれども、それを見てわかりますように、国民の被曝という点で考えれば、震度三から五ぐらいで設計されているわけで、別に、福島原発が震度六で壊れたところで何も驚くことはないわけですね。

 今度、事故が起こって私が何を思ったかというと、福島原発は震度五ぐらいで壊れるようになっているわけですよ、原子炉だけは違うけれども、全部終わって見れば。そのことは何もショックではありませんでした、残念でしたけれども。問題なのは、次々と出てくるうそです。このぐらいうそが多くつかれるのであれば、日本は巨大技術をやる資格はないというふうに思いました。

 それから、除染ですけれども、私もいろいろ計算をしまして、町の中はどういうふうになる、それから山野はどうだ、重機の入るところ、重機の入らないところをやりまして、福島原発の周りの五キロぐらいのところに全部汚染された土地を戻すと、やはり十五メートルぐらい上がっちゃうなという気がします。ただ、できないことではないし、状況を見ていますと、それを十分の一ぐらいにすれば、表土を一センチぐらい取れば、土を入れかえることなく、ことし実施してしまえば、一ミリシーベルトの枠の中に入る可能性がある、そういうふうに思っています。

 それから、特に葉っぱとか木々については、ちょっとこびりつく性質もあるので、夏ぐらいになって、土の上に載ったものがもう一回風で吹かれると葉っぱなんかにつきますので、適切な時期に雑草とか木の葉を全部切って、木自体は切る必要はありませんが、回収つきの焼却炉をつくって、そこでそれを順次燃やしてきれいにしていくということが必要かと思います。

斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。終わります。

川内委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 きょうは、四人の参考人の皆さんに貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。

 私は、最初に、医学、物理学をやってこられたお三方に伺っておきたいと思うんですが、あらかじめいただいておりました資料の中で、久住参考人は、四月十日の臨時会議で、二十ミリシーベルトに急に上がるということを大変心配されるのではないかと思いますが、しかし、あくまで、一年間に百ミリシーベルトまでは、確定的影響という、被曝をしたときに短期間にあらわれる身体的影響も、長期的に起こってくる晩発的、確率的影響も起こらないということをはっきり御理解いただきたいというお話でありました。

 では、百ミリまで大丈夫というお話になりますと、その場合の考え方としては、閾値を幾らにとれば、そこから上は確定的にリスクが出てくるけれども、もちろん、そこまでは発がんのリスク等あるんだけれども、そっちは確率的リスク、要するに、確率的リスクと確定的リスクの両方のお考えということになってくるのかなというふうに思うわけです。

 その考え方について、先ほどDNAについてのお話のときに、閾値を考えないで確定的というお話もありましたので、久住参考人、矢ヶ崎参考人、崎山参考人から、この点についてのお考えをまずお聞かせいただきたいと思います。

久住参考人 お答え申し上げます。

 確定的影響と申しますのは、放射線の被曝を受けたときに短期間にあらわれてくる影響でございまして、これは先ほど崎山参考人からも御説明がございましたように、百ミリ以下では、確定的、被曝直後あるいは二、三カ月の間にあらわれてくる影響はないという意味でも、私も同様な考えで申しました。

 それから、確率的影響というのは、次の世代ではなく、その後の長期的な被曝を受けた人の影響、主にがんの影響、悪性腫瘍の影響でございますけれども、それは先ほども申しましたけれども、今、ICRPあるいは国際的な理解では、千ミリシーベルト、一シーベルトで五%であるということですと、百ミリシーベルトというと〇・五%、千人に五人ということになります。

 現在、日本人ががんで亡くなるという割合が、先ほど半分ぐらいと申しましたけれども、軽く見積もりまして三〇%、四〇%といたしますと、千人のうち三百人か四百人ががんで亡くなるということになります。そのうちの五人を検出できるかということになりますと、私どもは、臨床的影響というのは疫学調査という手法でやっておりますので、その方法では検出ができない。

 放射線防護委員会、ICRP、あるいは今の国際防護基準が、ゼロから比例して線量がふえればふえるほど多くなるということを採用しておりますのは、あくまで百ミリシーベルトを、しっかりした閾値とは申しておりませんけれども、ここにはいろいろな科学的データがまだ不備なところもございますので、はっきりとそうは申しておりませんけれども、百ミリシーベルト以下では少なくとも明らかな影響は検出できないという認識のもとに、だけれども、放射線防護のためにはできるだけ安全サイドを考えましょうということで、閾値を設けないで、ゼロから比例的に増加するという考え方をとりましょうということで、ここは若干、全くの科学的なところと違う、放射線防護での世界という位置づけというように思っております。

矢ヶ崎参考人 矢ヶ崎でございます。

 数字の問題に関しましては、私は基本的に、国民の被曝をどういうふうにとらえるか、この視点なしには数字を云々することは決してできない、そういう立場でございます。

 具体的には、たとえ二十ミリシーベルトというような値を出すにしても、政府がそのときに、住民の放射線被害をどうやって回避するか。マスクを与える、水を与える、帽子を与える、バッジを与える、そういうことを総力を挙げてやって、国民との合意で、ここの土地を守る人がどうしても離れがたいというような、そういうことに対してどういうふうに協議していくか。それは住民と政府の間のかかわりで協議でき得る事柄だと思いますけれども、今は逆の立場。

 原子力発電所がこういうふうに危機的な状況になったときに、住民はそのままにしておいて、被曝だけはたくさん、ここまでやっても法的には触れない、だから、二十ミリシーベルトまでいったって法的には面倒見ないし、東電に責任とれとも言わない。そういうことを国家で決めているというような、そういうまさに住民切り捨ての数字が進んでいる、ここのところに日本の政治の構造のおかしさがあるんじゃないかなと、一住民としては痛切に感じます。

 二十ミリシーベルトだなんということは、ヨーロッパ放射線リスク委員会などの人間の健康第一ということで考えるところでは、とんでもない数字になります。

 日本の数字云々というのは、被爆者のことで申し上げましたけれども、実際は、二キロ以上で放射線をさんざん浴びている人たちもいっぱい病気にかかっているんですよ、がんでも亡くなっている。この人たちをゼロラインだということで、それよりもちょっとはみ出した人だけ被爆者と勘定して、それでいろいろな症状がないとかあるとか言っている、それが日本の状態です。

 ですから、数字云々という前に、住民に対する視点をどういうふうにするか、大事な日本の国民をどういうふうに守るか、この視点がない限り、絶対に私は何ミリシーベルトと数字が出ても納得するものではありません。

崎山参考人 今、原子力安全委員の方からおっしゃられた、これはずっと前から東大の放射線科の准教授なんかもおっしゃっていたんですが、日本は、大体二人に一人はがんで死ぬ、それが〇・五%ふえるだけだ、そういう議論が医師から出されたということは非常に問題だと思うんですね。〇・五%死亡率が上がるということはすごいことですよ、もしほかのことでしたら。

 あと、被曝というのは一様になされているもので、例えば二人に一人はがんで死ぬというのは、日本は世界で一番長寿国です。がんというのは大体が老人の病気ですね。天寿を全うしていくということは、先ほどお見せしましたように、がんの多段階説ですから、いろいろな遺伝子の変化が積み重なってがんになる。そういう時間軸の上に立って、五〇%の人ががんで死ぬ。

 この場合、特に子供たちが二十ミリシーベルト浴びるということは、子供たちの将来、例えば、今六十歳の人が放射線を浴びて、二十年後、三十年後にがんになっても、その人の寿命かもしれない。でも、ゼロ歳から九歳とか、小学校、高校生ぐらいの人が二十ミリシーベルトを浴びて、だって、彼らの方が放射線の感受性が高いわけですから、老人よりも早くがんになるかもしれませんし、発がん率も高くなるかもしれない。

 そういうことを一様に、なべて、〇・五%死亡率が上がるから大したことないというような議論は、もうほとんど論外だと私は思います。

吉井委員 時間が参りましたので、武田参考人への質問は、後の自由質疑のときにまたお願いしたいと思います。

 どうもありがとうございました。

川内委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日の参考人のお話、本当に役立ちました。

 今回の福島の事故は、一九五三年以来のいわゆる原子力の平和利用ということが本当に可能なのかどうかという大きな問題を突きつけていると思います。もちろん、我が国は被爆国で、いわゆる核兵器等々の問題は廃絶を願うものですが、その一方で、平和利用ということは国民的合意も得てやってきたことだと思います。

 しかし、一たん事故が起きると、一番伝えなきゃいけない情報が避難している人にも伝わらないという状況。それから、未来が見通せない、子供たちはどうなるのかという不安に今国民が立たされていると思います。

 この委員会は、一つでも前向きに物事を提言しながらやっていこうという委員会だと理解しておりますので、その観点から、おのおの聞かせていただきます。

 まず、久住委員に関しては、私は、いわゆるSPEEDIがスピーディーに情報伝達されないために、当日あるいは翌日、逃げる方向が風下に向かってしまったり、非常に余分な被害をふやしたと思います。

 例えば、赤宇木というところの避難所に逃げられた方、これは浪江のちょっと先あたりだったと思いますが、ここは、簡単な数値でいうと、年間になると百ミリシーベルト以上のところに行ってしまうような、しかしそこが避難所になっておりました。これは本人にも伝えられない。そして、今もその方たちは、恐らく自分が受けたトータルの被害を把握できていないと思うんですね。

 早速にやっていただきたいのは、聞き取りと、健康手帳を今回避難している皆さんにぜひ持っていただきたい。県外避難の方もおられますので、あのときの私の歴史はどこにあったのかということをきちんと個人個人に持っていただくということが、今ぜひ安全委員会にやっていただきたいことです。

 一点目は、なぜ情報がスピーディーに伝わらなかったのか。そして、今後のことを考えると、個人管理の手帳ということを安全委員会から強く強く強く言っていただきたいが、いかがでしょうか。

久住参考人 お答え申し上げます。

 先生がおっしゃいます情報を的確に早く伝えるということは、私どもも非常に重要であると認識しております。それが住民の方々を被曝から守るという意味で非常に重要なことかと思います。

 SPEEDIを使ってなぜスピーディーな情報を伝えなかったかということでございますが、まず、SPEEDIはもともと文部科学省が持っているものでございます。私どもは途中から、安全委員会どうぞお使いくださいということでお借りしているというのが現状でございます。

 それは、通常、事故、いろいろな場合を私ども防災訓練等でいたしますが、その場合には、発電所からの放出量がわかっておりまして、それに対して、では、風向き等々考えまして、どの方向へプルームといいますか放射線の多い空気が流れるかということをSPEEDIで予測いたしまして、そこのところを避難する等々いたしますが、今回は、まず発電所からの放出量がわからない、その状況で私どもは文部科学省からSPEEDIをお使いくださいと託されたわけですが、どういうふうに使うことができるだろうかということを考えまして、実は文部科学省の実行されますモニタリングを私どもが評価するということで、文部科学省からデータをいただくことになっております。

 私どもは、逆に、その文部科学省が実施されるモニタリングデータが、プルームというか放射線の量の多い空気、そこをうまくつかまえておれば、それを逆算することによってどのぐらい放出されたかがわかるのではないかということで、一生懸命そのあたりの測定をしてくださいということを文部科学省にお願いしまして、何点か確認できたところでSPEEDIの結果を公開させていただいたというのが現状でございます。

 おっしゃるとおり、早く風向きをということでございますが、ちょっと私どももそこは、初めの時期は、SPEEDIも含めて、持っていなかったというのが事実でございます。

 それから健康影響の問題でございますが、ここは非常に重要なことでございまして、今既に経産省の支援チーム等々でいろいろなことをされていると思いますが、これは私の個人的な意見かもしれませんけれども、各県あるいは各自治体は、疾病登録あるいはがん登録のようなものを持っておられます。既にそういうものがありますので、そういう既にあるものを強化して、住民の方々を網羅できるような形で、どういう影響が出たかというのをきっちりと押さえていくということが重要ではないかと思っております。

阿部委員 私が申し上げた意味はちょっと違うんですね。

 これは矢ヶ崎さんと崎山さんに同時に伺います。

 実は、私は小児科の医者です。赤ちゃんが生まれたとき、お母さんたちに母子手帳を持っていただきます。その子がどこでどんなふうに暮らしたか、どんな疾病にかかったか、予防接種はどう受けたか、履歴、ヒストリーがわかります。私は東大におりましたので、よく福島からがんの患者さん、子供を診ておりました。

 これから先、もし私の前に患者さんとして来た子が、では、この子の履歴の中にはどんなことがあっただろうか、今のような方法ではたどることができません。一人一人が持つことが重要なのです。さっき、矢ヶ崎先生はフィルムバッジ、これも一人一人です。あと、線によって、アルファ、ベータ、ガンマが分析されます。そこまでいかないと、実は今の医学統計の中で、がんの確率が何%、何%といっているのは外から探っているようなもので、中、内実を見ていないと思います。

 今回、私は悲惨さはチェルノブイリを上回るくらいと思っています。だからこそ個人管理の手帳を持つべきだと思います。お二人に、同じ質問です。

矢ヶ崎参考人 私も全く同じ意見を持っております。

 今、具体的には三日ほど前も郡山や丸森、福島に行ってまいりましたけれども、そのときに住民の皆さんから、自分の子供は日ごろぜんそくを持っているが、のどが非常に渇いて、からからのせきが出るようになった、甲状腺がはれるようになった、卵巣の右側がはれている、そういう訴えを聞きました。

 これが放射線とどういう因果関係があるかということはきちっと統計学的に見ないとわかりませんけれども、おっしゃるように、すべての住民に、福島だけでなくて、全国民的な規模できちっと健康管理手帳を記録してもらうということが大変重要です。これは、福島だけではなくて、比較的安全なところの人々と福島を比較することによって、放射線の害ということがきちっとあぶり出される、そういう統計を示し得るものになります。そういう意味で、ぜひこれは実現させていただきたいと思っております。

崎山参考人 原発労働者が放射線管理手帳を持っているような感じだと思うんですが、そういう記録をつけておくことは重要ではあるわけですけれども、予防にはならないわけですね。がんになってしまったときに、もとをたどって放射線であるかもしれない可能性を証明するためには記録を残すということが大切だとは思いますけれども、まずやることは、そういうこと以前に、がんにならないように、皆さんが、特に国会議員の方が力を注いで、それにならないようにしていただきたいと思います。

阿部委員 ちょうどよくつないでいただきました。

 では、予防のために何をするかということで、武田参考人にお尋ねいたします。

 私は全く同じ考えで、今、降り注いだ、土や木々やいろいろな、屋根の上にもある放射線をまず除染する、それなくして膨大な健康被害は防止できないと私は思います。そして、かなりの可能性でできると思います、一年かどうかは別として。

 残念ながら、ここで時間となりましたので、またぜひ、除染を早めるべきだ、強めるべきだ、全力を挙げるべきだということを随所で発信していただきたいと思います。

 終わらせていただきます。ありがとうございました。

川内委員長 以上で各会派を代表する委員の質疑は終わりました。

 これより自由質疑を行いたいと思います。

 この際、委員各位に申し上げます。

 質疑のある委員は、挙手の上、委員長の許可を得て後、発言をしていただくようにお願いいたします。また、発言の際には、所属会派及び氏名を述べた上、お答えいただく参考人を御指名いただくようにお願いいたします。

 なお、理事会の協議によりまして、一回の発言時間は三分以内ということにさせていただきたいと存じます。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

馳委員 おはようございます。自由民主党の馳浩と申します。

 武田参考人には、先般、文部科学委員会でもお世話になりました。あのときちょっと話題になりましたね。プールは今後どうかということで、各市町村は、小中学校を抱えていて、迷っておりました。先生として、学校における今後のプールの使用について、見解をお願いします。

 もう一つ、実は大変な課題は、放射性廃棄物の処理の問題ですね。

 私は、これは二つの流れが必要かなと思うのは、一つには、環境省が所管をする法律に基づいて廃棄物の処理をしていくという流れと、当然、その前段階として、モニタリングと評価を適切に行う、評価の分野にはもちろん医療分野も入る、この流れで処理の方針をつくらなきゃいけないと思うんですね。

 これは久住さんと矢ヶ崎さんに聞いた方がいいのかなと思いますので、今後、膨大にあふれている、大気中、地表、水、海洋、原子力施設以外へ出てしまった放射性廃棄物の処理についてのガイドラインをどうすべきかということについての所見をお伺いしたいと思います。

 以上です。

武田参考人 今回の事故が毎年続くわけじゃありませんので、多くの人にとっては一生に一度ぐらいの体験であると思いますから、被曝をする機会の起こるようなプールとかそういったものは別なものにかえるということを積極的にやるべきだと思います。

 それから、もちろん福島の除染を最優先にすべきだと思いますけれども、通学路なんかで非常に放射線の高いところと低いところがあります。したがって、できるだけ早く詳細に、どこがどのように汚れているかということを示すということが大切だと思います。

 これは、多くの福島以外のところでも、もちろん気流の関係とか雨の関係で非常に高いところと低いところがあります。それが非常に不完全な形で公開されている。そこら辺の人が行動をとることが難しい、こういう状態になっていますので、ぜひ全部を合わせて、除染の前でも、個人の被曝が減るような具体的な行動をとっていただければと思っています。

久住参考人 先生御指摘のごとく、放射性廃棄物の問題は非常に深刻な問題だと思います。

 私はまず第一点、非常に重要なことは、どの程度の汚染をされているのか、それがどの程度の量があるのか、そこをしっかり見きわめること、そして、それが一般の方々が住んでいらっしゃるところの関係、人への影響はどのような状況が考えられるのか、まず、そういう実態をしっかり把握することが重要であろうかと思います。

 その次に、汚染の程度あるいは量によってそれぞれ対応を決めていくべきかと思いますが、これにつきましては、現在、保安院を中心にいろいろな実際の実態把握をされていますので、それを踏まえた上で、私どもも一緒に考えさせていただければというように思っております。

矢ヶ崎参考人 まず、住民の生活の及ぶところから除染をするというのが大変大事ではないかと思っております。

 今、除染した土砂なんかをどういうふうに処理するかということで、政府は、そこにとどめておけ、そういうことをやっておりますけれども、とにかく生活の場面から汚染を取り除く、その処置をどういうふうに工夫するか。地下水の問題もいろいろあって複雑ですけれども、とにかく住民の生活第一、ここのところを徹底して、ある程度犠牲にしなきゃいけないもの、これは当然出てくるわけです。これだけの汚染が地球上に振りまかれている。処理して少なくするわけにはいきませんので、そういう観点で迅速に処理をしてもらわなければいけないということ。

 もう一つは、やはり東電で、こういう国策民営といいますけれども、振りまいたんだから、全部処理してもらうという視点、それは、一つの持っていき方として踏まえて、それを行政などがどういうふうに処理していくかというそこのところの問題は、とにかく、今申し上げましたように、住民の生活場所を第一優先してやっていただく、これがとても大事じゃないかと思っています。海が犠牲になりますけれども、全世界的にもう申しわけないことをしております。でも、住民の生活現場第一ということで、よろしく対処していただけたらありがたいと思います。

小川委員 民主党の小川淳也と申します。

 参考人の先生方、きょうはありがとうございます。

 まず、久住先生にお尋ねいたします。

 いただいた資料の十一ページで、今後の適切な防護の担保について、「環境、健康、社会、経済、政治、倫理等に配慮した判断を行う」という記述がございますが、なぜこれは環境、健康への配慮を第一にというふうにならなかったのか、政治に配慮するとはどういうことなのか。

 そして、精神的な意味で二十ミリシーベルトをよしとしていない、精神は込めていますというお話をきょういただきました。本来御議論をいただきたいのは精神論ではなく政策論でありまして、二十ミリシーベルトをよしとしていないのであれば、いつまでにどの程度に下げるべきだというのがまさに具体の政策論であります。この点についての御見解を具体的にお聞かせいただきたい。

 そして、武田先生、工学博士ですのでちょっと具体的にお聞きしたいんですが、今なお水路をもって冷却に努めようとしているこの方針は、冷やす、とめる、閉じ込めるですか、有効なのか、それとも別に方法があるのか、あり得るのか、この点の御見識をお聞きしたいと思います。

久住参考人 御説明いたしました十一枚目のスライドでございますけれども、恐れ入りますが、その前の十枚目のスライドに、七行目ぐらいに書いておりますが、原子力安全委員会は、今後とも必要に応じ、政府の原子力対策本部等々による総合的な判断に資するためと書いてございまして、私どもは、放射線防護の立場で助言をさせていただきますということをまず申し上げております。

 それで、環境、健康、社会、経済云々のどれが優先してということではございませんで、並べる順番が適切であるかどうかというのは議論がございますけれども、これは順番がどうこうということではございませんで、総合的に放射線防護の立場では助言をさせていただきますが、実態は、例えば先ほど来お話がございます学校の状況につきましても、私どもは、福島県のどの地域にどのぐらいの学校があって、お子さんがどれぐらいいらっしゃるというような実態を承知しているわけではございません。それは所掌される省庁が把握されていらっしゃるわけですから、放射線防護からはこのように考えますが、環境の問題、健康の問題等々、いろいろな問題に配慮して総合的な判断をお願いしたいということを申し上げているところでございます。

 それからもう一点、二十ミリを精神的によしとしたということでございましたが、今、非常に残念ながら、日本の、特に福島県においては、年間一ミリシーベルト以下で維持できるところが非常に少なくなっているというのが実態かと思います。

 そのような中で、では、子供たちを学校へ、学校を閉鎖して教育をしないのか、あるいは疎開をさせるのか云々かんぬん、いろいろな取捨選択があろうかと思いますが、二十ミリをよしとしたということではなくて、一から二十ミリの参考レベルで学校を開きたいという文部科学省の御意見でございましたので、先ほど来申しましたように、実態上二十ミリといえども、現状のモニタリングデータを見ますと、セシウムと沃素のバランスあるいは校内と校外の状況を考えますと、二分の一なり十分の一なりに下げることができるということであれば、短期間に限って、一から二十というバンドの参考レベルの中で学校を開かれることは差し支えないと思います。

 ただ、その参考レベルのバンドの意味は、先ほど申しましたように、必ず最大の努力をして年間一ミリシーベルトに近づけるということが原則でございます。これはALARAの精神というか原則でございますので、それを含んだものです。それをもって配慮していただきたい、総合的に判断していただきたいということでございます。

武田参考人 ああいう巨大な原子力発電所は巨大戦艦みたいなもので、いろいろな小さなアイデアがあっても、沈没していくときはもう仕方がないんですね。ですから、その意味で、水をかけていくのが最適であるかどうかということはいろいろ細かい異論はあるんですね。水は入れない方が、中性子を吸収しないから、再臨界が起こらないからいいとか、液体窒素を使った方がさらにいいんじゃないかと。私は、しかし、総合的に考えて、このまま少しずつおさめていくというのが最善ではないかと思います。

 それよりか、今一番問題なのは、もう福島原発は別にどうということはないので、福島原発がおさまるまでほかの作業は進めない、まず原発がおさまるのを待とうというような見解がありますが、工学的に言って、原発が最終的におさまるのは約十五年かかりますから、したがって、原発とはもう切り離して福島のために次の活動をしなければいけない、そこが非常に重要ではないかというふうに思います。

吉野委員 自由民主党の吉野正芳と申します。

 私のところです。福島県です。私の選挙区が第一原発のところです。

 それで、内部被曝と外部被曝なんです。私は、内部被曝の方が大変だと思っています。でも、今、世の中で出ているのは、二十ミリシーベルトがいいか、一ミリがいいか。外部被曝をきょうも議論されています。SPEEDI、三月十一日、事故の起こった十八時から一時間ごとに発表しています、予測図。どういう形で汚染されているか。三月二十三日に初めてプレス発表されました。内部被曝から発表されたんです。一番外側、汚染されていない、百ミリシーベルトです。これは、三月十二日から二十三日までの約十日間の累積で、一番外側が百ミリです。一番濃いところ、一万ミリシーベルトです。次に発表されたのが四月の十一日です。二回目です。これは何と外部被曝で発表しているんです。ここにごまかしがないかどうかなんです。

 そして、私は一番心配なのは、なぜきちんと内部被曝でやらないのか。今、外部被曝、外部被曝。この辺をちょっと先生方にお聞きしたいんですけれども、外部被曝もこれは大きな基準となろうかと思いますけれども、一番もっと大事な、そして長期に、もう体の中にあるわけですから、セシウム、三十年間も。これが常に三十年間出ているわけなので、内部被曝の線量がどう健康に悪影響を及ぼすのか、この辺のところをお聞きしたいと思います。

 そして、武田先生。私のところ、土壌汚染、本当に一センチ取ればいいんです。なぜ今取らないのかなんです。そして、それをどこに置くのか。津波被害、地震被害で瓦れき、私のところは仮置き場で一時ストップです。これをどこに持っていけばいいのか、この辺のところ。先ほど、燃えるものは焼却する。煙で放射性物質は取れると思います。焼却灰に濃縮されると思うんです。この濃縮された焼却灰の放射性物質をどうして取るのか、この点をお伺いしたいと思います。

 質問は、久住先生……

川内委員長 内部被曝についてはどの先生にお聞きしますか。

吉野委員 最後は久住先生で、あと矢ヶ崎先生と崎山先生、医学的な問題ですからお聞きしたいと思います。

久住参考人 先生御指摘のあった内部被曝は非常に重要かと思います。ただ、いろいろなケースケースによって、内部被曝が非常に有意に考えられるときとそうでないときとございます。例えば学校の場合は、文部科学省の概算では、内部被曝の影響は外部被曝の二、三%であるというような、子供の普通の状況での計算をされております。私どもももちろん、それに対しまして、内部被曝も重要であるということを申し上げております。

 それは一つには、例えば東電で女性の従業員の方が随分内部被曝で線量を受けられていますが、これは、大勢の人がある一定の建物の中に出たり入ったり、洋服とか靴とかいろいろなところに放射線をつけて張りつく。それが空中を舞って、それを吸入することによってかなり線量が上がってしまうというようなことがございますので、例えば学校についても、子供たちがそういう状況になる可能性というのは体育館ではないか。体育館で子供たちがいろいろ運動するときに、そういう内部被曝の問題を最大限に考えておかないといけないのではないのでしょうかというようなことは、文部科学省に対して助言で申し上げております。

 ただ、実態的には、そのようなケースによって内部被曝がかなり重要な線量になることがございますけれども、今考えております中では、矢ヶ崎先生は大分強く、非常に重要であるとおっしゃっておりますけれども、現在の生活の中では、内部被曝の線量というのは比較的低く保てるのではないかなと思っております。

 ただ、内部被曝、外部被曝の問題は、一つには、まず外部被曝というのは、どのぐらいの線量かというのを知ることが非常にたやすいといいますか割にわかりやすい。内部被曝は、どの程度かというのを知るのに、いろいろ計算等々ございますので、若干時間、日にちがかかります。

 それで、とにかく緊急時に判断するときには、まず外部被曝で判断して、その後、内部被曝の状況が非常に大きくきいてくるということであれば内部被曝で再検討しましょうというような考えに国際的にはなっているかと思いますので、私どももそれに従って助言をさせていただいているということでございます。

川内委員長 続いて、矢ヶ崎先生。

 たくさん質問をしたい先生方がいらっしゃいますので、参考人の先生方も簡潔、端的にお願いします。

矢ヶ崎参考人 簡潔にしたいと願っておりますが、済みません。

 先ほどグラフでお見せしましたチェルノブイリ周辺の子供の甲状腺の疾患など、これは完璧に内部被曝によります。外部被曝に比べて、内部被曝は二、三%しかない、そういうことを言われていますが、実態は研究されていない。これがそういう言葉になってしまっているというところが実態だと思います。

 例えば、沃素が、外部被曝としてカウントされるときには、ちょっとエネルギーの単位が入りますが、ガンマ線〇・三六一メガエレクトロンボルト、これが内部被曝で、沃素が体の中に入ったときに、沃素がベータ線を出して、同時にガンマ線を出して、キセノンに変わる。キセノンというのが安定化するためにガンマ線を出すという、この三つが内部被曝では完璧にかぶさってきます。沃素一本の、一個の被曝にしても、外部被曝の四・五倍、エネルギーがここに費やされてしまうんです。

 ホール・ボディー・カウンターだなんということで、内部被曝がわかるというふうに言っておりますが、これもガンマ線だけで測定しているということで、内部でベータ線が出てアルファ線が出る、一切カウントできません。そういう意味で、ホール・ボディー・カウンターは、測定上、それがひどい値があっても、実態の数十分の一しか見ていない実態があります。

崎山参考人 内部被曝の場合の問題は食物とか飲料水だと思うんですが、食べている、口にするものがすべて、線量というか放射能の量がわかっているわけではないということですね。知らないで食べてしまうということが一番問題で、外部被曝の場合は線量計で線量がわかりますね。そういう意味で、内部被曝というのは、かなり、農産物とか畜産物、それから魚、水産物の汚染問題と絡んできて、そういう産業とも絡んでくるので、ちゃんとした、線量をはかるというシステムをきちっとしていないとわからないということがあると思うんです。

 汚染地区で、自家製につくったものを食べているという場合ですと、外部被曝よりも内部被曝の方が多くなる可能性はあるわけです。ただ、その線量というのがわからないというのが一番問題で、ホール・ボディー・カウンターでやっても、今おっしゃったように、なかなかベータ線なんかははかれませんので、そういう意味では非常に問題であると思います。問題であるというのは、線量がわからないということもあると思います。

武田参考人 私が決断をできて、装置をつくれる立場にあれば、事故直後は別にして、四月の上旬には、まず第一に放射線で汚れたものを蒸留する蒸留装置を発注します。濃縮されたものが減容されましてドラム缶に詰まりますから、それをとりあえずしまっておく仮の貯蔵所をつくります。さらに、各所から集まってくる土壌を洗浄する装置をつくります。洗浄した汚水がありますから、その汚水を蒸留して除くことができますから、その装置をつくります。

 それからさらに、樹木もしくは野菜ですね。大変に悲しいことを言わなきゃいけませんが、福島でとれる野菜は汚染されたものが出てくるわけであります。福島の現在の汚染された地域でとれる野菜とか農作物で汚染されていないものをとるということは不可能でありますので、それを認めて、買い上げて、焼却をして、そこからの放射性物質を回収する。とりあえず、洗浄装置、蒸留装置、焼却装置、それに回収装置をつけたものを、直ちに私だったらつくります。

 それは、放射線がこれだけ大量に何京ベクレル出たということは、同時に、それを除去することを実施しなければ、全く手も足も出ないわけであります。

 それから、これを言いますと政治的には問題だろうと思いますが、私は政治家でないので十分に言わせていただきますと、既に青森には放射性物質を処理する大きな装置があります。それを折衝して、同じく原子力発電所から出てくる廃棄物も、それから不幸にして今度漏れた廃棄物も科学的には同じものでありますから、それを日本全体としてどのように処理するかということを決めなければいけないと思います。また、青森県の鰺ケ沢町のように、みずから放射性廃棄物を引き取るというふうに手を挙げているところもあるわけですから、これは震災前でありますが、したがって、そういうところとの折衝も開始して、福島県を汚したものをできるだけ早く影響のないところに格納していくということをとにかく早くやっていく。工学的にも技術的にも必ずできるものでありますので、実施すべきだと思います。

太田委員 参考人の皆さん、きょうは本当にありがとうございます。

 福島県から選出されております民主党衆議院議員太田和美と申します。

 私の選挙区は、原子力発電所から五十キロ、そして七十キロの圏内のところにありますが、特に、私の事務所の前は問題になりました薫小学校ということで、二十ミリシーベルトを超えた学校が事務所の前にございます。

 今、参考人の皆さんにちょっとお尋ねをしたいのが、いろいろな形で皆さんが学説をお話しされる中で、低放射線量は体にいいということをしきりに言う方たちが最近ふえてまいりました。おかげで、国の姿勢、県の姿勢もこの低放射線量について危機意識が余りにも低いのではないかというふうに私は率直に感じておりまして、今、郡山で歩いておりますと、マスクをする方たちがもうほとんどおられないような状況になっております。このホルミシス効果についてどういうふうに皆さんがお考えになられているのかということを、まず一点、お尋ねさせていただきたいと思います。

 そして、原子力安全委員会の久住さんの方にお尋ねをしたいんですけれども、参考レベルのバンドについて、例えば二十から百までは、緊急時被曝状況について、常に対策を必要とするということがここに特徴として書かれています。そして、一より大きく二十までというのは、線量低減を目指すいうことで、これは、つまり、ALARAの考えによって一ミリにしていかなければいけないということは、安全委員会も最近声を大にして言っていただいていると思いますけれども、そのことについて、文科省やそれぞれの各省庁に対して本当にどのような働きかけをしているのか、具体的にその対策を教えていただきたいんです。

 例えば、この間、議事録を読んでおりましたら、文部科学委員会で高木大臣が、郡山は率先して土を移動いたしました、その土のことについて国としてどういうふうに対策をしているのかと言ったら、これは市が独自で単独でやったことなので的確なアドバイスをしたいと思います。アドバイスじゃなくて、国の責任で対応していかなければならないというふうに私は感じております。そのところを安全委員会としてどう思われているのか。よろしくお願いいたします。

川内委員長 それでは、まず、四人の参考人の先生方への御質問から答えていただきます。久住先生は、二つありますから、最後に答えてください。

 では、武田先生からまずお願いします。低線量について、余りにも危機意識がなくなってきているのではないかと。

武田参考人 もちろんそれは、文部科学省が二十ミリまで安全だと言ったものですから、福島県に、私も薫小学校にも参りましたが、何しろ、周りはみんな、安全だ、安全だ、あなたは変人じゃないか、放射線が怖いというのは変人じゃないか、こういうふうに言われる人が多いわけですね。それから、例えば土をのけて子供に対する被曝量を減らそうと思うと、文部科学省が決めた三・八よりか低いのに何で減らすんだと。

 こういうふうに、原子力安全委員会が言っておられることと全く違うことが現地では言われているということが極めて大事なことだと思います。

 それから、時間もないので簡単に付言しますと、現在、既に子供たちが被曝している最中に、一ミリがいいとか百ミリがいいとか、何とか効果があるなんということは、私は発言すべき時期ではないと思うんです。それは、事柄が終わって、できるだけ子供たちの被曝を抑えて、大地を取り返した後、学者の先生方がもう一回ゆっくり議論して、一年百ミリだろうが千ミリだろうが決めていただければいいことであって、今までずっと、一番最初、冒頭に述べましたように、億ベクレルでも危ないと言っていた、今の一億分の一でも危ないと言っていた国が今急にそんなことを言うのは非常に不見識であるというふうに思います。

 また、文部科学省は神様ではないので、二十ミリが安全だとか、そういうことを決めることすらできないというふうに私は思っています。

崎山参考人 低線量が体にいいというあれは、ホルミシスという考え方で、一時、十五、六年前、盛んに言われたんですね。でも、そのホルミシスをサポートする科学的なデータはありません。

 それで、先ほど御紹介しました、アメリカの科学アカデミーから出ている低線量電離放射線の生物影響という報告書があるんですけれども、それにも、ホルミシスをサポートするようなデータはない、そういうふうに書いてあります。

 ホルミシスは、東大のお医者さんがそういうことをネットで言っていらっしゃるんですけれども、それはまるきり科学的な根拠はないということです。

矢ヶ崎参考人 低線量という概念そのものは、外部被曝だけを考えて言っていることでございまして、実は、先ほどからほかの委員からも、(資料を示す)先生方は見えませんね。こちらに線量を書いて、こちらに死亡率などを書いておりますが、ずっと直線的に低くても確率があるという話がありました。

 ところが、内部被曝を考えると、内部被曝というのは、非常に微量な放射性元素を体に取り入れるだけで十分大きな被曝がありまして、それをいろいろ、ミルクの中の放射性物質の量などで系統的にとってみると、こんな直線的に減少するのじゃなくて、ぐうっと同じように高い発症率が続いてすっと小さくなる、低線量まで十分大きな効果がある、これが今いろいろ各地で世界的に出されている現状でございます。

 ホルミシス効果というのは、先ほど、DNA、二重鎖が両方ちょん切られる、こういったようなところにはまるっきり意味のない現象なんですが、細胞のほかの活性酸素、水なんかに当たって活性酸素がたくさんつくられるところで、それについての効果が云々だなんというところでの議論がされたことがありますけれども、これが健康に対する主流では決してありません。

久住参考人 ホルミシス効果につきましては、先生方が既に言われましたように、科学的には根拠がないというのが現在の考え方かと思います。

 確かに、いろいろな実験をしてまいりますときに、生体防御反応というのがございますので、いろいろな外からの要因につきまして体はいろいろな反応をいたしますから、あたかもそれがいい方向へ働くものがふえたときには、よかったというような評価になるのかと思いますが、実態としては、今、科学的には余り証明されていなく、世界的には根拠がないというふうに認識されていると思います。

 それからあと、ALARAの精神をどのように文科省に伝えたのかとか、改善措置に生かしてはどうだという御意見がございましたけれども、私ども安全委員会は、週に二回、安全委員会を公開で開いております。そこへ各関係省庁からいろいろな状況の御報告をいただきます。それに対しまして私どもはしっかり意見を申し上げているという形で御意見を伝えるというのが、一番正式な伝え方かと思います。

 ただ、それだけではなく、実態的には、いろいろな形で情報を交換し、あるいは考え方を述べさせていただき、お互いに議論しておりますので、その場ではしっかり申し上げているというのが現状でございます。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。

 大変貴重な御意見、ありがとうございました。

 私は、モニタリングのあり方はどうあるべきかということ、それと食物連鎖ということで、二点お聞きしたいと思います。

 モニタリングについて、今国民が一番関心があるのは放射線の影響でありますので、まず、モニタリングをきっちりして情報を提供することが非常に大事だと思います。

 具体的ケースで申し上げますと、実は私、地元は栃木県でございまして、きのうも、お茶の葉っぱから規制値を超えるものが出たということで出荷停止になっている地域があります。あと、牧草についても、国の主導で県の農政部が県全体を五つの地域に分けて、それぞれ一カ所ずつモニタリングをして、マルかバツか決めているんですね。

 実は、県の西部、広い地域ですが、そこは牧草がバツになった、県の東部は、隣接しているわけなんですけれども、そこはマルになったということなんですけれども、実際に畜産業者から、そんないいかげんな、こんな漠たるモニタリングじゃ納得できないということで意見が出ております。

 学問的に見て、どれぐらいの範囲、メッシュでやれば意味のあるモニタリングになるのかということが一つ。これについて、御意見を伺いたいと思います。

 もう一つ、食物連鎖で、暫定基準値が出ておりますけれども、やはり食物連鎖ということから考えると、今の暫定基準値というものはどう考えたらいいのか。

 この二点につきまして、どなたでも結構ですので、御意見を賜れればと思います。

川内委員長 モニタリングについて御専門はいらっしゃいますか。武田先生、コメントがあれば。

武田参考人 まず、チェルノブイリの甲状腺がんの発生は、主に、放射線で汚れた草を食べた牛によって、牛乳によってなされました。したがって、牛乳は極めて危ないわけであります。

 今先生がおっしゃったように、栃木県であれ何であれ、現在は福島原発の近くの草はすべて汚れているわけでありますので、牧草を食べさせることは、現実的に、やってはいけないことだと思います。それをしますと、今度は牛乳を買う方のお母さんの立場になれば、全く牛乳が買えなくなる、日本国内の牛乳が買えなくなる、そういう事態になりますので、これはもうチェルノブイリのときの経験がありますから、それをしっかりと守るということが重要だと思います。

 それから、モニタリングは、空間線量にしても空中にしても、まずデータがきちっと整理されたものがないということで、ほとんど判断ができない状態に現在ありますので、これをできるだけ早く、今は恐らく、空間の線量もしくは各所の土壌、それから土、草、ここら辺で最も信頼のできるデータは、個人がはかったものを集積して計算するというのが最も便利な状態にあります。空間的には、高さによってもすごく、十倍ぐらい違いますから、そこのところは非常に急いで出していかなければいけないと思います。

矢ヶ崎参考人 お答えそのものではないんですけれども、今、野菜などのモニタリングを厚労省が各県でさせております。ここで大きな問題は、よく水洗いして、蒸留水で洗ってから検査にかけなさい、そういうことがされております。ところが、野菜が流通する、家庭に届くルートにかかってくる野菜は、水洗いできておりません。そういう意味で、食の安全を守るべき国の政策が、洗った後を国民に知らせているデータとしている、ここら辺は大きな現実とのギャップがあります。モニタリングの、食の安全の責任をとっていないんですね。そこのところが一つ大きな、既にやられていることで問題になると思います。

 もう一つは、民間の人にも各自治体にも測定の仕方を統一していっぱいデータを出してもらうということが、きめ細かいデータがきちっとした実態をあらわすデータに結びつくものですから、モニタリングはたくさんやった方がいい。特に、海のものに対しては物すごく重視すべきであると思います。

豊田委員 民主党の豊田潤多郎でございます。

 武田参考人に二点、お伺いといいますかお聞きしたいと思うんです。

 実は私、今回の原発の、どうしてこういう事故になったか、また、その事故がどうしてこんなに拡大し収束しないのかということの基本的な部分は天災かもしれませんが、かなり人災の要素が大きくなってきているのではないかと思っています。

 その点で二つお聞きしたいんですけれども、第一に、初動の対応というのが大変ミスがあったのではないか。私は、ずばり、アメリカの言うこと、アメリカの意見や助言というものを素直に早く取り入れて対応していれば、かなり事態は収束に向かっていたのではないかという気がしています。

 実は、私は、スリーマイルの問題が起きたときに、役所に入って若かったんですが、ニューヨークの勤務でちょうどアメリカに行っておりまして、そのときにスリーマイルの問題が起きました。連日連夜、今の日本と同じような形で報道がなされていて、あれは最後はメルトダウンで、幸運にもおさまったということですけれども、しかも一基だけだったんですが、今回は四基が一度に起きているという大変悲惨な状況です。

 そのスリーマイルの経験と、かつ、核戦争に備えて放射能というものに対する大変な装備のあるアメリカの意見というのをどうして素直に政府が聞かなかったのか、そういう意味で人災ではないかというのが私の思いなんですが、先生の御意見というか感想があれば、お聞かせ願いたい。

 それから二番目は、三号機の問題なんです。いわゆるMOX燃料なんですが、これは先生が、一番怖いのは福島じゃなくて「もんじゅ」だと言われている。まさに、「もんじゅ」はプルサーマルのメッカみたいなものなんですけれども、私が聞きました情報によりますと、アメリカといえども、プルサーマル、いわゆるMOX燃料の扱いは余りノウハウがない。基本的に、これは全部フランスが一手販売でやっているということです。

 地震が起きて原発の事故が起きたときに、三号機の関係、プルサーマルの関係でフランスの技術者がちゃんと配備されていたんですけれども、事故直後にフランスが帰れということを言ってその技術者を引き揚げさせた。東電も政府も、MOX燃料が問題になったときの対応のノウハウ、マニュアルすらない。その中でこういう問題が起きてしまって、いわゆるブラックボックスになっているという状況なんですね。

 一番怖いのは、いろいろ硼素だとかセシウムがありますけれども、プルトニウムというのは最悪の放射性物質と言われているわけでして、これから三号機が恐らく、一号機は安定しているとかなんとか言っていますけれども、恐らく三号機はかなり悲惨なことにまたなるのではないかと……

川内委員長 先生、質問をまとめてもらえますか、もう時間がないので。

豊田委員 済みません。わかりました。

 ということで、二番目の問題は、プルトニウムの関係で三号機の対応、これについて先生はどういうふうな見解を持っておられるか。この二点です。

武田参考人 今回は全く、初動は、国というのがないんじゃないかと思うような状態でしたね。

 御存じのとおり、原子力発電所の事故というのは、最初の一撃でほとんど九〇%の被曝が決まってしまう。きょう随分議論されていますけれども、内部被曝は、飛んできたものを呼吸すれば直ちに体の中に入ってしまうということで、私も自分で福島の原発の近くの人の内部被曝を計算してみましたけれども、大変な量の内部被曝であります。したがって、逃げるということ、マスクをするということ、そういった初動操作がほとんどなされなかったということで、はっきり言えば、日本には政府がなかったということは非常に明らかであるというふうに思います。

 これの根本原因は、私は長く、四十年ぐらい原子力の仕事をしてきましたけれども、徐々に徐々に原子力行政というのは甘くなって、保安院なんという、安全を管理するのか推進を管理するのかわからないようなものが次々とできて、データが出てこない。

 一方、魚の放射線の規制値がなかったことでわかるように、事故が起こらないから、事故が起こることを想定したことは考えるなということが長く続いたことによって、今回のように、飲み水も被曝も何ら防御することができないという状態で福島県の人が被害を受けたことは、原子力に携わる者としても非常に残念ですし、また申しわけないことをしたと私なんかは思っています。

 それから、三号機なんですけれども、プルトニウムの炉が始まる、やはりこれもウランと同じである、何にも変わりないということで、ほとんど検討がなされずにスタートした。

 それから、「もんじゅ」の件もそうですが、前に事故を起こして、配管がちょっと割れてどうなったということがほとんど思想的には改善されずにまた再開された。しかも、事故ということを表に出さないで処理されているというようなことで、やはりこれは早急に、我々が原子力発電所というものをもし動かすならば、事故に対して、はっきりとした指針とか技術的なもの、退避体制、それを整えなければ、私は、同じタイプの飛行機が一個墜落したわけですから、その原因を追求するまでほかの原発はとめて、安全なものから再スタートするということをしなければ、巨大技術の安全は保てないというふうに思っています。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 先ほど武田参考人にお伺いできませんでしたので。

 内部被曝がきょうの議論でも大事なことになってきたと思うのです。要するに、炉心溶融したわけですから、さまざまな核種のものが出てしまっているわけですね。半減期の短いもの、長いものがありますから、核種ごとのモニタリング、どれぐらいの線量のものがどう出ているかというモニタリング、しかも固定したポイントで累積線量率がどうなっていくか、このことの調査というのが最も大事な一つだと思いまして、これは武田先生と矢ヶ崎先生のお二人に聞きたいと思ったんです。

 時間が来ていますので、これで終わります。

武田参考人 国民の健康を守るという点で今一番抜けておりますのは、ストロンチウムとかプルトニウムという非常に重要なものが測定値すら出てこない。アメリカではプルトニウムが出てきて、アメリカで出てきているのに日本で何でないのかとよく私は聞かれるんですけれども、いや、日本の政府がはからないからだ、こういうふうに答えざるを得ない。ハワイで検出されて、福島で検出されないんですかと。

 三号機は相当程度ぼんと上に来ましたから、当然そこからプルトニウムとかストロンチウムのような比較的重たいものが出ているはずで、これは私は、これからの原子力のことを考えても、早くはかって公表して、特に魚なんかもそうですけれども、海水に出たのは初めてですので、もっとデータをはっきり出して、そして、避難するなら避難する、食材からの被曝を下げるなら下げるということを非常にはっきりと言わなきゃいけない。

 先ほどの三号機の質問もそうですけれども、三号機を動かしながらプルトニウムの測定をしない、一週間で出るプルトニウムの測定値を、内部で検討しなきゃならないから一カ月かかるというようなことを言っておるわけですから、全く被曝される方のことを考えずに動いているというふうに思います。

矢ヶ崎参考人 今御指摘のことに加えて、メルトダウンしたときに、部分的にしろ核分裂が起こりました。そこに対するデータというのはほとんど提供されておりません。

 それから、私ども内部被曝を問題にする者は、飛んでくるほこりがどれだけの粒径であるか、そういう大きさの分布など、内部被曝を評価する上で非常に大事なんですが、一つもデータがございません。そういう点で、きちっとデータを出して国民に知らせる、まずこれをやることがとても大事だと思っております。

川内委員長 先生方、参考人の先生方にお聞きになられたいことがまだまだたくさんあろうかと思いますが、申し合わせの時間が参りました。

 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。

 未曾有の原子力災害に対して、国会として、あるいは、この委員会はことし設けられたんです、科学技術・イノベーション推進特別委員会、原子力行政も担当する委員会でございますので、この未曾有の事故に対して政府の対応が不十分であるとするならば、国会として政府に対して申し上げなければならないこともあるのではないかということで、きょうこうして参考人質疑を行わせていただいたということでございます。

 いただいた意見を今後の委員会の審議に十分に反映させて、国民の皆さんに安心をしていただけるように、福島の皆さんが安心をして生活できるように、委員会としても精いっぱい努力をしてまいることをお誓い申し上げさせていただき、委員会を代表しての厚い厚い御礼にかえさせていただきたいというふうに思います。本当にありがとうございました。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二分散会


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