衆議院

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第7号 平成24年6月19日(火曜日)

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平成二十四年六月十九日(火曜日)

    午後一時三十分開議

 出席委員

   委員長 古賀 一成君

   理事 近藤 昭一君 理事 近藤 洋介君

   理事 田嶋  要君 理事 中川  治君

   理事 橋本 清仁君 理事 谷  公一君

   理事 額賀福志郎君 理事 石田 祝稔君

      相原 史乃君    石津 政雄君

      石原洋三郎君    石山 敬貴君

      市村浩一郎君    太田 和美君

      菊池長右ェ門君    沓掛 哲男君

      熊谷 貞俊君    小室 寿明君

      斉藤  進君    階   猛君

      白石 洋一君    菅川  洋君

      玉木雄一郎君    辻元 清美君

      中野渡詔子君    長尾  敬君

      畑  浩治君    森本 和義君

      谷田川 元君    柳田 和己君

      山口 和之君    湯原 俊二君

      若井 康彦君    秋葉 賢也君

      井上 信治君    伊東 良孝君

      小里 泰弘君    加藤 勝信君

      梶山 弘志君    高木  毅君

      長島 忠美君    三ッ矢憲生君

      吉野 正芳君    高木美智代君

      高橋千鶴子君   斎藤やすのり君

      阿部 知子君    柿澤 未途君

      中島 正純君    園田 博之君

    …………………………………

   参議院議員        岡崎トミ子君

   参議院議員        金子 恵美君

   参議院議員        谷岡 郁子君

   参議院議員        増子 輝彦君

   参議院議員        森 まさこ君

   参議院議員        加藤 修一君

   参議院議員        川田 龍平君

   参議院議員        紙  智子君

   参議院議員        荒井 広幸君

   文部科学大臣       平野 博文君

   国務大臣

   (復興大臣)       平野 達男君

   復興副大臣        吉田  泉君

   環境副大臣        横光 克彦君

   復興大臣政務官      若泉 征三君

   経済産業大臣政務官    北神 圭朗君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       高井 康行君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       佐藤 敏信君

   衆議院調査局東日本大震災復興特別調査室長     関根 正博君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月六日

 辞任         補欠選任

  大島  敦君     三日月大造君

同日

 辞任         補欠選任

  三日月大造君     大島  敦君

同月九日

 辞任         補欠選任

  大島  敦君     近藤 昭一君

六月六日

 辞任         補欠選任

  若泉 征三君     小室 寿明君

同月十九日

 辞任         補欠選任

  石津 政雄君     玉木雄一郎君

  市村浩一郎君     湯原 俊二君

  若井 康彦君     熊谷 貞俊君

  小野寺五典君     三ッ矢憲生君

  長島 忠美君     伊東 良孝君

  吉野 正芳君     高木  毅君

  吉泉 秀男君     阿部 知子君

  下地 幹郎君     中島 正純君

同日

 辞任         補欠選任

  熊谷 貞俊君     相原 史乃君

  玉木雄一郎君     石津 政雄君

  湯原 俊二君     市村浩一郎君

  伊東 良孝君     長島 忠美君

  高木  毅君     吉野 正芳君

  三ッ矢憲生君     小野寺五典君

  阿部 知子君     吉泉 秀男君

  中島 正純君     下地 幹郎君

同日

 辞任         補欠選任

  相原 史乃君     若井 康彦君

同日

 理事大島敦君四月六日委員辞任につき、その補欠として近藤昭一君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

六月十四日

 東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律案(東日本大震災復興特別委員長提出、参法第二二号)(予)

同月十五日

 東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律案(参議院提出、参法第二二号)

三月十九日 

 福島の子どもたちを放射能被害から守ることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三三三号)

 同(笠井亮君紹介)(第三三四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三三五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三三六号)

 同(志位和夫君紹介)(第三三七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三三八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三三九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三四〇号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三四一号)

 同(太田和美君紹介)(第五一一号)

四月二日

 福島原発事故の早期収束、被害の完全補償に関する請願(笠井亮君紹介)(第六二二号)

 東日本大震災・原発事故からの復旧・復興に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第七一〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第七一一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第七一二号)

同月五日

 被災者本位、地域再生重視の大震災復興に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第八五九号)

五月二十一日

 福島の子どもたちを放射能被害から守ることに関する請願(山口和之君紹介)(第一一四九号)

六月十五日

 福島の子どもたちを放射能被害から守ることに関する請願(志位和夫君紹介)(第二三〇六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律案(参議院提出、参法第二二号)


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     ――――◇―――――

古賀委員長 これより会議を開きます。

 理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古賀委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、理事に近藤昭一君を指名いたします。

     ――――◇―――――

古賀委員長 この際、吉田復興副大臣及び若泉復興大臣政務官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。復興副大臣吉田泉君。

吉田(泉)副大臣 復興副大臣を拝命しました吉田泉でございます。

 福島を中心とした原子力災害からの復興及び再生に関する事項に加えまして、福島復興局を担当いたします。

 平野大臣を支え、被災された多くの方々が復興に希望を持てるよう、全身全霊で取り組んでまいります。

 古賀委員長を初め、理事、委員各位の御指導、御鞭撻を何とぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。(拍手)

古賀委員長 次に、復興大臣政務官若泉征三君。

若泉大臣政務官 このたび復興大臣政務官を拝命いたしました若泉征三でございます。よろしくお願いいたします。

 福島を中心とした原子力災害からの復興及び再生に関する事項を担当いたします。

 関係副大臣とともに平野大臣を支えてまいりますので、古賀委員長を初めとして、理事、委員各位の御指導と御協力を何とぞよろしくお願い申し上げたいと思います。(拍手)

     ――――◇―――――

古賀委員長 参議院提出、東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。参議院東日本大震災復興特別委員長代理者参議院議員谷岡郁子君。

    ―――――――――――――

 東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

谷岡参議院議員 ただいま議題となりました法律案につきまして、その提案の趣旨及び主な内容を御説明いたします。

 平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故により大量の放射性物質が放出され、広範囲にわたる環境汚染の被害が発生いたしております。放射性物質が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていないこと等により、一定基準以上の放射線量が計測される地域に居住し、または居住していた被災者及び政府による避難指示により避難を余儀なくされている被災者は、常に健康上の不安を抱えるとともに、事故前の生活の継続が不可能になり、苦痛を強いられております。中でも、子供たちは、汚染された環境で子供らしく生活することができなくなっています。

 そのため、子供に特に配慮して行う被災者の生活支援等に関する施策を推進することにより、原発事故によって事故前の生活基盤を損なわれた被災者の主体的な生活再建を実現していくため、本法律案を提案することとした次第であります。

 次に、本法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、被災者生活支援等施策は、被災者一人一人が支援対象地域における居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還についての選択をみずからの意思によって行うことができるよう、被災者がそのいずれを選択した場合であっても適切に支援するものでなければならないこと、被災者生活支援等施策を講ずるに当たっては、被災者に対するいわれなき差別が生ずることのないよう、適切な配慮がなされなければならないこと、被災者生活支援等施策を講ずるに当たっては、胎児を含む子供が放射線による健康への影響を受けやすいことを踏まえ、その健康被害を未然に防止する観点から、放射線量の低減及び健康管理に万全を期することを含め、子供及び妊婦に対して特別の配慮がなされなければならないこと等の、被災者生活支援等施策の基本理念を定めております。

 第二に、国は、原子力災害から国民の生命、身体及び財産を保護すべき責任並びにこれまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っていることに鑑み、被災者の生活支援等に関する施策を総合的に策定し、被災者に提示し、及び実施することの責務を有するものといたしております。

 第三に、政府は、被災者生活支援等施策の基本理念にのっとり、その推進に関する基本的な方針を定めなければならないものとしております。

 第四に、国は、東京電力原子力事故に係る放射性物質による汚染状況の調査結果を踏まえ、放射性物質により汚染された土壌等の除染等の措置を継続的かつ迅速に実施するために必要な措置を講ずるものといたしております。

 第五に、国は、支援対象地域及び支援対象地域以外の地域で生活する被災者、支援対象地域以外の地域から帰還する被災者並びに避難指示区域から避難している被災者の主体的な生活を支援するため、食の安全及び安心の確保に関する施策、子供の学習等の支援に関する施策、就業の支援に関する施策、家族と離れて暮らすこととなった子供に対する支援に関する施策等、必要な施策を講ずるものといたしております。

 第六に、国は、東京電力原子力事故に係る放射性物質による健康への影響に関する調査について、子供である間に一定の基準以上の放射線量が計測される地域に居住したことがある者に係る健康診断については、生涯にわたり実施されることとなるよう必要な措置が講ぜられるものといたしております。

 第七に、国は、被災者たる子供及び妊婦が、東京電力原子力事故に係る放射線による被曝に起因しない負傷または疾病を除いた医療を受けたときに負担すべき費用について、その負担を減免するために必要な施策その他被災者への医療の提供に係る必要な施策を講ずるものといたしております。

 以上が、本法律案の提案の趣旨及び主な内容であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

古賀委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

古賀委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省雇用均等・児童家庭局長高井康行君及び環境省総合環境政策局環境保健部長佐藤敏信君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古賀委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

古賀委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。太田和美君。

太田委員 民主党の太田和美でございます。

 改めて、この法案の修正協議に御尽力をいただきました皆様方に、心から感謝、御礼を申し上げたいと思います。

 本日、傍聴席に市民の方も来ております。まさにこの法案はこうした皆様とのさまざまな思いを一つにして策定できた法案だというふうに思うと、大変感慨深いものがございます。

 まず、提出者の谷岡議員にお尋ねをしたいと思いますけれども、とりわけ私は、この法案に対する思い、それは、昨年の十月にチェルノブイリに視察に行ってまいりました。事故から五年後にできたという、いわゆるウクライナのチェルノブイリ法というものに出会いました。

 この法律は、まず第一に、事故から五年後でも年間一ミリシーベルトを超える地域を汚染地域に指定し、被災者を法的に定義したこと、そして第二に、安全な地域への移住を希望する住民に移住権が認められる、移住先での住宅や雇用についての支援を受ける権利が明記されたこと、さらに、汚染地域でもそこに住み続けたいという人々に対し、居住リスクがあるということで、居住者への月額支援、そして事業者への月額支援、医療支援などが特恵的に与えられることなど、こういったものがポイントになっているのは発議者の皆さんも御存じだと思います。

 いわゆるこのチェルノブイリ法というものは、被災者というものを細かく定義して、そして、細かく支援している、生活支援しているということが一番のポイントだったというふうに思っております。避難区域等からの住民への支援はもとより重要でありますけれども、私は、このような法律をつくって、特に、私が今住んでおります福島県の中通り地方など、低線量被曝のリスクを抱えながら住み続ける人々の支援も強化する必要がある、そのように思って、私も民主党のワーキングチームの副座長としてこの法案の取りまとめにかかわってまいりました。

 こういった形で、各党が合体して、与野党一致でこの子ども・被災者支援法ができたことは大変大きな意義がありますし、発議者の皆様方、与野党協議に当たった皆様方に、改めてこの御努力、被災地の議員として心から感謝、御礼を申し上げたいと思います。

 ただ、若干残念なことがありまして、この法案がプログラム法というような形になりました。当初、民主党が踏み込もうとしていたものは、支援対象地域への具体的な支援メニューが法案に明記されなかったことというのが、私、個人的に若干残念に思っております。

 具体的には政府の今後の検討に委ねるというわけでありますけれども、民主党のワーキングチームの事務局長として、当初のチェルノブイリ法のような立法を目指した谷岡議員に対して、この法案に込めた思いを伺いたいと思います。また、その観点から、今後の政府の検討に対する注文などがあればお伺いしたいと思います。

谷岡参議院議員 太田議員にお答えいたしたいと思います。

 本当に太田議員におかれましては、福島県選出の議員として、この法案、そこに寄せられる人々の期待であり、そして思いでありというものを毎回代弁していただいたというふうに思っておりまして、それがこの法案を生み出した大きな原動力であるというふうに思っております。

 この法案に込めた思いでございますが、何よりも、この一年余りにおいて、東電並びに日本の国家の名において、その線引きにおいて主体的な生活を損なわれてしまった人々、その方々を再び人生の再建に当たって人生の主体者の席にお返ししたい。また、多くの線が引かれてしまうことによって、時には家族、時には近隣者、コミュニティーの中でさまざまな線が引かれ、それが溝になっていった。そういう溝をもう一度埋め直したい。

 この法案は、人々をつなぐ法案でなければならない。この法案は、人々を客体として扱ってきたことから、主体者としての地位、主権者としての地位をお返しする法案でなければならないという思いでつくっております。

 したがいまして、まず情報をしっかりと与えられること、それにおいて自己決定というものがなされること、それに対して国がしっかりと支援を行うということ、それがこの基本線になっております。それは、具体的な生活上の負担を軽減するということのみではございませんで、心の垣根が取り払われるということが何よりも重要なことだと思っております。

 また、具体的なことにつきましては、ただいまのところは、特に子供を中心とした施策が中心となっております。それは、何よりも子供の放射性物質に対する感受性がとても強いということが重要であり、そしてまた、未来の世代を私たちが守らなければならないというところにあります。

 しかし、これは始まりの一歩であります。まだまだ私たちがやれていないことは、高齢者が今骨折がふえてしまっていたり、また認知症が悪化したり、さまざまなことを私どもも聞いております。その対策について、この福島県の基金が尽きたときにどうするのか、また福島以外のところにいらっしゃる方々についてどうするのか、まだまだ課題は残っていると思っております。

 もちろん実施をしていただくのは政府でございますが、私たちは、これを全て政府に委ねっ放しにするつもりはございません。立法者の意思として、この法案が成立いたしました暁には、私たちは、この法案を産み育てていく者として一緒に活動していこうということを今超党派の議員で相談をしているところでございます。

 タウンミーティングも開きたい。また、皆様の声をしっかり聞いていきたい。具体的なプログラムになっていないということを反対にしっかりと利用して、皆様の声、自治体の声、そういうものがしっかりと伝わって、そのニーズに応じてプログラムが立てていかれる、そんな法律に育ててまいりたいと思うところでございます。

 ありがとうございました。

太田委員 ありがとうございます。

 この法案をよりよいものに皆さんと一緒にしていきたいというふうに思いを同じくさせていただきました。

 そしてあと、福島県民からすれば、この法案、支援対象地域が年間何ミリシーベルト以上のところになるのかというところが一番関心のあるところだというふうに思います。

 もちろん、機械的に分けることによって住民が分断されることは避けなくてはなりません。そして、今の段階で数字がひとり歩きするということはよくないという点を踏まえて、あえて言及したいと思いますけれども、チェルノブイリ法あるいはICRPや国内法令に照らしても、私は一ミリシーベルト以上というところが支援対象地域になるべきだというふうに思っております。そうしたところを設定していただきたいというふうに思っております。

 そのことにより、そこで、発議者の方には、具体的な数字はお尋ねいたしませんけれども、この支援対象地域の設定についてどのような検討を政府に期待をするのか、そのお考えをお尋ねしたいというふうに思います。

谷岡参議院議員 お答えいたします。

 ICRPは、皆様も御存じのように、一般市民の年間の被曝量を一ミリシーベルト以下ということを推奨いたしております。と同時に、事故後におきましては、言ってみれば移行期間というものを認めておりまして、現実的な対応をするべきであるということも言っております。この二つを考えながらやっていかなければならない。

 同時に、できるだけ一ミリから二十ミリの中で低い方を選ばなければならないということも書いております。現在の二十ミリの数値というのは一ミリから二十ミリの中での一番高いところをとっているということで、特に、三倍から四倍の感受性を持つと言われている子供にとっては全く望ましい状況ではないというふうに立法者たちの意見として考えております。

 そこで、今後の問題でございますが、これは地域によってもいろいろあろうかと思いますが、基本的なものを、これから自治体であり、そして避難していらっしゃる皆様であり、残っていらっしゃる皆様、そういう方々の御意見というものはしっかり聞きながら、そこで考えていかなければならないと思います。この法律をきっかけに、ともに考える、ともに一番いい形を生み出していく、この放射性物質が環境内にあるという状況の中で、私たちがどのような形で力を合わせていくのかということについて、やはりしっかりと、みんなが車座になって話し合うことができるような状況というものをつくっていかなければならないと思います。

 政府におかれましては、その声をしっかりと聞いていただきたいと思います。再びこの法律がまた人々の間に線を引くことにならないように、どの単位で人々を分けていけばいいのか。例えば、それは小学校区なのか、あるいは字単位なのか。どういう形でやるのが人々に受け入れられ、そしてみんなに喜ばれる法律になるのか。この辺は丁寧な形でやっていただきたい。また、そういう声を反映していただきたい。私どももしっかりお手伝いをしてまいりたいというふうに思っております。

太田委員 次にお伺いしたいと思います。

 ちょっと時間がないので早口になりますけれども、この法案の第八条、第九条で、家族と離れて暮らすことになった子供に対する支援に関する施策を講じるものとするというものが盛り込まれております。

 福島県では、今、離れて暮らす家族と会う際にかかる旅費、ここに大変負担がかかるというような切実な声が聞こえてまいります。どのような支援策が必要と考えておられるのか。本来であれば、事故が起きなければ、こうした家族離散することがなかったはずであります。今こそ、一番やはり力を入れていかなければならない、そうした家族のきずなのところに切り込みを入れていきたいというふうに思っておりますので、そういったところを発議者の方にお伺いしたいというふうに思います。

増子参議院議員 太田議員にお答えを申し上げます。

 今御指摘のとおり、家族と離れて暮らすことになった子供への支援に関する施策としては、具体的にどのような施策を講ずるかについては、被災者の意見や地元の意見を反映しつつ、国民の理解が得られる形で仕組むことが必要だと考えております。

 この考えのもと、例えば御指摘のありました、家族に会う際にかかる費用の負担を軽減する措置、これは現在、賠償で月一、二回程度は認められておりますが、十分ではありません。全国、それこそ北は北海道から南は沖縄まで、家族が離散しているという状況を考えれば、これでは十分でございませんので、十分これらを考える措置もしていかなければならないと私どもは考えております。

 また、家族と離れて居住することに対する不安や寂しさを解消するために、子供たちの将来に対しての大変さまざまな課題が出てまいりますので、これらについても、通信費用の軽減やカウンセリング、心のケア、子供たちが集まっての催し物の実施など、そして何よりも、ある意味では住環境の改善ということも極めて重要な問題だと私どもは考えております。

 これらの適切な措置が講ぜられるものと考えておりますので、この辺はよく地元や被災者の皆さんと相談をしながら、適切に対応していきたいと思っております。

太田委員 ありがとうございました。

 最後に、復興大臣にお尋ねしたいというふうに思っております。

 福島県は、原発事故を逆手にとって、全国に誇れる健康長寿県を目指す、そういう考えでございます。政府も、復興再生基本方針で同様の趣旨を盛り込む方向と伺っております。

 ところが、この具体策について、私も各省庁、いろいろなところにレクをお願いするんですけれども、どこに頼んでも司令塔はどこなのかわからなくて、たらい回しにされているような状態でございます。県任せにすることではなくて、やはり国として福島県の健康づくりに責任を持って支援するという決意をお伺いしたいというふうに思います。

 この法案についても、私のところに昨日、双葉町村会から法案修正の要望なども送られてきました。医療費減免の対象を妊婦や子供に限らず大人に広げていくべきなどというものがございました。それほど福島県の健康の不安というものが大きいということでございます。

 そのことを踏まえて国としての行動をしてもらいたいというふうに思っておりますけれども、復興大臣、いかがでしょうか。

平野(達)国務大臣 今委員から御紹介がございましたけれども、政府では、福島復興再生基本方針の策定を今進めておりまして、その中で、福島の復興及び再生の目標として、安全で安心して暮らすことのできる生活環境の実現を掲げております。

 この目標の実現に向けましては、厚労省、厚労省では心のケア等々も含みます。小学生、中学生の心のケアについては文科省も参画をいたします。あるいは健康管理、これは今の規制庁法案ができますと環境省が主体的に取り組む形になりますが、いずれ政府の施策を総合して取り組むということになりまして、その全体的な調整、統括というのは復興庁が担当するということになります。

 ちなみに、健康長寿県ということにつきましては、これはあくまでも福島県の独自の取り組みでございますから、これについて国がどうのこうのというわけにはなかなかいかないということであります。

 ただ、一般的な今回の原発の事故に関連しましての健康管理、心のケアも含みますけれども、医療体制の整備、これにつきましては、国が万全の体制で支援をしていくということでございます。

太田委員 ありがとうございます。

 大臣、しかし、この法案で、基本理念のところに、外部被曝及び内部被曝に伴う被災者の健康上の不安が早期に解消されるように最大限の努力がなされるものでなければならないということ、そして、この法案の中には、政府は基本方針を定めなければならないということになっております。

 やはりそういった意味で、不安を解消するためには、福島県は本当に事故後でも健康になったということがそうした不安を解消する一番の手段であるというふうに私は思っておりますので、その辺のところを政府としても最大限の努力をお願いいたしまして、私の質問を終了とさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

古賀委員長 次に、吉野正芳君。

吉野委員 自由民主党の吉野正芳でございます。

 最初にこの法案を見たときに、名称です、福島の名前がないんです。本当に、提案者の皆様方、福島県のことを思って、風評被害を少しでもなくそう、そういう思いがこの法案の名前にあらわれています。

 私は、いろいろな人に言うんです。みんな、福島事故、福島原発と簡単に言うんです、でも、そのことがいかに福島県の方々、特に商売をなさっている方々に風評被害という圧力で苦しめているか。いろいろなところで聞きます。そういう中で、法律の名前に、東京電力原子力事故、福島の名前が入っていません。本当に心から感謝を申し上げます。

 さて、質問をさせていただきます。

 先ほど太田議員も、チェルノブイリ法、これをお話しになりました。まさにこのチェルノブイリ法の精神を盛り込んだ法案だなというのが私の印象です。

 というのは、自分で選べるんです。ここに住むか、またほかに住むか、全部自分の意思で選べる。そして、どこに行ってもそこへの支援をしていく。そういう考え方でありますので、その辺、チェルノブイリ法をどのように参考にしたのか、森議員、お答えいただきたいと思います。

森(ま)参議院議員 吉野正芳委員の質問にお答えいたします。

 御指摘のとおり、この法案の検討に当たっては、チェルノブイリ法を参考にいたしました。住民に、移住を希望する方には移住の費用、それから移住先での住宅の確保、雇用の支援、これを受けることができますよ。また、残ることを選択した、居住を希望する住民に関しては、居住し続けることに一定の健康上のリスクがあるという考え方のもと、医療支援などの保障を受けることができることになっております。さらには、避難先から帰還をしてくる場合もございます。この帰還者の方に関しても、自分の意思で選択をし、選択をした上は支援をしていくということになっております。

 ただいま南相馬市の小高区は避難地域解除されまして、帰還ができることになっておりますが、生活をすることが大変困難であることが指摘されておりますので、この法案を活用して支援していけたらいいかと思っております。

吉野委員 そうなんです。行政の押しつけではなくて、そこに住んでいる、避難している本人の意思で自分の生活を選べる、そしてそこへの支援、本当にすばらしい法律だなというふうに思っています。

 読んでいて、ちょっと疑問というか、教えてください。支援対象地域、ここで、放射線量が一定の基準、住めるというか、政府が避難の指示を解除できる基準を下回っても、一定の基準以上の地域という形で、具体的にどうなんだというところをお聞きしたいと思うんです。

森(ま)参議院議員 これについては、ほかにも質問が同様のものが出ておりましたけれども、本法案はプログラム規定でございますので、数字については条文上規定をされておりません。

 具体的にどの地域を支援対象地域に設定するかにつきましては、今般の原子力発電所の事故に係る放射性物質による放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていないという認識のもと、多様な事情を総合的に勘案して決めていく必要があると思います。被災者となり得る住民等の意見を聞きつつ、国民の理解が得られるような基準を今後具体法で設定していくことが重要であると考えております。

吉野委員 立法者のイメージとして、例えば福島県全部入るような、そんなイメージで一定の基準というものを設けたのか。それとも、厳しくというか、一定の基準以下のところはだめだよ、福島県であろうともだめだよという形で設定したのか。その辺のイメージを、思いを述べていただきたいと思います。

森(ま)参議院議員 提案者の一人であります私個人の意見でございますけれども、福島県は全地域含まれるという考えでございます。

 さらには、福島県の外、他県につきましても、放射線の非常に濃い地域もございますし、さまざまな状況を勘案して含まれていくべきという希望を持っております。

吉野委員 ありがとうございます。

 やはり、我々福島県に住む者としては、福島県で線引きをして、ここはいいよ、ここはだめだよ、これはもう争いのもとになるわけですから、思いとして、福島県は全部入るという、そういうことの立法者の意思を、いわゆる執行する政府は尊重していただきたいと思います。

 先ほどまた太田議員からもお話がありました、子供、妊婦の医療費の無料化なんですけれども、双葉郡の町村会からの意見書で三つあります。

 第一条、特に子供に限ったのはわかるけれども、やはり大人も含めてほしい、そういうふうに法律改正をしてほしいというお願いが一点です。

 二点目は、医療費負担、これも被災者全てに、大人も子供も含めて被災者全てに医療費の減免もしてほしいというお願いです。

 三番目に、これは十三条の三項のところなんですけれども、放射線に起因するというところを、なかなか原因がわからないというふうに理解していますので、明らかに起因しないものというふうに言葉を、条文を変えてほしいという意見書がきのう届いていますので、提案者の方でもし直せるのならば、これを吟味して、修正なり、また見直し事項なりをつけていただきたいと思います。

 そこで、子供に限ったことはわかります。私も女の子の孫がおりますし、福島いわきで生まれたんですけれども、ずっと今住んでいますから、将来なかなかお嫁にも、実は、ある仮設で五十歳の奥さんが、十九歳の娘がお嫁に行けない、娘さんも、お嫁に行かれないと、だから私は孫が見られないと言って涙をこぼしながら私に訴えた例がございます。こんなところも、将来に対する不安を解消するためにも、一生涯医療費無料化というのはいいんですけれども、大人のところもこれから考えてほしいなというふうに思います。

 先ほど谷岡先生の答弁の中で、始まりの一歩だという言葉がございました。まさに始まりの一歩で、この法律ができたら、大人も含めた被災者全員に医療費の無料化をしていくんだというようなことをぜひ、私も含めてですけれども、我々立法者としてつくっていきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

森(ま)参議院議員 私のもとへも、双葉町村会と浪江町長から同様の要望が届いております。

 また、本日と昨日の朝日新聞の一面に、アメリカのモニタリングによる実測値の汚染地図が当時、避難民に示されなかったという記事が載っております。つまり、第一原発の北西方向、浪江町や飯舘村を含む三十キロ超にわたり、一時間当たり百二十五マイクロシーベルト、この線量は八時間で一般市民の年間被曝量の限度を超える数値でございます。浪江町の方々は、八時間で限度を超えるところに六日間滞留しました。避難の経路を示されず、津島支所に向かって行ったからです。飯舘村の方々は、一カ月後の四月二十二日になるまで避難指示がされませんでした。

 そういったことを勘案いたしますと、特に浪江町や双葉町村会の要望は根拠があるものだというふうに考えております。ですので、大人を含めた医療費無償化に向けての私たちの試みを加速させなければいけないと思っております。特に、このきのう、きょうの新聞記事は、今までのSPEEDIの試算値と違って実測値でございますので、大きな意味があるものと思っております。

 そこで御答弁をいたしますと、御指摘の十三条三項では「被災者たる子ども及び妊婦」という文言になっておりますが、その先を読みますと「その他被災者への医療の提供に係る必要な施策」というふうに定められておりまして、ここの部分は、子供、大人を区別しておりません。ですので、現行のこの法律のままでも、大人の医療費を減免する施策が講ぜられることができると私は解釈しております。

吉野委員 法律にそのように書いてあれば、きちんと政府の方でも、立法者の意思として、大人も含めた医療費減免、これを考えていってほしいと思います。

 実は、我々、福島特措法をつくりました。そのときに、六十五条で、将来健康被害が発生した場合は、保健、医療及び福祉にわたる措置を総合的に講ずるために必要な法制上または財政上の措置を講ずるものとする、こういう規定が六十五条に書かれております。

 だから、将来、放射線の影響で病気になったらこれで担保されるということでつくったんですけれども、立証責任なんです。福島特措法は、立証責任が自分にあるというふうに解釈されているんです。やはり立証責任が自分にあるということではなかなか厳しいものがあると思うので、その辺は、皆さんの法律はどうなっているんでしょうか。

森(ま)参議院議員 この点が、私たち野党案の一番こだわった点でございます。自民党を初めとした野党の子ども救済法と民主党さんの被災者支援法が合体してできたこの法案でございますが、野党の子ども救済法で絶対譲りたくない、十三条の立証責任の部分でございます。

 これは、立証責任を国にあるという意味で定めた条文の文言でございます。ですので、当時子供だった方々が将来大人になった場合も含めて、結婚するときも、就職するときも、その後も、一生医療費を無償または減額していただける。そのときに、病気になりましたよ、けがをしましたよ、それがこの原発事故に起因するものだということを自分が立証しなくてもいいんです。病気になったという事実だけでいいんです。病院にかかれるんです。そして、それは違うと国が思うのでしたらば、国が裁判で立証してください、その病気は原発事故と関係ないですよということを立証してくださいという部分です。この部分は、政府の方にも確認をいたしました。

 先ほど答弁漏れがございましたが、この件に関連します。

 つまり、起因しないという言葉に、明らかに起因しないというふうな、「明らかに」の文言をつけてくださいという双葉町村会からの要望があります。

 これは、私たち野党案に最初からついておりました。明らかに起因しないものを除くというネガティブリストならば私たち最後は妥協しますというふうに言っていたんですが、民主党、政府の方が、明らかにという部分は削ってくれというふうに言ってきました。そこで、私たちは質問をしたんです、明らかにを削った場合と削らない場合で、国に立証責任があるということが変わりますか。そうしましたら、民主党、政府側のお答えは、変わりません、国に立証責任がありますということでございました。

 私たちは、それが確認をできましたので、明らかにを削っても、この法案を成立させることができるならということで合意をいたした、そういう経緯でございます。

吉野委員 一番はそこです。立証責任がどこにあるか。福島特措法の場合は立証責任は個人にあるということだったので、本当にそこまで気がつかなかった私、自分の不徳の、至らなさを責めるわけですけれども、よくぞここまで皆さん頑張ってくれたということで、うれしく思います。

 それで、福島県は、十八歳未満の医療費の無料化が十月から始まります。いわきは七月から始まります。この制度は十八歳未満ですから、十九歳になって、今度の皆さんの法律に基づいて医療費無料化になると思うんですけれども、病気とかけがとか、外れるものが出てくるのかな、対象のものが同じじゃないとちょっとつながっていかないと思うんですけれども、その辺はいかがなんでしょうか。

森(ま)参議院議員 私たち立法者の意図としては、対象から外れるものがあるとは思っておりません。全く同じであるというふうに考えております。

吉野委員 あと、医療費の減免という言葉なんですね。減らす、減じるものと、免ずる、ただにするというのと二つあるんですけれども、どういうことなんでしょうか。減ずるものはどういう場合で、免ずるものはどういう場合なのか、お答え願います。

森(ま)参議院議員 立法者の意図としては、福島県の免除、これを後退させることはあり得ないと考えております。ですので、福島県外の方の医療費で減額される場合もある、そういう意味でございます。

吉野委員 わかりました。

 それでは、区域内で生活する人たちへの支援、ここにちょっと移っていきたいと思います。

 ここで医療の確保というふうに書かれていますけれども、これは具体的に、病院があって、薬屋さんがあって、そこに行く交通手段もあって初めて医療が確保されるというふうに私は思うんですけれども、例えば広野町を例にとると、お医者さんも薬屋さんも経営的に成り立たないですね、人が来ないですから。その辺はどう維持していくのか、そこまで含めてちょっと教えてください。

森(ま)参議院議員 まさに、病院の経営が成り立たないと、病院が潰れてしまう。そうしますと、帰還をしても医療の支援を受けることができないわけですから、病院の経営支援ということも視野に入っております。

 相双地域を含む被災病院の協議会から、悲痛な要望が来ております。東電からの賠償が大変低額で遅い、そしてそれに対して通常どおり課税をされてしまうので、もう経営がもたないという声があります。そういう病院をしっかりと支えて、被災地の皆様が医療の支援を確保していただけるようにするということまで、この法案は目的にしております。

吉野委員 そこが一番大事で、医療施設があるにもかかわらず、やはり経営的に成り立たないから撤退してしまうということのないように、そこは、政府も、立法者の意思を体して、経営的に成り立たない医療施設であっても、例えば広野とか楢葉とか川内村にはきちんと、経営を維持できるような、そんな支援をしろというのがこの法律の目的なものですから、大臣、この点についていかがでしょうか。

平野(達)国務大臣 委員が特に後段で触れられた例えば双葉郡もこれから帰還の作業に入ってまいりますけれども、その場合に、医療のサービスの確保、どのように提供するかということは必須の課題でございます。

 今の委員の趣旨、それから今回の立法者の意思を尊重して、適切にしっかり対応してまいりたいというふうに思っております。

吉野委員 時間も参りましたので、本当にありがとうございます。皆さんがこの法律をつくってくれたことに感謝を申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

古賀委員長 次に、高木美智代君。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 まず初めに、本法案をお取りまとめになられた関係者の皆様に心から御礼を申し上げるものでございます。

 先ほど来、プログラム法というお話がございました。それをどのように実効性を持たせていくのか、理念法で終わらせずに、今全国の被災していらっしゃる方たちが期待をしていらっしゃるような、そういう法律に磨き上げていくか、私は、この質疑はまだまだ必要であると思っております。きょうは、そのために何点か質問をさせていただきます。

 持ち時間が短いもので、大変恐縮ですが、簡潔な答弁をいただければありがたいと思っております。

 まず、参議院で先議をされまして、第十三条第二項の健康調査につきましては、福島復興再生特別措置法と比較をしますと、一つは、国の責任で県外の方にも同様の健康調査が行われるべき、また二つ目に、少なくとも子供に対しては生涯にわたって調査が行われるよう国が財政措置を行うべき、こうしたことが明確になったと認識をしております。

 また、現在、県の自治事務で行われています福島県民健康管理調査につきましても、実施主体の変更を検討する必要性が答弁されているようでございますが、この理念法を実施法として一つ一つ確立していかなければならないと考えます。

 まず、提案者にお伺いいたします。

 今後の進め方につきまして、どのようにすべきとお考えなのか、見解を求めます。

加藤(修)参議院議員 今回の法案作成の過程におきまして、提案者といたしましては、健康調査は国の責任をさらに明確にすべきと考えているところであります。

 どのようにして健康調査をより確実に行っていくかを話し合うに当たりまして、当初の野党案であります子ども・妊婦保護法案とセットにいたしまして、実は野党六党は、平成二十三年東京電力原子力事故に係る健康調査等事業の実施等に関する法律案、これを参議院に既に提出しております。このいわゆる健康調査等法案は、健康調査等事業を法定受託事務として実施するものでございますが、現時点においては一つの実施法案として示されているところであり、たたき台として国会で御審議をいただくことによりまして、福島の方あるいは被災者の方、何よりも子供の健康を守れるよう取り組みを進めていただきたい、このように考えている次第でございます。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 重ねてお伺いいたします。

 私も、昨年の七月からですが、我が党は県の担当を決めまして、福島に月二回、今もずっと通わせていただいておりまして、いただいた御要望の実現、一つ一つともかく闘わせていただき、お返事をさせていただいております。

 そこで、福島の特措法のときもそうでしたが、やはり国の責任を法律で明確にしましても、誰が責任を持ってやるのか、これをはっきりいたしませんと、どうしても国というのは、恐縮ですが、譲って譲って、誰かがやるだろうというそのすき間にいろいろなものを落とし込んでしまうという傾向性もあります。

 そこで、この法文の中に主務官庁それから主務大臣が明記されていないという、この理由は何かおありなんでしょうか。被災者生活支援等施策の具体的な推進に当たりましては、復興庁、文科省、厚生労働省等々、多くの関係省庁が関係しております。また、この施策をどこの省庁が中心となって進めること、定めることを想定していらっしゃるのか、見解を伺いたいと思います。

 こういいますのは、やはり施策の責任主体となる主務官庁がはっきりしませんと、法律案でさまざまな、基本方針の策定も書かれていますし、それに基づいた施策実施に至るまでに実効性が弱まってしまうのではないかという懸念があるからでございます。提案者に答弁を求めます。

加藤(修)参議院議員 お答えいたします。

 この法案において、主務官庁、主務大臣を明記しなかった理由ですが、まず、政府全体で取り組んでいただきたい、そういう思いが一つはございます。また、法案に規定している施策は多岐にわたっておりますものの、個々の施策の内容から所管する官庁や中心となる省庁は明らかになるため、特に主務官庁を明記しなくても足りる、このように考えた次第であります。

 もっとも、基本方針については、復興庁が、東日本大震災復興基本法第二条の基本理念にのっとり、主体的かつ一体的に行うべき東日本大震災からの復興に関する行政事務の円滑かつ迅速な遂行を図ること、これを任務としておりますし、中心的な役割を果たしていただきたい、このように考えております。

 また、この法案に規定しました施策の重要性からすれば、実効性が弱まることがあってはならないと考えておりますし、そのためにも、この法案が成立した暁には、具体的な措置が関係省庁によって適切に行われることになるか国会がやはりチェックをしていかなければいけない、また、政府へ働きかけを行っていくことが極めて重要である、このように考えているところでございます。

高木(美)委員 提案者にもう一回確認なんですが、基本方針をつくるということは、その後の実効性も、先ほど加藤議員がおっしゃったように、チェックをするという機能ももちろんあわせ持つわけでございまして、当然その中心官庁というのは私はやはり復興庁が担うべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。加藤議員にお伺いします、それでよろしいですか。

加藤(修)参議院議員 そのようでございます。

高木(美)委員 今の提案者からの答弁を受けまして、政府の見解を平野大臣に伺いたいと思います。

平野(達)国務大臣 東日本大震災からの復興に向けての基本方針、あるいは先般可決いただきました福島特別措置法に基づく基本方針、これは復興庁がまとめております。復興庁が、まとめる際には各省の施策を統合する、意見を聞いてそれを統合するということで基本方針をまとめております。

 今回の法律も、これが成立をするということであれば、私どもは、復興庁がまずこの基本方針を定めるということになるんだろうと想定をしております。

 これはもう言うまでもなく、あらゆる施策、国を挙げて、政府を挙げて取り組むということでありますから、各省が持っている施策を責任を持って実行してもらう、そしてその全体の調整は復興庁が担う、この構図は、津波、地震地域の復興、それから福島再生特別措置法でも変わりません。この法律もそういう形で運用していくのがよろしいかなというふうに思っております。

高木(美)委員 どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、基本理念について伺いたいと思います。

 第二条第四項におきまして、「被災者に対するいわれなき差別が生ずることのないよう、適切な配慮がなされなければならない。」とありますが、具体的に、提案者である加藤議員はどのようなことを想定されているのでしょうか。

加藤(修)参議院議員 御指摘のとおり、被災者に対する差別の防止が課題となっておりまして、この法案の施策を講ずる中でも、いわれなき差別が生じることのないよう配慮をされる必要があります。

 例えば、この法案では、支援対象地域からほかの地域に移動する被災者、あるいは避難指示区域から避難している被災者に対し、移動とか避難先の地域での生活を支援するための施策を講ずることとしておりまして、当該施策を講ずる上では、その移動、避難先の地域の住民、地方公共団体の協力が必要なわけであります。そういった協力を得るためには、いわれなき差別が生じることのない環境をつくっておく必要が当然ございます。こうした考え方を明確に示すため、第二条第四項を規定することとしました。

 この法案の各種の施策は、同項の基本理念に即したものとなるように講ぜられることとなりますが、特に第十八条では、放射線等について国民の理解を深めるための施策を講ずるものとしており、これは差別の防止に資するものであると考えております。例えば、学校教育における放射線に関する教育やあるいは人権教育の推進など、必要な教育及び啓発を行うことが考えられます。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 かつて私も、ウクライナからいらした学識者の方と懇談をしましたときに、風評被害とどのように闘ったか、このことを率直に伺いました。一つは、徹底した放射線教育です、正しい知識をともかく与えてもらいたい、もう一つは、マスコミの誤った報道に対して徹底して闘ったことです、この二つを述べていらっしゃいました。

 やはり、第二条のいわれなき差別を防止するためには放射線教育が不可欠であると思います。第十八条では、放射線に関する学校教育、社会教育を含めた施策についての規定が盛り込まれております。

 政府の取り組みの現状と今後の対応につきまして、きょうは平野文科大臣にもお越しいただきました。大変短時間で恐縮ですが、簡潔な答弁を求めます。また、環境省からも副大臣にお越しいただいておりまして、簡潔な答弁を求めたいと思います。

平野(博)国務大臣 今、高木先生からお話がございましたが、特にそういう人権問題、差別、こういうことが起こらないようにするためにも、しっかりとした正しい認識を持ってもらう必要がある、こういう観点から、放射線教育に関する現実は今どうなっているんだ、こういう御質問だと理解をいたします。

 放射線に関して差別を受けることはあってはならない、こういうことで、児童生徒を初め国民全体が放射線について正しい知識を持つことが極めて重要でございます。

 文科省としましては、放射線に関する教育については、新しい学校学習指導要領の理科において、放射線の性質と利用について新たに示し、全国の学校で平成二十三年度から指導をさせていただいているところでございます。また、文科省として、例えば放射線について正確な知識を学ぶための小中高等学校における児童生徒用の副読本を作成し、配付をしてございます。基礎知識のみならず、放射線等の人体への影響、放射線や放射性物質から身を守る方法などについて学ぶことができるようにいたしているところでございます。

 さらに、教育委員会等に対し、被災した児童生徒を受け入れる学校において、当該児童生徒に対する心のケアや当該児童生徒を温かく迎えるための指導上の工夫、保護者、地域住民の方に対する説明などが適切に行われるよう、いじめの問題などを許さないように、問題を生じさせないように要請をいたしているところでございます。

横光副大臣 お答えをいたします。

 この法案の十八条に示されております、放射線が人の健康に与える影響等ということでございますが、これは、政府としては、もともと大変重要であると考えておりました。

 今般の原発事故によって、原子力被災者初め多くの国民が健康不安を感じておりますし、こういった健康不安への対策を確実にまた計画的に講じていかなければなりません。それを目的といたしまして、環境省を中心としまして、細野環境大臣を議長として、関係省庁の皆様方の御協力をいただきながら、原子力被災者等の健康不安対策調整会議なるものを設置いたしました。そして、そこにおきまして、去る五月三十一日に、健康不安対策に関するアクションプランを決定したところでございます。

 このアクションプランの重点施策として四つ掲げております。関係者の連携、共通理解の醸成、これがまず第一でございます。そして、放射線による健康影響等に係る人材育成、国民とのコミュニケーション、これは非常に重要であると思っておりますし、これが二番目。そして、放射線影響等に係る拠点等の整備、連携の強化、さらには国際的な連携の強化、この四つを掲げておりまして、担当する関係省庁、文科省や厚労省や復興庁やさまざまな省庁が当面の取り組みについて速やかに着手することといたしております。

 具体的には、まず統一的な基礎資料の作成、これが第一、そしてまた保健、医療あるいは福祉関係者や教育関係者への研修の実施などを行うことといたしておりまして、こうした取り組みを確実かつ計画的に実行することによって、原子力被災者を含め、国民全体に対し放射線による健康影響等についての正しい理解を深めてまいりたい、このように考えております。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 私も、放射線教育、そしてまた政府を挙げてのこうしたいわれなき差別が生じることのないような取り組み、かねてより求めてまいりまして、今このように進められていることを高く評価したいと思います。その上で、さらに実効性を持たせられますように、速やかなお取り組みをお願い申し上げるものでございます。

 この後、済みません、簡潔に加藤議員にお伺いいたします。

 まず、この支援対象地域につきましては、ここをどのように設定していくか、ここがこの法律のかなめになっております。この地域、そして地域外の方、またそこへ帰還される方といった構造になっておりまして、そうしますと、どの省庁がどのような基準で、またプロセスを経て指定をしていくのか、それが法文には書かれておりませんけれども、その理由をどのようにお考えなのか。また、この指定に当たりましてはどこかの省庁の省令で定めていくのか、また、指定に当たりましては関係地方公共団体の長からの意見聴取などの必要はないのか、簡潔な答弁を求めます。

加藤(修)参議院議員 この法案の支援対象地域の設定には、広過ぎず狭過ぎない適切な範囲を地域の実情を踏まえて決定していく必要がございます。

 また、この法案は、今般の事故に係る放射性物質による放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていないという認識のもとにおきまして、いわゆる支援対象地域の設定の基準も、多様な事情を総合的に勘案して決めていく必要があると考えられます。そのために、具体的な基準をどうするかにつきましては、政府で定める基本方針を踏まえまして、政府全体の英知を集め、適切に定められるものと考えております。

 なお、提案者といたしましては、御指摘のように、いわゆる被災者となり得る住民等の意見を聞くほか、関係地方公共団体の長から意見を聞くなどにより、国民の理解が得られるような基準を設定することが重要だと考えております。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 基本方針につきまして、二問まとめてお伺いしたいと思います。

 一つは、基本方針につきまして、閣議の決定を求める必要があると考えますが、いかがでしょうか。その方が基本方針に係る国の責任を明確にすることができると思います。

 それからもう一つは、作成するに当たりまして、関係行政機関の長と協議する必要があるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

加藤(修)参議院議員 提案者といたしましては、内閣としての意思決定と責任をやはり明確にすべきである、そういうふうに考えておりますので、基本方針については閣議決定を経ることが望ましい、このように考えております。

 また、後者、二番目でございますが、基本方針の取りまとめについては復興庁で行うことを想定しておりますが、基本方針に定める事項は非常に多岐にわたり、複数の行政機関の所掌事務に関する事項が多いことから、基本方針の作成及び変更に当たっては、御指摘のように必要に応じて関係行政機関の間で調整が行われる、このように考えている次第であります。

高木(美)委員 ただいまの質問につきまして、平野大臣からも答弁を求めたいと思います。

 基本方針についての閣議決定、また作成に当たっての関係行政機関の長との連携でございます。

平野(達)国務大臣 この法案の趣旨、それから法案提出者の意向、そしてこの委員会での議論等々を踏まえまして、きちんと対応したいというふうに思います。

高木(美)委員 最後に、経産省の北神政務官に伺います。

 本法案では、東電に対しまして費用についての求償規定は、国はできると書いてありますが、東電に対する協力措置規定はありません。汚染状況の調査とか、また除染の実施などに当たりまして当然協力が必要になると思いますが、この法律が成立したときには、政府はそのようにきちっとお取り組みになられるのでしょうか。

北神大臣政務官 結論から言えば、しっかり協力を要請していきたいというふうに思っています。

 これは、閣法で放射性物質汚染対処特別措置法というのがありまして、その第五条に、東電みずから誠意を持って汚染状況の調査とか除染をするように規定されておりますし、政府や地方公共団体の協力にも応じなければいけないと義務づけてありますので、しっかりそれで対応していきたいというふうに思っています。

高木(美)委員 ありがとうございました。

 以上で終わらせていただきます。

古賀委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、法案をまとめていただきました関係議員の皆さんに心から感謝と敬意を申し上げたいと思います。本当に、立法者の意思が現実のものとなって生きるように、その気持ちで質問をしたいと思いますし、今後も取り組んでいきたい、このように思っております。

 最初の質問は、先ほど高木委員の質問の中でお答えになっていたのかと思うんですけれども、改めて確認をしたいと思います。

 といいますのは、本法案の主務大臣が誰かということです。明記をしていないわけですね。そして、中身が、いろいろなものが盛り込まれておりますので、関係省庁はいろいろあるだろう。しかし、責任のなすりつけ合いになっては困りますので、最終的には、先ほどの答弁からいうと、復興大臣ということでよろしいのかということを改めてまず提案者に確認いたします。

金子(恵)参議院議員 高橋千鶴子委員には、私と同じ東北の出身ということでございますけれども、被災者の皆様に寄り添った形で活動していただいておりますことに感謝申し上げたいと思います。

 今の質問にお答えいたします。

 まず、基本方針の案の取りまとめにつきましては復興庁で行い、個別の施策につきましては当該施策を所掌する省庁が所管することを考えております。

 例えば、六条に定める放射性物質による汚染の状況についての調査等につきましては文部科学省が、そして七条に定める除染の継続的かつ迅速な実施につきましては環境省が、第九条そして十条に定める住居の確保に関する施策につきましては国土交通省が、同じく九条、十条に定める就業の支援に関する施策につきましては厚生労働省が、そして二条のいわれなき差別が生じないための配慮や第十八条に定める放射線と被災者生活支援施策に関する国民の理解を深める施策については文部科学省や法務省人権擁護局が所管するといったことを考えております。

 なお、提案者としましては、この法案が成立した暁には、各省庁において具体的な施策が適切に行われるよう国会がしっかりとチェックをしていくことにより、法律の実効性を高めていくことが重要であるというふうに考えているところでございます。

高橋(千)委員 まず、基本方針は復興庁がまとめるということは確認をしたわけですけれども、諸施策を関係省庁が担当するのはいいんです。ただ、最終的な責任、つまり、基本方針がその後いろいろな省庁にまたがってどうなっていくのかということをチェックしたり進言したりしなければならない。復興庁をつくるときに、復興大臣というのはそういう位置づけで、大臣と横並びではないという位置づけでつくったはずであります。

 そういうことも含めまして、平野大臣に確認をしたいと思います。

平野(達)国務大臣 法案が成立いたしましたら、今委員の言った方向で、ぜひ復興庁、役割を果たしたいというふうに思います。

高橋(千)委員 確認をさせていただきました。ただし、復興庁は十年の期限がついておりますので、終わった後も引き継がれていくのだということは確認をしたいなと思います。

 次に伺いたいのは、本法案で言う被災者とはどのような人をいうのかということであります。

 先ほど吉野委員から、福島という言葉をあえて入れなかったんだということがありました。私は、その心情はよく理解できます。そして、参議院の議論を聞いておりますと、避難の権利ですとか帰還をしたい人たちの支援ですとか、あるいはいわれなき差別の問題、まさに福島の皆さんに寄り添ってつくっているんだなというふうに思いました。

 ただ、この法案そのものは、やはり、出発点からいいますと、子供だけでなく大人もそうである、あるいは福島県だけではなく福島県の外の方も想定しているというふうに思いますけれども、確認をさせてください。

金子(恵)参議院議員 被災者につきましては、法案の第一条において「一定の基準以上の放射線量が計測される地域に居住し、又は居住していた者及び政府による避難に係る指示により避難を余儀なくされている者並びにこれらの者に準ずる者」をいうこととされております。

 この被災者の範囲ですが、これまで施策が講ぜられてきた避難を余儀なくされた者よりも大幅に拡大することとなります。福島県外に居住している者や大人であっても、一定の基準以上の放射線量が計測される地域に居住している、または居住していたことがあれば、被災者となっていくこととなります。

 また、移動や帰還に係る施策につきましては、福島県の被災者のみを想定しているのではなく、支援対象地域から移動する者または支援対象地域に帰還する者を対象とするため、福島県以外の地域であっても、支援対象地域に設定されていれば、移動や帰還に係る施策が講ぜられることとなります。

 差別につきましても、福島県の被災者だけではなく、福島県外の放射線量が高い地域に居住し、または居住していた被災者に対する差別の恐れがあります。そのため、福島県に限らず、広く支援対象地域に居住している方々、または居住していた方々に対する差別が生ずることのないような環境をつくっていく必要があるというふうに思っております。

高橋(千)委員 ありがとうございました。確認ができたと思います。

 今の一定の基準以上というのは、では、どこから基準になるのというのが非常にひっかかるところなんですけれども、これは既に参議院でも議論をしておりますので、きょうはあえて質問をしないということで、広く対象とするということで知恵を出し合っていきたいと思います。

 そこで、第三条の原子力政策を推進してきた国の責務、これが明記をされております。なぜ原子力事業者の責任については明記をされないのでしょうか。

金子(恵)参議院議員 原子力事業者の責任につきましては、原子力損害の賠償に関する法律第三条第一項において「原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。」とされているところであります。原子力事業者が第一義的に無過失責任を負うこととなっております。この法案ではこのような理解を前提としておりまして、原子力事業者が責任を負うことは当然のこととして規定しておりません。

 なお、今回の原子力事故につきましては、健康上の不安を抱え、生活上の負担を強いられている方々の中には、東京電力による損害賠償の対象となるかどうか必ずしも明確でない方々もおいででございます。また、損害賠償の対象となる方であっても、すぐに支払い等が行われず、現に生活上の負担等を強いられている場合があります。この法案は、このような状況の中で、まずは国として国民の生命、身体及び財産を保護する必要があるとの考えに立って、必要な施策を講ずべきであることを定めております。

 なお、国の施策の対象となった被害が結果として東京電力に損害賠償を請求し得るものであった場合には、後に適切に求償が行われるべきであり、その旨は第十九条に規定しているところであります。

高橋(千)委員 今の説明は、原賠法に書かれているから当然のことなんだという説明だったかと思います。

 福島法の最初の案が国の責任さえも入っておりませんでした、政府の案が。それに対して、幾ら何でもこれはひどいじゃないかということで意見を上げまして、最終的には同じような書きぶりで国の責任ということが明記をされたわけであります。ですから、私は、当然のことだというのをあえて書くことが大事なのではないかということをあえて言わせていただきます。

 最初に説明をされた二つ目の質問のところで、決して県内だけではなく、県外の人も含めて移動や帰還の問題がある、あるいはいわれなき差別というのはあるんだというお話がありました。

 本当にそうなんだけれども、現実はあらゆる線に線引きで、福島の皆さんや、あるいは福島のすぐお隣の皆さんが苦しい思いをしています。そのときに、なぜ自分は賠償されないのに川一つ挟んだ向こうはされるんだとか、そういう県民同士の思いがありますよね。でも、それを本当に乗り越えるためには、責任はその線引きをした人たちではなくて国であり東電なんだ、そこが本当に据わっているからこそ、福島県全員に対して謝罪をせよ、あるいは償いをせよということでこれまでオール福島の世論がつくられてきたのではなかったか。私は、そういう中での議員立法ですので、もう一声あってもよかったかなということを一つ意見として上げていきたいと思います。

 それで、第十三条に、健康影響調査あるいは医療の提供について明記をされております。また、先ほどの説明の中で、立証責任は国にあるんだという御説明もあったかと思います。ここで大人に対してはなかなか読み込めないところがあるんですけれども、どのように考えていらっしゃるでしょうか。

金子(恵)参議院議員 健康調査と医療の提供について、成人についてはどのように考えるか、大人についてはどのように考えるかというおただしでございますが、健康調査につきましては、低線量の放射線が人の健康に与える影響が科学的に十分に解明されていないということから、支援対象地域に居住し、または居住していた方、避難指示区域から避難している方々、そして、今後健康に影響が出てしまうのではないか、そういう不安を抱えていらっしゃる方々のためにしっかりと対策をしなくてはいけないというふうに思っております。

 そのため、定期的に健康状態を把握して健康管理を行うことでこのような不安を解消することが求められておりまして、また、万が一健康に影響が生じた場合にも、早期発見、早期治療ができるようにする必要があります。第十三条の第二項の前段は、このような観点から、大人か子供かを問わず、定期的な健康診断など健康への影響に関する調査について国が必要な施策を講ずることを規定しているところでございます。

 医療の提供につきましては、十三条第三項に定める医療費の減免措置を受け得る者は被災者たる子供及び妊婦としており、大人については明記しておりません。しかしながら、十三条第三項ではその他被災者への医療の提供に係る必要な施策を規定しておりまして、この規定に基づき具体的にどのような施策が講じられるべきかは、疾病の状況のほか、被災者の意見、また国民の理解が得られる形になっているかといった視点も踏まえて検討されることとなります。その検討の結果、大人についても医療費を減免する施策が講じられることもあり得るというふうに考えているところでございます。

 福島県の双葉地方、警戒区域等の自治体から、医療費負担減免の対象を大人も含めた被災者全てにすべきというような要望も出されているところではございますが、今後、しっかりとした検討をしていく必要があるというふうに考えています。

高橋(千)委員 ありがとうございます。その他のところで読んでいけるのだという御答弁だったかと思います。

 本当はこの医療の問題をもう少し質問したいと思ったんですけれども、今後、規制庁ができれば担当がそちらになるんだということで、何か今、端境期で、どうもまた責任がはっきりしなくなっちゃうなと思いまして、要望だけ平野大臣に受け取っていただきたいと思います。

 子供の場合は、今、福島県の放射線医学県民健康管理センターが警戒区域等の十八歳未満の子供の甲状腺検査をずっとやっているわけですが、五・一ミリ以上の結節や二十・一ミリ以上の嚢胞を認めたものが百八十六人、二次検査となりました。ただ、小さなしこりや嚢胞があるとされた子供が一万三千四百六十人、三五・三%にも上るんですね。だけれども、二次検査の必要はない、しこりはあるけれども検査の必要はないという言葉に、母親たちは本当に衝撃を受けております。これではどうしていいのかわからないと。

 このことは通販雑誌にも載ったわけですけれども、青森に避難されてきた福島県の親御さんが、自分の子供がどうなのかを知りたいということで、本当にこれでは不安に答えてもらえないということを言っておりましたので、説明も含めて、また継続的な検査をしていくことが必要なんだということをぜひお願いしたいと思います。

 そして、大人の場合は、今やられているのは本当に部分的な、そして外部被曝だけでありまして、九六・四%の方が五ミリシーベルト未満とあったわけですが、二十五ミリの方もいたわけで、自分たちの党の議員さんも、そういう通知をもらって衝撃を受けているということです。ただし、それは外部被曝だけですので、内部被曝自体も全くわかっていない。そういう中で、不安だけが広がっている。では、自分たちはなぜ診てくれないのか。大人は当然、行動範囲が広いですから、そこはちゃんとフォローしていかなければだめなんだということを要望しておきたいと思います。

 さて、きょうは北神政務官にも来ていただいておりますので、先ほどの関連なんですが、東電の関係で一言、簡潔にお願いいたします。

 今、宮城県などで要望が上がっているんですけれども、東電の賠償の当事者がどんなことを言っているか。原子力損害賠償支援機構を通して国民の税金による支援を今東電が受けているので、中間指針からはみ出す賠償はできない、こう言っているそうであります。これは何か逆さまじゃないか。

 今、支援機構には既に国民の税金五兆円の交付国債が入っています。それ自体、我々大問題だと思うんですが、入っているから賠償できない、それは逆じゃないですか。本当に、中間指針自体がここに書いている以外もきちんとと言っているわけですから、そのようなことは絶対言わせない、そして、しっかりと応えていくというふうな指導をしていただくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

北神大臣政務官 仮に、東電の担当者がそう言った事実があるのであれば、それは言語道断の話でありまして、厳しく指導しなければいけないというふうに思っています。

 というのは、中間指針というのは、御案内のとおり、賠償すべき損害の中で類型化が可能なものについて類型化しているだけであって、それをはみ出ているものであっても、個々の被害者の状況をちゃんと踏まえて相当因果関係範囲内で賠償するというのが我々の今までの運用でございますし、今年三月に中間指針の追補というものも公表しましたが、これにもはっきりと明記して、中間指針に載っていないものについても相当因果関係のものについてはちゃんと賠償すべきだということですので、我々は、そこは運用面でも中間指針の追補でもはっきりとそういうふうに考えておりますし、東京電力にもそのように指導をしていきたいというふうに思っています。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 中間指針を直すのが一番いいんです。それが私たちの要望です。宮城県をいわゆる風評被害の中になぜ入れないのかというのが一番の要望ですので、それは言っておきたいと思います。

 しかし、現場でこのようなことは絶対言わせない。お隣の丸森町は、本当に川を挟んですぐ隣が福島であるにもかかわらず、二十万円の見舞金を出すんだからそれで打ち切りだということを言って歩いているとか、そういうことがさまざま聞こえてくるんですね。それが皆さんの心を傷つけているということで、お願いしたいと思います。

 最後に、平野大臣に伺います。

 大臣、六月十五日の記者会見、記者さんから、今議論をしている、議員提案の子ども・被災者支援法案について質問をされたのに対して、大臣はこのように答えています。「条文を読む限り、現在行っている施策と大きな乖離があるとは考えていません。」つまり、違わないと。新しい法律をつくっても何も違わないというのであれば、これほど精力的な話し合いをして法案をつくったものを無視したことになっちゃうわけですね。

 さっき主務大臣は誰ですかという質問をいたしました。何か、第三者的な答弁をしていたようでありますが、そのような言い分はやはりちょっと適切ではないと思いますし、御自身の責任と決意を改めて約束していただきたいと思います。

平野(達)国務大臣 福島の原発事故に関連しましては、健康管理を含め、あるいはこれから帰還者への支援を含め、それから賠償を含め、政府は今いろいろな観点から支援もしくはやらなければならないことを実施しているということです。

 先般申し上げたのは、項目を見る限り、大体、政府については各項目についての一応の施策はそろっている。しかし、きょうの議論にもございましたけれども、例えば医療費をどうするか等々の問題、これはまださまざまな議論がございます。こういった議論につきましては、今回の委員会での議論も踏まえまして、また、何といっても、引き続き福島県の状況を踏まえながら、そしてまた立法の趣旨を踏まえながら、是正すべきは是正する、追加すべきは追加する、こういう姿勢で臨んでいきたいというふうに思っております。

高橋(千)委員 しっかりとお願いいたします。

 またこのような機会を設けていただくよう委員長にお願いをいたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。

古賀委員長 次に、斎藤やすのり君。

斎藤(や)委員 新党きづなの斎藤やすのりと申します。

 まず、今回、発議者の皆様におかれましては、政党を超えて、そして、被災地選出の議員だけではなく、谷岡先生もいらっしゃいますけれども、地域を超えてこの法案をつくられたことについて心から敬意と感謝を申し上げたいというふうに思います。

 本当にこの一年半、私も被災地の宮城県ですから、被災地の小さな子供を持つお母さん方は大変な心配と不安を抱えながら生活したわけでございます。その不安が少しでもこの法案をもって和らいでくれればいいなというふうに心から思っております。

 今回の法案は三つのポイントがあると思うんです。福島県以外の避難されている方が支援を受ける権利を得たということ、それから、土地を離れても、そしてそこにいても、それはそれぞれ自分で決めてください、いずれにせよ、きちんと支援しますからねという被災者ニーズに弾力的に応えているということ。それから、子供の健康を一生見ますよ、見守りますよ、そういう思いがこもった、すごく優しい気持ちを持った法案なんじゃないかなというふうに私は思います。まさに被災者の声を受けてできた、被災者ニーズをきちんと把握した法案だと思います。

 ただ、きょうのこの委員会の中でもずっと言われているように、これを理念だけで終わらせてはいけないわけです。きれいごとだけで終わらせてはいけなくて、少しでも苦しんでいる方を楽にさせてあげる、そういう実効性のあるものに変えなければいけないというふうに思います。

 その大きなポイントになるというのが第八条の支援対象地域についてだと思うんですが、発議者の荒井議員に聞きます。支援対象地域の認定基準というのは、誰がどうやって決めるんでしょうか。

荒井参議院議員 斎藤先生の三点のポイント、全く同感でございます。そして、それをまた形骸化させてはならないということがポイントですが、今回の与野党の協議、全党が入っての協議の中で、やはりなかなか政府の考え方を含めて難しいところがありました。まさにそういうところの御質問だろうというふうに思います。

 そのポイントですが、支援対象地域をどうするか、この基準でございますけれども、今回の原子力発電所の事故というものは、放射性物質、この放射線が人の健康に及ぼす危険についていまだ科学的に十分に解明されていないところにさまざまな問題も惹起しているわけです。普通、我々福島に生活していますと、低線量、長期被曝、こういう言葉がもう毎日のように使われますけれども、こういういまだに科学的に十分解明されていない状況の中で、どのように、被災されている福島県外の方も含めてこの実態をきちんと捉えて、そして心を込めて手を届かせていくかということになるわけです。

 では、どういう地域か、支援対象地域はどこであるかということになりますと、これも与野党で大変協議のあったところでございますが、この基準につきましては、政府で定める基本方針を踏まえて、適切に定めて対応していく、こういうことにいたしました。これは谷岡発議者初め我々も言っておるわけでございますが、その基準というものを含めまして、実態に合うように、我々も、言葉としていろいろな言葉をつくっておりますけれども、議連とか協議会をつくって、発議者を中心に全党、これらの気持ちをこうした基準の中に盛り込んでいくということが大切であろう、こういうことで、監督、チェックもしていきたいと思います。

 また、一方では、被災者の皆さんからの生の声、あるいは自治体の御意見も十分に聞き、また国民の皆さんの御理解も一方では得なくてはならない。こういうこともありますので、そういったものを勘案しながら、これは政府において決めていきますが、先ほど申しましたように、皆さんと国会でチェックし、また、発議者は議連的なものでまたきちんと実態に合うようにしていきたい、こういう考えでございます。

    〔委員長退席、近藤(昭)委員長代理着席〕

斎藤(や)委員 データが少ないからこそ、やはり最悪の事態というか、危険を念頭にしたことを対策としてとるのがリスクをヘッジする一番の方法だというふうに思いますので、そこをしっかりと考えなければいけません。

 私がすごく心配しているのは、こういった基準を例えば復興庁とか環境省がつくりますと、帰宅の基準が二十ミリシーベルト以下ですから、二十ミリシーベルトという基準になってしまうんじゃないか、そういう心配も私はしております。

 低線量被曝の蓄積データは、皆さん御存じのとおり、非常に少ないです。年間百ミリシーベルト以下は安全だと言う人がいます。しかし、二〇〇五年に米国の科学アカデミーによってつくられたBEIR委員会では、被曝のリスクは低線量でも直線的に存在する閾値はないという報告をしています。低線量でも、晩発性のがんを初め、病気になるリスクを大いに秘めている。

 国の危機管理は、先ほども言いましたけれども、最悪の事態を想定すること、やはりこれを念頭に基準づくりをするべきだというふうに私は思います。特に、全世代平均の四倍も放射能の感受性の強い赤ちゃん、子供、こういった子供たちを二十ミリシーベルトの高線量の場所に住ませるというのは、私はもってのほかだというふうに思っておりますし、この支援対象地域にしても、やはり年間一ミリシーベルト以上のところに設定すべきだと考えます。そんなふうにしたらお金は幾らあっても足りないよというのが官庁の理屈かもしれませんけれども、お金じゃないんです。やはり日本の未来を支える子供たちを守るということを前提に、私は制度設計をしていただきたいというふうに思います。

 それから、今回の医療の提供の対象が子供と妊婦だけになっています。これはなぜ対象がこういうふうになっているのかというのをお伺いしたいと思います。

荒井参議院議員 だけではございません。十三条三項には、「その他被災者への医療の提供に係る必要な施策」とも規定しております。

 子供や妊婦以外の被災者についてはどうかという点で今お答えをさせていただいているわけでございますが、この規定に基づいて具体的にどのような施策が講ぜられることが実態に合っているか、まさに先生がおっしゃっているそのとおりなんです。そういうふさわしいものについて、負傷や疾病の状況のほか、被災者の意見、地元自治体の御意見、また国民の理解をいただきながら、いろいろな形で検討されていく結果、子供や妊婦以外の被災者についても、先ほど来から発議者が答えておりますが、医療費を減免する施策が講ぜられるケースもあり得る、このように考えております。

 しかし、今回は、明言したのは、特に胎児を含む子供については一番放射線による健康被害、影響を受けやすい、先生がおっしゃったとおりで、我々も認識しておりますので、ここについての、妊婦が医療を受けられるようにし、子供が医療を受けやすくするようにすることで、健康への不安を解消するとともに子供たちの健康管理を行う、そして子供たちの健康被害を未然に防止する、こういったことを考えて、十三条三項の冒頭のところに被災者たる子供及び妊婦について医療費の自己負担を減免するために国が必要な施策を講ずることを明示した、こういうことでございます。

 先生の御意見は、けさほど福島県の双葉地方から緊急要望ということで出た御意見でございまして、そういったことも十分勘案して、政府ともども、国の責任は国会の責任でありますから、この法律を生かしていくべきだろう、このように思います。

斎藤(や)委員 ぜひよろしくお願いします。

 特に、放射能の疾病というのは、チェルノブイリのデータでもあったように、五年後、特に十年後になってから飛躍的にふえているというのがあります。未然に防ぐということもありますけれども、やはり大人になってからの発症ということも十分考えられると思いますので、ぜひこの対象というものをもう少し広げるように考えていただければというふうに思います。

 この法案というのは、やはり基準をどう決めるかということが重要なわけなんですけれども、被曝と疾病の関係をどうやって立証するのかということも非常に重要になってまいります。立証責任は被災者が背負うのか、どうやって立証するのかというのを端的に答えていただけないでしょうか。

荒井参議院議員 端的という御指摘が非常に難しゅうございます。

 発議者の一人として私は、この与野党協議で、もう全ての国会議員の気持ちだと思います、明らかにこの放射線災害、原発災害と無関係である、こういうふうに言えない限りは、明らかに言えない限りは、これはやはり救済してしかるべきです。放射線被害というのは心の被害でもあります。まだ十分に解明されていないところもあるわけですから、それを断じてしまって、心に、体に大変な負担を負っていくということは忍びがたいことですから、大勢の方を救済していこうという国会全体の、きょうお集まりの各党の皆さんのその気持ちでできている法案だということを、まず発議者の一人として私は申し上げておきたいと思います。

 その上で、ガイドラインを定めませんと、お医者さんに診に来てもらったときに、これは関係する、関係しないということをお医者さん自身も判断できない場合もあります。ガイドラインをつくっていくということが一つのやり方ではないか、このように考えております。そのときに、今そのガイドラインをつくるときに、そういった各党の気持ちがきちんと反映されるようにしていくということが何よりも大切なことだろうと思っているわけです。

    〔近藤(昭)委員長代理退席、委員長着席〕

斎藤(や)委員 どうもありがとうございます。

 そのガイドラインを役所がつくりますと、極めて厳しい基準になって、今までも水俣病とかそれから被爆者援護法の仕組みがありましたが、それで苦しんだ方も大変多いです。荒井先生が今おっしゃったように、やはり政治主導で、少しでも苦しい人を助けるんだという思いを持って制度設計に当たらなければいけないというふうに私は思っております。

谷岡参議院議員 斎藤委員にお答えいたします。

 この問題に関しましては、私たちは三つの方向で考えております。

 それは、被爆者援護法というような形で指定されているさまざまな病気、疾病と障害というようなものがまずございます。これはもちろんカバーされます。

 それから次に、方向といたしまして、放射線だけではなくて、事故による生活の激変、例えば運動不足ですとか、さまざまなものがあろうかと思いますけれども、そういうことが因果関係となって出ている可能性が高いもの。例えば、骨密度が下がるとかストレスとか、いろいろなこと、肥満等も考えられると思いますが、そういう生活習慣によるものが次に考えられます。

 そして三つ目には、この事故を機にして悪化したような、重篤化したようなもの、これは認知症ですとか発達障害等で一番多く見られることなんですけれども、こういうものが考えられます。

 この三方向というものを、できるだけ広く、可能な限り広くとって救済したいというのが私たちの思いでございまして、ガイドラインはその上に立ってできるものと考えております。

斎藤(や)委員 ありがとうございます。

 その体力不足、運動不足に関してなんですけれども、少し話がかわりますけれども、今回、支援対象地域の子供たちは、国の援助で屋外運動の機会の提供などを受けることができる、今、谷岡先生がおっしゃったことですけれども。今回は原子力事故の被災者が対象の法案なんですが、実は、宮城県では仮設住宅に住んでいる子供たちの運動不足が大変今顕著になっておりまして、女川町では、子供の平均よりも一日大体二千歩、歩く量が少ないというデータがありますし、それから福島県の須賀川では、ある仮設住宅では十人中六人が糖尿病だったというようなデータも出てきております。

 この対策について、国はどう考えておられるんでしょうか。

高井政府参考人 お答え申し上げます。

 被災した子供の支援につきましては、平成二十三年度、昨年度の第一次及び第四次補正で、安心こども基金を積み増しております。その安心こども基金を活用することによって、御指摘の宮城県では、被災した子供が安全に安心して遊ぶことができる場を提供するNPO等を補助していると聞いているところでございます。また、宮城県下の市町村で災害復旧として児童館を整備する場合には施設整備費補助金を交付しているところでございまして、これらの施策を通じまして被災地の子供の支援をしてまいりたいと考えております。

斎藤(や)委員 結構運動不足が顕著になっていますので、早急にお願いいたします。

 私の住む宮城県では、放射能に不安を感じて、九州や沖縄に避難されている方がたくさんいます。比較的線量が低いのになぜと思われるかもしれませんが、政府の情報発信が少なかったということで、非常に不信感を持たれている。危険なものを安全だと言い続けてきた政治不信がベースになっています。この法案が被災者の不安を少しでも払拭できればというふうに心から願って、私の質問とかえさせていただきます。

 きょうはありがとうございました。

古賀委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 昨年の東日本大震災の中で生じた東京電力の福島第一原発事故から、もう一年以上が過ぎました。そして、今回、参議院の皆様の御尽力で、不安を抱える子供を初めとする被災者の皆さんへこうした支援のための立法がつくられたことを、私も心から感謝するものであります。

 そして同時に、実は、一年以上たちましたと申し上げたことの中で、未曽有の東京電力の事故がもたらした放射能の飛散というもの、飛び散った放射能というのは、私たちがこれまでの中で想像だにし得なかった広がりを持っていると思います。

 一点目、お伺いいたしますが、支援対象区域については、いろいろな委員からの御指摘、御質問もありましたけれども、単に空間線量等々だけで必ずしも把握されない、いわゆるホットスポット問題、あるいは、今は川や沼、湖の汚染状況も、全国に広がっていると言っても過言ではないと思います。

 提案者に伺いますが、一定線量といった場合には、そうした事故が実は非常に大きな広がりを持ったものであり、綿密な計測、空間線量にとどまらない計測が必要であるという御認識でありましょうか、お願いします。

谷岡参議院議員 阿部委員にお答えいたします。

 そのとおりであります。私どもは、ガンマ線を中心といたします空間線量ということはもちろん重要だとは思っておりますが、とりわけ、子供を含めて、成長期にある子たちの骨に入りますストロンチウムでありますとか、また肺に入りますと本当に大きな肺がん等の影響を及ぼすことになりますプルトニウムとか、そういうものも含めてもっと細かいメッシュで切っていく必要があると思っております。

 また、おっしゃいますように、特に河川また海を中心といたしまして、今、底魚と言われているようなもののレベルも上がってきております。これは、底土の土壌の汚染が大変厳しい状況にあるからだと思っておりまして、ここについてはより一層しっかりとしたモニタリングをやるとともに、それを国民に提供する義務があろうかというふうに思っております。

阿部委員 今のような立法者の趣旨を踏まえて、平野文部科学担当大臣にお伺いいたします。

 この法案では第六条に、放射性物質の種類ごとのきめ細やかなモニタリングということも規定してございます。これまで文科省が中心になりまして、さまざまなモニタリングの調整をなさってこられました。今度新たに規制庁が発足するに当たって、こうした体制のさらなる充実ということも含めて、お伝えになるべきこともおありになろうかと思いますが、その点についていかがでしょうか。

平野(博)国務大臣 阿部先生にはもうずっとこのモニタリングの問題について指摘を予算委員会等々でいただいております。

 今、現実に、モニタリングの実施状況ということで少し触れたいと思いますが、福島第一原発の事故に伴う放射線モニタリングということで、関係府省、福島県が連携して総合モニタリング計画を打ち出しておりまして、これに沿いまして、陸域、海域、食品、水環境など、抜け落ちのないよう、いろいろなモニタリングについて着実に進めてきたところでございます。

 具体的には、先ほどの議論もございました、モニタリングポスト、いわゆる空間線量の測定、土壌に含まれる核種ごとの放射性物質の分析、河川や海などの水、土に含まれる放射性物質の分析、食品、水道水に含まれる放射性物質のモニタリング等々については、関係府省や福島県と分担をして進めてまいりました。

 さらに、放射性物質の拡散、沈着、移行の状況を把握するための調査研究については、昨年六月から第一次調査を実施いたしております。梅雨前後の時期における森林、河川等の自然環境中の放射性物質の沈着状況等々を含めて、ことしの三月に報告書をまとめております。現在、冬季における自然環境中における第二次調査を取りまとめ中でございます。

 今後とも、関係府省、福島県等々を含めて、必要な放射線モニタリングを実施する、こういうことでございまして、今、規制庁に、法案を通していただきましたならば、支障のないようにしっかりと引き継ぎをする、このことによってモニタリングの充実強化に努めてまいりたい、かように思います。

阿部委員 ぜひ、そうお願いしたいと思います。

 実は、放射能はある県でとまるものでもありません。そして、三百キロ圏に飛散したと言われて、静岡のお茶でも問題になりましたけれども、それをも超えて、今度は水の流れでさまざまに拡散しておりますので、十分なモニタリング体制というのは今後こうした支援対象区域を決めていく際にも不可欠と思います。

 引き続いて、経済産業省の北神政務官に伺いますが、きょう、お手元の三枚のとじの中の、三ページ目にはチェルノブイリ法、そして一枚目にはこの間の推定年間被曝線量の推移ということで、今回、さまざまな指定におけます避難指示解除準備区域の策定に当たって、五十ミリ、二十ミリ、十ミリ、五ミリというようなおのおのの基準、特に二十ミリシーベルト以下は先ほどの避難指示解除準備区域となりました。

 しかしながら、三枚目のチェルノブイリ法で見ていただければわかりますように、チェルノブイリでは、五年たった時点ですが、五ミリシーベルト・パー・年間以上のところは移住の義務が課せられたところになっております。私は、今の二十ミリで解除をしていくという方針は、この減衰曲線に従いましてもまだまだ五ミリになるには年月がある、どんなに除染をされてもこれはなかなか厳しいと思われます。

 そこで、二十ミリで帰還がかなうというようなメッセージとして受け取られないような、ここはさらにもっと、実はチェルノブイリに学んで五ミリという線もこれからもっと一に近づけるわけですが、そうした安全の側に配慮した考え方をとっていただけるものと思いますが、いかがでしょう。

北神大臣政務官 先生がおっしゃっていることは、昨年の十二月二十六日に原子力災害対策本部で、年間の二十ミリシーベルトというものを基準にして、それで住民に帰還をしていただく準備地域とするということだと思います。

 チェルノブイリの話も御指摘がありましたが、一応この二十ミリシーベルトの考えというのは、決して素人議論で決めたことではなくて、国際放射線防護委員会、ICRPとか、国際原子力委員会、IAEAとか、こういった議論も踏まえておりますし、内閣官房の中に低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループというものを設けまして、これは国内外の有識者から成るものでありまして、この中の議論で、ほかの発がん要因によるリスクと比較して二十ミリシーベルトというのは十分低いものである、こういう評価もいただいております。こういう考え方でやらせていただいているということでございます。

阿部委員 それはもうのけぞってしまいますね。例えば二十ミリシーベルトで五年おられたら、実効線量はわかりませんけれども、概念的には百ミリシーベルトに五年でなってしまう、生涯を通じて百ミリシーベルトと一方で決めて、二十ミリシーベルトで帰れるよというのは、やはり何を大事にしているかというところが違ってくると私は思います。

 一ミリシーベルトに近づけていくというところ、それから除染の進捗状況もこれから見なければいけませんが、今の北神さんの御答弁では到底住民は納得し得ない、子供さんなんか抱えていたら帰れませんよ。本当に帰れる体制をどうつくるかであります。後ろからお手が挙がっていますが、時間の関係で指摘にとどめさせていただきたいと思います。

 引き続いて、提案者に伺いたいと思います。加藤議員にお伺いいたしますが、我が国は広島、長崎での被爆を経験し、このことについては国が率先して被爆者のための援護法をつくったりしてまいりました。今回の福島の東京電力第一原発事故にあっては、福島県に委ね、福島県民の範囲で行われてきたという施策が多かったと思います。

 これは、国の責任で推進してきた原子力のさまざまな政策に対して、国として明確に責任が示されていない。健康に与える影響も含めて、今回、参議院においての皆さんの立法趣旨の中ではここをどうお考えになったか。この法律が必要とされる、今回の法が必要とされる根拠でもあると思いますし、また、福島県外の皆さんが健康に不安を抱えられた場合にどう応援していけるかということ。県外とは、避難している方も、あるいは、宮城県の丸森地区もそうでありましょう、千葉の流山もそうでありましょう、いろいろな地域がございます。起こしたことに対して国の責任と健康管理ということで加藤提出者のお考えを伺います。

加藤(修)参議院議員 お答えいたします。

 第九条の支援対象地域以外の地域に移動して生活する子供及び妊婦の健康診断につきましては、身近に必要な医療を受けることができるようにするために、政府において必要な体制整備を図るとともに、医療機関に対する情報提供を行うことなど適切な施策を講ずることが重要である、このように考えております。

 また、福島県以外で支援対象地域に設定された地域に居住する子供及び妊婦に係る健康診断につきましては、現に行われております福島県の健康管理調査と福島県以外に実施される健康調査の内容が不統一という事態が生じることは好ましいものではないと考えておりますので、そこで、第十三条第二項に基づいて国が適切に必要な施策を講ずることによって、福島県の内外を問わず、被災者は同じ内容の健康調査を受けることができるようになるものと考えている次第であります。

 さらに申し上げますと、第十三条の第二項に基づいて行う施策の内容につきましては、野党としては、これらの健康診断について、福島県の自治事務という現在の健康管理調査の位置づけの見直しを含めて検討されるべきである、このように考えている次第でございます。

阿部委員 吉野委員の冒頭の御質疑でもありましたが、福島という言葉ではなくて、東京電力の第一原発事故が及ぼしたものについて国がどう対策するかというところがみそであると私も思います。それは福島の皆さんのためにもそうであろうし、これは国策として進めた原子力政策の結果を受けたものでありますから、ぜひ、今の加藤議員の御提案の趣旨を踏まえて、今後の施策を望みます。

 最後になりますが、福島第一原発事故の被災者への医療提供体制というもので、これまで行われてきた医療提供体制をさらったものが、私の資料の二ページにございます。実にさまざまな省庁が縦割りで、おのおの連携がとられておらない。例えば、厚生労働省は被曝に関する医療はうちではないとおっしゃいますし、文部科学省は賠償や緊急時被曝医療体制についてだけ、復興庁はワンストップサービス、内閣府は原子力災害対策本部云々、経産省は先ほどの北神さんの御答弁のとおり、環境省がこれから中心になると言いますが、本当に必要なことは、一人の人間の健康を守っていく総合施策であります。

 その意味で、平野復興担当大臣には、もう御答弁をいただく時間がございませんので、先ほど来、もし規制庁にそうした健康の管理を含めてのさまざまな被災のケアが委ねられたとしても、復興の中心は命であります。命と暮らしであります。しっかりと復興の中心としてフォローしていただける主務官庁であることをお願いして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

古賀委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 本法案は、もともと、みんなの党の川田龍平参議院議員が、東大アイソトープ研究所の児玉龍彦先生などと連携してつくり上げた、去年の夏の議員立法、子どもと妊婦を守る法案が、ある種のプロトタイプともなっています。

 それが今、かなりの時間と紆余曲折は経ましたものの、超党派の議員立法として成立しようとしているのは、その画期的な内容も含め、大変感慨深いものがあります。挙証責任の問題や、あるいはあらゆる選択をした人への等しい支援が行われるのかどうか、この法案の実効が上がるか、あるいは言葉だけのものになってしまうか、そういう意味では、政府の履行監視が非常に必要なものでもあるというふうに思っております。

 まず、質問としてお尋ねをしたいと思いますのは、政府の福島の皆さんに対する姿勢の問題であります。野田総理は、大飯原発の再稼働について、六月八日に記者会見されました。この記者会見での野田総理の言葉が福島の人たちにすこぶる評判が悪いというふうに思います。

 いつも福島の現状を伝えてくれるラジオ福島の大和田新アナウンサー、私はメールのやりとりをいつもしていますが、このときにメールをいただきました。こう書いてありました。私たち福島県民は原発で日常の生活を奪われた、野田総理が守るべき国民の中には福島県民は除かれているらしい、福島県民は川で溺れている、それを国も東電も橋の上から見ているにすぎない、吹き飛んだ建屋の前に立って、本当に原発事故が収束したのか、安全とは何かを考えてほしい、こういうことを大和田アナウンサーはメールで送ってこられました。

 そして、これは福島ではありませんが、滋賀県の嘉田知事、野田総理の会見について、東電福島原発事故の記憶が残る中で、多くの皆さんが再起動に複雑な気持ちを持たれていることはよくよく理解できます、こう言ったことについて、記憶は過去に言及する言葉だ、福島の事故を過去に追いやっている、こういうふうに述べております。

 国民生活を守る、この記者会見の言葉に福島県民は入っていないんではないか、福島の人たちは国民じゃないのか、野田総理の言葉はそのように受けとめられていると思うんです。これが実はまさに、この議員立法が必要だというふうに考えられた理由ではないか。つまりは、政府は、福島のこと、福島の人々のこと、子供たちのこと、妊婦のことを本当に考えているのか、ここの部分に本当に大きな疑問がある、こういう状況なんだろうと思います。

 その意味で、平野復興大臣にお伺いをしたいと思うんですけれども、この大飯原発再稼働の判断に当たっての野田総理の記者会見の発言内容を、福島復興再生に当たる担当大臣としてどのように感じているか、評価をしているか、お伺いしたいと思います。

平野(達)国務大臣 大飯原発の再稼働につきましては、いろいろな要素を勘案しての総合的な判断、ぎりぎりの判断だったというふうに私は理解をしております。

 その一方で、福島の再生それから原発事故の事故処理、これをしっかりやらなくちゃならないということについては、総理は常々これは申されていることでありますし、私がさまざまな機会をとって官邸に説明に行くときも、そのことは繰り返し総理から強い指示を受けております。

 そういう福島を、例えば福島県民のことを忘れたとか、そういうことは決してないということははっきり申し上げられるのではないかというふうに思います。

柿澤委員 平野大臣のお立場ではそう言わざるを得ないのかもしれない。しかし、今の御答弁を聞けば、やはり、私たちの気持ちが本当に政府に届いているのかな、通じているのかな、感じてもらっているのかな、こういうふうに思われてしまうのではないかと思います。

 恐らく、今回の議員立法を提出された参法発議者の皆さんは全く違う考えをお持ちなのではないかと思います。この点、ぜひお伺いをしたいと思います。

川田参議院議員 まず、質問の答弁の前に、この法案を成立させるに当たって、この作成に当たって、私と、社民党の阿部知子議員、そして各党の、ここにおられます谷委員、それから田嶋委員初め、自民党、民主党それから公明党、あらゆる政党の、全党の共同提案によってこの法案を提出することができました。これまで御協力いただいた皆様に本当に感謝申し上げます。

 そして、私としては、今回のこの野田総理大臣の再稼働会見につきましては、全くもって無責任きわまりないというふうに感じております。

 これは、福島の原発事故の収束が全くしておらず、そして、この法案もつくりましたけれども、やはり、この事故の検証も全くもってとられていないという中で、国会において原発事故の検証のための委員会までつくっているにもかかわらず、今回のこの再稼働の会見というのは拙速であり、福島原発事故の検証からの対策がとられていないだけではなくて、福島原発以前の安全対策についてもしっかりととられていないこの大飯原発というのは、免震重要棟もない、それから避難経路も確保できていない状況の中で再稼働を判断するというのは全くもって拙速だというふうに感じています。

 海外からも注目されている中で信用も低下につながるものですし、国民の生活を守るためとおっしゃっていますが、福島の方たちが一体どんな状況に今置かれているのか。泣く泣く住みなれた土地を離れなければならなかった方たちや失意のうちにみずから命を奪われた方たち、家族が離れ離れになり、健康上の不安や将来の不安からも、子供たちも心のケアが必要になり、これから健康被害が今もって起きていることを考えると、このような普通の感覚、人間の考えとして、このような心のない会見のような発言というのは到底できないだろうと思います。

 人間らしい豊かな生活というのであれば、まずは福島の、そして福島だけではありません、全国の人たちのことも考えて発言をしなければいけなかったと思います。

柿澤委員 期せずして拍手が起きておりますが、この答弁は、もちろん、民主党の提出者の谷岡参議院議員も関与されて、そして議論をされて、こういう答弁になったんだろうと思いますので、そういう意味では大変重い御答弁をいただいたというふうにも思います。

 話をかえますが、平野復興大臣、先日、浪江の馬場町長とお会いされて、除染のモデル事業の報告として、一定時間を超えて洗浄を続けても効果は限定的である、こういう実験結果を示されたということであります。いわゆる除染の限界というものがはっきり見えてきたというふうに思います。

 しかし、これは、私が去年、チェルノブイリの視察を受けて、既に十月の科技特で細野大臣に指摘をしていたものです。チェルノブイリは、大量の軍隊と巨額の費用を投じて三十キロ圏内の除染を試みたけれども断念をした、福島では可能なのかと。そのときに細野大臣は一体何と答えたか。日本社会の粘り強さを考えればチャレンジすべきだ、こう答えていたんですね。これは一種の精神論です。

 平野復興大臣は、新技術の研究をする、こういうことも先日おっしゃられたというんですけれども、モデル事業だけでも百十八億円を投じて、本格除染には何兆円かかるかわからない。このような除染の限界のある中で、このまま既定の路線のとおり進んでいかれるのか、この点、お伺いをしたいと思います。

平野(達)国務大臣 私は、浪江町長だけではなくて、富岡町長、川内村長さんにも同じ説明を申し上げておりますが、二つのことを説明しております。

 まず一点目は、モデル事業でありますけれども、大熊町を初め八町村でモデル事業をやっています。

 この中で起きたことはどうかといいますと、確かに効果はあります。効果はありますが、まず放射線量が高いところで下がる率、これは高いです。しかし、もともと放射線が低いところで除染事業を実施しますと、その下がる率は下がってきます。

 これは、ちなみに、モデル事業につきましては、庭の除草、表土剥ぎ、屋根、壁の拭き取り等でございまして、これは人海戦術でやっています。人海戦術で丁寧にやっています。

 ですから、ここで何を言いたいかといいますと、放射線が低い地域の中でこういう作業をやったとしても、低減率は落ちてくるということです。

 あともう一点は、柿澤委員から御指摘いただいたように、これはアスファルト舗装のところでやった実験でございまして、同じものをずっとやり続けても低減率は途中のところからフラットになってしまう、こういう実態があるということでありまして、これは、まさに私は、効果はあるけれども一定の限界があるということだと思います。

 これからどのような除染をするかということにつきましては、この実態を踏まえまして、しかし確かに効果はございますから、この効果のある除染についてはできるだけしっかりやっていくということが基本だというふうに思っております。

柿澤委員 私がこのお尋ねをした上で何を申し上げたいかというと、先ほど来るるお話が出ていますが、昨年末に低線量被曝の健康リスクに関するワーキングチームの報告書が出て、二十ミリシーベルト未満は人が住めるということになったわけです。それで、避難区域の再編が行われて、二十ミリシーベルト未満は避難指示解除準備区域として、除染しながら帰還を進める、こういう話になったわけです。

 これは、チェルノブイリに比較して格段に高い放射線量の地域に、除染をするからという理由で、なるべく帰ってくださいと住民の帰還を促していく、こういう危険性のある話だというふうに思うんですよ。

 二十ミリシーベルト未満は人が住める、こういう政府の基本認識があるわけですけれども、今回の議員立法を提案した方々は、この政府の基本認識についてどういうふうに考えておられるのか、ぜひお伺いをしたいと思います。

川田参議院議員 この第二条第三項で内部被曝について言及しておりますが、これは、外部被曝による影響と内部被曝による影響の双方をあわせて考慮する必要があるためです。

 外部被曝という言葉ばかりが語られる中で、あえて内部被曝という言葉をこの条文に盛り込ませていただいたのは、それよりもこの内部被曝という概念をしっかりと皆さんに知っていただいて、体の中に取り入れた放射性物質によって放射線の影響を体が受けていくということは外部被曝とは全く違った影響を体に与えていくものであるということからも、どの法にも明記されていない内部被曝という言葉をあえてここで使わせていただくことが重要だと考えています。

 食品の全量検査を目指すことを野党案では当初目指しておりましたが、これは最初から全量検査というのは難しいところもありますので、しっかりとこれをスケジュール立てして、しっかりと検査機器の開発などもすることによって、食品の全量検査、全品検査ができるような体制をこれからも時間をかけてしっかりやっていくことが大事じゃないかと考えております。

 この二十ミリシーベルトについては、これは基準によって、今、被災地では、一方的に引いてきたことによって、子供たち、家族がばらばらになって、コミュニティーを分断されることになりました。そして、自主避難を余儀なくされている方も大勢おられ、避難しない選択、あるいはできない被災者の方も、どれが信じられる情報かが全くわからない事態に陥っています。

 そもそも、二十ミリシーベルトという基準自体がどんな基準に照らしても間違っているというのが私の認識、立法者の認識であり、政府の基本認識とは相入れるものではありません。また、ICRPや国内法理に照らしても、一ミリシーベルト以下にするのが当然のことです。

 この法律を少しでもその目的に向かって運用していけるように、全会派の発議者有志でこの法律のフォローアップをしてまいります。立法者の意思は、一ミリシーベルト以下に向かって進めていくというもので、自主的に安全に近づくように施策が進むよう、この法律では、毎年見直しをしていくことが盛り込まれております。

柿澤委員 先ほど、二十ミリシーベルトはチェルノブイリと比較して格段に高いというふうに申し上げました。先ほど来出ているチェルノブイリ法において、五ミリシーベルト以上を移住義務区域、一ミリシーベルト以上を移住権利区域としているわけです。こうした移住の権利というのを明確化して、権利を有する被災者に新しい居住地での生活再建のための十全の支援措置を国が講じていかなければならない。

 今回の法律でも、私は、権利性というものがいま一つ明確ではないのではないかと思います。その意味で、まず一定の線量基準で具体的な補償を伴う移住の権利ということを法的に明確化すべきであると考えますが、復興大臣、御見解はいかがでしょうか。

平野(達)国務大臣 まず、二十ミリシーベルトでございますけれども、二十ミリシーベルトは委員ももう十分御案内のように、このレベル以上であれば、あるいは以下であれば危険だ、安全だという値ではありませんし、いわゆる閾値ではないということであります。

 では、二十ミリシーベルトは何かといいますと、これは、私ども政府としては、いわゆる居住や労働を続けながら、モニタリング、食品の出荷制限、健康診断などによる放射線リスクの適切な管理や、生活圏を中心とした除染などの総合的な対策によって放射線被曝を低減、回避することが想定されている地域、これはICRPの考え方に沿って、二十ミリシーベルトという、目安ということで考えているわけであります。

 したがいまして、この二十ミリシーベルトというものにつきましては、繰り返しになりますけれども、これをもって安全だ、危険だという考え方を政府は必ずしもとっているわけではないということであります。

 それからもう一つは、二十ミリシーベルトでもって帰りなさい、帰らなければなりませんということも政府は想定しておりません。これは避難指示解除準備区域ということで、そこからインフラの整備をしたり、あるいはさまざまな公共施設、壊れた施設等がございますから、その復旧をしながら、最終的には、個々の地域の判断として、もっと極論しますと、個人の判断として帰るかどうかは多分決定をしていただくことになると思います。

 その上で、これからさまざまな、ここから、避難区域からたくさん避難されている方々がおられますけれども、政府としてしっかりとした意向調査をしなければならないと考えておりますが、そのときに、中にはどういう状況になったとしても移住を決意される方もおられると思います。そういった方々にどういう賠償をするかということにつきましては、これは今政府内でもいろいろ議論しておりまして、その基本方針というのを今各町村と内々に調整をしております。

 いずれ、この基本方針もある程度のめどが立ちましたら、しっかりと公表して、その上で住民の皆さん方としっかり意見交換をして、それで、正すべきことは正す、修正すべきは修正するという形での賠償指針を決めていくということになるかと思います。

 したがいまして、移住の権利というよりは、最終的にそこに戻る、戻らないということについての、国は、例えば、戻りなさい、戻らなければだめですよということについての強制力を持って具体的にどうこうするということは考えておりませんし、また、できないと思っております。

 そういった中で、さまざまな情報提供をしながら、今避難している方々の判断に資するような情報提供をしっかりやりながら、最終的に、地域としてあるいは町として、そして、繰り返しになりますけれども、場合によっては個人として、そういった判断をしていただくということになると思いますし、その判断した方向に従って、国は東電とも連携して必要な支援をしっかりやっていくということになると思います。

柿澤委員 こういう何だかさっぱりわからないことを言って、結局、自分がどれだけ補償を受け、そして生活の再建を国に支援してもらえるのかわからないまま、一年が過ぎ、二年が過ぎていく、この現状こそが、まさに今回の議員立法を必要とした最大の背景なんですよ。

 それに関して、平野復興大臣の今の御答弁は、何ら答えになっていないというふうに思います。その点、私は、ぜひ法的な権利性をここで認めて、しっかりと十全の措置を講じていく、このことを明言していただきたかったと思います。立法者の皆さんは、この気持ちを共有していただいていると思いますので、ぜひ法案成立の暁には、履行監視を政府に対して厳しく行っていただきたい、このことも期待として申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

古賀委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

古賀委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 参議院提出、東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

古賀委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古賀委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

古賀委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十三分散会


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