衆議院

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第4号 平成25年5月30日(木曜日)

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平成二十五年五月三十日(木曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 渡海紀三朗君

   理事 牧原 秀樹君 理事 三原 朝彦君

   理事 宮下 一郎君 理事 渡辺 博道君

   理事 福田 昭夫君 理事 伊藤  渉君

      大串 正樹君    大塚 高司君

      大野敬太郎君    鬼木  誠君

      加藤 寛治君    神田 憲次君

      小林 史明君    末吉 光徳君

      助田 重義君    関  芳弘君

      田中 英之君    中川 俊直君

      福田 達夫君    船橋 利実君

      星野 剛士君    前田 一男君

      武藤 容治君    村井 英樹君

      簗  和生君    山田 賢司君

      大島  敦君    津村 啓介君

      古川 元久君    前原 誠司君

      杉田 水脈君    鈴木 義弘君

      西根 由佳君    岡本 三成君

      輿水 恵一君    井坂 信彦君

      柏倉 祐司君    宮本 岳志君

      青木  愛君

    …………………………………

   国務大臣

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)

   (情報通信技術(IT)政策担当)         山本 一太君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   倉持 隆雄君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   西田 安範君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           常盤  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           山越 敬一君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            守本 憲弘君

   衆議院調査局科学技術・イノベーション推進特別調査室長           雨宮 由卓君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十日

 辞任         補欠選任

  武村 展英君     鬼木  誠君

  宮崎 謙介君     助田 重義君

  八木 哲也君     末吉 光徳君

  山下 貴司君     田中 英之君

  伊佐 進一君     輿水 恵一君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     武村 展英君

  末吉 光徳君     八木 哲也君

  助田 重義君     星野 剛士君

  田中 英之君     中川 俊直君

  輿水 恵一君     伊佐 進一君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 俊直君     山下 貴司君

  星野 剛士君     宮崎 謙介君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件


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     ――――◇―――――

渡海委員長 これより会議を開きます。

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官倉持隆雄君、財務省理財局次長西田安範君、文部科学省大臣官房審議官常盤豊君、厚生労働省大臣官房審議官山越敬一君及び中小企業庁経営支援部長守本憲弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡海委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

渡海委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 山本一太大臣には、今国会初めて御質問させていただきます。よろしくお願いしたいと思います。

 この安倍政権におきまして、経済成長のシーズをどう創出していくか。アベノミクスの決定打となる具体的な成長戦略の矢を放てるかどうかという非常に重要な責務の一端を山本一太大臣は担われていると認識をしております。

 中長期的には、仕組みづくりから、その仕組みによって多様な人が出てこなければなりません。安倍総理の言われる、最もイノベーションに適した国へのグランドデザインを描いていかなければならないときが今でございます。

 まず、科学技術・イノベーション政策の司令塔機能の強化について何点かお伺いをさせていただきたいと思います。

 既に我が国には、司令塔機能として、総理を議長とした総合科学技術会議が存在をいたしております。ここは、官房長官、そして総理が指定をする関係閣僚及び関係行政機関の長、有識者議員で構成をされておるわけです。

 まず、この点についてお伺いをしますけれども、この総合科学技術会議をどう強化していくのかという視点、いや、アメリカやイギリスのような、いわゆる科学技術顧問といった方を設置していくという考え方、さまざまなことが今、政府内でも議論をされているし、各党からも要請がなされていると思います。非常に大切な議論だと思いますけれども、まず、現時点において、この点に関する大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

山本国務大臣 御質問ありがとうございます。

 科学技術・イノベーション政策の司令塔機能強化に関しては、伊藤議員が委員長を務めておられます公明党の科学技術委員会からも前向きな御提言をいただいており、大変感謝をしています。きのう改めて読み返してまいりまして、この科学技術顧問の話もありましたし、あるいは公的シンクタンクの創設の話もありましたし、たしか科学技術外交のお話もありました。大変参考にさせていただいております。

 委員御指摘のとおり、科学技術・イノベーションに関する司令塔機能強化には、大別すれば、総合科学技術会議の機能強化と科学技術顧問の設置の二つの視点があると思います。

 官邸のリーダーシップを発揮するために、総理大臣に対して科学技術に関する助言等を行う科学技術顧問の設置について、与党を含め各方面からさまざまな提言があることは承知をしております。

 安倍政権では、内閣府に設置された最重要会議である総合科学技術会議について、その司令塔機能を抜本的に強化せよ、こういう総理の御指示を受けて、具体策を検討しているところでございます。

 科学技術顧問の設置の必要性については、総合科学技術会議や産業競争力会議においても意見が交わされておりまして、総合科学技術会議との二元化は避けるべきとか、顧問のためにスタッフをさらに置くことの妥当性などを指摘する意見もありました。

 私は、科学技術顧問の設置については、これらの指摘に加えて、科学技術政策担当大臣との役割分担という問題が一つありますし、科学技術顧問が担うべき高度な職務に対応できる人材の選定等々の難しい課題を踏まえつつ、十分に機能できる枠組みづくりができるかどうかということを判断する必要があると認識をしています。

 私としては、安倍政権の最優先課題である日本経済の再生に向けて、まずは、総合科学技術会議の司令塔機能強化を実現することが喫緊の課題ではないかというふうに認識をしております。

伊藤(渉)委員 今、山本大臣から御答弁いただいたように、私も、二元化は避けるべきだともちろん思いますし、今ある政府の機能を存分に発揮していく、こういう方向性でやはり進めていくべきだろうというふうに考えております。

 そういう意味では、今の総合科学技術会議がそのままの姿で、さらに司令塔機能を強化しつつ、諸外国のいわゆる科学技術顧問のような役割を担っていくということも十分選択肢としてあると思いますし、科学技術顧問と呼ばれる人が果たして一人なのか複数なのか、いろいろな議論があってしかるべきだと思いますので、ぜひとも実効性のある形に整えていっていただきたい、こういうふうに思うわけです。

 その上で、この司令塔に、やはり、最終的には、一人、あるいは総合科学技術会議だけでは実質的な権限というふうにはならないわけで、人、物、金をどう集約していくかということが非常に重要になってくると思います。

 そういう意味では、この司令塔に人、物、金を集約して、実質的な権限を強化するスキームも創設をしていく、あるいは今あるものを強化していく、こういうことも検討しなければならないと思いますけれども、この点についての大臣の御所見をお伺いします。

山本国務大臣 大変大事な御指摘だと思うので、少し正確に御答弁させていただきたいと思います。

 総合科学技術会議の司令塔機能強化については、先ほどちょっと申し上げましたけれども、総理から、予算、権限の両面でこれまでにない強力な推進力を発揮できるように抜本的な強化策を具体化すべく検討するという方針が示されておりまして、そこを踏まえて今いろいろな検討をさせていただいています。

 その方策としては、第一に、総合科学技術会議のもとに関係省庁等幹部で構成する科学技術関係予算戦略会議、これは仮称ですが、こういうものを設置して、各省庁が予算要求を検討する早い段階から総合科学技術会議が主導して科学技術関係予算の重点配分等をリードしていく新たな予算編成プロセスを導入したいと考えております。

 なお、予算編成プロセスへの関与は、これまでも、総合科学技術会議が主導で、以前は、概算要求の後に各省の施策を網羅的に優先度判定する、いわゆるSABC評価と言われているんですが、これを実は平成十五年から平成二十三年までだったと思うんですけれども、実施いたしました。これを発展させて、概算要求前から課題等を示し、各府省の連携等を促して調整するアクションプランプロセスというのを平成二十三年から導入して、二十五年までやってまいりました。

 こうやって、政策誘導を可能としつつ予算措置にも反映させるなど、一定程度はこのプロセスは進化してきたと思います。

 ただ、提示する課題と各省施策との連動が不透明だという指摘があったり、各省のインセンティブが弱いなどの問題もあって、予算編成プロセスでの真の司令塔機能を発揮するためには、これまでのプロセスの進化が必要だと考えております。これが第一点です。

 第二に、府省横断型のプログラムの創設を検討しております。国家的に重要な課題をイノベーションにより解決していくためには、関係府省の枠を超えた機動的かつ大胆な取り組みが必要であって、司令塔機能強化の柱の一つとして、総合科学技術会議がみずから重点的に予算を配分する新たなプログラム、担当大臣として最低でも五百億という枠を申し上げてきたんですが、これを創設したいと思っております。

 第三に、FIRST、最先端研究開発支援プログラム、この三十研究課題の多くは世界トップ水準の高い研究成果を創出しております。委員御存じのとおり、介護ロボットHAL、あるいは細胞シート、iPS細胞とか、こうした最先端の成果を出しておりますので、FIRST後継施策の新たな展開については現在鋭意検討しています。

 今後、これらを実行するための予算措置とかあるいは法律改正等の措置を実現して、総合科学技術会議が司令塔機能を発揮して、特に安倍政権の最優先課題である日本経済再生を実現させていきたいというふうに考えております。

伊藤(渉)委員 今の答弁とも関連をいたしますけれども、そうしてつくり上げられてきた科学技術の成果を実用化に結びつけ、イノベーションを実現、展開していくためには、さらに総合的に、全体像を把握して、規制緩和や税制等のさまざまな政策を組み合わせていく必要がございます。

 そこで、お伺いをいたしますけれども、そのためには総合科学技術会議以外の政府の他の本部組織とも十分に連携をしながら進めていく必要性がある、こういうふうに思いますけれども、重ねて大臣の所見をお伺いいたします。

山本国務大臣 これも大変大事な御指摘をいただきました。

 科学技術の成果をイノベーションを通じて新たな価値創造に結びつける、これは非常に重要だというふうに考えております。

 このためには、規制改革、特区制度等の他の政策手段を総動員する。研究成果を出口、出口というか事業化、実用化と言った方がいいかもしれませんが、そこまでつなぐ機能強化とか取り組みの実行が必要だと思っておりまして、総合科学技術会議と成長戦略を策定する日本経済再生本部、規制改革会議等が連携することが重要だと考えております。

 こうした考えのもと、総合科学技術会議で現在策定中の科学技術イノベーション総合戦略については、甘利経済再生担当大臣、稲田規制改革担当大臣にも御出席をいただいて審議を行っております。私も産業競争力会議の正規のメンバーの一人になっておりまして、成長戦略の審議においても連携をしております。

 引き続き、委員の御指摘もしっかりと踏まえて、本総合戦略の実行において、日本経済再生本部、産業競争力会議、規制改革会議等としっかり連携をして進めてまいりたいと思います。

伊藤(渉)委員 山本大臣は大変所掌も多い中ですけれども、本当に大変だと思いますが、ぜひともこのイノベーションについてリーダーシップを発揮いただきたい、我々もしっかり支えていきたいと思います。

 個別具体的な研究についてお伺いします。

 これまでも、独立行政法人や国立大学法人、あるいは民間のシンクタンクなどでも行われてまいりましたけれども、民間活力の活用はもちろんのことでございますが、独立行政法人での研究についてもさまざまな議論がございまして、もちろん、目下の財政状況にも十分配慮をしなければなりませんけれども、より研究開発の実施のしやすい組織形態、あるいは環境を提供していく必要がある。これも政治の役目だろうと思いますけれども、大臣の御所見をお伺いいたします。

山本国務大臣 御指摘のとおり、研究開発法人は、民間とか大学では困難な研究開発を実施し、日本の成長を牽引するために重要な役割を担っていると認識をしています。

 グローバルな競争環境の中で研究開発法人が優位性をしっかり発揮していくためには、長期性、不確実性、予見不可能性、専門性等といった研究開発の特性を十分に踏まえた法人制度の改革が必要だというふうに考えております。

 その際、効果的運用の達成とか効率的な運用の達成とか国民への説明責任を大前提とした上で、これは大前提ですが、研究開発法人が能力を最大限に発揮できるように、研究開発の特性を踏まえた制度運用のあり方等を法的に担保することなどにより、世界最高水準の新たな制度を創設すべきであるというふうに考えております。

 また、国際頭脳循環を促進するための人件費に係る制約の緩和など、現行制度においても運用上改善が可能なものについては早急に見直しを行って、研究開発の実施しやすい環境づくりに努めてまいりたいと思います。

 大事なことなので、もう一歩踏み込んで御答弁をさせていただきたいと思います。

 グローバルな競争環境の中で研究開発法人が本当に優位性を発揮するためには、研究開発の特性を十分に踏まえた法人制度の抜本的な改革が必要だと担当大臣としては考えておりまして、これはもう委員御存じかもしれませんが、世界最高水準の新たな制度を創設するための最適な法形式ということになると、いわゆる独立行政法人通則法のもとに置くという制度にするのか、あるいは全く別の法律にするのか、今各方面で議論がなされていることは認識をしています。

 ちょっと言葉に気をつけなきゃいけないと思いつつ申し上げますが、安倍政権としては科学技術・イノベーションを中核に置くという方向性を打ち出しているわけなので、私としては、思い切った改革が必要だというふうに考えております。

伊藤(渉)委員 さまざまな技術的な課題、議論があるかと思いますが、私も、そういう取り組みを政府がすることによって、現場の皆さんの旗頭にもなりますし、ぜひとも前向きに検討をいただきたい、こういうふうに思います。

 これまで司令塔機能の強化ということについて議論をしてきましたけれども、現場で私が遭遇してきた課題についても少々お伺いをしたいと思います。これは、経産省中小企業庁の政府参考人の方にお伺いします。

 過日、地元の、私は愛知でございますが、印刷会社を訪れました。そこでは、特殊な被膜の研究を経済産業省から支援を受けながら実施されておりました。非常に興味深いお話を聞きながら、ここで出てきたお話についてお伺いします。

 経産省から中小・小規模事業者に対する支援策についてお伺いをするわけですが、この中小・小規模事業者に公的資金で試作や研究のお支えをしているわけですけれども、ここで出てきた話というのは、申請の際や結果報告の事務手続がかなり煩雑で、かえって人手が必要になってしまうために、ともすると、公的機関とのコラボレーションをして研究開発を行うことに消極的になるという声を実は耳にしました。

 これは一方で、公的なお金ですから、そういった書類が必要になることも私も十分理解をした上で、こういう声があるということもまたお届けをしたいと思い、きょう質問をするわけですが、こうした点について、さまざまな現場の声が政府の方にも入っていると思いますけれども、改善をぜひとも行って、民間の知恵をもっと引き出していくべき、こう考えますけれども、政府参考人の答弁を求めます。

守本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおりでございまして、既存の中小企業支援策の事務手続が、特に小さな、小規模企業にとって煩雑で使用しづらいといったような声は私どもにもたくさん届いてございます。

 支援策の運用に当たりましては、支援を受ける側に立ちまして、使い勝手を向上させるために不断に見直していくことが重要と認識し、また、取り組んでおるところでございます。

 一例でございますけれども、物づくり中小企業、小規模事業者が公設試験研究機関や大学等と連携して行う研究開発を支援します戦略的基盤技術高度化支援事業というのがございます。

 これにつきましては、例えば、平成二十四年度に申請者が提出していただく書類は十四ページでございましたけれども、平成二十五年度には七ページに簡素化をさせていただきました。また、添付書類も削減をしたり、あるいは電子媒体で提出することを可能としたりといったようなところで簡素化を進めているところでございます。

 こうした取り組みを継続的に進めていくことによりまして、中小企業、小規模事業者の方々に、できる限り事務手続の煩雑さを改善することに努めまして、御指摘の、民間の知恵を引き出せるような支援策としてまいりたいと思っております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 時間の関係もございますので、これで最後の質問にさせていただきたいと思いますが、政府自体の人材育成という観点で山本大臣にお伺いをしたいと思います。

 今日までコストの削減あるいは行政府の人員の削減が続く中で、個々のプロジェクトのマネジャー機能を果たす、本来、これは行政府の仕事だと思うんですが、この行政府の職員の方々が、ともすると、現場に足を運んだり、まさにイノベーションを起こすための、これは要するに交わることが大事なものですから、いろいろな人と会って話したりすることは極めて大事なのにもかかわらず、そういう人材交流の場に参加をしたりして目ききを養ったり、あるいは自分の発想を膨らませたり、こういう機会が少なくなったり、そういうところに出づらくなっているんじゃないか。

 まさに、この国全体の人材育成を考えるわけですが、その中心にいるべき行政府の人材が少しずつそういう機会から離れてしまっているんじゃないかと私はすごく危惧をしております。

 こうした点を踏まえて、どんなに仕組みだけを議論しても、それを生かすも殺すも、やはり、その中枢にいる行政府の人材をしっかり確保し、育てていく、こういうことをお願いしたいと思うわけですが、行政府の人材育成の現状と大臣の御決意についてお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

山本国務大臣 今、安倍総理からの御指示を受けて、総合科学技術会議の司令塔機能強化について検討を行っていると先ほども申し上げました。その中にあって、今委員のおっしゃった事務局の人材育成、これも非常に大事な課題であるというふうに認識をしております。

 これまでも、事務局職員の現場感覚を醸成するという目的で、折に触れて、例えば、大学とか研究機関等の現場の研究者等との意見交換等の機会は設けてまいりました。

 今後は、これまで以上に、総合科学技術会議が持つべき分析、企画力等を継続的に発揮するために、その基盤となる事務局の人員体制の質的、量的な強化というものは進めていきたいと思いますし、かつ、業務の継続性を担保できる体制をつくるというのは非常に重要だというふうに考えております。

 加えて、このためには、まず、関係府省、産業界等々の協力を得ながら、科学技術・イノベーション等の専門的知見等を有する優秀な人材を集める、優秀な人材を登用する、こういうことを進めるとともに、関係府省とか産業界等からの出向者の任期の長期化等にも取り組まなければいけない。よりすぐれた人材の安定的、継続的な確保に取り組んでまいりたいと思います。

 もう一つ申し上げますが、国内外の科学技術関連のデータやエビデンスを収集、調査、分析するための機能を有する機関がいろいろあります。例えば、日本学術会議、経済産業研究所、科学技術政策研究所、科学技術振興機構研究開発戦略センターとか、そういったところがあるんですが、こうしたところとの連携を通じて、今委員のおっしゃった事務局の目きき、これを醸成していくことも重要ではないかと思っています。

 こうしたことで、プロパーの職員を含めた優秀な人材を採用する、育成する、そういうことを通じて、委員の御提案も踏まえた上で、科学技術・イノベーション政策の司令塔としてふさわしい目ききの確保に担当大臣としてしっかり取り組んでまいりたいと思います。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 大臣の今後の御活躍に御期待申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

渡海委員長 次に、柏倉祐司君。

柏倉委員 みんなの党の柏倉でございます。

 私は栃木県出身でございまして、大臣は群馬県ということで、北関東ラインということでよろしく御指導お願い申し上げます。

 私は、実は内科医でございます。医療関係の質問、特にiPS絡みの質問をちょっとさせていただきたかったんですが、大臣所信ということで、きょうは、大臣の所信に沿って、私が一番興味があります宇宙政策について御質問させていただきたいと思います。

 本年四月から、宇宙基本計画というものがスタートしております。測位衛星、通信衛星の拡充、ロケット技術開発、宇宙探査、そして有人宇宙活動といったもの、四つ、主に挙がっておるかと思うんですが、印象として、有人宇宙開発、こういったものが、若干その位置づけが後退しているのかなというような印象があります。

 内閣府の宇宙政策委員会が、実際にことしの一月に、これは格付といいますか重要度というのを評価されて、国際宇宙ステーション、ISSの実験棟「きぼう」、これは見直しが必要じゃないかというような形で評価されている。そして、ISSに補給物資を運ぶ補給機の「こうのとり」、これも予算の可能な範囲で実施すべきであると、若干トーンダウンしている印象が否めないと思います。かわって、準天頂衛星、こういったものの重要度がアップしてきている。

 こういった多事多難な日中、日韓、日朝外交の折、防衛、安全保障関連の宇宙予算がふえる、これはいたし方ないことだというふうに私も思います。また、アベノミクス、三本の矢、成長戦略の中で、やはり、ロケットシステム自体をパッケージで売る、こういった成長戦略も、これは大事なことだと思います。当然これもプライオリティーが上がるのは仕方がないと思います。小惑星探査、これも、日本が先頭を切っているわけですから、やはりリードしていかなきゃいけない。

 こういったものが比較的、相対的にプライオリティーが上がる、優先度が上がる、これはいたし方ないのかなと思うんですが、やはり、宇宙飛行、宇宙に人が行くというのは人類の夢でもございます。

 一九六一年にソ連のガガーリンが宇宙に行った。一九六九年、これは実は私が生まれた年なんですが、アポロ十一号が月面におり立った。九二年には毛利さんが日本で初めて宇宙に行った。我々が小学生のころは、やはり将来の夢は、プロ野球選手だとか、いろいろありました。でも、宇宙飛行士という人も男女問わず結構いたんですね。そういったところも、我々、この宇宙予算を俯瞰しますと、思いもめぐってくるわけでございます。

 国もプライドをかけて、有人宇宙飛行に予算と労力をある程度注いできたという実績もございます。しかし、現実的には、有人の宇宙機というのは一兆円以上かかるというふうにも聞いています。国の予算、宇宙関連というのは大体三千億円、暗黙の了解、これはシーリングがかかっている。そういった状況、先ほど言った状況の中、そして予算的な制約の中で、この有人宇宙飛行というのは見直しが迫られる。

 これはしようがないのかもしれないんですが、そこで、あえて大臣に、漠然として申しわけないんですが、なぜ、宇宙に人間は行かなければいけないのか、日本人は行くべきなのか、それをまず問いたい、それできょう質問させていただいているわけです。

 お手元に資料を配付させていただきました。去年の十月に国際宇宙探査シンポジウムというものが開かれて、いろいろ、宇宙関連政策、宇宙政策に関しての討議が行われた。そして、この資料は、パネルディスカッション、有人宇宙探査の意義というもののアブストラクトといいますか、サマリーでございます。

 有人宇宙に関する記述、アンダーラインをさせていただいていますが、これを読んでおりますと、なぜ宇宙に行かなきゃいけないんだ、リアリティーを持ってこれを読む人をして納得せしめるものが残念ながら多くない。これは限られた人の限られた議論ですから、これをもって政府の見解をただすというわけではないんですが、印象として、そういったものが間違いなくトーンダウンされている、現実味がないというのが、この議論の中からも伝わってくるということでございます。

 ここの議論を一部紹介しますと、なぜ宇宙に行くのかといったところで、心を持った人間が宇宙に行ってどのような感情を抱くかということ、この分析、解析に重要性があるというような意見とか、地球から月に人類が移動して、そのときに何が問題かというと、月面の人口がふえたときに、そこに住む人が地球からの独立を考えて地球と戦争を起こすかもしれない、こういうような議論までされているんですね。

 こういった議論が無駄だとは言いません、議論は大切だと思います。しかし、予算制約の中でこの有人宇宙というカテゴリーをどのような姿勢で推進していくのか、やはり改めてリアリティーを持って考えなければいけない、これをこのアブストラクトを読んでつくづく感じるわけです。

 漠然とした質問で大変恐縮ですが、まさにこれは根源的な質問でございますので、ぜひ大臣に、なぜ人は宇宙に行かなければいけないのか、お答えをいただければと思います。

山本国務大臣 柏倉委員には、北関東ラインで質問していただいて、ありがとうございます。

 先ほどおっしゃった宇宙基本計画の印象ですが、後退したというよりは、一言で言うと、新しい政権になってプライオリティーが変わったという言い方が多分正確だと思います。

 その上で、なぜ人は宇宙に行かなければいけないのか。恐らくいろいろな理由があるんだと思いますが、委員がおっしゃった、例えば国民に夢やロマンを与えるというのもあるのかもしれませんけれども、今の内閣の方針、宇宙基本計画の中身を踏まえて申し上げると、有人宇宙活動というものは、国民に夢やロマンを与えるだけではなくて、例えば他の先進国との協力を通じて新たに技術を獲得する機会として重要であるということが言えると思います。さらには、国際協力として我が国のプレゼンスの発揮にも資する、加えて、宇宙教育等の観点からも意義があるというふうに申し上げたいと思います。

 さらに言うと、本年四月三十日の日米科学技術協力合同高級委員会に出席のために、私、訪米をいたしました。下村文科大臣と一緒に訪米をさせていただきましたが、そのとき、科学技術政策担当の大統領補佐官、ホルドレン補佐官とか、NASAの長官のボールデン氏から、国際宇宙ステーション、ISSに対する日本の協力に関して強い期待も寄せられました。

 我が国は、多国間の共同プロジェクトであるこのISSにアジアで唯一参加する、これは五つぐらいしか参加していないと思うんですけれども、たしか、日、米、ロシア、カナダ、あとはどこだったでしょうか、とにかく日本もアジアで唯一参加をしているということで、さまざまな活動をやってまいりました。

 具体的には、これまで、先ほど柏倉委員の方から宇宙飛行士のお話がありましたけれども、JAXAの宇宙飛行士八名が有人宇宙活動を行ったこととか、ISSに日本実験棟、さっきお話が出ましたけれども、「きぼう」を建設して、微小重力とか宇宙放射線等の宇宙環境を利用した各種の試験研究を実施していること、それから、宇宙ステーション補給機「こうのとり」をH2Bロケットで打ち上げ、物資を補給している、こういった活動を実施してきたところです。

 他方、これも先ほど委員の御説明の中にありましたが、ISSの実験棟「きぼう」の利用については、我が国の産業競争力強化につながる成果は現時点ではなかなか明らかでないという意見もありまして、毎年、多額の予算、四百億円を要していることから、宇宙基本計画、これはことしの一月の二十五日、宇宙開発戦略本部で決定をいたしましたが、これにおいても経費の圧縮が必要とされているところです。

 将来的な国際協力を前提として実施される有人宇宙活動については、これは外交・安全保障、産業基盤の維持、産業競争力の強化、科学技術等のさまざまな側面から検討する必要があると考えておりまして、宇宙政策委員会の宇宙科学・探査部会において、今後とも十分に議論を行っていきたい、こんなふうに考えております。

柏倉委員 どうもありがとうございました。

 どうしても時代の要請があって、プライオリティー、順番をつけざるを得ないというところはよくわかりました。そういったところをきっちり国民の皆様にも伝えられるような、啓蒙といいますか、宣伝活動も、ぜひ内閣府の方ではお考えになっていただきたいと思います。

 次は、ロケットビジネスに関してなんですが、日本はパッケージインフラを積極的に輸出していくというような方針を立てられているかと思うんです。ベトナムで一つ決まったということなんですが、これが実際に今後、末広がりに広がっていくのかどうか、私自身、多少不安もあります。

 そこで、海外のロケットビジネスを俯瞰しましたときに、先頭を走っている者、これにやはり追いつけ追い越せをしなければいけない。その上で、彼らの戦略、戦術も分析をして戦っていかなければいけないのかなと思うんですね。

 そこで一つ、アリアンスペースというものがございます。ロケット業界のメジャーなわけですけれども、彼らがなぜ強いかというと、ロケット打ち上げの営業だけをアリアンスペースはやっているわけですね。ロケットをつくるところは違うところ。それで、国も、欧州宇宙機構というところがあります、そこが射場ないしロケット製造費まできっちり持っている。これは分業体制がしっかりされていて、営業をしっかりされている。しかも、年に六回打ち上げられるから、きっちりと、その下請さんというか、メーカーさんとも信頼関係ができて、メーカーさんも困らない、こういう状況になっている。

 信頼もどんどん上がっていくというか、保てますから、本当に独占、寡占状態のようになってきているわけですね。そういう岩盤に日本がどうやって穴をあけるのか、これは非常に大きな問題だと思うんです。

 日本は実際、今、一回か二回ぐらいしかロケットを打ち上げられない。これはペイを考えると、もう二回ぐらいは海外で毎年受注してこないとペイできない。それをどうやって海外で年二回とってくるのか。

 これでODAを介したトップセールスということを政府は考えられていると思うんですが、やはりそうではなくて、これは民間の、どことは言いませんが、ロケットで先端を走っているところ、そこが責任を持って開発、製造、セールスまでやれる、民間の力を強くするということがこの業界においても一番大切なことなんじゃないかなと思うわけです。

 そこで、先ほど申し上げました欧州宇宙機構は、射場管理、ロケット製造、これにはちゃんとお金も出している。それを、国は今後どういうふうな方向でそういった下支えをやっていくのか。

 これと、あと、下請さん、メーカーさん。年に六発も打てれば、メーカーさんはメンテナンスに困らないですね。ランニングコストも心配ない。ただ、今は目標の半分も打てていない状況で、下請の小さな町工場さん、これが非常に疲弊している。ロケットをつくるとなると、そのロケットの部品に集中して、ほかのものをつくらなくなる。でも気づくと、年に一回しか上がらない。要は、採算がとれない、先行き不安だ、先細りだろうということで、どんどんつくるものを変えている。

 要は、下支えする下請さん、これもやはり国は気を配らなきゃいけないと思うんですね。大手メーカーさんにそこまでやらせるのかどうか。やらせないとすれば、これは、技術安全保障という観点からも、国が積極的に関与していかなきゃいけないんじゃないかという意味。

 ちょっと二つにわたって聞いて申しわけないんですが、そこのところをぜひ、大臣の御意見を伺えればと思います。

山本国務大臣 大変重要な御指摘だというふうに思っています。

 今委員の方から、アリアンスペース社のお話がありましたけれども、やはりキーワードは、官民がきちっと連携をする、そして総合力を発揮していくということではないかと感じております。

 宇宙輸送システムは、我が国が必要とするときに必要な人工衛星等を独自に宇宙空間に打ち上げるために必要不可欠な手段で、その維持は、我が国の宇宙活動の自律性確保、今回の宇宙基本計画でも、自律性の確保と宇宙利用の拡大というのを二つの大きな哲学にしておりますので、この自律性を確保するという点からも極めて重要だというふうに考えております。

 一月二十五日に宇宙開発戦略本部で決定された宇宙基本計画においても、先ほど申し上げたとおり、宇宙輸送システムは、宇宙利用拡大と自律性確保を実現する社会インフラの一つとして位置づけられ、我が国が必要とする衛星等を必要なときに独力かつ効率的に打ち上げる能力を長期にわたり維持、強化、発展するため、あり方について速やかに総合的検討を行い、必要な措置を講じるとこの中で書かれております。

 我が国のH2Aロケット、これまで連続十六機打ち上げに成功していまして、信頼性については世界最高レベルにありますが、商業打ち上げサービス市場ではなかなか競争力が強いとは言えない状況で、今委員の方からも問題点の御指摘がありましたが、十分な民需とか外需の獲得ができていない、こういう状況にあります。そのため、これも今お話があったとおりですけれども、ロケット打ち上げ関連機器メーカーにおける事業撤退、これは実際拡大していまして、ここは深刻に受けとめなければいけないと思っています。

 現在、宇宙政策委員会の宇宙輸送システム部会で、宇宙輸送システムの総合的検討が進められておりまして、今般、数日前、五月二十八日に、輸送系の全体像を明らかにし、我が国の総合力、先ほど申し上げた、官民を含む総合力を結集して新型基幹ロケットの開発に着手する、こういう中間取りまとめがなされました。

 基幹ロケットに係る技術及び産業基盤の維持に対する国の役割は、もちろん大きい。先ほど委員がおっしゃったように、欧米も、もちろん国が国家戦略として関与しているというところはあるんですが、例えばカナダの宇宙産業の売り上げに占める外需比率が五〇%あるんですね。カナダの宇宙予算、年間三百億なんですけれども、ビジネスとして三千億円ぐらい収益を上げている。

 ですから、こういうこともしっかり考えながら、宇宙産業の国際競争力の強化が重要だというふうに改めて私は考えておりまして、先ほど民間企業のお話がありました。これも非常に重要な指摘だと思いますが、民間企業においても欧米のように主体性を持って対応いただく、ちょっとマインドセットを変えてもらうということが大事ではないかというふうに思います。

 さっきカナダの宇宙産業の売り上げのことを言いましたが、もう少し正確に言うと、年間約三千億円。カナダの宇宙庁の予算が三百億円。宇宙庁の予算が三百億なのに、宇宙産業の売り上げが三千億円、そのうち五〇%が輸出だということですから、こういうこともしっかり踏まえて考えなければいけないと思っています。

 こうした我が国の……

渡海委員長 大臣、時間を大分過ぎておりますので。

山本国務大臣 丁寧にと思ったので、済みませんでした。

 宇宙輸送システムに関する技術や産業基盤のあり方を含め、輸送系システムの全体像を明らかにしていきたいと考えております。

 長くなりましたけれども、大事なところだったので丁寧に御答弁させていただきました。済みませんでした。

柏倉委員 大変熱心に、そして丁寧に説明していただきまして、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

 どうもありがとうございました。

渡海委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 みんなの党の井坂信彦です。神戸の、兵庫一区でございます。

 私は、日本を挑戦者であふれる国にする、そしてしっかり稼げる国にする、こういうテーマで、この科学技術・イノベーション委員会と、そして経済産業委員会に所属をして活動しております。

 本日は、科学技術政策がきちんと事業化、そして経済成長、社会の発展というゴールにまでたどり着くようにという観点で、幾つか質問をさせていただきます。なお、本日は大臣、御丁寧ということでありましたので、幾つか質問を統合してお尋ねしたいというふうに思います。

 まず一点目ですけれども、さきのこの科学技術・イノベーション特別委員会にて、大臣がこうおっしゃいました。総合科学技術会議に独自の予算の権限を持たせるんだ、そして、ざっと五百億円ぐらい必要だと思っている、こういうふうにおっしゃっております。

 一方で、この科学技術関連予算、各省庁さまざまな予算を全省庁合わせますと、実に、日本じゅうで三兆六千億円ばかりあるということであります。この三兆六千億円に比べれば、先ほど大臣がおっしゃった五百億円というのはわずか一・五%。五百億円の独自予算を持つ、このお気持ちは大変了としたいと思うんですけれども、一方で、例えるならば、これは、オーケストラの指揮者であるはずの総合科学技術会議が、突然みずからバイオリンの練習を始めるような話ではないのかなというふうにも思うわけであります。

 全体の三兆六千億円をきちんと隅々まで統括することこそが大事ではないかと思う中で、この五百億円を一体どういう方向性で使おうと思っておられるのかをお伺いいたします。

山本国務大臣 井坂委員が、どの委員会だったかちょっとはっきり記憶していませんけれども……(井坂委員「予算委員会」と呼ぶ)予算委員会ですね、日本をイノベーションにあふれた国にする、本当に優秀な人材が集まる拠点にするというお話を伺って、私も全く同感だなというふうに思っております。

 委員御指摘の点は、安倍総理から、四月十七日に産業競争力会議で、府省横断型の研究開発プログラムの創設を検討するという方針が示されて、四月二十三日の総合科学技術会議で、プログラムの対象や配分の仕組みを含めた制度設計は総合科学技術会議が行う、こういった指示を受けて、現在、検討を進めております。

 その検討に当たっては、総合科学技術会議が司令塔機能を発揮して、科学技術・イノベーションが経済社会への貢献につながる課題解決型のテーマに対して、府省の枠にとらわれずに予算を重点的に配分する枠組みとすることを考えております。こうした方向性は、新たな科学技術・イノベーション政策のいわば骨太の方針として、今進めている科学技術イノベーション総合戦略に盛り込んでいきたいというふうに考えております。具体的なテーマについてはもう既に民間議員の方々と議論を始めておりますが、引き続き、具体化を進めていきたいと思います。

 委員のおっしゃった、三兆六千億円ぐらい予算がある中で、一・五%ですか、この五百億の話がありました。

 オーケストラの指揮者になるためには、バイオリンも弾かないといけないのではないかという発想がありまして、つまり、この総合科学技術会議がみずからの独自の予算配分枠を持つというのは、機能強化の三つぐらいある柱の一つなんです。

 やはり、省庁の枠にとらわれずに、五百億、私が勝手に言っているだけなんですけれども、最低でも五百億。五百億を少ないか多いかというのはいろいろ意見があると思うんですけれども、されど五百億。本当にニーズのある、例えばハイリスク、ハイインパクトのところに、省庁の省益等々で皆さんがやっていると思いませんけれども、枠を超えた形でプロジェクトをしっかりつけるということが日本の科学技術・イノベーションにとって突破口になるという場合もあるというふうに思っています。

 ただ、おっしゃったとおり、それだけで機能強化とは考えておりませんで、もっと大事なのは、本当に委員が大変大事なポイントを指摘していただいたんですけれども、指揮者ですから、指揮をしなければいけない。

 それは、先ほども伊藤委員の御質問にお答えしたように、アクションプランとかをつくって、一生懸命、政策決定プロセスのときから関係各省を巻き込んでやってきた。これはもちろん進化させて、今度は最初の段階から、戦略会議みたいなものをつくって、概算要求が始まる前に各省の予算関係者に集まっていただいて、総合科学技術会議のもとで方針をつくるところから始めてほしいと。これも今、総合戦略の中に組み込もうとしております。

 もう一つは、これはまだ話し合いがはっきりついたわけではありませんけれども、FIRSTのような、一千億、千五百というレベルでやってきましたけれども、本当に世界最先端の科学技術、いわゆるプロジェクトを推進してきた。この後継といいますか後の形、こういうものについてもぜひ何らかの形で創設をして、これも総合科学技術会議がしっかりとリーダーシップを振るっていく。

 この三つを組み合わせることによって司令塔機能を働かせていこう、こんなふうに担当大臣としては考えております。

井坂委員 本日、実は御提案したいのは、五百億を何も否定しているわけではないんです。ただ、その五百億をいわゆる省庁横断的な事業に、指揮者が事業を持つことの是非は多少私は考えるところがありまして、同じ五百億を使うなら、むしろ、バイオリンもやったことがないよりはある方がいいには違いありませんが、しかし、本来の、指揮の技術そのものを高めることに五百億円を使えないかということで御質問したいというふうに思います。

 科学的にこの科学技術政策を進められないかというテーマであります。いわばどの政策を取捨選択するのか。今は、要は、総合的に科学技術全般に深い知見を持っておられる方々が総合科学技術会議の議員になられて、最重点アクションプラン、それから重点施策パッケージということで大枠を示して、各省庁の政策をそこに予算査定前に誘導するという形、これはこれでいいと思うのですが、恐らくそれでは足りないと思っての今回の権限強化ということであります。

 であれば、まず、本筋からいって、科学技術政策あるいは個別の研究のどこに投資をするのか。これはある種ベンチャー投資に近いものがあると私は思っておりまして、全然だめだろうと思っていたものが急に化けることもあれば、全然異分野のものがつながって、世の中を変えるような大発明になることもあるわけです。こういったものを、しかし、わからないから広く浅く、あるいはベテランさんの目きき、勘と経験で、これまでのそういう政策選定のやり方から、よりエビデンスに基づいた科学技術政策の選定に移せないかというふうに考えております。

 実際、幾つか周辺の研究機関でそういった研究は進められていると思うんですけれども、エビデンスの測定、物差しのつくり方、そしてそれに基づく政策選定の仕方についてどうお考えか。

 そして、これは、要は産業化が近い研究だけでなくて、いわゆる基礎研究、本当に二十年、三十年たたないと花が開くかどうかもわからないようなものについても、いわゆるコーホート研究というような形で、たくさんの研究、とにかく支援をして、それが大体二十年、三十年後にどれだけ花が開いたかということをまた後から逆算して、実際このときの政策がよかったのか悪かったのか、こういう長期のエビデンスも私はとれると思っております。

 短期、長期問わず、エビデンスに基づいた科学技術政策の選び方、そしてこういうものをきわめるために独自予算を使っていくということについて、お考えを伺いたいと思います。

山本国務大臣 井坂委員から大変参考になるアドバイスをいただきました。感謝申し上げたいと思います。

 五百億になるかどうかわかりません、最低でも五百億円ぐらいはないとというふうに私は思っておりますが、これでどういうプロジェクトを選んでいくのか。単なる府省横断のプロジェクトでいいのか。

 これはもちろん、民間議員の方々も含めた総合科学技術会議のしっかりとした議論を踏まえて決めていくわけですが、いわゆる総合科学技術会議の目きき力、先ほども人材育成のお話が出ましたけれども、これは物すごく大事だと思っていまして、今、いわゆる経済界とかアカデミックな世界から本当にベスト・アンド・ブライテストの方々に集まっていただいていると思っていますが、そこは、余り型にはまったものよりは、本当に必要なところに集中投資するという考え方もあるのではないかというふうに思っています。

 その上で、今おっしゃった、エビデンスに基づく政策の企画立案ですが、これも非常に意義と重要性が高まっていると思っています。

 これまで、例えば研究成果は、委員も御存じのとおり、論文指標によって測定されてきた。これだけでいいのかという話がずっとあって、やはり、科学技術・イノベーション政策を進める上では、実用化、事業化にどう結びつくのかという視点から考えることも大事だと思っていまして、さっき、公的シンクタンクの連携、ちょっとお話ししましたけれども、こういうところとの連携を図りつつ、現場における実際の取り組みの現実も勘案して、実質的かつ形成的な評価、これはなかなか難しいです。でも、やはり評価の手法というものをきちっと確立していくように努力をしていきたいと思います。

井坂委員 ありがとうございます。

 確かに、物差しづくりは大変難しいと思います。特に、長期の結果を待つ基礎研究などは余計難しいと思うのですが、それでも、だからこそ、国が長期間、広範囲にわたって政策決定プロセスそのもののブラッシュアップをやる値打ちがあると思っておりますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 続きまして、オーケストラに例える続きで言うならば、すぐれたオーケストラ団員を集めるということで、先般、予算委員会でも御質問申し上げました優秀な人材の確保ということについても、もう一歩踏み込んで御質問したいというふうに思います。

 世界的な頭脳循環ということで、すぐれた若手の研究者に、国籍、言語を問わず日本に来ていただく、そして一時期でも活躍をしていただきたい、あるいは、一遍来ていただいたからにはそのまま日本に居ついていただいて、さらに研究を深める、あるいは産業化を進める、やっていただきたい。

 そういう中で、今、社会統合政策というものが日本はおくれていると思っています。幾らすぐれた研究の場所を用意して、幾ら高いフィー、お給料を用意したとしても、それだけでは来ていただけない。家族が日本に住みやすいのかどうか、あるいは、卑近な話でいえば、そもそもお買い物がしやすいのかどうか、そういったことまで含めて、要は、外から来た方と家族が日本で本当に暮らしていけるのか、そういう社会統合政策についても、科学技術の面からも、まさにこの五百億の予算でこちらの方も研究、実践が必要ではないかということについてお答えをいただきたいと思います。

山本国務大臣 いつもなるべく丁寧に御答弁しようと思って、どんどん時間が過ぎちゃうので、ちょっと早口で言わせていただきたいと思うんです。

 近年、国際的な頭脳循環というのが進んでおりまして、人材の獲得競争は激化をしておりますから、国を挙げて科学技術・イノベーションを強力に推進するという観点から、我が国の若手研究者の派遣、海外のすぐれた研究者の招聘、これを推進する仕組みというのは、私は死活的に大事だというふうに思っています。

 こうした認識のもとで、五月十七日の第百十一回総合科学技術会議に原案が出された科学技術イノベーション総合戦略、今、いよいよ詰めのいろいろな協議をやっているんですが、ここで、若手、女性、外国人研究者を含む多様な人材がリーダーシップを発揮できる環境の構築とか、世界トップレベルの研究者等の求心力を高める大学、研究開発法人を国際的なイノベーションハブとして強化する、こうしたことを重点的な取り組みとして位置づけております。

 例えば、これも細かく言うと時間がかかっちゃうんですけれども、総合科学技術会議が文科省と協力してプログラム化し、大学及び研究開発法人において国際化に向けた取り組みを先導し、すぐれた成果を上げている例として、世界トップレベルの研究拠点プログラム、WPI、これは非常にいい例だと私は思っているんですが、こうしたことを踏まえて、海外で活躍する日本人を含む世界トップレベルの研究者を呼び込む魅力あふれる研究環境の整備、いつも委員がおっしゃっているキーワードですが、これを関係府省の連携により推進してまいりたいと思います。

 なお、御指摘のあった社会統合政策ですか、多文化共生政策というふうに使っている省庁もあると思いますけれども、これは大事だと思います。やはり、入国した外国人の方々の社会への定着を促進するというのは外国人政策にとって重要な認識だというふうに、私も全く同じ問題意識を持っております。

井坂委員 最後になりますが、私、経済産業委員会の方もやっておりますので、やはり、文部科学系の政策と経済産業系、いわゆる死の谷と言われる、いい学問ができても産業化に結びつかないというギャップがあると思います。このギャップを埋めるということもひとつ、五百億の中でやっていただきたいと思います。

 本日は時間がありませんので質問いたしませんが、五百億で省庁横断的な独自の事業を持つ、これも全否定はいたしませんが、そうではなくて、むしろ政策選定のプロセスのブラッシュアップとか、あるいは社会統合政策的な、ちょっとほかの省庁ができないようなこと、そして死の谷を埋めるという本筋のこと、このあたりにぜひ資源を集中していただきたいということをお願い申し上げまして、本日の質問を終わります。

 ありがとうございました。

渡海委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 大臣は所信で、「科学技術・イノベーションは、この国の未来の形を決める鍵であり、我が国が直面する課題を乗り越えるための切り札です。」こう述べられました。

 科学技術・イノベーションが鍵だ、切り札だと天まで持ち上げていただくことは結構でありますけれども、肝心の科学技術に携わる研究者、それを支える人たちの処遇が大切にされてこそ、科学技術・イノベーションの推進が図られると私は考えますけれども、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

山本国務大臣 今おっしゃったように、イノベーションの本質は人であり、総理の指示にある世界で最もイノベーションに適した国の実現には、イノベーションの担い手が活躍する枠組みが整備されているということが必要だ、そんなふうに考えております。

宮本委員 しかし、現実には、適切には処遇されていないという問題があると思うんです。

 きょうは二つの問題を取り上げたいと思います。

 一つは、住宅にかかわる問題です。

 この間、民主党政権下で、公務員宿舎の削減計画が進められてまいりました。計画は、今後五年間をめどに、宿舎戸数を約二十一万八千戸から十六万三千戸に、四分の一も削減するという計画であります。

 筑波研究学園都市は、三十を超える国等の教育研究機関を初め、約三百にも及ぶ民間の研究機関、企業等が立地しており、約二万人の研究者を有する我が国最大の研究開発拠点であります。今度、当委員会でもつくばの視察を予定しておりますけれども、この科学の町にある公務員宿舎でも同様の削減が始まろうとしております。

 そこで、まず財務省に事実を確認いたします。

 つくば市における国家公務員宿舎の削減数、削減の割合を答えていただけますか。

西田政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年九月現在の数字でございますが、つくば市内に所在をいたします宿舎の設置戸数は約三千八百戸でございます。このうち、実際に入居者がいる戸数は約三千百戸でございます。今回の宿舎の削減計画に基づきまして、市内の宿舎については約千二百戸に削減をする予定でございまして、入居者ベース、入居している戸数との比較で見ますと約六割程度の削減となります。

 以上でございます。

    〔委員長退席、三原委員長代理着席〕

宮本委員 公務員宿舎全体では二五%、四分の一の削減ですが、つくば市内の宿舎は実に六割にも上る削減計画となっております。中心市街地にある宿舎までなくなって、町そのものがゴーストタウンと化す、こういうことが懸念されるわけであります。

 つくばというのは、改めて言うまでもなく、筑波研究学園都市建設法に基づいて、国の責任で研究学園都市にふさわしい公共施設、公益的施設及び住宅施設を一体的に整備する、あるいは政府が筑波研究学園都市建設事業を実施するために必要な資金の確保を図る、こういうことを、法律に基づいて建設と整備を進めてきた町なんですね。

 この国家公務員宿舎の削減は、つくば市にとっても町の存続にかかわる、あるいは町のあり方にもかかわる大問題だという声が出ております。削減をとにかく一律にただただ進めればよいというものではないと思うんですね。

 財務省にもう一問聞きますけれども、これは一体どのような対応になっておりますか。

西田政府参考人 お答え申し上げます。

 公務員宿舎の廃止、売却を踏まえましたつくば市の町づくりに関しましては、今月、つくば市におきまして、有識者及び関係者で構成をされますつくば中心市街地再生推進会議が設置をされ、つくばの魅力を向上させる中心市街地等の都市再生のあり方や、町づくりに効果的な公務員宿舎の処分方法等について検討が始められたところでございます。

宮本委員 今答弁があったように、つくば中心市街地再生推進会議、地元との協議を始められたということでありますけれども、宿舎の削減そのものはもう既に始まっているんですね。ことし二月には既に退去通知まで発出をされている。削減は決めた上で、削減処分の方法、やり方、これを協議する、検討するというのが、このつくば中心市街地再生推進会議の中身なんですね。居住者にとっては、まさに生活のかかった問題でありまして、今後のあり方も示されないままに削減だけが先行するというのは、私は問題だと思います。

 それで、次に内閣府に確認しますけれども、そもそも、つくばの宿舎の現状については、研究者確保の観点からも問題であるということが指摘をされてまいりました。

 例えば、二〇〇五年、平成十七年の十月三日につくばで行われた科学技術政策シンポジウムでは、宿舎についてどんな指摘がなされておりますか、内閣府。

倉持政府参考人 お答え申し上げます。

 総合科学技術会議では、平成十七年度に、第三期の科学技術基本計画の策定に向けまして、一般の方々の声の吸収に努める仕組みの一環といたしまして、御指摘の科学技術政策シンポジウムというのを全国七カ所で開催したところでございます。

 このうち、つくば会場での意見交換の中で、特に人材育成という部分につきましての意見交換がなされておりまして、御指摘の宿舎に関しましても、「短期間留学の外国人研究者に対する宿泊施設が不十分で、世界最低である。良い研究施設があるにもかかわらず、宿舎がいやだから筑波には来ないという外国人研究者がいる。」という発言があったことが記録されているところでございます。

宮本委員 大臣、先ほどもそういうやりとりがありましたよ。指摘にあるように、幾ら立派な研究施設があっても、そこで研究に従事する人たちの生活、住居が保障されなければ、すぐれた研究者は集まりません。研究も進むことはないんです。

 特に、つくばは国策としてつくられた町であって、宿舎が町の中心となっております。宿舎があるから安心して多くの学者、研究者が研究に従事することができているし、そのことは今後も変わらないと思うんですね。

 私は、特に若い研究者、非正規の研究者も宿舎に入れるように、むしろ改善が求められているというふうに思うんですね。宿舎の削減ではなく、むしろよりよいものにしていく必要があると思うんです。

 これは行政改革の観点から行われているということでありますけれども、つくばの公務員宿舎の廃止、削減問題は、我が国の科学技術政策にも大きくかかわる問題であって、ただ普通の公務員宿舎とは同列に論じるわけにいかないと思います。科学技術・イノベーションが鍵だ、切り札だ、そう力説される山本大臣こそ、必要な見直しも含め、意見も述べていただく、再検討を進めていただきたいと私は思うんですけれども、大臣の御所見をお伺いいたします。

山本国務大臣 公務員宿舎の廃止、削減問題、そのあり方というのは、もう委員御存じのとおり、私の所掌を超える部分でございますので、宮本委員の御質問に丁寧に、御納得いただけるような答弁ができなくて申しわけないんですけれども、政府として、行政改革について不断の取り組みを進めていくということは大事だと考えております。

 国家公務員宿舎については、必要な宿舎は確保する、そういう前提で削減を進めているところと承知をしております。

 我が国の科学技術・イノベーションの重要な担い手である独立行政法人等に勤務する研究者の住居等の処遇を確保することは重要だ、そこは認識をしておりますけれども、まずは、職員の多くが入居者となっている各法人の取り組み状況を注視してまいりたいと思います。

宮本委員 既に、ことし二月に退去通知が出されて、にわかに皆さん、出なきゃならないからといって家探しが始まって、今度は民間の物件も値上がりしている、こういう状況まで生まれているわけですね。ですから、そうおっしゃるんだったら、本当にこの問題は、真剣に現状をつかんで、もし問題があるとすれば正すという方向で御努力をいただきたいし、そうしてこそ我が国の科学技術・イノベーションの発展もあるんだということをまず御指摘申し上げておきたいというふうに思います。

 さて、もう一点です。

 次に、ことし四月から施行された改正労働契約法が大学等の教育研究機関にさまざまな混乱とあつれきを生んでいるという問題を御指摘申し上げなければなりません。雇用が安定しないようでは、幾ら鍵だ、切り札だと言ってみても、研究者は安心して研究や教育に打ち込めないわけであります。

 五月の十七日に総合科学技術会議が発表した科学技術イノベーション総合戦略原案、これを見せていただきますと、「研究支援体制の充実」として、「主な施策」の中に、「大学等における改正労働契約法の施行等に係る課題の精査及び対応策の検討を速やかに行い、教育研究全体として望ましい状況を創出」という文言が書き込まれております。

 これは、改正労働契約法の施行によって、精査、検討すべき課題が存在するということ、そして教育研究にとって望ましい状況とはなかなか言えない現状が存在するということを政府も認識しておられる、こう受けとめてよろしいでしょうか、大臣。

    〔三原委員長代理退席、委員長着席〕

山本国務大臣 改正労働契約法の中身については厚労省の方にお尋ねをいただければと思いますが、ただ、改正労働契約法は、有期契約労働者の雇用の安定を図ることを目的とした法律ではありますが、法改正への対応の仕方次第では、五年まででの雇いどめが増加するのではないかという不安が増し、結果、教育研究に大きな影響が生じるとの懸念も大学等の関係者からは実際にいただいております。

 こうした懸念が具体化、顕在化しないように、今後とも、文部科学省、厚生労働省に対し、法の趣旨や好事例の周知等の取り組みはしっかりと促してまいりたいと思います。

宮本委員 おっしゃるとおりであって、そういう懸念が出されてきたわけですね。

 そこで、これはまた内閣府に確認をいたします。

 総合科学技術会議として、改正労働契約法の問題にこの間どのように対応してきたか、事実関係をお答えいただけますか。

倉持政府参考人 お尋ねの改正労働契約法に関する総合科学技術会議の対応でございますけれども、改正労働契約法につきましては、大臣からも今答弁がございましたように、雇いどめに対する不安の声があることを踏まえまして、昨年四月に、総合科学技術会議において、関係者、これは厚生労働省、大学あるいは若手の研究者の方から意見を聴取させていただきました。そして、五月に、有識者議員による、「労働契約法の改正案について」という見解を取りまとめまして、公表をさせていただいたところでございます。

 これらを踏まえまして、関係省庁、文部科学省あるいは厚生労働省に対しまして、大学や関係機関に対する周知方を要請するとともに、それらの状況についての確認に努めてきているところでございます。

 また、今回の改正案と同様の労働法制がしかれているとされておりますEU諸国の状況につきまして、これを関係省庁の協力を得ながら調査をいたしまして、その結果を大学等に配付する、あるいは総合科学技術会議で報告を行ったところでございます。

 今後、この法律の施行に伴う大学等の対応の状況と現状の把握に努めるとともに、関係省庁、機関の参画のもと、改正法の円滑な実施に向けてフォローアップを行ってまいりたいと思っております。

宮本委員 ここに、昨年出た「労働契約法の改正案について」、総合科学技術会議有識者議員の取りまとめがございます。この中の「一 労働契約の内容の改善と合理性のない雇止めの防止」、この中で大学等機関に一体何を求めておりますか。事実関係を。

倉持政府参考人 委員御指摘の箇所につきましては、「改正された労働契約法の下で無期労働契約に転換した労働者を合理的な理由に基づいて解雇することが否定されるものではなく、プロジェクト型の研究活動を適切に運営していくことは可能となるものと考える。その際に重要なことは、改正法の下で新たに締結する労働契約の内容を適切なものにすることをはじめとして、合理性のある解雇理由が生じた場合に、そのことが客観的に明らかになるようにしておくことである。」ということを指摘した上で、大学等機関に対しては、合理性のある解雇理由が生じた場合に、そのことが客観的に明らかになるようにするために、「体制整備に適切に取り組むとともに、単に無期労働契約に転換することを忌避する目的を以て研究者等を雇止めすることのないよう望みたい。」そういう旨述べておるところでございます。

宮本委員 るる述べられましたけれども、いろいろと言った上で、しかし、「単に無期労働契約に転換することを忌避する目的を以て研究者等を雇止めすることのないよう望みたい。」これがこのときの指摘なんですね。

 それで、改めて厚生労働省に、この労働契約法改正の立法趣旨をお伺いしたいと思います。

 労働契約法改正の趣旨は、雇いどめを進めることなどではなく、無期雇用への転換を進めることによって有期契約労働者の雇用を安定させる、これが目的だと考えますが、間違いないですね。

山越政府参考人 改正労働契約法は、無期転換により有期契約労働者の雇用の安定を図るものでございまして、雇いどめの促進を目的とするものではございません。

宮本委員 当たり前の話なんですね。

 ことし四月二十五日の参議院厚生労働委員会で、田村憲久厚生労働大臣も、「五年の無期転換寸前で雇い止めが起こるのではないか、これによって結果的に、この法律がなければ、例えば、」「無期にはなりませんけれども、ずっと労働契約が有期の下で続いていくという方々が逆に職を失うおそれがあるのではないかということで、かなり委員会でも議論をした覚えが当時ございます。」「状況を我々も調査してまいりますけれども、やはりそういうおそれがあるということになれば、一定の対応を取らなければならない」と答弁をしておりますが、厚生労働省、間違いないですね。

山越政府参考人 そのような内容の答弁をされたと承知をしております。

宮本委員 しかし、五年で雇いどめというふうに就業規則を一方的に決める事態が現に大学で起こっております。

 この問題をめぐって、ことし三月二十八日に、国会内で集会も開催をされました。二月二十一日の参議院予算委員会で、我が党の田村智子議員が、大阪大学などの事例を取り上げて改善を求めました。下村文部科学大臣は、その質疑の中で、「適切な取扱いを促してまいりたい」と答弁をされましたけれども、きょうは文科省高等教育局に来ていただいておりますが、どのような適切な取り扱いを促しましたか。

常盤政府参考人 文部科学省におきましては、改正労働契約法の施行に当たりまして、大学等における教育研究への影響についての指摘がございますことを踏まえまして、現在、厚生省とともに課題の精査を行っているところでございます。

 文部科学省といたしましては、各国立大学に対しましてこうした状況をお知らせいたしておりまして、大学の課題を把握するとともに、今後の課題の精査を踏まえて適切に対応するようお願いをしているところでございます。

宮本委員 課題の精査をしているだけじゃだめですよ、現にこういうことが起こっているわけですから。大阪大学の場合は、昨年五月の総合科学技術会議の有識者取りまとめにある、まさにそのものずばり、単に無期労働契約に転換することを忌避する目的をもって就業規則を改定しているんです。

 法改正の趣旨とも違う、そして総合科学技術会議がやってはならないと言っている、そんな事態を放置しておいていいわけないんです。直ちに是正をさせるべきだというふうに私は考えるんですが、大臣、これは政治家として、聞いていただいて問題があると、これはひとつ御答弁いただきたいと思いますね。

山本国務大臣 これは個別の案件ですから、科学技術政策担当大臣としては、残念ながら答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

 一般論としては、今もいろいろとお話を聞いていましたが、就業規則は、各大学の判断により、労使の合意の上で作成するということですから、少なくとも改正法に照らして法律上の問題があるものではないと文科省と厚労省からは聞いています。

 ただし、委員がおっしゃったように、この雇いどめの懸念というものは若い研究者の方々からも出されていますから、それは、総合科学技術会議を担当する大臣としては、今後も問題が生じれば、厚労省と文科省に対して、大学とか関係方にしっかりと周知してきちっと対応していただくように促していく、これはきちっとフォローアップをさせていただかなければいけないと思っております。

宮本委員 ぜひともしっかりと大臣にはやっていただきたいというふうに思っております。

 さて、同時に、この有識者議員の取りまとめの「研究者等の雇用管理の在り方の見直し」というところでは、政府のこれまでの人件費抑制策についても言及をしております。内閣府、何と指摘しておりますか。

倉持政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の箇所でございますけれども、この有識者議員ペーパー、昨年の五月でございました。

 ここの指摘ぶりは、「法律が改正された暁には、大学等機関における研究者等の雇用の新たな管理の在り方」、注がございまして、「それは単に改正法への適応という受け身の対応に留まらない課題である。」という注がありますけれども、このあり方が検討される必要があるけれども、「その際特に留意すべきは、従来国立大学法人や独立行政法人に対して行われてきている人件費抑制策との関わりである。具体的には、平成二十三年度まで総人件費改革に基づく各法人の人件費抑制が要請されてきたが、平成二十四年度は震災からの復興財源の捻出のための人件費抑制が要請される状況にあり、今後も人件費を対象とした新たな抑制策が講じられる可能性がある。こうした政策の必要性は理解できるが、しかしまた、こうした政策が、大学等機関が改正された労働契約法の下で新たな雇用管理の在り方を検討する際の足枷となり得ることは指摘しておく必要がある。」旨述べております。

宮本委員 まさにそのとおりなんですよ。

 大阪大学は、就業規則を改定する理由として運営費交付金の削減を挙げております。国立大学運営費交付金は、二〇〇四年度の法人化以降、今年度までに一千六百二十四億円も削減をされてまいりました。この一千六百二十四億円というのは、東京大学と京都大学を廃止したに等しい金額であります。

 東京大学、京都大学など旧帝大と慶応、早稲田など十一の大学で構成される学術研究懇談会、RU11が今月発表した「日本の国際競争力強化に研究大学が貢献するために」と題した提言でも、労働契約法改正により、無期雇用の可能性が広がりました、しかし、基盤的経費が削減された大学にはその要請に応える余力はなく、むしろ直接経費の組み合わせによる長期雇用が排除された影響が残ります、こうRU11の提言も述べております。

 これも大臣にお伺いしたいんですけれども、やはり、日本の国際競争力強化に大学が貢献するためには、これらの大学、トップレベルの大学がまさに言っているように、国立大学運営費交付金、私学助成などの基盤的な経費の削減をやめて、拡充を図ることが何よりも必要ではないのか。大臣、そう思われませんか。

山本国務大臣 どちらかというと文部科学大臣に聞いていただく質問ではないかと思いますが、科学技術担当大臣として申し上げますと、私が申し上げられることは、まず、国立大学法人運営費交付金は、継続的、安定的に教育研究を行う上で必要不可欠な基盤的経費だ、そういうふうに考えております。

 一方で、国立大学については、今、全学的な改革を大学全体で自律的に進めていくということで、これらの経費を戦略的に配分することも求められております。

 こうしたことによって、五月十七日の総合科学技術会議に原案が提出された科学技術イノベーション総合戦略に掲げるように、世界トップレベルの大学等と競争する十分なポテンシャルを持つ大学等が国際的なイノベーション創出の拠点となるような研究環境の革新に努めてまいりたいと思います。

宮本委員 いや、文部科学大臣には、繰り返し、文部科学委員会で同じ趣旨のことを私は聞いているんですね。

 それで、大臣おっしゃるように、まさにイノベーションに貢献すべき日本のトップレベルの大学十一が口を開いて出たことというのは、いやいや、基盤的経費が削られているようではいかないんですよと言っているわけですから、それは額面どおり受けとめる必要があると思います。

 既によく知られているように、ノーベル賞を受賞した山中教授が所長を務めておられる京都大学のiPS細胞研究所でも九割が有期雇用となっているように、研究支援者の多くが、競争的資金による有期、非正規契約により雇用されており、不安定な身分の中で研究活動に従事しているという現状にあるわけです。

 このRU11の提言でも、「トップ研究者も、直接経費で研究人材を長期雇用できない現状を憂慮しています」「資金量の大幅な増加が望めないのであれば、なおのこと、基盤的経費や直接経費の規制緩和による間接経費の増額による「大学の裁量性が高い資金」の確保が必要です」、こう述べておるわけですね。山中教授自身も、「厳しい財務状況のなか、急に支援額が大幅に増えるとは思わない。むしろ、支援の質を変えて、人材を大切にしてほしい。」「現在、支援額の九五%を競争的資金が占める。その半分を運営費交付金などにすれば正社員に近い形で人材を雇える。」こうしてもらうのが一番現場にとっても助かるんだ、こう述べておられるわけですね。

 国が運営費交付金など基盤的経費を削って、専ら競争的資金にシフトすることによって、直接経費では研究人材を長期雇用できないために、非正規雇用をどんどんどんどんふやすという結果になってまいりました。

 今こそ、先ほど来議論になった労働契約法の改正の趣旨、無期転換を進めるということですから、そういう、非正規で今担っている人材を無期に転換するための必要な費用、財源をやはり国としてきちっと確保することが必要だ。これは国策でそういうことをやる必要があると思うんですが、大臣の御決意をお伺いしたいと思います。

山本国務大臣 先ほど申し上げたとおりのところでぎりぎりのところだと思いますが、おっしゃったとおり、この運営交付金は大事だというふうに思っております。

 ただ、同時に、先ほど申し上げたとおり、やはり今のいろいろな現状を踏まえて、経費を、全学的な改革を通じて戦略的に配分することも求められている、このことをちょっと繰り返し申し上げておきたいと思います。

宮本委員 終わりますが、日本の国際競争力の強化に大学が貢献するためには、少なくとも、競争的資金を含む、国の全ての研究、教育補助金、委託費における間接経費率を最低三〇%に引き上げること、それから、国立大学法人運営費交付金、私学の経常費補助など、基盤的経費の削減の停止、充実が必要だと、このRU11を構成する日本のトップレベルの大学が提言をしております。

 大臣が、科学技術が鍵だ、切り札だ、こうおっしゃるのであれば、こういう声に真剣に耳を傾けてこそ、その内実が伴うのだということを私は指摘をして、本日の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

渡海委員長 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木です。よろしくお願いいたします。

 アベノミクス、三本目の矢がいかに放たれるか、国内外から注目をされるところであります。

 これから公表となります科学技術イノベーション総合戦略の中身に大変期待が高まるわけでありますが、先日、原案が提示されまして、拝見をいたしましたけれども、さまざまなことが網羅的に書かれておりますので、どこに主眼が置かれているのかというのが、ちょっとわかりにくいというか、把握し切れない部分もあるんです。

 まず、この科学技術イノベーション総合戦略の中に、ゴールデンウイーク中、山本大臣、訪米されておりますけれども、その成果がどのような形で生かされているのか、お伺いをしたいと思います。

山本国務大臣 イノベーション総合戦略の中身のことについて丁寧に説明していると時間が超過してしまいますので、簡単に申し上げます。

 日本の研究開発のレベルは非常に高い、科学技術のレベルも高い、しかし、今までそれが本当に国民生活、国民が、この高い研究成果、研究レベルを享受できていたのかというところに問題意識がありまして、これをやはり、出口というとちょっと余りにもシンプルですが、産業競争力の強化、日本経済の復活に結びつけていこう、そこにフォーカスが置かれているということだ、簡単に言うとそういうことだと思います。

 米国出張の件ですが、今回の米国出張の主目的は、日米科学技術合同高級委員会に出席するためでした。米国側はホルドレン大統領補佐官、私は、下村文科大臣とともに共同議長を務めました。ハイレベルな政策対話を行ったんですが、米国においても、強い経済のためには科学技術・イノベーションが大事だと思っているということを再確認したところです。

 また、今回の出張では、アメリカの科学技術政策へ影響力を持つ産業界とかアカデミアの方々と、イノベーションの創出について意見交換もいたしましたし、イノベーション創出のために官民と政府が問題意識を共有することの重要性、ハイリスク、ハイインパクトの研究の推進も重要であるということを確認いたしました。

 さらに、米国で活躍する日本人研究者と意見交換、ラボの視察も行いまして、魅力ある研究環境の重要性というものも確認をさせていただきました。

 こうしたことは、今委員から言及がありました、去る五月十七日の総合科学技術会議の本会議に原案が提出された科学技術イノベーション総合戦略の第三章「科学技術イノベーションに適した環境創出」等の中でしっかりと反映をされているというふうに考えております。

青木委員 ありがとうございます。

 日本版のNIH、米国の国立衛生研究所を手本として、医療分野の司令塔を創設したいとの目的もあるやに伺うんですけれども、いろいろと御視察をされて、山本大臣のブログを拝見いたしまして、アメリカの参考になる部分と、なかなかまねできない部分があるなと感じた、そして、アメリカの研究開発を支える多層的な仕組みを痛感し、アメリカの底力を感じたと、いろいろ視察の思いがまだ熱い中でブログに書かれておりましたけれども、具体的に教えていただくことはできますでしょうか。

山本国務大臣 帰りの飛行機の中で書いた私のブログを読んでいただいて、本当にありがとうございました。

 まず一つ、参考になる部分もあるし、なかなかまねできない部分もあるというふうに書いた覚えがあるんですが、このまねできないというのは、ポジティブな意味で書きました。つまり、アメリカと日本はなかなか国柄も違う、文化も違う、政府のたてつけも違う。ですから、アメリカ型はなかなか全てそのまま日本では採用できないので、やはり日本独自のやり方というのもあるのではないかという形で書きましたので、まねできないというのは否定的な意味ではないということをまず申し上げておきたいと思います。

 出張中、世界トップレベルの研究拠点プログラム、WPIといいますが、先ほどもちょっと答弁の中で御紹介しましたけれども、あるいは沖縄科学技術大学院大学、OISTの制度設計の参考とした機関が実はあるんです。ハワード・ヒューズ医学研究所のジャネリアファーム・リサーチキャンパスというところなんですけれども、この医学研究所のキャンパスを訪れまして、世界トップレベルの先端的融合研究の現場を実際に見て、充実した研究支援体制、研究資金の潤沢さ、五年間は何の制約もなく研究に没頭できるシステム、こういうものを目の当たりにいたしました。

 さらには、米国科学振興協会、AAASと言っておりますけれども、ここが一九七三年から実施している科学技術フェローシップ制度というのがありまして、これは、科学者とか技術者を原則一年間、議会とか上下両院の委員会、議員事務所または官庁等の行政機関に派遣するという制度なんですが、これについて、総合科学技術会議の事務局機能を検討するに当たって参考にできるのではないかというふうに感じました。

 一方、ジョン・ホルドレン大統領補佐官と科学技術・イノベーション政策全般について意見交換を行いましたが、その際、先ほど申し上げたように、米国と我が国の行政体制の違いについてもいろいろとお伺いすることができました。

 この米国と我が国の違いに留意しつつ、安倍総理からも御指示をいただいている総合科学技術会議の司令塔機能強化について検討していく必要があるというふうに考えております。

青木委員 ありがとうございます。まねできないというのは、決して後ろ向きな形ではないということであります。

 NIHにも三百名ほどの日本人の優秀な研究者がいらっしゃるわけでありますが、日本側からいえば、こうした日本の優秀な研究者がなぜ渡米してしまうのか。もっと日本で研究を続けたいと思えるような日本における環境整備が必要ではないか、私もそう思うんです。

 今もお話をいただいておりますけれども、アメリカと比較をするばかりではありませんが、先ほども議論に出ておりましたけれども、これから人材獲得が本当に重要な視点になってくると思います。今の日本の研究環境に足りない点、必要な点、どのようにお考えでしょうか。

山本国務大臣 今、青木委員の方からあった、本当に優秀な研究者が日本で研究を続けたいと思うような研究環境をつくることが大事だというのは、全くそのとおりだというふうに考えております。

 アメリカへ出張した際に、ブログを読んでいただいたと思いますが、NIH、ナショナル・インスティテュート・オブ・ヘルスですけれども、この米国国立衛生研究所に在籍している日本人研究者、小林久隆先生とか向山洋介先生の研究室を視察し、さらに日本人研究者十五名と懇談する機会を持ちました。

 研究環境についてはいろいろな意見が出まして、実は日本の研究環境は悪くないという方もおられたんですけれども、NIHではやはり日本と比べて自由にみずからの研究アイデアに基づいて研究ができるという意見は多かったです。それから、異分野融合のしやすさ、充実した研究支援体制によって研究に集中できる環境である、こういうようなお話もありました。

 ただ、一つ私が大変心強く感じたのは、ベテランの方、中堅の方、若手の方、それぞれのグループから何人か代表者の方に出てきていただいたんですけれども、全員が、将来やはり日本に対して何らかの貢献がしたい、こういうふうにおっしゃっていたのが大変印象的でした。まさに青木委員のおっしゃったように、彼らのような有能な人材が我が国で活躍できるようにすることが重要だというふうに考えております。

 その認識のもとで、総合科学技術会議で検討中の、先ほどから何度も出てきております、五月十七日の本会議に原案が提出された科学技術イノベーション総合戦略において、海外で活躍する日本人を含む世界トップレベルの研究者を呼び込む魅力あふれる研究環境を整備することが必要であって、これに取り組むということをこの総合戦略でも打ち出しております。

 具体的には、先ほども御紹介申し上げましたが、国際化に向けた取り組みを先導している世界トップレベルの研究拠点プログラム、WPI、これがすぐれた成果を上げておりますし、国際的な評価を受けておりますので、こういうことを踏まえて、若手研究者とか外国人研究者の活躍を促進するための環境の整備、大学等の国際的なイノベーションハブとしての機能強化を担当大臣として精力的に進めてまいりたいと思います。

青木委員 本当に若者の研究者をぜひ日本で、先ほど、五年間没頭できる環境がアメリカにはあると言いましたけれども、そういう自由な環境の中で研究をしていただく環境整備が必要かなというふうに思います。

 昨日もリニアコライダーの議連の会議の方に、出席を最近させていただいているんですけれども、そこで発表をしてくださった研究者の方が、やはりアメリカは若者の研究者を大変守り立ててくれる、研究発表後にみんな集まってきて、よかったよかったと肩をたたいてくれるんだというふうにおっしゃっていました。そして、研究がうまくいくと二階級特進もできる、頑張っている人が頑張りがいがある、そういう空気があるということでありました。逆に言えば、日本にはそういう部分が足りないのかなというふうに感じました。

 先ほど住宅のお話もありましたが、外国人の研究者が日本に来て研究をする際に、やはり家を借りようと思っても断られるケースがあるんだそうです。これはアメリカでは憲法違反なんだそうですけれども、そういったことだったり、例えば銀行で口座を開いたりだとか、さまざまな生活の立ち上げに大変支障があるということで、先ほど山本大臣もおっしゃっておりましたけれども、そういう制度を、法改正が必要なのか、改めていくことも必要なのかなというふうに思います。

 その点について、何か御答弁があれば。

山本国務大臣 青木委員が出席をされた、昨日でしょうか、ILC議連の発言は、取り寄せさせていただいて、実は読ませていただきましたが、村山教授とのやりとりの中で、アメリカは本当に若い人たちにもチャンスを与えてくれるとか、あるいは、業績が適切に評価されるために、すぐれた業績を上げれば二倍、三倍の給与を受けることもあるとか、あるいは、今おっしゃった、生活の面でのいろいろな問題、これは大変参考になりました。とても説得力のあるお話だなと思いました。

 これは私だけでできることではありませんが、さっき社会統合政策が大事だという御指摘も委員の方からありましたので、やはり、いろいろな関係省庁とも協力をしながら、本当に、特に若い研究者の方々、理化学研究所の野依理事長が、レーバーからリーダーへ、つまり若い方々がレーバーじゃなくてリーダーになっていく環境をつくらなければいけないということをおっしゃっていましたけれども、関係省庁とも協力をしながら、そういう環境がつくれるように、担当大臣として一生懸命努力をしてまいりたいと思います。

青木委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。

 そして、それとあわせて、日本の研究者をとどまらせるのみならず、世界の最先端の研究者に結集いただく大変意義ある国策として、今申し上げました議連にも参加をさせていただいておりますが、ILCの、国際リニアコライダーの実験施設の日本への誘致について、山本大臣はどんなふうにお考えか、まずお聞かせいただきたいと思います。

山本国務大臣 このリニアコライダーのお話は、たしか前回の委員会で民主党の津村委員からも御質問を受けた覚えがあるんですが、国際リニアコライダー計画、宇宙創成の謎の解明を目指した大規模な学術研究の計画だというふうに存じております。現在、研究者レベルで国際的な設計活動や検討が行われている段階にあるというふうに理解をしております。

 戦略的かつ重点的な科学技術・イノベーション政策の推進を担う科学技術担当大臣としては、この計画が、学術研究、基礎研究を目的としているということ、さらには巨額の経費を必要とするということに留意して考えていく必要があるというふうに思っております。

 すなわち、多様な基礎研究の推進を一層強化するとともに、将来の経済社会の課題解決、これは実用化と言ってもいいかもしれませんが、これを見据えたイノベーション志向の科学技術政策が求められている、これが安倍内閣の大きな基本方針でもあるんですが、こういう中で、長期かつ高額な計画であり、社会や国民の理解がまず得られるかどうか、他国で実施されているものを含め、現在実施中の類似、関連する研究プロジェクトとの関係が整理されるかどうか、こういった課題があるということも事実だと思っていまして、まずは学術研究プロジェクトの優先順位づけの中で検討がなされる必要があるのではないかと私は考えております。

 いずれにせよ、現時点では、研究者レベルでの検討が進められている状況にあるということで、科学技術担当大臣としてはその状況を見定めてまいりたいと考えております。

青木委員 本会議でも安倍総理に質問をさせていただいたときに、やはり財源のことをおっしゃっていて、ちょっと前向きではない印象を受けたんですけれども、現在も、山本大臣からも、まだ同じようなところにあるのかなというような感覚を得ました。

 これは、ビッグバン直後の宇宙誕生の瞬間を解明する本当に夢の大プロジェクトなんですけれども、そこから生まれるいろいろな技術が、ITだったり、バイオテクノロジーだったり、ナノテクノロジー、また医療、環境、いろいろな先端研究分野に応用が可能だと考えられております。

 そして、これは、一度誘致されれば、一過性のものではありませんから、日本に加速器があることによって、いろいろな、研究者のみならず、企業の誘致も呼び込むことができると思いますし、それによって雇用も拡大するし、また、岩手か九州か、福岡かわかりませんけれども、観光業の発展にもなるでしょうし、本当に大きな波及効果が期待されるというふうに考えております。

 聞くところによると、この建設費が八千億というふうに伺っていますが、四千億、半分を日本が持って、あとは諸外国の出費で、十年ぐらいですか、かけて建設するように、ちょっと正確ではないかもしれませんけれども、そんなふうに聞いております。決して予算のかかるプロジェクトではないのではないか、それ以上の経済効果も見込めるのではないかというふうに思っておりまして、これを、ぜひ誘致に向けて山本大臣にリーダーシップを発揮していただければというふうに思っています。

 今、研究者レベルでいろいろと話し合われているということでありますが、研究者の方にお話を聞くと、なかなかこういう施設なり、こういったものが日本に誘致できないというところの政治的な交渉力といいますか、そこの部分を指摘を受けることがありまして、普通に交渉に臨んで、まず一歩を踏み出してもらえればいいのにというお話も聞きます。

 ぜひ、このリニアコライダーを三本目の矢の目玉として、象徴として誘致されることをお願いしておきたいと思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 ちょっと視点は変わりますけれども、山本大臣のお膝元、群馬には、IHIエアロスペースという会社があります。「はやぶさ」の回収カプセルを設計、開発した会社であると思います。また、救命救急に活躍するAEDも、群馬の日本光電工業株式会社の富岡工場でつくっておられます。また、楽器のウクレレとかハンドベルも、群馬だけで製造されていると聞いています。

 私の地元のことで恐縮ですが、東京都北区でもさまざまな技術がありまして、例えば、手術をする医師の手の大きさや長さに応じて、医師の好みに合わせてフルオーダーではさみなどの手術道具をつくる、そういう鉗子の技術が田中医科器械製作所というところにあります。また、細い直線の針金をつくるのは大変な技術なんですが、この針金の先にカメラやはさみをつけて、医療用のカテーテルに活用されています。その針金をつくっている佐藤精巧直線という企業もございます。また、千五百度の温度がはかれるセンサー技術、これも日本で二社、世界でも数社しかない技術があります。また、半導体の性能を検査する超精密機械を実用化した、世界で二人しかいない、そのうちの一人が北区の製作所の方にいらっしゃいます。

 検査機器を扱うというのが北区の物づくりの一つの特徴でもあるんですけれども、これから、成長分野である医療現場と物づくり企業の技術をつなげていこうということで、今自治体も考えているところであります。

 日本全国、四十七都道府県に多分いろいろな技術があって、その一覧表みたいなものがないかなと思って取り寄せをしてみたんですけれども、なかなかそういう資料がないということだったので、ぜひ、こういう医療技術、製造技術、また、農業の技術、建築技術、日本じゅうが技術の宝庫だというふうに思いますので、こうした足元にある、これまでの蓄積された技術を今こそ吸い上げて、光を当てていくということも大事なのではないかというふうに考えます。

 今、いろいろな会議や本部や戦略室等が立ち上がっていますけれども、ぜひ、そうした状況を把握している都道府県や、また市町村の関係者の方々からも意見を伺う機会をつくられたらどうかなというふうに思いまして、これが日本の成長戦略の底力というか、底を支える大きな力になるのではないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。

山本国務大臣 群馬県の会社と産業のことを調べていただいて、ありがとうございました。

 今、青木委員のおっしゃった、地域発のすぐれた技術のいろいろな例は大変参考になりました。

 その地域発の技術を持った関係者の方々といろいろと意見交換をしたらどうかというアドバイスは、どういう形になるのかわかりませんが、真面目に検討してみたいと思います。どういう枠組みになるのかわかりませんが、そういう方々と少なくとも意見交換をするというのは大変意味があるというふうに思っております。

 それから、地方発のすぐれた科学技術の例を集めた資料がないということだったので、これも、どこかにあるのかないのかわからないんですけれども、もしないとすれば、恐らく何らかの形でそういうものがあった方がいいのかもしれないので、それもちょっと、私、今のお話を受けて、研究をさせていただきたいと思います。

 それから、その上でちょっと御答弁を申し上げたいと思いますが、我が国がグローバル市場において持続的かつ発展的な競争力を維持するためには、これはもう、今おっしゃったように、地域におけるすぐれた技術を生かす、地域産業に新たなイノベーションを起こすとともに、地域経済の活性化を行うということは大変大事だと思っております。

 総合科学技術会議で現在策定中の、何度も出てきておりますが、科学技術イノベーション総合戦略においても、地域におけるすぐれた技術を生かすことが重要だというふうに考えておりまして、地域企業、大学等、産学官が連携しながら地域産業の発展を推進する等といった取り組みの重要性を盛り込んでおります。

 具体的には、地域企業のすぐれた技術、少量多品種で高付加価値の製品、部品の製造に適した三次元造形等の革新的な生産技術というものを地域が持つさまざまな資源と組み合わせる、この融合によって地域の物づくり産業に新たなイノベーションを起こす、こういうこと等を同戦略に盛り込んでおりまして、確実に成果が出るよう進めてまいりたいと思います。

 もう言うまでもありませんが、委員がおっしゃった北区のいろいろな技術のほかにも、例えば、有名な岡野工業さんの、蚊の針と同じ細さの痛くない注射針とか、あと、これは実は総合科学技術会議のやったいい仕事だと思うんですけれども、医療プロジェクトなんですが、ナカシマメディカル株式会社、すぐれた船舶用のプロペラ技術を人工関節に転換して成功した例というのもありますので、そういう地域発のすぐれた技術をしっかり生かせるような体制をつくっていけるように、担当大臣として努力をしてまいりたいと思います。

青木委員 ぜひよろしくお願いします。

 眠っているというか、なかなかまだ表に出てきていないすぐれた技術がたくさんあると思いますので、ぜひ、日本全国挙げて、地方の声を生かしていただきたいというふうに思います。

 総合戦略の中身についてでありますが、先ほど、最低でも五百億というふうにおっしゃっておられますが、ちょっと印象として少な過ぎるのではないかというふうにも思うんですね。

 この辺は、例えば先ほどのリニアコライダーとか、こういうものをもし実現するといった場合は、これまた別の予算の枠になるんでしょうか。ちょっと細かいことで恐縮です。

山本国務大臣 リニアコライダーについては、私の今のスタンスは先ほど申し上げたとおりであって、今、いろいろと状況を見守っているところですので、予算の財源がどうということを、ちょっと私の方から言うような立場ではないと思います。申しわけありません。

青木委員 山本大臣の方から、予算のことはとおっしゃるんですが、でもやはり予算が大事なので、ぜひ山本大臣に、やはりイノベーションは柱ですから、本当に山本大臣にかかっていると言っても過言ではないと思うので、それを実現するためにも、予算の獲得というところでもリーダーシップをぜひ発揮していただきたいというふうに申し上げておきたいと思います。

 あと、後半の時間なんですけれども、エネルギー政策も恐らくこの成長戦略の柱になろうかと思いますので、ちょっと原発に絡んで質問をさせていただきます。

 私も初めて質問主意書をせんだって出させていただきまして、御回答いただきました。これは、安倍総理の原発のトルコへのトップセールスについての質問主意書でございました。

 私は、原発の輸出だけは今の現状の中で思いとどまるべきだというふうに考えておりまして、いまだ被災者への手当てのめどもなかなかまだついていない状況で、また、廃炉に向けた技術もそうですし、使用済み核燃料の廃棄物の処理についても技術が確立されていない、一旦事故が起きるともう手がつけられないということが国民の間にも明らかになりました。安倍総理も、安全ではないとおっしゃっているんですね。

 そのような中で、日本が我先にと原発を売り込もうとする行為は、事故の被害のみならず、諸外国からの信頼を損なう、本当に取り返しのつかない状況をもたらすのではないかということを大変心配いたしております。

 閣議でかけていただいて御回答いただいているので、山本大臣の、このトップセールスに対する御所見をいただければと思います。

山本国務大臣 日本の原子力発電の海外輸出はちょっと私の所掌を超えたところなので、それを申し上げた上で、閣議決定をしたということで閣僚の一人として申し上げれば、政府としては、福島第一原子力発電所事故の経験と教訓を世界と共有をする、このことによって世界の原子力安全の向上に貢献していくことが我が国の責務であると考えておりまして、原子力発電所の輸出については、相手国の事情や意向を踏まえつつ、世界最高水準の安全性を有する技術の提供を今後とも進めていく、このように理解をしております。

青木委員 より安全の向上を図るということなんですが、絶対的な安全はないということも明らかになったかと思うんです。そして、今、新興国や中東諸国の人口がふえたり、経済成長に伴う電力需要で、特にアジアでは今後二十年間に約百基ふえる見通しだ、韓国、ロシア、フランスなども官民を挙げた受注競争が激しくなっているという報道もございました。一方でまた、福島の原発を狙ったテロ計画もあったのではないかという報道も今ございます。

 こういういろいろな面から危険なこの原発が今後アジアの地域でふえていく、こういう状況を見たときに、日本こそが、事故直後いろいろな国から温かい御支援をいただいたこの日本が今後果たすべき役割はやはり、原子力エネルギーを超えた、安全で、そして安定的なエネルギー政策で国際貢献をするということなのではないかなと。それに伴う経済活動であれば、国民世論も頑張れという形で本当に心からの後押しをするのではないかなというふうに思うんですけれども、現時点ではなかなかそういうお話は伺えないんですけれども、今こそ日本が、原発にかわるエネルギー政策を、世界に向けてその方針を宣言するべきだというふうに考えております。

 例えば、領土問題も担当されていらっしゃいますので伺いますけれども、今福島の帰還困難地域、三百一平方キロメートルです。竹島が〇・二一平方キロメートル、尖閣諸島が六・三平方キロメートルであります。これを比較するのが適当かどうかわかりませんけれども、今回の原発事故で、この三百一平方キロメートルという帰還困難地域、言ってみれば、実際これだけの国土を原発事故で失っているということと同じだというふうに思うんですよね。

 こういうことも踏まえて、原発のエネルギー政策について、今何か思うところはございませんでしょうか。

山本国務大臣 青木委員の政治家としての信念は今伺いましたけれども、私の今の立場としてお答えできるのはさっきの答弁になってしまうので、繰り返すことはいたしませんが、そこは大変申しわけないと思うんですけれども、もう一度申し上げますけれども、政府としては、この原発事故の経験、教訓を世界と共有する、それによって原子力の安全に貢献することが責務であって、これについては、相手国の事情や意向を踏まえつつ進めていくということを理解しているということでお答えをさせていただきたいと思います。

青木委員 ありがとうございます。

 また機会があったらぜひ質問させていただきたいと思いますが、地球の進化の歴史を今勉強させてもらっていますけれども、放射線を排除して、人類のみならず生物がこの世に生まれておりますので、四十数億年かけてでき上がったこの環境を、わざわざ今、人類みずから放射線を発生させて壊していいものなのかという指摘もさせていただきまして、また次の機会に改めさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

渡海委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十六分散会


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