衆議院

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第15号 平成23年7月25日(月曜日)

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平成二十三年七月二十五日(月曜日)

    午後五時一分開議

 出席委員

   委員長 黄川田 徹君

   理事 柿沼 正明君 理事 後藤  斎君

   理事 橋本 清仁君 理事 藤村  修君

   理事 三日月大造君 理事 谷  公一君

   理事 額賀福志郎君 理事 石田 祝稔君

      網屋 信介君    石田 三示君

      石津 政雄君    石原洋三郎君

      石山 敬貴君    江端 貴子君

      大西 孝典君    太田 和美君

      梶原 康弘君    金子 健一君

      川口  博君   菊池長右ェ門君

      斉藤  進君   斎藤やすのり君

      階   猛君    白石 洋一君

      高井 美穂君    高邑  勉君

      道休誠一郎君    富岡 芳忠君

      長尾  敬君    畑  浩治君

      初鹿 明博君    福田衣里子君

      宮崎 岳志君    村越 祐民君

      谷田川 元君    若井 康彦君

      秋葉 賢也君    井上 信治君

      小里 泰弘君    小野寺五典君

      加藤 勝信君    梶山 弘志君

      北村 茂男君    吉野 正芳君

      佐藤 茂樹君    高橋千鶴子君

      吉泉 秀男君    柿澤 未途君

      下地 幹郎君    園田 博之君

    …………………………………

   参議院議員        佐藤 正久君

   参議院議員        礒崎 陽輔君

   参議院議員        森 まさこ君

   参議院議員        浜田 昌良君

   参議院議員        小熊 慎司君

   参議院議員        荒井 広幸君

   財務大臣         野田 佳彦君

   文部科学大臣       高木 義明君

   厚生労働大臣       細川 律夫君

   農林水産大臣       鹿野 道彦君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力経済被害担当)  海江田万里君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     枝野 幸男君

   政府参考人

   (内閣法制局長官)    梶田信一郎君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房政策評価審議官)       田中  敏君

   衆議院調査局東日本大震災復興特別調査室長     関根 正博君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月二十一日

 辞任         補欠選任

  鷲尾英一郎君     白石 洋一君

同月二十五日

 辞任         補欠選任

  郡  和子君     江端 貴子君

  近藤 洋介君     道休誠一郎君

  階   猛君     初鹿 明博君

  中野渡詔子君     福田衣里子君

  若井 康彦君     石田 三示君

  長島 忠美君     北村 茂男君

  斉藤 鉄夫君     佐藤 茂樹君

同日

 辞任         補欠選任

  石田 三示君     若井 康彦君

  江端 貴子君     網屋 信介君

  道休誠一郎君     大西 孝典君

  初鹿 明博君     階   猛君

  福田衣里子君     金子 健一君

  北村 茂男君     長島 忠美君

  佐藤 茂樹君     斉藤 鉄夫君

同日

 辞任         補欠選任

  網屋 信介君     宮崎 岳志君

  大西 孝典君     近藤 洋介君

  金子 健一君     中野渡詔子君

同日

 辞任         補欠選任

  宮崎 岳志君     郡  和子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律案(参議院提出、参法第九号)


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     ――――◇―――――

黄川田委員長 これより会議を開きます。

 参議院提出、平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣法制局長官梶田信一郎君及び文部科学省大臣官房政策評価審議官田中敏君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

黄川田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

黄川田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。太田和美君。

太田委員 民主党の太田和美でございます。

 本日の復興特別委員会におきまして質問の機会をいただきましたこと、まずもって感謝、御礼を申し上げたいと思います。

 本日は、野党提出による緊急措置に関する法律案について御質疑をさせていただきたいというふうに思っておりますが、その前に、本日、お忙しい中、農水大臣そして厚生労働大臣にお見えになっていただいておりますので、まず冒頭に、ちょっと一問、質疑の方をさせていただきたいと思います。

 まず、七月八日から九日にかけて、福島県の南相馬市産の肉用牛十一頭から暫定基準値を超える放射性セシウムが検出された問題でございます。

 現在、福島県の牛肉は出荷が停止されておりますが、先週末に郡山市の肉牛の飼育農家でお話を聞いてまいりました。その農家の方からお話を聞きますと、そろそろ出荷しようと思っていた牛もいて、出荷できなくなってしまったことによって、これから維持によってえさ代もかかる、そして、出荷できたとしても、一頭三十万円くらいの価格の下落で、えさ代にしかならないというようなお話がございました。消費者に安全、安心を証明するためには全頭検査しかないということを強くお願いされました。

 ところが、私も調べさせていただきましたけれども、全頭検査というのが非常に難しいというふうに感じました。

 といいますのも、福島県の肉用牛の九割は県外で解体されております。しかし、今回の件で、県外で解体してから検査をするということは難しくなってしまったのではないかというふうに思っております。そうすると、県内で解体するということになるのですが、県内で唯一肉用牛を解体している郡山にあります食肉流通センターの解体能力、これは一日三十五頭の能力しかないということでございました。年間の能力にすると七千から八千頭でございます。福島県は年間三万三千頭の肉牛が出荷されていますので、これだけでは能力が足りないということでございます。県外で解体していただく方法を考えていかなければならないと思いますが、それには、国が他県に対して福島県産の肉用牛を受け入れるような体制を整えていただくことが必要不可欠になってくると思います。

 そして、検査の能力にも問題があります。昨日、岡田幹事長や輿石参議院幹事長の方も郡山に入っていただき、一緒に、郡山にあります農業総合センターに行ってまいりました。ここには、放射性物質の検査器が四台あります。これは、福島県産の野菜などにおける放射性物質を測定するために六月二十日に導入されたものでございますが、四台での検査能力は一日に八十検体だそうです。九月上旬には十台にふやす予定があるということでございますが、検査しなければならないのは牛肉ばかりではなく、今出荷時期を迎えている福島県の桃のことや、今までも測定を続けてきた野菜、そしてこれから収穫を迎える米などもあります。

 BSEの問題のときには全頭検査ができたと言われる方がおられますが、聞くところによりますと、BSEの検査は五時間で九十頭の検査ができるということで、全く能力が違うわけでございます。

 そこで、牛の全頭検査に関して、簡易測定、シンチレーション式のサーベイメーターによる測定が検討されているというふうにお聞きしておりますが、専門家に言わせると、空間線量の影響などで難しいのではないかというふうにも言われております。

 国として、簡易測定の可能性についてはいかがお考えか。そしてまた、全頭検査についてのお考えについて、厚生労働大臣にお尋ねをさせていただきたいと思います。

細川国務大臣 太田委員にお答えをいたします。

 福島県の方で汚染牛が出たということで、原子力災害対策本部の方では、七月の十九日、福島県産の牛につきましてはすべて出荷停止の通知をさせていただいたところでございます。

 そして、その後、それでは牛はどうなるのかということで、それを出荷する場合には、避難準備区域あるいは計画的避難準備区域などでは全頭検査、そのほかでは全戸検査をして、そして基準値を下回る場合には出荷を認める、こういうような措置をとらせていただいたところでございます。

 また、先日も、福島県知事の方からは、全頭検査をしてほしい、こういう御要望もございました。しかし、今太田委員が言われるように、牛の頭数と比較をしまして検査機器が非常に少ない、あるいはまた簡易検査につきましても、上の方のレベルについては検査できるけれども下の数値についてはなかなか検査が出ないとか、いろいろ難点もあるとかいうことで、検査機器について十分ではないというところがございます。

 しかし、私どもとしては、県の方でそういう御希望があるならば、できるだけそれに沿えるような形で、いろいろと各方面との協力を強く要望いたしまして、できるだけその方向に沿うようにさせていただきたい、今そのように考えているところでございます。

太田委員 ありがとうございます。

 この件に関しましては、国としても、実証検査をしていただくなどして簡易検査については一定のお墨つきをいただく、そういうような形で進めていただきたいというふうに思っております。簡易測定であれば県外の食肉施設の対応も可能となると思いますので、まずその対策を早急にしていただきたい、そのように思っております。消費者の安全、安心を取り戻し、価格の下落を抑える上でも、全頭検査に向けた国の体制の整備を強くお願いするものでございます。

 また、農水大臣の方にお尋ねをさせていただきたいのですが、セシウムが出た牛に関しては国の方で買い取るというようなお話がございますが、セシウムが出なかったとしても、汚染わらを食べた疑いのある肉について、これがこれから市場に出てしまったときに、価格の暴落、そういうようなことも皆さんすごく懸念されておりました。

 そういったところについても、全頭買い上げというような要望も県からも上がっておりますけれども、その点について、大臣の方のお考えを聞かせていただきたいと思います。

鹿野国務大臣 基本的に、安全なものしか出回らないというような状況をつくっていくことが大事でございまして、今委員からの御指摘の件につきましては、具体的な形で過去の取り組み等々を参考にしながら施策を講じていかなきゃならない、こういうことで最終的な詰めを行わせていただいているところでございます。

太田委員 ありがとうございました。お忙しいところを本日答弁に来ていただきまして、本当に心から感謝、御礼を申し上げたいと思います。

 最後に、農水大臣に一つなんですけれども、これから秋の収穫を迎えて、またそのときの稲わらはどうすればいいんだという質問が、週末、地元でたくさん聞かれました。結構、農家の皆さんも最近勉強されておりまして、土壌からセシウムを吸ってしまって、玄米には一割程度しか移行しなかったとしても、その稲の部分にたくさんセシウムがたまってしまうんじゃないか、そのときの処分をどうしたらいいのかというような御質問もたくさん来ましたので、そういうことについての国としての方針を明確に示していただきたいということを御要望させていただきたいというふうに思っております。ありがとうございました。

 それでは、事故から四カ月半たちましたけれども、そうした中で、東京電力における原子力損害に対する補償の取り組み状況として、現時点では、千名規模の福島原子力補償相談室というものを東電が設けて補償の仮払い等を実施しているところでございます。避難された方々に対する仮払いは事故後一カ月半を経過した四月二十六日から、そして出荷制限をされた農林漁業者の方々に対する仮払いは二カ月半を経過した五月三十一日から、そして中小企業者に対する仮払いは三カ月を経過した六月十日から開始されたということで、そしてまた、風評被害に対する仮払いはいまだ開始されておりません。

 野党の皆さんが、一律に今回の東電の対応や国の対応のことについて、遅い、狭い、不明確ですか、これは私は一理あると正直思っております。今回、福島県の選出の議員として、私もそうした問題意識に立ってこの仮払い法案について質疑をさせていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 今お話をさせていただいた中で、現在の原子力損害賠償法により政府が負担する額というのは一千二百億円にとどまっているということもありまして、これを超えてしまうと、東電も資金ショートを起こしてしまうのじゃないかということで、仮払いがなかなか進まないのじゃないか、また、賠償審の指針も定まらない等、いろいろな要因があって仮払いがおくれているというような原因もあろうかと思います。

 そこで、私は、国が支援する枠組みを早く成立させていかなければならないと考えておりますので、そこで、今回、私も少し異論はありましたけれども、原子力損害賠償支援機構法案というものを早期にやはり成立させなければいけないというふうに思っております。

 被災者への迅速で適切な賠償を進めることが急がれているわけでございますが、支援機構法案は、賠償のために必要な資金を上限を設けずに援助できるようになっており、原子力事業者を債務超過にさせない仕組みでございます。しかし、支援機構法案が成立しても、よくよく調べてみたら、交付されても、運営委員会などの設置により、実際の支援の開始には二カ月ぐらいかかるんじゃないかなというふうなこともあります。

 こうした中、仮払い法案は、政府が賠償金の一部を仮払いするという法案ですから、これが本当に実務的に実現できるのであれば、早急に資金を必要としている皆さんの助けになるんじゃないかなというふうに私は思っております。

 被災者の方に一日でも早く仮払金が支払われるということに対しては与野党が同じ方向を向いているわけでございますので、党派を超えてこの両案の早期成立に向けて議論をさせていただきたいというふうに思っております。

 そうした中、まず最初に質問させていただきたいのが、本法案の成立後です。

 仮払いが迅速に行われていくためには、第八条で規定される事務の一部を委託することが重要と考えています。これまでの議論の中でも、参議院の方でいろいろ議論されておりましたけれども、委託先として農協とか漁協、そして東電などが例示されておりました。

 そこで、私は、原子力損害賠償支援機構も、これは委託先の対象になり得るんじゃないかなというふうに思っているんですけれども、その場合、どのような要件を満たせばいいのか。この辺のところをちょっとお考えを聞かせていただきたいなというふうに思います。

浜田(昌)参議院議員 太田委員に、発議者を代表いたしまして答弁させていただきます。

 まず、太田委員から、福島の現地の皆様のお声、まさに仮払いが遅い、対象が狭い、また不明確という問題意識を共有していただきました。まことに厚く御礼申し上げたいと思っております。

 今御質問いただきました八条で事務委託をする者、これにつきましては、法律においては農協、漁協を例示で挙げておりますけれども、それ以外にも、商工会、商工会議所、さらには東京電力自身も想定しております。つまり、今、東京電力で仮払いをしている事務を担当している方々に参加していただくことが一番早いだろうということを考えております。そういう意味でそういう方々を考えております。

 なぜそういうことを考えたかといいますと、まず事務処理体制があること、そして経営的基礎があることというのが最低限要るんだと思っております。あわせて、そういう、かかわっておられますので実務に精通されている。今後、新しい機関があるにしましても、例えば、今御質問いただきました風評被害等、その産業の実態等々について知見を持っておられる、そういう団体であれば御助力いただきたいと思っております。

 それで、例示を挙げられました原子力損害賠償支援機構でございますが、これにつきましては、法案で、審議の途中でございますけれども、その機構が今後この損害賠償にどういう役割を果たされていくのか、今議論の途中でございますので、例えば東京電力にかわって損害賠償の事務を担当されるとか、そういうことになってくるのであれば、そういう実務を同じく共有するわけでございますのであり得るかと思っておりますが、ただ、この法案自身がまだ審議途中でございますので、これ以上の答弁は御勘弁いただきたいと思っております。

太田委員 ありがとうございます。

 この支援機構法案が成立したら、私は、損害賠償について総合的に担うことが必要であるというふうに考えておりますので、ぜひそのような御検討もしていくのが必要なのかなというふうに思っております。

 本法律案は仮払いの枠組みだけを規定しております。対象損害の範囲、そして仮払金の算定方法、必要書類等、そして実際の仮払いに必要な事項を十一項目にわたる政令で定めているんですね。この法律の公布から、それを十日後に施行するということになっているんですけれども、十日で十一もの政令を整えることが果たしてできるのかなというような疑問がございます。

 政令の策定や、そして東電が千人規模で今取り組んでいる支払い事務の構築などをこの十日以内に行うことはちょっと難しいのではないかなというふうに思っております。それで、法律案の中には、施行時にはすべての政令が整っていなくても必要最小限のものがあればいいと考えるけれども、そのことについてどう思いますか。ちょっと御答弁をお願いします。

浜田(昌)参議院議員 太田委員にお答えしたいと思います。

 まさにおっしゃるとおりでございまして、我々の思いは、一日も早く被害者に仮払いをしたいという思いから、最低限の日数でございます十日といたしましたが、十日ですべての政令がそろうとは思っておりませんでした。ただ、法律を見ますと、全体で十三の政令が規定されておるんですけれども、それは五月雨的にできてもいいではないか。

 例えば、先ほど冒頭御質問されましたように、今、セシウム汚染牛の風評被害の問題がございます。そうしますと、セシウム汚染牛の風評被害について仮払いをするとまず決めれば、それについて、それが対象損害に当たるという政令を決めて、そのために必要な資料はこれである、計算方法はこうであると。今まで口蹄疫とかの問題で既に計算方法というのは決まっておるでしょうから、そして、担当の農協はどこどこです、名あて人は文科大臣ですとかと、一連でそれだけ書いていれば、まずセシウム汚染牛の風評被害に対しての仮払金の支払いができるとか、まさに、すべて霞が関の発想というのは、十三の政令がありますと全部きれいにそろわないと間に合わない。それは平時の発想だと思っています。今は平時ではございません。

 こういうときは異常時ですから、まず困っている方に政令を部分部分でもいいからつくっていく。それによって、これは国が最終的には必ず仮払いをすると責任を持つわけですから、最終的にはほかの方にも回ります。ただ、困っている方には、まずその部分だけでも一気通貫の政令をつくり、それを順番につくっていって、ある段階でもう一遍横断的に政令を見直せばいい、こういう考えもございますので、そういう意味では、ぜひ与党の皆様のお知恵をいただいて、一日も早く施行できますように御理解賜りたいと思います。

太田委員 ありがとうございます。

 もう一つ、政令の部分についてお尋ねをさせていただきたいんですけれども、この仮払いの額の算出について、特定原子力損害の概算額に十分の五を下らない政令で定める割合を乗じた額という規定がございます。どのようなものが十分の五で、どのようなものが十分の六で、このところを一つ一つ、一件一件審査するというのがすごく難しいと思うんですよ。私としては、十分の五というふうに、平均十分の五とか、そのような形で定めてしまった方が公平でいいのではないかなという感じがしております。いかがでしょうか。

浜田(昌)参議院議員 今御指摘いただいた点も我々も非常に悩んだ点でございます。

 ただ、被害者の方々から、例えば中小企業等の、実損を受けられて、東京電力の方で二分の一とすると。毎月毎月二分の一で、二分の一が残っていくんだという話もいただきました。しかし、その二分の一自身も、東京電力の仮払いは法定されておりませんので、もしかすると、将来それがまた十分の二になってしまうかもしれない。最低限何らかの法定は必要という考えで、まず二分の一以上と書きました。

 では、なぜ二分の一の定数じゃないのかということですが、これはいろいろと被害によりまして算定の精度があるだろうと。例えば風評被害は算定の精度がやはり非常に低いと思います。そうであったとしても二分の一以上は確保したい。一方で、精神的損害、一カ月当たり十万円なり、避難所の場所によっては十二万円、これは算定の精度に余り誤差がないです。そういうものについては、十分の九であったり、場合によっては十分の十もできるかもしれない。いわゆる過払いのおそれがない、東京電力も求償をちゃんとしてくれるものについては、決して二分の一に限定することなく、より高いものを考えていきたいという思いから、法律としては、二分の一を下らない、こういう表現にしたわけでございます。

太田委員 ありがとうございます。

 もちろん、こういう緊急時、先ほども申しましたけれども、やはり一日でも早く仮払いを支払うことが必要ですから、今回のこの肉用牛の問題でも、一日でも早く、とにかくえさ代の仮払いをしてほしいというような御意見もありました。しかし、今回、政令で定めるところによりというのもいいんですけれども、できれば議会の中で明らかにできるところは、もう少し明確に詰められるところは詰めていった方がよりよい法案になるんじゃないかなというふうに御指摘だけさせていただきたいというふうに思っております。

 そして、次に移りますけれども、原子力被害応急対策基金についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 この基金があれば、市町村が条例で定めることにより、住民へのきめ細やかな仮払いにスピーディーに応じられるというのは本当に理想的な話であると思います。私も、何度も国に要望をしてきてもなかなかそれが国がこたえられないということがありましたから、いわゆる自治体の判断で被災者、県民を救うことができる、私はこれは本当にすばらしい、この法案の肝じゃないかなというぐらいに評価をさせていただいております。

 ただ、ちょっと心配事があるんですけれども、原子力被害応急対策基金の支出は、住民の被曝量の調査や学校、公園などの表土の除去、そして放射性物質を含むごみの処分、下水の汚泥などの除染にかかわる費用、また、避難指示はないが自主的に避難されている方の補償など、こういうのも結構地元から要望が上がってきているんですけれども、こういうことが想定されているというような議論が参議院の方でもあったというふうに思います。しかし、基金は打ち出の小づちじゃないわけですね。

 そこで、財務省の影がちらついていると言われるところもあるかもしれませんけれども、でも、やはり当然、総額のことがあろうかと思います。今、予備費のことでもいろいろ言われておりますけれども、予備費もやはり上限がありますので、そういうことを考えたときに、対象損害の範囲が今決まっていない段階で、その金額の想定もできないはずですから、早く申請した人だけが仮払いを受けられるというような不公平感が生まれてしまうんじゃないかな、そういう疑問も持っております。

 本法律の施行に伴い必要となる経費として今回五千億円が見込まれているといいますが、その内訳は、仮払いに二千億、基金に三千億ということですが、この基金の使途、そして基金の総額の算定根拠についてどう考えているのか、お尋ねをさせていただきたいと思います。

荒井参議院議員 先生も地元ですから、同じ気持ちを共有させていただいて聞いておりました。

 まさに御指摘のように、この基金が肝ではないかということも本当にそのとおりでございまして、世間では仮払いというところが優先されておりますけれども、足に靴を合わせるといいましょうか、本当の実態と国の支援策がかけ離れている。その点でいいますと、先ほどるる挙げられました点、例えば自主避難の方々をどうするか、こういったものも含めて、今回は十分の十、国が支援をいたしますので、まず、実態に合わせてお考えください、この自主性を尊重いたします。

 しかし、市町村、自治体からは、お金の裏づけがあるのか、裏負担があるんじゃないか、こういう懸念もあって、なかなか自治体も対応し切れないところがございましたから、そういう意味において、まことにこの基金というのは、本当に実態に合わせて、そして被災者を救済するという意味で意義がございます。

 そこで、当面三千億というのを大ざっぱに想定いたしておりますが、先生、先ほど七つほど申されたような点を含めて、それらを検討しております。もちろん、これは、複数年度にわたり支出が可能となる、こういった特徴もございますが、また、量において、金額において必要であれば、国会でいろいろと御議論をいただく、そういったことであろうというふうに考えております。三千億を予定しております。

太田委員 何か、ある意味、国が本来やらなければいけない、責任を負わなければいけないものを、地方自治体に押しつけてしまうようなことにならないかというような懸念もございますので、その辺のところを地方自治体の御意見もしっかり、この基金について、もちろん地方自治法の二百四十一条の基金の使い方については、条例で定めれば使えるというような法律もありますけれども、この法案が通るに当たって、その辺のところをちょっと地方自治体からも御意見を聞いていただきたいなというふうに思っております。

 そうでなければ、今度の自主退避で支援をしてもらいたい人たちが自治体の方に行って、あなたたちが出せばいいんだからとせっつかれても、何か逆にかわいそうなのかなというような感じもしてならないところがありますので、その辺のところを留意していただきたいというふうに思っております。

 たくさん御質問させていただきたいところがございましたが、ちょっと時間が中途半端になってしまいました。

 今回、与野党の理事さんを初めとして、皆さんといろいろとこの修正協議に応じていただいたことに本当に深く敬意を表させていただきたいと思います。

 この法案が本当に一日でも早く成立して、そして、本当の意味で被災者の人たちのためになるような法律案にしていただきたい。大変僣越でありますけれども、決して、野党としての意義を示すための、この法案を通すということ、それが目的にならないように、被災者を向いて、一緒に取り組んでまいりたいというふうに思いますので、その辺のところをよろしくお願い申し上げたいと思います。

 以上をもちまして、私の質問を終わりにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、村越祐民君。

村越委員 民主党の村越祐民でございます。

 本日は、委員長初め同僚議員の皆様に、質問の時間をちょうだいしましたことを心から御礼を申し上げます。

 私は、きょう、この仮払い法案に関して質問させていただきますけれども、まず、この法案の三点の趣旨、今回の原発事故が、我々がかつて経験したことのない非常に大きなものであって、被害者の皆さんの早期の救済が何よりも必要であること、二点目に、東電が本来行うべき損害賠償が始まるまで時間がどうやらかかりそうだということ、それから三点目の、原子力被害応急対策基金を設けるために地方自治体に対して補助が必要だ。この三点の御趣旨に私はまず全面的に賛同をさせていただくということと、それから提出者の御尽力に心から敬意を表したいと思います。

 その上で、とはいえ、今回の原発事故というのは、一義的にはやはり東電に責任があるんじゃないかということですし、それから、この法案が成立をして仮払いを随時行っていくとなると、やはり国民の皆さんの税金が支出されるわけで、それは慎重を期さなければいけない。

 それからもう一点。被害者の早期の救済だったり、今大変な思いをされているという心情を、提出者の皆さんが思いをいたして、法案をまさに突貫工事で準備されたと思います。だからこそ、多くの部分が政令に委任をされていると思います。この法案を見るにつけ、詳細な部分が余り明らかでない部分がありますから、必ずしも反対をするとかそういう意味ではなくて、細かい部分に関して、ぜひきょうは確認の意味での質問をさせていただきたいと思います。

 まず第一に、支払いのルールに関することをお聞きしたいんです。

 紛争審査会が七月の二十九日に中間指針を発表するということになっています。今までに、一次、二次、それから二次の追補という形で、どういう方々に補償をするかということをそこで示してきているわけですけれども、先ほどの質問の中にもありますけれども、差し当たって、成立後、十日後から施行するということに一応なっていますから、二十九日の決定予定の中間指針をどのように基準として取り込まれるのかどうか、そこに関してまずお聞きをしたいと思います。

佐藤(正)参議院議員 村越委員に答弁させていただきます。

 村越委員が言われましたように、被災者の側に寄り添わないといけないという気持ちは全く我々も同じでありまして、その際、今現状は、仮払いというものが、東京電力がやっているんですけれども、どうしても遅い、少ないという部分がある。例えば農業関係を一つとっても、今仮払いをされているのは三月、四月の出荷制限だけであって、五月、六月の出荷制限分はまだ払われていない。あるいは風評被害についてもまだ払われていない。早くしてくれという声が圧倒的に多い。それは多分同じ思いをされていると思います。よって、我々としては、国でとりあえず不足分は仮払いをしようという思いで出しました。

 ただ、国が仮払いをするときに何らかの基準がないといけないというふうに思います。そのときに、緊急に払わないといけないということですから、賠償審が出されます指針というものを一つの基準としようというふうには思っています。ただ、我々としては、被災者側に立ったり、国会議員としても、指針で十分だというふうには思っておりません。

 今回、中間ということもありますから、とりあえず中間指針、指針というものを基準に仮払いを行いますが、足らざる部分というのは、場合によっては基金の方でとりあえず支払いをし、それは後でまた、指針にこれは入る、あるいは絶対これは東電さんに求めるものだというものについては東電さんに求める。ただ、何らかの基準がないと仮払いはできませんので、指針というものをとりあえず使わせていただく。ただ、それがすべてではなく、それからまた三次、四次の指針が出れば、それはそれでまた政令で書いて、国の仮払いの方で、政令というものを改正を踏まえながらやっていくというふうに考えております。

村越委員 ありがとうございます。

 随時追補されていく指針を基準にされるというふうに理解しました。そうだとすると、やはり、当然、対象は広ければいいし、困っている方々にきちんと補償をより多くされるべきだという御趣旨だと思います。

 そのとおりだと思いますが、どんどんどんどん経費はかさんでいくことが予想されます。実際に仮払いに充てる費用のほかに、自治体なんかが背負わなければいけない事務的な費用も出てくると思います。そういうところの関連をどのようにお考えになられているのか、御答弁いただきたいと思います。

佐藤(正)参議院議員 まさに御指摘のとおり、今回、我々は、仮払いというものに当面二千億というものを見積もっております。その二千億の中には、これから事務の委託をすることが想定されております農協さんとかあるいは商工会というものの事務という部分も国の方が支援をするというふうには考えております。

 実際、今現状は、一銭も東電さんは払っていないんですよ、その辺の事務について。今非常に農協の方からも陳情を受けるのは、今、彼らが自分で雇っていて、その分の事務の負担も自分でやっているという状況があります。そういうものにもこたえてほしいということから、今回、我々は事務の方を入れるようにしております。

 ただ、これからどういう形で事務をどの団体に委託していくのかというものはまさにこれからの話でございますので、今この段階で、二千億のうちどのぐらいが事務費という部分は、確固たるものは申すことができませんけれども、二千億の算定根拠の中には、農協あるいは商工会という、いろいろなものが出てきたというもののデータを参考にさせていただきながら、積み上げはしております。

 ただ、いずれにしましても、今後の損害の発生状況というものにもよります。これからどういう形で、今回汚染牛肉の問題が出ましたように、いろいろなものが発生するというものにもやはり対応していかないといけないという思いでありますので、今この段階で、二千億のうち事務費がどのぐらいだということはなかなか答弁は難しい状況でございますが、何としても仮払いを円滑にするという意味でも、やはり事務の部分を国が持たないと、そこでふん詰まってしまうということもありますので、御理解を賜ればというふうに思います。

村越委員 ありがとうございます。

 そうすると、法案の一番最後、附則の一番後ろのページに今のお話の五千億ということが書かれているわけですけれども、これには仮払いのお金そのものと仮払いを支払う際に発生する事務的コスト、あるいは地方公共団体に対する補助そのもの、基金そのものとその基金を運営するためのコストが含まれているという理解でよろしいということを御答弁いただいたと思います。ありがとうございます。

 次にお伺いしたいんですが、既に現状、もう東電は例の百万円と七十五万円という仮払いの作業を、ゆっくりで不十分ですけれども進めていると思います。今後、この法案が成立をして、国が仮払いを始めた場合、被害者の方は東電と国と両方に対して仮払いを請求することが想定されると思います。その場合、事務的に非常に煩雑になると思います。どなたが重複の調整をされるのかということを御答弁いただきたいと思います。

佐藤(正)参議院議員 これから国が支払いをする場合、東京電力による仮払いというものとの調整というのは、当然これは図られなければいけないというふうに思います。

 今回、議論の中で、いわゆる役割分担をしましょうと。東京電力が素早く十分なものを払えるというものについては当然そのままやっていただきましょう、それでも東電さんがなかなか払いにくい部分、先ほど言われました風評被害の部分とか、そういうものについては国の方が支払いましょうというふうに、まず役割分担をしましょうというふうに考えています。

 また、今後事務の委託ということにおいて、できるだけ今東電さんが使っているやり方というものを最大限活用し、実際、被災者、被害事業者の方が混乱しないようにということも考えております。

 よって、例えば農家の方が求める場合、農家の方が、役割分担ありますけれども、一義的に、国の仮払いについても例えば農協さんの方に申請をする、農協はそれを取りまとめて、それを今度は、東京電力に今上げていますけれども、そういう形で東京電力にお願いをする、東京電力を経由して国の方に来るという形をとらせてもらうのも一案だと思っています。

 そうすることによって、まず入り口で切り分ける、切り分けた後の手続の仕方も今やっているやり方を最大限準用したいということによって、混乱を少なくしたいという思いがございます。

村越委員 今の役割分担のお話というのは、この法律案を見ているだけでは見えてくることのないところでしたので、非常に重要な御答弁をいただいたと思います。

 次にお伺いしたいのは、十条が想定するような、仮払いが過払いになってしまった場合、国は当然返還請求をするということになっていますけれども、どうやって受給者を捕捉したり確認したりするのか、なかなか困難だと思います。

 つまり、今差し当たって体育館で過ごされている方が仮設住宅に入ったり、もしくは全然違うところに身を寄せられたりして、被災者の方が住居を転々とされていくようなことも想定され得ると思います。そういう場合、余計に支払ったものを返してくれというのがなかなか困難な場合も出てくるかと思うんですけれども、そういう場合どういうことを想定されているのか、御答弁いただきたいと思います。

佐藤(正)参議院議員 今回、国が仮払いをするというものは、先ほど答弁させていただきましたように、紛争審査会の基準というものに基づいて仮払いをする。一つの基準がございますので、そこでまず一つの枠をはめ、その中で、金額の全額ではなくその一部を支払うということにしておりますから、国の仮払いというもので過払いが生ずるという事態は余り想定しにくいのではないかな。支払うものを、指針というものの中で、さらにそこで十分の十ではなく、限度を抑えていますので、そこでまず一つの枠がはまるというふうに思っています。

 ただ、仮に過払いがあった場合ということについても、だれに払ったかという部分の記録というものが、しかもどのぐらい払ったかというのもございますので、そういうものを参考にしながら、それは、国が返還にかかわる手続、事務を行うということにその場合はなろうかというふうに思います。

村越委員 関連してお伺いしたいんですが、十一条が不正請求を想定していると思います。当然これも、国民の皆さんの税金で支払いをするわけですから、まさに性悪説に立たれて、悪いことを考える人たちが出てきた場合の対処の規定だと思いますけれども、不正請求があったかどうかという判定、判断をどなたが行うのか、そこを御答弁いただきたいと思います。

佐藤(正)参議院議員 今この段階で、具体的にどのような不正請求があるかということは非常に答弁しづらい分野でございますけれども、例えば、損害の実害の額よりも多くの額を偽って請求をしたという場合、それに基づいて国の方が多く支払いをしてしまったという場合が不正請求に当たる一例かなというふうにも思います。

 そういう場合についてはその事務はどこが担当するかという御質問だったと思いますけれども、当然、不正請求に対する事務というのはやはり国が責任を持ってやらざるを得ないというふうに思います。その場合、特に強制徴収ということが国の行う一つの事務ということになろうかと思いますけれども、その場合も、だれに払ったか、どのぐらいの額払ったというのがありますので、これも同じように国が責任を持って、都道府県ではなく、一義的には国が前面に立って強制徴収の事務を行うということになろうかと思います。

村越委員 要は、これは事務作業が本当に膨大なことになると思います。ですから、法案が成立した場合は、野党の皆さんにも、実際事務を担当する省庁の業務にぜひ御理解と御協力を、そこに関してはぜひ与野党を超えて、困っている方々のために、いち早くこのお金が行き渡るように、そこは御協力を私からもお願い申し上げたいと思います。

 次にお聞きしたいのは、九条の三項に、国の求償権についてと。要は、取りっぱぐれるんじゃないか、東電にかわって仮払いをするわけですから。要するに、九条の三項に、国は、取得をした賠償請求権を東電に対して速やかに行使すると書いてあります。行使できるじゃなくて、行使すると書いてあるわけです。つまり、取りっぱぐれはない、必ず取り返すんだという意味に私は読んだわけですけれども、本当に求償権行使というのは担保できるのか、そういう心配をしています。

 つまり、本格賠償が始まった後に、本格賠償が恐らく優先されると思います。まさにそうされるべきだと思います。本格賠償、つまり、困っている方々にまずは賠償金をお支払いするのが優先されるわけであって、要は、国が東電から返してもらう作業は当然後回しになるんだと思います。そうあっても仕方がないと思うわけです。つまり、本格賠償が優先されてしまって、この求償権が劣後しないか、私は危惧をしておるんですけれども、その点に関してはいかがでしょうか。

浜田(昌)参議院議員 答弁させていただきます。

 まさに求償権を、取りっぱぐれないようにするということにつきましては、参議院の審議でも、また与野党の協議でも、重要な問題として議論を続けてまいりました。

 一応、法律のたてつけ上は、あくまで、特定原子力損害は、原子力事業者が賠償の責めに任ずべきものと書いておりまして、かつ、それについては、法三条で、国は、特定原子力損害であって政令で定めるものという限定で、その政令については、四条二項で、紛争指針に定められた事項ということで、あくまで、法律のたてつけ上は、東京電力に求償するものに限定して仮払いするとなっております。

 あとは事務手続の問題なんですが、これにつきましては、東京電力の求償可能性をチェックしていこうと。例えば政令で、いわゆる計算方法を決める、また資料を決める。そのたびごとに、東京電力から、どういう計算方法であれば求償できる、またどういう資料を整えておけば求償できるということを文書でいただいて、それを参考にして、政令なり、資料をつくっていく。そして、あわせて、先ほど佐藤議員から答弁しましたように、農協とか漁協から請求書が出てきた段階で、その請求書をもう一度東京電力に委託して、求償可能性をチェックしていただく。

 だから、判断するのは国でありますけれども、これであれば求償は非常に難しいというものがございましたら、もう一度その資料については請求者にプラスの資料を求めるということにしまして、ほとんどこれは求償できるという形が事務手続上できるというのは与野党合意をしたところでございます。

村越委員 今の求償可能性という概念は非常に重要なことだと思います。

 文科省は、その点、大丈夫でしょうか、ちょっと御答弁いただけますでしょうか。

田中政府参考人 先生が御指摘のとおりでございますが、賠償請求権の行使の具体的な手続、方法ということがまだ定まっていない現時点におきまして、どの程度で請求するのかということはなかなか難しいというふうに考えておりますけれども、国としては、速やかにと書いてあるとおり、できる限り早急に原子力事業者に対して請求権を行使していきたいというふうに考えているところでございます。

村越委員 次に、今回の仮払いと本格賠償の関連に関してちょっとお伺いをしたいんですけれども、東電の本格賠償が秋ごろから始まるというような見立てになっています。本格賠償が始まった後も、この法案に基づく仮払いを続けるのかどうか。あくまで本格賠償に対する仮の支払いという位置づけでしょうから、そうだとすれば、本来、仮払いを続ける期間というものを、期限を切ってもいいんじゃないかというふうにも思えるんですけれども、その点、いかがでしょうか。

佐藤(正)参議院議員 本払いと仮払いの関係ということでございますけれども、今、東京電力の方が、本払い、賠償請求に対する本格賠償をいつからどのような形で行うかというのは、まだ事故が収束していない状況、被害がどれだけ広がるかわからない状況においては、なかなか確たることを言うことは非常に難しいというふうに思います。

 そういう中で、一部分については本払いが始まるというのはあるかもしれません。でも、そのほかについては、まだ本払いではなく仮払いの状態というのがずっと続く可能性もございます。そういう状況においては、やはり東電も、あるいは国の方も、仮払いという我々のこの法案というものは、必要性は私はまだあると思います。

 実際、原子力賠償支援機構法案というものが仮に成立したとしても、それからどういう形でそれが本払い、あるいは仮払いというものについてはまさにこれからの話でございますので、今後本払いがどういう形で動くかというときに、では、我々の、国による仮払いというものが本当にゼロになるかということは、なかなか今この段階では言いにくい。

 恐らく、なかなか事故が収束しない、被害が確定しないという段階においては、本払いに移行しない部分というのも多く残るのではないかなというふうには思います。そういう中において、やはり今から我々の、国の仮払い法案について期限を設けるということは適切ではないのではないかなというふうに考えます。

村越委員 賠償を受けるべき人たちが最後の一人になるまで仮払いを続けるんだ、困っている人たちがいる限り仮払いを続けるんだというお話だと思いますけれども、それはそれで一つの考え方だと思いますので、よく理解をいたしました。

 次に、法案の十三条に関してお聞きをしたいと思います。

 十三条に、税制措置に関する規定があります。私の理解では、そもそも仮払金というのは課税対象にならないはずだというふうに理解をしているんですけれども、一体どういう事態を想定されているんでしょうか。仮払金に対する税制上の措置というのはどういうものなのか、御答弁をいただきたいと思います。

佐藤(正)参議院議員 御指摘の損害賠償については、やはり非課税という部分があろうかと思います。ただ、今回、仮払金に対する税制上の措置というものについては、個人に対する損害とか、あるいは事業者の営業損害等、さまざまな損害の形に応じて、政府が適切な判断のもと、措置を講ずるのではないかなと。

 我々の立場としては、今この段階で、どういう部分については課税、非課税ということは、なかなかここで答弁することは非常に難しいと思います。政府の方がこれから、いろいろな形態に応じて適切に判断し、措置がとられるというふうに考えております。

村越委員 例えば、これは七月二十日の毎日新聞の報道ですけれども、茨城県内のサーフィン事業所でつくる茨城サーフユニオンは、二十日、東京電力福島第一原発の事故で売り上げが落ちたなどとして、東電に約九千万円の損害賠償を請求したことを明らかにしたと。あるいは、七月二十二日の報道ですけれども、いわき市内の露天商でつくるいわきブロック祭店連絡協議会は、福島第一原発の事故の影響で被害を受けたとして、十五人分約九千二百万円の損害賠償を東京電力に請求したと発表したと。

 こういうふうに、いわゆる消極損害というか逸失利益ですね、原発の汚染水が海に流されたおかげで、海水浴のお客さんだったりそういうサーフィンをしている方が集まらなくなって、サーフィン講習会みたいなのが開催できなくなって商売ができなくなってしまった、利益が見込めなくなってしまった、あるいは、原発事故のおかげでお祭りが開催できなくなってしまって、焼きそば屋さんとかたこ焼き屋さんが商売上がったりだということで、利益を補償しなさい。これは当然のことだと思います。

 これはあくまで利益なわけですから、本来、利益が上がればそこに税金がかかるわけで、まさに逸失利益のための仮払金というのは利益の補てんですから、税金がかかってしかるべきだというのはよくわかるんですが、それは本来、仮払金ではなくて本格賠償された場合に税金をかけましょうというのはわかるんですけれども、仮払いには税金はかからないというのが一般の理解だと思うんですけれども、あえてこの十三条を設けられたという提出者の御意思は、まさにその本格賠償後のこと、あるいは、今、賠償支援機構法の審議を並行してさせていただいているわけですけれども、そちらも念頭に置いたことなのか。どういう御趣旨なのか、ちょっといま一度御答弁をいただければありがたく存じます。

佐藤(正)参議院議員 これは、一義的には政府の方が決める話だと思います、いろいろな形態がございますから。ただ、私の個人的な思いとしてはまさに委員と同じ思いでありまして、やはり仮払金、いろいろな、今のいわきのケースとか、千葉のケースがありましたけれども、それについては、非課税というものにしてもらったら非常に我々の思いと同じだなという感じはしますけれども、これは最終的には政府の方が判断する事項だと思います。

 これについても、今非常に不明確だという部分がありますので、この辺についても、政府の方から早く何らかの考えを示していただけると非常にありがたいというふうに思います。

村越委員 最後の質問になろうかと思いますが、原子力被害応急対策基金に関してちょっとお聞きをしたいんです。

 十四条の二項に、東電に対する求償について「妨げるものではない。」というふうに書いてあります。その文言の意味についてお聞きをしたいんですけれども、つまり、東電に請求せよとは書いていないわけですね。東電に請求するなとは言わないよというふうに読めるんですけれども、どういう意味なんでしょうか。私は、東電にやはり一義的な責任があるということからして、請求せよとしてもいいんじゃないかというふうに思ったんですけれども、その点、いかがでしょうか。

佐藤(正)参議院議員 お答えします。

 基金については、地方公共団体が行う事業について国がそれを補助するという仕組みになっております。

 仮払いの場合は、国が主体的にそれを払うということですから、それについての求償というのは当然、指針に基づいてやっていますから、求償するということになります。

 ただ、基金については、地方公共団体が行う事業の中で、これは東京電力に求償すべきものだというものは当然求償するということになるでしょうけれども、地方公共団体が行う事業の中においては、それに当たらない場合もゼロではないかもしれないということから、表現ぶりとして変えて、「妨げるものではない。」というふうにさせていただいております。

村越委員 ありがとうございました。

 時間が来ましたので、終わります。

黄川田委員長 次に、谷公一君。

谷委員 自由民主党の谷公一でございます。

 きょうは三十分ほど時間をいただきまして、我が党からも、提出会派になっておりますけれども、仮払い法案を中心に質疑をさせていただきたいと思います。

 大臣にも来ていただいております。そっけない答弁でも結構です。ただ、答えは明確に、考え方を明確に、端的に言っていただきたいということを参議院の提出者の方々にもお願いを申し上げます。

 先ほど来、太田委員、村越委員のいろいろな質疑を聞いておりました。何か参議院では皆さん方が、民主党の皆様を初め、相当厳しくやられて、最終的に賛同を得られなかったというふうに聞いております。

 私個人も、実は、我々野党の仕事はもっと別のところにあるのではないか。もう少し前向きの、例えば、生活再建をどういうふうに進めればもっとよりよい復旧復興になるのか、あるいは、仮設住宅の後の恒久住宅をどういうふうな恒久住宅にして、新たなまちづくりはどうすべきかというようなことを私も本当は議論したい。ですけれども、行うべき復旧の施策が余りに遅い、余りにおくれている。

 ですから、今回の仮払いも、いわば行政の執行の話ですね。それから、この後に委員会を、審議している瓦れき処理法案、我々が七月一日に出して、政府は一週間おくれの七月八日に出ました。こんなものも、本来であれば、行政府の執行がしっかりしていれば、我々はそういうことは任せて、もっと別の、あるべき復旧というよりも、あるべき復興の、より充実した中身を本当は議論をしたいのでございますけれども、やむを得ず、緊急の事態だからということで、原子力損害賠償の仮払い法であるとか、瓦れきであるとか、二重ローンであるとか、さらにまた提出を準備しております自治体への災害の交付金、こういったものを準備せざるを得ない、そういう思いをまず述べさせていただきたいと思います。

 話を戻します。

 参議院での与野党交渉、相当、何か十回近くやられたというふうに聞いておりますが、何が最終的にといいますか最大のネックとなり、交渉がまとまらなかったのですか。まずお尋ねします。

佐藤(正)参議院議員 谷委員にお答えさせていただきます。

 我々のこの法案、国の責任をまず明確にし、国が前面に立って仮払金を支払うということに一番の重きを置いておりました。民主党との協議の中では、どちらかというと、国が支払うことができると。するとできるの規定というものを、いかにそこから間を埋めていくか。早く被災者の方々にお金を届けるということでは、皆同じ思いでした。

 それを表から書くか、いろいろ条文の中でそれを少し目立たない形で書くかという部分のやりとりが非常に続きまして、結果としてそこが合意に至らず、その一番のアウトプットとして、役割分担、これについては国が払う、これについては東電が払うという部分の役割分担の最終的な切り分けのところでも、今私が説明しました、国が、するとできるという哲学の部分の溝が最終的には埋めることができなかったということでございます。

谷委員 参議院では埋めることができなかったその溝も、良識の衆議院では、聞くところによれば、まだ最終的なきちんとした案文は今作成中と聞いておりますけれども、まとまったということで、大変喜ばしいことだと思います。

 佐藤議員、主に、国の役割かどうか、それだけだという理解でよろしいですか。前の経緯をしっかり踏まえて、最終的にこの執行も、政府側にそういうことを踏まえた執行をしてもらわなければなりませんので、確認させていただいているわけです。

佐藤(正)参議院議員 多くの部分は、過払いをどうするんだ、あるいは不正請求に対してどうするんだという部分については、ほぼ合意に達しました。そのほかの合意じゃなかった部分については、施行期日の部分、これをどういうふうに設定するか、あるいは、地方公共団体に設置する基金の名前、これをどういうふうにするかという部分、特に基金については、我々は、子ども健康基金というだけではなく、自治体が今回の災害について迅速に、被災者、被害者のために必要なものを届けるという観念、広く設定したいと思っておりましたので、その辺の確認という部分がまだ積み残してしまったということでございます。そのほかについては、ほとんどは修正協議、合意には達しておりました。

谷委員 福島を中心とする原発被害者の思いというのは、私も、提出者の皆さんほどではないかもわかりませんけれども、いろいろなところからさまざまな要望をお聞きしました。やはり被害者に共通しているのは、だれであれ、とにかく早期に賠償金を支払ってほしいと。それで、最終的には、どういう事態になったとしても、国が責任を持って支払いをしてほしい、それが福島を初めとする原発地域の被害者の方の思いではないかと私は受けとめましたが、提出者の御見解をお尋ねします。

荒井参議院議員 先生と全く思いを共有いたします。

 政府・与野党実務者会議で先生と何遍も御一緒にさせていただきましたが、阪神・淡路のつらい御教訓をお持ちになられていろいろと発言をされてまいりました。全く、今回、それよりも遅いと言ってもいいぐらい、被災者の方々からは本当につらい悲鳴が上がっております。

 一つは、原発に関する法体系全体が不備があります。二つ目は、それぞれの法律の中に、国の責任というものが明記されていない部分があります。

 その意味におきまして、先ほど発議者からございましたけれども、国の果たすべき役割を踏まえる、つまり国が責任を持ちますよということを申し上げて、一点は、原賠審に基づきまして仮払い、いろいろな意味で遅い、額の問題もあります、そういったものを補って早くお渡ししようと。そして二つ目に、基金を設けまして複数年にわたり、しかも原賠審によらず、実態はこうなんですよ、自治体の実態がわかる、その実態から対応策を打っていく、このものについてはお金は十分の十を用意する。こういった二つのことによって、まさに先ほど先生からお話がありましたように、さまざまな問題点の解決をしていきたいということでつくっている法律でございます。

谷委員 被害者の思いということを提出者にお尋ねしました。

 同じ質問を海江田経済産業大臣にお尋ねしたいと思います。繰り返しになりますけれども、やはり思いも、早くお金を払ってほしい、そして最終的に、東電の経営形態云々どうなろうとも国が責任を持ってほしい、そういうことに尽きるのではないかと思いますが、海江田大臣の御見解をお伺いします。

海江田国務大臣 谷委員にお答えいたします。

 私も思いは同じでございまして、やはり、特に初期、避難を余儀なくされた方々というのは本当に、これは着のみ着のままで出てきた方々がほとんどでございましたから、先ほどの太田委員とのやりとりの中で、最初の仮払金が東京電力から払われたのが、たしか四月の二十六日でしたか、そういうお話でありました。それまでの間、私は、連日東京電力に行っておりましたけれども、まさに、一日も早くできないかという思いがずっとございましたので、この法律案、政府の案も、迅速に、そしてその後確実にということが、やはり一番の思いでございました。

谷委員 先ほど参議院議員の荒井議員に御答弁いただいたのですけれども、政府、各党の実務者会議を思い出します。二十回、三月十九日から五月の中旬までやりました。あれは政党の規模によらず一律の発言時間でございましたから、荒井先生は必ず原子力以外のことを、言葉はよくないかもわかりませんが、粘っこく、しつこく言われていました。そういう中に福島への愛情、郷土への愛というのを本当に感じたところであります。

 私も阪神・淡路を経験しましたが、今回の原子力事故はその比ではないと思います。それだけに、やはり、いろいろな法律、いろいろなスキームをつくり、そしてまた、しっかりとした予算措置をすることがまず当面大事かな、そういう思いであります。

 さて、役割分担についてお尋ねします。

 先ほども、村越委員でも質問がございました。国の仮払金と東電の補償金の支払いの役割分担でございますが、佐藤議員のお答えでは、調整を図らなければならないと。まあ比較的問題ないのは東京電力で、風評被害を初めいろいろ難しいといいますか、それが国だというふうに受けとめたのですけれども、そういう理解でよろしいですか。

 つまり、国でもいいよ、東京電力でもいいよとなると、一見親切なようですけれども、やはり、窓口が二つということは、被害者の方にしてみれば、どっちに行ったらいいのか、どっちに行ったら得なのかということをつい考えますので、基本的には、被害者にとって何が一番いいやり方なのかということを考えてしなければならないと思いますが、その役割分担について再度お尋ねをします。

佐藤(正)参議院議員 まさに先ほど来議論がされているように、東京電力が十分な額を素早く払うことができるというものについては東京電力さんにやっていただいて私は問題はないというふうに考えております。

 例えば、精神的な被害というものについては、非常に基準が明確ですし、これは十分な額を早期に払う。算定方法も簡単であります。そういうものは多分大丈夫だと思います。

 ただ、今、東京電力の支払いというものが、例えば中小企業については上限は二百五十万という制限がございます。それは、どうしても事業者からすると足らないという部分になる。

 今まで払った部分、二百五十万。実際、一千万の損益があったときに、仮に政令で十分の六を払うと決めた場合、六百万円。差額が三百五十万円。こういうものを国がこれから過去の分にさかのぼって払うということもできるかもしれません。

 いろいろな面で切り分けをしながら、足らない、遅いという部分、不明確という部分は、国の方がしっかりと基準をつくって、指針に基づいてルールをつくって払うということが基本になろうかというふうに思います。

谷委員 ここのところは、法律というよりもむしろ執行の話ですから、実際の執行ということになりますと政府の方になりますけれども、その辺はぜひ、我々もウオッチしなければなりませんし、しっかりしたものにしていただきたいと思います。

 さて、事務の話でございますが、参議院での質疑でも、民主党の方がこの法案に反対する理由の一つとして、県に事務を委託することは現実的に可能なのか、現に、あの福島県、いろいろな問題で大変な状況にある福島県に事務を委託するということはとんでもないことじゃないか、福島県も反対しているよというような話も聞こえてまいりました。

 その現実的な事務の執行について、福島県にいろいろ提出者としてもお聞きしていると思うんです。その辺の状況。また、福島県だけではありません。茨城とかそのほかの県も、把握している限り、仮払い法が成立した場合に、事務執行についてどういうふうに考えておられるのかということについてお尋ねしたいと思います。

佐藤(正)参議院議員 本法案につきましては、都道府県に事務を行わせることができるという状況になっています。できる規定ですので、しなくてもいいという場合もございます。

 福島県以外の県についての仮払いを行う場合、それについてもどの程度事務ができるかどうか、まさに数県と今調整をしている最中で、まだ、この回答は返ってきておりません。

 福島県についてですけれども、福島県も、確認したところ、全然やらないというわけではありませんと。これから東京電力の本払いというものが本格化するに従って恐らく福島県の事務もふえるでしょう、全然やらないということはありませんということで、いろいろ協議をさせていただきました。

 今回、福島県の方に行わせる事務、いろいろなレベルがあると思います。

 今やっているのと同じような、請求書を配付する、説明会を実施するというレベルもあれば、あるいは、実際に、その請求書を今度は受理する、その審査の支援をするということもできるかもしれません。でも、その場合は、農協とかほかの団体にそれを委託するということも可能なようになっています。

 いろいろなパターンがあると思いますけれども、福島県の方と実際調整をしたところ、現時点においては、調整の範囲内において事務を行うことは可能である、現状と同じレベルであればそれは特に問題ございませんという回答を得ております。

谷委員 ありがとうございます。

 そうしますと、今の佐藤議員のお答えですと、法律は、できるという規定で、何も、しなければならないという規定ではない。

 それで、福島県の方にいろいろ問い合わせをすると、確かにいろいろな事務で大変であるけれども、現在の東京電力の仮払い、東京電力の賠償事務と同様、請求書を県民の方なり事業所の方なりに配付したり、あるいは説明会を県が主催して開催する、主催というか関係団体を集めて、そういうことはできるような感じだと。そういう理解でよろしいわけですか。はい、わかりました。

 そうすると、この仮払い法と同時に今審議が進められている原発賠償のスキーム法で新たな機構を設立しようとしております。そうすると、実際、たしか今、東京電力は一千人ぐらいの方がこの支払いに従事しているというふうに説明を受けたかと思いますけれども、大変な事務なので、その新たに設立しようとする機構に委託するということは可能ではないか、また、それも一つのあり方として十分望ましいのではないかと私自身考えるわけでございますけれども、その点についての御見解をお尋ねします。

佐藤(正)参議院議員 支払い事務の委託につきましては、現在東京電力が支払っている農協あるいは漁協、商工会ということも実際想定はしてございます。また、東京電力に委託することも一応想定はしております。

 今お尋ねの支援機構、これが適当ではないかという御質問でございますけれども、支援機構が仮払いをするという事務を実施するにふさわしい体制が整っているかどうか、あるいはその円滑な実施ができるかどうか、まさにこれは、そういう体制が整っていれば、当然候補の一つになろうかということは言えるかと思います。

 ただ、現時点で、東京電力と支援機構との関係、細部はこれからですから、今この段階でそれがふさわしいかどうかということを私の口から答弁することは非常に困難でございますが、そういう体制が整っていれば、それは候補の一つになり得るというふうには思います。

谷委員 同時に支援スキームの法律も審議しているわけですから、法律で新たな法人を設立しようというときに、望ましい、整うような法人をつくらなければなりませんので、またその辺もぜひ視野に入れて執行の方を、これは政府にお願いするしかないかもわかりませんが、お願いしたいと思います。

 基金の話に移ります。

 正直な話、この原子力に限らず、我々も早くから、とにかく基金が必要ではないかと。大災害の場合は、東京で、霞が関で、永田町で思う以上にさまざまな行政需要というのがいっぱい出てくる。それは現地でないとわからない。しかし、現地の方は、やはりお金の心配をとてもする。ただでさえ見当もつかないようなお金を使わなければならないのに、きめ細かな、どんどん出てくる新たな需要に対して、お金の心配があるので適切に対応できない、だから早く基金をということを、福島だけではなくて、我々も一貫して主張してまいりました。

 十六年前の神戸のときは、一月十七日に起きて、それから二カ月半後、六千億の阪神・淡路復興基金というのをつくりました。その後三千億積み増しされて、九千億。当時は金利が高かったですから、その運用益で、十年間、三千億余にわたるさまざまなきめ細かな事業をすることができたということであります。

 なかなか一次補正に入らず、二次補正も入らず、そういうやむを得ない思いで、特に福島の地元の事情に精通されている、あるいは生まれ育った先生方が多いものですから、この法律で基金ということを明示されたかと思いますけれども。

 では、一つだけお尋ねします。

 この基金と、二次補正で計上をしております原子力被災者・子ども健康基金、九百六十二億ですか、それを提出者としてはどうとらえているのか。この関係をお尋ねします。

森(ま)参議院議員 谷委員にお答えします。

 基金のことについて御質問いただき、ありがとうございました。この基金はまさに本法案の肝だと思っておりまして、当初、自民党福島県連の方から要望がありました、この法案の素案にもこの基金を必ず入れてくれと。

 やはり仮払いは、指針が出たものだけに配られるものですので、その指針から漏れたものが、きめ細かい、今、谷委員がおっしゃったような救済の必要性が高いということで、盛り込んだわけでございます。

 お尋ねの、第二次補正の原子力被災者・子ども健康基金との関係でございます。

 二次補正に計上されている基金は健康を確保するための事業に限定して用いられておりますが、この法案は、そういった事業だけに限らず、指針から漏れたもの、それから、県が必要だというふうに考えて行う事業、それを行えるようになっております。その中には健康に関する事業も含まれておりますけれども、二次補正の基金と矛盾、そごがないようにしていくということは、これは合意をされていくものというふうに理解をしております。

 具体的に、ではどのようなものに使われるかというイメージでございますが、例えば、自主避難者が指針から漏れております、または、今、一番新しい特定避難勧奨地点というのが政府から指定をされまして、きょうも伊達市の小国地区の住民約百二十名がこの永田町に陳情に来ていただいておりますけれども、小さな地域を二分する、小学校の五十七名のうち半分が指定されて半分が指定されない、または、同じ敷地内で若夫婦の家だけが指定されて隠居の家は指定されない、そういったことが行われて、地区の方からは、助け合ってきずなを強めてきた地域を二分するようなことはやめてくれという悲痛な声が出ております。この地点に指定されない方々の例えば避難の支援、子供たちの疎開などにも使える基金でございます。

 また、三十キロで区切っておりますが、同じ行政区が三十キロの中を通っておりますときに、例えば南相馬市の鹿島地区ははみ出ておりますので、一切東電からの補償金がありません。そのような地域についても、県が判断すれば基金として支払っていける、支援していける、そのようなものでございます。

谷委員 今、森議員の答弁のように、さまざまな需要が出ると思います。今言われた例のほかに、この前の稲わらも、専ら牛のえさとして話題にはなっていますけれども、実は現地の方からは、きょうも小野寺委員からも少しお話を聞いたんですけれども、畜産農家の健康あるいは子供たちの健康に影響がないかどうか大変懸念している。では、そういう調査そのものも、何かそういうファンドがあれば、自治体の自由な判断で実施できるということかと思います。

 野田大臣に来ていただいております。

 提出者としては三千億円の基金ということで今この法案を提出されているわけでありますが、現在、二次補正に計上しております原子力被災者・子ども健康基金は、使途が限られている、金額も九百六十二億円ですか。そうすると、この法案が通った場合、この法案の趣旨に従って、もっと幅広い基金をしっかりと二次補正の予備費もしくは三次補正で計上するつもりだと理解してよろしいですか。お尋ねします。

野田国務大臣 谷委員にお答えをさせていただきます。

 きょうは参議院の先生方もたくさんお見えでございますけれども、きょう成立させていただいた第二次補正予算の中で、御指摘のとおり、福島県から御要望がありました基金、九百六十二億円を措置させていただきました。

 今御審議をいただいている仮払い法案、これが今大詰めというふうに聞いておりますけれども、ここで協議が調って、修正協議が調った暁には国の仮払いが進む、あるいは基金の性格づけが決まるということになれば、今回の通った補正予算の中に復旧復興の予備費がございます、あるいは、この後、本格的な三次補正の編成も入ります、それらを視野に入れながら、適切に予算措置対応させていただきたいというふうに思います。

谷委員 大臣、もう一度粘っこく確認させていただきます。

 提出者は、ぎりぎりいけばいろいろあるかもわかりませんけれども、それらの責任を積み上げて、基金と仮払いで五千億ということで提出しています。それを一つの目安として二次補正の予備費もしくは三次補正でしっかりと計上する、そういうふうに理解してよろしいですか。

野田国務大臣 額的なものはよく精査させていただきたいというふうに思いますけれども、先ほど申し上げたとおり、二次補正の予備費あるいは三次補正で適切に対応したいと思います。

谷委員 ありがとうございました。

 最後の適切にという形容詞は、余り好きな形容詞ではございませんけれども。どうもありがとうございました。

黄川田委員長 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 公明党の石田祝稔です。

 きょうは、政府とそれから法案提出者に質問をさせていただきたいと思います。

 まず官房長官にお聞きをいたしたいと思いますが、今回の原子力事故、東京電力福島第一原子力発電所、これについては、国に責任はある、こういうお考えということでよろしいんでしょうか。

枝野国務大臣 責任の定義とかいろいろなことはありますが、広い意味で、間違いなく、これまで原子力事業者とともに原子力政策を推進してきた国の責任はあると考えておりますし、また、こうした事故を防ぎ得なかったことに対する政府としての責任はあると考えております。

石田(祝)委員 まことに明確な、明快な御答弁であると私は思います。そういう国の広い意味での責任の上に立って仮払いほか被災者に対するいろいろな手当てをしていく、これが今回のいろいろな原子力災害に対する根本的な考えでなきゃならない、私はこのように思っております。

 その上で、今回、参議院の方でこの仮払いの法案を、仮称というんでしょうか、仮払いと申し上げますけれども、やはり三月十一日にこういうことがあって、被害を受けられた方々が本当に、ある意味でいえば着のみ着のまま逃げなくちゃならなかった。私たちは、それに対する賠償を早くしてほしい、こういうことは再三申し上げてまいりましたし、今、谷委員からもお触れになりましたが、発災以降、特に民主党の幹事長を中心に、私たちは政党の代表として二十回実務者会議を開きまして、いろいろなことを提案もしてまいりました。

 そういう中で、やはり私の思いは、極端なことを申し上げると、政府がどんどんどんどんと私たちが何も言わなくてもいいぐらい仕事をしていただければ、私たちは、別に法案を出す必要も当然ない、出てきたものに対して一生懸命審議をして早く通していく、こういうことであったと思いますが、残念ながら、いろいろな点でスピードが遅かった、このことは言わざるを得ないと私は思います。

 ですから、今回のこの仮払いで私がまず確認をしたいのは、一番新しい数字で、東京電力が仮払いをした、そういうことについて数字をお聞きいたしたいと思いますが、今までの請求件数、そして請求金額、また支払い済み件数、支払い済み金額、これらにつきましてお答えをいただきたいと思います。

海江田国務大臣 石田委員にお答えをいたします。

 まず真っ先に行われましたのが、さっき石田委員も御指摘のありました、着のみ着のままで避難を余儀なくされた方々でありまして、ちょうど四月の二十六日からスタートいたしまして、このときは、御高承のように、一世帯当たり幾らという計算でございましたから、およそ五万世帯ございましたけれども、この五万世帯の皆様方は、請求額のほぼすべてでございますが、五百七億円が支払われております。

 そして、この方々に対して、この時点ではとにかく一世帯当たりということでお支払いをいたしましたけれども、世帯の状況がいろいろございます。もちろん、実態的に考えまして、幾つかの世帯では、住民票などでは一つになっておりましたけれども実態的に二つの世帯だというようなときは二つの世帯で計算をしましたけれども、今度は一人一人に着目をしまして、しかも避難の期間がどのくらいあったか、あるいは避難の形態がどういう状況であったかということで、これは七月五日でございますが、一つの原則を定めました。原則一人当たり三十万円という形で追加仮払いをしました。

 これはなかなか中身が多様でございますので、今、その請求書がすべて届いているというわけではございません。しかし、私は土曜日の夕方に東京電力に行きまして確認をいたしましたが、恐らくきょうからになろうかと思いますが、請求書の整いました八十人の方々におよそ二千三百万円の支払いがなされる、これは土曜日の夕方の段階でございますが、聞いてございます。

 それから、農林漁業者の方々に対しましては、六月の中旬ごろまでに請求されました、まず出荷制限指示等による営業損害分が八十八億円ございます。このうち、団体との協議を行いましたので、この団体との協議で原則二分の一の仮払い額となりましたので、およそ四十二億円が支払われております。

 出荷制限指示等に関してその後請求されていた分及び風評被害分約三百八億円については、精査中あるいは団体との協議中とのことでございますが、これも今週以降順次さらなる支払いがなされる予定と聞いております。

 さらに、中小企業者が避難区域等においてこうむった営業損害については、届いた請求書から順に精査が進められて、七月二十二日までに請求があったおよそ六千社のうち約四千七百社分、ですからおよそ六分の五ぐらいでございますが、これについておよそ五十八億円が支払われたというのが一番新しいデータでございます。

石田(祝)委員 今、丁寧に御説明をいただきましたが、大臣、この数字を見て、私はこれで十分なのかなと。要するに、特に避難住民の方の、七月五日発表で、今度は個人ですよ、今までは世帯当たりということにしていたので、ある意味では二人の方の世帯と七人、八人のところも同じ金額だった、それではいかにもということで、個人に着目をしてと。

 それで、ここには、七月五日発表の追加仮払い請求状況約一万二千件、こういうふうに私はいただきました。今大臣の御答弁は、今書きますと、きょうだろうと思いますが、八十人に二千三百万円と。これは、七月五日発表の段階で一万二千件の請求状況があって、今、八十人ということでございます。

 これは、初めて払うというわけじゃなくて、世帯単位から個人単位になっても、一度払われている世帯の方に個人に着目して払うわけでしょう。だから、データがないわけじゃないですよね。一万二千件の請求で何でこんなに少ないんですか。ですから、これは私はちょっと、どういう理由か、まずお答えをいただきたいと思います。

海江田国務大臣 私が土曜日に聞いたところでは、きょうから払い始めるということでございまして、きょうが何時からなのかということはちょっと聞き漏らしましたが、まず最初に八十人ということになろうかと思います。これから、可及的速やかにと申しますか、まさに基本的なデータはあるわけでございますから、それにのっとって早目に支払いが行われるものと考えております。

石田(祝)委員 これは可及的速やかに支払いが行われるもの、そう考えている、それはそのとおりでしょう。しかし、先ほど申し上げたように、現実、七月五日にそういうことが発表されて、一万二千件のうちの八十というのはどうなんですか。一万二千分の八十。千二百分の八ですよ。これは百五十分の一。すごく少ない率だと思いませんか。

 ですから、先ほど申し上げたように、なぜ私たちが野党の立場で仮払いの法案を出さなきゃいけなかったのか、これはこういうところにも私は端的にあらわれていると思うんですね。

 それと、この点ともう一つあわせてお答えいただきたいのは、農業団体、農林漁業者の問題であります。

 ここは、出荷制限、出漁制限、こういうところについては半分払いましょう、こういうことだったと思いますが、六月中旬ごろまでの風評被害分として八十七億、そしてその後の請求分として二百二十一億、これだけのものが出ております。これは、六月中旬ごろまでのとあえて書いておりますので、それは当然五月のところもあるでしょう。たしか福島は早くおまとめになったり、茨城もまとめて請求した、こういうことも私は聞いておりますけれども、この部分については全く払われていない、関係団体との協議中、請求内容の精査中、こういうことでありますけれども、これはいかにも遅いと思いますが、この点、いかがですか。

海江田国務大臣 二点ございました。

 まず一点目でございますが、これまでも、私は前、ずっと連日東京電力に行っておりましたときは、その日その日の何件振り込みましたかということを聞いておりましたけれども、週の初めと週の終わりの方は本当に比較的少なくて、それは、当の銀行が込み合うとかそういうこともございまして、やはり週の中ごろがわっと膨らんで週の後半になるとまた少なくなる、日によってかなり違いがあるということは確かでございます。

 それから、先ほど私お話し申し上げましたけれども、今度の場合、かなり細かく、一人ずつでございますけれども、例えば、六月十日時点で避難されている方、それから避難後五月十一日から六月十日までの間に帰宅された方、これが一つのくくりで、お一人当たり三十万円、それから、避難後四月十一日から五月十日の間に帰宅された方が二十万円、それから、避難後四月十日までに帰宅された方、屋内退避のみの方、十万円という形で、これはかなり、避難を余儀なくされてからいつまでに帰宅をされたかとか、そういう一人一人の避難の状況についての把握が必要だったわけでございますから、それに今日まで時間がかかって、きょうやっと第一陣に支払いが行われたという形で御理解をいただければよろしいかと思います。

 それから、先ほど、農林漁業の方々については六月中旬ごろというくくりでございますので、きょうはそれからおよそ一月以上たっているわけでございますから、これについて、まだ私の手元に農林漁業の方々のその後の出荷制限に基づく営業損害額というのがございませんが、まず、出荷制限額二分の一でやりました六月中旬ごろまでに請求されましたこれについて、その団体との協議が相調ってということで四十二億円になっておりますので、その意味では、今団体との間で協議が行われるもの、これは思料、推測でございますが、そういうものだと私は考えております。

石田(祝)委員 大臣の言葉じりをとらえるようで悪いんですけれども、御理解をしていただければよろしいんじゃないでしょうかとは、これはどういう意味ですか。これについて、ああ、さようですかということで終わるということですか。私は違うと思うね、これは。いかにも私は遅いと思いますよ。

 そして、先ほど申し上げたように、一万二千件も、これは、まるっきり初めてやりますよ、そういう人じゃないわけでしょう。データがあるんじゃないんですか。ですから、これはお金の工面がつきにくいからなかなか遅くなっているのか、これもまた後でちょっと聞きますけれども、これは、大臣、ちょっと時間の関係で中小企業者については申し上げませんが、ここも、約四千七百社で五十八億ですから、一社当たり百万ですよ。会社の大きい小さいはあるでしょうけれども、これはいかにも、百万というぐらいの金額が支払われている仮払いの状況であります。

 ですから、これについては私たちがどうしても仮払いの法案を出さざるを得なかった、こういうことだろうと私としては思っております。

 それで、ちょっと順番を変えて若干お聞きをしますけれども、文科大臣にお伺いをしたいんですが、原子力損害賠償補償契約に基づく千二百億、これはもう、千二百億はいつも話になるんですけれども、実際、千二百億円は支出されておるんですか。

高木国務大臣 石田委員にお答えをいたします。

 いわゆる原子力損害賠償補償契約に基づく補償金の支払いについてでありますが、これは原賠法に基づいて、まず、事故を起こした原子力事業者から補償金の支払い請求が国に対して行われる必要があります。その後、その請求内容を十分に審査の上、補償金が支払われることになっております。

 今回事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所に係る原子力損害賠償補償契約に基づく補償金につきましては、第二次補正予算に御案内のとおり千二百億円計上しておりますけれども、現時点では東京電力から支払い請求が行われておりませんで、補償金の支払いはなされていない、こういう状況でございます。

石田(祝)委員 私たちは、千二百億は、これは保険的なもので入って、当然その千二百億は国から出して、そしてそれを上回る分については東電が出して、さらに無過失、無制限というところについてはこれから議論をしていかなきゃならない、こういうことだと思いますけれども、今御答弁にあったように、東京電力から請求がないので千二百億円は一円も払われていない、そういう形であって、これは請求がないということでしょうけれども、国も払うものを払っていなくて東京電力に金出せ金出せと言っても、これは無理ですよ。

 これは、私も役所にいたことがありますから、よくわかりますよ。請求書を出すな、こう言うんですよ。まあ、そう言っているかどうかわかりませんよ。請求書を出しても日付を入れるなとやるわけですよ、日付を入れたら何日後に払わなきゃいけないから。ですから、これはもうちょっと、今回、第二次補正に入れたということがすべてを物語っていると思いますが、これは予備費であっても何であっても、私は早く出すべきだと思うんですね。

 それで、特に、この原子力損害賠償補償料収入というのは毎年毎年一般会計に入っているわけですね。ことしも予算では八億九千八百七十万一千円、こういうものを営々として一般会計の収入として今まで入れてきているわけですね。ですから、一般会計として入れているものだから、お金は残っていないんですよ。だから、改めて予算措置しなくちゃならない、こういうことでありますけれども、これは私も改めて驚きました。一千二百億という話がずっと、もう三カ月も四カ月も出ているのに、一円も払われていない、請求がなかった、これで終わっているわけです。

 ですから、これももう遅きに失したとはいえ、今回二次補正で、きょう通ったわけですから、どんどんどんどんこれも仮払いしてあげたらいいじゃないですか。東電は金がないと言っているんだから、どんどん払ってあげて、これだって仮払いして後で精算すればいいんですよ。そして、その請求書をまた審査して、また時間がかかってしまった、これはもう本末転倒だと私は思います。ですから、こういうことを、やはり仮払いというのは嫌かもしれませんけれども、大事な国民のお金、こういうことでありましょうけれども、後でしっかり精査すればいいわけですから、こういうものについても、早く請求書を出させて、補償契約に基づく千二百億円、これを早く払っていく、こういうことをぜひやっていただきたいというふうに私は思います。

 それで、今回のこの賠償について、賠償の紛争審査会、この中間指針が七月末に出る、こういうことを言われておりましたけれども、これは予定どおり出る、こういうことでよろしいんでしょうか。

高木国務大臣 この審査会が策定する損害の範囲の全体像を示した中間指針、これにつきましては、被害者への迅速な救済を図るためにできるだけ早く取りまとめていただきたい、このように考えております。

 今御指摘のとおりでございますが、今回、その取りまとめ時期について、いわゆるセシウムに汚染された稲わらを摂取した肉牛の被害の件のみならず、その他の内容についても、風評被害というのが極めて広い、そしてその範囲の考え方については難しい判断が求められております。したがいまして、次回は七月二十九日に行われる審査会になるわけですけれども、この審査会での審議状況を踏まえて、最終的にいつになるか決まることになるであろうと思っております。

 私としては、できるだけ早く取りまとめていただきたい、こういうお願いでございます。

石田(祝)委員 大臣、もう一度確認したいんですけれども、今まででしたら、七月の二十九日の金曜日に中間指針、ある程度のまとめが出ると。しかし今回、セシウムの牛の問題が出てきたので若干延びるかもしれない。

 そうすると、そのまとまっているものだけでも発表できないんですか。そうしたら、そのセシウムの牛に引っ張られて全体的な賠償指針がおくれることになりますよね。これはどのようにお考えですか。

高木国務大臣 これはまさに、審査会の基本的な考え方としては、できるものから順次出していくという方針でございます。そういう意味では余り時間をかけられませんので、大きなめどとして、最終的には中間指針として七月いっぱいということでございました。

 今私が申し上げましたように、肉牛の問題等がございまして、さらなる検討が必要かもわかりませんが、まさにそれは、私が今ここで延びるとか延びぬとか言うことではありませんで、二十九日の審査会で議論があるということになろうかと思っております。

石田(祝)委員 いま一つはっきりしませんが、中間指針は今までの議論をしたものをまず七月二十九日に出す、そしてさらに、今回その過程で新しく起きたものについては、その後の議論ということで、ある意味では追加で、審査会が中間指針発表後のさらに新しい事態に対してその問題の整理をする、こういうことでいいんですか。

高木国務大臣 私が審査会の内容について今ここでは申し上げるわけにいきませんけれども、今委員のおっしゃった趣旨、できるものからということであれば、私はそのような可能性もあるのではないかと思っています。

石田(祝)委員 それでは、官房長官もお忙しいでしょうから、どうぞ御退席いただいて結構でございます。

 続いて、提出者にお伺いをいたしたいと思いますが、これは今までも何回か答弁また質問があったと思いますけれども、私の方から確認という形で質問をいたします。

 一つは、仮払金の支払いをめぐって東京電力と国との関係が複雑になるんじゃないか。これは、今までも御答弁いただいていると思いますけれども、再度お願いしたいんです。

 一緒にもう一つお願いします。仮払いした後、東京電力に請求した際、確実に回収ができるか。これは、一つは実際回収ができるかということと、仮払いした金額に満たない賠償の金額だった場合どうなのか。これが必ず財務省が心配しているところなんですよ。

 この二つ、順次御答弁をお願いします。

浜田(昌)参議院議員 御答弁させていただきます。

 最初に一点ございました東京電力との役割分担関係、まさにこの点が、参議院の審議また与野党協議の一番大きなポイントでございました。

 当初、発議者の発想は、事務の窓口を一緒にすれば、すなわち東京電力なり農協ということでしていれば、ポケットは二つあってもいいじゃないかという発想をしておりました。

 といいますのは、中小企業者は二分の一で上限二百五十万と限定される、これは理不尽だと。そうであれば、その分は国が乗せられるという発想であったんですが、与党の方から、東京電力もどんどん払えるようになるんだ、二つポケットがあると混乱しやすいから役割分担をしようという話になりまして、この法律では三条で、「特定原子力損害であって政令で定めるものを受けた者」ということになっています。この政令の中で国がやるものと東京電力がやるものを書き分けようという発想になったわけです。

 そのときに、あくまで譲りませんでしたのは、東京電力がどんどん早くやるものはこれは東京電力に任せようと。精神損害みたいなものですね、十万円で。それでも何かおくれているようですけれども。ああいうものはおくれないと思っていました。ところが、やはり風評被害、これは大変です。こういうものについては、霞が関の知恵も使って、農水省とか観光庁とか、そういう知恵を使って国がやっていくという役割分担をすればいい。しかし、その役割分担をどっちで書くか、どっちを表で書くかでこれは決裂したんです。つまり、与党の皆さんは、東京電力が原則だ、よって国は例外だと。逆に、我々は国が原則だと。それで決裂しました。

 ということで、あくまで東京電力がどんどんやるものは任せる、しかし、東京電力がやはりサボる、例えば社会福祉法人とか文教関係とかまた医療法人に払われていないという実態もあります。そういうものについては最終的に国が責任を持つということで、今回役割分担させていただきました。

 あと、求償関係でございますけれども、これについては、法律上、損害賠償をするものと限定しておりますし、かつ、条文の中で、既に仮払いをされたり何かの賠償があったものについては減じて仮払いをすると規定しておりますので、御心配のような事態は起こらないと考えております。

石田(祝)委員 時間の関係で、済みません、海江田大臣に原子力経済被害担当大臣としてお伺いをしたいんですが、五月の十日に、東京電力株式会社の前社長、その当時の代表取締役社長、清水社長に確認事項六点が示されておりまして、これについては、承った、こういう御回答が翌日あったというふうに記憶をいたしております。

 その六点の中で、すべてのステークホルダーに協力を求め、とりわけ金融機関から得られる協力の状況について政府に報告を行うこと、こういう項目がございますけれども、この六点については、わかった、承ったということの御回答でしたが、この点については、五月十日ですからもう二カ月半たつわけですが、どういう状況か、政府に報告がございましたでしょうか。

海江田国務大臣 今、委員御指摘のありましたように六点ございますが、六番目でよろしゅうございますか。(石田(祝)委員「そうです」と呼ぶ)

 六番目につきましては、東京電力は五月の二十日に経営合理化策を発表いたしました。それによれば、資産売却により六千億円以上の資金を確保するとともに、五千億円以上の費用の削減を行うこととしております。さらに、電気事業に必要不可欠なもの以外の事業をさらに縮小、再編するなど事業のスリム化を図っております。

 現在、東京電力の取り組みが十分なものであるかについては、東京電力に関する経営・財務調査委員会において調査しておりまして、東京電力を支援するに当たっては、これを踏まえて対応してまいりたいと思っております。

 また、東京電力は、六月の下旬に、取引のある金融機関に対し、今後も低利で安定的に融資を行うよう要請をしており、既に返済期間が到来した短期借入金については、低利での借り入れを要請し、借りかえを実施したと聞いております。

 なお、金融機関等の利害関係者の東京電力に対する協力のあり方としては、さまざまな方策があるものと認識をしており、当事者がそれぞれの立場で必要な協力について判断し、対応するものと考えております。(石田(祝)委員「いや、政府に報告があったかというのを聞いています」と呼ぶ)ですから、今のような中身について私が知り得ることとなりました。

石田(祝)委員 大臣、ちょっと明確にお答えいただきたいんですが、知り得るようになったということ、それは報告が正式にあったんですか、社長の名前とかで。いかがですか。社長の名前で、社長あてに出されて、社長からわかったというふうに来ているわけですね。その間、株主総会があって社長さんはかわっていますけれども、正式に文書で報告があったということでいいんですか。

海江田国務大臣 これは、数次にわたって報告がございました。

石田(祝)委員 今回のこの原子力損害賠償補償費、先ほど申し上げた千二百億円、二次補正に盛り込まれました。ですから、これはもう盛り込まれて、私たちも賛成して通った以上は、先ほど申し上げたように、やはりこれは、お金の面の心配で仮払いが進まない、こういうことにならないようにぜひお願いをいたしたいと思います。

 そして、予算書を見ますと、この千二百億円の支払いに対して、やはりこれは精査しなくちゃならぬということで、民間の保険会社に約三億円の予算を組んで調査もさせている。そしてさらに、きょうは手元に数字を持ってきておりませんけれども、東京電力がどういうふうにスリム化していくか、そのいろいろなことについて相当な金額の予算を、逆に国が予算を組んでそういうことを調べる、こういうことにもなっておりますので、こういうことは当然会社にやらせて、その報告を聞くというのが私は筋じゃないのかと。これをわざわざ予算を、私の記憶では十億ぐらい予算を組んでいたと思いますよ、そういうことで、なぜ調査をしなくちゃならないのか。これは当然東電にやらせて、それを見るという形が正しい形じゃないのか、私はこのことを申し上げて、終わりたいと思います。

黄川田委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、参議院から送付をされました仮払い法案を審議するわけです。また、本委員会では、原子力損害賠償支援機構法案が審議中でもございます。この両案が衆参両院で議論をされる過程の中で繰り返し議論になってきたのは、土台にある原子力損害賠償法が原子力事業者の責任集中、無限責任であることに対し、国がもっと前に出るべきではないか、国の責任を明記せよ、こういうことではなかったかなと思っています。

 そこで、自民党の提出者に伺いたいと思うんですけれども、今回の深刻な福島原発の事故は、津波対策、全電源喪失という事態に備えがあるかと、国会でも我が党の吉井議員が、あるいは福島県でも日本共産党福島県委員会並びに住民団体が繰り返し指摘してきたことでございます。しかし、安全だとしてきたという経緯が国会でも繰り返し明らかになり、想定外という言葉では免れないということはもう既に自明のことだと思われます。また、こうした背景には、老朽化した原子炉を延命させ、安全神話でお墨つきを与えてきたことなど、歴代政権党だった自民党には大いにその責任があるかと思います。

 まず、提出者はそうした認識を持っていらっしゃるのか、伺いたいと思います。

森(ま)参議院議員 高橋委員にお答えをいたします。

 私、答弁の書類を持っておりますが、それを読みません。

 私は、自由民主党に大きな責任があるというふうに思っております。政権与党として長年、原子力政策を進めてまいりました。その結果としてこのような事故が起きたと思っております。我が党には重大な、深刻な責任があるというふうに思っております。

 先日、東電の下請業者さんとお話をしました。下請業者さんがこの仕事を始めるとき、この建物の外には絶対に放射線や汚染を出さないということを社員とともに誓い合ってこのサイトに入った、それなのにこのようなことになったということを大変悔しくて残念だとおっしゃっておりました。そして、その下請業者さんたちが今、命をかけて収束に当たっているわけです。

 そういった現場の方、それから福島県民の被災者に大きな被害を与えた、そして全国の方にも大きな迷惑を与えた、このことについて、我が党は、歴史をさかのぼって、一体どこが間違っていたのか、真摯に反省し、検証し、国民の皆様におわびをしなければいけないと思っております。

高橋(千)委員 答弁書を読まずに、心を込めた答弁をいただいたと思います。ありがとうございます。

 自民党の福島県連の皆さんも、既にもう脱原発ということをおっしゃっておりますし、我が党の県会議員に対しても、本当に会わせる顔がないと、進めてきたことに対するおわびを述べていらっしゃいます。

 私は、やはりそういう立場に立って、本当に国の責任のあり方とはどうあるべきかと。もちろん、これは国の責任と一言で言いましても、国策とよくおっしゃいますけれども、それに営々と反対をしてきた方たちがいる。四十五年前に、福島第一原発が福島に設置をするということが決まったときから、日本共産党の福島県委員会の皆さんは反対をしてきた。そういう経過があった中で、どういう責任をとっていくのかということを考えなければならないと思うんです。そういう点では、やはり国は単なるスポンサーであってはならない、私はそのように思います。

 そこで伺いますけれども、賠償は第一義的に東電に責任がある、こういうことにこれまでの法の仕組みではなっていたわけですが、この点は変わらないのか、あるいは、国の方がそれよりも飛び出しているのか、全く対等だと思っているのか。自民党、公明党の提出者の方、それぞれに伺いたいと思います。

森(ま)参議院議員 私は、この第一義的に東電に責任があるという言葉が大嫌いでございます。福島県民も、もうこの言葉は聞き飽きたというふうに申しております。

 確かに原賠法には無過失責任が規定されておりますが、それは、過失責任が同時に存在することを除外してはおりません。私も、今までさまざまな委員会で指摘をさせていただきましたように、過去にさかのぼって、そして事故後も、国の方には大きな過失があるというふうに思っておりますので、国は責任を免れないというふうに思っております。

 そういう意味で、この法案に、国が支払うという文章が、ほかの法案にはない文章が初めて入ったということは大きな意義があるというふうに思っております。これによって、国は東電と同時にこの支払いについて責任があるということです。

 誤解していただきたくないのは、これは決して東電の損害賠償の責任を減免するものではありません。早期の救済のために、国がまず前面に立って賠償をして、それから東電に国から求償をしていく、そういうことでございます。

浜田(昌)参議院議員 高橋委員にお答えしたいと思います。

 公明党も、自民党と連立政権を組んでまいりまして、その期間、原子力発電所の推進をしてまいりました。そういう意味では、我が党も真摯に反省をし、責任があると考えております。その責任の一端として、この議員立法をさせていただいたと自覚をしております。

 今御質問の、第一義的に東京電力に責任がある、こうは我々も考えておりません。今回の仮払い法案、国が仮払いに責任を持つ、この一線を譲らずに貫いたというのがそのあかしでございます。

 どうしても今の内閣は原子力損害賠償法の発想から出られないと思うんですね。原賠法自身が、あくまで東京電力の無限責任という原則にしているものですから、内閣及び内閣法制局の体系に入ってしまっている。それをいかに少しでも打ち破るのかというのがこの議員立法でございますので、我々としても、御質問いただいた委員の思いを共有しているものと考えております。

高橋(千)委員 森さんからの答弁は、同時にというお言葉があったと思いますが、今の浜田さんの答弁は、同時に、やはり国も東電も同じであるということでよろしいですか。

浜田(昌)参議院議員 当然でございます。

高橋(千)委員 私は、やはり、国の責任を明確にするということと同時に、そのことによって東電の責任があいまいになっても困るということをしっかりと考えながら仕組みを考えていかなければならない、単なるスポンサーではならないということを言っているのはそういう意味でございます。

 次に進みたいと思うんですけれども、予算は五千億円くらいということで、先ほどの谷委員の質疑の中で、予備費をぜひ使うようにということのお話がございました。一方では、賠償額が十兆円にもなるかもしれないということも言われているわけです。

 そこで、仮払いは入り口で終わるのか、あるいは、いやいや、三次補正を積んでまでも仮払いは続けていくのだという気持ちなのか、どちらでしょうか。

浜田(昌)参議院議員 高橋委員にお答えしたいと思います。

 今回の基金につきましては、我々が計上いたしましたのは、約三千億と考えております。それは、現在の二次補正予算の子供の健康の問題だけではやはり不十分で、自主避難の問題、また間接被害の問題等々について対応するためには当面こういう金額が必要と考えておりますが、まだまだ原子力被害が広がっている状況、今回のセシウムの汚染牛についても、我々が発議した段階では想定しておりませんでした。

 そういう意味では、ぜひ与党やまた共産党の皆様のお力もいただきながら、当面はこういう規模でございますけれども、今後の進展に応じて、引き続き皆様のお力をいただいて、よりよく救済できるように御協力いただきたいと思っております。

高橋(千)委員 そうすると、今、最後に伺った、続きがあるというふうに受け取ってよろしいのかなと思います。

 そこで、今回、衆議院で議論しています原賠支援機構法案とこの仮払い法案がセットであるということが随分議論がされてきました。それが同時に成立したときにどうなるのかということを伺いたいと思います。

 内閣法制局長官に伺いたいんですけれども、例えば、国が仮払いしたお金を東電に求償することになるわけですけれども、一方で、東電は、支援機構から資金援助をしてもらうことになる、これは申し出をすることになるわけです。その機構には、出資金、交付国債、政府保証という形で国が支援するため、下手をすれば、めぐりめぐって、国だけがお金を出し、東電は何もしなくてよいことにならないかと思うんです。

 一方、東電が資金援助を申し込むためには、特別事業計画を提出することになりますけれども、仮払いの仕組みがあるとなれば、当面、財政状況が持ち直すまで、無理に計画を出さなくてもよくなるということにならないかと思うわけです。

 そこで、一体どこから先にやるということになるのか、伺いたいと思います。

梶田政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねにつきましては、議員提出法案でございます平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律案、これが成立いたしまして国が仮払金の支払いをする場合に、内閣提出法案である原子力賠償支援機構法案に基づく東京電力の負担金などがどのようになるか、こういう御趣旨の御質問だというふうに思います。

 これは、今申し上げました議員提出法案の趣旨なり規定の解釈、あるいは運用にかかわる問題でございます。私ども内閣法制局としてお答えすることは差し控えさせていただきたい。

 その上で、内閣提出法案であります原子力賠償支援機構法案について申し上げますと、この法案におきまして、原子力賠償支援機構は、原子力損害の賠償に関する法律、この第三条の規定による損害賠償責任を負います原子力事業者に対しまして、損害賠償の履行に充てるための資金の交付等の業務を行うこととされております。この業務に関する費用につきましては、政府提案の第三十七条、三十八条、第五十条等の規定によりまして、各原子力事業者が納付する負担金をもって充てるというふうにされております。

 なお、この今申し上げました原子力損害賠償支援機構法案における規定に関しまして、今回の議員提出法案におきまして、特別の取り扱いを定める規定は置かれていないというふうに承知しております。

高橋(千)委員 同じ質問を海江田大臣に伺いたいと思います。

 要するに、順番といいますか、明確にはされていないと。ですから、運営する政府にゆだねられるわけですけれども、大臣は、本委員会で、東電の仮払いがおくれているのはやはり資金繰りの問題である、支援機構法案が通ればきちんと払えるようになります、こういうふうに答えていたと思うんですね。そうすると、もう仮払いが要らなくなるのかということにもなりますし、どういうふうに整理をされるのか、伺いたいと思います。

海江田国務大臣 委員御質問のうち、二つが同時にというのは、まさにこれから国会で決める話でございますから、その結論を待ってということになろうかと思います。

 ただ、私どもは、仮払いについて、それがおくれていた理由の一つに、ちょうど株主総会の前後などもございましたけれども、やはり資金繰りというものに東京電力は大変困っておりましたので、その意味では、この機構法が成立をすることになりまして、そして、その資金繰りについては不安がなくなるということでございますので、私は、そのことによって仮払いがさらに一層スピードアップされるものと考えております。

 それから、仮払いはあくまでも仮払いでございますから、やはりできるだけ早い機会にこれが本格的な支払いになるようにしなければいけないと思っております。

高橋(千)委員 私は、ですから最初に質問の中でお話をしたように、東電はほとんど出さなくてよいことになるんじゃないかということと、スピードアップを本当に図るのであれば、やはり指針に基づくという点では仮払い法案も支援機構法案も違いがないわけですから、であれば、それをきちっとやらせるように国が責任を持てばいいのではないかというふうに指摘をしたいと思うんです。

 そこで、提出者の皆さんが、今の東電による賠償が遅い、狭い、少ない、これを解消するために国が仮払いするべきだとおっしゃっている、その趣旨は私も全く同感でございます。何も遅くしろなんということは全く考えていないわけで。ただ逆に、この仮払い法案を本当に運用しようと思うと、この問題が解決されて、早い、広い、多いになるのかという点では非常に疑問があるわけです。

 伺いますけれども、仮払いの範囲を指針に基づくとしたのはなぜでしょうか。先ほどやりとりが少しありましたけれども、今月中にも中間指針が発表されると。論点整理が既に発表されているわけですね。これについて、自民、公明両党の提出者がどのように評価されているのか伺います。簡潔にお願いします。

森(ま)参議院議員 我々は、現在の指針が十分であるとは認識しておりません。ですから、指針に基づくものだけですと、広いというふうにはならないと思っております。

 これは、発議者の間でも意見が分かれておりました。ただ、最終的に、仮払いの方は指針に基づくというふうにまとめ、仮払いから漏れたものを基金の方で補っていこうというふうになったのは、すべて早く支払うためでございます。指針に含まれたものを国が先に早く支払うということで、指針に基づくものにしました。そのかわり、指針から漏れたものは基金の方で救っていくようにしたものでございます。

浜田(昌)参議院議員 高橋委員にお答えしたいと思います。

 なぜ指針に基づくことにしたのか。これにつきましては求償可能性との関係がありまして、つまり、与党の皆様から言われたものは、国が仮払いするものは必ず東京電力に求償できるものにしてほしいと。そうしますと、今の原賠法の中で一つの、東京電力が賠償責任を負うものの指針として紛争審査会の指針が定めておりますので、それからはみ出すことによって求償可能性が減じられてしまうということから、仮払いについては、当初我々自身も実は広げたかったんです、広げたかったんですが、その求償可能性が減じてしまうということから、これはこの指針に限定せざるを得なかった。そして、そのかわり、今、森発議者から答弁させていただきましたが、それに漏れるものについてはむしろ基金で対応する。この二つを合わせれば、求償可能性も確保しつつ、それ以外も対応できるということから、こういう整理をさせていただいたわけでございます。

高橋(千)委員 余りすべてを基金にゆだねてしまうと、それこそ非常に無理があるのではないかと思うんですが、これはちょっと後で質問がありますので、時間の関係で、先に少し文部科学大臣に伺いたいと思うんです。

 早く早くという思いからこうしたのだ、しかも、指針に基づけば求償ができるであろうということが、先ほど来説明がございました。

 そこで、第四条、種類に応じて推計した特定原子力損害の概算額に対する十分の五を下らない、そして政令で定める割合を乗じて得た額というふうな記載がございます。

 そうすると、十分の五を下らないとは何かというと、今まで言われてきた説明は、十分の六から十分の八くらいである、十分の十ではないということが一つあると思います。それが、求償がしやすいものの方が割合が高いということも聞いてございます。

 ただ、一方で、概算額、そのもとの額というのは請求額とイコールではないはずですね。つまり、東電の場合は逆に、請求されたものに対して二分の一と決めている。そうすると、精査をしなくても書類がそろっていれば二分の一なんですけれども、この書きぶりですと、請求した額が政令で定めた額にふさわしいものかということをまず決めます、決めてから割合を、お茶は幾ら、牧草は幾らと、それぞれ違うわけですよね。その手続がかなり時間がかかるのではないかと思いますが、いかがですか。

高木国務大臣 高橋委員にお答えをいたします。

 これは、今回の法案、まさに提出された法案について私どもがどうのこうのと言う立場ではございませんけれども、今お尋ねがありましたように、今回の事故においては多数の被害者がおりまして、その方々にできるだけ迅速に対応するということが極めて重要だと思っております。

 今回の法案に規定されております仮払いの事務については、先生御指摘の作業を含め、何段階もの作業が必要でありまして、方法によっては、その作業量は大変に多くなることが予想されております。

 そのため、実際に仮払いを行うときには、この法案で規定されておりますように、まず、第四条において政令で定めることとされている仮払いの基礎となる概算額の算定方法をできるだけ明確にすること、第六条に定められている農業協同組合あるいは漁業協同組合などの団体の協力を得ること、また、第八条に規定する事務の委託の柔軟化、こういったことを活用することによって事務の迅速化を図ることが被害者を早期に救済するために重要となるのではないか、私はそのように考えております。

高橋(千)委員 何段階もの作業があるということをお認めになった上で、簡素化、その他の団体に委託をすることなどということをお話しされたと思います。

 ただ、私が指摘したように、それぞれの種類によって割合が違うということや、政令でその額を決めなければならない。これは、決めるのは団体にはできないわけですから、やはりそれは国がやらなければならない。国の税金を出すとなると精査が必要よということで非常に時間がかかるということではやはり難しいんじゃないかということを重ねて指摘をしなければならない。そうであれば、今やっている仮払いを何も国が肩がわりをしなくても、先にどんどんやらせていくということができるのではないかということを重ねて指摘したいと思うんです。

 そこで、先ほどの基金の話です。基金は救世主になり得るかという問題なんです。

 これは簡潔に伺いたいと思います。三千億円の基金は福島県だけでしょうか。

森(ま)参議院議員 基金は、基本的には福島県に設置されることを想定しております。それ以外の対策については、政府・与党の理解もいただきつつ、従来の国の予算の拡充等で実施されることをまずは期待しております。

高橋(千)委員 そうすると、福島県だけであるというお話がありました。

 私、昨日も宮城県の白石というところにいましたけれども、福島県の本当に隣なわけですね。その隣に丸森というところがあって、例のセシウムの検出という問題がございました。今本当に、もう全国にこの影響が広がっているわけです。本当に皆さんが不安を訴えている。また、先ほど来議論になっている事故後の稲わらを与えたことが原因で汚染が疑われる肉牛、きょうの十一時時点で十五道県、二千七百四十九頭を超えたと言われています。当然これは、牛の全頭検査や買い上げを求めているわけです。

 こうした新たな問題に対しては、先ほどちょっと議論がありましたけれども、指針を早くつくれとかどうかではなく、もう有無を言わさず国がやるべきだ、こういうことこそ率先して国がやるべきだと思いますが、この点、いかがでしょうか。

森(ま)参議院議員 委員のおっしゃるとおり、率先して国がやるべき問題だと思っております。基金は地方公共団体に与えられるものでございますので、国がまずこのセシウム牛の問題については全頭買い取り、全頭検査等の施策を実施していくべきだと思います。また、指針に加えられることを前提にして仮払いを行っていくことも考えられると思います。

高橋(千)委員 そうすると、やはり指針によらずに仮払いというお話が今あったわけですけれども、こういう点は、やはり行政的な責任があるという点で、私は国が責任を持ってやればいいと思うんですが、では、基金が福島県だけだという点で、やはりいろいろな問題が起こってくるのではないか。これに期待しているということもいっぱいありますし、やはりこれは一考を要するのではないかと思うんですね。

 私、ちょっと申しわけないんですが、通告しておりませんが、一言追加で質問したいことがございます。

 やはり福島県だって、基金は県に任せると言われますと、そうはいったって、何らかの基準がなければ、どこまで広げることができるのかと。つまり、皆さん福島出身でございますのでもう十分おわかりのように、福島県の原子力損害対策協議会は、二百二万人すべての県民が賠償の対象だ、こういう要望を提出しました。しかし、それを本当にやれば、とても三千億の基金では吹っ飛んでしまうということになりますし、それぞれの具体的な損害に対して支援をしながら、同時に、漏れるところも支援をしながら、かつ、すべての県民にと言っていくと大変なことになるわけです。

 そこで、私が考える、やはりやるべきなのは、福島県はやはりそういう点では要望をかなり精査してきていますね。いろいろな団体の皆さんの意見を聞いて、それぞれが、こんな問題があると言っています。そこには一定の合理性があります。そうすると、この基金が、後から指針になるものであれば求償できるという言いぶりではなくて、市町村や県が率先してやったものはむしろそれを指針にするべきだ、仮払いさせるべきだ、東電に求めるべきだ、そういう立場に立つべきと思いますが、いかがですか。

森(ま)参議院議員 委員のおっしゃるとおりだと思います。

 私どもがこの基金という制度をここに入れましたのは、まさに委員のおっしゃるとおり、文科省の指針に不満がありまして、この背中を押すというか、背中をけ飛ばすぐらいの勢いで、この基金で、福島県の県議会も意見書を出してきております、この基金制度を早く成立させてほしいと、共産党の県議さんも一緒に入って、県議会で意見書を出していただきました。その思いは、この基金を県の方に任せてほしいと。県が一番事情をよくわかっている。先生が先ほどおっしゃった協議会の方でも、いろいろな要望書を上げてきております。

 これが国の方でなかなか進まない。これを基金で、県の方が優先順位をつけて救済をしていく。これは三千億ではとても足りないということも私も重々承知しておりますが、今度の第二次補正予算が規模が大変小さいものですから、その予備費の中で補えるものということで、苦渋の決断でございますが、ぜひ、先生方の御協力も仰ぎながら、この基金を拡充していきたい。

 先ほど谷委員の御質問の中にもありましたが、神戸のときにはまた第二次の基金の拡充が行われたということでございます。ぜひそういったことも期待をしながらということで、答弁をさせていただきたいと思います。

高橋(千)委員 答弁は大変積極的で多としたいと思うんですけれども、しかし、このスキームのままではやはり指針から一歩も出ない。皆さんが言っている、不満をたくさん持っている指針の中から出ないということなんです。そして、東電が一緒に責任を果たすといいながら、実際には国がその支援を、スポンサーに成り下がっているというのが実態である。

 そういうことを踏まえて、今最後に私が提案したことをぜひ皆さん、与党も自民党の皆さんも検討していただいて、そういう法案ならぜひ賛成したいということを提案して、終わりたいと思います。

黄川田委員長 次に、吉泉秀男君。

吉泉委員 社会民主党の吉泉秀男です。

 参議院の議事録、二日間、大変御苦労さんでしたし、読ませていただきました。仮払い法案を提案していただいた、このことにまず感謝と御礼も申し上げたい、こういう立場でございます。

 四カ月半になってもまだまだ収束が見えない、そしてまた家族ばらばら。もう四カ月半にもなるわけですから、財布のひもも本当にかたくしながらも、底が見えなくなって、底がなくなっている、こういう状況の中に、一日も早く賠償、その部分で対応していかなきゃならないなというふうにも自分自身思っております。

 その中で、今大臣の方から、東電の賠償金の遅くなった理由の中に、資金繰り、こういうお話もございました。しかし、私は、資金繰りだけではないんだろうなというふうに思っております。やはり国の責任の部分をきちっと明確にしていかなきゃならない、こういう思いもあったのではないかなというふうにも思います。そういう中で、今の機構法案なり仮払い法案が日の目を見るということについては、被害者も含めながら、少し希望もあるのではないかなというふうに思っているところでもございます。

 そうした中において、この現状の中に、私は、今回の賠償については第一義的には東電の責任、この部分はやはりきちっと明確にしていかなきゃならない、こういうふうに思います。そして、そのところについての賠償の任務として、責務として、東電の持つ資産の処分も当然徹底的に考えていかなきゃならない。

 最終的にはこの事業が国の事業にもなりかねない、こういう部分も私はあるんだろうというふうに思っています。そして、東電がその賠償の任にたえられない、こういったときに国の責務というのが私は出てくるんだろうなというふうに思っております。

 ですから、この賠償に対して今進められている、そして千二百億を一つの頭にしながら、二分の一ということの中で今東電が仮払いを進めているわけでございますけれども、しかしまだ六百億、こういう状況でもございます。そんな状況の中では、ただ単に資金繰りのところから遅くなっている、こういう部分だけではないだろうというふうに思っております。

 そんな面で、今回の、いち早く避難者を、被害者を救う、こういった部分の中において、東電のこの遅くなっている理由についてどういうふうにとらえているのか、まずお伺いをさせていただきます。

礒崎参議院議員 お答えいたします。

 いろいろな理由はとにかくあるとは思いますが、やはり東電がまだ非常に慎重な姿勢を崩していない。この災害に対してどのような考え方を持っておるのか、私はまだ非常に不十分なところがあると思います。そのために、将来のいろいろな経営のことも考えているのかもしれませんが、慎重にやるものですから払う額も少ないし、手続も慎重にやっている。

 やはりそういう部分に大きな問題があって、今まずやらなきゃならぬことは被災者の皆さんの救済ということがまず第一でありますから、本来はやはり東電がもっと早くやらなきゃならぬわけでありますが、そこの、遅い部分を待っておっても仕方がないので、まず、国がもっと前面に出てやるということを今回この法案の中でお願いしたいと思ったわけでございます。

吉泉委員 そのところはわかるわけでございますけれども、しかし、東電の渋っている部分についての責任の明確化をやはり徹底的に求めていかなきゃならない、こういうふうに思います。

 そして、今の現状の中で四カ月半になっているわけですから。この法案、さらには今の機構法案が通っても、やはり事務的な部分の中で相当かかってしまう。ひょっとすると、発生以降、半年以上待たされる、こういう部分もあるんだろうというふうに思っています。

 そういう面の中では、ぜひ、徹底的な一つの責任の明確化、いわゆる国としてきちっと仮払い、その部分については私は疑義はないわけでございますけれども、今答弁ありましたけれども、東電の責任をやはり徹底的に追及していただきたい、こういうふうな部分をまずお願い申し上げます。

 そして、今、森参議院議員の方から、ノー原稿で、自民党のこれまでの政権与党として、さらには原子力政策を進めてきた、このところに対して大変慎重な、そして、国民に対して謝罪的な、そういうふうにも受けとめられる答弁がなされたわけでございます。

 しかし、私の方の地元新聞、さらには共同通信社において、こういう献金の問題が出されております。それぞれ、自民党の政治資金管理団体であるのか、その辺はわかりません、しかし、国民政治協会に、それぞれ、九年度の段階において、電力関係の社長を含め会長、この協会に対する個人献金、これの七五%が電力関係だ、こういうことで、今その事実関係が明らかになっております。

 私ども、きのうも地元にいたわけでございますけれども、この関係等を含めながら、やはり今、どうしたって被災者、被害者を救わなきゃならない、国を挙げて救わなきゃならない、この思いはある。その部分についての、最終的には個人個人のいわゆる電気料金の引き上げに必ずつながる、こういう一つの思いはそれはある。しかしながら、そういう一つの流れというものについてやはりきちっとしてもらわなきゃならない、こういう意見が多いわけでございます。

 そんな面で、森参議院議員が大変慎重な、そして明快な答弁をなされたわけでございますけれども、今の自民党、さらには政治団体の協会、そしてまた、それに対する電力役員の個人献金、この問題についてどういうふうに今理解をし、そしてまたどう整理をしようとしているのか。政党の役員ではないわけでございますから、一応自民党の方の提案者として、その辺について少し所見をお伺いさせていただきます。

礒崎参議院議員 お答えいたします。

 国民政治協会に対する個人献金の七割を超えるものが電力会社だという点は御指摘のとおりでございまして、これについて、電力会社の側は、別に組織的な対応をしたわけではないとは言っておりますが、いろいろな評論の中で、ちょっと不自然な点もあるという御指摘も受けているところでございます。

 いずれにいたしても、これだけの大災害を原子力発電所が起こしたわけであります。したがいまして、その当事者である電力会社と自民党とのこれまでの関係はやはり見直していかなければならないというのが基本であると思います。

 先生の方からおっしゃっていただきましたが、私が今、党全体を代表する立場にありませんので、どうするかというところまでは言えませんが、当然、この大災害、原子力災害を踏まえて、今後とも電力会社と我が自由民主党の関係をしっかりと見直していくことも必要であると重々考えているところでございます。

吉泉委員 ぜひ、それぞれ国民の前にわかるようにひとつよろしくお願いをしたいし、そしてまた、これまで原子力発電の中でいろいろな恩恵を受けてきた、その部分は国民はわかる。しかし、今ここに至って、それでいいのか、そしてどう処理するんだというふうになっていったときには、この問題についてはやはりきちっと整理をしていただきたい、こういうふうにまずお願いを申し上げたい、そういうふうに思います。

 そして、今、支払いの窓口の問題について、それぞれ整理をする、そしてまた役割分担をする、こういうお話がございました。その点について、今、指針について、今まで紛争委員会から一次、二次、さらには追補、この三つが出されてきているわけですね。仮払いの部分のところについて、国が仮払いで、この指針、今まで出た部分についても対応する、そういう気持ちなのですか、どうなんですか、そこをお伺いします。

礒崎参議院議員 御指摘のように、指針に基づいて仮払いをするという方針が出ておりますから、今までの指針、あるいは追加されたもの、あるいは今後出るものも踏まえて、すべてこれは仮払いで対応できる方向で考えておるところでございます。

吉泉委員 指針はわかるわけですけれども、この指針から漏れている部分ですね。この指針というのは、ある程度、紛争委員会の一つのところを想定しながらの一つのガード、こういうふうに受けとめるわけでございます。

 ですから、そんな面からいうと、今提案者として、指針から漏れる、こういったところについてはどういうところを想定しているのか、そしてまた、そのことになった場合、その対応の仕方をどうするのか、その点をお伺いします。

礒崎参議院議員 お答えします。

 それが我々もこの法案をつくるのに一番の悩みだったわけであります。基金というものを用意いたしましたけれども、基金は地方公共団体でありますから、地方公共団体が東電の賠償の肩がわりをするというふうなことにはさせたらいかぬというまず大前提があったわけでありますが、ただ、賠償をするもの、賠償をしないものというのがきちんと分かれるのを待っておったら、これは被災者の救済にならないということで、地方公共団体がまず自分でやろうと思う部分に対して国が一〇〇%の補助をして、基金で被災者への対応をできるという仕組みを設けたわけでございます。

 それで、具体的にどのようなところをやるかというのは、これはまさに今から地方公共団体で考えていただかなければなりませんが、御承知のとおり、三十キロ圏外の自主避難者などというものは何もありませんし、風評被害というのも、将来的には指針に入るんだと思いますが、今は入っていない。こういう部分を国の指針ができるのを待っていたら被災者をなかなか救済できませんので、そういう今言ったような部分を中心に、地方公共団体がみずからの判断で積極的な対応をしていただければと考えておるところでございます。

吉泉委員 そうすると、その点について、国と地方自治体の関係になるわけでございますけれども、それぞれ地方自治体の判断、こういうふうになっていったときに、それぞれの自治体、特に県なんですけれども、それぞれ違うわけでございます。そういう面については、国としての一つの関与の仕方、全部地方自治体だということについては少し整理がつかないのではないかなというふうに思いますけれども、その辺はどうですか。

礒崎参議院議員 御指摘のことはよくわかります。

 今言ったように、基金そのものは地方公共団体が設けるものでありますが、当然、それに対して国が十分の十、一〇〇%の補助をすることが前提になって考えておりますので、その補助をするに当たっては、国として必要な調整、あるいは、例えば複数の県、複数の市町村で基金をつくる場合には余りアンバランスにならないようなという調整は必要になってくると思いますが、やるかやらないかというところはまず地方公共団体でも主体的に考えていただき、あるいは国も一定の調整をしていただく。そこのところは今後の調整の中で、うまくという言い方もあれでございますけれども、きちんとやっていかなければならないことだと考えております。

吉泉委員 ぜひ、そのところについてはもう少し明確化をお願い申し上げたいと存じます。

 そして、この仮払いの額が半分というところについて、ちょっと疑問に自分自身思うんですけれども、それは、やはりこれから相当の高額にわたる賠償金なりいろいろあるわけでございますけれども、半分というふうに、ある程度こういうふうに基本的に線を引いたということについては、何か理由があるんですか。

礒崎参議院議員 お答えをいたします。

 我々の考えているのは、二分の一ではなくて、もう少し今の東電のやり方よりも率を上げたいと。だから、我々は十分の六、七、八ぐらいだというふうな言い方はしておるわけでありますが、法案としてつくる場合は、やはり最低限のところは幾ら何でも半分でしょう、二分の一でしょうということで、二分の一を下らないという法令用語にいたしておりますが、今後、政府の方で政令を決めていただくわけでありますが、算定のしやすいものは十分の八、だんだん難しくなってもやはり十分の六、そのぐらいでやらなければこの法案の魂が生きてこないと私は思いますので、法案としては一応そういう表現をいたしておりますが、もう少し高い割合で仮払いをすべきであると考えております。

吉泉委員 そうすると、これまで東電で支払った方々、この方々に対しても、仮払いのこの法案が成立をした後は追加支払いというふうになる、そういうとらえ方でいいんでしょうか。

礒崎参議院議員 当然そういうことになろうということを想定いたしております。

吉泉委員 わかりました。

 やはり、冒頭お話ししましたように、もう家族もばらばら、そしてまだ、もう今の現状の中からいうと、夏休みが終わったらばやはりほかの県に移ろうか、こういうお母さん方、子供たち、いるわけですね。そういう精神的な苦痛というものについては大変なものがあるだろうというふうに私は思っております。

 やはり、今回のこの仮払い法案を提出していただいた、このことに本当に敬意を表しながらも、東電の支払いの責任の明確化、これをあわせながら、ぜひ被害者に対しての手厚い賠償が一日も早く成りますよう、私どもも努力をしながら、皆さんの御努力に敬意を表させていただきながら、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

黄川田委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 今回、みんなの党も含めた野党五党が参議院に提出をしましたいわゆる仮払い法案、原子力事故被害緊急措置法案が参議院で可決をし、衆議院に送られてきました。福島第一原発事故の被害者への賠償金を東電にかわって国が仮払いし、後で東電に請求をするという内容であります。

 東電に任せていては賠償金の支払いが遅々として進まない。しかも、当然支払われるべき賠償金の支払いに東電が応じないというケースも出てきている。避難指示区域にある医療法人や学校法人、社会福祉法人等から三十件程度の請求について、四カ月たっても支払いに応じていないということであります。こういうことになるから、迅速な賠償金支払いのためにも、そして対象や額の不当な限定が行われないようにするためにも、賠償金について国が仮払いをし、後で東電に求償する仕組みが野党五党によって組み立てられたわけであります。

 この仮払い法案と政府提出の原子力損害賠償支援機構法案は、親子か兄弟のような法案で、同時に審議を進め、同時並行で修正協議をして、同時に成立をさせようということが言われているわけですけれども、しかし、これはどうなんでしょうか。

 原子力損害賠償支援機構法案は、東電一社で賠償債務が支払えない、東電みずからが言っていて、このままだと賠償金支払いで債務超過になって破綻をしてしまうので、賠償金支払いのための機構というのを新たにつくって、電力会社に相互扶助の名目で奉加帳を回して負担金を集めて、加えて、交付国債や政府保証融資による資金援助、さらには電気料金の引き上げをして、要は、国民負担で賠償金の原資をつくって東電を企業として救済しようというものであります。これがないと、東電は債務超過企業として市場の信認を失い、安定的な資金調達ができなくなって、ひいては電力の安定供給にも支障を及ぼす。閣議決定にあるように、東電を債務超過にしてはならない、だからこの法案を早く通してください、こういう説明だったわけです。

 しかし、賠償金の仮払いを国が負担する形で進めていくと、当面、賠償金の支払いで東電の経営が圧迫をされる、こういう事態は避けられることになるんじゃないでしょうか。最終的に東電をどうするか、リストラや資産売却でどれだけの資金を吐き出させるのか、減資による株主責任や債権放棄等の金融機関の責任をどれだけ求めるのか、こういった点は、国による仮払金を東電に求償するという局面で最終的に整理をすればよいということになります。つまりは、原子力損害賠償支援機構を早くつくって、今にも破綻しちゃうから、とにかく東電を企業として救済しよう、こういうスキームを急ぐ必要がなくなるはずなのであります。

 東電を企業としてどうするかについては、相当な意見の隔たりがあります。そして、菅総理、先日は海江田大臣もそのような御答弁をいただきましたけれども、発送電分離について必ずしも否定的な答弁をされていないように、政府・与党の中にも、東電を資本主義のルールにのっとって破綻処理をして、電力事業、電力行政の新たな姿をつくり出そう、こういう考え方の持ち主もおられるように思います。

 ならば、この支援機構法案で、リストラも資産売却も責任追及も全く不十分な東電をとにかく企業として救済するためにじゃぶじゃぶ金を投じることを可能にするような法案を、急げ急げと言って通してしまう必要がないではありませんか。

 仮払い法案と原子力損害賠償機構法案、両法案の成立がほぼ同時でなければならないと考えているのか、考えているとしたらその理由は何かということを、まず参法発議者の方にお伺いをし、そして海江田大臣にもお伺いをしたいというふうに思います。

小熊参議院議員 柿澤委員にお答えをいたします。

 私としましては、原子力損害賠償支援機構法案と今回の仮払い・基金法案が連携をするというふうには考えてはおりません。

 もちろん、この法案によって国が仮払いをした場合には、東電に速やかに求償して、そして賠償金の支払いを確保しなければなりません。しかし、この賠償金の担保をしていくものは、今回の支援機構法案によるものでなくても大丈夫だというふうに考えております。

 我が党といたしましても、御承知のとおり、この支援機構法案に対しては対案を用意しておりますけれども、ここはその議論をする場ではありませんので、その支援機構法案の場で審議をすべきだというふうに考えておりますし、我々五党の立場もそれぞれであります。

 しかし、今回のこの仮払い・基金法案というのは、被災者第一の法案として、我々が立場を超えて、心を一つにして、異体同心で、そして提出をさせていただいた法案でもあります。速やかな成立が望まれるところであります。

 また、この法案は、この経費は国庫から出すものとしておりますし、我々発議者の願いとしては、補正予算から出していただきたいという思いもあります。今回の支援機構法案の財源を当てにしているものでもないという一点においても、この法案と、そして支援機構法案が成立を急ぐ必要がないという議員のおただしは、そのとおりであるというふうにお答えをさせていただきます。

海江田国務大臣 私は、政府が出しました機構法案と、今参議院の提出者から説明がありました、それから現在も衆議院の与党、野党の皆さん方で大変熱心に議論が行われていると承知をしておりますが、この二つの法案は、言ってみれば重層的と申しますか、あるいは多重的と申しますか、やはり、本当に迅速かつ確実に、今回の原子力事故によって損害を負われた方々にしっかりとこの損害賠償に対する賠償金が支払われるために準備されている法律案だろうと思っております。

 ですから、迅速かつ確実にということでございますので、私どもは、政府の法案、そして提出者からお話のありましたこの仮払い法案、これが一日も早く成立されることをこいねがっております。

柿澤委員 願望としては海江田大臣の御答弁はわかるんですけれども、しかし、論理の道筋として、なぜ仮払い法案を成立させた上で機構を立ち上げなきゃいけないのか、ここのことについては御答弁がなかったように思います。

 また、我が党の小熊参議院議員から御答弁をいただきましたが、最終的には、この仮払い法案を通せば支援機構法案を急ぐ必要はない、こういうふうに小熊議員としては考えている、こういう御答弁もいただいたわけでありまして、こうなると、本当に、東京電力の責任をどう追及するのか、こうしたことについてもまだまだ不十分な状況にある。

 先日、本会議で、支援機構法案のときに、東京電力の清水前社長、五億円に上ると言われるような退職金の支払いが今の時点では保留をされている、いずれは支払うということなのか、こういうことを申し上げさせていただきましたけれども、こういうことについても全く不十分な中で、とにかく支援機構を通してしまおう、これでいいのかということを、私は非常に疑問に思っております。

 一点、海江田大臣にお伺いをしたいと思いますが、最後になると思いますけれども、この東京電力のリストラについて、海江田大臣は、踏み込んだ徹底的なリストラをやらせるんだ、こういう趣旨の御答弁を何度も何度もされておられます。この点は心強く感じておりますが、しかし、法的に見て、東電のリストラについて、政府は東電に対するどのような権限を持っているんでしょうか、こういうリストラをこうしろということを東電に対して言える立場なんでしょうか、このことについて大変疑問に思います。

 海江田大臣の御答弁をいただきたいと思います。

海江田国務大臣 この機構法案が成立をいたしまして、いよいよ国の資金によって賠償金の原資の調達が行われるということになりますと、これは、東京電力としましては、特別事業計画を出すことに相なります。

 この特別事業計画が出ますと、これはまさに、私どもがお願いをいたしました東京電力に関する経営・財務調査委員会でございます、この中には、会計の専門家、税務の専門家、法律の専門家が入っておりますから、この方々によってしっかりとリストラの中身を精査していただいて、そしてもちろん、その精査をした中身、それから、東京電力から出てまいりましたリストラの中身というものは明らかになるわけでございますから、そこで御議論をいただければよろしいかと思います。

柿澤委員 国が仮払いをして、その求償を、国民の税金を取り戻すという観点で東電に求めていく、この過程においてリストラを求めていった方が、よほど強制力のある、力のある、そうした対処ができるのではないかというふうに思えてなりません。

 私は、やはり仮払い法案が今回の東京電力の賠償スキームの柱になるべきであって、機構というものを新たにつくって対処をするというのは、東電を企業として救済する、そうした目的がやはり中に入っている、そういうものであるというふうに感じられてなりません。そのことを申し上げて、たったの十分間ですが、質疑を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございます。

黄川田委員長 次回は、明二十六日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後八時一分散会


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