衆議院

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第12号 平成24年5月31日(木曜日)

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平成二十四年五月三十一日(木曜日)

    午前九時四分開議

 出席委員

   委員長 中野 寛成君

   理事 武正 公一君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 古本伸一郎君 理事 松本 大輔君

   理事 和田 隆志君 理事 逢沢 一郎君

   理事 伊吹 文明君 理事 西  博義君

      網屋 信介君    井戸まさえ君

      石井登志郎君    石津 政雄君

      磯谷香代子君    稲富 修二君

      今井 雅人君    江端 貴子君

      岡田 康裕君    奥野総一郎君

      柿沼 正明君    勝又恒一郎君

      金森  正君    神山 洋介君

      川越 孝洋君    岸本 周平君

      工藤 仁美君    桑原  功君

      小室 寿明君    阪口 直人君

      篠原  孝君    白石 洋一君

      田嶋  要君    田中美絵子君

      田村 謙治君    高井 崇志君

      玉城デニー君    中野渡詔子君

      中屋 大介君    永江 孝子君

      長尾  敬君    早川久美子君

      藤田 憲彦君    松岡 広隆君

      三村 和也君    三宅 雪子君

      皆吉 稲生君    宮崎 岳志君

      宮島 大典君    室井 秀子君

      矢崎 公二君    山口 和之君

      山崎  誠君    山田 良司君

      山本 剛正君    湯原 俊二君

      石田 真敏君    大野 功統君

      加藤 勝信君    金子 一義君

      鴨下 一郎君    齋藤  健君

      田村 憲久君    竹下  亘君

      谷  公一君    野田  毅君

      馳   浩君    福井  照君

      町村 信孝君    遠藤 乙彦君

      竹内  譲君    宮本 岳志君

      中後  淳君    豊田潤多郎君

      中島 隆利君    浅尾慶一郎君

      山内 康一君    中島 正純君

    …………………………………

   国務大臣

   (社会保障・税一体改革担当)           岡田 克也君

   総務大臣         川端 達夫君

   財務大臣         安住  淳君

   文部科学大臣       平野 博文君

   厚生労働大臣

   国務大臣

   (少子化対策担当)    小宮山洋子君

   経済産業大臣       枝野 幸男君

   国務大臣

   (国家戦略担当)

   (経済財政政策担当)

   (科学技術政策担当)   古川 元久君

   国務大臣

   (防災担当)       中川 正春君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   内閣府大臣政務官     大串 博志君

   財務大臣政務官      三谷 光男君

   政府特別補佐人

   (人事院総裁)      原  恒雄君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  岡崎 浩巳君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    古谷 一之君

   参考人

   (日本銀行総裁)     白川 方明君

   衆議院調査局社会保障と税の一体改革に関する特別調査室長          佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十一日

 辞任         補欠選任

  石井登志郎君     宮崎 岳志君

  岡田 康裕君     奥野総一郎君

  岸本 周平君     皆吉 稲生君

  篠原  孝君     三宅 雪子君

  白石 洋一君     網屋 信介君

  田嶋  要君     中野渡詔子君

  田村 謙治君     矢崎 公二君

  長尾  敬君     松岡 広隆君

  藤田 憲彦君     柿沼 正明君

  宮島 大典君     川越 孝洋君

  湯原 俊二君     小室 寿明君

  柚木 道義君     桑原  功君

  渡部 恒三君     阪口 直人君

  田村 憲久君     大野 功統君

  馳   浩君     谷  公一君

  町村 信孝君     福井  照君

  竹内  譲君     遠藤 乙彦君

  豊田潤多郎君     中後  淳君

  山内 康一君     浅尾慶一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  網屋 信介君     白石 洋一君

  奥野総一郎君     岡田 康裕君

  柿沼 正明君     藤田 憲彦君

  川越 孝洋君     玉城デニー君

  桑原  功君     井戸まさえ君

  小室 寿明君     神山 洋介君

  阪口 直人君     工藤 仁美君

  中野渡詔子君     金森  正君

  松岡 広隆君     長尾  敬君

  三宅 雪子君     篠原  孝君

  皆吉 稲生君     山本 剛正君

  宮崎 岳志君     石井登志郎君

  矢崎 公二君     磯谷香代子君

  大野 功統君     齋藤  健君

  谷  公一君     馳   浩君

  福井  照君     町村 信孝君

  遠藤 乙彦君     竹内  譲君

  中後  淳君     豊田潤多郎君

  浅尾慶一郎君     山内 康一君

同日

 辞任         補欠選任

  井戸まさえ君     山崎  誠君

  磯谷香代子君     田村 謙治君

  金森  正君     田嶋  要君

  神山 洋介君     湯原 俊二君

  工藤 仁美君     山口 和之君

  玉城デニー君     今井 雅人君

  山本 剛正君     高井 崇志君

  齋藤  健君     田村 憲久君

同日

 辞任         補欠選任

  今井 雅人君     宮島 大典君

  高井 崇志君     岸本 周平君

  山口 和之君     山田 良司君

  山崎  誠君     中屋 大介君

同日

 辞任         補欠選任

  中屋 大介君     柚木 道義君

  山田 良司君     石津 政雄君

同日

 辞任         補欠選任

  石津 政雄君     渡部 恒三君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七四号)

 被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七八号)

 子ども・子育て支援法案(内閣提出第七五号)

 総合こども園法案(内閣提出第七六号)

 子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第七七号)

 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第七二号)

 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提出第七三号)


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     ――――◇―――――

中野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案、被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案、子ども・子育て支援法案、総合こども園法案、子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案及び社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁白川方明君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として総務省自治税務局長岡崎浩巳君、財務省主税局長古谷一之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中野委員長 本日は、特に税制等について質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲富修二君。

稲富委員 おはようございます。民主党の稲富修二でございます。

 この特別委員会、質問の機会をいただきまして、まず御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 この一体改革法案に至るまで、私、去年の秋に民主党の税制調査会の事務局の末席に加えていただいて以来、素案の取りまとめ、大綱、そして法案提出まで加わらせていただいております。そして、当委員会でこうやって質問をさせていただくということは本当に名誉なことだというふうに思っております。

 素案がまとまって以降、私も地元で、この一体改革について有権者の方と車座集会をしてまいりました。その中でいろいろな声をいただいてまいりましたので、きょうは政府の皆様にそれをお届けしたいと思って参りましたので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず、これまでマニフェストについていろいろな御評価がございました。改めて、民主党が、政権がかわって以降の税制改革についてどのような実績があり、どういう取り組みをしてきたのかということを冒頭お尋ねしてまいりたいというふうに思います。

 まず、税制大綱にも出ております公平、透明、納得という原則を掲げておりますが、これの意味するところを御説明願いたいというふうに思います。

五十嵐副大臣 お答えいたします。

 今委員から御指摘のように、平成二十二年度の税制改正大綱にこの考え方が出ております。納税者の立場に立ったときに好ましい税制のあり方ということでございますが、制度が公平で、かつ制度の内容が透明でわかりやすく、その制度に基づいて納税することについて納得できるものであるということが大事だ、こういう視点から、民主党では、この考え方に立って、いわば産業政策で特定のものに税の減免をするわけですけれども、これを租税特別措置といいますが、この租税特別措置の決め方につきまして、見直しに関する基本方針というのを定めました。

 これは二十二年度税制改正大綱に載っているわけでございますが、四年間で抜本的な見直しをするということにし、その基準を「ふるい」というような言葉を使っておりますけれども、適用の状況を、実態を把握してその効果を検証するという基準をつくって、租特透明化法というものを制定いたしまして、これを実施しているところでございます。

安住国務大臣 おはようございます。

 やはり税の問題を考えるとき、政権交代して、納税者の側という視点を我々は大事にしようということで、公平という点では、前政権と、これまでの立場と変わりません。

 しかし、透明と納得という言葉をきちっと入れました。それはやはり、これまでは徴収をする側からの中立性等、それから簡素ということを中心にやってきました。これはもちろん引き継ぎますが、一方で、納税者の側から、稲富さんにも十分昨年やっていただきましたけれども、その概念を入れたということは、後に多分納税者を中心にした税の仕組みを考えていくための一つの柱になるものを入れられたというのは、私は非常に大きなことだったと思うんです。

 その延長として、今、五十嵐さんからお話がありました租特は、やはり業界団体と戦後ずっと連なってきた、ある意味で不透明だという指摘もあった分野ですね。これを透明化したということは私はやはり大きな成果だったと思いますから、この透明、納得というところに重点を置いて、これからも、税を取るというのは公権力の中でも強い権力ですから、そういう点ではそこをやはり大事にして民主党の政権というのはやっていかなければならないと思っております。

稲富委員 ありがとうございます。

 副大臣、大臣に答弁いただきましたように、納税者の立場に立ってというところが、税を取る側からも、そして使う側からもやはり大事であるということが、まさに私は民主党政権の立脚点だというふうに思います。

 その上で、次、税制の決定プロセスの改革についてもお伺いしたいと思います。まさにその延長線上にあったことだと思います。

 政権がかわって直後、税制に関する大きな一つの変化は、まず党の税調を廃止したことだった、私はそこをすごく鮮明に覚えております。それ以降、なぜそういうプロセスをたどって、そして今どういうふうに党と政府の関係があるのか、そしてその評価についてぜひお伺いをしたいというふうに思います。

五十嵐副大臣 かつての自民党を中心とする政権の時代は、政府税調はありましたけれども、これは学者さんが中心で、有識者が中心でありましたけれども、これは追認機関で、与党の税調の決定を寸どめしておいて、最後、承認するということで行われていました。そうすると、決める人と説明する人が別になるということで、私どもの政府税調では、こういう国会の場に立って説明をする人間が決めるということにしました。

 そして、透明に議論が見えなければいけないということで、私どもの政府税調では原則公開でございます。本会合は全部公開。インターネットで中継もしておりますし、記者さんたちも入っております。そして、懇談会という場でも、これは非公開になりますけれども、それでも直後に極めて詳細なブリーフィングをいたしておりまして、ほとんどきちんと明らかになるということになっております。

 その後、党税調との関係が少し変わっております。与党税調が復活をいたしましたけれども、与党税調は提言機関ということで、決定はやはり政府税調が決定をするという形になっております。

 私は、もともと記者で、かつての与党税調の取材もしておりました。その辺の事情はよくわかっておりますので、これは大変大きな変化だというふうに思っております。

稲富委員 ありがとうございます。

 私も、これはなかなか納税者の方にはわかりにくい変化だと思いますが、極めて大きな一歩だと思っています。

 もちろん、当初廃止をしたものの、今党税調が復活する。今御答弁ありましたように、いかに透明性を確保していくか、そして片方で、やはり税はかなり専門性と利害調整の部分があって、それをどうやって調和させていくかということで、この三年近く、我が党も試行錯誤してきたと思います。しかし、それをやはりこれからも続けていきながら透明性を確保していくことは非常に大事であるというふうに思います。

 そして、次、寄附金税制についてお伺いをしたいと思います。

 資料の一枚目をごらんください。寄附金税制の優遇制度が拡大したということでございますが、その内容について御説明を願いたいというふうに思います。

五十嵐副大臣 民主党政権下では、市民が参画する新しい公共、その担い手を支えるという面から税制面の措置を講じてまいりました。

 まず、二十二年度税制改正におきまして、公益的な活動に関する個人の寄附を一層促進するために、所得税の寄附金控除の適用下限額を五千円から二千円に引き下げたところでございます。さらに、二十三年度税制改正においては、草の根の寄附を促進するということで、かなり思い切った改革をいたしました。認定NPO法人等に対する寄附について、新たに所得税の税額控除制度を導入するということにいたしました。

 同時に、認定NPO法人の認定ですけれども、パブリック・サポート・テストというのがあります。どれぐらい幅広い人から寄附を受けて支持されているかということが認定の条件だったわけですが、かなり厳しい条件でありました。これを絶対数で判定するという方式を採用いたしまして、認定されやすくするということをいたしました。

 この結果、かなりふえてきたと思います。二十一年度末、すなわち二十二年三月三十一日では認定NPOは百二十七でしたけれども、直近の二十四年五月十六日現在では二百五十三でございます。約倍増いたしました。NPOの活動をされている方々からは大変感謝をされているところでございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 これは、所得控除から税額控除と、名前でいうと所得から税額とわずか二文字ですけれども、非常に大きな改革だったと私は思います。

 今副大臣から御説明がありましたけれども、これは、即座に何か大きな成果が出るというよりも、やはり十年後、二十年後に振り返ってみて、あの税制改革があったからこそ、NPOを初め、公と私以外のところでの活動が広がる第一歩になるのではないかというふうに私は思っています。したがって、これは大変大きな成果であったというふうに思います。

 続きまして、租特について、先ほど大臣からも御答弁をいただきましたけれども、改めて、政権交代以降の租特についての成果をお伺いしたいと思います。

古谷政府参考人 お答えをいたします。

 先ほど副大臣から御答弁がございましたように、平成二十二年度の税制大綱におきます基本方針に沿いまして、平成二十二年度税制改正から始まる四年間で、それぞれの年度末に期限が到来いたします措置を中心に、抜本的に見直すということにされました。

 平成二十二年度以降二十四年度までの三年間で、こうした方針で取り組んでおりまして、政策税制措置二百四十一項目のうち、百七十項目の見直しを行いまして、二十九項目を廃止、六十七項目を縮減したところでございます。あわせまして、増収見込み額として、約三千百億円の見直し効果が出ているというふうに存じております。

 それから、平成二十二年三月に租特透明化法が成立をいたしました。法人の提出する適用額明細書に基づきまして、財務省において適用実態調査を行い、二十五年一月以降の通常国会へ報告するべく、今準備をしているところでございます。

 以上でございます。

稲富委員 地方の方はいかがでしょうか。

岡崎政府参考人 地方税におきましても、二十二年度大綱に沿いまして、二十二年度以降の四年間で抜本的に見直すということをいたしております。

 順次、この三カ年間の実績としましては、見直し対象の措置二百八十六項目のうち、百九十五項目について見直しを行いまして、うち、百六項目を廃止、三十項目を縮減したところでありまして、これらによる増収見込み額は約三百億円となっております。

稲富委員 ありがとうございます。

 冒頭、大臣からも御答弁いただきましたけれども、この租税特別措置、まさにその当時は必要であったけれども、時間がたつにつれ、その必要性、効果を検証されず、ずっと続いてきたものがあるのではないか、そしてそれが既得権益化しているものが多くあるのではないかということで、今回、租特の見直しをしたのだと思います。

 それで、実は我々のマニフェストにも大きく掲げましたけれども、その額には遠く及びませんが、透明化法を通し、成立させ、そしてやはり少しでも租特の見直しに着手をするということは、私は、戦後の税制改革の中でも大きな一歩になるものと思っております。したがって、これはやはり前へ前へ進めていかなければいけないというふうに思っております。

 次に、なぜ今回の税・社会保障一体改革の中で消費税を上げなければいけないのか、ほかの税目ではなくなぜ消費税なのかということを、何度も御答弁ありましたけれども、改めてお伺いをしたいというふうに思います。

安住国務大臣 本当に高齢化は、福岡でもそうだと思います、私の宮城もそうでございますし、大都会でも実は高齢化が進んでいるんですね。学校のクラスの子供たちの数も減っている。

 やはり、そういう点では、戦後、シャウプ勧告以来、所得税を中心にやってきた基幹税が、累進税率を高めている、例えば垂直的な税だけで今後も社会を賄えるかといえば、御存じのとおり賄えない。そういう点では、全世代対応型といいますか、水平的な税というものをやはり広く浅く国民の皆さんに御負担をいただくことで高齢化社会を支えていく。

 これは、金額の面からも、二十四年度の一般会計税収に占める消費課税の税収の割合というのは実は四二%ですが、二〇一五年においてはこれが五一%になるということは、私は、こうした水平的な税がこれからは基幹税の中心になっていかないと、日本ではやはりなかなか社会保障全体を支えることはできないと思うんですね。

 これは何度も私申し上げておりますけれども、しかし、だからといって、私どもの提案は、このお預かりした消費税を何か別のことに使って、例えば官僚とか政治家が何か自分たちの都合で使うんじゃないかということを思っていらっしゃるとすれば、それは全く違います。お預かりしますけれども、これは、年金、医療、介護、子育てという、いわばお預かりしたものはそのまま別の意味で還元をさせていただくということなんですね。

 ですから、払っていただくたびに、これは年金、これは少子化、これは介護や医療にかかるんだなということを国民の皆さんにわかっていただく努力というのを政府はこれからしていかないといけないと思いますので、やはり払いがいのある税というものに消費税を変えていき、定着をさせていきたいと私は思っております。

稲富委員 ありがとうございます。

 資料の二枚目をごらんください。

 今大臣からも御答弁いただきましたけれども、消費に関する課税が平成二十四年度から二十八年度につれてふえていくというのを、それぞれ、国税を一〇〇とした場合に、今の提案どおり成立をした場合に消費税がどれぐらいふえていくかというのを、機械的な試算ですけれども、作成したものです。

 これでいきますと、今御説明ありましたように、平成二十四年度は消費税が二四・六%、そして二十六年四月、五から八になったときが三四%、そして二十七年十月に八から一〇になったときが消費税が三六・五%、そして二十八年度、フルに一〇%になると消費税が三八・九%、国税に占めるということでございます。そして、その他の消費課税を合わせると約五割を超えるということで、改めて今大臣からも御答弁ありましたように、シャウプ税制の直接税から、この法案が通った暁には、消費税が、基幹税のみならず、一番の税源になるということでございます。それは、戦後の税制改革の中で極めて大きな転換点にあると思います。

 そこで、改めて、だからこそ、やはり消費税が抱える課題というものをぜひとも解決していかなきゃいけない、そしてそれに対して対応していかなきゃいけないということを思っております。

 そこで、車座集会をしていますと必ず出る御意見は、やはり軽減税率の問題です。当委員会でも何度も取り上げられましたけれども、改めてこの問題を私も取り上げたいというふうに思います。食料品は何とかならないのかという率直な御意見です。

 そこで、改めて、ヨーロッパは日本よりはるかに付加価値税が高い中で、いろいろな苦労をしながら複数税率をとっております。そこから学ぶべきものもあるのではないかということが一つと、消費税が導入される前は売上税法案が審議をされました。その際には、与党内でも大議論を経て、非課税項目をどれにするというようなことで、党内でいろいろな議論があったと聞いております。

 したがって、私は、日本のかつての売上税の議論、あるいは欧州での経験をもとに、何か今から我々が考え得る教訓というものがあるのではないかというふうに思っておりますので、ぜひその点を御答弁願いたいというふうに思います。

安住国務大臣 五十嵐さんからもまた補足をしていただきますけれども、旧物品税では、例えばコーヒー、ココア、ウーロン茶などの嗜好品は課税をされ、紅茶やお茶は不課税、やはりそういうところが出てくるんですね。例えば軽減税率の場合は、そういう意味では、適用の範囲や幅をどうするかというのは、これはもうその国の歴史と文化があります。それから、ファストフードの扱いなんかはもう各国ばらばらなんですね、持ち帰ったときとそこで食べたときの差があったりですね。

 そういう制度設計とかを考えると、やはり慎重な議論は必要だと思いますが、しかし、例えば標準税率が一五%、またそれを超えているときには、そういうことをすることでわかりやすく、言ってみれば、生活必需品に対して国民の皆さんの目にわかりやすくするという点ではメリットもあるかもしれません。

 ただ、今回は、私たちとしては給付つき税額控除の方が、直接、逆進性に対する対策としては合理性があるというふうに判断をしましたので、そういう方向になっておりますけれども、なお世界的なさまざまな軽減税率については研究を重ねていきたいと思っております。

五十嵐副大臣 かつての内閣の売上税のとき、私は記者であったわけですけれども、あのときの税制改正は表がありまして、以下のものを非課税にするという一覧表があるだけなんですね。どういう基準でそのものが選ばれたのか、さっぱりわからないという状況でありました。非常に線引きが難しいということでもあると思いますし、政治家との関係で、説明がつかないものが出てきてしまうということがあると思います。

 ですから、それは好ましくないのと、また、軽減税率を入れたからその分だけ、それでは例えば五%のままとどまるかというと、仕入れたものには税が入ってきますので、その分を誰が持つのかということがあります。必ずしも、そのままで最終消費者が値上がりが一つもないということにはならないということもありますし、そうすると、またその分税率を上げなきゃいけないということが出てくると思いますので、軽減税率は必ずしも効率的でないという見方があります。

 ですから、かつてのEC、EUの前身のECですけれども、EC指令でも、なるべく複数税率はやめて単一税率に移行しなさいという指令が出ているところでございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 資料三ページ目をごらんください。これは、物品税のころの緑茶、紅茶、コーヒーの課税についてまとめたものです。

 緑茶は、昭和十六年に課税が始まり、昭和二十五年に非課税になって、そして消費税に至るまで課税をしていない。紅茶は、昭和十四年に課税が始まり、昭和二十六年に非課税になって、そして消費税に至る。コーヒーは、ごめんなさい、これは表記が間違ってしまいましたけれども、昭和十四年に課税が始まり、そして消費税導入に至るまで課税をしていたということでございます。

 先ほど副大臣からもお話ありましたように、当時の、消費税導入前の大蔵委員会の議事録なんかを拝見していますと、なぜ緑茶は課税せずコーヒーを課税するんだという質問に対して、コーヒーの方がより嗜好性が高いという政府からの御答弁でした。しかし、やはりそこには明確な線引きは難しいということも、政府からの答弁としてもありました。

 私は、これは物品税の世界ですけれども、軽減税率を入れるということは、改めてこれと同じようなことを、これが日用品なのか、嗜好性が高いものなのかという判断をそのたびごとにやらなければいけないということでございまして、それは非常に政治的にコストが大きい、それは既得権益化をする可能性も大きいというふうに思っております。

 そこで、私は、ぜひ政府の皆さんにお願いなんですけれども、しかし、今、単一か、複数税率かという話をするだけで十分近くかかっています。しかし、国民からすると、食料品に軽減税率がかかった方がはるかにわかりやすいというのが実態です。

 したがって、これをいかに納税者の立場に立って、一律の方が取りやすいからこうするのではなくて、納税者にとって実は単一にする方が、むしろ複数にする方が税収に穴があき、むしろ納税者の負担になるんだということをやはり説明していかなければいけないと思います。まさに我々の原則である納得というところでいくと、いかにこれを説明するかということが極めて政府にとって、我々にとっても大事な観点かというふうに思いますので、ぜひよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 続きまして、時間が迫っておりますので、厚労大臣も御答弁の用意をしていただいたかもしれませんが、済みません、最後の質問に移りたいと思います。

 まず、この消費税法案が成立をした、そして二〇一四年四月に税率の引き上げがあるとするならば、これは経済の条項等々もあります、最終的に、これを引き上げるというのは誰がいつ判断するんでしょうか。大臣、お願いします。

安住国務大臣 究極は、この法律で停止をもし何らかの形で経済の変動があってやったとなったときに、これは法律を出しますから、最終的にはやはり議会ということになると思います。ですから、しかし、その判断はそのときの内閣、またその首班である内閣総理大臣ということになります。

稲富委員 そうしますと、これも地元の国民の皆様から聞かれる、我々が前の選挙のときに言っていた、マニフェストで要するに消費税は上げないと言っていたことと、今回上げること、上げる法案を通すこと、やはりこの葛藤の中で私もこれまでやってまいりました。

 しかし、これは、少なくとも次の選挙を経た後、それから、その後どういう内閣になるかわかりませんけれども、新たな、あるいはその時点の内閣が最終的に判断をし、この消費税引き上げということを判断する、そういう理解をさせていただいたということでよろしいでしょうか。

安住国務大臣 この法律がそのまま通れば、次に総選挙で選ばれた方々の議会の中で、その議員が最終的に判断を下すということになります。

稲富委員 ありがとうございます。

 今回の一体改革は、私は本当に、避けて通れない課題であるというふうに思います。

 そして、その中で、我々が当初掲げてきた、この四年間に消費税を上げないと言ったことと、しかし、今の経済状況、財政の状況あるいは世界経済の状況からこれをやる、今法案を通さざるを得ないと言っている中で、我々が一方で掲げてきた行政改革、政治改革もやはり同時並行的に進めなきゃいけない。いや、むしろ二〇一四年の消費税引き上げの前に、これは岡田大臣がずっと取り組まれておりますけれども、これを加速化し、成果を上げて二〇一四年を迎えなければいけないというふうに思います。

 その中でも、特に、これは私の思いですけれども、やはり議員定数の削減を一四年の引き上げ前に必ずやっていきたい、やっていかなければならないというふうに思っております。

 以上、私の質問を終わります。ありがとうございました。

中野委員長 これにて稲富君の質疑は終了いたしました。

 次に、勝又恒一郎君。

勝又委員 民主党の勝又恒一郎でございます。

 伝統のこの第一委員室で初めて質問させていただけるということを大変感謝申し上げたいというふうに思います。新人でございますので、直球で、率直にお伺いをしてまいりたいというふうに思っております。

 今回のこの社会保障と税の一体改革、連日大変重要な議論が繰り返されていると思います。その中で、きょうは少し、その脇を固める、しかし重要な意味を持つ二つの課題についてお伺いをしてまいりたいというふうに思っております。

 総理は、この課題について、社会保障の充実、安定ということはもちろんのこと、一方で、財政再建と成長というものをどう両立させるかというようなことを常々課題として挙げられているというふうに思います。私も、日本経済をどうやって成長させていくのかというのは、我々民主党政権のみならず、我が国にとって極めて重要な課題だというふうに認識をしておりますけれども、そういう中で、我々民主党も含めて、医療イノベーションということをこれまで非常に重視してまいりました。私も、この医療の世界というのは、極めて意味のあるマーケット、あるいは成長にとって重要なテーマだというふうに思っております。

 医療機器の世界は、世界市場でもいまだに約五%から八%の成長を続けておりますし、二〇一五年にはワールドマーケットで二十五兆円規模だと言われております。こういうマーケットに対して、医療イノベーションをどのように推進していくかというのは私は極めて重要な課題と思っておりますけれども、新成長戦略の中でこの医療イノベーションというのはどのような位置づけになっているのか、冒頭、お伺いをしたいと思います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 ちょうど、平成二十二年六月十八日に新成長戦略は閣議決定いたしましたが、同時に、そのときに、財政の規律をちゃんと守っていくということで、財政運営戦略を決めさせていただきました。まさに成長とそして財政規律を守っていく、これは車の両輪として、それ以来取り組んできているわけでございます。本委員会でも、まさにそうした視点から御議論いただいているというふうに考えております。

 この新成長戦略の中で、新しい成長の二つの大きな柱として、ライフイノベーションとグリーンイノベーションを位置づけました。そのライフイノベーションの中でも、やはり医療イノベーション、この分野というのは、実は、日本の場合は、さまざまな形で規制等もあったりして、相当マーケットが制約をされている。ですから、逆に言えば、ここは非常にマーケットが広がる部分である。しかも、高齢化が進んでいくという中では、今後、需要も非常に伸びていく。むしろ今は、逆に、そうした需要に必要な供給が十分にされていない状況じゃないか。そうした視点から、医療イノベーションは、この成長戦略の中でも大きな柱として位置づけております。

 そして、この医療分野におけます新成長戦略に関連する事項を実現するために、これは官民挙げて強力に取り組もうということで、同じ年の十一月には医療イノベーション会議を設置して、翌年の一月には医療イノベーション推進室というものを内閣官房に設置いたしまして、そのもとで医療イノベーションの実現に向けて今まで取り組んでおります。特に、日本発の医薬品、医療機器の実用化に向けた医療研究開発の推進、規制制度改革、さらには再生医療など、次世代医療で世界をリードするための研究開発の推進を行っていきたいというふうに思っております。

 現在、こうした点を中心にいたしまして、医療イノベーション五カ年戦略の策定に向けまして検討作業を進めているところでありまして、党の方からもさまざまな御提言もいただいておりますが、なるべく早く医療イノベーション会議で決定をし、その上で、この戦略の内容は、国家戦略会議が策定する日本再生戦略にも反映させて、その実現を図ってまいりたいというふうに考えております。

勝又委員 御答弁いただいたように、政府の中でも検討、そしてさまざまな施策を推進していただいているというのは十分認識をしております。

 同時に、この医療という分野において、特に医療機器というものをどういう形で、我が国において、産業として、あるいは医療の重要な分野として推進していくかということにおいて質問したいと思うんです。

 日本という国は、この医療機器を、これまでは薬事法という範囲でくくってきた。いわゆる読んで字のごとく薬の事と書く、薬の範疇で医療機器を規制、審査してきた。しかし、どうなんでしょうか、薬と医療機器、共通点もありますけれども、相違点もたくさんあるというふうに私は認識をしております。

 世界のさまざまな国々を見ても、薬と医療機器を同じ法律でくくるというのはなかなか少ない事例だというふうに私も思っておりますし、やはり医療機器というものの特性から考えると、例えば、薬というのは物質ですから、人体の中に入れて普通の人々が飲むものである、医療機器というのは、医師という専門家がみずからの道具として活用するものであるという違いもありますし、あるいは医療機器というのは多岐にわたるという分野でもありますし、あるいはリスクとベネフィットの関係が医師という専門家との関係においてなるというような特性もあります。

 そういうことで考えると、私は、今、薬事法というくくりで医療機器を規制、審査しているということの改革が必要な時期に来ているのではないかというふうに思っておりますけれども、厚生労働大臣の御見解を伺いたいと思います。

小宮山国務大臣 医療イノベーションを推進する意味からも、今委員御指摘の医療機器、これを本当に安全に迅速に審査をしていくというのは大変重要だというふうに思っています。

 御指摘のように、医薬品とは異なる性質を持つ医療機器、これはやはり医薬品とは違う視点で審査をしていく必要がある。このことは、厚労省の中でも、医薬品、医療機器の業界の皆さんともテーブルをつくっていますが、そこでも強くそういう御意見をいただいています。

 薬事法につきまして、この医療機器の関係条項を医薬品とは別に条項を設けまして、これを医療機器の章とするということ、そしてあわせて薬事法の名称も変更するということ、こうした改正をいたしまして、医療機器をなるべく速やかに承認、認証できる仕組みをつくっていく必要があると考えていまして、今、その方向で企業や医師など関係者とさらに意見を聞きながら進めているところですので、この方向でやっていきたいというふうに考えています。

勝又委員 大変前向きの御答弁をいただきました。このテーマは、与野党を超えてずっと長い間議論してきたテーマです。まだ話題にはなっていませんが、私は、薬事法をきちんと医療機器の観点から章立てをして、今、法律名も含めて改めていくんだという御覚悟をいただきましたけれども、非常に重要な観点だと思いますので、ぜひ大臣、ここは頑張っていただきたいなという思いがございます。

 同じように、この薬事法の範疇で、医療機器の審査体制というものが、これまでいろいろデバイスラグとの関係において非常に議論になっています。これは別に産業の側の味方をするという意味ではなくて、患者さん、国民にとっても、最新のいい医療機器を少しでも早く使っていただきたいというのは国民益なわけですね。

 ですので、ここは何としても頑張っていただきたいんですが、特に申し上げたいのは、八〇%というキーワードがあって、薬品というのは、御存じのとおりグローバルな多国籍の大企業が多いんですね。医療機器というのは中小企業が八〇%なんです。そして同じく、医療機器というのは承認申請が年間約千二百件あると言われていますけれども、この千二百件のうち約八〇%は改造、改良型なんですね。

 薬と違って医療機器というのは、医師が使いながらいろいろマイナーチェンジしていくわけですね。したがって、そのことが直接大きな審査のポイントになるわけではなくて、むしろ、よく改良するのに非常に長い審査を何度も何度も繰り返していくというのは、ラグがあるだけではなくて、企業の体力も奪っていくんですね。

 ぜひここは私はきちんと検討していただきたいと思っていまして、PMDAの改革というのは我々も言ってきましたけれども、このPMDAを軸とする医療機器の審査体制の改革について今どのような御検討をされているか、ぜひ伺いたいなと思います。

小宮山国務大臣 医療機器、そのリスクの程度によりまして、届け出が必要な一般医療機器、それから民間の登録認証機関の認証が必要な管理医療機器、そして大臣による承認が必要な高度管理医療機器、この三つに分けられていまして、最後の高度管理医療機器についてPMDAで審査を行っています。

 この高度管理医療機器につきましては、今委員もおっしゃったように、そのおよそ八割が既に市場に流通している医療機器と構造などが同じ、いわば後発医療機器と呼ばれるものです。この審査につきましては、安全性はもちろん必要ですが、迅速化を図るために、薬事法の改正によりまして、民間の登録認証機関を活用した承認、認証制度を新たに設けるという見直しを行いたいと考えています。

 あわせて、PMDAについては、革新的な医療機器の審査により重点的に取り組めるように見直しを進めまして、国民の皆様により迅速に医療機器をお届けできるように、これもしっかりと取り組んでいきたいと考えています。

勝又委員 大変明確な御答弁、大臣、ありがとうございます。これは本当に、長年この世界に携わってきた人たちが考えてきたことを、今明確に言っていただきました。

 PMDAには、ぜひ革新的で最新の医療機器について重点的に審査、規制をしていただいて、今も大臣がおっしゃられたような、いわゆる医療機器の特性である、八割方の改造型、後発医療型の機器というものは、第三者機関の認証を活用することも含めて、ぜひ迅速な審査体制に一刻も早く改革をお願いしたいと御要望申し上げたいと思います。

 私は、同じく医療の分野で重要な因果関係があると思われるマイナンバーについてちょっとお伺いをしたいと思うんですけれども、この後マイナンバーについていろいろ伺っていくんですが、医療との関連においても、実は、マイナンバー、共通番号制度というのは極めて意味があるなというふうに私は思っております。

 私自身も地方議員の時代から取り組んできたがん対策などは、がん登録を含めて、どういう臨床がどういう形で効いていったのかという、極めてデータの世界なんですね。アメリカなんかは、これを一元化して、膨大なデータベースを持っています。日本は今、それがまだ途上でありまして、なかなか十分にいっていない。厚生労働省が十分努力をされているのは理解をしますが、一方で、このマイナンバーのようなものを使っていけば、民間活用していけば、がん対策におけるがん登録なんかの分野でも、飛躍的な進歩を遂げる可能性があるというふうに私は思っております。

 そういう意味では、ぜひマイナンバーの成立を機に、医療の分野でも、前向きに共通番号制度を捉えていただいて、がん対策を含めたさまざまな医療分野におけるデータベース化あるいは標準化、こういうものに活用できないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

小宮山国務大臣 私も委員と同じ問題意識を持っています。

 これまでも、厚労省ではさまざまなデータの整備、活用を図る取り組みを進めてきました。御指摘のがん登録につきましては、今年度中に全都道府県で実施をされる予定で、この法的位置づけの検討も行うことにしています。さらに、番号制度のような長期にわたって個人を把握できる、こういう基盤が医療などの分野で活用できれば、がん登録でいえば、患者の生存期間の把握などに資することができると思っています。

 ただ、マイナンバー法案は、利用可能な手続が法律上列挙された事務に限られていまして、医療などの分野では、プライバシーの保護が重要ですので、それを図るとともに、必要な利活用が適切に行われるようにするための法制上、技術上の特段の措置を検討するということにしています。

 今後、利便性が高くて安心して活用できる番号制度の構築に向けまして、医療などの分野での特段の措置の検討をなるべく早急に進めまして、関係者や国民の皆さんにメリットも含めて御説明をし、御理解をいただきたいというふうに考えています。

勝又委員 ありがとうございます。

 もちろん、医療が極めて個人的な、大事な情報だということは私も十二分に理解いたします。

 同時に、がんなどは命にかかわる極めて大事な情報ですから、逆に、このことを推進していくことは、プライバシーに負けないぐらい、国民にとって極めて利益がありますので、特に抗がん剤などは、今極めて高価格なものが続々と入ってきていて、どれがどうなっているのか、わけがわからなくなっている状況ですから、ぜひ御検討をお願いしたいと思います。

 あわせて、この共通番号制度、マイナンバーについて、社会保障と税の一体改革の観点での質問に移っていきたいというふうに思うんですけれども、私は、この社会保障と税の一体改革は消費税の問題が極めて国民的には話題になっているわけですけれども、実はその背景にあるこの共通番号制度、マイナンバーというのは、国民にとって極めて利益のある、非常に意味のある法律、制度だというふうに思っております。

 今、がん登録の一例を厚生労働大臣から御答弁いただきましたけれども、ぜひ、この共通番号制度、マイナンバーの意義というものを国民の皆さんにわかりやすく御答弁をいただきたいと思います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 マイナンバーは、より公正な社会保障制度の基盤であるとともに、情報化社会のインフラとして国民の利便性の向上に資するものであります。国民の視点に立った番号制度の構築ということをこれまで考えて、法案提出に至ったところであります。

 具体的には、この番号制度の導入によりまして、所得把握の正確性が向上して、真に手を差し伸べるべき人に対する社会保障の充実ができることになると思いますし、また、負担、分担の公平性が担保されることにもなると思います。

 さらに、さまざまな行政手続などにおいて従来求められていた添付書類が削減されたりとか、行政機関から国民の皆様方へきめ細かなお知らせサービスの提供が可能となるなど、さまざまな利点があると思います。

 また同時に、このマイナンバーを活用することによって、国、地方における行政のさまざまなコストの削減にもつながっていくというふうに考えております。

勝又委員 この番号制度というのは、ひとときは国民総背番号制などといって、極めてネガティブな表現で言う方々がいる中で厳しい局面もあったんですけれども、今大臣からお答えいただいたように、実は、非常に国民にとってメリットがある。

 例えば役所の中へ行って、今おっしゃった趣旨でいえば、いろいろな、住民票の添付をしたり印鑑証明をとったり何をとったりというようなことが一つの窓口できちんとできるようになる、あるいは、いわゆる申請主義と言われる、国民にとって利益があることも一々役所に行ってお願いをしないと利益が得られないというこの日本の体制を、逆に、国の方から国民にきちんとメリットを享受させていくことができるというようなさまざまな意味があると思いますので、私は極めて意義のある法案だと思っております。この社会保障と税の一体改革の委員会にはかかっているわけではありませんけれども、あわせて、この推進は重要なテーマだというふうに思っております。

 そこで、私が今懸念をしている課題について一つお伺いをしたいんです。

 このマイナンバーを推進していくに当たって非常に重要なインフラの整備、いわゆるIT調達が必要になってまいります。恐らく、本当にこれだけ国民に密接に関係のあるITシステムを導入するということは、そうそうないことだろうと思います。

 一方で、我が国のIT調達というのは、この十年、さまざまな課題を抱えてきました。いっときは、分離分割発注あるいは低コスト化ということが言われて随分改革が進んだかのように見えておりますが、実は、そのことが大きな弊害を幾つも起こしてきたという反省があります。

 例えば、近年でいえば、特許庁の情報システムの課題が有名であります。二〇〇六年に調達をされて、二〇一一年を開発の期間としていたんですが、これがどんどん先延ばしになっていった。そして、ことしになってついに、もうできませんと言ってその受注企業がバンザイをしてしまった。

 どうしてこういうことが起こるのかということをきちんと考えなきゃいけないと思うんですが、これは、我が国において平成十四年に調達関係省庁申し合わせというのがありまして、内閣官房、財務省主計局、総務省行政管理局、経産省、こういったところが、IT調達にかかわる総合評価落札方式の標準ガイドというのをつくっています。簡単に言うと、これは価格点と技術点を一対一にするんですね。これをわかりやすく言えば、価格点が八十点、技術点が二十点でも、その逆でも、全く同じ点数になるんですね。

 ということはどういうことか。ともかく安い値段で入れておけば、たとえ技術が低くても、あるいはその設計能力はなくても落札できてしまうというシステムなんです、この加算方式というのは。一対一のこの制度が、特許庁のようなこういう、受注はしたけれども最後システムがつくれませんというような恐ろしいことが起こるんですね。

 ちなみに特許庁は、この五年間に五十五億円投入して、結局システムは何一つできなかった。やり直しです。

 もし、共通番号制度、マイナンバーでこんなことがあったらどうなりますか。私は、これはもう政府の責任なんというものでは済まされない、大変なことになってしまうというふうに思います。

 そういう意味において、四省庁の標準ガイドを見直すことも大事ですが、もう既に法案提出をしていて、法案が成立すればこの共通番号制度はいよいよ調達がスタートする段に入っていますから、ぜひこのことについては、この共通番号制度でまずきちんと調達のあり方というものを考えていく必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。

古川国務大臣 今御指摘がございましたように、この番号制度導入に当たって、システム調達でゆめゆめ疑義があるようなことがあってはいけないですし、やはりきちんと、これは決めた以上はちゃんとそれがうまく整備をされなければいけないというふうに思っています。そういった意味では、調達というのは極めて重要な課題であるというふうに思っております。

 今委員からも御指摘がございましたが、この調達のあり方につきまして、先ほど指摘があった標準ガイドにおけます得点配分を含む総合評価落札方式のあり方につきましては、今後、関係府省の協力を得つつ、政府情報システム調達のあり方全般を検討する中で議論していくことというふうにされております。

 ただ、ちょっと、結論を得るには一定の期間が必要じゃないかなという議論もありますので、そうしたことも踏まえまして、今、このマイナンバーに係る情報提供ネットワークシステムの調達のあり方については、勝又委員初め、党の方でも御議論いただいております。ですから、そういった党の方の御議論も踏まえて、適切な調達を行っていかなければいけないというふうに思っております。

勝又委員 この問題は、実は財務金融委員会でも財務大臣に三村委員が質問しています。要するに、調達のあり方、制度というものの所管という意味において財務大臣は協議を受ける側だと思うんですけれども、今、古川大臣から御答弁がありました。この共通番号制度には、私の申し上げた、党の側の趣旨も踏まえて、いわゆる価格と技術の一対一という問題、これを検討していくというふうに言っていただきました。

 実は、財務大臣も財務金融委員会で三村さんの質問に対して、自分自身からも関係省庁に働きかけをして、やはり今の技術レベルの高さがそのまま落札に、今の一対一以上に反映できるような仕組みを考えるのがいいのではないかなという感想を持ちましたので、今後働きかけをしていきたいというような御答弁をされていますけれども、ぜひこの問題、財務省としても前向きにとらえていただきたいんですが、いかがでしょうか。

安住国務大臣 御指摘の問題点は、私も全くそうだと思っております。

 民主党の中の小委員会での議論というものを踏まえて、財務省としては対応してまいります。ふだん財務省は余り民主党の言うことを聞かないじゃないかと言う人もいますけれども、この問題に関しては、小委員会の意向をちゃんと受けてやらせていきます。

勝又委員 大変心強い、この問題についてはしっかり考えたいという御答弁をいただきました。ありがとうございます。

 済みません、五十嵐副大臣にも御答弁をお願いしたいと思ったんですが、ちょっと時間がないので一問飛ばさせていただいて、最後の質問に移りたいというふうに思います。

 社会保障と税の一体改革、この委員会でも、逆進性対策とか低所得者対策というのは何度も議論になって、これは極めて重要な論点として私も認識をし、議論が深まってきているというふうに思います。しかし同時に、総理も言っているように、我が国の今後のあり方として、分厚い中間層を復活させていくんだというお話をしています。私自身も、この分厚い中間層を構成している皆さんというのは、実は日本の活力ではないかというふうに思っているんです。

 そういう皆さんにとって、やはりこれまでの逆進性、低所得者対策という議論だけでは、なかなか社会保障と税の一体改革が、なぜ日本にとって、国民にとって利益があるのかというのは、いま一つまだ伝わっていないような気が私はしています。

 そういう中で、岡田副総理にぜひ伺いたいんですが、いわゆる総理が言う分厚い中間層を復活していくんだという意味においては、この社会保障と税の一体改革というのはどういう意義があるとお考えでしょうか。

岡田国務大臣 直接的には、一つは今回の子ども・子育て支援策、これは、働くことと子育てがきちんと両立する、そういう日本をつくるということですから、まさしく中間層の皆さんを中心にそのメリットは享受できるというふうに思います。それから、厚生年金の適用範囲の拡大もその一つだと思います。

 ただ、そういった個々の問題は別にして、やはり社会保障制度をしっかり持続可能にするということ、そのことが、中間層、つまり多くの皆さんの将来の生活を保障し、そして安定させるということですから、この社会保障・税一体改革そのものが基本的に中間層の分厚さを増すために重要なものである、そういうふうに思っています。

勝又委員 ありがとうございました。質問を終わります。

中野委員長 これにて勝又君の質疑は終了いたしました。

 次に、田中美絵子さん。

田中(美)委員 民主党・無所属クラブの田中美絵子でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 社会保障と税の一体改革法案につきまして、私も、最近地元を回っておりまして、進めてほしいという声と、そうではない声、両方伺っているわけでございます。国民の皆さんには改革の内容がまだ十分御理解いただいていないというふうに私も思っております。

 そこで、本日は、この社会保障と税の一体改革関連法案による改革の内容、そして関連する事柄について幾つか質疑をさせていただきたいと思います。

 まず、地元の皆様から一日も早く実現してほしいという御要望をいただいておりますのが、学童保育の充実でございます。

 私は、厚生労働委員会の委員、そして学童保育の議連のメンバーということもございまして、地元の学童保育をおよそ三十カ所程度回らせていただきまして、さまざまな御意見を伺ってまいりました。本当に、子供たちが元気にされている姿を見て大変感激もいたしましたが、一方で、保護者やまた指導員の皆様方が大変な御苦労をされているということも実感をしたわけでございます。

 そんな中で、今回の児童福祉法改正による学童保育の充実は、一日も早く実現してほしいと皆さん方も心待ちにしていただいているところでございます。ただ、いつから実現するのかということになった場合、消費税が上がってからですよといったお答えをしますと、やはり皆様方は、二年間も待てないといったことをおっしゃるわけでございます。学童保育は、一般的には小学校一年生から三年生が通っておりますので、改革の恩恵を受けられるのは小学校一年生だけだというふうに思います。

 何かサービスを買うときには、サービスと同時にお金を払うならいいんですが、お金を先に払ってください、サービスは後ですということだと、お金を払うのにはもちろん抵抗があるわけでございます。消費税も、増税後にどんなふうに生活がよくなるのか体験していただく、これが御理解を得るのに大変重要なことだと思うところでございます。

 そこで、学童保育を例にとって、何か消費税増税前から改善できるところはないかということをお伺いしたいと思います。

 まず、現在、お手元の資料一ページのように、十人未満の小規模学童保育、これは国の補助制度の対象とならない学童保育でございますが、市町村が行う支援事業は、地方交付税のうち特別交付税で国、総務省からお金が出されております。全体の金額は四億四千万ほどでございますが、各都道府県の市町村の実施状況を都道府県別に集計した金額を見ますと、富山県の一億円から広島、新潟の二千万円、そして沖縄県のゼロ円まで、かなりのばらつきがあるわけでございます。

 学童保育をつくるときに、最初からたくさんのお子さんを集めるのは難しい場合もあります。小さく産んで大きく育てるということで、厚生労働省のホームページの活用も含めて、この特別交付税制度の市町村そして学童保育関係者への周知を図り、まずは小規模学童保育から量的、質的な拡充策をとっていただけないかと思いますが、厚生労働大臣、いかがでしょうか。

 ちなみに、大臣はこの特別交付税制度を御存じだったでしょうか。

小宮山国務大臣 この学童保育の問題というのは、私も自分の経験もございましたし、ガイドラインづくりなど、私自身もいろいろ努力をしてきたところで、もちろん、この制度があることは知っています。

 今回、新システムの中にきちんと盛り込んでいますけれども、おっしゃるように、その前からできること、今もできることとして、その十人未満の放課後児童クラブに、今御紹介があったように、国庫補助要件を満たさない、小規模なところを支援するための特別交付税が交付をされています。ただ、全国ばらつきがあるということも事実ですので、自治体とか関係者の皆様に、いろいろな機会を捉えて周知に努めていきたいというふうに思います。

田中(美)委員 ありがとうございました。

 また、学童保育では、都道府県の単独事業で、いわば都道府県の持ち出しで国庫補助対象外のクラブへの補助ですとか国庫補助の上乗せを行っている事例が、調査していただいたところ、二十九都道府県ございます。資料の二ページ目でございます。

 これもかなりばらつきがございます。国庫補助対象外のクラブへの運営費補助を見ますと、鳥取県が一億九千万円で一番多く、国庫補助対象クラブへの上乗せ補助では東京都が十一億円という数字もございます。全体の金額は十七億円ほどでございますが、東京都の十一億円は、地方交付税不交付団体でございますから、それを除くと六億円でございます。この県などの単独事業を地方交付税で支援すれば、もっと多くの自治体がいろいろな事業を行えるようになると思います。六億円くらいのお話だと思います。

 消費税が上がるまでの間で結構でございますので、厚生労働大臣、総務大臣に、地方交付税で支援していただけないかと頼んでみていただけないでしょうか。

小宮山国務大臣 放課後児童クラブに対する地方単独の支援につきましては、二十九都道府県で国庫補助に対する上乗せなど十七億円を補助していると承知をしています。

 これに対する国の支援につきましては、国庫補助のあり方とあわせて、地方自治体の実情をよく伺いながら、総務省初め関係府省と連携をして検討していきたいと思います。

田中(美)委員 ありがとうございました。

 学童保育は、大変厳しい財政状況の中で、保護者の皆さん方が中心となって運営をされているわけでございます。その中の指導員の皆さんも、平均三年未満で収入の面からやめてしまうといったケースもあるというふうに伺っております。ぜひ国の手厚い支援をお願いしたいと思うところでございます。

 それでは、消費税本体のお話を少しさせていただきます。

 学童保育の量的拡充には、消費税で百億円を手当てすると伺っております。また、消費税収のうち七千億円が子育て関係に充てられるとも伺っております。他方、消費税を上げると、物価が上がり、景気が後退して、全体の国税収入や十三・五兆円という消費税収そのものが減ってしまうと指摘されている方もいらっしゃいます。

 そこで、素朴な疑問ですが、消費税を上げた後、景気が悪くなり、全体の国税収入や十三・五兆円と予定されている消費税収が減ってしまった場合でも、子育て関係の七千億円とか社会保障改革メニューには予定どおりの予算がつくのでしょうか、それとも削られてしまうのでしょうか、予算は削らず国債の発行でしのぐのでしょうか。岡田副総理、お答え願いたいと思います。

岡田国務大臣 まず、経済への影響ですけれども、普通に考えれば、そう大きくはないというふうに考えております。これは、前回の橋本政権のときにはかなりの影響があったことは事実で、私も、野党のときにそのことについて国会で取り上げたことを思い出します。

 ただ、後から考えてみると、数字的には消費はそんなに減っていないんですね。統計上は後からこれは出てくるわけですけれども。むしろ、やはり全体の経済規模が、不良債権の存在などによって全体の貸し渋りなどがあった、そのことによって経済が縮んだということが、消費税収にももちろん、全体の税収にも影響したということであります。

 基本的に、いずれにしても、それは後からわかることでありまして、消費税収が減る、減らないということも事後的にわかることで、そのことによって当初予定した予算がすぐに変わる、こういうことはございません。

田中(美)委員 ありがとうございました。

 一応、念のためですが、消費税と景気の関係についてお伺いいたします。

 消費税を上げると物価は何%上がると予想いたしておりますか。また、その物価上昇だけ捉えると景気への影響はどう出ますか。経済財政担当大臣、お答え願います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 消費税率の引き上げ前後には、駆け込み需要及びその反動減による影響が見込まれるものの、引き上げ前後の期間をならしてみると、成長率については、消費税率の引き上げがない場合と大きな差はないというふうに考えられます。

 内閣府で経済財政の中長期試算をしてみましたが、消費税率引き上げ前後に当たります二〇一三年から一六年度におきまして、消費税率の引き上げを含む一体改革を考慮した場合と考慮しない場合について比べますと、消費者物価上昇率は年平均〇・九%程度の差が生じるのに対しまして、経済への影響については、実質GDP成長率について見ると、年平均〇・一%程度の差が生じる程度というふうに試算をいたしております。

田中(美)委員 ありがとうございました。

 社会保障改革を実現するには、景気対策を頑張って消費税収を確保しなければならないということはよくわかりました。

 そこで、景気対策ですが、財政出動するのは本末転倒ですし、規制緩和は効果が出てくるのに何年かかかると言われております。金融の緩和が大切だと思います。日銀にもっと金融緩和してもらえるよう政府としてメッセージを発していただけないでしょうか。

 総理が一生懸命景気対策を頑張ると国会で表明されておりますが、日銀がそれと連携して金融政策を行うという姿勢を見せてもらわないと、総理の決意も説得力を欠いてしまうと思います。岡田副総理の御決意を伺いたいと思います。

岡田国務大臣 突然の御指名だったんですけれども、基本的に、日銀と政府の関係はきちんとコミュニケーションができている。これは、総理と日銀総裁の間、私も総裁と時々お話をすることはありますが、もちろん、財務大臣や古川大臣との間も含めて、コミュニケーションできております。基本的認識も変わりません。

 ただ、もちろん、それぞれの役割というものがありますから、その独立性をきちんと担保しつつ、お互いに共通の問題意識を持って、共通の目標に向かってそれぞれの役割を果たすということで、私は、現時点ではかなりうまくいっているというふうに思いますし、これからもそこにそごが出ないようにしっかりとやってまいりたいと思います。

田中(美)委員 景気対策をしっかりとっていただいて、税収が期待どおり上がってくるのを期待したいと思います。

 では、消費税との関連で、介護保険について少し伺います。

 まず、平成二十四年度の介護報酬改定については、介護報酬が引き上げられた分野もあれば、下げられた分野もあると伺います。事業所の収益状況も勘案して上げ下げが行われたとも伺いますが、どのような方針で行われたんでしょうか。厚生労働大臣、お答え願います。

小宮山国務大臣 平成二十四年度の介護報酬改定では、介護職員の処遇改善の確保、地域包括ケアの推進などを図るために、一・二%プラスの改定を行いました。

 改定の主な内容は、施設から在宅介護への移行を図る観点から、在宅サービスの充実と施設サービスの重点化を推進する評価を行ったということ、また、介護予防、重度化予防の観点から、リハビリや機能訓練などの自立支援のためのサービスを適切に評価したということ、また、医療と介護の機能分担、連携を推進する評価を行ったこと、そして、介護人材の確保と介護サービスの質の向上に向けた取り組みを強化したことなどです。

田中(美)委員 ありがとうございました。

 政策的な配慮もあって介護報酬改定が行われたと伺いますが、事業主側からすると、介護報酬から見て高い収益が見込まれるから投資したにもかかわらず、その後、介護報酬が下げられると不測の損害をこうむってしまう場合もあろうかと思います。

 次回改定は、消費税の増税に絡む時期でもあり、国民の皆様にも納得していただける方策を考えなくてはいけないと思いますが、厚労大臣、事業主から見てもわかりやすい改定の方向性を考えていただけませんでしょうか。

小宮山国務大臣 社会保障・税一体改革の大綱では、二〇二五年に向けまして、地域包括ケアの構築を目指しています。これによりまして、介護が必要な状態になっても、なるべく住みなれた住宅、地域で在宅を基本として生活が継続可能なようにしていきたいと思っています。

 次期の介護報酬改定は、こうした将来の方向性に向かって行う予定でして、おっしゃるように、もちろん、関係者の御理解を得なければいけないので、事業主を初め関係者の御意見も十分伺いながら行っていきたいと思っています。

田中(美)委員 ありがとうございました。

 それでは、消費税との関連で、医療保険制度について一つだけ質問させていただきます。

 人工乳房の薬事承認と保険適用の問題です。

 人工乳房と申しますのは、女性が乳がんなどで乳房を切除せざるを得ないという場合に、乳房を切除した後の胸に埋め込んで乳房を再建する器具でございます。乳房を切除するということは、女性にとっては大変な精神的苦痛を伴うものでございます。この精神的な苦しみを少しでも和らげる手段として、人工乳房が注目をされております。

 しかし、薬事法の承認がない、医療保険の適用がないということが大変な問題になっておりまして、今現在、片方で百万以上もかかってしまっております。そのために、乳がんの切除手術をためらって命を縮めてしまう患者さんもいるのが現状でございます。そして、このような中、人工乳房の薬事法承認の手続がなかなか進まないという現状がございます。

 何とかこの人工乳房の薬事承認と保険適用を進めてほしいというのが全国の乳がん患者さんたちの悲願でございますが、厚労大臣の今後のお考えを伺いたいと思います。

小宮山国務大臣 乳がんになった方、それから専門の学会などから、人工乳房インプラント、この早期の薬事承認と保険適用を求める声があることは承知をしておりますし、私も直接そういう要請も幾つかいただいています。

 委員からの御指摘も含めまして、厚生労働省としても、患者さんや専門家の皆さんの願いに少しでも早く応えられるように、薬事承認に向けまして、審査をできる限り早く進めていきたいと考えています。

 また、このインプラントが薬事承認された場合には、保険適用に向けた手続を進めていきたいと思っています。

田中(美)委員 ありがとうございました。ぜひよろしくお願いいたします。

 では、消費増税や社会保障改革の中心的な課題であります年金について少し伺います。消費税率のあり方とも関係する運用についてです。

 まず、平成十三年から公的年金の積立金の自主運用というものが始まっております。

 直近年度の運用成績と平成十三年度からの通算の運用成績はどうなっていますでしょうか。資料三ページにも出ておりますが、厚生労働大臣、御確認願います。

小宮山国務大臣 厚生年金と国民年金の積立金は、平成十三年度に自主運用が開始されています。

 それ以来の運用状況は、収益率につきましては、平成二十二年度末まで一・五七%のプラスとなっています。また、累積の収益額については、平成二十三年十二月までで、およそ十九・七兆円のプラスとなっています。

 今後とも、長期的な観点から、安全で効率的な、そしてまた確実な運用に努めていきたいと思っています。

田中(美)委員 ありがとうございました。

 お手元の資料四ページと五ページのように、国家公務員共済や地方公務員共済の積立金の過去十年間の収益率平均は二・〇二%ということでございますが、厚生年金、国民年金は一・五七%ということで、公務員共済に比べて見劣りがいたしております。

 何かと恵まれていると言われております公務員の年金でございますが、積立金の運用についても成績がいい。被保険者である民間サラリーマンとしては不公平感も募るのではないかと思います。

 公的年金一元化も控えておりますので、公務員共済並みの二%ぐらいの利回りが出るように何とか頑張っていただきたいのですが、厚労大臣の御決意を伺います。

小宮山国務大臣 年金積立金の運用利回り、これは主に資産構成割合によって決まってきます。

 GPIFの基本ポートフォリオでは、国内と外国の株式の割合が合計二〇%で、国共済と比べまして株式の割合が高いんです。平成十三年度から二十二年度までの期間は、国内と外国の株式の収益率が債券を下回ったために、株式の割合が低い国共済の運用利回りが高くなっていると考えられます。

 他方で、厚生年金と国民年金の積立金の運用では、平成十三年度から二十二年度までの間に、年金財政上必要な利回りは確保をされています。

 引き続き、効率的で安全な観点から運用をしていきたいというふうに思っています。

田中(美)委員 御決意の表明、ありがとうございました。

 ただ、利回りを確保するために乾坤一てきでハイリスク・ハイリターンの運用に打って出るということはどうかとも思います。

 新興国株式での年金資金の運用を始めるというような報道もありましたが、新興国の株式というものは企業倒産のリスクや為替変動のリスクが高いと伺います。この新興国株での運用について、検討状況や今後の方針を、厚生労働大臣のお考えを伺います。

小宮山国務大臣 年金積立金の管理運用、これは、厚生年金保険法などで、専ら被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うこととされているところです。

 このため、新興国の株式での運用は、GPIFの運用委員会で慎重に検討されましたが、一つは、新興国の株式市場は世界の株式市場全体で一四%を占めていて、新興国株式への投資が一般的となっているということ、また、外国株式の運用でこのような成長市場に投資しないということはかえって収益機会を失うことになるということから、基本ポートフォリオの外国株式の割合の範囲内で新興国株式での運用を拡充するということにいたしまして、今準備を進めているところです。

 また、実際に運用を担うことになります運用受託機関でも、取引量が少ないなど新興市場の特徴に配慮いたしまして、運用の開始については慎重に行っていきたいと考えています。

田中(美)委員 ありがとうございました。手がたい運用をぜひお願いいたしたいと思うところでございます。

 それでは、通告しておりませんが、岡田副総理にお伺いをさせていただきたいと思います。申しわけございません。

 岡田副総理の御実家は大手のスーパーを経営されているというふうに思います。今回の消費税の増税は、家計に大変大きな負担感を与えるものではないかと思うところでございます。

 そんな中、岡田家では、お子さんがお二人いらっしゃって、奥様もいらっしゃるということでございますけれども、奥様は消費税についてどのようにお考えなのか、もし御家庭内でそういった家族の会話がございましたら、教えていただきたいと思います。

岡田国務大臣 私は、野田総理とともに、この社会保障・税一体改革を必ず実現するということで頑張っておりますが、それを一生懸命サポートしてくれていますので、同じ考えだと思います。

田中(美)委員 ありがとうございました。

 いろいろと伺ってまいりましたが、そろそろ時間となりましたので、結びとさせていただきたいと思います。

 子供たちの瞳が輝く社会、年金や介護など老後の安心な社会、そうした暮らしやすい日本の国づくりに社会保障と税の一体改革法案が大いに貢献することを祈念いたしまして、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

中野委員長 これにて田中さんの質疑は終了いたしました。

 次に、大野功統君。

大野委員 おはようございます。自由民主党の大野功統でございます。

 私は、まず、社会保障と税の一体改革に臨む野田内閣の基本的な姿勢についてお伺いいたしたいと思います。

 基本的姿勢といった場合には、一つは政治的な決意、政治的な取り組み、もう一つは政策的な課題、テーマでございます。

 まず、政治的な問題について、側面についてお伺いしたいと思うんですが、野田総理はこの改革に当たって、政治生命をかけるんだ、それから、昨日は野田・小沢会談があったようでございますけれども、乾坤一てきなんだ、あるいは一期一会なんだと。まあ随分と言葉は躍っているんですよね。なかなか、言葉が躍っているだけで、一向に進まない。全く会談は平行線に終わったと伺っております。

 しかし、この問題は、別の視野から見ますと、何だか民主党の内部の内輪げんかなんですよね。こんなに、社会保障を改善するために、国民に強い、大きな負担を、大きな痛みをやってもらわなきゃいけない、こういう重要な法案を審議しているときに、なぜ内輪でそんなにもめなきゃいけないのか。内輪げんかにはもう見切りをつけていただきたい。内輪げんかの期限はもう設定してもらいたいと思いますよ。そうでないと、国民から見たら、こんな大きな問題を議論しているのに、内輪げんかで先行き見えないじゃないか、本当に政治というのは一体何やっているんだ、こういうことであります。

 そういう意味で、小沢氏をいつまでに説得し、説得できなければ、いつには見切り発車をするよ、もう見切り発車の時刻は過ぎてしまっておりますので、そういう決意をどうぞまずお聞かせいただきたいと思います。これは岡田副総理にお願いいたします。

岡田国務大臣 私は、ちょっと大騒ぎし過ぎだと思いますね。党の中で確かに元代表は非常に影響力のある方ですから、元代表と総理が会談をする、メディアがいろいろ騒ぎ立てるのはわかりますが、しょせん党内のこと、そして、党の中の方針はもう決まっている。手続を経て、閣議決定もして、法案を国会に出し、こうやって御審議いただいているわけであります。

 それぞれの御意見はいろいろありますから、それを総理として聞くということ、これは必要なことだと思いますけれども、耳を傾けることは。それを余り大きく取り上げるというのは、ちょっと私は理解に苦しむわけでございます。方針は既に決まっております。

大野委員 私が伺っているのは、そういう認識であれば、いつ見切り発車をするのか、小沢氏を説得できなければ、いつ小沢切りをやって本筋の方へ入っていくのか、こういうことを聞いているんです。

岡田国務大臣 ちょっと言葉が私はいかがなものかと思うんです。これは党の中の問題ですから、切るとか切らないとか、そういう問題は党にお任せいただいて、我々は、やはり党に所属する議員の皆さん、いろいろ意見がある、それは最後までしっかり説得をするということでございます。(発言する者あり)

 伊吹筆頭が採決すればいいとおっしゃっていますが、それは、きっちり審議を尽くし、そして、ぜひ我々の出している法案にいろいろ御意見もいただき、合意点に達し、そして採決をする、そういうことだと思っております。

大野委員 だからこそ、私は、この内輪げんか、党の中の問題だから口出すな、こういう趣旨だろうと思いますけれども、だから、内輪げんかだ、こんな内輪げんかを見ている余裕はないよ、こういうことを申し上げているんですよ。

 ただ、そういう問題の前に、一つ考えてもらいたいことがある。それは、三年前に総選挙で民主党は国民から負託を受けました。そのときの民主党と今の民主党、変わっていませんか。そのときの民主党は、マニフェストでは今とは違ったことを言っておりました。そのときの民主党は、国民から見て本当に一体感があったんですよ。今の民主党は、そのときに比べて心も体も変わっちゃっている。体質も考え方も変わっている。

 そうなりますと、やはりここで、国民の負託を受けた民主党、体質が変わっている、心が変わっているんだから、もう一度国民に信を問い直す必要がないのかどうか。私はあると思いますよ。体質が変わっている、心が変わっている、そういうことを考えて、どうぞ、そういうことについて基本的にどう考えるのか。

 負託を受けたのは民主党なんですよ。野田さんじゃないんだ。野田さんというのは、民主党から選ばれて、国会で承認を受けて総理になっていらっしゃるわけですから。民主党が変わっているんだから、民主党自体を問い直してみる、この必要がないかどうか。

岡田国務大臣 二〇〇九年の選挙のとき、私は幹事長でございました。今は副総理という立場でおります。

 心が変わったとか体質が変わったという言い方は、ちょっと党に対して失礼ではないかと私は思います。我々は全く変わっておりませんし、国民の生活が第一、こう訴えて二〇〇九年の選挙を戦いましたが、今もその基本的考え方は変わっておりません。

大野委員 心が変わった、体が変わったと言うと大変失礼だという御指摘でございますけれども、国民から見たら、当時、三年前の民主党は一体感がありましたよ。今、内輪げんかをやっている民主党ですよ。三年前の民主党は、マニフェストで明快に書いてあった。これは、考え方が変わっています。だから変わったと言っているんです。国民の目から見て私は申し上げているんですが、そういう意味で、やはり国民の信を問い直す、このことは非常に重要な問題だと思っております。

 政治的姿勢というのは、御答弁を聞いていまして、余りはっきり、よくわかりませんでしたけれども、変わっていないとおっしゃるのなら変わっていないとお思いなんでしょうが、私から見たら、国民の目から見たら、変わっていますよ、こういうことを御指摘申し上げたいと思います。

 次に、問題は、政策的見地、特に税財政の面から見た見地から御質問申し上げたいと思うのであります。

 まず、この二十年間、国の税収、随分変わっています。

 ちょっと申し上げますと、法人税でいいますと、これは平成元年ですけれども、十九兆七千億円あった。これが、平成二十三年の決算がまだ出ておりませんので、平成二十二年で申し上げますと、九兆円。すごい落ち込みですね。半分以下ですよ。それから、所得税が、二十六兆七千億円あったのが、平成二十二年決算で十三兆七千億円。消費税は、五%に引き上げた後ですけれども、十兆六千億円ありました。これは、そう大きくは減っていませんけれども、十兆円になっている。三税合わせて、税収の落ち込み、二十四兆以上あります。

 もちろん、この間、法人税、所得税の税率の引き下げとか、あるいは研究開発投資減税とか、いろいろあったわけですけれども、それを調整しても、恐らく二十兆近い落ち込みがありますよね。このことについて率直な感想を、副総理なり安住大臣、どちらでも結構でございますが、おっしゃってください。

安住国務大臣 おはようございます。

 九〇年度で六十・一が、二〇一〇年で四十一・五ですから、先生御指摘のとおりでございます。

 私も、中身を見て思うのは、分離課税の部分でいうと、利子それから土地、これらがやはり相当落ち込んでいまして、実は中身だけで八兆円近いんですね。ですから、そういう意味では、この二十年を見たときに、金融の面もありますけれども、やはり資産の、土地の下落等が税収にはね返ってきていること、これがそのまま数字に出ているんではないかなと。こうしたものが土台となって、もちろん、累次のフラット化や法人税の減税等はやりましたけれども、根本にはやはり、こうした分離課税の部分を見たときには、経済の状況というのが影響しているんではないかと思っております。

大野委員 そういう分析は分析として評価しますけれども、私は感想をどうですかとお伺いしているんです。

 感想からいえば、今申し上げました二十四兆なりの減収というのは、消費税換算で何%ですか。一〇%ですよ。これだけ税収が三税だけで落ちていて、それで今、消費税、最終一〇%の目標で上げていく、消費税の五%を上げていく、こういう議論をやっているのは本当にむなしい、こういうふうに思うんですよ。

 だからこそ、消費税を議論する場合に、景気対策とか、無駄の削減とか、それから財政削減とか、こういう問題が重要になってくるんじゃないか、こういう感想をいただきたかったのでありますが、どうぞ。

安住国務大臣 日米議員会議でも、先生に会長をしていただいて、私も副会長をやらせていただいたり、大変長く御指導いただいております。

 もちろん、そうだと思います。ただ、例えば、平成十九年は、先生、五十一兆まで税収がはね返って戻ってきているんですね。ですから、やはり景気を好転させるということは本当に重要なことだと思います、それに伴って税収も上がってきて。

 ただ、一方で、構造的な問題として、やはり社会保障の部分で安定財源を求めていかないと、ここでも何度も御指摘いただきましたけれども、一般会計におけるほかの予算がほとんど伸び悩んでいる中で、成長戦略を含めて、さまざまな積極的な国の投資というか予算措置というものを考えたときには、やはりそういうこともやっていかなければならないという側面もございますので、今回、消費税の提案をさせていただいているというところでございます。

大野委員 おっしゃるとおりです。社会保障の安定財源を得るというのは、本当に我々、政治の課題として、自民党も一生懸命取り組んでいるところでございます。

 ただし、私が申し上げているのは、増税を考える場合に、やはり、今申し上げたような、財政の削減をどう考えるか、無駄切りをどうやっていくか、景気対策をどうやっていくか、こういう問題だということを御指摘いたしておるところです。

 そこで、法案を見ますと、目標として、社会保障の安定財源と財政の健全化、この二つを掲げておりますけれども、財政の健全化というふうなことを言った場合、本当に私は、二十一年から二十四年の四年間ですか、公債発行の方が税収より大きいんですよね。こんな国はどこにあるんだ、これはもう絶対直していかなきゃいけない、こういうふうに思っておるところでございます。

 民主党は、かつて、増税以外の選択肢を随分強調しておられました。例えば、無駄を省くんだ、あの事業仕分けなんか随分と受けましたからね。事業仕分けとか、公共事業、コンクリートから人へとか、公務員の給与カットとか、こういう無駄を省くことに随分力を入れられた。あるいは、埋蔵金があるんだと言って、埋蔵金に随分取り組んでおられた。政府保有株、JT株とか郵政の株とか、そういうのを売ろうとしていた。こういう努力を振り返って、いかがですか。

安住国務大臣 失礼します。最初に私の方から言って、その後、副総理に答弁していただきます。

 リーマン・ショックの次の年の税収が三十七兆まで落ち込んだということは、麻生内閣でも大変経済対策等をやられましたけれども、その土台がそこまで落ちていて、一般会計上はどうしても九十兆円近い予算を組まざるを得なかった、そのギャップというのはやはり非常に大きいものがあったと思います。

 財務大臣として申し上げれば、やはり今先生から御指摘のように、公債発行の方が多いということは、私も恥ずかしい話だと思いますから、何とか来年度は何が何でもこれは逆転をさせたいと思っております。

 そういう点から……(発言する者あり)ですから、ことしの税収は何とか上げたいとは私は思っておりますが、そういう中で、特別会計を含めて、いわゆる埋蔵金というようなものもいろいろ探ってきましたけれども、限界があるということもこれは事実でございますので、そういう中で、やむを得ないことではありますけれども、税収構造の見直しとしての消費税というものをやはり提案せざるを得ないと私は思っております。

岡田国務大臣 政権交代後、委員御指摘のことはいろいろと進めてまいりました。その結果として、例えば二十二年度は、新たな財源確保として十四兆円。歳出削減で二・三兆、そのうちには公共事業一・三兆を含みます。税制改正で一・一兆、これは年少扶養控除の廃止であります。それから、税外収入で十・六兆。二十三年度につきましても、個々の内訳は申し上げませんが、全体で十・九兆円程度の財源確保をしております。

 そういったことはかなりやってまいりました。しかし、こういうものには終わりがございませんから、これからも進めていかなければいけない。

 間もなく、各省庁がみずからの事業を見直すという行政事業レビューというものを始めます。これは公開して進めるわけですが、今までになかった、役所みずからが自分の無駄をきちんと外部の人も入れて指摘をしていただき、そして、それを概算要求に反映していくという新たな試みでございます。

 それから、もちろん、公務員人件費の削減ということにつきましても、一時的なものだけではなくて、例えば給与カーブを見直すとか退職給付を見直すということに取り組んでいるところでございます。

 それから、先ほどちょっと話が出ておりましたが、政府のIT化、これも非常に重要なことで、効率的な政府ということにつながってまいりますので、そういったことについても、今、政府の中でしっかりと進めているところでございます。

大野委員 私が申し上げたかったのは、当初、民主党というのは、無駄の削減とか埋蔵金とか、そういうことばかりおっしゃっていた。だから、やはり全体のバランスをとって、税収、支出と歳入とのバランスをどうとっていくか、そういう大きな観点に欠けていたんじゃないか、こういうことを申し上げたかったので、ようやく反省の色が見えたな、私にはそう思えて仕方がありません。

 それから、もう一つは、経済成長と財政健全化、この関係についてお伺いしたいんですよ。

 財政健全化とばかり言ったって、経済成長がなければ健全化はできない、これは本当に強調して申し上げたいです。

 経済成長がなければ税収は減りますよ。さっき、過去二十年間を振り返ったとおり、税収は減ります。税収が減ると、当然、財政が悪化。財政が悪化すると、今度は成長率が抑制されます。抑制されると、将来不安が起こってくる。将来不安が起こったら、もう消費をしようという国民の意欲がなくなってくるんですよ。そうすると、消費が低迷する、公債発行残高がふえていく、こういう問題になりますから、やはり増税を考える場合に、一番大事な問題として、景気対策、経済成長というものをどういうふうに考えていくか。もちろん、歳出削減とか無駄を省く、この努力も継続してやっていかなきゃいけないわけでありますけれども、そういう基本的な考え方についてどう思われますか。

岡田国務大臣 委員御指摘のように、やはり経済成長をしっかりと進めていかないと、経済成長をすれば税収がふえるということもございますし、そもそも、経済が落ち込んだということになると、その税収も期待できないわけであります。そういう意味で、新成長戦略を着実に実施することが重要だというふうに考えております。

 先般、その全体の項目を見直しまして、非常に厳しい結果が出ましたが、それはあえて、我々、具体的にやっているというだけではなくて、成果が出ているものはどれだけあるかということで見直しをさせていただきました。

 いずれにしても、そういうものを踏まえて日本再生戦略というものに反映させていきたいというふうに考えているところでございます。

大野委員 経済成長が大事であるということはお認めいただいておるわけでございます。

 それでは、かつて、コンクリートから人へ、こういうふうなことをおっしゃっていた。インフラ整備というのは経済成長にとって大変大事な問題です。特に、今から地方の経済が発展していかないと、いろいろな意味で日本の国というのはよくなりません。若い人が東京で就職するばかりじゃ困る。地方に雇用先をつくって、若い人が地方で両親と一緒に住めるような、近居できるような環境をつくっていかなきゃいけない。そういう意味からも、地方の道路、港湾、空港等の整備、これは本当に日本の経済社会にとって重要な問題であります。

 お伺いしたいのは、コンクリートから人へというスローガンはお取り消しになりますか。

岡田国務大臣 この辺になると、大分、委員と意見が違うということになってくると思います。

 我々は、コンクリートから人へというのは、一つの象徴ではありますが、人にもっと投資を、そういう趣旨で申し上げました。そして、公共事業については、先ほど申し上げましたが、政権交代前と比べて大体一・三兆から一・五兆程度、削減をきちんとしております。そのことがだめだと言う方もいらっしゃいますが、やはり、限られた財源をいかに有効に使うかということだと思います。

 もちろん、大震災を経て、その大震災の復興、それから将来予想される震災への対応、そういうことは重要でありますが、人口がこれから減っていく中で、どんどん公共事業を拡大していくということはあり得ないことであって、しっかり選択と集中で効率的な事業を進めていきたいと思います。(発言する者あり)

 この辺が恐らく、いろいろやじがたくさん飛ぶところを見ると、自民党の考え方とかなり違うところではないかというふうに思っております。

大野委員 一九八〇年代以降、世界の各国を見ていまして、地方分散が起こっていないのは日本だけなんですよ。地方の経済発展というのはインフラ整備から始まっていくんですよということを申し上げて、次へ移りますけれども、認識を変えていただかないと、なかなか日本の将来は暗いなと。

 次にお伺いしたいのは、この消費税法等の一部を改正する法律案、この中で、やはり、景気あるいは経済成長と増税の関係をどう考えているか、こういう問題であります。

 第一条に、「趣旨」でありますけれども、「経済状況を好転させることを条件として行う」、こう非常に強く書いてありますよね。「税制の抜本的な改革の一環として、社会保障の安定財源の確保及び財政の健全化を同時に達成することを目指す観点から消費税の使途の明確化及び税率の引上げを行う」、こういうふうに書いてある。

 私がびっくりするのは、一面、いいなとも思うんですよ、「条件として行う」、こう書いてあるんです。普通なら目的としてとか書くところを、「条件として」と書いてある。それぐらい強く経済発展、経済環境の整備を願っているんだな、おお、これはすばらしいなと思って、しかも、附則の十八条では、「消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、」云々云々と書いて、「経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、」と書いてあるんですね。だから、景気条項、ああ、きちっとしておるなと。

 しかし、お伺いしたいんですよ。

 一つは、増税実施後はどうなるんですかという問題ですよ。増税実施後のことについては何にも触れてない。一条の「趣旨」の方で見ますと、条件として行うんだから、経済成長がなければ、一遍上げた消費税を、税率を下げるんですかと読めるんだけれども、附則の方を見てみますと、実施前によく見て引き上げするかどうかを決めなさい。非常におかしな法律で、「条件として」と、ここまで強く書きながら、増税実施後に景気が悪くなった場合のことには触れておりません。そうなると、これは無用の長物ですよ。せっかく強固な意思を持って書いておられるんだと思いますが、無用の長物。それから、実施前の条件ですが、極めて抽象的。もっともっと具体的な指標でやるべきではないか。

 この二つの点について、どう思われますか。

安住国務大臣 先生御指摘のように、条件というふうにしたということは、経済状況を好転させることが必要ということをより明確にあらわしてはおります。

 そこで、先生から今、特に、消費税を上げた後の景気が例えば急に下がったり、そういう場合どうするのかということですけれども、私は、それは予断を持って答えるのは難しいとは思いますけれども、やはり一般論として言えば、さまざまな政策努力を通じて景気を下支えしていかなければならないということだと思っております。

 ただ、これは、法律にこうしたことを書くというよりは、時の政権としての責任でその下支えをするということが私はいいのではないかと。むしろ法律になじむ事項ではないような気がしておりますので、そうしたことを下支えするということを決意として申し上げたいと思っております。

大野委員 国民の目から見たら、指標を明確にするべきだ、私はそのように思います。

 それから、次に、景気対策ということが重要であれば、なぜ、今回の税によってもうちょっと経済対策にかかわることを盛り込んでいかないのか。もっともっと早目に書けることはどんどん決めて書いていっていいんじゃないか。

 例えば、今の経済を見てみますと、もう言うまでもないことですが、日本には金がある、金が回らないだけなんです。高齢者が金を持っていて、その金が回っていかない。いわば、もう、労働分配率も、日本の場合高目になっていますし、これ以上上げるわけにいかない。それから、消費需要、投資需要は全くない。そういう中で、金はあるんです、金をどうして回していくか。

 一例で言いますと、景気対策で重要だと思いますのは、例えば贈与税で、家を建てる場合、この場合に、ことしから一千万が一千五百万円になっていますけれども、どんと三千万とかもうちょっと高い数値を出して景気をよくしよう、しかも金が回るようにしよう、親子の愛情が伝わっていくようにしよう、こういうような政策をなぜどんと打ち出していかないのか。この点の御意見を頂戴したいと思います。

安住国務大臣 先生御存じのように、一千万をそれでも一千五百万にはさせていただきました。これは、エコ、耐震に備えてということですから。まだまだこれが足りないということでございますけれども、私どもとしては、やはり、随時こうしたことをやりながら、いわば贈与のしやすい環境づくりというものは必要だと思っております。

 ただ、統計的に見ますと、やはり一千五百万というのはなかなか大きな数字でありまして、住宅の取得にかかる平均的な贈与額が、先生、一千百万なんですね。だけれども、これは、都市部は全然、東京なんかは、もしかしたら、それは違うじゃないかという御指摘があるかもしれませんが、それは一つあります。

 それから、相続時精算課税制度ができましたので、そういう意味では、毎年の控除の百十万とこれと住宅を足せば、相当な恩恵を得られるような形にはしておるつもりでございます。

 そうしたことから、こうした住宅面を含め、資産を移転させることで景気浮揚にしていくべきだという趣旨には私も賛同するところは大変多うございますので、全体の税のバランスの中から、私は、徐々にでございますが、そうした方向でやっていっているつもりでございます。

大野委員 そういう、今申し上げましたような税の持つ多面的な意味をもうちょっと考えていただきたいと思います。

 次に御質問申し上げたいのは、再配分の問題であります。

 これは、消費税についても再配分ということを法案には書いてあるようではありますけれども、消費税は逆進性を持っている、もちろん、消費税というのは世代間の公平は確保できる、こういう問題はありますけれども、所得税についてのみ再配分問題を議論させていただきますと、所得税の最高税率を、今回は四〇%を四五%に上げる。これはもっと上げていいんじゃないですか。四五を五〇ぐらいにしてもいい。

 それから、課税最低限をもう少し上げれば、そうすると、消費税の逆進性を直していくために給付つき税額控除とかそういう議論は、税率一〇%まではそうしなくてもいいような状態がつくれるのではないか。

 こういう点について、再配分をもう少し考える、特にその中の一例として申し上げました所得税の再配分、この機能をどう考えるか。

安住国務大臣 先生、四五%に五%今回上げさせていただくということでございますが、これをさらに上げよということでありますけれども、これはいろいろな議論があると思いますから、今後十分議論をさせていただきたいと思います。

 それから、一つだけちょっと、反論というわけじゃございませんが、最低限のところをもうちょっと何とかせいという御指摘ですけれども、先生御存じのとおり、五%―一〇%範囲で八五%なんですね、我が国は。先生が一番詳しいフランスの例をとっても四〇%。それから、イギリスでも一〇%以下だと全体の一四%。アメリカで二〇%。それからいうと、日本は、一〇%以下が所得税を納めている方の八五%である。これからいうと、私は、控除制度も含めて、低所得者の皆様方に対しては相当対応しておるつもりでおります。

 ですから、累進税率をどうするかは、これは国会で、極めて重要な課題だとは思いますけれども、今のフラット化を直すというときに、上の部分については十分検討はしますが、下の方では、他方、やはり、一〇%以下の所得税を納めている方が八〇%あるということが累進性や再配分機能からいってどうなのかという面も考えていただければと思っております。

大野委員 もう少し伺いたいんですが、時間の問題がありますので、次へ移らせていただきます。

 今回は消費税を目的税としていることであります。目的税ということであれば、その目的のための収支バランスがとれていないとおかしい。つまり、消費税を上げても社会保障経費は全部賄えません。まだすき間が随分残っています。二〇一五年の例でいいますと、十七兆円のすき間があく、これは地方税も含めてですけれども。

 十七兆円のすき間があく。すき間にしては随分大きいですよ。こんなのはすき間と呼べません。だけれども、目的税とした以上はやはり収支はバランスしていかなきゃいけないんですが、その間、この問題をどういうふうに考えていくのか。すき間のところはできる限り圧縮していくとするのか。つまり、社会保障制度について考えていくのか、削減していくのか。あるいは、それに至るまで徐々に徐々に一般財源を圧縮して、将来はちゃんと、きちっと独立できるようにするのか。諸外国では付加価値税は全て一般財源になっていると私は理解しております。

 そこで、なぜこれを目的税にしたのか、この点についてお伺いしたいと思います。

安住国務大臣 今現在でも高齢者三経費に予算総則上は明記をするということですが、一言で言えば、国民の皆さんに御理解いただけるように透明性を確保すると。それから……(発言する者あり)今、伊吹先生から、説明しやすいというだけの話じゃないかと。しかし、それは事実、真理でございまして、お預かりしたものは、ほかのものに使わないで、これに回していきます。

 ただ、他方、先生御指摘のお話のように、では、これまでの目的税を考えた場合に、自己完結といいますか、ちゃんとそれを、受益と負担がわかりやすくなって、特別会計とかになっているじゃないかと。

 この場合は、社会保障というのは、一般会計で歳出に占める割合が一番大きい中で、では、これを足らず前も全部、この原理でいけば、全てこの税でやるのかということになると、ちょっとこれは話は違いまして、やはり国民全体が受益者であるということからいえば、目的税としていただきますけれども、これをもって一〇〇%回せる状況では率直にはございませんので、今後、足らず前のいわゆる十七兆の部分というものは、さまざまな努力をしながら再設計をしていかなければならないと思っております。

大野委員 今後の検討課題が随分山積しておりますね。国民の側から見ると、もっともっと今できることは今すぐ明快にしてもらいたい、こういう気持ちで、この社会保障と税の一体改革を理解できるんじゃないかなと。

 そういう意味でいいますと、検討課題としていっぱいあります。例えば、住宅取得に係る措置とかさっきちょっとお触れになりましたけれども。あるいは、自動車取得税とか重量税、地方法人特別税とかいっぱいあって、軽減税率の問題とか。軽減税率の問題もちょっと議論していいと思いますけれども。今解決できる問題、自動車重量税とか取得税なんというのは今すぐ解決できる問題じゃないですか。これは二重課税ですよね。しかも、重量税なんて理屈に合わない税金もある。これは当分の間税率とおっしゃっていたんじゃないですかね。

 こういう問題を明快にした上でやっていくという心構え、この点、どうお考えになりますか。

安住国務大臣 個別税については、やはり毎年の年度改正の中でしっかりとそれぞれ解決をしていかなきゃいけないと思います。過去の例を見ても、全てフルセットで法律を出した中で解決しているのではなくて、それから施行までの間にやはり年度改正でやっているものも多うございますので、私どももそうしていきたいと思います。

 個別税について、消費税をさらにかけることで二重課税という御批判もありますが、欧州諸国等を見ていますと、そういう個別税に対しても消費税はほとんどかけております。

 ですから、軽減をどう図っていくかという議論は十分あってしかるべきでございますので、私どもの党の整理におきましても、車体課税等については、そうしたことを勘案しながら対応していきたいと思っております。

大野委員 社会保障と税の一体改革です。税の中でも一体で改革していく、こういう心意気、これがないとなかなか国民は理解してくれないんじゃないか、私はそのことを申し上げたいと思います。

 主な問題がどうしても残っております。もう一つ大変重要な側面が今あるんですよ。

 それは何かといいますと、ライフスタイルがどんどん変わってきている、ワークスタイルも変わってきた、少子高齢化の問題です。独居世帯がどんどんふえている、あるいは、若者がなかなか結婚しない、東京へ東京へと若者が就職していく。こういう、ライフスタイルがどんどん変わっていっている。

 これは、社会保障を考える場合に、もっともっと税で、こういう人間のきずながだんだん薄れていっているんですよ。ひとりで孤独死してしまうお年寄りがふえている、本当に悲しいですね。家族制度をもうちょっとつくっていけば、三世代同居をもうちょっとふやしていけば、子供の数がもっとふえていけば、人間同士のきずなが生まれてきます。そういうことを考えれば、ここでもう本当に大革命、所得税の大革命をやるべきじゃないか、私はこのように思っているんです。

 フランスでは家族単位の税制をやっておりますね。詳しくはもう御存じでしょうから解説しませんけれども、要するに、家族全体の収入を家族の人数で割って課税ベースをつくっていく、こういうような問題であります。

 この問題は、フランスでは分母の方に子供しかカウントしておりませんけれども、フランスの場合は、第一子、第二子は一人、第三子からは一・五人分にカウントする。非常に子供を大事にしている、こういう問題ですね。日本の場合は、両親、つまり、おじいちゃん、おばあちゃんも分母に入れていいんじゃないか。おじいちゃん一人と同居していれば、おばあちゃん一人と同居していれば、恐らく、私は考えるんですが、一・五人分ぐらいにカウントして、そして、そういう税制で人間のきずなを強めていく。

 今いろいろなアンケートがありますけれども、一つのアンケートを見てみますと、何をしているときが一番楽しいですか、こういう質問に対して、多くの人が、家族一同が夕食のときに顔を合わせて一緒に食事をとりながらきょうの出来事を話し合っていく、これが一番楽しいという人もいるんですよ。いっぱいいますよ。それが、だんだんだんだんそういう日本人の心が失われてきている。自助、共助、公助といいますけれども、共助がだんだん失われていく。それを税制で支えていく、これは物すごく大事な問題になってくるんじゃないかな。

 これは、もう忍び寄る有事ですよ。忍び寄る危機ですから、今ほっておいたってどうということはありません。だけれども、やがて十年、二十年たったら、なぜあのときこういう問題をきちっと処理しておかなかったんだろうか、こういう大きな反省が出てくると私は思います。

 そういう意味で、今すぐ取り組んでもらいたいのは、こういう社会的な問題、いわば少子高齢化、独居老人、三世代同居、こういうものをどうやって、家族のきずなをどうやってつくり上げていくか。長生きできることは人生の喜びです。この喜びを孤独死という心配に変えては絶対にならない。これを守ってあげるのが政治の一番大きな責任でありますが、そういう心構えはいかがでしょうか。

 そういう意味で、私は、この問題、どういうふうにお考えになるか、税制でそういう世界をつくっていけるんじゃないか、こういうことについて、感想で結構です、安住大臣と小宮山大臣、お二人から御意見を伺いたいと思います。

小宮山国務大臣 感想をということでございますが、フランスはいろいろなことで家族政策に取り組んでいるというふうに承知をしています。子供についても、税制だけではなくて、いろいろな面で手当てをした結果、今、少子化だったものが、子供の数がふえている。一方で、女性がいろいろな場面に参画できるように、パリテという、一対一に男女をしなきゃいけないというものを入れたり、いろいろなことで社会制度をフランスの中でも変えてきています。

 日本はやはり、家族のきずな、これが大事だという文化だということは承知をしておりますので、さまざまな工夫があっていいとは思いますが、私個人の感想からしますと、私も四世代同居をしておりまして、これはいい面となかなか大変な面があるということも御理解をいただいて、日本の中でも、特に超少子高齢社会に対して税制を初めいろいろなことで工夫をしていくということはあっていいというふうに私も思います。

安住国務大臣 とても大変な問題でございまして、シャウプ勧告以来の税制を抜本的に変えよというふうにも聞こえます。

 世帯合算制度は、昭和二十五年から、これはもう先生も大蔵省の大先輩であられますから、これを個人単位課税に変えろということで、今まで六十数年間やってまいりました。これをN分のN乗方式にもし変えるとなれば、もちろん、大家族等がそれでできていく、それが結果的に社会全体や税収にとってもいいということは、やはり少し研究をきちっと重ねていった上で考えないといけないとは思います。

 フランスも、この税制で子供がふえ出したのかということはちょっと私わからないところがございまして、ただ、そういう意味では、長年培ってきた個人単位課税制度そのものを見直すということですから、単に社会を変えるというよりは、税制の根幹にかかわる今御提案だと思いますので、いろいろな意味で研究もしてみたいと思っております。

大野委員 研究をしたいと思うという前向きな御姿勢ではございますが、私は、この研究は、本当に真剣に取り組んで、早急に取り組んでいただきたいと思います。そうでなければ、今はもう日本は改革の時代ですよ。どういう世界が正しいのか、その目標を掲げて、それからバックキャスティングで現状を直していく、こういうことをやらないと、日本はいつまでもこういう沈滞したムードが流れてしまう、いつまでも家族のきずなが生まれてこない。そういう意味で、家族制度を、ぜひとも、社会の幸せのために、日本人の助け合いの気持ち、思いやりの気持ちを守っていくために大革命をやろう、このぐらいの覚悟で取り組んでいただきたいと思います。

 これに関連して、もう一つは、民間のサポートもやはり要ると思います。これは、例えば生命保険とか年金保険とか、そういう問題であります。国がやる社会保障に加えて、年金制度等に加えて、やはりそういう問題も考えていかなきゃいけない。

 今回の税制改正では、恐らく生命保険料控除等について改正ということも考えておられるんでしょうが、それは見方が違うんですね。中立的な観点から考えていこう、そうじゃなくて、社会保障、家族をどうやって守って、そのことが逆に社会保障経費を減らしていく、こういうことにもつながっていくんだ、こういう観点から、生命保険とか年金とか民間のやるサポートを取り入れていってもらいたいと思います。

 単に、税の理論とか経済的な視点とか、そういうことではなくて、今申し上げたような、家族を守る、愛情を守る、社会保障の一環を民間にもやってもらう、こういう観点から考えてもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。

安住国務大臣 個人年金の保険料の控除は、そういうことだけではないんだというお話ですが、一応、政策的には設けておりますし、確定拠出年金につきましても、自助努力を促そうということで、これは控除対象等になっております。

 ただ、先生が御指摘のように、つまり、どこまで国としてそうしたものをサポートしていくのかというのは、資産形成過程における自助努力をどこまでやって、どこからがいわば我々自身が助けていくかという哲学的な話にもなりますので、よくお話を聞かせていただいた上で、本当にできるのかどうか、それから、限られた政府の財源の中でどこまでサポートするのかということは、検討をしていかなければならないとは思っております。

大野委員 自助、共助、公助ということがよく言われます。今、世の中を見ていまして、共助の世界がだんだん薄れていっているんですね。それを国として、税制としてどういうふうに考えていくのか。共助、これは、家族同士の助け合いがあれば公の部分の役割が少なくても済むかもしれない、こういうことを考えていく。それは国として社会保障を考える場合にも大事ですけれども、もっともっと大事なのは、やはり、人間として、家族としてのきずなをどう考えていくか、こういう問題であります。

 ですから、検討しますとかそんなことじゃなくて、真剣に取り組んでいただきたいと思いますが、そういう意味で、小宮山大臣、もう一度、覚悟のほどというか、今までの議論をお聞きになって、感想なり異議なりありましたらお聞かせください。

小宮山国務大臣 財務大臣もお答えいただいたように、税制を根幹的に変えるというのはなかなか大事業だというふうに思います。

 ただ、さまざまな面で、日本らしく、本当に、家族のあり方とか男女のいろいろな問題とか、そうしたことの工夫をしていく必要はあるかというふうに思っております。

中野委員長 総務大臣の答弁は要りませんか。(大野委員「はい、お願いします」と呼ぶ)総務大臣、感想をどうぞ。

川端国務大臣 税制によって家族のあり方を国の意思として応援していこうというお話含めて、大変、私は、ある種の説得力のあるお話であるというふうに伺いました。

 この前の日曜日に孫が生まれる予定がまだ生まれていないんですが、家族というものを含めて、今おじいさんの話が出ましたので、そのことを含めて、私は本当に、そういう部分では、それぞれに対してお互いに果たす役割というのは、社会、家族のきずなという意味では大変大事である、それはもう同感であります。そして、それを税として国がそういうことで応援するということは、私は、真剣に一生懸命考えるべきで、大きなテーマだというふうに受けとめさせていただきました。

中野委員長 突然、どうもありがとうございました。

大野委員 総務大臣から大変すばらしい感想を伺いまして、ありがとうございました。

 今の点は、ぜひとも真剣に取り組んで、研究を始めていただきたい。そうでなきゃ、おくれます。どうぞよろしくお願いします。

 最後にお伺いしたいのは、税というのはあくまでも手段である、このことをどうお考えになるか。つまり、社会保障と税の一体改革ですから、社会保障の姿形、これができなければ、消費税を上げますよ、目的税化なんてとんでもないわけであります。この点、つまり、私が申し上げたいのは、社会保障の未来図をきちっと詰めて、そのための目的税として税収をどう考えていくか、このためには、将来、税率がどうなっていくか、そこまで見通しをつけていかなきゃいけないのであります。

 とにかく、大事なことは、税は手段なんです、目的じゃない。目的はあくまでも、国民を幸せにするために、長生きできる喜びを心配の種にしないように社会保障制度をきちっとつくることである、このことを確認したいと思います。岡田副総理、お願いします。

岡田国務大臣 基本的には、委員のおっしゃるとおりであります。

 ただ、現状を見ると、歳入の半分を国債に頼っているという状況ですから、やはり今の社会保障制度を維持していくだけでも、何とか消費税を含めて歳入をふやさなければいけないというのが現状。しかし、将来的なしっかりとした社会保障のビジョンを持って、そして手段である税について考えていく、基本的には委員のおっしゃる考え方のとおりで、今回の一体改革をなし遂げた後、さらにそういった議論をしっかりとやっていきたいというふうに考えております。

大野委員 まず、お願いというか、申し上げたいと思いますのは、この重要な課題でありますから、内輪げんかあるいは問責二大臣を抱える中で、自民党は優しく協議に応じているわけでございます。そういうことも念頭に、本当に早く内輪げんかをやめて、きちっと議論して、すばらしい議論をした上で、社会保障と税の一体改革に取り組んでいただきたい。このことと、もう一つは、やはり体質、考えが変わってきているんだから、選挙はやらなきゃいけませんよ。

 この二点を申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

中野委員長 これにて大野君の質疑は終了いたしました。

 次に、谷公一君。

谷委員 自由民主党の谷公一でございます。

 きょうは、大野大先輩に引き続き、質問をさせていただきたいと思います。主に地方税を中心に何点か御質問したいと思います。

 質問の前に、先ほど大野議員が、昨日の野田・小沢会談について、岡田副総理に感想といいますか、それを聞かれました。副総理の方は、大騒ぎし過ぎている、しょせん党内のことではないか、また、党内手続、閣議、政府内の手続もきちんとしていると、やや不快そうな感じで答弁されたわけでありますが、当然、今度の国会内にこの委員会で採決をできる限り早く求める、その考え方に変わりはない、そういう考え方だと受けとめさせていただいて、岡田副総理、よろしいですか。

岡田国務大臣 これは、いろいろな論点は残っております。ですから、それはぜひ協議をしていただいて、御党を初め各党の賛成をいただいて、しっかり採決をしたいというふうに考えております。

    〔委員長退席、古本委員長代理着席〕

谷委員 もちろん今の会期内の、ここはまだ衆議院ですから、参議院も残っていますので、六月のできる限り早いときに採決を求めたいということでよろしいですか。再度確認します。

岡田国務大臣 この社会保障・税一体改革をこの国会でなし遂げる、これは総理のかたい決意でございます。そのためには衆参で可決しなければなりません。ぜひ御党の賛同をいただいて、そしてしっかりと採決をしてまいりたいというふうに思います。

谷委員 もう一つ、岡田副総理に感想をお尋ねしたいと思います。

 昨日、私は夜テレビを見ていて、小沢さんの方が、いや、消費税増税の前にやることがある、おなじみの、行政改革だ、社会保障の将来像といいますか、きちんとした確立だ、そして経済の立て直しだと。新聞で見ていますと、与党内でさんざん議論されたようなことをまだ言われている。党内の実力者と言われる方がメディアに出て、NHKの九時のニュースで生出演していたかと思いますけれども、いまだなおそういうことを、岡田副総理も言われるように、党内手続も既に終えているにもかかわらず言っているということについて、どう思われますか。

岡田国務大臣 行革などは、私、担当であります。そもそも、政権交代以降、党内もさまざまな議論をしながら進めてまいりました。ですから、全然できていないとか、そう言われると、それは違うだろうという気持ちはございます。

 ただ、小沢元代表が言われている中で、消費税に別に反対なんじゃないんだ、こういうことが足らないんだという言い方をされていますので、それは言葉を尽くして説明をしていけば最終的には賛成していただける、そういうことだと私はきのうのテレビ出演などを見ていて受けとめたところでございます。

谷委員 そうですか、最終的には賛成していただける。何かテレビを見ている限り、全くそのように思えませんでしたけれども、まあ、これは認識の違いですから、もうこれ以上言いません。

 質問に入ります。

 まず、私、震災復興の特別委員会の理事を設置以来ずっとさせていただいておりまして、安住大臣にもたびたび、いろいろお世話になっているところでございますが、さて、その被災地への配慮ということで、私も十七年前、神戸で震災に遭遇しましたけれども、住まいの再建、確保ということが、やはり被災地が復旧復興するために何よりも不可欠だと思います。

 今は仮設住宅に、もうほとんど、多くの方が入られ、また、今回の場合は仮設住宅以上に、賃貸住宅の借り上げ、みなし仮設というんですか、それに住んでおられますけれども、あくまでも暫定的なものだ。そうすると、恒久的な住宅をこれから確保しなければならない。

 それは、個人で再建される場合は、前の、津波被災地であれば同じところというのはなかなか難しいので、今、高台移転などの事業を進めているわけですが、多くの方が相当、ウエートはどれぐらいになるかわかりませんが、自力で、個人で再建しようとしていると思いますし、また、そのことを国としても、行政としてもしっかり支援する必要があるかと思います。支援が不十分であればいわゆる災害公営住宅、恒久的な住宅に多く入るわけでありますし、また、そのことも相当な財政支出も伴いますし、できる限り個人で頑張ろう、汗をかいて建て直そうという方に支援は必要かと思います。

 そういう観点から見ると、今回の政府の対応は大変不十分だと私自身は思っております。法文の中の検討事項にも書いていない。住宅は書いていますよ。ただ、それは住宅全般についての記述なわけでしょう。復興については、法案ではなくて、三月末に決定をした閣議決定で、次のような方向ということで、「地域全体のまちづくりを進める中で支援を行うなど、被災者の方々の負担緩和への配慮を行う。」。何をするのかよくわかりません。

 具体的に、消費税を、仮に一〇%になるということになれば、土地は非課税ですけれども、二千万円の建物、家であれば、二百万でしょう。安住大臣の選挙区も大変な被害を受けたところでございますので、十分現状についてはもちろん私以上に承知しているかと思いますが、消費税で何か手当てするというお考えはございませんか。お尋ねします。

安住国務大臣 まず、本当に谷先生には、復興に関しては大変御配慮も御指導もいただきまして、心から感謝を申し上げます。

 御地元の方からの石巻への支援物資や、本当に、小中学校の皆さんの激励文とかいただきまして、心から改めて感謝を申し上げますとともに、実は、皆さん意外と知られていないんですけれども、兵庫県の県庁の皆さんにいち早く宮城県に入っていただきまして、宮城県ではこういう被害の経験がなかったものですから、瓦れきの積算は、ほとんどが神戸市や、たしか石巻市では兵庫県の県庁の皆さんに来ていただいて、過去の事例をもとに積算をしていただいたという経緯があります。今でも石巻の人間は本当に兵庫の皆さんに大変お世話になったと思っておりますので、申し添えさせていただきます。

 復興特ではいろいろなお話もいただきまして、現状では、被災住宅に関係する非課税措置や控除限度額の四百八十万円の引き上げ等、さまざまなことは手当てをしております。先生おっしゃるように、これから、個人の側から見たときに、被災者にとって一番重要なのは、どうやって早い段階で仮設住宅から普通の住宅や、集合住宅も含めてですけれども、住んでいくか、移っていくかということが最大の焦点になります。

 今、私、地元に行ってお話を聞いていますと、やはり高齢者の方の多い地域なんですね。ですから、そういう地域では、新しく住宅を建設するという方以上に、実は、災害復興のアパートをつくってもらえば、そこに集落のみんなと一緒に住みたいという方の声も非常に多うございます。

 ですから、そういう点では、家賃等に対する非課税措置というのは消費税でありますので、そういう点では、私は今の消費税の体系の中でも十分対応ができるとは思いますが、では、新しく家を建てて自立する方に対してはどうかというと、被災地向けに特段、消費税の中での措置というのは、現時点では、制度設計でそれを盛り込んでいるわけではないのであります。そういう点では、復興にかかわるさまざまな措置を通して、現時点では住宅支援をしていかなければならないというふうに思っております。

谷委員 今大臣に答弁いただいたんですけれども、やや一般的な答弁で、寂しい感じがします。

 被災地は高齢者が多い、災害公営住宅に入る希望者も多い、それは承知しています。災害公営住宅は家賃を低くして、さまざまな支援措置、それはそれで講じる必要があると思いますけれども、自力で自分の家を建てて、これからこの地域で頑張ろうという人を思い切って消費税相当について支援することも考えてもいいのではないか。

 もちろん、神戸のときはありませんでした。そのときは被災者生活支援金もありませんでしたし、その後できた制度ですから。ただ、今回は一〇%ですよ。確かに、不動産取得税、五%は非課税です、十年間。常識的に、五%が非課税なのに、一〇%はきっちり取るんですか。

 ですから、今回の法案の中に出ていないということは十分踏まえた上で、一般の住宅取得への配慮とは別に、被災地の住宅取得については何らかの、税で無理ならほかの手段でもいいです、やはり配慮をすべきじゃないか。全国的な住宅取得と違うでしょう。やむを得ず、災害で流されて、その災害さえなければ二重ローンまでして建てる必要はなかったんですから。

 その辺を、何か消費税についても、正確に言うと消費税か消費税相当かわかりませんが、必要な支援というのをしっかり検討してほしいと思います。再度御質問します。

安住国務大臣 私も地元の選出議員としてはそう願いたいなと思っておるんですけれども、一方で財務大臣として考えたときには、ちょっと、なかなかはいわかりましたとは言えませんが、十分配慮をしないといけない重要事項だというふうなことは認識しておりますので、税の部分では単一税率を維持しますが、それに相当すると先生はおっしゃいましたが、何らかの形での配慮というものができないかどうか、事務当局に検討させます。

谷委員 ありがとうございます。

 相当長い期間かかると思います。神戸のときと違って、十年ではできないかもわかりません、福島もありますので。相当の期間支援が必要かと思いますので、ぜひしっかりとした検討をお願いしたいと思います。

 もう一つ、経済への影響ですけれども、一点だけお尋ねします。

 今の政府の案では、平成二十六年四月から八%、二十七年十月から一〇%、つまり二段階だと。そうなると、二段階で上げるということは、さまざまな問題が現実的にはあると思います。

 私も、今回の消費税の話が出る前から、小売の店の方から、谷さん、今度消費税を上げるときは十分周知期間をとって、大変なんだ、一つ一つの製品にラベルを張って、その事務でも大変だし管理も大変だということを何人かの方からよくお聞きしていました。特に、中小というか零細企業の商店の事務コストの増大というのも大変だと思います。

 もう一つは、その事務コストの問題と、最初の段階で八%でしょう。今五%ですから三%上げようにも、そんなのならもうまけてちょうだい、なかなか転嫁できない、法律の精神は最終消費者が負担するということですけれども。では、最初の八%のときに、今よりも三%分だから、店の方で何とかまけてえなということになってしまう。次が、今度は二%。二%そこそこなら、もうあなたのところで持ってなと。つまり、買う人が負担しない。事実上ですよ、事実上、あるべき姿ではなくて。

 そういうことについてどういうふうに対応しようと思われているのか、その辺の対策についてお尋ねしたいと思います。

安住国務大臣 何点かの問題があると思います。

 まず、中小零細業者がいろいろな意味で転嫁ができないのではないかと。それに対しては、我々としては、これまで二回の引き上げ以上に厳しい取り組みをして、そういう方々が、例えば優越的地位にある方々から言われていわば課税ができないような、自分でその分をかぶらざるを得ないような状況を何とか回避するために、あらゆることをしたいと思います。

 あらゆることの中には、それは容易ではないかもしれませんが、そういう意味では、徹底した、転嫁Gメンをつくったり、行政サイドでできることを含めてやっていきたいと思います。そして……(発言する者あり)巧妙にやるところをさらに厳しく、我々としては、これを阻止するためにやる。それで、表示カルテルを独禁法の適用除外とするようなことも党から御提案をいただいておりますので、そういうこともやりたいというふうに思っております。

 段階を踏むのは、先生、やはり経済への影響が、いきなり五%では逆に言えば非常に衝撃が大きいところもあるので、今回、段階的な引き上げを提案させていただいております。

 そういう経済的な側面は御理解をいただくとして、総額表示の張りかえ等が大変だという事務作業については、それは本当に申しわけないという気持ちもございますけれども、しかし一方で、そうしたことをやることで、いわば経済への影響というものをできるだけ少なくしていくということをぜひ考えなければならないということで今の案を提案させていただいているということを御理解いただければと思っております。

谷委員 二段階がいいのか悪いのか、いろいろな観点からさまざまな意見があると思いますよ、言われるとおり。

 ただ、私が気になるのは、中小企業あるいは商売をやっている方が、現実に、本当に転嫁できるかなということです。それは、今、例えばジャスコに納める業者はやはり弱いんです、実際問題。

 だって、今の牛乳価格を決めているのは大手のスーパーですよ。雪印なり明治が生産者と決めているわけじゃないんですよ。結局は販売するスーパーが決めているんです。それが実態なんです。

 そういうことだけじゃなくて、もう一つは、店が消費者に売るときです、あるいは食堂、レストラン。食堂が転嫁できるか、こういうデフレで厳しい経済状況で。そういうことは実際にはなかなか難しいのかな、その指摘だけさせていただいています。

 いろいろやっておられるということでありますけれども、大臣、いずれにしても、単に公取とか、その問題もありますけれども、消費者との関係ではできないでしょう、実際問題。そのことを指摘させていただきます。

 さて、消費税収の配分と使途の話です。国と地方の配分については、この委員会でも石田先生を初め、配分なり使途の考え方の議論がございましたけれども、それに関連して何点か確認させていただきたいと思います。

 国と地方をどう配分するかというのは、役割分担に応じた配分ということで、今度新たに、五%のうち三・四六%は国、一・五四%が地方。地方一・五四%のうち、地方消費税が一・二%で、交付税が〇・三四%。

 お手元の資料二にございますように、地方消費税相当は社会保障四経費の地方負担分に対応するものであり、地方交付税は地方単独事業に対応するものであるということでございますが、川端総務大臣、これで間違いございませんか、これは総務省の資料ですけれども。

川端国務大臣 地方消費税一・五四%分は、基本的には、地域主権改革の基盤整備と同時に、特に地方の社会保障の安定的財源の確保という観点から配分することにいたしました。そういう意味では、地方消費税の充実が基本でありますけれども、財政基盤の弱い小さな自治体においては、消費税だけでは収入が非常に少ないということもあって、特にそういう団体からも強い要請があって、一部は地方交付税法の定率分の充実に回してほしいという御要望もありました。

 そうしたら、この一・五四%をどういうふうな比率で分けるのかといういろいろ議論の部分の中で、地方消費税はいわゆる社会保障四経費の社会保障給付費の地方負担分、消費税の交付税法定率分は地方単独事業に対応するということでシェアを案分して、結果的に一・二%と〇・三四%に配分するということで、この一・五四%を、同じ地方の社会保障の安定財源であるけれども、どういうふうな考え方で配分するかという物差しとして、ここに書いてありますような四経費と単独事業という部分で案分をさせていただいたところでございます。

    〔古本委員長代理退席、委員長着席〕

谷委員 次の質問を先取りしたかのような答弁でございました。

 つまり、この資料二でいいますと、社会保障四経費に当たるのが地方消費税、単独は交付税、こういう考え方で分類した。そうしたら、法律はどう書いていますかということですね、地方消費税法。こうは書いていないんですよ。地方消費税は、社会保障四経費に加えて、「その他社会保障施策に要する経費」、お金はいただいていないけれども、法律ではそれだけ書いている。どういうことなのかということでございますが、法律で書いてある「その他社会保障施策」というのは、川端大臣、これは単独事業のことですか。何ですか、この中身は。お尋ねします。

川端国務大臣 お尋ねの、いわゆる「その他社会保障施策に要する経費」というのは何かというお問いだと思いますが、例えば予防接種とか健康診断あるいは障害者のサービスなど、国分の消費税収の使途である社会保障四経費以外の社会保障施策に要する経費が該当しますので、その中には地方単独事業も含まれております。

 また、今の御指摘でいいますと、一・五四%で地方消費税と地方交付税の配分時、先ほど私が申し上げた配分時の考え方と使途においては整合性がないのではないかという御指摘だと思いますが、先ほど申し上げましたように、財政力が弱いということへの配慮で、一つの目安として、全国ベースでの社会保障四経費と単独事業の、七・七兆円と二・六兆円の分の配分をいたしましたのはそういうことであります。

 充当先に関しては、地方の実態としては、四経費とその他の部分にミシン目が入ってはっきり区分けするということではなくて、総合的、一体的に運営しているという部分があるので、そういうことも加味して、配慮をぜひともやるべしという地方の御意見があったということで、予算区分である社会保障かどうかを峻別して、これはこちら、これはあちらというふうにできないということがあったということで、地方団体の意見も尊重して、「その他社会保障施策に要する経費」にも充当できるというふうにさせていただいたという経過でございます。

谷委員 今大臣が答弁になりましたけれども、要は、消費税を地方消費税も含めて何に充てるかという議論がさきに行われて、配分はもめにもめて年末に決まった。ですから、配分の考え方と消費税の使途のギャップがあったのでこういうことが生じたのかなと。それともう一つは、現実に、地方、現場においては、社会保障四経費だけでは、現実の社会保障を行っている立場からいうと全てカバーできないという実態があるということかと思います。

 さて……(発言する者あり)いや、また質問はこの後続くんですけれども、一旦視点を変えまして、この配分は、平成二十二年度決算で行っていますわね。二十二年度決算で行っている。では、今後、新たな五%の値上げによって、新たに社会保障を充実する。どうも、子育てなり、介護とか医療とかを充実さす。そうしたら当然、そういう経費であれば、地方の負担が今まで以上に多いと思うんですよ。

 ですから、とりあえずは二十二年度決算をベースに国と地方はこういう負担割合にしていますけれども、今後の値上げ分の社会保障の充実経費の使途によっては、配分を変えることは当然あり得ると思いますけれども、それでよろしいですか。

川端国務大臣 この引き上げ分に関しては、いわゆる地方と国の、それぞれのやっている事業の役割分担に応じて配分をさせていただきました。

 これで結局、四事業に係る経費それぞれの部分と、地方においては単独事業をプラスして配分したところで、六九・二対三〇・八%というふうになったということは先ほど申し上げた経過でございますが、その中で、今回、二・七兆円の社会保障の充実に必要な財源ということで出ております。これが新たに充実させるということでありますが、この部分に関しては確実に財政措置を講ずることということで、地方にもしっかりお金が来るということであります。

 この中で、推計でありますけれども、この二・七兆円の国、地方の負担は、国が一・八五兆円、地方が〇・八五兆円ということで、しっかりと財政措置を講ずるということに地方としてはなっておりますので、この比率、一・八五対〇・八五はちょうど〇・七と〇・三という配分でありますので、今実際に国と配分した分と今度追加的に充実してやる分とが、率がほとんど同じでありますので、そういう部分では国と地方の役割分担が年度の進捗で大きく変わることはないというふうに思っておりますので、社会保障充実分の国、地方負担の動向に伴って、引き上げ分の消費税収の国と地方の配分を変更することは考えておりません。

谷委員 大臣は推計で言われ、私は、実態を見て必要に応じて、変わるならば変えるべきだというあれですから、すれ違いに終わりそうですから、この議論は指摘だけにさせていただきます。

 さて、そういうふうに、地方単独事業をどれぐらい認めるかというのを、国と地方で大分、何回も会議を開いて、もめて、年末に決着をしたわけでありますけれども、お手元の資料の三にございます、社会保障四分野に該当するというものと、それから〇・五の地方単独事業の総務省資料でありますけれども、これらについては、川端大臣、地方交付税で今見ているんですか、見ていないんですか。お尋ねします。

川端国務大臣 この分野で整理をいたしましたのは、こういう事業がそれぞれで、四事業とそれにのっとった範囲というもので整理をさせていただきました。これを、個々の事業がどれぐらいどう関与しているかということではなくて、一定の基準で総額を切って決定した。人件費を除くということで二割引き、それから、制度として全国あまねくやっているかどうかというので、七五%にということで決めました。

 そういう意味では、これの整理と、個々の事業に係る、いわゆる交付税で見ているかということは、基準財政需要額への算入とは直接関係しているということの制度にはなっておりません。

 その上で、この過程に用いた調査として、例えば、妊産婦健康診査あるいは児童相談所については、現在の基準財政需要額の算入の対象としておりますけれども、乳幼児医療費助成や障害者医療費助成は、現在の基準財政需要額の算入には対象としておりません。

 基準財政需要額については、国の制度等との整合性を持った標準的な財政需要を算入するということにしておりますので、社会保障に関する地方単独事業についても、この考え方に基づき、今後とも適切な交付税措置を行ってまいりたいと思っております。

谷委員 では、大臣に確認します。

 資料三の経費は、いずれも来年度以降の地方交付税でしっかり見ます、そう受けとめてよろしいですか。

川端国務大臣 今申し上げましたように、直接的に交付税の基準財政への算入のところに入っているものと入っていないものがございます。そういう意味では、今書いてある部分が全て、地方交付税という意味で全部手当てされるという仕組みにはなっておりません。(谷委員「いや、来年度以降です。今後です」と呼ぶ)ええ。

 それで、例えばそのときに、乳幼児医療費助成というのを調べてみますと、義務教育就学前の児童を対象としているものが、都道府県の制度としては、通院で三十七団体、入院で四十五団体です。都道府県は四十七ということで、大半の団体で実施されることを踏まえて、この社会保障四経費にのっとった範囲の社会保障給付における地方単独事業には含めることにいたしました。

 ということでありますが、事業としては、この対象として見ているという意味では、これに使っていただくということの範囲としては当然カウントされるものになるというふうに思っております。

谷委員 要は、資料三をこれからしっかり見ますということかと思います。

 そういうふうに考えると、小宮山大臣、この中で、今、川端大臣も御指摘のありました乳幼児医療制度助成、国の制度は就学前は二割でしたね。ほとんどの自治体は、なしか、一割負担にしているんです。なぜかというと、現場では、子供さんは二割負担よ、お年寄りは一割負担よ、これが通用しないからです、実際問題。以前は、国の上乗せの医療費助成は裕福な自治体がやっているというふうに言われていましたが、実態を見ると、恐らく安住大臣なり川端大臣の御地元もほとんどやっていると思います。私の地元でもそうです。過疎の団体もほとんど例外なくやっているんです、やらざるを得ないんです。

 しかし、厚生労働省は今まで、いや、そういう単独事業をやるから医療がかかるんだ、医療費は波及増するんだといって、国庫補助をペナルティー、カットしてきたんです、御存じのように。もちろん、自公政権のときからしてまいりました。しかし今回は、もめにもめて、何度も繰り返すようですけれども、社会保障を国として初めて、こういう単独も認めよう、こういう地方の事業が、単独の社会保障があるからこそ国、地方が両輪となってしっかり社会保障を担っているんだということを認めたと私は思います。

 そういう考え方からすると、論理的に、小宮山大臣もカットはやめるべきだと思いますが、どうでしょう。

小宮山国務大臣 委員がおっしゃるように、国と地方が二重のセーフティーネットを重層的にかけていくということは、年末の国と地方の協議の場でも合意をしているところでございます。

 御指摘の地方単独事業は、国、地方の役割分担に沿った消費税分の配分を概括的に整理する中で、社会保障四分野として整理したものです。

 御指摘の乳幼児医療費の助成、これは引き続き地域の判断で行われるものですが、一般的には、医療費の窓口負担を軽減した場合には、しない場合に比べまして医療の給付費が増加をして、これに対する国庫負担が増加をすることになります。

 このため、国庫負担について、限られた財源の中で公平に配分をするというその観点から、軽減している市町村に、軽減を実施していない市町村と同じ補助となるように国庫負担額を調整しています。これは別に地方単独事業が果たしている役割を否定しているわけではございません。(谷委員「いや、大臣、今後のことを言っているんです、今後のことを」と呼ぶ)

 今後ですけれども、国保の国庫負担の調整措置につきましては、市町村間の公平性の確保、また財源の確保など、あわせて考えなければなりませんので、これは中長期的な検討課題として受けとめさせていただきます。

谷委員 信じられない答弁ですね。何のためにまとめたんですか、国と地方を。怒りますよ、地方は。結局、国は、何やかんや言いながら、地方の単独の社会保障の仕事を認めると最後は言っておきながら、またペナルティーをかける。論理的に考えてもおかしいんじゃないですか。

 交付税で見ると今川端大臣は言われたんですよ、この資料三の経費を。しかも、先ほど大臣に、御質問前にお話ししましたように、乳幼児が、特定の東京都とか大阪とか豊かな団体だけやっているというならまだ私はわかります。全国で七割の自治体がやっているんじゃないですか。障害者の自己負担を軽減するための単独措置というのは、六割以上の団体がやっていますよ。そして国は、こういう四分野に、資料三にありますような範囲の地方単独事業を、こういう地方の単独事業があるからこそしっかり社会保障制度が今まで担われてきたんだと認めたんじゃないですか。中長期的な検討課題、信じられない答弁ですよ。

 財務大臣、この議論を聞いておられましたか。どう思われますか。きっちり検討してくださいよ。財務省に遠慮しているんですか。論理的な話ですよ。当然じゃないですか。

安住国務大臣 突然の御指名ですけれども、実は、各府省に対して要望書はしっかり来ております。ですから、川端大臣から答弁はいたしましたけれども、政府としては、こうした実情があることは十分認識しておりますので。

 ただ、四分野の上の事業、書いてあるものと、それにのっとったという、そののっとったところをきちっと正確にコンクリートしてまではいっていませんので、要望に沿って今後対応しますというふうに厚労大臣はお話をなさったと思いますので、しっかり調整はさせていただきたいと思います。

谷委員 いきなり財務大臣の答弁を求めたので、安住大臣も勘違いされたと思います。

 のっとった範囲じゃないんです。のっとった範囲じゃなくて、上の方の四分野に該当するんです。医療のところの二番目に書いてあるでしょう。全国的にやっている制度で、総務省も今後地方交付税できちんとカウントすると言っている。でも、厚生労働省は、いやいや、こんなことをするからその自治体の医療費が波及効果でふえるんだ、ペナルティーだということを相変わらず続けようとする。

 是正は中長期的な課題だ、こういう姿勢は許されないですね。本当の地方の社会保障に係る単独事業を認めた姿勢とはとても思えないです。無視しているんですか、地方を。これはもう不要だと思っているんですか。

川端国務大臣 私からちょっと。私の発言が不正確であったので、誤解を与えたらいけないので。

 地方交付税の基準財政としてカウントすることではないということは、制度として申し上げたとおりであります。ただ、社会保障全体として何にどういうふうに地方が使われたかという中の話においては、この費用も当然ながら、社会保障としてやるという意味で、カウントされるというふうに申し上げました。

 そして、今先生御指摘の減額の話は、これは大変大きな課題だというふうに我々としても認識をしておりまして、地方財政措置に対しての各府省への申し入れの中では、これは昨年の九月二十日で、まだ決着がついていないときですが、かねてからの議論でありますので、厚生労働省に対しては、「子ども・子育て支援に係る財政措置」という中で、「地方公共団体が乳幼児医療費助成等を行っている場合に採られている国民健康保険に係る国庫負担金の減額措置を廃止するなど、地域の実情を踏まえた子ども・子育て支援策の展開を阻害する現行制度を見直すとともに、」云々「を検討されたいこと。」ということで、我々としては大きな問題意識として持っておりますので、引き続き、厚生労働省それから財政当局を含めて、これを大きな検討課題として取り組んでまいりたいというふうに思っております。

谷委員 ぜひ。

 今大臣が言われた、総務省が毎年財務省と厚生労働省に申し入れをしている。余りに筋が悪いから申し入れしているんです。私も承知をしています、それは。申し入れをしていますけれども、財務省と厚生労働省は無視してほったらかしていた。もっと言えば、自公政権のときからそうでしたから、反省も込めて言うんですけれども。ただ、今回は今までと事態が違う。そのことを踏まえて、しっかり対応していただきたいと思います。

 次に、今回の改革の中で、自動車関係諸税もお尋ねしようと思っていたんですけれども、大野先輩が少しされましたので、地方法人特別税についてお尋ねしたいと思います。

 お手元の資料の四番目でございます。

 今さらこの制度のあれを私が言うまでもなく、要は、全国の自治体間で余りにも税収に格差があるので、裕福な団体の法人事業税の一部を特別税として国税で徴収して、全国に再配分をしよう。それで、四ページにございますように、もともと地方消費税一%相当、東京都から三千二百億、制度創設時の想定はいただいて、全国にざっと配分しようということで、現在は景気が悪いですから、額が減っています。

 こういうことでございますけれども、これは税制の抜本的な改革において偏在性の小さな地方税体系の構築が行われるまでの間の措置だということになっておりますが、今回は検討課題に記されているのみであります。具体的にどうするということは何も出ておりません。

 しかし一方で、今回の消費税、地方消費税の創設で、たしか、川端大臣、東京都は四千八百億ほどお金が行くんですかね、地方消費税。四千八百億行くんですね。全国の消費税、地方消費税のうち一三%か一四%ぐらいは行くはずです。うらやましい限りです。何もしなくても、四千八百億、東京都に行くんですから。一方で、地方法人特別税、四ページにあるのは、これは約束じゃないか、早く解消しろということも、東京都なり全国知事会は言われています。どういう方向でこれを直していくんですか。お尋ねします。

川端国務大臣 お答えいたします。

 今の地方法人特別税・譲与税は、御指摘のように、税制の抜本的な改革において偏在性の小さい地方税体系の構築が行われるまでの間の措置として、平成二十年度の税制改正で創設されました。

 今、このままで、消費税が手当てされるという中で、これをもとのとおり復元をするということにしますと、さらに偏在性を拡大してしまうということになります。これを見直す際には、地方法人課税のあり方を見直すことで、地域間の税源偏在の是正の方策を講ずる必要がございます。

 それで、法的には、地方法人特別税・譲与税の抜本的な見直しは、この法律に基づく地方消費税率の引き上げ時期を目途として実施することと閣議決定及び法案に書いておりますので、今後、いろいろな審議会、地方財政審議会あるいは財政制度審議会等々の御議論、これは既にいろいろと、例えば地方財政審議会の意見では、消費税の地方交付税分を地方消費税にもうそのまま入れて、地方法人課税を国の法人税の地方交付税分へという税源交換が提言されたり、一方では、財政制度審議会等の建議においては、むしろこれはそれぞれそのまま、既存の地方法人特別税も活用しつつ、地方税の仕組みの中で不交付団体を含めた財政調整を行うことということで、中でやったらどうだというふうに、いろいろな意見が出ております。

 それで、これらの審議会の提言なども参考にしながら意見を聞いて、この問題については、専門的に検討する場を設けることを準備したいというふうに思っております。

 おっしゃるように、それぞれの立場でいえば、ふえることはウエルカムで、減ることはノーというのが基本にどうしても出るという部分を、前回、これを導入するときも大変厳しい御調整をされたということは伺っておりますので、これをまた、その期限が来たという状況をしっかり踏まえつつ、幅広い議論の中で取り組んでまいりたいというふうに思っております。

谷委員 いろいろなやり方があるかと思うんですけれども、この地方法人特別税と譲与税によって、名前を出して悪いんですけれども、東京、愛知、大阪以外の地方は大分助かっているんですよ。ですから、助かる度合いをよくするのは賛成ですけれども、助かる度合いを少なくするというのは絶対にやめていただきたいと思います。

 ただ、ちょっと今の内閣ではやや心配なんです、東京都と時としてガチンコをやらなきゃならないですから。前のときは与謝野先生が相当動いたんです。石原都知事とけんかできる、けんかをして少なくとも引き分けに持ち込めるだけの内閣はいるかなと若干心配はいたしますけれども、岡田副総理は大丈夫だと目では言われておりますけれども、またしっかりその点についても取り組んでいただきたいと思います。

 それでは、公務員の改革についてお尋ねをいたします。

 国家公務員に協約締結権を付与するという国家公務員法の改正案が国会に出ております。全く審議をしておりませんし、我が党もまだ正式には党内では議論をしておりません。方向としては賛成しがたいということでございますけれども、何かそれに加えて、地方公務員についても改革素案と称して、地方公務員の協約締結権も認める公務員改革素案をまとめた。そして今月の十八日に、全国知事会が反対だ、そして先週の金曜日には、全国消防長会、これは消防組織のトップでつくる消防長会ですが、断固抗議すると総務省に提出したというふうにお伺いをしております。

 こういうまだ二団体といいますか、ほかの団体もあるかもわかりませんが、国家公務員の改正もこの先が全く見えていない段階で、何か地方公務員も、いろいろ圧力はあったのか、変えようとしている。しかし、しょっぱなから強い拒否反応を関係の方面から受けている。これをどう受けとめ、これから、どういう場で、いつぐらいをめどにこの問題について話し合っていこうとしているのですか。お尋ねします。

中野委員長 谷先生、大分時間が過ぎてしまいましたが、去年私が提出した法案でもあるので、総務大臣から答弁してもらいます。

川端国務大臣 国家公務員法は、国会に提出されていることは御案内のとおりであります。

 国家公務員と地方公務員それぞれに、公務というのを国と地方で役割を担っていただいているという意味で、自律的労使関係できちっと運営すべきだという考えのもとに加えて、国家公務員制度改革基本法附則第二条第一項において、地方公務員の労働基本権のあり方について、国家公務員に係る措置にあわせ、これと整合性を持って検討することが要請をされております。こういう背景で、我々としては素案の取りまとめをいたしました。

 御指摘のように、知事会等々、各団体からいろいろな意見をいただいております。これは、それぞれの部分の御理解をしっかりいただかないといけない問題でもありますので、これからも丁寧に、まあ御意向の部分の理解を深める作業はまだ少し足りないというふうに私も思っております、丁寧に議論を進めて、真摯な形で議論を重ねる中で、法案の提出に向けてできるだけ早い時期にそういうものが取りまとめられるようにということで努力をしてまいっておりまして、今、一定の、ここまでということをしているわけではございません。

谷委員 委員長、ありがとうございました。

 では、これで質問を終わります。ありがとうございます。

中野委員長 これにて谷君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。齋藤健君。

齋藤(健)委員 自由民主党の齋藤健です。

 きょうは、質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 いつも、しつこいようですが、申し上げているとおり、揚げ足をとらず、正論の直球勝負でいい議論がしたいと思っておりますので、御答弁の方もよろしくお願いを申し上げます。

 まず初めに、安住財務大臣にお伺いをいたしますが、大臣は就任されて八カ月ぐらいですか。私は、前の野田財務大臣にもお伺いしたんですが、この八カ月の間、財務省の事務方の官僚の皆さんとおつき合いをして、彼らのいいところと悪いところを今どのように把握されているか、感想を聞かせていただければと思います。

安住国務大臣 九月のたしか一日の就任ですから、丸九カ月でございます。あしたで十カ月目に入るということでございますが、なかなか難しい質問で、五十時間審議いただきましたけれども、最も難しい質問でございます。

 どこの、それこそ齋藤さんの御出身の役所でもそうでございますけれども、目標を持って前向きにやっている職員の方というのはやはり輝いておりますから、そういう意味では、別に財務省だから特段いいとか悪いというのはないと思います。

 それは、さまざま、戦後の、いわゆる官僚の皆さんから見ていい時期に比べれば、例えば、役人を終わった後の人生のこととか、大変不安を抱えているような時代でございますけれども、厳しい財政状況の中で予算編成をしっかりやったり、税制改正等について夜遅くまで仕事をしておりますから、そういう点では、安い給料でよく働いてくれているな、率直な気持ちはそういうところでございます。

齋藤(健)委員 私も財務省の皆さんとは長いおつき合いがありまして、私の見るところ、財務省の皆さんのいいところは、一つは、予算や税制という各省にまたがるお仕事をしていますので、全省のことを把握しておられます。だから、どの省の案件でも、一応、財務省に聞けば何でも答えが返ってくるということであります。

 そのことも関連するんですが、全省のことを把握しているわけですから、国全体をどうしていこうとか、そういう経綸を曲がりなりにも持っている職員の人が多いな、私は、今までのおつき合いでそう思っております。

 そしてもう一つは、何か物事をなし遂げるときに非常に周到に準備をされるということであります。これがだめだったら次はこれ、そういう案を幾つも考えた上で、二の矢、三の矢まで準備をしているというのが私の知っている財務官僚の皆さんのいいところだと思います。

 一方で、きょうは野田先生とかおられるわけでありますが、ややよくないと思いますのは、財政を預かる者のさがかもしれませんが、余りに財政がきついものであります、皆さんから要望をたくさんもらうということもありますので、時として、財政が短期的に助かるのであれば国民経済的にはあるいは長期的にはマイナスになってもいいという政策判断をしがちであるという点があります。そういう点を政治が政治主導でしっかりと是正していかなくてはならないのではないか、私はそういうふうに考えているところであります。

 そういう意味で、今回提案されております社会保障と税の一体改革の中身を私なりに拝見させていただきますと、私が理解しております財務省らしくないなと思いますようなこと、不思議なことがたくさんございます。一言で言えば、なぜこんなに詰めが甘いんだろうか、なぜこんなに段取りが悪いんだろうかということが不思議でなりません。

 きょうは、この不思議でならないところを安住大臣あるいは関係の大臣の皆さんにお伺いしていきたいと思っております。

 その前に、質問通告をしておりますが、今大変私が心配していることをお伺いしたいと思っております。それは歳入庁構想についてであります。

 歳入庁の構想につきましては、皆様方のマニフェストの中でうたわれている話でありますが、私は、本当にこの歳入庁というものを、これからどういう案が出てくるかわかりませんが、かなり心配をしているところであります。

 今回の消費税法等の一部を改正する法律案におきましても、七条でこれからのいろいろな検討事項が書かれているわけでありますが、その第八号に、条文として「歳入庁の創設による税と社会保険料を徴収する体制の構築について本格的な作業を進めること。」というふうに記されているわけであります。

 私、ここでまず真っ先にお伺いをしておきたいのは、この歳入庁をつくるとどういうメリットがあるか、どういう目的でつくろうと検討されるのか、この点についてまずお伺いをしたいと思います。

岡田国務大臣 歳入庁のメリットの最大のものは、恐らく、国民年金の保険料、もちろんそのほかの年金の保険料もあるんですが、国民年金の保険料と国税の徴収が一元化されることによって、特に納付率の非常に低い国民年金の保険料が改善するということが期待されるということだと思います。

齋藤(健)委員 納付率の改善ということでありましたが、この間の、四月の二十七日だったと思いますが、政府の方で税と社会保険料を徴収する体制の構築についての作業チームというものが中間報告を出されました。

 私もこの中間報告は精読をさせていただきましたが、その中間報告の中に、国税の皆さんがカバーしている方々と社会保険料の徴収の相手の皆さんとは随分すれ違っているんだ、そういう記述がございまして、その記述によりますと、国税庁が確定申告なんかによりまして所得情報を把握しているのは八分の一ぐらいにすぎない、そういう表現があったと思います。

 ですから、対象者が大きく異なっているということでありますが、それでもなお、社会保険料の納付率というものはそんなに大きく向上するものなんでしょうか。

岡田国務大臣 今委員御指摘の点は、私、きのう、この場でも申し上げ、指摘をしたところでございます。

 重なっている部分はもちろんあるんですけれども、そうでない部分もありますから、国税にそれを一本化するということになれば、しかも、我が党の主張も年金機構の人は連れていかない、こういうことですので、そうすると、国税そのものを相当ボリュームアップしないとできないし、そもそも保険料と税とは必ずしも同じではありませんので、徴収の形も変わってまいります。そういったことについてどう答えを見出していくかというところが一番難しいところ。しかし、先ほど言いましたメリットも当然ありますので、そこをしっかり検討しなければならない。

 私は、基本的には、歳入庁を設けるという党の方針に従ってしっかりと問題点を解明していきたいというふうには思っておりますが、委員の御指摘の問題があることは事実であります。

齋藤(健)委員 そうしますと、今の副総理の御答弁ですと、国税庁の職員の皆さんが保険料の徴収の方に携わっていく、その分、国税の方が、手を抜くと言っては言葉が悪いかもしれませんが、おろそかになってはいけないから、国税庁の職員はふやしていくんだ、こういうお考えだというふうに受けとめてよろしいでしょうか。

岡田国務大臣 それがどこまで可能かという問題はあります。全体の公務員人件費を抑制していくという一方の要請もございます。

 それから、機構の皆さんは合流しない、では、今機構で働いておられる方々はどうなるのか、こういう問題も当然あるわけで、やはり連れていってしっかりとバージョンアップして、そういう方々に集めていただく、こういうことも考えられる。しかし、今公務員ではありませんから、その辺をどう考えるか、そういった問題があるということであります。

齋藤(健)委員 確認ですけれども、そうしますと、今、年金機構にいる職員の皆さんは税の徴収については全く知識がないのではないかと思いますが、そういう人たちも、今の副総理の御答弁ですと、少し勉強して国税の方もやっていただく、そういう理解でよろしいでしょうか。

岡田国務大臣 今政府の中で議論しているところで、方向性を出しているわけではありません。いろいろな今申し上げたような論点を、きちんと答えを出していかなきゃいけないということであります。

齋藤(健)委員 もう一つ申し上げますと、国税の皆さんが徴収に入る方というのは、ケースとしていろいろあると思いますけれども、悪質であったり高額であったりするケースが非常に多いし、あるいは、長年にわたっているものであったりするケースを徹底的に調査されるということになると思います。

 一方で、年金の方は、毎月毎月の支払いということになりますし、額も、低額と言っては怒られるかもしれませんが、多数の皆さん相手に、税金でやっているものに比べれば、かなり金額が低いものを多くやらなくちゃいけないということになりますので、お金をいただくという同じ仕事であるにしても、かなり質の違ったものになるのではないかと思っています。

 そういうときに、これから議論されるということなので、まだお答えは出ていないのかもしれませんが、年金機構の皆さんが、税を勉強して、これから入ってきて税の徴収の方もやるというのは、私はかなり高いハードルになってくるのではないかと思いますし、もっと突っ込んで言えば、そういうことによって国税本体の徴収機能というのが弱まっていく可能性もあるんじゃないか、大量にこれから勉強する人が入ってくるわけでありますから。

 そういうことを考えると、歳入庁というものをつくって本当に合併をしていく意味というのは一体どこにあるのかということを、もう一度御答弁いただけたらと思います。

岡田国務大臣 今委員が御指摘のような問題は、当然頭の中には入っております。そういった中で総合判断していかなければいけません。しかし、国民年金のこの現状は何とかしなきゃいけません。

 それは、徴収体制の問題だけではなくて、やはり年金に対する信頼、必ず払った保険料以上のものが返ってくる、それは、税金が半分入っているわけですから、そのことが将来にわたってしっかり確信を持って国民に受け取ってもらえる。

 それから、私は、国民年金を見ていまして、従来、伝統的に入らない人はいいやみたいな感じが実は国の側にもあったのではないかと。それは、自営業者であったときは比較的資産もある方が多いということで、それはそれで成り立った、入った人だけを国民年金の対象と。しかし、今や、国民年金の性格そのものが変わってきておりまして、まさしく所得の少ない方々、そういう方々がたくさん入っておられる中で、これは、きっちり入っていただいて、そして年金もお払いしなきゃいけない非常に根幹的な国のシステム。したがって、そういう集める側にもまだまだ甘さがあるということは言えると思うんですね。

 そういうこと全体を考えながら、最終的にどうするかということについて答えを出さなきゃいけないということであります。しかし、余り時間をかけるわけにはまいりませんので、今精力的に議論しているところであります。

齋藤(健)委員 もう一つお伺いしたいんですが、一般の国民の皆さんには、旧社会保険庁のいろいろ起こした出来事についてのイメージが鮮明に残っております。

 残念ながら、年金機構におきましても、それが一〇〇%改善されたという印象は、国民の皆さんが持っているとは言えません。私の地元でも随分いろいろお話を伺いますが、細かいことはここで申し上げませんが、信頼が回復されていないと私は思います。

 そして、年金記録も不完全にしか残せなかった。そして、内部情報は、リークしたとしか思えないような出来事がたくさん続く。そして、職場規律は緩くてずさんだったということが明らかになっている中で、こういう人たちと一緒に国税の職員の皆さんを仕事させる組織をつくるということは、私は、悪貨が良貨を駆逐するという言葉がありますけれども、国税の方の規律が緩んでいくのではないかということを大変心配しております。

 今、この統合の議論をするに当たりまして、年金機構が、もう昔の年金機構とは違う、大臣がリーダーシップをとって変えたから大丈夫だというふうに言える状況になっているのかどうか、大臣の御答弁を伺います。

小宮山国務大臣 日本年金機構は、今委員が御指摘のように、社会保険庁のときに大きな不信を抱かれていますので、信頼していただける、そのような仕組みにしっかりと生まれ変わらなければいけないという強い認識を持っています。

 発足に当たりましても、二十年七月の閣議決定に沿いまして、懲戒処分を受けた人は採用しない、それから、訓告などとされた人の採用も、民間出身者から成る職員採用審査会、この意見を聞いて、設立委員会が行ってまいりました。

 また、今おっしゃいました不正アクセスの件についても、業務目的外の年金個人情報の閲覧をするに際しましては、個人の情報を保護するという意識を徹底するのはもちろんのこと、生体情報認証による厳格なアクセスの制御、監視を今行っておりまして、こうしたことが起こらないようにしているところです。

 おっしゃいますように、それでは、全て生まれ変わったのか。まだまだ甘い点があるということは私も思っておりますので、そこはしっかりと取り組むようにということを、いろいろな折に触れて私の方からもやっているところでございます。

齋藤(健)委員 今大臣の答弁をお伺いすると、途上であるというふうに受けとめるしかないような御答弁でありました。大丈夫ですという御答弁ではなかったように思います。

 そして、私は、この問題を本当に慎重に検討した方がいいと思うわけであります。まず、国税庁に今やっている年金の徴収業務を少しずつ委任をする、合併するんじゃなくて。委任をしていって、その分は国税庁の人の手当てもして、本体部分の業務に支障が出ないようにしながら委任をしていって、悪貨が良貨を駆逐するようなことがないようにして、その間、年金機構の規律をもっともっと高めていって、そしてそれが成就した暁に初めて統合の議論をすればいいのではないかと私は思いますが、まだ途上であるにもかかわらず、こういう合併がいい、やった方がいいという議論には、私はくみできないのであります。

 安住大臣、いかがでしょうか。

安住国務大臣 懸念はごもっともだと思っております。

 党としての方針も十分私はわかっておりますけれども、昨日もここで答弁させていただきましたけれども、やはり、税を徴収するのと保険料を納めてもらうのでは全く似て非なる業務なんですね。

 私の印象では、大変恐縮ですが、社会保険料を徴収するというのは、実はNHKの受信料とよく似ているんじゃないかということを私は感じております。何回も訪ねていって、それでも取れなきゃ、済みませんでした、取れませんでしたと。取るよう努力をしているということをよく言うんです。

 ところが、税務職員は全く違います。取らないで済みませんでは済みませんから、きちっと、重加算税をかけたり、社会的制裁も含めて、さまざまなことをやります。そのかわり、非常に重い責任を持って、いわば取りにくいようなところにもどんどん行って取ってくるという長い蓄積がある。

 そういうことと融合することが本当にプラスになるんであれば、私はどんどんやればいいと思います。これは、国民の立場から見て、その組織統合というのが本当に利益があるんだったら私はやればいいと思いますけれども、今、齋藤さんの御懸念というのは、私も、副総理もおっしゃいましたが、持っておりますので、そういうものを払拭して、本当に、データ統合をするのは、国税庁と一緒にならなきゃデータ統合をできないのか。登記は、本来登記を持っているのは法務省のような気もするんですね。

 ですから、そういう意味では、年金機構そのものがまずどれだけ努力をして収益の改善も含めてやれるのかというのを、まず必死にやはりやってみるべきだという意見も、私は賛同いたします。

齋藤(健)委員 まず、年金機構が規律を回復し、それからの議論ではないかと私は本当に思います。一度崩れた組織を立て直すのはなかなか大変だと思いますので、ちょっと聞くと見ばえのいい議論かもしれません、歳入庁構想というのは。しかし、やはり現実をきちんと踏まえた上で、おかしくならないように対応すべきだということを重ねて申し上げまして、次の話題に移していきたいと思います。

 今回の消費税の改正法案の議論に戻したいと思います。

 冒頭申し上げましたように、不思議に思うことを一つ一つ伺っていきたいと思っております。

 まず最初に、軽減税率を、例えば食料品なんかに導入をした方がいいのではないかという議論があります。そして、それに対しては、低所得者の人に対する対策を講ずる、今軽減税率を設けるのは適切ではないというのが今の皆さんの御判断だと思いますが、そのかわりと言ってはなんですが、低所得者対策をしっかりやりますという話も伺っております。

 この法案でも、第七条の中に、低所得者対策について検討するという条文が入っています。しかし、本来、税率を一〇%にする、そのときに軽減税率をなぜやらないかという議論があって、そして、低所得者対策をかわりにやりますと言っているんであれば、低所得者対策の中身を一〇%の税率とあわせて示すのが筋ではないかと思うんです。そうしませんと、軽減税率を設けるべきだという議論をしている方、あるいは低所得者の人たちが判断できないのではないかと私は思うのですが、なぜ、同時に具体的内容をここに示さないのでしょうか。

安住国務大臣 一〇%の段階で、政府案としては、軽減税率はとらないという方針は示しております。ですから、給付つき税額控除にすると。

 ただ、この委員会でも、五十時間の審議の中で、主な論点の中に、この給付つき税額控除をした場合に、絶対の条件として番号制度の導入、この番号制度の中で、ストックをしているものまで全部把握できないのではないか、だから、そういう点では本当にいわゆる低所得対策ということになるのかという議論がありました。

 制度の設計までは提案しましたが、具体的な幅、範囲、それからどういう方を対象にするかというところまでは決まっていませんので、そういう点では、御指摘をいただいたとおりでございます。

 一つだけちょっと、言いわけじみたことになりますけれども、六年のときも、実は制度設計を全部完璧にやったのではなくて、やはり施行までの間の、年度改正の中でやるというのがこれまでの流れでございましたので、そういう意味では、今回は制度としての給付つき税額控除は提案をさせていただきましたので、その幅、内容については年度改正等で十分審議をしたいと思っております。

齋藤(健)委員 今回は、上げ幅も五%というふうに大きくて、しかも軽減税率というのが前回と比べて大きな議論になっている中で、それをカバーするものとして提案するのであれば、一緒に提案をしてくれませんと、低所得者の人たちは一〇%がいいのか悪いのか判断できないと思うんですが、なぜ一緒にやらないんでしょうか。前回というのがありましたけれども、今回一緒にやった方がベターだと思うんですけれども、何でこっちだけ置いていくんでしょうか。

安住国務大臣 私もベターだと思います。

 ただ、やはり番号制度を、ある意味で制度設計をきちっとしないと、これは、ある意味でその制度設計をちゃんとすれば、あとは、どの段階からやるかというのは自動的に決まってきます。それから額も決まってくると思うんですね。ですから、そういう点では、番号制度をきちっと決めて、それで、それが例えば二〇一五年、一六年、いつになるかということになりますけれども、それが決まるまでの間に、やはり額、対象、幅、そういうのを決めていかなければならないと思います。

 ですから、ある意味では骨格というものは示しておりますので、その中で、いずれ、どういう範囲を、ターゲットと言ったら恐縮でございますが、対象にするか。それができない間は簡素な給付措置と申し上げておりますので、これは例えば、前の二回のときには臨時福祉給付金という形をとりましたが、そういうふうなものを参考に対応したいと思っております。

齋藤(健)委員 今の大臣のお話を伺っても、一〇%という高い税率にする以上は、その経過的な措置のものもあわせてこうするというふうに具体的にセットで提案をしなければ判断のしようがないと私は思いますが、判断できると思われますか。

安住国務大臣 逆の見方をすると、やはり、では軽減税率でいくとなった場合も、これは諸外国の例を見ても大変に奥の深い議論に入っていかないといけないと思うんですね。

 例えば、では、日本の場合、品目を何にするかという話になっていったときに、主食はパンの人も多ければ米の人も多い、また、みそ汁を飲む人もいればスープを飲む方もいる。つまり、ターゲットによって全然この額も変わってきます。それから、いろいろな意味で、文化や習慣を考えれば、他国の例だけでは当てはめられないものもある。それは、ほかの国では、基本的には、標準税率が大体一五%ぐらいですね、これを導入したときに。

 ですから、一〇%というのは、そういう点では非常に微妙なところに私どもあるとは思いますが、やはり、かかる経費や対象等を含めてやったときは、むしろ低所得者の方を、特定をすると言ってはあれですが、ある一定のターゲットを絞ったところに給付するやり方の方がより効率的に低所得者対策が打てるというふうに思って、今回、この低所得者対策としての給付つき税額控除を提案しておる次第でございます。

齋藤(健)委員 私が伺っておりますのは、大臣、わかって御答弁されているんだと思いますが、その低所得者対策、私は軽減税率をやれという議論はここでしていません。だけれども、皆さん方が低所得者対策をやれと言うのであれば、低所得者の人から見て一〇%をいいか悪いか判断するときに、その対策の具体的な中身がなければいい悪いは判断できないのではないでしょうか、そのときに何で一緒に提案をされないんですかと。一緒に提案されない理由を伺っているんです。

安住国務大臣 やはり、番号制度をきちっと法案化して、その中で、例えばストックの問題なんかをどういうふうに把握するのか。例えば、これは固定資産税なんかをどう扱うかにもよるんですけれども、ここでもやはり利子は、つまり、源泉徴収、源泉課税はほとんど対象になっていないので、そういう意味では漏らしが多いんですね。

 だから、そういうものをちゃんと制度化して、ある程度やはり制度がしっかり設計をされた段階の中でどれぐらいの幅でやるかということを決めていかなければならないので、そういう点では、全部決めていなくておかしいじゃないかという御指摘は、ある意味でごもっともなんですが、現時点では、やはり骨格を示すところで御提案せざるを得ないという状況でございます。

齋藤(健)委員 これ以上繰り返しませんが、低所得者の方々は、具体的にここが示されなければ賛否は判断できないと思います。そして、その低所得者の方々を選挙区に抱えている私も判断ができません。

 次に伺います。

 簡易課税制度、これも第七条で検討課題になっております。中小企業の皆さんは、この簡易課税制度がどうなるか非常に関心を持っておられますが、この簡易課税制度についても検討なんです、見直すなんです。さっきの質問と同じですが、どうして一緒に示してあげないんですか。

安住国務大臣 さまざまな論点を二十八項目にわたって列挙させていただきました。これは理事会の方に昨日資料は出させていただきましたが、現時点では、例えばみなし仕入れ率の問題もそうでございますが、率直に言って、今内部調査はしております。それで、その中で実態調査をしながら、これもやはり年度改正でしっかり提案をさせていただく。その年度改正は、来年度、再来年度とありますが、やはりその中で一つずつこなしていかないといけないというふうに思っております。

齋藤(健)委員 中小企業の皆さんは、自分が簡易課税制度を使えるのか使えないのかわからなければ、この一〇%についてもなかなか賛否を決められないと思います。

 なぜ、賛否を決められないような提案の仕方をあえてするんでしょうか。もし、年度改正でこれを手を打つというのであれば、そのときに一〇%をあわせて問わなければ、今一〇%だけ先に結論を出してくれ、後は俺たちに任せてくれよということでは、中小企業の人たちもなかなかわかりましたというふうにはならないのではないかと思いますが、なぜ、一緒に示すという親切な対応をしないのでしょうか。

安住国務大臣 見直しを行うということは、例えば簡易課税のみなし仕入れ率については、御存じのように、卸から始まって九〇、八〇、七〇、六〇といきますね。しかし、実態として、これがいわば実質の仕入れと設定をしたパーセンテージの間にどうも開きがあるという意見があるわけです。

 そこで、今本格的な調査を行っておりますが、そこで出てきた幅をきちっと見た上で、やはり、得をしているというふうな意見もありますから、ここのいわば課税額を正確にみなし仕入れ率に反映させるには、やはり少し時間を置かせていただきたい。同時に、それは年度の改正の中でしっかりとやらせていただきますので、少し時差があることは、私は大変申しわけありませんが、やむを得ないことではないかと思っております。

齋藤(健)委員 ということは、今の時点で、この税法の改正案について、中小企業の皆さんは判断できないのではないかと私は思います。そういう提案になっているということが私には不思議でならないわけです。

 私は、一緒に決着を図るというのが、政権の政策あるいは提案の仕方として、中小企業の皆さんが賛否をはっきり決められるように、全部セットで示すべきだと思います。それができないんだったら、セットで示せるようになるまで待つべきではないかと私は思います。先に一〇%の方だけ決めて、後はどうなるかわかりません、これから見直ししますというのでは、皆さん心配になるばかりではないのでしょうか。

 また、同じように、この七条には、酒税、たばこ税、石油関係諸税のタックス・オン・タックス、税金の上にさらに消費税をかけるということで、税負担が大きくなるので、これをどういうふうに調整をしていくか。世界の流れがいろいろありますとか、そういうことは私も承知をしておりますが、しかし、ここでこうするということをあわせて提案していないのはなぜなんでしょうか。これも将来の課題に先送りされているんですが、なぜ一緒に示さないんでしょうか。

安住国務大臣 原則はしっかりしているんです。タックス・オン・タックスです。ですから、二重課税という御指摘もありますけれども、欧州諸国においても、そうした個別税については、その上にある意味で消費税をかけさせていただくことは、世界の中では普通のことであります。

 ただ、個別に、酒、それから、今たばことおっしゃいましたか。(齋藤(健)委員「言いました」と呼ぶ)そうですね。自動車等、いわゆる納税者の側から見たときに、いろいろな意味で重税感があったり、それから、これはちょっと取り過ぎじゃないかというようなところは年度の改正でしっかりやっていく方向性は示しておりますので、その中でやはり、政府税調、党税調の中で議論を詰めていって一つずつ提案をさせていただきたい。

 それはいずれ、先生、年度改正でやるということは、それぞれの通常国会で御議論いただいてきちっと結論は出していきますので、時差があることに対して先ほどから御指摘はいただいておりますけれども、完全な形でこれでというところまでいかないことについては、ある意味では申しわけないとは思いますが、そういう点では一〇〇%でないということは、ちょっと御理解はいただかないといけないと思います。

齋藤(健)委員 私が申し上げたいのは、皆さんの理屈はわからないわけじゃないんですが、ただ、実際にこういう関係の業界におられる方々が、こっちはどうなるかわかりません、検討します、しかし一〇%はお願いしますというのでは判断ができないでしょうということを申し上げているわけであります。なぜセットで示さないのか。それとも、セットで示さない方がいいというお考えなんですか。

安住国務大臣 方向は示してはおりますけれども。検討する方向ですね。

 それはなぜかというと、先生、税法の骨格は、一〇%に上げさせていただいて、単一税率でやらせてくださいということなんですよ。今齋藤先生がおっしゃっている話というのは、その中で、いわば特別措置をどういうふうにしていくかということですから、それは、今までのやり方でいえば、自民党の時代も、年度改正の中でそれぞれの業界や団体からお話を聞いて、その中で合理性のあるものについては、ではこうしましょうという形でやってきたという経緯があるので、そこはわかっていただきたいということです。

 そのかわり、二十八項目についてはできるだけ早く結論を出して、どんどんとそれについては方向性は出していくつもりでございます。

齋藤(健)委員 この話も同じ結論になるんですが、お酒やたばこ、あるいはガソリンなんかを御商売で扱っている人は、これがどうなるかはっきりわからなければ、いや、検討しましたけれども年度改正では何もしないことになりましたなんということにもなる可能性があるわけです。ですから、そこはどういうふうになるかということをはっきり示さなければ、一〇%ということについてもどう判断していいかわからないですよ、普通の人は。そういうことを申し上げているわけであります。

安住国務大臣 齋藤さん、それは、だからこそ、例えば自民党時代も大変、電話帳と言われて、業界、団体との話し合いというのを丹念に、丁寧に重ねられて、特別措置も含めてやってこられたわけで、むしろ骨格の、本体の法律の中でそれを全部書いているということではないわけですね。

 そういう意味では、私は、これから骨格は決めさせていただいて、方向は、例えば見直すなら見直すという方向を出しておりますから、肉づけの部分では、さらに業界や団体、それから消費者の皆さんなんかとも話し合いを重ねながらいいものをつくっていく、こういう手続を、時差があることは私は先ほどから認めておりますから、それはしっかりやっていきたいと思っております。

齋藤(健)委員 関係する皆さんは、恐らく、一〇%だけが決まっていて、その後のことはこれからの議論ですというふうにしか受けとめられないと思いますので、なかなか議論が前へ進まないんじゃないかなと。今提案されているわけですから、この国会でやるということで。しかし、この国会ではそういうものが出てこないで、年度改正ということでありますから、なかなか判断が難しいな、何でそういう難しいやり方をするんだろうかということを素朴に疑問に思っているということであります。

 それから、次に、税の話はまだ、燃料課税、印紙税、全部同じ問題がありますが、社会保障の方も同じ問題を抱えておりまして、これはもう何回も指摘されておりますので、私の方からしつこく言うつもりはありませんが、後期高齢者の医療制度の問題をどういうふうにするのかとか、全部一緒にすると言った年金はどうなったのかとか、それから最低保障年金はどうするのかとか、そういうものが一体改革と言いながら示されないで、税の方だけは何年何%というふうにはっきり示されているということには物すごい違和感を感じるということであります。よしあしが判断できないと思います。

 つまり、ビジネスの世界で例えて言うのがいいかどうかわかりませんが、請求書の金額は何年に幾ら払ってくれということが書いてあるんだけれども、肝心の商品がよくわからないみたいな、そういう状況のもとで判断をしてくださいと言われても、できないんじゃないかというのが私の意見で、本来、一体改革と言うなら、後期高齢者、皆さんがマニフェストに挙げたものがどうなるかというものも含めて一緒に出すべきだと思いませんか。

岡田国務大臣 論理的には、委員の言われるとおりだと思います。

 ただ、現実、今回の五%引き上げの中でも、新たなことは一%で、あとの四%は既存のことの延長であります、率直に言って。ですから、全ての社会保障費を消費税を目的税化して賄うような、そういう増税のときには、当然それに見合った全体像がなければいけませんが、今回はそこまで至っておりません。

 したがって、最小限の一%のところだけ新しいことにということでありますので、全体像が、そういう意味では、先ほどの年金の抜本改革とか高齢者医療の問題とか、あるいはそのほか、医療、介護ありますけれども、そういうことについては、ある意味で次のステップの問題として議論させていただくということ、そこは御理解いただくしかないというふうに思います。

齋藤(健)委員 その方向性の議論もしっかりしていかないと、将来、最低保障年金が導入されるかどうかもわからない段階で、今、これで結構ですというふうにはなかなか判断できないということだと私は思います。

 そして、私が申し上げたいのは、本来であれば、さっきの税の簡易課税の話や低所得者対策も私はセットで出すのがやはり政府・与党の責任だと思うんですね。なぜなら、出されなければ判断できないし、それがいいか悪いかという議論も、出されなければ進みません。しかし、それがないということでありますし、使う側も、これから将来、本当に年金制度が最低保障年金に向かっていくのかいかないのかもわからないまま、とりあえず一〇%でいいでしょうと言われても、なかなか判断できません。

 私は何が言いたいかというと、とにかく判断できるような提案をしてほしいと。中小企業の人が判断できるような提案、それから今社会保障でいろいろ苦しんでいる人が判断できるような提案をきちんとしていただかないと、一〇%という数字だけが、さっきの請求書の話じゃありませんが、あとは年度末に向けて検討しますが、検討した結果、結局やりませんでしたなんということにもなるかもしれないようなもので一〇%だけお願いしてくださいと言われても、国民の皆さんはなかなか、そうですかというふうにはならないんじゃないかというふうに申し上げているわけであります。

 したがいまして、もう五分になってしまいましたが、私は、特に私が今まで知っている財務省の仕事のやり方は、もう少し綿密だったんじゃないかと思うんですよ。こういうような指摘をされないように、水も漏らさぬような体制と内容でもって、これだけ大きな、財務省が何十年かに一回の、乾坤一てきの増税をするわけでありますから、私ごときにセットでやるべきじゃないかなんて簡単に指摘されるようなやり方をしてくるということが私には不思議でならない、信じられないということであります。これだけの大きな提案をするのであれば、水も漏らさぬような詰めをしてやるべきであるところを、なぜ、わざわざ私ごときに簡単に難癖をつけられるようなものを提案してくるのかが理解できないということであります。

 ここから先は推測ですけれども、私は、これはわざとではないかと。つまり、今の政権のもとで社会保障の細かいことを詰めたり簡易課税や低所得者対策を詰めるとばらまきになってしまう。ですから、そうならないように、次の政権ができたときにしっかりしたものを、こっちの方を詰めればいいという深慮遠謀なんじゃないかと思わざるを得ないぐらい、従来の財務省の皆さんの仕事の進め方からすると詰めが甘いなと、推測ではありますが、思っているわけであります。

 時間が少なくなりましたが、最後に、経済への影響をどう考えているのかという点につきまして、古川大臣にも来ていただきましたので、ちょっと時間がなくなったので先に結論を申し上げますと、私は、少し見方が甘いなというふうに思っております。

 今回の八パー、一〇パーの増税に関して、日本の経済にどういう影響があると分析されているのか、まずはお伺いできたらと思います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 内閣府で行いました経済財政の中長期試算におきましては、消費税率引き上げ前後に当たる二〇一三年度から二〇一六年度にかけての平均実質成長率は、慎重シナリオでは一・一%、成長戦略シナリオでは一・八%になっておりまして、仮に一体改革を考慮しない場合のそれぞれのシナリオの平均成長率一・二%、一・九%と比べ、〇・一%ポイント程度低い試算結果というふうになっております。

 これについて、小さ過ぎるんじゃないか、そういう御指摘がございましたけれども、今回の社会保障・税一体改革は、社会保障の充実及び安定化のための安定財源の確保と財政健全化の同時達成を図るものであります。この改革のもとで、改革に伴う社会保障支出の増加があることに加えて、家計の実質所得への影響はあるものの、消費税率引き上げによる税収が社会保障財源として国民に還元されて、社会保障に対する不安が軽減されることが見込まれます。

 こうしたことから、一体改革が経済に与える影響は限定的なものであるというふうに想定をいたしております。

齋藤(健)委員 年平均で〇・一%GDPを押し下げる、そういうふうに理解いたしました。

 一方で、今回、東京電力の管内ではありますが、電気料金が上がることになりました。原発が動きませんと、いずれはほかの電力会社も値上げに踏み切らざるを得なくなってくると思います。そういう意味では、今後予想される、東電だけじゃなくて、原料の輸入、燃料の輸入が継続していった場合に、日本経済に影響が出ると思います。この辺については、今どのように見ておられますでしょうか。

古川国務大臣 御指摘ございましたように、電気料金等が上がると、当然、それはやはり経済にもマイナスの影響でありますので、私どもも、料金引き上げには極めて慎重であっていただきたいと思っておりますし、今、経産省の委員会において、この料金引き上げの姿勢が適正なものかどうか、より一層の経営の合理化とか、そういうこともやれないか、そういうことを厳しくチェックしているわけでございます。

 そうしたことをしっかり政府としても見ていかなければいけないと思っておりますし、同時に、この機会に、グリーン成長を初めとして、新たな成長戦略をしっかりと実現していく。既に二年前にまとめました新成長戦略、これまでも実行しておりますが、そうしたものを加速させて、経済を安定的な成長軌道に戻していくということが極めて重要だというふうに考えております。

齋藤(健)委員 質疑の時間が終了いたしましたので、最後に一言だけ。

 この話は、もう一回、景気がこれが原因で大きく腰折れするようなことがあってはいけないと私は思っております。電気料金は間違いなくこれからも上がっていきます。円高も続きます。法人税も四〇%です。そういうことを考えたときに、消費税というのは皆さんが考えている以上に私は大きな影響を持つと思いますので、それについてのしっかりとした対策もあわせてやらなくてはいけない。

 皆さんは、影響がないと言わないとなかなか党内が通らないのかもしれませんが、しっかりと現実を見据えた上で、打つべき手を打ちながら前へ進んでいくべきだということを訴えさせていただいて、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

中野委員長 これにて齋藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、福井照君。

福井委員 自由民主党の福井照でございます。

 本日、質問の機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。感謝申し上げます。

 まず、岡田副総理、国家観、なぜ今こんな大きな消費税の議論をしているのかということについて、その歴史認識、そして、どういう国家像を求めているから、いつまでに何をしなければならないから今議論しているんだという認識について、一分で結構でございますので、ぜひお述べいただきたいと思います。

 その考えている最中の時間、ちょっと聞いていただきたいんですけれども、まず、資料一をごらんいただきたいと思います。国家の命運を左右したいろいろな災害がございました。

 今、私ども、国土強靱化こそ国家の基本とすべきであるということを標榜しておりまして、その国土強靱化を標榜する者の代表として今御質問させていただいているので、ここから始めさせていただきたいと思います。

 一番有名なのは一七五五年のリスボン大地震ということで、GDPの三割から五割、平均すると四割のダメージがあったというふうに言われております。日本でいうと二百兆円ですね。五百兆の四割、二百兆円のダメージがあった。特に首都と港がやられたので、イギリスとの貿易、ブラジルとの貿易のインフラストラクチャーが壊れちゃったので、その後の衰退があった。また、もちろん引き潮があれば上げ潮もありますけれども、その後数百年間、ポルトガルは苦しむわけですね。

 フランス革命も、やはり災害があった。火山は一万年に一回のことですけれども。

 日本も、江戸のレジームの呻吟のこと、そして最後、安政の大地震、これは、まさに明治維新へつながるということで、まさに国家の命運というのは災害から起こる。もちろんそれだけじゃありませんが、神が時代に埋め込んだメタファーと言ってもいいというふうに私たちは捉えている。そして、東日本大震災が起こった。

 もっと言うと、大恐慌の後のニューディールも、まさに社会保障、医療改革は失敗したんですけれども、ニューディールは、すなわち社会保障であって、社会保障を成功させるために有効需要をつくって、フーバーダム以降の公共事業を追加したというのが歴史的な事実でございます。

 なおかつ、日本は保守合同が起こりました。保守合同で政治の時代を終わらせて、これからは経済の時代だということで高度経済成長に突入するわけですけれども、それはまさに、福祉のために、社会保障のために全体の経済ボリュームを上げるんだということが自由民主党の目標であったわけです。

 田中角栄の言葉で、資料にはありませんけれども、福祉は天から降ってくるものではなく、外国から与えられるものでもなく、日本人自身がみずからのバイタリティーをもって経済を発展させ、その経済力によって築き上げるほかに必要な資金の出所はない」、そういうふうに書いているんですね。

 田中角栄は、まさにいろいろな議員立法、福祉のための議員立法をしました。それが自由民主党の今までの戦後の歴史であったということで、まさに中間層を創造する、中間層を手厚く支援するという意味で、社会保障も公共事業も一緒。

 特に今回は、国土強靱化、経済も強靱化、貿易基盤も強靱化、そして防災基盤も強靱化、なので、国土強靱化というのを国家の基本にしよう。そういう国家をつくり上げることこそ私たちの共通目的である。そして、財政だけじゃなくて、成長戦略も、そして経済構造改革も同時に立体的にやらなければならない。一つの価値判断、価値基準だけじゃなくて立体的にやらなければならないというのが私たちの主張なんです。

 というのは、この十年間、平面があって、社会保障の背の高さがある。だんだんふやさなければならない。防衛費からそこへ乗せる、公共事業費からそこへ乗せるというのを主計局と各省庁がまさに火花を散らしながらやってきたというのがこのいわば十数年間の歴史であったということで今日に至ったということでございます。

 岡田大政治家として、今こうやって消費税を議論し、そしてこの国会でどうしても上げなければならないのは一体なぜなのか。どういう国家像をいつまでに実現しなければならないから今議論しているんだ、その理由を、一分間で結構ですので、ぜひお述べいただきたいと思います。

岡田国務大臣 私は、国家観とか歴史認識とか、そういったこと以前の問題だと思っております。

 つまり、国の財政が半分借金で賄われている、こういうことがいつまでも持続可能だとは思いません。逆に言うと、今までよくもったと思います。やはりそういう事態を、早く是正の第一歩を踏み出さないと何もできなくなってしまう、国としても。社会保障の持続もできないし、それから時代の変化に対応して新しいこともできない、国家が衰亡していくだけだ、そういうふうに思っております。

 それから、委員のお話を聞いておりまして、私、一つ思ったのは、やはり我々は高度成長期の惰性から早く離れなければいけないということだと思います。民間企業はバブルがはじけたあたりでそこのところを大きく転換した。それが社会全体にとってよかったかどうかは別にして、企業としては生き残りをかけてそういった努力をしたし、努力しなかったところは淘汰された。政府だけがいつまでも右肩上がり、もちろん、我々も成長を目指さなければいけませんが、高度成長期の発想から変えられないまま今日まで来て、気がついたら大きな借金を残していた、こういうことだと思っております。

福井委員 では、もう一問、岡田副総理に御質問させていただきます。

 来週、自由民主党で国土強靱化基本法なるものを提出させていただきたいというふうに思っております。

 その基本理念をちょっと御紹介させていただきますと、まさに、自民党か民主党かということではなくて、先ほどから御紹介しているように、上げ潮もあれば引き潮もある、右脳もあれば左脳もある、右足もあれば左足もある、集中もあれば分散もある、そして自由もあれば平等もある。自由と平等でエネルギーをつくって進めてきたというのがこの近代政治の力学だったかもしれませんが、それを全て包摂して、集中と分散を対立して、今から十年間は集中だけ、その先の十年間は分散だけというんじゃなくて、集中も分散も自由も平等も全て包摂をして、そしてアウフヘーベンしていくんだ、次のステップに、次の次元にこの日本全体をよいしょと上げていくんだというのを国土強靱化の概念として、基本理念としてうたっているというのがこの国土強靱化基本法なんですね。

 もっと言うと、十七条の憲法の第一条、和をもってとうとしとなすとありますけれども、大和言葉で言うと和らぎというんですね。和らぎをもってたっとしとなす。これがまさに、物部も蘇我氏も戦争も平和も全て包摂をして、よいしょと次の時代に乗せなければならないという聖徳太子のお言葉だった、祈りに似たお言葉だったというふうに私自身も捉えているわけです。

 そういう意味で、その矛盾を包摂して今から日本を進めていくにはどうしたらいいかというと、これは全ての哲学者、東西に共通しているのは、運動することによって解いていくということですね。とにかく動いていくんだと。カントもキルケゴールも一遍上人も、高速回転をして、全て動かして矛盾を解決していく。だから、解決はできないですね。次の次元に移ることによって、その次の人生に、そしてその次の国に持っていく。その運動することの中身を今回は防災、減災と捉えたわけです。

 千年に一回の災害が起こって、今まで一体おまえたちは何をしていたんだと。たまたま高度経済成長のときに私たちは大災害がなかったんです。忘れていたんです。千年に一回。火山は一万年に一回起こるんです。百年に一回の地震、津波には対処しようとしてきました。それだけだった。それをもう一度見直して、国土を見直したときに、私たちは今何を考えるべきか。

 もう一度、先ほどの岡田副総理のお話は大変ありがたかったですけれども、もう一歩進めて、次の理念をぜひ御教示賜れば、短目で結構でございますので、よろしくお願いします。

岡田国務大臣 なかなかお答えするのは難しいんですが、私は、御党が提案された国土強靱化、その中で最も重点を置いておられるのは、大規模災害への対応ということだと理解をしております。

 これはやはり、東日本大震災が起きて、我々、非常にある意味では楽観的だったというか、軽視してきたことを思い知らされたというふうに思います。同じような大規模災害というのは今後も起こり得る、それは現実のリスクとして考えなければいけない。

 そういう中で、それに備えて、起こってからではなくて、起きる前からしっかりとした備えをしなきゃいけない。もちろん、いろいろな意味で有限な資源でありますから、選択と集中でしっかりとした対応をしていく、そういった考え方が根底にあるというふうに思って、その考え方自身は私は賛成であります。

福井委員 ありがとうございました。

 釜石の奇跡ということで、小学生に教えて一人も亡くならなかった、とにかく逃げるということを教えた群馬大学の片田先生のお言葉で、災害ごときで死なない社会というのを私たちは目指したいと。

 災害ごときなんですよ。災害は起こるから犠牲者が出ても当たり前というのは間違いである、国家のそして政治の目的としてそれは間違いである、災害ごときで人が死なない社会をつくるべきということをぜひ私たちはこれからも旨にしたいというふうに思っております。

 いやいや、もう結構でございます、時間もありませんから。今、岡田副総理からは、お言葉、二問いただきましたので、これにて終わらせていただきたいと思います。

 今度は総務大臣にお願いしたいんですけれども、同じ国土強靱化基本法の中でうたっておりますのは、昭和二十二年、GHQが日本国をして廃止せしめたものがいろいろあります。財閥を解体した、そして内務省を解体した。しかし、最も意味のあると思ってやめさせたのは町内会なんですね。町内会をGHQが廃止させたというぐらい、町内会というのは日本のガバナンスの、まさに民主党が標榜している地方主権の根幹中の根幹だったということが、そのGHQの分析で明らかになっていると思っていいわけですね。

 今回は、隣保協同の精神に基づいて行われるその地域地域の防災の取り組み、それを国が支援すべきだ。災害対策基本法には、市町村が地元の皆さんを支援してもいいとは書いていますけれども、国がやるんだということを今回、国土強靱化基本法で位置づけたいと思っているんですね。

 いずれにしても、昭和二十二年、町内会を廃止せしめたというままになっているんです。もちろん、町内会もあり、コミュニティー活動もあり、自治省が取り組んでいることでずっとやってきた。もちろん、総務省も今取り組んでおられると思いますけれども、ガバナンスの根幹としての自治会なり町内会なり、あるいは防災隣組なりというのをもう一度見詰め直して支援するというお取り組み、ぜひ大臣として、きょう、これからやりますというふうにおっしゃっていただきたいので、よろしくお願いしたいと思います。

川端国務大臣 地域コミュニティー、特に町内会とかの大事さは、今度の震災を含めて改めて実感をされた。

 そして、私は割にNHKの朝ドラをよく見るんですが、この前「カーネーション」で、今「梅ちゃん先生」、両方とも戦争中から戦後、その物語は別にして、地域のお隣さんとか御近所とかというおつき合いを含めて、非常にやはりコミュニティーの結束力が強かったというのを改めて感じますし、私は、ありがたいことに、地元大津では割にそういう活動が熱心です。ただ、東京で赤坂宿舎に暮らしておりますと、一応は地域の住民の生活基盤を置いているんですけれども、恐らく、地域社会とのつながりというものは基本的にはゼロですよね。

 そういう部分で、やはりこれからの社会のあり方としての地域、コミュニティー、そして、とりわけそういう部分の自治会組織とかが極めて重要であるというのは、基本的に、私は、先生が思っておられるのと一緒の認識であります。

 そして、その自治会活動で、例えば集会所を持つとかいうときに、ある種の法人格ということを持てるようにするというふうな仕組みはありますけれども、御指摘のような、何か、国のある種のガバナンスの位置づけとしてきちっとするということはありません、正直言って。役割を認識して、サポートすることはいろいろ考えて、特に地方自治体はやっておられますけれども、そういう部分では、私は、今回こういう切り口で示されたということは、ある種の、ああ、そういう見方があるんだということは、印象として非常に重く感じました、正直申し上げて。

 そういう部分では、基本は、そういう活動がより強まって、地域で助け合う、みんなが助け合うという地域社会を、だんだん希薄になっていくのをどう強くしていくか、目的はそうだと思いますので、そういう御提起という部分では、我々としても、私自身としては、ちょっと勉強してみたいなというふうには思っております。

 以上です。

福井委員 本当に、国民年金の掛金を集めるのも、まさにその延長の市町村が今までずっとやってきたわけですから。本当に、そんなのんびりした答弁だと困るんですね。

 まさに、社会保障と一体改革で、先ほど申し上げましたように、防災、減災活動を通じて矛盾を解決し、通じて日本のガバナンスを強化するということでございますので、まさにそこが一番根幹であります。生活保護もそうですから、ぜひ御再考いただいて、役所に御命令をいただければありがたいなと思います。

 それから、安住大臣、お待たせをいたしました。

 資料二をごらんいただきたいと思います。

 苦労してつくった棒グラフでございますので、若干御説明をさせていただきたいと思いますが、中身は、もう毎日嫌になるほど見た図でございましょう。

 家計の金融資産、一番右を見ていただくと、千四百八十三・五兆円あるけれども、一番下の緑は建設国債。ああ、なるほど、建設国債はこんなものやったんやなと。全然ふえていないし、大体少ない。二百四十七兆円しか残高がなくて、地方が二百一兆円で、赤字国債が四百二十一兆円で、足しても八百九十四兆円で、右方、左方あるでしょうけれども、五百八十九・五兆円のいわばすき間があるという現実を踏まえなければならないというのが私どもの主張なんですね。

 というのは、先ほど言った国土強靱化は、事業費ベースで最低二百兆円ぐらいかかるというふうに見ております。先ほど言いましたように、ポルトガルがやられたのはGDPの四割。そういうのがあるんです。そして、今内閣府が発表しているだけでも二百兆、三百兆、見直し前で。見直し前で、首都圏直下と南海トラフと名古屋と大阪の直下型地震とを足すと三百兆円、今でも。見直したらもっと行くでしょう。そうすると、もうGDPの四割をはるかに超えて、GDPの六割、七割、そういう被害が予測されているので、早く事前の防災というのをやらないといけません。

 事後の、ポストディザスターのリコンストラクションというのは当たり前です。だけれども、プリディザスターのリコンストラクションというのをやらなければならないというのが私たちの主張で、事前の防災、事前の復興、このために要する費用については、それは建設国債を発行していただいてもいいし、今私たちが目指しているのは、この国土強靱化のための特別の債券を発行して、そして、建設国債は六十年ですけれども、百年、二百年、千年国債、いや、今イギリスがやろうとしている永久国債まで含めて、特別の国債というのを発行して、必要な金額をカバーするということしかないんじゃないかということを考えている。

 そして、それはもちろんハードだけじゃないんです。ばらまき公共事業、ちまちま要らない道路づくり、もちろん違います。全然違います。差し迫った危機に対して必要最小限の、防波堤なり道路なり避難路なり避難地なり、そして情報通信、エネルギー、液状化対策、必要なことは山ほどある。大体もうそれがわかっているということを踏まえると、そして、それがソフトもあるんですね。ソフトもあるので、ソフトも含めて、いわば建設国債、準建設国債というのになじむかどうかというのについて、これはなかなか財務省的には難しいと思います。

 きょうは、これから、与野党一緒になって国土強靱化に取り組んでいただくということをお約束いただいた上で、特別な建設国債、国土強靱化債の考え方についていろいろ御指導いただきたいというふうにお願いをして、ぜひその辺のところの御答弁をお願いしたいと思います。

安住国務大臣 全国防災は、御指摘もいただきまして、補正予算、本予算でも対応しています。復興に関係することということで、額は全然、多分、御想定のものよりは少ないと思います。

 先ほど副総理からもお話ありましたけれども、いわゆる防災に関係する必要な事業というのは、プライオリティーが高くなってきたことは事実でございます。

 懸念は、やはり、市中でこの国債をではどう見るのかということなんですね。出す側から見たら、これは強靱化のための国債だからいいといっても、赤字国債も建設国債もこれも、買う側の視点で見たときには、おのずと規律性というのは絶対出てくるわけでございます。それを外して幾ら発行しても、買う人がいなくなればこれは全く意味がございません。

 そういう意味で、やはり財政上の制約はどうしても受けますが、その中での優先順位は、確かに前よりは、大震災の後、高くなって、それは、私も予算編成をやりまして、特に先生の御地元の、入り口の河口の堰のところも要望どおり予算はつけさせていただきましたけれども、あれは大震災がなければそういうこともないわけでして、それ以外のこともちゃんとやっていますので、二階先生もいますけれども、和歌山のことも何も含めて……(発言する者あり)関係ないといっても、ですから、そこは程度の問題はあるということだけはわかりますので、あとは法律の中身を私としては注視しております。

福井委員 ありがとうございました。

 自由民主党は、リーマン・ショック以前、そして以降の平均GDPで三十兆円のデフレギャップがあるということで、半分は国土強靱化、半分は新成長戦略、あるいは新々、新々々成長戦略ということでお願いをしようとしております。

 そこで、枝野大臣に御来臨を賜りましたので、ちょっと時間が迫ってきましたので、問い、答え、四問ぐらいになっていると思いますが、まとめてお願いしたいと思います。

 まず、成長戦略。キーワードはもちろん対アジアということで、ERIAというツールもあって、組織もあって、人もいて、そして関係各国の投資もあってということで、アジアのマーケット、あるいはエンジンとしてのアジアの力というのを援用して、あるいはそのまま取り込んで日本の成長につなげていくということについて、もう一度、もう何回も答弁されているでしょうけれども、御答弁をいただきたい。

 それから、先ほど岡田先生とお話をさせていただいたんですが、結論は、和をもってたっとしとなすということと国土強靱化ということを目標にすると、今の経済学というものの限界、サプライ、ディマンド、満足とか幸せとかというのを、幸せもスコープ・オブ・ワークに入っていないんでしょうけれども、現在の満足しか取り扱っていない。

 未来の希望というのは、プロフェッサー・センがケーパビリティーというので若干芽はありますけれども、しかし、未来の希望を目的関数にした経済学というのはまだないんですよね。そろそろそれをやらないと、子供の方が自分よりもいい人生、孫の方が子供よりもいい人生、あるいは、地域全体でそういう希望がなければ、だんだんだんだんよくなっていくんだという希望がなければ何も動かぬというのは、この強靱化を通じて私たちの学習した結果なんですね。

 ですので、その未来への投資、希望を取り扱っていく経済産業省として、何か言っていると小っ恥ずかしくて汗が出ますけれども、しかし、大真面目に、本当に、心から、経済産業省としてあるいは政府として、希望を扱う施策なり投資なりというのをぜひ実現していただきたいということで、アジアと希望と、ちょっとまとめて枝野大臣から御答弁いただきたいと思います。

枝野国務大臣 御質問ありがとうございます。

 御指摘のとおり、日本のこれからの経済のためには、アジアの成長を取り込んでいくということが大きな柱であるというふうに思っております。

 したがって、アジアの特に拡大する中間層をいかに取り込んでいくのかということで、効率的な生産ネットワークの構築を目指す必要があろうかと思っています。域内の経済統合やインフラ開発を含む投資環境整備を進めることがその中でも重要だと思います。

 私自身、四月に日本でASEAN各国の経済大臣をお招きした会議を開催しまして、東アジアの地域包括的経済連携、いわゆるRCEPの年内交渉開始に向けた取り組み強化に合意をいたしました。また、ことしに入ってからも、タイ、ミャンマー、インドなどを訪問し、インフラ開発を含む投資環境整備などについて官民一体となった取り組みを推進しております。

 こうしたアジア地域の発展のためには、東アジア・ASEAN経済研究センター、いわゆるERIAが大変大きな役割を果たしているというふうに私自身も認識をしております。そして、これらに対してはASEAN各国からも高い評価をいただいているところでございます。これを戦略的に活用して、これまでも、東アジア地域のFTAについて比較分析をしたり、あるいは域内のハード、ソフトのインフラ開発に関するアジア総合開発計画の作成などを実施してきています。

 これらは、東アジア諸国の首脳に対して政策提言という形で、実際にアジアの経済統合を推進するための大きなバックボーンになっていると思っておりまして、今、日本が中心となってこのERIAを立ち上げているところでございますが、日本も引き続きこのERIAをしっかり活用していくことで支援をしてまいると同時に、ASEANなどの各国からも、人、金の面でそれぞれの国力に応じて御協力をいただきたいということを努力しているところでございます。

 こうしたことを通じてアジアの成長を取り込んでいきたいと思っております。

 それから、希望とか夢とか、経済の従来の発想からは、特に数値化できないものですから、なかなか取り込めていないという問題意識は、私も全く同感でございます。そうした意味では、このなかなか数値化できない価値というものを、経済政策においてもきちっと位置づけていくということが重要であろうと思っております。

 今、多分趣旨は近いと思っておりますが、特に豊かさを実感できる社会経済というものをつくっていくことが重要であろうという観点から産業構造の転換を進めていく、あるいは就業構造の転換を進めていくということに取り組んでいるところでございます。

 特に、夢、希望という観点からの御指摘ですと、ちょっと小さいと御指摘を受けそうですが、例えば、これから少子高齢社会を迎えていく中で、安心して子供を産み育てながら社会の中で活躍できる、そのための仕組みをちゃんとつくっていきますよ、あるいは、高齢化がますます進んでいく中で、超高齢者、非常に高齢でも、年齢の高い高齢者の方を比較的年齢の若い高齢者が支えるという構造がもう既に出てきていますが、そうした状況になっても、自分の親に快適な老後を過ごしていただきながら、それを介護しながら自分も社会の中で活躍できる、こういったことはニーズがあるし、それがないと逆に現役世代が働けないということで産業にも直接的な影響がありますが、こういったところをしっかり支えていこうと。

 それから、日本は、世界各国から、特に広い意味でのクール・ジャパンという、世界で高い評価を受けていますが、それが経済とか産業とか、そういったものに必ずしも十分につながっていない。日本が高く評価されていることをしっかりと生かして、それがビジネスになって日本が伸びていく、こういった戦略を組み立てていくことによって、自分のあるいはこの国の未来に希望や夢が持てるというような構図をつくっていきたいということで今進めているところでございます。

福井委員 ありがとうございました。

 次に、中川大臣、この前、高知県にお越しいただきまして、本当にありがとうございました。

 資料三をごらんいただきたいと思います。きのう財務省からいただいた資料を、久しぶりに電卓を持ち込んで計算したのでございますが、阪神・淡路のときの経験です。

 七年度一次補正、二次補正、八年度一次補正とありまして、阪神・淡路の復興に要する公共事業費等というのが、もちろん一兆円、六千億、三千億ありますが、当時は、それ以外の項目で公共事業を追加しているんですね。七年度一次補正で八千億、二次補正で三兆円、八年度の一次補正で一兆四千億円。ここが今回と全然違うところです。この前、東北自動車道、がっちり何とか守りましたけれども、このときにやっているんですね。このお金で全国の落橋防止装置をつけて、道路そして河川の堤防の耐震工事を至急やったんです。建築基準法も、命だけは守るというふうに改正をしました。今回これをやらないと、後世から一体何をやっていたんだというふうに言われると思うんですね。

 さらにまた、後ほど古川大臣からお話しいただきますけれども、デフレギャップもあり、そして新々成長戦略に結びつける防災事業もありというふうに思うんですが、この表を見て、今般の経済情勢を見て、そして、南海トラフの発表をされた担当大臣としてどういう御所見をお持ちか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

中川国務大臣 先般、地元にもお邪魔をさせていただきましたが、本当に熱心に、真摯にこの防災計画を受けとめていただいておりまして、皆さん、これから具体的な計画を描いていくというそのプロセスの途中にあるんだ、我々と一緒にそれを描いていくということ、頑張っていきたいというふうに思っております。ありがとうございました。

 阪神・淡路それから東日本の大震災、徹底的にこれを検証していくということ、これがまず第一だと私たちは思っております。その上で、ああいう大規模な、そしてまた甚大な被害を及ぼす災害に対して、どういうふうに枠組みとして体制ができているのか、これを今、再検証している。その上で、首都直下地震や南海トラフというのは特に切迫感が、迫ってきているということを専門家に指摘されておりますので、それに対する具体的な対策というのを、地方自治体とあわせて、一緒にネットワークを組んでつくっていくということであります。

 そのときの基本的な考え方として、ハードかソフトかということではなくて、ハードもソフトも両方考え合わせた形のトータルな政策をつくっていくということ。その中で、やはりハードでやっても、それから、津波であれば、越えてくるというものに対しては、減災という考え方の中で、例えば堤防の整備と、それからハザードマップの作成、それに基づいて都市計画の中にそれを反映させていく、それから訓練の中にまた反映をさせていく、その専門家も育てていく、そういう組み合わせをしっかりと考えていくということ、これを具体化していくということが大事だというふうに思っています。

 そういう意味で、今回、国土の強靱化ということで政策をまとめていただいて、御提言をいただいたこと、感謝申し上げたいと思いますし、また、参考にさせていただきながら、一緒に知恵を出していくという体制をつくっていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。(発言する者あり)

福井委員 余り最初からいい答弁をされてもあれですけれども。

 来週、国土強靱化基本法を提出させていただいて、二週間後には、南海トラフ由来の巨大地震、巨大津波対策特別措置法なるものを、三重県も対象になりますので、よろしく御審議のほどお願い申し上げたいと思います。

 お待たせしました、古川大臣。

 資料四は、ちょっと古い、古川大臣が会議で提出された、三%から十五兆円というときのデータです。先日、十兆円というデータを示されました。とにかく、GDPギャップがあるんだ。そして、その十五兆が十兆になったけれども、今後どうなるかという見通し、なかなかこの場では言いづらいかもしれませんけれども、言いづらいところを、のりを越えて、ぜひ、GDPギャップについて、古川大臣の御答弁をお願いしたいと思います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 GDPギャップにつきましては、今委員の方から御指摘ございましたように、足元の二〇一二年の一月―三月期では、潜在GDP比マイナス二・二%程度、金額では十兆円程度、そういう試算になっております。このGDPギャップは、リーマン・ショック後、マイナス七・九%程度まで拡大をしましたけれども、その後は、震災による影響を受けながらも、経済状況の改善に伴い縮小してきておりまして、ぜひこういう傾向が続いていくように私どもとしても期待をしたいと思いますし、そうなるように私どもも政策運営をやってまいりたいと思っております。

 具体的には、このGDPギャップ縮小の観点から、平成二十三年度、累次にわたる補正予算に盛り込まれた施策を行っておりますし、さらには、平成二十四年度予算、これの迅速かつ着実な実行に努めているところでございます。さらには、やや長い目で見て、経済の持続的な成長を実現していくために、今復興需要がこの景気回復に大変資しているわけでございますけれども、こうした復興需要というのは公的需要が中心でございますから、そうしたものから民間需要主導の経済への円滑な移行を図っていく、このことによってGDPギャップを縮小させていきたいというふうに考えております。

福井委員 ありがとうございました。

 ティンバーゲンの定理というのがあるんだそうでございまして、独立したX軸、Y軸、Z軸とあるかもしれませんが、デフレ対策と、それから社会保障と税の一体改革というのはまさに直交する問題であり、それを解く施策も直交していいんだというか、独立しなければならないというのがティンバーゲンの定理でございます。

 今、三%だったら十五兆円、二%だったら十兆円。いずれにしても、この三年か二年で回復をしなければならない、それをゼロにしなければならないというふうに私たちは思っていますので、そのデフレギャップの解消のために何をしなければならないか、一体ほかにどんな手があるのか。それは、有効需要の創造、公共事業でそれを埋めていくしかないんじゃないか。

 しかもそれは、無駄をするんじゃなくて、まさに迫りくる、クリーピングじゃなくて、今まさにそこに存在する危機に対処するための防災・減災対策、避難する場所をつくる、人の命を救う。そして、中川防災大臣がごらんになった、避難を拒否する人が出てくるのを、首長はこれだけは勘弁してほしいとさえ思っているんですよ。三十四・四メーターが来る、もうええわ、どうぞ逃げられる人は逃げてください、私たちは逃げないというふうに、避難しない人、避難を拒否する人、これを救うというのが私たちの政治の役目だと思うんですね。一人もそういう避難拒否者を出さない。

 そのために要るお金というのは、先ほど言いましたように山ほどあるわけですし、このティンバーゲンの定理もある。

 だから、独立して、社会保障と税の一体改革は税の一体改革、デフレ対策はデフレ対策ということで、公共事業の十年で二百兆円、もちろんソフトも含めて、安住大臣の高い志と大きなお人柄でぜひお認めをいただきたいと思います。

 そのアナロジーがあるんですね。

 防災担当大臣から御答弁いただきたいんですけれども、資料五をごらんいただくと、今世界で一番人気のある、ダボス会議で一番人気のある、二年連続ナンバーワンのキャメロンが何で人気があるかというと、緊縮財政だからです。緊縮財政をしているから人気がある。

 しかし、今やっていることは、こんなことをやっているんですね。ナショナル・インフラストラクチャー・プラン二〇一一というので、高速道路をつくりましょう、エネルギー開発しましょう、情報通信やりましょう、廃棄物処理やりましょう、上下水道やりましょう、洪水対策やりましょう、知的財産やりましょう。大きなお金を使いましょうということで、国家インフラ整備計画というのをやっている。

 この資料にはありませんが、解説として、インフラネットワークは経済を支えるバックボーンであり、成長と生産性を実現する上での重要な要素である。イギリスは、過去数百年間の歴史を通じて広範囲に充実したインフラを整備してきたけれども、これまではネットワークに関してばらばらだった、個別対応的であった。これを反省した。

 ばらばらだった、フラグメンティッドだった、それでリアクティブだったというふうに反省をしたわけです。

 なので、国際競争力を確保する上でも、今までの対応を反省して、ダイナミックな経済を支えるに足るインフラを戦略的にネットワークとして整備しようと。

 その結果がこれなんですよ。財政再建は財政再建、だけれどもインフラ整備はインフラ整備。これはイギリスでやっているじゃありませんかということなんですね。これは現実なんです。

 これを見て、そして資料六を見ていただきますと、今、日本でも現実としてやっているのが、日本の港の格を実現するための防災対策、そして耐震を強化した堤防、そしてバースをつくろうとしているわけですね。神戸でこれだけ減って、大きな船がもう立ち寄らなくなったんです。回復すべきは、コンテナの数もそうですけれども、港の品格なんです、港の格なんです。それを回復しなきゃ日本の企業はますます出ていく。それを食いとめなきゃ、一体何してるんや、こう言われるわけですね。

 道路はもう言いません、資料七にあります。

 日本の今までのインフラの志、これをぜひ理解していただいた上で、しかも、このイギリスのアナロジーを見て、中川大臣から御決意をぜひ御紹介いただきたいと思います。

中川国務大臣 復興計画の中で、強靱なというその意味合いは、事前に整備をしていくということ、これも一つあるでしょうが、もう一方で、レジリエントとさっき言われましたが、いわば起き上がってくる、やられてももう一回起き上がってきて頑張っていくんだという、その力をつくり上げていく、そういう意味もあるんだろうと思います。

 日本は今どういう状況かというと、やはり東日本の大震災を受けて、あの地域を復興していくことによって日本の元気を牽引していくぐらい、そういう戦略を立てていこうというさなかにあるんだと思うんですね。そういう意味では、財源的にも十九兆円という特別の財源がその中にあって、そこから全てが始まっていくということだと思います。

 私も、それを全国にどう展開していくかという考え方の中で、それでは財源をどうするんだということがあると思うんですが、まずは東日本の復興ということ、これを優先的にといいますか、第一義的に考えながら次の戦略をつくっていくということであろうかと思いますので、その点についても、よろしく御協力をいただくようにお願い申し上げます。

福井委員 時間があと二分ありますので、最後の質問を同じ中川大臣にさせていただきます。

 BCP計画というのが最近はやりでございます。いろいろな法人が、企業が、工場が、その企業活動が継続できるように、どんな地震が来ても、どんな津波が来ても継続できるように、バックアップがあり、あるいはその場所が強靱であるというのが、今それぞれの企業に課せられた命題でありますが、この国土強靱化基本法では、国がそれをグリップする、国が責任を持つ。もう企業企業が勝手にやるんじゃなくて、国が全体を統括し、そして責任を持つということにしたい。

 そして、今、日本に欠けているのは国家機能ですね。ここでもし全員が死んだらどうなるのか。順番が決まっていません。知事とか市町村長は総務部長から順番がもう決まっていますのでいいんですけれども、国家機能というのは余りにあっけらかんとしているというのが、いまだにそういう状態が続いています。

 アメリカが二〇〇七年に、国家継続政策ということで、ナショナルな、ビジネスコンティニュイティーじゃなくてナショナルコンティニュイティーのポリシーというのを打ち立てました。アメリカにあって日本にないのはここなんですね。ナショナルの、国家機能の持続、コンティニュイティーストラテジーというのをすぐつくらぬといけないというのが今課せられた私たちの命題でございますので、そこのところに対する中川大臣の御所見を伺いたいと思います。

中川国務大臣 重要な点を御指摘いただいたというふうに思います。

 民間では、目標が、大企業でほぼ全てに対してBCPを入れる、それから中堅企業で五〇%ということで、今鋭意進めておりまして、大分進んできていまして、大企業で既に七二%にBCPが入ってきています。それから中堅企業で三六%ということで、この辺、底上げをしていくという努力をしていきたいと思うんです。

 それから、中央、我々の足元の省庁、それから首都機能等々含めての問題でありますが、今、各府省庁の業務継続計画について、非常時優先業務の選定に当たって準拠すべき指針、非常時優先業務に必要な職員の確保、庁舎が被災した場合を想定して、東京圏内外における代替施設、バックアップの施設、これについて検討すべく、対策の委員会を局長級で持ちまして、話を詰めているというところでございます。

福井委員 時間が参りましたので、これからも国土強靱化をよろしくお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

中野委員長 これにて福井君の質疑は終了しました。

 次に、遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。

 大変長時間にわたる審議で、委員長、委員の皆様、また閣僚の皆様、大変お疲れかと思いますけれども、よろしくお願いいたします。あしたで六十三時間ということだそうでありまして、まだまだ続くかと思いますが、どうかよろしくお願い申し上げます。

 私からは、きょうは消費税がメーンテーマということでありますが、各論に入る前に、まず、我が国の社会保障の将来像、これをどう閣僚の皆様は考えているのかということですね。

 特に、高福祉・高負担、中福祉・中負担か、あるいは低福祉・低負担か、あるいはその中間的な形態もあるかと思いますが、例えば、北欧なんかの国々は明らかに高福祉・高負担、アメリカなんかは多分、低福祉・低負担と言ってもいいかもしれませんが、いろいろなバリエーションがあるかと思います。

 我が国の場合、今後どのような形のそういった社会保障を目指していくのか、その哲学、ビジョンを簡潔にお答えいただきたい。まず、これは岡田副総理にお聞きします。

岡田国務大臣 今委員御指摘の北欧の高福祉・高負担、なかなかそこまではいけないのではないか。しかし、アメリカのようなそういった社会保障にはしたくないという意味では、私は、かなりの国民の多くが、やはり中福祉・中負担というか、中という言葉自身が非常に曖昧ではありますが、北欧型でもないしアメリカ型でもないというふうには思っておられるのではないかと思います。

 そこで、予算も限られて中福祉・中負担というときに、やはり大事なことは効率ということであって、無駄のない、より品質の高い、そういう福祉が、社会保障が供給されるようにやっていかなければいけない。中福祉・中負担だけれども、同時に高い効率ということではないかと思います。

遠藤(乙)委員 同じ質問、小宮山大臣、お願いします。

小宮山国務大臣 日本の社会保障制度は、国民皆年金、皆保険といった、先進国の中でもすぐれた機能は持っていると思います。ただ、おっしゃる北欧のような高福祉ではありませんし、高か中か低かといえば、中福祉というのが水準だと思っています。

 一方で、社会保障の負担を見ますと、これは低負担と言ってもいい部分があるのではないかと思っていまして、これから、まだ不十分だとは言われておりますけれども、何とか社会保障を充実し、そして重点化、効率化もしていく中で、中規模だけれども高機能な社会福祉というものを目指していければというふうに思っています。

遠藤(乙)委員 同じく、安住大臣、お願いします。

安住国務大臣 どうも御苦労さまです。

 やはり、国民負担率はそんなに高いわけではございませんから、それに比べれば、これまで長年、戦後、特に昭和の終わりから平成にかけて介護なんかもきちっとやってきましたから、今、小宮山大臣がおっしゃるように、低負担であることは間違いないと思います。しかし、クオリティーの高い年金、医療、介護のサービスは維持しているのではないかと思います。ただ、それがひずみとなっておりますので、そこはやはり税財源をしっかり確保させていただいて、機能維持をしっかりしていきたいと思っております。

遠藤(乙)委員 おおむね中福祉・中負担、あるいは中福祉・高機能といった言葉が出ましたけれども、大体のイメージは理解したつもりでございます。

 そこで、一体改革は大変重大なテーマでありまして、これはどの党にとっても本気で真剣に取り組まなければならないテーマであることは当然です。社会保障の充実をどうするか、その財源をどう手配するか、極めて重大であります。我々としても、非常に重大なテーマでありますし、また、消費税の問題も避けて通ることはできないという思いは共通でございます。

 ただし、今の民主党案、政府案というのが、どうしても増税ありきというのが先に出ておりまして、拙速、拙劣、国民の思いというものを果たして本当に十分に理解しているのか、あるいはまた、景気、経済の実態というものに十分な配慮をしているか、極めて疑問でありまして、そういった意味で、私どもは五つの、いわば条件といいますか点を提示して、これらが十分に満たされていないということで今議論をしているわけであります。

 そこで各論へ入ってまいりますが、社会保障目的税化、これはもう、大綱それから政府案でもそういう方向が出ておりますが、この厳密な意味について伺っていきたいと思っております。

 これは、いろいろなふうに解釈をされておりますが、基本的には、私は二つの考え方があると思います。

 一つは、消費税と社会保障を一対一対応に考えて、消費税の財源の範囲で社会保障をやっていく、あるいは、社会保障をやるには全て消費税でカバーして、必要ならば消費税を上げていくといった独立採算的な考え方でこれを律しようという考え方が一つあるかと思います。それをいわばA案とすれば、もう一つの考え方は、国民の理解を得ていくためにも、消費税は全額社会保障に充当する、しかし、それでも足らざるところは一般財源もしっかり活用して必要な社会保障をやっていく、この考え方をB案といたしますと、今後、民主党の考え方としてはどっちの考え方なのか、そこら辺を明確にお答えいただければと思っております。

安住国務大臣 AかBかと言われれば、間違いなくBでございます。

 目的税の定義のことは、午前中、大野先生との議論にもありましたけれども、やはり一番大事なことは、国民の皆さんにいかに透明性を確保していくかということだと思うんですね。お支払いになったものがどう使われるかということは、復興の例で例えさせていただきますと、復興については、所得税を上げさせていただきましたけれども、これは復興に充てるんだということがより明確になりましたので、国民の皆さんは御理解いただいたと私は思っております。

 消費税については、ただし、A案の話でいえば、本来の目的税はそうかもしれないんですね。しかし、これは受益が全国民であるということから、それをもってすれば、では、足らず前はどんどん消費税でやるかというとそうではございません。ここは、先生おっしゃるように、広く、いろいろなものを工夫しながら、足りないものはまた賄っていくという考え方に立てば、B案ということになると思います。

遠藤(乙)委員 今大臣から、B案、すなわち、消費税は全て社会保障に充当する、そして足らざる部分は他の財源も充当していくということを明確におっしゃっていただきまして、これは、ある意味では私どもの理解と共通だろうと思っております。

 やはり社会保障は極めて重大なテーマでありまして、既に百七兆ぐらいの社会保障給付があって、最大の項目、特に年金、介護、医療、子育て、あるいは将来的には、若者の自立支援等も含めて、大変重要なセーフティーネット構築でありますので、私は人間の安全保障という視点から、そういった考え方が必要かと思っております。特に、憲法二十五条ですか、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」また、そのために、国は、社会保障、公衆衛生等をしっかりやらなくちゃいけないと書いてありますので、まさに憲法の精神からいっても、目的税の考え方は今のB案でいくことが大事だと思っておりますし、この点は評価をしたいと思っております。

 続いて、社会保障の特別会計化ですね。これは、どうも、今までの議論では、何となく否定的なニュアンスに感じております。

 確かに、特別会計をつくるということについては、行政改革の観点から問題が多いということで、原則的には特別会計はどんどん整理をしていくという方針が出されておることはよく承知をいたしておりますが、ただ、先ほども大臣の答弁にあったように、国民にいかにわかりやすくするかということが非常に重要なポイントであります。

 特に、社会保障は国民全体の最大関心事項であって、国民にとってわかりやすい、どういう給付が行われ、またどういう財源が使われているのか、明確に全体像が国民にとって理解できるということが非常に重要でありまして、今の実際の社会保障の予算組みは極めてわかりにくくて、どこがどうなって誰が負担しているのか全くわからないシステムになっております。

 そういった意味で、国民の理解を得ていく、そういった政治的な重要性から考えても、社会保障については特別会計化をして、特に国会でも重点的にむしろ審議をしていくべきだと考えておりますが、この点について、安住大臣、いかがでしょうか。

安住国務大臣 先生の御主張も一つの考え方だと思います。ただし、問題は、最大の歳出項目をそのまま、言ってみれば特別会計にして本当にいいのかという議論はあると私は思います。

 それからもう一方で、四経費以外も、言葉は悪いですけれども、全部入れ込んで、ぶち込みますね。逆に、四経費がどう使われているか不明確になることだってあり得ると思います。いずれ、プラス、マイナスはあります。

 それから、もう一つ考えないといけないのは、やはり保険料ですね。保険料とこの税の負担。

 そういう意味では、さまざまな組み合わせでこれは成り立っているわけですから、自己完結型の特別会計というわけにはなかなかいかないので、もしそういう考えをとるとすれば、今までにないいわば知恵と工夫が必要だというふうに思います。

遠藤(乙)委員 私も今、大体同じような問題意識を持っておりまして、確かに一般会計の最も大きなウエートですから、一般会計の中から外すわけにはいかないだろう。しかしながら、それは残しつつ、逆に全く新しい発想で、社会保障そのものがどういう負担の構造なり、またどういう給付になっているか、わかりやすくするために、ちょっと特別会計という言葉は適切でないかもしれませんが、そういう新しい概念で社会保障の仕組みをきちんと教えていくことが必要じゃないかと思っております。ぜひこの点も今後検討していただきたいと思っておりまして、私は、単純に特別会計がいいということを言ったわけじゃありません。

 国民にわかりやすく社会保障というものを理解してもらうためにはどうしたらいいかということの一つの検討課題として、全くユニークな、そういう一つの見える化、社会保障全体の見える化を図るという工夫、イノベーションがあってもいいのではないかと思っておりまして、ぜひこの点は御検討いただきたいと思っております。

    〔委員長退席、古本委員長代理着席〕

安住国務大臣 私も、一つ言えることは、国民の皆さんは意外と、窓口で御負担はいただいているにもかかわらず、公費負担や税の投入が幾らかということに対して、逆に言えば、社会保障全体の国の予算を俯瞰して見るということを理解するのがなかなか難しかったと思うんですね。

 だから、そういう意味での見える化をどうするかということは十分重要な視点だと思いますので、いずれ、特別会計というよりは社会保障全体をどういうふうに国民の皆さんに理解いただくかということについては、しっかりと努力をしていきたいというふうに思います。

遠藤(乙)委員 非常に御理解をいただいて感謝をいたします。

 特に、医療なんかでも、窓口で払っているだけではなかなか、実際に費用負担がどうなっているか、多くの方々は保険によってわからないわけです。例えば、盲腸だって手術に数百万かかりますし、胃がんだったら数千万かかるでしょうし、いわゆる透析なんかだったら月五十万から百万かかりますからね。

 そういった高額医療については、やはり実際にかかる方も、それだけ多くの方々の保険負担あるいは公費負担等で成り立っているということを理解していただくことも大変大事なことでありまして、そういった意味で、社会保障をできるだけ個々の国民の方にも見える化をどうするかということは、ぜひとも今後の検討課題として進めていただければと思っております。

 続いて、今後、その他の議論が決着をして、消費税が上がっていくと仮定した場合の低所得層対策、逆進性対策でございますね。これはよく軽減税率か給付つき税額控除かということで今議論が行われておりまして、どうも政府案は給付つき税額控除を中心に考えているというふうに理解をいたしております。

 私も、理論的に考えると、経済学的に考えると、給付つき税額控除は非常にすぐれている。ゆがみがないし、また理論的にはすっきりしているということであって、確かに、頭で考えるとこれはすぐれているなと思うんですが、しかしながら、実際的な、これを執行していく段階のさまざまな実際上のインフラ整備の問題、マイナンバーとかあるいは国税庁の人員の強化とか、また、不正なあれをどう対処していくか等について、いろいろな問題が実は存在をしております。

 逆に、軽減税率は、既に付加価値税の先進地域であるヨーロッパではこれが基本になっております。

 例えば、お配りした資料の資料一を見ていただきますと、これは国会図書館がつくった資料でございますが、各国の付加価値税と軽減税率の具体的な表になっておりまして、いわばEUは、基本的には軽減税率、複数税率の制度をとっております。特に、食料品については、ゼロ税率、軽減税率あるいは非課税といった形で、非常に社会政策的な配慮をしているわけであります。それから、カナダの場合は、いわゆる税額控除でやっておりますが、食料品についてはゼロ税率ということでやって、やはりこの軽減税率の考え方も併用しているということであります。

 こういったことを見ると、いわゆる軽減税率方式が、合理的に品目を絞るのは難しいとか事務負担が大変だとか、いろいろあるかもしれませんが、実際にはやっていますのでやれないわけがないし、また、ヨーロッパ諸国がこういったことをむしろやっているということは非常に参考にすべきです。

 特に、私は、国民の現場の感覚からいいますと、やはり軽減税率の方が心理的な負担が少ないんだろうというふうに思うんですね。やはり現場の声を聞きますと、ネギ一本買っても消費税、魚一匹買っても消費税となれば非常に痛み感が強い。

 したがって、標準税率で、最終的に控除で返ってくるというようなことを言っても、なかなかそれは、個々の買い物のたびに非常に負担感があって、特に食料品に高い税率がかかると、これは非常に抵抗感があって、現場の皮膚感覚でいうと、やはりこの軽減税率、特に食料品等については、そういったことを配慮することが極めて政治的、心理的に重要だということがあるわけでありまして、こういった問題は、ぜひとも今後国民の間によく調査をし、意見を聞いていかないと、単に頭の上で、机上の空論で考えると、これは非常にまた厳しいことになるというふうに考えるわけであります。

 また、カナダなんかの場合には、特に確定申告、ほとんど、七五%以上が確定申告をしております。日本の場合にはたしか一八%ぐらいだと思います。カナダ、成人のほとんどが確定申告をするというような国ですと、非常にこういった給付つき税額控除はやりやすいけれども、日本みたいな、そういった確定申告が十分でないような国、また、国税庁の比率を見ても、カナダの場合には、人口比でいくと、たしか日本の三倍以上の人員が配置をされておりまして、これからそれだけ人員をふやすことは非常に無理な話であります。

 そういった点の具体的な実施の体制を考えても、やはり非常に問題があるということを指摘したいと思いますので、低所得層対策あるいはまた逆進性対策については、よく各国の実情あるいは国民の意見等も聞いた上で、ぜひこれは検討していただきたいということをお願いしておきたいと思っております。(発言する者あり)では、答弁をお願いします。

安住国務大臣 公明党の先生方から何度か、私も、遠藤先生の上司の先生からもいろいろ御指導いただいて、軽減税率もいいんじゃないかという御指摘をいただいております。国対委員長からもですね。

 ただ、問題は、今先生からもお話があって、それぞれ一長一短あります。軽減税率も、標準税率とかいろいろ見ると、やはり高い税でかけているところが多いのと、ゼロ税率の話がありましたが、私が報告を聞いている範囲では、イギリスでは逆にそれが問題になっていて、ゼロ税率をやはり上げるべきではないかという意見がかなり出ているというふうにも聞いておりますので、軽減税率もなかなか、いろいろ議論をしていくと難しい問題はあるだろうなと思います。

 ですから、今回は、私どもとしては、給付つき税額控除という話をこの基本的な設計に持ってきました。

 精度のことで、資産部分をちゃんと把握できるのかとか、そういう意見もございますので、精度は高めていきたいと思いますが、今後、では軽減税率について全く検討しないのか、勉強しないのかということについては、いろいろな御提言もありますので、そういう点では、見える化ということでおっしゃっているんだと思うんですね。ネギ一本、お米を買ったり何を買ったりしたときに、これはかかっていませんよという見える化が大事だという御指摘でしょうから、そういうことが実際に具体的にどこまで、逆に言えば税の侵食をするのかとか、そういうことをやはりいろいろ研究をして、課題が克服できるかどうか検討させてもらおうと思っております。

遠藤(乙)委員 それからあと、個別の品目、食料とか医療、教育、あと住宅、不動産ですね、これは一生に一回の非常に大きな買い物だったり、それにこの標準税率がかかったら、これは大変な負担になるわけですね。あるいはまた公共料金、こういったものにきめ細かい配慮をしないと、やはりこの負担感というのは非常に大きくて、消費を冷やすことになるだろうと。

 こういったものに対しては、今後どういう配慮をしていくつもりですか。

安住国務大臣 今でも、御存じのとおり、例えば土地、不動産、医療とか、それから今言った教育ですね、例えば火葬とか埋葬料もそうですけれども、さまざま、診療報酬等についても非課税の部分はございます。そういう意味での政策的配慮というのは今後も同等に継続はしていきたいと思っておりますが、基本は、やはり単一税率で一〇%ということにしながら、国民の皆さんの生活の中で著しく消費税が上がったことによるしわ寄せがないような配慮というものは十分していきたいと思っております。

遠藤(乙)委員 いずれにしても、国民の負担感は非常に大きなものがあって、やはり、いきなり消費税増税ありきということですと非常に問題があるということを申し上げたいわけですので、よくこの点は慎重に調査し、いろいろな意見を聞いて検討していただければと思っております。

 それからもう一つ、消費税の経済への影響という視点で、資料二と三を準備させていただきました。いずれも国会図書館の作成でございますが、資料二の方は、消費税の税率と経済成長率が影響があるかどうかということ、それから資料三の方は、引き上げたときに、景気にあるいは消費需要にどういう影響を及ぼしているかということを表にしてもらったものでございます。

 結論から言ってしまいますと、中長期的な経済成長率でいうと、消費税の高い低いは基本的に関係ない、中立的だということが言えるわけであります。

 ただ、問題なのは、例えばスウェーデンなんか非常に高いけれども、二五%もあるけれども、成長率は高い。日本なんかは低い、五%だけれども、非常にマイナス成長みたいなところがあって、相関関係は、一旦消費税が定着してしまえば、経済成長率というのは中立的ということが言えるわけであります。

 他方、問題なのは、短期的な景気への影響でありまして、資料三で見ていただくと、付加価値税を引き上げたときのその数年間のあれを見てみますと、確実にGDPが落ちており、また民間消費が落ち込んでおりまして、明らかに、そういった短期的な衝撃というものは景気上は必ずあるということが言えるわけであります。

 これから見ると、今の日本のこんなに深刻なデフレ不況、円高不況の中で、本当に中小企業もさまざま、商店街等があっぷあっぷしているところで、そこで消費税を引き上げることが果たして適切かと。これはもう野党こぞってこういったことを指摘しておりますし、民主党の党内でもそういった指摘が非常に強いわけでありまして、これは決してそういった政局ではなくて、本当に現場の声として、こういった日本の今の現状において消費税を上げることはどうかということは、ちまたに満ち満ちているわけであります。

 強いて言えば、例えて言えば、重病人に冷たい水をかけたり冷たい空気にさらすようなものであって、必ず経済をさらに腰折れさせていくのは間違いないということでありまして、そういったことを考えると、やはりまず景気回復が大前提ということになると思うわけでありますが、この点につきまして、これは大臣ですかね。

岡田国務大臣 遠藤委員の御心配もよくわかります。そういう指摘は、ある意味では我々も共有するところであります。

 ただ一方、では過去を振り返って、いつがチャンスだったのか。私は、そういう観点で見れば一回しかなかった、小泉政権のときの二〇〇四年あたりからの成長期。あとはずっと日本経済は調子が悪かったわけです。

 ですから、結局、それはずっとできないことになりかねないということで、私はやはり、よほどの状況の変化があればそのときはストップをかけることができる、そういう仕組みはビルトインされておりますので、一方で、成長戦略によって経済成長をこれから図りつつ同時にやっていく、そういうことだと思います。

 多少リスクはありますけれども、それを乗り越えてやっていかないとさらに大きなリスクが待っている、つまり財政的にやっていけなくなる、そういうことだと思っております。

遠藤(乙)委員 これは、最も大きな論点の一つとして、今後本気で議論する必要があると思っております。

 我々としては防災・減災ニューディールというのを出し、また、自民党さんも先ほど、国土強靱化計画を出し、同じ発想に立って、もしやるのであれば本格的な景気対策を打って、それからだというのが基本認識でありまして、これは非常に重要な、譲ることのできない論点でありますので、ぜひ今後ともしっかりと議論をしていきたいと思っております。

 続いて、成長戦略の問題に移りたいと思います。

 これは、今の一体改革の問題、いわば強い財政と強い社会保障をつくるかという問題意識だと思います。民主党の成長戦略の中にも、強い経済、強い財政、強い社会保障ということが提起してありまして、私は、問題提起としては妥当だと思っております。

 ただ、どうやってソリューションをちゃんとつくるかということは、これは極めて難しい話であって、強い財政と強い社会保障の次元だけで幾ら議論していても、真の意味で持続可能なシステムはつくれない。多分それは、どこかでまた行き詰まるということだと思っておりまして、基本的には成長戦略をしっかりやって、十分な経済の活性化、成長、そしてまたもう一つは、人口、出生率の回復といったことも含めていかないと、この社会保障の問題自体が長期的に持続可能でなくなる、これは共通の理解だと思っております。

 そういった意味で、どうやって強い経済、強い財政、強い社会保障を、いわば三位一体の形で現実的な、実効的なソリューションをつくるかという問題があるわけでありまして、この点につきまして、民主党はどうも成長戦略が弱いと言われておりますけれども、この点はぜひとも重要なテーマであります。したがって、まずこの点につきまして、古川大臣、御担当だと思いますので、どうやってソリューションをつくっていくかということをお答えください。

古川国務大臣 お答えいたします。

 ちょうど二年前に新成長戦略を閣議決定した。同じ日に、財政運営戦略も閣議決定をさせていただきました。

 まさに、私どもは、経済成長と財政規律をきちんと維持していく、やはりこれは、今日本が直面しているさまざまな課題の中で、車の両輪としてやっていかなきゃいけない問題だというふうに位置づけていたからでございます。

 その中で、新成長戦略の考え方は、これは委員もよく、後でも御質問が出てくると思いますが、イノベーションの話は、委員とは科技イノベーション特でもやらせていただきましたけれども、重要性を認識しておられると思います。

 今、日本も、そして世界も、歴史的な大変大きな構造転換を求められている時期にある。従来の産業構造も含め、人口構成も、特に先進国を中心に高齢化が進み、日本はそれだけじゃなくて人口も減少している、そういう大きな社会変革が起きている中で、産業構造も大胆に転換をしていかなければいけない。

 ですから、人も、従来いる企業などから、新しい創業や起業を促して、そういうところに移っていく。しかし、従来のところにいる人たちが新たなことにチャレンジするには、当然リスクが伴います。そのリスクを少しでも軽減して、新しいことにチャレンジする勇気を起こすためにはどうしたらいいか。やはり、社会保障を中心とするセーフティーネットがきちんとしかれていることによって、新しいことにチャレンジする勇気も出てくる。だからこそ、社会保障をきちんと安定化させるということが重要であると考えたわけであります。

 だからこそ、新しい成長を目指すためには、新たな分野にチャレンジしてイノベーションを起こすような人たちあるいは企業をふやしていかなきゃいけない。しかし、そうしたリスクをとるような人たちや企業をふやしていくためには、セーフティーネットの整備も必要である。そうしたことをやっていくことによって結果的に経済も成長していけば、それは財政にも資するわけでありますし、また、財政の中心は何かといえば、社会保障のところが中心になってくる。その三位一体に、これを実現しようということでこれまで取り組んできたわけであります。

 したがいまして、私ども、今この委員会で御審議いただいております社会保障と税の一体改革と同時に、総理も、消費税の引き上げをお願いさせていただくところまでの二年間は日本経済の再生に専念をしていくんだ、集中して取り組むんだと。今、新成長戦略を昨年の震災や原発事故を踏まえて再設計、再強化する日本再生戦略の取りまとめを行っておりますが、こうした取り組みを車の両輪として行っていくことによって、今御指摘もいただきました強い経済、強い財政、強い社会保障を一体的に、有機的に進めてまいりたいというふうに考えております。

遠藤(乙)委員 御説明はよく聞くんですけれども、要するに、成長戦略、私もずっと読みましたが、非常にいいことをいっぱい書いてあります。ただ、これはアイデア集なんですね。要するに、アイデア集であって、戦略とは言いがたい。要するに、各省のいろいろそれぞれが、お役人さんが考えた作文をホッチキスでとめてあるというだけであって、本当の意味の戦略とは言いがたい。

 それからまた、議論が非常に定性的、精神論が多くて、何とかに全力を挙げる、何とかを努めるとか、そういう表現ばかりで、要するに精神論であって、戦前の日本の軍と変わらないような、精神論だけで攻めていくという話であって、本当に、定量的な一つの道筋あるいは戦略、工程がほとんどわからないわけですね。これでは、作文集ではあっても戦略とは言いがたいということであります。

 もう少し戦略について言いますと、少なくとも成長戦略として大きな三つの分野があって、一つはマクロ経済戦略、財政金融ですね、実は最も強力な部分がマクロ経済戦略です。それからもう一つはイノベーション戦略であって、これはさまざまな潜在的な成長力を高めるいろいろな施策。それからもう一つは対外経済戦略で、例えばTPPとかFTAとかEPAとか、そういったもので国際的な日本の経済成長環境を整える。こういった少なくとも三つの分野について、総合的にこれをやっていかないとだめだというのが私の見解でありまして、特に、新成長戦略ではマクロ経済戦略がすっぽり抜け落ちている。一番重要な部分が抜け落ちているために、定量的な、具体的な目標とか筋道が全然示されないということではないかと思っております。

 まず、この点について、総合的な、今の三つの分野のいわば成長戦略を進める必要があるということについて、大臣、どうお考えですか。

古川国務大臣 まず、抽象的だという御指摘がございましたが、新成長戦略、これは工程表をしっかりつくって、できるだけ数値目標等を入れて、それをどう実現しているか、そうしたこともチェックしていくということを厳しくこれは二年前に求めました。そして、先日、このフォローアップを行いまして、これもかなり厳しく私ども、フォローアップ、チェックをさせていただきました。

 従来ですと、役所の方は、委員もよくおわかりだと思いますけれども、やりましたと、成果が出なくてもやっていればそれは丸というふうだったんですけれども、私どもは、ただやっただけではだめで、ちゃんと当初の目的としていた成果が出ているかどうか、成果が出ていなければ、それはやったというところまでまだ言えない、そういうかなり厳しい見方をさせていただいております。

 そして、今回のフォローアップの中でも、もう少しきちんと具体的な数値や何かを、目標を立てた方がいいものとかを、もっとちゃんと示せということも今後厳しく指摘をしていって、今度まとめる日本再生戦略の中では、できるだけ、具体的な数値も入れて、工程表をつくって、それをきちんと毎年フォローしていくような、そういう形にしてまいりたいというふうに思っております。

 また、マクロ経済戦略、そしてイノベーション戦略、対外経済戦略の総合戦略というお話がございました。

 これは、私が今全体、経済財政部門の担当大臣であったりとか、科学技術担当大臣であったりとか、国家戦略担当大臣であったりとかいうことでありますが、それぞれ部局は、スタッフは分かれておりますけれども、しかし、それを総合的に私のところでまとめて、しかも、これを国家戦略会議において日本再生戦略という形で一体としてまとめていく、そうした作業をいたしております。

 マクロのところで申し上げましても、これは新成長戦略の中で、二〇二〇年度までの年平均で、名目三%程度、実質二%程度の成長というのを政策努力の目標として明確に掲げております。今後とも、それぞれがばらばらではなくて、私のもとで、そして国家戦略会議のもとで、マクロ、イノベーション、そして対外経済、そうした戦略を総合的にまとめて、そごのないような形で実行に移して、そして実行に移すだけではなくて、しっかりそのフォローアップも行ってまいりたいというふうに思っております。

遠藤(乙)委員 御説明は伺いましたが、やはり相変わらず精神論ということだと思います。

 それで、先般のキャンプ・デービッド・サミットでも非常に重要なメッセージが出ました。要するに、単なる財政再建、緊縮策だけでは不十分で、やはり成長と雇用と両立をするものでなければならない。これはもう世界じゅうがそれを実際に示したと思います。フランスの政権交代あるいはギリシャの選挙の結果を見ても、最も国民が求めているものは雇用であり、成長なんだ。それなくして、単純に財政再建あるいは緊縮だけでは国民が受け入れないということでありまして、このサミットのメッセージは、オバマ大統領の大統領選を目指しての一つの思惑もあるかもしれませんけれども、それを割り引いたとしても、極めて重大な、世界全体の国民のメッセージであるという受けとめが必要ではないかと思っております。

 特に、マクロ経済、経済成長において実は一番の中核を占める分野でありまして、この部分がすっぽりと抜け落ちているというのを私は非常に危惧しているわけであります。また、マクロ経済政策には司令塔がないんだということをよく言われております。かつては経済財政諮問会議というものがありましたが、そういったものがなくなってしまって、今は本当に単なる言葉だけが流れているという話であります。

 それで、もう少し踏み込んでいきますと、やはりマクロ経済政策という場合には、これは基本的な目標が幾つかあります。まず、十分な、完全雇用に近い雇用の確保、適正な成長の維持、物価の安定、それから為替レートの適切な水準の維持、少なくともこれはどんな教科書にも書いてあるわけであって、先進国の中では必ず何らかの形で法律の中に書き込まれているわけであります。

 例えば、アメリカでも、FRBの一番のトップには最大雇用が来ているわけでありまして、日銀の場合には物価安定しかありませんけれども、最大雇用が一番重要なFRBの目標だということが出ております。それからEUでも、基本条約の中でこういった項目、あと産業政策であるとかいろいろなことを含めてきちっと整理をしてあって、法的なものとして明示してあります。

 ところが、我が国の場合は、成長とか雇用といったことは出てこないんです。例えば、マクロ政策を握っている財務省、財政金融政策を握っているわけでありますが、財務省設置法の中には、健全財政の維持とか税制の公正といったことは書いてあるけれども、雇用とか成長はどこにも書いてありません。だから、どうしても財務省が主導する経済政策の場合には財政再建が主導になってしまって、成長とか雇用といったものをどう達成していくかということについて総合的な戦略がやはり不十分ではないかというふうに思うわけであります。

 そういった意味では、これからの成長戦略を考えていく場合には、やはりこれを、適正な成長、それから十分な雇用機会、あるいは物価の安定、為替レートの維持等々を含めて、きちっと政府が守るべき目標とすべきものとして法制化すべきだろうと私は思っておりまして、及びそれを実行していく期間を明示するといったことも含めて、法制の整備が必要ではないかと考えておりますが、この点につきましていかがでございましょうか、古川大臣。

古川国務大臣 ちょっとその前に、先ほど委員から雇用についてすっぽり抜けているという御指摘がございましたが、これは新成長戦略の中でも、雇用、人材を非常に重要な分野として位置づけておりますし、今も、特に若者の雇用環境は非常に不安定でございます、やはり、未来をつくっていく、次の時代を担っていくのは若者ですから、その若者の雇用に特化した若者の雇用戦略も今まとめているところでございます。そういった意味では、しっかりこれをやってまいりたいと思っております。

 そして、さまざまな施策をやっていった上で、先ほど申し上げました二〇二〇年代までの年平均で名目三%程度、実質二%程度の成長を政策努力の目標とする。これは、日本再生の基本戦略等において閣議決定されておりまして、政府全体の行動の指針として位置づけられております。

 また、現在この委員会で御審議をいただいております税法等改正法案の附則第十八条におきましても、この政策努力の目標を示して、デフレ脱却や経済活性化に向けて、こうした望ましい経済成長のあり方に早期に近づけるための総合的な施策を実施することを政府の責務といたしております。

 そういった意味では、政府としてしっかりこのことを決めて取り組んでおりますし、今後とも取り組んでまいりたいと考えております。

遠藤(乙)委員 努力していることはよくわかります。今、非常に雇用が問題、特に若者の雇用が問題であることはよくわかっておりますし、いろいろな政府の報告書で書いてあることはよくわかっておりますが、要するに、私が言いたいことは、目標がきちっと法制化され、各省がそれを達成しなきゃならないという明確な拘束、義務が課されていないというところに問題があるわけであって、やはり、役人の心理からしますと、法律に書いてないことは結局ネグっちゃっていいわけですね。

 したがって、内閣がかわるたびにいろいろな報告書が出るけれども、それは作文で終わってしまう。本当に強制力のある、拘束力のあるもので縛っていくためには、あるいはきちっと目標として与えるために、やはり法制の中にきちっと書き込んで各省がそれを実現しなきゃいけないという形にしないと、これは実効性がないだろうということを考えております。

 そういった意味で、成長戦略を考える場合には、特にマクロ政策が大事であり、それの枠組みをきちっと法制化する。例えば、これは今ぱっと思いついた話ですが、マクロ経済政策推進基本法のような形で、そういった目標と組織をしっかり書き込んで、また各省の分担も書き込むものは書き込んで、きちっと政府全体を拘束する法的な制度が必要だろうというふうに考えておりますので、ぜひとも、これは日本の長いデフレ不況を脱却し、これからの日本を再建していくためには極めて重要なポイントではないかと私は思っております。

 特に、失われた二十年でありまして、日本は突出して実は停滞をしております。世界全体は、この二十年間で大きく、約五%以上の平均成長率で伸びておりますし、それからEUやアメリカでも名目で四%以上の平均成長率で伸びている。日本は二%台、実質でいうとほとんどゼロに近いわけでありまして、もしこのままいきますと、つい最近の経団連の報告書でもありますように、二〇五〇年ごろには、悲観シナリオでいくと日本は先進国の地位を脱落する、実はそういった大変厳しい指摘もされているわけであります。

 これは本当に、党派を超えて、マクロ経済政策のあり方、そしてまたイノベーションや対外経済戦略を含めて、どうしたら日本の持てる可能性を引き出し、グローバルにしっかりと活躍して具体的な成長につなげるかということは、これは真剣に考えなければいけないわけでありまして、そういった点、今はまだ極めて不十分であります。この点がなくして単純に増税ということだけでは、ますます事態は悪化するだろう、ますます日本は衰退を早めるだろうというふうに危惧をするものでありまして、ぜひともこの点、しっかりと議論をしていただければと思っております。

 それから、防災・減災ニューディールの件。

 先ほども少し申し上げましたが、これは非常に定量的な目標を示しております。毎年十兆円規模の公共投資を、特に防災、減災、災害に強い国づくり、またまちづくりのためにしっかりとやっていこうということでありまして、向こう十年間にわたって毎年十兆円、十年間で約百兆円規模ということを提案しております。

 特に今、三・一一以降は、いかにこの日本列島が大変な地震大国であり津波大国であることか、よく認識したわけでありまして、また三・一一以降、実際の地震発生も十倍以上になっておりますし、いつ首都直下地震あるいは三連動地震が来るかわからないという切迫した状況にあるわけであります。そして、国民の思いは、ぜひともそういった命を守らなきゃいけないということにあるわけでありまして、これは十分に国民の理解を得られるものであると思います。

 また、日本は高度成長期にいろいろなインフラをつくってきましたが、コンクリートの寿命は大体五十年から六十年でありまして、いよいよそういった公共インフラの更新期を迎えるわけであります。そういった意味では、更新はもう最低限やらざるを得ないわけでありますし、また、新たな耐震技術を踏まえた、そういった構築もしなければならないわけであります。

 そういった意味で、ぜひともこの防災・減災ニューディールを、国民の命を守る、災害に強い国づくりをするという目的と、それから、今の深刻なデフレ不況を脱却する最も重要な、これはいわば手段としてやるということをぜひ検討していただきたいと思っております。

 具体的に、毎年十兆円規模ということは、約二%の経済成長になります。日本は約五百兆円弱でありますから、毎年十兆円規模の公共事業をすることは、約二%の成長率を上乗せすることになります。その他の成長等考えますと、間違いなく三%以上の成長を実現することは明確でありまして、それを十年間続ければ、しっかりと日本は成長軌道に戻るということであります。そういった意味で、私は成長のターボエンジンだと思っておりまして、ぜひこういったことをやるべきだと思っております。そうすることによって初めて、強い財政と強い社会保障の持続可能性が担保されるだろうというふうに考えるわけであります。

 そういうことで、先ほど自民党さんからも、こういった、国土強靱化計画、同じ趣旨であると思いますが、されておりますけれども、特に我々の主張する防災・減災ニューディールについてどのように政府としてはお考えか、お聞きしたいと思います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 御党からは、かねてより、防災対策を含め、経済財政政策の御提言をいただいております。

 政府は、現在、大震災からの復興等、景気の下振れ回避に万全を期すとともに、デフレ脱却に断固として取り組むことをマクロ経済政策運営の基本スタンスとしておりまして、今委員から御指摘があったように、この点においては、御党とお考えは大きな違いはないというふうに思っております。

 そして、御党から御提案のあります防災・減災ニューディールの考え方でございますが、政府としても、現在、学校、病院の耐震化等、約五千八百億円の全国防災、減災対策を含む平成二十三年度第三次補正予算を実行しているところでございますし、また、約四千八百億円の全国防災事業を含む平成二十四年度本予算、これも、一日も早く、迅速かつ着実に実行してまいりたいというふうに思っております。こうしたことを行うことが、需給ギャップの縮小を通じてデフレ脱却にも寄与するものというふうに考えております。

 また、さらに、ことし四月以降開催しております閣僚級のデフレ脱却等経済状況検討会議におきましては、デフレ脱却に向けて国民の潜在需要を実現するという観点から、住宅等の耐震性強化等を重視すべき政策分野として検討課題の一つに挙げておりますので、今後、御党の御提言等も踏まえつつ、デフレ脱却と経済活性化に向けて、引き続き全力を挙げてまいりたいというふうに考えております。

    〔古本委員長代理退席、委員長着席〕

遠藤(乙)委員 ぜひ強力に、この失われた二十年から脱却するためにも、防災・減災ニューディールを強力に推進すべきですね。取り組んでいただくことを強く要望しておきます。

 それでは、続いて、今度は枝野経済産業大臣にお聞きしたいと思います。

 国際競争力という視点から成長戦略というものをちょっと見てみたいと思います。

 資料の五をごらんください。

 IMDというのはスイスにある国際経営研究所で、非常に有名な経営の研究所であります。そこがたしか一九九〇年ぐらいから国際競争力の比較を出しておりまして、これは国際的にも非常に有名でございます。特に、これは企業の観点からの、企業から見て好ましいかどうかという視点からの国際競争力ということでやっておりまして、若干企業の見方に偏っておりますけれども、逆にまた非常に参考になるものであります。そういった意味で、この視点からお話をしたいと思っております。

 特に、日本は、当初、一九九〇年代初頭においては、国際競争力は一位でした。たしか二、三年ぐらいは一位をキープしておりましたが、その後、急激に低下をしまして、二〇一〇年が二十七位、二〇一一年は二十六位ということで、非常に今低迷をしておりまして、ほかの、シンガポールとか中国とかマレーシアとか韓国等にも抜かれておりまして、企業から見ても、日本が非常に魅力のない国になってきたということが言えるわけであります。

 特に、この総合指数を構成するものとして、経済状況、政府効率性、ビジネス効率性、インフラと分けておりまして、この小項目部分で非常に参考になる情報を含んでおりますが、いずれにしましても、日本の場合、急速に企業から見て魅力のない国になってきているということであります。

 特に、このIMD指標は、現時点のものというよりも、中長期的な日本の未来を知る上で非常に参考になるわけでありまして、企業がどんどん退出していく、外国の企業が入ってこないということを意味するわけでありまして、これは実は、日本の未来予想図に大変暗い影を投げかけている。さっきの経団連の調査もそうでありますし、いろいろな各種の指標が、中長期的に、今のままでいくと、日本の未来予想図は非常に暗いということを指示している形であります。

 そういった意味では、ぜひこの国際競争力をもう一回取り戻していくということが非常に重要ではないかと思っております。

 そういった意味で、特に経産大臣から、この総合力、総合指標二十六位、また、いろいろな指標でも非常に低いという状況についてどうお考えか、また、今後国際競争力を高めるためにどう取り組んでいかれるかを含めて、御所見をお伺いしたいと思います。

枝野国務大臣 御指摘の国際競争力の比較というのは、一つの比較ではありますけれども、大変示唆に富んだ、そして深刻に受けとめなければならない問題だろうというふうに受けとめております。

 そのうち、この資料五にもあります「競争力向上のために望まれること」の一番最初にあります持続可能性への道筋の確保ということについては、まさに当委員会で御議論をいただいているこの問題を解決することだろうというふうに思っております。

 それから、二つ目にあります一般的な意味での競争力強化策としては、三年後からの法人実効税率の五%引き下げ、あるいは、主要貿易相手国との高いレベルの経済連携推進、それから、若干ミクロかもしれませんが、国内立地補助金やエコカー補助金などを進めておりますし、また、グローバル企業にとっての投資先としての我が国の魅力を高めるべく、税制上のインセンティブ措置などを講じるアジア拠点化推進法案、それから、事業環境整備等の施策を取りまとめたアジア拠点化・対日投資促進プログラムの実施などに着実に組んでいるところでございます。

 さらに加えて申し上げれば、やはり、まさに日本の実質的競争力を高めなきゃいけない、回復をさせなければならない、そうしたことの意味では、一つは、結局は、日本の財産は人材であるというふうに思いますが、その人材、育てるということも大事ですが、今ある人材が生かされていない。

 例えば、いわゆるM字カーブに象徴される、女性の力が活用されていない。逆に、日本の国内で統計をとりますと、女性を活用している企業ほど収益力などが高い、こういう客観的なデータも出ています。こうしたことを促していく。それから、例えば、高齢者といっても、六十代ぐらいの高齢者の方は元気でいらっしゃいますが、こうした方でいろいろなスキルのある方を生かすことができていない。こうしたことについては、即効性もあると思っておりますので、ここをどうやって人材力を最大活用するかということのプログラムを今つくっているところでございます。

 それからもう一つは、日本にとっての競争力の源泉は、広い意味でのクール・ジャパンだと思っております。ただ、これが、例えば、コンテンツは非常に魅力がありますが、コンテンツだけでは大きなビジネスにならない。それから、地方には、たくさんの魅力ある特産品であったり観光資源などがありますが、単品ではなかなか競争力を持たない。こうしたものを、流通であるとかそれから消費財であるとか、さまざまな分野を横断的に結びつけることで潜在力を掘り起こす、こういったことを今推進しておりまして、こうした総合的な施策によって、この競争力の順位を着実に回復をさせていきたいというふうに思っております。

遠藤(乙)委員 枝野大臣の御所見、私も基本的には同じでありまして、大変心強く感じた次第であります。

 特に、人材の活用、これは本当に大事でありまして、女性とか高齢者も含めて、持てる能力を最大限に活用するような社会システムにするということがまず大事だと思います。

 それからさらに、このIMDの報告書を見ると、強み、弱みということが非常に明確に浮かび上がってまいります。

 日本の持つ強みは、特に研究開発能力、科学技術、これはもう圧倒的に強くて、非常にすばらしいというふうな評価がIMDからなされておりまして、これはまさに我々の実感とも共通する。ノーベル賞学者も出ている。また、特に特許件数なんかは、年間三十万件ぐらいありまして、いまだに世界でトップランクにあって、科学技術能力が極めて高いということがありまして、これは日本の非常にすばらしい強みです。

 逆に、弱みということになりますと、特に起業家精神、これは、全世界、五十九カ国、対象をとった国の五十九位です。最下位ということでありまして、要するに、非常に国民が職人かたぎというか、あるいは安定志向といいますか、技術には非常にこだわるけれども、安定を志向していて、リスクテーキングとか、新しいものを立ち上げていく、そういった経営感覚あるいは起業家精神には乏しい。五十九カ国中五十九位という、名誉あるというか、名誉ある地位になっておりますけれども、これが非常に問題。

 それからまた、企業から見て、大学の魅力がない。これは、大学それ自体のやり方はあるんでしょうけれども、企業から見て、企業のニーズに合った人材育成がない。即戦力として、そういった育成がされていない。今までは、ブランドで学生をとって、企業に入ってからオン・ザ・ジョブ・トレーニングでしっかりと訓練をして使っていたわけですが、今はもうその余力がありません。したがって、企業としては即戦力で使える人材を欲しがっているわけであって、そういった人材育成には、日本の大学は教育力が非常に欠如しているということを言っているわけです。

 また、語学力、これが五十八位。五十九カ国中五十八位でありまして、アジアでも最下位。多分、北朝鮮の次ぐらいに、下から、ブービーだと思いますけれども、大変に語学力が悪い。

 また、経営者の国際感覚が非常に欠けておりまして、こういったことが相まって、今、日本のガラパゴス化をもたらしていて、世界全体が非常に、七十億の市場が大きく発展し、特に新興国が物すごい勢いで発展しているにもかかわらず、日本がどんどんガラパゴス化をしており、企業関係者も外に目が向かない、学生も留学を全然しなくなった、温泉とかそういったものが好きで、また、いろいろな国内的なことにばかり志向しておりまして、全然世界に行かなくなったということで、このガラパゴス化こそが日本の今の衰退の一つの大きな理由だと言われております。

 そこで、成長戦略ということを考えると、先ほど枝野大臣も言われたように、人材をどう活用するか。女性とか高齢者をどう活用していくか。もう一つは、グローバルな視点から、これにどうもっと力をつけていくかということで、特に国際感覚、それからもう一つは経営感覚、この二つをしっかりともう一度、再教育、再訓練していけば、日本人は非常に優秀ですから、必ず世界でも活躍できると私は思っておりまして、ある意味で成長戦略の最も重要な部分が、これは政府でも取り上げておりますが、グローバル人材の育成、あるいはグローバルリーダーの育成、これこそ最重要の国家戦略だという認識をぜひ持っていただきたいと思っているわけであります。

 そこで、文科大臣に御出席いただいておりますので、なぜ消費税のところに文科大臣かということを御疑問に思うかもしれませんが、今言ったコンテクストで、消費税の問題を議論していくにも、持続可能な社会保障、経済をつくるためにも、成長戦略が大事だ、その成長戦略の最も大事な部分が人材であり、特にグローバル人材の育成ということが鍵だということで、文科大臣にお越しいただいているわけであります。

 さっきの中にもありましたように、特に国際感覚、これは、一つは実践的な語学能力と、もう一つは異文化に対する理解、コミュニケーション能力、この二つだと思っておりますが、これが著しく日本人に欠けているということであります。

 特に語学面では、日本は中学、高校でかなり時間をとって英語教育をやっているにもかかわらず、全然使えない。アジアで国際会議をやっても、ほかのアジア人はみんな英語でしゃべるのに、日本人だけは通訳をつけて浮いてしまっている。これでは、とてもじゃないけれどもグローバルに活躍できるわけがない。ますますガラパゴス化が進行するわけであって、この語学問題、特に英語の実践的能力というのが実は極めて重大なテーマであると思っております。

 そういった意味で、文部大臣には、日本の英語教育の問題点をどのように認識しておられるか、どうやって今後これを改革していくか、この点につきまして、まずお話を伺いたいと思います。

中野委員長 文部科学大臣平野博文君。日本語でどうぞ。

平野(博)国務大臣 私もドメスティックな人間ですから、日本語で答弁させていただきたいと思います。

 今、遠藤さんから言われたことは、もう私自身も、あらゆる部分についてやはり共通していることは、全て人がやるということであります。そういう中にあって、人材の育成、また、これだけ多様化している社会でありますから、いろいろな人材があって当然だと思いますし、そういう中で、先ほど御指摘ございました特に語学力、特に英語、こういうことですが、私は、学校教育の中に、英語の学問を教えているわけではない、こういう認識に変えなきゃだめだ、こういうふうに思っております。

 特に、これはコミュニケーションをしていくためのツールとして、これはもう我が国の、もちろんベースにありますのは日本語をしっかり学ぶということが大前提でありますが、それに加えて、やはりこれだけ世界に、グローバル化した時代に共通する言葉のツールとして、日本人が全て持っておく、こういうことの認識が大事であろう、こういうことでございます。

 そういう中にありまして、問題点は、そういう観点での教育をしてこなかったというのが問題点だ、私はかように思っております。読み書きそろばん、そういうところでは英語においてもできるわけですが、コミュニケーションツールとして本当に使える教育になっていない、これが今、私、現実の認識に立っております。

 したがいまして、今後、そういう観点での英語の教育のあり方をしっかり模索し、今の大学入試あるいは中高、もっと小学、そういうところで、本来の共通言語としてのあり方に英語も加えていくべきだ、かように考えています。

遠藤(乙)委員 平野文科大臣の認識は、私も基本的には同じものでございます。

 それで、日本の英語教育、何でこんなにだめなのかということなんですが、これは、多分日本の置かれた文明史的状況を歴史的に見ると、要するに、常に海外先進国、かつては中国、アジア、そして近代では欧米、そういったものの先進文化、技術を取り入れていく、特に文献を通じて、文献情報の解読を通じて取り入れていくということに非常にウエートがかかっておって、例えば蘭学事始でわかるように、先人は大変な努力をしたわけですけれども、基本的に、海外の文献情報、言語情報を徹底的に解読してそれを吸収していくというだけであって、アウトプットは全然考えておりません。外に向かって発信することなど全く考えていない。

 また、音声情報のことはほとんど考えていないわけであって、本来、外国語というのは、音声情報と文字情報があって、それを受容する部分と発信する部分があるわけで、要するに四つの分野があって、リスニングとリーディング、それからスピーキングとライティング、四つあるわけです。普通、どこの国もこの四分野を同じバランスで発達させるために、非常にスムーズに語学力が発展するんですが、日本の場合には読解だけ、文法知識と単語を辞書で引いていくだけ、そういう教育であって、自動車の教習に例えますと、法規と構造だけは知識を徹底的に教える。ところが、技能教習はほとんどやらない、路上教習は全然やらない。これでは車を運転できるわけがないわけです。

 また、語学というのは、スポーツと同じように練習量に比例するわけで、ちゃんといいコーチについて、練習量をどれだけ確保するかによって習得するわけであって、全くその部分が欠けている。

 単に言語情報、文献を解読していくというだけのやり方がずっともう長年にわたり、中国語も返り点で吸収するだけで発信は全然ないわけで、また、英語も同じようなものであって、こういった構造がずっと受験制度あるいは学校教育において再生産されてきて、これが今に続いているわけですね。ただ、もうこれがもたなくなって、本当に日本がグローバル化しなきゃ日本の経済も浮上できないことになりますと、ぜひとも本格的な英語教育の改革が必要になってくると思います。

 そこで、具体的な提言として、今のいろいろな、TOEICとかいろいろなテストが非常に盛んでありまして、これは、今の学校教育から何とか脱出せにゃいけないということで皆さんが模索する中でそういったものに飛びついているんだと思いますが、一番のポイントは、四つの分野、さっきの、聞くこと、読むこと、話すこと、それから書くことですね、この四つの分野をしっかりとバランスをとって発展させるということが大事でありまして、特に韓国なんかは非常にその点は明確な戦略を打ち出しておりまして、ことしから、NEATというんですか、ナショナル・イングリッシュ・アビリティー・テストを既に実行いたしまして、大学の入試あるいは公務員の採用にもそれを義務づけております。

 日本人は、もともと非常に資格試験好きといいますか、試験好きなものですから、逆に、そういった本当にグローバル化を反映したすぐれた内容のテストあるいは検定試験をつくることによって、それに一生懸命頑張ってもらうことが、実際のグローバル化に役立つようなものであれば、それは非常によいガイドラインとして作用するわけでありまして、ぜひとも、そういった意味で、文科省がひとつ音頭をとっていただいて、そういう本当にグローバル化の現実に適した検定試験をもっともっと発達させるように努力していただければと思っております。

 TOEICなんかも、一面、非常にいいんですけれども、あれはリスニングとリーディングだけであって、スピーキング、ライティングの分野はありません。したがって、そういった意味で、発信する部分はなかなかまだついておりませんので、高得点をとっても実際には使えない人もいるわけですね。したがって、もっともっとバランスのとれた検定試験を、ぜひ文科省の主導のもとにしっかりと進めていただければと思っております。

 これにつきまして、文部大臣の御所見をお伺いいたします。

平野(博)国務大臣 今先生から御指摘がありましたが、確かにバランスのとれたものでなければなりません。書くことはできるけれどもしゃべることはできないみたいな、これでは何の意味もなさない、こういうふうに思っています。

 私も会社生活のときには余りそういう昇級資格はなかったんですが、今、企業においては、TOEICで七百点以上なければ課長に行けないとか、それだけ、この世間、社会もそういう時代になっております。

 したがって、文科省におきましてもいろいろな検定制度を後援してまいりました。先生御指摘の、バランスのとれた、そういうものが新たに、民間が今やっておりますが、生まれてくれば、文科省としても積極的にそれは後援あるいは支援をしてまいりたい、かように思っております。

遠藤(乙)委員 ぜひ、その方向で努力をお願いしたいと思っております。文部省として、海外への留学の拡大、奨学金あるいはバカロレア等で非常に努力されていることは高く評価をしておりまして、ぜひその方向で努力をお願いしたいと思います。

 それからもう一点、先般、タンザニアの議長が訪日をされまして、横路議長ともお会いになって、そのときに、ちょうど駐タンザニアの日本の大使が帰ってこられておりまして、おもしろい話を聞きました。

 それは、今、タンザニアで、もう援助の時代は終わってビジネスの時代になって、非常に活性化して成長も進んでいる中で、日本からやってきた三十歳の若者がビジネスで非常に大きな成功をおさめて脚光を浴び、有名人になっている、タンザニア政府からいろいろな助言まで求められるぐらいの存在になっているということであります。

 沖縄出身の男性らしいんですが、二十四歳のときにタンザニアに定着して、そこでビジネスに開眼して、今や、五年間で四十一社を立ち上げ、百人以上の従業員を使い、何と年商三百億という話を聞きまして、通称タンザニアのプータロー君というように呼ばれているそうなんですが、ドロップアウトしたような青年でも、国際的に活躍して、実際にそういった起業家精神を発揮して成功している例もあるわけであります。

 そういった意味では、今後、単に正規のいわゆる大学、大学院といったところだけではなくして、専門学校生とかあるいはニート、フリーターも含めて、これからそういったグローバル化へのさまざまな支援をし、またチャンスを与えていくべきだと思っております。

 特に、起業家精神は、学校システムで図れないし、学校では教えておりませんので、こういったことはやはりまた別の能力でありますので、そういったことも含めて、広い視野に立ったグローバル人材育成の支援策が必要だと思っておりまして、まず、ニート、フリーターといった点では、ぜひこれは小宮山大臣にお聞きしたいと思います。

小宮山国務大臣 今委員がいろいろ、あと実例も含めて御指摘いただいた視点は、大変大事だというふうに思っています。

 今、厚生労働省の方では、企業が労働者を海外に行かせる前の職業訓練の助成をしたり、自分で留学前に外国語の関連講座を受講したりするときにその費用の一部を助成したりしていますが、まだまだそうしたところは足りないと思っていますし、こうしたことは被保険者のフリーターには適用になりますが、非常にまだその規模が小さい。

 それから、ニートなどに対しましては、職業的に何とか自立するようにサポートするために、民間にも委託をいたしました地域若者サポートステーションというのを全国に今百十カ所、ことし百十五カ所つくりたいと思っているんですが、そうしたところにも、今言われたような海外展開も支援できるようなところもあるかと思いますので、そうした視点をぜひ持って、もっとここは積極的に進めるように私からも働きかけていきたいと思います。

遠藤(乙)委員 ぜひ、大臣のまた御尽力をお願いしたいと思っています。

 先ほども枝野大臣が言われたように、やはり人材の活用、育成、特にグローバル化という視点でこれは非常に重要であります。私は、成長戦略の最終的なポイントは教育改革にあると思っておりまして、いかにグローバル人材の育成に向けてそういった教育改革をするかということになるかと思っております。

 もう一度大臣にお伺いしたいんですが、今の文部省の姿勢を私は大変評価しておりまして、さらにこういったことを、いわゆる大学生だけではなくて、例えば専門学校とかそれ以外の分野にも幅広くチャンスを広げていく、使い勝手のいいそういった新システムをつくるということをぜひ御検討いただきたいと思っております。

平野(博)国務大臣 議員からの御指摘でございますが、もちろん学生は、そういう意味で、支援、バックアップする奨学金制度等充足しておりますが、これだけ多様化した時代、国際社会にあって、より実践的な部分、あるいはいろいろな分野にやはり支援をしていくという考え方のもとに、特に成長分野を中心として中核的人材を養成する、育成する、こういう観点で産官学によるコンソーシアムを組織化いたしておりまして、この二十四年度の予算におきましても四・八億円の予算をお願いしております。そういう中で、ITでありますとかファッションでありますとか、そういう分野においての人材を養成するモデルカリキュラムを今開発し、支援をしよう、こういうふうに考えております。

遠藤(乙)委員 ぜひとも大臣の強いリーダーシップをお願いしたいと思っております。

 いずれにしましても、今我々がやらなきゃいけないのは、日本再生のシナリオ、再建のシナリオをつくることであります。ソリューションをつくらなくちゃいけない。そのためには何よりも成長戦略が極めて重要な役割を占めるということ。さらに、人材の活用、育成、特にグローバルな視点に立った育成が非常に大事だということでありまして、ぜひこれは党派を超えて取り組んでいき、いずれきちっとしたシナリオが党派を超えて合意されて、国民から見て本当に信頼され、また希望の持てるような、そういうソリューションができることを強く期待して、皆様の徹底的な御審議をお願いし、私の質問を終わります。

 以上です。

中野委員長 これにて遠藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、浅尾慶一郎君。

浅尾委員 みんなの党の浅尾慶一郎です。

 今回の消費税の増税の話は、基本的には、財政再建のためではなくて社会保障の充実のためという説明がされておりますが、同時に、マスコミにおいては、財政再建待ったなしだというような報道もされているわけです。

 では、日本の国を会社に例えた場合に、経営の再建というのを値上げという形で考えれば消費税増税ということになるのかもしれませんが、値上げの一本足打法というのはなかなか経営再建にはつながらないだろうというふうに思っております。

 普通、経営が厳しくなったときにまず最初に行うのは売り上げをふやすということでしょうし、その次に行うのは、同時にということかもしれませんが、不要不急の資産があればそれを売っていく、そして、社長の給料が多かったら給料を減らしたり、実体がない役員がいればその人に役員をやめてもらったり、さらに、役員の数も減らして、従業員の給与も減らしていくというようなことをやった上で値上げというのが通常の順番なんじゃないかなというふうに思います。

 国においても同じことだろうというふうに思っておりまして、そんな観点から、まず、我が国の現在の税収というものがどういうものなのかということで質問をさせていただきたいと思います。

 日本の国の今の税収は四十兆円ぐらいということでありますが、今配付をさせていただいた資料、一般会計税収の推移というのがありますけれども、これを見ますと、平成二年が六十兆一千億円で一番多くて、確定しておりますのが、平成二十二年度が四十一兆五千億。これは決算が出た数字ということでありますが、四十兆内外で推移していますということで、平成二年と比べて三分の二に税収が落ちてしまったということであります。

 私が非常に不思議に思ったのは、経済の実力を示すのは実質のGDPということで、お手元に実質のGDPの推移の資料もお配りをさせていただきましたけれども、平成二年、一九九〇年ですが、このときの実質のGDPは四百五十三兆六千億円、平成二十二年、二〇一〇年は五百十一兆ということで、実質の経済は今の方が大きくなっている。そうすると、実質の経済が今大きくなっているにもかかわらず、何で税収が三分の二になってしまっているんだろうという疑問を持ったわけでございます。

 しかし、よくよく考えてみますと、我々が日ごろお店に行って物を買うのは実質ではなくて名目、これはちょっとわかりにくいかもしれませんが、お金を払うのは実際に表示されている価格だということでありまして、表示されている価格で計算しているのが名目のGDPだということになるわけでありますが、名目のGDPで見ますと少し差が縮まります。一九九〇年のときが四百五十一兆円で、二〇一〇年が四百七十九兆ということなので、なるほど、実質よりは差が縮まるなと。しかし、名目のGDPは、一九九〇年と比べると、まだ今の方が大きいなということがわかるわけであります。

 今の方が経済の規模が実質、名目ともに大きいということについて、ちょっと、名目というのも本当に税収から見た場合に全てのものを入れているのかなというふうに思って、これは古川さんのところにまずは確認の御答弁をいただきたいと思います。

 経済を調べるに当たっては、名目の経済値を調べた後でGDPデフレーターというもので修正する、このGDPデフレーターには土地の値段や株価の資産価格の変動は含まないというふうに理解していますが、そういう理解で正しいですね。

古川国務大臣 そのとおりでございます。

浅尾委員 そうなんです。土地の値段や株の値段は含まれていないんです。

 そうすると、では、土地の値段、株の値段を、一九九〇年の年末と二〇一〇年の年末、つまり、今の一・五倍税収があったときと比較をするとどうなるのかというのがもう一つの資料であります。

 年度末ですから、日付でいうと一九九一年の三月二十九日、株価は二万六千二百九十二円でありました。二〇一〇年度末、二〇一一年の三月三十一日は九千七百五十五円ということになるわけであります。土地の方も、これは公示価格で見ると、住宅地が八十八万八千六百円が三十三万七千百円に、商業地はもっと落ちていまして、七百七十五万円が百七十一万七千円と相当落ちているということなんです。

 この資産性のものと税収との連用性というか関連性というのがどの程度あるというふうに財務大臣は考えておられるか、まず伺いたいと思います。

安住国務大臣 連用性はわかりませんけれども、統計だけ見ると、分離課税分だけ見ても、土地譲渡だけでも三・七兆だったのが〇・四ですから、それだけ見れば約十分の一ぐらいになっていますし、利子も調べると五・三兆から〇・五になっている。

 ですから、そういう点では、浅尾さんおっしゃるように、デフレの正体は何ぞやというのはいろいろな議論があると思いますが、資産の中で占める土地、不動産価格というのはやはり反射しているということは税収からわかります。

 ただ、九〇年のこの時点をどう見るかというのは、これはあると思いますよ。バブルのはしりぐらいですから、このもともとの足が、丈が大きいというか、八十八万とか七百七十五万が、大変言い方は申しわけありませんが、標準の中で考えて真っ当な数字なのかどうかというのはちょっとわかりません。

浅尾委員 私が申し上げたいのは、冒頭申し上げましたように、実質の経済の規模は九〇年と比べても今の方が大きい。これは、結果として、土地とか株等を除いた物価も落ちたので、例えば、九〇年当時は町で一杯コーヒーを飲めば三百円だったのが、今は安いところに行けば百円とか百二十円で飲めるようになったとか、そういうものも含めて、お金の価値がその分だけ上がったから実質の経済は大きくなったということなんだと思いますが、しかし、名目で比べてもちょっと今の方が大きい。ただし、この名目というものの中には資産性価格というのが入っていないということをまず指摘させていただきたかったんです。

 きょうは、日銀の総裁にもお越しいただいておりまして、まず、総裁に伺いたいんです。

 もちろん、日銀の金融政策の目的は物価の安定ということになるかと思いますが、しかし、物価といったときに、経済に与える影響は、資産性のものの価格が少なくとも安定している、あるいは落ち過ぎちゃったら少し戻ってもらうということもかなり、法律を読めば日銀の本来業務ではないかもしれませんが、日銀が通貨の番人としてはやっていかなければいけないことなのではないかなというふうに思います。

 その観点から、日銀が金融緩和をしたときに一番金融緩和に対する反応度が高いのは、多分、最初が為替で、その次が株価であったり地価、土地の値段で、その後にいわゆる消費者物価が来るのではないかというふうに思いますが、総裁としてどういうふうに判断されておられるか、伺いたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 資産価格、特に株価あるいは為替相場は、これは市場で常に新しい情報を織り込んで相場が形成されますために、金融政策の変更にもすぐ反応があるということは、これは御指摘のとおりであります。これとの比較でいいますと、消費者物価とかあるいは実体経済の方の反応がおくれるというのは、そのとおりでございます。

 これは、金融政策が物価あるいは実体経済に影響を与える経路を考えますと、まず、中央銀行による流動性の供給なりあるいは金利の変化が金融機関あるいは金融市場に影響を与え、それがまた時間を経て最終的な経済に影響を与えていくということで、したがって、時間的な差があるということでございます。

 ただ、資産価格は、そういう意味で金融政策の方に反応しやすいということはそのとおりでございますけれども、しかし、実際の、これは為替にしても株価にしてもそうでございますけれども、昨今の欧州の問題が示しますように、これはいろいろなニュースに反応いたします。最近でいきますと、スペインの問題を背景にして、投資家が先々リスクをとれる、あるいはとれない、そういう判断が非常に相場を動かしていますので、そういう意味で、確かに金融政策に反応する部分はございますけれども、やはり相場の変動それ自体を見た場合は、実はさまざまな要因で動いているという感じがいたします。

 いずれにせよ、先生の問題意識として、日本銀行は、資産価格の変動、そうしたことも意識してちゃんと金融政策を行っているのかというお尋ねだと思います。

 日本銀行としては、資産価格それ自体をターゲットに政策を行うことは行っておりませんけれども、しかし、資産価格の変動が実体経済にもあるいは物価にも最終的には影響を与えていくということも十分に勘案しながら政策を運営しているということでございます。

浅尾委員 現行の日銀法では物価ということになりますので今のお答えのとおりだと思いますが、政府として、税収というものと名目プラス資産価格を入れた何らかの経済全体の大きさというものを考えた場合に、現状の、先ほど古川大臣にお答えいただきました、デフレーターには資産性価格の変動というのは入っておりません。

 前にも安住財務大臣に検討していただくということでこの委員会にお願いをさせていただきましたけれども、税収全体に対して、やはり経済全体で、その経済というのは、繰り返しになりますが、資産性のものが入った指標というのがあった方が、それに対して税収がどう動くかということが少なくともわかるということは、将来の税収について見通しもとれると思いますし、そういうものがあった方が国民の負担というものもわかりやすいのではないかというふうに思いますので、安住大臣になるのか、あるいは古川大臣なのかわかりませんが、今申し上げた問題意識の検討状況についてお答えいただきたいと思います。

安住国務大臣 先般、ここで、そういう統計も政府で調べたらどうだということでございました。

 私がここで申し上げたのは、過去のデータは全く、そういう統計をとっていないので、比較対照するものがないので、統計で大事なのは、そういう意味では、同じデータでとり続けるからこそ統計でありますので、そういう点でも、しかし、資産の中で不動産なんかがどういうふうな影響をGDP全体に与えるかというのは一つの研究例としてあってもいいということで、調べさせますということを申し上げましたので、その姿勢は変わりません。

浅尾委員 地価がGDP全体に与える影響というよりは、土地の値段や株の値段が税収に与える影響の方が大きいということだと思いますので、そのことをぜひ踏まえて検討していただければと思います。

 日銀の総裁、お時間があると思いますから、最後に一点だけ。

 先ほど、株価や土地の値段も踏まえながら金融政策を行っているというような趣旨の答弁をいただいたと思いますが、具体的に、日銀としてその際見る指標というのは、どういう指標をごらんになっているかということをお答えいただいて、あとは総裁に対する御質問はございませんので、よろしくお願いしたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 実際に金融政策を行っていきます場合には、もちろんさまざまなデータを使いますので、ある一つの数字だけではございませんけれども、資産価格という意味でいきますと、やはり何といっても、企業の経営者のマインドに大きな影響を与えるのは、為替相場であり、あるいは株価であるというふうに思います。

 これも釈迦に説法でございますけれども、例えば急激な円高になった場合に、企業収益あるいはマインドに影響を与える、それが実体経済に悪影響を与えるということは、これは一つの影響が出てくるルートでございます。この点は十分注意して見ております。

 それから、あと、資産価格と物価の関係でございますけれども、確かに、資産価格そのものは物価指数には入ってございませんけれども、しかし、重要な資産である例えば住宅、住宅を借りる際の賃料、あるいは、自分が住宅を持っている場合、その場合の仮想的な賃料というものを想定しまして、こうしたものは実は物価指数にも入っております。

 そうしたものも含めて、私どもは、不動産も含めて資産関連の価格あるいは取引の情報をかなり集めておりますので、そうしたことも見て、政策運営に生かしております。

浅尾委員 最後の質問と言ったんですけれども、今為替のことをおっしゃったので、もう一点だけ。

 多分、多分というか、間違いなく、日本銀行が金融緩和をしてバランスシートを大きくした場合には、その分だけ相対的に、例えばFRBのバランスシートの伸びと日本銀行のバランスシートの伸びによって為替価格が決定される要素の方が、介入によって決定される要素よりも大きいというふうに思いますが、そのことについてどういうふうに判断しておられるかということを伺って、本当に最後の質問にいたしたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 ただいま先生から御質問のありました問題意識というのは、これはよくエコノミストの方からも頂戴する意見でございます。

 もちろん、為替レートの決まり方についてはいろいろな理論がありますので、私どもいろいろな理論はもちろん注目しておりますけれども、事実だけを見てみますと、実は、そうした関係が現実には当てはまっていないということでございます。

 例を申し上げますと、日本銀行は、二〇〇一年に量的緩和を始めまして、二〇〇六年の三月にこれを解除いたしました。この量的緩和を行っておるときは、日本銀行のバランスシートは、FRB対比、これは拡張したわけでございますけれども、しかし、この時期は、どちらかというと、むしろこれは円高でございました。日本銀行が量的緩和を解除した二〇〇六年の三月、それからゼロ金利を解除した七月以降の為替を見ますと、むしろ為替相場は円安方向になりました。二〇〇七年の円安は、これは数字を見ていればわかりますけれども、非常に円安水準でございました。これは、日本銀行のバランスシートが縮小しているもとで実は起きたわけでございます。

 もちろん、これは全く関係がないと言っているわけではございませんけれども、やはり、為替レートの動きを規定する大きな要因は、先ほど申し上げましたような、グローバルな投資家がどの程度今自分がリスクをとれるかということに関する評価でございます。

 今の時点でいきますと、欧州債務問題について、これが少し改善の方向に向かっていっているのか、あるいは悪化の方向に向かっていっているのか、こうしたことがやはり大きな決定要因になっているように感じております。

中野委員長 総裁、どうもありがとうございました。

浅尾委員 次に、国の保有する資産について、では、どの程度これが資産、負債両建てで落としていくことができるのか。日本の国が一千兆円を超える借金を抱えているということでありますけれども、同時に、かなりの資産も持っているということであります。

 例えば、日本の国が両建てで持っている資産、負債の中で、恐らく一番大きいのは外国為替資金特別会計ではないかなというふうに思います。一千兆円のうちで、この平成二十三年度末の予定額でいいますと、百五十五兆円が外国為替資金特会の、全部が借金ではありませんが、貸方ということになるんじゃないかというふうに思いますが、そういう理解でよろしいですか。

安住国務大臣 ちょっと丁寧にお話ししますか。それだけでいいですか、まず。(浅尾委員「とりあえず」と呼ぶ)では、それで。

浅尾委員 丁寧にというのは、私の質問は、もし丁寧におっしゃっていただくのであればそれはそれで、要するに、借金が百三十兆ぐらいですか、それから積立金が二十兆ぐらいというので百五十五兆というような数字だと思いますが、そういう理解でよろしいですか。

安住国務大臣 いや、私が申し上げたのは、政府資産全体ということだったのでという話なんです。(浅尾委員「はい」と呼ぶ)では、それはそれでいいです。

浅尾委員 私の質問は、政府資産の中で両建てで持っているもの、資産と負債両建てで持っている特別会計で一番大きいのは外国為替資金特別会計ではありませんかと。一千兆円を超える我が国の負債に対して、一番大きな負債というのが外国為替資金特会のこの数字ではないですかという質問です。

安住国務大臣 ですから、短期証券は、貸している方で百二十兆で、積み立てが二十・五ですから、大体そういうところでございます。

浅尾委員 一千兆円の借金のうち百二十兆ぐらいが外国為替特会の借金。これは、例えてというか、事実でいうと、日本の政府が国民から短期のお金を借りて、これを借りかえ借りかえして百二十兆になっていますが、その借りかえて得た円を使ってドルやユーロを買って、そのドルやユーロはドル債で運用されたりユーロ債で運用されているということでありますから、例えて言うと、日本の政府が国民からお金を借りてアメリカの政府にお金を貸し付けているというような形になっているということであります、形状的には。

 これは、果たして本当に健全なのかなと。では、今、全部その米国債を売ったら、四十兆ですか、五十兆ですか、含み損があるということなので売れないということですけれども、多分、想定レート百二十円ぐらいに戻ると含み損がなくなるんじゃないかというふうに思いますが、百二十円になると資産、負債がちょうどバランスする、百二十円を超える円安になると含み益が出るという理解だと思いますが、まず、そういう理解でよろしいですか。

安住国務大臣 その分岐点を、何円なのかということは、私の方から今申し上げることはできませんけれども、一定の水準になれば、計算上は、今浅尾さんが言うようにプラスになっていくことは事実です。

浅尾委員 ですから、私が申し上げているのは、形の上で、日本の国民からお金を借りてアメリカの政府に貸し付けている、この形というのが、それは円高対策とかなんとかということの政策効果は別にして、ちょっとおかしいんじゃないか。

 もし、円高対策という政策効果ということでいうと、では、何で含み損が介入しているにもかかわらず出るんだという話にもなるわけでありまして、別の対策をとって、できるだけ、為替が反転したときには外国為替特会というのを小さくしていく努力というのを、国全体の借金を減らすというのであれば、やられたらいかがですか、そういう提言であります。

安住国務大臣 適正な保有額がどれぐらいかということは議論のあるところです、率直に申し上げて。

 ただ、現時点での為替の水準を考えれば、やはり大きな赤字になることは事実でございますから、保有をし続けるということになると思いますが、浅尾さんの提案というのは、もう少し規模というものを考えるべきではないかということであれば、私も、それは幾らが適正なのかということは十分議論しなきゃいけないと思っております。

浅尾委員 次に、我が国が持っております特別会計の資産、負債で、私が規模が大きいなと思いつつ着目をしておりますのが、いわゆる地方公共団体向けの貸付金でありまして、これは平成二十四年度の末の予定額でいうと五十三兆円ぐらいになるということだと思います。

 これは、何を私が注目しているかというと、この制度は、日本の政府が国債を発行すると、金利は地方自治体が発行する何とか市債とか何々県債よりは多分安い。安い金利をそのまま、これは政策目的もありますけれども、貸し付けているというのは、資産、負債両建てでそうすると、日本国が借金をしたものを日本の自治体に貸し付けるということなので膨れ上がるということなんですが、国が安くお金を調達して地方自治体に貸し付けるというのは、ある種、言葉を恐れずに言えば、中央集権的な形になるんじゃないか。

 むしろ、地方分権ということであれば、地域の自主性に任せて、それは、その地域の自治体がそれほど財政的な信用力がなければ借りる金利が高くなるけれども、そういうことも含めて地方分権なんだという発想になれば、この五十五兆円というのも減らしていける方向にあるんじゃないでしょうか。

安住国務大臣 意見の分かれるところだと思います。

 地方自治体の現実を考えますと、そういうやり方をすれば、それは国としては少し楽になることはあるかもしれませんが、現実にマーケットが、それぞれの自治体が発行する債券、地方がどういう形で債券を発行するか、そういう御提案はいろいろあるのかもしれませんけれども、現実に、やはり消化していかないといけないわけですね。

 それが国が肩がわりしているのは問題だという御指摘はあるかもしれませんけれども、整備をしっかりやらないと、極端なことを言えば、やはり自治体ごとによって差も開くでしょうし、地方が一緒になって、例えば地方自治体の、地方公共団体金融機構というのを今やっています。これは二・二兆ぐらいやっているというお話を聞いておりますけれども、地方債の発行総額というのは二十四年度でも十四兆ですから、そういうところから見れば、私は、今財務大臣として言わせていただければ、やはり現実対応をせざるを得ないというふうに思っております。

浅尾委員 地方共同債というような考え方、地方自治体が共同で発行して行うという考え方もあると思います。

 申し上げたいのは、むしろ、具体的な施策としてはそういうことができると思いますが、哲学として、国が安い金利で調達をして、財政力がそれほど、国ほどない地方自治体にそのままの金利で貸し付けるという制度が、ある種、国から借りるためにはいろいろな言うことを聞かなきゃいかぬということもあるでしょうし、そういう考え方でいくのか。それとも、各自治体が、地方分権の流れの中で、これは税源の移譲もしなきゃいけないでしょうけれども、自前の財政の中でやっていくのがいいのか。どっちを今の政権としては考えるんですかという質問です。

安住国務大臣 ですから、結論で言うと、浅尾さん、やはり現実的対応をしないと。

 べき論はもちろんあると思います。ただ、私どもとしては、今やはり、そういう意味では、マーケットできちっとそうした債券を消化して、そして地方にお金をきちっと届ける責任というのはやはりあるわけです。

 ただ、俯瞰して見れば、地方の自主性を重んじて、ある意味で強弱やそういうものもきちっとついて、そして、いわば経営者的感覚でいえば、できれば、いい自治体もだめな自治体もはっきりした方がいいんだ、そういうことがしっかり市場で評価された方がいいんだという考えに立てば、浅尾さんの御主張は一つの一貫性はあるとは思いますが、今、日本の地方の四十七都道府県の、それぞれ個別の自治体のことは川端総務大臣の方にお聞きいただければと思いますが、そうしたことをして今のような資金調達が本当にできるかというところに関しては、やはり難しい面もあるのではないかなと。

 ただ、それをもって、国が地方に対して例えば箸の上げ下げまで何か命令をしているということは、私は事実とは反すると思います。

浅尾委員 そういう主張はされるだろうなと思いつつ、一方で、地方の方が国と比べてプライマリーバランスの度合いがいいんだということも言っておられるのは、若干矛盾しておられるんじゃないかなと。これは指摘だけにさせていただきたいと思いますが、そのことは指摘をさせていただきたいと思います。

 その上で、もう一個、国の資産ということでお願いしておりまして、少し出していただきましたが、国が持っているいわゆる行政財産の中に、道路とかそういうのを除いて、例えば国家公務員の宿舎とか庁舎とか、莫大な土地があります。

 恐らく、恐らくというか、間違いなく、日本国の土地を一番多く持っているのは日本国政府自身ということになるんですが、この土地を、では時価で評価したらどれぐらいになるかというのは、そういう計算は多分されておられないんだと思います。

 時々で土地の評価がえはされているというふうに聞いていますけれども、実際に時価で評価したら、一千兆の借金に対して今ある資産が七百兆ですが、時価で評価したら、土地の値段は大分下がっていますけれども、それがもっと上がるかもしれないしということで、まず、この国家公務員宿舎一覧というのは出していただきましたが、私の事務所の方で時価評価をするとなかなか大変なところもあるものですから、政府の方で、特に住所地が、セキュリティー上の理由で国家公務員宿舎の所在地を公表できないというのが結構入っているものですから、では、それを公表しないのであれば、そちらの方で、これは時価になるとこれぐらいになりますという数字ぐらいは出していただけるとありがたいんですが、いかがでしょうか。

安住国務大臣 なかなか難しいリクエストだと思います。

 逆に言えば、台帳で出しているんですけれども、バランスシートの話でおっしゃっているのかもしれませんが、それが仮にあったとしても、例えば国の借金が減るわけでもありませんし、国有財産全体が、極端なことを言えば、売却可能な資産かどうかというのは、例えば道路とか橋とかさまざまありまして、そういうことを、台帳としては出していますけれども、我々の今の考え方としては、これを今の資産の評価で出すという考え方はございません。

浅尾委員 いや、別に道路、橋を売れと言っているつもりは全くありません。宿舎とか庁舎の中で、例えば地方の出先機関をなくしていくということであれば、その庁舎の土地は要らなくなるでしょうし、宿舎だって、これは減らしていくという方向であれば、その部分がどれぐらいになるかというのはやはり出されたらいいのではないかと。

 例えば、少し前に話題になりました朝霞の国家公務員宿舎、これは、建設中止は決まりましたが、土地の売却というのはまだ決まっていないと思いますが、つくらないのであれば、これを売却して少しでも借金の返済に回したらいいのではないかというふうに思います。

 そういうこともあるので、売却可能なものが少ないというふうに言われるかもしれませんが、まずはそのもとデータとして、これぐらいあるんだという数字を出していただけるとありがたいということで、答えは、難しいという答えになるか、もし考え方を変えて出すということであれば、お答えいただきたいと思います。多分、考え方は変えないのであろうかと思いますが、もし少しでも出せるものがあるのであれば、ちょっと出していただきたいと思うんですが、いかがですか。

安住国務大臣 つまり、国会に報告するときは、台帳の国有資産現在額で出していますということなんです、答えで言うと。

浅尾委員 台帳の国有資産価格と実際の取引ベースとは大分違うので、そういうのも計算をしていただければと思いますが、それができないということであれば、私の方で少し時間をかけながら計算をしてみたいというふうに思います。

 次に、歳出削減の方に移らせていただきたいと思いますが、国の制度、特に公務員の人件費、これはなかなか、二割削減というような目標を掲げておられますけれども、実現していないということです。

 お手持ちに、政府の出されたSNAに基づく一人当たりの雇用者報酬の最新の数字が資料として配られているのではないかというふうに思いますが、これを見ますと、平成二十二年の全国平均が四百四十四万でありますが、それに対して公務は九百十四万ということで、全産業の中で一番高いということになります。

 九百十四万ということは、全国平均の倍以上ということで、累次にわたって予算委員会でもこのことは指摘をいたしてまいりました。高くなる理由はいろいろありますが、基本的には、大きな理由としては、昇給の制度のあり方と、そして福利厚生のところだというふうに私は思います。

 きょうは、新しい人事院の総裁にもお越しいただいております。この昇給制度、三年前からですか、二年前からですか、正確な期日は忘れましたが、五段階の人事評価というものを入れられるようになった。単純に言えば、A、B、C、D、Eの五段階の人事評価。Aの人は従来の二倍昇給します、Bの人は従来の一・五倍昇給します、Cの人は従来どおり、Dの人は従来の半分、Eの人は昇給しないという五段階。

 これは、半歩というか一歩前進かなと思ったんですが、問題は、Aには全体の五%を強制的に割り振ります、昇給する方ですね。B、従来の一・五倍昇給する方には全体の二〇%を強制的に割り振る。しかしながら、C以下は割り振りをしない結果、Cに割り振られている人は、五足す二〇で二五、残り七五ですが、従来どおり昇給している人は七二%だというふうに聞いています。

 ということは、今までより昇給する人が全体の四分の一いる中で、従来どおり昇給している人が残りほとんどということは、総人件費がふえちゃうんじゃないですかということを前の江利川人事院総裁に指摘をさせていただきました。

 新しい人事院総裁になりまして、この評価制度を正規分布にされるように変える御予定はありますか。

原政府特別補佐人 お答えを申し上げます。

 制度につきましては、今先生がおっしゃられたとおりでございますので、重複は省略させていただきたいと思います。

 正規分布にするかしないかということ。人事評価の仕方というのは、やはり組織、業種、業態、それぞれだと思います。したがいまして、民間を含めて、いろいろな人事考課の方法があろうかと思います。

 おっしゃるように、マイナス評価といいますか、下の方の評価になった者に一定の枠をはめて、そこに言ってみれば相対評価で一定の比率を当てるといったようなやり方をしている組織もあろうかと思います。また、必ずしもそうでない組織もあろうかと思います。その辺は、その組織としてどのような人事管理をするか、それがまた、その組織にふさわしいかという判断があろうかと思います。

 公務のような組織におきまして、五段階評価いたしますと、一般的には、どの組織においても真ん中の評価というのは数が非常に多くなる。そこで、必ずマイナスの評価に一定の枠をはめるということになりますと、いわば標準レベルのある意味のグループになるくくりのうちのある部分を一定の割合で下位評価をするという形になる。

 人事評価というのは、必ずしも評価そのものが目的ではございませんので、組織をいかにトータルとして管理するか、組織管理、人事管理をするか、あるいは、その人事評価をすることをまた人材育成の観点からもどのように活用するかという観点でございまして、公務といったような組織で一定の割合をマイナスにするというのがふさわしいかどうかという点につきましては、私どもとしては、必ずしも、適切であるかどうかについては、そのように考えていないということ。

 ただ、現実に評価をしまして、悪い評価が出た人間をするのは当然でございますし、また、この人事評価制度が、今先生からも御指摘がありましたように、まだシステムをつくりまして間もない、かつ、評価をした上で、その評価を昇給なりあるいは勤勉手当にいかに評価するかという実績はその後の課題でございますので、まだ実績の積み重ねというのは少のうございます。

 そういった意味で、できた制度をどのように各省庁において運用していくかというのが極めて大事なことでございますので、そういった点につきまして、これからも私どもとしても注視をしてまいりたい、かように考えている次第でございます。

浅尾委員 いろいろと御説明いただきまして、下の方の評価に強制的に割り振るのは公務に適切でないということをいろいろおっしゃっているんだと思います。

 では、率直に伺いますが、なぜ、普通の人よりも倍上がる人は強制的に割り振るんですか。なぜ、普通の人の一・五倍上がる人は二〇%割り振るんですか。

原政府特別補佐人 お答えをいたします。

 こういった制度を導入する前、年功序列、一律的な昇給システム、あるいはボーナスの支給といったものが一律的になったという時代がかなり長かったと思います。そういった中で、時代の変化を受け、また組織を活性化するために、きちんとした評価をし、そしてその評価を反映させなければいけないという形になってきたと思います。

 そういった意味で、私も国鉄とJRで両方の経験をいたしましたが、一律にするというのは、やはり組織の緊張感をなくすことでございまして、やはり、どのぐらいするかということよりも、評価をする、一生懸命仕事をした人間にはそれなりに評価を与えるということが大事なんでありまして、そういった意味では、こういった制度を導入したことは意味があることだと。

 もちろん、予算的な問題がありますから、プラスをどんどんつけるということには当然なりません。総枠的には一定の範囲内でやっていることでございますので、プラスも出すし、マイナスも出す。ただ、マイナスを強制的に割りつけるというのは、どう考えましても、真ん中の評価というのは数が多いわけでございますから、その数の多い部分のある部分を強制的にマイナス評価をするということが、組織全体のパフォーマンスにどういう形で出るか、あるいは人事育成上どうかという点については、いろいろ意見のあろうことかと思います。

浅尾委員 何か余り説明になっていないんですが。

 ちなみに伺いますが、従来はなかった制度で、従来よりも昇給額が倍になる人が五%、従来の一・五倍になる人が二〇%、全勤務者の中でいるわけですね。その予算の原資はどうやって出しているんですか。どんどんどんどん人件費がふえちゃうじゃないですか。

原政府特別補佐人 公務員の賃金水準については御承知のとおりでございまして、そういった形の中で総枠をはじいてまいります。そういった総枠の中で、昇給につきましても、あるいは勤勉手当についても配分をするということでございます。

 決して、一方的にふえるだけの措置をしているわけではございません。財政当局との予算の配分もございますし、水準そのものにつきましては、御承知のとおりで、民間準拠という形で決めさせていただく。水準そのものについては、いろいろ議論のあるところだと思いますけれども、そういった枠内で運用しているわけでございます。

浅尾委員 私の質問は、従来なかった制度を入れられましたと。その中で、従来よりも昇給額が倍になる人が五%いますね、一・五倍になる人が二〇%いますね、その昇給の原資はどこから出てきたんですかという質問です。

原政府特別補佐人 従来の仕組みにおいても、昇給なり特別昇給の枠というのがございました、中身は先生御承知のとおりでございますが。そういった従来からの全体の人件費の枠がございます。そういった中で、こういった席で申し上げるのが適切かどうか、かなり特別昇給等が順番に適用されたりとかいった慣行が一部にあったことはどうも事実のようでございます。そういったものは基本的に改めて、きちんとした評価をして、それを反映させるという形にしたわけでございます。

 少なくとも、人事評価で給与に反映する基本は、私の経験としても、一生懸命仕事をした人間にはそれなりに応えるというのが基本だと思います。マイナスだけつけるというのは、私はトータルとしては得策ではないと思います。もちろん、マイナスの部分はマイナスにしなければいけません。信賞必罰というのはしなければいけませんけれども、何割の人間は必ず下げろというのは、トータルのパフォーマンスを上げることに私はつながらないと思います。

浅尾委員 今のお答えだと、要するに、何ゆえ上がる方だけ強制的に割り振っているのかということについて、別に私はマイナスだけつけろと言っているわけではないですよ、上がる方も絶対評価の中で強制的に割り振っているのはおかしいんじゃないですかということを伺っているんですけれども、その点についてどういうふうに思いますかということです。

原政府特別補佐人 新たな制度が動き出すに際しまして、一定の基準を示したことは事実でございますが、それを強制的とおっしゃられれば、まさにそういうことだと思います。

 実際には、先ほども申し上げましたように、こういった人事考課をどのように行い、それをどのように給与に反映していくかというのは、まさにこれから試されるわけでございまして、そういった中で、常にこれが絶対であるということではないかと思います。もちろん、正すべきものがあれば正していくということだと思います。

 ただ、基本的に、今までそういったプラスの評価もしないで一律にやってきたという形のものを改めるということで、改めるに際して、現在の形としては一定の数字をお示しさせていただいた。それを強制と言われれば、強制ということだと思います。

浅尾委員 時間が参りましたので終えたいと思いますけれども、特別昇給をやめて五%なり二〇%の割り振りをしているというところを、それが順番になっているのであれば同じことだということを指摘させていただいて、質問を終えたいと思います。

中野委員長 これにて浅尾君の質疑は終了いたしました。

 次に、中後淳君。

中後委員 新党きづなの中後淳です。

 早速質問に入らせていただきます。

 今回、消費増税を中心に議論が進められているわけですけれども、何度も取り上げられていますが、シロアリの話だとかいろいろ言われていますが、当時、政権交代前に民主党が強く掲げていた象徴的なところに天下りというのがありました。野田総理もその演説の中で、シロアリという以上に、天下りをなくして、天下りを撲滅した後でなければ消費増税はしてはいけないんだということをおっしゃっていたのは間違いない事実だと思いますけれども、その天下り撲滅を初めとする、癒着構造だったり既得権益に切り込む姿勢を全面的に打ち出して政権交代というのが実現しております。

 今、天下りの撲滅について、現状どのような状況なのかということについて、まず伺います。

岡田国務大臣 まず、我々、マニフェストの中で天下りについて厳しい態度をとりました。マニフェストの中で言っていることは「天下りのあっせんを全面的に禁止します。」ということであります。その天下りのあっせんは現在全面的に禁止されております。

 その他、独立行政法人の役員公募を実施しております。あるいは、特殊会社の役員人事についても、公平性、透明性を確保するための取り組みを行ってまいりました。

 現実に、例えば独法の役員を見ますと、政権交代前の平成二十年十月一日現在で独法の役員についている退職公務員の数は百八十九名いました。そういう公募方式を取り入れたことなどによりまして、平成二十三年十月一日現在では四十五人ということで、百八十九人から四十五人に激変しているわけでございます。

中後委員 今、天下りについては余り取り上げられることがなくなってきているように私は思っているんですが、マニフェストで掲げていた天下りの禁止ということについては一段落ついたというふうに御認識ですか。

岡田国務大臣 天下りのあっせん禁止です、マニフェストで言っていたのは。そのことは制度的には確保されました。ただ、やはり国民感情から見ると、そうはいっても、どこかでそういったことをやっているんじゃないか、そういう疑念というか、そういった気持ちで受け取られている部分がないわけではない。

 そういう意味で、さらに一歩進めるという意味で、例えば独立行政法人の役員について公募を原則にする、これは党で立案された行政改革実行法案の中で書かれていることでございます。その趣旨を盛り込んで今般国会に出しました独立行政法人通則法改正法案に、独立行政法人については役員は公募するということを盛り込んだところでございます。

 それから、政府と関係の深い公益法人、財団法人とか社団法人ですね、その公募などによる役員選任のあり方についても現在検討中で、近々新たな方針を打ち出す予定でございます。

中後委員 あっせんというところを強調されますけれども、当時、政権交代前、テレビなんかでも、天下りを一切禁止するんだという言葉を聞いた多くの国民は、天下りあっせんということについて今の現状を期待していたというふうに私は思っておりません。これは、消費増税を、任期内に上げないと言っていることが今正しいと言っているのと非常に近いような気がしております。

 それで、民間への天下りについては天下りと認識されているんですか。官僚が民間企業に行くということについて、どのようにお考えですか。

岡田国務大臣 まず、委員、マニフェスト二〇〇九年をごらんいただきますと、明らかに「天下りのあっせんは全面的に禁止する。」というふうに書かれておりますので、委員は読まれていないかもしれませんが、明確に書かれております。

 そして、我々が気にしているのはあっせんですから、それは民間であろうが、自分の判断で、自分で探して民間企業に公務員OBが行くということについて、これは天下りでも何でもないし、それが問題であるというふうには考えていないわけであります。あっせんをする、関与をするということが問題なわけです。

中後委員 そのあっせんでなければよいというところの抜け道を通って、今でもそういう体質があるんではないかというふうに随分と言われております。

 あと、今、東京電力のお客さま本部長を務められた方が関連の一部上場会社に出向になった。これは、一般企業ではよくある話、いわゆる肩たたきと言われているようなリストラのときによく行われた手法だとは思うんですけれども、今、東京電力がそれをやると、それも天下りだというふうに言われているような状況です。定義的には全く天下りでなくても、そういう既得権的なものを動かしていくということに対して、今、民間の方々、一般の方々は、それはないんじゃないかという認識をされている方が多いと思っているわけです。

 そういう意味で、民間の企業が官僚OBの方々を自分の会社に採用してその能力を発揮してもらうということについては、岡田副総理は問題がないという御認識なんでしょうか。

岡田国務大臣 そこにあっせん行為あるいは癒着のようなことがなければそれは問題ないし、もしそれに問題があるということであれば、公務員に籍を置いた者は再就職できないということになって、実は現在、あっせんをなくしたことによって、国家公務員の退職が非常に減っております。かなり高齢化するということで、むしろそちらの問題はあるというふうに思っております。

中後委員 当然、その行き先も含めて考えなければ、それぞれの生活もあるわけですから、今までのように途中で天下りしてもらうというようなことを引き続きやるということであれば、そういうことになると思います。

 これを質問したのは、実際に名前を出していいのかどうかわからないですけれども、イオングループさんにも官僚出身の方が相当たくさんいらっしゃいます。これも普通に考えたらそんなにおかしな問題ではありませんけれども、今、国家権力の中枢にいらっしゃる岡田副総理と非常に関連の強い会社に財務省の事務次官OBだったり検事総長さんがいたりとかいうことについては、道義上どうなんだというふうに民間の方が、一般の方が認識されても、それは当然、そういう認識になるんじゃないかなと思っております。

 この点について事実を確認した上で、御意見を伺いたいなと思います。

岡田国務大臣 まず、私と私の親族が役員を務めている会社とは関係ございません。そういう言い方は、私は非常に不本意であります。

 それから、天下りと言われましたが、それは、能力のある人が民間企業で働くことは問題がないと思います。

 たまたま今言われた二人は、私、検事総長の方は多分面識がないと思うんですけれども、その前に言われた財務省の次官経験者というのは小川さんのことだと思います。もう随分前であります。社外取締役をやられました。私はよく知っておりますが、それは私の選挙区の出身者というか、まあ、お父さんがなんですが、ということで前からよく存じ上げておりましたが、非常に能力のある方で、社外取締役として適切なアドバイスをされたのではないか、私、中身は知りませんが。

 それが何か問題があるというのは、ちょっと私、理解に苦しむわけであります。

中後委員 私も、これは法律的に問題があるとか、そういうことをお話ししているのではありません。ただ、天下りを禁止します、撲滅しますと言っていた方々のごくごく近いところにそういう現状があって、それを見た方々がどう思うかという心情的な、道義的なお話をしているということであります。

 いわゆる東電の方々がそういう扱いをされているのも似たような趣旨、法律的に問題があるわけでも何でもありませんけれども、やはり批判の対象になっているということも踏まえて質問させていただきました。

 次の質問に移りますが、二番を飛ばして三番、控除から手当への考え方についてというところに行きたいと思います。

 所得控除の制度、これは所得の高い人ほど還付率が高くなります。極めて逆進性の高い制度であって、金額も巨大な、質の悪いばらまきだと私は思っているわけですけれども、この点について政府の見解をお伺いします。

小宮山国務大臣 これは、当初、子ども手当をつくったときも、民主党の税調では全体として、今言われたように、高所得の人に有利な控除から手当へという形でずっと考えてきましたので、そういう意味では、その考え方は今も持って政権運営をしていると考えています。

中後委員 なぜ急にこの話をしたのかというと、確定申告を私も行います。そこで、自分の場合でいうと、私の申告所得が約千五百万円、所得から差し引かれる金額、いわゆる控除される金額が五百万円あります。いろいろな、扶養控除だったり社会保険料控除だったり、そういうのを積み上げると五百万円になります。課税所得が約一千万、税額が百八十八万円になるわけですが、控除がない場合、五百万円がない場合というのは、私は、税金は三百五十七万円納めなきゃいけないということなります。税率を三三%で換算するとそういうことになります。すると、そこで差額は百六十九万円出てきます。

 この百六十九万円というのが、私が医療で使ったりとか、社会保険料を払ったりとか生命保険を払ったりとか、父や母や祖母を扶養しているということで返ってくる、ある意味、手当ということになるんだと思いますが、この控除によるみなしだと百六十九万円。千五百万円の所得がある私に対して本当に必要なのか。百六十九万円というと、本当に、それが丸ごと年間所得である人もいるような金額になっております。

 できれば、本当は、この百六十九万円を控除して還付するという形をとるのではなくて、所得に比例する形で高額にしていくという形じゃなくて、一律に、親を扶養している人、子供を扶養している人には均等に分けていくというのが控除から手当という考え方であったと認識しているわけですが、それが子ども手当で一部実現しているんですけれども、ほかにもたくさん残っております。

 このたくさん残っている部分について、今後、方針等があったらもう一度お聞かせください。

岡田国務大臣 マニフェストの中で我々が書いたものは、あと配偶者控除なんですね。これは党の中でいろいろ議論されました。私は将来的には廃止をすべきだという考え方ですが、随分違う意見の方もたくさんいらっしゃって、なかなかそれは実現できていないでいるというのが現状だと思います。

中後委員 非常に小さい話になるかもしれませんけれども、例えば生命保険料控除が十万円あります。これは、税率三三%の私だと、三万三千円返ってくる計算になります。言ってみれば、十万円の生命保険に入ったとすると、六万七千円で実際に生命保険に入れたのと同じということになるわけですが、これが所得の低い方だと、五%なり一〇%だと、一万円とか五千円しか返ってこないという計算になります。その方々は、生命保険に入るときには、九万五千円であったり九万円を払わなきゃいけない。

 これは逆進性が高いばらまきじゃないかという指摘なわけで、ほかにも、所得から控除を引いて、後々税率を掛けてお返しするというやり方そのものが全体的に逆進性が高いばらまきであるということで、今、控除で還付しなきゃいけない金額を全体をならして、手当という形なり給付という形なりにすべきなのではないかと思っているわけですけれども、その点について御意見を伺いたいと思います。

安住国務大臣 今、基礎控除、配偶者控除、それから扶養控除、そういう控除があります。それから、特別な、例えば障害者の方に対する控除とか、さまざまあります。歴史的経緯の中で、所得からそうした控除をすることによって暮らし向きを少しでも楽にすればということでこの控除制度はできてきましたけれども、これをできるだけ手当に変えられるものは変えていこうということで、政権交代をしてから、子ども手当とか高校の無償化、それに伴ういわば控除で、やめるものはやめてきたわけです。

 全部やめてもいいですよというのは中後さんの奇特な考えで、それはそれでいいんですが、現実に、そうであれば、自分でまず実行すればいいとは思います。制度としては、まだまだそういう控除の必要性というのがある人はたくさんおられますから、これはやはりコンセンサスを得ながら、手当に変えていくものは変えていくというふうにしたいと思います。

中後委員 今言っていることは、僕は、一般の方々もなかなか理解されていないのかなという気がします。

 例えば、私は今、障害のある父と母と祖母が扶養に入っております。そこで引かれる金額は百万円。そこに対して返ってくる金額は約三十万円です。ですから、私がその三人を扶養することで国から返してもらっている税金は三十数万円になるわけです。

 ただ、これが、私が所得が二百万円で三人を扶養しているとすると、同じ三人を扶養しなくちゃいけない状況は変わらなくても所得が低くなるだけで、その三人がいることで返ってくる税金というのは非常に少なくなるわけです。一〇%であれば十万円、五%であれば五万円という金額になってくるわけです。

 そこは、低い人に対して厳しい、所得がある人に対してたくさんお金を返すという、この制度そのものが逆進性が高いというお話をしているのであって、これを私が一人でやめたからといって何にもなりませんし、そこが最初の控除から手当へという大もとの発想の原点だったんだとすれば、ほかの所得控除で税率を掛けて還付をする、税額控除であればまた話は別です、所得控除である以上はそういう仕組みになっていて、これは一般のサラリーマンの方々は年末調整とかでがばっとやられますからなかなかわかりにくいんですけれども、一人一人、個人事業であったり確定申告をする中で、税収の三三%から四〇%に上がるところとか、そういうところを意識すると、急に返ってくるお金が変わってきて、額が多くなるとかというところについては、しっかりと考えた方がいいのかなという気がしております。

安住国務大臣 御指摘は十分私もわかります。

 それで、やはり、給料明細書なんかを余り確認しない若い人は本当にそうなんですね。お給料の明細書をちゃんと見てもらえば、年末調整のお金とか、しっかり書いてありますが。

 逆進性の問題、そういうことがありますから、類似の控除の問題について、私も先ほどから申し上げているように、一つずつ丁寧に、解決をすべきものはするということをしていきたいということでございます。(発言する者あり)

中後委員 今、逆進性じゃないとかという声も後ろから大変聞こえてきますけれども、例えば親を一人扶養するというときに、ある方は十万円、ある方は一万円、それが所得の高い人は十万、低い人は一万円で面倒を、そういう形で税金を還付しますよということを考えると、これは逆進性が高い制度なんだと。それは子ども手当も全く一緒の考え方でならしているはずなので……(発言する者あり)大丈夫ですよ。恥ずかしくはありません。

 そのとおりに、今、私も実際に自分で経験してみて指摘をしているわけで、ずっと以前から私が疑問に思っているところだったわけです。一言で言えば、私の所得があって、百八十万円税金を返してもらう必要はないのではないかということですね。

 では、ちょっと次の質問に移りますけれども、年金のことで、国民年金保険料、今納付率は五九%台、六〇%を切ったわけです。四割以上の方が未納となっている現状についてですが、納付率向上についてどのような対策がとられているかということについて、まず伺います。

小宮山国務大臣 この未納の問題は大変大きな問題なので、今いろいろ取り組みをしています。

 実際には、免除の対象となる低所得者に対する、免除制度を知らないで免除の手続をとっていない人に対して周知をし勧奨を図るということ、また、戸別訪問を重視した保険料納付勧奨を徹底するということ、また、負担をする能力がありながら納付をしていない高所得者への強制徴収の推進など、未納者の属性に応じたきめ細かな対策をさらに徹底して強化していきたいと考えています。

中後委員 未納者に対する対策というのも、現場の方々は非常に努力をされております。ただ、現実的にその実績がどうなっているかというと、やはり年々下がっているのが現状であって、なかなか成果が上がっていないというのが実態だと思います。

 私の地元の今大学生の子から、話をしたときにも、やはり年金のこと、私も三年ぐらいすると年金を納めなきゃならない、でも、今のこの状況で、みんな大学の周りでも、納める必要あるのかね、納めなくていいんじゃないのという話になっている、正直払いたくないという意見を言っている、そういう空気になっているという現状なんです。

 その子は、国民の年金をぼったくっているんじゃないかという言い方までしていましたが、今、年金問題はどうなっているんですかと聞かれたので、年金はみんなで支え合う制度であるし、例えば障害を受けたときに、年齢に関係なくちゃんと保障してもらえるのは国民年金だという説明なんかをして、納めてくださいというお願いをしているわけです。

 日本全体にこういう空気がある中で、納付率が六割程度の保険料制度というのはもう制度として相当厳しい状況になっているのは間違いない、大きな社会矛盾になっている。この方々が本当に未納のまま年をとっていって、働くことが難しい高齢者になったときにどうやって生計を立てていくのかということは、やはり国として将来の年金制度をしっかりと見据えなきゃいけないわけですけれども、将来的な生活保護受給者をふやすようなこととなって、これは大きな社会矛盾になると思うわけです。

 今の年金制度の延長線上で、この納付率が下がっているというのをとめられるというふうに御認識なんでしょうか。

小宮山国務大臣 それは、なるべく若い方たちが信頼をしてもらい、それで低年金、無年金に対応するということで、民主党は新しい年金制度ということを提唱してきました。

 ただ、その際に、ここでも議論になっているように、今の制度が安心だということが、皆さんから、どうも心配だというふうに変わっていってしまったことは問題だと思うので、今の制度が安心であって、皆さんたちが払っていただいたものが、国がなくなってしまわない限り、事業主負担分などもございますから、払ったよりも多くのものが必ずもらえるということはもっとしっかりと周知を図っていかなきゃいけないというふうに考えています。

中後委員 時間もなくなってきましたので少しはしょりますけれども、今、当然、いろいろなところで、生活保護の方と国民年金受給者の支給されている金額が逆転しているだとか、最低賃金で働いている方と生活保護の方の支給、また、これは、働いている方にはいろいろな意味で納めなきゃいけないもの、義務があったり医療費がかかるとかというところなんかも含めて逆転現象が起きていて、これは大きな社会矛盾だというふうにされております。

 そういうことを改善していくために最低保障年金とかという議論が出てきて、その部分は税金でとかということだったと思うんですが、これは来年の通常国会でという話になって、今回出ておりません。私にとっては非常に残念な話です。

 あと、社会保障の目的税化ということについても、これもいろいろと議論されているとは思うんですが、社会保障を充実させるための財源としては消費税約一%分で、残りの四%は安定化というお話なんですけれども、この四%安定化というのは、今実際に使われているところに消費税がスライドして入るという形になって、その今充てられているお金はどこに行くのかということについて明確にはきっとお話しされていないんだと思います。

 今実際に使われている財源が、消費税の四%がスライドしてくることで何に行くのか。これは、追っかけていくと赤字財政を補填するというような方向に行くと思うので、これについては私は、その四%分はもう正直に国の財政収支の均衡を図るために消費税をお願いすると言ったらどうかと思うんですが、この点についてはいかがですか。

岡田国務大臣 四%は現行の社会保障制度の維持、安定のためにという言い方をしております。

 それはどういうことかといえば、今、借金とか、それから基礎年金の国庫負担分を二分の一にする、そこの部分の財源に充てるという部分はあるんですね。それ以外は、基本的には、現在借金で賄われている部分についてそれを消費税収で充てる、そのことによって社会保障制度の持続可能性を確保するということでございます。

 ある意味では、それは正直に申し上げているつもりでございます。

中後委員 ただ、一〇〇%社会保障に充てるんだ、社会保障に充てるんだと言うと、これも先ほどの話ではありませんけれども、一般の方からすると誤解をされるようなことにもなるので、そこははっきりとおっしゃった方がいいのではないかということと、今、穴のあいている部分というのは社会保障だけではありません。

 例えば、地方財政も大変な穴をあけております。臨時財政対策債やら一般会計の特例加算やらということで恐らく十数兆円分、今、将来へのツケ回しという形で財政上の措置がなされていると思うんですが、地方税としての消費税の議論なんかも片方である中で、今回、これを社会保障に一〇〇%充てるんだという流れをつくる上で、一方で、また大きな穴があいている地方財政については、これからどういう形で財政措置をされていく考えがあるのかどうかについて伺いたいと思います。

川端国務大臣 御指摘のように、巨額の財源不足が続いておりまして、ことしの予算でも十三・七兆円に及ぶ財源不足を抱えていることは事実でございまして、今回の引き上げ分の消費税収に係る地方分は二十四年度の地方財政計画ベースに換算すると四・一兆円の増収になりますけれども、これではとても足らない部分があることは御指摘のとおりであります。

 その部分で、前提として言えば、まず地方の財政の分でいえば節減努力を不断の見直しの中でやっていただくということが前提でありますけれども、一方で、この社会保障とかの部分の安定財源の確保とあわせて、やはり経済の活性化で地方税収の確保をするということも努力として必要だと思います。

 同時に、国も地方も巨額の財政赤字を抱えているということで直ちには困難でありますけれども、地方の交付税総額は、やはり特例加算とか臨財債で確保するのではなくて、本来は交付税率の変更により安定的に確保するという制度本来の運用に戻していくことが適当と考えて、我々としては事項要求として要求をしてきた経過もございます。

 引き続き、各方面から、地方財源の安定的な確保に全力を尽くしてまいりたいと思っております。

中後委員 ありがとうございました。

中野委員長 御苦労さまでした。

 これにて中後君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明六月一日金曜日午前八時四十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十四分散会


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