衆議院

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第1号 平成23年4月20日(水曜日)

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平成二十三年四月二十日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

  法務委員会

   委員長 奥田  建君

   理事 滝   実君 理事 辻   惠君

   理事 樋口 俊一君 理事 牧野 聖修君

   理事 平沢 勝栄君 理事 大口 善徳君

      相原 史乃君    井戸まさえ君

      磯谷香代子君    大泉ひろこ君

      川越 孝洋君    京野 公子君

      熊谷 貞俊君    黒田  雄君

      桑原  功君    階   猛君

      橘  秀徳君    中島 政希君

      野木  実君    福島 伸享君

      三輪 信昭君    水野 智彦君

      山崎 摩耶君    横粂 勝仁君

      北村 茂男君    柴山 昌彦君

      棚橋 泰文君    徳田  毅君

      城内  実君

  青少年問題に関する特別委員会

   委員長 高木美智代君

   理事 岡本 英子君 理事 川村秀三郎君

   理事 城井  崇君 理事 高井 美穂君

   理事 湯原 俊二君 理事 棚橋 泰文君

   理事 松浪 健太君 理事 池坊 保子君

      小野塚勝俊君    金子 健一君

      神山 洋介君    川口  浩君

      橘  秀徳君    橋本 博明君

      初鹿 明博君    花咲 宏基君

      松岡 広隆君    皆吉 稲生君

      山田 良司君    横粂 勝仁君

      吉田 統彦君    馳   浩君

      宮本 岳志君

    …………………………………

   法務大臣         江田 五月君

   国務大臣         蓮   舫君

   内閣府副大臣       末松 義規君

   法務副大臣        小川 敏夫君

   厚生労働副大臣      小宮山洋子君

   内閣府大臣政務官     園田 康博君

   厚生労働大臣政務官    小林 正夫君

   最高裁判所事務総局民事局長兼最高裁判所事務総局行政局長           永野 厚郎君

   最高裁判所事務総局家庭局長            豊澤 佳弘君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 田中 法昌君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          後藤  博君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    原   優君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            鶴岡 公二君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          山中 伸一君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ・青少年総括官)          有松 育子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           石井 淳子君

   法務委員会専門員     生駒  守君

   衆議院調査局第一特別調査室長           金子 穰治君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三一号)


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     ――――◇―――――

奥田委員長 これより法務委員会青少年問題に関する特別委員会連合審査会を開会いたします。

 先例によりまして、私が委員長の職務を行います。

 内閣提出、民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本案の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付してあります資料により御了承願います。

 これより質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。相原史乃君。

相原委員 相原史乃でございます。

 本日は、法務委員会そして青少年特別委員会連合審査会におきまして、民法等の一部を改正する法律案におきます質問の機会をいただきましたことに、心より感謝申し上げます。

 去る三月十一日に起きました東日本大震災におきまして多くの方々の人命が奪われましたことに深い悲しみを感じますとともに、いまだに避難所にいらして不便な生活を余儀なくされていらっしゃる多くの方々に対し、心よりお見舞いを申し上げたいと思います。

 さて、今回の東日本大震災では、多くの子供たちの親権者も亡くなり、特に御両親を亡くされた子供たちは昨日で百名を超えているとの報告を受けております。このような震災孤児に対しては、現在、一般生活費、入学支度金、学用品費、学習塾や部活動の実費支給に加えまして、政権交代後実現しました子ども手当も月額一万三千円が支給されることになっております。今後も震災孤児を社会全体で支えていく必要があると強く感じております。

 震災孤児は、今のところ、親族のところに身を寄せており、児童養護施設等に入所しているお子さんは今のところいないと聞いております。現状の一時避難先としての親族の方々も被災者であることを踏まえますと、今後は施設に入所する子供たちがふえていく可能性があります。未成年後見人の選任をする場合も今後多く出てくることが予想されます。

 その際、未成年後見人の選定に当たっては、戸籍謄本などの七種類にも及ぶ申し立て書類が必要でございますけれども、家庭裁判所におかれまして、特殊事情を考慮し、必ずしもすべての書類がそろわなくても申し立てを認める等の弾力的な運用をぜひお願いしたいと思っております。肉親を亡くし、つらい思いをしている子供たちに負担をかけることのないようにしていただきたいと思います。

 この点につきまして、最高裁判所事務総局にお伺いしたいと思います。

豊澤最高裁判所長官代理者 最高裁判所のウエブサイトなどには、申し立ての際に提出していただく標準的な書類としてこのようなものがあるということで掲載をいたしております。しかし、今回の大震災の影響によって、そうした書類をすべて整えることができない、準備することが困難なものがあるというような事情、これも大いにあり得ることだと思いますけれども、そのような場合には、各裁判所におきまして、事案に応じて柔軟な対応がなされるものというふうに考えております。

相原委員 大変安心いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、今回の民法の一部を改正する法律案に関する質問をさせていただきたいと思います。

 今回の法改正は、児童養護の第一線で活躍されている全国社会福祉協議会や全国乳児福祉協議会の幹部の方々からも大変高い評価の声をいただいております。関係各所の皆様の御尽力に心より感謝申し上げます。

 法務委員会でこれまで審議を重ねてきました質疑内容との重複を避けつつ、以下の質問をさせていただきます。

 最初に、現場の方々の強い要望であり、今回の改正の特徴でもあります未成年後見制度について質問させていただきます。

 第八百四十条第二項では、家庭裁判所が必要であると認めたときは、複数の未成年後見人が許容されることを前提に、未成年後見人の追加選任を認めるようになっていますが、この未成年後見制度を着実に推進していくための具体的な方策はどのように考えられているのでしょうか。例えば、未成年後見人の選任や報酬に対する公的支援は今後想定されているのでしょうか。また、被後見人の不法行為に対する賠償責任の保険を未成年後見人は掛けられるのでしょうか。

 特に、以前の親族を前提とした未成年後見人ではなく、今回の改正では、法人を未成年後見人に選任することも許容することになっておりますので、この点は明確にする必要があるのではないでしょうか。厚生労働省の方にお答えをお願いいたします。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 児童福祉施設等で生活する子供たちの中には、親権を行う者がいない者もあり、退所後に自立していくためには、身上監護と財産管理を行う未成年後見人の存在は大変重要であります。また、このたびの大震災で、ひときわそういう必要性が高まってきているのではないかなと思うところでございます。

 一方で、未成年後見人の報酬や、あるいは被後見人、子供が第三者にけがを負わせたり他人のものを壊してしまい、未成年後見人に損害賠償責任が生じた場合の賠償責任保険の保険料負担が必要という意見もあると承知いたしております。

 今般の制度改正におきまして、法人や複数人が未成年後見人になれることになりますことから、子供の権利擁護の観点から、法人等が未成年後見人となる場合にどのような支援が可能か、検討してまいりたいと思っております。

 ちなみに、私ども、この問題について検討いたしました社会保障審議会児童部会児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会の報告書の中におきましても、未成年後見人の引き受け手を確保する観点から、「必要な経費を補助するなど未成年後見人となる者のサポートを進めることが必要」というふうに報告をいただいているところでございます。

相原委員 どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、児童虐待の四つの類型のうち、特に心理的虐待について質問させていただきます。

 配付資料をごらんください。一枚目の上のグラフは、児童相談所におけます児童虐待の相談件数に関するデータです。下のグラフは、相談件数を種類別にパーセンテージであらわしたものです。これらのグラフを見てみると、上のグラフでは、児童虐待に関する相談件数のすべての種類が年々増加していることがわかります。さらに、下のグラフでは、種類別の比率を見ると、赤い折れ線であらわしましたように、心理的虐待の比率が特に増加していることがわかります。

 次に、裏をごらんください。左側が、児童虐待事件の検挙件数をグラフ化したものです。そして右側は、罪種別検挙件数の推移です。これらのグラフを検討してみると、心理的虐待に関する検挙件数がゼロであることがわかります。この原因として、検挙するための刑法罰が設けられていないことが挙げられると思います。

 心理的虐待を防止する法律として児童虐待防止法がありますが、罰則規定はありません。また、児童虐待防止法では、第十一条で児童虐待を行った保護者に対する指導、第十二条で面会制限等の規定を設けておりますが、児童相談所への相談件数の比率が増加傾向にある心理的虐待について、現状の対応のままでよいのでしょうか。厚労省の方にお伺いしたいと思います。

石井政府参考人 御指摘のとおり、児童相談所の相談対応件数のうち、心理的虐待の割合、件数ともに増加傾向にございます。

 心理的虐待の対応につきましては、保護者指導による保護者の養育態度の改善、それから、虐待を受けた子供の心のケア、これが大変重要だと考えております。

 このため、保護者指導を強化させるために現在行っているものとしましては、保護者への援助に関する基本的ルールを定めた、児童虐待を行った保護者に対する援助ガイドライン、これを平成二十年三月に策定いたしておりまして、その中で、児童福祉司等による面接や家庭訪問での指導、支援、関係機関が実施するプログラムへの参加の促進などをお示ししております。また、予算面におきましても、保護者指導支援員や精神科医などを児童相談所などで活用するための経費を補助いたしております。また、子供の心のケア、これを進めていくために、児童心理司によるカウンセリングや心理療法の実施、施設における心理療法担当職員の配置の促進、さらには情緒障害児短期治療施設の設置などの取り組みを行っております。

 今後とも、こうした取り組みを通じまして、心理的虐待の対応についてしっかり取り組んでまいりたいと思っております。

相原委員 ありがとうございました。

 心理的虐待は、この後質問させていただきます親の懲戒権と混同する部分が多く、児童相談所などにおきましても扱いにくい事象と考えられております。明確に心理的虐待に対する刑法罰をつくるか、もしくは、身体的虐待や性的虐待、ネグレクト、心理的虐待など事象別に対応策をとっていく、そういった方法も提案させていただきまして、次の質問に移らせていただきます。

 懲戒権につきましては、既に山崎摩耶先生が御質問されておりましたが、この懲戒権は大変重要な論点であると考えておりますので、私からも質問させていただきます。

 明治三十七年二月の大審院における判例が現在の懲戒権に関する通説となっているようですが、このときの事件内容は次のとおりです。

 知能発育不十分の長男が不従順であることに怒った父親が、頭部を棒二本の間に挟み、両端をくいと樹木に結びつけ、縄で両手を背後に縛り、小屋に押し込め、こん棒で数回殴打し、約三時間監禁した。この行為によって父親は制縛監禁罪で訴えられました。

 そのような事件でしたけれども、このときの判決は次のとおりです。

 懲戒の程度、手段に関しては、必要なる範囲を逸出せさる限りは、制縛監禁しまたはこれを殴打するの必要があれば、法律上これをなすことができる。

 つまり、明治三十七年の判決では、子に対する体罰も含めて正当な懲戒行為とみなしておりました。

 このような明治時代からの懲戒権をなぜ今回の改正で削除もしくは変更できなかったのでしょうか。大臣にお伺いいたします。

江田国務大臣 この懲戒権というのは古くて新しい課題で、懲戒権という言葉はもう要らないんじゃないか、そういう議論は随分これまでもございました。

 明治時代の判例、私はその中身までちょっと承知をしておりませんが、もし今委員が言われたような懲戒行為が懲戒として許されるとするなら、それはやはり現代ではもう許されないような行為であることは明らかだと思います。

 時代によっていろいろ変わってまいりまして、懲戒とか、あるいは監護、教育とか、法律は民法じゃありませんが、しつけとか、いろいろな言葉がありますが、大体皆同じような言葉で、子の福祉のために親が子に行うしつけということだろうと思っております。

 それなら懲戒というのは要らないんじゃないか、懲戒という言葉が児童虐待の正当化のために使われているんじゃないか、そういう問題意識はよくわかるんですが、しかし、これは多くの識者の議論をいただきまして、懲戒という言葉がなくなると、逆に今度は親が何もできなくなるんじゃないか、しつけなどをできなくなるんじゃないか、そういうような誤った理解を社会に与える、それはやはり国民的な理解を得られないんじゃないか、そのような議論もあって、今回は児童虐待の防止という観点から民法を見直すということだったので、懲戒という言葉は残し、ただし、子の利益のために行使することですよと、そのことを明確にしたということでございます。

 ぜひ御理解いただきたいと思います。

相原委員 親の懲戒権には一般的な限界があり、懲戒権の限界範囲は社会通念によって定められ、時代背景に即して判断されるようですが、民法に懲戒の程度、手段の限界範囲について何の規定もありません。親の懲戒権は、時代背景や社会通念から何をもって懲戒とされるのか、具体的な範囲を規定した方がよいのではないでしょうか。

 例えば、児童虐待と懲戒権とは具体的にどのような差異があるのか、明確な見解をお願いしたいと思います。大臣、よろしくお願いいたします。

江田国務大臣 懲戒という言葉で児童虐待が正当化されるはずはありません。児童虐待は児童虐待で、これもいろいろな態様があると思いますが、これは許されるものではない。あくまでも、懲戒というのは、子供のために、子の利益のために親が行う監護、教育の範囲でなきゃなりません。

 そのことについて、具体的な基準を法律で書くといいましても、これは、それこそ親と子の関係というのは、個々それぞれが親子の関係なので、これが親子の関係ですという模範解答を国が出すというようなものとは違うと思うんですね。それぞれの親子の関係が愛情に結ばれ、あるいは安らぎの場であり、そういう信頼関係であり、そうしたそれぞれの持ち方ということですから、これはやはり親が子の利益を思って最善のことをしていくということに尽きるので、やはり個別の事情に譲るべきであると思っております。

相原委員 現代において、児童虐待がふえております。児童虐待防止法が議員立法で成立してきた流れの中で、児童虐待を予防、防止していくために、社会全体で子供を育てる環境を整備していく必要性を強く感じております。

 懲戒権という言葉について、親が子供を懲戒するという言葉は、その言葉自体が、社会通念上、使用することが一般的ではないと思います。懲戒は懲らしめ戒めると書きますので、一般には児童虐待を連想させる文言でありますけれども、懲戒という言葉は、しつけの方がより妥当ではないかと私は感じております。

 しつけとは、三省堂の大辞林第二版によれば、「子供などに礼儀作法を教えて身につけさせること。また、身についた礼儀作法。」と定義されております。さらに、しつけという言葉は中国にはない言葉で、日本人がつくった国字ですし、身を美しくすると書いてしつけと読みますので、やはりしつけという言葉がよいのではないかと思いますので、ここで一つ提案をさせていただきたいと思います。

 親の懲戒権を、親が子をしつける権利として変更することはできないのか、大臣にぜひこの見解をお伺いしたいと思います。

奥田委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。

江田国務大臣 いい言葉だと思います。

相原委員 ありがとうございました。

 時間が来ましたので、質問を終わります。

奥田委員長 次に、川口浩君。

川口(浩)委員 川口浩でございます。

 まずは、さきの東日本大震災、私も先週、先々週と現地へ参ってまいりましたが、本当に悲惨な状況で、日々の生活にも困っていらっしゃいます被災者の皆様、そしてお亡くなりになられました方々の御冥福を心よりお祈りし、またお見舞いを申し上げます。

 さて、今回の児童虐待の防止等を図るための親権にかかわる制度の見直しに関するさまざまな法律案についてお尋ねをさせていただきますが、近年、子供たちが犠牲者になる大変痛ましい事件が毎日のように報道されてしまうようになってまいりました。これは、今相原委員からもありましたように、しつけと親のわがままとどうも勘違いしている人がふえてきてしまった、こういうのが背景にはあるのではないかと思います。

 私は、二十年間以上、学校保健の場で学校医として歯科の健診に携わってまいりましたが、児童の状況を見ておりましても、ここ数年、間違いなく、ネグレクト、虐待傾向の児童が確実にふえております。児童相談所、各施設等関係行政各位の皆様の御尽力には心より敬意を表すものでございますが、これまで、どうもやはり親権の権利の側面ばかりが強調されてきたために、子の利益が害される状況にあったのではないかなというのが、感ずるところでございます。特に、必要な医療を受けさせないケース、並びに、進学等に親のわがままで強く反対する等、親権者への対応に関係する皆様が疲弊している状況があるのも事実ではないでしょうか。

 この点につきまして、今回の本法律案ではどのような措置を講じておられるのかをまず御質問させていただきます。

江田国務大臣 親権というのは、これはもし権利義務ということでいえば、親の、子供を監護、教育し、またその財産を管理する権利であり、同時に、子供のために監護、教育し、財産を管理する義務でもございます。これはもともとそうなんです。しかし、そのことが明文上余りはっきりはしておりませんでした。そこで、今回、親権の行使というのは子の利益のために行うんですよ、このことを明文化した。今委員おっしゃる点ではこれが一番重要なところだと思っております。子の利益ということです。

川口(浩)委員 大変結構な取り組みであると思います。現場において円滑かつ適切な運用が迅速になされますようにぜひとも周知を図るとともに、広く国民に対しても広報活動を行っていただけますようにお願いを申し上げます。その上、できるだけ早期にこの改正案を施行することができますように、自治体や関係団体等と準備を進めていくこともあわせてお願いいたします。

 次に、今回の東日本大震災では、今相原委員からもありましたが、両親を失い、親権を行う者がいなくなった状態のお子様たちも多数いらっしゃると思われます。本法律案は、そのような状態になりました子供たちへの対応の点においても十分な配慮がなされているものなのかどうかをお尋ねさせていただきます。大臣、お願いします。

江田国務大臣 私も被災の現場に行ってまいりましたが、本当に悲惨な状況でございます。そんな中で、多くの子供たちが両親を失う、未成年後見人を選任する必要がある、そういう子供たちがたくさんいるものと思われます。既に現在、これは厚生労働省の調査による確認状況ですと百十人ということになっているようですが、恐らくまだまだふえていくのだろうと思います。

 こういう子供たちに未成年後見人をしっかりと選任して、そしてその育ちに落ち度がないようにしていくこと、これは私どもみんなの務めだと思っておりまして、今回の法改正によってそうしたさまざまな制度的な整備が一日も早く図られることが望まれていると思っております。

川口(浩)委員 日本の未来を担う子供たちがどのような状況においても十分に保護され、伸び伸びと生活できる環境をつくり上げていくためにも、一日も早く今大臣がお答えになられました改正法が施行されることを願っております。ありがとうございました。

 次に、被災地での子供たちの状況について若干御質問をさせていただきます。

 私は福島県の田村市と宮城県の亘理郡山元町というところで、先週、先々週と、何日か医療ボランティアとして歯科診療を行ってまいりました。ある小学校にお邪魔したときに二十一名の児童の方の歯科健診を行わせていただきましたが、残念ながら、そこまで生活の細かいところに対する心配りができる余裕がないために、九〇%以上の児童が歯磨きが不十分であり、六名の児童が要治療、たった二十一名のうちの一名、二名の児童にもネグレクトの傾向が早くも見られておりました。これは、私の経験からいうと平均を大きく上回ってしまう状態ではないかと思います。

 また、違う避難所では、津波に追いかけられて逃げてきた児童が多く生活しておりまして、震災から数週間経過し、少し落ちついてきた今ごろになって、睡眠中、明らかにうなされておりまして、それによるストレスによる歯ぎしり、それから、被災地を自分の目で見たときにどうしても緊張して歯を食いしばる等、そうしたストレスを感じる場面が多い生活をする状況でございました。

 被災地での学校生活も徐々に再開されてはおりますが、児童の健康状態はもちろん、心理状態を把握し、避難所、仮設住宅での生活が長引くとされる現状で、これから増加が心配されますネグレクト、虐待を未然に防ぐためにも、基本的に六月三十日までに行うこととなっております学校健診をできるだけ早期に行うべきと思っております。

 外傷のない児童でも、歯科の健診によってネグレクト、虐待を早期に見抜くことは可能でございます。ネグレクトを受けている児童は、治療を受けさせてもらえないために歯が溶けたりしてしまっております。ところが、現場の養護教諭や保健の先生、学校長等が申しますには、現在の学校ではとても学校健診ができる状況にはなっていないとの御意見でございました。

 これはなぜなのかを文部省の関係の方にお尋ねしたいと思います。

有松政府参考人 お答えを申し上げます。

 学校における児童生徒等の定期の健康診断につきましては、ただいま先生から御指摘のございましたように、毎学年、六月三十日までに実施することとなっております。例年でありましたら、実施計画とか実施要項を作成の上、現在、各種準備を進めて健診を実施しているというような状況にあるわけでございますけれども、現在、特に被災地におきましては、その準備を円滑に進められる状況にはないということが一つ考えられると思います。

 また、学校での健康診断におきましては、学校医及び学校歯科医がその役割を担っていただくことが大きいわけでございますが、当該地域におきましては、学校医及び学校歯科医御自身も被災をされておりまして、学校における健康診断に従事していただけないというような場合もあるというふうに聞いておるところでございます。

川口(浩)委員 そうしますと、学校医、学校歯科医にかかわらず、教育委員会の関係者、教員の皆様方も当然被災されている方も多いわけでございます。その場合に、臨時の増員として学校医や学校歯科医等をほかの地域、他府県等から派遣して、そういった事業を応援するということも可能かどうか、そのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

有松政府参考人 お答えいたします。

 学校保健安全法におきましては、学校には学校医を、そして大学以外の学校には学校歯科医をそれぞれ置くものとしているところでございますが、定員についての定めがあるものでもなく、したがって、他の都道府県の医師や歯科医師の方を学校医及び学校歯科医として任命し、または委嘱するということは可能でございます。

 なお、被災した学校の再開に当たりまして、私ども文部科学省からは、社団法人日本医師会及び社団法人日本学校歯科医会に対しまして、定期または臨時の健康診断や健康相談の円滑な実施のために、学校医及び学校歯科医の派遣など格別の御配慮をいただくように依頼を申し上げているところでございます。

 文部科学省といたしましても、学校における健康診断が適切に行われますように、引き続き関係機関に御協力を依頼しながら支援してまいりたいというふうに考えております。

川口(浩)委員 被災地では、これから仕事を探したり、身元不明者の方の捜索、瓦れきの撤去など、復旧復興に向かう、大人がやることがたくさんございます。危険な場所が多い被災地では、どうしても、日中、幼い児童を避難所に残したまま外出せざるを得ない状況の保護者も多数いらっしゃいます。放課後、夏休み等の長期休暇に児童が避難所や仮設住宅に取り残されることがないよう、関係省庁の皆様には、ぜひ新しいシステムづくりをお願いいたします。

 一つだけ、意外でございましたが、ある児童の方が、避難所の生活をふだんの生活より人が大勢いて楽しいと言った子供がいたんです。どうしてかなと思ったらば、その子供は、自分の家がなくなったことを知らない、津波を見ていない。ですから、これからだんだん真実のことがわかっていくに従いまして、震災により心に負った傷がだんだん大きくなっていくのではないかと懸念されることもあります。

 これ以上心の傷を大きくしないためにも、皆様方、ぜひとも全力を挙げて一緒に取り組んでいただけるようにお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

奥田委員長 以上で川口浩君の質疑を終了いたします。

 次に、柴山昌彦君。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦です。

 今回提出されている親権についての民法改正案についてですが、二〇〇〇年、平成十二年に、実は民主党が議員立法案をまとめています。そこでは、子供に対する懲戒について定めた民法八百二十二条は削除することになっていましたが、江田大臣は当時、党内でどのようなお立場でしたか。

江田国務大臣 かなり古いことなので十分記憶をしていないんですが、資料をいろいろ調べましたら、当時、民主党の司法ネクスト大臣というものを務めておりました。これは、詳しい説明はいいかと思いますが、影の内閣ではちょっと暗いので、明日の内閣というものをつくりまして、ネクスト大臣という制度を入れて、その司法を担当していたわけでございます。

柴山委員 そして、今回は、表の大臣として法案を提出されたんですけれども、この法案では、先般から出ているとおり、条文が削除されておりませんけれども、なぜでしょうか。端的にお答えください。

江田国務大臣 経過を調べてみますと、当時、民主党が用意をしました児童虐待の防止等のための体制の整備に関する法律案、これは、私は司法ネクスト大臣ですが、千葉景子男女共同参画・人権・総務ネクスト大臣がネクストキャビネットに提案をして、了承を受けております。そこで、私から提案しているものではなくて、しかも、これは国会には提出をされていないものでございまして、最終的に国会に委員長提案で現在の児童虐待防止法が提出されて、そして成立をした、そういう経過でございます。

 さはさりながら、私どもが取りまとめました今の児童虐待防止の法律案では、民法改正をして、懲戒というところを削除することになっているのは事実でございます。それは、その当時の、これはプロジェクトチームがございまして、田中甲座長のところでそういうものを取りまとめたということでありまして、民主党の中の議論でそうなった。

 今回は、私どもが提案をさせていただいたのは、さまざまな識者の皆さんから、法制審の答申なども含めて議論をしていただいて、懲戒権というものを削除する案ももちろん検討されましたが、しかし、さまざまな事情から、今懲戒という言葉を削除することによってかえって誤った認識を広げることになってはいけない、それよりもむしろ、懲戒という言葉は残しながら、ただし、これは子の利益のために行われるものですよ、そのことを明確に記述することの方が、社会の誤解を防ぎ、児童虐待を防ぐことに資するのではないか、そういう思いから今回の文言ということになったわけでございます。

柴山委員 長い御答弁でしたけれども、短くまとめると、いやいや、自分はネクスト大臣だけれども、実際にこれをまとめたのは千葉景子さんだよと。それから、学べば学ぶほど、やはりこの条文を削除するといろいろ問題がある。

 確かに虐待は許されないことです。しかし、条文を削除することは、当然、先ほど来お話があるように、必要なしつけまでもが許されないという誤った考え、イデオロギーと言ってもいいかもしれませんが、こういうことを広げかねないわけです。当時、大臣は、ネクスト大臣という立場にありながら、そういう御発言をし、そして党内論議に生かしてこなかった。このことは私はしっかりと反省していただかなくてはいけないというように思って、次の質問に移らせていただきます。

 これまでは、親権の喪失などについて家庭裁判所への請求権を有していたのは、子の親族と検察官に限られていました。これを今回の改正法では、子供本人にも請求権を認めています。

 しかし、児童の裁判申し立ては有効なんでしょうか。具体的に何歳の子供がどう請求することを想定しているんですか。

江田国務大臣 この法律案では、年齢を問わず、意思能力がある限り子に請求権を認めるということにしております。子供がそういう家庭裁判所への親権喪失等の申し立てをすることができるか。これはできるということにしているわけです。

 ただし、もちろん、そういうことを行う意思能力がなければそれは当然できないわけでありまして、実務では、十五歳以上であれば、特段の事情のない限り、意思能力があるものとして本人の申し立てを認めているということだと承知をしております。

 それ未満の年齢ではだめだと一律に決めるのではなしに、まさに事案ごとの本人の成熟度等の判断によって決まるということでございます。

柴山委員 十五歳以上は、それは遺言もできるし、養親子契約だってできるから、これはできるのは当然だと思いますよ。

 ただ、今大臣が、意思能力があればできる扱いになっているというふうにおっしゃいましたけれども、これまで、意思能力というのは小学生でも認められているんですよ。今おっしゃるように、ケース・バイ・ケースで、裁判所に対する申し立てが、あるいは有効だ、あるいは無効だ、こんなことになったら、これは私は手続の安定というものを極めて阻害するんじゃないかと思っています。

 それともう一点。弁護士に対してこれを依頼する、子供が一人じゃできないから弁護士に対して依頼するということも当然想定されると思うんですが、弁護士に対する委任契約は有効なんですか。

江田国務大臣 有効な場合も無効の場合もあると思います。

柴山委員 そのメルクマールは何でしょうか。

江田国務大臣 子供の法律行為を行う能力は、一般には、これは未成年者ですから、親権者なりあるいは未成年後見人の同意が要るわけでございますが、しかし、専ら権利を受けあるいは義務を免れる、これについてはそうした同意が要らないということで、したがって、弁護士との契約においても、弁護士に対する報酬債務を負わなければ、これは子供も弁護士と契約ができることになるということでございます。

柴山委員 要は、私的な関係で弁護士を頼むということは事実上できないということなんですよ。こういうことをもっとしっかりと議論した上で法律の制度設計というものをしてもらいたいというように思います。

 また、午前中の参考人に対する質疑で、子供が申し立てをするということによって、親子関係が再統合ができなくなってしまうような決定的な事態にならないかというようなことも言われていましたけれども、御説明の中では、いやいや、家庭裁判所と児童相談所とか関係者の連携を密にして適切に対応しますと。場合によっては取り下げということもあるかと思うんですけれども。

 まず、取り下げが有効なのかということと、あと、そういう連携をしなくちゃいけないということが何かに書いてあるんですか。

江田国務大臣 例えば、十七、八ぐらいの子供で親から性的虐待を受けて弁護士と相談をしている、こういうような場合もあるわけです。そういう場合に、その子が弁護士を代理人として親権の停止や喪失を求めるということ、これは容易に想像できる具体的事案だと思います。(柴山委員「報酬が発生しなければね、弁護士報酬が」と呼ぶ)もちろんです。報酬は発生しない場合でなければ、さっき申し上げたとおりです。

 そして、そういう場合に、それでは再統合は無理じゃないかと。それは無理な場合もあるし、しかし、そうではなくても、やはりいろいろな人のサポートによってまた再統合という道が開けるかもしれません。その道を閉ざすわけではもちろんありません。

 さらに、申し立ての取り下げはもちろんできますし、また、私ども別に、子供が直接に親に対してそういう申し立てをすることを奨励しているわけではありません。そういうこともできる道だけは残しておこうということで今回決めているわけでございます。

柴山委員 ぜひ、今最後に申し上げたことも含めて、具体的な不都合というものが生じないように、しっかりと政省令なり含めて手当てをしていただかなくてはいけないというように感じております。

 それと、概念的な整理のために質問をさせていただきますが、今回、未成年後見人にも親権喪失などについての申し立て権を認めていますが、そもそも、親権者がいないときに選ばれるのが未成年後見人なのに、親権喪失の申し立て権を未成年後見人に認めるというのは一体どういうことですか。

原政府参考人 今回の法改正によりまして、親権停止制度というのが創設されます。したがいまして、まず親権停止制度が活用されて、その後に親権喪失の申し立てがされるというケースがございますので、そういうケースであれば、親権停止によって選任されている未成年後見人が申立人になる、そういう場合を想定しております。

柴山委員 それではお伺いしますが、親権停止を一たん受けた、そして選ばれた未成年後見人が、再度、親権停止の更新というものも請求できるんでしょうか。

江田国務大臣 更新という扱いではなくて、再度親権の停止あるいは喪失を申し立てる、そういう制度設計にしております。

柴山委員 もう一度停止の申し立てをした際に、しっかりと審査をして停止にするかどうかというのを決めるということで、まずは安心しましたけれども、これは考えてみますと、一度親権の停止という判断を食らっておきながらその行状が改まらないというのは、イエローカードを一枚もらった人間がもう一枚イエローカードをもらうのと同じことだと思いますよ。私は、この場合に、再度審理をするということであれば、二回目は喪失ということにしてもらわなければいけないのが原則であると思いますが、いかがでしょうか。

江田国務大臣 親権の停止の制度は、私ども、かなりいろいろなバラエティーがあると思っております。

 例えば、医療ネグレクトで、医療行為が必要、そういう場合には、そんなに二年も停止する必要がないわけです。そうではなくて、もっと短い期間、この医療行為を行うときだけちょっと親権は後ろへ下がっていてくださいという形にしますので、そういう場合には、医療行為が終わって一定の状態に、もとへ戻ると、良好な関係に復する可能性は十分にある。しかし、それでもなお、そのとき、例えば半年なら半年の後にまた停止をする必要があるというようなことは、それは十分あり得ることで、一度親権の停止があったら、それが例えば一カ月であってもイエローカードだから次は喪失だ、それはちょっとかたい制度になり過ぎているのではないかと思います。

柴山委員 必ずレッドカードにしろと言っているわけではありませんので、そこはぜひお間違いのないようにしていただきたいと思います。

 続きまして、親権停止について再度、別の質問をさせていただきます。

 親権喪失という制度がなかなか利用されないのを改善するという観点から停止制度を導入するということは、私は大きな改善だと思っております。

 そこで、伺いますが、ここ三年間の児童虐待関連の検挙件数及び人員と、親権喪失の申し立て件数及び認容件数、それぞれお聞かせください。

田中政府参考人 まず、過去三年間の児童虐待事件の検挙件数及び検挙人員についてお答えします。

 過去三年間の児童虐待事件の検挙件数は、平成二十年三百七件、二十一年三百三十五件、二十二年三百五十四件でございます。検挙人員は、平成二十年三百十九人、二十一年三百五十六人、二十二年三百八十七人と増加傾向にあります。

柴山委員 では、法務省、お願いします。

原政府参考人 私の方から、親権喪失の件数について御報告したいと思います。

 司法統計の件数を御紹介いたしますが、司法統計上は、親権喪失と管理権の喪失、あるいはそれらの取り消しの件数が区別されておりませんで、合計の数字になっておりますので、これから申し上げる数字は、そういうことだという前提でお聞きいただきたいと思います。

 まず、平成二十年の新受件数は百三十九件、二十一年の新受件数が百十件、平成二十二年の新受件数が百四十七件ということで推移しております。ただ、このほとんどは、実務的には親権喪失の件数であろうというふうに考えております。

柴山委員 しかも、認容件数ということでいえば圧倒的に少ないわけですね。三十件とかそういうレベルで推移しているということだと思います。この停止という制度がしっかりと活用されることを望むんですけれども、それだけで足りるとは私は思えません。

 児童福祉施設に子供が入所しているのに、ほとんど面会にも来ないで、子ども手当だけはちゃっかり受け取っているというような親ですとか、あるいは施設の子供の携帯電話の契約に嫌がらせで親が同意をしない、こういうような場合、これは親権停止ということにまでなるんでしょうか。

小川(敏)副大臣 基本的には、さまざまな事情を勘案して、家庭裁判所の審判で決めることだと思います。

 携帯電話につきましても、同意しないのが、嫌がらせということで、マイナスな、消極的な評価の携帯電話契約の不同意ということで質問されておられるんでしょうけれども、しかし、不同意とした親の方から見て、やはり携帯電話を子供が余りいいことに使わないからという理由で不同意なのか、あるいは本当に嫌がらせなのか、そういったことも含めて、やはり個々的に家庭裁判所の方で、その背景事情も含めて判断して決定していくということだと思いますので、委員のお尋ねのように、一つの事例をとらえて、それですぐ停止かと言われても、なかなかちょっと答えられないというようなことだと思います。

柴山委員 ことし、現に十七歳の高校生が、裁判所の命令で、虐待する親と離れて児童福祉施設に入所しているのに、親の同意なくNTTドコモの携帯電話の契約をしようと思ったら、これが断られたというんですね。施設長は同意をしている。再三要請しているのに事態が変わっていないということなんですよ。これはつまり、親権停止をしていない場合の施設長の権限とあるいは親の親権、この矛盾抵触の場面だと思うんですけれども、これは一体どっちが優先するんですか。

小川(敏)副大臣 これまで施設長の方に親権停止の申し立て等がなかった、あるいはそういうことで施設長と親権者である親の意見とが衝突して、結果的に子供のためによくないというようなケースがございました。まさに委員がお尋ねのとおりでございます。

 まさにそうした問題に対応できるように、今回は、親権喪失というのはなかなかであるけれども、やはりそうした問題について、親権停止というものを導入して、個々具体的に適切な対応ができるようなということで、今回の法改正に及んでいるものと認識しております。

柴山委員 質問を繰り返します。

 親権停止が出ていないときに両者の権限はどのような関係になっているんですかとお聞きしているんです。

小川(敏)副大臣 現行法でございますね。これはやはり……(柴山委員「新法でも同じですよ。親権停止がされていない場合の両者の関係は」と呼ぶ)親権停止がされていない場合ですか。親権停止がされていなければ……(柴山委員「向こうで手を挙げていますけれども」と呼ぶ)失礼しました。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 親権者につきまして、親御さんについて親権がまだある、その上で施設に入所している場合に、施設の側におきましても、監護、教育そして懲戒といったような、いわば親権の一部の権能というのは有している。そういう意味では、親権の状態が、親権の種類が、若干幅に違いがありますけれども、同時並行的にあるというのが現状でございます。

柴山委員 つまり、今御説明があったように、監護、教育、懲戒について、施設長の固有の権限については、不当に妨げられないという条文もつきましたけれども、施設長が優先する。だけれども、携帯電話の契約というのはそれには入りませんよね。とすれば、やはり親御さんの権限が優先する。親権喪失という行為がなければ、これは親御さんの同意がなければ契約できない、そういうことですね。

石井政府参考人 結論から申しますと、その携帯電話の件、いろいろありますけれども、確かに、親権者の同意を得ない契約というのは、親権者が後に取り消し権を行使することがあるという意味で、やや不安定な面がございます。しかしながら、今の携帯電話の件でございますが、会社によっては親権者の同意を本当に必須とするケースもあれば、その辺は、施設長さんがそう言っているんだからということで認めるケースもあるわけでございまして、むしろそういう意味で柔軟にこういう問題について考えていただくようなケースがあるということを私ども知らしめながら、特に必要な場合においては、お子さんが携帯電話を持ってもいいようなケースにおいては、子の利益ということに照らして持てるような形で情報の周知ということを図っていきたいと思っているところでございます。

柴山委員 ぜひ、不都合のないような形で、趣旨を徹底していただきたいというふうに思います。

 続きまして、親権の代行という制度についてお伺いします。

 今度の児童福祉法の改正によりまして、児童相談所長は、これまでの入所中の児童に加えて、例えば二十に至るまでの子供ですとか、里親委託中あるいは一時保護中の児童についても、親権者や後見人がいない場合には児童相談所長が親権を代行するということとなります。

 この親権代行という制度は、何らかの裁判手続が必要なのでしょうか。また、親権者等がいない場合には、物理的、法律的にいないケースのほか、事実上会いに来ないようなケースも含まれるんでしょうか。

石井政府参考人 一時保護中や里親委託中の親権を行う者または未成年後見人のいない児童等につきましては、その児童等がそのような状態に至ると同時に、裁判手続を経ることなく、当該一時保護や里親委託の措置に係る児童相談所長によって親権代行が開始されるというふうに解しております。

 また、親権を行う者がないときとはどういうケースかというお尋ねがございました。

 もちろん、親が親権停止や親権喪失の宣告を受けている場合は法的に児童等に対して親権を行使する者がいないわけでございまして、その場合はもちろん親権を行う者がないときに入りますし、また、児童等の両親がともに亡くなった場合など、物理的に親権を行使する者がいない場合もそうでございます。さらには、親権者は存在するけれども、重い病気、あるいは行方不明、刑務所に入っているなど、事実上親権を行使することが不可能な場合も含まれると思いますが、今委員御指摘がありましたように、親が子供に会いに来ない、それをもって親権がとまっているかというと、それは親権を行う者がないということにはならないと思います。

柴山委員 ただ会いに来ないだけではだめだということだったんですが、物理的、法律的にいない場合には限られないという御答弁だったかと思います。

 としますと、例えば、子供が捨てられて施設で保護されているような場合、赤ちゃんポストなら匿名という場合が多いんでしょうけれども、会いに来ず、しかも今おっしゃったような行方不明になっている親御さんは、裁判行為がないわけですから、法律的には親権を失うことはなく、先ほどと同じように、児童相談所長の代行親権とやはり権限がバッティングするということになるのではないでしょうか。具体的には、子供の財産の処分とか、そういうことは一体どうなるんでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 子供が見捨てられて施設入所しているけれども全く会いに来ない親がいて、親権者もいるけれども親権代行者もいるケースだろうと思います。

 その場合には、事実上親権を行使することができないような状態でなければ、やはり親権を行う者がいるものと解されると考えております。そのように、親権を行う者がいるのであれば、親権代行の規定は結果として効力を発しないということになりまして、そういう意味では調整を図られるということであります。

 ただ、親権者と親権代行者が併存しますと大変錯綜いたしますので、御指摘のように、混乱しないように、親権者の存在は判明しているけれども、親権の行使を長期間行っていないために子供の利益が害されているといったような場合には、やはり親権停止の申し立てを検討すべきではないかと考えております。

柴山委員 検討すべきではないかではなくて、そこはしっかりと申し立てをすると。緊急の場合には申し立てなければならないと書いてありますが、それ以外の場合は義務化されていませんからね。今言ったような実務をきちんとマニュアル化してほしいと思います。

 時間がなくなりましたけれども、先ほども出ました東日本大震災によります震災孤児についてお伺いします。

 この結果、多くの施設入所者や里親の保護を受ける子供が出てきていると思いますが、まず、その実態について、どんな子供の保護状況になっているのか、お聞かせください。

    〔奥田委員長退席、高木委員長着席〕

小林大臣政務官 今回の震災で両親を亡くした、また両親が行方不明の児童については、現在、児童相談所の職員が各避難所を巡回するなどして、早急に把握に努めております。

 四月十九日現在の確認状況では、百十名、岩手県が四十四名、宮城県が五十名、福島県十六名の確認が行われていますけれども、今後ふえる見込みがあると思っております。

 具体的には、被災地の児童相談所職員と他県の児童相談所職員がチームを組んで、要援護児童の確認、要援護児童との面談、養育と生活に関する親族との話し合いを実施しております。

 今後は、親族による受け入れや里親などによる受け入れの調整を図るほか、児童のメンタル面の支援として、児童相談所職員の巡回等の取り組みを通じて、児童が安心して生活、成長できるようにきめ細やかな対応を図ってまいりたい、このように考えています。

柴山委員 親族に預けられているケース、それから里親の保護を受けているケース、どうしてもそれで救われなければ施設ということになるんだということだと思いますけれども、ただ、これは、今おっしゃったように、百十人と非常に数が多い。しかも、その上、放射能の被害が広がっている子供たちについては、いじめが横行しているというような報道もあります。

 そのような中で、そういった保護関係が不幸にも不適切であった場合、安心して愛情を注げないですとか、あるいは保険金を私してしまうとか、そういうようなケースでは一体どのような措置がとられるんでしょうか。

石井政府参考人 児童相談所は、里親や施設に子供を措置した場合には、この里親や施設から子供の養育状況について報告を求めております。また、職員が定期的に訪問して子供から直接意見を聞いたり、施設と合同で会議を行ったりしておりまして、里親や施設と連携をとっているところでございます。

 また、被措置児童等虐待の都道府県等への通告制度を設けておりますのと、それから、被措置児童等虐待対応ガイドラインというのも作成をいたしまして、里親や施設職員等に対する研修による意識向上や、あるいは子どもの権利ノートといったようなものの作成、推進なども進めております。

 仮に不適切な対応があった場合でありますけれども、これは児童相談所が中心となりまして、里親や施設に報告を求めて指示を行うものであります。さらに、必要な場合には、児童相談所が子供を一時保護をしてそういったいじめから守るといったようなことも行うわけでございまして、いずれにしましても、子供が健やかに育つことができるよう、きめ細かな配慮に努めておりまして、またそうした目配りをしっかりしていく必要があるというふうに思っております。

柴山委員 報告を求めるということで本当に実効性が図れるのかということもぜひ考慮していただきたいというように思います。

 時間がなくなりましたけれども、未成年後見人、こちらの場合についての同様の監督のあり方、それから、法人について後見人たる資格が認められることになりますが、法人で実際に当該児童を担当している方が職務不適格であるという場合の措置、それぞれお伺いしたいと思います。

原政府参考人 後見人の職務執行につきましては家庭裁判所が監督しているわけでございますので、法人が未成年後見人に選任された場合につきまして、当該担当者に子の利益を害するような事情がある、そういう情報が入れば、家庭裁判所としては速やかに状況を調査し、当該事実が確認できれば、後見人に対して担当者を交代するように指示する、その他相当な処分を命ずるということになろうかと思います。

柴山委員 こちらは公権力を適切に行使するということであろうかと思います。

 最後に、里親なんですけれども、きのうも質疑に出ていたようですけれども、通常の里親ですと里親の手当が払われるんです。しかし、親族が里親としていろいろと世話をする場合には、里親手当というものは出ない扱いになっています。

 また、先ほどお話があるような、後見人の場合の報酬ですとか、あるいは損害を与えてしまった場合の保険、私はこういうものを一刻も早く制度設計をして、国が十分に手当てをしていくことが必要だというように思っております。

 いつまでにこうした手当てを講じるおつもりでしょうか。最後にそのことを質問させていただいて、私の持ち時間を終わらせていただきます。

高木委員長 石井大臣官房審議官。申し合わせの時間が参りましたので、御協力願います。

石井政府参考人 このたびの地震ではさまざまな問題が起こっておりますけれども、私どもは、可能な問題について一生懸命取り組んでまいりたいと思います。

 いつまでとはちょっと、恐縮でございますが、今申し上げる用意がございませんので、お許しいただきたいと思います。

柴山委員 事は緊急を要します。ぜひ迅速な対応をお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

高木委員長 これで柴山昌彦さんの質疑は終了いたします。

 次に、馳浩さん。

馳委員 自由民主党の馳浩です。

 きのうの法務委員会で積み残した質問がございますので、そちらの方から入りたいと思います。

 親責任規定の言わんとするところは、親権は、親の権利というより親としての責任がその本質であり、その責任を遂行するのに必要な限りで親権の権利性が認められるという考え方であります。

 その意味では、改正案はいまだに「権利を有し、義務を負う。」となっており、残念でありますが、親権の法的性質、概念について、今回の改正案で変化はあるのでしょうか。

江田国務大臣 児童虐待防止法の四条六項は、「親権を行う者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を有するもの」と規定をしておりまして、委員おっしゃるとおり、児童虐待防止法という見方からすると、子供の利益のために親権を行使する義務を親が負っているんだということが当然言えるかと思います。

 一方、しかし、権利の面もまた民法八百二十条で、親権は権利であると同時に義務であるという形で規定をしておりまして、親権というものが権利と義務と両側面を持っているんだということは、今回の民法等の改正によって、その前後で変わるわけではないと思います。

 ただ、今回の改正の中に、特に子の利益ということを強調しておりますので、言ってみれば、子の利益のために行う、そういう意味で義務でもあり同時に権利でもあるという変化はあるかなと思っております。

馳委員 前回の児童虐待防止法の改正において、親責任という規定、これを議論し改正案に載せたという当事者として、立法趣旨としては、民法の親権概念の変更を意図していたという、そういう議論の経過もあり、そういうつもりでもあったんですね、立法者の皆さんの意向として。大臣、何か所感があればどうぞ。

江田国務大臣 所感と言われてもちょっと困るんですが、先ほども御質疑の中でございますが、明治時代の判例で、子供の大変な体罰ですね、その事例が大審院によって、それでもいいのだと言われたのか、これはいけないんだと言われたのか、私はちょっと見ていないのでわからないのですが、そのような時代の親の子供に対する立場と今とは大きくやはり変わっているだろうと思います。親は子供を自由にしていいんだというのは、もう今はそんなことを言ってはいけないので。

 やはり私ども、子供というのは社会の宝であり未来の夢ですから、これをみんなではぐくみ育てる、子供がすくすくと育つ、その育ちをしっかり支援をしていく。親も、もちろん子供を育てていくというのは親の個人的な営みですが、同時に、社会の期待を背負って親が子供を育てていく、そういう時代になっているので、やはり私は、親権というものは子供の利益のために行使をする、そういう、権利だ義務だということでいうならば、やはり義務の側面は非常に今強くなってきていると、私たち皆、認識をしなければいけないと思っております。

馳委員 権利と義務という関係ばかりではなく、親としての責任がありますよね。その責任を果たしていないときに、やはり、社会的に罰を受けますよ、果たすべきことは果たさなければいけないですよという合意があって初めての民法のあり方ではないかな、こういうふうに私は思っております。

 そこで、子の利益の観点を明確にすることによって、現実にどのような効果が期待されるんでしょうか。

江田国務大臣 これは、法律がそういうことを明確に記述することによって、もちろん国民の中にそれを周知し、さらに国民によって支持されるということでなければなりませんが、子の利益のために親権を行使するんだということが社会一般に行き渡り、支持されることによって、一人一人の親の自覚も深まりますし、また、周囲の子育て中の親に対する目もそういう目で見るようになっていって、社会全体の子育てに資するものだと思います。

 とりわけ、現下の児童虐待の大変な状況に対して一石を投ずる、児童虐待をみんなでなくしていく、そういう一助になっていくものと期待をしております。

馳委員 私自身は、子育てはまず第一義的に親の責任ですよ、親として果たすべき責任を果たしましょう、そして同時に、社会全体で子育てに、子の利益を考えた対応をしていきましょうと。私は、その方向性が今回明確に民法改正によって示された、そういう筋合いのものだなというふうに思っております。

 そこで、懲戒権について次に伺いたいと思います。

 民法八百二十二条の懲戒権を削除するか否かが論点になっておりましたが、結局は、条文に文言修正を加えて残しました。その立法趣旨は何ですか。

江田国務大臣 これは、先ほども柴山委員の御質問がございましたが、懲戒という言葉を削除をする、そういう考え方も私は十分あると思っております。懲戒という言葉が持つ意味合いというのはやはりちょっと誤解を生みやすいので、しつけというような、そういう提案も先ほどございました。

 しかし、今回は、児童虐待防止という観点から民法改正に取り組もうとしたわけで、この懲戒という言葉を口実にして児童虐待をする場合がある。しかし一方で、懲戒という言葉をなくすると、今度はしつけもできないんじゃないかと誤解をされるようなこともあるいは出てくるかもしれない。その誤解があるよというおそれが、社会一般にそういうおそれがあるというように思われるとするならば、やはり私たちは、そこは、懲戒という言葉をあえてこの際取り除くというところまでは踏み込めない。

 そんなことから、懲戒という言葉は残す、しかしこれは、監護、教育、あるいはしつけ、そういうことと同趣旨の言葉であって、そのことをより明確にするために、あくまで子の利益のために行うことですよ、こういうことを書き加えて明確にしたということでございます。

馳委員 現行法では、「必要な範囲内で自らその子を懲戒し、」とありまして、この「自ら」という文言を削除しておりますが、なぜですか。

江田国務大臣 現行法の懲戒の方法は二つありまして、一つはみずから懲戒をする場合、もう一つは懲戒場に入れる場合、二つ法律上は書いてあります。

 しかし、お恥ずかしい話ですが、これはもうあくまで法律上書いてあるだけでありまして、現在、私どもは懲戒場というものを用意しておりません。そこで、懲戒場という規定を取り除くのはもう当たり前の話でありまして、これを取り除いて、そうすると、懲戒場に入れるんじゃなくて「自ら」の部分だけが残るんですが、「自ら」の部分だけ残るのに、それはみずからやるに決まっているわけですから、「自ら」という言葉も要らない、論理的にはそういうことになったわけで、それほど何か深い哲学的な意味があるわけではありません。

馳委員 民法の勉強ということでお聞きしますが、懲戒場というのはいつごろまであって、そこでは一体何が行われていたんですか。もしかしたら、私みたいな怖い刑務官みたいなのがいて、懲戒官か、腕立て伏せさせたりしていたんじゃないんですか。

 これはあくまでも、だって、法律で今回取り除いたんですよね。でも、現状ないと大臣もおっしゃいました。これは本当に私も勉強の意味で、本当に懲戒場があったのか、どんなことをしていたのか、その効果があったのか、ちょっとお聞きしたいと思ってお聞きします。

江田国務大臣 私は民法を勉強したのは昭和三十年代の半ばから終わりごろですが、その当時には、私もこの文言を見て、えっ、懲戒場なんてあるのかと思いました。思ったのも当然で、当時はもうありませんでした。戦後すぐに懲戒場というのはなくなったと聞いております。

 その昔あった懲戒場がどういうものであったかというのは、ごめんなさい、ちょっとそこまで勉強しておりません。

馳委員 私が言わんとするところは、後生大事に何十年もこの懲戒場という文言、規定が残っておった、そして、きのうも申し上げましたが、親権の一時停止について、我々議員立法を担当していた者はもう十年近くずっと言い続けてきて、それに抵抗していたのが法務省なんですよ。現行法でも十分できますからと何百回私は聞いたかわかりません。何でですかね。

 私は、そこの鈍感さなのか、わきのかたさなのか、腰の重さなのかわかりませんが、これはやはり法務省の体質ですかね。大臣、どう思われますか。

江田国務大臣 鈍感さ、わきのかたさ、腰の重さ、いろいろ言われます。いずれも当たっているのかなとも思ったりいたしますが、民法の中にはほかにもいろいろな規定がありまして、我妻栄先生の教科書には、この条文は無視するしかないなんという解説もあったりするんですね。何しろ明治の時代にできた民法ですから。もっとも、親族、相続は違いますけれども。ですから、そういう古いところが確かにいっぱいございます。

 ただ、これは民事の基本法ですから、余り変えるわけにもいかない、法的安定性も考えればというのでずっと残ってきておるんですが、現在、債権法の関係については、これも議論はいろいろあるところですが、法制審議会で審議をしている最中で、鈍感と言われましても、法務省も、やはりこれだけ時代が変わってくると、いかに基本法といえども、このままずっと墨守するわけにはいかないと思っているところでございます。

馳委員 今回の改正案には載ってきませんでしたが、私自身は、というよりも国会の中にも、共同親権あるいは共同監護権について議論をし、現実、海外にもこういう規定がございますから、我が国も規定として明示していかなければいけないという議論があります。これについては私、また後ほど追及してまいりますけれども、そういう意味では、やはり法務省としてのアンテナもさらに働かせていただきたいということを申し上げて、次の質問に移ります。

 法務省民事局参事官室が平成二十二年八月に出している補足説明資料三十四ページには、仮に懲戒権の規定を削除したとしても、子に対する必要なしつけは民法第八百二十条の監護教育権に基づいて行うことができると解されると記してあります。

 そこで、まず、児童虐待防止法第十四条にも出てまいりますしつけと、民法における懲戒の概念的区別はどうなっているのかをお伺いしたいと思います。さらに、国連児童権利委員会から指摘されている体罰との区別はどうなのか。いかがでしょうか。

江田国務大臣 御指摘のとおり、児童虐待防止法の十四条は、児童のしつけという言葉を使っておる。児童虐待防止法の制定により児童虐待の定義が明確化されたことに伴い、親権の行使に際して、児童虐待に当たることのないように適切に行使をしなきゃいけないということなので、しつけは虐待をもちろん含まない、虐待はしつけじゃないということははっきりしています。

 同時に、民法の親権の行使の監護、教育についても懲戒についても、これは当然、児童虐待はいけないわけでありまして、懲戒の名のもとに虐待を行うことが許されるわけはないので、そう考えますと、しつけというのと監護、教育というのと懲戒というのと、まあ同じような意味内容だというように私は理解をしたいと思っておりまして、これらすべてが子の利益のために行われなきゃならぬということでございます。

 さて、ところで、国連の児童の権利委員会が、体罰ということについて我が国に対しても一定のメッセージを発しておりますが、今申し上げたように、虐待は断じて許されないわけでありまして、国連の児童の権利委員会の指摘をする体罰というのも、全体としては子の利益のために行うしつけとかあるいは懲戒とかというものを指して言っていることではなかろうと思っておりまして、児童の権利委員会のメッセージは重く受けとめますが、現在のところ、児童の権利委員会のメッセージは、我が国では少なくとも法制度においては守られているものと思っております。

馳委員 私見ではありますが、民法八百二十条の解釈からしつけが生まれるとの考えは捨てるべきだと思います。なぜなら、今回の改正案で、懲戒とは民法八百二十条の範囲内での懲戒だと明記したからでありまして、八百二十条の範囲内の懲戒こそしつけと同義と考えるべきだと思いますが、それでよろしいですね。

江田国務大臣 特に意見を異にするものではありません。

馳委員 さて、懲戒権の削除も含めた見直しは先送りされましたが、私は、しつけと同義となる懲戒権規定は残しつつ、必要な範囲を逸脱した懲戒が許されないという旨を明記する方がよいと考えますが、いかがですか。

江田国務大臣 そういう考えもあり得ると思います。ただ、そう書いてみても、一体どこが限界なのかというのはなかなかわからないので。

 先ほども申しましたが、親と子の関係というのは、それぞれが親子の関係でございまして、そのどれがよくてどれがいけないのかというのは、なかなか言いにくいところがあるんですね。子のしつけというのもそういうことであって、しつけのためにちょっとぱちんとやるのがいいんだという親もいる。そういうことを受け入れる子もいる。そのことを私たちは否定することはできない。しかし、いやいや、あくまで有形力の行使はいけないんだ、それが子供の心に傷をつけるんだ、それがまた次の連鎖になっていくんだ、そういう親もいる。その中ですくすくと育っていく子供もいる。それを私たちは、いや、それはしつけがなっていないと言うわけにもいかない。

 いろいろなことがございまして、それぞれの親子関係にゆだねるべきことであって、そこに何かの文言を加えてみても、その本質というのは変わらないんだと思っております。

馳委員 必要な範囲を逸脱した懲戒は許されない。もう一回言いますよ。必要な範囲を逸脱した懲戒は許されないという指摘に対して、大臣は、それはそのとおりだがというふうに最初に申し上げられましたので、その大臣答弁で私は十分であります。

 次の質問に移ります。

 今回の法改正で、施設入所等の措置がとられている場合において、施設長等の意向が常に優先し、親権者の意向が反映されないことになりますが、これでは親権者が施設入所等の措置に同意しなくなるおそれがあると思いますが、いかがですか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法改正では、施設入所等の措置がとられている子供について、施設長等が子供の監護等に関しその福祉のために必要な措置をとることを親権者等は不当に妨げてはならない旨の規定を新たに設けることとしております。

 この規定は、あくまで親権者等による不当な主張を排除するために設けるものでありまして、施設入所等の措置がとられている場合において、正当な親権者の意向を無視するものではございません。そして、施設長の意向が常に親権者の意向に優先することになることを意味するものでもないわけでございます。したがいまして、今後とも、施設入所中における親権者への情報提供や意向聴取を適切に行うなど、親権者の意向にも配慮した対応を行っていくことになるものであります。

 もとより、施設には、虐待を受けた児童のみならず、さまざまな事由で施設に引き取られている、親御さんの病気だとかそういう事由で引き取られているお子さんもおられるわけでございまして、さまざまな事情がありまして、一概に親権者が言うことがすべておかしいという前提に立てるものでもないと思っております。

 ただ、御指摘のとおり、この規定が存在することによって、親権者の同意が得られず、迅速な子供の保護ができなくなるといったことにならないように、施設入所等の措置をとるに当たりましては、都道府県等においてこの規定の趣旨を親権者などによく説明をいたしまして、施設入所の措置についてきちっとした理解をいただくように、都道府県等にはしっかり周知をしてまいりたいと思っております。

馳委員 親権者の親権に優先して児童の監護、教育及び懲戒に関して必要な措置をとることができる場合についての具体的な判断基準、ガイドラインを示す必要があると思います。不当な主張とは何ぞや、これはガイドラインをもってして提示をされないと、現場の方は困ると思うんですね。いかがですか。

石井政府参考人 御指摘のとおり、全くおっしゃるとおりでございまして、児童の監護、教育、懲戒に関して、親権者の親権に優先してとることができる必要な措置かどうか、一義的に施設長等が判断しますが、その辺がはっきりしませんとトラブルのもとになるというのも、そのとおりかと思っております。

 このため、施設等において児童の処遇や親権者との調整が円滑に行われるよう、厚生労働省としては、児童福祉や法律等の専門家や、そして現場の御意見も聞きながら、具体的な事案を取り上げまして、どのような主張が不当と考えられ、優先してとることができる必要な措置と考えるか、それを示すガイドラインを作成して、周知を図ってまいりたいと考えております。

馳委員 関連して、本改正案においても、最終的に施設長がとる措置が優先することになるとしても、緊急事態は別として、手続的に、親権者への説明、説得、そして納得を得ることという、丁寧に手続を行うということが大事だと思いますが、それでいいですね。

石井政府参考人 そのとおりでございます。

 長く答弁いたしますと御迷惑かと思いますので、短く答えます。

 いずれにしましても、最終的には親子再統合まで至りたいというのが私どもの考えでございますので、やはり丁寧に説明をしていくということが肝要かと思っております。

馳委員 問題は、親権者に対する適正手続が不十分だった場合、訴訟等が提起されて、結果として施設長等の措置が違法となる場合も法的にはあり得るのかどうかという問題ですが、いかがですか。

石井政府参考人 施設長等が児童の福祉のためにとる監護等の措置について親権者が不当に妨げてはならないとするこの規定の趣旨は、子の利益と関係のない主張をすることや、あるいは実力行使に出ることの手段を用いるといったような、親権者の不当な行為が許されないことを明確にするものでございます。

 したがいまして、この規定につきましては、施設の側に義務づけたものではございませんで、親権者に説明する手続に不備があった場合でありましても、そのことが直ちに違法になるものではないというふうに考えております。

 ただし、おっしゃいましたように、施設の入所の際にはやはり親権者にきちっとした説明を行う、そこは大切でありますので、確実に行われるように徹底を図ってまいりたいと思っております。

馳委員 施設長等と親権者で児童の処遇について意見が対立した場合に、都道府県児童福祉審議会など第三者が意見を調整する仕組みを設けるべきとの意見もありますが、いかがですか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、児童の処遇をめぐりまして施設長等と親権者で意見が対立した場合に、この両者の意見を調整する場として児童福祉審議会などの第三者機関が必要であるということは、社会保障審議会の議論の中でも指摘をされているところでございます。

 児童の処遇につきましては、施設長等と親権者の意見が対立する場合には、まず、施設の現場が抱え込むことのないよう、児童相談所に相談していただくことが大切だと思っております。さらに、難しい問題につきましては、児童相談所長を通じて都道府県児童福祉審議会の意見を聞くなどによって調整を図ることが望ましいと考えております。

 こういった運用につきましても、児童相談所やあるいは施設の関係者とも相談しながら、しっかりと検討した上で、ガイドラインの中でこれを反映していきたいというふうに考えております。

馳委員 具体的な事例として、軽度の知的障害を持つ入所中の被虐待児童の就学先として、親は障害を認めたくなくて普通学級を希望し、施設長が特別支援学級を支持している場合などは、判断が難しくなります。こういう場合、どういうふうな対処方針をとるつもりですか。

石井政府参考人 私ども、いろいろなケースを想定しまして、いろいろ中では検討してまいったわけでございますが、今お尋ねの件につきまして、児童の就学先として、児童を通常の学級に在籍させるか、あるいは特別支援学級に在籍させるかにつきましては、これは校長の判断によるものと承知をいたしております。御指摘のような、児童の就学先において親と施設長の意見が対立しているケースにおきましても、これはさまざまな事情を勘案した上で、最終的には校長が適切に判断をされるものと考えております。

 具体的には、児童の障害の状態とか、あるいは現実に養育をしている施設、児童相談所、そして親御さんの御意見も踏まえた上で適切に判断いただけるものと考えておりまして、こうした取り扱いにつきまして、文部科学省とも相談しながら適切に対応してまいりたいと思っております。

馳委員 今申し上げた事例は、インクルージョン教育の問題であったり、そろそろ出てくるでしょう障害者対策基本法の問題とも密接に絡んでまいりますので、ここはやはり丁寧に対応をいただきたいと思います。

 施設長等の監護方針と児童の意見が合わなかった場合に、児童が第三者に相談できるようにして、その第三者が相談を踏まえて子供の意見を表明できるようにしたらよいのではという意見もありますが、いかがですか。

石井政府参考人 施設長等が行う監護の措置が子供の意向と合わない場合につきまして、施設では、児童福祉施設最低基準にも定められておりますが、苦情受付担当者やあるいは第三者委員の設置等の必要な措置というのがあるわけでございます。児童は、これらの相談先や、あるいは児童相談所、都道府県社会福祉協議会の運営適正化委員会などに相談できることとなっております。また、相談を受けた先も、受けっ放しではいけませんで、第三者委員やあるいは運営適正化委員会等は、施設等に必要な申し入れを行うことも可能となっております。

 さらに、子供がこれらの相談先に相談しやすくする、これが大変重要でございまして、相談先の電話番号を記載しました子どもの権利ノート、こういったものを活用する等の取り組みも進めているところでございます。

馳委員 今回の改正で権限強化された施設長等による監護が適切に行われるように、資質向上を図るための研修等の実施、あるいはサポート体制の強化が必要だと思いますが、いかがですか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 本当に、法律が仮にできたとしましても、その運用がしっかり成らなきゃ意味がないというのはおっしゃるとおりでございまして、施設長等の権限と親権との関係の明確化を図る今回の改正法につきましてもそうしたことをやっていかなきゃいけない。まずは施設長等に制度の理解を深めていただいて、その上で、資質向上も図るために、全国の施設長の研究協議会での研修などを行うことといたしております。

 また、施設長等が行う監護の措置については、先ほど申し上げましたが、ガイドラインを作成する、そして、ガイドラインの中で示したいと思いますが、施設長等が判断に迷う場合には、児童相談所に相談しなさいとか、あるいは、さらなる調整に当たるものとしまして児童福祉審議会の意見を聞くとか、そういったような一連の流れにつきましても十分周知を図って、施設長等において新制度が適切に活用できるように支援をしてまいりたいというふうに考えております。

馳委員 それでは、続いて、子供の連れ去り問題について入りたいと思います。

 きょう、私がグラフを一つ資料としてお示しをしました。これは、スタート地点が一九六五年、一番右端の方が二〇〇九年ですね。法務委員会で、これは先週でしたね、江田大臣に、国際結婚、国際離婚について、最近では一般的になってきていますよねというふうにおっしゃっていただいて、では現実どうなっているんでしょうかねとお聞きしたら、それで出てきた資料が、グラフとして、これなんですよ。一目瞭然なんですね。

 その上で、大臣にまず最初に所感としてお聞きしたいんですけれども、ハーグ条約に関する問題は国内問題にも存在をする。つまり、子供の連れ去りは、何も国際結婚そして国際離婚があって子供を連れ去ってくる、あるいは国内から海外に子供が連れ去られるという問題だけではなくて、国内においても、離婚をし、また離婚は離婚する前と後とありますが、一方的に一方の配偶者に無断で子供を連れ去ったままという事案も多く存在するということなんですね。

 この認識について、このグラフを見たり、これは国際的な問題、あるいは国内にもこういう事案があるということについて、大臣としてどういう認識を持っておられるかをまずお伺いしたいと思います。

江田国務大臣 ハーグ条約の問題というのは、国境を越えた子の移動がある場合に、移動の前と後のどちらの場所で子供の監護についての判断を裁判所で求めるのがいいか、そういう判断で、前の場所に連れて戻してそこでやりなさいということ。ですから、そういう場面で、これは国内にはハーグ条約の問題というのはないのでありますが、しかし、合意なく勝手に子供が親の一方だけの都合で場所を移される、それによってもう片っ方は子供から引き離される、そういう事例が国内にも多々見られる、これが今なかなか厳しい状況になっているということは、私も認識をしております。

馳委員 ちなみに、私もこのグラフを見てふむふむと思いながら、スタート地点が一九六五年ということは、昭和四十年ですね、五千件に満たない国際結婚。そして、ちょっとふえ始めたなという真ん中から右のあたりが、これは多分、バブルのころというふうに言われると思いますね。そして、あれ、ちょっとまた最近減ってきたなというのが、二〇〇六年、七年あたりですね。これは、もしかしたら結婚数自体が減ってきたのかな、そういうふうな印象を持ったり、まさかこんなことにリーマン・ショックが関係しないだろうなとか、私はいろいろな社会的背景をもって国際結婚と国際離婚、この紫の部分が国際離婚ですね。

 残念ながら、この五年間、国際結婚は減っているんですが、国際離婚はやはりふえているんですね。こういった実態というのも、この社会を取り巻くある意味では現実だというふうな認識のもとで、ハーグ条約への対応、また国内の子供の連れ去り問題について対応していっていただきたいと思って、以下、質問をつなげたいと思います。

 子供の連れ去り問題について、民法典には個別規定はなく、親権の濫用等の抽象的な規定しかありません。また、刑法での誘拐罪や人身保護法やDV防止法では、連れ去った行為自体の法的評価が中心です。

 そこで、親子関係、特に子の最善の利益から考えて、この連れ去り問題を親子関係から広く評価する法体系が不可欠だと私は思います。民法改正、個別法制定等の法的な手当てが必要ではないかと思いますが、大臣の見解をお伺いします。

江田国務大臣 民法第七百六十六条という規定がございまして、これは、子の監護について必要な事項を家庭裁判所が判断して定める。その規定が基本にあって、現在では、家事審判法の九条一項乙類四号というものがございまして、そこで子の引き渡しについて審判をするということになっておりまして、理由なく一方の親が他方の親の同意を得ずに子を連れ去る、これが適切でないということは、私は言うまでもないと思いますが、基本的には夫婦間で子の監護について十分話し合いをすべきことであって、そうした話し合いなく連れ去るというときには家庭裁判所が役割を果たす。

 民法改正等、別の個別法制定等については、現在の段階ではこういう法的手当てがありますので、慎重に考えるべきものだと思いますが、委員の問題意識は貴重だと思っております。

馳委員 最後の質問にいたします。

 子供の連れ去り問題は、今回の法改正にも深くかかわってまいります。例えば、片方の親が子供を連れ去り、その後協議離婚して、子供の監護問題で対立した場合、現在の監護状態が非常に優先されやすく、連れ去った側に監護権が結局認められやすいんです。そして、連れ去られた側は、面会交流の約束を担保に渋々監護権を渡します。しかし、いざ面会交流の段になると面会させない、裁判所が履行勧告しても無視し続けるパターンであります。つまり、連れ去った者勝ちの例が実に多いという実態がございます。

 そして、この事例のやみは深くあります。つまり、DVを主張しての連れ去りが多く、このDVが、本当に保護すべきDVなら結構です。しかし、巷間言われる、いわゆるDV冤罪事例も多くございます。

 そこで、最高裁にお聞きしますが、今挙げた事例について、どんな調停や審判がなされているのが現状か、その傾向をお示しください。

 また、法務省は、DV冤罪についてどんな認識を持っているのか。あわせて、DV冤罪の防止について、DV防止法上の運用、特に加害者側の言い分を聞くという適正手続は運用上もしっかりと行われているのかどうかをお伺いします。

高木委員長 最高裁判所豊澤家庭局長。申し合わせの時間が参っております。簡潔にお願いいたします。

豊澤最高裁判所長官代理者 子の連れ去りをした者による現在の監護状況の継続という観点から、連れ去った者勝ちになっているのではないかという御指摘でございました。

 父と母のどちらを親権者に指定し、あるいは監護権者とすべきかというのは、事案に応じて、家事審判官あるいは裁判官が個別に、具体的な事情のもとで判断すべき事柄でありまして、一般的には、子の福祉の観点からさまざまな事情を考慮して、総合考慮して判断するということになります。

 その際に、子の監護状況というのが考慮要素になり得ることは当然でありますが、そこに言われる監護の状況といいますのは、現在の監護状況のみに限られているわけではありませんし、子の出生以来、現在に至るまでの中での監護状況といったものも当然考慮されるわけです。

 したがって、現在の監護状況というものは考慮要素の一つでありまして、これによって結論が必ず右に行く、左に行くというふうな、それのみで判断されるという枠組みにはなっていないというふうに理解いたしております。

江田国務大臣 簡単にということなんですが、DV冤罪がどの程度かというのは、残念ながら数字的にはわかりません。しかし、DVも随分たくさんあるし、また冤罪もあると思います。

 その手続保障ですが、接近禁止命令とか、あるいは住居からの退去命令、これはかなり強力で、刑罰もございますが、家庭裁判所で、発令に当たっては、口頭弁論あるいは相手方が立ち会う審尋、この期日を経なければいけないとか、あるいは、相手方の主張内容も確認した上で、証拠資料に基づき保護命令を発することになっているとか、書面の写しの交付であるとか、そして即時抗告ということもございまして、手続的にはそういうものがちゃんと用意をされております。

馳委員 終わります。どうもありがとうございました。

高木委員長 馳浩さんの質疑は終了いたしました。

 次に、池坊保子さん。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 このたび、児童虐待防止法にかかわる観点から民法が改正されますことを、十年の歳月をもって、私は安堵するとともに、長過ぎたなという思いもしております。

 二〇〇〇年に児童虐待防止法をつくりましたときから、懲戒場の削除、懲戒権の問題、今度は子供の利益ということが入りましたけれども、親権一時停止、未成年後見人、面会交渉などなど、私どもはぜひとも民法を改正してほしいと望んでまいりましたけれども、これがいつも、そうされることなく、そして今日まで参りました。きょう、そのようなときを迎えましたことは、安堵いたしますとともに、私は、法は何のために、だれのためにあるのかと、何度もいら立たしい思いを持ちました。それらのことを考えますときに、児童の権利のために迅速に審議していただきたいと、これからも強く願っております。

 平成十一年に青少年特別委員会が設置されましたときに、先を歩んでいる人間の責務として、子供のよりよい環境整備を図りたい、それは何だろうかと考えましたときに、超党派で取り残されておりました児童の虐待がございました。これをぜひ成立させたい。これは児童福祉法があるのではないかという意見もございましたけれども、そうではないのだ、やはり新しい法律が必要ではないかという超党派の議員たちの熱い思いの中で成立してまいりました。

 私は、児童虐待防止法の成立の意義は、単に児童虐待に対処するための独立法ができたということだけではないと思っております。これまで民事不介入に徹していた家庭内問題に、社会が初めて、申請ではなく、外部から介入時に関与する仕組みをつくったという点で、大きな歴史的転換の意味を有していると私は感じております。この法文の中に、家庭内の問題といえども、児童虐待にかかわる犯罪があれば、その責任を負わなければならないという文言を明記し、家庭内の問題、犯罪に対して、初めて警察が加害者に対する逮捕、立件ができるようにした画期的なものだと私は自負しております。個別の親に任せるというふうに先ほど大臣はおっしゃいましたけれども、家庭内の個別の親に任せることができない事情があったからこそこのような法律ができたということを、まずもって御理解いただきたいというふうに私は思っております。

 それでは、個々の問題について質問させていただきます。懲戒権について私は伺いたいと思います。

 そもそも民法八百二十二条の懲戒場、こんなものは戦前からずっとなかったではございませんか。にもかかわらず、これは、私は長いこと、なくしてほしい、なくしてほしいと言いながらも、なぜなくならなかったのかというのを伺いたいですが、私はこれは法務省の怠慢というふうに思っておりますのでお答えは省きますが、ようやくそれが、来週ですか、なくなるということをうれしいと思っております。

 懲戒権についても、子供の利益ということだということでございます。この文言が入ったということを大変心強くは思っておりますけれども、先ほど大臣の御答弁を伺いながら、懲戒としつけは同意語ではないということをまず御認識いただきたいと思います。

 児童虐待防止法をつくりますときにも、何でつくるのか、これはしつけじゃないか、しつけで手を上げることもあるよ、それが何で虐待なのか、そうおっしゃる長老の議員もいらっしゃいました。世間もそういう感じで見ておりました。世間のコンセンサスを得ることも大変苦慮いたした点でもございます。

 これは私、では一体、懲戒とは何かと思って辞書を引きました。懲戒という文言、不正または不当な行為に対して制裁を加えるなどして、懲らしめることなんです。特別の監督関係または身分関係における規律の維持のために、一定の義務違反に対し制裁を科することなんですね。それから、ほかの辞書も全部調べてまいりましたけれども、懲らしめること、戒めること、公務にある者の義務違反に対し国または公共団体が制裁を科すること。ある辞書には、不正、不当な行為を再び繰り返さないように罰を加えることなんです。つまり、懲戒という日本語をしっかりと正しく認識なさった上で、しつけと同じだよというふうに言っていただきたいというふうに私は思うんですね。

 そもそも、懲戒というのは罰なんです、懲らしめることなんです、制裁なんです。では、しつけとは何か。しつけとは、字のごとく、礼儀作法を身につけさせることなんです、身につけた礼儀作法なんです。ですから、私は、同じ線上にしつけと懲戒があるとお思いになっていらっしゃることがそもそも間違っているのではないかと思います。なぜならば、平成二十年度の一年間で六十七人の子供が虐待で死んでおります。その子供たちの親が言うには、しつけだと思って私はやったんだ、しつけだと思って殴った、しつけだと思って懲らしめた、懲らしめたんですね。

 懲らしめるということはしつけではないということをまず御理解いただきたいと私は思っておりますが、大臣、いかがでいらっしゃいますか。

江田国務大臣 委員御指摘のとおり、私も児童虐待防止法ができたということは画期的なことだと思っております。

 先ほど、別の委員からの御質問のところで懲戒権について指摘がございましたが、当時、私ども民主党は、懲戒という言葉を省いた民法改正案をまとめたんです。しかし、いろいろな議論の中で、どうも当時の与党の皆さんの御理解をいただけなかったんだろうと思います、それを省くことなくまとまって、委員長提案で出てきて、私もネクストキャビネットの一員としてそれを了解いたしました。しかし、私どもは懲戒という言葉をなくする法案をまとめたこともあるんだ、そのことはぜひ申し上げておきたいと思います。

 懲戒という言葉が、一般的に、懲らしめる、戒めるというのがしつけとぴったり合うかというと、なかなかそれは難しいところがある。しかし、全体に、児童福祉法もありますし、あるいは今の民法もありますし、監護、教育、しつけ、懲戒、こういう言葉があるわけで、それはどう違うんですか、こう言われますと、これはすべて子の利益のために行う営みなんだ、こういう意味で重なっているんだと。同義というと、それは言葉の定義でいうと、辞書的には同義でないかもしれませんが、私は人間の営みとしてはそこは同じだというように理解をしていきたい。懲戒だから、つまり、しつけじゃないから、しつけを超える何かができるんだなどというような理解をしてはいかぬものだと思っております。

池坊委員 何かあれこれと説明を加えなければ理解してもらえないということはやはり困ると私は思うんですね。端的にわかるということが一般の人には必要だというふうに思っております。

 せっかく江田大臣が、政府にお入りになる前には、これは必要ないとお思いになったならば、その主張をぜひ、いろいろな議論があったとしても、貫いていただきたかったというふうに私は思っております。子供の利益というのが入ったから前進ではございますけれども、これを別の言葉にするべきであったのではないかというふうに私は思っております。

 今のお話などを伺っておりますと、正当な懲戒、あるいはしつけ、児童虐待との区別について、一般の国民にもわかりやすいガイドラインをつくる必要があるのではないかと、今のお話を伺ったら、なおのこと思いましたが、いかがでございますか。たくさんの質問をしたいと思いますので、ちょっと簡潔にお答えいただけたらと思います。大臣、お願いいたします。

江田国務大臣 法務省的には、こういう規定を用意いたしまして、これをあとはそれぞれの役所、つかさつかさで運用していただくものだと思いますが、児童福祉を預かる場面で必要なガイドラインは適切につくって運用していただけるものと思っております。

池坊委員 では、これは厚労がなさるのでしょうか。ぜひしっかりとしたガイドラインをやっていただかないと、今のような説明を一々しているわけにはいかないと思います。

 それでは、親権の二年以内の一時停止について質問させていただきたいと思います。

 私は、この親権の一時停止、これはできてよかったなというふうに思っておりますが、この前に一部を制限するものがあってもよかったのではないかなというふうに考えております。それも多分審議会の中では議論されていたのではないかと思います。議事録は読みましたけれども、この議論がどのような経過を経たかという情報公開がございませんでしたので、その内容についてはわかりませんけれども。

 先ほども審議の中に出ておりましたように、例えば携帯電話を買いたいと思うけれども、親が邪魔をする。今の高校生の一〇〇%近くが、普通、携帯電話を持っております。それへの邪魔が入るとか、あるいはドメスティック・バイオレンスで家庭内暴力を受けているとか、あるいはまた、施設を退所した子供に親がお金を無心してつきまとうとか、さまざまなこともございます。

 これは、面接強要禁止仮処分などを活用してはどうかという意見が多分出たのではないかと思いますけれども、面接強要禁止仮処分が機能するものであるならば、今までDV法の保護命令など必要ないことになりますけれども、現実にはそんなことはなくて、DV法の保護命令は年間三千件前後の申し立てがあり、年間二千五百件前後の発令があるというふうに聞いております。これが、一部制限、今までの財産の方はあったと思いますので、身上監護権が一部停止があってもいいと思いますけれども、それに対してはどのようにお考えでしょうか。

江田国務大臣 法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会というところでさまざまな議論が行われました。この議論は、議事録は公開されているんだと思うんですが、検討はされました。親権の一部の制限ということについて検討はされましたが、一部の制限ということについて、身上監護権のみを制限する制度であるとか、あるいは必要な部分を特定して制限する制度であるとか、いろいろ検討されましたが、いろいろな問題点も出されたんだと聞いております。

 身上監護権だけを制限して財産管理権は残す、しかし、財産管理権を持たない未成年後見人が十全な子の監護を果たせるだろうかというような疑問もあるとか、あるいは、一部分に限定してといっても、それはなかなか限定の仕方が難しいとか等いろいろございまして、二年を超えない限度で期間を定めて親権をすべて停止するという制度に整理をしたということで、そこはとりあえずこれで一度やらせていただきたいと思っております。

池坊委員 先ほども申し上げましたようないろいろな事情がある。それからまた、パスポートを申請したいけれども、親の協力がないとこれは申請ができない。精神疾患があって医療保護入院をしたいと思っても、これも課題でございます。

 今おっしゃるお答えを聞いておりますと、それなら親権停止をした上で未成年後見人を選べば解決する問題だとおっしゃられるんだと思いますけれども、私は、そこまでしなければならないのかなという疑問を生じております。

 親が子供を施設に入れた経緯を振り返ってみますと、適切に養育できないなどの事情で施設に入れていることが多いわけですから、基本的には施設に任せるべき部分がかなりあるのだろうと思います。予防接種、特別支援学校への就学、パスポートの申請などといった点については、関係省庁が連携して、必ずしも親の協力を得なくてもスムーズに対応できるような工夫が必要なのではないかと思います。

 これは、児童福祉法の二十八条の承認のもとで子供が児童養護施設などに入っている場合に限られておりますね。この場合にはいいわけですけれども、しかし、実際には、民間のシェルターに入っている子供、親族に身を寄せている子供、ひとり暮らしをしている子供などにとっても親の接近を避けたい事情があることが少なからずあるのではないかと思います。そういう子供たちにとって接近禁止命令はぜひ欲しいという声が聞こえてまいりますが、厚労の小宮山副大臣、いかがですか。

小宮山副大臣 接近禁止命令、おっしゃるとおり、必要な点もあるかと思いますけれども、まず面会、通信を禁止する、そこで従わなければ、強制に切りかえまして、その後やるとか、やはりプライバシーとの関係とかいろいろございますので、段階を追ってやっていく必要があるのではないか、そのように考えております。

池坊委員 そして今度、親権、これは八年と九年で二十五件しかなかったのではないかと思います。つまり、親権の喪失というものがあったとしても、現実にはそれを使うことがなかなか難しいのだと思います。それで今度は親権一時停止ということになったのだと思います。

 これはなぜそうなったかというと、やはり再統合、喪失だと一生傷を負うけれども、二年以内だったらまた親と子が再統合することが容易にできるのではないかというようなことでこのような仕組みをつくったのではないかと思っておりますけれども、それでは親子の再統合を促進するどのような仕組みを考えていらっしゃるかをお聞かせいただきたいと思います。

小宮山副大臣 親との再統合というのは、やはり親指導をどうするかということも絡みまして、なかなか難しい問題ではあるかと思っています。

 ただ、児童虐待を行いました保護者に対する指導、支援につきましては、児童虐待防止法十一条におきまして、児童虐待を行った保護者について行われる指導は、「親子の再統合への配慮その他の児童虐待を受けた児童が良好な家庭的環境で生活するために必要な配慮の下に適切に行われなければならない。」とされておりまして、厚生労働省は、平成二十年三月に、保護者への援助内容を明示いたしました、児童虐待を行った保護者に対する援助ガイドラインを策定いたしまして、このガイドラインに基づいて、児童福祉司等による面接や家庭訪問での指導、支援、関係機関が実施する親子の再統合に向けたプログラムへの参加の促進など、保護者の指導に当たっての基本的な方法は示しているところでございます。

 さらに多様なプログラムの実施も必要だと思いますし、前回の児童虐待防止法改正のときにやり残した問題といたしまして、やはり親を教育するような専門家がこの国には少な過ぎる、そうしたことの養成もしっかりしていかないとなかなか再統合には結びつかない、そういう意識も持ってしっかりとやっていきたいというふうに思っております。

池坊委員 もっとお伺いしたいこともあるのですが、未成年後見人について質問させていただきたいと思います。

 今度、未成年後見人に法人が、そして複数後見が認められたということは、私は確かに前進であるというふうに思っております。今後、福祉関係者や心理専門家、あるいは家庭裁判所の調査官経験者や子供の権利に詳しい弁護士などが未成年後見人の受け皿となるような法人を立ち上げたらいいというふうに考えております。

 ですけれども、これだけで未成年後見人のなり手がふえるとはとても思えないんです。

 第一に、未成年後見は財産管理のみならず身上監護も含んでおります。例えば子供が第三者を傷つけた場合、未成年後見人が法的責任を問われるということもございますね。

 それから第二に、先ほども出てまいりました報酬の問題です。現行法では家庭裁判所は被後見人の財産の中から相当な報酬を与えることができるとしております。しかしながら、成年後見と異なり、未成年後見の場合は子供に財産があるとは限らないと思うんですね。むしろ、ないことの方が多いのではないか。未成年後見制度を本当に機能させるためには、最低限、業務を続けていけるだけの報酬を国が支払うとともに、賠償責任について保険制度を設けるなど、善意で未成年後見人になった者が思わぬ責任を負わされないように、しっかりとしたサポートが必要なのではないかと思います。

 例えば、今、法テラスというのがございます。あれを使っている多くの国民がいるわけです。法テラスなんかも、最初は、とてもそんなことはできないよという考えの中にあっても、お金もない、だけれども問題を抱えている人たちが行けるような、そういう法の場所をつくるべきだという強い熱意のもとで生まれてきたと思います。

 ですから、こういうような保険制度も、そんなことはできないよということではなくて、こういうことのサポート、政府ができるんだという気持ちから、大臣、ちょっとお考えいただきたいと思いますが、いかがですか。

小宮山副大臣 実務をする方から先にちょっとお答えをさせていただきます。

 退所後に子供たちが自立していくためには、おっしゃるように、身上監護と財産管理を行います未成年後見人の存在というのはとても重要だと考えています。

 今委員が御指摘ありましたように、未成年後見人の報酬、被後見人、子供が第三者にけがを負わせてしまう、あるいは他人のものを壊してしまう、未成年後見人に損害賠償責任が生じた場合の賠償責任保険の保険料負担が必要、こうした御意見もあるというふうにも聞いております。

 今回の制度改正で、法人や複数人が未成年後見人になれるということから、子供の権利擁護の観点から、法人等が未成年後見人となる場合にどのような支援が可能か、必要かということをしっかりと検討していきたいと考えております。

江田国務大臣 今、小宮山副大臣から答弁されたとおりですが、委員がおっしゃる、そんなことできないよといって初めからあきらめるんじゃなくて、知恵を絞って取り組んで、一歩でも前へ進み出して、そして次第にしっかりとした制度をつくっていく、そういうプロセスというのは本当に大切だと思います。すべてにわたってそういうことでありたいと思っております。

池坊委員 私どもが二〇〇〇年に児童虐待防止法をつくりましたときも、児童福祉法があるじゃないかと厚労省には随分と反対もされました。でも、子供の最善の利益を考えるときにぜひ必要だというふうに思って私どもがつくりましたけれども、やはり子供の最善の利益、それからまた国民一人一人の最善の利益、これを念頭に置いたならば、不可能なことはないというふうに私は考えております。

 面会交流についてお伺いしたいと思います。

 民法第七百六十六条第一項を改正して、父または母と子の面会及びその他の交流を新たに明示しております。この法改正により、どのような効果を意図していらっしゃるかを端的にちょっとお答えいただきたいと思います。

江田国務大臣 子の面会交流ということ、それから費用の分担ということ、これを離婚の際には決めなきゃいけないんだということを、いけないとまではなかなか言いにくいんですが、決めるようにするということは書き込んだわけです。

 これまではここが明確でなかったものですから、なかなか当事者がそういうことを決めようという方向に向かず、家庭裁判所の実務においては、もし家裁が入ってやるときにはなるべく決める努力はしてきたと思いますが、しかし、そこでも必ずしも決め切れていなかった。

 やはり、別れた後も、父と子、母と子、この関係はちゃんと残るわけですから、そういう面会交流ということを離婚のときにもきっちり決めてくださいよ、それが我々の意思なんですよ、こういうことを国会がメッセージを発するということは非常に大きい効果があると思っております。

池坊委員 必ずしもこれはマストではありませんので、アメリカなどですと、夫婦で養育計画をつくらなければ離婚はできないというふうになっておりまして、親には教育プログラムの受講が義務づけられ、その子の発達に応じたかかわり方や交流のルールを学ぶ。争いになったときは、子の立場に立ち、調整する専門職がいる。面会交流の施設も全米にあり、低所得者は利用が無料である。日本も、離婚を協議する段階で子供とのかかわり方をアドバイスしたり、離婚後のトラブルも相談できるセンターを各地に設置すべきであるというふうに私は考えております。

 なぜならば、現在、面会交流紛争が激増しております。平成十年では、調停千七百件、審判二百九件の申し立てにすぎなかったのが、平成二十年には、調停が六千二百六十件、審判が千件と、この十年で四倍近くにもふえております。また、解決も困難で、審判、調停合わせて、既済七千百件のうち、面会交流が認められたのは四九%にすぎません。そして、月一回以上の面会が認められたのはさらにその半数、宿泊つきというのは一五%にとどまっております。また、合意ができても守らないケースが多く、家裁事件の中でも面会交流事件は、最後まで争いが残り、すっきり解決できない事件と言われていると私は耳にしております。

 この背景には何があるのか。私も調べましてびっくりしたんですけれども、離婚の増加、まあ離婚の増加というのは私ども耳にいたしますから、離婚というのは年々ふえているんだなというふうには理解しておりましたけれども、平成二十年の離婚数は二十五・一万件であり、同じ年の婚姻数七十二・六万件で割りますと、二・九組に一組が離婚していることになります。このうち、子供がある夫婦の離婚は十四・四万組で、子供の延べ数に対して二十四万五千人なんですね。出生数がこの年百九万人でしたので、子供の四・五人に一人が成人になるまでの間に親の離婚を経験するということになっていくということに対して、私はある意味びっくりしたんですね。

 ある意味では、親の離婚というのは子供たちの間にとっても特別なことではなくて、当たり前のことになっていく。でも、決してそれは当たり前ではないというふうに私は思っておりますので、親が離婚した場合に、非監護親との面会交流は子の利益のために極めて重要であると私は考えております。

 この点についての御認識を伺いたいと思いますことと、非監護親との面会交流が現在の日本ではかなり不十分にしか行われていない理由について、どのように認識していらっしゃるでしょうか。

江田国務大臣 私は、あと一カ月少々で七十歳になります。私どもの世代というのは、振り返ってみて、確かに、妻といろいろなプロセスを経てまいりました。いや、本当です。そして、しかし、私どもの世代というのは、なるべく別れないようにした方がいいんだ、なるべく乗り越えていった方がいいんだ、そういう世代だったと思います、率直に言って。お笑いになっても結構ですけれども。

 しかし、今は大分それが違ってきているんだと思います。夫婦になってみた、しかし、やはりこれはちょっとイメージが違った、別れることによって自分の人生がさらに豊かになっていくと二人が思えば、それは別れる、そういう選択がかなり自由になってきているし、また、家裁の実務でも、家裁の実務はよくは存じませんが、だんだんそういうような実務になってきていると聞いております。

 そういう、離婚というのが普通のことになってくると、それはやはり親の離婚を経験する子供がふえてくるのは、これはもう論をまちません。しかし、その場合に、やはり父と子、母と子の関係というのは、これはもう切っても切れない関係でございまして、そして、上手に別れれば、そうすると、非監護親と子の交流というものは子の健全な育ちのためにも大切なことだと理解をしていかなければいけないと思っております。

 今、非監護親と子の面会交流というものが必ずしも十分に行われていないという現実がありますが、やはり離婚のこういう状況を直視すると、そこは、非監護親と子との交流というものをもっともっといろいろな意味で私どもサポートしていかなきゃいけない。それは、いろいろなそういうサポートの団体があったりカウンセラーがあったり、いろいろなシステムをつくっていかなければいけないと思っております。

池坊委員 私も大臣と同じぐらいの世代ですので、まず、夫婦に多少のことがあったとしても、子供の最善の利益のためには両親が一緒に養育する方がベターではないかというふうに考える世代でございます。今、若い世代は、そんなけんかしている親よりは、すぐに自分たちの幸せを追求した方がいい、それも一つの新しい価値観ではあると思いますから、それを否定するわけではございませんけれども、私はそれの影響を子供に与えてはいけないのではないかと思っております。

 面会交流は、親にとっては、子供との精神的交流を図り、その成長にかかわるという点で重要な意味を持つものではないかと私は思っております。他者の妨害を排除してでも実現されるべきであるという点で、法的保護に値するのではないかと私は思います。子供にとっても、健全な成長を果たす上で極めて重要で、親と子供の両方にとっての権利ではないか。親の権利だと言われているところもありますが、私はそうではなくて、子供の権利ではないかと思っております。

 アメリカでは、一九八〇年にカリフォルニアでそのような養育の規定ができましたとき、それをきっかけとして全米に広がったというふうに聞いております。

 インディアナ州の親時間ガイドラインというのを読みましたら、冒頭に、両方の親と頻繁で有意義かつ継続的な接触を持つことが、通常、子の最善の利益であるという仮定のもとにガイドラインをつくったんだというふうに言われております。

 八つの項目がございましたが、その一番初めに、親が別れることに子は責任がないこと。これをやはり親は念頭に置くべきではないかと私は思っております。

 二番目は、子は両方の親とそれぞれ独立の関係を維持発展させ、それぞれの親から継続的な養育と監護を受けること。私はこれも、両親が仲が悪くても、子供にとってはいい父親であり、いい母親であるということもあり得ると思います。

 それから、児童虐待を見ておりますと、もし共同で養育していたり、あるいは面会交渉があったならば、子供の異変に気がつくということもあり得たなというふうに私は感じたこともございます。

 これが例えばアメリカですと、半数以上が、六五%でしたでしょうか、月に二泊三日で、どっちかの、一緒に住んでいない方の親のところに泊まりに行く、そういうことが、個人主義の国ですから、尊厳ということで認められているんだと思いますけれども、日本の場合には、どうしても家族観というか、それがこの面会交流を阻んでいるのではないかというふうに私は考えております。日本の場合には、離婚すると、もうこれは縁切りだよというふうなことになっていくのですけれども。

 非監護親との面会交流が十分に行われるようにするには、民法七百六十六条第一項を改正するのみならず、さまざまな施策が必要と私は考えております。政府あるいは最高裁として、どのような施策を講じるおつもりがあるのかないのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

小宮山副大臣 委員が再三おっしゃっていますように、子の利益の観点から、離婚後も適切な親子の面会交流が行われるということ、これはとても重要だと思っております。

 今回の民法改正案で、子の監護について必要な事項の具体例として、親子の面会交流が条文上明示されています。

 厚生労働省としましては、平成十九年から、養育費相談支援センターを設置いたしまして、ここで、養育費のことのみならず、面会交流の相談にも応じているところです。また、都道府県等を単位に設置されました母子家庭等就業・自立支援センターで、専門の相談員を配置いたしまして、養育費や面会交流の相談にも応じています。

 今後とも、専門の相談員を配置していないセンターに、これは全国百六カ所のうち二十七カ所ございますが、ここに配置を進めるとともに、相談員の人材養成のための研修や関係機関との連携など、この面会交流に関する取り組み、日本の中ではなかなか難しいと言われておりますが、子供のために充実するように取り組んでいきたいと考えております。

江田国務大臣 小宮山副大臣の答弁のとおりなんですが、伝統的な家族観、家庭観ということもあると思いますが、それと別に、監護親が面会交流を拒否するのはなぜなんだろうか、ここを考えてみると、多少この対策が打てるかなと。

 それは、一つには、面会交流の際に子を連れ去られてしまうんじゃないかと恐れる。これは、そういうおそれのないように、いろいろな面会交流のサポート体制をつくることで解決がつく。

 あるいは、離婚に至った父、母の強い強い葛藤がずっと残って、もう顔を見るのも嫌だと。これは、やはり離婚の際に、今、離婚というのはどちらかが悪いから離婚じゃなくて、どっちもが立派なんだけれども合わないからという場合もあるんですよ。これは本当なんです。ですから、そういう場合には、やはり話し合って離婚というのを円満にやっていく、そのことによって、その後も子供とのかかわりはちゃんと持てる、それを許すというようなことに至ることは十分考えられる。

 あるいは、子との面会交流は子供にとって大切なことなんだということ、これはもうしっかり理解を深めていく、そういう手当てをしていく。

 いろいろそういうことがあって、今、法務省ではこうした関係の調査研究を委託しているところで、真剣に研究をしながら今後の対応を私は考えていきたい。

 あるいはまた、小さな営みだと思いますが、家庭裁判所の調査官OBが組織をつくって、そうしたところにいろいろなサポート体制を用意しているというようなこともあるようでございまして、これからの課題でございます。

池坊委員 私も同じように思っておりまして、新しい出発のために離婚をする、こういう夫婦があるということは認めるべきであると思います。ただ、そのときに、では、どうやって子供がなるべく傷つかない方法を考えていくかということは、やはり大人たちの責任ではないかと思います。

 一九九四年四月、国連子どもの権利条約を批准いたしました。同条約では、親の離婚後でも、子供の権利として、親とは分離されていないことが明示されております。我が国は同条約を批准したにもかかわらず、非親権者、非監護者である親と子との適切な交流がなされていない。これは、ほかの例を見ましても、韓国、アメリカ、イギリス、フランス、すべて調べましたら、やはり日本が一番甘いのではないかというふうに思いますので、私は、積極的に、例えばペアレンティング・コーディネーター、つまり監護調整人とかそういう第三者を置くということが極めて重要ではないか。そうすると、何か冷静に判断ができる、何か冷静な自分を取り戻すことができるのではないかと思っております。

 私は、一つには、国民一般への啓蒙ということが必要かと思います。

 二つ目には、離婚する夫婦に対する調停あるいは審判の際の啓発、これが大切。

 三つ目に、協議離婚する場合における行政窓口における啓発。あるいは、外国の例にあるように、養育計画の作成や講習受講を義務づけ、これをクリアした者にのみ協議離婚を認める法制度の導入も必要ではないかと考えております。

 四番目に、面会交流を円滑に行うために活動する第三者、今大臣がおっしゃいましたけれども、これは、離婚した夫婦が容易に利用できるようにするための措置、例えば、このような活動を行われるNPOを公的に支援、離婚夫婦に紹介する、あるいは家庭裁判所に公的な面会交流センターを設置するなど、これは、馳議員が十九日の質疑で、そのような議事録を読ませていただきましたけれども、これも有効ではないかと思っております。

 これが審議されましたときには、法務委員ではございませんが、また差しかえで質疑をさせていただけたらと思いますが、ぜひ、これについても、日本はまだまだおくれておりますので、積極的に進めていただけたらと願い、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

高木委員長 池坊保子さんの質疑は終わりました。

 次に、宮本岳志さん。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 本改正案が、虐待する親の親権を二年以内に限って停止する制度を創設することや、子供みずからが親権喪失等の申し立てを行える点、児童養護施設等も未成年後見人となることができるようにする点、離婚協議に当たって養育費や面会交流を明文化することなど、いずれも必要なことであり、我が党も賛成であります。

 きょうは、時間もございませんので、民法第八百二十二条、懲戒権に絞って質問をいたします。

 昨年十月の法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会第八回会議の議事録を読みますと、ほとんどすべての委員が八百二十二条の懲戒権を削除すべきだという意見であります。

 ところが、十二月の第十回会議では、法務省民事局の羽柴関係官が、二項の懲戒場の規定は削除するが、一項の懲戒権については、子の利益のために子の監護及び教育に必要な範囲内という条件をつけて残すという、今回の改正案のもとになった要綱案を示しました。その後の第十回会議の議論を見ても、やはり懲戒権は削除すべきだ、こういう強い意見が出され、他の委員も、それが一番いいのだがという、そういう議論が続くものを、この法務省事務局案で取りまとめているわけです。

 まず聞きますけれども、法務大臣、なぜこれを削除しなかったのか、お答えいただけますか。

江田国務大臣 削除すべしという強い主張があり、その主張に一定の根拠があること、これは私も認めます。しかし、私もことしになって法務大臣になったばかりなので、その間の経緯を、法務大臣としてそれに関係しているわけではございませんが、最終的に出されました答申というのが、今、懲戒は残し、ただし子の利益にということで上がってきたものですから、やはり多くの皆さんの議論を集約するとそういうことになる、これはそう受けとめざるを得ないということでございました。

 懲戒というものが持つ言葉の悩ましさというのはあると思いますけれども、しかし、逆にそれをなくすると、今度は、しつけもできないのではないかというような誤った理解が社会に広がるのではないかとか、そういう理由を述べられたのであろうと思います。

宮本委員 この第十回会議で羽柴関係官は、本来できるしつけができなくなるといった誤った受けとめ方がされないかなど、現在ある規定を削除することによる社会的な影響についての懸念というものに触れておられます。しかし、同時に、児童虐待を行った親は必ず、しつけのためにやったと主張することは、これはもう各委員、これまでにも申し上げているとおりであります。

 そこで、江田大臣と蓮舫大臣、お二人にお伺いしたいんですが、しつけというものと虐待というものの間に明確な一線を引けると思うかどうか、これをイエスかノーかで端的にお答えいただけますか。

江田国務大臣 引けないと思います。

蓮舫国務大臣 しつけというのは、子供の健全成長に資するために保護者が行うものであって、他方、虐待というのは、子供の心身ともに、その成長にマイナスの影響が及ぶものであり、明確に違うと思いますが、線引きは難しいと思います。

宮本委員 ここの議論は、実に混乱した議論がずっと続いているわけです。

 きょうは、私、資料をつけておきました。いずれも、地方自治体のホームページをとったものであります。

 一番は福井県大野市、「しつけと虐待はまったく異なるもので、行為の程度で測れるものではありません。」とあります。二番は神奈川県相模原市、「しつけと虐待を程度の問題として捉えることは正しくありません。」とあります。これらは、程度の問題を否定する、いわば質的区別派だと思うんですね。

 三番は、福島県のホームページでありますけれども、「子どもの虐待は家庭におけるしつけとは明確に異なり、」から始まっていて、一見、質的に区別がつくと言っているようでありますけれども、その直後に、「しかし、実際上は」「区別を判断することは大変難しい」と言い、結論は、担当者一人で判断するな、組織的対応をといういわば中間派であります。

 四番は、北海道北広島市、「たしかに、「しつけ」と「虐待」の違いを明確にすることは難しいことです。」と区別を困難視しております。

 五番の大分県津久見市も、「境界は必ずしも明確ではありません。」と述べた上で、虐待と考えてよい場合を挙げて、「通常のしつけ、体罰の程度を超えている。」というのを挙げるんですから、程度の問題だと見ているわけで、こちらは量的区別派だと言わなければなりません。

 さらに、同じく今の津久見市は、「民法で認められている「親が必要な範囲で子を懲戒する権利(懲戒権)」によるしつけや体罰と、「虐待」との境界は必ずしも明確ではありません。」と述べているのに対して、六の福岡県は、「「虐待」と民法で認められている「懲戒権」によるしつけとは、区別されなければなりません。」と、全く反対のことをこの二つのホームページは述べているわけですね。

 蓮舫大臣、どうしてこのような混乱が起こっているとお考えになりますか。

蓮舫国務大臣 宮本委員、その質問は非常に悩ましいといいますか、ここに至るまで、さまざまな虐待関連の法改正が行われているときに、議員の間でも、あるいは法務省の中の審議会でも、厚生労働省の中でも本当に幅広い議論が行われてまいりました。懲戒なのか、しつけなのか、それとも虐待なのか、体罰なのか。ただ、明快に言えることは、やはりその状況が毎回違うものですから、一つ一つ個別の事由において丁寧に見ていって、これは一体何なのかという議論を多角的に行うのは必要ではないかと思っています。

宮本委員 議論が繰り返されてきたように、しつけと虐待というものは明確に区別されなければなりません、それは。

 にもかかわらず、このように混乱した議論が起こるのはなぜかと考えるときに、これは子どもの虹情報研修センターの研究部長でもある川崎二三彦氏が書いた「児童虐待」という岩波新書でありますけれども、この中で、しつけと虐待の境界領域にもう一つ体罰というものが割り込んでくると、明らかに別のものでなければならないはずのしつけと虐待の区別がつかなくなってしまうんだ、こういう指摘がございます。

 そこで、先ほどの資料の七番目につけた最後のものを見ていただきたいんですけれども、それを裏づけているのが富山県立山町のホームページであります。「“しつけ”と“虐待”とは違います!」と述べた上で、「しつけをするのは難しいものです。自分の子どもを思うあまりに手が出てしまい、あとで冷静になって寝顔をみたら自己嫌悪。どの親でも一度は味わう苦い気持ち。でも日常茶飯事しつけで“たたく”ようになると、それに慣れて、暴力はエスカレートしていき、自分が抑えきれなくなってしまいます。気をつけたいですね。」と書いてあって、つまり、しつけだと言ってたたくということを始めると、いよいよその境界線というものがぼやけてくるんだということを言っているわけですね。そして、この子供に対する親の体罰を正当化しているものこそ民法八百二十二条の懲戒権だというふうに川崎氏は述べておられます。

 そこで法務大臣に確認するんですが、二〇〇〇年四月十三日の衆議院青少年問題に関する特別委員会で、当時の法務省民事局長は、「この懲戒には体罰も場合によっては含まれる」と答弁しておりますが、間違いないですね。

江田国務大臣 「場合によっては」という修飾語つきでそういうことを民事局長が答弁しているというのは事実でございます。

宮本委員 この体罰というものが、今申し上げたように、しつけと虐待の境界をあいまいにするというだけでなくて、私は、これは明らかに体罰は子供への暴力であって、そういう点では、この民事局長答弁というのは、それを家庭において容認するものになっていると言わざるを得ないと思うんですね。

 江田大臣、この答弁、いまだに適切だとお感じになりますか。

江田国務大臣 これは本当に悩ましいところで、しつけと虐待というのは区別をすべきものなんです。それは違うものなんだと言わなきゃいけないんです。私がさっき言ったのは、しかし、なかなかその境界域になりますと、事案によっていろいろと振れてくるということを申し上げたので、虐待はもちろんいけません。しかし、しつけというものは、やはりそれはあるんだろうと思います。

 そこで、体罰なんですが、この体罰とは何かというのもまたこれが難しいところで、先日、法務委員会でも申し上げたんですが、私も子供をぱちんとたたいたことがあるんです。しかし、その瞬間に、これはしまったと思って、すぐおもちゃを買って謝ったんですが。本当にそこはなかなか、親子の間でそう簡単に線が引けるものじゃないんだということなんですね。

 だけれども、もしどちらかに決めなさいということになれば、体罰というものは、やはり精いっぱいやめるべきものだと思います。

宮本委員 個々の親子の関係で、さまざまな、つい手が出るということがあることまでも問題にするつもりはないんです。

 ただ、体罰というものをやって何が悪いのかという議論のよりどころになっているのがこの懲戒権というものであって、しかも、民事局長が「場合によっては含まれる」と言うものですから、私は、ここは非常に問題があるというふうに言わざるを得ないんですね。

 それで、文部科学省、きょう初等中等教育局長に来ていただいておりますけれども、学校においても、懲戒というものは学校教育法十一条に定められております。学校の校長並びに教員は子供を懲戒することができるんですけれども、その懲戒の手段として体罰を行うことは許されておりますか。

山中政府参考人 学校においてでございますけれども、学校教育法は第十一条で、校長及び教員は、教育上必要があると認めるときには児童、生徒、学生に懲戒を加えることができる、ただし、体罰は加えることができないというふうに規定しております。体罰は禁止されているというものでございます。

宮本委員 法務大臣、私、この法制審の議論、第八回も第十回も読みましたよ。圧倒的多数、ほとんどの人は、この懲戒権、八百二十二条というものは削除すべきだ、あるいは削除するのが望ましいという議論をやっていて、それで、先ほど言った事務方が、一項については残すんだという話をしたときに、では、どういう条件をつけるかといったときに、みんなが口々に言っているのは、体罰や暴力はだめですよというふうに書かなきゃならないというやりとりなんですね。

 今回つけ加えた条文というのは随分これまでと違っているというふうにおっしゃるんだけれども、実は、二〇〇〇年四月十三日の、今やりとりのあった民事局長答弁も、「場合によっては含まれる」と言いつつも、子の利益のために行うべきだ、そして、教育のために必要かつ合理的なものであることが求められると言っていますから、何も別にこのときはそういう条件がなかったわけじゃないんですよ。そういう条件があればやってよろしいという議論になっていて、明確にこの委員の方々、法制審でやっている議論とはやはり違うんですよね。

 それで、端的に聞きますけれども、なぜ学校教育法十一条のように、ただし、体罰は許されないと書き込まなかったんですか。

江田国務大臣 なかなか難しい御質問でございますが、学校の場合は、やはりそれは先生という資格を持って子供の教育に専門に当たっている人の営みで、これは体罰などを加えることが教育上意味があるというような理解をしたりする人じゃない、むしろ、体罰を加えなくて子供を上手に教育していく方法を十分身につけている人たちの場ですから、だから、そこであえてそういうことを書いても、それは教育上ちゃんとしたやり方をしなさいよということで、その規定を十分生かしていけるということで書いているのだと思います。

 これに対して、家庭というのはもうさまざまですから、家庭の営みというのは、時に間違ったこともある、時に憎しみ合うこともある、そういうのを乗り越えて乗り越えていく、そういう裸の人間のぶつかり合いの場ですから、あえていろいろな規定をそこに書き込まないようにしようという、一生懸命説明するとすればそういう説明かなと思います。

    〔高木委員長退席、奥田委員長着席〕

宮本委員 明示的にそういう言葉を使っていないけれども、限りなくそういう趣旨を含んだ改正だというふうには受けとめました。

 ただ、本当に、やがてはやはり八百二十二条そのものを削除すべきだというのは、すべての委員の方々が、今回やむなしという方も含めて主張されていることですから、その点しっかり押さえておきたいと思うんですね。

 それで、これは実は国際的な到達点に照らしても非常に恥ずかしいことであります。何人もの方から出ましたけれども、子どもの権利条約、これは日本も批准しておりますけれども、この条約の十九条の1に対しても反するという指摘がありますし、また、この間、国連子どもの権利委員会から三回目の政府に対する勧告が出されましたけれども、ここでもこの問題は触れられております。

 きょうは外務省に来ていただいておりますけれども、これは一つにまとめて、条約の十九条1と、そして勧告の中身を御紹介いただけますか。

鶴岡政府参考人 児童の権利に関する条約第十九条1は、「締約国は、児童が父母、法定保護者又は児童を監護する他の者による監護を受けている間において、あらゆる形態の身体的若しくは精神的な暴力、傷害若しくは虐待、放置若しくは怠慢な取扱い、不当な取扱い又は搾取(性的虐待を含む。)からその児童を保護するためすべての適当な立法上、行政上、社会上及び教育上の措置をとる。」と規定しております。

 また、ただいま委員御指摘の、児童の権利に関する条約に基づき提出いたしました第三回我が国政府報告につきましては、児童の権利委員会は、昨年六月に公表した最終見解のパラグラフ第四十八におきまして、次のとおり勧告しております。「委員会は、締約国に対し以下を強く勧告する。 (a)家庭及びその代替的監護環境を含む全ての環境における、体罰及び児童の品位を下げるあらゆる形態の扱いを法律により明示的に禁止すること、 (b)全ての環境において、体罰の禁止を効果的に行うこと、」

 以上でございます。

宮本委員 その勧告の一つ前の四十七項では懸念というものが表明されているんですが、「家庭および代替的ケア環境における体罰が法律によって明示的に禁止されていないこと、ならびに、民法および児童虐待防止法が、特に、適切な懲戒の行使を許容し、体罰が許容されるのか否かについて不明確であることを懸念する。」と述べているわけですね。

 江田大臣そして蓮舫大臣、これは子どもの権利条約という条約の批准国として、これらの懸念と勧告にどうこたえるのか、お二人の大臣からお答えいただけますか。

蓮舫国務大臣 こうした条約を当然守らなければいけませんし、勧告をいただいたもの、あるいは懸念をいただいているものは適切に是正をしていかなければいけない。もしかしたら歩みがのろいかもしれませんけれども、児童虐待をなくすために今回まず一歩進んだ、ここで終わるんじゃなくて、ここから先の努力は行政としてもあるいは国会においても引き続き議論をしていただきたいと思っております。

江田国務大臣 蓮舫大臣の答えのとおりだと思います。

宮本委員 世界の到達点は本当に進んでいるわけです。

 昨年の十一月の五日に、超党派議員でつくるチャイルドライン支援議員連盟で、スウェーデンから国会議員や有識者、NGO関係者を招いて意見交換会を行いました。私も出ましたけれども、あのとき江田大臣も御出席だったと思います。

 スウェーデンは、一九七九年に親による子供への体罰を全面的に禁止をいたしました。世界的には、子供に対する暴力は人権の侵害で一切認めないというのが趨勢となっております。

 江田大臣に最後に聞いて終わりますけれども、懲戒権というものは、やがては、行く行くは、やはり世界の常識、趨勢にしっかりと合わせていく、そういう方向が求められていると私は思うんですが、江田大臣の御見解をお伺いして、私の質問を終わります。

江田国務大臣 反論ございません。

宮本委員 終わります。

奥田委員長 以上で宮本岳志君の質疑を終了いたします。

 次に、城内実君。

城内委員 無所属の、国益と国民の生活を守る会の城内実でございます。本日、質問の時間をいただきましたこと、ありがとうございます。

 さて、本日は、この合同審査会に蓮舫大臣も来ていらっしゃいますので、今までやや江田大臣に対する質問が多かったので、蓮舫大臣に対する質問も幾つか加えさせていただきたいと思います。

 最初に、まず、子ども・若者ビジョンの今後についてというのが一つ。二つ目は、東日本大震災におきます震災孤児への対応、あるいは原発への対応の問題について。そして三つ目、時間がございましたら、法務委員会、私の積み残しの質問である民法等の一部改正、親子の面会交流及び養育費等についての明示について質問させていただきたいと思います。

 まず、最初の質問は、今、蓮舫大臣が来ていらっしゃいますけれども、大臣が副本部長を務めていらっしゃる子ども・若者育成支援推進本部が、昨年七月に、子ども・若者ビジョンというのを公表いたしました。

 それによりますと、子供、若者というその世代的なイシューに応じて、これまで省庁横断的にいろいろな、ばらばらにやっていたものを一つにまとめて、それを一括して一体的に見ていこうと。これは非常に私は高く評価するものであります。

 しかしながら、私も事務方からの子ども・若者ビジョンの一枚紙の表を見たら、いろいろな項目が数え切れないぐらい書かれているんですね。したがって、こういった多岐にわたるメニューをどう議論して、どうまとめて、どう実施すべく調整していくのか。これはなかなか簡単じゃないと思うんです。特に、最近の、震災後の民主党政権の対応を見てみますと、やたらと○○本部とか○○会議とかたくさんつくられておりますけれども、何か効果的な施策が出ているとはとても思えないんです。失礼ながら、会議は踊る、されど進まぬという状態のように感じます。

 そこでお聞きしたいのは、この子ども・若者ビジョン、その中で、各施策については実施状況の点検、評価を行うと記載されておりますが、このビジョンはまさにメニュー満載で評価できますけれども、これだけ多岐にわたる項目がたくさんあるものに対してチェック体制というのはできるのか、どうなっているのか、これを蓮舫大臣にお答えいただきたいんです。

蓮舫国務大臣 委員まさに御指摘のとおり、我が国が今実施しております各府省における子供、若者に関する施策というのは多岐にわたっています。そのどれにも優先順位をつけるのが難しいというぐらい、政府としても、子供、若者の育ち、学び、問題というのを解決して促進するための応援体制をとりたいと思っている。

 去年の七月にこのビジョンをまとめたときに、会議体をつくって、この施策がどのように進んでいるのか、効果的に進んでいるのかをしっかりとフォローアップしていきたいというまとめもさせていただきました。近々、子ども・若者育成支援推進本部の下に、子供、若者も加わったビジョンの点検、評価を行うための会議を立ち上げる予定でございます。踊らない会議をつくりたいと思っています。

城内委員 踊らない会議は結構なんですが、ぜひ私がお願いしたいのは、いろいろ多岐にわたる項目がありますけれども、重点、優先順位をしっかりして、何でもかんでも事業仕分け的発想でばさばさ切るのじゃなくて、この重点項目はいっぱい予算を使って早急に迅速にやる、これは少し後回しとか、やはりそういっためり張りをきかせていただきたいなというふうに思います。

 二つ目の、東日本大震災絡みの問題でございますけれども、先ほど川口浩議員も質問されましたが、このたびの大震災で御両親を失った十八歳未満の子供たち、いわゆる震災孤児の皆さん、この皆さんについての現状はどうなっているのか、また、今後どのような対策をとっていくのか。先ほど御答弁に、百十人震災孤児の方がいらっしゃって、もっとふえるのではないかという話がありましたが、これは厚生労働省だと思いますが、児童相談所等が行っている現状、里親の問題とかいろいろあると思いますけれども、その今後の対策について、より踏み込んだお答えをしていただきたい。

 二つ目は、文科省だと思いますが、被災した子供たちに対する就学支援、子供たちはやはり学校に行ってきちんと教育を受けなければならないわけですから、その点についての今の現状。

 そして最後に、蓮舫大臣から、この問題についてのまとめ、どのように受けとめられるかということを、それぞれ御答弁いただけないでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の震災で両親を亡くした、または両親が行方不明の児童、要援護児童と呼んでおりますが、これにつきましては、現在、児童相談所の職員が各避難所を巡回するなどして、早急に把握するよう努めております。これは残念にして毎日人数がふえている状況でございまして、四月十九日現在、百十名でございますが、実は、ちょっと前ではまだ、百名、三けた行かなかったという状況でございます。

 要援護児童の多くにつきましては、百十名の内訳でございますけれども、一時的に施設に入所している二名を除きまして、現在のところ、親族とともに生活をしております。子供の今後の姿を考えた場合に、やはりできるだけ親族に育ててもらうのが望ましいというふうに考えておりまして、親族里親などを積極的に活用して支援をしてまいりたいと考えております。

 また、親族で引き受けられない場合につきましては、養育里親などを活用することとしておりまして、被災地の自治体では、未委託の登録里親が今二百六十二名ございますので、一応、量としましては十分な受け入れが可能ではないかなと思っております。

 それ以外の問題につきまして申し上げたいと思いますが、被災地の児童相談所の職員と他県の児童相談所職員が今チームを組んで、いろいろな相談あるいは状況把握に努めているところでございます。要援護児童さんと面談をしていく、あるいはその親族さんとの話し合いを実施していくことによって、そこで何が求められているか、そういったことも把握をしながらフォローしていくということでございます。

 今後は児童のメンタル面の支援が大変重要かと思っておりまして、現在も行っておりますけれども、こうしたところに対する施策の充実に努めてまいりたい、かように考えております。

山中政府参考人 被災をした児童生徒、子供たちに対する就学援助でございますけれども、非常に重要な問題でございます。

 就学困難な子供たちが非常に多くの数に上るということから、小中学生に対しましては、学用品や通学費、給食費、こういう就学援助が必要でございます。主に市町村の教育委員会が行っている事業でございますけれども、これについて弾力的な対応でしっかりと対応していただくようにということを要請しております。要保護、準要保護で、要保護の方には国が援助しておりますけれども、準要保護の方は市町村の方で行っているというところでございます。

 また、高校生につきましては、それぞれの都道府県で奨学金事業が行われております。ここに国が基金を積んでやっている事業がございますので、こういうもので緊急の採用制度といったものを弾力的に運用して、今回被災した子供たちに対する奨学金事業というものが弾力的に行われるようにということをお願いしているところでございます。

 このほか、災害救助法によりまして、被災した子供たちに対する文房具とか通学用品などの学用品の給与というものも行われます。

 また、こういうものは手続が必要になってきますので、手続をしないでということになりますと、今、民間団体の非常に弾力的といいますか迅速な対応、例えばベルマーク教育財団では、ノート十万冊、鉛筆十万本、パステルクレヨン三千個、これを第一次として、宮城、岩手、福島県等に送っているというふうなものもございます。

 ただ、これは、民間の団体のいろいろな、緊急といいますか、そういう弾力的な運用でございますので、今後、文部科学省といたしましても、小中学生に対する学用品とか通学費とか、そういうものが引き続き必要になっておりますので、これに対する就学援助、あるいは高校生に対する奨学金、これについても、従来のものに上乗せしたものが当然必要になってまいります。この点、補正予算においてしっかりと対応していきたいということで、今取り組んでいるところでございます。

蓮舫国務大臣 先日、岩手県釜石市に視察に行きまして、保育所を見てまいりました。子供たちに触れて、あるいは保育士の方々ともお話をして、命がある子供たちにおいても、心の問題というのは非常に重い、大変なショックを受けている、このメンタルケアの必要性は痛烈に感じてまいりました。

 また、城内委員御指摘の、親御さんを亡くした、あるいは、今なお行方不明で、お母さん、お父さんが帰ってくるのを待っている子供たちもおられますので、このお子さんたちの心の問題というのは早急に対応しなければ、しかも長期的に、忘れることなく、しっかりと対応しなければいけないと思っております。

 先ほど御指摘いただきました子ども・若者ビジョンにおいて優先順位をつけるのであれば、震災前につくったビジョンではございますが、子供、若者の健康と安心の確保のために、心の健康を初めとする健康教育の充実、相談体制の充実等に取り組んでいくということを掲げておりますので、震災後の子供のメンタルケア、より優先的に取り組ませていただきたいと考えています。

城内委員 ぜひ蓮舫大臣にお願いしたいのは、私も、まさに心そして体のケア、これは本当に、子供は成長しますし、やはり心の面で、メンタルな部分で一生取り返しのつかないことになることがあり得ますから、ぜひきょう、さらに厚労省、文科省の皆さんにも、迅速に、スピード感を持ってやっていただきたい、このことを強調させていただきたいと思います。

 そして、この関連でですけれども、今、蓮舫大臣、釜石に行かれたというふうに話をされましたけれども、私も実は四月十二日に、一日がかりで、岩手県、そして航空自衛隊の松島基地も行ってまいりましたが、そこで、現地で至るところに自衛隊の隊員の皆さんが、それこそテントで野営をしながら、頑張って復旧活動をされているんですね。

 そこで、私はちょっと気になったんですが、実は蓮舫大臣の行政刷新会議の事業仕分けで、これは昨年の十一月二十六日なんですが、防衛省の予算のところで、制服についてこういう議論があったんですね。アジアの特定の国々で縫製を行うことは単価を下げることに非常に貢献する、あるいは、国内で使う災害用のものであれば特段の国内の縫製は必要ないだろうなどといった議論があった。要するにコストダウンをして、多分縫製というと中国とか、あるいはスーツだと北朝鮮が有名ですけれども、そういうところのものを我が国自衛隊の隊員に着せた方がいいんじゃないかというような議論がありまして、これに対して北澤防衛大臣が、軍服を海外に依存するなんという話は世界じゅうで聞いたことがない、その国と危険な状態になったら、おんぼろ服で事に臨むのかと批判と。

 これは私は北澤大臣の御見解の方が正しいと思っているんですが、まさに今私が見てきたのは、自衛隊員が雨がっぱを羽織って、テントで野営しながら、まさに不眠不休。彼らが何が必要かというと、消臭剤ですよ。なぜか。それはまさに、亡くなられた方の死体の処理とかをされているわけです。二つ目、カロリーメイト。ポケットに入れてこれを食べたい、こういう状況なんです。そして三つ目は、まさに、あなた方は日本の誇りです、たったこの一言なんですよ。

 これについて、私は、自衛隊員の誇りを踏みにじるような、何でもかんでも経費削減で、中国製の服でも着なさいよ、安いんだからみたいにね。これについてちょっとお答えしていただきたいんです。

蓮舫国務大臣 まずは、今回の震災の復旧復興に当たって、自衛隊員の方々が不眠不休で取り組まれていることに、私からも、政府として、心からお礼を申し上げたいと思っております。

 そして、よく城内委員のように御指摘をされるんですが、その事業仕分けは昨年ではなくて一昨年でございました。そのとき議論したのは制服そのものではなく、制服そのものはある種国家機密でございますから、それをあえて安いからといって海外に発注するような議論はしていません。

 あのとき議論をしたのは、限られた予算で何ができるか。例えば靴下であるとか下着であるとか、汎用品ですね、あるいはベッド関連、シーツであるとかまくらカバーであるとか、こういうふうな汎用品を大量に海外に、あるいは関連メーカーに大量に発注することによってコストを削減できることはどうなんだろうかという議論をしたものが、いつの間にか制服というふうに話が残念ながら歩いているということは、これは適時適切に私も丁寧な説明はしたいと思っておりますが、ぜひ誤解のないように受けとめていただければと思います。

城内委員 しかしながら、自衛隊員の方々からすると、やはり自分たちの誇りというものを大事にしていますから、そういう誤解がないようにしっかりと御説明していただきたいし、そのようなことがないようにしていただきたい。

 二つ目は、実はスーパー堤防の問題なんですが、大臣は、去年ですか、江戸川を視察されて、その際、二百年に一度の大洪水を想定するのは百歩譲ってわかるが、全部の完成まで四百年かかるのは現実的かということで、スーパー堤防などというものは必要ないというようなことをおっしゃったというふうに、私はちょっと記録を見て、これは事業仕分けワーキンググループB、平成二十二年十月二十八日ですか、そのような発言をされているんですが、私は、想定外の津波ということも考えて、スーパー堤防、あらゆる堤防というのは、無駄とは考えられないんじゃないかなと。

 この点について、多分大臣は反省されているか認識を改めていると私は期待しておりますけれども、お答えいただけますか。

蓮舫国務大臣 視察に行ったのは、江戸川ではなくて多摩川でございました。

 それで、そのとき私は、仕分けのときの議論でも、二百年に一回の洪水でも、当然備えるのは大事だと。二百年というのは、あした来るかもしれないし、二百年後に来るかもしれない。その備えを否定したものではございません。ただ、実際にスーパー堤防が完成されるまでに数百年かかるものが本当に現実的なのか。しかも、これは、ロードマップであるとか全体の予算像であるとか、いつ工事が完成するという目標もございませんでした。

 それであれば、その予算をもっと現実的な、今、あした、何らかの災害が来たときに備える方向に予算を振りかえる方が効果的、効率的ではないかというワーキンググループのまとめだったと存じております。

城内委員 何年かかってもこつこつ、それこそ千年に一度ということもあるわけですから、何でもかんでも、特に私が申し上げたいのは、自衛隊員の誇り、あるいは我が国の国民、市民の生命、安全にかかわるものについて、やたらとこれは無駄だとかいうことで、いや、何百年もかかるからやめましょうということはおかしいんじゃないかなと私は思います。

 もう一点、さらに御質問させていただきたいんです。

 今、蓮舫大臣は節電担当大臣としていろいろ御活躍だと思いますが、私はドイツに十年ほどおりました。ドイツでは、緑の党と社民党の連立政権下で、脱原発ということが推進されております。ちなみに、私の地元の近くに浜岡原発というのがありますけれども。

 そして、今の、一昨年のメルケル政権、キリスト教民主同盟と中道の自由民主党の連立政権ですが、脱原発政策を見直す、原発の運転期間を平均で十二年間延長する、要するに、原発を見直すことをやめたということなんです。しかし、今回の福島の原発事故を踏まえて、これははっきり言うと対岸の火事ですよね、四月十五日、ドイツは超党派で協議をして、やはり脱原発にすべきではないかという政治決断をしたんです。

 しかし、福島原発は日本ですよ。当事者は日本なのにもかかわらず、当事国でないドイツではこのような決断をしたということは、私はこれはある意味で本当の政治主導であって、勇気と覚悟を持ったドイツの政治家の皆さんの英断を高く評価したいと思うんです。

 ちなみに、昨日、私は福山官房副長官のところに参りまして、お時間をいただいて、浜岡原発についての安全性については、御用学者ではなくて、ちゃんとした、しかも複数の専門家に、相談しながらじゃなくて個別に鑑定書をつくっていただいて、それをちゃんと公表していただきたいというようなことも含めて陳情させていただきました。

 まさに、政治主導、政治主導とおっしゃるのであれば、こういったことについて、それこそ脱原発にするのかどうか、あるいは今後のエネルギー政策をどう見直すかというのを早急に国民の前に提示していただきたいと思うんですが、それについてお答えしていただきたい。

蓮舫国務大臣 発災以降、東京電力管内においては、本当に多くの国民の皆様方の御努力をいただきまして、事故を起こした原子力発電所が震災前に供給していた電力に相当する部分の需要抑制は行っていただきました。その部分で、今、私たちはどのような電力を使うようなライフサイクルあるいは働き方を見直していかなければいけないのかは、政府も挙げて、経済界の御協力もいただきながら、四月末を目途に検討しているところでございます。

 その上で、今後の原子力政策のあり方、過去の政権が進めてきたというこれまでの経緯もございます。ですから、ぜひ野党の皆様方も、あるいは与党の私たち、そして政府、あわせて一体の場所でしっかりと議論していくことが私は望ましいと考えておりますし、その件に関しては、これまで総理にも提案をしたことがございます。

城内委員 私は無所属で、非常に中立な、どちらかというと、自分で言うのも変ですけれども、市民、国民の立場に立って物を見ているつもりであります。別に与党の民主党さんの足を引っ張るというつもりはないんですが、しかしながら、総理及び関係閣僚の皆さんの行動を見てみますと、何でも東京電力のせいにするとか、何でも、例えば尖閣の問題にしても検察のせいにするとか、何かとても本当の政治主導とは言えないようなことが次から次へと起きております。

 繰り返しになりますけれども、やはりドイツをもうちょっと見習っていただいて、勇気と覚悟を持って決断して、その結果責任をきちんととっていただく、これが本当の政治主導、政治決断であって、そういうことができない総理大臣、閣僚であればまさに仕分けの対象にしていただいて、やめていただきたい、それが国民の本当の声だと私は思いますよ。

 したがいまして、そういう御答弁ではなくて、蓮舫大臣として、私はもう脱原発の方針に転換しました、これで閣内が不一致だったらやめますぐらいのことを、それぞれの大臣が御自身の良識で表明していただいて、何かいろいろと小田原評定でああだこうだと議論している場合じゃないと私は思うんですが、それについて最後にお答えいただけないでしょうか。

蓮舫国務大臣 まさに、この国の電力を、代替をどこに頼るのか。この国の経済を引っ張ってきている、あるいは国民生活を支えているわけですから、その代替の見通しもないままに、原子力は今すぐやめるべきだと言うことが本当に責任のある政府の姿かどうかというのも私は他方で考えたいと思いますが、城内委員がおっしゃっている意味はよくわかります。ぜひ、きょう初めて聞いた質問ですので、肝に踏まえて考えさせていただければと思います。

城内委員 どちらかというと、私は個人的には慎重派ですよ。ですけれども、私は別に原発をやめろというんじゃなくて、ぜひ方向性を早く示してほしい。しかも、現に福島原発がもう使えなくなって廃炉ですから、足し算、引き算で、これだけのまさに消費を賄うにはどれだけ節電するか、そのためにはエネルギーミックスをどうするか、将来は代替エネルギーをどうするかというのは、議論をすればすぐいろいろ方向が出てくると思うんです。早くそれをやっていただきたい。そうしないと、やはり国民も不安ですし、そこがまさに政治決断、政治主導じゃないかと思いますが、このことをぜひ、生意気なようですが、肝に銘じていただきたいというふうに思います。

 時間もなくなりましたので、これで私の質問は終了いたします。ありがとうございました。

奥田委員長 以上で城内実君の質疑を終了いたします。

 以上で本連合審査会を終了いたします。

 これにて散会いたします。

    午後四時七分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

 民法等の一部を改正する法律案は法務委員会議録第五号に掲載


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