衆議院

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第1号 平成23年8月3日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十三年八月三日(水曜日)

    午後一時三十分開議

 出席委員

  財務金融委員会

   委員長 石田 勝之君

   理事 泉  健太君 理事 大串 博志君

   理事 岸本 周平君 理事 古本伸一郎君

   理事 鷲尾英一郎君 理事 竹下  亘君

   理事 山本 幸三君 理事 竹内  譲君

      五十嵐文彦君    今井 雅人君

      打越あかし君    江端 貴子君

      小野塚勝俊君    岡田 康裕君

      柿沼 正明君    木内 孝胤君

      小山 展弘君    近藤 和也君

      菅川  洋君    玉木雄一郎君

      豊田潤多郎君    中塚 一宏君

      中林美恵子君    長尾  敬君

      松原  仁君    三村 和也君

      柳田 和己君    和田 隆志君

      今津  寛君    齋藤  健君

      竹本 直一君    村田 吉隆君

      茂木 敏充君    山口 俊一君

      斉藤 鉄夫君    佐々木憲昭君

  経済産業委員会

   委員長 田中けいしゅう君

   理事 石関 貴史君 理事 北神 圭朗君

   理事 楠田 大蔵君 理事 後藤  斎君

   理事 近藤 洋介君 理事 谷畑  孝君

   理事 西村 康稔君 理事 佐藤 茂樹君

      池田 元久君    磯谷香代子君

      緒方林太郎君    川口  博君

      川島智太郎君   木村たけつか君

      櫛渕 万里君    熊田 篤嗣君

      斉木 武志君   斎藤やすのり君

      柴橋 正直君    白石 洋一君

      杉本かずみ君    平  智之君

      高松 和夫君    橋本  勉君

      花咲 宏基君    室井 秀子君

      吉田おさむ君    梶山 弘志君

      近藤三津枝君    高市 早苗君

      橘 慶一郎君    西野あきら君

      額賀福志郎君    望月 義夫君

      稲津  久君    山内 康一君

    …………………………………

   財務大臣         野田 佳彦君

   経済産業大臣       海江田万里君

   国務大臣

   (金融担当)       自見庄三郎君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   経済産業副大臣      池田 元久君

   国土交通副大臣      池口 修次君

   内閣府大臣政務官     和田 隆志君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 鈴木 明彦君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  森本  学君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    細溝 清史君

   参考人

   (日本銀行総裁)     白川 方明君

   財務金融委員会専門員   北村 治則君

   経済産業委員会専門員   綱井 幸裕君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 財政及び金融に関する件(円高問題等)


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     ――――◇―――――

石田委員長 これより財務金融委員会経済産業委員会連合審査会を開会いたします。

 先例によりまして、私が委員長の職務を行います。

 財政及び金融に関する件、特に円高問題等について調査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今井雅人君。

今井委員 民主党の今井雅人でございます。

 きょう、財金、経産両委員会の連合審査会のトップバッターとして質問をさせていただく機会をいただきまして、大変に光栄に思っております。ありがとうございます。

 二十分という時間でございますので、早速、質問をさせていただきたいと思います。

 昨日の財務金融委員会で、野田大臣の方から、現在の円高に対する懸念をお伺いいたしました。きょう、日銀の白川総裁もいらっしゃっていただいていますので、まず白川総裁にお伺いしたいと思いますが、総裁は今現在の円高が日本経済あるいは日本の物価の安定にどのような影響を与えると考えていらっしゃるか、まずはお伺いしたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 先月以降の為替市場の動きを見ますと、円の対ドルレートは、御案内のとおり、ドル安・円高方向に進みまして、ごく最近は、既往ピークに近い七十六円から七十七円台で推移しているわけでございます。

 こうした為替円高の影響でございますけれども、原材料などの輸入コストを引き下げまして企業や消費者にプラスの影響を及ぼす面もありますけれども、海外経済の先行きをめぐる不確実性が大きいこの局面においては、円高の動きが輸出や企業収益の減少、企業マインドの悪化などを通じまして経済にマイナスの影響を及ぼす可能性には、特に注意する必要があるというふうに考えております。

 また、やや長い目で見ましても、電力供給をめぐる不確実性や円高の進行などを背景に、企業の海外シフトの加速や、あるいは中長期的な成長期待の低下が生じる可能性に注意が必要であります。仮に先行きの経済が下振れますと、物価も下振れる可能性が強まることになります。

 日本銀行としては、最近の円高の影響も含めまして、経済、物価動向を丹念に見ていく必要があるというふうに考えております。

今井委員 ありがとうございました。

 円高には日本経済にとってメリットとデメリットがありますけれども、現在の状況を考えると、円高はデメリットの方が大きいというような御認識であったというふうに思います。それは大臣と同じ御認識であるというふうに認識をさせていただきます。

 その上で、現在の円高の原因ということについて少しお話をしたいと思うんです。

 一部では、アメリカの債務の上限問題がドル安・円高を引き起こしているという話がございましたが、一たんこれも合意をしたわけでありますけれども、合意後もドル高方向に向かわないということでありますから、これが主たる原因であるということはちょっと説得力に欠けるかなというふうに思います。

 もう一つ、よく財金等でお話がありますのは、アメリカあるいはヨーロッパの景気が悪いので、日本経済はそれに比べて比較的景気がいいから資金が還流してきて円高になる、そういう論調の話がございます。

 きょうお持ちしました資料の一枚目の下のグラフを見ていただきたいんですが、これは日米欧のGDPの四半期ごとの年率ベースの推移です。

 赤が日本なんですが、このグラフを見る限り、日本の景気がアメリカやヨーロッパよりも比較的いいということは、この指標からは見てとれません。ですから、この論調も、一部正しい部分もあるかもしれませんが、これをもって現在のドル安・円高を説明するということもちょっと無理があるというふうに私は思っております。

 その上のグラフを見ていただきたいんですね。明らかに違う傾向が出ているというものは、実は中央銀行の金融政策でございます。

 これは中央銀行のバランスシートですけれども、日銀とECBのバランスシートのふえ方に比べて、FRBのバランスシートのふえ方がとても異常な状態になっている。この三年、四年ぐらいで三倍ぐらいになっているんですけれども、これは、明らかにアメリカだけが量的緩和を極端にやって、ほかがそれに比べて少ないということで、それがドル安というのを誘引しているんじゃないかというふうに私は考えております。

 もう一点は、日本は御案内のとおり、経常収支が黒字の国で、この十年間を平均しますと、年間で約十七兆円ほど経常収支の黒字があります。これはつまり、毎年十七兆円の円買い需要があるということですから、ほうっておきますと自然に円高になりやすい。円という通貨はそういう傾向があって、それをとめるためには、逆に今度は資本輸出を促さないとその分が埋まらないので、円高になってしまう。

 現在はリスク許容度が低くなっていて、なかなか資本輸出が進まないというのも円高の原因じゃないかというふうに私は考えておりますけれども、この点について、大臣それから総裁はどうお考えかを、それぞれお答えいただきたいと思います。

野田国務大臣 今井委員はまさに為替の実務にたけたプロでございますので、釈迦に説法みたいな話かもしれませんけれども。

 最近のいわゆる円高の傾向の背景として一般的に言われてきたのは、欧州の債務問題、それから御指摘のあった米国の債務上限問題であります。ただし、欧州の債務問題についても、ギリシャ支援も合意ができているわけですし、いわゆる債務上限問題も、ぎりぎりの段階でありましたけれども、上下両院で議決がされて大統領の署名も終わったということで、成立をしています。

 にもかかわらず、まだマーケット、これは注意深く見なければいけませんけれども、それがマーケットにストレートに反映されているかというと、決してそうでもない状況でございます。ということは、この図の下の段で御説明がありました日米欧のGDP前期比、EUそしてアメリカに比べて、日本は震災があったわけですから、足元の経済がとても厳しい状況です。したがって、到底、経済のファンダメンタルズが反映されているマーケットとは思えない状況だと私は思います。ということを踏まえて、引き続きマーケットの動向を注視していきたいというふうに思います。

 ただ、金融政策については、これは日銀総裁からお答えいただきたいと思いますが、ちょうどあした、あさってと日銀の金融政策決定会合です。政府の立場の、しかも財務大臣の立場の私が物を言うのは、ちょうどブラックアウトにかかるというふうに思いますので、発言は控えたいというふうに考えております。

白川参考人 お答えいたします。

 為替相場でございますけれども、議員のお尋ねは、主として円・ドルレートで御説明がございました。

 先ほども申しましたとおり、現在の円高水準というのは既往ピークに近い水準でございまして、日本銀行としてももちろん問題意識を持っております。

 そう申し上げた上で、この現在の為替相場をどう理解するかということでございますけれども、これを見ていますと、円高というよりか、ドルの全面安という色彩が強いように思います。

 これは出発時点をどこでとるかによって、もちろん随分数字は変わってまいりますけれども、例えば年初来ということで申し上げますと、一番上昇していますのがスイス・フラン、これが一九%、次にニュージーランド・ドル、これが一四%、次いでオーストラリア・ドル、これが八・七%、次いでユーロ、ブラジル・レアルと続きまして、日本の円だけが上がっているわけではございません。そういう意味で、現在は、ドルの全面安の中で円についても急激な円高が生じているということでございます。

 いずれにせよ、このドル安をどういうふうに理解するかということでございます。

 これはもちろん、為替相場ですから、私が余り踏み込んだ詳しい説明をするというのは、必ずしも立場上適切ではないと思いますけれども、マーケットのコメント、こういったものを総合いたしますと、世界経済全体として現在はリスクが高まっているというふうに投資家が認識するときには、とりあえず相対的にリスクが高い通貨を外していく、よくリスクオフという言葉で表現していますけれども、そうした動きが広がりやすいわけでございます。

 アメリカの経済それ自体については、実質GDPは必ずしもパフォーマンスが悪いわけではないというのは議員の御指摘のとおりでありますけれども、しかし、アメリカは、これに経常収支の赤字、それからアメリカの国債については、半分は海外に依存しているわけであります。

 振り返ってみますと、さまざまな金融危機は、これは最終的には流動性の問題から出てくるわけでございます。欧州もそうでございます。そういう意味で、将来はともかくとして、とりあえずどこのリスクが高いのかということを投資家が選択し、消去法的に、安全と見られる他の通貨にドルからシフトをしているということだろうと思います。

 それから、日本銀行に固有の御質問として、マネタリーベースについての御質問がございました。

 これまでも国会のいろいろな委員会でよく指摘を受けておりますけれども、我々自身は今、マネタリーベースを含めて潤沢に資金を供給しております。現在、マネタリーベースあるいは中央銀行のバランスシートの対GDP比という意味では、日本銀行が一番拡張している。これはとる時点によって多少イメージが違ってまいりますので、先生のとっているこのベースではそうでございますけれども、日本銀行は、GDPとの比率で見ますと、一番拡張した中央銀行でございます。

 その上で、マネタリーベースと為替との関係を見てみますと、詳しい説明は省略いたしますけれども、明確な関係は見られないというのが、事実から言えることだというふうに思います。

今井委員 ありがとうございました。

 ちょっと私と意見が違うところはありますけれども、時間がございませんので、次に参りたいと思います。

 実際にこの円高問題を……(発言する者あり)後で少しかかわってきますので。

 では、円高をどうとめるかということで対策が大事だと思いますけれども、一九九五年、平成七年に、やはり一ドル七十九円台にまで円高が進んだことがございまして、ちょうど私、このとき円のチーフディーラーをやっておりましたので現場におりましたが、二枚目を見ていただきますと、九五年の四月に七十九円七十五銭をつけましたけれども、その後反転して、百円台まで戻っています。

 このとき何をしたかということをもう一度確認したいんですけれども、三枚目のペーパーを見ていただきたいんですが、ちょっと時系列に読んでいきます。

 四月の十四日に日銀は公定歩合を〇・七五引き下げまして、同時に政府は、内需の振興、規制緩和等の緊急円高・経済対策を発表しました。これは、内需を拡大して経済収支の黒字を縮小させよう、そういう対策ですね。それから四月二十五日、今度はG7で、現在の相場が行き過ぎている、こうしたものの反転をさせることが望ましい、こういう声明を出しました。

 六月の下旬に、これは政治的な問題ですが、日米の自動車協議の合意が成立しまして、七月の七日、このとき、日銀もそれまでにない対応で、「当面の金融調節方針について」を発表、オーバーナイトのコールレートを公定歩合よりも低い〇・七五%に誘導。それから同時に、円売りの協調介入が行われました。

 八月の二日に、今度は大蔵省の方から、「円高是正のための海外投融資促進対策について」の発表がございました。詳細についてはその次のページにありますけれども、簡単に申し上げますと、日本から海外への資本投資を促進するような、そういう施策を打ち出したということであります。と同時に、八月二日にまた円売りの協調介入が実施をされました。

 その介入を受けまして、当時のルービン財務長官ですけれども、異例の声明を発表しておりまして、アメリカ政府は日本の当局が資本移動の障壁を取り除く政策を講じたことを歓迎する、これらの政策と協調介入は四月二十五日のG7による共同宣言に沿ったものであると。それで、九月八日に日銀が再び公定歩合を〇・五%引き下げていきました。

 ということで、私、何が申し上げたかったかといいますと、円高を抑制する方法として、例えば為替の介入とかはありますけれども、為替の介入単独ではやはり限定的なんだと思うんですね。このときにもやっているのは、結局、金融政策の緩和、為替での介入、それから財政政策ですね、景気拡大の政策、それから外交面での交渉。この四つのことを同時にやって、ようやく円高が反転していったわけですね。当然、現在は経済の環境も違いますし、同じことをやったらこのときと同じように反転するとは限りませんけれども、私が申し上げたいのは、これだけの覚悟を持っていろいろなことをやって、初めて円高が是正されるということなんですね。

 ですから、中途半端なことをやっていても、この円高というのは、一時的に是正することはできても、結局またもとに戻ってしまう、そういうふうに私は考えておりまして、それを説明したいがために、この九五年での日本政府及び日銀がやった政策を説明させていただいたわけです。

 こういう対策を説明させていただいた上で、大臣と総裁に、どのようにお考えか、またお伺いしたいと思います。

野田国務大臣 委員の御指摘のとおり、九五年当時というのは、財政政策も金融政策も、そして外交面のさまざまな努力も含めて、まさに総合的なパッケージとして、日本で総力を挙げて円高阻止に向けて努力をしたということだと思います。

 介入だけを見ても、日米欧の協調介入もあるし、日米の協調介入もあるし、日本単独の介入もあります。等々、本当にあらゆる手段を講じながら円高を阻止しようとしたのがこの九五年だというふうに思います。

 これは大いに参考になると思いますし、私どもも、例えば、今、衆議院の財務金融委員会では、特例公債法案とともに修正税制改正法案の御審議もいただいています。法人実効税率を引き下げて、まさに企業の立地促進のためにどうするかというような、そういう視点も含めて、総合的な対応をさせていただきたいというふうに思います。

白川参考人 お答えいたします。

 九五年の急激な円高の進行局面では、先生の資料にございますとおり、日本銀行は公定歩合の引き下げを含め金融緩和を強化いたしました。

 先生のお話にございますとおり、当時と現在、もちろん経済金融環境が違っております。しかし、その違った金融環境の中で、政策当局としてさまざまな努力をする必要があるという点は、全くそのとおりでございます。

 改めて見てみますと、当時、公定歩合、九五年の四月と九月に引き下げましたけれども、その直前の水準が一・七五%でございました。コールレートは二・二%、長期金利は四%でございました。御案内のとおり、現在はコールレートはもうほとんど〇%、長期金利は一・〇%でございます。

 こういう環境の中で日本銀行としてどういうふうな金融緩和の強化を行っていくのかということで、大変いろいろな知恵を絞っております。昨年来行っておりますことは、包括的な金融緩和政策と呼ばれるものを通じまして金融緩和を強力に推進するということを行っております。

 具体的には、長目の市場金利や各種のリスクプレミアムに直接働きかける、そういうねらいから資産買い入れ基金というものをつくりまして、このもとでさまざまな金融資産、これは国債だけではなくて、CP、社債、REITそれからETF等のリスク性資産を含めまして買い入れを行って、金融緩和を一段と強化しております。

 日本銀行としては、先行きの経済、物価情勢、動向につきまして、これは海外経済あるいは為替相場の動向も含めまして、注意深く点検した上で、必要と判断される場合には適切な措置を講じていくという方針をかねて申し上げておるわけでございます。日本銀行として、さまざまな環境の中で適切に政策運営に努めてまいりたいというふうに強く思っております。

今井委員 ありがとうございました。

 最後に一つ申し上げたいんですけれども、市場は経済のファンダメンタルズを反映して動くものだと言われておりますが、決してそれだけではなくて、やはり投資家を含めた市場のマインドをどう動かすかということが非常に大事です。

 私はよく覚えておりますが、九五年のときにこれだけの対策を打った後、もうこぞって日本の機関投資家は、それまでヘッジをしていましたけれども、ヘッジ外しの円売りをしました。それから、海外の中央銀行もドル円を買ってきました。それから、ソブリン・ウエルス・ファンドも買ってきました。もういろいろなところが一斉に、ドルを買って円を売るということを始めたわけですね。

 これは、日銀、政府が円高を阻止するんだという強い意思を示したことによって、よし、これについていこうということでみんなが動き出したということなんです。政府の介入とかこういうものだけでは需給は変えることはできませんので、一番大事なことは、みんなをついてこさせることなんです。

 みんなが円高になるかもしれないと思って、そちらの方にバイアスをかけているんですから、それは大丈夫だ、おれたちがしっかりとめるという意思を示せば、マーケットはみんなついてきますから、逆に向かっていくということが必ず起きます。

 日本の経済を担われるお二方でありますから、ぜひ私が最後にお願いしたいのは、強い意思を持ってこの円高をとめるんだということで、大胆な政策をこれからもやっていただきたいということをお願い申し上げまして、時間になりましたので、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

石田委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 皆さん、御苦労さまでございます。経済産業委員会、衆議院議員の北神圭朗でございます。

 円高が進みまして、ちょっとえらいことになってきました。東日本の大震災を受けて、東北の供給基地がずたずたになった。そしてマインドも、全体的に消費が非常に減少していた。一方で、割と早くそれが回復したやさきに、この円高というものが進んでいる。しかも、電力の供給の問題とかそういったものも重なっていて、日本の企業にとっては大変厳しい環境に置かれている状況でございます。

 そういう中で、円高の話も今同僚の今井先生から話がありましたが、原因としたら、アメリカの経済が思ったほど力強くないとか、あるいは米国債の格下げの問題があるとか、さらには金融政策の違いとか、こういったものもいろいろあると思いますし、私も背景には経常収支の黒字というものがあるというふうに思っております。

 経常収支が、やはり日本というのはフローの面では非常に資金余剰があるということで、投資家というのは、やはり最後は日本というのは安心ができる国だ、スイス・フランとオーストラリアのドルと日本の円というのは、そういう意味では、アメリカとかヨーロッパが非常に厳しい状況の中で、これらの資産は安全だ、そういう認識が少なくとも市場にあるということだというふうに思っています。こういう認識が正しいのかどうか。

 そして、新聞等でも、今回珍しく日本銀行も非常に前向きな政策を打ち出そうとされていることにも私も歓迎をしておりますが、そういった政策が、今まで、ややもすると、単なる介入であれば効果が短期的に終わってしまう。

 そういった意味で、私は、今申し上げた円高の理由というものが今後も続くのであれば、これはなかなか容易でない状況でありますし、そういった意味では、一時的な市場の介入だけではとてもこの円高の状況を克服できないなというふうに思っておりますが、その点について、財務大臣とそして日銀総裁の答えを聞きたいと思います。

野田国務大臣 御質問ありがとうございます。

 円高の背景の話は、先ほど今井委員とのやりとりもありましたとおり、海外経済のさまざまな動向が一つの要因であるということは言われてきましたけれども、そうはいっても、それぞれにある程度の道筋が見えてきているにもかかわらず状況が変わらないということは、ある意味、日本の円に対して一方的に強い評価が出過ぎている、これは決してファンダメンタルズを反映しているものではないということが基本的な認識でございますので、引き続きマーケットの動向をしっかり見きわめていきたいと思います。

 加えて、介入云々ということだけではなくて、さまざまな政策のパッケージとして、総力を挙げて円高阻止、そしてその先には産業の空洞化の回避、そういう視点を持って、きちっと、先ほど覚悟の話が出ておりましたけれども、覚悟を持って、国として総力を挙げていかなければいけないなというふうに思います。

 冒頭の御指摘のところの、経常収支の黒字と為替が果たして直結するのかどうかというのは、ちょっと私自身はまだすとんと落ちないところがありますが、その経常収支の黒字を含めても、最近はちょっと慢性的な貿易収支の赤字等が出ているので、必ずしも経常収支の黒字国としてずっといくかどうかということも含めて、状況は流動的ではあるというふうには思います。

白川参考人 まず、円高の影響につきましては、先ほど今井委員の御指摘に答えましたように、日本経済に対してマイナスの影響を及ぼし得るというふうに見ております。

 現在のこの円高・ドル安でございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、これはドルの全面安でございます。したがいまして、基本的に、現在の流れを変えていくというためには、これだけ大量のお金を動かしています世界の投資家、これが世界経済全体のリスク認識について不確実性が減ったというふうに認識できるような経済状況に持っていくということ、これが大もとの対策でございます。

 先生御指摘のとおり、当面の介入あるいはその他の政策だけじゃなくて、もともとの根本の政策が必要ではないかという点については全くそのとおりでございまして、世界経済の安定をしっかり保っていくような方向での各国の取り組みが必要だというふうにまず思っております。

 そう申し上げた上で、今度は日本銀行でございますけれども、円相場も含めて海外経済、これが日本の経済の先行きに対してどのような影響を及ぼすのかということを丹念に点検して、その上で、日本銀行の金融政策の使命をしっかり全うしていきたいというふうに思っています。

北神委員 そのとおりで、経常収支の問題はさておきまして、やはり今回はドル安が全面的にあって、それで相対的に円高になっている。でも、一方で、長い目で見てもずっと円高が続いている。

 その原因はいろいろありますね。金融緩和の問題の指摘もありますし、あるいは日本の経済がそもそもほかの国に比べて成長が、成長はそんなことないんですけれども認識が、より相対的に強いという認識があったり、いろいろな要因があると思いますが、実質実効為替レートで見ても、やはりこのところ円高でずっと推移をしているというふうに思います。

 そういう意味では、円高対策だけではとてもこの状況を乗り越えることができませんし、日本銀行の短観を見ても、大体企業は八十二円から八十四円ぐらいですかね、その間を想定していまして、今の七十円台になっちゃうと、相当厳しい状況に置かれる。

 何回も繰り返しますが、電力の制約の問題とか、こういったことでは、空洞化も進むおそれがある。そうなれば、地域の雇用も失われますし、地域の経済も非常に厳しくなる。ですから、今回は、円高対策ということじゃなくて、総合的な経済対策というものを全面的に打ち出すべきだというふうに私は思っております。

 そういう中で、日本銀行の対策は非常に大事で、いわゆる介入だけじゃなくて、財務省の指示のもとで介入するだけじゃなくて、いわゆる数量調整というか、金融緩和そのもの、先ほど包括的な緩和の話がございましたし、あれは私は一歩、日本銀行も踏み込んだなと去年思いましたが、それをさらに拡大するとかしないとか、そういったことが記事に載っておりますが、あした金融の決定会合が開かれますので、そういう中で、総裁としてどういうお考えをお持ちかということをぜひお聞きしたいというふうに思います。

白川参考人 お答えいたします。

 日本銀行では、毎回の金融政策決定会合におきまして、政策委員各メンバーが、会合までに明らかになりました経済金融関係のデータや、あるいは企業や金融機関などからの情報を丹念に点検し、十分な討議を行った上で政策を決定しております。現在、新聞でさまざまな報道がなされていることは承知しておりますけれども、今申し上げました一般的な姿勢ということは、今回の会合でも同様でございます。

 あす、明後日に予定されています金融政策決定会合においては、円高の影響を含めまして、先行きの経済、物価情勢を注意深く点検した上で、金融政策運営について適切に判断してまいりたいというのが私の覚悟であります。

北神委員 金融政策決定会合で決めるという話だと思いますが、私からは、ぜひ日本銀行も、この際、大胆に金融緩和の面でも踏み込んでいただきたいというふうにお願いをしたいと思います。

 日本銀行の独立性の問題もありますけれども、私は、きょうはぜひ財務大臣と経済産業大臣にもお願いをしたいんですが、独立といっても、日本銀行の法律を見ると、第四条に「政府との関係」という項目がありまして、「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」という規定が入っているわけであります。

 ですから、私は、政府が今回、円高の問題だけじゃなくて、恐らくこれから、今既に原油高、穀物高、そして私が一番懸念しているのは、総理大臣がたぐいまれな個人的な指導力、あくまで個人的な指導力を発揮していただいて、既存の原発がなかなか立ち上がらないだろうというふうに思っております。

 これは、産業に対する多大なる影響があるというふうに私は思っております。何とかこの夏場は乗り越えられるかもしれませんが、冬場、そして来年の夏を考えると、何ら見通しがない中で、この電力の不安定な状況が続く中で、体力のある企業が海外に行ってしまうことを私は極めて恐れているわけでございますし、私は、恐らく日本銀行もかなりそういう意識があるんじゃないかというふうに確信をいたしております。ですから、そういった中で、円高だけの問題じゃなくて、全般の政策の問題を取り組んでいかないといけないというふうに私は思っております。

 経済産業大臣と野田大臣、今、日本銀行法の第四条、つまり何を言いたいかというと、多分財務大臣だと思いますけれども、やはり日本の政府として、どういう経済政策をこれから打って、名目成長率はどのぐらい、実質成長率はどのぐらい、その差が物価ですから、その物価というものをやはり日本銀行とすり合わせをしながら、その物価を維持するために、日本銀行というものは、やり方は独立性を保つべきだと思います、どういう手法で物価というものを確保するのかというのは日本銀行の独立性が確保されるべきだと思いますが、やはり物価の水準、そして、独立に考えるんじゃなくて、やはり経済成長全体の中での位置づけというものを踏まえて、政府と日本銀行が協力をしてこの難局を乗り越えるべきだと思いますが、その点について野田大臣の見解を伺いたいと思います。

野田国務大臣 産業の空洞化を何としても回避しなければいけないという問題意識は、全く同感です。

 電力の問題、円高の問題を含めて、この問題を何とかしませんと、極東の片隅に位置する小さな島にお年寄りと中小企業だけがいる元気のない国になりかねません。それは雇用もつくれません。ということを考えると、この問題については、全力で政府として取り組むことが基本だろうというふうに思います。

 その上で、日銀との関係の御指摘でございます。この問題意識は、日本銀行も共有をされていると思います。これから私どもが取り組む政府の経済対策、さまざまな政策と整合的である中で日銀としての金融政策を考えていただく、そのためには緊密な情報交換をしていくことが必要であり、その問題意識を共有することが必要だと思います。

 その点の取り組みは、私どもはしっかりこれからもしていきたいというふうに考えております。

北神委員 ありがとうございます。

 情報交換だけじゃなくて、できれば政府一体として、玄葉国家戦略担当大臣も入れて、経済産業大臣も入っていただいて、日本の経済の政策をどのように持っていくのかというものを具体的に示しながら、できるだけ日本銀行にも具体的な目標というものを持っていただいて、その上でそれに向かって政策を打っていただく、そういう方法が一番いいかなというふうに思っておりますので、その点、ぜひお願いをしたいというふうに思っております。

 あと、今申し上げたように、総合的な経済政策ですが、今までどうしても財政出動とかそういったものに頼ってきたわけでありますが、私は、東日本の大震災の後は、がらっとこの経済政策の置かれている風景が変わってきているというふうに思っております。

 ここ二十年間は、平成四年のバブル崩壊以降、基本的には資産価格の下落によって、言ってみれば需要の方が足りなくなってしまった、需要不足の中で経済というものが疲弊していた。そういう中で、私は、総需要管理政策というものは一定の意義があったと思いますけれども、今はむしろ、需要の面も弱含みではありますけれども、さっき申し上げたように、電力の供給の問題とか、サプライチェーンも八割ぐらいは回復しているみたいですが、相当、中国とかいろいろな国が買いあさってくるんですね。ですから、日本の供給基地というものも弱くなってくる可能性もある。さらに、原油高、穀物高、円高、そういう状況に置かれているわけですね。そういう中で、やはり、企業の供給能力を強化することがむしろ、今こそ問われている状況ではないかというふうに思っております。

 そういう中で、法人税率の引き下げの話が税制改正の中で、まだ通っておりませんけれども、五%引き下げるという話がありましたが、これでも実効税率の面においては、比較する国によって違いますけれども、まだまだ相対的に高い部分がございます。私はこれは大胆に引き下げるべきだというふうに思っております。

 さらに言えば、ちょっと心配なのは、復興の財政需要の議論の中で、所得税とか消費税とか法人税、こういったものが増税の対象になるという議論があります。私は、増税する議論というのは、それはそれでいろいろな意見があっていいと思います。しかしながら、今、日本の産業や企業が置かれている中、まさに財務大臣がおっしゃったように、産業の空洞化というものを一番恐れなければいけないときに法人税の増税はないだろうというふうに思いますが、その点についての見解を伺いたいと思います。

野田国務大臣 まず、復興の基本方針が先月末にまとまりました。この中に、産業空洞化を防止する観点から、「法人実効税率の五%引下げについては、与野党間での協議を経て、その実施を確保する。」としたところであります。だから、これは基本方針に入っています。

 一方で、委員御指摘のとおり、現在、衆議院の財務金融委員会において特例公債法とともにこの税制改正の議論も行われていて、その中身は、御指摘のとおり、法人実効税率の五%削減、中小企業の軽減税率をさらに三%削減、こういう内容が盛り込まれているということでございまして、今御審議をいただいているところです。

 その上で、復興財源の確保についての検討でございますけれども、これは政府税調において、これから議論をすることになります。復興の基本方針においては、基幹税を初めとして多角的に検討するということになっていますので、その検討をさせていただきながら、政府税調としては複数の選択肢を結論として出して、それを政府・与党で御検討いただいて、復興本部で決定をしていただいてというプロセスをたどることになります。

 まだプロセスはこれからでありますので、定まったことは申し上げられませんが、基幹税を初めとして多角的検討をするという中の複数の選択肢を、これからどう議論して、集約化していくかということだと思います。

北神委員 多角的検討という話ですから、ぜひ産業の空洞化の視点というものも強く持っていただいて、企業の置かれている環境というのは今非常に厳しい。特に私は、大企業ももちろん苦しいかもしれないですけれども、円高の中では割と、生産拠点を海外にたくさん持っていたり為替のリスクヘッジをしていたり、そういった意味では、むしろ中小企業が一番厳しい状況に置かれているというふうに思います。

 そういう中で、法人税の、特に中小企業の軽減税率とかこういったところについては、ぜひ御配慮をいただいて、企業の活性化というものをちゃんと視点に置いていただきたいというふうに思っております。

五十嵐副大臣 私の方から補足して。

 大臣がおっしゃったとおりなんですけれども、これから税調で審議をいたしますが、今実際に行われている税率より上げるという話は、これまで一つも出ていませんから。

 増税という言葉だけで反応されている方々がちまたにたくさんおられるんですが、今実施されている税率より上げるという話は、これまでも政府部内で一つも出ておりませんので、誤解のないようにお願いいたします。

北神委員 ぜひお願いをしたいと思いますし、そういった意味で、税制改正の中でそういう視点でも議論をしていただきたいというふうに思います。

 もう時間がなくなってきましたが、さっき言ったように、これは中長期的な課題だというふうに思っております。法人税の減税の話もしました。

 あと、私は、規制緩和というものもこれからどんどんやっていかないといけない。つまり、供給側の経済政策というものが極めて大事だというふうに思っております。

 規制緩和だったら、太陽光とか風力とか、こういった再生可能エネルギー関連の規制改革というものももちろん大事でありますし、空洞化の問題については、立地補助の手続とかも非常に煩雑だという声もありますので、こういったものをしっかり緩和していただきたい。

 最後の質問になりますけれども、今まで立地促進補助というものがございました。これも打ち切られたんですけれども、割と効果がありまして、予算の大体五倍ぐらいの設備投資を誘発したり、ちょっと数字がありますけれども、すそ野産業を含めて雇用創出効果が大体十一万人ぐらい生じている。条件として四年間以上の安定的な雇用維持というものが、その補助をもらえる条件になっております。

 こういったことを検討して、アメリカとかもこういうのをやっていますから、そういう企業の誘致戦争みたいになっておりますので、こういったものをぜひ第三次補正予算に大胆に入れ込んでいただいて、この長引くであろう円高、そしてさらには企業の置かれている厳しい環境の中で、経済対策をどんどん打っていただきたいというふうに思いますが、最後にその質問だけ聞かせていただきまして、終わりにしたいと思います。

海江田国務大臣 北神委員にお答えをいたします。

 確かに、委員御指摘のとおり、立地補助金は平成二十一年度の第二次補正、それから平成二十二年の予備費を使って行いました。効果は、先ほど委員からお話があったとおりでございます。

 私どもも、先日、七月の二十九日に取りまとめました復興基本方針、この中に、企業の立地環境を改善するため、サプライチェーンの中核分野や我が国の将来の雇用を支える高付加価値の成長分野における生産拠点等に対し、国内立地補助を措置すると書いてございますから、当然、これからの予算の中で、この方針をしっかりと具現化してまいりたいと思っております。

北神委員 ありがとうございました。

石田委員長 次に、山本幸三君。

山本(幸)委員 自由民主党の山本幸三でございます。

 きょうは財務金融委員会と経済産業委員会の連合審査会を開くことができまして、大変うれしく思っております。関係者の皆様方の御労苦に、心から感謝を申し上げたいと思います。

 早速、本題に入りたいと思います。

 今、超円高が進んで、みんな悲鳴を上げている。私は、何で今ごろ悲鳴を上げるんだと。今の円高は、円高になるべくしてなっているんですよ。そのことをきょう申し上げて、政府並びに日本銀行の対応をただしたいというふうに思います。

 このことを理解するためには、為替レートというのはどういうふうにして決まるのかということを一応整理しておかなきゃいけない。これは、大臣との間では何度もやりとりをしましたので、もう大臣は十分おわかりだと思いますけれども、ちょっと、きょうはお三方の見解も含めて聞きたいと思います。

 為替レートというのは、一緒くたにして議論をしているとわからなくなる。短期の要因と、それから中期、基本的にこれが一番大きいんだけれども、中期の要因と、それから長期の要因と、三つに分けて考えないと、為替レートの動きというのはよくわかりません。

 それぞれについて、どういう要因で決まるのかということについて、財務大臣と経済産業大臣と日本銀行総裁に、それぞれお伺いしたいと思います。

野田国務大臣 短期と中期と長期を分けることは一般的には難しいなと思っていましたけれども、財務金融委員会の山本ゼミナールを受講した記憶によりますと、短期は、ファンダメンタルズが変わるいとまもないぐらいの短い期間のレートの動き。たしか中期は、マクロ経済変数、ファンダメンタルズが変わるという中で完全雇用は達していない中でのレートの動き。長期は、これは多分五年以上というお話だったと思いますけれども、マクロ経済政策、いろいろな取り組みをしながら、ファンダメンタルズが変わって、一方で完全雇用も達しているという状況での動きという類型をされていたというふうに記憶をしております。そういう、大変勉強をさせていただきました。

海江田国務大臣 私も久しぶりに山本委員とお目にかかります。

 短期の円高ということでいえば、やはり一番直近では、アメリカの財政事情の問題、それからヨーロッパのギリシャ等を初めとした財政の問題ということがあろうかと思います。

 それから、中期は、やはり金利差ということも考えなければいけないわけでございまして、特に米国の金利との金利差ということで申し上げますと、やはりその金利差が詰まってくるということによる円高もあろうかと思います。

 それから、長期は、これもいろいろな構造がございますけれども、先ほど委員の、質問者のお話の中にもございましたけれども、やはり経常収支の黒字ということがあれば、これは当然のことながら、貿易で得た、例えばドルを円にかえるという動きもございますから、こうした、今思いつく限りでございますが、短期、中期、長期、それぞれの理由があろうかと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 為替レートの決まり方を考えていく上で、短期それから中期、長期というふうに、時間の長さを明確に意識して考えていくというアプローチの仕方というのは、これは非常に大事だというふうに思っておりまして、山本先生と同じ認識でございます。

 為替レートがどうやって決まるのかについて、これまで学者はいろいろな形で議論をしてきておりますけれども、しかし、為替レートの決定に関するいろいろなサーベイ論文といいますか、既往の研究成果を鳥瞰したそういう論文を見てみましても、あるいは教科書を見てみても、これで為替レートがすべて説明できるという理論は、残念ながらできていないという感じがいたします。

 ただ、そう申し上げた上で、大きな傾向としてどういうことが言えるのかというのが先生の御質問だというふうに思います。

 時間が長くなればなるほど、とりあえず長期という世界では、何らかの形で各国の経済のファンダメンタルズを反映して為替レートが決まってくる、そういうタイムスパンを長期というふうに考えているということだと思います。そのファンダメンタルズについて、ある人は経常収支を重視したり、ある人は内外の物価の動向を重視しますけれども、いずれにせよ、ファンダメンタルズ、経済の実態から離れて、長期では為替レートは動かない、為替レートは経済の実態を反映する方向に収れんしていく傾向を持っているというのが長期だろうと思います。

 一方、その対極にあります短期でありますけれども、これは、もちろんそうしたファンダメンタルズを遠くで意識はいたしますけれども、日々の為替取引は、これは取引のフローであります。したがって、時として相場観が一方方向に傾いて、相場がファンダメンタルズから乖離するということが起こり得るわけであります。

 取引の流れということを考えた場合に、一つは輸出入に伴う経常取引の取引でございますけれども、現在の為替市場では、それ以上に、資本取引、あるいはオフバランスの、デリバティブの取引も含めて、為替のリスクを移転する取引、この規模が非常に大きくなっているということでございます。

 そうした短期と長期をつなぐ間に中期というのがあるわけでありますけれども、この中期は、経済の実態、あるいは政策の動向、こうしたものを反映して決まってくるというのが私の理解であります。

 ただ、いずれにしても、冒頭申し上げましたとおり、為替レートについて決定的な理論があるわけではありませんから、私どもとしてはマーケットの状況を丹念に見ていくということを心がけていきたいというふうに思っております。

山本(幸)委員 野田財務大臣は、短期、中期、長期の定義をしただけですよね。海江田大臣からは、ある程度、その要因についての話がありました。白川日銀総裁、すべてを説明できる理論はない。まあ、それはそうでしょう。だけれども、かなりの程度説明できる理論というのは、ある程度確立しているわけですよ。教科書にも書いていますよ。同じ先生に習ったあれとは思えない答弁だ。

 答えだけ申し上げますと、短期は、要するにフローじゃないんです、ストック。フローが変わる時間がないんだから。そうすると、ストックの動きについて人々がどう予想するかによって決まるんですよ。株価と一緒だ。だから、何らかの事件が起こって、それに対して為替市場の人々が反応する、その予想、為替市場の人々が期待を持ってどのような行動をとるかということで決まるんですよ。

 日本の対外純資産というのはプラスで二百五十一兆円ぐらいあるんですから、常にそれだけの投機が起こっている。それをバランスさせなきゃいけない。日本の市場参加者は対外資産を、外貨建ての資産をどう買おうとするかという行動をしている。それから、海外のいろいろな機関投資家、中央銀行を含めて、日本からの負債をどうしようかとしている。

 ある事件が起こったときに、日本の市場関係者は対外純資産についてシュリンクする。リスクをとりたくない、これはちょっと危ないと思うような事象が起きたとき。あるいは、海外の人が日本の負債をとりたくない。これが起こったときに円高になるんですよ。

 だから、短期というのは株価と同じように資産、アセットとしての動きを考えなきゃいかぬし、それに影響を与えるのは、ある事象に基づいて人々がどういう期待感の変化をもたらすかによって決まるんですよ。これはなかなかコントロールできない。したがって、それに対しては対応はなかなか難しい。介入が考えられるけれども、それについては後ほど申し上げますが、さっき今井さんが非常にいい指摘をされました。そういう介入の効果がどうなるかということと影響する。

 それから、中期が一番大事なので一番最後に言いますが、長期というのは、かなり長い期間の趨勢的な経済の変数の動きなんですね。

 これは、物価、デフレであるかインフレであるかが続いているかどうか、あるいは、一番関係するのは交易条件なんですが、交易条件がどういうふうに変化していくか。それはすなわち、企業の生産性がどういうふうに上がってくるか、日本の経済の実質面での成長率がどうなるかによって決まってくる。

 結論から言えば、交易条件が悪くなればその国の通貨は安くなりますよ。逆に、よくなると強くなる。したがって、輸出産業の生産性が高いというのは交易条件が悪くなる一つの要因だから、これは円安の効果になるんですよ。それから、中国みたいに成長率が非常に高い国が周辺にあると、交易条件が悪化して日本の円は弱くなる。

 さっき経常収支の話がありましたが、経常収支の話は、まさに資本取引があって非常に難しい話があって、これはトランスファー理論というのが行われていて、そう簡単じゃないんですね。結論から言えば、自国と他国の輸入弾力性が、足した総和がマイナスだったら、むしろ皆さん方の常識と違うことが起こる。つまり経常収支の黒字国は円安になる。長期的にはそういうことが起こってくるということが言われています。これは長い話だから、そう簡単にいかない。

 問題は中期。中期はまさに経済政策によって決まるんです。

 中期理論の基本は、私は何度も野田財務大臣に申し上げましたけれども、今日の中期理論でどの教科書も採用している理論というのは、マンデル・フレミング理論ですよ。

 マンデルという人とフレミングというノーベル経済学賞をとった学者が言っている理論でありまして、簡単に言えば、変動相場制のもとでは、財政政策を使うと、金利に上昇プレッシャーがかかって、金が入ってきて、円高になって、効果がない。逆に、金融緩和政策をとると、金利が下がって、それから円安になって、二重に効果があるという理論であります。つまり金融政策が、為替レートを強くするか弱くするかに、根本的に大きな影響を与えるわけですよ。

 そこで、お配りした資料をちょっと見ていただきたいんです。

 さっきの今井さんの話とほぼ適合するんですが、今井さんは二〇〇八年からの短期のところをとって議論していましたが、要するに、過去十年を振り返って、日本銀行が何をしてきたかを見れば一目瞭然なんですよ。日本銀行は何もしていないんだ。

 二〇〇〇年のマネタリーベースを一〇〇とした場合に、今日、この三月の震災があったからちょっとマネタリーベースをふやしたけれども、あれがなかったらほとんどふやさないでいっているよ。それでも一〇〇が一五〇になっただけだ。それに比べて、中国は二〇〇〇年から今日に至るまでにマネタリーベースを約六百二十倍ぐらいに、一〇〇を六二〇にした。アメリカは四五〇ぐらいだ。そして、イギリスと韓国が大体二八〇ぐらい。ユーロ圏が二五〇ぐらい。

 これを見れば一目瞭然なんですよ。為替レートというのは各国の通貨の相対評価なんだから、円が高くなるに決まっているじゃないですか。

 それを日本銀行は、白川総裁は、我々は潤沢に資金を供給しています、その証拠は名目GDPに対する比率が一番高いですと、ばかなことを言っているけれども、名目GDPというのは、日本は過去二十年間、全然変わっていないんだから。ほかの国は、アメリカは二・五倍、中国は七倍になりましたよ。順調に名目成長率が伸びていれば、そんなことにならないんだ。だから、そんな説明は私にはきかないんだ。ごまかすな。

 何にもやっていないんですよ、日本銀行は、お金をふやしているって。だから、円高になるんですよ。これを転換しない限り、円高はどんどん続きますよ。

 だって、これから復興のための財政支出がどんどん出ていくわけだ。もう出だした。財政支出を拡大すれば為替レートは円高になるというマンデル・フレミング理論どおりに動いているんですよ。そうでしょう。それをひっくり返すためには、よっぽど思い切った金融緩和、マネタリーベースを伸ばさない限り、できませんよ。これをやる覚悟があるかどうかが今問われているんですよ。

 さっき言ったように、こういう状況になったときに円高傾向を円安傾向に変えるというのは大変なことなんだ。介入も、ちょこっと介入したってききませんよ。三月のときがそうだったように、すぐ終わる。それから、日銀があした、あさって、ちょこっと、また言い逃れみたいに少し緩和するかもしれないけれども、そんなことじゃきかないんだ。一九九五年、さっき今井さんが言いましたね、あれぐらいの覚悟を持ってやらなきゃだめですよ。

 この点について、財務大臣、経産大臣、どう思いますか。

野田国務大臣 短期的な対応については、今できることをしっかりとやっていくことが大事だというふうに思います。その意味で、マーケットを注視しています。

 ただし、中期にかかわることは、委員の御指摘のとおり、さまざまなやるべきことをやらなければいけないと思いますが、マンデル・フレミング理論、以前も御講義をいただきました。そういう有力な説があるということも、まさにレートには金融政策が一番影響があるというその理論もお示しをいただきました。そのときに日銀総裁は、たしか、さまざまな学説がある中で、その中で現実的な対応をするというお答えがございました。

 そのやりとりは大変興味深く拝見をさせていただきましたけれども、今、私が短期でできること、そして中期で政府全体で取り組むこと、これは政府全体で心を合わせて対応していきたいというふうに思います。

海江田国務大臣 私が先ほど中期は金利差だということを申し上げたのは、山本委員の考え方に近いわけでございます。言い方が若干違いますけれども、同じようなことを考えているということでございます。

山本(幸)委員 海江田大臣がおっしゃった金利差というのは重要なんですね。金利差は、さっき縮んだと言いましたけれども、実は日本の方が高いんですよ、実質金利で見れば。日本はデフレなんだから、デフレのところを計算すれば、日本の方が実質金利は高いですよ。これは予算委員会で白川さんに、私が証拠を示して認めさせたから、文句を言わないと思いますが。

 野田大臣、そんな、できることはやりますだなんて言っているようでは変わりませんよ。溝口介入に負けないぐらいの介入をやるぐらいの覚悟はないんですか、あなたは。どうですか。

野田国務大臣 いわゆる二〇〇三年の溝口介入は、持続的、長期にわたり、そして多額のお金を使った介入をしたという事実は、よく勉強をさせていただいております。

山本(幸)委員 勉強するだけじゃだめなんだ、やらなきゃ。しっかりやってくださいよ。まあ、やるという覚悟を示したんだというふうに理解しておきますがね。

 この資料の一ページがすべてを示していて、日本銀行が過去十年間、何もしていない。唯一、少しふえたのは、福井さんがやった量的緩和のときだ。それから三月十一日以降にちょこっとだ。

 白川さんは、量的緩和については、福井さんがやるときも一番反対した人だと聞いているんですが、この結果、日本は、経済は停滞、株は安くなっちゃった。そして、最後のページは、デフレが続いている。

 このデフレの数字を見ると、日銀は実に見事にデフレでコントロールしているんだ。つまり、コアコアCPIはマイナス〇・五、コアでまあゼロ。

 あなたはそういう考えで金融政策をやっているんですか。

白川参考人 たくさんの問題意識、御質問をいただきましたので、短い時間で全部にお答えするというのはなかなか難しいような感じがいたしますけれども。

 まず、日本銀行としては、現在のこのデフレの状態、これからできるだけ早く脱却し、物価安定のもとでの持続的な経済成長の経路に復帰することが極めて重要な課題だというふうに認識しております。そうした強い認識のもとに、先ほど申し上げました包括緩和を中心として、強力な金融緩和を推進しております。

 それで、先生の方から、多少、理論的な整理を踏まえて、日本銀行の政策に対して御批判がありましたので、少しお答えさせていただきます。

 私自身は、先生と同じように、さまざまな理論、これは非常に大事にしております。しかし同時に、私自身は実務家、政策当局者でありますから、理論の不完全な現状において、特定の理論だけに依拠して政策を運営していくというのは、国民の多くの方から見て、やはり不安になってくるというふうに思います。私自身は、理論に対してはオープンで、しかし、現実の経済、金融をしっかり見て、政策を、日本銀行の使命をしっかり認識して、遂行したいと思っています。

 先生のお配りになったマネタリーベースの図表でございますけれども、これは、こういうグラフで比較をするときにいつも起こる問題ではもちろんございますけれども、一つは、どの時点を出発点にとるかということで、実は随分イメージが変わってまいります。

 日本は、バブル崩壊後、現在先進国が経験しているような問題を真っ先に経験し、その結果、日本銀行は、一九九〇年代後半から、実は日本銀行のバランスシートを大きく拡張し、拡張した姿の中で若干の変動はございますけれども、それを現在もキープしているということで、最近時点のみに焦点を当てた場合には、なかなか日本銀行の積極さがうまくグラフに浮かび上がってこないということが一点。

 それからもう一つは、この先生のグラフは、これはマネタリーベースの実額でございます。これを、出発点を一〇〇にして計算していますから、仮に、名目GDPとの比較でもって、マネタリーベースが少ない場合でも、ゼロに近い数字が上がった場合にはそれが一挙に大きな倍率になる、これはもう皆さんがふだん、日常経験されていることでございます。

 したがいまして、やはり、マネーというものが、中央銀行の供給するマネーがどの程度経済を刺激する効果があるのかということは、やはり、GDPとの比較でもって、その比率がどれぐらい変化していったのか、それから、現在どういう水準を維持しているのかということをあわせ考える必要があると思います。

 こうした水準で見た場合に、累積的な対GDP比でのマネーの供給の比率の上昇幅というのは、日本銀行が一番大きいし、それからその水準も日本銀行が一番高いということでございます。

 これはマネタリーベースに関する事実関係でございますけれども、一方、マネタリーベースを先生が御指摘のようにふやした場合に、為替市場との間で関係があるのかということでございます。

 もちろん、為替レートはさまざまな要因で変動しますから、あるときには両者が相関しているように見えるし、あるときは全く逆の動きを示すことがあります。しかし、先生のグラフの中で取り上げています二〇〇〇年代以降に限って見ますと、マネーサプライ、日本のマネタリーベースが一番ふえましたのは、先生御指摘の時期でございますけれども、二〇〇二年から二〇〇五年にかけて日本銀行のマネタリーベースは大きく増加しました。しかし、この時期は振り返ってみますと、日本は円高の時期でございました。

 量的緩和を解除した二〇〇六年三月以降、特に二〇〇七年にかけて、当然マネタリーベースは減りましたけれども、振り返ってみますと、この時期は、一九九〇年代後半以降で日本が最も円安になった局面でございます。つまり、マネタリーベースの伸びとそれから円・ドル為替レートについては、むしろこれは逆の方向の動きが見られるということでございます。

 私自身は、マネタリーベースが関係がないということは、今、全体として有意な関係が見られないということを申し上げましたけれども、しかし、日本銀行の金融政策という意味では、これは金融緩和政策を強力に推進しております。

 今、短期金利がゼロのもとで、しかしどうやって緩和効果を生み出していくかということについて、これは我々自身、必死になって考えてまいりました。

 その方法の一つが昨年の秋に導入いたしました包括金融緩和で、さまざまなリスク性の資産を買い入れることを通じて、実際に、民間の経済主体が資金調達をする金利に少しでも働きかけていくという努力をあわせて行っております。

 いずれにしましても、先生の問題意識も踏まえました上で、中央銀行の責任ということをしっかり受けとめた上で、政策を推進してまいりたいと思っています。

山本(幸)委員 うそっぱちばかり言わないでくださいよ。どこの時点をとってそれから出す、それは変わることはありますよ。だけれども、あのリーマン・ショックが起こる前、二〇〇七年から比べてみたら、さっき今井さんが示したとおりじゃないですか。日銀が全然やっていないじゃない。それだけ見たってやっていませんよ。

 それから、GDPとの比率でやるというのはやめなさい。日本はあなたのおかげでデフレで、白川デフレだよ。それで全然成長していないんだよ。成長していないGDPをもとにして比率が上がりましたなんて、喜ぶような話ですか。恥ずかしいよ、そんなのは。そう思わないの。

 それから、ゼロ金利のもとでと言っていたけれども、さっきから言っているように、予算委員会であなたとやり合ったけれども、実質金利は高いじゃないか、日本は。そうでしょう。

 全然、緩和的なことなんかやっていませんよ。それを何でもっとやらないんだ。今、日本に円高をもたらしているのはあなたの責任なんだよ。そう思わないか。

白川参考人 為替レートの影響については、日本銀行として、先ほど来申し上げていますとおり、注意深く見て、適切な金融政策を心がけていきたいというふうに思っております。

 多くの論点につきまして、多少重複、繰り返しになりますので、そこの部分については避けますけれども、今、具体的な話として二つございました。

 一つはリーマン・ショックとの比較でございます。

 リーマン・ショックは、思い起こしてみますと、これはアメリカの金融システムがほとんど崩壊に瀕する、そういう局面で、どの金融機関も資金繰りに大きく不安を持つという状況、それだけ金融システムが壊れたわけであります。そういう状況を修復するためにお金を供給しないといけなかった、したがって、マネタリーベースの伸びは高かったということであります。

 日本の金融機関は、もちろんリーマン・ショックで大きな影響を受けましたけれども、しかし、欧米の金融機関に比べますと、金融システムの傷みははるかに小さかった。したがって、金融機関が、アメリカの金融機関のように資金を調達する、資金を抱え込むニーズが高くなかったということのあらわれでありまして、むしろこれは、金融システムの傷つき方が大きかったアメリカは大きくマネタリーベースがふえざるを得なかった、そういう事態に陥ったということであります。

 それから、実質金利について御説明がありました。為替レートに影響を与える金利は、これは主として長期の金利であります。長期の金利水準から差し引くべき物価は、これは予想物価上昇率であります。いろいろな専門機関が長期的な予想インフレ率を出しております。どの予想インフレ率の数字がいいのか、これ自体はもちろん若干の議論はあります。しかし、エコノミストのコンセンサスフォーキャストというもので仮に実質金利を計算しますと、日本の実質金利の方が高いという事実はございません。

 先生が依拠されている方法によると、日本の方が高いという計算結果、先生は多分そういう御指摘で、もちろん、そうした主張もあり得ると思いますけれども、しかし、よく使われていますエコノミストの中長期的な予想インフレ率を差っ引くと、日本の方が高いというわけでは必ずしもないということでございます。

山本(幸)委員 そんなことはありませんよ。あなたはその予想したみたいなものを聞いたと言っているけれども、私がこの前議論したように、物価連動債でくるものとか、ブレークイーブンで出てくる金利とか、あるいはGDPデフレーターを見れば、日本の方が高いんですよ。それは数字の話だから、今度、別にやります。

 それから、リーマン・ショックのときは、米欧は金融システムが傷んだからやった、日本はそれが足らなかったからやらないで済んだと、あなたはその言いわけばかりずっとやっているんだけれども、そのために日本が一番経済が落ち込んだんですよ。そして、一気に円高がそこから進んだんじゃないですか。そうじゃありませんか。

    〔石田委員長退席、田中委員長着席〕

白川参考人 リーマン・ショックとの比較でございますけれども、先ほど申し上げましたのは、アメリカとの比較でございます。

 日本銀行自身は、リーマン・ショックのときに積極的な金融緩和を展開しまして、マーケットに対して潤沢に資金を供給いたしました。その量は、これはGDPとの比較ということではなくて、実額でもって見ても金額を大きくふやしました。したがって、日本銀行が出していないということではございません。

山本(幸)委員 リーマン・ショックのとき、出していないというのは、さっきの今井さんの数字で明らかじゃないですか。数字を見れば明らかなんですよ。この数字を見て、やっています、出していますなんて、だれが信じるんですか。

 両大臣に申し上げておきますが、これからよほど政府が腹を決めて日銀に金を出させなければ、円高がどんどん進みますよ、マンデル・フレミング理論で、これからどんどん復興、財政出動は拡大していくんだから。そして、デフレがどんどん進んで、恐慌状態になりますよ。それを正す覚悟、介入を含めて、日銀にやらせるという覚悟はあるんですか。

 財務大臣に最後に聞いて、終わります。

野田国務大臣 日本銀行と緊密に連携をとって、委員が御懸念を持つような、そういう危機的な状況にならないように、覚悟を持って全力を尽くしていきたいと思います。

山本(幸)委員 終わります。

田中委員長 以上で山本君の質疑は終了いたしました。

 次に、西村康稔君。

西村(康)委員 経済産業委員会、自由民主党の西村康稔でございます。

 きょうは、財金委員会の理事の皆様方の御配慮をいただきまして、このような円高対策の合同の質疑ができることに、本当に感謝を申し上げたいと思います。

 そしてまた、ただいまは財金の、我らが自民党が誇るエコノミスト、山本幸三委員の高尚な、理論的な議論を聞かせていただきまして、それを踏まえて、私は、現場からの、地べたの現実的な政策について、ぜひ御議論をさせていただきたいと思います。

 まず、野田大臣にお伺いをいたします。

 震災直後、三月十一日に震災がありました。そして、たしか十八日だったと思いますけれども、介入をされた。これは非常に小さな金額で大きな成果を上げた。私は、この瞬間的な判断、瞬発力は、野田大臣あるいは日銀、この協調を含めて、高く評価をしたいと思います。

 しかし、今回は何ですか、今回は。なぜ介入をやらないんですか。私は、アメリカが債務上限をめぐってがたがた議論があって、合意する、しない、合意した瞬間なんかすごいチャンスだったと思いますよ。なぜ今回、介入をまだやらないんですか。

野田国務大臣 三月十八日の協調介入については評価をしていただいて、ありがとうございます。

 三月十一日の発災があって、放置すればまさに経済的な被害が二次災害になるという状況でございましたので、介入を決意し、各国に呼びかけて御協力をいただきました。G7の連帯があったということで、大変よかった結果だと思います。

 今回なぜ介入しないのかという御指摘でございますが、介入する、しない、あるいは、今、タイミングにかかわるお話でございましたけれども、具体的なことについてはコメントを控えさせていただきたいというふうに思います。

西村(康)委員 野田大臣は、ある意味、私の兵庫県、赤穂浪士の大石内蔵助のような風貌、雰囲気、親分肌のところがありますので、やるかやらないか、まあ、やらないような顔をしてやる、そういうふうに受けとめましたので、ぜひ。大事なことは不意打ちでありますから、不意打ち。今やると言ってやっても、それは効果がないですから、言わない。やらない雰囲気を出しておいていただいて、やっていただきたいというふうに思います。

 そして、日銀の金融政策についてこれから議論をしていきたいと思いますけれども、アメリカで債務上限の合意が最終的になされました。一瞬考えると、合意がなされたわけですから、ドルが高くなるんじゃないかというふうに思うわけでありますが、しかし、実際には逆に動いた、円が高くなる。この理由と、これに対してどう対応するかについて、ぜひ議論をしていきたいと思うんです。

 まず、日銀総裁に、アメリカ経済の足元、今後の見通しについてどういうふうに見ておられるのか、このことについてお伺いしたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 アメリカ経済のことしに入ってからの動きを見てみますと、最近発表されましたGDPの数字でも確認されますとおり、これは成長が減速してきております。

 アメリカの当局者それからエコノミストが挙げている要因の一つは、ガソリン価格が上がって、消費者の実質的な購買力が落ちてきているということでございます。それから二つ目は、日本の震災以降は、日本のサプライチェーンの寸断の影響で、アメリカの自動車メーカー、現地における自動車の生産、これに影響が出たということを挙げております。こうした要因で一時的に減速をしているというのが、比較的最近まで、アメリカのエコノミストあるいは当局者に多い見方でありました。

 日本銀行自身はどういうふうに考えているのかというお尋ねでございますけれども、日本銀行自身は、アメリカの経済を見ていく上では、二〇〇〇年代半ばのバブルが崩壊した後の大きなピクチャー、絵の中で、やはりこれを見ていく必要があるというふうに考えています。

 日本のバブル崩壊以降もそうでしたけれども、バブル期に大きく借金が積み上がり、あるいは過剰なストック、これが積み上がりますと、この調整には時間がかかる、その調整が終わるまではなかなか経済が本格的には回復しないということを経験いたしました。その間に金融政策あるいは財政政策のてこ入れがあって、一時的に経済がピックアップすることはもちろんあったわけですけれども、しかし、なかなか本格的には回復しにくかったということでございます。

 現在のアメリカを見てみますと、アメリカの中でも特に家計部門がそうでございますけれども、家計の債務が非常に高水準でございますし、その問題の裏側にあります住宅価格の調整、これもまだ終わっていないということでございます。

 したがいまして、こういう下押し圧力がかかり続ける経済というのは、どうしても上には弾みにくく、下には振れやすいということになりやすいというのが一般的な傾向だと思います。ただ、大きなピクチャーはそうでございますけれども、この先々の展開については、これはデータに即して丹念に見ていく必要があると思っています。

 繰り返しになりますけれども、大きな経済のメカニズムを念頭に置きながら経済を見ていく、アメリカ経済についても見ていく必要があるというふうに考えております。

西村(康)委員 今、総裁から幾つかのアメリカ経済の課題、そして多くのエコノミスト、足元が弱含んでいる、一時的に減速しているというお話もありました。

 そうすると、アメリカが経済政策を打つとすれば、基本的に財政政策か金融政策しかないわけですね。ところが、財政政策は、今回債務上限が合意されましたので、もう財政出動はできにくい、できない、つまり、金融政策しかないわけですね、アメリカは。

 バーナンキ議長は、七月十三日に、これは慎重な言い回しでありますけれども、いわゆる量的緩和の第三弾の実施にも言及をしております。しかも、八月九日には、FOMC、まさに連邦公開市場委員会が開かれて、量的緩和になるかどうかは別として、緩和的な政策がとられるかもしれない。

 多くの市場の関係者はこれを予測して、日銀は何もやらない、一方で、アメリカは財政政策に足かせがかかって金融政策しかない、その中で金融緩和をやる、この中で円高にぐっと動いている。この見方について日銀総裁はどう思われますか。

白川参考人 海外の中央銀行でありますFRBの金融政策それ自体について、私の立場で詳しいコメントをするということは、立場上は控えた方がいいというふうに思います。

 そう申し上げた上で、日米の金融政策について若干の御質問にお答えしたいと思います。

 FRBは、いわゆるQE2と呼ばれる政策を昨年の秋に導入したわけであります。これの効果をどういうふうに評価するのかについて、政策当局者あるいはエコノミストの間でもいろいろな議論がなされております。

 以前、名前を失念いたしましたけれども、ほかの方の御質問の中にもございましたけれども、昨年、QE2を行った後の展開を見てみますと、商品市況が上がり、新興国の経済が強くなってくる、その結果、新興国で活動するアメリカの企業の株価が上がってくる、それはアメリカの消費者にもプラスの影響があるという形で、一方でプラスがありました。しかし、同じQE2の結果として、商品市況が上がるということで、むしろアメリカの家計の購買力を下げたという面もございまして、ネットの効果をどのように評価するかについてはいろいろな議論があると思います。

 ただ、いずれにしても、FEDは、先々の政策についていろいろな可能性を自分たちは持っているんだということを言っているわけであります。

 FEDはこの六月末にQE2を終了させたわけですけれども、日本銀行自身は国債の買い入れも含めて現在も行っております。つまり、アメリカの方は現在金融緩和をここでとめているわけですけれども、日本銀行はその後も金融緩和を強力に推進しているという現在進行形であります。

 先ほど先生が、日本銀行は金融緩和をやっていないという趣旨の御発言がありましたが、日本銀行は現に強力に今展開をしています。今後ともしっかり日本の経済を支えていくべく努力をしていきたいと思っています。

西村(康)委員 やっていないという言い方はちょっと撤回をさせていただきますが、やり方が甘い、変化が少ないということを申し上げたいと思います。

 八月九日、場合によって、大幅な緩和、量的緩和を出されたらさらに円高が進むわけでありますので、これは去年も同じことが起こりました。去年も夏に日銀が行動をとらずに、秋にかけて急激な円高になって、私は、昨年十月、予算委員会で同じ質問、介入すべきだという、十カ月ぐらい前に質問させていただきました。

 あした、あさってとあるわけですけれども、本当なら、メッセージを出す意味でも、きょう、一日前倒しする、きのうやる、そのぐらいの意欲を持ってやっていただきたかったわけですけれども、もうきょうですから、あした、あさって、ぜひ大幅な緩和、さらなる対策を打ち出していただきたいと思いますけれども、そのことについてお話をしたいと思います。

 金利差の話はもうありましたので、資料をお配りしておりますけれども、二ページ、三ページ、要は、短期金利はゼロにほとんど張りついていますからもう下げられない。長目の金利をどう下げるか。そのための手段が、いわゆるリスク資産の買い入れ、この基金、この政策だと思います。

 三月十四日にこの枠をふやされて、資料の四ページにお配りをしておりますが、四十兆円とされています。これは数日前の七月末現在の数字ですけれども、四十兆のうち、もう三十七兆近く、ひょっとしたらもう少し、数日たっていますから買われているんだと思いますが、この枠をさらに大幅に、十兆円なりふやすということ、買い入れ枠をふやす、さらなる金融緩和をするということが必要だと思いますけれども、総裁、いかがですか。

白川参考人 金融政策決定会合、先生御指摘のとおり、あした、あさってとございます。

 日本銀行としては、現在の経済、金融の状況を注意深く点検した上で、日本銀行の使命を達成する上で最も適切な政策を行っていきたいというふうに思っております。政策委員会の決定は、これは日本銀行法の定めによって、私が決めるということではなくて、これは九名の政策委員の議論の結果これを決めていくということでございますけれども、どの政策委員も日本銀行の使命をしっかり踏まえた上で政策運営をしていく覚悟でございます。

西村(康)委員 アメリカが緩和を打ち出す前に、ぜひ大胆な政策を打ち出していただきたいと思います。

 特に、この下の二つの、いわゆるETF、J―REITと呼ばれる指数それから不動産投資信託、これの買い入れ枠をそれぞれ九千億、一千億とされていますが、まだ三千四百億、二百二十七億とあります。それぞれマーケットが二兆円とか三兆円とか小さいですから買いづらいというのもよくわかりますけれども、これは実経済にも直接影響がある。

 つまり、REITは不動産の証券化したものですから、これを買うことによって実際に不動産市場も活性化する効果がある。ETFは日経平均なりを指数としているわけですから、これを買えば実の株価にもプラスの影響があるということで、単なる緩和だけじゃなくて、実経済にプラスがあるものとして、ぜひ、この買い入れをさらに進めていただくと同時に、枠をふやしていただくことをお願いしたいと思いますし、恐らく、マーケットが小さいということで、なかなか買えないということを言われるんだと思います。

 きょう、国交副大臣、池口副大臣に来ていただいております。ぜひ、このJ―REITをもっと組成を、組成していけばいいわけですから、いろいろな不動産の開発案件を組成していけばいい、あるいは既にあるJ―REITも新しいものを買えばいい、このための大胆な支援策、そしてまた、日銀がそれを買い入れていく、金融緩和と同時に実経済も動かしていく、一石何鳥のいい政策だと思うんですけれども、このためにJ―REITを活性化させていく大胆な政策をぜひ打ち出していただきたいと思いますけれども、いかがですか。

池口副大臣 J―REITの促進策ということで御質問でございますが、これは金融庁と共管でございますが、私の方で国交省としての考え方をお話しさせていただきます。

 国交省としては、J―REIT市場の拡大というのは、経済の活性化並びに都市再生の観点から非常に重要であるというふうに考えておりまして、御質問のありましたように、日銀さんも、今、J―REITの投資口を買い入れておるということは、大変重要な下支え効果があるというふうに思っております。

 国交省の今までの施策ですが、一つには……(西村(康)委員「簡潔に」と呼ぶ)はい、わかりました。

 二十三年度税制改正で、J―REITが不動産を取得した場合の不動産取得税の課税標準の特別措置というのをやっておりまして、五分の三を控除しているということで買いやすくなっているというふうに思っておりますし、海外投資家からの増資についても、環境整備をして、増資をしやすい仕組みにしております。

 足らざるところにつきましては、今後とも、金融庁と連携しながら、さらに検討を進めていきたいというふうに思っております。

西村(康)委員 ぜひ、大胆な政策を、これから税制要求なりいろいろな経済対策をやる中で打ち出していただきたいと思うんです。

 今おっしゃったのは、不動産の控除する額が、従来三分の二だったのが五分の三に減っていますので、これは逆行していますから、控除できる額が減っているわけですので、ぜひ、これは財務大臣、細かな話ですけれども、不動産市場の活性化、やはり、物が動いていく、土地が動いていく、経済活性化していく、非常に重要な観点ですので、そして、日銀の政策と相まって不動産市場を活性化していく、そのための大胆な政策を打ち出していただきたいと思いますけれども、いかがですか。

野田国務大臣 重要な観点での御示唆だと受けとめさせていただきまして、国交省とも、もちろん、国交省がよく御検討いただいた上で協議をさせていただきたいというふうに思います。

西村(康)委員 ぜひ、各省連携していただいて、いい政策を打ち出していただければと思います。

 池口副大臣、もう結構でございますので。

 日銀総裁に、引き続き、この買い入れ、特に長期国債の買い入れについてお伺いをしたいと思います。

 資料の六ページにお配りをさせていただきました。総裁が先ほど来おっしゃっていますGDP比、GDPのとり方がおかしいという山本委員の御指摘もありましたけれども、先ほどの今井委員の表でも、あるいは私のこの六ページの表でも、GDP比で、下がアメリカでありますけれども、たまたまクリーブランド連銀のホームページからとりましたのでアメリカの買い入れ額ですけれども、確かにこの比率では大きいです。恐らく、資産、BSのバランスを見ても、世界で最もたくさん買っているということを先ほどおっしゃっていましたので、そのとおりだと思います。

 しかし、市場は、水準を見るんじゃなくて変化を見るわけですね。どう変化しているか、政策がどう変わるか、今後の期待、予想をするわけであります。

 日銀は、確かに高い水準で買っています。しかし、ちょっとしか変わらない。どうせそんなに変わらないだろうと。銀行券ルールとかなんとか、もう関係ないです。もっと大胆にやらないと、アメリカは、これはQE2ですけれども、一たんやめましたけれども、これをさらに第三弾をやられると、ぐっとまた上に来るわけであります。この変化率を市場は見るわけであります。

 御専門家でありますから私が言うのは僣越でありますけれども、ぜひ、まさにサプライズでいいんです、大胆に長期国債の買い入れをしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

白川参考人 お答えいたします。

 日本銀行は、中央銀行として、大胆に、積極的に政策運営を行っているという自負を私は持っております。

 今先生のお配りのこのグラフは、繰り返しになりますけれども、二〇〇七年を出発点にしております。アメリカが問題に直面したのは、まさにこの二〇〇七年にサブプライムローン問題が起きて、ここからアメリカは問題に取り組み始めたわけであります。日本は、不幸にしてこれよりも前に問題が起きて、日本銀行はもっと早くから積極的に取り組んだわけでございます。

 今先生が、これは水準ではなくて変化なんだという話がございました。この点について、私の意見ということではなくて、FRB自身、あるいはバーナンキ自身がどういうふうに答えているかといいますと、自分たちのQE2の効果は、これは変化ではなくてストック、現在自分たちがこれだけの国債を持っている、このストックに注目をしてほしいということを繰り返し言っております。

 私自身は、もちろん変化を否定するわけではございません。ただ、FRB自身は、むしろストックの方を重視しているということでございます。

西村(康)委員 それはいいんです、ドルが安くなっているんですから。アメリカの経済、製造業にとってはいいわけですから。成功している人の話を聞いて同じだと言ってもだめですよ、日本は今円高をとめなきゃいけないんですから。

 過度な円高だという意識がないんですか、総裁。その点をお伺いしたいと思います。

白川参考人 先ほどから申し上げていますとおり、現在の円高、この局面での急激な円高ということは、日本経済に対してマイナスの影響を及ぼし得るということで、非常に注意深く見ております。したがって、私自身が円高に対して意識がないということでは全くございません。

 これは純粋に、先生の御質問の中で、アメリカの政策について変化と水準という話がございましたので申し上げただけでありまして、日本銀行自身は、積極的に、アグレッシブに行動しているということでございます。

 それから、もう一点だけ申し上げますと、日本銀行は、このグラフにも出ていますとおり、ストックという面でも、それから、今や実はフローの金額でも、日本は一番国債を買っております。ただ、これが通貨の調節という目的を離れて、もっと別の目的に、例えば財政赤字のファイナンス、あるいは、よくマネタイズという言葉が使われますけれども、そうした目的に日本銀行の国債買い入れが使われているというふうな認識がもし生まれますと、今度は長期金利自体が上がってまいります。

 したがいまして、日本銀行としては、最終的な経済のバランスをしっかり意識して責任を遂行していきたいと思っています。

西村(康)委員 おっしゃっていることはわかりますけれども、しかし、現実、円高がこれだけ進んで、それがとまらない。しかも、ただでさえ、経産大臣がよく言われますよ、五重苦、六重苦。その中で、電力の安定供給まで不安になってきた、そして電力料金が上がる、そこに来て急激な円高。このままだと完全に空洞化を加速しますよ。

 FRBの政策目標、これは連邦準備法の中では、五ページに書いていますけれども、雇用の最大化というのを入れています。彼らの政策目的の中に、物価の安定だけじゃなくて、お配りした資料の五ページにあります、雇用の最大化。しかし、日銀法には雇用の最大化はないんです。物価の安定しかないんです。

 つまり、総裁は物価の安定を第一に考え、空洞化して雇用が失われること、その意識がないんじゃないですか。もうやっている、やっている。これは山本委員から先ほどいろいろな御指摘がありましたけれども、もっと大胆にやらないと、日本経済は本当に空洞化して、めちゃくちゃになってしまいますよ。雇用がなくなってしまう。

 私は、日銀がやらないなら、日銀法を改正して雇用の最大化を入れるべきだと思います。総裁、いかがですか。

白川参考人 日本銀行の金融政策の目的、使命については、国会でお決めになりました日本銀行法に定めておりまして、正確に申し上げますと、物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということでございます。国民経済が健全に発展していく、もう少し現代的な言葉で言いますと、経済が持続的に発展していくためにはさまざまな条件が必要でありますけれども、中央銀行は、主として物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に貢献するようにというのが現在の法律の定めであります。

 その際に、日本銀行は物価だけを見て、雇用も含めまして実体経済の動きを見ていないということではもちろんございません。今先生が御指摘のとおり、例えば円高がこの局面でさらに空洞化のリスクを加速する、そういう可能性がある、その結果、経済がさらに下押す可能性があるではないかという問題意識は我々も持っております。これは先ほど、ほかの議員の御質問に対してもお答えいたしました。そういう認識も持った上で、政策をしっかり行っていきたいというふうに思います。

 ただし、この空洞化という問題これ自体は、これはさまざまな要因があります。私として、この為替レートを通ずる影響については、中央銀行という立場ではこれはもちろん十分に目配りをしていますけれども、日本全体としてこの問題にしっかり取り組んでいくこともあわせて大事だというふうに思っております。

西村(康)委員 この「国民経済の健全な発展」の中に雇用の問題意識も入っているという御発言だったと思います。それも見ながら進めているということだと思いますが、総裁のいろいろな発言、講演も読ませていただいていますけれども、労働生産性の向上の話をよくされていますが、余り雇用、空洞化あるいは失業率の話には触れておられない感じがいたします。

 いずれにしても、この本当に急激な円高の、あした、あさっての政策決定、ぜひ大胆な政策をお願いしたいと思います。

 海江田大臣に来ていただいていますので、その空洞化の関連で、電気料金の値上げその他についてちょっとお伺いをしたいと思います。

 まず、原発が全部とまることによって化石燃料にかわっていくということで、三兆円ぐらい上がるという試算を先般発表されました。つまり、主として石油、天然ガス、LNGでしょうけれども、これが三兆円上がることによって、ことしの、あるいは全部とまってからの試算でも結構ですが、石油石炭税はどのぐらい増収が考えられますか。

海江田国務大臣 西村委員にお答えをいたします。

 これは一定の仮定を置いた上の数字でございますけれども、原子力がとまって火力で代替した場合、三兆円増加して、それによる石油石炭税収が約七百億円増加します。

西村(康)委員 原発がとまって石油、石炭にかわることによって、全部とまっていけば恐らく七百億円ということだと思いますが、これはぜひ、まさに新エネルギー、再生可能エネルギーのそうした分野、電力多消費型への配慮もあるかもしれませんし、むしろ、新しいスマートグリッドとか将来の発送電分離までにらんだ、いろいろな分散型の新しいエネルギーの開発あるいは蓄電池、こうしたものへの支援に使うべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

海江田国務大臣 これは西村委員が一番よく御存じの点でございますが、この石石税の場合は、一たん一般会計に入れられて、そこから特別会計にまた繰り入れられる、必要額ということでございますから、この必要額をできるだけふやす努力をしたいと思っております。

西村(康)委員 財務大臣、棚からぼたもちみたいな税収であります。原発をとめたことによって、七百億、一般会計に入ってくるわけであります。

 これはぜひエネルギー対策に使うべきだと思いますが、いかがですか。今申し上げた、単なるエネルギー対策じゃなくて、まさにこれからの未来への新エネルギーであったり、再生可能エネルギーであったり、蓄電池であったりですね。いかがですか。

野田国務大臣 一つの御意見、御提言だと受けとめさせていただきながら、有効に活用させていただきたいと思います。

西村(康)委員 百も千もあって、そのうちの一つだと言われるとちょっと心外でありますけれども、一つの有力な提案としてぜひ受けとめていただきたいと思います。

 そして、ちょっと時間がなくなってきましたので急ぎますが、多くの企業が被災をして、まさに先ほど申し上げた急激な円高と相まって、空洞化のおそれがある。

 ここへ来て、韓国、中国、アメリカといった国々が、日本にいるより、ぜひうちに来てくださいと誘致活動を活発化させております。特に韓国は、大変多くの企業に声をかけ、関西の企業にまで最近は声をかけ始めております。

 関西でも電力が足らないんでしょう、韓国に来れば電気料金は日本の三分の一ですよ、さらに日本は上がるんでしょう、法人税は特区に来れば五年間ただにしますよ、こういう甘いせりふ、口説き文句で、東北の被災した企業も、あるいは電力不足、節電で苦労している企業に、そういう言い方をしてきている。しかも、FTA、アメリカともEUとも、もうすぐ発効する、関税ゼロで輸出できますよ、日本はどちらもできていないんでしょうと。大変厳しい状況にあります。

 野田大臣にぜひお伺いをしたいのは、昨年十月の予算委員会で、私、ウォンの介入について、ウォンは介入している、野田大臣もまさに介入を行っていると答弁、七ページに議事録をそのまま書かせていただきました。その後、韓国に対してもいろいろ働きかけを主張していきたいという御答弁をされました。

 この八ページにある韓国の外貨準備高が積み上がっている、これはまさに介入をしているあかしだというふうに思います。〇九年は、これは〇八年、〇九年にかけて危機がありましたから、リーマン・ショックがありましたから、ウォンをむしろ買い支えるために減っているわけでありますけれども、積み上がってきている。まさに介入をやっているんだと思います。

 ぜひ、この韓国の介入をとめる、むしろウォンをもはや先進国として適正な水準に、いわゆる為替の介入をさせない、そのことを日韓でやっていく。あるいは、米韓、EUと結んで、かつて日本は円安是正を求められたときに、円高にせよということで、日米の円・ドル委員会が開かれました。ぜひそうした枠組みを通じてやっていただきたいと思います。

 昨年から韓国のいろいろな首脳と会われていると思いますが、これまでこの介入についてどういう取り組みをしてこられたのか。あるいは今後、こうした取り組みについて、もはや先進国である、そして、今最も日本の企業のライバルであるということを踏まえて、ぜひ、公平な、公正な競争の中でやっていくということを求めたいと思いますけれども、大臣、いかがですか。

野田国務大臣 御指摘をいただいた議事録でございますが、私、ストレートに、委員の御指摘のとおり韓国が介入を行っていると言っていますが、政府は介入実績を公表していないんですね。正確に言うならば、政府の立場としてはそういう報道があるということを承知しているということをお答えすればよかったなと、ちょっと今改めて、資料を見て思い返しておりました。

 その上で、今、G20で、日本も韓国もこのメンバーでございますので、通貨安競争をどう回避していくかという、まさに国際社会としての取り組みの中で、今、両国の意見交換を率直にさせていただいているという状況でございますので、これからもそういう観点からの議論を続けていきたいと思います。

西村(康)委員 時間が参りましたので終わりますが、野田大臣、野田さんは、これからいよいよ総理を目指されるお立場にあるわけであります。ぜひ、今こそ大胆な介入、大胆な日銀の金融緩和、そして先ほどのTPPもそうです。しかし、これは大臣の直接のあれではありませんので、むしろ、先ほど来言われた法人税、五%にこだわらずに、さらにもっと下げる。場合によっては特区、韓国は五年間ゼロですから、東北にそうした思い切った制度を入れていく。

 投資減税もそうでしょう。企業には今、二百兆ぐらい手元資金が積み上がってきている。投資をしない。思い切った投資減税、それによって日本経済をもう一回再生させていく、活性化させていく。この急激な円高を何としても早くとめていただいて、そして次へ、未来に向かって進む大きなきっかけにしていただきたい。

 ぜひもう一段進化をしていただいて、多分、財務省は、役人は嫌がるでしょうから抑え込んでいただいて、そして堂々たる総理候補として頑張っていただきたいと思いますが、その経済政策の野田大臣の決意を伺って、エールを送らせていただいて、私の質問を終わりたいと思います。

野田国務大臣 一定の仮説に基づいたエールだと思いますので、それはちょっと前提を外していただきますけれども、我が国が大変厳しい局面を迎えていることは確かでございますので、覚悟を持って職責を果たしていきたいというふうに思います。御指摘ありがとうございました。

西村(康)委員 ありがとうございました。

田中委員長 以上で西村君の質疑は終了いたしました。

 次に、竹内譲君。

竹内委員 公明党の竹内譲でございます。

 財務大臣、日銀総裁には、円高問題につきまして随分と議論をしてまいりましたので、きょうは、連合審査ということで、海江田大臣に質問をしたいというふうに思っておるんですが、大臣、大丈夫ですか。申しわけありませんね。

 円高、為替の問題に入る前に、私の方からは、経済の前提条件からちょっと質問させていただきたいというふうに思っています。

 その意味では、今回の東日本大震災に伴う経済危機の本質は何か。それは、リーマン・ショックとの違いは何かということからよく考えないといけないというふうに思っておるんですけれども、まず、この点につきまして、海江田大臣はどのようにお考えですか。

海江田国務大臣 竹内委員にお答えをいたします。

 今回の三・一一の東日本大震災以降のこの経済の危機というのは、確かにリーマン・ショックのころと違う状況がございます。

 一つは、三月十一日、あの大震災が発災いたしまして、いわゆるサプライチェーンの途絶ということがございました。東北地方というのは、御案内のように、改めて今度の震災を通じてわかったわけでございますが、日本のものづくりあるいは流通の本当に大きな拠点になっていたということでございますから、サプライチェーンの途絶、それからものづくりの工場などが大きな災害を受けたということで、やはり供給が落ち込んだということがございます。

 それから、もちろん、あの大震災による国民の意識の、内向きと申しますか、それこそ本当にいろいろな意味で自粛ということもございましたけれども、その需要自体もいっとき落ち込んだということで、需要と供給の不足が両方ございまして、かなり大きくシュリンクをしたということでございます。

 ただ、先ほどもお話ございましたけれども、サプライチェーンにつきましては、おおよそ八割方ですか、戻っております。それから、業種によりましては、これは三・一一以前に戻ったものもございます。

 ただ、これから、依然としてまだ、恐らく来年の春ぐらいまで続くと思われるのが電力の供給不足ということでございまして、これによって、やはり、例えば東北地域、あるいは東京電力の管内であります関東地域というのは、一五%、これは法律に基づく使用制限、自粛をしていただいて、それで、違反をした場合は罰金もあるという、本当にこれまで経験のなかった状況におりますから、その意味で、やはり供給の制約というものが出て、大変複雑な様相を呈しているという認識を持ってございます。

竹内委員 そういたしますと、今後、復興需要も出てくると思うんですが、順調に経済は回復するというふうに海江田大臣はお考えでしょうか。

海江田国務大臣 あともう一つ、先ほどのお話は実はまだ途中でありまして、答弁の時間が少し長くなりましたので切りましたけれども、実はもう一つございますのが、まさに日本の企業の海外移転という話になってまいります。

 確かに、委員御指摘のような復興需要というものはあろうかと思います。ですから、その意味では、いっとき、やはりこれは期待するわけでございますけれども、V字回復と。ただ、このV字回復というのは、まさに谷がぐっと落ち込むところが、三月十一日という本当に未曾有の大震災による、大災害による落ち込みでありまして、そこからのV字回復というのはできようかと思いますけれども、そこから先ですね。

 そこから先が同じような勢いで回復をし続けるということは、これは恐らくだれも考えていないことであろうと思いますし、そこから先が、まさになだらかな、少しでも上昇局面になればいいわけですけれども、なだらかなまま失速しないとも限らない。ですから、景気の先行きに対しては大変注意をして見守らなければいけない、こういう考え方でございます。

竹内委員 財務金融委員会でも、この議論は野田大臣や日銀総裁にも何回もさせていただきまして、もしも今回原発の問題がなければ、電力制約というボトルネックがなければ、十分日本の供給力は余っていたんですよね。だからデフレだったわけですよね。供給は十分あった、でも需要がなかった、だからデフレになっていた。

 もしこの原発の問題がなければ、需要が二十兆円以上出てくるわけですから、これはかなり需要が高まってきて景気が回復してくるのではないか、通常そういうふうに考えられるわけですね。景気が回復すれば、当然増収にもなりますし、それから、国内需要が高まるわけですから、製品を日本でつくろうということで投資がふえたり消費もふえたりする。ということは、先ほどから言われているいわゆる空洞化が阻止されるわけでありますし、今、西村委員からありましたような、雇用も維持される、こういうふうに思うんですね。

 ところが、残念ながら、今回は非常に不幸なことに原発問題が起きてしまった。ですから、この供給制約、原発ショックといいますか供給ショックというものをどう乗り越えるかということが、すべてのポイントになってくるのではないかというふうに私どもは考えているわけでございます。

 ですから、今回は供給制約がありますから、多くの企業が、電力の制約が、一〇%以上も足りないんだったらもう向こうへ持っていこうか、こう思っているわけですよね、検討しているわけです。そうすると国内投資は落ちる。そうするとその分GDPは落ちるわけですよね。一方で、東北では二十兆円ほどGDPは上がる。結局、打ち消し合ってゼロに近くなってしまう。ということは、このままでは、ほとんどこれはデフレから脱却できない可能性がある、こういうふうに思うわけであります。

 その意味で、次の質問、通告しておりますが、まさにデフレから脱却できるための、そしてさまざまな円高に伴う問題、すなわち産業の空洞化であるとか雇用の喪失とか、そういうものを実は解決する重要なポイントというのは、やはり当面、原発を再稼働できるかどうか、ここにかかっているんだと思うんですね。

 その意味で、せっかくの機会ですので、海江田大臣としては、これはちょっと通告していなかったんですが、この再稼働についての大臣の御見解を賜りたいというふうに思います。

海江田国務大臣 私は、もちろん安全性を確認した上でございますけれども、やはり電力の供給、本当にこれは、先進国の条件というのは、質のいい電気が安定的に供給されて、いつでも、その電気を消費しようと思ったら、産業も、それから家庭もそうでございますが、しっかりと電気が供給されるというのは、一つの先進国の条件かなと。

 いろいろな発展途上国を見てまいりましたけれども、よく停電だとかそういうのがありまして、もちろん、節電というか、節電というより省エネですね、省エネをやらなければいけないということは、これはもう言うまでもないことでありますが、ただ、電力の安定供給というのは大変大切なものだと私は思ってまいりましたので、安全性の確認のできた原子力発電所は、これは再稼働してもらおうというふうに思っておりました。

 いろいろ紆余曲折はございましたけれども、最終的にはIAEAの、特にヨーロッパがこれを採用しておりますけれども、ストレステストというものがございますので、これは、実はことしの六月ぐらいからIAEAが各国に対して、日本の東京電力の福島第一発電所の事故もございまして、そういうストレステストをやりましょうということで、EUの国々が実際それをやることになったわけでございます。そのEUの国々が採用しましたIAEAのストレステストを参考にしました新たな安全評価というものをやりましょうと。現在停止中のものについては、これは第一次でやりましょう、そして現在動いておるものについては、これは第二次という形でやりましょうと。

 内容的にはそれほど違わないわけでありますけれども、第一次、第二次と分けてやりましょうということでございますので、もう既に七月の二十二日の時点で、各電気事業者にはこういう形でやりますということを伝えてございますので、今それぞれ準備をして、そして、実際に第一次のストレステスト、これを、とまっているところはやっているはずでございますから、それをしっかりとやっていただいた上で、まず保安院がその確認をやる、そして、その上で原子力安全委員会が確認をする。ダブルチェックの体制で、そこで安全が確認をされたものについては再稼働していきたいと思っております。

 このまま、とまっているものが全く動かないということになりますと、来年の四月で全部の原子力発電所がとまるということになってしまいますので、そのことは電力の安定供給から避けたいというふうに思っております。

竹内委員 再稼働に向けて、全くとまってしまうというようなことは避けたい、こういうことでありました。

 そこで、私どもも、十分な安全確保が重要であるということはもう当然であるというふうに思っております。しかし、それは十分可能だという認識もまた持っておるわけであります。もちろん、これまでの原子力行政におごりや油断があったことは認めなければなりませんし、かつての与党としても一定の責任があったことは反省をしなければならないというふうにも思っております。また、今後、保安院を含め、改革を断行しなければならないということも当然だというふうに思っています。

 ただ、そのことが、そのまま脱原発、原発は要らないということにはつながらないというふうに考えています。というのは、福島第二、女川、東海第二原発というのが近くにありましたけれども、辛うじて免れているわけでございまして、外部電源が一本残ったり、津波の高さがほんの少し低かったとか非常用電源が作動したり、非常に辛うじて残ったんですが、逆に言えば、福島第一ももう少し耐震性を強化して防波堤を高くしておけば、助かった可能性は非常に高いわけですよね。

 そういう意味では、今回、福島が大事故を起こして、そのほかの第二、女川、東海第二が免れた理由をやはりきちっと検証しておく必要がある。また、それは国民の皆さんにもよく説明をしていただきたいと思うんですね、経産大臣として。

 そして、その意味では、これでもう終わりますけれども、菅総理の思い込みだけで原子力政策や再稼働を決めないで、海江田大臣としても、きちっと言うべきことは言っていただいて、真っ当な政策を立案して実行していただきたい。

 一言、もしありましたら。

海江田国務大臣 そのとおりだと思っております。

竹内委員 以上で終わります。ありがとうございました。

田中委員長 竹内君の質疑は以上で終了いたしました。

 続きまして、稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久でございます。

 十分間の質問の時間をいただきました。通告に従って順次させていただきたいと思いますが、最初に、海江田大臣、私、先に財務大臣に二問ぐらい質問させていただきますので、四、五分以内に帰ってきていただければと思っています。よろしくお願いします。

 最初は、私の方から財務大臣に円高対策ということで質問させていただきたいんですけれども、既に、この急激な円高に対する対策等の質疑については、多くの方々が御質問されていたと思います。私は、少し中期的なという意味で、円高対策について二つほど質問させていただきたいと思っているんですけれども、まず一つ目の質問は、これは確認の意味で聞かせていただきたいと思います。

 いわゆるアメリカのドル安の要因、それからもう一点は、今のアメリカの財政状況をどう見るかということについて伺いたいと思います。特に、最近、アメリカの例の格付会社も、アメリカの国債の格付については下げる可能性を示唆しております。そういったことも踏まえて、ぜひ、この点について大臣の所見を伺いたいと思います。

野田国務大臣 ドル安の背景としては、アメリカ経済の回復のおくれ、そして財政の問題、債務上限問題がいわゆるデフォルト直前のぎりぎりの段階までなかなか合意ができなかったことがあったというふうに思いますが、ようやく上下院で可決をし、オバマ大統領もサインをされたわけで、成立をしたわけですので、この後のマーケットの動向はよく注視していかなければいけないというふうに思いますけれども、財政が大変厳しい状況である、経済の回復がおくれているということ等の背景が、ドル安につながっているというふうに理解をしています。

 ただ、先ほど来ずっと申し上げているとおり、スイス・フランに続いて日本の円が強くなっているんですね。主要通貨が全体的に対ドルでは強くなっているんですが、円はそこまで高く買われる理由はないというふうに私は思っていまして、まさにファンダメンタルズを反映していないというふうに認識をしています。

稲津委員 今の御答弁でアメリカの財政状況によるものだということで、アメリカの財政悪化ということについては、これは我が国もある意味で非常に類似している面があるというふうに私も思います。

 財政悪化の問題については先進国共通の課題になっている、こういう状況の中で、ここをどう見ていくかということが大事だと思うんですけれども、今大臣もお話があったように、ちょっと過度な円高、円買いの方に向かっているということ。考えてみたら、国と地方で、巷間言われるとおり、九百兆円の借金があるというこの現実を考えていくと、私はやはり、特にこの十年間、日本の本格的な財政再建の道というのはなかなか思うように歩んできていないんじゃないだろうかと。もちろん、リーマン・ショックもありましたので、そういったことも十分勘案しなきゃいけないと思うんですけれども、それがまず一つ。

 それから、欧米の債務ショックでいわゆる円高・ドル安になったということ。ここのところを考えていったときに、今申し上げましたように、日本の財政状況も決していいわけじゃない。だから、これを考えていくと、例えば、今たまたま円が買われているという異常な事態になっているけれども、しかし、少し中期的に見ると、いつ、今度は逆に円が売られてしまう、そういう可能性も、私はないとは言い切れないと思うんですね。

 例えば、経済の状況が余り好転しない、なおかつ財政状況がさらに悪化していくということ、もし仮にこれが進んでいってしまえば、繰り返し申し上げているように、円売り、円安ということも、可能性もないとは言えないと思うんですけれども、この点については、大臣、どうでしょうか。

野田国務大臣 委員の御指摘のとおりだというふうに私は思います。全く同感でございます。

 たまたま相対的な評価で円高になっていますけれども、日本の財政問題にサーチライトが当たり、加えて、震災後さまざまな復旧復興をやっていかなければいけないことのエールをいただいていますけれども、一方で、逆に、財政規律を守る国かどうかという関心も非常に強まっています。そこで財政の規律が弛緩しているというメッセージが流れたり、あるいはそういう取り組みに見えたときには、おっしゃったようなリスクが出てくるというふうに私は思いますので、これは絶対に避けなければいけないというふうに思います。

 円高も大変憂慮すべき問題です。ただし、日本が売られる、これは為替だけではなくて株も債券も含めて、そういう状況になることが一番の国難だと思いますので、そういうことにならないような取り組みをしていきたいというふうに思います。

 海江田大臣が戻られたので、前座の答弁は短目にしたいと思います。ありがとうございました。

稲津委員 大臣から今率直な御答弁をいただいたんですけれども、ただ、もう一つは、これだけは指摘させていただきたいと思うんですけれども、果たして、では、大変恐縮ですけれども、菅政権のもとでこの財政再建の考え方というのは中途半端になっていないかどうかということは、指摘させていただきたいと思うんです。

 例えば税と社会保障の一体改革の問題についても、増税時期についてはなかなかはっきりされない。それから、何よりも今回の震災復興に向けての復興費用のあり方について、金額も、それから期間もあいまいになっているということ。そういうような政治姿勢で果たして、今、円高の問題、そして近い将来もしかしたらという円売りの話、ここはやはり、私は、政治的なスタンスをきちんと持っていかなければならない、このことを指摘させていただきたいと思います。

 次は、海江田大臣に質問させていただきます。

 それは何かというと、この円高によって、燃料、特に火力発電の電源である石油、石炭、天然ガス、これらについて、価格低減の影響というのはどう見ていますか。このことについてお示しいただきたいと思います。

海江田国務大臣 稲津委員にお答えを申し上げます。

 今お話のありました石油などの資源は全般的に高騰の傾向にあるということは、これは言うまでもございません。

 その高騰の傾向にある中で、我が国とすればほとんどを海外に頼っているわけでございますから、その意味では、円高が、言ってみると、ショックを和らげる機能を果たすということは確かであろうと思っております。

 ただ、為替の動きと、それからそうした価格との間に若干のタイムラグもございますので、今の円高で即これだけ大きく安くなったということもなかなか言えないかな、もう少し様子を見てみなければならないかなと思っております。

稲津委員 今、円高の中で、石油、天然ガス、石炭、この価格がいわゆる円高の影響で低減されているというのは、大臣の御答弁のとおりだと思います。

 ただ、もう一方で、では、例えば原油価格等はどうなっているのか。このことについては、実は非常に高値になってきている。もちろん景気動向で油価が下がるということもあると思うんですけれども、もうそういうレベルの話じゃなくて、明らかに今、原油高というのは言えている。天然ガスも、石油価格に連動してきますので同じような傾向がある。石炭はどうか。石炭も、大体七割がオーストラリアから輸入していますので、ここもどんどん上がっていって、今、二〇〇〇年の前半のころから比べると四倍ぐらいになっている、そういうこともあります。

 だから、何を言いたいかというと、もしこのような状況の中で、仮に、近い将来円売りみたいな話が出てくると、これはまさに大変なパニック状態になるだろうというのが私の思いなんです。

 そこで、ぜひ燃料高騰のしっかりとした対策を、今こそやはりこの現実を見据えてやるべきと思うんですけれども、この点についての大臣の所見を伺いたいと思います。

海江田国務大臣 三・一一の東日本大震災が発災するまでは、まさに私ども、エネルギーの、とりわけ原子力を除いた石油製品などの価格というものに非常に注目をしておりました。そして、この高騰というものを少しでも和らげるために、それこそ、例えば、これは中山政務官でしたか、経産省としても、産油国あるいは産油の地域の国際会議などがありますと、そこで、その安定供給をぜひお願いしたいということを言ってまいりました。私もオーストラリアなどに出張の折は、やはり、安定的に良質の石炭を供給してほしいということを言ってまいりました。

 そこで、今回、三・一一の大震災の発災、とりわけ原子力発電所の事故ということになりまして、また新たな需要が生じてきたわけでございますから、やはりその分、当面は火力の発電などに頼らざるを得ないわけでございますから、そのまま海外の価格の高騰が日本の電気料金に転嫁されないよう十分に注意をしていかなければいけない。そして、引き続き、これまでと同じように安定的に、しかも、できるだけ安価な燃料が、原材料が入ってくるようにという努力を続けていかなければいけないと思っております。

    〔田中委員長退席、石田委員長着席〕

稲津委員 時間が参りましたので終わりますけれども、先ごろ、電力各社の四月から六月までの連結決算の結果が出ました。多くが経常赤字ということで、その要因は何ですかというと、やはりこれは、例えば九州電力は、玄海の原発がとまっている状況の中で、どうしても火力等の燃料で随分上がってしまっているという事実。だから、何を言いたいかというと、円高によってコストを低減なんというのは、もうこれは事実上吹っ飛んでしまっているという現実があるということ。

 そして、原発の再稼働は今何とも言えない状況にある。なおかつ、再生可能エネルギーでしっかりやっていこう、こういう流れもある。では、どこであとは見るんですかといったら、これは当然、化石燃料に当面の間少しウエートがかかるだろうと。

 そこが今こういう状況になっていますので、これで終わりますけれども、ぜひ、これらの高騰対策をしっかり打っていただきたい、このことを強く申し上げて、質問を終わります。

石田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 これまでの質問との重複を避けるようにして質問をしたいと思います。

 まず、海江田大臣にお聞きをしますけれども、これだけ急激な円高が進んでいきますと、輸出関連の大手企業を中心に、リストラですとかコストカットというようなことが激しく進む可能性があります。大企業としては利益が崩れるのを抑えることに役に立つかもしれないけれども、しかし、他方で、その結果、下請中小企業に対して非常に大きな負担がかかる。あるいは、雇用調整を激しく行うということになりますと、失業不安が広がる。その結果、内需の約六割近くを占める家計消費というものが冷え込んでいく。つまり、円高による大手企業の対応の行動が、結果として内需を冷やし、デフレのスパイラルを加速する、そういう要因にもなりかねない。

 したがいまして、まず緊急の対策として考えなければならないのは、過度な下請単価の買いたたきとか雇用に対する調整、こういうものに対して、そうさせないような対応ということが必要ではないか。つまり、大企業というのは、統計を見ますと、資本金十億円以上の規模で、もう既に内部留保が二百五十兆円を超えるようなそういう状況なんですから、体力は十分にある。したがって、いきなり弱いところにしわ寄せをすることは避けるべきであるというふうに思いますが、どのようにお考えでしょうか。

海江田国務大臣 佐々木委員にお答えをいたします。

 確かに大企業も、当初計画をしておりました、例えばドルのベースで採算ラインがありますから、大体八十円台ぐらいでやっていますから、今回のような七十円台、七十七円、七十六円ということは当然採算割れでございます。そういうケースが出てきたとき、よく海外移転ということが言われます。もちろん海外移転もございます。

 しかし、その前に、今委員が御指摘のありましたような、国内のコストをどうやって下げるかというところでは、やはりそういった下請に対するしわ寄せでありますとか、あるいは働く人たちに対するしわ寄せですとか、そういうものが来るということは十分可能性がありますので、私どもとしましても、そういうことのないようしっかりと見守っていきたい、こういう認識でおります。

佐々木(憲)委員 見守るだけではなくて、対応をきちっとやっていただきたいというふうに思うわけであります。

 次に、各国の通貨の力を比較する場合、さまざまな方法があると思うんですが、その一つに購買力平価というものがあります。

 これはどのような特徴があるのか、内閣府の説明を求めたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 購買力平価とは、それぞれの国の通貨、例えば日本円、アメリカ・ドル、それぞれの購買力が等しくなるように計算した通貨の換算比率ということであります。例えば、一商品だけ例をとりますと、同じ性能の車をアメリカで購入すると一万ドル、日本で購入すると百万円としますと、円とドルの購買力が等しくなるような換算比率は、一ドルイコール百円ということになります。

佐々木(憲)委員 ところが、実際に、実勢レートというのは、購買力平価と離れて非常に激しく変動しているわけであります。

 今言われたように、購買力平価の比較の仕方というのは、それぞれの財貨・サービスの購買力によって通貨の価値を比較するものでありますから、投機的な動きとかあるいは国際収支の変化とか、そういう要因を除いて比較をするというわけでありまして、私は、一番のベースになる比較の方法だというふうに考えております。

 現時点で、購買力平価で見た対ドルレートというものはどのぐらいの水準でしょうか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 OECDによれば、購買力平価で見た円の対ドルレートは、直近値である二〇一〇年で一ドル百十一円四十銭となっております。

佐々木(憲)委員 それが現在七十七円、七十六円というような状況でありますから、非常に大きく離れているわけであります。

 なぜそういう状況が引き起こされるのかということですけれども、その要因として非常に大きいのは、やはり、国際的な投機的なマネーが非常に膨らんで、瞬時に移動して為替の投機に向かう、これが要因だと思うんですね。

 その大きさを見るために数字を確認したいんですけれども、財務大臣、世界の貿易総額と為替取引の総額というのはどのぐらいの落差があるんでしょうか。

野田国務大臣 まず、IMFの統計によりますと、二〇一〇年の世界の輸出総額は十五・〇兆ドルです。傾向を見ますと、毎年少しずつ上がってきて、リーマン・ショックの後で落ち込んでいますが、傾向としては少しずつ上がってきているということです。これは年間で十五兆ドルです。

 一方で、もう一つはBISの統計なんですけれども、二〇一〇年四月時点での世界の為替取引総額は一日当たりで五・一兆ドル、これは六年前に比べて約二倍ということでございます。

佐々木(憲)委員 そうすると、年にするとどのぐらいの、何倍ぐらいになるんでしょうか。

野田国務大臣 逆の計算でいいでしょうか。

 一日でいくと、世界の輸出総額は、十五兆ドルを三百六十五で割ると〇・〇四兆です。一方で、一日当たりの為替取引総額が五・一兆ですから、約百倍でしょうか。

佐々木(憲)委員 つまり、実需に比べると為替取引というのは百倍の規模で、これは二十四時間、全世界をその資金が動き回る形で為替取引が行われているということになるわけで、これは非常に大きな圧力になるわけです。円に対して円買いの流れが強まりますと、一気にだあっと世界じゅうからそういう動きが引き起こされていく。したがって、現在の急激な円高の要因として、これは非常に重大な影響を引き起こしているわけだと思っております。

 そこで、もう時間もありませんから、日銀総裁にお聞きします。

 為替相場を実際に動かしている主体は何か。一般的に、過剰資金が世界じゅう動き回るというのはわかりますけれども、これを実際に、特定の目標を、ターゲットを決めて、そこに買いをしかける、ドルを売る、こういうようなことを行っているものですね。報道によりますといろいろありますけれども、いろいろなファンドが動いているというような話もあります。

 日銀総裁としては、どのように認識されているでしょうか。

白川参考人 お答えいたします。

 外国為替市場には、金融機関、ファンド、事業会社、一般の個人それから公的部門など、さまざまな取引主体がグローバルに参加しております。先ほど野田大臣の御答弁にもございましたけれども、毎日膨大な規模の為替取引が行われております。その為替取引の背後にあるもとの取引は、もちろん、財・サービスに関する輸出入もございますけれども、それ以上に、資本取引、あるいは既に行われた取引に伴う為替のリスクをヘッジする、今積極的にそのリスクをとっていくというか、今自分が抱えているリスクを消してしまうためのヘッジの取引、こうした取引が行われております。

 先生の御質問は、だれが買っているのかということでございます。

 こういうお答えになるのは大変恐縮なのでございますけれども、私自身は、金融市場の毎日の動きを、これは金融機関、証券会社それから事業会社を通じて詳細にヒアリングは行っておりますけれども、しかし、これは日本だけではなくて、世界じゅうのマーケットがございます。したがって、だれが買っているのかというふうに、なかなか特定はできません。

 ただ、先生の御質問の中で、ファンドという話がございました。これは必ずしも、ファンドというのはさまざまな意味で使われますので、要は、実需の取引だけではなくて、相場観に基づいてお金を動かす人というふうにとらえますと、今はその資本取引のウエートが高いということでございます。

佐々木(憲)委員 報道によりますと、リーマン・ショックのような複雑な取引を引き金にして金融危機を引き起こしたような、そういう状況があります。とりわけヘッジファンドと言われるものが、一時はリーマン・ショックでその取引高が減りましたけれども、最近はまたもとに復活をした。それが非常に大きな猛威を振るっているということも言われているわけであります。

 そこで、こういう取引に対して何らかの規制が必要だ、つまり、ルールに基づく規制が必要だと思うんです。そのために、今世界じゅうの金融機関、政府が、共同の行動をとろうということで協議が行われていると思います。

 アメリカの財務省で、こういう提案があるそうですけれども、年内にも、金融機関に識別番号をつけた上で取引内容を報告する義務づけを行う、そういう規制を導入する方針で、日本やヨーロッパにも採用を打診している、こういう報道があります。これは六月中の報道でした。

 実際に、こういう動きがあるのかどうか。そして、日本政府も、私は、これに対応してきちっとしたことをやらないと、為替投機で円の乱高下というものが起こりやすくなるので、一定のルールが必要であるというふうに思います。

 証券監督者国際機構、これもデリバティブ取引について同様の規制を検討しているということも言われておりますけれども、こういう枠組みをつくる動きが実際にどういうものがあるのか、また日本政府としてどう対応するのか、自見大臣にお聞きをしたいと思います。

自見国務大臣 佐々木憲昭議員にお答えをいたします。

 自由主義社会において、私は、投資というものは必要だと思っておりますけれども、やはり行き過ぎた投機というのは、これは非常に弊害もあるわけでございます。しかし、実体経済においては、やはり投資と投機というのはなかなか区別が難しいところもある、こう思いますけれども、私は、政治家として、投機資金をいかに民主的にコントロールするかということは、二十一世紀の人類の重要な課題だと思っております。

 そういったことに立てば、先般の金融危機後の国際的な金融規制改革の中で、金融取引の実態把握強化の重要性が認識されてきたところでございます。その流れの中で、システミックリスクの測定、監視の支援等の観点から、今先生が言われたように、金融機関などに取引主体ごとに世界共通の認識番号をつける仕組み、これはLEIと申しまして、リーガル・エンティティー・アイデンティファイヤーと言うようでございますが、についての世界的な検討が実は進められているところでございます。

 具体的には、アメリカの財務省においてLEIの導入に向けた検討が進められているほか、国際的な業界団体も具体的な提案を公表していると承知しておりまして、今先生御指摘がございましたように、証券監督者国際機構、IOSCOや、金融安定理事会、FSB等においても議論が行われているところでございます。

 当庁といたしましても、日本国としましても、LEIの目的、対象範囲、情報管理、セキュリティーの課題などに留意しつつ、国際的なそういった大きな流れがございますから、検討課題にしっかり参加をしてまいりたいというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、終わります。

石田委員長 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一です。

 野田財務大臣にお尋ねします。

 財務省による為替介入というのは効果があるんでしょうか。効果があると御認識されているんでしょうか。

野田国務大臣 単刀直入な御質問でございますが、介入というのは、市場のセンチメントに対する働きかけだと思います。その有効性、有用性を一般論で語るのは難しいんですが、介入する以上は、その効果が最大限に出るように最善を尽くすということだというふうに思います。

山内委員 先ほど、実は民主党の今井委員の配付資料をじっと見ていて思ったんですけれども、九五年の円相場と為替介入実績、これを見ても、効果があったのか、円が下がっているときもあれば、余り効果が見えないときもある、いろいろなケースがあるなと。あるいは、短期的には為替介入の効果があったとしても、数日あるいは数週間でもとに戻ってしまうというケースも多々見られます。

 そういったときに為替の差損が発生するわけですけれども、膨大な為替差損が発生すると、それが国民負担になる可能性もあります。そういった状況について、野田大臣はどのように認識をされているんでしょうか。

野田国務大臣 外為特会は、基本的には、過去に為替介入を行ってきたその結果として外貨資産を保有することになるわけでありますけれども、現在は、今、約七十六兆円であります。足元のレート、今、一ドル七十七円で換算すると、約四十一兆円の為替評価損が発生をしています。

 一方で、外為特会というのは、内外の金利差等によって、ほぼ毎年度、例外は一部ありましたけれども、剰余金を生み出しています。その結果、昭和二十七年度以降の剰余金累計額は約五十兆円でありまして、このうち約三十兆円は一般会計に繰り入れてきたということも留意をする必要があるかというふうに思います。

山内委員 かつて行政刷新会議の事業仕分けでも外為特会が対象になったことがありました。そのときさまざまな指摘がありましたが、その指摘というのは実際の政策にどのように反映され、改革されているんでしょうか。

野田国務大臣 山内委員の御指摘のとおり、昨年の十月に行われました行政刷新会議の事業仕分けにおいて、外為特会に対しては、主に三つの評価がなされました。

 第一は、剰余金は一定のルールに基づいて一般会計に繰り入れる方式にすること、二点目は、財投預託されている積立金を、中期的に、債務である政府短期証券、いわゆるFBの償還に充てることでバランスシートの両サイドを減らしていくこと、三点目は、外貨運用益をFB発行により円にかえることで負債が積み上がる構造の解消を図る、この三点の指摘がございました。

 この評価結果を受けまして、まず、剰余金についてでありますけれども、昨年十二月に、毎年度の剰余金の三〇%以上を外為特会に留保することを基本とする一般会計繰り入れルールを公表したところでございます。

 ただし、現行の中期財政フレームの期間については、外為特会の内部留保額を段階的にふやしていくことを目指しつつ、一般会計の財政事情に最大限配慮することとしており、今後は、このルールに基づく剰余金の処理を行い、外為特会の債務超過の解消を図りたいと考えています。

 次に、財投預託金及び外貨運用益の円転のためのFB発行については、法律改正により、事業仕分けの評価結果を踏まえた対応を行うよう検討を進めているところでございます。

 なお、現行制度における運用面の対応として、二十三年度より、満期償還された財投預託金によりFBを償還し、FB残高を圧縮しているところでございます。

 今後とも、外為特会の適切な管理を行う観点からも、事業仕分けの評価結果を踏まえた検討を進めてまいりたいと思います。

山内委員 為替の介入、全否定するものではありませんが、今後のやり方、あるいは基本的には為替介入よりもむしろマネタリーベースの方が為替レートに対する影響が大きいんじゃないかという意図で質問させていただきました。

 実は、次の質問、配付した資料は自民党の山本幸三先生と全く同じ資料になってしまいました。日ごろ山本先生の講義を聞かせていただいている関係で、同じような質問だったので、せっかく用意したんですけれども省きまして、通告していないんですが、日銀の白川総裁にお尋ねをしたいと思います。

 先ほど来、デフレの問題で、恩師の山本先生から白川デフレという言葉が出てきました。やはり、日銀のインフレ対策というのかデフレ対策というのかは、ここ数年、余りいいできではなかったんじゃないかな。あるいは、今回の円高、あるいは長期的、最近の円高傾向、景気の動向、いろいろなことを考えると、日銀のパフォーマンスを御自身でどのように評価されていますでしょうか。

 総裁として、ここは反省する点があるとか、ここはもっとうまくやれたんじゃないかとか、あるいは、場合によっては責任を感じているということもあるかもしれません。御自身と日銀のパフォーマンスをどのように評価されていらっしゃいますでしょうか。

白川参考人 日本銀行の使命は日銀法にはっきりと定められております。

 金融政策という面では、物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということですし、もう一つは、決済システムの安定を通じて金融システムの安定をしっかり維持していくということですので、平たく言いますと物価の安定と金融システムの安定、これをしっかりやるというのが日本銀行の仕事でございます。

 私自身は、就任以来、この日本銀行の目的、このことだけを考えて仕事に専念してまいりました。自分自身で、自分の仕事の成果といいますか、取り組んだことについて自分で評価をするということは僣越だということで、差し控えさせていただきたいと思います。

 日本の経済ということでいきますと、先ほどの、物価の安定を通じて国民経済の健全な発展を図るという観点と、それから金融システムの安定、この二つの面で考えてみますと、物価の安定、これは、私どもは物価の安定として望ましい姿を、中長期的な物価安定の理解という形で数値的に定義をしております。これは中心を一%程度というふうに申し上げております。

 そうした状況を、これは中長期的な姿でございますけれども、そうした方向にしっかり実現していくということに我々は取り組んでおりますけれども、残念ながらまだそこには到達していないということで、これは日本銀行の力だけでデフレ脱却ということが実現できるというふうには思いませんけれども、しかし、日本銀行としてできることはしっかりやっていくという覚悟でございます。

 一方、金融システムの安定というところでございますけれども、これは、バブル崩壊後、日本の金融機関は大変苦しい状況に直面しました。政府の方でもさまざまな対策に取り組んで、そうしたさまざまな努力の結果として、日本の金融システムは、欧米に比べますと、相対的に安定しております。

 先ほどリーマン・ショックの話がございましたけれども、あのときに、欧米の金融機関が資金を調達するためにどれだけ追加的に金利を払わないといけなかったかというプレミアムを見てみますと、日本に比べますと、日本の方ははるかに小さかったということでありまして、これは金融システムという面では相応の成果があった。

 いずれにせよ、物価の安定を通ずる国民経済の健全な発展ということで、我々自身、まだまだしっかり仕事に取り組んでいく必要があるというふうに思っております。

山内委員 今、物価の安定に関しては一%に達していないということで、恐らくうまくいっていないという御認識ではないかと思いますが、やはり、デフレの問題、先ほど来、積極的に思い切った政策をやっているとおっしゃっていますけれども、まだまだ足りないんじゃないかと思います。

 もう時間が参りましたので質疑を終わりますが、ぜひ、次の委員会のときには山本先生から白川デフレなどと言われないように、しっかりと物価の対策に取り組んでいただきたいと思います。

 以上で終わります。

石田委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午後四時六分散会


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