衆議院

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第14号 平成24年6月5日(火曜日)

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平成二十四年六月五日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中野 寛成君

   理事 武正 公一君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 古本伸一郎君 理事 松本 大輔君

   理事 和田 隆志君 理事 逢沢 一郎君

   理事 伊吹 文明君 理事 西  博義君

      相原 史乃君    網屋 信介君

      井戸まさえ君    石井登志郎君

      磯谷香代子君    稲富 修二君

      今井 雅人君    江端 貴子君

      小原  舞君    岡田 康裕君

      勝又恒一郎君   木村たけつか君

      岸本 周平君    桑原  功君

      近藤 和也君    篠原  孝君

      白石 洋一君    田嶋  要君

      田中美絵子君    田村 謙治君

      中屋 大介君    長尾  敬君

      花咲 宏基君    早川久美子君

      福田衣里子君    藤田 憲彦君

      三村 和也君    三宅 雪子君

      宮島 大典君    室井 秀子君

      柳田 和己君    湯原 俊二君

      柚木 道義君    渡部 恒三君

      赤澤 亮正君    石田 真敏君

      加藤 勝信君    金子 一義君

      鴨下 一郎君    坂本 哲志君

      田村 憲久君    竹下  亘君

      野田  毅君    馳   浩君

      石田 祝稔君    大口 善徳君

      竹内  譲君    塩川 鉄也君

      宮本 岳志君    豊田潤多郎君

      渡辺 義彦君    重野 安正君

      中島 隆利君    山内 康一君

      中島 正純君

    …………………………………

   国務大臣

   (社会保障・税一体改革担当)           岡田 克也君

   総務大臣         川端 達夫君

   財務大臣         安住  淳君

   厚生労働大臣

   国務大臣

   (少子化対策担当)    小宮山洋子君

   内閣府副大臣       石田 勝之君

   内閣府副大臣       後藤  斎君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   農林水産副大臣      佐々木隆博君

   経済産業副大臣      牧野 聖修君

   国土交通副大臣      吉田おさむ君

   環境副大臣        横光 克彦君

   内閣府大臣政務官     大串 博志君

   財務大臣政務官      三谷 光男君

   衆議院調査局社会保障と税の一体改革に関する特別調査室長          佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月四日

 辞任         補欠選任

  金子 一義君     橘 慶一郎君

  宮本 岳志君     高橋千鶴子君

  豊田潤多郎君     斎藤やすのり君

同日

 辞任         補欠選任

  橘 慶一郎君     金子 一義君

  高橋千鶴子君     宮本 岳志君

  斎藤やすのり君    豊田潤多郎君

同月五日

 辞任         補欠選任

  江端 貴子君     福田衣里子君

  岡田 康裕君     柳田 和己君

  田嶋  要君     木村たけつか君

  田中美絵子君     相原 史乃君

  田村 謙治君     今井 雅人君

  永江 孝子君     磯谷香代子君

  藤田 憲彦君     網屋 信介君

  柚木 道義君     三宅 雪子君

  渡部 恒三君     桑原  功君

  田村 憲久君     赤澤 亮正君

  町村 信孝君     坂本 哲志君

  竹内  譲君     大口 善徳君

  西  博義君     石田 祝稔君

  宮本 岳志君     塩川 鉄也君

  豊田潤多郎君     渡辺 義彦君

  中島 隆利君     重野 安正君

同日

 辞任         補欠選任

  相原 史乃君     田中美絵子君

  網屋 信介君     藤田 憲彦君

  磯谷香代子君     小原  舞君

  今井 雅人君     花咲 宏基君

  木村たけつか君    田嶋  要君

  桑原  功君     渡部 恒三君

  福田衣里子君     江端 貴子君

  三宅 雪子君     中屋 大介君

  柳田 和己君     岡田 康裕君

  赤澤 亮正君     田村 憲久君

  坂本 哲志君     町村 信孝君

  石田 祝稔君     西  博義君

  大口 善徳君     竹内  譲君

  塩川 鉄也君     宮本 岳志君

  渡辺 義彦君     豊田潤多郎君

  重野 安正君     中島 隆利君

同日

 辞任         補欠選任

  小原  舞君     井戸まさえ君

  中屋 大介君     柚木 道義君

  花咲 宏基君     近藤 和也君

同日

 辞任         補欠選任

  井戸まさえ君     永江 孝子君

  近藤 和也君     田村 謙治君

同日

 理事西博義君同日委員辞任につき、その補欠として西博義君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七四号)

 被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七八号)

 子ども・子育て支援法案(内閣提出第七五号)

 総合こども園法案(内閣提出第七六号)

 子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第七七号)

 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第七二号)

 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提出第七三号)

 派遣委員からの報告聴取


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     ――――◇―――――

中野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案、被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案、子ども・子育て支援法案、総合こども園法案、子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案及び社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、各案審査のため、昨四日、第一班福島県、第二班兵庫県に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からそれぞれ報告を聴取いたします。第一班武正公一君。

武正委員 おはようございます。武正公一でございます。

 それでは、福島県に派遣された第一班の派遣委員を代表いたしまして、団長にかわり私からその概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、中野寛成委員長を団長とし、理事和田隆志君、伊吹文明君、西博義君、委員江端貴子君、岸本周平君、田嶋要君、田中美絵子君、早川久美子君、三村和也君、鴨下一郎君、田村憲久君、竹下亘君、馳浩君、高橋千鶴子君、斎藤やすのり君、中島隆利君及び私、理事武正公一の十八名であります。

 昨日、福島市内のホテル辰巳屋において会議を開催し、まず、団長から派遣委員及び意見陳述者の紹介等を行った後、福島県白河市長鈴木和夫君、日本労働組合総連合会福島連合会事務局長今泉裕君、特定非営利活動法人全国認定こども園協会副代表理事古渡一秀君、福島県商工会議所連合会会長瀬谷俊雄君、福島県商工会連合会会長轡田倉治君、税理士金田宗君、福島県民主医療機関連合会事務局長齋藤和衞君、南相馬市立総合病院院長金澤幸夫君の八名の方から意見を聴取いたしました。

 その意見内容につきまして、簡単に申し上げます。

 鈴木君からは、社会保障と税の一体改革のためには、税の抜本的見直しが必要であり、消費税以外の税目の議論も行う必要があること、また、復興優先であるべき旨の意見が述べられました。

 今泉君からは、年金制度の持続可能性と公平性を確保するためには、現実的な試算に基づいた財源確保策を講じた上で改革を行うことが必要不可欠である旨の意見が述べられました。

 古渡君からは、東日本大震災の被災地である福島での経験から、子供の安全確保・ネットワーク再生が急務であり、総合こども園による地域コミュニティーなど就学前児童の居場所を確保する必要がある旨の意見が述べられました。

 瀬谷君からは、財政健全化の観点から、歳出削減と消費税率の引き上げが必要である旨の意見が述べられました。

 轡田君からは、消費税率引き上げの前にデフレ脱却や景気回復に取り組むことが重要である旨の意見が述べられました。

 金田君からは、社会保障と税の一体改革の全体像を国民にわかりやすく説明する必要がある旨の意見が述べられました。

 齋藤君からは、消費税増税による医療機関への影響を懸念する意見や、社会保障の財源としての消費税増税を疑問視する旨の意見が述べられました。

 金澤君からは、被災地から避難している若い世代が戻れる環境をつくるため、雇用の確保、教育、医療、福祉の充実等を図る必要がある旨の意見が述べられました。

 意見の陳述が行われた後、各委員からは、消費税増税に当たって被災地である福島県に対する具体的な配慮の内容、低所得者対策としての軽減税率及び給付つき税額控除制度に対する評価、株式会社の参入と指定制導入により待機児童解消を図ることの是非、消費税の段階的引き上げと価格転嫁問題への取り組みに対する評価、現在の経済情勢下において消費税率を引き上げることによる景気への影響、今回の社会保障政策に含まれていない医療と介護分野のあり方、消費税率の引き上げが福島県内の経済に影響して震災からの復旧復興の足かせになる懸念、被災地における医師不足問題解消のために必要な国の支援策等について質疑が行われました。

 なお、議事の内容は速記により記載いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。

 以上をもって第一班の報告を終わりますが、今回の会議の開催につきまして、多数の関係者の御協力により極めて円滑に行うことができ、深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

中野委員長 御苦労さまでした。

 次に、第二班鉢呂吉雄君。

鉢呂委員 兵庫県に派遣された第二班の派遣委員を代表いたしまして、私からその概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、理事古本伸一郎さん、松本大輔さん、逢沢一郎さん、委員石井登志郎さん、岡田康裕さん、勝又恒一郎さん、藤田憲彦さん、宮島大典さん、室井秀子さん、加藤勝信さん、橘慶一郎さん、野田毅さん、竹内譲さん、山内康一さん、中島正純さん、そして団長として私、鉢呂吉雄、十六名でございました。

 昨日、神戸市内のANAクラウンプラザホテル神戸において会議を開催し、まず、私から派遣委員及び意見陳述者の紹介等を行った後、兵庫県知事井戸敏三さん、日本労働組合総連合会兵庫県連合会事務局長辻芳治さん、社団法人兵庫県保育協会会長小林公正さん、神戸商工会議所女性会前会長藤浪芳子さん、社会福祉法人兵庫県社会福祉協議会会長武田政義さん、関西大学社会学部教授松原一郎さん、神戸商工会議所副会頭籔本信裕さん、近畿税理士政治連盟兵庫県連合会会長徳富勲さんの八名の方から御意見を聴取いたしました。

 その意見内容につきまして、簡単に申し上げます。

 井戸さんからは、国民の将来に対する不安の解消が必要であり、サービス内容と負担のあり方を含めた社会保障改革が必要である旨の意見が述べられました。

 辻さんからは、公平性の確保、機能強化、持続可能性を確保した年金制度の実現が真の皆年金体制の確立の第一歩となる旨の意見が述べられました。

 小林さんからは、全ての子供が平等な生育環境を保障されるよう、少子化対策、待機児童対策に取り組む新しい仕組みの構築が必要である旨の意見が述べられました。

 藤浪さんからは、世界の中での日本の立場を維持し、世界経済のバランスをとるためには、消費税率の引き上げは必要である旨の意見が述べられました。

 武田さんからは、社会保障改革を論じるに当たっては、無縁社会とも表現される現代の社会状況も考慮すべきである旨の意見が述べられました。

 松原さんからは、標準的な家族という条件が損なわれた今日、そのような状況に合致した社会保障制度への根本的な改革が必要である旨の意見が述べられました。

 籔本さんからは、中小企業の負担増とならないよう、消費税は価格に転嫁されるべきであることを消費者や大企業に周知する必要がある旨の意見が述べられました。

 徳富さんからは、消費税の納税義務の免除等を判断する基準期間を廃止し、また簡易課税制度を見直す必要がある旨の意見が述べられました。

 意見の陳述が行われた後、各委員から、地方消費税の配分のあり方、医療・介護分野における国と地方の役割分担、子ども・子育て新システムの導入による給付の一本化への評価、消費税率引き上げと短時間労働者への社会保険の適用拡大による中小企業の負担増の懸念、消費税の軽減税率と給付つき税額控除の長所及び短所、消費税へのインボイス方式の導入の是非、今回の年金制度改革の方向性等について質疑が行われました。

 なお、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はこれによって御承知願いたいと存じます。

 以上をもって第二班の報告を終わりますが、今回の会議の開催につきましては、多数の関係者の御協力により極めて円滑に行うことができ、深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

中野委員長 御苦労さまでした。

 以上で派遣委員からの報告は終わりました。

 お諮りいたします。

 ただいま報告のありました第一班及び第二班の現地における会議の記録は、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕

    ―――――――――――――

中野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。篠原孝君。

篠原委員 皆さん、おはようございます。民主党の篠原孝でございます。

 三年ぶりに質問に立たせていただきます。ということは、与党になってから一度も質問の機会がございませんでして、私の真面目な同僚議員は、このまま与党を続けるとばかになるばっかしだと言って、変な心配をしておりました。質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 皆さん、民主党の一年生議員、そういう点では、質問の機会がなくて非常にかわいそうだと思います。

 冒頭、ちょっと昔話をさせていただきますと、私が一番長く所属したのは外務委員会でして、三年おりました。真面目な次席理事が、そこにおられます武正さんでした。いつも夜遅くなって電話がかかってくるんですよ。篠原さん、また誰も質問をする人がいないので、よろしく、ガチャンでした。

 外務委員会は、週に二回、ほとんど二回ずつ質問をしておりました。なぜそうなるかというと、本当に少なかったんですね、この前のとき。委員に鉢呂さんとか田中眞紀子さんとか、もう一人の方がおられましたけれども、全然質問されないんです。ですから我々に回ってまいりまして、いつもさせていただいておりました。

 山内康一さんなんかもおられまして、こんなことを言うのはなんですが、私の質問のファンでございまして、そのときは自民党でして、与党席からいつも拍手が沸いておりました。

 その当時の質問というのはどういうのかというと、私は一年生議員のときから非常に建設的な質問しかしておりませんでして、厳しい理事の皆さんから、もっと追及しろとかと怒られていましたけれども、頑として言うことを聞かずに、建設的な質問だけをしてまいりました。

 与党になりましたので、ちょっと態度を改めて、超よいしょ質問をしようかと思いましたけれども、それもやはりよくないので、今までどおりの質問のスタイルでやらせていただきたいと思います。

 ちょっと順序が狂うんですが、最初に、安住財務大臣にお伺いしたいと思います。

 これは、名誉を回復するためなんですが、菅直人代表、このときに保険料の未納という問題があったんです。

 実は、資料の三ページにそれをちょっと書いたんですが、これは都合が悪いとかいって外されてしまいましたので、ないんですが。

 その当時、自民党の閣僚の皆さん七人がひっかかった。違う理由でひっかかった人もいるんですが。皆さんもそうなんですが、大臣になられると、短期共済の健康保険には入れてもらえるんですけれども、長期共済の年金には入れてもらえないんです。それを知らないでいてそのままになっていただけの話で、当時の菅直人代表には全く瑕疵がないんです。社会保険庁が十カ月未納でしたよと言ってくれればいいのに、御存じのとおり、その後いろいろ露呈しましたけれども、そういうこともしていない。納めた年金の記録もなくしているという状態ですから、そんなのは当たり前で。

 そして、そのとき、名は伏しますけれども、我が党の方にも、その当時の民主党の方にも減らず口をたたく人がいて、うちのネクストキャビネットでもちゃんとチェックするとか言って。ネクストキャビネットなんて法律に何もないわけです。チェックする必要もないわけですよ。それで、チェックしたら、何と菅代表だけがそれにひっかかっていた。かわいそうだと思うんですね。

 今、年金の一元化とか言っているときに、国会議員の皆さんが、国務大臣になられて国家公務員になるわけですが、そのときに、なぜ長期共済、年金には入れないんでしょうか。

安住国務大臣 おはようございます。

 菅総理が代表のとき、私も党の役員をやっていましたけれども、おっしゃるとおりで、後に名誉回復したといいますか、役所の方からきちっと謝罪をして、菅総理のその期間の問題については実務的なミスであったと。しかし、当時の政治的な、いわば、いっときの大変な批判の中で代表を辞任せざるを得なかった。しかし、そういうことも糧になって後に総理にまでなれたんですから、それはそれで逆境に強い菅さんだなと思います。

 しかし、その話とは別に、ここにも歴代大臣がおられますけれども、これは制度上というより、私は、私どもも入っていましたけれども、やはり国会議員の互助年金があったからだというのも一つあると思います。まあ、若い議員の方は知らないわけですけれども、十年加入すれば国会議員としての互助年金というのが。それぞれ応分の負担もしたわけですけれども、国費も入れながらこれは対応していました。

 このことがあったので、多分、類推するに、共済年金にまた加入すればこれはダブル加入ということもあるものだから、そういう点では、国会議員という身分のままで大臣をやる、もちろん、その長短はあります、短い長いはあるかもしれませんが、その前に、やはり身分としてそういう年金が担保されていたというところも大きかったのではないかなと私なりには思っております。

篠原委員 それはいいんですけれども、年配の方はそこら辺があるんですけれども、その後、ほかの若い皆さんは関係なくなっているわけですよね。だから、入れてもらわないとおかしいんじゃないですかね。

 それで、短いと伊吹筆頭理事がおっしゃいましたけれどもね。安住財務大臣は、まだ五十歳。図らずも初の入閣で財務大臣という要職につかれている。まあ図っておられたのかもしれませんけれどもね。それで、今、やって、大臣は一年だとしても、中曽根元総理は五年やられたんです。その前に科技庁長官、通産大臣、行革担当大臣をやっていたら、合計すれば十年になるわけです。ここで安住さんも、十年入って、有資格者になる可能性があるんです。だから、そういう改正を早くしなくちゃいけない。

 僕、聞きましたら、平成十六年五月六日には、なぜかしら民間から登用される国務大臣は両方に入れていいというふうになっていると。なぜ国務大臣だけまだ除外しているのか。

 国会議員はみんな、世のため国のためばっかし考えていて、自分のことは全然ほったらかしになっていて、そして後から何か変なことを言われる。

 安住さん、一番将来のことを考えて直していただかなくちゃいけないので、これはぜひ、政令で改正できるんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

安住国務大臣 国会議員の身分でない人が、民間人が閣僚になった場合は、もしお務めになっていた場合、兼職禁止なので、厚生年金から外れてしまうというようなことがあるので、その代替措置としてということですけれども。

 まあ、国会議員については、小泉総理のときに議員年金互助会制度をやめましたから、私は率直に言って、本当に、どうかなと思っております。世論は非常に厳しい反応はありますけれども、いわば国会議員の年金なんか要らない、そういう政治批判の中でそういう話になったのは、果たして、冷静に考えるとどうだったんだろうかというふうに思っております。

 これから若い議員を、まあ、私ももうそういう意味では、まだ若いとは思っていながらも在職年数は比較的来ましたが……(発言する者あり)いやいや、自民党が提案したんです。これは小泉総理ですよ、決断なさったのは、申しわけありませんけれども。(発言する者あり)いやいや、だから、お互いそんなことをなすり合っていたって仕方のないことですよ。

中野委員長 勝手に会話を交わさないでください。

安住国務大臣 いいですか、ちょっと話をして。

 ただ、私は実はそのとき、九年八カ月だったんですよ、今の私の当選五回は。それで、自民党も公明党も私も、これはけしからぬと。やはり、その期待権みたいなものもあるんじゃないかという議論もあったんです。しかし、それは、時の政権が、そんなのはだめだということで。実は、足切りと言ったらあれですが、九年八カ月であろうと十カ月であろうとだめだというのが総理の御決断だったと思います。その間、掛金は、一応八掛け、八割方返してはいただきましたけれども。

 逆に言えば、国会議員を非常に、スケープゴートと言ったら変ですけれども、そういう風潮の中で冷静さを欠いた部分もあって、その後、改革をするにしても、今後、これは政治の信頼というのが必要だとは思いますけれども、議員の身分というのは、実は国会法では退職金も認められてはおりますけれども、いまだに手つかずのままでもあります。

 国民の皆さんの大変厳しい目にさらされておりますけれども、国民の皆さんの理解を得ながら、いわば将来的に若い議員を本当に育てていくにはどうしたらいいかというのは、各党間でぜひ私は真摯に話し合っていただければと思っております。

篠原委員 私は和やかにやろうと思っているのに、思いがけず波紋を生じてしまいましたが、結論はいい方向に行っているんじゃないかと思います。

 それはわかります。国会議員の年金もちゃんと考えなくちゃならないし、身分保障も考えなくちゃならない。第一歩として今やれることは一元化ですから、私は、政令で、今の皆さんもちゃんと払って、本当に、冗談じゃなくて、一つの保障になりますから、それをつえにしてどうしても十年大臣をやりたいからとしがみつかれると困るんですけれども、結果としてそうなるならいいので、それもちゃんと直していただきたいと思います。

 それでは、次に、また財務大臣に質問を続けさせていただきますけれども、これは資料の一ページを見ていただきたいと思います。

 この間の質疑でもって、安住大臣は、相続税ですが、一のところ、お金持ちが代々ずっと続くというのはよくないので、こういうふうに改正させていただいたと。私は、これは精神としては非常に真っ当なことだと思います。二代、三代と親の財産でもって食べていくというのは、そこはちょっと国家に納付していただく。

 問題は二番目でして、よく見ていただきたいんですが、死亡保険金に係る非課税措置を次のとおり引き下げることとすると。現行、五百万で、法定相続人全部乗じた数で控除しているのに、改正後は限定するというんです。未成年者、障害者、これは当然入ります。次です。相続開始直前に被相続人と生計を一にしていた者に限ると。私は、これは冷たい改正だと思うんです。

 どうしてかというと、自分の亡き後が心配だから、生命保険をわざわざ掛けていて、残してやると。生計を一にしていなくたって、東京に就職している、しかし、何か非正規雇用者になって年収が二百万とか三百万になってしまっている、この人のは何で控除対象にならないのか。

 これは私は非常に冷たい改正だと思うんですけれども、いかがでしょうか。まあ、ここで直せと言うのは、与党になりましたのでやめておきますけれども、将来の課題として考えていただきたいと思います。

 どうせ税収を多くするんだったら、上の、たくさんお金を持っている人で自然と相続したという人のところから取って、自分が亡き後困るといって積んでいた人のところをちゃんと優しく面倒を見るという姿勢が必要なんじゃないでしょうか。

安住国務大臣 相続税は、実は思い切った改革をやっておりまして、今その緒についたばかりであります。いろいろな御指摘があって、ですから、最近、贈与に振り向けた方がいいんじゃないかというふうな家族もふえ出したと聞いておりますけれども。

 そもそも論からいえば、百人のうち四人しか、お亡くなりになった方の家の相続税のお支払いというのはない。つまり、日本では、九十六人の方はもう相続税は払わなくてもいいという制度なわけですね。これは、ある意味では、その家の歴史を守り、富というものをお子様に引き継いでいくということからいえば、自然の流れとも言えます。

 しかし、一方で、私の考えは、先般申し上げたように、お金持ちの家で生まれた人はずっとその財産を受けて、そうでない人はもう本当に厳しい環境の中で生活をするというのに対して、やはり、チャンスのある社会、それから、許容範囲といいますか、許容限度はありますけれども、その中で、ある程度のものはもう一回お国に返していただいて、これをまたその世代で頑張った人が得るという社会の方がいい。私は、ここまでは賛成なんですね。

 問題は、死亡保険金なんですね。ただ、これについては、ほかの商品との特別扱いをできるだけやめましょうという中立的な観点からいたしました。ですから、そういう点では、実は、高額所得者の方や資産家の方が、さまざまな節税目的で、一例を挙げますと、九十代になってから高額な保険に入ったりしているようなケースも見られます。こうしたことからいうと、いわば公平性をどういうふうに確保するか。

 それから、自然な形で相続税というものを納めていただくときに、実は、この生命保険のあり方というのは、私どもから見ると、少しそういうすきがあるなというふうなことを感じておりました。

 ですから、篠原さんもおっしゃったように、未成年の方や障害者や、被相続人と生計を一にしているというふうな方については今のままでいいですが、いわゆる財産分与に関して、資産を生命保険の側に振り向けてそれで分けるようなことだけは、これはちょっと行き過ぎではないか、こうした点も考えながら、今回、改正を行うということになったわけでございます。

 だから、冷たいというふうな意見もあるかもしれませんが、より公平性を求めたということは御理解いただきたいと思います。

篠原委員 余り詰めませんけれども、ループホールみたいなのができて悪用するのがいるんです。それは一罰百戒で別途解決すればいいのであって、こんなところでやる必要はないんじゃないでしょうかというのが私の意見でございます。

五十嵐副大臣 今の篠原先生のたまたま取り上げられた例でいくと、認められる可能性があると思います。

 直前まで生計を一にするということは、同居の要件ではありません。ですから、勤務や学校、療養ということで離れている、それで、今先生がおっしゃったように、収入がうんと少ない、収入があれば別ですが、それは自立していただくということですが、そして、日常的に足りないということで仕送りをしていたというような例の場合は、これは今の要件に当てはまるという可能性が個々についてはありますので、決して冷たいということではないというふうに思います。

篠原委員 運用できちんとそういったふうに優しくやっていただきたいと思います。

 それでは、二ページをちょっとごらんいただきたいと思います。

 私は、野田総理が政治生命をかけるという消費税の増税は、絶対バックアップしてやっていただく、これは民主党員の義務だと思っております。ただ、横へそれますけれども、TPPとかは慎重に、再稼働は超慎重にというので、その考えと違うんですよね。そっち、ちゃんとやってもらわなくちゃいけないんです。こちらはきちんとやっていただかなくちゃいけない。

 わかるんですが、税収不足ということが盛んに言われていますけれども、こういうもの、今までもいろいろ出てきたかもしれませんが、我々、ちょっといろいろなものをつくってみました。

 どういうふうに税収が動いているかというと、見ていただきたいんですけれども、これは五年ごとにやって、一九九〇年、このときが一番なんですね、六十兆円が一番です。今どれだけ減っているかというと、一番左の法人税が十兆円減っています。所得税が約十四兆減ってしまっていますね。それで今、四十一兆しかない。これで消費増税をしようとしているわけですね。

 消費増税、十三兆円ふえてというふうになっていくと、やはりバランスが崩れていくんじゃないかと私は思います。ですから、消費増税は必要ですけれども、ほかのところもちゃんと税金を納めてもらうということを言っていっていいんじゃないかと思います。

 ところが、法人税は、二言目には国際競争力、国際競争力と、海外へ出ていってしまうと。世論調査、いろいろなのがありますけれども、法人税が高いから海外に工場を移転するというのは五番以内に入っていたことがないですね。一番は、消費地が近いから、二番目が、人件費が高いからなんです。だから、そうじゃないんですね。

 それで、実効税率、一九九〇年だと四九・九八%という数字があります。今は三五・六四%で、一五%ぐらい減っちゃっている。所得税だけちょっとここに書きました。所得税の最高税率、七五%だったんです。

 それで、皆さんのところにはないですけれども、三ページには某週刊誌から引用した高額所得者の名前があったんですけれども、確認していないからだめだとかいうので皆さんにはお配りしていないですけれども、年収八十億円とか三十三億円とか、カルロス・ゴーンさんは八億円とか、ソニーの会長さんも八億円とか、そういう人たちがいるわけですよ。

 それで、ヨーロッパ、フランスでは大統領選挙が行われました。オランド候補は、百万ユーロを超えた人たち、最高税率は四〇%か四一%で日本とほぼ同じだったんですが、それを百万ユーロ以上、一億円ですね、それ以上は七五%にすると、これをひっ提げて大統領に当選しました。サルコジ大統領は、あちらのバリュー・アデッド・タックスを一九・六から二一にするとか、直接税と間接税を両方パラレルに論じられて、大統領選挙の一つの争点になっていたはずです。

 ですから、将来に向けてはこういうことを考えて、法人税も所得税も負担していただく。これを見ると一目瞭然なわけですね。これ、もちろん改正しました。改正して所得税の税率を上げていますけれども、ちょっと上げ足りないんじゃないかなという気が僕はするんです。法人税、所得税も同じように負担していただくという姿勢を示して、そして税金を納めていただいて財政再建に資するということを消費増税と同時並行して考えていかなくちゃいけないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

安住国務大臣 所得税については、世界的な潮流を考えても、今後、最高税率をどうするか、私は篠原さんと同じように、これは真剣に検討しないといけませんので、政府税調の中でも議論の主議題にこれからしていきたいと思います。

 ただ、今回のことでいえば、消費税のお願いをして、それから、ここには、まだ二〇一〇年ですから、これは復興の所得税の引き上げというのもあるんですよね。これは二十五年続くんですね。

 世界の中の標準規格でいうと、そういう意味では四五%に今回いたしましたが、では、それが大体どうなのかというと、いいところと言ったら変ですけれども、これはアメリカでも、バフェットさんなんかはもっと上げろという御議論でございますが、やはり、今篠原さんおっしゃるように、税の全体のバランスですね。特に縦と横の関係、水平的な税と垂直的な税をどうバランスをかけて個人個人の所得分布の中で租税負担が偏らないようなやり方をやっていくか。

 それから、あえて申し上げますと、高額な所得者のところにばっかり目が行くんですが、ただ、我が国の累進税率の中で一番の問題は、高い方というよりは低い方だと私は思います。五%、一〇%という低率の所得税にかかっている人が全体の約八五%ですよね。政治の世界ではそのことを余りおっしゃらないけれども、そこの、再配分機能といいますか、上がってくる税が非常に少ないんですよ、ほかの国に比べて。そのことがまた税収全体に影響していると思います。それがまた国民負担率にもはね返ってきていて低いわけですね。

 ですから、税の累進をどういうふうにしていくかというときには、今ある五%や一〇%の刻みをそのまま置いておいて高額な方にだけかけるのが本当にいいのかどうかということも、ぜひ私はもう一方の問題点として提起をしたいと思います。

 いずれ、これ以外にも、個別の名前を出すとちょっと差しさわりはありますけれども、さまざまな税について、もう少し時代に合った対応の仕方をしてお金をかけさせていただくとかいろいろなことは私はあっていいと思いますから、総合的に、シャウプ勧告以来の今までの基幹税プラスアルファというのを見直す時期に来ているということの認識は一致しております。

篠原委員 何事も私はバランスだと思います。バランスのとれた人間が一番長生きする。私のように背だけひょろ高くて肉がついていないと、これは余り長生きできないんです。(発言する者あり)できますか、そうですか。

 やはり、バランスのとれた増税。消費増税して二十何%になって、今は四十一兆円で、ちょっとふえるんですけれども、消費税率が五割近くなると。諸外国を見ても、消費税が国税の半分を占める国なんてないんですね。だから、同時にバランス。今私が持っている資料では、ドイツが四九・一%というのはありますけれども、アメリカが二五・五%、イギリスが三六%ですか、スウェーデンも三八%。だから、法人税、所得税、消費税、国税の大事な収入源が三分の一ずつのようなことを考えていっていただきたいと思います。

 今、安住大臣、非常にいいことをおっしゃった。二言目には低所得者への配慮というのを。私は、それは必要だと思います。必要ですけれども、この委員会でもたびたび大臣が答弁されているように、八%というのはそんなに高い税率じゃないんだ、国民負担率が少ないと。でしたら、給付つき税額控除とか、軽減税率のかわりの、私は、それも余り必要なくて、必要ないと言っているんじゃないんです、もっと別の形でやるべきだと思う。税は単純明快が一番だと思います、理解しやすいのが。

 それから、これからのことで提案をさせていただきますと、初めて導入するときは物すごく疲れます。今五%にしている、それを上げるというのは、上げたり下げたりするのは。今度は所得税の、全員じゃないんですけれども、累進課税、五%一挙に上げると。そういうことを考えたら、二段階でやるというのも、今回はしようがないですけれども、将来は、こんなに面倒くさいことをせずに、すぱっすぱっとやっていけばいいんだと思います。そうしていただきたいし、そうやって国民に説明すればいいんだろうと思います。

 岡田副総理を先頭に、「明日の安心」ですか、あっちこっち説明に行かれたと思いますけれども、私は、日本国民、非常に理解力がすぐれていますし、ちゃんと説明すればわかると。野田政権も、こんなに幸運な総理は、この件について言えば、ないと思います。税金を上げても、それは世論調査をすれば嫌だとは言いますけれども、真面目な長野県民などは、岡田さんが最初に来られたというせいでもないと思いますけれども、消費増税してもいいんだと。私が支持者訪問をしていても、消費増税について文句を言われることはないですね。そのかわり、TPPと再稼働についてはめちゃめちゃですけれどもね。落としてやるとか言われています。だから、これは粛々とやっていったらいいんだろうと思います。これは意見にしておきます。

 次、生活保護の問題、あちこちから言われております。

 小宮山厚生労働大臣にお答えいただきたいんですけれども、やはり、ちょろまかしができちゃうんですね、どこにでもありますように。さっきの生命保険のことについてだって、変なことを考えるのがいる。大体どこにでも悪いことを考えるのがいるんです。私みたいに真面目なのはそういうことを考えませんけれども、どこにも知恵がある人がいるわけです。

 低所得者に対してというのは、古くなりますけれども、生活保護で朝日訴訟というのが判例でありました、これをわかっている人は相当古い世代の人ですけれども。生活保護世帯がこんなぜいたくなものと。

 アメリカは、ごまかしがあるのでフードスタンプなんです。食料にしか使われない。それだけに限定される。

 では、教育で、図書券というのがありますね、あれと同じように、教育券というのをやる。そして、それをやると、こういう問題がすぐ起こります。大体わかりますけれどもね。そんなのをすると恥ずかしくて使えないからと。まあ、ずうずうしくてそんなの全然気にしない人もいるかもしれませんけれども、どうも、生活保護というのは明々白々でわかってしまう。

 そうしたら、十五歳未満の子供を持っている人たちをバックアップするために、食料券を同じように渡す。あのうちは小さい子供がいるからこれを使っているんだなというふうにできますから。子供たちの手当にも食料券を渡すなりして、それでやられたら私は大分違ってくるんじゃないかと思います。

 将来の検討事項として検討していただけたらと思いますけれども、いかがでしょうか。

小宮山国務大臣 今篠原委員がおっしゃったように、食料品とか教育、現物で、クーポンでしますと、やはり、プライバシー、生活保護を受けているとわかってしまうということと、あと、導入のための初期の費用とかランニングコストがかかるというような話もございまして、課題があることは確かだというふうに思います。

 ただ、おっしゃったように、生活保護費をどのように適正に使うかということについてはいろいろな工夫があっていいと思いますので、今委員からも、先を見通した課題として検討をということがございましたので、そういう工夫の一つとしては検討も必要かというふうには思います。

篠原委員 三兆円近くが使われて、本当に保護が必要な人にはちゃんとやってやらなくちゃいけませんけれども、何%かが余り必要のない人のところに行ったりして、ほかのところに使われている。だから、軽減税率を食料に設けている、それから新聞だとか雑誌とか本にも設けている、そういうのがあるわけですから、工夫できるわけでして、ぜひやっていただきたいと思います。

 それから、また税の話ですけれども、これは党内の議論のときちょっと言ったんですが、またTPPの関係でアメリカがいろいろなことを言ってきているわけです。これについては、答えにくいところは答えなくていいですよ。

 その中で、軽自動車の分類がおかしいとか言ってきてね。私は、これはすぐ予想できましたよ。関税をゼロにする、関税自主権を放棄すると。小村寿太郎さんのとき頑張って回復したのを進んでゼロにするというんですから、おかしな話だと私は思いますけれどもね。あっていい話なんです。それをゼロにすると。

 しかし、こんなことを言っていると、アメリカというのはとんでもない国だから、韓国もそうだから、気がついて、韓米FTAはおかしいと。ほかのところとFTAをやったんだけれども何も文句が出ないのに、韓米FTAだけはおかしいといって、法律家たちが怒って、国会でもどんちゃかやって、ハンナラ党はセヌリ党に名前を変えなくちゃならなかったんです。

 鄭東泳という、あれは韓米FTA阻止闘争委員会の委員長でしたが、岡田副総理と誕生日、生年月日、全く一緒という立派な青年でした。四時間ぐらい話してきましたけれども、よろしくと言われましたので、この場でお伝えしておきます。気が合うかと言ったら、政治的な主張が違うと言って、私たちの方が合うと言っていましたけれどもね。よろしくと言っていましたので。

 彼は、もう気がついたわけですね。内政干渉ですよ、完全に。

 そのとき僕は予想できたんです。自動車重量税と自動車取得税、自動車二税について議論していました。こんなことをやっていったらアメリカから、自動車重量税というのはアメリカの車を差別するためにやっていると、そんなんじゃないわけですが、そういう難癖をつけられる、そういう国なんだから、だから慎重にしたらいいんだと言ったら、来年度の税制改正に関係ない御発言はお慎みくださいといって進行役から御注意を受けましたけれども、私の心配したとおりになっちゃっているんですね。

 これは本当に真面目に考えなくちゃいけないので、我が国のいろいろな仕組みについてこんな難癖をつけられる筋合いはないんです。徴税権まで国際交渉の対象にして、ああでもない、こうでもないと言われる。こんなことは断固阻止していかなければいけないと思うんですが、一般論で結構ですから、財務大臣、お答えいただきたいと思います。

安住国務大臣 今言った自動車関係税について関心を持っているようだということは報告は受けておりますけれども、外務省の方で情報収集しながら、今、篠原さん言うように、国益に反するようなことや自動車業界にとって逆に言えば不公平な話になるようなことについて、また、税の体系をゆがめたり、そういうことに対しては、私としても、私の立場でしっかり物も言うし、対応していきたいと思います。

篠原委員 それでは、三年に一回しか質問の機会が回ってこないので、総務大臣にも来ていただいているので、日ごろちょっと疑問を感じているものをついでに聞かせていただきたいと思います。

 私、長野の駅前に分不相応のワンルームマンションを借りているんですけれどもね、高いところです。何日泊まるんですかね、金帰月来していますが。TPPや原発で忙しいので、土日も帰れないことがあるんですけれども。

 そこに、全国展開をする企業の社長さんたちのたまり場というか、その人たちがみんな泊まっているわけですね、そこのワンルームマンションに。私と違って、週末に、東京や千葉、都心に戻ってくる。だけれども、平日はずっとあっちにいる。

 選挙の期間になると、こういうことを言うんです、篠原さん、頑張ってくださいと。一応、エールは送ってくれるんです。しかし、私、住民票はあっちにあって、ないので、済みませんけれども力になれませんと言うんです。

 そして、そのおかげで、長野市に全然税金を納めていないんですよ、住民票のあるところ。長野で一番高給取りが、長野市、地元に全然税金を納めないという。こんな不合理は絶対におかしいと思うんです。

 できるというのは聞いていますよ、知っていますよ。長野市が根性出して、長野用語でずくを出すというんですけれども、まめにやって、あなたおかしいですよといって追及したら、長野市に払わなくちゃいけないそうですけれども、そんなことをしている市町村はないようなんです。これはおかしいので、地方に税収、税金が行くように。

 自動車二税のときもそうなんです。自動車を使っているのが長野県なんか物すごく多いんです、山ばっかしで。群馬県が一位で、長野県が二位です。自動車関係の税金をいっぱい払っている。だから、それがおこぼれで地方自治体に行く。それがなくなってしまうと。自動車関係の人たちが、消費税導入とともに自動車二税を廃止しろと言っています。地方自治体は困ると。

 私の提案ですけれども、これはまだ先ですけれども、環境税もそうですけれども、森林面積に応じて地方に配分する、そうすると、何とか村なんていうのは八五%から九五%森林なんですから、そっちにお金が行くんです。そういうやり方とか、いろいろ考えられるんです。ですけれども、こんな単純なことからして都市が有利になるようになっちゃっているわけです。

 ほかにもいっぱいあるんですよ。私のところに飯山市というのがあるんです。一番北のところです。そこへ、高速道路、豊田飯山インターからおりていくと、全国展開をしている店ばっかしです。

 雁木通りの非常にきれいな町並みが、もう完全に、シャッター通りなんてものじゃないです。死の町と言っていろいろ、正直な表現ですけれども、ぶつくさ言われた人がいますが、本当にそんな感じです。全然何も開いていないんだ。

 TSUTAYAとかしまむらとか、イオンというのもちょっとありますけれども、ワークマンとかベイシアとか、そんなのばっかしで、お客さんも従業員もそこの人なのに、利益はほかの県に行く。だから、地元の人たちは、何でか知らないが群馬通りと呼んでいます。全部利益がほかの県に行ってしまう。

 そして、けしからぬことに、これは皆さん、信じられるでしょうか。雪祭りというのが二月中旬にあるんです。商店街が寄附したりするんです。寄附しないんだそうです、群馬通りの企業は。許しがたいです、こういうのは。

 隣の中野市はまだいいんです。隣の須坂市。夏の祇園祭りの花火大会、中止になりました。地元の企業、みんなぶっ潰れている。そういう何とか支店の企業はあるんですが、同じように花火の寄附をしない。だから打ち上げ花火ができない。ずたずたにしてしまっているんです。

 日米構造協議の大規模店舗規制法の廃止が問題になっていますが、これはアメリカのさしがねで、よくないことだ、同じことがTPPで行われると私は言っているわけですね。やはりおかしいので、日本で是正できるのは是正すべきだと思いますけれども、どうでしょうか。

川端国務大臣 もう、よく制度的には御存じだと思うんですけれども、一つは、住民票のあるところというのを一つのベースにするということで、住民基本台帳の適用者は住民基本台帳のところを一応住所とする。ただし、実態としてそういうところでない部分と認められるときは、そこの住民税は住民基本台帳によらなくて、実態として徴収してもいいというふうになっている。

 ただ、それをどう解釈するんだということで、実は、今例を引かれた部分でいいますと、昭和四十六年に、自治省から各都道府県総務部長宛ての通達の中で、勤務する事務所または事業所との関係上、家族と離れて居住している会社員等の住所は家族の居住地にあると認定することはどうかという問いに対して、QアンドAなんですけれども、答えとして、勤務する事務所または事業所との関係上、家族と離れて居住している者の住所は、本人の日常生活関係、家族との連絡状況等の実情を調査確認して認定するものであるが、確定困難な者で、毎週土曜日、日曜日のごとく勤務日以外は家族のもとにおいて生活をともにする者については家族の居住地にあるものとするという通達を出しているということで、週末帰っている人はそちらで、親元や、例えば東京なら東京でというふうに、一応方針は出しているという事実があります。

 ただ、これはQアンドAの通達ですので、法の解釈としては、できるということになっているんですが、実は、そのもっと前の制度として、一年でもあちこち行くということはあるので、一月一日時点をベースにするということもまた一方であるわけですね。

 そういう意味で、篠原先生言われた、そのマンションにお住まいの人がどれぐらいの期間おられるのか……(篠原委員「五年」と呼ぶ)五年ということとかになりますと、これは長野県で課税することは、先方にそういう実態があるからということで調整をして課税することは可能なんですが、結構手間がかかるんですね、それぞれ認定等々手間がかかるということで。今、企業においての部分で、そういう人はどうですかというふうな問い合わせをしたりしている市町村もありますが、今言われたような部分。

 それと、例えば両方で案分したらどうかとかいう案もあるんですが、一月一日でもってということの背景はいろいろあって、どう計算するのかわからないから、一日にいたところでと。これは日本国内と海外も実はそうで、一日に日本にいたら、いなかったらみたいな議論も時々ありますけれども、そういう部分で、現行はそうなっているということはお答えできるんですけれども、工夫もいろいろしてはいるんですが、結構手間暇かかる。

 もう一つは、そういう意味で、納税意識を高く持ってもらえれば、ふるさと納税とかいうことをしていただくということで代替していただくことはあるんですけれども、これは個人の自発的意思ですから、強制力がありませんから。

 そういう意味で、一つの、地域社会の活力それから税収というものでいえば、大変大きな課題であることは間違いないというふうに思っております。

篠原委員 私はどこにどうしているかというと、長野県中野市田麦というのが私の生まれ在所です。そこでは、冬は寒くて泊まれないんです、暖房がないですからね。夏は泊まります、めったに行きませんけれども。弱小の、人口四万そこそこの市に貢献しているのです。大半は長野市ですし、東京ですけれども、東京には納めない。これはこれでいいんじゃないかと。安住さんだって女川町でしょう。みんな地元ですよね。

 だから、そういうことで、私、一部の国会議員なんかはそうしていますけれども、企業の皆さんはそういうことをやっていない。これはぜひ考えていただきたいと思います。

 次に、ちょっとこれは小宮山厚生労働大臣といろいろやりとりしたいんですが、これは私の考えだと思われるとよくないので言っておきますけれども。

 これは、私の配偶者、無給、よく小言を言う秘書が来ているんですけれども、毎度。ただ、こんな質問しちゃいけないとおしかりを受けていますが、私の考えではないけれどもこういう考えがあるということで、ちょっと話を聞きながら四ページを見ていただきたいんです。

 「アメリカ・ナウ」という、古い本なので恐縮ですけれども、女性の問題、こども園の関係、幼稚園、保育園で、それから女性に働いてもらう環境ということを言っていますけれども、これをちょっとよく皆さんも読んでいただきたいと思います。

 これは、経済学者は知っていますが、皆さんは知らないかと、一九八二年、マービン・ハリスという、ホワット・ツー・イート、何を食べるかというのを。文化人類学者です。人類のことをやって、非常に露骨なことを書く。これはアメリカで大ベストセラーになりました。タイム誌が異例で一ページの書評を書きました、三十年前に。

 日本にも同じことが起きている。特に、線を引っ張っているところを中心に見ていただきたいと思います。

 アメリカで女性がどんどん仕事をし出した。極端な、一部だけ、象徴的なことを切り張りしてきましたけれども、この学者はどう言っているかというと、アメリカが乱れている原因は全てそこにあるというんです。これは私の意見じゃないんですよ、怒らないでください。それで、立派な女性はだめな男性より能力があると。当然ですね。だから、男性の職場を奪うというので、失業率が高まる。それから、地域社会活動のかなめになっていたのが、元気のいい活発なアメリカの女性たち、主婦だった。その地域社会の、日本流に言うときずなですよ、きずなのもとになっている主婦たちがお金稼ぎに走って、地域社会のたがが緩んでぎすぎすして、終局的には犯罪率の高騰にまでつながっているという。

 同じときに、イワン・イリイチが「シャドウ・ワーク」というのを。影の仕事ですね。女性のいろいろな仕事をちゃんと評価しろと。これは、カール・ポランニーという人類学者、経済学者なんかが言ってきたような人たちの系列で、「エネルギーと公正」という本も書いておられる。この人が、女性のそういう仕事というのをちゃんと評価しなければいけないと。

 こういう意味では、馳さんが、専業主婦の敵とかいって厚生労働大臣にちょっと質問されていましたけれども、そんなんじゃないのは知っています。そんなに怒らないで。私の意見じゃない。こういう意見もあるということを言っているわけです。誤解のないように。(発言する者あり)まあ、そうですけれども。多少はあるんです、多少。ただ、議論をさせてくださいということだけです。

 それで、そういうことを考えると、よく言われる自助、共助、公助の、公助に余り頼り過ぎちゃっているというのがあるんじゃないですか。

 ここを見ていただくと、恐ろしいことが書いてあるんですね。アメリカで女性が行くのは何でかというと、今までは産めよふやせよが大事だったけれども、核兵器の時代になったから、軍人はそんなに必要なくなったんだ、産めよふやせよは必要ない、だから、低賃金で安く女性を使っていい、そうなると、子供の数が確実に減る、しかし、国家の存亡にとって、子供の数が減ったって構わない、そういう分析をして、それを放置したということがここに書いてあるわけですね。

 そうすると、この論からいうと、景気をよくして、男性とか女性じゃなく、ともかく一家で一人が外から収入を持ってきて、あとは、地域社会活動をし、かつ、病気になった人、介護が必要な人を介護したりして、余裕のある家庭があったりしたら、いろいろなことがうまく回ると。

 ところが、今、我が日本国はどうしているかというと、ほとんどそういった社会というのはもうなくなっているんだ、回復が不可能なんだという大前提のもとに、制度をいろいろ仕組もうとしている。これは、膨大なお金がかかると思います。これは難しいんですけれどもね。

 そんなことよりも、では、もう一つ考えて、かつての麗しい地域社会、地域社会全体で子供を育てようということをやったらいいんじゃないかという考え方があるんですけれども、この点について、小宮山厚生労働大臣の常日ごろお考えになっていることをお聞きしたいと思います。

小宮山国務大臣 篠原教授といろいろと余り議論をし出しますと、これは夕方まで時間が尽きないかもしれませんから、ポイントだけ申し上げますけれども。

 別に私、全然、先日もお答えしたように、専業主婦の敵でも何でもなくて、それぞれの人が自分の生きたい生き方ができればいい、そういうふうに基本的には思っているんです。

 もちろん、自助で、家族の中で子育てをする、そして、昔は、地域の中で、隣のおじちゃんとかおばちゃんが、悪いことをすれば怒ったりとかいろいろなことをしたのが、そこが希薄になったということも今子育てがしにくいということだと思うので、家族で、地域で子育てするというのは、私は全く異論はありません。

 ただ、先ほどおっしゃった、女性が働くと子供が少なくなるというのは、これは事実と違います。諸外国、ヨーロッパなどを見ても、女性が働いて収入が高いほど子供の数が多いんですね。

 ですから、いろいろな説はあると思いますが、私が申し上げたいのは、今、日本でも、潜在就業率という、本当は働きたいと思っている女性が九割近くいるんですね。そうすると、今、これだけ子供の数が少なくなって、社会を誰が支えていくかというときに、先ほど、委員のお言葉の中にも多少気になるところはあったんですが、女性を働かせるという、福祉的な立場からではなくて、これから、やはり経済戦略として、女性も働いた方が日本も必ず元気になるんです。

 それは、いろいろな意味で、女性が働かないと日本の社会としても損失があるというようなデータが幾つか出ていますので、そういう意味で、別に働きたくない人に働けと言っているんじゃないんですよ、働きたい女性はきちんと能力を発揮して働いた方が、家庭の中の維持も、今もう、一家で一人が大黒柱という時代でもなくなっていますので、それは、それぞれみんなで支え合ってやっていくことが、家族にとっても、子供にとっても、社会にとってもいいんじゃないかということで、今、政府としても、総理の御指示で、女性の活躍促進について、六月にまとめる日本再生戦略に盛り込んで、工程表もつけてやろうというようなこともしていますので、これを、働きたい意欲があって働ける人は、男性も女性も働くということだし、家庭での子育てだって、私の孫は、どちらかというと、息子の方が保育所に送り迎えをしているというような形もあって、いろいろなそれぞれの思いの中で、選択ができるような社会が豊かな社会じゃないかと私は思っています。

篠原委員 立派なおばあちゃんを持っていると、孫も立派になりますね。ちゃんと子育てを手伝っているんですね。

 五ページをちょっと見てください。

 少子化の問題で、これは、もう東京が、都会部がだめで、鹿児島県や長崎県や沖縄県、島が、何でか多いわけですね。

 今、小宮山厚生労働大臣が言われましたけれども、フランスは合計特殊出生率が二・〇を超えているんですね。だけれども、見てください。外で働いていて、嫡外子、嫡出でない子の出生率が五三・七%、三十年の間に五倍になっている。韓国と日本は、ずっとましですね。これは不幸をつくっているんじゃないかなと。こういうことを考えたら、男性も含めて、子育てにちゃんと専念していただいたりするということも考えたっていいんじゃないかと思います。こども園とか幼稚園とかは絶対必要で、早くと言っていますけれども。

 また私の経験で言わせていただくと、私は団塊の世代でして、団塊ジュニアということを石井さんが盛んに言っておられましたけれども、四十一歳で団塊ジュニアだなんて、私の息子はまだ二十一歳でして、どうもジュニアという感じがしないんですがね。それで、団塊の世代が年金受給開始年齢になるなどというのが出てくると、我々の世代が悪いことをしているみたいで、どうも気になってしようがないので、ちょっとその話をさせていただきます。

 私は純農村で生まれました。母親は農家の主婦です。幼稚園とか保育園は行ったことがありません。きのう資料が来なかったですけれども、季節保育園というのが公民館でできたんです。私が小学校一年になったとき。一つ違いの弟が保育園に行っていると、何かおやつを、長野でいう、こびれをもらうという。学校が終わるとすぐ行きました。それで大事件が発生したんです。大したことないんですけれどもね。日ごろかわいがっている弟が、兄ちゃんが来た、こびれを食べたことないからと僕にくれたんです。僕は、こんなおいしいものかと、家でそんなもの食べたことないですから、食べたら、しっかりその季節保育園の先生に見られていて、ひどい兄貴だ、弟のおやつをとって食べてしまったと内通がありました。私は親からひどく叱られました。しかし、言いわけしませんでした。弟もわかっている。そうやって、こんないい息子ができて、国会議員にまでなっているんですね。だから、時代は違いますけれども、幼稚園、保育園に行かなくて。

 それで、ひどいですよ。僕は覚えていないんですけれども、隣のばあちゃんがそれをよく言うんです。

 長男です。一歳違いで次男が生まれました。学年は一歳ですけれども、本当は一歳七カ月ぐらいなんですが。柱に縛りつけられるんです。こういうふうにされるんじゃないですよ。ここにこうやって、ぐるぐる回れるようにして。わんわん泣いているわけです。そうすると、近所のおばさんが来て、私を連れ出してどこかで子守してくれるんです。ひどいのは、お昼上がりしてくるんです、おっ、孝がいないな、どっかの近所のばあさんが子守していてくれるんだと。誘拐されたとは思わないんですね。そうして出ていって、夕方になると帰ってきている。このおばあちゃんからは、私が帰省するたびに、四十五歳ぐらいになっているときも、腰を曲げて、孝ちゃん、でっかくなってよかったとかと言われていました。そういう温かい地域社会がある。これは、二度とそういう社会が生まれないということじゃなくて、私は、そういうのでいいんじゃないかと、三世代同居とかでね。非常に古風になって済みませんけれども、そういう社会になってもいいんじゃないかと。

 それで、六ページを見ていただきたい。

 「逝きし世の面影」という、これは、ペリーだとかハリスだとかオールコックとかモースとかいっぱい来て、その人たちが江戸から明治にかけての日本の様子をいっぱい書いているんです。共通しているのがいっぱいあるんですがね。子どもの楽園だと書いてあるんです。こんなに子供を大事にする社会はないと。これをよく読んでください。

 そして、いろいろなことを言っているんですよ。開国を迫っているんですけれども、開国もちゅうちょするんです。これだけ平和な国にヨーロッパのルールを押しつけたりするのは非常につらい、このままの楽園であってほしいということを言っているんです。

 それから、もっと違うのでは、日本人は怠け者だと言っているんですよ。どういうことで言っているかというと、お祭りが一カ月に一回ぐらいあって、お祭りのために働いている。余暇もちゃんとしていたんです。大分違っていたんですね。

 子供を大事にしなくなるし、やたら働いてばかりいるようになる。働かずに、家にいたり地域社会に出てお祭りをやったりしていればいいんです。そういうライフスタイルもあるんじゃないかと私は思うんです。

 そういう政策を民主党は掲げてきたし、生活第一ですね、やっていくべきじゃないかということなんです。これをぜひ見ていただきたいと私は思います。

 覚えておられると思います。菅さんが盛んに言いました。東京都の合計特殊出生率が一・〇を割った、〇・九九九九だと。盛んに、しつこく言いました。そして、農山漁村を子育てに適した地域として再生することが日本の再生につながるということで、やたら農業や林業にてこ入れしておられました、ちょっと私の入れ知恵もあったんですけれども。

 私は、これは正しいと思っております。先ほどの、子供を安心して育てられる社会、こういうものをぜひつくっていただきたいと思っております。

 それには、地域社会全体のバックアップが必要だ。どうも、工事のお金を出す方にばっかし行っていて、鳩山さんの新しい公共もそうです、横のつながりとかそっちを大事にしていくということを、我が党、我が政権の、あるいは自民党時代もそうかもしれない、どうもちょっと忘れているんじゃないか。そっちをほったらかしにして、瓦解していく。アメリカの学者は、少なくとも、アメリカの混乱はこういうところにあるんだと言って指摘している。日本が三十年後に追いかけるような、追いかけてそんな社会にしていると。これは絶対私はよくないと思います。この解決というのはなかなか難しいんです。

 川端総務大臣はこの前、朝ドラの「カーネーション」と「梅ちゃん先生」ということをおっしゃっていました。もう一つ、その前に「おひさま」というのがあったんです。あれは長野県が舞台で、見ていたんです。あそこは本当にほのぼのとした地域社会。「三丁目の夕日」、一九六四年、あのころはまだそういうのがあったわけです。

 そういう社会なんです。見るも無残な難行苦行の社会だったかというと、違うと思うんですよ。ほのぼのとしたいい社会だった。それは、経済的にはこんな巨大な国じゃなかったですよ。非常にバランスのとれた国だったんじゃないかと思います。

 この点については、もう一回質問の機会が与えられたら、もっと資料をきちんとつくってきてやりたいと思います。地域社会と社会保障や何かの関係ですけれども、やりたいと思いますので、これはそのときにとっておきます。

 この地域社会の復活、例えばフーテンの寅さんだって、あれは寅さんが主人公ではなくて、寅さんが帰ってくる柴又帝釈天のとらやの人たちや近所の人たちが主人公だと思う。帰るところがあると。

 我々日本人は、自分たちの暮らすに当たっての基盤というか、英語を使いたくないんですけれども、アイデンティティーを失いつつある。これはよくないので、この回復というのが私は社会保障の重要な柱になっていいと思うんですが、地域社会のたがを強めるという政策、急にはわからないと思いますけれども、川端大臣の御見解、御見識をお伺いしたいと思います。

 それで、もしおありになりましたら、小宮山厚生労働大臣もお願いします。

川端国務大臣 大変奥行きのあるお話をずっと伺っておりました。

 社会保障というのは、どうしても、政策的な話という意味で、制度やお金ということに非常に重きが置かれて、わかりやすいということになっているのは事実だと思うんですね。

 この前、ある助産師さんとお話をする機会が、ベテランの方なんですが、そうしたときに、子育て、こども園とか、いろいろな部分の制度は非常に大事なことだけれども、お母さんが、一人産んで、二人目を産むときに非常に悩みを抱えているというふうなことが多いというときの心のケアとか、そういうことというのもぜひとももっと力を入れてほしいという、今、要するに子育てノイローゼとかたくさんあります、そういう意味でいったときに、何か建物とか制度とか手当とかいうことと違う切り口の議論が少し平板というか薄くなっているのではないかという話を、この前地元に帰ったときにしていました。

 今、先生が言われた部分も、やはり、心のあり方というか社会のあり方の根幹にかかわる物の考え方だと思うんですね。

 非常に手前みそな話をいたしますと、私は近江商人の末裔なんですけれども、近江商人というのは、質素倹約とか誠心誠意とかいうことの普通の家訓以外に、三方よしということを言っているのです。売ってよし。もうけなければ商売にならないから、売ってよし。買ってよし。買った人は、いいものをいい値段で手に入れたということで、よかったと。普通それで終わりなんですけれども、そして、世間よし。

 いわゆる地域社会というものと自分たちの商売のかかわりというものを考えたということで、そこの部分がどうも最近希薄になっていることは大変私も感じておりますので、先生がおっしゃるようなそういう議論は、いきなり制度がどうかということではない、教育の問題とか社会のあり方とかいうことは、実は非常に力を入れて政治の世界で議論すべき課題だというふうに私は感じております。

篠原委員 最後に、岡田副総理にちょっと御注文。答えていただかなくてもいいかもしれませんけれども。

 渡部恒三大先輩、きょう出ておいでになりましたけれども、私と半日じゅうおしゃべりしていて、その後ちょっと入院されておられたので、そのときにどういう会話をしたかというのをちょっと紹介させていただきます、御本人がおられますけれども。

 竹下さんが質問されているときでした。兄貴の竹下登は偉かったな、腰が低くて、根回しとか調整とかと頭ばかり下げていた、それと比べると、何か野田さんや岡田さんは、正論は立派だけれども、頭が高いとおっしゃったんです。

 それで思い出して、いやいや、もっと頭が低い人がいたですね、丹羽兵助さんていたですねと。そうしたら、そこに柚木さんの差しかえで杉本かずみさんがいます。あなたは知らないだろうと言ったら、それは知らないけれども、孫なら知っていますよと。丹羽秀樹さん、ここで一生懸命補佐をやっていました。そうしたら、おお、来い来いと渡部さんがやっていました。それで言われたことが、俺は、俺の一緒のときの息子と一緒ならいいけれども、孫と一緒になっちゃった、年とったもんだと言っておられました。

 そのとき、岡田さんや、もう、何かみんなおわかりだと思いますが。

 三木派、河本派におじぎ三人衆というのがあった。丹羽兵助さん、森山欽司さん、毛利松平さん。腰が低いんです。あちこちに行って、自民党内、野党にも頭を下げて歩いておられた。政策実現のためにです。

 どうもそういう姿勢が足りない。派閥、みんなあるかどうかは知りませんけれども、しかし、名前を挙げてもいいですね、近藤洋介さんとか蓮舫さんとかいろいろな方が来て、正論を堂々とまくし立てておられる。どうもちょっと違うんじゃないか。生意気三人衆と言っちゃ悪いけど、全然違うものになっちゃった。だめなんですよ。頭を下げるというのがないわけです、説得して政策を実行しようというのが。それは政権与党や何かのすることではないんです。

 こういうことをちゃんとやっていただくことをお願いいたして、それでうまくおさめて、この社会保障と税の一体改革を絶対成功裏に導いていただくことをお願いいたしまして、私のレクチャーだか講義だかは終わらせていただきます。

中野委員長 講義の間に答弁をいただく時間がなくなりましたので、終わらせていただきます。

 これにて篠原君の質疑は終了いたしました。

 次に、早川久美子さん。

早川委員 おはようございます。民主党の早川久美子でございます。

 本日は、貴重な質問の機会をいただきました。ありがとうございます。

 代議士の役割、さまざまあると思いますが、一つ大きくは、地域の声を国政に届けるというのが役割であると思います。きょうは、改めてこの役を担う思いで質問させていただきたいと思います。

 私の地元は、先ほど篠原先生からお話がございました、フーテンの寅さん、葛飾・柴又でございます。今もなお、中小企業、町工場やそしてまた商店が並ぶ、いわゆる中小企業の町として知られております。私は、その中小企業の町で、この半年間、ほぼ毎週末のようにタウンミーティングを重ねてまいりました。そして、中小企業の皆様方にもお声を聞いてまいりました。

 この場所で何度も出ておりますように、社会保障と税の一体改革、総論といたしましては、社会保障を安定させるためにはやはり消費税を上げるのはいたし方がない。これはもう本当に総論でございます。やはり、どうしても、その後の景気はどうなっていくのか、その懸念が強いわけでございます。九七年、消費税が五%に上げられることにより、自分たちの経営者の仲間が会社を畳み、また商店のシャッターをおろしている姿を目にしているわけでございます。国民の消費税に対する不安とはこのときの姿であり、不景気の悪夢の再来になるのではないかという不安でございます。

 今回、消費税増税に当たって、政府も、新成長戦略などさまざまな戦略が練られておりますが、なかなかそのことは国民の皆様方に伝わっていないというのが私が認識するところでございます。

 改めてお聞きをしたいと思います。今回の消費税引き上げのときの経済への影響についてどう予想されているのか。また、九七年、五%、消費税が増税されたときに、そのときのGDP、消費支出の動き、経済への影響はどのようなことがあったのか、お聞かせをいただきたいと思います。

大串大臣政務官 まず、事実関係から、先に私の方から御答弁させていただきたいというふうに思います。

 ただいま、消費税導入時と引き上げ時の経過がどういうものだったかという質問がございました。

 これに関しまして、実質ベースのGDPと消費支出について、一九八九年、これは導入時ですけれども、振り返ってみますと、消費支出は、消費税導入前である同年一―三月期に駆け込み需要によって増加し、その後の四―六月期には反動減、こういうふうになって、これを受けてGDPも同様の動きになったという経緯があります。その後は、可処分所得が着実に増加する中で消費支出も堅調に推移して、GDPは内需主導の拡大を続けた、こういうふうな経緯がございます。

 さらに、九七年四月の引き上げ時でありますけれども、引き上げ時に関しても同様に、引き上げ時の前と後で駆け込み需要と反動減ということがあったのは事実であります。その後、ただ、第三・四半期になりますと、消費は再びプラスに転じております。戻ってはおるんですけれども、その後、九七年七月から深刻化したアジア通貨危機の影響や、あるいは同年十一月に大手金融機関、破綻が続きました。こういったことも受けて消費者マインドは悪化いたしまして、消費支出やGDPも弱い動きとなっております。

 さらに、今回の消費税の引き上げ、あるいは社会保障と税の一体改革を含めて、どのような試算を、見通しを持っているかということでございますけれども、この一月に経済財政の中長期試算というものを私たちは提出申し上げました。それに、今回の社会保障と税の一体改革も織り込んだ上での試算をしておりますが、いわゆる慎重シナリオというもので見てみて、二〇一三年において一・五%成長、二〇一四年に〇・七%成長、二〇一五年に〇・九%と、若干の反動増、反動減が、駆け込み増、駆け込み減が見られますけれども、二〇一六年以降は一・三%近傍で成長は続いていく、こういった見通しを持っているところでございます。

岡田国務大臣 事実関係というか数字は、今、大串政務官の方から述べたとおりですけれども、短期的にはそういったことで、確かに、消費税を引き上げるということになれば、駆け込み需要はありますし、その反動減がありますから、影響があることは間違いない。

 しかし、もう少し長い目で見れば、むしろ、財政赤字、債務残高の増大というものは非常に大きなリスク、金利が上がれば企業の資金調達や設備投資も圧迫されるわけで、あるいは将来、EUの今の危機じゃありませんが、非常に大きな変化が起きる可能性があるということになれば、それはやはり企業活動そのものも非常にシュリンクするわけであります。個人の消費においても、将来的な経済不安、そういったものが今の消費を制約するということは、私は現に起こっている。貯蓄率が、結構若い人も、将来心配だから一生懸命貯蓄する、こういうことを言う人がいるわけですが、そういった懸念を取り除いていくということは、長い目で見て、経済の安定成長への道を切り開くものである、そういうふうに考えております。

早川委員 今の御答弁から、反動減はあるということは否めないということでございます。ぜひとも、ここの部分に対しても、中小企業対策という部分でどんどんと政策を打ち出していただきたいと思っております。

 次に、消費税増税に当たって中小企業の皆様方が大変心配をされておりますのが、消費税の転嫁についての御質問でございます。消費税を上げると、価格転嫁ができない、事業の負担がこれまでより大きくなって経営が立ち行かなくなるとの声が聞こえます。昨日、私も福島に公聴会に行ってまいりました。そこの福島商工会連合会長も強く懸念をされていたことでございます。

 規模が小さい事業者ほど価格転嫁が困難であり、多くの業者が厳しい価格競争の中で料金に消費税を転嫁できず、自己負担となってしまうわけでございます。弱い立場の事業者としては、取引先から外されることが怖くて、優位的な濫用、これがあったとしても取引先を訴えられないという現状が今までも続いておりました。

 政府・与党民主党は、これを受けてワーキングチームを開いて、五月十四日に報告書を上げ、また、それをさらに政府がお受けになって、三十一日に中間整理を出していただきました。

 内容は、先週報道にも大変大きく記載されていたように、前回の消費税増税のときにはやってこなかった新規の施策というものを打ち出されております。例えば、独禁法のさらなる対応、転嫁状況に関する検査体制の強化、いわゆるGメンの設置、積極的な取り締まりを行うために人員を増大するといった大変前向きな結論が出たことは、大変うれしく思っております。

 価格転嫁の問題は、中小企業の死活問題に直結する大変重要な課題でございます。改めて、この立法措置の意気込みをお尋ねしたいと思います。

岡田国務大臣 今回予定している消費税の引き上げに当たりまして、きちんとそれが価格に転嫁されるということは、私は非常に大きなポイントだというふうに思っております。

 今回、前回の引き上げと比べて、異なることが幾つかございます。一つは、やはり経済の状況。デフレといいますか、物価が低位安定している中での引き上げになりかねないということが一つと、もう一つは、二段階で五%上げるということですね、二%とか三%じゃなくて五%引き上げる。それから、平成十五年に免税点の引き下げをやっておりますので、前回は余り関係なかった、初めて税率の引き上げを経験する課税事業者も多い。そういう状況の中での引き上げになりますので、ここは相当周到にきちんとした対策をしなければいけないというふうに思います。

 そういう中で、党からの御提言もいただいて、先月三十一日に検討本部を開き、中間的な整理をしたところでございます。

 五つあります。簡単に申し上げますが、一つは、公取、それから中小企業庁で、優越的地位の濫用に関する監視、取り締まりについて、特別調査を前回のときに比べて大幅に上回る規模で実施するということでございます。

 二番目は、委員も御指摘の、Gメンといいますか、しっかりと違反行為の情報収集、調査を行うための時限的な人員の拡大など、体制整備を図るということでございます。

 三番目は、原則として消費税の転嫁の拒否あるいはこれに類する行為を行えないような立法措置のあり方についても検討するということでございます。

 四番目は、転嫁カルテルを独禁法の適用除外にするための法的措置についても必要に応じて検討する。

 最後に、値札のつけかえ作業などに非常に負担がかかりますので、総額表示義務を弾力的に運用することについて検討する。

 この五点について、さらに議論を深め、万全を期したいというふうに考えているところでございます。

早川委員 ありがとうございます。

 新規施策を中心に、中小企業だけに消費税増税のしわ寄せが来ないようにしっかりとやっていただきたいと思います。

 また、財政上、税制上の支援措置についても、予算編成や財政改正時などの過程において支援措置を検討するということでございますが、具体的にどのようなお考えがあるのかをお聞きしたいと思います。

 もちろん、予算措置という部分でございますので、まだその時期ではないかもしれません。しかし、何かしらそういうアイデアがあれば、ここでおっしゃっていただくことによって事業者の方々に安心をしていただけると思いますが、御答弁がありましたら、よろしくお願いします。

五十嵐副大臣 お答えをいたします。

 平成元年の消費税導入のときには、パソコンソフトの開発費用の任意償却とか税制上の措置を幾つかとらせていただきました。それから、平成十五年度の改正時には、免税点制度や簡易課税制度の適正化などが行われましたので、商店街振興事業基金の造成とか、あるいはコミュニティー施設、商店街共同利用施設の整備事業の補助金など、予算措置をさせていただきました。

 時代が変わっていますから、それとそっくりというわけにはいかないと思いますが、業界団体、中小事業者を中心にお話をよく聞き、また、関係省庁がよくそれを聞いた上で適切な、効率的な施策をお考えいただければ誠実に対応して検討してまいりたい、こう思っているところでございます。

早川委員 今回は、今までにない二段階の引き上げということでございますので、事業者の方々も二倍以上の負担がかかるわけでございます。どうぞ適切な予算措置をしていただきますよう、改めてお願いを申し上げます。

 次に、延滞税の利率についてでございます。

 先日、宮島委員の質問に対して、五十嵐副大臣の御答弁でございますが、平成二十五年度の税制改正時に成案を得るということでございました。これは、方向性といたしまして、下げる方向性で御検討いただくと理解してよろしいのでしょうか。ちょっと確認の意味で聞かせていただきたいと思います。

五十嵐副大臣 税は公平感ということですから、きちんと納期内に納めていただいている方と、それから滞納されている方ということで、差が出るというのはやむを得ないことだろうと思います。

 ただ、今の水準が、極めて低水準に普通の金利があるものですから、その差ということで何か考え直すことはないかということで、今、納期限から二カ月以内は四・三%ということで、低くする措置をとっているところでございます。

 さらに、御指摘のとおり、閣議決定、三月三十日にされましたけれども、今後の対応について、負担の見直しについては、低金利下における利率のあり方、事業者の負担等を考えて、二十五年度税制改正時に成案を得るとなっておりますので、多角的に検討した上で是正に努めたい、こう思っております。

早川委員 ありがとうございます。

 前回、五十嵐副大臣の御答弁の中で、民間との利率の部分を比べられておりました。一概には言えないと思うんですけれども、ぜひとも、先進国の利率なんかも比較して、引き下げる方向で御検討いただきたいと重ねてお願いを申し上げます。

 次の質問に移ります。

 景気対策、これは新成長戦略を加速していくと言われています。しかし、一方で、人口が減少していく中で、日本の経済成長を進めていくためにはやはり難しいのではないかという論も聞きます。

 まず一つ目の質問でございますが、人口減少の中、どのようにデフレ脱却をしていくおつもりなのか、お聞かせください。

大串大臣政務官 今御指摘いただきましたように、人口減少社会の中でどのようにデフレから脱却していくか、非常に大きな課題でございます。

 デフレ脱却というのは十年以上にわたる課題でございまして、日銀と一体となって全力で取り組んでいますが、一つには、需給ギャップをどうするか、デフレ予想をどうするか、低成長予想をどうするか、こういった問題があって、これを生産から所得、民需へと結びつけていく好循環が今のところ実現していない、これを実現させていくことがデフレからの脱却に関して非常に重要だと思っています。

 デフレ脱却等経済状況検討会議というものを開いて、デフレに対する抜本的な対策をつくり、日本再生戦略や予算編成プロセスに入れていきたいというふうに思っていますが、まさにおっしゃったように、人口減少下においてデフレから脱却するという意味においては、その中でも海外の需要をどう取り込んでいくのか、これは非常に重要な論点だというふうに私たちは実は思っております。世界の成長センターであるアジア太平洋地域のインフラ需要とかあるいは新中間層の購買力、これをどう取り込んでいくのか、こういったこともしっかり分析、検討した上でデフレ対策そして日本再生戦略に盛り込んでまいりたいというふうに思っています。

早川委員 ありがとうございます。

 今の御答弁にございました、マーケットを海外に向けていくことが成長戦略の一つだということでございます。私もこれは本当に今後必要であると思いますが、現在の中小企業、なかなかそのノウハウがないですとか、いろいろな部分でちゅうちょしてきた部分がございます。この海外事業展開、これを政治が支援すること、そしてもう一つ、国際力を上げていくために交易条件の改善を図っていく、この二つのアプローチが私は不可欠ではないかと思っております。

 中小企業庁が五月にまとめました海外展開支援策につきまして、日本政策金融公庫による海外展開資金は、平成二十二年より二十三年の実績が約四倍になっております。件数でいえば、約三倍の六百七十五件でございました。急速に中小企業の海外展開が本格化しているところが見られます。

 以前は海外進出というと製造業がほとんどでございましたが、最近目立つのは、サービス業、いわゆる小売とかレストランの海外展開でございます。私も先日、台北にちょっと行ってきたんですけれども、百人ぐらいの行列ができていて、この先に何があるんだろうと思ったらば、私もよく東京で食べている豚骨の日本のラーメン屋さんでございました。

 いろいろ見てまいりますと、最近目立つ海外事業展開をしている経営者は、比較的若く、ネットなどで世界的な情報をとれる方たちであるということがわかってまいります。海外に事業を展開すると国内の雇用が減ると懸念をされておりますが、海外市場の獲得は国内の雇用を安定させる、また拡大していくという結果も出ております。

 国内の雇用の維持拡大をしていくためにも、新しいこのような世代、業種の方々の海外展開をさらに後押ししていく必要があると思いますが、何か御所見があれば、お聞かせくださいませ。

牧野副大臣 早川委員の質問にお答えをさせていただきます。

 委員御説のとおり、国内需要の減少と国際競争力の激化など、我が国の中小企業をめぐる内外環境が厳しさを増す中で、成長著しいアジア等の海外市場の需要を取り込むことは重要なことだと考えております。

 とりわけ、御指摘のとおり、これまで製造業の海外展開が主だったわけでありますが、近年は、流通、小売、外食など、サービス産業が新たなフロンティアとして期待されており、本年三月九日に改定した中小企業海外展開支援大綱においても、新たにサービス業の海外展開支援を強化することとしたところであります。

 これを踏まえ、ジェトロが新たに、中小サービス企業やフランチャイズ企業の海外展開に対し、初期段階で必要となるフィージビリティースタディー調査などから、店舗開設とその後のフォローアップまで一貫した支援体制を行う事業をことしから開始しているところであります。

 今後、こうした個別支援に加え、適切な情報提供や有望国へのミッションの派遣、展示会などへの出展など、サービス産業も含め、中小企業の海外展開をしっかりと支援してまいりたいと考えております。今までは、どちらかというと、きれいごとで終わった嫌いがありますが、貪欲に支援をしてまいりたい、そのように考えております。

早川委員 ありがとうございます。ぜひ貪欲に支援をし続けていただきたいと思います。

 もちろん、日本の中小企業を支えてきたのは製造業でございます。この製造業の方たちもしっかりと支援をして、海外展開をしていく必要があると思います。

 中小企業庁が三月に、“日本の未来”応援会議というものを設置いたしました。もう一度中小企業に元気になってもらいたい、また、今までの政策をもう一度見直すという趣旨であったと聞いております。今月、六月には報告がまとめられると聞いていますが、その狙いと効果について、そしてまた、今までの中小企業政策をどのように転換していくおつもりなのか、お聞かせください。

牧野副大臣 我が国企業の九割以上を占める中小そして小規模企業がその潜在力を発揮することが我が国の経済の成長にとって重要だ、これはお説のとおりでございまして、このために、従来なかなか伺う機会のありませんでした中小、小売、小規模企業経営者の生の声を直接お聞きし、中小企業政策を真摯に見直すために、本年三月に“ちいさな企業”未来会議を設置させていただきました。私も三カ所参加いたしました。

 これまで、全国各地で三十カ所以上の会合を開催し、延べ三千八百名の中小企業関係者が参加したところでありまして、現在、六月中旬の取りまとめに向けて作業を行っているところでありますが、いただいた意見を踏まえて、中小そして小規模企業者に対するきめ細かな経営支援体制の構築や、青年層、女性層が活力を発揮できる事業規模の整備など、中小そして小規模企業の実情、ニーズに沿った政策を再構築してまいりたい、このように考えております。

 “ちいさな企業”未来会議を各地で開いた中で、情報が欲しい、交流の場が欲しい、あるいは規制の緩和をしてほしい、それから、コンサルタントの力を必要とする、そして、資金援助を何とかしてもらいたい、こういう要望がたくさんありましたので、的確に応えていきたい、このように思っています。

早川委員 ぜひ、六月のおまとめ、楽しみにしております。

 経済成長を図っていくためには、もう一つの課題は国際力をつけていくということであると思います。法人税は、これは下げる方向であるとしか言えないと思います。その辺は政府と一致をしているところだと思います。また、FTA、EPAに関して言えば、このカバー率、お隣の韓国と比べて、半分の一九%でございます。ぜひとも、今後、これを急ピッチで進めていただきたいと思います。

 また、この御所見を伺った後に、さらに、この条約締結後、中小企業にとっては原産地証明など手続がなかなかわかりづらい、情報が少ないという中小企業の声も伺います。今後、情報提供などの充実をさせていくべきだと考えますが、バックアップをどのようにとっていくおつもりがあるのか、お聞かせください。

牧野副大臣 ただいまの議員から御指摘のありました、特にEPAに係る原産地証明書の発給につきましては、法律に基づき経済産業大臣が指定した指定発給機関である日本商工会議所が今実施しているところであります。

 日本商工会議所は、ホームページやセミナーを通じて原産地証明書発給に関する情報を提供しているほか、全国二十一カ所の地方事務所においても、中小企業を含め、原産地証明書の発給手続に関する個別の相談の受け付け、アドバイス等を今行っているところであります。

 また、国内外のジェトロの事務所におきましても、貿易、投資の専門家が、EPA活用のための手続に関するアドバイスや、通関手続に伴うトラブル解決の支援を今行っているところであります。

 さらに、当省といたしましても、こうした関係機関と協力しつつ、セミナー等による周知活動を行うとともに、当省のホームページに設けております専用窓口を通じて企業等からの相談を受け付けるなど、対応を行っているところであります。

 今後とも、関係機関と連携しつつ、このような手続の面、支援のさらなる充実を図って体制を整えていきたい、このように思っています。

早川委員 よろしくお願いいたします。

 また、経済を安定させるということが一番の課題でございまして、今までも日銀法の改正についての質問がございました。円高対策、マーケットを安定させる、このことを政府と日銀が目標を共有する、そしてそれが日銀の役割だと明示をさせる、物価安定に徹底的に日銀が行動をとるといったことを担保してもらうためにも、私は日銀法の改正は極めて重要であると思っています。野党の先生方にも、この委員会を通して同じような意見が何度か出されております。

 社会保障と税の一体改革、この成立と同時に、日銀法の改正が求められると考えますが、改めて御所見をお伺いいたします。

安住国務大臣 そういう御主張があることは十分承知しております。

 長い日本の財政の歴史の中で、しかし、戦前にはさまざまなことがあって、ハイパーインフレを起こし、その後、敗戦に至っては国民生活を破壊してしまったり、金融当局と時の政権との距離というものをどういうふうにはかるかということは長い間さまざまな議論があって、その上で現在の日銀法というものが存在をしております。

 政府の方向、例えば金融緩和とか成長を目指すという点について、これは一体となってやっていくということについては、これまで以上に今の政権ではやっております。ただ、一方で、日銀の独立性をどういうふうな観点から考えていくかということについては、やはり慎重な議論が少し必要ではないかなというふうに思っております。

早川委員 ぜひとも、今後、与党でも十分な議論を重ねていただきたいと思います。

 次の質問に移ります。

 少子高齢化が進む中で、労働人口が減少していく中、女性をさまざまな分野で活躍させるということは日本の経済を支える大切なポイントであると思っております。

 一九七〇年代から八〇年代、アメリカでは、働く女性の増加が経済成長を支えてきたとも言われています。また、昨年九月、APECにおいては、ヒラリー・クリントン国務長官が、労働市場に占める女性の割合が増したことによる生産性上昇の効果は、現在、アメリカのGDPの四分の一、金額に換算をすると三・五兆ドルと言われています。さらに、あわせて、女性の労働参加の障壁を減らすことは日本のGDPを一六%上げるとの試算を紹介いたしました。

 日本でも独自の試算がされており、女性の就業希望者は、三十代を中心に三百二十四万人、この方たちが全員力を発揮していただければ、労働力は五%アップして、金額計算をすると約七兆円、GDPは約一・五%、新たな付加価値がつくられると言われております。そのために、特に三十代の雇用、これをしっかりとバックアップすることが必要であり、今までもこの委員会で子育て支援についても議論がされてまいりました。

 私は、違う視点、いわゆる雇用をふやすという部分で、ここで質問させていただきたいと思います。

 いわゆる女性の働く場の拡大ということで注目をしたいのは、新規事業所、特に女性の新規事業所の拡大、成長です。二〇〇六年から二〇〇九年の間、新規事業所、約四十一万件が雇用をつくったのは三百七十四万人でございます。

 特徴的なのは、女性起業家が設置した事業所の就労者は、約九割が女性であるということです。ですから、女性起業家を支援していくと、そこには女性の雇用が生まれるということ。これは、なかなか九割女性が働くということは大変なことだと思っております。このことに対して御所見をいただきたいと思います。また、どのようにサポートしていくのか、お聞かせください。

小宮山国務大臣 今委員が言われましたように、本当に元気な女性起業家がやはり日本の経済成長も支えていくと思いますので、そうしたところは経済産業省などとも連携をとって、起業家の支援ということをしたいと思っていますし、これまで何度も女性の就労支援と言われながら、報告書は積み上がっても実態が進まない、その中で、今、厚生労働省としても、女性の活躍促進・企業活性化推進営業大作戦と銘打ちまして、実際に、二十七年度までに二万一千社の企業に対しまして、ポジティブアクションの取り組みを推進するために、本省と都道府県の労働局で営業をかけていく、それを今月、男女雇用機会均等月間から始めるということに取り組んでいます。

早川委員 ありがとうございます。

 まだまだ日本の女性起業家の育成というのは少ないんですけれども、ある意味そこに伸び代があるということなので、しっかりと御支援をいただきたいと思います。

 また、今、厚生労働大臣よりお話がございました、二万一千社、アプローチをとっているということでございますが、まさにこれが生きた政策となることを期待いたしているところでございます。また、繰り返しになりますが、女性の経営者に働きかけるようにしていただくため、この二万社にも積極的に経済産業省とともに頑張っていただきたいと思います。

 社会保障と税の一体改革、増税だけがひとり歩きをしてしまっているような感じがいたします。まだ国民の多くは消費税増税後の景気の悪化におびえているわけで、ぜひ、中小企業対策、骨太の新成長戦略を出し続け、一人でも多くの国民にこの法案を理解していただいて、速やかに成立することを祈念いたしまして、私の質問を終えます。

 ありがとうございました。

中野委員長 これにて早川さんの質疑は終了いたしました。

 女性への助成措置、頑張ってください。

 次に、赤澤亮正君。

赤澤委員 委員長におかれましては、女性だけでなく野党にも優しくしていただきたいなと思います。

 自由民主党の赤澤亮正でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私、過去、予算委員会などでもなかなか社会保障のテーマで質問する機会がなかったので、本日は日ごろから感じている素朴な疑問についてお伺いをしたいと思いますが、その前に、閣僚の任命権者の野田総理がおられませんので、質問といっても限界がありますけれども、一言ちょっと言わずにいられないので、昨日の内閣改造について申し上げたいんです。

 一言で言えば、とにかく遅い、遅過ぎる。これは我が党の幹事長も記者会見等でおっしゃったようですけれども、問責決議が出てから四十日以上たっていますよ。全野党賛成で成立した問責閣僚の交代をいたずらに引き延ばしてきたということです。その結果、国政の停滞を招いていることは否定できないと思いますよ。加えて、もしかしたらそれよりももっと問題なのは、国の独立と平和、あるいは国民の生命、身体、財産を危険にさらしたと言われてもしようがない、私はそう思っています。いかなる理由があっても許されるものではないということをまず強く指摘しておきたいと思います。

 昨日の内閣改造は五閣僚の交代でしたけれども、要するに、問責二閣僚と問責予備軍二閣僚の、不適格者合計四名の交代であった、こういうことです。特に、そのうち防衛大臣と法務大臣は、本年一月にも不適格者の交代があってからまだ半年もたっていないですよ。このような短期間に不適格者の後任がまた不適格者という閣僚ポストが二つ出てくるということは、これはもう言語道断と言わざるを得ないですよ。どう表現していいのかわからない。

 その中でも、目玉人事は田中防衛大臣の交代であったことは衆目の一致するところだと思います。私は、後任の森本敏新防衛大臣を悪く言う気はさらさらありません。素人の次はど素人とやゆされた過去二代の一川、田中両防衛大臣よりはるかに安全保障分野の見識が高いことは間違いないと思います。

 これは任命権者である野田総理がおられませんので、誰に聞くか迷いますし、お答えも困るかもしれませんけれども、総理の職務代行第一順位ということで岡田副総理、それから、防衛副大臣を経験しておられるので安住大臣でも結構でございます。コメントをもらいたいと思うのは、なぜ、素人の次はど素人、そのまた次は民間人なんですか。民主党はそこまで人材がいないのか。要は、国家の独立と平和を守る防衛大臣を党内から出せないということは、政権担当能力がないと言われても仕方ないんじゃないですか。コメントをいただきたいと思います。

岡田国務大臣 まず、問責の問題は、これは与党、野党、お互い立場をこれからも変えていくわけなので、やはりどう考えるべきかというのはお互い知恵を出した方がいい。確かに問責は、そういう決議がされれば、それは重く受けとめなければならないことは事実ですが、そのことによって、今回も、だから交代させたということはないんですが、国会も動かなくなる、こういうことについてどう考えるべきかということは、やはり冷静に議論すべきテーマだと私は従来から思っております。そのことをまず申し上げたいと思います。

 その上で、森本さん、彼は、安全保障問題については、総理も言っておられるように、我が国の第一人者の一人であることは間違いありません。論客でもあります。ですから、そこを買って適任と見て大臣になっていただいたということであって、いろいろな議論はありますけれども、シビリアンコントロールとかそういう観点で議論をされる方はいらっしゃいますが、私は余りその議論はよくわからない……(赤澤委員「シビリアンコントロールは聞いていませんから」と呼ぶ)わかりました。適任者だというふうに考えて、森本さんに防衛大臣になっていただいたというふうに考えております。

赤澤委員 続けさせていただきますと、岡田副総理、今、真摯にお答えいただいたんだと思いますが、今回の再改造内閣を見ると、私は、やはりさっきの論点からいうと、民主党はちょっと人がいないんじゃないか、もう既視感というかデジャブを覚えるんですよ。というのは、かつて社会保障分野で進退きわまった民主党が、それまで民主党の社会保障政策を真っ向から厳しく批判して違う見解を持っていた、当時自民党の与謝野衆議院議員に助けを求めた事例を思い出すんです。

 森本新防衛大臣も、同様に、ずっと民主党の安全保障政策を厳しく批判してこられた方ですよ。なおかつ、例えば集団的自衛権などについて、自民党の防衛政策とよっぽど親和性が高い方です。民主党との見解、全く相入れない、そういう主張をお持ちのはずですけれども、安全保障分野で進退きわまった民主党がまたぞろ、これまでにいわば自民党が培ってきた人材にすがりついた格好である、私にはそう見えます。

 岡田副総理からお答えいただけなかったので、待機中の、待機中のというか先ほどから準備されているように見えるので、安住財務大臣にお伺いをしますが、民主党に本当に人材がいないんですか。

 というのは、田中大臣、ひど過ぎたでしょう。もしもし大臣とも言われているし、無断退席してコーヒーも飲んだし、PAC3とP3Cの違い、あるいは軍隊と警察の違い、どれも何か余りわかっておられるように見えなかった。本当に国民は不安になったわけです。彼よりましな、そういう人材が民主党の中に本当にいないんですか。

安住国務大臣 私は思うんですけれども、二つあるかなと。防衛省は日本最大の国家組織でございます。ですから、今ちょっと正式な数は忘れましたが、二十五万人弱ぐらいの人間が勤めておりますので、例えば、選挙区が先生のお隣の石破先生、長く防衛大臣、一番おやりになったんですかね、政策的に明るいこともさることながら、私が個人的に着任して思ったのは、防衛省にとって、やはり、組織をいかに機能的に動かしていって、ある意味で仕事をしやすい環境をつくってやるかということと同時に、ユニホームを着た人たちと我々制服を着ていない者同士のある意味での関係というものをしっかりわきまえて、そして対応するということだと思います。

 日本の自衛隊は、東日本大震災を見ていただくとわかるんですが、やはり非常に完成度の高い組織でございますので、森本先生は浜田大臣のときの補佐官でございましたから、私が着任したときにも、防衛省の中へ随分おいでいただいて、いろいろな意味で御示唆いただいていますから、別に民主党政権下で、民主党との関係が非常に、政策が百八十度違って、意見が違うのでそこに助けを求めたというのとはちょっと違うとは思います。

 ただ、沖縄問題等について非常に助言をいただいていましたから、それを生かしていただければということと同時に、民間人はだめだということなんですが、内閣法で今までもこれは……(赤澤委員「委員長、質問に答えていないので、もういいですよ。私は民主党に人がいないかと聞いているんです。民間人はだめとか言っていないですよ」と呼ぶ)民主党には四百人近く議員がいます。ですから、私は、赤澤さん、何を言いたいかというと、こんなことを言うと大変また怒られるかもしれないけれども、私は……

中野委員長 結論を急いでください。

安住国務大臣 はい。二十五年近く政治を見ていますと、防衛庁長官時代から見ていただければ、防衛の専門家だけがなったんじゃないんですよ。やはり、統率がうまくて、人の上に立って組織をうまく動かせるような方々で初入閣なさった人は自民党時代もたくさんおられますので、さまざまなタイプがあるということだと思います。

赤澤委員 委員長には、結論を急いでくれと言って、野党の私にも優しくして、大変ありがとうございます。

 今のは、結局、答えになっていないんですよ。だから、防衛の専門家でなくても統率できる人がいればいい、ポイントを言えばそういうことですけれども、そういう方が民主党にいないんですかということを我々は聞いているわけですよ。民主党の政権担当能力がそこで問われているということを指摘しているんです。何で党内から出てこないのか。

 これは安住大臣特有の、ほかの問題でもそうですが、非常にのらりくらりと、まあ、お人柄か、するすると……(発言する者あり)そういうことだと思います。横から援軍もいただきましたので、こればかりやっていてもなかなからちが明きませんので、次に進ませていただこうかと思います。

 繰り返し指摘しておきますけれども、今回の内閣改造は遅過ぎたということと、あとはやはり、民主党の中からそういう人材が、私は、民間人がだめだとか言った覚えもないし、見識が高い方ではないと言った覚えもないんです。森本さんは本当に立派な方だと思います。少なくとも前二人の防衛大臣よりは、安全保障分野はよほど見識が高いと思います。ただ、そういうこととは別問題として、なぜ民主党の党内から出てこなかったのかということについては本当に素朴な疑問を覚えますし、これはインターネット等で見ておられる国民の皆様も同感ではなかろうか。本当に政権担当能力が問われる事態、社会保障も安全保障も、どうも党内の人材だけで賄い切れないという感じが強くしたということは指摘をしておきたいと思います。

 次に、消費増税関連法案の審議を今やっているわけでありますけれども、政府・与党の覚悟のようなものについてお伺いをしていきたくて、法案審議のまずスケジュール感ということなんですね。

 野田総理が政治生命をかけると宣言をされた消費増税関連法案の審議時間が、私の承知しているところは先週末で六十三時間にも達しています。いよいよ、順調に審議を進めれば、来週には百時間の大台に達する、こういう状況になっています。この点を踏まえれば、政府・与党には、そろそろ衆院で採決するまでの日程案を示す責任があるんじゃないかと思います。

 いまだそれは示されていないと私は理解していますけれども、現時点でどのようなスケジュール感を持っておられるのか、岡田副総理にお尋ねをいたします。

岡田国務大臣 まず、昨日の記者会見で総理が明確に述べられましたが、六月二十一日、今国会の会期末であります、というお尻を見据えてそれまでに衆議院で採決する、そのために最大限の努力をするのが政府・与党の務めであるということを記者会見で述べられております。そのことに尽きるわけですけれども、六月二十一日を目指してやっていく。

 ただ、これは当然、各党間に協議をお願いしなければなりません。その協議が調わなければ採決というのも難しいということでありますので、そこは真摯に協議をぜひさせていただきたい。そして、何とか早く協議がまとまって採決できることを期待したいというふうに考えているところでございます。

赤澤委員 G20に総理がお出かけになると承知をしています。会期末に衆院では採決ということであれば、誰が考えても十五日には何とかということじゃないかと私は理解をするので、もう本当に目の前まで来ています。

 率直に申し上げれば、どうも総理がこれまでやられたことを見ると、問責閣僚を交代させることを何か取引に使おうとしているかのように一瞬私には見えたわけであります、引き延ばして。しかしながら、はっきり申し上げれば、改めて申し上げるまでもないですけれども、内閣改造と当委員会の審議は全く関係がありません。

 本日、三党の幹事長会談があるやに私は伺っています。これだけもう目と鼻の先に、総理がおっしゃったことを実現するには採決をしなきゃいけない日取りというのが見えてきているのに、与党の幹事長から十五日には採決させてほしいという話がきちっと出てくるのか、本当にいぶかしいんですよ。

 率直に申し上げて、本日の会談、まだないので、その中身については予断は許しませんけれども、政治生命をかけている総理、それと一体のはずの内閣はもちろん、輿石幹事長を含む党の執行部が本当に一体でなければ、それは我々野党からすれば、真剣に一生懸命やってきたのに、もうばかばかしいという展開になるわけですよ。

 その辺、本当に例えばきょう幹事長から、明らかにもう十五日ぐらいにはやらなきゃどうにもならないんだけれども、与党としては、協議もあるけれども、それを念頭にやらせてほしいなんという真摯な話というのは出てくるんですか。

岡田国務大臣 まず、十五日という数字は総理は口にしておられないんですね。きのうの記者会見でも、記者から、十五日までに採決しろという指示と受けとめていいかという質問がありまして、それに対して総理は、二十一日がお尻であるということを言われております。それに向けて環境整備をしなきゃいけないんだということでございます。

 きょうの三党幹事長会談で我が輿石幹事長が何を言われるかというのは、これは党の話ですから、私が臆測で物を言うことは避けたいと思いますが、昨日も、政府・民主の役員会議といいますか、七人の会議で総理の指示ははっきり出ておりますので、それを踏まえて輿石幹事長はお話しになるというふうに思っております。

赤澤委員 私は自民党の執行部ではありませんので、余り中央公聴会の日程とかそういう細かいことまではここで言いません。しかしながら、それなりに国会の日程、スケジュール感、進み方というものを理解している者からすると、総理がおっしゃったことをきちっと実現しようと思えば、本当にそろそろお話がなければ、後々、そんな突然にどういうことだ、不誠実だと野党が言わざるを得ないようなことになりかねない段階までもうそろそろ来ていると私は思うんですよ。それをきちっと認識した上で、本当に、総理と内閣と党が一体になって、ぜひきちっと話を進められる体制を整えていただきたいということを重ねて指摘をさせていただきたいと思います。

 その次に、やはり政府の覚悟ということで伺いたいのは、繰り返し申し上げているように、不適格の閣僚の交代だけで自民党が民主党の問題の多い社会保障政策に乗るなんということはあり得ません。

 自民党は、実はことしの党大会で、民主党の公約違反の増税に加担することはできないという平成二十四年党運動方針を決定済みなんです。だから、ここも当然理解をいただいていると思うし、理解していただかなきゃいけないのは、我々だってそんなにフリーハンドがあるわけではありません。率直に申し上げれば、政府・与党に甘い期待を持たれては困るので、あえて率直に申し上げれば、やはりマニフェストを撤回していただいて、自民党の社会保障基本法案を丸のみするような、それぐらいの対応をしてもらわないと、我々だっておいそれと安易な妥協はできないんです。

 その辺の政府の覚悟についてお伺いをしたいと思います。

岡田国務大臣 これは、各党間で御協議いただく中身ですので、今余り政府が言わない方がいいと思います。

 いずれにしろ、私は、社会保障・税一体改革は待ったなしだと思いますので、国民の立場に立って真摯な話し合いがなされる、そのことは必要だと思います。

 それから、委員の質問に直接お答えしているわけではないということをお断りした上で、やはり我々政府としては、社会保障・税一体改革についてお願いをしておりますので、そういう姿勢で謙虚に、いろいろな御提案について受けとめていかなければいけないというふうに考えております。

赤澤委員 これは本当に国民にとっても国家にとっても大事なテーマだというのは、完全に岡田副総理と認識を共有していると思います。

 それで、くどいようなんですが、私は、本当にこれはナローパスだと思うんですよ。きちっと、総理が政治生命をかけたけれども、法案が成立するということはそう簡単なことではないと思います。

 それで、あえてもう一度だけ伺っておきたいのは、マニフェストを撤回して自民党の社会保障基本法案を丸のみするというような可能性は、現時点でこれはもう否定されるんですか。その辺のことをもう一度お伺いしたいと思います。

岡田国務大臣 今の御質問については、私はお答えしない方がいいと思います。

 しっかり各党間で、協議が始まれば、もちろん、その協議というのも恐らく、全部の政党とやるというよりは一対一でお願いすることになるだろうと思いますけれども、その場でいろいろなお話をさせていただくことになるというふうに思っております。

赤澤委員 政府・与党に相当な覚悟を求めるということだけ、繰り返し申し上げておきたいと思います。

 それで、次の話題に移りますが、この一体改革特委を開いて審議を進めたことは、私は非常によかった面があると思っています。

 それは、これは恐らくテレビ入りだったと思いますけれども、五月二十一日、多くの国民の皆さんが見ている中で、野田総理もはっきりと、現行制度の中に、トータルで一億人の方がこの年金制度にかかわっているわけでございます、この制度が破綻をしている、あるいは将来破綻をするということはございませんとはっきりこれをおっしゃっています。

 御参考までにですけれども、順不同でいけば、五月のやはり同日、小宮山国務大臣も、我が党の鴨下委員の、今の年金制度は安定して大丈夫な制度なんですか。大丈夫な制度でございます、そのように設計をされています、制度として安定してもらえるということでは、そのとおりでございます。

 最後に、岡田副総理です。五月三十日ですね。国民年金そのものは、計算上これも成り立つ、私、国民年金は壊れているという表現、党首討論などでも使っておりまして、そこは行き過ぎがあったということはおわび申し上げたい、計算上は成り立っている。

 関係する閣僚が一気通貫で、現行の年金制度は破綻しないということをきちっと宣言していただいたことの意味は、私は大変大きいと思っています。

 自分で地元で国政報告会などをやっているときの感じを申し上げれば、やはりいまだに、正直申し上げて、政権交代の選挙のときの民主党の議員の皆様のキャンペーンがきき過ぎていて、本当に年金が破綻するという不安を持っている高齢者の方が物すごくたくさんいます。だからもう、今私は街頭演説に立つと、五月二十一日に野田総理も年金は破綻しないとおっしゃいましたよ、安心して、年金は破綻しないという信頼をして老後の人生設計をやってくださいということを一生懸命呼びかけています。

 私は、ここは本当に危機意識を持っていて、現在も高齢者の皆様の年金不安は非常に根深いと思います。だからこそ、個人の金融資産の大半を保有している高齢者の皆さんが、端的に言って、いまだにお金を使わない。国内にお金はあっても、個人資産、金融資産が千四百兆とよく言われていますけれども、国民は世界的に見てお金持ちであっても、国内経済にはお金が回らない、いつまでたってもデフレ経済から脱却できない。

 私は、高齢者の年金不安が日本経済の最大のおもしであって、そして経済発展の最大の障害であると考えています。

 そういう意味からすると、もう既に、総理も岡田副総理も小宮山大臣も、現行制度についていたずらに不安をあおることはもうしない、破綻するものではない、計算上成り立っていると。もちろん、見直しは否定しません。今のものが金科玉条で全く直す必要がないとは我が党も全然申し上げませんし、そういうことでありますけれども、その点、政府・与党挙げて、現行の年金制度は破綻しない、国民の皆様は安心して、年金を信頼の上、老後の人生設計をしてくださいというメッセージを強く発することというのは、私は、消費税増税の前にやるべき優先順位の極めて高いテーマじゃないかと思うんです。

 その点についてどうお考えになりますか。

岡田国務大臣 今委員御指摘のように、国民年金制度を含めて、年金の支払いはきちんとなされるということであります。ただ、年金の外、国民年金に入っておられない方がたくさんいて、そういう方が将来無年金になる、そして生活保護に頼る、そういったことについての政策課題があることは間違いない、そういう意味でさまざまな議論が要るというふうには考えております。

 現在、年金に入っておられる方について言えば、その方々が年金がもらえないというようなことは、それはないということでございます。そのことはしっかりと伝えていかなければいけないというふうに思っております。

赤澤委員 今おっしゃったことは答弁の中で何度もおっしゃっているし、入っておられない方、低所得者の方の対策とかが必要なことは認めますが、我が党としては、基本法案の中で、基本的にはやはり保険料をきちっとお払いいただいた方に年金を差し上げる、所得が低くて払えない方も保険料に応じて年金をお渡しする、それでカバーできない部分は、これは別途、生活保護などの低所得者対策で手当てをするということを党としては法案の形でまとめているわけであります。

 その点の必要性があることは全く我々も認めますし、考えは違えど対策は講じようとしているわけでありますけれども、しかしながら、国民年金に加入している方たちが不安に思っているんです。その不安が余りに大きくて、いまだに財布のひもを緩める気にならぬ、年金がいつどうなるかわからぬならもう貯金にすがるしかない、貯金は極力取り崩せない、これは大変なおもしだという認識をぜひ共有していただいて。

 私、これは政府・与党の皆さんが言いづらいのはわかるんですよ。言葉を選ばずに言ってしまえば、年金不安をあおって前回の衆院選挙に勝利して、政権交代が実現しています。年金不安に根拠がなかったと認めることは大変つらいだろうと思いますけれども、これは国家国民のために本気で取り組む課題だと思います。もう一度、いかがですか。

岡田国務大臣 いろいろな集会に出ておりまして、私、実感することは、委員おっしゃったことは事実です。しかし、そのほかに、消えた年金の問題というのもあるんですね。だから、やはりここはきちっと回復をして、年金に対する信頼を取り戻さなければいけない。

 それからもう一つは、若い世代が、自分たちは少なくとも払った保険料だけ受け取れないのではないか、世代間に不公平があるんじゃないかということを根強く思っている。ここに対しても、いや、税金が半分入っているんだから払った保険料以上に年金は受け取れますよということを説明するわけですが、こういったことをトータルできちっと国民に対して伝わるようにしていかなければいけないというふうに考えております。

赤澤委員 今、幾つかのことをおっしゃいました。

 二つお答えをしておきたいのは、やはり大事なのは、副総理がおっしゃった年金記録の管理がずさんだった、これはあってはならない不祥事で、それは自民党も非常に責任を感じているわけです。それが年金不安の引き金になっちゃっていることは否定ができません。ただ、それと制度設計がおかしくて制度が破綻するんだという話は全く別問題なので、そこは分けて、きちっと国民の皆様に理解してもらう努力をやはり政府・与党に求めなきゃいけないことは間違いないということ。

 それからもう一つは、今まさに、ちょっと通告した中身に絡むので副総理がそういうお話をされたのかもしれないんだけれども、この辺の話は、今、年金の受給を開始された年齢の方たちに幾ら説明しても御理解いただくのは至難のわざなんですよ。国政報告等でお話ししても、高齢者の方が最後に言うのは、きょうの年金のお話はとてもいいお話で安心したけれども難しくてわからなかった、こうなっちゃうんです。そうなると、大事なのは、中学か高校ぐらいからきちっと年金について、社会保障について教育をしておくこと。それが、ちょっと皮肉っぽく言えば、第二民主党が出てきて年金不安をまたあおっても、国民が安易にそれに乗らない、私はそういう防波堤になると思っているんです。

 年金記録の問題については責任があるということは繰り返し私は認めておきますけれども、やはり年金教育、そういったことをきちっとやっていくべきだということについては、きょう文科省には声をかけていませんけれども、年金を担当されている立場から、例えば、一体改革がなし遂げられたらそれについての理解を求める、そういうことも含めてぜひきちっとやっていくべきじゃないかと思いますが、その辺についていかがですか。

小宮山国務大臣 それは委員がおっしゃるとおりだと思います。

 特に、いろいろな集会などで若い方たちにこの仕組みの説明をして御理解いただいた上で、安心できるものだということは強く私からも申し上げていますが、なかなか時間のかかること。

 そういう意味では、やはり、学校教育の中で、共助の仕組みで社会保険を中心にしてやっているということも含めて、この社会保障の制度をしっかりと教えていくということは大事だということで、これは、厚労省としましても、平成二十三年度から有識者の検討会をつくりまして、教材の作成ですとか試行事業の実施など、社会保障教育の実践に向けて今取り組んでいるところですので、文科省とも協力をしてしっかりやっていきたいというふうに思います。

赤澤委員 我が党の委員も繰り返し当委員会の質疑の中で申し上げていることですけれども、やはり年金制度は政争の具にしてはならぬ、これで政局はやらぬようにしないといかぬ、しっかりと国民に教育を受けてもらいたい。

 特に大事だと思うのは、受給開始された後というよりは、今の未納の問題を解消していくにもそこが非常に大事で、基礎年金なんか、これは半額税金で払っている。さっき岡田副総理もおっしゃいました。だから、自分は保険料を払わないからといっても、そうすると将来、年金はもらえず、消費税を払った分は払い損になるんだというあたりがきちっと理解されて、年金が破綻しないとなれば、これは、払わないのはおかしいぐらいの話だと私は思っています。単純に計算すれば、一払えば一・五ぐらいは返ってくる、なぜなら、多少目減りはするけれども、税金で半分出してもらうから、こういう話ですね。その辺のことを、今、未納が非常にふえている世代にきちっと教育することの必要性は、私は、繰り返し申し上げておかなきゃいけないと思います。

 以上のことをとりあえず、中間取りまとめじゃないですけれども、お話をすると、年金制度は現行の制度も破綻しないということを、きちっと政府・与党挙げて、あるいは与野党挙げて国民に理解を得るように運動を起こすということと、それから、将来的にはきちっと教育をして、未納の問題等の解消を全力でやっていく。大変根深いので、そこまでやらないと恐らく解決はしないだろうということを強く指摘しておきたいと思います。

 次の話題に移ります。

 これは社会保障における自助の考え方ということですが、我が党は、きちんと保険料を納めた国民の皆様に対して年金をお払いする、自助の考え方を貫こうということで、社会保障基本法案を取りまとめました、骨子を取りまとめております。

 民主党の、今の政府の方たちは、最低保障年金について、最近になって、保険料を払えなかった人は格別、払えるのに払わなかった人にはおいそれと支給するつもりはないという趣旨の答弁を繰り返していますけれども、これは自民党の基本的考え方に歩み寄ったという理解でよろしいですか。

岡田国務大臣 これは今まで誤解があったかもしれませんが、我々も、所得に応じて保険料をお払いいただく所得比例年金、ここに加入いただくことが前提ですので、そこに加入すらしていないということであれば、それは最低保障年金も受け取れないということになるわけであります。

 所得比例年金に加入したけれども、所得が非常に少なくて保険料が非常に少ない、あるいは所得がゼロであれば、極端なことを言えば保険料はゼロになるわけですが、そういう方については、これは一定の割合では最低保障年金も受け取れるということになりますが、生涯を通して所得がゼロというのはちょっと考えにくいわけで、基本的には保険料を御負担いただくということが前提になります。

    〔委員長退席、古本委員長代理着席〕

赤澤委員 それで、最低保障年金についてのマニフェスト二〇〇九の記述をちょっと確認したいんです。鳩山総理が大きな顔写真で出ているものですよ。これは、理事会で了解を得ないと、マニフェストを配付したり、あるいはここで示したりできないので、あえてちょっと言葉でいきますけれども、三が社会保障について書いてある。五つの約束のうちの三番目でしたね、でっかい活字で三となっていました。

 そこにはっきり書いてあるのは、国民全員が受け取れる年金制度を確立と最低保障年金のことが書いてあるんですよね。受給資格とか受給要件のようなものというのは一切書かれていないんですよ。あのマニフェストを見て、全ての国民が受け取れると書いてある、それを評価した人は非常にたくさんいると思います。

 私から見ると、何の説明もなしに、言葉でマニフェストを変更しちゃっていないかなという強い疑念を抱くんですけれども、そこについてはどう理解されますか。

岡田国務大臣 これは国会でも事前に議論がいろいろな場でなされてきておりますが、保険料が全くなしで、つまり制度に加入すらしていない方に最低保障年金を支払う、そういう議論は国会の場などで我が党はしていないし、逆の議論をしたことは何度かあるんじゃないかと私は思っております。

赤澤委員 それで、足らざるところがあると思ったからこうなったんだと思うんですよ。というのは、昨年夏の成案をまとめる直前の五月二十六日に民主党が公表した「「あるべき社会保障」の実現に向けて」という紙に、「最低保障年金の受給にあたっては、適切な受給要件を設ける。」という表現が入っているんですよ。保険料を払わなきゃもらえないのは当たり前だから書かなくていいんだという岡田副総理の理解なら、こんな記述を改めてしなくていいはずなんですね。足りないところがあると思うから後で直したんですよ、これは。

 だから、改めて言えば、この五月の時点で「「あるべき社会保障」の実現に向けて」なる紙をつくった段階で、国民に信を改めて問うことなくマニフェストを勝手に変更して謝罪もしていないということじゃないですか。

岡田国務大臣 ちょっと今手元に持ってきていないんですが、年金の審議をしていく中で、私が先ほど申し上げたように、保険料をそもそも加入せずに払っていない、そういう人には受け取る資格がないということは、何度か我が党の議員の口から出ているはずであります。

 ですから、変えたとか、そういうことは全くございません。

赤澤委員 あながち納得できないんですけれども、しかしながら、ぜひこれはお願いをしておきたいし、御党所属の全ての議員にかかわることだと思うんですが、私は、恐らく、この質疑を真面目にフォローすることもなく、いまだに日本国じゅう各選挙区で、年金制度は破綻するんだから、だから民主党の新年金制度です、支持をお願いしますとやっている方たちがいるんじゃないかと心配をします。断言しません。

 それから、最低保障年金についても、岡田副総理は高潔な方ですから、おっしゃっていることを信じて、誠心誠意おっしゃっているのは私、理解しますけれども、最低保障年金、全ての人がもらえるんですよと本当にやっていないか。やはり党内でもきちっとそこは、本当にこれは大事な話なので、もう一度よく議論をされて、各議員の皆様も、我々も一緒になって、その辺については、受給資格というものがきちっとあるんだというのは、これは国内に浸透するようにぜひしていただきたいということをお願いしておきたいと思います。

 先ほどのマニフェストのあれについて言えば、やはり当初のものがまずいと思わなきゃ、「最低保障年金の受給にあたっては、適切な受給要件を設ける。」なんということを後から申しわけ程度に書き添えるようなアクションにはならないんだろうと私は思います。少なくとも、選挙ツールであるものにはそれを書かずに戦ったということは、繰り返し、不適当だったということを指摘しておきたいと思います。

 次に、これは小宮山大臣に伺えばいいですかね、現行制度の問題なので。国民年金、これじゃちょっと私は足りないなと思う加入者の方にはどういうツールが用意されていますか。

小宮山国務大臣 今回は、低年金の方がいらっしゃるという現実の前に、低年金の方には基礎年金に加算をするというやり方。それから、資格期間を二十五年から十年に短くするということ……(赤澤委員「ごめんなさい、現行制度。もう一回質問しましょうか」と呼ぶ)今の制度。国民年金基金で上積みができるような形をとっています。

赤澤委員 済みません、国民年金基金について質問すると通告していたので、あうんの呼吸でその辺を言っていただけるかと思ったんですが、新年金制度に小宮山大臣が大変熱意があるというのがよくわかりました。

 それで、伺いたいのは……(発言する者あり)褒め過ぎですか、済みません。民主党のマニフェストがうたう年金一元化の結果、今の国民年金と国民年金基金の組み合わせは一体どうなるのか、国民年金基金は存続するのか、その辺についてお伺いをしたいと思います。

小宮山国務大臣 国民年金基金制度というのは今の公的年金制度を前提としてできているもので、新年金制度導入の際の制度設計についてはまた議論をすることにしていますけれども、どういう考え方であっても、国民年金基金の制度というのは、上乗せでさらに所得を保障するという意味でこれは大事な制度だと思っていますので、この理念は貫いていく必要があるというふうに思います。

赤澤委員 今、安易に、貫いていくと言われたけれども、それは貫きづらいと思います。その話を今からいたします。

 現行の国民年金基金は、若いときに加入をすると、月々一万円ほど掛金を払えば、将来月々二万円程度もらえるというような仕組みです。最大で六万八千円まで掛金を払うことが可能で、その場合は、例えば一つの例であれば、年間百二十万円年金がもらえる。かつ、掛金、保険料は全額所得控除、社会保険料控除がききます。受取金、年金は公的年金等の控除がきくということで、税制上も非常に優遇されたものとなっているんです。

 要するに、国民年金基金は、やる気のある国民が頑張って掛金を多目に払って自助努力できる仕組みなんですね。税制優遇措置もついていて、その自助努力が国を支援する仕組みが非常に上手に構築されていると思って、私は、この制度を知るに至ったときは、一目ぼれじゃないけれども、これはいい制度だなと。

 一体何が問題なんですか。この制度について何か問題がありますかね。

小宮山国務大臣 今委員も言われましたように、この国民年金基金制度は、国民年金のみに加入している自営業者などが国民年金に上乗せをして厚生年金に加入しているサラリーマンなどとの格差是正を図るという意味で、これはすぐれた制度だというふうに私も思っています。

 具体的には、任意に加入できる制度で、地域ですとか職域単位で設置されている基金に加入する。それで、国民年金の上乗せとして、掛金に応じた額の給付を受給できる制度となっていますので、この制度に特に問題があるというふうには思っていません。

赤澤委員 そうすると、現行制度は、大体今、年二百八十円かそこらずつ保険料がふえていっていますけれども、今で一万五千円前後、たしか二〇一七年に一万六千九百円で頭打ちだったですかね、そういう掛金で、なおかつ、この基金を活用すれば最大六万八千円まで掛金を多く払って、こういうことですね。

 ところが、これは、少なくとも林参議院議員は指摘されたと思いますけれども、民主党の一元化によって保険料が一五%になると、例えば年収四百万円の方は年間六十万円保険料を払うことになる。これは月五万円です。今の三倍以上払うことを求めるのが、民主党が提示した年金一元化なんですよ。

 一万五千円を払った上に六万八千円まで上乗せというなら現実味があると思うんだけれども、五万円払った上に、国民年金基金はいい制度だから精神を維持するといいますけれども、それは、大方の自営業者の方とか農業者の方とか、あるいは非正規雇用の方とか、例えば年収四百万円であれば、五万円を当然に払った上にさらに上乗せと言われても、もうあっぷあっぷじゃないかと私は思うんです。本当に、一五%保険料をお払いいただいた上で、国民年金基金は精神がいいからそのまま続けるといって、それは機能する制度になりますか。

小宮山国務大臣 新しい年金制度の中でこの国民年金基金の精神をどういうふうに受け継ぐのかどうかということは、これは今党の中で検討している中でさらに検討されるべきものだと思っています。

 ただ、一五%で五万円ぐらい払わなければいけないということについては激変緩和の措置ということも考えていますし、そうしたことの中で、あわせてどのような形にすれば自営業者の方に一番安心していただける制度になるか、これはこれからの論点になるところだというふうに思います。

岡田国務大臣 我々の制度は、確かに保険料が上がるんですが、給付も上がるんですね、所得比例年金ということで。

 ですから、そこで給付が上がれば、その部分、今、国民年金基金に加入しておられる方も、給付が上がる部分は別に国民年金基金に頼らなくていいという部分が出てまいりますので、額の調整などはその分なされる可能性が高いというふうに思います。

 しかし、そうであっても、なおかつ国民年金基金に引き続き加入したいとか多少減額して加入を続けたい、そういうニーズはあると思いますので、そういうことも含めてどういう制度設計にするか、よく考えていく必要があるというふうに思っております。

赤澤委員 どちらが得かというような試算というのはやられたことはあるんですか。

岡田国務大臣 これは基本的に仕組みが違うわけですね。国民年金基金、私も、もう二十二年間、初当選以来加入しておりまして、議員年金がなくなることを見越していたかもしれません。そういう意味では非常に助かるわけですけれども。

 いずれにしても、これは積み立てに非常に近いものだと思うんですね。所得比例年金の方は賦課方式ということですから、単純にこれを比較することはできないんだろうというふうに思っております。

赤澤委員 だけれども、そういう比較を示さなければ、自営業者の方や農業者の方がどっちの制度がいいんだなんて判断できませんし、その上で、ほぼ同じだったとしても、私、申し上げたいのは、自助の考え方というのはどういうことなのかということなんですよ。

 要するに、一万五千円前後という保険料にしておいて、六万八千円上乗せできますよ、自助努力で頑張ってというのは、私は大変すぐれた仕組みだと思うんですよ。ところが、今、岡田副総理は、保険料、新年金制度で上がりますけれども、もらえるものがふえると言うけれども、別に、保険料を多く払って多く年金をもらうというのは、今の仕組みでできるんですよ。国民の選択でできるわけですよ。そのための国民年金基金なんです。

 だから、国民に裁量の余地を残して、自助努力をしてくださいと促して、自助努力をした人には税制で支援するというのは非常にうまくできた仕組みで、そこを、保険料を上げて、たくさん上げるからそれでいいでしょう、それに差しかえますというのは、私に言わせると、高圧的で硬直的で乱暴ではないかということですよ。そこについて御理解いただけないんですか。

岡田国務大臣 これは、年金の本質をどう考えるか、そういう議論なんだろうと思うんですね。

 委員おっしゃるように、最低限のところを公的年金でカバーして、あとは自助努力的な、積立方式とかあるいは任意加入というふうに構成することは、白地で書くのなら、本来ある厚生年金、共済年金でカバーしている部分についても同じようなことができるはずであります。しかし、そこはやはり強制徴収というか保険料を納めていただいて、かなりの金額の年金を払う、そういう仕組みになっているわけですので、何といいますか、今の国民年金のあり方がよくて、そういった少し高い保険料を取って高い年金の額を払う厚生年金、共済年金がだめだということでもないので、公的年金という中でいろいろなバリエーションがある、こういうことだろうと思います。

赤澤委員 だめだということではないとおっしゃったけれども、私はだめだと思いますよ。自営業者や農家の方に、例えば、年収四百万、地元の農家の方でも年収一千万なんて方、二千万の方、おられますよね、一五%の保険料なんて言ったら、これはもうびっくり仰天だと思いますよ。そこをきちっと理解されたら、もうこれは賛成のしようもないんじゃないかと思います。

 その辺は、やはり逃げることなく、本当にそれで国民に理解を得たいんだったら、それをもう正面から問うてくださいよ。自営業者、農家の方に、本当に保険料一五%、年収幾らの方はどうなりますよと、ちゃんとキャンペーンをやってください。そうしたら、もう私はこれは沙汰やみになる話だと思います。難しいと思いますよ、本当にそれで移行しようと思ったら。理解が得られないと私は思うので、その点は指摘をしておきたいと思います。

 残った時間で、民主党のマニフェスト二〇〇九についてお伺いをしたいと思います。

 なぜマニフェストにこだわるか。この議論をすごくやってきていると思うんですが、やはり私は、それを撤回して我が党の基本法案に乗ってもらわないと、なかなか道が開けないんじゃないかと強く思うものですから、マニフェストについてちょっと幾つかお話をさせていただきたいと思います。

 それで、今まさに副総理が手にしておられるものですけれども、民主党のマニフェスト二〇〇九の十六・八兆円の恒久財源調達をうたう工程表がありますね。

 十六・八兆円で実施する政策の内容として、見ていただくと、年金制度改革、最低保障年金と書いてありますね。医療、介護の再生と書いてあるんですよ。子育ても書いてあるんです。そうすると、十六・八兆円で、ほぼ全ての社会保障分野が網羅的に書いてあるんですよ。その財源の一覧表には、消費税増税は一切含んでいません。

 そうすると、はっきり言わせてもらえば、要するに、民主党のマニフェスト二〇〇九は、消費税を書いてないんじゃなくて、消費税増税なしで社会保障改革等を実現すると宣言しているマニフェストなんですよ。それで国民と約束を交わしているんです。書いてなかったから説明が足りなくてごめんねじゃないんですよ。それをきちっと読めば、最低保障年金は無駄等の排除で見つけた十六・八兆でやると書いてあるんですよ。説明不足じゃないです。

 明確なマニフェスト違反だと思いますが、いかがですか。

岡田国務大臣 このマニフェストの中で最低保障年金に必要なお金が入っているかと言えば、それは、結論を言えば入っておりません。

 この十三・二兆円というのが、十六・八兆だけれども、そのうちの三・六兆はペイ・アズ・ユー・ゴーだということで十三・二兆円という金額がここに大きく書いてあるわけですが、その十三・二兆円の内訳の数字は、その上、子ども手当以下ずっと書いてありますので、年金制度の改革についての財源というのはここには書いてないということであります。

赤澤委員 これは事実に反すると思いますが、そのものをよく見て、これは本当に反省していただきたいと思います。

 三枚目、見てごらんなさいよ。表になっているものです。十六・八兆円で、年金制度改革という項目の中で最低保障年金と書いてありますよ。書いてないと幾ら言い張ったって書いてあります。年金のところを見てごらんなさいよ、最低保障年金と書いてあります。(岡田国務大臣「金額はないでしょう」と呼ぶ)金額が入っていないって、その十六・八兆円の中で最低保障年金が挙げてあったら、それでやると国民が思わない方がおかしいでしょう。不親切きわまりないですよ、それは。

岡田国務大臣 この十三・二兆円ですね。十三・二兆円の内訳が、全部金額が書いてあるんです、ここに。これを全部足すと十三・二兆円になるんです。年金のところは書いてないんです。(発言する者あり)いや、言いわけじゃありません。

 ですから、これは新たに財源を必要とする、これの枠外であるということであります。

赤澤委員 ところが、その十三・二兆だけじゃなくて、そのページの下に十六・八兆と書いてあって、それで、十三・二兆と十六・八兆の差で最低保障年金をやるんじゃないかとか、国民が思わない方が不思議じゃないですか、そんなものは。幾らやったって無理ですよ。聞いている人は怒ると思います、それを見ながら聞いていたら。(岡田国務大臣「ちょっといいですか」と呼ぶ)

 いいですけれども、時間は余りないですよ。簡潔にお願いします。

岡田国務大臣 これをつくったのは私ですので、幹事長になって、かなり苦労しながら、やはり十六・八というのはなかなか大きな数字ですので、十三・二ということにして、そして、幾つかのことについては、ペイ・アズ・ユー・ゴーで三・六兆、財源を見つけながらやっていくもの、それは具体的にここに書いてあるわけですね。後期高齢者医療制度の廃止、大学の奨学金の拡充、最低賃金引き上げ、中小企業支援等ということで、最低保障年金ということはここに明示してありませんので、この三・六兆の内訳で最低保障年金を考えていたということは事実に反します。

赤澤委員 岡田副総理が真摯にそう考えておられるとしても、そのとおり書いてないということを私は指摘して、ちょっと時間もあるので、次の質問に入らせていただきたいと思います。

 これまでの国会の議論では、今の政府・与党がマニフェストにうたった十六・八兆円の財源を見つけられなかったとか、あるいは、その結果、財源不足のためにマニフェスト違反を連発したといって責めてきているわけです。ただ、私はちょっと違う観点から議論をしたいんです。

 安住大臣、財政再建の責任を負う安住大臣です。民主党が自公政権当時に積み上がった国の借金をさんざん非難していたにもかかわらず、民主党のマニフェスト二〇〇九が、十六・八兆円財源を見つけても一円たりとも借金の返済に充てるとしていないのは、もうそれだけで亡国のマニフェストと言われてもしようがなくないですか。

安住国務大臣 ここは率直に、社会保障の自然増への対応とか財政再建について記述をしていなかったということは事実でございます。

赤澤委員 そうすると、財政再建の責任を負う財務大臣が、あえて私は亡国のマニフェストと言いましたけれども、撤回しないというのは、これは仕事をする気がないと言っているのと同じようなもので、しかも、今お認めになりましたけれども、公明党の坂口先生が、かつて民主党の社会保障政策を評して、子供のお絵描きとおっしゃったんですね。私、全く同感で、社会保障費の自然増も念頭に置かずにつくったマニフェストなど、子供のお絵描きそのものなんじゃないかと思うんです。

 今さらそれにしがみつく理由なんか私はないと思うので、本当に話をまとめたいんだったら、それはもう前提にしないでさっさと撤回をして、国民に今謝罪をして前に進むという選択をしていただきたいと真摯に思うんですが、安住大臣、いかがですか。

安住国務大臣 総理は、野田毅先生の本会議の中でも、そういう点では、十六・八兆について自分なりの反省をしっかり述べておりますし、ここでの委員会での冒頭の質疑においても、伊吹先生初め御指摘ありましたけれども、総理としては真摯に反省するところはしっかり反省しておりますので、そのことだけはぜひわかっていただきたい。

 私も、今財務大臣の職にあって考えることは、記載をしていなかったし、財政再建というものにある意味で焦点を当てて総選挙で堂々とこのことについて議論ができなかった、しなかったということに関して言えば、残念なことであったというふうに思っております。

赤澤委員 これ以上申し上げませんけれども、私は、本当にそれを頑張って維持しなきゃいけないというようなマニフェストとはとても思えないということを繰り返し申し上げて、前に進むために覚悟を決めてくださいということを繰り返し申し上げておきたいと思います。

 それで、もう一つ、平成十七年度の年金等社会保障制度協議会、これについて岡田副総理の過去の発言があったので、私、ちょっと気になったことがありましたから、御質問をいたします。

 これは、三月十六日の議事録が今手元にありますが、「私、二〇〇五年のときに、」「民主党の代表として、衆参の年金等社会保障制度協議会を設置をいたしまして、いい議論も大分行われたと思うんですね。しかし、残念ながら郵政解散によって途中で中途半端に終わってしまいました。あのときにもう少しきちんと続けることができたらなという思いは今私ございます。」こういうことなんですけれども、事実と違うと思うんですよ。

 あの当時、郵政解散で打ち切られたんじゃなくて、民主党の方たちが出てこなくなったんですよ。そのような事実は覚えておられますか。

    〔古本委員長代理退席、委員長着席〕

岡田国務大臣 私の記憶にはございません。

 ただ、これは国会の会期ごとに設置を決めなければいけない会議で、私は、小泉総理と党首会談で、秋までに年金については一定の方向性を出すということを明言していただいて、この協議会を始めたものであります。

 しかし、現実には、秋に至るまでに郵政解散があったということですから、もちろん、解散をいつするかは総理の専権ですから、そのことについて言ってみても仕方ないんですが、各党間でしっかり年金について議論をして、一定の結論を秋までに見出すということを私は目指しておりましたし、小泉総理は、国民年金も含めた一元化についても議論しなきゃいけないということは言っておられましたので、そういう意味では、非常に残念な思い、途中で断ち切られたという思いは今も変わりません。

赤澤委員 では、私も改めて調べてみようかと思いますが、私は、事実関係は、郵政解散というものの前に、もう民主党の皆様が熱意を失ってこの協議会に出てこられなくなった、それで立ち消えになったというような理解をしておりますので、これはまたちょっと改めて議論をさせていただきたいと思います。

 残念なのは、やはり野党の時代の民主党が、例えば被用者年金の一元化の法案を我々が出したところが反対をされた。今、大宮まで一緒に行こうという話がありますけれども、一緒に行けるところまでは行こうよと呼びかけられている民主党は、かつて同じことを我々が呼びかけたときには反対をして全く応じられなかった、これは事実だと思うんですよ。その辺について、やはりこれはきちっと反省をしていただかないと、我々も、過去の事実を知っている者としては全くおさまらぬということを申し上げておきたいと思います。

 何かありますか。

岡田国務大臣 その点については、まことに申しわけなかったと思います。行き過ぎがあったことは間違いありません。年金の抜本改革を目指すとしても、しかし、それにいろいろな議論あるいは時間がかかるとすれば、できることからやるという現実的な手法をとるべきではなかったかというふうに今思っております。

 その反省に基づいて、例えば被用者年金の一元化なども、当時の自民党、公明党が議論をしておまとめになった案を基本的にそのままお出しをさせていただいております。ぜひ、この特別委員会の中で御議論いただいて、この国会で成立をお願いしたいというふうに思います。でないと、これはまた同じことの繰り返しになってしまうんじゃないかというふうに思いますので、ぜひお願い申し上げたいと思います。

赤澤委員 副総理がおわびするとまでおっしゃっていますから、これ以上申し上げませんけれども、そういう経緯もあるので、しっかりと前に進めるためには、歩み寄りというのはむしろ政府・与党がやっていただかなければならぬと繰り返し指摘をいたします。

 まとめますけれども、本日お話をした国民年金基金の例からもこれは御理解いただけると思うんですけれども、私は、民主党の新年金制度は、繰り返しますが、硬直的かつ高圧的なものだ、真面目に保険料を納めて自助努力をしてきた国民の皆様にとっては迷惑なんじゃないかと感じています。総理が政治生命をかける消費増税関連法案の成立を本気で目指すのであれば、政府・与党には、マニフェストを撤回して、自民党の社会保障基本法案、今の段階では骨子でありますけれども、これを丸のみすることを真剣に検討してもらわなければならないと思います。

 そのことを重ねて指摘しておきたいと思いますが、最後に、副総理、何かありますか。

岡田国務大臣 具体的なことは各党間の協議でお話しいただきたいと思います。

 ただ、マニフェストを全面撤回と言われると非常につらいものがあって、例えば、我々は、チルドレンファーストとかコンクリートから人へというようなことを申し上げました。いろいろ御議論はあると思います、そういう基本的考え方は、私、民主党としては重要なことだと考えておりまして、個々の具体的な政策についていろいろな御議論はいいかと思いますが、全部取り下げろとかという議論はなかなか厳しいものがあるというふうに思います。

赤澤委員 終わります。ありがとうございました。

中野委員長 これにて赤澤君の質疑は終了いたしました。

 次に、坂本哲志君。

坂本委員 自由民主党の坂本哲志でございます。

 今回は、昼休みを挟みまして三十分ずつ、計一時間の質問の機会を与えていただきました。心から感謝を申し上げたいと思います。

 私は、地方の問題に焦点を絞って質問をしたいと思います。

 地方の問題につきましては、これまで、当委員会の石田先生、さらには谷公一先生、それぞれが質問をされました。その中からいろいろな、今回、閣議決定、法案提出に至るまでの問題点が浮き彫りにされたというふうに思います。

 国と地方の協議の場の問題、地方消費税の問題、あるいは税の配分比率の問題、こういったことを中心にお伺いをしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 その前に、NHKの経営委員長でございます數土文夫氏が、東電の社外取締役の方に専念するということで、NHKの経営委員長を辞職されました。

 數土氏の東電の取締役就任につきましては、先月、五月の十一日から十三日にかけて各マスコミが一斉に報道いたしました。

 私たち自由民主党の総務部会では、五月の十五日に、NHKから事情を聞くべく、経営委員の方に来ていただきたいということで呼びかけましたら、党本部に數土経営委員長御自身が出向いてこられました。私たちも少しびっくりしたところでございます。

 そういう中で、私たちの総務部会の方の幹部がNHKの経営委員長と東電の取締役の兼務の問題につきまして意見を述べさせていただきましたが、六人意見を述べましたけれども、全員が、兼務、兼職はふさわしくない、すべきでないというような意見でありました。

 その一つは、東電が現在、加害企業である、その加害企業にNHKの経営委員長が就任するということは、受信料を支払っている方々、あるいは福島県民の方々、そして国民全体に対して感情を逆なでするものであるというような意見でございました。

 それから、さらには、これから電気料金の値上げの問題、原子力発電所の再稼働の問題、あるいは放射線の問題、こういったものが非常に国民の耳目を集める中でNHKの経営委員長が東電の社外取締役に就任するということは、NHKの報道の面でも国民から非常に疑惑を招くことになるというような意見も出ました。

 さらには、報道機関の中立性、とりわけNHKの中立性というものは非常に厳格でなければいけない、そういう中で、安易にこの取締役というものを承諾するのはやはり軽率であるという意見が出されたところであります。

 それに対して數土経営委員長は、経営委員長としてあるいは経営委員として報道内容にタッチすることはない、私はNHKの経営部門に携わるだけであるというふうに言われました。そして、東電がこのような状況にある中で、経営陣として何らかの力になりたいということを自信満々におっしゃられました。強気の発言でございました。

 しかし、その後、各マスコミあるいは世論、そして身内のNHKからも、この兼務はふさわしくないというような論調が高まりました。

 しかし、その中で、問題ないというふうに経営委員長と東電の取締役の兼務を擁護された方が、閣僚が三人いらっしゃいました。川端総務大臣、そして枝野経済産業大臣、さらには官房長官でございます。

 特に川端総務大臣におかれましては、NHKの予算その他を所管する担当大臣であります。そして、NHKと国民の間でその間合いを見ながら、いかに厳正で公平な報道がされているかということに常に気を使わなければならない立場であります。それが、世論の大きなうねりと逆行する形で、法的に問題ないというふうに言われたことは、私は、そのこと自体が非常に問題発言であるというふうに考えます。

 結果として、數土経営委員長は辞職をされました。これはやはり、世論あるいはその他の常識的な考えの方々に押されたからであるというふうに思います。

 そういう中で、なぜ法的に問題ないということで擁護されたのか、総務大臣としての御意見をお伺いいたしたいと思いますし、これは、結果として辞職されたわけですので、私は、判断ミスであり、大臣としての大きな問題であるというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

川端国務大臣 お答えいたします。

 法的に問題ないというのは事実でありまして、法的に問題ありません。

 一つは、非常勤の経営委員については兼職は禁止をされておりません。もう一つは、報道との関係でも、経営委員会の委員は個別の報道番組に干渉することはできないというふうに禁止されております。そういう意味で、兼職することは法制度上は問題ないというふうに申し上げました。これは、擁護するしないということではなしに、事実を申し上げました。

 そして、その部分で御本人がどう判断されるかということでありまして、逆に言えば、こう言ったからやめるべきであるとか、やめるべきでないとかいうことに立ち入って私がコメントしたわけではございません。御本人が決断されたものでございますので、政府としては粛々と受けとめさせていただきました。

坂本委員 民主党は常々政治主導ということを言ってこられました。これを政治的に主導しろとは言いませんけれども、私は、やはりNHKの予算その他を所管する大臣として、法的に問題ないと、それはそれで客観的なものとして言うとして、一方では、やはり、NHKのあり方として慎重を期すべきだというような言葉も必要ではなかったかというふうに思います。それが総務大臣としての発言であるというふうに私は思います。

 せっかくの機会ですので、ここに二人のNHK出身の大臣がいらっしゃいます。安住大臣と小宮山大臣、それぞれ、報道機関の出身として、あるいはNHKの出身として、今回の兼務の問題をどう思われたか、そして辞職されたことに対してどう感じられたか、そのことを忌憚なく、率直にお考えをお聞かせ願いたいと思います。

 報道機関出身として聞きますので、内閣不一致とか閣僚不一致とかそういったことは言いませんので、忌憚のない意見をお願いいたしたいと思います。

小宮山国務大臣 今、総務大臣お答えあったように、私の所管外ではございますけれども、委員長として數土委員長は非常に有為な人材だったと思いますので、経営委員会を去られたことは大変残念だというふうに思っています。

 ただ、法制度の関係では、今、総務大臣から御答弁があったように、非常勤の経営委員会の委員は兼職は禁止されていない、また、報道との関係でも、経営委員会の委員は個別の放送番組の編集に干渉することはできないとされていますので、問題はないと思っています。

 また、組合の日放労の方は、これは組合としての立場で議論をして懸念を表明したというふうに承知をしていますが、これは、さまざまな意見がある中で、組合としての意見だと思っております。

 いずれにしましても、法制度上問題がないということは今申し上げたとおりですが、御本人がこういうふうに判断をされましたので、それを真摯に受けとめたいと思います。

安住国務大臣 国会の同意人事で任命をしていただいて、梶山先生にも賛成していただいて數土さんは経営委員になられたと思いますから、そういう意味では、人物的には立派な方だし、経歴もあると思います。御本人の判断での今回の辞職ということですから、その立場を尊重したいと思います。

 なお、NHKという組織は、決してそういう、経営委員長が何かあるからといって編成内容、放送の内容を変えるなんていうことは法律上も全くあり得ませんから、誤解に基づいて何か疑念を持ってやるというふうなやり方で本人を追い詰めていくやり方は、決していいものではないと思います。

坂本委員 よく似ていると言われますが、梶山ではありません、坂本であります。(安住国務大臣「失礼しました」と呼ぶ)よくみんなに間違われるんですよ。

 ただ、私は、報道機関出身としてどうかというふうに聞いたのであって、そういう通り一遍の紋切り型のお答えを期待したわけではありませんし、それを求めたわけでもありません。やはり、日がたつにつれて、元記者としての、ジャーナリストとしての感性が鈍られているのかなというふうに感じました。

 それは、厚生労働大臣としても、やはり子供に対して、あるいはひとり暮らしの高齢者に対して、いたわりの心や、ジャーナリスト時代に培った感性というのは、非常に大事にしておかなければいけないことであります、一番大事なことでありますので。そのことについては、しっかりと感性を持ってこれからの法案作成や政策づくりに当たっていかなければ、無味乾燥なものになってしまうということを付言しておきたいと思います。

 岡田副総理にお伺いをいたします。

 地方を見れば国の本当の豊かさがわかるというのは、私の基本的な考え方であります。どこの国に行きましても、首都や主要都市は、美しく華やかであります。しかし、一歩地方に足を踏み入れたときに、それが本当にどれだけ豊かであるのか、そしてまた、楽しく美しく、また、生活する上で共同体的な生活がされているのか、運営がされているのか、そして、自治体として民主的な行政が行われているのか、政治が行われているのか、こういうものを見たときに、本当のその国の豊かさがわかるというふうに感じます。それが本来の国の力であり、幸福度であるというふうに思います。

 豊かになった、あるいは大国であるというふうに言われております中国やロシア、あるいは経済発展が著しい東南アジアや南米、こういったところの地方と、北欧、ヨーロッパ、あるいは北米、こういったものの地方を比べれば、やはり、その国の本当の豊かさや、その国が積み上げてきた歴史というものがわかるというふうに私は思っております。

 そこで、今の日本の地方の状態はどういう状態であるか。

 これはこの前、石田先生も言われました。本来の産業でございます、第一の産業であります農林漁業、これが衰退をいたしております。さらに、公共事業が大きく削減をされました。そして、それによりまして、やはり住民の方々の消費が落ち、購買力が落ち、地方の商店街がシャッター通りになってしまっております。高齢率は都市に比べて格段の違いがあります。それに、賄わなければならない社会保障費、これは地方自治体の大きな負担となっており、もう倍々ゲームのような形で増加していく、そういう実情であります。今後、自主財源は減少するだけで、まさに途上国並みの地方になっているのではないかという思いがいたします。

 そういう認識を持っておるわけですけれども、副総理としての、地方の実態の認識、あるいは都市と地方の格差の問題、このお考えをお伺いいたしたいと思います。

岡田国務大臣 私も、例えば幹事長とかいろいろなポジションでいろいろな地方を見る機会も多かったわけですが、もちろん、これは地方によっても違います。違いますが、やはり非常に疲弊している地域がかなりふえてきていることは間違いないと思います。

 その原因は何か。いろいろあると思いますが、やはり、委員御指摘のように、農業や林業、水産業といった一次産業が衰退している。耕作放棄地とか荒れた森林とか、そういうことを目にする機会も多いわけであります。そして、それにかわるべく高度成長期に導入された工場、地域分散された工場も、リストラの中で、撤退したりあるいは海外に移転しているということで、働く場がなかなか確保できない。他方で高齢化が進んでいくという中で、非常に厳しい状況ということは私も思います。

 他方で、目の前にある森林資源をもっとうまく生かして、例えばバイオマスとかエネルギーの原料に使うとか、もう少し工夫の余地もあるんじゃないのかなというふうに思うこともあります。地域には地域のよさがありますから、そういった地域の特性を生かしてそこに雇用の場をつくり出していく、そういう工夫は可能だし、そういったことに成功している、そういう地域もあることも事実であります。

坂本委員 そこの問題認識は共通しているというふうに思います。

 だからこそ、今回の税制改革あるいは消費税についても地方への配慮が必要であると思いますし、一方で、地方に一番打撃を与えるTPPなどについては、やはり撤回をする、反対をする。そして、これからの地方を再生させるためにどういう体制がいいのか、どういう税制がいいのか、そういったものをしっかりと、上辺だけじゃなくて、考えなければならない。これはまさに今すぐにでもやらなければならないことであるというふうに考えております。

 そこで、本論に入ります。

 現政権で、社会保障と税の一体改革論議について、時系列的にちょっと見てみました。

 論議が開始されたのが一昨年、平成二十二年の六月四日の菅政権の発足時でございます。このときに設置されました政府・与党社会保障改革検討会議、これがまず、今回の消費税あるいは社会保障改革のスタートでございました。そして、同年十二月十四日に、二十三年半ばまでに成案を得、国民的合意を得た上でその実現を図るという社会保障改革推進が閣議決定をされております。

 その後の大きな動きは、三・一一大震災がありまして、それから三カ月半たった平成二十三年の六月三十日の、政府・与党社会保障改革検討本部が決定いたしました社会保障・税一体改革の成案であります。ここに来て初めて消費税の引き上げというのが出てまいりました。それまでは、社会保障をどのようにしていくかという論議が中心でありました。

 税率一〇%まで引き上げる。当面、社会保障にかかわる安定財源にする。それから、平成二十一年度税制改正法の附則百四条に示された道筋に沿って二十三年度中に必要な法制上の措置を講じる。

 そして、ここが大事なところでありますが、国と地方の配分については、現行分は基本的に枠組みを変更しないことを前提として、引き上げ分については、社会保障四経費のうち制度として確立されたものとそれに係る分野にのっとった範囲の社会保障給付における国と地方の役割分担に応じた配分を実現する。非常にわかりにくい表現ですけれども、こういうふうな表現であらわされました。

 さらに、地方の単独事業については、必要な財源を確保できるよう地方税制の改革を行うという、非常に、大まかなといいますか、大くくりな表現で締められたところであります。

 そして最後に、地域主権改革の推進及び国と地方を通じた安定財源の確保の観点から、地方消費税を充実するとともに、地方法人課税のあり方を見直すなどにより、税源の偏在が小さく、税収が安定的な地方税体系を構築するというふうに文言としてはあります。

 しかし、ここで問題点が私は二点あると思います。

 その後、それが九月二日の野田政権にそのまま引き継がれていくわけですね。そして、社会保障・税一体改革案を早急に具体化するという閣議決定となります。

 先ほど言いました、この時点で問題点が二つあると私が思いますのは、一つは、社会保障の改革あるいは社会保障の制度、こちらの方が優先して、本来ならば同時に税制の問題、特に国税と地方税の問題あるいは地方消費税のあり方の問題、こういったものも並行して論議されなければいけなかったわけですけれども、その辺の論議が足りない。政府税調においてこの論議が始まりましたのが六月の七日からであります。

 二つ目の問題点は、社会保障に係る負担費用が国を中心に考えられている、地方の問題が当初はほとんど考えられていなかったということであります。それは、以前、与謝野大臣の、五%引き上げのときに、これは地方への配分はゼロ、事実上ゼロというようなことからも、うかがえると思います。その結果、どうなったか。

 それ以外にも、やはり地方消費税の問題があります。これも、議論が不十分なまま、ここまでやってきました。また、地方法人課税、いわゆる地方法人特別税、特別譲与税、この問題も、結局先送りをして現在に至っているというのが実態であります。

 そして、先ほど国と地方の配分というふうに言いましたけれども、地方の負担の軽視というのがどうしても最後まで見られたということであります。

 当初、厚生労働省が、社会保障四分野に該当する事業総額は三・八兆円である、そのうち給付に係るものが二・六兆円、制度として確立されているものは〇・二兆円、二千億円というような数字を出してきたことからも、いかに地方の単独事業、あるいは制度化された事業、あるいは制度化ぎりぎりにある事業、こういったものが軽視をされていたかということにつながらざるを得ないというふうに思います。

 社会保障と税の一体改革ではなくて、国を中心とした社会保障の財源穴埋めの消費税論議が先行して、そしてその後、地方からのさまざまな意見が出て、後づけで地方問題を論議していったというような時系列の流れになっていると私は思いますけれども、総務大臣としてはいかがですか。

川端国務大臣 丁寧に正確に検証していただいたのは、そうおっしゃるとおりの経過で、時系列的にはそういう議論がありました。

 そういう中で、その過程において、成案の取りまとめに至るまでには、いろいろな立場の主張やそういう議論があったのは事実だというふうに私は思います。そういう中で最終的に成案として昨年六月にまとめました。

 そのときに、社会保障の一体改革の成案では、引き上げ分の消費税収については、社会保障四経費にのっとった範囲の社会保障給付における国と地方の役割分担に応じた配分を実現することと、ここで、まず物の考え方として、やはり国と地方が役割に応じた配分をすることということを成案で書きました。

 そして同時に、それは国と地方の協議の場で真摯に議論を行うこととしたわけでありまして、それに至るまでには、さまざまな立場で、委員御指摘のような主張ととられかねられないような意見もあったと私も思います。ただ、最後にまとめたときには、そういうことを乗り越えて、国と地方が役割分担をしてちゃんとやろう、その財源は国と地方の協議の場で真摯に話し合おうということをまとめました。

 したがいまして、その後、国と地方の協議の場で議論をいたしましたのは、どういう範囲がのっとった範囲、単独事業をどう位置づけるのかという議論、それから、その分の配分はどうあるべきか、あるいは、消費税と交付税とにどうするのかという議論をいたしましたが、私は、大事であったことは、国と地方がそれぞれの、骨太のセーフティーネットという国の役割と、地方の単独事業も含めたきめ細かな社会保障と、両方が一体となって社会保障全体を支えているという共通認識を国と地方で共有できたこと、これが議論のベースとして非常に大きかったというふうに思います。

 その後、総務省が決算ベースで単独事業でどういうことをやっておられるかという調査をしたものをベースにしながら、一定の部分の枠を加えることによって配分を決定したという経過をたどりましたので、成案決定までの議論を踏まえて、成案から、御指摘のようなことではなくて、地方軽視ではなくて、国と地方が大事にしっかりやっていくというベースで議論をして今日に至ったというふうに私としては思っております。

坂本委員 成案までは、やはり、地方の問題、国の問題、そんなに熟議をすることはなかった、あるいは、私が今指摘したようなことを否定できないというようなお答えでございました。そして、成案ができた時点でそういう共通の認識ができたということでありますが、問題は、これからであります。

 六月に成案ができて、そして、国と地方の協議の場が始まるのが十一月ですね。十一月の十七日から始まりました。これは余りにも遅い。仮にそこに共通認識があったにしても、どういう順序で、あるいはどういう熟議がそれまで行われていたのか、これは全くわかりません。

 これは午後からの質問でもやりたいと思いますけれども、六月に成案を得て、国と地方の協議の場、そして分科会が始まったのが十一月の十七日、そして、最終的に結論が出たのが十二月の二十六日。わずか一カ月とちょっとしか国と地方の協議の場は行われておりません。そして、その中で分科会が開催されたのはわずか五回であります。臨時会の二回を含めて五回であります。

 私は、もっともっと地方と国、そして厚生労働省も含めて論議を深めるべきであったというふうに思いますけれども、総務大臣、改めて御見解をお願いします。

川端国務大臣 前段、成案に至るまでにはさまざまな議論がありまして、私が申し上げたのは、さまざまな議論があったということで、必ずしも地方軽視の部分があったとかいうことを認めているわけではございません。いろいろな議論があって、受けとめ方によって、先生のような解釈をされるという部分が言われるけれども、いろいろな議論はあったというのは事実だと思いますということを申し上げました。

 それから、六月三十日に成案ができまして、十一月までは、実は、この共通の議論をするためには、四事業にのっとった事業というのはどういうものなのかということで、全地方自治体に対して、そういうものはどういうことをやっておられますかということを全て悉皆で問い合わせをした調査をし、そしてそれを分類、整理し、決算ベースの数字をいただいて整理をするということに時間がかかりました。

 そういう意味では、共通の議論をするベースとして、社会保障に欠けているという意味でも、例えば予防接種とかそういうのに使っているというのもあれば、一方で、障害者の部分に使っているという、四事業に直接乗るのかなという項目もあれば、敬老祝い金のようなものもあるということを、全部調査するのに若干の時間がかかって、十一月までかかりました。

 しかし、それをベースにするということであると同時に、本会議は、回数はおっしゃったとおり、分科会も含めての回数でありますが、その間、開いた後の個別のいろいろな調整等々は、事務局あるいは私も含めて、各地方のそれぞれの団体ともいろいろな意見交換をしながら次の親会議あるいは分科会に臨むという状況を丁寧に熱心にやってきたということでございます。

坂本委員 地方の実態を調査するというのは、片山大臣が、すぐ、このような状況を見て俊敏に手を打たれた。ですから、こういう個々人の判断によることが多くて、財務省、厚労省、総務省あるいは地方を通じての話し合いが本当に丹念に行われたのかというふうに考えております。

 その問題につきましてはまた午後から再度詳細にお尋ねをいたしたいと思いますので、午前中はこれで終わらせていただきます。

中野委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。坂本哲志君。

坂本委員 午前中の続きをやります。国と地方の配分比率です。

 結局、去年の十一月十七日に始まりました国と地方の協議の場、臨時会も含めて五回、そして最終的には、十二月の二十六日に成案ができた、結論が出た。地方の分が、五%のうちの一・五四%。そのうちの一・二%が地方消費税、〇・三四%が交付税算定率ということになりました。

 これに関しては、さまざまな評価があるところだと思います。しかし、私が、各都道府県知事さん全部に聞いたわけではないですけれども、私のところの熊本県知事を初め何人かの知事さんに聞きましたら、やはり、地方としては非常に時間が足りなかった、この一・五四についても不満である、二千億円からスタートする非常に低い発射台からスタートしましたので、一・五四まで積み上げたということでは、知事会の会長の京都の山田知事、あるいは中村愛媛県知事あたりがかなりの努力をされたようですけれども、しかし、これ以上地方の方から不満を言うと抵抗勢力のように見られてしまう、だから不承不承納得した、承諾したというのが現実のような姿であります。

 この配分率について、総務大臣としての考えをお伺いいたしたいと思います。

川端国務大臣 先ほどの午前中の御議論で申し上げましたけれども、いろいろな考え方の整理をする中で、四事業、それから、それにのっとった事業、単独事業を含めてということで、国と地方がそれぞれの役割分担をしながら社会保障全体を支えているんだということと同時に、その基礎データとなるのは、全体としてどういう事業が地方がやっているのかというのを決算ベースで整理をする、そしてそれがどこに当てはまるのかということでの額を決めていったわけでありまして、発射台が幾らであって、一方の要求がこれだけあって、要求水準と回答が乖離をしていて、だんだん真ん中に寄せてきたという議論は一切しておりませんので、その部分は誤解のないようにぜひとも御理解をいただきたいのが一つ。

 知事さん、今お名前を出された人も、私、直接お出会いをしておりますが、お立場上、そこで面と向かっては言われないのかもしれませんが、これは、この最終十二月の二十九日に取りまとめた段階で、最後はこういうふうにしましょうというときまで、分科会を含めますと八回議論をいたしました。

 そして、それぞれの考え方、一番初めに申し上げたように、これだけの事業をという整理をしたときに、どこまでの範囲を地方単独事業として見るのか。極端に言えば、人件費は入れないというけれども、保健師さんは人そのものがサービスであるから人件費に入れてほしい、あるいは、障害者の事業は四事業に入らないけれども、子供や老人は一体にやっているからぜひともカウントに入れてほしい等々のいろいろな議論を積み重ねて、整理をするのに八回かかりました。

 その最後に、取りまとめたときに、これは議事録の冒頭だけを読みますと、全国知事会長からは、この整理案については、私どもの主張について配慮をいただき、まことにありがたい、市長会長からは、私どもの主張を大いに取り入れていただいたことについて、短い期間にもかかわらず精力的に御検討いただいたことに感謝申し上げたい、全国町村会会長からは、分科会や協議の場での厳しい議論を踏まえれば、お示しのあった地方への配分は、その中に前回私から申し上げた地方交付税による一定の財源確保も含まれていたことから評価している、等々の御発言がありました。

 ただ、これをやっている間もいろいろ御議論があって、省庁で整理をして、こういう考え方でどうだろうとお示しをするというのを、私も二回、六団体の皆さんと非公式の場でもお出会いしましたが、そこから首長さん、代表者、また、知事会ですとあと四十六人おられるわけですから、市長会だったらもう千何百団体ということで、全部の意見を集約するのは極めて困難であるという中を最大限御努力いただいた中で、それはいろいろな思いを持っておられる方も当然ながらおられると思いますが、我々としては、手順を含めて、額を発射台から議論するということではなくて、正当な議論にしようということで、片山大臣のときに、調査結果をベースにする、そしてその考え方を整理するということを積み上げてきた結果でありますので、ぜひともに御理解をいただきたいと思っております。

坂本委員 地方六団体としては、自分たちもその中で論議したわけですので、これからのこともありますし、そういう評価といいますか、結論しか出せないんだろうなというふうに思います。

 特に、団体としての意見ということではなくて、現場では、やはり地方の単独事業に対しての不満というのが非常にあると思います。これは、厚生労働省の方で、どうしても地方単独事業になると、それは人気取りでやっているんじゃないか、あるいは地方が、勝手ということではないですけれども、それぞれに自主的にやっているだけではないかというような先入観がどうも多い。

 しかし、例えば、現在急増しております発達障害に対する地方での対策、こういったものに対しては、やはり数がふえているだけに、地方としてそれぞれに障害者対策としていろいろな予算を組まなければならないのは事実であります。これは地方の必要性であります。

 しかし、現実問題として、それが、今回はそうでありますけれども、基準財政需要額に算定されない、さまざまな形で交付税からも外されていったということに対しての現場の不満というのは相当あるし、今後、地方単独事業というものをどのように考えるかということで、厚生労働大臣としても、地方にしっかりと耳を傾ける、足を踏み入れる、そして地方の福祉あるいは医療、介護の現場を見て、やはり、国として責任を持たなければならないものはしっかりと予算化する、あるいは交付税化する、そういった努力は必要であると思いますけれども、どうも先ほど言いましたような先入観が強いような気がいたします。

 小宮山大臣、今後の方針として、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

小宮山国務大臣 それは、地方で単独のことも含めてやっていただいているものと国と、これは二重のセーフティーネットという形でお互いに補完してやっていくということで、総務大臣にも汗をかいていただいて、国と地方の協議の場で取りまとめを行いました。私としても、子ども手当の問題も含めまして、各地方の首長さんたちとは、お会いをして、いろいろお話もしているところです。

 今回は、年金、医療、介護に子育ても含めた社会保障四経費で全国的に制度として行っているものを中心に、あとは、川端大臣の御苦労もございまして、それぞれの地方の実情にも配慮をしながら今回こういう形をとりましたので、当然、地方にはしっかりと目配りもしてまいりますので、御理解をいただきたいと思います。

坂本委員 全国的な制度となりつつあるものについても、そこには配慮がなかった点がどれだけかある。もう一度、今後検証をしっかりとしていただきたいということを指摘しておきたいと思います。

 岡田副総理にお伺いをいたします。消費税にかける決意のほどをぜひお聞かせいただきたいと思います。

 先ほど、赤澤先生の方からも質問がありました。きのう改造がありました。この改造がどういう性格のものであるか、私も今もってよくわかりません。問責の二閣僚を交代させたものなのか、問責に応えたものなのか、それとも、新しい疑惑が出てきた閣僚もあわせてトカゲの尻尾切りをしたというような性格のものであるのか。少なくとも、人心一新をして新たな問題に挑戦する、そして求心力を高めるというような性格のものではなさそうであります。

 しかし、これから消費税の採決に至るまでいろいろな問題があると思いますが、私は、内閣と党がやはり一致してやる、一体でやる、でなければ、絶対この大きな問題というのは処理できない、解決できないというふうに思います。

 特に、国民が望んでいない税の引き上げというのをやるわけですので、内閣と党の間で平仄をしっかり合わせていく、これをやらなければ、私たちとしては、その決意が伝わってこないというふうに感じます。

 そういう点で、郵政民営化というものの法案を成立させました小泉総理のとき、この法案そのものは功罪さまざま評価が分かれるところでありますけれども、この小泉総理のときの人事、これはぜひ参考にしていただきたいなというようなことであります。

 当時の自民党は、郵政民営化反対が八割ほどありました。しかし、それでも最終的にはまとめていった。それはやはり人事からスタートしたというふうに私は思います。

 小泉総理が誕生しますと、幹事長を盟友の山崎拓代議士にされました。私は現在も、近未来政治研究会、いわゆる山崎派のメンバーでありますけれども、山崎会長は、総理とはこれほど権限があるのか、これほど強いものかということを思い知ったというふうに言われておりました。総務会長は、宏池会から分かれられました堀内光雄先生でありました。そして、政調会長は、河野グループの麻生太郎先生でありました。それまでのいわゆる旧田中派というのが全て外れました。当時の自民党としては、これだけでもやはり大変なことでありました。

 そして、その次の改造で、若い安倍晋三先生を幹事長にして、山崎先生はそのまま副総裁になる。そして、その次の改造では、偉大なるイエスマンとみずから称されます武部勤先生を幹事長にした。一つのみずからの思いを達成する法案を成立させる、そのためのすさまじいものがあったというふうに思いますし、その当時の人たちに言わせますと、小泉総理には怒気迫るものがあったというふうなことが言われています。

 果たして、今の総理に、今の内閣にそういう覚悟があるのかどうか。政治生命をかけるということはおっしゃっておられます。そして、内閣改造はされました。しかし、党の方のかなめは、この消費税問題、あるいは政治生命をかけると言われた総理にブレーキをかけるような方が党のかなめに座っておられます。こういう人事をもう一度覆してでも、消費税問題、最終的にこの国会で成立させる、そういう覚悟があるのかどうか、総理のていに対して、岡田副総理に御答弁いただきたいと思います。

岡田国務大臣 今委員の御指摘をお聞きしておりまして、まず、メディアはいろいろ書きますけれども、輿石幹事長と野田総理の間に考え方の違いはございません。私も輿石幹事長とは頻繁にコミュニケーションをとっておりますが、話していて違和感を感じたことはないんです。もちろん、多少のスピード感の違いとか、そういったものはあるのかもしれませんが、物事を進めていく上で何か考え方が違うということは、今まで、輿石幹事長が就任されて以来、私は一度もございません。

 私なりに、私が幹事長のときに輿石参議院会長ということで、党運営を二人三脚で進めてまいりました。中には意見の違う問題もありましたが、お互いにコミュニケーションをよくする中で、しっかり歩調を合わせて、輿石幹事長に随分支えていただきました、当時の参議院会長ですけれども。ですから、輿石幹事長という方の物の考え方とか、そういったことを私はよく承知しておるつもりです。何か執行部と政府の方で考え方が違って心配だとか、そういう懸念は私は全く持ち合わせていないわけでございます。

 それから、ちょっと余分かもしれませんが、委員言われた小泉さんの件なんですが、私、当時民主党の幹事長をやっておりまして、安倍さんが幹事長になられました。あのときに、確かに小泉さんのすごい決意というものは伝わってくるんですが、旧田中派を排除したこと、それから、本来、総裁と幹事長というのは同じ派閥から出さないという中で、武部さんは同じ派閥ではなかったわけですが、安倍さんを幹事長に据えられたこととか、いろいろなことが、求心力を生むと同時に、やはり党内の遠心力というか反発も内蔵してしまったことは事実で、私は、郵政民営化法案の採決においてああいう結果になったこと等が、特に参議院において否決されたということの一つの遠因になったのではないかというふうに思います。

 ですから、党を運営していく上でやり方はいろいろあると思いますけれども、私は、野田総理は十分そこはお考えの上で進めておられるというふうに考えております。

坂本委員 マスコミはそんなにおもしろおかしく書くものでもないし、おもしろおかしく書かなければいけない部分はありますけれども、しかし、押さえるところはきちんと押さえて、やはり事実を、あるいは真実に近づく形で事実をしっかり報道する、これがマスコミでありますので、マスコミをおもしろおかしくということだけでやゆするというのは、私はいかがなものかと思います。

 それから、今、小泉さんのときの遠心力というふうにも言われましたけれども、やはり、大きな課題、大きな国家的問題をやるときは、一つの党がぶっ壊れてもしようがない、あのときは自民党をぶっ壊すというのが一つのフレーズになりましたけれども、そのくらいの覚悟を持ってやるべき今回の消費税の問題であるということでありますので、ぜひ、これから、残されたわずかな期間でありますけれども、その覚悟を持って、副総理、党も含めて、切り盛りをしていただきたいというふうに思います。

 税の問題にまた戻ります。

 地方消費税の問題、それから国税と地方税の今後のあり方の問題、これをまとめて、川端総務大臣それから財務大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 まず、国税と地方税の問題につきましては、これは、本来ならば、先ほどから言っておりますように、今回の社会保障と税の一体改革の中で、国と地方の役割分担と同時に、その財源の問題と同時に、国税と地方税の問題を今後どうしていくか、少なくともその入り口に至るぐらいまでのことは話しておかなければならない問題であったと私は思います。しかし、そういうものがしっかりと論議された形跡がありません。

 それから、石田先生のときも出ましたけれども、今回でも、あれは平成二十年だったですかね、地方法人特別譲与税、この問題も、やはり時を置かずして解決をしておかなければならない問題であるというふうに思います。

 しかし、今後、国税と地方税の問題をどのように論議していくのか、その道筋が全く見えておりませんので、この工程表をどう考えておられるのか、三%上げた後なのか、あるいは五%上げた後なのか、あるいは、この法案が成立したら、その時点で税の抜本的な改革をやりながら安定した地方税の確保といったものをやられるおつもりなのか、お伺いいたしたいと思います。今のは、財務大臣、総務大臣、双方お答えください。

 それからもう一つ、これは総務大臣。

 地方消費税の問題は、これは平成元年の消費税導入のときに地方が要求しましたけれども、このときはかなわず、二〇%だったですかね、地方交付税の中に算入するということで、消費譲与税という形で決着をしました。地方の側は、消費税導入という国家的な課題の中で、それは仕方なしというようなことで妥協いたしましたけれども、平成九年の五%への引き上げのときに一%という地方消費税が実現をいたしました。地方にとりましては、この地方消費税というのは安定的な財源であります。しかし、現実問題として、都道府県税やあるいは地方税に占める地方消費税の割合というのはまだまだ低いところがあります。一〇%台、一七%とかあるいは一二、三%とか、そういう状況であります。

 今回も、本来ならば、この地方消費税というのは、消費税と違いまして、国の使途に左右されない、地方の固有の財源でありますので、地方消費税という意味からいえば、やはり、今回のように使途を縛られるというのは、私は、本来のあり方ではないというふうにも思います。

 そういう意味では、今回は、消費税そのものが社会保障に使うという目的化したものでありますので、ある程度仕方なかったにしても、これからの地方消費税のあり方というのは、すぐにでも、あるいは一旦歯どめをかけて、そして、やはりもう一度総務相あるいは地方六団体の間で話し合うべき問題であり、そして、その性格づけというものをはっきりとしておかなければならない問題であるというふうに私は思います。

 そういう意味で、総務大臣に、これからの地方消費税の本来のあり方、そして地方消費税に対して今後どういう姿勢で臨むのか、お伺いをいたしたいと思います。

安住国務大臣 先ほどは失礼しました。熊日出身の坂本さんを梶山さんと間違えてしまいまして、大変申しわけなく思っております。顔が似ているものですから。済みませんでした。

 ところで、地方税のことについて、まず、地方税そのものというのは、財務大臣が発言する話かどうかちょっと私も戸惑うところはございますけれども、住民自治を支える根幹であるということを踏まえれば、やはり地方税体系全体は、安定的に、そういう意味では、偏在性がなく、税収というものを確保できるということを原点に構築していくものであろうと思います。

 そして、これは、一体改革においては、今地方消費税の話もありましたけれども、この充実と、地方法人課税のあり方を見直すということを法案に明記いたしました。

 地方法人税につきましては、税制の抜本的な改革において偏在性の小さい地方税体系の再構築が行われるまでの間、当分の間措置ですね、これを踏まえてこれからどうしていくかということでございますが、これは言わずもがなでございますけれども、やはり東京、大阪、愛知等に比べると、熊本、北海道、埼玉等、それぞれにやはり分かれておりますので、この当分の間をどこまでやっていくのかということは、ぜひ地方の間でも御議論をいただければと思います。

 私は、坂本さん、地方交付税のあり方について、地方税を考えるときに、このままでいいのかどうかという議論がどうしても出てくると思います。地方分権が進むということは、ある意味では、地方交付税の今のような配分の仕方について、どういうふうな機能で新たにそれをやるのか、それとも、思い切ってもう、道州制のようなものでできたらば、それはもう全くやらないのか。地方交付税制度そのものが、ある意味では固定化していますと、やはり今、抜本的な改革になかなかなりにくい体制といいますか、構造ではないかなと。これは全く個人的な意見で恐縮でございますが、感想を述べよということなので、私はそういう問題意識を持っております。

 地方のニーズにおいて地方がみずから調達できる財源の確保を、まず努力をぜひやっていただきたいと同時に、地方交付税のあり方についてもそろそろ本格的な議論をしていただくということも重要ではないかと私としては思っております。

川端国務大臣 地方の財政が大変厳しいことは委員御案内のとおりでありまして、財源不足で十三・七兆円、借金残高が二百兆円ということで、加えて、社会保障費がどんどん毎年増大していくということですので、地方の一般財源を確保することは極めて重要なことであります。

 そういう中で、一つは、メーンとしては、やはり地方税を充実強化するということが本筋の本筋であります。そういう意味でいいますと、安定的で経済などへの影響が比較的少ない地方消費税の充実というのは極めて大きな役割を果たすと思っております。

 今回は、委員御指摘のように、社会保障の充実に特化してそれの安定財源に充てるということで導入をいたしましたけれども、間接的には地方財政の安定化には当然資するわけでありますけれども、将来的に言えば、地方消費税の充実ということと、もう一つは、これも御指摘ありました地方法人課税のあり方の見直し、この二つが地方税としては財政を立て直していくための大きな要素であるというふうに思います。

 もう一つは、今財務大臣がおっしゃいましたことに関連いたしますが、やはり、課税の自主権の拡充ということで、自主的な判断と執行の責任という、地方の行政は、まさに課税をもって住民と直接接するということが地方自治の原点でありますので、こういうものの充実を、今回はわがまち特例ということでスタートさせましたけれども、いろいろな形での取り組みが大事だと思っております。

 しかし、そういうふうに地方税の充実を図っていくということをやっていく中でも、やはり税源の偏在はどうしても残りますので、現在の地方交付税制度は大きな役割を果たしていることは事実でありまして、この部分をどうするかということも、今財務大臣が触れましたが、検討課題でありますが、今、現時点においては、この役割を、財源調整機能を維持するということを含めてどうしていくかは大きな課題であろうというふうに思っております。

 その中で、具体にお触れいただきました法人税に関連する議論でありますけれども、これも、地方法人特別譲与税は、法律としては、税制の抜本的な改革において偏在性の小さい地方税体系の構築が行われるまでの間の措置として、平成二十年度税制改正で創設をされました。

 今このままぽっとやめますと偏在が一気に拡大をしてしまうという、まあ一定の役割を果たしておりますので、これを見直す際には、地方法人課税のあり方を見直すことでいわゆる地域間の偏在の是正をするということにならなければいけないということでありますので、この法案に基づく地方消費税率の引き上げ時期を目途として見直しを実施するということにしておりますので、審議会の意見もいただいておりますが、地方団体からの意見を踏まえながら、国、地方の税制全体を通じた幅広い議論を行うべく、専門的に検討する場を設けるよう今準備をしております。

 三月三十日の閣議決定において、地方消費税率の引き上げ時期を目途ということにしておりますので、引き上げは、平成二十六年四月、平成二十七年十月に予定されているところでありますので、最初の引き上げ実施、すなわち二十六年四月の実施前にはその内容が明らかになるよう検討を進めてまいりたいと思っておりますし、具体的な施行時期については、抜本的な見直し等の内容に合わせて検討してまいりたいと思っております。

 以上です。

坂本委員 なかなか難しい問題で、交付税改革、抜本改革と言われますけれども、現実にはなかなか難しいんです。民主党の場合には、これをひもつき補助金ではない一括交付金というのにしましたけれども、しかし、二年目で制度的にやはり行き詰まってしまったというようなところがあります。

 それから、財政の調整機能とそれから課税自主権ということを一口に言っても、地方の方で果たして課税できるどれだけの税源があるか、税があるかということになると、非常に難しい。しかし、これは、与野党を含めて、今後、国と地方あるいは税全体の問題として考えていかなければいけない問題であると思います。

 そういうことを考えていきますと、民主党のマニフェストの一つである、一丁目一番地と言われています地域主権ということ、これがいかに陳腐なうたい文句であるかというふうに私たちは思わざるを得ません。

 やはり、国家として、国の役割、あり方と、それから地方のあり方、地域のあり方というのを一体的に考えていく、と同時に、税の配分、税源、こういったものも考えていく、そして、その税の配分あるいは税の調整の中で、それに見合う権限の移譲やあるいは人の移動、こういったものを一体的にやっていくというのが、本来の地方分権、そして、地方が自立可能な自治体として成立する要件であるというふうに私自身は考えております。

 今の民主党のマニフェストを見ますと、地域主権という言葉が並び、そして、結局、権限の移譲だけであります。財源を伴わない権限の移譲、あるいは組織を伴わない権限の移譲、こういったものを進めていくと最終的に国家や地方がどうなるかということは、玄人だったら少なくともわかるはずであります。

 この地域主権という言葉は国民を非常に惑わすものでありますので、この旗はやはりおろすべきである。そして、今財務大臣も言われました、自民党では道州制基本法を今提出すべく準備をしているところでありますけれども、道州制を含めて、一体的な、税と権限と、そして組織と人材と、これを考える、その中には地域主権という言葉なんかないんだ、国と地方の役割分担であり自立である、そういうものであるというふうに思います。

中野委員長 時間が参りましたので、そのままおまとめください。

坂本委員 そういうことで、このマニフェスト、ぜひ、国民に非常に戸惑いを与えるものとして、旗をおろしていただきたいというふうに思います。

 お答えください。副総理。

中野委員長 答弁の時間、ありません。時間がなくなりました。今のは御意見として承っておきたいと思います。(坂本委員「委員長、一言だけ、副総理に」と呼ぶ)

 一言です。

安住国務大臣 地方によっては、例えば整備局なんかを、これはいいけれどもこれは残してくれとか、そういう意味では、地方にとっても余り御都合のいい話ばかりでない改革なんだということを私はわかっていただきたいと思います。そういう厳しさも踏まえて、今の国の形を変えるということで我々提案しておりますので、これは見解の差かもしれませんが、旗をおろすつもりはございません。

中野委員長 これにて坂本君の質疑は終了いたしました。

 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 これから質問をさせていただきますけれども、中央公聴会の日程について、やっと協議ができるのかな、こういう状況になってきたようでありますけれども、とにかく総理が、この会期内に採決をする、こういうことをおっしゃっているわけですから、やはり、党もそれを受けて一体でしっかりと決意を持ってやっていただきたい、こういうふうに思います。

 きょうは消費税の、特に逆進性対策についてお伺いをしたいと思います。

 どうも、この逆進性対策について何も決まっていないということで、やはり国民がこの消費税増税を理解するには、いかなる逆進性対策を打っているのか、これだけ増税になれば、どれだけ逆進性でもって還付されたりあるいは税額が控除されたりするのか、それが見えないと、なかなかこの消費税増税ということについて理解が進まないと思います。ですから、そこをやはり今回明らかにしていただきたい、こういう思いでございます。

 それで、この改正法案の七条でもありますように、二〇一四年の四月、消費税を八%とする際に、低所得者に現金を渡す簡素な給付措置を始める、二〇一五年度以降、番号制度の本格稼働、定着後、速やかに給付つき税額控除を導入する、こういうふうに消費税法の改正法案七条に書いてあるわけです。

 しかし、この簡素な給付措置では、何を財源に、誰に幾ら払うかということがはっきりしていない。また、給付つき税額控除もなかなか具体的な案が出てこない。去る五月二十八日、一年半ぶりに政府の税制調査会の専門委員会が開かれて、ようやく議論が専門家からも始まる、こういう状況なわけでございます。

 逆進性対策というのは、これは消費税増税への国民の理解に欠かせない、極めて重要な支援策であります。そういう点で、現時点においてどのような仕組みにするのか、一年以上も議論がされているにもかかわらず詳細は決まっていないということでございますので、これは政府・与党の怠慢としか言いようがない。しっかりきょう答弁をしていただきたい、こう思う次第でございます。

 そこで、簡素な給付措置についてでございますが、「「簡素な給付措置」の具体化にあたっての基本的な考え方」、これが、この資料にもありますように、平成二十四年四月十七日の五大臣会合で決定された。給付額の水準、対象者の範囲、財源が具体的にどうなっているのかということなんですが、非常に抽象的ではっきりしない。

 例えば、給付額の水準についてでございますけれども、これは、所得の少ない家計ほど生活に必要不可欠な消費支出の割合が高いことによる低所得者への影響がどうなるのかということで給付額の水準を決めるということですが、具体的にどういうことなのか、お伺いしたいと思います。

安住国務大臣 消費税の持っている特性の中で、もう先生御存じのように、やはり所得が低い方に関しては、高い人よりはどうしても税負担が重くなる、そういうことはこの税のいわば弱点だと思います。そういう中にあって、一〇%に引き上げた場合に、いわゆる所得の低い方に対して、いわば逆進性に対してできるだけ緩和をしよう。

 世界の流れでいうと、それには二つあります。

 まずは、軽減税率というものを設けて、例えば、生活のさまざまな分野にわたって非課税にしたり、そういう目に見えるような対策を打っている国もあります。

 他方、私どもが今提案申し上げているのは給付つき税額控除、これは、いわば税額に応じて、所得の低い方をターゲットにして、御指摘のとおり、その対象はまだ決まっておりません、これは現金給付等によって消費税の負担分について緩和をしていこうという考え方でございますが、これに至るまでには、番号制度を本格的に導入しないと、どの人がどれだけいわばしわ寄せが来るのかという基本のデータがそろいませんので、これを実行するまでの間は簡素な給付ということになりますが、これは、想定し得るのは、やはり、あるターゲットを絞って、これについて現金の給付をする、そういうことを考えております。

 基本的な考え方としては、給付水準については、所得の少ない家計ほど収入に占める生活に必要不可欠な消費支出の割合が高いということから、低所得者への影響を勘案し決定する、そういう話になっているわけであります。

大口委員 それが対象者の範囲ということになるわけですね。

 それで、今、住民税非課税世帯、三千百万人という方々が一つの目安になっているという意見もあります。それから、その場合、低所得者と今大臣はおっしゃったけれども、大体どれぐらいの範囲の方を低所得者というのかという問題もあります。それから、そこには、物価スライドの措置がある生活保護あるいは各種の福祉手当の受給者というものも入るのか、あるいは重複の調整ということもあるのか、ここら辺はどうなんですか。

安住国務大臣 対象者の範囲については、実務上の対応可能性に配慮をしないといけないと思います。

 そこで、ほかの社会保障制度における低所得者対策の範囲との整合性にやはり留意して決定をしようと思っております。ですから、今、例えば御指摘のありましたことも考慮事項にはなりますが、まだ決定したわけでは全くないし、それをベースに決めるということでもございません。それから、生活保護などの物価スライド等との関係や財政運営戦略との整合性も勘案して検討する。

 検討ばかりじゃないかということですが、ある対象を決めて額を決めるというのがこの考え方の、いわば、単純に言えばその二つに尽きるわけでございますが、どの範囲にどういうふうな額をということについては、まだ正式に決まっていませんので、今後の検討ということになります。

大口委員 ですから、軽減税率の方がわかりやすいというのは、もうはっきりするわけです、計算できるわけですよ。ところが、簡素な給付措置とかいう形だと、いまだにはっきりしていない、こういうことなんですね。ですから逆進性対策について一体政府はどういう考えを持っているのかはっきりわからないわけですよ。そこが国民の理解につながらないわけなんです。

 ですから、まずはやはりそこら辺をはっきりさせるということが大事でして、もう一年以上議論しているわけですから。

 では、財源についてお伺いしますけれども、財源は、財政運営戦略、二〇一五年、基礎的財政収支の半減目標ということとの整合的なものである、これはどういうことなのか。それから、消費税増税分というものを、今回の三%あるいは五%の増税分というものを、これをこの簡素な給付措置に使うのかどうか。そのほか、どうやってこの財源を確保するのか。それから、地方に負担をお願いするのかどうか。お伺いします。

安住国務大臣 まず、例えば、前回、前々回は、これは単年度措置でございましたけれども、臨時福祉給付金ということで、約六百億、それから前回が九百億円台半ばぐらいのお金を、それぞれ一万円ずつお配りをしているというケースがございますが、これらも参考にはさせていただきたいと思います。

 今度の簡素な給付措置については、財源をどうするのかということでいえば、あくまでこれは暫定的、臨時的な措置でございますので、いわゆる消費税収を充てるというものではございません。ですから、財源の措置に当たっては、今先生からもございましたけれども、財政運営戦略等を総合的に勘案して財源を確保するというふうなことになるわけでございます。

 ですから、これはどういう意味だということですが、財政再建の道筋を今歩むわけですから、そういうことに逆行しない範囲の中でしっかり財源を確保してということですが、財源については、今後の検討課題になります。

大口委員 では、地方の負担のお願いはどうですか。

川端国務大臣 簡素な給付とはいえ、執行機関の事務負担は相当なものになると考えられます。したがいまして、関係機関には丁寧な説明を行わなければならないし、その意見をしっかり聞いて、事務負担の軽減には十分配慮をいただきたいということは申し上げておりますが、実際に具体の話にはまだ至っておりません。

大口委員 だから、簡素な給付措置の財源で、地方が負担はするのかどうかということをお伺いしているんですよ。

岡田国務大臣 そういう議論はしておりません、考えておりません。

 それから、簡素な給付措置、五大臣の間でいろいろ基本的考え方については議論しておりますが、これは非常に重要な問題であります。所得の少ない方々に非常に御負担をいただくわけですから、その痛みをどうやって和らげるかという話であります。

 ですから、こういうことについても、各党間の知恵をいただいて、協議をしながら、その内容を煮詰めていく必要があるというふうに考えております。

大口委員 では、地方負担は考えていないということですね。全部国の財源でやるということですね。もう一度確認します。

岡田国務大臣 現時点で、地方負担ということを議論していることはございませんので、考えておりません。

大口委員 それで、いろいろと民主党の中でも議論があったりしているわけですけれども、例えば、四千億円ぐらいで考える、それは、マイナンバーを実施して総合合算制度が始まる、それまでの間、四千億の枠を使うという考えがあったり、あるいは、これは民主党から出たようですが、世帯平均所得が五百五十万を対象とする、一兆円ぐらいの規模ということが出たり。ただ、これは、構成員が多い方の場合は対象にならない、逆に、単身世帯はどんどん入ってくるということで、四千億の枠があるからそれを使うとか、あるいは一兆円とか、余り真剣にこの逆進性の対策について議論されていないと私は思うんですね。

 だから、そこの政府・与党の態度が、逆進性対策に対してどこまで真剣に考えているのか、私はそう思っているんですよ。だから、そこが我々は全く理解できないところなんです。どうですか、岡田副総理。

岡田国務大臣 総合合算に伴う四千億をという議論は、一時、政府としても、そういったことを党との議論の中で提示したことはございます。しかし、それは取り下げられておりまして、それとは別の問題として考えようということであります。

 どのくらいの規模でやるのか、これは、どの範囲でやるのかということとある意味で共通する話でありますが、そういうことについて、各党の御意見も十分踏まえながら考えていきたい。まさしくそういったことこそ、これから各党で協議していただくところの一つの大きなテーマであるというふうに考えております。

大口委員 ですから、あと、低所得の範囲もいろいろなわけですよね。中所得に及ぶのか、そこら辺はどうなんですか。

岡田国務大臣 給付つき税額控除というのを将来のあり方として考えるわけですが、ここはかなり絞り込まないと、余り中所得の方までというふうには考えていないわけです。

 ですから、今回、その前段である簡素な給付措置についても、範囲を広げるということは薄くなるということにもなりかねませんので、そこはやはり大きな影響を受けるそういった方々について対象にすべきではないかと現時点では考えております。

 もう既にいろいろな制度でカバーされている部分についてどう考えるかとか、そういったことの議論の整理をこれからしなければいけないということで、いろいろ議論はしておりますけれども、余り今の段階で固めない方がいいだろうというふうに思っているところで、各党のいろいろな御意見を聞かせていただきたいと思います。

大口委員 ただ、やはりこれは消費税増税の肝の部分ですよね、逆進性対策。それについて民主党の考え方がないということになりますと、これはやはり問題だと思うんですよ。逆進性対策については、ある程度、国民からのいろいろな批判も受けるわけですよ。しかし、あえてそれを政治主導で責任を持って提示する。それに対して野党に協議していただきたいということであるならわかるんですが、全部、難しいことは与野党で協議するということで、私は責任逃れのような感じがして仕方ありません。

 次に、給付つき税額控除についてでありますけれども、この対象の範囲あるいは給付額の水準、それから財源の規模、これは、簡易な給付措置におけるそれとどのような関係にあるのか。念頭に置きつつというようなことで、関係性があるというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

安住国務大臣 制度設計までの間の暫定的な措置とはいえ、そこで例えば全く対象が断絶するというか、本格的な稼働に入って、そこで余りに対象が違うとなるとやはり混乱は起きるわけですから、ある程度そのことは想定をした上で慎重に制度設計をしたいというふうに思っているわけです。

 確かに、具体的に幾らぐらいの範囲で幾らまくのかを提示せよという意見もあります。ただ、例えば、ちょっと言いわけになりますけれども、前回を見ても、法案が通った後にやはり臨時福祉給付金等の給付については決まっているんですね。ですから、ターゲットをどういうふうに絞るかということに対しても、多少やはり時間をいただいて、先ほど副総理のおっしゃったように、それぞれの党で持ち合わせているさまざまな考え方を議論していただければ大変ありがたいと私は思っております。

大口委員 ただ、この給付つき税額控除というのは、税額控除と給付を組み合わせたものだ、こういう定義ですね。そうすると、所得税の税額控除をやるということですね。ということは、所得税の課税者に対してもこの給付つき税額控除というのは対象になるということですね。

 そうなってきますと、簡素な給付措置の場合は給付だけですが、今度、給付つき税額控除の場合は税額控除もあるわけです。対象はやはり違ってくるんじゃないですか。中所得の方にも対象は広がっていくんじゃないですか。

安住国務大臣 実は、控除のありようもさまざまなことが想定されると思います。例えば、税から控除をそのままやるという制度もあれば、あらかじめ控除対象者も含めて現金をお配りするというふうなやり方とか、さまざまなやり方がありますから、どういう方々をまずその対象にして簡素なものをやるかということと同時に、正式に、完全にそれがイコールになるかと言われれば、ちょっと私も今の段階では何とも答えられないんですけれども、簡素な措置ではなくて、番号制度導入に基づくちゃんとした給付つき税額控除をやるとなったときにも、結果的には、どの時点の所得からそれを入れていくかによって自動的に額は決まってくるわけです。その額をどこからにするかということについては、まだ検討中であるということです。

大口委員 マイナンバー制度というものを莫大なお金を使ってやるわけでしょう。給付つき税額控除もやるわけですね。ですから、それはやはりかなりの所得層に及ぶわけでしょう。ですから、簡素な給付と給付つき税額控除の対象はかなり違うんじゃないですか。もうちょっと簡潔に答えてください。

安住国務大臣 それは、なぜ今は答えられないかというと、簡素な給付措置も、ターゲットのとりようによっては、それは数千万人単位になる可能性だってあるわけです。

 ですから、先ほど岡田副総理もおっしゃったように、では、そういうふうな広い範囲で、先ほど住民税の非課税世帯と言いましたけれども、そういう広い範囲でやった方がいいのか、それとも、もう少しターゲットを絞って、より低い所得、また所得税を納められないような方々に対して厚くやった方がいいのか、そういうことは簡素な給付措置の場合はありますから、新しく番号ができた後の給付つき税額控除とは、多少そこでは違いが出てくる可能性も否定できないということを私は申し上げているわけです。

大口委員 ということは、対象がかなり大きく変わる可能性もあるということですよね。そこら辺も全然決まっていないということなので、今の民主党の逆進性対策というのは何も決まっていないということじゃないですか。本当にいいかげんだなと思うわけであります。

 それで、給付つき税額控除の場合は、既に四千億円の枠もないし、財政運営戦略における慎重シナリオによる二〇二〇年の国、地方の基礎的財政収支のGDP比、これはマイナス三・〇程度である。追加的な財政収支改善が必要な状況の中、どこに財源を持ってくるのかですね。このとき、やはり地方負担ということもお願いせざるを得なくなるんじゃないか。ここら辺、どうでしょうか。

安住国務大臣 これは公式には、関係五大臣の会議等で検討していく中で、生活保護など関連する社会保障制度等との関係の整理や、給付つき税額控除自体の制度のあり方とあわせて検討していくということになります。

 ですから、財源について、今、消費税の税収の中ではなくて外にありますということは申し上げられますけれども、その財源を、例えば額もまだ決まっていないわけですから、どこから持ってくるんだということに対しても検討をしているということになるわけです。

大口委員 ですから、軽減税率の場合ははっきりしているわけですよ、数字が。国民が全部計算できるわけですね。わかりやすいんです。

 しかし、今の給付つき税額控除、財源もはっきりしていない、どうなるかわかりません、これでは、やはり国民は非常に心配になるんじゃないですか。余りにもいいかげんな答弁だと私は思うんです。

岡田国務大臣 軽減税率も、どの範囲で軽減税率を適用するかということによって額は当然違ってくるわけです。例えば、食料品全般にするのか、食料品の中の一部にするのか、あるいはそれ以外も含めるのか、それによって金額が違うわけで、軽減税率をどうするか、それを五%、一〇%の五%のままにしておくのか、七%にするのか、そういう議論もあるわけで、別にそれが軽減税率で何か具体的に決まっているわけではないと思うんですね。

 一般論として言えば、やはり簡素な給付措置の延長線上に給付つき税額控除がありますので、それがさらに大幅に拡大するとかそういうことは余り考えにくいというふうに思います。これは、税を入れたことによる、所得の少ない方に対する負担増を和らげるということが主たる目的でありますので、基本的には、委員も御指摘のように、簡素な給付措置からの延長線上にある、こういうことだろうというふうに思っております。

大口委員 ただ、所得税の課税対象者も範囲に入るわけですからね。今、岡田副総理がおっしゃったけれども、それとの整合性ということも全然明確に説明されていませんし、本当にわからないと思います。

 それで、こういうふうな場合、今度は執行ですね、給付の事務の執行、これは大問題になると思うんですね。確定申告をしっかりしなきゃいけない、それが数千万人だ。それから、給付をしなきゃいけない。それから、給付つき税額控除の場合、所得の把握も、これは給与所得だけではなくて資産性所得も把握しなきゃいけない。そうすると、事業所の年末調整というのはできないですよね。

 そうすると、では、数千万人の人が税務署に行ってその申告をして、そして給付事務を行ってということになった場合、これは膨大な事務が必要だし、事務経費も必要だし、そういう膨大な申告に対して本当に不正のチェックができるのかというと、これは不可能だと思うんですね。この辺、どうですか。

安住国務大臣 確かに、似たような制度を導入しているカナダのGSTクレジットの場合は、カナダの国自体の全住民に占める税務申告率が七二・七%なんですね。それに対して、今先生御指摘のように、我が国はどうかというと、全人口に占める申告者数というのは一八・五%でありますから、そういう意味では、いわば源泉徴収社会ですから、税務署での申告なれをしている人は少ないのではないか。

 だから、執行上どうするんだということは確かに御指摘としてありますが、私どもとしては、今後の制度設計の中で、対象範囲をどういうふうにするかということを前提のもとに、効率的で公平な仕組みとして、この執行面での対応をちゃんとできるような制度設計というものをしっかりやっていきたいと思っております。

大口委員 ただ、詳細については全然何も決まっていない、こういうことですね。

 次に、実は、電子書籍とか電子広告についてお伺いします。

 これは日経新聞の五月二十六日付に出ているわけでありますが、要するに、アメリカの通信販売業者が、例えば電子書籍等の、あるいは音楽、あるいはパソコンのアプリケーションソフトなどのデータを海外から送信する場合、これは消費税はかからないですね。日本の企業が日本から送信する場合は、これは消費税がかかります。ですから、一部の企業は海外に拠点を設けて、そこから送信するということも考えておられる。そういう点で、内外の差が出てきています。

 EUは、これではまずいということで、域外からの送信についても消費地課税という形でやっています。日本はどうするんだ。それこそ消費課税の空洞化が始まる、電子取引というのはますます広がってくるわけですから。これについて安住大臣にお伺いします。

安住国務大臣 御指摘のとおりでございまして、考え方としては、今大きな流れとしては、先生御指摘のように、ヨーロッパのように課税を行うという流れが一つにあります。

 それで、問題は世界的な規模で起きていまして、結論からいうと、やはり日本としては、OECD等の国際機関における議論に積極的に参加をして、今後、EU諸国における例も参考としつつ検討していきたいというふうに思っております。問題意識は十分持っております。

大口委員 これは本当に喫緊の課題ですので、よろしく対応していただきたい、お願いします。

 あと、被用者年金の一元化でありますけれども、今回、共済年金の三階建て部分を廃止する、新たな年金について別に法律で定めるということになったわけですね。

 ところが、最近の人事院の発表によりますと、退職金と平均寿命までの上乗せの年金の合計額の退職給付の二〇一〇年度平均では、国家公務員が二千九百五十万、民間が二千五百四十七万と、これだけの、官民格差が四百万ある。

 今回、この三階建てを廃止したわけでありますけれども、新しい年金については税を投入すべきではない。ですから、この四百万円の削減も、職域加算の二百四十三万円は、これは全てカットして、退職金を百六十万円減額する、こう考えるべきだということについて小宮山大臣にお考えをお伺いしたいと思います。

小宮山国務大臣 ここは私の所管ではございませんで、今、岡田副総理のもとで有識者会議でいろいろとこれから議論をされるところでございますので、副総理の方から聞いていただければと思います。

岡田国務大臣 今ここの新しい年金制度については、私のもとの有識者会議で議論を行っているところであります。

 いずれにしろ、委員御指摘のように、四百万の官民格差があるということははっきりしましたので、これは速やかに是正しなければいけない、そこのところまでは有識者会議でも結論をいただいております。

 あと、当面はともかく、将来の姿としてそれをどういう形で是正するのかというのは、つまり、新しい年金の部分に税金を入れないという形で是正して、残りを退職金で是正するのか、あるいは、一定の税金を入れた年金制度というものを新たにつくって、そして主として退職給付の方で調整するのか、これは考え方としては両様あり得るわけで、いずれにしろ、四百万の、税金の投入額というものは、これは是正するというところでは変わりませんので、あと、どちらがいいか、あるいは新しい年金制度をどういうふうに制度設計するかということはこれからの議論であります。

大口委員 小宮山大臣に聞いたのは、小宮山大臣は税を投入すべきじゃないというお考えだったからでございます。

 そこら辺も含めて、しっかり国民の常識というものを踏まえてやっていただきたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

中野委員長 これにて大口君の質疑は終了いたしました。

 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 きょうも時間をいただきましたので、質問をいたします。

 まず、岡田副総理にお伺いをいたしたいんですが、きょうは前回の質問で触れられなかったところをやりますが、個別の案件も多いものですから、まず、きのう行われました内閣改造についてお伺いをいたしたいと思います。

 率直に言って、どういう御感想をお持ちでしょうか。

岡田国務大臣 今回、五閣僚の交代ということでありますが、適材適所で、もちろん今までがどうかということではないんですが、私は、非常にいい顔ぶれがそろった、きょう閣議を行いましたが、改めてそういうふうに感じておりました。

石田(祝)委員 私がお聞きをいたしましたのは、総理がきのう御自身で新しい方を発表される、異例のことだというふうに思いますが、そういう中で、これは新聞報道でありますけれども、社会保障・税一体改革を含め、諸懸案を前進させる環境整備をする、機能強化と適材適所、こういうお話をなさったと思いますが、私は、岡田副総理を初め安住大臣、また小宮山大臣、川端大臣も連日ここで熱心にやられておって、一体改革の議論は進んでいるんじゃないのかな、こういうふうに思っておりますけれども、きょうでたしか七十時間になると思うんですよ。それだけ熱心にやっているのに、あえて、一体改革の議論を進めるから大臣をかえたんだみたいな話で、ここで座っていらっしゃる方に非常に失礼ではないのかな、私はこう思いますけれども、そういう観点でお聞きをしたんです。

 副総理は、ずっと朝から晩までそこでお座りになって質問に対する答弁をなさっている。そういう立場からすると、今回のこの内閣改造で一体改革の議論がどう進んでいくのか、御自身がその責任者の立場で率直にどうお考えかなということでお聞きをしましたが、今の、内閣の適材適所は、ちょっと私は、もう言葉は使わない方がいいんじゃないかなと思いましたけれども、先ほどのお答えとは別に、御自身が熱心にここで議論に参加をされて進めておられる立場からすると、議論が余り進んでいないような言い方で内閣改造した、いわゆる、そういう進まないことの、邪魔なものを取り除いたような言い方になっておりますけれども、そういう点で、いかがですか。先ほど以上の率直なお答えをいただければと思います。

岡田国務大臣 これは答えにくいですね。注意深く答えないといけない御質問だと思います。

 いずれにしろ、社会保障・税一体改革、野田政権にとって今最大の課題であります。この内閣改造というもの、私は、それを前進させるためにも意味のあることだというふうに考えております。

石田(祝)委員 きょうで七十時間ということを私申し上げました。いつの日からか、百時間というのが一つの目安だ、こういうことがどうも共通の認識になっているようでして、百時間に向かって着々と議論を進めているのに、なぜそんなことを総理はおっしゃるのか、私は理解ができません。

 特に、この法案は、国会に提出された以上、この委員会でしっかり議論をしていくというのが本当のところだと私は思いますし、それが一日もとまらずにしっかりやられているということですから、私は、そういう立場で、副総理がきのうの総理の言葉をどう聞いたのかな、こういうことであえてお聞かせをいただきました。

 それで、それとも関連をするんですけれども、やはりここで議論をこういう形で、朝の九時から五時まで、一日七時間、熱心に進められて、きょうで七十時間、そういう中で、いろいろな議論をされておりますけれども、あえて総理がそういうことをおっしゃるというのは、この法案とか委員会以外のことに、やはり結論を出すことに対しての何か阻害要因があるんじゃないのか、こういうことを考えられていると思うんですね。

 ですから、それが何かというと、あえて申し上げると、最低保障年金をどうするんですか、そして後期高齢者医療制度の廃止、これをどうするんですか、ここのところにやはりひっかかっているんですよ。それともう一つ大きな根本の問題は、やはりどこまでいっても、消費税の増税について、やらないと言ったことをやっているということ、これが一番の大きな問題なんですよ。

 ですから、そこのところを何となくかわしながら議論をしているということで、時間を熱心にやって、私もしっかり質問させていただいておりますし、きょうもそのつもりでありますけれども、そういう根本のところが、やはりどこかで本当の議論が進んでいかない、国民が期待するような結論を得るようなコースに入っていないというのが、そこが大きな原因だと私は思うんですね。

 それについて、私は、先日の委員会で、副総理に、最低保障年金の法案はいつ出すんですか、こういうことをお聞きしました。八月二十九日が我々の任期ですから、当然それまでに出さなきゃいけないというふうに私は思いますけれども、確たるお答えはそのときありませんでした。党で議論をしている、こういうお話でした。

 それで、副総理、あと一年ちょっと我々の任期もあるわけですけれども、やはりいろいろなことを考えると、これはそろそろ、党に任せているというのじゃなくて、案を固めておかなきゃいけないと思うんですね。

 ですから、私が今申し上げたような最低保障年金の問題、また後期高齢者医療制度の廃止の問題、また、もともとの、消費増税をやらないと言ってきた、それを今回法案にしている、こういうことが私は本当の議論が進まない理由じゃないかと思うんですが、その点について副総理はいかがお考えですか。

岡田国務大臣 まず、我々、二〇〇九年の総選挙において四年間消費税を上げないと言ったことは事実であります。そのこととの関連で、国民の皆さんが、この任期の間に消費税を上げることを決定するということもないだろうというふうに思われた方は多かったかもしれません。

 私は、マニフェストに反しているとは思いませんが、しかし、そういう状況を鑑みれば、それは大変申しわけないことだというふうに、国民の皆さんに対して、そういうふうに思われた方が多かったとすれば申しわけないことだというふうに思っておりますし、同じ趣旨は総理も言われたというふうに私は思っております。

 それから、最低保障年金というより年金の抜本改革とか、あるいは後期高齢者医療制度廃止の問題は、まさしくこれはこれから各党と協議をさせていただく中で御議論いただく話ではないかというふうに思っております。

 私は、厚生労働委員会で、御党の坂口先生が、これから協議すれば、来年法案を出すということにこだわるのか、そういう御質問をいただきましたので、きちんと各党間で協議ができて、そして答えが出るなら、別に民主党だけが法案を出すということにはならない、こういうふうに答えたこともございます。

 まさしくそれは胸襟を開いて、どういう制度がいいのかということについて各党間でお話し合いをさせていただき、それがもしまとまればそれが答えになるわけでありますので、ぜひ協議を行うことについて公明党にも積極的に参加をしていただきたいというふうに思っております。

石田(祝)委員 まあ、協議の問題については我が党の代表が明確にお述べになっておりますので、私はその点は申し上げません。

 それで、私は、基本的にはちゃんと全て通告をしてと思っておりますけれども、ちょっと副総理、これは政治家としてお伺いをしたいんですが、最低保障年金、非常に前回の選挙で民主党躍進の大きな原動力になったのではないか、こう思っておりますが、例えばこのまま法案を出さないで選挙に突入する、そうなったとき、民主党はまた最低保障年金をやりますよということを公約にするんですか。

岡田国務大臣 今の御質問は、いろいろな仮定に基づいておりますので、すぐにお答えすべきではないし、また、次回の選挙におけるマニフェストをどうするかというのはまさしく党で議論を今行っておりますので、そこは控えさせていただきたいと思います。

 ただ、いろいろな具体的な考え方というものをより煮詰めないといけないと思いますし、その前に各党間の協議で一定の合意ができればそれはそういう必要もないわけですから、余り決めつけて今お答えしない方がいいのではないかと思っております。

石田(祝)委員 私は、あえて政治家岡田副総理にお聞きをしたんですが、結局、私が前回、いつ出されるのか、二十五年中しか書いていないですよ、我々の任期を考えるとそんなに時間がないということを申し上げたんですが、明確なお答えはございませんでした。

 そういう中で、やはりこれから、どうしてもこれはもう一度信を問え、我々はこういう立場でありますから、そうすると、最低保障年金はなかなか、政権交代して二年九カ月になるのに、姿も影も形もない、そういう中で、やりますよ、やりますよとおっしゃられても、これは二〇〇九年の選挙のときの約束からもう随分日がたって、まだ出してこない、そういう中で選挙に突入したら、またやりますよというお話は、これは私はあり得べからざる話だ、こういうことでお聞きをいたしましたが、その点も明確なお答えはなかったというふうに思います。

 続いて、厚生労働大臣にお伺いをしたいんですが、国民年金と生活保護費について、前回、私も質問、また私の意見として、四十年間払い続けた人が、非常に不満というんでしょうか、なかなか納得できない思いをしている、こういうことを申し上げました。

 それで、調査、協力について全銀協会等のお考えもお伺いをしながら質問をいたしましたが、その後、何か進展があったというふうにお伺いをいたしましたけれども、この点、いわゆる調査、協力という点でどのようになったのか。全銀協会以外の金融機関、こういうこともどうですかということを前回お聞きしましたけれども、その点について、前回、三十日の質問以降、何かありましたらお答えいただきたいと思います。

小宮山国務大臣 生活保護の受給要件を確認する上で必要な資産調査、これについては、金融機関の本店などに複数の支店分の口座を一括して照会できるようにならないか全国銀行協会に対しまして厚生労働省から要請をしてまいりました。

 このたび、全国銀行協会の協力を得て、福祉事務所が本店等に照会を行えば国内全店舗の口座の有無などを確認できることになりました。平成二十四年十二月から実施予定にしています。

 この一括照会は非常に有効な手段ですので、全国銀行協会に加盟していない関係団体、信用金庫、信用組合、農業協同組合など、そのうち一部には既に厚生労働省から働きかけを行っています。

 今後、この一括照会の実施状況などを確認しながら、またさらに積極的にこうしたところにも働きかけを行っていきたいと考えています。

石田(祝)委員 私は、前回申し上げましたように、国民年金を四十年掛けた方との差、これについては、生活保護を引き下げるということは申し上げませんというふうに言いましたけれども、その大前提として、本当に困っているのかどうかということ。ここは、やはりある一定の範囲の中しか調べないから、どこかよそに口座を持っているだとかそういうことはあってはならないわけですから、そういうことを前提にして、本当にこれは困っている、何とかしなくちゃならない、これに手を差し伸べるということは、私は国民誰も反対しないと思うんですが、そういうものをほかに持っていながらということになると、これは納得できない。四十年、汗水垂らして働いて、毎月毎月払ってきた、そういう我々と比べて何だというのは、これは国民の率直な思いとしてぜひまた御理解も頂戴したいというふうに思います。

 それで、加算について少々お聞きしたいんですが、政府案は今回六千円の加算をする。私から言わせると、いわゆる年金制度の横づけみたいな、上乗せと言ってもいいかもしれませんけれども、福祉的措置でやられているわけですね。これは、六千円の根拠をちょっとお伺いしたいのと、あわせて、我が党も二五%の加算ということを提案いたしておりますけれども、それぞれについてお考えをお伺いします。

小宮山国務大臣 今回の低所得者への年金額の加算につきましては、現在の年金制度で実際に低年金の人が存在をする、その中で最低保障機能を強化しようということで、一定の低所得の基礎年金に月額六千円の加算を行うことにいたしました。

 この六千円の根拠ですが、単身高齢者の基礎的消費支出、衣食住や光熱費など、この基礎的消費支出である月額が六・七万円から七万円ということですので、それと、今回、特例水準解消をしたいと考えていますので、その解消後の老齢基礎年金の満額六・四万円の差額を賄える水準として設定をいたしました。

 そして、今御党がおっしゃっている低所得者の老齢基礎年金額、二五%上乗せするという、問題意識は同じだと思うんですけれども、この加算につきましては、具体的な方法は考え方は違うかもしれませんが、最低保障機能の強化など、今の制度に改善が必要だとお考えの点は同じだと思いますので、また御意見も伺いながら、調整ができるところがあれば検討させていただきたいと思います。

石田(祝)委員 続きまして、一つ質問を飛ばしますが、産前産後休業期間中の保険料免除について。

 今回、産前産後の休業期間中、この保険料を免除する、こういうことにしたわけですね。これは私、前から、いわゆる自営業の方、その御本人、もしくは配偶者というのはこれは変ですけれども、一人一人が国民年金に入っているわけですから、この方たちにも、産前産後休業期間中、これはもうごまかしようがない話ですよね、出産ということはもう誰もが明確にわかることでありますので、その前後の、産前産後期間中の保険料免除ということ。これは、国民年金は使用者がいないということで、本来被用者は使用者と半分半分でいいところを、全額掛けている、扶養の考え方もない、こういうことで、御夫婦、自営業の場合はそれぞれが払っていかなくちゃならない。

 ですから、今回、産前産後の保険料を免除するということを入れるわけですから、これはぜひ国民年金の方もこういう制度も考えていってはどうか、私はこういうふうなことも提案をいたしたいんですが、これは、小宮山大臣、前向きな御答弁をいただけますでしょうか。

小宮山国務大臣 今回の法案では、育休期間に加えまして産休期間中も厚生年金保険料を免除して、女性が就業しやすくしようということにしています。他方で、国民年金でも、さらに次世代育成支援という観点から、同様に保険料免除制度を設けるべきという御意見があることも承知はしています。

 ただ、国民年金制度に育休、産休中の保険料免除を盛り込むということについては、一つは、育休、産休という仕組みが被用者を対象とした制度であるので、自営業者ですとか無職の人などさまざまな就業形態が存在する国民年金に広げられるものなのかどうかというのが一点。

 また、もう一点は、この措置の新たな財源確保のために国民年金保険料の引き上げなどを行うこと、これについて、その免除の対象にならない被保険者の理解が得られるかどうかというような課題もあるというふうに考えています。

 今後、今検討している民主党の新しい年金制度の中でも、こういう産休期間中の保険料免除を含めた次世代育成支援をどうするかということを考えていくと思いますので、また各党間で御議論をいただければというふうに思います。

石田(祝)委員 これは、いわゆる働き方に対して中立な制度ということをよくおっしゃるじゃないですか。これは働き方に中立じゃないですよね、その考え方というのは。

 要するに、国民年金の方も全く働いていないわけじゃないわけですよね。被用者保険の年金の方は育休期間も免除されている、産休期間も免除される、こういう形になっているわけですね。ですから、出産という非常に大事なことに対して、雇われている人は就業の問題でそういうことになっているんだ、国民年金、国民健康保険の人はそれがないから無理ですよというのは、私は、これからの少子高齢社会でいろいろな意味で応援しなきゃいけないということを考えると、やはりちょっとその理屈は、小宮山大臣はいつも働き方に中立のと言っていらっしゃるんじゃないですか、これは働き方に中立じゃないですね、その考え方は。

 ですから、これはもうちょっと、きょうはこれ以上申し上げませんけれども、我が党はそういう考え方もいたしておりますし、さらに言えば、育児休業だって、いわゆる被用者の方は一年ぐらい認められたり、長く認められたり、私は以前、東京都の学校の事務をしておったときがあるんですが、二年間ぐらい一度も学校に来ない先生もいるんですよ、要するに、続けて子供さんが生まれて。これは悪いと言っているんじゃないですよ。現実の姿としてそういう方もいらっしゃるわけで、余りにもそれは差があるのではないのか。そういう点も、これはこれからの課題として、私は、ぜひ前向きに取り組んでいただきたいと思います。

 それでは、ちょっと時間がなくなりましたので、きょうは健康保険のことについて少々お伺いをしたいんですが、健康保険証のカード化についてということであります。

 これは、実は、昨年の衆議院の予算委員会で、私が二月の予算委員会で、当時の野田財務大臣ほか細川厚生労働大臣、また総務大臣、文部科学大臣にお聞きをいたしましたが、健康保険証のカード化、これを進めるべきではないかという趣旨で御質問いたしました。それぞれ所管の大臣の方から御答弁をいただきましたが、進んでいるところ、非常におくれているところ、ございました。

 これは安住大臣によく聞いていただきたいんですけれども、当時の野田財務大臣は、その後、総理になられましたので、このカード化についてもいい答弁があるとやはりそういう道も開けるんじゃないか、こういうふうに私は勝手に思っておりますけれども。

 それでは、まず協会けんぽ、そして川端総務大臣には地方公務員の健康保険証のカード化、これについて、それぞれ簡単に現状をお聞かせいただきたいと思います。

 まず、小宮山大臣と川端大臣。

小宮山国務大臣 公的医療保険の被保険者証につきましては、平成十三年の四月から、被保険者等の利便性向上などを図るために、加入者ごとにカード様式で交付されることにしていましたが、経過措置として、従来どおり紙様式で交付することもできるということにしてあります。

 市町村国保の被保険者証カード化の進捗状況につきましては、これは年々ふえていまして、平成二十三年六月時点でおよそ八四%になっています。今後カード化を実施する予定の市町村国保も含めますとおよそ九三%になっています。

 被保険者証のカード化につきましては、保険者で一定の事務負担やコストが発生いたしますけれども、被保険者の利便性の観点から非常に重要な取り組みですので、さらにそれが進むように、引き続き働きかけを行っていきたいと考えています。

川端国務大臣 昨年、石田先生から片山大臣に御質問がありまして、片山大臣の方から、地方公務員共済組合は六十四組合中六十一組合であるということと、三組合については、今後の更新時期などにおいてカード化を推進されるよう要請してまいりたいという御答弁をさせていただいてございます。

 それで、今実施の組合は、去年の二月と同じで、六十四組合中六十一組合でありますけれども、残る三組合については、去年の二月では未定でありましたけれども、委員の御質問の趣旨を踏まえて要請を行ったところ、うち二組合については今年度中、一組合は平成二十六年九月にはカード化予定ということでありますので、最終的には二十六年九月で全部完了するということになりました。

石田(祝)委員 最後にお伺いするということで安住財務大臣にちょっとお待ちいただいたんですが、やはり徐々に、協会けんぽ、また国保、そして地方共済、きょうはお見えいただいておりませんけれども私立学校共済、私立学校共済はもう一〇〇%終わっている、こういうことで前回の御答弁もありました。

 一番残っているのが、大もとのいわゆる財務省がやっているところ、国の共済組合なんですけれども、これは、財務大臣、現状はどうなっていますか。まず現状をお聞かせください。

安住国務大臣 二組合がカード化しましたけれども、現時点では、十八共済組合については順次これからカード化を図るということになっております。

 これは昨年来、先生から御指導いただいておりますので、後でお許しいただければ、少しこの先のことはお話ししたいと思います。

石田(祝)委員 去年の二月の質問をしてから、具体的には国の方は余り数としては進んでいない。

 現状、中がいろいろと進むということのようですから、この後、御答弁をいただきたいんですが、私がなぜこういうことを言いますかというと、紙で一枚ですと、全員がそこに名前が載っているわけですね。これは遠隔地というのもありますけれども、それぞれが、ぐあいが悪くなったときにコピーを持っていったり、子供の修学旅行はどうするんだとか、いろいろなことがありまして、やはり一人一枚持たせていただいた方が非常にいい。

 私もそのときに自分の健康保険証をお示ししながら、私は国民健康保険ですから、こういう形で家族全員もらっていますよと。ですから、それぞれが必要なときに自分のものを持って病院に行って治療を受ける、こういう形になっているわけですね。

 ですから、今、国家公務員の方が非常に不便を感じているのは、病気であったり、子供が修学旅行に行くときに非常に困る、こういうお声もありまして、また、財務省もみずからカード化を進めよう、こういうお話をなさっておりながら、なかなか大もとが進んでおらないじゃないか、こういうことでありますが、財務大臣、これからの御予定をお聞かせいただいて、前進をしているようでありますから、御答弁をいただきたいと思います。

安住国務大臣 きょうも、実は朝、私、自分の、大臣の共済の保険証を持ってきまして、若い職員の皆さんと、考えてみれば大変不便だ、みんなはどうしているのと聞いたら、やはりコピーを持ってお子さんが例えば病院に行かれたり、自分がぐあいが悪いときはこれを持ってきて、ですから家には保険証がない、こういう状況なので、確かに先生御指摘のとおりでございます。

 そこで、二十四年度、今年度中に十四、二十五年度中に、一番最後は防衛省で平成二十五年九月予定でございますが、そこで十八組合全てカード化を終了いたします。

 ですから、そういう点では、大変おくれましたが、カード化に対する予算措置等も含めて、あらかた二十四年度中に完成をいたしまして、二十五年度の後半までには、来年の四月までには防衛省を除いて全て、防衛省は人が多いものですから、これは二十五年の九月ということになりますので、御了解をいただければと思っております。

石田(祝)委員 若干時間がかかったという気もいたしますけれども、道筋もはっきりつけていただきましたので、私は率直に言って、小さいお子さんをお持ちの、役所で頑張っていらっしゃる皆さんも、いろいろな意味で助かったなというふうな気持ちをお持ちになるんじゃないのかなと。このことは財務大臣の御労苦を多といたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

中野委員長 これにて石田君の質疑は終了いたしました。

 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは、被災地の復興と消費税の問題について質問をいたします。

 東日本大震災、同時に、茨城、栃木の皆さんにとっては、東日本大震災に加えて、五月六日にあの竜巻被害がありました。三本の竜巻が茨城、栃木を大きく縦断するような、多大な被害を与えたわけであります。

 全壊も八十八戸、半壊が百九十四戸、一部損壊が九百四十二戸、非住家も含めると二千棟近い被害が発生をしております。亡くなった方もおられます。屋根そのものが吹き飛ばされた家も大変多いわけで、屋根が吹き飛ばないまでも、その修理には数百万とか一千万かかるという方もいらっしゃるということです。農家の方や中小企業の皆さんも被害を受けました。

 こういった甚大な被害が出た災害であるのですけれども、今国会ではこの問題についての国会質疑がただの一度もありません。災害対策委員会が現地に委員派遣を行いましたけれども、それを踏まえたような国会、委員会質疑もありません。そういう点でも、今の国会の運営そのものが極めて異常だということを厳しく指摘しなければならない、国民の立場でしっかりとした審議を行うことが求められている、このことを最初に申し上げておくものであります。

 そこで、この竜巻被害の関係で何点かお尋ねしたいんですが、一つは、被災者生活再建支援法についてであります。

 全壊の戸数については、茨城県のつくば市が七十五戸、栃木県の真岡市で六戸、益子町で七戸となっています。現行の仕組みでは、つくば市は被災者生活再建支援法支援金の対象となりますが、真岡市、益子町は適用対象となりません。被災者の方からは、同じ災害なのに、支援されるところと支援されないところがあるのは納得いかないという声が上がっております。被災自治体の要望書でも、柔軟な対応を求めるとか、きめ細かな支援を求める、こういう声が寄せられております。

 そこで、内閣府にお尋ねをいたします。

 被災者生活再建支援制度は、スタート以来、自然災害の要件を何度か見直してまいりました。この要件の変遷とその際の理由について、簡単に御説明をいただけますか。

後藤副大臣 先生にお答えいたします。

 先生のおっしゃるとおり、平成十年に被災者生活再建支援法が阪神・淡路大震災を踏まえて制定されました。平成十年の制定当時は、三つの主な要件で対応するということになっております。

 一点目は、災害救助法に該当するような大規模な住宅被害が発生した市町村、並びに十世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村、三点目は、百世帯以上の住宅全壊被害が発生した都道府県としておりました。

 それが、平成十六年の改正におきまして、これらの市町村に隣接をする人口十万人未満の市町村で五世帯以上の住宅が全壊した場合を追加し、さらに、平成十九年の改正におきまして、法制定時の対象市町村を含む都道府県の中で、全壊五世帯以上の被害が発生した人口十万人未満の市町村を追加したところでございます。さらに、直近の平成二十二年の改正におきまして、法制定時の対象市町村を含む都道府県または対象都道府県が二以上である場合で、かつ五世帯以上の住宅全壊被害が発生した人口十万人未満の市町村、並びに二世帯以上の住宅全壊被害が発生した人口五万人未満の市町村を規模要件に追加いたしました。

 先生おっしゃるように、制定以来、過去三回、規模の追加をしながら、できるだけ被災者の方に使い勝手がいいという形で対応を進めているところでございます。

塩川委員 今お答えいただきましたように、過去、大規模災害などを契機に要件の拡大を行ってまいりました。規模の追加を図ってきたわけであります。要するに、市町村単位の全壊戸数を基準に適用するということになりますと、実際にはそこで漏れてしまうような自治体の被災の世帯が生まれてしまうということであります。

 大規模災害で全国一緒にきちんとした支援を行おうという被災者生活再建支援法の趣旨を考えても、今回のように一部漏れてしまうような災害に対応した形での見直しが必要だ。過去、同一災害で支援対象の不均衡が生じたことを踏まえて要件の見直しを行ってきたわけですから、今回の竜巻被害にもかみ合った見直しを行う必要があると考えますが、その点についてお答えください。

後藤副大臣 いろいろな検討は竜巻被害でもさせていただきました。特に、先生おっしゃるように、ある一定の規模を区切って、対象になる部分、ならない部分があるというのはおかしいという議論もございました。

 特に昨年の東日本大震災以降、内閣府の中でもいろいろな検討会を立ち上げて、その一つ、災害対策法制のあり方に関する研究会という検討会も、これは昨年十二月六日に中間報告をまとめています。その中でも、先生が御指摘の被災者生活再建支援法についても、特に、平成十年、法制定当時は収入要件で再建の支援をするかどうかということもございましたが、それは平成十九年の法改正で、所得要件については撤廃、廃止をすることになりました。そういう部分で、生活困窮度を資産要件も含めていろいろな角度から追加的に検討すべきだという御意見。

 さらに、被災者に対する国の支援のあり方に関する検討会、これは本年三月に中間整理ができておりますが、この中でも、被災地の皆さん方からのいろいろな御指摘も踏まえて、どのような形で今後、被災者生活再建支援制度に臨むかという論点整理を行いました。これについてもいろいろな御意見があって、やはり全体に適用すべきだという意見と、そうではなくて、やはり一定の規模要件等を課すべきだという、ある意味では両論併記になっています。

 特に、先生が今お話をしていただいております被災者生活再建支援法、この一条には、都道府県の相互扶助の観点ということが明定をされております。そういう意味で、国がどこまでかかわるのか、そして、都道府県の基金を使いながらこの生活再建支援法が適用されるということを考えて、特に昨年の震災以降、県独自で支援制度を設けている都道府県が、二十五から現在の五月末時点で三十まで、独自の支援制度を設ける自治体が五都道府県、増加をいたしました。

 そういう意味で、独自の支援制度を設けている対象都道府県につきましては、支援金の支給額の二分の一が特別交付税措置がされるということで、法の目的を考えて、国、都道府県、市町村のバランスを考えるときに、まず、この独自の都道府県の支援制度もそれぞれの自治体で充実をしていただくということも含めて、さらにどのような形が国として考えられるか、多様な視点から検討してまいりたいというふうに思います。

塩川委員 自治体が独自で支援策をとるというのは重要であります。そういうのをしっかりと促していくような取り組みということは重要です。同時に、被災者生活再建支援法として、この間、要件の緩和を行ってきたわけであります。

 例えば二〇一〇年の豪雨災害のときにも中井防災担当大臣の答弁でもありましたが、各地に点々と被害が広がっている中で、例えば被災者生活再建支援制度を適用しようとしても、広島県の庄原市だけという状況、政府内で話し合い、庄原市だけでなしに、各地域の全壊、半壊のお宅をお手伝いできる、政令改正して適用したい、こういうことが平成二十二年、二〇一〇年の改正になっているわけであります。

 このときにも、全国知事会からの要望で、現行制度で一部地域が適用対象となるような自然災害が発生した場合には、全ての被災区域が支援の対象となるように制度改正を行うことを求めているわけであります。こういう立場でぜひ具体的に考えてもらいたい。

 もう一言、答弁をいただきたい。

後藤副大臣 現在、国会の方に、災害対策基本法の改正についても御議論をお願いしているところでございます。さらに、災害法制体系というのは、災害救助法、生活再建支援法を含めて百以上の災害にかかわる法体系がございます。それをこれから、今、それぞれの関係省庁にもお願いをしながら、どこまで、まず優先的に何ができるかということも含めて検討を進めるというところでございまして、先生の御指摘というのは、平成二十二年の政令改正の中でも、市町村にできるだけきめ細やかにという視点の中で改正をしたものというふうに私も承知をしておりますので、先生の御意見も含めて、これから、何がまずできるのか、どのくらい時間がかかるのかということも含めて、できるだけ前向きに考えていきたいというふうに思います。

塩川委員 同じ災害なのに、支援されるところと支援されないところが生まれないように改正をすべきだ。その点では、二〇〇七年の法改正のときの附帯決議に、四年後の見直しは今であるわけで、半壊世帯への支給などを含め、基本的な、抜本的な見直しということが必要だということを申し上げておきます。

 次に、災害救助法の住宅の応急修理について小宮山大臣にお尋ねをいたします。

 被災者の皆さんが被災住宅に住み続けることができるように、五十二万円を上限に、住宅改修について現物支給されるのが住宅の応急修理であります。ただ、資力要件、収入要件が障害となっております。この点の見直しが求められています。

 今回の竜巻災害でも、子育て世代の中で、共働きですと、こういう資力要件、四十五歳未満だったら五百万円とかそういうのを超えてしまうわけで、いわば、その町にとっては一番中核となるような子育て世代をしっかりと応援したいんだけれども、住宅の応急修理というのがそれに当たらないということに今なっている、こういう点はぜひ見直してほしいという声が上がっているわけであります。

 そこでお尋ねしますが、住宅の応急修理を行う上で自治体が参考としているのが、厚労省の方でつくっております災害救助法の事務取扱要領、その実施要領の例の中に資力要件が記載をされていますが、これは、かつての被災者生活再建支援法の年収等の要件を引き写したものだと思いますが、その点を確認させてください。

小宮山国務大臣 それはそのとおりでございます。

 災害救助法による住宅の応急修理につきましては、災害のために住宅が半壊以上の被害を受けた人で、みずからの資力ではその修理ができない人に対して実施をするものです。

 御指摘の所得要件については、平成十六年十月の新潟県中越地震の際に、住宅の応急修理が速やかに進むように、住宅の再建を目的とする被災者生活再建支援法の当時の所得要件に合わせて要件を大幅に緩和して、今こういうことになっています。

塩川委員 今大臣お答えありましたように、被災者生活再建支援法の年収等の要件を参考にして住宅の応急修理の資力要件を設定したという経緯があります。

 そこで、先ほど後藤内閣府副大臣の答弁がありましたように、被災者生活再建支援法は、二〇〇七年の改正の際に収入要件を撤廃いたしました。であるならば、住宅の応急修理の資力要件も撤廃することが必要ではありませんか。

小宮山国務大臣 災害救助法による応急修理の所得制限は、平成二十一年度に、応急修理のさらなる活用を促進するために、特に修理に多額の費用がかかる住宅の全壊ですとか大規模半壊については所得制限を撤廃いたしました。

 なお、現在、私を含めて関係閣僚がメンバーとなっています防災対策推進検討会議、ここで、災害救助法を含めた災害法制全般の見直しが行われていますので、被災者生活再建支援法との整合性も含めて、ここの会議の中で、整合的にできるように進めていきたいというふうに思っています。

塩川委員 被災者生活再建支援法では資力要件を取り払ったわけで、住宅の応急修理だけ残しておく必然性はありません。

 この議論の中で、昨年、大塚副大臣が、参議院の復興特別委員会の我が党の大門議員の質疑の中で、この制度の本質は、必要最低限度の修理により居住する場所を応急的に確保することであり、経済的な負担軽減ではないということを述べておられます。

 住宅の応急修理は、経済的な負担軽減が本質ではなく、居住場所の応急的な確保が本質であるならば、資力要件を設ける必要がないわけで、こういう立場から資力要件を取り払うという方向で対応を求めたい。改めてお答えください。

小宮山国務大臣 災害救助法による住宅の応急修理は、災害により半壊以上の被害を受けて、その破損箇所を修理すれば日常生活を営むことができる、そういう場合に、その破損箇所について必要最小限度の修理を行うものです。

 今御指摘の答弁の趣旨は、こうした応急修理制度の目的を説明したもので、この制度が、個人資産としての住宅の損害を補償するということで被災者の経済的な負担軽減を図るものではないということを説明した答弁だというふうに思います。

 先ほどお話ししたように、今、防災対策推進検討会議、ここで災害救助法も含めて全体の災害法制を検討していますので、その中で御指摘の点でも整合性がとれるようにしていきたいというふうに思います。

塩川委員 居住場所の応急的確保が本質、その立場での見直しこそ行うべきだ、五十二万円の上限の引き上げなどを含めて、住宅の応急修理の見直しを行うことを求めておくものであります。

 関連して、川端大臣に一点お尋ねします。

 竜巻被害の地域というのは、先ほども申し上げましたように、東日本大震災で被害を受けた地域と重なっているわけであります。東日本大震災で被害を受けた地域におきましては、取り崩し型復興基金の交付税が交付をされております。ですから、二重災害、連続災害となっているこういう地域で、地震でも被害を受けたけれども、竜巻でも被害を受けた、こういう方々に対して、その県、自治体が独自の支援策をこの復興基金を使って行うということは当然可能だと思いますけれども、その点について確認をさせていただきたい。

川端国務大臣 まず、おっしゃるとおり、二重に被災されたというのは、もう本当にお気の毒としか言いようがない部分であり、改めてお見舞いを申し上げたいと思うんです。

 言われましたように、この取り崩し型の復興基金、もともとの財源は交付税でありますので、その分では一千九百六十億円、使途に制限はついておりません。これがもともとの性格です。それを受けて、具体の設置目的や使途等については、特別交付税措置でありますので、特別交付税措置の趣旨を踏まえて、それぞれの被災県で条例によって定めていただいております。

 そういう意味では、使途の制限のない一般財源でありますということでは、その該当する被災県の判断に委ねられている。これを、例えば今回のものに使えるかどうかということ、どのように活用するかは、それぞれの団体で、復興基金に対する財政措置の趣旨、条例との関係も含めて、議会等で十分議論していただいて、適切に判断されていくものだというふうに思います。

 一部、条例を読ませていただきましたが、条例の中で、書きぶりとして、解釈としては読めるという書きぶりの幅を広げているのもあれば、非常に限定的に東日本の復興に限るというふうにしか読めないのではないかという条例もあります。これは、それをどうするかといったら、県のこれからの御判断であると同時に、一方で、この基金自体もいろいろもう使う予定をしておられるという財源的な背景もあると思いますので、それぞれの地域の県及び議会において御議論をいただければというふうに思っております。

塩川委員 県の判断で使えるということですから、こういうことで、被災者の実情に沿った対応策を求めていくものです。

 特別交付税の措置とかあるいは特例交付などを迅速、適切に行うことも今後の対応としては求めていきたいと思いますし、実際に現場では、例えば水田で瓦れき、ガラスの破片などがまざり込んでいるなどということもあるわけですから、そういったことに対して、農水省の補助金などもつけられていますけれども、もっと期間を延ばして、稲刈りが終わった後にも対応できるような、そういう支援措置も認めてほしいという声などもありますので、こういうことを含めて改めて要望しておくものであります。

 そこで、安住大臣にお尋ねしますが、被災地の復興にとって消費税がどのようなものかということで何点かお尋ねしますけれども、東日本大震災では被災者への税の減免措置を行いました。

 安住大臣にまずお尋ねしますが、所得税については減免措置があると思いますが、あるかないかの一言だけお答えいただけますか。

安住国務大臣 さまざまな措置を行っております。ございます。

塩川委員 川端大臣にお尋ねします。

 地方税におきまして、住民税やあるいは固定資産税など、被災者の方に着目した税の減免措置があると思いますが、確認します。

川端国務大臣 被災地向けに関してということで言いますと、四度にわたり地方税法を改正いたしまして、固定資産税の課税免除とか、固定資産税、不動産取得税の軽減、あるいは自動車取得税、自動車税、軽自動車税の非課税措置等を講じたところでございます。

塩川委員 被災者の皆さんにとって税負担の大きい所得税や住民税、固定資産税などの減免措置が行われております。

 そこでお聞きしますが、こういった所得税とか住民税などの減免措置を今回の災害において行っている理由は何なのか。この点についてお答えいただけますか。

安住国務大臣 これは、例えば所得税でいうと、雑損控除や災害減免法に基づく所得税の減免措置の前年分適用特例とか、それから、被災事業用資産の損失の特例、住宅ローン減税の適用の特例等々、やはり急の災害で、本来所得としてカウントされるべき、こういう災害がなければ入ってくるであろうことを前提に納税をしてもらうということが現実にはできない状況になったわけですから、そういうことに対する減免の措置であります。

 ちなみに、私も被災者として減免措置を実はいただいておるんですけれども、非常に助かったわけでございます。

塩川委員 安住大臣も含めてということですけれども。

 納税ができないからとおっしゃいました。つまり、被災者には、こういう災害によって、もちろん財産を損なう、あるいは仕事を失う、そういう機会の中で、税金を納める力が小さくなっている、つまり担税力がなくなっている、これが減免を行う理由ということで考えていますが、そういうことでよろしいですね。

    〔委員長退席、古本委員長代理着席〕

安住国務大臣 一時的にはそういうことなんですね。ですから、そのダメージが例えば一日も早く復旧していただければ、また仕事をしていただいて、普通に所得が戻ってくるまでの間、やはりそうした措置というのが必要になるということだと思います。

塩川委員 担税力がない、いわばその負担能力がないからこそ減免措置を行っているわけであります。

 それでは、被災者に対する消費税の減免措置というのはあるんでしょうか。

安住国務大臣 現時点で、消費課税じゃなくて消費税ですよね。(塩川委員「消費税です」と呼ぶ)

 今提案させていただいている消費税については、ございません。

塩川委員 現行制度で、現時点で消費税の減免措置というのは当然ありませんよね。

安住国務大臣 大震災による、消費税の課税事業者選択届出等の書類がおくれた場合に、例えば、それに対していいですよというような消費税の課税事業者選択届出書等の届け出に係る特例、特例措置は何点かございます。

塩川委員 今、事業者に対する消費税の特例措置として申告期限の延長ですとかあるいは徴収猶予とかというのがあるわけですけれども、ただ、それは後で払ってくださいねという話であります。

 何よりも、被災者の方にとってみれば、消費税の減免措置はありません。ですから、今お答えいただきましたように、所得税や住民税、固定資産税というのは、税金を納める力がない、納税ができない、担税力がない、そういった方々に減免措置を行っているのにもかかわらず、そういう負担能力がない被災者にも負担を求めるというのが消費税ということになりますね。

 これは余りにも被災者の皆さんにとって消費税の負担が大きくなる、消費税が被災者の皆さんにとって大きな負担となるということを示しているものになりはしませんか。

安住国務大臣 消費税の税の性質上、何度も申し上げていますけれども、やはり水平的課税でありますから、そういう意味では、所得税のようないわば累進率がある垂直型の税であればさまざまな控除や減免措置はありますけれども、制度設計上、大震災や大災害に遭われて、例えば、物を消費する、買っていただくときの消費者として何か減免措置を考えている制度ではないわけです、それは。ですから、そういう点では、御負担をお願いしているということです。

塩川委員 結局、税の性格上、被災者の方に重い負担をかけるのが消費税ということでありまして、消費税増税の理由として負担が公平などということも言われていますけれども、とんでもない。負担能力がない被災者の皆さんに大きな負担を強いる消費税というのは、応能負担の原則や生計費非課税の原則に反する税だと言わなければなりません。

 この消費税をさらに引き上げるということが、被災地の復興や被災者の支援に大きな妨げとなるということも言わざるを得ません。消費税増税に対する被災地の声は、反対、懸念の声が多数であります。昨日の地方公聴会でも、消費税増税に厳しい意見が出されたと聞いております。

 そこで、国交省に住宅再建関係についてお尋ねをいたします。

 被災地の今の現状として、資材不足とか業者不足などということが言われているとお聞きいたします。

 そこでお尋ねしますが、住宅建設に関連をした資材不足とか業者不足によって、工事の着工とか完成がおくれている、そういう懸念の声が上がっていますけれども、そういう現状についてはどのように把握をしておられるでしょうか。

吉田(お)副大臣 委員の御質問にお答えを申し上げます。

 被災地におきましては、まずは入札につきまして不調問題が起こっているということは認識をいたしております。また、今委員御質問の資材高騰、業者の人手不足というふうなこと、これも現実に起こっております。

 入札不調につきましては、できる限り、建設業者、被災地、被災地域外が共同で行うこと、そして、技能者、技術者等を機動的に確保する復興ジョイントベンチャー制度の試行を導入しております。また、主任技術者の現場配置につきましては、被災地域内の複数の工事で密接性、近接性が確保される場合には兼任を可能とするということ。そして、設計労務単価につきましては、建設企業への調査や統計調査の結果等を活用することによりまして、直近の労務費の実態を反映した単価を設定するなどの取り組みを速やかに実施いたしております。

 引き続き、関係者が一丸となって取り組むことによって、可能な限り、地域における雇用の確保を図りつつ、復旧復興事業の円滑な施工を確保してまいる所存でございます。

塩川委員 入札不調という話がありました。業者の不足によって、実際にその入札の価格では割が合わないという状況が広がっている。そういう中で、全体とすれば、工事の着工や完成のおくれが出てきている。

 この点では、日銀の福島支店の福島県金融概況四月分、五月十日の発表でも、住宅投資について、「この間、業者の確保難が続いていることから、着工や工期の遅れがみられている。」と指摘をしております。被災者の住宅再建にとって、資材価格の高騰や業者不足による工事着工、完成のおくれというのは深刻な問題であります。

 そういう中で、国の復興交付金なども活用した被災地の住宅再建の取り組みがどうなっているのか。

 五月十八日に、政府は第二回の復興推進会議を行いました。この「復興の現状と取組」という資料を見ますと、復興交付金による支援ということで、住宅再建及び高台移転に向けた取り組みについて書いてあります。その中に、防災集団移転促進事業が掲載されています。この防災集団移転促進事業については、「早期事業着手が見込まれるもの」ということが書いてあって、その「事業完了は早い地区で二十五年度を予定」と書いてあるわけであります。

 もともと、防災集団移転促進事業につきましては、早く移転をすることによって住宅再建をしたいという方もいらっしゃいますし、いや、現地で、この場所で住宅の再建をしたいという方もいらっしゃいます。あるいは、現地再建と言われている地域であっても、そこから移転をして住宅再建をしたいという方々もいらっしゃる。そういった方々の、被災者の実情に本当に丁寧に対応しながら進めていくということが何よりも重要であるわけで、住宅再建及び高台移転に当たっては、被災住民の納得と合意が大前提であります。上からの押しつけで拙速に進めてはなりません。

 そこで、今の点ですけれども、防災集団移転促進事業について復興交付金が既に二回配分をされています。その中で、防災集団移転促進事業の早期事業着手の予定地区というのが何市町村、何地区となっているのかについて、数字でお答えをいただけますか。

吉田(お)副大臣 委員御質問の五月十八日の件でございますが、平成二十五年度というのは、委員も御指摘されましたように、早ければということでございます。丁寧にということ、そしてまた、引き続き私ども国土交通省も職員を派遣いたしまして、この件につきましては丁寧に対応方をさせていただいているということも冒頭申し上げさせていただきたいと思います。

 そして、今御質問にございました復興交付金のことでございますけれども、復興交付金によります防災集団移転促進事業の早期事業着手予定地区数でございますが、これは第一次と第二次に分かれております。平成二十三年度並びに平成二十四年度第一・四半期を合わせて第一次。第一次、第二次を合わせまして、まずは計画策定費という形でいいますと、二十四市町村、二百四十五地区、約百三十五億円、これが調査という形で入りました。その後、事業費という形で、二十市町村、百三十二地区、約一千六百七十億円が今現在、早期事業予定という形で配分がなされているということでございます。

塩川委員 事業費がついている地区というのが百三十二地区という話でありました。早期事業着手の予定地区、つまり事業費がついているような地区というのが百三十二地区ということですけれども、今お答えもありましたが、復興推進会議の「復興の現状と取組」に書いてあります「事業完了は早い地区で二十五年度を予定」ということとの関係でも、もともと百三十二地区あっても、それが実際に事業が完了する年度というのは幅があるわけです、大体四年とか五年かけてやるわけですから。

 そういった際に、この復興推進会議の資料でも指摘をしている、「事業完了は早い地区で二十五年度を予定」とあるけれども、その大多数の事業というのは、実際には二十六年度以降になるのが大半ではないんですか。

吉田(お)副大臣 委員にお答えを申し上げます。

 現状では、先ほど申し上げました早い地区では、今年度中にも被災者の移転先である住宅団地の造成が始まるものと聞いております。

 現時点におきましては、岩手県、宮城県、福島県の四市一村が策定した計二十二地区の集団移転促進事業計画に対しまして国土交通大臣が同意をしております。こういうような早期に事業着手ができる地区に対しましては、復興交付金も必要額が配分され、既に用地交渉が始まっており、さらに、一部の地区では用地取得、また測量等にも着手をしているということでございますので、本年度中の造成が始まり、二十五年度中に早ければ移転等が行われるということでございます。

 そして、今委員御指摘の点でございますが、事業実施年度が、二十五年度までにできるというのは七地区になるということでございます。

塩川委員 集団移転促進事業計画が出されているもの、その数のうち、実際に二十五年度末までに造成が完了する事業計画が占めるというのが、わずか七つであります。つまり、二十五年度末というのは平成二十六年三月ですから、その翌月の四月は、消費税が八%に引き上げられるときであります。つまり、タイミングとすると、その消費税の引き上げ前に造成が完了するというところがわずか七地区しかない、その他はみんなその先にならざるを得ないというのが今の現状となっているわけであります。ですから、そういう意味でも、事態は極めて深刻な状況になっています。

 その上、今、計画が出ているところもありますけれども、いまだに事業計画の提出に至っていないような地域も残されている、実際には多数あるわけで、そういう中で、事業計画を出しているところで、早いものが、消費税八%引き上げ前に整うというのが七つという点でも、消費税増税の影響というのは不可避と言わざるを得ません。

 その点を具体の話で見ますと、資料を配付いたしましたが、仙台市の防災集団移転促進事業計画を例にお聞きしたい。

 五月二十九日に、仙台市は、防災集団移転促進事業計画を国交大臣に提出いたしました。その事業スケジュールを配付資料としております。この一番下の欄に「住宅再建」とありますけれども、四角で囲ってあるのがそれぞれの地区になっています。各地区ごとに住宅再建の時期が異なっております。それは、移転先の造成や工事の完了時期に差があるためであります。

 そこで、吉田国交副大臣にお尋ねしますけれども、この仙台市の計画において、平成二十五年度までに造成完了となる地区、その世帯数が幾つか、それから、二十六年度以降に造成完了となる地区の世帯数は幾つとなっているのか、この点についてお答えください。

吉田(お)副大臣 委員の方から配付をしていただいている資料なんですけれども、これは私どもの手元の資料、また仙台市の資料等を見ていきますと、一地区抜けておるような感じがします。多分これは仙台市さんの資料かと存じますけれども、南福室地区というふうなのがこの資料からは抜けておりまして、数字を合わせてまいりますと、どうもそれが抜けているような感じがいたしております。

 そういうようなことを含めまして御報告を申し上げますと、平成二十五年におきましては五地区二百三十三戸、平成二十六年以降で九地区七百六十八戸が今進んでいくという形で予定をしております。

 以上でございます。

塩川委員 今の答弁ですけれども、仙台市の資料は、これは注にも書いてあるんですけれども、要するに、岡田地区となっているところが、実際には南福室地区と上岡田地区に分かれている、それを一緒に掲載しているのがこの資料なんですよね。

 そういう点でも、数字は合っているということで、二十五年度までに造成完了となる地区の世帯数は二百三十三、二〇一四年四月の八%の増税後に造成完了となる地区の世帯数が七百六十八。つまり、合計一千一のうちの七割以上が、消費税増税後に造成が完了するという地域であります。こういう事業計画との関係で、奥山仙台市長も、被災地としては気になるのは実施のタイミングだということを述べているのが、まさにこの事業計画との関係での指摘であります。

 そこで、安住大臣にお尋ねしますが、こういう消費税増税というのは被災者の住宅再建にとって大きな障害となる、このことははっきりとしているんじゃありませんか。

安住国務大臣 消費税の影響、建物を建てるときにやはり御負担になるということは困るじゃないかということなんですけれども、私も、消費税として単一税率を維持しておりますから、そのことで何か変更ということにはできませんけれども、率直に申し上げて、被災地の皆さんのそういう住宅建設については特段の配慮が必要な部分を感じておりますので、検討させていただきます。

塩川委員 特段の配慮、特段の配慮と言うんですけれども、具体的な中身というのは何も示されていないんじゃないですか。そういう中で、多くの被災者の皆さんが、消費税増税を踏まえて住宅再建をどうしようか、移転の再建もしたい、あるいは現地での再建もしたい、しかしその状況が整わない中で、住民合意、納得と合意を踏まえた上で進めたときに消費税増税の壁が立ちはだかっているわけですから、そういった状況をそのままで、どうして被災者の皆さん、被災地の現状に応えることができるのか。大きな障害となっている、こういう問題についてそのままにしておくのか、このことが今問われているんじゃないですか。

安住国務大臣 だけれども、多分、塩川さんは、仮にそれをやったとしても消費税反対なんですよね。

 私どもは、消費税は入れさせていただきたいんです。そのかわり、被災者の方に対しては、私どもの責任で何らかの対応はやはりとらないかぬかなと今思っているということです。

塩川委員 だから消費税増税反対だということを繰り返しているわけで、ただ引き上げます、でも何らかの対応はとりますということなんだけれども、その何らかの対応が何にも見えてこないということでいいのかという話が出てくるわけですよ。

 実際に、現地で聞きますと、この住宅再建で、例えば仙台市などでも、丘陵地にある住宅団地が地盤被害を受けているわけです。そういった地盤被害の地域について、宅地地盤被害の支援策などが今度の復興交付金などにも盛り込まれて、実際に予算措置なども行われてきているわけですけれども、そういったときに、仙台市では、国の基準に満たないような規模の被災世帯に対して支援する市独自の制度をつくっているわけですよね。そういうときに市の方が想定をしていたというのが、復興交付金の効果促進事業だったわけであります。

 使い勝手のいい効果促進事業ということを予定していたんだけれども、一次でも二次でも、効果促進事業を充てることにはいまだに至っていないという状況であるわけで、現地の住宅再建の具体的な動きに対して、国が応えるどころか、逆にその足を引っ張るようなことで、どうして今の被災地の復興に力になるのか。

 加えて消費税増税などになれば、とてつもなく被災者の皆さんの負担が大きくなって、被災地の復興を大きく後退させることにならざるを得ないということはお認めになりませんか。

安住国務大臣 ですから、塩川さんは、これがあってもなくても反対だとおっしゃっているわけで、私どもは、消費税を入れさせていただいた上で、今も、この被災地の住宅建設のことは私もよく存じ上げています、我が身のことでもありますから。

 だから、そういう意味では、どうするかということと、しかし同時に、今回の全壊をした家についての今までの資金的な支援というのは結構やらせていただいておりますからね。なおかつ、特例措置として住宅ローン控除の特例等々さまざまなこともやっていますが、それのみならず、今大きな壁が立ちはだかっていると言いますが、この消費税の話は、確かに負担がふえることは事実でございます、多分それは、五%から八%、一〇%になれば。しかし、それをもって全ての消費税がだめだという考えには私は立っていないんです。

 被災地の方々がそういうふうにこれから住宅を建て出すというときに、この消費税を上げた分については何か特段の配慮というものが必要ではないかという意見が各党からも出されておりますし、我が党内からも大変強うございますので、よくよく検討して、そうした対応というものができないか、私どもは検討させていただくということを申し上げているんです。

塩川委員 この事業計画、仙台市の場合などでも、移転対象戸数が千七百六とあるんですけれども、まだ三割の方は態度を決めていないというか、こういう移転の計画そのものに反対だという声も上げておられる方なんですよね。

 そういうところについてきめ細かな対応が必要なんだということであるわけで、そういう意味でも、事業計画の完了というのがいつというのも、何らか線を引くような話でもないわけで、そういったときに、やはり慎重に住民の納得と合意を踏まえて進めていくときに消費税増税が立ちはだかる状況というのは、被災者支援、被災地の復興に逆行するということは重ねて申し上げなければなりません。

 時間もあれですけれども、水産加工業についても、では農水副大臣、ちょっと簡単に、加工流通施設についてお聞きしますけれども、復旧復興状況がどうなっているかということと、その中で、再開を希望する加工流通施設の全てが業務再開をする時期というのはいつなのか、この点について簡潔にお答えいただけますか。

佐々木副大臣 昨日、拝命、就任をしたばかりで早速御質問いただきまして、よろしくお願いをいたします。

 水産加工施設の再開状況でありますが、水産加工業者の全国団体、全国水産加工業協同組合連合会の調査でございますが、東日本大震災により被災した水産加工施設は、岩手県、宮城県、福島県の三県で八百五十二施設、このうち七百五十九施設、約八九%が再開を希望しているところでございます。そのうち、三月末現在でありますが、四百十八施設、約五五%が再開を既にしているところでございます。

 あと、復興のめどでございますが、水産加工施設の復旧復興の目標年次でございますが、御案内のように、海岸と違って、水産加工施設は後背地になりますので、被害が甚大で大変広範にわたるということ、あるいは、地域によっては、地盤のかさ上げあるいは工場の移転など土地利用にかかわる面的な計画が必要であるというようなことなど、それぞれの地域の状況を踏まえると、復旧復興には五年程度の期間を要するというところもありますので、関係県等からの要望をもとに、平成二十七年度までとしたところでございます。

 以上でございます。

塩川委員 五年度ということで二十七年度末ですけれども、これは要するに、復興の基本方針にある集中復興期間の線引きなんですよ。ですから、そこまでにしっかりとやる、その構えというのは当然一つの指標としてあると思いますけれども、そういう意味では、逆に、そういう集中復興期間に、しっかりとした水産加工業の復旧復興を図る時期に消費税増税をかぶせるというのが水産加工業の出足をくじく、妨げになるということもあわせて指摘をして、時間が参りましたので、質問を終わります。

古本委員長代理 これにて塩川君の質疑は終了いたしました。

 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 この特別委員会、きょうで二度目の質疑に立たせていただきました。前回、申し出をしていたものの半分も行かずに時間が来ましたので、きょうは前回の残りの部分をやりますということを申しておきましたので、よろしくお願いいたします。

 前回は通告しておりませんでしたけれども、きょうは財務大臣にも質問をさせていただきます。前回の当委員会の中では申し上げておりませんでしたけれども、きょうは税制についても何点か聞いておきたい。

 安住大臣にお尋ねいたします。

 大臣とは予算委員会の分科会などで所得税の累進性を中心に質疑を行ってきた経過もございます。その中で、大臣も、現在の日本の所得税がフラット化していることをお認めになっております。野田総理も再分配機能の低下に言及いたしまして、総理が財務大臣時代には、再分配機能の回復の必要性について述べている。税制改正大綱には、社会保障と税の一体改革において、税率構造を含む改革を進める必要がある、このように明記されております。

 ところが、今回の改正では、最高税率を五千万円以上について四〇%から四五%に引き上げる、それのみでありまして、これでは、果たして再分配機能が強化されたのかというと、そうではないと言わざるを得ない。

 最高税率もさることながら、国際的に見て類を見ないブラケット幅の広がり、これこそが再分配機能を失わせ、さらに、財源調達機能を損なってきた最大の要因ではないか、このように考えるんです。

 大臣、復興のために所得税増税を行ったという理由は、これは理由にならない。私が言っているのは、課税所得が一千万円を超える所得者の税を問題にしている。今までずっとこのことは申してきたんですね。

 例えば、国会議員の歳費は二千万円を超えております。国会議員の歳費として妥当な額かどうかというのはまた別の問題といたしまして、給与所得者との比較で上位一%に分類をされますが、ところが、ここが最高税率に該当しない。こういう税率構造はおかしい、このように思うんですが、なぜ今回この問題に手をつけなかったのか、大臣の考えを聞いておきたい。

安住国務大臣 消費税の引き上げの議論をさせていただいたときに、当然、所得税の扱いを今のままでいいのかという議論というのは出てきております。

 その中で、実は、注意しないといけないのは二つあると思うんです。

 それは、今先生おっしゃったように、最高税率が、四〇を四五に上げた、しかし、その対象がターゲットとしては少ない、ですから、税収が、そこで上がってくるお金というのは、そういう点では多くはないわけです。だから、そこをもっと上げていくべきではないかというのが一つですね。

 もう一つ、実は、あえて言わせていただくと、これは日本の所得税の特徴なんですが、限界税率問題でいえば、一〇%以下の納税者というのが全体の八四%にもなるんです。これは、アメリカでは二九%、イギリスでは一四%、フランスでは四〇%。つまり、高い方からもっと取らなければならないという議論もあるんですけれども、一方で、何が一番この累進税率で問題になっているかというと、一〇%以下の所得税、つまり、税率の低い方が全所得税納税者の八四%にも達しているわけですね。

 だから、これを考えたときに、上の方だけやって下をそのまま放置したのではむしろバランスが悪くなる可能性があるので、私は、率直に申し上げまして、両方をきちっともう一回見直して、累進性のありようというものをやはり議論すべきではないかと思っております。

 高額所得者からの課税をもう少し強化しろという点に関して言えば、二四改正で、二十四年度の税制改正で給与所得控除の上限を設けました。一千五百万円を超す人たちについては控除額は二百四十五万円にしておりますから、私は、これはかなりきいてくると思っております。それから、五千万超の方々というのは、実は平成九年が一・一万なのに二十一年には二・七万人にふえているんですね、今回の四五%のターゲットの方。だから、急激にふえ出した高所得者に対する課税を、そこにいわば焦点を当てて五%ということにしました。

 ですから、今後、もう一回、消費税それから所得税のあり方というのは、何度も申し上げていますけれども、垂直的な税と水平的な税を、個人個人の負担比率をよく見ながら、特定の階層に負担の行かないようなバランスをとりながら、なおかつ先生の御指摘のように、ブラケットが非常に広がってしまって累進率が低いという課税のあり方を見直せという声もごもっともでございますので、下から上までの階段のあり方についても検討したいというふうに思っております。

重野委員 という答弁を聞いて、言うならば、日本の圧倒的多数の国民の担税力、あるいは税金をかけても、その上がってくる額というのは膨らまないわけですよね。これは、私は、政府の労働政策も含めて広範なものがあると思いますね。

 今、圧倒的多数の労働者が賃上げ要求しても、賃上げどころか賃下げが進んでいると言ってもいいような状態が一方にあるんですよ。そのことは、裏返し、担税力、税として国が期待するものが細くなっているという現実ですよね。これを放置しておいていいものか、こういうことを言わざるを得ないんですね。

 だから、私は、税金を納める力を持っている、担税力のあるそういう層からは取るというところを、具体的に表現すればこういうふうな話になっていくので、方向としては、野田総理も分配機能低下に言及している、こういう国会の中での答弁もあるので、これはやはり大臣のところで、課税をする側ですから、しっかり、そこのところは、与えられた状況の中でどう力をつけていくかというところは考えていただきたいと思いますが、いかがですか。

安住国務大臣 この消費税の問題が成立しましたら、次に、所得税の問題を本格的に議論したい、資産課税についても十分議論したいと私は思います。

 というのは、昭和六十年を例にとると、最高税率七〇なんですね、所得税は。ただ、そのときに、私はこれは省内で話しているわけではないんですが、参考資料を見ますと、先生、一〇%から二一%までの刻みを五つの刻みにつくっているんです、当時は。今は五、一〇、二〇ですよね。だから、やはり上も大事なんです、上ももちろん、それは。だけれども、余りやり過ぎると、本当に他国に行ってしまわれたら困りますから、それは、頑張った人は頑張った人なりに富を得なければならないというルールに基づいて、許容範囲がどこまでかという議論をしっかりさせていただきます。

 一方で、やはり刻みを、フラット化の流れで来ましたが、もう少し刻みを考えさせていただくこともできないだろうかなと。そういうこともあわせてやるというふうなことでバランスをとった改革というものを、そのかわり、先生御指摘の、消費税の負担もあるんだよということにも十分配慮しながら、所得税のフラット化の今後のありようについては役所の中でも十分検討をしてもらおうと私は思っております。

重野委員 御答弁は要りませんけれども、消費税を語るその前にすることがあるだろうというのを我が党は一貫して主張しているわけですね。

 我々は、消費税というものを全否定する立場にはありません。だけれども、今このときに消費税なのかと。このことをくどくくどく言っているんですが。

 例えば、今の賃金構造を見ても、非正規労働者がふえて、非正規労働者がふえるということは、いわゆる賃金のレベルが下がるんですよ。それで、正規の労働者が相対的に減っている。こういう大きな仕組みが一方にあって、そのことは、裏返し、国民の、税を納める力が細っているということなんですよね。やはり政府としては、その部分もしっかり考えて労働政策も含めてやってもらいたい。そのことを私は申し上げたい。よくよく受けとめていただきたい。

 次に、岡田大臣に聞きますが、消費税の、景気に与える影響について。

 これはもう繰り返し巻き返しで聞くんですけれども、当委員会でしばしば取り上げられてきた問題だと私は受けとめております。九七年の消費税引き上げ、バブル崩壊の影響から徐々に立ち上がりつつあった日本経済をデフレスパイラルにおとしめた、そういう指摘を我々はこの間ずっとやってきた。

 当時の経済企画庁によれば、消費税引き上げで五・二兆円、その他の負担増を合わせると八・六兆円の家計の可処分所得の減少となったと。これは明らかに景気悪化の原因の一つに挙げられている。当時の経済企画庁はそのように言いませんが、経済企画庁が出している調査資料はそのことを物語っている。

 今回の増税額は、九七年のそれに比べれば倍以上になるんですね。これが景気に悪影響を与えるのは必定と言わざるを得ない。

 各種の調査では、五%引き上げた際にGDPは実質でマイナス二%前後となる、このように言っています。内閣府の試算でも、一%引き上げでマイナス〇・一一%、五%に単純に換算するとマイナス〇・五%程度だ、このように言っているんです。

 財政審は、以前、増税が景気をよくするということを言っていたようでありますが、政府としてはこのような立場をとっているんですかという点について聞いておきたい。

石田副大臣 二〇〇八年の内閣府公表の短期日本経済マクロ計量モデルにおきましては、消費税一%引き上げによる一年目の実質GDPの抑制効果をマイナス〇・一一%としております。他方、民間機関では、先生御指摘のように、それぞれ諸説ございますが、消費税一%引き上げによる影響がマイナス〇・四%となる試算結果のほか、マイナス〇・二から〇・三となる試算結果も示されております。これらは私どもも承知をいたしております。

 これらの試算結果とは、改革に伴う社会保障支出の扱い方が異なるために、単純に比較をすることは困難でありますが、本年一月に公表いたしました内閣府の経済財政の中長期試算では、二〇一三年度から一六年度にかけての平均実質成長率は、一体改革を考慮しない場合の平均成長率と比べて〇・一%程度低い試算となっております。

 以上でございます。

岡田国務大臣 今石田副大臣が言われたとおり、今我々は計算しているわけですけれども、そういった短期的な問題と、それから、やはり中長期的に見て、今の日本の財政の状況、あるいはそれを前提とした社会保障の持続可能性、そういうことに対して多くの国民が不安感を持っている。だから、若い人が貯蓄に走ったり、そういうこともあるわけです。

 財政の立て直し、あるいは社会保障制度の持続可能性ということに一歩踏み出したということになれば、これは、そういった中長期的な消費性向とか、そういったものにも影響を及ぼす、あるいは懸念を取り除くということで、これは計量化は非常に難しいと思いますけれども、見えざる効果というものはあるんじゃないかというふうに思っております。

    〔古本委員長代理退席、委員長着席〕

重野委員 先ほど、経済財政の中長期試算という話がありましたけれども、その中長期試算について、こう言っているんですね。「ここで示す展望は、種々の不確実性を伴うため相当な幅を持って理解される必要がある。」これは、ただし書きにそのように書いている。

 このただし書きに言う不確実性とは一体何を指しているのかということが一つ。それから、相当な幅を持って理解される必要があると言っているんですが、その相当な幅というのは、具体的に言うと、GDPで何%程度の振れ幅を考えているのか。その点を聞いておきたい。

 また、この振れ幅というのは、一体改革のあるなしに影響を与えるものなんですかということ。つまり、下振れも、上振れしても、一体改革のあるなしで同じ率だけ変化する、そういうふうな理解でいいんでしょうか。

石田副大臣 本試算は、経済、財政、社会保障を一体的にモデル化した、先ほど申し上げた内閣府の計量モデルを基礎といたしております。

 したがって、成長率、物価及び金利などはモデルから試算されるものであり、あらかじめ設定したものではございません。

重野委員 私が聞きたいのは、この中長期試算を語るときに、今私が問題にしている消費税の問題、消費税を引き上げても中長期的には経済に影響しない、こういうふうに言っているんですかということを私は聞きたいんですね。

 専門家の間でもいろいろな議論があるようですけれども、いろいろな学者が消費税がどういう影響を及ぼすのかという議論をする中で、ある説が、中立命題という言葉を使っておるんですが、つまり、消費税を導入することによって日本の経済がどう動くのかという点について、こういうふうに動くから何としてもこれをやらなきゃならないんだと、こういうふうな説明というのは余り耳にしないんですね。その部分、聞かせてください。

石田副大臣 先ほどもちょっとお答えをいたしましたが、消費税引き上げの前後には駆け込み需要及びその反動減による影響が見込まれるものの、引き上げ前後の期間をならしてみると、成長率については、消費税を引き上げない場合と大きな差はないと考えられます。

 内閣府の試算では、先ほどちょっと申し上げましたが、慎重シナリオで、二〇一三年度から一六年度の平均成長率を、消費税を引き上げた場合、これが一・一%程度、それから消費税を引き上げない場合、これが一・二%程度と見込んでおりまして、大きな差はないと考えております。

 以上でございます。

重野委員 先ほど財務大臣に質問したときにも触れたのでありますが、結論的に言うと、企業あるいは資産家に対する増税志向というのは、つまり、そういう部門におる皆さんに対し、税の上で、我々が言う真っ当な税をかけることにちゅうちょするということ。それは、俗に言うと、税を上げれば日本から逃げ出す企業がふえてくるんだ、だから、その部分については、それはできないんだと。正式には語っておりませんけれども、そういうふうな解説をする向きもある。

 国民は、消費税を上げるとなったって、国外に行くなんてことはできないわけです。逃げ出すことはできない。国民は、企業のように、機能を外国に移転していく、そのことによって税の負担を免れる、そんなことがとれない。とれないということを当てにして消費税を増税し、税収増を図っていく。こういううがった見方をする部分もあるんですが、理屈の上では、そんなことは間違っているというのか、いや、そういうこともあり得るというのか、そこら辺をひとつ説明してくれませんか。

石田副大臣 今回の社会保障・税一体改革における消費税率の引き上げにつきましては、国民全てが人生のさまざまな段階で受益者となり得る社会保障の安定財源確保に向けたものと明確に位置づけられることなどから、消費行動に与える影響は限定的なものになると想定されるわけでございます。

重野委員 私がこだわるのは、六月四日付の日経ですけれども、これに、「上場企業、半数が無借金」、こういうような記事があって、今、日本のそういう上場企業総体、有利子負債に比べた手元資金の超過額は一一年度末で二十五兆円。具体的に、例えば任天堂は、借入金などがゼロ、一兆円近い手元資金を持つ。こういう日経の記事があったんですね。

 こんなのを読むと、一方において、消費税五%アップというのが突きつけられて、決まれば、国民は逃げるすべはない。なのに、一方、企業の側については、それは今の政府が意識的にそうやったかどうか知りませんよ、だけれども、結果としてそういう現実がある。金融を除く上場企業三千三百八十三社、それを調べた結果ですから、これはあながち私はうそじゃないと思うんですよ。

 そんなことが一方においてはあるという現実の中で、今、消費税と。国民の重税感というものが日増しに高まっている、こういう流れというのは私はおかしいという思いがあるから今この問題はちょっとしつこく聞いているわけですよね。

岡田国務大臣 今の話は、経済に及ぼす影響というよりは、やはり、消費税の負担というものを、国民が最終的に担うものなのか、あるいは企業にも負担させるべきなのか、こういう話だろうというふうに思います。

 もちろん、法人税が、最終的に全部企業が担っているのかというと、そこはいろいろ議論がまたあるところだと思いますが、私は、消費税を五%引き上げ、それを社会保障に全額使うことにしているということは、ある意味では国民の中での所得の再分配も行われているわけですから、そこは、きちんと説明すれば国民の皆様にも御理解はいただけるというふうに思っております。

 これを何かわけのわからないことに使っているということであれば別ですけれども、五%引き上げ分は、年金、医療、介護、子ども・子育て、これに基本的に全額使いますということであります。それをやらずに社会保障制度の現状を維持していくということになれば、それは借金を続けていくということになるわけですから、結局それは、国民の中で、現在の世代が次の世代に対して負担を負わせているということになって、私は決してフェアなことだとは言えないというふうに思うわけであります。

 そういう意味で、きちんと説明すれば多くの国民の皆さんは御理解いただけるし、現に多くの方が理解していただいているというふうに私は思います。

重野委員 これ以上は言いませんけれども、今私が指摘をした問題について、やはり政府も、そういう現実というものから目をそらさずに、一方においてそういう現実があるんだ、何十兆といういわゆる留保がある、これはもう、うそでも何でもない、本当のこと、現実の事実ですから、そういう現実がある、そういう中で今消費税の議論がされている、そこのところを国民にわかりやすく説明をする。今大臣も言ったように、本当に国民に説明をする。そういう点について国民が納得できるような説明ができるなら、僕は、やってもらいたいと思いますよ。もうこれ以上言いませんけれども。

 きょうは、通告しておいて、お待たせしました。このまま行くと、また最後まで行かぬうちに時間が来るようでありますが。

 まず、総務大臣に聞きます。

 今回の地方消費税について、従来からの一般財源ではなく社会保障四経費に充てるとした理由、これが一つ。

 また、交付税の法定率について、消費税率の引き上げに合わせて法定率を引き下げていくということになっている。今回の、地方もあわせた消費税の引き上げでも、依然として地方の財源不足は解消されません。交付税法六条の三の二にもあるように、普通交付税の総額が算定した額の合算額と著しく異なる場合は、法定率の変更、今回の場合でいえば、少なくとも百分の二十九・五を維持すべきではないか、このように思うんですが、これについて大臣はどのようにお考えでしょうか。

川端国務大臣 地方財政が非常に厳しい財源不足であるということと多額の借金を抱えているということで、一番メーンとしては、やはり財政の健全化ということで、地方税を充実しなければならない。これはもう、大きな課題であることは間違いありません。その地方税の充実の中で、一番大きく担っていただける可能性があるのは地方消費税である。これは、偏在性も少なく、景気の変動にも余り影響を受けないということであることは、そのとおりだと思います。いろいろな自治体からも、そういうことの充実を図れというのはかねてからずっとお話をいただいております。

 財政の安定化と財源の安定化ということを含めて議論していくということはずっとやってきたわけですけれども、なお一方で、いわゆる社会保障の財源はどんどんふえていくという状況があります。

 今回は、財源の安定化と地方消費税の充実ということ、そのふえていく社会保障の財源にまずは一義的に特化して充てるということにさせていただいたということですから、結果としては、地方の財政の安定化に資することは間違いありませんので、方向性としては、そういう、先生がふだん言っていただいていることに合うわけです。本来、使途は自由であるべきものではあるけれども、今回は、社会保障に限定的に使うということで地方の自治体の皆さんにも御理解をいただいて、こういうことにさせていただいたということでございます。

 そして、その中で、いわゆる消費税の換算率で、消費税の、交付税の部分の法定率が下がったではないかということでございます。

 今まで、五%の中で、一%は地方消費税に行くので四%、四%の中で、法定率二九・五ということで、一・一八%を地方交付税分にするという仕組みでありました。今回は、それに一・二%の地方消費税と〇・三四%の交付税分ということでありますので、一〇%に最終的にしたときに、もともとの一%の地方消費税分と一・二%の今回の社会目的税の地方消費税分で、結局は七・八%が、残った消費税です。

 これに関して、〇・三四%交付税をふやすということで、今までの一・一八%に〇・三四を乗せて一・五二になりますので、七・八%の中で交付税分として回すということを結果として割り返すと一九・五%分になりますということなので、本来からいうと、四%の二九・五%が、今度七・八%、ほぼ倍に母体がなったわけですから、同じ額でしたら、半分の一四・七五ですか、ということです。

 これは結果としての分で、前回は法定率で交付税分を見ましたけれども、今回は、トータル財源として、五%アップする一・五四%を地方に回して社会保障を担っていただく、そして、その内訳は一・二と〇・三四であるという、〇・三四から割り返した数字でありますので、法定率分を下げて調整したという数字になっていますけれども、そういう趣旨というか、計算上の数字でありますので、その部分は御理解いただきたい。

 と同時に、この法定率分をこれからどうしていくかというのは、交付税の機能の部分では大変大きな問題であるので、これはまた別の議論として、ちゃんと我々としては大きな課題として考えていきたいと思っています。

重野委員 小宮山大臣、お待たせしました。

 一つ、児童福祉法二十四条の変更についての危惧の念を私は本会議で述べたところです。この点について、もう少し詰めていきたいと思うんです。

 二十四条の変更によって、国と自治体の実施責任がなくなりました。保護者は、自治体で給付認定証の交付を受けて、その認定証を持って園と直接契約をする、こういうことになるんですね。これまで自治体に申し込むだけだったんですが、今度は二度に分けて本人がやらなければならない。これは、手続がふえるわけで、保護者にとっては当然負担となるわけです。

 そこで、こうした制度が保護者や子供にとってプラスになると考えているのかどうかという点が一つ。そうしたことは今の仕組みの中でも運用を改善することによってできるのではないか、このように思うんですが、それに対する大臣の見解を聞いておきたい。

中野委員長 小宮山厚労大臣、まことにつらいのですが、あと三十秒ほどしか時間がございません。

小宮山国務大臣 はい。

 新しいシステムでは、個人給付の仕組みにして、一人一人について受給資格や保育の必要性の確認、認定を行いまして、その子供のニーズに応じた保育などを提供できるようにする。そういう意味で、市町村が正確に保育の需要を把握できるようにしています。

 同時に、公的契約を施設と利用者の間で直接締結する仕組みを導入いたしまして、利用者はニーズに応じた施設の選択が保障される、利用者と施設がこれまで以上に直接向き合って、教育や保育の質についてさらに改善を促すというような効果があります。

 現行の制度ですと、入所する保育所はあくまでも市町村が決めます。単なる運用改善ですと、施設の選択が保障できないということと、利用者と施設が直接向き合うことのメリットも生まれないということから、新しい仕組みが必要だと考えています。

重野委員 まだまだ通告したものが大分残りましたけれども、その分はまた次の機会にやるということで、以上で終わります。

中野委員長 これにて重野君の質疑は終了いたしました。

 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一です。

 きのうは、この委員会の地方公聴会で終日東京を離れておりまして、実は、きょうの質問は先週の金曜の段階で用意しておったんですが、金曜からきょうまでの間にいろいろな出来事がありました。本委員会に直接かかわることでいろいろな動きがありましたので、ちょっと最初に、事前通告していない質問から岡田副総理に質問させていただきたいと思います。

 実際には、質問というよりもお願いというか、所感をお聞かせいただきたいと思うんですけれども、ちょっと長くなりますが、背景からお話をさせていただきます。

 去年の東日本大震災以降、国会ではよく、三党合意で大事なことが決まるケースが大変多くなりました。民主党、自民党、公明党の三党で合意ができれば、国会の議席の占有率は圧倒的ですから、最終的に多数決で決まるということは当然のことだと私も理解しております。しかし、三党で合意した法案が、非常に短い審議時間でぱぱっと決まってしまうということが大変多かったというふうに記憶しております。

 国会審議の形骸化を招かないためには、ぜひ、仮に大政党の間で合意ができたとしても、きちんとその後議論するということが大事じゃないかと思います。

 私は、経済産業委員会の委員も兼務しておるんですけれども、去年、再生可能エネルギー法案の審議に参加しました。再生可能エネルギーの審議は、当時、菅直人総理が非常に力を入れていらっしゃったんですが、私も基本的には賛成したいと思っておりました。しかしながら、国会での審議が、民主、自民、公明三党の実務者協議で法案修正がなされた後は、ほとんど審議時間がなく、すぐに採決に至りました。

 あのときの再生可能エネルギー法案は、政府提出法案から相当程度修正がなされました。原案の政府案から大幅な修正がなされたにもかかわらず、その修正内容について十分に審議する時間がとれなかったと思っております。そういった意味では、本来、気持ちよく賛成したい法案であったにもかかわらず、十分な審議ができなかったという例があります。

 それと、もう一個嫌な思い出があります。

 郵政改革特別委員会。私、郵政改革の特別委員会の委員も兼務をしておりました。郵政改革法案のケースでは、法案の審議になかなか入れなくて、当時、民主党の武正理事が大変御苦労されていたわけですけれども、あのときは、審議入りまでに十何回、二十回ぐらい理事会を開いて、結局、審議になかなか入れない状況が二年越しぐらいで続いてきたという状況がありました。しかし、あるとき、民主、自民、公明の三党で合意ができるや否や、三時間の審議と三時間の参考人質疑のわずかな質疑時間で、あっという間に法案が成立をしてしまいました。

 二〇〇五年の郵政解散もありました。あれだけかつて大騒ぎをして、国論を二分するテーマであった郵政の民営化を方向転換する、そういう重要法案を、わずか三時間の審議だけで国会を通してしまった、これは大きな問題ではなかったかと思います。

 同じようなことが、もし今後、消費税の修正協議が行われて、民主と自民なのか、民主と自民と公明の三党なのかわかりませんけれども、もし仮にこういう大きな政党の間で修正協議がなされて法案が修正された場合に、修正した後も審議時間を一定数確保することが大事だと私は思います。なぜかというと、修正した点についてきちんと国民に告知する必要もあるかと思いますし、修正点について国会の開かれた場できちんと議論していくということが大変重要だと思います。

 そういった意味では、政府というよりはもしかしたら与党の民主党にお願いすることかもしれませんが、政府・与党ということで、岡田副総理のお考えを聞きたいと思います。

 仮に、大政党と協議が成り立って、実務者協議等で法案修正がなされた場合、その後、ちゃんと審議時間を確保してもらえる、説明の時間をとってもらえる、そういう方向に持っていっていただきたいと思いますが、それについてお考えをお聞きします。

岡田国務大臣 今委員もみずからおっしゃったように、これはどちらかというと、政府と各党との関係というよりは委員会の運営の話でありますので、各党間で、理事会などでお話しいただく問題ではないかというふうに思います。委員のお話を聞いていて、気持ちはわかる部分もありますし、よく理事会の場で議論していただければというふうに思います。

 あと、こちらからお願いですけれども、委員とこの場で議論させていただいていて余り違わないと思うことも非常に多いものですから、ぜひ、今回の社会保障・税一体改革についても、賛成ということも視野に置きつつ各党間の協議をしていただければ大変ありがたいというふうに思っております。

山内委員 私がこの法案にもし賛成すると政治生命をかけることになってしまいまして、それはそれで大変勇気が要ることですので、しっかりこれから考えさせていただきたいと思いますが、ぜひ、岡田副総理、政府のナンバーツーでありますし、民主党の中で大きな力を持っていらっしゃいますので、きちんと議論ができる体制をつくっていただくように御努力をいただきたいと思います。

 次に、通告しておりました最初の質問に入りたいと思います。

 民主党で、作業チームで議論がされた中で、新聞報道で消費税転嫁Gメンというのが結構大きな見出しになっておりました。午前中も民主党の早川委員から質問がなされておったと思いますけれども、問題意識は私も理解できます。消費税の転嫁が難しい、特に中小の零細企業で交渉力の弱い企業ほど消費税の転嫁ができなくて困ってしまう。

 しかも、そもそも消費税というのは国税の中で一番滞納が多い税金じゃないかと思います。滞納といってもいろいろな理由があると思います。悪質な例は当然取り締まらなくてはいけないんですけれども、中小の零細企業の中では、本当は払いたいけれども、消費税の転嫁ができなかったりしてどうしても払えないと困った業者、そういうところも多いと聞きます。消費税の転嫁ができなくて、結局、自分でかぶらなきゃいけない、そういう弱い立場の零細業者も多いと思います。

 そういうやむを得ない理由で滞納している業者なんかも多いということを聞きますから、これは、消費税の転嫁、もしかしたら制度の不備、制度の欠陥に起因する部分が多いのではないかなというふうに思います。

 消費税でよく益税という言葉がありますけれども、一部には損税という言葉もあると聞きました。中小企業が、結局、消費税を転嫁できなくて自分でかぶってしまう、そうしたら益税どころか損税になっている、そういう状況があるとも聞きます。ずっとデフレ経済のもとで、価格競争が激しい、値段も下がっている、そういうときに消費税の転嫁をしていくというのはなかなか困難であるということも考えられます。

 そういった意味では、民主党の作業チームが今取り組んでいるこの消費税の転嫁Gメン、消費税の増税分の価格転嫁について検討し、独占禁止法の改正を念頭に、消費税の転嫁を拒むことを不公正な取引方法として検討するというふうに報道されております。

 こういう転嫁Gメンを設けるということはちょっと方向性として違うんじゃないかな、その前に制度の不備を改める方が先ではないかなというふうに思うんですね。単に取り締まりを強化するということだけだと、もし消費税が八%、一〇%になってもっと苦しくなってくると、またそこから逃れようとするような人もたくさん出てくると思います。まずは、取り締まりを強化する、規制を強化するよりも、今の制度の欠陥を改める方向に考えていくべきではないかと思います。

 また、転嫁Gメンという新しい職種を設けるのであれば、人も予算も余計に要るかもしれません。行政の肥大化、官の肥大化につながりかねないと思いますが、こういう転嫁Gメン、その前に制度の改善が必要じゃないかと思うんですが、その点について質問します。

安住国務大臣 まず、議論の前に、ぜひ賛成して、もし政治生命をかけたときはぜひ私のところに来ていただければ、我々としても非常に歓迎いたしますので、よろしくお願いします。

 そこで、滞納の話は、山内さん、少し誤解もあると思います。

 二十一年度の統計から二十二年末における整理状況でちょっといいますと、徴収決定額が十兆二千億なんですけれども、督促前収納額が九兆八千二百八十九億円で、九六・三%なんです。それで、その後に、二十一年度中それから二十二年度中の整理済み額、つまりこれは集めたということですね、それからいうと、二十二年度末までに九九・四%の徴収に至っています。

 ですから、滞納額が多いというふうな指摘もありますけれども、基本的には九九・五、四ぐらいのアベレージで徴収ができていますので、実は、消費税自体が大きな欠点を抱えているというよりは、比較的これは非常にいいパーセンテージで徴収体制というものはあるのではないかと思っております、必要であれば後で資料をお渡ししますけれども。

 それから、Gメンの考え方はいい、ただ、もしかしたら御指摘は、官の肥大化につながるのはよくないんじゃないかということだと思います。

 そこで、私どもとしては、今ある公取それから中小企業庁なんかで使っている検査官体制、これの充実を考えております。ですから、そういう点では、ここの中での人的パワーは充実をする必要はあるとは思いますが、決してそれによって全体の官の肥大化につながるようなことはないようにしたいというふうに思っております。

山内委員 Gメンをつくっても官の肥大化にならないということですけれども、具体的には、では、何人ぐらい人手が要って、どれぐらい予算がある、そういう試算というのは今やられているんでしょうか。

 あるいは、もしほかの部署から人を異動させたりとか既存の職員に追加で仕事をさせるということになると、逆にどこかが手薄になる可能性もあろうかと思います。そういう人繰りと予算繰り、どのようにお考えなんでしょうか。

 本当に官の肥大化にならないんでしょうか。私は、何となく、今までの流れを言うと、細かいことまでチェックしていこうとすると人手が絶対かかりますから、ほっておいたらどんどんどんどん人がふえていくようなイメージを持っております。いかがでしょうか。

安住国務大臣 ですから、大事なことは、今ある公取や中小企業庁の組織をきちっと活用してやっていくということだと思います。

 そのために、新たに例えば国家公務員法で言う総定数をふやすとか、そういうことにできるだけしないような形でこの制度の充実を図っていきたいと思いますが、具体的にどういう体制で何人になるのかということについては今後の制度設計ということになります。

山内委員 まだ余り具体的な検討が進んでいないようですので、次の質問に移りたいと思います。

 消費税のインボイスについて、これまでもいろいろな方が質問されていましたけれども、きのう地方公聴会で税理士さんのお話を聞きました。消費税のインボイスのことをおっしゃっていて非常に興味深く思ったんですけれども、その税理士さんは、インボイスを導入したらそれだけで税収が結構ふえるんじゃないか、五千億ぐらいふえるんじゃないかというようなことをおっしゃっていました。

 実際幾らになるかわかりませんけれども、インボイスを導入すれば、消費税の転嫁が難しいという、その問題の解決にもある程度役に立つということもあるんじゃないかと思うんです。

 消費税のインボイスについて今どのように政府としてお考えなのか、お尋ねします。

安住国務大臣 今は請求書等の保存方式ですね。では、これをインボイスにしたらどうだという意見もありますが、今回は現行の制度でいきます。もちろん、御存じのように、単一税率でいきますし、今の請求書等の保存方式というのはインボイス制度とほぼ同じ効果があるというふうに思っております。

 その税理士の方の発言がどういう内容だったかはちょっとわかりませんけれども、インボイスの導入をやれば税収が今よりも上がるというのは、ちょっと私どもの中では肯定的な意見ではございません。

 インボイスについてはプラスマイナスあると思います。そういう点では、今後の検討課題として、例えば単一税率をどうするかとか、そういうときには出てくるとは思いますが、やはり、例えば、免税事業者の排除をどうするのかとか、中小企業事業者の、今なれている状態で請求書等保存方式をやっていますから、これが、事務負担がふえたりしたときどうなるかというような問題がありますので、現時点では今の制度が合理的だというふうに思っております。

山内委員 インボイスについて、今財務省としてどういう認識かということをもう少し具体的にお聞きしたいと思います。

 とりあえず現行制度でやるということですけれども、恐らく、優秀な財務省のことですから、既にヨーロッパとか各国の例を検討されて、インボイス制度のプラスとマイナス、それぞれ分析されていると思うんですけれども、どういうメリットがあって、どういうデメリットがあって、そしてなぜ今回は導入しなかったのか、その点についてもう一度お聞きしたいと思います。

安住国務大臣 課税事業者が発行するインボイスに記載された税額のみを控除するというのが、イギリスなんかでよく言われているインボイス制度ですね。ですから、イギリスでの書類を見ておりますと、ちゃんと適用税率、額の記載を義務づけておりますから、そうした点ではわかりやすい制度ではあります。

 ただ、一方で、日本でもそうですけれども、免税事業者等が取引から排除されるおそれもあります。つまり、インボイスが発行できない業者さんが出てくるということですから。そういう点では、私どもとしては、今ある請求書等保存方式は、そういう意味での透明性の確保という点からいえば、インボイス制度とほぼ同じような効果というものはあらわしているのではないかというふうに思っております。

 ただし、複数税率を導入している国々においては、私は、やはり税率を明記したインボイスは必要だというふうに思います。日本の場合は、現時点では単一税率でいきますから、そういう点ではインボイスの必要性は現時点ではないというふうに判断をいたしました。

山内委員 今、外野の税の大家から、インボイス制度はデメリットはないという御意見もありました。私も、今話を聞いていると、そんなにデメリットはないように思いますし、税理士さんのおっしゃっていた趣旨は、徴収漏れがなくなるだろう、捕捉できない部分が表に出てくれば税収がふえる、そういう意図だと思うんです。

 今回はとりあえず現行制度でいくということですけれども、もし今後、修正協議等があれば、ぜひインボイスの導入も含めて検討していただきたいと思います。まあ、導入したから賛成に回れるとは思えませんけれども、よりよい制度にすべく、いろいろな事例を研究していただきたいと思います。

 次に、三番目の「歳入庁または国税庁の拡大について」というタイトルで通告した内容について質問をします。

 我が党、みんなの党は、歳入庁設置ということを前の衆議院選挙のときから主張してまいりまして、実はその点、民主党と似ている部分もあるんですけれども、我々は、もし地方自治体が望むならという条件つきですけれども、国税庁に年金機構、それから地方税の徴収の一部まで入れて歳入庁をつくるのがベストだと思います。ただ、歳入庁、なかなかいろいろな反対があって、もし難しいとすれば、別に党の方針ではなくて私個人の考えですけれども、次善の策として、国税庁を拡大する形で、今、年金の徴収機能だけでも統合することは可能じゃないかなというふうに思っております。

 これまでこの委員会の質疑の中で、国税庁は大変職員の士気も高い、能力も高い、他方、年金機構はこれまでいろいろ問題を起こしてきた前科がある、この二つを一緒にしたら悪貨が良貨を駆逐してだめになるという御懸念がありました。私もそういう懸念も一定の真理があると思うんですけれども、ただ、一〇〇%同意できないのは、職員の数ですね。国税庁が五万六千人いて、日本年金機構の正規職員、准職員が一万二千人と、数的にいうと圧倒的に日本年金機構が少ないので、実態としては国税庁が吸収合併する度合いが強いと思いますから、そんなに国税庁の職員の士気がぐっと下がるというふうには思えません。

 仮に、年金に関する全ての機能を国税庁に移すのではなくて、一部の業務だけ国税庁に移すというのもオプションとして考えてはいかがかと思います。

 年金の相談とか適用は年金機構が引き続きやる、そのかわり、お金の、年金の徴収だけ国税庁に移すというオプションを考えていくと、年金の徴収部門にいる年金機構の職員は約二千四百人だそうで、日本年金機構のわずか二千四百人分が年金の徴収業務に携わっているということは、この五万六千の国税庁に二千四百人の徴収業務の部門だけ移籍してしまえば、国税庁のサイズは大して変わらずに年金の徴収も一緒にできるようになるんじゃないかなというふうに思うんですね。

 そういった意味では、国税庁と年金機構を一緒にしたら国税庁がだめになってしまうという議論はちょっとおかしいと思いますので、歳入庁がベストだと思いますし、もし仮に歳入庁が難しかったら、今の国税庁にせめて年金の徴収業務だけでも移管していく、こういうことが考えられるんじゃないかと思いますが、岡田副総理、いかがでしょうか。

岡田国務大臣 政府の方でいろいろ検討して三つの類型というのをまとめたわけですが、その中には、徴収のところを一本化するという構想も含まれております。年金の支払いのところまで、一本化した組織、歳入庁に担わせるとすると、これまた大分性格が変わってまいりますので、そういう意味では、徴収のところの一本化というのがより現実的かなというふうには思います。

 ただ、そこで議論しなければいけないのは、厚生年金と国民年金、両方あると思いますけれども、厚生年金の方の問題は、御党がたびたび指摘しておられる、厚生年金に本来加入しなきゃいけないのに入っていない、そういう企業、そこをどうやって加入させていくかという問題。国民年金の方は、払わない人、あるいは国民年金にそもそも入らなきゃいけないのに入っていない人に対してどうしていくかという問題。後者の国民年金に関して言うと、やはり今の国税庁が把握している所得層の方々とかなりずれがあります。一部重なっていますけれども、ずれもありますので、そういう意味では、陣容も相当整えないといけないという問題もある。

 そういったことについて、今、もう一度といいますか、残された論点を政府の中でも詰めているところであります。そういうものをまとめて、そして党ともよく相談をして、最終的にどういう形があり得るかということについてまとめていかなければいけないというふうに思っております。

 委員の御指摘も私はよくわかるんです。参考にさせていただきたいというふうに思っています。

山内委員 ありがとうございました。

 次に、マイナンバー制度についてお尋ねします。

 マイナンバー制度、具体的にどれぐらい導入にコストがかかるものでしょうか。また、それによって得られる便益というのはどれぐらいになるんでしょうか。

大串大臣政務官 お尋ねいただきましたマイナンバーの導入に対する費用と便益ですけれども、費用という観点からしますと、マイナンバー及び法人の番号も付番しなければなりません。この付番のシステムの構築に約百億円程度を考えています。

 さらに、それらをつなぐ情報提供のネットワークシステム、あるいはマイポータルという行政側から個人の皆様に情報をお届けする仕組み、さらには、第三者機関を置こうと思っていますけれども、第三者機関の監視システム、こういったものの構築で約四百億円を見込んでおります。

 この辺は、システム調達のあり方も含めてさらにどれだけが本当に必要かということは詰めてまいりたいというふうに思います。

 このほかにも、実際これを運用し出すとマイナンバーを利用してもらうことになる、例えば国税庁、あるいは日本年金機構、あるいは地方公共団体の皆さん、あるいは共済組合の皆さん、健保組合の皆さんなど、これとつながれる方々のところでもシステム改修が必要になってきます。ここはもう少し詰めなきゃならないですし、ほかにも、税務署に提出するための法定調書にマイナンバーや法人番号を記載するための金融機関のシステムとか事業者の給与システムの改修も必要になる見込みです。

 この辺はもう少し詰めていかなければならないと思いますけれども、いずれにしても、こういった費用がある中で、便益に関しては、御案内のように、マイナンバーを通じて社会保障がよりターゲットされた形で効率的にお届けできるようになるとか、あるいは災害時に個人の情報を遺失せずに適切に個人確認ができるようになるとか、あるいはあっちこっち行かずに一カ所でいろいろな行政手続をできるようになるとか、あるいは先ほど申し上げたマイポータルを通じて、申請主義ではなくて、行政の側からこういうサービスができますよということをお伝えできるようになるとか、いろいろな便益がありますが、これを金銭価値に置きかえるのがなかなか難しいものですから金銭価値における便益は分析しておりませんけれども、いずれにしても、今申し上げたようなメリットがあるというふうに思っておりまして、その点は国民の皆さんにもきちんと御説明できるように、御報告していかなければならないというふうに思っている次第でございます。

山内委員 マイナンバー制度を導入するに当たって、相当IT関係の投資が必要になるということだと思うんですけれども、維持管理まで含めると相当なお金になると思うんですね。

 財務省絡みでそういうIT投資、これまでたくさん必要だったものの一つとして、e―Taxがあろうかと思います。このe―Tax、どれぐらいお金がかかって、それからどれぐらいの便益があったんでしょうか、教えてください。

五十嵐副大臣 今の大串政務官の御説明と同じなんですが、なかなか計量化するのは難しいです。

 基本的に、例えば平成二十二年度における整備経費、運用経費は合計百二十一億円でございますが、これは一件当たり五百八十一円のコストがかかっていると計算されます。これを、徐々に目標を、年次、二十五年度に向けて利用率を上げて、費用も下げようとしております。

 これに対して便益はどのぐらいかというと、さまざまな申告書の種々の事務の手続が省略されるとか、印刷、郵送費が省略されるとか、さまざまな便益が考えられますけれども、一応、今計算できるのは、納税者側から見て、申請窓口等への往復の交通費の削減効果、あるいはその間使われる時間の短縮ということから経済効果を試算すると、それだけで、その分だけで、交通費の部分だけで、年間二百七十一億円の便益がある、こう見ております。

山内委員 交通費だけしかわからないというのも、ちょっと寂しい気がします。大体、役所が何か将来予測をすると、過大に見積もるケースが多いように思います、交通量の予測とかは大体外れているわけですけれども。

 そういった意味では、きちんと費用対効果を事前に予測して、実績と比べて検証していくという作業が、特に大きな金額が動くIT投資に関しては必要になると思うので、今後、その点、しっかりモニターをしていただきたいと思います。

 実は私も某独法の職員であったときにシステムの契約とかをやっていたんですけれども、非常にびっくりするような金額を大したことないサービスに払わされて悔しい思いをしたことがあるんです。

 そういうIT投資というのは、何かよくわからないうちにたくさんチャージされて損した気分になるんですけれども、実際にどれだけ便益があるか非常にわかりにくくて、納税者の側からも本当に役に立っているのかなと。特にe―Taxなんか、最近は大分利用者がふえてきましたけれども、最初のころは件数が伸び悩んでいたりとか、電子申請物は結構パフォーマンスがよくないのが、他省庁の場合ですけれども、多いと思いますので、ここはしっかり見ていっていただきたいと思います。

 そういう体制というのは何かあるんでしょうか。評価の仕組みとか、担当者がどういうふうにチェックしていくかとか、財務省の中で工夫はされているんでしょうか。

五十嵐副大臣 オンライン利用拡大行動計画というのができておりまして、平成二十年の九月でございますけれども、二十五年目標で、e―Tax利用率六五%の目標をつくって、これをさまざまな指標も設けて達成しようということになっておりまして、現時点で、二十三年度は五二・七%の利用でございますけれども、さまざまな指標を設けて、目標と基準値を設けて、またサンプル調査等も行って、それを確かめたいということになっております。

 また、今後も、業務プロセス改革計画というのをつくっておりますので、これに基づいて積極的に定着化と効率化のために頑張っていきたいと思っているところでございます。

山内委員 ありがとうございました。

 次に、環境税について。

 この委員会で環境税はほとんど議論されておりませんし、法案とも直接関係ないんですけれども、未来の世代にツケを残してはいけないということでは、国の借金と同じぐらい環境の面も配慮して考えていく必要があろうかと思います。二年、三年先では無理だと思うんですけれども、二十年、三十年という長い単位で考えていくと、もっと環境税を活用していく必要があるんじゃないかなと思います。

 民主党政権になってから環境税は少し前に進みましたけれども、あの程度の金額では、恐らく企業とか個人の行動パターンを変えるほどの効果はないんじゃないのかなと。

 私は以前から、環境は大幅に増税をして、その増税して得られた税収を、法人税の減税とか低所得者の給付つき税額控除みたいな形で、痛みを伴う人たちにちょっと還元していくようにして、結局、トータルでは財政中立的な環境税の増税が必要ではないかと。環境税は増税します、ほかの税を減税して、収支プラスマイナス、国民負担は変わらないという感じで、もっと環境税というのを税の大きな柱の一つにしていってもらいたいと思っております。

 大分前に、アメリカの経済学者、たしかポール・クルーグマンが、何かお遊びで書いた論文がありました。二〇五〇年の世の中はこうなっているというような、半分真面目、半分お遊びで、エッセーみたいなものを書かれていたんですけれども、二〇五〇年の地球では環境税を柱にしなくてはいけないと。悪いことに課税をして、いいことは余り税をかけないようにしよう。そうすると、消費することも別に悪いことじゃない、所得を得ることも別に悪いことじゃない。そういう税よりも、むしろ環境税とか、そういった部分で税収の柱にするべきだというようなことを言っていたような気がします。

 そういった意味では、長い目で見ると環境税をもっともっと大きくしていく必要があると思います。その点について、岡田副総理、何かお考えがあればお願いします。

岡田国務大臣 環境税といいますか炭素税、これは固定価格買い取り制度と並んで、やはり地球のCO2を減らしていくための重要な手段だと思います。

 したがって、長い目で見れば、委員御指摘のような形で炭素税あるいは環境税というものを活用していくというのは一つの方向性だと思います。私の持論でもあります。ヨーロッパなどでは、そういった炭素税の結果、上げられた税収を社会保障に使うというようなことも現に行われているわけであります。

 ただ、今のそういった環境税については、ことしの十月から三年半かけて税率を段階的に上げていくということを決めたばかりでありますので、まずそれをきちんと実施した上で、次のステップとしてどう考えていくか。炭素税の課税によって影響を受ける産業界などもありますので、段階を踏みながら考えていく。

 しかし、方向性としては、委員の御指摘、私、基本的に共有するものであります。

山内委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

中野委員長 御苦労さまでした。

 これにて山内君の質疑は終了いたしました。

 次に、渡辺義彦君。

渡辺(義)委員 新党きづなの渡辺義彦であります。

 連日、また本日も長時間大変御苦労さまでございます。最後の質疑者でございますので、もう一踏ん張りよろしくお願いを申し上げます。

 まず、今回の内閣改造について。

 昨日、野田総理は内閣改造に踏み切られたわけでございますが、組閣当初は、五カ月前は、最善かつ最強布陣と強調しておられ、二大臣の問責を受けた後も、繰り返してそう述べておられました。しかし、急転直下、決断し実行していく政治のために、こうおっしゃっておられたわけでございますが、この内閣改造に踏み切ったのは、まずは、それは何のためで、どういう理由でということを副総理にお伺いしたいと思います。

岡田国務大臣 これはきのうの会見で総理も言っておられますように、やはり、より実施能力というか、そういうものを高めるために今回の内閣改造を行ったということだと思います。

渡辺(義)委員 ありがとうございます。

 新聞紙上で、野党の協力を得るための一つのお考えからなのかとか等々、そういうこともお聞きしておりますが、しっかり新しい内閣で取り組んでいただきたい、そう思っております。

 続きまして、最大野党の自民党さんは、社会保障制度に関する特命委員会と厚生労働部会の合同会議で、政府の社会保障改革関連法案の対案をおまとめになられました。

 まず最初に、政府の社会保障関連法案と今回の社会保障制度改革基本法案との大きな違いというもの、理念等々も含めて、その辺はどのような点であるかということを副総理と厚労大臣にお聞きしたいと思います。

岡田国務大臣 自民党案には、基本理念のところと具体論のところとあるわけですが、基本理念としては、我々と余り大きな違いはないということは総理も申し上げているところであります。

 ところが、具体的なことになりますと、例えば年金については持続可能な現行年金制度を基本とするというふうに書いてあります。高齢者医療についても現行の制度を基本とする、子ども・子育て支援については現行保育制度を基本とする、こういうことになっておりまして、こういったところが我々のお願いしております社会保障・税一体改革とは異なるということだと思います。

 そういったところについて、これからの協議で、どういうふうにしてお互いの合意点を見出していくか、こういうことではないかと思います。

小宮山国務大臣 今、副総理もお答えになられたとおりだと思います。

 自民党でまとめられました社会保障制度改革基本法案の骨子、これについては、基本理念などは……(発言する者あり)社会保障改革基本法案の骨子はまとめられたんじゃございませんか。そうですか。加藤委員がおまとめになったということですが、拝見させていただいたところ、その基本的な理念は共通部分も大変多いのではないかと思っています。

 ただ、年金、それから高齢者医療制度については、現行制度の改善なのか、あるいは抜本的に改革をするのかということが違うかと思いますし、子ども・子育て支援につきましても、子供にお金をつけてちゃんとやらなきゃいけないというところは一緒だと思うんですけれども、それがやはり現行制度の手直しなのか、新しい仕組みにするのかというところが違うかと思いますけれども、これはやはり、子供たちの問題も、それから社会保障のことについても、これからの国民の皆様にとって何がいいかということは、真摯に話し合いをしてよい結論を出していきたいというふうに思っています。

渡辺(義)委員 ありがとうございます。お二人とも同じような御意見でございました。

 政府が目玉にしておられる総合こども園には、野党の皆さんは反対されておられる。自公政権時に導入した認定こども園の拡充を御主張されているわけであります。また、最低保障年金の創設についても、現行の社会保険方式を手直しし維持すべきであると、岡田さんおっしゃったとおりでございます。後期高齢者医療制度の廃止も、自民党さんは、根幹は維持しつつ手直しでいいんじゃないかと。

 順番に言っていきますと、修正協議には論点が大変多いんじゃないかな、方向性が逆のものもあるんじゃないかなと私は思っております。例えば、政権公約に掲げました歳入庁の創設、このことに関しましては、岡田副総理や安住大臣は、なかなか困難であるから、後退したような御意見というか御発言と私は認識しておるんです。とはいえ、御党の前原政調会長さんは、歳入庁の設置や最低保障年金については、総理や閣僚の修正容認の発言に対しては、ちょっと、けげんなというか不快な御発言をされているやにお聞きしております。

 そこで、小宮山厚労大臣は、政権交代後、それ以前からもであります、総合こども園を初め、この特別委員会で議論されておられます法案、さまざまな法案の立て役者だと私は思っております。取りまとめに御苦労されてきたと認識もしておりますが、この増税法案を通すために、修正協議の結果、こういう総合こども園や年金、医療制度等々のものが白紙になりかねない状況というか状態が起こり得るかもしれないと私は思っておるんですけれども、小宮山厚労大臣は、このことはどうお考えになっておられますでしょうか。

小宮山国務大臣 それは、社会保障と税の一体改革と、社会保障を、しっかりと今のものを持続可能にして、そして必要なところは充実をさせていくというために消費税が必要だと申し上げているので、社会保障の方の改革がない、税だけということはあり得ないというふうに私は思っています。

 先ほど違いをおっしゃいましたけれども、例えば子供の制度についても、これは本当に一生懸命つくってまいりましたけれども、自民党さんや公明党さんがおっしゃる、認定こども園を改良したもの、そのとおりなんです、総合こども園というのは。それの二重行政の部分と財政支援が足りない部分を、ネックになっているところを解消して発展させるものですので、その一点をとりましても、話し合いの結果合意が得られるということは、私どもの考え方を根っこから変えなくても、折り合えるところを折り合いながらそこはやっていけると思いますので、これは必ず、社会保障と税は一体にして成立をさせていきたいというふうに考えています。

渡辺(義)委員 それであれば、増税法案成立のために仮に白紙に戻されたとしたら、思い入れの深い社会保障等々、子供に関しても、それこそ再度提出しようとか、いやもう、それは総理、殺生でっせというようなお考えはございますか、意気込みというか。

岡田国務大臣 政府としては、この七法案、税と社会保障、これを最善のものとして国会に提出させていただいております。その基本的考え方は変わりません。

 ただ、これは各党と協議をして合意点を見出さなければなりませんので、それは政府というよりは、各党間でよく協議をしていただいて何とか合意に至っていただきたい、そういうふうに思っております。

渡辺(義)委員 小宮山大臣には、政治家としてぜひとも、初志貫徹というか、頑張っていただきたいなと思っております。

 もう一つ、生活保護の問題について小宮山大臣にお尋ねをさせていただきます。

 私は、今話題になっておるといいますか、生活保護の問題に注目されております大阪の西成区というところで育ちました。日本最大の日雇い労働者の町であります。あいりん地区と言われておるんですけれども、生活保護率は二三・五%、ということは四人に一人、生活保護を受けておられます。

 高度成長期に地方から出稼ぎでお越しになって、高齢化した、また不況によって仕事にあぶれてしまった、雇用の機会もなくした。今、生活保護の対象者となっておられるんですけれども、その人たちを食い物にするような貧困ビジネスや、便乗してどさくさに紛れて不正受給する、そういうこともございますけれども、私のふるさととして、ちょっとあの状況を見ると、悲しい状況であるなと感じております。

 この西成においては、単身の独居老人といいますか、高齢者の問題、不況により失業、雇用の問題という、これは複合した問題であると私は思うんです。保護費の見直し、基準を引き下げようかというようなことはちょっと新聞にも載っておりましたけれども、年金との不公平感等々、見直しは当然必要であるというのは私も考えておりますけれども、このような事情もお考えいただいた上で御検討いただきたいと思っておりますが、小宮山大臣の生活保護に対しての御所見をお伺いしたいと思います。

小宮山国務大臣 今、五年に一度のデータをもとにして、専門家の皆様に、生活保護の水準の見直しをお願いしているところです。

 その中で、私は下げると申し上げたのではなくて、一〇%ぐらいカットをという自民党さんの御意見を総理が受けとめると言われましたので、そういう御意見も参考にしながらということを申し上げましたので、下げるということを決めているわけではございません。

 その上で、御指摘のとおり、今、生活保護世帯のおよそ四割強が高齢者世帯なんですね。全受給者の半数強が六十歳以上でもありますので、高齢化ということが非常に受給者がふえている一つの要因です。

 こうした方は、就労による経済的な自立というのがなかなか難しいケースも多いので、例えばボランティアとか社会参加の場に参加していただくことなどを通じて、社会的につながりを持っていただくような施策も必要かと思っています。

 ことしの秋をめどに生活支援戦略を策定しますけれども、その中で、生活困窮者の支援を実施するNPOですとか社会福祉法人とも協働をして、社会的な自立に向けて寄り添ってサポートをしていくことなども組み込んでいきたいというふうに考えています。

渡辺(義)委員 次の質問に移ります。

 将来の国家像についてと、何か漠然とした質問になってしまうんですけれども、ある方の言葉をかりますと、本来必要なのは、我が国の財政にどのような問題があって、放置すればどんな問題が生じて、どこまで増税すれば問題が解決されるのか、このことを具体的に示さなければ、国民にはなかなか増税というものを御理解いただけないんじゃないかということでございますが、岡田副総理は、この国、我が国のグランドデザインといいますか、自助を重んじる社会とか、福祉、経済重視であるとか、そういう意味では、我が国をどんな方向というか、どんな国にしていこうというふうにお考えになっておられますでしょうか。

岡田国務大臣 この社会保障・税一体改革の議論というのは、そういった将来についての見通しといいますか、あるいは目標とか、そういう問題以前のこととして、この日本を持続可能にしなければいけないと。したがって、いろいろ、将来目指す方向は、それぞれ方向感覚は違うかもしれませんが、誰であっても、この国の政権を担っておれば通らなければいけない道だというふうに思っています。

 つまり、今年度予算を見ても、半分以上は借入金、借金で賄っている。国債発行残高を見ても、GDPの二倍を超えている。そういう形が持続可能でないことは明らかで、それを何とか是正していく。これはなかなか遠い道のりでありますが、まず今回の五%引き上げによって、プライマリー赤字を半減する、そして同時に社会保障制度を持続可能にする。これは誰がやっても避けられないというふうに私は思います。

 その上で、では、その後どうしていくかということについては、再度議論して、歳出削減とかあるいは経済成長による税収増とか、そういうものをある程度見込める、そういう中で、さらに増税をするとすれば何で増税するのか。先ほど来議論になっておりますが、所得税とかあるいは環境税とか、そういう項目だってあるわけですから、何も消費税だけに限る必要はないということだと思います。

 いずれにしても、このプライマリー赤字がある限りはそれを何とかしなければいけないというところは、私は、どういう国の将来像を描くにしても、必ず通らなければいけない道ではないかというふうに思っています。

渡辺(義)委員 そのプライマリーバランスをとるために消費税を一〇%にするということで事足りるというか、それで大丈夫とお考えでございますか。それとも、もっとその後増税も必要であるとお考えでありますか。

岡田国務大臣 今回の消費税の五%引き上げによってプライマリーバランスの赤字が半減するという状態で、なお、プライマリーバランスが黒字化するには至っていないということだと思います。

渡辺(義)委員 ということは、もっと消費税なり、ほかの税収もそうですが、上がる可能性もあるということでございますか。

岡田国務大臣 私は行政改革も担当しておりまして、まだ行政改革で、すぐに効果が出なくても、少し時間がかかっても効果の出るものはあると思います。総人件費の抑制などもその一つですし、それから、政府の情報システムの見直しを今進めております。私のところと古川大臣のところで協力してやっておりますが、これなども初期投資はかかるんですが、行政が効率化することで、やはり少し長い目で見れば歳出削減につながる。そういったものでどれだけ実績が上がるかということによって、さらなる増税が必要かどうかというのは決まってくる。

 その増税というのも、先ほど言いましたように、消費税だけではなくて、所得税その他の税制というものも視野に置いて、もう一度それは二〇一五年の前後で議論しなければいけないんじゃないかというふうに思います。

渡辺(義)委員 今おっしゃったように、穴のあいたバケツに税金を上げてどんどん投入したって漏れちゃうわけですから、そういう意味では、私は、行財政改革というもの、バケツの穴を先に塞ぐことが大切ではないんだろうかと考えております。

 当然、それは並行してやらなければならないことではありますが、今こういう状況下の中で、税収増のこともおっしゃいましたけれども、今、国民、企業もそうです、大変苦しいときに消費税を上げてしまうということはいかがなものかと私は思っておりますが、やはり増税が先とお考えでございますか。

岡田国務大臣 随分いろいろな意味での行政改革も進めてまいりました。しかし、それは終わりはないので、これからも全力でやっていかなければいけないというふうに思います。

 しかし、先ほど言いましたように、消費税を五%上げたとしても、それでプライマリー赤字が半減するだけ、まだ半分残るということですから、ここのところはもう避けられないというか、先送りすべきでないというふうに思います。

渡辺(義)委員 私ごとでありますけれども、私は、二〇〇一年の小泉元総理が華々しく登場されたころに参議院選挙に出させていただいて、小泉さんが、痛みを我慢していただければ世の中はよくなるよ、この日本はよくなるよとおっしゃっておられました。私はそのときに、その痛みというのはどのような痛みで、どのぐらいの痛み、その痛みはいつまで続くというか我慢すればよいのかという部分で、この痛みの種類や程度や期間も明確にされないと、なかなか国民の皆さんも先行きが不安であると思うんです。ですから、あのときのやり方というかにちょっと似ているんじゃないかなと、私の意見でございますけれども、思っております。

 もう少し先行きが見える、経済というのは心理的な部分が大変多いと思いますので、そういう意味では、政権交代がなされて、国民が、あれから、小泉さんからいえば十年であります、あのとき託されたことというものを実現するためにはどうしていったらいいんでしょうねということを、ちょっと自分で自問自答してしまいましたけれども、申しわけございません、質問にはなりませんでしたけれども、今ふと原稿にないことを申してしまいました。

 肝心な、経済を維持して活性させるということでは、先ほども岡田副総理もおっしゃっておられましたけれども、やはりどう考えても今の時期の増税というのは、中小企業の倒産や失業者の増加、失業手当、生活保護受給者がどんどんふえてきて、より一層財政が圧迫されて不況になっていくんじゃないかと私はついつい考えてしまうんですけれども、その辺はいかがでございますか。

安住国務大臣 やはり国民負担率を考えますと、先生、社会保障の今の年金、医療、介護の日本のサービスというのは非常に質は高いと私は思います。ですから、介護保険がスタートしてから、やはりひとり暮らしのお年寄りの方なんかに対するケアというのはもう格段に向上しました。そういう意味では、暮らしの面では私は大変いい制度だったと思います。

 ただし、これはお金のかかることです。保険料だけで賄えればいいわけですけれども、そうでないわけですね。そこがなかなか悩ましくて、年金、医療、介護それぞれ、例えば保険料収入を見ていると、やはり頭打ちになっています。これを消費税等で賄わなければ、結局、では今度は保険料で御負担をいただくのかということにもなりかねないわけですね。そうでなかったら、質を下げるかということにもなってくるわけで。

 だから、百兆円を超えたそうした社会保障費が間もなく、二〇二五年には百五十兆近くになっていくという現実からは、やはりなかなか目をそらせないと思うんです。特に団塊の世代の皆さんが六十五歳になり始めまして、これから三年の間で六百万人を超えるような方々が年金受給者になっていく。

 こうしたことを考えますと、増税の負担というのが大増税だという御批判もありますが、五%から一〇%に上げさせていただいて、これをそういう意味では目的税にしていくということですね。私どもが提案しているものというのは、そういう点では、やはりその維持をしていきたいんだということなんですね。そのことは結果的には社会の安定につながっていくし、いつまでも借金を背負いながら、それも、世界から見たときにこれがどういうふうな借金かというのは、やはり大変に重い借金だと私は思います。

 私どもは再三、国際会議に行っては実は警告を受けるわけですね。このまま財政状況を放置する日本は、これは何とかしないとだめじゃないかということは再三言われますから、そうした面も考えながら、経済に本当に影響をできるだけ最小限にするような配慮をしながら、しかしやはり税の負担をお願いしないといけない時期に来たというふうに思っております。

渡辺(義)委員 借金、借金ということでありますけれども、債権もあるわけですから、国内での借金であります。先ほども心理的な部分と申しましたけれども、日本は借金だらけやでという部分も、メンタルな部分では僕はマイナスだなとは思っております。

 税外といいますか、とにかく増税するよりも、私は、税収をふやすこと、これは、ふやす方法としては、国債を発行するとか、経済活性化による税の増収、税外収入には政府財産の売却等々もあると思いますけれども、ほかに、財務大臣として、税収が上がるにはこんなアイデアがあるでとか、こういう部分で税収を上げていこうとしているという部分は何かございますでしょうか。

安住国務大臣 今、所得税のフラット化や法人税率の引き下げをやりました。ですから、そういう点では、税収機能は、全体には税収が上がっていくというよりはかなりの減税をやっているわけです。所得税だって、全体の所得税納税者の八五%は五%ないし一〇%の低い課税率なんです。そこはアメリカや欧州と全く違うんですね。

 ですから、重税感があるという御主張もあるかもしれません。しかし、冷静な目で見れば、日本の低所得者に対する配慮というのは実は世界の中では相当やっていて、それが逆に言えば再配分機能のいわば一つの問題になっているというのもありますから、そういう意味では、水平的な税である消費税と、それから垂直的な税である所得税の組み合わせというものをもう一回考えなければいけないところに来ているのかもしれませんので、そういう点では、所得税のあり方等についても見直さないといけないと思っています。

 もう一つは、やはり経済をよくして、できるだけ法人税を多く納めていただく。それから、お給料がふえていただければ所得税もふえるわけですから、そういうこともあわせてやりながら、全体に増収を目指したいというふうに思っております。

渡辺(義)委員 もう時間がございません。たくさんまだ質問がございましたが、続きまして質問させていただきます。

 消費税の質問をずっと続けてまいりましたけれども、徴税漏れといいますか、脱税だけではございませんが、なかなか税金を徴収し切れていないという部分もいろいろ聞いております。ある試算では、税金は四兆円ぐらい取れていないんじゃないかとか、社会保険の徴収漏れも十兆円ぐらいあるんじゃないかというようなことが指摘されておりますが、この辺の徴税漏れに対して、どんな施策という部分をお考えになっておられますか。お聞きさせていただきます。

五十嵐副大臣 今お話しなさった十兆円、四兆円というのは、根拠がない数字だと私は思います。

 課税漏れ、徴税漏れ、課税漏れはなかなか把握ができませんが、欧米諸国等と比べて、諸外国と比べると日本人は極めて真面目で、アンダーグラウンドの経済が少のうございますので、そんなに大きな額の課税漏れはないと考えております。

 また、我が国の国税当局は大変優秀でございまして、さまざまな法定調書を分析し、必要なところでは実地調査も行いまして適正課税に努め、二十二事務年度の実績では五千億円の追徴税額を定めております。

 今後とも、数は少ないんですけれども、国税当局の人員の効率的な、今執行しておりますけれども、そのもとで、適正公平な課税、徴税を実現していくために努力を重ねていきたいと考えております。

中野委員長 時間が参りました。おまとめください。

渡辺(義)委員 我が国が徴税というか徴収率が高いのは、サラリーマンの皆さんの源泉徴収制度というのがあるから、より高いんだと私は思っております。

 最後でございます。まとめろということでございますので。

 小宮山大臣と安住大臣はNHKの御出身でございます。NHKの徴収といいますか、視聴の徴収率は大変高うございますので、この辺を上手に生かして、しっかりと不公平感がないように徴税していただきたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

中野委員長 御苦労さまでした。

 これにて渡辺君の質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

中野委員長 この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中野委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に西博義君を指名いたします。

 次回は、明六日水曜日午前九時四十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会

     ――――◇―――――

  〔本号(その一)参照〕

    ―――――――――――――

   派遣委員の福島県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成二十四年六月四日(月)

二、場所

   ホテル辰巳屋

三、意見を聴取した問題

   公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、子ども・子育て支援法案(内閣提出)、総合こども園法案(内閣提出)、子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)及び社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 中野 寛成君

       江端 貴子君   岸本 周平君

       田嶋  要君   田中美絵子君

       武正 公一君   早川久美子君

       三村 和也君   和田 隆志君

       伊吹 文明君   鴨下 一郎君

       田村 憲久君   竹下  亘君

       馳   浩君   西  博義君

       高橋千鶴子君  斎藤やすのり君

       中島 隆利君

 (2) 意見陳述者

    福島県白河市長     鈴木 和夫君

    日本労働組合総連合会福島連合会事務局長    今泉  裕君

    特定非営利活動法人全国認定こども園協会副代表理事          古渡 一秀君

    福島県商工会議所連合会会長          瀬谷 俊雄君

    福島県商工会連合会会長 轡田 倉治君

    税理士         金田  宗君

    福島県民主医療機関連合会事務局長       齋藤 和衞君

    南相馬市立総合病院院長 金澤 幸夫君

 (3) その他の出席者

    衆議院調査局社会保障と税の一体改革に関する特別調査室長       佐藤  治君

    内閣官房社会保障改革担当室長         中村 秀一君

    内閣府大臣官房少子化・青少年対策審議官    伊奈川秀和君

    総務省大臣官房審議官  平嶋 彰英君

    財務省大臣官房審議官  星野 次彦君

    厚生労働省大臣官房審議官           蒲原 基道君

     ――――◇―――――

    午後零時三十分開議

中野座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員長の中野寛成でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げます。

 まず、改めて、東日本大震災により亡くなられた方々の御冥福を心からお祈りを申し上げますとともに、御遺族や被災された方々に対しまして、心よりお見舞い申し上げます。

 また、被災者の支援や復旧復興、さらに福島におかれましては原発事故による放射能汚染対策のために御尽力をいただいている関係者の皆様に改めて心から感謝を申し上げ、敬意を表する次第でございます。

 さて、皆様御承知のとおり、当委員会におきましては、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案、被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案、子ども・子育て支援法案、総合こども園法案、子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案及び社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案の審査を行っているところでございます。

 本日は、各案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、当福島市におきましてこのような会議を催させていただくところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわりませず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願いを申し上げます。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、全て衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うこととさせていただきます。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願い申し上げます。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は御着席のままで結構でございます。

 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。

 まず、派遣委員は、民主党・無所属クラブの理事武正公一君、理事和田隆志君、江端貴子さん、岸本周平君、田嶋要君、田中美絵子さん、早川久美子さん、三村和也君、自由民主党・無所属の会の理事伊吹文明君、鴨下一郎君、田村憲久君、竹下亘君、馳浩君、公明党の理事西博義君、日本共産党の高橋千鶴子さん、新党きづなの斎藤やすのり君、社会民主党・市民連合の中島隆利君、以上でございます。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 なお、敬称は、私の衆議院の慣例、日常の言葉で君づけで呼ばせていただきますが、どうぞお許しをいただきたいと思います。

 福島県白河市長鈴木和夫君、日本労働組合総連合会福島連合会事務局長今泉裕君、特定非営利活動法人全国認定こども園協会副代表理事古渡一秀君、福島県商工会議所連合会会長瀬谷俊雄君、福島県商工会連合会会長轡田倉治君、税理士金田宗君、福島県民主医療機関連合会事務局長齋藤和衞君、南相馬市立総合病院院長金澤幸夫君、以上八名の方々でございます。

 それでは、まず鈴木和夫君に御意見をお述べいただきたいと存じます。

鈴木和夫君 白河市長、行政の長をしております鈴木であります。

 一言、今回の税と社会保障の一体改革についての思うところを述べてみたいと思います。

 誰しもが、今この日本の現状を考えるときに、財政健全化の必要性を否定する人はいない、同時に、社会保障の充実を否定する人はいないわけであります。

 ただ、それを一体的に今同時に議論することが妥当かどうかということと、私は行政の長でありますから、主に税の方の観点からまず入っていきたいと思いますが、このように、今、大きな税を提案するということは、税を語ることは国を語ることだと思います。同時に、国の形、地域の形を考えることなんだろう、あるいは、大きく言えば、生活のありようを考えることなんだろう、大変大きいテーマなんだろうというふうに私は思うんですね。

 そのときに、税の抜本的な見直しという視点があるんだろうかということが一つあります。税が不足をしている、ですから、一番みんなが平等に負担できる消費税、こういう議論はもちろんあるわけでしょうが、今までの税の問題というのは多々あったわけです。例えば税の捕捉率の問題、こんな問題があったり、例えば法人税が高いという議論がありますが、本当に高いのかどうかということについても冷静な議論をしたことがあるんだろうか。あるいは、今回は特定財源化ということでありますが、特定財源化ということについて本当に問題はないんだろうか。道路財源のように特定財源化すると、一種の聖域化するということもあります。

 そういった意味で、社会保障のお金が少ないので、その部分を消費税で全部これに充当しますよということは一見わかりやすいような議論でありますが、しかし、これが安定的にいったときに、制度の構築があったときに、果たして、これが特定財源化することによって支障を生ずるのではないか、財政の裁量の幅がなくなってしまうのではないかということを懸念するわけであります。

 ですから、そういった意味で、今度の税の議論が消費税の議論にちょっと偏重し過ぎているのではないか、偏り過ぎているのではないかということ。ですから、当然、それ以外の税のあり方についてもやはり議論をすべきなのではないかということです。

 それからもう一つは、当然これは国税の議論をしているわけでありますが、国税と地方税は表裏一体であるわけですね。当然、今度の議論も、消費税がもし国民の信を得て実現できれば、国と地方の税源の配分という議論もあるわけでありますが、地方自治体の首長としては、例えば、現在の五%については四対一に分かれています。それが交付税等のはね返りで、実質は国が二・八二対地方が二・一八と、大体五五と四五に分かれています。これが今度の議論では、国が六・二八%、地方が三・七二%と、六対四、六・五対三・五ぐらいの割合ですね。若干、地方に配分が低いような気がしております。

 しかし、実際のところは、地方が負担をしている社会保障のいろいろな細かな政策は相当大きいものがあるわけですね。乳幼児の医療の問題を初め、例えば国民健康保険税なんかももう制度がパンクしかかっていますから、相当の市町村では、一般会計から繰り入れをして賄っているという状態があります。こういうことを考えているとき、そして、これからは現物給付が中心となってくるわけですね。現物給付を担うのは地方自治体、とりわけ市町村であるわけです。そういうことを考えると、国と地方の税の配分の問題が果たしてどうなのかということ。

 そして、現物給付の大部分はマンパワーですよ、マンパワーです。今の議論は、マンパワーを、人を、人員をふやすことにどうも問題があるような議論があるんではないのか。例えば、今度の東日本大震災での一番大きい問題は、合併をして人員が相当減りました。合併をした旧町村においての、あの惨たんたる被害の大きい要因はマンパワーの不足です。そう考えますと、このマンパワーというか、保育士、保健師さん、あるいはケースワーカー、こういった人間、地方自治体は人イコール事業費でありますから、このマンパワーを決して軽視してほしくないというふうに思います。

 そしてもう一つは、これはいろいろな議論がありますが、時期の問題。私は、基本的には、財政の健全化は必要であるという認識です。そして、社会保障の改革も必要であるという認識を前提に今話をしておりますが、ただ、問題は、今この時期なのかどうかということですね。今ずっと申し上げてきた議論、税の本来のあるべき姿、国と地方の税制度のあるべき姿、そんなことの議論が余りされていないということが一つ。

 それからもう一つは、今、大方の人がおっしゃっているのは、デフレの中での増税ということが果たして妥当なのかどうかということですね。もちろん財政健全化は待ってくれません。待ってくれませんが、しかし、日本の国力からすれば、今の二年、三年、私は待ってもいいのではないかという考え方であります。まず、デフレから脱却をするということ。

 それからもう一つ、私が心配するのは、産業を牽引するものが出てこないということですね。新しく日本経済を牽引する産業が出てこないという、この大きい問題があるのではないか。こういったものに重点的な配分をした上でこの議論をすべきなんだろう、そういうふうに思います。

 それからもう一つは、先ほど、税を語ることは国家を語ることだ、こういうふうに言いましたが、税については、国民の大方の人は、このままでは立ち行かないというふうに誰しもが思っている。しかし、税というのは信頼の問題だと思います。それは政府に対する信頼の問題。それは中央政府、地方政府、あまねく同じであります。

 今度の大震災以降、私ども福島県の首長としては、やはり非常にいろいろな思いを持っております。これは簡単に言うと、地域住民が政府というものに対する信頼を今ほど低めている時期はないんだろうというふうに思います。特に、先ほども座長から話がありましたが、放射能汚染の問題で、やはり国民は政府の対応については非常に疑問視をしているわけです。こういう中で、国民と政府の信頼関係が最も必要な税という問題を正面切って議論することが妥当なのかどうか、私はこの問題を非常に提起していきたいと思います。

 そういう意味で、今は大震災からの復旧復興をまず第一義的にやる、そして、まずデフレから脱却し、新しいいわゆる成長戦略とおっしゃっていますが、そういったものを具体的に、今度の民主党の政府の方針にも書いてありますが、経済成長との循環を考える。もちろんそのとおりでしょうが、それをもっと具体的に具現化する方策をぜひとも考えてもらいたい、こういうふうに思っております。

 いずれにしても、税と社会保障の改革、健全性は待ったなしでありますが、そういう骨の太い議論を同時に展開、あるいは一定の時間をつくって、その間にこの問題を議論するという多少の猶予があってもいいのではなかろうか、こういうふうに思っております。

 詳細は、皆さん、先生方からの御意見で、また対応していきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)

中野座長 ありがとうございました。

 次に、今泉裕君にお願いいたします。

今泉裕君 連合福島の今泉でございます。

 本日は、大変貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私につきましては、一体改革の中でも、主に年金制度改革に関して発言をさせていただきますが、連合として、将来的に年金を受給する全ての労働者の立場から、幾つかの意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、今回の年金制度改革の必要性についてですが、御承知のとおり、高齢者世帯の収入の七割以上が公的年金で賄われているという調査結果がありまして、皆年金制度発足以降、公的年金は老後生活の柱として定着をし、日本の社会保障制度の基盤をなすものとして、高齢社会を安心して迎え暮らせるための重要なものとなっています。

 しかし、皆年金の達成以降、日本の社会経済の状況は大幅に変化をし、世界に類を見ないスピードで少子高齢化が進むとともに、一方では雇用の非正規化が進行して、年金保険料の未納者や未加入者が増加をしています。

 つまり、年金受給者がふえる一方、制度の支え手が減少しているわけですが、こうした状況は、賦課方式を基本とする年金制度の持続可能性に大きな影響を及ぼしていると言えます。

 一部に、平成二十一年度の財政検証で年金制度の安定性が確保されていることから、改革は不要との声があるとも聞いておりますが、本当に改革は必要ないのか、疑問を感じます。

 平成二十一年度財政検証では、今後百年の年金財政を見通す上で、賃金上昇率二・五%、運用利回り四・一%を前提として、年金財政の健全性は担保されているとの結論に至りました。

 しかし、名目賃金は過去十年で一〇%程度下がっており、最新の数値でも、二〇一〇年度の名目賃金上昇率はコンマ六八%と、財政検証上の数値にはほど遠い状況にあると思います。また、運用利回り四・一%を継続的に確保することが常識的に考えて困難であることは、現在の経済状況と運用の環境を見ても明らかだと思います。こうした状況で、本当に年金財政は健全と言い切れるのでしょうか。

 また、現在の年金制度は、国民年金、厚生年金、共済年金と職種ごとに制度が分立しており、制度の公平性が確保されているとは言いがたい状況にあると思います。年金制度の持続可能性と公平性を確保し、安心と信頼の年金制度を実現するためには、現実的な試算に基づいた財源確保策を講じた上で改革を行うことが必要不可欠であると思います。

 次に、政府・与党の年金制度改革法案についてですが、今回の一体改革で実現を目指す年金制度改革には、基礎年金の国庫負担二分の一恒久化や、厚生年金と共済年金の一元化といった、年金制度の持続可能性と公平性を確保する内容が含まれております。今回の改革で安心と信頼の年金制度が完全に構築できるとは言えませんが、その第一歩として、確実に改革をなし遂げるべきと思います。

 こうした視点に立ち、残された時間は、一体改革の関連法案として国会提出されている年金機能強化法案と被用者年金一元化法案について、基本的に賛成の立場から、その理由と意見を述べたいと思います。

 まずは、基礎年金国庫負担二分の一の恒久化です。

 年金制度の持続可能性を確保するためには、今回の年金機能強化法案に盛り込まれた基礎年金国庫負担二分の一の恒久化は、何としても達成すべきであると考えます。

 基礎年金国庫負担は、二〇〇四年の年金法改正の際に、二〇〇九年度までに二分の一に引き上げ、それに必要な安定財源を確保する税制改革を行うことが附則に明記されております。しかし、実際には、税制改革は今日に至るまで実施されず、これまではいわゆる埋蔵金を活用して二分の一を維持してきましたが、今後も埋蔵金などで財源を捻出することは困難であると思います。国庫負担二分の一維持は年金制度を安定的に維持する上で不可欠であり、早急に安定的な財政基盤を確保しなければなりません。

 与野党の皆さんには、ぜひともこの危機感を共有していただき、基礎年金国庫負担二分の一の恒久化と、その財源確保のための税制抜本改革を確実になし遂げていただくことを心からお願いしたいと思います。

 なお、今回の年金機能強化法案とは別になりますが、二〇一二年度の基礎年金財源確保のための国民年金法改正法案は、二月十日に国会へ提出されたまま審議が進んでおりませんので、この法案も成立させていただくよう要望いたします。

 次に、短時間労働者への社会保険適用拡大についてです。

 短時間労働者への社会保険の適用拡大を行うためにも、年金機能強化法案は確実に成立させていただきたいと思います。

 短時間労働者を含む非正規労働者が増大していますが、非正規労働者の雇用は不安定であり、加入できる社会保険まで正規労働者とは異なります。こうした差別的な取り扱いは、働く立場として納得できるものではありません。

 今回の法案では、社会保険の適用対象が、週労働二十時間以上、月額賃金七万八千円以上などの五つの条件を満たした労働者に拡大されました。

 連合は、全ての雇用労働者への社会保険適用を目指し今日まで運動を展開してきましたが、今回の法案では、短時間労働者独自の要件として、企業規模要件や勤務期間要件が設けられたことは残念であります。

 しかし、現在の雇用労働者の三分の一以上を非正規労働者が占める中で、労働力人口の減少社会となった日本においては、非正規労働者の格差是正が日本の将来を大きく左右するものと思います。

 この危機感を共有し、ぜひとも今回の法案を確実に成立させていただき、そして、今回の法案を第一歩として、全ての雇用労働者の社会保険適用に向け、さらなる改革をスピードを上げて進めていただくことを強く求めたいと思います。

 次に、被用者年金一元化についてです。

 厚生年金と共済年金の一元化については、年金制度の公平性確保のための第一歩として、確実に実現する必要があると考えます。

 現在約四十八兆円ある共済年金の積立金は、厚生年金の積立金並みの二十六兆円を一元化後の厚生年金に拠出し、残り二十二兆円は廃止される共済年金の職域部分の処理に充てるとされています。

 そもそも、共済年金と厚生年金は制度の成熟度は異なっておりますので、積立金の仕分けにつきましては、現在の厚生年金と共済年金双方に不公平感がなく、同一の給付水準の厚生年金給付が将来にわたって安定的に行われるよう、公平性の確保が最も重要と考えます。

 今回の積立金の仕分け方法が公平であるのか、数値的な検証を得て、ぜひ国会でも議論をしていただきたいと思います。

 終わりになりますが、私たち連合として、本日、複数の課題について意見を申し上げました。今回の法案が成立するだけでは、年金制度の持続可能性と公平性の確保が完全に達成できるとは考えておりません。

 しかし、安心と信頼の年金制度を実現するためには、その第一歩として、今回の年金改革法案を含む一体改革関連法案を成立させ、さらなる改革に向けて与野党が発展的に議論をしていただきたいと思います。

 なお、本日は年金制度改革を中心に発言をさせていただきましたが、一体改革の中では、子ども・子育て新システムの実現も極めて重要な課題であると思います。労働力人口の減少や少子化への歯どめ策として、新システムの実現にぜひとも取り組んでいただきたいと思います。

 以上を申し上げ、私の発言とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

中野座長 ありがとうございました。

 次に、古渡一秀君にお願いいたします。

古渡一秀君 ありがとうございます。

 御紹介いただきました古渡です。どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、子ども・子育て新システムについて意見を述べさせていただきたいと思っております。

 今、なぜ新システムという制度が必要なのか。実は、震災後の被災地で、子供たちの問題を実に現場で経験した観点からお話ししたいと思っております。

 まず最初に、震災、原発事故、放射能問題による急激な人口減少は、今後、福島県における人口の下支え、経済成長の支えの崩壊となり、復興対策の鈍化、並びに福島県将来ビジョンにも大きな影響を与えます。

 従来、国、都道府県、市町村は、少子化対策とし、少子化対策基本法、次世代育成推進法と数々の政策を実施してきましたが、基本的には少子化には歯どめがかかっていないと思います。しかし、当県における課題は、従来の政策ではどうしても追いつくことができない大きな課題であること、この窮地を脱するためには、福島で生まれ、福島で育ち、福島で成長し、福島をつくっていく子供たちの教育、保育、育ちの成長ビジョンが必要であり、実現に向けた抜本的な総合対策が必要であると考えています。そして、何よりも幼保が歩み寄り、地域の子供たちを市町村が責任を持って支援する仕組みが急務であると考えております。

 そういう観点から、三つの提案でお話をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、子供の安全確保、ネットワーク再生が急務ということがあると思います。

 震災直後の混乱の中、就学前の子供たちについてネットワークができていなかったことが露呈しました。特に、就学前の幼稚園、保育所、認可外、これは所管が全てばらばらです。他方、文部科学省の直轄でいいますと、義務教育の小学校の対応は大変すばらしく、早かったと思います。

 しかし、その後、当県における子供たちの処遇、いろいろな諸問題は多分皆さん御存じだと思っております。既存のばらばらな制度、要するに、私学は県、公立幼稚園、公立保育所、認可保育所は市町村、その他の施設はばらばら。要は、こういうばらばらな対応が、実は震災後、非常に何もできなかったという実感があります。

 そして、我々は、就学前の子供たちについて、国の制度を一元的に管理し、現場では市町村に権限と財源を集約して、地域のネットワークを再生させることがやはり急務だと考えております。

 きょうは資料を準備しておりますので、それを見ていただければと思います。

 レジュメ、これでよろしいでしょうか。年少人口の急激な減少による急務な少子化対策。福島県で起きている現実は、五年から十年以内に各地における日本の姿と考えています。復興再生から考える子ども・子育て新システムという観点でお話ししたいと思います。

 まず、一ページを開いていただきたいと思います。

 これは、福島県の震災・原発事故前の年少人口と一年後の年少人口の比較を記載してあります。上の表は、ブルーのラインは震災前の年少人口の比です。しかし、震災後、原発の事故以後、実はオレンジ色のところまで子供が減っております。基本的には、約五年以上の少子化が急激に進んだことになります。

 右下に赤い字があると思うんですけれども、今回、各市町村の避難者数が発表されました。その中でも、実は、非常に減っている市町村と、ある程度とまった市町村とあることが今回わかりました。そういう観点では、やはり地域に根差した仕組みをどうつくるかというのが非常に大事かと考えております。

 続きまして、二ページもお願いいたします。

 これは、当時、震災前と震災後の住民の移動の数字です。震災前は大変多かったんですけれども、震災後は大変少なくなってしまいました。特に、福島県内に入ってくる世代、二十から二十四歳の世代は、ほとんど共働き世帯の人たちです。

 そういう観点で、実は、その次の三ページを見ていただくと一目瞭然になりますが、よく新聞で、幼稚園の激減ということがあったと思います。確かに、幼稚園は、幼稚園の園児というのはかなり激減いたしました。

 しかし、右の表は、福島市内における私立保育所の充足率です。特に、ほとんどが一〇〇%以上を超えるという状態でした。その下に書いてありますが、合計の欄の中で、特にゼロ歳児、一歳児、二歳児が急激にふえた。震災で子供たちが減っているのに、実はミスマッチで、保育所を利用する人も非常にふえた、そういうことが言われます。そういう観点では、要するに、人口減少にもかかわらず、乳児保育のニーズがかなりふえた、ミスマッチがここで起きたと思います。

 また、人口流出の一方で、福島に残った家庭は共働きで養育しないと生活が維持できない状況になり、保育のニーズは多分これでもふえたと考えております。

 したがって、幼稚園と保育所の制度を前提としたままの運用改善では、福島県ではもう通用しないということだと思っております。今、福島で起きていることは、将来の日本各地で起き得ることだと考えております。一日も早く制度改革に着手することが不可欠だと考えております。

 また、危機管理の観点からも必要であり、安全、安心して子供を育てられる地域の協力体制も急務です。その意味では、今回の震災でわかったことは、市町村並びに県もそうですけれども、かなりの格差があったと感じております。

 また、就学前児童の居場所の確保という観点があると思います。親の共働きに関係なく、安全な居場所が必要です。特に被災地では、保育を必要とする子供たちが地域によって分断することは合理的ではないということです。

 そして、今回、総合こども園が地域の拠点になり、地域コミュニティーの再生に貢献できるという一つの実証ができました。資料でいいますと、六ページを見ていただければと思います。

 今回の震災のときに、実は、認定こども園が各地域の施設と共同で、避難している子供たちとか、たくさんの子供たちを支援することできました。また、幼稚園も保育所も一つ一つ、そういう震災に対しても協力するという、大変すばらしい事例がたくさんあったと記憶しております。

 また、我々は、総合施設型認定こども園の構想と呼んでおりますけれども、基本的に、全国認定こども園協会としましても、名前に、名称にこだわるつもりは全然ございません。やはり基本的には、こども園の機能として考えていきたいと考えております。

 しかしながら、今の幼稚園と保育所の制度にしがみついて何の改革もしなかったら、何年たっても、この福島で起きた現状、またはこれから起きようとしている問題は解決しないと我々は考えております。都市部だけの規制緩和をしたり、一時的な財源を投入すればよいという問題ではなく、もちろん待機児童対策も必要です、被災地や人口減少地域を含めたオール・ジャパンの問題だと私たちは考えております。

 また、被災地の子供たちが直面した事態に向き合えば、団体の利害を超えて、子供の視点、親の視点、地域の視点で新システムの改革が必要だと考えております。

 与野党で早く協議して共通項を見出し、改革を実行し、必要なところに必要な財源を早く投入してほしいと考えております。具体策がないまま、問題があると言って足踏みしているだけでは何の改善も進まず、その間に子供たちの貴重な時間が失われる。建設的な与野党協議を早急に開始し、この国会でこの法案を成立させ、恒久財源を子供たちにぜひ充てていただきたいと考えております。

 最後に、この大変貴重な時間をいただいたことに深く感謝申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)

中野座長 ありがとうございました。

 次に、瀬谷俊雄君にお願いいたします。

瀬谷俊雄君 瀬谷でございます。

 本日は、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございました。時間の制約上、簡潔に申し上げます。私は、この肩書どおり、経済界を代表する者、そういう立場から発言をさせていただきたいと思っております。

 私は、先月、ちょっとショッキングな出来事というのは、たまたまアメリカの格付機関のフィッチ社が日本の国債をワンランク下げたのでございますね。ですから、いろいろ、一番上がトリプルAという、Aを三つ並べたんですけれども、これはアメリカとかイギリスとかドイツとかフランスが入ってくる。日本はずっと下がりまして、韓国、クウェートよりも下になりました。

 フィッチ社というのはマイナーなところで、そう大きな影響力を持つと思いませんけれども、同じような格付機関で、例えばスタンダード・アンド・プアーズとかムーディーズとか、この辺がどういう判断を下すかということでございます。これはやはり日本の財政に対する一種の不信任状とでもいうべき存在でございまして、私は、今後どうなっていくのか、この国債の格下げということに非常に危機感を持って毎日暮らしております。

 それで、今回は、社会保障と税の一体改革という問題が文字どおり今脚光を浴びておりますけれども、どなたかがおっしゃいましたように、やはりこれは一体改革の中で社会保障の方がむしろ主たるメーンプレーヤーであって、それを持続するために、では、どういうふうに財政的に手を打つのか、こういう位置づけでよろしいのではないかと思います。

 でございますから、いろいろ難しい議論がございましょうけれども、一国の財政といえども、早い話、家計と同じでございまして、入るをはかりて出るを制する、結局これしかないわけだ。となりますと、例えば、歳入歳出のうちの歳出削減をどういうところに持っていくのか。

 今、社会保障面につきましてもいろいろ抑制的なパラグラフがございますけれども、それはそれといたしまして、やはり歳入面におきましても、よほどこれから日本経済が高度成長へまたもう一回戻ってくるなら別でございますけれども、どうもやはり、停滞二十年が終わりまして、相変わらずほとんどゼロ成長。この段階におきましては、そういうことも効果が期待できない。となりますと、今回提案されたような消費税というのがやはりどうしても持ち上げてきて、それの負担というものでもって考えなければいかぬ。

 やはり、何といいますか、ことわざですが、良薬は口に苦しという。だから、私もいい年でございますけれども、例えば一定以上の収入がある者については、年金を辞退するとか給付を辞退する、それでも構わぬと思っております。やはり日本はそれぐらいの危機的な状況にあるんだろう。

 したがいまして、きのうですか、このぐらい厚い法案がそっくり届いたのでございますが、到底、明細を見る時間はなかったのでございますけれども、大まかに言いますれば、今回の社会保障と税の一体改革に関する特別委員会、これの趣旨は、やはり結論的に言ってしまえば、消費税をいつ、どんな形で上げるか。

 もちろんいろいろ方法論はあります。例えば複数税率の問題もありますし、インボイスの問題もありますし、それについては細かな抵抗とか何かあるかもしれませんけれども。やはり大まかに見て、この際、今やらなかったら必ず日本経済は、破滅というと大げさでございますけれども、例えば国債のレートが急上昇する、その場合、どういうことが起きるか。同時に、これは国債をたくさん抱えております金融機関の経営不安というものも出てまいりますし、あるいは金融のシステマチックなリスクが生ずる、大不況に陥る。だから、もちろん一生懸命、分配論につきまして、社会保障とか給付、そういう面でやるのは結構でございますけれども、もともとこれは財源がなければ話にならない。

 それで、よく皆様方から、成長戦略と財政規律のどっちが先だという話がございますけれども、私に言わせれば、こんなのは愚問でございます。やはり基本のきちっとした、まず規律ありきで、これが確立されなかったら成長戦略は描けないのではないか、このように思っております。先生方、お立場によりましてはお耳ざわりかもしれませんけれども、私ども経済人としてはそう思っております。

 また、もう一つ、私の肩書には、社会福祉協議会の会長でもございます。したがいまして、今、古渡さんがおっしゃったような子ども・子育ての問題とか、あるいは老人医療の問題、いろいろな問題につきまして、現場を預かっている者として、そういう目線はいつも持っているつもりでございますけれども、それでもなおかつ、やはり今回の税の問題については、とりあえず上げるべきだ。

 どなたかの議論にありましたように、税全体についてのきちっとした議論がされていないじゃないかと。そうはいいましても、私に言わせれば、日本の税制というのは、ここに伊吹先生がいらっしゃいますけれども、大体、直税の方に傾いているといいますか、これはたしか直間比率といいますけれども、これがやはり、間の方がちょっと著しくウエートが薄かったのではないか。

 この際、いろいろ議論はありましょうけれども、思い切って、このぐらいの程度の増税については十分やっていけると。十分、担税力という言葉があるかもわかりませんけれども。少なくとも、GDPの六割はたしか個人消費でございますが、これが落ち込むことはないだろう、若干それは一時落ち込むかもしれないけれども回復できる、そう思っておりまして、ひとつこの辺を、細かい点にとらわれずに、大きな目的のために、先生方の御尽力をお願いしたいと思っています。

 以上でございます。(拍手)

中野座長 ありがとうございました。

 次に、轡田倉治君、お願いいたします。

轡田倉治君 福島県商工会連合会の轡田倉治でございます。私は、小規模零細企業の代表として、一言発言をさせていただきたいと思います。

 御案内のとおり、今、消費税増税問題で大変にぎわしているわけですが、我々小規模零細事業者から言わせますと、なぜ今消費税なんだということなんですね。その前にやることがたくさんあるのではないのかなと思います。

 特に、まず国民の理解が果たして得られているのかどうか。その辺の政府のPRの仕方が、どうも我々から見ると、もう一歩というところだろう、こんなふうに見えてなりません。

 それから、歳入歳出の考え方なんですが、どうも、歳入に比較して歳出の仕方が非常に無駄があり過ぎるように見えております。我々小規模零細企業者から言わせると、大変無駄が多い。我々は会社経営をする場合に、本当に、五分、十分の電気も消すというふうなやり方でやっているわけです。果たして政府の方々は歳出削減を本当に考えてやっておられるのかどうか、その辺が疑問でならないわけであります。そういう観点から、もっともっと歳出を削減できるのではないのかな、こんなふうに思います。

 そんなことで、今決して日本の経済はいい方向ではありません。最近、円高基調も進んでおりますし、非常に我々小規模零細企業は厳しい状況にございます。御案内のとおり、我々から言わせると、デフレの脱却と景気回復、これはイコールなんでしょうけれども、まずそれを最初にやっていただきたい、それがお願いであります。

 このような経済状況の中で、消費税を上げて税金を納めろと言われても、とてもとても我々は、今の状況ではそのような状況にはなりません。

 今、日本には全体で四百二十一万社という企業があるようですが、中小企業と言われるのが四百十九万、九九・七%なんですね。そのうち、私ども商工会に加盟している小規模事業者は三百六十六万三千社ございます。全体の八七%なんですね。ですから、この八七%の企業が今このような経済状況で悩んでいるわけです。これには当然雇用があるわけです。雇用の問題を一つ考えてみましても、消費税が今政府が考えているような状況になりますと、果たしてその消費税が納められるのかというような心配が出てまいります。

 一つは、まず価格に転嫁できない。今五%ですが、一〇%になったらとても、そうでなくても大型店との価格競争でどうにもならないような状況にあるわけですから、そこにまた一〇%価格転嫁したら、とてもとてもお客さんなんか来てくれない。これが状況だと思うんですね。

 例えば物を売る小売業者ですが、例えば製造業の場合、我々はほとんど下請企業ですね、これは親会社の方から、消費税が上がった分コストダウンが必ず来ます。今、五%が一〇%になれば、二〇%のコストダウンが要求されます。それをのまないと仕事は海外に行ってしまうというような状況が今続いているわけですね。

 それで、先ほども社会保障の問題も出ておりますが、とてもとても厚生年金やら社会保険の雇用主負担を負担し切れなくなってしまう。そうなってしまうと、会社を閉鎖するか人を減らすか、自分が生きていくためには何かを考えなくちゃならない。そんな状況になろうかと思います。

 そんなことから考えますと、とにかく、今この状況で消費税を上げるということに対しては、我々商工会としてはもう絶対に反対という立場でございます。

 ただ、先ほど来お話ありますように、社会保障の問題もあります。私ももう年金を受給する年になりました。ですから、社会保障が完全なものであれば大変助かるわけですが、ただ、ここで我々が雇用をしなくなって、若い世代で働く世代が働く場がなくなったら、社会保障をしてくれる、納税してくれる方がいなくなってしまうわけですから、まず雇用を守ることが先決だというのが私どもの考え方でございます。

 そんなことから考えますと、今本当に消費税を上げるべきなのかなという疑問になります。ただ、いずれは、先ほど来お話がありますように、このままでは日本の国がやっていけなくなるのは当然ですから、時期を見て、まず景気の回復、デフレ脱却を図りながら、そこから税・社会保障の改革ということになるのではないのかな、こんなふうに考えておるところでございます。

 先ほど来お話ししていますが、我々小規模零細企業、非常に厳しい状況で、今ですら我々は東南アジアと戦争をやっているような状況です。価格で戦争ですね。そういう状況が続いているわけですから、何とか我々の生活それから雇用を守りたいという気持ちを察していただければな、こんなふうに思います。

 それから、最後になりますけれども、私どもは、ここにいる方も恐らくそうだろうと思いますが、福島県に生まれ、福島県に育ち、福島県で生活をしております。恐らく福島県でこの世を去るということになると思うんですが、それから考えますと、今御案内のとおりの、昨年の三月十一日以降、福島県の県民は今どんな思いで生活しているか、それをまず念頭にお考えいただければな、こんなふうに思います。いまだに復興どころではないんです。復旧もまだいっていない地域がまだまだあります。瓦れきがそのまま。まずそちらから解決していただけないのかな、そんなふうに思います。

 これは福島県だけではないんですが、この東北三県の一日も早い復旧復興、特に福島県は原発の問題がございまして、これはいつになるか先の見通しが立たないような状況でございますから、そちらの方に今政治は全精力を傾けて。日本の一番偉い人が言ったようですが、福島県の復興なくして日本の復興はないということですが、いまだにまだ復興どころではありません、我々の目から見ますと。ぜひとも先生方にはそういうことを念頭に置いてこの社会保障と税の一体改革の問題に当たっていただければな、こんなふうに私の一言とさせていただきます。

 以上です。(拍手)

中野座長 ありがとうございました。

 次に、金田宗君、お願いします。

金田宗君 私は、栃木県と県境にあります西郷村というところで税理士をしております。今回の社会保障と税の一体改革、このことにつきまして、私は、税理士という立場から一言述べさせていただきたいと思います。

 社会保障と税の一体改革という言葉すら知らない国民がいっぱいいるということでございます。何を改革するのか、あるいは、税と一体改革ということになれば、税とどういうかかわりを持っていくのか、そこら辺の説明といいましょうか、国民は知らないんです。ですから、わかりやすい言葉で説明をしていただきたい、このように思うわけでございます。政府は、改革の全体像というものを具体的にわかりやすい言葉で説明する必要がある、そういうふうに思います。

 消費税の増税が前面に出ているようでございますが、改革とは増税なり、こういうふうに思っている国民がいっぱい、大部分じゃないかな、このように思います。

 今、この時期にやらなくてはいけないのか、先ほど来お話がありましたように、その理由が薄弱といいますか、そういうふうに思えてなりません。無駄な支出を省く、これが行政改革だと思います。それの早期断行、それと景気対策など、先にやらなければならないものがいっぱいあるのじゃないか、このように思うわけでございます。増税した分の使途が明確ではないように思います。国民はこれを一番知りたがっているのではないかと思っております。増税をするならば、それなりの環境づくりが大変重要であるというふうに考えております。

 これが総体的に私の意見でございますが、具体的な意見としてお話しさせていただきたいものがございます。

 私は税理士という立場から、今一番の話題でありますこの消費税の問題です。法人企業あるいは個人事業の現実の実態を少し申し上げてみたいと思います。

 年間一千万以上の売り上げがある業者は全て納税義務者となります。お客さんから受け取った売り上げに含まれる五%の消費税を自己の事業資金に使い込んでいる、いわゆる預かり金と称するものでありますけれども、それをどうしても事業資金に使わざるを得ない、これが中小企業の実態だ、このように思います。

 私のクライアントの中でも、売り上げに含まれる五%の消費税を事業資金に使っているのがほとんどでございます。その分を消費税預金として別枠で預金をしている方はほんのわずかでございます。そして、一年たてば、会社の決算、個人の所得税の申告、こういうことになるわけでございますが、確定申告で一年分を一遍に納めるということが、またこれは大変なことなんです。

 先日、ある業者の方が申告をして、消費税の税金がとても払える状態じゃないということで税務署へ相談に行きました。税務署に行って相談しようかと思ったら、最初から、消費税は預かり金なんだからこれは絶対納めなくちゃならないものだ、こういうふうに言われまして、分割納付の相談の言葉さえも出せないで帰ってきた、こういう実態でございます。

 また、納税するために何とかして借り入れを申し込みたい。しかし、返済能力に乏しいということで、なかなか当てにならない、貸してももらえない。また、下請業者の場合、親方に対して消費税の五%を請求する、転嫁する、こういうことがなかなかできない状態である。これが中小零細企業の実態ではないか、このように思うわけでございます。五%の今の消費税率でさえ、このような実態であります。

 ただ、事業者としては、何としても滞納したくない、絶対に税金を納めなくちゃならないという使命感から、自分の会社の役員報酬を減らしたりあるいは経費を極端に倹約したり、そういうことで頑張っております。税務署の話でいきますと、滞納の中で消費税の滞納が一番多い、こういうことを言われております。

 全国の状況が全てこうだとは私は思いたくありませんが、税率をアップすることによって生ずる納税者の苦悩というものは、またまた深刻なものになってきてしまうのではないか、このように思えてなりません。

 私は、今回の一体改革において、消費税の増税を絶対反対とするものではありません。ただ、その前にやることがたくさんあるのではないか、先ほど申し上げましたけれども、行政改革にしろ景気対策にしろ。

 あとは、消費税法の見直し、改正ということも必要ではないかと思います。要するに、今の消費税では益税というものが出てきます。お客さんから消費税を受け取っても、国にその税金が行かないという益税でございます。それに対して、所得として税金が定率でかけられるんだからいいんじゃないかというふうな話が来ますけれども、それは、税率の分だけは国に行くかもしれませんが、それ以外のものはその事業者の中に入ってしまう、国に行かない、こういう問題。

 それから、消費税に限らず、租税特別措置法というのがございますが、その租税特別措置法の整備をすることによって財源はかなり出てくると私は思っております。こういうことを先行させていく、その過程で消費税のアップということであれば、私は、別に反対はいたしません。

 そういうことで、今回の社会保障と税の一体改革、この中で消費税というものが前面に出ている以上、その消費税について私なりの考え方というものをここで申し上げさせていただきました。

 これからも中小企業の身になって考えていただいて、税というものの大切さというものを国民に広く理解できるような政策をひとつお願いしたい、このように思って、私の発言を終わります。

 以上でございます。(拍手)

中野座長 ありがとうございました。

 次に、齋藤和衞君、お願いいたします。

齋藤和衞君 私は、福島県民主医療機関連合会、略して民医連と申しますが、事務局長をしております齋藤です。

 民医連は、医療生協や福祉法人の医療・介護事業所が加盟し、福島県内でいいますと常勤職員で一千名が働いております。福祉法人では認可保育所も一部運営しております。医療や福祉は、国民の誰もが健康で文化的な生活を送る上で不可欠のものとして、私たちみずから担い、また制度の充実を訴えてまいりました。

 今般の社会保障と税の一体改革は非常に多岐にわたりますので、私も限られた時間の中でお話しするものですから、ちょっと内容が紋切り型になりますが、御容赦をいただきたいと思います。

 今回の社会保障と税の一体改革は、二月の閣議決定に全体像が示されたように、社会保障財源確保を口実に消費税を引き上げる、引き上げたものを社会保障に回すんだから社会保障はよくなるのかと思えば、そうではなくて、社会保障も削減する、そして、これを効率的に行うために国民を管理する共通番号制を導入するということで、改悪のオンパレードといった状況です。

 地震、津波に加えて原発事故により十六万人も避難生活を余儀なくされ、県内全体に広がった放射線による健康問題に苦しむ福島県民から見れば、復興の妨げになるばかりか、第三の災害、政治災害とでも言うべき事態であると私たちは受けとめております。規制緩和で生じた格差と貧困、こうした政治の転換を国民は求めたわけです。民主党政権はこうした期待に誠実に応えるべきだと私たちは思います。

 まず、子育て新システムですが、重大なことは、児童福祉法二十四条に基づく保育の実施義務が行政になくなると、保護者は自力で探し直接契約する、施設に対する国の最低基準がなくなり規制緩和が進む、保護者の所得にかかわらず負担がふえたり、そのことによってお金で受けられる保育が違ってしまう、そして、経営中心になって職員の雇用も今以上に不安定になるということなどが問題です。そして何よりも、運営主体に株式会社の参入が認められ、配当も、制限があるものの認められるということでございます。

 こうしたことに、多くの保育園運営者や親から不安の声が上がっています。教育や福祉に営利企業を参入させる必要はどこにあるんでしょうか。待機児童問題は、認可保育園を計画的に増設すれば足りたはずです。この十年以上、国は、定員オーバーで入所させることをやりながら、増設そのものは意識的に怠ってきたというのではないでしょうか。

 年金の三法案では、対象の拡大など一部の改善もありますが、物価の下落を根拠に三年間で二・五%も引き下げるという問題があります。消費者物価は必ずしも生活実態を反映しておらず、高齢者の可処分所得は逆に減少していることからも、この引き下げには道理はありません。現に受給している高齢者、今後受ける人々の不安と失望を深くします。低所得者への加算などもありますけれども、これも消費税引き上げが成立しない限り実現できない、こういう代物でございます。

 そして、消費税ですが、パーセンテージは低いという見方もあるかもしれませんけれども、実に倍です。どのような料金だって、数年間のうちに倍になるという話は受け入れられないでしょう。しかも、このデフレ環境下です。福島県の勤労者世帯調査、これは非常に数が少ないんですけれども、三・一五人の世帯で勤労者が一・七四人ぐらい、月収が四十四万九千円という一つの数字がありますが、消費支出が三十万一千円だそうです。ですから、月々一万五千円の新たな負担、年間でいいますと十八万円もの税負担をすることになります。

 普通の所得の人がこうですから、非正規労働者、全国ではもう三分の一にも達するということなんですけれども、二百万円以下の労働者、一千万人います、障害者、年金生活者、一人親世帯、こうした人たちに重くのしかかることは当然でございます。

 こうした法律以外にも、既にこの春からは、後期高齢者医療の保険料が引き上がりました。それから、協会けんぽの健康保険と介護保険も引き上げられました。そして、六月議会では、国民健康保険料と介護保険料も、多くの市町村で引き上げの検討がされると思います。社会保障の負担強化と消費税引き上げ、まさに一体として、連続として行われる、この改悪の姿を既に示しているものと思います。

 実は、福島県でも、税金、保険料の滞納者の対策チームをあちこちの市町村でつくりまして、差し押さえなどをしている。しかも、生活実態やなりわいを無視した取り立てをして生活が行き詰まってしまうという例を聞きます。これは格差是正をマニフェストに掲げた政権党のやることではないというふうに思います。

 また、先ほど来皆さんがおっしゃっているように、税金を実際に納めるのは事業主で、価格に転嫁できない場合が中小企業ほど多いというふうに言われております。税の負担と徴収制度に重大な欠陥をそもそも消費税は持っています。増税されれば払えない、倒産がふえ、ますます経済を冷え込ませることは明らかです。一方、輸出品の場合は原材料仕入れに払った税金を戻すなど、大企業に著しく有利な、不公平な税制であります。

 そして、医療や介護分野で申し上げますと、当然にも患者さんに消費税負担はないので、事業主が全部負担をします。医薬品、材料、その他一般経費は最終消費者として払い、医療内容にもよるんですけれども、収益比率で一・五%にもこの消費税負担が及びます。今、医療機関は、小泉構造改革によります医療費削減の影響から回復できていません。増税されれば、そのまま赤字に苦しむ医療機関をさらに追いやることになります。

 消費税増税分を社会保障に回すなどと盛んに言われていますが、そもそも、社会保障の財源として、消費税はその逆進性からも最もふさわしくない財源です。消費税の範囲内でしか社会保障を行わないという、社会保障を相互扶助に変質させるような意図が見えてなりません。

 今回の十三・五兆円の増税で、実際には社会保障財源に回るのは六・五兆円のみで、残りは財政赤字の穴埋めや大企業の減税に使われてしまうことになります。この消費税導入後二十二年の間の累積増税額二百三十八兆円に対し、法人税への減税が二百二十三兆円ですから、このおそれは十分にあると考えます。

 あえて言うならば、消費税を五%に引き上げた以降、十年間に新たに大企業が積み上げた内部留保は二百六十六兆円といいますから、驚きます。この財政危機の打開の財源をどこに求めるべきか、如実に示していると思います。

 最後に、国民共通番号制についてですが、医療や介護の情報を提供する側が共有化する、消費税の逆進性緩和のために低所得者への給付などを理由に挙げていますが、プライバシーの侵害が極めて大きな問題です。健康情報まで国家が管理するという事態になり、マイナンバー証は国内パスポートのごとく携帯を強制されかねません。システム構築、維持管理費は膨大なるものになるはずです。

 負担と給付を個人単位にまで集計し、社会保障を限りなく保険に変える狙いを持って社会保障費抑制と消費税増税を進めるためのこの共通番号制は、提案から削除することを強く求めたいと思います。

 今回の震災で、自治体の機能と社会保障制度のありようが被害と復興を左右している、これを痛切に感じています。これ以上の格差と貧困を国みずからがつくるようなことはせず、被災三県の復興に資するような施策を切に望みます。

 以上です。(拍手)

中野座長 ありがとうございました。

 次に、金澤幸夫君にお願いいたします。

金澤幸夫君 南相馬市立総合病院の院長をしています金澤と言います。

 このような機会を与えていただいた皆様に感謝申し上げます。

 私は医師なので、政治、行政に詳しくありませんので、被災地の現況と医療の問題について述べたいと思います。

 昨年三月十一日に起きた東日本大震災で、南相馬市では六百三十一名の方が亡くなっており、さらに、東電第一原発事故で屋内退避、緊急時避難準備区域に指定されておりまして、南相馬市の人口は七万から一時期一万に減少しています。これらの指定は去年の九月に解除されていますけれども、現在でも南相馬市の人口は四万五千で、二万五千人はまだ避難を続けています。

 皆様のお手元の資料一が、三月十一日、震災のときと比べて現在どうなっているかという年齢別の居住者数、資料二はそれをグラフにしたものです。

 わかることは、震災前と比べて、ゼロから四歳児では二四%、五歳から九歳では三四%と、低い居住率になっています。二十五歳から三十四歳では五〇%を切る居住率です。このことから、小さなお子さんを持つ若い夫婦が避難していることがわかります。また、六十五歳以上の高齢者は三二%で、震災前の二六%より六%ふえ、超高齢社会になっています。震災がなければ二十年後に見られた状態です。南相馬市の人口、このままの状態でいくと百年後にはゼロになるそうです。

 このような状況下で、南相馬市としての最重要課題は、避難している次世代を担う若い世代が戻れる環境をつくることだと考えます。そのためには、除染などによる放射線被曝の低減は当然ながら、市民が安心して生活できる雇用の確保、生活インフラの整備、そして教育、医療、福祉の充実など全てが必要で、どの一項目が欠けても南相馬市の復興は成らないと考えます。

 市民の多くが従事していた農業は壊滅的で、新たな産業、手法を変えた農業の創設が必要と考えます。また、セシウムが降り積もった南相馬市を一旦出てわざわざ帰ってくるためには、南相馬市に住むメリット、インセンティブが必要と考えます。具体的には、税、医療費の優遇、子育ての支援などが考えられますが、御検討をお願いいたします。

 また、市民が安心して暮らす、または南相馬市に戻ってくるためには、医療の充実も必要です。私どもは、公的病院として行う業務として、二次救急までの救急医療、小児科、産婦人科診療の整備、仮設で暮らす住民の健康管理、内部被曝検診での市民の健康管理を考えています。

 相双地区は震災前より医師不足は深刻で、資料の三に、平成十八年のものですけれども、十万人当たりの医師数が載っています。住民十万人当たりの医師数ですが、全国平均二百六人のところ、相双地区、原発のあるところから相馬、新地までのところを相双地区といいますけれども、百十人でした。

 資料の四を見てください。南相馬市の緊急時避難準備区域に指定された地域の医師、看護師の推移を示しました。震災前と震災後の今年一月十日現在を比較しますと、医師が四十八から二十八に減少、五八%、看護師が四百六十四から二百三十七人、五一%、半分に減少しています。また、入院許可病床は、千四十六床ありましたが、実際稼働しているのは三百三十三床、三二%です。

 資料五を見てください。これは、私たちの病院の医療スタッフ数の推移をまとめたものです。常勤医は震災前十四から四に減少、福島医大、あと厚労省の方の支援もあって、現在十四人で震災前に戻っていますが、小児科、産科医はいずれも一人体制です。

 福島県では、医師の絶対数が六百名足りないと言われています。小児科、産科医も少なくて、県外からの医師の確保が必要だと考えています。

 看護師数ですが、震災前にはまだ戻っておりませんで、四病棟中三病棟で運営していて、一病棟はあけられない状態です。市内の病院でも看護師不足が一番問題になっています。医師は入ってこられるんですけれども、放射能汚染のあるところに県外から看護婦さんが入るというのはかなりハードルが高いので、何か方法がないか御検討を願いたいと思います。

 あともう一つ、自分たちの病院の特徴ですけれども、広野から新地まで広い細長い相双地区ですけれども、脳外科の入院治療ができるのは私たちのところだけです。脳卒中センター構想がありまして、補助金もつくような話なんですけれども、援助、協力をよろしくお願いいたします。

 資料六、七をごらんください。南相馬市内の仮設住宅に五千二百二十八名の方が入居されております。多くは農業をされていた方で、稲作はできず、また畑で作物をつくることもできない状態です。心配されることは、運動不足で高血圧、高脂血症、糖尿病などの慢性疾患の悪化です。ことしの四月から在宅診療部を設け、家族離散で病院までの交通手段のない方や仮設居住の市民の健康管理、往診を行っています。

 南相馬市の仮設居住者の多くは、二十キロ圏内の小高区の人たちです。四月十六日から自由に入れるようになっていますけれども、まだインフラの整備、除染等が進まなくて、多分、秋ごろかといううわさですけれども、帰りたい人もたくさんいるんです。早期にこれらが進むように、南相馬市へ国としての支援をよろしくお願いいたします。

 あともう一点ですけれども、震災後の昨年七月十一日から、ホール・ボディー・カウンターによる、以下WBCと話しますけれども、検診を行ってきました。

 資料の八、九をごらんください。昨年九月二十六日から開始された、キャンベラ社製WBCを用いた十二月までの内部被曝の検診結果です。小中生、高校生以上、いずれも約四割でセシウムが検出されています。

 ただ、資料十を見ていただくとわかるのですけれども、チェルノブイリ原発事故後五年から十年後、やはりお子さんです、十二万ぐらいのWBC検診結果を比較するものとして出していますけれども、これと比べると南相馬市民の被曝量は軽微なものだと考えられます。

 資料十一をごらんください。月別の検出率を示しましたが、今年に入り検出者は減少し、小中生の九九%は検出限界以下で、両親が食べ物にすごく気をつけていることがこの結果になっていると思います。

 ただ、成人では一〇%の人で検出されていまして、また検出値高値で再検を行った百九名中二名では増加しており、また下がりの悪い方も見られており、食べ物との関係が疑われます。必ずしも健康被害を起こすというわけではないのですけれども、自分は明らかに高い人からやり終わった後にお話を聞くんですけれども、畑で野菜をつくっているという人がやはり多いように思います。

 現在は急性被曝はなくて、今後は食物からのセシウム摂取による内部被曝が問題となります。チェルノブイリ原発事故から二十六年経過していますけれども、ウクライナでは、いまだに食べ物の放射能測定、ホール・ボディー・カウンター検診が行われています。私どもも今後何十年にもわたりWBC検診を行い、無駄な内部被曝を避けたいと思っています。

 問題は、ホール・ボディー・カウンター検診にお金がついていないことです。保険点数のようなものをつけていただければ、財政的な支援があれば続けられると思うんです。セシウム137の半減期は三十年ですから、長いスパンで戦わなくちゃいけないかなと今思っています。よろしくお願いいたします。

 以上です。(拍手)

中野座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

中野座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田嶋要君。

田嶋(要)委員 民主党の田嶋要と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 お話を皆様からお伺いしておりまして、やはり、福島の特別な事情をいろいろと頭に置いて、この改革のことを進めていかなければならないと改めて痛感いたしました。

 私ごとでございますが、去年の今ごろは、現地の本部長として、この地に三カ月駐在をしてございました。そういう思いも重ね合わせて、今いただいた御意見をお伺いする中で、まず最初に御質問させていただきたいのは、消費税、どうしてもやらなければいけない引き上げであるとしても、この福島の状況、まさに復興のステージにすら入れていないという轡田さんからのお話もございましたが、であれば、何か具体的に、こういうような配慮はできないかという具体的な御提案があれば、きょうはいただきたいと思います。

 先週の私どもの委員会で、自民党の谷先生だったと思いますけれども、住宅に関する御提言もございました。まさしく復興は衣食住から始まっていくわけですが、これからそういう意味では住宅ということも大変大きな要素になってこようかというふうに思ってございますが、世界のほかの国々を見ますと、新築の上物に消費税をかけていない、そういう国も多いわけでございます。

 もし御意見がございましたら、これは轡田さんから反対という御意見をいただきましたので、まず轡田さん、それから鈴木市長の方にお伺いしたいと思います。

轡田倉治君 今、田嶋先生からお話ありました復興復旧の件ですが、今先生が言われたのは全くそのとおりなんですね。これから復旧復興していくためには、特に住宅建築関係があるわけです。これについて、例えば、物を千円、二千円で買うものの五%、一〇%はさほどじゃないわけです。住宅建築となると千万単位ですよ。それが五%上がるということになると、これはえらいことになるわけですね。結局、消費税が上がるということは一緒ですから、やはりそういうことも念頭に置いてやっていただかないと、福島県の復旧復興は果たしてどうなるのかなという、そんな考えを私は持っております。

 先ほど来私がお話ししているのは、特に県内の業者さんは、中企業というよりも小規模零細なんです。家族企業、あるいは従業員がせいぜい十名か二十名手前ぐらいの企業がほとんどなんですね。ですから、そういう企業に対しての消費税というのは、先ほど私が申し上げたとおり、非常に厳しい状況になってくるということですので、その辺を考えながら、私も、社会保障・税一体改革、まるきりの反対ではないです。いずれはやらなくちゃならない。私も社会保障をされている方ですから、ぜひその辺も考えていただかないと。今それをやるべきなのかなというのが私の疑問です。

 以上です。

鈴木和夫君 ちょっと議論がずれているかもしれませんが、消費税の中で、今言った福島県に対する被災のバックアップというのはなかなか難しいと思います。もし消費税の増税というものを時間軸でやるのであれば、福島県の復興を考えるときに、今も話がありましたが、私は去年からずっと主張しているのは、雇用の場が完全に失われたんです。双葉地方は八万の人がいますが、一万五千の人は大体、東京電力関連で食べているわけですよ。この方の職が完全に失われたということ。これは、どこでその分のカバーをするんだろうか。

 福島県には企業立地補助金というもので特別な扱いをされて一千六百億ほどのものが出ましたが、足らなくて、さらに一千億ほど不足しているんですね。これは今、知事初め、補助金の増額を要望しておりますが。

 そういう立地補助金のことは別に置いて、例えば、今の税で、消費税は消費税で、では上げると。ならば、一方で例えば法人事業税を思い切って減免するとか、法人税を減免するとか、固定資産税を減免するとか、同時にやらなきゃだめだと思います。消費税は特定の業種はなかなかできないでしょうから、福島県だけに限って言えば、そういった福島県再生特別法という法律がありますが、しかし、税のことは余りうたわれていないので、その中で今言った法人、産業に資するような、生活に資するようなものを同時並行的に進めることも、私は一つの方策ではなかろうかと。

 福島県だけは特別ですからね、これは。私は被害者意識を持っているから言うわけじゃなくて、福島県だけはほかの県とは被災の状況が質的に全く違いますので、それはちゃんと先生方は去年、十分御存じでありますので、そこのところは、やはり福島県に向けた復興策としては、税を使うのであれば、今言った法人事業税、法人税等の減免、それを地方交付税でバックして補う、こういうことの方策がセットで必要になる、こう思っております。

田嶋(要)委員 どうもありがとうございます。

 原発関係の雇用が多く失われているという現実も本当に私たちは直視をしなければいけませんし、先週の安住大臣の答弁でも、消費税相当、何らかの対策検討という御発言もございましたので、ぜひともそれは取り組まなければいけない問題だというふうに私自身も認識をいたしております。

 続きまして、複数の方から消費税の転嫁のお話、御指摘が出ました。これも東京でも議論も出ておるわけでございますが、本当に悩ましい問題だと思います。そもそも論を言い出すと、導入期からこの問題はあるわけでございまして、今回だけの問題ではないわけでございますけれども、私も党の方でこの問題をずっと議論してまいりましたが、これぞという解決策がなかなかないのではないかなというふうに思っております。

 そこで、一つ、瀬谷さんの方と轡田さんの方にお伺いしたいと思いますが、少し言葉としても先ほど出ましたインボイスのことでございます。

 これは、今回はインボイスというのは採用されないということで今進んでおるわけでございますが、転嫁の議論をしておると、やはりインボイスをやるしかいい方法はないんだみたいな声がかなり出るんですが、一方で、企業経営者、中小零細企業を含め、圧倒的に反対というような声もよく聞くわけでございます。

 しかし、よく考えてみますと、ほかの国々、これはもう世界じゅう、日本以外の国でインボイスを導入していない国はほとんどないというふうに伺ってございますし、それと加えて税率を言うならば、大体の国はいきなり一〇%の導入でございます。お隣の韓国も、日本よりもうんと早い時期に、いきなり最初から一〇%の消費税導入でございました。

 そういうことを考えたときに、やはり、今回やるかどうかはともかく、このインボイスということは考えていかなきゃいけないのかなと私自身も思っているわけでございますが、反対ということであればそれでも構いませんけれども、瀬谷さんと金田さんから御意見を賜りたいと思います。

瀬谷俊雄君 お答えいたします。

 このインボイスという問題は、なかなか悩ましい問題でございまして、一つ、事業者側から言わせますと非常に煩雑であるという問題もありますし、それから、端的に言ってしまえば、余り自分のところの内容をどうこうという問題も、これはおありになるでしょう。

 ただ、これは、今先生がおっしゃったように、初め、どの段階の税率からスタートするかという問題でございまして、日本は非常にモデレートなところからスタートしたものですから、当初、インボイスは問題にならなかった。恐らく、今いろいろ御議論はありますけれども、一〇%ぐらいだったら私は必要ないと思う。強行して大丈夫だと私は思います。

 それがもうちょっと段階的に上がっていきまして、例えば二〇%ぐらいまで行きますと、そのとき改めて税率の複線化という問題が俎上に上りますし、そうなりますれば、商工業界の方としても事務的な煩雑さと言っておられませんので、おのずとインボイスは導入されるのではないか、そのように思っております。

 以上でございます。

金田宗君 ただいま、インボイスの話とありました。

 私は、どちらかといえば、このインボイスの方に賛成なんです。

 というのは、今、消費税の計算は帳簿方式というのでやっております。帳簿方式というのは、売り上げでいただいた消費税と自分たちが支払った消費税の差額を納めるというやり方でございますね。それが帳簿方式なんです。

 インボイス方式というのは、最初の、品物が出た時点で、その品物に最初からついてくる消費税そのものがずっと最後まで行くというやり方だと思っています。ですから、この商品は、製造の段階から卸売の段階、小売の段階に行くまで、消費税は同じ金額がついていく、こういうやり方ではないかと私は思っているんですが、そうすれば、ああ、この部分は消費税は別だということがはっきりしてくると思います。その分だけ納税すればいいんだなという形をとればいいのかな。そういうことからいきますと、消費税の益税がなくなってくる、このように思います。

 ですから、益税対策、益税に課税するという形、これが今の消費税法ではどうしても出てくるんですね。簡易課税という方式でございますから。

 その簡易課税の方式ですと、原価率が各業種、業態によって変わってまいります。第一種から第五種までございます。第一種が九〇%の原価率、それから小売が八〇%、こういうふうにいきますと、例えば私らの業種の場合ですと、第五種なんでございます。第五種の業種というのは原価率五〇%なんです。

 ところが、収入一千万に対して五百万円の経費、消費税のかかる支出があるかというと、ないんです、実際は。どのくらいかといいますと、消費税のかかる分については三割から四割ぐらいしかないんです、はっきり言いまして。そのために、五〇%の仕入れ税額控除をやっていただきますので、何%かは残るわけですね。これが益税なんですよ。

 益税に対して税率、法人税とか所得税がかかるといっても、その税の種類の税率分だけしか国に返ってきませんね。だから、その辺で益税がかなりある。この辺の訂正をすれば、必ず、もう少し税収が上がるのではないかなというふうに考えております。

 以上でございます。

田嶋(要)委員 どうもありがとうございます。益税と損税のはざまで、本当に最善の努力をしたいと私も思っております。

 それでは、時間がございませんので、最後に齋藤さんに一問お伺いいたしますが、よろしゅうございますか。

 先ほど、保育の関係で、株式会社の御指摘がございました。旧政権以来、株式会社は保育に既に参入をしているという状況がございますが、今回、この総合こども園で改めてそのことに御反対をされているというのは、若干、今既に行われているそのものを否定されているのかな、どうかなという気もします。

 それと同時に、また、ある大学の先生の分析結果によりますと、いわゆる効率性は格段に上がり、かつクオリティー、質の部分に関しては全く犠牲になっていない、そういう調査結果も出てございます。それは一結果でございますけれども、そういうところから、試行錯誤は伴いますが、やはり引き続きトライしていくメリットが大きいのかなと私自身は思っておりますけれども、いかがでしょうか。

中野座長 齋藤和衞君。残念ながら、時間が三十秒ほどしかありません。

齋藤和衞君 はい。

 同様の趣旨で、介護保険制度も十年前に始まったように私は思います。

 しかしながら、介護保険制度で、皆さん、まだ記憶にありますでしょうか、大手の株式会社が不正を起こしました。それ以降、物すごく行政の側からいわば取り締まり的に監督をしてきたという歴史があります。現場から見れば、本当に過剰なまでの指導が来ております。結局のところ、利益を出さなくてはならない企業が事業をやる以上、こういった問題が必ず起きるというふうに私は思っております。

 現行のいろいろな株式会社さんは日本で支配的なわけですから、一〇〇%みんな不正をやっているなんということはありませんけれども、そういうふうなことは一切ありませんけれども、しかし、利益を求める以上、そういう問題が発生するということは明らかだというふうに私らは思っております。

田嶋(要)委員 ありがとうございました。

中野座長 ありがとうございました。

 次に、岸本周平君。

岸本委員 民主党の岸本周平でございます。よろしくお願い申し上げます。

 本日は、本当に御協力をいただきましてありがとうございました。お話を伺っておりまして、福島の事情もよくわかりましたし、それから、総論としては、私どもが委員会で議論している論点がほとんど出たように思いました。

 その中で、例えば、消費税の前にやるべきことがあるんじゃないかと。おっしゃるとおりだろうと思います。それからまた、国債は日本の場合は九五%は国民が持っているんだけれども、先物取引の場合は大体三割から四割が外国人の投資家が商いをされておられて、瀬谷さんがおっしゃるように、もしヘッジファンドと格付機関がぐるになって、市場に対して攻撃をしかけるような場合が、本当にもう目の前に危機があるような状況かもしれません。それもそのとおりかもしれません。

 そういう意味で、私どもも、本当にそれぞれの御主張に一理がありまして、そうだよなと思いながら、しかし、孫や子供にツケを回すわけにもいきませんので、何とか決められる政治をしたいと思って悩んでおるわけでございます。

 総論は大体出尽くしたということで、少し細かい点について御質問をしたいと思います。

 まず、連合の今泉さんと、瀬谷さんにお聞きしたいんですが、特に瀬谷さんは年金の方は政府の提案に御賛成ということですので、少し税金の話を瀬谷さんにもお聞きしたいと思います。

 いわゆる低所得者の方に対する手当てとして、やり方が二つありまして、一つは軽減税率、複数税率で手当てをしたらどうかという考え方と、あるいは、それだとお金持ちの方も食費にはたくさんお金を使いますので、結構お金持ちの人が買ってしまうということですから、給付つきの税額控除で、所得の低い方に目がけてお返しをしてはどうかという二つの考え方があるんですけれども、この考え方について、今泉さんと瀬谷さんのお考えを少しお聞かせ願えればと存じます。

今泉裕君 私どもとしましては、やはり今の、特に就職氷河世代と言われる三十歳ぐらいまでの世代の数、そして所得感、あるいは、その後の中間世代での職を失った世代、高齢者世代というところでの、イレギュラーな雇用世代ということで表現しますと、やはり税金の問題につきましては、給付つきということでの、リターンという表現がいいかどうかわかりませんが、それは現状に合致した内容であるというふうに思っております。

 以上です。

瀬谷俊雄君 今先生のおっしゃった給付というのは、いわば事後的に給付されるという意味でございますね。(岸本委員「そういうことでございます」と呼ぶ)それでよろしいんですよ。

 税は非常に普遍的であるということが大原則なんですよ。そこのところで変えちゃうと大変なことになる。これはやっちゃいけない。そのかわり、今言ったイレギュラーなそういうことが後にはね返ってくる場合は、その分だけ給付を、何らかの意味で緩和する措置をとればいい。

 以上でございます。

岸本委員 ありがとうございます。

 それでは、もう一つ、先ほど金田先生からもお話がありました益税の問題が出されたわけですけれども、これも本当にいろいろな議論があります。

 簡易課税とそれから免税点の問題がございまして、今、免税点は一千万円なんですけれども、これも、ある意味、免税点以下の方にも益税という問題が出てくるだろうと思います。これは私どもはミニ集会でよく有権者の方からお聞きするわけで、何とかそれを直せと。簡易課税については、今、金田先生の御説明、ちょっと合理的な思いもいたしましたが、逆に今度は、零細な事業者の方が本当に細かい事務の作業をしていくのが大変だねということで、簡易課税と免税点が設けられたわけです。

 実は、私、平成元年の導入のときに主税局で課長補佐をしておりまして、担当しておりましたものですから大変悩みまして、伊吹筆頭理事は大先輩でございまして、当時、既に党税調におられたことと存じますが。そういう意味で、これは、先ほど口火を切っていただきました金田先生と、轡田さんに中小零細の代表として、お二人からもう一度、簡易課税と免税点のあり方について、御意見をぜひ頂戴したいと存じます。轡田先生から。

轡田倉治君 実は、免税点、今、一千万ですよね、以前は三千万。我々商工会としましては、三千万に戻してくれというのが要望なんです、逆に。そういうことなんですよ。

 それから、簡易課税も、これは幾らでしたか、年収五千万。これはひとつやむを得ないのかなと思うんですが、非常に我々も頭の痛いところで、やはり会員さんあっての商工会ですので、会員さんから責められれば、そういうことを我々は要望していかなくてはならないというのが正直なところです。

 ですから、やはり、それこそ小規模零細企業ですから、結局、複雑な事務、これが嫌なわけだ。嫌というよりも、できないんですよ。それを先生みたいな方にお願いすると、お金がかかるわけです、はっきり言いますけれども。その負担が難しいということを言っているわけです。そういうことです。

中野座長 率直なお答えをありがとうございます。

 続いて、金田宗君。

金田宗君 ただいまいろいろな話がございましたけれども、私としましては、簡易課税の業種分類といいますか、第一種から第五種までございますから、それをもう少し細かく分けてみたらどうかなという考え方でございます。そうしますと、もう少し現実的な計算が出てくるんじゃないかなというふうに思います。

 五千万円というふうに上限がありますが、簡易課税はもう少し下げてもいいと思います、三千万ぐらいまで。それ以上になると原則計算。これは必ず、何といいますか、原則計算ですから、仮受け消費税から仮払い消費税をマイナスしたものという形になってまいりますので。

 大体、消費税について、私は、益税があったり不公平があったりするのはだめじゃないか、申しわけない、これはまずいんじゃないかなというふうに考えております。ですから、簡易課税の業種分類をもう少し細かく分けていくこと。

 それから、第四種、第五種となってきますけれども、何かそこら辺で、どちらに該当するのかなという判断がつかないのがございます。そういう場合には、第五種の方でやっちまえというような形になってしまうのが多いんですが、それではまずいと思いますので、具体的な業種をもう少し明らかにした方がよろしいのかな、このように思います。

 それから、免税点につきましては、収入一千万以下の方は、仮受け消費税があっても納税する義務がないという形になってまいります。これも一つの問題ではあるんですが、そもそも一番最初に消費税ができたときに、収入が一千万ない人も一千万以上ある人も消費税は全部取りなさいという、何か政府の方の指導がありましたね。そういう形で、一千万以下の人は、いや、うちでも消費税は取っていないからいいやという感じではなくなって、一千万でも以下でも全部取ってしまえ、もらってしまえ、そういうふうな形になってしまいましたので、そこで一千万という数字を設けるのがどうかなということはありました。

 だけれども、余りにも、一千万以下、三百万、四百万ぐらいの年収の方も消費税を納めるとなると大変だと思います。しかも、簡易課税だとしますと、必ず消費税を納めるという形に計算されてきますので。だから、一千万については、私はこれは現在ではやむを得ないと思います。

 以上でございます。

岸本委員 どうもありがとうございました。具体的で、かつ率直な御意見をありがとうございます。

 それでは、きょうは齋藤さんと金澤さんは医療の代表ということでおいでいただいていますので、ちょっと税金の話で申しわけないのですが、今、医療は非課税になっております。これは平成元年の導入時の経緯もありまして非課税になっておりますが、逆に、現時点で、病院経営者の方、あるいはお医者様からは、課税にしてもらえないだろうかと。つまり、仕入れ税額が控除できないものですから、建前上診療報酬に入っているとはいうものの、もう随分たつものですから、できれば課税にしてほしいという御意見もあるわけなんですけれども、この点について、齋藤さん、金澤さん、もし御意見があれば、お聞かせ願えればと存じます。

齋藤和衞君 課税扱いにしろという要望とセットになっているのは、いわゆるゼロ税率にしてほしいと。そのことによっていわゆる仕入れにかかった税金が控除できるという発想でありますので、その意味では、医療機関の実際に負担する分は軽減されるということは間違いはないと思います。それ以上でも以下でもないかなというふうに思います。

 いつの日か、ゼロ税率が患者たるいわば消費者にも負担が行くということの導入になるのであれば、それは我々としては反対しますけれども、今、ゼロ税率適用ということにだけ限れば、賛成はできるかなというふうには思います。

金澤幸夫君 済みません、不案内でよくわからないのですけれども、税金はかかっていますよね、消費税。かかっていないんでしょうか。(岸本委員「自由診療はかかっていますけれども、保険診療は課税ではない」と呼ぶ)診療。でも、購入するものに関しては……(岸本委員「購入するものにはかかっています。ですから、税額控除ができないので」と呼ぶ)診療の部分ですか。(岸本委員「はい」と呼ぶ)

 申しわけありません、わかりません。

岸本委員 ありがとうございます。

 それでは、最後になりますけれども、古渡さんに御質問したいと思います。

 大変、ポンチ絵を使っていただいて、わかりやすい説明をありがとうございました。

 私も和歌山という田舎に住んでおりまして、和歌山ですと、実は待機児童というのはいないという前提でありますが、福島の方でも待機児童さんはそんなにいらっしゃらないのではないかと思うんですけれども、そういう地域を分けたような考え方をもう少し政府の方でも議論すべきではないかというような御意見があるんですが、その辺、福島の地域事情を含めた御意見があれば、お聞かせ願えればと思います。

古渡一秀君 福島県における待機児童といいますのは、先ほどお話ししましたように、福島市、郡山市、または、もしかするといわきの方も若干あると思いますけれども、先ほど言いましたように、基本的に、若い世代の人たちが今主体になっていると思います。そういう観点では、幼稚園におけるニーズと保育所におけるニーズは完全に逆転が始まったということが一つ言えます。簡単に言えば、保育所志向が非常に高くなったということだと思っております。

 以上です。

岸本委員 以上で終わります。

中野座長 次に、田村憲久君。

田村(憲)委員 自由民主党の田村憲久でございます。

 本日は、大変貴重な御意見、まことにありがとうございました。

 私は、まず、そもそも論をお聞きさせていただきたいと思います。皆様方の御意見をお聞かせいただいておりまして、消費税に関しては賛否ございました。しかし、社会保障の改革に関しては、それがいいか悪いかという評価はありましたけれども、これはやらなきゃならないと。そういう意味で、一体改革というと、これは消費税を上げるのとセットでありますから、消費税を上げざるを得ないというような、そんな雰囲気になってくるんですが。

 そもそも、今回のこの特別委員会で議論をしております社会保障分野の法律を見ますと、子ども・子育て、少子化対策は柱として一つあります。しかし、ほかは年金の法律しか出てきていないということでございまして、しかも、中身は二分の一国庫負担、基礎年金の部分でございますけれども、これももともと、我々自民党、公明党のときに打ち出した話。それから、被用者年金の一元化も、対象の範囲に関して若干違いはありますけれども、これも実は自公政権が打ち出した話でありますし、また、非正規労働者の方々の社会保険の適用の拡大というものも同じような話であります。

 こういうことを考えますと、一方で我々が余り賛同していない低所得者の年金の上乗せという部分はありますけれども、どうも医療、介護という大所が抜け落ちておるわけでございまして、特に介護保険は、スタート、導入時から、もう既に大きさは倍に広がってきております。対象者もやはり倍になってきておる。保険料を見ますと、介護の保険料が一番これからの伸びが激しいわけでございますから、持続可能性を考えれば、やはり介護の改革、そして医療の改革というものがここに入っていないと、我々は一体改革だというふうには思えないわけでございます。

 そういう意味からいたしまして、そもそも論として、今回のこの一体改革というものをどう御評価いただいておるのか、鈴木市長と瀬谷さんにお聞かせをいただきたいと思います。

鈴木和夫君 冒頭私が言いましたように、社会保障の必要性、財政健全化の必要性はまさしく待ったなしの話だと思いますが、この話が、いろいろな捉え方があると思いますが、私は、どうしても税を上げなきゃならないというのが先にあるのではないかということなんですね。多分それは、一体改革なんですけれども、やはり税を上げざるを得ないというところから、当然不足するのは、社会保障費が毎年一兆円ずつ出てくるということの現実があるわけでありますので。それはそれとして、私はあえて否定はしませんが。ただ、田村議員がおっしゃったように、前の自民党案と民主党案と、さほどの違いはないんですよ。大きな違い、基本的な考え方の違いはないんだと思うんですね。

 私らは今、自治体の長として、まさしく田村委員から話があった介護保険、白河も介護保険料がこの四月から一気に千五百円ぐらい上がって、五千円を突破しました。いろいろな特老とかそういう施設をつくれば、当然これは上がるわけですね。これは、もっともっとこれから上がらざるを得ないんです。そこのところにやはり公的部分をしっかり入れないといけないというのと、あとは、施設だけつくればいいのかという問題もあるわけです。

 今話がありましたので、介護の問題については、もうちょっとやはりきめ細かな議論をしてもらいたいというふうに思います。確かに今、今回の評価するところは、子育て論、これは明確に出てきました。これは私は評価いたしますが、介護、医療、特に介護の部分について、しっかりとした議論をもう少し積んでほしい。

 それから、国民健康保険税はもう事実、破綻していますからね。これは市町村レベルでやる話じゃないですよ。広域連合みたいなものをつくらなければ、人口四千、五千の村で、自治体で国民健康保険なんか維持できないということも含めて、それも含めて、やはりもうちょっときめ細かな、これは政策論というよりかはテクニカルな議論かもしれませんが、その議論をしてもらいたいというふうに思います。

瀬谷俊雄君 私は、結論から申しまして、今回の社会保障の一体改革にかなり高い評価をしております。

 もちろん、おっしゃるように、介護というところで少し抜け落ちている点があるかもしれませんけれども、これはこれとして、国際比較等はしたことがないのでございますけれども、例えばヨーロッパやアメリカあたりのそういう、社会保障といいましょうか、こういうものと比較した場合に恐らく遜色のない、第一級のシステムではないか、こう思っております。

 それで、どうしても、それをサステーナブル、つまり持続可能にするためにお金が要るんだ、これはこれで本当にわかるのでございますけれども、よく皆様はこういうことを言うんですよ。増税するなら、その前にやることがいっぱいあるじゃないか、例えば無駄、無理を排除すればいいと。みんなそう言うよ。あともう一つは、積極的な成長戦略をとるべきだと。あったら示してほしいね。もう十年来、そういうことを言って、何もできてこないわけでございますよ。

 だから、例えば、今の政権におかれましても、十兆ぐらいは簡単に、予算の組み替えとか何かによって出てくると、どなたかがおっしゃっていましたが、そんなことは毛頭ないはずだ。やはりそれは、国だってちゃんとそれで予算要求をして、執行して、それについては会計検査院がきちっと締めておりますし、またいろいろな世論の批判にさらされたわけですから、それはちょっとおかしい話だと思う。結局、だんだんだんだんここまでせっぱ詰まってきて、最後にこの消費税にたどり着いたというのが私の感想でございます。

 だから、社会保障の一体改革全体として評価すれば、もちろんそれは自民党さん時代にも幾つか芽があったし、民主党に行って、ある種の加速をしたかもしれないけれども、全体としては十分容認できる内容ではないか、私はこう思っております。

 以上でございます。

田村(憲)委員 ありがとうございました。

 私が御意見をお伺いしたかったのは、実は、今の医療保険にしましても、介護保険にしましても、制度自体はもうつくられておるわけでありますが、問題は、保険料の伸びというものが急激でございまして、保険者は大変、もちろん被保険者の方々も大変ということであります。それをある程度抑えていくような仕組みをつくり上げた上で、それと消費税との関係をどう明確にするかということがあれば、生活者の方々も、消費税は一方で上がるけれども、一方では保険料はこれぐらいでおさまるんだというような安心感が与えられるのではないかと。しかし、それがないものでありますから、どうも国民の皆様方が、消費税だけ上げるんじゃないのというような、そういう感覚を持っておられるのじゃないのかなということで、実は御意見をお伺いしたかったわけでございます。

 それでは、次に移ります。

 唯一ある年金の部分なんですけれども、これは今泉さんにお聞きしたいんですが、いろいろと御評価される部分、それから今回の改正案の中で正していかなきゃいけない部分があられるというふうにお話をされましたが、そもそも民主党の年金案というのは全く違うわけでございまして、例の最低保障年金とそれから一元化、全ての被保険者が一元化になる、そういうような制度であったわけでありますが、今回、そういうものは全く出てこずに、いまだに議論の俎上にさえ上っていないわけでありまして、そんな中で、我々自公政権のときにやっておった今の現行制度を直すような制度に結果的にはなっておるわけであります。これに対して、どのような評価をなされておられますか。

今泉裕君 評価という意見になるかどうかわかりませんが。

 私たち連合としましては、以前から、将来の年金制度はどうあるべきなのかという長い議論があったわけなんです。先ほども申し上げましたように、年金制度というものをやはり一元化して、そして高齢社会での、特に地方なんかでは問題になっている、老老間格差の問題とかいろいろあります、もちろん非正規がふえているというところもあります、年金の支払いもできないという方もたくさんいらっしゃるということで、十年間、随分変わってきたということがありますので。おおむね連合が考えてきた年金制度というのは、今の民主党の年金制度と、全て一緒だとは言いませんけれども、非常に似ているという部分で一定の評価はしているという考えはあります。

田村(憲)委員 今改正に関しての評価というのは、その過渡期の部分だという評価だということでいいんでしょうか。

今泉裕君 そうですね。

田村(憲)委員 ありがとうございました。

 それでは、続きまして、古渡さんにお伺いをいたしたいんですが、認定こども園という制度がスタートして、もうやがて五年近くたってくるわけでありますけれども、一定の評価はいただいております。しかし、今おっしゃられましたとおり、使い勝手が悪いという話はあるんだと思います。

 しかし一方で、総合こども園という今回の政府の提案でありますが、我々は、全ての幼稚園、保育園が一緒の方向に進む必要はないのではないかと。その中で、総合こども園といいますか、今の認定こども園になりたいところはなっていただければいい話であって、それが、今なるのが難しいでありますとか、なった後、省庁間で所管が違っていて面倒くさい、お金がちゃんと一つのところから出ていないとか、そういう問題を改正した方がより現実的であって、全ての制度を変えることによって現場も大変な混乱が生まれてくるのではないか、こういうふうに理解をいたしておるわけでありますけれども、その点に関してはどのようにお考えでしょうか。

古渡一秀君 まず最初に、私がちょっと表で出しました、福島県のこの一年間の人口推移、年少人口のがあったと思うんですけれども、まず一つは、これだけの人口がたった一年で五年以上進んでしまうと、実は、今、福島県は私立幼稚園が百四十六あるんですけれども、あと三年後に、多分、八十くらいに減ってしまいます。まずそれが一つ。

 もう一つは、例えば、地方の場合は人口減少というのが明確だと思うんですけれども、まず、保育所ニーズが逆に非常に高まってきているというのが先ほどの調査でもあったように、今度は逆に、保育所における子供の処遇問題が、大変なことがだんだん起きてくるというのが一つ。これで二つですね。

 もう一つは、地域のことがあったと思うんですけれども、地域全体の中でやはりきちんと見ないと、もう対応できないということになっています。

 先ほど先生がお話しになったように、現行制度をもっとよくした方がいいんじゃないかという考え方ですね。でも、多分、無理だと思います。何でかというと、まず、市町村がきちっとその対応ができない。市町村が、子供たちのための仕組みづくり、ネットワークにしてもそうですけれども、一元化されていないものですから、なかなかうまくいかないというのがあると思います。もう一つは、先生のお話でいうと、多分、認定こども園法をもう少しうまくして財政面をという観点だと思いますけれども、そうしますと、例えば、今の認定こども園になるためのハードルは非常に高いと私は思っております。

 そういう観点で幼保連携型を経営しておりますけれども、逆に、認定こども園になったから全ていろいろな機能が動くわけではなくて、ある程度、一年、二年、三年、きちっと実績を積んで、その地域の子供たちのための仕組みづくりということを考えますと、認定こども園だけが時間軸でぽこっぽこっとできても、多分、福島県の場合は待ったなしで、施設はどんどん潰れ、またはいろいろな複合作用が起きてくるんじゃないかとは考えています。

田村(憲)委員 ありがとうございました。

 我々は、そこは今回、この仕組みがいいのかどうかわかりませんけれども、協議会みたいなものをつくって対応していくような受け皿もできるわけでございますので、そういうものを利用しながら、うまく連携をしていけばいいのではないのかなというふうに思っています。

 最後に、先ほど、株式会社が入るとなぜ危ないかという議論がありましたが、私自身は、保育園は今も株式会社はございます。ただ、問題は、これは認可という、今回のこども園も実はそうなんですね、総合こども園は認可なんですね。認可のこども園というものに株式会社が入ってくるというのは、それは認可という一つのハードルがありますから、それはそれで一つ、いいのであろうと我々も思います。

 しかし、指定制というものが今回新たに入ってくるわけでありまして、この指定のみの株式会社というのは、一定の基準を超えれば指定をせざるを得ないという基準になりますから、当然そこで一つスクリーニングが外れちゃうわけでありますので、非常に危ないというふうに認識しております。それで待機児童を解消するよりかは、やはり保育士がもともと足りませんから、それへの対応。

 それからもう一つは、地方の負担というものが非常に厳しいということがございますので、そこをどう手当てするか、その方が重要だというふうに思っておりますが、最後に、鈴木市長の方から御意見をいただければありがたいと思います。

鈴木和夫君 この認定こども園、総合こども園については、私は、それほど対立軸がはっきりしているものではないような気がいたしておりますし、現行の認定こども園でも十分対応できるというふうに基本的には認識しております。

 やはり子育て、育児の問題は大変大きい問題で、特に、就業構造が完全に変わってきております。白河は六万五千弱の人口ですけれども、働く方がどんどんふえてきておりまして、預かり保育なんかの需要がどんどんふえてきております。ということは、我々地方自治体の出番がどんどん高まっているということも含めて、当然それは財政需要、財政資金の問題にもはね返ってくるわけでありますので、こういった問題にこそ、やはり我々地方自治体、これは市長会、町村会も含めて、そういうところと大いに議論をしてもらいたいというふうに思います。

 先ほど言いましたが、我々の地方自治体、地方単独事業でやっている部分が相当ある。この認定こども園、総合こども園を含めて、育成、生育、こういったものの環境整備というのは、我々地方自治体、とりわけ市町村の出番であるということを強く認識しております。

中野座長 竹下亘君。

竹下委員 自民党の竹下亘でございます。

 私の兄が消費税を導入させていただきましたので、皆さんにいろいろ御迷惑をおかけいたしておりますが、すごくいいこともしたと、心の中では私は自負をいたしております。

 消費税の問題を議論するときに、一つの論点が、特に中小零細企業がきちっと、消費税というのは最終消費者に負担をしていただく税制でありますので、それを中小の小売店が負担したのでは何の意味もない、それは経済をゆがめるだけでありますので、どうやってしっかりと価格転嫁ができるか。それをインボイスで保障するのがいいのか、法律で何か保障するのがいいのか。下請法というもので非常に縛っているというか、厳しく見ているというような点はありますが、どうすれば価格転嫁ができるのかというのは一つの大きな論点である、こう認識をいたしております。

 そこで、これは皆さん方お一人お一人にお伺いしたいんですが、今の民主党案は、三%、二%の二段階引き上げ論であります。これは、一回の五%だったら、おい、おまえ、これを負担しろよとはなかなか言いづらいけれども、二%あるいは三%は、おまえ、ちょっとこれはおまえの店で負担しろ、こういうことになりやしないかなという心配もそこに出てくるわけであります。

 またさらに、二回引き上げるということは、レジのソフトを二回直さなければならない。これは一回で何十万、あるいは企業によっては何千万かかる負担でありますので、そこの事務的なことを考えたら、一回で五%の方がいいのかな、私なんかは個人的にそう思っております。

 そこで、皆さん方に、この二%、三%論に対する考え方、さらには、転嫁ができるかできないか、お一人お一人に本音で教えていただければありがたい、こう思います。

鈴木和夫君 転嫁の問題はちょっとあれですが、私も、税の問題を正面から議論するならば、一遍に上げるべきだというふうに思います。

 私は、基本的に税の問題は国家を考えることだということを申し上げましたが、だからそれは小出しにする必要はない、上げるのなら五%、きちっと説明をして、上げるべきだというふうに思っております。

 それから、益税、インボイスの問題。これは多分、税に内在する問題があるのであれば、そこは今回きちっと直すべきだ。これは総論でありますが、そういうふうに申し上げたいと思います。

今泉裕君 あくまでも働く者の立場として申し上げるならば、二段階をもって引き上げることに関しては賛成であります。

 その理由としましては、現在の経済状況、デフレと言われておりますが、経済に限らず、賃金もデフレ化しているということが一つ。それと、やはり、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、低賃金化しているという今の労働実態を考慮すれば、段階的に上げていくということがベターであろうというふうに考えます。

 インボイス等につきましては、専門外ですので、知ったふりをしてもしようがありませんので、回答は避けさせていただきたいと思います。

中野座長 古渡さんはちょっと専門外かもしれません。いいですか。

古渡一秀君 はい。

 非常にわかりづらい場所なんですけれども、ただ、基本的に、今回の消費税というのが、きちっと子供に使ってくださるという、そこに対しては大変評価させていただいております。

 二%、五%という観点で考えますと、時間軸なのかなとは思っていますけれども、若い世代の保護者で考えれば、確かに、一遍に上がると多分つらいだろうなと思っております。

 以上です。

瀬谷俊雄君 これは転嫁できます。建前論として、転嫁できると考えないとしようがない。

 それから、これは分割の方が妥当ではないか。そのときの状況にもよりますし、確かにコスト負担の問題もあるのでございますけれども、やはり、一遍に上げるというのは、今の天下の形勢から見て、若干無理があるのではないかと思います。

 以上でございます。

轡田倉治君 私は、消費税に対しては反対ですので、それは明確にしておきたいと思いますが、ただ、どうしても、先ほど来の皆さんのお話を聞いていますと、社会保障という、何かでつられるような感じを受けているんですけれども。

 やはり、やるのならば一遍に五%上げてもらうというのが、これは現実。というのは、我々、一番末端の作業をしなくちゃならない立場にいる者なんですよね。ですから、何度も何度も一年置きくらいにそういう事務作業が出てくるということは、非常に費用もかかることですし、手間もかかることということになろうかと思います。

 ただ、転嫁ができない、できる、非常に難しい立場です、これは。実際には転嫁はできないと私は見ています。

金田宗君 私は、二段階のアップについては、原則的にはちょっとだめかなという感じはいたします。一遍に五から一〇へという感じであります。なぜかといいますと、事務量が果たしてそういうふうに追いついていけるかどうか。あと、先ほど来、先生の方から話がありましたレジの交換とか、そういうことも必要だと思います。ですから、そこら辺は、五%から一〇%へ一気に上げていい。

 そして、転嫁の問題なんですが、一〇%上げれば、半分はいただけるんじゃないかと私は思っているんです。というのは、五%では何となく、請求しても、まけてくれや、こういうふうな形だったと思うんですが、いざ一〇%になると、これだけはちょっと厳しい、せめて半分だけはいただきたい、こういう形が出てくるんじゃないかな、こういうふうに思います。

 ですから、本当は私はインボイス方式がいいと思っているんですけれども、帳簿方式だとどうしてもそういういろいろな問題が出てきますけれども、そういう形で、五%から一〇%へ一気に上げた方がいい、私はこういう考えでございます。

齋藤和衞君 私は、先ほど冒頭の陳述で申し上げましたように、基本的には反対であり、行く行くは消費税という方式をなくし、国民は応能負担で税を負担するべきだと思っておりますから、反対ですので、意見を言う立場にないわけなんですけれども、あえて言うとすれば、私も現場で、診療報酬の自己負担分だけではなくて、いわゆる自費診療に属する部分、健康診断でありますとか診断書とかその他、医療材料を原価で提供するという作業に携わったこともありますので、その煩雑さにおいては、切りのいい数字にすることが一番でございます。

 二%とか三%とか、そういうのをされますと、全く現場では、端数が出て、もちろん端数の原則はありますけれども、困るわけです。現場でやっていて、端数が、幾つかの品物が合算されると変わってくるわけです、単体で売るときと。こんなことが現場であって、お客様から消費税でございますともらうお金が、経理をくぐって、一旦みなし簡易課税になりますと金額が違ってくる、こんないいかげんな制度があっていいものかというふうにつくづく思っていたことが今思い出されました。

 したがって、切りのいい五%にするというのは、その立場だけからすれば、私の感想として申し上げますけれども、先ほどから申し上げましたように反対でございますので、非常に矛盾した回答にはなるかなというふうには思います。

 もう一つ言わせてもらえば、やはり、今、内税方式で表示せよというふうになっておりますが、五%を引き上げるに当たりましては、外税方式にちゃんと表示を戻してもらいたい。国民が、自分が払っている、あるいは負担している税金がいかほどなのか、これが示されないで、どうして主権者かというふうに私は思いますので、ぜひ、どのような結果になったとしても、この制度は外税方式できちんと表示するように、もう一度検討していただきたいと思います。

金澤幸夫君 僕は会計に疎いんですけれども、病院の支出で多いのは、人件費に次いで材料費なんです。だから、収益が上がっていても、材料費が上がっちゃうと利潤がなくなっちゃうんですね。どうしても上げるというのであれば、段階を踏んで上げてもらえば被害が少なくて済むかなと、一般的には考えます。

竹下委員 ありがとうございました。

 立場によって、事務をする立場、あるいは買い物をする立場によって本当にいろいろな見方があるなと。本音のお話も聞かせていただきまして、大変ありがとうございました。

 時間もだんだんなくなってきましたので、鈴木さんにちょっとお伺いをしたいんですが、今回の法律と直接のつながりはないんですが、歳入庁という議論が今、国会の中で出ております。社会保険料の徴収と税の徴収をするのを一元化しようという話であります。そもそもこの問題は、もともと社会保険は市町村が担当していて、例えば私の村は人口三千八百人の村ですから、九八%とか九九%の収納率であったわけですが、それを社会保険庁へ移したら、いきなり七割になり、六割になりという状況に今なっております。

 この社会保険料の徴収の問題について、市町村がいいのか、国がいいのか、歳入庁がいいのか。現場の立場ではどんなことを感じておられるのか、教えていただけますでしょうか。

鈴木和夫君 いずれにしても、やはり一元化すべきだ、した方がいいと思います。

 例えば今、市の場合で言いますると、国民健康保険税と税がありますね。これは一緒の課税課でやっているわけです。国民健康保険、実際は料金ですか、国民保険税、これはやはり同じところでやった方が全体をよく把握できるというのと、例えば滞納しますね、滞納した場合に、どうしてもやはり税の方から取っていくわけですよ。これは別々にやるとなかなかその連携がうまくいかないので、やはりワンストップでやった方がいいと私は思います。

 ですから、国税も、それから社会保険も、歳入庁というんですか、できれば歳入庁でワンストップでやった方がそれこそ効率的だろうというふうに思いますし、情報の把握もワンストップでできるだろうというふうに思うので、行政の長としては、とにかく、歳入庁という言葉がいいかどうかわかりませんが、そこのところで一つワンストップで把握をし、歳入の仕事をするということが望ましいというふうに私は思っております。

竹下委員 最後の質問ですが、その歳入庁の話ですが、もう一回市町村に徴収責任を戻すという議論はどうお感じになりますか。

鈴木和夫君 私は、前提があると思うのは、今の千七百市町村のレベルで全部おろすことがいいかどうかということがあると思いますね。人口三百万の横浜市から人口二千人のところとフルセットで今地方自治法ができておりますから、そうではなくて、そこのところを切り分ける必要があるんだろう。地方自治体とはいっても、おのずからやはり自治体は行政能力が違いますから。政令市から、中核市から、そうでない市から、いろいろな市があるので、そこをやはり切り分ける必要があると思います。

 ただ、原則としては市町村で対応すべき、してもいいと私は思っております。

竹下委員 ありがとうございました。

中野座長 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 きょうは、長時間にわたって貴重なお話を拝聴させていただいて、心より感謝を申し上げます。しばらくの間、質問をさせていただきたいと思います。

 私は順番にお伺いしていきたいと思うんですが、まず、白河市長の鈴木和夫さんにお伺いをしたいと思います。

 先ほどの冒頭の話をお聞きいたしまして、私どもの考え方と非常に近いなという思いがしました。つまり、税を上げるについて、やはりもっとさまざまな観点があるんじゃないか、もちろん無駄のこともあり、税も、所得税を初め資産課税も含めて、さまざまな税のあり方があるんじゃないかというようなお話があったと思います。

 今やはり、高額所得者とどちらかというと低額の方と、大きく二極分化をしているような傾向があって、特に所得の低い人たち、若い人たちも非正規の皆さんが多くなったりして、そういう全体感の中に立って、消費税というのは本当に今の時期適用していいんだろうか、そんな思いからだろうと思うのですが、この時期について、今は少しどうかなというお話のようにお見受けしたんですが、どういう条件がもう少し満たされれば、そこのところの何かお考えがあればお伺いしたいと思います。

鈴木和夫君 基本的に、私は財政の健全化も社会保障の充実も、これは大変大事なことだというふうに思っておりますということは冒頭申し上げました。

 ただし、今、国としてのありようが、非常にいろいろな病気を抱えているといいますか、いろいろな治療をしなくちゃならないときにどうかということを言っているわけで、一つには、さっき瀬谷さんもおっしゃいましたが、日本の経済活力が非常に失われてなかなか処方箋が見えない、処方箋が見えないが、しかし何がしかの対策は打つ必要があるということは皆さん思っているわけですね。しかし、そこのところを政府として、あるいは自治体として真剣に考えてきたことがあるんだろうか。

 私は雇用の場、産業振興が一番大事だというふうに先ほども言いましたが、そういう意味で、本当に本格的に経済の問題について取りかかる必要があるというのと、これは野田総理も言っておりましたが、分厚い中間層が一番大事だと。やはり国家の安定は中間層です。圧倒的に中間層が多いのが日本国家の今までの、私が自民党政権の一番の評価するところは中間層をつくってきたことですよ。これはまさしく世界的にまれに見る成功を示した。それが今崩れかかっていますので、中間層をどう立て直すかということだと思うんですね。この観点から税も一役を担えるだろうというふうに、これはもちろん働き方もあるだろうし、社会構造が大きく変わってしまったのでなかなか難しい問題はありますが、もう一回社会の中核をなす中間層を厚くするための政策を集中して、これは育児の問題もそうでありましょうし、医療の問題も全部ここに私はかぶってくるんだろうと思います。この議論をもう一回する、整理をする。

 税もそうなんですよ。税も、言いましたように、税のあり方というのは国家の仕組みを考えることですから、消費税だけの議論でない。資源再配分機能を考えるんだ、所得税だって考えなくちゃならない。相続税は今回入っていますが、相続税も所得税もトータルに考えるという議論がどうも欠けているのでちょっと心配だなということを言っているので、もうちょっと冷静になって。今、国家が破綻するとかなんとかという議論はありますが、私はそんなことはないと思いますよ。ないと思います。ですから、冷静にやはりここのところは与野党で議論をしてもらいたい、こういうことで申し上げたわけです。

西委員 大変説得力のあるお話だとお受けいたしました。

 時間が余りないので、次々と隣に行かせていただきたいと思います。

 今泉さんにお聞きをしたいと思います。

 年金を中心にお話をいただきました。それで、消費税についても先ほど御意見がございました。先ほど私の話の中で、低所得者に対する配慮、これは消費税の逆進性があるということは一般的に言われておりますので、その辺について、消費税、具体的に上げていくとしたらどういうふうに考えていらっしゃるのか、特に低所得者の部分についてのお考えをお伺いしたいと思います。

今泉裕君 低所得者につきましては非常に難しい問題だと思っております。連合ですから、労働組合という立場ですと、どうしても大労組、大企業組合の組合員を軸とした考え方になりがちなんですが、やはり弱者のところにも目を向けていかなくてはいけない。むしろ、弱者を守るというよりも弱者をつくらないという発想、そういう視点がやはり大事なんだろうというふうに思うわけでありますが、残念ながら、低所得者と言われる、余り言葉は好きではありませんが、非正規の方がたくさんいらっしゃるということで、ここの部分についてどういうふうに将来の年金を考えるかということは、連合としても大変重要な課題だと思っております。

 今回いろいろ法改正がありまして、制限が出ましたけれども、一部に反対もあったことは事実なんですが、そこにもきちんと厚生年金の部分を掛けていくということで、将来の生活負担を少しでも軽減させていこうということでの制度がやはり大事になってくると思いますし、ただ、そういった方々の所得感ということを考えますと、必ずしもそれは賛成意見にはならないんだと思います。

 昔、厚生年金を導入するときいろいろな状況があったそうです。月々一万円の掛金に対して九割方の反対があった、ただし、残りの一割は将来の老後生活を少しでも安定化させるためにということで、強行導入したという組合さんも数多くあったと聞いておりますので、やはり、その時代を得て、今その時期に来ているのかなというふうに考えております。

西委員 ありがとうございます。

 続きまして、古渡さんにお伺いをしたいと思います。

 先ほどからデータを拝見させていただいて、古渡さん、全国の五年先を行っている気がすると。つまり、やはり働き方も随分違って、共働きもふえてきてということなんだろうかなというふうに私は推測したんですが。

 今回の法改正で、総合こども園という形に変更になります。今まで認定こども園の関係で随分御活躍をいただいてきたんですが、この認定こども園から総合こども園に変わるに当たって、今もこれは賛成だという御意見をお聞きしておりますが、認定こども園の段階ではなかなか難しかった最大の課題を、経営される立場と、それからそこに通われるお子さん、保護者の皆さん、その両者の考え方から、最大のものは何だったというふうに思われますか。

古渡一秀君 まず最初に経営する立場でいうと、やはり二元行政だと思っております。あと、例えば補助金の配分。例えば、幼稚園に対する配分、また保育所の配分、ばらばらで、現場的には一つにしなくちゃいけない。そうすると、会計基準は二つを一つにしなくちゃいけない。大変これはややこしい、面倒くさいものでした。

 あともう一つ大事なのは、認定こども園、確かに県の認定ですけれども、保育所の認可をとるのに、各市町村の御配慮がなければまず認可はとれません。そうすると、幾ら、こども園をやりたい、その地域のニーズがあっても、やりたいと言っても、市町村の御意向に阻まれて、結果的にやる方が少ない。これが、まず経営する方の判断。

 認定こども園をやって、保護者の立場でよかったこと、非常にたくさんあります。

 まず、保育に欠ける要素で認定こども園に入りました。実は保育に欠けなくなってしまいました。そうすると、幼稚園の方に移行することができ、同じ施設でずっと保育を受けることができる。その逆もあるということです。要は、幼稚園に在籍していましたけれども離婚してしまいました、実は保育に欠けるようになってしまいました。ということは、普通はそこでお金がなくなってきてしまいますので、逆に言うとその保護者は違うところに行かなくちゃいけないとか、またはなってしまうんですけれども、そういう立場の方であっても、市町村とのその仕組みの中で、まあ、直接契約ですので、では保育所の入所の方でやりましょうよというように、保護者と子供に対しては施設をかえずにずっと質を担保された保育を受けることができる。こういう意味では、認定こども園制度はすばらしいと思っております。

 まあ、それをもっとレベルアップしていただきたいなとは思っております。

西委員 ありがとうございます。

 もうあと五分と言われてしまいましたので少し順番を飛ばさせていただきますが、現場の立場で先ほどからお話をいただいている、皆さん現場なんですが、中小企業の現場の皆さんということで、轡田さんと、それから、実務をおやりになっている金田さんにお伺いしたいと思うんです。

 今の経済の実情というのは十分おわかりのことだと思いますが、これで、先ほど一遍に上げる方がいいという御意見が多かったですけれども、いずれにいたしましても、三%、五%にしても、消費税が上がります。いっときの影響はあるけれどもすぐに回復するよという御意見も先ほどあったように思いますが、お二人の現場の感覚からして、この消費税の率の引き上げというのは、景気、経済にどういう影響があるか、またはないかという、その感覚を教えていただきたいと思います。

轡田倉治君 我々小規模零細企業にとっては、決していい方向には行かないと思います。というのは、先ほど来お話ししているように、価格に転嫁できない、あるいは、製造業ですと見積もりに転嫁ができないということが必ず出てきます。これは間違いないんです。

 小売業なんかは価格に転嫁ができなくなる。すると大型店との競争に負けてしまう。それから製造業ですと、今は見積もり競争ですので、一〇%というのは大変な価格になるわけです。おまえのところ見積もり高いよと、一言で終わってしまうんですね。転嫁どころの騒動ではないんですよ。それで、中国にやるぞとかどこどこにやるぞと言われて終わってしまうんです。そういう状況なので、決してよくはならないというのが私の持論です。

金田宗君 ただいま、現在のような景気の世の中では、一〇%にすることはかなり難しい、中小企業に与える影響というのはかなり深刻なものだと私は思います。その前に、やはり景気を少し上げていただく、景気を回復していただいて、それからという形を私は原則的にとっていきたいというふうに思っているんですけれども、その辺を、景気に与える影響というふうに言われますと、やはり今現在では厳しいんじゃないかなというふうに思います。

 消費税を上げる前に、景気対策、あるいは景気の回復、その他をいろいろ努力していただいて、それから上げるのだったら大丈夫というふうに私は思っております。

西委員 最後に、南相馬の市立総合病院の院長さん、金澤先生にお聞きをしたいと思います。

 先ほどから、この南相馬市周辺の原子力事故における影響も踏まえた、大変重要なお話をいただいたと思います。一人でも多くの人が一刻も早く帰ってきて、安心した生活を、安定的に暮らしていける条件というものを考えたときに、お医者さんが大変少ない、またスタッフも大変少ないという現状を教えていただきました。そのための何らかのメリットをぜひともというお話でございました。

 この全体の消費税議論の中で、特別の、南相馬市だけどうというようなことはなかなかできにくいとは思いますけれども、先生の思いの中で特に医療の制度、今回は特に年金と子育て、それに消費税というのが大まかな実態になっております、社会保障の中では、介護も医療もこの中には余り重く議論になっておりませんけれども、せっかくの機会ですから、医療の制度の中で、先生の方から何か御意見があればと思って、お伺いしたいと思います。

金澤幸夫君 中医協の方が去年の夏ごろいらっしゃって僕らの話を聞いてくれたんですけれども、医療費を何らかの名目で上げてほしいと言ったんですね、特区みたいにして。でも、それは問題になっていたみたいですけれども、三月ぐらいに消滅してしまいました。多分ネックになったのは、支払いする人の支払いのお金も上がっちゃうんじゃないのという話があったみたいです。

 今も同じですね。医療人口が半分になっていて、ただし医療スタッフも半分で、その中でどういう医療をしたらやっていけるのという話なんですね。それは、多分原発の補償がまだ進まないころで、自分の病院も、去年の十一月にはお金を借りないと病院を運営できないように追い込まれたんです。でも、十二月に東電からのお金が入って、自分たちは手持ち金を七億持っていて、なくなって、それが入ったというイメージですね。それがないとやっていけなくて、銀行から借金しなくちゃいけなかった。そのときに中医協にお願いをしたのは、やはり、特別特区にしてもらって、医療費を何らかの形で高くしてほしい、保険点数を高くしてほしいということですね、簡単に言っちゃうと。ということはお願いしました。でも、やはり同じですね。今も同じです。

 以上です。

中野座長 ありがとうございました。

 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 時間の関係で、多分全員にはお聞きすることができないと思いますが、御了承願いたいと思います。早速お願いをいたします。せっかく福島に来ましたので、実態を込めて伺いたいなと思っています。

 瀬谷さんと轡田さんに同じ質問をさせていただきます。

 五月に、この法案が審議入りするときに、私少し触れた問題なんですけれども、福島県内の事業所、まだ七割くらいが営業が再開できない、あるいは不能になっていると聞いております。また、再開したところも、売り上げが大幅ダウンをしていると。まさに、復興どころではないのだというお話が、そのとおりではないかなと思うんです。そこら辺の会員企業の実情と、その上で、こういう時期に消費税を上げるということがさらに景気を引き下げるということにもならないかなと思うのですが、ぜひ伺いたいと思います。

轡田倉治君 まさしく、今先生がおっしゃるとおりです、回復状況はですね。福島県、浜、中、会津と、三つに地方が分かれておりまして、浜地方、要するに沿岸部が、震災とそれから原発と、両方の被害に遭っているわけです。

 この中通り、会津地区については、もちろん東電の原発の被害もありますけれども、それよりも、その被害の中でも風評被害が非常に大きいということです。あと、その震災の被害が、実は中通りが一番ひどいんですよ。これは余り報道されないんですが。どうしても沿岸部の津波の方ばかり報道されちゃって、実際、私らもこの会の関係で向こうの方も行くんですが、震災は実は中通りがひどいんです。

 向こうは、津波に遭ったところはもちろんひどいんですが、そういう状況で、もちろん相双の原発地区、これはもう商売を始めるどころの騒ぎじゃないですよ。どこに行っていいんだか、まだ居場所も決まらない状況です。果たして戻れるんだか戻れないんだかもわからない。どこに自分は定住していいんだかもわからない。

 これは国にも責任があります。全然その案を出してくれないわけですから。我々はもういらいらして待っているわけです。向こうの地区の商工会長さんに、どうなっているんだと、我々がそういうふうに言われているわけです。ところが、幾らお願いしてもなかなか前に進まないというのが現状です。そんなことで、もう、今どうすればいいんだというのが先なんですね。景気が悪いとかいいとかの状況じゃないんです、今。

 中通り、会津地区についても、今言われたように風評被害で、特に会津地区は観光ですから、お客さんがほとんど来ない。もうあすにも倒産しても不思議でないというのが現状なんですよ。だから、今先生が言われているような状況にはないということです。

 以上です。

瀬谷俊雄君 私は、本業は銀行なんですよ。銀行員。十七年間ここでトップをやっていましたから、県内の十の会議所がございますけれども、重立った取引先はほとんど熟知しております。そういう点からいいますと、先生いろいろ御心配いただいておりますけれども、大体七割方はもうもとへ戻ってきたと。私はこのように思っております。

 もちろん、今轡田さんがおっしゃったように、風評被害というものは、特に観光面で直撃されておりまして、非常に厳しい状況なのでございます。

 しかしながら、先ほどいろいろお話がございまして、この消費税の問題も、何といいますか、大企業の利益剰余金が積み上がったというようなお話をされておりますけれども、私に言わせますと、福島で今、私どもの会議所、一番最大の課題は雇用問題なんですよ、正規、非正規を含めまして。

 そうすると、福島市をとりましても、ここで最大の一社当たりの雇用といえばキヤノンでございます。福島キヤノン、これは二千人でございます。それから、会津へ行きますと、富士通がピークは八千人おりました。それからパナソニックがある。相馬に石川島播磨がございます。三菱電機もある。

 福島県というのは東北六県の中でも抜群の鉱工業生産を持っていますけれども、これを支えているのは、もちろん地場の中小零細企業さんもありますけれども、やはりこういう大企業が多いんですね。とすると、やはりそういうものの間に下請、一次があり二次があり三次がありということで、複合的な組織として県経済が成り立っているわけでございます。

 私が一番懸念しております避難者については、転退出者は戻りつつありますし、きのう、おとといも夏祭りがありまして、私が実行委員長で盛大にやったわけでございますけれども、そういうことをやることによって、少しずつ風評被害を払拭しつつある。しかも、思った以上に子供さんが出てきた。

 それから、町のタウン情報を見ますと、意外や意外、賠償金の問題があるのかもしれないけれども、今、貴金属が割合売れているんですね。えっ、宝飾店がそんなに売れているのかと、意外な驚きでございました。だから私は、まだまだ担税力はある、大丈夫だ、そういうことなんです。

 もう一つ、せっかくの機会ですから、最大の課題は何かといったら、原発の問題です。

 御承知のように、F1の一から四までは実質上廃炉でございますから。五、六は生きているんですね。F2は生きているんです。これを全部やめることによって、恐らく二万人ぐらいの雇用がすぽっと抜け落ちる。それの後をどうするかという問題が全然まだ目鼻が立っておりません。だから、それはそれで個別の問題として、これは政府のエネルギー政策といいますか、先生方にもお考えいただきたいんですけれども、それをどうするか。

 このエネルギー問題に一つのめどをつけることと、それからもう一つ、返す刀で財政規律、プライマリーバランスは回復するんじゃないかという、糸口でもいいからちょっと見せないことには、日本の回復はないんじゃないかというのが私の状況認識でございます。

 こんなものでよろしゅうございますか。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 たくさんの課題が出されまして、いっぱい議論をしたいところですが、次の方にも質問をしたいと思います。

 原発をやめても雇用につながるということをちゃんと提案しておりますので、ぜひ後で議論をさせて……。ちょっと済みません、次の質問がありますので。

 齋藤さんに質問をします。

 先ほどちょっと田村委員からもあったんですけれども、実は一体改革なんだけれども、四経費のうちの半分が全く法案が出ておりません。医療や介護がどうなるか、実は大きな痛みが隠されているんではないかということが問題意識としてあるわけです。窓口負担の増加などがあるわけで、現場に行って実態を見ている立場から、ぜひ御意見をいただきたいと思います。

齋藤和衞君 原発、震災がありまして、福島県の住民に対しては、医療の自己負担についてのいろいろな免除もございました。しかしながら、徐々にそれは取り払われてきているというのがあります。

 入院の食事療養費は三月から、これはもう一律に負担が発生しておりますし、地震、津波の被災者で全壊、半壊の方は、国民健康保険の場合、九月末までは自己負担の軽減が図られましたけれども、これも九月で終わるとか、あるいは原発事故で避難している方は来年の三月まで延びたとはいえ、そこで打ち切られるとか、確かに一年ないし一年半ぐらい軽減策はとられましたけれども、この先続くであろう苦しい生活に対する救済が今のところまだ見えていないということです。

 そういう中にありまして、福島県のいわゆる協会けんぽは、健康保険部分で九・四七から九・九六に上がりましたし、介護保険料も一・五一から一・五五に上がったというようなことで、これも以前から繰り返し上げられてきたこととはいえ、この一体改革の重要な中身になっているというふうには私は思っています。それが影響としてあります。

 それから、今回、介護保険の報酬の改定等がありましたが、包括ケア、これは非常に名前としてはいいし趣旨はいいんですが、実際行われたことといいますと、訪問介護、ヘルパーの滞在時間が短くなるでありますとか、予防介護の制限がまた強まってきたとか、一体改革の今回の法律にはないんですけれども、政府の裁量で既にどんどん進められているというものがあることは申し上げたいというふうには思います。

 今、十六万人の方は、いろいろな、さまざまな方がいらっしゃいますけれども、一番大きいのはやはり二重生活をしているということです。子供と母親だけが県外に行っているとか、あるいは県内でも比較的低線量の地域に移るということがあります。そして、仮設住宅に移っても、非常に狭いので、一家で生活していた方が二つに分かれるとか、若い子だけは普通の民間のアパートに行くとか、そういう二重生活をしている。そのことから、いろいろな意味で医療分野での負担にしわ寄せが行くということはあるかなというふうには思っております。その辺も、これは今回の一体改革とあわせて震災への対応として求めたいところでもございます。

 以上です。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 同様の趣旨で金澤さんにも質問したいと思うんですが、先ほど来、ちょっと経営者のようなことで増税に対してどうですかという質問があったと思うんですが、そうではなくて、本当に被災地のど真ん中で大変な苦労をされて被災者を励ましてきたその立場から、今、医療や介護がどうなっているのか、そのことの影響についてもし伺えればと思います。

金澤幸夫君 僕らのところばかりじゃないと思いますけれども、やはり被災しているところに一律に消費税が行くのはどうなのかなというのは、当然意見としては出てくると思います。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 先ほどの医療体制とかありましたけれども、どうしても充実させようとすれば、その分増税ですよという議論になっては困るなということもあり、やはり今の、負担をこれ以上やらないという立場で頑張りたいなと思っています。

 最後に一言、古渡さんに御質問いたしますけれども、子供の減少というのが未来の姿なんだという御指摘がありました。それは全くそのとおりだと思うんですが、ただ、それが新システムでなぜ解決するのかということではちょっと飛躍をしていましたので、アイデアが必要なんだと。数の議論だけでは、だったら三歳未満の義務づけは何でないのという議論になってしまうので、やはり中身で、本当に子供にとってよいものをやるためには何が必要なのかということで、もう一言伺いたいと思います。

古渡一秀君 先生の今のお話、多分二つあると思うんです。

 まず、私が出した資料の一ページを見ていただきたいんですけれども、資料一ページに、実は隣の白河市長さんの町も緑のチェックが入っているのがあります。一番右下をちょっと見ていただきたいんですけれども、今回、子供の避難が非常に少ない市町村が実はここの三つなんです。

 私は、この現場の中で、実は何でこういうことなんだろうということをずっと考えて調査させていただいていました。これは、基本的に行政の対応です。行政が、市町村が子供の政策をきちっと、ある程度やっておられるという市町村は実は非常に離れにくかったのと、あともう一つは、ここに経済界の方、たくさんいますけれども、仕事があること、ワーク・ライフ・バランスがしっかりしていること。

 もっと大事なのは、僕が一番注目していますのは本宮市なんですけれども、情報公開がきちっとしていること。これは、先ほど私が一番最初に言いましたように、市町村がきちっと責任を持つ、そこがここであれだけ明確に出るということが一つ。

 もう一つ、子ども・子育て新システムの中で我々が一番丁寧にお話ししていますのは、子供の保育の質を担保しましょうよと。そのためには、どうしても財源が必要だと我々は思っております。特に保育士さん、幼稚園教諭の給与改善とか、たくさんいろいろな問題が含まれています。

 ですので、そういう観点で、明確にお話しすればもっとたくさん、いっぱいあるんですけれども、端的に言えば、今改善しなかったらばまず無理でしょうと諦めたくないのが一つと、未来に向けて今が最後のチャンスかなと思っているのが、我々がぜひお願いしたいなと思っているところです。

 以上です。

中野座長 斎藤やすのり君。

斎藤(や)委員 早速、質問をさせていただきます。

 先ほど、金澤先生が、南相馬で七万人から四万五千人に人口が減ったよ、雇用が重要だよという話がありました。轡田さんも、社会保障は働く場がなくなったら納税者がいなくなるから雇用を何とかしなければいけない、そういうお話がありました。

 連合の今泉さんに御質問なんですけれども、年金の国庫二分の一負担のための消費増税やむなしということを言われておりました。一方で、消費税増税で正社員のリストラが進むのではないか、そういう危惧も実はございます。

 御存じのとおり、会社は、売上分の消費税から仕入れにかかった消費税を差し引いた分を納めなければいけない仕入れ税額控除というのがございます。その際、正社員の給料とか退職金、社会保険料は仕入れの対象とならずに、仕入れにかかったものとして消費税の課税対象としてはだめになっていますけれども、派遣社員の報酬の消費税というのは控除されます。この結果、課税対象となる売り上げとか従業員数が同じだと、正社員だけの場合よりも派遣社員がいる方が控除額がふえる、つまり、派遣社員を雇った方が利益を得ることができるということになります。

 これで消費税一〇%になった場合に、恐らく、企業間の価格競争というのが大変拍車がかかって激しくなるんじゃないか、そうなると、経費削減のために派遣社員の使用ということを経営者は考えるのではないかというふうに私は思うんですけれども、労働界の代表として、今、どういう見解をお持ちなのか、そうさせないようにどのような対応をするのかということをぜひ教えていただければ幸いです。

今泉裕君 ただいまの説明といいますか、内容につきましては、既にそうなっておるわけでありまして、ひもとけば、一九八七年にもう派遣法が適用されて、年々年々その範囲が広まって今日に至るという経過があります。

 私は、非正規、いわゆる派遣制度というものは、決して悪だとは思っておりませんし、現に、派遣業界との、生産技能労務協会とか人材派遣協会等との定期的な協議もしておりますし、もう一度申し上げますと、決して悪とは思っていない。

 ただし、今回の消費税の問題もそうなんですが、それが部分的に、具体的に言いますと、清掃業界とかあるいはケータリング業界なんかでも部分的に発生しているようでありますけれども、今までの労働時間数を、六時間勤務を四時間勤務にするとか、短縮を図ることによって企業負担を減らしていく、いわゆるワークシェアというわけじゃないんでしょうけれども、時間数を減らして全体の人をふやすという傾向は、部分的に出ているのは事実であります。

 ただ、これも恐らくいずれは底を打つわけでありますし、最終的にそれが本当に価格においての企業間競争の争点になるとは思えませんし、むしろそれは、今までのさまざまな労働関連の法規の導入に当たって、最終的に本当に競争が激しくなったのかというと、ちょっと私は違うように思っております。

 したがいまして、一時的なリスクはあったとしても、長い目で見たときの企業の信頼性であるとか、あるいは雇用における社会性、そういったものが最終的に顧客の信頼性ということにつながってくるんだろう、それが最終的な企業の競争力強化ということにだんだんだんだんつながっていくんだと思っております。

斎藤(や)委員 ありがとうございます。

 ぜひ組合の皆様にも、やはり賃金を上げることが将来の社会不安を回避できるんだと、ですからデフレ脱却による年金財源の確保と賃金の上昇ということも、ぜひ同時に訴えていただければ幸いでございます。

 さて、轡田さんに聞きます。

 先ほど、風評被害で観光業に大変大きな影響が出ているということですけれども、それ以外に、今この震災と原発の災害で深刻な影響を受けている産業分野、これをぜひ具体的に教えていただけないでしょうか。

轡田倉治君 観光業は当然なんですけれども、一部製造業にも出ております。これは輸出関連だと思うんですが、私のところもちょっとひっかかっちゃっているんですが。そういうことで、大分仕事の量が減らされているというのも現実ですし、やはり一番は食品の小売、これが今大変な状況にあります。県内のものはほとんど売れない。放射線量の検査表示をしないと、してもまず売れないというのが、県内のものは間違いないですね。福島県のスーパーなんかにはほとんど県外の食品関係が入ってきている。特に、農産物はほとんど県外のものであるというような状況です。

 全ての業種に関連がありますけれども、やはり観光業は特別ですが、それ以外に、食品関係を扱っている業者さん、それから、一部製造業、特に輸出関連の仕事をやっている方がかなり影響が出てきております。

斎藤(や)委員 ありがとうございます。

 ということで、観光業、それから食品の小売、農水産業ということですけれども、こういうものはやはり生産活動の七割ぐらいがたしか家計消費に多分依存していると思いますので、福島県の主要な経済を支えるこういったものに対してこれから増税が課されるということは、私は福島経済にとって大変大きなことだと思うんです。

 改めて瀬谷さんにお伺いしたいんですけれども、県内経済の消費増税の影響というのは、私は、今意見を聞いたところによると、相当これは復興の足かせになってしまうような気がするんですが、その点はどうでしょうか。

瀬谷俊雄君 これは、前ほどちょっと申し上げましたように、税というのは一国の一番基幹システムですから、これが地域によって、あるいは状況によって、こうなる、ああなるという話ではないと思うのでございます。

 ですから、例えば消費税をこういう大変な福島県にあまねく導入したといたしましても、それに見合う別個の手当てというのはいろいろあります。例えば特別措置法とか、あるいは特区の問題がございまして、そこで部分的に拾っていくとか、あるいは全体的に、復興予算といいましょうか、企業誘致でも何でもそうでございますけれども、復興の助成金であるとか進出助成金であるとか復興交付金とか、そういうもので手当てしていけばよろしいと。

 だから、それを今回の税制の問題の例外事項としてこの地域を特に外す、これはできないと私は、私はというか、当事者でありませんのでそう言っちゃいけませんが、影響があったとしてもそれは別物だ、このように考えています。

斎藤(や)委員 地域によって余りそういう差をつけるべきではないということだったんですけれども、一方では、賃金の世帯収入の地域間格差というのは確実にありまして、例えば年収でいいますと、東京は六百万円ですけれども、福島県が四百十万円です。これは年収にすると百九十万円の地方格差があるわけでございまして、この地方格差は、やはり低収入の方が増税の負担を大きく受けてしまうわけですから、これは家計への負担も大きいし、当然零細の個人事業主などにも大きな影響が出ると思うんです。

 金田さん、この後、この消費増税が仮に五%から一〇%になった場合に、例えば生活にどのような影響、社会への影響がどういうふうになるのか。三から五に上がったときに自殺者がふえましたけれども、福島県内の生活、社会への影響というものは、どういうものが考えられるでしょうか。

金田宗君 私は、景気が物すごく下がると思いますね。消費が減ると思います。福島県のサラリーマンが東京のサラリーマンと比べて収入が格段に、今おっしゃったように、百九十万も違うと。東京と福島の物価もまた違うと思いますけれども。それが、消費税が増加したことによりまして買い控えというのがかなり出てくると思います。

 私の周りの人にもいろいろ話を聞きました。税率アップになって消費税が多くなった場合どうしますかと聞いたことがあるんですが、みんなやはり、選んで買います、こういうことを言いますね。できるだけ支出を少なくするという形をとる、そうしますと、全体的に売り上げが少なくなって景気が悪くなる、そうすると、消費税を納めるのにも大変なことになってしまう、こういうことは言えるんじゃないかと思います。

 だから、私は、先ほどから申し上げているように、景気回復とかそういうものが先に来ておかないとまずいんじゃないかな、こういうことを申し上げたいと思います。

 以上です。

斎藤(や)委員 消費増税のインパクトと不安感というのも大きいと思うんですが、一方で、放射能への不安感というのもあると思います。

 昨年十二月の人口は震災前よりも四万人も福島県内では減っている。これが結局、県内の総生産を一・四%引き下げてしまっている。これで消費税を増税したらどうなるのやという、私は非常に不安感はあるわけですけれども。そのためにも、放射能の除染というのはしっかりやらなければいけないという一方で、先ほど金澤先生がおっしゃっていた医療費の優遇、インセンティブという話がございましたけれども、具体的にこういうインセンティブがあれば人口流出は防ぐことができるんじゃないか、アイデアがあったらぜひ教えていただきたいと思います。

金澤幸夫君 今行われているようなことで十分だと思うんですが、一つは、医療費の窓口の支払いが免除になるのが一番わかりやすくていいと思いますけれども。

 あと、ちょっと将来的なことの心配は、それが全部解除になったときに病院に来る患者さんが減るんじゃないかというのが、医療者側からすると何か心配というか、起きそうなことだなと思っています。

斎藤(や)委員 どうもありがとうございました。

 時間がちょっと余っていますけれども、私の質問は以上でございます。ありがとうございました。

中野座長 御苦労さまでした。

 続いて、中島隆利君。

中島(隆)委員 社会民主党の中島隆利でございます。

 本日は、大変お忙しい中、被災地福島地域の皆さん方、復旧復興に日夜努力されております皆さん、そしてまた貴重な御意見をいただきました。心からお礼を申し上げたいと思います。

 最後になりますが、私の方から少し質問をさせていただきたいと思います。

 それでは、まず最初に、金澤陳述人にお尋ねしたいと思います。

 先ほど来御報告がありました、大震災それから原発事故、被害を受けながら、本当に、地域医療、南相馬市立病院の中で大変な御苦労をされているお話をお聞きいたしました。七万人の人口が当時一万人にも減り、そして現在では二万人もまだ減っている、こういう状況、それから、南相馬市の総合病院のお医者さんが十二人が四人になっている、こういうお話がございました。そういう状況の中で、先ほどお話がありました、ホール・ボディー・カウンターですか、要するに内部被曝を検査する、こういう機器等に対する支援が欲しい、それがないと。それから、仮設住宅で暮らしておられる四千五百名の被災者の皆さん方の健康管理、これに取り組まれておられるということで、大変な困難な中で被災地の医療活動を通じておられると思います。

 そこで、医師の派遣も支援をしてほしい、こういう意見もございましたが、これらの問題、あるいは、行政、国に対してどういう課題をもっと求められているのか、そこをもう少しお聞かせいただきたいと思います。

金澤幸夫君 端的に言わせていただいたんですけれども、やはり若い人が戻ってこない、これは全国的な問題ですね。南相馬市が先駆けて、二十年もみんなのところに先駆けて高齢化社会になって、小さい子がいない社会になったということです。

 皆さん、当然考えていらっしゃるんでしょうけれども、若い人が普通に暮らせるというのは、ちゃんと仕事があって、お子さんを育てる環境があって、それで保育の問題もさっきいっぱい出てきましたけれども、ちゃんと子供を育てられて、それから教育が受けられてという環境を日本全体がつくらないと。日本全体の問題ですね。自分たちの市が二十年先駆けていたというだけで、これからみんな追いかけて、そうなっていくんです。だから、そこに力を注いでほしいなと思います。何でできないのかなと思います。

 あと、そうするためにどうしたらいいのというのは、やはり日本というのはお金がないですよ。世界に売り出すものもだんだんなくなってきたし、技術も何かみんなと同じになってきたし、そこを突破しないと、何を考えてもうまくいかないような気がしますけれども。

 あとどうしたらいいかといったら、身の丈に合った生活をみんなするようにということになります。ないお金で予算をつくっていろいろなことをやっていたら、そんなの絶対破綻するに決まっているので、そうしたら、みんな平等に切り詰めて、ちょっと昔に戻って、身の丈に合った生活をしなくちゃいけないんじゃないかなと思います。

 ちょっと話が飛んでしまって申しわけありません。

中島(隆)委員 先ほどお話がなかったのですが、攻めの医師募集ということで、医者を三十名募集される計画があるということです。恐らくこれは、この復興、あるいは先ほど出ました原発被曝者の診察も含めて大変な医師不足の中でそういう計画だと思うのですが、この計画について、恐らく市立総合病院だけではできないと思うのですが、この医師三十名の拡大の計画、これに対する具体的な取り組みなり、あるいは国の支援なり、こういうことについて何かございましたら、お話をいただきたいと思います。

金澤幸夫君 亀田総合病院の小松先生という副院長先生がいらっしゃるんですけれども、その人の発案で実際にやっていて、五月の末で一応終わっています。十人の応募があって、実際に勤めるのが決まったのが二人で、対応待ちの人が四人います。あと、面接を待っている人が二人です。

 さっきも話したのですけれども、十万人当たりの医師数が全国平均の半分しかいないんですね。人口は減ったといっても、相馬、新地、南相馬で九万から十万はいます。だから、十万人当たり二百人以上医者がいてもオーケーです。医者はもともと南相馬市では減っていますので、三十人ふえても医療のニーズはあると思います。

 あと、これは私の全くの夢なんですけれども。自分が院長になったのは平成十七年ですけれども、十六年から医師の研修制度が義務化されました。その後たくさん医師がやめていくんですけれども、そのかわりの派遣はないんですね。やはり自前で研修医を採れるような病院にならないとこれからは生きていけないのかなというのが、震災中からずっと考えていたことです。医師三十人は、あっても別に困らないです。

中島(隆)委員 それでは、鈴木さんにお尋ねしたいと思います。

 先ほど冒頭お話がありましたように、今回の消費税、今の時点ではやるべきではない、やはりまずデフレ・景気対策が優先だ、こういうお話、全く私どももそう思っております。

 そこでお尋ねしたいのは、先ほど冒頭でありました、今、市町村の自治体でマンパワーが大変不足をしている、厳しい。今後、この人員減のマンパワー対策に抜本的な対策が必要だというようなお話がございました。

 ところが、今、税の一体改革の中で国が言われているのは、まず身を切るべきだということで、もう既に国家公務員八・一%、さらに人件費二割削減とか、そして今、議員定数の削減とか、こういうのが前面に出てきているわけですが、特に地方自治体は、合併によって三千三百が千七百になりました。もう既に、職員も議員も賃金もずっと下がりっ放しですね。

 ですから、国が今言っている、身を切るべきだという訴えと、地方自治体のマンパワー確保のための今後の、消費税前にやることだという、本当にわかるんですが、そこの点を、もっと御意見がありましたら出していただけませんでしょうか。

鈴木和夫君 ずっと地方行政不要論というのがよくあるんですね。例えば、交付税を圧縮するときに、昔の財務省、旧大蔵省は、どうしても何かのときに地方交付税を圧縮する、こういう背景が実はあって、地方行政は何か無駄なことをやっているような、ずっとそういう機運があって、この間、二十年この方、行革、行革ですね。そして職員を減らせと。それを交付税、特交なんかで少し圧縮するみたいな、そういうふうな機運がずっとありました。

 平成の大合併は、国は強制はしない、大部分は自主的な判断で皆さんやりました。しかし、やはりその裏には、交付税での締めつけも実はあったわけです。と同時に、もちろん合併のメリットもありましたが。

 しかし、上越市とか、今度の、例えば気仙沼もそうですかね、基礎自治体としては異常なぐらい大きくなりました。上越なんか、小さい県がすぽっと入るんですよ。十数市町村が合併したんです。これが基礎自治体と言えるんだろうか。そして、すなわち、旧町村の職員はぐっと減りました。当然ですね、これは。合併のメリットは効率化だ、こういうことであります。しかし、裏を返して、今度の大震災ではそれがもろに出ちゃったですね。これは、やはり強烈なカウンターパンチだと思います。

 そして、地方自治体はやはり相当雑巾を絞ってきています。これ以上雑巾を絞るといっても、それはもう無理だというふうに思います。むしろ、やはりマンパワー、私が言いましたように、保健師さん、ケースワーカー、こういった方々はまさしくイコール事業費そのものでありますから、ここのところを削られたらば地方はもたないというふうに思います。やはり、これから地域を支えるのは、自治体の役割は大変大きくなってくるので、そこのところの、官の肥大化をしてはいけないというのは、地方の肥大化とイコールじゃないというふうに思いますね。

 地方の場合は、効率化だけじゃとてもやり切れないです。効率化だけではなくて、違ったメジャーが必要だというふうに思っていますので、もちろん、無駄を省く、これは当然でありますが、その無駄というのはもっと大きいところの無駄というのがあるんだろうと私は思いますが、地方自治体、押しなべて千七百市町村は相当程度身を削っているので、私はこれ以上の圧縮はなかなか難しかろうと。むしろふやしてもいいぐらいの行政の施策があってもいいのではないか。特に社会福祉については、これはマンパワーが全てでありますから。

中島(隆)委員 次に、今泉さんにお尋ねをいたします。

 先ほど冒頭でもお話ありました、非正規が非常に拡大している、非常に格差が拡大をしているというお話もございました。全ての労働者に社会保険が適用できるようにしてほしい、こういうお話もありました。

 そこで、後の方のお話でもありましたが、弱者を守るというよりも、つくらないことをまずやってほしい、こういうことでしたから、私は、当然そのことは非正規を正規化するということが必要ではないかなというふうに思うんです。

 先ほど、後段の質問でも、派遣については悪とは思わないというような御意見もちょっと出されていたようですが、今の非正規の現状を見ますと、三割を超えて四割近くになって、しかも二百万以下が一千万人いると。大変な低賃金労働がふえているわけですね。

 以前は中小企業も大企業もそうでしたが、企業が半分、そして働いている人が半分で厚生年金を、それで社会の将来の年金を確保していたわけです。それが、もう年金も払えない。先ほど轡田さんからあったように、もう保険料も払えない、こういう状況になってしまって、だからこそ年金の二分の一の税額の負担が要る、こういうことになったんだと思うんですね。

 ですから、そういう面では、その前提はまず、非正規を正規に変える。非正規を正規に変えるためには、やはり中小企業への支援が必要です。ですから、そこのところ、労働組合の方から見た非正規を正規にやる方法と、中小企業さんが本当に正規に変えるためにはどういうのが必要であるのか。その二人、それぞれ、御回答いただければと思います。

今泉裕君 非正規につきましては悪とは思わないということを先ほども言いました。まず、繰り返しませんが、一九八七年以降、もう少し言えばプラザ合意以降、社会経済がグローバル化することによって、就業構造も変化せざるを得ない、その波の中にあって、一つの対策案として非正規というくくりができてきたという経過があるようであります。

 それ自体は否定していないんですが、やはりここに来てよく言われる、同じ仕事をしているのであれば同じ賃金だ、いわゆる同一労働、同一価値、同一賃金という観点からしますと、もともとは社員と派遣社員の仕事の区別があったのが、今、その区別がなくなってきているということに一つ問題があるのであって、段階的な取り組みをするのであれば、まずはその同一労働、同一価値、同一賃金というところに持っていくということが大事なんだと思います。

 あわせまして、最低賃金、福島は一時間当たり六百五十八円でありますけれども、これだけ経済がグローバル化をして、福島でも東京でもニューヨークでも、一つの業態を見ればどこでも同じという、標準化をされてきている中で、地域の賃金を極端に差別化といいますか、区別化するということはいかがなものなのかなといいますと、円卓会議で提唱されております、できる限り早い時期に時給千円まで持っていくということも合わせわざとして取り組むべきであろう、その取り組み努力は今しております。

 以上です。

轡田倉治君 端的に言いますと、利益が出ればこれは簡単なんですよ。問題はそこなんです。

 小規模零細企業というのは、製造業ですと、恐らく三次か四次下請になっているわけです。メーカーさんの直の下請ではないはずです。メーカーさんの直の下請ですと中企業くらいになりますから。ですから、恐らく三次、四次の下請。一〇%ずつはねられても、もう半分になってしまうという状況なんです。そんな状況の中で利益を出すというのは本当に大変な、経営者は苦労しているはずです。

 また、小売業でもそうなんです。大きなスーパーさんと競争しながら、利益を削り削りやっているものですから、なかなか思ったような利益が出ない。そのために正規社員を使えないというのが現状なんですね。社会保険、厚生年金、結構な負担になるわけですから、やむにやまれず、今お話に出ているような派遣社員とかパート社員とか、そういうことで賄っていかざるを得ないというのが現状なんです。

 ですから、問題はいかに利益の出るような方法がとれるのか、そこだけですね。

 以上です。

中野座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 意見陳述者の皆様方におかれましては、御多忙の中、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、また、率直な御意見も随所に出していただきました。まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただいた御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心から感謝申し上げます。まことにありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後三時四十九分散会

    ―――――――――――――

   派遣委員の兵庫県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成二十四年六月四日(月)

二、場所

   ANAクラウンプラザホテル神戸

三、意見を聴取した問題

   公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、子ども・子育て支援法案(内閣提出)、総合こども園法案(内閣提出)、子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)及び社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 鉢呂 吉雄君

       石井登志郎君   岡田 康裕君

       勝又恒一郎君   藤田 憲彦君

       古本伸一郎君   松本 大輔君

       宮島 大典君   室井 秀子君

       逢沢 一郎君   加藤 勝信君

       橘 慶一郎君   野田  毅君

       竹内  譲君   山内 康一君

       中島 正純君

 (2) 意見陳述者

    兵庫県知事       井戸 敏三君

    日本労働組合総連合会兵庫県連合会事務局長   辻  芳治君

    社団法人兵庫県保育協会会長          小林 公正君

    神戸商工会議所女性会前会長          藤浪 芳子君

    社会福祉法人兵庫県社会福祉協議会会長     武田 政義君

    関西大学社会学部教授  松原 一郎君

    神戸商工会議所副会頭  籔本 信裕君

    近畿税理士政治連盟兵庫県連合会会長      徳富  勲君

 (3) その他の出席者

    内閣官房内閣審議官   香取 照幸君

    内閣府大臣官房審議官  石井 淳子君

    総務省大臣官房審議官  米田耕一郎君

    財務省大臣官房審議官  宮内  豊君

    厚生労働省年金局総務課長           藤原 禎一君

     ――――◇―――――

    午後零時三十分開議

鉢呂座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会派遣委員団団長の鉢呂吉雄でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案、被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案、子ども・子育て支援法案、総合こども園法案、子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案及び社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案の審査を行っているところでございます。

 本日は、各案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、当神戸市におきましてこのような会議を催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願い申し上げます。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、全て衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。

 まず、派遣委員は、民主党・無所属クラブの理事古本伸一郎君、同じく理事松本大輔君、同じく民主党の石井登志郎君、同じく岡田康裕君、勝又恒一郎君、同じく藤田憲彦君、同じく宮島大典君、同じく室井秀子さん、自由民主党・無所属の会の理事逢沢一郎君、同じく加藤勝信君、同じく橘慶一郎君、同じく野田毅君、公明党の竹内譲君、みんなの党の山内康一君、国民新党の中島正純君、以上でございます。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 兵庫県知事井戸敏三君、日本労働組合総連合会兵庫県連合会事務局長辻芳治君、社団法人兵庫県保育協会会長小林公正君、神戸商工会議所女性会前会長藤浪芳子さん、社会福祉法人兵庫県社会福祉協議会会長武田政義君、関西大学社会学部教授松原一郎君、神戸商工会議所副会頭籔本信裕君、近畿税理士政治連盟兵庫県連合会会長徳富勲君、以上八名の方々でございます。

 それでは、まず、井戸敏三君に御意見をお述べいただきたいと存じます。

井戸敏三君 お手元に私の意見をまとめた資料をお配りさせていただいていると思います。その資料に基づいて、御説明と、意見を述べさせていただきたいと存じます。

 初めに、このような非常に国民的な関心と検討課題になっております税と社会保障の一体改革の地方公聴会、この神戸でこのように開催していただきましたこと、心から感謝申し上げたいと思います。

 そのような意味で、私どもとしましても、大変、国民生活に影響があるだけではなく、私たちが携わっている地方行政にも大きなかかわりのある事柄でもございますので、私からはかなり網羅的な御意見を申し上げることになりますが、お許しを頂戴したいと存じます。

 まず初めに、国民が将来に対して強い不安感を抱いており、不安感の解消が必要だということを掲げさせていただきました。

 兵庫県も、実を言いますと、この間の国調で、二千四百六十八人ではありますが、人口減少県の仲間入りをしてしまいました。ひたひたと人口減少の波が押し寄せてきているという状況でございます。それも、人口減少は、少子高齢化とあわせまして、地域格差の拡大という形で進んでおります。つまり、大都市はまだまだ人口は横ばいなり、ふえているのでありますが、周辺地域や農村地域が非常に減ってきている。その中で、どう地域を活性化していくかが課題になっております。

 一方で、東日本大震災でございましたような大規模災害への対策、特にこの地域では東海・東南海・南海の三連動型地震に対する対応が不可欠になっております。

 あわせまして、関西電力管内、この夏、節電一五%と言われているような厳しさがあります。再生可能エネルギーだけではなかなか達成できない課題でありますが、再生可能エネルギーの開発普及にさらに努めていく必要がある、これらを的確に進める必要があります。

 また、信頼感が揺らいでいることへの対策が不可欠ではないかと思います。

 欧州債務問題は、私は人ごとではないと考えております。EUのような、多国籍国家でありますが、ドイツひとり勝ちで、なぜEUがこのような問題を起こしたかということを考えましたときに、結局、財政調整制度がないということであります。

 日本の場合は、東京ひとり勝ちであっても、財政調整制度が機能していたはずでありますが、最近は、交付税も横ばいかカット、補助金もカット、公共事業もカットということで、地域の競争力と言われておりますけれども、結果として東京ひとり勝ち、ドイツひとり勝ちと同じ現象になっておりまして、それを調整する仕掛けをきちっと再構築していただく必要があるのではないか、このように思います。

 また、二十年間続いておりますデフレ不況対策。これは何としてでも消費税のアップにあわせて、並行して行っていただく必要があります。これがなければ、単に国民の購買力を吸い上げてしまうということだけになってしまうのではないか、このように思っております。

 国、地方を通じた財政赤字解消対策も、そのような一環として考えるべきだと存じます。

 私は、先ほど申しました、東京一極集中を是正しながら各地方を元気にしていくためには、第二の公共事業、つまり、福祉ですとか医療ですとか健康ですとかエネルギーですとか環境、こういう第二の公共事業を全国的に推進していく、このことが非常に重要だ、そのための税と社会保障の一体改革として捉えるべきなのではないか、このように主張させていただきたいと思います。

 社会保障の抜本改革の具体化に当たりましては、サービス内容の見直しとあわせて、負担のあり方も検討する必要があります。

 私は常に、胴上げ型、騎馬戦型、肩車型という言い方はミスリードすると主張させていただいております。単に年齢構成の変化をあらわしているにすぎない言葉が、いかにも若者の負担で高齢者が支えられているというようなばかなイメージをなぜ売りつけているのかということに対して非常に憤っております。私も前期高齢者の一人でありますから、若者の世話になっているわけではないという自覚があります。

 しかも、そこの表の下をごらんください。これは慶応大学の先生の試算ではありますが、就業者に対する非就業者数、一九七〇年、一・〇四、二〇一〇年、一・〇五、二〇五〇年は人口が減りましても高齢化しても一・一〇だ、こういう試算もございます。これが私は現実の姿ではないか。高齢者とそれから女性の活用が図られるべきだ、このように考えます。

 まず、年金でありますが、その次のページです。受給資格期間を短縮する。これはもう、十年と言われておりますが、さらに短くすることも検討していいのではないか。あるいは、六十歳以上の高齢者にも所得に応じた保険料を負担させ、高所得高齢者に対しては給付制限する、これが不可欠ではないかと思います。

 そのような意味で、七十五歳まで働くことができる社会の実現。七十五歳までの人たちは、介護サービスは三%ぐらいしか受けておられません。そういうことを実態として考えましたときには、勤労環境を整備して、支給年齢の引き上げをさらに検討すべきだと思います。現に、今の六十五歳は、平成六年ですが、男性も女性も平均年齢が三歳上がっております。そのようなことを考えたときの対応というのも検討の素材に上げるべきではないでしょうか。

 医療保険制度につきましては、各種医療保険制度のどこに属するかで保険料負担率が全然違います。その下の資料をごらんください。そのような意味で、私は、各種医療保険制度につきましては一本化する、このことが不可欠だと思っております。そのような意味で、一本化の方向づけをきちんと導き出した上で、それへの過程においていろんな対応が検討されてしかるべきではないか、このように思います。

 特に、高齢者医療制度につきましては、現状維持が原則なんではないだろうか。この高齢者医療制度を変えることによって運営主体を都道府県としようとする考え方もあるようでありますが、国保の構造的な問題を全く解決なしに、単に保険者をかえるだけの制度改正は絶対に反対であります。

 介護保険におきましても、やはり同様の問題があります。軽度者に対する訪問介護サービスの利用者負担は引き上げたらいかがでしょうか。あるいは、現役並み所得の高齢者の保険料の引き上げも検討したらどうでしょうか。医療保険の例に倣いまして、一割負担一律ではなくて、三割の負担率もセットしたらいかがでしょうか。あるいは、一号保険者の保険料上昇に限度を設けるとすると、それは何らかの、誰かが持たなきゃいけませんので、そのような検討もしてみるというのはいかがでしょうか。

 それから、総合こども園制度の早期確立をぜひ求めさせていただきたいと思います。

 ようやく保育に欠けるとの要件から保育を必要とする児童を対象とする総合こども園の創設に向けた審議が行われておりますが、ぜひ総合こども園制度を確立していただきたいと存じます。

 また、待機児童対策につきましても、大都市だけの問題ではないかという認識がございますが、中小都市においても見られる現象です。現に、宝塚市では九十人、明石では四十八人、芦屋市では三十人というような待機児童が昨年の四月の場合に発生して、十月にはさらに発生をいたしております。そのような意味で、一般的な制度としての取り組みが必要ではないかと存じておりますし、農村部では定員割れが発生しておりますので、総合こども園制度を活用した整理統合のできる、そういう環境整備をお願いしたいと思います。

 それから、社会保障と税の番号制度の問題でありますが、既にもう住民票のコードが現実に活用されているわけでありますので、直接個人番号による情報連携が行われるような住民票コードの活用が必要ではないか。

 それとあわせまして、個人番号カードにいろいろな情報を織り込もうという検討がされておりますが、実を言いますと、これは住民票コードを検討したときのメリットとして、我々、私も研究会の一員でありましたが、提案した話と全く同じ話をまたマイカードでもおっしゃっておられまして、もっと住民票コードを活用すべきではないか、このように思います。

 それから、地方税財政の問題に若干触れさせていただいておりますが、今回、一・五四%で、二・六兆円の地方単独事業費を見ていただくことになったわけでありますが、調査では六・二兆円あったということでありますし、地方財政自身はもうずうっと赤字を続けております。

 特に、最後のページでございますが、社会保障関係費が地方財政を圧迫しているんです。平成十五年から社会保障関係費が地財計画ベースで九兆円ふえました。地方単独施策に要する経費は七兆円減っています。一般財源も約二兆円減っています。つまり、地方単独施策を七兆円減らし、地方一般財源が二兆円減った分が全部社会保障関係費に回っているという構造であるということをぜひ御理解いただきたいと思います。

 そのような意味で、現場を担っております地方の財政に対する配慮もぜひ十分に御検討いただくことをお願いして、私の陳述を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鉢呂座長 ありがとうございました。

 次に、辻芳治君にお願い申し上げます。

辻芳治君 連合兵庫で事務局長を務めております辻でございます。

 このたびは、地方公聴会ということで、大変貴重な発言の機会を与えていただきましたことに、まず感謝を申し上げたいと存じます。

 私たち働く現役世代は、保険料拠出者であると同時に、将来の年金受給者でもあります。本日、私からは、働く仲間を代表しまして、一体改革の中で示されております年金制度改革に関して意見を述べさせていただきたいと存じます。

 さて、国民皆年金が達成されて五十年以上が経過をいたしましたが、六割の高齢者が公的年金のみで生活をしているとの調査結果があるように、年金制度は、今や国民の老後生活を支えるものとして必要不可欠な存在となっております。

 しかし、国民年金の第一号被保険者の保険料納付率は六〇%を割り、特に若年層については五〇%を割るなど、年金不信とも言える状況が起こっております。こうした状況が続いた場合、将来的な低年金者や無年金者が大量に発生することが見込まれ、厚生労働省によりますと、百十八万人の無年金者が発生するとの推計がなされておるようでございます。こうした現状で、本当に国民皆年金が達成したと言えるのでしょうか。

 また、労働者全体に対する非正規労働者の割合が三分の一を超え、ワーキングプアの増加、格差拡大が進んでおります。しかしながら、厚生年金は基本的に正規労働者を念頭に置いた制度となっており、結果として、厚生年金に入ることができず、国民年金に加入せざるを得ない雇用労働者が大量に発生をいたしています。

 真の国民皆年金制度を実現するためには、年金制度を働き方や雇用形態に中立公平なものにすると同時に、その機能を時代の変化に応じて今日的なものに強化する必要があります。そして、公平で機能強化された年金制度が将来にわたって持続可能であらしめることこそが政治の責任なのではないかと思います。

 そうした観点でいえば、今回の社会保障・税の一体改革で実現を目指す年金制度改革には、年金制度の公平性確保と機能強化、そして持続可能性を確保するための改革項目が盛り込まれており、確実に実現をすべきであると考えます。具体的には、短時間労働者への社会保険の適用拡大や基礎年金国庫負担二分の一恒久化といった項目です。今回の改革で、真の国民皆年金が達成できるとまでは言えませんが、その第一歩として確実に改革を断行していただきたいと考えるところでございます。

 こうした視点に立ち、残された時間については、一体改革の関連法案として国会提出されております年金機能強化法案と被用者年金一元化法案について、基本的に賛成の立場から、その理由と意見を述べたいと思います。

 まず第一に、年金機能強化法案に盛り込まれました短時間労働者への社会保険の適用拡大についてでございます。

 先ほど申し上げたとおり、現在の社会保険制度は、週労働時間三十時間以上の労働者にしか適用されないなど、正規労働者を念頭に置いた制度となっております。こうした働き方や職種によって加入できる社会保険制度が異なる点というのは、私ども働く立場からして全く納得ができません。不安定雇用の勤労者が年金や医療保険といった社会保障までもが正規労働者より不十分というのは、社会的公正性に欠けるのではないでしょうか。

 こうした現状を放置しておくと、将来の無年金・低年金者、そして生活保護受給者を多く生むことにつながります。また、企業の社会保険料負担は、短時間労働者を多く雇用する業種とその他の業種との間で社会保険料負担の公平性が確保されておらず、安上がり雇用の増大を招いているなど、こうした観点からも見直す必要があります。

 今回の法案がまとめられるまでの間、連合は、原則全ての労働者への社会保険適用を目指し、政府・与党への働きかけを行ってまいりました。

 今回の法案では、短時間労働者独自の要件として賃金や企業規模要件が設けられ、約四十五万人を対象とした適用拡大となります。この結果については、連合が目指してきた全ての雇用労働者への社会保険適用には至らなかったという点においては残念ではございます。その意味では、今回の法案で示された適用拡大は十分であるとは言えませんが、我が国の社会保険制度において長年の課題であった適用範囲の見直しに風穴をあける第一歩になるものです。

 したがって、ぜひとも今回の法案を確実に成立させていただきたい。そして、今回の法案を第一歩として、施行三年後を目途に対象を見直すと法案に明記されているよう、全ての雇用労働者への社会保険適用に向けて、さらなる改革を進めていただくことを求めたいと存じます。

 また、冒頭、将来の無年金者は百十八万人に達すると推計されているというふうに申し上げました。

 この無年金者対策の観点からは、今回の強化法案に盛り込まれております受給資格期間の短縮、井戸知事からもございましたけれども、これは非常に重要な政策項目であると考えております。具体的には二十五年から十年ということでございまして、無年金者対策としてふえ続ける高齢の生活保護世帯への対応としても寄与いたしますし、納付した保険料を極力給付に反映させるなどの観点から重要であると考えます。

 続きまして、基礎年金国庫負担二分の一恒久化についてでございます。

 これまでの間は、埋蔵金などの活用を通じて何とか維持をしてきたというのが現状でございます。ここ数年、毎年のように、予算編成時に基礎年金国庫負担二分の一財源確保が大きな問題となってきました。国民の老後生活の基盤とも言える年金制度の財源をこのような不安定な状態にさらすことは適当でないことは明らかではないでしょうか。政治の責任として、国庫負担二分の一恒久化とその財源確保のための税制抜本改革を確実になし遂げていただきたく、強く求めたいと存じます。

 次に、被用者年金一元化につきましても、ぜひとも実現をすべきと考えております。

 雇用の流動化や働き方の多様化が高まっている今、ライフコースや職業選択に影響を与えない公平な社会保障制度を構築すべきであり、職業によって所得保障の内容や保険料率が異なる現状の被用者保険制度は適当ではありません。年金制度の公平性を確保し、信頼性を高めるためにも、ぜひとも今回の一体改革の中で被用者年金の一元化を実現していただきたいと考えます。

 最後になりますが、私たち連合は、本日、複数の課題を指摘させていただきましたが、今回の法案が成立するだけでは、公平性と機能強化、持続可能性の確保が完全に達成できたとは言えないと考えております。

 しかし、真の国民皆年金制度実現に向けた第一歩として、今回の年金改革法案を含む一体改革関連法案を成立させ、さらなる改革に向けて、与野党の先生方の論議を進めていただくことを強く望みます。

 なお、本日は年金制度改革を中心に発言させていただきましたが、一体改革の中では、子ども・子育て新システムの実現も重要です。仕事のため結婚や出産を諦める、あるいは働きたくても働けない人は少なくありません。これは、労働力人口減少を迎える日本にとって、あってはならないことではないでしょうか。新システムは、財源と政策を子育て支援等に振り向ける大きなチャンスですので、ぜひともなし遂げていただきたいと思います。

 以上をもって、私の発言を終わらせていただきます。ありがとうございました。

鉢呂座長 ありがとうございました。

 次に、小林公正君にお願いいたします。

小林公正君 まず初めに、今公聴会に意見を述べさせていただきますことを感謝申し上げます。

 私は、保育現場の立場の者として、子ども・子育てに関する現場の実態を踏まえながら、子ども・子育て三法案並びに子ども・子育て新システム案について、基本的な考え、あるいは思い、そしてまた要望などを申し述べたいと思っております。中には大変失礼なことを申し上げることもございましょうが、お許しいただきたいというふうに思います。

 まず、今回の社会保障と税の一体改革の中で、その一つに子供について加えていただいた、老人、医療、介護に加え、子供というものが加わったことというのは大変意義があるというふうに思っております。さらにまた、今回の子ども・子育てに関する政府案は、もともと自公政権時代につくられたその流れから、土台に加え、そして今回、特にワーキングチームの中で、地方自治体あるいは経済界、幼稚園、保育園の関係者が一堂に議論されたということも大変意義が大きいものではないかというふうに思っておるところです。

 さて、この議論の当事者である子供でございますが、意見を子供は述べることもできません。また、子供たちには参政権もないわけでありまして、いわば社会的弱者の立場とも言えると思います。私たち保育関係者は、子供の代弁者としても発言したいというふうに思っているところでございます。

 そのことからも、今回の議論は、子供にとっての最善の利益を求めるということが原点であり、ややもすると、大人のそれぞれの立場の都合であったり、あるいは政治の都合であったり、あるいは業界の都合では進めるべきでない課題であるというふうに理解しております。特に、大変失礼なことではございますが、子供たちのこのことにとって、政争の具にしてほしくはないし、ひいては、この議論というのが将来の日本の姿につながるものであるということを意識しながら、党派を超えた議論をぜひお願いしたいところでございます。

 新システム案は、基本理念に、全ての子供への良質な生育環境を保障する云々とございますが、今回、全ての子供とされたということを、我々保育関係者も真摯に受けとめなければならないというふうに思っているところでございます。保育所の利用要件も、保育に欠ける子から保育を必要とする子と拡大されました。

 保育制度が開始された時代と子供を取り巻く社会環境は変わり、子供たちの生育は厳しい環境に置かれております。少子化に相反して保育ニーズは高まり、また、保育を必要とする子供たちが増加している現状でございます。当然、子供は保護者や家族のもと育ち、保護者がその責任を負うということが第一義ではあると思います。しかし、今日の日本社会は必ずしもそれが望めない厳しい実態もあります。虐待などにつながる課題ともなってございます。

 一方では、保護者や家族のあり方についての議論も当然必要ではありましょうが、何よりも、全ての子供たちが公平な生育環境を保障されるために、新システムの基本理念に沿った少子化、待機児解消に取り組む新しい仕組みを構築しなければならないと考えております。

 次に、保育現場からでございます。

 ゼロ歳から五歳までの子供たちを預かる保育現場では、子供の育ちの保障、いわゆる保育、教育の実践、そして多様な保育サービスの提供、それから保護者の子育て相談対応、さらには地域の子育て相談、その他、いわば就学前の子育てに関するデパートのような状態であります。保育所の抱える負担と責任、さらに期待はふえるばかりでございますが、伴う保育者の就労環境は改善されておりません。中でも、今や人材確保は深刻な状態になりつつあります。

 テレビでも最近見たんですが、学生時代の、特に女性の憧れの職業、なりたい職業というのがいまだにベストファイブ、この前は見ましたら二位でございました。しかし、その学生たちが専門学校あるいは資格を取る学校に行きまして、そして就職となりますと、この保育現場の厳しい労働条件あるいは低い給与を知ります。特に、保育者の月々の平均給与は二十二万円、全職種の平均よりも約十万円ほど低いとされております。これによりこの有資格者たちが他の職場に就職する現状がそれをあらわしているところでございます。

 職員の処遇改善、配置の改善、さらには研修を受けやすくする体制など、これらは全て、子供にとっての保育の質の向上、改善につながる内容でもございます。待機児の対策のために建物ばかりが言われますが、実は、建物があってもそこに人がいないのでは、待機児の解消につながりません。量的拡大とともに人材の確保が不可欠な要件となっているわけでございます。

 次に、財源の確保について、お願いを含めて申し上げます。

 日本の子供に使う国の予算は、先進国の中でかなり低いということが言われております。また、日本の社会保障費を老人と比較した場合、十一対一とか聞いております。子供に予算をつけることは日本の未来への投資でもあり、そのための財源を確保しなければならないのは政党を超えて一致した考えではないかというふうに理解しておるところでございます。

 新システムでは一兆円が必要とされております。そのうち〇・七兆円は消費税で、〇・三兆円の財源確保についてめどがついていない。めどがついていないならば新制度は進められないというふうな過日の国会での特別委員会での議論がございました。〇・三兆円のめどがつかないから何としてもめどをつけるというふうな、確保するための議論をしていただきたいというふうにお願いしたいのでございます。できれば、七千億、〇・七兆円に〇・三兆円加えていただくことにより、先ほど申し上げましたように、それが質の改善につながるというものでございまして、何としても、めどが立たないなら進めないのではなくて、最低〇・七兆円でも結構でございます、確保をしてもらうこと、そしてまた、十分な財源確保と同時に、建設的な協議を進めていただき、法案成立を目指していただくことをぜひともお願いしたいと思います。

 最後に、要望でございます。

 初めに述べましたとおり、今回の法案に関する議論は、長年積み重ねられてきたものの結果だというふうに理解しております。今の政局の動向は全く不透明でありまして、しかしながら、この問題は、党派を超えて、知恵を出し合って、先送りだけは必ず避けていただきたい課題でございます。

 また、新システム案は検討課題も確かに抱えているところもございます。そしてまた、今のこの新システムの法案が満点とは私たちも理解しておりません。しかし、逆にまた、いきなり満点状態にするということは現実的に無理があろうかというふうに思います。ただ問題を抱えているということでむやみに危惧したり足踏み状態をするのではなくて、あすを担う子供たちのために、子供にとってよりよい仕組みのまず一歩を踏み出していただきたいというのが我々の熱望するところでございます。どうかよろしくお願いしたいと思います。

 最後に、添付資料をつけておりまして、今回の新システムに関して議論される項目について所見をつけております。また後の時間でございましたらお願いしたいと思っております。

 以上でございます。

鉢呂座長 ありがとうございます。

 お手元に資料があると思いますので、また御参考にしていただければと思います。

 次に、藤浪芳子さん、お願い申し上げます。

藤浪芳子君 ただいま御紹介いただきました藤浪でございます。

 神戸商工会議所女性会の前会長、そして経済団体でワーク・ライフ・バランス委員会の委員長を拝命しております。また、本業は工業関係の小さな制御装置メーカーでして、先代から引き継いだ会社を三十二年間、潰さないように励んでまいりました。

 個人的には、なぜ働くのか、なぜ一生懸命貯蓄をするのかということに関しましては、すなわち、なぜもらったお金を全部使わないのかということに関しまして、老後の備えと病気のとき、この二点です。この二点の問題がなければ、私は、もらったお給料は全部使っているだろうなというふうに考えるんですけれども、その分、税と社会保険で国家が有意義に使っていただけるということに関しては、非常にありがたく思っております。

 税につきまして一番大切なことは、公平感に尽きるのではないかと思っております。

 経営者の観点からは、源泉税、市県民税、また各種保険料、介護保険も含めました社会保険料、雇用保険料は、ある意味で国や地方に納めなければならない税の一種だと考えております。今回、消費税の値上げが大きな問題として国民に投げかけられていますが、これらの直接税や保険料率がいつの間にか何度も上げられていることに対して問題視されていないことは、常々不思議に感じておりました。

 紙切れ一枚の通達で料率が二、三カ月後に上がります。特に、社会保険料は労使折半ですが、ほとんどが会社負担の労働保険料は非常に高く、重税感は否めません。社員に対しては、平均的に当社では給与総額に対して各種税金と社会保険料を足しますと約二五%ほどの負担になり、せっかく賃上げをしても手取り額は少なく、やはり負担が徐々に大きくのしかかっていることを感じております。

 しかし、この現実を、日本古来の相互扶助の精神、また、日本社会の人口構造の変化に対応するために、国民の義務として受容しております。

 ここで、不公平感として、第一に、税金や保険料を払わない人たちがいること、第二には、官民の不平等な年金制度がなかなか改まらないことが挙げられます。

 被用者年金一元化は、何度も国会の場に上がりながらずるずると引き延ばされ、やっと平成二十七年の十月施行予定とのことです。平均的に標準報酬総額、退職金等は民より官の方が一三%以上多いとの数字ですが、中小零細企業の実態数字を含めますと、その差は驚くほどになると思われます。その上、公的年金制度における公務員の優遇を指摘されながら十年以上も放置することは、とても国民が新たな増税に協力したい気持ちにはなれません。公務員宿舎の問題も、民間では考えられないことです。

 各会社には社員からの徴税、納税の義務を押しつけ、また、負担もふえる中、制度を決める官こそがまず既得権を手放し、民が不公平感をできるだけ持たないようにすることが何よりも優先されることだと思います。

 消費税の値上げに関しましては、国の財政事情を鑑み、政治家を初め専門家の方たちがあらゆる方面から考えて出された結論です。誰も喜んで税金を払う人はいないと思いますが、個人的には、世界の中で日本の立場を維持し、世界経済のバランスをとるために必要だと考えています。

 値上げに際してお願いしたいことは、集めたお金をいろいろな名目をつけて、いわゆるばらまきをしないことです。例えば、子ども手当。名前は次々変わっているようですけれども、中身は同じだと思います。少子化を防ぐ手だての一つとして子育て家族には随分喜ばれたようですが、結果として思惑どおりであったのでしょうか。

 給食費を払わない家庭の率は下がっていないようにも聞いております。また、生活保護世帯の増加に見られるように、強く生きなくても政府が何とかしてくれる、行政が手を差し伸べるべきだとの風潮は、古来日本人の勤勉さ、正直さに反するものだと思っております。私自身、孫が三人いますが、いただいたお金は貯金に回っているようです。

 また、都会では待機児童が多く、働きたいお母さんはわらをもつかむ思いで子供たちを保育園に入れるのを待っています。餓死寸前の人たちには目の前のお米が必要ですが、女性が社会参加でき、安心して子供を産むことができる環境の整備の方がより大切だと思います。これからの社会は、女性の労働力なくしては成り立ちません。

 また、パート労働者の社会保険加入のハードルは下がりましたが、一定期間以上働きたくない女性がまたふえるのではないかと心配しています。何より、税金面で夫の扶養家族の範囲を超えたくないという理由で、有能な女性が一定時間以上働くのを拒否しています。給料を上げ、もう少し働く時間を延ばしてほしいとお願いしても、税金をたくさん取られるのではとの理由で断られます。年金や保険の財政事情が最優先されるのでしょうが、働く女性が不公平感なく、その能力を社会に還元できるような制度をお願いします。

 日本は資源のない国ですから、人がその能力を十二分に発揮しないと世界の中での優位性を保つことはできません。最近の超円高で潤っている業種も多いと思いますが、当社は、ドル安に続き、ユーロが数年前に比べて六、七割下がった状態で輸出で戦っております。どれだけ税や社会保険料の負担がふえても、日本国内で事業を継続し、雇用を継続する選択肢しかない中小企業は、世界の中での日本の揺るぎない地位の確保と、子々孫々に至るまで豊かで幸せな生活をしてほしいと願っております。

 変化の中、何もしないことが一番の罪です。スピードを持って国家国民のために御指導をお願いいたします。

 以上です。

鉢呂座長 ありがとうございました。

 次に、武田政義君にお願い申し上げます。

武田政義君 社会福祉協議会の会長という立場で一言述べさせていただきたいと思います。

 まず初めに、社会福祉協議会というのが、実は県民の皆様方あるいは市民の皆様方にどれだけ知られているかということであります。ぜひこの機会に委員の皆様方にも御理解いただきたいというふうに思っておるところであります。

 御案内のとおり、社会福祉協議会は、都道府県及び市区町村に例外なく設置されておる組織でありまして、福祉事業の経営者から障害を有する当事者まで、さらに民生委員、児童委員、あるいは自治会、婦人会、老人会、子供会といった地域の組織、そして医師会、社会福祉士、あるいは介護福祉士でありますとか、福祉専門職の団体まで、幅広くその構成員として組織をされた協議会であります。地域福祉の推進ということで、あらゆる角度から生活課題あるいは福祉課題に取り組んでいるところであります。

 そういう団体でございますが、今回の一体改革につきましては、少子高齢化が進む中、現行制度を維持するための自然増が毎年一兆円を生ずるという状況を考えるだけでも、必要な財源が不足していることは歴然としておるわけであります。国民の暮らしの安心と安定が保障される社会基盤として誰にとっても必要不可欠なものであるという観点から、今回の一体改革、安定的な財源に裏打ちされた社会保障、社会福祉制度の確立は緊急の課題であると受けとめているところであります。

 しかしながら、十年前に導入された介護保険制度を見た場合、従来、家族を中心に行われてきた介護というシステムが、この制度の導入によって介護保険というシステムに切りかえられた結果、いわば伝統的な心の持ちよう、あるいは家族の支え合い、こういったものが大きく変わってしまったことは周知のことでございます。

 このようなことを考えますと、今回の柱の一つであります子ども・子育て新システムは、子育ての主体を親あるいは家族から社会全体にともいうべき要素が含まれておるわけでありまして、また再び、介護保険と同様、家族あるいは地域の支え合い、こういったものからかなり大きな心の持ちようの変化をもたらすものではないかというふうに考えているところでありまして、ここの制度化に当たりましては、実施段階で国民的な周知あるいは合意のための時間、説明が何よりも必要ではないかというふうに考える次第であります。

 きょうは、阪神・淡路大震災の経験等も踏まえ、そして、日ごろの社会福祉協議会の活動を通じて感じておることをお伝えさせていただきたいと思います。

 地域福祉の課題ということで、現在、虐待、ニート、あるいはDV、孤独死というふうな課題が次から次と出てきておるわけでありますけれども、こうした事態は、行き過ぎた個人主義あるいはきずなの喪失と言われるような状況で、社会的な孤立がその背景となっていると言われておるわけでありまして、無縁社会という言葉でも表現される現代の社会状況に、これまでの既存制度だけでは対応し切れないさまざまな問題が表面化しているということで、これからの社会保障のあり方を論ずる場合、このような心の持ち方あるいは伝統的な社会のあり方についても忘れることなく、それを含めた議論が必要ではないかと考えているところであります。

 二月の十七日に閣議決定されました社会保障・税一体改革大綱を見ましても、その中での特別部会、生活支援戦略について議論が行われているところでありますけれども、こういった議論の中でどんなに新しい制度、システムがつくられたとしても、必ず制度と制度のすき間、ここを埋めるものが何かということを忘れてはならないと考えております。やはりこの制度のすき間を埋めるのは、地縁であり、血縁であり、支え合いであると考えておるところでありまして、それをお世話しているNPO、ボランティア、あるいは社会福祉協議会等々の福祉活動であろうかと考えているところであります。

 地域の福祉の担い手として我々は存在をしておるわけでありますけれども、阪神・淡路大震災におきましても、人命を救ったのは、やはりコミュニティーの力でありました。見ず知らずの人が助け合うというわけにはいきません。有事の際の大きな力になるのも、コミュニティーの力であります。さらに、大震災を契機に、LSAでありますとか、グループハウスでありますとか、町の保健室といったような仕組みが創設、活用され、兵庫発の取り組みということで、このたびの東日本の被災地においても導入をされるというようなことで、今お役に立っていることは御案内のとおりであります。

 このような災害を通じて得た人と人との支え合いのシステム、あるいは、大がかりな国の制度ではありませんけれども、地域での経験が生かせるような、そういう取り組みをも抱き合わせで、この一体改革を進めていただきたいというふうに思うわけであります。

 市町合併等が進む中で、自治体の数が兵庫県でも半数以下に激減いたしました。その結果、社会福祉協議会も同様に半数以下に激減をいたしております。このことが、結果として、地域コミュニティーのポテンシャルを低下させる大きな一因となっておることは紛れもありません。

 このコミュニティー、地域福祉の推進役であります社会福祉協議会をいま一度見直ししていただきまして、そこで活躍をいたしておりますコミュニティーワーカー、ボランティアコーディネーター、あるいは地域福祉コーディネーターといった専門職の育成と確保といったものにつきましてはぜひ評価をいただいて、さらに、日常生活自立支援事業でありますとか生活福祉資金貸付事業、あるいは、要援護者を支える相談支援の専門職、こういったものについて、さらには成年後見制度を含めた地域の総合的な権利擁護体制の整備につきましても、抜本的な財政支援策を講じていただきたいというふうに思うわけであります。

 東日本大震災におきましては、社会福祉法人、福祉施設、あるいは民生委員、児童委員、社会福祉協議会が大きな力を発揮したことは記憶に新しいところでございます。とりわけ、ボランティア活動につきましては、種々の団体や個人が主体的にさまざまな活動を展開したところでありますが、その活動基盤を支えたのは、現地の災害ボランティアセンターを設置した被災地の社会福祉協議会であります。これらを支援した全国の社会福祉協議会。全国の都道府県、市区町の数だけ存在する社会福祉協議会が災害等の有事の際に結集して果たす、これも安心、そして安全を確保する上で、国のおやりになる福祉システムあるいは救済システムとは別に、民の力で安心、安全を確保していくというシステムでございますので、これらについても恒久的な制度化を図るべきではないかと考えている次第であります。

 また、民生委員につきましては、全国で二十三万人の方がおられるわけでありまして、孤立死の対応としての見守り、こういったものもやっておられますが、一様に聞こえてきますのは、行き過ぎた個人主義、その結果生まれた個人情報保護法の問題であります。現場の声を聞いていただきまして、適切な運用のもとに、要支援者、要援護者の情報が適切にこれらの地域での担い手の皆さん方に伝えられることを配慮願いたいというふうに思う次第であります。

 このような中で、このたびの一体改革について、金銭面あるいは経済面での支援という面ではこの制度改革に期待は大きいところでありますが、この制度を実施することによって、先ほど来出ておりますように、国民の側で甘えが出て、ここの部分については我々が汗をかく必要がない、助け合う必要はない、あるいは、従来から培われてきたよき日本の伝統である家族そして地域での支え合い、こういったものが失われていくことに懸念を持つわけであります。

 先ほど申し上げました阪神・淡路大震災で、北淡町の被災地は、瓦れきの中に埋められたお年寄りあるいは家族の皆さん方が、近所の方々によって、どの部屋に住んでおられたか、どの部屋に寝ていたかということまで顔見知りの環境にありましたので、被災直後から早速救援活動を開始し、そして多くの命が救済されました。これからの社会にこのようなことが可能になるかどうかということを考えますと、やはり、人と人とのつながり、あるいはお互いの存在を認め合う、こういった運動も忘れてはならないのではないかと考えるわけであります。

 そういう意味で、兵庫県社会福祉協議会、ことしから、ストップ・ザ・無縁社会ということで、今の社会のあり方でよいのかどうか一度立ちどまって考えましょうというキャンペーン運動を展開することといたしております。経済的な問題あるいは制度的な問題とは別に、心のありようについて、お互いを認め合い、支え合い、そしてみんなでつくる地域福祉ということで、キャンペーンをやっていく所存でございます。

 政府におかれましても、このような草の根の運動についても何らかの形で、画一的なものではなしに、それぞれのコミュニティーで展開するものに弾力性のある支援、こういったものをぜひお願いしたいということを申し上げて、私の陳述を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

鉢呂座長 ありがとうございました。

 次に、松原一郎君にお願いいたします。

松原一郎君 ありがとうございます。

 関西大学社会学部で社会福祉の研究と教育に携わっておる反面、兵庫県政、神戸市政等の、福祉だけではなくて住宅や教育、あるいは男女共同参画の委員会、審議会で政策立案並びに政策評価に携わっております。

 それでは、早速ですがお話しさせていただきます。

 社会保障と税の一体改革、以下一体改革と略しますが、これに対する私自身の姿勢は、いたし方ないという消極的賛成であります。現代の社会保障制度の枠組みをそのまま踏まえて財源確保の手だてを打ったというのが実態であり、国の税収不足を補い、借金の増加を少しでも抑えるという緊急避難的措置はとらざるを得ないというふうに考えます。

 とはいえ、消費税増税を柱とするフィスカルポリシー、財政が中心で、社会保障や広い意味での福祉政策、つまりソーシャルポリシーが、一体と言われる割には提示されておりません。

 ちなみに、ソーシャルポリシーとは、資源の再配分システムとしての福祉国家における政策体系及び資源の管理システムを意味し、その主要な領域として、健康医療、所得保障、雇用、住宅、教育、そして社会福祉、狭い意味での社会福祉ですが福祉サービス、これがあります。そして、ソーシャルポリシーは、福祉国家の基本スタンスを示し、国によってもちろん違いはあるものの、社会的公正さの実現や社会統合、インテグレーションを、文字どおりポリシー、政治理念として掲げていることが通常です。

 一体改革において、その基本的な考え方として示されている論理、これは資料二を見ていただいたらわかるんですが、日本の社会経済の大きな変化、具体的には、ここでは六つほど挙がっておりますが、例えば、人口の高齢化・現役世代の減少、非正規雇用の増加など雇用基盤の変化、家族形態や地域基盤の変化、経済成長の停滞等々の大きな変化を踏まえて改革する、こういう論理の流れです。

 ところが、現行の社会保障、社会福祉の体制は、それぞれの四点について見れば、一、人口が高齢化せず、少子化もそんなに進んでいない。二、正規労働者が圧倒的で、その上、企業の福祉も行き届いている。三、男性が主たる稼ぎ手となり、女性が子育てや高齢者、障害者の介護を担うという性別役割分業型の家族制度が存続している。四、経済の安定と成長が望める等々、こういうふうな諸条件を前提とし得る時代における制度設計でありました。今や、この限界が明らかになったことで、このような前提を覆した上での新たな制度設計こそが、本来の意味での改革の名に値するものでありましょう。

 いま一度、私たちは、日本の福祉国家の歩みを自省的に捉え、今日の臨界点を認識し、及び、あすの社会像を想定した福祉社会の体制、福祉社会レジームを構築する必要があります。

 第二次世界大戦後の長期の経済成長を基盤に、完全雇用による世帯主の安定した稼働収入と家族内の役割分業を前提にした福祉制度は、急速に過去のものとなりつつあります。ほとんどの先進国は、二十世紀型の福祉国家体制を抜本的に見直すプロセスに入ったのにもかかわらず、日本はその作業を行ってこなかったと言えるでしょう。男性稼ぎ主の安定雇用と依存できる標準的な家族という条件が大きく損なわれた今日、そのような社会変動に合致した社会保障、社会福祉の制度へと根本から改革しなければ、財政の帳尻を合わせたところで、日本社会の持続的な発展は望めないでしょう。

 本来、社会福祉制度は、個別の制度を増改築して構成するものではなく、あるべき社会像について国民の選択とコンセンサスが必要であり、これに基づいてそれぞれの国の福祉国家が特徴づけられることになる、社会福祉学エンサイクロペディアの引用ですが、そういう立場に私も立ちます。

 一体改革は、財政中心にとどまっております。かつ、個別の増改築をしたということでもあります。二十一世紀の日本の社会像を選択したくとも、それが提示されていないという限界を有していると考えます。

 国民会議などでこの議論を早急にすべきだと提言いたします。資料一にありますように、既に今まで大変な積み重ねがありますので、これまでの議論の積み重ねで一定の収れんを得てきた、例えば社会保障改革に関する有識者検討会報告を活用することで、一からの作業を省くことが可能となりましょう。

 この検討会で座長を務めた宮本太郎氏は、社会保障の政策理念、政策手段、政策主体の転換は不可避だとして、次のように述べております。第一に、社会保障の理念について言えば、所得保障中心の発想から、参加保障中心の考え方への転換である。第二に、社会保障の手段について言えば、現金給付からサービス給付への転換である。第三に、再配分の理念と手段の転換は、その主体の転換を促す。

 先進国が二十一世紀型のポスト産業社会下の福祉社会像を模索し出したと先ほど述べました。これは単に、失業や貧困がふえた、グローバル経済下のそういう現象に対する危機意識だけではありません。むしろ、社会経済の大変動の中、国民、市民が社会への参加や権利の行使に問題を生じ、これによって社会としての連携や統合に危機的状況が立ちあらわれているということへの取り組みにほかなりません。

 EU、ヨーロッパ共同体では、社会的排除の緩和をソーシャルポリシーとして前世紀末から既に前面に掲げ出しております。社会的排除というのは、労働市場への参入が排除されている、あるいは家族や地域社会という社会の資源あるいは制度から排除されている、さらには福祉国家のさまざまな制度への参入が阻止されている、こういう状態を示しております。排除を受けている人々と参入し得ている人々の間にあるその格差こそが、持続し得る社会にとっての大敵だというふうに私は考えております。

 今回の一体改革でも、中間層を豊かにしていくと言われておりますが、従来、中間層が豊かに膨らんでいった気球型の社会が、上下に二分された砂時計型の社会へと変質し、この分裂こそが日本社会をますます液状化させ、不安定化に拍車をかけます。福祉国家への諸制度への参加の困難、あるいはその根底にある政治的権力のなさ、パワーレス、これをむしろ社会的排除の大きな特質として見るべきではないでしょうか。

 その点では、資料三にありますように、「社会的包摂政策を進めるための基本的考え方」、一の「基本認識」や、(一)の「戦略的に取り組む必要性」の中で丸が二つありますが、特に二つ目、「国民一人ひとりが社会のメンバーとして「居場所と出番」を持って社会に参加し、それぞれの持つ潜在的な能力をできる限り発揮できる環境を整備することが不可欠。」等々書いておりますが、先ほど私が申しましたように、福祉国家の諸制度への参加の困難、そしてその根底にある政治的権力の少なさ、パワーレスを問題として捉えるのではなく、むしろこのように、心理的かつ人間関係上の孤立へと矮小化している我が国での社会的排除観に危惧を覚える次第です。これでは、格差社会を是正したところの新たな社会像というものが導き出されるはずがありません。

 最後に、兵庫県政や神戸市政などに政策家としてかかわっている立場から一言申し上げます。

 ポスト福祉国家像の欠如した中で、県や市のさまざまな領域で政策を立案していくというのは本当に現場での大変な困難が伴っております。個々の計画は、いわばマニュアル等々がありまして、おりてくるんですけれども、大きなこういう政治理念、これが国民的な選択、そしてコンセンサスを経ていない中で、一自治体でどんなふうに展開するのかということに危惧を覚えるわけです。

 また、今回のこの一体改革は、果たしてどのような雇用改善をもたらすのでしょうか。そして、二十一世紀においてどのような権利と義務を国民にみずから示しているのでしょうか。等々、この一体改革を受けて地方での政策化を図るというときには、大変な、難しい答え、答えがなかなか見出しにくいという状況に変わりありません。

 国政への不信がよぎる中、それでも、否、そうだからこそ、住民の生活課題の緩和と格差社会の超克へ我々市民がその知恵とエネルギーを結集して、未来市民にすばらしい社会を残せるよう、努力を続けたいと考えております。

 以上です。ありがとうございました。

鉢呂座長 ありがとうございました。

 次に、籔本信裕君にお願い申し上げます。

籔本信裕君 まず、この公聴会に意見陳述の機会を設けていただきまして、ありがとうございました。

 商工会議所では、社会保障と税の一体改革につきまして、将来に問題を先送りしないために、社会保障制度の持続可能性の確保を最優先課題としながら、給付の重点化、効率化を実行して、財政健全化、経済成長の実現など総合的に取り組むべきであるというふうに考えております。また、消費税の引き上げにつきましては、デフレの脱却、景気や経済成長、あるいは中小企業経営を最大限阻害しないよう、タイミングや幅や仕組みは慎重な対応が必要であるというふうに考えております。

 現在の議論では、社会保障給付の機能強化が優先されまして、痛みを伴う給付の重点化や効率化を図る多くの項目が先送りにされている感が否めません。消費税率の引き上げの前に、税と保険料の国民負担率あるいは給付と負担とのバランスなどを明確にして、給付の重点化、効率化を徹底することが大前提であります。

 具体的には、年金では、今回の政府案では三年間でいわゆる特例水準の解消を図ることとなっており、高所得者への給付額の見直しも織り込まれておりますけれども、特例水準の解消後は、デフレの脱却が焦眉の急でありますけれども、たとえかなわなくとも、マクロ経済スライドを実施すべきであると考えております。

 一方、負担面を見ますと、健康保険では、主に中小企業が加入する協会けんぽの保険料率は毎年引き上げが行われ、事業主負担に大きく依存した現在の社会保険料体系は既に限界に達しており、協会けんぽへの国庫補助率の早期引き上げが必要です。

 また、短時間労働者の社会保険適用拡大や子ども・子育て支援に係る拠出金率引き上げにおいても、中小企業経営へ大きな影響が及ぶことが懸念されまして、その見直しや配慮が必要であります。

 財政赤字や社会保障給付費の伸びを考慮いたしますと、消費税引き上げによる財源措置も、先ほど申し上げました対応を図っていただいた上ではやむを得ないと言えますけれども、同時に、徹底的な身を切る行財政改革、例えば、国会議員の定数削減を初め、公務員制度の改革、地方分権の推進による二重行政の解消など、その具体策を示し、早急な断行が不可欠であります。

 さらに、内外経済の状況等を踏まえ、引き上げに伴う景気の下振れリスクをカバーできる相当規模の景気経済対策の実施が重要であります。特に、中小企業に対する負担軽減策、中でも円滑な価格転嫁の万全な確保が求められます。

 日本商工会議所等中小企業関係四団体による調査では、消費税引き上げが実施された場合、売上高五千万円以下の小規模零細企業の六〇%以上が税の価格転嫁をできないことが見込まれ、企業規模が小さければ小さいほどその状況は一層困難になると推測されます。国は、まず過去に講じられました価格転嫁対策を全て行った上で、消費税が価格に転嫁されるものであるとのメッセージを取引上立場の強い消費者や大企業に対して徹底的に配信すべきであります。

 なお、一般消費者向けの価格表示につきましては、取り扱い商品、サービスや業態によってさまざまな意見があるものの、消費者にわかりにくくなることによるトラブル、混乱、システム変更によるコストを懸念いたしまして、現行の総額表示が望ましいとの意見が多く寄せられております。

 今後の一体改革議論や運営に当たりましては、財政規律を無視した機能強化ばかりを先行させることのないようにしていただきたいと思っております。また、企業に過度な負担やしわ寄せが及ばないよう、実際に必要な対策を講じていただくようあわせてお願いいたします。

 現在の我が国製造業を取り巻く経済環境は、超円高、電力不足など六重苦と言われておりまして、企業の大小を問わず、海外での事業展開へ目を向けざるを得ない状況にあります。国内産業の空洞化の回避、国際競争力強化の観点から、中小法人の軽減税率を含む法人実効税率をアジア諸国並みへ引き下げを強く望みます。

 また、国内に残る中小企業にとっては、相続税の課税強化は事業承継の障害となり、雇用確保や、例えば第二の創業といった経営革新の観点からも、さらなる事業承継税制の拡充が必要であります。

 それから、社会保障の関連で申し上げますと、医療、介護、保健は成長分野であり、社会保障の充実をコストとしてだけではなく、将来への投資として位置づけ、雇用創出につなげると同時に、企業などの市場参入を促す支援策などを検討していただくよう要望いたします。

 神戸では、阪神・淡路大震災からの復興プロジェクトといたしまして、神戸医療産業都市構想を進めてまいりました。現在では、世界的な医療研究機関や二百社を超える医療関連企業、四千人を超える研究者や企業スタッフが集積するなど、着実に進展しております。

 また、当地では、整備を続けております世界最速のスーパーコンピューター「京」も秋には本格運用を始める予定で、そのシミュレーション科学をも活用いたしまして、再生医療、先制医療の実用化を進め、医療コストの削減にも寄与することとしております。

 なお、当地区は、御承知のとおり、大阪、京都とともに関西イノベーション国際戦略総合特区として国の特区認定を得ております。

 我が国の医療産業は、内視鏡を初めとした診断系機器では世界シェアを誇っておりますが、他国の開発もスピードアップしており、すぐれた技術を持つ中小・中堅企業を積極的に医療分野に誘引し、国際的な競争力をつけなければ、シェア確保はできません。しかし、医療産業分野は、医事法や薬事法、臨床試験や創薬審査など、さまざまな法律や規制が多数存在し、資金力や人材が不足する中小企業やベンチャー企業の参入にとって大きな障壁となっております。

 特区内では、こうした企業が医療及びその関連産業へより容易に参入できるよう、法律や規制の緩和とともに、税制措置も含めた大胆な環境整備を申請しておりますので、御理解と御支援をお願いいたします。

 以上でございます。

鉢呂座長 ありがとうございました。

 次に、徳富勲君にお願い申し上げます。

徳富勲君 税理士の徳富と申します。

 日ごろ、税理士として地元の中小企業経営者の皆様と接触して、ほぼ三十年以上、この仕事を続けております。ただいまの皆様の発言の中で、社会保障と税の一体化のほとんどが社会保障のお話で、一番憎まれ役かもわかりませんが、税についてお話ししたいと思います。

 税の中で、このたび消費増税ということで、実は多岐にわたって、所得税、相続税、贈与税、資産税があるのでございますが、特に消費税について絞ってお話ししたいと思います。

 実は、僕は、急に本日参加しましたので、ほとんど原稿らしき原稿が余りないので、また個別に質問がございましたらお答えしたいと思いますが、ただ、二点に分けてお話ししたいと思います。一点は、今日の消費税の制度です。そして二点目は、今の民主党の原案について少し説明なりお話をさせていただきたいと思います。

 一点目の現在の消費税の制度です。

 これは、御存じのように、消費税といいますのは、平成元年から今日まで二十数年ですね。そのほかの大きな税、例えば所得税、法人税はもう還暦を超えて、六十年以上なじんでおるんですが、消費税は二十数年です。そういうことからしますと、消費税の制度にはまだまだ粗削り、不備な点がたくさんあるんです。法人税、所得税は結構練られて、改正されて、それなりにでき上がっているんですが、消費税は結構粗削りな税だと思います。

 まず、きょうは専門家の先生がいらっしゃいますので余り基本的なことは避けますが、消費税独特な制度というものがあるんです。それは課税期間というもの。これは、法人税も所得税も、個人だったら一月一日から十二月三十一日、法人は決算から決算、こういうことで税を把握する。特に、費用、収益、期間損益、担税力ということにウエートを置きまして計算するんですが、実は、消費税独特の計算の仕方がたくさんありまして、それは基準期間というんですね。基準期間という言葉は聞きなれていないかもわかりませんが、消費税を考える中で基準期間が一番大事なんですね。

 平成元年に消費税ができましたとき、まだ皆さんが間接税、特にこういう大きな間接税に対して知識がございませんでしたので、例えば簡易課税、あるいは免税点というもの、特に簡易課税は、びっくりするでしょうが五億円だったんですね。そして、免税点は三千万円だったんです。

 それで、その基準期間というのは実はどういうことかと申しますと、企業を始めて二年間、三年目から課税をしましょうと。すなわち、一年目、二年目は練習しなさいというようなことで導入されたんですね。それが、今、簡易課税は、当時五億円が平成三年に四億円になり、平成九年には二億円になり、平成十五年の改正では五千万という、ずっとなじんでいって簡易課税も下がりましたし、免税点の初めの三千万円も現在一千万円ということで、結構消費税について認識されたんでしょうということで課税が変わってきたんです。ただ、基準期間だけは残っているんですね。

 それで、基準期間といいますのは、例えばこの課税期間、平成二十四年の一月から十二月の課税期間は、二年前、すなわち平成二十二年の一月から十二月に免税業者であったか課税業者かによるんですね。もし二年前に売り上げが一千万円以下であれば、ことし例えば売り上げが十億であろうが、一億円であって、消費税が数千万であっても、実はこれは免税業者で、払わないんですよね。今度、逆に、二年前に課税業者であれば、二年後のこの決算で売り上げが五百万であろうが三百万であろうが課税業者になるという、その基準期間というものを何とかしてもらえないかということなんですね。

 これも、結構、そのまま手つかずではなかったんですね。現在は、資本金が一千万円以上の企業は基準期間を設けない、すなわち次の年から課税業者であるというのをつくりましたし、また、特定期間という言葉、これもなかなか皆さん聞いたことはないと思うんですけれども、特定期間というものをつくりまして、その課税期間の前々年あるいは前年の半期の売り上げ、すなわち、個人であれば、一月から六月までの売り上げが一千万円を超える、もしくは給与所得等、これは賞与も入るので、給与所得等が一千万円を超えておれば課税業者になる。

 そして、この改正でさらに、関連企業、親会社が子会社の株を五〇%以上お持ちで、その親会社が五億円以上の売り上げをしておれば、その子会社は課税業者になるという、何となしに後づけでいろいろつけてきているんですね。

 しかし、私、私というか税理士会としましては、はっきり申しまして、このたび、この基準期間を廃止していただきたい、これが本音なんです。といいますのは、全ての、例えば、この一年を計算して、これが一千万円を超えるか超えへんかということで、超えなければ当然消費税は払わない、超えておれば当然課税して払う、それが税の明瞭性なんですよね。

 だから、二年前の、これが中小企業はわかりにくいんです。と申しますのは、途中から、設備投資したりいろいろなことをしまして、物すごく物を買ったりします。これは、そういうのが初めにわかっておれば、免税業者でも手続をして、課税業者という手続ができますが、これは課税期間の前に書類を出さなければならないんです。

 だけれども、なかなかこういう経済の動きが激しい現状におきまして、法人税でも所得税でもそうですけれども、この一年間の中で消費税を見直すというのがまず第一点。だから、現在の制度の中で、私はやはり、基準期間、特に五%が一〇%になるとしますと、この影響は膨大なものだということが第一点です。

 現在の制度の第二点目は、簡易課税の問題なんですね。

 免税点もあるんですが、特に簡易課税に関しては、これは今、五千万円以下が一から五段階。例えば、九〇%が仕入れ税額控除ですよ、すなわち売り上げの一〇%に対して消費税をかけますよ、こういうのが卸売業。そして二段階は小売。製造業、飲食、サービス業という五段階をしているんですが、これも最近、現状になかなか合っていないんですね。これは、私ども税理士も中小企業から調べますと、ほぼ一〇%ぐらい格差があるんですね。だから、この辺をもう少し見直す必要があるんじゃないかと。

 そして、現在の制度の第三番目は帳簿なんですね。

 現在の消費税、ヨーロッパは御存じのようにインボイス、すなわち領収書、請求書、そういう書類中心なんですが、日本は帳簿組織をとっておるんですね。その帳簿と、さらに請求書等のセットじゃなければならないという格好になっておるんです。

 ということは、法人税も所得税も、仮に調査があって帳簿上不備であっても、領収書とか請求書があれば修正してくれます。しかし、消費税は帳簿が優先なんです。その帳簿の中の記載条項というのが結構うるさいんですね。それは、相手の名前、それから財・サービスの内訳、それからもちろん金額、仕入れ日というように、結構厳しいんです。実は、請求書や領収書を見たらそれは一致するんですけれども、だけれども、帳簿方式なんで、帳簿というものを中心に調査が入るんですね。

 だから、現在のようにITで、パソコンで打ち込んだりするときに、結構、摘要欄がしますので、これからは恐らく消費税の流れはインボイスに行くと思うんで、むしろ帳簿を中心にした方がいいんじゃないかと。

 この三つが、基本的に私がまず現在の制度に対する要望です。

 時間がありますね。そうしますと、次に、社会保障と税の一体化に関する消費税に対する考え方なんです。

 まず、一番大事なのは、今議論になっていますが、給付つき税額控除。ほとんど聞いたことがない、給付つき税額控除。これはなかなかわかりにくい。誰に聞いたってわからないんですけれども、これは、僕がたまたま大学時代、三十年ぐらい前にフリードマンの負の所得税というのを勉強した、それじゃないかなということで、僕も結構今勉強しているんです。

 これは、消費税じゃなしに所得税に大体取り入れているんですね。すなわち、所得税の計算は、御存じのように、所得から所得控除を引いて課税所得というものを出して、そこに税率を掛けて、そこから税額控除を引いて云々と、税を払うんですが、恐らく、例えば逆進性の税額控除というのをつくるんでしょうね。三十万とか何ぼかというような。

 しゃべり出したら長いんで、質問でまた受け付けると思うんですけれども、そういうことで、複数税率か給付つき税額控除かという問題をもう少し考えていただきたいなという点でございます。

 以上でございます。

鉢呂座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

鉢呂座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。橘慶一郎君。

橘(慶)委員 冒頭、順番を変えていただいたことにつきまして、団長さん初め各委員の皆様方に厚く御礼を申し上げます。

 本日はどうもありがとうございます。兵庫の方へ来させていただきまして、質問の前には、本当にお時間をおかりして、万葉集を詠んで始めるというのが私の流儀でございまして、きょうは、兵庫県でありますので、明石を詠んだ柿本人麻呂がございましたので、これを御披露して、まず井戸知事に御質問してまいりたいと思います。

 巻三、二百五十五番。

  天離る鄙の長道ゆ恋ひ来れば明石の門より大和島見ゆ

 九州、中国地方から近畿へ向かって、明石まで来ると、だんだん奈良の方が恋しいという歌でございました。ありがとうございます。

 井戸知事の方から総括的なお話があったわけですが、私も地方行政に携わったという立場で、地方税制ということについては、今回、幾らかは偏在性が解消していくということにはなるんだと思いますが、抜本的な部分ではまだこれは完成形ではないと思っております。今回も附則の方でそういったことについては考えるということでありますけれども、知事として、今回のこの消費税の配分の評価、そしてまた、これから、もうあと一歩をどうしていくべきかということについて御意見をお伺いしたいと思います。

井戸敏三君 橘先生から非常に高尚な、柿本人麻呂の歌まで御披露いただきまして、ありがとうございました。

 これから瀬戸内海、きれいな海になったんでありますが、漁獲量が二分の一に減ってしまっているとか、美しい海としての海岸線の保全に課題を向けなければならないとかという状況でございますので、冒頭、いい歌を披露していただいたのではないかと感謝いたします。

 地方税制の課題は、国税の課題に加えまして、一番の問題点は偏在でございます。どうしても税源は大都市に集中しておりますので、同じような税制を構築しましても、東京はたくさん入るけれども島根県だったらそんなに入らない、こういう実情がございます。

 ですから、地域的な偏在をどう是正するかといったときに、消費税、地方税でいいますと地方消費税はその偏在度が非常に少ない。所得税や法人税よりもかなり偏在度が少ない税金でございますので、我々は、地方の消費力に応じて課税をしていく消費課税を地方税の中心に据えさせていただいて、そして地域的な均てん化を図る。財源調整の手段としては法人税や所得税という、偏在性が仮に高くてもいい、その財源を活用していくべきではないか。そのような基本方向を主張させていただいております。

 あわせまして、さらに一歩進めますと、そのような所得税や法人税の一部を地方共同税という形で地方が共同して頂戴いたしまして、地方が自主的に今の交付税制度のような形で基準をつくって配分をする、そういう地方共同の自主的な財源均衡組織、機関をつくっていただくことが望ましいのではないか、このように考えているところでございます。

橘(慶)委員 ありがとうございました。

 できるだけ多くの意見陳述人の方にお伺いしてまいりたいと思いますので、次は、小林会長さんの方にお願いしたいわけです。

 先ほど、待機児童問題あるいは保育の現場の問題の中で、特に人材のことのお話があったかと思います。これをもう少し敷衍していただいて、この人材というのが今なかなか採用しにくい現状ということ、例えば、おっしゃった中では給与体系の問題を一番初めにおっしゃいましたが、そこが解決すればある程度見込めるということなのか。若い方々の採用に実際携わられてどんな感じがあるのか、そこをもう少しお話しいただければと思います。

小林公正君 先ほど申し上げたことにもまた重複するかもわかりませんが、まず、保育は、本当に今いろいろなニーズに応えている状況がございます。時間もそうでありますし、それから親の相談等も含めまして、特に、親の中にはいろいろと、モンスターとか言われるような形の、非常に保育に対して求める方がございまして、そういう中で、いわゆる給与だけではなくて、肉体的にも非常に長時間の労働なり、あるいは精神的な負担というのを感じている。

 先ほど申し上げましたけれども、教育実習等で参りますと、そういう中で、その現場の保育者が、そういったことに対して非常に負担を持っているということを直接感じるわけですね。例えば、就職を募集しても受けない、実際に募集しても全然来ないというふうな園もあったりして、そういったことがあらわれているんじゃないかというふうに考えております。

橘(慶)委員 ありがとうございます。

 そんな意味では、やはり地域のきずなといいますか、親御さんも含めて、みんなで保育所を中心に頑張っていかなきゃいけないという感じを持つわけです。

 その観点から、武田社協会長さんの方からは、私も最初に申し上げたとおり地方行政をやりましたので、社協さんの役割ということについては十分理解をしているつもりであります。

 その中で、一つは、お話があった民生委員、児童委員さん、こういった大変大事な役割を地域で果たしていただいているわけですね。そういったことで、この辺のなり手といいますか、都会の場合はどうなのかなという心配をするわけですが、受けていただける方々の、大丈夫なのかなというところはどうなのかというのが一点。

 もう一つは、ちょうど各地方公共団体で今回第五次の介護保険計画を立てられて、また、介護サービス量等も見直されたわけですが、在宅ということをやはり考えていかなきゃいけない時代だと思うんですけれども、その辺、どういうサービスの需要の状況になっていて、どういう課題があるか、わかれば、わかる範囲で教えていただければと思います。

武田政義君 質問をいただいて、本当に感謝いたしております。

 民生委員、児童委員だけではなしに、今、地域福祉を支える要員として、自治会、それから老人会のお世話をされている方、それから共同募金会の皆さん方、婦人会の皆さん方、それぞれが、今の地域を支える役割はやっても報いがない、かえって文句だけ言われるというふうな空気が出てきておりまして、民生委員にしましても、定年制がしかれておる関係で、やめられる方はもう自動的に年齢でやめていかれます。補充するのが大変になっています。

 とりわけ、都市部だけというふうに思っておりましたけれども、地域のニュータウンとか、あるいは逆に限界集落とかというようなところで、お世話をする内容がかなり厳しいものになってきておりますので、量的には都市部、それから実際に携わる上では課題が山積してきております郡部についても同様、やる人たちのモチベーションを高める何かが要るなという状況はもう切実でございます。

 それからあと、介護保険等で地域へというふうな流れが出ておりますけれども、地域といいましても、支える側でどれだけ用意をされているかというと、結局のところ、人と人とが支え合う、地域へ戻ってこられた要介護者がどれだけ頻度高く接触できるか、あるいは買い物に行けるかというふうなものを考えますと、制度の、介護保険の給付の内容だけで生活が保障されるというよりは、むしろボランティアの方への期待とか、サポートをするような組織でありますとか、民での制度外の支え合いというのがもうかなり切実になってきております。

 よくやっていただいているところはもうどんどんやっていただいていますし、やれていないところはやはり制度に頼る以外ないみたいな状況がございますので、この点は、先ほど申し上げましたように、やっているところに支援を、やっていないところにはできるだけやるような動きをする、そういった面の支えが必要ではないかなというふうに思っています。

橘(慶)委員 ありがとうございました。

 そして、次は籔本副会頭さんに御質問させていただきたいんですが、経済を見ておられる立場で先ほどもお話がありました。消費税の引き上げの時期、幅、率というお話もあったわけですけれども、なかなか景気も、欧州のこういう問題も含めて、一筋縄ではないという状況もあるかと思っております。この辺についての、おっしゃった、可能であればこのタイミング、幅、率ということについてどういう御感想なりお考えをお持ちであるか。

 あるいは、また一面、成長を図っていくことと両輪にしていくということが大事だとすれば、それでは国としてどういったことにお金を振り向けていくといいますか取り組んでいくべきであるとお考えであるか、この辺のお考えをお聞かせいただければと思います。

籔本信裕君 お答えいたします。

 消費税について今御質問がありましたけれども、時期とか幅というのは、非常にこれは難しいんだろうと思います。ただ、これだけ財政の状況とか、あるいは社会保障が毎年一兆円ふえていくといったことを踏まえると、そうした恒久的な税源ということで、消費税というのは上げざるを得ないのかなと。これは消極的ですけれども、事ここに至ってはやむを得ないなというふうに考えております。

 ただ、消費税もそうなんですけれども、ベストの改革を求めて議論ばかりしていても、これはなかなか積み上がらないという部分があると思うんですね。そういうことからしますと、やはり、現実に案を、成案をして実行していく中で不都合なところがあれば修正していくというんですか、そういう現実的な積み上げを図っていかないと、いつまでたっても議論ばかりで会議は踊るでは困るわけであります。

 そこのところは、確かに消費税増税というと非常に大きなインパクトを与えますから、考えられる施策というものはやっていく必要があろうかと思いますけれども、一方で、やはりどこかの段階で進める。いろいろ議論が出ていますように、いずれ一〇%でクリアできればいいわけですけれども、どうもそんな感じでもないというところも事実ではないかと思います。

 それからもう一つ、成長産業をどう見ていくか。これは、国内の需要ということからいいますと、既存のところはやはりなかなか難しい。せいぜい、よくて現状維持ということなんだろうと思います。

 そうすると、先ほど私が申し上げましたように、やはり医療関係とかそういう高齢化対応のところ、ここのところは、確かにコストはかかる、社会保障としてコストがかかるところではあるんですけれども、そこは、先ほどお話がありましたけれども、インセンティブの付加の仕方で就業人数をかなり吸収できるのではないかなというふうに考えております。

 以上です。

橘(慶)委員 皆様方の御意見をいただきましたので、こういうことをやはり大切にしながら、またしっかり審議を進めていきたいと思っております。

 きょうは、皆様方、本当にありがとうございました。

鉢呂座長 次に、岡田康裕君。

岡田(康)委員 本日は、意見陳述にお越しくださいました皆様、御貴重なお時間をお越しいただきまして、本当にありがとうございます。冒頭、感謝申し上げます。

 早速にいろいろな角度からありがたいお話を伺ったところなんですけれども、私なりに、釈迦に説法かもしれませんが、やはり、今の政治の情勢を振り返りますときに、もう口が酸っぱくなるほどいろいろな方が言われることですけれども、バブルが崩壊してからの特にこの二十数年間、社会環境、経済環境がどんどん変わってくる中で、政治が適切に政策や制度の変更でもって対応してくることができてこなかった、そのことが積み重なって今の行き詰まりのような状態に至っているんじゃないかと思います。

 先ほど松原先生のお話にもありましたけれども、もちろん少子化、高齢化も言うに及ばず進んできておりますし、また、景気が停滞し始めてから、ピーク時の税収からすると本当に三分の二ぐらい、六十兆から四十兆ぐらいに落ち込んできていますし、また、特別会計の方に目を向けましたら、社会保障関係費の保険料収入、これは働く方の標準報酬が伸び悩んでしまっていますから、保険料率を掛けてもなかなか保険料収入が伸びなくなってしまっている。こういった収入面でのダブルパンチもあるわけです。

 一方でまた、核家族化が進んできているということも、やはり、医療、介護を考えますと、どうしてもお金がかかるようになってきているというのもあろうかと思いますし、また、共働きが当たり前になってきているということは、子育て支援が急務であるということにもつながっていると思うんです。

 そういう意味でも、今回の一体改革が、五%程度と言ったら怒られるかもしれませんが、五%もの負担をお願いしても社会保障が十年、二十年安心だと言えるようなところまで一気に変えられるものにはなっていないというところが、本当に申しわけなく思いながらではあるんですが、しかし、政治の流れを転換するきっかけになるような一体改革にすることができれば、そう思って与党の一員として取り組んでおりますので、ぜひとも忌憚のない、いろいろな大所高所からのアドバイスをいただければと思っております。

 最初に、井戸知事さんにお伺いさせていただきます。

 知事は、旧自治省時代からもう財政のプロ中のプロでいらっしゃいまして、先般の特会の仕分けの際にもいろいろなアドバイスをいただきました。先ほど橘さんからもお話がございましたけれども、少し別の角度からアドバイスがいただければと思うんです。

 今、政権交代もしてきて、地域主権改革という名のもとに、地方交付税においても最初の年で一兆円ほど何とか上乗せをして、まだまだ不十分だということは存じておりますが、また、義務づけ、枠づけの見直し、権限移譲というのも、これは非常にマニアックな領域でしたけれども、最近、一次、二次の一括法が通って、かなり具体的に地方自治体の皆さんの中でも成果が出始めているんじゃないかと思うんです。

 そして、地方消費税、まだまだ十分ではないかもしれませんが、兵庫県さんの方でも幾分、地方消費税収というのにもプラスが出てくるんじゃないかと期待されるところだと思います。

 また、地域自主戦略交付金、これも継続事業で占められている部分がまだまだ大きいとは思うんですけれども、一年目、二年目と進んできて、少しずつ継続事業も終わっていきますと、裁量の余地も少しでもふえてくるんじゃないかと期待もしているんです。

 今現場でいらっしゃいます井戸知事のお立場から感じられているところと、また、今後の地方財政的な観点から思われていることなどをおっしゃっていただければと思います。

井戸敏三君 今、岡田委員の方から例に挙げられました、これまでの地域主権改革に関連する地方行財政対策、それなりに、それぞれ進めていただいたこと自身は、私どもも評価すべきだと思っています。特に、国と地方との協議の場も制度化していただいたわけでありますので、そのような意味でも、国と地方との協議の場を通じて、具体的に情報を共有化しながら、よりよい対策を講じていく、それが基本姿勢として必要なのではないか、このように思っております。

 ただ、いずれにしましても、今回の社会保障と税の一体改革におきましては、やはり消費税、地方消費税の増額ということが正面に立っておりまして、社会保障の中身の抜本的な改革についての議論が少し弱いのではないか。先ほど松原先生も、現行制度の延長線であって、抜本改革にはちょっとほど遠いんじゃないかという御指摘があったのは、そのような視点で指摘されている事柄ではないか、このように思います。

 私どもの立場からしますと、最後に申し上げましたように、この十年間で、社会保障関係の経費が地方財政計画ベースでも九兆円ふえて、そして一方で、地方単独事業に回っていた金が七兆円減って、地方一般財源、税と交付税の総額も二兆円減っているという、一兆円何とかプラスアルファした後、五千億減らされて、今、現状がこう来ているわけです。そのような状況にあるんだということを構造的に見ていただきますと、まだまだ地方の財源不足というのは二割近く続いておりますから、その地方の財源不足対策を行うためにも、やはり国、地方を通じた財政の再建が不可欠だ、このように主張させていただきたいと思います。

 ただ、あわせまして、どうしても私が強調したいのは、デフレなんです。平成二十二年の兵庫県の名目GDPは十八兆、実質化しまして二十一兆と言っているんです。つまり、三兆円のデフレギャップがあるんですね。これをそのままほっておいた上でこれからの消費税増税に耐えていけるのかというと、これは非常に懸念しております。そのような意味で、やはり経済対策とあわせた対応が少なくとも必要だ、このように思います。

 私の持論から言いますと、中長期の設備資金をもっと調達しやすい仕掛けをつくらないといけないのではないか。日本は特にエクイティーファイナンスが弱過ぎるんですが、そのエクイティーファイナンスを中心とする中長期資金の提供システムをもっと強化する必要があるのではないかというふうに思っているものでございます。

 ともあれ、先ほども橘先生にお答えしましたけれども、地方税の基本はやはり偏在性のない安定した消費課税というのが望ましい、それを補完する意味で所得課税が位置づけられていくべきなのではないか。ここは、実を言いますと、住民自治との関連で、論理化するのに矛盾があるんじゃないかという御指摘を受けるかもしれませんが、偏在性を解消しようとすると、併用し、特に消費税を重視していくべきなのではないか。

 そのような意味で、今回の配分割合一・五四というのがいいかどうか、我々も意見がないわけじゃありませんが、決まったことですので、それは了として、地方消費税を増額していただくことに対しては、ぜひ適切な、いろいろな組み合わせをしながら増額していただくようにお願いしたいと存じます。

岡田(康)委員 もう一問、社会保障の観点から知事にお伺いしたいんです。

 先般、スウェーデンのことを分析した方のお話を伺いますと、ランスティングという都道府県の単位と、コミューンという市町村の単位が向こうもあるようでして、中の歳出の内訳みたいなものを見ていきますと、都道府県の方が主に医療関係を中心になさっていて、市町村の方で教育とか介護とか福祉なんかを、役割分担のようになっている。

 そういうふうな最終責任的なものが役割分担されてくると、課税自主権なんかも生かして、独自の取り組みもどんどん進んでくるのかなというふうな気がしたものですから、知事も、今は連合長として関西広域連合にも御尽力いただいているわけですけれども、国の医療の、また介護の、そして子育て支援とか、こういったものの役割分担というか、国と地方のあり方みたいなところについて、思われているビジョンみたいなことがありましたら、ちょっと時間も余りありませんので、短くおっしゃっていただければ助かります。

井戸敏三君 まず、国と地方との役割分担からしますと、社会給付、給付行政はやはり国の仕事、しかし、具体のサービスの提供は地方の仕事だということにしていくべきだと思っています。

 そのときに、県と市町村との役割分担をどうするのか。今、例に医療とその他のサービスを挙げられたわけでありますが、私は、何も医療を県が引き受けるのを反対しているわけではありませんが、今のままで県に引き受けろと言われると、それは、何ら矛盾の解決の方策もなしに、主体を県に市町村から転換するだけだから問題だ、こういうふうに申し上げて、陳述でも、制度としては国に一本化した上で、例えば料率は都道府県単位で料率をセットするとか、いろいろなやり方があると思います。

 ただ、現場的な仕事は市町村にということで動いているのでありますが、市町村も規模が随分違います。能力も違います。したがいまして、基本的に、能力のあるところには権限移譲して市町村に任せる、しかし、少し応援をしなきゃいけないような市町村に対しては県が出張っていける、そういう仕組みもあわせて検討していただくとバランスよい対応ができるのではないか、そのように考えております。

岡田(康)委員 知事、どうもありがとうございました。

 続いて、藤浪女性会前会長さんにお伺いをさせていただければと思います。

 きょう、ここに来る前にインターネットでお名前で検索させていただきますと、中小企業を急遽バトンタッチを受けられて三十数年、解雇されることなく従業員の皆さんと頑張ってこられたお話を読ませていただきました。

 そういう中で、商工会議所の女性会のお役などをされておられたと伺っておりますので、女性経営者の仲間の方ですとか、また従業員の皆さんからもいろいろな声を聞かれていると思うんですけれども、この一体改革を踏まえて、また、その先に向かって、女性の方々にもっと子育てもしながらまた社会に出て活躍をしていただくために、どういった、追加的といいますか、こういった施策がもっと充実したらいいのになと感じられるようなところがありましたら、ぜひおっしゃっていただければと思います。

藤浪芳子君 施策はどんなものがいいかと言われても、ちょっとわかりません。

 ただ、まだまだ男性中心の社会でありまして、女性が働きにくい。これは、子育てとか介護の問題はまだまだ女性が引き受けなければいけない、これが解決されない限りは、働きやすい環境というのはできないのではないか。その意味で、保育所の充実が一番求められる。

 それと、先ほど申しましたように、税金の問題で、なかなか女性が出たがらない。家にいて今の恩恵をこうむっておきたい、半分では、お金だけじゃなくて、社会進出もしたい、このはざまで動いている女性もたくさん見受けられますので、ほんのちょっとのことで損をするならこっちを選ぼうかというような際どいところにおりますので、この辺の制度を少し変えていただくことによって、もう少し女性が働きやすいのじゃないかと思っております。

岡田(康)委員 ありがとうございます。

 では、最後の一問は、お話が途中になられました徳富税理士さんにお伺いできればと思うんですが、まさに最後におっしゃられようとしていたところをお聞きしたくてですね。

 今、軽減税率か、もしくは給付つき税額控除かというのも、これは一つ、各党間で大事なテーマなんですね。税理士会の皆さんが出されている来年度税制改正に向けての意見書をもう既に読ませていただいたんですが、その中で、項目で明確に複数税率反対、こう書いていただいておりますので、税理士会のお立場から、給付つき税額控除と軽減税率、これはどっちの方が低所得者ないし逆進性対策としていいと思われているか、ストレートにおっしゃっていただければ助かります。

徳富勲君 簡単に申しますと、制度の問題で私ども税理士は検討しまして、複数税率に対しては単一税率なんです、だから、単一税率か複数税率かという議論をしているんですね。そして、給付つき税額控除というのは、これは消費税とは若干違うんですね。これは社会保障に対するヘッジで、すなわち所得税の中に入れるんですよね。だから、この議論、すなわち、消費税の中に制度として組み入れるかどうかという問題で税理士会は今検討している途中でございます。

 以上です。

岡田(康)委員 どうもありがとうございました。

鉢呂座長 次に、室井秀子さん。

室井委員 本日は、兵庫県にこうして公聴会に来られましたことを本当に誇りに思っております。兵庫県というのは、本当に、神戸市から日本海側まで大きな県でありますし、日本の縮図であるような、そんな気がします。その中で意見をこれからいただきたいと思います。

 まずは、井戸知事にお伺いさせていただきます。

 私も兵庫県会議員をしておりましたので、本当に、認定こども園というのは、兵庫では特に知事のお計らいが、肝いりがあったおかげだと思いますが、全国に比べれば多くあるのが事実です。そんな中で、実は私も調べまして、二十四年で認定こども園が全国で九百十一あったんですね。その中で兵庫県は七十二、昨年と比べても十二ふえたわけです。

 その中で、知事としては、この認定こども園を進めてきた意図、思いというものはどういうものがあるのか、短目で結構ですので、お話しください。

井戸敏三君 ようやく今審議されている法案で総合こども園という形で、保育に欠ける子は保育所、保育に欠けない子で学ぼうとする子は幼稚園という、このすごい壁が立ちはだかって運用されてきていたわけでありますが、実情は、保育に欠けない子であっても、例えば、お母さんが長期の病気になられているとか、あるいは介護でへとへとになられていてなかなか子供の面倒が見られないとか、いろいろな事情があったので、従来から、保育に欠ける子、欠けない子の区分が取り払われないかというのが底流としてありました。

 それは、認定こども園は一つの施設で、保育に欠ける子、欠けない子の区分は相変わらず一部残ってはいるんですけれども、つまり、幼稚園制度と保育園制度が併存している形ではあるんですが、少なくとも保育を必要とする子供を預かれるという施設として工夫された制度でありましたので、我々としては、この認定こども園制度をできるだけ普及させていきたいということで進めてきたものでございます。

 特に、幼稚園の場合は、午後から施設が、人材がかなり余裕がある、ですから、放課後保育も随分取り組んでいただいてきたわけでありますが、放課後保育に取り組めるのであるならば、プラスアルファ、保育に欠けない子供を預かれる対応も可能なのではないかというような視点も入れましてお願いをしてきた。取り組む方々が、ニーズがあるからだと思いますが、積極的に取り組んできていただいているということを、私どもとしても喜んでいます。

室井委員 本当にありがとうございます。実に、知事がおっしゃるとおりだと思います。

 そのことを踏まえまして、小林先生にお伺いさせていただきます。

 今までの補助金制度というのが、幼稚園であれば文科省、よく誤解されるんですけれども、保育園というと幼稚園ではないかと思われる方もいらっしゃいますが、保育園というのは厚生労働省管轄の保育所でございますので、今の現状では厚生労働省の補助金であると思います。今度、総合こども園になりますと内閣府一本になります。そのことにおいて、兵庫県においてもさらにこれから充実すると思われますが、小林先生はどうお考えになりますか。

小林公正君 先ほどの知事のお話のように、兵庫県は非常に積極的に認定こども園を推進されておるわけですが、実は、進めておられるけれども、思うようにも進んでいないという実情がございます。

 それはなぜかというと、まず一つは、やはり二重行政であるということですね。今先生がおっしゃったように、一点は、文部科学省それから厚生労働省が入っていて、そのためにお金がいわゆる二重の流れになっているということであります。それから、そのために非常にこの事務が煩雑しているという現場の声がございます。

 また、今まで、もう既に保育所は保育所でいわゆる乳幼児教育というものに取り組んでおるんですが、そういったことに対しての法的な位置づけなり、あるいはまた逆に、幼稚園が保育園のように預かり保育というのを実施されているんですが、それがきちっと法律化、制度化されていないというふうな課題がございます。

 今回の新システムは、そういう課題をクリアして、できるだけ簡素化して、当面、最初は内閣府も加わった三つの省庁でありますけれども、私はあくまでも経過措置であってほしいと思っております。将来的には何らかの省庁をつくっていただいて、そこで一本化していくという、まず第一歩を踏み出していただきたい、そういうふうに思っております。

室井委員 私どもも、そのように、小林先生がおっしゃるように進めていきたいと考えております。

 そんな中で、今度の新システムにおいては、幼稚園が三分割されるとか、いろいろな批判を伺っているのも確かです。幼稚園に対して甘かったんじゃないかとか、いろいろ言われているのも事実です。

 しかし、私は、ここで一つ考えなければいけないのは、保育所が総合こども園になった場合、家庭にいる子供たち、親が働いていなくても保育園に行くことができるようになります。私は、それはとても大事じゃないかと思うんですね。と申しますのは、過疎化になるところ、つまり、幼稚園が閉園しているところが実は出てきております。そういう場合は、働いていない親を持った子供は就学前までは行けないということになるんですね、幼稚園がなければ。保育所には行けませんから、今の制度では。その点に関しては小林先生はどうお考えになりますか。

小林公正君 先ほど知事もおっしゃったとおり、今、いわゆる保育に欠けるという子だけじゃなくて、本当に保育を必要とする家庭の子供というのはたくさんおります。先生今おっしゃったように、それでは、今の現行制度、保育に欠ける子だけを保育所は受け入れるということではなくて、やはりいろいろな施設の中でそういった子供たちもきちっと保障していくということが大事じゃないかというふうに考えております。

室井委員 小林先生の御意見に賛同する者の一人として、ありがたく思っております。

 次に、社会福祉法人兵庫県社会福祉協議会会長の武田先生にお伺いいたします。

 先ほどの先生の御意見の中に、子育ての主体は家庭であるべきだと。本当にごもっともでございます。そのとおりだと思っておりますけれども、やはり会長さんがおっしゃるように、家の中で虐待等が行われているのも、そういう事例もあります。

 そんな中で、今回の子ども・子育て新システムの総合こども園においては、家庭内だけで育てるのじゃなくて、社会の中で子供を育てようという考えも一部含まれておりますが、会長さんの御意見はいかがでしょうか。

武田政義君 私が申し上げたかったのは、今度の消費税を前提とした一体改革が、実際に、中身は介護保険、年金、医療、それに加えて新子どもシステムということで、消費税が新たに創設されるけれども、実は、既存の三つの制度を含んで、新たなものは子育てだけで登場するわけですね。

 そうしたときに、介護保険という形で、家族で面倒を見てきた古来からの日本の生き方が突然に施設介護になってしまった、予算上も、あるいは実態も予想以上にその進行が速くなってしまった、日本人の生き方が変わってしまったということになった。

 ということは、保育所の問題につきましても、社会でというふうな形になった場合は、これは、今現行でやられている義務教育というもの、これが義務保育になるのか、あるいは、預けたい人は全部受け入れましょう、だけれどもこれは義務ではありませんよという形で、福祉だ、あるいは社会保障だ、こう言うのであれば、そこのところは議論をした上でやっておかないと、子育てはみんな社会がしてくれる、保育所がしてくれるというふうになってしまうと、ますます児童虐待の問題とか、親が責任を持たなくなるということになりますから、どこかで責任を持つために明確に議論をされた方がいいですよ。

 しかし、子育ては親というのは、親がみずから手を差し伸べて、ずっと保育所にも行かせずに自分でやるということではなしに、子育ての責任は親が持つんだということだけは忘れないでほしい、そういう意味でございますので、御理解をいただきたい。

室井委員 私も同じような意見を持っておりますので、ありがたく御意見をいただいておきます。ありがとうございます。

 その中で、辻芳治事務局長にお伺いいたします。

 実は、先ほどの藤浪女性会前会長の御意見にもありましたけれども、女性が安定して能力を発揮できて働くような社会があるべきだという御意見をいただいております。

 そんな中で、働く女性と言わず、働く男女がワーク・ライフ・バランスを実現できるよう企業や社会全体が意識を変えていく、これがまず第一だと私は思っておりますけれども、今回の改革で総合こども園を実施しますと、連合として、働きながら安心して子供を産み育てられる社会になるための御意見をいただけましたらありがたいです。

辻芳治君 今、室井委員の方からいただきました御質問についてお答えをしたいというふうに思います。

 知事からもございましたし、皆さんから御指摘の、やはり働く立場、とりわけ高齢者、女性の就労率をどう高めるか、連合としても大変重要な課題というふうに認識をいたしております。

 その際、やはりワーク・ライフ・バランス社会を目指そう、数年前、国も憲章を発表され、そのことを通じて企業労使初め社会全体でそのことを推進ということですけれども、我々としては、まだまだ、緒についたというようなところで、そのような社会の入り口に立っているぐらいの認識でございます。

 したがって、県においても、いろいろな施策を通じてワーク・ライフ・バランスの推進、そのことを通じての働く女性などの就労支援、そんなことの税金を投入したいろいろな補助金であったり、さらには研修だとか、そんな仕組みも県レベルでは対応しながら進めています。

 その意味からしますと、今回の子ども・子育て支援の新システム、その中の総合こども園、これは先ほど井戸知事からもございました、兵庫県においても全国に先駆けて多くのそうした展開をいただいておりますので、より全国的にもそのような形が前に進むということで我々としては受けとめておるというふうなところでございます。

 以上でございます。

室井委員 ありがとうございます。やはり、女性の立場といたしましては、働きやすさ、それがまず第一ですので、ぜひこれからも進めていってほしいと思っております。

 その中で、申しわけございません、徳富先生にお伺いいたします。済みません、突然行きまして。

 徳富先生にお伺いいたしますけれども、本当に、税金の納め方、実は私自身も小さいですけれども企業を経営しておりますので、そのたびに変わります。藤浪前会長様と同じように、子育てしながら会社をしてきましたので、自分で経理もしてきましたので、非常に思っておりますので、きょうの先生の御意見は、私もっと質問させていただきたいんですが、終了いたしましたという紙が来ましたのでこれで終わらせていただきますが、参考にしてしっかり考えたいと思います。

 本当にありがとうございます。

鉢呂座長 時間が来ましたので、これで終了いたします。

 次に、加藤勝信君。

加藤(勝)委員 自由民主党の加藤勝信でございます。

 きょうは、大変お忙しい中、こうした機会に意見をいただきまして、本当にありがとうございます。

 まず、井戸知事に二つ教えていただきたいんです。

 一つは、今回、私どもの委員会では、広い意味では社会保障と税ということなんですが、かかっている法律というのは、年金に関する法律と少子化に係る法律、そして税に関する法律しか実はないわけでありまして、本当は、高齢者医療制度の問題等々、本来出てきていなければいけないのではないかと私は思っているんです。

 その中で、このいただいた資料の中にも、高齢者医療制度について、都道府県を運営主体とすることは反対だ、こういうお話であります。

 政府からは、特に全国知事会さん等と今いろいろな話をされております、こういうふうに我々はお聞きをしているんですが、全国知事会のたしか社会文教委員でもおられると思いますけれども、知事会側としては、今の状況をどういうふうに見ておられるのか。逆に、政府から、こういう形で見直しをしたいけれどもということで知事会さんの御意見をもう少し欲しいとか、あるいは、さらに話し合いを続けていきたいとか、こういうふうに認識をされているのか、教えていただきたいと思います。

井戸敏三君 知事会の立場としては、現状のままで、後期高齢者医療制度を都道府県管理で運営するということについては反対ということを明確に申し伝えさせていただいております。

 それはなぜかといいますと、例えば、今の市町村で運営していただいております国保、後期高齢者医療制度をやめたら国保に戻るんですね。その国保の財政支援の抜本的な改革が十分されているのか。市町村のレベルで一般会計で数千億の財政支援をしていかないと今の国保料の水準ではやっていけないというような現実があるわけです。そういう現実に対する対応が基本的になくして、国保に戻ればいい、後期医療制度を戻せばいいというだけでは困るのではないか。

 そして、しかも、管理者を都道府県にするということは、現実にその補填を都道府県にツケ回しするということになるだけでありますので、そのような問題解決がされないのに、廃止をしますというような方向づけはいかがだろうかということを非常に強く主張させていただいております。

 私は、先ほど申しましたように、どこの医療制度に所属するかで負担がこんなに違ってしまっている、それを国一本の制度に置いて、そして負担の適正化を図るべきだ。この方向が決まってから、その過程としてどういう過程をとっていくか、そのような相談ならば十分に建設的な協議ができるのではないか、こう思っています。

加藤(勝)委員 今の状況では、知事会のスタンスを明確に伝えている、こういうことだろうと思います。

 それからもう一つ。地方消費税あるいは地方交付税の関係で、今回の消費税、最終的には一〇%になる、その五%分については、いわゆる年金、医療、介護、そして今、少子化対策という四つの経費に充てるということになっているわけでありまして、その前提が地方の方にもかぶさってきている。地方消費税については目的がある程度書かれている、地方交付税については書かれていませんが、そういう形で使ってほしいというような意向が政府からは示されている、こういうふうに認識しているんです。

 ただ他方で、地方交付税とか地方消費税は、そもそも地方のいわゆる一般財源としてどういうものにも使える、こういう制度立てであったはずだと思いますね。

 その辺の今回の一応のセットというのがあるわけでありますけれども、これから先行きを考えたときに、例えば地方消費税のありようというものをどういうふうに知事はお考えになっておられるのか。

井戸敏三君 今回の五%増額分の配分として、地方に一・五四、そのうち地方消費税が一・二、〇・三四が交付税原資だという割り振りになりました。地方消費税の一・二分というのは、いわば国の社会保障制度の地方負担額に見合う額をそれで保障しよう、あと単独事業部分については交付税措置の方でいこうということになったのでありますが、これはマクロとしてはそういう割り切りをしましたけれども、個々の団体でそのように上手にうまく割り振れるかというと、そんな保証は実を言いますとありません。

 したがいまして、交付税や地方消費税は目的税化はされていない、主としてそういうものに充てるんだというスタンスで法律も書かれているのではないかと承知しておりますが、これからも、そういう完全な目的税化するような形で財源保障をしていくのがいいのか、それとも少し中をとっているような今回の措置のような形で臨むのがいいのかは、これは全体量が今のところ足りていませんので、足りていない段階は、そういう目的税化あるいは目的財源化という手段を講じながら、納得をしてもらう一つの方法として進めていかざるを得ないのではないかと思いますが、将来的には、やはり使途については我々に任せてほしい、自主性を確保した形での地方税財源の充実を図ってほしい、このように願っております。

加藤(勝)委員 籔本副会頭に御質問させていただきたいと思うんですけれども、今回、消費税の議論と一緒に、年金については、短時間労働者に対する厚生年金、健康保険の適用拡大、こういうことが盛り込まれておりまして、実施時期も平成二十八年の四月からということでありますから、ちょうど一〇%に引き上がった翌年ということになりますと、中小企業の方々には、消費税の転嫁の問題と同時に、この適用拡大という問題がダブルでぶつかってくるのではないか。

 我々もかつて適用拡大の法律は出させていただいたことはありますけれども、また、私自身は、皆さんに対する影響等を考えながらも、だんだんでも拡大をしていくべきではないかというふうには思いますが、ただ、今回の消費税の引き上げに伴うさまざまな負担と同時にこういうものがあるというのは、中小企業の皆さんにとっては大変重たいものじゃないかと思いますが、その点に対する副会頭のお考えを教えていただきたいと思います。

籔本信裕君 お答えいたします。

 確かに、中小零細企業は現状でも大変厳しい状況にありまして、先ほど知事の方からお話がありましたけれども、デフレという宿痾のようなものが取りついて、大企業の場合あるいは中堅企業の場合は海外に出ていくということも体力的にも可能なんですけれども、中小企業も一部そういった海外展開も進めておりますけれども、現実にはなかなか体力のないところは難しいという中で、消費税の引き上げと、もしこの法案どおりになるとしたら、同じ時期に保険料の引き上げがあるというのは大変厳しい状況であるのは事実です。

 ただ、保険料をどういうふうに負担をするかというところを考えますと、今回、当初はもう少し大きな、対象者が四百万人とか、こう言われておりましたけれども、かなり、十分の一ぐらいに対象者が絞られた形になっておりまして、もちろん、ないにこしたことはないんですけれども、片方で、受給と保険のバランスのところを考えると、なかなか厳しいけれどもある程度やむを得ない部分はあるのかな、ただ、そこについては、いろいろな面で御配慮をいただきたいなというふうに考えております。

加藤(勝)委員 ありがとうございました。

 続いて、武田会長に御質問したいと思うんですが、先ほど、伝統的な社会のあり方とか心の持ち方、こういう視点からいろいろ御議論いただいておるんですが、今回の意見陳述の中には出てこなかったんですが、今回の年金法の改正の中に低所得者に対する加算というのが入っているわけでありまして、地方住民税、要するに市町村民税が世帯全体で非課税であったり、御本人の年金がいわゆる満額の六万四千円という方については例えば六千円加算しよう、こういう形になっているんですね。

 私どもは、やはり、年金あるいは社会保険というのは、保険料に見合ったもので当然年金が支給されたりサービスが受けられる、こういうありようからすると、そういう年金制度の中で、別途、福祉的にそういう措置をとること、そのものがいかがなものなのかな、こういうふうにも思いますし、まさに、社会のありようにも随分変化をもたらすのではないかと思うんですけれども、その点についてのお考えをもしお示しいただければと思います。

武田政義君 社会福祉協議会としての合意形成をしたというわけではなしに、全く私自身の考えといたしましては、このたびの年金の問題については、大きく分ければ、これはお互いに共済であり、互助であるはずなんですよ。ところが、その中で、ルール違反とか、あるいは、不幸にして非常に低所得者あるいは貧困になってしまったという人の救済を、この互助システム、共済システムの中でやるのか、あるいは、本体の、憲法で定められた保障、文化的、社会的な生活を保障するという憲法の中で吸収するのかという議論があると思うんです。

 やはり、年金についても、介護保険等についても、これらについては、お互いにここに参加をしましょうという一定のルールを持って参加をし、そしてお互いがお互いをカバーし合うというものであるとすれば、今、加藤委員が言われたような、一時的にあるいは急にそういう不幸な状態になった、あるいは無年金、みずから招いたというものについては、一定のルールがあって、別の制度に従来の措置による救済措置を持ち込むべきではないという私自身の私見としてはあります。

加藤(勝)委員 ありがとうございました。

 最後に、保育協会の小林会長に質問させていただきたいと思うんですけれども、今回の総合こども園、今認定こども園の話もありました。私どもが認定こども園制度をスタートして、そして今、兵庫県でもいろいろ活用いただいている。ただし、確かにいろいろと問題点があるのは認識をしております。

 ただ、この状況の中で、一方で、幼稚園としての長い歴史があり、保育園としての長い歴史がある中で、今急にがちゃんと一遍にしていくというのは、私はやや乱暴な議論ではないかなと。むしろ、名前はどう変えてもいいんですが、認定こども園のありようをもう少し改善していく中で、それがどんどん拡大していけば、またその中で制度の見直しをしていくというのが本来のありようで、余り一遍に実験的なことを全国で、しかも、対象がこれからの世代を担っていただく子供さん方において急激にやるというのはいかがなものなのかな、私はこういうふうに認識をしているんです。

 その辺、むしろ、認定こども園の制度をもう少し使い勝手がいい、使われ方がいいようなものにしていく流れの中でこういった問題に対応していくべきじゃないかと思いますが、それに対しての御意見を承りたいと思います。

小林公正君 先生がおっしゃいますように、今の、総合こども園というふうに名称が変わっておりますが、要は、私は、認定こども園が発展的にいろいろな問題、課題を解消するということが目的にあるような気がするんですね。

 そういう中で、急激に変えることはどうかというふうなお話でございますけれども、今回も、例えば、幼稚園においては、総合こども園に移る場合、ゼロ歳―二歳の子供たちは義務化しないというようなことが盛り込まれておりますけれども、そういうところに、いわゆる徐々に、最終的には一本化した施設にというふうなことの意図が見られるような気がします。

 それと、やはり利用する方にもいろいろな選択肢があっていいんじゃないかというふうに思うわけですね。何も総合こども園だけが全てを担う施設ではなくてもいいんじゃないかというふうに思うわけでして、そういう中でその姿を今後考えていけばいいんじゃないかというふうな気がいたします。

加藤(勝)委員 それぞれ忌憚のない御意見をいただきまして、大変ありがとうございました。終わらせていただきます。

鉢呂座長 次に、竹内譲君。

竹内委員 公明党の竹内譲でございます。

 長時間でお疲れのところ、申しわけありません。私を含めてあと三名でございますので、何とぞよろしくお願いいたします。

 まず最初に、徳富先生にお伺いしたいんです。

 先ほど、課税の基準期間を廃止してもらいたいというお話がありまして、この御指摘は、六十三時間の特別委員会の審議の中でもほとんどなかったと思います。貴重な御意見だと思いまして、参考にさせていただきたいと思います。

 その上で、やはり複数税率のメリット、デメリット、そしてまた給付つき税額控除制度のメリット、デメリットにつきまして、いろいろな問題があるんですが、ここをちょっとお考えを詳しく教えていただけませんでしょうか。

徳富勲君 先ほどちょっと申し上げましたけれども、制度として消費税の中に組み込むのであれば、複数税率がいいと思いますね。

 税の大前提として、公正、透明、納得というのがあって、その納得なんですね。食料品から自動車まで全て単一税率で一〇%、一五%、上げられるかどうかというものは、納得しません、恐らく。その中で、海外でも、例えば医療とか水道光熱費、それから食料品、新聞、雑誌、こういったものはやはり低い税率なんですね。

 僕は、このたび、いいチャンスだと思うんです。例えば今、消費税が五%。八%、一〇%に上がりますね。そうすると、複数税率に格好、ちょうどいいチャンスなんでしょうね。だから、今言いましたように、医療、水道光熱費、食料品等は五%で、極端な話、置いておいたらいいんでしょうね。あるいは八%にするもの、また一〇%にするものと。海外ではゼロ%というのがありますが、まさかゼロにはならないと思いますが、まずそれがいいです。

 一般的に、複数税率は課税ベースが狭いと言いますが、そうじゃないんでしょうね。それは、恐らく税率が上がってくるとふえるんでしょうね、まだ。それともう一つ、徴税コストが高いとか、あるいは事業者が複雑だとか言いますが、それは一言で言いますと、経験となれでしょう。だから、僕は、消費税の制度の中では複数税率を入れるべきだと思います。

 ただ、給付つき税額控除の大きな長所は、所得の捕捉というんですかね。だから、当然、マイナンバー制、これは余り問題になっていませんけれども、マイナンバー制というものを取り入れて所得を捕捉すれば、あるいは、社会保険料だとか税を、税務署を合併した歳入庁をつくる、そういうようなことと並行すれば、社会保障と一体化ですから、社会保障との関係はできると思いますが、あくまでも消費税の制度とすれば複数税率の方がいい、こう僕は思います。

竹内委員 そこで、複数税率をもし選んだ場合に、インボイスという問題があります。

 ヨーロッパではこれは普及しております。日本の場合、余り知られていないということもありますが、事務が過大になるとか膨大になるとかそういう御批判もありまして、事業者の方々からこれまでは反対が多いという感じがしておるんですが、その辺のインボイスの是非につきましてはいかがでしょうか。

徳富勲君 今の、僕の十分間の中で申し上げましたように、今現在は帳簿による課税なんですね。だけれども、法人税や所得税は、逆に言うと、やはりインボイス。インボイスというのか、証拠書類なんです、領収書や請求書や。だから、消費税も大きくなって税率が高くなると、消費税というのは、御存じのように、やはり集税マシンとしたら大きいんですね。そうすると、帳簿だけ、あるいは帳簿と領収書とセット、どちらかです。そして行く行くは、僕はやはりインボイス。

 インボイスというためには、今の内税というより、やはり外税の方へ切りかえるということ。内税はなかなかわかりにくいんですね。今、総額主義ですから、内税の中にも税幾らという内書きはあります。だけれども、やはりインボイスとなると、本体と税、すなわち外税と。だから、余りにも内税ということでならされて納税者は痛税感が余りないので、税が上がると、少なくとも外税、インボイスという形に進むと思います。

 以上です。

竹内委員 ありがとうございます。

 給付つき税額控除の場合、マイナンバー制度という、また総背番号制みたいなものに対する国民の理解がどうなるかとか、完全にそれで所得が把握が可能であるかとか、こういうまだ先々遠大な課題を抱えることになるわけですが、もし上げるとした場合でも、どちらの方向に、複数税率で行くのか、こっちで行くのか、まだわかりませんけれども。

 籔本副会頭にお伺いしたいんですが、今の関連で、複数税率の場合だったらインボイスを入れざるを得ないと思うんですよね、さまざまな税額控除をするためには。今お話がありましたように、外税でしっかり転嫁もできるようにするとか、そういうことも考えた場合に、事業者の皆さんの、これまでは御反対が強いんですが、この辺の感覚はいかがなものかと思いまして。

籔本信裕君 当初の意見陳述のところで申し上げましたように、やはり現状では、確かに徳富さんがおっしゃるように、なれの問題もあるんだろうと思いますけれども、中小零細企業を中心に、総額税方式で、インボイスはややネガティブといいますか、そういう意見が、先ほども申し上げましたようにアンケートでは、五千万以下の小規模零細企業なんですけれども、六〇%が今の総額税方式の方がいいと。

 ただ、現実に中小零細企業はなかなかそれが価格に転嫁できないということについては、国としてしっかりそういう転嫁できる対策、これまでやっていただいていますが、消費税が価格に当然転嫁されるものであるというメッセージを、消費者なりあるいは立場の強い大企業なりに徹底して配信すべきであるというのが現在の商工会議所の意見でございます。

 以上でございます。

竹内委員 引き続き、徳富先生にも籔本先生にも両方お伺いしたいんですが、景気も非常に悪い。中小零細企業の場合、私なんかも地元で、私は京都なんですが、特に流通業の皆さんなんか、五%でも消費税の支払いをするのに四苦八苦している、運転資金で途中使ってしまうことも多いと。そういう中で、これで一〇%に上がった場合に、もう廃業せざるを得ないとか、そういう切実な声も多いんです。この辺、現場をよく御存じのお二人の御意見をちょっとお伺いしたいんです。

徳富勲君 消費税は間接税ですから、実は納税者と税を納める事業者とは違うんですね。だから、それぞれの痛税感は全く違うんです。

 消費者は、値段として上がるんです。ということは、これは当然買い控えしたり、またエコポイントのときのように駆け込みしたり、いろいろな行動は想像できますね。だけれども、事業者は、これは全然違うんです。事業者は、課税売り上げから仕入れ税額控除を引いたもの、これに課税される。それは唯一、僕は実務家として思っているんですけれども、売り上げを中心にしている。

 法人税とか所得税は、担税力、すなわちその期間の中の収益、だから担税力があるんです。消費税は売り上げですから、例えば極端な話、一億円売ったら、一〇%になれば一千万円の消費税ですね。しかし、それは回収できているかできていないかというのは全く問題外なんです。すなわち、それを月賦だとかあるいは手形だとか一年先に支払うとなったら、実は売り上げとして計上されますけれども、手元に現金はないんですね。だから、これで中小企業の人は資金繰りに困って、言い方は悪いけれども、銀行で借りるか倒産するかです。

 だから、制度というんですか仕組みの中に、基本的に担税力というものが入っていない。単に売り上げと課税仕入れということですから、その部分を税率が上がったときには何らかの方法は考えるべきだ、このように思います。

籔本信裕君 お話がありました大手流通に納入している零細中小企業の業者のところですね。本来であれば、消費税が上がれば当然その分を転嫁して販売するということになるわけですけれども、そこのところの、これまでの三%あるいは五%のとき、あるいはこういう厳しい状況のときに、消費者にできるだけ安く売る、安いものを売るというところから、現実に中小零細企業がその分を、言い方があれですけれども、泣く泣く我慢を強いられているというケースも確かにあると思うんですね。

 そういう点からいって、これが五%から一〇%になる、しかも今までのような慣行になれば、これはもうまさしくやっていけなくなって、もしそういう今までの、全体じゃないですけれども、一部のそういう商慣行というものがそのままやられれば、中小零細企業の中で業態がもたなくなるところは間違いなく出てくると思います。

 そこのところを、先ほども申し上げましたけれども、消費税というのは価格にきちんと転嫁されるものですよというところをどれだけ事前に徹底して、そういったものが逆に抑えられるようなことがあれば、何らかのそういうものにならない対策、そういったものを具体的に考えていく必要があるんではないかなと思います。

 以上です。

竹内委員 最後に一問、短時間で申しわけありませんが、松原先生。

 先ほどのお話の中で非常にいいお話をいただいたと思っておるんですが、時間がありませんが、先生が三ページの中で、福祉国家への諸制度への参加の困難と政治的権力のなさをどうするかということを御指摘いただいておるんですが、ここについての先生のお考えをちょっといただければありがたいと思います。

松原一郎君 個々のこういう問題に対して今、処方箋を書く、そういうやりとりじゃないとは思うんですけれども、むしろ、ここで申し上げたかったことは、社会的排除というものの捉え方。

 それをやはり、大変一面的に、例えば、きずながないとか居場所がないというふうな捉え方じゃなくて、もっと複合した、だからこそ、これまでの貧困とか低所得という言葉ではなくて、社会的排除という言葉が使われているのはなぜなのかというのは、経済的要因だけではなくて、健康であったり、あるいは社会的な関係性とか、社会制度や資源とのアクセス、あるいは情報。さまざまな意味でその人が人間らしく住むための意思決定、自分の人生に対して自分がコントロールできる力、あるいは他者に対して影響を及ぼす力、こういうのも含めて、そういうふうなものが奪われているという状態、それが複合して生じている、こういうダイナミックスをEUなんかでは社会的排除という捉え方をしているということです。

 そういう意味では、例えば、シングルマザーであったりあるいは失業中の若者であったり、なかなかこういう政治的な力というものを行使し得ない、もちろん、それは選挙に行かないから悪いんだというふうに言えるかもしれませんけれども、さまざまな局面でそういう力を持ち得ていない人たちに対して、この排除という概念を持って、言いかえますと、社会的統合なり包摂という概念を持って対処すべきで、それは、政府の今までの文書とか積み上げからしますと道半ばというか、途中でちょっとそれてしまっているんじゃないかなという危惧を指摘したかったわけです。

竹内委員 ありがとうございました。

鉢呂座長 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一と申します。

 きょうは貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

 最初に、井戸知事に質問させていただきます。

 消費税の増税だけでは将来的には社会保障の増加というのは賄い切れないということがよく言われております。私自身は、何らかの形で社会保障費の抑制というか効率化も同時に進めていかないと間に合わないと思っているんですけれども、それについてどう思われるかと、具体的にどうすれば効率化というか抑制ができるのか、もし何かアイデアがあれば教えていただきたいと思います。

井戸敏三君 おっしゃるとおり、今回の税と社会保障一体改革が実現したとしても、一部の財源を確保するということにつながる、全体の財源を確保したことにならないのではないか。それは、地方の単独事業六・二兆円で、今回は二・六兆円の財源が確保されたという、グラフで示させていただいたとおりでございます。

 しかし一方で、増税というのはなかなか、国民に負担をかける話でありますので、できるだけ小さなものにしながら、歳出の方で、社会保障の方で見直すべきところは抜本的な見直しを加えていくべきだ。

 私が提案させていただいたのは、年金につきましても、あるいは医療につきましても、介護保険につきましても、どうその経費を負担するか、あるいは負担能力のある人に負担をしてもらうか、これを基本に制度設計をしていくべきではないか。

 もう一度簡単に言いますと、負担能力に応じた負担をどう求めていくかということと、負担能力に応じた支出制限をしていくか、この二つの観点で検討を進めるべきではないか、このように思っています。

山内委員 ありがとうございました。

 次に、徳富先生に、先ほど来、消費税のインボイスの質問、竹内委員からもありましたけれども、それに関連して質問ですが、インボイスというと、やはりいろいろなところから反対もあります。ただ、メリットもあると思いますけれども、具体的にどういうメリットが考えられるのか、あるいはデメリットはどういうものがあるのか、より具体的に教えていただければと思います。

徳富勲君 現在の帳簿方式、これは、例えば土地でも、単なる土地だったらこれは非課税なんです。土地の上に線を引いて駐車場にしたら、課税なんですね。交際費にしても、飲食したら課税なんですが、お金で包んで渡したら、これは当然非課税なんです。だから、帳簿の中で、課税、非課税、課税、非課税、大変な作業なんです。

 インボイスであれば、当然、取引の中でもらった部分の中に税額が幾ら、払った部分に税額が幾ら。だから、単純に言うと、その払った税額から預かった税額を引いたら簡単に納税できるんですね。

 先ほど、ちょっと僕、竹内先生の質問に言い忘れたんですけれども、お答えしますと、消費税を預かり金だと思っている人がたくさんおるんですね。これは例えば、給料の源泉徴収で預かり金だ、だから税務署も、これは預かり金だから必ず払えと。必ず払えといったってそれは払うんですが、預かり金だからというような表現をよくされるんですけれども、消費税は、預かり金という概念はないんですよ。

 ということは、今言いましたように、売り上げの中で、表向き課税売り上げですけれども、商工会議所の副会頭がおっしゃったように、力の弱いところは取っていないんですね。売り上げに上げていない。だけれども、それは、もし一〇%になったら、当然、一・一で割って、なるんですね。だから、中小企業で特に消費税を転嫁できないところは、これは預かり金というより、大変な税になるんでしょうね。

 だから、インボイスにすれば、中小企業であろうが大企業であろうが、払った税ともらった税を差し引く、あくまでも書類上だという僕の考えです。

 以上。

山内委員 インボイスがあると転嫁しやすいからいいというのがメリットだということですかね。

 あと、消費税にインボイスを導入すると徴収漏れがなくなって税収がふえるんじゃないかという意見がありますけれども、それについてどのようにお考えかと、どれぐらい額が捻出できるかということ、もしアイデアがあれば教えていただきたい。

徳富勲君 額は難しいんですが、例えば、僕の知っている範囲では、恐らく免税業者というのは今二百数十万人います。だから、それを、その人もこれから免税業者という括弧をつけるのか、なくなるのか。海外で日本のように一千万円、免税業者というのは、結構高い。ドイツなんかだったら、恐らく二、三百万円だと思うんですよね。

 それと、簡易課税にしたって、簡易課税というものはインボイスと全く違う。だから、簡易課税をインボイスにするだけでも相当な税が入ると思います。

 だから、これは推測ですけれども、ある会計事務所がたまたま出している数字ですけれども、今、簡易課税と免税の分だけで恐らく五千億円ある、これが一〇%になったら一兆円になるんじゃないかという話もあります。インボイスはそれを捕捉するんじゃないかな、こんなような感じでお話ししているんです。

山内委員 ありがとうございました。大変よくわかりました。

 それでは、松原先生に質問させていただきたいと思います。

 松原先生のお話、大変私も同感なところが多くて、今の社会保障、福祉制度の前提がもう全然変わってしまっているという点、全く同感だと思います。

 松原先生のペーパーの一ページ目の下の方に、「完全雇用による世帯主の安定した稼働収入と家族内の役割分業を前提にした福祉制度は、急速に過去のものとなりつつあります。」私も同じような感覚を持っております。

 標準的な家族というのが、なかなか、今や若い世代では少なくなってきているんじゃないかと思いますし、そもそも、標準世帯という発想自体、標準世帯から外れる人に不利益な制度であれば、やはりこれからは変えていかなくてはいけないと思っております。

 私自身は、団塊ジュニア世代で、ロストジェネレーションと言われる世代ですから、同じ世代だと、非正規雇用も非常に多いし、シングルマザーもシングルファーザーも非常に多くて、珍しくなくなってきている、そういう世代だと思います。

 かつて、核家族化という言葉がありましたけれども、今や、核家族がさらにばらばらになって、個人単位で社会保障とか福祉を考えていかないとまずい時代に来ていると思います。一生独身の人というのも今大分ふえているわけですから、そういう時代に、やはり、標準世帯とか標準的な家族を前提にした今の制度というのは、そろそろ抜本的に変えていかなくてはいけないという思いを私も持っております。

 その中で、今後、どういう制度を設計していかなくてはいけないのか。そして、標準世帯、特に上の世代に行けば行くほど標準世帯というのが当たり前だと思っている世代が多いと思うんですが、やはり常識が変わってきていると思うんですけれども、社会全体をそういう新しい方向に持っていくには何をすればいいんでしょうか。

松原一郎君 まずは政治の力ではないでしょうか。先生方に期待をしたいと思います。

 例えば、今委員がおっしゃったように、ここでも「標準的な家族」というふうに書きました。つまり、社会保障の受給資格というものが、従来は、労働市場での地位に基づく。それによって社会保険なりがついて給付があるということ。あるいは、その給付や拠出の単位というものが、往々にして、個人ではなくて世帯というものを前提にしている等々。ここの、本文でも申し上げましたけれども、男性稼ぎ手というそういうモデルだけではなくて、それに付随したことですけれども、そういうふうな、いわば戦後の一時期と言ってもいいかもしれませんが、その家族形態あるいは社会のあり方を前提にした社会保障制度の設計であったということです。

 そういう意味では、先ほど申しましたように、では、どんな社会像をこれから三十年、五十年後に描くのかということ。やはり、社会学なりそういうふうなものの知見を活用しながら、社会像を描くことによって、どういうふうな体制を考えていくのかということを考えていく。

 これなしでこの帳尻合わせをしていますと、やはり、誰のための負担なのか、誰に対する給付なのかと。しょせん、これは負担と給付という大きな問題ですので、誰もが不公平感を感じたり、あるいは、誰のために私たちは今我慢をするのか、そしていつまで我慢するのかというふうなこととか、往々にして、今の選挙民、納税者が自分のことしか考えなくて、次世代のことを忘れるというふうなこととか、先ほど政治に期待させていただきたいというのは、そういう意味では、三十年後、五十年後、この社会がどうなっているか、どうしたいのか、そういう選択肢をぜひつくっていただいて、これは価値観にかかわることですからなかなか収れんはしないと思いますけれども、その選択肢の中でコンセンサスを得ていく。

 そういう意味では、政治という意味では、本当はその選択肢をめぐっての議論というのが二大政党制を初め本来あるべき姿ではないかなというふうに思っておりますが、しかし、そんなふうに価値観が二つ、三つに分かれることではない、むしろ収れんすることではないかなというふうに思われる方もいらっしゃるでしょうし、また、できればそういう方向で、まさしく政治主導で、こういう近未来の日本の社会像を想定した上で、それにそぐわしい社会保険、社会福祉の体制というふうなものを考えていただきたい。

 本当に、私たち選挙民も、政治リテラシーを持たなければいけませんけれども、何かキャッチフレーズ的なものに踊らされるんじゃなくて、どういうふうな選択を将来に対してするのか、それをまた政党も示していただいた上で、私たちに選挙の際の選択肢を与えていただきたい、こんなふうに思います。

山内委員 ありがとうございました。

 時間がないんですが、ちょっと最後に小林会長にお尋ねします。

 いただいたペーパーの中で、株式会社の保育への参入に対してややネガティブな御意見かと思うんですけれども、仮に、保育に株式会社がどんどん参入することになると、例えば保育士の給与水準が下がるとか、そういう事例がこれまでに何かあったんでしょうか。

 株式会社といってもいろいろな会社がありますから、一律に悪いとは私は思わないんですけれども、その点、何か根拠となる数値とかあれば教えていただければと思います。

小林公正君 根拠となる数値というのは今ちょっと持ち合わせてございませんが、先生おっしゃるように、確かに株式会社にもいろいろとあるんですけれども、要は、子供の立場で物を申したときに、子供が、利用者が直接保育所を選ぶということはできないわけです。やはり親の都合でどうしても選ぶようになる。そうすると、子供にとってじゃなくて親にとっての必要なサービスというのが過剰になる。それはなぜかというと、企業というのはやはり営利目的であるということですよね。

 そういう点で、あるいはまた人件費を削減する、あるいは環境ですね、できるだけコストを低くして保育をするというふうな状況が発生するんじゃないかというふうな危惧をしております。

 ただ、かといって、では我々認可保育園が全ての子供たちを受け入れられるかというと、そうではございません。そういう中で、やはり、今ある他の施設と、いわゆる指定基準を設けて、きちっとした基準の中で、しかもそれを実際にいろいろと点検する中で、そういった子供たちを受け入れていくという方法しかないのかというふうに考えております。

 基本的には、企業参入ということは非常に危惧をしております。

山内委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

鉢呂座長 次に、中島正純君。

中島(正)委員 国民新党の中島正純でございます。

 きょうは皆様方に、さまざまなお立場から、いろいろな貴重な御意見をお聞かせいただきまして、大変勉強になりました。ありがとうございます。今から御質問させていただき、さらに勉強させていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 それでは、まず最初に井戸陳述人、辻陳述人、小林陳述人、それから藤浪陳述人、四名の方にお聞きをしたいと思います。

 年金制度改革についてお聞きをさせていただきます。

 社会保障と税の一体改革につきましては、連日、国会で議論が交わされているところでございますが、若者の多くが年金制度に対する不安感、不信感を抱いており、また、低年金、無年金への対応といった問題も現行制度では抱えております。

 今回の年金制度では、低所得者に対する年金額の加算や、高所得者の年金の一部支給停止など、さまざまな措置を講ずることとしており、年金、無年金の問題や世代間の格差問題について、改善の道筋をつけようとしております。

 多岐にわたる改正で一くくりでの評価は難しいかもしれませんが、今回の年金制度改革全般につきまして、それぞれの皆様から、個人的な感想でも結構でございますので、御意見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

井戸敏三君 私の考え方は非常に簡単明瞭なんです。つまり、負担能力のある人からは取れ、負担能力のない人には取るな、それから、負担能力のある人には支給停止をしろ、負担能力のない人には満額出せ、それは年齢にこだわる必要がないということなんですね。

 それを、六十五歳以上になって非常勤の職であると、例えば一千万円、三つか四つの非常勤の職から報酬を得ても、丸々支給されるんですね。こういう制度になってしまっているんです、今のは。ですから、これはおかしいので、全部の所得を合算した上で判定を加えて、負担能力のある人には、制限ではなくて、私は、もう支給停止してもいい、それぐらいの制度と、それから、六十で保険料を取るのをやめる必要はないので、生涯現役世代を目指すんだったら、先ほどは七十五と言いましたが、一定所得以上がある方には負担をしていただく、そういう仕掛けに変えるべきだ、こういうふうに思っています。

 そういう仕掛けにすることによって、世代間の何となく不公平があるみたいな印象を払拭できるんじゃないか。世代間、不公平はないんですよね。今の若い人は、自分で自分の首を絞めているだけなんです。要は、将来給付を捨てているんですね。例えば、基礎年金でいえば、二分の一は税金なんですよ。それから厚生年金でいえば、上積みの二分の一は事業者負担なんですね。それなのに入らないとかいったら、要は自分の掛金だけで生活しますわと言っているのと同じ話なのです。

 そこのところをよく申し伝えなきゃいけないということと、二ページに書きましたように、大体、胴上げ型とか騎馬戦型とか肩車型みたいな言い方が絶対間違いなんですね。こんないいかげんな議論をするから、ああ、将来我々はお年寄りを全部自分でしょうのかと言っているんですが、実を言うと、しょわれるのは今の若い人なんですね。しょうのはもっと先の若い人なんです。そこがこんがらかって、自分がしょわれると思っていないんですよ。ところが、実際問題としては、自分もしょわれるんじゃなくて、自分が蓄えたものがほとんどで、税だとか雇用者のと合わせた基金でもって年金が回っていくわけですね。

 だから、そこの年金の基本システムというものに対する周知徹底とかPRが欠けているんじゃないかという気がいたします。ようやく少し是正措置が講ぜられようとしているけれども、先ほども言いましたように、負担能力に着眼して、あるやつからは取る、あるやつには支給しない、こういう基本原則で徹底して見直しをしていただいたらいかがかというふうに思います。

 それから、少なくとも二階部分までは共通制度にしていくべきだ、共済だろうと何だろうと共通制度にしていくべきだ、三階部分は選択の問題だ、そういう基本視点が必要なのではないかと思います。

辻芳治君 今、中島委員の方からありました年金制度改革にかかわる低所得者加算なり高所得者の年金調整、それと、私からも意見陳述申し上げた無年金者なり若年の加入の問題、そうしたところをトータル的に少しコメントを申し上げたいと思います。

 まず、低所得者加算なり高所得者の調整の件ですけれども、基本的には、私ども連合トータルとして、これは何としても今の法案の内容でいくべきだというところまでの強い主張ではないんですけれども、いずれにしても、免除期間加算と定額加算というミックスの形での加算方法が考えられています。これは、低所得者加算ということでの所得再分配機能の強化というようなことと、やはり高齢者に対する防貧、貧困防止の役割を高めるというような観点から、今回の法案の内容で基本的にはいいというふうに受けとめております。

 あと、高所得者の年金減額。これについても、知事からも少し、給付しないというような御意見もございましたけれども、やはりこれは負担と給付の関係があるわけですし、そうした意味では望ましくないというような意見もあるのかもしれませんが、知事からもございましたように、基礎年金財源のうちの半分は国庫、税金によって賄われているということですので、今回の法案では減額対象となっているのは保険料部分ではなくて国庫、税金の部分であるということからすれば、今回の減額は、公共の福祉という政策的な観点と財政の一般的な考え方、必要な分野に必要な支出というような原則からしても、許容される内容だという受けとめをいたしております。

 それと、年金。確かに、今回の一元化法案なり機能強化法案、意見を申し上げたように、あくまでも第一歩ということで、私どもは、全てを先送りではなくて、何らかの改革の一歩をまず踏み出すべきだという主張を申し上げています。いずれにしても、将来的には、当然、財源負担の、税制改革との関連ということが出てくるわけですし、制度的にもまだまだ、時間軸と具体性というのは今回の法案では明確になっていないところもございますので、それらを逐次、段階的に改革を目指していくべき。

 その上で、やはり負担の部分が強調されて、若い皆さん方も、この負担をすれば将来どれだけの年金がきっちり担保されるかというところが裏腹で見えていない。そのことに対しての、若年層の加入率の問題にも出ているんだと思います。

 やはりそうしたあたりを早急に、具体策なり時間軸、これは私ども連合も改革案を、一足飛びに行うのではなくて二段階でという提案も申し上げています。そんなところも参考にしていただきながら、全て、つまり自営業者の所得比例年金の創設、これは第二段階のところで自営業者の所得捕捉という重要な難しい課題が控えていますので、それらの条件整備なども踏まえて、連合としては、四十年程度をかけての中長期の課題でそんなものを指し示すというようなことも、年金制度改革、第一歩を踏み出す重要性は訴えておりますけれども、将来的な絵姿をどう示すかということが大事なんだろうというふうに思っております。

 以上です。

小林公正君 質問はどういう内容でしょう。ごめんなさい。

中島(正)委員 年金制度改革についてなんですけれども、今、連日国会で議論されておりますけれども、若者が年金制度に対する不安感であるとか不信感、それから、今、現行制度では、低年金それから無年金といったいろいろな問題を抱えております。

 今回の年金制度では、低所得者に対する年金額の加算や、それから高所得者の年金の一部支給停止など、さまざまな措置を講じておりますけれども、多岐にわたる改正で、一くくりでは非常に評価は難しいと思うんですけれども、個人的な御意見でも結構ですので、何かありましたらよろしくお願いいたします。

小林公正君 全く個人的な意見でございますけれども、やはり知事もおっしゃっていましたけれども、若者が年金制度そのものに対してのきちっとした認識といいますか、意味がきちっと伝わっていないというところに一つは課題があろうかと思います。

 それと、やはり将来に向けての不安というものをどういうふうに伝えるかによって、若者というのはその辺の意識が変わっていくんじゃないかというふうな気はいたしております。

藤浪芳子君 やはり知事さんおっしゃいましたように、昔は、年金に掛けた分をもらう、ですから、できるだけ早くもらって、たくさんもらわないと損やというような、そういう風潮がありました。

 今は、高所得者、たくさん収入がある人には年金を払わない、カットするという考え方は、やはり税金の一部なのかなという気がしております。低所得者に対しましては、先ほど申しましたように、最後は政府が何とかしてくれる、誰かが何とかしてくれるという甘えを生まないようにしないと、それは、今の正規雇用の人たちがどんどん減っていっているという、これともすごく関連してくると思います。

 ですから、企業側それから政府の側の税金とか社会保険の制度が、それがフリーターを生んだとは思いませんけれども、フリーターが楽でいいわと。これを掛けてももらえないかもしれないという片半面、ちゃんと受けるところをつくりますと、何もしなくてももらえるよというような逆の不公平が出てくるような気がします。その甘えの構造が怖いなというのが一つあります。

 ただ、ではそのままでいいのかというと、やはり、皆、日本国民が全部で助け合わないといけないというのは基本なんです。

 実際、私の母も年金をいただいておりますが、母が年金をいただいているおかげで、私どもは母に対して全く何も扶養をしなくても済んでいるという非常にありがたい状態は今あります。

 ですから、年金を次々、次世代次世代へ送っていく、負担を送っていくというようなことを言われますけれども、逆に、もらうことによって次世代の負担が軽くなっているという現実もあると思いますので、よく考えていただいて、助けないといけないけれども、過剰なことをすれば、逆に、勤勉性であるとか正直にやるということに対しての逆が来るような気もしております。

 以上です。

中島(正)委員 ありがとうございます。

 あと一分五十秒ぐらい余っているんですが、もう一問質問すればオーバーしてしまいそうなので、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。

鉢呂座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 意見陳述者の皆様におかれましては、御多忙の中、長時間貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただいた御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大きいものがあるというふうに確信をしております。ここに厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後三時四十一分散会


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