衆議院

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第1号 平成24年6月12日(火曜日)

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平成二十四年六月十二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中野 寛成君

   理事 武正 公一君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 古本伸一郎君 理事 松本 大輔君

   理事 和田 隆志君 理事 逢沢 一郎君

   理事 伊吹 文明君 理事 西  博義君

      阿知波吉信君    相原 史乃君

      網屋 信介君    石井登志郎君

      稲富 修二君    江端 貴子君

      緒方林太郎君    岡田 康裕君

      加藤  学君    笠原多見子君

      勝又恒一郎君    川口  博君

      川村秀三郎君    岸本 周平君

      熊田 篤嗣君    近藤 和也君

      篠原  孝君    白石 洋一君

      田嶋  要君    高井 崇志君

      高橋 昭一君    道休誠一郎君

      中屋 大介君    永江 孝子君

      長尾  敬君    橋本  勉君

      浜本  宏君    早川久美子君

      樋口 俊一君    藤田 憲彦君

      三村 和也君    宮島 大典君

      向山 好一君    室井 秀子君

      本村賢太郎君    矢崎 公二君

      湯原 俊二君    柚木 道義君

      石田 真敏君    加藤 勝信君

      金子 一義君    鴨下 一郎君

      田村 憲久君    竹下  亘君

      橘 慶一郎君    野田  毅君

      馳   浩君    町村 信孝君

      池坊 保子君    坂口  力君

      竹内  譲君    高橋千鶴子君

      石田 三示君    中後  淳君

      重野 安正君    吉泉 秀男君

      山内 康一君    中島 正純君

    …………………………………

   公述人

   (慶應義塾大学教授)   駒村 康平君

   公述人

   (株式会社日本総合研究所調査部主任研究員)    西沢 和彦君

   公述人

   (日本労働組合総連合会副事務局長)        菅家  功君

   公述人

   (株式会社みずほ年金研究所研究理事)       小野 正昭君

   公述人

   (年金コンサルタント)  河村 健吉君

   公述人

   (横浜市長)       林  文子君

   公述人

   (親心を育む会スーパーバイザー)         松居  和君

   公述人

   (恵泉女学園大学大学院平和学研究科教授)     大日向雅美君

   公述人

   (東洋大学社会学部教授) 森田 明美君

   衆議院調査局社会保障と税の一体改革に関する特別調査室長          佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十二日

 辞任         補欠選任

  石井登志郎君     緒方林太郎君

  稲富 修二君     相原 史乃君

  岡田 康裕君     橋本  勉君

  岸本 周平君     加藤  学君

  篠原  孝君     笠原多見子君

  白石 洋一君     矢崎 公二君

  田嶋  要君     川村秀三郎君

  田村 謙治君     高井 崇志君

  長尾  敬君     樋口 俊一君

  柚木 道義君     網屋 信介君

  渡部 恒三君     中屋 大介君

  田村 憲久君     橘 慶一郎君

  竹内  譲君     坂口  力君

  宮本 岳志君     高橋千鶴子君

  豊田潤多郎君     中後  淳君

  中島 隆利君     吉泉 秀男君

同日

 辞任         補欠選任

  相原 史乃君     稲富 修二君

  網屋 信介君     柚木 道義君

  緒方林太郎君     本村賢太郎君

  加藤  学君     岸本 周平君

  笠原多見子君     篠原  孝君

  川村秀三郎君     川口  博君

  高井 崇志君     向山 好一君

  中屋 大介君     浜本  宏君

  橋本  勉君     岡田 康裕君

  樋口 俊一君     熊田 篤嗣君

  矢崎 公二君     白石 洋一君

  橘 慶一郎君     田村 憲久君

  坂口  力君     池坊 保子君

  高橋千鶴子君     宮本 岳志君

  中後  淳君     石田 三示君

  吉泉 秀男君     重野 安正君

同日

 辞任         補欠選任

  川口  博君     田嶋  要君

  熊田 篤嗣君     長尾  敬君

  浜本  宏君     渡部 恒三君

  向山 好一君     道休誠一郎君

  本村賢太郎君     石井登志郎君

  池坊 保子君     竹内  譲君

  石田 三示君     豊田潤多郎君

  重野 安正君     中島 隆利君

同日

 辞任         補欠選任

  道休誠一郎君     阿知波吉信君

同日

 辞任         補欠選任

  阿知波吉信君     高橋 昭一君

同日

 辞任         補欠選任

  高橋 昭一君     田村 謙治君

    ―――――――――――――

本日の公聴会で意見を聞いた案件

 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七四号)

 被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七八号)

 子ども・子育て支援法案(内閣提出第七五号)

 総合こども園法案(内閣提出第七六号)

 子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第七七号)


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     ――――◇―――――

中野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案、被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案、子ども・子育て支援法案、総合こども園法案、子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案及び社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案について公聴会を行います。

 午前は、年金制度改革関連二法案について審査を行います。

 この際、公述人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。公述人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にさせていただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 駒村公述人、西沢公述人、菅家公述人、小野公述人、河村公述人の順に、お一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を受けることとなっております。また、衆議院規則の規定により、公述人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願いたいと存じます。

 それでは、まず駒村公述人にお願いいたします。

駒村公述人 おはようございます。

 社会保障・税一体改革、年金制度に意見、こういう機会をいただきまして、大変ありがとうございます。

 私にいただいた時間は十五分でございますので、早速、資料に基づいてお話しさせていただきたいと存じます。

 お手元に私のパワーポイントを打ち出したものが、横に印刷してあるものがございます。これが、番号を右下に打っておりまして、きょう、まず最初の報告で、九ページまで使わせていただいて御報告させていただきたいと思います。

 その後のページは資料あるいは論文になってございますので、また後ほど必要に応じて言及していきたい、こういうふうに思います。

 では、一ページ目の表紙をめくっていただき、最初の絵でございますけれども、社会保障制度、とりわけ年金に関して、今回の社会保障・税一体改革における改革の目標というのは、ここにある三つが挙げられている、こういうふうに理解しております。働き方、ライフコースの選択に影響を与えない一元的な制度、それから、最低保障機能を有し、高齢者の防貧、救済機能が強化された制度、国民から信頼されて財政的にも安定した制度、この三つだと思います。

 この三つの改革目標、これは、九〇年代後半から二〇〇〇年代にかけて、OECD、先進国各国で行われた年金改革、これもほぼ同じ三つの目標、つまり、働き方や、最低所得の機能強化、それから財政的な安定性、高齢化が進んでも年金財政が破綻しないような仕組み。これは先進国で行われた年金改革に共通した目標だと思います。

 そういう意味では、今回の一体改革の年金改革の部分の目標というのはまず正しい、こういうふうに評価しております。

 次のページを見ていただきまして、この次のページというのは、これは、国民年金一号被保険者の職業構成であります。

 国民年金一号は、いわゆる未納化、四割の方が払っていないという批判があるわけですけれども、実際に、国民年金一号の加入者でございますが、このほとんどが現在は無業者あるいは非正規労働者によって構成されている。自営業者は、かつてと違い、既に二五%ぐらいまで減少している。残り七五%は不安定な生活を送っている方たちである。この方たちの四割が払っていない。国民年金の定額負担、一万六千円程度の定額負担、最終的には一万六千九百円まで上がるとされている負担に今後耐え得るかというのが大きな課題になっているだろうと思います。

 また、年金のいわゆる空洞化の背景には、こういった非正規労働者の増加というのも大きな要因になっているのではないかと思います。したがって、働き方にかかわらず、年金、特に所得に比例して保険料を払う厚生年金になるべく多くの方に入っていただくというのは正しい改革の方向性だろうと思いますし、諸外国でも類似の改革は行われております。

 そういう意味では、今回の一体改革の中の年金の部分での適用拡大と言われている部分も、わずか四十五万人というのは研究者から見れば非常に残念ではございますが、今後、適用拡大がより大きくなるということを期待して評価したい、こういうふうに思います。

 次のページを見ていただきたいと思います。

 これは、一方で高齢者の貧困率が現在どうなっているのかというのを見たものであります。貧困率というのも、どうやってとるかによって数字に随分違いが出てくるわけでございますけれども、ここでは、生活保護の状況を見たものでございます。

 赤い線が、生活保護を受給している世帯の中での高齢者、六十五歳以上の世帯の構成ということで、途中で少し定義が変わっておりますので少し折れている部分はございますけれども、これは定義上の問題でございます。現在は、生活保護受給者の四五%ほど、六十歳以上に定義を広めると五〇%以上、生活保護の約半分が高齢者によって占められているという状況でございます。

 真ん中の点線でございますけれども、これは左目盛りを見ていただくわけでございますが、これは高齢者世帯の中で生活保護を受けている世帯の割合ということでございます。左目盛りはパーミルということですので、一四〇というのは一四%を意味しております。

 かつて、年金が非常にまだ充実していない時代は、確かに高齢者の貧困率は極めて高かったという時代がございますが、その後、年金の拡充とともに、高齢者の貧困率、生活保護を受けている高齢者の割合というのは低下傾向に入ったということになります。しかし、九〇年代後半からこれが逆転上昇を始めているということも見てとれる。これは、後ほどもう少し年齢構成別に細かく見てみたいと思います。

 何を申し上げたいかというと、高齢者の数がまず今後も急激にふえていく。特に六十五歳以上の割合は人口の四〇%、七十五歳以上だけに限定しても三〇%近くになっていくということでございますけれども、高齢者の数また割合が今後もふえていく。さらに、高齢者の貧困率そのものが上昇傾向にある。これは、両方を考慮すると、今後も生活保護受給者はふえていき、しかも、その中に占める高齢者の割合がより一層ふえるのではないかという心配があるわけです。

 次のページを見ていただきたいと存じます。

 これは生活保護を受けている人の動向でございますけれども、薄い青い線がこの二十年間の人口の伸び率でございます。総数のところを例えば見ていただくと、ほとんど変わらない、人口総数はむしろ減少傾向にあるということでございますが、生活保護受給者は、御案内のとおり二百十万人を超えており、戦後最大の数字になっているということでございます。

 それを年齢区分別に見ますと、確かに二十代のところは伸び率は非常に高いわけですけれども、これは全体の占める割合は余り多くない。六十歳、七十歳のところがこれもまた急激に伸びていることがわかる。七十歳以上の人口はふえているわけですけれども、それ以上に生活保護受給者がふえている。六十代は、人口の増加率をはるかに上回るペースで生活保護受給者がふえているということでございます。

 こういうふうに見ていきますと、既に現行制度の中で漏れ落ちた人たちが生活保護の方に徐々に徐々にシフトしてしまっているというのが大きな課題になっているだろうと思います。

 では、現行制度、今後どういう問題を迎えていくんだろうか、既に現在抱えているんだろうかというものを見たのが六ページ、現行制度の抱える課題ということでございますが、四つほど挙げさせていただきたいと思います。

 一つは、一号の未納者の増加。これは非正規労働者の増加が原因である。これに対しては適用拡大をなるべく広くやっていく、これが解消の手段であろうと思います。

 二番目。二〇〇四年の年金改革によってマクロ経済スライドが組み込まれたわけですけれども、このマクロ経済スライドによって、基礎年金、厚生年金ともに給付水準が落ちていくということも非常に大きな問題になってくるのではないか。足元で既に高齢者の貧困率が高まっている中で、さらにマクロ経済スライドを行っていく、特に基礎年金で行っていくというのは非常に問題を引き起こすのではないか、こういうふうに思っております。

 三番目。二〇二五年に向けて、既に見通しが発表されているわけですけれども、介護保険料、後期高齢者医療保険料、こういったものが急激に上昇していく、これによって手取りの年金額が急激に下がっていくのではないか。この問題に対してどういうふうに対応するのか。生活保護とのいわゆる逆転の問題もさらに広がるのではないか、こういうふうに思います。

 そういうふうに考えますと、高齢者の貧困率の上昇、そして、そのことに加えて、その背景には、無年金・低年金者がいて、それが生活保護に流入していく。生活保護と基礎年金をともににらんだ新しい最低所得保障のあり方を考える時期ではないかと思います。そういった意味では、今回の一体改革の中に入っている加算と言われているところは、完全ではないにしろ、一定の評価をしたい、こういうふうに思っております。

 次のページでございますけれども、現行制度と、一体改革が成立した場合の年金制度と、民主党案、いわゆる民主党年金改革の比較を行ったものであります。

 一番右の欄に「課題」というふうに書いてあるところが共通する課題でございまして、保険料については、保険料固定方式。これは、現行制度も一体改革後も民主党案も変わらない。一八・三%を将来目指す、民主党案は一五%に障害・遺族年金分が別途つくということになっているだろうと思います。

 高齢化への対応、これが高齢化社会において一番難しいわけです。マクロ経済スライドという形で行うわけですが、これは民主党も既に試算で明らかにされているように、みなし運用利回り、これはほぼマクロ経済スライドと同じ発想の調整方法が行われている、こういうふうに理解しております。

 年金一元化については、厚生年金。一体改革の後は厚生年金の適用を共済、短時間労働者に広げていくということ。民主党のアイデアは、これを自営業も含めた全国民を対象にしていくということであります。ここにおいては、所得捕捉、事業主負担が大きな課題になっていくと思います。

 最後に、国庫負担の使い方でありますけれども、現行制度は基礎年金の二分の一を国庫で保障している。それに対して、一体改革では、低所得加算と高所得への減算を行い、国庫負担分の重点化を図っていくというふうに評価をしております。これを突き詰めていくと、ある種、民主党の方の最低保障年金にも形としては接近していくのではないかと思います。その際には、やはり、所得捕捉を前提にした所得比例年金の全国民への適用拡大というのが最大のテーマになってくるわけでございます。

 そういう意味では、八ページの方に、現行制度を一番左の端に置いて、そして民主党案を右の端に置くと、今回の一体改革はちょうど中間的な方向に向かい始めているという点で、抜本改革という言葉ではないですけれども、大型のリフォームを繰り返すことによって、公費の使い方をより重点化していくということに注目すると、民主党案の最低保障年金と類型としては近づいているのではないか、こういうふうに思います。

 まとめますと、二段階の一元化というわけでございまして、被用者年金の一元化をまず行い、適用拡大を次に行い、そして、無職、低所得者への保険料免除の徹底を行っていけば、所得比例による保険料によって九割までの年金加入者をカバーすることができるということで、ほとんどの非正規労働者は今よりも負担は軽減されるだろうと思います。

 二段目に、残り一〇%の自営業者への扱いをどうするか。ここが必要なのか、可能なのか、その影響はどうなのかということも今後議論していかなければいけないだろうと思います。

 しかし、マクロ経済スライドによって、あるいは保険料負担の上昇を低所得者に対してどのように対応していくのかということを考えれば、国庫の使い方をより重点化していかなければいけないだろうという点では、現行制度の課題を一つ一つ検討していけばおのずと答えは明らかになっていく。低所得者の方に国庫の集中投入をやっていかなければいけなくなるのではないかと思います。

 最後に、九ページに入らせていただきたいと思いますけれども、今後の年金の議論の進め方については、議員の皆さんに九つの提案をさせていただきたいと思います。

 これは、年金改革を非常に与野党で進めていったスウェーデンの年金改革の進め方を参考にしたものでありますが、与野党で現行制度の課題を共有し、制約条件を、どういう限界があるのかということを見て、さらに、それぞれの案にはこだわらず、必ず合意はして、合意内容については与野党で責任を持ち、議論をパフォーマンスには使わない、目先の選挙の争点にはしない、圧力団体からの独立した議論、そして全ての情報を国民に提供する、こういうような与野党協議のルールをつくっていただき、実のある議論を進めていただきたいと期待しております。

 時間が来ましたので、私の最初の発言は以上にさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございます。(拍手)

中野委員長 ありがとうございました。

 次に、西沢公述人にお願いいたします。

西沢公述人 日本総合研究所の西沢です。

 本日は、今この委員会に出されています年金二法案とこの委員会ではない一法案の計三法案と、あと、今後の課題について意見を述べさせていただきたいと思っております。委員長から忌憚のないということでしたので、忌憚なく申し上げさせていただきたいと思います。

 まず、(1)、お手元にA4縦の資料がありますが、低所得者への年金加算がございます。これについて、私は基本的に反対です。

 なぜかと申しますと、最低保障機能という目的自体は大いに賛同いたします。これは、今駒村さんからお話があったとおり、高齢者の貧困率というのが高まっていることは事実でありますし、生活保護へ流れ込んでいることも事実である。ただし、低所得者加算をすることによって、やはり公平性の低下と高齢期の勤労をディスカレッジ、ちょっといい日本語が見つからなかったんですが、することは看過できないと思います。

 例えば、一生懸命基礎年金を払って若干の厚生年金の上乗せがある人といったものが、もらえない可能性がある。高齢期に少しパートをして収入を得た、恐らくこれは税法上の給与所得だと思いますけれども、六十五万を上回った給与収入があった人はもらえなくなる可能性があるといったことを見過ごすべきでないと思うんですね。

 これは、国会や霞が関でお互い意見を闘わすというよりも、私がお勧めするのは、日本年金機構の年金事務所の窓口の方ですとか市町村の窓口の方、あるいは社労士の窓口の方に、果たしてこういった制度が説明がつくのかといったことを、現場で実際に年金受給者の方々と接する方に聞いてみるのが一番だと思います。

 そうしたときに、例えば、一生懸命働いて年金を払ってきた方が窓口に来て、私はもらえるんですかと聞かれたときに、窓口の方が、いや、これはあなたはもらえませんと言われたときに、ああ、政府に裏切られたという気持ちになると思うんですね。

 ですので、政治的にメンツをかけて低所得者加算の取り下げを議論するよりも、現場の方に聞くといった新しい情報を仕入れて判断をされるのが一番であるかと思います。

 二番目に、高所得者に対する年金額の調整でありますが、これも、現下の苦しい財政状況のもと、少しでも国の税収を、財政を潤そうという気持ちはよくわかりますが、年金の中でやるべきでないと思うんですね。これは、できれば公的年金等控除の見直しですとか、税制の枠組みの中で対処すべきであると思います。

 政府・与党の社会保障・税一体改革大綱の中には年金等控除についてかなり記述がありますが、下げるとも上げるとも言えないような曖昧な記述になっていますけれども、ここは、一旦、公的年金等控除を引き下げるという方向で、高所得の高齢者の方には負担を負っていただく方向で再度調整すべきであるかと思います。

 三つ目に、短時間労働者への厚生年金適用拡大。これは、まさに政策目的は妥当であると考えますが、やはり、標準報酬下限九万八千円を下げることによる国民年金との公平性の低下といったことも看過できないと思います。

 ただ、この法案にはいいところがありまして、今、厚生年金の適用基準というのは、かつての厚生省の年金局の課長から現場向けの手紙、内簡で処理されているんですね。ですから、労働時間の四分の三というのは法律でも何でもなくて、課長の手紙にすぎない。これを法律に明記するといったことは、ぜひやるべきであると思います。

 ただし、九万八千円を七万八千円に引き下げるのは私は反対であり、かつて、二〇〇七年に被用者年金一元化等法案が出されたときも、この九万八千円は維持されたんですね。レジュメの次のページに引用してありますけれども、当時、私は社会保障審議会年金部会の委員をさせていただいておりまして、年金局の課長に質問しました。当時の課長も、やはり不公平、不均衡はあるというふうにおっしゃっていましたが、昨今、これは厚生年金の中での所得再分配の強化なので問題ないといった旨の発言をされていますけれども、私は、説明が一貫していないと思っております。

 総じて、この最低保障機能の強化の法案というのは、政策目的は妥当であると思いますが、現行制度のもとでそれを実現しようとすることによって制度にゆがみが生じるといったことがあると思います。ですので、私は、現行制度のままでいいとは全く思いませんし、今政府が目指されている方向性といったことはわかりますが、それは、現行制度の修正で行うのではなくて、新しい制度をつくるというところに向けられるべきであると思っております。

 被用者年金一元化等法案でありますが、これは、一歩前進ではあっても、国民の目から見まして、完全に一点の曇りもない一元化であるというふうには見られないと思います。

 一つ目に、積立金の仕分け方法が合理的ではありません。今、単年度の一、二階部分の支出割合に共済も合わせると言っていますけれども、年金は百年間均衡して初めて年金財政になりますので、これも、二〇〇七年の当時はチェックが行われていましたけれども、百年間を通じてこの積立金を一、二階で共有財源にすれば間に合うのかといったチェックが国民の前に提示されるべきであると思います。

 単年度で四・二年分ですか、あればいいというものではなく、この法案というのは、一歩前進なんですけれども、この法案が仮に通ってしまうことによって、一、二階外に切り分けられて共済年金に残る積立金が既得権になってしまう可能性があるんですね。ですので、一、二階の切り分け財源をよくよく慎重にチェックすべきであると思います。

 共済組合の事務組織が存続するというのも、結論が性急過ぎるというふうに私は思っております。

 法案の説明では効率化の観点からと書いていますけれども、効率性の観点からいいますと、管理は日本年金機構に、積立金の運用はGPIFに移管するのが合理的であるわけであります。確かに、イニシャルコストはかかるかもしれませんけれども、その後のランニングコストもあわせて考えると、日本年金機構、GPIFに統合した方が効率的かもしれません。

 よって、存続と、GPIF、日本年金機構への統合との両者が比較検討された上で、ではやはり存続しようというならわかりますけれども、そういった検討がないまま、効率的であるから今のままにするというのも、なかなか納得できないところがあると思います。

 この法案では、結局、事務組織を残すことによりまして、厚生年金一号、二号、三号、四号というのが登場してしまうんですね。例えば、我々民間サラリーマンは一号、共済の方は二号、三号、四号となってくるわけです。

 例えば、国民の皆さんに、いや、一元化しました、今度、共済の方は二号になります、三号になります、四号になりますといった説明をしたときに、国民の多くが一元化しましたねと受けとめてくれるかということであります。何かおかしいことをしているんじゃないか、共済が既得権を存続しているだろうという温床になると思います。

 ですから、できるだけ制度をシンプルに、一元化するというのであれば、一号から二号、三号、四号などという区分けを持たずに、全て厚生年金の加入者として加入するというのがあるべきであるかと思います。

 この委員会には法案が付託されていないようでありますが、特例水準の解消というのはぜひやるべきであると思います。

 レジュメには書いていませんけれども、交付国債に関しては、私はどちらでもいいと思っています。赤字国債の交付国債でも。マネーが入ってくるわけではありませんので。

 ですので、そうして今国会に提出されている法案を見ますと、この委員会に付託されているものの中では、被用者年金の適用拡大に関しましては、九万八千円を下げるべきでなく、ただし適用基準は法律に明記すべきである。低所得者加算に関しては、ぜひ現場の方の声を聞きながら議論を進めていただきたいというふうに思います。

 今後の課題でありますが、年金制度の改革をする際に、大きく二つの課題があると思います。

 一つは、年金財政であります。

 これは非常にしんどい作業でありまして、二〇〇四年改正のときに、当時の自民党、公明党の皆さんが、国民の批判を浴びながら、負担を上げ給付を下げる非常にしんどい作業をされてこられた。これがまず第一の課題であり、さらに続けなければいけないと思います。

 ただ、少し気になりますのは、確かに、年金財政が破綻しているという表現は行き過ぎであるかと思いますけれども、決してこのまま安泰であるとも言えないわけであります。

 二〇〇九年の財政検証の経済前提については賛否両論があるところかと思いますが、私はやはり甘いと思っています。甘いと思っていますし、実際、二〇〇七年の当時、民主党の皆さんは甘いと強く批判されていたわけでありますが、昨今、野田首相を初めとして、いや、百年均衡していますというふうに、ころっと変えられるわけですね。

 ですので、私はそこに非常に強い不信感を持っているわけです。そのまま貫いてほしかったわけですね、二〇〇七年のを。できれば、そのとき財政検証をやり直して、その上で支給開始年齢引き上げなどの議論に進まなければおかしかったわけであります。

 ですので、年金不信というのは、確かにメディアや我々研究者の行き過ぎた発言などもあったと思って、それは反省しなければいけませんが、批判しながらその後も貫かないといった姿勢にも求められると思いますね。

 マクロ経済スライドが二〇〇四年に入ったわけでありますけれども、これは見直すべきです。デフレ下で機能していないものを機能するように。この委員会でも何度も出ていると思います。

 少し私のマクロ経済スライドに対する見方を申し上げますと、これは政治家の方が国民に給付抑制をなかなか言い出しにくい、国民もそれを受け入れるだけのまだ成熟度に達していない中で、厚生労働省年金局の官僚の方がこういった舞台装置を準備してくれたんですね、マクロ経済スライドですと。名前を聞いても何だかよくわかりませんね、でも実態は給付の水準の抑制なんですということであります。

 ですから、本当は、政治家の先生方の皆さんと国民の間の成熟度が高まって、これだけの負担をしなければ給付はできないな、これだけの給付のためには負担が必要だなということを理解されれば、こういった官僚の方に余計な仕事をしてもらわなくても済んだはずであります。そこまでさかのぼって、負担と給付の仕事を見直しすべきであると思います。

 一方で、五ページ目に書いてありますが、仮にマクロ経済スライドが適用されますと、駒村先生が言われたように、基礎年金が大幅に下がっていってしまいます。これは非常にゆゆしき事態でありまして、確かに給付は抑制しなければいけない、けれども基礎年金まで給付抑制してよかったのかという話はあるわけです。

 これは、根本に立ち返りますと、基礎年金が何のためにあるのかといった意義が不明確であることに一つ理由が求められると思います。これは八五年の年金改正の中で、基礎年金法という法律をつくるのではなくて、国民年金法の改正で基礎年金を導入しているといったこともその象徴かと思いますが、基礎年金は一体何のためにあるのかといったところから説き起こしていくことも必要であるかと思います。

 六ページ目以降に、今度は制度の抱える諸構造への課題でありますが、だんだんちょっと時間もなくなってまいりましたけれども、少しだけお話ししますと、私、先ほど申し上げましたとおり、現行の年金制度のままで、例えば第三号ですとか無年金、低年金あるいはパート適用拡大に対応できるとは考えていません。ですから、政府・与党が目指されている新年金制度の中でそれを解消しようという方向性は、非常に賛同するものがあります。

 ただ、それがスウェーデン型となると、ハードルが高いと思います。ですので、課題がある、新年金制度を目指そうというところまでは私は大いに賛同しますが、ソリューションがスウェーデン型でなくていいと思うんですね。

 ちょっと時間が参りましたので、これ以降のことについてもしあれば、質疑の中で申し上げたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

中野委員長 ありがとうございました。

 次に、菅家公述人にお願いいたします。

菅家公述人 連合で副事務局長を務めております菅家です。このたびは、貴重な発言の機会を与えていただいたことに感謝申し上げます。

 私たち働く現役世代は、保険料拠出者であると同時に、将来の年金の受給者でもあります。

 本日は、働く仲間を代表いたしまして、今回の一体改革の中で示されている年金制度改革につきまして意見を述べさせていただきたいというふうに思います。

 まず、年金制度改革の必要性について述べたいというふうに思います。

 昨年は、日本の皆年金の五十周年でした。日本の公的年金は、高齢化の進展に伴い社会保障給付費の五割の五十三兆円に上り、国民生活と日本経済に占める役割は極めて大きなものになっております。

 また、ミクロベースで見ましても、六割の高齢者世帯が年金収入だけで生活しているなど、年金制度は、今や国民の老後生活を支える基盤として必要不可欠な存在となっております。

 一方で、足元の経済情勢の不透明さや、年金記録問題などの制度上の諸問題などと相まって、年金制度に対する不信感が増大していることも指摘できます。

 二〇一〇年度における国民年金保険料の納付率は、過去最低の五九・三%と五年連続で低下しております。特に、若年層の納付率の低さは深刻で、二十歳代は五割を割っております。

 若年層の納付率の低迷は、高齢期における低年金者や無年金者の大量発生を意味し、旧社会保険庁の調査では、将来、百十八万人の無年金者が発生するというふうに推計されております。こうした現状で、本当に国民皆年金を達成しているということを言えるのでしょうか。

 また、九〇年代の雇用労働分野の規制緩和と長期にわたる景気の低迷で、非正規労働者は今や全労働者の四割近くに達するなど、ワーキングプアの増大、格差拡大が進んでいます。

 しかしながら、社会保険は基本的に非正規労働者の存在を念頭に置いた制度となっていなかったため、非正規の短時間労働者は厚生年金と健康保険に入ることができず、全額自腹で保険料を払わざるを得ないということになっており、結果、平成二十年の国民年金の被保険者に占める労働者の割合は約四割に達しているわけであります。

 このように、非正規労働者は、正規労働者との間に、賃金、労働条件で大きな格差がある上に、社会保険でも大きな格差があるのです。これを放置すれば、現役そして老後にまで格差が続く、まさに格差の固定化とも言える社会問題を惹起することは必定です。

 年金制度に対する国民の信頼を取り戻すためには、年金制度を働き方や雇用形態に中立、公平なものにすると同時に、生活に必要な給付が確保されるようその機能を強化することが必要です。そして、こうした公平で機能強化された年金制度が将来にわたって持続可能とするため、不断の改革を行っていくことが重要であるというふうに考えます。

 政府・与党の年金制度改革法案の評価について述べたいというふうに思います。

 今申し上げました観点でいえば、今回の社会保障・税一体改革で実現を目指す年金制度改革には、年金制度の公平性確保と機能強化、そして持続可能性を確保するための改革項目が盛り込まれており、確実に実現すべきであるというふうに考えます。

 私は、安心と信頼の国民皆年金を維持するために、今回の改革は確実に実現すべきだというふうに思います。

 政府そして与野党は、政治の責任で、国民の老後生活の重要な基盤である年金を政争の具とすることなく、法案を確実に成立させていただくことをまず要望させていただきます。

 こうした視点に立ちまして、本日は、年金機能強化法案と被用者年金一元化法案について、基本的に賛成の立場から意見を述べさせていただきたいというふうに思います。

 まず、短時間労働者への社会保険適用拡大についてであります。

 先ほども申し上げましたとおり、現在の社会保険制度は、週労働時間三十時間未満の労働者には適用しなくていいとされておりますが、こうした働き方によって受けられる社会保障が異なり給付と負担の両面に格差があるということは、働く立場からすると全く納得ができません。

 雇用が不安定な者が、年金や医療保険といった社会保険が正規労働者より不十分というのは、余りに理不尽ではないでしょうか。リスクの高い人を排除せずに社会連帯でカバーするという社会保険の理念に立ち戻り、社会保険の適用対象者を拡大すべきです。

 労働時間で社会保険の適用対象を限定することで、社会保障制度が非正規労働者をつくり出しているということも言えます。また、専業主婦の短時間労働者を多く雇用する業種の事業主負担をその他の業種が負担しているということにつながりかねないことから、いびつな所得の移転が行われているというふうにも言えます。こうした点からも、社会保険の適用範囲は早急に見直すべきだというふうに考えます。

 私どもは、雇用保険の適用対象となっている週二十時間以上の労働者は、原則全て社会保険の適用対象とすべきというふうに考えております。

 今回の法改正におきまして、短時間労働者独自の要件といたしまして、賃金、勤務時間、企業規模要件が設けられたことにつきましては、こうした観点からは極めて残念であります。勤務時間につきましては、通常の労働者と臨時雇用者、そして短時間労働者、それぞれに異なる要件が定められることになり、トリプルスタンダードによって事業所で混乱が予想されます。また、企業規模につきましては五百一人以上という、中小企業の要件とも異なる新たな基準が設けられ、企業間の競争条件にも影響が出ることが懸念されます。

 しかしながら、今回の適用拡大は、日本の社会保険制度の長年の課題であった適用範囲の見直しに風穴をあける第一歩になるものであり、確実に成立をさせていただく必要があるというふうに受けとめております。

 また、法施行後三年以内に短時間労働者に対する適用範囲をさらに拡大するための法制上の措置を講ずるとの附則の規定を確実に実行し、全ての雇用労働者の社会保険適用に向け、さらなる改革を断行していただくことを強く求めたいというふうに思います。

 次に、基礎年金国庫負担二分の一の恒久化について意見を述べさせていただきます。

 年金制度の持続可能性を確保するためには、今回の年金機能強化法案に盛り込まれました基礎年金国庫負担二分の一の恒久化を絶対に達成すべきというふうに考えます。

 基礎年金国庫負担は、二〇〇〇年の年金法改正で〇四年までに二分の一に引き上げると附則に明記されながら実行されず、二〇〇四年の年金法改正で、改めて〇九年度までに二分の一に引き上げ、それに必要な安定財源を確保する税制改革を行うことが附則に明記されました。しかしながら、税制改革は実施されず、何とかこの間やりくりして臨時財源を確保してきたというのが実態だったのではないでしょうか。

 もはや、臨時財源で毎年財源を捻出することは困難であることは明らかであります。国庫負担二分の一の確保は、年金制度を安定的に維持する上で不可欠であり、直ちに安定的な財政基盤を確立しなければならないというふうに考えます。

 二〇〇四年改正の長期安定スキームは、国庫負担の引き上げが前提となっております。その意味でも、基礎年金国庫負担二分の一の恒久化と、その財源確保のための税制抜本改革を着実になし遂げていただきたいということを強く要望させていただきます。

 また、二〇一二年度の基礎年金財源確保のための国民年金法改正法案は、二月十日に国会に提出されたまま審議が進んでおりません。この法案もあわせて成立させていただくようお願いいたしたいというふうに思います。

 次に、最低保障機能の強化について意見を述べさせていただきたいと思います。

 今回の改革内容には、低所得者加算や高所得者の年金減額といった内容が盛り込まれております。この点について、こうした事柄を社会保険の制度内で行うべきではないという議論があることは承知しております。

 しかし、冒頭に述べましたように、現役世代に低賃金である人が高齢期も低年金になるという格差の固定化、再生産が今や社会問題化しているのであります。

 こうした低年金問題を完全に年金制度の枠外に置き去りにすることはよいのでしょうか。むしろ、高齢者に対する防貧の役割を高める観点から、年金制度の所得再分配機能を強化することは望ましい方向だというふうに考えます。

 もちろん、基礎年金財源の半分は保険料でありますので、保険料拠出者の納得性と、保険料納付意欲を阻害しない方法で行うことが必要であります。

 今回の加算方法は、免除期間に応じた加算と定額加算をあわせた方法となっておりまして、防貧機能と保険料納付意欲への配慮、そして保険料拠出者の納得性のバランスを考慮した方法であるというふうに評価できると考えております。

 次に、被用者年金の一元化について述べたいというふうに思います。

 被用者年金の一元化につきましては、省庁間での協議のみで今回の法案がまとめられた点は極めて残念でありますけれども、年金制度の公平性確保のための第一歩として確実に実現する必要があるというふうに考えます。

 雇用の流動化や働き方の多様化が高まっている今、ライフスタイルや職業選択に影響を与えない公平な社会保障制度を構築すべきであり、職業によって所得保障の内容や保険料率が異なる現行の被用者保険制度は適当ではないというふうに思います。

 国民の年金不信を払拭するためにも、公平性を高めることは重要であり、ぜひとも今回の一体改革の中で被用者年金の一元化を実現していただきたいというふうに考えます。

 この法案では、約四十五兆円ある共済年金の積立金につきまして、厚生年金の積立金の水準に見合った額、四・二年分の支出にたえ得る分を共通財源として仕分け、残りは制度が廃止となる職域部分の財源に充てるとされております。しかし、各共済年金と厚生年金は制度の成熟度が異なっております。

 共済年金の積立金は、一元化する前の保険者ごとに不公平感がなく、同一の給付水準の厚生年金給付が将来にわたって安定的に行われるよう仕分けなければなりません。その意味におきまして、この積立金のあり方につきましても検証が必要だろうというふうに考えているところでございます。

 最後になりますけれども、本日、幾つかの課題について指摘をさせていただきましたが、今回の改革だけで年金制度の公平性と機能強化、そして持続可能性確保が完全に達成できるわけではありません。

 しかしながら、真の国民皆年金制度実現に向けた第一歩として、今回の年金改革法案を含む一体改革関連法案を成立させていただき、さらなる改革を行っていただきたいというふうに思います。

 加えまして、年金制度は、ほかの社会保障制度、そして非正規雇用対策などの雇用政策と密接に関連するものでありますので、年金制度のあり方を考える際には、これらの関連政策と足並みをそろえて、一体的に見直しを進めていくことが肝要でございます。そうした社会保障制度の側における一体改革の視点に立った改革論議とその具体化が前進するよう最後に要望させていただき、私の発言を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

中野委員長 ありがとうございました。

 次に、小野公述人にお願いいたします。

小野公述人 本日は、お招きいただきましてどうもありがとうございます。みずほ年金研究所の小野と申します。

 私は、社会保障の専門家でも経済学者でも税の専門家でもございません。長年、アクチュアリーあるいは年金数理人という立場から企業年金にかかわっておりまして、その関係で、数理的論点から公的年金に関心を持つ者でございます。

 さて、二十一世紀に入りまして、日本の公的年金の改革の議論は、スウェーデンの一九九八年改革を強く意識してきました。私も二〇〇二年ごろからこの改革に興味を持ちまして、現在でも、同国が公表しております公的年金制度の年次報告でありますオレンジレポートを毎年拝読しております。

 本日は、日本の年金改革議論につきまして、数理的な面を交えて意見を申し述べたいというふうに思っております。

 実は、スウェーデンを調べ始めた当初でございますが、私も、同国の制度というのは非常に魅力的だというふうに考えました。これが日本に導入されればすばらしいとも思いました。しかし、よく考えてみれば、公的年金制度というのは、現役の労働者が引退者に対して適正な水準の引退給付を分配する機能であるということが言えます。スウェーデンの制度改革に関して、オールドワイン・イン・ニューボトルズというふうに評価した学者がいるということを聞きました。つまり、外見が変わっても本質は変わらないということかと思います。

 スウェーデンの制度の導入の適否を判断する要素の一つは、両国の人口構成や人口推計の違いだというふうに思います。

 まず、三ページの図一をごらんください。

 これは、二〇一〇年時点の両国の人口及び五十年後、百年後の人口推計の結果を示したものです。縦軸が人数で、横軸が年齢です。人口構成は、年少人口、生産年齢人口、老年人口に分けてあります。

 ごらんいただければおわかりのとおり、日本の人口は猛烈な勢いで減少しますが、スウェーデンはそうなっておりません。この違いは、両国の出生率と移民の違いというふうに思います。日本の合計特殊出生率は一・三五、スウェーデンは、この時点では一・八〇とされておりました。

 出生率と死亡率が一定ならば、人口構造は安定的に推移します。各時点で想定している安定人口を折れ線グラフで表示してありますが、これを総人口をそろえて比較したものが、下にあります図表の二でございます。いかがでしょうか。

 今申し上げた内容を数値でお示ししたのが、一ページにお戻りいただきまして、1の(1)でございます。

 公的年金の設計を議論する際に、私たちは諸外国に比べてこのような厳しい予算の制約条件が課されているということを御認識いただかなければいけないということでございます。

 老齢給付のコストだけを純粋な賦課方式で評価いたしますと、そこに書いてございますとおり、さまざまな要因というのはありますが、スウェーデンの半分程度の給付水準にしかならないということになります。

 現在は、積立金があることとか、いきなりこの状態になることはないという意味では、実際にはこのとおりにはならないわけですけれども、ただ、申し上げたいのは、スウェーデンの制度を模倣しようとしても、財政的観点から見ただけでも、それはスウェーデンと同じには運営できないということです。

 また、従属人口指数には老年人口指数ほどの差がないという意味では、この議論は年金だけに限ってするべきではないということも一つの示唆かと思います。

 いわゆる民主党案の検討に際して手がかりになるのは、昨年五月に提示されたと言われております新年金制度の財政試算のイメージ(暫定版)というものでございます。

 ここでは、平成二十一年財政検証の基本ケースと同じ前提によると、所得比例部分では、賃金上昇率から人口減少率の約三割を差し引いた率がみなし運用利回りであるという結果が出ております。甘いと言われております積立金の運用利回りを四・一%から慎重シナリオの三・七に下げますと、みなし運用利回りは、賃金上昇率から人口減少率の五割を差し引いたものということになります。

 最低保障年金に関しましては、各報道で取り上げられましたので改めて申し上げませんけれども、総じて、給付が低下する一方で、必要な消費税は現行制度を継続した場合よりも増加するという結果だった、非常に魅力に欠けるものだったのではないかなというふうに思います。

 私には、そこまでして最低保障年金を導入する意義が理解できないというふうに思っております。まずは、現行制度の適用拡大であろうというふうに思います。

 現行制度において提案されている無年金者あるいは低年金者対策というのは、最低保障年金、いわゆる民主党の新しい年金制度というのを強く意識したものであろうかと思います。

 この提案というのは、防貧機能を担う公的年金制度に救貧機能を付加するものでありますけれども、その結果として、自助、共助という意識が損なわれることはないでしょうかというふうに思われます。

 年金の受給資格の短縮は、四十年の期間のうちの三十年が未納という一種違法な期間である、その場合でも受給資格は与えるというようなことだというふうに理解しておりますが、参考とされた米国を初め諸外国の公的年金は、総じて皆年金ではございません。免除制度がある日本の皆年金のあり方を、こうした比較で行うというのはいかがなものかというふうに考えております。

 七万円年金のためにされる福祉的加算の要件でございますが、これは必要な人に支給されるようになっているんでしょうか。また、付加保険料でありますとか国民年金基金あるいは個人型確定拠出年金といったような、さまざまな自助努力に対応するようなものの拠出意欲を減退させないのでしょうか。

 六分の一加算というのは、満額拠出していたものの免除を助長させるというか、こういったようなことがかつての運用三号問題、この部分に限ってそういったものになりはしないでしょうかということを考えます。このようなことを考えておりますと、救貧を組み込むことには若干無理があるように思います。

 さて、ここからは完全に数理的ではありますが、非常に主観的な意見でございます。

 毎年スウェーデンの年次報告を眺めていまして、最近しみじみと思うのは、資産というのは一体何だろうということでございます。

 スウェーデンの公的年金のうち、賦課方式で運営する部分については、貸借対照表をつくってしまって、これを運営の検証に使用しております。

 図表の三をごらんください。

 負債は、過去の被保険者期間に基づく将来の給付の現在価値ですので通常の概念ですが、一方、資産側は、APファンドと言われる実際の積立金はほんの一部でございまして、バランスシートのうち大半は保険料資産という仮想的な資産でございます。実体があるわけではございません。

 時間の関係で技術的なことは申しませんが、なぜこのような資産を思いついたのか、その背景について私は非常に興味があるわけでございます。

 会計上の資産の定義というのは、過去の経済的な取引に起因した経済的な便益を受ける権利だというふうに思います。公的年金制度は、保険料の拠出に基づく受益の権利を法律で定めています。したがって、被保険者には保険料拠出という経済的取引に基づく、分配を受ける権利があるというふうにみなされます。これは等価性を前提としたものではございませんけれども、被保険者や受給者から見れば対価性のある資産であり、計上可能とも考えられます。

 年金の有無にかかわらず、生産人口が従属人口を支えていくという構造は変わりません。つまり、社会全体としてのコストはおおむね変わらないというふうに言えると思います。その上で、私的な扶養関係から発生する不合理とか不公正、こういったものを整理したものが公的年金制度でありまして、私は、社会の重要なインフラであり、国の財産であるというふうに思っております。日本はなぜ、公的年金という社会インフラを財産と考えて、積極的に評価しないんでしょうか。

 レジュメに書いてあります議論は、こうした観点から、有益な議論と言えるでしょうか。

 例えば、既に破綻しているという議論。

 あるいは、年金記録問題という、どちらかというと管理運営の問題というのを制度設計の問題と区別せずに議論する、こういったこと。

 あるいは、積立方式の発想で、積立金のみを用いた貸借対照表で債務超過を訴える議論。これは、図表四にございますとおり、厚生労働省の資料を加工しまして、厚生年金に五百兆円の債務超過がある、こういった議論でございます。

 あるいは、世代間の公平性を社会保険の中だけの給付と負担の関係を比較した一面的な数字でもって評価する議論。

 こうした議論に接した国民というのは、年金制度にどのような印象を抱くでしょうか。

 社会保障制度は、国民に安心、信頼を提供する制度です。立法者が社会保障制度を議論する際、みずからの議論が国民からいかに受けとめられるか、こういったものについてぜひとも意識していただきたいというふうに思います。安心とか信頼があるからこそ、人々はさまざまな活動にチャレンジできるというわけです。きれいごとかもしれませんが、国民が社会保障を財産と考えることができるか否か、それがスウェーデンとの違いなのではないでしょうか。

 社会保障制度を財産と思える国は豊かだと思います。たとえ超党派の会議ができたとしても、そこでの議論が党利党略に終始してしまえば、国は豊かになりません。

 私は、社会保障制度に安心とか信頼を与えることというのが、全くお金のかからない、何よりの景気対策だというふうに思っております。

 私の御説明は以上でございます。どうも御清聴ありがとうございます。(拍手)

中野委員長 ありがとうございました。

 次に、河村公述人にお願いいたします。

河村公述人 年金コンサルタントの河村でございます。

 最近、年金コンサルタントというと評判が非常に悪いんですけれども、実は、私は年金受給者ですと言った方がいいんですね。コンサルタントの仕事は昔やっていましたけれども、もともと余り好きじゃないので、来たら一応選んでやるかという程度の話で。実は、だから年金受給者なんです。

 信託銀行で三十年ぐらい年金の仕事をしていまして、その後投資顧問会社に行って少しそういう仕事をしましたけれども、きょうは非常に具体的に公的年金の財政にかかわる問題についてちょっと御説明をさせていただきたい、ぜひ聞いていただきたいと思います。

 それで、消費税は反対です。もっとほかにやることがあるだろうというのを、きょうは、だからお話ししたいと思うんですね。

 最初の一枚、二枚は、年金制度を支える基本的な問題というのは、当然ながら労働力の変動ですね。受給者の数がどう変わるか、それからもちろん被保険者がどう変わるかです。

 図の一を見ていただくと、過去、九〇年以降、それから将来は、平成二十一年の基本ケースの予想計算ですが、右側の赤い四角にありますように、被保険者は最少で三千百五十万、最大が三千四百六十万、非常に安定しております。受給者は、九〇年の七百九十万から一〇年二千九百十万、莫大にふえたわけです。これはもちろん高齢化ということですね。

 今後の、一〇年度から三〇年度の予想を見ますと、この間は、今後の出生率がどう変わっても、この人たちはすぐ労働力になりませんから、年金制度としては出生率の影響を受けない期間なんですけれども、被保険者が二百三十万減って受給者が三百十万ふえる。比較的変動は小さいと見た方がいいわけです。

 問題は、被保険者をふやせば支え手がふえるわけですから、ではそれをどうするかというのが一番重要な政策課題だと思うわけです。今度の改革案にもそういう観点はあるわけですけれども、それをもうちょっと立ち入って申し上げたいと思うんです。

 次のページの表の一をごらんください。これは、就業者、雇用者、被用者年金の加入者を八〇年以降五年ごとに並べた数字であります。一番下に簡単に書きましたが、就業形態の雇用化が著しく進行している。これは、一番右の端ですが、働いている人の七割が雇用者だったのが、今や八七・七%と九割近いことになっているわけですね。ところが、雇用者のうち被用者年金の占める比率は、八割弱のところから一〇%ぐらい下がっているわけですね。これは、比率的には非常に大きな減少だと思います。人数は、そこにありますように、割合安定してふえているわけです。やはり、雇用化が進んだにかかわらず被用者年金の加入率が低下したのは、これは非正規雇用が原因だと思います。

 それから、下にありますように、三公社及び農林漁業共済組合は、今、厚生年金に移っているんですけれども、その人数が九十万ぐらいありますね。ですから、そういう意味では、公務員、共済年金はそんなには減っていないんですね。それから、最近の雇用事情からしますと、役所で働く人は厚生年金の適用者というのがかなり多いんですね。全部共済じゃないんですね。ですから、そういうことなどを考えると、公務員は多分そんなに人数としては減っていないんだろう。ただ、共済年金としては、こういうふうに縮小はしています。

 ですから、こういう状況からすると、二〇〇〇年の有識者会議で社会保障をどうするかという議論があったわけですが、あのときに一番強調されたのは、支え手をふやす。三つテーマがあったんですけれども、一番大きいのは支え手をふやすという問題なんですね。ですから、支え手をふやすということをぜひ政策的に検討することが重要ではないかと思うわけです。

 三ページをごらんください。三ページは、厚生年金の収支状況の過去と将来の数字を兆円単位で掲載してあります。五年ごとの数字です。

 私は一番重要だと思うのは、先にお話しになった方もいろいろおっしゃっていますが、マクロ経済スライドなんですけれども、二〇〇四年の改革で、マクロ経済スライドというのは保険料固定方式と言われるわけですけれども、あれは、再計算というシステムをなくしたんですね。それまでは厚生年金は、五年ごとに財政再計算をしていました。それで、結果に基づいて、必ず国会に保険料の改定案と制度の改定案を出していたんですね。

 ところが、二〇〇四年以降は、そういう作業はなくなりました。ちょっと、誰がということは申し上げませんが、厚生省の役人とのつき合いもありましたので、そのころ言っていたんですけれども、とにかく年金国会が一番嫌だと言う人が多いんですね。なぜかというと、もうとにかくつるし上げに遭うと。だから、何とかあれをやめるようにしたいというのがマクロ経済スライドです。

 それから、やはり一番問題なのは、調整率の考え方の中に、雇用者の人数の総計に平均給与を掛けるという考え方があるんですけれども、雇用者がどんどん減っていくと、そういう意味では調整が進んでしまうという問題点を持っているわけですね。

 ですから、マクロ経済スライドそのものの考え方を本当にどうすべきなのかということをもう一回根本から考え直すべきではないかというのが、私のまず基本的な意見です。

 次に、標準報酬というのがあるわけですが、皆様御存じのとおり、標準報酬というのは、厚生年金においては、そこに書きましたけれども、九万八千円から六十二万円の三十等級なんですけれども、これも長い間変わっていないんですね。一方、健康保険は、五万八千円から百二十一万円という四十七等級です。

 私は昭和四十八年から年金の仕事をしているんですけれども、その年に物価スライドが入ったんですね。このときまではたしか、標準報酬は健保も厚年も一緒でした。四十八年の改正というのは、物価スライドが入って、それまで修正積立方式の厚生年金をシミュレーション法に変えたんですね。

 シミュレーション法というのは、パラメーターが非常に多いんです。もちろん、運用利回りをどうするかとか労働力人口などの変動が一番大きいんです。もちろん、どのぐらい結婚するかとか、子供はどのぐらいいるか、障害になる確率とか、本当はその表をつけようかと思ったんですけれども、これは余りに複雑なので、そんなものを見たって別に、だから何だということになるので、とにかく非常に複雑な計算をしていることは事実なんですね。

 それから、もっとまずいことに、経済成長の予測は厚生労働省の権限じゃないわけですよ。これは内閣府の権限なんですね。そうすると、成長率の数字を厚生省がつくるわけにはいかない。これは厚生省の役人と話したときに言っていましたけれども、強烈な縦割りがあって、あれはできないと。要するに、厚生労働省ができることというのは、ある程度限られているわけです。

 そういうわけで、マクロ経済スライドというのが、やはり限りなく保険料が上がり、給付が下がるのではないかという、確かに西沢さんがおっしゃるように、もっとよく周知させるべきだというのはあるんですけれども、仮に周知させたとしても、恐らくそういう懸念を国民は持つと思うんですね。

 ですから、そういうことなどを含めて、もう一度、こういった構造が適切かどうかということについて、やはり議会はきっちり議論をして、それを検討すべきだと思うんですね。結局、再計算をやめたということが非常にきいているんですよ。やはり、国民の関心が行き届かないところで厚生省というのは何をやるかわからないから、別に僕は厚生省の敵じゃないんですけれども、そういうところはあるので、その辺をよくお考えになったらどうかと思います。

 したがって、標準報酬を健康保険並みにすれば、そこに書きましたように、ざっと計算すると、これは健保のデータで、九千五百億円の増収になります。もちろん、これは一遍に上がると、事業主負担も本人負担もありますから、そんなことは簡単にはできないわけです。しかし、どこかでこれは改定して、やはり財源を立て直さなきゃいけないので、それが本来、厚生年金の制度をどうするかのもっと基本的な問題じゃないかと思うんですね。

 御存じの方もおられると思いますが、アメリカの公的年金は、基礎給与の上限はたしか一千万円ぐらいなんです。これは為替レートがいろいろ変わるから、もう少し低いかもしれません。上限はそのぐらいなんですけれども、給付については三段階になっているんですよ。低い方は一〇〇%、次の段階が四十何%で、その上が一五%だったかな、折れ曲がっているんですね。だから、日本もそういう折れ曲がり方式にすれば、拠出金は大きいけれども給付には余り影響しない。これは完全に所得の再分配なんですけれども、そういうやり方を検討してはどうかと思います。

 それから、このシミュレーションは運用利回り四・一という非常に高い運用利回りなんですけれども、積立金は大体四年分持っているというのを前からずっと厚生省は言っているわけですけれども、これは四年分には根拠がありません。さっき申し上げたように、段階保険料方式からシミュレーション法に移る間に、何となく四年というのを既成事実化しただけなんです。積立金が大きいと実は運用リスクが大きいですから、実際に年金積立金運用基金はリーマン・ショックのときにたしか八兆円ぐらいマイナスになりましたけれども、積立金を減らしてしまえば運用リスクはないわけです。それで、今ある積立金というのは、多くは団塊の世代が拠出した資金ですから、それをこれからの給付に使っても世代間の問題は起きないわけですね。

 ですから、私は、何年分がいいかというのはちょっとよくわかりませんというか、これは議論しなきゃいけないと思いますけれども、何年分か減らせば、さっき申し上げた、これから比較的受給者と被保険者が安定している期間に、何とか保険料も余り影響を受けないような形で、かつ、制度を改定するということができるんじゃないかと思うんです。それがもう本当に今度、まあ、ことしかどうかはあれとしても、もうこの数年が最後のチャンスだと思うんですね。それをぜひお考えいただきたいと思うんです。

 やはり、立法府がそういうことをきっちりと議論してやっていただきたいと思うんですね。ですから、それは赤い字で書いた「積立金の取り崩し」という問題で、幾らという案はありません。

 それから、企業年金が専門なので、私は三井物産とかソニーとか新日本製鉄の年金制度をつくったんです。もっとたくさんつくっていますけれども、そういう関係で、ちょっとこのことはぜひ知っていただきたいのが、年金にかかわる特別法人税という問題ですね。

 これは、九九年に特別法人税を凍結したんですけれども、このころ、実はバブル崩壊でマーケットがかなり低調で、マーケットの人ならすぐに調整と言うわけですが、調整していて、いずれにしても何とか救済しなきゃというので、一%の税金をただにした。ただというか凍結したわけです。取らないようにしたんですね。それから、何と今まで十三年間、税金を取っていないわけですね。

 どういう計算で一%は決めたかというと、その下に書きましたように、これは税務大学校の吉牟田先生の有名な本なんですけれども、そこに書いてあるんですけれども、所得税率と地方税率を加えて、それに延滞税を掛けたものを比例案分したという考え方なんですね。

 なぜかというと、年金の権利を得ると、そのときは課税されないわけです。それで、運用益も課税されない。課税されるのは将来の退職のときなんですね。だから、その間は繰り延べにしようというのが特別法人税です。もちろん、関係者の中には、こういう制度は世界に例がないとかいって反対する人がいますけれども、実際には三十年以上、特別法人税を払っているんですよ、企業は。それで、これは実際の納税事務は資産を運用している信託銀行や保険会社が納税しますから、別に取り漏れはないんです。非常に徴税コストは安いんです。

 もし、これを一%でやりますと、そこに、年金基金というか年金制度の、日本の上位十社、これが本当に上位十社かどうかはわからないんですけれども、恐らくこの十社が、これは十社か十一社かちょっと数えていないですけれども。NTTは特例で制度が二つあるんです、ほかはみんな一個しかないんですけれども。上の方はみんな、二兆円とか一兆何千億とか、すごい資産を持っているわけです。ここで一%本当に税金を取ると、そこにありますように、千二百億円ぐらいの税金を取れるんですけれども、さっきの計算式にありますように、今、では一体何%の延滞税かというのは、ちょっと現実性はないわけです。

 今、金利が低いですから、多分一%ぐらいにしないと今のあれとしては理解されないし、もちろん所得税率も地方税率も、特に所得税と地方税の関係が逆になりましたから、そういう意味ではここは変わりますけれども、いずれにしても、同じような考え方で計算し直すと、多分〇・三%とかそれぐらい、〇・二か〇・三ぐらいになっちゃうと思いますけれども、それでも、もらっている企業の方は、余りこういうことについてすごく喜んでいるわけじゃないんですね。まあ、よかった、やるんだったらやればという程度の話で。

 これは厚生年金基金はかからないんですよ、非課税なんです。掛け金の三倍ぐらいのところまでは非課税ですから、そういうふうになっています。

 時間かな。前の人が少し短かったから、ちょっと延ばしていいですか。

中野委員長 ええ。

河村公述人 そういうわけで、この年金資産は、有価証券報告書を全部見たんですけれども、国内、国外の年金資産の区分というのを分けていない会社が多いんですよ。

 これは、SECに出している資料があって、それを見るとあれなんですけれども、ちょっと時間がなくて。SECにアクセスすればもちろんわかるんです。時間がないからくたびれるからやめちゃったんですけれども、だからごめんなさい、これはちょっと過大かもしれません。下に書きましたよ、トヨタは海外子会社を含んでいます。国内だけと書いてあるのもあるんですけれども。

 そういうわけで、あともう一つ話したかったのは、ちょっと書いていないんですけれども、公務員の職域年金の問題なんです。職域年金というのは八六年の法改正でいきなり出てきて、私もそのとき本部にいたんですけれども、何でああいうのが出てくるのかと思ったら、あっという間に審議なしに通ったんですね。それで、理屈が、企業年金がないからと。ところが、企業年金は、退職金を減額して企業年金に移すんですよ。公務員は、退職手当法の給付はカットしないで職域年金をつくったんです。これは問題ですね。

 これは、やはりそういう角度の検討もしてもいいんじゃないかと思うんです。共産党の人はそこは余り言わないでほしいなんというふうなことを言っていたんだけれども、一応。いや、僕はちょっとこれは本当は言っておきたいと思うので、済みませんね、言っちゃいますけれども。いや、何を言ってもいいと委員長がおっしゃったので。

 それから、もう一つ、三公社の中に、旧共済期間中の政府の支出というのが入っているわけですね、特別費用というのが。私は、NTTのを前に計算したんですけれども、NTTだけでも数千億ありましたよ。ですから、NTT、たばこ、JRの分の旧共済、恩給時代の、あれの政府の負担というのを今回どうされているかというのは、あの物すごく多い資料の中でわからなかったんですけれども、ちょっとその辺も場合によったらお調べになったらどうかと思います。

 済みません、ちょっと時間が超過したかもしれませんが、後ほど質問があればお受けするので、よろしくお願いします。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

中野委員長 ありがとうございました。

 これにて公述人の方々からの意見の開陳は終わりました。

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中野委員長 これより公述人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田康裕君。

岡田(康)委員 民主党の岡田康裕でございます。

 本日は、いろいろな角度からお話をいただきまして、本当にどうもありがとうございます。

 今、この一体改革の各法案の審議も、裏で与野党協議が行われるような状況になってきております。その中で、ポイントは幾つもあるわけですけれども、例えば基礎年金の国庫負担の三分の一、二分の一の話ですとか、また物価スライドの特例水準の解消の話でありましたりとか、もう一つ言えば、被用者年金一元化。細かく言えば論点は幾つもありますけれども、この三つについては、大きな方向性という意味では、与野党それほど激突をしているところではないのかなと思っております。

 やはり焦点になってきていますのは、既に触れていただいておりますけれども、低年金者への六千円加算の部分。その先に最低保障のあり方というのもちらほらするわけですけれども、その部分がまさに今の与野党協議の焦点になってきているのではないかと思いますので、時間も短うございますから、ぜひそこに絞って質疑をさせていただければと思っております。

 先ほど駒村先生や西沢先生からもお話ございましたけれども、どういう人に加算をしていくのかという意味では、やはり少し分解して考える必要もあると思っているんですね。つまり、払えるのに払っていなかったような人にまで加算するのかといったような話もあれば、障害基礎年金というのもあったり、免除者の方々もあったり、そしてまた、マクロ経済スライドの話です。

 今の直近の財政再計算でも、百年の安心を考える上で、マクロ経済スライドを特例水準解消後から二十五年適用して計算していると思うんですよ。これは、二十五年間、例えば〇・九%ずつ減っていくとすると、二割ほど基礎年金部分が低くなるはずです。駒村先生の資料には、行く行く三割というふうなお話もありましたけれども、物価スライドの特例水準部分を解消すれば、恐らく二千円ぐらい基礎年金部分も下がるんでしょうから、そういう意味では、二十五年か三十年先といいますと、実は私、三十六歳なものですから、年金、そろそろかなというころには、我々も国民年金一本ですので、ちょうど基礎年金部分というのは五万円を切ってくるような水準になるはずなんですよ。

 そういうことからすると、そういう底上げ的な意味での加算というところの話もまた一方であると思うんですよね。先ほど西沢先生から、不公平が生じるという話はありました。以前、先生の御講演も聞かせていただいて、なるほどごもっとも、そのとおりだなと思いました。

 ですけれども、そういった不公平論というのも、駒村先生が入られていました社会保障審議会の年金部会の中でも、第十一回あたりの議事録を見ますと、まさに、委員の皆さんから、これは不公平が生じるじゃないか、そういった話も議論された上で、事務コストのこととかいろいろなことを勘案されて最終的にこの案に落ちつかれたんだと認識をしているんですね。ですから、そのあたりをもう少し突っ込んでお話を伺いたいんです。

 まず、西沢先生にお伺いをいたします。

 先生も問題視されていると思うんですけれども、やはり基礎年金部分にまでマクロ経済スライドが当たっていくということで、厚生年金の方は、所得代替率五〇%とかで、ある程度水準を守れると思うんですけれども、国民年金、基礎年金一本みたいな方々のところというのは、どうしても低年金になっていくと思います。そういうあたりを今後どういうふうに解消していくべきだと思われますでしょうか。

西沢公述人 今、岡田先生から、基礎年金に対するマクロ経済スライド適用について御質問がありました。

 私、これは確かに、二〇〇四年改正を振り返りますと、年金財政をもたせるためにマクロ経済スライドを導入されたというのは英断だったと思います。まだ動いてはいないんですが。

 ただ、基礎年金と報酬比例の役割を考えたときに、報酬比例は拠出建てというんでしょうか、保険料を払ってその範囲に応じてもらえるという考え方でいいと思うんですね。一方で、基礎年金という基礎と名前を冠した年金に関しては、給付建てというんでしょうか、まず給付水準があって、それに応じて保険料を負担するという考え方の方が本来はふさわしいと思うんですね。

 ですから、二〇〇四年改正はかなり混乱の中で法案を可決したと思いますけれども、一つ私のアイデアとしては、例えば基礎年金に関してはマクロ経済スライド適用をやめる。これも幾つか財政上のパターンがありますけれども、新規裁定だけはやめる、あるいは、既裁定に関して、物価スライドをさらにマクロ経済スライドを適用するようなことはやめるといった細かな議論をしていくべきであると思います。

 これは、公明党の皆さんが福祉改革ビジョンという、ちょっと正式名称を間違っていたら申しわけないんですけれども、中で出されている定率加算にかなり近いと思うんですね。マクロ経済スライドをやめるということは基礎年金全体を底上げするということですので、定率加算に近いと思います。こうして定率加算にすれば公平性の問題を回避することができますので、こういった議論を詰めていくことがいいのではないかと思います。

岡田(康)委員 貴重な御意見をどうもありがとうございます。

 続いて、駒村先生にお伺いをしたいんですけれども、先生の方からも大分この加算の話について触れてはいただいたんですが、冒頭、先生の資料の一ページ目で、「先進国に共通する年金改革の方向性と一体改革の目標」という中で、近年の先進諸国で年金改革が同様の方向性で行われてきたというお話がまさにございましたが、今のところ、つまり、この二つ目の「最低保障機能を有し、」という部分について、各国も、日本ほどではないにしても、高齢化が進んでいく中で、どういうふうにここを改革していこうとしている、ないし、してきているのかというのを、二、三、例などいただければありがたいと思います。

駒村公述人 OECD、ILO、世銀等で、どういう改革が行われたのか、整理されております。

 第一番、一番多かったのが、高齢化に対応して財政を安定させる仕組み。ずばり言うと、支給開始年齢と、年金額の実質引き下げというものがあります。

 それから二番目が、雇用、労働の多様化に応じて、社会保険から落ちていく人、非正規の部分をどうカバーするかという部分があります。

 三つ目として、大体上位三つ目に入ってくるわけですけれども、年金額を引き下げるとはいうものの、低所得の人の年金を一定以下まで下げてしまえば、それは年金の役割を果たさないということで、そこの部分については公費などを集中的に投入する。具体的に言えば、こういう名称で公費を使って低所得者の年金のところを厚くしたのがスウェーデン、フィンランドという北欧の国です。それから、そういう年金というラベルは使わないで、そのかわり社会扶助の手法を使って、しかし社会扶助の資産制限を非常に緩い形で高齢者に適用するというのがドイツのやり方だということで、いずれにしても、高齢期の所得が一定以下にならないように保障しているというのは、年金を使った仕組みと社会扶助、日本でいうと公的扶助の運用を変えていく、緩くしていくという方法があろうかと思います。

 以上です。

岡田(康)委員 続いて、菅家さんにお聞きしたいんですが、先ほどもお話の中で、そういった最低保障機能というのは、最後は生活保護というのがあるんですけれども、その前の段階での、年金の中でそういった機能を求めていくべきではないかという御意見をいただいたように聞こえました。

 そういう中で、私、駒村先生の論文なんかも拝読しておりますと、非正規の方々への厚生年金加入の適用拡大を、事業主の方の負担もありますけれども、しかし、それを乗り越えて、ぐぐっと適用拡大を突き詰めてやっていくと、大分厚生年金の網の中に入っていただくことができるであろうと。しかし、それでもまだ残るのはやはり自営業者の方々だと思うんです。

 そういう方々に対しての、一元化という話をし始めますと、所得比例部分をどうするんだといったような話も出てくるわけですが、そこらあたりは、菅家さん、連合の皆さんの考え方なり、お話しいただけますでしょうか。

菅家公述人 連合の年金制度改革の考え方について、少し述べさせていただきたいというふうに思います。

 連合は二段階で制度改革を考えておりまして、まず、今回法案が提出されておりますけれども、被用者年金の一元化をまずなし遂げるべきで、それと同時に、基礎年金の全額税方式化ということを考えているところでございます。

 そして、第二段階として、自営業者の所得比例年金を創設いたしまして、被用者と自営業者の所得比例年金を一元化する。その上で、最終的に基礎年金を最低保障年金に転換するというのが連合の考え方でございます。

 ただ、現行制度から今申し上げましたような制度への移行につきましては、自営業者の所得比例年金の創設に向けた条件整備、自営業者の所得捕捉などといった観点もございますので、私どもといたしましては、四十年程度かけて移行する中長期的な課題として提起をさせていただいているところでございます。

岡田(康)委員 もう一度駒村先生にお伺いしたいんですが、今の、自営業者の方々の、より正確な所得把握というか、そういったところについて、先生はどういうふうに臨んでいくべきだと思われますでしょうか。

駒村公述人 現状、自営業者の方は第一号かということについて、まず、高所得の自営業、ある程度法人成りをしているような自営業者は既に二割程度、上位の方はもう厚生年金の方に入っているのではないかと思います。

 残りの方たち、低所得の方たちでありますけれども、この人たちについては、所得捕捉がどのくらい現状、税で正確なのかというのは、さまざまな数字は実際ございます。研究によっては、もう九割ぐらい捕捉できているんじゃないかというところでございます。

 実際に、さまざまな統計データを見て分布を見たところ、確かに、下の二〇%ぐらいのところはほぼゼロの所得だというふうに答えていますけれども、それよりも右側の、百万以上ぐらいの方の分布は、ほぼ正社員と非正規社員等の人たちのグループと同じような所得分布をしておりますので、それほど極端な所得分布の違いが自営業グループとその他グループであるわけではない、こういうふうに考えております。

 以上です。

岡田(康)委員 どうもありがとうございました。

 この六千円加算のところは、国会のこれまでの審議の中でも、その境目のところで起きる逆転現象の不公平さとか、そういったところばかりが大きく報道されがちなんですけれども、例えば一方で、障害基礎年金が、今回百八十万人の方が、影響が出るわけですけれども、加算されるものも含まれていますから、そういうところはぜひ丁寧、慎重に与野党協議をしていくべきだと思っています。

 また、先ほど来お答えいただいておりますとおり、払わなくて、その人に加算するのかという問題はありますけれども、そうはいっても、基礎年金部分が、今の現行制度だと、財政計算上は持続可能だといっても、どんどんどんどんやはり少なくなっていきますので、そこをどう底上げするかという議論は非常に大事でございますから、この加算の議論も丁寧に審議をして、何かしら、今の制度の問題点を一歩でも二歩でも前に進めるようにしていかねばならないと思っております。

 時間が参りましたので、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

中野委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。

 次に、橘慶一郎君。

橘(慶)委員 五人の先生方、本当にありがとうございました。

 きょうは、年金のこれからのあり方ということであります。孫子の代まで安心できるように、そしてまた保険料を払っている皆さん方、国民の皆さんが平等感があるように、こういうことであろうかと思いまして、そういうお話をそれぞれの観点からお伺いしたと思っております。

 先生方はちょっと驚かれるかもしれませんが、私、万葉集を詠んでからいつも質問するということにしております。

 きょうは、孫子の代までこの世がアジサイのごとく栄えるようにという歌でございますので、きょうの場には合うのかと思います。

 巻二十、四千四百四十八番。

  あぢさゐの八重咲くごとく八つ代にをいませ我が背子見つつ偲はむ

 では、よろしくお願いいたします。

 最初に、まず小野先生にお伺いしたいと思います。

 企業の年金数理をいろいろ御担当されているというお話でありました。言ってみれば、それの大型版がこの国民年金というか、国民の、国の年金制度だと思っております。

 そこで、企業年金もいろいろな問題がありまして、数理計算をして、例えば債務が、積み立て不足があれば何年かに分けて積み立てをしていくとか、いろいろなことをやっているわけであります。こういったことがいろいろありまして、厚生年金基金の問題などもあって、いろいろと国民の皆さんにはこういった年金制度に心配があるということになるんだろうと思いますが、企業のそういったいろいろな年金数理を御担当になっておられて、国の年金制度の場合、国が果たす役割がどうであるか、あるいは先ほどお話がありました国の年金数理というものはどういうふうに見ればいいのか、もう少しお考えをお伺いしたいと思います。

小野公述人 お答えします。

 企業年金の話をこの場でお話しさせていただける機会があるとは思っておりませんで、大変ありがとうございます。

 御存じのとおり、厚生労働省でも有識者会議というのがございまして、ここで、厚生年金基金の問題、厚生年金基金を中心とした財政のあり方とか厚生年金基金そのもののあり方、こういったものが議論の対象になっている、私も委員の一人ということでございます。

 公的年金との関係でいうと、一つは、公的年金を積立方式にしてはいかがかというような議論が一点あるかと思います。これに関しては、私も、多くの皆様が言っていますけれども、それは余り得策ではないというふうに思っております。

 特に、積立金の運用利回りということを当てにすると、そこがいかにも世代間で全く不公平がないような印象を受けるような、そういった仮定というのが非常に横行しているように思っていますが、資産のリターンというのは、結局のところ、労働者が発生させるアウトプットに基づいてリターンがあるということでございますので、それは必ずしも公平性をそれで確保したということにはならないということとともに、積み立てとなりますと、今、例えばカルパースというアメリカの公務員年金、カリフォルニア州、ここが実は予定利率七・五%、こういう利率を使っていますが、アメリカの十年国債は、御承知のとおり、今二%を切った状態でございます。こういった財政問題等がありますと、公的年金の中で積み立ての要素を過度にふやすと、やはり非常な混乱ということがあるのではないかなというふうに思います。

 それとともに、企業年金でございますけれども、この時点で、先ほど予算制約と申し上げましたけれども、企業年金という自助努力の手段を奪い取るというようなことというのは余り適当ではないというふうに思っております。

 特に、個人に任せてしまうとなかなか難しい面がありますので、職域の年金というのは、そういったところを非常に効率的に運営できるということもございますので、こういったものの芽を摘むというようなことに関しては、やはりちょっと慎重に考えるべきだ。とにかく、トータルでもって年金制度を普及発展させていくということが重要かと思います。

 以上でございます。

橘(慶)委員 ありがとうございました。

 次に、西沢先生でございますが、先ほどの陳述の際に、最後のところが少しお時間が不足されまして、今、小野先生にも少しお話をいただきました、これからの年金制度はいかにあるべきと。

 このいただいた書類の中でも、新しい年金制度について三つばかり、こういうことに問題点があるという資料はいただいておるんですが、それでは、西沢先生として、これからの年金制度というものはどういう形がよろしいとお考えであるのか、先ほどお話しにならなかった部分について、お考えをお伺いしたいと思います。

西沢公述人 今、新しい年金制度というのは、政府・与党が出されているものを想定されたお言葉かと思いますが、私は先ほど、スウェーデン型であれば手が届きにくいというふうに申し上げたわけですね。

 今、最低保障年金を取り下げる、取り下げないが話題になっていますけれども、スウェーデンの年金制度をまず簡単にまとめますと、所得比例年金が主体なんですね。年金給付全体の九二%が所得比例年金で、保証年金は八%にすぎないわけで、あくまで補完なわけです。

 ですから、所得比例年金を手厚くして、なるべく所得比例年金を給付して保証年金への依存を小さくするというのがスウェーデンの年金制度、まさにザッツ社会保険方式でありますが、私は、この日本の高齢化の状況からいって、残念ながら、負担と受益の明確な社会保険方式の年金というのは成り立ちにくいと考えています。ですので、所得再分配を強化した中で公的年金を維持するというのが、残念ながら我が国の現状かなと思います。

 もう一つ、基礎年金のお話を申し上げましたけれども、やはり八五年改正は大改革だったわけですが、国民年金法の改正という中で基礎年金を導入したというところに、基礎年金は何のためにあるのか、どういった給付水準を保障すべきなのか、どういった財源がふさわしいのかといった議論がどうしても十分でなかった印象を持っていますので、私は、この制度にしようということは今申し上げませんけれども、基礎年金法を、ではつくるとしたらどういう法律になるかといったことを考えるのがいいかなと思います。

橘(慶)委員 どうもありがとうございました。

 基礎年金の問題、二階建ての問題、いろいろあるわけでありまして、これからの年金制度をどうするかということについては、今、岡田委員もおっしゃったように、与野党間でいろいろな協議も進んでいるわけであります。

 そこで、駒村先生の方から、このいただいた資料の中に、先ほど見ておりますと、抜本改革より連続大型リフォーム方式という、言ってみれば、家を建てかえるのではなくて、リフォームを一つの考え方を持ちながら進めていく、こういう言葉に対しては、私、個人的には非常に共感を覚えるものであります。

 先生は、先ほどからお話があるように、先進国のいろいろな事例も見ておられるかと思います。そういうことも踏まえて、抜本的ということが本当に歴史上あちこちあるのか、それとも最近はこの連続大型リフォームなのか、世の中全体、先進国はどうなっているのか、少し御存じのところをお答えいただければと思います。

駒村公述人 この表現、いろいろ思いもあるわけですけれども、たしかチャーチルか誰かの言葉だと思いますけれども、新しい家ができる前に古い家を壊してはいけないという話があったと思います。要するに、新年金というのは具体的にまだ設計図もできていない、その前に今、現行制度を壊すわけにはいかない。しかも、もし仮に新しい制度ができても、引っ越すまでに四十年ぐらいかかってしまうということです。

 年金というのは、現在と過去と未来がある種つながっていなければいけない部分がございます。ある日あるときから急に新しい制度はできませんので、どういう仕組みを目指すのか、どういう社会を想定するのか、公費財源はどこに重点投入するのかという具体的な方向性は決めた上で、部分的に大型のリフォームを行っていくべきだというふうに考えております。

 世界じゅうの年金改革を見ても、先ほど小野さんからもお話があったかとも思いますけれども、スウェーデンも、確かに見せ方は抜本に見えますけれども、実際には、ほとんどの仕組みというのは余り変わっていない部分が多いと思います。世界の年金で、特に先進国のある種歴史がある年金の中で、全く新しいものをある日あるときからスタートするということはなかったんじゃないかと思います。

 そういう意味では、方向性をちゃんと定めた大幅なリフォームをしていくべきではないかという認識でございます。

 以上です。

橘(慶)委員 どうもありがとうございます。

 そういうリフォームをどういうふうにするかという中で今回提案されている一つが、厚生年金の適用を労働時間の短い方々のところへ少しでも拡大していこう、こういう考え方、言ってみれば、裾野を広げていこうということであります。

 それはそれで本当に厚生年金の制度のためにはいいことだとは思うんですけれども、ただ、これは菅家公述人、菅家事務局長さんにお伺いしたいわけですが、御指摘があったように、今回は、従業員規模とか、ちょっと今までにないような新しい仕分け、そういうことで始めざるを得ないと言った方がいいんですか、こういうことがございます。

 当然、これは、第一歩を踏み出すという考え方にしては、どうしてもそういうことも必要なのかもしれませんが、実際、実務されておられますと、従業員規模五百人といった問題とか、いろいろなことが懸念されるんだろうと思います。

 その辺、どういう問題を懸念されていて、どういう対策が必要だとお考えになっているのか、今回の改正案に即してお考えをお願いいたします。

菅家公述人 先ほども申し上げましたとおり、私どもは、基本的には、労働時間週二十時間以上の労働者につきましては適用すべきというのが大原則だというふうに思っております。

 委員御指摘のように、一気にそこまでいかないというさまざまな事情があることも承知しておりますので、今回はその改革に向けた第一歩として受けとめておりますけれども、あくまでも方向性はそういうことだろうというふうに思っております。

 部分的に導入することによるさまざまな問題点につきましては、先ほどトリプルスタンダードというふうに申し上げましたけれども、例えば正規労働者と臨時職員それから短時間労働者というふうに、さまざまな労働時間によって適用が異なる、考え方が異なるという問題点、これが一番の問題だろうというふうに思っておりまして、これを具体的に解消する方法というのは基本的にはないわけでありまして、やはり、そういった現実の問題を解決しながら、あるべき方向にぜひ早く持っていっていただきたい、それが唯一の解決策だというふうに考えているところでございます。

橘(慶)委員 そして、もう一度駒村先生に戻ってくるわけですけれども、財政計算、これがなかなか、やはり世の中がこの後どうなるか見通せない部分があったりして、射程をどうとるかというのは非常に難しいんだと思います。そして、どうすれば国民の皆さんに安心をしていただけるか。そこがおさまってくれば、また、この年金の言ってみればお支払いになる方も、気持ちとしてより積極的になってくるし、こういうこともあると思います。

 この辺、いろいろな、どうしても将来はなかなか見通しにくいということがあるんですが、財政計算というのはいかにあるべきとお考えであるか、お考えをお伺いしたいと思います。

駒村公述人 現行制度を、百年後をある程度イメージしながら五年置きに見直していくという考え方であります。百年後がいいのか、七十年後がいいのか、国によってはもうちょっと短い国もあります。ただ、日本は非常に高齢化の程度が厳しいので、やや安全を見て百年を想定している。

 ただ、百年後の経済予測は、当てられるというわけではございません。数年後すら、来年すら危ないわけでございますので、そういう意味では、この財政検証の仕組みというのは、ある意味、高速道路でいえば百メーター向こうを見据えながら、しかし、ちゃんとハンドルは握ってコントロールしているというものだというふうに思っております。そういう意味では、そこで行われる数値というのは、想定される数値というのは、なるべく恣意的ではないもの、要するに客観的なものを入れておかなければいけないのかなと思います。

 現在の年金財政については、平成二十二年の財政のチェックが行われておりまして、二%前後、予定よりは積立金が実質ベースでずれているとはいうものの、緊急事態というわけではない。ただ、予測の中には、例えば女性の労働力率、既婚女性の労働力率が今よりも一五%上がるとか、あるいは、男性の場合ですけれども、六十五歳までほとんどの方が働いているとか、あとは六十五歳を超えても六割以上の方が働いているとか、そういうある種の政策目標が組み込まれておりますので、そういう部分も除外する形でチェックもしておかなければいけないのかなと思います。

 以上です。

橘(慶)委員 五人の先生方には、貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。こういったことを踏まえて、私ども、またさらに審議を進め、練っていきたいと思います。

 きょうは、まことにありがとうございました。

中野委員長 これにて橘君の質疑は終了いたしました。

 次に、坂口力君。

坂口(力)委員 公述人の先生方には、きょうは大変お忙しい中をこうして御出席を賜りまして、心からお礼を申し上げたいと存じます。

 五人の先生にできるだけ一問ずつお聞きしていこうというふうに思っておりますが、時間の配分がうまくいくかどうかわかりません。そこまでいかなかったらお許しをいただきたいと思います。

 まず最初に、駒村公述人からお聞きをしたいというふうに思っております。

 いわゆるスウェーデン方式の一元化法案というのは、私は一つの考え方ではあるというふうに思うんですが、これは民主党さんともいろいろお話をしているんですけれども、最低保障年金を多くしますと財政的に非常に大きくなる、そして、最低保障年金を小さくいたしますと年金額が減る、こういう両面がございます。

 私は、できるだけ現在の年金制度を減らさないようにしていこうと思えば、かなり大きな最低保障年金が必要になってくる、それはしかし、現在の日本の財政的な状況からいきますとたえがたい状況になるので、なかなかそれは難しい、こう考えておりますが、先生の御意見を賜りたいと思います。

駒村公述人 先生御指摘の最低保障年金の面積、幅ですね、これは大変重要なテーマだと思います。先ごろ公表された民主党のプランのところでも、そこのところをどれだけ幅をとるかによって、最低保障年金に必要な税財源というのは変わってくるということだと思います。

 一番難しいところは、所得比例年金に純粋化することによって、中間所得層のところがどれだけ沈むかどうか、ここが非常に重要な部分かと思います。

 この辺は、あそこで出されたシミュレーションの所得分布やあるいは基礎年金拠出金のやりとりがどこまできちんと正確に反映されているのかによって、真ん中の沈みぐあいはまた変わってくるのではないかとは思っております。

 いずれにしても、やはり最低保障年金の財源制約から考えると、まずは下の方に重点化し、そしてせいぜい真ん中ぐらいまで、あそこで出されていると第二案ぐらいだったと思いますけれども、現役の世帯の平均収入が五百万円ぐらいのところでもう最低保障年金の対象を打ち切らないと、先生御指摘のような、かなりのお金がかかるのではないか、こういうふうに思います。

 以上です。

坂口(力)委員 ありがとうございます。

 私もいろいろ試算をいたしておりますが、第二案ぐらいでありますと、四百万ぐらいの方で一〇%、六百万の人ですと二三%ぐらい現在の年金から減少になる、そこをどうしていくかということだというふうに思っております。

 次に、西沢先生にお聞きをさせていただきたいというふうに思います。

 西沢先生がお書きになっております、高所得者への年金額の調整、目的自体は理解できるが、負担と給付の対応という原則を崩す、高所得者には、公的年金等控除の見直しなど税制で負担を求める方が望ましい、こう書いていただいてありました。

 私も全く同感でございます。非常にいい文章だというふうに思って読ませていただきました。

 それで、もう一つお聞きをしたいのは、先生が「年金特別会計厚生年金勘定と共済との間で資金のやりとりが発生する複雑なスキームに。」と書いていただいてありますが、これは、現在の状況が非常に複雑なので、もっと単純明快にしろということを先生は御指摘になっているというふうに考えてよろしいんでしょうか。

西沢公述人 今、坂口先生から、共済年金と厚生年金の一元化について、私は、複雑化するということに関して御質問をいただきましたが、本当は図表をおつけすればよかったんですけれども、皆様の、多分委員会から配られている参考資料の中にもあると思うんですが、結局、共済組合の事務組織が保険料を共済員から徴収して、自分で積立金を運用して自分で給付することになりますので、そのことによって、共済組合の事務組織と年金特別会計厚生年金勘定の間で拠出金や交付金のやりとりが発生するようになるんですね。

 ですから、今回の一元化というのは、年金特別会計厚生年金勘定に全部、国家公務員や地方公務員も保険料を納めるのではなくて、一旦共済に納めて、そこからもらうというスキームになっているわけです。ですので、これを複雑化するというふうに申し上げた次第であります。

坂口(力)委員 ありがとうございました。それでよく理解できました。

 次に、菅家公述人にお聞きをしたいというふうに思います。

 アルバイト等で働いている皆さん方をできるだけ公的な年金の中に入れていきたい、それは私もそう思っておりますが、いわゆる三号被保険者の女性の皆さん方からは、絶対反対だというお手紙、陳情が非常に多いですね。これは前回のときにもそうでございましたけれども、今回もやはり多い。

 これは、将来を考えますと、厚生年金に入っていただいておく方がいいというふうに思うんですけれども、なかなかそうも思っていただけない。そんなところがございますが、御感想がございましたら、お聞かせいただきたい。

菅家公述人 短時間労働者の中には、老後に国民年金しか受け取ることができないことに対する不安を感じている方々、さらには、健康保険による出産手当金や傷病手当金といった休業補償を受け取ることができずに、安心して働くことのできない人がたくさんおられるというふうに思っております。

 したがって、私は、基本的には、多くの短時間労働者の方々が社会保険の適用を望んでいるというふうに考えておりますけれども、今、坂口先生が御指摘になられました、労働者自身が望んでいないのではないかという指摘があることについては、単に保険料の負担の面ばかりがクローズアップされて、社会保険の適用を受ける、先ほど申し上げましたようなメリットがなかなか伝わっていないのではないかなというふうにも考えているところでございます。

 それでも適用を望んでいないという短時間労働者の方々につきましては、保険料を払う余裕がないということだろうというふうに思いますけれども、それはやはり低賃金の問題であるわけでありまして、そういった賃金問題での改善ということもあわせてやっていく必要があるだろうというふうに考えております。

坂口(力)委員 それでは、小野参考人にお聞きをさせていただきたいというふうに思います。

 将来人口推計、立派な表をつけていただきまして、大変参考になると思っております。

 この「低所得者対策と最低保障年金」のところでございますが、社会保険制度として運営されている公的年金において、救貧の機能を盛り込むことに無理はないか、それから自助、共助による防貧機能をゆがめることはないか、私も全く同じ心配をいたしております。

 ここはもう私はお聞きするまでもないというふうに思いますが、先生が御指摘になりました、インフラとしての、日本はなぜ公的年金という社会インフラを財産と考えられないのかという御指摘がございました。日本もかつて、住宅を建てたりいたしますときに、公的年金を担保にしてというようなことはございました。今も一部まだ残っているかもしれません。

 しかし、先生が言っておみえになるのは、もっと大きな意味で御発言になっているのではないかというふうに思ったんですが、十分ちょっと理解できなかったものですから、少しつけ加えていただくことができればと思います。

小野公述人 どうも御質問ありがとうございます。

 先ほどごらんいただかなかったかもしれないんですが、図表三というところに、スウェーデンの公的年金が、賦課方式の部分でございますが、つくっております貸借対照表の概念がございます。この中で、黄色くしてあります保険料資産というところでございます。ここの話を私は申し上げておりまして、これは全く仮想的な資産でありまして、証券も何もない資産でございます。こういった概念を使って、通常は無理だと思っている賦課方式の制度に貸借対照表をつくってしまった、ここが一つスウェーデンの知恵だろうというふうに思います。

 そのためには、これを使って財政を検証して、必要であれば給付額を調整するという仕組みになっておるわけですけれども、これをつくった発想の背景にあるものは、やはり公的年金制度というものを一つの財産だというふうに感じている、そういった考え方があるのかな、これは全く私の個人的な考えでございますけれども、こういった発想がないと、このような貸借対照表はできないだろうと思います。

 問題は、テクニカルな面ではなくて、その背景にある国民なり政治家等の年金制度に取り組むというか、対する考え方の問題だと思いまして、そこが日本とスウェーデンとでは大分異なるのではないのかなというふうなことを感じましたので、ちょっと書かせていただきました。

 以上でございます。

坂口(力)委員 ありがとうございます。

 そういたしますと、日本の制度の中にこれを取り入れろというほどの意味はないというふうに理解してよろしゅうございますか。

小野公述人 日本の制度はスウェーデンのようにNDCという形ではございませんので、この仕組みを取り入れるとなると技術的に非常に難しい問題が出てくると思います。

 ですので、これを日本もまねして取り入れろということでは決してございません。

坂口(力)委員 河村公述人に一言だけお聞きをしたい、ちょっと時間が迫ってきておりますが。

 五年ごとに年金制度の見直しをするのがなくなったというふうにお話がございましたけれども、マクロ経済システムを中心にいたしまして、そして、積立金の見直しは五年ごとに現在も行われているわけでございますが、もっとこれは全体に見ろということでございましょうか、年金全体の見直しをしろ、こういうことでございましょうか。ひとつ簡単にお答えをいただきたい。

中野委員長 河村公述人、恐縮ですが、一言お願いします。

河村公述人 マクロ経済スライドをおつくりになった方にああいうことを申し上げるのは非常にあれだったんですけれども、要するに、私が言いたいのは、国会で審議をする仕組みを定期的につくる、前の再計算はそういう仕組みがあったので、今度だってもちろん検証計算はやっていますから発表はしているんですけれども、国会審議がないんですね。ですから、それを何とかつくっていただきたいというのがさっきの趣旨です。

坂口(力)委員 ありがとうございました。

中野委員長 これにて坂口君の質疑は終了いたしました。

 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、五人の公述人の皆さん、それぞれに大変興味深く聞かせていただきました。お忙しい中ありがとうございました。

 早速質問させていただきます。

 最初に、駒村公述人に伺います。

 先生はまさに公聴会の常連でもございますので、〇四年の年金法改正について評価を伺いたいと思います。

 先ほどの最初の公述の中でも一言、課題ということで触れていらっしゃったと思うんですが、〇四年の三月十八日、参議院予算委員会の中央公聴会におきまして、先生が問題点ということで述べられたことがございます。積立金を一年分だけ九十五年後に持ちつつ、五〇%の給付水準を維持しつつ、なおかつ保険料一八・三五%というものを維持できるのかと、これを全て同時に維持することは可能なのかという指摘をされていたかと思います。

 百年安心というネーミング自体はやはりふさわしくないということは主張されているかと思いますが、先生のこの論点から見て、現行年金制度をどのように評価されているのか、伺います。

駒村公述人 ありがとうございます。

 当時の評価と今の評価も変わっておりません。保険料を一八・三%に固定することによって若い世代に保険料が限りなく上がっていくことはないんだということを伝えたところは一つの評価できるところだと思います。

 一方で、マクロ経済スライド、これはどこで終わるのかというのは、結局、経済成長、賃金上昇率、出生率、こういったものに左右される。現時点では五〇%割れというのはまだ明らかにはなっていませんけれども、若干当時よりは出生率が上がっている分はいいわけですけれども、今後の状況次第では五〇%割れという可能性はまだ残っているというふうに思いますので、この部分は、入り口も出口も締めているというのは、かなり窮屈な制度ではないのかなと思います。

 さらに、百年安心という言葉は、先ほど私は言いかえましたけれども、百メーター後を見ながら現在を調整するんだ、そして百年間手放し運転して、もう何もしなくても大丈夫だよという意味ではないんだということがきちんと国民に伝わっているかというところが若干心配でございます。

 さらに、マクロ経済スライドで基礎年金までが二〇〇九年の財政検証でも大幅に下がっていくというところは、大変心配しているところでございます。

 以上です。

高橋(千)委員 基礎年金がマクロ経済スライドで非常に下がっていくことが心配だという御指摘、非常に重大ではないかなと思っています。

 同時に、入り口も出口も締めたんだ、そういう中で、結局百年安心の制度は正しかったんだという議論がこの国会でもされているわけです。もうその中で既に、ではデフレ下でも発動するべきではないかという議論がされているということについて伺いたいなと思っています。

 次に、西沢公述人にそのことを伺います。

 昨年十一月二日付の日経新聞の「経済教室」に寄稿されていらっしゃいます。「限られた保険料収入の範囲で、積立金も活用しつつ今後百年間給付を続けられるとの見込みが立つまで適用される。」というふうな表現をされているんですけれども、二〇一五年の水準でいいますと、マクロ経済スライド率は一・二%と小宮山厚労大臣が答えています。これをデフレ下でも発動するとなると、本当に下限がなくなって、どこまでも下がってしまうということになりますけれども、それでもやむを得ないというお立場でしょうか。

西沢公述人 やむを得ないですね。

 保険料一八・三%、国庫負担二分の一の中で給付できる範囲まで、財政が均衡するまでマクロ経済スライドをデフレ下でも適用するというのは避けられない。ただ、先ほど申し上げた基礎年金と報酬比例の区分けのことを繰り返し申し上げますと、基礎年金がそれでよかったのかというのは、駒村先生がおっしゃったとおりであります。ですので、デフレ下でやるのは避けられないと思います。

 以上です。

高橋(千)委員 今のお答えは、多分基礎年金には踏み込むべきではないという御趣旨かと思いますが、デフレ下でもやむを得ないというお話でありました。

 同じ質問を河村公述人に伺いたいと思います。

 私たちは、もともと特例水準の解消やマクロ経済スライドに反対をしております。ただ、まして、デフレ下での経済スライドの発動となりますと、本当に最後の歯どめさえも取っ払ってしまうということでは、到底認められないと思っておりますけれども、御意見を伺います。

河村公述人 お答えします。

 私はマクロ経済スライドに反対なものですから、今の質問は非常に答えにくいんですけれども。やめて組みかえた方がいいという立場ですから。ですけれども、今、前の二人がおっしゃったように、仮に続けるとすれば、基礎年金に及ぶべきではないということは、もちろんそう思います。

 それから、公的年金の財政が非常に難しいのは、基礎年金勘定という仮想勘定があって、そことの資金のやりとりが頻繁に今起こるようになっているんです。そこの中身については計算の結果だけ発表されているんですけれども、内容はよくわからないところが多いんですね。ですから、そういうことなどももう少しきっちり開示していただく。

 それで、基礎年金というのはもともと国民年金ですから。国民年金は社会保険じゃないわけです。国民年金法というのは国民年金保険法ではないわけですね。ですから、あれはどちらかというと定額拠出、定額給付という制度がもともとの出発点ですから、所得の差というのは余り考えていない制度なわけです。

 ですから、そこへむしろ戻していくというふうに考えるべきだとは思うんですけれども、そこだけやろうとしてももう今や難しいので、ちょっと余り具体論はないんですけれども、とにかく何とか組みかえられないかというのが私の意見です。

高橋(千)委員 お答えにくいということでしたが、反対の立場を私も言っておりますので、同じであるということで、ありがとうございます。

 それで、次に、菅家公述人と小野公述人に同じ質問をさせていただきます。

 一つは、最低保障年金制度の創設について賛成か否かということです。これは、民主党のという意味ではなくて、我々は、国連からも最低保障年金制度を創設すべきだということを勧告されておるわけで、日本としても報告をしている立場ですから、当然これをつくっていくべきだと思っております。それについてどう思っているかということです。

 それと、その際の財源についてどのようにお考えかということです。

 連合の年金のプランによりますと、基礎年金から始まって、その半分は一般財源で、半分は目的税という形で紹介をされていますが、消費税との関係はどうなのか。そうなると、企業負担をどのように考えているのか。

 ちょっと一遍に言ってしまって申しわけありませんが、お願いいたします。

菅家公述人 連合も最低保障年金制度を提起している立場でありますけれども、その財源につきましては全額税とし、その半分については一般財源、そして残りの半分につきましては社会保障目的税、ありていに申し上げますと消費税を充当すべきだというふうに考えているところでございます。

 二番目の御質問にございました厚生年金保険料の事業主負担分、基礎年金に入っている事業主負担分につきましては、したがって、所得比例年金の事業主負担の引き上げに充当すべきだということで、そこは引き続き負担すべきという考えでございます。

小野公述人 私は社会保障全般の専門家でもございませんので極めて狭い見識でしかないんですけれども、申し上げましたとおり、最低保障年金という民主党の新しい年金制度を意識しつつ、今回、福祉的加算というのを導入された、あるいは、その六分の一加算というのが入ったというふうに認識しておりまして、その制度が入ることによるマイナス面というものもやはり考えないといけない。

 一つは、先ほど申し上げましたとおり、自助、共助、それを原則とした保険制度ですね、社会保険制度に対する影響。それから、みずから努力をする、その姿勢に少し水をかけるようなことになりはしないか。そういう意味で、少しやり方を考えた方がよろしいのではないかなというふうに思っております。

 財源等々につきましては、少し、まだ見識、見解を持ち合わせておりませんので、御容赦願いたいと思います。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 自公政権下での社会保障国民会議の議論ですとか、最低保障年金の議論がされている中で、やはり、そのまま全額税という考え方が提起をされておりまして、そうなった場合に、結局、企業負担が全くなくなってしまうよねということと、大幅な消費税の増税になるよねということは、既にそのときから議論をされておりましたので、あえて質問させていただきました。ありがとうございます。もちろん、反対の立場で質問させていただきました。

 そこで、河村公述人にもう一度伺いたいと思います。

 最初の意見陳述の中で紹介をされた、就業者の中に占める雇用者の割合が高まっているが、雇用者に占める年金加入者の割合が下がっていると、数字を示しての表現、大変わかりやすい指摘だったと思います。やはり支え手が必要だということ。それから、特別法人税を課税せよというお話、まだ研究段階かなとは言われますけれども、しかし隠れた法人税減税と言えるのかなと思って、大変興味深く聞かせていただきました。

 そこで、もう一つ提案があった標準報酬の引き上げの問題です。一般的には、それを引き上げると給付にはねるのではないか、高くなり過ぎるのではないかという心配が聞かれるわけですけれども、影響は小さいという先生の御説明だったかと思います。もう少し詳しくお願いいたします。

河村公述人 お答えします。

 私は先生じゃないので、普通に呼んでいただいていいんですけれども。

 それで、標準報酬の上限というのを、今まで十一回ぐらい改定があって、こういうふうにどうも内部では決めたらしいんですね。一番上の標準報酬が五%を超えると報酬を引き上げるというふうになっているんですね。ところが、今五%を多分超えていると思いますよ、十年以上やっていないですから。ですから、まず、それは少なくとも、厚生労働省の内部、年金局の内部の考えでしょうけれども、もう少し刻みをつくって、かつ上の方まで引き上げるということをやった方がいいと思うんですね。

 さっき申し上げた、給付に折れ線をつくるという、アメリカの公的年金の方式ですけれども、これはほとんど議論がないんですよね、日本では。これほどアメリカの影響を受けている国はないのに、アメリカの公的年金について紹介した本というのは余りないんですね。これは、だから実際には議論をしないとまずいんじゃないかとは思うんですけれども、要するに、高所得であると負担感というのは非常に小さいんですよ、今の厚生年金は。ですから、大した保険料も払っているというふうにならない。ですから、そこを少し上げても、別にそれほど問題にはならないと思います。

 それから、厚生年金の給付というのは、御存じのとおり、平均標準報酬を使いますから、四十年間の最後のところだけちょっと上がってきても、それは、四十分の一とか、その年数分しか響かない。ですから、拠出はすぐふえますけれども、給付になってくると、平均標準方式ですからこれはそんなに影響は大きくないだろうと思うんです。

 ただ、今デフレ下なので、昔は、こういう仕組みはインフレ下ではかなりうまく機能したんですけれども、デフレ下というのはちょっと難しい面はあるかもしれません。そこら辺は、もう少しデータなどで調べて検証する必要はあると思います。

中野委員長 終わりました。

高橋(千)委員 一言だけ済みません。

中野委員長 はい。

高橋(千)委員 残念ながら、時間が来ましたので。

 先ほどの坂口委員の質問の中で、再計算をやっていくべきだという御指摘があったと思います。ひたすら、年金財政が破綻してツケ回しが起きるんだという議論だけがされている中で、そうではない、余地があるんだということを御指摘いただいたかと思います。非常に今後の参考にさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

中野委員長 これにて高橋さんの質疑は終了いたしました。

 次に、中後淳君。

中後委員 新党きづなの中後淳と申します。

 公述人の皆様方、本当に貴重な御意見を聞かせていただいて、心から感謝を申し上げます。

 早速質問に移りますが、まず前段として、今回、社会保障と税の一体改革という中で、メディアも含めて消費増税のことが非常に関心高く取り扱われているわけですが、河村公述人は冒頭で消費増税には反対だとおっしゃいましたけれども、それぞれの公述人皆様方の立場を御確認させていただければなと思います。四名の先生方、また河村公述人も何か御意見があれば、一言ずつ、簡単に理由も含めてお聞かせいただければと思います。

駒村公述人 社会保障給付費が百十兆円を超えておりまして、一方、国の財政赤字は四十五兆円近くになっているという状況、それから、広く薄く高齢世代からも一定の費用負担をお願いするという意味で、消費税の増税には賛成でございます。

 もちろん、ほかの相続税や所得税も合わせてより再分配がきくような仕組みに改めるべきだというものを加えておりますけれども、まずは、消費税の増税について賛成の立場でございます。

 以上です。

西沢公述人 私も、今回の社会保障・税一体改革の消費税の引き上げは賛成です。

 もっと上げた方がいいと思いますし、社会保障の充実と言わず、財政健全化の道筋が見えてから社会保障の充実に移ればいいかなというぐらいに思っています。

菅家公述人 今回、社会保障と税の一体改革ということで、特に消費税につきましては社会保障の目的に限る、そういった制度改革が提案されておりまして、連合は基本的には賛成の立場でございます。

小野公述人 財政の観点から申し上げますと、私も賛成という立場でございます。

 ただ、年金制度だけ見てみますと、例えばその五%なりですね、そんなに必要かというとそうではない。社会保障全体のことを考えて必要だということだと思います。

 以上でございます。

河村公述人 お答えします。

 私は、まず一つは、社会保険方式を維持すべきだというのが理由ですね。消費税を入れると、税方式ですから、社会保険方式が壊れてしまうんですね。今でも基礎年金には税は入っているんですけれども、大きなつくりは社会保険方式ですから、それで賛成できない。

 それから、まだほかに財源があるではないかという論点で、例えば、私は実は金融も専門なんですけれども、証券税制や何かは異常な税制で、日本だけこんなに税金をかけない、キャピタルゲインに対して。ですから、そういうものについてきっちり処置をした上で税全体を見直すべきではないか。だから、さっき、特別法人税のようなことも申し上げたわけです。

 まだほかにも、ああいうところというのはたくさんありまして、ですから、そういうことを含めて賛成できないと言っているわけです。

中後委員 あと、本来であれば、今のデフレの景気、デフレ経済の環境下でということも含めてお聞きすればよかったんですが、時間の関係もありますので、次の質問に移らせていただきます。

 そうすると、今回、消費増税を年金の中にも充てていくということになるわけです。国庫負担分の中に充てていくということになるわけですが、社会保障の目的税化を消費税が担っていくという考え方について、今、河村さんの方からもありましたけれども、保険料と税という考え方、また、税ということであれば費目をどうするのか、消費税にするのか、その他の税の方が適当なのかという議論もベースにはあるんだと思いますけれども、そうしたら、これは西沢先生の方から御意見を伺いたいと思います。

西沢公述人 今、消費税の社会保障目的税化についてお尋ねがありまして、ちょっと難しいですね。

 私は、今の社会保障財政全般を見渡しますと、年金に限らず、保険料、税、あと医療であれば支援金などが入り繰りまして、非常に複雑になっております。ですので、負担と給付が一対一対応していないことが、今なぜ財源が必要かという説明を非常に難しくしているわけであります。

 例えば、医療であれば、国民医療費を人口で割りますと一人当たり年間二十八万円なんですが、そこに税や支援金が入って、その負担と給付が見えにくくなっているといった意味では、負担と給付を見えやすくするという意味での目的税化はやるべきだと思います。

 ただ、それが消費税という税目であるかといった議論は、今回、不足していると思うんですね。例えば、所得税の再分配機能を強化する中で、給与所得控除の上限設定なども入っていますけれども、財源を確保することはできるかもしれませんし、やはり、消費税の逆進性の議論がここに来て盛んになっていますが、この問題についても後半になってやっと出てきただけであって、なぜ消費税という税目を使うかといった議論は十分煮詰まっていなかったかなと思います。

 ただ、結論からいいますと消費税でいいと思うんですけれども、以上のようなお答えになります。

中後委員 どうもありがとうございました。私も、所得の再配分というところの観点をもう少し議論していくべきなんだろうなというふうには思っております。

 それでは、今回の改正、適用拡大だとか、年金制度の全般を底上げするような改正も大分含まれておるわけですが、先ほど小野先生の方から、社会保障制度は国民に安心と信頼を提供する制度であって国の財産であるというお考え方は披露されましたけれども、国民年金に限って言えば、もう納付率が六割を切った、五〇%台になってしまったという現状があります。これは適用拡大で救われるところもあるかと思いますが、恐らく、自営業者の皆さんや若者層を中心にして、私も直接言われたことが何度もあるんですけれども、本当に、払ったら後で戻ってくるのというところの信頼感というのが大分損なわれているように思います。

 駒村先生でしたか、自営業者への適用拡大のところが最後にちょっと資料の中にあったと思うんですが、自営業者等の国民年金の方が納付できる環境を整えていくということが持続可能な年金制度のベースにないと、信頼というものが取り戻せないのではないかなと私は考えておるわけですが、何をすべきかということを踏まえて、先ほどの自営業者への適用拡大ということのもう少し踏み込んだ説明、この資料も、各国の資料、参考資料三番の自営業者の年金保険料率というのは非常に興味深いなと思ったんですけれども、その点を駒村先生にお話しいただければと思います。

駒村公述人 現行制度と、それから、二段階のうちの改革の二段目の話というのと、二つの御質問があったと思います。

 現行制度の私の評価は、六割しか払っていない一号のうちのほとんどは、やはり非正規労働者、そこには若いグループも重なっているということです。一方、自営業者の方は比較的きちんと払っているのではないか、私はデータ上はそういうふうに理解をしております。

 若い世代に対しては、やはり急激に未納率が上昇している。これは働き方の問題と、正しい情報が若い世代に伝わっていないというのがあるかと思います。どういう方が払っていないか、さまざまな分析をしたことがあるんですけれども、やはり、どういうふうに年金の情報を集めているのかというのが、非常に聞きかじり、きちんとした情報を受けていないというのはあると思うんです。そういう意味では、教育とか情報が大事だと思います。

 二番目の御質問の、二段目の、自営業者への適用拡大、これは、資料三、十二ページでも紹介しておりますように、日本以外のほとんどの国は、自営業者に対しても所得に比例した保険料を求めている。これは、国際比較をやれば、ほとんどの国でございます。同じ制度かどうかは別ですけれども。それにおいて、労使の合計分を負担していただいているというのも多くの国の状況だと思います。いきなりこれをやるわけにはいかないと思いますので、さまざまな支援とか移行措置を、応援した上でやった方がいい。ただし、全部の自営業者が今よりも負担増になるわけではなくて、所得分布を細かく見てみると、半分程度ではないか、こういうふうに思っております。

 以上です。

中後委員 どうもありがとうございます。

 今の教育とか情報というところも非常に大きなテーマになるんだろうなと思っていますけれども、例えば若い方なんかは、若い方じゃなくてもそうなんですが、これは確信犯的に年金を払わないという方までいらっしゃって、ただ、その方々がどこまで情報を知っているかというと、例えば自分が事故に遭って次の日から障害者という立場になることなんか全く想定していなかったりしまして、そういうことも含めて、もう少し情報を広く、何のための国民全体で支えるそうした仕組みなのかということはやっていかなきゃいけないんだろうなと思います。

 また、生活保護との関係と、最低賃金等との関係とか、いろいろと社会矛盾のところが言われています。これは年金とは直接関係ないかもしれませんが、ベースにある社会矛盾として、生活保護を受けている方と最低賃金の関係、これは労働者の組織である連合の代表としまして、菅家公述人から、最低賃金のあり方について、今、生活保護との逆転現象なんかが随分言われていますので、その辺について御意見を伺えればと思います。

菅家公述人 基本的に、今の最低賃金の水準が低過ぎるというふうに考えておりまして、やはり生活保護の水準との均衡を図る方向で最低賃金を引き上げるべきというふうに考えております。

中後委員 ありがとうございます。

 それと、先ほど小野公述人の方から、年金の防貧機能というのが損なわれるというお話がありました、低年金者への加算とか、そういうことによってということだと思うんですが。一方で、生活保護が増加していて、これは救貧制度の一番ベースになるところだと思うんですけれども、そちら側に逃げ込むというか、そちら側が増加をしているということも現実的にはあるわけで、既に、防貧機能から救貧機能の生保の方に、いろいろなことで人が流れているように感じているわけですが、そういった全体的なところから見て、年金制度だけの防貧から救貧へということではなくて、社会全体から見て救貧というところと防貧というところを関係づける上で、生活保護や年金との関係について御見解を伺えればと思います。小野公述人、よろしくお願いします。

小野公述人 この分野は余り深い見識を持っていないんですけれども、私が申し上げたかったのは、例えば福祉加算が給付されたとして、同じ年金収入のある人でも家族構成によってもらえる人ともらえない人が出てくるということがあって、そのもらえる人、もらえない人の区別というのが、果たして本当に必要なところに回っているのかどうか。特に、例えば高齢のシングルの女性とか、こういった人たちのことを考えると、果たしてどんなものかなというような御見解をある方から教えていただきました。

 そういう意味で、生活保護も補足性の原則というのがありますので、こちらが上がれば向こうは下がるというようなもとで、プラス・マイナス・ゼロなのかもしれないんですけれども、ひょっとして、プラスマイナスでやはりプラスになってしまうんではないかな。なおかつ、それが必要なところに行くかどうかというと、少し疑問なところがありますねということで申し上げました。

 以上でございます。

中後委員 いろいろな社会矛盾的なところが、今の年金制度、いろいろと言われているところのベースにあるんだろうと私は思っているわけですけれども、今回の改正の中で、無年金者の受給資格、二十五年から十年に短くなって、今、無年金者と言われている方が四十二万人いる中の十七万人が救済されるということも盛り込まれておるわけです。

 この間、私も質問したんですけれども、この十七万人の方が現在どのような収入基盤で生活しているのかという捕捉が全くされておりません。事業収入がある方もいらっしゃると思いますし、資産がある方もいらっしゃると思います、家族の扶養に入っている方もいらっしゃると思いますし、生活保護の方もいらっしゃるでしょう。

 そういう方々の分析等をちゃんとした上でどういう対応策をとるべきかということを考えなきゃいけないと思うんですけれども、無年金また低年金の方々への対策について、最後に河村公述人から御意見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。

河村公述人 すごく難しい質問なので、どうやって答えていいかわからないんですけれども、一つは、受給権を十年にする、これは賛成です。日本の二十五年というのは異常に長いですね。ですから、それを正常化させるということだと思うんですね。

 年金と生活保護との関係の最も基本的な問題は、先ほど連合の方も言われましたけれども、やはり短時間労働者の賃金を思い切って上げる。オランダのように、短時間でも長時間でもみんな時間給が一緒である、極端に言ってそういうふうになっているらしくて、実際は違うみたいですけれども、そういうふうにすれば、一挙にはできないにしても、そこは変えられるわけで、ですから、それを制度の中でやろうというのはやはり無理だと思うんですね。

 ちょっと余りうまい答えじゃないと思うんですけれども、済みません。

中後委員 ありがとうございました。

中野委員長 これにて中後君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉泉秀男君。

吉泉委員 社会民主党・市民連合の吉泉秀男です。

 本当にきょうはいろいろな角度から、五名の先生方、公述人の皆さんから御指導いただいた、このことにまず感謝を申し上げたいというふうに思います。

 自分としては、ほぼ四点の視点でそれぞれ公述人の方から御指導を賜りたい、こういうふうに思っております。

 私ども社民党としては、今、民主党さらには政府が提案をしているように、年金というものについて、最低保障年金制度そして所得比例年金、この二つの組み合わせ、このことについて、私どもとして、社民党としても一つの公約をさせていただいているわけでございますけれども、今の状況の中で、やはり最低保障年金制度については、今の年金制度そのものに一つの趣旨から合わないのではないか、こういう意見もございますし、さらには、低所得者の加算についても、年金制度そのものを根本的に覆すのではないか、こういう意見もございます。

 きょうの公述人の方からは、最低保障年金については前向きに評価されつつも、この年金の加算についてはやはり問題があるだろう、こういうことでそれぞれ指摘もされたというふうに思っております。

 そういう状況の中で、この最低保障年金そして低所得者の加算金制度について、まず河村公述人の方から見解をお伺いさせていただきます。

河村公述人 これもすごく難しい質問ですね。

 私は、どっちかというと、国民年金はフルペンションが四十年ですね。四十年加入して今六万七千円だか何かになっているわけですけれども、そこを加入可能年数を短縮すれば、それで給付を変えなければ、自動的に給付は上がるんですね、もちろん財源をどうするかとかそういう問題はあるんですけれども。

 日本の制度というのは、やはりどうしても、厚生年金も、さっきも御質問ありましたけれども、二十五年以上という非常にきつい縛りが入っていて、あれは十年以上ですか、国民年金は、実際にフルペンションは四十年になっているわけです。

 ところが、いろいろ問題があって、例えば厚生年金で、十五歳で就職して、それで六十五歳まで働くと、これは基礎年金の加入期間は五十年あるわけですね。ところが、頭打ちが入っていて、給付はとまっちゃうわけですよ。そういうことがあるんだったら逆があるわけで、そういうようなことなどをもうちょっと御検討されたらいいんじゃないかと思います。

 ちょっと、民主党案そのものについては、これから始めると、そういうフルペンションになるのに成熟期間が非常にかかるから、今一番問題になっている高齢化対策の時期というのはこれから二十年ぐらいあるので、それには間に合わないんじゃないかというのがあるから、あれは賛成できないんですけれども、ほかの案はあると思います。

 ちょっと答えになりましたでしょうか。済みません。

吉泉委員 それぞれこの論点はこれからも続くんだろうというふうに思っています。

 それと同時に、やはりそれぞれ不公平感、このことを感じるところが、まさしくサラリーマンの専業主婦、いわゆる三号被保険者の制度、このことに対して非常にいわゆる自営業者の方からいろいろな意見が出てきているわけでございます。これについても賛成反対いろいろな議論があり、そしてまた、これからもこの制度について議論が多くなされるんだろうというふうに思っております。

 その中で、駒村公述人は、この制度について、それぞれ自分の考え方、いわゆるこの制度について堅持をするべきだというふうな主張をしているように伺っているわけでございますけれども、この点についての考え方、そのことについてまずお伺いをさせていただきます。

駒村公述人 私は、社会保険全体の基本的な考え方というのは、基本的には所得に比例して保険料を払う、それに応じてもらうべきだ、こういうふうに思っております。

 そういう意味では、今の国民年金、国民健康保険というのは例外的だと思います。なるべくこの対象者を少なくするというのが世界じゅうで向かっている年金の共通の方向性だ、こういうふうに思っています。そういう意味では、三号の方も、所得に応じて、収入があれば保険料を払っていただく、なければ、それは最低保障年金という形で入ったときに、夫の分をどう評価するかという形で反映するのではないかと思います。

 最低保障年金をどうするかというのが最も三号の扱いの分かれ目になってきますけれども、ここについては、最低保障年金という言葉にこだわるのか、高齢期の所得保障体系を生活保護との関係も含めてどう整理するのかということは、少し整理して考えた方がいいと思います。

 最低保障年金となると、最低保障年金をもらえるかどうかというのは年金テストだけ、年金があるかないかという年金テストだけになります。それに対して現在の加算部分は、どちらかというと、年金テストというよりは所得テスト、どの程度所得があるかによって減額が決まる。別の、たまたま年金機構というものを使って年金に加算するという形にはなっておりますけれども、むしろ所得テスト型の補足給付だというふうに位置づけた方がいいと思います。

 最もきついのが、社会扶助、公的扶助による、車も資産も家族も全部チェックをして、高齢期の本当に困っている人だけをくくり出してやっていく。

 ただ、これからマクロ経済スライドがきいたりしていく中で、あとは医療、介護の保険料が上がっていく中で、大量にこういう方が出てくれば、そういうチェック自体が今後機能するのかどうなのかということ、あるいは、車を持たせないということで本当にいいんだろうかということになってくれば、所得テストなのか年金テストなのかというのをきちんと議論した上で、最低保障年金という言葉にこだわるのか最低所得保障制度というふうに考えるのかは、議論した方がいいんじゃないかと思います。

 以上です。

西沢公述人 第三号被保険者についてお話がありました。先ほどの坂口先生のお話も思い起こしたんですけれども、一方で、専業主婦の奥さんからは第三号をなくしてくれるなという意見が出ている。

 私、先ほどのレジュメで七ページ目に、スウェーデンと日本の状況を比較してありますけれども、やはり専業主婦の奥さんも、働きたくても働けない方も多いと思うんですね。待機児童が潜在的に百万人いるといった状況ですとか、あるいは働いても男女賃金格差があるといった状況の中、あるいは旦那さんがなかなか帰ってこないといった家庭内の不満であるとか、そういった状況が解消されない限り、第三号被保険者を廃止するといってもなかなか公平感は出てこない。一方で、自営業者を旦那さんに持つ専業主婦の奥さんにしてみれば、サラリーマンだけずるいではないかという話があると思うんです。

 ですので、年金を初めとした社会保障制度というのは、労働市場の公平、その映し鏡だと思うんですね。男女間格差がない、正規、非正規の格差がないといった状況が達成された中でそういったものが自然に解消されていくのが望ましい姿であると思います。

 以上でございます。

吉泉委員 今、駒村先生の方から考え方が出されたわけでございますけれども、その中に、私的、公的年金の部分のいわゆる一緒にした年金制度、このことを提案がなされているようにお聞きをしています。今、賦課方式、さらには積立方式、こういうところでも、賦課方式は、これからの年金財政のことを考えていったらば、これはやはり破綻をする、こういう意見なんかもあるわけでございます。

 その中で、小野公述人の方として、公的年金、私的年金の役割分担の見直し、こういう提案もしております。この案については駒村先生とほぼ同じような考え方に私は受けとめておるわけですし、この論文、さらには主張に対して、自分自身も非常に興味を持っているところでございます。この内容について、小野公述人の方から説明いただきたい、こういうふうに思います。

小野公述人 財政運営として、公的年金の積立金を持っている国というのはそれなりにあるわけでございますね。ただ、それは完全に事前積み立てという形でもって運営しているわけではないと思います、一部確定拠出制を入れているところというのはフルファンディング、形式上はそうなると思いますけれども。

 そういうことで、公的年金は積立金を否定するということではなくて、積立金はそのバッファー基金、ファンドとして、将来に備えるということは必要な話だというふうに思います。ですから、積み立てと賦課方式というのを適度に組み合わせた形で運営していくのがよいのではないかということを考えています。

 そうはいっても、先ほど予算制約ということで申し上げましたとおり、将来の公的年金の給付水準というのは、余り高いものを期待できないというのは事実だと思います。ですので、そういう意味で、自助努力の部分を私的年金、なかんずく職域を単位とする企業年金という形で運営していくというのが将来的には必ず必要になってくるというふうに思います。

 諸外国では、特に企業年金も含めた政策論争というのがあるように伺っておりますけれども、なかなか日本の中では、年金というと公的年金という話になってしまうので、ぜひ、そこも含めて、老後の所得保障という政策から考えていただきたいということでございます。

吉泉委員 時間がなくなりましたので、最後に菅家公述人の方からお伺いをさせていただきます。

 連合については、まさに、全ての働く人たちが厚生年金の方に加入、こういうところを求めながら運動しているんだろうというふうに思っております。しかし、この間、非正規等の働く人たちがふえまして、社会保険の加入者もどんどん減っている、こういう現実もあるわけでございます。

 今回、五百一人以上という中において、非正規の人たちを社会保険適用、こういうふうになったわけでございますけれども、そのことに対して、やはり事業主の方からは、二分の一の負担の問題について、いろいろな非常に大きな意見がございます。

 そうした中において、五百一人以上のいわゆる事業所、こういうふうに今回は限定されたわけでございますけれども、これらの問題なんかも含めて、この間、この内容、さらにはこの制度を取り入れるまでの連合の運動の問題もあったと思いますけれども、これからの事業所の人方との連携も含めてやった場合に、どういうふうに考えているのか、この点についてお伺いをさせていただきます。事業主の理解をどう求めていくのか。

菅家公述人 繰り返しになりますけれども、短時間労働者の適用につきましては、週二十時間以上の雇用保険の適用対象になっている労働者は、基本的に全て対象になるべきというふうに考えております。

 ただ、今回も五百一人以上ということで企業規模要件が設けられたわけでありますけれども、さらに申し上げますと、短時間の労働者を多く抱えている業種、産業もある、そういった全体の状況がございますので、そこはバランスをとりながら理解を求めていかなければならないというふうに思っておりますし、中小企業につきましても、そういったさまざまな支援措置なども講じながら理解を求めて、拡大をしていくべきだというふうに考えております。

 以上です。

吉泉委員 どうもありがとうございました。

 私どもとしても、零細さらには中小企業の中で働く人たちについても全て保険に入るような、そういう中身で進めさせていただければというふうに思っております。

 時間が来ましたので、これで終わります。ありがとうございました。

中野委員長 これにて吉泉君の質疑は終了いたしました。

 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一と申します。

 最初に、五名の公述人の皆様それぞれに質問させていただきます。

 年金の支給開始年齢の引き上げについて、いろいろな意見がありますけれども、それについてどのようにお考えなのか、今のままでいいのか、あるいは引き上げるべきなのか、御意見をお聞かせください。

駒村公述人 年金の支給開始年齢は、当初、厚生年金の場合は、五十五歳から始まりまして、戦後六十歳、現在は六十五歳まで上がってきております。この間、非常に時間がかかっておりますけれども、寿命の延びに合わせて上がってきているものだと理解しております。

 今後、日本は六十五歳以上人口四〇%というような状況になってきますので、一方では寿命も延びていきますので、その寿命の伸長と合わせて、将来の課題として、支給開始年齢の引き上げの準備を今からした方がいいのではないかと思います。

 結論としては、支給開始年齢を将来的には延ばした方が、おくらせた方がいいのではないか、こういうふうに考えております。

 以上です。

西沢公述人 私は、一定の年齢を定めるべきでない方向に向かうべきだと思うんですね。六十五なのか六十なのかということではなくて、生涯受給額が変わらないように設定しておく。あくまで六十、六十五というのは参照値であって、六十で受給しても六十八で受給しても生涯受給額が変わらないような、年金数理的にフェアな仕組みにして、一定の年齢を切らないという方向に持っていくのが好ましいかなと思っております。

菅家公述人 支給開始年齢の問題は一般論で語るべきではないというふうに考えておりまして、高齢者雇用政策とセットで議論すべき課題だというふうに考えております。

 現在、国会におきまして、高齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案が提案されておりますけれども、年金の支給開始年齢が六十五歳となることを前提とした内容でありますので、支給開始年齢を検討する状況には至っていないというのが私どもの考え方でございます。

小野公述人 年金のシミュレーションを百年ということでしておるわけでございますけれども、まず、今までの経緯からして、年金の制度が百年変わらないということはあり得ないだろうと思いますね。

 将来的に、例えば平均余命が九十歳となったときに、六十五歳から二十五年ですか、これだけ引退期間ということで過ごすということは、本人の健康がかなり改良されてくるということも考えると、技術的な問題とか財政的な問題というものもさりながら、やはりできるだけ長く働くというような世界というのが、結果として支給開始年齢が引き上げられていく姿になってくるのではないのかなというふうに思っております。

河村公述人 私も連合の考え方に近いんですけれども、雇用と一緒に考えればいいというあれなんです。

 統計的には、六十五歳以上の就業率は日本はかなり高いですよね、先進国の中で。ですから、実際はその内実がどうなっているかというのをよく調べて対応を考えればいいんじゃないかと思うので、簡単に、余り延ばせばいいということではないと思うんですけれども、ただ、皆さんおっしゃるように、平均余命年数が延びておりますから、そういうこともあるかなとは思います。あるかなという程度で、積極的にというほどではないんですけれども。済みません。

山内委員 今の皆さんのお答えに関して、西沢先生に、生涯変わらない受給という、ちょっと私、内容がよく理解できなかったんですけれども、いつ死ぬかわからないのでどうやったら生涯同じになるんだろうという素朴な疑問がありまして、その点、お答えいただければと思います。

西沢公述人 平均余命までいきまして、平均余命を尻尾としまして、六十五でも六十八でも、もらい始めて、生涯で見てみると、合計額で見ると変わらないという意味でありまして、今の年金制度は、例えば早目に受給してしまいますと減額率が不利になってしまいますので、あるいは繰り下げ受給をしてもそんなに有利にならない、アクチュアリーフェアでないわけですね。

 ですから、平均余命まで生きたときに、もらい始めた時点から計算して、ちょっと金利とかも入れますけれども、合計額が一緒であれば、引退時期を選ばなくて済むような制度になるわけであります。それが好ましいということであります。

山内委員 よくわかりました。ありがとうございました。

 次に、菅家公述人にお聞きしたいと思います。

 連合から出されたいろいろな声明を読みますと、政府の案に対して基本的には評価されている、ただし、評価しているけれども、関係者への説明や協議が不十分であるとか、あるいは労使の協議を行う前に法案化している、どちらかというとプロセスの点で、もっと開かれたプロセスと丁寧なプロセスが必要じゃないかという御趣旨ではないかと思います。

 そこで質問なんですけれども、今、三党協議ということで、民主、自民、公明、三党でいろいろな修正協議、法案をなさっています。もし、修正協議が終わって、修正法案が出てきて、すぐ採決ということになると、国民に対する説明の時間とかあるいは連合の皆さんも含めていろいろな団体の意見を反映させる時間というのは余り余裕がないんじゃないかと思うんですね。

 連合といえば、恐らく民主党にとっては一番の最強の支援団体だと思いますから、当然、民主党も気を使われているとは思うんですけれども、ただ、修正協議、今、限られた期間の中で修正案が出てきて修正がなされると、そういう広く意見を聞くタイミングと、国会の審議もそうですし、民間の各種団体や有識者の方の意見を聞く時間もそうですけれども、なかなかとれない、そういう弊害があるんじゃないかと思います。

 その点について、連合としてどのようにお感じでしょうか。

菅家公述人 前段お話しになった部分につきましては、被用者年金の一元化法案についての評価でございまして、かつては、三公社五現業等々の統合のときには、しっかりと審議会で議論をされて、関係者の意見を聞いて制度をまとめていった、そういう経緯があるわけでありますけれども、今回は残念ながらそういうことはなかったということで、そういう評価になっているということでございます。

 それと、与野党の国会における修正協議を経て成案を得ていくという過程につきましては、それはまさに国会の機能そのものでございますので、それについて、私どもとして、どうこう言う立場ではないということについて申し上げたいというふうに思います。

山内委員 ちょっと似た質問を西沢先生にさせていただきたいと思います。

 西沢先生、以前に書かれたエコノミストの文章の中に、民主党の政策立案のプロセスとして、専門性の高い優秀な議員もいるけれども、スタッフの人数が限られていて、党としての組織的な政策形成機能が乏しいといったようなことを書かれていらっしゃいます。

 実際、今、修正協議がやられております。その修正協議に参加している議員というのは、恐らく各党そんなに多くありません。何か、テレビで、ニュースで見る限り、ほんの数名で議論がなされているようですけれども、そういう議論をやっているとどうしても見落としてしまう点とか、あるいは、先生方のように学者や研究者や実務の世界にずっと携わっているわけではない議員が中心にやると、どうしても、ちょっとした見落としとかあるいは予想もしない影響というのが出てくるんじゃないかと思うんです。

 恐らく、今の政府案も、一定の、一定というと失礼かもしれませんが、かなり時間をかけてつくってきて、整合性のとれた一つの体系というかシステムになっていると思うんですね。恐らく自民党案も、自民党の哲学や主義主張とこれまでの経験に基づく一つの体系がしっかりできていると思うんです。恐らく公明党さんの案も、一つの哲学に基づいて、それぞれしっかりしている、体系があると思います。

 いろいろなシステムがあって、一カ所でも変えると、全部のシステムというのは、いろいろな玉突きで影響が出ると思うんですね。ですから、二つのシステムを一つにする作業というのは、実は物すごく大変なんじゃないかなと外から見ていて思うわけですね。

 いろいろな、政府案だって、つくるのに何カ月も何年もかけてやったものだと思います。自民党さんの案も、恐らく何カ月も何年もやってできたものだと思います。その二つを一緒にしていくときのプロセスをわずか一週間とか十日でやるというと、後々、何か思いもしない影響とか結果が出てくる可能性があるんじゃないかと思います。そういった点について、先生はどのようにお考えでしょうか。

西沢公述人 私は、山内先生がこの特別委員会で、修正協議ができた後に修正法案が出て、それを審議するのかどうかと岡田副総理に尋ねられていたというのを拝見していまして、私もそれを懸念していますのは、仮に修正協議ができて法案が修正されたとして、十分な国民に対する開示がないまま法案が通ってしまったときに、例えば、低所得者加算に関しての不公平感が国民の間に出てしまうといったことを恐れるべきだと思うんですね。

 これは、後期高齢者医療制度のときがそうだと思います。二〇〇六年六月に法案が通って、二〇〇八年四月に不公平感が出てしまったということを恐れるべきだと思いますから、即座に可決してしまうのではなくて、国会で十分に審議をする、あるいは、よく会計で行われます公開草案のような形で国民に一旦提示した上で世論を待つ、あるいは現場の方に意見を聞くといった形で進めていくべきであろうかと思います。

山内委員 私も全く同感です。どんなにいい政策でも、プロセスが開かれていないとどうしても不信感を持たれてしまうかもしれない。あるいは、もしかしたらまた、いい政策でもネーミングで失敗するようなこともあるかもしれませんから、修正がもしなされた後は、ぜひしっかり議論をする時間というのがとっていただけるように、各党の皆さんにお願いをしたいと思います。

 次に、もう一度西沢先生に、別の質問をさせていただきます。

 西沢先生は、前にどこかの書かれた文章で、基礎年金が満額でも生活保護の給付水準に見劣りする、これは万人の納得を得られないんじゃないかということをおっしゃっていました。

 今まさに生活保護が話題になっているんですけれども、基礎年金の水準と生活保護の水準の関係がちょっと問題があるんじゃないかというときに、これを是正するには三つ、手があると思います。一つは基礎年金を上げる、一つは生活保護の給付水準を下げる、三つ目はその両方を組み合わせるということなんですけれども、どういう方法でこのバランスを是正していく必要があるとお考えでしょうか。

西沢公述人 私、具体的には、よく念頭に思い浮かべますのはカナダの年金制度でありまして、カナダの年金制度は、OAS、オールド・エージ・セキュリティーというユニバーサルペンションが、一般財源をもとに、月額でいいますと日本円で四万五千円ぐらい給付します。今の基礎年金をこれに組みかえる。ただ、それでは最低生活保障に足りませんから、カナダが行っているように、GIS、ギャランティード・インカム・サプリメントという形で、前年所得を基準に補完してやるという形が好ましいと思っております。

 生活保護の基準を私はいたずらに切り下げるべきでないと思うんですね。これは憲法に基づいて基準を設定しているわけであって、年金との逆転を解消するために切り下げるべきではないと思います。

 これは自民党の方々の骨子案、もう案ではなくて成案になっているかもしれませんが、中でも、一番最後の方に、生活保護を高齢期と現役の時期に分けることも中長期的な方針というふうに書かれていたと記憶しておりますが、こうした中で議論をより進めていくことによって解消していくのかなというふうに考えておりますし、これは民主党の皆さんが提案している最低保障とも考え方は決して違うと思いませんので、ここで収れんできていけるような可能性も感じています。

山内委員 ありがとうございました。

 時間の関係で最後の質問になるかと思いますが、河村公述人にお尋ねをします。

 社会保障の支え手をふやすということが大事だとおっしゃいまして、私も全くそのとおりだと思うんですけれども、具体的にどういう方法が効果的でしょうか。

河村公述人 お答えします。

 雇用政策を変えるということですから、非正規をなるべく減らして正規にするという考え方か、さっき申し上げたように、時間、賃金を公平化するというふうにして正規も非正規も余り差がないようにするというふうな、その二つのやり方があると思うんですけれども、その辺を少し時間をかけてでもやはりきっちりやっていくということ。

 それからもう一つは、女性の就業率は、日本は御存じのとおりM字型カーブで、三十代の真ん中辺がへこんでいるわけで、大分上がってきたんですけれども、やはりその辺については、保育の問題とか、労働条件と保育と両方を改善していかないとなかなか子供が産めないんですね。

 ですから、そういうことを、今、ちょっと、こういうことを言っていいかどうかわからないんですけれども、私は、孫のお守りを毎週一回、二人預かっているんですよ。それで、保育園に行くと、保育園で、孫というか小さい子を支えているのは大体おじいちゃん、おばあちゃんなんですね。ですから、結局、世代間ではそういうふうに支えているんですけれども、その辺をもう少し制度として成り立つようにしていけば、そういう働く人はふえると思います。働きたいという人はすごく多いですからね、女性では。

 それと、あと、一番難しいのは、我々の年代の六十五歳以上ぐらいのところをどうするか。この辺はちょっと我々も仲間でよく話すんだけれども、働いている人は結構多いですよ。多いけれども、余り、これだというふうな一つの案というのはないですね。そういうところも課題だとは思います。済みません、ちょっとぼやっとした話で。

山内委員 ありがとうございました。以上で質問を終わります。

中野委員長 これにて山内君の質疑は終了いたしました。

 次に、中島正純君。

中島(正)委員 国民新党の中島正純でございます。

 本日は、公述人の皆様にそれぞれの立場で貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。大変勉強させていただいております。

 それでは、順次質問させていただきます。

 まず最初に、公述人の皆様全員にお聞きしたいと思います。

 今、政府・与党においては、現行の年金制度を抜本的に改革するという新年金制度を創設しようとしておりますけれども、現行制度の抱える問題点のみを改善して対応できるのではないかという指摘もございます。この点について皆様のお考えをお聞かせ願いたい、これが一点。

 それと、年金財政についてなんですが、賦課方式、これは大変今問題である、だから積立方式に移行するべきだという声もございます。こうした観点から、新しい年金制度の必要性や抜本的改革の課題などについて皆様のお考えをお聞かせ願えますでしょうか。

河村公述人 何でしたっけ。ああ、そうか、抜本改革ですね。

 今度の政府案というのは、私は賛成できないんですけれども、もちろん、現行制度の手直しをしながら雇用を変えていけばいいというふうな、どちらかというと、制度の内部にある問題点を、さっき申し上げたような高額所得者に対する保険料の引き上げとか、それから、場合によったら、少し支給率を下げてしまうとか積立金を使うということで、多分、年金制度はそんなに問題ではないんですよ。きょうはテーマは年金ですから、健康保険はすごい大変ですけれども、年金はそうでもないと思っているんですね。ですから、それをやればいいんじゃないかと思います。

 それだけでしたっけ、質問は。(中島(正)委員「あと、賦課方式と積立方式についてです」と呼ぶ)

 賦課方式は、積み立てに変えるべきという議論が二〇〇〇年のときにかなりあったんですけれども、結局、あれは、過去勤務債務というか、過去の期間についての積み立てを誰がするかという問題があって、今度の民主党案なんかもそうなんですけれども、四十年ぐらいしないと完成しないんですね。そうすると間に合わないんですね。だから、結局、積立方式というのは、誰がそういう財源負担をするかというのが不明確で、多分うまくいかないだろうと思いますよ。私も、もちろんそれは賛成ではありません。

小野公述人 先ほど駒村先生から、百メートル先とか、あるいは新しい制度、四十年後とかいう話が出てきたわけでございますが、私は、現行制度の改良というものを地道にやっていくということが必要だというふうに思っております。

 その際に、その方向性というのは、四十年後の新しい年金制度、これを見据えて着実にやっていくということになるかと思うんですが、その姿というのが、どうも八年ぐらいかかってまだ一つも出てこないという状況では、現行制度の改正というのも、では、果たしてその方向に沿っているのかどうか、その方向に沿っていくといろいろな矛盾が出てくるのではないか、そういうような点で少しどうかなという疑問を呈したところでございます。

 その意味で、私は、先ほども出ましたけれども、公的年金制度に抜本改革というのはないんだというふうに思います。漸進的に社会情勢の変化に応じて変わっていくというのが公的年金の姿だというふうに思いますので、私は、正直申し上げまして、抜本改革という言葉は非常に嫌いな言葉でございます。

 積立方式に関しましては、先ほど御説明申し上げましたとおりでございますので、省略させていただきます。

 以上でございます。

菅家公述人 連合は、将来の年金制度のあり方といたしまして、所得に応じた保険料を納める社会保険方式による所得比例年金をベースにして、税財源による最低保障年金の組み合わせ、このことがよろしいというふうに考えておりまして、そういう意味では、民主党さんの考えている方向性とは共通する部分があるんだろうというふうに思っています。

 ただ、連合といたしましては、段階的にそういった制度に移行すべきというふうに考えておりまして、四十年程度かかるのではないかというふうに考えているところでございます。

 それと、積立方式につきましては、公的年金制度の持っている意義、一生涯の保障であるとか、あるいはインフレリスクへの対応でありますとか、あるいは障害、遺族になったときの生活保障、そういった公的年金制度の意義の観点からして積立方式はなじまないのではないかというふうに考えておりますし、やはり移行にかかわる二重の負担の問題もあるというふうに考えております。

 以上です。

西沢公述人 私は、現行制度の修正ではだめだと思います。というのも、今の制度というのは、厚生、共済、国民年金、各制度を分立させたままそこから基礎年金拠出金を出させることによって、いわばフィクションあるいはバーチャルで基礎年金給付を行っているという仕組み、これが被用者年金適格者になるのに九万八千円の壁の原因であったり、第三号の原因であったり、あるいは不透明感の原因であるわけです。ですから、基礎年金拠出金ではなくて、基礎年金なら基礎年金の給付水準、負担方法を別途定めるという形に改革していくべきだと思います。

 二点目の積み立てか賦課かとよく二者択一で語られますけれども、これは二者択一ではなくて、非常に連続的なものですから、マクロ経済スライドの適用を頑張って一兆円でも二兆円でも積立金をふやすといったことが将来制度にとって好ましいわけでありますし、積立方式は価値規範みたいなものだと思うんですね。規範です。財政健全化を図ろう、将来世代に対して負担を残さないという規範であって、それに向けて少しでも近づくというもので位置づけられるかと思います。

駒村公述人 最初の方の御質問は、先ほど私が説明しました資料の七ページの方にございますけれども、現行制度をゼロ、そして民主党案を仮に抜本改革として一というふうにして、このゼロと一を一生懸命、今、全く違うかのように議論しているわけですけれども、先ほども御説明していますように、財政の基本的な仕組み、つまり賦課方式であるという点では両制度同じでございますし、賃金に比例して年金のベース部分が計算されるというのも両方とも同じであります。違うところは何かというと、職業別に分立しておくのか、基礎年金という形で国庫負担二分の一にするのか、低所得者に寄せるのかというところが一番の違いでございます。

 そういう意味では、ゼロか一かという議論ではなく、国会の皆様で、このゼロと一の間にどういうバリエーションがあるのかというのを議論していただきたい。そういう意味で、私は、今のちょっとした手直しでは済まないと思います。しかし、意識した大幅なリフォームであれば、これを見方によっては抜本というかもしれませんけれども、その抜本と現行の間があるんじゃないか、こういうふうに思っておりますので、そういう議論ができることを期待しております。

 積立方式の方でございますけれども、積立方式になれば、世代間の不公平がなくなるとか、あるいは、高齢化、高齢社会を乗り切れるとかいうような議論がありますけれども、それはそういうわけではありません。積立方式になったからといって、今ある不公平の問題は解消できるわけでもないわけですね。

 そして、もし積立方式がもつ、高齢化を乗り越えるということであるならば、きちんとした金利がつく。金利がつくというのは経済成長があるということですから、経済成長がなければ、逆に言うと、積立方式も高齢化社会を乗り切れないということになります。

 逆に言うと、経済成長さえあれば、現行の賦課方式でも高齢化社会を乗り切れることになりますので、この賦課方式を基準にしながら一部民営化する、民間の運用も期待するという、賦課方式を中心にしながら民間の積立方式のような形も一部導入するという形でいいんじゃないかと思います。

 以上です。

中島(正)委員 御意見が真っ二つに分かれましたね。ありがとうございます。

 続きまして、小野公述人と河村公述人にお聞きしたいと思います。

 企業年金のあり方について、企業年金については、AIJの問題などがありました。運用面での課題が指摘されています。しかし、企業年金制度自体は、公的年金制度を補完するものであって、その役割は大変重要であるというふうに考えております。

 今回の一体改革では企業年金には直接触れておりませんが、今後のあるべき姿について、企業年金にかかわってこられた小野公述人と河村公述人のお考えをお伺いいたします。

小野公述人 経済的には失われた十年とか二十年とかと言われている中で、さまざまな仕組みがいろいろな弊害というものが出てくると同時に、同じように企業年金についても、やはり非常に困難な局面になっているということは事実かと思います。

 現在は、厚生労働省の有識者会議の中で、AIJ問題に端を発しました厚生年金基金のあり方ないしその企業年金の財政運営のあり方というものが問題になっていると思いますけれども、企業年金につきましては、どちらかというと、大企業の正社員中心の年金というような位置づけにならないような方策、これが必要だと思います。

 そういった観点からいうと、現在の厚生年金基金制度というのは、どちらかというと、中小企業を中心として運営してきた。さまざまな財政的問題があるということは承知してはおりますけれども、AIJ問題が発生したからといって、直ちにこれを見直すですとかいうことに関しては、私は少し否定的な見解を持っております。

 問題は、財政運営の中で、単独とか連合とかという、大企業の年金、単独の制度というのはそれほど問題がないというふうに思っておりまして、問題があるのは、いわゆる多数事業主制度、幾つもの会社が一緒になって一つの年金制度を運営するような仕組みになっているもので、現在の厚生年金基金のほとんどがこの仕組みを取り入れているわけですけれども、この財政運営がやはりうまくいっていないというのは、日本だけではなくて、万国共通の問題かと思っております。

 アメリカでも、やはり多数事業主制度というのは、例えば高目の予定利率を適用したりとかしていまして、その結果として、例えばコモディティーだとか何だとか、代替資産の運用だとか、そういったものにいくという側面もあるのではないかなというふうに私は思っておりまして、これは簡単に片づけられる問題ではないと思いますけれども、だからといって、もう手を上げてしまうということでもないというふうに思っております。

河村公述人 今の意見にかなり近いんですけれども、企業年金は、やはり基本的に大企業の正社員向けの制度なんですね。それで、今度AIJで起きたのは、総合型という複数事業主の参加する基金制度なんです。

 結局、いろいろな経過があって、財政運営だけは物すごく締めたんですけれども、運用は緩和していたんですね。資産運用でああいうふうにつけ込まれたわけです。

 私はちょっと、やはりこの辺を見直すべきだと思っていまして、よく、運用規制をすると、市場に対する流動性が失われるというふうに新聞なんかが、日経なんかがすぐ書くんですけれども、それはうそですね。年金基金がやっている取引というのは、そんなに大きくないんですよ。ですから、そういう意味では、安定投資家であることは事実だけれども、市場の流動性なんか、別に、規制をかけても失われないです、それをやるのは、ヘッジファンドをやれば物すごく失われますけれども。

 ですから、運用規制を少し強化して、とりわけデリバティブや先物取引については、昔は規制があったんですね。ですから、そこは規制すべきだというふうに思っています。

 もう一つは、中小企業の総合型についてなんですけれども、これは、現実的にはもう、ちょっと立ち行かないと思うんです。ですから、解散を含めた救済をどうするかというのが、今後捜査が進んだ段階できっと問題になると思います。

 私は、場合によったらやむを得ないのかなと思うんですけれども、そうなると、中小企業の場合は、確定拠出年金の総合型というのが一つあるんですけれども、そっちへ入るしかなくなっちゃうんですね。ですから、ますます退職後の所得格差が大企業と中小企業で大きくなっちゃうので、その辺をどういうふうに誘導するかというのが政策問題だと思います。

中島(正)委員 ありがとうございました。

 ちょうど時間が参りましたので、これで終わりたいと思います。

 きょうは貴重な意見をありがとうございました。

中野委員長 これにて中島君の質疑は終了いたしました。

 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、公述人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 午後二時から公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時開議

中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午後は、子ども・子育て支援関連三法案について審査を行います。

 この際、公述人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。公述人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 林公述人、松居公述人、大日向公述人、森田公述人の順に、お一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、念のために申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を受けることとなっております。また、衆議院規則の規定により、公述人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願いたいと存じます。

 それでは、まず林公述人にお願いいたします。

林公述人 御紹介をいただきました横浜市長の林文子でございます。

 本日は、このような機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 お手元に、「横浜市の保育所待機児童対策と子ども・子育て支援関連三法案について」という資料をお届けしてございますので、これをごらんになりながら、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 私は、市長就任前、約十三年間にわたりまして民間企業の経営者を務めてまいりました。社会に出て働き始めた四十七年前でしたらともかく、一九八六年の男女雇用機会均等法が施行されてもう二十六年もたっているわけでございますが、この時代に、お子さんを預ける保育所が見つからないために泣く泣く職を辞することになった優秀な女性の方たちがまだまだいらっしゃると思います。子供のために会社を休めば職場に自分の居場所がなくなるかもしれないという不安な声は後を絶ちません。

 また、夫は忙しくて家事にかかわれない、隣近所とのつき合いがほとんどないので、身の回りのことを気にかけてくれる人や相談相手が身近にいないといった声もございます。昨年の東日本大震災以降、きずなの大切さが再認識されていますけれども、家庭や地域での支え合いが希薄になる中での子育ては非常に孤独で不安なものであるということを、私は改めて強く感じております。

 子育てを社会全体で支えるということは、第一に子供の幸せを願うものでありまして、子供を産み育てたいという若い世代に希望を与えるものです。

 平成二十二年に横浜で開催されたAPEC首脳会議の際にも、サイドイベントとして、経済の成長及び繁栄には女性の参加と連携が不可欠であるという認識のもとに、女性の起業や社会進出を促すための方策が話し合われました。以後、APECサミットに合わせて、女性と経済サミットが継続的に開催されまして、私も議論に参加をしてまいりました。

 そして今、市長として、提言内容を具現化させるために、女性の社会進出を阻む大きな障壁となっている出産、育児と、仕事との両立を支えるための制度の充実、サービス量をふやすことを進めているわけでございます。そして、私が特に重点を置いて取り組んでいるのが保育所待機児童の解消でございます。

 それでは、お手元の資料の二ページをごらんいただきたいと思います。

 横浜市の待機児童数は、私が市長に就任した直後の二十二年に一千五百五十二人でございました。これは、実に全国でワースト一位という大変不名誉なものでございました。この春には、そこから八八%減、百七十九人にすることができました。関係者の皆様の知恵と工夫、そして相当な市税を導入して、やっとここまでたどり着きました。

 二十五年四月に私がお約束している待機児童をゼロにするという目標に向けて、今年度も、気を緩めることなく、横浜市が一丸となってただいま取り組んでいるところでございます。

 それでは、横浜市の保育所待機児童解消に向けた取り組みをお話しいたします。

 資料の三ページをごらんください。

 初めに、子育て家庭を取り巻く状況でございます。

 横浜市が行ったアンケート調査で、未就学児の保護者のうち、調査時点で就労していない方を対象に、働きますかという御希望を伺いました。約七割の方が働きたいとおっしゃっておりまして、そのうちの実に九割が、パート、アルバイト等の就労を希望しているということです。また、両親がともに働いていらっしゃる家庭でも、幼稚園を利用したいという方は二割でした。

 保護者の就労希望が高まっている中でも、保護者の保育ニーズは、必ずしもフルタイムで働くことをしっかり支えてほしいというわけではないことがわかります。したがって、両親が働いている場合は保育所を利用する、専業主婦家庭の場合は幼稚園を利用するといったすみ分けでは、保育ニーズに対応ができないということでございます。

 そこで、私が市長就任後にまず取り組んだのが保育所待機児童解消プロジェクトチームの立ち上げです。現場の一線の若い職員の意見を中心に、いろいろなアイデアを既成概念にとらわれずに出してほしいとやりました。そして、実行に移してまいりましたが、認可保育所の定員の拡大とあわせまして、多様な働き方に対応したあらゆる手法を導入してまいりました。保護者がニーズに応じてさまざまなサービスを選択できる環境づくりに取り組んできたわけでございます。

 資料の四ページをごらんくださいませ。

 具体的に、効果のあった六つの取り組みを御紹介したいと思います。

 多様な働き方に対応したあらゆる手法の導入、この一つ目ですが、認可保育所定員の拡大でございます。

 二十三年度には、三千六百人分の定員拡大を図りました。そして、さらに四十九カ所新たに新園を開設いたしましたが、このうち、株式会社やNPO法人等によるものは三十三カ所でございまして、実に新規開設の三分の二以上を占めております。

 平成十二年三月に、当時の厚生省からの通知によりまして、株式会社を含めた、社会福祉法人以外の参入が認められたことを受けて、横浜市では、十四年六月に株式会社による認可保育所を初めて設置いたしました。さらに、既存の建物の改修等によりまして保育所を整備する事業では、十五年から株式会社にも整備費を助成できるようにし、株式会社の参入を一層促進いたしました。

 二十四年四月一日現在で、横浜市の私立の認可保育所四百十三カ所のうち、百六カ所、二六%が株式会社という形でございます。多様な運営主体が参入してこそ、この解消ができているわけでございます。

 さて、二つ目です。多様な保育施設、保育サービスの展開です。

 その地域の保育ニーズや年齢に合った保育施設、保育サービスを選択して利用できるよう、多彩なメニューの整備に取り組んでいます。

 特に、待機児童の多くを占める三歳未満児への対応ですが、横浜市独自の基準を満たした横浜保育室や、全国に先駆けて始めた、十人未満の小規模単位で保育する、NPO法人等を活用した家庭的保育事業を地域の特性に応じて整備しています。この三年間で、横浜保育室は二十八カ所ふえました。NPO法人等を活用した家庭的保育は十七カ所ふえております。

 次に、資料の五ページをごらんください。

 三つ目でございますが、幼稚園の預かり保育事業です。

 横浜市では、就学前児童の三〇%以上のお子さんが、四、五歳児では七五%以上のお子さんが幼稚園に通われています。市内の幼稚園、二百八十五園全てが私立です。保護者の就労を要件として、保育所と同様の十一時間保育を行う預かり保育事業を横浜市は全国に先駆けて開始いたしました。特に、この三年間で三十五園の御協力を得て、百十園でただいま実施をしています。幼稚園協会からも、この事業に理解と協力をいただいております。

 四つ目です。預かり保育を実施している幼稚園と横浜保育室との連携モデル事業です。

 ゼロ歳児から二歳児までの横浜保育室と三歳児以上からの預かり保育を実施している幼稚園とが、幼稚園の入園枠の確保や、幼稚園の園庭開放、園児の交流などで連携することにより、就学前までの一貫した保育環境を確保しようという取り組みを始めました。

 五つ目でございます。これが非常に新しい取り組みです。保育コンシェルジュを設けました。

 保育を希望する保護者の方の相談に応じて、それぞれのニーズに最も合った保育資源や保育サービスの情報提供を行う保育専門相談員を用意いたしました。十八の区役所に合計二十一人を配置いたしました。保育所に入れなかった保護者の方へほかの保育サービスを紹介する、フルタイムでなくても大丈夫ですよときめ細かく向き合ってお話をして、お一人お一人と対話をすることによって、このマッチングが非常にできまして、これが待機児童の解消に非常に奏功したわけでございます。

 そして、最後でございますけれども、市内に十八あります区役所の区長を巻き込みました。今までこういうことはなかったんですが、私が指揮をいたしまして、区長を集めて、解消のための会議をやらせていただきました。こういった一丸となって取り組んだことが奏功いたしました。

 特に、区と兼務の緊急保育対策課担当係長というのを、若手でございますが、これを配備して、保育で預け先に困っている方のおうちまで行って話をしてきてください、現場主義で、自分から歩いて行ってくださいという、これが奏功いたしました。

 ともかく、一人一人のニーズでお悩みの方に向き合って、一対一でお話しすることが大変奏功したと考えております。

 資料の六ページをごらんいただきたいと思います。

 それでは、保育所待機児童解消の取り組みから見える、都市内分権から考えられる地方分権の重要性について触れたいと思います。

 横浜市は、三百七十万人の人口を擁する巨大な基礎自治体です。現在、大都市制度の議論を進めていますが、中でも、都市内分権、行政区の機能強化に取り組んでいます。地域の課題に迅速に丁寧に対応し、解決を図るには、市民の皆様の身近な区役所がその力を十分に発揮することが重要です。

 一言に横浜市と言っても、地域によって特徴は異なります。マンション開発等が続き、就学前人口が増加している区もあります。また、みなとみらい地区のように、先進ビジネス地域でありながら、多くのマンションが建ち、若い世代が流入している地域もあります。

 そのような中で、全て画一的に取り組もうとしても、無理が生じます。地域ごとの状況をきめ細かく分析し、その地域の資源をうまく活用しながら取り組みを進めていくことが不可欠でございます。

 このことは、国と地方との関係でも同じであると考えます。現場である基礎自治体に権限と財源を一元化し、地域の実情に応じた柔軟な施策展開を行えることが、住民の皆様方に必要なサービスを提供できることにつながると考えます。

 資料の七ページでございます。

 子ども・子育て支援関連三法案でございますが、子育ての基本は親にあるものの、家庭や地域の子育ての支え合いが低下していることを踏まえて、全ての子供に良質な生育環境を保障し、社会全体で子供の育ちと子育てを支えていこうという基本的な考え方が示されております。住民の皆様の生活の安心、安全を守る基礎自治体の長として、大変歓迎をしています。

 少子高齢化社会において、未来の世代を担っていく全ての子供たちの健やかな育ちと学びを保障すること、そして女性の就労支援や子育て支援を進めることは、現在の暮らしの安心と未来の社会の活力につながるものであると確信しています。

 また、ただいま御紹介した取り組みは、横浜市がこれまで関係者と意見交換を繰り返しながらつくり上げ、実践の積み重ねが待機児童解消への効果という形で実を結んだものです。現場でつくり上げた取り組みが国の制度に位置づけられ、後押しをしていただけることが示されたことは、大変心強く思っております。

 最後に、子ども・子育て支援関連三法案における問題点を、大きく分けて三点、お話しさせていただきます。

 資料の八ページをごらんくださいませ。

 一つ目は、財源の確保です。

 制度自体を実行可能なものとして、保育の質、量の拡充を確実に行うためには、安定的な恒久財源の確保が必要です。

 横浜市では、待機児童対策に取り組んできたことにより、保育所やその他のサービスの運営経費が大きく膨れ上がりました。例えば、資料のこのページの下段にグラフを示しましたが、認可保育所の運営費は、一番左のグラフ、二十四年度予算で総額六百七十七億円、市費は四百二十一億円となっています。この三年間で、実に総額百三十三億円増加、市費は七十四億円増加しています。横浜保育室は、左から二番目のグラフでございます。二十三年度から、先取りプロジェクトで国費の導入を認めていただいて大変感謝をしておりますが、それでも市費はこの三年間で十六億円増加しました。

 また、今後、県所管の私立幼稚園について、実施主体が市町村にかわれば、保育、教育サービス量とともに権限、責任も大きく広がります。役割に応じた適正な財源配分と財源の確保をしていただくことが必要となります。

 二つ目は、サービス基盤の確保でございます。

 市民サービスが確保される前提として、全ての既存施設が確実に給付制度に移行していくことが必要です。

 特に、幼稚園の協力が大きな鍵となると考えています。幼稚園が総合こども園になり、長時間の保育と、ゼロ歳児から受け入れて低年齢児保育の両方をいきなり行うのは難しいと考えます。横浜市では、預かり保育や横浜保育室との連携など、幼稚園の特性を生かしながら、長時間保育と低年齢児保育が行える仕組みをつくってきました。このように、幼稚園から総合こども園への移行は、ソフト面でステップを踏むことのできる環境づくりが必要でございます。

 次に、保育士、幼稚園教諭の確保が重要です。現在でも、待機児童解消を進める中で、保育士等の確保は大きな課題となっております。保育士の給与水準にも問題がございます。ほかの業種に比べて低く、現場は大変厳しいので、この待遇をよくしなくてはいけないのではないかというふうに思います。

 自治体への権限と財源の移譲。地域のニーズに応じて多様なサービスを総合的に展開する必要がございます。現在都道府県の所管となっている私立幼稚園に対する権限や財源を含めて、制度の実施主体となる都市自治体に給付と事業を実施する権限と財源が付与され、実施が担保される必要があると考えております。

 三つ目です。施行までの準備期間を確保していただきたいと思います。

 周知徹底を十分にしないと、これは大変現場が混乱します。事業者の指定や、利用者の認定、給付事務など、多岐にわたる準備作業を行う一方で、現行制度も並立する状態になりますので、法案成立から施行までには十分な準備期間が必要です。

 大変早口になりました。

 子供の育ちを見守り、子育て支援を行う際に、利用者の目線に立ってきめ細かく対応していくには、行政だけが取り組むのでは難しいと考えています。保護者、地域、NPO、企業など、社会全体が一体となって子供を守り、育てる仕組みをつくりたい。ぜひ、引き続き、現場の声を十分聞いていただき、制度に反映していただくことを期待しております。

 どうもありがとうございます。(拍手)

中野委員長 ありがとうございました。

 次に、松居公述人にお願いいたします。

松居公述人 こういうところに呼ばれるとは思っていなかったんですけれども、二十五年、同じ話をし続けています。

 私はアメリカに三十年住んだんですけれども、アメリカでは、今、生まれてくる子供の三人に一人は父親がいません。三人に一人の子供が未婚の母から生まれるということです。これはもう有名な数字です。御存じの方も多いと思います。

 しかし、これが一体何を意味しているのか。

 三人に一人の母親が、女性が、自分の子供が生まれた瞬間から女手一つで育てていかなければならないということがまずあります。これは無理です。母子家庭が必ずしも悪いと言っているのではないんです、社会にきずながあれば。母子家庭で頑張っている母親を見て逆に立派な子供が育つとか、母子家庭で頑張っている母親を見てその周りに新たなきずなが生まれるとか、子育ては社会にきずなを生むためにあったんです。それが、三人に一人が初めから母子家庭ということになると、母子家庭が攻撃されるようになります。

 今から十余年前、日本の国会に当たる連邦議会にタレント・フェアクロス法案という法案が提出されました。これは、二十一歳以下の未婚の女性が子供を産んだ場合には一切生活保護費を出さず、その分をためておいて、政府が孤児院をつくって、そこに子供を収容して育てようという法案でした。画期的な法案です。親がいるにもかかわらず、母子家庭に任せておくと犯罪者がふえるから、政府が孤児院で育てる。これは、まだ起きていない犯罪を裁くことです。こんな人権問題はないと思います。

 孤児院は確かに子供にはいいんです。そんなことはアメリカ人はみんなわかっています。孤児院で育てば、犯罪者になる確率は少ない、虐待される確率も少ない。幼稚園や保育園が子供にいいのと同じです。でも、こんなことをしていては親心が育たない。子育てというのは、子供を育てる以上に、それをすることによって親が親らしくなっていく、人間が人間らしくなっていくためにあったんです。それがアメリカ人にはわからない。孤児院で育てればいいんだと。

 当時この法案に賛成していた下院議長、日本でいえば衆議院議長に当たるギングリッチという人が、この法案に賛成してこう言ったんですよ。孤児院と考えなければいいんだ、二十四時間の保育所と考えればいいんだと言ったんですよ。僕はこの言葉を一生忘れないです。福祉というのは既にそこまで行く可能性を持っています。

 そして、御存じのように、このギングリッチさんは、ことしの大統領選に共和党から立っていました。ロムニーさんとオバマさんがしくじったら、大統領になったかもしれない。そして、このギングリッチさんは、自分が子供のときにこの法案があったら多分孤児院に入れられていた人です。そういう体験を持った子供が権力者になって、孤児院の方がいいんだと。そこまで来ています。

 私は、今、年間百五十ぐらいの講演を、主に保育士、そして保育園のお父さん、お母さんたちにしています。

 一人の園長先生が言いました。松居先生、保育士をやっていると、ゼロ歳から来ちゃうんだと。そうすると、子供が初めて歩けるようになる瞬間に出会うそうです。そういうときに、園長は担当の保育士に言うそうです。絶対親に言っちゃいけないよ、もうすぐ歩けるようになりますねと言わなきゃいけないよ、初めて子供が歩けるようになるところを親が見ていないなんてことを許したら、私たちのやっている仕事が親子の不幸に手をかすことになるんだからねと言いました。これが本当の保育士心、これが本当の親心ですよ。

 保育士の資質というのは、子供たちの幸せをいかに強く願うかだとその園長は言いました。そして、子供たちの幸せは親子関係にあるんだと言いました。自分たちが幾らいい保育をやっても、五歳までですよと。

 今、日本全国を回りながら、いろいろなところで、四十八時間、土曜日、日曜日、子供を親に返すのが心配だという園長が出てきています。五日間せっかくいい保育をやったのに、また月曜日にかみつくようになって戻ってきちゃう。せっかくお尻がきれいになったのに、また月曜日に真っ赤になって戻ってくる。四十八時間おむつを一度もかえないような親をつくり出したのは自分たちなんじゃないか。そのジレンマの中で、二十年、三十年、日本の保育士たちはやってきたんです。

 どうやって親を親らしくするか。

 ゼロ歳、一歳、二歳、これほど毎年違う連中はいないです。三歳、四歳、五歳もすごいです。でも、ゼロ、一、二は、毎年毎年あれほど違う。あの人たちにはあの人たちの毎年毎年の役割がある。

 ゼロ歳児はしゃべれないんです。しゃべれないことには意味があるんです。我々に言葉の通じないコミュニケーションを一年、二年強制して、我々を育ててきたんです。

 生後二、三カ月、赤ん坊が笑うんです、ほんのちょっと笑うんです、絶対に笑うんです。その笑顔を見ていた人間たちはうれしくなったんです。そして、その笑顔を四、五人の大人たちが一緒に眺めていると、それが夫婦だったり、おじいちゃん、おばあちゃんだったり、隣のおじちゃん、隣のおばちゃんだったり、その大人たちの心が一つになったんです。生後たった二カ月、三カ月、ほんのちょっと笑うだけで、我々をいい人間にし、我々の心を一つにしてきたんです。

 これが人間社会の原点です。この人たちの役割を、この人たちが今まで果たしてきた、我々をいい人間にする役割を返していかなきゃいけないんです。

 今、全国の保育園、幼稚園で、一人保育士が欠けたら次を見つけるのは大変ですよ。ハローワークに広告を出したって、ゼロですよ。そういう中で保育士たちは今やっているんです。

 全国の幼稚園、保育園の教員を育てる専門学校で軒並み定員割れを起こしています。願書を出せば全員資格を持てる、そういう状況の中で、どんどんどんどん保育士たちがくたびれてきている。

 今、全国の公立の保育園の保育士の六割が非正規雇用です。時給八百五十円、九百円でやっているんですよ。役場へ行くと、自分たち正規の人たちがいつやめるか、いつやめるかとみんな待っているのがわかると言います。自分たち正規がやめたら非正規雇用にしようと。そういう中で、保育の質をどうやって今保っていくのか。保育士たちの本当に子供たちの幸せを願う思い、それにかけるしかないと思います。

 アメリカの首都、ワシントンDCでは、六〇%の家庭に父親像となり得る男性がいません。父親像となり得る男性がいない、これはとてもアメリカ的な言い方です。もしも母親がボーイフレンドや恋人と暮らしていたら、それは父親像となり得る男性がいると計算するんです。三三%が未婚の母から生まれて、子供が十八歳になるまでに四〇%の親が離婚するんです。実の両親に育てられる子供の方が少ないんです。そういう国では、実の親とか血のつながりなんていうことはもう言わないですよ。大人の男性がいれば、それは父親像となり得る男性がいると計算する。そう計算しても、六割の家庭にいない。

 ワシントン市がプロジェクト二〇〇〇というプロジェクトを始めました。これは、公立の小学校を使って子供たちに父親像を教えようと。アメリカで三三%の子供が未婚の母から生まれているときに、イギリスで四〇%の子供が未婚の母から生まれているんです。フランスで五〇%、福祉国家と言われるスウェーデンでは六〇%の子供が未婚の母から生まれているんです。

 犯罪率を見てください。一桁違います、日本とは。欧米で三割、四割、五割の子供が未婚の母から生まれているときに、この国は一%台だった。これは奇跡の国ですよ。幼稚園、保育園、学校、この人類の歴史にとって本当に歴史の浅い巨大なシステムが普及充実すると、大体、家庭は崩壊していきます。考えてもみてください。この幼稚園、保育園、学校、これがどれほど長時間不自然に親子を引き離すか。壊れていなかったのはこの国ぐらいです。

 日本にできちゃった結婚という言葉があるんですが、私はこの言葉を聞くとうれしくてしようがない。できちゃったら結婚するんです。日本の男たちはまだ責任感があるんじゃないかなと思いますよ。欧米では、できちゃっても結婚しないのが三割、四割、五割いるんですよ。それに比べれば。

 学校の教育だってすばらしいですよ。高校を卒業すると読み書きができるようになっちゃうんですよ。アメリカは、高卒の二割が読み書きできないですよ。読み書きが満足にできない学校の先生というのが出てきていますよ。何で読み書きができない先生を雇うしかなくなってくるか。一人の大人に、三十人、四十人のしつけもできていない子供の子育てを任せてごらんなさい。一生懸命やろうとする人ほど、感性の豊かな人ほど、ノイローゼになってやめていくんですよ。そうすると、読み書きが満足にできない学校の先生を雇うしかなくなってくるんですよ。

 私が最初の本を二十年前に書いたとき、東京都で休職している先生の四人に一人が精神的病で休職していたんです。今、七割ですよ。埼玉県は六割ですよ。もうこのままいったら学校が危ないですよ。民主主義も、幼稚園も、保育園も、学校も、親が親らしいという前提のもとにつくられているんです。親が親らしいということは、ゼロ、一、二歳、このとても不思議な人たちが、彼らの役割を果たせるかどうかです。

 二歳児なんてなかなか変わっていますよ。あれほど非論理的で理不尽な連中はいないですよ。私は、二歳児と二人で八時間過ごせと言われたらぞっとしますよ。でも、そこに小学校一年生の女の子を一人加えるけれどもどうかと言われたら、オーケーですよ。私はそういう体験がありますよ。小学校一年生の女の子がそこに加わるだけで、結構楽しい八時間になるんですよ。間の二時間は眠っていますしね。しかも、この二歳児が六歳の女の子を育てる風景、この二歳児が六歳の女の子からいい人間性を引き出す風景、これは見ていてうれしいです。

 二歳児と健やかに過ごせなかったら、人類なんかとっくに滅んでいるんですよ。二歳児と健やかに過ごすということは、二歳、六歳、五十八歳、この組み合わせがいいんじゃないのと天が言っているようなものですよ。この六歳の女の子のかわりに六歳の男の子を加えるけれどもどうかと言われたら、ちょっと待ってよということになるわけですよ。ここがまた人類のおもしろいところですよ。この六歳の女の子のかわりに八十歳のおばあちゃんを加えるけれどもどうかと言われたら、それもいいかもしれない。その中で、育て合い、育ち合いがあるわけです。

 こういう年齢の離れたきずなを持たないと、二歳児とさえ健やかに過ごせないんですよ。これは繰り返し繰り返し、宇宙が我々に、年齢の離れたきずなを持てよ、きずなを持てよ、そうでないと二歳児でさえいらいらの原因になるよと言っているようなものです。ゼロ、一、二歳、このとても不思議な連中が、我々をここまで人間にしてきたんです。

 私は、あるお母さんから贈ってもらった詩をいつも講演の最後に読むんです。私が言いたいことを全部言っているような気がしている。政治家の方たちも学者の方たちも、昔は詩人だったわけですから。

 読みます。

    愛し続けていること

  いつかあなたも

  母親にいえないことを

  考えたり、したりするでしょう

  その時は思い出してください

  あなたの母親も

  子供にはいえないことを

  ずいぶんしました

  作ったばかりの離乳食をひっくり返されて

  何も分からないあなたの細い腕を

  思わず叩いたこともありました

  あなたは驚いた目で私を見つめ

  小さな手を不安そうにもぞもぞさせていました

  夜中、泣き止まないあなたを

  布団の上にほったらかして

  ため息をつきながらながめていたこともありました

  あなたは温もりを求め

  いつまでも涙を流していました

  わたしは母親として

  自分を恥ずかしいと思いました

  だけど苦しみにつぶされることはなかった

  それは小さなあなたが

  私を愛し続けてくれたからです

  だからもしいつか

  あなたが母親にいえないことを

  考えたり、したりして

  つらい思いをすることがあったら

  思い出してください

  あなたに愛され続けて救われた私が

  いつまでもあなたを

  愛し続けていることを

絶対に一人では生きられないあの人たちが、一律一人では生きられないあの人たちが、まず私たちを育てるんです。そして、あの人たちに愛され、許され、そして救われたと、この人は書いている。あの人たちに救われた私たちがあの人たちを守る、この順番は絶対に忘れてはいけないんです。幼児たちがどれほどの役割を負っているか、私たちを育てるという、そして、人間社会にきずなを生むという、そこを絶対に忘れてはいけない。

 以上です。(拍手)

中野委員長 ありがとうございました。

 次に、大日向公述人にお願いいたします。

大日向公述人 恵泉女学園大学の大日向と申します。本日は、お招きをいただきまして、ありがとうございます。

 初めに、簡単に自己紹介させていただきます。

 私は、発達心理学の領域で、主に親子関係、家族問題を研究しております。また、NPOの代表として、地域の子育て、家族支援の活動にも携わっております。

 国の少子化対策、子育て支援に関しましては、少子化社会対策大綱検討会以来、子どもと家族を応援する日本重点戦略分科会、社会保障審議会少子化対策特別部会などにかかわらせていただきました。

 このたびは、幼保一体化ワーキングチーム、基本制度ワーキングチームの委員として、子ども・子育て新システムの検討をさせていただきました。

 本日は、これまでの研究、子育て支援の現場での実践、そしてワーキングチームの議論を踏まえまして、新システムに対する私の意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず初めに、なぜ今、新システムが必要なのか。

 私は、子供の育ち、親の生活実態を間近に見る立場におります。よく家庭や親の教育力の低下が言われますが、親の大半は子育てに一生懸命です。一生懸命だからこそ、不安やストレスを強めていると言った方がよいかと思います。近年の家族構成の変化、地域のつながりの希薄化の中で、懸命に子育てに励んでいる親が喜びを持って子供とかかわることができるよう、社会全体で子育てをしっかりと支えていくシステムを築いていくことが必要かと考えます。

 また、働くことを希望する女性がふえておりますが、高学歴化、社会参加の意欲の高まりだけではありません。近年の経済不況の影響もその背景にあります。しかし、待機児問題、そして、小学校に上がると、学童期の放課後対策が手薄なことから発生する小一の壁が立ちはだかっています。

 一方、子供の側に目を移しますと、小一プロブレム、学力低下、いじめの増加なども指摘されております。

 こうした子供、親が置かれている現状の厳しさが少子化という形であらわれていると考えられます。少子化がこれ以上進みますと、生産年齢が減少して、社会保障の維持の上からも危機感が持たれていますが、何よりも子供の発達環境を阻害するという点で、看過できない問題だと私は考えております。

 しかし、若い世代は決して結婚、子育てに消極的ではありません。私は女子大の教員をしております。若い女性たちと日々接しています。結婚したい、子供を産みたいと願っている人が大半なのです。同時に、仕事、社会参加もしたいと願っている。でも、それがかなわないのが現実です。なぜなら、子育て、働き方に関するこれまでの考え方、制度が時代の変化に合わなくなっているからだと思います。

 若い世代、特に女性が子供を産みたいと願っているのに産めない理由、幾つかございます。まず、依然として職場環境が厳しいことがあります。同時に、安心して子供を預ける環境の整備がおくれています。都市部では深刻な待機児問題が続いています。仕事を続けるのか、産むのを諦めるのか、仕事をやめて産む決心をするか。働くことと子育てがVS構造になってしまっている、これが少子化の大きな原因です。

 しかし、この問題は保育所をふやせば解決するかというと、必ずしもそうではありません。むしろ、就学前の子供が過ごす場が、親が働いているかいないかによって、幼稚園と保育所に分かれている現状に根本的な問題があると私は考えます。

 御案内のとおり、幼稚園は文部科学省の所管で、幼児教育を提供する施設として学校教育法に位置づけられていますが、四時間保育を中心としているために、事実上、専業主婦の家庭の子供しか利用できません。その結果、幼稚園は入園希望者が減って、特に地方では減少の一途をたどっています。幼稚園のない自治体が二割あります。人口一万人未満の自治体では五割に及んでいます。幼稚園がこれまで積み重ねてきた幼児期の教育のすばらしい実践が消えていくとしたら、大変もったいないことだと思います。

 そうした中、幼稚園の側は、親、子のさまざまなニーズを酌んで、四時間の保育の後に預かり保育を実施している幼稚園もふえていますが、その多くが児童福祉法による保障のない無認可保育の状況です。

 一方、保育所は厚生労働省の所管です。かつては、働かざるを得ない家庭の子供の保育を行う児童福祉法上の施設としてスタートいたしました。近年は、働くことを希望する女性がふえ、保育所の整備が追いついていません。女性の社会進出は日本社会の経済成長を支える鍵でもありまして、これまで保育所が果たしてきた役割は、今、さらに増大していると言えると思います。

 前政権の時代から幼稚園、保育園の歩み寄りが進んで、保育指針の改定などによりまして、保育所での保育内容の実態は幼稚園での教育と同等のものとなっているにもかかわらず、学校教育法に位置づけられた義務教育の基礎を培うという意味での教育の保障は、法律上、保育所には適用されていないのです。

 つまり、保育所に通う子供と幼稚園に通う子供は、親の生活スタイルの違いによって、法律上、学校教育を受けていない子と受けている子に分けられてしまっています。

 一方、親の生活を見ますと、子育て世代の親の生活環境は今非常に厳しく、変化も激しいです。一時仕事を中断したり、再開したり、女性の働き方も多様化しています。そのたびに子供が保育所から幼稚園に移ったり、保育所を探し回って、結局、お母さんが働く希望を断念したりということが少なくありません。

 現行のフルタイムを想定した認可保育所と専業主婦の方を想定した幼稚園の二つの制度のままでは、もはやその変化に対応できないと言えます。

 さて、都市部では今申し上げたような待機児問題が深刻ですが、他方、地方の特に人口減少地域では、幼稚園と保育所をそれぞれ維持することができなくなっています。集団で子供同士が交流する健全な生育環境を維持することが困難になっていることも、子供の発達上、大きな問題です。

 子供の健やかな育ちを守り、同時に親が安心して働き続ける上で、こうした現状の改善は一刻の猶予もないと私は考えます。

 今回の新システムは、親の生活スタイルや住んでいる地域にかかわらず、全ての子供たちに良質の学校教育と保育を保障することを目指し、そのための制度改革、財源確保を目指したものです。

 この新システムは、一昨年の一月、民主党政権下で策定されました子ども・子育てビジョンを起点としておりますが、実は、一九九〇年の一・五七ショック以来、歴代の政権が出された数々の提言を土台にしたものにほかなりません。二十年余りの時間をかけて醸成された政策の集大成だと私は考えております。

 わけても、新システムの柱の一つである総合こども園は、自公政権下でつくっていただいた認定こども園制度の発展形です。認定こども園は幼保一体化を目指した先駆的な取り組みでしたが、認可と財政措置を一本化して二重行政を解消することが課題とされていたことは、いわゆる小渕報告でも指摘されていたとおりです。

 既に幼保一体化を目指して苦労を背負って先行的に取り組んでくださった認定こども園協会の方々御自身が、このたびの総合こども園構想を非常に高く評価して実現を望まれていることも御紹介させていただきたいと思います。

 さて、ワーキングチームでの取りまとめを振り返りたいと思います。

 幼保一体化を期した新システムの構想は、就学前の子供の育つ環境が保育所と幼稚園に分かれて六十数年来の悲願でもありました。

 一年半、三十五回にわたって検討いたしました。ワーキングチームの委員はそれぞれ団体を背負っていらっしゃいます。それゆえに、立場もあり、譲り合わなければまとまらない場面も何度もありました。しかし、長い歴史の中で培われた文化の違いを持ちつつ、ここまで議論をまとめることができたのは、この日本に生まれ、暮らす全ての子供に良質な生育環境を保障したいというこの一点で、団体、組織の利害を超えて、委員の皆さんが心を一つにして議論を進めてくださった結果です。

 都市部の待機児問題、地方の定員割れ問題の解決、親が働いているいないにかかわらず、就学前の全ての子に教育と保育の機会をどう保障するのか、いずれも現行制度のままではどうしても解決ができません。幼稚園、保育所、認定こども園、それぞれが積み重ねてきたすばらしい実績を大切にしながら、新しい仕組みをつくることを、その大切さを痛感して、皆で知恵を出し合い、心を一つにしてまとめました。

 その途中、東日本大震災を経験いたしました。再開後のワーキングチームで、被災地の認定こども園の委員の方からこのような発言がありました。もっと早く新システムができていればよかった、被災地ではもはや幼稚園だ保育所だと言っていられないんだ、子供の命を守るために、総合こども園、こども園が連携を組んで乗り切らなくてはならない、この悲痛な発言を私は胸が痛む思いで聞きました。

 最後に、先生方にお願いがございます。

 今、日本の子供たち、そして、その親の生活と子育てを守るために、なすべき喫緊課題は、子育て支援の制度を抜本的に、かつ、オール・ジャパンの視点で再構築しなければならないということです。

 都市部だけ規制緩和したり、今までの制度に一時的に財源投入をしたりすればよいという待機児童対策に矮小化するような次元の話では決してありません。都市部だけでなく、人口減少地域も含め、どこに生まれ、どこで育とうとも、また親の生活スタイルの違いにかかわらず、全ての子供が健やかに育つための新しい制度を築くことを急がなくてはならないと思います。

 どうか与野党での建設的な協議をしていただきまして、共通項を見出していただきたいと思います。医療、年金、介護に加え、このたび、子ども・子育てを社会保障の重要な柱に加えていただきました。必要な恒久財源を子ども・子育て世代にどうか投入していただきたいと思います。

 ぜひこの国会で法案を成立してほしいと切に願っております。

 以上です。ありがとうございました。(拍手)

中野委員長 ありがとうございました。

 次に、森田公述人にお願いいたします。

森田公述人 東洋大学社会学部の教員をしております森田でございます。本日はお招きいただきまして、ありがとうございます。

 私は児童福祉を専門にしております。このたびの震災では、東日本大震災子ども支援ネットワークというNGO、NPOの人たちのネットワークの組織を立ち上げまして、国会議員の皆様方と一緒に被災地の支援というのに取り組んでまいりました。

 本日は、この問題は多少関連いたしますけれども、私の最も専門といたします自治体での子供施策、とりわけ児童福祉課題を抱えている子供たちという視点に立ったときに、今回の新システムというものに何を期待し、そして何が課題なのかということについて私の立場から述べさせていただこうと思っております。

 私は、関東近辺、十三ぐらいの自治体で、ちょうどこの二十年余りですが、さまざまな地域での子育て、あるいは子供たちの育ちにかかわる計画、そして実施、そして評価というものをつくり上げることにかかわってまいりました。また、国連子どもの権利条約の具体化ということでもこの実施に取り組んでまいりました。

 そういった立場から、今回の新システムの議論ですけれども、当初から注目してまいりまして、先ほど大日向先生がおっしゃいましたように、ここ二十年余りの集大成であるというふうなことをおっしゃっていましたけれども、私自身、こういった議会でお話をさせていただくのは、具体的には認定こども園法のときにもお話をさせていただきました。そんなことを思い出しております。

 新システムが目指した社会あるいは新システムで問題にされた重要な論点、私もここに書かせていただいておりますけれども、基本的には、この議論というのは、この二十年来、私たち大人たちが先進諸国の一つの見本として実施しなければならない大きな課題をここで具体化してきたというふうに考えております。

 重要な視点ということで、私は六点挙げさせていただきました。

 一つは、全ての家庭や子供たちに視点を当てた政策というものが実施されなければならないということ。特に、そこでは市民の参加というものが非常に重要であるという視点。

 それから二番目にですが、利用者の負担額というのが非常に格差があります。

 そしてまた、制度がわかりにくい。このわかりにくさというものがやはり子供たちの権利実現というところに非常に大きな影響を与えているというふうに思っております。そういった意味で、わかりやすい制度をつくり上げたいと考えておられた今回の議論、これは非常に重要な視点だというふうに私自身思っております。

 そしてまた、私は児童福祉を専門にしておりますけれども、こういった立場から今回の議論を見ておりますと、非常に重要な点が福祉と保育。ここで私が保育と使うときには、これまでの養護と教育を具体的に一体化したものとして保育という言葉を使わせていただきますが、具体的には、余り福祉の課題、児童福祉課題というのが出てまいりませんでした。特に、福祉という点では、私が児童福祉を課題にしておりますので、さらにここは後で申し上げさせていただきますけれども、保護者支援、こういったものも含めて、非常に重要な課題がこの中には含まれております。

 また、私自身、子育て、そしてまたたくさんの学生たちが、働き続けたいということで、卒業して、また社会で活動してまいりました。そういった若い男女を見ておりますと、何とか子供を育てるということと働くということ、社会の一員として活動していくということを実現できるような社会にしたいということを願ってまいりました。

 また、子供予算ということでは、今回、子供たちや子育て家庭のために、ヨーロッパ諸国からかなり離れてしまったこの日本の社会の中で、子供たちの育ちに対して、子育てに対して、一定の予算をきちんと確保してくださるということに対しては心から感謝を申し上げたいし、こういった営みが社会的な承認を得るということにぜひ御協力いただきたいというふうに考えております。

 きょうは、ここで私がどうしてもお話をしたいと思っております、地域での児童福祉課題というものについてお話をしたいと思います。

 皆さんのお手元に図一というのを示させていただいております。これは、関東近辺、人口六十万人の中核市の実情です。

 この実情を見ていただきますと、私はいつも申し上げるんですけれども、保護が必要な家庭の子供たち、そして自立をしている家庭の子供たち、この間に実は、支援が必要な家庭の子供たち、あるいは子供たち自身が支援が必要だ、その子供たちがたくさんいるということを御理解いただきたいということです。

 具体的には、A市というふうに申し上げますけれども、ここで書かせていただきましたが、下の方に要保護の世帯があります。生活保護の受給世帯、あるいは、今回の計画の中でも、具体的にこういった家庭に指示をし、そして具体的な入所の措置をしていくというふうに書かれておりますが、こういった世帯があります。

 この自治体、実はかなり待機児がいる自治体ですが、見ていただきますと、保育所入所率は五〇%前後という状態です。つまり、全部が入れていないという状態にあるということです。

 そしてまた、要支援の状態ですが、具体的には、できればこういう家族には、あるいはこういう子供たちには、保育園に優先的にでも入って支援をしてやりたいという家庭でございます。外国人登録をなさっていて言葉がまだ不自由である、文化的になかなか地域になじめない、あるいは一人親で子育てが非常に困難である、あるいは障害のある子供である、こういった子供たちもたくさん地域にはおります。

 具体的には、児童扶養手当を受給する世帯に関してはほとんどこの自治体では入所できておりますけれども、見ていただきますように、障害のある子供たちは半分以下ですし、外国人登録の人口では半分強、三分の二ぐらいというふうになっています。

 こういったデータは、実は、この自治体で今後の保育のあり方を検討する会議というのを設けたときにつくり上げていただいたデータです。こういったデータをつくり上げるには大変な努力が自治体の中で必要なわけですけれども、こういった仕組みをそれぞれの自治体の中につくり上げていく。

 そして、ここでは全乳幼児の人口の約五%ぐらいがこういった直接的な支援が必要な世帯であるという数字をはじき出しました。そして、実際のところですが、今保育園に入っているこういった支援が必要な子供たちというのは一七%ぐらいいるということもはっきりしてきたわけです。

 ちょっとこの図を見ていただきたいというふうに思いますが、この図の中で、私が今、保護の世帯、自立世帯、そして要支援世帯という概念を使っておりますが、実はこの世帯がメタボ状態になっている。もうぱんぱんに膨れ上がっている状態で、具体的には、自立の支援だとかあるいは回復のための支援だとかというものが十分になされないと、実は、自治体の中で予防的機能だとかあるいは回復の速度を速めていくだとかということができないということなんですね。

 表一というのをごらんください。

 これは、実は関東近辺の認定こども園、この自治体の中で長時間児、短時間児という、具体的には、長時間児というのはもともと保育園にいた子供たち、そしてまた短時間児というのは幼稚園にいた子供たち、この子供たちが今一緒に暮らしている地域です。この認定こども園で見てみまして、ここはいわゆる自治体立の認定こども園です、そこで見てみますと、具体的には、長時間児の三分の一、そしてまた短時間児でも二割以上の子供たちがこういった支援が必要な状況にあるということがわかります。

 新システムの課題について、三点に絞り込んでお話をしたいと思っております。

 一つは、基礎自治体に対する期待と支援というものをどう国の制度の中にのせてくださるかということです。社会的な子供支援あるいは家庭支援というものは近代国家にとって欠くことができないものだというふうに私自身は考えております。その国の決断と、そして財源を用意していただいて自治体を支援するということはとても重要なことだというふうに思っております。

 そういった意味で、児童福祉法第二十四条の改正によって、保育を必要とする子供たちへの整備と措置の徹底ということ、これを具体化するための法立て、これをぜひ私は実現していただきたいというふうに思っております。

 特に、改革できない自治体、今回、子ども・子育て会議ですけれども、この会議、残念ながら基礎自治体の中で、できる規定になってしまっております。本来ならば、この基礎自治体こそにこういった組織をつくり上げ、そして先ほど申し上げたような、そこの中にあるさまざまな団体がそこでのそれぞれの利害関係を超えて地域の子供たちのために協議していく、そういった会議体をぜひつくっていただきたいし、そのことなくしては地域の再生はあり得ないというふうに私は思っております。

 量と質の確保、そしてまた、先ほども図にお示しさせていただいたように、限定的な数であった児童福祉課題を持っている家庭が、あるいは子供たちが、もう地域の中でかなりのパーセントになってきてしまっている。自治体によってはこの数字はさらにふえているわけです。こういった自治体に対して、自分たちでこの問題を協議していく力、これをぜひ後押しする、そういった仕組みをおつくりいただいて、そして各自治体での総合的支援というものができるようにしていただきたいというふうに思っております。

 二番目に、残念ながら、今回の法案の中でも、厚生労働省、文部科学省、この組織の中での一体化ということはできませんでした。実は日本社会の中で、二十年と申しません、もう三十年、四十年、こういった幼保の一体化というのは、私が学生時代に、学生のときの卒業論文で一元化問題を書きました。もう四十年も前の話です。もちろん、これは大正期からこの日本の中で議論されてきていることですので、先達たちがずっと議論してきた問題です。OECDなんかでは、ゼロ歳児からの教育とケアの一体化ということがもう既にうたわれております。

 ぜひ国が、今の工程表の中にある内閣府を一つの手がかりにして、改めて一元化に臨めるような形での取り組みをお願いしたい。基礎自治体はもうここ十年来、子ども部、子育て支援部といった基礎自治体の中での総合的な部署をつくり上げ、そして、特に認定こども園なんかをつくっているところでは、その調整する課をつくっております。このような煩雑な状態をそのまま放置するということは、責任の放棄につながっていくと思っております。

 最後に一点、私は、子どもの権利条約を、この批准している国の中で具体化する、こういったことに専念している者として最後に申し上げておきたいと思います。

 これだけ多様化している保育の制度ができ上がっていくときに、私は、自治体の中で苦情の受け付けなんかもしてまいりました。オンブズパーソンと言われる役割も果たしてきました。そういった中で、本当に子供たちが声を上げる機会というのは少ないんです。これだけの多様なサービスが展開したときに、権利侵害に対して誰がこの子供たちを守るのか、こういった仕組みというのはどうしても必要ですし、ぜひ次の段階でお考えいただきたいというふうに思っております。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

中野委員長 ありがとうございました。

 これにて公述人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

中野委員長 これより公述人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三村和也君。

三村委員 民主党の三村和也です。

 本日は、四人の公述人の皆さんから大変貴重なお話を伺いました。この委員会での審議ももう百時間に達しようかという段階ですが、これまで、与野党で議論をしていると応酬のようなところもこの子どもシステムについてもたくさんあるんですが、きょうは本当に、四人の先生方から、子供の幸せをいかに実現するかという視点でお話を伺いまして、大変、初心に返るというか、心洗われる思いがいたしました。というのは、多分、ここにいる国会議員の先生方皆さんの思いだというふうに思います。

 林市長からは、まさに現場の改革をされた第一線のお話をいただきましたし、また、松居先生からは、幼児が親を育てる、人間社会にきずなを生むというお話で、私も、息子が六歳になって、娘がことし八歳になりますから、大変身につまされる、非常に感銘を受けたお話でございました。また、大日向先生、森田先生からも、専門的な分析に基づくお話をいただきました。

 まず、林市長にお伺いをしたいと思います。

 実は、私は横浜市民でして、三十六になりますが、この三年間ぐらいずっと横浜市の成人式に出席をさせていただいています。

 横浜市の成人式では、横浜アリーナでやるわけですけれども、林市長がお話をされるんですが、きょうも四十七年前に社会に出られたというお話がありますが、四十七年前、まだ男社会のときに社会に出られて、働く女性の立場でずっと活躍をしてこられた、そういった立場で待機児童の解消といったプロジェクトに取り組まれて、この二年間で八八%の待機児童の数を縮減させたと。

 実は、私の息子も、三歳までは横浜保育室というところでお世話になって、今、年長さんですけれども、幼保一体型の、預かり保育をしてくださる幼稚園でお世話になっております。

 林市長は、就任されてからこの二年間、現行の、保育園があり、幼稚園がありという制度の中で改革をされてきたわけですけれども、その視点から、現行の制度の課題とか問題点、御自身が問題に取り組んだ中で浮き彫りになったところはどこかという点と、また、新システムでは、総合こども園ということで、今まで、例えば、私立の幼稚園は県、横浜でいうと神奈川県ですね、横浜の場合は全て私立ですので、幼稚園は県そして保育園は市と現場でも縦割りになっていたところを、新しいシステムでは市町村に権限と責任を集中するということを考えているわけですけれども、そういったところに対する評価とか、もしくは、もうちょっとこういった課題があるといった点があれば、御所見を承りたいと思います。

    〔委員長退席、武正委員長代理着席〕

林公述人 私は、二年間強これに取り組みまして、やはり、幼稚園と保育園の管轄が県と市と分かれている、これが非常にやりにくい原因になっておりまして、一元化ができないということで、今回の法案でこれが一元化されることによって、基礎自治体の私たちに権限と財源が全て一緒に譲渡されれば非常にスムーズになるというふうには考えています。

 例えば、東日本大震災のときに、何しろああいう状況でございましたので被災地の方を御支援したいということだったんですが、幼稚園の管轄についてはやはり県でございましたから、幼稚園の方でのお引き受けがちょっとできないとか、そんなような問題もございました。

 今各先生からのお話がございましたけれども、国が完全に一元化させて支援することは大変に大切でございまして、私どもとしては、子育て支援策と保育、幼児教育が一元的に基礎自治体におろされれば大変効率がよくなるというふうに思っております。

 あとは、私はどちらかというと、課題というか、この方向に進むことは本当にいいことなんですが、先ほど申し上げましたけれども、導入部分は相当気をつけなくてはいけないということと、あと、やはり保育士さんですね、今先生方のお話にもありましたけれども、保育士さんの確保が相当今難しいことでございますので、保育士さんの研修であったり、育てることを非常に大事にしなくちゃいけないし、今の労働環境を相当改善しなくてはいけないというふうに思っております。

 それから、今回、幼稚園に相当御協力をいただいて一時預かりというのをしていただいたんですが、このやり方というのは国では認めておりませんので、横浜市の独自の政策で着手していったわけでございます。

 基礎自治体の私たちというのは、そこに住んでいる住民の方の生活というものを一番つぶさに見ております。今も、かなり現実的な、例えば生活保護の方の御家庭の、保育園にお預けになる方の状況をちらっと先生からお話ございましたけれども、そういう現場の状況というのは一番基礎自治体がわかっているわけでございますので、ぜひとも一元化して私どもにお任せいただきたい。

 そのかわり、財源が非常に厳しい。毎年毎年ほとんどの基礎自治体は収支不足なんですけれども、大都市というのは、今こういった経済環境の中でございますから、税収が非常に落ちてくる中で、当然ながら経済環境が悪いと雇用確保ができませんので生活保護がふえていくという非常に悪循環の中で、毎年毎年扶助費ばかりがふえていくということでございますので、これはやはり非常に国の支援が必要だと思います。

 私は経済界出身なので、国の今の財源の状況もわかっておりますから、何でもかんでも出してくれという気持ちは全くないんですけれども、ただ、二重行政の廃止によってコスト削減もかなりできると考えております。ということでございます。

 以上です。

三村委員 ありがとうございます。

 国民や親に一番近い基礎自治体がやはり責任を持ってしっかりと対応していくということで、新しいシステムにその点では評価をいただいたというふうに思っております。

 次に、保育の拡充ということについて、大日向先生とまた林市長、お二人にお伺いをしたいんです。

 新しいシステムは、大日向先生から、総合こども園というのは認定こども園の発展形であるというお話をいただきましたが、その総合こども園を、保育の拡充を機動的にやっていくために、客観的な基準を満たしたところをどんどん指定していくといった考え方に立っておるわけですけれども、一方で、今ある認定こども園、これも非常にいい制度であると思うんですが、平成十八年に創設をされて、もちろんふえていっていますが、平成二十四年四月の段階でまだ九百十一である。これは広がりに欠けているというふうに認識せざるを得ないと思うんですね。

 そこで、現状のこの認定こども園がなぜ余り広がっていかないのかというところの、こういうふうに変えればもっと拡充されるんじゃないかという点、現状の認定こども園の課題とか問題点について、大日向先生と林市長から御所見をお願いいたします。

大日向公述人 御質問ありがとうございます。

 先生がおっしゃるように、認定こども園は、幼保一体化を目指した先駆的な実践として非常に高く評価される内容のものを持っていると思います。

 しかし、課題もあります。これは小渕報告でも指摘されていることですが、認定こども園は幼稚園と保育所の制度を前提としております。しかも、四類型ありまして、幼稚園型、保育園型、幼保連携型、地方裁量型とあります。根拠法、あるいは認可権者、設置基準、財政措置、利用者負担が幼稚園部分と保育所部分で別々となっています。ここが非常に運営しづらいということです。同じ認定こども園の中で同一の教育、保育を受けていても、子供が保育認定を受けているか否かによって公費助成、利用者負担の仕組みが異なってしまっている点も大きな問題です。

 新システムでは、総合こども園の創設によりまして、幼稚園、保育所、認定こども園に対する三つの認可、認定を一本化します。そして、一つの行政庁のもとで一つの制度が適用されることになります。こども園給付の創設によって公費助成、利用者負担が一体化されますので、子供が受ける教育、保育の内容に応じた給付が保障されますので、利用者の方にとっても公平な仕組みになると思います。地方裁量型認定こども園、幼稚園、保育所の認定を受けていない認定こども園についても、基準を満たせば総合こども園に移行できるよう支援を行っていくということになっています。

 先ほども申しましたけれども、現状の認定こども園のさまざまな運営のしづらさ、そのあたりを改善して、二重行政の解消、財政措置の公平性を期すこと、これが、認定こども園協会の方々も切に望んでおられるということでございます。

 以上でございます。

林公述人 大日向先生とちょっと重なるところがございますけれども、料金体系でいいますと、保育所の部分というのは横浜市の保育料に準拠しておりますね。それから、幼稚園は園の設定によるということで。補助金も、基本的に幼稚園の補助金と保育所の補助金が分かれているということでございます。そして、幼稚園と保育所の両方の認可、県と政令市から受けなければならないということでございまして、今、横浜市は認定保育園は十一ございますけれども、やはりこれは進んでいないんですね。

 一番の問題は、幼稚園の方たちから見ると、ゼロ歳児の保育というのは非常に難しい。ちょっとこういうふうに申し上げていいでしょうか、リスクが高いというか、厳しいですよ、相当ね。そんなこともちょっと戸惑っていらっしゃる原因にもなっておりますから、これもやはり一元化させて、もっともっと支援と議論もして、やっていかなきゃいけないことだと思います。

 以上です。

三村委員 時間が少ないので最後の質問になると思いますが、株式会社の参入の論点がこの委員会でも議論されております。

 林市長からのプレゼンテーションで、非常に多くの株式会社を保育室に参入させているということでございます。森田先生のお書きになった文章を読ませていただくと、もちろん今でも株式会社の参入は認められているわけですから、それをいかに行政がコントロールして、またモニタリングして、不正をしないようにするかという点が大事だと思うんですが、できれば森田先生と林市長から、総合こども園なりこういった分野への株式会社の参入に関しての御所見を簡潔にお述べいただければと思います。

森田公述人 どうも御質問ありがとうございます。

 私は、常々、利用する子供の側からこの問題を議論しなければいけないということで、具体的には、私は今、世田谷区の中で苦情審査会というのにずっとかかわっておりました。オンブズです。こういったところと、それから、社会福祉サービスの質の向上という委員会も立ち上げました。こういったところにもかかわりまして、具体的にはやはり、どう評価するかということと、その評価に基づいてどういうふうに支援を展開するかということ、そして、最終的には、何かが起きたときには救済するという仕組みをつくる。これだけの三点セットのものがないと、株式会社のみならず、やはり社会福祉法人であっても何でもそうなんですが、残念ながらこういった公的な仕組みの中でも今までも子供に対する権利侵害は起きていますので、こういったものがぜひ必要だというふうに思っております。

 以上です。

林公述人 横浜市の保育所待機児童の解消を図る上でも、株式会社などの幅広い民間の力を活用していくことによって相当解消に寄与していただいたと考えております。本当に、株式会社の力をかりなければこれだけの成果は上がらなかったというふうに思っておりまして、今は民間の方たちも相当質の高い保育ということを考えておりますので、これは必要だと思います。

 ただいま先生がおっしゃったことも非常に私は理解できますが、やはり、何かあったときに支援すること。民間の人に、やってください、やってくださいと言って、後、何かあったら全く支援していない、あなた方の責任でしょうというのは非常によくないというふうに思っております。

 それから、株式会社というのは、これは配当するんじゃないか、株主のために利益を出すんでしょうという御質問がありますけれども、ちょっと御紹介しておきますけれども、今、例えば、配当が行われた場合は運営費補助の一つである民間処遇改善費の対象とならないということがございまして、これまで横浜市では、配当を行ったことで民間処遇改善費を停止した例はないということは、一定の抑制にはなって、健全経営にもつながっているというふうに思っています。

 新システムでは、総合こども園の場合は、一定の制限を設けた上で配当が認められていますね。だから、株式会社は株式を発行することによって資金を集めて企業活動を行うものでございますから、事業を急速に拡大していく上では、もう我々行政だけではできませんので、民間の参入というのは大きく寄与していきますから、その特徴を生かしながらも、今先生がお話しになったようなことを、非常に安全性を担保するとかということを考えていかねばならないと思います。

三村委員 終わります。

武正委員長代理 これにて三村君の質疑は終了いたしました。

 次に、馳浩君。

馳委員 自由民主党の馳浩です。

 早速質問させていただきます。松居公述人、子ども・子育て新システムの会議に参加されましたか。

    〔武正委員長代理退席、委員長着席〕

松居公述人 していないです。

馳委員 子供の育ちをどうするかという議論があって初めて、子供の居場所と幼児教育の充実を考えていくべきであるというふうに私は思っております。親の働き方によって子供をどこに預けるかということの議論をしてはいけないと思っておりますが、私の考えに御感想があれば、松居公述人。

 済みません、もう一度言います。親の働き方によって子供の育ちが、居場所とかシステムが議論されるのは間違っているんじゃないかなと私は思っているんです。いかがでしょうか。

松居公述人 親の働き方と子供の育ちというのは、当然何千年にもわたって関連してくることだと思います。

馳委員 そこで、本音は、子ども・子育て新システムの議論に、松居先生に参加してほしかったなということを言いたかったわけであります。何か違うところから拍手が起きているようですが。

 さて、では、林公述人にまずお伺いします。

 現行制度でも、横浜市のように待機児童の解消策はできています。そんな中で、現行制度はもっとこうあればよいなという御意見をいただきたいと思います。

林公述人 現行制度の中でもここまでできたというんですが、相当厳しくて、財政的には子育て支援にシフトした金額は相当なものでございまして、先ほども御案内しましたけれども、私は、ちょっと限界ではないかと。

 そして、これは、間口を広げて受け入れ体制をつくることは大変いいんですけれども、そうすれば、当然ながら、また保護者の方たちが、就業希望がふえてまいります、今の経済状態でもございますので。実際は、こうやって解消して約十分の一近くになっておりますけれども、毎年毎年、保育所にお入りになりたいという希望の人はどんどんふえているんですね。そこまで枠を考えて、かなりの財源を投入して今やっておりますから、もう基礎自治体だけでは、このままでいったら非常に限界ですね。

 それと、先ほどから申し上げましたけれども、許認可なんかが別々だということによっての二重行政は絶対になくさなくちゃいけないというふうに思います。

 以上です。

馳委員 今おっしゃった議論は、福田内閣のころからの方向性、そして小渕報告にあるそのままの議論を林公述人はおっしゃいました。その方向性が一足飛びに総合こども園になったんじゃないかなというふうな認識を私は持っています。

 その上で、私なりに、現場の保育士さんからいただいた、保育所の園長さんからいただいた疑問をまずぶつけたいと思います。

 保育所における幼児教育の充実。ひとえに人の問題だ、処遇の改善と研修をしっかりやってほしい、このことを言われるんですね。そのためには、やはり財源と人の手当てをぜひお願いしたいと。

 なるほどなと私も実感いたしましたが、この点については、林公述人と松居公述人のお二人に御見解を伺いたいと思います。

林公述人 全く先生がおっしゃるとおりでございます。今、私どもがこの政策をやっている中でも最重要の問題ですね、保育士さんの今の教育システムというのは。

 実際、現場にいる人たちが、人数も足りないです、決して保育士さんにとって潤沢な状況ではございませんので、研修に出すこともちょっとできないという現実にも突き当たっておりますから、そこは私どもも解決していかなきゃいけない大きなテーマです。

松居公述人 二年前にこのシステムの概要が最初に出てきたときに、まず保育士たちがひっかかったのは、五年以内に二十五万人、未満児を預かれというところだったと思います。それは、今の状況の中ではやはり無理だと。

 それと、もう一つは、雇用労働施策に最初から入っていると。確かに保育園は雇用労働施策から始まったものですけれども、現場の保育士は、それ以上に子供たちの幸せというのは考えています。これは、ある意味、親以上に長い時間を過ごしますから。幼保一体化の議論があったときも、やはり、幼稚園も雇用労働施策に入ってくるのではないかということが、保育園の方からも、幼稚園の方からもありました。

 現実に、今、埼玉県で子供を保育園に預ける親というのは二七%です。全国的に言えば、幼稚園が全くない自治体というのをのけて考えれば、七対三の割合で日本の親は子供を幼稚園に行かせているわけですね。そういう中で一気に雇用労働施策に幼稚園の方も入れようというのは、やはりかなり違和感があるなと。これは、幼稚園の方の保育者の方からも、そういうことが聞かれます。

 それと、家庭保育室という名前で百人規模がもう既にあるわけですから、今の状況を見ていて、今までの流れ全体が子供のことを考えていないなということは、現場は実感しています。

 その中で出てきたこれですから、やはり保育士会なんかも公に反対しているわけですし、私立幼稚園連合会も一千万署名運動みたいなものをするんだと思います。

 以上です。

馳委員 こども園給付について、大日向公述人に伺います。

 新システムだと、十年で全部の保育所が総合こども園になる、こういうふうになっていますよね。ところが、幼稚園は手挙げ方式ですよね、手挙げ方式。幼稚園もこども園給付の対象にすべきではないかという議論は、皆さん方の新システムの会議の中でどこまで煮詰まって、そしてどうしてそうなったのか。そこら辺、ちょっと、事の経緯を教えていただけますか。

大日向公述人 御質問ありがとうございます。

 保育所は、おっしゃるとおり、ほとんどがこども園に移行いたします。

 一方、幼稚園の方は、財政的にインセンティブを持たせる、移行のインセンティブを持たせるということになりました。

 そこには、幼稚園側のいろいろな思い、課題があって、幼稚園、保育所、それぞれ、非常に長い文化、歴史の違いがあります。

 幼稚園の方々の中には、どうしても移りたくない、応諾義務あるいはさまざまな幼児教育の歴史、伝統があるとお考えのところがあるかもしれない。その方々を無理に移行するということもなかなか難しいでしょう。しかし、待機児対策あるいは幼稚園の預かり保育も児童福祉法の保育に位置づけるためにも、できるだけ移っていただきたい、できることならこども園給付で一本化したいという思いは私ども非常にありました。

 しかし、どうしても残りたいとおっしゃるところまで無理に移行ということはお願いできないということで、一部残るかもしれない、そういうことを残したということでございます。

馳委員 大日向公述人、もう一度お伺いしますが、今幼稚園の預かり保育は七五%やっているというふうに言われています。新システムで、インセンティブで幼稚園が総合こども園に移行するところもあれば、建学の精神もあるし、宗教的な問題もあるかもしれません、やはり幼稚園のまま残る、幼稚園のまま残るけれども預かり保育を継続してやりたいというときには、こども園給付の対象にこの預かり保育はなっていませんよね。なっていますか。なっていないはずなんですよ。

中野委員長 質問なら質問で、一旦切ってください。

馳委員 はい。

 なっていないんですが、そこは、私はこども園給付の対象にしてもいいんではないかなと思っているんですが、いかがですか。

大日向公述人 建学の精神、宗教上の理由等々でお残りになる幼稚園に関して、私学助成が残るということはそのとおりでございます。しかし、総合こども園あるいはこども園に移っていただくところは、可能な限り、こども園給付を給付するということでございます。

馳委員 預かり保育の財源がどうなるんだろうかという心配は新システムになった後も残るんだろうなというのが私の心配事で、今ちょっと聞いてみたんですね。

 あと、では、森田公述人にお伺いいたしますが、文部、厚労行政の一元化、これは、現場でいえば、要は、地方自治体の総務部で対応すれば、幼稚園にしろ保育園にしろ、あるいは認定こども園という形にしろ、幼保連携型の認定こども園にしろ、申請をする方にとってみれば、総務部に持っていけば全て対応してもらえるということにすればいいのであって、行政的な問題なのではないでしょうか。厚生労働省、文部科学省、連携室がありますが、現在、もう非常に水と油のような関係に私は感じるんですよね。

 この、文部、厚労行政の一元化とおっしゃっている森田公述人の意味は、どういう意味でおっしゃっておられるのか、教えてください。

森田公述人 どうもありがとうございます。

 私が申し上げておりますのは、具体的には、文部、厚生の両省に幼稚園と保育所が分かれております。そして、それによって法律、そして財政の出方、あるいは保育の中身、内容、あるいは職員の具体的な教育の仕方、こういったものが全て分かれてまいります。

 今現在、認定こども園等を実施している自治体の多くは、やはりこれはばらばらではできないということで、例えば、教育委員会の教育のところから一人、人が出て、あるいは保育課の方から一人出て、そしてその人たちが別の、例えば何とか室、調整室みたいなものをつくって一緒に運営するとか、あるいは、そういったものを総合的に、例えば子供部の中に総合のそういった部を設けて実施するとか、そういうふうな、自治体の中での職員の採用とかあるいは具体的な保育の中身については、一生懸命、一体化するような調整をなさっています。

 ただ、それが、具体的には、補助金の関係だとか報告書の関係だとかというところで本当に煩雑な方法。特に、やはり一番大きい問題は、教員あるいは保育士の養成課程等にもそれが関係してきて、なかなかそこが一元化できないというところに、養成課程そのもの、あるいは養成された保育士や幼稚園教諭そのものにもかなり負担が発生してきているということがあるというふうに私は思っております。

馳委員 私は、現行の認定こども園制度、手続の一元化、簡素化というものを求め、小渕報告にあったとおり、また、福田総理がその方向でやるべきだよと言ったことを十分に行政の方で踏まえて対応してくださっていれば、それでよかったのではないかな。プラス、自治体によっては、保育所が多いところ、幼稚園が多いところ、まちまちでありますので、一気に新システムというのはちょっと一足飛び過ぎるのではないかな、そういうふうに思って、いろいろとお聞きをしてまいりました。

 最後に、発達心理学の専門家である大日向先生にお伺いいたしたいと思います。

 少子化ではありますが、発達障害児、ふえてきております。最近では、一歳半ぐらいで大体何となく、現場の保育士さんは、この子はちょっと大変だなということにお気づきのようであります。

 新システムにおいて、こういった発達障害児への対応、配置基準の加算になるのかもしれませんが、こういったことに対する配慮はなされているのでしょうか。教えていただきたいと思います。

大日向公述人 大変重要な点を御指摘いただきまして、ありがとうございます。

 新システムの議論では、全ての子供の幸せを念頭に考えました。その中には、発達障害を持っているお子さん、あるいは社会的養護のお子さん、一%の子供であっても犠牲にしてはならない、その子供たちの幸せを最優先に考えるということを議論の前提としたことをお答えいたします。

 ありがとうございます。

馳委員 最後になりますが、けさの朝刊を各紙拝見して、小宮山大臣は、もうおりたみたいですね。総合こども園撤回。「民主、総合こども園撤回」「民主「こども園」譲歩も 公明案軸に駆け引き」、こういうふうになっておりまして、政治の現場と、皆さん方が積み上げた議論の成果とは、ちょっと方向性が違うのかな。いや、逆に、結論が一緒であるならば段階的にやるべきだというふうに大臣が判断されているのか。

 非常に私も、ここ数日、最終的に修正協議がどうまとまるかということを見守っておりますが、私、またあさって、大臣と議論を国会でさせていただきますので、きょうの御意見を参考にさせていただきます。

 ありがとうございました。

中野委員長 これにて馳君の質疑は終了いたしました。

 次に、池坊保子さん。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 私は今、党の中にあって、子どもの育成支援委員会の委員長をしております。

 私が文部科学大臣政務官でございましたときに、今後の家庭教育支援の充実をテーマに勉強会を開きました。そのとき、大日向委員には座長をしていただきまして、大変さまざまな提言をいたしました。

 その中でまとめました報告書としては、「「社会の宝」として子どもを育てよう!」その投げかけとして、「子育ては、親だけが担うことだと思っていませんか?そうではありません。子どもを育てることは未来の日本を支える人材を育てることです。社会の一人一人、みんなが主役なのです。子どもの成長を社会全体で支え喜び合いましょう。」これは、私の、子供に対するいつも変わらない姿勢です。

 何よりも大切なことは、子供の真の意味での最善の利益を求めていくこと、それとともに、子供を育てている親が孤立することなく、みんなが手をかしていく、そうした環境整備をしていくことだと思います。

 きょうは、四人の委員の方には大変参考になる御意見を伺いました。

 林委員は、子育てをしながら苦労してきっと働いていらした。その体験の中から、私は、待機児童解消に向けた本当に実効性のある取り組みをなさったというふうに思っております。私ども公明党の、子どもの育成支援委員会がまとめました、今後の幼児教育、保育制度のあり方についての基本的な考え方も、今横浜市が取り組んでいらっしゃることと大して違わない、それを実行してくださったと思うところが多々ございます。

 認定こども園、私が文部科学副大臣のときに発足いたしました、成立させました。幼保一元化、森田委員おっしゃいました。もう四十六年前から私は卒論で書いてきた。私も、子供を持ちましたときに、子供を幼稚園に預け、そして保育園に預ける、本当に大変です。子供にとっても環境が違いますでしょう。親にとっても大変だ。だけれども、これには、文化も違います、歴史があります。先ほど林委員がおっしゃったように、幼稚園の協力、理解が必要だった、そして、それには段階的に環境整備も必要だったという意味のこともおっしゃいました。私は、やはり年月が必要だったのではないかと思います。

 認定こども園が九百十一なのは少ない、何で拡大しなかったか。二つ理由がございます。一つは財源がないからです。財源の担保がありません。それからもう一つは二元化だったからです。

 大日向委員にお伺いしたいと思います。

 皆さんは一元化になってうれしいよとおっしゃいますが、この新システムにおいては、二元化プラス内閣府が入ります。三元化になってしまいます。

 私は、二年をめどに、省庁が再編されて、子供だけ、あるいは子ども家庭省とかそういうものが、省なのか庁なのかそれは何かわかりませんけれども、一元化されるべきだと思います。三元化でなおわかりづらいんじゃないか、困るんじゃないかというのが一点です。

 もう一点は、大日向委員に伺いたいのは、総合こども園が使いやすくなるとおっしゃいましたが、確かに認定こども園は四類型がございました。わかりづらいとお思いかもしれません。今度の総合こども園は五類型です。保護者にしたら、とてもわかりづらいと思います。

 私は、一般の国民から見れば、仕組み、システムはシンプルな方がいいと思いますが、どのようにお考えか、ちょっと伺いたいと思います。

大日向公述人 御指摘ありがとうございます。

 まず、三元化ではないかという御指摘でございます。

 現行は、権限、財源が、幼稚園は都道府県、保育所は市町村、認定こども園は四類型によってそれぞれ違っております。

 新システムは、権限と財源を市町村に集約いたします。また、内閣府に子ども・子育て本部を設置いたしまして、関係省庁の連携確保で運営をしていきます。したがいまして、現行システムの問題を限りなく解決の方向に向けた議論をしているのではないかと私は考えます。

 また、新システムは複雑でわかりにくい、そういうお声は確かにいただきます。ただ、現行どうなのかということを考えますと、まず、現行の施設類型は、幼稚園、保育所、認定こども園など、そして認可外施設、事業所保育所があります。それぞれ、所管が文科省、厚労省あるいは自治体等々です。

 公的給付を見ますと、基本的に、幼稚園、保育所、認定こども園には給付が保障されておりますが、その他の施設と子供たちには、制度として基本的に給付はありません。在宅の子供には現金給付の児童手当のみです。

 こうした現行制度に比べて、新システムは総合こども園に一本化し、所管、そして総合こども園に関しましては根拠法も一本化いたします。

 一方、こども園、乳児だけの保育所、あるいは指定を受けるけれども総合施設に移行しない、あるいはできないという施設、こちらも、客観的基準を満たせばこども園給付を給付いたします。そして、小規模型の保育、家庭的保育は地域型保育給付として、地域型保育事業として展開いたします。

 そういう点では、わかりにくいということは、今までの私どもの御説明が足りなかったのかなと反省はいたしますが、改善はされていると思います。

池坊委員 ありがとうございます、大変御丁寧な御説明をいただきまして。

 私は十分に勉強いたしておりますので、大日向委員、わかっておりますが、やはり所管が三つになるということはわかりづらいんですよ。これから、先ほども議論に向かってとおっしゃいましたが、議論に向かってだけじゃ決してだめなんじゃないか。一元化されるよということが、皆さん何となく、される何か妄想というか、そういうことにどっぷりつかっていらっしゃるんじゃないかなと思うことが私の懸念材料なんですね。

 私は、子供のためにやはりいいシステムをつくりたいと思っておりますから、今のままでいいなんて思っておりません。もちろん、すごくいいものを、みんなが知恵を出し合っていきたい。その中にはやはりシンプルなものがいいんじゃないか、三元化はやはりだめだよということを申し上げたいなと思うんです。

 林委員に伺いたいんですけれども、財源が市町村にあったら、あとは市町村の権限でなさった方が。やりづらいのではないかと思うんですね。今まででも児童福祉法二十四条で、これは市町村が保育の義務を負っていますね。これはやはり負った方が保護者にとってはいいのではないかと私は思いますけれども、それをどうお考えか。

 それから、幼稚園がこれからも協力を得て子育てをしてほしいというふうに思いますので、延長保育ということもしてほしいと思いますけれども、こういうときは市町村の裁量というか、そういうのが認められた方がいいのではないかと思いますが、その辺はいかがでしょうか。

林公述人 先生、御質問ありがとうございます。

 私はもう、基礎自治体に全ての権限をお任せいただきたいというふうに申し上げておりますので、権限と財源を一緒にいただくということでございます。一番、基礎自治体が状況がわかっているという一点で、幼稚園に関してもそうでございます。おっしゃるとおりで、全てお任せいただきたいというふうに考えています。

池坊委員 先ほども、株式会社の新規参入が問題になっておりました。これは、今のところですと、撤退するときには三カ月前に通告しろとかいろいろございますけれども、横浜市では、配当があった場合には運営費を多分減らすんでしょうか、いろいろな市町村での取り組みというのがあると思いますけれども、これからどういう方向に行くのがいいというふうにお考えでしょうか。

林公述人 私は、これからますます女性が経済進出をしていくということで、この保育所待機児童問題はもっともっと厳しい局面が来る。横浜市はおかげさまで解決方向に向かっているようですが、実はここから先のハードルが高いんですね。それは、やはり何といっても財源の問題に尽きているわけでございます。

 先生、ちょっと済みません。私、先生の御質問の趣旨をたがえていますか。もう一度ちょっとお願いします。

池坊委員 株式会社の問題について、横浜市が今後どのような方向に持っていこう、林市長は経営者でもいらっしゃいますから、その辺も踏まえてお話を伺えればと思っております。

林公述人 ですから、全く行政だけでやれるのはもう限界ですし、国のこういった状況の中でも、全ておんぶにだっこというわけにはいきません。

 それで、今、時代が、さまざまな民間の活力を使っていくという時代に来ておりますから、ただ、こういう福祉の世界になるとちょっと難しくなってくるという、皆さん御心配がふえますけれども、きちっとしたいろいろな制度の決まり事をやっていけば、民間の活力をどんどん使っていかねばならないと思っております。

 ですから、これは、私は決して妨げるものじゃなくて推進していくべきものだというふうに、ただし、きちっとしたリスクの担保はとりたいというふうに思います。

池坊委員 やはり国がしっかりと、子供の命を預かるわけですから、それは基準を設けてするべきというふうに、たとえ参入を認めるとしても、私はそのことは担保すべきというふうに考えております。

 横浜市がやっていらっしゃる小規模保育あるいは家庭内保育、そういうことは私たちの党も大変推進をいたしておりまして、待機児童の解消のためには、大型の保育所だけではやはり限界があるのではないかと思います。きめ細やかなそうした設備が必要ですし、そういう施設に対するお金というのも、財源がなければならないというふうに思っております。

 森田委員にお伺いしたいんですけれども、私は、児童虐待防止法成立のときからかかわっておりまして、養護施設などにも行って、いろいろなところへ行っておりますけれども、やはり保護が必要な家庭、児童というのが多いと思います。そういうきめ細やかな手助けのためには、財源がもちろんなくちゃならないんですけれども、何が今後必要だとお考えでしょうか。

 私は、子育て支援会議というのを、これは国がつくりまして、今度は市町村にもやはり義務づけて、市町村が地域の人を巻き込んだこうしたものをつくるべきというふうに考えておりますけれども、それもあわせてお答えいただけたらと思います。

森田公述人 大切な御質問、どうもありがとうございます。

 私は、地域の中で子供たちのためにシステムをつくる、これは、地域の政治家の方々に市民の人たちは負託するわけですけれども、それだけではなく、やはり市民たちが力を合わせて子供たちのために協議をしていくということは大事で、そういった意味で、自治体の中での子ども・子育て会議をつくる、そしてそれを応援してくださるということはとても大事なことだというふうに思っております。そこから始まるし、そこからしか展開していかないだろうというふうに思っているわけです。

 その中で、調整力というものは、私、実は東日本大震災のときに危機的状況にあったときに、ちょうど岩手県の大槌町というところで、震災が起きて三カ月ほどたったときに、町長もいらっしゃらないという中で市民の方たちがお集まりになったときに、子供たちのための復興会議というのを開いた経験がございます。そのときに、本当に幼稚園も保育所もない、何もかも失われたところで、子供たちのためだったらということで、皆さんの利害関係を超えて一緒に子供たちの支援をしよう、そういった意見が集まりました。

 そういう意味で、私は、やはり市民の、あるいは市民社会がもっと子供たちのためにお金も、そして知恵も力も全部集めていこうということがとても大切で、そういった意味で、こういう会議を絶対に設けなければならないということと、そしてまた、大事なことは、家族を丸ごと支援していくための地域支援をもし仮に保育所あるいは子育て支援センターがやるとすれば、そういった力を持てるような人的な配置あるいは専門性の付与、こういったものがどうしても必要になってくるし、やはり、今のような大規模化していく保育所のような形では、なかなかそれは難しいだろうということも感じております。

 そういった意味で、家庭的保育あるいは小規模型の保育の中で、具体的には、子供たちあるいは親たちを丁寧に支えていくような地域支援の仕組みというものができたらいいなというふうに思っております。

池坊委員 松居委員にも伺いたいと思いましたが、残念ながら時間が来てしまいました。私たちは、超党派で今、親学についての議員連盟を発足させまして、親をみんなが支え合っていこうということで勉強会を開いております。松居委員の御本もたくさん読みまして、同意する部分もございますけれども反論したいこともたくさんございますけれども、またそれは機会を改めてということで、きょうは参考人の委員の方々に深く感謝いたします。

 ありがとうございました。

中野委員長 これにて池坊さんの質疑は終了いたしました。

 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、四人の公述人の皆さん、お忙しい中御出席をいただき、貴重な御意見をありがとうございました。

 時間が限られておりますので、早速質問に入らせていただきます。

 まず、大日向公述人に伺います。

 先生には、〇八年の五月に、次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に向けた基本的考え方、いわゆる社保審の少子化特別部会、部会長であられたと思いますが、その報告を受けて、厚労委員会で質問させていただいたことがございます。やはり参考人として出席をいただきました。

 私はやはり、先生の先ほどのお話にもあったと思うんですが、自公政権下の議論が今回の新システムの土台になっていると考えておりますし、また、本会議の質問などからずっと見ていても、与党の議員からもそれが土台であるという説明があったのかなと思います。

 そこで、特別部会は、〇九年の八月の政権交代を挟んで、切れ目なく継続をされて議論されておりますよね。そして、〇九年十二月に論点整理が出されています。我々は、その間、何か粛々と特別部会は進んでいるよねと、意見をなかなか言うところではなかった、選挙があったわけですから。

 ですから、そういうことを踏まえますと、先生にぜひ伺いたいのは、自公政権時代に検討されていた保育制度改革と、民主党政権下での今の新システムの違いはどのような点なのでしょうか。

大日向公述人 御質問ありがとうございます。

 先生のおっしゃるとおりでございます。

 先ほども私申しましたように、今回の新システムは、九〇年の一・五七ショック以来、二十余年かけて、超党派でいろいろ先生方が御検討くださったものの成果だというふうに考えております。特に私が大きな思いを持っておりますのは、二〇〇七年の、子どもと家族を応援する日本重点戦略です。重点戦略、これは、二〇〇四年の子ども・子育て応援プランのときに、これからは日本社会の来るべきグランドデザインを描いて、果敢に重点戦略を策定して打ち込むべきだ、そういう御提言をいただきました。その御提言を受けて、重点戦略は二つの課題を打ち出しております。

 一つは、働き方の見直しです。そしてもう一つは、地域の子育て支援、保育の充実です。この重点戦略の課題を受けて、即、少子化対策特別部会が設けられ、これまでの保育制度のいろいろな問題点を改善すべく検討を行いました。それを今回の新システムではかなり受け継いでおります。

 ただし、少子化対策特別部会は、保育制度の改革に限られておりました。しかし、今回の新システムでは、保育制度改革だけでなく、幼稚園も含め、そして地域の子育て支援拠点も含め、全ての地域、全ての子供たちの幸せ、そして、その親の生活を保障しようという観点で議論をさせていただきました。

 先生方の超党派の御議論の土台があっての一つの結実だと思っております。本当に感謝しております。ありがとうございます。

高橋(千)委員 先生の思いがたくさんあるんだと思いますけれども、結局切れ目はないのだというお話だったかと思うんですね。ただ、全ての子供たちということで若干違うのだというので、基本は同じだという趣旨であったのかなと思うんですが、さまざまな施策が出されました。そして二十余年の成果である。そして、一年半、三十五回の審議を経て今回の新システムの法案を出された。それが数日の三党修正協議で振り出しに戻ろうとしておりますけれども、先生はどのようにお考えでしょうか。

大日向公述人 三十五回検討会を持ちまして、これは、私だけではなく、全てのかかわった委員たちがひとしくこういう思いを持っております。ここまで子供たちのために議論をさせていただいたことは非常にありがたい、この議論を、どうか一刻の猶予もない今の子供たち、そして親たちのために実りあるものにしていただきたいと思います。成案として法律が通ることを心から願っております。

 どうか、最後申しましたけれども、子供たちのために、そして全ての地域の親たちのために、この新システムを通していただきたいと思います。

 もしこれが崩れることになったら。子供たちは数年ですぐ大人になってしまうんです。この数年間を無駄にしてはならないと私は考えております。

 以上です。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 私は、逆の意味で、子供たちには時間がないので無駄にしてはいけないなと思っております。先生方が一年半かけて議論したことを国会でももっと議論するべきではないか、そう思うんですね。

 別にこれは論戦の場ではないですので、あくまでも私の意見ですけれども、例えば、先ほど認定こども園をつくりましたと池坊先生はおっしゃいました。ただ、残念ながら、認定こども園の議論のときは、半分の所管である厚生労働委員会では、共管であるにもかかわらず連合審査さえもできませんでした。法案をたくさん抱えていましたので。私は厚生労働委員として発言をしたかったのに、そういう機会さえもなかったわけです。

 本日も、残念ながら新システムに対して反対の立場の明確な御意見の方がいらっしゃらないな、そういう中で議論が煮詰まったということはないことを祈りたい、もっと審議をしたいなと思っているということを紹介したいと思います。

 そこで、続けて質問いたしますが、児童福祉法二十四条、市町村の保育実施義務が削除されたことについて、林公述人、森田公述人に伺いたいと思います。

 私たちは、保育実施義務が削除されたということは、待機児童という概念そのものがなくなってしまうのではないか、待機の実態が隠れてしまうのではないかと思いますが、この点について御意見を伺います。

林公述人 御質問ありがとうございます。

 現行の児童福祉法では、保育に欠ける場合、市町村は保育所において保育しなければならないとされているわけでございますが、横浜市は横浜市の責任として、待機児童の解消を目指し、ハード、ソフトの両面で現在精力的に取り組んでいます。

 一方、新システムになりますと、児童福祉法が改正されて、さらに、子ども・子育て支援、新法が新しくできて、この法律に基づいて保育行政を行っていくことになります。

 改正後の児童福祉法では、市町村は、保育を必要とする全ての子供に対して必要な保育を確保する措置を講じなければならないというふうになっているわけですけれども、この新法では、市町村が地域の需要を踏まえた計画的な保育の基盤整備を行うことになっています。これらの法律によって、市町村が子供の健やかな育ちを重層的に支える仕組みとなることから、新システム稼働後も市町村の責任が後退するものではないというふうに考えています。横浜市としても、これまでと同様に横浜市の責任としてしっかりと保育行政を行ってまいります。

 以上です。

森田公述人 これまでも、実は、待機児の概念等を含めて、基礎自治体と国の中ではかなり違いがあったりしました。地域の中で子供たちを育てる親たちの状況というのは、実は、しっかり意見反映、あるいは制度設計や、あるいは具体的な量の整備、あるいは実施の方法、評価のあり方、こういったところにきちんと意見反映ができる状況にはないのが現状の状態です。

 そういった状況の中では、どうしても行政の意図によって実施されるというふうなことになってしまいますけれども、その前提として、私が先ほど来申し上げているように、会議体をきちんとつくり、そして市町村の役割というものを、保護が必要な、あるいはさまざまな支援が必要な子供たちに対して、基本的には保育を必要とする子供たち全てに提供できるような形に実施できるかどうか、そこが問われているんだというふうに思っております。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 先ほど森田公述人がお示しいただいた表といいますか、いろいろな支援の必要な子供がいるということを目に見えるようにすることはとても大事なことだと思うんです。

 だけれども、待機に我々がやはりこだわるのは、そのことによって、それこそ最初に林公述人がお話しされましたように、仕事を諦めたり、二人目の子供を諦めたりするようなことがずっと叫ばれていながら、そこに本当に向き合ってこなかったのではないかということが指摘をされて、公的保育の拡充ということを我々は求めているんですけれども、全ての子供ということで包含されてはいけない、こだわらなければならない部分なんだというのが言いたかったわけであります。

 そこで、林公述人に伺いますが、市町村の役割は後退するものではないというお話をされました。これはやはり、この間の論戦ですとか、それから諸団体の要望などが非常にありまして、政府の答弁も、かなり、逆に強く市町村に責任を持たせるのだ、あるいは、撤退への規制ですとかそういうことをきちっと書いていくんだということを答えてきたんです。逆にそれは非常に矛盾が起きないか。つまり、何か事が起こったら、それはみんな市町村がちゃんと見なかったからよということになりかねないのではないか。保育の実施義務というのは行政と国が両方持っているものだ、私はこのように思っています。

 林公述人は、全ての権限を持たせてほしいとおっしゃいました。そのことの意味ですけれども、例えばナショナルミニマム、人員配置や面積基準なども含めて、やはりこれは自治体に委ねるべきだというふうにお考えでしょうか。

林公述人 本当に、何度か申し上げておりましたけれども、基礎自治体の私どもの現場の中でこういった政策が進められていて、それを私自身も三年近く見詰めてまいりまして、先ほどの保育の会議なんかも、現場の方というか地域でやるべきだという、この法案の中にも入っているんですが、そういうこともあって、私としては、やはり市町村にお任せをいただきたい。横浜市は大都市制度ということをちょっと主張しているんですが、自助自立という形で、財源とともにお任せいただければやれるというふうに考えております。(高橋(千)委員「基準も」と呼ぶ)はい。

高橋(千)委員 基準もという意味であったと思います。なかなかそれは、ちょっと賛成しかねる意見であります。

 それで、最後に直接契約の点で、大日向公述人と、時間があれば森田公述人にも伺いたいと思います。

 これは介護保険の保育版にならないのだろうかという強い懸念を持っております。保護者は、市町村によって保育のニーズを認定されて、直接契約を結ぶことになるわけですけれども、下手をすると、保護者の方が選ばれる可能性があるのではないか。つまり、キャパが足りない場合ですとか、要するに所得の格差で、保育料は応能負担だと言いつつも上乗せ徴収を認めているとか、さまざまな問題があります。

 一番問題なのは、そういうことがまだ見えていないんですよね。例えば、長時間と短時間の境目はどうなるのだろうかとか、保育料の決め方はどうなるんだろうか。そういうことがわからないままに、法制定後の政省令に委ねられる。本当にこれで子供のためだということが言い切れるかという不安を持っています。その点で御意見を伺いたいのと、森田公述人は児童福祉ということでずっとかかわってきましたので、直接契約が格差につながらないかという懸念を持っていますが、一言伺いたいと思います。

中野委員長 大日向公述人、高橋さんの持ち時間が過ぎてしまいました。簡単にお願いいたします。

大日向公述人 直接契約、私どもは公的契約と呼んでおりますが、いろいろ御不安があることは承知しております。

 しかし、新システムは、全ての子供を対象として市町村が事業計画を策定します。そのために地域住民のニーズ調査を行います。地域の実情に応じて、必要な施設を計画的に整備することを求めます。市町村の権限と同時に責務をふやします。従来のように、財政上の理由で、必要な施設の開設を抑えることはできなくします。

 保育の必要性については市町村が客観的基準に基づいて認定して、それを受けて保護者は施設を選択するということです。しかし、需要と供給がアンバランスなとき、待機児が今なお解消しない地域では、しばらくは従来どおりの方法が踏襲されると思います。

 また、幼稚園は、今親たちが直接契約をしているのになぜ余り不満が出ないか。需要と供給のバランスがとれているから。保育量をふやすことによって親たちが路頭に迷わないようなことを基礎自治体に求めます。そこのところはぜひ御理解いただきたいと思います。

 ただし、先生が御不安のような、障害を持っているお子さん、あるいは経済的にいろいろな不安、厳しさを持っているお子さんたちに対しては、従来以上に市町村が責任を持ってこども園をあっせんするということも非常に強く義務づけております。子供たち、親たちが路頭に迷うことのないような制度を私たちはつくりたいと思っております。

中野委員長 森田公述人、恐縮ですが、簡単にお願いします。

森田公述人 どうもありがとうございます。

 私は、ちょうどこの五年間ぐらい、十代で出産した親の妊娠、出産、子育てというものの調査研究もしてまいりました。その中で非常に感じているのは、やはり、非常に難しい行政手続とかなんかはできない人たちが多いんですね。どんなに手続を簡単にしても、やはりその人たちを直接的にサポートするような、先ほど横浜市がコンシェルジュをつくったというお話がありましたけれども、私も、ちょうど今、五年間、埼玉県で子育てマネジャーというのを養成してまいりました。五百人ほど養成したんですけれども、そういう、なかなか自分の力で自分の状況を判断して、そして行政施策あるいは具体的な地域施策につながらないような人たちの場合には、そういった新しいシステムが地域に必要だろうということは思っております。

 そういった意味で、さまざまな形での権利侵害が起きないように、あるいは、利益を自分のところにきちんと持ってこられない人たちに対しては、そういったシステムが必要だというふうに思っております。

 以上でございます。

中野委員長 これにて高橋さんの質疑は終了いたしました。

 次に、石田三示君。

石田(三)委員 新党きづなの石田三示でございます。

 本日は、四人の公述人の先生方、大変示唆に富んだ御教示をいただきまして、ありがとうございました。

 それでは、質問時間も短いので、これから早速質問に入らせていただきたいと思います。

 横浜市長、林公述人にお伺いしたいと思いますが、先ほど来、株式会社が参入してということがいっぱい出ているわけでございますけれども、先駆的な例で、四十九の新規のうち、三十三カ所が株式会社だということだそうでございます。

 その中で一番課題となっているのは、やはり質の低下が問題になるんだろうというふうに私は思っているところなんですが、それに対する横浜市としての対策、あるいは監視の状況とか、そういったことをどうされているか、お伺いをしたいと思います。

林公述人 まず、指導を、本当に社福と同じ基準で指導させていただいている、それから、監査の基準も全てそうです。ですから、今、株式会社というのがこれから参入を、今も横浜市は積極的なんですが、こういった審査と監査の基準をきっちりやっていくということでございます。

石田(三)委員 私は、株式会社が入るのは全く問題ないですし、冒頭から、子供の権利、子供が一番幸せにということが大前提でございますので、そこがやはり一番原点になければならないなということでございます。そういったことがしっかり行われるのであれば、私はどこが参加してもいいんだろうというふうに思っております。

 それから、林市長、施行までの十分な準備期間を置くべきだとおっしゃられておりますけれども、その辺の期間の長さ、何をどうやっていくからどれくらいの長さが必要なんだ、具体的に何か御提示できますか。

林公述人 介護保険の導入のときに少し混乱したという事実がございましたね。やはり二、三年の期間は置いていただきたいというふうに思っています。

石田(三)委員 林市長、申しわけありません、もう一つお伺いしたいんですが、今回、市町村に義務がなくなるということで、保育コンシェルジュ、これを置かれたことは、私は非常に大きいなというふうに思うんですね。保護者が忙しい中に、今回、これから直接契約になるわけですから、そういった施設を自分で探して契約をするということがなかなか難しくなるだろう、大変になるだろうというふうに思っているんですが、その中で、この保育コンシェルジュを置かれたというのは私はすばらしいなというふうに思っているんですが、これはどういった経過で、また予算的な部分とかそういったところを、横浜市の状況をちょっと教えていただけたらと思います。

林公述人 嘱託職員として採用させていただいておりますけれども、保育の仕事に従事して、御自身がお子さんができて、そのまま御家庭に入っている経験者とか、それからまたは、保育士さんとしての経験はないんですが、子育てをして御自身が大変問題意識を抱えたような方、そういう方に今やっていただいて、結局、そういう御自身も子育てしたことによって、現実に問題を抱えている方に非常に寄り添うことができるということが成功の事例ではなかったかと思います。

石田(三)委員 松居公述人にお伺いをしたいと思うんですが、先ほどお話を伺って、また違った切り口から、子供によって大人は育てられるんだというようなことだと私は思いまして、大変すばらしいお話だなというふうに思いました。

 その中で、一日保育士体験、これについてちょっとお話を伺いたいと思うんですが、簡単にお話しいただけますか。

松居公述人 一日保育士体験というのは、保育園の園長先生たちから、とにかく子供の幸せを願ったら、やはり親に親らしくなってほしい。この親らしいというのはいろいろ定義はあると思いますけれども、子供を親が迎えに来ても飛びついていかないとか、いろいろな現実をやはり園長先生たちは見ているわけですね。

 そのときに、年に一日八時間、一人ずつ親に保育園に来てもらって、眺めているだけでもいいという先生もいるし、保育士がいろいろやっているところをまねしてやってほしい。これを今、埼玉県は、三年以内に全ての幼稚園、保育園でやるというのでやっています。高知県も、教育委員会が主体になって全県で始めています。品川区は、おととしから全ての公立幼稚園、保育園で始めています。

 これをやると、七割、八割の親たちが保育園に対する感謝の気持ちを感想文に書いてくれる。財政的に保育士をバックアップできないんだったら、感謝の気持ちでバックアップするしかないなと私は思っています。その感謝の気持ちを親たちが書いてくれることによって、保育士たちはもう少し頑張ってみようという気になります。そして、この感謝の気持ちが学校教育を支えるのではないかな、そういう気がしています。それを少しずつ少しずつ、この前も、長野の茅野市の市長が一日保育士体験をマニフェストに入れて当選してくれたので、一気に進めています。

 これをやると、親たちも保育士も信頼関係というものができてきますから、そこで随分元気になってくると思います。この信頼関係というところから立て直していかないと、子供を育てるということは育てる側の信頼関係が育つということですから、保育士は、子育て支援をやっているというより、子育て代行をやっているわけですよね。代行する人間とやはり親たちが、特に一日平均十時間十五分預かっているわけですね。何とかそこで信頼関係を生んでいくために、年に一日でいいから、一生に四日と私は言うんですけれども、年に一日でいいから保育士たちと一緒に過ごしてほしいというのを進めています。

石田(三)委員 先生が書かれた中で、「日本の保育を囲む仕組みがこのまま進み保育がただの労働になってしまったら、そんな園が増えそうです。」という記述があるんですが、今回、新システム導入の中で、そういったことを解決する課題というか、ここをこうすべきだというものがございましたら教えていただきたいと思います。

松居公述人 保育は労働なんですけれども、それでもやはり日本の保育士たちを見ていますと、ほとんどの保育士たちが本気で子供の幸せを願っているというふうに僕は思っています。

 ただ、そこに株式会社とかいろいろ、既にもう認可外で相当入ってきているわけですね。そういうところに行きますと、やはり土曜日なんかは、私たちが預かっているから夫婦で遊んでいらっしゃいみたいな発言が出るんですね。これは、株式会社が本当に子供たちの幸せを願って親たちに何か苦言を呈さなきゃいけないとき、苦言を呈せるかというと、甚だ疑問だと思います。

 そういった意味でも、株式会社で本当にいいところもあるかもしれないけれども、かなり多くの場合に、やはり親の利便性で動いている。親に対するサービスであって、子供に対するサービスになっていない。つまり、チルドレンファーストになっていないというところが非常に危惧しているところです。

石田(三)委員 多分、私は、その辺では先生と同じような気持ちを持っています。確かに、今回のこの新システムは子供の幸せをまず第一にということをうたっているわけでございますので、それをしっかり踏まえて進めなきゃいけないなというふうに思っています。

 森田公述人にお伺いをしたいと思うんですが、新システムの課題の中で、各地方自治体の中に議論する場をつくってもいいですよという、つくらなきゃならないという義務規定ではありませんので、そういった中で、多分、横浜市長さん、こういったしっかりした方がいらっしゃるところはすばらしい計画を立てて進められると思うんですが、そうでないところに関しては、やはり格差ができたり、先ほどから申し上げているように、どんな子供でも同じようにそういったサービスが受けられるということの中では差ができてくるんだろうというふうに思うんです。

 それで、改革できない自治体についての支える仕組みの構築ということをおっしゃられているんですが、具体的にどんなことが考えられるか、お伺いをしたいと思います。

森田公述人 どうもありがとうございます。

 私は、基礎自治体の中で、実はかなり大きな自治体でも、今まで保育のあり方の検討会みたいなものをやってまいりました。その中で、実は、幼稚園や保育所、あるいは認可外の保育施設、そしてまた、さまざまな地域でボランティア活動なんかをなさっている方たちにもお入りいただき、そういった議論をしたことがございます。

 そのときにも、非常に重要なのは、やはり自分たちのいわゆる権益というんでしょうか、そういったものを外して議論するということ、子供たちのために今何がその自治体に必要なのかということを議論することがとても重要だというふうに思って議論してまいりました。

 ただ、常に私が思いますのは、地域の中で困難な状況にある児童福祉課題を抱えている子供たちの立場に立つということは、想像力あるいはさまざまな自分たちの抱えている問題なんかを含めても、なかなかそういったところに一般市民たちが立つことは難しいということも感じております。

 そういった意味で、やはり、専門家あるいは行政の中での専門の立場にある人たちが、どれだけリーダーシップをとれるかということが重要だというふうに思っております。そういった意味では、本当に私も、横浜市長の今回の御発言については感服をいたした次第でございます。

 そういったことを考えますと、今後、こういったことが必要になったときに、都道府県がどれだけこういったものに対する支援、指導というものができるかということと、それから、私も含めまして、児童福祉専門家あるいは教育等の専門家や、あるいは医療関係、心理学関係、こういった研究職にいる者たちが、もう一段、やはり行政や地域の子供たちのために力を合わせなければならない、あるいはNPOやNGOで働いている人たちも、こういったものに力を合わせなければならない。こういった社会をどこまでつくれるかということが、私は重要な視点ではないかというふうに思っております。

 それにはもちろん、専門家の養成あるいはルールづくり、こういったものも必要だと思いますけれども、やはり、そういったものが全て今まだ十分にできていない状況にあるというふうに思っております。

石田(三)委員 今回、この子ども・子育て新システムの導入というのは、大きくは待機児童を解消していくということがあるわけですけれども、もっと大きな歩みの中では、最終的には出生率が上がっていかなければならないんだろうというふうに思っています。

 大日向先生のレジュメの中に、「若い世代、特に女性が子どもを産みたいと願いつつも産めない理由は」と三つ挙げてあるんですが、今回、このシステムの中で、もしこういったことが解決されるとするならば、要するに、このシステムが導入されて、出生率はどのくらい上がるというふうにお考えですか。皆さんに一言ずつお願いをしたいと思います。

中野委員長 時間が余りありません、絞っていただけるとありがたいですが。

石田(三)委員 では、大日向先生、お願いします。

大日向公述人 出生率がどのくらい上がるかは、申しわけありません、お答えできません。しかし、産みたいと考える人が安心して産み、そして子育てに喜びを見出せる社会を築けるのではないかと願っております。

石田(三)委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。

中野委員長 これにて石田君の質疑は終了いたしました。

 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正でございます。

 公述人の皆様方には、本日は、大変お忙しい中、わざわざ時間を割いて本委員会に御出席をしてくださいました。心から感謝申し上げます。

 時間が限られておりますので、早速入りますが、まず、森田公述人にお尋ねいたします。

 幼保一元化の一歩として、現在、認定こども園が各地でつくられております。他方で、幼保一元化の施設の必要性についての一般の人々の理解は必ずしも深まっているとは言えません。

 森田先生は実際に認定こども園の創設にかかわっておられると聞いておりますが、その実践についての紹介をしていただければありがたいと思います。

森田公述人 先ほど来申し上げましたように、大学時代から幼保一元化問題は私のライフワークでございました。実は、この当時の一元化問題というのは、簡単に言えば、保育所の幼稚園化というふうに私は表現しております。つまり、幼児教育というものを保育所でどのように実現していくのか、もう少し言いますと、教育というものを乳児期から幼児期まで一貫した形でどういうふうに提供していくのかということが大きな課題だったんだと思うんです。

 それに対しまして、御存じのように、一九九〇年代後半から、分権化の進展の中で、保育所の中にたくさんの希望者が出てきます。その中で、実は、幼稚園の保育所化というものが起きてきます。具体的には、早い年齢から子供を預けたい、あるいは長時間子供を預けたい、こういった状況が出てきます。

 この中で、実は、私は保育というふうに言わせていただきますが、その保育の中にある教育的あるいは養護的機能というものが総合的に提供されるということが、現代社会であれば絶対に必要だというふうに思ってまいりました。そういった形で幾つかの自治体で一元化施設をつくる、具体的には、一体化あるいは認定こども園、こういったいろいろな形がありますけれども、つくってくることにかかわってまいりました。

 具体的には、でき上がった自治体の中では、私は、利用している親たちには大変満足度が高いというふうに思っております。ただし、これができ上がって後、あるいはつくる段階で、非常に行政的な煩雑さ、あるいはその後の運営の中での煩雑さがあります。

 しかし、やはり子供たちの中には、親の都合によって分けられない、特に過疎の地域では、子供の数が減ってまいりますと、子供たちが一緒に遊ぶ時間帯を多く持てる、こういった仕組みはどうしても必要ですし、都心部にあっては、具体的には、今までですと、保育に欠ける状況じゃない状況、あるいは欠ける状況というものが交互に起きてくるような家庭もあります。

 こういった家庭が総合的にやはり支援される、親の都合によって、あるいは行政の都合によって分けられないということはとても大事なことであるし、この子供たちが、具体的には小学校に進学したときに、とてもお互いの関係がうまくいった形で集団が形成できるという成果も出てきております。

    〔委員長退席、松本(大)委員長代理着席〕

重野委員 次に、大日向公述人、それから松居公述人にお伺いいたします。

 今回の新システムでは、株式会社、NPOなど、多様な担い手が参入することになります。利潤追求を目的とする株式会社の参入は、子供や親に対する権利侵害を引き起こしかねないという懸念を持たざるを得ません。学校教育における特区措置としての株式会社の参入では教育、研究の劣化が発生しており、これはもう政府も認めております。

 また、小規模保育、家庭的保育、事業所内保育など、保育事業も多様化してきました。この間の痛ましい乳児の死亡事故の多くが閉鎖的な小規模保育所や家庭的保育所で発生しているという現実も一方にはあります。法案では施設の情報公開が盛り込まれておりますけれども、果たしてこれで十分なのか、疑念を待たざるを得ない。

 各公述人の御所見をお伺いいたします。

 さらに、自治体としてどういう仕組みがあるかについて、林公述人、よろしくお願いをいたします。

松居公述人 先ほども申し上げたように、株式会社というのは、ある意味、保育士の質ということから考えたときに、従業員の質みたいなことで、ある程度の質を上げることは可能だと思います。そういうところもあるでしょう。

 しかし、今、実際にもう既に入ってきている株式会社というか、認可外の利潤を目的とした保育園の状況を見ていますと、規則が守られていないところが半数ぐらいあって、それを役人の人が、私は役人の人とも相当いろいろな人に会って話すんですけれども、やはり取り締まれないんですね。次の年も同じようなことになるんです。役場の人が一度、おおむねで始まって望ましいで終わるような規則だったら取り締まれませんよと私に言いました。

 ですから、今はとにかく待機児童をなくせなくせで、どんどん緩くなってきているわけですね。東京都の認証保育所だって、三人に一人資格を持っていればいい、緩くなってきている。もう全体の流れが規制緩和というか緩くなってきているわけです。そういうところを保育界と保育士というのは見ていますから、本当に今度の仕組みで質が上がるんだろうかということからいうと、みんなかなり疑問を持っています。

 本当に役場の人がこれを全部取り締まるだけの人件費が出て、おおむねで望ましいだけじゃない規則をちゃんとつくってくれるんだったら可能かもしれないですけれども、ただ、今の保育界にいろいろ問題があるのは事実です。

 では、認可の保育所が果たしてすばらしい保育をやっているかというと、実習に行った学生がある保育園に行って、外国人労働者を雇っているわけですよ。それで園長が、ゼロ歳児は言葉がわからないから外人でいいのよと言ったというんですよね。こういう状況が既にありますよ、認可で、公立でもありますよ。

 そういう状況の中で、今ここまで質が落ちてきているのを、本当にこの仕組みで一気に変えられるのかということに関しては、やはり相当疑いを皆さん持っていますよ。

 それと、この仕組みを変える過程で、例えば直接契約制なんかにしても、園の負担が物すごく大きくなってくるわけです。新宿区の公立の四谷保育園みたいに、役場が全部配置とあれを決めるという、そこまでお金を使ってやるんだったら可能かもしれない。だけれども、実際は、市町村に行った場合に、その仕事を現場に押しつけたら、今まででも大変なのにもっと大変になるなというのは現場の方は思っています。

 以上です。

大日向公述人 先生のおっしゃるとおり、保育の質に関しては、私ども保育関係あるいは教育関係の者は一番関心を持っております。

 保育の質は、一番何が関係するだろうか。もちろん、物理的な施設の環境、設置基準を守ることは当然です。でも、言葉を十分話せない、要求も訴えることのできない子供たちにとって一番必要な保育の質というのは、保育者なんです。保育者の応答性、その保育者がよりよい応答性を発揮することができる、よりよい保育ができるためには、やはり職場環境、そして研修システム等、そうした働く方々の環境整備は欠かせません。そのために財源をぜひ確保していただきたいというのは、私どものたっての願いです。

 保育の量をふやすことに関して、行政で七千億加算されると聞いております。しかし、質を確保するためには、さらに加えて、一兆円を超えるお金をぜひともつけていただきたいと思います。

 また、小規模保育、家庭的保育に関しましては、前政権下ですばらしいガイドラインをつくってくださいました。家庭的保育ガイドラインです。それに沿って、担う方々の資格認定ということを進めていくことが必要だと思います。

 いずれにしても、ウオッチングシステムは絶対必要です。子ども・子育て会議、私も、ぜひとも地方、基礎自治体でも必置にしていただきたいと思います。日々どういう保育がその地域でやられているのか、職場の方々がどういう体制で、どのくらいきちんと安定した環境で働き続けることができているんだろうか、設置、参入の段階はもちろんですが、運営がどうなっているんだろうか、そのあたりを私たち市民も年じゅうチェックするようなこと、行政がやってくれるからというだけじゃなくて、当事者もステークホルダーも識者も、全部が、国のあるいはこの日本の子供たちのために、子ども・子育て会議の中で英知を出し合うことが必要だと思います。

 事業主体の別だけで質が低下する、低下しないということは、もう既に議論できる段階ではなくなっているというふうに思っております。

林公述人 私、この市長職になりまして、待機児童解消をしようとしたんですが、最初にこの政策を、限りなくゼロにするというお話をさせていただいたとき、ともかく、周りの方からはやめなさいと言われたんですね。そんな約束をしたらとんでもないことになりますよ、間口を広げればまた一段とふえてくるんだ、これはいわゆるイタチごっこになってしまうというふうに言われました。

 実際、踏み込んでやったわけでございますけれども、もう何度か申し上げているでしょうか、今回の横浜市の待機児童がここまで激減した原因の中では、民間の方の御参入がなければ全くあり得なかったと私は思います。そして、今、こうやって、まず私はここまで待機児童の、それはもう本当に市民の皆様の現場で、いろいろなところでお伺いして聞いた言葉が、子供を預けられなくて、この横浜市が日本一待機児童が多いではないかとたくさんの方に言われたわけですね。それが本当に切実な声でした。

 だから、まず量を何とかしなきゃいけないということで、量の確保ということで、このメモにも差し上げておりますけれども、いろいろな方法で、ともかく減らすことができたんです。そうすると、当然、質のところになっていきます。ただ、私は、確かにそういう御心配があって、今先生がおっしゃったように、幾つかそういう例があるとしますけれども、横浜市の今の状況では、決してそんな大変な、悪い状況は起きていないということですから、私は信じたいと思います。

 ですから、こういうことを国がはっきり認めていただければ、みんなでさまざまな方策をとってコミュニケーションする、議論する、常に検証し続けるということをやって、みんなで、子供のためだという一点において、そうやって話し合いをしていけばできることだ。だから、質を落とさないというか、質を上げることもできるし、民間と、例えば行政のやっている横浜市立保育園との差とか、そんなものは私はないと思います。

 だから、今、大日向先生もおっしゃいましたけれども、保育に携わる人の問題だと思います。それから、経営者の方のトップマネジメントの問題だと思いますし、やはり非常にコミュニケーションが大事かな。

 私は、今回の待機児童対策で一番大切にしたことは、では、今までどれだけ市がコミュニケーションしてきたのかというところをすごく検証したんですね。例えば、保育園に入りたい方、どうぞ、お申込書をいただきます、それから後は役所で申し込みをかける。それで、はい、あなた様は申し込んでいただきましたが、こちらはどうですか。いや、もう、そこは私は入りません、ああ、そうですかということでやってきたんじゃないですかと。

 お断りになったけれども、その御事情は何なんでしょうか、どういった事情でここの保育園を選ばれなかったんですかときめ細かくお話をしていった結果、えっ、そうだったんですか、認可保育園が全てじゃないんですね、そういうところもあるのねというのは、実際にさんざん起きた話です。そういう中でマッチングを続けて減らしていったということだから、私は、ある意味では、そういった施設の差別をしてもいけないだろうというふうに思っています。

 今、株式会社でお入りいただく場合、横浜市が補助できるというのは、例えばビルの一室をお借りになったときの内装や何か、そういうことはできます。ただし、土地を買って、それに上物を建てるというようなことについては、ちょっとそこまではできない、というのは、これは財政の問題がございますので。

 そういうことを含めて、国とまた議論していただいて、体制を整えていただきたいというお願いです。

重野委員 まだまだ質問の準備をしておったんですけれども、私の質問の仕方が悪かったのかもしれませんけれども、半分も行かずにもう時間が来てしまいました。

 皆さん方には、そういう意味では発言の機会を著しく縮小したような感じで、大変恐縮しておりますけれども、ありがとうございました。

 せっかくの先生方の答弁、説明をしっかり受けとめて、私たちも大いなる関心を持って頑張っていきたいと思います。

 以上で終わります。

松本(大)委員長代理 これにて重野君の質疑は終了いたしました。

 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一と申します。

 最初に、林公述人に質問をさせていただきます。

 横浜市は、非常に待機児童の解消に成功されたということだと思うんですけれども、民間参入というと株式会社の議論がずっとあったんですが、NPOの方についてお聞きしたいと思います。

 NPO、横浜市でも大分ふえているということですけれども、NPOの保育所というのを市長はどのように評価されているのか、あるいは、株式会社とNPOを比べると、何か違いとか傾向というのがありますでしょうか。

    〔松本(大)委員長代理退席、委員長着席〕

林公述人 ちょっとお時間いただけますか。

中野委員長 はい、どうぞ。

 ちょっとお待ちください。

 もしよろしければ、ほかの公述人への質問を先に。

山内委員 わかりました。では、別の公述人の方に。

 ちょっと調子が狂ってしまいましたが、大日向公述人に質問させていただきたいと思います。

 子ども・子育て新システム、当事者としてずっとこの議論にかかわられてきたことと思います。ただ、書かれているものを見ると、いろいろな委員がいて、いろいろな団体の利害を背負ってきている委員の人がいろいろな意見を言うと。もしかすると、大日向さんの理想の姿からは、ちょっと今の政府案というのはずれているのかなと思わなくはないんですけれども、今、修正協議も国会の外でやられております。ここを直してほしいというものがあったら、お考えをお聞きできればと思います。

大日向公述人 ありがとうございます。

 このワーキングが始まる前は、恐らくまとまらないだろうと言われておりました。私もそれは大変心配しておりました。でも、とにもかくにも、ここまでまとまったことは大変感謝の思いでございます。

 その上で、さらに大変心強い御質問をいただいたことを感謝申し上げたいと思いますが、本来であれば、先ほど高橋先生、池坊先生がおっしゃってくださいましたけれども、全ての施設が根拠法も類型も一本化ということは願いました。その方向に向かっていきたい、その方向に向かっての一里塚というふうに考えております。

 しかしながら、ゼロから二歳児の小規模型保育は、三、四、五がおりませんので、学校教育法体系外ということで総合こども園外になってしまいました。あるいは、さまざまな建学の理念等で、総合こども園に移りたくないという幼稚園がいらっしゃるということも、現実的にはそうだろうということで、施設類型は三つになりましたが、可能な限り、保育園はほとんど、幼稚園も財政的にインセンティブすることで総合こども園に移る、八割、九割は、私は根拠法も施設類型も一本化になると思います。

 願わくば、ゼロから二歳の乳児だけの保育所に関して、児童福祉法の中に教育ということを明確に位置づけていただければ、大変ありがたいと願っております。

 以上です。

林公述人 先生、どうも失礼いたしました。

 NPO法人でございますけれども、やはり、規模としては小規模でございます。ただ、本当に熱意のあふれた方たちがやってくださるというのは、私も訪問すると肌で感じております。

 ただし、どんな団体であっても審査基準とかは全部一緒でございますので、そこは申し上げておきたいと思います。

山内委員 ありがとうございます。

 私も別に株式会社がいけないとは個人的には全然思っていないんですけれども、株式会社を参入させるに当たっては、ある経済学者の方がおっしゃっていたんですけれども、株式の配当規制は設ける必要があるんじゃないかということをその学者の方はおっしゃっていました。

 実際、この前この委員会で大臣にも質問したんですけれども、介護制度を見ると、介護職員の給与水準は低いのに、介護施設には内部留保が何兆円単位であるというような議論もありますので、株主への配当、一定の縛りとか、あるいは規制というのは必要なんじゃないか。まあ、市場は必ず失敗するものですから、ある程度の歯どめが必要だと思うんですよ。そういったものを国の制度にどのように反映させる必要がありますでしょうか。

林公述人 先生が危惧されていることは全く大事な視点だというふうに思います。

 ただし、総合こども園の学校としての継続的、安定的な運営を担保するのには、やはり資金を集める上で株式会社の形態というのは必要なことだと思いますので、おっしゃったように一定の制限を設けるということは必要だというふうに思います。

山内委員 一定のというのはどれぐらいになるかはちょっと難しいと思うんですけれども、ぜひ、国の方でも取り入れてもらいたいと思います。

 それと、ちょっとこの法案とは外れますが、林市長の副市長をやられていた山田正人さんという、経産省の男性キャリア官僚で初めて育休をとったというユニークな方を副市長に、市長が招かれたかどうかは存じませんが、副市長をやられていました。

 横浜市では、そういう男性の育休とか、そういった点で何か取り組みはなさっているんでしょうか。

林公述人 私は男性の育休というのを非常に進めておりまして、山田さんが見えてかなりそういう啓蒙にはなりました。彼はいろいろなところで男性の職員を集めて育児のすばらしさというものを、だから、育児によって自分がどれだけ成長したかという講演等々をやっていただきました。

 結論でございますけれども、男性で四・一%の方がとるようになったということでございます。ちなみに、女性は九七・四%ですから、この四・一というのはかなり高い数字ではないかと思います。

山内委員 大変高いと私も思います。私もできればとりたいぐらいなんですけれども、なかなか国会では難しいようですが。

 次に、松居公述人と森田公述人、お二人にお尋ねをしたいと思います。

 今のこの法案について、ここをこう変えるべきだというアイデアがあれば教えてください。

松居公述人 今の法案について、ここをこうと言われると非常に困るんですけれども、この法案は、通って本当にこれが実施されたらどうなるのかということが、法案をつくった人たちのイメージと随分違うところに私はイメージがいくんですね。つまり、全体的に言えば、親が子供を保育園に預ける時間は相当減るだろう。

 これは厚労省の方なんかも、松居さん、これは賛成してもいいんじゃないのと。いや、そこまでわかりますかと私は聞きます。だけれども、現実には現場で起こる混乱の方が心配なので私は反対をしていますけれども、保育界で何が起こっているか、市長さんたちがどういうふうな動きをするか、それと親たちがどういう動きをするか、そういうことを考えると、だから、何と答えていいかわからないです。今のシステム、このままいったら目的としたことと反対の結果が出ますよぐらいなことしか私は言いようがないです。

 ただ、幼稚園、保育園が今まで分かれていたというのは、日本は欧米に比べれば家庭崩壊とか犯罪では物すごく数字がいいわけですから、モラル、秩序ということ、夜、外に自動販売機を置ける先進国なんてここだけですから、そういうことからすると、何か今までやってきたことはよかったんだろうと考えるのが普通です。そうすると、幼稚園、保育園という二つの仕組みがあって、それが余り変わらないで来たということが多分よかったんだろうなというふうに私は考えています。

 だから、どちらかというと、余り変えずに、保育士の給与とか、保育園、幼稚園を使って親と保育士がもっと信頼関係を生むとか、そういうことでいくと、一日保育士体験なんかでもほとんど予算はかからないわけですけれども、そういうところからもう一回立て直して、本当にそこで保育士と親たちの信頼関係が構築された上で、では幼保一体化やろうかというのだったら、それは不可能じゃないと思います。

 だけれども、今の状況で、幼稚園と保育園がこれだけ違う状況の中でいきなりというのは、掛川の幼保園なんか見ても、私は結構、認定こども園なんかもたくさん見ていますけれども、認定こども園の地方裁量型なんて、市が認可しなかったのが県に認可されちゃったりとか、いろいろな問題を抱えています。だけれども、もう一回、じっくり今の状況をしっかり把握してから進めたらいいんじゃないかな、そのくらいに思います。

森田公述人 私は、児童福祉を専門にしている立場として、一つは、非常に議論が弱かったのは、福祉的課題を抱えている子供たちや、あるいはそこで暮らしている子供たち、子育て家庭、こういったところに対する議論がやはり十分ではなかった、途中でこれがほとんど消えてしまいました。

 このことについては、具体的には都道府県、今、児童福祉課題はほとんどが都道府県が担っております。これと、今回中心になっている基礎自治体の問題がやはり解決がついていないということ、これはとても大きい課題だと思っています。

 それからもう一つ、基礎自治体の中でいうと、やはり一番大きいのが、子ども・子育て会議の必置化が外れたということだと私は思っております。ここは何が何でもつくって、そしてその中で、計画やお金の使い方、あるいは評価や、さまざまな部分をつくっていくというのは、これはやはりヨーロッパなんかで基本的に行われていることですし、こういったものがないと、乳幼児期、特に自分で声を上げられない子供たちの権利侵害が起きる、あるいは、起きたときにきちんとした対応が大人によってなされないということになってしまいます。

 そういう意味で、私が一番危惧しておりますのは、こういった二つの対象者の問題についてのことでございます。

 以上でございます。

山内委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

中野委員長 これにて山内君の質疑は終了いたしました。

 次に、中島正純君。

中島(正)委員 国民新党の中島正純でございます。

 きょうは、公述人の皆様、それぞれの立場から貴重な御意見をお聞かせ願いまして、ありがとうございました。

 早速、質問に入らせていただきたいと思います。

 まず最初に、大日向公述人にお伺いをさせていただきます。

 新システムは、現行制度から大幅な制度変更となりますが、その中でも、本委員会において議論となりました、施設と保護者との直接契約、こども園における指定制度の導入、市町村の保育実施義務規定の改正、幼保一体化、総合こども園の創設などの各施策について、大日向公述人の率直な御意見をお聞かせ願えますでしょうか。

大日向公述人 御質問ありがとうございます。

 新システムの画期的な点は、子ども・子育てが社会保障改革の重要な柱に位置づけられて、そのための財源確保が明確にされたということだと思います。これは歴史的に初めてのことです。

 具体的には、何度も申しまして恐縮ですが、全ての子供に良質な発達環境を保障すること、そして、それが親の生活と子育てをどこに住んでいても保障できるという一点に尽きます。現行制度ではそれがかなわないことが明らかです。

 先生が御質問くださった幾つかのことを順次お答えしたいと思いますが、まず、都市部の待機児問題、この解消も新システムでは大きな柱の一つとしております。市町村の権限、責任を明確にして、利用者の施設利用を保障することが必要だと考えるからです。

 現行は、保育に欠ける要件の認定と入所する保育所のあっせんを市町村が一緒にやっています。需要と供給のバランスがとれているところはいいんですが、待機が多いところ、児童福祉法二十四条の例外措置が認められてしまって、認可外にあっせんすることが認められてしまっています。そうしますと、その施設が認可基準を満たしていたとしても、財政措置ができないという理由で無認可のまま放置されている。これでは待機児の解消が一向に追いつきません。

 現行制度は、認可保育園に入れた子と認可保育園を守るだけの制度になっている。認可保育園に入れない子、あるいは、一生懸命努力していらっしゃっても、認可基準を満たしているのに無認可に置かれている、そうした施設もぜひ守るということを考えております。

 もう一つ、公的契約のことを御質問いただきました。

 これも、親たちが本当に迷うことなく、保育に欠けるではないんです、保育の必要度を市区町村が認定していただきたい。認定した以上、市区町村は必要な保育量を満たす義務が課せられます。もちろん、そこに財源はつけますが、当然、義務が課せられます。でも、しばらくは待機児が解消しない地域では市区町村が一生懸命あっせんもします。また、先ほど来出ておりました子育てマネジャー、保育マネジャーたちが十分、総合こども園を探すことのできない御家庭、親たちのためにもいろいろ動くということも考えております。

 指定制度ということは保育の量をふやすためにぜひとも必要なことだと思っています。しかし、先ほど来の御質問にもありましたけれども、質を下げるということは絶対にあってはならない。事業主体の別ではなく、質をまず担保するための参入規制、運営、あるいは撤退規制は非常に厳しく課すということです。

 繰り返しますが、従来以上に市町村の責任そして権限を明確にする、しかし、国は財源をきちっと確保し、ナショナルミニマムは保障するという、国、市町村、そして親、ステークホルダーたちが一体となって子供の生活を、育ちを守るということを、心を一つにして願っております。

 以上でございます。

中島(正)委員 非常にわかりやすい説明をありがとうございました。

 続きまして、林公述人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 何度も申しわけございません。二年間で八八%待機児童の激減ということですので、やはりどうしても聞きたいなという思いになりますので、ちょっとお伺いをさせていただきたいんです。

 本当に、今後のこの新システムの施行の際のモデルケースになると思われるんですけれども、新システムでは、実施主体である市町村が、事前に保育の潜在ニーズを把握するための調査を行い、潜在需要も含めて事業計画を策定することとなっております。

 実施主体の長として、この潜在ニーズを把握するための方策として、今までの御経験も踏まえて、お聞かせ願えますでしょうか。

林公述人 今回の待機児童解消に際して、区役所の区長さん以下を中心に据えまして、地域に密着した人たちからの意見を入れて解決方法を一緒にとったんですね。それから、保育所とのコミュニケーションもすごくよくとりました。そういう意味では、私どもは、かなり潜在的なニーズも把握をしながらこれだけ、ここまで減らしてきましたから、そういう経験をやはりまた皆様に成功事例としてお知らせもしたいと思っておりますし、私どもとしては、潜在的な保育ニーズをきちっと把握する自信はあります。

 言ってみれば、さっき申し上げた地域の区役所の中に担当の専任の係長を置いたり、それから、保育コンシェルジュを置いて、そこの地域の就学前児童をお持ちの方たちとの連絡を密にとっていますので、そういう意味では、やっていけるというふうに思います。

中島(正)委員 それでは、もう一度、林公述人にお聞きしたいんですけれども、株式会社参入によって、今まで何かトラブル等の発生はなかったのかとか、それと、先ほど石田先生からもちょっと御質問ありましたけれども、石田先生からは、質の低下が懸念されるという点がありました。私は、逆に、競争原理で、株式会社ですから、やはりお互いに切磋琢磨し合って、環境、保育の質が上がったとか向上したとか、そういう例は見受けられましたでしょうか。

林公述人 全くないとは言えません。実際にございました。でも、社会福祉法人にもあるわけでございますね。

 ですから、それは、そういった例があったからといって、きちっと質を高めて、むしろ大変意欲的な御法人もあるわけです。そして、そういう志を持って、株式会社といえども、本当に社会のためになりたいと思って、しかし、民間の方がやるということになれば、そういったやり方でしかなかなかできないということで、そういう志を持っている方がいらっしゃいますから、さまざまな方のお気持ちを酌んで、私はこれからもやっていきたいというふうに思っています。

中島(正)委員 ありがとうございます。

 それでは、松居公述人と森田公述人にお伺いしたいと思います。

 新システムの親と子にとってのメリットについてお聞きしたいと思うんですが、新システム導入について、新システムでは、地域型保育事業や地域子ども・子育て支援事業にも財政支援を行うなど、多様なニーズに対応することとしております。これによって、利用者は、保育のニーズに合わせてこども園などを利用することができることとなり、今まで認可外保育施設などに預けざるを得なかった保護者の方も、一定の水準が担保された保育施設に預けることができるようになります。その結果、親も安心ですし、子供にとってもよい環境が提供されるから、両親がまた子供を産み育てようと思える制度だというふうに考えております。

 このような新システムのメリットについて、松居公述人と森田公述人はどのようにお考えでしょうか。

松居公述人 今おっしゃったようなことが全て実現できるのであれば、それはいいと思います。

 それに伴って、その財源ですよね。やはり今まで日本の子育てに対する財源というのは、GDPの〇・六%みたいなものでやっていたわけですよね。それをやはり倍ぐらいにはしてほしいと思います。倍ぐらいにしてくれて、あと、一日保育士体験をやってくれるんだったら、どんな仕組みでもいいかなと私なんかは思ったりします。

 ただ、今の少子化というのは、現在二割、十年後三割の男が一生に一回も結婚しない、これですよ。やはりそういう状況がなぜ生まれているかというところまで考えていかないと、幾ら待機児童をなくせなくせと言って、これで少子化問題が、男がどんどんどんどん結婚しなくなっているわけですから。

 ですから、経団連が、父親も母親も含めて、ゼロ、一、二歳を持っている親は残業しちゃいけないとか、やはりそこら辺までやってくれないと、男の方にも子育てが本当にいいものだと、それで、子供たちに父親を育てる機会も与えてあげないと、本当の少子化対策にはなっていかないと思うんですね。子はかすがいではなくて、子育てがかすがいだったわけですから、やはり男女がそろって最初の三年ぐらいは子育てが一緒にできるようなことを経団連あたりがやってくれない限りは、こういう議論をしていてもだめだなというふうに僕は思います。

森田公述人 私は、この児童福祉という、ある意味ではマイナーな研究分野をやっておりますので、常々思うのは、やはり子供たちの問題に全ての大人たちが気持ちを向けるということ、そして、一緒にこの子たちの問題を考え、そしてこの子たちと一緒にこの社会をつくり上げていく、そういう決意をしてくださるという機会になるんだとすれば、すごく大きな成果になるというふうに思っております。つまり、子供たちが、ある意味で道具にされてはならない。

 例えば、今回の議論の中で一番大きいのは、少子化対策から、子供主体、全ての子供と子育てを支援していく、こういう少子化という問題から子ども・子育てを支援していくという形に変わったということはとても大きなことがあり、そのことで、全ての地域のところで、子供たちや子育て家庭にお金をつけよう、あるいは人をつけよう、整備をしよう、そういうある意味では社会的正義が働き始めるんだとすれば、私は物すごく大きな成果だというふうに思っております。

中島(正)委員 ありがとうございます。

 それでは最後に、大日向公述人にお聞きしたいと思います。

 今回のこの新システムは、各関係団体に丁寧にヒアリングを行われて、約一年半をかけて議論をされて取りまとめられたものであると聞いております。ただ、私のところにも、新システムの必要性や内容の複雑さ、また保育所や幼稚園の今後に対する不安など、さまざまな声も届いております。

 大日向公述人は、内閣府の子ども・子育て新システム検討会議作業グループの委員として新システムの構築に係る議論に参加されておられましたので、その過程でさまざまな御意見をお聞きになったことと思います。

 作業グループの議論の中で、主な論点について大日向参考人にお聞きしたいと思います。

大日向公述人 御質問ありがとうございます。

 確かに、作業グループはいろいろな立場の方が参加してくださいました。幼稚園、保育園、経済界、労働団体、自治体、NPO、識者、当事者たちです。当然立場も違います。ですから、いろいろな考え方がありました。でも、いつもいつも議論が錯綜しそうなときにみんなが振り返ったのは、子供のため、子供のために心を一つにしようということがまず第一点でございました。

 私は、そうした議論を聞きながら心に残る言葉が幾つかございました。

 一つは、ある保育団体の代表の方がこうおっしゃいました。我々はさまざまな団体の利害、権益を背負っている、でも、子供のためにそれを全部捨てようじゃないかとおっしゃってくださいました。

 もう一人の委員の方は、歴史、文化が大事だ、幼稚園、保育園が培ってきた歴史、文化を拙速に変えてはいけない、でも、歴史、文化は我々人間がつくってきたものじゃないか、でしたら、時代の要請に合わせて、子供のためによりよい歴史、文化をつくろうということを言ってくださいました。

 この言葉は、いつも議論が迷走しそうになったときに、座長として繰り返させていただいた言葉でございます。

 幼保一体化、基本制度ワーキングにかかわりながら、私がいつも心に思っていたことがございます。スウェーデンのオムソーリという言葉です。スウェーデンは社会福祉が行き渡っています。なぜ行き渡っているのか。もちろん、高負担だから高福祉ができると言われます。そのとおりかもしれませんが、もっと深い哲学を持っている。これは、人生には喜びも多いけれども、それと同じくらい、それ以上に悲しみもあるんだ、悲しみを分かち合ってこそ人々は幸せになれるということです。

 この言葉は、実は私が未熟な親のとき、オムソーリではなかったんですが、別の言葉を言っていただきました。支え支えられてお互いさま。私の未熟な、母としても未熟だった、妻としても未熟だった、その私を支えて励まして育ててくれたのは、松居先生が言われるように、子供でもありました。でも、同時に地域の人でした。御近所のおばあ様が私たち一家を支えてくださって、そして、いつもいつも恐縮してお礼を言う私におっしゃったんです。人生は支え支えられてお互いさまよ、大日向さん、今は大変かもしれないけれども、上手に甘えることを覚えなさい、やがて必ず余裕が持てる、そのときにまた返せるものを地域の方にお返ししましょう。この言葉を私は胸に刻みながら、新システムのワーキングチームにかかわらせていただきました。

 きょう、いろいろ先生方から御質問をいただきまして、とてもうれしいことがございました。

 きょう、来るときに新聞を読んで、私は胸が潰れる思いでした。もうだめなのかと思ったんです。総合こども園見送りとか新システムだめだみたいなことが書いてありました。新聞報道です。でも、私、幼保一体化のときも同じようなことを書かれたんです、もう後退だとか分裂とか。でも、幼保一体化のワーキングでは、委員の方々が必死になって議論していた。

 きょう、ここに伺って、先生方が、私たちが考えている以上に、もっと一元化を進めるべきじゃないかとか、子供のためには財源をとるべきじゃないか、非常に心強いお言葉をいただきました。さすが、二十数年、超党派で子供のために取り組んでくださった先生方のおかげだと思います。

 感謝を持って、そして、ぜひとも成案を期待しております。どうかよろしくお願いいたします。

中島(正)委員 ありがとうございました。時間が参りましたので、これで終わります。

 ありがとうございました。

中野委員長 これにて中島君の質疑は終了いたしました。

 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、公述人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 次回は、明十三日水曜日午前八時四十分理事会、午前九時公聴会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時六分散会


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