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第3号 平成26年4月8日(火曜日)

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平成二十六年四月八日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 竹本 直一君

   理事 丹羽 秀樹君 理事 三原 朝彦君

   理事 宮下 一郎君 理事 渡辺 博道君

   理事 福田 昭夫君 理事 伊東 信久君

   理事 伊藤  渉君

      青山 周平君    大串 正樹君

      大野敬太郎君    大見  正君

      鬼木  誠君    加藤 寛治君

      神田 憲次君    小林 史明君

      今野 智博君    瀬戸 隆一君

      関  芳弘君    田畑 裕明君

      武村 展英君    渡海紀三朗君

      中村 裕之君    福田 達夫君

      船橋 利実君    前田 一男君

      宮崎 謙介君    武藤 容治君

      村井 英樹君    八木 哲也君

      簗  和生君    山下 貴司君

      山田 賢司君    山田 美樹君

      小川 淳也君    大島  敦君

      奥野総一郎君    津村 啓介君

      古川 元久君    鈴木 義弘君

      高橋 みほ君    伊佐 進一君

      輿水 恵一君    柏倉 祐司君

      小池 政就君    宮本 岳志君

      青木  愛君

    …………………………………

   国務大臣

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)

   (情報通信技術(IT)政策担当)         山本 一太君

   内閣府副大臣       後藤田正純君

   内閣府副大臣       岡田  広君

   文部科学副大臣      櫻田 義孝君

   文部科学大臣政務官    上野 通子君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  二宮 清治君

   政府参考人

   (内閣官房行政改革推進本部事務局長)       宮島 守男君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  菱山  豊君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   倉持 隆雄君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           武井 俊幸君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 南  俊行君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           中岡  司君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           山脇 良雄君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           田中 正朗君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           磯谷 桂介君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局次長)      伊藤宗太郎君

   政府参考人

   (文化庁長官官房審議官) 作花 文雄君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  佐藤 敏信君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           高田 修三君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中西 宏典君

   参考人

   (独立行政法人宇宙航空研究開発機構理事長)    奥村 直樹君

   参考人

   (独立行政法人理化学研究所理事長)        野依 良治君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月八日

 辞任         補欠選任

  加藤 寛治君     青山 周平君

  宮崎 謙介君     今野 智博君

  武藤 容治君     中村 裕之君

  簗  和生君     田畑 裕明君

  山田 賢司君     瀬戸 隆一君

  古川 元久君     奥野総一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     加藤 寛治君

  今野 智博君     宮崎 謙介君

  瀬戸 隆一君     山田 美樹君

  田畑 裕明君     簗  和生君

  中村 裕之君     大見  正君

  奥野総一郎君     古川 元久君

同日

 辞任         補欠選任

  大見  正君     武藤 容治君

  山田 美樹君     鬼木  誠君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     山田 賢司君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件


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     ――――◇―――――

竹本委員長 これより会議を開きます。

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として独立行政法人宇宙航空研究開発機構理事長奥村直樹君及び独立行政法人理化学研究所理事長野依良治君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣参事官二宮清治君、内閣官房行政改革推進本部事務局長宮島守男君、内閣官房内閣審議官菱山豊君、内閣府政策統括官倉持隆雄君、総務省大臣官房総括審議官武井俊幸君、総務省大臣官房審議官南俊行君、文部科学省大臣官房審議官中岡司君、文部科学省大臣官房審議官山脇良雄君、文部科学省大臣官房審議官田中正朗君、文部科学省大臣官房審議官磯谷桂介君、文部科学省科学技術・学術政策局次長伊藤宗太郎君、文化庁長官官房審議官作花文雄君、厚生労働省健康局長佐藤敏信君、経済産業省大臣官房審議官高田修三君及び経済産業省大臣官房審議官中西宏典君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

竹本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神田憲次君。

神田委員 おはようございます。自由民主党の神田憲次でございます。

 本日は、山本大臣並びに櫻田文科副大臣に御臨席いただいております。公務御多用の折、答弁に御対応いただき、まことにありがとうございます。また、JAXAの奥村理事長におかれましては、出張日程を御調整いただいてこの場においでくださったとのことです。まことに恐縮でございます。経産省からの高田審議官とあわせ、重ねて感謝申し上げます。

 さて、本日は、航空機産業について、特に技術開発と産業振興の部分についてお伺いしたく存じます。

 まず、山本大臣にお伺いいたします。

 大臣もごらんになられたとは思うんですが、昨年公開の「永遠のゼロ」、宮崎監督の「風立ちぬ」等々に登場しますゼロ戦の研究施設と生産が、私の選挙区である豊山町というところ、三菱重工業の研究施設なんですが、こちらによって行われたというところでございます。大臣御出身の、中島飛行機の群馬県、これには異論があるかとは存じますが、ここはひとつ、ゼロ戦は愛知ということにしておいていただきたいと存じます。

 我が国の航空産業は、数奇な変遷をたどっていると申し上げてもよろしいかと存じます。戦後の占領政策の中で、航空機の生産のみが研究開発が許されず、そして空白の七年間がございます。その後、YS11が生産はされるわけですが、そのYS11はもう廃止になって応分の年月がたっております。

 そこで、第三期科学技術基本計画の策定に基づいて、YS11以来の国産旅客機MRJ、三菱リージョナルジェットの開発が平成二十年三月に決定されました。

 自動車の部品が一台につき二、三万点ということですが、航空機の部品はその百倍、三百万点以上と言われております。航空機産業が極めて広い裾野の産業を伴って、その要素技術からシステム技術まで、先端産業が集約されておる。また、この技術は、他産業に転用可能な技術も多く、日本が技術立国であるための柱、基幹産業にもなり得る期待が寄せられておるところではないかと思います。ところが、現状の日本の航空機産業は、基幹産業とは言いがたいような状況にあります。

 そこで、大臣は以前、所信表明の中で、「科学技術・イノベーションは、この国の未来の形を決める鍵であり、我が国が直面する課題を乗り越えるための切り札」というふうに述べられました。まさしくそのとおりだ、力強いなと感動したわけですが、総合科学技術会議の司令塔機能強化に極めて熱心にお取り組みと伺っております。その強化施策の三本の柱のうち、将来有望な十の分野に集中的な投資を行う戦略的イノベーション創造プログラム、SIPが新設されまして、予算権限を獲得されました。

 そこでお伺いしたいのですが、この戦略的イノベーション創造プログラム、SIPにおきまして、航空機産業はどのような位置づけがなされておりますでしょうか。改めて具体的にお示しいただければと考えております。

 また、大臣は科学技術分野に対する関心が非常に高いと伺っておりますが、SIP及び航空機産業の研究促進に向けて、意気込みをぜひお聞かせ願えればと存じます。

山本国務大臣 まず最初に、今、神田委員が言及されたように、群馬県には中島飛行機がございますが、ゼロ戦は愛知ということについて、ここで異論を唱えるつもりはございません。

 そこで、SIP、戦略的イノベーション創造プログラムについてですが、これは、単なる研究開発だけに終わらずに、社会的課題の解決、産業競争力の強化への貢献、こういうものを目的としております。

 このSIPの一課題である革新的構造材料、これは、熱に強く、長もちし、かつ軽い材料を開発して、主として航空機などに応用することでエネルギーの効率的利用を促進する、こういう取り組みでございます。同時に、今後の市場拡大が見込まれる中小型の旅客機の国産化、こうした産業戦略も意識をして、新規材料の開発、機体の設計からエンジン等への適用、最終製品化まで一気通貫できる体制構築をぜひ目指していきたいと思います。

 この革新的構造材料のPD、プログラムダイレクターは、世界的にも有名な学識経験者である岸輝雄東京大学名誉教授に担っていただいておりまして、私としても、岸PDを最大限サポートするなど、この分野で成果を上げることに尽力をしてまいりたいと考えております。

神田委員 御答弁いただき、まことにありがとうございます。

 そこで、大臣にぜひ一度私の地元であります豊山町に足を運んでいただきたく存じます。これは丹羽先生ともかぶるんですが、三菱重工業小牧南工場史料室というのがございまして、ゼロ戦の復元機、それから航空宇宙に関する史料もそろっております。大臣にも大変喜んでいただけるのではないかと存じます。よろしくお願いします。

 二問目に移ります。

 産業振興についてですが、世界の航空機産業の市場規模が五十兆円だそうです。これは、日本の家電産業の約六倍という規模に当たります。民間航空機部門が年率四%という成長が見込まれており、年率四%ということになりますと、かなりの成長分野であろうかと存じます。

 そして、今後の旅客需要の大幅な増加も見込まれておりまして、当然、市場をめぐる国際競争も激しいというのが現況かと思います。欧州のエアバス、アメリカのボーイング、それからこのたびの日本の、後ほど申し上げるMRJ。これらの小型機の分野においては、ボンバルディア、それからエンブラエル、さらには中国、ロシアと、虎視たんたんと市場のシェア獲得を狙っている。そういった意味からも、我が国は後発国でありますから、本当にこの分野においては、これから成長分野としてということであれば、かなりの努力が必要ではないかと思います。

 そこでまず、このプロジェクト、手を挙げていただきました三菱重工のMRJ、これには大変敬意を表したいと思うわけですが、スケジュールの変更が三度ばかりございまして、しかしながら、いよいよ実機が、二十七年、おおむね一年後の初飛行に向けてその姿が明らかになっておることはマスコミ等の報道で御承知のとおりかと存じます。

 平成二十二年六月三日決定の産業構造ビジョン二〇一〇には、国内航空機産業を現在の一・三兆円から二〇二〇年には二兆円に拡大するということでございますが、今現在、四年たちましたところ、達成へ向けて、指針を改めてお伺いしたく存じます。

 また、現状の支援政策、例えば、輸出貿易保険の充実、海外受注拡大支援といった産業支援政策につきまして、具体例を教えていただければと存じます。

高田政府参考人 お答え申し上げます。

 航空機産業は、今後、二〇三〇年までに世界の市場規模の倍増が見込まれる成長分野でございます。我が国においても、この成長機会をしっかりと捉えて、国内航空機産業の発展につなげていくことが重要と考えております。

 委員御指摘の産業構造ビジョン二〇一〇では、二〇二〇年に航空機産業を二〇一〇年の約二倍の二兆円規模にするという目標を掲げ、三菱リージョナルジェットの海外販売、売り込み支援や次世代旅客機向けの素材開発などを進めてまいりました。さらに、今後、成長を確かなものとするため、引き続きMRJをしっかり支援していくとともに、ボーイング777Xなどの機体やエンジンの国際共同開発への参画、拡大の支援、また、装備品分野の新規参入促進、部素材や周辺産業の国内生産強化、さらには、航空部品の中小企業の物づくりネットワークの構築などに向けて取り組みを強化していく所存であります。

 今後とも、引き続き積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

神田委員 御答弁ありがとうございます。

 二〇二〇年といえば、東京オリンピックが開催される年です。二兆円という規模の目標値にとらわれず、さらに高みを目指して、アジア、東京とをMRJで結んで、世界各国からどんどん人が日本に観戦に来ていただくというような、前向きな施策をお願いしたく存じます。

 さて、次の質問に参ります。

 航空機の技術開発に関する質問でございます。

 航空機の分野では、今、環境への配慮、それから安全、快適性、三つ目に経済合理性、この三点を全て備えることが国際競争に打ちかつためのキーワードであると聞き及んでおりますが、現在のJAXAの航空機産業へのお取り組みを教えていただきたいと存じます。

 あわせて、世界に優位性を主張できる具体的な技術、部門は何であるのか、そして、現在、技術がどの程度のレベルにあるのか、奥村理事長に御教示いただければと存じます。

奥村参考人 お答えいたします。

 最初の質問の方から入りたいと思います。

 航空分野に関しまして、私どもJAXAでは、ただいま先生の御指摘ございましたように、燃費の向上ですとか発生する騒音の低減といった環境技術、あるいは乱気流に巻き込まれることを避けるような飛行機の安全技術等、さらには将来に向けた技術開発、これを大きな三本柱として、現在、研究開発を進めているところでございます。

 同時に、これらの先進的な技術を支える基盤技術、あるいは風洞といった基盤設備、これらの維持発展に努めるとともに、さらには将来の航空産業を目指す大学生あるいは大学院生の教育支援、そういうことを通じて我が国の航空産業の育成に尽力しているというところが現状でございます。

 もう少し具体的に申し上げますと、例えば、航空機の高効率、軽量化を目指しました軽量複合材ファンあるいは耐熱複合材タービンの設計技術開発を進めてございます。こういった先進的な設計技術と日本のエンジンメーカーの製造技術とあわせ、次世代のエンジン開発において日本の技術が世界を先導するといったことを現在考えて進めているところでございます。

 安全技術に関しましては、飛行中の飛行機がレーザーを用いて、飛行機の前方に発生するであろう乱気流を事前に予測してそれを回避するといった技術を進めておりまして、先生御指摘の環境、安全、快適性、経済合理性に配慮した世界最先端の研究開発に取り組んでいるところでございます。

 続きまして、二番目の御質問にお答えしたいと思います。

 我が国の航空機産業そのものが持つ優位性としては、やはり何といっても、素材からその利用技術が進んでおります軽量化複合材料だろうと考えてございます。これは、もとの素材でございます炭素繊維そのものを日本のメーカーが独占的に供給しているということもあり、それを利用した複合材料技術といったことは、極めて世界的にも強い分野でございます。

 また、先ほどもちょっと触れましたけれども、エンジンの国際共同開発においても一定の国際的なシェアを日本のメーカーは確保しており、やはり日本の一つの強みであろうというふうに見ております。

 こういった競争力のある産業分野を、私どもJAXAとしても、その基盤技術として支えてきてございまして、より具体的には、例えば、先ほど触れました複合材料の先進技術開発においては、私どもJAXAでは長年の経験があり、具体的にメーカーさんへの技術供与等も進めてきてございますし、あるいは環境負荷の低いエンジンにつきましては、例えばNOx等を下げる燃焼技術といったことも開発してございます。

 こういった要素技術に加えまして、先ほども触れました風洞を利用した機能検証技術、あるいは、まさに名古屋空港に置いております飛行機がございまして、これを用いますと総合的な機能検証ができる、そういった力も活用して、私どもは日本の航空機産業の競争力発展に貢献してまいりたいと思います。

 以上でございます。

神田委員 奥村理事長、大変ありがとうございました。

 最後に、もう持ち時間が終わっておりますので、櫻田副大臣に一つだけお願いしたく存じます。

 先ほど、奥村理事長の方から風洞実験室の話が出ました。

 全体の予算が限られる中で、なかなか難しいことではございましょうが、こういった基礎・基盤施設維持運営費というのがやはり年々縮減しておりまして、昨年度の四十七億八千八百万から、ことしはまた四十四億四千八百万……

竹本委員長 時間が過ぎていますので、簡潔に質問してください。

神田委員 はい。

 そういった意味からも、日本の航空機の科学技術を今後国家の基盤と見据えるためには、設備の更新が必要でないかと思われます。副大臣の御意見をお聞かせ願いたく存じます。

櫻田副大臣 お答えさせていただきます。

 私のもと、現在、御質問のようなことにつきましてはタスクフォースを立ち上げておりますので、一生懸命取り組みたいと思いますので、早速、具体的な方向に取り組んでいきたいと思います。

神田委員 これで質問を終わらせていただきます。まことにありがとうございました。

竹本委員長 次に、前田一男君。

前田委員 北海道八区の自民党の前田一男でございます。

 私からは、冒頭、今新聞をにぎわせておりますSTAP細胞を取り巻く昨今の状況について、私の所見、また政府のお考えといったものがあれば伺いたいというふうに思います。

 率直な感想として、科学者は事実に対して厳格でなければならないというのはよく承知をするところでありますが、しかし、これまで一緒になって研究をしてきた理研、そして小保方氏、その両者が対立するようなそういった姿を見るのは、本当に残念であるし、また、ある意味気の毒だなというふうに思っているところであります。

 そして、今の報道は、あたかもSTAP細胞自体が否定されるような方向に進んでいるように私は思うのでありますが、検証チームが追跡調査を行っても、批判的な気持ちでもって行っていくとすれば、仮にもし私がSTAP細胞だとすれば、そういう中では発現したくないだろうなというふうに思うのであります。きっとうまくいかないんだろうなというふうに率直に思います。

 もし、その後で、ほかの国でSTAP細胞を発見したということになったら、これはもう理研としての信用というものも失墜してしまうのではないかなというふうに思いますし、また、一方の小保方氏も、今ここが彼女の研究者としての勝負どころではないのではないかなというふうに思うんです。この私の声は届かないとは思いますけれども、どうにかして、両者のいろいろな思いというのはあるんでしょうが、それが一つの収束を見ていくような方向に行くことを望んでいます。

 現在の理研を取り巻く現状について、政府として何か所見があれば伺いたいと思います。

山脇政府参考人 お答えいたします。

 御質問のSTAP細胞の論文につきましては、四月一日の理化学研究所の会見におきまして、調査の結果、二件の不正、その他の事実が認定されたと承知しております。

 この背景には、研究者個人の責任だけではなくて、研究のチェック機能が機能しなかったこと、データ管理、研究の実施、発表に至るプロセスが適切に管理されていなかったことなど、複合的な要因が存在すると思っています。理化学研究所として、研究不正の防止策に積極的に取り組むことが必要と認識しております。

 理化学研究所におきましても、本件を重く受けとめて、野依理事長を本部長とする改革推進本部を立ち上げ、また、外部有識者から成る改革委員会を立ち上げまして、研究不正や過失の防止に係る規程や運用の改善、若手研究者が最大限に能力を発揮できる体制の整備など、再発防止のために必要な対策を早急に取りまとめると聞いています。

 文部科学省といたしましても、理化学研究所において、可能な限り早期に、かつ厳正に、再発防止のために必要な対策がとられるよう求めてまいりたいと考えております。

前田委員 本当のところは、我々政治家も、そして、今いろいろ報道しているマスコミの方々も、わからないというのが現実だというふうに思うんです。ぜひ、両者、互いの主張をお互いに理解し合って、酌むべきは酌み、そして譲歩すべきは譲歩して、一定の収束を得て、そしてまた一緒になって新しい未知の世界へ進んでいく、そういうふうな環境が整っていくことを心から望むところであります。

 また、政府としましても、こういった状況の中では、理研を特定国立研究開発法人に指定する法案は出しづらいというところがあるのかもしれませんけれども、しかし、この一事をもって、理研全体のこれまでの実績でありますとか、また、その信頼性、そういったものが揺らぐものではないというふうに私は思いますし、やはり、世界のトップクラスの人材を我が国に集めて、そして未知の技術に対して臨んでいくということの意義は大変重要なものでありますから、ぜひこの法案の実現も、環境が整い次第進めていただきたいというふうに思います。

 次に、原発、そして次世代のエネルギー、そういったことについて話を進めていきたいと思います。

 今とまっている原発については、規制委員会がこの後どういう判断をするかというふうなところに注目が集まっているわけでありますけれども、私は、その規制委員会の判断の後に、やはり国民の、そして立地自治体及びその周辺自治体の心からの理解というものが必要だというふうに思うんです。

 私の地元の函館市も、先日、国と事業者に対しての訴訟を起こすに至りました。こういう状況は、私は、国としても、また事業者としても、本当は恥ずかしいことだというふうに思うんです。もっと地域住民の方々の理解を得て、そして国が一つとなって、国民が一つとなって進んでいく、そういう環境をつくっていくということにもっと丁寧に臨んでいただきたいというふうに思います。

 函館市が今言っていることも、例えば、二〇一二年の十月に、一度震災でとまった原発を、事業者がまた工事を動かすというふうなことをしました。函館市は、せめて新基準でもってこれの認可がおりるまではとめておいていいのではないかという主張であったり、また、避難計画もしっかりとしたものをつくった上で稼働というものが認められるような形にすべきではないかというふうなものであったり、私は、その訴状を見る限り、函館市の主張はそれなりに説得力のあるものだというふうに思います。決して原発というものを全否定しているものではないので、何か政治の知恵でもって、この函館市の主張というものもきちんと取り込みながら、函館市も一緒になってこれからの国のエネルギー政策を考えていけるようにしていただきたいというふうに思っています。

 この脱原発という考え方については、各党、即刻ゼロというふうな党から、時間をかけて次世代のエネルギーを見出していこうという党まで、さまざま広がりはあるわけでありますが、原発を少なくしていこう、危険なものだから少なくしていこうという方向については、それぞれ各党共通しているところだと思います。しかし、それには、やはり原発にかわるエネルギー、そういったものをきちんと見出していかなければいけない、これもまた政治の責任だと思うんです。

 自然エネルギー、再生可能エネルギーもどんどんと開発、そして広げていくべきだと思いますが、しかし、それでもって原発に置きかわるものになるということはなかなか信じられないものだというふうに私は思うのであります。

 政府は、二十六年度で科学技術イノベーション創造推進費、これは大臣の所信にもありましたけれども、五百億円をかけて、SIP、戦略的イノベーション創造プログラムを、五カ年程度の時間をかけて新エネルギー開発を進めていこうというふうな考え方をしておりますけれども、その五項目だけで脱原発に進める、その大きな推進力になるとは私はなかなか思えないのであります。

 本当に脱原発に進むならば、輸入エネルギーに頼らない、国産の、または準国産のエネルギーというものをきちんと一定の時間をかけて開発していかねばならないと思うのでありますが、今の時点でこれの候補となるようなもの、それはどういうものがあるのか、政府としてそういったものがあれば御開陳いただきたいと思います。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から御指摘ありましたように、やはりどうしても我が国は化石依存度、過度に依存するというような状況になっておりますので、そういったものをできるだけ変えていかなくちゃいけないということで、これは具体的に、これまでも太陽エネルギーとか風力発電、そういったものに関係する研究開発もやってきましたけれども、さらにそれに加えまして、メタンハイドレートの商業化実現といったものに向けました技術を整備するためのメタンハイドレート研究開発事業、さらには、いろいろな国産エネルギーを活用するということができるような水素利用研究開発事業、そういったことの事業に取り組んできております。

 そういった意味では、引き続き、将来を見据えたいろいろな研究開発には積極的に取り組んでいきたいと考えてございます。

前田委員 積極的に取り組むというふうな御発言でありますけれども、私は、これを本当にやるのであれば、一世代三十年ぐらいのロングスパンでもって、国家プロジェクトとしてこれを進めていくという決意、そして具体的な予算というものを示していかないと、国民は、口では政治家はいろいろ言うが、また、政府は脱原発と言うけれども、本気でそれを考えていないのではないかと思われるのではないかと思うんです。

 国家プロジェクトとして脱原発に進むために、このような、どれがうまくいくか、うまくいかないかはわからないけれども、国として次世代のエネルギーの開発に進むんだという決意をぜひ見せていただきたいというふうに思います。

 原発の技術が世界で最も進んでいる我が国で、福島の原発の事故というものが起きてしまいました。今、この原発は、最終処理にしても、人類としてその答えを見出すことができません。また、どんなヒューマンエラーが起きるかわかりませんし、一旦大きい事故が起こってしまったら、その被害たるものや甚大なものであります。

 そうではなくて、もっと、それは原発でもいいのでありますけれども、何か事故が起きてもそれほど大きな事故にはつながらないような原発でありますとか、また、私は第四世代の原子力システムやトリウムの溶融塩炉の資料などもいただきましたけれども、何か我が国の原発にかわる代替エネルギー、そういったものになり得るもので、かつ、甚大な事故にはつながらない、そして、きちんと最終処理というものも心配しなくてもいいような、そういうふうなことを考えていかなきゃいけない。

 我が国でこういった事故が起きたということは、これは世界共通の課題でありますから、世界に対してそういったものを提供していく義務、そして貢献する力というものが日本に試されているのではないかというふうにも思うところであります。

 いま一度、政府として、国家プロジェクトとして、脱原発に向かうための主要なるエネルギー、そういったものを見出していくんだという決意をお聞かせいただきたいというふうに思うのですが、いかがでしょうか。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 やはりエネルギー関係のいろいろな技術開発と、そういったものの研究開発を進めていくということとともに、それをしっかりと社会に根づかせていくためには、長期的な研究開発というのをしっかりとやらなくちゃいけないというふうな、先生御指摘のとおりでございまして、そういう具体的なエネルギー関係の技術開発に当たりましては、具体的な目標といったものをまず定めまして、その研究開発を実現していくための時間軸、さらには社会に実際に実装させていく、そういったための方策もあわせて明確にしていかなくちゃいけないというふうに我々は考えております。

 そういったものを明確にしながら対応していくということで、先生いろいろな御指摘をいただきましたけれども、トリウム発電とか核融合等、そういったものにつきまして、かなり超長期の取り組みを要するんじゃないかというふうに我々も認識しておりますので、それらの点をよく見きわめた上でしっかりと取り組んでいくというのが必要だと認識してございます。

前田委員 予算の制約もあるでしょうけれども、本当に国としてそれに向かっていくんだ、それによって、私たちの安全とか安心とかを確保して、そしてそれがまた世界に貢献できるんだということであれば、私は、国民の多くの方々が、例えば福祉の部分とかほかのいろいろな部分の予算を若干削っても、こういったところに振り向けていくべきではないかというふうな世論はでき上がるのではないかと思います。

 そういった決意をぜひこれからも持って、そして前に進んでいただきたいと思いますし、私自身もそういう方向で努力してまいりたいというふうに思います。

 本日は、ありがとうございました。

竹本委員長 次に、輿水恵一君。

輿水委員 公明党の輿水恵一でございます。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、心より感謝を申し上げます。

 私は、本日は、大臣所信に対しましての、総合科学技術会議を中心とした日本のイノベーション、その取り組みのあり方について確認をさせていただきたい。また、そういったものを踏まえての、個人情報は保護しつつも、パーソナルデータ、これをいかに活用して、そのイノベーションに追い風を送っていくのか。そういった視点で質問をさせていただきたいと思います。

 日本は、どう考えても、エネルギーあるいは資源を輸入して、そして製品を、またサービスをどう展開していくか、やはりここに成長の鍵がある、これは昔からそういう状況であると思います。

 そのような中で、総合科学技術会議が果たす役割というのは非常に大きい。総合科学技術会議といっても、具体的に何がスタートするかというと、その中からいろいろなプログラムがスタートしながら、その成果を具体的な産業あるいは雇用に結びつけていく、そういったことになるのかと思います。

 今日まで、最先端研究開発支援プログラム、FIRST、あるいは最先端・次世代研究開発支援プログラム、NEXTプログラム、そういったもので一つ一つ成果をおさめてきているところでございますが、今回、大臣の所信にありました戦略的イノベーション創造プログラム、いわゆるSIPと革新的研究開発推進プログラム、ImPACT、この内容について確認をさせていただきたいと思います。

 いずれにしても、それぞれのプログラムについての課題の設定等の大きな道筋については総合科学技術会議で決定をする。ということは、この会議でどういったものが決定し、どういう道筋で進められるか、ここを間違ってしまっては後のものがつながらなくなってしまうということで、ここが非常に肝心だなというふうに感じているところでございます。

 まず、SIPの推進につきまして、この課題の設定における考え方、またその辺の取り組みについてお聞かせ願えますでしょうか。

倉持政府参考人 御説明申し上げます。

 委員御指摘のように、総合科学技術会議でございますけれども、内閣総理大臣のリーダーシップのもとに、科学技術・イノベーション政策の推進のための司令塔として、我が国全体の科学技術を俯瞰して、総合的、基本的な政策の企画立案、総合調整を行うものでございます。

 お尋ねの戦略的イノベーション創造プログラム、SIPでございますけれども、このプログラムは、まさにその総合科学技術会議の司令塔機能を強化すべく、内閣府に予算を計上して、四つの分野を対象に、府省横断的な重要課題を設定して、基礎研究から実用化、事業化までを見据えた研究開発に対して機動的に予算を配分するというプログラムでございます。

 四つの分野と申しますのは、エネルギー、次世代インフラ、地域資源、そして健康・医療分野というものでございますけれども、このうちの三つ、エネルギー、次世代インフラ、地域資源の三分野につきましては、府省一体となった取り組みの必要性、社会や産業界のニーズ、国内外の将来の市場、雇用の規模、あるいは我が国の国際競争力強化の方向性などの観点から、重要な十課題を、昨年九月に開催されました総合科学技術会議において設定したところでございます。

 残りの健康・医療分野の研究開発に対しましては、総合科学技術会議におきまして全体の予算額の三五%を配分いたしまして、具体的な研究につきましては健康・医療戦略推進本部が実施することとしているところでございます。

輿水委員 ありがとうございます。

 将来につながる四つの分野、その中から十課題選定をして進められるというふうに今伺いましたが、まさにその十課題、私も見させていただきまして、やはり今の時代に、また将来非常に必要な、そういった課題についての選定がなされている。

 その上で、ここで具体的に成果をどのように出していくのか、そこになると、SIPプログラムの中で、プログラムディレクターが中心となって、研究の目標の設定、また進め方をしっかり具体的に提案しながら、実現に向けて一歩一歩前進をしていくものだと思います。

 結局、プログラムディレクターがしっかりしていないと、その研究、幾らいいテーマがあってもしっかりとした産業等に結びついてこない、そういう問題があると思うんですけれども、このプログラムディレクターはどのような形で選任がされているのか。また、これは研究項目ごとに選定されるんだと思いますけれども、どういう視点で選定するのか。また、目標の設定、あるいは、研究項目が十項目あるんですけれども、予算というのは限られているわけで、どのような形でその十項目に配分をしていくのか。その辺の考え方についてお聞かせ願えますでしょうか。

倉持政府参考人 御説明申し上げます。

 プログラムディレクターでございますけれども、昨年十月に内閣府が公募をさせていただきまして、総合科学技術会議の有識者議員によって構成されるいわゆるガバニングボードというのがございますが、ここで書類及び面接による審査を行った上で、昨年十二月に選定されておりまして、十課題ごと、十名の方が選ばれております。

 なお、正確に申し上げますと、SIPの予算は二十六年度予算でございまして、昨年十二月の時点ではまだ、予算成立前でございましたので、正式にはプログラムディレクターということではなく、内閣府政策参与と称して公募させていただいておりますけれども、このたび予算が成立いたしましたので、今後、総合科学技術会議において、プログラムディレクターという形で正式に決定させていただきたいと考えているところでございます。

 研究開発項目であるとか目標、これは非常に大事な点でございます。まさに実用化、事業化のための戦略などとともに、研究開発計画という形でプログラムディレクターに取りまとめていただきます。

 それで、具体的な予算の配分でございますけれども、これにつきましては、先ほど申しましたガバニングボードというところが、必要に応じて外部有識者もお招きした上で各研究開発課題を評価して、その結果をもとに、最終的には総合科学技術会議において決定する予定でございます。

輿水委員 ありがとうございます。

 ということは、一つ一つ、十のそういった研究項目に対してプログラムディレクターが研究の計画を立てていく。計画を立てて、目標達成のために、予算というものもそこに一緒に出てきます。それを総合科学技術会議の方に出して、今言われたガバニングボード、そこの中で判断をされて予算が配分をされてくる。そういう流れになると思うんです。

 そこで、問題は、プログラムディレクターがこういう計画でこの予算でやればこの目標が達成できると出したにもかかわらず、十の研究項目がある中で、うまくその予定どおり予算が配分できない、この程度にしてくれというふうになったときに、不十分な場合、その目標も達成できない、どうするのか、そういった問題に対しての何か対応というのはあるんでしょうか。

倉持政府参考人 御説明申し上げます。

 委員御指摘のように、確かに、このプログラム全体で予算額がございますので、全体の予算規模がございます。その中で、各プログラムディレクターは、一応そういった適切な金額も念頭に置きながら研究計画を練っていただくわけでございます。

 確かに、予算的制約などから、各プログラムディレクターが当初希望されていた金額より少ないという可能性があるわけでございますけれども、その場合は、各プログラムディレクターにおかれては、研究開発項目を見直していただいたり、スケジュールや目標など、その計画の内容を臨機応変に修正するといったことも必要になろうかと思います。

 目標達成の是非であるとかプログラムディレクターの業績につきましては、ガバニングボードが必要に応じて外部専門家の参加を得て評価をしていく、こういう形にさせていただいております。

輿水委員 ありがとうございます。

 その限られた予算の中で達成できる目標を設定し直して、そしてそこに向けてきちっとした成果を出していくという流れになるということがわかりました。評価については、それがいかにしっかりとなされているかはガバニングボードの方でしっかり評価をしていくとわかりました。

 ここで、ちゃんとそれぞれのプログラム、また当初の技術革新、これを具体的にきちっと進めていくという意味では、予算が足りない、やはりあった方がいいというところについては何とかつけるという、どこが責任を持ってこのプログラム、研究項目を具体的にきちっとした結果、成果として結びつけていくか、それはやはり総合科学技術会議でやっていくべきだ、そういう責任の所在について確認をさせていただきたいんですけれども、山本大臣、どうでしょうか。

山本国務大臣 今、輿水委員がおっしゃった、中身をしっかりと見ながら、きちっと総合科学技術会議が目ききをして決めていくべきだというのは全くそのとおりだと思います。特にプログラムディレクターを支える体制、これは非常に大事だというふうに考えています。

 SIPの、先ほど倉持統括官の方から説明をさせていただいた十名のPD、これは産学のすぐれたリーダーでありまして、産業技術に関する知見を有しています。さらに、PDは内閣府に所属をしてもらいまして、研究開発計画の策定、マネジメント等の権限も有することになります。

 しかしながら、各課題とも扱う内容が広くて業務量も多いということで、例えば当該課題に関連するマーケット、政策、技術などに精通した専門家などの協力が得られるようにしたいと思っています。例えば、PDが主宰する委員会の委員として委嘱するというような方法も考えられると思います。さらに、各PDのもとには、内閣府の担当管理職、担当者を配置して、しっかりと進めてまいりたいと思います。

輿水委員 ありがとうございます。

 まさに総合科学技術会議で、PDの技術的な視点だけではなく、マーケティング、あるいは全体的な、産業化をしていく上でのいろいろな知識を持ったメンバーがそこに結集することによって当初の目的を達成する、そこに総合科学技術会議の責任がある、そういった意味では、PDに任せっきりではなくて、しっかり評価をしながら目標達成に向けてぜひ取り組んでいただきたい、このように思います。

 続きまして、ImPACTの推進について確認をさせていただきたいと思います。

 革新的研究開発推進プログラム、ImPACT、これも同じように総合科学技術会議でテーマの選定をし、今度は、こちらの方ではプログラムマネジャーの選任をしていく、そして、予算配分もきちっとしながらプログラムを決定していくという流れになると思うんですけれども、このImPACTについても、今もうそれが進んで、プログラムマネジャー、いろいろな計画を公募で募集しながら、それを選択して、それに予算をつけていく、そういう流れになってくるのかなと思うんです。

 例えば、私、個人的には、日本というのはやはりエネルギーをすごく消費している。消費量というのは、ちょっと調べてみましたら、年間五百兆円、そういった消費をしている国だと。そこの部分で、新たなエネルギーの創造と同時に、やはり省エネ、エコ化、そこは非常に重要な課題だと思っておりまして、今回このImPACTの一つのテーマとしてもこの問題が取り上げられております。

 例えば、この問題に対しましての、生活様式を変える革新的省エネ、エコ社会の実現という、このテーマに対しましての応募の状況についてお聞かせ願えますでしょうか。

倉持政府参考人 御説明申し上げます。

 ImPACTにつきましては、委員御指摘のとおり、公募をいたしまして、まずプログラム構想の提案を求めるということでやらせていただいておりまして、このプログラムマネジャーを公募したところ、現在百八十件、これは全体でございますけれども、応募があったところでございます。

 今、御指摘の具体的な一つのテーマについて何件であったかということにつきましては、すぐ確認をいたします。

輿水委員 ありがとうございます。

 テーマがたくさんある中で、私がここで聞きたかったのは、テーマに応じて均等配分という問題ではなくて、応募した中身、その重要性に応じて、バランスを考えるというよりも、中身できちっと考えてそこに予算をつける、そういった視点も大事なのかなというふうに思いましてこの質問をさせていただいたんですけれども、この点についての御見解をお聞かせ願えますでしょうか。

倉持政府参考人 御説明申し上げます。

 ImPACTにつきまして、先ほど御説明申し上げましたように、今、プログラムマネジャーの公募を行って、百八十件の応募があったところでございます。これから総合科学技術会議において厳正に審査を行った上で、六月ごろに決めていきたいという予定にしております。

 このプログラムマネジャーの審査におきましては、いわば構想に至った背景であるとか構想の斬新さ、あるいは世界を変える革新性、発展性などのプログラム構想の内容を見る書面審査と、構想力であるとかマネジメント力などプログラムマネジャーとしての資質や困難な課題をやり抜く意欲が応募者に備わっているか、そういったことを見る面接審査を実施することとしております。

 この選定に当たりましては、委員御指摘のように、人だとか金額ありきということではなくて、プログラムの内容や応募者の資質をまさに見きわめまして、ImPACTの制度の趣旨に沿った提案を採択するべきであるというふうに考えております。

 したがいまして、テーマごとの採択数あるいは予算配分があらかじめ予定されているということではございませんで、提案内容と審査によっては、結果的にテーマ間に偏りが出るということもあり得るものと考えているところでございます。

輿水委員 ありがとうございます。

 まさにここでのイノベーションが社会のあり方とか世界のあり方を変えていく、まさにこれを産業化することによって世界展開できる、そういった技術の芽がここで生まれてくるんだと思います。そういった視点で、しっかりとした選定と、予算の、均等ではなくてしっかりしたものに重点化をして、そういった産業を生み出していくことが重要かなと思うんです。

 そこで、当然、プログラムマネジャー、技術的な視点を持っている方が中心になるのかなと思うんですけれども、やはり、日本はいつまでたっても技術で勝ってビジネスで負けているという国であるわけにはいかない。プログラムマネジャーに対して、その技術をどう世界展開していくか、産業化していくか、ここには、やはりそれを今推進している総合科学技術会議がしっかりとバックアップをして、総合的に産業化をして、日本の新しい事業として世界に展開していく、そういったアプローチが大事だなというふうに考えるんですけれども、この点の取り組みについて、副大臣、大臣、どちらでも、よろしくお願いいたします。

後藤田副大臣 ありがとうございます。

 委員御指摘の点というのは本当に大事でございまして、やはり触媒的な、技術と産業をつなげる、同時にガバナンスも、昨今言われているようなことも含めて、そういうことがやれる体制を、総合科学技術会議として、先般、イノベーションに最も適した国をつくり上げていくための司令塔といたしまして、他の司令塔機能との連携を強化するということ、また府省間の縦割りの排除、また産学官の連携強化、基礎研究から出口までの迅速化のためのつなぎ、こういったことなどに総合科学技術会議みずからがより直接的に行動していくということにしております。

 ImPACTにつきましても、他の司令塔機能、また産学官との連携を強化することはもとより、その成果をインパクトのある形で社会に還元するために総合科学技術会議としてどのように取り組みを行うべきか、検討をさらに進めてまいりたいと思います。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 まさにインパクトのある、そういった技術開発、イノベーションが社会にインパクトを与えていく、そこまでしっかりと取り組んでいく、そういった思いで私も応援をさせていただきたい、このように思っております。

 そして、その上で、そういった新しい技術開発をする上で、その追い風となるのが、さまざまなデータ、現状のデータを有効に活用して、いろいろなニーズだとか、また、その後の発展性みたいなものをちゃんと調査して、そして展開をしていく、こういったことが必要なのかなというふうに思うんです。

 これは、医療分野においても、あらゆる産業においても重要であり、総合的に見ていく必要があるんですけれども、そのような中で、IT総合戦略本部において、パーソナルデータの利活用を促進するための取り組みを着実に進められる、そういった大臣の御所信をいただきました。

 ここで、パーソナルデータの利活用に関する制度見直し方針を踏まえて、さまざまな検討が今進められている、このように伺っております。その検討の状況と今後のスケジュールについて教えていただけますでしょうか。

二宮政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年十二月に、内閣総理大臣を本部長といたしますIT総合戦略本部におきまして、パーソナルデータの利活用に関する制度見直し方針を決定したところでございます。この制度見直し方針におきましては、個人情報及びプライバシーの保護を前提としつつ、パーソナルデータの利活用を促進する制度を構築することによりまして、新ビジネスや新サービスの創出を図ることとしているところでございます。

 これを受けまして、本年三月より、IT総合戦略本部のもとに設置をいたしました、消費者団体や経済団体の代表、法学者等をメンバーといたしますパーソナルデータに関する検討会を再開いたしまして、第三者機関を初めといたします各論点の検討を進めているところでございます。

 なお、論点が多岐にわたりますので、今後、複数回検討を重ねまして、制度見直し方針にありますとおり、本年六月までに法改正の内容を大綱として取りまとめまして、来年の通常国会への法案提出を目指すこととしているところでございます。

輿水委員 ありがとうございます。

 日本におけるデータ保護の現状といたしましては、個人情報保護法では、保護すべき対象が「特定の個人を識別することができるもの」、そういうことになっているんですけれども、特定の個人を識別できない情報は、いわゆるパーソナルデータ、そういう領域に入るものであると思うんです。これが自由に利用、流通可能であるはずなんですけれども、実際の社会では過剰な反応があって、とはいっても、いろいろな形で調べてやれば特定できるんじゃないか、また、こういう情報はやはり使うのを控えた方がいいんじゃないか、そういった状況もあるのかなと思うわけです。

 そして、そういった意味でも、いかに適切に、個人情報を保護しながらパーソナルデータを具体的に使っていくか。その一つの方法として、個人データを加工して、個人が特定される可能性を低減した上でのプライバシー保護、そしてパーソナルデータの活用、こういったものも一つの技術として成り立ってくるものだと思っております。

 そして、今、この本部の方で、第三者機関を設定して、当然、個人情報の保護とか、またはそういった問題に対しての罰則とか、そういったものを進めていると思うんですけれども、それだけではなく、しっかりと個人データを加工して個人が特定されないような使い方、さらに、このデータを使うことによって、飛躍的な、いろいろな開発が進んでくる、そういったことを総合的に勘案しながら、できるだけ早い段階で相談体制を、窓口を開いて、研究開発と同時にデータの活用も積極的に進められるような、そういった環境の整備が大事かなというふうに思うんですけれども、その点についての考え方をお聞かせ願えますでしょうか。

後藤田副大臣 委員御指摘のパーソナルデータの保護と利活用、このバランスが非常に大事だと我々も考えております。

 先ほども参事官から説明がございました昨年十二月の見直し方針におきまして、先ほど委員も御指摘の、ルールの曖昧さから、事業者がパーソナルデータの利活用にちゅうちょしている、このような御指摘もございます。そのルールの曖昧さの解消等のため、独立した第三者機関による事前相談等の体制整備を初め、保護されるパーソナルデータの範囲の明確化、また、個人データを加工し個人が特定される可能性を低減したデータに関し、第三者提供に当たり本人同意を要しない類型の創設等々も重要な論点として挙げているところでございます。

 まさに、今申し上げた観点も含め、先ほどのスケジュール感の中で、パーソナルデータに関する検討会におきまして議論をさらに進めまして、その成果を本年六月に大綱として取りまとめてまいりたい、このように考えております。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 そういったデータを活用して、また、さまざまなプログラムを具体的に推進しながら、最終的には新たな産業を創造していく。そして、新たな産業を創造した、でも生産は海外の方がとなってしまっては、国内での産業また雇用というものが生まれなくなってしまうという意味では、総合科学技術会議の中で、やはりその先の、国内に技術を定着させていくための取り組みという視点も非常に重要なのかなというふうに思うわけです。ということは、国内で常に付加価値の高い、そして国内でなければできない、そういった産業を生み出していく。

 そういった意味で、先日の別の会議で提案がなされた、単純に商品だけ個別で売るとか、一つの商品にあらゆる性能を加えて、それで丸ごと売るというよりも、商品も含めたサービスとして、例えば、今開発が進んだHAL、ああいったサイバーロボットというか、そういったものも、一つだけ、商品としてこれですよじゃなくて、そのメンテナンスとか、個々に合わせたいろいろな工夫、そしていろいろな症状を改善するためのシステムというものをしっかり開発しながら、常にそれを更新しながら、そのシステムを売っていく。

 そういうふうなことをすることによって、単純な、生産とか製造とかそういったものではない、システム的なものを日本が開発して世界に提供する、そして、新しい、インパクトのある、日本の将来を担う産業として国内に根づかせていく、こういった取り組みも必要かな、そして新しい日本の成長戦略の柱として進めていくべき、このように思うんです。

 生まれてきた技術をどうやって国内の産業として根づかせていくのか、その辺についての大臣の意気込みと考え方を最後に聞かせていただければと。思いで結構でございます。よろしくお願いいたします。

山本国務大臣 今の委員のお話は大変参考になりました。勉強になりました。

 ImPACTとSIPというのは、総合科学技術会議を強化していく上での二つの柱なんですけれども、先ほど質疑をさせていただいたSIPの方は、より短期という言い方は正しいかどうかわかりませんが、出口をにらんで産業化させていく、府省連携の流れの中で産業化させていくということに対して、ImPACTは、今委員もおっしゃったように、それがうまくいくと社会全体が変わるような、ハイリスク・ハイインパクトな産業を生み出すということが目的ですから、そういう流れをつくれるように、あらゆる知恵を絞って頑張ってまいりたいと思います。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 今、社会は、温暖化の問題だとか人口の問題、いろいろな問題で、インパクトがある開発でインパクトのある生活環境の変化も求められていると思います。それを担う日本の技術をぜひ生み出していただくことを、また、ともに生み出すことを決意させていただきまして、私の質問とさせていただきます。

 本日は、大変にありがとうございました。

竹本委員長 次に、小川淳也君。

小川委員 民主党の小川淳也でございます。

 大臣所信に関連をいたしまして、御質問申し上げます。

 きょうは、理化学研究所の野依先生、大変お忙しい中、また、一連の騒動への対応で大変お忙しいことと思います。委員会への御出席に御協力をいただきまして、まことにありがとうございました。心よりお礼を申し上げます。

 まず、現在の科学技術をめぐる情勢については、大臣も御想像のとおり、このSTAP細胞をめぐる真偽のほどなり、また、その手続に対する国民の疑念、関心が最大のものではないかと思います。

 大臣に、この点、受けとめをお聞かせいただきたいと思います。

山本国務大臣 今、小川委員の方から御指摘になりましたSTAP細胞に関する論文については、四月一日に、理化学研究所の調査委員会の最終報告がなされました。調査対象の六件のうち二件について捏造と改ざんという不正行為があったという内容であって、科学技術担当大臣としては大変厳しく受けとめております。

 理化学研究所については、優秀な研究者がすばらしい活動を行い、世界最高水準のインフラを有するすぐれた法人であるというふうに認識をしております。こうした理研において、従来の生物学の常識を覆す結果として公表された論文中に不正があったと認定された、このことを極めて残念に思っております。ただし、今回の件で、寝食を忘れて、日夜、革新的な研究に取り組んでいる若手研究者のチャンスを奪うようなことがあってはならないというふうにも思っています。

 理化学研究所においては、国民に不信感を持たれないように、ガバナンス、それから危機管理マネジメント、これもやはり世界と比べて一流であることをしっかり証明していただくということだと思います。一日も早く信頼を回復すべく、全力で対応に取り組んでいただきたいと思います。科学技術担当大臣として、理研のその後の対応を十分に見きわめてまいりたいと思います。

 なお、委員御存じだと思いますが、四月一日からSTAP現象の検証についても取り組みを始めたということでありますので、科学的にきちっと検証がなされるということを期待しております。

小川委員 大臣は、厳しく受けとめておられる、あるいは高い関心を払っておられるという御答弁でございました。

 所信演説の中で、日本の科学技術の信頼性の確保、向上に関する言及がない。時節柄、そういった言及があってもよかったのではないかという点をちょっと指摘したいと思います。

 それから、あわせて、これは通告外ですので、お感じになる範囲で結構です。

 日本の科学技術に対する国民の信頼度はどの程度かという統計調査がございます。余りクイズのようになってもいけませんので、ここは御紹介した方がいいかと思いますが、直近、二十四年の調査で六六%だそうです。現在、高いと言われている内閣支持率よりさらに高い。国民の日本の科学技術に対する信頼度が高い。原子力災害の後、若干低下し、その後、回復傾向にあったようです。

 しかし、このSTAP細胞をめぐる騒動の後、どういうふうに数字が変化しているか、大変興味深いところですが、データはありません。文部科学省の方で調査をされているようですので、大臣にも御関心をお持ちいただきたいと思います。

 野依先生にお聞きいたします。

 国民の科学技術に対する信頼は意外と高いんですね。意外とと申し上げると失礼ですが、七割近い、大変高い水準であります。

 一方、同様の調査で、大変興味深いというふうに私はお見受けしていますが、専門家に今度聞きます。国民は科学者を信頼していると思うかと専門家に聞いた場合、数字がぐんと下がりまして、四割台前半に落ち込みます。私は、この数字を見てちょっと意外でした。国民は科学技術に対して高い信頼を置いている。しかし、科学技術者自身が、自分たちが信頼されているかどうかについて、必ずしも高い自信を持っていない。

 科学者として、大変大きな業績、功績を残された野依先生であります。ノーベル化学賞を受賞された際には、私も、日本国民の一人として、大変誇らしく、本当にうれしかったことを鮮明に記憶しております。そういう研究者としてのお立場からの御見識もいただきたいですし、理化学研究所という大変大きな組織をまとめられる管理者であるというのは、また、違った御苦心、御苦労がおありだろうというふうに拝察をいたします。

 今私が申し上げた観点、専門家の立場から見た国民の科学技術に対する信頼、そして今回の一連の騒動、特に、不正があった、捏造、改ざんがあったと認定されたわけでありまして、その不正を防げなかった背景について、研究者として、管理者としてどうお考えになるか、お述べいただきたいと思います。

野依参考人 先ほど大臣からもお話がございましたように、今般、理研の研究者が発表いたしました論文の不正問題が科学社会の信頼を損なう事態を引き起こしていることは、大変申しわけなく、おわびを申し上げたいと思います。

 今回の事態は、研究者本人の倫理観の欠如、共同研究における著者間の責任分担の不明確さ、研究所の組織としてのチェック機能に改善すべき点があったことなど、複合的な要因によって生じたもの、そういうふうに認識しております。

 したがいまして、こうした問題が再び発生しないように、外部の先生方の御意見も伺いながら、再発防止策を早急に取りまとめ、そして、組織として必要な対応を確実に行うとともに、高い規範を再生した上で、科学技術・イノベーションへ貢献するという理化学研究所の責任を果たしてまいりたいと思います。

 今お尋ねの研究社会に関するものでございますが、研究者と一般社会の対話がもう少し必要じゃないかと思います。その上で、研究者あるいは科学技術に携わる者は社会に対して何をするかということを、もう一度確認しなければいけないと思っております。

 かつて、科学は知識をつくる営みでありました。しかしながら、最近は、社会の中の科学、社会のための科学ということが大変大事になってきておりますので、今後とも、科学者、技術者たちは一般社会と対話をしながら、みずからが何をすべきかということ、特に若い人たちは対話を通して自分たちの持てる力を十分に発揮していく、そういうことが必要ではないかと思いますので、一般社会からも激励をしていただきたい、そういうふうに思っております。

小川委員 大変真に迫る研究者ならではの御答弁、ありがとうございました。

 もう少し私も、きょう、国会の場であります。それから、理化学研究所という大変権威ある機関の内部で何が起きていたのか。事実の検証はまだ待たねばならないところがあろうかと思いますが、少しトップの口から率直に感じておられることをお聞かせいただきたい、そういう趣旨で御質問申し上げます。

 私は、STAP細胞発見の報道に接しましたとき、ことしの年明けだったと思いますが、大変強い衝撃、大きなインパクトを感じました。これまで万能細胞については、高い技術なり大変な遺伝子操作なり、ちょっと素人からは及びもつかない領域の世界の話だと思っていたわけであります。しかし、圧力をかける、あるいは酸に浸す、もし不適正であれば訂正していただきたいと思いますが、そういう極めて素人からも理解可能な過程を経て細胞が初期化するというのは、大変衝撃的なお話でありました。

 しかし、逆に一方で、危機的な状況下で細胞が初期化に向けた運動、変化を起こすというのは、生命の神秘であり、また、生命力の多様さであり、強さであり、大変な可能性を秘めた発見なのか、しかも、それが三十代の若い女性、割烹着も話題になりましたけれども、ああいうセンセーショナルな表現とあわせて国民に大きな衝撃を与え、訴求力を持ったわけであります。

 当然、理事長は、世の中で公になる前に、相当、事実関係なり、あるいは研究の成果としては御存じだったと思いますが、その事実関係、そして、それに対してどういう感想を持たれていたか、発表前の話でありますけれども、理事長御自身の体験から率直にお述べいただきたいと思います。

野依参考人 私が研究者、当事者たちから話を聞きましたのは、発表の数日前、一週間以内でございます。笹井副センター長、小保方さんの二名からその研究成果を聞きまして、まさに衝撃を受けたところでございます。それ以前には全く聞いておりませんでした。

小川委員 私ども一般がそうであったように、理事長といえども、いささかの疑い、いささかの懸念も持たずにその発表を受けとめたということでよろしいのかどうか。

 そして、あわせて、理事長の最近の国会での御答弁、また本日の御答弁を拝見していても、やはり組織として、構造的な問題として考えていく必要性はお認めになっておられますが、同時に研究倫理の問題である、あるいは、こうした分業体制による共同研究を性善説でやっていいのかどうか、人の資質、研究者の倫理観という極めて厄介なものについても言及せざるを得ない。つまり、組織の構造、チェック機能の問題と研究者の個性、キャラクター、倫理観の問題、両方に言及しておられるわけであります。

 その意味で、今、お聞きになった時点で、いささかの疑念も、いささかの懸念もお持ちにならなかったのかどうかが一点。そして、今回、渦中の人であります小保方ユニットリーダーの研究者としての個性、倫理観に触れざるを得ないとすれば、理事長は以前から面識があったのか、あるいは、その発表、報告を受けた際にどういう感想をお持ちになられたのか、率直にお答えいただきたいと思います。

野依参考人 このSTAP細胞の論文は、ネイチャー誌という世界に冠たる雑誌に載っておりまして、そこに掲載されるというのは、さまざまな審査を経て掲載されるわけでございます。そこで掲載されたこと、それから、それをリードする笹井副センター長を初め、大変立派な実績のある研究者がリードしてきたということで、全く疑いは持っておりませんでした。

 それから、研究不正全体の問題につきましては、これは世界的に蔓延するゆゆしき問題でありまして、私は、それまでに随分憂慮してきたところでございます。私は、研究者社会全体として、研究論文のチェック体制を初め、大いに改善すべき点が多いかと思います。

 理化学研究所では、文部科学省が定めました研究活動の不正行為への対応のガイドラインを踏まえて規定を整備し、不正の防止に取り組んできたところでございます。しかし、不正が起こったということに大変衝撃を受けております。

 今おっしゃったように、倫理教育が非常に大事だというふうに思っております。もちろん、チェック体制ということも大事でありますけれども、倫理教育が非常に大事である。

 理化学研究所には、千九百人ぐらいの研究者がおりまして、研究系の職員を入れますと二千八百人おります。彼ら、彼女たちの経験、教育、あるいは文化、そして倫理観というのはまちまちでございまして、これを取りまとめていくということは大変であるけれども、とにかく倫理観を高めていく、これがまず一番大事だろうと思っております。

 山本大臣がおっしゃいましたように、やはり、若い人、女性、外国人、そして民間の方、多様性を研究所が保っていく、獲得していくことは、科学あるいは科学技術を振興する上で非常に大事であるということでございます。何とか今後は、彼らの力を十二分に発揮し、かつ、不正をなくすということで努力をしてまいりたいと思っております。

小川委員 理事長には最後のお尋ねです。

 研究者の倫理観、これは研究の世界に限らずだと思います。あらゆる職業世界においてこの倫理観というのが基本にありませんと、最近、きのう、きょうも政界でも大変大きな事件がございましたし、これは、あらゆる専門分野、あるいは社会人としての基本にかかわる問題だろうと思います。だからこそ扱いは難しく、一言で指導、教育と言っても、なかなか事は簡単ではないというのが真相ではないかと思います。

 最後に、理事長に、今回、一年ぐらいかけて検証をみずからの責任において進められるということに対しての決意をお述べいただきたいと思いますし、あわせて、倫理観というのは、長年研究に携わられてきたお立場から、これは昔からある問題ですか、それとも最近の若い人特有の問題ですか。背景には何があるんですか。成果を急ぐのか、成果を求められ過ぎるのか、期限、お尻が切られているのか。

 その背景についてどうお感じになるか、これは若い研究者に特有の問題なのか、そして今後の再発防止に向けた責任者としての決意、あわせてお述べいただきたいと思います。

野依参考人 STAP現象の科学的な検証というものは、第三者によって追試されて初めて証明されていくものでございます。まずはそこで、昨日公表いたしましたように、理研の研究者がその厳密な検証を試みるとともに、外部機関の研究者による再現実験に積極的に協力し、また必要な情報を提供するための体制の整備を進めてまいりたいと思います。

 昨日も発表いたしましたように、順調にいっておおむね一年を要するというふうに見込まれております。また、検証実験の状況につきましては節目ごとに公表いたしますとともに、理研内外を問わず研究者からの問い合わせに真摯に対応するなど、第三者による検証あるいは研究についても支援をしてまいりたいと思います。

 倫理観の問題については、私ども、今回のことは研究社会で起こったことでございますので、申し開きをするつもりは毛頭ございません。謙虚に承らなければいけないと思っております。しかしながら、この問題は、やはり社会一般に蔓延する問題ではなかろうかと思っております。研究者といえども社会の一員でございますので、そういう影響を受けているのではないかと思います。

 社会的な背景はいろいろあろうかと思います。研究社会におきましては、研究費獲得の競争が厳しいこと、あるいは職業を得ることの競争の厳しさ、さまざまなことがありますけれども、それはやはり言いわけにはならないのではないかと思っております。

 倫理観というものは、やはり社会に存在する者として当然守らなければいけない共通の価値観だと思っております。とにかく、さまざまなことに誠実に対応していくということが、一番大事なことではないかと私は思っております。これは、研究者になってからでは若干遅いのではないかと思っておりまして、幼少期から倫理観を植えつけていく、そういうことが大事じゃないかと思います。

 日本は、やはり倫理観は比較的高いと私は思っております。先ほども申し上げましたように、研究社会でなくとも、さまざまな社会でグローバル化が起こっておりますし、さまざまな文化的、教育的背景を持った、違った倫理観を持った人たちが集まってくる時代にどういうふうに対応していくか、これは、社会全体でやはり考えていかなければいけない問題ではないかと思っております。

小川委員 ありがとうございました。

 引き続き大変困難な状況におられるというふうに想像いたしますが、まずは今回の真相の究明、そして、私、個人的には、STAP細胞の真偽、存在そのものについては、いまだ期待感をつないでいる立場であります。そういったことの真偽のほど、最終的には理化学研究所の信頼回復、そして日本の科学技術全体に対する信頼感、こうしたものへの御貢献を心よりお願い申し上げまして、御出席をいただいたことのお礼にかえさせていただきたいと思います。

 どうぞ、理化学研究所の関係者の皆様は御退席いただいて結構です。ありがとうございました。

 大臣、引き続き、日本の科学技術全般について、少し違った観点からお尋ねいたします。

 世の中には、科学の名を付した商品開発、あるいは販売勧誘といったようなものが多々見られます。大臣の直接の所管ではないと思いますが、あえて、日本の科学技術全体に対する信頼という観点から、少し範囲を広げてお尋ねします。

 大阪大学に、菊池誠という専門の先生がいらっしゃいます。私は、地元で消費者相談に当たっておられる方から依頼を受け、この問題について考えております。この大阪大学の先生の御指摘、御主張なんですが、例えば、血液型が本当に人の性格に大きな影響を与えるのかどうか。日本には、迷信にも近いような血液型信仰というのがあると思います。それから、マイナスイオンは、さまざまな電子製品を初めとして、健康にいいということが言われたりします。それから、私も初めて聞くものも多いんですが、ホメオパシー、波動、水の結晶、あるいはゲルマニウム製品なんというのもありますね。それからEM菌。実際に真偽のほどがどうなのか、科学的にどうなのか、必ずしも明らかではない。

 それは、効果がある面もあるのかもしれません。誇張がいけないということかもしれない。この辺、非常に曖昧でありますが、直接の御担当分野ではないとはいえ、日本の科学技術全体の信頼を預かる立場から、こうした問題の存在について、御関心のあるやなしや、あるいは今後注意を払っていただけるかどうか、この点について御答弁いただきたい。

山本国務大臣 私は科学技術・イノベーション担当大臣でございますので、あらゆる分野の科学技術にはもちろん関心を持っております。ただ、委員も御存じのとおり、消費者問題は私の担当ではありませんので、科学技術担当大臣としての立場から今の御質問にお答えをしたいと思います。

 科学技術・イノベーション政策を国民の理解と信頼と支持のもとに進めていく、先ほど御紹介があった文科省の調査もありましたけれども、この信頼のもとに進めていくためには、研究開発活動、期待される成果、それから科学技術の現状と可能性、その潜在的リスク等について、国民、政府、研究機関、研究者との間で認識を共有することができるように、双方向のコミュニケーション活動等をより一層積極的に推進していく。この双方向のコミュニケーション活動が、やはり私は鍵だというふうに考えています。

 そのためには、研究者による科学技術コミュニケーション活動、科学館や博物館におけるさまざまな科学技術に関する活動等を、これまで以上に積極的に推進する必要があるというふうに考えています。こうしたことによって、科学技術に関する知識を適切に捉え、柔軟に活用できるように、国民の方々の間の科学技術リテラシーの向上を図る、これが極めて重要ではないかというふうに考えております。

小川委員 ありがとうございました。

 今は、科学技術の御担当の立場から御答弁をいただいたわけであります。

 一方、消費者行政を預かる立場からも、この問題には大いに関心を持っていただき、情報収集、注意喚起等も含めて充実した対応をお願いしたいと思いますが、その観点から御答弁をいただきたいと思います。

岡田副大臣 小川委員の御指摘は大変重要であると考えております。

 私どもも、国民生活センターにおきまして、その効果や効能が疑わしいものもあるといったことについては、消費者に対する注意喚起をこれまでも行ってきたところであります。一方で、地方公共団体の消費生活センターにおいても、このようなマイナスイオンとか、あるいはゲルマニウム使用の商品とか、そういうものにつきましては、消費者からの相談の受け付け、情報提供を行っているところであり、今後とも、消費者がどこに住んでいても質の高い相談を受けられる地域体制の整備を進めてまいりたいと考えております。

 一般消費者に優良であると誤認されるような表示は、御承知のように、景品表示法で規制を行っているところでありますが、引き続き、不当表示に該当する事案に接した場合には、同法に基づき厳正に対処してまいりたいと考えております。

 いずれにしても、これらの相談を受けられる地域体制の整備、景品表示法の執行の強化のため、消費者安全法による消費生活相談員の質、量の確保、そして消費生活相談員の職の法定化、景品表示法による監視指導の強化等を内容とする不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する等の法律案を今国会に提出しているところであり、これからもさらに、委員御指摘のように頑張っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

小川委員 ありがとうございました。

 ぜひ、地元といいますより全国各地でこの消費者相談に当たっておられる方々の声を吸い上げる努力、それから、消費者相談業務のそういう観点からの充実にはこれまで以上にお力を注いでいただきたい、このことをお願い申し上げたいと思います。

 残り少ない時間になりました。

 大臣、きょうは、私自身、大臣がお述べになった各所掌分野で、科学技術に関連して個人的に関心を持っている分野が多々あります。

 例えば、香川県では、香川大学が希少糖という食べても血糖値が上がりにくい糖を開発しまして、これはやがて全国区になるのではないかというようなことを言われたりしています。

 それから、大臣がお述べになられました宇宙政策については、準天頂衛星によるGPS機能、これは革新的に変わると思うんですね。

 それから、ヴァージン社は、民間宇宙旅行を開発しようとしていると言われています。こんなものもジャパン・ブランドで、ぜひ宇宙旅行、今は限られた宇宙飛行士の方々だけに開かれた世界でありますが、素人も含めて、日本がその最先端を開くということもあっていいんじゃないかと思います。

 それから、IT政策について言えば、ロンドン・オリンピックがかなりIT分野で、史上最大のITオリンピックだったと言われています。東京オリンピックに向けた決意もお聞きしたいと思っておりました。

 そして、著作権、知的財産戦略でありますが、どうも事前に事務的にお聞きしたところ、日本のコンテンツ、番組の海外展開と比べますと、韓国の番組は二倍から三倍ぐらい進出しているということであります。この辺についてもぜひお聞きをしたかった。

 そして、原子力行政については、将来的な核融合による発電の可能性、こういったことについてもお聞きをしたかったわけであります。

 残念ながら、大臣、最後にこれだけお聞きします。各省の皆さん、それぞれ御準備をいただいて、直接のお尋ねができないことはお許しいただきたいと思いますが、この質問をそれぞれの分野についてしようとしたときに、これは何省です、これはこっちの省です、あれはそっちですという事務的なせめぎ合いなりが依然起きたわけです。

 大臣は、科学技術予算全体を主導される、そして司令塔機能を強めるんだというのが今回の所信の中での決意表明でありました。しかし、予算の構成を見ても、約三兆六千億の科学技術予算、しかし内閣府が直接所管しているのはわずかに数百億ですか、こういったことも含めて、今、内閣府の改革論議も進めているというふうにお聞きをしております。

 指導力の強化についてどうお考えになるか、内閣府改革との関連も含めて大臣の決意をお伺いして、質問を終わりたいと思います。

山本国務大臣 今、委員御指摘のあった科学技術関係予算の主導ということですが、これは総合科学技術会議が司令塔機能を発揮してきた重要な取り組みだと思っています。

 昨年から、私を議長とした関係府省の幹部職員から成る予算戦略会議をつくったり、あるいは、きょういろいろ議論が出ていますが、SIPとかImPACTで総合科学技術会議が目ききできる予算の枠をつくったり、いろいろなことをしながら司令塔機能の強化に努めてまいりました。

 小川委員はやはりその間の事情を本当によく御存じだなと思って、今、御質問を聞いていたんですが、司令塔機能強化については、内閣官房の方でも例えば見直しをするとか、あるいは、これからだと思いますけれども、党の中でもそういう議論がある、そういう流れになっていくと思いますが、いち早く私のもとに、六つの司令塔を担当しているものですから、その間で司令塔連携・調整会議というものをつくって、各省のトップを集めて今いろいろな議論をさせていただいているというふうに思っています。

 もう長い答弁を読む時間はないんですけれども、一言で言うと、内閣府の整理しなければいけない業務というのはあると思うんですが、私はやはり、国家戦略を省庁の枠を超えてしっかり練り上げていく、実施していくという内閣府の役割は非常に大事だと思っています。

 きょう本当はいろいろと御質問をしていただきたかったんですが、今、小川委員の方から言及のあった、五つか六つの成長戦略に直結する政策を担当している司令塔、それぞれの機能が大事だと思っていますので、総合科学技術会議の司令塔強化とも相まって、こうした司令塔の強化、それから連携のあり方についてしっかり取り組んでまいりたいと思います。

小川委員 ありがとうございました。

竹本委員長 次に、福田昭夫君。

福田(昭)委員 民主党の福田昭夫でございます。

 きょうは大臣所信に対する質疑でありますが、山本大臣初め関係者におかれましては、ぜひ簡潔にわかりやすくお答えをいただければと思います。

 なお、時間の都合で質問は順序を変えて、まず初めに、三番目のエネルギー基本計画と原子力委員会の見直しについて、こちらの方からお聞きをしたいと思います。

 一つ目でありますが、エネルギー基本計画の見直しについてであります。

 政府は、福島第一原発事故を踏まえて、エネルギー基本計画の見直しをしております。エネルギー源として、再エネ、太陽光、風力、地熱、水力、バイオマス、バイオ燃料、原子力、石炭、天然ガス、石油、LPガスを挙げておりますけれども、水素発電についてはエネルギー源として挙げておりませんが、どうしてですか。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 水素そのものをいろいろな物質からつくり出して発電に使う、いろいろなところで使うということでございますけれども、先ほど御質問にございましたけれども、基本計画、二月の末に政府の取りまとめた原案という中では、水素発電の可能性を含めまして、水素の本格的な利活用に向けて、水素活用の将来の姿、さらには、水素の製造から利用に至るような関係者の全ての果たすべき役割を明確にしたロードマップをつくるということにつきましては、一応、そこの中で、今後国として取り組むべきものというようなところに位置づけさせていただいているところでございます。

福田(昭)委員 それでは、そのロードマップでありますが、基本計画案の三、「エネルギーの需給に関する長期的、総合的かつ計画的に講ずべき施策」の八、「安定供給と地球温暖化対策に貢献する二次エネルギー構造への変革」の三に「”水素社会“の実現に向けた取組の加速」が記述されておりまして、水素の大量貯蔵、長距離輸送、燃料電池や水素発電など、さまざまな要素を包含した、今お答えがあったロードマップを本年春を目途に策定し、その実行を担う産学官による協議会を早期に立ち上げるとありますけれども、現状、どんなふうになっているんですか。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに、私が御説明申し上げましたように、この基本計画案が現在議論されているところでございまして、今後、この基本計画が閣議決定されたものを踏まえまして、引き続き具体的なロードマップ策定に向けた作業を進めていくということでございますので、今後の課題というふうに認識してございます。

福田(昭)委員 それでは、計画がまとまっていないから、この春と書いてありますけれども、もう桜の花も散って春が終わっちゃうような感じなんですけれども、まだ進んでいないということなんですね。

 それでは、この基本計画案の四、「戦略的な技術開発の推進」では、本年夏までに技術開発ロードマップを策定し、その中には、蓄電池、燃料電池の低コスト化、石炭、LNG火力発電等の高効率化や水素の貯蔵、輸送技術などの革新的技術開発に取り組むとあります。これも夏までにと書いてありますが、現状どんなふうなんですか。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、検討会等を立ち上げまして、具体的な中身についての検討は事務的に準備をしているということでございます。

福田(昭)委員 それでは、先日、千代田化工が、水素の液化、液化したものから水素を取り出す技術を十年かけて開発し、ことしから川崎コンビナートで水素発電所の建設に取りかかるとの報道がありましたが、御存じですか。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 千代田化工がそのような検討を進めていることは存じ上げてございます。

福田(昭)委員 千代田化工のことについてというよりは、この水素発電所が、どんな技術開発が進んでいるかということの認識が余りにも乏しいんじゃないでしょうか。

 この水素発電所が実用化されていけば、原子力発電所は必要なくなって、十年以内に全て水素発電所に取りかえられる、そのように私は考えるんですが、どうですか。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、水素発電といったものも含めまして、いろいろな全体のエネルギーミックスを考える中で、この活用が進んでいくというふうに考えてございます。

 以上でございます。

福田(昭)委員 私はぜひ、このエネルギー基本計画はまだ閣議決定していないようでありますから、この水素発電の可能性をちゃんと調べた上で、これからの電源をどうするかということを考えるべきだと思うんですね。

 ぜひ、そうした意味では、今回の基本計画案には原子力発電がベースロード電源と位置づけてありますけれども、ベースロード電源と位置づけることはやめる、それから再稼働もやめる。そして、今、青森県の大間で建設しておりますけれども、これについては先ほど質問の中でありましたけれども、函館から差しとめ訴訟が出ているという現状であります。その建設も中止すべきだと思いますけれども、いかがですか。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど先生からいろいろと御指摘いただきました水素発電といったことも含めまして、今後、我が国のエネルギー供給を安定化するためには、エネルギー供給源の多様化といったものも考えなくちゃいけませんし、環境負荷の低減といったことも全体のエネルギーミックスという中で考えなくちゃいけないというのが基本方針だとは思ってございます。

 それと、いろいろな意味で、原子力を含めます核燃料サイクル等々につきましては、やはりどうしてもそのサイクルにつきましては、資源の安定、有効利用とか廃棄物の問題、そういったものも視点に入れながら我々としては進めていきたいというふうに考えてございます。

 そういった意味では、原発依存度を低減していくというふうなことは大きな方針として出しておりますけれども、その位置づけ等々の重要性については変わらないというふうに考えてございます。

福田(昭)委員 先ほども申し上げましたが、水素発電が実用化されれば、原子力発電なんか要らなくなりますよ。そのことはまた後で触れたいと思います。

 二つ目は、現行の原子力委員会の役割と見直しの内容についてであります。

 原子力委員会の在り方見直しのための有識者会議報告書によりますと、見直しの方向性について、原子力利用の中立性を確保しつつ、我が国の立場を発信するため、一つとして、平和利用と核不拡散、二つとして、放射性廃棄物の処理処分、三つとして、原子力利用に関する重要事項に関する機能に重点化するとしております。

 しかし、これらは、エネルギー基本計画案の中でも「原子力政策の再構築」の中で全て記述されており、あえて原子力委員会を残して仕事をしてもらう必要はないと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

    〔委員長退席、三原委員長代理着席〕

山本国務大臣 原子力委員会担当大臣としてお答えをいたします。

 まず、委員の方から原子力委員会の見直しの内容についてお話がございましたので、そこからちょっと申し上げたいと思うんです。

 現行の原子力委員会は、原子力の研究、開発及び利用に関する政策と原子力に関する事項について、企画、審議、決定する役割を持っております。

 今回の原子力委員会の見直しは、近年の原子力をめぐる環境の変化、一昨年に秘密会議という批判を受けた原子力委員会の不適切な運営が国民の皆様の信頼を損ねる状況となったことを踏まえて開始をされたということで、具体的には、内閣官房に有識者会議を設置して、原子力委員会が必要なのか、関係各省で担うことのできない機能は何か等について検討が行われ、もう委員の方から言及がありましたが、原子力委員会は引き続き内閣府の審議会として存続させる、平和利用の確保、放射性廃棄物の処理処分に関する機能等に重点化する、それから原子力利用の推進についての網羅的な計画である原子力政策大綱は作成しない、さらに、委員会を抜本的に見直して、形骸化した所掌事務を大幅に廃止縮小することも踏まえて、委員数は三人とする等の結論が示されました。

 こうした結論を踏まえて、今、内閣府において検討を重ね、現在、改正法案の提出準備を進めております。先ほど委員から御指摘がありましたが、原子力委員会でなければやはりできない分野の仕事というものはあるというふうに私は考えております。

福田(昭)委員 これだけ、後でまた触れたいと思いますけれども、重点的に取り組む仕事を限定していくと、例えばでありますけれども、総合資源エネルギー調査会あるいは原子力規制庁、こうしたところにその仕事を任せれば、私は原子力委員会をあえて残す必要はないと思っております。

 先ほども申し上げましたが、エネルギー基本計画の中でもしっかりと、平和利用と核不拡散、あるいは放射性廃棄物の処理処分、原子力利用に関する重要事項などについても記述がございますので、こうしたところに任せれば十分可能ではないかというふうに思っております。

 それでは、三つ目でありますが、核燃料サイクルと「もんじゅ」の見直しについてであります。

 まず、エネルギー基本計画案では核燃料サイクル政策は推進するとありますけれども、その中心的役割を果たすべき高速増殖炉「もんじゅ」の経緯と現状について、簡潔にお答えください。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 高速増殖炉「もんじゅ」についてのお尋ねでございます。

 エネルギー資源に乏しい我が国におきましては、エネルギーの長期安定供給は重要な課題の一つでございます。高速炉は、限られたウランをできるだけ有効に使えるとともに、高レベル放射性廃棄物をより少なくする技術として、我が国におきましてその研究開発を進めてきたところでございます。

 「もんじゅ」につきましては、高速増殖炉プラントとしての技術成立性を確認する原型炉として、昭和六十年に建設を開始いたしました。平成六年には初臨界、翌年、平成七年に初送電をしたものの、同年十二月にナトリウム漏えい事故が発生いたしました。その後、ナトリウム漏えい対策の強化などを行うとともに、「もんじゅ」の位置づけや必要性に関して幅広い国民的な議論を行いまして、平成二十二年五月に約十四年半ぶりに運転を再開いたしまして、約二カ月にわたる運転を行いました。その後、平成二十二年八月に燃料交換終了時に炉内中継装置を落下させるトラブルが発生いたしましたけれども、平成二十四年八月には運転可能な状態への復旧作業が完了してございます。

 他方、平成二十三年三月には東京電力福島原子力発電所の事故が発生いたしまして原子力政策の見直しの議論が開始され、「もんじゅ」についても、この結果を踏まえた対応を図ることが必要とされてございます。また、平成二十四年十一月には「もんじゅ」の機器の点検漏れがあったことが明らかとなりまして、平成二十五年五月に、原子力規制委員会より、運転再開準備の停止を含めた措置命令が発出されてございます。

 このことを踏まえまして、国民の失われた信頼を取り戻すべく、平成二十五年五月に文部科学大臣を本部長といたします日本原子力研究開発機構改革本部が文部科学省に設置されまして、同年八月に基本的な改革の方向性が示されてございます。これを受けて、同年九月には、日本原子力研究開発機構みずからが具体的な改革計画を策定、公表してございます。同年十月より集中改革期間を開始しておりまして、現在、原子力研究開発機構の方で運転管理体制の見直しなど、その改革に全力で取り組んでいるところでございます。

福田(昭)委員 建設は昭和六十年からということでありますが、建設期間と研究開発費用はどれぐらい総額でかかっているんですか。

田中政府参考人 建設費については五千八百八十六億円でございます。

 運転費につきましては、これは平成二十六年度予算まで入れてございますけれども、四千百四十二億円でございます。

福田(昭)委員 多額の費用がかかっても実現できないという現状にあるわけでありますが、それでは、ほかの国々もどうもちゃんとできていないようでありますが、各国の現状はどうなっておりますか。

田中政府参考人 お答えいたします。

 高速増殖炉につきましては、実は、各国、かなり精力的にやっている国もございます。

 この部分で先進的でございますのはフランスでございまして、フランスは過去に、原型炉フェニックスを一九七三年から二〇一〇年まで、実証炉スーパーフェニックスを一九八五年から一九九八年まで運転してございます。

 現在、さらに積極的に取り組んでおりますのはロシア、中国、あるいはインドといったような国々でございまして、ロシアにつきましては、現在、原型炉を運転しておりまして、我々が聞いております情報では、ことし実証炉を運転開始する予定であるというふうに聞いてございます。

 中国につきましても、現在、実験炉を運転してございますが、中国の実験炉は、同時に発電もするという機能を持っているようでございます。

 また、インドにつきましても、現在、実験炉を運転してございまして、これも同じように、ことしでございますが、原型炉を運転開始する予定であるというような情報を聞いているところでございます。

福田(昭)委員 先ほども申し上げましたけれども、原子力発電につきましては、何といっても、これは小泉元首相も言っておりますけれども、まず、使用済み燃料の最終処分場がどこにもないんですね。残念ながら、日本は御案内のとおり地震列島、火山列島で、日本学術会議が提言したように、それこそ何万年も安定しているような地層は日本にはどこにもない、したがって、しっかりとした最終処分方法が決まるまで保管をしておけ、そういう提言をしていると思います。そんなことを考えるのが一つ。

 それから、原子力発電所をつくれば、核の拡散につながらないようにしなくちゃならないという危険性もあります。私は、原子力発電所をつくれば、そこに原子爆弾をつくるだけの材料ができますから、必ず核の拡散につながっていくというふうに思っております。

 さらには、先ほど申し上げましたように、水素発電が可能になれば、原子力発電が全てより安全なものに取ってかわられます。要するに、千代田化工は、政府が考えておりますエネルギー基本計画の位置づけにある水素を貯蔵する、液化するということにも十年かけて成功した、そして、そこから水素を取り出すということにも成功しているんです。ですから、基本計画にあるこの記述も、やはりきちっと見直さなくちゃならない。政府がやろうとしていることはもう既に技術開発もできちゃっているわけでありますから、あとはいかにこれを実現するかということであります。

 そういったことを考えれば、本当にこれだけの福島第一原発の事故を起こして、また事故原因もはっきりしない。しかも、その被害にいまだに苦しんでいる。それは福島県の人だけではありません。福島県を初め、私の栃木県や茨城県、群馬県、千葉県、そして宮城県、新潟県、そうしたところがみんなまだこの原子力の被害に苦しんでおります。そんなときに、より安全で、しかも、水素はまさに、それこそ夢のようなエネルギー源だと思うんですね。

 先ほどは、この核燃料サイクルは、資源の少ない日本にとっては本当に欲しい燃料だったという説明がありましたけれども、しかし、その説明はもう通用しなくなるんじゃないですか。もっとより安全なエネルギーができるということになれば、ここでしっかりと方針を大転換することが政府の役割だというふうに私は思いますが、いかがですか。

中西政府参考人 先生に幾つかのコメントをいただきました。それに対しまして、幾つかの点について確認も含めましてお話をさせていただければと思います。

 先ほどちょっと御指摘をいただきました千代田化工の水素発電、我々が知っておる範囲では、中東の石油精製の際に出てきます随伴の水素ガスを使って発電するということをやっていらっしゃるということでございまして、やはり水素発電につきましては、引き続き、いろいろな研究開発をやっていかなくてはいけないというようなことだと思っています。そういった意味では、先ほど一言触れましたけれども、協議会というものをつくりまして、その中でしっかりと検討していくという形でございます。

 エネルギー全体の話につきましては、現在、まさにこの基本計画の中で、それぞれのエネルギー源ごとの特質、そういったものを踏まえながら、いかにして安価で安定的なエネルギー供給をやっていくのかという基本的な方針のもとに、最終的な基本計画の閣議決定に向けたプロセスにあるという認識でございますので、引き続き、よろしく御理解いただければと思っております。

福田(昭)委員 私も、この科技特でぜひ千代田化工を現地調査するように提案しておりますので、委員長、後でお取り計らいをお願いしたいと思っています。

三原委員長代理 理事会で議論しましょう。

福田(昭)委員 それでは、四つ目は、原子力政策大綱等の政策の基本方針の提示についてであります。

 原子力委員会がその根幹をなす原子力政策大綱等の政策の基本方針の提示をすることをやめたら、原子力委員会も必要なくなる、私はこう思うんですが、大臣、いかがですか。

山本国務大臣 先ほど申し上げましたが、原子力委員会のあり方については、内閣官房の原子力委員会の在り方見直しのための有識者会議で、そのあり方、その存廃を含めて抜本的な見直しの検討が行われました。

 その結果、今委員が御指摘になった点ですが、原子力政策大綱については、エネルギー基本計画と重なる部分が多いということで作成をしないことになりましたが、他方で、原子力に関する諸課題の管理、運営の視点から、平和利用の確保、放射性廃棄物の処理処分等に関する機能、これは重要であって、原子力委員会を存続させ、これらを担わせることが適当である、こういう結論になったわけでございます。

 こうした結論等を踏まえて内閣においても検討を重ねた結果、原子力委員会を存続し、所掌事務の一部を廃止縮小する、こういう内容の改正法案を今国会に提出すべく準備をしている、こういうことでございます。

福田(昭)委員 今も大臣の答弁の中にありましたけれども、基本的な政策についてエネルギー基本計画の中で位置づけるということであれば、原子力委員会の果たすべき役割というのは、まさに原子力利用の中立性を確保する、その一点だけなんですね。そういうことになると、むしろ、原子力委員会の最後の仕事として原子力政策に終止符を打つ提言を出してやめるのが、原子力委員会として最後にすばらしい仕事をしたということになるんじゃないかなと私は思っていますので、御検討をいただきたい、このように思っております。

 それでは、だんだん時間がなくなってきましたので、この項についてはまとめたいと思います。

 イギリスでは、原子力施設の廃炉目標が定められており、多額の費用が予定されているそうであります。廃炉は百年がかり、無事故でも九十年を想定し、国費を投入して、政府の専門機関が戦略を練っているそうであります。これから我が国においても、原子力損害賠償機構が内容を変えて廃炉に取りかかるということでありますけれども、イギリスでは国がやっているそうであります。

 我が国も、全国十六カ所に五十四基、青森県に建設中のものも含めれば十七カ所に五十五基の廃炉作業がいずれ必要となるわけであります。気の遠くなるような年数と経費がかかると思います。

 私は、そういったことを考えれば、これから政府もやろうとしておりますが、廃炉技術をやはりしっかり開発して、そのことに専念して、原子力発電は一刻も早くやめ、廃炉技術をむしろ海外に提供する、そのことが、被爆国、さらに原発事故の被害に遭った日本の国際貢献として、一番大きな役割を果たすことができるようになるんじゃないか、そのようなことを申し上げておきたいと思います。

 いよいよ残り時間が少なくなりました。

 次に、政府は、内閣府設置法の一部を改正して、科学技術によるイノベーションの創出を図りたいとしております。

 そこで、残念ながら全部は質問できませんので、今回、二番目の方に行きたいと思いますが、科学技術・イノベーション政策の強力な推進策についてお聞きをしたいと思います。

 一つ目は、総合科学技術会議による政府全体の科学技術関連予算の主導についてでありますけれども、どのような形で科学技術関連予算を主導するということなのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。

山本国務大臣 政府全体の科学技術関係予算の編成においては、総合科学技術会議が司令塔機能を発揮して、昨年から、私を議長として、関係府省の幹部職員から成る予算戦略会議というものを開催し、さらに、その議論を踏まえて、資源配分方針を策定するなどの取り組みを進めてまいりました。

 今回の平成二十六年度予算編成に向けた具体的な例を挙げると、重要課題の解決に向けて、総合科学技術会議が、府省の枠を超えて、基礎研究から実用化、事業化までを見据えた取り組みに予算を重点配分する、きょう何度も出てきておりますが、戦略的イノベーション創造プログラム、SIPを創設しております。

 さらに、総合科学技術会議が課題解決に向けたアクションプランを示して、各省の取り組みの政策誘導、府省連携の促進等を実施しております。さらに言うと、イノベーションに適した環境創出に向けて、組織、仕組みの改革に向けた各省の取り組みを重点政策として推進しております。

 こういう形で、総合科学技術会議が、府省、分野の枠を超えて、予算編成に主体的かつ先導的な役割を果たしてきております。重要なことは、こうした取り組みを成果につなげて、イノベーションを実現していくことだと思います。

 今後とも、総合科学技術会議が司令塔となってSIPを着実に実行に移し、各省の取り組みを含めたPDCAサイクルを回していくということで、科学技術・イノベーション政策を強力に推進していきたいと考えています。

福田(昭)委員 SIPについてはプログラムディレクター、ImPACTについてはプログラムマネジャーということで、それぞれプロジェクトを管理するというか指導する、そういうリーダーを考えているようでありますが、このリーダーのよしあしが、もしかすると成果を生み出すか、生み出さないかにつながっていくと思います。

 その点について、大臣はどのようにお考えですか。

山本国務大臣 それは、委員御指摘のとおりだと思います。

 ImPACTの特徴は、やはりプロデューサーにしっかりと資源を配分するということであって、SIPもImPACTも、中身は違いますけれども、プログラムダイレクターとプログラムマネジャーにいかに優秀な方々を抜てきできるか、これが成功の鍵だと思っています。

 ちなみに、SIPは、きょうもいろいろ議論が出てきておりますが、各界を代表するすばらしい十人のPDが生まれた。これをしっかりと政府として後押ししていくということが大事だと考えています。

福田(昭)委員 それでは、最後の質問になりますが、世界最高水準の新たな研究開発法人制度の創設についてであります。

 この中で、独法に対する措置として、中期目標期間の長期化ということで、目標を五年から最大七年としたわけですが、その根拠は何かあるんですか。お答えをいただきたいと思います。

宮島政府参考人 研究開発型の法人の実態を見まして、近年、研究開発プロジェクトが長期化する中、現行制度の三年から五年の中期目標期間では成果の評価が十分にできないとの批判がある一方、文部科学省の協力も得て行った調査では七年以下のプロジェクトが全体の八割を占めていることなどから、今般の独法制度の見直しにおいては、研究開発型の法人の中期目標期間は最長七年とする方針としたところでございます。

福田(昭)委員 それでは、最後にまとめて終わりにしたいと思います。

 私は、研究開発期間は五年として、延長を最大五年認める、したがって、もし必要なときには最大十年までオーケーとするのが適切かなというふうに思います。

 それは、皆さんの資料、ImPACTの資料にもありますように、青色ダイオードも発見から実用化まで十年かかっているんですね。水素発電も、先ほど申し上げましたが、技術開発に十年かかっている。また、万能細胞、これも多分十年ぐらいかかっている。そうした中で、山中先生の御提案によって、有期雇用の期限も、五年までだったものを延ばしたという経過が実はございます。

 そんなことを考えると、私は、目標期間は五年として、最大限五年の延長まで認める、物によっては一年でいいかもしれないけれども、二年でいいかもしれないし、それは柔軟に対応していくということで研究開発を進めていくという体制をつくる方が望ましいのではないかということを提案して、質問を終わります。

 ありがとうございました。

三原委員長代理 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 日本維新の会、鈴木義弘です。

 第四期科学技術基本計画というのが定められておりまして、この「基本認識」の中で、人材とそれを支える組織の役割の一層の重視というのが「第四期科学技術基本計画の理念」の中に掲げられております。「基礎研究及び人材育成の強化」という観点のところの三項目めに、科学技術を担う人材の育成というのが出ておりまして、その中に、大学院教育の抜本的強化、博士課程における進学支援及びキャリアパスの多様化、こういった計画の概要が示されています。

 きょうは、特にその中でも、先ほども、私、農水委員会とかけ持ちになっておりまして、同席していなくて大変申しわけなかったんですけれども、STAP細胞の話が話題になったと思うんですけれども、そもそもの、博士の質についてということを御質問させていただければと思っています。

 研究者本人もさることながら、先ほど話題になったような、STAP細胞の件もそうなんですけれども、その組織の研究体質の改善を含め、科学技術に関係する研究者がやはり不信を持たれてしまったんだと思うんですね。そういった信頼の失墜は免れないものでありますから、事態の真相解明と、研究機関のチェックのあり方を見直す機会になってもらえればなというふうに思っております。そんな中で、数年前に出された研究ノートを目にした、その中で、今幾つか御質問をさせていただければと思っています。

 一つ目は、科学技術を振興するのに、人の確保と高度な研究システム、産学連携と、いろいろ克服しなければならないテーマが多岐にわたっていると思います。国内の国公立大学、私立も含めて、研究機関に国が補助金を出している。ですから、研究の質をどう問いかけていくか、難しいテーマであるとは思いますが、これからの科学技術の振興には欠かせないものだというふうに考えております。

 そこで、世界に目を向けてみますと、EUなんかであれば、高等教育の同質性保証の実現に向けて、ボローニャ宣言や、学士レベルの技術者教育の国際的同質性を保証するためのワシントン協定の存在があると聞きます。それぞれ、政府機関主導、民間技術者団体主導という違いはあったとしても、高等教育の国際的同質性保証に向けての強い意欲、要望が根底にあるとも言われています。

 現在の我が国における技術者教育が国際的同質性を取り入れたシステムになっているのか、まず初めに大臣にお尋ねしたいと思います。

上野大臣政務官 鈴木委員の質問にお答えいたします。

 現在、経済のグローバル化に伴い、国境を越えて活躍できる優秀な技術者の養成が求められている中、先ほど御指摘がありましたように、技術者教育の国際的な通用性を確保しようとする動きが生じているところでございます。

 例えば、世界十五カ国の技術者教育団体が加盟するワシントン協定には、我が国からも平成十七年より、技術者教育プログラムの認定、査定を行う非政治団体である日本技術者教育認定機構、JABEEが参加しているところでございます。現在、百六十二の、具体的には、大学百十一校、高専五十校、水産大学一校ですが、この百六十二の高等教育機関の協定する三百九十一の教育プログラムがJABEEの認定を受けておりまして、国際的な水準を認識した技術者教育が多くの大学で展開されているところでございます。

 技術者教育に取り組む各大学におきましては、地域や産業界が技術者として必要と考える能力を学生に確実に身につけさせることが重要でありますが、特に、国際的に活躍できる技術者の養成を志向する大学におきましては、このワシントン協定も含めた国際的な教育の動向を踏まえながら、その教育プログラムの質の改善を図ることが必要と考えているところでございます。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 今、STAP細胞の関係で、名前を出しちゃうといけないんでしょうけれども、ある大学が、それにかかわる学位を出したところ、二百五十人を超える人を、もう一回論文を見直しているという話もあります。今御答弁いただいたようなシステムがきちっと機能していれば、そんなことはないはずなんですね。そこはどこがチェックしているのかということも大事なことになってくるんだと思います。

 その中で、幾つか今の現場の状況をお尋ねしていきたいというふうに思っております。

 今御説明いただいたように、外国の諸国にも同じように、我が国政府や産業界の双方から、博士課程の学生及び博士課程修了者、ポスドクのことを言っているんですけれども、能力に大きな期待が寄せられているのは誰もが承知していることだと思います。しかし、理工系博士課程における学生自身の勉学と、学生に対する指導がどのような期待に応えることを目指して行われているかということについて、必ずしも明確にされていないという話もあるんです。

 大学院はもちろんのこと、伝統的な大学では、学問の発展に寄与する基礎研究の遂行がその主たる使命であるし、特に大学院では学生に研究を行わせることを通して教育することに重点が置かれているため、エンジニアが実社会で必要とする専門的能力を付与する教育は明らかに副次的な使命とされてきたのが日本の歴史的事実でもあり、現在も余り変わっていないんじゃないかというのを過去にも指摘されています。

 そこで、お尋ねしたいと思います。

 政府として、教育界と産業界の研究開発にかかわる共通の価値観、すなわちすり合わせ、日本の製造業の中で一番得意な分野とされているのはこのすり合わせなんだと思うんです。

 ですから、お尋ねしたいんですけれども、教育界と産業界のすり合わせ、産業界が求めているものと教育界が求めているもので、どこかで一致をさせない限り、科学技術の振興はやはりどうしても同じ方向に向かっていかないんじゃないかと思うんですけれども、そこをお尋ねしたいと思います。

上野大臣政務官 委員御指摘の、各大学が地域において産業界と積極的に対話する機会を設け、そのニーズなどを踏まえながら教育改善、充実を図ることは重要であると私も思っております。

 文部科学省としましては、大学等と地域の産業界が一体となった産学協同のための連携会議の設置、また、大学と産業界が連携して実施するインターンシップ等の取り組みを支援し、産業界のニーズに対応した人材育成の取り組みを行っているところでございます。

 文科省としましては、引き続き、大学教育において産業界との連携強化をされますよう取り組んでまいりたいと思っております。

鈴木(義)委員 今御答弁いただいたんですけれども、結局、産業界で必要な革新的将来技術の開発等、ブレークスルーを達成するために真の意味での博士が必要にもかかわらず、そのような期待に確実に応えられる、担える人材が大学から多数輩出される構造になっていないと言われているんですね。

 だから、会議は設置しました、そこで話し合いはされているんです。でも、それがきちっと意思の疎通があれば今みたいなことにはならないはずなのに、そこは誰がチェックするのかということなんですね。お尋ねをすれば必ず、いや、教育界だったら文部科学省だ、産業界になれば科学技術振興機構だとか経産省が所管だと、ばらばらなんです。内閣府に、きょうのこの科技特で御質問申し上げたいのですけれども、大臣に御答弁いただきたいんだと言ったら、いや、これは文部科学省の所管だ、内閣府の考えじゃない。

 先ほど私が冒頭で申し上げた第四期科学技術基本計画の概要のところにきちっとドクターの話も出ているし、大学院の話も出ているんですね。それでお尋ねしているにもかかわらず、なぜ科技特の、主管される大臣が答弁されないのかというのが、もともとの今申し上げた矛盾になっているんじゃないかなというふうに思っています。

 そんな中で日本の産業の競争力を回復、維持していくには、難しくなるだけではなくて、博士課程の存在意義を根底から問われる事態にもなりかねないんです。

 また、博士の学位の質保証には、学位を授与するに値すると認められた学位論文の質のみならず、博士課程学生の選抜から学位授与に至るまでの教育、研究指導、論文の受理、審査、判定の一連の過程全てが影響してきていると言われています。しかし、その実態が十分に明らかにされておらず、学位論文及び博士課程教育の質がどのように保証されているのか明示されていない、また明示的な根拠が提示されていないというふうにも言われています。

 政府として、技術立国を掲げ、これからも科学技術振興を図ろうとするのであれば、博士課程の質を、どのような統一基準をつくり、どのくらいのレベルを目標にするのか。そこがやはりきちっと、これから科学技術を支えていく若い研究者を輩出するのは、大学がメーンになっているんです。そこで統一した価値観を共有できるような仕組みをつくっていかなければならないんだと思うんですけれども、その点についてお尋ねしたいと思います。

上野大臣政務官 鈴木委員のおっしゃること、よくわかります。

 お答えさせていただきます。

 博士課程教育の質を担保するため、文部科学省としましては、現在、大学院設置基準、省令を定めており、大学院新設の際には、これらの基準に沿って、教育組織や研究指導の方法などを適切に整備されているかどうか、厳正な審査を行っているところでございます。

 また、具体的な教育、研究指導等の基準や、そのレベルについては、大学院設置基準により、各大学院が組織としてその質を担保するため、授業や研究指導の方法、内容、年間計画や、学修成果や学位論文の評価基準を明確にすることなどを各大学院に求めております。これを受けて、各大学院では、授業や研究指導の方法や、論文審査などに関する具体的な基準を学内規程等により定め、あらかじめ学生に対して明示しているところでございます。

 今後とも、各大学院に対して、組織的な教育、研究指導や論文指導の確立を促すことにより、博士課程教育の質の向上と博士論文の国際的通用性の確保を図ってまいりたいと思っております。

鈴木(義)委員 それを共通の基準をつくったら、大学もしくは大学院が外に情報発信して、大学、大学院のオープン化というのはそういうことだと思うんですね。それで、ほかのところから違うんじゃないのというふうに意見が出たときに、そこで初めて制御作用が働いてくるはずなんです。どこの大学も同じだと思うんです。ましてや、国内の大学ばかりじゃなくて、海外の大学とも競争していかなくちゃいけない。

 平成二十一年の科学技術白書の中で、日本の大学を出てアメリカの工科系の大学に留学して博士課程、学位を取っている人がどのぐらいいたかというような記事を見たんです。日本で二百人です。隣の韓国で千百人、中国は四千人に近いような学生が、アメリカの工科系の大学で学位を取っているんです。日本は、ほとんど三十年間、二百人で変わらないんです。今、もしかしたら、もっと落ちちゃっているのかもしれないんです。

 全てがアメリカの大学で学位を取るのがいいわけじゃないんですけれども、やはり人的なネットワークをほかの国は構築しているということなんです。それに対応できるだけのシステムをもう一度日本の大学なり大学院がつくっていかなければ、これからの新しい科学技術の創造というところには行かないんじゃないかなというふうに思っています。

 次に、もう少し踏み込んだ質問をさせていただければと思っています。

 博士課程で最重要の仕事が、博士論文執筆のための研究遂行であることから、多くの大学では指導を引き受ける教員がいない、入学候補者は入学できないというふうに言われているんです。指導する側の教員が、自分がやっている研究に準じてというんですかね。

 そこで問題になってくるのが、結局、入学候補者が希望する研究のテーマと教員の指導可能な研究テーマのミスマッチ。大学では、各教員の専門分野、現在の研究テーマの一覧を作成し、公開して、ミスマッチを最小限にするように努力していて、修士課程の学生が指導教員をかえずにそのまま博士課程に進学するケースが多数を占めているのは、日本の大学では当たり前のことになっているし、さして問題にはなっていないというふうに言われています。

 しかし、ほかの大学から、修士課程修了者、マスターを出た人がドクターコースに行きたいといったときに、もしくは、海外からの学生、ドクターのコースに行きたいといった留学生、そういったときに、特定のテーマに固執してしまったり、適切な情報アクセス、またコミュニケーションが一般的に困難なこともあって、全部が英語がしゃべれる先生方ばかりじゃないんだと思うんです、そこでミスマッチが生じてしまうんじゃないかというふうに言われています。

 同じことを繰り返しお尋ねするようになるかもしれませんけれども、博士の質の確保のための学生の選抜方法の基準づくり、それと特定の研究テーマと学生のミスマッチ、また同一大学以外の学生の受け入れのための基準づくり、指導教員の研究テーマや情報のオープン化に取り組まなければならないと考えますが、御答弁をいただきたいと思います。

上野大臣政務官 お答えいたします。

 学生が他大学へ進学する場合に、研究テーマ等のミスマッチが生じないようにするためには、大学院において学生選抜や教員の研究テーマに関する情報を適切に公表することが重要であると思います。

 文科省としては、平成二十二年に学校教育法施行規則を改正し、教員の組織や各教員の学位及び業績、また入学者に関する受け入れ方針など、大学が公的な教育機関として公表すべき教育情報を法令上明確にしたところでございます。

 文科省としましては、今後も、各大学院において適切に情報が公開されますよう、各大学院の積極的な取り組みを促してまいりたいと思っております。

鈴木(義)委員 御答弁いただいたように、情報の開示というのはすごく大事なことでありまして、特に博士課程の学生に対しての指導内容、こういったこともやはり積極的にオープンにしていく、極端に言えば、そういう大学に科研費を多く上げるとか、そのぐらいのインセンティブを与えない限り、大学は変わらないと思うんです。

 ですから、博士号、学位を出すに当たっても、審査する人が学内の人しかいない大学が大変なんです。だったら、第三者を必ず入れること。それを条件にして科研費をプラスしてやるとか、もしそういうやり方をしないのであれば科研費は少し削らせてもらうとか、運営費補助を少し基準を見直しするとか、そのぐらいなことをやらない限り、大学の自治という名のもとで、大学が変わろうとしないと思うんです。そのぐらいやはり積極的にやらないと、これからの研究開発を担う学生を輩出してもらう大学、大学院が変わっていかないんじゃないかと思うんです。

 そこのところは、時間もあと何分もないんですけれども、山本大臣の方で総括して御答弁いただければと思うんですが。

山本国務大臣 質疑のやりとりを伺っておりまして、やはり人材育成というのは非常に大事だということを再認識いたしました。人材が新たな価値を生み出し、競争力を強化するための原動力だと。さらに、すぐれた研究者を確保できるかどうかがイノベーションの創出を大きく左右する、これは紛れもない事実だというふうに思いますし、将来の科学技術・イノベーションの担い手となる博士の質の確保を図っていく、これは重要な問題だと科学技術担当大臣としても認識をしております。

 一般的に言うと、高度な専門性とともに幅広い視野、こういうものを兼ね備えた若手研究者は、主体的に研究活動に取り組む、問題の解決に向けて果敢に挑戦する資質を有しているというふうにも考えております。

 科学技術政策を担当する大臣として、博士の質を高める取り組みに加えて、多様なキャリアパス、この構築を推進することによって、若手研究者が安心して研究に専念し、思い切って能力を発揮できるような、そういう環境が整備できるように、やはり内閣府として、総合科学技術会議として、各省の取り組みを促してまいりたいと思います。

鈴木(義)委員 促すだけだとちょっともう時間がないんじゃないかと思っているんですね。それだけ切迫していると思います。

 今、日本は先端技術を行っているんだというふうに誰もが思っているんですけれども、ほとんど錯覚しているんじゃないかという考え方もあります。

 それは、隣の韓国だとか中国は日本以上にもっとハングリーさがあって、貪欲に科学技術の振興、安いものをつくれば売れた時代じゃなくて、高付加価値をつけなければ次は生き残れないと日本を見習って思っているんですね。それだけ隣の国では教育だとか科学技術の振興の人材にかける、予算も人も手だてして海外にどんどん出させていながら、今お話をお聞きすると、日本の学生さんが、海外に行く人も少なくなるし、海外から来ている留学生もある一部の国に偏ってしまっているのも現状だと思うんですね。

 そういった意味で、今までの慣習だとか通例に惑わされないような形で、学位論文の質の確保をとるための基準をつくるとか、今幾つか御指摘させていただいたもので、やはり国が指針を出すべきなんだと思うんです。促すだけじゃなくて、こういう方向で科学技術を進めていく、各分野は別にして、やはりベーシックなところで方向を示してもらいたいと思うんです。

 御答弁いただければありがたいんですけれども。

山本国務大臣 今委員が御指摘になった点は、まさしく総合科学技術会議の司令塔強化につながるところだと思います。

 正直申し上げて、各省の枠を超えて政策を推進するというのはなかなか実際には難しいところがありますけれども、きょうの答弁でも繰り返し申し上げたとおり、予算戦略会議をつくったり、アクションプランで政策に影響を与えるプロセスを強化したり、あるいはSIPやImPACTで予算の枠を確保したり、あらゆる手段を使って科学技術政策に対する総合科学技術会議の機能の強化を図っておりますし、それをしっかり進めていきたいと思います。

 きょう委員のおっしゃった、やはりこういう分野でも内閣府がしっかりと政府を俯瞰する、各省を俯瞰するような方針を示せということですが、そういうことができるように頑張ってまいりたいと思います。

鈴木(義)委員 短い時間でありましたので、特に文部科学の所管になってしまうんですけれども、やはり科学技術の根幹を支えているのは、若い研究者がどう育っていくか。そこに共通した価値観もあるし、そこで優劣がつくんだったらみんな若い人たちも納得してくれるんだと思うんです。それが、もし日本の国内の中でシステムができなければ、優秀な人ほど海外に出ていってしまう。それをやはり引き戻す、また引きとめるためにも、早急にシステムづくりに御尽力いただければなというふうに思っております。

 以上で終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

三原委員長代理 次に、高橋みほ君。

高橋(み)委員 日本維新の会の高橋みほでございます。

 きょうは、科学技術特別委員会での初めての質問になりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 今回は、まず、二〇〇九年に始まりました最先端研究開発支援プログラム、すなわちFIRSTについて質問させていただきたい、そう思っております。

 このプログラムは、リーマン・ショックの後、未曽有の危機と閉塞感に直面して、日本を立て直すのはイノベーションしかない、そんな強い思いで始まったということを伺っております。このため、世界のフロンティアを日本が切り開くんだということで、三十のプロジェクトと研究者の発掘というものから始まったと伺っております。

 このプロジェクトでは、今までと異なって、研究者を煩雑な手続書類の事務から解放する、研究費の使い方にも異例の自由度をつけるというような点が大胆な手法を取り入れたということで言われております。

 このFIRSTのプログラムの成果ダイジェストの本、この本なんですけれども、見させていただきました。これを読みますと、かなりいろいろいいものが取り組まれているんじゃないかなと思って私は感心したんですけれども、ただ、これは五年のプログラムでございますので、世界を引っ張っていけるような成果が出たのかということは、ちょっと私としましては心もとないという気もいたしました。

 これを読んだ後に内閣府さんからいただきました資料によりますと、この三十のプロジェクトのうち、四つのプロジェクトは既にベンチャーが成立済みということでした。そして、そのほか、東レや島津製作所や日立製作所により研究も実用化されているということを伺っております。

 この実例集を拝見して私が興味深かったのは、富士通さんが行っております、横山直樹さんという方によりますグリーン・ナノエレクトロニクスのコア技術の開発というものでございます。低炭素社会と高度の情報化社会というものを共存させていくには、何といっても、IT機器のキーとなるLSIの消費電力の低減が必須だということを伺っております。

 そのために、このプログラムでは、LSI、大規模集積回路チップの消費電力を大幅に低減するために、それに必要な基盤技術の開発に挑んだというものだそうです。最終的な目標というのは、消費電力を従来の百分の一ぐらいにするというものでした。

 このプロジェクトでは、LSIが演算を行うトランジスタ、情報や電力を伝達する配線、その情報を記録するメモリーで構成されていることに対応して、これら三つの構成要素に、これまでにない新材料や新構造を取り込んだものというふうに伺っております。

 これによりまして、二〇二〇年度の東京オリンピックの開催の年を目標に、これらの技術を統合して、現在のLSIの十分の一から百分の一の消費電力を実現するLSIチップの製品化を目指すということを伺っております。それによりますと、将来的には、スーパーコンピューター「京」並みの処理速度を持ちましたスマートフォンも夢ではないということを伺っております。

 日本は、いつも言われていることなんですけれども、全く新しいものを発明するというのは今まで残念ながら苦手だったんですけれども、今回のプログラム、私が今述べましたものですと、かなり有望で新しいもの、全く新しいものということはないんですけれども、これからの技術というものは、産業界にとってはかなり有望で、お金も稼げるものではないかなというような印象を受けました。

 ただ、このプロジェクト、内閣府の総合科学技術会議の橋本和仁議員さんによりますと、この成果は、新しい材料や構造で半導体素子をつくれることを実証したが、この効果を実現するためにはさらに十から百倍の研究費用が必要であるというふうに言われました。もともと四十五億円の研究費の、その十倍か百倍ぐらいお金をかけないと実際には実用化できないということを伺いまして、これはなかなか大変なんじゃないかなというような印象でした。

 このように、この三十のプロジェクト、とてもいいものだと思ってはいるんですけれども、今回このプロジェクトが終わりまして、その後、国が何にも投資をしない、そこにお金もしない、何も指導をしないということになっていますと、せっかくのこの五年間のプロジェクトというものが余り効果がないものになってしまうんじゃないかなというようなおそれがありました。

 ですから、質問としましては、FIRSTのこのプログラム、三十については、これからも国として支援していくのか、特に財政上の支援を予定しているのか、お尋ねいたしたいと思います。

山本国務大臣 衆議院の科学技術特別委員会に来ていただいて、大変うれしく思います。ぜひ、科学技術・イノベーションについて、私も担当大臣として万難を排して来ようと思っているので、いろいろ闊達に御議論ができればというふうに考えています。

 先ほど、科学技術・イノベーションの必要性についていろいろと言及がありました。日本は新しいイノベーションをつくるのはなかなか苦手だという話もありましたが、今そこに読んでいただいたFIRSTの冊子にもあるように、この中から山中先生のiPS細胞が生まれ、さらに岡野先生の細胞シート、さらに言うと山海先生の介護ロボットHAL、やはり世界の最先端を行く技術の後押しをしている、イノベーションの後押しをしているということを考えると、必ずしも日本で最先端の技術が生まれないというわけではないという気がいたしております。

 高橋委員の御指摘の点ですが、FIRSTは、先端研究助成基金の法律上の設置期限である平成二十六年の三月三十一日をもって終了となりましたが、創出されたすぐれた研究成果は、今おっしゃったように、円滑に次の段階の研究開発、応用、実用化につなげていくことが大事だというふうに考えています。

 このため、内閣府としては、FIRST終了後の財政的な受け皿ありきという、受け皿だけではないんですけれども、各研究課題が次の段階に円滑に移行できるように、産業界への研究成果の広報とか、関係省庁への情報提供に取り組んでまいりました。

 三十の研究課題の今後の方向性、もう高橋委員の方からもいろいろ言及がありましたが、大きく分けて三つぐらいありまして、一つは、共同研究企業と研究を継続して実用化を進めるケース、二つ目は、ベンチャー企業を立ち上げて成果の実用化を目指すケース、三つ目として、新たな知の創造に向け基礎研究を継続するケース等、研究開発のステージとか進む方向性によってさまざまな考え方があると思います。

 各研究課題の内容、進捗に即した多様な選択肢の中から適切な対応が行われるというふうに考えております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 私も、別に日本人に創意工夫がないとか新しいものになかなか挑戦できないと言っているわけではございませんけれども、ただ、iPSの山中教授がノーベル生理学・医学賞を受賞したのは、確かにこのプログラムの実施期間中だとは思うんですけれども、山中教授はきっと前からずっとされていて、このプログラムのおかげじゃないんじゃないかなと、ちょっと残念ながら思った次第ではございます。

 それで、ちょっと次に行きたいんですけれども、この今の取り組みは、最初は二千七百億円使われる予定だったものを、自民党政権から民主党政権にかわったがために、平成二十一年度の補正予算の見直しが行われまして、一千五百億円に減額して、一千億円を三十課題に、五百億円を若手、女性研究者の支援に充当するというふうに決まったと伺っております。

 私、これを伺ったときに、かなりもったいないなとか残念だなと思ったことがございまして、この三十課題と中心の研究者が決定された後に減額されたということにしますと、減額されなければ、実はもっとすばらしい成果が出た可能性というのが高いんじゃないかと考えました。もし、そうではない、この研究成果はきちんと出ているというならば、もともとありました二千七百億円は要らなかったという話になってしまうんじゃないかなというような気もしております。

 ですから、今回、まだ正式な検証というのはされていないと思うんですけれども、この減額された金額でも、これらの研究に対しまして十分なものであったのだろうか。それとも、初めの予定どおり配分できていれば、もっともっとすばらしい効果が出たのかということをちょっとお尋ねしたいと思っております。

山本国務大臣 そこは予断を持ってなかなか申し上げられないところがあるんですが、FIRSTをめぐる予算、この流れは今委員がおっしゃったとおりなので繰り返しません。

 こうした変化に伴って、FIRSTの公募段階、平成二十一年の七月ですが、このときは一課題当たり三十から百五十億というふうにしていた研究計画を、上限五十億ということで各課題に、平成二十一年の十二月ですけれども、お願いをいたしました。課題によっては、当初の研究計画を修正したところもあるというふうに聞いております。

 ただし、当初の目標を大きく変えない範囲での修正であったということで、予算は減額されましたが、研究計画については、極めて意義のあることを確認の上決定されたというふうに考えています。

 平成二十四年度に中間評価を実施しておりますが、これによれば、各課題の研究開発は、中心研究者のリーダーシップ、研究支援担当機関のサポートによって、研究計画に沿っておおむね順調に進捗していると評価をされておりまして、変更された予算額の中であったとはいえ、研究計画で期待された成果は創出されているというふうに考えております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 というと、すばらしい成果が出たということは喜ばしいのですが、初めの金額設定がまずかったのかなというようにちょっと疑問に思った次第ではございます。

 ただ、私も、研究というものはお金が本当にかかるものであると思っておりますので、これからも、本当にもっともっときちんとしたところにお金を入れるという方向性は貫いていただきたいと思っております。

 今まで、きょう朝からいろいろな方がおっしゃっているんですけれども、理研の小保方さんのSTAP細胞の研究についてちょっと言及させていただきたいと思っております。

 単なる間違いだったのか、捏造なのかというようなお話がずっとあったんですけれども、きょうのお話によりますと、何か捏造と認定したような言い方をされておりましたので、ちょっとびっくりはしているんです。私は、本当にこれに期待した人間としまして、もう少しゆっくりと検証していただきたいなという意識があるんです。

 テレビなどを拝見したとき、共同研究者とかいろいろな方が出てきておりまして、その方たちは、自分には関係ないことだ、ちょっと知らないよみたいな言い方をされていた方が多いようなイメージを受けました。これを聞きますと、科学技術の研究では、ある程度、本人の申告を信じるしかないのかなというような印象もあるんですけれども、やはり不正行為があっても発見しにくい構造になっているというのは確かだと思っております。

 そこで、今回のFIRSTのプログラムや最先端・次世代研究開発支援プログラムでは不正行為などがなかったのか、お尋ねしたい、そう思っております。

倉持政府参考人 御説明申し上げます。

 FIRST、NEXTでの不正行為のお尋ねでございます。

 残念ながら、ございました。ちょっと御説明申し上げたいと思います。

 FIRSTでは、平成二十四年の七月に、FIRSTの田中プロジェクトといいまして、次世代質量分析システム開発と創薬・診断への貢献、これは中心研究者が島津製作所の田中耕一最先端研究所長でいらっしゃいますけれども、そのプロジェクトでのサブテーマリーダーを務めていた元京都大学の教授が収賄事件で逮捕、起訴されるという事案が発生いたしました。

 総合科学技術会議といたしましては、この田中プロジェクトにおける元京都大学教授の逮捕、起訴というものを重く受けとめまして、平成二十四年十月に、最先端研究開発支援推進会議というのがございますが、そこにおいてこのプロジェクトのあり方を検討した結果、元京都大学教授をプロジェクトから除外して、研究体制の全面的な見直しを行ったという事案が一件ございます。

 一方、最先端・次世代研究開発支援プログラム、NEXTの方でございますけれども、これは平成二十四年十月に、東京大学の三原助教という方を代表とするプロジェクトにおいて、研究実態を伴わない雇用者に対して人件費を支出するという事案がございました。このプロジェクトにつきましては、平成二十四年十二月に廃止となりまして、東京大学の調査結果に基づきまして、雇用に係る人件費の返還及び競争的資金等の交付の制限というものを課したところでございます。

    〔三原委員長代理退席、委員長着席〕

山本国務大臣 一つだけ委員に申し上げたいんですけれども、私が先ほど科学技術担当大臣として厳しく受けとめなければいけないと申し上げたのは、理研の内部の調査委員会による報告書にああいう厳しい結果が出たということについて、これを厳しく受けとめるということでございまして、御存じのとおり、四月四日だと思いますけれども、内部の改革委員会と外部有識者による調査委員会も立ち上がったということで、これも恐らく連休後なんでしょうか、ちょっと正確にはわかりませんが、しっかりとここでも方向が出てくるというところで、そういうところもきちっと見きわめて、いろいろと担当大臣として対応を考えていきたい、こういうことです。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 それでは、不正行為が起きないような仕組みというものは実際とられているのか、そしてこれからまた新しく別にそのような仕組みをとろうとしているのか、教えていただければと思っております。

倉持政府参考人 不正行為が起きないような仕組みということについてのお尋ねでございますけれども、総合科学技術会議におきましては、ただいま申し上げました二つのプログラムの助成金におきまして、経理の、不正な使用であるとか研究開発活動の不正行為が認められた場合には、競争的資金の適正な執行に関する指針というのをつくっておりまして、それに基づいて、この二つのプログラムの場合は、資金配分機関が独立行政法人の日本学術振興会というところでございますけれども、この日本学術振興会が定めるところにより、厳正に対処する旨を定めているところでございます。

 これに基づきまして、日本学術振興会は、助成金交付条件において、研究の不正行為及び研究費の不正使用、不正受給が起きないよう、規定を整備して、補助事業者に対して遵守を求めているところでございます。

 例えば、具体的には、研究の不正行為の防止につきましては、補助事業者に対して不正行為の防止及びその疑いが生じた場合に適切に対応するための必要な規定等の整備を求める等でございます。

 また、万一、不正行為を行った研究者には、一定期間、補助事業への参画を認めないこととするとともに、事案に応じて交付した助成金の全部または一部を返還させる、そういった取り組みを行っております。

 研究費の不正使用、不正受給の防止に関しましても、同様な規定を設けたりして取り組んでいるところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 研究費の不正というところは、結構、客観的なものでもありますので、わかりやすく、効果が出やすいと思うんですけれども、やはり内部の、内容的な不正というのはなかなか、見つけたり防止するというのは大変だと思いますので、これからその点に関して特にいろいろ考えていっていただければと思っております。

 ちょっとまた話はかわるんですけれども、このFIRSTというのを立ち上げるときに、五百六十五件の応募があったと伺っております。それから厳選されまして三十のプログラムが決まったと伺っております。とすると、選には漏れたけれども実際は有望なプロジェクトがあったんじゃないかなというようなことも私は考えました。

 そこで、お尋ねしたいと思います。

 この三十以外の選に漏れたプロジェクトなどへの研究費の助成とか、ほかでいいから、ほかのところで何かやっていったらどうかというようなことが実際にあったのか、質問したいと思います。

倉持政府参考人 FIRSTにつきましては、委員御指摘のとおり、応募が五百六十五件ございまして、三十課題を選定いたしました。もちろん、こういう質の高い公募でございますので、ボーダーというのは紙一重の面もあったかと思いますけれども、残念ながら応募に漏れたプロジェクト、もちろん、その中にはすぐれた提案があったのではないかと思われますけれども、それにつきましては、一応このプログラムは三十課題ということでございまして、総合科学技術会議として何らかの措置を講じているという状況ではございません。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 FIRSTというのは、選択と集中で、認定されたものにお金を入れるということで始まったと伺っておりますので、今の御答弁は仕方がないのかなというようなイメージもあるんですけれども、きっともっとほかにもいいものがあったというようなイメージが私はありますので、いろいろなところで再度挑戦するなりしていただけるようなことを促していただければなと思いました。

 FIRSTが一応区切りがついたということで、平成二十五年補正予算に五百五十億円を計上し、ImPACT、革新的研究開発推進プログラムが行われると伺っております。これは、実現すれば社会に変革をもたらす非連続イノベーションを生み出す新たな仕組み、ハイリスク・ハイインパクトな挑戦を促し、我が国の研究開発マインドを一変させるものを目指しているというものでございました。そうすると、FIRSTとImPACTの違いというのは何なのかなとちょっと思ってしまいました。質問しましたところ、ImPACTの方は産業界からの要望に基づいてやられているというところが一番違うというふうに伺ったんですけれども、ただ、FIRSTがこれだけすばらしいというような御説明があったのに、であればFIRSTと同じような仕組みでもよかった、なぜImPACTにしたのかということをちょっとお伺いできればと思っております。

倉持政府参考人 お答え申し上げます。

 FIRSTは、柔軟で自由度の高い予算使用が可能な研究資金の基金化であるとか、研究者が研究に専念できるような研究支援機関を設置するなど、研究者の研究環境を最優先に考えて、日本を代表する研究者に思い切って研究をしていただく、それで世界トップレベルの研究を目指した制度でございまして、先ほど御指摘いただいていますように、大きな成果が得られているところでございます。

 今般、このFIRSTの後継というものを検討するに当たりまして、こういったことの重要性は認識しつつも、今やはり非常に閉塞感を持っている日本の研究の状況、特に、科学技術・イノベーションを成長戦略に結びつけていくという観点からは、やはりよりハイリスクなチャレンジが必要だ、こういうことを求める声というものが高まってきておりました。

 そういう中で、例えば研究費の基金化であるとか、こうしたFIRSTのすぐれた面、特徴を取り入れながら、ハイリスクなチャレンジをできるように、いわゆるプログラムマネジャー方式というものを導入いたしまして、産業競争力の飛躍的向上であるとか社会的課題の解決を非連続イノベーションによって克服、達成しよう、そういう意図を持ってImPACTという新たな制度の創設を決定したところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 やはり今度はプログラムマネジャーというのが大事だということはよくわかりました。

 ただ、私が思うのは、今まで日本というのは、ノーベル化学賞をとったとか、いろいろな、有名で、結構功成り名遂げた人にお金を入れるというようなことが実は多いんじゃないかと危惧しております。ですから、昔の名前で出ています的な人にお金を入れるのではなくて、本当にこれからの人にぜひお金を、プログラムマネジャーにしてもらいたいというふうな希望がございます。

 あと、またこれも同じような名前だなと思って、私にはよく理解できないんですけれども、SIP、戦略的イノベーション創造プログラムというものを始めたということを伺っております。十課題あると伺って、見てみたんですけれども、残念ながら、ちょっと私にはこれで本当に必要なのというようなのが散見されるようなイメージでした。

 それは例えば、革新的設計・生産技術というもので、地域の企業や個人のアイデアやノウハウを生かし、時間的、地理的制約を打破するような新たな物づくりを確立、地域の競争力を強化、これは何をやるのか全然わからないんですよね。あと、トヨタの方が、若手エンジン研究者が激減する中、研究を再興し、最大熱効率五〇%の革新的燃焼技術を実現し、省エネ、二酸化炭素削減に寄与、日本の自動車産業の競争力を維持強化というふうに書いてある。こういう革新的燃焼技術というのもあるんですけれども、これはちょっと、この会社のものを後押しするだけの、余り革新的なものでもないなというような印象がございました。

 もちろん、次世代海洋資源調査技術という、ああ、これはすばらしいなというようなものもあったんですけれども、何となくFIRSTに比べるとちょっと内容的には落ちてきてしまっていて、内容がわからないというものがございました。ですから、ちょっとネタ切れなのかなというような印象もございます。

 ぜひ、本当にこれから科学技術というのは大変重要なことだと思いますので、プログラムを選定するときに頑張っていただき、そしてそこにお金を入れていただき、日本を引っ張っていけるようにしていただければと思っております。

 ありがとうございました。

竹本委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会の伊東信久でございます。

 山本大臣におかれましては、内閣委員会のときに引き続き、同じように科学技術・イノベーションに関する御質問をさせていただくわけですけれども、内閣委員会のときと若干オーバーラップというか、かぶる部分もあるんです。

 今般、きょうも野依理事長が来られましたけれども、STAP細胞のことが話題に出ております。私もSTAP細胞に関することというか、STAP細胞を中心に今回質疑をさせていただきます。

 まずは、ここの委員会は科学技術・イノベーション推進なんですね。ですので、STAP細胞の発見を擁護するような立場をとった質疑になろうかと思いますけれども、そこは、各御意見、現在の調査結果がございますから、まずは事実を検証していきたいと思っております。

 さて、科学技術の発展に関しまして、国の方針として、いわゆる新しい産業として科学技術を推進しなくてはいけないということは共通の認識だと思いますけれども、さかのぼれば、科学技術基本計画というのが一九九六年に、科学技術の政策にまとまった予算を出そうという礎となっております。そこから五年後、二〇〇一年の第二期においては、いわゆる医療分野、生命科学分野に重点配分されていったわけなんです。

 九六年に始まって、二〇〇一年との比較でもよろしいですけれども、今に至るまでの予算額、本年度に関する科学技術に関する予算額の推移というのを、省庁間にまたがると思いますけれども、お聞かせください。

倉持政府参考人 委員御指摘のとおり、我が国では、議員立法でつくっていただいた科学技術基本法に基づきまして、一九九六年以来、五年を計画期間とする科学技術基本計画というものを順次定めてまいりまして、その中で、政府研究開発投資の総額の目標というものを掲げ、科学技術関係予算の確保に努めてきているところでございます。

 第一期の科学技術基本計画の初年度であります一九九六年度の科学技術関係予算額と本年度の予算額とを比較いたしますと、一九九六年度には二兆八千百五億円でございました。これに対しまして本年度は三兆六千二百六十四億円となっておりまして、約三割増加していることになっております。

 また、各計画期間の予算総額の推移につきましては、第一期の基本計画の目標が約十七兆円ということでございましたけれども、実績として十七・六兆円でございます。第二期の目標は約二十四兆円でございましたけれども、実績は二十一・一兆円でございます。第三期の目標は約二十五兆円とされておりましたけれども、実績は二十一・七兆円ということでございます。

 さらに、二〇一一年度から二〇一五年度までを対象とする現行の第四期計画でございますけれども、これにつきましては、やはり目標として約二十五兆円というものを掲げてございます。計画期間の四年目に当たります本年度、ここまでの実績を総計しますと、約十八・一兆円という状況にございます。

伊東(信)委員 恐らく、今回も予算が遂行されないのではないかなと思うんですけれども、実際に科学技術の見積もりというのは、大体、他の職業と違って難しいわけなんですけれども、ただ、実際に現場を聞いてみますと、まだまだ科学技術に対する予算も少ないかと思います。

 実際、今度できるNIHも、アメリカの場合、NIHだけで三兆円というところで、科学技術全体で三兆円というのは決して多くは思わないんですけれども、一期、二期で決められた予算が遂行できない原因というのは何かあったのでしょうか。

倉持政府参考人 科学技術基本計画におきましては、長期的な投資の目標といたしまして、GDPの一%程度はやはり科学技術に回したい、そういう考え方に基づきまして先ほどの数字というのが掲げられているところでございます。

 委員御案内のとおり、なかなか日本の経済状況は、この間厳しいものもございまして、その中で、もちろん計画としてその目標を掲げているわけでございますから、私どもとしては全力を挙げて予算確保に努めているわけでございますけれども、残念ながらそこに届いていなかった、そういう状況にございます。

伊東(信)委員 恐らく詳細に関しては、いろいろな細かい状況があったのかとは思います。もちろん、今の御答弁のように、日本の経済の状況というのも考慮しなければいけないわけでございますけれども、これを投資と見るかですよね。科学技術を投資と見るかというのは、いわゆる哲学も入りまして、なかなか難しいところでございますけれども、大臣が所信で、我が国が直面する課題を乗り越えるための切り札と、この科学技術・イノベーションをおっしゃっていただきました。

 科学技術・イノベーション政策の推進において、大臣は司令塔としてリーダーシップをとっていただきたいんですけれども、その具体的な司令塔機能というのはございますでしょうか。

山本国務大臣 率直に申し上げますと、司令塔機能強化の道のりは道半ばだというふうに思っています。

 三・六兆円の科学技術関係予算、これに対して内閣府、総合科学技術会議がどうやって影響力を持っていくのかということでいうと、一つは、各省の予算編成プロセスにいかに影響を与えるかということだと思います。それは、新たにつくった予算戦略会議、私のもとに各省の局長クラスに集まっていただく会議も活用しながら、アクションプランを進化させていく、政策決定プロセスに影響を与えていくというやり方が一つ。

 もう一つは、きょう議論がありましたけれども、SIPとImPACT、総合科学技術会議が中心になって目ききができる予算の枠をつくる、その予算の枠をつくることによって関係各省を巻き込んでいく。

 大きくいうと、この二つのプロセスで今司令塔機能強化をやってまいりまして、今回の理研の問題にも関係がありますが、特定国立研究開発法人が創設された場合には、さらにそこで総合科学技術会議がいろいろな役割を果たすことになるということもあって、いろいろな意味で司令塔機能強化の流れは進んでいると思うんですけれども、道半ばだと思います。

 もう一つは、政治的に言うと、総理のバックアップがあるということで、民主党政権下では残念ながら、決して科学技術・イノベーションに関心が低かったとは思いませんけれども、総合科学技術会議は恐らく一年に三回ぐらいしかできなかった。安倍内閣はこの過去一年で十二回ぐらいやっていますので、そういうもろもろの手段で、今、司令塔機能強化を図っているところです。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 先ほどの我が党の高橋議員の質疑でもあったんですけれども、今大臣の御答弁にもありました、いわゆる目ききのところですね。ImPACTなどはそういった趣旨があるとは思うんですけれども、いかに今後ブレークしていくか、ブレークスルーを起こすかという科学技術を発掘していかなければいけない。我が党の高橋議員が、○○先生は有名になってから予算がおりたのではないですかと、それは厳しい御意見。だけれども、おりないより、やはりおりた方がいいということなんですね。

 ただ、問題は、必ずしも、いわゆるコントロールをしていく上で、ガバナンスをしていく上で、ポジティブなことばかりではないということです。

 今回話題になっているSTAP細胞の論文をこちらに用意しました。これはネイチャーの最初の一ページなんですね。どなたかわかる方で構わないんですけれども、これのどこが問題なのでしょうか。

倉持政府参考人 御説明申し上げます。

 大変恐縮です。私はこの英語の論文を今直接見ましたので、この論文のここということは申し上げられませんけれども、今般、理研の方で不正ということで調査委員会を立てて報告が出た部分につきましては、データの扱い等につきまして、あるいはその実験方法の記述の部分について引用がないとか、六カ所、六件の疑問点が示されました。それにつきまして、調査委員会としてその事実関係を確認して、その結果、二件についてはやはり改ざん、捏造の不正があったと認定されたというふうに理解しております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 この論文の中の、このページではないところの、後のページのいわゆる画像処理に関して、私は余り使いたくないですけれども、改ざん、捏造があったということなんですけれども、では、STAP細胞自体の存在に対しての改ざん、捏造があったのでしょうか。もしくは、STAP細胞は存在するのでしょうか。お答えできる方で構わないです。

倉持政府参考人 お答え申し上げます。

 ここにつきましては、まだ、ある、ないという論拠というものがはっきりしていないということで、先ほど理事長からもお話があったかと思いますけれども、理化学研究所として、そこの再現試験というものをきっちりやっていきますし、それに対して、情報をできる限り公開して、広く第三者にも参加いただけるような、それの支援をしていく取り組みを進めるというふうに理解しております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 私は知っているぞという、そういうことが言いたいわけじゃなくて、若干、本当に意地悪な御質問で、菱山審議官、倉持統括官をいじめたいわけじゃないんですね。だけれども、今お答えいただいた、あるかないかわからないというお答えというのは、すばらしいと思います。厚生労働委員会で田村大臣も、真実はわからないんですとおっしゃったんですね。

 では、真実はどこにあるかというのは、真実はどこかにあるわけなんですね。ただ、現在わかっていることは、この論文がパブリッシュされたということですね。ネイチャーという雑誌にパブリッシュされたということです。

 科学的に言いますと、科学者の中というか我々の中で、もっと言うとiPS細胞研究所の先端を行っている方のお話を聞くと、パブリッシュされている時点で存在しているんです。パブリッシュされたということは、世界各国の再生医療にかかわるいわゆるレフェリーがいるんですね。レフェリーが何回も何回もやりとりして、あると認めたからパブリッシュされたんです。これは一つの事実なんですね。この事実を否定しようと思ったら、これに関する否定論文を出さなければ、STAP細胞は存在しないとならないんですね。

 例えば、香港で最近、STAP細胞の存在が疑わしいというような声明を出しました。だけれども、これは、日本じゃない海外の研究機関が単にこの数カ月の間にその実験に成功しなかった、もしくはこの論文自体の理解をしなかった、この論文自体を受け入れなかったというだけのことなんです。だから、単なるそこの研究機関の方針なだけなんですね。

 ただ、このSTAP細胞に関して皆さんにぜひともわかっていただきたいのは、iPS細胞との比較文書を出していますけれども、iPS細胞は、この四つの遺伝子を我々の体の細胞の遺伝子の中に導入することによって、いわゆる受精卵と同じような細胞に戻す。つまり、どんな臓器にもなり得るような細胞をつくれるということなんですね。

 それに比べて、STAP細胞は、まだ動物実験の段階です。ネズミの体細胞に刺激を与えることによって、ここにコップを描いていますけれども、これは、ビールみたいに見えますけれどもオレンジジュースなんですね、弱酸性なんです。弱酸性のところに長時間浸すことによって、同じように初期化が起こったということなんです。

 さて、これが今みたいな説明になると、本当かいやというような疑念が生じるのは間違いないです。ただし、このネイチャーのレフェリーは、それを認めてパブリッシュされたんです。その時点で、それはあるとされるんですね。これが科学のいわゆるルールでございます。

 さて、この背景にあるのは、生命の、つまり細胞の不思議さで、イモリやトカゲとかが再生機能を持っているように、もともと生物には、そういうような、もととなるような、卵になるような細胞があるんじゃないか、いろいろな臓器になる細胞があるんじゃないかということですね。実際、あるんですね、幹細胞というのが。

 年末に出された再生医療の推進法案、厚労省から出ました推進法案というのは、それをiPS細胞と、今僕が申し上げた、もともと人間にある幹細胞と、それと単なる体細胞をふやす、この三つに分類して、それぞれに危険度を分けよう、それぞれに認定にするのか届け出にするのか、そういったことでございます。

 このiPS細胞、STAP細胞というのは、もととなる幹細胞を人工的につくる方法論なんですけれども、この細胞というのは単なる材料でしかないんですね。

 人間の体を車に例えると、iPS細胞は臓器になる。我々、科学技術特別委員会で去年視察に行った高橋政代先生、やっと網膜という、眼球の中のそのまた一部の上皮ができたところなんですね。まだまだ本当に、申しわけないですけれども、ハンドルをつくったりとか、エンジンは最後までできていないんです。エンジンのギアができている状態なんです。だから、こんな状態で足の引っ張り合いをしている場合ではないんですね。

 ここには本当にいろいろな問題があったと思います。理化学研究所が、もしかして、推測ですよ、そのまま突っ走るのに何かしら、人間というのは、足を引っ張ったりとかジェラシーがあったりしたのかもしれないし、内部でリークがあったのかもしれません。しかし、なぜこのSTAP細胞がパブリッシュされた時点でこのようなバッシングを受けたか。それは、一つは、やはりマスコミが悪いと思います。

 小保方先生のキャラクターでSTAP細胞が出たときに、非常にもてはやされました。しかし、何カ月かして、この論文のいろいろなミスが見つかったときに、今度は逆にバッシングが起こりました。もちろん、私自身も学位を持っていますし、大阪大学の招聘准教授でありますから、この論文の書き方に関して、これを擁護する気持ちはありませんけれども、ただ、このSTAP論文について、オール・ジャパンで守っていかなければ、これも日本が誇る財産なんですね。

 この財産を、正しいのであるか間違っているのであるかというよりも、あるのかないのかは検証です。先ほど野依先生が帰られるときに、私、一言お聞きしました。STAP細胞の質疑をします、でも、これはサイエンスですよねと言ったら、そうなんです、これからは検証が大事なんですと。つまり、検証していくことが次への過程なんですね。この論文を取り下げるとかそういった問題ではないし、不正がどうのとかの問題じゃないです。検証していくことが大事なんです。

 だから、野依先生は、みずからの自浄機関にプラスアルファして、検証を科学的にやっていこう、プラス的にやっていこうということなんですけれども、今の現状では、とてもじゃないけれども、科学技術・イノベーションを日本の中での切り札とはできません。

 先ほど大臣が、各省庁間でいろいろな壁を取り払わなければいけないし、司令塔となるには、まず安倍首相がバックアップをしてとおっしゃっていただきましたけれども、今回、プロジェクトマネジャーとかプロジェクトディレクターというのは、いわゆる研究の方向性を決める、そういった機関です。

 私のこの資料の中に、ラグビーとアメリカンフットボールの写真を載っけています。これは、山中先生が衆議院の表彰のときに講演でおっしゃっていた話、もしくはラスカー賞をとられたときに引用されたお話なんですけれども、科学者はあくまでも科学者なんです、それを製品化したりとか商品化したりすると、それは、CEOという、いわゆる経済的な部分がいるから、全く別分野、ラグビーとアメリカンフットボールぐらいの違いがあるんだよと。だからこそ、誰か、オーガナイザー、マネジメントする人が出てほしいということなんです。

 ただ、このプロジェクトマネジャーとかプロジェクトディレクターをつくるだけでは、いわゆる司令塔機能はないと言っても過言じゃないと思います。社会的、倫理的、広報的な、もう一つ科学を支える機関というのが、政府がやらなければいけないと思うんですけれども、そのあたりはいかがでしょうか。

倉持政府参考人 プロジェクトをサポートする、本当に今、研究開発を進めるに当たりまして、ただ実験室で研究をしていればいいというものではございません。知財戦略あるいはいろいろなことがございますので、今までのFIRSTの例でも、そういったところの重要性というのは、我々痛感しているところでございます。

 今回、ImPACTなりSIPなり、そういったもので、全体の指揮官というのはプログラムマネジャーであったりプログラムディレクターであったりするわけでございますけれども、その方のもとにしっかりと、専門的知識を持った方をサポートする体制を組んでいくことが非常に重要だというふうに認識しております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 先週の内閣委員会での山中先生の参考人としての答弁、七ページに書いてありますけれども、段落二の、科学者の独立ということなんですけれども、しかし、この独立というのは非常に注意しなければならない点があります、独立させてほったらかしにするのは非常に危険であります、私もそうでありましたが、三十代の研究者というのは、実験の方法については一生懸命それまでやってきて上手になっていると思うんですけれども、それ以外のさまざまな点についてはまだまだ未熟な人間でありますということです。

 この科学技術・イノベーションを発展させる上で、まだまだ問題がございます。このイラストにありますように、基礎研究であるところは文部科学省、そして、これを人間に応用しようと思えば、医療、臨床が厚生労働省、そして、これを製品化しようと思ったら経済産業省が必要となってきますけれども、省庁間の橋渡しがなければ、この死の谷を越えることはできません。これが本当の科学技術・イノベーション政策だと思っております。

 まず、医学と工学の連携、先ほど野依先生が言いました。社会に何が必要なのかを研究者はヒアリングする必要がある。しかし、科学者は今の体制ではできません。ですので、その体制をつくること。そして、小保方先生も野依先生も研究者です。マスコミ対策なんかできるわけがないです。それは政府なり国なりが守っていく、そういう体制をつくっていかなければいけないんです。これが本当の科学技術・イノベーション政策だと思うんです。もう時間もありませんけれども、最後に山本大臣、御決意を。

山本国務大臣 伊東先生の御議論、大変参考になりました。やはり研究者としてのお立場からの御見解だと思います。

 やはり科学者は、例えば経済人とは違うと。さっきラグビーとアメリカンフットボールの写真を見せておっしゃっておりましたけれども、まさに我々がImPACTでしようとしているのはその部分であって、いわゆるImPACTはプログラムマネジャーというものを設ける、ある意味でいうとプロデューサーであるということで、FIRSTは、最先端の研究をしている科学者の方を厳選して、そこに予算をつけるという仕組みだったんです。

 ImPACTは、まさに今先生おっしゃった死の谷を越える、高い高い研究開発のレベルをいかに産業化していくか、商品化に結びつけていくか、そのためのプログラムマネジャーと思っていますので、今のお言葉をしっかり踏まえて、科学技術・イノベーションのサイクルをしっかりつくってまいりたいと思います。

伊東(信)委員 ありがとうございました。

竹本委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時二十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時八分開議

竹本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。柏倉祐司君。

柏倉委員 みんなの党の柏倉でございます。よろしくお願いいたします。

 最初は、高度安全実験施設、BSL4の必要性についてお伺いしたいと思います。

 先日、「アウトブレイク」という二十年前ぐらいにはやった映画を見ました。大臣もよく御存じだと思いますが、アフリカで、エボラ出血熱ではないんですが、それに似たような、かなり病原性が高い、緊急性の高い、そういった感染が、アメリカに持ち込まれて、それで感染が拡大していくというような映画でございました。主役がダスティン・ホフマンで、モーガン・フリーマンなんかも出て、私、個人的には、何年かに一回見るというような感じの映画なんです。

 思い出を語っているわけではなくて、最近、ギニアを中心にエボラ出血熱が拡大しているということでございます。エボラ出血熱というのは、最も危険な病原体という位置づけで、感染したらすぐに死んでしまうから、遠く、例えばギニアから日本に持ち込まれるようなことはないということを言われているわけでございます。しかし、現実には、やはりテロもあります、炭疽菌テロというのもありました。こういうテロがある以上、やはり、アフリカで起こっているから大丈夫、これは対岸の火事というわけにはいかないと思うんです。

 そういう現状を踏まえて、この日本にも高度安全実験施設、いわゆるバイオセーフティーレベル4というものが必要なんじゃないかという観点でお聞きしたいと思います。

 エボラ出血熱、天然痘、いろいろございます。基本的には、治療方法が余りない。今、必死に治療方法をいろいろな製薬会社がエボラ出血熱でも模索しているようですが、まだ決定的なものはないということでございます。

 ただ、こういったものがもし来た場合、やはり、それを分離して、同定をして、きっちり対処をしていく、こういった国の機関というのが私は絶対に必要になると思うんです。これがバイオセーフティーレベル4ですね。しっかりと、エボラ、天然痘ウイルス、こういったものを扱える高度な安全実験施設が必要だと思うんですが、残念ながら、今、日本で一つも稼働していないということなんです。

 一九八一年に国立感染症研究所、そして一九八四年に理化学研究所バイオリソースセンター、これはつくば市なんですが、建設はされたけれども、近隣住民の反対で稼働していないという現状があります。

 最近は、長崎大学の医学部が手を挙げてくれたということなんですが、実は、そこにつくっちゃいかぬというような反対声明を出して、やはり同じ長崎大学なんですが、教育学部の教授がそういったことを言っている。なかなか進まないという現状があるようなんですね。

 なかなかやはり、レベル4、こういう映画もそうです、その危険性というものが正確に伝わっているのかどうか、それもありますが、一旦国にそういった病原体が入ってきたときに、その場で分離、実証して対策を練るというスキームを日本につくらなきゃいけないという緊急性は、説明すればわかってくれると思うんです。そこをどうやっていくか。これですね。

 一九八七年に一回、ラッサ熱というのが、海外から入ってきた旅行者なんですけれども、日本に来た。ただ、結局はわからなくて、アメリカに検体を送って、そこで同定をしたということがございます。

 現状、このレベル4といいますか、こういう危険な病原体に対する対応策というものは、二十年前、三十年前と、残念ながら、高度安全実験施設等の点では余り進歩がないということだと思います。

 国民の生命財産を預かる国としては、この高度安全実験施設の整備を早急に講じるべきだと思いますが、そこのところの御所見をいただければと思います。

佐藤政府参考人 お答えをいたします。

 感染症対策、とりわけエボラ出血熱だとかラッサ熱などに関連しての御質問でございました。

 効果的な感染症対策を実施するためには、高度で安全な、そして迅速に実験ができるということが重要でございまして、国内においては、今お話がありましたように、BSL4、バイオセーフティーレベル4という高度な施設を整備して、これが適切に稼働されるということが重要であると認識しております。

 ただ、今の御質問の中にもありましたように、国立感染症研究所の村山庁舎が持っておりますBSL4施設については、設置はされたものの、使用されないまま経年、年月がたっておりまして、必要な改修等は行ってきているということで、現時点においてもBSL4の施設として利用することはできます。しかしながら、現段階では、周辺住民の方の御理解が得られていないということもありまして、BSL4レベルに相当する病原微生物は取り扱っていないという現状にございます。

 しかしながら、これも議員の御指摘にありましたように、世界的な感染症の流行とか世界の研究の動向等々を考えますと、厚生労働省としましても、こうした既存施設が活用できて、そして病原微生物の試験研究が実施できるようにということは大変重要な課題と考えておりまして、引き続き粘り強く、周辺住民の皆様の御理解を得られるよう努力をしてまいりたいと考えております。

柏倉委員 基本的には、もう技術ではなくて、周辺住民のコンセンサスをいかに得るかという行政的なプロセス、そこがリミッティングステップになっているということですね。

 どこの国も、G8では、このBSL4はあって稼働もしているという状況だそうです。これは国民性もあると思うんですね。スウェーデンなんかでは、割と、比較的住民が協力をして、その必要性を認識して、積極的に認めていこうという動きもあるというふうなニュースも最近出ておりました。

 やはりここはしっかりと、行政の責任として、もう待ったなしというぐらいの認識で進めていただきたいと思います。

 それでは、次なんですけれども、脳科学研究の国際プロジェクトについてお伺いいたします。

 オバマ大統領が、BRAINイニシアチブということを二〇一三年に発表しました。これは、個々の脳細胞の複雑な神経回路、血流といったものを解析して、それを医療、介護といったものに実用化していこうというようなものですね。その基礎となるデータをとっていく、十年間で全て頭の回路を解明しようというぐらいの勢いでやるというものでございます。これはヒトゲノム計画に匹敵する、ないし、それ以上のものだと言われるもので、市場規模でいえば三兆円近いというようなことも言われております。アメリカで、ゲノムの次はブレーンだということでやっている。

 EUも同じように、ヒューマン・ブレーン・プロジェクトというのを掲げて、これは日本も、実は沖縄科学技術大学院大学や理研も参加しているわけなんですけれども、大規模に脳内情報の読み出し、記録、解析というものをしっかりやって、日本の医療、介護に資するようなデータ、そして研究開発まで一挙にやってしまおうという、物すごいブルドーザー的な野心なわけです。

 そこで、日本ではどうなのかといいますと、文科省で二〇一三年五月十七日に、脳科学研究に関する懇談会というのがありました。こういったアメリカ、EUのプロジェクト、これを紹介した後、日本も頑張りましょうといって、革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクトをしっかりと策定してやっていこうということになっているかと思うんですが、ただ、これは人間の脳ではなくて、霊長類の脳を主に解析することをやっているというふうに聞いております。

 EUのプロジェクトでは、人間の脳をしっかり解析する、その上で、ネガティブコントロールとしての霊長類というものは、位置づけはあるけれども、それが、対象となるきっちりとした人というものにフォーカスしたものになっているわけです。ところが、日本ではなかなかそれがなっていないように思います。

 そういったところを、実際に日本が進めていく脳科学に関するプロジェクトはどういったようなものを対象にして、どれぐらいを目標にしてこれからやっていくのか、答えていただけますでしょうか。

山脇政府参考人 お答えいたします。

 先生御質問の革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクトは、平成二十六年度より開始することとしております。

 このプロジェクトは、我が国が強みを持つ技術開発のさらなる効率化、高度化を行うことによりまして、霊長類の脳の全容を神経細胞レベルで解明した上で、人の精神・神経疾患の克服につながる脳機能の解明を目的としております。

 これは、マーモセットという霊長類を実験動物で使うことになりますが、人に近い脳機能を有する、人間に近い行動特性を持つでありますとか、人間で高度に発達した前頭葉についても同様に発達している、人に近い脳機能を有するというような霊長類でございます。これを用いてこのプロジェクトを進める。

 また、我が国では、世界に先駆けまして、遺伝子操作が可能な霊長類であるマーモセットというものも開発いたしましたので、それらを活用しながら、このプロジェクトによりまして脳機能の全容解明につなげていきたいというふうな考えでございます。

柏倉委員 予算はどれぐらいを今見込んでいるんでしょうか。

山脇政府参考人 お答えいたします。

 このプロジェクトに対する平成二十六年度予算としては、約三十億円措置されております。なお、平成二十五年度補正予算で、このプロジェクトに関連するものとして三十一億円を措置したところでございます。

柏倉委員 それはアメリカやEUに比べてどれぐらいの規模なのかということをまず教えていただきたいんですが、脳科学のブレーン・マシン・インターフェースという今最新の技術がいよいよ使われるんじゃないかというようなものがあります。脳の血流、あと脳波、電気的な信号も解析をして、例えばそっちのクーラーをつけようと思うと、そこのいろいろな解析をして、機械が読み取って自動的につけてくれる。介護でこれができれば、地方の介護士さん不足なんというのは非常に助かるんじゃないかなと思うんです。

 こういった科学技術、そして医療、介護、こういう直結する技術を一日も早く、やはりこれは世界に先駆けてやっていかなきゃいけないと思うんですね。欧米におくれをとってしまっては、市場が荒らされると言うと変ですが、やはり日本の技術が生かされないようになってしまいますから、しっかりと世界に先駆けてこれを開発していただくために、その予算の方をいま一度ちょっと欧米と比較して説明していただきたいというのと、今後どのような研究分野、脳の研究分野で結構です、こういったブレーンインターフェース等々にしっかりとフォーカスしていくのかどうか、ほかの分野を考えているのか、そこも含めてお答えいただければと思います。

山脇政府参考人 お答えいたします。

 アメリカ、ヨーロッパのプロジェクトでございますが、アメリカのBRAINイニシアチブにつきましては、我々が把握しています予算額は十年で一千億規模、それから、ヨーロッパのヒューマン・ブレーン・プロジェクトにつきましては、十年で約千五百億円規模というふうに承知をしているところでございます。

 我が国の今申し上げました脳機能ネットワークの全容解明プロジェクトにつきましては、目標設定として、開始五年後には、マーモセットの全脳回路に関するマクロレベルのマップをまず作成する、それからまた、開始十年後には、人の精神活動にとって重要な神経回路に対応したマーモセットの神経回路を神経細胞レベルで解明する、そのような目標を設定して、その達成をするために必要な予算を確保していきたいというふうに考えておるところでございます。

 また、先生御指摘の脳科学全般のプロジェクトに関しましては、健康・医療戦略本部のもとのプロジェクトにおきまして、脳とこころの健康大国実現プロジェクトとして政府全体で対応するということにしておりまして、今年度約七十一億円、総額で措置をしているというような形でございます。

 このようなプロジェクトを推進することによって、脳機能の解明、それから精神疾患等の克服につなげていきたいと考えているところでございます。

柏倉委員 予算額、これは限られた中でやっていかなきゃいけないのはよくわかっているんですが、欧米と比較して少し少ないのかなという印象があります。やはりここは大臣にしっかり頑張っていただいて、最先端の脳科学、この市場をきっちりと日本の手におさめるべく、市場の開発を後押しするような国の施策をぜひつくっていただきたいと思います。

 それでは、次に入らせていただきます。

 ImPACT、これは非常にアンビシャスな、ハイリスク・ハイインパクトな研究をやっていくということで、これから始まるわけですけれども、今、プログラムマネジャーを選定しているという話を聞きます。しかし、なかなか思ったようにプログラムマネジャーの選定が進んでいないんじゃないかというような話も聞こえてきます。

 手を挙げるという人もいるでしょうし、企業から推薦をしてもらうというやり方も今しているわけですね。企業としても、優秀なプログラムマネジャーを出してしまったら、社員としての身分を保持したままでは利益相反に最終的になってしまうんじゃないかというような不安もあるし、送り出した企業は委託研究を受注できなくなるというような取り決めもあるように聞いております。そして、社員としても、一旦離れてこのプログラムマネジャーになってしまったら、会社に戻ってこられるのかな、そういった不安も当然のことながらあるわけです。

 それで、三月十八日の日経新聞を数行引用させていただきます。

 プログラムマネジャーは原則研究しないで大学と企業、研究室と市場をつなぎ新事業を生み出すのが役目。今月から公募を始めた。三―五年は企業を離れて専念する。その後ですけれども、経済同友会の科学技術・イノベーション委員会委員長を務める野路国夫コマツ会長は、企業でも優秀な人材は限られる、そんな人が社内の出世を諦めてくれるだろうかと懐疑的だということを言っています。電機メーカーの幹部も、どのレベルの人材を出すか社内で検討している、会社のメンツもあるというふうに言っている。

 なかなかやはり、企業原理、倫理と、このプログラムマネジャーの確保、選定、平和的に進めばいいんですが、一人の人間の人生を左右しかねない選択です。こういうところ、プログラムマネジャーの公募の現状をどのように今文科省は把握しているのか。また、プログラムマネジャーの出身母体により、採用、不採用をあらかじめ決めているというような運用はされていないかどうか。よろしくお願いします。

倉持政府参考人 御説明申し上げます。

 ImPACTでございますけれども、先生御案内のとおり、今、プログラムマネジャーの公募をいたしております。去る三月七日に公募を開始いたしまして、三月三十一日に概要の書類の提出を締め切らせていただきました。集計した結果、応募総数は百八十件となっております。そして、現在、さらに詳細な書類の提出をお願いしているところでございます。

 プログラムマネジャー選定の今後のスケジュールとしては、総合科学技術会議の有識者議員と外部有識者から構成される革新的研究開発推進プログラム有識者会議で書面を審査し、ImPACTの趣旨との整合性、あるいは、プログラムマネジャーの資質、技術的評価の観点から優秀な提案を選んで、その後、さらに面接審査を行う予定でございまして、最終的にプログラムマネジャーが決定されるのは六月になる予定でございます。

 応募者が所属している機関によって、その採用に影響が及ぶことはないのかというお尋ねがあったと思いますけれども、このプログラムマネジャーの応募者につきましては、企業等に所属される方、大学等に籍を置いておられる方、独立行政法人等公的機関に勤務される方、あるいはどこの機関にも所属されていない個人研究者の方もおられます。非常に多岐にわたるバックグラウンドを持っておられる状況にございます。

 プログラムマネジャーの選定に当たりましては、構想に至った背景、斬新さ、世の中を変える革新性、発展性、そういったプログラム構想の内容や構想力、あるいはマネジメント力等の資質や困難な課題をやり抜く意欲など、そういった観点から審査されることになりますので、応募者が所属している機関によって採用についての判断が影響を受けるものではないというふうに考えているところでございます。

柏倉委員 ぜひ、その研究者の実績、そして物の考え方、着想、そういったものに基づいたプログラムマネジャーの選定をお願いしたいと思います。どうしても、出身母体とどういった関係があるないということで雑音が入りますと、やはりしっかりとした研究も進みませんので、そういったところはきっちりとクリアに進めていただきたいと思います。

 それでは、最後の質問です。

 日本の研究のあり方ということについてお伺いしたいと思います。

 先ほど、BSL4の施設、日本の脳の研究について少しお話しさせていただきました。日本の研究を見てみますと、欧米に比して段階的に、連続的に物事を積み重ねていく。これはこれでしっかりとしたスタンダードなやり方だと思うんですが、これだけ情報が氾濫して、そして科学者の個性、着想、独自性といったものがやはり新しいものを生み出してくるという時代になりますと、なかなか日本のクラシックな、土台からしっかり積み上げてきて、基礎原理、応用、そして実用、この流れそのものの時間を縮めていかなきゃいけないわけでございます。

 そこで、科学者の発想転換といいますか、これは日本では余り使われていない分類のようですが、ストークスという人が研究を分類しているんですね。根本原理の追求をする、これはボーア型と言うらしいんですが、原子核の理論を提唱した物理学者、根本原理を突き詰めていくタイプ。そして、イノベーションを追求する、要は実用発明、エジソン型と言われているようです。そして、両方やる、根本原理を追求しながら実用面も求めていく、これがパスツール型ということにされているわけです。

 当然のことながら、パスツール型が今求められているんだというのはわかっています。しかし、やはり科学者の人たちの認識というのは、実は、若干、政府、行政とずれがあるというのも事実だと思います。

 例えば、ジョージア工科大学と一橋大学イノベーション研究センターが共同で行った研究があります。どういったタイプの研究が重要か、さっきのストークスの分類を提示して、どれが大事ですかと言ったところ、日本の研究者でパスツール型が大事だと言ったのは一五%だった。ところが、アメリカの研究者は倍以上の三三%だった。

 やはり、この潜在的な意識といいますか、思考といいますか、物の考え方、研究者の研究に対する姿勢、これは少し実用重視というものから乖離してしまっているなという一つのあかしだと思うんです。

 そこで、お伺いしたいんですが、やはり日本においてこれまで研究の延長線上にない研究、また非連続的なイノベーション、そういったものを志向する、こういった土台が実は少なかった。分厚い基礎研究の蓄積があるわけですから、その土台のもとに、そういう創造的、時には偶発的、孤発的な発想もあると思うんです。しかし、そういったものをしっかり大事にして、このパスツール型の研究姿勢というのを科学者の方に持ってもらう、そういったものが必要じゃないかと思いますけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。

山本国務大臣 今、柏倉委員のおっしゃったことは大変大事なことだというふうに思っています。

 御指摘のとおり、科学技術・イノベーションの推進には、やはり基礎研究と出口研究、この出口志向との両方のバランスをとるということが非常に大事だというふうに考えていまして、少子高齢化、エネルギー制約、我が国を取り巻く社会環境は非常に厳しくなっておりますので、これに対する課題解決型アプローチとして、我が国が取り組むべき課題の達成に向けて、研究開発の推進、その成果の利用、活用に至るまで関連する科学技術を一体的、総合的に推進する、これが非常に大事だというふうに思います。

 一方で、企業の研究開発は、やはり短期的な方向にシフトするという傾向がありますので、研究者の自由な発想に基づいて行われる基礎研究も、これはイノベーションの源泉となるシーズを生み出すということで、知的、文化的価値を創造し、直接、間接に社会の発展に寄与するものとして、その意義、重要性は低くなっていない、高まっていると言っていいと思います。

 ですから、結論として言うと、課題解決型のアプローチ、それから、独創的な研究成果を生み出し、それを発展させて新たな価値創造をつなげるアプローチ、この両方をやはり車の両輪として科学技術・イノベーション政策に反映させていかなければいけないと考えています。

柏倉委員 どうもありがとうございます。

 やはり車の両輪、そのとおりだと思います。科学者の意識革命というものもこれからしっかりと大臣には御指導していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 終わります。

竹本委員長 次に、小池政就君。

小池(政)委員 結いの党の小池政就です。こんにちは。よろしくお願いします。

 私は、議員になる前は、大学で研究者をずっとやっておりまして、研究者の立場からすれば、お金がどんどん入ってきて、それを自由に使えばいいということでありましたが、今はこういう立場におりますので、きょうは、政策、また、研究開発の予算の効率性でありますとか実効性でありますとか、そういう観点から御質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、今までも幾つか質疑になっておりますが、ImPACTについてお伺いさせていただきたいと思います。

 ImPACTの中で、今の質疑でもありましたが、特にPM、プログラムマネジャーの重要性が非常に、そこは大事だということはこれまでの答弁のとおりだと思いますし、また、そのプログラムマネジャーは、今百八十件来ているという中で、どうやって選定していくかということも非常にこれから重要な課題だと思っております。

 応募要項も拝見させていただきまして、大体十数名程度を目安として、一人当たりの研究金額の規模は総額三十から五十億円程度、年俸制で、年間二千万円ぐらいの給与を予定されているということでございます。

 また、先ほどの指摘にもありました大事なこととして、やはり責任をしっかりとってもらうために、専任が原則といたしまして、前の職場にポジションはあったとしても、エフォートは最低でも八〇%以上ということは、確かにその必要があるということで拝見させていただきました。

 その際に、PMが予算も恐らく管理するということになると思いますが、予算の執行について、今想定しているところで、PMがどういう形でその予算を使っていくのか、委託とか、調達先とか、そこら辺も全部PM任せにしようとされているのか、教えていただけますでしょうか。

倉持政府参考人 お答え申し上げます。

 ImPACTのお尋ねでございますけれども、このプログラムにおきましては、プログラムマネジャー及び研究開発のプログラム構想、そして研究開発プログラムごとの予算額は、総合科学技術会議によって決定されることとなっております。

 プログラムマネジャーは、研究開発プログラムを実施する研究機関をプログラムマネジャーの権限において選定をいたしまして、そこに研究委託を行わせる。具体的に申しますと、プログラムマネジャーが所属していただきます科学技術振興機構、JSTでございますけれども、このJSTがプログラムマネジャーの方針に従って研究機関との間で委託契約を締結する、こういうスキームを考えているところでございます。

 プログラムマネジャーは、その権限で、研究開発の加速であるとか、あるいは少しスローダウンする、あるいはやめてしまう、方向転換等ができるようになっておりまして、五年間の基金による自由な予算執行環境の中で目標達成を求めていく、こういう考えでございます。

小池(政)委員 プログラムの規模がかなり大きいものでありますから、そこら辺の管理、また検証等は非常に重要だと思っております。

 そこで、内閣府がこのImPACTについてどのようにリーダーシップをとっていくかということについてお伺いさせていただきたいと思うんですが、予算は補正で五百五十億円ついておりまして、これは内閣府ではなくて文部科学省についていたかと思います。

 予算の面では文科省ということでもありますが、先ほどのPMの選考でありますとか実際の資金の管理でありますとか、またプログラムの研究の検証でありますとか途中のチェックでありますとか、そういうところで内閣府はどのように取り組んでいかれるつもりなんでしょうか。

倉持政府参考人 このImPACTでございますけれども、プログラムマネジャーを中心にプログラムを動かしていく。そのために五年間の基金をつくる。その基金を置くために適切な法人、あるいはそのプログラムマネジャーがきちんと所属していくために必要な法人、そしてそのプログラムマネジャーを支援していただくためのいろいろな支援の機能を持っている法人、そういうことで、ある法人が必要だということで、オール・ジャパンで検討して、この科学技術振興機構というところが適しているという判断で、ここに基金を置く。そのために文科省に予算を計上したということでございます。

 御指摘のとおり、例えば、プログラムマネジャーの選定であるとかプログラムの執行状況につきまして、総合科学技術会議、そのもとに有識者による会議を設けまして、そこがまさにマネジメントをしていく、そういう体制でしっかりと成果に結びつけていきたいと考えているところでございます。

山本国務大臣 今、小池委員のおっしゃったことは非常に大事なことなので、科学技術担当大臣としても申し上げたいと思うんですが、ImPACTは文科省のプログラムではありません。

 文科省に予算がついたのは、先ほど倉持統括官から説明をさせていただいたように、JSTという仕組みは、プログラムマネジャーをきちっと管理して、いろいろなことをやっていくための手足といいますか、仕組みとしてここにお願いをしたということであって、これは実はきょうの議論にもいろいろ出てくるFIRST、この前のプログラムでも同じような形をとってやったということなんですが、プログラムマネジャーの選定もそれから運営の方針も総合科学技術会議がやるということですので、いろいろな意味で、これからのプログラムの運営は内閣府の総合科学技術会議が中心になっていくということでございます。

小池(政)委員 ぜひ、内閣府主導で科学技術の省庁横断的な取り組みということをやっていただきたいと思います。

 その際に、今大臣がおっしゃいました総合科学技術会議でありますけれども、今回、このImPACTというのはDARPAを参考にしているということでありますが、果たして軍事、防衛の視点はどうなんだろうということをちょっと考えてしまうわけでございます。

 総合科学技術会議の中には防衛省関係の方がいらっしゃらないわけでもありますし、また、科学技術というのはやはり軍事的な面というのも関連していて、そこから付随する技術がスピンオフという形で出てくるということからも、そういう観点が大事じゃないかなということを思うわけでございます。

 また、特に、これから武器輸出三原則の緩和ということで、共同開発を進めていくということを政府は方針として示しているわけでございますから、共同開発というのは、必ずしも、参加すれば向こうの技術を提供されるわけではなくて、やはり同等の技術をある程度日本が保有しておく必要もあると思いますし、このDARPAを参考にしながら、そこだけを抜いてしまうということじゃなくて、その観点もぜひ含めるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

山本国務大臣 小池委員御存じだと思いますが、アメリカのDARPA、国防高等研究計画局、これは、インターネットの原型とかGPSといった、産業とか社会のあり方に大きな変革をもたらす革新的なイノベーションを次々と生み出した機関でございます。

 ImPACTは、我が国の産業競争力の飛躍的な向上、それから直面する深刻な社会的課題の克服につながる非連続イノベーションの創出を目指すということですので、革新的なイノベーションを次々と生み出してきたDARPAにおけるマネジメントの仕組み、中核はまさにプログラムマネジャーなので、これを参考に制度を設計したということでございます。

 いろいろな観点があると思いますが、ImPACTにおいては、DARPAのように防衛、軍事技術への発展を目的とするものではありません。特定の分野、領域にとらわれず、異なる分野や領域を融合し、多様な出口に発展することによって社会を大きく変化させるような、インパクトのある成果を期待するということでございます。

小池(政)委員 ImPACTとしてはそのプログラムは今回想定していないということでございますが、総合科学技術会議の役割等も含めて、そのような観点というのもぜひこれから検討していただきたいと思います。

 防衛省は防衛省で、技術研究本部というものがありまして、そこで、確かに自分たちで研究開発はしていると思いますが、そことの情報交換等も非常に大事なことだと思いますので、ぜひ検討をいただきたいと思います。

 その際に、今回は軍事じゃなくてその他分野に特化しているということでございますが、情報の公開性についてお伺いさせていただきたいんです。

 成果というのは、必ずしも成功したものだけではなくて、途中経過のものも、大臣もインターネットのお話をされましたけれども、使いようによってはかなり汎用性があったり、非常にイノベーションが生まれたりするところもあるものでありますし、また、多額の税金を投入してこのようなプログラムを行っているわけでございますから、その成果というものを広く社会に公開していくべきだと思うんですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

山本国務大臣 ImPACTにおける研究成果は、ワークショップ、シンポジウム等の方法も視野に、幅広く社会へ還元する、そういう方策を考えてまいりたいと思います。

 ただ、一つ申し上げなきゃいけないのは、やはり、知的財産権の保護等には配慮をしなければいけないというふうに考えています。

小池(政)委員 ぜひ公益性の観点をしっかりと持って進めていただきたいと思います。

 次に、SIPについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 SIPも今回、内閣府が主導で進めていくということでございますが、この点についても、大臣にまずお伺いをさせていただきたいんです。

 やはりここも、予算から見ると、内閣府は五億に対しまして、文科省は三百五十億、また、その他省庁も、厚生労働省が四十九億だったり、農水省が三十六億、経産省は四十億だったり、概算要求だけ見ても、各省がそれぞれ自分たちの恐らく何か強い意思を持って要求してこのプログラムに参加しているようには見受けられるんですが、その中で、五億の内閣府が果たして司令塔としてどのように役割を果たせるのか、ちょっと不安なところもあるんですが、今どのようにお考えでしょうか。

山本国務大臣 SIP、戦略的イノベーション創造プログラムは、イノベーション創出の加速をさせるということで、研究開発だけではなくて、規制改革等、他の政策手段も全て総動員をする、それによって研究開発成果の実用化、事業化までつなげていくことを強力に実践するというプログラムでございます。

 総合科学技術会議では、これまで、科学技術基本計画の策定、科学技術重要施策アクションプラン等による予算の重点化に関する総合調整等を行ってまいりましたが、今般、みずからSIPの予算を持つということで、必要なところに機動的に配分できるようになることによって、研究開発の実施段階において強力にリーダーシップを発揮することが可能となるというふうに考えております。

 小池委員の御指摘はもっともなところがありまして、先ほどもちょっと申し上げましたが、数兆円の科学技術関連予算、これにどうやって影響を与えていくかということについて言うと、予算の枠を持っただけではそれはなかなかうまくいかない、加えて、やはり政策決定プロセスに対しても影響を与えるいろいろな仕組みを考えなきゃいけないということで、アクションプランも進化させたわけです。

 この五百億、正確に言うと、健康・医療戦略室に調整の分で出すのを除くと三百数十億ですが、この枠があるだけでやはり各省を連携に巻き込んでいけるということで、今回、初めてのSIPのいろいろなプロジェクトをつくろうとしているわけですけれども、このSIPは、総合科学技術会議が司令塔機能を発揮していく上ではかなり効果があるということを実感しております。

小池(政)委員 ぜひ、各省の主導権争いに巻き込まれないように、むしろ、大臣がおっしゃったように、司令塔として巻き込んでいくという役割を果たしていただきたいと思うんです。

 その際に鍵となるのが、このSIPについてはガバニングボードとそれからプログラムダイレクター、PDが非常に重要だと思います。このPDについては、今もう既に選考されました政策参与がこれから就任されるということを聞いております。そのPDまたガバニングボードが果たして本当に機能するのかなということもちょっと確認をさせていただきたいんです。

 このPDは十人ですよね。十人のうち五人が民間ということでありますが、そのうちの四人、民間五人のうちの四人の出身の企業を調べてみますと、総合科学技術会議にいる民間出身委員、三人いらっしゃるんですが、その三人が所属されている企業から、このPDの五人のうちの四人が選出されているわけでございます。そこだけ見ると、結局、内輪の総合科学技術会議の委員が、だったらうちのところからこれを出すよという形で決めたようにも思います。

 また、PDというのは、これは非常勤という形で、一週間で二日程度来るかという話も聞いているところでございまして、先ほどのImPACTの方のPMというのは、これは原則常勤で、所属していたとしても八〇%以上はこのImPACTの方でしっかりと働かなくてはいけないという一方で、果たしてこのPDの方は、これだけ非常に軽い業務というか立場で本当にその役割を果たせるのかなということを思ってしまうわけであります。

 これまで、科学技術戦略推進費というのが、このSIPの前に似たようなものがありまして、これは文科省から、行政事業評価レビューにおいて、抜本的な改善を求めるということが言われているわけでもありますし、また、その前の科学技術振興調整費といいますのは、事業仕分けで廃止という形で決まったものであります。

 ですから、このPDそれからガバニングボード、これが機能しないと、またこれと同じような結果が生まれてしまうという懸念が残るわけでございますが、今の選考それからPDのあり方はこれで本当に大丈夫なんでしょうか。

倉持政府参考人 委員お尋ねのSIPでございますが、ガバニングボードあるいはプログラムディレクターが極めて重要である、御指摘のとおりだと思います。

 プログラムディレクターでございますが、昨年十月に内閣府が公募させていただきました。それで、総合科学技術会議の有識者議員によって構成されるガバニングボードで、書類、面接による審査を行った上で、昨年十二月に選定されました。

 まだ、正確に申し上げれば、予算が通っていませんので内閣府の政策参与と称する形になってございますけれども、今後、総合科学技術会議においてこのプログラムディレクターというのを正式に決定してまいる予定でございます。

 この選定基準でございますけれども、国内外の研究開発動向、あるいは関連する規制、制度等の動向、あるいは市場動向に関する知見、あるいは産学官が関与する研究開発プロジェクト等の管理経験、そういったことを基準としまして、先ほど申しましたプロセスを経て選定をさせていただいたということでございます。

 それで、確かに、このSIPのための科学技術イノベーション創造推進費、これが五百億円あるわけでございますが、先ほど大臣が答弁されましたように、そのうちの百七十五億は健康・医療分野で使いますけれども、残りの部分について、今度十課題を選んで、このPDのもとに、今までのいわゆる調整費の仕組みとは全く違って、きちっとプロジェクトフォーメーションをする。そのために、このPDの方には、非常勤ではありますけれども、内閣府の職員になっていただく。

 このPDの役割は、先ほどのImPACTのプログラムマネジャーが、まさにエフォート一〇〇%近いことで御自身が動くというのに対しまして、このSIPの眼目は、いかにして府省連携を牽引するかということでございまして、この貴重な予算を使いながら、関係省庁を束ねて、それを総監督的に見ていただく立場でございます。

 このプログラムディレクターのもとに、もちろんその上にはガバニングボードがあるわけでございますけれども、それぞれのテーマのプログラムディレクターのもとに、プログラムディレクターと関係省庁、あるいは専門家、あるいは管理法人、そういったもの、そして、私ども内閣府も当然入りまして、推進委員会というのをつくって、きちんと各省が一体となってゴールに向かって進んでいく。

 こういう仕組みをあわせて構築して進めさせていただくということで、今までの取り組みとはまた違う仕組みを整備させていただきながら進めていきたい、こういう考えでございます。

小池(政)委員 ちょっと今の答弁ですとなかなか不安が払拭されないわけでございますが、PDを通して、結局、今までのような予算が配分されて、検証、チェックというのもしっかりとされないような、そんな懸念が残ってしまうわけでございます。

 具体的に、別の観点からちょっとお伺いさせていただきます。

 それでは、そのPDそれからガバニングボード、非常に大事なわけでございますが、果たしてこの仕組みの中で、成果の公開性でありますとか、それから予算の執行というものがしっかり管理できるのかなということをお伺いさせていただきたいのは、民間の方がやはりPDに入っているわけでございます。

 例えば、PDが力が強ければ、成果についても、公金を使っていながら、その成果を囲い込みしてしまったりとか、出すものを限定してしまったりとかいうことだってあり得るわけでありますし、また、予算についても、ガバニングボードが管理するということをおっしゃっていますけれども、ガバニングボードも八名でございまして、この何十億、何百億のお金をしっかり管理できるかどうかというところは、それが担保できるのかどうかわかりません。

 また、きょうの午前中の質疑でも、FIRSTやNEXTにおきましても、これまで、収賄とか、それから架空の人件費が計上されていたという例もあったわけでございます。しかも、この二例は、京都大学の教授が収賄でこのような事件があった。また架空人件費は東京大学でこのようなことが起こった。

 大学が調査して、その結果としてこのようなことが少し明るみに出てきたと思いますが、今回のプロジェクトは、必ずしもそのPDが大学関係の人でもありませんし、全く民間を中心として行われることもあり得るわけでございますから、その際に、そのような公開性でありますとか、それから予算の正当な執行というものがしっかりと担保できるのかどうか、この点についてどう考えていらっしゃいますでしょうか。

倉持政府参考人 委員お尋ねのように、予算がしっかりと執行されるという点につきましては、極めて重要な御指摘だと思います。

 具体的には、私ども内閣府にこの予算、五百億円が計上されておりますけれども、このPD、プログラムディレクターのもとで具体的な研究計画というのを練り上げていただきます。その研究計画につきましては、いろいろ、ワークショップ等も開きながら、その内容につきましては積極的に公開していきたいというふうに考えております。

 具体的な資金の流れといたしましては、これを私どもからしかるべくこのプロジェクトを管理していく法人に振りかえていく、それで、いわゆる予算の執行面では、きちんとそういった法人のノウハウも活用できるような形で運営に遺漏なきを期していきたい、このように考えているところでございます。

山本国務大臣 小池委員のおっしゃっていることは、SIPを運営していく上で非常に大事なことだというふうに思っていまして、特にガバニングボードがきちっと機能するかどうか、これは非常に大事だと思っております。

 ガバニングボードにとにかく第三者も入れて、それぞれのプロジェクトはきちっと毎年度評価をするという仕組みになっておりますし、例えばそのプロジェクトに関する利害関係を持った人がいれば、その会議からもちろん排除するなど、利益相反も起こさないようにしたいと思いますし、今おっしゃったようなことが起きないように、これはきちっと細心の注意を払って運営をしていきたいというふうに考えています。

小池(政)委員 ぜひお願いいたします。

 PDの立場として、民間主導でかつ非常勤という形でございますから、必ずおっしゃったような利益相反等の懸念というものもそこで残るわけでございますから、大臣に前向きな答弁をいただきましたので、ぜひよろしくお願いいたします。

 時間になりましたので、これで終わります。ありがとうございました。

竹本委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 科学技術政策を進める政府側の検討の場となっております総合科学技術会議について聞きます。

 総合科学技術会議の運営を定める総合科学技術会議運営規則というものがありますけれども、まず、この運営規則の中で、議事要旨や配付資料等の審議内容の公表をどう定めてありますか。

倉持政府参考人 お答え申し上げます。

 総合科学技術会議運営規則第六条におきましては、「議長又は科学技術政策担当大臣は、会議の終了後、遅滞なく、当該会議における審議の内容等を、適当と認める方法により、公表する。」と規定しております。また、議事要旨につきましては、総合科学技術会議運営規則第七条におきまして、「議長又は科学技術政策担当大臣は、会議の終了後、速やかに、当該会議の議事要旨を作成し、これを公表する。」と規定してございます。

宮本委員 会議の終了後遅滞なく公表する、あるいは速やかにこれを公表する、こういう規定になっているわけですね。

 遅滞なく、あるいは速やかに、こうあるわけですけれども、公開に至るまでの具体的な期間あるいは時間は、実際どうなっておりますか。

倉持政府参考人 審議内容等の公表につきましては、会議終了後、山本科学技術政策担当大臣より記者会見を行うとともに、議事要旨につきましては、会議開催後、原則として四日以内に公表することとさせていただいております。

宮本委員 非公表の措置の場合に、運営規則を読みますと、「我が国の利益に重大な支障を及ぼす恐れがある場合は、議長が会議の決定を経て非公表とすることができる。」こう規定されております。

 そこで、聞くんですけれども、「我が国の利益に重大な支障を及ぼす恐れがある場合」というのは、具体的にはどういう場合を指すわけですか。

倉持政府参考人 お尋ねの点でございますけれども、この点は、例えば個別の知的財産にかかわるものであるとか、個別具体の研究開発プロジェクトの計画段階にあるものであるとか、あるいは株式等市場の動向に影響を与える場合などが考えられると思われます。

宮本委員 では、具体例で確認をしたいと思うんです。

 総合科学技術会議の中に、科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術会議有識者議員との会合というものがございます。総合科学技術会議のホームページには、平成二十一年、二〇〇九年度から現在までの議題と配付資料と議事概要が掲載してあります。きょう皆さんの机にも配付しましたけれども、これは平成二十五年度の分であります。昨年四月からことし三月まで、配付資料の一ページから五ページまで、安倍内閣になってからのものであります。ごらんのように、ほとんどが非公開となっております。

 まず、これも事実を確認しますけれども、総合科学技術会議のホームページで、この非公開扱いというのは、全部で何カ所ございますか。

倉持政府参考人 お尋ねの、科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術会議有識者議員との会合でございますけれども、これはいわゆる総合科学技術会議の本会議、あるいはそのもとにあります専門部会とはちょっと性格が異なりまして、いわば打ち合わせの場という形で活用されているものでございますけれども、この会合につきまして、平成二十一年九月よりこれまでに百八十五回開催されているところでございます。その過程で、合計四百八十七の議題について議論されているところでございますけれども、会合では、議題ごとに公開、あるいは非公開、その点につきまして決定をしております。四百八十七の議題のうち、百四十四の議題が非公開とされているところでございます。

宮本委員 四百八十七の議題のうち、百四十四が非公開とされていると。

 平成二十五年度を見ますと、もうほとんどの会合の議事要旨と配付資料、これは非公開になっております。ですから、非常に二十五年度は率が高いわけですね。

 この二十五年度分のほとんどの会合の議事要旨と配付資料を非公開としている理由は何ですか。

倉持政府参考人 お答え申し上げます。

 第二次安倍内閣が発足いたしまして、平成二十五年三月一日に新たに有識者議員が任命されて以降は、官邸におけます総合科学技術会議本会議が月に一回あるいは二回といったペースで開催されておりまして、活発に御議論いただいているところでございます。

 お尋ねの、この科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術会議有識者議員との会合は、この官邸での本会議の前に、例えば有識者議員が連名で資料を作成するなどの事前の準備の場としても活用されておりまして、このため、今御指摘のように、非公開として、いろいろ議員間で自由に意見交換をする、そういった形での開催が多くなっております。

 なお、この会議での資料、あるいは議事につきましては、その結果をまとめて、総合科学技術会議本会議において全て公表させていただいているところでございます。

宮本委員 では、具体的に聞きたいと思うんです。

 配付資料の六ページを見ていただきたいんです。この六ページの一番上を見ていただきますと、少しさかのぼりますけれども、平成二十二年三月四日、議事内容を読みますと、平成二十一年度科学技術の振興に関する年次報告骨子案、これは非公表となっております。もうこれは四年も前の報告書でありますけれども、この報告がいまだ非公表ということになります。

 先日、内閣委員会で我が党の佐々木憲昭議員が非公表にする理由を聞いたところ、非公表を前提に忌憚なく意見交換したからという答弁でありました。

 聞きますけれども、公表を前提にすると会合で忌憚なく議論ができない、こういうことでありますか。

倉持政府参考人 この会合につきましても、基本的に原則として公開で行われておりますけれども、座長が出席者の同意を得た場合は非公開とすることができるとされております。

 委員お尋ねの会議の議事につきましては、審査検討過程にある具体の研究開発プログラムであるとか個人名を扱う場合、あるいは非公開を前提に自由闊達な議論をする必要がある、そういった場合でございまして、そういう理由から会議の冒頭に非公開とすることが決定された上で議論がなされているというふうに理解をしております。

宮本委員 よくわからぬ説明ですけれどもね。

 もう一つ。では、先ほどの資料の六ページの二つ目。平成二十二年二月四日の議事要旨は、最先端研究開発支援プログラム(一千億円、三十課題)について、こうなっておりますね。これを見ますと、研究詳細や知的財産に係る内容を含むため非公開とたった一行で書いてあります。

 一千億円というのは国民の税金でありまして、個人情報はともかく、この特許取得前後の経過については国民に対する説明責任を果たす必要があると私は思うんです。この非公表の問題、ここは大臣に聞きたいんですが、これはやはりきちっと公表すべきじゃないですか。

山本国務大臣 科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術会議有識者議員との会合、これは、科学技術政策担当大臣、担当副大臣、担当大臣政務官と総合科学技術会議有識者議員が、宮本委員の御発言をそのままかりると、忌憚なく意見交換を行うためのいわゆる打ち合わせの場として活用されております。

 私も実はこの会議に大臣になってから結構出るんですけれども、原則としては公開で行われています。ただ、審査の検討過程にある個別具体的な研究開発プログラムとか個人名を扱う場合は、やはり非公開を前提にした方が自由闊達な議論ができるし、そういう必要がある場合もあるというふうに考えています。その場合は、座長が出席者の同意を得て非公開とすることができるというふうにされております。

 なお、本会合における議論を経た後、官邸で開催する総合科学技術会議の資料、議事要旨、議事録は全て公開しておりますし、総合科学技術会議をやった後は必ず私、会見をやって、出席者の相当細かい議論まで紹介をさせていただいております。

宮本委員 では次に、六ページ目の上から三つ目。平成二十三年二月二十四日、議事概要を見ますと、医療イノベーション会議、これは非公表の理由も書かれておりません。これは全く何のことかわかりませんが、非公表の理由について、内閣府、説明してください。

倉持政府参考人 委員お尋ねの、先ほどの二月四日の件から御説明申し上げますと、これは確かに最先端の研究開発支援プログラムについて扱われております。FIRSTの一千億円の研究費を、それまでに選定された三十課題にどのように配分するかについて議論を行ったものと承知しております。

 各課題の研究内容について、専門的な立場から精査、審査を行っておりまして、その過程におきましては、各課題の研究開発内容の詳細であるとか、それこそ知的財産に係る内容、あるいは個人情報等も含むため非公開としたものでございますけれども、この三十課題の配分額につきましては、同年三月九日に開催されました第八十九回総合科学技術会議本会議において決定され、議事要旨とともに公開されているところでございます。

 それから、今お尋ねの二月二十四日の件でございますけれども、議題一として、医療イノベーション会議について、議題とされております。ここにつきましても、議題をまさに非公開にすることを前提に自由闊達な意見交換を行っていくものということで整理をされております。

 以上でございます。

宮本委員 非公開を前提に自由闊達な議論を行うということで、後になってもこれは全くわからないものになっているわけですね。

 それで、六ページの一番最後、一番下です。平成二十四年四月十二日の議事概要に、労働契約法の改正についてというものがございます。これは、有識者議員の率直な意見交換の場とするため非公開と、同じような理由が書かれてあります。

 労働契約法の改正について率直な意見交換を行うとなぜ非公開措置となるのか、これはちょっと本当に理解に苦しむんですね。若い研究者の任期つき労働契約の導入を議論すれば我が国の利益に重大な支障を及ぼすおそれがあるとは到底考えられないんですけれども、これはなぜ非公開にしているんですか。

倉持政府参考人 お尋ねの件でございますけれども、法律の改正内容につきまして、非公開を前提に自由闊達な御議論をいただく必要があるため、非公開としたというふうになっております。

 この件につきましては、委員もあるいは御案内と思いますけれども、有識者によりまして、見解を有識者議員のペーパーとしてまとめて、後日公表したところでございます。

宮本委員 日本の研究体制に重大な影響を及ぼす研究者の雇用問題を議論するのになぜ非公開にするのか、全く理解できません。非公開となっている理由は国民に中身を知られたくないからではないか、こういうふうに言われても仕方がないと思うんです。

 もう一つ聞きましょう。

 私は、ことしの二月の四日、文部科学委員会で、いわゆるImPACTを進める科学技術振興機構法一部改正案について質疑に立ちました。その際も、このImPACTを検討している最先端研究開発支援推進会議の内容が会議要旨も配付資料も非公開となっていることを示して、中身がさっぱりわからないと後藤田副大臣にお聞きしたところであります。

 副大臣の御答弁は、簡潔な表現で五つ程度の大くくりのテーマを設定し公募を行う、正式には総合科学技術会議の近々の決定をもって公表する予定というものでありました。

 既に、この法律は成立をし、プログラムマネジャーの公募も行われ、三月三十一日で締め切られております。いまだに会議要旨も配付資料も非公開となっているのはどういうわけですか、大臣。

山本国務大臣 宮本委員がおっしゃったお話ですけれども、これは、二月四日の文部科学委員会において、どのようなテーマが設定をされるのかという質問に対して、総合科学技術会議の決定をもって公表する、こういうふうにお答えしたということだと思います。

 ImPACTのテーマについては、二月十四日の第百十七回の総合科学技術会議において決定をいたしましたが、その議事概要と配付資料については、既に内閣府のホームページに掲載をし、公表をされております。

 ImPACTについて検討してきたこの最先端研究開発支援推進会議は、一般に公開されていない技術的アイデアを取り扱ったりとかあるいは非公開を前提に自由闊達な議論をする場合、何度も申し上げていますが、こういう場合等、議事の中身に応じてやはり非公開とすることがあるということです。

 いずれにしても、総合科学技術会議等において決定した内容等については、宮本委員の御指摘も受けて、これからも適切に公表してまいりたいと思います。

宮本委員 五つのテーマは公表しているんですよ。新世紀日本型価値創造とか、地球との共生とか、人と社会を結ぶスマートコミュニティー等々となっております。しかし、なぜこの五つになったのかの議論のプロセスが依然としてブラックボックスのままになっている。

 先日の内閣委員会でも菅官房長官は、準備段階はともかく、全体の会合で決定したものについては全て公開しております、こう答弁をしておられました。全く今も同じような答弁ですけれども、しかし、決まった結論だけ公開するというのではなくて、議論の経過を知らなければ国民はチェックしようがないですね。

 ホームページで、先ほどあった百四十四カ所も非公開としている現状を変えて、やはり、総合科学技術会議運営規則第六条の規定どおり、原則的に全て公開すべきではないか。一定、時間がたてばということもあるでしょうが、こう考えるんですが、大臣、いかがですか。

山本国務大臣 議論のプロセス、例えばなぜこのテーマに決まったのかということは、もちろん、こうした委員会の質疑で御質問があればきちっと説明をさせていただければというふうに思いますし、委員御存じかもしれませんが、会議の中で、例えば特定の名前が出てくるとか、まだはっきりしていないプロジェクトのことを話すときに、どなたが何を言ったかということをそのまま全て公開するということになりますと、自由な議論が遮られる場合はあると思います。

 そういうときに限って非公開にしているというふうに私は考えております。

宮本委員 名前は伏せてというような議事録も幾らもございます。何も、個人名を何から何まで挙げろということは言っていないんです。

 非公表措置が何年も続いている原因の一つに、運営規則に国民と国会の関与の規定がないということがあると思うんですね。

 聞きますけれども、運営規則の中に、非公表の措置をとったとき、その非公表が妥当かどうかを検証したり、非公表措置を公表に向けて定期的にチェックするような、そういう規定がございますか。

倉持政府参考人 総合科学技術会議の運営規則には、お尋ねのような規定はございません。

宮本委員 特定秘密保護法の議論で、恣意的な秘密指定を国会でチェックする仕組みをどのようにつくるかという議論がございました。

 私は、ことしの一月、本院の欧米各国の情報機関に対する議会監視等実情調査議員団の一員として、ドイツ、イギリス、アメリカを訪問し、つぶさに外国の事情も調査をしてまいりましたけれども、結論は、政府による秘密指定を全てチェックしているような国はなく、そのようなことは到底できようがないというのが外国の事情でもありました。

 しかし、原則公開としている総合科学技術会議等の議事内容について、非公表の措置がとられたときに、それが妥当かどうかを国会で検証するシステムさえないというのは、本当にこれはひどい、ぐあいが悪いというふうに思います。

 国会が定期的にチェックできるように、運営規則を変えるべきではないか。大臣、いかがですか。

山本国務大臣 何度も同じことを申し上げて恐縮ですが、総合科学技術会議における審議内容等は原則として公表するということにしておりまして、これまでも適切に、資料の公表、記者会見による議論の紹介、議事要旨及び議事録の公開等は行ってきております。

 こうして会議運営における透明性の確保には努めておりますので、運営規則を変更する必要はないというふうに考えております。

宮本委員 しかし、それはチェックのしようがないので、ぜひ検討していただきたいと思うんですね。

 最後にもう一問、ImPACTについて聞きます。

 二月四日の文科委員会の質疑で、防衛省は、昨年十月二十九日、三十日、防衛省技術研究本部が都内で開催した防衛技術シンポジウムに政策研究大学院大学の白石隆学長が参加をして、民生・防衛共用のデュアルユース技術が重要になる、武器輸出三原則の見直しで国産装備のマーケット拡大が見込める、米国の同盟国やアジア諸国も日本に期待しており、その司令塔となる総合科学技術会議には防衛大臣も入れてほしいと語った事実、さらには、総合科学技術会議の久間議員が、デュアルユース技術を視野にプログラムに取り組んでほしい、防衛省は人材が豊富、人の育成とすぐれた人材の発掘でも協力してもらいたいと語った事実を認めました。

 結局、これらの会議の内容がこれほどまでに非公開にされているのは、先日の武器輸出三原則見直しの閣議決定とも相まって、最先端研究開発とか革新的研究開発とかの名のもとに、軍事研究に手を染めて、武器輸出で金もうけをしようという狙いが隠されているのではないかと私は思いますが、大臣、そうじゃないですか。

山本国務大臣 ImPACTで実施される研究開発プログラムの中身は、公募による提案を今後審査して決定されますけれども、採用された構想については、知財、個人情報等については一定の配慮をしつつ、先ほども申し上げましたが、公表されることになっています。

 本プログラムの趣旨ですが、分野や組織の枠を超えた連携、融合によって、インパクトの大きな飛躍的イノベーションを創出する、それによって社会や産業の大きな変革を目指すものです。あらかじめ特定の分野、産業を対象とする研究開発を目的としているものではありません。ましてや、軍事研究とか防衛研究を目的としているものではありません。宮本委員の真っすぐなお人柄でそのまま見ていただければ、そういう隠された意図はないということはわかっていただけると思います。

宮本委員 この二月の四日、私に対して、防衛省は、注視してまいりたいと答弁をしておりますので、ちゃんと防衛省もその気はあるというふうに答弁しているんですね。

 白石氏が述べたとおり、安倍内閣は、四月の一日、武器輸出三原則を撤廃し、武器や関連技術の輸出を包括的に解禁する防衛装備移転三原則を閣議決定いたしました。これは、半世紀近くにわたって国是とされてきた原則を放棄する大転換だと言わなければなりません。この決定は、集団的自衛権行使など安倍政権が推し進める海外で戦争する国づくりと不可分であり、絶対に認めるわけにはまいりません。憲法九条を踏みにじり、科学技術を海外で戦争する国づくりに動員する危険なたくらみには国民とともに断固反対する決意を表明して、私の質問を終わります。

竹本委員長 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木です。

 早速質問に入らせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、質問が重なりますが、ImPACTの公募状況とFIRSTの成果の検証について、あわせてお伺いをしたいと思います。

 ことしの二月に文部科学委員会で、補正予算関連法案として、独法科学技術振興機構法の一部を改正する法律案ということで質疑を行いました。ハイリスク・ハイインパクトな挑戦的研究開発を推進するために、科学技術振興機構、JSTに五百五十億円の基金を設けるものであります。生活の党といたしましても賛成をいたしまして、大変期待をするものでございます。それ以降、テーマや運用の基本方針が決定されたと伺っており、また、プログラムマネジャーの公募受け付けも終了した段階にあると伺っております。期待どおりの応募が来ているのかどうか、御所見、感触等をお伺いしたいというふうに思います。

 そして、FIRSTにつきましても、平成二十一年度のやはり補正予算で組まれまして、五年間で一千億円の基金を活用するプログラムがことしの三月末で終了いたしました。そちらの成果の検証、そして、これから、産業化、実用化へとどのようにつないでいくのか。

 あわせて、より具体的にお聞かせいただければと思います。

山本国務大臣 先ほどから何度か統括官の方からも答弁をさせていただいていますが、ImPACTのプログラムマネジャー、PMの公募については、三月三十一日まで応募を受け付けていたところですが、産学官の各方面から百八十件の応募が寄せられました。

 応募者数を所属別に見ると、産業界が全体の三分の一、五十九名、大学が約半数、八十六名、以下、公的機関勤務、個人研究者等となっております。

 また、テーマ別に言うと、テーマ一、「資源制約からの解放とものづくり力の革新 「新世紀日本型価値創造」」の割合が、実は約三割ということで最も多くなっておりまして、次いで、テーマ四の「少子高齢化社会における世界で最も快適な生活環境の提供 「誰もが健やかで快適な生活を実現」」が三割弱となっています。

 今後は、プログラムマネジャー選定過程において、ImPACTの制度趣旨と提案された内容との整合性とか、構想するシナリオの妥当性、さらには、専門的知見、イノベーションをなし遂げようとする意欲などの人物像の審査などを行って、最終的には六月をめどに、総合科学技術会議において、PM、プログラムマネジャーを決定したいと考えております。

 それから、御質問のあったFIRSTの成果の検証ですが、平成二十一年度から実施してきたFIRSTは、平成二十六年三月三十一日で終了となりました。制度の趣旨に沿ったすぐれた研究成果が得られているかどうか、その効果をしっかり検証することは大事だと考えています。

 総合科学技術会議は、FIRSTの研究課題の着実な推進を図るとともに、その事業の効果を検証するために、専門性を有する外部有識者の協力を得て、毎事業年度フォローアップを実施してまいりました。

 また、平成二十四年度は中間評価を実施いたしまして、一部の研究課題には計画の見直しを求めております。

 平成二十六年度は、当初の目標どおりの成果が得られたかどうか、各研究課題に対する事後評価を行うとともに、今後の我が国の研究開発システムの向上、施策の制度設計に活用するために、プログラムの制度自体の評価を行うこととしております。

青木委員 ありがとうございます。

 ImPACTにつきましては、今日本が抱える社会的課題を解決できるもの、また国民の理解を得られるものということで、大変期待をいたしております。

 そして、FIRSTにつきましては、これは日本を代表する三十人の研究者が大変目覚ましい成果を上げられているというふうに私は思っておりますが、先ほど大臣も触れられました山中教授のiPS細胞によります再生医療の研究ですとか、山海教授のロボットスーツHALですとか、東京女子医大の岡野教授の細胞シート等がFIRSTの成果としてございます。

 この細胞シートについて若干お伺いをしたいというふうに思いますが、御承知のとおり、薄い膜状に培養しました細胞シートを患部に張りつけるだけという画期的なこの治療法は、生きたばんそうこうとも言われておりますが、再生医療に欠かせない技術として今注目をされています。既に、角膜、食道、心臓疾患、そうした臨床試験を世界に先駆けて開始しているというふうに伺っております。

 FIRSTにおきましては、その細胞シートを安定的に量産する組織ファクトリーと、細胞シートを積層して臓器そのものを再現する臓器ファクトリーなどの開発を行ったというふうに伺っております。

 この技術の確立によって、多くの難治性疾患の方や、また臓器に障害がある患者さんたちを救えるようになることと期待をするところでございますが、FIRSTは終了いたしましたけれども、この研究の取り組みに対して、今後、政府としてどのような支援策を考えておられるか、お伺いをさせていただきたいと思います。

山脇政府参考人 お答えいたします。

 御質問の細胞シートを用いた再生医療研究についてでございますが、文部科学省といたしましても、関係府省と協力、連携しながら支援に取り組んでいるところでございます。

 具体的には、今御指摘の東京女子医大に対する支援といたしましては、先端融合領域イノベーション創出拠点形成プログラムというプログラムにおきまして、平成十八年度から十年間にわたり支援をしてきているということでございます。ですから、今後も継続的に、平成二十七年度まではこのプログラムによる支援を行うという計画でございます。

 また、これ以外には、再生医療実現拠点ネットワークプログラムにおきまして、これは大阪大学を支援するプログラムでございますけれども、平成二十五年度から、iPS細胞由来の心筋細胞シートを用いた心臓疾患に対する研究開発に取り組んでいるところでございます。

 引き続き、革新的な再生医療の実現に向けた取り組みを推進して、その成果がいち早く医療現場に届けられるように努めてまいりたいと考えております。

青木委員 ありがとうございます。

 私、存じ上げておりませんで、平成十八年から既にその取り組みが始まっているということだと思います。ぜひ、また前向きなお取り組みをお願いしたいと思います。

 もう一点、このiPS細胞を用いましたパーキンソン病治療の見通しについてお伺いをしたいというふうに思います。

 京都大学のiPS細胞研究所の研究グループが、人のiPS細胞を使ったパーキンソン病治療の臨床研究に向けた手法を確立したという報道を目にいたしました。発症のメカニズムが不明な難病の治療法の確立ということで、大変喜ばしいことであります。

 なるべく早く、多くの患者さんへお届けできるようになることを願っておりますが、安全性あるいは有効性の確認ですとか、実施計画の策定などを経て臨床研究を行うというふうに伺っておりますけれども、パーキンソン病の臨床研究の今後の見通しと、また、それに限らず、iPS細胞を利用した難病の治療法の研究について、今後の見通しについてお伺いさせていただきたいと思います。

山脇政府参考人 御質問のありましたパーキンソン病に関する再生医療についてでございますが、これに関しましては、先生今御指摘のとおり、京都大学が再生医療の実現に向けた研究に取り組んでいるところでございます。先月には、臨床研究に向けた手法を確立したというふうに発表しております。具体的には、治療に使いますドーパミン神経前駆細胞を選択的に大量培養する手法を確立したということが発表されたところでございます。

 引き続きこの研究を継続して、できるだけ早く臨床応用できるようにお願いしたいと思っておりますが、今の時点では、パーキンソン病に関する臨床研究について、患者適用の見込みの時期としては、平成二十八年度を見込んでいるという状況でございます。

 また、これ以外にもiPS細胞を用いた臨床研究につきましては、ことしの夏ごろにも、世界で初めて、目の難病であります加齢黄斑変性の患者に対する細胞移植が理化学研究所などにより行われる予定となっております。

青木委員 ありがとうございます。

 患者さんにとりましては、またその御家族にとっては、いち早くというふうに願っていると思いますが、今、平成二十八年度を目途にということのお話がございましたので、希望もまたさらに持てるのではないかなというふうに受けとめさせていただきました。

 次の質問に入らせていただきます。

 このFIRSTのプログラムとともにNEXTプログラムも行われていたわけでございますが、若手や女性の研究者を対象としたプログラムでございました。こちらも五百億円という多額の予算を費やした大きなプロジェクトであったというふうに思っておりまして、その成果についてもきちんと検証して、社会に役立てていかなければならないと考えています。

 このNEXTの成果の中で一つ興味深いものを目にいたしまして、日本原子力研究開発機構、JAEAが、海水から電気を発生させながらリチウムを分離して回収するということに成功したという報告を伺いました。

 我が国では、レアメタルでありますリチウムを南米諸国から一〇〇%輸入しております。その一方で、リチウムイオン電池等の原料としての需要も高まっておりますが、それをこの地球上に無尽蔵にあると言っていい海水から、微量ではあっても電気とともに取り出せるとなれば、これこそ革新的な、まさにハイインパクトな技術ではないかというふうに思っております。

 この件のみならず、このNEXTプログラムに対する総括についてお伺いをしたいのと、また、今後の若手、女性研究者に対する支援についてお伺いをしたいと思います。

倉持政府参考人 私の方から、最先端・次世代研究開発支援プログラム、NEXTの成果の検証につきましてお答えさせていただきます。

 このNEXTでございますけれども、研究を実施した期間は、平成二十三年二月から平成二十六年三月までの実質三年二カ月という期間でございました。その間、本当に若手の方、女性の方に一生懸命御努力いただきました。

 成果の検証といたしましては、平成二十五年度に、各研究課題の進捗状況や成果を把握しつつ、必要に応じて改善を要求する、そういったことを目的といたしまして、平成二十五年五月までの成果により中間評価を実施したところでございます。

 この中間評価結果によれば、先ほど委員から海水のリチウムの課題の御紹介がございましたけれども、評価対象とした研究課題の七割以上が順調に進捗し、当初の目的に即した研究成果が得られる見通しとなってございます。

 また、本年度、二十六年度に事後評価を実施することとしておりまして、各研究課題の進捗と成果の検証を行うとともに、プログラムの効果についての総括を行わせていただく予定としております。

伊藤政府参考人 若手研究者、女性研究者に対する支援についてお答えさせていただきます。

 今御質問の若手研究者、女性研究者、これは、我が国が人口減少、少子高齢化社会に向けまして、引き続き成長を続け、新たな価値を生み出していく際に、科学技術・イノベーションの担い手として極めて重要でございます。

 このような観点から、文部科学省におきましては、若手研究者につきましては、これまで、博士課程の学生さんも含めて経済的な支援、あるいは、みずからの研究に専念できる研究環境の整備、また、必要なキャリアパスの開拓、これらの支援策を講じてきたところでございます。

 さらに、平成二十六年度予算におきましては、研究者の流動性を高め、キャリアアップを図る取り組みといたしまして、科学技術人材育成のコンソーシアムの構築、これを実施することといたしております。

 他方、女性研究者につきましては、我が国の女性研究者の割合が諸外国と比較して低いという現状にあることを踏まえまして、これまでも、女性研究者の研究と例えば出産、育児等との両立を図り、研究を継続するための支援を行う等を講じてきたところでございます。

 今後も、これらの取り組みを引き続き推進しますとともに、平成二十六年度予算におきましては、新たに複数の大学、研究機関等と連携し、女性研究者の研究力向上を図る取り組みを支援してまいりたいというふうに考えてございます。

 これらの取り組みを通じ、引き続き、若手研究者や女性研究者などの育成や雇用の安定を図り、その活躍の促進を図ってまいりたいと考えております。

青木委員 ありがとうございます。

 女性研究者については、総務省の統計によりますと、十二万七千八百人ということで、研究者全体に占める割合は一四・四%と、実は過去最多ではあるのですけれども、今御答弁にありましたとおり、諸外国と比較しますと、まだまだ大きく見劣りをするという現状でございます。

 昨年の本委員会で理化学研究所の横浜キャンパスを視察いたしました際に、研究所に保育所が併設されているのを御案内いただきまして、やはりこうした女性が活躍しやすい環境を整えるということは大変女性にとってはありがたい支援でございまして、ぜひそうした取り組みを今後とも続けていただきたいというふうに思います。

 午前中の野依理事長の御答弁でも、若手、また女性、外国人、民間と、研究人材に厚みを持たせていくことが必要だということでございましたので、ぜひ大臣におかれましても、そうした積極的なお取り組みを今後ともよろしくお願い申し上げたいと思います。

 最後の質問になろうかと思いますけれども、昨年の五月でしたか、本委員会で山本大臣に質疑をさせていただきまして、お膝元の群馬県の企業ですとか私の地元の企業を例に、地域発のすぐれた技術に光を当てて、都道府県や市町村の関係者の方々からも意見を伺う機会をつくって、日本の成長戦略の底力としたらいかがかということの御提案をさせていただきましたところ、地方発のすぐれた科学技術の例を集めた大変貴重な資料をその後お届けいただきまして、改めて御礼を申し上げたいというふうに思います。

 その際に、地域発の技術を持った関係者の方々との意見交換の場をぜひ設けていきたいというお知らせもいただいたんですが、その後、そうした意見交換の場を設けられたのかどうか、もし実現なさっていれば、どのような成果と、そしてまた課題があったのか、お聞かせをいただければと思います。

山本国務大臣 その質問にお答えする前に、まず、科学技術・イノベーション政策について、一言、ちょっと申し上げさせていただきたいと思うんです。

 FIRSTの成果について、青木委員が大変高く評価していただいたことに感謝申し上げたいと思います。

 きょうの質疑の中で、山中先生のiPS細胞、それから山海先生の介護ロボットHAL、それから岡野先生の、先ほどおっしゃった細胞シート、これがFIRSTの中で生まれたというのはちょっと違うんじゃないかというふうな御指摘もありましたが、もともとFIRSTは、最先端の研究分野で活躍をされている三十人の方々を厳選して、その方々の研究を支援するというプログラムで、その方々の研究を生み出したというわけではありませんけれども、この研究を前に進める、飛躍させるためには大きな成果があったというふうに思っています。

 それからもう一つ、きょう、言い足りなかったと思うのは、FIRSTは、もちろんいい成果も上げましたが、当然課題もあります。そういうことを踏まえて、実はImPACTができた。きょう、伊東先生の方から、研究者はあくまでも研究のスペシャリストだというお話がありました。中には、プレーイングマネジャーができる、例えば産業化に結びつけられる方もおられると思いますけれども、やはりそこがなかなかつながらないので、伊東先生がおっしゃった、死の谷が越えられない。

 何でDARPAのプログラムマネジャーなのかというと、プログラムマネジャーがハイレベルな研究開発をまさに産業化に結びつける役目をしているということで、実は、いつも私は言うんですけれども、プロデューサーを応援する仕組みだということなので、ちょっと言い足りなかったところだけ申し上げたいと思います。

 それから、青木議員の御発案で、昨年六月、卓越した技術で地域からイノベーションを起こされている中小企業三社の代表の方々をお呼びして、意見交換会を実施いたしました。その後、御報告したつもりだったんですが、御報告がなくて本当に大変失礼いたしました。

 意見交換会では、三社の代表の方から、それぞれの地域の企業が持つ、世界に誇る技術の紹介をいただきました。また、実際の製品サンプル等も手にとって、そのすばらしさを実感することができました。

 やはり、これは青木委員があのときの質問でもおっしゃったように、卓越した技術を持つ地域の企業は、日本の物づくりの源泉だと思います。科学技術イノベーション総合戦略においても、こうした地域の企業がイノベーションを起こしていくための取り組みの重要性を盛り込ませていただきました。確実に成果が出るように、引き続きフォローしていきたいと思いますし、また、こういういろいろな御提案があれば、ぜひ、委員会の場でも結構ですから、どんどん出していただければというふうに考えております。

青木委員 大変ありがたいと思っております。

 今、山本大臣から、ImPACTにかける、ImPACTのみならず、科学イノベーション全体にかける意気込みも含めて、御決意をいただいたというふうに思っております。大変心強く思いました。

 そして、地域発の技術にさらに今後とも光を当てていただきたいというふうに思いますし、これも新聞報道で恐縮ではございますけれども、JST、科学技術振興機構、基金を積んだところでございますが、このJSTと地方銀行が連携を図って、地域の中小企業を応援していこうという動きがあるというふうに伺いました。

 中小企業にとりますと、研究開発費の助成が受けられる、そうした機会がふえるということや、JST主催の研修にも参加ができるということで、中小企業自身の人材育成とともに、金融機関もともに連携を図っていただけるということで、事業化を進める際の資金需要にも対応できていくということと受けとめておりまして、やはり、地域の技術と、日本の経済の足腰と言われている中小企業、ここへの応援体制、支援体制も、今後ともさらに進めていただきますようにお願いをしたいというふうに思いますが、もし御所見があれば伺いますけれども、それで終わらせていただきます。

山本国務大臣 JSTは文部科学省の所管ですので、私が申し上げることはないんですが、ちょっとその件について一言、また申し添えたいことがあります。

 先ほどの答弁で、ImPACTは文部科学省のプロジェクトではないということを申し上げました。JSTの枠組みをおかりしている、これは内閣府の総合科学技術会議が主導してきたと。ImPACTの創設に当たっても、総合科学技術会議が中心になって制度設計をしてまいりました。

 ただ、やはり、このImPACTの趣旨に、研究開発の分野で主要な役割を果たす文部科学省にも、きちっと理解をしていただいて協力をしていただいている。関係各省にもいろいろと協力をしていただいてこのImPACTを運営していくということなので、もちろん総合科学技術会議がしっかり司令塔としてグリップは握りましたけれども、ちょっと言い過ぎたので、そのことだけ申し上げておきたいと思います。

 JSTについては、文部科学大臣がきちっと運営をしていっていただけるんじゃないかと思います。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省といたしましては、地域が主導し、その地域の特性を生かしました地域発イノベーションの創出に向けて取り組んでいくということ、これは、地域の活性化でございますとか、あるいは国の科学技術の高度化、さらには多様化にとって極めて重要であるという認識をいたしております。

 その際、地域が自立的、継続的にイノベーションを生み出していくためには、これまでの産官学の連携に加えまして、ただいま委員のお話にございました、地元企業との強力なネットワークを持っておられる、あるいは将来的な、中小企業を初めといたします資金供給源となり得る地域の金融機関との連携、これが極めて重要であるというふうに認識をいたしております。

 これら地域の金融機関と大学等研究機関のシーズを保有するJSTが連携協力をすることで、シーズの開発から事業化まで円滑に行われることが期待されるということでございますので、文部科学省といたしましても、この取り組みを積極的に支援してまいりたいというふうに考えております。

青木委員 ありがとうございました。

 私は、その組織論的な部分がまだわからない部分はありますけれども、成長戦略、国家戦略として、やはり司令塔機能としてしっかりその役割を果たしていただくことを御期待申し上げ、また、文部科学委員でもありますので、またそちらの方でも質疑を進めていきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

竹本委員長 長時間、全員御出席のもと、熱心な御討議、本当に御苦労さまでございました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十一分散会


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