衆議院

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第3号 平成23年10月25日(火曜日)

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平成二十三年十月二十五日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 松宮  勲君

   理事 菊田真紀子君 理事 田村 謙治君

   理事 高井 美穂君 理事 津村 啓介君

   理事 吉田 統彦君 理事 馳   浩君

   理事 松野 博一君 理事 遠藤 乙彦君

      石田 三示君    石原洋三郎君

      磯谷香代子君    稲富 修二君

      大泉ひろこ君    大西 健介君

      大畠 章宏君    大山 昌宏君

      岡本 英子君    川内 博史君

      木内 孝胤君   木村たけつか君

      熊田 篤嗣君    杉本かずみ君

      菅川  洋君    空本 誠喜君

      平  智之君    高木 義明君

      高松 和夫君    中後  淳君

      永江 孝子君    橋本 博明君

      平山 泰朗君    水野 智彦君

      向山 好一君    村上 史好君

      森本 和義君    山口 和之君

      柚木 道義君    渡辺 義彦君

      江渡 聡徳君    金田 勝年君

      河井 克行君    河村 建夫君

      近藤三津枝君    佐田玄一郎君

      下村 博文君    吉野 正芳君

      吉井 英勝君    阿部 知子君

      柿澤 未途君

    …………………………………

   国務大臣

   (原子力行政担当)    細野 豪志君

   国務大臣

   (科学技術政策担当)

   (宇宙開発担当)     古川 元久君

   内閣府副大臣       石田 勝之君

   内閣府副大臣       中塚 一宏君

   外務大臣政務官      中野  譲君

   文部科学大臣政務官    神本美恵子君

   経済産業大臣政務官    北神 圭朗君

   政府参考人

   (宇宙開発戦略本部事務局長)           山川  宏君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   泉 紳一郎君

   政府参考人

   (総務省行政評価局長)  新井 英男君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           加藤 善一君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            倉持 隆雄君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房地域経済産業審議官)     内山 俊一君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      糟谷 敏秀君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     深野 弘行君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官)   黒木 慎一君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  西  正典君

   参考人

   (原子力委員会委員長代理)            鈴木達治郎君

   衆議院調査局科学技術・イノベーション推進特別調査室長           雨宮 由卓君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十五日

 辞任         補欠選任

  石森 久嗣君     山口 和之君

  江端 貴子君     永江 孝子君

  熊谷 貞俊君     村上 史好君

  空本 誠喜君     磯谷香代子君

  平  智之君     杉本かずみ君

  近藤三津枝君     下村 博文君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     高松 和夫君

  杉本かずみ君     平  智之君

  永江 孝子君     木内 孝胤君

  村上 史好君     向山 好一君

  山口 和之君     菅川  洋君

  下村 博文君     近藤三津枝君

同日

 辞任         補欠選任

  木内 孝胤君     江端 貴子君

  菅川  洋君     木村たけつか君

  高松 和夫君     森本 和義君

  向山 好一君     熊谷 貞俊君

同日

 辞任         補欠選任

  木村たけつか君    石原洋三郎君

  森本 和義君     空本 誠喜君

同日

 辞任         補欠選任

  石原洋三郎君     渡辺 義彦君

同日

 辞任         補欠選任

  渡辺 義彦君     岡本 英子君

同日

 辞任         補欠選任

  岡本 英子君     石森 久嗣君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件


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     ――――◇―――――

松宮委員長 これより会議を開きます。

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として原子力委員会委員長代理鈴木達治郎君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として宇宙開発戦略本部事務局長山川宏君、内閣府政策統括官泉紳一郎君、総務省行政評価局長新井英男君、文部科学省大臣官房審議官加藤善一君、文部科学省研究振興局長倉持隆雄君、経済産業省大臣官房地域経済産業審議官内山俊一君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長糟谷敏秀君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院長深野弘行君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官黒木慎一君及び防衛省防衛政策局長西正典君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松宮委員長 なお、ちょっと私、訂正をさせていただきたいと思いますが、ただいま原子力安全・保安院長と原子力安全・保安院審議官の肩書の前に資源エネルギー庁と読みましたが、原子力安全・保安院は資源エネルギー庁とは別の独立した組織、経済産業省の傘下のもとの組織でございますので、訂正させていただきます。

 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松宮委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馳浩君。

馳委員 おはようございます。自由民主党の馳浩です。

 この科学技術・イノベーション特別委員会は、大臣の失言を追及するような委員会ではございませんので、古川大臣には安心して、そして我が国の未来にとって有益となるような答弁をいただきたいと思います。

 冒頭ではありますが、この二カ月間ほど、原発事故を受けての、過酷な事故があったときの運転操作マニュアル、これを国会に提出してください、どうだったんですか、この問題について理事会において議論がされて、きのう委員長のもとに、そして理事会のもとに提出されたところであり、けさの報道、ワイドショーなどでも大変関心を持って受けとめられております。

 我々が政治的に一番関心を持たなければいけない点は一点ですね。長時間に原発操作の電源が喪失した場合にどのような運転手順で対応すべきか、それについてのマニュアルがなかったということが問題です。いわゆる想定外を想定していなかったということが危機管理上問題であるということで、我々政治の側にも指摘が残った、こういうふうに思っております。

 ただ、この問題については、細野大臣が担当でありますので、午後の質疑者に譲りたいと思います。

 改めて、古川大臣の就任、お祝いを申し上げながら、きょうは私は、宇宙開発問題を軸にしての質問とさせていただきます。

 ことしの九月三十日に閣議決定された「実用準天頂衛星システム事業の推進の基本的な考え方」、これは一体どういう内容ですか、お伺いいたします。

古川国務大臣 御答弁を申し上げる前に、まず一言、最初に、馳委員に大変温かいお言葉をいただきましたことを心から感謝申し上げたいと思います。また、馳委員におかれましては、宇宙政策について、大変今までも御尽力をいただいてまいりましたことを宇宙開発担当大臣として心から敬意を表したいと思います。

 その上で、今御質問のございましたことについてお答えをさせていただきたいと思っております。

 準天頂衛星システムは、産業の国際競争力強化、産業、生活、行政の高度化、効率化、そしてアジア太平洋地域への貢献と我が国のプレゼンスの向上、さらには、日米協力の強化及び災害対応能力の向上等広義の安全保障に資するものであることを踏まえまして、我が国といたしまして、実用準天頂衛星システムの整備に可及的速やかに取り組むこと、具体的には、二〇一〇年代後半を目途にまずは四機体制を整備すること、そして将来的には、持続測位が可能となります七機体制を目指すこと、そして、実用準天頂衛星システムの開発、整備、運用は内閣府が実施すること、これを中心に閣議決定したものでございます。

馳委員 では、お伺いいたします。

 当該閣議決定においては、準天頂衛星システム、つまり測位衛星システムは、産業の国際競争力強化に資するものであるとされているが、その具体的な内容はいかがなものでしょうか。

山川政府参考人 二〇〇六年のEUの調査によりますと、衛星測位に関する世界市場ですけれども、それは、端末等の地上関連機器から、そしてアプリケーション等のサービスに至るまで、非常に多岐にわたります。その規模といたしましては、二〇〇五年におきましては七兆円ぐらいだったんですが、二〇二五年に至りましては五十六兆円に成長すると見込まれております。

 このような大きな市場に対しまして、我が国が準天頂衛星システムを整備することによりまして、地上も含む高度な機器やサービス、これらの市場を創出することが一つ。もう一つは、我が国がその測位衛星システムの標準化、それに主体的に参加していく、そういった役割を果たしていくことで、我が国の幅広い産業の競争力強化に資すると考えております。

馳委員 我が国の技術が世界標準を目指す、これはやはり、我が国ならではの産業戦略のトップの理念だと思うんですね。大臣も、これは当然異論のないところでもありますし、国家戦略の担当大臣としても、やはりこれは今後の我が国の宇宙開発が、あえてライバルを中国としましょう、中国が求めている宇宙戦略と、我が国が求めている宇宙戦略と、恐らく、地域も似ていますし、お互いに対輸出の依存度においても、大変ライバル意識を持って取り組んでいかなければいけない問題だと私は思っています。

 そういう点からも、官民挙げての連携と、やはり世界ナンバーワンを目指す、その気概を持って、政府としても支援をしていただきたいとまず申し上げた上で、次の質問をいたします。

 同じく、閣議決定にございます「アジア太平洋地域への貢献」という、その具体的な内容はいかがでしょうか。

山川政府参考人 我が国は、準天頂衛星システムでございますけれども、その衛星システムの軌道がアジア太平洋地域をカバーしております。そのために、当該地域におきまして測位サービスを提供することで、そのような観点で国際貢献を図ることができるというふうに考えております。

馳委員 その準天頂衛星の軌道がアジア太平洋地域をカバーしているということは、先ほども申しましたように、我が国の産業戦略として、マーケットをこのアジア太平洋地域に広げて、内需を潤すのは当然ではありますが、マーケットを拡大することによって我が国の経済戦略にも資する、こういう考え方でよろしいのでしょうか。

古川国務大臣 まさに、これは新成長戦略のもとでも、アジアというのは、世界の中で一番、成長の先端でございます。そうしたところで、アジアの需要を日本の内需として取り込むんだということも決めております。

 そういった意味では、幅広い意味で、準天頂衛星システムもそうしたものに資するものというふうに考えております。

馳委員 資源の少ない、また少子化に向かう、高齢化に向かう我が国の、そして島国である我が国にとっての大変重要な戦略であり、極めて可能性が大きいということを私も理解したいと思います。

 その上で、同じく閣議決定にございます「日米協力の強化」、この具体的内容をお伺いしたいと思います。

山川政府参考人 我が国の準天頂衛星システムでございますが、米国のGPSと互換性を持っております。GPSの持つ測位機能を補完、補強するものでございまして、GPSのアジア太平洋地域での有用性を高めるものと考えております。

 ことし一月でございますが開催されました全地球的衛星測位システムの利用に関します日米協議の共同発表におきましても、日米両政府は、その準天頂衛星システムの重要な将来の貢献について認識しております。衛星航法システム分野におきます継続的で緊密な協力がアジア太平洋地域の平和的発展に資すること、そして、世界的な経済成長を促進させることを確認しているところでございます。

馳委員 そこで、同じく「広義の安全保障に資する」ともしておりますが、広義の安全保障とは何ですか。広義の安全保障といえば、当然、狭義の安全保障と指摘せざるを得ません。広義の安全保障があるとする、狭義の安全保障とは何ですか。

 極めてわかりにくい表現になっておりますので、具体的にお示しをください。

山川政府参考人 閣議決定におきましては、我が国が重要な社会基盤でありますこの測位衛星システムをみずから整備、運用していくこと、そしてさらに、それが災害対応能力の向上に資すること、こういったことが含められておりますので、幅広い安全保障に資するということから、広義の安全保障という表現になっております。

馳委員 では、狭義の安全保障とは何ですか。

古川国務大臣 委員もおわかりの上で御質問されておられると思いますが、当然、広義の安全保障という場合には、それは、その内集合として狭義の安全保障というものも含んでいるものというふうに私どもは承知をいたしております。

馳委員 では、私からはっきり言うしかないですね。

 正面から、宇宙基本法第三条にあるように、我が国の安全保障に資すると唱えることはできなかったのでしょうか。

古川国務大臣 先ほど事務局長からもお答えをさせていただきましたが、ともすると、安全保障というと、一般的には、逆に言うと狭義の意味でとらえられるところが多いわけですね。

 しかし、今回の、我々がこの広義の安全保障という言葉を使ったのは、まさに狭義の安全保障の意味のみにとどまらず、災害対応能力の向上に資するとか、かなり幅広い、安全保障といっても相当大きなところまでカバーするんですよと、そういう意味で広義の安全保障ということを使わせていただいたというふうに御理解をいただきたいと思います。

馳委員 理解をするために質問しているんですが、要は軍事的な、ここのポイントですよね、狭義の安全保障といいますれば、軍事的な技術協力、そして作戦的な協力、技術的な協力、こういうことも広義の安全保障には含まれていると判断してよろしいのですか。

古川国務大臣 先ほど来から申し上げておりますが、広義の安全保障の中には狭義の安全保障も当然含まれるものというふうに考えております。

馳委員 わかりました。

 特に日米協力の強化で、アメリカのGPSとの互換性ということを先ほどおっしゃいました。私は、ここが一つ我が国の経済戦略としても大きな可能性を秘めたポイントになるのではないかなと思っておりますので、それが我が国主導でできるかどうかということが今指摘した狭義の安全保障と絡んでくるものと思っているんです。

 つまり、我が国が主導権を持ってアメリカのGPS機能に対して、我が国がリーダー的な役割を果たす技術力がある、けれどもそれが、我が国がリーダー的な役割を果たせるかどうかというふうなポイントなのではないかと私は思っています。

 結論として、我が国はこの分野においてアメリカよりもより高い技術力を持ってリーダー的な役割を果たすべきであるという意味で、今ほどわかり切っている話を申し上げたところであります。

 では、次の質問に行きますが、今回の閣議決定は、初号機「みちびき」の成果があっての決定であります。「みちびき」の具体的成果と、また、課題についてお伺いをいたします。

加藤政府参考人 御説明いたします。

 「みちびき」につきましては、昨年九月の打ち上げの後の初期機能を確認した後に、十二月の中旬から、宇宙航空研究開発機構を初めとしまして、関係機関によりまして実証試験が行われてございます。

 この実証試験の内容につきましては、高層ビルの影響などで米国のGPSの電波が届きづらい都市部域での測位可能範囲の改善の程度、それから、GPSと同等の測位性能が得られるか否かの確認、さらには、「みちびき」独自の補強信号を付加することによる測位精度改善が開発目標を達成し、実用に供することが可能か否かを確かめるものでございます。

 これまでのこの実証試験の結果といたしましては、例えば、新宿あるいは銀座におきまして、「みちびき」の信号がGPSに加わることで、測位率、すなわち受ける範囲が大幅に改善していることや、自動車等移動体でのサブメーター級の測位精度、それから、測量分野でのセンチメーター級の測位精度の改善が確認されてございます。

 一方、課題といたしましては、より安定した補強信号の受信などにつきまして、今後の分析評価が必要な問題点も出てございます。

 文部科学省といたしましては、今後も関係機関と連携いたしまして「みちびき」の実証試験を進めることによりまして、技術開発の立場から、この「みちびき」の成果が実用準天頂衛星システムに反映できるように貢献してまいりたいと考えてございます。

 以上でございます。

馳委員 よくわからない言葉が出てきましたので、ちょっと聞いてみたいと思います。

 我が国独自の補強信号、より安定的な補強信号という、補強信号という言葉を二回お使いになりました。補強信号とは何なんですか。

加藤政府参考人 申しわけございません。

 補強信号と申しますのは、「みちびき」から現在受けております米国のGPSの誤差を観測いたしまして、それを「みちびき」経由で送ることによりまして、現在のGPSの誤差をより縮めることができる信号でございます。

馳委員 ということは、アメリカのGPSよりもより精度の高い測位システムを展開することができるようになるというふうな成果と受けとめてよろしいんですか。

加藤政府参考人 御説明いたします。

 厳密に米国のGPSと「みちびき」の誤差を比較するということではございませんで、現在使っております米国のGPSに対して、この「みちびき」の信号を付加することによってGPSの誤差をより狭くできる、付加することによってより精度を高くすることができる、そういうことでございます。

馳委員 さっきから聞いていてちょっと違和感を感じるんですが、では、我が国独自のGPSを開発して運営することは可能なんじゃないですか。

加藤政府参考人 御説明いたします。

 「みちびき」のこの実証試験の中には、先ほどの補強信号と同時に、補完につきましても実証試験を行ってございまして、先ほども御説明いたしましたけれども、米国のGPSと同等の測位性能が得られるか、確認をしてございます。

 それにつきましても開発目標が達成できているということでございますので、同レベルの性能を持ったものができているというふうに御理解をいただいて結構だというふうに考えてございます。

馳委員 ここは、やはり大臣に聞きたいですね。

 同レベルというならば、アメリカよりもよりすぐれた性能のGPSを我が国が開発して、打ち上げて、運営して、その果実をアジア太平洋地域に分け与えるというか、それをまさしく産業に生かしていくということもできるのではありませんか。

古川国務大臣 今議論を聞かせていただいておりまして、私もよくまたその性能等について確認をさせていただきたいというふうに思っております。

馳委員 何となくごまかされたような答弁ですが、後ほど、このアメリカのGPSとの連携についてはまた質問をいたしますので、次の質問に移ります。

 準天頂衛星システムの予算について、来年度概算要求において、内閣府より四十一億円が要求されております。その具体的な内訳をお伺いしたいと存じます。

山川政府参考人 閣議決定を踏まえまして、我が国の測位衛星システムの開発整備、具体的に申し上げますと、準天頂衛星システムの基礎設計、詳細設計、そして一部検証モデルの製作、そういったものが含まれます。さらに、例えば周波数の国際的な調整など必要な経費、それらのうちの初年度分を要求してございます。

馳委員 この概算要求が日本再生特別枠で要求されているのはどうしてですか。

 特別枠では、次年度以降の予算獲得が非常に危ぶまれるので問題だと思います。いかがですか。

山川政府参考人 平成二十三年の九月二十日に閣議決定されました「平成二十四年度予算の概算要求組替え基準について」におきましては、我が国経済社会の再生に向けた取り組みが日本再生重点化措置とされております。

 その中で、重点化措置の対象となる分野といたしまして、宇宙が新たなフロンティア及び新成長戦略として規定されました。この点が一つ。

 もう一つは、非常に厳しい財政事情のもとにおきまして、内閣府のシーリング枠の状況などを踏まえまして、準天頂衛星システムを日本再生特別枠で要望したところでございます。

 なお、衛星システムの整備やその運用にかかわる経費につきましては、国庫債務負担行為として後年度負担を同時に要望しております。

 閣議決定を踏まえまして、これらの必要な予算とそれから国庫債務負担行為の確保につきまして、全力で努力してまいりたいというふうに思います。

馳委員 私が質問したのは、指摘をしたのは、特別枠だと次年度以降の予算獲得が非常に危ぶまれる、どうして特別枠にほうり込んじゃったんですかということなんですね。

 今の御答弁では、シーリングもかかっている、一〇%のある中での、削る部分は削る部分、そして、一・五倍の枠が特別枠で要求できるということでしたね、それでそこにほうり込んだと。極めて、財務省にうまくしてやられたなという印象を受けてしまうんですね。

 私は、野田総理も宇宙開発は重要だとおっしゃっておられます、したがって、これは正々堂々と、特別枠なんか使わないで要求すべき筋合いの事業なのではないかと思うんですね。古川大臣、いかがですか。

古川国務大臣 これは、馳委員もいろいろ今まで予算もつくられたりしてこられましたから、おわかりになると思いますが、きちんと最後の中で、最終的な予算を決定する中で、そこできちんと位置づけていく。

 今まさにおっしゃられましたように、総理は特に宇宙に関しては大変昔から思い入れもあって、委員なんかとも一緒にずっとやってこられたわけでございます。ですので、これは、野田総理、野田政権をしっかりお支えいただいて続けさせていただければ、ちゃんとこの宇宙については今後とも推進をしてまいりたいと思いますので、ぜひ、そういった意味でも、馳委員のまた総理に対する御支援、御協力もいただければということをこの場をおかりしてお願い申し上げたいと思います。

馳委員 自民党が与党時代はこういうやり方だったんですよね。復活折衝枠に残して目玉にするということで演出をしたわけですよね。似たようなことが日本再生特別枠ということで総理の肝いりで行われ、その担当が古川さんだというふうに私は何となくシナリオが読めたような気がいたします。

 私に協力しろと言う前に、将来、私が、古川が総理大臣になって積極的に予算をつけます、そのぐらいの答弁をしなきゃだめですよ。応援していることは間違いありませんからね、誤解のないように。

 さて、当該閣議決定には、二〇一〇年代後半を目途にまずは四機体制を整備し、将来的には七機体制を目指すとしておりますが、これはより具体的なスケジュール表が必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

石田副大臣 馳委員にお答えをいたします。

 委員御案内のとおり、この件につきましては、平成二十年の四月に閣議決定され、その後、平成二十二年に「みちびき」が上がったわけであります。そして、「みちびき」を含めて三機、準天頂衛星システムの第一段階として、技術そして利用の実証を行う計画であったわけであります。

 今回はさらに進みまして、総理も申しておりますが、二〇一〇年代後半を目途に四機で実用体制をすることになっております。将来は、御案内のとおり、七機体制を目指したいと考えております。

馳委員 ステップワン、ステップツー、ステップスリーというように、まずステップワンで実証、ステップツーで実用、そしてステップスリーでは七機体制。私はここの数字にこだわりたいんですね。なぜ七機じゃなければいけないのか、そしてその七機には幾らぐらいかかるのか、ランニングコストも含めて戦略的なスケジュール観を教えてください、これが私の質問の本音なんですね。お願いします。

山川政府参考人 まず、七機である理由でございますけれども、七機という意味は、日本あるいはアジア太平洋地域におきまして、仮に米国のGPSが使えなかった場合であってもその地域で測位機能を満たすことができるという意味で七機でございまして、七機である理由は、絶えず頭上に四機測位衛星が見える必要がございます。それを満たすためには全部で七機を展開する必要があるということでございます。

 それから、経費の問題ですけれども、七機を整備するためには、衛星それから打ち上げ、そして地上システムを含めまして、概算でございますが約二千六百億円ぐらいが必要というふうに考えております。

馳委員 非常にわかりやすいというか、本当に意味のあるお話だと思います。アメリカのGPSなしでもというところが非常に大きな意義を持ち、まさしくそういう方針を目指すことは、我が国がリーダーシップを発揮し、そのために技術者の皆さんに目標を持たせるということは意味があると思います。

 そこで、やはり大臣にくぎを刺しておかなければいけないのは、この二千六百億円、短期というよりも中期的という言葉を使った方がいいと思いますね、二千六百億円という中期的な予算の確保を視野に入れた戦略、これこそ僕は大ぶろしきだと思うんですよ。これを広げて目指すんだということを、アメリカを初め中国に対しても、特に中国は、今、宇宙開発でしのぎを削って、我こそはと頑張っていますよ。こういうときに、日本として、この二千六百億円は必ず国家として確保をして使うんだ、そしてこの二千六百億円を使ったら、それが五兆円や十兆円や五十兆円にもなる経済波及効果があるんだ、やはりそういう方針を戦略としてお示しいただきたいと思うんですね。大臣、いかがでしょうか。

古川国務大臣 予算の額は幾らかということはちょっと別にいたしましても、先ほどから申し上げておりますように、とにかく、将来的には七機体制を目指すということは、これは政府としても今決めておるところでございます。

 そこへ向けて、まずは四機体制ということで踏み出していくということでございますから、そういった意味では、先ほどから議論に出ておりますけれども、必要なそういう体制の整備に向けて着実に一歩ずつ進めていく。大ぶろしきという言葉がございましたが、余り大ぶろしきを広げますと、私自身も前の内閣で反省のこともございますので、やはりそこは着実に一歩ずつ前に進めていきたいと思いますので、ぜひ御理解をいただければというふうに思っております。

馳委員 この大ぶろしきはいい大ぶろしきですからね。この二千六百億円という数字を、第四次、第五次の科学技術基本計画、これにのっけていくんだ、明示をして取り組むという姿勢を求めたいということであります。

 次の質問ですが、我が国の測位衛星システムは、特定地域向けのいわゆる地域測位衛星システム、RNSSと呼ばれるものですが、将来的には、特に我が国の安全保障問題を考えれば、アメリカのGPSなどの全地球測位衛星システム、GNSSに発展させていく長期の戦略的な方針が必要だと思っています。その方針をお持ちですか。

石田副大臣 お答えいたします。

 現在、米国、アメリカは三十機体制、ロシアは二十一機体制であります。委員御案内のとおり、ほぼ世界を網羅しているわけでありますが、日本の測位衛星システムは、いわゆる地域版というか、アジア太平洋を整備することを目的としているところでありまして、それを整備することが戦略的にも最も重要であるとの考えから、いわゆる地域測位衛星システム、RNSSを整備することとしておるわけでございます。

馳委員 まずはRNSSからという石田さんの力強いお言葉ですが、将来的にはGNSSを目指すということでよろしいんですね。

石田副大臣 もちろん、時期は別にして、将来的にはそれを目指したいというふうには考えております。委員も同様だろうと思います。

馳委員 全く同じです。協力したいと思います。

 次の質問に移ります。

 同じく、九月三十日に、「宇宙空間の開発・利用の戦略的な推進体制の構築について」の閣議決定を行っておりますが、その内容はどうなっておりますか。

山川政府参考人 御説明いたします。

 九月三十日の閣議決定でございますが、内閣府に我が国宇宙政策の司令塔機能と準天頂衛星システムの開発、整備、運用等施策実施機能を担当する体制を構築するために、そのために必要な法案等を次期通常国会への提出を目途として準備することとする、また、その準備に際しての基本的な考え方を決定したものでございます。

馳委員 宇宙政策の司令塔を内閣府に持ってくるとなっておりますが、なぜ内閣府なのか、文科省ではだめなのか、その理由をお伺いしたいと思います。

古川国務大臣 先ほどからの委員の御質問にもございましたように、宇宙政策というのは、やはり民生、安全保障、両分野にまたがるものでございます。したがいまして、科学技術の観点以外にも、外交、安全保障や産業振興、そういう政府全体の見地から戦略的な推進が求められているというふうに考えております。

 そういった意味で、宇宙政策の司令塔機能は内閣府に置くことが適当であるというふうに考えたということでございます。

馳委員 内閣府が実効性のある司令塔になるためには、各省の利害にとらわれないプロジェクトの評価、見直し、各省間の政策連携を内閣府が実施できるようにならなければならないと思いますが、いかがですか。

石田副大臣 委員おっしゃるとおりでありまして、実効性のある司令塔となるためには、各省の省益にとらわれないこと、プロジェクトの評価、見直し、各省間の政策連携を内閣府が実施できることが極めて重要であろうというふうに思っております。

 そして、閣議決定に基づきまして検討することになる宇宙開発利用の体制の構築に際しては、このような観点を踏まえて検討を進めてまいりたいと考えております。

馳委員 そこで、現在、宇宙関連予算は各省ばらばらに組まれておりますが、内閣府一括で宇宙関連予算を管理、執行したり重点配分したりできなければ、内閣府は実効性のある司令塔にはなれないと思いますが、いかがでしょうか。

古川国務大臣 おっしゃるように、将来的には内閣府一括で宇宙関連予算を管理、執行するような、そういう一元化を目指していきたいと思っておりますが、まずは、内閣府に政策の重点化を含めた強力な司令塔機能を構築する努力をしていきたいというふうに思っております。

馳委員 先ほどお伺いしたときに、その司令塔を内閣府に持ってくるために必要な法案の改正も視野に入れているとこの閣議決定で示されておりますね。必要な法案の改正とは、どの法案を具体的に指摘しているのでしょうか、教えてください。

山川政府参考人 御説明いたします。

 具体的には四つあると考えておりまして、一つは内閣府設置法、二つ目が文部科学省設置法、宇宙基本法、そしてJAXA法、この四つというふうに考えております。

馳委員 ありがとうございます。

 設置法二つ、JAXA法、宇宙基本法ですね。その法律は、超党派の議員立法として成立したものが含まれております、宇宙基本法。そこの附則第二条、第三条などに、その体制整備については、一年を目途になどと年限を区切ってやるようにとなっておったんですが、これも政権交代の影響があったのか、あるいは準備が整っていないのか、文科省が抵抗しているのかはわかりませんが、まだ具体的な案となって見えてきておりません。

 どこまで大臣もおっしゃれるかわかりませんが、私は、来年の通常国会には、この閣議決定で言うような法案の改正を国会に出すべきだ、スケジュール観として来年の通常国会には出すべきだと思いますが、私が想定しているようなスケジュール観でよろしいんでしょうか。もし計画していることがあれば、お話をいただきたいと思います。

古川国務大臣 おっしゃいますように、馳委員にも御尽力いただいた基本法の附則には、一年を目途ということであって、それがおくれているわけでございますから、そういうことも踏まえまして、できるだけ早急に必要な改正法案を国会に提出できるように努力してまいりたいというふうに考えております。

馳委員 来年の通常国会には、ぜひ古川大臣のリードで出していただきたいと思いますが、あれから、一年を目途と言っていたのが二年、三年とたってしまいました。いかがでしょうか。

古川国務大臣 次期通常国会に出せるように頑張りたいと思います。御協力よろしくお願いします。

馳委員 もちろん協力しますが、内容次第では修正を求めるかもしれません。それは大いに議論したいと思います。

 そこで次の質問に移りますが、関連して、宇宙開発委員会は廃止する必要があるのではないかと思いますが、いかがですか。

古川国務大臣 宇宙開発委員会につきましては、その機能につきまして宇宙開発戦略本部の機能と重複があることは委員も御承知のとおりだと思います。そういった意味では、閣議決定に基づき体制を検討するに当たりましては、宇宙開発委員会のあり方を含めて検討してまいりたいというふうに思っております。

馳委員 では、宇宙開発委員会がダブりが出てくれば、将来は廃止も視野に入れている、そういうことでいいんですね。

古川国務大臣 そういうことも含めて検討してまいりたいということでございます。

馳委員 宇宙関連予算に関係して、国際的現実を踏まえれば、宇宙開発の目的は安全保障がメーンとなっていると思います。防衛省の来年度宇宙関連予算の減少が際立っておりますが、どうしてこうなったんですか。

西政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十四年度の概算要求の歳出ベースにおきましては、宇宙関連施策のための所要経費約二百九十億円を計上しておりまして、これは平成二十三年度当初予算額と比較して、約百二十四億円、二九・九%減となっております。

 他方、平成二十四年度の概算要求を契約ベースで見ました場合には、Xバンド衛星通信機能の整備運営事業などの宇宙関連施策のための所要の経費が約二千六百九億円計上してある関係で、平成二十三年度当初予算額と比較した場合、約千九百九十七億円の増額、前年度比約三二六・七%の増、このような形になっております。

 私どもにとりましては、宇宙の開発利用というものは、昨年十二月に閣議決定された防衛計画の大綱におきまして、我が国の安全保障の基本方針の一つとして、情報収集及び情報通信機能の強化の観点から、開発及び利用を推進する旨記述されておるところでございます。

 防衛省といたしましても、防衛力の効果的な運用のために、C4ISR機能を宇宙も利用して強化することが重要と位置づけておる点でございます。

 こうした観点から、防衛省・自衛隊としても、今後も宇宙利用を推進してまいる所存でございます。よろしくお願いいたします。

馳委員 ちなみに、今胸を張ってお答えになったXバンド衛星ですか、二千六百九億円、Xバンド衛星というのは、何に、どういうふうに使うんですか、ちょっと教えてください。

西政府参考人 お答えいたします。

 Xバンドは、周波数帯の性格から、大変長距離の通信に適しております。これをもちまして、私ども、例えば今遠距離で活動しております部隊、例えばハイチにおきますPKO、あるいはジブチにおきます海賊対処、こういった遠隔地において活動しております部隊に対してきちんとした連絡をとるためには、このXバンドの利用がなくてはならない。よって、新たにその衛星機能の事業等を計上させていただいておるものでございます。

 ありがとうございます。

馳委員 私のつたない知識によれば、このXバンド衛星とMPレーダーと組み合わせれば、防災のために、例えば積乱雲などの雲の動きとか、あるいは地崩れ、がけ崩れしたときなどの地形の変化とかが瞬時にというか数分以内に解読ができて、そして自治体や警察や消防などに送ることができるようになると聞いておりますが、その組み合わせのXバンド衛星ということでよろしいですね。

西政府参考人 お答えいたします。

 申しわけございません、私も、Xバンドの利用法を、そこまでのことはちょっと存じておりません。勉強させていただきたいと思っております。

 ありがとうございます。

馳委員 これは国交省、気象庁や文科省の科学技術部門と話を聞いていただければわかると思うんです。

 私が言いたかったのは、防衛省の予算としてXバンドの衛星をやっていますよということは、防衛省のためだけではなくて、その衛星を使って、MPレーダーと組み合わせれば、まさしく民生に、まさしく防災に、より有効に使うことができるという意味で整備の促進をお願いしたい、こういうことを言いたかったのであります。

 そこで、内閣府に宇宙政策の司令塔になってもらう理由の一つとして、宇宙関連予算の拡充があります。この防衛予算の減少を踏まえるならば、デュアルユース、軍民共用の考え方、つまり、宇宙開発は産業の振興と広義の安全保障の両方に資することを強調して今後は予算の獲得、拡充を図っていくべきではないかと私は思っております。いかがでしょうか。

石田副大臣 お答えいたします。

 宇宙空間の特性上、宇宙システムは民生、安全保障の両方の利用可能なものが多いことは事実であります。このような民生、安全保障の共通のシステムとして整備することにより宇宙開発利用を進めていくことが適切と考えております。

 議員立法で、委員御案内のとおり、平成二十年の八月に施行されておりまして、それにのっとってやることになっておりますが、今御発言がありましたように、この予算の獲得、拡充については努力をしてまいりたいと考えております。

馳委員 野田総理は宇宙政策が目玉だと言っている割には、来年度予算はついていないんです。野田政権における宇宙政策への意気込みを改めて古川大臣に問いたいと思いますが、いかがですか。

古川国務大臣 そこは、委員には、予算の額だけではなくて、先ほど来からここで議論している、そういう方向を決めていったりとか一つずつ前に進んでいるところもぜひ見ていただきたいと思うんですね。

 まず、総理は、前国会の所信表明の中で、宇宙空間の開発利用の戦略的な推進体制の構築を検討するというふうに申し上げて、これを踏まえて、九月三十日には「宇宙空間の開発・利用の戦略的な推進体制の構築について」を閣議決定いたしました。そういう意味で、一歩前に、ちゃんと言ったことを閣議決定して進めたということであります。

 また、宇宙基本法では宇宙の利用を重視しておりまして、宇宙開発戦略専門調査会が最優先課題として挙げた実用準天頂衛星システムにつきまして、この事業の推進の基本的な考え方、これもまた九月三十日に閣議決定をいたしました。検討したものを閣議決定をしている。

 そうした中で、来年度、準天頂衛星については、まず初年度として、四十一億円というものを計上したわけでございます。

 そういう意味では、総理は、一方で、これは大変財政が厳しい中、その制約もあるという中で、とにかく宇宙政策については、これは大事であるという認識のもと、重点化、効率化を進めながら必要な予算はきちんとつけていくんだということを考えておられると思います。

 私も、そういう認識のもと、そうした総理を支え、政府として宇宙空間の開発利用を今後、より戦略的かつ積極的に取り組んでまいりたいと思いますので、どうか御理解を賜りたいというふうに思います。

馳委員 さきの閣議決定には「「宇宙庁」的な一元化ではない形で実効的な宇宙開発利用体制を構築すること。」と、非常にわかりづらい表現で体制構築のことが書かれております。また、宇宙庁の設置は将来的な課題として先送りしておりますが、どんな課題があって先送りとしているのでしょうか。

山川政府参考人 御説明いたします。

 「「宇宙庁」的な一元化ではない形」という表現ですが、これは、各省が現在行っております業務は原則として各省に残す、その上で、内閣府に我が国宇宙政策の司令塔機能と準天頂衛星システム等の施策実施機能、これを担わせることによって実効的な宇宙開発利用体制の構築を目指すということでございます。

 それから、宇宙庁の設置は将来的な課題として先送りという御指摘でございますが、閣議決定の文言によりますと、宇宙庁につきましては、「科学技術・イノベーション政策の検討とも連携しつつ、将来的な課題として引き続き検討する。」とあります。

 この宇宙庁につきましては、例えば組織肥大化の防止等の行政改革上の要請もございますし、政府全体の行政組織のあり方とも関連いたします。ですので、まずは内閣府に我が国の司令塔機能とそれから施策実施機能を担わせることを目指したということでございます。

馳委員 JAXAの位置づけも不明確で、先送りされております。

 思うに、宇宙基本法に基づく宇宙開発利用を推進する政府全体の中核的な実施機関としてJAXAを位置づけるべきであると考えています。

 JAXAは現在、文科省と総務省の共管でありますが、内閣府が実効性ある司令塔になるため、さらには宇宙開発利用が安全保障政策にも深くかかわることからしても、内閣府によるJAXAの所管も必要ではないかと思います。大臣、いかがでしょうか。

石田副大臣 お答えいたします。

 閣議決定を踏まえまして、JAXAの主務庁につきましては、今日まで、文部科学省が監督実績と予算の大部分を支出してきたところであります。その経緯からがあるわけであります。一方、内閣府では司令塔機能をどう実行するか、今後検討していきたいというふうに考えております。

馳委員 大臣、ここでにやっと笑っちゃだめなんですよ。このJAXAの位置づけをどうするかというのは、実は、宇宙基本法を超党派で検討してきた、その成立をした後の体制整備で最も重要な問題だから、だから私はここで改めて指摘しているんですね。

 大臣のお考えをお願いします。

古川国務大臣 委員御指摘のように、JAXAをどこでどういう形で位置づけるかということは極めて重要な問題だという共通の問題認識は持っておりますので、そういう問題認識に従って、これからどこで所管するかということについては検討してまいりたいというふうに思っております。

馳委員 私は、内閣府において所管をするということ、予算の額を見ても、文科省、JAXAの予算が突出しておるわけでありますから、司令塔の役割を果たすという観点からも、JAXAは内閣府で所管することの方が自然な流れであるという私の見解を申し上げておきます。

 最後に、世界の宇宙開発利用の現状がどうなっており、我が国は産業面と安保面でどのような状況に置かれつつあるのかを考えると、宇宙開発の重要性、喫緊性がいまだ十分に国会において、また国民に伝わっていないと思われます。大臣から、改めてその決意を申していただきたいと思います。

古川国務大臣 委員御指摘のように、宇宙産業の国際市場は年々拡大しているにもかかわらず、我が国宇宙産業は、国際競争力が低いために、国内政府需要に依存をしている状況にあります。先日、トルコの通信衛星を商業受注するなど一部に明るいニュースもございますが、全体としては弱体化が進んでいるというふうに考えております。

 したがいまして、我が国の宇宙活動の自律性を確保する上で、宇宙産業基盤の維持は不可欠であります。今後は、国内政府需要と国際市場の双方から受注することで基盤の維持を図ることが重要であるというふうに考えております。

 先日、私、タイの科学技術担当大臣ともお目にかかりました。タイの方でも、今新たな衛星の打ち上げを考えている。日本としても、ぜひそういうものに協力をしていきたい。そのときに、大臣の方から、衛星そのものではなくて、その後のメンテナンスも含めたオペレーションなど、やはりパッケージでそうしたものがどういう国であればサポートできるのか、そんなことも考えているんだというお話もございました。

 実は、新成長戦略の中で、パッケージ型インフラ輸出を進めていこうということで、ただ単につくるだけではなくて、その後のメンテやオペレーション、そういうものも全部パッケージで、日本はやはり新幹線システムに象徴されますように、ただ新幹線で車体とかの技術がいいだけじゃなくて、そういう全体のオペレーションやメンテナンス、トータルでそこは非常に私は世界に冠たる、そういうすぐれたものを持っていると思います。そういったものをセットで、ワンパッケージで海外に出していこうということを考えているわけでございまして、それを促進するための閣僚会合というのも開いております。

 その場で、先日も私は、この宇宙開発、特に衛星などについても、これはパッケージ型インフラ輸出の一つの項目として位置づけて、やはり官民挙げて、国内だけでなくて国際的にもこれを売り込んでいく、そういう努力をしていこうということを発言させていただきました。ぜひ、そういった意味では、これは国内だけじゃなくて、国際市場からも受注できるように努力をしてまいりたいと思っております。

 また、宇宙の安全保障におきます利用は重要でありますので、各国とも実情に応じて取り組んでいるというふうに理解をしております。

 我が国は、宇宙基本法が成立するまでは宇宙利用を平和目的に限定しておりましたが、現在は、日本国憲法の平和主義の理念にのっとり、宇宙を安全保障のために利用可能となっております。今後は、宇宙基本計画等を踏まえ取り組んでいくことが重要であるというふうに考えております。

 さらに、宇宙空間は、人類のフロンティアでありますとともに、広範な地域へのサービスの提供、国内外を問わない領域へのアクセス、地球規模、宇宙の事象の把握などの特性を有していますことから、民生、安全保障、両分野における宇宙空間の利用の重要性は今後さらに大きくなっていくという認識に立って、両分野における宇宙空間の利用の推進と宇宙空間の利用を自律的に行う能力の保持を有機的に連携させながら、総合的に進めていくことが重要であるというふうに考えておりまして、これは野田総理も、宇宙、海洋はまさに日本にとってのフロンティアだというふうに位置づけております。

 ぜひ、そういった意味では、馳委員を初めとする委員の皆様方の御協力もいただきながら、宇宙開発を強力に推進してまいりたいと思いますので、どうか御協力をよろしくお願い申し上げます。

馳委員 このパッケージ型インフラの輸出というのは、鉄道もそうでしょうし、こういった宇宙戦略における衛星システムも一つ入ると思います。

 また、原発の安全運転管理というものも入るんですが、今般の震災でちょっと見直しでおりますけれども、私は、安全管理、安全運転という点においては、原発も、フランスと並んで世界最高レベルの技術はあるけれども、しかしそれは、どのようにシステムを運営していくかということが今国内において問われておりますので、これはまさしく政治課題として取り組んでいきたいと思います。

 もう一点は、やはり、パッケージ型のインフラ輸出は、水、水資源にしてもそうですよね。我が国の淡水化技術と、特に自治体の企業局の技術は本当にすぐれたものがございます。ぜひ、こういったものをまとめて推進していくような国家戦略担当大臣としてのお働きを期待いたしますし、これは何も足を引っ張るような話ではなく、やはり我が国として進めていかなければいけない問題と思います。

 最後に、宇宙戦略は、産業政策、防衛政策、そして平和政策、そして防災政策、すべてがやはり緊密に連携しておりますので、だからJAXAは内閣府でしっかり所管できるように、ここは、古川大臣、もうちょっと強く言ってもいいところなんですよ。改めて、そのリーダーシップを発揮していただくことを期待申し上げまして、私の質問を終わります。

 以上です。

松宮委員長 次に、川内博史君。

川内委員 おはようございます。川内でございます。

 ことし一月二十四日に本委員会が発足をいたしました。公明党の遠藤先生やらの大変な御努力でこの委員会が発足をしたわけでありますけれども、初代の委員長を務めさせていただきました。きょうは、松宮委員長以下理事の先生方のお許しをいただきまして、発言をさせていただく機会をいただいたことにまず心から感謝を申し上げたいというふうに思います。

 きょうは、原子力行政、昨日明らかになった黒塗り手順書の問題等について取り上げさせていただきたいというふうに思いますけれども、原子力行政というのは、原子力基本法、あるいは原子力政策大綱に、研究、開発及び利用の推進は安全が大前提であるというふうに書いてございます。その大前提である安全というものが、福島の東京電力第一原子力発電所の事故によって、その前提が揺らいでいるというのが現在の状況である。

 さらに、原子力行政という場合に、私どもは原子力発電というものを、脱原発とか脱原発依存とか、あるいはしばらくは運転せざるを得ないのだとか、原子力発電に主に注目して議論をするわけでございますけれども、しかし、原子力行政という場合には、高速増殖炉とかあるいは核燃料サイクルとか、その燃料、使用済み燃料をどう処分していくのかということを含めてきちんと技術開発ができたときに、初めて原子力行政が完結をするわけでございます。

 そこで、まず本日は、高速増殖炉並びに核燃料サイクルについて若干触れさせていただきたいというふうに思います。

 文科省に来ていただいております。

 高速増殖炉「もんじゅ」の総事業費、今までかけた事業費は幾らか。そして、今まで「もんじゅ」はどのくらい発電をしたのか。そして、その発電によって幾ら収入があったのか。この三点について、数字をお答えいただきたいと思います。

加藤政府参考人 御説明いたします。

 御指摘ございました「もんじゅ」につきましては、昭和五十五年から平成二十三年度までにつきましての「もんじゅ」にかかりました総事業費は合計で九千四百八十一億円になってございます。

 また、「もんじゅ」につきましては、過去に発電をしてございまして、その発電の実績につきましては一億二百三十二万五千キロワット時でございます。

 それに伴いまして、売電、電気を売ったことによる収入がございまして、それにつきましては、平成七年の八月から十二月において約六・一億円、六億一千万円の収入がございました。

 以上でございます。

川内委員 九千四百八十一億円をかけて六・一億円の収入であったということでございます。

 次に、原子力委員会に来ていただいておりますが、核燃料サイクルのこれまでの総事業費が幾らかということを教えていただきたいと思います。

泉政府参考人 核燃料サイクル関係の予算の過去の総事業費というお尋ねでございますけれども、核燃料サイクル関連の予算ということで集計ができてございます平成十年度以降二十二年度までの十三年間の累計額で申し上げますと、約八千百十八億円ということになってございます。

川内委員 この核燃料サイクルもうまくいっているとは思えないわけでございますけれども、平成十年以降、その前の数字は集計できないということのようでございますけれども、平成十年度以降これまで八千百十八億円かかっている。

 政府としては、毎年総務省が行政評価局で一つ一つの政策について政策評価をまとめているわけでございますけれども、総務省にも来ていただいておりますが、この「もんじゅ」と核燃料サイクルの政策評価はどのようなものであったのかということを教えていただきたいと思います。

新井政府参考人 お答えいたします。

 平成二十二年八月三十一日付で公表されました平成二十一年度の実績に係る文部科学省の実績評価書におきましては、高速増殖炉サイクル技術の進捗状況及び高速増殖原型炉「もんじゅ」の進捗状況につきまして、いずれもA、すなわちおおむね順調に進捗しているとの評価がなされているところでございます。

川内委員 「もんじゅ」は、先ほど申し上げたとおり、九千四百八十一億円かけて、売電収入は六億円です。核燃料サイクルは、八千百十八億円をかけて、いまだにうまくいっていません。しかし、その政策評価は、おおむね順調に進捗している、Aだ、私に言わせればエーだと思うんですけれども。

 何というんでしょう、きょうは、原子力政策担当でもあり、あるいは行政刷新の担当でもある中塚副大臣にお運びをいただいておりますが、「もんじゅ」と核燃料サイクルの政策評価がAであると。これは順調に事業が進捗しているというこの評価について、副大臣として、まずどのように評価をされるのかということ。

 さらに、新聞等では、核燃サイクルや高速増殖炉について、仕分けの対象にするのではないかとする記事なども出ているようでございますけれども、私は、当然に、ここでしっかりとこの核燃サイクルや高速増殖炉について分析をする、来し方を振り返る、そして行く末をどうするのかを考えるということをしていかなければ、このまま、順調に進捗しています、Aですということで来年度予算もそのままつけますわということにはならぬのではないかというふうに思いますが、中塚副大臣に御答弁をいただきたいと思います。

中塚副大臣 川内委員にお答えをいたします。

 今お話がございましたとおり、私、内閣府で原子力委員会を担当していると同時に、行政刷新も担当をいたしております。

 それで、まず、行政刷新についてのお話からさせていただきたいのでありますが、先般、十月二十日に総理官邸におきまして行政刷新会議を開催いたしました。行政刷新会議は、十一月下旬に提言型政策仕分けということを実施するということを決めさせていただいております。

 今、まだ仕分けの対象というのは現時点では決まってはおらないわけですけれども、関係省庁からヒアリング等を踏まえて、また行政刷新会議での議論も踏まえて決めていきたい、そう考えています。

 一方、行政刷新会議の中に独立行政法人改革分科会というものを設け、有識者の先生方に委員になっていただいて、ただいま議論をしているところであります。

 ここ二回ほど、私も時間があるときはその分科会に出席をして、議論を聞き、また参加をしているわけなのでありますが、ちょうど研究開発独法について取り上げております。今、川内先生がお話しになられたような評価の問題、そして費用対効果の問題、これについては厳しく見ていくべきだという有識者の委員の先生の御意見もございます。

 いずれにいたしましても、今の先生の御指摘、問題意識を踏まえ、今後しっかりとまた行政刷新会議において取り扱っていきたい、そう考えております。

川内委員 確認しますけれども、私の指摘を踏まえて行政刷新会議で取り扱うということでいいんですか。

中塚副大臣 独立行政法人の改革の分科会において研究開発独法というものはもう既にテーマに上がっておるわけであります。そのことに加えて、先生の問題意識というものを踏まえ、取り組んでいきたい、そのように考えております。

川内委員 では次に、昨日一部が公開をされましたいわゆる黒塗り手順書について伺います。

 この件については、松宮委員長以下理事の先生方に大変な御努力をいただいておったわけでございまして、深く敬意を表し、感謝を申し上げたいというふうに思います。

 まず、昨日の資料公開の別添四、原子力安全・保安院による保安調査結果についてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 この保安調査結果なるものは、現場の福島第一原子力発電所の運転員あるいは操作員にヒアリングを行って作成されたものかということを教えていただきたいと思います。

黒木政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の東京電力福島第一原子力発電所の事故にかかる保安調査結果、九月十六日のものでございますが、これは、原子力安全・保安院が、同発電所の事故発生時における対応状況について実態を把握するために、平成二十三年八月、ことしの八月に発電所の関係者等にヒアリングを行い、その結果を取りまとめたものでございます。

 このヒアリングは、当該発電所の所長等の発電所及び東京電力本店の管理職を対象として行っておりまして、御指摘のございます非常用復水器の操作を行った運転員への直接のヒアリングは行っていないという状況でございます。

川内委員 いろいろな事故の原因を究明するに当たって、直接の操作あるいは運転をした方に話を聞く、ヒアリングをするというのは大前提ではないかというふうに思いますが、なぜ運転員の方に対してヒアリングを行っていないのか。

 これは責任追及では決してないです。このような大事故について、だれかの責任を追及するとか、だれが悪いとか、こいつが悪いとかそんなことを言っている、あるいはしようとしているわけでは決してない。

 事故の原因というものをしっかりと究明していく上では、直接の運転員の方にヒアリングをするというのは最も大切なことであるというふうに思いますが、なぜ聞かれていないのか、聞いていないのかということについて、その理由を御説明いただけますか。

黒木政府参考人 お答えいたします。

 今回の保安調査におきましては、東京電力福島第一原子力発電所の運転管理を担当する部門の管理職にもヒアリングを行っておりまして、当該管理職が部下の運転員から聴取した内容も含め、原子力安全・保安院に対して説明をしているということでございます。したがいまして、今回の調査によりまして、事故発生時における対応状況については一定の把握はできたというふうに考えているところでございます。

 しかしながら、保安院といたしましては、昨日になりますが、十月二十四日から、東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見に関する意見聴取会という、新しい技術的知見に関する意見聴取会を立ち上げたところでございます。

 この意見聴取会におきまして、当該事故を踏まえた技術的課題を整理し、これまでの対策の見直しの方向を検討していく考えでございますので、こうした中で、東京電力に対して必要な情報を提供するよう求めてまいりたい、そういうふうに考えているところでございます。

川内委員 東京電力に対して必要な情報の提供を求めていく、あるいは運転管理をされた方に話を聞いたのだということでございますけれども、そうすると、政府としては、東京電力の報告を信じるのですと。東京電力がおっしゃっていることを、ああ、そうですね、ああ、そうだったんですかということでそのまま受け取りますということにつながるわけでございます。

 もちろん、相手を信頼する、信用するということは大切なことだというふうに思いますが、他方で、聞いたことが本当に真実であるか否かということについては、きちんとそのエビデンスを確定させていくということも一方で大変重要なことであるというふうに思うんですね。

 私がなぜこのようなことを申し上げるかというと、昨日明らかになった手順書では、非常用復水器について手順書六の操作を行ったということになっております。

 それをとめたのは、最初は温度管理のためだったんだというふうにおっしゃっていらっしゃるわけですけれども、温度管理が手順書に書かれているのは手順書十二番の項目であって、手順書六番の項目には温度管理のことは書いていない、圧力を調整するのだということが手順書六の項目に書いてあるわけでございまして、そういう最初東京電力からお聞きしていたことと昨日明らかになったこととのそご、温度管理と圧力の管理、調整というものが同じことなのか否か。

 東京電力から言わせれば、それは似たようなものですわということになるのかもしれませんが、しかし、その後、非常用復水器を手動で何回かスイッチを入れたり切ったりしましたという報告。しかし、一方では、SRVという蒸気を逃がす弁を手動で切ったり入れたりしたのではないかという指摘もあるわけでございまして、実際に手順書六には、非常用復水器を使うか、もしくはSRVを使うか、どっちかでやってくださいねということが書いてあるわけでございます。

 その辺について、非常用復水器を手動でスイッチを入れたり切ったりしたのか、SRVのスイッチを手動で入れたり切ったりしたのかということについて、実は東京電力からの聞き取りでは、非常用復水器のスイッチを入れたり切ったりしているのではないかという報告は受けているが、そこの事実は確定していないという理解でいいですよね。

黒木政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘のように、ヒアリングの調査の結果だけ、これで判断をするということでは片手落ちであるというふうに私どもも思っておりまして、具体的に、我々が入手したプラントパラメーターのデータ、これとの比較などもして、客観的な事実と比較して合理的な説明になっているのかなどを確認しながら、私ども、調査を進めていきたいというふうに考えているところでございます。

 現時点におきましては、御指摘のように、非常用復水器については、とめたり入れたりしたという指摘に対しまして、プラントパラメーター、提出していただいたものについては、圧力等が上下しているものが提出されているわけでございます。

 私ども、これが本当に合理的なものかどうかについては、独立行政法人原子力安全基盤機構などの法人がございますので、そういうところでクロスチェックの計算をしていただいたりとか、それから、先ほど申し上げました意見聴取会を開催しておりますので、この意見聴取会において専門家の貴見を聞きながら、不合理な点がないのか等々確認してまいりたいというふうに考えている次第でございます。

川内委員 まさしく非常に重要なところで、東京電力のメルトダウンに向かう解析データによると、一号機の非常用復水器の自動起動によって原子炉圧力容器内の圧力というのは五十五気圧ぐらいまで一挙に下がるでしょうという解析になっています。

 しかし、実際には、実際の現場で起きた非常用復水器の起動によって原子炉圧力容器内の圧力は四十六気圧ぐらいまで落ちているわけで、その差が九気圧ある。実際の計算よりも、物理ですから本来は計算どおりになるはずなんですけれども、それよりも九気圧分、圧力効果が大きいわけですね。

 この差について、今、どういうことなのか合理的説明を求めていかなければならないという趣旨の御答弁であったというふうに思いますが、この東電のメルトダウンに向かう解析と実際の圧力容器内の圧力の差については、現在のところ、まだ保安院としては、その理由についてはっきりとこうであるということを説明できる状況ではないということでいいですよね。

黒木政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のように、実測値の方がより低い気圧まで下がっていたということでございます。

 この点につきましては、この解析結果と実測値の違いについては、解析にかかわる入力値やプログラムに含まれる不確かさなどが影響していることも考えられるわけでございますが、具体的にはどのような要因かということは、御指摘のように、現時点で私ども把握してございません。

 先ほど申し上げましたように、原子力安全基盤機構、JNESにおいて、このときの事故時の挙動解析を行うことも含めまして、また、先ほど申し上げた意見聴取会の専門家の助言を得ながら、私ども、いろいろチェック、検証を進めていきたいと考えております。

川内委員 そういう意味でも、現場の実際に運転操作をした方にしっかり話を聞くということはどうしてもしていただかなければならないことであるというふうに私は思います。

 そこで、専門家を集めた会合もおつくりになられたということでございますので、衆議院の科学技術・イノベーション推進特別委員会で川内という委員が、現場の運転員にも話をちゃんと聞いて事故原因の究明に努めるべきであるという発言をしたということを、その新しくできた会合の委員の先生方に事務局としてお伝えいただきたいというふうに思いますが、どうですか。

黒木政府参考人 お答えいたします。

 議員から今お話のあったことにつきましては、委員の先生方に御連絡し、お伝えするようにいたします。

川内委員 次に、古川大臣に伺います。

 古川大臣はエネルギー・環境会議の議長でいらっしゃいます。前任の玄葉大臣は、仮に来年春にすべての原発が停止した場合でも来年夏に電力不足も料金値上げも起こさせないことが政府の方針であると言明されて、古川大臣にも申し送りをされたということでございますが、古川大臣、この点について、そのとおりでよい、電力不足も料金値上げも起こさせない、全部とまってもそうなんだということを御確認させていただきたいというふうに思います。

古川国務大臣 私の前任の玄葉大臣のもと、七月二十九日、エネルギー・環境会議で、当面のエネルギー需給安定策におきまして、基本的な対処方針として、「原子力発電所の停止が広範に生じた場合でもピーク時の電力不足とコスト上昇を最小化する」というふうに宣言をいたしております。

 今委員から御指摘があった玄葉大臣の御発言はこの方針に基づいたものでございまして、私も同様の認識を持っております。

川内委員 脱原発依存社会を目指す、あるいは原発依存度を低減させていくというのが野田内閣の方針であるというふうに私は理解をしておりますが、そうなれば、原子力発電というものをベースロード電源というふうに今までのように位置づけることは難しくなるわけでございまして、原発にかわるベースロード電源を見つけなければならない。

 私は、天然ガスコンバインドサイクル発電というのがベースロード電源としてはふさわしいのではないかと考えております。

 同僚議員とともに、東京電力の川崎発電所の最新型で熱効率六一%のLNG・MACC、モアアドバンスト・コンバインドサイクルを見学してまいったわけでございます。

 資源エネルギー庁に伺いますが、この最新型の天然ガスコンバインドサイクル発電こそ、CO2の排出量も少ない、熱効率も非常に高い、そして設置費用も安いということで、ベースロード電源たり得る有望な電源ではないかというふうに思いますが、資源エネルギー庁の御見解を聞かせていただきたいと思いますが、もう時間も余りないので手短にお願いします。そうだと言っていただければ。

糟谷政府参考人 委員御指摘のように、天然ガスのコンバインドサイクル発電は、CO2の排出量が非常に少なく、二十一年度においても発電電力量の約三割を占める重要な電源であるというふうに考えております。

 今後の電源構成のあり方につきましては、総合資源エネルギー調査会で議論を深めまして、来年夏ごろまでに新たなエネルギー基本計画を策定してまいりたいと考えております。

 また、政府エネルギー・環境会議におきましても、革新的エネルギー・環境戦略を取りまとめることになっておりますが、そこにしっかりと反映させてまいりたいと考えております。

川内委員 時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。

松宮委員長 次に、大泉ひろこ君。

大泉委員 おはようございます。民主党、大泉ひろこでございます。発言の機会、大変ありがとうございます。

 古川大臣、まずは、御就任大変おめでとうございます。ことしは、大臣、地震に津波、台風、原発事故とたくさんの災害がございましたけれども、災害の根本的な解決には科学技術というものが大きく貢献するんじゃないかと私は思います。その科学技術政策をリードする役割を担っていらっしゃること、このことをまずはお喜び申し上げたいというふうに思います。

 このことは私自身の認識なんですけれども、二十世紀というのは、先進国が競って福祉国家たらんとした。二十一世紀はどうかというと、イノベーション国家を先進国は目指しているのではないかなというふうに思います。日本はその先頭集団の中にあると私は考えます。日本がぶっちぎりで先頭を行くには、これは古川大臣の双肩にかかっていると私は思っているところでございます。

 そこで、昨日、大臣は、科学技術・イノベーション政策につきまして、国家戦略の観点というお言葉を使われました。国家戦略ですね。

 民主党政権におきましては、政策集インデックス二〇〇九、あるいは昨年二〇一〇年六月の閣議決定で、現在の総合科学技術会議を改組して、内閣総理大臣のもとに科学技術戦略本部、あるいは科学・技術・イノベーション戦略本部という本部組織を設置すると決めてございます。さらに、本年、二〇一一年七月に、震災後でございますけれども、民主党科学技術イノベーション推進調査会がやはり、科学技術イノベーション戦略本部を設置するように提言が行われております。

 今さら言うまでもございませんけれども、この本部というのは、科学技術・イノベーション政策を立案したり、あるいは科学資源の確保と配分を一元的に行うという司令塔の意味でございます。

 そこで、古川大臣は、国家戦略としての科学政策を進めるに当たって、今まで言われてきているこの本部組織の設置を制度化する予定でございましょうか。まずは、そこから伺いたいと思います。

古川国務大臣 まずは、大泉委員におかれましては、科学技術・イノベーション政策に大変御理解をいただき、またお励ましをいただきました。私も、自分の仰せつかっております職責の重大さというものをしっかり認識して、科学技術・イノベーション政策を強力に進めてまいりたいということをまず申し上げたいと思います。

 その上で、この科学技術・イノベーション政策の、民主党のインデックス二〇〇九で書いたもの、あるいは昨年六月に閣議決定された新成長戦略での科学・技術・イノベーション戦略本部といった司令塔機能の強化等につきましてでございますが、これは、我が国の今後の成長を支えるために重要な課題というふうに一貫して我々が野党時代から認識をして、私も鳩山政権では科学技術政策担当の副大臣として、どういうふうにやっていくのかという内々議論をして、それを踏まえて、昨年の新成長戦略の中にまとめたわけでございます。

 そしてまた、私もことしの一月、党に戻りまして、党の中の調査会の事務局長をさせていただいて、先ほど委員からも御指摘があった報告書をまとめさせていただきました。

 そうしたものに基づいて、今、私のもとで有識者から構成される研究会を設置いたしまして、公開の場で科学技術・イノベーション行政体制のあり方や政府内における科学技術助言体制の具体的な内容について、今まで政府あるいは党で議論してきた、そしてまとめたものをたたき台にして、それをちゃんと外の皆さんにも見ていただいて、議論もしていただいて、そして具体的に提案をいただくことにいたしております。

 私自身も、ことし十月にイギリスのベディントン主席科学顧問にお目にかかったり、またアメリカ・ワシントンに行きましてホルドレン科学技術担当大統領補佐官とも意見交換をいたしまして、政府におきます科学的助言のあり方について意見交換も行ったところでございます。

 そういった意味では、今まさに、戦略本部の設置に向けて準備を一つ一つ進めておりまして、今度設置をいたします研究会のもとで出てくる提言等も踏まえて、新たな科学技術・イノベーション推進体制に関する法案の作成、そして次期通常国会への提出も含め、必要な政策を前進させてまいりたいと思いますので、ぜひ御協力いただきますようによろしくお願いを申し上げます。

大泉委員 この件は、政権交代から党内でもずっと検討を続けてまいりましたし、いつ本部組織ができるのか、法案が出るのかというのを待って待って待ち続けたという経緯がございます。したがいまして、もうこれ以上待たせないでいただきたいということを大臣に申し上げたいというふうに思います。

 今、委員会で検討中ということでございますけれども、若干その中身について伺いたいんです。

 本部組織でカバーする対象ですけれども、先ほど宇宙庁の話なんかも馳委員の御質問の中に出ておりましたが、宇宙、海洋、IT、知財、原子力、この分野全部を対象とするのかどうかをまず教えていただけますでしょうか。

古川国務大臣 今、委員から御指摘がございました宇宙、海洋、原子力、そのほかにもITとか知財、すべて科学技術・イノベーションと密接に関連するものでございます。したがいまして、科学技術・イノベーション政策を検討する際には、これらのすべてを視野に入れて検討することが必要だというふうに考えております。

 同時に、例えば宇宙とか海洋、IT、知財、原子力等なんですが、それぞれ今までの法律に基づいて、そのための戦略本部があったりとかそういうこともあります。そういった意味では、これまでの法律に基づいた今の推進体制、そうしたものも踏まえながら、今度目指そうとしている司令塔としての科学技術・イノベーション推進体制はどうあるべきか、そうしたことを考えてまいりたいというふうに思っております。

大泉委員 私の希望としましては、大きなイノベーションをやっていく上では科学行政の一元化というのが必要だというふうに思いますので、それぞれ個別の議論にならないようにお願いを申し上げたいというふうに思います。

 この本部組織でございますけれども、もう一つ、科学の予算の配分権を持たせるかどうかということをお聞きしたいと思います。

 財務省御出身の大臣でございますけれども、従来、財務省が各省から出てきたものを査定するという方式でずっと科学予算についてもやってきたわけでございます。本部組織ができたら、ここに配分権を持たせる。そうしますと、例えば今進めているグリーンイノベーションですけれども、各省にわたる大プロジェクトも予算化されやすいというふうに思うんですけれども、いかがでございましょうか。

古川国務大臣 今の現在の形の中でも、科学技術関係予算につきましては、それこそS、A、B、Cというふうにつけたりとか、ことしは、来年度予算につきましてはアクションプランというのをつくったりして、重点化、今もちょっとお話ありましたが、ライフイノベーションとかグリーンイノベーション、昨年の新成長戦略で促進をしよう、加速をしよう、そういった部分に重点的に予算をつけていくんだと。ですから、そういった意味では、今の科学技術会議においてもそういう形の方向づけというものはいたしております。

 ただ、同時に、そうはいっても、まだまだ科学技術関係予算の配分についてはめり張りがきいた配分ができていないという指摘があるのも、これも事実でございまして、どういう形で、新しく我々が考えております科学技術・イノベーション推進組織が科学技術関係予算について関与していくかというのは、これは、委員御指摘のとおり重要な課題であるというふうに思っています。

 したがいまして、この辺については、予算配分権の有無にかかわらず、新しい組織では、財政当局を初め関係部局と密接に連携して、特に複数府省にまたがるような研究開発プロジェクトでは、重複を排除しながら、一方で、それぞれの府省や研究開発機関のポテンシャルを十分に活用できるような予算を実現できるよう、そういった意味では、新しい組織のあり方を検討してまいりたいというふうに思っております。

大泉委員 私も役人の出身でございますけれども、ばらばらに分かれていると、頭で幾ら考えても、自分の部署を守るという性癖があるんじゃないかと思うので、やはり本部組織で一元化して予算の配分権を持つべきと思いますし、本部組織にする最大のメリットというのは予算の配分権を持たせることだと私自身は思っておりますので、なお検討していただきたいと思います。

 それと、大臣は国家戦略室の御担当もなさっていると思います。これまた長い間待たされておりますけれども、国家戦略局にいつなるのかということをお聞きしたいと思います。

 重ねてで恐縮でございますが、国家戦略局ができるといたしますと、科学の国家戦略である本部と国家戦略局と二つの司令塔ができてしまうと思うんですけれども、科学政策については、国家戦略局と科学戦略本部のどちらが主導権を握ることになるのか、教えていただけますでしょうか。

古川国務大臣 国家戦略室につきましては、私自身が最初の国家戦略室長として部屋をつくるところからやらせていただきまして、一日も早くこれを局に格上げしたいということで、政治主導確保法という法案も出して審議をお願いしておったわけでございますけれども、残念ながら、今般の震災対応に伴いまして、国家戦略局の設置等を内容とする政治主導法案は今取り下げた状況にはございます。

 しかし、今後とも、国家戦略室の機能を十分に発揮して、政治主導によります課題解決に取り組んでいく上では、やはり国家戦略局への格上げというものもぜひ実現していきたいと思っていますし、また今度、国家戦略会議というものも閣議決定で設置をすることにいたしました。そういった意味では、この国家戦略会議の法制化も含め、もう一度、国家戦略局、室の局への格上げ含めた政治主導確保法の国会への再提出ということもぜひ努力をしていきたいと思っております。

 そのためには、与党の皆さんの協力はもちろんでございますが、先ほど来からの議論の中でもありましたが、政治主導の行政を進めていくためには、その司令塔的な機能というのはどの党が政権を担っても必要なわけでございますから、そういった意味では、そういう体制の設置に野党の皆さんにも御協力をお願いしていきたいというふうに思っています。

 その上で、では国家戦略局と科学技術イノベーション戦略本部ができた場合どうするのかというところでございますが、科学技術・イノベーションの場合、委員も御承知だと思いますけれども、非常に技術的な専門的なところもございます。

 国家戦略局が余り巨大な組織になってしまいますと、これはかえって、なかなか機能的にうまく回らないというのは、委員も大きな役所にいらっしゃったからおわかりになると思いますが、国家戦略局は、ある意味で国の重要な課題について大きな方向性を示していく。科学技術・イノベーションの推進の司令塔は、特にこの科学技術・イノベーション、専門的な知見も必要だとする、そうした方々にも方向性を決めていただいて、国家戦略会議やそれを運営していく国家戦略、今では室、格上げできれば局になりますけれども、そういうところもしっかり連携する形で進めていきたい。

 ですから、まずはやはり専門的な分野のところ、科学技術・イノベーション推進の戦略本部で議論していただきますけれども、そうしたものと、あと国家戦略会議、そして国家戦略局、しっかり連携をとって、最終的には、国家として国家戦略で推進していかなきゃいけないこと、そうしたことについては強力に政府として推進していけるような、そういううまく連携体制をとれる体制のあり方というものを今後考えてまいりたいというふうに思っております。

大泉委員 御答弁はわかりましたけれども、大臣も言われましたが、科学技術は専門性もあるということでございますので、科学技術についてはやはり特化した本部の方で優先的にやっていただく方が、そのための本部組織じゃないかなというふうに私は意見を述べさせていただきたいと思います。

 次に、第四期の科学技術基本計画について移りたいと思いますけれども、第四期の科学技術基本計画、昨年の十二月に策定されましたときに、GDP、国内総生産の一%を政府研究開発経費に充てるという数値目標が示されたわけでございます。

 ただし、その時点では一%に至らなかったということでございますが、今後、この一%をどう実現させていくかということを伺いたいのと、あわせて、GDP一%に含まれる科学技術の内容、これを教えていただけますでしょうか。

泉政府参考人 お答え申し上げます。

 第四期の科学技術基本計画におきましては、政府の研究開発投資の拡充ということに関しまして、第四期の科学技術基本計画で掲げる政策を着実に実行して、科学技術先進国としての地位を保持するとともに、各国との協調、協力のもとに、地球規模の問題解決などの科学技術・イノベーションで世界に貢献していくために、これらを支える研究開発投資の目標を明確に設定した上で投資を拡充していくことが不可欠である、こういう考え方のもとに、御指摘にありました、政府の研究開発投資をGDP比の一%にすることを目指すこととするというふうにされておるところでございます。

 これにつきましては、先ほど古川大臣の方から答弁をいただきました科学技術重要施策アクションプラン、これは、もう少し詳しくねらい等を申し上げますと、各省の科学技術予算の概算要求の前に、我が国にとって重要な、科学技術政策によって解決していかなければいけないような重要な課題を総合科学技術会議が提示しまして、その解決に向けて、各省の概算要求の段階で予算の重点化を図っていただく、そういう取り組みでございます。

 こういったものを通じて、予算編成の過程の中で必要な資源を確保いたしまして、第四期の科学技術基本計画が掲げる諸政策の推進、取り組みを図っていきたいということでございます。

 御質問の二点目でございますけれども、政府研究開発投資の目標であるGDP一%に含まれる科学技術の内容ということですけれども、これは、今申し上げましたように、まさに第四期科学技術基本計画を推進するために必要な予算、政府の投資ということでございます。

 具体的にはまず、震災からの復興再生に向けて、科学技術でどういう貢献、どういう研究開発等が必要であるか、重要であるかといったような内容、それから、グリーンイノベーションあるいはライフイノベーションというような言葉で示されておりますエネルギー・環境分野でございますとか、健康・医療分野の重要課題に向けた研究開発等、さらに基礎研究あるいは人材育成の強化といった政策、こういったものに要する投資ということでGDP比一%の内容ということでございます。

大泉委員 御説明ありがとうございました。

 GDP、国内総生産というのは毎年変化していくので、分母が変化するということでございますけれども、どちらにしても、一%という数字は、アメリカなんかに比べても決して高い数字ではないと思うんですね。冒頭に申し上げましたように、イノベーション国家としてぶっちぎりで先頭を行くためには、このパーセンテージを高めていく、一番を目指す勢いを持っていただきたいと希望したいと思います。

 それと、この第四期に関連しまして、イノベーションを推進するに当たって道具となるというんでしょうか、研究と産業を結びつける必要があるというふうに思うんですが、経産省で研究と産業を結びつけるクラスターの推進を行ってこられました。

 海外に目を向けると、フィンランドの携帯電話のノキアというのも、フィンランドのオウル市というところの成功した産業クラスターから生まれたというふうに聞いております。

 では、日本のクラスターの現状はどうなっているか、教えていただけますか。

内山政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の産業クラスターにつきましては、経済産業省は、産学官連携の広域的ネットワーク形成、そして地域イノベーションを促進することによりまして、新事業の創出を図るため、二〇〇一年度から産業クラスター計画を実施してまいりました。全国では約一万二百社の企業、約二百九十の大学などが産業クラスター関連事業に参加をしまして、大学等の研究成果の事業化など、これまでに七万件以上の新事業が開始されており、地域経済の活性化に貢献してきたものと評価をしております。

 例えば、九州地域の環境・リサイクル産業分野では、産学官連携によりまして事業化支援、販路開拓支援、これに加えまして、アジア展開支援によりまして新たな成長産業の育成を目指しております。

 また、北海道のバイオ産業分野でも、食・健康クラスターとして、フランスのフードクラスターとのビジネス交流を促進し、機能性食品の技術交流、販路開拓に取り組み、北海道地域の強みである食を通じた産業の育成を進めております。

大泉委員 ありがとうございました。

 イノベーションを進めるのに、クラスター方式というのは非常に大きな道具であると思いますので、今後とも推進していただくようにお願い申し上げたいというふうに思います。

 引き続き、第四期科学技術基本計画でございますけれども、十二月に策定されて、震災後、八月に見直しをされておりますけれども、この見直しのポイントについて簡単に教えていただけますか。

泉政府参考人 昨年の十二月に第四期の基本計画に当たる総合科学技術会議の答申が出たわけですけれども、その後、閣議決定をしようとしている間にまさに東日本大震災が発生いたしまして、これの影響というものを踏まえて、科学技術政策はどうあるべきかということを再検討ということで、八月まで検討を行ったわけでございます。

 そのポイントは、まさに東日本大震災が我が国の経済社会に与えた影響等を勘案しまして、まず、科学技術政策の大きな目標、柱として、震災からの復興再生を図って、それで次の成長につなげていくということを大きな柱にして掲げたということで、それに向かっての科学技術の諸施策を盛り込んだということが大きな一つの柱でございます。

 あわせまして、震災の結果、原子力発電所の事故があったわけで、エネルギー技術あるいはエネルギー政策をめぐる状況が変わってくるという状況の中で、新しい再生可能エネルギーあるいは分散型エネルギー技術の研究開発の促進、こういったことを、この見直しを通じて新たに強化して盛り込んでおるところでございます。

 あわせて、震災で、科学技術の可能性と潜在的なリスクあるいはマネジメント等について、国民の理解と信頼と支持をいかに得ていくかということが非常に大きな課題になったということの認識を踏まえて、科学技術のリスクコミュニケーション等についても新たに盛り込んだところでございますし、もちろん、生活の安全性と利便の向上を図るということで、自然災害、大災害に対する安全確保のための科学技術の研究開発、こういったものもより強く盛り込んだということでございます。

大泉委員 今の御答弁の最後のところでございますけれども、見直しの中で指摘されている科学技術の信頼性の回復ですね。

 信頼性は回復できますでしょうか。そして、今回の反省点は何か、手短に教えていただけますか。

泉政府参考人 やや繰り返しになりますけれども、まさに、この大震災とそれから原発の事故によりまして、我が国のリスクマネジメントあるいは危機管理に不備があったことが明らかになって、そういう意味で、科学技術の可能性と潜在的なリスクあるいはマネジメントについての国民の理解と支持をしっかり得ていく、そのために双方向のコミュニケーションをしっかりとっていく必要があるということが、今回の大きな科学技術政策からの反省ということで、基本計画の基本認識にも示されているところでございます。

 こういったことを踏まえて、先ほど申し上げましたように、科学技術の現状あるいはその可能性、条件、潜在的なリスク、コストといったものについて、正確な情報を迅速かつ十分に国民に提供していくような取り組みを強化する。つまり、多層的で双方向のリスクコミュニケーションの活動を促進するというようなことを取り組みとして新たに盛り込んでございまして、こういった取り組みを通じて信頼を引き続き得ていくように努めてまいりたいというふうに考えております。

大泉委員 ありがとうございました。

 見直しの中でもう一つ、エネルギー対策についても言及されましたけれども、今、学界から大きな提言がいろいろされております。例えば、宇宙太陽光発電とか深海エネルギーとか、あるいは省エネルギー技術、非常に初期投資の大きいものでございますけれども、こうしたダイナミックな提言についてどう取り組むかについて、簡潔に教えていただけますか。

泉政府参考人 第四期基本計画を見直して新たに盛り込んだ中で、そういう新しいエネルギーの技術、これまでにないようなエネルギーの技術というようなものの可能性を追求していくというような取り組みも盛り込んだところでございます。

 こういったものにつきましては、先ほどの二十四年度の科学技術施策のアクションプラン等におきまして、重点化施策として特定するといったような取り組みを通じまして、こういった技術の分野でも具体的な取り組みが進展するように図っているところでございます。

大泉委員 せっかく神本政務官に御出席いただいておりますので、二つ重ねて文科関係の質問をさせていただきたいと思います。

 一つは、東北復興に科学技術を使うということで、岩手県から提案されているリニアコライダー、これは期待してよろしいかどうかということ。

 もう一つは、これはすごく重要な問題でございますけれども、ポスドク問題でございます。私は、若者の問題の中で、非正規雇用とかニートもあるけれども、ポスドクも非常に大きな問題だと思うんです。これにどう取り組んでいらっしゃるか、教えていただけますでしょうか。

神本大臣政務官 大泉議員には、日ごろから、文科部門会議等で科学技術に関しては大変御提言いただいていること、まずお礼を申し上げたいと思います。

 今お尋ねのポスドクの問題でございますけれども、これは、言うまでもなく、本当に優秀な頭脳が生かされる、科学技術の発展を担う重要な存在であるという認識のもとに、文部科学省としましては、これまでも、ポストドクターを対象に長期間のインターンシップを行うなど、企業と一緒にキャリア開発を行う大学を支援してまいりました。

 こういった支援によって、大学側には、キャリア開発に取り組む体制づくり、企業側には、ポストドクターの能力を評価してその後採用につないでいくというような成果が出ていますけれども、今後とも、こういった企業等で、多様な場で活躍することができるように、キャリア開発の支援にしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

 リニアコライダーについては、政府参考人の方からお答えさせていただきます。

倉持政府参考人 国際リニアコライダー計画についてお答え申し上げます。

 この計画は、まさに質量の起源とされるヒッグス粒子の性質の解明などを目的とするものでございます。

 現在の状況は、まさにその研究の前提となるヒッグス粒子そのものを見つけようということを目的といたしまして、世界の研究者が欧州の合同原子核研究所、CERNと申しますが、そこに集まって、国際協力のもとで、大きな加速器を用いたLHC実験というものを進めているところでございます。

 お尋ねの国際リニアコライダー計画は、そのLHC実験の成果を踏まえて、その次の計画として具体化されるものであると認識しております。

 国内におきまして、文部科学省の科学技術・学術審議会の作業部会を設けまして、いろいろな分野の中長期的な大型プロジェクトについて検討しておりますけれども、昨年の十月の報告書では、このリニアコライダー計画につきまして、今申し上げましたLHC実験の成果を踏まえながら、現行の、例えば、つくばの大型加速器を高度化して取り組むような、国内計画が終わった後の計画として位置づけるべきであるとか、継続して研究者コミュニティーや諸外国の関係者との協議が必要というような指摘がされているところでございます。

 こういうような状況のもとで、このリニアコライダー計画につきましては、現在、研究者レベルで国際的な設計活動や検討が行われております。我が国からも研究者が参加し、高エネルギー加速器研究機構を中心としていろいろな要素技術の研究開発に取り組んでいるところでございまして、現在、政府としてはそれを支援しているという段階にございます。

大泉委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。

松宮委員長 次に、遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。

 古川大臣には、大変重要なお立場で、ぜひ活躍を期待したいと、まずはエールを送りたいと思っております。

 大臣は国家戦略の担当でもございます。特に今回は、十月二十一日の段階で、閣議決定によりまして国家戦略会議が発足をいたしました。これは野田総理の肝いりで、非常に力を入れておられると伺っております。ただ、いろいろ報道によりますと、何をやるのかということがよく見えないということもあります。また、総理と古川大臣との間で十分意思疎通が果たしてできているのかといった報道もございまして、ちょっとよく見えない点があります。

 当初、大臣は、インタビュー等で、TPPの問題やあるいは社会保障改革、税制の問題も含めて、やるというふうに発言をされておられたようでありますが、その後、そういった方向ではなくなったように伺っております。

 まず伺いたいのは、そもそもこの国家戦略会議は何をどう議論していくのか、また、総理との間でそれはどういう話し合いになっているのか、この点につきまして、まず大臣の御意見をお聞きいたします。

古川国務大臣 まずは、遠藤委員の方からエールを送っていただきましたこと、感謝を申し上げたいと思います。

 そして、さまざま報道で出されていることに言及がございましたが、報道で出されているような事実はなくて、国家戦略会議については、総理と私の間でしっかり認識を一にして、これから運営を行ってまいりたいと思っております。

 国家戦略会議については、今まで国家戦略室で税財政の骨格や経済運営の基本方針を、あるいは総理から特に指示のあった重要政策というので、例えば、先ほど来から議論がありましたが、エネルギー・環境会議とか成長戦略をまとめたりとか、そういうことをやってまいりました。

 今度の国家戦略会議は、戦略室がその事務のところを中心に担当していくことになるわけでございますが、まさに戦略室でやってきたことを当然含め、それを超えて、経済外交を初めとして国家の内外の重要課題について取り上げていこう、そういうことで先日閣議決定させていただいて、設置を決めさせていただいたところでございます。

 これから発足をして議論をしていくわけでございますが、まずは、総理から年内に取りまとめを指示いただいております日本再生戦略、これを国家戦略会議の場で議論してまいりたいと思っております。

 その再生戦略にかかわる部分については、TPPを初めとする経済連携の部分やあるいは社会保障と税の一体改革、そういったものも、別に何かを排除するとかそういうわけじゃなくて、日本再生戦略として必要なものについては、当然それは議論の素材として上がってまいりますし、また、来年度予算に関しても、その再生戦略を実行していく上で必要な部分については、これは当然戦略会議としても考え方を示していくことになろうかというふうに考えております。

遠藤(乙)委員 今の御答弁で、日本再生戦略という視点から重要な問題はすべて俎上にのせるというふうに理解をさせていただきました。そういった意味で、TPPや社会保障改革等も必要に応じ素材となるというふうに理解をしたいと思います。

 そこで、国家戦略会議は、新成長戦略の見直し、これが特に大きなテーマであるというふうに理解をいたしております。これは、今まで随分我々も成長戦略をいろいろやってまいりましたが、なかなか思うに任せない点があります。

 そこで、この新成長戦略の見直し、具体的に、今までの新成長戦略の何が特に問題であったか、どこが欠けているのか、これからどこを重点的に見直していきたいのか、ちょっとこの点につきまして踏み込んだ大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。

古川国務大臣 これは、今、委員の方からも率直なお話がありましたので申し上げたいと思いますが、実は、この成長戦略というのは、ここ十年ぐらいで何度もつくっているんですね。つくるたびに、実行されないでまた次と。

 これは行政全体の問題だと思うんですが、決めたことをどう実行していくのか、そして実行したものがどうなのかとチェックをして、それをまた次のプランに生かしていく。行政のPDCAサイクルをしっかり回す。

 私自身も二年前に政権の中で仕事をさせていただきまして、やはりプランのところは、委員も与党にいらっしゃったときによく御経験をされたと思いますけれども、そこまではいいんですけれども、そこからどう実行していくのか、ちゃんと実行しているのかどうか、その実行の度合いがどうなのか、それに応じて次のアクションに続いているのか、やはりそこの部分が非常に弱かったんじゃないかなというふうに思っております。

 そういった意味では、昨年、我が政権としても新成長戦略をつくって、それは菅政権のもとで実現会議というのをつくり、そのもとで、例えば、先ほどもちょっと馳委員との議論の中でございましたけれども、パッケージ型インフラ会合というものをつくって、一つ一つ案件も含めてどういう状況なのかというチェックをしていく、そういうこともやっております。

 ですから、そういった意味では、今回、震災あるいは原発事故が起きまして、昨年、新成長戦略でまとめた、日本は、エネルギー・環境分野やあるいは高齢化という分野で世界のフロントランナーにあって、課題先進国だと。この課題を解決して、世界一のエネルギー・環境国家をつくる、世界一の健康長寿国家をつくる、それをグリーンイノベーション、ライフイノベーションを通じてやっていく、そういう大きな方向性は今の状況でも変わっていないと思います。

 しかし、これを震災後、そして原発事故が起きたこの状況の中でどう再強化、再設計するかということを、まさに今、事務的にも検討しているところでございますが、これをこれから国家戦略会議の中で、これは民間の方にも参加をしていただきますので、そういう議論の土台にのせて、そしてまとめ上げていきたいというふうに考えております。

遠藤(乙)委員 私も、今大臣が言われたPDCAサイクルですか、これもさらに具体化する必要があると思っておりますが、特に、今イノベーションという言葉が出ました。これは、私は最も重要なキーワードだと思っておりまして、今、例えば今回この委員会が科学技術・イノベーション委員会というふうにして発足をしておりまして、まさにこの部分がこの委員会のイノベーションの部分なわけであります。

 他方、大臣は、二〇〇四年に出されたアメリカのパルミサーノ・リポートというのはちなみに御存じでしょうか。(古川国務大臣「ちょっと済みません、それは」と呼ぶ)これは事前に入っておりませんでしたので。

 これは、二〇〇四年にIBMの会長のパルミサーノ氏を委員長としてアメリカでつくって発表した、アメリカのまさに国家戦略の、いわば現在で一番重要な文書なわけなんです。

 いろいろ書いてありますが、一番大事なことは、この本の副題にはイノベート・アメリカということが書いてありまして、要するに、アメリカをイノベーションしていくということ、継続的なイノベーションをこれから起こしていくことこそがアメリカの国力の根幹である、国家戦略の根幹であるということを打ち出しております。

 とともに、それを支える人材育成、国内の人材育成とともに海外からも頭脳を引っ張ってくる、そういったことによって、アメリカをこれからも世界の先頭に立たせるという極めて重大な戦略でありまして、これが今、官民ともに実は共有されていて、それがベースになってアメリカのさまざまな政策が出ているということ。

 また、今、世界じゅうがイノベーションということに焦点を当てて国家戦略を進めている。中国もそう、シンガポールもそう、いろいろなところがそうでありまして、ぜひとも、国家戦略会議を進めるに当たっては、このイノベーションというものを徹底的に追求していただきたいと思っているわけであります。

 そこで、イノベーションについてのことなんですが、大臣はイノベーションということをどういうふうに理解をされておられますか。まず、このことについて伺いたいと思います。

古川国務大臣 私は、イノベーションというのは相当広い意味があると思います。例えば、ちょっとした新しいアイデアとか、少し物の形を変える。

 例えば、私がよく申し上げているんですけれども、日本酒なんかは、今、世界で非常に評判がいいんです。私が毎年出ていますダボス会議でやっているジャパン・ナイトで日本酒を持っていきますと、皆さん、外国の人がおいしいおいしいと言います。ぜひこれを私は、世界的にワインと並ぶぐらいの競争力のある輸出産品にさせたいと思うんですが、私はいつも申し上げているんですが、一つ問題があるのは、あの瓶の形なんですね。

 一升瓶とか、あるいは七百二十ミリでもそうですけれども、日本酒の場合は非常にすっとスリムな形ですが、ワインは御存じのように、ワインセラーに置くためには、ちょっと斜めに置けてひっかかるようになっているんですね。首がある。例えば、瓶の形を変えてワインと同じような形にするだけで、私は、日本酒なんかはワインセラーに、フレンチ料理の店でもイタリアンの店でも並ぶようになるんじゃないかと。例えば、こういうちょっとした形を変えるということも、これもイノベーションだと思います。

 そういった意味では、イノベーションというのは非常に幅の広い意味合いでございまして、大変ベストセラーになった「もしドラ」じゃないですけれども、やはりイノベーションというものが非常に社会を変えていく、世の中を変えていく。

 特に日本のような、今、人口も減少し始めた、そして高齢化が進んでいる、そういう中で成長を実現していくためには、やはりイノベーションをどうしても実現していかなければいけない。そのイノベーション実現のために官民あらゆる力を総結集するということは、我が国にとっても極めて重要なことだと思っていますので、そうした観点のもと、あらゆる点でのイノベーションというものを実現するために全力を尽くしていきたいというふうに思っております。

遠藤(乙)委員 大臣がイノベーションを広い視点でということは非常にそのとおりだ、まさにそれがポイントだと私は思っております。

 従来、日本では、このイノベーションということを技術革新というふうに言葉を訳しておりました。たしか、その語源が経済白書、もはや戦後ではない、かなり古い経済白書ですが、その同じ経済白書でイノベーションを技術革新として訳した。それがずっと定着してしまったわけであって、ある意味では、それは非常にその時点ではよかったんですけれども、今となっては、むしろこういう狭い解釈が逆に日本の再生を妨げているというふうに私は思っておりまして、本来のイノベーションの考え方をもっともっと日本が官民挙げて受け入れていく必要があるというふうに思っております。

 もともと、このイノベーションというのは、釈迦に説法ですが、シュンペーターという、オーストリアの経済学者でケインズと並び称される人でありますけれども、まだ三十歳のときに書いた「経済発展の理論」という中で五つに分類をしております。例えば、新製品の開発、新生産方法の開発、新市場の開拓、新組織の改編、それから新資源の開拓、こういったさまざまに広がっておりまして、決して技術の改革だけではないということでございます。

 また、イノベーションという言葉も、本来は新機軸とか新結合とか創造革新と訳すべきであって、決して技術革新と訳すべきではない性質のものであります。

 ちなみに、今、中国でもイノベーションについては創造革新を略して創新という言葉を使っておりまして、これがまさに非常に適切な考え方であって、ぜひ日本もこれから、決して新生産方法の開発という狭い意味の技術革新だけではなくて、もっと幅広い、新市場の開拓であるとか新製品の開発であるとか、そういったことも含めて、思い切り視野を広げることが日本再生の戦略の最大のポイントだろうと私は思っておりますので、戦略会議においてはそういった視点でやっていただきたいと思っております。

 ちなみに、この新成長戦略の問題点といいますか、確かに個々の部分はなかなかよくできている部分もあります。役人の作文を集めたものと言う人もいますが、個々の部分では見るべきものもあります。ただ、非常に技術サイドに偏っている、サプライサイドに偏っておりまして、どこから需要が来るのか、どこに市場を求めるのかといった点、あるいはまた、だれがその革新を担うのか、主体者の部分ですね、この部分の具体性が欠けております。

 端的に言うと、もっともっとグローバルな市場を相手にした日本のマーケティング、営業努力、これが大変に日本は欠けております。内向き、下向き、後ろ向きと言われてきておりますし、また日本は、起業、要するにビジネススタートアップ、その意識が先進国で最も薄い国でありまして、若者も自分で会社を起こすよりも雇用を志向するといった意味で、実は世界で最も起業意識の低い国であります。

 多分、グローバルな視野に立った営業努力、マーケティングと、それからまた、若者も含めて、ビジネススタートアップ、起業に向けてもっともっと積極的な活性化をする、このことこそが日本の再生に一番欠けているものだろうと私は思っておりまして、ぜひとも、国家戦略会議では、こういった部分に具体的に踏み込んで検討をいただきたいと思っておるところでございます。

 もし感想があれば、一言。

古川国務大臣 私も全く同じ認識を持っておりまして、今回、国家戦略会議の民間委員を選択するに当たりまして総理から御指示があったのは、グローバルな視点を持っている方、そういう御指示がございました。

 今回選ばせていただいた緒方貞子さんなんかは、多分、世界の中で最も知られている日本人のお一人じゃないかと思います。また、住友化学の会長の米倉さんや武田の社長の長谷川さんも、お二人とも、今たまたま経済界の代表でいらっしゃいますけれども、こういう立場に立つ前から、毎年ダボス会議などにも参加して、グローバルなところでいろいろなグローバル課題に対処してきた方々でございます。そういった視点から今回選ばせていただいたわけでございまして、まさに、委員御指摘があったように、やはりグローバルな視点で国家戦略を考えていかなきゃいけない。

 同時に、起業の部分というのは、私もそこは非常に問題だと思っております。今、日本で大企業と言われているところも、最初はベンチャーから始まったわけでございます。ですので、やはりこれは、新たな企業を創造する人をどう応援するか。先週末にまとめさせていただきました円高への総合的対応策の中でも、一項目、とにかく新たな創業、起業をサポートする、これも強靱な経済構造をつくっていくために不可欠なことだということで、一項目をしっかり書かせていただいて、その実現を目指していきたいと思っております。

 そういった意味では、今、委員のおっしゃったそうした考え方と同じくして、これからの国家戦略を進めていきたいというふうに思っております。

遠藤(乙)委員 ぜひ、そういう取り組みをお願いしたいと思っております。

 それから、イノベーションの具体的な分野についても、今一応グリーンイノベーションとライフイノベーションというのが柱になっておりまして、これは非常に重要な分野だと思っておりますが、さらに視野を広げて、例えば農業イノベーション。実は私は、農業というのは本来の日本の持ち味を発揮する極めてポテンシャルの高い分野だと思っておりまして、これもぜひやるべきだろうと。

 また、中小企業イノベーション。中小企業は、非常にすばらしい技術力を持っているんですが、マーケティング能力がほとんど欠如しておりまして、むしろそういったことをうまく結合すれば、これも非常に日本の中小企業の視野が大きく開ける。

 あるいはまた、クール・ジャパン・イノベーション。世界で最も存在感のある日本は、アニメあるいは若者ファッションの分野でございまして、今、日本全体が非常に世界で存在感をなくしている中にあって、世界のゴールデンタイムで一番頑張っているのがこういった分野でありまして、こういった部分もぜひこれから強くやっていく必要がある。

 さらには、地域イノベーション、特定の地域が地域全体のシステムを考えていくということで、例えば今回の災害復興特区などもそういった東北の地域イノベーションになるでしょうし、あるいは沖縄等についてもそういった特区構想で進めることも非常に大事だと思っておりますので、国家戦略会議は、そういった視点も含めて、具体的な内容を持った戦略性のある提言をぜひ期待したいと思っております。

 続いて、総合科学技術会議の改組の件につきましてお伺いいたします。

 この総合科学技術会議の改組については、民主党としても、また政府としても打ち出してきておりますけれども、科学技術イノベーション戦略本部への改組について、今どういう状況になっておりますでしょうか。

古川国務大臣 先ほど来からずっとこの委員会での質疑でも申し上げておりますけれども、総合科学技術会議の改組によります科学技術・イノベーション政策の司令塔機能の強化というのは、我が国の今後の成長を支えるために極めて重要な課題であるというふうに認識をいたしております。

 先ほどもちょっと申し上げたんですが、ことし十月に、私は、イギリスのベディントン主席科学顧問やアメリカのホルドレン科学技術担当大統領補佐官とも、政府におけます科学的助言のあり方について意見交換を行いまして、イギリスやアメリカでどういう形になっているのか、そんなことも聞いてまいりました。

 そうしたことも踏まえまして、今後、私のもとで有識者から構成されます研究会を設置して、公開の場で、科学技術・イノベーション行政体制のあり方や政府部内における推進体制、あるいは科学的助言体制の具体的内容について提言をいただくこととなっておりまして、そうした提言を受けて具体的に、体制について、法案の提出なども含めて検討してまいりたいというふうに思っております。

遠藤(乙)委員 立法府の方が一足先に科学技術・イノベーション委員会として発足をしておりますので、ぜひ、行政もおくれないようにスピードアップをしていただきたいということでございます。

 とともに、この科学技術イノベーション戦略本部と戦略会議、どういう関係性として整理をされますでしょうか。

古川国務大臣 これも、先ほど大泉委員の御質問の中でもお答えした部分ではございますが、やはり科学技術・イノベーションというところでは少し専門性もございます。そういった意味では、専門家の皆さん方の知見もそこでまとめていただくということが必要ではないかと。しかし、そこでまとまったものは、やはり国家戦略会議の方ともうまく連携をして生かしていく。

 それぞれのいわば役割分担をしながら、総合的に科学技術・イノベーションが国家戦略として推進されるように、しっかり連携をとって運営を進めてまいりたいというふうに思っております。

遠藤(乙)委員 続いて、研究開発法人についてお伺いいたします。これは文科省でございますか。

 独立行政法人の方はだんだん整理が進んできておりますけれども、他方、研究開発法人についても見直しが今進められていると聞いておりますが、どういう状況か、どういう方向に持っていこうとしているのか、この点につきまして説明をお願いします。

古川国務大臣 我が国の研究開発システムの中核を担います研究開発法人の改革というのは、科学技術・イノベーション政策強化のために不可欠でございまして、研究開発という業務の特性に合った法人制度が必要であるというふうに認識をいたしております。

 一方で、今、行政刷新会議の方で独立行政法人全体の見直しの議論というものも行われておりますので、そことの整合性も図りつつ、国際競争力の強化等の観点から、研究開発の成果を最大化するためにふさわしい研究開発法人のあり方について検討しているところでございまして、そうした検討結果も踏まえながら、新たな研究開発法人の制度の創設に努めてまいりたいというふうに思っております。

遠藤(乙)委員 続いて、宇宙開発戦略につきましてお伺いいたします。

 もう既に先ほどからも議論がされてきておりますけれども、改めまして、宇宙開発に臨む基本戦略、そしてまた宇宙庁や宇宙政策担当組織のあり方、検討状況、これにつきまして大臣の所見をお願いいたします。

古川国務大臣 宇宙については、野田総理も一方ならぬ熱い思いを持っておられます。

 宇宙空間というのは、これは人類のフロンティアであるとともに、その利用を通じて、広範な地域へのサービスの提供や国内外を問わない領域へのアクセス、地球規模、宇宙の事象の把握などを可能にする特性を有しております。

 そして、民生、安全保障両分野における宇宙空間の利用の重要性が今後さらに大きくなっていくというふうに考えておりますので、宇宙基本法、これは議員立法でつくっていただいたものでありますが、その宇宙基本法の考え方に基づきまして、両分野における宇宙空間の利用の推進と、宇宙空間の利用を自律的に行う能力の保持を有機的に連携させながら、宇宙開発利用を総合的に進めてまいりたいというふうに思っています。

 そうした考え方のもとに、九月三十日には「宇宙空間の開発・利用の戦略的な推進体制の構築について」という閣議決定を行いまして、内閣府に我が国宇宙政策の司令塔機能と準天頂衛星システムの開発、整備、運用等施策実施機能を担当する体制を構築するために必要な法律案等を、先ほどもちょっと答弁させていただきましたが、次の通常国会に提出を目指して準備することを決定いたしました。

 したがいまして、今後、こうした閣議決定も踏まえて、また宇宙基本法の考え方に基づいて、実効的な宇宙開発利用体制を構築するべく努力をしてまいりたいというふうに思っております。

遠藤(乙)委員 それでは、事業仕分けと宇宙開発戦略につきましてちょっとお聞きしたいんですが、事業仕分けも非常に重要な考え方であることは我々も理解をしております。しかし、なかなかいろいろな議論がありまして、特に「はやぶさ」とか、あるいはまたスーパーコンピューター等、こういったことが、事業仕分けの結果、予算が減らされております。

 特に「はやぶさ」については、平成二十二年度の概算要求段階で十七億円、我々の時代には要求をしておりましたが、政権交代して、何とこれが〇・五億円にまで下げられ、さらに事業仕分けで〇・三億円、三千万円にまで削られてしまった。ところが、「はやぶさ」が地球に戻ってきたのでフィーバーが起きまして、またこれは見直しをするといったようなことになってきております。

 それで、事業仕分けは非常に大事な考え方だと思いますが、やはりこれは、よく見分ける能力といいますか、何が本当に将来発展していくのか、あるいはだめなのか、そういったことも含めて潜在的な可能性を見抜く、そういう能力がないと、なかなかこれは、単純な外見的な基準だけで切ってしまうのでは非常に問題があるわけです。

 特に科学技術なんというものは、非常に長期の時間がかかってやっと開発、発展するものでありますから、そういった眼力といいますか、これは非常に仕分け人の方に要求されるわけでありまして、なぜ二番じゃいけないのかというのが非常に大きな話題となりましたけれども、特に科学技術については、もっともっとそういった眼力を持った人に仕分けをしてもらう必要があるかと思っております。

 そういった意味で、例えばイギリスの科学誌のネイチャーというのが、二〇〇九年の十一月二十六日号におきまして、民主党の誤謬というテーマで社説を書いておりまして、事業仕分けは、科学事業の社会的価値について理解する上で国民に有益な情報がもたらされたが、事業仕分けのメンバーに仕分け対象となった分野の専門家が一人もいなかった例があることや、官僚による短時間での説明というやり方に無理があったことを指摘し、事業仕分け結果が最終判断となれば、今後数十年にわたって壊滅的な影響を及ぼす可能性をはらんでいると指摘をしております。

 これは非常に当を得た指摘でありまして、こういったことについて、大臣としては、事業仕分けそのものはもちろん理解しますが、やり方によっては非常にもろ刃の剣になる、非常に混乱を招くということもあったわけでありまして、そういったことについての反省といいますか、それはございますか。

古川国務大臣 この事業仕分けにつきましては、私は、当時、行政刷新担当の副大臣でもございました。まさに、この形をつくった一人でございますけれども、要は、一度、今までやってきたことを公開の場で、皆さんにも理解してもらうような、ちょっとさらしてみる必要があるんじゃないか、そういう視点で行ったわけでございます。まさにそこは、今、委員がネイチャーの論文を読んでいただいた、そういうさまざまなことについて世の中の関心を集めることになったという意味では、非常に意味があったと私は思います。

 特に科学技術の分野については、今回のそれこそ原発事故などの後の状況の、先ほど来からの議論の中でも、一般の人たちにとって科学技術に対する不信感が非常に高まってしまったわけなんですが、ともすると、私が見ておりましても、科学技術の世界というのが一部の専門家の皆さんの中で閉じてしまって、一般の人たちにつながっていなかった部分がやはりあったんじゃないか。

 そういった意味では、こうした科学技術のみならず、事業仕分けは別に科学技術だけやったわけじゃなくて、全分野について行ったわけでありますけれども、そういう形で一般的に関心を高めていく、そういう意味というのはあったと思っています。

 また、ここはちょっと誤解がある部分があるんですけれども、その雑誌でも指摘されているように、事業仕分けの結果が最終決定であれば、それはさまざま問題があるかもしれません。しかし、これはあくまで、立ちどまって一度考えてみよう、そうしたものを踏まえて最終的には、我々、では政策をどうしていくのか。実際には、科学技術の予算もこの二年間で減らしているわけではございません。特に、若手の研究者とか、今までの中ではなかなか光が当たらなかったようなところに予算をふやしていこうというようなこともやっております。

 そういった意味では、そうした評価をしてみて、その上で最終的に、予算であったりあるいは方向性を決めていくのは、これはきちんと我々が政治家の責任として、そして政務に入っている者の責任としてやっていくという形でやってきておりますので、今後とも、あらゆる政策、それは不断の見直しをしながら、しかし、重点的にやるべきところはしっかりやっていく、そうした姿勢をとってまいりたいというふうに思っております。

遠藤(乙)委員 かなり言いわけに聞こえるわけです。

 事業仕分けについても、余りにも試行錯誤の幅が大き過ぎますと不信感を買うわけであります。やはり、物事、本質を見て、きちっとそれを評価していくということが一番根幹であると思っておりまして、これは可能性がない、これは可能性がある、そういった潜在的な可能性をどう見るかというそこら辺の眼力といいますか、それが一番求められるということでありまして、今後、そういう点に留意して、特に科学技術については、ぜひともそういった方向で進んでいただきたいと思っております。

 ついでに、「はやぶさ」後継機については今どういう状況になっておりますか。文科省ですかね、よろしくお願いします。

加藤政府参考人 御説明いたします。

 「はやぶさ」につきましては、我が国が持つ高い宇宙科学技術を世界へ向けて示すとともに、国民に夢や希望を与えたものと考えてございます。

 この「はやぶさ」の貴重な経験で培われました技術を一層向上させまして、新たな科学的成果を得ることを目的に、現在、「はやぶさ」の後継機の開発を行ってございます。これにつきましては平成二十六年度の打ち上げを目指してございまして、それに必要な経費として、来年度、七十三億円要求してございます。

 ちなみに、「はやぶさ」の後継機につきましては、有機物や水を含んだ鉱物が比較的多いとされてございます小惑星を対象にしまして探査を行う予定でございます。

 科学的にも技術的にも世界を圧倒的にリードします「はやぶさ」の後継機の開発を着実に進めることによりまして、科学技術の知見の獲得はもとより、我が国が持つ最先端宇宙科学技術のブランド力の向上につなげてまいりたいと考えてございます。

遠藤(乙)委員 もう時間ですのであれですが、「はやぶさ」につきましては、前政権時代にしっかり議論をして、重点政策として予算をつけたわけでありまして、ぜひともそれをよく理解して、これからもよくフォローしていただきたいと思っております。

 国家戦略については、先ほど申したイノベーションということをよく理解されて、ぜひいい結果を出すように努力されるよう期待いたしまして、私の質問を終わります。

 以上です。ありがとうございました。

松宮委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

松宮委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 なお、この際、一言申し上げさせていただきますが、午前の政府参考人の組織上の名称で原子力安全・保安院黒木審議官と申し上げましたが、正確には、やはり資源エネルギー庁原子力安全・保安院黒木審議官ということでございますので、訂正させていただきたいと存じます。

 それでは、質疑を続行いたします。吉野正芳君。

吉野委員 自由民主党の吉野正芳でございます。質問をさせていただきます。

 私たちの宇宙ができて百三十七億年たつと言われております。そして、私たちの星が生まれました。これはすべて、核融合で生まれたのが星であります。すなわち、核のエネルギーというのは、私たち人類にとって、またすべての宇宙をつくっているものにとって、核エネルギーということを考えないでいることはできないというふうに私は理解をしているところです。

 核エネルギーの中では、まず、私たちの星をつくったような核融合反応という分野と核分裂という反応の分野、そして、私たちは核分裂という反応で原子力のエネルギーを利用することを手に入れることができたわけであります。

 私は福島県出身であります。私も原子力発電所を本当に推進してきた者の一人でございます。でも、これだけの大事故が起きてしまいました。じくじたる思いでこの原子力に今取り組んでいるところでございます。

 今、我が国が目指してきた核燃料サイクル、いわゆる核分裂の世界です。核分裂の世界で、ある意味で究極の目標である核燃料サイクル、すなわち高速炉の研究、ここを今度の事故でトーンダウンさせてはいけないのかなというのが私の考えであります。

 高速炉を研究すれば、核分裂で起きるごみ、廃棄物、これを核種変換することも可能でありますし、プルトニウムをつくり、ある意味で、ウラン238をプルトニウム239に変えるわけでありますので、ウラン燃料、自然界の燃えるウラン235は〇・七%くらいでございます。残りは238でありますので、ここのウラン238を本当に役に立てるものに変えることのできる技術を目の前まで私たちは手に入れているわけでありますので、特にこの高速炉、高速増殖炉も含めた中での高速炉、ここの研究に対して、国としてどういう立場で臨んでいくのか、その辺のところをお伺いしたいと思います。

古川国務大臣 今、委員からお話がございました高速増殖炉サイクル技術の研究開発につきましてでございますが、まさに、委員のお地元で今回こういう事故が起きたわけでございます。

 そういった意味では、現在、政府としてエネルギー政策や原子力政策の今後の方向性を今検討しているわけでございますので、そうしたものを見据えつつ、そのあり方については検討してまいりたいというふうに思っております。

吉野委員 エネルギー政策を、来年の八月ころ結論が出ようかと思いますけれども、それを見据えつつ対応していくという形では、いわゆる担当大臣として、これだけの技術を持った日本の技術、そして人材を育成していくという上ではなかなか、やはり後ろ向き過ぎやしないのかなというのが私の持っている懸念なんであります。そこら辺のところを打ち破っていくのが古川大臣の務めなのかなというふうに思っているんですけれども、いかがなんでしょうか。

 エネルギー政策が決まるまではすべてのものは中断する、ストップする、一時立ちどまる、そういう形でありますけれども、これは、我々日本以外にも、全人類の、ある意味では大きな科学技術においての目的であるというふうに思いますので、たなざらしにして、考えないんだという形ではいけないのかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

古川国務大臣 考えないとか、たなざらしにするというふうに申し上げているわけではございませんで、これは、エネルギー政策や原子力政策、今後の方向性というものを議論しているわけでありますから、そういうものを横目で見ながら、どういう形でこちらの方をやっていくかということを考えていくということであります。

吉野委員 今現在、古川大臣はどんなお考えなんでしょうか。

古川国務大臣 今申し上げたとおりでございます。

吉野委員 大臣という職を離れて、一政治家としてどういう考えを持っているか、そこを聞きたいと思います。

古川国務大臣 大臣と一政治家と分離できるわけじゃございませんので、今そのように考えているということでございます。

吉野委員 わかりました。

 内閣の一員として、特に科学技術の担当大臣として、政府においてエネルギー政策をどうするかという議論があろうかと思いますから、科学技術を推進するという立場から、核燃サイクルをきちんと推進するような、そんな発言をお願いしたいと思います。

 高速炉を、これも大きな今「もんじゅ」がある意味でありますけれども、高速炉の燃料をつくるためには再処理、先ほど言いましたように、天然ウランは〇・七%しかございません、残り九九・三%は変えることのできる技術でありますので、再処理技術というものを私は推進していくべきだと思っております。

 この辺について、今現在、六ケ所村ではなかなか、ガラス固化という本当に初歩的なミスだと私は思っているんですけれども、そこでつまずいておりますけれども、古川大臣としてはどういう考えで再処理を見詰めているか、お聞かせ願いたいと思います。

古川国務大臣 済みません。多分、これは細野大臣の担当じゃないかと思いますので、これを私のところで責任を持ってお答えする、そういうことはできませんので、御理解をいただきたいと思います。

吉野委員 核燃サイクルというのは、再処理がなければ核燃サイクルはできないんですね。ちゃんと通告してあるんです、核燃サイクルについて聞くというふうに。ですから、当然、高速炉の話、再処理の話、そして究極的には最終処分場の話、これ一体で核燃サイクル、サイクルなんですから、輪っかなんですから。

 だから、技術的にどういうところ、例えば、今、日本の技術はガラス固化に固まっていますけれども、この辺も含めて、フランスの技術をそのまま取り入れていくということも一つの選択肢になろうかと思いますけれども、科学技術担当大臣として再処理技術をどう見ているか、サイクルにとっては必要であるかないかも含めて御答弁願いたいと思います。

古川国務大臣 済みません。これはこちらの方のあれかもしれませんけれども、ちょっと通告をいただいておらないという話でございまして、そういう中でございますので、ちょっと責任ある御答弁はできませんので、申しわけありませんが、控えさせていただきたいと思います。

吉野委員 通告がないと言いましたけれども、私は、核燃サイクルで質問すると通告しているんです。

 核燃サイクルの意味をちょっと言ってください。核燃サイクルは、高速炉と再処理と、ある意味で最終処分場も入るんです。大きな循環なんです。通告がないというのは、これはちょっとだめですよ。

 もう一回御答弁願います。まず、核燃サイクルとはどういうものか、担当大臣に聞きたいと思います。

古川国務大臣 そもそも私は、この核燃サイクルの担当大臣ではございませんので……(吉野委員「担当でなくたってわかるでしょう。ちょっとこれはおかしいよ。だめだよ」と呼ぶ)

松宮委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

松宮委員長 それでは、速記を起こしてください。

 吉野正芳君。

吉野委員 角度を変えます。担当が違うというのであれば、それはそれで結構ですから。

 まず、古川大臣、科学技術担当大臣として、核燃料サイクルというシステムをどう理解しているか、お尋ねをします。

古川国務大臣 科学技術担当大臣としてというお話をいただきました。

 その立場で、先ほどから申し上げておりますように、通告をいただいておりませんので、責任ある御答弁ができませんので、申しわけありませんが、お答えは差し控えさせていただきます。

吉野委員 通告の問題は、後できちんと精査したいと思います。

 通告しないで質問に立つなんという失礼は、私はしていないつもりです。申しわけありませんけれども、核燃サイクルについて尋ねますという、たったこれだけですけれども通告をしております。細かくはしておりません。(古川国務大臣「それを聞いていないんです」と呼ぶ)時間もないですから、いいです。

 次は、原子力委員会にお尋ねをいたします。

 今まで、この福島の原発事故を見てきて、原子力委員会の顔が見えなかった。私もいろいろなところで質問をさせていただいて、原子力委員会、もっと顔を見せろという形でお話をしてきましたけれども、現実には、いろいろお話を聞きますれば、近藤委員長、いろいろ水面下で御努力をなされて大いに汗をかいているということ、理解をさせていただきました。

 そして、私たちの福島県にとって除染が一番大事なんですけれども、除染の前に、やはりオンサイトである原子炉の収束の問題、そして廃炉への道のり、これがパラレルで並行的に、地域の方々の、除染、帰宅できるようにすること、そして同時に廃炉への道のり、これが一番の関心事でございます。

 そういう意味で、原子力委員会に中長期措置検討専門委員会というものが設けられて、八月三日から会議を開かせていただきました。

 イメージ的に、私素人ですから専門家にお尋ねするんですけれども、まず最初に、あれだけ壊れてしまった瓦れき、特に建物、建物の中には使用済み燃料プールもある、そして原子炉もある、格納容器もある、それらが配管等々のところから漏れ出ているというのが現状の姿と思うんですけれども、廃炉への第一歩はどこから手をつけるんでしょうか。お答え願いたいと思います。

鈴木参考人 御質問ありがとうございました。

 まず第一段階は、目標は、使用済み燃料プールの中に入っている使用済み燃料、これはまだ今のところ大きな損傷はないと考えておりますので、それを取り出すのが第一目標であります。

 そこに行くまでに、御指摘のように、周りの作業場を整えなきゃいけませんので、瓦れきを取り除く。そして、これ以上の放射性物質が外に出ないようにカバーをかける。こういう作業をやって、それから今度は、いわゆるクレーンとかそういう重機を持ち込んで使用済み燃料を取り出す。これをやるのがまず第一の目標であります。

吉野委員 原子炉を全部水でふさいで、原子炉の中に全部水を入れないと、いわゆるデブリと言われる溶けた燃料を取り出すことはできないのかなと私は思っています。

 そのためには、原子炉及び格納容器にあいているであろう穴、これをどうふさいでいくかというのが一番大きな工程になってこようかと思いますので、その辺はどういう形で穴をふさいでいくのか、専門家の御意見を聞かせてください。

鈴木参考人 御指摘のとおり、デブリ、いわゆる破損燃料を取り出すには、遮へいのために水を冠水させるのが一番いいのではないかと思っておりますが、現時点で水が漏れている、どこで水が漏れているかわからないという現状ですので、まずは、まだ放射線が非常に高い地域なので、多分、遠隔装置、ロボットなどを使って現地に入って、それで破損箇所を見つけて、できれば修理する、こういう計画なんですが、これは御指摘のとおり、なかなかまだ現状がわからないのでかなり時間がかかりますし、そのロボットの開発にも時間がかかるということで、最終的な目標としては、水をためて、それで破損燃料を取り出すというのが目標である。これはかなり時間がかかると思います。

吉野委員 素人考えで、穴をふさぐためには普通、内側から大きな鉄板でもやれば簡単に穴をふさいで水も出てこないと思うんですけれども、内側からはなかなか難しいだろう。そうすると、外側から外づけしなきゃならないというと、どういう技術で、その辺の技術開発もこれから必要なんでしょうけれども、やはり外づけを考えているんですか。

鈴木参考人 残念ながら、現状まだそこまでわかりません、どうなるか。もちろん、御指摘のとおり、外からカバーをするというアイデアはありますが、そこに行くまでの間、まだまだ技術開発、現状の理解が必要ですので、まずは、プールにある使用済み燃料を取り出して、それと並行して原子炉の状況をできるだけ正確に把握する、それから今御指摘のような個別具体的な項目に入っていくかと思います。

 遠隔技術とかロボット技術について、一番これが大事だろうということは、現在専門家の方々で一致しているところでありますので、この辺は国も全力的にバックアップして、世界最先端のロボット技術を使ってやっていくというのが計画であります。

吉野委員 最初に、使用済み燃料を空にするということであります。これも、かなり瓦れき等々が入っていて、使用済み燃料、さや管に傷もついているのかなと私は思うんですけれども、これはどうやってとっていくんですか。いわゆるクレーンがないんですね。取り出すクレーンがないので、一号機はテントの覆いはできましたけれども、どこでクレーンをつけていくのか、その辺のところをお願いします。

鈴木参考人 先ほど申しましたように、いずれかの段階で重機を持ち込んでクレーンをつくらなきゃいけないですね。だから、その前に瓦れきを取ってカバーを、今カバーがかかっていますけれども、かなりできてきましたが、一遍それをとって、それで使用済み燃料を取り出す。今の理解では、使用済み燃料そのものは恐らくそれほど傷ついていないので、クレーンが入れば、多分安全に取り出せるだろうというふうに考えております。

 この辺も、今後の状況を逐次把握していかないと、まだちょっと先のことはわかりません。

吉野委員 冷温停止の条件は、原子炉の底部が百度以下、もう一つ、放射性物質を出さないこと、二つの条件で冷温停止なんです。いわゆる使用済み燃料プールから燃料を取り出すときに、外からクレーンでやっていますので、放射性物質が外に漏れるということは、水の中で処理するから大丈夫だ、こう言われても、私たち地元としては大変心配なんです。

 そのときにはきちんと、いわゆる冷温停止状態を解除して、何キロ以内は避難しなさい、そこまでやるんでしょうかね。

鈴木参考人 今私がお話ししたすべてのことは、冷温停止が実現しないとできないことですので、その段階から、我々の今議論している中長期措置の方に入ります。したがって、それが確認されない間は作業はできません。

 御指摘のとおりでありまして、安全確保が第一ですから、冷温停止を確実に確認した後、今のような作業に入るということであります。

吉野委員 カバーをして初めて放射性物質が出ないんですね、今テントカバーがありますから。でも、カバーを外して使用済み燃料をとるんでしょう。カバーは外すんでしょう。だから、そのときに冷温停止の条件が崩れてしまうんじゃないのかなと心配しているんです。

鈴木参考人 冷温停止というのはあくまでも原子炉の炉心の方の話でありまして、今カバーをかけているのは、上にある瓦れきとかそういうのにくっついているものが風で飛んでしまったりしないようにすることですので、そこの部分は、冷温停止状態とは関係ないです。

 まず、瓦れきを取り除き、放射性物質がついたようなものをできるだけなくして、対外的に外に出るような放射性物質の量ができるだけ少なくなるような段階で、もちろんモニタリングを全部して、そういう状況で使用済み燃料を取り出す。その作業自体は、通常の作業と多分それほど変わらない作業でできるのではないかと考えております。

吉野委員 放射性物質を出さないという条件は、原子炉の中から出ないということなんですか。

 我々は、原子力発電所、原子炉の中だろうと格納容器の中だろうと燃料プールからだろうと、核物質が出ることはだめなわけですよね。だから、ふたをとらないと使用済み燃料がとれないので、その辺の理解の仕方をちょっと教えてください。

鈴木参考人 御心配いただいていることは、現在の原子炉建屋で、カバーがない状況で使用済み燃料を取り出すのは危険ではないですかという御質問でしょうか。(吉野委員「そうです」と呼ぶ)はい。

 恐らく、これもわかりませんが、建屋にカバーをつけて、クレーンを持ち込むときはちょっと、そこら辺は私も専門じゃないですからわかりませんが、一たんカバーをとらなきゃいけないかもしれませんが、作業をするときはカバーをかけてやります。使用済み燃料を取り出すときは、カバーをかけてその中で作業をするということになっております。

 したがって、作業をしている最中のものが何らかの形で外へ出るということのないように、そのためにカバーをかけるわけですから、作業中はカバーがかかっています。

 私が申し上げたのは、クレーンを持ち込むときに、カバーがかかっているとクレーンは持ち込めないということで、一度カバーを外してクレーンを持ち込む、だけれども、使用済み燃料を実際に取り出すときはカバーをかけて作業をする、こういうことであります。これで御理解いただけましたでしょうか。

吉野委員 今の頭のカバーはテントシートなんですね。これでやるんですか。それとも、そのほかにコンクリートの壁をつくって、金色堂みたいなさや堂をきちんとコンクリートでつくるということなんですか。

鈴木参考人 それはちょっと、今現在検討中ですが、多分、最初はテントですよね。あと、最終的には堅牢なものにするという前提で動いていると思います。

 ここは現場の動きを見ないとちょっとわからないので、現時点ではっきりしたことは言えませんが、できるだけ堅牢なものにしないと、地震がまた来るかもしれませんので、そういう意味ではカバーはきちんとしたものをつくる、建屋としてですね、という計画であります。よろしいですか。

吉野委員 私の理解では、今、ある意味のテント、屋根はテントですから、テントカバーでとりあえず放射性物質が外に出ないようになっています、一号機は。最終的には、金色堂みたいな形のさや堂、コンテナという言葉らしいんですけれども、さや堂をコンクリートで回りにつくっていくんだというふうに聞いているんですけれども、その計画はあるんですか、さや堂をつくるということは。

鈴木参考人 現時点で具体的にどういうものをつくるかということは、実は検討部会では議論されていません。今現在我々が議論していることは、どういうステップで進めるかということで、ある程度のイメージとしてのアイデアで議論をしています。

 おっしゃるような、具体的にどういう建物をつくるかというのは、これから現実に現場の方で検討させていただくということになると思いますが、大事なことは、最初に御指摘がありましたように、放射性物質がこれ以上環境の外に出ないということを守る、これを大前提にやるということであります。

 それから、言い忘れましたが、技術開発の課題がたくさんありますので、これは、内外の知見を集積するということで、国際協力ということでやっていきたいと思います。できるだけ効率的に、透明性を持って、御質問にも答えられるように、逐次情報を公開していきたいと思っております。

吉野委員 今、内外からの協力という言葉が出ましたけれども、全くそのとおりだと思います。

 これは全世界が注目している廃炉への道のりでありまして、東京電力みたいな形で、知的財産だから教えられないんだということではなくて、きちんと水平展開をして、日本国の持っていた、これによって取得できた知見は全部やはり全世界に公表していくという、それも私は必要ではないのかなと思っているんですけれども、そういう立場で専門委員会としては今動いているのかどうか、お尋ねしたいと思います。

鈴木参考人 御指摘のとおり、いわゆる税金を使って公共財としてやる研究開発については、国際公共財として世界に発信していく、共有していく、これが大事だと思っておりまして、そういうプロジェクトにしていきたいと思っております。

 一方で、私企業が私企業で開発するものもありますので、それはちょっとまた別かと思いますが、いずれにしても、国際プロジェクトで最新の知見をできるだけ効率的に使っていくという方向で現在検討を進めているということであります。

吉野委員 国際プロジェクトというのは、いわゆる外国企業にも門戸を開くということですか。

鈴木参考人 恐らく、そういう可能性も当然含めて検討するということであります。

吉野委員 廃炉への道のり、まだまだ遠い道のりであります。でも、私たちは、ある程度の目安なんですね。専門委員会でかなり詳細な工程表をいただきました、この段階が終われば次はこの段階だという。ただ、その一段階をクリアするにも、これは大変な技術的課題、研究課題がたくさんありますね。

 我々が知りたいのは、やはり気が焦っているものですから、時間なんです。いつごろまでに次の段階といいますか、最終的には廃炉ですけれども、いわゆる使用済み燃料プールを空にできるのはいつごろなのか。原子炉のデブリをとり終えるのはいつごろなのか。原子炉のふたをあけて取り出すのはいつごろなのかという時間軸なんですね。アバウトでいいですから、その辺をちょっとお聞かせ願いたいと思います。

鈴木参考人 現在検討されている案では、使用済み燃料プールから使用済み燃料を取り出すのに三年程度、それから、最終的に破損燃料を取り出す作業には最低十年という数字が出ております。

 今後、これは御指摘のとおり、まだまだ不確実なところがありますので、検討していく上で変わってくるかもしれませんが、現在の目標はそういう数字であります。

吉野委員 できるだけ早く私たち被災地の方々がふるさとに戻れるように、やはり原発がきちんと廃炉で、きれいな更地になって初めて安心というものが確実なものになるわけでありますので、全世界の英知、人類の英知を集めて、廃炉への道筋を本当にお願いしたいと思います。

 きょうは本当にありがとうございました。私の質問をこれで終わらせていただきます。

松宮委員長 次に、松野博一君。

松野(博)委員 自由民主党の松野博一でございます。古川大臣、よろしくお願いいたします。

 この委員会は、公明党の遠藤先生を初め多くの先生方の御努力で設置をされました。その目標は、もう既に大臣も御承知だと思いますが、このところ日本が元気がない、国際競争力が下がってきている、こういった状況の中で、科学技術をベースとして国際競争力を高めるイノベーションを進めていこう、その環境づくりを政治として何をやればいいか、このことを議論しようということが一番大きな目的であります。

 そして、私たち政策形成者、立法府の議員が今後さまざまな政策立案をし、判断をしていかなければならない。先ほど、科学技術イノベーション戦略本部の設置に向けてというお話もいただきました。科学技術を一括して推進する、そういった仕組みづくりも必要だと思いますが、同時に、これからは、エネルギー、医療、環境等はもちろんでありますけれども、外交や都市計画やあらゆる分野に関して、科学的見地、情報というのを政策形成者が持たないと、正しい政策判断ができない、こういった専門家の意見をしっかりと私たちが吸収していくシステムづくりをしよう、こういうこともあわせた目標であります。

 この認識に基づいて、個々質問させていただきたいというふうに思います。

 まず、日本の国際競争力を高めるイノベーションを起こしていくために、政治が責任を持つべき環境整備とは何かということですが、これは、さまざま多方面にわたるわけでありますけれども、突き詰めると、一つは予算確保の問題、もう一つは、そのイノベーションを阻害する規制があるとすれば、その規制をしっかりと取り除いていくということだと思います。

 まず、予算分野、金目の話から始めさせていただきたいと思いますが、午前中の議論でも、事業仕分けの中での科学技術予算の取り扱いについて議論がありました。大臣の御答弁の中で、事業仕分けの目的として、なかなか国民的意識が集まらなかった科学技術予算に国民視線で切り込んでいくということに意味があるんだという御説明もいただいて、そういった面、確かに重要だなというふうに思います。

 同時に、二十二億円あった予算が三千万円まで減って、また復活する。大分これは振幅が大き過ぎるなという感想も率直に持っておりますし、国民の意識をミスリードする面があってはいけないなという懸念もございます。

 こういった問題が起こる理由は、先ほど申し上げた、政策の形成者たる議員がさまざま、科学技術方面からの情報を吸収するシステムというのがまだ確立されていないんだなというふうに思いますが、同時に、科学技術の予算を一種査定する評価基準というのが確立をされていないということも大きな原因だろうというふうに思います。

 全体論としては、GDPの一%、第四期基本計画の間に政府研究開発投資、総額が二十五兆円というのが打ち出されておりますが、個々の優先順位をはかる政策評価基準というのがまだまだ確立をされていないという感想を持っております。

 昨年、文部科学委員会の視察でドイツ、フィンランドに行きましたときも、個々の会議で私が質問したのは、どうやって科学技術に対する予算、総投資額、また個々のプロジェクトに対する予算組みをする価値基準を設けているんですかということと、どうやって立法府や行政内、また国民に関しての合意形成をされるんでしょうか、この二点を繰り返し聞いていたわけですが、ドイツ、フィンランドにおいても、なかなか試行錯誤の連続だというような印象を受けました。

 しかし、これはあくまで税金を投入して行うべきものでありますから、当然評価基準というのをしっかりとつくっていかなければいけませんし、これが確立しないと、使った後の事後の評価というのもできないという状況であります。

 古川大臣がこの科学技術に対する予算をつくっていくに当たって、どのような評価基準をつくっていこうというふうにお考えなのか、お考えをお聞きしたいと思います。

古川国務大臣 まず、先ほど遠藤委員とのお話の中にもありました、事業仕分けで、三千億あったのががんと減らされたというお話があった。

 確かに、そういう項目を見ればそういう面もあるんですが、全体で申し上げますと、民主党政権の中で最先端・次世代研究開発支援プログラムの追加創設を行ったり、科学研究費補助金の大幅拡充など、基礎研究や若手研究者支援の充実に努めてきておりまして、二十三年度の科学技術関係予算でも、これは対前年度比で二・一%増、ほかのを抑えている中でふやしておりますし、この補助金は大幅に増額、二十二年度が二千億から二十三年度二千六百三十三億とかなり大幅にふやしております。

 そういう意味で、一つ一つの個別のところのみならず全体を見ていただいて、我が政権としても、科学技術政策については重点を置いているということをまず御理解いただきたいと思います。

 その上で、今、委員からもお話がありましたように、どう評価をしていくのかというのは、委員が与党であった時代も非常にいろいろと悩んでこられた話だと思います。

 そういった意味では、まさに委員が最初におっしゃいましたように、こういう国会の場で科学技術・イノベーションの議論をする特別委員会ができて、委員の皆さん方、いろいろさまざまな知見をお持ちでございます。そしてまた、それぞれ非常に強い分野、先ほどの馳委員は宇宙とか大変強い分野をお持ちでございます。委員の皆さん方がさまざま持っているそうした得意分野、強い分野のものをこういうところに出していただいて、議論をしていただいて、そういうものを踏まえて、政府として科学技術をどう推進していくか、そういうことを進めていきたいと思っております。

 そういった意味では、こうした委員会の場を国会の方につくっていただいて議論をしていただくということは、我が国の科学技術・イノベーションの推進にも大いに貢献すると思いますし、今後とも、そうした意味で背中を押していただければというふうに思っております。

 その上で、今後の科学技術・イノベーション政策の推進におきましては、我が国が取り組むべき課題をあらかじめ設定して、その達成に向けて、研究開発の推進から、その成果の利用、活用に至るまで関連する科学技術を一体的、総合的に推進する方法と、もう一つは、独創的な研究成果を生み出し、それを発展させて新たな価値創造につなげる方法の二つがございます。

 この後者の方が最先端研究や基礎科学の推進に当たるものでございまして、第四期の基本計画では、この両者をいわば車の両輪として、我が国の科学技術・イノベーション政策を強力に推進することといたしております。

 そうした視点から、国際的な基準、多様な指標に基づく評価の実施など、ピアレビューを含めた審査を行ったり、あるいは評価のあり方の改善を図るなどして、委員がおっしゃったように試行錯誤になっていくかもしれませんが、より重点的、効率的、そして何よりもやはり、先ほどの遠藤委員のお話にもありましたけれども、成果に結びつけていかなければいけないと思いますので、その成果に結びつけていくために全力を尽くしてまいりたいというふうに思っております。

松野(博)委員 評価を確立するというのは難しい作業だというのは、私たちも与党に、政府内にいて作業をしているときに当たって痛感をしていることであります。しかし、やはりその評価基準というものをしっかりつくっていくという作業は、これは政府側も、また、当委員会の一つの大きな目的だと思いますから、しっかりと議論をしてまいりたいというふうに思います。

 先ほどの質疑の中で、新成長戦略がなかなかうまく機能しなかった理由は何かと遠藤先生の方から御質問があったかと思います。大臣の方は、PDCA回路がうまく回らなかったのかなというようなお話もいただきました。そういう面も確かにあると思います。

 この委員会の大きな目的として、冒頭申し上げました、企業の国際競争力を高めるイノベーションを起こしていくということで、先ほど、行政側の反省点、分析を大臣からいただきましたけれども、一方、企業の側から見ると、日本企業というのは、基礎的な技術もあり、特許数も、世界の各国の企業と比べて、数でいえば大変な数を持っています。しかしながら、このところ、経済成長を押し上げるような、市場を創造していくようなイノベーションが起こっていないということもまた事実だろうというふうに思います。

 なぜ、日本の企業に市場創造につながるようなイノベーションがこのところ起こらないのか。また一方で、ガラパゴス現象みたいな話もありますが、市場にマッチをしないというような現象も同時に起きていてなかなか難しいんですけれども、この今の企業が抱えているイノベーションが起こりづらいという状況に関して、大臣がどう分析をされているのか、御所見をお伺いしたいと思います。

古川国務大臣 やはり一番は、今大変厳しい経済状況の中で、企業ももちろんそういう中で研究開発投資に費用を回しているわけでございますけれども、やはり経営そのものが厳しければ、当然そういったところに予算的な制約があるという部分もあると思います。そういった意味では、成長を実現していくということ、そして、その果実が研究開発費用に回っていく、そういう状況をつくっていかなければいけないというふうに思っております。

 同時に、民間の研究開発投資を誘発するためには、規制や制度の合理的な見直しや民間研究開発投資への税制優遇措置などについて、政府の方としても、インセンティブを与えるような検討もしておかなければいけないというふうに思っています。

 研究開発については、民間とそして政府がお互いにそれぞれ連携をして、官民挙げて取り組んでいかなきゃいけない問題だと思います。そういった官民の取り組みや、あるいは、研究開発の中心は大学、大学院等の高等教育機関であると思いますけれども、そういったところの連携も、アメリカあたりの大学とか大学院なんかと比べるとまだまだ日本の場合不十分ではないかと思いますから、そういう連携を推し進めるような努力も、ぜひ、企業の方もしていただきたいと思いますが、政府の方としても、そうした連携がうまく進むような環境づくりというものをバックアップしてまいりたいというふうに思っております。

松野(博)委員 研究開発費の総額を見ると、ここ二十年間ぐらい、一位がアメリカで二位が日本でありますから、国際的に見ても高い研究開発投資をしているということになるんだろうと思います。

 しかし、日本の場合、中身を見ると、投資総額の八割が民間投資になっておりまして、政府負担の比率が、先進諸国、主要国の中で最低レベルなんですね。その結果、どうしても、企業が研究開発費の八割を担っているという状況の中において、基礎研究よりも応用分野に力を入れがちになりますし、応用研究よりも、その応用研究を実用化また商品化に向けての開発投資に向けるお金が多くなるのは、これは企業の性質上いたし方ない部分だと思います。

 こういった状況の上で、例えば企業の最先端研究の分野、米国企業においてバイオテクノロジー等の最先端分野に対する研究開発費用に比べて、我が国の最先端分野に対する研究開発が大変厳しい状況にある。

 例えば、京都大学の山中先生がiPS細胞を開発されて、その翌年のその分野を発展させる予算づけの問題で、その当時は私たちが与党だったわけですが、億の二けたの単位の予算をとるのが大変でした。

 その時期に、もうアメリカは各州単位で数百億円とか数千億円というようなiPSやバイオに対する制度、枠組みをつくり、また、ファンドを利用して資金を集めているという状況を見て、これは何とか日本も仕組みづくりを考えないと、最先端分野での企業の国際競争力がどんどん残されていってしまうなという危機感を今も持っているわけであります。

 今後、企業の最先端研究分野に関する研究開発費を確保する、もちろん、冒頭申し上げたとおり、国のこの比率を高めていくというのは一つの方策だと思いますが、それに加えて、大臣に、仕組みづくりについて御所見があればお伺いしたいと思います。

古川国務大臣 今、委員もおっしゃられましたように、まずは、今は民間の方が八割で政府の方が少ないというお話でありますから、第四期の科学技術基本計画におきまして、政府研究開発投資を対GDP比一%にすることを目指しております。ですから、そこは全力で努力をしてまいりたいと思っております。

 そして、今ちょっとiPSのお話がありましたが、iPSについては、おくればせながらかもしれませんが、かなり政府としてもてこ入れをしているところでありますけれども、民間では行うことが困難でリスクの高い最先端分野、そして可能性があるようなところはやはり積極的に投資をして、これらの成果をイノベーションにつなげていくような努力はしていきたいと思っております。

 民間について、では、そうした分野への研究開発投資をどうそちらの方にドライブをかけていくかということについては、これはさまざまなやり方もあろうかと思います。これがということを私自身も今すぐ具体的なものがぽっと頭に浮かぶわけではございませんけれども、やはり、アメリカなんかと日本と、若干そういう意識的な考え方、マインドの違いというところなどもあるんじゃないか。

 例えばアメリカなんかですと、一回二回失敗した人の方が、次、三回目に成功する確率が多いといってそういう人に投資をするような、過去に失敗した経験がある人の方がお金を集めようとしても集めやすいというところがありますが、日本なんかだと、一度失敗すると、もう、一回失敗した人には投資をしないというような風潮もあるわけであります。

 やはりここは、その失敗を、それこそ、この前亡くなられたスティーブ・ジョブズ氏の話じゃないですけれども、とにかく、失敗をするということが、実は、次に向かって、成功に向かって大事なんだということがあるわけでありますから、失敗を恐れないような、そして、失敗をネガティブにだけとらえるのではなく、むしろそれを次に生かすチャンスだというふうにとらえるような社会的な雰囲気、ムードづくりというものをしていかなきゃいけない。そういう社会の雰囲気になるような形に持っていくということが、政府や我々政治家の役割じゃないのかなというふうに感じております。

松野(博)委員 今、大臣がお話をいただいた企業の挑戦する姿勢をつくっていくためにも、また、これも先ほどの質疑の中であった日本の起業家が少ないという問題も、この二つの問題に共通するのは、日本の金融市場、金融システムの問題が大きいと思うんですね。そういった面まで含めて、総合的にぜひ政府として対応していただきたいというふうに思います。

 今までお話をさせていただいたような方向性の中で、今後、企業が国際競争力を高めるイノベーションをするに当たって、政治としてできる環境づくりは、当委員会の議論の中でも一生懸命進めてまいりたいというふうに思います。

 少し質問の方向が変わるんですが、大臣の所信の中で、災害からの安全性向上というお話がありました。もちろん、ことし東日本大震災が発生をして、今その復興再生に向けて一丸となって努力していかなければいけないものでありますが、今後、例えば房総沖地震や東海沖地震それぞれ含めて、太平洋岸を中心に、ここ三十年間で相当規模の地震が起こる可能性が、七〇%から八〇%を超えるという予想が出ております。この数値を見ると、近未来の日本の最大の脅威が地震または津波と言ってもいいんだろうというふうに思います。

 そこでまず、科学技術政策担当大臣として、今後高い確率で発生が予想される大地震、津波に対していかなる対策が必要だと、また、いかなる使命を科学技術政策担当大臣として果たしていかなければいけないとお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。

古川国務大臣 今回、我が国は、東日本大震災で甚大な被害を受けたわけでございます。多くの人命も失われました。こうした被害を克服して、国民が将来にわたって安全かつ豊かで質の高い生活を送ることができるよう、国として、大規模な自然災害の発生に際して、人々の生命と財産を守るための取り組みを着実に進めていく必要がございます。

 私の生まれ育った名古屋も、私が小学校のころから、ですからもう三十年以上前から東海地震が起きる起きると言われて、私も小学校のころ、座布団を縫ったような防災ずきんで、よくそういうところからやっていました。

 本当に、たまたま今まで起きていないんですが、今、委員もおっしゃったように、東海地震初め大規模な地震が太平洋岸で起きる可能性というのは極めて高いと言われておるわけでございますから、やはりこの日本という、これは今や日本だけじゃなくて世界的なところがありますけれども、自然災害というものはどうしても避け得ないというところがあります。ですから、それが起きたときに、少しでも国民の命を守り、そして財産を守っていく。やはりそのための取り組みというものは、これは科学技術の視点からも非常に重要な課題として取り組んでいかなきゃいけない。

 そんなことで、総合科学技術会議では、平成二十四年度の科学技術重要施策アクションプランにおきまして、復興再生並びに災害からの安全性向上を最重点化対象としております。

 そして、この中では、例えば緊急地震速報や津波予想情報の精度向上、大地震、大津波でも途切れることのない、災害に強い情報ネットワークの構築、地震、津波災害に強い町づくり、インフラ整備等を最重点化施策として取り上げ、推進するというふうにいたしておりますので、その方向に従って、来年度予算等も重点的に、めり張りのついた予算編成というものを行ってまいりたいというふうに考えております。

松野(博)委員 科学技術政策担当の古川大臣と、また、恐らく文科大臣、調査やさまざまな予測の分野に関しては文科省もかかわってくるんだと思います。そういったこれまでのケーススタディーも含めて、さまざまそういったシミュレーションを出していくということも重要な話だと思いますが、なぜきょうそのお話を大臣にあえてお聞きしたかというと、今回の東日本大震災、福島第一原発の事故の中で想定外という言葉が使われて、想定外という無責任な言葉を使うなという批判が随分なされました。もちろん、その想定をどういうふうに想定したかという合理性については検証しなければいけませんが、一方で、想定をしなければ行政の執行はできないんですね。行政執行というのは想定の範囲でやるしかないんです。

 ですから、そういった中でいかに正しく想定をするかというのが重要であるというのは改めて認識をしておりまして、そういった意味において、地震に対しては、難しい、まだ科学的にも立証されていない部分、証明されていないさまざまな部分があるわけですが、科学技術の果たすべき役割は大きいというふうに思いますので、ぜひ御尽力をいただきたいと思います。

 そして、これは時間的に最後になってしまうかもしれませんが、地震対策、先ほどの想定外の話にもつながるんですけれども、今も、どのぐらいの周期で地震が起こっているのか、その前に起こった大地震がどの程度の被害、津波も含めて起こしているのか、そういう予想、シミュレーションがさまざま発表されています。改めて、日本という国はこんな短い周期でこんな大きな災害をこうむってきたんだなというのを感じているわけです。

 そして、そういう科学的知見をもとに安全対策を向上するということになると、もちろん予想システム等々もありますが、ハードの面でも、それでは大臣のお地元の名古屋から、うちは地元が千葉ですが、延々海岸線に向けて、何メーターの津波を想定した防波堤をずっとつくっていくのか、それ以外にもどうするのかとか、膨大な予算がかかっていくんですね。

 この質問は古川大臣にするのが適当かどうかわかりませんけれども、そういった科学的知見に基づいて予想される被害、それに対する対応策に対して、どの程度の予算、財政的なものをつぎ込んでいくか、その判断が難しいんだと思います。

 古川総理大臣になったつもりで、これから、日本の近未来に対する最も大きな危機の一つであるこういった災害対策に対して、どの程度の予算措置をとっていくべきなのか、御意見をお伺いしたいと思います。

古川国務大臣 委員も御承知のように、今の日本の財政状況を考えれば、それは、やれるのであれば何でもやりたいという思いはありますが、しかし、限られた中で、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、どうめり張りをつけていくかということだというふうに思います。

 その中でもやはり災害対策というのは、今回の大震災も考えれば、重点事項の高い問題でありまして、あれもこれもという時代ではなくて、あれかこれかを選択しなきゃいけない時代になってきていると思います。

 そういった意味では、これは私どもとして、国民の皆様方にどういう形で例えば防災対策をするのがいいのか。今、委員のお話があったように、それは、二十メートルの津波が来ても大丈夫なような防波堤をつくるというのも一つかもしれない。あるいは、そういう津波が来ちゃったときは、もうそれ自体が押し寄せてくることはやむを得ないと考えて、しかし、それが来てもちゃんと逃げ込めるような施設をつくって、命は助かるようにすると。そうすると、財産は一瞬失うかもしれないけれども、命は助かる。しかし、それだったら、こちらだったらこれぐらいの費用がかかります、これだったらこれぐらいの費用がかかりますと。

 とにかく、やはり一番は命を守るということだと思いますから、そういう視点から、幾つかの防災のあり方についても、一つこれしかないというものじゃないと思います。もちろん、地域によってはちゃんと、何か大きな堤防をつくったりそういうことをしなきゃいけない地域もあるかもしれませんが、防災の対応としては幾つか選択肢もあると思います。やはりそういう選択肢を示しながら、限られた予算の中でめり張りをつけて予算配分をしていくということが大事じゃないかと思っています。

 特に、来年度予算なんかでも考えておりますのは、これは委員も御承知のように、かなり省庁によって、似たようなもので結構ダブっていたりして、ダブっているがためにどちらもちょっとしかつかなくて、全体として見ると、本当に効果を上げるようになっていないというところもあったりもしています。

 そういった意味では、私のところで、科学技術関係のところについては、関係府省の施策を俯瞰的に検討して、重複排除などを行って、本当に大事なもの、優先順位が高いものについて重点的に予算の配分が行われるような、そういう効率化を目指しておりますので、そうしたことをより加速していきたいというふうに思っております。

松野(博)委員 大臣御答弁のとおり、限られた予算の中ですべてはできません。一〇〇%ということは、もうこれはあり得ません。その中においてしっかりと予測をして、そして、起こったときに最も効率的に被害を少なくすることを考えるに当たって、科学技術の重要性というのは言うまでもないことでありますから、災害対策ということも科学技術の大きな柱としてお取り組みをいただきたいと思います。

 質問を終わります。

松宮委員長 次に、下村博文君。

下村委員 自民党の下村博文です。

 きょうは質問の機会をつくっていただきまして、ありがとうございます。科学技術・イノベーション推進特別委員会、初めて質問をさせていただきます。

 きょうは、二時四十分までが古川大臣で、四十分以降細野大臣が来られるということでございますので、古川大臣に対して質問を準備したんですね。

 民主党が野党のときには、かなりアバウトな、あるいは事前通告もしないことが多々ありましたが、私は、それは大臣に対しても失礼だと思いますし、きちっとした国会論戦をしたいということで、きのうかなり細かく質問通告をしたんですね。

 もちろん、委員会に応じた質問をつくったつもりだったんですけれども、これが、八割ぐらいは古川大臣の答弁ではないと。これは文部科学省にやってもらいたいとか経済産業省にやってもらいたいということで、この委員会の大臣に対する質問をつくったつもりだったんですが、ほかの委員会だったらほかの委員会で大臣に対してできるわけです。ここは、担当大臣はお二人ということですから、文科大臣なりほかの大臣を呼べるわけではありませんので。つまり、非常に縦割り行政が国会答弁の中にも出ているなというふうに思ったわけです。

 改めて大臣の肩書を見ましたら、国家戦略担当、内閣府特命担当大臣、経済財政政策、科学技術政策、社会保障・税一体改革担当、宇宙開発担当ということで、重要な幅広い担当をお持ちなわけですけれども、そもそも国家戦略担当というのはどんな担当なのか。

 きのうの質問も、国家戦略に関係することも含めて、そう細かいことを聞いているつもりじゃないわけです。もちろん、メーンは科学技術・イノベーション中心ですから。

 そもそも、国家戦略というのはどういう担当として位置づけられているのか、冒頭お聞きしたいと思います。

古川国務大臣 国家戦略室というのは鳩山政権のときに立ち上げて、国家戦略室の責務といたしまして、税財政の骨格、そして経済運営の基本方針、並びに、総理から重要な課題として御指示いただいた項目について企画立案そして総合調整を行う、これが国家戦略室の責務になっておりまして、そこを所管する大臣ということでございます。

 その上で、この二年間やってまいりましたこととしては、財政運営戦略を策定いたしましたり、毎年度の予算編成の基本方針の策定などを行ってまいりましたし、また、新成長戦略を策定したり、現在は、エネルギー・環境会議の議長やあるいは食と農業の再生の会議の取りまとめ役というようなことをやっております。

 そういった意味では、基本は税財政の骨格と経済運営の基本方針、そしてそのほか、総理から御指示をいただいたことについて担当大臣として仕事を行っているということでございます。

下村委員 国家戦略で、最も今喫緊の課題として早急な結論が問われているのがTPPですよね。これなんかは当然、国家戦略会議、国家戦略の、あるいは古川担当大臣の大きなテーマになると思いますが、どうですか。

古川国務大臣 経済運営、TPPを含める経済連携を推進する閣僚間会合の取りまとめを私もやっておりますので、そういった意味では、政府の中のこの問題についての議論の取りまとめというものをやっているという状況でございます。

下村委員 いや、私が聞いているのは、あなたは国家戦略担当大臣でしょう。国家戦略担当という意味では、TPPというのは最も重要な国家戦略ではないんですか。かかわっているというんじゃなくて、本来は、それについて最も責任を持って対応する大臣ではないんですかというふうにお聞きしているんです。

古川国務大臣 これは、国家戦略という言葉を狭義にとらえるのか広義にとらえるのかというところになってくるかと思うんですが、広義にとらえるとすれば、ある意味でそれは、今、委員がおっしゃるように、すべてが国家戦略ということになってくるかもしれません。

 このTPPを初めとする経済連携については、それこそ経済産業大臣やあるいは外務大臣、こうした、それぞれ所管する大臣もおります。そういう大臣などとも連携をとりながら政府として取りまとめていく、私は取りまとめの役割をやっているということでございます。

下村委員 本来は、国家戦略担当大臣が全面的に第一線で対処するべきテーマだと思いますね。

 民主党がさきの衆議院のマニフェストの中で、首相直属の国家戦略局の新設を掲げたわけですね。これも、民主党にとって大きな選挙のテーマだったというふうに思います。しかし、実際は、法改正が実現できず、国家戦略室を置いただけの中途半端な体制が続いてきたんですね。ですから、まさに中途半端な体制が今の答弁にも出ているのではないかというふうに私は思います。

 今回の国家戦略会議、この設置根拠も法律で定めているわけではありませんから、各省庁にどれだけ影響力を及ぼし得るのか、非常に未知数の部分が多いわけでありまして、果たしてどんなふうに責任を持って担当大臣がされるのかということについては、私は期待はしたいと思いますが、しかし、権限がなければ対応することができないわけですね。

 古川さんの大臣になる前のコメントで、こういうのが書いてあったんですね。なぜ民主党が掲げてきた政治主導が行き詰まったのかという質問に対して、大臣になる前の古川さんですけれども、一番の失敗の原因は、まず政府のガバナンス改革をやり、権限と人員を整え、体制ができてから政策を実行すべきだったのに、民主党が圧勝した高揚感の中で、何でもできると勘違いして戦線を拡大し過ぎてしまったのだというふうに語っている。私もそのとおりだと思います。

 政権交代直後に政治主導法案を出せなかった、民主党の政治主導が頓挫する、それが大きな敗因であるというふうに分析をしていまして、そのとおりだというふうに思っております。

 ですから、そういう中で国家戦略の担当大臣になったわけですから、当初の掲げた思いも含めて、しっかり対応してもらいたいなというふうに思います。

 具体的に、大臣発言があった中で幾つか一つずつお聞きしたいと思うんです。

 一つは、知的財産戦略の推進のところで発言されていましたクール・ジャパン戦略ですけれども、クール・ジャパン戦略については、我が国が困難を克服して再び立ち上がる決意をジャパン・ネクストというメッセージに込めて国内外に発信し、日本の文化、伝統と創造力を生かした新たな国づくりを進めますと。これは非常に賛同するところです。これをしっかりと、まさに国家戦略として取り組むということが、今後の我が国の盛衰を担っている重要なテーマだというふうに思います。

 ただ、これだけの発言で、具体的にどんなふうにするかということについてよくわかりません。もうちょっと詳しくこれについてお答えをいただきたいと思います。

古川国務大臣 我が国の歴史や文化の中で養われました美意識や創意工夫に基づく、クール・ジャパンと世界で称されるような、言ってみればソフトパワーと言えると思いますが、これはやはり世界に通用する知的資産として、我が国の新たな経済成長の原動力になるというふうに考えております。

 このため、内閣官房が中心となって、クールジャパン推進に関する関係府省連絡会議を開催して、クール・ジャパン・アクションプランを取りまとめさせていただきました。

 そして、六月には知的財産推進計画二〇一一を策定し、その中に、クール・ジャパン戦略を重点戦略の一つと位置づけて、クール・ジャパンの発掘、創造、発信、拡大、基盤整備について好循環のサイクルを確立し、経済成長につなげることといたしております。その一環で、今回、ジャパン・ネクストというロゴ、メッセージを決めたということでございます。

 具体的には、コンテンツやファッション、いわゆる食、住まい、観光とか地域産品、そういったものを効果的に組み合わせて、各国のニーズに基づくグローバルな展開戦略を策定し、推進することといたしておりますので、関係府省などと連携しながら取り組んでまいりたいと思っております。

 そのときに、私が特に感じますのは、例えば韓国とかあるいは香港、こういったところはもともとマーケットが小さいので、最初から、それこそ日本市場とか世界市場を想定したマーケティングとか戦略を立てております。

 ともすると、日本でクール・ジャパンと言われるのは、日本人がこれ格好いいねというふうに気がついたというよりも、むしろ外の人が、日本のこれいいじゃないかということで、逆に日本人以外のところでそうした価値が評価をされているというところもありますから、やはりこれは、我々日本の側が最初から、世界でクール・ジャパンと言われるようなものについて、まず日本の国内のマーケットだけじゃなくてグローバルなマーケットというものを考えるような、そうしたマーケティングとか戦略も立てていかなきゃいけないんじゃないか。

 そうした戦略を立てるように、そうしたマーケティングを行うように、そういったことも、民間のいわば目に見えないソフトパワーを持っている方々に対して促していきたいというふうに考えております。

下村委員 その促し方の問題なんですけれども、具体的にちょっとお話し申し上げたいと思うんですが、日展というのがあるんですよ。

 この日展というのは、もともと始まったのは明治から始まっているんですけれども、今、拡大をして、日本画、西洋画、彫刻、そして美術工芸、書、五分野において、全部で五千点ぐらいは展示されているというふうに思うんですが、私は毎年、国立新美術館に知り合いの方の作品が展示されてあって行くんですね。

 これは本当に財産として埋もれているなというふうに思います。日本画とかそれから美術工芸なんかも、本当にすばらしい作品がたくさんあるんですね。

 しかし、それぞれの分野においても、これだけでプロとして、職人として食っていける人は、その五千点の作品、つまり五千人から、実際はもっと何万という方の応募があるわけですけれども、数十人もいないだろうと。ほかの仕事をしながらそういう作品をかいていたりつくっているということで、なかなかこれで食っていくのは大変なんですね。

 しかし、一つ一つの作品を見ると、これは本当に世界の中で通用するなと。ただ、その情報がないから、これだけ日本の美しい伝統工芸とか日本画とか、これは世界の人たちが目に触れる機会がないので評価されていない。しかし、個々の職人的な人たち、個々の人たちが世界に発信するというのはなかなか無理なんですね。個人企業、中小零細企業が海外進出がなかなか難しいのと同じです。

 ですから、まさにこれは国を挙げて、国家戦略としてそういうことをどう世界に対して発信していくかという中で、例えば画家の方々に言われたんですが、日本の六本木の国立新美術館だけでなく、パリでやるとかニューヨークでやるとかあるいは北京でやるとか海外でやる。

 しかし、その団体や関係者の人たちはそれだけのノウハウもないし力もないし、なかなかやれない。こういうのが、例えばの話、いろいろなそういう、日展だけじゃないわけですけれども、国がバックアップして、とにかく世界の人たちに見てもらう、そして、そこから新たなビジネスをスタートさせるというフォローも含めてやっていったら、これは日本の大きな芸術文化国家としての成長戦略の位置づけにもなるのではないかというふうに思っております。

 ぜひこれは担当大臣として進めていただきたいと思いますが、いかがですか。

古川国務大臣 多分、直接の担当は文化庁とかになるんだと思いますが、今、委員から御指摘があったように、なかなか個々人では、それこそ、これは絵の世界だけじゃなくていろいろな分野、小さいところですばらしい技術を持っている、しかしなかなかそれを外に伝播できていない。これは、こういう文化芸術だけじゃなくて、例えば中小企業の持っている技術なんかもそうだと思います。

 そういった意味では、大企業と違って世界戦略を打てないようなところにどうサポートしていくかということは、やはり政府として考えていかなければいけないことだと思っています。

 特に、今、委員から御指摘のあった芸術作品などのところでいえば、委員も御存じのように、浮世絵が印象派に影響を与えた。これは別に浮世絵としてヨーロッパに渡ったわけじゃなくて、陶器に浮世絵がいわば新聞紙のかわりで使われていた。それが渡って、その陶器を包んでいた浮世絵を見てすばらしいというので評価が上がったというようなこともあるわけでありますから、今おっしゃられたような芸術作品というのは、これは日本の伝統文化を示すクール・ジャパンの重要な構成要素の一つではあるというふうに思っています。

 そういった意味では、そうした、小さいかもしれない、あるいは世界に自分たちで売り出していく力はないかもしれない、そういうところをちゃんと見つけ出して世界へ売っていく、そしてアピールしていく。これは、政府としても、さまざまな機会やあるいは方法を通じて考えていかなければいけないことだというふうに思っておりますので、今の委員の御指摘なども十分踏まえた上で、今後、クール・ジャパンという形で、そうしたものを世界にどう発信していくのかということについてはしっかり検討してまいりたいというふうに思っております。

下村委員 この質問も、事前通告のときに、今、古川大臣が一義的には文化庁ではないかというふうに言われましたね。実際、担当役人もそう言ったんですよ。だから文部科学省に聞いてくれと。

 これは文部科学委員会でもやったんですよ。文化庁でもあるいは文部科学省でも、それはいいですねとは言いますけれども、なかなか、実行するだけのパワーもないし予算もないし、また、そもそも文化庁だけでやれる話じゃありませんから、実際は、いいですねだけで終わってしまっているんですよ。

 こういうことこそ、古川さんが大臣になる前に発言をしていたように、まさに政治主導じゃないですか。

 政治主導が頓挫したという要因の中で、これからしっかりと縦割り行政の中でどこがやるとかいうことじゃなくて、政治主導で、トップがリーダーシップを持ってどうするかということが問われているわけであって、なかなか、役所がやろうと思っても、やりたいとは思っていますよ、それぞれ。しかし、予算の問題とか権限の問題とか、それからトータル的なコーディネート力になると、一文科省や文化庁だけでできる話ではないんですね。そうすると、まさにこういうことこそ、オール・ジャパンとして政府がトータルで取り組まなかったらできないということなわけです。

 ですから、こういう意味では、とにかく国家戦略担当大臣という名前がついているわけですから、またまた、当初からそういう思考、発想を持っておられた方なわけですから、ぜひこれは、クール・ジャパンというのをどうしていくかということについては、一つの事例だけで申し上げましたが、ほかのことも含めて、これは関係省庁だけでやれる話じゃないですよ。まさに、官邸主導でしっかりと政府が挙げてやっていかないと対応できないことだと思いますが、いかがですか。

    〔委員長退席、高井(美)委員長代理着席〕

古川国務大臣 大変いい御質問をいただきました。

 まさにここは、委員も副長官をやっていらっしゃいましたから御存じだと思いますが、官邸には広報室というのがありまして、今まで、国際広報というのは副広報官一人だけだったんですね。委員が副長官のときはそうだったと思います。私が副長官のときに、対外的な発信というのは、各省庁ばらばらじゃなくて、きちんとまとめていかないといけないだろう、そして、官邸がやはりそこはグリップしなきゃいけないだろうということで官邸の広報室に国際広報室というのを設けて、スタッフも置いて、そして、官邸のところで、各省庁ばらばらにやるんじゃなくて、一元的に、各省庁が対外的なところで発信していこうとしているもの、事業とかそういうものもきちんとチェックして、関係省庁連絡会議なんかをつくってグリップして、こうしたことは国としてまさに重点を置いてやっていきたいことだからここに特化しろとか、そういう指示を出すようになりました。

 そういう中で、まさにこのクール・ジャパンの取り組みについても、これは私の方からしっかり官邸の国際広報室と連携をとって、ここの指示のもとに、各省に対しても、こういう視点で重要だと思われるものを国際的にもPRしていく、そうした努力をするようにという指示を出したところでございます。

 そういった意味では、まさに委員御指摘のように、官邸主導で、各省ばらばらじゃなくて、日本のプレゼンスをどう高めていくのか、そして、日本の魅力をどう世界に伝えていくのか、そうした体制がようやくできて、今スタートしているところでございますので、ぜひまたそれを御支援いただければというふうに思います。

下村委員 古川大臣が官房副長官のときもやはり広報の大切さというのを発言されておられたので、またきょうもその話が出たので申し上げるわけですけれども。

 広報も大切ですよ。実際、私が官房副長官のときも、総理補佐官の一人は広報責任者でした。それから、当時の広報官というのは、次官の次レベルの非常に優秀な人をほかの省庁から持ってきて、担当でつけていました。

 しかし、そういう広報レベルの問題ではなくて、権限を持ってどうやり切るか、その資金的な部分と権限的な部分、法律的な部分も含めてトータル的な力を持たないと、これは実際はできない話なんですね。

 そういう意味で、民主党が当初選挙公約の中で掲げた国家戦略局を置くということは、私は大賛成ですよ。縦割り行政の弊害というのがこういう大きな時代変化の中で対応できない中で、やはりオール・ジャパン、政府として官邸主導の中でやるべきものをしっかりやるということは絶対必要なことなんですね。

 このことについて、実際はつくれないから、今回、国家戦略会議を開くということですが、ちょっと冒頭お話を申し上げましたように、果たして国家戦略会議がそういう趣旨で本当にできるのかどうかということについては非常に疑問です。先ほど申し上げたように、TPPだってテーマに入らないし、それから、税と社会保障の一体化も入らないというふうに聞いていますし、この国家戦略会議というのをどんなふうに位置づけようとお考えか、あればお聞きしたいと思います。

古川国務大臣 これは午前中の質疑でもあったんですけれども、TPPやあるいは社会保障と税の一体改革、入らないとか報道はされておりますけれども、そういうことはありません。

 この国家戦略会議では、総理から御指示があったのは、日本再生戦略を年内にまとめてほしいと。ですから、その日本再生戦略をまとめる上で関係のあるようなものについては、TPPを初めとする経済連携の話やあるいは社会保障と税の一体改革の話も、当然それに関連する分野では議論していくことになろうかと思っています。

 そして、今、委員から大変心強いお話をいただきました。国家戦略局、賛成だというお話でありました。我々も、法案をおろしたのは決して本意でおろしたわけじゃなくて、震災対応を優先するという中で、本当に断腸の思いでおろさせていただいたわけでございますが、もう一度、国家戦略室を局に格上げすると同時に、この国家戦略会議もきちんと法定化する法案を、できるだけ皆様方の御理解もいただくような形でまとめて国会に提案したいというふうに私は思っておりますので、その折にはぜひ御協力をいただければというふうに思っております。

下村委員 ことしの八月十九日に第四期科学技術基本計画が閣議決定されました。本来であれば三月だったわけですけれども、今回の東日本大震災が起きたことによって、これについてさらに検討を加えるということで半年間延びたというふうに思います。

 その中で、被災地の復興再生を加速するためにどうするかということについて、この科学技術基本計画の中でしっかりと対応していく必要があるのではないかと思います。具体的に、特に東北地方、被災地を中心に、ここを科学技術的な部分をバックアップしながらどういう復興復旧を、目先だけでなく長期的な視点の中でしていくかということは非常に重要なことであるというふうに思います。

 この中で、例えば再生可能エネルギーに着目して、太陽エネルギーをどうしていくか等、重点的に、それは全国津々浦々していくというのはなかなか大変な話ですから、まず、この東北地方に科学技術的なターゲットを絞って戦略的に取り組むということをぜひすべきだというふうに思いますが、このことについて担当大臣としてどんなお考えがあるか、お聞きしたいと思います。

    〔高井(美)委員長代理退席、委員長着席〕

古川国務大臣 我々も、委員の問題意識と全く同じ認識を持っておりまして、被災した地域を中心に、地方公共団体、大学、公的研究機関、産業界等が連携して、特区制度なども活用しながら、再生可能エネルギーなどについても、官民の関連研究機関が集積した新たな研究開発、イノベーションの国際的拠点の形成に向けた検討を進めることが重要だというふうに考えております。

 そのため、東北地方の大学等の研究機関の再生エネルギー分野への取り組みを後押しすることで、世界的な研究拠点を東北地域に実現し、関連産業の集積を通じて産業の復興にも貢献する東北復興次世代エネルギー研究開発プロジェクトを、平成二十四年度科学技術重要施策アクションプラン、復興再生並びに災害からの安全性向上に位置づけたところでありますので、ぜひ、委員が御指摘になるような思いを共有して進めてまいりたいというふうに思っております。

下村委員 これも具体的に提案を申し上げたいと思うんですが、国際リニアコライダーです。

 これは自民党の文部科学部会のときに、被災地三県の方々に、今政府で検討している第三次補正予算の中で十分でないもの、さらに追加で必要なもの等々を意見聴取しました。この中で、岩手県が国際リニアコライダーについて強く要望されておられました。

 これは、我が国の素粒子物理学の分野で多くの実績を上げている中で、この国際リニアコライダー、ILC、全長三十一キロから五十キロの直線衝突型加速器を中心とした大規模研究施設のことで、世界じゅうの研究者が協力して、世界で一カ所だけ建設するということで今検討されているわけです。その候補地として、我が国においては、非常に地盤が安定しているということで、東北の北上山地とか九州の脊振山地の二カ所、候補地として挙がっているというふうに聞いております。

 このILCでは、高速近くまで加速した電子と陽電子を衝突させ、質量の起源や宇宙誕生のなぞを解明する研究を行うことになりますが、そこで得られたノウハウは、基礎科学の発展だけでなく、医療技術やナノテクノロジー、高度の建築技術等への応用も期待をされているということでございますので、ぜひ、政府としてもILCの科学技術・イノベーション推進について進めてほしいと思っておりますが、担当大臣としてはどのような認識を持っているか、お聞きしたいと思います。まず、大臣にお聞きします。

古川国務大臣 今、委員からお話があった岩手県の話というのは、多分、委員と同期当選になるのかもしれませんが、達増知事が私が岩手を被災後に訪問したときにも熱く語っておられました。ですから、そういった意味での思いというものは私も十分認識をしているつもりでございます。

 今、御指摘がございましたように、国際リニアコライダー計画というものは、宇宙誕生の起源解明だけでなくて、応用への発展などの期待もあって、これは内容的には大変興味深いというふうに考えております。

 現状としましては、本計画については、国際協力のもとに行われる大規模な計画であって、研究者レベルで国際的な設計活動や検討が行われている段階と認識をいたしております。

 一方、国内におきましては、文部科学省の審議会において一連の大型プロジェクトが検討された際、その一環として、この計画につきましても幾つかの課題が示されたというふうに聞いております。

 したがいまして、こうした国の内外の動向や研究の状況を見ながら議論を進めていくことが大事だというふうに考えておりまして、今後の推移を注視してまいりたいというふうに思っております。

下村委員 ただ、コストが非常にかかるわけですね。このリニアコライダー建設にかかる費用が約八千億円と見込まれている。さらに、維持運営費がかかるということで、非常に今財政厳しい中、莫大な負担にもなってくるわけです。

 しかし、今、大臣から御指摘があったように、今現在、世界最大級の加速器があるフランス、国際的に一緒にやろうとしているわけですが、フランスのCERNにおいては、加速器をつくる資金に対して三倍の経済効果があると言われ、また、ILCの経済効果を、初期十年間における直接経済効果と経済波及効果の合計で約五兆二千億円と分析をしている研究者もいるわけです。

 とりわけ、ILCを東北地方に誘致するということは、東日本大震災からの復興に大きく貢献することになるわけでございまして、文科省の方が予算を調査費として計上しているということを聞いておりますが、どこにどうやってどれぐらい計上しているのかというのはつまびらかでないんですね。これについての具体的な予算的な取り組みについて、また今後どんなふうに推進しようとしているのか、お聞きしたいと思います。

倉持政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、国際リニアコライダー計画でございますけれども、まさに今、委員御指摘になりましたような、今CERNで、質量の起源とされるヒッグス粒子を見つけようという研究が国際協力でやられていまして、見つかった後に、そのヒッグス粒子の性質の解明をしようということで計画されているプログラムでございまして、今、古川大臣からも御答弁いただきましたように、研究者が国際的な設計チームを形成しまして研究活動を進めている、こういう段階でございます。

 したがいまして、今私どもといたしましては、我が国の研究者は、そういう研究活動、高エネルギー加速器研究機構を中心として要素技術の研究開発等に取り組んでおりますので、そういったものを支援しておりまして、二十三年度予算につきましては、いろいろな、高エネルギー加速器研究機構の運営費交付金であるとかあるいは科研費補助金等を用いまして、約二十六億円程度の予算を関係予算として使わせていただいているという状況でございます。

 今回、震災もございまして、岩手県からのそういう御要望もございました。まさに、高エネルギー加速器研究機構もいわば今回の震災で被災した面もございまして、そういうところで行われております先端的な加速器についての研究開発のおくれを取り戻さなければいけない。あるいはまさに、地元からの御要望もございますように、震災がありましたけれども、その後の地質の状況を評価する必要があるということで、第三次補正予算におきましては、高エネルギー加速器研究機構の要請に基づきまして、同機構への運営費交付金として五億円計上させていただいております。

下村委員 よろしくお願いしたいと思います。

 それから、古川大臣にiPSについてもお聞きしたいと思うんですが、iPS細胞の研究は、国際競争の激しい中、我が国では京都大学を初めとする多くの研究機関において精力的に進められております。

 もともと、京都大学の山中教授は、自民党の世耕参議院議員の中高校の同級生なんですね。全然、これがまだ有名になる前に、まだスタートして、今から八年ぐらいだと思うんですが、こういう研究をしている、しかし、京都大学だけの予算では限られていて、世界じゅうが競争しているから、自分たちが今最先端だけれども、あと何年かしたらあっという間にほかの国の研究開発機関に追い抜かれてしまう、ぜひ国が全面的にバックアップして力を入れてほしいという要請がありました。我々も、そういう意味で、それなりには協力をしたつもりです。

 このiPS細胞の研究がさらに進めば、患者の細胞から神経や筋肉などさまざまな組織の細胞を作成することが可能になって、ありとあらゆる、皮膚損傷とか若年性糖尿病、心筋梗塞、白血病、骨粗鬆症等の疾病を治療する再生医療、これを飛躍的に発展させる可能性があるということで世界じゅうが、各研究機関や大学レベルの話じゃなくて、それぞれまさに国家戦略として取り上げるというような状況の中、ぜひこれは我が国において、国を挙げてこのiPS細胞の研究を進めるということが非常に重要だというふうに思っておりまして、このことについてのさらなる促進、どんな戦略を持っておられるか、お聞きしたいと思います。

古川国務大臣 委員、今御指摘がございましたように、私も、iPS細胞は当初から、これは大変すそ野の広い、そして潜在的な可能性が極めて大きい、国民の健康に寄与するだけじゃなくて、経済成長の力強い牽引力にもなり得るというふうに認識をいたしております。

 私自身もこの前、十月二日に京都大学のiPS細胞研究所を訪問して、山中教授にもお目にかかりましたし、また、実際に私も自分の目で、これがiPS細胞ですというのを見せていただいたりもしました。

 そうしたiPS細胞の研究が含んでいる非常に大きな可能性というものも十分念頭に置いて、総合科学技術会議で、平成二十四年度概算要求に向けた科学技術重要施策アクションプランにおきまして、再生医療研究開発を重点的取り組みの一つとして掲げ、研究の推進を図っております。

 その中で、このiPS細胞等を活用した再生医療技術の早期実用化を目指して、関係省庁との緊密な連携のもと、先ほどもお話があったiPS細胞を用いた難病の克服や創薬、あるいは人工臓器、周辺装置の開発など、産学官の研究開発を適切に、これは知財戦略とか国際標準化戦略、そういったものも含めて推進してまいりたいというふうに考えております。

下村委員 ぜひ促進をしていただきたいと思います。

 細野大臣が来られましたので、お聞きしたいと思います。

 東京電力福島第一原発事故による放射性物質の除染、汚染廃棄物処理に関することでありますが、当初、五ミリシーベルト以上の地域一帯を面的に除染するということでしたけれども、関係自治体から強い抗議、要望があって、五ミリシーベルト未満も国の責任で除染すべきという声を受けて、年一ミリシーベルト以上を追加被曝線量というふうにしたというふうに聞いております。

 この除染を確実に進めるために、放射性物質で汚染された土壌などを管理する施設の確保は欠かすことができないわけでありまして、政府は、除染で出る廃棄物について、地域ごとの仮置き場で三年程度保管し、その間に中間貯蔵施設を建設することを決定したということも聞いております。

 しかし、中間貯蔵施設といっても、中間が実際は数十年に及ぶ可能性が高いのではないかというようなことも指摘されているわけです。

 また一方、この中間貯蔵施設に関しては、毎日新聞の調査では、除染を実施する自治体の半数近くが設置は受け入れられないというふうに答えているわけでありまして、福島県内だけで見ると半数を上回ったというような状況がございます。

 これは、やはり政治の怠慢だと思うんですね。ですから、一日も早く除染をして、そして汚染廃棄物についても処理をするということを、本当に誠意を持って地元の方々に対して説明しながら進めていくということが細野担当大臣の役目であるというふうに思いますが、まず、多くの自治体が中間貯蔵施設の設置に反対している中、どのように中間貯蔵施設を設置して除染作業を進めていくのか、また、自治体に対する説得をどうこれからしようとしているのか、お聞きしたいと思います。

細野国務大臣 今、福島そして日本全体において、除染というのが極めて重要な位置づけになっているというふうに思っておりまして、この除染を進めるためには、どうしても土壌が出てきますから、それを仮置きしなければならない、そういう状況になっております。

 この仮置き場の設置に今一番苦労をしておりまして、仮置き場が決まらないものですから、逆になかなか除染が進まない、そういうジレンマに今各地が苦しんでおります。

 そこで、仮置き場をつくるためには、ある一定の期間がたてばそれが取り除かれる、取り除かれる場所というのは中間貯蔵ということになるわけですから、その場所の確保というのが今かぎになってきている、そういう状況でございます。

 今月中にはロードマップをお示しするということで、専門家の意見も聞きながら、関係者といろいろな調整をしてまいりました。来週月曜日が月末でございますので、今、詰めの作業という段階でございます。

 ですので、地元の皆さんも含めたいろいろな調整はもちろんしておるのですけれども、やはりその基礎となるべきは、具体的な中間貯蔵施設のイメージ、姿だと思うんですね。ですから、今度のロードマップの中では、中間貯蔵施設というのはこういうものなんだということをしっかりお示ししたいと思います。

 それは、単なるごみ捨て場ということではなくて、安定的に安全に廃棄物をしっかりと保存することができる場所なんです。そして、それは研究開発の場所でもあって、減容化をしたり、さらには放射性物質を取り除いたりすることによって、新たないろいろな開発も行わなければならない、そういう研究の場所でもあるんですね。そういうイメージをできるだけしっかりと持っていただけるようなロードマップをお示ししたいというふうに考えております。

 ロードマップをお示しした後は、では具体的にそれがどこにできるのかということについて、地元とさらに協議をしていかなければなりません。それは簡単な作業だとは思っておりませんけれども、除染を実行するためには避けて通れない道でございますので、できるだけ丁寧に御説明をして、対話を欠かさずに行うことで、何とか福島の皆さんに御理解をいただきたいというふうに考えております。

下村委員 これは余りにも遅いんですよ。

 三月十五日に事故が起きてから、自民党においてはもう五月から、馳さんが事務局長になって関連部会長が集まって、放射性物質汚染対処特別措置法、これは八月に環境委員会で成立をしましたが、我が党はもう五月から対応を検討していたんですね。本来は、政府がその時点ぐらいに国会提出をすべき法案であって、議員立法レベルの話ではないというふうに私は思います。それが全く対処できていなかったものですから、やむにやまれぬ思いで我々もしっかりと五月から対応をしてきた。

 それでも、成立したのは八月ですから遅いわけですが、しかし、完全施行は来年の一月ということで、本当に、被災されている方々にとっては、一体国は何をやっているんだという怒りの思いというのを持っておられるというふうに思うんですね。

 この除染それから中間貯蔵施設について、それはいろいろな思いは持っておられるでしょうけれども、早く対応しなければ、自分の住んでいるところに帰ることもできないという方々もたくさんいるわけです。ましてや中間ですから、では、これからその最終処分場をどうするのかということも明らかになっていませんよね。

 担当大臣として、この最終処分場、これはいつごろまでに、どんなイメージで、どんなふうにつくろうというふうに考えておられますか。

細野国務大臣 きのう、実は、福島県の原発のある地元の方々が来られまして話をいたしました。当初は、中間貯蔵施設受け入れを拒否するということで、そういう要望書をつくっておられたんですけれども、最終的に、来る段階になって、皆さんで話をされて、中間貯蔵施設については受け入れもやはり考えなければならないのではないか、そんなお話をしてお帰りになりました。

 私も、特にことしの、遅いとおっしゃるかもしれませんけれども、八月、七月の終わりごろからでしょうか、このことが一番難しいだろうというふうに考えまして、このことに最大の時間を費やしてまいりました。

 その中で申し上げると、やはり福島の皆さんのこの思いはもっと理解をすべきだと思うんです。というのは、東京を含めた首都圏に電気を供給してきた、我々はその支えをしてきたんだと。その中で、こういう事故が起こって、避難しなければならない状況になったわけですね。

 そういった皆さんが、それも乗り越えて、やはり貯蔵施設も必要じゃないかというふうにおっしゃっているというこの重みを、私はもっと自分で重く受けとめなければならないと思いましたし、できれば、国会議員の皆さんにもお考えをいただきたいし、国民の皆さんにもそうした思いを感じていただきたいなというふうに思っております。

 したがいまして、最終処分の場所というのは、やはり福島の皆さんにそこまで押しつけることはできないのではないかという、出発点はそこにございます。

 そこで、ロードマップでできれば最終処分の方向性についても示したいというふうに思ったわけでありますが、今、最終段階の詰めを行っておるんですが、やはりそこは、技術的なことも含めて、示し切ることは難しゅうございます。

 したがって、中間貯蔵の整備まではお示しをして、そこから先、最終処分については、その段階でしっかりと次の段階として考えていく、そういうロードマップになります。

 ただ、イメージはございまして、例えば中間貯蔵いたしますが、これを減容化したりセシウムを取り除く技術というのは、結構いろいろ要素の技術としてはございます。今回これだけの放射性廃棄物が出ますから、そういう要素技術をどんどん育てて、確実にそれを減容化することは恐らくできると思うんですね。それができた段階で、ではそれを安定的に保管できるのはどういう場所なのか。

 残念ながら、日本の場合には、ごくごく低レベルの廃棄物以外は最終処分場はありません。六ケ所にごくごく低レベルのものだけありますが、ほかには、最終処分についてはこれまで最終的に示されたことはないわけですね。ですから、これから一定の期間をかけてそういったことについて検討した上で、最終処分のあり方については改めてお示しをする、そういう形でまいりたいと考えております。

下村委員 いわゆる廃棄物ですが、東京都も受け入れるということを表明したんですね。

 これについて、私、選挙区が東京の板橋で、私の地元の人から、東京都が受け入れることはけしからぬというふうに私の事務所にも抗議の電話がかかってきましたので、基準以上の汚染された廃棄物であれば、それは簡単に受け入れるというのは難しいけれども、しかし、基準内であれば、受け入れるものはやはり受け入れるという東京都の姿勢を私は支持したいということを丁寧に説明したら、わかっていただきました。

 そういう意味で、やはりお互いに助け合いながら対応していくということですけれども、やはり主体は国ですから、国がしっかりと、福島県民の方々に対してもあるいは周辺の方々に対しても、誠心誠意対応するということが問われているんだろうというふうに思います。

 その中で、実際の課題としての除染の問題ですけれども、放射性物質の除染に必要な技術の研究開発、具体的にどのような体制でどのように取り組もうとしているのかということについて、児玉龍彦東大教授が七月二十七日に厚生労働委員会で怒りの発言をしたのが、ネット上で相当評判になりましたよね。この中で、現地に直ちに除染研究センターをつくれというような提案もされておられました。

 今、この除染について、どんな体制でどのように取り組みをしているのかお聞きしたいと思います。

細野国務大臣 恐らく、政府の関係機関の中で最も除染について検討が進んでいるのは、原子力研究開発機構、いわゆるJAEAだというふうに思います。これは文部科学省所管の独立行政法人ですが、現地に数十人の部隊を送り込んで除染の活動をすると同時に、いろいろな研究開発をしています。ここは数千人の研究部隊を抱えていますから、福島以外のさまざまな研究所も含めて、さまざまな除染の技術について検討していただいて技術開発をするという役割を今担っていただいております。

 もちろん、環境省が所管をいたしますので、環境省としても、研究開発のあり方についてはしっかり考えなければならないというふうに思っておりまして、実際に予算もつけて今準備をしております。

 ただ、やはり放射性物質ということになると一日の長がJAEAにございますので、これはどこの所管ということではなくて、そこを一つの拠点としながら、政府全体でしっかりと検討していくという体制をとりたいと思っております。

 実際、非常に多くの提案がございまして、私のところだけでも、除染の提案は恐らく数十から場合によっては百ぐらい来ているかもしれません。全体としては恐らく数百以上来ているかと思いますので、そういった中には使えるものもかなりあるというふうに考えておりますので、必要なものをできるだけ実際に実験してみて、そして現実にやっていくという形で取り組んでまいりたいと考えております。

下村委員 私のところにも、除染対策で民間の方々からいろいろな提案がたくさん来ているんですね。関係省庁に紹介をしているんですが、ことごとく断られているんです。すべてがうまくいっていない。これは、児玉教授が現地に直ちに除染研究センターをつくれと言っているのと同じように、既存の組織ではもう対応できないんですよ。除染の実施について、国、地方自治体、それからさらに民間企業、大学、そういうところとさらに一体化して連携して対策を進める必要があるのではないかと思うんですね。

 そういうコントロール的なものをどうつくっていくかということで、具体的に民間企業の方々のクレームといいますか、心配事についてちょっと代弁しますと、一つは資金の問題がある。東北復興支援の資金、例えば農地の復旧復興に当たって反当たり二十万円出ると発表されたけれども、いつ出るのか、分割あるいは一括支給になるのか等、細かいことについては全く未発表のままで、現地は全く動けない状況だ。これらを発表すれば、地元は計画的に行動して、また、精神的なその辺も軽減されて、対応することができるのではないかという資金の問題ですね。

 それから、例えばそういう新技術の実証試験のための公的資金を前払いする仕組み。これは、実際、新技術については技術評価を事前調査で行っている。事前調査で技術評価しているわけだから、資金も前払いでやってもらえればそれについて着手できるけれども、民間にとっては、特に中小企業にとっては、補助金が後払いということで、ちゅうちょしてなかなかスタートできない、ノウハウはあるけれども経営的な問題でスタートできない、こういう問題があるということで、これも、技術評価と同じように、事前審査でオーケーになるのであれば事前に公的資金も出してほしい、こういうようなこと等が出ております。

 この資金の問題に対してどんなふうに手当てするかということも、さらに民間のノウハウをより活用するという意味では大変重要なことだと思いますが、これについてはどうお考えになりますか。

細野国務大臣 今、恐らく個別の事例を引いておっしゃったと思いますので、事実確認できれば、させていただきたいというふうに思います。

 恐らく、多くの中小企業を初めとした皆さんの方からの御提案というのは、実際に事業化される前に、技術的なところで例えば結局は実用化されないという形で、受け取る側からすると却下をされるということになっていたり、十分なきちっとした返しがなく、いつの間にかうやむやになっていたり、そういったものもあると思うんですね。ですから、そういったものについてしっかり検討して、しっかりとお返しをするような仕組みはつくらなければならないというふうに思っております。

 あとは、例えば、そういう段階であるものについて、どれに予算をつけてどれを実際にやってみるのかという判断は極めて難しゅうございまして、やはり専門家に任せなければなりませんので、そういう仕組みの中でうまくそれを活用するお金の回し方がないかどうか、もう一度考えてみたいというふうに思います。

 私も相当数提案をもらって、どうなんだということで時々問い合わせをすると、これはちょっとこういうことで難しいんですとか、これはなかなか実用になるとコストがこうなんですとか、そういう答えが多いものですから、もう一度、皆さん善意で御提案いただいている方が多いですから、そういう善意を生かすことができるように確認をしてみたいというふうに思います。

下村委員 私が紹介したところはすべてだめになっていますから。ノウハウがあるにもかかわらず、なかなか、実践の場になるといろいろなハードルがあって、せっかくの善意が実現できていない。結果的には、もう政府に頼らないで、民間レベル、現地に行って、そして、求める人たちに対してほとんどボランティアのような形でフォローしているというところが実際はほとんどだということで、今までの仕組みの延長線上では解決できないということで、もう一度、オール・ジャパン的にその人たちのノウハウをどう生かせるかということについて、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。

 それから、環境大臣でもありますのでお聞きしたいと思うんですが、経済産業省の原子力安全・保安院、それから文部科学省の放射線規制部門、これらを統合した原子力安全庁、仮称ですけれども、これが来年四月に環境省の外局として設置される予定となっています。

 原子力発電の規制と推進を分離させ、規制を徹底させることがそのねらいであるというふうにされているわけですが、しかし、環境省は今まで原子力行政に全く関与してこなかったわけですね。ですから、我々自民党も、環境省の外局にこの原子力安全庁を設置することが本当にベストなのかということについては、相当の議論がありました。つまり、実効性の観点からいろいろな課題がある。

 当面は、経産省や文科省からの出向者に頼らざるを得ない状況である。そもそも今、環境省の職員でも、全部足しても千百人ぐらいしかいないわけですから、この同じぐらいの人数が必要になってくるというふうに思うんですね。そういう中で、省の統制がうまく機能するのか。原子力安全庁は、事故発生時の初動や核テロ対策等の重要な危機管理を担当することになるわけですから、組織発足のときの初期段階とはいえ、組織的な混乱によって事態を深刻化させることは許されないことであるというふうに思います。

 原子力安全庁をどのような組織にするかということで、今月四日に、有識者から意見を聞くための原子力事故再発防止顧問会議、こういう初会合を開いたそうですが、そのときにおいても、発足時における確実な機能づくりをどうするかという議論があったというふうに聞いております。即効性、実効性のある組織づくり、これはまさに政治主導でしっかりやらないと、ただ単に別のものが原子力安全庁でできただけ、実態的には変わらない、あるいは機能しないということになりかねないと思いますが、このことについては担当大臣として今どう考えているか、お聞きしたいと思います。

細野国務大臣 この原子力安全庁をつくる際は、組織のあり方として主に二つ議論をいたしました。

 一つは、委員会形式にするか、もしくは行政庁、行政機関としての扱いにするか、こういう論点でございます。

 今回私どもが提示をいたしましたのは、委員会形式というのは、確かにいろいろな、例えば三条委員会の独立性の高いものというのは我が国にも幾つかあるわけですけれども、そういった意味で、確かに比較的好まれて使われてきたやり方ではあるけれども、危機管理という面でいうと、なかなか大臣の指揮系統でしっかりと動くということが難しい面があるだろうというふうに考えまして、そこで行政庁という考え方をとりました。

 もう一つの考え方は、内閣府に置くか、もしくは環境省のもとに置くか、ここについても検討いたしました。結論としては、環境省に置くことにいたしました。

 理由は二つございます。

 まず一つは、今回の事故の最大の問題の一つは、推進側と規制側が同じところにあった、資源エネルギー庁なり経済産業省のもとに保安院があったというところにあるわけですね。そこから独立をさせたい。独立をさせるときに、内閣府に置いておくと、幾つかの組織が若干そういう傾向があるわけですが、大体、なかなか人がそこで採用できなくて、親元を見ながら、ほとんど植民地支配のようにさせられていて、十分な独立性が確保できないのではないかということを懸念いたしました。これが一つ。

 もう一つは、まさに環境省に置いた理由でもあるんですけれども、やはり環境省という役所は、今、廃棄物と除染で闘っております。これは、我が国においても、歴史上究極の環境汚染とも言えるものです。それに対応している環境省だからこそ、安全規制を高めることができるのではないか。その上で、植民地支配ではない形で、環境省の中で、確かにこれまで放射性物質を扱ったことはないわけですが、きちっと人事を回して人を育てることができれば、それは立派な機関にすることができるのではないか、こういう観点から、環境省のもとに置くとしたところでございます。

下村委員 時間になりましたので終わりにしたいと思いますが、ぜひ、環境省としての本来のスタンスで、原子力問題について厳しくチェックするということがそのあり方であると思いますので、対応をしていただきたいと思います。

 終わります。

松宮委員長 次に、遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 細野大臣に質問させていただきます。

 大臣は大変重大な任務を引き受けられまして、冷温停止作業、そしてまた福島の人々の不安を取り除く作業、大変重大な任務を引き受けられ日夜奮闘されておられることは、私たちも高く評価をしているところでございます。また、世界じゅうがかたずをのんで福島原発の行方に注目をしております。ぜひ、今後ともさらに精励をいただきますよう、心から期待をしたいと思っております。

 そこで、実は私ども、私自身も今議運にも所属をしておりまして、先般、議運としてチェルノブイリ等に調査に行ってまいりました。本来であれば議運は、議会制度調査とか議会交流といった一般的なテーマなんですけれども、今回はチェルノブイリ事故等調査団ということで、議運としてそういった非常に特殊なテーマで行ってきたわけでございます。

 そもそも、先般の臨時国会におきまして、国会に事故調査委員会を設置するという大変画期的なことが決まりまして、その関連で、これは議運が中心となってやってきたものですから、また、今後とも議運が両院合同協議会の形で参画をするものですから、ぜひとも、こういった事故の現場を知る必要があるということで行ってきたわけでございまして、チェルノブイリあるいはまたIAEA等に行ってまいりました。

 この委員会でも、河井委員とか吉井委員も参加をされまして、超党派で十三人の方が行かれまして、大変有益な、またある意味では非常に衝撃を受けた出張であったということでありまして、その所感も含めながら質問をしていきたいと思っております。

 多くの方がほとんど同じような印象を受けまして、私なりにまとめますと三点。

 一つは、チェルノブイリの事故というものが日本で受けとめられているよりはるかに広範に、またかつ深刻な被害が生じておりまして、今も続いているということを改めて認識いたしまして、国際機関等の発表している報告等とは大きくかけ離れている、改めて再調査が必要ではないかということを全委員が痛感したわけであります。これが一点。

 それから第二点に、原発事故の問題。原子力安全といいますと、どうしても原発の構造の安全性、どうしたら事故を起こさないかという面に非常に目が行ってしまいますが、実は、ある意味ではそれ以上に重大なテーマが低線量の放射線が及ぼす健康被害、住民をそういったことからどう防護するか、これが極めて重大なテーマであるということを改めて認識いたしました。現に、数百万の人々がチェルノブイリ関連ではいまだに影響を受けているわけでありまして、そういった問題、これは福島にとっても大変重大なテーマだということを認識いたしました。

 第三に、今までも内外の英知を結集してということをおっしゃっていますが、実態的にはまだ日本国内の枠組みでしかありませんで、場合によってはIAEAも若干動いておりますが、やはりチェルノブイリの経験、これは極めて重要であって、ぜひともこの教訓を最大限に活用する必要があるというのが第三のポイントでございます。

 チェルノブイリの場合には、大変重大な事故、広範に及びまして、避難の問題、除染の問題、あるいは廃棄物処理の問題、参考になるものとならないものとありますけれども、大部分は極めて重大な参考資料として、ぜひともチェルノブイリのケースを我が国としても十分に学習し、また参考にしなきゃならないということを感じた次第でございます。

 私ども、キエフにまず参りましてすぐに、立入禁止になっております三十キロ圏内に許可を得て入りまして、いわゆる石棺のところまで行ってまいりました。第四号炉、コンクリートと鉄で固めたわけでございますが、また、今それの再建が問題になっておりますけれども、三百メートルぐらい近くまで行きまして、六・八マイクロシーベルトという非常に高い放射線を受けながら、短時間ですので防護服は着ていきませんでした。余りいい気持ちはしなかったんですけれども、そこへ行ったり、あるいはプリピャチという、四万数千人の原発の作業員の人たちが主に住んでいた町、今完全に森の中の廃墟になっておりまして、そこを訪問したりいたしました。

 また、キエフにはチェルノブイリの博物館が、これは非常によく資料がまとまっておりまして、特にその中で、当時の映像が残っておりまして、原発の中で、いわゆる作業員の人たちが防護服を着てシャベルを持って、飛散した核燃料を集めて回っている、生物ロボットというふうに言われておりましたけれども、大変ショッキングな映像も残っておった次第でございます。

 さらにまた、さまざまな政府関係者、あるいは被災者の方々とも直接懇談をさせていただきまして、百聞は一見にしかず、改めて、原発事故の厳しさというものを非常に身にしみて帰ってきた次第でございます。

 また、数字としてちょっと引用いたしますと、ウクライナの非常事態省の立入禁止区域庁の長官という方、いわば避難地域の最高責任者の行政の方がおられます。ホローシャさんという方ですけれども、この方ともお会いをしていろいろお話を聞きました。そしてその中で、今においても、チェルノブイリ事故によって障害者がおられまして、ウクライナだけで十一万人の方がチェルノブイリ事故による障害者として認定を受け、今、年金を受け、医療支援を受け、住宅支援等を受けている、後遺症に非常に悩んでおるということを直接その人の口から聞きました。

 また、ロシアで同じような立場の人が四万人、ベラルーシで一万人、合計十六万人の方たちがチェルノブイリ事故の障害者として認定をされていて、後遺症に悩んでいるということを聞いたわけです。

 こういった数字は、今まで日本では知られていなかったかと思いますけれども、大変これは大きな一つの数字ではないかと思っております。

 また、さらにショッキングだったのは、チェルノブイリ博物館で入手しました「チェルノブイリの長い影」という小冊子がありまして、これは特にウクライナの国内の医療関係者たちがさまざまな調査を行って、臨床的な調査、さまざまな例、それを二〇〇六年時点でまとめたものでございまして、それによりますと、要するに、もう大変な形で放射線被害が広がっているという実態が浮き彫りになっておりまして、単にがんだけではなくて、例えば免疫系にダメージを与えることによってさまざまな感染症を誘発している、あるいはまた心臓系の欠陥、その他さまざまな、特に妊娠中の女性に対するさまざまな被害ということが浮き彫りになっております。

 特に、非汚染地域と汚染地域の間で明確な顕著な数字の統計的な差があるということでありまして、必ずしもすべてが放射線の影響と言い切るわけにはいかないでしょうが、明らかに放射線の影響とまず疑ってみるべき根拠が出ておりまして、非常にそういった意味で衝撃を受けた次第です。

 また、その中の一つに、当時その事故処理に動員されたリクビダートル、要するに事故処理作業員とでもいいましょうか、特に二十代から三十代の元気な消防士、あるいは兵士、兵隊さんたちが約六十万人動員をされております。その人たちが、急性の放射線障害で死んだのは三十人ぐらいだったんですけれども、その後続々と亡くなっておられまして、二〇一〇年の段階で、六十万人の作業員の人たちの死亡率が二一・七%と推計をされております。ということは、十二万人強の人が二十五年後までに亡くなっておられるということです。

 この数字は、ほかのウクライナの非汚染地域のその他の勤労世代、エージグループの死亡率の二・七倍であるということでありまして、それから単純に逆算をしますと、本来であれば、二十五年たって今大体四十代、五十代の人たちのはずなんですが、本来の死亡率だったら四万人程度であるのに、それが十二万人だということは、単純に言えば八万人ぐらいが何らかの形で、直接、間接に放射線の被害で寿命が縮まっているということでありまして、これは大変実はショッキングな結果でありました。

 こんなことで、先ほどの総括的な印象を持ったわけでありまして、ぜひとも、こういったチェルノブイリの例を十分に参考にした上で、これからの福島への対応、あるいはそれ以外の地域も含めてやっていく必要があるかと思っております。

 そこで、私の質問に入りますが、やはり、低線量の放射線からどう住民を守るか、そういう視点が極めて重要だと思っております。特にウクライナの場合、旧ソ連の一番知的な中核でありました。旧ソ連の場合には、御承知のように核実験をたくさんやっておりまして、そういった放射線の生体への影響ということが最も実は知見が蓄積をされております。また、実際にもチェルノブイリで被害があったわけで、しかも、ウクライナの場合、非常に学術水準が高くて、非常にそういった強い印象を受けたわけであります。

 そういった人たちの検討結果として、ウクライナの場合、立入禁止の基準あるいは恒久的な移住の対象地域、五ミリシーベルト以上を強制移住、退去の基準にしております。それから、五ミリシーベルト以下一ミリシーベルトまでを、とりあえずは住んでいいけれどもやはり避難した方がいい、もし避難する場合、避難したい人については国が支援する、そういうカテゴリーのランクが設けられております。さらに、一ミリシーベルト以下については、必要に応じて健康監視という形でカテゴリーが設けられております。

 一九九一年二月のウクライナ議会の法律によってこれが制定されて、被災地、被災した人たちへの対処する法律ということで、こういった基準のもとにさまざまな避難措置、あるいは除染の問題とかいろいろなことが体系的に定められております。

 また、ロシアあるいはベラルーシについても同じ基準で適用をされているところでございます。

 そこで、日本の場合、まだこういった恒久的な明確な基準が決まっていない。とりあえずは一ミリシーベルトにまで下げるよう努力をする、二十ミリシーベルトまでは許容できると。一ミリシーベルトまで下げるように努力をするという暫定的な基準は出ておりますけれども、やはりもう少し明確にきちっと、住民の放射線防護という視点から基準を決めるべきではないかというふうに私たちは感じております。

 ちなみに、同じくウクライナの科学アカデミーの会員で放射線防護の専門家の方とも会いまして、話を聞きました。日本政府は、暫定的に二十ミリシーベルトまでは許容し得る、できるだけ下げるように努力はするが、とりあえず二十ミリシーベルトまでは許容し得る、学校も含めてということで、どう思うかと聞きましたら、口をあんぐりあけまして、とんでもない数字だ、これはもう信じがたい、私の孫だったら絶対にそんな学校は行かせない、非常に強い口調でそういうふうに話をされました。

 そのことも非常に印象に残った次第でして、確かに、現場の方々の思い、ふるさとを失った人たちの思い、あるいは生活の基本を失った思いは筆舌に尽くしがたいものがあるかもしれませんが、他方、科学的な基準から見て、放射線からどう防護していくかという点も非常に大事でありますので、この点の恒久的な基準をきちっと早急に決めることが、やはり本当の意味で国民の皆様に安心をもたらす道ではないかと私は考えるわけでございます。

 そういった意味で、この五ミリシーベルト、それから一ミリシーベルト、こういった基準についてどう考えられるか。また、日本としてどのような基準を今後設定していくと考えておられるか。これにつきまして、大臣のお答えをいただければと思います。

細野国務大臣 避難区域の設定基準というのは、実は私が直接担当しておるわけではないんですけれども、貴重な御提案と情報も今いただきましたので、私の考えておるところをお答えし得る範囲で申し上げたいと思います。

 まず、チェルノブイリと福島なんですけれども、この二つの事故には類似をする点と違う点があると思っております。

 まず、違う点なんですけれども、チェルノブイリの場合は原子炉そのものが爆発しておりますので、大量の放射性物質が瞬時に飛び散っております。その意味では、急性被曝が非常に深刻だったということです。福島ももちろん、建屋がああいう形で爆発しておりますので、一定の放射性物質は拡散をしたわけでございますけれども、チェルノブイリのときと比較をすると、急性の被曝の危険性というのは極めて限定をされておりまして、今のところ、私ども政府が把握しているところでは、急性被曝によって健康被害が生じたという方はおられません。もちろん死者もおられません。そういう状況でございます。そこは違う。

 一方で、類似をしているのは、やはり低線量被曝についての取り組みという意味では、これはかなり類似しているところがあるというふうに思います。

 しかも、この低線量被曝についてのさまざまな学術的な知見というのは、私も世の中に出ている本をできるだけ読もうと思って相当読みましたけれども、これはなかなかまだ定説がないということもございますので、チェルノブイリのそうした情報というのは、日本政府が学ぶべきところが非常にあるというふうに私は思っております。

 そこで、まず基準なんですけれども、現在は確かに、二十ミリシーベルト以下のところを、ICRPで言う現存被曝状況ということで住まわれている方がたくさんいらっしゃいます。

 ただ、学校ということに関して言うと、もう相当除染をしておりますので、これは今、一マイクロシーベルト・パー・アワー以下になっておりますから、逆に、ミリシーベルト・パー・年で換算をしますと五ミリを切ってきているところが、上限いっぱいいっぱいでも五ミリぐらいのところしか学校は開いておりません。ただ、このことも含めて、平常の状況でないことは間違いありません。

 ですから、私が得ている情報だと、チェルノブイリの場合には、六年ぐらいしてから五ミリを避難の区域に設定したと聞いておりますが、我が国の場合は、ではどう考えるのか。現存被曝状況という、事故後の収束の期間をどれぐらいと見るのかという期間の問題がまずありますね。その期間を一定に限定するとするならば、それが終わった段階でどこまでそれを現実的に下げていくのかということ。そうしたことは、こうしたチェルノブイリの経験というものをしっかりと踏まえた上で、これから判断をしていかなければならないところであるというふうに考えております。

遠藤(乙)委員 確かに、チェルノブイリがそういう基準を決めたのは一九九一年二月の法律なんですね。ただ、それまでの間、ソ連の崩壊という非常に混乱期があったということ、それからまた、現場の国民からの非常に強い不安、陳情、そういったものがあってそうなったということもありまして、日本の場合、だから、しばらくの間ほっておいていいんだということにはなりませんので、むしろ、最新の知見を踏まえた上で、基準というものの設定をぜひお願いしたいと思っております。

 特に、広島の時代は、DNA等ほとんどわかっていなかったわけですし、どういうメカニズムでDNAに影響するか、染色体あるいは遺伝子等に影響するか、知識がなかったわけであります。特に、最近DNAの解析が非常に進んだわけでありまして、最先端の知見を踏まえた基準の設定をぜひお願いしたい、しかも、それを早急にやることが国民の皆様が安心をする一番のことだろうと思っております。

 ウクライナにおきましても、政治家、一般の庶民の方、行政官も異口同音に言ったのは、正しい情報を迅速に公開すること、これが事故後の最重要の秘訣であるということをだれもが言っておりましたので、改めてこのことを強くお訴えしたいと思っております。

 そういった意味で、ちょっと時間がありませんので少し論点を絞りますが、一つは再調査が必要だろうと思っております。

 IAEAが一九九一年にまとめた結論では、チェルノブイリでは放射線の影響は全く大丈夫だということを言っておりましたし、それから、二〇〇五年のチェルノブイリ・フォーラムでも、がんで死ぬ人が約四千人ぐらいだろうということで、これは余りにも過小評価だということで強い非難を浴びておりました。

 どちらが正しいか、いろいろ問題はありますけれども、やはり何よりも、現地調査、臨床調査、それからフィールドワーク、これをしっかり踏まえた上での分析でないと説得力がありませんので、ぜひ、これは再調査をすべきということを日本からも提起をしていってもらいたいと思っております。

 それからもう一つは、そうはいっても、なかなかIAEAは簡単に動かないかと思います。各国いろいろな思惑がありますので動かないかと思いますが、まず、私は、できたら日本とウクライナ二国間で、片や日本は、広島、長崎を経験し福島を経験している、また、チェルノブイリを経験したウクライナ、二国間で真摯な協力をすることによって、そういった最先端の研究を進めていくことも大事かと思っております。

 そういった意味で、ちょっと話がすぐに飛んじゃいます、外務省に飛んじゃいますが、チェルノブイリは大変重要で、しかも、日本ではまだ正確な事態が伝わっておりませんので、ぜひとも福島の再生を検討するためにも、チェルノブイリの事故の情報収集は大変重大なテーマであります。

 そのためには、ウクライナの我が方の大使館、今回行って非常にお世話になりましたが、他方、情報収集面は非常に弱体でありまして、具体的には、館員が十五人いる中でウクライナ語ができる人は一人しかおりません。これではとても情報収集ができないわけであって、さっき申し上げたウクライナの法律とかをほとんど把握しておりませんでした。

 これからの福島の復興のためにも極めて重要な一つの参考になりますので、ウクライナの我が方大使館をぜひとも、チェルノブイリの情報収集協力等のために機能強化を早急に図っていただきたいということをお願いしたいと思います。例えて言えば、ウクライナ語を一人じゃなくて三人ぐらいは必要でしょうし、あるいはまた調査員を派遣して学術的な面からもサポートする、こういったことも必要かと思っておりますので、ぜひこのことをお願いしたいと思っております。

 実は、これは今回行った議運のメンバーの共通の思いでございまして、そういったことを代弁して申し上げたいと思っておりますので、ぜひ外務省から御答弁をお願いしたいと思います。

中野大臣政務官 大変建設的な御意見をいただき、大変ありがとうございます。

 私もウクライナに皆さんが行かれたときの報告を受けておりますけれども、委員おっしゃるとおり、福島後、特にウクライナ大使館の機能を強化するべきだという話は、省内でも今実際にはお話をされている状況でございます。人的な部分を含めて、体制の強化は、前向きにこれから取り組んでいきたいと思っておりますので、また何かの機会にぜひ御指導の方をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

遠藤(乙)委員 ぜひ強力に進めていただきたいと思います。また、財務省にもしっかりと我々の方からも申し入れしたいと思っております。既に申し入れをしておりますが、しつこく申し入れていきたいと思っております。

 それからもう一点、IAEAの性格なんですが、どうしても日本人には国際機関信仰みたいなのがあって、国際機関がやっていることは何でも正しい、それがスタンダードだみたいな思い込みがどうもあるようでございます。

 今回行って私たちが感じたのは、特に、チェルノブイリに先に行ってウィーンのIAEAに行って話を聞いたら、余りにも温度差があり過ぎる。余りにもチェルノブイリの実態について、そういった意識が非常に薄いのではないか、特に低レベルの放射線の被害ということについて意識が薄いんじゃないかということを肌で感じました。

 やはり原子力安全という上からは、一つは、原発の構造的な安全性という側面は当然ですが、もう一つは、低線量の放射線の影響、健康被害をどう抑えるか、こっちにももっともっと力を入れてほしいということは率直に思った次第でございます。

 そういった中で、IAEAもある意味では原子力村といいますか、アトムズ・フォー・ピースという考え方自体が原子力の推進を言っているわけでありまして、推進と規制を分けるというのが今の常識になりつつあると思っております。

 そういった意味からいっても、IAEAが日本に対して保安院のあり方についていろいろコメントをしておりますけれども、推進と規制を分けろと言っておりますが、IAEA自体がそういった健康被害の調査について自分のところでやっているんですね。WHOがやっていたのをある意味では抑えて、IAEAの方がやっているような状況なんです。それから、WHOが本来やるべきところを、報道によれば、二年前に放射線健康被害の調査をする部局が廃止をされたと聞いておりまして、非常に弱体であると思われます。

 特に、これから世界の一般の市民の関心は、核の不拡散という問題、これももちろん安全保障上重要なテーマでありますけれども、それ以上に、原発の安全をどう確保するか。

 現在、世界でも四百四十基ぐらいあるわけでありますし、さらにこれから九十基以上が建設をされるというふうに聞いております。一つは、老朽化した原発、特に旧ソ連、東欧圏には老朽化した原発がたくさんあって、特にブルガリアなんかはいつ問題が起こるかといったことが言われております。あるいはまた、新興国、中国やインド等がどんどん今原発をつくりつつあります。中国なんかでは、例の新幹線の事故とか地下鉄の事故等、ああいった巨大技術を新興国が拙速に取り入れた場合に問題が起こってくるわけでありますから、原子炉についても同じような問題がやはり予見されるわけであります。

 世界の一般の市民からすれば、やはり原子力の安全、特に何かあった際の低レベルの放射線の健康被害をどう防護するかということが極めて大きなテーマであります。

 そういった意味からも、例えば日本がもっと積極的にイニシアチブをとって、今の低レベル放射線の健康被害をどう調査し、あるいはまた防護していくかというのはもっともっと力を入れるべきであって、ぜひそういったことを、日本の外交の重要な一つの国際貢献の点からも、もっともっと積極的に推進していいんじゃないかというふうに思っております。

 例えば具体的には、WHOにそういった機能を与え、あるいは任意拠出でもしてそういった部局を充実させるとか、そういったイニシアチブをとるべきではないか、それこそが本当の意味の政治主導ではないかと思っておりますが、外務省からお答えをいただければと思います。

中野大臣政務官 先ほど委員からチェルノブイリ・フォーラムのお話がありましたけれども、委員御案内のとおり、チェルノブイリ・フォーラムでは、IAEAにかかわらず八つの国際機関、その中にはWHOも入っておりますけれども八つの国際機関と、先ほどからお話にあります被災三カ国とが共同して、いろいろな調査研究も進めております。

 その中で、例えば二〇〇六年にはWHOの方で、IAEAと共同してまた報告書なども提出しているわけでございますけれども、そういうやり方自体が、今、委員がおっしゃっているようなところとの温度差がどの辺にあるのかというところも含めまして、外務省としてもいろいろとこれから研究をさせていただきたいと思っております。

遠藤(乙)委員 もう一点だけ、参考になり得るお話なんですが、実はこの半径三十キロ立入禁止圏に、それ以後高齢者の人たちが約千二百人戻ったというふうに言われております。やはり、ふるさとを失い、移住はしたけれども、とても行った先では耐えられないということでふるさとに戻ってきた高齢者が千二百人いたそうでありまして、今は、亡くなって約三百人が生活をしているということでありました。

 それに対してウクライナ政府の対応は、これは黙認するしかないということで黙認をして、かつNPOがその高齢者の人たちに対して、放射能に汚染されていない食料や水を届ける仕事をしている、それも側面的にいわばサポートしているということでありまして、今後基準を決めたとしても、現実には、福島の地元の方々の特に高齢者の人たちにとってはなかなか機械的に適応できない面もありまして、そこら辺は非常に人間的な配慮も必要となってくるかと思われますので、ぜひそんなこともチェルノブイリの教訓からこれから大いに学んでいただければと思っております。

 最後にもう一点だけ。今後、原子力政策、大変重大な国民的課題であります。しかしながら、今回国会にも調査機関を設置しますが、最初から脱原発とか原発推進とかいったことでなくて、徹底して今回の事故の真相を究明して、特に原発のリスクとコストを厳正に評価して、そして今後の国民レベルでの原子力政策のたたき台になるような報告書を出してもらいたいと期待をしているところでございます。

 その中で、脱原発という考え方もいろいろあるかと思いますが、他方、原発自身の安全性を抜本的に強化するということも一つの選択肢として当然あり得るわけでありまして、私は、技術立国の日本としてはこの面もぜひ探求はすべきだろうと思っております。

 今までの日本はどうしても軽水炉型の原発を前提に来ておりますけれども、抜本的に安全な原発というものは果たして技術的にあり得るかというテーマです。

 要するに、今の原発が多重防護という、技術論としては非常に無理筋の考え方でやっておりまして、それが今回、本当にいともたやすく破られてしまったということでありまして、こういった多重防護という考え方自体に無理があるのではないか、非常に不完全でまた未完成の技術ではないかという技術論からの指摘もあるわけです。

 これを今後どういう形で、技術論としてもっと本質的に安全なものをつくれるかどうかということも日本が先頭に立って研究すべきで、例えばある一部の研究者からは、ウランではなくてトリウムを使う、しかもトリウムを溶融塩の形で液体燃料として使う、小型化していく、こういったことによって、本質的に安全な原子炉はつくり得るという提案もされておりますし、また、そのほか第四世代型の原子炉ということ、いろいろな提案、たしか六種類ぐらいの提案が出ているかと思います。

 こういった本質的な技術の変革、革新を通じて本質的に安全な原子炉をつくるという選択肢について、政府としてはどのように認識をしているのか、この点を最後にお聞きしたいと思います。

加藤政府参考人 御説明いたします。

 ただいま第四世代原子力システムという言葉が出ましたので、これに関しまして御説明いたします。

 将来の原子力システムといたしまして、第四世代原子力システムという考え方がございます。これは、安全性、信頼性それから経済性などが現在の発電炉よりも進展が期待されるものとして、第四世代原子力システム国際フォーラムという形で、国際的枠組みで現在研究開発が進められてございまして、日本もその活動に参画しているところでございます。

 この第四世代原子力システムの開発につきましては、将来の原子力の安全性の向上にも貢献すると思ってございますので、今後の政府全体の原子力政策の議論を見詰めながら、原子力国際協力の枠組み等を活用して、必要な取り組みをしてまいりたいと思ってございます。

遠藤(乙)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

松宮委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 先ほど遠藤議員から御紹介いただきましたように、私も一緒にチェルノブイリなどへ行ってまいりましたけれども、あわせて、ウィーンの北方約五十キロぐらいのところにツベンテンドルフ原発というのがあります。この原発は、建設して、さあ動かすかどうかというところで国民投票をやったんですね。動かさないでという方が五〇・五%、動かそうという方が四九・五%。差し引き一%差だったんですが、これは国民の意思だということで、動かさないと。原発はできたんだけれども、完全にできているんです、しかし動かさなかったんですね。核燃料棒を入れていない、全く臨界反応をやっていませんから放射能汚染の心配はない、だから除染の問題などはない、こういうものも一緒に見てまいりました。

 これから日本がどういう方向に進んでいくのかという点では、ここは、ツベンテンドルフ原発自体が観光施設みたいなものですから、一つのありようというのを示しているかなというふうに思うわけです。

 さて、きょうは、三月十一日の地震、津波、全電源喪失以来の問題について、実のところ、なかなかきちんとしたことが必ずしもわかっていないものですから伺っておきたいんですが、最初に、福島第一原発の炉心が損傷という段階なのか、あるいは溶融という状態なのか、いつの時点で、どういうデータに基づいて判断されたのか、これを最初に伺っておきたいと思います。

深野政府参考人 お答えいたします。

 三月十一日の時点につきまして、まず、当時、原子炉の中の状況がなかなか把握が難しかったということがございまして、実際、炉心が溶融していたかどうかということについて判定をするのが難しい状況にございました。

 ただ、当時、炉心溶融に至る可能性があるということにつきましては、事故の進展予測の結果等によってそういう評価をしておりまして、翌十二日、それから翌々日の十三日に、官房長官あるいは保安院の関係者の記者会見においても、炉心溶融の可能性があるということについては言及をしていたところでございます。

 それから、炉心の損傷ということでございます。溶融まで至っていないかもしれないけれども損傷していたのじゃないかということにつきましては、三月十二日の時点で、発電所構内において放射線量が上昇したことを確認する、そういったことによりまして、少なからず、炉心損傷の状況が生じ放射性物質の影響が出ている、そのような評価をしていたところでございます。

吉井委員 それで、炉心損傷ということにしても、要するに被覆管が破けてしまうと放射性沃素が出てしまうわけですよ。

 それで、放射性核種と線量率のデータを、これは環境に出るということになりますと直ちにそれに対する対応が必要ということになりますが、いつの時点でこれを把握されたのかを次に伺います。

深野政府参考人 構内、それから周辺地域の放射性物質による影響でございます。

 まず、構内につきましては、三月十一日の夜十一時過ぎでございますけれども、一号機のタービンの建屋内で時間当たり一・二ミリシーベルト、そういう放射線量が確認をされておったところでございます。これによって、そういう放射性物質の影響が生じていたということについて評価を行ったところでございます。

吉井委員 次に、冷却できないわけですから、当然メルトダウンということになるわけですね。それで、圧力容器でメルトダウンが起こり、さらに格納容器へメルトスルーという状態になったのは、いつ、どういうデータをもとに判断されたのかを伺います。

深野政府参考人 溶融につきましては、先ほども申し上げましたように、当初は、その可能性はある、そのような評価をしておったところでございます。

 ただ、その後、炉心が溶融しているんじゃないか、そういうことを推定させるようないろいろなデータが出てまいりまして、例えば、これは三月二十八日の時点でございますけれども、原子力安全委員会の方でも、第一発電所の二号機のタービン建屋地下一階の滞留水を調査したところ、一時溶融した燃料と接触をして汚染された水が底にたまっている、そういったことも確認をしておりまして、そういったことによって炉心の状態を推定するに至ったわけでございます。

 原子力安全・保安院といたしましても、四月十八日でございますけれども、一号機から三号機の炉内の状況につきまして、今申し上げたようなことも含めて評価をいたしまして、燃料ペレットの溶融が生じ、燃料集合体の形状を維持できない状態になっている、そのように推定されるということを取りまとめまして、原子力安全委員会にも報告をしたところでございます。

吉井委員 これまでのお話を伺いまして、東京電力にしても官邸にしても、非常に楽観的といいますか、かなり希望的な見通しを持ってこられたのではないか、本来かなり深刻な事態が起こりながら、必ずしもそうなっていなかったのではないかというふうに思うんです。

 そこで、昨日も、かつての黒塗り資料が、保安院の皆さん方の努力もあって、政府の努力もあって出てまいりました。

 まだ十分繰り返し読み切ったというわけじゃありませんが、全電源喪失となると、機器冷却系が働かないものですから、かわりの手段で、炉心が絶対に冷却水の上に出ないという取り組みが必要になるわけですね。

 東京電力に、そういう事態を想定したシビアアクシデントマニュアル、過酷事故対策というものがあったのかということが国民の皆さんが一番知りたいところなんですが、そもそも、その名に値するものはあったんですか。

深野政府参考人 いわゆる、燃料が破損をする、そういった状況を想定したシビアアクシデントに対するマニュアルというのは、一応整備はされておりましたが、その内容をよく見ますと、いわゆる全電源が喪失された状態でそのマニュアルで十分に対応できる、必ずしもそのような内容にはなっていないというふうに認識をしてございます。

吉井委員 私がシビアアクシデントマニュアルというのを取り上げたのは一九九九年ですから、実はもう十二年ほど前のことになりますが、当時、世界各国では、アメリカのNUREGなどに基づいて、全電源喪失を想定した過酷時マニュアルなどをつくったり考え出したりしていたときですね。このとき、日本だけは、日本の原発は安全なんだ、その上、万が一にも想定を超えるものは考えられない、それでも、仮想事故を考えたマニュアルをそれぞれの事業者の自主的判断でつくってもらう、こういう立場で臨んできました。

 ことし三月十一日以前の段階で、電力会社の自主的判断によってシビアアクシデントマニュアルあるいはマネジメント、これがつくられている原発はどれなのかということを聞いておきたいんです。あるいは、シビアアクシデントマニュアルのない原発ですね。もしなければ、後ほど調べてお答えいただきたいんですが、そもそもそういうことは調べていますか。

深野政府参考人 ちょっと今手元に、すべての原子力発電所について、シビアアクシデントのマニュアルが整備されているかどうかということのデータを持ち合わせておらないので、その点については確認をさせていただきますが、一九九〇年代からシビアアクシデントについて、経済産業省、当時通産省でございますけれども、いろいろと検討を重ねてまいりまして、シビアアクシデントに対する基本的な対応のあり方についての報告もまとめ、それぞれの原子力事業者からマニュアルの提出をいただいて確認をしてきたところでございます。

 ただ、今御指摘がございましたように、これは法律上の要求事項という形ではございませんで、あくまでも、それぞれの事業者にそういうことを勧める、指導する、そういう形で進められてきたものでございます。

吉井委員 福島原発第一号機について見ますと、全電源喪失で機器冷却系がストップしたという場合、タービンには圧力容器から直接蒸気が流れないように主蒸気隔離弁というのが働いてストップするわけですね。

 その上で、隔離時冷却系として働くのが隔離時循環冷却装置なんですが、いわゆる十分間ルールというのがあって、余り一遍に温度を下げ過ぎて容器が傷んでくるとか、あるいは沸騰が急にぼんと進むということがあってはまずいということで、一応、十分ぐらいたつとバルブを閉めたりあけたりしながら調整しながらやっていく、そして冷温停止まで持っていくというのが考え方だと思うんです。

 圧力が一定程度低下したところで、消火栓配管などを使って真水もしくは海水注入して、とにかく炉心が冷却水面に出ないようにする、これが本来全電源喪失の場合のシビアアクシデントマニュアルの一番のポイントになってくるのではないかと思うんですが、伺っておきます。

深野政府参考人 全電源喪失ということでは、必ずしもマニュアルがきちんと整備されていないのが現状ございます。

 ただ、全交流電源の喪失ということにつきましてはマニュアルで取り決めがございまして、その中では、例えば今回御提出を申し上げました福島第一発電所の一号機につきましては、基本的に非常用復水器、これによって電源が回復するまでは冷却して何とかもたせる、そういうような形でございます。

吉井委員 そこで、私も読んだんです。東京電力が出してきた資料では、以前は真っ黒に黒塗りされて全くわからなかったんですが、これは、核物質防護と知的財産権保護ということを主張されたわけですね。そんなに知的な会社だったら、そもそもあんな事故をやっていないんですよ。

 ですから、そこが非常に問題だと思うんですが、昨日公開された別添三の資料を見ると、地震の影響で外部電源が喪失したことを認めているんです。その上で、非常用ディーゼル発電機、DG二台が自動起動し、非常用母線の電源が回復した。しかし、津波の影響を受けてディーゼル発電機1A、1Bが停止したことから全交流電源喪失となり、格納容器冷却系、CCSが停止した。非常用復水器、ICは弁開閉表示が確認できない状態であり、また、高圧注水系、HPCIは、制御盤の表示灯が消灯していたことから起動不能と判断したと記載しているんですね。

 これは、知的財産権を主張できるほどのシビアアクシデントの想定というのはされていなかったんじゃないですか。

深野政府参考人 今御指摘がございましたような記述が、この別添三の事故時運転操作手順書の適用状況ということでございます。これにつきまして、シビアアクシデントの手順書は一応整備されていたわけでございますが、実際には、電源喪失によって関係する弁や何かの操作が適切にできなかったということをそこに記載しているということでございまして、そういう意味では、必ずしも十全なものではなかったということでございます。

 それから、先ほど一点、ちょっと間違えた発言をいたしましたので訂正をさせていただきたいと思いますが、シビアアクシデントマニュアルにつきましては、提出を受けてはおりませんが、整備状況については福島で確認をしたということでございます。

吉井委員 全電源喪失ということになれば、当然、圧力容器の機器冷却系を働かせる電源がなくなるということなんです。それを想定した対策が本来のシビアアクシデントマニュアルというものじゃないんですか。

深野政府参考人 そういう点におきましては、今回、シビアアクシデントマニュアルにおきましても、実際に中央操作室からいろいろな機器を操作する、そういう前提でございましたので、すべてのそういう操作用の電源、あるいは計測用の電源が失われたという想定でのマニュアルには必ずしもなっていないということでございます。

吉井委員 実は、これはアメリカの方でも、あの事故の後すぐにマーク1についての報告書が出ているんですね。そこでは、全交流電源喪失時の格納容器の操作についてというのが検討もされているんですが、私、これを読んでいまして、必ずしも十分なものではないなというふうに思ったんですが、いずれにしても、全電源喪失の問題というのは、非常に深刻な問題として、原発については考えなきゃいけないということがはっきりしたと思うんです。

 この結果として、大量に放射能汚染が広がったわけですね。これは、住んでいる人も避難させられてしまう、農産物も魚介類も被害を受けて、業者の方も苦しむ、消費者も苦しむという大変深刻な事態になっているわけですよ。

 私は、そういう点では、圧力上昇と炉内水位の低下によって核燃料棒が冷却水の上に出てしまうと、被覆管の破損による放射性沃素の放出と、さらには炉心溶融が短時間に起こる、こういう緊急事態にあるということを、官邸にしても保安院や安全委員会にしても、もちろん一番心配しなきゃいけないのは東京電力ですが、どこまで認識していたのかということが今非常に問われているときだと思うんです。

 これだけ被害が広がっている中で、一体、東京電力にしても、細野さんは後ほど、TEPCOと政府の対策連絡か何かの仕事をしてはりましたよね。要するに、どの時点でどれぐらい深刻だという認識を持っていたんですか。

深野政府参考人 事故の状況につきましては、御指摘のように、圧力が非常に高くなってしまって炉水も減っている、非常に深刻な状況であるということにつきましては、比較的早い時点に、一号機についても認識はされていたものと考えております。

 十一日の深夜にはそういう進展についての予測などもいたしまして、十二日の未明でございますけれども、その結果、やはりベントが必要である、そのような判断をした、そのように認識をしてございます。

吉井委員 どうも、海外の報告を見ておっても、炉心溶融に至る時間というのはもっと早いわけですから、その判断がかなり遅かったのではないかと思うんです。

 代替注水として、ディーゼル駆動消火ポンプを使って、消火系ライン、FPより圧力容器内に炉心スプレー系、CSを経由して冷却水を入れる試みを行ったが、電源喪失のため、中央制御室からこれを操作することができないという事態にあったのではありませんか。

深野政府参考人 非常用の消火系のディーゼルポンプでございますが、これについては、待機状態になっていたけれども、ある時点でその動作がとまって、その後立ち上げられなかったということでございまして、今、この事故全体につきましていろいろと工学的な評価を始めたところでございますが、そういった中で、今御指摘の点についても今後検討してまいりたいと考えております。

吉井委員 私は、これは、工学的評価だけじゃなくて、社会的にも、日本の産業経済にとっても極めて深刻な問題を及ぼしていることについての評価というのを、今きちんとやらなきゃいけないときだと思うんです。

 手順書適用状況表というのを見せてもらったんですが、さっき言ったようにお手上げの状態だったんですよ。

 そもそも、全電源喪失に当たってのシビアアクシデントマニュアルと称するものにおいても、高圧注水系、HPCI、給復水系、炉心スプレー、CS、原子炉停止時冷却系、SHC、格納容器冷却系、CCSによる注水が不可能な場合で、さらに復水補給水系、MUWCによる代替注水が不可能な場合を想定して、それを前提としての、消火ライン、FP系ポンプが正常なこと、電動弁等の電源が正常なことを挙げているんですね。

 つまり、これだけの前提条件が整わなかったら炉心溶融は起こり得るということを想定したシビアアクシデントマニュアルであったんじゃないんですか。

深野政府参考人 マニュアルで、どういう状況であれば対応できたのか、あるいは、どういう状況になった場合には対応できなかったのかといった点につきましても、今後、事故の進行等についての調査、評価の中できっちり検討していきたい、そのように考えております。

吉井委員 実は、これは添付資料などにちゃんと書いてあるんですよ。前提条件がついているんですね、「当該事故における事故時運転操作手順書の前提条件」。この前提条件が満たされなかったら、そもそもシビアアクシデントマニュアルとして対応できないんですよ。そういうものしか持っていなかった。ある意味ではというより、本当の意味でいえば、東京電力にはシビアアクシデントマニュアルがなかったというのが本当のところじゃないですか。

 だから、シビアアクシデントマニュアルがあったのか、シビアアクシデントマニュアルというのは一応あったんだけれども、そのとおり操作をやらなかったので炉心溶融をやったのか、これはどっちなんですか。

深野政府参考人 シビアアクシデントマニュアルというのは、そういう名前のものは整備されていたということでございますけれども、その中にあるいろいろな操作につきましては、電気があるということが前提で書かれていたものでございまして、そういう意味では、こういう状況で十分活用できるものにはなっていなかった、そのように認識をしてございます。

吉井委員 私は、かなり今回の事態について結論的な問題が出てきたと思うんですよ。

 つまり、シビアアクシデントマニュアルとは銘打っているんだけれども、実際には、すべての電源が失われたときに、これは明白に炉心冷却できないわけですから、機器冷却系が働かないわけですから、炉心が露出して被覆管が壊れてしまって放射性沃素が出てしまう、メルトダウンになるというのはわかり切った話なんですね。それに対するシビアアクシデントマニュアルというものをきちんと東京電力はつくっていなかったということが、私は、今回非常に大きな問題として言っておかなきゃいけないと思うんです。

 あわせて、私、きのう理事会で皆さんと一緒に見て非常に驚いたんですけれども、ここが白紙なんですね。一号機事故時運転操作手順書と書いてあるんですけれども、どこの一号機かわからないんですよ。これは福島第一の一号機かもしれないし、福島第二原発の一号機かもわからないし、柏崎刈羽原発の一号機かもわからない。もとのものはここが全部黒塗りだったんですが、黒塗りは確かに取れたんだけれども、肝心なところが今度は白ぼてになっちゃって、黒が白に変わってしまってさっぱりわからない。

 これは余りにも不誠実なやり方なので、これは、細野大臣初め、この原発の事故対応、環境対応に当たっておられる政府の皆さんの責任で、TEPCOに対して、シビアアクシデントマニュアルについて、こんな半端なものじゃなくて、千七百ページぐらいというんですか、まだ一割ぐらいしか出ていないんですけれども、全部きちんと出しなさいと。個人の固有名詞などは要らないんです。

 知的財産権の話はさっき言ったとおりなんですが、そんなに知的な会社だったら、こんな事故はやっていないですよ。これは特許にかかわるお話もあるんですけれども、大体、事故をやるような装置では特許は取れないんですよ。

 ですから、そういう妙な理屈を並べるんじゃなくて、それをきちんと大臣の方に出させるということを指示して、これはあなただけじゃなくて経産大臣との相談もあると思うんですけれども、やはりこれは政府としてやってもらう必要があると思うんです。

 あわせて細野大臣に伺っておきたいんですが、TEPCOによる原発災害で多くの人が避難を余儀なくされ、生産者も消費者も放射能不安を持っているものですから、測定器を買うとか、あるいは検査機器が新たに必要になってくるという問題などを含めて、いろいろな問題が出ているんですね、自治体もそうなんですよ。

 これらに要する費用負担というのは、本来だったら原因者負担が当然だと思うんです。放射線環境対策から求められる費用負担についてはちゃんとTEPCOにやらせるんだ、TEPCOは、一遍に手が回らないから、自治体にお願いします、国にお願いしますとかいうことはあるにしても、加害者がのうのうとしておって、シビアアクシデントマニュアルもちゃんと出さないで、それで時間が過ぎればいい、そういう話ではないと思うんです。

 ここは、細野大臣として、きちんとしたことをやらせ切るということを伺っておきたいと思います。

細野国務大臣 まず、シビアアクシデントマニュアルですけれども、これは一部公開されましたけれども、これから順次公開されるべきものであるというふうに承知をしております。枝野大臣が直接的には事業者に対する監督権がありますのでそういった指示をされていますが、私も適宜報告を受けていますので、公開の方向でということで、それらもあわせてしっかりとやってまいりたいというふうに思います。

 一方で、さまざまな環境の汚染に対する対応について東京電力がしっかり負担をすべきではないかというお話でございますが、基本的にはその考え方に沿って私どももやっております。

 今回の事故でございますけれども、原子力損害賠償法上、一義的には原子力事業者である東京電力がその責任を負うべきである。その上で、除染についての法律でございますが、これは放射性物質汚染対処特措法でございますが、この法律の中でも、国が除染については迅速に処理はするという責任にはなっておりますが、その経費につきましては、東京電力に対して求償していくということをもともと予定しております。

 ただ一方で、東京電力に金を出す出さないでやっておって除染がおくれるというようなことがあってはなりませんし、それこそ、モニタリングも含めておくれは許されませんので、まず政府がやって、そして必要なものについてしっかりと東京電力に求償していく、そういう考え方でやってまいりたいと考えております。

吉井委員 これで最後にしておきますが、最後に古川大臣に伺っておきたいんです。

 エネルギー基本計画を今後考えていくわけですね。冒頭にツベンテンドルフ原発の例を紹介しましたけれども、世界の流れの中では、ここは既に七割を超えるものが再生可能エネルギーでやっておって、早く一〇〇%にしようということなんですが、再生可能エネルギーを爆発的に普及させることによって農林漁業や中小企業にその仕事を回して、地域経済が成り立つようにしていく。

 つまり、エネルギーの面でも地域経済の面でも原発依存から抜け出せる、そういう持続可能な日本をどのようにつくっていくかということが、実はエネルギー基本計画を考える上で非常に大事な課題になってくると思うんですが、この点だけ最後に伺って、質問を終わりたいと思います。

古川国務大臣 七月二十九日にエネルギー・環境会議で取りまとめました「「革新的エネルギー・環境戦略」策定に向けた中間的な整理」の「戦略の基本理念」におきまして、「原発への依存度低減のシナリオを描く。」というふうに明示をしております。今後は、この考え方に基づきまして、年末には基本方針を定め、春ごろにはエネルギー選択のオプションを示し、国民的な議論を行った上で、来年の夏を目指して革新的エネルギー・環境戦略を作成する、そうした予定でございます。

 経産省でも、総合資源エネルギー調査会によりますエネルギー基本計画の見直しが進められているところでございますが、今お話があった原発の扱いについても連携しつつ、今申し上げました脱原発依存というシナリオを描いていく、そういう基本理念のもとに議論してまいりたいというふうに考えております。

吉井委員 終わります。

松宮委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。本日は、お二方の大臣に御質疑をさせていただきます。

 まず最初に、古川国家戦略担当大臣、御就任、大変おめでとうございます。そして、期待もしております。

 私の質問の第一点目は、再生可能エネルギーの促進は、国家の重要なエネルギー政策、すなわち国家戦略であるか否かでございます。

 先ほど来の御質疑でエネルギー基本計画をどうつくるか等々のお話もありましたけれども、実は、原子力の取り扱いをどうするかとは別途、私はもちろん脱原発の立場ですが、そうでない立場でも、再生可能エネルギー戦略というのは国家戦略であるべきだと考える立場であります。果たして、このたび国家戦略担当大臣になられた古川さんは、原発は国策で進んできたエネルギー政策です、この再生可能エネルギーを国家戦略にするのか、しているのか、すべきなのか、お願いいたします。

古川国務大臣 再生可能エネルギーの導入を促進していくということは、これは昨年まとめました新成長戦略の中で、日本を世界一のエネルギー・環境先進国にする、そこに向けてグリーンイノベーションを加速していく、その中で、再生可能エネルギーの導入を思い切って促進していくということは、そのときから、まさに国家戦略上重要な位置づけとして置いてまいりました。それが、今回の原発事故も受けまして、エネルギー戦略そのものを見直していかなきゃいけない。その中で、先ほど申し上げましたように、脱原発依存という方向を示しているわけでございます。

 そうした中では、当然、再生可能エネルギーの促進に向けて、さきの国会でも、再生可能エネルギーの導入を促進する法律も通ったわけでございますから、こうした法律も活用しながら、今まで以上に再生可能エネルギーの導入促進に向けて、これは国家戦略としても大事な、重要な課題として位置づけて取り組んでまいりたいというふうに思っております。

阿部委員 もしそういう覚悟であられるのならば、私は、やはりちょっと取り組みが遅いというか、もっと踏み込むべきだと思うんですね。

 お手元に、革新的エネルギー、エネルギー・環境会議ですね、例の七月二十九日、先ほど古川大臣がおっしゃったときに出された資料を拝見いたしますと、例えばここでは年央、年の半ばまでに、発送電の分離を含めたさまざまな電力の供給体制をきちんと考える。結論は、また少しあると思いますし、あるいは、もっともっと再生可能エネルギーを促進させるために、今度の補正予算だってもっと組み込めるものがあるだろうと思うのですね。総論は急いでいるよと言うんだけれども、各論を見ますと、今震災後でいろいろなことがありますけれども、でも逆に、震災からの復興に対しても、再生可能エネルギー戦略というのはキーになるものだと私は思うのです。

 今現在、政府において、例えば一例をとりますと、この発送電分離はどこまで詰められたのでしょうか。これをお願いいたします。

古川国務大臣 今お話があった発送電分離という話でございますけれども、私ども、エネルギー・環境会議におきまして、新しいエネルギーのベストミックスに向けて、どうその選択肢など年度末に出すかということで考えているわけでございます。再生可能エネルギーの比率を高めるためには、コスト低下を促す仕組みの導入というものが需要の創造のために必要だと思っていますし、需要家みずからが導入する際の選択肢の拡大等により、再生可能エネルギー産業がより確立しやすいような状況をつくっていかなきゃいけないというふうに思っています。

 そうしたエネルギー戦略をつくると同時に、では、それらの戦略を支える電力システムをどうするかということは、まさにこれは、東電の問題等も含め、これから考えていかなきゃいけない問題だというふうに思っております。

 それから、今、委員からも御指摘があった発送電の分離も含め、電力需給の安定とそしてコスト抑制とリスク管理という三つの目的を達成する上で望ましい電力事業体制のあり方はどういうことかということについて、これは、どこかだけ取り出してというわけにはいかないと思います。やはり全体的な問題がありますから、そうしたものをさまざまな観点から検討もしながら、来年の夏には革新的エネルギー・環境戦略を取りまとめる、そこへ向けて努力をしていきたいと思っています。

 しかし、だからといって、今御指摘があったように、その間再生可能エネルギーの導入を促進するのをおくらせるということではありません。これはいろいろな形で取り組んでいきたいと思っておりまして、例えば、被災地の復興の過程などで特区制度なども活用して、より、この再生可能エネルギーの導入を、まさに被災地において優先的そして先進的に取り組むようなこともやっていきたいと思っていますし、できる限りの再生可能エネルギーの導入促進に向けた措置は、来年度予算などでもとっていきたいと思います。

 これは予算だけじゃなくて、いろいろさまざま規制の問題もあると思うんですね。先日、私は、風力発電を促進しておられます町長さんなんかのお話を聞きましたら、特に農林省関係の法律がなかなか邪魔をしているんだというお話も伺いました。

 そういった意味では、今、規制改革など、行政刷新会議などでもやっておりますが、そういう規制面でのいわば再生可能エネルギーの導入を促進するような措置も大胆にとっていく、そうした作業をこれから加速していきたいと思っておりますので、どうぞ御理解をいただければというふうに思っております。

阿部委員 例えば、今度経済産業担当大臣になられた枝野さんも、言葉では発送電の分離ということも視野に入れているとおっしゃいますが、私は、政権全体としてここは本当に早急にやっていただきたいです。

 例えば、今多くの再生可能エネルギーに取り組もうという方も、接続拒否とかいうことも実際にちらつかせられるわけです。いろいろなものがそこに乗り入れられて、そしてコストでも下げていく、あるいはベストミックスをつくる、そして安定供給をする。これは、いずれ我が国が分権型社会というのを、これも民主党政権、私ども三党連立を組んだときからの大きな目標でありましたから、それらを考えても、もう不可欠なものであります。どう移行していくかはあると思いますが、その大きな流れをもっとプッシュしていただきたい。

 そして、補正予算には確かに福島を中心とする再生可能エネルギーが出ておりますが、これは国家戦略なんですね。国家、全国土を挙げてこの方向を明示するというのが国家戦略担当のお仕事だと思います。

 そして、今、規制改革の点をおっしゃっていただきましたが、大事だと思います。私は、あともう一点、人材育成だと思います。

 きょうお手元の資料の二ページ目、あけていただきますと、これは、各自治体がもし地域主導による再生可能エネルギー事業のために何か取り組みたいと思ったら、その地域にある再生可能エネルギーの資源は何であるか、どういうふうにコーディネートしていけばいいか、ファンディングはどうするかなどの計画を立てていこうという。これ自身は環境省の事業でございますし、六十を超す自治体の応募があったけれども、次年度は恐らくまだ一けたくらいしかいかないかもしれないと。

 各地に、自治体で再生可能エネルギーをやりたいという声はあります。ただ、どのようにお金を動かしていくか、どのように計画していくかということにおいてこそ、ある意味では政府のサポートが必要だと私は思います。そういう点で、もうこれは御指摘だけさせていただきますから、ぜひ国家戦略としてお取り組みをいただきたいと思います。

 繰り返し申し上げますが、古川さんはこの政権の発足当時から副大臣としてのお仕事もされて、今回大臣であります。政権の流れを最もよく知る方でもあると思います。きちんとリーダーシップを発揮していただけることを心より期待申し上げます。

 引き続いて、細野大臣にお伺いいたします。

 細野さんにはいろいろな意味で、原発事故もありましたので、しょっちゅう質疑をさせていただきました。きょうの質疑もその延長にありますが、よろしくお願いしたいと思います。

 せんだって、細野大臣は、IAEAの第五十五回総会に御出席されて日本からのメッセージを発せられたわけですが、私はその大臣の発言を英文も含めて拝見いたしましたが、非常に残念な点がございます。

 何かというと、言及されているものは主に原子炉の冷温停止状態であったり、あるいはこの事故を安全に完結させるということの決意なのですが、一体どれくらいの広がりを持った事故、先ほど遠藤先生はチェルノブイリをもう一度検証しようとおっしゃいましたが、細野さんがきちんとIAEAの場でどんな事故であったかということを言ってくださらなければ、世界には伝わらないわけです。

 私は何度も何度も、例えばウラン235、広島型原発の幾つ分ですかとか、データは出していただきました。セシウムどのくらい、百六十八・五倍、三百キロ圏に広がっていると。これから低線量被曝も問題になると。私は、これらは正直に世界に開陳した上で、そして、我が国が今どういうことを努力しておるかを伝えるべきだと思うんです。いつも、原子炉の事故というとリアクター、すなわち原子炉だけに目が向きますが、被害は、生きとし生けるものと環境に広がるわけであります。

 果たして大臣は、このIAEAでの御発言、どうしてそのようになられたんでしょうか。

細野国務大臣 IAEAには二回、私ども報告書を出しておりますが、一回目は六月、二回目がこの総会の九月です。六月のときは私は補佐官として、そして九月のときは大臣としてこの報告書の責任者をやりました。

 この報告書の中で、六月のときは、ほぼ世界の関心がサイトの中に向いておりましたので、それにかなり限定をした報告書になっておりますが、九月の報告書には、今阿部委員御指摘のオフサイトのことについてかなりの分量が書かれています。もちろん、さまざまなモニタリングの結果も書いてありますし、医療であるとか食に対する取り組みなども書いてございます。

 ですから、ぜひ御理解をいただきたいのは、そこも含めて包括的な報告書を、九月のIAEAの会には日本政府の方から自主的に出したんです。IAEAから求められたのではありません。それは、積極的に我が国がそういった説明をすべきだろうというふうに考えたものですから、そういう形で取り組みをさせていただきました。

 演説では、確かにオフサイトの話は余りいたしませんでした。それは、多分全体をごらんになったらおわかりになると思うんですけれども、IAEAの総会だったものですから、原発の事故だけではなくて、さまざまなことについてきちっと、IAEAの取り組みについて我が国なりの評価をしなければなりませんでしたので、その部分もかなり占めていて、どうしても事故についてお伝えをしたいところに限定して、日本政府としては収束に向かって最大限の努力をしているということをお伝えしたかったものですから、そこについて限定したということです。

 もう一点だけ。

 それで、それだけでは私も舌足らずだと思いましたので、日本政府の方から申し出をして、私どもがスピーチをした後、サイドイベントとしてセミナーをやりまして、そこでは、九月に出したすべての報告書について詳細なやりとりをしております。そこはもう非常にたくさん参加をされまして、総会の会場がすかすかになるのではないかというぐらいそちらに集まりまして、専門家が報告をして質疑がなされておりますので、恐らく、出席した専門家の中では、日本の情報量が足りないと思われた方はおられないのではないかというふうに感じております。

阿部委員 予算委員会でも申しましたが、ゴルバチョフが国連で演説したときも、被害のチェルノブイリの人々の実態は伝えられなかったんですね。いつも、それが最も正式な場では伝えられないということが私はやはり問題だと思います。

 大臣が努力されたことは評価いたします。でも、世界が一番知りたいのは、これが何をもたらすかであります。菅前総理が、あのまま事故が三千万人の首都圏の人々に及ぶと思ったときに、自分はこの技術の限界を見たというふうに後々おっしゃっています。

 私どもは、あったことを正直に伝えた上で、進むも引くも考えていくということがとても大事と思いますので、なお、私は引き続いて要求し続けたいと思います。

 なぜ私がそういうことを申しますかというと、その後、日本はIAEAをお呼びになって、そしていろいろ御助言を承ったようです。十月の七日から十五日ですか、IAEAが来られて日本の除染について発言をされていますが、一言で言うと、このIAEAのリコメンドは、私から見れば、事故の過小評価につながっていると思います。

 例えば、提言の一は、過剰に安全側に立った考え方を回避する。簡単に言うと、恐れるなということですよ。しかし、低線量被曝の実態は、やはり恐れるに足るものなんですね、わかっていない分。

 あるいは、提言の五では、放射性廃棄物の扱いも、あるレベル以下のものでは、被曝を引き起こさない廃棄物を放射性廃棄物として分類しないことは重要であると。しかし、これもまた、今我が国は大変問題になり、そこを細野さんは御苦労をされているわけですよ。この放射能というか原発の事故は、本当に一ミクロンの粒子で広がっていって、それは円で広がるのではない、物すごく広がりを持って、多くの人を不安に陥れるということですから、こういう表現は、その実態も知らないんじゃないかなと私は思いますね。

 それから、提言の八も、いろいろ、これは農地の除染についてですが、日本の農地の除染のことについても、私は、ちょっとこの認識、もう紹介しませんが、おかしいと思いますね。

 もろもろ、提言の十は、森林地域の除染に多くの時間と努力を投資する前にやれることをやれ、簡単に言うと。しかし、日本にとって森林は水源なんですね。今度、国有地に中間貯蔵施設なりなんなり仮置き場を置くということも、この水源、水の汚染を来さないようにするということは、我が国には物すごく大きな課題なんですね。そうしたこともきちんとIAEAとももっと踏み込んで論議していただきたい。

 そして、細野大臣にはぜひ、先ほど遠藤委員がお取り上げになりましたが、ウクライナとも共同で、何が起こったかを見ていただきたいし、同時に、ECRR、欧州放射線リスク委員会というのがございまして、これは、ICRPと違って、低線量被曝を専ら問題にしてきた委員会であります。簡単に言うと、アメリカ側の考え方とヨーロッパの考え方は二本のラインになって走っているわけです。そして、それは物事の切り口で変わるかもしれませんし、しかし、今私たちが立たされた位置は、この事故を通じて、本当に真摯に何を検証していくかをバイアスなく世界に伝える役割があるんだと私は思います。

 欧州の放射線リスク委員会の文献はごらんになったことがありますか。

細野国務大臣 ECRRの報告書自体は私は詳細には見ておりませんけれども、発言はかなり抜粋して読んでいますので、およそそこに集まっておられる研究者の方々がどういうことをお考えになっているかというのは承知しております。

 それと、阿部委員にぜひここは認識を共有させていただきたいんですけれども、IAEAは、アメリカの機関というよりはむしろヨーロッパの色彩の方が強いんですね。例えば、除染のミッションのチームのトップはスペインの方でしたし、その前、さまざまな調査に来られたのも、たしかフランスの方なんかが中心にやられていたというふうに記憶をしています。ですから、それはアメリカとヨーロッパの対立ではなくて、ヨーロッパの専門家の中にもいろいろそれぞれのお考えの違いがあるということなんだろうというふうに思っております。

阿部委員 そうですね、私の比喩、簡単に言うとと使わせていただいたのは、やはり、チェルノブイリ事故で実際に十万ベクレルを超すような汚染があったヨーロッパの地域における危険の認識が違うという意味で言わせていただきました。もちろん、ヨーロッパの中でそういう発言をして、いろいろ、お国と衝突したりしている科学者もございます。それは細野さんのおっしゃるとおりです。でも、私は、今回我が国が真剣にこの事態に立ち向かえば、そうした対立を超えて、本当に必要な知見を世界に披瀝できるだろうと思います。

 具体的なことを伺いますが、細野さんは環境大臣でもありますから、環境省がやっておられるエコチル調査というのを御存じでしょうか。子供たちというか、お母さんと赤ちゃん、出産されたときに臍帯血をチェックしてまいります。これは、さまざまな有害物質など、農薬もそうです、何か子供の成長の阻害要因となるものをはかっていこうという、日本が始めた調査であります。

 このエコチル調査の中に、ぜひ放射性物質の測定を入れていただきたいです。なぜならば、先ほど遠藤さんが御紹介になったウクライナの文献の中にも、胎盤にもセシウムがたまったりということが報道されております。今、福島では、例えば母乳や子供の尿にセシウムが出るわけです。そして、一ミクロンの粒子というものが果たして胎盤を通過するかどうかもまだわかっておりません。事態はすべてやぶの中であります。

 そうなると、我が国が既に持っている健康のフォローの仕組みの中に、私は、エコチル調査というのはいいことだと思います。環境汚染が子供たちに、次世代に与える影響を見るわけです。この中に、放射性物質の検出をめぐって、ぜひ検討、お取り上げいただきたいが、いかがでしょうか。

細野国務大臣 エコチル調査はよく存じ上げております。

 その話に入る前に一言だけ申し上げたいんですけれども、私も、事故発災以降ずっといろいろな放射線の問題とかかわってきて、常に悩みながらいろいろな判断にかかわってきました。判断の責任者だったというよりはサポート役だった時期が長いですし、今も最終的に避難区域の設定なんかは私が担当ということではないので、決定権者ではありませんが、常に悩みながら自分なりの意見を持ってきました。

 そのときに、特に低線量被曝というのは、幾ら文献を読んでも明確な答えはどこにも書いていないわけですね。書いていないものの中でどういう判断をするのが最も正しいのかということについては、悩みながらいろいろな判断をしてきました。そして、そのことは、重い重い課題ですけれども、これからもやっていかなければならないことだと思っております。

 そこで、今政府内で議論していますことを率直に申し上げますと、エコチル調査を有効に活用することももちろん検討しているんですけれども、もう少し大きく見た場合に、低線量被曝の放射線医療もしくは健康というものをどういった体制で我が国はやっていくべきなのかということについて、今政府内でいろいろな検討をしております。

 これまで環境省というのは、放射性物質は扱ったことがありませんでした。今回初めて扱うことになりますので、環境省はどこまでできるんだろうか。他の省庁も、それこそ科学技術という意味では文部科学省、医療という意味では厚生労働省、それぞれ一定の役割を果たしてきたわけですが、今の体制で本当に、二十年、三十年、福島の皆さんの健康をしっかりとフォローできるんだろうか。そこも含めて、政府として、トータルにどういう体制で臨むかということをしっかり考えたいと思っております。

 その中で、お母さんとお子さんとの間のいろいろな、それこそ健康の問題というのは一番大事なところでございますので、そこが絶対に落ちることがないように、しっかりそこはやっていきたいというふうに考えております。

阿部委員 体系立った検討と同時に、どんどん時は過ぎていくわけです。逃すことなく、できることなのですから、私はやっていただきたいです。それをやることが阻害要因でなければ、鉛についても環境ホルモンについても農薬についても、有害物質についてチェックする、その仕組みをつくったことを評価して、その上のことであります。

 そう申しますのは、問題は福島だけじゃなかろうと思うからです。例えば、細野大臣ももう既にお聞き及びと思いますが、私は神奈川ですが、横浜でもストロンチウムの検出が言われるわけです。この事故の特性は、雲に乗り、風に乗り、雨に乗り、そこに濃縮されたり、距離とは違うところに検出されるということもあるわけです。あるいは、これから食べ物を通じての内部被曝もお母さんたちの不安のもとになるでしょう。安心材料を出していくという作業も、わかる形で、見える形で、すごく重要になると思います。

 このストロンチウム並びにプルトニウムの測定も、まだ、恐らく百キロ圏内で二百カ所そこそこだと思いますが、今後どのように進められますでしょうか。

細野国務大臣 現段階までで、東京電力の福島第一原発から約八十キロ圏内の百カ所について、プルトニウム、ストロンチウムの核種の分析を行っておりまして、その結果によりますと、原発から約四十五キロ離れた地点を含む六カ所で、原子力発電所事故に由来するプルトニウムが検出された、そういう報告を受けております。横浜のものは、また別途どなたかが検出をされたものなのかもしれませんが、かなりの距離で飛散をしているということは間違いなかろうというふうに思います。

 このプルトニウムとストロンチウムのそれぞれの測定値なんですけれども、まず、プルトニウムについては、原発の事故の前に全国で観測をされた測定値の範囲の中にはございます。これは、過去に核兵器の実験なんかが行われたことに由来するものということなんですが、そういう状況。ストロンチウムは、事故発生前に観測された測定値よりは高い値が出ておりまして、そういう意味ではより深刻だということになろうかと思いますが、既に飛散をしているセシウムと比べると影響は小さいというのが今のところの政府の分析です。

 長々済みません。ちょっと長く言い過ぎましたが、プルトニウムとストロンチウムの測定は、今、文部科学省の方で検討会をつくりまして、かなり前向きに取り組んでおります。若干分析に時間がかかりますので、すぐに全国で一律に調べるということができないのは非常に申しわけないんですけれども、測定の地点をふやして、できるだけ正確な情報を国民の皆さんにお知らせする、そういう方向であることは間違いないというふうに承知しております。

阿部委員 プルトニウムについては、飯舘方面を主に北西部で出ておって、ストロンチウムについては、今、私が御紹介したように、横浜の方まで出ているわけですね。それは、従来はかられたものよりは高いわけです。

 大臣の今の御答弁の中で、考え方において、ストロンチウムは、例えば、セシウムの十分の一、ないし伴って出る、その程度で安全だというのは、私は違うと思うんです。なぜなら、ストロンチウムの影響というのは、ほとんど検証されたことがないわけです。それも、先ほどのヨーロッパのリスク評価の委員会の中で大きく問題になっております、骨、骨髄の問題が必ず出てまいります。ですから、大丈夫とか安心とか言わないで、できるだけ情報を集めていって、それを伝えることが最大の役割だと私は思います。

 最後に、いわゆる原発サイトからのEPZ、どこまでを危険サイトとして認めていくかということですが、これについて、きょう、お手元の資料で見ていただきますと、どんどんどんどんいろいろな、例えば、沃素を配る地域を広げたり、あるいは緊急の避難の地域を広げたりしていくと、原発から半径二十キロ、五十キロ、百キロ、二百キロと、いろいろな対策のサイトをふやしていきますと、原発から百キロエリアを円にかくと、ほとんど日本全体、何か一たん事あれば、どうにも、にっちもさっちもいかないという状況の図であります、これは円を拡大していって。

 私がこういうふうなことをかきますのは、今、原発の再稼働を御検討かと思いますが、少なくとも、一たん事があった場合に広がる影響の大きさ、オフサイトセンターをどこに置くのか、それから、細野さんが今度お取りまとめになる原子力安全庁のような新たな組織で再稼働も考えるべきだと。きょうも保安院の皆さんとのやりとりもありましたし、あるいは、先ほど吉井先生のお取り上げくださったアクシデントマニュアルの件もありました。今のままでは、私は、事故はまた不可避だと思います。新たな原子力安全庁のもとで再稼働を検討する、いかがでしょう。

細野国務大臣 再稼働そのものについては、保安院そして経済産業大臣が一義的な判断をして、それを我々はサポートするという立場でございますので、御意見としてはしっかり承って、しっかりと考えるということが重要だと思います。

 今御指摘のEPZの変更、さらにはオフサイトセンターの部分なんですけれども、既に原子力安全委員会の防災指針をつくるワーキンググループにおいて、このEPZを変更する新しい考え方についてはたたき台をお示ししております。

 それに伴って、当然、オフサイトセンターは変えなければならないところがたくさんございますので、来年の一月以降に、このオフサイトセンターのあり方についても検討されることになろうかというふうに思います。

 ただ、私が事故に直面して逆に感じておるのは、オフサイトセンターというのは、ここに置いたらすべて解決するというものではないんですね。五キロにあるのは近過ぎます。もっと離さなければなりませんけれども、では、十キロならいいのか、二十キロならいいかというと、事故が拡大すると、そこも不適切ということになるわけです。

 ですから、建物がどこにあるかというよりは、きちっと対応できるような仕組みをつくる方が大切ではないか、そんなふうに感じております。

阿部委員 おっしゃるとおりで、オフサイトセンターも、実は原子力災害対策本部、保安院が事務局をやる災害対策本部も機能しないから、今回のようにSPEEDI情報も出なかったわけです。それはもう細野さん、よく間近で御存じだと思いますので、機能と、それを十分に実行できる場所の設定、あるいは移すことも含めて、いい計画を立ててください。

 終わります。

松宮委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 きょうは、細野大臣に、いわゆる除染の問題を中心にお伺いしてまいりたいというふうに思います。

 今月九日から十五日まで、震災復興特別委員会の海外派遣でウクライナ・チェルノブイリ原子力発電所を視察し、専門家からヒアリングを行ってまいりました。

 ヒアリングでは、当時のソ連邦のウクライナ共和国の保健大臣だったロマネンコさん、また、当時の非常事態省の副大臣だったプリステルさん、また、現在の立入禁止区域管理庁、こういうものがあるんですけれども、このホローシャ長官、こうした方々からお話を聞くことができました。彼らの話でほぼ共通をしていたのは、除染を行って住民を戻すということがいかに困難であるかということであります。

 非常事態省の副大臣だったというプリステル氏が言っていた言葉が非常に印象的だったので、幾つか引用をしたいというふうに思います。

 家の除染も必要だろうが、子供は川で遊ぶ、山で遊ぶ。それを軍隊を出して全部は除染できない。だから立入禁止区域がある。仮に、原発近くで汚染度合いの低い村があるとして、そこに住むことはできるが、学校の窓から原発が見えて、四方八方を立入禁止の鉄条網で囲まれる。そこに子供たちを住まわせるのはモラルに反する。

 また、次の発言。汚染だけで居住の判断はできない。土地の汚染より人々への影響を考えるべきである。単純な汚染度合いで居住の可否を判断する私たちの間違いを繰り返すべきではない。当初は、三十キロ圏内に大量の軍隊と巨額の費用を投じて除染をしたけれども、それはいわば無駄な努力に終わってしまった。こういうことをおっしゃっていました。

 私たちの経験から学んでほしいというプリステル氏の言葉が非常に重く響きました。

 チェルノブイリの場合は、三十キロ圏内の除染を途中で断念しています。その上で、立入禁止区域として人の住めない地域にして住民を帰還させない、こういう判断をとっております。翻って日本は、除染による住民の帰還を目標としている。これが可能であるのかどうか、まずお伺いをしたいと思います。

細野国務大臣 チェルノブイリの方でいろいろなお話をお聞きになったレポートは、改めてしっかり拝見したいというふうに思います。一部、我が党の議員の方から情報をいただいておりますので私も拝見をしましたが、全体をやはりしっかりと見る必要があると思いますので、改めてしっかり拝見をします。

 結論から申し上げると、除染による帰還は、私は可能であると考えております。もちろん、すべての、例えば原発の周辺のエリアも含めて、帰還がいつの時点でどうやってできるのか言ってみろと言われれば、それは私、申し上げることができませんし、相当長期間にわたって御帰還をいただくことが難しいところがあることは、もう既に菅政権のときに認めております。

 ただその一方で、二十キロ圏内でも、線量が決して高くない、通常の生活に戻れる可能性のあるエリアというのはかなりあります。あとは、私は、これは日本の社会の一つの考え方だというふうに思っていまして、かつて、例えばソ連やロシアがやったようなやり方を我々はとるのか、それとも、粘り強く除染をすることで、御帰還をされたいと思っていらっしゃる皆さんにこたえるのか。もちろん、安全の問題はありますよ、健康の問題はありますから、そんな安易なことは言えませんけれども、私は、日本社会の一つの、例えば、本当にそういった皆さんに対するこれまでの御苦労に対する配慮であるとか、また、それに対してしっかりとやっていこうという社会全体の粘り強さであるとか、そういったことを考えれば、我々はチャレンジすべきだ、そう考えます。

柿澤委員 これは、細野大臣の姿勢としては、まさにそうした御答弁をいただいて、大変心強い、前向きで、また希望に満ちあふれたメッセージが住民の皆さんに発信をされる、そういうことであるんだろうというふうに思います。

 ただ、今後行われる除染の活動、こうしたことが成果を生んで、そして放射線が低減をされて、晴れて住民の皆さんの帰還が現実に実現をする、こういうところまで見届けるまでは、やはりなかなか住民の皆さんとしても、本当に待つのが厳しい、こういう期間が続くんだろうというふうにも思います。

 さて、今回の視察では、原発から三キロ圏の捨てられた町、プリピャチ市にも行ってまいりました。ここは原発作業員の居住のために建設をされた町でありまして、五万人が住んでいたんですけれども、八六年四月二十六日の炉心爆発で、三日間の荷物を持って逃げてください、こういうことで、三十六時間以内に避難が完了した。戻れるはずが、二十五年間たって、そのまま戻れなくなってしまった、こういうところです。

 立入禁止区域長官のホローシャさんによりますと、このプリピャチ市でも、実は、チェルノブイリはその後もほかの原子炉は稼働していましたから、作業員を戻すべく、住民を戻すべく除染が行われたそうなんですけれども、やはりこのプリピャチ市でも途中で断念をすることになった。そのときに決定打になったのが、プルトニウムが検出された、こういうことだったんだそうです。

 半減期の長いプルトニウム、またストロンチウムについては、先ほど阿部委員からもお話がありましたけれども、福島第一原発もMOX燃料を使っていたことから、当初から飛散の懸念が言われておりました。しかし、粒子が重いから遠くには飛ばない、こういうふうに言われていて、本格的なモニタリング調査というのは最近までされてこなかったと思います。

 そんな中で、横浜市でマンションの屋上からストロンチウムが検出されて、大きなニュースにもなっているわけです。プルトニウム、ストロンチウム等の核種について、仮にこれが、本格的な測定を行って一定程度検出をされるようなことがあれば、これはなかなか大変な事態だというふうにも思いますが、そうした測定をどれだけしているのか、また、今後、広範囲の測定調査をする予定はあるか、お伺いをしたいと思います。

細野国務大臣 プルトニウム、ストロンチウムにつきましては、発電所から八十キロ圏内の百カ所について核種の分析を行っております。これは通常の、それこそセシウムなどの調査とは少し違う形でやらなければなりませんので、それだけに、百カ所というのは、かなり数はやったつもりでありますけれども、限定をした分析を行っております。その結果、発電所から約四十五キロ離れた地点を含む六カ所でこの原発事故由来のプルトニウムが検出されたというふうに承知をしております。

 これからなんですが、確かに、先ほど阿部委員も御指摘をされたとおり、ストロンチウムの場合は、カルシウムと同じように骨に沈着するという性質もありますから、そういったことも含めて、これらの核種をしっかりと調べるということは重要であるというふうに考えております。

 現在、文部科学省で放射線量等分析の作成にかかわる検討会というのが行われておりまして、モニタリングのやり方についてしっかりと検討しておりますが、そこで、この核種についてもしっかりとはかっていく、そういう方向だというふうに聞いております。

柿澤委員 九月三十日ですか、文部科学省が調査をして公表した、プルトニウム、またストロンチウムに関するマップが私の手元にあるんですけれども、現状においては、先ほど細野大臣も阿部委員に対する御答弁でお話をされていたと思いますが、こうした核種がもたらす健康に対する影響は高くないのではないか、こういうふうに見られているわけです。また、測定結果も、そういう意味ではそれほど、並み外れて高いという数値が報告をされているわけではないということなんだろうと思います。

 しかし一方で、たしかIAEAに報告をした解析結果としての放出試算値としては、例えばプルトニウム241でいえば一・二テラベクレルとか、ストロンチウム90でいえば百四十テラベクレルですとか、地表のデータと比べると、ちょっとけた外れに多い数値が解析試算値として報告をされている。では、飛んでいったそれはどこに行ったのかということにもなるわけです。

 先ほど申し上げたように、プリピャチ市、チェルノブイリ原発周辺の捨てられた町が捨てられた町になった最終的な判断要因が、プルトニウムが検出されたということであったとすれば、こうした実態が今の時点でも十分正確に、また詳細に調べられて明らかになっていないということは、極めて大きな課題ではないかというふうに思います。

 今後のお取り組みをぜひお願いしたいというふうに思います。

 除染についてですが、これまで、除染に関する活動が福島県内でもう既にスタートをして、また野田総理も現地を視察する、こんなこともありました。この除染の活動について、細野大臣、当初、五ミリシーベルト以上のところを除染の活動を行う、こういうお話だったと思いますけれども、これについては、一ミリシーベルトまでいわば対象とするということになったと。

 その一ミリシーベルトから五ミリシーベルト、こういう地域を対象地域とすると、その地域の広さというのはどのぐらいの規模で、また、そこにどのぐらいの人が住んでいる、こういうことになるのか、教えていただきたいと思います。

細野国務大臣 少々経緯を御説明申し上げたいというふうに思うんですが、予算をつくるときに、ある一定の前提を置いてさまざまなことについて計算をしなければなりません。そこで、除染についてどれぐらい計算するのかというのを考えまして、その中で出てきたのが、五ミリシーベルトのところで一つ線を引いて、そしてその前後で大体の予算をはかるということでやったわけですね。ですから、五ミリシーベルト以下をやらないというふうに考えたわけではなくて、一つの試算の前提としてやったんです。

 実際に考え方としては、一ミリを目標にということは掲げておりましたので、五ミリ以下にあっても、市町村が希望をし、必要なことについてはやっていくということについては、実はもともと私自身の中では全く揺らぎはなくて、若干誤解を持って受けとめられたものですから、これはよくないと思いまして、それで一ミリシーベルトということを改めて申し上げた、そういう経緯です。

 今のは経過説明でございますが、したがいまして、今年度から来年度にかけて計上しております一兆一千六百億円というのは、一ミリシーベルトから五ミリシーベルトも含めて、すべてのところについて全部はぎ取るということは前提にしておりません。

 したがって、では全体として幾らかかるか、すべて今説明をせよということになれば、そこは試算がまだできておりません。実際に、五ミリから一ミリのところについてどういった形で除染をしていくのか。当然、子供たちのところは、五ミリとはいっても高い放射線量ですからやらなければなりません。そして、例えば自宅なんかも、やはり子供さんがいるところはやろうということがあれば、それにもできるだけ応じていく必要があるというふうに思います。

 ですから、実際に、例えばこの二年間は徹底的に除染をやります。この二年間については五割まで減らすという目標も立てているわけですから、徹底的にやる中で必要な予算があればそれはさらに確保していく、そういう方針で臨みたいというふうに考えております。

柿澤委員 今私がお尋ねした質問は、一ミリから五ミリシーベルトのところも対象地域にすると、対象地域の広さはどのぐらいで、居住人口はどのぐらいになるか、こういう質問だったので、その点御答弁いただければと思います。

細野国務大臣 面積でいいますと、一ミリから五ミリのところが九千八百平方キロということです。これまで、少なくとも試算上確保しておるのは約一千億円。ですから、確かに極めて限定的な予算です。これは子供を対象にしていたりとか、一ミリから五ミリの中でも、ここは高いというところについてはしっかりやるということを想定しております。

 ただ、五ミリ以上のところも含めて、それぞれのところでどういう形で除染をするのかというのは、正直言いましてまだ明確に見きわめることができないんですよ。ですから、面積はおよそわかっておりますが、これに幾ら、どういった形で予算がかかるのかというのはまだ見きわめることができておりません。

 ですから、この九千八百平方キロメートルのところの除染の費用がどれぐらいかかるのかということについては、今お答えをするだけの材料がございません。

柿澤委員 今おっしゃったように、一ミリから五ミリシーベルトのところ、九千八百平方キロメートルということで、五ミリシーベルト以上のエリアと比べるとたしか面積は七倍になる、こういう試算がされていたかと思います。

 今試算をされている一兆一千四百億の中で、一ミリから五ミリシーベルトのエリアの除染で使うと想定されている費用は一千億円ということですね。そうすると、引き算をすると一兆円が五ミリシーベルト圏内の除染に使われるということになるわけです。

 ここから先は単純計算の世界ですから、私のモノローグでお聞きをいただければと思いますが、対象エリアが一ミリシーベルト以上ということになると七倍に広がる、そうすると、五ミリシーベルトの範囲のところが一兆円ですから、単純に七を掛けると、すべて一ミリシーベルト以下にしてほしいと要望を受けて除染を行えば七兆円の費用、こういうことになるわけです。

 ちなみに、民間企業が試算をしたという住宅の除染のモデル事業の試算をちょっと拝見したんですけれども、敷地六十坪、建坪二十坪、床面積三十坪の二階建ての戸建て、三十坪の庭と十坪のコンクリートの駐車場があって、屋根はスレートぶきだ、こういう家屋のモデルで除染をやってみると、モニタリング調査と除染と廃棄物処理、もろもろの費用を合わせて計五百六十万円なり、こういう試算もあるようであります。

 そういう意味では、これは大変なコスト、また労力、そして期間をかけて行われる活動になる。そうしたことが果たしてどれだけの成果を生むことになるのか、こういうことをこれから先お尋ねしてまいりたいというふうに思います。

 除染活動として行われているのは、主に表土剥離や高圧洗浄だと思います。このような手段をとっている根拠は何か、お伺いをしたいと思います。

細野国務大臣 先ほどの答弁について、柿澤議員の方から試算をいただきましたけれども、改めて御説明申し上げたいんですが、一ミリから五ミリのところと、五ミリ以上のところで切り分けをしているわけではないんですね。概算として、予算の根拠としてそういう数字を出していますが、除染は、それぞれの自治体の考え方や住民の考え方にできるだけ応じる形でしっかりやっていこうという考え方なんです。ですから、必要なところについて順番に予算を充当していくという考え方ですので、前提としての考え方が若干違うということをぜひ御理解いただきたいと思います。

 今御質問は除染の方法ですが、主に三つぐらいの方法を当初想定しました。一つは物理的な方法、はぐというものですね。二つ目は科学的な方法、例えばセシウムを取り除くような物質を散布したり吸着したりして取り除く方法。三つ目に、農水省が主にやっていましたけれども、植物を植えたりするような、そういう生物学的方法。

 この三つ、さまざまな検討をしたんですけれども、一番即効性が高いのは物理的な方法である、すなわち土をはぐのが一番放射線量が下がるということでやったということであります。

 それと組み合わせて、水による、流す作業もやっておりますが、これは効果がある部分となかなか効果が出ない部分がありまして、物理的な方法がとれないところについてそういう方法がとられているということであります。

柿澤委員 今、表土剥離をやり、また高圧洗浄も行われているわけですけれども、やってみると、線量低減のためとはいえども、なかなかこれは破壊的な行為でありまして、表土を剥離する、庭の土を全部取っちゃうわけです。これまで育ててきた庭木も全部抜いて、本当に全部真っさらにする。高圧洗浄を建物の表面にかけると、例えば塗装もはげたり、あるいはさまざまな影響があらわれる。

 こういう除染活動を行った後生じた家屋に対する影響とか被害というものは、なかなかばかにならないということが言われているんですけれども、これを原状回復する場合、例えばもとの庭につくって直す、こういう場合は、この費用というのは一体だれが負担することになるんでしょうか、お伺いをします。

細野国務大臣 そこはまだ考え方を整理はしておりません。具体的な事例もまだ私のところまでは来ていないものですから、検討対象にはなるのかなというふうに思います。

 基本的に、除染の費用は東京電力にいずれかの段階で求償するということを前提にしておりますので、その考え方に沿うということになるのかもしれませんが、どういう状態でどういう損害が出るのかということによっても若干変わってくる可能性もありますので、そこはしっかり持ち帰って検討したいというふうに思います。

柿澤委員 除染活動がゴールとして目指しているものというのは何なのかということをお伺いしたいと思います。

 やはり人が住めるような状況になる、抽象的にはそういう言い方になるんだと思いますけれども、どの時点でどれだけの線量に低減をされれば除染完了というふうにみなせるのか、この点はどうなっているんでしょうか。

細野国務大臣 考え方として私どもが提示をしておりますのは、最終的な目標としては一ミリシーベルト。これは世の中の道理としても、汚したものは汚した人間がしっかりと片づけてもとに戻すというのが本来の姿ですから、そういったことを言っております。

 それと、この二年間で言うならば、半減をする。子供たちがいる空間に関しては六〇%低減する、重点的にやるということですね。これが当面の目標になります。

柿澤委員 さて、それで、今の除染活動が効果を上げているのかということでありますが、除染の活動にもかかわられておられます神戸大の山内知也教授が九月に、放射能レベル調査結果報告書、渡利地区における除染の限界、こういう報告書を作成しています。

 これによると、モデル事業実施区域として通学路等の除染が行われた福島市渡利地区において、九月十四日に空間線量を測定してみたところ、平均して線量は六月の時点の七割にしか下がっておらず、一から二マイクロシーベルト・パー・アワーに高どまりをしていたということであります。

 また、今回、家屋の除染が始まったのを機に家の中の線量をはかってみたそうなんですが、さんざん除染をやった家でも、二階の線量はやはり一マイクロシーベルトに高どまりしている。しかも、足元より天井が高くて、屋根に近づくほど線量が高くなる傾向がある。屋根の上をはかってみたら、案の定一・七から一・八マイクロシーベルトあったというんですね。

 報道ステーションでも取り上げられたそらまめ保育園というのがありますが、五月から父兄がさんざん除染活動をやって、三十マイクロシーベルトを〇・三まで下げた。でも、室内の線量は高いままで、床の線量が〇・三マイクロシーベルト、天井に近づけると〇・五以上あったというんですね。やはり室内の線量は下がらないということで、園長さんは年内で移転を決めたというふうに聞いております。

 結論として、山内教授は、表土剥離や高圧洗浄の今の手法では家の中の線量低減は図れずに、屋根の張りかえまでが必要になってくる、こういうことをおっしゃっています。一言で言って、今やっている除染というのは、除染活動ではあったとしても、除染そのものにはなっていないのではないか、こういう根本的な疑問を投げかけられております。

 子供を初め長時間とどまっている空間の線量を下げるのが除染であって、福島市渡利地区の除染活動について、例えば八時間程度はとどまるであろう室内における線量、こうしたことを除染活動の終了時にはかって確認する、こういうことをやっているのかどうか、お伺いをしたいと思います。

細野国務大臣 渡利地区の結果については、山内先生が書かれたものも私拝見をいたしましたので、本当に、なかなか除染というのは難しいものだなというのは改めて私自身も感じております。

 やり方も、いろいろな試行錯誤はこれからしていかなければならないというふうに思っております。さまざまなやり方にチャレンジをした例というのが出てきておりますので、その中でどういったものが最も効果的なのかということについて確認をして、そして、その最も効率的な方法をできるだけ幅広くやっていく、そういうやり方をしなければならないと思っております。

 国が直接的にやっておりますのはモデル事業でございますので、これからやる段で、比較的人が住んでいないところでやるわけですので、そこはそこのやり方があろうかと思います。

 一方で、今御指摘のように、生活をされているところで除染をやった場合に、最終的にどういう形で効果を検証するのかとか、それをどう解釈していくのかということについては、これはそれぞれの自治体がやっていただいているという面がありますので、若干踏み込んで、国がもう少し検証しなければならないところがあるなということを、今御発言を聞いて感じました。

 ですから、渡利地区も含めて、特に福島市、伊達市を初め中通りでかなり除染をやっていただいていますから、そうしたところで自治体がやったことをどう検証していくのかということについても、改めてしっかり政府として確認をしていく必要があると感じております。

柿澤委員 一度除染活動をやってそれで終わりかというと、これはそうでもないということも言われています。

 東京でも、私の知人が地元の公園で、七月十六日に土地を取って除染をやった地点でもう一度調べてみたところ、これは十月二十三日、ついこの間の日曜日ですけれども、木の根っこのところで、〇・一一まで下がっていたのがまた〇・九二になっちゃった。トイレの横の地点が、〇・一二になっていたのが〇・三〇になっている。三カ月でもとのもくあみ。それどころか、もっと上がっているところまであるということなんですね。

 これは、地形的なものや雨水の流れ、そのような要素に影響されていて、放射性物質が集まってくる、線量が高くなる場所がある意味では決まっているんだと。渡利地区で見ても、弁天山に降り積もっているセシウムが、雨が降ると少しずつ流れて線量が上がる場所、これがもう決まっている。

 こういうところは、もし仮に今表土剥離をやって線量が下がったとしても、また三カ月たったら線量が戻ってしまう、こういうことがあり得るんじゃないかと思いますが、その場合、また除染活動を行うんでしょうか、お伺いします。

細野国務大臣 まだそこまで方針が決まっているというわけではありません。幾つかの地点でモデル事業をやっていまして、恐らく、そこで出てくるのではないかというふうに思っておりますのは、特に山の近くですね。そこを除染した場合に、また山からそういった放射性物質が来るということで、繰り返し繰り返しやらなければならない地点が出てくる可能性はあると思っております。

 まだ、そういったところについて、どういった形で対応していくのか、本当に繰り返しということになるのかどうかについては、政府としての検証ができているという状況ではありません。

柿澤委員 こういう形で、取りかかってみたものの、成果が上がるかどうか。そして、今後やっていく上で、必要なところの除染にどれだけのコストがかかるのか。こういうことに関する確たる見通しがはっきりとは言えない。こういう状況だということが、今やりとりをしていて感じられるわけであります。

 この除染に関するもう一つの問題は、除染をやるからということを理由にして、そこの住民の避難を認めていないところにあると思います。

 今、先ほどから申し上げている福島市の渡利地区、ここは、場所によっては特定避難勧奨地点に相当する高い線量が測定されていて、実際に、勧奨地点に指定をしてくれ、こういう声も上がっているというふうにも聞いております。

 特定避難勧奨地点に指定をしていない渡利地区でありますけれども、仮に、自主避難をした住民がどうなるかというと、これは賠償、補償の対象から外れてしまう、こういうことになるんだろうというふうに思いますけれども、そういう理解でよろしいでしょうか。

細野国務大臣 賠償の問題は、北神大臣政務官の方から御答弁申し上げます。

 まず渡利地区なんですけれども、政府として、もちろん自治体の協力を得ながら一緒にやったということでございますけれども、測定した地点が千三十八地点ございます。そのうち、積算の線量予測が、来年三月までで二十ミリシーベルトを超えるおそれがあるというふうに判明したのが二地点でございます。いずれもこの地域の端に位置しておりまして、お二つとも御家庭としては避難を希望されていないということでしたので、そういう客観的なデータに基づいて、特定避難勧奨地点には指定をしなかったということでございます。

 先ほど、若干答弁、十分語り尽くせませんでしたけれども、渡利地区で放射線量の低減をやっていただいておりまして、福島市のホームページで公開されているところによりますと、約二割の線量低減効果があったという報告も出ております。したがって、渡利地区については、この除染活動をしっかりやって、そして結果を出すことで、現状においては対応できるのではないかというふうに考えているところでございます。

北神大臣政務官 自主避難の賠償についてお答えしたいと思いますが、委員御案内のとおり、今現在、原子力損害賠償紛争審査会で議論をしているところでありまして、実は、まだ確たる方針が出ていない。いろいろな意見が出ていまして、十一月の下旬ぐらいに中間指針というものを取りまとめるということになっております。

 いずれにせよ、その中間指針がどうであれ、大原則は、この原発の事故と相当な因果関係のあるものについては、東京電力さんがしっかりと賠償するということが我々の理解でありますので、経済産業省としても、しっかりと被災者の皆さんの話を聞きながら、そしてその実態を踏まえながら、その立場に立って賠償に取り組むように指導することでございます。

柿澤委員 その一方で、今出た審査会が、原発事故に関連する福島県内の自主避難者に関して、事故当初の自主避難者は賠償、補償の対象にするけれども、一定期間が経過した後の自主避難者は対象としない、こんなことを中で議論している、こういうことが報道されているわけです。

 結果として、国の情報を信じてとどまって、後から危険性を察知して逃げようというときにはもう補償の対象にならない、こういうことでは、私は、やはり政府に対する信頼を損ねてしまうというふうに思いますので、この点、本当に重々念頭に置いていただきたいというふうに思います。

 時間も経過をしてしまいましたので、何問か残してしまいましたが、今お聞きをいただいておりますとおり、除染の活動は行うわけですけれども、その効果、またどれだけのコストがかかるのか、そして期間はどのぐらいか、また、どういう結果がもたらされれば本当に安心してそこに暮らすことができるのかどうか、そういう点について、確たる答えが今のところ示されていない。そうした中で、除染をやるから帰れるんです、除染をやるからとどまっていてください、こういうことで本当に、一年二年理解を求め続けるということができるのだろうか、こういうふうにも感じているところです。

 私がチェルノブイリ、ウクライナでお聞きをしたプリステルさんの、私たちの経験から学んでほしい、こういう言葉が大変重く響くわけでありますけれども、しっかりと現実を踏まえ、また、正しい情報を国民に対して率直に説明して今後の対応をとられることを心から期待申し上げまして、この質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

松宮委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十一分散会


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