衆議院

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第11号 平成23年8月26日(金曜日)

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平成二十三年八月二十六日(金曜日)

    午前九時四十二分開議

 出席委員

   委員長 川内 博史君

   理事 阿知波吉信君 理事 稲見 哲男君

   理事 熊谷 貞俊君 理事 空本 誠喜君

   理事 津村 啓介君 理事 馳   浩君

   理事 松野 博一君 理事 遠藤 乙彦君

      石田 三示君    石津 政雄君

      石森 久嗣君    今井 雅人君

      小川 淳也君    太田 和美君

      金森  正君    川島智太郎君

      熊田 篤嗣君    桑原  功君

      阪口 直人君    菅川  洋君

      平  智之君    高橋 英行君

      竹田 光明君    玉置 公良君

      豊田潤多郎君    中川  治君

      藤田 憲彦君    本多 平直君

      森岡洋一郎君    柳田 和己君

      山崎  誠君    柚木 道義君

      江渡 聡徳君    佐田玄一郎君

      塩谷  立君    谷  公一君

      松浪 健太君    吉野 正芳君

      斉藤 鉄夫君    吉井 英勝君

      阿部 知子君

    …………………………………

   参考人

   (株式会社三菱総合研究所理事長)         小宮山 宏君

   衆議院調査局科学技術・イノベーション推進特別調査室長           上妻 博明君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月二十六日

 辞任         補欠選任

  石津 政雄君     藤田 憲彦君

  勝又恒一郎君     高橋 英行君

  金森  正君     桑原  功君

  平  智之君     柳田 和己君

  野木  実君     森岡洋一郎君

  河井 克行君     松浪 健太君

同日

 辞任         補欠選任

  桑原  功君     金森  正君

  高橋 英行君     今井 雅人君

  藤田 憲彦君     石津 政雄君

  森岡洋一郎君     野木  実君

  柳田 和己君     平  智之君

  松浪 健太君     河井 克行君

同日

 辞任         補欠選任

  今井 雅人君     勝又恒一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件(我が国の科学技術、イノベーション推進の今後の在り方について)


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     ――――◇―――――

川内委員長 これより会議を開きます。

 この際、理事会の協議に基づき、委員長から発言をさせていただきます。

 本年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれが引き起こした津波が、東京電力福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所を襲い、大規模かつ長期にわたる原子力事故が発生をいたしました。

 福島第一原子力発電所の一号機から三号機について、それぞれ原子炉圧力容器への注水ができない事態が一定時間継続したため、各号機の炉心の核燃料は水で覆われずに露出し、炉心溶融に至ったとされております。

 原子力災害対策本部が六月に取りまとめた原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本政府の報告書の中では、地震発生から津波が到達するまでの間の詳細な損壊状況は不明であり、今後の調査が必要であるとされております。

 地震発生から津波が到達するまでの間に福島第一原子力発電所で起きた事象を解明するに当たっては、非常用復水器の操作及び格納容器スプレーの起動が重要なかぎとなるとの指摘がございます。

 この指摘を検証するには、両設備に係る東京電力の操作マニュアルが必要不可欠でございます。

 また、菅総理も、八月六日の広島市原爆死没者慰霊式等において、原子力については、これまでの安全神話を深く反省し、事故原因の徹底的な検証と安全性確保のための抜本的対策を講じると、徹底的検証について言及をされております。

 ついては、原子力災害対策本部は、総理発言にあるように、事故原因の徹底的検証のため、東京電力株式会社に対し、福島第一原子力発電所の非常時の運転操作に関するマニュアル、特に、非常用復水器及び格納容器スプレーの取り扱いに関する部分を含むものの提出を求め、同本部が、当委員会に対し当該資料を提出するよう要求するものでございます。

 政府においてしかるべき取り計らいをお願い申し上げます。

     ――――◇―――――

川内委員長 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件、特に我が国の科学技術、イノベーション推進の今後の在り方について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として株式会社三菱総合研究所理事長小宮山宏君に御出席をいただいております。

 この際、小宮山参考人に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。小宮山参考人におかれましては、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、小宮山参考人から二十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に簡潔、端的にお答え願いたいと存じます。

 御発言の際は着席のままで結構でございます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、小宮山参考人にお願いいたします。

小宮山参考人 ありがとうございます。

 そこのパワーポイントのスクリーンと同じものがお手元に配付されてございますので、このどちらでもごらん願いたいと思います。

 私は、日本の再創造ということを提案しておりまして、今後の日本の進むべき道、そのためにどういうイノベーションが必要なのかというような形で考えてございます。

 スライドを送ってください。

 日本は、イノベーションということでは非常におくれていると思います。イノベーションが起きない。なぜ起きないかといいますと、科学技術が社会で実験されて、そのうちのいいものが社会を変革していくというのが新しいイノベーションであります。ここが途上国と先進国との違うところ。

 先進国は新しい科学技術を社会で実験することが必要で、それによってイノベーションが起こります。途上国には坂の上の雲を目指して社会を変えていけばいいという明確な差があるわけです。

 この先進国になったときのやり方が日本はできていない。どこがかというと、科学技術の問題よりは、社会実験ができないというところの方にはるかに大きなところがあるわけで、この答えというのは、一番わかりやすいのは規制緩和ということになるかと思います。

 先ほど東北の話が出てございましたが、最後の私の結論は、東北で思い切った規制緩和で新しい社会をつくるということをしていって、それを日本のイノベーションにつなげるべきだというのが私の本日の主要な論点に最後はなります。

 もう一つは、現状があってビジョンがございます、どういうところに向かいたいと。実は、これは途上国ですと、ビジョンに向かって進むというのが非常に楽なんですね。もうほとんど何もないわけですから、つくればいいわけです。しかし、先進国というのは、特に日本に代表されるように、非常にしっかりした社会というのがあるわけです。そのときには、移行プロセスの議論も同時に極めて重要でありまして、ビジョンも欠落しているんですが、特にこの移行プロセスの議論に関してはほとんどやられていないというところが大きな問題かと思います。

 次をお願いいたします。

 二十世紀の延長戦だけで再生は無理だというこの議論は、私もきょう参考人として述べさせていただいておりますけれども、例えば、今力を持っている企業、そういうところに聞いただけでは将来は見えません。これは二十世紀の延長戦と私は呼んでおりますが、二十世紀に成功した形で商売をしているわけです。

 それは、例えばエネルギー資源という言い方で言うと、エネルギー資源の供給をふやして経済成長をする、これは、一九七三年、オイルショックの年までは、明確にGDPの成長とエネルギーの消費量というのは弾性値一対一で成長しております。そこからぱたっと、例えばグーグルが一つ日本にできた、十兆円のGDPがふえますけれども、エネルギー消費はふえないわけです。こういうエネルギーとGDPとが一対一でなくなった、これは非常に大きな論点であります。

 では、二十一世紀はどうかというと、効率化によって、エネルギー資源の消費を減らして経済成長をするというのが二十一世紀のエネルギー資源政策ということであろうと思います。

 こういう思いに至った背景を少し説明させていただきます。

 次をお願いいたします。

 私は人工物の飽和ということを年来申し上げておりますが、恐らく二〇五〇年あたりで世界じゅうで人工物がほぼ飽和に至る。

 この意味は、例えば自動車です。自動車は、日本では一人当たり〇・四五台、大体二人に一台ですね。二人に一台までみんな持っていきます。上の日本からドイツまでを見ていただきますと、二人に一台、人口で保有台数が決まるんですね。

 これが非常に大きな点で、このとき、ポジティブな面とネガティブな面、ネガティブな面は、アメリカの自動車の販売台数、日本の自動車の販売台数が飽和します。日本は五千八百万台の自動車があって、十二年で廃車になります。そうすると、五千八百万割る十二、一年五百万台というのが毎年廃棄されて、毎年売れていくわけです。ですから、自動車に関しては、日本の国内需要というのは五百万台なんです。このように人口で飽和する需要、これが、日本、アメリカ、ヨーロッパ、いずれも内需の飽和ということに苦しんでいると申しますか、その基本的な背景。

 ただし、ポジティブな面があります。それは、新車をつくる資源、例えばレアアースとか鉄とか、そういったものは廃車されるものの中に含んでいるということです。つまり、メタルに関するリサイクル社会をつくれば、天然資源は要らなくなる時代が二〇五〇年ごろにやってくる。これは、もともと天然資源を持たない日本にとっては最もいい社会であります。

 つまり、人類が永久に地下から金属を掘り出すという必要はないんですね、捨てていけば別ですよ、それが人工物の飽和という極めて重要な背景。

 次をお願いいたします。

 それでは、今、世界は中国の需要、もちろん中国だけではございませんが、先進国になろうとしている人たちの需要によって経済が引っ張られているというのは皆さん御存じのとおりでございます。そうすると、中国が一体いつごろ飽和するかというのは極めて知りたいところで、私もいろいろな指標から調べております。結論は、意外と飽和は早いということです。

 これはセメントの生産量です。縦軸は一人当たり何トンのセメントを生産しているかというのを年別にとっていった。そうすると、この下の面積が各国トータルとして今まで何トンのセメントを一人当たり入れたかということです。

 一番下の緑がアメリカです。アメリカは一人当たり十六トンのセメントを国土に投入しています。三億人の人口がいますから、三億掛ける十六トン、四十八億トンのセメントをアメリカに高速道路としてあるいは空港として塗ると、アメリカの今のインフラができ上がったということです。

 同じように、フランスがその上の黒ですが、フランスが二十二トン、日本は二十九トンです。山が急なのでダムが多いとか少ないとか、そういった国情の違いはございますが、大体一人当たり二十トン入れると先進国の今の必要なインフラはできるというふうに見ることができます。

 今急速に伸びている青が中国でございまして、これは一人当たりですので、昨年、中国は世界のセメント生産量の五五%をつくっております。そして、去年まで、二〇一〇年までに中国が投入した量が既に一人当たり十四トンになります。先ほどのアメリカの十六トンというのを思い出していただきますと、あと一年ちょっと、もうすぐアメリカと同じ一人当たりのセメントが中国に投入されます。

 このことは驚くべきことでして、アメリカと中国、ほとんど同じ国土の大きさに人口が四・五倍いますから、中国にアメリカの四・五倍のセメントが塗られるということで、この意味は、いろいろ議論しておりますけれども、わかりません。もしかすると、既にもう要らないものをつくっているという可能性すら感じさせる。

 いずれにしても、中国がインフラの整備というような形で世界の需要を引っ張っていくという時代がそんなに長く続くとは思えないというのがいろいろな指標からの結論でございます。

 次をお願いいたします。

 そうすると、私たちは需要を二種類に分けて考えた方がいいんじゃないか。

 一つは普及型の需要。今、車の例を申し上げましたけれども、家、車、新幹線、原子力発電所といったような、普及して飽和していく形の需要、これが二十世紀に物づくり産業が行っていることです。これを私は二十世紀の延長戦と言っております。ここを負けるわけにはいきません、というのは、これで今、日本は食べているわけですから。したがって、これが高度成長するに向かう、ここの競争に負けないように国が支援していくというのは、極めて重要な問題であります。

 しかし、大事なことは、今の産業をそうやって支援しているだけでは、二十一世紀の新しい戦いにおくれるよということであります。ここがポイント。私の、きょうの科学技術・イノベーションというところは、創造型の需要の方に力点があるんだろうと思います。

 では、創造型の需要とは一体何があるのだろう。

 これの一つがグリーンイノベーション。これはもう申し上げるまでのこともない。

 もう一つがシルバーイノベーション。今後、高齢社会が世界にやってまいります。中国でさえ、二〇一五年に、もうあと四年ですよ、もうあと四年で生産年齢人口、十五歳以上六十四歳以下という年齢が二〇一五年でもって減り始めます。これは中国の明確な高齢化であります。高齢化というのは世界が抱える課題ですので、ここに膨大な産業がある。ここを日本は率先して開拓して、世界にリードした新しい産業をつくっていく、これをシルバーイノベーション。

 きょうはこの二つを申し上げますけれども、もう一つ、ゴールドイノベーション、情報技術に基づくものというのが極めて重要でありますが、こうした新しいところ、つまり、日本の戦略というのは、経団連に代表されるような二十世紀の延長戦を負けないように勝ち続けつつ、同時に二十一世紀のイノベーションというのを強力に推し進める。二十世紀の延長戦が強過ぎるものですから、この二十一世紀の新しい方がどうしても遅いんですよ、日本は。ここが最大の問題というふうに私は考えます。

 次をお願いいたします。

 例えば、エネルギーの問題、CO2の問題、ここに関しても、日本は乾いたぞうきんであって、もう減らせないよという議論がありますが、これは間違いです。なぜ間違いかというと、それは物づくりに関する話。

 日本の物づくりというのは、確かに、一九七三年のオイルショック以後、強烈な効率化をやって、例えば、セメントなんか、一トンつくるのに、今、一九六〇年代の半分しか使っておりません。これだけ効率化をした。

 ところが、アメリカのセメントなんていうのは余り進歩していないんですよ。中国は、進歩していない技術を使っております。ですから、先ほど言ったように、五五%のセメントをつくっている中国が一トン当たり日本の一・七倍のエネルギーを使っているんですから、中国が日本の技術を入れればいいんですよ。その方が彼らにとっても得なんですよ、長期的に考えて。

 そういう状況にありますので、物づくりで日本がこれ以上CO2を減らすというのは、経団連を中心におっしゃるように、確かに苦しいんです。しかし、ここで見ていただくように、物づくりはエネルギー消費あるいはCO2の発生というものの四三%にすぎません。これは二〇〇七年ですけれども、恐らくもっと減っていますよ。

 四三%。四三%が減らせないけれども、左側の家庭、オフィス、輸送、これは、右側で物をつくって、左側で生活をするというふうな分類をしてございます。ですから、家庭、オフィス、輸送、こちらはだぶだぶです。これはもう本当に多く減る。日々の暮らしがだぶだぶ。

 私の家は、ちなみに八一%CO2を減らして、快適でございまして、あと二年ぐらいでもって初期投資を回収いたします。

 つまり、経済的に成り立って、CO2が減って、しかも快適になるという道が幾らでもあるのが家庭、オフィス、輸送。いい物づくりでリードして、左側の日々の暮らしでCO2を削減していく、これがグリーンイノベーションですし、これを世界に広めていくというのが日本がグリーングロースをしていくということであると思います。

 ですから、日本はCO2は減らせないと言っているのは間違いで、日本の成長を阻害しているわけです。

 次をお願いいたします。

 二つだけ、ごく普通の例を申しますが、冷暖房が一番、オフィス、家庭のエネルギーの使用の大きいところです。

 これの対策としては二つです。

 一つは、家の断熱をよくすること。

 私の前の家、これは普通の家です。それと、新しくつくった家、これも今の普通の家です。これを建てかえるだけで、大体断熱が三倍よくなります。これは、冷暖房のエネルギーが三分の一になるということなんです。極めて重要。最大のエネルギー消費が三分の一になっちゃうんですよ。しかも快適になるんです。ここが重要ですね。

 それから、もう一つが機器ですね、エアコン。

 日本のエアコンというのは世界の標準的なエアコンの半分しか電力を消費しません。これが、少ししかつくっていないから、高くて、日本の国内でしか売れていなくて、ウォルマートだ何か全くほかの国に抑えられているというのが日本のガラパゴス化ということですよ。ここが日本の弱いところであります。

 物はいいんです。一九九〇年のエアコンと、去年売られたエアコンとは、電力消費は六〇%減っております。冷蔵庫に至っては、二十年の間に、電力消費が五分の一に減っております。二十年前のエアコンをお使いの先生方は、ぜひ買いかえていただくと、電気代が五分の一になります。

 私は、十三年間使った冷蔵庫を買いかえて、電力代が三分の一になりました。一年に二万円、電気代が得しました。私の冷蔵庫は十四万円です。ですから、七年で元が取れちゃうんです。これをやると、私の生活は快適になります。

 冷蔵庫の場合ですと、大きさが同じだと、内容量が三百五十リッターから四百三十リッターにふえました。これは、断熱材が、今は日本のは真空断熱材で薄くなっているからですよ。だから、同じところに置いても広くなるわけです。もちろんきれいになります。それで、電力消費が三分の一に減って、私の製品は東芝から買いましたので、東芝が喜ぶ。

 これをもう少し大きく敷衍すると、生活が快適になって、電力消費が減って、お金は回収できて、日本の産業が強くなるわけです。これがグリーングロースということであると思います。

 次をお願いいたします。

 まだ余り普及していない、極めて重要な日本の先端商品が給湯です。給湯は家庭で一番大きなエネルギー消費です。給湯のエネルギーというのは、八割減る、あるいはほとんどなくなってしまいます。皆さん方が家庭でお使いの瞬間ガス湯沸かし器、あそこで燃やしているガスというのがなくなっちゃうんです。

 これが非常に大きな大変な商品で、一つはヒートポンプタイプ。これは電力系の会社がつくっているエコキュートという商品名で発売されているもの。それから燃料電池、これはエネファームという名前で、石油系、ガス系が発売している。どちらもすばらしい商品であります。

 これを、中でどっちがいいとかいう神学論争をやっているのが日本の情けないところで、これはほとんど、世界でも一番大きな給湯のエネルギーがなくなっちゃうぐらいのグリーンイノベーションの代表製品ですから、これを世界に早く売っていく、そのためには補助金をつけたっていいんですよ。補助金をつけるならこういうところにつけて、グリーングロースを引っ張っていくというのが必要だと思います。

 次をお願いいたします。

 これは、省エネは、先ほど申し上げましたが、日本の産業がエネルギー効率を上げたというのは、人類のためにやったわけではございません。これはフリーマーケットで、エネルギー効率を上げるためには初期投資が必要なわけですけれども、初期投資がエネルギーコストの削減で回収できるから企業が投資をしていったわけであります。つまり、回収できる投資が省エネルギーなんですね。私の冷蔵庫の例も、今申し上げたのは同じような意味。

 つまり、冷蔵庫からエアコンから石炭火力発電所に至るまで、効率を上げるというのが一番大きなエネルギー減なんです。原子力を太陽電池が補完できるかどうかというような議論にすぐ行きますけれども、これは間違い。一番大きなエネルギー減というのは省エネルギーなんです。そして、ここで日本はイノベーションの種を山ほど持っているわけですよ。私は、今ごく一部の例を御紹介したわけです。ここで日本は世界を引っ張るべきなんです。

 次、お願いいたします。

 これが私が二〇五〇年のビジョンとして提案しているエネルギーに関する絵で、きょうは細かいことを申す時間がございません、御質問いただけばぜひお答えしたいと思いますけれども、二〇五〇年までに省エネルギーでエネルギー消費を五五%減らします。そうして、現在一八%、原子力がとまっていて減ってきていますけれども、一八%の準国産エネルギーを含めた国産エネルギーを三二までふやします。太陽電池、風力発電、バイオマスエネルギー、地熱、中小水力の総動員です。これによって三二までふやす。そうすると、日本は七〇%のエネルギー自給国家になれるわけです。これが私の提案しているモデル。

 二十年以上提案しておりますけれども、なかなか聞いていただけません。最近ようやく少し目を向けていただいて、今ここに呼んでいただいたんですかね。

 次、お願いいたします。

 私は、今、グリーンイノベーションの議論をしました。これが日本のグリーンイノベーションのビジョンとして提案しているものです。資源自給国家。

 一次資源が安く買える時代というのは終わりました。私が学生の時代に一バレル一ドルだった石油が今百ドルしていて、この後三百ドルになるんですよ。それを、日本は資源の輸入国家だからといっていて次世代に日本を引き継ぐことはできません。食料だって間違いなく価格が上がっていくわけです。なくなるわけではありませんけれども、価格が上がっていくわけですよ。それを、日本は輸入国家だからといって引き継ぐことはできません。

 一つ一つ根拠がございます。

 エネルギー七〇%というのは今ざっと申し上げた話。鉱物資源七〇%というのはリサイクルです、都市鉱山ですよ。リサイクルをきちんとやることで鉱物資源の七〇%をリサイクル品、本当は二〇五〇年に一〇〇%と言ったっていいんですけれども、物事一〇〇%はいきませんので、三〇%ぐらい輸入してもいいかと。それから、食料七〇。今、カロリーベースで四〇ですね。

 それから、木材は昨年二四%です。こんなものは世界に対する犯罪ですよ。七〇%の森林のある国で二四%しか自給していない、それで世界のNGOから日本は世界の森林資源を枯渇させる元凶だと言われているんですから。これは事実ですよ。

 日本が森林を開発して、林業を開発して、このキーワードは大規模化と機械化とサプライチェーンの構築、これの全体像をつくることですよ。ここでさまざまな社会的な条件を突破することですよ。これをやって初めて、端材として出てくる膨大なバイオマスがエネルギーの方にも効いてくるわけです。

 結論を申しますと、水が最大の資源になってくるというふうに私は思っております。水があって、食べ物があって、林産資源があって、鉱物資源があって、エネルギー資源がある、これが最低限必要な一次資源ですよね。これを七〇%供給できるようになったら日本は本当に強いし、そこには十分科学技術的な根拠がございます。そこを目指すべきだというのが私のグリーンイノベーションでの提案です。

 次、お願いいたします。

 もう一つがシルバーイノベーションで、ぜひ、年金だとか介護だとかという議論を、このデータをベースに議論してください。

 これは、秋山弘子さんという世界のジェロントロジーの分野のリーダーですが、彼女が、六十歳以上の人々六千人を、百五十人のインタビュアーを動員して二十年間フォローした結果です。

 これはそれの男性版ですが、どうやって人間のアクティビティーが落ちてくるか、肉体的なアクティビティー、おふろに入れるかとか、散歩ができるか、階段を上れるかといったようなこと、それから知的なアクティビティー、電話を一人でかけられるか、買い物に一人で行ってちゃんと帰ってくるか。それと、もう一個はちょっと忘れちゃいましたけれども、六項目で調べる。

 そうすると、赤、七〇%の人は、七十代の後半ぐらいに脳溢血をやるとか何かでどこかひざがおかしくなるとかなってきて、九十ぐらいで亡くなられる。一一%ぐらい、国会議員の先生方はこういう人が結構いるんですけれども、一一%ぐらいは九十になってもまだ落ちてこない。

 はっきり言うと、こっちはいいんですよ。左側ですよ。二〇%近い人が六十代の前半で、何か脳障害とかやるわけですよ。そして、ここを見てください。その下をはっているでしょう、七十二ぐらいから九十ぐらいまで。こういう人たちが長期の介護になるんですよ。

 ここをどうするかという議論をするのが、どうやって活気ある高齢社会をつくっていくかという議論じゃないですか。年寄りに金をもっと払わせるのか、若い人が払うのか、そんな議論を幾らやっていたって、答えが出るわけはないんですよ。そこの答えというのはここにあって、どうやって左側の二〇%の人を減らしていくか、これが個人にとっても幸せということですし、社会の負担も減っていく、いい高齢社会ということです。ここに膨大な産業がある。

 一つは、やはりいい家をつくることですね。日本の脳溢血、脳障害の八割は、十一月から二月の間に起きています。これは、やはり、凍えるように寒いおふろの脱衣所とかトイレとか、そういうところで倒れているわけですよ。

 そこを、例えば断熱のいい家にすればそういうのがなくなりますから、それが減れば結局いい高齢社会にもつながっていくということですし、ひざの筋肉が落ちちゃっただけだって、買い物に行けなくなるわけですよ。ここに、サポーター型のロボット、ひざにちょっとこうやればできるようなサポーター型のロボット、こういうようなものがあれば、外に出られるじゃないですか。そうすると、左側にならずに右側になれるんですよ。こういうような物づくり産業。

 例えば、オンディマンドバス。これは、買い物弱者、こんなことを言っていて高齢社会がよくなるはずはない、外に出て人と接触しなければ、人はぼけるんです。これはもうこの要因分析でよくわかってきております。

 例えば、オンディマンドバスを走らせて、隣の若い人に車に乗せていってもらわなくても買い物に行けるようにするような社会システムをつくる。オンディマンドバスを入れて、この左側を右側に持っていく、そういうところにシルバーイノベーションという新しい産業が起きて、そのシステムが中国を初めとする世界に膨大な輸出産業となるわけですよ。ここを考えていかないと、日本のイノベーションの議論はできない。

 次をお願いいたします。

 私は、日本のビジョンは何かというふうに今議論をしております。これは、結局、三種の神器とかいって皆が物を欲しがって成長していったのが高度成長社会ですよ。もうその欲しいものがないんです。車も持っているし、家も持っている。五千万世帯があって、日本には五千八百万軒の家があります。家も余っているんです。だから、数は充足しているんですよ、もう物は。

 そのときに、僕らは何が欲しいんだという議論、これが今後の社会ですよ。この競争が、先進国、日米欧がしている競争の本質なんですよ。その一つとして、社会システムをどうするんだ、資本主義をこのままやっていけるのか、修正する必要があるんじゃないかという議論もその一つですよ。そこを我々は考えている。

 今、私たちはプラチナ社会というものを考えている。一つはエコロジーだろう。やはり、中国に行って、昼間晴れていたって、この間、北京でもって太陽は赤黒くあるわけです。物を持った後で、ああいうところに住みたいとは思わないんですよ。我々は、やはり、エコロジー、資源の心配なんかもしたくないという意味でのエコロジー。

 それから、世界が高齢化に向かうんですから、高齢者を含めて人々すべてが参加できる社会だと思うんです。

 それから、六十歳で定年になってさようならという社会というのは、この後、成り立ちませんよ、人生百年時代にとって、長過ぎる。ここで、やはり一生人々がそれなりに成長し続けられる社会。これは生命科学的な背景も出てきています。平均すると、死ぬ二年前まで、条件がそろうと、人間の脳の可塑性というのは残るんです。成長できるということなんです。そういう意味で、人が成長し続けられる、そして雇用がある、これが恐らく僕らが欲しい社会なんじゃないか。わかりません。ここが一番議論すべき点だと思います。

 一応、物があるという社会で、次の社会というのをプラチナ社会というふうに定義いたしました。登録商標をとってございますので、使うときにはぜひ一言、まあ、どうでもいいんですけれども。

 次をお願いいたします。

 そして、中央集権だけでは無理だろう、先日道州制のシンポジウムも行われましたけれども、中央集権だけでは無理である。やはり、自治体をベースに市民が自分でもって前に進むという体制をつくらないと、今後、日本はないだろう。国は何をやっているんだという議論をしているだけでは前に進めないだろうと思います。そうした思いに御賛同いただいて百の自治体が、百ちょっとですね、現在参加してございます。

 その次をお願いいたします。

 これは、こういうシステムをつくっておりますので、今回の電力危機、幸いにして東京電力は極めて悠々と電力危機をクリアできると思いますけれども、もちろん工場、オフィスも協力したんですけれども、市民も相当協力していると私は思います。これは今分析しております。

 それを動かした一つは、低炭素社会戦略センターという科学技術振興機構のセンターがございます。ここでのさまざまな研究をプラチナ構想ネットワークを通じて自治体に広げていった。自治体は、PTAのネットワークとかさまざまなネットワークで市民に直接連絡するということを行いました。

 次をお願いいたします。

 結局、現在、四十八の市、県、町が参加して、これは東京電力管内でございます、東京二十三区の多くを含め、栃木県も福田知事と宇都宮市長とが連携して全体に、まあ、どこまで浸透したか、これはまだこれからやらなくちゃいけませんが、こうしたことが必要なんだと思うんです。

 今回の津波でも、警報を出しても聞いた人と聞かない人といるわけですよ。うまく連携がとれる、人々の間で連携がとれるところと、とれないところとあるわけですよ。これは、日ごろからいろいろな形で市民が参加するという民主主義をつくっていかないと、そのときだけ、安全のために津波警報だとだけ言っていてもだめだと僕は思います。こういうものをつくっていって、例えば今のネットワーク・オブ・ネットワークス、これが多分今後の民主主義の運動論なんではないかというのが私の考えであります。

 次をお願いいたします。

 国内で多数の事例を、これは、先ほど申し上げた林業一〇〇%の自給率を二〇五〇年に目指すというのは極めて妥当だというふうな結論に至った理由でございまして、プラチナ構想に参加している多くの自治体で調べました。

 そうすると、一生懸命はやっているんですね。でも、基本的に言うと、一点突破のパッチワーク。バイオマスでもってボイラーを入れて自然エネルギーですねと言っているというような一点突破のパッチワークがあるだけです。全体像がまるでない。パッチワークと補助金の垂れ流しというのが基本的な構造ですから、これをうまく設計していくというのを今始めているところでございます。

 次をお願いいたします。

 イノベーション。イノベーションというのは統合的な変化だと思います。科学技術というのは局部の発見、発明であります。これを社会と結びつけるというのは極めて大きな作業が必要なんです。これをやるところが今ないんです。あるとすると企業だけなんですが、これだけではだめ、ここに国も関与することがあるんだと思います。

 私たちの関与の仕方というのは、今言ったようなやり方で、調査した結果、林業を再生すればバイオマスも成立するし、林業再生のかぎというのは大規模化と機械化とサプライチェーンの構築だ、これで二十一世紀林業の創生だ。これは、用材、木材ですね、それから紙、エネルギー、さらにはキシリトールとかいったようなさまざまな高付加価値物、こうしたもののサプライチェーンをトータルで設計する、ここにさまざまな地域を当てはめていく、そういうトップダウンとボトムアップの掛け算がないと日本の林業は復興しないと思います。

 次をお願いいたします。

 私は、三つのイノベーションが必要だと思います。これは、グリーンイノベーション、シルバーイノベーション、きょう申し上げませんでしたけれども、科学技術の観点からいって、日本で一番おくれているのは情報技術です。情報技術自体はそんなに負けておりません。この間、幸い、スパコンでもって世界一を取り返しました。

 こういう技術で負けているわけではありませんが、社会への導入、社会での活用というのは途上国以下です。これだけ進歩してきた情報技術というのが、国際的に比べて、社会でもってほとんど活用されていない。これが問題です。逆に言うと、ここに膨大なイノベーションの種がある。

 次をお願いいたします。

 それで、私は、東北だと思います。日本は、リスボン地震でもってポルトガルが二度と浮かび上がらなかったという一七五五年でしたかの事例を思い出すまでもなく、今度の東北というのは、ライジングサンからサンセッティングにかかっている日本にとって強烈なダメージですよ。しかし、ここにチャンスもあるんだと思います。

 というのは、二十世紀型の、二十世紀の社会が日本は非常に強いから、いいから、二十一世紀への移行ができないという構造があるんだけれども、東北の一部で、なくなっちゃったんですから、あそこに新しい、いいものをつくりましょうよ。

 だから、私は、それは港を復興するとかセメントも重要ですよ。だけれども、十八兆円でしたっけ、十九兆円でしたっけ、そのうちの相当部分、そんなコンクリートほど金はかかりません、その部分を、私の言い方をすればプラチナ社会を構築する、言い方はいろいろでいいですよ、新しいイノベーションのための投資に向けるという決意が僕は今後の日本にとって決定的に重要なんだろうというふうに考えております。

 具体的に、私は、宮城の復興会議の議長をお引き受けして、やってきました。例えば、あの地域にブロードバンドは光でもって全部張る。これを決めましょうよ。大した金じゃないですよ、兆と比べたら。それができるとスマートグリッドの種にもなるし、インフラだし。

 それから医療ですよ。医療で、カルテが全部流れちゃったんですから、その新しいカルテをつくってカルテを共有して、東北大学のお医者さんでも町のお医者さんでも、同じカルテを同時に見られる。MRIも一回撮れば、あっちでもこっちでも見られる。当たり前じゃないですか、今のクラウドでもって、情報技術の時代で。それを、医師会の一部の古い人たちが反対するからとやれないのが今の日本なんですよ。それを東北でやるんですよ。それがイノベーションで、科学技術を幾らやっていたってイノベーションは起きませんよ。ここが私の申し上げたいところです。

 だから、復興特区、やりましょうよ、総合的な復興特区。ここで、東北で新しいものをつくって、なるほど、ああいういいことができるんだというものが見えれば、ほかのところにも入りやすくなると思います。

 最後のスライド、最後ですか。

 先進国は、日本は今まで二番手、明治の時代には百番手ぐらいだったんでしょうけれども、そこから一気に二番手か、下手をすると一人当たりGDPが一位になったこともあるんだから、一番手まで来たわけです。

 だけれども、先進国というのは二番手、三番手では勝てないんですよ。イノベーションを最初にやらないと勝てないんですよ、今、イノベーションをやる人たちがみんなアメリカへ行っちゃうんだから。アメリカへ行っちゃうんですから、種を持っている人たちが。それで科学技術、イノベーションと言っていたって、できるわけがないじゃないですか。ここですよ。

 だから、これは一枚目のスライド、科学技術と社会実験でイノベーションが起きるので、イノベーション、この答えは規制緩和なんだけれども、僕は、具体的には復興特区なんじゃないかと今考えております。

 それで、下の、現状で、ビジョンと移行プロセス、ここが欠落しているんですけれども、ここが復興計画なのではないか、それを日本でやるのではないだろうか。本当に希有なチャンスで、これが僕は二万人の鎮魂だと思いますけれどもね。

 次を、これが最後になりますが、こういう思いを私は書きました。僕はいい本だと思っています。

 ところが、いい本が一万部しか売れないんですね。どうでもいい本が売れるんですよ。百八十ページですから、ぜひ先生方には、必要であればお送りします、お買いにならなくても結構ですよ。私お送りしますので、お読みになる方はぜひ御請求いただければお送りさせていただきたいと思います。

 どうも御清聴ありがとうございました。済みません、長くなりました。(拍手)

川内委員長 ありがとうございました。大変刺激的な、興味深いお話を承らせていただきました。

 これにて小宮山参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

川内委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 参考人に対する質疑は、理事会の協議に基づき、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 この際、委員各位に申し上げます。

 質疑のある委員は、お手元のネームプレートをお立ていただき、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。発言が終わりましたら、ネームプレートをお戻しください。また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べください。

 なお、理事会の協議によりまして、一回の発言時間は三分以内となっておりますので、委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は自席から着席のままで結構でございます。

 それでは、質疑のある方はネームプレートをお立てください。

松野(博)委員 自由民主党の松野と申します。

 大変すばらしいお話をいただきまして、ありがとうございました。

 先生のお話の中で、一番最初と一番最後に出てきたパネルについてでありますが、イノベーションという言葉、私たちの委員会も科学技術・イノベーションということで名前を冠しているわけでありますが、この概念であったり定義というのはさまざまであります。ぜひ、先生がお考えになっているところのイノベーションの概念、定義についてお話をいただければというのが一点です。

 もう一点は、そのイノベーションに導くための、科学技術掛ける社会実験、また現状掛けるビジョン、移行プロセスということでありますが、この科学技術のところを考えれば、日本は、基礎科学の分野から含めて、特許の取得数では世界的にもトップクラスを誇っているにもかかわらず、イノベーションが日本で起きないというのは、社会実験、またビジョン、移行プロセス、これは私たち政治家の責任かもしれませんが、ここが決定的に不足をしているということだろうと思います。

 先生の今のお話の中で、社会実験の事例として規制緩和、また復興特区のお話がありましたが、この社会実験に関してもう少し具体的な先生のお考えがあれば、ブレークダウンしてお話をいただければというふうに思います。

 以上です。

小宮山参考人 ありがとうございます。

 御案内のとおり、イノベーションの定義というのは幾つあるんでしょうか、さまざまな人がさまざまなことをおっしゃるわけです。国際会議なんかで、イノベーションの定義は何だというような議論にしばしばなりますが、最近、比較的コンセンサスになっているのは、イノベーションというのは、やはり社会に大きな、大きいか小さいか、大きなイノベーション、小さなイノベーションという言い方もございますから、イノベーションというのは社会に変革が起こること、これがイノベーションなんだろうと。

 主として、そのドライビングフォースというのがしばしば科学技術である。だけれども、イノベーションのドライビングフォースというのは必ずしも科学技術に限らない。例えば、今まであった科学技術を普及する方法であったり、あるいは知識が、知識も科学技術の一つなんだといえばそうなんですが、例えば社会的な知識というようなものがドライビングフォースになることもある。

 だから、テクノロジー・ドリブン・イノベーションとかナレッジ・ドリブン・イノベーション、ソサエティー・ドリブン・イノベーション、いろいろな言い方をおっしゃるのも出てきておりますので、私の定義は、社会に変革が起こってそれが人々の幸せにつながること、これをイノベーションというふうに定義してございます。

 それから、日本でイノベーションが起きない理由というのは、今規制緩和ということを申し上げましたけれども、実はそれだけでもないと思っているんですね。

 日本は、明治以来ずっと追っかけてきて、大企業の力が非常に強い、そういう社会でやってきております。そうすると、大企業でイノベーションが起こるというのはやはり難しいですよね。ベンチャーはゼロから行くわけで、それはグーグルだってマイクロソフトだって、本当にゼロから十兆円の企業まで上がっていくわけですが、ゼロから赤字でやっている間に、大企業の中ですと、隣でもって一千億円稼いでいるところが横にあるわけで、赤字だとか一千万円黒字になったとかいうようなところがやっていけるというのはかなり難しい状況にございますよね。ですから、なかなか日本でベンチャーが、シリコンバレーのようには育てにくいという環境がある。

 だから、マインドとか社会の構造、それと規制、やる気になった人が、少ないんだけれどもいてもできないという、この二つあるというふうに思います。

 規制は、もうともかく、私は、バイオマスのコージェネレーションというのを企業の方々と設計したことがあるんですね。そのときに、七十の許認可が必要なんですね、七十三でしたか。バイオマスのコージェネレーションというのは、バイオマスを切ってきて発電をする、同時に、お湯が出ますのでそのお湯を地域暖房に使う、そういうシステムですけれども、例えば国道の下にパイプを通さなくちゃならない、そうすると国道に関する国の認可が要るとか、そこが市の道路を通ると市の認可がまた必要だとか、結局、そういうのをずっとやっていくと許認可が七十幾つ。これは規制と言えるようなものもたくさんあるんですね。そして、そういうのというのはベンチャーでは突破できないんですね。

 だから、総合特区という提案を私も長らくずっとしているんですが、ある種もう少し包括的なものにしないといけないんだろうと思うんですよ。バイオマスのコージェネレーションをやっていい、そのときに、もちろん国道の下にパイプを通すわけですけれども、例えば知事と当該地域の自治体のヘッドが認可すればいいとかいうような形の、かなり総合的な特区をやらないと。

 それから、医療関係だったらもう幾らでもありますよね。今、糖尿病なんかは、なる前に予防医療と申しますか、これが圧倒的に有力なわけで、それは検診をするのが一番いいわけです。

 そうすると、ちょっと血をとるわけですよ。採血できるのは看護師さん、医療技術者なんですね。今どうやっているかというと、苦肉の策で、自己採血という形に逃げているんですね。自分でもって刺す。それで、血をこうやったのを看護師さんがとるという形にしてベンチャーがやっていますよ。かなり頑張っております。これでも、周りからいじめられて大変なわけです。ですから、医療関係になったら規制の山じゃないですか。

 その規制のほとんどというのは、不合理な規制だと思います。もちろん、ある種の論理はあるわけで、だから規制しているわけですけれども、結局、全体の中でそこがどれぐらい重要かという判断をしたら、この規制は不合理だという場合が極めて多いんだろうというふうに感じております。

遠藤(乙)委員 大変啓発されるお話、ありがとうございました。

 先生もお気づきと思いますが、この委員会は、科学技術・イノベーション推進特別委員会となっておりまして、実は、行政に先駆けて立法府、しかも衆議院で今国会から置かれた委員会でございます。

 その基本的問題意識は、まさに先生が述べられたこととぴたり一致するわけなんですが、日本は、科学技術は世界に冠たるものがあるのになぜイノベーションが進まないのか。

 特に、例えば国際競争力で見ても、スイスのIMDというところの発表によると、九〇年代はトップだったのが、何と今や二十七位。今、シンガポールが一位でアメリカが二位ぐらいなんですけれども、韓国や中国にすら抜かれている状態です。それがこの失われた二十年の停滞をもたらしているわけで、大変危機的な事態という認識をしておりまして、これを突破するのが科学技術、世界に冠たる科学技術をイノベーションに向けていかに展開していくか、ここに実は大きな問題意識を持ってこの委員会はスタートしたということをぜひ御理解いただければと思っております。

 そういった意味で、どうやったら我が国がこのすぐれた科学技術をイノベーションに展開していけるか。いろいろなヒントがございますけれども、一つは、この立法府の役割ということをどうお考えかということ。すなわち、行政は縦割り構造が非常に固まっていまして、その範囲の中でのイノベーションはあり得ても、トータルのイノベーションが非常に難しい。

 また、よく、何でも反対するときの理由に、前例がないからということがあるわけですけれども、前例がないからこそやらなくちゃいけないわけです。それを突破できるのは、やはり立法府が本来の役割を認識して、そういう行政の縦割りを超越して、トータルなビジョン、全体像に立って新しい方向性を切り開く、そういうことが非常に大事で、まさにそれは、国権の最高機関である国会がまずやるべきではないかというふうに私も思っております。

 そんなわけで、先生のお話の中にネットワーク・オブ・ネットワークスといった現場の動きもありますし、立法府としてもっと、日本のイノベーション推進に向けてどういうことをやっていったらいいかということをぜひお聞きできればと思っております。

 そのときに、例えばいろいろな分野を総括した基本法、そういったものを議員立法でどんどんつくって、新しいビジョンやガイドラインをそこに含めて、そういったものを立法府が推進して行政や現場を引っ張っていくといったことも大事かと思っておりますが、立法府の役割、先生の期待ということについて、ぜひ御意見を賜れればと思います。

小宮山参考人 ありがとうございます。

 私も、ある意味でいうと人生をかけて考えてきたことなので、二つ申し上げておきたいというふうに思います。

 一つは、科学技術が日本は非常にすぐれているというのは、ノーベル賞の数でもわかるわけです。二十一世紀に入ってのノーベル賞は、圧倒的に多いのがアメリカで、たしか三十何人だったと思いますけれども、日本とイギリスが大体十人です。九人か十人だったと思いますね。その下はドイツとかスイスの四人ぐらいになりますから、そういう意味で科学技術はトップです。

 ただし、よく考えなくちゃいけないのは、科学技術というのは分野が非常にたくさんあるんですよ。昔ですと化学だ物理だという感じなんですが、今はその中が百だ千だに分かれているわけです。そういう状況で日本がトップをとっている、あるいはトップに近いところが多いというのが日本の科学技術の強さという意味ですね。ですから、これと社会とはすぐにはつながらないんですよ。

 昔、ノーベル賞をとったペニシリンの発明、あれなんかを考えてみると、ペニシリンができたら抗生物質という知識が生まれて、第二次世界大戦で化膿して死んじゃう人というのが本当にいなくなるという公共的な価値を物すごく生んだし、あれはファイザーでしたか、ファイザーという会社がそれで大もうけするという経済的価値を生む。つまり、ノーベル賞が社会的な価値というのと極めて単純に結びついたんですよ。よき時代です。

 それが非常に細分化してきて、細かいことまでわかってきて、利根川さんのノーベル賞というのはすばらしいノーベル賞で、ノーベル賞でもピンからキリまであるんですが、利根川さんのノーベル賞は極めて立派なノーベル賞ですよ。だけれども、あれは免疫ですから、免疫ががんと関係することはほとんど確実なんですが、利根川さんがノーベル賞をとったからといって、がんなんて治らないじゃないですか。この差ですよ。

 要するに、ペニシリンが発見されたらこれだけの直接的な効果がある、利根川さんがノーベル賞をとって、人間にとっての直接的な価値がどれぐらい生まれたか。これは細分化と高度化なんです。ここが実は、社会の中に起こるべきイノベーション、高齢社会をどうするかとか、もっといい医療を受けたいとかいう社会の要請と、細分化された領域で生まれてくる科学技術との問題なんです。ここを一人でつなぐことはできないんですよ。

 だから、ノーベル賞学者なんてここに呼んで聞いたって、私は、そうそううまくいかないと思いますよ。要するに、組織として、細分化され高度化した科学技術を社会にどう役立てるか、ここを掛け算するところが必要なんです。

 それの一つの事例は、科学技術振興機構の中に低炭素社会戦略センターというセンターをつくりました。ここでは、まさにそれをやっているんです。低炭素化のさまざまな、燃料電池のいい触媒が見つかったり、こっちは細かいんですよ。だけれども、こっちは、どうやって人々が生活してエネルギーが減っていきますかという議論ですから、こっちは非常に包括的なんですよ。この間を体系的につなぐのを、今研究員は二十人ぐらいですか、それがあったことが、先ほど申し上げた市民の節電運動をやれることにもつながったわけです。

 そうしたような細分化した科学技術と社会とをつなぐ機能が組織として必要なんだ。小宮山先生に聞いたってわからないんだということですよ。小柴先生に聞いたって、そんなことはわからないんだということですよ。ここのところをどうやって社会としてやっていくか。例えば、総合科学技術会議あたりがそういうことを果たすべきなんだけれども、あそこは手足がないからできないんですよ。そういうのをどうやってやっていくか。ここら辺はぜひ、行政、立法の観点からお願いしたいことの一つです。

 それからもう一つは、規制緩和の包括性ということだと思うんです。

 先ほど、バイオマスのコジェネの例を申し上げましたけれども、私も何度も、国会の先生だの役人とあらゆることを話しました。まじめにやったんです。どっちもまじめなんですよ。これをやるために、例えば医療の採血、予防医療をやるために何が問題になっているんだと考えるわけです。そうすると、薬事法の何とかという話になってくるわけです。それでは、そこを緩和しようというわけですよ。それで、規制緩和でやるわけですね。

 ところが、別のものが出てくるんです。新しいことをやるというのはそういうことなんですよ。社会で適用しようとすると、最初に予測したってわからないものが、だから絶対だめなのは、役人が何をやりたいんだと聞くわけです。こういうことをやりたいんだと言うわけですよ。では、何が問題なんだと言うと、薬事法のここが問題なんだと言うわけですよ。では、それを緩和しようといってやりますね。このやり方では絶対にだめ。やらないよりはましだけれども、このやり方では新しいことは起きない。

 イノベーションというのは、やっているうちに、ちょっと待て、これがいいと言っていたけれども、実は、人々が喜ぶのはこっちなんだといって変わっていくんですね。それと、人間の知恵は有限ですから、山のようにある法律だの政令だ省令だ条例だ、そんなものがみんな頭に入っている人はいないんですよ。やる前にはわからないんですよ。だから、包括的な、どういうふうにやったらいいのか、つくっていただきたいんですよ。

 例えば、総合特区と言っている総合というのもそういう意味だし、包括的な復興特区と申し上げているのもそういう意味なんだけれども、何かやろうとしたらいろいろな問題が必ず出てきますよ。それを、わかりません、ここら辺は私は素人ですので、例えば知事と自治体のヘッドが裏書きすればやっていいとか、そういうぐらいのかなりソフトな、内閣府、法制局なんかが目をむくような、それぐらいのことをやらないと僕は前に進めないと思う。

 本当は、アメリカみたいなのはあり得るんですよ。例えば、ユーチューブが動画の配信でもって世界の一つの情報イノベーションの基盤を担いましたよね。あんなものを認可するところはないですよ、あれは明らかに個人の知財の侵害ですから。だけれども、あれはやっちゃったんですよ。そうしたらば、ニューヨーク・タイムズが半年後ぐらいに表彰しちゃったんですよ。そうして、みんなおもしろいというのでもってわっといっちゃったから、もうとめられないんですよ。今だって、あれはしばしば違反だと思いますよ。

 それぐらいのことができるのがアメリカのダイナミズムなんだけれども、日本でそれはなかなか難しいかもしれない。だから、日本にふさわしいような仕組みというのを、ぜひ議員立法か何かでやっていただきたいというふうにお願いしたいと思います。

 私が思いつくのは、その二点ぐらいですね。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 そもそも、タイトルがとてもいいというか、「なぜ日本でイノベーションが起きないのか」という先生の最初の分析二つを、そういうことかと思って伺いました。

 私は、後段の、現状掛けビジョン掛け移行プロセスというところで地球温暖化問題を伺いたいのです。

 そもそも社民党は、政権交代の直後は民主党と連立をいたしておりまして、そのとき、一九九〇年比で二〇二〇年までに二五%の二酸化炭素削減というのを三党連立合意でつくりました。でも、今思えば、それはビジョンであって、移行プロセスをどうするかというところをもうちょっとしっかり詰めておかなかったということもあって、当時は、多分民主党のお考えの中にも、原発というものが二酸化炭素排出が少ないから、それも加味しながらということもお考えであったと思うんです。私どもはそういう立場ではないけれども、世界に約束する公約として、二五%削減というのを何とかやりたいと思っておりました。

 三月十一日が起きまして以降、この二五%削減を、もうできないから下げるべきじゃないかというような論議もあるんですけれども、私は、日本の政治あるいは科学との絡まりの中では、こうした国際公約を先にぼんと上げて、そこから逆規定して物事を決めていくという発想は極めてまれだったし、何とかこのことを実現させていきたいと今も思っております。

 先生は従来から、温暖化問題には大変見識も深く御発言も多々ございましたので、原発の稼働がどうなるかということはございますけれども、きょう、ちょうど再生可能エネルギー法も成立いたしますし、あと、先ほど来の省エネ、ここが大きなソースになると思いますけれども、現状で、この二五%ビジョン、そして移行プロセスということはどうお考えか、お願いいたします。

小宮山参考人 原発が起きた後で、大変難しい、重い議題であると思います。

 恐らく、メキシコ・カンクンもああいう状況になって、合意はできない。それから、コペンハーゲンもできませんでしたね。日本は、非常に大きなバードン、法的なリーガルバウンドの大きな負担を、ほかの国の動向と関係なしに負うのはよくないというふうに思っております。ただ、国内でいろいろな目標を持つのは、これは非常にいいこと。

 というのは、やはり温暖化というのは本質的問題ですよ。みんな、何かあるとすぐ逃げますけれども、というのは、タイムスパンが長いからですよ。本当に温暖化が人類の危機になるのは二〇五〇年ぐらいというふうに私は思っております。ですから、先が長いものですからどうしても、ウォールストリートで来年までに四〇%のリターンを得たいなんという人たちには関係ないわけですよね。そういう非常に短期のスパンでお金をもうけたいという人たちと、長期の、人類の二〇五〇年というのをやはり本気で考えようよというものとの戦いという面がありますので、日本が大きな損をしないように長期的に考えていくということだと思うんです。

 私は、夏の前、原子力の問題が起きた直後に申し上げていたのは、秋になって頭が冷えたころにもう一回議論した方がいいんじゃないかというのが私の意見でした。今、少し秋に近づいてきておりますが、夏前とここで大分違うんじゃないですか。思ったよりも危機は小さかったんじゃないですか。

 最初、東京電力が大変だというふうになりました。続いて、実は東北電力の方が大変なんだというのがだんだんみんなわかってまいりました。というのは、先鋭の火力発電所なんかもやられちゃいましたのでね。そしてさらに、中部、浜岡の問題があり、関西電力、九州電力といって、ほとんど日本全体になったわけですね。でも、乗り越えましたよ。

 今、一生懸命分析していますけれども、ピークは二五%減っていますよ。二五%のピークでの削減ができちゃったんですよ。二五%、できちゃったんですよ、よく考えてみると。

 それから、これは実は、工場がピークの昼間にやっていた分を夜に動かしたという分もあるわけです。ですから、ピークが減ったというのと、全体のエネルギーが減ったというのは実は違うんですよ。でも、一五%減っていますよ。つまり、電力の一五%削減というのが東京電力管内でできちゃった。それほど悲惨だったかなという感じがするわけです。時々、エレベーターの中が汗臭いとか、ここまで消しちゃっていいんだろうかと。やはり、必要な電気と必要ない電気とあるわけですね。

 それから、効率化という問題があるわけです。先ほど申し上げたような、冷蔵庫を買いかえるといったような効率化という寄与もあるわけですよ。ですから、一番進めるべきは効率化、それから無駄の排除、それから我慢なんですけれども、二十八度でも我慢しようかというのが私は余り好きではないんですが、ここまででもって一五%減っちゃったというのは、非常に大きな事実ですよ。これをよく分析しなくちゃいけない。

 この中には、それで工場の生産性が落ちたというようなことがあるかもしれませんね。私が調べた二つの例では、ありません。工場の原単位というのは、毎年一%、二%ずつは減らしていこう、同じ生産をするのにエネルギーを減らしていこうというのは企業がずっとやっているわけですが、そのとおりに進んでおりまして、今回、夜に移したために上がっちゃったというような状況は、私が調べた二つの工場ではありません。

 ということは、オフィスの生産性も恐らくそんなに落ちていないでしょう。病院が患者の受け入れを減らしたという話も聞きません。多分、少しはいろいろあるんですよ。だけれども、恐らく、一五%ができたというのは、今後のかなり大きなこと。

 電力の三〇%を供給していた原子力が今このような状況になって、これをゼロにして日本がやってくれなんて、さすがに私は思いません。これは、移行プロセスが無理だと思います。ですから、極端なことをやったらだめだけれども、私は、CO2を日本は世界の先陣を切って引っ張っていくんだというのはおろさない方がいいんじゃないかというのが、今でも思っていることです。

 今後どうなるかわかりませんけれども、私は、二百カ国あるいは百数十カ国で、新しいポスト京都が本当にできるのかなと。これはちょっと個人的な予想でありますけれども、できるのかなと疑っております。非常に不利なものに日本が判こを押すのはよくないというふうに僕は考えております。

 しかし、例えば都市間とか二国間とか、さまざまな形で世界が動いていく可能性というのは強いと僕は思うんです。というのは、アメリカがやらなくたって、カリフォルニアなんかはすごいですよ、シカゴだってすごいですよというように都市あたりは動いていきますから。それが、私、プラチナ構想ネットワークといって、日本で自治体というのにもっと自主性を持たせた方がいいんじゃないかと思っている一つのゆえんです。

 今後は、これだけ複雑な問題を、苦しくなっちゃったオバマさんが率いるアメリカと、ギリシャが危なくて大変なEUと、外からはライジングドラゴンと言われながら国内的には大変な苦境を抱えている中国、そういうところが合意していくというのはとても難しい。難しいのはみんなわかっているんだけれども、できないんじゃないかなという気もするほどです。そういうときに人類が前に進んでいけないというのは、破綻しちゃうんだから。

 私は、二国間とか都市間とか十個の都市が何か結ぶとか、さまざまな形で進んで、そういう実態を見ながら国家間もトリーティーができていくというような形もあるのかなと。わかりません、専門じゃございませんので。ただ、そういうことを夢想しております。

阿部委員 新しい視点をありがとうございます。

 広島の前の秋葉市長も、平和都市を世界で結ぶという都市間構想をなさいましたので、今、先生がおっしゃっていただいたようなことをまた改めて参考に考えてみたいと思います。

 ありがとうございます。

阿知波委員 民主党の阿知波吉信です。

 今のお三方の委員の先生方の質問を受けて、さらに御質問したいんです。

 私も、一番最初の科学技術と社会実験のところ、規制緩和のところなんですが、ここで、科学技術の中でもさまざまございまして、例えば今回の原子力に関することですと、むしろ安心とか安全とか、そういう規制というものをまた見直していかなきゃいけないでしょうし、例えばiPS細胞のような生命にかかわることというのは、また別の判断が要るんだと思うんですね。

 こういう中で、結局、規制というルールづくり、これは、例えば大きいものは立法府の政治家がやるんでしょうし、具体的な細目は行政府がやっていくんだと思うんですけれども、私たちは正直に言いまして素人なんですね。そうしますと、こういう科学技術というものについて、やはり専門家が、専門家の立場で評価をしたり、いいのか悪いのかという判断をしたり、またさまざまな学説とかいろいろな考えの中でコンセンサスを得て責任のある一定の考えを、先ほどの組織づくりということに関係するんですけれども、そういうものをルールづくりの方とうまく接続させないといけないんです。

 そういう意味で、これまで種々ここの委員会でも総合科学技術会議の方とか日本学術会議の方々とお話ししていますと、結局、学者の世界でコンセンサスを得ることは困難である、難しいんだということが一つの壁となっているんですが、先生のお考えとして、専門家の方々の中でコンセンサスを得るんだ、責任ある一つの解を見出すんだ、そのためにはどうしたらいいんだというお考えをいただければと思いまして、よろしくお願いいたします。

小宮山参考人 それはまた、私の人生をかけて考えていることです。

 私の先生の一人の吉川弘之前々々々東京大学総長なんかは、まさに今先生のおっしゃったワンボイス、ワンボイス主義なんですね。要するに、学術会議を通じて学者のユニークボイスをつくれということだけれども、私は懐疑的です。

 一番が温暖化のIPCCですね。あれは、国際的に本当に大変な学者が集まってワンボイスに近いものをつくって、なおかつ懐疑論が消えないという状況です。IPCCの結論というのは相当ユニークボイスに近いものですよ。ところが、あれをやるためにどれだけのエネルギーを使ったかということと、温暖化というのはたかが物理的現象なんですよ。CO2の濃度がふえたときに何が起こるかというだけの話ですから、自然現象に対する評価ですよ。それですらあれぐらい大変で、なおかつ、九五%ぐらいしかワンボイスでないわけです、五%反対する人たちがいるというような話ですから。

 ましてや、エネルギーとか原子力だとかそういう社会との関係の非常に強いイシューになってくると、学者のコンセンサスというのは僕は無理だと思っているんです。それではやれないじゃないかというと、僕は、専門家というのが非常に狭い、今、原子力の専門家というのはいないんですよ、ここを覚悟しなくちゃいけないと思っております。

 というのは、テレビで解説をされた方が原子力の専門家と言われる方々ですね。だけれども、最初は原子炉の専門家が出てきたけれども、今はもう土木工事の専門家か何かが出てきた方がいいぐらいですね。あるいは、アレバの装置だの東芝のサリーだの、あれはどうなんだというような話だったらば私にやらせた方がいいぐらいだし、今度は、体に対するもの、最後にみんな一番心配しているのはそこですよね。体に対する影響なんといったら、最先端の人だって、児玉さんと中川教授では、あの人たちは両方とも立派なトップクラスの、しかも善意の人たちですよ。あれでもあれだけ違うわけですよ。

 だから、ワンボイスというのが難しい。それはなぜかというと、非常に領域が細分化して、その一つ一つの中での知識がふえてきているから難しいんですよ。だけれども、それでもつくらなくちゃいけないんだから、学界全体のワンボイスなんて言わないで、やはり信頼できるグループにやらせる。そして、それを判断する、私は素人だからとみんなすぐ言うんだけれども、言わない、専門家だって、どうせこの部分だけの専門家で、放射性物質全般の体に対する影響を判断できる専門家なんというのはいないんだから。それは、この人はここの専門家だけれども、原子力影響の専門家ではない。

 そういう意味で、我々素人もそういうところに口を出すというか、やる。そういうグループというのができるように、そして、今だと何か自分を売り込む人たちばかり出てきちゃっていて、レベルの高い人が入ってこないんですよ。そこをどうやってみんなで育てていくかというあたりが一番重要なところであるというふうに考えます。

 ちょっとまどろっこしいお答えですが、現状がまどろっこしいんだから仕方ないとお考えいただきたいというふうに思います。

阿知波委員 どうもありがとうございます。

吉野委員 自由民主党の吉野正芳です。

 林業再生について、先生のお話、本当に有意義で、先生の言うとおりなんです。私たちも木材利用法案をつくりました。民主党さんが公共建築物等木材利用法案を出してくれました。この等の中に、私たち自民党がずっとつくってきた中で、一本の木すべて使っていこう、枝葉もサーマル系で使っていこう、曲がり材も合板で使っていこう、用材、これは当然製材用という形で使っていこう、無駄なく使っていこう。そして、使うことによってお金を生みます。そのお金を山に還元して大きなお金の循環をつくろうということで公共建築物等木材利用法案をつくったわけなんですけれども、まだまだなんですね。

 そして、森林法も改正しました。ここのエリアは間伐が必要だ。でも、中に不在地主がいる。今まではその地主の了解なしにはそこの山は切れなかったんですけれども、森林法を改正して、そのエリアの中で不在地主がいても切ることが可能になった、いわゆる私の権利の制限をした。そういう形で森林法も改正してやっているんですけれども、先生のおっしゃるとおりなんです、大規模化、機械化、そして一番大事なサプライチェーン、いわゆる大規模な製材工場へ。山の所有者は個々人なんですね。だから、娘が嫁に行くから切るんだ、この発想なんです。ですから、本当に出てくる量が小口化されて、それをいかに集めて大規模製材工場に持っていくかというところが日本の場合なかなかできないところなので、先生の言うとおりなんですけれども、現実にはなかなか進まない。

 例えば、製紙会社は紙をつくっています。日本の木でつくっているんじゃないんです。輸入チップなんです。それも高い値段なんです。国産チップより輸入チップは倍高いんです。キロ二十六円なんです。エネルギー利用、今度ペレットも石炭の火発で使うようになります。これも全部海外の木材、輸入ペレットなんですね。

 その中で、もっと先生の考え方を具体化して、これだけの山の資源のある我が国で木材資源が使われていなかったのかという、まさに仕掛け、仕組みをつくるのがイノベーションだと思いますので、その辺のところをお聞かせ願いたいと思います。

小宮山参考人 私も先生のおっしゃることは、不在地主の問題とか国産材の利用の問題等、すべて重要で、私が今やろうと思っていることは、一番大きな絵ですね、日本全体の大きな絵。

 日本は今、森林での成長量が大体一億五千万立方メートルぐらいあるんですよ。それで、去年の木材需要が六千万立方メートルぐらいなんですね。ですから、成長している分を全部切れば、輸出できるんです。それで、七〇%は切らないと、森が健全な形で維持できない。学者の話ですから、七〇なのか九〇なのかはよくわかりませんけれども、彼らは大体そんなことを言います。

 つまり、少なくも日本で自給できるぐらいは切らないと、日本の山はもたないんですよ。切らないと弱肉強食の森になりますから、比較的民家に近いところは竹ですよ。今は、飛行機から見たら黄緑色によく見えますけれども、日本の山じゅう竹だらけ。それから、ニセアカシアなんという外来樹が非常に強くて、日本海側なんかではどんどん上がっていって、秋田に入って、白神山地は大丈夫かというような議論がやられているぐらいです。

 要するに、切らないとだめなんですよ。しかも、切れば自給できるんですよ。これが日本全体のマクロな議論なんですね。これをだんだんブレークダウンして落としていくと、極めて重要な問題として幾つかのところに行き当たる。それは、先生のおっしゃった、例えば国産材をもっと使おうよという話にもなるし、私有地でわからないものはどうするんだというところにもなるし、御存じだと思いますけれども、ほかにも実はあるんですね。

 これ全体のサプライチェーンをかきたいと思いますよ。一億五千万立方メートル出てくれば、材が七千万立方メートルはとれますから、これで材は完全に自給ですね。それで、パルプが、五千万トンぐらい今輸入しておりますか、出てきますし、残りの三千万トンがバイオマスの燃焼、いわゆるバイオマスエネルギーというふうに使えて、さらに付加価値の高い芳香剤だとかキシリトールだとかさまざまな微量物質が出てきますので、そういったものも有効に利用していく。そういう絵を今かこうとしているんですよ。

 ところが、こういうところにお金が出ない。ここが問題ですよ。大した金じゃないですよ。幾らかな、ちょっとわからないけれども、せめて数億ぐらいあればそういう絵がかけるんですよ。絵はかけますよ、漫画は。だけれども、そこに実体ある数値を入れないと、意味はありませんよね。それをかく、その金がないことが大きいですよ。どこからも出ない。

 こういうところに出してくださいよ。今やっているんだもの。今やっていて、本当に、民間会社もなかなか出さないですよ。そういう全体の絵をかいて、その中に各地域を当てはめていかないと。

 だから、我々がやっているのは、下川町なんというところは、今、二割が民有林、町有林で、八割が国有林ですよ。これは、国有林と一体化して運営すれば、非常に競争力のあるものになるのはもう見えているんですよ。今、一生懸命やろうとしているわけです。例えば、こういうところの実験があって、山形県の最上町でも、おじいさん、おばあさんからやっていた古い林業を計画的なものにしてやっていっている。そういうものをたくさん出していって、それで機械化なんですよ。

 やはりドイツで使っている機械だの、オーストリアで使っている、オーストリアなんかアルプスですから、山という意味では似ているんだけれども、ああいうところで使っている機械というのは、やはり日本になじまない点がいろいろあるわけです。やはり日本は日本の機械を開発しなきゃいけないんですよ。機械メーカーは幾らでもあるんですよ、コマツだとか、世界に冠たるところが。向こうの機械はコマツがつくっているんですから。

 だけれども、まじめに話すと、千台まとめて発注してくれないと、結局補助金で、一億円で何とかヤーダーだとかいうのをつくって、補助金だからできたんだよねで終わっているのが今ですよ。これが、私が補助金の垂れ流しと言っている構造。千台まとめて発注してくれれば、日本の製造業が本気でつくるというわけですよ。本気でつくるというのはどういうことかというと、一億じゃなくて五百万で製品が出てくるということです。そうすれば機械化できるじゃないですか。

 だから、問題は社会的な要因だけなんですよ。大規模化も営林署がちゃんと、下川町の民有地内、ゆっくりゆっくり進んでいるんだけれども、そうだし、大規模化でしょう、機械化でしょう。大規模化の中に先生が今おっしゃった持ち主の不明なところはどうするんだというような話も入ってくるわけです。それから、営林署との問題はどうするかといったような問題が幾つかあるわけですね。それで機械化、それからサプライチェーン。この中の一番末端のところが、紙パルプの国産の方が安いんだといったお話とか、国産材をもっと使わせようよというような話があって、これもやはり大分の日田林の話と下川町とでは全然状況が違うわけで、これも東北からやりたい。

 岩手の遠野市の本田市長なんかに聞いても、もう岩手の森なんか荒れ放題、あの森が。宮城にはそれほどの森がありませんから、あそこを仙台の復興に使えばいいわけですよ。それで、瓦れきの処理も必要だから、瓦れきの処理というのはただ燃やしたらもったいないので、あれは大変なバイオマスエネルギーですから、きちんと燃やして、エネルギーをとって、五年もたったら、できれば三年で、瓦れきはなくなりますから、そのころに林業の端材としてのバイオマスがそこに流れてきて、その装置がバイオマス発電所になっていくというようなのが移行シナリオですね。

 ですから、林業一つとってみても、ビジョンがあって、現状があって、そこをどうやって移行していくか。これはやはり地域ごとに、東北で考え、北海道で考え、福島で考えてやっていかないと、非常に個別性が強い、それと、日本は一億五千万立米あるというそのトータルの図と、かなり詳細にくっつけていくというのが日本のビジョンだと思います。

吉野委員 貴重な御意見、ありがとうございました。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私、最初に伺っておきたいのは、日本は資源が少ない国だとかつて言われていましたけれども、考えてみれば、太陽のエネルギーからしますと、地球に降り注ぐのは年間四千三十ゼータジュールで、日本の面積にかかってきますけれども、しかし、水とか太陽とか風力とか木質バイオマスとか、いろいろな形であると思うんですね。

 一方、地下資源などにかかわってくる方ですけれども、これは、石油にしても石炭、レアメタルにしても、長期にわたって輸入してきましたから、もちろん製品にして出した分もあるんですけれども、国内に随分ストックがあって、やはり石油で見ても、石油化学製品をどういう形でリサイクルしてずっと使い続けていく道を開くかということとか、それから、さっき鉱山に関しては都市鉱山の話が先生からありましたけれども、コンクリート構造物についても、もう人工物は飽和状態ですし、しかし、コンクリートそのものをこれまた再利用する道、やはりリサイクルしていくという分野について、各分野で取り組むならば、新しい技術や産業に結びついてくると思うんですが、これらについての先生のお考えを伺っておきたいと思います。

小宮山参考人 リサイクルはキーワードだと思います。そのときに、リサイクルの中身というのを三つぐらいに分けて考えた方がいいと思います。

 まず、エネルギー資源というのはリサイクルできない。これは皆さんよく御案内と思いますが、エネルギー資源というのは永久に必要なもので、化石に頼っていたのを今後どう行くかということで、これが太陽というのは最終的な形で、僕はそれが正しいと思っています。

 それから、その次が有機物資源ですね。木材とプラスチックですね。これのリサイクルをどうするかという問題。ここはかなり微妙な問題がございます。

 それで、何年前ですか、もう十数年前になるかもしれないんですが、循環社会調査委員会でしたか、国の割合レベルの高い調査委員会がございまして、そこで結論を一応出してございます。

 それは、リユース、リデュース、リサイクルなんですが、そのリサイクルの中に、マテリアルリサイクルとサーマルリサイクルとを等価に置いたということで、ここに当時の環境省が大変抵抗しまして、一応説得したんです。それで、マテリアルリサイクルとサーマルリサイクルは同じにしました。

 これは、こういうふうに考えてみるとわかりやすいんですよ。

 プラスチックは必要です。今原油のうちの五%ぐらいがプラスチックにかわって、九五%ぐらいは燃料です。主として燃料なんです。そうすると、五%のプラスチックを必要なんですね。だけれども、プラスチックをリサイクルすると、こっちの九五%の五%が要らなくなるわけです。だけれども、これをリサイクルするというのも結構大変なんですよ。それで、こっちの五%からプラスチックを新しくつくって、この五%のプラスチックは燃やすという解があるわけですよ。これは等価ですよ。ですから、サーマルリサイクルとマテリアルリサイクルというのは等価なんです。

 等価じゃないのはどういうものかというと、PETぐらいですよ。プラスチックのボトルのあれですね。あれは、実はPETをつくるというのは非常にエネルギーがかかるわけです。ですから、PETぐらいはリサイクルして使うというのは、市民の協力さえ得られて、PETがかなり純粋な形で得られれば成り立つ話。

 紙なんかは、もともとあれはバイオマスですから、最後は燃焼するというのが一番効率いい。ただし、ごみ燃焼焼却場で無駄に燃やすのはたき火をしているのと同じですからよくない。だけれども、火力発電所の、例えば石炭火力に混焼するとかという形できちんとやれば、化石エネルギーというのはどうせ燃やしているんですから、これと等価ですから、正しい使い方。ここが少し難しいところであります、紙とプラスチックというもののリサイクルが。

 残りが、メタルであり、先生最後におっしゃったコンクリートということになりますが、メタルが一番重要なポイントだと私は思っております。

 これが鉄から金からレアアースからということになって、これはもう無条件にリサイクル社会をつくる。幸いにして、鉄とかアルミニウムとか大きなものは回っています。なぜかというと、鉄鉱石にしろアルミニウムの原料であるボーキサイトにしろ、環境にあるものは酸化されているからですよ。酸化物なんですよ。鉄鉱石というのは酸化鉄だし、ボーキサイトというのは酸化アルミニウムですよ。ここから酸素を外すのに製錬で物すごいエネルギーを使っているわけです。

 ところが、リサイクルされてきたアルミニウムとか鉄というのはもう金属ですから、溶かせばいいんですよ。溶かすエネルギーというのは、鉄の場合には二十七分の一、アルミニウムの場合には八十三分の一、圧倒的に酸素を外すエネルギーよりも小さいんですよ。だから、アルミニウムをリサイクルする、鉄をリサイクルする、今でしたら電炉ですね、その産業というのが成り立っているわけです。こういう背景があります。

 レアアースだって、最初からリサイクルするという形をとるに決まっていますよ。企業はかなりそういう方向に行っております。これを徹底させることですよ。そうすれば、十年か二十年たったら、もう日本に、自動車だの家電は全部いい電池を載っけている、磁石を載っけているという時代が来ますよね。ネオジムとかジスプロシウムというのは磁石に使うんですから。

 そうすると、自動車も戻ってきますし、家電リサイクル法で家電も戻ってくるんですから、磁石を外すのは簡単ですよ。これをもう一回ジスプロシウム、ネオジムに、まあ、部材のまま使うものもあるだろうし、そういうリサイクルをすれば要らなくなる。あとは、金みたいなものですね、本当に希少なもの。

 私、これもちゃんとしたデータがないので大体の勘で話すんですが、本当はもう金なんて日本は輸入する必要がないと思いますよ。金は、佐渡の金山だの鹿児島の金山も非常に品位がいいんですが、一トンの鉱石をやると、金が出てくるわけですね、これが二十グラムぐらい入っているんじゃないですか。非常にいい品位の鉱山ですよ。だけれども、南アフリカなんかの標準というのは、大体一トンで五グラムしか金が入っていない。だから、あれは金を掘っているんじゃなくて岩を掘っているんですよ。その中に五グラムの金が入っている。

 携帯電話がありますね。携帯電話を一トン集めると、その中に二百五十グラムの金が入っているんですよ。集めればいいんですよ。要するに、都市鉱山は金に関しては五十倍品位の高い鉱山なんですよ。

 問題は、携帯の中にいろいろ人に見られたくない情報とか入っているから、そいつを抜いてやって、例えばUSBか何かで戻してあげて集まるというインセンティブをつけたシステムをつくればいいわけでしょう。これが、ある意味でいうと、社会のイノベーションですよ。リサイクル社会というイノベーション。

 それは回収技術というか、昔、写ルンですというレンズつきカメラというのがございましたね。あれは、印刷するためにカメラを持ってくるんですよ。持ってきてさえくれれば、リサイクルというのはエネルギーゼロなんですよ。だから、リサイクルは収集するのにエネルギーがかかっているというのは、頭の悪い人の言うことなんですよ。今のシステムが悪いというだけですよ、場合によっては、分析してみると。頭のいいシステムをつくればいいんですよ。

 例えば、バイオマスとしての麦わらなんというのは、米が一千万トンとれていて、麦わらだって一千万トン出てきますから、相当な量があるわけですよ。これだって、お米を農協に持ってくるときに一緒に持ってきてもらえばいいじゃないですか、麦わらも。かさばっちゃうからだめだ。それこそブリケットにするためにぐしゅっと圧縮して運べるような形にする機械を開発して、どこに置くかわかりません、それさえできれば、運ぶのなんて石炭を運ぶのと同じですから、あとは何の問題もないわけです。

 要するに、頭のいい、エネルギーコストのかからない回収システムさえつくれば、リサイクルというのが非常に効率よく、コスト効率もエネルギー効率もよく動くので、これこそ日本がつくる次世代社会ですから、大きく言うと、リサイクル社会に向かうべきだと思います。

 そのときに、結論を申しますと、エネルギーに関する誤解をしない、先生は違うと思いますけれども、いつまでたってもエネルギーリサイクルという話が出てくるから。

 それから、紙とプラスチック、この議論をメタルと分けないといけない。なぜならば、ここが今非常によくないと言って、リサイクルしてはいけないというような本が七十万部売れるんですね。けれども、私のいい本は一万部なんですよ。というのは、リサイクルなんかしたくない、二十世紀の延長戦型の産業で食べている人たちの方が圧倒的に多いわけですから、リサイクルしてはいけないと言ってくれる方がありがたいわけですよ。そういう形で二十一世紀の戦いに負けているのが今の日本ですから、私の本を読まないといけないというのがあります。

吉井委員 ありがとうございました。

 さらに一点だけ、今先生がおっしゃった個人情報にかかわる問題ですね。これは、ナビにしても、それからグーグルにしても、携帯にしても、ユーチューブなんかにしても、だれがどう使っているかということで、それを情報にして新しくこういう商品を売り込もうとかいろいろ使われる可能性があるわけですけれども、ITの時代における個人情報保護のあり方、これもひとつ技術開発なんかで考えていかないといけない課題だと思うのですが、これだけ伺って終わりにしたいと思います。

小宮山参考人 これも本当に重い課題であることは間違いないと思います。

 それで、二つの方法があって、一つは、理念的に議論を重ねて、立派な基本法みたいなものをつくっていこうというやり方で、これは必要だと思います。

 一方で、理念に基づいて社会実験をしようとしていくとおくれます。これが日本の問題です。

 例えば、この間韓国に行ったときに、私は基本的に電力料金を累進にすべきだと思っています。エネルギーを家庭で、要するに、私の家のようにエネルギーを使わないところの電気代はキロワットアワーで単価を安くする、たくさん使うお宅は単価も高くするという累進にしてインセンティブをつけるべきだと思います。

 ところが、今、日本でこれをやろうとすると大変難しい、お金の収集の仕方が。韓国が実はやっているのに驚きました。韓国は累進の価格をやっているんですよ。これはなぜできるかというと、ITが進んでいるからです。だから、計算式一つ入れればいいわけです。計算式は幾ら複雑でも構いません。要するにお金をもらっちゃえばいいんですから。それをITに載っけるだけでお金の徴収ができちゃうわけですよ。

 そういうふうな形と、そのときに幾ら払ったかが漏れる心配があるんじゃないかというこの議論ですよね。私は、日本で圧倒的に欠けているのは、やってみて、そこの中から問題点を探して、それを法律の方に反映していくというこのサイクルがないこと。だから、いつまでたっても、人間ドックを受けた人が病院に行ったときに、人間ドックのデータというのがクリックしたって出てこないんですよ。介護をしようとするときにレセプトのデータが見えないんですよ、個人がつながっていないんだもの。

 今、恐る恐る福井県で、A、B、Cと個人をアノニマスにして、健康診断のデータとレセプトデータと介護のデータとをつなげる実験をしております。僕は、この実験をやっちゃえば、それでもって一体どういうことが起きるのか、もちろん、あらかじめできるだけ暗号化するんですよ、そのとき一体どういうことが起こるのかというようなことを実験しないと、これが新しい医療システムになるんですよ。それが売れるんですよ。

 今、原子力のパッケージ輸出というのを言っていて、この問題も小さい問題ではないけれども、はるかに大きな問題が新しい医療のシステムというのを売っていくという商売になるに決まっているんですよ。ベトナムで新しい医療システムが欲しいというときに、MRIが欲しいなんて言わないですよ。重粒子線のあれが欲しいんだ、そんなことを言うわけがないですよ。何が欲しいのか。お医者さんが足りないんですよ。看護師さんも足りないんです。そういうときに、この地域の医療をどうするのかというのが欲しいものですよ、向こうは。

 そこに対して、こういうシステムを遠野市でやっています。遠野市は今結構いいことをやっているんですよ。栗原市なんかも結構いいことをやっていますよ。そういういいところが本当にいいものになって、それの情報基盤が設計技術として企業に蓄積されて、そういうものを全体として売っていく。その中に重粒子線も入るしMRIも入ってくるという形でなければ、医療機器なんて幾ら開発していたって大したものにはなりませんよ。それが答え。

 要するに、医療システム全体として、町のお医者さんが最先端の医療技術についていけない。これは当たり前ですよ。これだけ細分化したところで、中川先生と児玉先生だってあれだけ言うことが違うときに、お医者さんに聞いたらわかるだろうという時代はもう百年ぐらい前に終わったんですよ。お医者さんに聞いても医療の最先端はわからないんです。

 このお医者さんにこのことを聞くとわかるんですよ。そういうものをどうやってITで連携して、ここの町のお医者さんに行ったときに、お医者さんもコンピューターのシステムの支援を受けて、東北大学のこの先生のところに行きなさいということが言えるというシステムがこれからの医療システムで、背後にゲノムの情報がくっつくわけですよ。そして、この人にはこういう医療がいいというのができてくるというのもわかっているわけですよ。その情報はもうクラウドにためられるんですよ。そこまで見えているんですよ。

 そこをやるのが、日本は入り口で情報の暗号化が完全でない。それは完全じゃないですよ。それをやっていく技術、これは社会実験の一つで、十分注意した上で小さいシステムからやっていくというのが私の申し上げたい答えです。

吉井委員 ありがとうございました。

川内委員長 小宮山参考人のお時間が十一時三十分までということで、時間が来てしまったんですが、いいですか。

豊田委員 民主党の豊田潤多郎でございます。

 簡単に、簡潔に申し上げます。

 先生のお話は大変傾聴に値するというふうに感銘を受けておりますが、それでは、国、地方公共団体が先生の考えておられる方向に話を進めていく場合に、国、地方公共団体の関与、役割というものをどういうふうにとらえるか。

 これは、簡潔に言えば、三点に絞られると私は思います。一つは、関与しなくていい。それから二番目は、関与は必要だが、規制緩和等の財政負担の伴わない関与の仕方にすべきである。三番目は、関与は必要であり、なおかつ、大きな財政負担も伴う形での国家的プロジェクトでやるべきだ。

 極端に言えばこの三つに絞られるんじゃないかと思いますが、答えを先取りして恐縮ですが、私は二番目のお金はできるだけ使わずに規制緩和等で行っていくべきであるという答えではないかということを期待しつつ、先生の御意見をお伺いします。

小宮山参考人 おっしゃるとおりだと思います。

 宮城県の復興会議をやっていて、そのことも多少というか一生懸命考えました。国に復興構想会議ができて、宮城県に我々の復興会議ができたわけです。そのときに、現実に動くのは基礎自治体なんですよ。気仙沼市であり、基礎自治体なんですね。県すらも基礎自治体ではないわけです。

 そのときに、それぞれの役割がどうかというと、今先生は一つだとおっしゃったんだけれども、やはり二つじゃないかと思いました。その真ん中の制度ですね。規制緩和という制度。あるいは、場合によっては、先ほどの私有地がわからないときにどうするというようなのも先生は規制緩和に入れておられるんだろうと思いますけれども、もしかすると、新しい制度をつくらなくちゃいけないかもしれません。いずれにしても、制度、法律をつくるのは国なんですよ。ここにやるべきことがたくさんあるというのが一つですね。

 もう一つは、制度と言っちゃうと制度なんだけれども、財政。財政が回るようにしてください。必ずしも、お金を下さい、交付金で全部下さいと言っているわけではなくて、融資でもいいわけですよ。太陽電池なんか、融資しちゃって載っけちゃえば、電気代をもらえば回収できますから。

 これは私が自立国債と言って前から国に提案していた話ですけれども、これは自立県民債だっていいわけだし、ファンドだっていいわけなので、そうした融資の仕組み。長銀だの政策投資銀行だの、ああいうのをどうかませるのか。九千億の再生基金でしたっけ、経産省がつくったものがありますね。ああいうような形を、お金が回る制度を設計する。これも制度なのかもしれません。そういう意味では、国がやるべきことは結局は制度。

 あとは高いところに住めとか。あとは知恵なんですよ。知恵をどういうふうにするかというんですけれども、残念ながら、基礎自治体は、必ずしも知恵が十分あるという状況にはないわけですね。これは人材ということだし、組織が必ずしも強くなっていない、中央集権に頼り過ぎていたから。だから、ここら辺が非常に重要なところで、知恵をどこが出していくか。高いところに住むか低いところに住むかなんかは知恵の一つです。

 それはいわば最後はおせっかいみたいなもので、本当は基礎自治体が決めるべきことですよね。でも、日本でそういうのが動けるような状況になっていないんだとすれば県がお世話するし、国もしかるべきところにはお世話する、そんな構造なんじゃないかというふうに考えております。

川内委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、小宮山参考人に一言御礼を申し上げます。

 小宮山参考人には、大変貴重なすばらしいお考え、御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。今後の本委員会の活動に十分に生かしてまいりたいと存じます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げさせていただき、拍手をさせていただきたいと思います。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十五分散会


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