衆議院

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第9号 平成23年8月3日(水曜日)

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平成二十三年八月三日(水曜日)

    午後一時三十一分開議

 出席委員

   委員長 川内 博史君

   理事 阿知波吉信君 理事 稲見 哲男君

   理事 熊谷 貞俊君 理事 空本 誠喜君

   理事 津村 啓介君 理事 馳   浩君

   理事 松野 博一君 理事 遠藤 乙彦君

      石田 三示君    石津 政雄君

      石森 久嗣君    小川 淳也君

      小原  舞君    太田 和美君

      勝又恒一郎君    金森  正君

      川島智太郎君    阪口 直人君

      菅川  洋君    平  智之君

      竹田 光明君    玉木 朝子君

      玉置 公良君    中川  治君

      野木  実君    本多 平直君

      山崎  誠君    湯原 俊二君

      柚木 道義君    渡辺浩一郎君

      江渡 聡徳君    河井 克行君

      佐田玄一郎君    塩谷  立君

      吉野 正芳君    斉藤 鉄夫君

      吉井 英勝君    阿部 知子君

    …………………………………

   参考人

   (公益財団法人平成基礎科学財団理事長)

   (東京大学特別栄誉教授) 小柴 昌俊君

   衆議院調査局科学技術・イノベーション推進特別調査室長           上妻 博明君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月三日

 辞任         補欠選任

  熊田 篤嗣君     湯原 俊二君

  竹田 光明君     玉木 朝子君

  豊田潤多郎君     渡辺浩一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  玉木 朝子君     竹田 光明君

  湯原 俊二君     小原  舞君

  渡辺浩一郎君     豊田潤多郎君

同日

 辞任         補欠選任

  小原  舞君     熊田 篤嗣君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件(我が国の科学技術、イノベーション推進の今後の在り方について)


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     ――――◇―――――

川内委員長 これより会議を開きます。

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件、特に我が国の科学技術、イノベーション推進の今後の在り方について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として公益財団法人平成基礎科学財団理事長・東京大学特別栄誉教授小柴昌俊君に御出席をいただいております。

 この際、小柴参考人に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。

 東日本大震災あるいは東京電力福島第一原子力発電所の過酷事故というものは、私たちのこの国の科学とは何なのか、科学技術とは何なのかという本質的な問いを私たちに投げかけております。宇宙物理学の理論を実証してごらんになられたという基礎科学の立場から、三・一一以降の科学技術・イノベーション政策のあり方について、ノーベル物理学賞受賞者でいらっしゃる小柴昌俊先生の御意見、忌憚のないところを承れればということで、本委員会を設定させていただきました。本日は、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、議事の順序について説明をさせていただきます。

 まず、小柴参考人から二十分程度で着席のまま御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えを願いたいというふうに存じます。

 繰り返し申し上げますが、御発言の際は着席のままで結構でございますし、お暑いようでしたら上着をとっていただいて結構でございます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、小柴参考人にお願いいたします。

小柴参考人 私、きょう、こんなにたくさんの国民を代表する諸先生方の前で意見を述べさせていただくのは大変に光栄に存じます。私、もうすぐ八十五になりまして、相当ぼけておりますが、何とか一生懸命に自分の考えをまとめて聞いていただきたいと存じます。

 先ほどちょっと伺ったことによりますと、この委員会というのは四月に生まれた新しい委員会だそうで、こうやって拝見しますと、いろいろな党からたくさんの議員の先生方が集まっておられて、基礎科学、それからイノベーションについて、これからどうやるべきかということを諸先生方が本気になって議論なさって方向を打ち出されれば、日本にとって大変大きな役割を果たすことになるだろうと期待しております。

 さて、基礎科学と申しますと、皆さん一番たやすく手にとっておわかりになるのは、私は応用科学の方だろうと思うんです。つまり、何か新しい技術的な開発をこの分野でやって、このくらいの人数を使って、このくらいの予算を使って、三年間やればどれくらいの獲物が得られるだろうかというのは、大概その道の人なら見当がつくんです。

 ところが、基礎科学の分野というのは、そういう見通しがつかないんです。見通しのつくようなことだったら、基礎科学としてやる必要のないことなんです。

 これはよく御理解いただきたいんですけれども、例えば、私どもが何十年もかけてニュートリノという素粒子のことを調べてまいりまして、日本の素粒子物理学でニュートリノに関する研究というのは世界を圧しております。では、例えば、ある種類のニュートリノが生まれて、それが飛んでいる間にほかの種類に変わっちゃうよというようなことを発見したとしても、産業界に何の役にも立たないんですよ。ですから、そういうふうな研究の仕事にかかる費用を産業界に期待しても、得られるような種類のことじゃないんです。

 ですから、私はよく質問を受けるときにお答えするんですけれども、ある国が基礎科学をどのくらい本気でやるかということは、その国がどのくらい文明国なのかということによって決まることなんです。

 ある国が、基礎科学なんて、もうけに何もつながらないんだから、そんなばかばかしいことにはお金を使わない、もうかることだけにお金を使う、これは一つの生き方です。ただ、それをやると、その国は商人の国としては立派に発展していくでしょうけれども、世界の文明国とは言えないという結果になると思います。

 それで、国家の財政ということを考える立場にある先生方は、例えば、こんな研究にこんなに国民の税金を使っていいのか、それよりもっと役に立つことに回した方がいいんじゃないかというような議論がよくなされるんです。

 昨年もありました。ある世界一のコンピューターを目指しているプロジェクトに対して、一流じゃなきゃいけないんですかという質問があった。この質問自体が、その人はもう基礎科学をどうするかという議論をする資格がないと私は思わざるを得ないんですよ。

 よその人がもうやっちゃったようなこと、二流のことというのは、基礎科学では何の価値もないんです。だから、世界で初めてのこと、人類が今までやったことのないことをやって初めて人類に新しい知識をつけ加えることができる、その可能性があるというだけなんです。

 では、どの計画を毎年毎年選んでいったらいいか、これは大変に難しい問題です。だれも、一〇〇%の自信を持って、ことしはこの計画に何億円つけろというようなことを言える人はいません。ベストの場合でも、その分野に何十年と一生懸命になって仕事をしてきた人が、自分の勘を働かせて、この計画をこのくらいの規模でやったら何かいいことが出てくるんじゃないかという勘、それしかないんですよ。

 これは、本当に政治家としては判断のしにくい対象じゃないかと思うんですけれども、現実の問題として、そういう事実は認めなきゃならぬと思うんです。

 ですから、私は、国として、例えば日本の国は、我々の国は世界の中の文明国としてこのくらいの、予算の何%をこの国の基礎科学に使おうかということを、国会かあるいは総理大臣か知りませんけれども、それをまず決めるべきで、そういうふうに決めたものを、具体的にどういう計画にどのくらいずつ回していくのが一番いいのかということを議論するためには、先ほどお話しした基礎科学の分野でずっと本気になって苦労してやってきて、それで相当の成果を上げたという人たちを集めて、その人たちの勘を働かさせる。

 それをずっと聞いた上で、政治家の方が判断なさって、それでは、ことしはこれにこのくらい使うというようにしたらどうだろうとやるよりほかに手はないんだろうと私は思います。

 これで大丈夫ですよと保証のついた基礎科学の進め方というのはだれにも考えられないんです。これは現実の問題として難しいことですけれども、それが事実です。

 それから、もう一つ、私は、基礎科学ばかりでなくて、物事について、政治家の人にもそうですけれども、学者の人にも、もっと謙虚な態度をとらなきゃいけないんじゃないかということをこの間から痛切に感じております。

 それを感じた契機になったことは何かといいますと、先ほど委員長も言われた、この間の大震災で原子力発電所が大変な被害をこうむった。これはいまだに解決していませんね。我々が、日本の国があの災害に対してとった態度というのは、あれは一番いい態度をしたんでしょうか、私は大変疑問に思うんです。

 というのは、日本は世界で唯一の原爆被爆国です。ですけれども、原爆で被害を受けたんですけれども、そのときの中性子がどのくらいの量がどういうふうに拡散していって、どういうふうな被害を与えたかなんというデータは、アメリカが派遣してきた医学調査団が全部集めていったので、日本人はそれに対してそんなに詳しく知らないんです。

 さらには、爆発させるというような臨界以上のことを何遍も何遍も実験をやって、太平洋の中で大変な実験をやって、我々にも迷惑をかけた。砂漠でも爆発を何遍もやって、それで、そのときに出てきた大変な量の放射能をどういうふうにしたらいいのかというようなことを実地で知っているのはアメリカの軍なんですよ。これは素人が考えたってすぐわかることなんです。

 ですから、私がもし日本の総理だったとしたら、あの原子炉の災害がこんなにひどいことになっておるといったら、これは大変に恐ろしいことだ。だから、私どもにはできないけれども、秘密かもしれぬけれども、アメリカのうんと経験を持った軍の連中をすぐ派遣してもらって、ぜひ事態を回収するのに応援してくれと、私がもし総理だったらすぐアメリカの大統領に電話してお願いする。僕はそういうのが謙虚な態度だと思うんですね。

 僕は、何か、おれは偉いんだとかおれは何も人に聞く必要ないんだというような態度というのはやはり改めるべきで、もう少し謙虚な態度をとることが大事じゃないかと思います。

 時間があと五分ぐらいになりましたが、あと考えつくことを申し上げますと、皆さん御存じだと思うんですけれども、前世紀、二十世紀の百年間というのは、基礎科学の進歩というのは大体ヨーロッパ、アメリカでなし遂げられた。

 それで、アジアは悲しいことに、最近日本がノーベル賞を物理や化学で十何人ももらっている、人口一億二千万に対してそれだけの人数がもらっているというのは、アジアでは非常に例外的にいい結果を出している国だ。中国とかインドとか、十何億の民を抱えていながら、そういうふうな功績を残した人というのは、例えば、アメリカに若いころから留学して、アメリカで教育を受けて、アメリカで研究して、アメリカでやった仕事に対してノーベル賞をもらう、それでうんと年をとってから中国へ戻った、そういうふうな人だけなんですよ。そういう場合には、その国の若い人に与えるインパクトというのはそんなに大きくないんです。

 私は、この二十一世紀というのは、今までそういう寄与をしていないアジアの若い人たちが、この世紀には基礎科学を担ってそれを進めていくという役割を何とか果たしてもらいたい、こういう願いから、あるいは新聞やテレビでごらんになった方もあるかもしれないんですけれども、おととし、日本でエーシアンサイエンスキャンプというのを一週間開きました。

 それは、アジア、特に日本関係のノーベル賞学者を十人ぐらい招いて、それからアジアの十二カ国から百人ぐらいの若い人たちを招いて、つくばで一週間一緒にキャンプをする。それで、アジアの若い人たちに、二十一世紀の基礎科学を背負っていくんだという気概を何とか持ってもらいたい。これをやりましたら大変反響が大きくて、あと一週間ぐらいでその続きを韓国で開くことになっております。

 日本でやったときには、ありがたいことに両陛下もおいでくださって、アジアからの若者たちを励ましてくださった。

 僕は、そのために何が必要かということを考えてみますと、前世紀にアメリカとヨーロッパがそういう寄与をどんどん、若い人が次から次へと仕事をやっていったというのはどこにあったかというと、やはり、物理の最先端を研究する高エネルギー加速器というのが、最先端のものがヨーロッパやアメリカに次々とつくられていった。今、最先端の加速器というのはスイスのジュネーブにあります。日本からも行って実験しております。

 その次の世界的な大加速器、最先端の加速器はどういう計画かというと、線形加速器という、ぐるぐる回すんじゃなくて、直線的にこういうふうに加速してぶつける、そういう加速器なんです。線形加速器センター、ワールドリニアコライダーセンターという名前で呼ばれていますけれども、それを次の世界計画にしようということはもう決まっておりますけれども、それをどこにつくるかというのはまだ決まっていないんです。

 今、ユネスコの関係の委員会などでいろいろ議論しておりますけれども、それを何とかアジアに設置すれば、それを設置したことによってアジアの若者たちの受けるインパクトは、大変に大きなものになるはずです。

 私は、そういうことを何とか実現したいと思って、年はとっておりますけれども、いろいろと努力をいたしている次第でございます。

 時間が参りましたので、この辺で私の発言を終わらせていただきます。(拍手)

川内委員長 ありがとうございました。

 これにて小柴参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

川内委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 参考人に対する質疑は、理事会の協議に基づき、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 この際、委員各位に申し上げます。

 質疑のある委員は、お手元のネームプレートをお立ていただいて、立てることをもって挙手のかわりにさせていただきたいというふうに思います。委員長の許可を得て発言をいただければと存じます。発言が終わりましたら、ネームプレートをもとの横の位置にお戻しいただきたいと存じます。また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べください。

 なお、理事会の協議によりまして、一回の発言時間は三分以内となっておりますので、委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は自席から着席のままで結構でございます。

 それでは、質疑のある方はネームプレートをお立てください。

熊谷委員 民主党の熊谷でございます。

 小柴先生には、大変貴重な御意見を伺わせていただきまして、大変ありがとうございます。

 私も長らく大学におりましたもので、研究というもののあり方、これは常々、今の現状と関連しまして、非常に日本の場合は問題があるなということを最近考えております。

 特に二〇〇三年の独法化、大学が独立行政法人化したり、あるいは、もう十五年前になりますが、科学技術基本法にのっとった科学技術基本計画というものの中で、国がプロジェクト型の研究を推奨するといいますか、テーマ選定も含めて、全国津々浦々の研究者の自発的な研究意欲にまつのではなくて、むしろそういうものでリードしていく、こういう姿勢が、私はかえって、本来、日本の基礎科学、あるいは応用もそうですが、あらゆる分野に、全国津々浦々、大変優秀な研究者の方が独自に研究を続行しておられるというこの分厚い日本の科学技術の基盤、これを損ねるものではないかなと大変危惧しております。

 そういうことで、プロジェクト型、先生の基礎科学、実験科学につきましては、プロジェクトというよりも、巨額なお金の予算をつけるというのは大変先生も御努力された中で実現していくというのは、これはまたこれで別に大事なことでございますが、あらゆる科学技術研究費の出し方が、プロジェクトという、期限と成果、これを規定した、それを第一の評価基準にするようなやり方で研究費を出す、こういう競争的資金のあり方、これは大変問題だと私は思いますが、その辺、先生のお考えを聞かせていただきたいと思います。

小柴参考人 おっしゃった御意見、私も本当にそうだと思います。

 国立大学法人というのが独立法人になった。そのときに、私は、今までいわばぬるま湯につかっていた大学人が独立法人になったから、さて、これで今までみたいなぐあいにはいかぬぞ、おれたちで、自分で稼がにゃならぬのだと。だから、産学協同、産学協同とわめき出して、みんな頭へ血が上っちゃうんじゃないか。そうなった場合に、産学協同のできる工学部とか農学部、そういうところはいいかもしらぬけれども、それのできない文学部や理学部は冷や飯を食わされて、いい学生は行かなくなっちゃうんじゃないか、それが心配だった。だから私は、そのときに基礎科学財団というのをつくろうと思ってつくったわけです。

 おっしゃるとおり、政府からのお金が、こういう研究計画で何年間で何人の人に対してこれだけのお金をやる、それで毎年毎年報告書を出しなさい、これは、お金を出す方としてはとても効率のいいお金の出し方のように思われるかもしれないんですけれども、事研究に関しては、決していい方法だとは僕は思いません。

 かつての講座研究費というのは、国立大学の教授当たり、年に三百五十万でしたか、幾らでしたか覚えていませんけれども、そういう金額を黙って講座研究費として出していた。それは、その教授の自由な発想でどんなことに使ってもいい、そういうお金なんですよ。

 私は、新しいクリエーティブな仕事をする人にとって、規則で縛られた生活をずっと続けているということは決していい環境じゃない。自分の発想でこれをやってみる、ああやってみるか、こうやってみるかといっていろいろと苦労をする、そういうことをやるための費用が、以前に出ていた教官の講座研究費という意味が非常に大きかったんですね。

 それが全然なくなってしまったというのは、僕は、日本の大学での研究計画というのが小型化して矮小化したということにつながるんじゃないかと思っております。

熊谷委員 ありがとうございます。

松野(博)委員 自由民主党の松野と申します。

 先生、きょうはどうもありがとうございます。

 先生とは、リニアコライダーの推進勉強会で何回か先生のお話をお伺いして、久々にまた御指導いただくわけでありますが、二点お伺いしたいと思います。

 一点は、欧米の研究環境と比べて、今、日本の研究者が自由度がないというお話をいただきましたが、研究を阻害される日本での最大の要因というのは何でしょうか。(小柴参考人「何を阻害しているの」と呼ぶ)研究を、自由度を下げていると、今お金の話がありましたけれども、そのほかに阻害をしている要因があればお話をいただきたいと思います。

 もう一点は、基礎科学は直接的な経済的な利益に結びつかないというお話をいただきましたが、しかし一方で、同じ日本人が世界人類に貢献をしているということは、日本人にとっての大きな誇りでありますし、今最も日本に欠けている自信というものに結びつくものと思います。そのために、これだけの業績を日本人が今基礎科学の部門で上げているんだということをしっかりと一般社会や特に子供たちに伝えていく必要があるかと思います。

 小柴先生は、今教育現場をお回りになって子供たちに基礎科学のすばらしさを伝えるというお仕事をされていると伺っておりますが、一般国民や、特に教育現場に関して、基礎科学の大切さ、おもしろさ、こういったものをより伝えていくための方法として、何かお考えがあれば教えていただきたいと思います。

 以上です。

小柴参考人 今の御意見で私すぐ頭に浮かびましたのは、大学が独立法人に変えられて、日本の地方の国立大学というのは本当に、私が心配していたように、稼がにゃ稼がにゃというふうになってしまいました。それは、私の息子がある地方の大学の教授をしておりますので、もろにそのことは知っております。大変悲しいことです。

 私は今の御質問で、日本の大学がそうなってしまったなら、基礎科学のようなもうからないものというのはやはり冷や飯を食わされるんじゃないかという心配から財団をつくったと申し上げたんですけれども、では、その財団はどういうことをやっているかといいますと、月に一遍、自分が勉強したいと当人がやる気になって申し込んできた高校生、大学の一、二年生だけを入れて、先生に引率されてくるなんという人は入れてやらない。当人のやる気のある若い者だけを入れてやって、その分野のトップレベルの学者に、あなたのお話の内容のレベルは下げないでください、だけれども、聞かせる相手が高校生、大学の一、二年生ですから、あなたが一時間でしゃべる内容を一時間二十分掛ける二回という倍以上の時間に引き延ばして、わかりやすく説明してやってください、そういう会を月に一回ずつやっています。

 そのうちの年に四回分はDVDにして、以前はNHKが三時間半の全国放送でそれを放送していた。そのつくった録画をDVDに落として、それを財団が全国の学校や図書館に無料で寄附するということを続けているわけです。

 ところが、残念なことに、この三時間半の長時間の基礎科学の放送というのはとても反響が大きくて、いい反響が得られていたんですけれども、NHKの機構改革か何かで、そんな長時間は放送できないということになって、この四月からはそれがされなくなったんですけれども、でも、DVDはちゃんと財団がつくって全国に配っております。

 ですから、私、少しずつではあるけれども、私どもが努力して見ている限りは、理科離れ、理科離れと言って嘆き悲しむほどのことはない、日本の若者たちにはまだまだ頼もしい連中がたくさんおります、そういう気がしております。

松野(博)委員 ありがとうございました。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤と申します。

 大変感銘深いお話、ありがとうございました。

 私は、ちょっとノーベル賞につきましてお聞きしたいと思います。

 私は、このノーベル賞は知的創造性の象徴であると思っておりまして、できる限りノーベル賞をとれる人をたくさん輩出することが日本にとっても大事だと思っております。

 そこで、今、普通に見ると、絶対数ではアメリカが圧倒的にノーベル賞が多いんですけれども、人口比で見た場合、実はスウェーデンが断然トップで、スウェーデンの場合、日本と同じぐらいノーベル賞をとっていますが、人口は九百万人ですよね。そうすると、百万人に一人ぐらいがとっているわけで、人口比で見るとスウェーデンが圧倒的です。スウェーデンの場合、ノーベルが元祖だったこともあって、割り引いても非常に高い数字。また、最近二十年ぐらいをとってみますと、イスラエルもまた人口比ではトップです。

 そうすると、やはりスウェーデンとかイスラエルとか、そういう大きな国ではない国が知的創造性で大変な貢献をしているということについて先生が何かお気づきの点、どういうことでそういうことなのかという点があれば、ぜひちょっとお聞きしたいと思っております。

 ちなみに、私はもう一つ、ノーベル賞とともにオリンピックの金メダル、これも重要な国民の体力、スポーツ能力の水準だと見ていまして、実は、オリンピックの金メダルの絶対数ではアメリカがトップなんですが、人口比ではスウェーデンがやはりトップなんですね。スウェーデンという国、文明的に見ても、そういった意味では非常に成熟しているのかなという興味を持っております。

 最近なでしこジャパンが、こっちはFIFAの方でとりましたけれども、お互いやはりこれは日本の目標として、一つはノーベル賞、一つは金メダル、これをできるだけとれるような人材育成、環境づくりをすることが日本の文明国への成熟という点では大事だと思っております。

 そんなことを含めて、先生の、先ほどノーベル賞について、スウェーデンやイスラエルが大変高い比率を占めていることについて何かお気づきの点、日本に参考になる点があったらお聞かせいただきたいと思います。

小柴参考人 おっしゃるとおり、例えばユダヤ人のこういうふうな分野における実績というのは大変なものがあります。

 私、こういうことを言うと差しさわりがあるおそれがあるんですけれども、世界に民族がたくさんありますけれども、これは正直言って、ある民族よりもこちらの民族の方が全体として素質がすぐれているんじゃないか、そういうふうな、どの民族も同じレベルであるというふうには思わないんです。

 先ほど申し上げたように、アジアの中で日本だけが特別にノーベル賞受賞者が多い。日本人という民族は、世界のほかの民族に比べても引けをとらない民族であると心の中で私は喜んでいるんですけれども、実は、ユダヤ人というのはもっとそれが強いようですね。

 つまり、私はユダヤ人の学者で非常に親しくした人が何人かいるんですけれども、その一人が私に言ったことは、あなたは知らないだろうけれども、ユダヤ人の子供として生まれると、まともなことで身を立てることというのはできないんだ、一番身を立てやすいのは音楽家になることだと。

 皆さん御存じだと思うんですけれども、世界の音楽界というのはユダヤ人に牛耳られているわけですね。ですから、ユダヤ人の子供というのは生まれて物心がつくようになると、まずバイオリンとかそういう楽器を持たせられて音楽の先生に通わせられる。それがどうもうまくいかないで音楽に才能がないというと、おまえ、仕方ないから学者になれといって学者にさせられるとか、これは冗談のように言っていましたけれども、そういう例がたくさんあるんですね。

 それともう一つは、ユダヤ人というのは何千年にわたっていろいろな迫害を受けているでしょう。ですから、民族間の結束力が非常に強い。だから、今までの実績でノーベル賞受賞者がたくさんいますでしょう。そういう人たちは、毎年、ノーベル賞の賞の推薦権があるんです。財団の方から推薦状を送ってきます。毎年だれかを推薦できるわけです。そういうときに、ユダヤ人のコミュニティーというのは、相談し合って、言い合わせて同じ人を推薦すると通る確率は非常に大きくなる。本当にそうなんですよ。

 ですから、必ずしも実態がそれに沿っているとは思いませんけれども、現実の問題として、ユダヤ人の場合は、そういうふうな助け合いといいますかそういうのがきいているというのは、これは私だけの見方じゃなくて、世界の学者がそういうふうに感じていることなんです。

 ただ、今これはうっかり言いましたけれども、委員長、この問題というのは下手をすると民族問題になりかねないので、今の民族に関することは扱いを注意していただいた方がいいんじゃないかと思います。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 小柴先生にはITERの六ケ所誘致のときなどに随分いろいろ御意見を伺って勉強させていただきましたが、ちょうど、科学技術、今度の五カ年計画の中でも核融合の問題が一つテーマとしてありますから、この機会に先生のお考えを伺っておきたいと思うんですが、三点伺いたいんです。

 一つは、DT反応というのは、トリチウム除染の問題とか、それから高速中性子が出てくる問題とか、いろいろな問題があるので問題だと思うんですが、DD反応についての核融合の研究というのは一つの考えるべきテーマなのかどうかというのが一点です。

 それから二つ目に、フランスに結局ITERは行きましたけれども、フランスに行ったITERを一つの物理実験の装置と割り切って考えるならば、それはそれで一つの考え方なのかなということがあるかと思うんですが、それは巨大な金額になってはあれですけれども。

 三つ目に、やはり核融合の場合、どうしてもブランケットなどの炉材料とか周辺技術の開発をきちんとやらないと、なかなか簡単にいくものではないと思いますし、超高温とそれから極高真空のような状態とか、いろいろな装置が複雑に絡み合いますから、どうしてもコンポーネントが複雑に絡み合ったりして、商業化を考えるというのはなかなか難しいのではないかというふうに思うんですが、その三点についての先生のお考えを伺いたいと思います。

小柴参考人 今、ITERの問題をお出しになったんですけれども、ITERを日本で中心になってやろうという計画が出されましたとき、私は強く反対したんです。

 その理由は何かといいますと、核融合をそのころ推している学者たちが言っている、夢のような次世代の発電方法であるということは、私はそのまま受け取れない。なぜかというと、あなた方の言っている方式で核融合が実際に実現したとしても、そのときに放出される中性子の被害というものをどう処置したらいいのかというのは全然見当がつかぬ、その問題が解決できない限り、次世代のエネルギー源としては使いようがない、そう言って私は反対したんです。

 財閥とかそういうのは、それまでに投資したいろいろな土地とかなんとかということのために、ああしたい、こうしたいということはあるんでしょうけれども、やはり、国民のお金を何千億と使うということになったら、これはいいかげんな議論でオーケーするわけにはいかないというのが私の気持ちです。

 核融合自体というのは、決して無駄な研究とかそういうふうに思っているわけじゃないんです。ただ、核融合を今の段階で取り上げるとしたら、これはいろいろな核融合の、何と何をどういうふうにして融合させるかといういろいろなことを試してみて、どういうふうなやり方を選んだら、中性子の被害が出ない核融合というのがあり得るかというようなことを研究すべきで、最初から放射能の被害のことを知らぬ顔して、何千億というお金をよこせというのは、これは国民の税金の無駄遣いと言わざるを得ないと私は思います。

吉井委員 今おっしゃったのにつけ加えて、扱う温度が非常に高い温度、超高温になりますし、それから冷却するときには液体ヘリウムのような、今のITERの場合ですと、極高真空の状態の領域やら極低温とか、そういう装置を複雑に絡み合わせるわけですから、これはなかなか、今おっしゃった炉材料の面でも大変なんですけれども、複雑に装置が絡み合うので、研究としてはいいんだけれども、商業化するには、かなりよく準備してかからないととても難しいんじゃないかと考えているんですが、その点の先生の御意見を伺っておきたいんです。

小柴参考人 そのとおりです。今おっしゃったとおり、ビジネスとして扱う段階にはまだなっていないと私は考えております。

吉井委員 どうもありがとうございました。

阿部委員 社会民主党の阿部知子です。

 本日はありがとうございます。

 ただいまは、吉井さんは核融合の方をお尋ねですが、私は、核分裂で、いわゆる原子炉の事故のことで先ほど小柴教授からお話をいただきましたが、アメリカは、核実験の経験、あるいは原爆投下からのさまざまな知見などを持っているから、そこに協力を仰ぐべきだと。私もそのように思います。やはり、実際に軍事としても活用してきたし、たび重なる核実験で知識は蓄積をしておられると思うんですね。

 私も、実は、まだ現在も終わっておりませんけれども、三月十一日の事故の後、五月に、アメリカのNRC、原子力規制委員会にお話を伺いに行ってまいりました。そのときにとても印象に残りましたのは、いわゆる使用済み核燃料棒の問題を、実は原子炉の問題以上に、今回の福島における事態でもアメリカ側は心配していたように私は印象を受けました。

 この使用済み核燃料の問題は、フィンランドでも、十万年どこに保存するかというような論議を行わざるを得なかったり、また我が国でも、今も四号炉は千五百本余りをぎちぎちに詰め込んで、置き場を移すことができない。そうすると結局、次の世代に赤字国債以上の負荷をかけ、そして、放射性物質の捨て場のないものを残すのではないか。

 私は、今の世代の責任として、今は電気を使えていいけれども、あとは全部次の世代にというのでは大変に申しわけないと思うのですが、この点についての小柴教授のお考えをお願いします。

小柴参考人 今おっしゃったように、今まで実用に使われているいわゆる核分裂の原子炉にしても、私は前から聞かれると言っているんですけれども、原子炉による発電というのは必要悪だと。決して、問題なく利用できてぐあいのいいものじゃなくて、今おっしゃった放射性廃棄物という大変な悪がくっついてくる。それをどういうふうに永久的に処理したらいいかというのはいまだにわかっていない。

 私はその当時も言ったんですけれども、もっと本気で、放射性廃棄物を永久に、将来の世代に渡さないで、頭痛の種にならないようにする一つの方法というのは、例えばこの間の大地震でも痛感しているんですけれども、太平洋側のプレートが日本列島の下に沈み込んで大地震を起こした。日本海溝という深さ一万メートルぐらいの海の底で起きていることですよね。そうすると、昔そういう可能性をある人も言っておられたんですけれども、鉄の箱におさめた放射性廃棄物をその一万メートルの海底で沈み込んでいく太平洋のプレートにつけたまま日本列島の底に沈めていったら、これは十万年たっても出てこないですよ。だから、そういうことが可能ならば一つの解決方法になり得るわけです。

 だけれども、技術的にそういうことが可能かどうかというのは、これはよっぽど本気になって調べてみないと何とも言えないことだと思います。

阿部委員 わかりました。ありがとうございました。

津村委員 小柴先生、きょうはありがとうございます。

 先ほど、リニアコライダーのお話がありました。先生はアジアに誘致というお話をされましたけれども、日本でも、岩手県や北九州でリニアコライダーをぜひ誘致しようという議論があるやに聞いております。

 リニアコライダーを誘致する意味について、少し深く掘り下げて伺いたいと思います。

 少しだけ御紹介をいたしますと、実はこの数カ月、政府の方でもリニアコライダーの誘致につきましては幾つかの議論がございまして、このほどまとまりました第四期の科学技術基本計画におきましても、復興と関連して、岩手県あるいは宮城県あたりの北上山地に三十キロのリニアコライダーを建設して、その周辺に学園都市といいますか国際的な科学技術の研究拠点をつくっていくというような構想が岩手県知事の達増さんの方から提唱されまして、関係の経済団体の皆さんや国会議員の皆さんも党派を超えて御支援なさっているということもあって、実際に科学技術基本計画の文章の中にも、リニアコライダーという言葉は出てこないんですが、世界最先端の技術拠点という話が出てきます。

 また、復興構想会議の方でも同様の議論もありまして、政府の議論でいいますと、これから秋に編成されるでありましょう三次補正予算の中で、復興関連の予算としてこのリニアコライダーの調査費のようなものをつけられるかどうかということが、これから科学技術の分野では一つの大きなテーマになると思っているんですね。

 そういう意味で、今非常に重要なタイミングで、きょう参考人として、その道の大家である小柴先生に来ていただいているわけです。

 このリニアコライダー、先生は先ほど、ITERの方は一兆円近くかかって、しかし、将来の実現性とかプラスマイナスも冷静に判断すれば日本誘致には賛成できなかったということをおっしゃったわけですけれども、リニアコライダーもやはり一兆円、国際的な分担はするにせよ、何千億円という大変巨額な費用が発生するものですから、国民の皆さんに納得をいただいて予算をいただくというのはなかなか大変な作業ですけれども、その道の専門家でもいらっしゃる先生から、日本にリニアコライダーを誘致することが、ITERそのほかとは違って、いかにプラスの意味が大きいのかというのをぜひお聞かせいただきたいと思います。

小柴参考人 議員の先生方も何人か、このリニアコライダー計画に大変お力を尽くしてくださるのは大変にうれしいことだと私は感謝しております。

 今現実にこの問題に取り組んでいるのは、私の昔の教え子たちがたくさんかかわっているわけです。その人たちがこの間も来まして、岩手県だけじゃなくて奥羽地方全体が一つにまとまって、招きたいということを言い出していますと。

 私は、前から、その若い人たちにも、それから議員さんの集まりでも言ったことですけれども、最初から日本に日本にという形で叫び声を上げるというのは適当ではないんだろうと思っています。

 それはどういうことかといいますと、先ほど申し上げたように、アジアの中で日本の国民だけが、基礎科学について、ほかの国に比べてずっと進んでいるわけです。さらに日本が突出して走り出そうという形になるというのは、アジア全体から見て日本が浮き上がっちゃう。私はそれを心配しているんです。

 ですから、先ほど申し上げたように、まず、例えば、こういうふうな立派な委員会ができたのなら、この委員会が、いろいろな国の同じような議員さんの基礎科学の将来計画を考えるグループと御相談くだすって、アジアとして意思を統一して、アジアのどこかにリニアコライダー計画を招こうじゃないか、こういうふうな話し合いをして、まず、ヨーロッパやアメリカじゃなくてアジアに持ってこようという線を確立して、その上で、今度はまた関係の議員さんたちの集まりが、それでは、経済的にも技術的にも、それからいろいろな人材とかそういうことを考えて、アジアのどこに設置するのが一番適当かということを議論なさると、議論をちゃんとすれば、技術力とか開発力とかという点で、それからお金の面でも、日本にお願いしますとアジアのほかの国から言ってくるに決まっているわけです。

 そういう形を経て初めて日本に呼んでくるというのが、僕はいい計画だと思う。最初から日本に持ってこよう、日本に持ってこようと言ったら、僕はアジアで反感を買うと思います。

津村委員 よくわかりました。プロセスといいますか、アジアの国境をまたいだ連携の重要性ということ、大変よくわかりました。

 先ほどの御質問でもう少しだけ伺いたかったのは、日本国民だけじゃなくてもいいんですけれども、大変大きな投資をするその意味を国民の皆さんに説明するときに、この研究にはどういう意味があるといいますか、経済効果だけではないと思います、学術的な価値も含めてできるだけわかりやすい言葉で説明をしていきたいんですけれども、このリニアコライダーをつくる意味といいますか、少しお話しいただくとするとどういう言い方になりますか。

小柴参考人 一番最初に説明しましたように、基礎科学の研究計画というのは、こういう獲物が得られますということはだれにも言えないんですよ。例えば、今までつくられた世界の大きな最先端の加速器どの例をとってみても、何かを見つけようと計画してそれがちゃんと見つかったという例はほとんどないんです。

 例えば、有名なチャームというクオークをつかまえたスタンフォードの電子・陽電子衝突、それからブルックヘブンの衝突、そういうのを見ても、全然予期していなかった現象がぱっと見えた、そういう形で基礎科学がぐっと進歩したわけです。

 ですから、今度、世界最大のエネルギーで電子と陽電子をこういうふうにぶつける。なぜ電子と陽電子にしたかというと、陽子と陽子というのは、これは皆さん御存じないかもしれませんけれども、陽子というのは、実は素な粒子じゃなくて、より細かな粒子が三個ずつくっついた組み合わせの粒子なんです。そういう複雑な組み合わせ粒子同士をぶつけたというと、そのぶつかった結果は物すごく複雑になる。はっきりした答えがちゃんとつかめない。でも、電子と陽電子というと、両方とも素粒子ですから、内部構造なんというのはないわけです。だから、ぱちんとぶつかってぱっとエネルギーだけになっちゃう。それが壊れてほかのものになるという非常にすっきりした解析ができる。

 だから、何かあればすぐはっきりと見えますよということはわかるんですけれども、では、何が見えるかということになると、それはいろいろなことをスペキュレーションする人はいますよ。だから、例えばスーパーシンメトリックな粒子がつかまるはずだとかいっても、だれも保証できないんです。

 だけれども、そういうふうな今まで全然手のつけられなかった新しいエネルギー分野に飛び込んでいって、そこがどうなっているかというのを調べるということが今まで基礎科学を推し進めてきたんだし、何が見つかるという具体的なことがなくてもその分野に取り組むということが、基礎科学として意義のあることだ、学者はそういうふうに考えております。

津村委員 ありがとうございました。

吉野委員 自民党の吉野正芳です。

 私は、第一原発のところが私の選挙区ですので、一番地元の方の関心が高いのは、いつ帰れるんだ、いつ戻れるんだ、このことなんです。戻るためには、まず一つ、原発の収束です。そして、収束と同時に除染の問題。除染をしないと、いわゆるお掃除をしないと帰れないわけであります。

 先生の目から見て、今の東電、国の原発事故の収束はあれでいいのかどうか、あのほかに何か手はあったのかどうか。先ほど、米軍に多くの知見があるから私なら米軍に頼んだという言葉を踏まえて、今のやり方でいいのかどうかというのが第一点です。

 もう一つは、除染、お掃除なんですけれども、一番は、土の中に入っている放射性物質をどう取り除いていくかということなので、日本の技術を使っていけば、土をきれいにするということは私はできるのかなと思っているんですけれども、先生の御意見を聞きたいと思います。

 以上です。

小柴参考人 今の御質問は、私にとっては大変答えにくい御質問なんです。

 というのは、私は、素粒子のニュートリノというのはずっと何十年とやっていまして、原子力のことというのは、いわゆる学生時代に勉強はしたことがありますが、本気になって取り組んだことというのは一遍もないんです。

 ですから、今の御質問のような具体的なことについて、私がどう判断しているかというようなことを申し上げても、事実に即したことは言えないと思います。大変申しわけないけれども、勘弁していただきたい。

小川委員 民主党の小川淳也と申します。

 きょうはありがとうございます。

 先ほどの遠藤先生のノーベル賞のお尋ねと関連するんですが、日本の先生方がすごく頑張っておられることは、私どもにとっても大変誇りです。ところが、アメリカ国籍の先生がおられたり、アメリカ在住、アメリカの研究機関という例が間々あって、そこはちょっと複雑な思いをすることがよくあるんです。

 そこで、日本になくてアメリカの研究機関にあるものは何なのか。それは、お金の問題なのか、人事の問題なのか、あるいは研究成果の評価の仕組みなのか。日本に足りないものは何なのかを教えていただきたいと思います。

小柴参考人 私、先ほど、平成基礎科学財団をつくろうと思った根拠といいますかきっかけは、国立大学の独立法人化だというように言いましたね。

 そのときに、私が特に頭に描いていたのは、要するに、私自身は、独立法人にするということに反対する気はなかった。なぜかというと、私自身、東京大学に何十年も勤めていて、東京大学が本当に一流の大学ならば、日本だけじゃなくて世界に向けて門戸が開かれていなきゃならない、そういうふうに感じていた。ところが、御存じと思いますけれども、法律があって、日本国籍を持たない人は東京大学の教授には任命できないというようなことがありまして、これは本当に、閉ざされた大学というので私は気に食わなかったんですね。

 それで、私は、そのことが気に食わなかったばかりじゃなくて、その後も、東大の総長に会って意見を聞かれたときには、もっと国際的に開かれたものにするために、東京大学の講義はもっと英語の講義をふやしなさいよ、そういうことを申し上げたことがあります。だんだんとふえているようですけれども。

 その一番大きな理由は何かといいますと、先ほどお話ししたエーシアンサイエンスキャンプの一週間のキャンプでも、オフィシャルの言語は英語ですというふうに決めました。それはなぜかといいますと、自然科学の分野で英語というのは広く通用するんですけれども、例えば、新しい研究成果を日本語で書いて日本語の論文として学会誌に出しても、世界でプライオリティーは認められないんです。英語であるかドイツ語であるか、そういうふうな限られた数のランゲージでないと、世界的なプライオリティーは認められない。英語なら認められる。

 だから、残念なことなんですけれども、科学の分野では英語という言葉でコミュニケーションせざるを得ないんですよ。そういった意味で、私は、悲しいけれども、英語での講義をふやしなさい、そういうことを言っているわけです。

小川委員 ありがとうございました。

阿知波委員 民主党の阿知波吉信です。

 私は、基礎科学と研究費の関係についてお尋ねしたいんです。

 先生は、基礎科学、基礎研究というものは見通しが立たないものなんだとおっしゃっております。一方で、費用はかかります。予算はかかるものです。こういうものなんですが、私は、税金を使う以上、国民に対して説明をしたり説得をしたり、もしくは納得をしてもらう、こういうことは必要だと思うんですね。

 アメリカのNASAにお邪魔しますと、例えば宇宙開発に莫大な予算を使っている、しかし、こういうものがいかに意義があってとか、こういうものの役に立っていますとか、そういうことで国民を説得する姿勢にあふれているという現状を目の当たりにいたしますと、日本も、例えば先生がノーベル賞をとられたということも大きな説得要因にはなると思うんですが、例えば、「はやぶさ」、衛星が帰ってきたとか、そういう個々のものではなくて、政府機関として、組織として、仕組みとしてそういう機能を持って、継続的に繰り返し繰り返し国民に対して税金の使い道について説得を行っていく、そういう機能を日本の国は増すべきだと思うんですが、いかがでございましょうか。

小柴参考人 おっしゃるとおりです。

 私は、カミオカンデ、スーパーカミオカンデのときにたくさんの税金を使って、それは大変に今でも感謝しているんですけれども、それに対する感謝の気持ちをあらわすのに財団をつくったということもあるわけなんです。

 おっしゃるとおり、国民に、一体どんなことが今行われているのか、その意義、ねらいというものがはっきりと示せなくても、こういう努力を今しているんだよというようなことは、やはりしょっちゅう伝えておく必要が大事だと思います。

 それをやるのは、国民に対して働きかけるというのは、代議士の先生方というのがやはり先に立って、例えば関係のある基礎科学の者を引っ張り出して、国民に対して、この件についておまえたちはどう考えているのかしゃべれというふうなことをやらせていただいた方がいいんじゃないかと思います。

 つまり、例えば私自身、もう九月で八十五になるんですけれども、私が言い出して、国民の皆さん、日本は今こういう計画をこういうふうにやっていますよというふうなことを言い出す機会というのは、なかなかできないんですよ。

 だから、やはり国会として、特にこういうふうな名前のついた委員会というのは、国民に対してPRというのを一つの大きな仕事として取り上げていただいた方がいいんだろう、そういうふうに感じます。

阿知波委員 ありがとうございました。

石津委員 民主党の石津政雄と申します。

 きょうは、先生には大変示唆に富んだお話をありがとうございます。

 端的に二つほど、ざっくばらんに御所見をお伺いしたいと思います。

 第一点は、私の友人に、浜松ホトニクスの晝馬さん、先生も大変ごじっこんにされている、あの方と何回かお目にかかってお話をさせていただきました。そのときに、あの会社では、ちょっと数字は忘れましたけれども、利益の何%かは必ず研究費に充当する。一企業でありながら、そこまで力を入れて研究費を確保しているのにもかかわらず、日本は、科学技術立国を標榜している割には研究費が非常に乏しい、このような所感を申されたことを僕は覚えております。

 その研究費のかさ等々について、先生の率直な御意見を賜りたいということが一つ。

 もう一つは、私もかつて大学にいましたときに、科学研究費の、例の科研費ですね、配分関係にちょっと携わったことがあるんですが、どうしても成果主義で、かつ、会計が単年度主義です。最近になって新聞を大分にぎわしておりますけれども、本来、規則を破ったことはよくないんですが、しかしながら、研究は、役人が考えるように、非常に単純に、一年度であるいは単年度ですべて終わらせるということは不可能ですね。

 こういうような日本の科学研究費の使い方のありよう、制度等々について相当問題があるかと私は考えておるんですが、先生の御意見をいただきたいと思います。

小柴参考人 まず最初に、浜松ホトニクスの晝馬さんですけれども、この人は大変な人物です。私は非常に親しくしてもらっています。

 先ほど申し上げなかったけれども、日本の国で財団を設立しようと思うと、まず一億円の基本財産というのを用意しなきゃならぬ。それを人に出してもらうわけにはいかないので、まず自分から出さなきゃならぬ。ところが、私はそのころ年金生活をしていて、しようがない、金がウルフ賞という賞の五百万しかなかった。困ったな、何とかしてつくれないかなと思っていたら、二週間ほどしたらストックホルムから電話がかかって、ことしのノーベル賞はあなただと。ありがとうございますと言ってストックホルムへ行ったら、三千五百万くれた。合わせると四千万でしょう。

 ああ、ようやく半分近く来たな、これならほかの人に頼めると思って、早速浜松へ行って晝馬さんに会って、おれみたいな貧乏人が四千万出したんだから、あなた、六千万出せよと言った。そうしたら、わかりましたと言って翌日六千万送ってくれた、そういう人なんです。

 あの会社は、光科学の大学院なんかもつくっていますし、研究を応援するということを一生懸命やっています。

 稼ぐ方も大したもので、光をつかまえる検出器の分野では世界のマーケットの六〇%以上占めている、そこまで成長しているんです。まあ、それはいいんですけれども。

 先ほども申し上げたことなんだけれども、日本で講座研究費というのを本当にすぽんと切られちゃって、ああいう種類のお金が出ていない。これは、研究者の自発的な研究能力というのを押さえ込んじゃうということなんですよ。ですから、僕は、あれは何らかの形で復活していただいた方がいいと思うんです。

 ただ、問題は、日本のもとの、国立大学の教授全員に同じ額を配る、こういうふうないわゆる平等主義というのはやめた方がいい。

 今、例えば地方の国立大学で教授をやっている人たち、そういう人たちはもう既に何年間かの研究の実績というのがあるわけですね。そういう人を評価する委員会というものをやはりつくるべきだ。それで、あるレベル以上の研究能力がある、そういうふうに判定された教授たちには、ある額の講座研究費というのをノー文句で渡して、それの会計を単年度ごとに縛らないで、例えばことしの予算と来年、再来年と三年分まとめてから使うというようなこともできる、そういうふうな自由さを与えてやるということが日本の科学を生き生きとさせることに役立つんだろうと私は思います。

石津委員 ありがとうございました。

 先生、ますますお元気で、御活躍をお祈りいたします。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 きょうは、先生、本当にありがとうございます。先生は、すばらしい研究成果を上げられたということと同時に、すばらしいお弟子さんをたくさん育てられたということでも大変有名でございます。

 しかしながら、先生の書かれた御本を読みますと、例えば、あの有名なお弟子さんの戸塚先生にしても、あれは筆記試験では合格していなかったんだ、でも、いいところがあるから引っ張り上げたんだというふうなこともお書きになっていますし、先生御自身、大学ではびりに近かったというようなことも書かれております。

 そういう意味で、我々は大変勇気づけられるんですけれども、若い人を育てる、また、優秀な人を見つける、こういうことについて、先生のお考えを聞かせていただければと思います。

小柴参考人 今お話がありましたことですが、きょうはまだ申し上げていないんですけれども、筆記試験という形で人の能力を判定するというのは、その人の能力のごく一面しか判定していないんだ。要するに、筆記試験ではかれる能力というのは、受け身の認識能力をはかっているんだ、教わったことを覚えて答案に書くというだけの能力。もう一つ大事なことは、自分から何をやるか、どうやってやるかというようなことをやる能動的な能力。筆記試験では、これはだれにも見れないんですね。私はその両方の能力が大事だということを言っているわけです。

 ですから、私はいい弟子をたくさん持った、おまえ、幸せな教師だと言われるんですけれども、それに対してちょっと反論しますと、私のことを幸運なおやじだというふうに例えてくれる人はいるけれども、そのおやじが息子たちに先立たれて死なれちゃったら、こんな不幸なおやじはないだろう。私の場合、期待していた教え子というのは、もう三人以上、私よりずっと若くして死んじゃっているんです。だから、私は本当に不幸な教師なんだと言っています。

 私は、今お話ありましたように、難しい公式を理解して、それを黒板にさっと書いて、学生たち、これを覚えて勉強しろよというようなことのやれる人間では決してないんです。東大の先生になって、毎年大学院の学生が二人、三人と来るようになったとき、一体、私は教師としてどういうことをしてやったらみんなの役に立つんだろうと考えました。

 それで到達した結論は、私にはそんな難しいことを次々と教えるという能力はないんだから、私が一番大事だと思っているのは、仕事をやるときに、人から言いつけられた、先生から言いつけられた、親から言いつけられた、だからやっているんだという仕事とかそういうのじゃなくて、自分がこれをやりたい、これならおれはやれると感じた、そういうことをやるというのが一番大事なんだ。そういうことに手をつけ始めると、困難に出会ってもやめようという気が起きない。

 私自身、それを随分、もう何遍も感じていることなんです。自分がこれをやろうと決めたときには、困難に出会っても、それでやめようという気にならないです。やったことのない財団をつくるということ、事業でもそういう困難に出会ったけれども、やめようという気は起きなかった。

 だから、私は大学院の学生一人一人に、そいつが、ああ、これならおれはやってみたいなと感じるようなことに何とか出会わせてやる、それが教師としての私の役目だと思って、例えば、カミオカンデという実験だってそういう目的で計画したんです。

 だから、私のことを先生と呼ぶ者はいなかったですね、親分、親分と言って。そんな感じだったんですね。

斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。

阪口委員 民主党の阪口直人と申します。

 本当に、きょうはすばらしいお話、ありがとうございました。

 エリート教育についてお伺いをしたいと思います。

 日本の教育は、いわゆる詰め込み教育というか、画一的な能力を持った子供たちを育てるには適したところもあり、また、優秀な労働者を育てるという意味では、それはすぐれた実績も上げてきたと思いますが、特に基礎科学の分野で、天才的な業績を生み出す可能性のある子供たちを生み出すという意味では、少し問題があるのではないかとも思っています。

 一方で、アメリカですとか、また、最近中国などは、そういった天才的な科学者を生み出す、もしかしたら一人で十万人分の雇用を生み出し得るような方を育てるというエリート教育を行っていると聞いているんですが、このエリート教育の是非について、また、日本の風土に合うのかどうか。

 さらに、もし肯定的なお考えを持っていらっしゃるということであれば、日本が参考にすべき国のエリート教育の例というものがあれば、先生のお考えを伺いたいと思います。

小柴参考人 エリート教育というのは、中身は少しずつ変わっているんでしょうけれども、いわゆる何とかオリンピックというのでトップになるかどうかというのは、私はそういうことに余り価値を認めていないんです。それは、さっきも言ったように、筆記試験でいい点をとるということだけがその人の能力を反映しているわけじゃない。それよりも、やる気が起きるかどうか。

 さっきも言ったように、私は若い人に何かアドバイスをと言われたときに必ず言うのは、自分がやりたいと感ずることができるものに出会えるように、物おじしないで、新しいことに次から次へとぶつかってごらんなさい、そのうちに、ああ、これならおれはやれる、これならおれはやりたいと思うものに出会えるかもしれない、そうしたらしめたものだよというわけです。

 そういった意味で、私は、いわゆる世の中で言われているエリート教育というのは、要するに点をよくとる人というのはつくっていけるかもしれないけれども、本当にクリエーティブな仕事がやれる人になるかどうか。先ほどもお話しした、個々の人間が自分で本気でやりたいと思うような仕事をやれるようにあんばいしてやる、それが年長者の若者に対する親切じゃないか、そういうふうに感じます。

阪口委員 実は、今私がエリート教育という言葉を使ったのは適切ではなかったかもしれませんが、まさに先生がおっしゃるように、例えば、極めて若いころから科学に対してより興味を持つように、あるいは独特のセンスを持っている、関心を持っていると認められた子供に対して、いわばその能力を開発するための特別な後押しを行う、そういった意味での、エリート教育という表現以外であればどういう表現がいいのかちょっとわかりませんが、そういった才能あるいはやる気を伸ばすための教育という意味で実は申し上げたんですが、そういった教育を、例えば比較的若い時期から行うということについてどのようにお考えか、改めてお聞きしたいと思います。

小柴参考人 いわゆるエリート教育とあなたが言われることを具体的にどういうことを考えたらいいのかというのははっきりわかりませんけれども、先ほどお話しした、私どもの財団が月に一遍やっている楽しむ科学教室、それはお話しの線に沿っているアクティビティーの一つじゃないかと私は考えております。

 つまり、楽しむ科学教室、なぜ楽しい科学教室じゃなくて楽しむなのかというと、ただ人の話を聞いて、ああ楽しかったという受け身じゃなくて、自分から能動的に科学を楽しむ、自分から働きかけていく、講演を聞いたら質問をどんどんしていく、そういうふうな働きかけをするというのが大事なんだと私は思っています。

 それと、今おっしゃった、子供の理科離れがどうこうとよく言われるんですけれども、私は、理科が好きになるか嫌いになるかというのは、大体小学校の高学年から中学の一、二年で決まるのが多いと思うんです。そのときに理科を教えた先生が、先生自身、理科をエンジョイしていない、理科を好きでない先生が教えたら、これは惨めなもので、生徒が理科を好きになるはずはないんです。ところが、必ずしも理科の先生が理科を好きで教えているというわけじゃないんです。

 それに対する一つの案として、私は何年か前に、当時の文部大臣に、あなた方は予算がないと言っているけれども、予算を新たに使わなくても、例えば大学院で物理や天文学をやっている大学院生、大体そういう人たちは奨学資金をもらっている、だから、おまえたち、年に何遍か自分の出た学校へ行って、後輩に自分たちが楽しいと思っている物理や天文学を教えてやれ、そうしたらおまえたちの奨学金返済分をこれだけ免除してやるぞ、そうすれば新しい予算を使わなくたっていい先生が得られるじゃないか、そういう話を言った。そうしたら、その大臣は、ああ、いいですねと言ったんだけれども、三カ月ぐらいで首になっちゃったから実現しなかった。

 それを何遍か言っていたら、この間、二カ月ほど前ですが、毎年一遍、小柴昌俊科学教育賞というのを出しているんですけれども、それに推薦されてきた中で、東大の大学院学生が何人かでチームをつくって、自分たちの卒業した学校へ行って後輩たちにそういう講義をやって教えているというのがありまして、それに奨励賞というのを渡しました。そういうことを先輩が後輩たちにやってやるというのは、僕は本当にいいことだと思っています。

山崎(誠)委員 民主党の山崎誠でございます。

 本日は、さまざまの貴重な御意見をゆっくりとお聞きできる機会と思いまして、本当にありがとうございます。

 私からは一点、お聞きをしたいです。

 最近すごく私としても考えていることなんですが、科学技術は私たちの社会に本当に欠くべからざるものであって、さまざまな豊かさをもたらしたものだと思うんですが、例えば原子力の問題、核兵器の問題もあります、今回のような、平和利用といいながらも、やはり社会、私たちのこの地球に大きな影響を与えるような技術、例えば遺伝子組み換えのような技術、さまざまなそういう科学が進歩をしていくことによって、何らかそのリスクも大きく伴うようになっているのではないか。

 こういう現状の中で、先生のお言葉の中で謙虚さというお話があったと思うんですけれども、私たちが人間として自然科学あるいは科学の世界に向き合う、向き合い方も今は大きく問われているんじゃないかなというふうに思っています。手を出してしまうと、そのリスクが一たん顕在化したときに、この地球全体は、人類だけのものではなくて、生態系を含めて、すべての生物のものであって、私たち人間が自由にしていいものではないと思っております。

 そういった意味で、科学に対する私たちの物の考え方というのを、ここは一回しっかりと問い直さなきゃいけないんじゃないかと思っています。一言で言えば、科学と倫理の問題、あるいは科学とそれに向き合う哲学みたいな問題について、三・一一も踏まえて、我々は考えながら次の方針を決めていかなければいけないと思っているんですが、ぜひ先生のお考えをお聞きしたいと思います。

小柴参考人 あなたのおっしゃることに全く賛成です。私も同じように考えています。

 難しいですね。つまり、新しいことができると、それがどういう影響をこれからの若い世代の人たちに及ぼしていくのかがなかなかはっきりとつかめないんですね。だから、それだけに、さっきも言ったように、謙虚に、まじめにそれを調べるという態度を崩しちゃいけないと思っております。

山崎(誠)委員 私は、今非常に危機的に思っているのは、政治もそうなんですが、いわゆる学者、研究者の皆さんに対する信頼も、残念ながらさまざまな部分で揺らいでいるのではないかなというふうに思っています。

 この間の原発の事件で、原子力村みたいなお話があって、専門家の言っていることも実は当てにならないんだみたいなことが社会の中に流れていくのはすごく悲しいことですし、日本にとっても世界にとっても悲劇だと私は思うんです。ぜひその辺を、信頼を取り戻すために、我々はどういう心構えで、謙虚さというのが一つの大きな答えだと思うんですが、今どうすべきなのか、何か御指示をいただければと思うんです。

小柴参考人 今例に挙げられた、例の原子炉の問題、これはいろいろなことが複雑に絡み合っていて、部外者である私どもがああすべきだ、こうすべきだと言えるような状況にはないわけです。

 私は、ごく初期のころの今の総理大臣のとった態度とか、そういうのを見ていて、もっと謙虚に事態に対処すべきじゃないかというふうに感じたということを申し上げたんですけれども。

 だから、あなたの言われるように、あの件に関係しているいわゆる技術者、学者も入っているのかもしれないけれども、その人たちが、こちらから見ていると、本当に右往左往しているという感があるのは否めないですね。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 二回目の質問をさせていただきます。

 先生から、講座研究費のお話を伺いました。私も自由な研究がどんどん進むようにすること、そして若い研究者が育っていくということはすごく大事なことだと思っているんですが、もう一つ、先生が、スーパーカミオカンデなどでもそうですけれども、やはり大きな研究となりますとチームを組んでやってこられたわけですし、その中には、国立大学なんかですと、かつては技官と呼ばれた研究支援者、サポーティングスタッフが、割ときちんと位置づけられて、処遇も受けてやってきたわけですけれども、何かだんだん予算が削られる中で、サポートする人たちも削られてくる、数の面でもそうなんですけれども、サポーティングスタッフの人たちが自分自身も研究意欲を燃やしたり、モチベーションを高めるという、そういうことをきちんと支援していかないと、将来、チームを組んで研究で成果を上げていく上でも非常にまずいことになってきているんじゃないかなということを実は危惧しているんです。

 それは、かつて田無にありました原子核研究所などでは、技官の方たちが、例えば原子核実験のための非常にいいターゲットをつくるために、同位体を分離して、質量数が一つ違うだけで、そういう特定の質量数のターゲットをつくるとか、そういうのを技官の方がきちんとつくられたり、あるいはその研究所全体で、装置が壊れたときには、工作室があって、非常に腕のいい、旋盤も溶接もできる方たちがいた。

 研究というのはもともとそういうたくさんの人たちに支えられて、そして自由な研究をさらに発展させることができると思うんですけれども、この講座研究費の話とともに、どうも今は、そういうサポーティングスタッフを支援したり、あるいは新しい、若い人を育てていくということがだんだん軽視されてきているんじゃないか。それは、国の予算のあり方の問題にかかわってくるんですけれども、その点についての先生の御意見を伺っておきたいと思います。

小柴参考人 おっしゃるとおり、そういう技術的なサポーティングスタッフというのは非常に大事なものです。ただ、今までの状況を眺めてみても、そういうふうなある程度能力のある技術的なサポーティングチームというのは、ある程度まとまった組織でないと持てないわけです、予算の面でも何でも。

 例えば、私が一人の教授としてカミオカンデ、スーパーカミオカンデをやるなんというときには、仕方がないから大学院学生を技官のかわりに使うんです。それは決して悪いことじゃなくて、大学院学生が手に職を覚える、それが実際にやれるわけですから、だから決して悪いことじゃないと思うんですけれども、今おっしゃったような技術的なスタッフというのは、ある程度の研究組織になったら、やはり備えていなければならないものだと私は思います。

吉井委員 やはりサポーティングスタッフを抱えるということは、その人たち自身が腕を磨きながら、技術の継続性といいますか、大学院の方ですと、一定年限が来たら、残る人もいますけれども離れていくわけです。

 そういう点では、サポーティングスタッフとしてちゃんといることが継続して発展する力になるし、研究する中で、やはり自分自身も、ただサポートするだけじゃなしに、みずからのテーマを持って研究することが、その人にとってもモチベーションを高めていくことになって、全体として発展につながるのではないかなというふうに思っているんですが、もう一言御意見を。

小柴参考人 おっしゃるとおりなんですけれども、この場合も一つ大事なことは、技術グループを指導していく立場の人、この人がどれだけちゃんとしているかということで事態は全然違った結果になります。

吉井委員 どうもありがとうございました。

遠藤(乙)委員 二回目の質問になりますが、公明党の遠藤でございます。

 我が国の理科離れ、数学離れが指摘されて久しいわけですけれども、今先生のお話を伺っていて感じたんですが、理科や数学について、子供たちあるいは学生がさらに探求したいというモチベーションを持つことに、教える側の教え方、これがまず決定的な影響を持つかと思っております。

 特に日本の場合、学校の先生も大体大学卒でなる人が多くて、教職の単位を取るためにそういった勉強をした、義務的に勉強をしてきた人が多くて、探求する喜びを本当に味わっている人が少ないために、生徒にもそれが反映して、数学にしても理科にしても嫌いになっちゃうということだと思うんですね。

 ところが、今フィンランドの教育が非常に注目されていますが、あそこは、教師になる前提がまず大学院卒ということであって、みずからリサーチをやった経験がある、リサーチの喜びを知っている人が直接に当たっているということ、それから、小人数教育なので、子供一人一人に個別指導を軸にしているということがあって、それがフィンランドの教育を非常に高めているんじゃないか。特にフィンランドの場合、勉強時間が長いわけでもないんですけれども、非常にパフォーマンスがいい。例えば、リナックスなんというソフトは大学生がつくったわけですけれども、日本では考えられないような、そういうクリエーティブなことが大学生、大学院生レベルでも起こっているわけであります。

 そういった意味では、根本的な部分でもう少し教育の改革が必要かなというふうに思っています。

 ちょっと話が飛ぶんですが、最近、日本で高齢者の間に数学ブームが起こっている。かなり高等数学についてブームが起こっていて、例えばオイラーの定理なんかをみずから数カ月かけて徹底的に理解するといったこと、これは非常にいい方向だと思っているんです。

 やはり、日本の基礎科学を本当に高めていくためには、こういった文化というか風土というもの、あるいは教え方といったものを根幹的に変えていく必要があるかと思っておりまして、そういった教育改革についての先生の御所見をさらに伺えればと思っております。

小柴参考人 先ほど、理科好きの先生が教えなかったら、教わった生徒が理科を好きになるはずはないということを申し上げました。これは日本の小学校教育で最もひどくて、私の理解している限り、日本の全国の小学校というのは一人の先生が四十人ぐらいのクラスを一つ担任して、その先生があらゆる科目を教える。これでは、理科の好きでない先生が理科を教えるということを避けられないわけです。

 僕は、そのとき、文部大臣にも言ったんですけれども、予算がないと言うんだったら、その学校の先生全部を理科向きの先生と国語向きの先生の二組に分けて、一人ずつペアを組ませて、そのペアが二つのクラスを担任する、そういうふうにすれば、予算を余計に使わなくてもある程度改良できるでしょうということを申し上げたことがあるんです。

 結局、国民全部が理科好きになる必要はないし、そんなことはできるはずはないのです。理科よりも音楽が好きだ、絵が好きだという人がおって当然なんです。だけれども、本来、理科好きになれる人が、教え方のためになれなかった、これはかわいそうですから、だから、その小学生の問題とか、さっきの大学院学生の母校へ帰れというのを提案しているわけです。

 私は、こういうことというのは、小さなことからじわじわと進めていくよりほかに、一挙に改善するという方法はないんだろう、そういうふうに思っています。

阿部委員 小柴先生には、長時間お疲れさまです。私も、二度目の質問をさせていただきます。

 きょうのお話の中で、実は、私が一番深く感動したのは、先生がやっていらっしゃる平成基礎科学財団のアジアンサイエンスキャンプと呼ばれるもので、二〇〇七年から始まったということで、恐らくことしはもう五回目になるんでしょうか。クラスターではありませんが、アジアで若い人たちをある程度集積していって、次の時代を考えるという意味で、大変にすばらしい取り組みだと私は思いました。

 それで、今度で五回目だと思いますけれども、重ねられて、その御感想というか、あるいはこれからどのようにやっていかれようとするかということをもう少しお願いします。

小柴参考人 これは余り表立って公表しない方がいいのかもしれないんですが、実はこのエーシアンサイエンスキャンプというのは、基礎科学の分野では、英語をオフィシャルランゲージにして、宗教とか国の損得とか政治に関係なく、それぞれ意見の交換ができる分野なんだ、だから、基礎科学をとって、子供たちに自由な討論がやれるような場をつくってあげる、これで始めたわけなんですね。

 ところが、それをつかさどるアドバイザリーコミッティーというのに、日本の小林誠さんとか野依さんとか、それから私は中国ではヤンなんという先生も呼んできて、そのコミッティーをつくったんですけれども、悲しいことに中国のヤン先生が非常にナショナリスティックな要求を出して、結局それが問題で、そのアドバイザリーコミッティーがいわば途切れちゃったような段階になったんです。これは去年のことなんです。今、小林誠さんが中心になって、それを何とか生き返らせようとしていますけれども、難しい問題というのはまだ残っているんです。

 例えば、皆さんも御想像はつくでしょうけれども、韓国の次に強くこのエーシアンサイエンスキャンプを主催したいと言い続けているのはイスラエルなんです。ところが、それに対して既にアラブの方は、そんなのにはおれたちは参加しないということをはっきり言っちゃっているわけなんです。そうなってくると、基本的な精神というのが損なわれちゃうわけですよね。一体どうしたらいいのか。韓国の次の来年のエーシアンサイエンスキャンプをどうしたらいいのか、大変な難問になっています。

阿部委員 大変多難な中ですが、ぜひ、当初の目指したものを求めて、なおよろしくお願いしたい。本当に、科学を求める子供たちのというか若い人の心は必ず世界で隔てなく結ばれると思います。よろしくお願いしたいと思います。

本多委員 民主党の本多平直と申します。

 本日はありがとうございました。

 基礎科学をしっかりと重視していく国こそ文明国だというお話をいただきました。率直に言って、日本というのは、先生から見て文明国であるのかどうか、そして、結構頑張っているけれどももうちょっとなのか、かなりまだまだだめだというレベルなのか。そういう観点から見て、ここは文明国だ、参考にした方がいい、学んだ方がいいという国がありましたら、お教えをいただきたいのが一点。

 二点目なんですが、基礎科学というのにそんなにたくさん分野があるのかどうかわかりませんが、比較的ここはできているんだけれども、この分野は弱いよとか、ここをもうちょっとやった方がいいよ、基礎科学の中でも、日本の中でそういうむらがあるのかどうか、もしあるとすればどういうところを、目くばせが足りない部分などがあれば、お教えをいただければと思います。

小柴参考人 日本の基礎科学というのは、皆さんのお考えになっているよりも僕は高いレベルにあると思います。

 私の個人的な感じですけれども、これから先の若い人で、ノーベル賞を受けてもおかしくないという人が二、三、頭に浮かんでいます。ですから、私自身は悲観的では全然ないんです。

 ただ、日本で、素粒子というのは基礎科学の大きな分野なんですけれども、素粒子の方でも、つくばの高エネルギー研究所の電子・陽電子衝突装置でB中間子というものの崩壊形式を非常に精密に調べて、確かに、粒子、反粒子の対称性は壊れているよということを実験的に証明して、それで幾つかの賞をもらっていますけれども、それなんかも大変に大きな寄与なんです。

 ですけれども、私はすべての分野について進んでいると、これはどこの国でも言えないことなんですけれども、京都の山中先生の例もありますように、ほかの分野でも基礎的な研究というのがちゃんと日本で行われているということは皆さんも御存じだと思います。

 ですから、私は、日本の国民というのは優秀であると思っております。

空本委員 民主党の空本誠喜と申します。

 きょうは、ありがとうございます。

 私も研究者でございました。そして、実は原子力屋でございます。その中で、先生の方にちょっと何点か。

 私も研究の中で何回も失敗をしています。先生の中で、やはりこれは大きな失敗だった、しかし、それをどう乗り越えて、そしてそれを次の研究につなげていった、今回、基礎研究、そういったものの枠をどんどん広げていくためには、その失敗をどういうふうにつなげてきたかというのをどんどん御披露いただけたら、それがつながっていくのではないかなと思いまして、一点目は研究の失敗、そしてそれをどう乗り越えてこられたか、そういったものがございましたら、御教授いただきたいと思います。

 もう一点は、今度、研究の卵はどういう卵があるか。研究の卵、研究テーマの卵、先ほど、素粒子の方ではいろいろあるし、またバイオの方でもございますというところではあるんですが、今回、原子力において、私、実は小学校のときに「宇宙戦艦ヤマト」を見て、放射能除去装置というのをつくりたいなと思ったことがあります。それで、放射線計測とかやったんですが、なかなかそこまで行きません。そういう中で、消滅処理とか、そこら辺に、今回の原子力災害に際して、新しい研究テーマというものがどんどん生まれてくるんじゃないかなと考えておりますが、先生、どのようにお考えか。

 二点、お願いいたします。

小柴参考人 御質問の最初のもの、どれをお話ししたらいいのかと考えています。

 皆さんもよく御存じのカミオカンデという実験、あの実験は、先ほども言いましたように、一人の新しく入った大学院学生、こいつはどんなことに興味を持つかなと思って、そのころのアメリカの理論学者が発表した新しい理論、これが本当だとすると、水素原子の原子核というのは、陽子というプラスの電気を持った重い粒子がしんにあって、その回りをマイナスの電気を持った軽い電子が取り巻いて水素原子になっているわけですね。このしんの陽子という重い粒子が自然の寿命でぱっと壊れて、プラスの電気を持ったもっと軽い陽電子と、残りがエネルギーの塊のような中性パイ中間子というのにぱちんと割れる、こういう発表をしたわけです。これは本当かいなと。本当だとしたら、これは大変な発見で、その年のうちにノーベル賞が決まっちゃうような大発見になる。

 それで、それを日本でもやれるように、安くて確実な実験方法というのは、地下に水をためて、それを周りから、光をつかまえる球でのぞくのが一番安上がりだ。それで、カミオカンデという実験の案をその男に示したら、夢中になって、ぜひやりたいというんです。

 そこで、文部省に要求を出して、説得して、世界で今までやられたことがなくて、もし見つかったら、これはもう確実にノーベル賞そのものである発見になりますよということで、何とか三億七千万円の予算がついたんですよ。やれやれと思って、つくり始めようと思ったら、アメリカからニュースが伝わってきて、私の古い友達の物理屋が同じアイデアで、地下に水をためて周りを光電子増倍管でのぞくという、同じことを計画している。ただ、向こうの方が金をうんと持っているから、ためる水の量が何倍もたくさんなんです。

 こうなってくると、陽子崩壊をつかまえるというのは、まさに宝くじを買うような話です。当たれば大きいけれども、当たる確率は非常に小さい。こういうことに国民の税金を使っていいのかということでまず悩みましたけれども、さらにアメリカの計画を聞いてみると、これは本当に壊れたら、もう間違いようのないシグナルですから、でっかいアメリカがまず最初にあったあったと幾つかつかまえた後で、日本のカミオカンデがうちでも見つかりましたといっても、後追い実験、二流の実験になる。これでは、国民の税金を使うのは申しわけない。

 それで、これは大変な大失敗になるというので、一生懸命考えました。

 球を千個使うことにしていたんだけれども、球の数をふやして光に対する感度をふやそうとしたって、それは、文部省にもっとお金をくれと言ったって、くれるはずはないでしょう。だから、球千個分のお金で、どうやって敵のでっかい実験に勝てるか。それで考えついたのが、一個一個の球をでかくして、球一つの感度をけた違いによくしてやるんだ。それで、さっき話に出た浜松ホトニクスの社長を大学に呼んで、口説きに口説いたわけですよ。それで、共同研究ということで、大きな球を開発して、設置したでしょう。だから、自分がやろうと思ったときは、何とかして困難を乗り越えるんだと。

 設置して、皆さん御存じだと思うんですが、あなたは特に実験をやったから御存じだと思うんですけれども、新しい装置をつくったら、必ずキャリブレーションというのをやります。これだけの光がつかまったらこれだけのエネルギーだということを正確にキャリブレーションするんだ。そのために、水の中でとまったミュー粒子が電子を出して崩壊する、この放出する電子のエネルギー分布というのは正確にわかっている。だから、見える、この飛び出した電子のエネルギー分布をはかってみて、それを理論と比較してみると、ちょうどキャリブレーションになるわけなんです。

 やってみたら、きれいにエネルギー分布が見えて、ただ、八MeV、MeVというのは御存じないかもしれないんですけれども、エネルギーの単位です。そのエネルギーの単位以下は、周りの放射性元素から来る雑音でばっと隠されて見えない。

 だけれども、私がすぐ感じたのは、やはり国民の税金を使ったら、宝くじの実験じゃなくて、やれば確実に結果が出るということをやるべきだ。そう思って考えてみたら、これは周りから来る雑音をけた違いにぐっと減らせば、一週間に一遍ぐらい起きるはずの、太陽から来たニュートリノが水の中の電子をぽつんとはじく、そのはじかれた電子が走り出したのをちゃんとつかまえれば、太陽からのニュートリノをちゃんとはかることができるんじゃないか。これをやれば確実に答えが出るはずなんだ。それで、国民の税金を使った理由がちゃんと立つじゃないか。

 そこで、ほかにお金の算段、改造のための算段をした上で、一年半かけて改造して、周りの雑音をぐっと減らして、太陽ニュートリノがはかれるようにしたわけで、そうして準備をして、太陽ニュートリノをはかり始めたら、二月としないうちに大マゼラン星雲の超新星のニュートリノがばっと飛び込んできた、こういうことなんです。

 だから、苦労はたくさんありました。でも、自分がやろうと思った実験のときは、その困難は何とかして乗り越えるものなんです。

川内委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、小柴参考人に、委員会を代表いたしまして御礼を申し上げさせていただきます。

 小柴参考人には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。今後の科学技術・イノベーション推進に大いに参考にさせていただきたいというふうに存じます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十七分散会


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