衆議院

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第16号 平成24年6月7日(木曜日)

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平成二十四年六月七日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中野 寛成君

   理事 武正 公一君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 古本伸一郎君 理事 松本 大輔君

   理事 和田 隆志君 理事 逢沢 一郎君

   理事 伊吹 文明君 理事 西  博義君

      井戸まさえ君    石井登志郎君

      稲富 修二君    打越あかし君

      江端 貴子君    小原  舞君

      大西 健介君    大西 孝典君

      岡田 康裕君    勝又恒一郎君

      神山 洋介君    岸本 周平君

      工藤 仁美君    斉藤  進君

      篠原  孝君    白石 洋一君

      田嶋  要君    田中美絵子君

      高井 崇志君    竹田 光明君

      道休誠一郎君    中林美恵子君

      中屋 大介君    永江 孝子君

      長尾  敬君    野田 国義君

      橋本 博明君    畑  浩治君

      早川久美子君    藤田 憲彦君

      三村 和也君    皆吉 稲生君

      宮島 大典君    向山 好一君

      室井 秀子君    山尾志桜里君

      山崎  誠君    湯原 俊二君

      柚木 道義君    渡部 恒三君

      あべ 俊子君    石田 真敏君

      加藤 勝信君    金子 一義君

      鴨下 一郎君    下村 博文君

      田村 憲久君    竹下  亘君

      野田  毅君    馳   浩君

      町村 信孝君    斉藤 鉄夫君

      竹内  譲君    高橋千鶴子君

      宮本 岳志君    豊田潤多郎君

      三輪 信昭君    中島 隆利君

      吉泉 秀男君    江田 憲司君

      山内 康一君    中島 正純君

    …………………………………

   国務大臣

   (社会保障・税一体改革担当)           岡田 克也君

   総務大臣         川端 達夫君

   財務大臣         安住  淳君

   厚生労働大臣

   国務大臣

   (少子化対策担当)    小宮山洋子君

   内閣府副大臣       石田 勝之君

   内閣府副大臣       後藤  斎君

   総務副大臣        大島  敦君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   文部科学副大臣      高井 美穂君

   国土交通副大臣      奥田  建君

   内閣府大臣政務官     大串 博志君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    古谷 一之君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  榮畑  潤君

   衆議院調査局社会保障と税の一体改革に関する特別調査室長          佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月七日

 辞任         補欠選任

  石井登志郎君     中屋 大介君

  岡田 康裕君     打越あかし君

  勝又恒一郎君     皆吉 稲生君

  岸本 周平君     大西 健介君

  白石 洋一君     畑  浩治君

  田嶋  要君     野田 国義君

  田村 謙治君     向山 好一君

  永江 孝子君     高井 崇志君

  早川久美子君     道休誠一郎君

  湯原 俊二君     山崎  誠君

  柚木 道義君     橋本 博明君

  加藤 勝信君     下村 博文君

  田村 憲久君     あべ 俊子君

  竹内  譲君     斉藤 鉄夫君

  宮本 岳志君     高橋千鶴子君

  豊田潤多郎君     三輪 信昭君

  中島 隆利君     吉泉 秀男君

  山内 康一君     江田 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  打越あかし君     工藤 仁美君

  大西 健介君     岸本 周平君

  高井 崇志君     永江 孝子君

  道休誠一郎君     早川久美子君

  中屋 大介君     井戸まさえ君

  野田 国義君     大西 孝典君

  橋本 博明君     柚木 道義君

  畑  浩治君     白石 洋一君

  皆吉 稲生君     勝又恒一郎君

  向山 好一君     竹田 光明君

  山崎  誠君     中林美恵子君

  あべ 俊子君     田村 憲久君

  下村 博文君     加藤 勝信君

  斉藤 鉄夫君     竹内  譲君

  高橋千鶴子君     宮本 岳志君

  三輪 信昭君     豊田潤多郎君

  吉泉 秀男君     中島 隆利君

  江田 憲司君     山内 康一君

同日

 辞任         補欠選任

  井戸まさえ君     石井登志郎君

  大西 孝典君     田嶋  要君

  工藤 仁美君     岡田 康裕君

  竹田 光明君     斉藤  進君

  中林美恵子君     神山 洋介君

同日

 辞任         補欠選任

  神山 洋介君     湯原 俊二君

  斉藤  進君     山尾志桜里君

同日

 辞任         補欠選任

  山尾志桜里君     小原  舞君

同日

 辞任         補欠選任

  小原  舞君     田村 謙治君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七四号)

 被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七八号)

 子ども・子育て支援法案(内閣提出第七五号)

 総合こども園法案(内閣提出第七六号)

 子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第七七号)

 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第七二号)

 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提出第七三号)


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     ――――◇―――――

中野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案、被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案、子ども・子育て支援法案、総合こども園法案、子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案及び社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として財務省主税局長古谷一之君、厚生労働省保険局長外口崇君、厚生労働省年金局長榮畑潤君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田嶋要君。

田嶋(要)委員 おはようございます。民主党田嶋要でございます。

 質問に先立ちまして、一言申し上げます。

 昨日、寛仁親王殿下が薨去あらせられました。

 スポーツ振興、障害者福祉などに大変御尽力された、そして気さくなお人柄の、国民に愛されたひげの殿下の御訃報に接しまして、ここに謹んで哀悼の意を表したいと思います。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 きょう私は、地元でもやっております車座集会あるいは転嫁対策のワーキングチームというのをやらせていただきました、そしてまた、先日、地方公聴会で福島でも参加させていただきましたが、そういったことを踏まえて、転嫁問題を中心に質問させていただきたいと思います。

 まず、それに先立ちまして、地元でいろいろな方から、消費税と国の借金のことでよく質問されます。資料一ページ目につけておりますのが、民主党で使っている、これは財務省からの資料でございますけれども、国の借金のグラフでございますが、まず最初に、簡単に三点お伺いしますので、まとめてお答えをしていただければと思います。

 民主党政権になって、国の借金のことを政権交代前からいろいろ言っておりましたが、このグラフでもわかるとおり、政権がかわっても相変わらず対GDP比の数字は悪化の一途でございます。このことに国民も首をかしげる方も大変多いわけでございますが、なぜ相変わらず改善されないのか、そのことをもう一度確認したいと思います。

 それから、今回、消費税が三%、五%と上がっていくわけでございますけれども、その消費税の増税分で、フローとしての国の新たな借金というのはその分減らすことができるのかどうか。

 そしてもう一点は、では、ストックとしては、今回の消費税の増税によってストックとしての国の借金はいつになったら実際に減り始めるのか。

 御負担をいただくからには、そして目的の一つとして財政再建の第一歩とおっしゃっているわけですから、その点に関してわかりやすい説明、プライマリーバランスとか言わずに、わかりやすい説明を国民に向かって発していただきたいと思います。

安住国務大臣 おはようございます。

 とにかく、借金の多さというのは今、世界の中でも飛び抜けております。GDP比でも二〇〇%を超えるような勢いでございますから、そういう点では、今、田嶋さんがお示しになったグラフのとおりでございます。

 なぜこういうことになっているのかということは、端的に申し上げまして、一般歳出が税収の中ではやはり半分ちょっとしか賄えない、残りをみんな公債発行に依存しているような状況でありますから、これが積み上がってきて、毎年、特にこの十年間、急激に債務がふえたということでございます。

 それでは、財政再建が、今回の税と社会負担等をやればこれがどういうふうになるのかということでございますけれども、残念ながら、国債発行の額というのは急激に改善はいたしません。

 今の予算の枠組みの中で、社会保障費が大変増加をしておりますし、そのほかの予算については、この二十年来、自公政権下でもマイナスないしは横ばいでずっと参っております。地方自治体に対するお金については、地方の財政状況の厳しい中、これはほとんど現状の維持をしながらやってきましたから、その分、他の基礎的な政策経費についてはしわ寄せが来ているような状況であります。そうした点から考えますと、ふえ続ける社会保障費に見合った何らかの財源の措置というものをとらない限り、財政上は、ますますこれは厳しくなるということでございます。

 ただし、財政赤字が雪だるま式にふえていくことに対して、そのスピードを緩めていくことができる。そして、できれば二〇二〇年には、我が国としては、全予算に占める中で、借金の利払いや償還費に占める国債の払いはやむを得ないとしても、残りについてはいわば収支プラマイ・ゼロにしていこうというのが今の目標であります。まずそこに近づけることが大事であって、重なってきたストックの分については、残念ながら、これを減らしていくというところまで行き着いていないというところでございます。

田嶋(要)委員 そういうことで、それを受けて転嫁問題に入らせていただきますけれども、これは、ワーキングチームの事務局長もやっておりましたが、いろいろ検討したんですけれども、なかなか悩ましい問題だと私は思います。

 それで、岡田副総理にお伺いできればと思いますけれども、せんだっての地方公聴会でもいろいろ御指摘が出てございました。

 この問題の本質は、私は、ほかの方でも同じような指摘がございましたけれども、消費者一般には余り知られていない問題だということだと思うんですね。これはなぜかというと、消費者が負担をしていない部分だということだと思います。片や、実際には、税を本来負担する方々ではない途中の段階の方々、中小零細企業の方々が非常に苦しんでおられるという、そのずれがやはりこの問題の本質ではないかなというふうに思います。

 加えて、地方公聴会でも、二段階で上げるということに関しての賛成、反対という質問も出てございましたけれども、ちょうど四人対四人で、この二段階に対する反対という声もございまして、その反対という声がやはり中小零細企業の声を代弁する方々から出てございました。二回に分けて上げることが、本当に中小零細の転嫁の問題をさらに深刻なことにするのではないかという御懸念でございます。

 そして、資料の三におつけしましたけれども、ここを見ていただいても、これは私どもの転嫁対策の最初の会議で我が党のある議員の方から御指摘いただきまして、これは前回、三から五に上がったときの実際の数字でございますが、もちろん、こういった自殺者数が急増したことの原因が全部消費税ということではないわけでございます。いろいろな悪いことが重なったわけで、こういうことでございますが、しかし、調査された大学の先生のレポートによりますと、圧倒的多数が中年の男性だということで、サラリーマンもあるでしょうけれども、経営者の苦しみということであります。

 そういうことを考えまして、あるいはこの委員会でも出ました、十兆円を超えるネット増税は初めてだということでございます。そういったことを踏まえて、まず政府の本部の本部長でもございます岡田副総理に、この問題は、本当に今度こそ深刻に受けとめて、これまでと格段の対策を講じなければいけない。国民にはなかなかこれは理解されていない問題であるから、本当にこれは気の毒な感じもするんです。そのことの重さをぜひ受けとめていただいて、今もデフレの状況ではありますが、本当に万全の対策をやるということをまずお誓いしていただきたいと思います。

岡田国務大臣 まず、転嫁の問題は非常に重要だという委員の御指摘は、そのとおりであります。

 党の方でもいろいろ御検討いただいて、非常に有用な御提言をいただきました。それを踏まえて、政府としての考え方も、先般、中間的に整理をして、お示ししたところであります。今までとは異なる、法的措置も含めた万全の転嫁対策を講じる。そして、これも党からGメンということで御提案いただきましたが、しっかりとした監視体制もつくるということについて、先般政府としての考え方を発表させていただいたところでございます。

 本来、消費税というのは最終的に消費者に転嫁されるということが前提の税でありますので、そのことのPRも政府としてしっかり行っていきたいというふうに考えております。

 それから、自殺の話を委員御指摘になりました。ここは、相関関係があるのかないのか、全くないとは言えないと思います。しかし、これは、一つの大きなきっかけは、私は、バブル崩壊に伴う大量の不良債権の発生とその処理、そういう中で、多くの経営者の皆さんも含めた自殺者というのが急増したということだと思います。

 消費税を引き上げたことが直接の原因だったというふうには必ずしも考えておりませんが、そういった現実、自殺者が非常にふえたという現実は十分に念頭に置いて、万全の転嫁対策というものを講じていきたいというふうに考えております。

田嶋(要)委員 前回、三から五%に引き上がったときにいろいろな対策を講じられました。導入時も講じられたんですが、問題は、そうした講じた対策がどういう効果を生んだかということの検証は全くなされていなかったんですね。だから、どのやり方が効果的だったかということを私たちは余りよくわからない中で、今度もいろいろ考えていかなきゃいけないということだと思っております。

 今、副総理がおっしゃっていただきましたけれども、もちろん、いろいろな悪いことが全部消費税のせいだということはないと思います。しかし、今回は、先ほど申し上げたような理由、二段階、そしてネットでの十兆円を超える増税、いろいろなことを考えると、本当にこれは心して対策をやっていただきたい、それは予算措置も含めて本気でやらなければいけないということを改めて強調させていただきたいと思います。

 そして、公正取引委員会、きょう竹島委員長がお見えでございますので質問させていただきますけれども、せんだっての答弁の中で、BツーCに関しては公取の所管外だというような御発言がありまして、私もちょっとびっくりしたわけでございます。御本人、そういう意図はなかったと思いますけれども、今回の問題も当然中心的に御活躍をいただくのが公取でもあろうかと思っておりますので、ぜひ、その点に関してもう一度御答弁をいただきたいということ。

 それから、導入時にカルテルの例外扱いという対策を導入いたしました。それに関して、私自身は、今回当然やらなければいけないというふうに考えてございますが、少しまだ何かちゅうちょがあるような感じも印象としては受けてございます。その点に関して、まず委員長の御覚悟をお伺いしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 お答え申し上げます。

 五月の二十三日にこの特別委員会で御質問をいただきまして、そのときに、公正取引委員会の調査はBツーCに及んでいない、BツーBに限定しているということを申し上げました。

 御質問が、消費税の転嫁に関する実態調査について、公正取引委員会がやった調査は事業者、BツーBに限定してやったわけですが、その結果は、一〇〇%近い事業者が転嫁できているという結果だった。一方、そのときの質問者の先生が示されたデータはBツーCも含んだ中小四団体の調査、これでは中小零細になるほど転嫁ができなかったという結果が出ている、大きな違いがあるじゃないかという御質問でございましたので、いや、私どもの方の調査はBツーBだけでございます、BツーCを入れたその質問者の先生が出されたものとカバレッジが違います、こういう趣旨で申し上げたわけでございまして、BツーCに関して、そもそも公正取引委員会は何の関係もないということを申し上げたわけではございません。

 小売業者が、例えば共同して価格を一定にして消費者に売ろうということを決めたら、これは立派なカルテルでございますから、当然、独禁法の問題になってくる。ですから、舌足らずだったのかもしれませんが、実態調査のカバレッジの話を申し上げた。

 それから、二点目の適用除外のことでございますが、平成元年は、転嫁カルテル、表示カルテル、これはいずれも独禁法の適用除外にしたわけでございます、時限的でございましたが。それから、平成九年度の引き上げのときには、それはいたしませんでした。

 今回は、田嶋先生のされた党の方の御議論もございますし、それを踏まえた、先ほど副総理がおっしゃった政府の検討本部の中間整理でも、転嫁カルテルそれから表示カルテル、両方について、まだ最終的な結論を出しておりませんが、これは必要があればまたやる、こういうことでございますので、私もその点について何か消極的な態度をとっているわけじゃございません。まだ最終的な結論は出ておりませんけれども、やることが必要であるということに意思統一がなされた場合は、きちっと対応してまいりたいと思っております。

田嶋(要)委員 前回の価格カルテル、表示カルテルの例外を申し出てきた団体に対してその対応をしたということですが、そういう団体が、じゃ、実際、転嫁に関して、いい結果が出たのかどうか、そういうその後の、事後の調査というのが全くありません、そういう話を公取からも聞きまして、それではそういう対策がどの程度の功を奏したかがよくわからないわけでございます。非常に残念でございますので、そこをぜひしっかりと調査もしていただきながら、そして今回やらない理由は僕はないと思います。こういう深刻な問題であるということを考えたときに、やはり初回に導入したこの対策に関しては、ぜひとも今回、初回という思いでやっていただきたいというふうに思っております。

 それから、もう一つ、公取にお伺いいたしますが、私ども党の方で、さらにどういうふうなことができるかということで、今ガイドラインでいろいろと、できること、できないこと、こういうことは独禁法違反にならない、下請法違反にならない、そういうことをガイドラインにおさめておるわけでございますが、やはり何といっても立法として格上げをしていくということが全国民に対していろいろな意味で大きな効果を生むのではないかというふうに考えてございます。その点に関して、公正取引委員会、どのようにお考えになっているか。

 それから、この委員会でもあるいは本会議でも、野田総理、岡田副総理、それから安住財務大臣から、転嫁Gメンという言葉が必ず出されております。この転嫁Gメン、私ども民主党の方で御提案を申し上げておるわけでございますが、まだ竹島委員長からその言葉は出てございませんので、御検討をもう既にしていただいていると思います、この転嫁Gメンということも、今までない施策ではございますが、私はこれが今度の鍵を握ってくるのではないかというふうに思っておりますので、現在のところのお考えをお聞きしたいと思います。

竹島政府特別補佐人 二点、御質問をいただいたと思いますが、今、消費税のガイドラインに書いてあることを法律にしてはどうかというのが一点だというふうに思います。

 これは、その効果が、どういう御利益があるのかということについて、私はちょっと疑問に思います。構成要件を簡略にするとか立証水準を下げるということであれば意味がありますが、今既にガイドラインで、かくかくしかじかのことをやれば、例えば消費税の引き上げ分を正当な理由なく優越的地位の濫用で拒否して取引価格を上げないというようなことは、まさにもう既に現行法で違法でございますので、そういう事例があれば違法だ、そういうことがガイドラインに書いてあるわけでございまして、それを法律に書いたからといって、何かプラスアルファの御利益は出てこないと私は思うんですね。ですから、そういうことについてはそういうふうに今思っています。

 さはさりながら、党の方の御提言もありますし、中間整理におきましても、新たな措置といいますか、「原則として消費税の転嫁の拒否やこれに類する行為を行えないような立法措置の在り方について、関係省庁間で更なる検討を行う。」ということが書かれている。これはまさに新たなことだと思いますが、その具体的なアイデアについて今検討しているところでございます。もう少しお時間をいただきたいと思います。

 それから、Gメンのことをお尋ねでございましたが、これは、いろいろ予算措置も伴うと思いますけれども、それから各省の御協力もいただかなければならぬと思いますが、とても、公正取引委員会、八百人しかおりませんので、ひとりではできませんので、関係省庁と連携をとって、Gメンのことについてはきっちりと対応してまいりたいと思っております。

田嶋(要)委員 公取、現在八百四人でございますけれども、その組織の規模はほかの先進国に比べても決して見劣りするものではないということで、人数的には十分な体制だというふうな御説明も事務方から聞いてございますが、しかし、今回特例的に消費税引き上げの期間、二段階にわたる恐らく延べ三年間ぐらいはこのGメンなるものを用意して、しっかりと国民を支えていくことが肝心ではないかというふうに思っております。

 例えば、地方の商工会議所、そういうような各種の団体とも連携をしながら、まさに声なき声、弱い立場の方々がなかなか声を上げにくい、そういうところまでこちらの方から出向いていってしっかりと対応をとれる、あるいは未然に不正を防止する、そういうことが大変重要になってこようかと思いますので、ぜひこのGメンに関しましては、現在の中小零細企業の数、八百万を超えるわけですか、そうすれば、そのうちで規模の小さいところほどこの転嫁の問題に苦しんでいるということでございますので、仮に規模の小さい、半分程度の企業にしっかりと、一種アカウントマネジャーのような方式で、それぞれの転嫁Gメンの方に関してそれぞれの担当の企業を割り当てるなどしてやっていただく。そうした全国で徹底的に、立場の弱い企業の側に立った、わかりやすい具体的な対策ということをぜひお願いしたいというふうに思っております。

 それでは、その関連できょうは消費者庁にもお越しいただいておりますので、後藤副大臣にお伺いをしたいと思います。

 消費者庁の前身というか、前回の引き上げ時には経済企画庁でございました。そのときには消費税の引き上げの関連で、いわゆる便乗値上げということに対しての物価をモニターする方々を五千人雇って、そして全国で便乗値上げをウオッチする、そういうふうな仕掛けをつくっておられたとお伺いしております。

 しかし、消費者庁の役割は何かと考えたときに、価格の適正さ、適正価格からの逸脱をチェックする、そういうふうに考えた場合に、確かに、最終消費者からすれば、物価が上がることの便乗値上げの方がより関心が高いというのは先ほど申したとおりでございます。しかし、十分な消費税の転嫁がなされていないということも結局は国民にとってはよろしくないという観点に立てば、そこにやはり消費者庁も一定の役割を、あるいは関与をして協力体制をしくことが今度の転嫁対策に関しては私は役立つのではないかというふうに思っておる次第でございますが、消費者庁としてその点御検討いただけたかと思いますけれども、現時点でのお考えを共有していただきたいと思います。

後藤副大臣 先生が御指摘のとおり、平成元年度、消費税の導入当時は四千二百人の物価モニターの方々に御依頼をして、特に便乗値上げという点で調査をいたしました。平成九年の際にも、二千七百人体制で物価モニターの皆さん方に調査、監視という形で三十品目について対応いたしました。

 今回、省庁再編によって、物価モニターという制度は現在消費者庁は持っておりません。ただし、地方消費生活相談員の方々、これは地方に張りついている方でありますけれども、ちょっと組織的には違いますが、今三千三百人体制でおります。

 いずれにしましても、今回は便乗値上げというよりも、今御指摘のように、きちっと転嫁をされ、それがやはり社会保障と税の一体改革にきちっとプラスになっていくという、消費者の皆さん方の意識を醸成するという意味でも、いろいろな角度から今検討しておりますし、先生御指摘の物価モニター制度の活用という点についても鋭意検討していきたいというふうに考えております。

田嶋(要)委員 私どもの党内の議論でも、便乗値上げに対して、便乗値下げの方がより深刻だ、そういう御指摘もメンバーから受けたわけでございます。

 これは、中小零細企業の方々も同じ消費者でもあり、かつ、国民であるわけでございますので、ぜひとも、こういう特に今まだデフレの状況でもございますし、便乗値上げももちろんいけませんけれども、この深刻な問題を全省庁で共有していただいて、連携できるところはぜひ連携をしていただきたい。

 便乗値上げに関しても、消費者庁がもしそういうケースを見つけたら公取にそれを渡すという話を説明を受けました。同じような仕組みでやれるのではないかというふうに思っておりますので、ぜひそこは協力をしてお願いしたいというふうに思います。

 続きまして、財務省の方にお伺いしたいと思いますが、資料の四でおつけしました総額表示の方式でございます。

 現在はこの五通りの総額表示ということで、平成十五年にいわゆる外税から内税ということでBツーCに関してはこういった総額表示に義務化されたということでございますが、いろいろな議論の中で、この表示のあり方と転嫁の問題は関係ないという業界もおいででしたし、いや、やはり関係があるんだという業界、外税に戻してくれという業界、さまざまございました。なかなかこれは難しいわけでございますが、私どもの結論といたしましても、平成十五年に決定をしたBツーCの総額表示はさわらないでおこうという結論に至ったわけでございます。

 しかし、総額表示のこの五パターンを認めているということは、私、個人的には余りよろしくないのではないかというふうに思っております。

 理由は二つでございますが、一つは、やはり、これから消費税がだんだん高まっていくと、本体価格と加えて一体自分はどれだけの納税をしているんだという、いわゆる納税者意識を高めていくという意味では、税額がはっきりと見えた方がいいのではないかという点でございます。

 それとまた、一部の事業者が転嫁のことで、このことによって、つまり、税と本体をしっかりと内訳を見せた方がやはり転嫁ということに資するのではないかというふうにも考えるわけでございますので、できましたら、この五つの表示のうち、なるべく下の方に寄せるような取り組みというか、義務化ができるかどうか検討課題でございますけれども、ぜひとも、免税会社のことも意識をしながら、できるだけそういった形でお取り組みをいただければというふうに思いますが、大臣、御意見をいただきたいと思います。

五十嵐副大臣 お答えいたします。

 私どもも、とにかく現行の総額表示制度は維持する必要があると思います。最近、税務当局等へかかってくるお声を聞きますと、総額が小さくしか書いていないとか、総額表示がないことに対するお怒りの声の方が実は多くて、総額表示がやはり最低必要だということだと思います。

 価格の方式、どれかを政府が推奨するということはなかなか難しいと思います、業態ごとに必要なやり方、便利なやり方というのはあると思いますので。ただ、先生の御意見も含めて、十分に各業界との協議をしながら、連携をとって、各省庁とも連携をとりながら、価格表示に関する環境整備にしっかり取り組んでいきたい、こう思っているところでございます。

田嶋(要)委員 余り踏み込んでいただけなかったような印象でございますが、やはり、大義があると思います。これはやはり、納税者にとって、消費税がこれから上がっていくときに、社会福祉の目的で納める税金ということでございますので、むしろ望んで払えるような環境をつくるべきだ、そういう御意見も党内でもいただきました。したがって、こういうところをはっきりと見える化をしていくということは誰にとっても大事なことだというふうに思っておりますので、推奨はできないという御答弁でございましたけれども、ぜひとも、できるだけ下の方に寄せていただきたいと私は思っております。

 最後のページの資料でございますが、書籍の業界に関して大変興味深いことが前回の引き上げのときに行われたと伺いました。実際、書籍は商品のライフサイクルが長いということで、御相談があって、財務省の方でこういう特例を認めたということでございます。

 私が気になるのは、これは思い切って図書業界が申し出てきたからこういう結果を生んだわけでございますが、実は、やらなかっただけで、結局は自分たちが苦しんで、のみ込んで終わってしまった業界がたくさんあるのではないかというふうに思います。勇気のある図書業界はこういういい結果を生んだということではないかというふうに思います。

 ぜひとも、今回は、待ちの姿勢で何か言ってきたら考えてやるよじゃなくて、全業界に悉皆的に、どういうことをやったら皆さんの転嫁の問題が若干でもお助けできますかということで、役所の方から出向いていって、そういうことを一業界一業界、皆さんの声に耳を傾ける、そういう姿勢をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

安住国務大臣 総額表示の仕方の中には、もちろん総額しか表示をしない、それに比べて、田嶋さんの主張というのは、本体プラス税まで、五段階ありますけれども、できるだけやはり透明性を確保すると同時に、外に見える化をちゃんとやらないと、この税の意味合いや、いろいろな意味で困る人も出てくるのではないかということで、我々はごもっともだと思っております。

 ですから、今書籍の例を出していただきましたけれども、これは、本体価格を表示して、プラス税という形になっていますね。ですから、本屋さんに行くとみんなそういう形になっていますから、見える化になっています。

 一〇%という税になりますと、やはり国民の皆さんから見たときに、本体価格と税の比率というものが実際の額でできるだけわかるようにした方が私も個人的にもいいとは思っておりますが、業界が今までやってきた慣例というか習慣というのもあって、その中にはあしきものもあるのではないかという御指摘もあると思いますから、できるだけこの総額表示のやり方について、消費者の側から見てもわかりやすさというものを追求するにはどういう方向がいいのかということは、私どもとしても、この書籍等を例にして、それぞれ丁寧な説明をしてまいりたいと思っております。趣旨は十分踏まえて対応してまいります。

田嶋(要)委員 要は、取り組みの姿勢の問題を私は問うておるわけでございますが、誰も言ってこなかった、あるいは人員的にそれ以上できなかった、そういう言いわけを今回は絶対にさせないということで、全業界に役所の方から出向いていって相談に乗るという形をとっていただいて、弱い立場の方々を守る姿勢を貫いていただきたいと思います。

 最後に一問だけお伺いしますが……

中野委員長 時間が来ておりますので、ちょっと質問は。

田嶋(要)委員 できませんか。はい、わかりました。

 では、以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

中野委員長 これにて田嶋君の質疑は終了いたしました。

 次に、室井秀子さん。

室井委員 おはようございます。近畿比例ブロックの民主党の室井秀子でございます。

 質疑に先立ちまして、福祉の現場監督を自任し、障害者福祉、がん撲滅運動などに力を尽くされました三笠宮家の寛仁親王殿下の御冥福を心よりお祈り申し上げます。

 本委員会も、社会福祉のことを皆さんで議論している委員会です。本当に、心ある親王殿下に心より御冥福をお祈り申し上げます。

 さて、社会保障と税一体改革で一番注目を集めているのが消費税の増税です。消費税を二段階に分けて五%から一〇%に引き上げる。本委員会でも明らかになっておりますが、社会保障と税一体改革では全ての世代の安心を掲げており、消費税の増税によって社会保障を充実させるということが重要な点だと思います。

 しかし、現役世代は、改革による恩恵より負担が強まることと思っているのではないでしょうか。最近の共同通信の世論調査で、反対が五六・八%、賛成が四一・七%。私は、どうも国民の間では、必ずしも社会保障の充実については具体的な恩恵が描けていないような気がします。

 そこで、社会保障と税一体改革の関連法案で具体的に社会保障の充実がどう盛り込まれているか、岡田副総理、お伺いいたします。

岡田国務大臣 まず、今回の消費税税率五%引き上げということですが、残念ながら、新しいことの充実のためには一%、現在の制度の安定のために四%ということでお願いをさせていただいております。

 この委員会でも、全て新しいことに投入すべきだという御意見が出たこともあります。しかし、今の財政の状況はそれを許さない。

 逆に言いますと、現在の社会保障制度、これは、いろいろな問題があるにしても、私は、世界的に見てかなりすぐれた制度だと思いますが、それを持続していくということは非常に重要なことだと思うんです。年金制度にしても、医療制度にしても、介護保険制度にしても、それがこれからも十年、二十年と続いていくということの見通しをしっかりつけるということは極めて重要で、そこに不安があると、それは将来不安につながってくるということだと思います。そのために、四%、使わせていただくということであります。

 新しいことについては一%。これをやや詳しく申し上げますと、一%、二・七兆円ということですが、実は新しいことには三・八兆、一方で重点化、効率化を一・二兆行いますので、その差額として二・七兆の財源が必要になり、それに消費税一%分を充てるということでございます。

 御質問は具体的にということですが、一つは、ここでも随分議論してまいりましたが、子ども・子育て支援について、ここを抜本的に拡充するということでございます。

 日本がほかの先進国と比べて十分でないことの一つが、やはり働くことと子育てがなかなか両立できない社会である。そういう中で、働くことを諦めなきゃいけなかったり、逆に言うと、子供を諦める、あるいは、二人欲しいと多くの夫婦が思いながら実際には一人という、そういう状況を抜本的に変えるための子ども・子育て支援策、これが一つであります。

 そのほか、医療、介護についても、在宅をより重視することで、その質を上げていこう。

 それから、低所得者の方への年金制度、低所得者に加算するという年金制度。それから、国民健康保険や介護保険についても、所得の二極分化が進むことで、保険料の負担ができなくなっている、そういう方がふえています。そこにしっかり手当てをする。こういった所得の少ない方への対策ということも盛り込んでいるところでございます。

 以上が、大体一%に相当する新しい政策ということでございます。

室井委員 岡田副総理、本当にありがとうございます。

 実は、私はここに今立たせていただいておりますけれども、小宮山大臣と同じように、子育てしながら仕事もしてきました。保育所にも幼稚園にも、子供三人おりますので、いろいろなところに預けてきました。そして、三世帯同居をしておりましたので、主人の両親の介護もしてきました。本当に、現場、私が社会生活をしている中で一番思うことは、社会保障が充実していれば、私は税金はどれだけでも出します、老後を安定させてくれるならば、そういう思いをしている方はたくさんいますので、ぜひこの法案をよりよいものにしていってほしいと思います。

 その中で、実は、子ども・子育て新システムの中で、本委員会で総合こども園の問題がいつも出ております。先輩議員や同僚議員の質疑で明らかになりましたけれども、認定こども園を二〇一〇年まで全国二千カ所の設置目標が、実際、ことし四月では九百十一件しか伸びていないんですよね。

 これはどうしてか。補助金や職員の配置、調理室の設備、いろいろ義務がありまして、そういうものを解消して、新たな基準で設置されるのがこの総合こども園なんですよ。つまり、認定こども園、私は兵庫県選出なんですけれども、兵庫県は認定こども園が本当に多数あるんですね。その中で、大きなバージョンアップなんですよ、認定こども園のバージョンアップが総合こども園である。

 私は、少し切り口を変えて、子ども・子育てシステムの過疎地での効用についてお伺いしたいと思います。

 私の地元兵庫県は、実は、北は日本海に面し、南は瀬戸内海から淡路島を介して太平洋へ続き、神戸市のような大都市から、漁村、農村、山村、限界集落まで、いろいろな多様な気候と風土から、日本の縮図みたいなところなんです。

 今週の月曜日、四日に開かれました神戸市の地方公聴会で陳述された小林公正兵庫県保育協会会長の保育園は、実は朝来市というところにあります。朝来市は人口約三万人、子供は減少し、高齢化が進む市です。小林先生は、子供が減り予算も削る状況では、やがて集団保育する場所も人材もなくなり、地域で子育てできなくなる、新システムで財源を確保し、子供が育つ環境を確保してほしいとおっしゃいました。

 そして、関西大学教授の山縣先生がおっしゃっているのは、幼稚園の存続が厳しい地方などでは、保育所の機能もあわせ持つ総合こども園の移行が進み、地域に子供の教育拠点を残してくださいと指摘されております。

 そこで、小宮山洋子厚生労働大臣兼少子化担当大臣に、子ども・子育て新システムが過疎地域においてどのような影響があるのか教えてください。

小宮山国務大臣 今委員がおっしゃっていただいたように、兵庫県の一部にあるような過疎地でも、子供が減少して、幼稚園、保育園単独ではもう成り立たなくなっている地域があります。

 そうした地域でも幼児期の学校教育そして保育の機能を確保する、そのことが課題だと思いますので、政府提出の今回の法案では、地域型保育給付を創設いたしまして、小規模保育ですとか家庭的保育など、メニューをふやして、それぞれ地域の実情に柔軟に対応できるようにしているということが一点。

 そしてまた、地域のニーズに基づいた地域子育て支援拠点事業など、地域の子育て支援のための事業の提供体制を整備するということ。

 そして、幼保一体化の推進によりまして、最初に申し上げた、単独では幼稚園、保育所の維持が困難な、子供の数が減少している地域で、幼児期の学校教育、保育を、これは隣の市町村とも共同でできるということまで含めて、それぞれ市町村の御判断で多様なことができるようにしていますので、過疎地のお子さんたちにも非常に貢献できる仕組みだというふうに考えています。

室井委員 小宮山大臣、ありがとうございます。

 この委員会でいつも質問されていて、大都市の待機児童の問題ばかりを取り上げられるんですね。そうじゃないんですよ。地方では、少子化が進んで、幼稚園が廃園しているんです、幼稚園がなくなっているんです。

 ここでもう一つ皆さんに、ここにいらっしゃる皆さんは御理解していただいていると思いますけれども、実は、保育園というのは幼稚園ではないんですよ。つまり、保育所なんです。篠原先生も保育園の話をなさいましたが、保育園、つまり保育所というのは、親が働いていない子供は保育所に入れないんですよ。そうなると、小学校入学まで家庭以外で過ごす場所がなくなって、友達をつくったり集団で遊んだりする機会は、この少子化の時代にできないんです。

 つまりは……(発言する者あり)済みませんね、いろいろ言いますけれども。私も農村地帯で育ってきたものですから、保育園で育ってきた人間ですので、私は小さいときに、どうして隣の子は幼稚園に行って私は保育園なのかと悩んでいたんですが、今、大人になってわかったんですよ、このことが。

 保育園、保育所が総合こども園になれば、この子供たち、幼稚園がなくなって遠くまで行かなければいけなくなったお子さんが保育園、保育所に入ることができる。これは本当に、全ての子供に幼児教育と保育サービスを提供しようとする総合こども園のこの理念は決して間違っていないので、ぜひ進めていっていただきたいと思います。

 次に、社会的養護に関してお伺いいたします。

 今、児童福祉施設というのは、以前よりもちょっと変わってきております。というのは、虐待を受けた子供や保護者が適切に育てられない子供がふえてきております。そして、配置基準は、現在のところ、六対一でした。つまり、六人の子供を一人の先生が見る。しかし、皆さん御存じのように、二十四時間対応ですので、交代勤務がありますので、実質的には一人の先生が二十人前後を見ていらっしゃるのが現状なんです。

 昨年七月に厚生労働省が取りまとめた「社会的養護の課題と将来像」でも、児童養護施設の人員配置を六対一から四対一に引き上げる目標水準が盛り込まれました。そして、本年度予算でも、若干ですが、五・五対一まで引き上げられましたので、早急に、四対一、この目標水準までの実現が必要です。

 社会保障と税の一体改革の議論の中で、子ども・子育てに〇・七兆円を充てるとされておりますが、その中の項目に、社会的養護の充実という項目が盛り込まれております。この財源を活用し、課題と将来像に掲げた児童養護施設の人員配置の四対一などへの引き上げが実現すると私は期待しておりますが、小宮山大臣はどのようにお考えでしょうか。

小宮山国務大臣 社会的養護について御質問いただいて、ありがとうございます。

 この問題は、非常に大事な問題ながら、いつも何か後回しで、スポットが当たってこなかった。それを、おっしゃっていただいた現場の方に集まっていただいた検討委員会で、現場からの声をもとにして、昨年の七月に「社会的養護の課題と将来像」を厚生労働省の審議会で取りまとめました。

 そのときにいろいろとお話を伺ったんですけれども、社会的養護の施設というのは、今は虐待とか障害を受けた子供たちがふえているので、非常に人員が必要。ところが、三十年以上、配置基準ですとか面積基準も含めて変わってこなかった。それをとにかく変えなければいけないということで、児童養護施設の人員配置を、今おっしゃっていただいた六対一から四対一にしたいということで、今回、今の財源の中でぎりぎり五・五対一という形にしたんですけれども、今回の子ども・子育てを一つの柱とする一体改革の充実の部分で、〇・七兆円をこの社会的養護の充実にも充てまして、児童養護施設の人員配置の引き上げなどに関しても、優先順位をつけながら、しっかりと取り組んでいきたい、現場の声に応えていきたいというふうに考えています。

室井委員 小宮山大臣、本当にありがとうございます。どうぞ光を当ててやってください。子供は未来の希望です。大臣の心強いお言葉に感謝いたします。

 次に、基礎年金国庫負担割合を二分の一に恒久化、この委員会でこの問題は実に多く取り上げられました。そして、平成十六年の年金制度改正において年金制度を長期的に安定させる枠組みをつくりましたが、財源確保の手当てはできていませんでした。(発言する者あり)そうですね、そのとおりです。理念はよかったんですが、お金の手当ては何もできていなかったんですよ。政権交代後、臨時財源で、あっちからこっちから取りまして、やっとしてきたんですけれども、今回の年金機能強化法案により、長年の懸案が解決いたします。

 四日に開かれました神戸市の地方公聴会で、辻芳治連合兵庫事務局長は、政治の責任として、基礎年金国庫負担二分の一の恒久化とその財源確保のための税制抜本改革を確実になし遂げていただくことを強く求めますとも述べられました。

 また、ここにいらっしゃる逢沢先生が実に褒めていらしたんですけれども、藤浪芳子神戸商工会議所女性会前会長は、年金を安定させてくれるのであれば、老後が安心できれば、増税は構いませんとおっしゃっていました。そのとき、私の隣に逢沢先生が座っていらっしゃったんですが、激励の言葉を述べられておりました。

 そこで、小宮山厚生労働大臣にお伺いいたしますが、今回の基礎年金国庫負担割合二分の一恒久化による現役世代のメリットを教えてください。

小宮山国務大臣 基礎年金国庫負担二分の一につきましては、平成十六年の改正で導入されました年金財政の枠組みの柱の一つで、これがもし達成できないと、平成十六年改正で固定した保険料の上限をさらに上げるとか、給付水準をさらに切り下げるということをしなければならなくなるんですが、そうしたことがこの財源確保によって回避できるということがあります。

 今回の一体改革では、安定財源を確保した上で、基礎年金国庫負担二分の一を恒久的にすることで、若い世代の負担が過重なものにならないように、高齢世代になっても自分たちが安心できる、そういう年金制度にしたいと思っていますので、若い方を含めた現役世代の信頼を得ることがこれからの年金制度にとって最も大事だと思っていますので、これはしっかりと実現をしたいというふうに思っています。

室井委員 実は、私は三人の子供がいると先ほど申しましたけれども、その子供が、年金に入った方がいいのとぶつけてきました。

 私は答えました。国民年金の国庫負担が恒久化しているので、二分の一国が税金を出してくれるので、絶対に破綻することはない。そして、もう一つのメリット、年金というのは、不慮の事故や病気で障害者になったとき、障害年金が生涯にわたり受給できるのよと話しました。

 そこで、小宮山厚生大臣にお伺いいたしますが、年金のメリットについてお聞かせください。

小宮山国務大臣 私も各地の対話集会などで、若い人たちに同じような意見をぶつけられました。若い人たちにとっても、これは、年金というのはまだまだ遠い先だというので、実感がないと思います。ただ、今委員がおっしゃったように、国庫負担も入っていますし、それは年金に入った方が、国がなくならない限り、あなたにとっても得ですし必要なことなんですよということを申し上げています。

 それで、今おっしゃったように、将来の年金受給のほかに、不慮の事故とか障害、そうしたことはいつ起こるかわからないわけですから、若いときでも障害年金、遺族年金が受給できるということも含めて、若い世代にとってもメリットがあるということだと思います。

 また、国民相互の助け合いの、相互に扶助し合うという仕組みですので、そこはそういう責任もあるし、さまざまな面を若い方たちを中心にぜひこれは与野党を問わずしっかりと御説明をして、維持をしていきたいというふうに思います。(発言する者あり)

室井委員 自民党の先生方に、二人でいいことを言うと、今激励を受けました。

 私は、年金のメリットをずっと広報として伝えていくべきだと思うんですね。民間の保険会社にもいろいろありますけれども、一生涯にわたって障害年金を払ってくれるところなんてないんじゃないかと私は思います。(発言する者あり)ないという自民党の鴨下先生のお話ですから、絶対にないと思います。年金は老齢年金だけではなく障害年金でもある、これをぜひ声を大きくして若者に教えてやってください。よろしくお願いいたします。(発言する者あり)いろいろなお言葉が出ております。

 次に、私の地元の兵庫県尼崎市にある高等学校では、社会保険労務士の方が労働社会保険諸法令の授業を行って、出前講座というんですが、そういうことを行っているところもあります。

 私は、若年層の勤労観、社会保険に関する知識などについて、社会に出る前に正しい労働や社会保険制度について学ぶ機会を提供することは必要であり有益だと思います。社会人として巣立っていく前に、労働問題や社会保険に精通した社会保険労務士の知恵を活用して、働く上での基本となる知識、社会保険制度などをわかりやすく解説してもらうことにより、生徒たちは安心し、働くことへの意欲が芽生え、キャリア形成が実現する、有意義だと思います。

 そこで、文部科学副大臣にお伺いいたしますが、学習指導要領での社会保障等の取り扱いと社会保険労務士による労働社会保険諸法令の授業について、現状としてどのようになっているのか、お伺いいたします。

高井副大臣 お答えいたします。

 御指摘は本当にそのとおり、大事な点だと思います。今、学校教育を通じて社会保障の意義を子供たちに教育するということはとても大事でございまして、小中高等学校の学習指導要領において、社会保障に関する指導について明記をいたしております。

 例えば、中学校の社会科、公民的分野の部分においては、社会保障制度の基本的な内容を理解させ、少子高齢化など現代社会の特色を踏まえながら、福祉社会の目指すべき方向について考えさせること。それから、高等学校の公民科におきましては、社会保障制度の現状と課題などを、医療、介護、年金などの保険制度において見られる諸課題を通して理解させることというふうにしております。

 また、総合的な学習の時間においては、外部の各種団体との連携などの工夫を行うということを学習指導要領上に規定をしておりまして、御指摘あったとおり、社会保険労務士が出前授業として学校に出向いて、年金や医療、労働などの社会保障制度というもののわかりやすい説明を行う授業など、いろいろな取り組みがあると聞いておりますし、御紹介があったとおりだと思っています。

 今後とも、外部の専門家の協力も得ながら、学校教育を通じた社会保障に関する教育の充実に努めていきたいと思っております。

室井委員 副大臣、ありがとうございます。

 日本というのは申請主義、何でも申請しないといけないんですね。やはり高校の課程において、社会に出ていく一歩手前ですから、何事も知識がないといけないと思いますので、これからぜひ進めていってほしいと思います。

 高井副大臣、申しわけございません。ありがとうございました。どうぞ御退席ください。ありがとうございます。

 次に、このごろ新聞を見ておりますと、片隅になってきてしまいましたけれども、餓死や孤立死、この問題があります。

 ことしになって最初に目にしたのが、一月十二日、釧路市で八十四歳の夫と七十二歳の妻の死亡が発見され、一月二十日には札幌市白石区、四十二歳の姉が死亡し、次いで四十歳の障害を持つ妹さんが凍死したという例。二月に入っては立川市、二月二十日、さいたま市北区、三月七日、再び立川市。本当にたくさんあります。今回の事件の発生の最も大きな、そして深刻な原因となっているのは貧困の広がりです。

 厚生労働省の平成二十二年国民生活基礎調査の概況によりますと、低所得者の割合を示す貧困率は、平成二十一年には一六%と最低の数字を示しておりますし、生活保護制度の利用者が、このごろ生活保護がいろいろクローズアップされておりますけれども、過去最多の二百九万人、住民の多くが、何らかの生活上のつまずきがあれば餓死や孤立死に直結しかねない生活状況となっております。

 実は調べますと、生活保護世帯の割合、高齢者世帯四二・五%、母子世帯七・七%、障害者世帯一一・四%、傷病者世帯二一・三%、その他の世帯一七・一%、経済的に困難と思われる高齢者世帯の割合が非常に多いんです。

 札幌市の白石区の事件では、亡くなられた姉妹のうち、お姉さんが三回福祉事務所を訪れて生活保護の相談をしており、収入としてわずかな年金しかなく、手持ちの金もわずかであるということを福祉事務所は十分に知っていたんですね。でも、受けられなかった。

 今月の一日、大阪府富田林の団地で、無職の男性四十三歳と母親七十三歳と見られる男女が首をつって死亡しているのが発見されました。自宅には所持金はなく、電気もとめられ、口座の残金も数円しかなく、母親の年金で生活していた。しかし、この方たち、生活保護は受給していなかった。

 最後のセーフティーネットと言われる生活保護、これには、生活保護の制度の見直しに当たっては、保護を必要とする人にはきちんと保護を適用すべきであるとともに、生活保護から脱却に向けて就労支援の強化、このその他の世帯一七・一%という方は、就労支援さえあればここから抜けられると思うんですよ。

 小宮山厚生労働大臣の御所見をお伺いします。

小宮山国務大臣 今、委員がいろいろ挙げていただきましたような孤立死、あってはならないことですし、最後のセーフティーネットとして、生活保護、必要な方にはしっかりとそれは受給をしていただかなければいけないというふうに思います。

 そしてまた、就労支援で自立できる方にはしていただくという、それも大事な視点ですので、二十四年度は、ハローワークと福祉事務所に配置する就労支援の担当者、これを増員をさらにしまして、より手厚い支援を行うということ、また、日常生活から就労に至るまで総合的な支援が必要な方が多いので、そういう事業を新たに開始するなど、就労支援に向けても強化をしています。

 さらに、働く能力がある生活保護受給者に対して、就労するインセンティブとなるような取り組みを強化していくということも重要だと考えています。

 このため、この秋をめどに生活支援戦略を検討する中で、保護受給中の就労収入の一部を積み立てて、保護を脱却するときに一括還付をする就労収入積立制度、その導入も含めまして、いろいろな働くことのインセンティブの強化もしていきたいというふうに考えています。

室井委員 今回のいろいろな報道で、生活保護への関心の高まりは、生活保護をめぐる世間の目の厳しさを教えています。やはり、本当に困っている人には手を差し伸べるべきだ、でも、そうでない人にはきちっと、不正は許してはいけない、そういう心構えでこれからも大臣には取り組んでいただきたいと思います。

 意図的に未納を続けた人が無年金者になって生活保護を受ける、こういうことは絶対にすべきではありませんし、国家財政や地方財政を圧迫しているのも事実です。この構造を脱却すれば就労に結びつく、そうすれば税金を納めてくれる側になりますので、ぜひこれからもよろしくお願いいたします。

 次に、消費税を上げるに当たって、低所得者の方々に御負担が重くのしかかるのではないかという懸念が当然あるわけですが、その点は、本委員会でも、現金給付や所得税減免、社会保障費減免など、いろいろな救いの手が差し伸べられるということが確認できました。

 私は、現役世代の暮らしの安心という点では、社会保障制度の拡充と雇用対策、この二つの課題を車の両輪として取り組むことが重要だと思います。下がり続けてきた賃金、処遇の改善に力を入れていく、安定した雇用創出が重要だと思います。

 最後になりましたが、私は、一つ御紹介したいことがあります。江戸時代に……

中野委員長 時間が来ておりますので、端的にお願いします。

室井委員 はい。

 江戸時代に、信州松代藩の家老の恩田杢さんという方が藩政改革の事績を筆録した書、「日暮硯」というのがあります。

 さて、この上、皆々が不得心なれば、手前が役儀も勤まらず候間、切腹いたすよりほかはなく候。したがって、手間に首尾よく役儀を勤めさせてくれるも、また切腹させるも、皆々様の了見次第に候間、いかがいたし候や、皆々の所存を聞きたく候。さりながら、かように庭中にては、皆の者返答もあるまじく候間、まずきょうは帰り、総百姓と相談して、追って返答してくれよ。

 恩田は、年貢増徴に百姓らの合意が不可欠だと考え、得心してくれるよう頼んでいます。決して、一方的に増税を強制したりしておりません。

 私は、この委員会での審議を通し、消費税率引き上げを柱とする社会保障と税の一体改革に対し、国民の皆様への納得していただくことが大事だと思います。

 どうか、与野党ともに、日本が避けて通れない財政と社会保障の改革に真摯に向き合い、後世に恥じない制度になりますよう、徹底した議論をお願い申し上げ、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

中野委員長 これにて室井さんの質疑は終了いたしました。

 次に、中島正純君。

中島(正)委員 国民新党の中島正純でございます。

 初めに、三笠宮寛仁親王殿下の突然の御訃報に接し、悲しみの念を禁じ得ません。天皇皇后両陛下を初め、御近親の方々の深いお悲しみをお察し申し上げ、謹んで哀悼の意を表します。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 本委員会では、毎週質問のお時間をいただいており、各担当大臣には、毎回丁寧な答弁をいただいております。前回までは総括的な質疑をさせていただきましたので、本日は、より具体的に、分野別に御質問を準備してまいりましたので、きょうも、各担当大臣におかれましては、社会保障と税の一体改革の全容が国民の皆様にわかりやすく伝わるように、御説明をお願いしたいと思います。

 まず初めに、岡田担当大臣に、一部の低所得者への再分配施策についてお聞きしたいと思います。

 今回の法案で、消費税が全額社会保障財源となることをもっと強調すべきだというふうに私は思います。また、消費税が社会保障として支出されることに加え、社会保障改革の中で低所得者への年金加算や介護保険料の軽減などの措置を講じることとなっております。低所得者対策としてはこれらで十分ではないかというふうに思うのですが、この上さらに給付つきの税額控除など再分配施策をするとなれば、一部の低所得者はもらい過ぎではないかというふうに懸念を持つのですが、岡田大臣、その点についてのお考えをお願いいたします。

岡田国務大臣 今回のこの社会保障・税一体改革で、三つの再分配の機能があるというふうに私は申し上げているんです。

 第一は、まず、社会保障制度そのものが再分配機能がある。消費税、これは消費の多寡に応じて御負担が変わってまいります。しかし、社会保障、例えば医療とか介護のサービスというのは、これは所得の多い方も少ない方も基本的に同じサービスです。ですから、消費税で財源を得て社会保障をしっかりやるということそのものが再分配機能を持つ。

 それに加えて、委員御指摘のように、今回改めて、所得の二極分化といいますか、非常に所得の少ない方がふえていることによって、例えば、国民健康保険やあるいは介護保険の保険料が払えない、それから、年金が非常に少額だ、そういったところについて対策をしっかりやっていくということを考えています。

 加えて、給付つき税額控除ということを考えているわけです。

 それから、そもそも、消費税を入れることによって消費者物価が上がれば、年金はスライドして上がるんですね。これもよく見落とされている点であります。しかし、そういうことをやった上で給付つき税額控除ですから、重なることによっておっしゃるようなことが起こらないように、きちんと、そういった従来の施策をやってもなお御負担がふえるところ、そういうところを、ある意味ではピンポイント的に対策を講じていく。そのためにも、私は、軽減税率よりは給付つき税額控除の方がいいのではないか、そういうふうに思っているところです。

 給付つき税額控除の制度設計については、今申し上げたようなことを十分踏まえて制度設計していかなければいけないというふうに考えております。

中島(正)委員 大臣の御説明はよくわかりました。国民の生活の平等と安心を守るのは国の責任だというふうに思っております。一部の人に配慮し過ぎるということにならないように、気配り、目配りをよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、総務副大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 地方税の社会保障財源化の担保についてお伺いをしたいと思います。

 消費税の使途については、国の分は法律で社会保障財源化が明記されておりますが、一方で、地方においては、どのように社会保障の財源になることを担保するのか、目的外に利用されることがないようにするためにはどのような措置を講じられるおつもりなのか、副大臣の御見解をお願いいたします。

大島副大臣 お答えさせていただきます。

 今回の社会保障・税一体改革においては、社会保障の安定財源の確保と財政健全化の同時達成の一歩として消費税率の段階的な引き上げを行うこととしており、現行分の地方消費税一%を除き、地方分の収入についても、現行の基本的枠組みを変更しないことを前提として社会保障財源化することとしております。

 まず、引き上げ分の地方消費税収一・二%分については、消費税法第一条第二項に規定する経費その他社会保障施策に要する経費に充てるものとする旨、地方税法に明記をしております。

 また、地方交付税については、地方交付税法第三条二項において、それぞれの地方団体への交付に当たっては使途を制限してはならないこととされております。

 このために、消費税の交付税法定率分を含めた地方分の消費税収の使途の明確化に当たって、法定率分一・五二%と引き上げ分の地方消費税収一・二%、この総額を、社会保障施策に要する経費及び社会保障四経費に沿った範囲の社会保障給付の総額と、決算や地方財政計画の段階において比較し、それぞれの範囲内であることを確認することとして、総枠で確認をしていきたいと考えております。

 以上です。

中島(正)委員 なかなか全ての地方までは目が行き届かないというふうに思いますが、今回の消費税分、全額社会保障に使うというふうになっております。地方の部分で、言っていることとやっていることが違うじゃないかというようにならないように、御配慮の方をよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、小宮山大臣に社会保険の適用拡大についてお伺いをしたいと思います。

 先日の質疑では、短時間労働者に対する社会保険の適用拡大の意義について簡単にお伺いをいたしました。本日は、さらに突っ込んだ御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 社会保険の適用拡大については、昨年の夏に社会保障・税一体改革成案が出されたときには、二十時間から三十時間の短時間労働者約四百万人に適用を拡大するという案を検討していたというふうに承知をしております。しかし、その後の民主党内でさまざまな議論があったようで、結局は、週の所定労働時間が二十時間以上という要件に加えて、賃金が月額で七万八千円以上、そして、勤務期間が一年以上で、学生は適用除外、さらには、従業員が五百一人以上の企業のみに適用ということになり、結果として適用人数は四十五万人に絞られることとなってしまいました。

 被保険者が五百一人以上の企業についてのみ適用拡大が図られますが、新たに対象となる企業を適切に把握していくことが重要であるというふうに思います。このためには、対象となる企業に対して十分な周知が必要であると考えますが、どのように企業に対して周知していくのか、大臣のお考えをお願いいたします。

小宮山国務大臣 一言、その前に申し上げたいんですが、四百万人全体、正確には三百七十万人ですけれども、それを一度にやるとは言っていなかったので、今回、また後ほど御質問があるかもしれませんけれども、現実的なスタートラインとして四十五万人からスタートをし、三年以内にさらに拡大をするということも法律に明記いたしますので、段階的にそれはやっていくということです。

 今御質問の適用拡大の対象となる事業所については、法務省の保有する法人登記簿情報と日本年金機構の適用事業所情報を結びつけること、また、今後導入が見込まれる法人番号により得られる情報を活用すること、こうしたことによって、法人単位での被保険者の数を把握するということを検討しています。

 事業所に対する周知については、毎月全事業所に送付している納入告知書、これに制度改正のチラシを同封すること、また、法人番号などを活用して五百人以上の企業向けのチラシの配布、そして、政府広報や日本年金機構のホームページを通じた広報、こうしたことで周知を徹底していきたいと考えています。

中島(正)委員 また小宮山大臣にお伺いしたいんですが、民主党内の議論を直接伺ったわけではないんですが、適用拡大については、正社員として働けない非正規労働者に社会保険を適用することで、今の格差を老後に持ち込ませないという大きな意味がある一方で、これまで保険料を負担していない事業主に新たに負担が生じることになるので、企業経営への影響を懸念する立場から、適用拡大に対する慎重な意見があったようですが、今回の適用拡大においては、事業主の負担を緩和するためにどのような措置が盛り込まれているのか、自公政権の十九年の法案との違いはあるのか、お聞きしたいと思います。

小宮山国務大臣 適用拡大によって新たに社会保険料負担が発生する事業主への配慮の措置、これはいろいろな御議論の中から、法案では、まずは従業員数が五百一人以上の企業から適用を行うことにしたということ、そして、施行を二十八年四月として、十分な準備期間を設けていることがあります。

 また、十九年法案にはなかった措置としましては、医療保険制度では、今回の適用拡大によって、主に短時間労働者の多い業種の健康保険組合に生じる負担増を緩和するための措置、これを講じることにしています。

中島(正)委員 短時間労働者と非正規労働者に社会保険の適用拡大をすれば、また次は、逆に事業主に負担が生じるということになってくると思いますが、ここは本当に国民が注目していることだと思いますので、力を入れて取り組んでいただきたいというふうに思います。

 続きまして、また小宮山大臣にお伺いいたします。専業主婦の方が厚生年金の適用を受けることによるメリットについてお聞きしたいというふうに思います。

 このことについては、事業主に一定の負担が生じることは確かでありますが、社会保険の適用拡大は、自公政権で年金の大改正が行われた平成十六年からの懸案であり、若年者の就職問題がますます深刻化する中で、将来のある若者が貧困のわなに陥らないようにするためにも、一刻も早く手をつけなければならない課題であります。これは、フリーターと言われるような独身の若者だけでなく、離婚や死別によって一人で子供を育てなければならない状態になったシングルマザーにとっても同じことであります。

 一体改革において、社会保険の適用拡大は、子ども・子育て新システムとともに、現役世代向け、若者向け政策の柱であり、これがなければ、消費増税と高齢者向けの給付増だけと言われかねません。事業主の負担増に対して適切に配慮しつつ、現実的なスタートを切る方法として、今回の法案は合理的な内容であるというふうに考えております。

 一方で、パート労働者を雇用する事業主のお話を伺っていますと、パートが社会保険の適用を望んでいないという話をよく聞きます。

 確かに、現在、年金では第三号被保険者として保険料を負担していない専業主婦、といっても、例えば週三十時間未満で働いている方も多いわけですが、その方は、社会保険の適用を受けることによって、新たに保険料を負担することになってしまいます。多くのパート労働者は、できるだけ収入をふやそうと考えてパートについているわけですから、保険料の負担がふえるものの年金がすぐにもらえるわけではないということで、適用してもらいたくないという方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし、現在保険料を負担していない第三号の被保険者の方にとっても、厚生年金の適用を受けることで将来の年金は確実にふえるわけですし、大きな利点もあるのではないかというふうに思っております。ですから、適用拡大を実施するに当たって、このメリットを専業主婦の方にも確実にお知らせすることが非常に重要なことだと思います。

 専業主婦の方が厚生年金の適用を受けることによるメリットを伺うとともに、このメリットをどのように専業主婦の方に周知していくのか、大臣、お願いいたします。

小宮山国務大臣 パートについている方が、なかなか本人が希望しないということは、やはり今委員が言っていただいたようなメリットがまだ周知をされていないということだと思います。

 今、第三号被保険者となっている人が厚生年金の適用を受けることによって、一つは、新たに厚生年金の保険料負担が生じることにはなりますけれども、自分自身が将来受け取る年金額が確実にふえるということがあります。

 それからまた、今委員も言われたように、人生、長い間には、夫が失業をするとか、離婚、死別といったようなリスクがある中で、みずから厚生年金に加入している働き方ができているということは、自立した生活、それを支えることになります。

 それからまた、年金制度の加入について見ても、第三号被保険者から第一号被保険者になるのではなくて、保険料を事業主が折半する第二号被保険者として、比較的低い負担で社会保険の適用を受け続けることができる。

 こうしたメリットがありますので、そのことについては、いろいろな形でしっかりと周知をして御理解をいただくように努めていきたいと思います。

中島(正)委員 ありがとうございました。

 続いて、小宮山大臣にお伺いしたいと思うんですが、先ほども室井議員が少し取り上げられましたが、基礎年金国庫負担二分の一についてお聞きしたいと思います。ちょっと違った観点から御質問させていただきます。

 今回の法案で、税制の抜本改革による恒久財源化を確保した上で基礎年金国庫負担割合の二分の一を恒久化するという意義は、前回お伺いをいたしました。

 平成十六年改正法によって基礎年金国庫負担二分の一を達成する年度とされてきた平成二十一年から平成二十三年度までは、毎年臨時財源を見つけてきた上で、基礎年金の国庫負担二分の一を維持するという努力が続けられてきたと承知をしておりますが、これまでどのような措置がとられてきたのか、また、今後はもうこのような臨時財源による対応は難しいというふうに思いますが、大臣の御見解をお願いいたします。

小宮山国務大臣 平成十六年の年金制度改正では、安定財源を確保する税制の抜本改革を行った上で、平成二十一年度までに基礎年金国庫負担割合二分の一に引き上げるということにしていました。

 ところが、実際には、安定財源が確保されずに、平成二十一年度以降、政権交代の後も、臨時財源をいろいろなところからかき集めて、基礎年金国庫負担割合二分の一を何とか達成してきました。

 でも、今後も毎年度二・五兆円という非常に巨額の臨時財源を確保していくということは限界がありますので、また、年金という、ずっと恒常的に費用を必要とするものを臨時財源で賄うということは適切ではないというふうに思います。

 消費税の引き上げにより安定財源を確保して基礎年金国庫負担割合二分の一を恒久化すること、これは、自公政権のときから引き継いだ年金法本来の考え方で、避けては通れないので、ぜひ皆さんの御理解をいただいて成立をさせていただきたいと思っています。

中島(正)委員 ありがとうございます。

 続きまして、この委員会で初めて安住大臣に御質問をさせていただきたいと思います。

 ちょっと時間が少なくなってきたので、あと一問か二問になってしまいますけれども、被用者年金一元化法案の追加費用の削減について伺いたいと思います。

 国家公務員の共済年金が発足したのは昭和三十四年、地方公務員の共済年金が発足したのは昭和三十七年であり、共済年金制度が発足する以前は、公務員の退職後の生活を支える制度として恩給制度が存在しておりました。公務員OBの共済年金受給者には、共済年金が発足する前の恩給制度の時代から働いていた人もおられます。こういった方に対しては、恩給制度の期間分の給付についても共済年金として給付することとなっております。この恩給制度の期間分の共済年金給付については、共済年金発足前で年金保険料は払い込まれていないので、給付に要する費用は国や地方が追加費用として負担することとなっております。

 今回の被用者年金一元化法案では、恩給制度の期間分の共済年金給付を二七%削減し、国や地方が負担する追加費用も二七%削減するとしておりますが、この二七%削減の考え方について、財務大臣から御説明をお願いいたします。また、これについて一定の配慮措置が設けられているということですので、その配慮措置の考え方についてもあわせてお願いいたします。

安住国務大臣 今御指摘のように、昭和三十四年までは恩給制度がありましたので、その前からお勤めになっている方々は今でもこの恩給の支給が対象になっているわけですね。

 そういう点からいうと、追加費用、今回、二七%削減の考え方を示しましたけれども、これは、本人の保険料負担は四・四%であったのに対して、恩給期間の本人負担は二%でございました。このために、恩給期間に係る給付が本人負担の差に見合った水準になるように、その差二・四%の、共済制度発足時の全体の保険料八・八%に対する比率、これを、二七%相当の部分ですから、削減をするということにいたしました。

 一定の配慮とはどういうことかということなんですけれども、御存じのように、財産権から派生をする既裁定年金の保障や受給者の生活の安定という観点からすれば、恩給期間と共済期間の合計の合算の給付については一〇%を減額の上限とする、それから、年収の二百三十万以下の給付については上記のような削減をしない、そういう生活の配慮というものを今回講じさせていただきました。

中島(正)委員 それでは、今説明のあった追加費用の削減により、国や地方の負担が減ることになると思いますが、一年当たりどれぐらいの削減が見込めるのでしょうか。

安住国務大臣 平成二十五年度平年度ベースで試算をしますと、国共済の追加費用につきましては、国の負担が約二百億円減少するものと見込まれております。

 地方については、総務省の方からお答えいたします。

大島副大臣 地方公務員共済組合の追加費用の削減見込み額は、これはごく粗い推計なんですけれども、平成二十五年度の平年ベースで一千二百億円と見込んでおります。

中島(正)委員 それであれば、現在、我が国の財政は、国、地方の長期債務残高が九百兆円を超えるなど、過去に経験したことがない危機的な状況にあります。さらに今後少子高齢化が進行すると、現役世代の減少により税収が減り、老齢人口の増加により社会保障費が増加して、財政状況はますます悪化してしまうことが見込まれております。

 この厳しい財政状況を踏まえれば、追加費用を二七%以上削減して、国や地方の負担をさらに軽減することも考えられると思いますが、財務大臣の御見解をよろしくお願いいたします。

安住国務大臣 今回の削減額は二七%、私は比較的大きな削減になったと思います。そういう点では、国民の皆さんも、この恩給期間に対してどういうふうに考えるのか、それぞれ意見の分かれるところではあるとは思います。しかし一方で、今生活をしておられる高齢者の皆さんが多数なわけですね。昭和三十四年前より、極端な話をすれば、就職をなさって働いておられる方々で、その数も年々、そうはいっても減っております。

 ですから、そういう点を考えますと、これ以上削減を仮にするとなれば、恩給期間の本人負担分まで削減するのかという問題なんかも発生をいたしますので、そういう点では、現時点ではこの削減幅というのが相当ではないかというふうに考えております。

中島(正)委員 ありがとうございました。

 あと一問いけそうなので、あと一問、質問させていただきます。小宮山大臣にお願いいたします。

 最後に、国民年金保険料の未納対策についてお伺いしたいと思います。

 先日、この未納対策についてお伺いした際、大臣からは、未納者の属性に応じた対策を進めているとの御回答をいただきました。確かに、一口に未納者と言っても、所得が少なく、本来免除対象となり得る人もいれば、一定の所得があり、負担能力があるにもかかわらず支払わない人がいることから、ぜひきめ細やかな取り組みを進めていただくことが必要だというふうに思っております。

 その中でも、負担能力がありながら国民年金保険料を支払わないことは問題であり、毅然とした対応が求められます。これらの方に対しては特に強力に納付を働きかけて、強制徴収の対象としていくことも検討すべきだというふうに思いますが、大臣の御見解をお願いいたします。

小宮山国務大臣 負担能力がありながら国民年金保険料を納付しない人に対しまして、毅然とした対応をとるべきという委員の御主張は、そのとおりだというふうに思います。

 これまでも、そうした人に対しては、たび重なる納付督励を経ても納付につながらない場合、最終催告状と督促状を順次送付して、最終的に強制徴収に移行しています。

 今年度からは、対象者を拡充するなど強制徴収を強化することにしていまして、今後さらに未納者対策に強力に取り組んでいきたいと考えています。

中島(正)委員 ありがとうございました。これで終わります。

中野委員長 これにて中島君の質疑は終了いたしました。

 質疑時間がおくれ、大変時間調整に御迷惑をおかけいたしましたが、御協力に感謝いたします。

 次に、田村憲久君。

田村(憲)委員 おはようございます。自民党の田村憲久です。

 この委員会も三回目の質問のこの席に立たせていただきまして、まだまだ質問が十分に足らないといいますか、これからもじっくり審議をしていきたいところでありますけれども、そうはいいながら会期末が迫っておりますから、きょうは、中身のある質疑をさらに深めさせていただきたいというふうに思います。

 内閣改造をされました。きょうは、ちょっと私の参考資料を見ていただきますと、歴代の問責を最近受けた大臣、総理も含めて、事のてんまつがどうなったかというのを一覧で配らせていただいておりますが、一九九八年十月十六日、小渕内閣で額賀福志郎防衛庁長官、これは問責を可決されまして、辞任をされました。内容は、当時の防衛庁の装備品納入をめぐる不祥事、これが原因であったわけでありまして、御本人のいろいろな問題というよりかは、防衛庁の中のいろいろな問題の責任をとって問責を可決された。おやめになられました。

 その後、自民党内閣では、福田総理、麻生総理が、やはり問責を受けまして可決され、結果的に、福田総理は辞任をされましたね、総理を。内閣を、言うなれば総辞職した。そして、麻生さんは解散をいたしました。ちゃんとした責任をとったんですね。

 ところが、その後、民主党内閣になってから六人問責が可決されたんですが、見ると、全部内閣改造というやり方をしているんです。責任の所在といいますか、とり方じゃないんですね、これは。内閣を改造された。今回も、言うなれば最善最強なんということを総理はおっしゃられておられますけれども、はっきり言って何かよくわからないんですね。その問責を受けた方々が残られれば、それは一つの考え方ですよね。しかし、問責を受けた方々はやはり内閣改造でいなくなっておられる。

 私、今回、消費税増税をお願いされておられるわけでありますけれども、この消費税というものに対して国民の理解を得られるかどうかの一番のポイントというのは、その内閣を、その総理を国民が信頼できるかどうかだと思うんですよ。事実、消費税を上げるのは仕方がないなと思っておられる方々が半数近くおられるんですね。しかし一方で、今上げてもらっちゃ困る、この内閣で上げてもらっちゃ困るという方々はかなりの数おられる。半数以上おられるわけですよね、六割ぐらいおられる。やはり内閣を信頼していないからだと思うんですよ。

 そういうときに、またぞろこういうようなやり方で問責の大臣をおかえになられる。やはり本来は辞任をしていただくのが筋だと思うんですが、私は、岡田副総理はそういう意味では非常にきれいな政治家だというふうに思います。その正義感の強い岡田副総理から見て、こういうやり方は適当だというふうに思われますか。

岡田国務大臣 まず、事実認識の問題として、私は、福田さんは問責があったからやめたとは全く思っておりませんし、御本人もそういう気持ちはないと思うんですね。それから、額賀大臣も、問責の後、一カ月ほどしておやめになりましたが、問責というのも一つの理由だったかもしれませんが、それだけではなかろうと思います。

 私は、やはり、問責決議というのは重いものだというふうに思いますが、問責が出たからやめる、そういったことは避けるべきだと思います。

 田村委員はどうお考えかわかりませんが、参議院が問責したから大臣をやめなきゃいけないということが、これがもうごく当たり前のように行われるということになりますと、それは、基本的には内閣が閣僚を選んでいるわけですから、そういう問責という権限があることは私は認めますけれども、だからそれで必ずやめるということが本当にルールとして確立をして、それがいいのかどうかということは、やはりよく考えなければいけない問題ではないかというふうに私は思っております。

田村(憲)委員 いや、問責を受けたら必ずやめる、じゃないですよ。民主党になったら、問責を受けても必ずやめないんですよ。誰一人として辞任はしていないんですよ。みんな内閣改造で逃げちゃっている。そこに本当にこの問責の重みというものを民主党のそれぞれ内閣がお感じになられておられるのか、そういう疑問を感じております。

 そして、なぜ自民党のときにはやめざるを得なかったのか。福田総理も、問責を受けたからやめたわけじゃないよと言われるかもわかりませんが、御自身が、参議院が動かない、そういうようなぎりぎりの中で、最終的にはこう判断せざるを得なくなったわけですね、これは。総理が参議院に出ていけなけりゃ国会は動かないじゃないですか。

 つまり、当時の野党、そのときの第一党は民主党であったわけでありますけれども、民主党は国会を、参議院を一切動かさない、そういうことをやってきたから、だからこういうふうな話になったわけですよね。国会が動かないんですから。

 今回、私、ちょっと問題があるなと思ったのは、輿石幹事長が、本当かどうかわかりませんよ、新聞の記事ですから、問責は効果がないと自民党に教えてやったという発言をしたというような。結局、今回は、自民党といいますか野党が非常に理解を示して、この委員会もずっと動かしてまいりました。そして、原子力規制庁の方も、これも言うなれば、職権でああいう形でスタートしましたけれども、それにおつき合いをした。

 これは、野党が大変心が広く、理解をしたからでありまして、野党には全てやらせておいて、自分ら与党は問責を受けても何の責任も負わずに辞任もしない、最後、仕方がないから内閣改造で格好だけつけるかみたいな、私は、こういうようなわかりにくい政治が、いや、悪くないのならば内閣改造でかえる必要はないんですから。悪いと思っていないのなら内閣改造でかえる必要はないんですから。何かごまかしの、よくある民主党のパターンですが、自分たちの非をほかに転嫁して、ごまかす。こういうような姿勢が国民に見てとれるから、この消費税に関しても、民主党にやってもらうというのはどうも信用を置けないねというような世論調査の結果になっておるのではないか、そう思うんですね。

 何かありますか。

岡田国務大臣 私、幹事長のときにも各党の幹事長に申し上げたんですが、まず、総理に対する参議院の問責の効果いかんと。私は、これはやはり、だから総理がやめなければいけないということはないと。憲法上、内閣総理大臣に対する不信任案の提出というのは衆議院にのみ認められているわけで、しかも、それに対して内閣総理大臣は解散をもって対抗できる、こういう構造になっております。参議院には内閣不信任案提出ということはありませんし、解散もありません。

 そういう中で、参議院が総理に問責決議を出したからやめなければいけないということは私はないと思いますし、参議院の前議長の西岡議長はそのことを明言しておられました。そこは、憲法上も、私の言っていることが恐らく、恐らくといいますか、それ以外の解釈というのはないんだろうと思います。

 それから、我々、野党のときに福田総理に問責決議を出したかもしれませんが、そしていろいろな行き過ぎがあったかもしれませんが、そこは総理としてしっかり突っ張っていただいて、憲法上、参議院の問責決議というのは、それは重要だけれども、しかし、だからといって自分はやめる必要はない、本来はそういうふうに言われるべきだったと思います。私は、福田さんといろいろな場面で意見を交わすことが多いんですが、別に問責があったからやめたというふうに認識はしていないんですね。

 あと、閣僚についても、問責決議は重いですけれども、だからやめるということが一般化することのこの国全体の統治機構に及ぼす影響というものは、これはお互い与党、野党入れかわっていくわけなので、よく考えなきゃいけない問題だというふうに思っています。そういうことを避けるためにも、我々は、内閣改造ということは行っても、問責でやめるということはやっていないということです。

田村(憲)委員 まあ、こればかりやっていても仕方がないので。与党になって学んだというふうに一言言っていただければ、我々も少しは。だってそうでしょう、野党のときにはやめろ、やめろと言ったんだから。やめろ、やめろと言って問責を出したんでしょう。そのときはそうだったじゃないですか。問責を出して、やめろと言ったんですよ、皆さん。額賀さんのときでもそうですよ、やめろと言ったんですよ。

 だから、与党になって学んだというふうに言っていただければいいが、そういうごまかしの発言をされるから、我々もついついまた言いたくなっちゃうんです。

 必ずやめろという話じゃないんです。必ずやめていないというところに私は問題があると。誰一人とし辞任していないんですよ。世論調査をすると、やめるべきだというのが圧倒的ですよね。七割以上の方々がやめろと言っている。でも、やめない。それを内閣改造で、誰一人としてやめていないんですから、内閣改造でごまかして、閣内をさらしている。こういうやり方に問題があるということを私は申し上げているのです。

 これ以上この議論をしても仕方がないので、もう御答弁は要りません。

 民主党が与党になっていろいろなことを学ばれたなという意味では、確かに、与党になられて国民は不幸だという議論もありますが、私はきょうの議論も聞いていまして、ああ、大分進歩されたなと思いますのは、年金の議論が、年金がとにかく破綻する、破綻すると今まで言われてきた。我々が同じような答弁をしても、いやいや、年金は破綻しているんですと、民主党の、誰とは言いませんけれども、委員からいろいろと我々は言われ続けてきた。それを今や、民主党の委員の先生方が大臣に向かって、いや、年金は大丈夫ですよね、こうこうこうだから、安心しているから、だから若い人たちにちゃんとメッセージを送ってくださいなんというような議論になっているというのは、これは年金を考える上では非常にいい傾向になってきたなというふうには思っております。

 ただ、それだけすばらしい年金制度、もちろん悪いところは変えなきゃいけませんよ、にもかかわらず、まだ民主党の年金案というものにこだわっておられる。

 何が必要なのか。つまり、民主党の年金案はどの部分が今の年金制度と比べてすぐれていて、だから民主党の年金制度案に変えなきゃいけないんだ、それはどこなんだというのを端的にお答えいただけるとありがたいんですけれども。

岡田国務大臣 その前に、今委員が言われたことについて一言。

 結局、田村さんは若いですから期待しておられる有権者の方も多いと思うんですが、あなたの今の発言というのは、また与党になったときに言われてしまいますよ。だから、お互い、そこはやはり踏まえて議論すべきだということを私は申し上げているわけであります。

 それから、年金については、もちろん消えた年金などいろいろな問題もあって、国民の年金不信が高まった。もちろん、我々が、年金が破綻していると、やや言葉が過ぎたこともそれは影響していると思います。しかし、それだけではないんですね。消えた年金など、やはり国民から見たらとんでもないことが起きたわけですから、そういうことも年金不信の原因になっているということです。

 我々が特に問題にしたのは国民年金で、やはり、国民年金というのは、かつては自営業者の方を対象にして、その自営業者も、ある程度資産もあって、しかも定年もない、そういう中でできてきた制度だと思うんです。それが、今や加入者の多くが非正規で働く方、所得の少ない方が多数になって、果たしてこの年金制度で十分かどうか。それから、そもそも、逆に言うと入っていない方もたくさんいらっしゃる。本来は入らなければいけない、つまり、厚生年金や共済年金の対象外で、入らなきゃいけない方で入っていないと思われる方も多い。

 そういう状況をやはりきちんとしないと国民皆年金じゃなくなってしまいますので、そういったところが問題点として残されているというふうに思っております。

田村(憲)委員 また前段のことを言われると、私もまた返さなきゃいけないんですが、私は必ずやめろなんて言っていないですよね、さっきから。必ずやめないというところに問題があるんだと。

 つまり、やめなきゃいけない、辞任をしていただかなきゃいけない大臣はおられたんじゃないですか。それを全部内閣改造で吹っ飛ばすから、私はそれに対して申し上げている話であって、これは、我々が与党に戻ったときでも、やはり問題があれば、いや、問責が通っていなくたって、今まで自民党でいろいろな問題発言をされた大臣はやめられているんですよ、辞任して。問責だけじゃないんですよ。そこをどうも御勘違いされておられる。

 よくお考えをいただいて、もうこの答弁は要りませんけれども、私は、岡田副総理は非常に正義感の強い政治家だと思うから副総理に対してこういうような質問をさせていただいておるので、論理のすりかえはやめていただきたいというふうに思います。

 今の話、年金の方。まず、いろいろな意味で、フリーターだとかいろいろな方々がおられるという話だと思うんですが、例えばパート労働者を含めて、今回、これは法律を出されておられるわけですね。四十五万人ぐらい、初めは三百六十万人ぐらいですか、を対象にしようと思っていたけれども、いろいろな事情があって四十五万人までその枠を絞ったとはいえ、我々がもともと十九年に出した法案をちょっと変えたような法案ですけれども、要は非正規の方々を厚生年金に入れよう。これは、三百六十万人までいけば大体のところはカバーできるわけですね。今話をされたところというのはカバーできる、そういう話ですよね。

 それから、無年金者、保険料を払わない人と。だって、皆さんの制度にしたって保険料を払わない人は出てくるわけでしょう。ここは何ら変わらないんですよ、変わらない。それは歳入庁が、それこそ少ない保険料を何万円もかけて取りに行って、家でずっと張っていて、帰ってくるのを待って、それでも払わなかったら強制徴収をする、資産を差し押さえる。そこまで全部手間をかけてやればできるかもわかりませんが、それはやろうと思えば今でもやれますけれども、コストパフォーマンスが悪いからやらないですよ、事実上。やれないですよ。財務大臣、そうですよね。だから、結果的には同じなんですよ。

 なぜ国民年金があるか。皆さんの年金制度というのは、一五%、これを事業主と折半、ない人らはどうなるのか、自営業者はどうかわかりません。以前は、最低保障部分の事業主負担がなくなるから、これを自営業者のところに入れればいいんだなんて、民主党の方で言われていた方もおられましたよ。だけれども、実際問題、どんどんこの最低保障部分が薄くなっちゃうものですから、今。

 消費税が七・一%かかりますよなんて言われちゃうと、これはこんなに厚くできないというのでさらに薄くしようなんてことが新聞なんかで報道をお聞きしますけれども。すると、事業主負担も減っちゃいますからね、なくなる部分が。すると、結果的にはそんなものは充てられない。はっきり言いまして、個人事業主の方々に対しては非常に負担のきつい、そういう制度になると思います。

 それにしても、パート労働者も含めて、仮に厚生年金に入れて、それを報酬比例年金、新しい民主党年金の方に入れて、保険料一五%。例えば、一年間で一日しか働かない人、これもマイナンバーを入れて源泉徴収をやれば取れないことはないですよね、事業主が給料を払うときに引けばいいんですから。そういうことですよね。

 だけれども、本当に一年間のうちに一万円しか収入のない人から取るかどうかわかりません。最終的には年度末に還付するのかもわからない。わかりませんが、自営業者はそうはいかないんですよね、自営業者は所得を捕捉できないから。マイナンバーを入れたってできませんよね。これはそう簡単じゃない。だから国民年金というのがあるんですよ、定額で保険料を払って。これは知恵なんですよ。

 机上の空論で、誰だって、全てずっと、全部所得が捕捉できて公平に取れますよという話ならいいんですよ。そうじゃないから国民年金という制度があるんです。それで足らなければ、先般から話が出ているように、国民年金基金という制度もあるわけですよ。それをもうちょっと有利にするという方法はあるのかもわかりません。

 そう考えると、今岡田副総理が言われた、何が必要だ、新年金制度は、実はこういう方々が今までいろいろなところで漏れているから、それを全部包含するために必要だみたいなことを言われましたけれども、全部論理矛盾になっちゃうんですよね。

 どうですか、これでもまだ新年金制度をやらなきゃいけないというふうに思われますか。

岡田国務大臣 そういうことも、各党間でよく協議をすべき問題だと思います。

 ただ、厚生年金の適用範囲の拡大、これは我々の制度でも実は同じ問題を抱えるわけですが、やはり事業主負担というのは非常に重いということで、厚年の拡大については大変な抵抗に遭っているわけですね。さらに、それを全ての非正規の働き方をしておられる方に広げていくということになると、相当いろいろな議論が出てくる。

 ただし、それは先ほど申し上げたように、我々の制度も同じ問題に直面するということはそのとおりなんですが、どちらがよりやりやすいか、そういった点もよく議論してみればいいんだろうというふうに思っております。

田村(憲)委員 どうやら、今の制度がいいなということを言外に今発言されたような気がいたしましたが、ほとんど民主党の年金制度の必要性というものが意味がないということが、この議論をする中で、民主党の委員の先生方からの質問の中でも、裏を返せばだんだんはっきりわかってきたというふうに私は思います。

 以前は、例えば出生率を考えていくと、今どんどんどんどん下がって、それこそ肩車型になってきている、こういう状況で、年金制度がもたないから民主党の年金案がいいんだ、これは積立方式だからなんて当初言われましたよ。しかし、実際問題は積立方式じゃないということがいろいろなところでわかってきて、ここはやはり、少子化という意味では同じような十字架を背負わなきゃならぬな、これもそうであった。

 それから、今もよく言われるんです。積立金の運用利回りが四・一%、こんなのじゃもたないよね、だから、自公でやった今の年金制度というのはインチキなんだ、ごまかしなんだという議論もよく言われましたが、実際問題、そうじゃないということはわかっておられますよね、副総理。わかっておられますか。四・一%という運用利回りは、あれはやはり年金制度を破綻させるものだ、今の実質運用利回りと比べて、そういうふうに思っておられますか。

岡田国務大臣 基本的には、自民党、公明党の時代に計算されて、それが成り立つものであることは立証されているということだと思います。

 ただ、その後、時間もたったし、それから、その前提そのものがどうなのかということについては、これも私は、本当に各党間で協議をして、つまり、これは別に今の制度を改善するところだけにきいてくる話ではなくて、我々の制度も同じなんですね。今、我々の制度は、百年安心プランをつくられたときと同じ前提で計算しているんですが、そういう前提そのものが妥当かどうかということについても党の中では議論しているわけです。

 そういうことも、状況が、時間が少したちましたので、まだ五年間はたっていませんけれども、百年安心プランにももう一度適用してみて、本当にそれが成り立つということはきちっと国民に示した方がいいだろうというふうに私は思うんですね。

 さまざまそういったことで、正直に国民の皆さんに説明をして、マクロ経済スライドも、これは我々はすぐれた制度だと思いますが、国民から見たら年金が減っちゃう話なので、必ずしもそれがどこまで理解されているかという問題もあると思うんですね。そういったことを、もう一度きちっと制度を組み立てて、国民にも説明して御理解いただく、そういうプロセスが必要なんだろうというふうに思っています。

田村(憲)委員 何か話がいろいろなところに拡散して、聞いていることと違うことをお答えされるんですが、四・一%という運用利回りは、あれは実態は、物価上昇率一%、実質賃金上昇率一・五%、合わせて名目で賃金上昇率が二・五%なんですよ。四・一から二・五を引いたものが実質の運用利回りなんです。つまり、年金は、賃金が上がればその分だけ年金の支給額も上がっていくわけですよね、水準が。

 そういう意味から考えると、四・一引く二・五、一・六が実質運用利回りですから、この十年の運用利回りを見ますと大体一・六なんですよ。だから、ぴったり当たっているんです。何らこの計算は問題なかった。いや、そんなことは、厚生労働省のお役人に聞けばみんな、そうですという話になるので。にもかかわらず、四・一%は間違いだ、年金は破綻するなんて議論をずっとあなた方はやってきたわけですよ。だから、そういうことも含めて、与党になってお学びになられて現実的な議論ができるようになったというのは、我々は進歩だなというふうな認識は持っております。

 さて、そんな中で、我々、今回出てきた法案の中で、我々が出した法律もありますからね、以前。これは、まあまあ、そういう意味では考え方は一緒なのかなというような法律も幾つかありますが、どうしてもこれだけはというふうに思うのが、例の低所得者の年金加算の法律案であります。

 まず初めにお聞きするんですが、共済年金の一元化の話で、先ほど、なぜ追加費用が二七%かという理屈を言われましたよね、二七%。それは多分、本人が保険料を払っていない部分、この部分だけは差っ引きますよ、今の考え方でいうと、そういう考え方ですよね。しかし、総支給額の一〇%を上限にします、こういうことを言われた。これはなぜですか。なぜ一〇%というのがあるんですか。もう一回お聞かせください。

安住国務大臣 もう既成事実は申し上げませんが、この一〇%をなぜにしたのかということについては、前例を参考にしたと、一言で言えば申し上げられると思います。農業者年金の場合は九・八でしたし、国会議員の年金の場合は、あれは一〇%でございましたし、地方議員もそうでございます。ですから、おおむねここら辺が一つの水準ではないかということで線を引かせていただいたということです。

田村(憲)委員 つまり、財産権の侵害とてんびんにかけて、一〇%ぐらいならばまあまあ妥当かというような、そういう判断だったと思うんですよね。

 一方で、年金加算に絡んだ法律で、高所得者の年金、基礎年金の国庫負担分を停止する、こういう制度をこの法律の中に盛り込んでおります。

 今、国民年金だけで六万六千円。これは六万四千円を前提にしていますけれども、六万四千円の二分の一、収入が一千数百万を超えてくると、これは全て停止になりますよね。六万四千円の二分の一が停止されれば五〇%削減ですね。一方で、財産権の問題で一〇%が限度だと言っていて、金持ちだから五〇%削減するなんて、そんな横暴なことをやっていいんですか。今言っている話と全く整合性がつかないと思うんですが、この点はどう考えているんですか。

小宮山国務大臣 財産権は、法律で一旦定められていても、公共の福祉に適合する限り、法律で事後的に変更することも許容されていると解されていると思います。

 今回の高所得者の年金額の調整は、年金制度の中で低所得者への加算とあわせて行って、高齢者の世代間、世代内の再分配を図るために行うものなので、これは公益性は高いというふうに考えています。

 恩給期間に係る給付の追加費用の削減は、その年金額に着目をして、年金額を将来にわたって減額をするというものです。

 これに対しまして、今回の高所得者の年金額の調整は、一つは、年金以外の所得も含めた高所得者、これは高齢者のおよそ一%を対象にしています。二つ目に、追加費用の削減は年金額の最大一〇%なのに対してこの支給停止額が基礎年金の五〇%といいましても、これは、全ての所得を合算した所得に対しては最大およそ三%に当たります。

 そしてまた、追加費用の削減のような、将来にわたって年金額を減額するというのではなくて、一時的に所得が多い場合に支給を停止する措置で、これは単純に恩給期間に当たるものと比較する種類のものではないというふうに考えています。

田村(憲)委員 まず、どちらも税金の部分だということは同じですね。追加費用も税金ですよね、国庫負担も税金。そういう意味では、税金の部分を削減するのに、一方は一〇%というような上限をかけているわけですよね。

 今の話ですと、いや、それならば、引かれた期間、そして、なくなって年金がもらえなくなった。総計して、もしずっと国庫負担部分が年金停止がかかった場合、なくなっている期間がずっとだったらこれは五〇%になっちゃうわけですから、その部分から一〇%になるまでお返しをするみたいな、そういうようなことを考えなきゃいけなくなっちゃいますよ。

 一時的なものだと言われますけれども、それはだって、人生のうちその一時的な期間が、その方が年金をもらえる期間のうちのどれぐらいを占めるのかなんというのはわからないわけですから。

 まあ、論理矛盾をしたのを無理やり御答弁されていますが、これは私は財産権の侵害にひっかかってくると思いますね。こんな、二分の一なんて余りにもひど過ぎる。

 さらに申し上げると、この間、こういう議論のときに話が出ておりましたけれども、国民年金の減免、これは、自分が加入している時期の減免期間に応じて、もらえる支給は当時の国庫負担分なんですよね。だから、昔、三分の一国庫負担があったときには、免除されている人は、その期間分は要するに三分の一の部分しかもらえないんですよね。そうですよね。ところが、今回はそれは関係ないんですよ。二分の一停止される方は、過去、大方私は、三分の一しか国庫負担分、自分の加入期間はそういう制度の中でしか動いていませんでしたよと。なのに、減額されるときは二分の一減額されちゃうんですよね。

 もらうときは、過去、そのときに三分の一国庫負担制度だったから、その期間は免除者は三分の一の税金部分しかもらえませんよと。なのに、取られるときには、いやいや、もう今の二分の一で全部停止しますなんという話になるので、この部分も全くもって整合性がない。何か非常に不合理な方法だと思うんですが、何かありますか。では、岡田大臣どうぞ。

    〔委員長退席、古本委員長代理着席〕

岡田国務大臣 私は、これだけの財源が厳しい中で、やはり高齢者の中でも負担能力のある方には御負担いただくという発想は必要だと思うんですね。それを税でやるのか、それとも先ほどのような年金の中の国庫負担の部分でやるのか、そこは議論はあり得ると思いますけれども。

 私は、三分の一の国庫負担を二分の一に上げたときに、一律に全部そうすべきだったのか、あるいはそこで、全体の所得の多い方にはそのまま二分の一に上げないというような、そういう議論が果たしてできなかったのか、これは今となってはもう遅いんですが、そういうふうにも思うんです。

 非常に奥深い議論がいろいろ必要だと思いますが、資産と所得はまた違いますし。だけれども、大きな流れとして、やはり高齢者の中でも負担能力のある方には御負担いただくような、そういう考え方にシフトしていかないといけない、そのことは委員もお認めいただけると思います。

 その具体的やり方として、税でやるのか、今言ったような年金制度の枠内でやるのか、そういうところについてはいろいろな議論があり得るというふうには思います。

田村(憲)委員 我々は、もし低所得者対策をするのならば、年金なんというやり方はやってほしくないです。これは、保険という制度の中で、保険料を払って、その保険料を払ったものに対する、見合う約束としてもらうわけなんです。それを後から、この人らは金持ちだから切るという考え方はだめです。

 民主党の年金制度案、あれは要するに、保険料を納めているときに所得の多い方々は最低保障がもらえないという制度なんですよね。だから、その時点の話なんですよ。今回のは、後から見て、今収入があるから年金を停止する、そういう制度なんですよ。つまり、あなた方の哲学からいっても、あの民主党の年金案とこれとは時間軸が違うんですね。そういう意味からすると、やはりこんな後追い型のやり方は私はよくないと思う。

 例えば、六千円、今回、年金加算するわけですよね。その六千円の根拠は何だとこの間質問があったら、きょうお配りをしている資料を見ていただくと、大体の基礎的な支出、これが七万円なんですと。七万円だから、今、これがスタートするころには基礎年金の支給額が六万四千円になっている予定なので、それを足して七万円なんですというんですが、見てみると、七万円なんて、この十四年から二十二年の間に二回しかないですよ。二十一年、六万七千円、二十二年も六万七千八百円。七万円じゃないじゃないですか。

 これはあくまでも、あなた方が最低保障年金七万円と言われた、これが実現できない、だから、ちょっとごまかすために一部は七万円ですよなんというような、そんなごまかしをしたとしか私は考えようがない。こういうごまかしの制度というものはやはりやめていただきたい。

 さらに矛盾点を幾つか追及しますから、その上で御答弁ください。

 まず、この間から議論しております、低所得者とはいいながら金融資産はカウントされない、これは大問題ですね、不公平。大臣がやむを得ないと言われました、六万四千円を超える人がもらえない。厚生年金が若干入っていて六万五千円の人がいる、この方は七万円もらえないですね。こういう問題も出てくる。

 さらに申し上げれば、こういう方々が、大臣、いいですか、今月、あと一カ月厚生年金に入ると、いよいよ年金が六万四千円ちょっとになっちゃう。だから事業主の親方に、悪いけれども、今月俺は働いているけれども、厚生年金加入はしないでくれ、こう言った。事業主は、それはそうだよね、あなた、この一カ月のために六千円もらえなくなっちゃったらかわいそうだから、では、あなたはごまかしておきますよと。こうなった場合、大臣、この事業主は法律違反になって、罰則があるんですか。

小宮山国務大臣 幾つかのことをまとめて御質問いただいたので、なるべく短く……(田村(憲)委員「いや、これだけでいいですよ、時間がないんです」と呼ぶ)でも、その前に、ちょっと一言言わせてください。

 ただ、先ほどの、低所得者に対する何らかの措置が必要だということはお考えだと思うので、これを私たちは年金の中でやりたいと考えましたが、そこはまた与野党の御議論の中でお考えいただければと思います。

 先ほどの二分の一と三分の一に関しては、給付を受けるときで賦課方式でありますので、これは考えますから、それは、三分の一だった人も受け取るときは二分の一分という計算でやっていますので、そこは矛盾しないということだけ申し上げます。

 今、最後の点ということですけれども、厚生年金適用事業所に使用される七十歳未満の人を適用対象にして、これは本人や事業主による任意の加入、非加入の選択を認めていません。使用関係があるにもかかわらず、事業主がこれを偽って届け出を行わなかった場合は、形式的には厚生年金保険法に違反すると考えられますので、これは罰則の対象になります。

 ただ、現実にそれを適用するかどうかは、たび重なる指導を行うとか、幾つかの現実的な対応に応じてそういうところまで至るということでございます。

田村(憲)委員 法律違反なんですよ、明確に。そんな不合理な制度でいいんですか。その一カ月のために六千円もらえなくなっちゃうんですよ、この人は。だから、ここにも大きな問題がある。

 さらに申し上げれば、年金の繰り上げ給付。例えば六十歳から年金をもらった。これは少なくなるから仕方がないけれども、早く欲しいという人はこういうことをやりますよね。こういう方々はこの六千円の給付の対象になるのか。

 そしてもう一点、今度は繰り延べ給付。これは、もしかしたら平均寿命まで生きられないかもわからないけれども、我慢して、ちょっと年金の給付をふやしたいといって、後でもらおうと五年耐えた方、こういう方も六千円の対象になるのか。どうですか。

小宮山国務大臣 今回の低所得者等への加算、これは、ほかの社会保障制度で多く用いられている低所得者の範囲を基本にしてやっています。

 繰り上げ、繰り下げなどの事情にかかわらず、現に受給している年金額で判定する、これはほかの社会保障制度の低所得の判定でも同様でありますので、今回、特にそれに比べて不公平な扱いをしているというふうには考えていません。

田村(憲)委員 では、繰り上げで先に年金をもらった方は、これは仮に、本来ですと厚生年金に若干入っていて六万四千円を超えちゃう人でも、繰り上げで先にもらっちゃったから六万四千円以内に、厚生年金の若干を含めてでもおさまっちゃったという人は六千円もらえて、一生懸命我慢して、多くもらおうと思って、いや、これからならそんなばかなことはしないといって先にもらうかもわからないですよ。だけれども、もう既にもらっている人で、俺、満額、四十年間国民年金に入って、繰り下げ給付してもらって、六万八千円あるんだというような人は六千円もらえないなんというような不合理を本当に起こしていいんですか。これは国民の皆さんは怒ると私は思いますよ。いかがですか。

小宮山国務大臣 繰り上げ受給をした人が有利になるという御指摘ですけれども、繰り上げ受給には、将来にわたって年金額が減るとか障害年金が出なくなるなどのデメリットもありますので、そこは慎重な判断が必要だと思っています。

 また、加算制度がないときに、生活に余裕があるなどの理由で繰り下げ受給を選択した人は、現に高い年金を受給していますので、特段の配慮措置は必要ないと考えます。

田村(憲)委員 本来、国と契約してこういう公的保険制度があるわけですよね。繰り上げであろうが繰り下げであろうが、面積としては、平均寿命まで生きるということが前提で、同じ面積で計算されて支給金額が決まっているわけですよ。にもかかわらず、一方はもらえる、一方はもらえないなんということが起こること自体、今回の皆様方が提案された制度の欠陥であることは間違いがありません。

 さらに申し上げます。

 今まで、加入期間二十五年が年金の受給資格の要件だったわけですよね。これを十年に引き下げるという法律を出してこられました。これも大問題なんですよね。

 何が問題か。そもそも、二十五年から十年ということで、九年十一カ月の人と十年との間に矛盾が起こるということもあるんですが、さらに、この間で六千円つくかつかないかということが決まっちゃうわけですよ。十年の人は一万六千円プラス六千円、九年十一カ月はゼロですよ。これも大問題です。

 ちなみに、我々自民党も、参議院選挙の政権公約でこれを入れました。ただ、そのときに我々はその問題点がわかっていましたから、そういう矛盾点を解消するために、昭和三十六年までさかのぼって、三年間、特例納付で、納めたい保険料を後払いで納められるような特例制度を入れました。だから、今ゼロの方、七十歳で加入期間零カ月の方も、さかのぼって十年分だけ納めればもらえるという制度、一応そこで公平性を担保したんです。

 ところが、皆さんのやった後納、昨年ですか、法律を通しましたよね。あれは、三年間に限って、今から過去十年しかさかのぼれませんから、もう七十を超えている人たちだとかは無理なんですね。六千円もらう権利はなくなっちゃうんですよ。こういう問題も実は抱えているんです。

 だから、こういうようなことをやるときには、私はこの六千円の加算はそもそもよくないと思いますけれども、しかし、やるときにはそういう穴を全部埋めてからやらないから、非常に不公平な話が出てくる。

 何かありますか、大臣。では、御答弁ください。

小宮山国務大臣 受給期間の短縮、これは無年金者をできるだけなくそうという、その趣旨は多分一緒だというふうに思うんですが、今回の仕組みについては、受給期間を短縮しても保険料納付十年未満の人は受給権が生じない、そこの問題点を今御指摘いただいたと思うんです。

 これを考えるのには幾つかの論点があります。一つは、一度も保険料を納めたことのない人も含めて一気に受給権を得ることが可能になりまして、真面目にこつこつと保険料を納めてきた人に不公平感を与えるということ。また、今後も同様の措置が実施されるという期待につながって、保険料納付意欲に悪影響を与える。また、多額の保険料を短期間にまとめて納付できる高所得者とか資産家だけが得をすることになるというような問題点も議論の中で指摘をされてきました。

 それに加えて、これまで三回にわたって特例納付を実施してきています、昭和四十五年、四十九年、昭和五十三年と。その第三回の実施時に、このような対策は今回限りとすべきだ、そういうような御指摘をいただいた点も含めて、こうしたことにも留意をしながら、今回はこういう形にしたものです。

田村(憲)委員 だから、我々は特例納付だということを申しておるんです。しかも、こんな六千円ばらまくなんて。大制度変換するときに、これぐらいのことをやらなかったら、それは怒りますよ、本当にもらえない方は。

 さらに、低所得者対策だといって、無年金者の人が一番低所得者なんだから、普通で考えれば。この人らから消費税で吸い上げて、年金をもらっている自分らよりまだ豊かな方々に、この六千円のために使われちゃうんですよ。これは、何も低所得者対策と言えないじゃないですか。全く論理矛盾ですよ。本当に一番困っている人、それは保険料を納めなかったんだから、悪いと言われればそうなのかもわからないけれども、しかし、実態の生活は一番困っておられるかもわからない。そんな方々は消費税だけ取られ損だということ。六千円はもらえないということ。だから、おかしい。

 だから、私は、年金で低所得者対策をやるのはおかしいと言っているんですよ。そこをしっかりと我々は皆様方に申し上げたいというふうに思います。

 もうそろそろ時間がなくなってきたので、最後の質問に入りたいと思います。

 以前も申し上げましたけれども、共済年金の一元化、これは十九年、我々が出した法律でありました。もしあのときにこれを皆様方が御理解いただいて可決しておれば、もうそろそろスタートしているんですね。スタートしています。

 さあ、あなた方は五年ぐらいおくれて多分施行するという話になる。この五年間の間に、今もお話が出ましたが、恩給見合いの追加費用、これを二七%削減という話。そうですよね、財務大臣。これが、我々が十九年に出した法律が通って今もうスタートしておれば、あなた方の法律が通ってスタートするまでの間のタイムラグ、この間に幾ら税金を削減できたのでありましょう。財務大臣と総務大臣、これは国共済と地共済で違いますから、それぞれからお聞きをいたしたいと思います。

安住国務大臣 期間はどうなっているか、ちょっとそれはわかりませんけれども、もし今のような二七%の削減で、国分だけで削減額をそのまま当てはめると、一年大体二百億ですから、掛ける年数ということになると思います。

大島副大臣 平成十九年法案が仮に成立したとした場合の地方公務員共済組合の追加費用の削減額については、国家公務員共済組合と同様の方法により試算しますと、平成十九年法案が仮に成立したとすれば、おおむね六千五百億円程度になると推計しております。

田村(憲)委員 ありがとうございました。非常に大きい額でございました。

古本委員長代理 これにて田村君の質疑は終了いたしました。

 次に、下村博文君。

下村委員 自民党の下村博文です。

 私は、子ども・子育て新システムを中心に質問をさせていただきたいというふうに思います。

 いよいよこの委員会も終盤戦に入ってきた中で、採決の時期について議論がされているところでございます。そして同時に、各党でこのことについての修正協議が始まるという段階でございます。

 そういう中で、もう今まで相当な議論を、これは本会議のときからしている中で、それぞれ関係大臣としても修正協議についてどのように考えているかということについて後でお聞きしますが、そういうことを前提で、今までのような答弁の繰り返しということでなく、誠実な、前向きな対応をお願いしたいというふうに思うんですね。

 まず、この子ども・子育て法案なんですが、これは、野党全てが厳しい意見を述べているというふうに思います。それはどういうことかというと、別に、ためにするという議論を我々もしようと思っているわけではないわけでありまして、もともと自民党も、随分前から、幼保一体化論についてとか、あるいは将来における子ども家庭省のあり方とか、党内議論も積み重ねてきたところでございますし、百八十度全然違うということではないわけですね。しかし、今回の法案は、我が国の子供たちをどのように育てていこうとしているのか、そういうことがまるっきり伝わってこないんです。理念的な部分が全く伝わってこない。

 我が国の子供たちを育てるために、小学校の就学前の子供たちに対して、教育的な観点で、どんな教育が必要なのか、そしてどのような施設や環境が必要なのか、そういうことをトータル的に議論していく中で国民的な合意がなされるということが必要だと思うんですね。ですから、今までの議論の中でも、一体化の中における総合こども園というのが特化してしまって、そもそも、では子ども家庭省についてどうするのかというような、つまり、国家戦略的に幼児教育も含めて位置づけるというようなことが全く欠如してしまっている。

 ですから、いろいろなアンケートでも、賛成より反対の方が多いわけですね。第一生命経済研究所のアンケート調査で、幼保一体化について、賛成二六・六%、反対は四六・八%。これは幼稚園とか保育園の関係者のアンケート調査ですが、ほかの調査でも大体似たような傾向でございます。

 この中で、確かに、待機児童対策をどうするかということは喫緊の課題であるというふうに思いますが、これと総合こども園が重なっているとはどうしても思えない部分があるわけですね。こういうことについて、前提として議論をしていきたいというふうに思います。

 自民党の方でも既に、社会保障制度改革基本法案の骨子案、これをつくっているわけでございます。この中で、現行の幼稚園それから保育所等の制度を基本としつつ今の課題については制度設計をしていくという中で、認定こども園についての設置の促進をしていくべきだと。これは、何度も大臣が、認定こども園というのは二重行政である、それから財源不足の問題がある、だから総合こども園だと言っても、その飛躍が理解できない。

 これはやはり、総合こども園ではなくて認定こども園の中で解決をしていくかということについては、再三再四国会でも取り上げてきていることでありますし、当然、修正協議の中における大きなテーマであるというふうに思うんですね。

 これは、なぜ認定こども園では解決できないのかということについて、今までの答弁の繰り返しというよりは、今のこの段階における小宮山大臣の見解を改めてまずお聞きしたいと思います。

小宮山国務大臣 委員の方から、幼児期の子供たちの考え方については、いろいろなことも考えているので、ぜひ一致できるところというお話をいただいたことは大変ありがたいというふうに思っています。

 御指摘のことですが、認定こども園は、再三申し上げているように、今の就学前の全ての子供に学校教育、保育を、質のいいものを提供しようという先駆け的な取り組みだという認識を持っています。

 二重行政と財政支援が足りないというのは、私が勝手に申し上げたことではなくて、認定こども園をやっていらっしゃる皆様たちが、何が課題かというときに、二重行政と財政支援が足りないということをおっしゃっているので、そうしたことを今回の中で払拭しようと考えていますので、小渕報告のことも昨日、馳委員からたくさん御質問いただきましたが、そうしたことの検討とか運用の改善を踏まえた上で、今回こういう形にしないと、二重行政と財政支援の課題にしっかりと応えることができないということで、こういう形の制度改正をというふうに提案させていただいています。

下村委員 いや、ですから、その中身を聞いているわけですよ。認定こども園における課題があるということについては、それはそのとおりだと思います。ですから、今御指摘の小渕報告の中でも、それをどう五年をめどに見直していくかということについて随時やっていくということですね。ですから、認定こども園の延長線上の中で解決できる部分というのは多々あるというふうに我々は思っているわけです、今の問題を含めて。

 それが、いや、解決できないから総合こども園にするんだということを今まで言われているわけですよ。それはなぜ解決できないのか。総合こども園に名前だけ変えることについてどんな意味があるのかということについて、それはわからないと。前政権の政策を全否定の中で、名前を変えているとしか思えないような答弁がずっと続いているんですよ。

 これは、大臣、今後の協議の中でもポイントだからということで改めて申し上げているんです。

小宮山国務大臣 申し上げたいのは、認定こども園制度というのは、やはり、幼稚園と保育所それぞれの制度を前提としていますので、そういう意味では、運用改善を行っていても二重行政とか財政支援の不足などの課題は残されるというふうに考えています。

 具体的に申し上げると、助成制度が、幼稚園は私学助成など、そして保育所は保育所運営費と、別の制度になっていまして、財政支援とか利用者負担の公平性が図られていないということがあります。幼保連携型は両制度から財政支援を受けられるといっても、幼保の区分を超えて資金を融通することができないということなど、助成の制度にはそういう問題があるので、今回は、共通のこども園給付とすることで財政支援の仕組みを整理して、安定的で使いやすいものにしたいと考えています。

 また、行政窓口の一本化、これもきのうの審議でもいろいろお話あったように、努めてきましたけれども、認可ですとか財政支援、指導監督の権限が分かれていますので、事業者が幼保双方の制度に基づく指導監督に服する必要があるということは変わりがなく、行政の部局間、また県と市町村の間でも調整事務が発生している、そういうことがあります。

 そして、幼稚園と保育所で法制度上の位置づけが異なるために職員の待遇や身分を統一しづらい、そのようなことがあるので、今の認定こども園を発展させたいと思っているんですが、これを改善しただけではこうしたことが解消しないということで、今回の提案をさせていただいています。

下村委員 それについては全く同意できないわけですが、今の大臣の方向性として、そうすると、全ての幼稚園、全ての保育園を、総合こども園に全部する、将来。そういう前提での今、話ですか。

小宮山国務大臣 保育所につきましては、一部のゼロ、一、二歳の乳児保育をするところ以外は、一定の期間後には総合こども園になると考えています。

 ただ、幼稚園については、いろいろと当事者の方に集まっていただいて、かなり議論を長い時間かけてする中で、やはり今度は、受け入れる責務ができますので、例えば宗教関係の信者さんを入れたいという幼稚園とか、非常にブランド性の高い幼稚園などで、なる必要がないとおっしゃっているところなどもあるので、強制的に幼稚園を一定期間後に総合こども園にするということはとりませんでした。

 ただ、総合こども園になっていただいて、ゼロ、一、二歳から教育と保育をやっていただけるところについては、いろいろな形のインセンティブをかけることによって、手挙げ方式で、なりたいところになっていただく、そういう方式にしたいと考えています。

下村委員 前半の話と後半の話で違うんですよ。

 前半の話だと、宗教法人等の特別な幼稚園についてはそれを認めるというようなお話がありました。つまり、例外的な意味で言われましたね。それから、後半の部分において、インセンティブとして、総合こども園にすることによってより財政的にもバックアップするという中で、それでは、そもそも今の私立の幼稚園等は存在そのものを基本的には認めない方向なのか、それが一点。

 それからもう一つは、私学助成のあり方についても、認定こども園では解決しないという話をされました。総合こども園にすることによって、結果的に私学助成等もこれはなくしていくという考え方なのか。その辺はどうですか。

小宮山国務大臣 例外的にと。先ほど、こういうところはまずならないという意思表示がございましたので、そういうことを申し上げたので、あとのところはなるべく両方の、学校教育、保育をやっていただきたいということで、インセンティブをかけるというお話をさせていただきました。

 そして今、私立も含めて、幼稚園の七五%が預かり保育をされています。そこに対する財政支援なども今回は厚くなりますので、そういうことをやっていらっしゃるところは、少なくとも三歳から五歳のところに関しては、総合こども園になりやすくなっていただけるというふうに思います。

 それで、ゼロ、一、二歳をやらなくても三歳から五歳の学校教育、保育両方をやるところに関しましては、ほかに、今回認める小規模保育とか家庭的保育とかと連動していただいて、そこの子供が三歳になったら上がれるような仕組みということも考えていますので、それは、先ほどおっしゃった、待機児対策にならないのではないかということについては、そういう意味で、今回の仕組みの中でも待機児さんの対策になるというふうに思います。

 私学助成については、残る部分もあるんですが、現在の私立幼稚園に対する財政措置、これは、施設に対する機関補助である私学助成と、保護者の経済的負担軽減を目的とする幼稚園就園奨励費補助によって構成をされています。また、私学助成は、幼稚園運営に係る経常的経費への補助である……(下村委員「中身を聞いているんじゃないんですよ。今後どうするかと聞いているんです」と呼ぶ)

 子ども・子育て新システムでは、現在の私学助成の一般補助と、幼稚園就園奨励費補助については、原則としてこども園給付に統合します。また、特別補助のうち、預かり保育や子育て支援に対する補助については、私学助成ではなく、新システムの地域子ども・子育て支援事業として再構築をすることにしています。

 一方で、特別補助のうち、特別支援教育など多様なニーズに対応する特色ある取り組みについては、幼児期の学校教育を振興するための奨励的な見地から、引き続き私学助成により支援を行うことにしています。その際には、今までの学校法人に加えて、社会福祉法人が設置する総合こども園についても助成の対象とするということにしています。

下村委員 大臣、端的に答えていただきたいんですけれども、私立の幼稚園が現状のままやっていきたいと、私学助成等を受けているところですね。それについては私学助成はそのまま減らさないということでよろしいんですか。端的に答えてください。

小宮山国務大臣 それは先日も委員会で答弁をさせていただきましたが、減らすということはございません。

下村委員 減らすだけでなく、先ほどおっしゃったように、既に幼稚園でも預かり保育をやっていますね、七五%。しかし、実際、対象は三、四、五歳児。これについては補充をする、拡充すると。これは必ずしも、既にやっていることですから、別に総合こども園にならなくてもやっているわけですから、今の、総合こども園でない幼稚園の中で、預かり保育については拡充をするということでよろしいわけですね。

    〔古本委員長代理退席、委員長着席〕

小宮山国務大臣 預かり保育をされているところ、そこについては、ですから、教育と保育、両方をやっていただくという総合こども園になっていただくことによって、そこの、預かり保育の部分の補助をふやしたいというふうに考えています。

下村委員 そうすると、大臣、総合こども園にならない幼稚園が、既にだから七五%が預かり保育をやっているわけですけれども、それは対象にしないということですか。

小宮山国務大臣 幼稚園の預かり保育は、共働き家庭の子供を一定程度受け入れています。このため、幼稚園の預かり保育の拡充は三歳以上の子供の待機児童対策として大変有効だと考えています。

 一方で、現在の預かり保育は、待機児童の八〇%以上を占める三歳未満の子供を対象にしていない、また、担当する職員に保育士資格が必要とされていない、私学助成による助成額なども長時間の保育を前提とした水準でないことなど、やはり問題点も多いと考えていますので、今回、子ども・子育て新システムでは、幼稚園の総合こども園への移行を促進する、そのことによって、三歳未満の子供も受け入れを可能にする、幼稚園教諭の免許と保育士資格の両方を持つ保育教諭、これが担当することにして、現在の預かり保育を利用している三歳以上の子供も含めて、保育の必要性の認定を受けることで、保育にかかる費用に応じたこども園給付が支給されるようになるということで課題を解決して、待機児童の解消を一層促進するということになります。

 先ほど申し上げたように、この新システムで幼稚園が総合こども園になっていただいた場合に、そこにこういう、課題を解決するような対応がとられますので、そこに対して今までよりも多い財政支援をしようということでございます。

下村委員 一問一答で、端的に答えていただきたいんですけれども。

 もう一度確認ですよ、大臣。大臣、聞いていますか。いいですか。(小宮山国務大臣「はい、聞いています」と呼ぶ)既に私立の幼稚園等では預かり保育をやっているわけですよ、七五%が。今の大臣の答弁だと、やっていても、さらにそれに対して、預かり保育について加算するかどうかは、総合こども園にならないと加算しませんよ、今のままでは加算しませんよ、そういうことなんですね。

小宮山国務大臣 今申し上げたような預かり保育のいろいろな、今の課題となっていることが解消されない場合には、今までと同じ私学助成の中でやるということになります。

下村委員 それは問題ですね。結果的に、今政府が考えている総合こども園に協力しない限りはインセンティブは一切なし、そういう制度設計ということですね、今の大臣の答弁は。それ自体も非常に問題だと思いますよ。

 それからもう一つ、総合こども園と待機児童の問題を連動させて言われていましたが、別問題じゃないですか、これは。

 そもそも、例えば幼稚園の問題もそうですけれども、三、四、五歳児の預かり保育よりは、ゼロ、一、二歳の待機児童の方が、八割で、圧倒的に多いわけですよ。いかに総合こども園で解決するかというよりは、待機児童対策は待機児童対策で、別の手だてで対応していく必要があるんじゃないんですか。

小宮山国務大臣 今回こういう新しいシステムを提案しているのは、一つは、就学前の全ての子供に質の高い学校教育、保育をするということ、そしてもう一つが待機児童解消、また、全国的に家庭とか地域の子育ての、養育を支援するという、この三つの目的で今回つくろうと思っています。

 では、待機児童解消に総合こども園が役立たないかというと、そういうことではなくて、今、現に幼稚園で七五%が預かり保育をしているように、幼稚園の方は、今、特に都市部では、保育所はあきがなくて待機児さんがたくさん発生しているのに対して、幼稚園は、三割、全国的にあきがある。そうであれば、そこの、同じ就学前の子供のためのスペースを活用してやっていただける可能性があるだろうということで、こういうことを考えているわけです。

 先ほど申し上げたように、もちろん、待機児対策については、安全にかかわらない規制をなくすとか、補助を厚くするとかいうことで、特に都市部で先進的に取り組んでいらっしゃる市町村の御意見も伺って、今取り組んできています。ただ、そのことだけではとても間に合わないということ。

 そして、総合こども園は、待機児さんのためだけではなくて、先ほども御質問があったように、地方で、幼稚園、保育所それぞれ単独では成り立たないところを、隣の市町村と共同で、総合こども園という形で学校教育も保育もできるところを確保するとか、さまざまな要因があってやっていますので、待機児対策につきましては、先ほど申し上げたようにインセンティブをかけて、総合こども園でゼロ、一、二歳もなるべく見ていただきたい。

 そのほかに、ほかの小規模保育とか家庭的保育との連携をして、バックアップを総合こども園がするという形で、これは今までよりも格段に待機児さんへの対応にもなると考えています。

下村委員 そもそも、待機児童対策と、総合こども園としての幼保一元化、これは別の対策、手だてが必要で、既存の幼稚園があいているからといって、そこにゼロ、一、二歳児の待機児童がたくさんいる地域が重なっているような状況ではない、数字だけの問題ではないということを御指摘したいというふうに思います。

 我々は、一つは、総合こども園ではなくて、認定こども園のより一元化や、つまり二重行政の解消ですね、それから、財源不足についてどうフォローするかということによって対応すべきであるということが一点。

 それからもう一つ問題は、保育士の処遇の改善ですね。これは、余りにも処遇が厳しいために、実際、資格を持っている方はたくさんいらっしゃるわけですよ、ところが現場で働いていない、こういう問題があるわけですね。そういう意味で、必要な財源上の支援、今の制度の中で解決できる部分が相当あるというふうに思っているわけでございます。

 もう既に相当この委員会でも議論されている中で、少子化対策については一兆円の予算を政府は考えている、しかし、財源としては七千億である。三千億についての見通し、これは今後検討していくということですが、安住財務大臣、三千億円、これはぜひ財務大臣の立場からも、もう一カ月以上議論しているわけですから、いつまでも検討している状況じゃないと思うんですね。

 財務大臣の立場から、財源についてはどんなふうに考えますか。

安住国務大臣 なかなか大変なお金でございまして、しかし、今の下村先生と小宮山大臣の話を聞いていまして思うんですけれども、これから修正協議に入らせていただくと、これはもう政府の手を離れて議会の中でのコンセンサスづくりをしていただくわけですから、そういう中でいい案を出していただければと私は思います。

 一応、我々の案としては、それに伴う財源として、今、〇・七、残りの三千をどうするんだということですが、これは何とか、一般財源を含めて財源の手当てというものをやはり考えていかなきゃいけないだろう。

 特に、与野党協議がもしうまくいって、本当に子育て対策等に役立つような施策ができてきて、これに対する財源が国民から見ても必要だとなれば、財務省としても特段汗をかかなければならないと思っております。

下村委員 まだ具体的に案がないと。

 これは、岡田副総理、どうですか、三千億の財源。

岡田国務大臣 先ほど来、総合こども園についてもいろいろな議論が交わされました。

 私は、与野党でこの子ども・子育てについて虚心坦懐に御議論いただき、そして、よりよい制度、合意できれば、子ども・子育て対策の必要性ということはお互い合意されているわけですから、必要な財源についてもいろいろな工夫を凝らしながら確保していくということ、そのことも合意いただければ、政府としては、それは真摯に受けとめて、実現に向けて努力させていただきたいと思います。

下村委員 しかし、政府としても、いつまでも財源については検討中ということじゃなくて、具体的な例示等を出すときに来ているんじゃないですか。それがない限りは、やはり無責任だということになってしまうわけですね。

 次のテーマに移りますが、小宮山大臣が言われていることについて、待機児童の問題なんですが、どうしても共感できない部分があるんです。

 まず一つは、三歳以上の三、四、五歳児については、我々は、総合こども園じゃなくて認定こども園で十分対処できる、その方向性についてはそれほど違っているわけじゃないという現実の中で、つまり、新しく法律をつくらなくても現実の中で対応できると思うんですね。

 それから、待機児童の問題なんですけれども、これは確かに解決しなければならない部分があるというふうに思います。

 ただ、教育基本法の第十条で、家庭教育として、「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。」とされ、第二項で、「国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。」こういうふうに書いてあるわけですね。

 このたびの子ども・子育て支援法案それから総合こども園法案は、こうした教育基本法における学校教育と家庭教育の考え方を前提にしているのかということについて、本来家庭教育で担うべきものを学校教育で肩がわりするような、あるいは施設の中で肩がわりするような、そういう制度設計になっているとしか思えないような部分があります。

 自民党は、一歳未満の子供に保護者が寄り添う育児を促進する、ゼロ歳から、誰でも子供を、希望すれば預けるということではなくて、そのためには、もちろん、親の努力だけではかないません、ワーク・ライフ・バランス等、育児休業等の取得をきちっと促進する、また社会全体でそれをフォローするということも必要です。

 しかし、基本的には、ほかの先進国でも、実際は、子供は一歳以上という国が多いわけですね。希望すればゼロ歳からということではなくて。確かに、今、ゼロ歳からというのは一〇%います。それは母子家庭等、どうしても親が働かなければ生活していけないというやむを得ない家庭ももちろんあると思いますよ。ただ、基本的には、ゼロ歳のときにはできるだけ親が子供を養育できるような環境づくりをしていくということが望ましいのではないかというふうに思うんですね。

 しかし、このことについては、小宮山大臣は、ゼロ、一、二歳待機児の解消ということを言われているわけで、このゼロ歳についてどうなのかということについてはお聞きしたことが国会でもないというふうに思いますので、この辺の、つまり家庭教育との問題ですね、どんな認識を持っておられるのか、お聞きしたいと思います。

小宮山国務大臣 前段おっしゃいました、教育基本法にある家庭教育と学校教育の考え方、これを今回も前提にしています。そういう意味では、家庭教育の役割を学校教育に肩がわりさせるものでは決してございません。

 教育基本法の第十条、御紹介いただいたものをそのまま引いて、子ども・子育て支援法案の第二条でも、「子ども・子育て支援は、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識の下に、家庭、学校、地域、職域その他の社会のあらゆる分野における全ての構成員が、各々の役割を果たすとともに、相互に協力して行われなければならない。」ということを基本理念として規定しています。そういう意味で、のっとっているということです。

 ただ、かつて家庭や地域が担っていた子育てに関する支え合いの機能が低下しているので、社会的にそういう機能を新しい形で再生させなければいけないという思いはこの中に入っておりますが、決して学校教育に家庭教育を肩がわりさせるものではないということを、まず一点目、申し上げます。

 そして、ゼロ歳児については、誰しも、子供を産んだら小さいときは脇にいて育てたいというのは、私自身も含めて、皆さんそう思われるということが自然な感情だと思います。そういう意味で、今委員が御指摘のように、ワーク・ライフ・バランス、育児休業の促進、それは私もぜひそういう方向で進めたいと思いますが、現状としては、やはり六割以上の女性が妊娠したときにやめている。

 そういう状況の中で、もちろん働き方を変えること、そうしたことと、先ほどおっしゃったシングルマザー以外にも、仕事の性格上中断できない、続けなきゃいけない人もいるわけなので、それはどうしてもやはりゼロ歳でも預けて仕事をするという方の選択にも、そのときに子供が一番いい状況にいられるという意味でやらなければいけない、そのように考えているところです。

下村委員 小宮山大臣の、国会答弁じゃなくて国会答弁以外の日ごろの言動を仄聞すると、親が働くことのみに価値を置いていて、授かった子供に愛情を込めて育てる親、つまり専業主婦ですね、この専業主婦の存在を無価値のものとして取り扱っているがごとく軽視し、根絶することを目的としているような仄聞があるんですよ。

 こういう考え方でないとしたら明確にお答えになっていただきたいと思いますが、このようなことが、長い目で見れば国づくりの基本を揺るがすものになってしまう。つまり、働く親とそれから子育てに専念する親と、それぞれが適切に評価されて、両方に目配りをしたバランスのとれた施策をする。特に、親が子供を育てる中で幸せを実感できる、そういう国づくり。特に、三歳までは子育てについては親が専念できるような環境づくりを逆に国がどうつくってあげるかということが最も必要なことであるというふうに思いますが、そういう仄聞が誤解であれば、端的にお答えいただきたいと思います。

小宮山国務大臣 専業主婦の価値を否定するというような考え方を私が持っているのではないかという御指摘に関しましては、完全に否定をさせていただきます。決して私は、専業主婦を軽んずるなどということを言った覚えは全くございません。

 ただ、今、女性の中で本当は働きたいと思っている女性が九割いるということも事実ですので、そういう意味で、子育て期のいろいろなサポートも含めて、やはりそれぞれが、働きたい人が働けるようにする、子育てに専念したい人はもちろん子育てに専念をする、それぞれに対してしっかりサポートをするということは、私もそのように考えています。

 これまで、働いている人たちへのサポートが余りに足りない、妊娠をしたらやめることが、三分の二の女性がそうしているというような現状の中で、働き続けたい人は働くということが本人にとっても社会にとっても必要でしょうということを申し上げていますので、それぞれの選択がかなうような多様な選択肢を用意したいというのが私の本意でございます。

下村委員 いや、もしそうであれば、私は、今回の法案についても手順が相当違っているんじゃないかと思うんですよ。

 まず一つは、やはりワーク・ライフ・バランスですよ。これをしっかりと各企業等に働きかけをすることによって、間違いなくゼロ歳ではなくて一歳から子供を預けられるような環境づくりについて、これは今の政府がまずはこのワーク・ライフ・バランスの国民運動的な形で広げていくという手順をすべきだというふうに思うんですね、まず一点。

 それからもう一つは、先ほどの子ども・子育てよりも前に、理念、国家戦略としての子ども家庭省という話を申し上げましたが、つまり、政府として、あるべき形は何なのかと。先ほどについても、働きたい女性がたくさんいる、それは我々も別に否定しているわけじゃありません。ただし、一番大切なときに子育てができて、そしてその一定期間が終わったらまたその人の能力を生かして職場復帰ができるような、あるいは社会の中で貢献できるようなということを言っているわけであって、一時期的に、全てを両立するというよりは、より人生の、子育ての中で、優先順位の中で、もっとやりたいという部分については十二分に対応するような環境づくり、それがワーク・ライフ・バランスということだと思うんですよね。

 そういう部分が全く見えない、今回の中でも。政府がどういうふうに企業に働きかけながら、この子ども・子育て新システム以前の問題として、こういう制度設計をする前にどんな協力を要請しながらこれからしていこうというのが見えないということについて、子ども・子育て新システムの対応の前のワーク・ライフ・バランス、これの実現に向けてどんなふうにされるつもりなのか、お聞きしたいと思います。

小宮山国務大臣 もちろん、委員が御指摘のように、ワーク・ライフ・バランスは大変大切なことです。ただ、前かどうかというと、私は、みんなあわせてやっていくべきものだと思っています。

 子ども・子育ての政策というのは、ずっと総合的につくってまいりましたけれども、経済的負担があるから、持ちたい子供を持てないという方たちに対して手当、そして今回の法案の中では、就学前の子供の居場所をちゃんとつくるということに重点を置いています。

 ワーク・ライフ・バランスについては、今回の法案には入っていませんが、これはもう自公政権のときからずっとお取り組みをいただき、憲章もつくっていただきましたが、なかなか実態がなっていないということに対して、今、例えば、私のもとに特命チームをつくって、もう報告書とか方向性は山のようにできているのに実態が変わらない、実効性あるためにどうしたらいいかということで、きのうもこの委員会でも答弁させていただきましたが、私どもが、本省とそれから都道府県の労働局の雇用均等室などから人が出て、それぞれ企業に対して、ポジティブアクションそしてワーク・ライフ・バランスについての営業をかけていく大作戦を、三年に限って二万一千社を対象にそれをやっていく。そのうちのおよそ六割の企業には実際に三年後にはそれが実現したという形にしていただくというような数値目標も含めて、今取り組んでいるところです。

 そして、能力があって働く気持ちのある女性たちが活躍をするということは日本の経済成長にとっても必要だということで、今、国家戦略の方で日本再生の戦略をつくっています。その中の大きな柱として、女性の就労を支援する、その仕組みも入れるところでございますので、この法案の中は子供の居場所が中心ですけれども、あわせて、政権といたしまして、ワーク・ライフ・バランスを含めた就労の支援ということにも力を入れて取り組んでいるところです。

下村委員 具体的にお聞きしたいんですが、ワーク・ライフ・バランスの中で、それからあとは、これはこの委員会で我が党の小渕委員も提案していましたが、例えば四月からの予約制。なかなか四月に入れないから、四カ月、三カ月で子供を入園させざるを得ないというようなこともありました。これについては政府が積極的に対応できることだというふうに思うんですね。

 その中で、先ほども申し上げましたけれども、ゼロ、一、二歳、これについて我が党は、ゼロ歳はできるだけ親が家庭で育てられる。もちろん、いろいろなバックアップは必要ですし、今、孤立した子育てになっていますから、昔のように大家族やあるいは三世代で一緒に住んでいるわけじゃありませんから、たった一人の若いお母さんが子育てだけで苦しんでいるということに対しては、どうフォローするかということはもちろん必要です。

 しかし、基本的に、家庭で親が育てられるような環境をつくるという意味では、ゼロ歳の子供は保育園に預けなくてもいい仕組みをどうつくれるかということでは、我々は、極力これはふやさない。しかし、一歳、二歳について待機児童についてはできるだけ対応する。実際、スウェーデンでも、ゼロ歳はゼロ%、二歳だったら例えば九〇%が預かっているというか預けているというような状況もありますね。

 このゼロ、一、二歳に対しての目標といいますか、基本的な、待機児童に対しての、保育園で預かる、そういうめどというか目安についてはお考えはありますか。

小宮山国務大臣 今、スウェーデンの御指摘がありましたが、スウェーデンは両親がとれる休暇が四百五十日。それは、時期によって変わりますけれども、恐らく所得の八〇%から九〇%が保障されて、一歳半まで休みがとれるような仕組みができています。そういう中で恐らくゼロ歳児保育というのはないんだ。私が知っているところからいくと、そういうことじゃないかというふうに思います。

 ゼロ、一、二歳について、もちろん、先ほどからお話ししているように、家庭で育てたいと思う方は専業主婦でも働き続ける方たちでも、それは家庭で育てられるようにサポートをする必要があると私も思います。

 ただ、現状の企業の中では、妊娠をした人にだけの特別な権利としての育児休業というのは、これだけいろいろな経済情勢が厳しい中でなかなかとれていないのが現実なんです。その中でしっかりやってくださいということで、先ほど申し上げたように、厚労省としても営業をかけていきますし、経産省からも、女性が働き続けた方が経済的な効果としてもこれだけの数値が違いますということも含めて、今協力をいただいて、政府を挙げてやろうとしています。

 だから、ゼロ、一、二歳それぞれ、もちろん子供たちにとって何が一番いいかということが第一ですが、それを育てる保護者の選択が可能なように、多様な仕組みをつくっていくことが必要だというのが、私の基本的な考え方です。

下村委員 聞いていてもよくわからないんですよ。

 岡田副総理にお聞きしますが、今回、子ども・子育て新システム、我々は、総合こども園とか、それから今回の法案については反対です。しかし、基本的に待機児童を解消しなければならないことは事実ですし、それから、幼児教育について、保育園と幼稚園、つまり、働いている親によって違うということについては望ましいことではないと思いますから、これを一体化していくという方向性については共有できる部分があるというふうに思うんですね。

 ただ、その中で、今の話のように、預けられるようなものをどんどんつくることによって、そこにどんどん預けるということが、つまりゼロ歳から二歳の話ですけれども、本当に望ましいのかということを考えると、これは、ワーク・ライフ・バランスを含め、先ほどスウェーデンの話がありましたが、スウェーデンだけじゃないです、一歳からというのは。つまり、ゼロ歳児は基本的には保育所が預からないというのは、北欧ではそういうところがほとんどなんですね。それは、今のような親の問題というよりは、社会全体でどうフォローアップするかという問題にあります。

 ですから、幼児教育なり、ゼロ歳から五歳までの子供のあり方、環境づくりについては、やはり国家戦略できちっと考えていくということがトータル的に求められているというふうに思うんですね。

 改めて、先ほどの小宮山大臣の答弁の延長線では、なかなか、そうはいってもすぐ解決できないという感じがいたします。これは政府としてしっかり取り組むべきことだというふうに、我が国において、どこの政府であっても取り組むべきことだと思いますが、いかがですか。

岡田国務大臣 委員御指摘の、特にゼロ歳から二歳までの子供たちの教育、そこについてしっかりと国として国家戦略として考えるべきだという考え方は、私は基本的に認識を共有しております。

 ただ、今小宮山大臣も言われましたように、例えばゼロ歳児について委員のような御指摘があったとしても、しかし、残念ながら日本の現状は、ゼロ歳児を預けずしてやっていくということについていろいろな条件が整っていないということも事実で、ですから、その条件が整うまで待つべきなのか、あるいは待っている間はではどうすればいいのか。

 やはり、それは車の両輪のごとく進めていかないと、今の現実の中で、ゼロ歳児を抱えた若い夫婦が仕事をやめざるを得ない、そういう状況が続くのはこれまた好ましいことではないというふうに思います。これは、恐らくかなり大きな改革というか我々男性の働き方も含めて考えていかないといけない問題なので、一朝一夕にすぐ変わるとか、そういう問題ではない。

 それだけに、国家戦略として取り組んでいかなきゃいけないんだけれども、それができるまでの間、特に、女性が仕事をやめて、あるいは子供を産むことを諦めるというような状況は望ましくないので、仮に経過的なことだとしても、ゼロ歳児保育ということ、あるいはゼロ歳児がきちっと親以外のところで安心して預けられるところを確保していくということもあわせ考えていかざるを得ないんじゃないかというふうに思っております。

下村委員 ゼロ歳児の保育を確保するなと言っているわけでは全然ないわけです。必要な部分は当然すべきだ。ただ、国家戦略として、今後のあり方として、やはり育児休暇がきちんととれて、そして家庭できちっと子育てができるような環境については、後追いではなくて、今の制度の中で、日本社会の中で追認するのではなくて、国が国家戦略として考えるべきではないかということを申し上げているんですね。

 それから、どうしても自民党が同意できない部分が株式会社の参入です。これは、保育園で既に株式会社が入っている、一定の役割を果たしている、これについて否定するわけではありません。ただ、今後、総合こども園というのは学校教育を行うわけですね。学校教育を行う中で、そこにビジネス的な視点で株式会社が参入するということについては、やはり線引きをすべきだろうというふうに思うんですね。

 今までの保育園をそのまま総合こども園にこれから変えていくから、だから株式会社も例外ではないということについて、そもそも、総合こども園が学校教育そのものを行うということになると、これはもう全然別の次元の問題ですから、小学校以降の学校教育とは全然別に切り分けるんだということが今までも再三再四答弁でありましたが、そうではなくて、そもそも総合こども園そのものに反対ですが、株式会社ではなくて、何らかの制度設計をしなければ、そのまま参入というのはこれは認めるべきではない。別の形で、例えば教育法人とか、株式会社の延長線じゃなくて、そういうことが必要ではないかと思いますが、いかがですか。

中野委員長 小宮山担当大臣、時間が過ぎております。端的にお願いします。

小宮山国務大臣 今、現に株式会社が入っている保育園が二百八十八カ所あるんですね。それで、そこについても、やはり総合こども園になってもらいたいという思いがございます。

 いろいろな御懸念がある中で、これは多くの審議をした中で、参入の段階、運営の段階、撤退の段階で、可能な限り私どもは規制をかけているつもりなんですが、皆様方の御懸念もいろいろ伺っておりますので、ぜひここについても御議論をいただいて、各党間で結論を出していただければと思っています。

下村委員 終わりました。

中野委員長 これにて下村君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。あべ俊子さん。

あべ委員 こんにちは。自由民主党、あべ俊子でございます。よろしくお願いいたします。

 まず初めに、ひげの殿下で親しまれました、福祉に御尽力いただきました殿下の御逝去に対しまして、心からお悔やみを申し上げます。

 さて、私、本日は、後期高齢者医療制度に関して質問をさせていただきたいと思います。

 岡田副総理、後期高齢者医療制度、これは廃止なさいますか。

岡田国務大臣 我々民主党として、後期高齢者医療制度については廃止ということを申し上げてきたわけでございます。基本的にはそういう考え方に立っておりますが、今後、与野党協議ということも決まったようですので、そういう場でさまざま御議論いただければと思います。

 我々は我々の主張を持っておりますけれども、それぞれの御主張があると思いますから、そういったものを真摯に受けとめて、各党間で協議をしていただければというふうに思っております。

あべ委員 小宮山大臣、後期高齢者医療制度、廃止の方向性でしょうか。お答えください。

小宮山国務大臣 高齢者医療制度につきましては、政権交代後、運用面で改善できる部分は可能な限り対応してきました。制度体系を見直すことについてはさまざまな御意見があることは承知をしています。

 ただ、現役世代の制度にかなり厳しいという認識もおありだと思いますので、今副総理も言われましたが、各党間でぜひ御協議をいただければというふうに思います。

あべ委員 小宮山大臣、何をおっしゃっているかわからないんですが、廃止の方向性ですか、そうではないんですか、お答えください。簡潔にお答えください。

小宮山国務大臣 一体改革の大綱では、「関係者の理解を得た上で、平成二十四年通常国会に後期高齢者医療制度廃止に向けた見直しのための法案を提出する。」としています。

 ただ、いろいろとその方針に基づいて調整を進めてきましたが、全国知事会を初め関係者の合意を得るに至っていない段階ですので、厚労省としては、また与党の御意見も踏まえながら、引き続き対応したいというふうに思っています。

あべ委員 非常に曖昧なお答えでございますが、岡田大臣、改めて聞きます。

 今回の後期高齢者医療制度に関しまして、パート年金保険料の拡大の軽減措置に対して、後期高齢者支援金の特別措置を平成二十八年四月から施行するということが入っているんですが、このことが入っているということは、存続に関して、いわゆる容認するということではないでしょうか、岡田大臣。

小宮山国務大臣 これは、新しい制度についてはまた施行するまでにもいろいろと時間もかかることもございますし、当面はこういう形で今の制度の改善も必要だということでしておりますので、矛盾することはないと思います。

あべ委員 岡田大臣、改めてお聞きします。

 廃止という方向性は、岡田大臣としては変わりないでしょうか。

岡田国務大臣 先ほど厚労大臣も御答弁しましたように、これは党として廃止という方向性を出しているわけで、私も当然党員でありますから、同じ考え方であります。

 ただ、具体的な内容については、各党間で協議の場もできましたので、そこで御議論いただければというふうに考えております。

あべ委員 改めて岡田大臣、後期高齢者医療制度の問題点は何でありましたか。

岡田国務大臣 一つは、ネーミングの問題というのがあったと思います。同時に、やはり、そういった一部の年齢層の人たちに限って制度をつくるということに対する違和感というか、そういうものが強くあったということは言えるというふうに思います。

あべ委員 ネーミング、違和感。制度の問題とこれは全く違う話でございますが、小宮山大臣に改めてお聞きしますが、後期高齢者医療制度の問題点は何であったと思っていらっしゃいますか。

小宮山国務大臣 後期高齢者医療制度の問題点は、制度発足当初、七十五歳に到達した時点でそれまでの保険制度から分離、区分した保険制度に一律に加入するということで、これは年齢差別だという御批判が国民の皆様からあったと思います。また、医療サービスや健診の取り扱いなどが現役世代と異なるものとなったこと、こうしたことをあわせて、年齢による差別という反発があったと理解しています。

 先ほど申し上げたように、政権交代後、運用面で改善できる部分については可能な限り対応してきましたが、その制度体系を見直すことについてはさまざまな御意見があると思っておりますので、関係者の理解が得られるよう、引き続き検討、調整をしていきたいと考えています。

あべ委員 この制度を導入してから、実は政府の方からその制度導入後の効果というのが出ておりますが、小宮山大臣、それは御理解していらっしゃいますか。政府参考人で結構でございます。紙だけ読まれても困ります。

外口政府参考人 制度を導入後の効果でございますけれども、先ほど小宮山大臣から御答弁申し上げましたように、数々問題点がございましたけれども、その関連で申し上げれば、例えば健康診査の受診率、十九年度二六%が、二一%に下がったものが、補助金等を使いまして、これは二十一年度二二%から、二三%に上がっております。また、人間ドックの数も回復しているところでございます。それからあと、保険料で申し上げれば、五千二百五十円程度だった保険料が、その次の二年間も大体同じぐらいなんですが、二十四年、二十五年度は大体五千六百円、こういった内容でございます。

あべ委員 改めてお聞きしますが、一つは、保険料負担の割合に関してどのような形になったかというのが一点目と、また、保険料負担の地域間の格差に関して、厚生労働省、どういう効果が出ているか教えてください。

外口政府参考人 まず、保険料の負担でございますけれども、保険料の負担は、先ほども申し上げましたけれども、伸び率は、五千二百五十円ぐらいが、その次の二年間は大体同程度で、それからその次の二十四、二十五年度が約六%の伸び、これは、現役世代の保険料率の伸びよりは抑えられた伸びになっております。

 それから保険料率の地域格差でございますけれども、市町村国保の時代は五倍ぐらいあったものが二倍程度に、これは範囲を拡大しましたので、縮小しております。

あべ委員 今、外口さんがおっしゃった高齢者の保険料負担、地域間格差がなくなったということは非常に大きいわけでございますが、もう一点大きいのは、公費、現役世代からの支援、高齢者の保険料という負担の割合が明確になったということであると私は思いますが、外口参考人、いかがでしょうか。

外口政府参考人 負担割合の明確化についての御指摘でございますけれども、確かに老人保健制度のときには負担割合が不明確であって、主に被用者保険の保険者さんの方でございますけれども、これから先どのぐらい負担がふえるのかというような御指摘がありました。ただ、これは負担割合が五対四対一というように明確化されたところでございますので、その意味での明確化ということは御指摘のとおりだと思います。

あべ委員 このように、世代間格差の部分と地域間格差を解消しようと思って行ったのがこの制度でございまして、岡田大臣、ネーミングが悪いなどという批判をそのまま今内閣にいらっしゃる方が受けとめられるというのは、ちょっと私は大臣としていかがなものかと思いますが、この二点、特に制度を導入して、新しい、いいメリットとして出ていることに関して、岡田大臣、コメントはございますか。

岡田国務大臣 今、担当者が述べたわけですから、それはそのとおりだと思います。

あべ委員 では、この制度を廃案にするという理由が私はよくわからないんですが、岡田大臣、廃案にする理由は、ほかに何か私にまだ言っていないことがあるのであったら、教えてください。

小宮山国務大臣 先ほどお答えしたこととまた繰り返しになってしまいますけれども、当初、年齢差別というような御批判が国民の方からあった、それで、マニフェストにこういう形で書かせていただいて、ただ、現状、いろいろ運用面で改善してきたところもございます。それでもやはり制度全体を見直すという党の考え方を受けまして、私どもも今その調整をしているというのが現状でございます。

あべ委員 今おっしゃっている差別というのは、具体的に、年齢以外に、小宮山大臣、何があるんですか。

小宮山国務大臣 だから、七十五歳に到達したところでこれまでの保険制度から分離、区分した保険制度に一律加入と年齢で分けたということと、医療サービスや健診の取り扱いなどが現役世代と異なるものとなったことが差別だというふうに受けとめられたと思います。

あべ委員 それは制度の話ではなくて、国民目線の部分でシームレスにできるかどうかというだけの話でございまして、この制度そのものを入れた動機づけは、先ほども申し上げたように、地域間格差の問題、さらには世代、特に高齢者の医療費がかかるのに現役世代のお金を幾ら使っているかわからないというところに税の歯どめをかけようということが大きな問題です。

 岡田大臣、改めてお聞きします。

 後期高齢者医療制度は差別であったと思いますか。

岡田国務大臣 これはどういうふうに受け取られたかの問題で、高齢者の皆さんから見ると、それが一種の差別ではないかというふうに受け取られたからこそ、あれだけの社会問題になったというふうに思います。

あべ委員 私は大臣にお聞きしているのであって、一国民にお聞きしているのではありません。

 年齢で差別をするということが、本当に必要じゃない場合、本当に差別でやっている場合と、私はしっかり分けるべきだと思います。

 例えば、自民党の青年局、これは四十六まででございまして、それを過ぎると入れてもらえないわけでございます。これは差別なんでしょうか。さらに言えば、成人式の後にたばこ、お酒がいいと言われているときに、これは差別なんでしょうか。

 現役世代とのバランスを考えて、現役の世代を守るために、また国保に関しては、これは地域の若者が一番割の悪い思いをしているわけであります。ここの部分も含めた制度上の格差をどのようにしていくかということが今回の問題でございますから、これは差別であるかどうか、年齢以外の部分の制度上の問題を、大臣として品格を持ってお答えください。

岡田国務大臣 四十六歳で青年というのは、ちょっと私はもう少し若い方がいいような気がしますが、それはともかくとして、私が申し上げたのは、この後期高齢者医療制度を入れたときの高齢者の皆さんの受けとめ方が、それを差別と受けとめたということであります。

 年齢に応じていろいろな仕組みを変えるということについては、それはそういう考え方は当然あっていいというふうに思っております。

あべ委員 大臣、制度として、この後期高齢者医療制度は制度上の差別があるかどうかということを簡潔にお答えください。

岡田国務大臣 差別というのは、これは先ほども言いましたように、受けとめ方の問題というのは非常に重要です。だから、そのことを横に置いて一般論として申し上げますと、年齢で区切って一つの仕組みをつくり上げるということは、それは当然、あっておかしいことではないというふうに思います。

あべ委員 そういう意味でおっしゃったら、逆に、この後期高齢者医療制度が差別があるとすれば、高齢者の負担を軽減する、すなわち、現役世代と企業の負担をふやして制度の持続可能性が確保できると大臣は思っていらっしゃるんでしょうか。

小宮山国務大臣 例えば、後期高齢者医療制度ですと、高齢者の保険料の増加ということがございまして、高齢者の保険料の伸びが現役世代の保険料の伸びを基本的に上回る構造になっていた。それを、新しい制度の中では、高齢者の保険料の伸びが現役世代の保険料の伸びを上回らないよう抑制する仕組みを導入するなど、幾つかの点で、問題点だと言われたものを、今提案しているものでは、そこを改善する形に盛り込んでいます。

あべ委員 今、それはどこでどのように議論をしているか、進捗状況も含めて教えてください。

小宮山国務大臣 これは民主党の中で、この制度については、先日、党の方で決定をされたというふうに聞いています。

 それで、私どもは、その新しい制度につきまして、関係者の理解を得た上で法案を提出すると、先ほど申し上げたように、大綱に書きましたので、今、知事会を初め関係者の皆様とお話をしているところでございます。

あべ委員 法案はいつ出てきますか。

小宮山国務大臣 それは、先ほど申し上げたように、関係者の理解を得た上で提出と申し上げていますので、今調整に当たっておりますので、関係者の理解が得られましたら提出をいたします。

あべ委員 では、得られなかったら出さないということでよろしいんでしょうか。

小宮山国務大臣 仮定のお話には余りお答えができませんので、得られるように努力をしているところでございます。

あべ委員 政権がいつ交代するかわからないんですが、在任中に出せそうかどうかの見込みだけでも教えてください。

小宮山国務大臣 今、全力を挙げて調整をしていると申し上げました。いつまでにということは、相手方のあることでございますので、なかなかお答えするのは難しいと思います。

あべ委員 この後期高齢者医療制度を廃案にするとおっしゃって、まだ関係者の調整もできないと言って、皆さん方、実は、四野党提出の後期高齢者医療制度廃止法案を、私どもが、自公が与党であったときに出されているんです。覚えていらっしゃいますか、小宮山大臣。

小宮山国務大臣 そうしたものを提出したというふうには認識をしています。

あべ委員 岡田大臣、どういう法案を出されたか、覚えていらっしゃいますか。

岡田国務大臣 この制度を廃止するということ以上に、今、私、余り記憶が残っておりません。

あべ委員 そのときに、出されたときの提案理由というのがございまして、年齢で区切ることの合理的な理由がない、低所得者に対しても従来よりも保険料負担が高くなっている、後期高齢者医療制度加入者の保険料の伸び率が現役世代よりも高くなる可能性がある仕組みとなっているという法案提出理由でございまして、中身が全然ない。私は、野党というのはこんな無責任でいいのかというふうにびっくりしたような法案なんですね。

 ですから、私ども野党になった自民党は、ちょっと余りにも、このようなすさまじい法案が出せるような勇気がなくて、大変、今も四苦八苦しているわけでございますが、そういう中にあって、もう本当にこのいいかげんな、特に私どもが、この後期高齢者医療制度、中でいろいろ議論はあったけれども、先ほども申し上げました、やはり現役世代を守るという観点が物すごく大切だったんです。

 大臣、この後期高齢者医療制度、今の仕組みで、現役世代に対して本当に配慮した制度だったなというふうには全く思いませんか。

岡田国務大臣 これは、ですから、どのぐらい原点に戻ってというか白紙に戻して議論するかにもよると思います。

 率直に言って、私は、やはり拠出金制度というのは、なるべくそういったものが少ない方がいいとは思います、それが余りにも多くなると、保険というものは働かなくなってまいりますので。そういう個人的な思いは持っていますけれども、それ以上ちょっと、今の御質問にお答えするのは難しいと思います。

あべ委員 岡田大臣も難しいところがたくさんあって大変だなというふうに思いますが、そういう中にあって、後期高齢者医療制度の廃止というのは、何を廃止すると廃止することになるのか、ちょっと具体的に教えてください、小宮山大臣。

小宮山国務大臣 後期高齢者医療制度では、独立型の制度にしたことによって、幾つかの問題点が生じていると思います。

 一つは、年齢による区分で保険証が別になっているということ、また、被用者本人の給付と保険料、これが、七十五歳以上の被用者の方は傷病手当金などを受けられなくて、保険料も全額本人負担だということ、それから、被扶養者の保険料負担、個人単位で保険料を徴収するため、扶養されている高齢者も保険料を負担しなければいけないということ、それと、先ほど申し上げた高齢者の保険料が増加をするということ、また、患者負担の上限が同じ世帯でも加入する制度ごとに適用されるということ、また、健康診査が広域連合の努力義務となった中で受診率が低下をした、このような点があったというふうに認識をしています。

あべ委員 私は、今大臣がおっしゃったことは制度上の根幹の部分ではないと思っております。それは、それぞれに対応していけばいい話であって、私どもが財政的に特にこの高齢者の医療費を賄うときに、先ほど岡田大臣がいわゆる拠出金を出していけば保険としての機能がわからなくなるとおっしゃっておりましたが、後期高齢者、七十五歳以上の方々は病気をしやすいということがわかっているわけであります。それが、保険としての機能が本当に働くかどうかを考えれば、働かないとなると、現役世代がお金を、自分たちが出している保険料を回さないといけないというところに歯どめをかけたいということがもともとの根本であったわけでございますから、特に現役世代に、また自分たちの世代は自分たちの世代で支え合うということを考えたときに、この後期高齢者医療制度、私は、財政的にも、また世代間格差からも非常にいいものであったというふうに思いますが、大臣、全然それは思わなく、やはりだめだったから、ネーミングが変だから変えようというふうにまた思われるわけでございますか。

岡田国務大臣 制度の内容につきましては、党の方でいろいろ御議論いただいておりますので、私は、政府の一員として党の議論を待つというか、関係者の理解を得るということにもなっておりますから、その理解を得るための努力を行いつつというのが現状であります。

 中身について、いろいろと私の意見を言わない方がいいというふうに思っております。

あべ委員 さらに言いますと、後期高齢者医療制度を本当に皆さんがやめようと思っているかどうかの覚悟、看板のかけかえだけにならないかということはいろいろ批判をされているところでございますが、この看板のかけかえにならないというふうなことは、本当に制度そのものの根本の部分を見直しているのかということが私は多くあると思います。

 特に、国保における再編ということは大きな課題であると思っておりますが、このことに対して、国保の再編に関して、岡田大臣、何か御意見ございましたら、伺わせてください。

岡田国務大臣 ちょっと質問の意味がよくわからなかったんですが。

あべ委員 すなわち、今回の医療制度に関しまして、国保というのは、高齢者が多い、病気をなさっている方が多い、現役世代が少ない、収入、さまざまなことの影響があるわけでございますが、ここの部分の格差をどのように解消していくかということは私は非常に重要なことだと思っておりますが、このことに関して、大臣、何か御意見ございますか。

小宮山国務大臣 やはり、国保は市町村単位の財政運営になっていまして、非常に財政基盤が弱いということと、保険料がばらばらだということもございますので、これは都道府県単位の財政運営に向けた環境整備を進めるという方向で、今新しい仕組みについても考えたいと思っています。

あべ委員 この都道府県単位に関しまして、今も調整がされているわけでございますが、調整項目、政府参考人で結構でございますので、一体どういう項目があるのか教えてください。

外口政府参考人 国保の市町村格差は、先ほど御指摘のように、年齢構成が高いとか医療費水準が高いとか小規模保険者が多いとかいう問題がございまして、そういった単位の不安定性をなくしていくために財政運営の都道府県単位化の推進ということをやっておりまして、その中では、例えば、市町村国保の都道府県単位の共同事業、これはさきの国保法改正でもさらに拡大することをお願いしたところでございますけれども、そのほか、財政調整機能、これは国の方と県の方とありますけれども、そういった調整交付金の制度がございます。こういった制度の中で、格差を縮めていくような努力をしているところでございます。

あべ委員 特に今おっしゃった中で、医療水準に関する配慮でございますが、都道府県、市町村を見ても、医療費が高いところと低いところがあるわけでございます。これは年齢、疾病にかかわらず、医療提供体制の部分が非常に大きく影響するところだと思っておりますが、この医療提供体制が、都道府県ごとに医療計画を見ている中で、それを国として調整係数を本当に行うべきかどうかということに関して、外口参考人、お答えください。

外口政府参考人 市町村の保険料格差のもとになる医療費の格差でございますけれども、これは医療機関が十分整備されているところであれば、その中のトータルの疾病の量にかかわるわけでございますけれども、例えば僻地、離島あたりでは、医療機関の整備がおくれているために、医療費が少なくて、保険料が少ない。

 そういったところを無理に平均化するようなことをすると、その僻地の市町村の町民さんたちにとって保険料が上がり過ぎてしまうということはございますので、そういった場合には、先ほど申し上げました調整交付金等を使って無理のないように調整するという仕組みも考えているところでございます。

あべ委員 この医療提供体制、特に医療の水準によっての部分を調整係数でどこまで見るかということは、市町村さらには都道府県の提供体制をどこまで計画の中に入れ込んでいるかということも含めて、全体で見ていくのは本当に注視をしていかなければいけないと私は思っているところでございます。

 また、最後に、私、事前通告を具体的にさせていただいておりますが、分厚い中間層をつくるというふうに言われているわけでありますが、各所得別に消費税を導入した場合の具体的な影響額、これをどのように見ているかの数字を教えてください。

古谷政府参考人 お答えをいたします。

 消費税率を五%から一〇%に引き上げました場合の一年当たりの消費税負担の増加額でございますが、総務省の家計調査と全国消費実態調査をもとに、お尋ねの所得階層ごとに申し上げます。

 まず、収入二百万円程度の世帯では約七・二万円の負担増となります。それから、収入三百万円程度の世帯ですと約八・六万円、収入四百万円程度の世帯ですと約十・三万円、収入五百万円程度の世帯では約十二万円、収入六百万円程度の世帯では約十四・九万円、収入八百万円程度の世帯では約十七・二万円、収入一千万円程度の世帯では約十九・三万円、収入一千五百万円程度の世帯では約二十・五万円というふうに試算をいたしております。

あべ委員 ちなみに、この中で、中間層というのは何百万から何百万の範囲というふうに考えていらっしゃいますか。

古谷政府参考人 お答えいたします。

 中間層と申します場合、いろいろな見方があろうかと思いますが、所得税の課税最低限は二百万円程度になっております。それから、二十四年度改正で給与所得控除の見直しをさせていただいたラインは所得一千五百万円ということでございます。

 中間層について、私どもの方で一概に定義することはいたしておりません。

あべ委員 分厚い中間層、その前提条件の中間層がどういう人かわからないで、低所得者対策、分厚く、どのようにしていくかも含めてよくわからない。

 安住大臣、この中間層というのはどこからどこですか。

安住国務大臣 定義はございません。

 しかし、例えば、住民税の非課税世帯を持ってきたり、生活保護の皆さんのそれぞれのレベルを言ったり、公式な定義はございませんけれども、今主税局長が申し上げたように、課税の面で考えれば、大体二百から千五百ぐらいの間ということが課税の面での一つの区切りではありますが、ただ、世の中の実態として、中間層といったときには、そうした政府が考えている法律とか、それからさまざまな控除制度なんかとは違う意味での中間層は存在すると思いますが、それは政府として答えるべきものではないと思います。

あべ委員 ありがとうございます。

 皆さんが前提条件を全く考えずしてわけのわからないことを言っていることがよくわかりました。

 ありがとうございました。

中野委員長 これにてあべさんの質疑は終了いたしました。

 次に、斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。

 きょうは、初めに税制の抜本改革ということについて質問をさせていただきたいと思います。

 今回の議論は、社会保障と税の一体改革、一体改革ということが一つのキーワードになっておりますが、もう一つのキーワードは税制の抜本改革ということではないかな、これは余り言われておりませんけれども、そういうことではないかと思います。

 平成二十一年度の税制改正法案の附則百四条にも、消費税を含む税制の抜本改革という言葉を言って、いろいろな所得課税や資産課税、消費課税についてあるべき姿が示されていたわけでございます。そういう意味で、今回の案は抜本改革と言うに値するのかという質問です。

 この百四条におきましても、所得課税のあるべき姿、また資産課税のあるべき姿について、ある意味では事細かくと言うと言い過ぎですけれども、方向性が示されておりました。今回、皆さんから出された、政府から出された案は、その域を出ておりません。方向性だけは示されていると言ってもいいかもしれませんけれども、あの百四条から進歩していない。進歩しているのは消費税のところだけでございます。

 そういう意味で、安住大臣、今回の案は税制の抜本改革とはとても我々は言えない、このように思いますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

安住国務大臣 先生御存じのように、所得税、それから資産、そして消費、さらにはその他揮発油税等、今の日本の税収構造というものは、やはり高度成長期にある程度骨格ができ上がっております。ですから、そういう点では、こうした構造改革をすることはいわば抜本的な改革につながる、私もそういう認識でおります。

 そのためには、社会をどう見るか、どう考えるかということが一つ重要なことではないかと思っております。

 まず第一として、やはり、人口減少が顕著になってきて、少子化、高齢化というのが進んできています。それから、この十年近く格差というものは、残念ながら少し広がってきました。家族の働き方も多様化し、グローバルな企業の進展も見られる。エネルギーや環境問題については、世界的な規模で重要な課題に取り上げられてきている。我が国に限って言えば、長期的なデフレという中でどうやって成長を維持するか。こうした視点に立って、税制というものは改革をしていかなければならないというふうに思います。

 その中で、今、消費税法についてはこのとおり御提案をさせていただいているように、やはり、垂直的な税から水平的な税の全世代型御負担をお願いして、ふえ続ける社会保障に充当していこう、ここは、改革というよりも、構造的な改革になっていると思います。

 そのほかのことについて、先生からは不十分ではないかということでございます。確かに、所得税の抜本的な累進税率や今のフラット化をどう考えるかという奥行きの深い議論というものは、私はこれからやはり本格的にやらなければならないとは思いますが、少なくとも最高税率については、五千万超に関して五%引き上げさせていただく提案をさせていただいております。緒についたというよりも、ここに一つ、我々の意思というのはあらわれてはおります。

 問題は、所得税の場合、何度もこの場で申し上げておりますけれども、課税率が一〇%以下の給与所得者が全体で八〇%を超えるような状況でありますので、累進税率を考えたときに、そうしたことも含めて、下から上までと言っては大変語弊があるかもしれませんが、この累進率をどうするかというのは大変重要な課題だと思いますので、我々としても、消費税を含めて今後抜本的に議論をし、何らかの方向というものは出したいと思っております。

 資産課税については、実は大変、今回、我々としては所得税以上に踏み込んだつもりではおります、贈与税等を含めて。これも、不十分だと御指摘あるかもしれませんが、私どもの考えとしては、今、お亡くなりになった方百人のうち、実際に相続税をお支払いいただいている方は四人でございます。後で議論になるかもしれませんが、私はやはり、今、バブルとかさまざまな経済状況から時代が変化をしてきて、そういう点ではここに着眼点を置いて、私どもとしては、もう少しこの課税対象を広げさせていただくことはあっていいのではないか、こういう点から改革をいたしました。

 贈与税についても、そういう意味では、今までも教育費や家の増築、新築については一定の額までの贈与は課税での特別な扱いをしておりましたけれども、お孫さん等を贈与税の対象者にしまして、こういうことからいえば、比較的、世間から見てもここの改革というのは私はかなり手がついたのではないかと思います。

 しかし、これで十分だとは思っていませんので、総合的なバランスを持って今後とも改革を私は進めていきたいと思っております。

斉藤(鉄)委員 今大臣がおっしゃったような内容、方向性については、既に平成二十一年、附則百四条に書かれているんですよ。もしそういうふうにお思いになるのであれば、なぜ今回の法案にもっとその方向性が明確な内容で出されてこなかったのか、そこをお聞きしているんです。

 では、ちょっと具体的に入っていきたいと思います。

 所得課税、先ほど大臣が答弁で少しお述べになりましたけれども、消費税は低所得者層にきつい税だ、このように言われております。そういう中で、片一方で所得税の累進性を緩和してきたという歴史があって、所得再分配機能の低下ということが言われておりました。消費税を上げるのであれば、所得税の所得再分配機能についてももう一度しっかりとした議論を行うべきだというのが附則百四条の基本的な思想だったわけでございます。

 今回、課税所得が五千万円超の人に限定して五%だけ上げるということでございますが、消費税の上げとともに、抜本改革というのであれば、より広い富裕層により多くの負担を求める方向性を出すべきだと私は思いますが、この点について財務大臣のお考えはいかがでしょうか。

安住国務大臣 もう言うまでもなく、所得税は、基幹税の中のこれまで日本の柱だった税でございます。先生からは、累進性をもう少し抜本的に改めて、今の刻み数を少し考えたらどうか、あわせて所得税の最高税率等についての検討もあってしかるべきではないのかという御指摘だと思います。

 確かに、昭和六十一年であれば、最高税率が七〇%で、これに住民税を課しますと八八%、そして所得税の税率の刻み数は十五。これが、平成元年に入りますと、五〇%の最高税率で、住民税を入れますと六五%で、刻み数が五段階。現在においては、ここが四〇%で、住民税を入れて大体五〇%でございます。刻みが六ですね。こういうふうになっていて、今回、政府税調の中でも随分この部分については議論がありました。

 というのは、アメリカで、例えばあのバフェット氏なんかも、富裕層に対して、みずからに課税をせよというふうな声が出ており、ウォールストリートでデモがあったり、やはり高額納税者の方々に対する御負担をもう少しお願いすべきでないかという議論は、私は世界的に巻き起こってきているというふうに思います。

 ただ一方で、我が国で考えますと、今回、消費税の御負担をお願いすることになりました。一方、昨年、復興特別所得税の御負担もお願いをいたしております。そうしたことがありました。それから、二四改正において、所得税の給与所得控除に上限を設けました。御存じのとおり、給与収入一千五百万で、これ以上は控除額が二百四十五万でずっと続く。

 こうしたことで考えると、急激に幅広い層から所得税をさらにということは、やはりさまざまな面で、経済的な面でも、慎重な対応をした方がいいと私は政府税調の会長として判断をいたしました。これでやめるということではなくて、目下そうした御負担を昨年からお願いしている段階でございますので、今回は、そういう意味では、五千万の方々、納税者について最高税率を引き上げることに絞ってお願いをした。

 これには理由がございます。給与収入五千万超の方は、平成九年には一万一千人でございましたが、平成二十一年には二・七万人と二・五倍になっておりますので、そういう意味では、所得格差が広がってこの階層がふえておられるので、ここの部分は五%上げさせていただくということにしております。

 先生からは、これは附則百四条でもちゃんと、税制改正でもそう書いてあるんだ、もっと抜本的にということでございましたが、これを実際法律にしたり、それぞれの年度改正でやってきて、着実には進めてきておるつもりでございます。

 ただ、先生からの問題点は私も共有しております。今回、消費税の問題が議論が行われておりますけれども、これらが落ちついた段階で、我が国の所得税の歴史を踏まえて、今後、どういうふうな所得税のあり方がいいのかということは、私は十分議論をさせていただきたいと思っております。

斉藤(鉄)委員 今回、所得税のブラケット、刻みを見ますと、その区分になっているところ、六百九十五万、次が九百万、ですからここは二百五万の幅ですね。九百万の次が千八百万、ですからここは九百万の幅です。千八百万の次が五千万、ここの幅は三千二百万あるわけで、ここのブラケットは幅が広過ぎるのではないか。例えば三千万ぐらいで一つ刻みを設ける、そこをプラス五%、五千万でまたプラス五%というような形でも、私は先ほど大臣が指摘されたようないろいろな問題点はクリアできると思います。

 いずれにしましても、この所得課税について、いわゆる抜本改革ということになっていないのではないかという点をちょっと指摘させていただきます。

 次に、資産課税でございます。

 今回、相続税の改正につきましてあったわけですけれども、この改革を行う必要性、いろいろな声がございます。明確に国民に説明していただきたい。特に、バブル崩壊後の地価の下落との関係、それから、附則第百四条にも明確に方向性を書いてございます。つまり、地価の下落に対応せよということが書いてあるわけですけれども、これとの関係等、御説明いただきたいと思います。

安住国務大臣 先ほどちょっと触れさせていただきましたけれども、相続税については、バブル期の地価高騰による相続財産の価格上昇に対応した負担調整を行うために、実は累次にわたって基礎控除の引き上げ及び税率構造の緩和というものを進めてまいりました。御指摘のとおりでございます。

 ただし、その後、地価が大幅に下落をしたにもかかわらず、実は、この基礎控除等についてはバブル期に設定した高い水準に据え置かれてしまったことから、相続税が課税されるのは、先ほど私が申し上げましたように、お亡くなりになられた方々百人のうち四人にまで低下するなど、私は、ある意味では、これは先般、石原自民党幹事長の御質問には、少し幹事長とここは意見が合わなかったんですが、このままでは格差の固定化につながる可能性もあるので、そういう点では、それを防止し、相続税の役割を十分にやはり果たしていかなければならない、そういう考えに立っております。

 そうした考えに立って、今般、抜本改革法案では、相続税について、バブル後の地価が大幅に下落した後においても据え置かれている基礎控除及び税率構造を、地価動向等の推移に対応して見直すことで負担の適正化を図ることを提案させていただいております。これは、今先生から御指摘のあったように、附則百四条の趣旨を踏まえている改正であるということも申し添えさせていただきます。

 なお、この見直し案につきましては、負担の早期適正化等の観点から、当初は実は二三改正で実現を提案させていただいておりましたけれども、当事者である先生を前に恐縮でございますが、税調会長による税制改正事項の協議の結果、二十四年度の税制改正または抜本改革に合わせ成案を得るようというふうな合意を得まして、今回提案をさせていただいております。

斉藤(鉄)委員 その三党協議のときも私も言わせていただいたんですが、私は、ある意味で、この資産課税についても、抜本改革、いま一歩足らないのではないか、このように思っております。

 附則百四条を読みますと、「格差の固定化の防止、」これは先ほど大臣もお述べになったとおりです。そして「老後における扶養の社会化の進展への対処」、つまり、介護等、社会化が行われている、片一方で、資産を持っていらっしゃる方への介護の社会化というようなことについては、その資産について社会への還元があっていいのではないか、こういう観点かと思います。その観点がまだ足らないと私は思います。

 バブル以前に戻すということですが、地価はもうバブル以前を下回っています。それに対して、基礎控除、バブル以前は二千万円だったんだけれども、今回はまだ三千万円。それから、最高税率については、バブル以前は七五%でしたけれども、今回上げたとはいえ五五%。それから、亡くなった方百人のうち相続税の対象者はどのぐらいかといいますと、バブル以前は八人、今回は六人ということで、戻っていないんですね。

 そういう意味では、私は、この資産課税についても抜本的に強化する必要がある、このように思いますが、もう一度。

安住国務大臣 一言で言うと、私も先生の方向性に大賛成であります。

 ただ、これまで、そこにはやはり、例えば住宅を東京等で持っておられる方々とか、さまざま資産形成をしてきた中で急激な変化があれば、土地やお住まいになっている住居等の父親からの贈与について、急激に今まで想定していなかったような変化を起こすことになりかねませんので、私は、これで改革を終えるのではなくて、徐々にやらないといけないと思っています。

 これを五千万から三千万にして、一人当たりの贈与は六百万に下げましたから、そういう意味では相当その控除額の対象も減ります。ただ、問題は、そういう意味では、土地のことに関しては特別の配慮というものは残しております。

 そうしたことを今後どういうふうにしていくかということは、ここでも私申し上げたんですが、お金持ちの方はお金持ちの御子息としてずっとい続けることは果たしていいのかというのは、私は、やはりそれは範囲がある程度あって、そのあとは、お父様のそういう資産というのは一度社会に還元をしていただいて、そして、逆に言えばチャンスというものを日本の社会でつくっていく。どんなに貧しい家で育っても、その方が頑張っていけばまた富を形成していける、そういうふうな社会にしていくためには、やはりここの部分の改革というのは多少やらせていただかなきゃならない。

 ですから、今は、お亡くなりになった方百人のうち四人を六人にいたしましたけれども、私の財務大臣としての方向性としては、さらに、高齢化社会の中で、この部分については御負担をお願いするということは、逆に社会にとって活力を生むということがイコールになるのであれば、前向きに考えていきたいと思っております。

斉藤(鉄)委員 その考え方は私も大臣と方向を共有するものですが、一方で、家計資産の六割は六十歳以上の世帯が保有しているということでございます。金融資産ですと、平成元年ですと、六十歳以上の方が保有している金融資産は大体三〇%だったんですが、平成二十一年ですと、これが六〇%になっている。それから、金融資産だけではなく資産総額ですと、これがもっと、平成元年のときは三五%が六十歳以上でしたけれども、今は、六十歳以上の人が持っている資産総額について言いますと、これを足し合わせますと六五%ぐらいになっているということで、いよいよ高齢者の方に資産が偏っている。その六十歳以上の相続はまた六十歳以上の方に相続されるということですが、逆に、若い人への所得移転といいましょうか資産移転ということを促さなくてはならないのではないか。

 そうしますと、先ほど大臣がおっしゃった、お金持ちの孫はそのまま金持ちであり続けていいのかという問題とも絡んできますが、相続税は引き上げる必要があるけれども、経済を活性化させるため、また資産の世代間移動を潤滑にさせるために、生前贈与など贈与を促進する税制は必要なのではないかということも、あわせて私言っておかないと誤解されますので言いますが、そのことについてはいかがでしょうか。

安住国務大臣 御指摘のとおりでございます。

 ですから、資産課税の中で贈与税の位置づけというのは、今先生がおっしゃったように、やはり相続税を補完するものであるという認識を私も持っております。

 金融資産の多くを高齢者の方が保有している現実の中では、被相続人のみならず、相続人も高齢化をしているという現実があります。ですから、若者世代への資産移転が進みづらい状況があって、これは人によっては、デフレの原因にもなっているというふうにも指摘をされています。

 平成十五年に自公政権下でおつくりになられた相続時精算課税制度、こうしたものを活用して、資産移転をということでやってまいりましたが、さらに、二十一年からは、住宅取得のための資金の贈与について、これを一定額まで非課税措置とする。これは、二四改正では、省エネ、耐震で、以前の一千万を千五百万まで拡充したりしております。

 ですから、できるだけ家とか、それから、現時点でも、教育資金や生活費の贈与については非課税措置をとらせていただいたりはしておりますけれども、今後さらに、今回のことでいえば、お孫さんを贈与税の受贈者とする場合に緩和措置を講じておりましたし、相続時精算課税制度においても、お孫さんへの贈与も可能にするなど、御子息を飛び越えてお孫さんの世代に思い切っておじいちゃん、おばあちゃんがお金を生前贈与した場合、相続税を取られるときと比べていただいて、これは贈与の方が比較的、お孫さんに対するプレゼント、自分が頑張って生涯を送られて、私も、全て国家に富をまた戻してくださいと言っているわけではなくて、ある一定の親や孫に対する愛情をこうしたプレゼントという形で贈っていただいて、生きている間にまたこれをお孫さんが活用していただく、こういうことに贈与税というものをやはり変えていきたいというふうに思っておりますので、今回のような改革案を出させていただきました。

斉藤(鉄)委員 相続税と贈与税のことにつきまして最後にまとめるとしたら、やはりまだいわゆる抜本改革という域に行っていない、こういうことを申し上げておきます。抜本改革が必要なのではないか。

 次に、いわゆる低所得者対策でございます。

 今回、低所得者対策、逆進性対策ということで、いろいろ議論がありました。やはり今の政府案は余りに雑である、こう申し上げざるを得ません。何ら具体性がないということを申し上げざるを得ません。

 もっと、本当に支援すべき人たちはどういう人なのか、どういう層なのかということについて、しっかりとした制度設計があってしかるべきではないか、このように思います。逆進性を議論するのであれば、社会保険料を含む負担全体と社会保障による受益をトータルに勘案して、どの層を助けなきゃいけないか。

 岡田大臣に聞きたいと思っておりますけれども、例えば、物価スライドするような制度によって暮らしていらっしゃる方については、消費税が上がれば物価が上がる、物価にスライドした例えば年金等はそのことが考慮されるわけですから、そういう方々と、そういう制度と関係のない、例えば職のない若い人たち、そういう人たちをどう支援していくかということとは、別々に事細かな逆進性対策が必要なのではないかと思いますが、どのようにお考えですか。

岡田国務大臣 そこは斉藤委員のおっしゃるとおりですね。ですから、今回の給付つき税額控除はその前段階としての一時的な措置ということですけれども、どの層を念頭に置いてつくり上げるかということは非常に重要なところだと思います。

 おっしゃるように、年金とかあるいは生活保護とか、物価が上がればそれにスライドして上がるというものについては、そこはある意味で痛みは緩和されている、全部それで補われているかどうかというのは議論が分かれると思いますけれども、ある程度緩和されているということになると思うんですね。ですから、より必要なところにターゲットを絞って、そして組み立てていくということが必要だと思います。

 これは前回のときもそうだと思いますが、消費税の引き上げを決めた後、実際に引き上げるまでのこの間にきちんと議論をして、そして制度を組み立てていくべきで、そもそも給付つき税額控除というのはすぐにはスタートしないわけですけれども、ぜひ、そういったことも各党の協議の中でも御提案いただいて、どのぐらいの規模で、どの層に対してやっていくことが適切なのかということを御提案もいただき、協議させていただければというふうに考えております。

斉藤(鉄)委員 どの層が本当に支援が必要なのか、余りに今回の案は雑なのではないかという観点から、小宮山大臣にちょっと質問させていただきたいと思いますが、いわゆる低所得者等への年金、月六千円の加算でございます。

 給付つき税額控除、これは消費税逆進性対策ということですから、年金とある意味では制度が異なるから、それを一緒に論ずるのはいかがなものかということもわかりますけれども、この給付つき税額控除については、マイナンバー定着後に適正な所得把握をして、これをきちんと行うということです。

 片一方、年金で、マイナンバーが導入される前に、とにかく六千円、低所得者には配りますということでは整合性がとれないのではないか。本当に支援が必要とされている人はどういう方なのかということを、きめ細かな制度設計が必要なのではないか、余りに雑ではないかと思いますが、いかがですか。

小宮山国務大臣 今、低所得者が現にいる中で、そこへの何らかの支援が必要だということは共通の認識を持っていただけるというふうに思います。

 今回の年金改正法の低所得者への年金加算につきましては、市町村が既に把握をしている所得情報、これを利用いたしまして、ほかの社会保障制度、例えば介護保険の保険料軽減ですとかあるいは高齢者医療の窓口負担軽減などでも用いられている低所得者の範囲を基本としまして、加算の対象となる低所得者を決定することにしたので、余りにもずさんな、大ざっぱなということではなくて、今までの制度に倣ってやっているということでございます。

 喫緊の課題だということですので、これは、低所得者への年金加算は、消費税を一〇%に引き上げたとき得られる財源を活用して行いたいと思っていますので、平成二十七年十月時点で利用可能な情報を活用して、できるだけ早くこの制度を施行させるためにこういう仕組みにいたしました。

斉藤(鉄)委員 この月六千円定額加算については、そのほかにもいろいろな問題点が指摘されております。公明党が提案する定率加算の方がいろいろな意味でも合理的だと私は思いますけれども、このことについては今後ちょっと議論が必要かと思います。

 マイナンバーが出ましたので、ちょっとマイナンバー、番号制度についてお伺いします。

 金融庁にお伺いします。

 利子は源泉分離課税ということになっておりますので、いわゆる預金口座にはマイナンバーは必要ないというような議論もございますけれども、ペイオフ対応の観点、それから、今回のことで問題点が指摘されました災害時の迅速な対応という観点からも、私は、預金口座にマイナンバーを義務づけるということも必要ではないかと思います。

 財務大臣にも、資産性所得を把握する観点、それからマネーロンダリング対策の観点からも、預金口座にマイナンバーを使わないというのは非常に大きなマイナス点を残すのではないかと思いますが、もう時間がありませんので、簡潔に両者からお願いいたします。

大串大臣政務官 御質問いただきましたように、マイナンバー、非常に利便性を高めるものでありますけれども、一方で個人情報保護という点も配意しなければなりません。そういう面で、手続に利用する対象に関しては極めて厳格に始めていこうというふうにしております。

 そこで、今お話がありましたように、預金口座に関しては源泉分離というふうになっておりますものですから、そういうこともあって、今回、マイナンバーの付与対象ということになっておりません。ただ、おっしゃったように、災害の場合に相手方をきちんとつなげるとか、そういった利便性も民間利用という面においては活用が期待できる面があろうかというふうに思っています。

 ですので、まずは公共面におけるマイナンバー制度の利便性の定着をきちんと見ながら、その上で、かつ、個人情報保護の進展も確認しながら、施行後五年をめどに、利用範囲の拡大を含めた見直しを行うことというふうにしています。

 そういうことも含めまして、それを導入するときの利用者や金融機関の負担、あるいは利便性の向上の度合い等々も含めながら、かつ、個人情報保護の状況も勘案しながら、よくよく検討してまいりたいというふうに思います。

安住国務大臣 今お話がありましたけれども、要するに、源泉分離課税はその時点で課税終了ですよということで法定調書には載らないということだと、ストックの部分で大きな穴がどうしたってあくんじゃないかということは私ども懸念を持っております。

 資産を把握するときというのは、先生御存じのとおり、金融資産とあとはやはり土地ですね。これは、例えば、それぞれの自治体は固定資産税等である程度把握はしていると思いますけれども、こうしたそれぞれの持っている情報、それから、源泉分離をしてきた利子等の課税によって、どういうふうにこれから、ある意味で、個々人の持っておられる金融資産について我々自身がどこまで把握させていただくかというのは十分慎重な検討をしたいと思っております。

 というのは、我が国には十二億口座、金融の、銀行を含めた口座がございます。本音で申し上げれば、本当に国民はこれを我々国に把握させていただくことを許容していただけるのかということは率直に議論があるところだとは思いますが、行政として、この制度を定着化させていって、不公平感をなくすときには、ある程度のことはやはり必要だとは思いますが、そうした現実もあるということを踏まえながら、慎重に対応したいと思います。

斉藤(鉄)委員 消費税の税率を上げる、また所得税の累進性を上げていくという中で、やはり不公平感というのが最も大きな問題だと思います。そういう観点からもぜひ御検討いただきたいと思います。

 ちょっと税金の問題に戻りまして、次に、車体課税。

 車体課税について、第七条では、簡素化、負担の軽減及びグリーン化の観点から、見直しを行うということとされておりますが、では具体的にどうするのということは一切書いていない。また、いわゆる走行ですね、走るとき、燃料課税ということですけれども、当分の間税率が維持されていることや石油石炭税の上乗せを行うことも踏まえ、検討を行うとあるだけで、これをどうしようかという方向性も見えてこない。

 税制のグリーン化ということも地球温暖化対策として重要です。このことも含めて、今後どうされようとしているのか。ここもいわゆる税制の抜本改革の名に値しない案だと私は思いますが、財務大臣。

安住国務大臣 いわゆる七条のところで、こうした問題点について列記をさせていただきました。

 御指摘のとおり、車体課税については、方向性としては今後検討するということですが、もちろん、タックス・オン・タックスについては、世界の流れでいえばあるにしても、認めていただいているとしても、御負担が重くなることについては、やはりユーザーの側に立って、二重取りという批判をできるだけ受けないような方向にしたいとは思っておりますので、ここは、それぞれの年度改正の中で十分、それぞれ業界団体の意向やユーザーの意見を聞きながら対応したいと思います。

 御存じのとおり、今回は、二四改正においても、エコカー減税の拡充、延長もしておりますし、負担軽減という措置もとらせていただいておりますので、応急的な措置はしておりますが、御指摘のように、七条で書いてある方向性について、より具体な検討は残念ながら今後ということになります。

 それから、グリーン化でございますけれども、私どもも、震災後のエネルギー問題につきまして、特に、省エネルギーや再生可能エネルギーの拡大というものは、大変重要な課題というふうに認識をしております。

 二四改正において、懸案でございました、先生にも大変御助力いただきましたけれども、地球温暖化対策のための税を導入することが実現はいたしましたけれども、今後、それでは税制のグリーン化をさらに具体的にどの規模でどの範囲で広めていくかということは、十分な議論とコンセンサスを得なければなりませんので、七条に具体的に書かなかったことはお叱りを受けるかもしれませんが、これも一五年の本格的な消費税の引き上げまでの間にしっかりと制度設計をして、それぞれの年度改正によって対応していきたいというふうに思っております。

斉藤(鉄)委員 次に、住宅税制です。

 七条には、消費税引き上げ時にその影響を緩和する観点から、住宅の取得に係る必要な措置を行うということが書いてあるんですが、その具体的な措置とは何かとか、また、諸外国でよく見られる、住宅という人間が生きていく上で最も必要なものについて、例えば軽減税率を適用するとかゼロ税率にするとか、そういう方向性についても全く書かれておりません。

 住宅という非常に大きな問題について方向性が書かれていない、これも税制の抜本改革という名に値しない部分だと思いますが、今後、この税制の改正を行ったら住宅の建設が極端に落ちたとか、そういうことがあってはならないと私は思っております。このことについてどのように考えていらっしゃるか、これは国交省に聞きます。

奥田副大臣 お答えさせていただきます。

 斉藤先生御指摘のとおり、住宅は国民生活の基礎となる部分でもあります。これまでも、税制改正という中で、駆け込み需要、そして反動といったものもこれまでのデータとしてしっかりと皆さんが把握していることとも思います。

 今回の法改正というものにつきましては、それぞれの引き上げ時に所要の措置を実施するということを明記されております。

 国土交通省としましては、税負担の増加による影響を平準化していく、需要を平準化していくという観点、そして、良質な住宅ストックを形成していく、このことを後押ししていくという観点、そして、広範な経済に対して与える影響という経済政策としての観点を持って、しっかりとこの論点を論じていきたいというふうに思います。

 具体的に何がという話がありましたけれども、住宅の関連税制、そして、歳出措置といいますか予算措置というものの組み合わせを考えながら、総合的に勘案する必要があるかというふうに思います。

 政府税調などの中でも、ここで国民負担を、住宅を購入しようとする方の負担をふやすことはやはり避けていただきたいということ、そして、これまでもある税制、そして海外の住宅制度といったものも参考にしながら、そういった議論を深めて、そしてまた結論を得ていきたいというふうに考えております。

斉藤(鉄)委員 軽減税率やゼロ税率について、国交省として財務省に要求するというような考えはありませんか。

奥田副大臣 業界団体からはそういった御提案というものも、あるいは御要望というものも強くいただいておりますし、選択肢の一つとしてこういうものがあるというのは、先ほど海外の事例といったことも申し上げましたけれども、そういったことも、私としては、選択肢の一つとして議論の中において結論を得ることができればというふうに思います。

 ただ、国土交通省の要望というものと、また政府の中での議論というものも必要かと思いますので、そういった提案は、国土交通省としては選択肢の一つとして示していきたいというふうに思います。

斉藤(鉄)委員 税についてもう一つ、国と地方の問題です。

 総務大臣にお聞きいたします。

 二〇一五年度のプライマリーバランスの試算を見ますと、国は、成長シナリオでもマイナス三・〇%ということで、基礎的財政収支、ゼロになっていません。しかしながら、地方におきましては、慎重シナリオでもプラス〇・三%となっております。

 これだけ見ると、国はまだまだ厳しい、しかし地方はもうプラスになっちゃったということで、消費税五%のうち一・五四%も地方に上げるのはちょっととり過ぎではないかという説もありますが、総務大臣としてどのようにお考えですか。

川端国務大臣 トータルの財政事情、どちらも大変厳しい中で、今言われたような、国と地方の状況が若干異なることは事実だというふうに思います。

 今回の消費税五%を上げさせていただくという部分は、そういう中において、上げた分を全て社会保障の安定と充実に使うという前提で、その財源として消費税をするという議論が進んでまいりました。したがいまして、今回の社会保障四経費とそれにのっとる部分の経費に充てるということで、国と地方の役割分担に応じて配分するという、一番、ベースがそこの考え方でありました。

 そして、その中で、しからばどういう役割分担なのかということで、地方の皆さんともいろいろ協議を何回も重ねました中で、共通認識として、いわゆる国の制度としての四事業に加えて、地方単独事業という地方独自の制度との両方のセーフティーネットで社会保障全体を支えているという共通認識を持つことに至りました。

 そこの後は、昨年来、地方の単独事業がどういうものがあるかということを調査しているのも踏まえた中で、結果的には、四事業にのっとる部分が三・八兆円ある、そして〇・五兆円分が単独事業であろうということで、それの人件費を除く分、あるいは制度としての確定分を含めて、二・六兆円が地方のそういう事業であろうということで、国が全体でやっております二十三・一兆円の四経費の額と、地方がそれに基づいてやっている七・七兆円に地方単独事業二・六兆円を加えた十・三兆円、すなわち二十三・一兆円と十・三兆円という部分を配分して、三・四六と一・五四という配分を決めました。

 したがいまして、もとが社会保障の安定、充実に充てるという部分に配分するという前提に立ちましたので、結果として、それがそれぞれの財政の健全化に資することは間違いありませんが、五%をじかに初めどう分けるかは、それぞれの役割分担で、社会保障の四事業とそれにのっとった単独事業とに配分するという前提だったので、という意見もあるというふうにおっしゃいましたけれども、私どもとしては、地方にとり過ぎているというふうなことに思っているわけではございません。

斉藤(鉄)委員 その点については理解をいたしました。

 最後に、岡田大臣に年金制度についてお伺いいたします。

 社会保障と税の一体改革、我々は、いまだに社会保障の全体像が示されていないということを申し上げてきました。特に年金制度については、皆様方が、皆様方がおっしゃる新年金制度を目指すのか、それとも現行制度を進めていこうとされているのか、それさえもわからない。

 五月八日の本会議で長妻さんは、政権交代のたびに年金制度が変わることは許されない、このようにおっしゃっておりました。そっくりそのままお返ししたいと思います。

 そういうことからすれば、どちらの、今の制度なのか、それとも皆様方が考えられる新しい制度なのか、それさえ示さずに、全体像を示したということにはならないと思います。

 また、五月八日の本会議において長妻さんは、与野党の年金協議会を設置して、合意を図らなければならない、こう主張されているんですが、であるならば、年金制度改革について与野党で協議をしたいとおっしゃるのであれば、二十五年に新年金制度の法案を出しますということについては撤回されなければ矛盾するではないですか。これから協議をしていこうということであれば、そこは本当に誠意ある姿勢が必要だと思いますが、岡田大臣に質問いたします。

岡田国務大臣 この年金制度の問題は、そろそろきちんと政治が答えを出さなければいけない問題だと思うんです。

 我々は、委員御指摘のように、抜本改革ということを主張してきております。御党は、現行制度を基本に、それを改善することでしっかりとした制度になるということをずっと主張してこられています。あるいは、いろいろなシンクタンクとかメディアの中にもいろいろな改革案が出ております。やはり国民も迷っているというふうに思います。

 ですから、ここは真剣に議論をして、そして決着をつける。それは一週間、二週間で決着するのは私は無理だと思いますが、少し時間をかけて責任ある答えを出す、そういう時期に来ているというふうに思っております。そして、そこで決着がつけばそれが答えですから、それ以上のものはないわけでございます。

 我々は我々の立場がありますので、抜本改革を主張させていただいておりますが、それでなければいかぬといったら、これは協議になりませんから、それぞれ謙虚に、御党の御主張にも耳も傾けて、何が望ましい姿かということを国民の立場で議論していくべきだというふうに考えております。

斉藤(鉄)委員 少なくとも、来年に法案を提出するということについては撤回されるべきだということを申し上げまして、質問を終わります。

中野委員長 これにて斉藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。きょうは、生活保護の問題に絞って、五十分間、質問をいたします。

 生活保護の基準やあり方については、今、社会保障審議会の中で、特別部会やあり方検討会がやられているところであります。

 被保護人員は、二月現在、二百九万七千四百一人で過去最高、三兆七千億円と年々伸びております。

 今回のお笑い芸人の問題が引き金となって、保護をもらっているみんながずるをしているとか、無駄遣いだというような印象を与える報道も目につくわけであります。

 そこで、改めて確認をいたしますが、生活保護法は、第一条に「日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」とあります。また、第二条では、無差別平等の原則をうたっております。

 そこで、生活保護は憲法に保障された国民の権利であり、本当に必要な人が受けられないということはあってはならない、このことを確認したいと思います。

小宮山国務大臣 委員がおっしゃるとおりだというふうに思います。

 生活保護は最後のセーフティーネットですので、本当に必要な人には確実にその保護を実施するということが必要なのは当然でございます。

高橋(千)委員 まず、そこは当然、当然のことなので一致をしたのかなと思います。

 連日の報道を受けて、国会では一〇%保護費の削減あるいは扶養義務の強化などが取り沙汰されていることに、当事者たちも大変な肩身の狭い思い、つらい思いをされております。

 例えば、青森市の六十一歳の女性です。親、兄弟、子供たちに毎年扶養届が送られてくる。その都度、また市役所からいつもの送られてきた、何て書けばいいのと聞かれると、本当に申しわけないなと心が重い。自分たちの生活で精いっぱいで、とても扶養できる状態でなくても、一月になると届く通知、このつらさをわかってほしいと訴えています。

 子供たちを育てるため、生活していくため生活保護を受ける、そのことで、いつも後ろめたい気持ちで暮らしています。スーパーで買い物かごに入れる品物を見られているんじゃないかと周りの人たちの目を気にしながら生活を送っている人もいます。

 このように、現実に、申請のときも、またその後も、大変厳しい調査があり、肩身の狭い思いで暮らしています。中にはそうでない人がいるかもしれませんけれども、大部分の方は、自分を恥じたり、あるいは今度のことでさらに追い詰められているわけです。

 例えば、診療所でソーシャルワーカーをしている女性、まさに保護を受けている方たちを身近で見ている方がこんなことを言っています。

 脳梗塞を起こして退職してから預金を切り崩して質素な生活を送られてきた方や、孫請の仕事がどんどん減ってほかに仕事も見つからず家賃も公共料金も払えなくなってしまった方など、普通の人が普通に生活する中で困窮されています。生活保護の申請を勧めたときに二の足を踏まれるのが、これまでも借金で迷惑をかけてきた親兄弟らに扶養調査までされるなら申請したくないという、つらく悲しい声です。

 普通の人が普通に生活する中で困窮に陥っている、この指摘は非常に大事だなと思うんですね。

 それで伺いますが、現在の法律上は、今回の事案ですけれども、極めてレアなケースであって、道義的責任が問われることがあったとしても、不正受給ではないということをまず確認します。

 それと、取り沙汰されている、親族側に扶養が困難な理由を証明する、義務を果たすというか、そういうことを考えているんですか。

小宮山国務大臣 今回話題になっています個別な事案についてはコメントは避けさせていただきますが、一般的に、扶養義務者が扶養しないことを理由に生活保護の支給を行わないとした場合には、本人の生活が立ち行かなくなるということも十分考えられますので、こうした点も考慮をして、生活保護法では、扶養義務者からの扶養は、保護を受給する要件、前提とはされていません。そのため、扶養義務者からの扶養がされないとしても、保護を受けることはできます。

 また、厚生労働省では、個別のケース全てを把握しているわけではありませんが、どのようなケースがまれなケースであるかということは、ちょっと申し上げられないというふうに思います。

 一方で、扶養が明らかに可能であるにもかかわらず仕送りを拒否している、そういう場合などについては、やはり、生活保護制度への国民の皆さんの信頼を失うことにもなりますので、そうしたことはしっかりと是正をしなければいけないと考えます。

 このため、今後、制度の見直しをしていく中で、本当に保護を必要とする人が受けられなくなることのないように留意をするということは、もう委員がおっしゃるとおりです。それを前提とした上で、福祉事務所が必要と認める場合には、扶養が困難と回答した扶養義務者に対して、扶養ができない旨の説明責任を求める仕組みを検討していきたいと考えています。

高橋(千)委員 レアなケースかどうかはわからないみたいな答弁、そう面倒くさいことを聞いたわけではないんです。有名人であって、詳細にはわからなくても、誰が見ても売れっ子だからそれなりの収入があるだろうね、そういう類いの話であって、誰もがそうではないという意味で言ったわけであります。

 扶養義務というのが、一般的には、当然民法には規定をされているんだけれども、それが条件ではないということは、一九五〇年の新法以来、明記をされてきたことでありますし、これを変えるとなると、救貧法に戻るわけですから、重大な法改正になるわけですよね。ですから、それはちょっとやり過ぎですよということが言いたいわけであります。

 そこで、少し議論を進めたいと思うんですが、扶養義務の問題というのは、そもそも、水際作戦の常套手段として議論がされてきました。日弁連の二〇〇六年全国一斉生活保護一一〇番の結果でも、違法な水際作戦の可能性が高いと判断された百十八件中、四十九件がこの扶養義務に関するものでした。

 二〇〇五年から北九州市で三年連続、生活保護をめぐる餓死などの事件が起こった。これは大変記憶に新しいわけですが、発端の〇五年の八幡東区の孤独死事件も、保護の申請には何度も通ったんですが、兄弟姉妹による扶養の可能性がないか確認してくるようにと追い返されました。二〇〇六年の門司区での餓死事件も、福祉事務所の担当者が、子供に養ってもらうようにと申請を拒絶しています。

 また、ことし一月の札幌市白石区の姉妹の孤立死事件もありました。この同じ白石区では、二十五年前の一月に、同じように、母子の餓死事件がございました。このときは、三人の子供を持つ母子家庭の母親が、再三福祉事務所に保護申請をしたものの、働けば何とか暮らせるだろう、離婚した前の夫の扶養意思の有無を書面にしてもらえなどと述べて、拒否され、放置され、餓死に至った事件です。

 ですから、さっき書面の問題を大臣おっしゃいましたけれども、そういうところにかかわってくるんですね。なぜこのような事件が後を絶たないんでしょうか。

 法律や制度次第で人を死に至らしめることもあるということ、そういう認識をお持ちでしょうか。証明を義務づけたりすれば、DVや虐待などで、夫婦、親子の縁まで切った人に扶養を迫ったり、隠れているのに連絡先を教えてしまう、こういうことにもなりかねないんです。どう思いますか。

    〔委員長退席、古本委員長代理着席〕

小宮山国務大臣 今委員が紹介してくださったような、餓死に至るような、そういうことはあってはならないわけですので、先ほど申し上げたように、支援が必要な人には確実にしっかりと生活保護を受けていただく、その考え方を変えるつもりは全くございません。ただ、明らかに扶養が可能と思われる扶養の義務者には、その責任を果たしていただきたいと考えているわけです。

 現在行っています扶養義務者に対する扶養調査でも、夫の暴力、DVから逃げてきた母子ですとか、扶養義務者に扶養を求めることが明らかにその人の自立を阻害するような場合ですとか、二十年間例えば音信不通であるなど明らかに扶養が見込めない場合などは、その扶養調査を行わない取り扱いとするというような配慮をしています。

 今後、制度見直しの具体的な内容を検討していきますけれども、本当に保護を必要な人が受けられないことはないように、そうしたところはしっかりと注意をしながらやりたいというふうに思います。

高橋(千)委員 今、そういうDVなどの問題がある人には扶養調査を行わないんだという答弁でありました。やはり、書面を出させるという言葉がばっと出たときに、もうそれだけで当事者が震え上がる、あるいは申請を諦めるということが現実に起こっていますので、冒頭におっしゃった、必要な方に保護が受けられないということはないようにするのだということをやはり貫いていただきたいと思うんです。

 先進諸外国の扶養義務の範囲を見ても、やはり扶養義務者の範囲というのは、同居をしている配偶者あるいは成人ではない子供の親、当たり前の話なわけですけれども、それ以上に、やはり追い込むということはあってはならないと思うんです。

 さっきも言ったように、明らかにというのは確かにあると思います。そういう場合は、よく話し合って本人に同意を求めていけばいいだけの話でありますから、ローンや教育費など生活に追われる子供を新たな貧困に追い込んだり、逆に、それを避けるために諦めるということがあってはならないように、これは本当に繰り返し指摘をしておきたいと思います。

 次に、基準の問題をお話ししたいと思います。

 自民党さんが保護基準一〇%の引き下げを提案いたしました。この保護基準については、社保審の基準部会で検討中であります。〇七年にも一度かなりの議論がございました。そのときも、やはり結果としては引き下げには至らなかったわけです。

 多方面な検討を重ねてきた問題であり、いろいろな角度から議論しなくちゃいけない。そういうことを考えれば、多分一〇%には根拠がないんだろうし、数字ありき、例えば五ならいいとか、そういう問題ではないということを確認したいと思います。

小宮山国務大臣 今委員がおっしゃいましたように、現在、生活保護基準部会で、五年に一度実施されます全国調査のデータ、これなどを用いまして、現在の基準額が一般低所得世帯の消費実態と均衡が図られているかどうか、そうしたことなどについて、専門的、客観的に検証をしているところです。

 自民党さんから御提案いただいた一〇%については、総理も受けとめるという答弁をされていますので、そのことも参考にもさせていただきながら、ここでしっかり専門的に検討するということで、別に一〇%がありきということではございませんし、私がここで下げるということを申し上げたわけでもございません。

高橋(千)委員 受けとめるの意味を今確認することができました。まず数字が最初に来るわけではないということ、また、下げるという前提でもないということが確認ができたと思います。(発言する者あり)どうぞ、やってください。先生、議論は議論できちっとやりましょう。

 一方では、基礎年金が高齢者の基礎的消費生活水準を維持するものと創設当初は考えられていたかなと思います。

 資料の一枚目にあるように、基礎年金の水準を単身高齢者世帯の家計と比較した図がございます。食料、住居、光熱水道というふうにずっと積み上げてきまして、まあ、これは平均値ですから、いろいろあるんだと思うんですが、食料が三万一千五百六十九円というところから始まって、どう考えてもはみ出しているわけです。ですから、満額でも基礎的な消費支出をカバーするにはわずかに足りない、こういう評価を厚労省がしているわけであります。

 気になっているのは、最低保障年金ということを一応民主党は提案をしておられます。まだ法案にはなっておりませんが、七万円という数字が言われているのと、その七万円に近づけるための上乗せ六千円ということも言われているわけですね。ですから、消費支出を賄う程度ということが、こうなってきて七万円くらいが一つの目安になっていったらどうなるのかなということをちょっと危惧するわけであります。

 つまり、七万円で賄えるよとなったときに、では、年金より高いのは問題だから、生活保護基準はこの程度でよいということになってしまうのか、あるいは、保護を受けている高齢者は年金七万円で十分だよということになってしまうのか。いずれにしても、影響はあるのかなと思いますが、どのようにお考えですか。

小宮山国務大臣 民主党の最低保障年金は、現役時代の収入に応じた所得比例年金、その受給額が少ない人に対して、補足的に税を財源として給付をするものです。これに対しまして、生活保護は、資産など厳格な調査の上で、最低限度の生活水準に不足する分を税財源で保障するということで、両者は、制度の位置づけや仕組みが大きく異なります。

 生活保護の基準については、今申し上げたように、五年に一度の客観的なデータに基づいて検証を進めて、ことしの末をめどに結論をまとめたいと思っていますので、そこで七万円が何かの基準となるということではございません。

高橋(千)委員 よろしいと思います。そこはまず確認をさせていただきました。

 ただ、私は、基本的には年金で暮らせるのが望ましいと思うんです、そのはみ出す部分がやはり公的支援でできていけば本当はいいんだろうなと。問題は、年金法も、最初の質問で言ったように憲法二十五条から始まっておりますので、こっちが保護に波及していくということになると非常に問題があるという懸念を持って質問をさせていただきました。

 そこで、実は、保護というのは、保護を受けている人だけの問題ではないのだということで質問をしたいんです。

 課税最低限あるいは各種減免制度の当然目安となるために、多くの保護を受けているわけではない国民に波及をいたします。

 先に総務大臣に伺いますが、例えば、個人住民税非課税限度額、これは生活保護基準を考慮していると思いますが、どのようになっているでしょうか。生活保護世帯と同水準の世帯数はどのくらいあるのか。そして、基準がもし見直されれば、これに連動して非課税基準が下がるというか、そういうことになっていくかと思いますが、どうでしょうか。

川端国務大臣 三点お尋ねでございました。

 まず、非課税限度額の設定でございますが、個人住民税の均等割及び所得割については、特に低所得者の税負担に配慮するため、所得金額が一定の水準以下である者については非課税扱いとしております。

 具体的には、均等割につきましては生活扶助基準額、所得割については生活保護基準額を勘案して、個人住民税の非課税限度額を設定しているところでございます。

 また、非課税限度額と同水準の世帯数についてお尋ねでございますが、総務省においては、納税義務者の人数は把握しておりますけれども、納税義務者とならない非課税の対象人数の調査は行っておりません。

 また、個人住民税は個人単位で課税されておりますので、生活保護世帯と同水準の世帯数がどれぐらいあるかについては把握をしておりません。

 三つ目でありますが、非課税限度額の見直しにつきましては、一般論として申し上げれば、生活保護基準が見直された場合には、個人住民税の均等割及び所得割の非課税限度額の基準について検討する必要があるものと考えております。

高橋(千)委員 今説明をされたように、均等割は扶助基準額に配慮して組んでいるということだったので、当然、その基準額が見直されればこれに波及するということだったと思います。

 本当はどのくらいの方に影響があるのかなということを少しイメージしたかったんですが、数字が出ないということでありました。課税されている方が均等割で五千九百万人くらいということでありましたので、それ以外の方がまず非課税なわけですよね。そこの中にどれほど割り込んでいくかということが一つイメージとしてあるかなと思っております。

 この課税限度額が変われば当然、保育料ですとか市町村単位の各種減免制度全体に波及すると思います。

 きょうは、文部科学副大臣にも来ていただいています。

 就学援助を受けている児童のうち、要保護児童、また準要保護児童がどのくらいあって、その準要保護児童というのはどういう児童をいうのか、お願いします。

高井副大臣 就学援助の対象となる要保護児童生徒数につきましては、平成二十二年度は十四万七千七百五十五人となっております。また、準要保護児童生徒数につきましては、平成二十二年度で百四十万三千三百二十八人となっています。

 準要保護者とは、各市町村が要保護者に準ずる程度に困窮していると認定した者を示しまして、具体の認定要件は、例えば生活保護の基準や市町村民税の課税状況などをもとに、各市町村が地域の実情に応じて定めているということであります。

 具体例としては、生活保護を基準に一定の係数を掛けたものであるとか、児童扶養手当の支給の度合い、それから市町村民税の非課税などを考慮して、各市町村が地域の実情に応じて定めているということであります。

高橋(千)委員 今の説明いただいたものの都道府県別の資料を二枚目につけておきました。

 今説明があったように、準要保護児童というのが市町村で必ずしも同じではない。市町村の事情などを考慮して決められていくということだったわけですよね。だけれども、考え方としては、保護者に準ずる程度で困窮しているということで、その児童が百四十万を超えているということが、まず非常に重いなと言えるのかなと思います。

 当然、これも保護基準が見直されれば影響を受けるということでよろしいですね。

高井副大臣 仮に生活保護基準が下がった場合には、就学援助事業の対象となる児童生徒数に影響が出るということが考えられます。

 最終的には、実施主体である市町村、教育委員会が準要保護者の認定要件やまた援助額をどのように定めるかによって変わってくると思いますが、就学援助事業全体への影響については、現時点ではちょっと明確にお答えすることは難しいと思います。

高橋(千)委員 実は、ここまでやったのは、ちょっと〇七年の基準の見直しのときの、ある意味、おさらいでもあるわけなんです。

 あのときも、やはり一般の消費水準が非常に落ちている、当然なわけですよね、かなり国民の賃金水準などが下がっていて景気が悪化しているという背景のもとで、それに合わせると基準の引き下げが必要ではないか、そういう議論が随分されました。でも、これは保護者の問題だけではなくて、いろいろな意味の目安になっているんだから全体に波及するんだよということを本当にみんなで確認し合ったんです。

 シングルマザーの女性がみずからの家計簿を私たちに見せてくれて、保護を受けていないで本当に厳しい暮らしをしているんだけれども、でも、保護があることによってさまざまな手当ですとか基準を受けられている。そこはやはり自分たちに結局影響するんだ。自分たちがやりくりして大変な中で頑張っていることを理由に、国民の家計が下がっているんだからあなたたちももっと下げなさいとなっていくと負のスパイラルがとまらなくなるんだ、そういう議論だったんですね。私は、これはまさしく今きちっと立ち返らなければならない議論だなと思うんです。

 小宮山大臣、いかがですか。

小宮山国務大臣 その基準の値というのは、先ほど申し上げたように、客観的なデータで、専門的にその都度その都度出していますので、そうしたことを国民の皆様にもよく御理解いただいて、必要な方に必要な保護が行くようにということだというふうに思います。

高橋(千)委員 そういう問題ではなくて、当然全体に影響しますよね、やり方によっては負のスパイラルになってしまうということも認識しなければならないと思いますがいかがですかということです。

小宮山国務大臣 それは、委員がおっしゃる負のスパイラルにならないようにしていきたいというふうに思います。

高橋(千)委員 はい、そのとおりです。

 そこで、最低賃金法も〇七年に見直しをいたしました。生活保護と整合性を図るということが盛り込まれたわけです。そのときも実は私、厚生労働委員会で質疑をしまして、仮に保護の基準が下がったら、これは最賃も下がっちゃうんだろうかと議論をしました。

 本当は、保護よりも少ない最低賃金があるので引き上げようという、全体の議論はそういうことだったんですね。実際、今、一定引き上がってきた、それはそのとおりだと思います。だけれども、そのときの答弁は、否定はできないというものでありました。つまり、基準が下がれば最低賃金の見直しもあるなということもありました。まさにそういう問題であるということをまず指摘をしておきたいと思います。

 そこで、提案にいきますけれども、労働総研はこのほど、最賃の引き上げは日本経済再生への第一歩という報告を発表しました。

 賃金構造基本統計調査をもとにして、時給千円を下回っている労働者が二千二百五十二万人と推計をしました。この人たちの時給を仮に千円に上げた場合、六兆三千七百二十八億円必要である。ここから計算していきますと、雇用が四十一万人ふえるとか、家計消費支出を四兆五千六百億円増加させ、GDPを〇・八%押し上げる効果がある。そして、働いてもなお足らなくて生活保護を受けている方もいるわけですが、そうした方たちを十六万四千世帯を改善させて、三千八百億円の財政支出削減になる、こういう提案をしておるんです。

 そこで、最低賃金は現在、全国平均七百三十七円です。私たちは全国一律千円を求めてまいりまして、民主党は、一律ではないが、八百円以上、平均千円という目標だったかなと思うんです。

 これをやはり思い切って引き上げて、暮らせる賃金にする。そうしたら、保護に頼らなくてもいいわけだし、内需の拡大ということ、今言ったような効果があるわけですから、そういう前向きな方向に向かっていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

小宮山国務大臣 民主党もマニフェストで、御指摘のように、最低賃金が全国で平均千円という目標を掲げています。政府でも、平成二十二年六月に策定しました新成長戦略で、二〇二〇年までの目標として、全国最低八百円、全国平均千円ということを掲げています。

 この目標の実現に向けまして、これは雇用、経済への影響ということもありますので、労使の関係者と調整を丁寧に行いながら取り組んでいきたいと考えています。

高橋(千)委員 ぜひ、この目標を掲げて、しかもスピードアップしてやっていただきたいということを求めたいと思います。

 それで、議論がいろいろありまして、例えば、稼働能力がある者はという、ある者はというのは単に年齢で見ているところがあるわけですが、仕事が見つからないのに対象外にするとか、あるいは生保受給に訓練を義務づけるという強引なやり方はやはりやるべきではないと思います。

 今やられている求職者訓練制度も、欠席すれば給付がとめられちゃう、そういうこともあるので、例えば、面接が、せっかく頑張って二次、三次となっても、それ以上休んだらだめよということになるので、非常に矛盾があるわけですよね。あるいは、訓練メニューが不足して、希望しても受けられないという問題も出ています。

 ですから、今政府がいろいろ生活困窮者対策ということで、保護の手前の支援策を検討しているということは、私はとても大事だと思っています。もっとこれを拡充させて、例えば、ヨーロッパでは、若い夫婦に最も必要なのは家賃補助だということで重視していることや、訓練を義務づけない求職者支援制度など、そういう教訓に学んで、緩やかな保護の形を、がちっとしたものではないことも検討していく必要があるんじゃないかなと思いますが、いかがでしょうか。

小宮山国務大臣 生活困窮者の対策として、ことしの秋をめどに生活支援戦略をつくっています。この中で、求職者、就労の支援ということも体系づけて盛り込んでいきたいというふうに考えています。

 この戦略の検討に当たりましては、就労ですとか自立に向けて、それぞれ多様性があるので、それを尊重した対応を基本として、本人が主体的に自己決定をしてやっていけるようにということで、参加と自立に向けた積極的な努力、それを支援するということを基本に考えています。

 こうした視点から、谷間なく総合的な相談支援体制を確立すること、本人の状況に応じた伴走型の寄り添うような支援をしていくということ、そして経済的、社会的な自立に向けた多様な就労機会を確保する、また、おっしゃったように、居住の確保、家計の再建支援とあわせた資金の貸し付けなど、そうした取り組みを、これは政府の人手だけではなかなかできないし、本当にきめ細かに伴走をしていくためには、NPO法人など民間企業とも協働、ともに働くことをしながらやれるような形を今検討しているところです。

高橋(千)委員 二〇〇〇年から自殺者三万人が恒常的になってしまいました。下がらないです。二十歳代の青年の死因のトップが、約半分は自殺であります。また、自殺したいと思ったことがあると答えた方も四人に一人です。リーマン・ショック以降の乱暴な派遣切りやリストラがなければ、保護に至らず働いていたかもしれません。派遣村は自殺の一歩手前の人をたくさん救いました。

 また、今お話しした訓練制度も、実は、さっき紹介した札幌の白石区の姉妹、お姉さんは給付を受けていたわけですよね。その手当が出るまで一週間かかる、それまで何にもないので何とか保護を受けたいといったときに、食料があればいいんでしょうということで乾パン、そういうことをした。だから、本人がサインを出しているのに、いやいや、申請の意思がなかったということで片づけられているわけです。せっかくの制度があるんだったら、やはりそこをちゃんと、もう少しつなぎ目があってもよかったのになということが言えます。

 ですから、私はこの伴走型というのはとても大事だと思いますが、かなめの人の問題はやはり充実させなければならないと思うんですね。

 そこの話を後でするんですが、その前にもう一つだけ指摘をしたいことがあるので、きょうはちょっと提案もぜひさせていただきたいので、もう一つお願いしたいと思います。

 そこで、資料の三枚目を見ていただきたいと思います。

 これは「境界層該当証明書」とあります。境界層とは何かということになるわけですが、(一)に「却下に係る申請日・廃止日」、つまり、生活保護を申請して却下されたということを証明している書類であります。

 その下に、「保護を要しない理由」「境界層該当措置による」ちょっと空白があって「  円以上の減額を受けることにより、保護を要しないため。」つまり、例えば介護の利用料が五千円だとして、五千円丸々払っちゃうと保護を受けなきゃいけないほど大変だけれども、そのうち幾らでも、三千円でも補助すればやっていけるんだ、そういう保護基準、境目の人たちのことを境界層と言うわけですね。

 これは、私はもっと使ったらいいんじゃないかという議論をこれまでもしてきました。この制度は、医療、介護、障害、さまざまあると思いますが、どのくらい活用されていますか。

小宮山国務大臣 今委員から御紹介があった境界層該当者、これは、より低い基準を適用して負担を軽減すれば生活保護を必要としない状態になる人なんですけれども、医療保険、障害者自立支援制度での境界層該当者の数、これは把握していません。介護保険制度で境界層措置の適用を受けている人の数は、平成二十三年四月一日現在で三千七百六名です。

 現在の制度でも、境界層の措置を適用することによって、各制度で最も低い負担区分とすることを可能にするなど、できる限りの対応をしているところです。

高橋(千)委員 本当に少ないですよね。三千七百六名、介護だけしかわかっていないということですが、二千九百万人が被保険者であるということからいっても、もっと救える人がいるのではないかなと思うんです。

 それで、この書面は福祉事務所長が発行することになっているんですよね。そうしたら、みんな知っているんだろうかということ、保護はだめだといったら、せめてこういう制度があるよと言ってあげたらどうですか。この数さえ知らないとはどういうことなんでしょうか。もっと周知徹底して、これがあればもっと救われるという人もいるんだから、活用していただくことが必要だと思いますが、どうでしょうか。

小宮山国務大臣 こういう仕組みを用意していますので、おっしゃるように、それが知られていないのでこれだけの数ということは、私もそうかと思います。そういう意味では、周知をしっかりと徹底していきたいと思います。

高橋(千)委員 はい、周知をお願いいたします。

 本当に、実はこのことを何回も私はこだわっているんですけれども、厚労省もやはり縦割りなものですから、各課の方たちに、保険料が高いじゃないかとか、負担できないで保険証が取り上げられているとか、いろいろな議論をするときに、そんなに大変だったら保護を受ければいい、こう言うわけなんですね。でも、それは正しい道だろうかと思うんです。

 一体改革だと議論をしているのに、自分のところの分担じゃなければ、ほかに行くんだったらそれでいいのか。そういう問題じゃないと思うんです。だったら、生活保護がどんどん膨れ上がっても仕方ないという制度になっちゃうんですよ。

 そうじゃなくて、保護を受けなくてもこういう減免制度があれば暮らしていける、さっきの年金の話じゃないですけれども、わずかな年金だけれども暮らしていけるという人がいる方が健全な姿ではないですか。財政的にもそう思うんですよ。

 この考え方をもっと拡充させて減免制度を発展させていくということが大事だと思いますが、いかがですか。

小宮山国務大臣 このことだけに限らず、私も、やはり局縦割りが省内の中にもあることについては、気がつくたびにそこのところは言っているところなんです。

 そういうことが事実としてあればまた御指摘もいただければと思いますが、そういう縦割りということではなく、厚生労働省全体として、おっしゃるように、少しでもやはり生活保護を受けずに済む人が多くなることということが必要なわけなので、そういう意味では、この制度の周知ということにも努めていきたいというふうに思います。

高橋(千)委員 ここは本当にお願いしたいと思います。

 さっき紹介した介護の話も、いろいろ助成はしてあげるんだけれども、ゼロということはないんだと言うんですね。ゼロがあってもいいんじゃないかと言うと、いやいや、そこまで来るとあとは保護ですと言う。いやいや、保護でなくてもゼロの方がまだ全体としてはいいんじゃないかという意味で、財政的な効果も含めて提案をしていますので、本当であれば一体改革というのはこういうことを議論したらいいんじゃないかなと思いますので、ぜひお願いをしたいと思います。

 さてそこで、先ほどの伴走型の話に入りたいなと思うんですが、これまでの議論で大臣は、保護が必要な方が受けられないということはないようにと繰り返しおっしゃいました。

 不正受給に対しても、私たちは厳正な対応をしていくことは当然だと思っているんです。そのことによって、真面目に保護の範囲で切り詰めながら暮らしている人たちが肩身の狭い思いをしなくてもいい、逆に言うとそういうことになりますよね。

 でも、どっちにしても、その鍵はやはり窓口なんですね、福祉の人材なんです。既に各種報道でも、ケースワーカー一人当たりの生活保護世帯数は九十六世帯、多過ぎるということが指摘をされています。社会福祉法十六条に基づく標準配置数はどうなっていますか。

小宮山国務大臣 ケースワーカー一人当たりの担当生活保護世帯数、これは、今御指摘いただいたように、平成二十一年度のデータで見ますと、全国平均でおよそ九十六世帯。これを市部と町村部に分けてみますと、市部では、標準では一人当たり八十世帯に対して、一人当たりおよそ九十九世帯、町村部では、標準と同様で一人当たりおよそ六十五世帯となっています。

高橋(千)委員 一対八十に対して九十九であるということで、現実に、標準でこの程度までよと、それ自体も私は多いなと思うんですが、それを超えているという実態があるかと思うんですね。

 それだけではないんです。二〇一二年の三月に公表された札幌市の包括監査報告書によれば、ケースワーカーの業務量が過重になっており、扱う制度が複雑になっているにもかかわらず、かかわらずですよ、担当年数が一年未満が二三%、一年以上三年未満が四八%、合わせますと三年未満の経験しかないケースワーカーが七一%もいることがわかりました。

 そこで、全国はどうでしょうか。なぜ、このようになっているのでしょうか。

小宮山国務大臣 ケースワーカーの平均経験年数そのもの自体はわからないんですけれども、業務経験が三年未満の人がおよそ六割となっています。この理由としましては、地方自治体で人事異動などの事情があるというふうに考えられます。

 一方で、業務経験の長短にかかわらず、生活保護制度を国民の信頼に応えるものにするためには、ケースワーカーの資質の向上、これが非常に重要な課題だと考えています。

 このため、厚生労働省では、全国ケースワーカー研修会を毎年実施するほか、福祉事務所でケースワーカーを指導する立場にある職員向けの研修を実施しまして、各自治体でも独自に研修を実施しています。

 国と地方それぞれの取り組みによりまして、ケースワーカーの資質の向上には努めていきたいというふうに思っています。

高橋(千)委員 単純に人事異動でいいのか、経験が蓄積されなくていいのかという問題意識を持って質問をいたしました。

 次の質問に答えながら、ぜひお願いしたいなと思うんですが、資料の四に都道府県別の充足状況を示しておきました。

 これは、全国は九四・二%なんですけれども、話題の北海道が、保護率が二七・三%とかなり高目ですけれども、充足率が九五・八%。大阪は、二九・四%に対して、六九・五%にすぎません。ですから、こういうものを見ていくと、すごく充足率が高いというところもあるのはどうしてかなと思うんですが、一人の持ち数が多いということは当然わかるわけです。

 そこで、雑誌「世界」の五月号にルポが載っておりました。大阪市内のケースワーカー九百八十人のうち、約二百十人は三年契約の任期つき職員だといいます。フルタイムで月の手取りは十三万円。正職員は持っているケースが七十件から八十件程度なのに、自分は百件もケースを持っているという任期つき職員の女性の声を紹介しています。

 給与は生活保護水準以下、私より稼いでいる人の相談に乗ることもありますというコメントが載せられていて、これは本当に深刻な実態だなと思うんですね。

 やはり、生活保護という最もコアなところ、人権にかかわる部署ですよね。当然、社会福祉士法でも、その資質ということは定められていると思います。

 ですから、さっきの質問に返りますけれども、こういうことを、経験の蓄積を大事にしなくちゃいけないんじゃないかということと、では、この非正規職員というのはどうなっているんですか。

    〔古本委員長代理退席、委員長着席〕

小宮山国務大臣 御指摘のケースワーカーの充足率のデータ、これは平成二十一年度に国が地方自治体への監査を実施する際に随時把握したものです。

 その際に、この調査では、正規雇用、非正規雇用といった雇用形態についてまでは調査をしていません。調査時点は異なりますけれども、平成二十一年に実施をしました別の調査で見ますと、九百九十八人の非正規職員がケースワーカー業務に従事をしていました。この調査では、同日時点の正規職員数は一万三千八百八十一人になっています。

 おっしゃるように、やはり経験蓄積が必要だということについては、先ほど申し上げたように、さまざまな研修などでそこを補うようにしていきたいというふうに考えています。

高橋(千)委員 六月二日付の朝日新聞に、栃木県のケースワーカーを十年経験したという男性の方の声が載っていました。県の福祉事務所長、つまり自分の上司だと思うんですが、過剰な支給は上司がチェックするからいい、だが、適用漏れがあったら取り返しがつかないと訓示をされた。本来支給すべき保護費が支給されていない場合には監査で叱責された。最近の福祉関連の窓口では、保護の申請さえ受理してもらえないケースが少なくないという。調査して適用外なら却下の処分をすべきだが、門前払いは違法行為だ。生活保護行政は四十年前と比べて後退しているのではないかと指摘をしています。

 大臣、思うのですが、やはりこれが本来の仕事ではないでしょうか。不正だとか、支給をやり過ぎたというものは後で正していけばいいけれども、命にかかわるような、本来もらえる人が漏れてしまうということはあってはならないということを県の事務所長が教えていた。やはり、こうでなければならないと思うんです。

 ですから、先ほど九百九十八人の非正規職員の話がありました。外部委託ということも言われています。でも、やはり一番肝心なところはこの人たちが担っていかなければならないわけでしょう。この体制をきちんと充実させていくということを、ぜひ大臣に決意をお願いしたいのと、総務大臣にも、定数減ばかりではなく、必要なところには増員していくべきだということで、お二人に質問したいと思います。

小宮山国務大臣 生活保護受給者の自立支援ですとか不正受給の防止など、その制度を適正に実施するためには、各自治体で業務に当たるケースワーカーを確保することが重要だということは言うまでもありません。

 このため、ケースワーカーの確保に必要な人件費については、地方自治体全体の職員数が減少する中、受給者が増加している状況などを考慮して、平成二十一年度以降、毎年度、地方交付税算定上の人数をふやしています。

 また、生活保護受給者に対する就労支援を強化しながらケースワーカーの業務負担を軽減するために、ハローワークに就職支援ナビゲーターを、また福祉事務所には就労支援員の増員を行うような取り組みもしています。

 厚労省としましては、今後とも、必要な人数の確保を図りながら、なるべくきめ細かに、寄り添って支援ができるように努めていきたいと考えています。

川端国務大臣 お答えいたします。

 厚労大臣と若干重複いたしますけれども、ケースワーカーの職員数は、地方公務員の数が減っている中では、ふやしていっていただいています。ただ、先ほどからありますように、生活保護適用者数の増加ほどはふえていないので、結果として、一人当たりの担当世帯数がふえていることは事実でございます。

 そういう中で、平成二十一年以降、総務省といたしましても、毎年度、地方交付税の算定上の定員を見直しておりまして、ケースワーカー措置数の推移というので、市分でいいますと、平成二十一年十名を二十四年度は十三名、県分は二十一年度十六名を十九名、そして医療扶助単価等の見直しということでの単位単価は増額しているということを含めて、結果として、生活保護費の基準財政需要額は、平成二十二年から二十三年の増加を見ますと、市分で一四・二%、県分で六・四%ということで、増加をするということにして、適切に対応してきております。

 各地方公共団体では、先ほど充足率のお話が出ておりましたけれども、効率的で質の高い行政を実現するために、地域の実情に応じ、行政需要の変化に対応しためり張りある人員配置を行っていただきたいということと同時に、引き続き、自主的に適切な人事管理に取り組むことが重要であるというふうに思っておりまして、総務省としては、先ほど申し上げた対応を含めて、これからも対応してまいりたいと思っております。

高橋(千)委員 今、お二人とも、福祉の部署はふやしたんだという御答弁でした。そのとおりなんですよね。集中改革プランで、五年間で目標の超過達成を地方自治体はしているわけですよね。それほどの削減をして、国家公務員五・七%よりも超過をして達成をしている。その一方で、福祉事務所などの人は六%以上ふやしているというと、その振れ幅が大きいわけですよね。その振れ幅が、どこにひずみが来ているかというと、保育所の民営化ですとか外部委託ですとか指定管理者制度ということで、がばっと民間に移譲しているというところでつじつまをとってきたという姿なんだと思うんです。

 ただ、それをいつまでもやっちゃいけないですよね。もう改革プランは終わったわけですから、これからはやはり充実に転じていかなければならないと思います。

 地方公共団体定員管理研究会のまとめでも、部署によっては、非常勤職員の占める割合が大きくなっていて、責任の所在が課題だという指摘もございます。

 ですから、本当にそこは見ていって、福祉の部署だけふえたといっても、全体のひずみが来ているんだということを指摘したいと思います。

 もう一言で終わりますので。

 既に伴走型の支援をしているケースワーカーの方は本当にいらっしゃいます。認知症のお年寄りに付き添って一日財布を捜してあげたり、金銭管理をしてあげたり、アパートを見つけてあげたり、そういう頑張りをしていらっしゃるし、また、そのことがもう寝ても覚めても離れなくて、ストレスを抱えて休職に至ってしまう、そういう方もまたいらっしゃる。

 そういう現場なんだということを指摘して、なかなか職員の頑張りのところには光が当たらないですので、一方では厳し過ぎるという話と、一方では甘いんじゃないかということが言われて、本当に頑張っているところが見えてこない。だから、そこにも光を当てていただいて、必要な体制をちゃんととっていってほしい、このことを指摘して、終わります。

中野委員長 これにて高橋さんの質疑は終了いたしました。

 次に、吉泉秀男君。

吉泉委員 社会民主党・市民連合の吉泉秀男です。

 この委員会において二回目の質問に立たせていただきます。

 二十一日の会期末を控えながら、この委員会においても相当議論が、また審議が詰まってもきたんだろうなというふうにも思っておりますけれども、しかし、地元に帰ってみても、さらにはマスコミの世論調査等々を含めて見ましても、国民の声は非常に冷たい、こういう状況だろうというふうに思っております。

 昨日、中央新聞の、ある新聞社の調査結果が出たようでございます。それを見ますと、今回の法案に対して、賛成は三一%、反対が五六%。しかも、前回の調査から賛成が七%減少し、反対が五%上回っている、こういう調査結果が出たわけでございます。

 こういう状況の中において、今の野田政権、まさに政治生命をかける、そういう一つの方向の中で引っ張ってきているわけでございますけれども、私どもからするならば、国民の理解がなかなか得られない、そしてまた、逆に反対の声が出て、そしてそれが増加をしている。こういう状況から見ると、この法案に対する審議、さらには国民の声はなかなか冷たいんだなというふうにも思っております。

 そうした中で、大臣は、この国民の判断、こういった部分をどういうふうに受けとめているのか、まず冒頭お伺いをさせていただきます。

岡田国務大臣 最近の新聞社の調査、確かに厳しい結果が出ております。ただ、私は、それは調査のやり方にもよりますし、そういう数字には一喜一憂しない、その結果を無視するというわけではありませんが、そのことによって余り判断を左右されないという基本的考え方に立っております。

 私も週末ごとに各地を訪れて、百人から二百人規模の集会を一時間半ほどやり、皆様の御意見を聞かせていただいております。確かに、増税は嫌ですからいろいろな御意見も出ますが、同時に、社会保障制度をしっかりと維持していくためにも一定の負担増はやむを得ないという声も実はたくさんあるわけでありまして、フラットに消費税増税反対か賛成かと聞けば反対と答えられる方であっても、社会保障制度の持続可能性のために消費税を上げることについてどうかと聞けば、また違う答えが返ってくるんじゃないか、そういうふうに実感をしているところでございます。

 増税は大変厳しいことですから、簡単ではありませんけれども、ぜひ多くの国民の皆様の御理解をいただきながら、やはり次の世代のためにもここはやり抜いていかなければならないというふうに考えております。

吉泉委員 大臣の、ミニ集会なり二百人集会なり、そういうところでの状況を今お聞きしたわけでございます。

 しからば、社会保障制度の充実、こういう言い方をするわけでございますけれども、しかし、昨年の予算、ことしの予算、これを見ていった場合に、二十三年度の当初予算では、社会保障費の額というふうになれば、二十八兆七千億、全体に占める割合が三一・一%。補正の段階でこれを減額いたしまして、二十六兆四千億、二七・九%と減額をされております。そして、ことしの予算、このことを見ますと、交付国債、これを除いて二十八兆五千億、昨年とほぼ同額でございます。

 それぞれ、今の現状の中において、お年寄りがふえてきている、そして社会保障というものについて、やはり大事だし増額をしていかなきゃならない、こういう声なんだろうというふうに思っておりますし、自分自身もそう思っております。しかし、今の状況の中から見れば、なかなかそれが数字になってあらわれていないというのが現状だろうというふうに思っております。

 ましてや、今回の法案の内容を見ましても、五%これを引き上げる、この部分について、国は三・四六%、地方に一・五四%配分をして、そして使途は、社会保障の充実一%、これまでの社会保障の安定化、制度を守る、そういう意味で四%、こういうふうに説明をしているわけでございますけれども、それならば、今の現状の中において、社会保障費という部分については一体どのぐらい必要なのか、どのぐらいの割合を全体の枠の中で示すのか、このことについて、やはり今の予算の編成、そういうものを見ましてもなかなか見えてこない、こういう状況にあるというふうに思っています。その点についてお伺いいたします。

安住国務大臣 ちょっと誤解もあるのではないかと思いますけれども、昭和三十五年からの例をちょっと申し上げますと、昭和三十五年のときを例にしますと、社会保障関係費は、一般会計に占める比率は一一・一なんですね。ところが、今、これは二九・二になっています、二十四年度で。公共事業というのがよく言われますよね。これは一七・四%なんです、昭和三十五年。これが今、五・一ですよ。その他、文教・科学振興、防衛、全部ひっくるめて、先生、これが昭和三十五年で五一・二%ですから、大体予算総額の半分ですね。これが今、二三・一です。

 つまり、公共事業と文教・科学振興、防衛費等を全部仮に足したとしても二八・二ですよ。社会保障は全予算の二九・二なんです、今。ということは、足らないんじゃないかという御指摘もありますが、実は、これはやはり時代のニーズに応じて、社会保障費は一般会計の中で相当物すごい割合を占めてきた。むしろ本当は、教育、科学振興、中小企業対策とか、そういうことに対する予算を、もっと充てたいという気持ちもありますけれども、全くそういう余裕というのがなくなりつつあるというのが財政の硬直化を招いているのではないかと思うんです。

 先生は地方自治が長いですから、しかし、地方自治だけは、昭和三十五年から、平均、アベレージでほぼ一八%ずつ、地方に対する交付税の交付というのは変わっていないんです。現時点でも二十年前でもほぼ同じなんです、多少の増減はあっても。

 ですから、総論でいうと、国債費の割合がどんとふえましたよね。それで、地方に対する仕送りはほぼ同じアベレージで、実は変わっていないんです、政府から地方に対しては。社会保障だけぐんと一一%から二九%に伸びて、そのほかがぐっと減ったという現状でございますので、この傾向は、これからますます高齢化社会になって、どんどんどんどんこの割合はふえていくと思います、今の制度でいけば。

 だから、無駄なことや、まあスリム化というのは必要だとは思いますけれども、高齢者の方の数がふえてくるわけですから、このシェアはもっと高まっていくので、このお金をどういうふうにしていくかということが目下の急務だと思います。

 その中で、社会保障は保険料と公費負担で賄っているわけですね。これは百兆を超えました。これが十五年たつと百五十兆近くになるわけですね。そうなったときに保険料だけに依存するというわけにもいかないので、公費の、公の負担分を水平的な税である消費税で、みんなで全世代で分け合わないと、若い人だけに、例えば所得税に依存したらそうなってしまいますし、我々も大変つらいところでございますが、そういうことで、構造的な問題が背後にあって消費税をお願いしているということでございます。

吉泉委員 昭和三十五年からの数字を出してやったわけですけれども、しかし、そのことについて、今、三〇、三五、そういうところまで割合がふえる、占めてくる可能性というのは十二分にあるわけですよね。

 ですから、抑えるのではなくて、やはりある程度の一つの考え方、いわゆる五%を上げる、そういうふうになっていった場合に、全体の枠の中においては大体このぐらいの割合の中で、社会保障費についての位置づけというものをきちっと示す、そういう必要があるんだろうというふうに私は思っております。

 ですから、そのことについて、確かに少子高齢社会が急激に進んでいる日本でございますから、そんな面については今の政権の中で少しきちっと位置づけをやらないと見えてこない、こういうふうにも思っております。

 そして、もう一つの財政再建、このところについて、今、国民からいえば、もう一千兆円借金だ、毎年四十兆の借金をふやす、やはり相当のショックな一つの覚え、さらには、若い人にとっては今後のすごい不安、こういうものを醸し出している現実だろうというふうに思っております。

 そういう中において、今、それぞれ学者なり、さらには有識者の方については、財政を立て直すには消費税を一五%、一六%、こういう言い方をする人もおりますし、さらには二〇%、三〇%、こういう言い方をする人もおります。その根拠はやはり、今の四十兆、この部分の、いわゆる借金をしている、そのところを割った数字を消費税に依存する、そういうふうになるとそういう数字が出るんだ、こういうことなんだろうというふうに思っております。

 しかし、そういう声というものについて、またはそういう学者、そういう人方の意見というものは意見としてありながらも、前回もお話ししましたように、私ども社民党としては、消費税に依存するのではなくて、やはり一つの法人税を含め、いろいろな面で考えていかなきゃならない、こういうことについても提案をしているところでございます。

 そういう中で、財政再建、このところについて、今の社会保障の問題も当然あるわけでございますけれども、今、政府としては、今後の、借金をしないで運営をしていく、そういった部分について、なった場合に、どのぐらいまで消費税に依存していくのか。

 だから、五%と言われても、そういう借金とそれから毎年四十兆を出している、このところもなかなか国民からは、財政再建だ、さらには社会保障の充実だ、こういうふうに言われても、何を言っているという声、そういう部分の中において反発もあるんだろう、こういうふうに思っております。

 そんな面の中では、今の政府の考え方、今は五%なんだけれども、今後、借金体質から脱皮するためにどういうふうに考えているのか。本音のところをちょっとお聞きしたい、こういうふうに思います。

安住国務大臣 問題は、やはりふえ続けた国債の元利払い費はずっとつきまといますから、現実に、現時点でも約二十二兆ありますね。この比率が二四%もあるわけですから、普通の家で計算すれば、例えば百万円あったとして、二十四万円は自然と、黙っていても借金払いに消えていくという構造ですよね。

 ですから、私どもとしては、少なくとも二〇二〇年までの間には、この国債費、元利払い費を除くいわゆる一般経費については、何とか税収でプラス・マイナス・ゼロにしたいというのがプライマリーバランスだと思うんです。

 そこに行くには、では、どれぐらいこれから足りないのか。もちろん、成長をどれくらいして、税収ほかがどうなっていくかということもありますから、例えば、先生、一五年の一〇%をもし上げさせていただいた時点では、三角三%ちょっとなんですね。GDPの大体三%ですから。残りは、二〇二〇年までの間にこの三角三パーを埋めないといけないわけですよ。それは多分十数兆円ということになりますけれども、これは、総理もおっしゃっているように、まず成長して税収を全体でふやす。それから、歳出を思い切っていろいろなところを削減する。さらに足らず前のところについては税体系全体の中でこれを考えていく。三つの道からいわば山を登って、プライマリーバランスをゼロにする目標に近づけていきたいというのが偽らざる本音でございます。

吉泉委員 なかなか本音的には出さない、そして楽観的な、そういう今の答弁だというふうに私は思っております。高度経済成長の、そのところをまだ夢見ているのではないかな、はっきり言ってそういうふうに思います。

 この間十数年間、自民党政権、民主党政権、一生懸命頑張ってまいりました。そして、私どもそれぞれ国民も一人一人、一生懸命働いてまいりました。しかし、実際に効果は上がらない。そういう中で、政府は口を開けば成長戦略、そして三%、二%、こういう言い方をいたします。そして、そのところを一つのいわゆる努力目標、そういうふうなことの中で私方を誘導するわけでございますけれども、しかし、昨年の実質マイナスという数字も出ました。それから、政府の見通しの部分についてもやはり一%なりそういう数字を出して、それも達成でき得ない、こういう状況が続いてきているわけでございます。

 私は、もっと現実を直視しながら、経済は上向きに成長させる、そのことは当たり前なんだけれども、しかし、この発想というものについてもう少し厳しく見ながら、社会保障制度を初めあらゆる制度に対して、やはり少しきつい視点で諸制度を構築していく必要があるんだろう、こういうふうに思っておりますけれども、岡田大臣の見解をお伺いします。

岡田国務大臣 委員から大変いい御意見をいただいたと思うんですね。

 もちろん我々は、成長戦略ということで、名目三、実質二ということを目指す、そのことは非常に重要なことだと思っております。しかし、それが達成できないという場合であっても、やはり財政のバランスというものがそれでまたさらにどんどん悪くなるというような事態は避けなければなりませんので、同時に歳出削減の努力も必要だし、あるいは今回の消費税五%引き上げということは、そういう意味でもこれはもう避けられないことである、そういうふうに思っております。

 なるべく増税というのはその幅はふやしたくない、そういう思いの中で、経済成長とかあるいは歳出削減とか、まずはそういうことにしっかり力を入れていきたいと思いますが、五%引き上げた後のさらに次のことについては、そういった成長率とか歳出削減の努力を見た上で、どういう税目でどのぐらい増税するかということを再度御議論いただく場面がやがて来るということだと思います。

 そのためにも五%引き上げというのは、もうこれは避けられないことではないかというふうに思っております。

吉泉委員 今、岡田大臣の方から答弁があったわけでございますけれども、総枠、自分として受けとめるならば、五%、当面、二〇二〇年度までは頑張っていく、私はそういう捉え方をしたわけでございますけれども、しかし、前に、生活保護の問題について高橋委員の方から五十分あったわけでございますけれども、私は今の現状ということを、今の貧富の差、この部分も余りにも激しくなってきているのではないかなというふうにも思っております。

 今、生活保護の現状というふうになれば、終戦後の二十年のところよりも上回った、こういう状況ですね。えっ、終戦後のあの日本の姿よりも生活保護がもっと上回った、これは大変なことだと思うんですよね。

 その中で、非常に気になるのが高齢者ですね。七十歳以上が二八%、六十歳以上が二二・九%、五十歳以上が一四・二%。五十歳以上の段階でも六四・二%の生活保護者の現状なんですね、全体の。これはやはり異常なんだろうというふうに思っております。そして、平成七年から急激に伸びてきた、こういう状況でございます。

 その中で、今、生活支援戦略の骨格、この中において、一つ一つ戦略の方向性を出し、そして基本的な視点なんかも出して、議論がこれからなされるんだろう。また、今現在、一回か二回はやっているんだろうというふうに思っておりますけれども、気になるのが、生活支援戦略の進め方という中において、生活支援の一つの基準の問題なんかも含めて、そういった部分をみんな含めてやっていくという部分が非常に気になるところなんです。

 やはり私は、平成七年以降、これだけ高齢者が急激に生活保護を受けなければならない、そういう現状について、大臣としてどういうふうに現状を分析しながら対応しようとしているのか、そのことについてまずお伺いします。

小宮山国務大臣 生活保護の受給者がこれだけ急増している要因というのは、さまざまあると思います。

 一つは、やはり厳しい経済状況の中で失業する人がふえている。それから、今委員が御指摘いただいたように、やはり高齢者が、自立して就労することが難しい高齢者が、御紹介いただいたように、六十歳以上が四八%、全体の半数近くになっているということも、ふえているということの大きな要因だと思っています。

 委員がおっしゃいました生活保護の基準については、基準の部会で今、五年に一度のデータをもとに検討していますので、その基準の問題とこれからの生活支援戦略というのは、別の形というか別の場所でやっているということは御理解をいただきたいと思うんです。

 生活保護が本当に必要な人に行くということは、さっきから御議論があるように、必要なことです。ただ、働ける方には働いていただくということが必要なので、そういう意味では、就労支援で自立を促していくということ、そして就労がなかなか難しい高齢な方にはボランティアに参加をしていただくなど、とにかく社会参加をして自立を促していくということ、そうした取り組みにあわせまして、やはり不正受給の是正、そうしたことを幾つか組み合わせてやっていきたいというふうに思っています。その際には、寄り添って就労の支援や生活の支援をするために、NPOの方たちにも協力をいただいて、協働という形でやっていきたいというふうに思っています。

 この生活支援戦略、これはことしの秋をめどに策定をしたいと思っていますが、六月にまとめる日本再生戦略の中にも、これは国全体、政府全体として取り組むということで、柱の一つに入れたいというふうに思っています。

吉泉委員 今の失業者の問題、そして高齢者の問題、これは一つの原因ということで言ったわけでございますけれども、今一番大きい問題が高齢者の問題。さっき話しましたように、五十歳以上がもうこれだけ、六四%も受けているんだ。その中において、六十五歳以上の年金受給者、これが約七十万、そのうちに、年金受給者の中において生活保護が、受けている部分というのがそれの半分もいるわけですね。

 そういう点からいうと、この年金の問題とどうしてもリンクせざるを得ない。一生懸命頑張ってきて、そしてそれぞれ、今の核家族の問題なりいろいろな状況がある中で、今、お年寄りが孤立的な状況になっているんだ。このところに相当のメスを入れ、そしてまた、そこのところを視点としながらの、生活保護の物事を考え、変えていかないと、今までのような状況の中に、失業なりそういった中における一つの生活保護、それは当然自立していなければならないわけですけれども、問題は、やはりお年寄りのそういう人たちの生活保護の考え方というものについて、もっともっと視点を追求、さらにはそこの抜本的な施策が求められているんだろうというふうに私は思っております。

 そういうふうな中において、私どもは、これまでも消費税、この部分について、五%の当時についても何とか、低所得者というふうな部分ではなくて誰でもが、食料品なりさらには日用雑貨、このことについては戻し税を含めてやるべきだ、こういうことを主張してまいりました。

 それが今、一〇%、上げていく段階において、この逆進税の問題でいろいろな議論がなされ、そしてまた還付方式とかいろいろな形で今考えられているようでございますけれども、しかし、働きたくても働けない、そしてまた、年金の部分が少なくて、こういう一つの現状がある中において、やはり私は、もう一度、今、引き上げる前についても、いわゆる非課税の範囲、そういったものを実施するべきなんだろうというふうに思っておりますけれども、このことについてお伺いをさせていただきます。

安住国務大臣 軽減税率のことだけ申し上げますと、先生は弱者のことをおっしゃっているとは思います。しかし、物を、食料品を買うのは、大金持ちも買うんですね。そういう点では、軽減税率をもってして弱者対策とか低所得者対策になるというのは、一方では、高額者の方が高い食材を買ったりしたときには得をするということにもなりかねないし、また、食料品は、どこをターゲットにするかによっては税収のかなりの部分に侵食をするおそれもあるんですね。

 それから、私ども、先生も余目だし、私は石巻だからそれは、東北に行けば、渡部先生のところもそうですけれども、主食といえば米ですね。しかし、傾向を見ますと、総務省の調査ではパンの方が最近は多くなったという話も。ですから、主食といっただけでも、さまざま今度は出てきますから、どこで線を引いてどうするかとなったときには、相当な時間と、それから民族というか国のいわば生活習慣の中でのいろいろな議論というものが必要になってきますので、そういう意味では、そう単純なものではないということだけぜひわかっていただきたいと思っております。

吉泉委員 そのことについては十二分にわかっています。私どもも、この間の段階でずっと議論をしながら、ある程度詰めてもきたところでございます。恐らく、民主党のところでも自民党のところの中でも、この問題についてはそれぞれ政策的な部分についても出してきているわけでございますから、今の現状の中においては一定の合意でき得る、そういう状況については、本気になればやれるんだろう、こういうふうに思っています。

 ですから、今の、これだけ景気が低迷をし、そして上がれば上がるほどまた消費意欲が下がってくるわけでございますから、その点についてはぜひよろしくお願いを申し上げたい、こういうふうに思います。

 そして、時間がなくなってまいりましたんですけれども、年金の問題についても非常に、私どもとしては、先般も言ったわけですけれども、最低保障年金、そして誰でもが入れる、そして一元化、このところについては旗はおろさない。あるところからはおろせ、こういうふうに詰められているわけですけれども、おろさない、そのことについては同意をさせていただきたい、こういうふうに思っております。

 しかし、今の現状の財政の問題を考えていったときに、今までの賦課方式、これで本当に間に合うのかなというふうに思っております。

 百年安心プランの一つの財政の見通し、その基本は、物価上昇率一%、賃金上昇率二・五%、そして運用利回り四・一%、このところが、いわゆる財政を見通していく際に、一つの基準になっているわけですね。今の現状からいうと、それぞれの数字というものは、余りにも高い数字である、甘い数字であるんだろう、こういうふうに思っております。そういうことの中で物事を考えながら、保険料なり、さらには給付の部分を設定した場合に、いろいろな面で後で非常に問題が出てくるんだろうなというふうに思っております。

 大臣としては、安心プランは大丈夫だ、こういうふうに言うわけでございますけれども、私は、今の賦課方式の中については、非常に黄色の信号が出てきているのでないかな、こういうふうに思っております。

 そんな面で、この長期的な一つの根幹である賃金上昇率の問題について現状とそぐわない、こういう状況、さらには、利回りもこんなにいかない、こういう現実の中において、どういうふうに理解をしているのか、大臣からお伺いさせていただきます。

小宮山国務大臣 年金財政につきましては、五年に一度、将来の人口ですとか物価の上昇率、賃金上昇率などの経済前提を設定して長期的な年金財政の見通しをつくり、給付と負担の均衡が図られているか検証を行っています。

 それで、二十一年二月の財政検証では、将来にわたって財政の給付と負担の均衡が図られているということが確認をされています。その後の財政状況につきましても、直近二年間の積立金の実績を見ても、プラス方向に乖離している年もあれば、マイナス方向に乖離している年もありまして、現時点で年金財政が大幅に悪化しているということではございません。

 ただ、賃金が下落をしているなど、現在の経済情勢は楽観視できないものがありますから、長期的な人口や経済の趨勢を見きわめながら、健全な財政運営ができているかどうか、これはしっかりと注視をしていきたいというふうに思っています。

吉泉委員 確かに、十六年度から一回目の検証を二十一年にやった。その中からもう一度向こう五年間の検証をして、そして、財政の見通し、こういった部分を立てたと。

 しかし、今の現状から私は言ったわけでございますけれども、この根拠となる見通しなんですが、この数字を中心としながら、今、財政の見通しがなっているわけですから、このところは、前回のいわゆる十六年から二十一年もこの数字的には達成できていないわけですから、そういう状況の中において、私は、少し甘い数字であるのでないか、こういうことについて心配をしているということでございますので、よろしくお願いを申し上げます。

 あと時間がなくなりました。

 その中で、最後の質問でございますけれども、国民年金の三号者の問題です。

 今、一千万人を超えていますよね。この方は、いわゆるサラリーマンの奥さんだからということで、保険料を掛けないでいるわけでございます。それぞれの理由はあるだろうというふうに思っています。

 しかし、自分自身、地元に行きますと、農家の人だって、奥さんも、お父さんも、おじいちゃんも、おばあちゃんも、みんな掛けている。商店の方に行っても掛けている。何でサラリーマンの奥様がそういうふうにして免除になるのだと。子供を育てている、いや、うち方だって育てていますよと。その国民年金の部分が、六千万人のうち一千万人がそういうふうになっている、こういう状況というものについては、非常に、全体的に見れば不公平感がやはり感じられるんだろうというふうに思っております。

 この点については、相当、部署のところで議論はなされているんだろうというふうに思っていますけれども、この間、それぞれ、女性の社会進出等々含めながらかかわってきている大臣について、この三号被保険者の問題についての考え方をお聞きして、終わらせていただきます。

小宮山国務大臣 第三号被保険者の制度は、昭和六十年の基礎年金導入に際しまして、所得がない専業主婦にも自分名義の年金権を確保するという目的から導入されましたけれども、今委員がおっしゃいましたように、やはりこれは、共働きの世帯、独身の女性、また自営業の方からも、女性の就業意欲を抑制しているといったような批判があることは事実でございます。

 厚労省では、昨年六月に一体改革成案を取りまとめて以降、年金部会などの場で、二分二乗の考え方を含めて、この見直しについて精力的に議論を行ってまいりましたが、現在、一体改革大綱では、引き続き検討という形になっています。

 ただ、おっしゃったように、配偶者控除、それからこの三号の問題、そして今回出している社会保険の適用拡大を含めて、やはり、生き方、働き方に公平な制度にしていく必要はあるというふうに私自身も思っています。

吉泉委員 ありがとうございました。

中野委員長 これにて吉泉君の質疑は終了いたしました。

 次に、江田憲司君。

江田(憲)委員 まず冒頭、寛仁親王殿下の御逝去を悼み、我が党からも心から哀悼の意をささげさせていただきたいと思います。

 さて、きょうは、我がみんなの党に一時間弱もお時間をいただきまして、この機会をおかりしまして、与野党の理事の皆様には心から御礼を申し上げます。

 いつも私は、予算委員会、この特別委員会でも大体二、三十分でやれと言われまして、そこにかかっている時計とにらめっこしながら時間に追われて質問するものですから、早口になったり大変声を荒げたりして失礼などもあるんですけれども、きょうは、特に安住大臣、御安心ください。しっかりと私も理路整然と質問させていただきますので、ぜひ理路整然とお答えいただきたいというふうに思っております。

 きょうは、日本の財政の真の姿というか現状について、基礎的なことも御質問していきたいと思うんですが、その前に、昨日からきょうにかけて、本委員会にかかっております増税関連法案をめぐって政治的な動きがございますので、その点についてお聞きをせざるを得ませんので、岡田副総理にちょっと冒頭お聞きをしたいと思うんです。

 午前中、御党の小沢元代表が、自民、民主、公明の修正協議入りについてこういう発言をされているという報道に接しました。増税さえ通れば後はどうでもいいという言い方をする人がいるが、これは、政党政治、民主政治を破壊する、冒涜する言い方、行為だというような発言をされ、それで、これは暗に、修正協議を進めようとしておられる野田総理以下政府の皆さん、それから関係党の皆さんを念頭に置いた発言だという報道もあるわけでございます。

 この点について、岡田副総理もいろいろ御苦労されて、そういった形での三党協議、修正協議入りというところにこぎつけたということでございますので、何か、同じ党の所属議員でありながら、政党政治を破壊するだとか、政党政治を、民主政治を冒涜するだとか、こういった発言をされていることにつきまして、御反論があれば、この場でやっていただきたいと思います。

岡田国務大臣 今、小沢元代表ということで言われましたが、そういう発言は、私、確認しておりません。少なくとも、もし御発言が事実だとしても、私や野田総理のことを言ったというふうには理解しておりません。

 つまり、前提は、増税さえできれば後はどうでもいい、そんなことは全く考えていないわけでありまして、我々がお願いしているのは社会保障・税一体改革であります。全体七本の法案をこの特別委員会に審議をお願いしているわけで、増税だけできれば後はどうでもいいなどということは全く考えておりませんので、私や野田総理のことについて言及されたとは思っておりません。

江田(憲)委員 それでは、お聞きをしたいんですが、社会保障と税の一体改革というふうに称されているわけですから、ただ、さはさりながら、伝え聞くところによりますと、自民党さんの方は、最低保障年金を撤回しろだとか後期高齢者医療制度の廃止も撤回しろ、こういうことを強く訴えられてきたわけですよ。

 そういう中で、野田総理も、この二十一日、会期末までにこの法案について採決をする、それが民主党政府の責務であるとまで言い切っておられ、伝え聞くところによりますと、修正協議は十五日までにできるだけ合意をするというようなことも合意されたようでございます。

 この点、岡田副総理にお聞きしたいのは、この修正協議をまとめるためには、こういったいろいろな状況を勘案しながら、例えば、御党が政権公約をされ、掲げられてきた最低保障年金、これについての撤回も含んで協議をされるという理解でよろしゅうございましょうか。

岡田国務大臣 まず、直接の協議の対象は、我々は、国会に出しておりますこの七つの法案だというふうに考えております。その他のことももちろん協議の中で議論の対象になる、そういったことはあり得るかと思いますが、それに対してどう対応するかということは、これはまさしく、協議の中で、各党間で真剣に議論する中で決まってくることで、今、予断を持って、撤回という意見が出るんじゃないかとか、そういった仮定の議論にお答えする必要はないというふうに思います。

 真摯に議論してお互い合意点を見出していく、そのことに尽きると思っております。

江田(憲)委員 それでは、三党協議が相なったときには、その合意には政府側は従う、こういう方針でよろしゅうございますか。

岡田国務大臣 三党で合意することになるのか二党なのか、ちょっとよくわかりませんが、あるいは御党も含めて合意できればもっといいと思いますが、いずれにしろ、それは、各党間で、まず党の中での合意というのが要るわけですね。勝手に三党の代表者だけが合意するだけじゃなくて、党の中で、一定の協議といいますか合意というか、そういうのが要ると思います。

 当然、政府としても、各党間で合意ができるに当たっては、その内容についていろいろとしっかりとバックアップしなきゃいけませんから、政府と民主党との間でそごが出ないように、事前によくコミュニケーションをとって進めていくことになるというふうに思います。

江田(憲)委員 今のお話を聞く限りにおいては、与野党協議、予断を持たずしっかり議論していくというお立場だということで受け取りました。

 しかし、さはさりながら、これは協議ですから、御党が、例えば、最低保障年金にあくまでもこだわる、後期高齢者医療制度の廃止にあくまでもこだわられれば、協議は相ならないということになるんだろうと私は第三者的に見ておりますけれども、そういう中で、協議がまとまらないという場合には、法案採決というのは、一方で野田総理は民主党政府の責務として二十一日までには採決をするんだとおっしゃっているんですが、協議が調わない場合は、採決というのはどうなるんでしょうか。

岡田国務大臣 協議が調わなければ、採決しても、参議院では通らないという事態が予想されるわけです。ですから、何としてでも協議はまとめなければならないというふうに考えております。それ以上、仮定の議論にはお答えする必要はないと思います。

江田(憲)委員 わかりました。そういうことで、予断を持たず、協議に真摯に臨んでいかれるということで承りました。

 民主党さんは、官僚主導を打破して政治主導にしていくんだと。私は、岡田さんは、通産省の先輩でもあり、昔から仕事も一緒にさせていただき、政治家になられても注目をさせていただいておりました。

 そうした中で、民主党さんは政権交代に向けて非常に準備をされてきたと私は思うんですね。その大きな一つの準備が、やはり政権移行チームというものを設けるんだと。従来の政権交代のように、いきなり組閣をして、それで大臣が記者会見をして、官僚が差し出したメモを読み上げればそこで既成事実化されてしまう、まさにここが官僚主導だというような、みそ中のみそだということで、私の理解では、首班指名の特別国会の前に政権移行チームを設けて、内閣や党の骨格人事、基本政策についてしっかり議論をして腹合わせをして、コンセンサスを得て、それでやっていくんだと。

 当時も、例の熱い政権交代選挙の当日に報道された新聞等を読みますと、鳩山由紀夫新総理を座長にして政権移行チームを発足させるんだという報道もあったんですが、これが一瞬にして、せっかく、私の理解するところでは、岡田克也議員が中心になってそうした政権移行チームを発足させる準備もされてこられたと思います。どうしてその政権移行チームというのが当初できなかったんですか。

岡田国務大臣 ちょっと私も記憶が定かではないんですが、政権交代があった後、私は幹事長でしたが、私の記憶では、当時の河村官房長官その他と相談をして、まず引き継ぎをさせていただいたという記憶がございます。

 つまり、政権移行期にあって、たしか当時は、SARSでしたか、いろいろな幾つかの大きな懸案があったんですね、政権として。ですから、鳩山政権がスタートするまでの間に、重要な問題については現政権から、つまり、麻生政権からしっかり引き継いで、そして準備をする、そういったことはいたしました。

 同時に、チームという名前をつけたかどうかは別にして、新しい政権がスタートするに当たって、どういう布陣でいくとか、主要なテーマは何にするかとか、当然、マニフェストを中心に組み立てたわけですが、そういう議論はしていたというふうに記憶をしております。

江田(憲)委員 当時の報道を私も改めて読みますと、この政権移行チームは、もう準備万端、発足するつもりだったところが、小沢一郎さんの鶴の一声で潰れたという報道が目につきました。

 プラス、御党の掲げた政治主導の司令塔、核中の核であります国家戦略局も、私が橋本政権のときに経済財政諮問会議というものを企画立案させていただいたわけですが、それをさらに強化するものとして、ある意味で私は期待をしていたんですね。それが、今の今に至ってまでできていない。それについても、当時の報道を読み返しますと、これも小沢一郎さんの、国家戦略局って何だという一言で潰れたというような報道もあるんですよ。

 ですから、私が申し上げたいことは、今、小沢一郎さん、元代表は、マニフェストの原点に立ち返れということをおっしゃっているんですが、私が見るところ、マニフェストの原点、まさに原点中の原点、官僚主導を打破して政治主導する、そのためにせっかく準備してこられた政権移行チームや国家戦略局というものを潰したのが、当時の報道からすると、小沢一郎さんなんだということが言われているわけなんですけれども、その点について、岡田副総理の見方というのはいかがですか。

岡田国務大臣 国家戦略担当は副総理を兼任する菅さんが担当されたということで、いろいろ最初、御苦労があったと思います。なかなかスタッフが具体的に集まらないとか、物理的なスペースの確保も含めて、一から始まったということで、それがうまく動き出すまでに若干の時間を要したことは事実だと思います。

 小沢元代表がそれに何かブレーキをかけたとか、そういうことは私は記憶にないんですね。ただ、一つあったのは、我々の当初の構想は、政調会長と国家戦略担当が兼任する、そのことによって党と政府、一体感を出して運営していく、こういう考え方でありましたが、ここは、当時の小沢先生のお考えもあって、そういう兼任はしない、ですから、菅さんは政調会長を兼任しないということに急遽なった、そういうことはございました。しかし、全体にブレーキをかけた、そういう認識では私はございません。

江田(憲)委員 さっき安住大臣が私の質問にうんうんとうなずかれていたので、何かございましたら、どうぞ、安住大臣。

安住国務大臣 所管でないので、御勘弁いただきたいと思います。

江田(憲)委員 その辺の経緯はともあれ、結果的に我々の目に見える範囲内で起こったことは、あの年末に小沢一郎幹事長が官邸に乗り込んで、これが国民の意思だとおっしゃられて、ガソリンの暫定税率は維持するんだ、道路公団、道路会社に休日割引用にためていたお金を使って新しく道路をつくるんだと、それまで鳩山内閣が検討していた真逆のことを申し入れた。これははっきりした事実としてあるわけですね。

 それから、幹事長室への陳情一元化というものが出てきて、まさに私の元ふるさとであります岡山県知事あたりが、どうして知事でありながら直接国土交通省や農水省に陳情ができないのか、要望ができないのか、何で民主党県連会長、幹事長室を通さないとできないのかという事件もございました。当時副幹事長を務めておられた民主党の議員の方にも直接私はお聞きしましたけれども、それはそれは、とにかく副幹事長以下が幹事長の指令のもと陳情を選別し、そして選挙の協力をしないと陳情はつながないみたいなことが行われたというお話もしておりました。

 ですから、いずれにせよ、どうあれ、私は、非常に残念だったのは、やはり政権発足当初に、せっかく準備された政権移行チーム、国家戦略局という非常にいいアイデアが船出できなかった、スタートダッシュにつまずいたということだと思うんです。

 その小沢元代表が、今、本当に大変私どもが困惑しているのは、みんなの党と同じようなことをおっしゃっているんですね、この消費税増税については。増税の前にやるべきことがあるだろう、これは、申しわけないですけれども、私どもが最初、結党したときの原点でありますよ、私がいろいろ書いたんですけれども。増税の前に、まず、景気が悪いんですから、その後起こった事象では大震災と原発事故が襲って国難の中にあるんですから、まずこれを最優先課題として、大震災からの復旧復興、それから景気をしっかり、十数年デフレなんですから、デフレから脱却して経済を成長させていく、これを最優先課題として取り組むべきだと。

 いろいろありますけれども、もう一つが、確かに額的には幾ら踏ん張っても些少かもしれませんけれども、やはり、隗より始めよ、国会議員や役人が身を切ってみせなければ、国民の皆様も負担を納得されない。そういう意味で、国会議員や役人が身を切る、特別会計のいわゆる埋蔵金と称されるものや、政府資産の売却や、いろいろなことをしっかりやっていく。

 ですから、私が申し上げたいことは、本当は、もう三年近く民主党への政権交代から時間がたつわけですから、この間にこれをやっていただいておれば、今、我々もこういった議論をする必要はないんですよ。それが、残念ながら、景気がよくなったなんて、デフレから脱却した、みじんもないような状況であり、かつ、全く何もやっていないとは私も申し上げませんが、やはり、当初約束したような無駄遣いの解消や予算の組み替えが大変不十分ながら終わっているということも事実でありますね。

 国会議員や公務員も、私も全くやっていないとは言いませんが、この前申し上げたとおり、国会議員の歳費だって、国家公務員の人件費だって、やはり非常に額的には些少で、しかも二年限りという現状ですから。

 私は、そういう意味では、やはりここをしっかりとやらないと、この社会保障と税の一体改革、それから消費税の増税、待ったなしだというふうに野田総理は言われるわけですけれども、私は待ったありだと言っているわけですよ。

 無責任に待ったをするつもりはありません。しかし、待ったをしている間に、大きく言ってこの二つのことをやり遂げる。やり遂げた後、いろいろしっかりと計算をして、社会保障のために幾ら財源がさらに必要なんだ、だから、消費税かどうかは別にして、これだけの負担を国民の皆さんにお願いせにゃいかぬのだといって時の総理が頭を下げれば、私は、国民の皆さんも理解していただけるんだろうと。

 まさに、それは、手前みそですけれども、橋本政権のときに実際に三から五に上げたときに、私は官邸にいたわけです。そういうプロセスをつぶさに見てきただけに、経験をさせていただいただけに、私は、民主党政権さんにもぜひそういうところをしっかり参考にしていただいて、やはり増税プロセスというのは、財務官僚がペーパーに書いてできるものじゃないんですね、御承知のように。政治評論家や何やがわあわあ言ってできるものじゃなくて、まさに政治プロセス中の政治プロセスですから、やはり国民の皆さんに理解を得るということが一番大切、そのプロセスをしっかり踏んでいかなければならないというふうに私は申し上げているわけです。

 小沢一郎元代表の話に戻せば、そういう意味で、今みたいなことをおっしゃられるんですね、小沢元代表は。しかし、私もこの世界に役人として、政治家としてもう三十年以上いるものですから、国民福祉税構想の舞台裏もよく知っております。あのときは、いきなり深夜の記者会見で細川当時の総理が、腰だめと称して七%の国民福祉税構想をぶち上げられた。その背後にいたのは、小沢一郎さんと、大蔵省と、私がいた通産省ですね。よく齋藤次郎さん、今日本郵政の社長の名前が挙がりますけれども、当時タッグを組んでいたのが通産省なんですよ。当時産業政策局長熊野英昭さん、もう亡くなられましたけれども、そのもとに私は産業政策局の総務課長補佐としておりまして、実はいろいろなことをやっておりました、当時は。

 ですから、舞台裏はよく知っている当事者の一人なんですけれども、あのときも、小沢一郎さんという政治家は、とにかく七%の福祉税をやらにゃいかぬということで、大蔵省と通産省、特に大蔵省とタッグを組んでやられたわけですよ。よく言われるように、「日本改造計画」という御著書でも、消費税は一〇%に上げにゃいかぬとおっしゃられている。それから、これは真偽のほどは定かではありませんが、福田康夫政権のときに大連立を持ち込んだときに、当時仲介をした方のお話によると、消費増税を一緒にやろうじゃないかといって大連立を持ちかけられた。

 ですから、私は、今まで、小沢一郎さんという政治家は増税論者だと思っていたわけですね。それが、なぜかみんなの党と同じようなことをおっしゃられているというのは非常に私には不可解だし、ある意味、非常に迷惑なことでもあるんです、みんなの党として。

 これについて、岡田克也さんという政治家は、九〇年代初頭、船田元さんたちと一緒になって、特に安全保障の問題について、小沢一郎元代表のもとで非常に御活躍されていたというイメージもありますし、ある時点まで政治行動もともにされていたということはございますので、先ほどの冒頭の、民主政治の冒涜だ、政党政治の破壊だとおっしゃって増税に反対をしている小沢一郎元代表、その発言自体というよりも、小沢一郎さんという政治家に対して、今、岡田副総理はどういう思いをお持ちなんでしょうか。

岡田国務大臣 小沢先生は、私が選挙を経て国会議員になったときの幹事長であり、かつ、自民党経世会の、派閥の長ではなかったんですけれども、我々新人議員の指導者として、私は大変影響を受けましたし尊敬もしてきたわけであります。途中から党が変わりまして、新進党までは一緒だったんですが、そこからはちょっと縁が遠くなったわけでありますが。

 九〇年代初めのころの私がよく存じている小沢一郎さんは、数ある政治家の中でも非常に傑出した存在というか、例えば、細川政権、細川さんを担いで連立政権をつくり上げたというのは、私はちょっと予想できなかったというか、恐らく当時の自民党も余り考えていなかったと思うんですね。非自民政権をつくり上げた。

 それからもう一つは、これは私は小沢さんとは考え方が違うんですが、安全保障面で、国連決議があれば場合によっては武力行使も含めてそこに日本も参加できるというお考え。これは、私の考え方とは違うんですけれども、しかし、今までの憲法論議の中で一つ突破口を開いたというふうに言えると思います。そういう政策面でも、非常に今までにない発想をお持ちの方であったというふうに思います。

 今はちょっと遠い存在で、日常的に意見交換をする、そういう立場にありませんが、最近の御発言の中で思うことは、やはり我々、政権交代して三年間、未熟なところもありましたが、懸命にマニフェストに書かれたことを、全部やったわけじゃありませんが、実現するために一人一人が努力してきたと思うんですね、この民主党の中にあって。それは、閣僚であったり、あるいは党であったり、いろいろな立場がありましたが、一生懸命やってきた。歳費削減でも、江田さんから見ると不十分だと言われるかもしれませんが、かなりのことをやってきたことも事実。

 そういうことはぜひお互い認め合って、そして、民主党はここまでやったということは胸を張って言うべきだ、そういうふうに基本的には考えております。

江田(憲)委員 もうやめますが、最後にもう一つだけ。

 そういう角度からじゃなくて、もともと増税論者の小沢一郎さんという政治家が今増税反対を訴えていることについて、岡田さんはどういう思いですか。

岡田国務大臣 小沢先生も、増税が絶対反対、特に消費税引き上げが反対と言っているわけでは必ずしもないんですね。今消費税を引き上げることに反対という言い方を一貫してしておられると思います。

 したがって、私は、もし与野党協議が相なって、そのことを私は必ず実現したいと思いますが、そして消費税引き上げの採決ということになったときに、小沢先生がもう一度考え直してそれに賛成していただける、そのチャンスはあるというふうに思っております。

江田(憲)委員 わかりました。

 それじゃ、本題に入ります。

 まず、きょうは基礎的なことをやりたいんですね、難しいことよりも。

 前回、総理御出席のもとで私が取り上げたんですが、この社会保障と税の一体改革は、消費税を五%上げて十三・五兆円の税収が上がるんだという大前提があるわけですね。しかし、前も申し上げましたとおり、我々は、少なくとも常識として、消費税一%税収というのは二・五兆という前提で考えてきたわけですよ。それが何で二・七兆円なのか。二・七兆円掛ける五の十三・五兆円、二・五兆円掛ける五の十二・五兆円、その差は何と一兆円もあるわけですね。

 だから、一兆円もの誤差が出るようなことをやっておられて、しかも、私が知るところ、十三・五兆円を前提にして、例えば、二・九兆円は年金の国庫負担に充てるんだとか、子育てには二・七兆円充てるんだとか、社会保障の安定化には七兆円充てるんだという算定をされているわけです、割り振りを。

 ここは、前回も聞きましたけれども、もう少し整理して、ちょっと安住大臣からお答えください。

安住国務大臣 この間も御質問ありましたけれども、アベレージをとると、ばらつきは多少あるにしても、大体平均二・五兆ぐらいかなと思います。この間、質問もありましたのでお答えしましたけれども、一・六%ぐらいの成長を見込めば、さらに毎年増収分は期待をされるということで、二・七という数字を置いています。

 ですから、これまでの例を見ていただければわかるとおり、余り景気に影響されない税だということはあるとは思いますけれども、我々としては二・七という数字を置いて計算させていただいている。これはもう江田さん御存じのように、数字を置かないといけませんから、置かせていただくということです。

江田(憲)委員 いや、それが本当におかしいというふうに思うんですよ。

 財務省というところは、財務大臣は、ほかのところではかた目にかた目にとおっしゃっているんですよ。何でここだけ楽天的なんですか。だからおかしいと言っているんですよ。

 秘書官ですか、あなた。ちゃんと答えてもらえばいいですよ、秘書官がメモ入れても、私も昔やっていましたからね。

 要は、私も調べました、消費税を三から五に上げて以降、毎年消費税収が幾らあったか。確かに、多少のぶれはあるけれども二・五兆円。二・七兆円を超えた年なんて一年もありませんよ。そんな高目の数字を、しかも一方では消費税収というのは景気に左右されないんだとおっしゃっている。ですから、私には、ちょっと頭が悪いんでしょうか、二・七にわざわざ置いたということが全く理解できないんですが、もう一度御答弁ください。

五十嵐副大臣 直近の二十二年度の決算では約二・六兆円でございます。そして、その前には二・七兆に近かったこともありますので、政策効果を入れれば二・七兆円というのは無理な数字ではございません。

江田(憲)委員 無理な数字ではないんだったら、少なくとも、一・六%名目成長ですか、それをちゃんと法案か何かで担保しないと税収が見込めないわけですからね。施策も実施できないじゃないですか、その分。

 だから、一・六%名目成長というのを確約されるんですね。

安住国務大臣 これは税収見込みですからね。さっき正確性に欠けると言いましたけれども、今副大臣からも答弁ありました。これは同じものを持っているとは思いますけれども、平成に入ってからの数字を少し言いますと、十二年ぐらいから二・五、二・四、二・四、二・四、二・五、二・六が続いております。平成二十一年ぐらいからまた二・四、二十二年で二・五ですけれども、この二年は二・六、二・六。

 ですから、江田さん、そんなに言うほど、私は人間としてはアバウトかもしれませんが、財務大臣としては正確に答弁しているつもりでございますよ。

江田(憲)委員 楽天的になることは別に悪いことではないんですけれども、こういう都合のいいところだけ丼勘定というか、甘目の数字を見込むという。ほかのところは厳しい厳しい、民主党内からは経済成長は大事なんだ、さんざん議論があったじゃないですか、名目三%、実質二%成長ならば、ちゃんとそれを大前提に置けよと。そんな議論も全くこっちに置いておいて自分たちが算定する、こういうのが財務省の唯我独尊なんですよ。自分たちがやるところだけは甘く査定して、二・七兆円なんて、いまだかつて入ったことのない税収をやる。例えば我々が名目四%、実質二%成長だと言うと、そんなできもしないことはとてもじゃないと一方では言う。

 今、五十嵐副大臣みたいに、それは政策効果も入れれば二・七兆円いきます、そんな話をするんだったら、ぜひ言っていただきたいのは、政策効果も入れて名目三%、これは民主党の立場ですけれども、達成するんだという、ちゃんと道筋を示すというのが普通なんです。

 こういった自分たちの税収、とにかくこれはお金が足らないから、十三・五兆円で、いろいろどこから工面するかといってやって、ああ、そうか、二・七兆円、ちょっと甘目だけれども、まあこの程度でやれば五%で、あと一兆円上げ底にできる、それを使おうと言うとつじつまが合う、この程度の話なんですよ。私もずっと政府にいましたからその程度のことはよくわかる、幾ら言いわけされなくても。

 ですから、この話はもう水かけ論になりますが、ぜひ皆さんにも、ここに出席している議員の皆様にも申し上げたいことは、この二・七兆円という数字を誰も詰めていないんです、多分、これが出てきたときにね。

 あなた、では安住大臣、大臣として、二・七兆円というのが出てきたときに、二・五兆円じゃないのかという質問とか問い詰めというのはされたんですか。

安住国務大臣 ですから、実は、この近年は二・六兆いっているんですね。私は、やはりそういう点では、二・七に根拠がないというのはちょっと当たらないと思うんです。

 例えば、積算の根拠というのは、消費税率分を除いた、一応、政府試算で言う名目GDP成長率の二〇一三年度が一・七、一四年度が一・〇、それから二〇一五年度が一・三ですから、これは二・六兆に名目成長率の延伸分を掛けていくと、一〇一・七パー掛ける一〇一・〇掛ける一〇一・三、イコール二・七になるんですよ。

 ですから、江田さんが長くおられた政府の今までのオーソドックスな計算でいえばこうなるので、普通のことだと思います。

江田(憲)委員 計数や代入値を変えれば、それはなるんですよ。問題は、それがサステーナブルか。皆さんが見込んでおられる、増税後にサステーナブル、持続可能で二・七兆円入ってくるのか。そうしないと、皆さんの大前提が崩れるということを申し上げているわけで。

 私は、いろいろなデータを見るのも必要、それから過去の経緯、データ、過去の歴史的な経緯を見るのも大事、こういったことを申し上げているだけで、これはもう、これ以上申し上げても水かけ論なんで、二・七兆円が正しいのか二・五兆で見込むのが正しいのかというのは、ごらんいただいている方の御判断に任せたいと思います。

 あと、そうはいっても二十分ぐらいになりまして、何をやろうかなというふうに思っているんですが、では、六十年償還ルール、これはもう通告をしていますから、六十年償還ルールについてやりましょう。

 国債は六十年で償還をするんだというルールを今まで厳然と守ってきたわけですが、なぜこの六十年償還ルールというものが決められているんでしょうか、お教えください。

安住国務大臣 ストレートに六十年の根拠について説明したいと思います。

 これは、公共事業費のうちの用地費とか出資金について、永久に効用を発揮すると考えられるのは約百年と有限に抑えて計算をしている。これに対して、公共事業のうち施設関係費については、できる限り資産の実態に即して、税制、税法、公営住宅等に定める耐用年数を適用し、それぞれの予算額で加重平均をしている。貸付金については種類ごとの償還年限を適用し、それぞれの予算額で加重平均をした。

 そこで、こういうことがあって、昭和四十二年の予算審議の際に、今私が言ったような算出をしたことをベースに、公債見合い資産の平均的な効用発揮期限を政府として参議院予算委員会に提出いたしました。この試算においては、平均的な効用発揮期間は六十・一年となっております。

 また、平成元年度においては、償還期限を六十年とすることの妥当性が問題となったことは事実ですね。それで再試算を行った。これは財政審にかけさせていただきましたけれども、この再試算においては平均的な効用発揮期間は五十六年であったことから、おおむね、償還期限については、六十年ルールは変更することはないというふうなことになって、現在に来ております。

江田(憲)委員 簡単に言うと、これは建設国債、その対象である公共事業の便益が六十年程度続くという前提で決められたわけですね。

 しかし、やはりもう時代も変わり、今、皆さん、四十四兆円の新規国債発行額のうち赤字国債は幾らですか。要は、赤字国債にはそういう公共事業の便益だ何だという概念は全くないわけですよ。そういった中で、六十年償還ルールというのは妥当性を持っているんでしょうか、安住大臣。

安住国務大臣 建設国債分を除けば三十九兆円ぐらいですかね。特例公債の話ですね。(江田(憲)委員「そうです」と呼ぶ)

 いろいろな意見はあると思いますよ。あると思いますけれども、このルールでやってきたというのが答えになるんですが、ちょっと言わせていただきたい。

 六十年償還ルールは、公債の発行によりつくり出される資産が、私さっき説明しましたよね、国民経済の発展向上に……(江田(憲)委員「わかりましたから。また質問しますから」と呼ぶ)いやいや、これは一応議事録に残したいので。国民経済の発展向上に役立つことから、公債の見合い資産が平均的に効用を発揮し得る期間を目安として、建設公債の減債期間を六十年と定めたものであります。

 そこで、一・六の掛け算で十年ごとにやってくるので、これがいわば減債制度のベース、根拠になっておりますということは、もう再三、江田さんとは話をさせていただいてきておりますけれども、この六十年が果たしていいのか悪いのかと。

 つまり、それは、減債基金にフィードバックすれば、減債の額全体が今の規模で適正かということを多分御質問したいと思いますので……(江田(憲)委員「それはしますから、じゃ」と呼ぶ)どうぞ。

江田(憲)委員 ちょっと、先走りしないでね。ちゃんと順序立てて、わかりやすくやりますから。

 皆さん今おわかりのように、もう新規国債四十四兆円のうち三十八兆、九兆は赤字国債なんですね。ですから、この六十年償還ルールというのはもう破綻しているわけですよ。

 それで、これは安住さん、私は非常に珍しい経験を持っていまして、財政法の六十年償還ルールについて、当時の財務省と内閣法制局で決闘したことがあるんですよ、おかしいといって。それも、私が産業政策局の総務課の補佐のときに、おたくの法規課の補佐とやって。ここは手前みそですけれども、ある意味一人の権威だと思っていますから。

 要は、これははっきり結論を言うと、擬制、フィクションなんですよ。もう、えいやとは言いませんけれども、一応そういう計算をして、さっきおっしゃられたように。だけれども、六十年に決めたというのは、当時から、それは六十年に置いたということなんですよ。だから、すぐわかるように、例えば最近では、高速道路のがっちりした構造物は百年もつ。ただ一方で、木造の家屋なんかは同じ公共事業だって三十年もたない。ですから、いろいろなまちまちはあるんですね。

 私が言いたいことは、今ちょっと先走られましたけれども、私はずっと予算委員会で、国債整理基金の、基金残高と正式には言うんですか、剰余金、これがもう平成十七年から十兆円以上余っているんですね。このまさに繰り入れ、毎年、例えば国債償還でアバウトを言いますと、元本で十兆円繰り入れ、利子分で十兆円繰り入れている。この利子分はちょっとおいておきまして、十兆円超の元本繰り入れというのが、まさに今安住大臣がおっしゃったように、六十年償還ルールに基づいて行われている。それは、一〇〇%全部、国債を六十年で返すためには、皆さんすぐわかりますよね、一〇〇%割る六十で一・六%。だから、国債残高の一・六%を単純に機械的に入れているんですよ、単純に機械的にね。

 だから、私がずっと申し上げてきたことは、今までは、予算委員会で時間がなかったので、この点が説明できないのでわかりにくかったかもしれませんが、そもそも、こういう一・六%を毎年毎年、機械的に単純に繰り入れていくということが既に合理性を失っているということなんですよ。

 ですから、この国家危急の折には、十兆円超のお金が残って現にあるわけですから、それを使うということは当然考えられる手法だし、過去十一回使ってきました。それに対しては、皆さんは当時は、まだ余裕金の額も少ないし、国債の発行残高も少ないからという反論をされていましたけれども、そういう問題とは違うんですよ、質的に。

 そして、もう一つだけ今回申し上げますと、当時財政制度審議会の会長であられた桜田武さんという日経連の会長が、この国債整理基金の余裕金を使うときにどうおっしゃったかというと、いや、民間企業では、借金返済のための積立金を積むために、わざわざ借金して、金利まで払って積み立てているプラクティスなんてないんだ、本当に奇妙なシステムですねと言って、当時、財政制度審議会の会長もこの余裕金を使うということを許した。竹下大蔵大臣当時もやられた。御党の藤井裕久大蔵大臣、細川内閣のときもやられたんですよ。

 ですから、私が申し上げたいことは、全部じゃなくても、そうやって今お金が一円でも欲しいときに、申しわけない、たんす預金という言葉を使わせていただきますが、こんなにたんす預金に積んでおくような余裕はないんです。ましてや国民に増税をお願いしている。復興増税はお願いしたわけですよね。ですから、その辺はまさに政治家の判断なんですね、安住大臣、これは政治家の。

 ですから、ぜひそこはまた再考されて、全部とは言いませんけれども、二十二年度は十三兆円、ことしは十兆円超まだ残るんですよ。ぜひ前向きに検討していただけませんか。

安住国務大臣 私、何度もこの話を聞かせていただいて、財金の場では、要するに、わかりやすい例を、六百億を例にして、これを十年ずつやって一・六を掛けていくということで説明したことはあるんです。

 ですから、減債基金は、例えば六百億の返済が五百億になったときのその一・六を掛けたときには、百億じゃなくて八十四億になりますから、そうやって積んでいっても、実は足りない部分が出てくるわけですね。だから、そういう点では、減債基金制度でちゃんとあらかじめまとまったお金を持っておくことで、ファイナンス上の必要性をいわば担保してきた。

 しかし、江田さんの御主張は、例えば昨年の議事録を見ても、東日本大震災のこうした財源が急に要るときに、いわば減債の基金をむしろ使って震災復興なんかに充てたらよかろうということで昨年あたりは御主張なさっていて、私は、ある程度の説得力はあったと思い……(江田(憲)委員「うそ」と呼ぶ)私は思っていました。

 ただ、財務大臣になってからは、一つ考えられることとして、やはり今、国債の発行残高が江田さんも御存じのとおりのような状況になって、ファイナンスに対する目というのは非常に厳しいですよね。

 この場でも、昨年の九月にCDSの質問を受けましたけれども、やはりこういうお金をいわば寄せておくというか、これをきちっとした制度としてずっと長くやってきたことは事実ですね、いい悪いは別にして。

 このやってきたものを取り崩すということになったとき、または制度自体を変えるということは、我々としては、国際社会の中での見られ方というのもあると思いますから、やはり慎重にやらないといけないという部分もあると思うんです。

 全く否定するものではないんだけれども、そこの慎重さをやはりよくよく考えて、こういう基金のやり方というのは世界に例がないという御主張もあって、私もおっしゃるとおりだと思います。ただし、その前に行く段階での財政規律に対する厳しい歯どめというのは、実は世界の中でかなりあるんですよね。だから、そういうことを考えながら対応したいと思っています。

江田(憲)委員 今までよりは多少は前向きな答弁でしたけれども、要は、皆さん、わざわざ特別会計を設けて減債制度だといって、最初わけがわからなかったでしょう。だけれども、こういう制度を持っているのは日本だけなんですね。

 では、もっとわかりやすく、もっと単純な質問をしますと、なぜ十兆円を超えるお金が平成十七年から残っているんでしょうか。その理由は何なんでしょうか。

安住国務大臣 これは、過去に国債を発行した額なんかが多かった時期もありましたから、それに基づいて、償還費それから利払い費等を積み上げております。

 それから、基金の残高も、平均すると大体十一兆から、ことしで九兆円になっておりますので、そうした額になっているということです。

江田(憲)委員 そこはちょっとおわかりになっていないので、私から答えを言いますと、簡単に言うと、若い国債の比率が多いからなんですよ。若い国債というのは、償還期限がまだ先の国債が占める割合が多いから、幾らその元本一・六%を繰り入れても繰り入れても償還期限が来ないから残っているんですよ。

 だから、私が申し上げたいのは、こんな減債制度は即刻廃止すべきだと思いますよ。こんなことをとっている国はないんだから。減債制度みたいなこんな制度が積立金を削る削らないで国債の信認が落ちることなんて絶対にあり得ませんよ。だって、市場関係者というか、特に外国投資家なんかは、こんな伏魔殿みたいな減債制度なんて誰も知りませんから。

 それよりも、国債の信認というのは、前回からあなた方も、二〇〇二年の例の格付が下げられたときに主張している。おっしゃっているとおりなんですよ。財務省が言っているとおり、国債は、経済のファンダメンタルズを見てくれとあなた方が言っているんですね。国債の信認というのは、あなた方が挙げられた数値によると、海外純資産は世界一だとか、外貨準備は百兆円だとか、経常収支は十七兆円だ、そういうことなんですよ。ですから、こんな減債制度を廃止したから、ましてや積立金を崩したから国債信認が落ちるなんという話は、財務官僚がつくり出した詭弁ですからね。まずそこが一つ。

 では、どうするかというと、皆さん、これを廃止して、簡単なことなんですよ、諸外国がやっているのと同じようなことをすればいいんですよ。要は、幾ら何でも、国債管理はしていますからね、財務省も。ですから、償還期限、六十年償還ルールを仮に前提にして、元本返済がいつ来る、借りかえ借りかえで回していくにしても、元本返済がどのくらい来るかというのは、当然これは計算がすぐ出てくるわけですね。ですから、簡単に言えば、その返済額に応じて毎年毎年償還額を、ちゃんと元本返済分を予算に措置していけば足りるんですよ。

 しかし、そういった自転車操業ばっかりやってもいけないから、多少余裕を持って積み立てるということも、引き当てるということも私は認めましょう。しかし、今のように、償還期限が長い国債がいっぱいあるのに、機械的に、単純的に六十年償還ルールに基づいて、しかもその合理性があるかどうか疑わしいような償還ルールに基づいて機械的にやっている。何の温情もない。そうしたときに、こういう大震災、原発被害が起こって、お金が少しでも必要なときには、先人はそういう非合理性も看破した上でこういったお金を使ってきたわけですよ。

 ですから、ここは政治主導ができるかどうかという一つの象徴的な事例なんですよ。それは、今まで、御党の政治家だけじゃなくて、大蔵省、大蔵大臣になった人、大蔵省の政務次官になった人、国債整理基金に目をつけるところまでは目をつけられる。しかし、目をつけてこの余裕金を使おうじゃないかといったときに、さっきからおっしゃっているような財務官僚のいろいろな理屈をつけたものを聞かされちゃったら、ああ、そうか、これは将来の借金の返済のための積立金、引当金なんだなと。だから、これを崩すということは国債の償還が多少信認を落とす、そういうような話を聞かされちゃって、もう思考停止していたんですよ。

 だから、もう少しきょう申し上げたかったことは、この制度自体の根源的なところに思いをいたしていただいて考えれば簡単なことなんですよ。これは我々が政権をとった暁には絶対やりますけれどもね。やったところで国債の信認も落ちないし、国債の償還は順調にいきますからね。我々も、ずっと元本償還をやるなと言っているんじゃないんですから。利子返還はやれと言っているんですから。利子分の十兆円はちゃんと措置していいんですよ。元本部分を機械的に繰り入れるのはやめてくれ、これだけ悲鳴を上げている人が多いんですから、こう申し上げているわけですね。

 せっかく安住大臣、前向きな答弁をされて、慎重に検討した上で大胆に決断する、ぜひお願いをしまして、もう時間が来ましたので、私の質問を終わらせていただきます。

安住国務大臣 私は、もう一つだけ、ちょっと視点を変えて一言だけ言うと、過去の財政審の議事録を、このことに関しては意外と私は見ました。一つだけ、先生、財政出動に歯どめをどうやってかけるのかという議論をかなりやっているんですよ、昭和四十年前後。こういうことがあるから放漫財政にならないんだという説もかなり有力なんですよ、財政学の世界で。

 だから、先生の言うこともわかるんだけれども、一方で、やはり規律のある財政をどうやって保つかということはあるから、さっき自転車操業とまさにおっしゃったんだけれども、定率繰り入れそのものを全面的に停止するのは、私はちょっとやはり難しいと思います。(江田(憲)委員「では、委員長、ちょっと最後、一言だけ。時間内で」と呼ぶ)

中野委員長 江田君、どうぞ。時間はあります。

江田(憲)委員 そういう答弁があったので、一言。

 それは財政規律は重要ですよ。そのためにも、これをやめると十兆新規国債発行が減るんですよ。今四十四兆の新規発行が三十四兆になるんですから、累積債務も十兆減るんですよ。だから、我々の案を採用されれば累積債務も減るという意味では財政規律にも重要だということを申し上げて、終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

中野委員長 議論の続きはまた別にやってください。

 これにて江田君の質疑は終了いたしました。

 次に、三輪信昭君。

三輪委員 新党きづなの三輪信昭でございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 〇九年の政権交代というのはなぜ起きたのか、このことについてまずお尋ねしたいと思います。今、永田町におる政治家は一度冷静にそれを考える必要があるんじゃないかな、このように感じるからでございます。

 国民はマニフェストの各論を支持して政権交代が起こったのか。私は、そうとは受けとめていないわけであります。

 当時、私は、郵政選挙で負けました新人四名の方を、ずっと勉強会をやっておりまして、四年目に民主党のマニフェストというのを目にしたわけであります。

 私ごとで恐縮ですが、当時、私は六十六歳、年金生活者であります。中身を見まして、扶養控除の廃止は私にとっては実質的な増税であります。

 また、農家への戸別補償、これは私、農家でないわけですから、全く関係のないところであります。

 もう一つ、高速道路の無料化というのがありましたが、愛知県に住む私から見て、東名高速道路、これは当時、岡崎を中心に大変な渋滞が連日続いておったような状況でありまして、物づくり愛知にとっては物流の渋滞というのは深刻な問題であります。したがって、高速道路の無料化がされたらどうなるんだろうと大変心配したことを覚えております。

 したがって、各論に対しては、それぞれの立場において賛否両論あったのではなかろうかなと私は受けとめております。

 しかし、あの選挙で、国民は民主党に三千三百万票を投じていただいたわけであります。何に期待をしたのか。それは、私は、マニフェストの理念に対して国民が期待をしたんじゃなかろうかなと思うわけであります。

 具体的に読ませていただいたときに、国民の生活が第一、この言葉は非常に心に響きましたし、社会全体で子供を育てよう、この言葉に私は、先ほど言った扶養控除がなくなっても、それはやはり我慢せないかぬ、そのように受けとめたわけであります。

 それで、ここでお聞きしたいのは、〇九年に国民がそれほど期待したその理念に対して、現政権がいかに対応されているのか、ぜひ岡田国務大臣に見解をお聞きしたいと思います。

岡田国務大臣 まず、二〇〇九年の選挙、なぜ民主党が勝たせていただいたかというのは、きのうも私申し上げましたが、やはり基本的に、ここで政権をかえて自民党政治を一旦終わらせたいという国民の声が非常にあったというふうに思います。個々の政策というよりは、やはり政権交代そのものに意義を見出したということだと思います。

 もちろん、その具体的な姿としてマニフェストというのがありましたので、私、マニフェストを軽視しているわけではないんですが、委員も言われている、個々の政策というよりは、やはり政権がかわることそのものに期待感が強かったと思います。

 政権交代いたしまして、我々、マニフェストに書いたことについて、一つ一つ、実現しようと真摯に努力してまいりました。

 もちろん、中には、これは今できないということで断念したものもあります。私が幹事長のときには、高速道路の無料化、これは実験をやっていたんですが、その実験を全部やめました。むしろ被災地のためにそれは使うべきだというふうに考えたからであります。あるいは、その前に、鳩山政権のときは小沢幹事長が、ガソリンの暫定税率廃止、これの見送りを決められました。

 そういった、今いろいろなことを考えるとやるべきではないというふうに判断して先送ったもの、あるいは断念したものもありますが、例えば委員御指摘の、我々はチルドレンファーストという言い方をしたんですが、子ども・子育てということで子ども手当を一旦は実現いたしました。今は児童手当という形になっておりますが、従来の児童手当と比べれば、かなり中身は充実したものだと思います。それから、三十五人学級の実現、これは少しずつですが、一年生、二年生という形で実現してきております。高校の授業料の無償化も実現しております。

 そういう意味では、チルドレンファーストというのは、今回の子ども・子育て支援策も含めまして、かなり私はできているんだというふうに思っております。

 それから、コンクリートから人へ、これも公共事業費を大幅に削減するという約束は果たしております。最近、例えば新幹線とか八ツ場ダムのことが取り上げられますが、しかし、公共事業予算としては我々は削減しておりますので、その枠の中でやっていることであって、そこの公約は満たしているというふうに思います。

 政権交代して、いろいろな局面にぶつかって、なかなか難しい場面はありましたが、私は、民主党の、そのとき政府に入った人間、あるいは当時おられた方々、みんな懸命に努力をして、少しでもその約束を果たすために努力してきたし、かなりのことはできている、そういうふうに思っております。

三輪委員 努力をしておるということに対して、それは私も、御党におった人間といたしまして、全くやっていないというようなことは考えておりません。

 ただ、今回のこの特別委員会、これは、社会保障と税の一体改革という中で、消費税の増税ということに行っておるわけであります。しかし、社会保障というものが残念ながら明確に見えていないような気が私はするわけですよね。したがって、この点は逆先行じゃないかな、そんな気がしてならないわけであります。ぜひとも、〇九年、そのときの初心に返ってさらに努力していただくことをお願いして、次の質問に入りたいと思います。

 今回、政府からこの委員会に七つの法案が出されております。これはマスコミ報道でありますが、野田総理は内閣改造後直ちに修正協議に入れということを指示されまして、翌日には幹事長会談、きのうもやられて、きょうから恐らく進行中ではなかろうかなと思うわけであります。

 まず、この事実関係を説明していただきたいと思うんです。

岡田国務大臣 これは党のことではありますが、昨日も幹事長会談が開かれまして、輿石幹事長の方から、ぜひ協議をお願いしたいということで、自民党、公明党の幹事長にお願いさせていただきました。お受けをいただいて、これから協議がスタートする、そういうふうに思っているところであります。

三輪委員 修正協議によりまして、現在、当委員会で議論されておる七法案が大きく修正される可能性がある、そんなことも予想されますが、政府として、その辺の見解があったらぜひお聞きしたいんですが。

岡田国務大臣 これは政党間でこれから協議することですので、政府としては、それを見守るというか、あるいは与党民主党が協議するに際してよく御相談をしたい、受けたいと思いますけれども、基本的には政党間でお決めいただくことだと思います。

 我々、七法案を出させていただいておりますので、それが最善のものとして考えて出させていただいております。しかし、それに対していろいろ御意見が各党あるわけですから、そこはよく協議をさせていただく。我々として、なるべく、これは一体改革ですから、社会保障・税一体改革でありますので、この七法案について、できるだけしっかりと成立をさせたいという思いはございますが、それはまさしく協議によって決まっていくことというふうに考えております。

三輪委員 どうして私がそんなに修正ということにこだわるか。これは、民主党の目玉政策でありました子ども手当であります。これは児童手当という形で、精神は継がれているかもわかりませんが、大変大きく変わったという、この事実があるわけですよね。

 したがって、こんなことを聞いていいかわかりませんが、済みません、小宮山大臣、当初の子ども手当案と今の児童手当、この二つを比較した場合、どちらの方がよかったのかなとお考えか、お聞きしたいと思うんです。

小宮山国務大臣 私どもが子ども手当を提案したときは、何度も御説明しているように、高所得の人よりも低所得の人に厚くということで、控除から手当という考え方でやりました。ただ、その際に、ここでもおわびを申し上げましたけれども、財政の見通しが甘かったということもありまして、二万六千円という手当ができませんでした。

 それで、ねじれている国会の中で、各党の御同意をいただかないと、児童手当、子ども手当、それが途切れてしまうということもある中で、今回、各党の御理解をいただいて新しい児童手当ができたということで、私は、恒久的な制度の中に、子供一人一人に注目をして、児童福祉施設などの子供にも行くようにしたとか、中学生まで行くようにしたとか、子ども手当のよかった面も引き継がれておりますので、恒久的な制度に落ちついたということで、よかったというふうに思っております。

三輪委員 想定した答弁でありまして、また、このことは後の質問の中で引用させていただきたいと思っております。

 今、修正協議が進む、そういう状況の中で、これは私の単純な考えでありますが、七法案が修正される可能性があるという状況で、私は委員会は一度休会にすべきだというふうに思うわけですよね。

 なぜか。今回、質問、私、担当になりました。どう修正されるかわからない法案に対して、では、質問する方として、非常に幅が狭い、限定されてくるわけなんです。もしかして修正されたものが違うものだったら、答弁される方も、ここで答弁されたものがもしかして修正で大きく変わったとなれば、状況としては答弁が曖昧にならざるを得ぬじゃないかな、後で困ることが起こると大変でありますから。

 したがって、修正案が出るということがわかっている以上、私は、修正案が提出された後に改めてきちっと本委員会で議論をする、その日程をきちっと確保しておくことが今大事だ、こう思うんですが、見解をお伺いしたいと思います。

岡田国務大臣 まず、修正協議に参加をされるところとされないところがあると思うんですね。ですから、やはり国会の中でしっかりと議論することは意味のあることだというふうに思います。

 あとのことは、これは委員会の運びの問題ですので、私から何か言うというよりは、理事会などで御協議いただくことではないかと思っております。

三輪委員 ぜひとも、修正案に対して、各党それぞれまた受けとめ方が違うと思いますので、真剣に審議する時間を準備いただくよう委員長にお願いしておきたいと思います。

中野委員長 理事会で協議をいたします。

三輪委員 それでは、数少ない質問できるものについてお尋ねしたいと思います。現在の生活保護のあり方というものについてであります。

 現在、約二百十万人と言われておる生活保護の受給者、私は、これは二種類の受給者があるんじゃないかな、こう思っておるんですよね。本当に働きたくても働くことができない状況にある困窮者と、働く能力がありながら制度利用の方が楽だと考えて、この制度を、言いかえれば悪用といいますか、生かしておる人、この二種類があるんじゃないかな、こう思うんです。問題は、後者の方が問題なんですよね。

 そこでお聞きしたいんですが、生活保護を申請するということに対して、チェック機能というのはどのようになっておるのか、お伺いをいたします。

小宮山国務大臣 生活保護の申請に際しましては、申請をされた方の資産も含めて、最低限必要な生活ができるかどうかをチェックしておりますし、それから、扶養が可能な人、日本の場合は本人と配偶者の三親等内、それぞれウエートは違いますけれども、その中で扶養可能な人がいないかどうか、そういうことも話をしてもらった上で申請をしてもらった上で、本当に必要な人に出せるような形をとっています。

三輪委員 手続上の話はそうだと思うのでありますが、現実に、申請をされた人に対して、きちっとそれがチェックされる体制がつくられているかどうかという点についてお伺いいたします。

小宮山国務大臣 そのチェックということを何をおっしゃっているのかということがありますけれども、それは、御本人からの申請に基づいて受給ということを決めていますので、本人の申請が、本当は扶養できる人がいるのではないか、そうしたことがある場合には、いろいろと今、これから、また法的にも、そういうことを説明責任を課するということも考えられるかという検討もさせていただきたいと思っていますが、今のところは、御本人が申請をしていただいたことをもとにしてやっているということです。

三輪委員 私は、地方議員を十六年やっておりまして、この問題に触れたことがあります。非常に悪い例を示します。

 偽装離婚というのを現実に私は見たんです。ということは、子供の姓が変わったということは、学校の中ではすぐ話題になります。私の選挙区で、近いところの県営住宅に住んでみえましたから、調べました。何と同居してみえるんです。一緒に生活してみえるんですよね。それで、母子家庭用の生活保護を受給されてみえた。これは現実にあった事例であります。

 先ほど、チェック、ちゃんとやっていますよ、本人の申請ですよ、こうおっしゃいますけれども、現実に受給者をきちっとチェックしなかったならば、この制度そのものを悪用するということは無限に広がっていってしまうと思うんですよね。

 最近新聞等に出ておる、これもあしき例でありますが、例えば、生活保護申請者を一カ所にたくさん集めて申請させて、それをピンはねするとかいうような悪い実態もあるわけでありますので、大事なことはやはり、申請者の書類を信頼、信用されるのも結構でありますが、その事実、現場を確認していただくという、この作業までやるということが必要じゃないかな、このように思うわけであります。

 次に、生活保護費そのものについて伺います。

 例えば、四十年間真面目に国民年金を払い続けた人が現在受け取る年金額、月額六万五千五百四十一円であります。仮に、国民年金の掛金を全く払ったことのないような、義務を一切果たすことなく生きてきた人が生活保護を受けられる場合、受給される金額は、高齢者単身で、地方で六万二千六百四十円、東京では八万八百二十円であります。それ以外に、アパート等の住宅扶助、医療費その他多くの扶助事業があるわけでありますね。最後には葬祭費まで対象になっていますよ。

 真面目に四十年間年金を掛けてきた方が受け取れる金額と、そうでない人がこういった待遇を受けるということ、これが公正な制度と言えますか。見解を伺います。

小宮山国務大臣 その前に、ちょっと一言だけ、先ほどの不正が疑われるケースについてですけれども、その場合には、ケースワーカーが家庭訪問をしてそれを調査するとか、あるいは資産調査の金融機関本店への一括照会方式を導入する、それから告発の目安となるような基準をつくって不正受給対策をさらに徹底していくということはしていきたいというふうに思っています。

 今の点ですけれども、これは、これまで年金と生活保護は仕組みが違いますからという説明をずっとしてきましたけれども、国民の皆様に御信頼いただくためにも、その説明だけではなかなか納得できないところがあると私も思います。

 それで、先日立ち上げました低所得者対策の在り方に関する研究会、これは低所得者のための総合合算制度の仕組みなどを検討するために立ち上げた研究会なんですが、そこで、年金とのバランスにおいて生活保護の額がどのようにあったらいいかということも含めて、今その議論を始めたところでございますので、そうしたところで、やはり整合的な、仕組み横断的な考え方をしっかりとつくる必要があるというふうに思っています。

三輪委員 もう一つ例を挙げたいと思います。

 母子世帯での例であります。三十歳で子供二人の場合、地方では月額十五万七千三百円、東京では十九万二千九百円であります。それ以外に先ほど言った各扶助が加えられます。

 それでは、東京で今パートタイマーで女性が働いたとして、時給九百円として、一日八時間、月二十二日間働いたとしても、月額の所得は十五万八千四百円にしかなりません。そして、所得税がかかります。子供を預ける幼保の費用がかかります。

 その差、どちらが生きるのに楽かというようなことから考えますと、これは大変な逆転現象だと私は思うんですね。

 額に汗かく者、正直者が浮かばれない、こんな制度を放置しておいていいんでしょうか。社会保障改革を真剣に取り組むとするならば、三兆七千億とも言われております予算が必要だと言われていますけれども、生活保護というもののあるべき姿というものを、ここは一遍きちんと考え直すべきだと私は思うんですね。

 特にひどいのは医療扶助なんですよ。全く無料でありますから、そして、生活保護を受けていますから働く必要がないですから、暇ですから、これが大変大きな財政負担の原因になっておる。

 したがって、生活保護者であったとしても、たとえ一割であろうが、やはり医療費負担をするというような改め方をしませんと、私は、余りにも不公平を残したままの社会保障制度というのは国民が認めないと思うんですよ。この点についてお伺いします。

小宮山国務大臣 最初の、就労による最低賃金との兼ね合いですけれども、これは当然、おっしゃるように、働いて得るということが基本ですので、それを最低賃金が下回るということは大変問題なことです。

 これに対しましては、地方最低賃金審議会、ここで逆転現象を解消するまでの年数を設定して、計画的に解消を今進めていまして、現在三県が下回っている、そこもなるべく早く解消したいというふうに思っています。

 それから、医療扶助の問題ですけれども、確かに生活保護に必要な費用の半分が医療扶助です。そこで不正がないようにということは、これは、電子レセプトを使ってやるようなこともしていますし、なるべく低額のジェネリック、後発医薬品を一度は使ってもらう方法とか、いろいろ考えています。

 ただ、御意見がある自己負担を一部するということについては、とにかく最低限の生活ができる基準に足りない分を生活保護でお払いしているので、病気にかかられた場合、大変高齢な方とか精神を病んでいらっしゃる方とかもいらっしゃいますので、そこで受診が抑制され過ぎないかということも含めて、それは慎重に考えていく必要があるというふうに考えています。

三輪委員 今、高齢者とおっしゃいましたけれども、そうじゃない若い人でも、先ほど言ったように、母子家庭であるわけですから、最低賃金保障を下回ったと言われましても、生活保護よりも働いた方が少ないという現実は現実としてあるんですよ。少ない人は医療費を負担しているんです。だから、これをチェックして、一割でもいいから負担してもらうという制度に改めるということはどうでしょうかと言っておるので、それを否定されたんじゃ、私はちょっと大臣のお考えはおかしいんじゃないかなと思うわけであります。

中野委員長 時間が参りましたので。

三輪委員 そうですか。

 時間が来たということでありますので、最後に、国民が社会保障というものに対して公平さを感じる制度というものにぜひ改めていただくことをお願い申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

中野委員長 これにて三輪君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明八日金曜日午前八時四十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時六分散会


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