衆議院

メインへスキップ



第9号 平成26年8月7日(木曜日)

会議録本文へ
平成二十六年八月七日(木曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 森  英介君

   理事 塩崎 恭久君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 鈴木 淳司君 理事 宮下 一郎君

   理事 山際大志郎君 理事 中川 正春君

   理事 足立 康史君 理事 江田 康幸君

      赤枝 恒雄君   うえの賢一郎君

      加藤 寛治君    川田  隆君

      菅野さちこ君    北村 茂男君

      佐々木 紀君    桜井  宏君

      白石  徹君    新谷 正義君

      橘 慶一郎君    中村 裕之君

      丹羽 秀樹君    額賀福志郎君

      細田 健一君    細田 博之君

      宮澤 博行君    簗  和生君

      渡辺 孝一君    荒井  聰君

      生方 幸夫君    辻元 清美君

      馬淵 澄夫君    小熊 慎司君

      椎名  毅君    斉藤 鉄夫君

      中野 洋昌君    西田  譲君

      三宅  博君    山内 康一君

      笠井  亮君    玉城デニー君

    …………………………………

   文部科学副大臣      櫻田 義孝君

   経済産業副大臣      赤羽 一嘉君

   環境副大臣

   兼内閣府副大臣      井上 信治君

   経済産業大臣政務官    磯崎 仁彦君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  千原 由幸君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房原子力災害対策担当室長)

   (原子力規制庁放射線防護対策部長)        黒木 慶英君

   政府参考人

   (復興庁統括官)     熊谷  敬君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           田中 正朗君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           土井 良治君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁廃炉・汚染水特別対策監)    糟谷 敏秀君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      多田 明弘君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            三好 信俊君

   政府参考人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (原子力規制庁次長)   清水 康弘君

   政府参考人

   (原子力規制庁長官官房審議官)          山本 哲也君

   政府参考人

   (原子力規制庁長官官房原子力安全技術総括官)   竹内 大二君

   政府参考人

   (原子力規制庁原子力規制部長)          櫻田 道夫君

   参考人

   (東京電力株式会社代表執行役社長)        廣瀬 直己君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月三十一日

 辞任

  木下 智彦君

同日

            補欠選任

             中丸  啓君

八月一日

 辞任         補欠選任

  中丸  啓君     三宅  博君

同月七日

 辞任         補欠選任

  菅家 一郎君     赤枝 恒雄君

  齋藤  健君     橘 慶一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     加藤 寛治君

  橘 慶一郎君     齋藤  健君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 寛治君     桜井  宏君

同日

 辞任         補欠選任

  桜井  宏君     菅家 一郎君

    ―――――――――――――

六月二十日

 一、原子力問題に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 原子力問題に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

森委員長 これより会議を開きます。

 原子力問題に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として東京電力株式会社代表執行役社長廣瀬直己君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣参事官千原由幸君、内閣府大臣官房原子力災害対策担当室長兼原子力規制庁放射線防護対策部長黒木慶英君、復興庁統括官熊谷敬君、文部科学省大臣官房審議官田中正朗君、経済産業省大臣官房審議官土井良治君、資源エネルギー庁廃炉・汚染水特別対策監糟谷敏秀君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長多田明弘君、環境省水・大気環境局長三好信俊君、原子力規制委員会委員長田中俊一君、原子力規制庁次長清水康弘君、原子力規制庁長官官房審議官山本哲也君、原子力規制庁長官官房原子力安全技術総括官竹内大二君、原子力規制庁原子力規制部長櫻田道夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

森委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

森委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細田健一君。

細田(健)委員 ありがとうございます。

 おはようございます。自民党の細田健一でございます。

 本日このような機会を与えていただいた我が党の塩崎理事、鈴木淳司理事また鈴木馨祐理事のお三方に、改めて心から御礼を申し上げます。本当にありがとうございます。

 それでは、時間がございません、早速質問に移らせていただきます。

 規制委員会が設置した敦賀発電所敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合のメンバーである鈴木康弘先生、それから大飯発電所敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合のメンバーである渡辺満久先生、この両先生が、近藤正道参議院議員、これは当時の参議院議員で社民党の先生でいらっしゃいますが、近藤正道参議院議員が主宰する原子力政策「転換」議員懇談会という議員連盟、これは主として社民党、民主党の議員の先生方から構成される私的な議員連盟のようですが、この議員連盟の技術顧問として活動し、平成二十年四月二十七日、議員と同行して敦賀原発を視察された。

 これは、配付されている新聞記事、資料の一、福井新聞の記事でございますが、平成二十年の四月二十七日に議員団と同行されて敦賀原発を視察され、議員とともに記者会見に応じて、敦賀原発直下に活断層があるというふうにされていた事実を原子力規制委員会は認識されていらっしゃるでしょうか。田中委員長の答弁を求めます。

田中(俊)政府参考人 先生御指摘の、二〇〇八年四月に行われました原子力政策「転換」懇談会による敦賀発電所の調査において、敷地内破砕帯調査に関する有識者会合のメンバーである二名の先生が同行されたということはお聞きしております。

 ただし、二名の先生が活断層の専門家として同行されたということは聞いておりますけれども、同懇談会の技術顧問であったかどうかという位置づけについては承知しておりません。

 なお、このときの調査は、直前の同年三月に、事業者が旧原子力安全・保安院に対し、敦賀発電所の敷地内を通る浦底断層が耐震設計上考慮する活断層に該当すると報告したことを踏まえて、浦底断層のトレンチなどを視察されたと聞いております。

 現在、敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合で評価していただいているのは、原子炉建屋直下の破砕帯についてであり、二〇〇八年四月に行われた原子力政策「転換」懇談会による敦賀発電所の浦底断層の調査とは直接関係するものではありません。

細田(健)委員 ありがとうございます。

 技術顧問として入られたかどうかというのは認識していないということなんですが、今回資料には出しておりませんが、この両委員の方を技術顧問として敷地内に入れてほしいという許可を求める文書というのは私の手元にございます。これは、いかなる求めに応じて今後提示させていただいても結構でございます。

 そもそも、何の縁もゆかりもない学者の方を敷地内に軽々に入れるということはあり得ないのであって、これは原電サイドに確認をしていただきたいと思いますが、技術顧問という肩書で活動しているというふうに先方がおっしゃったからこそ、原電も、この両先生を敷地内に入れて、議員の先生方とともに視察をすることを認めているわけでございます。これが事実だろうと思うんです。

 こういう、いわゆる党派的な偏りのある活動に参加されて、議員と一緒に視察をされて、この福井新聞に書いてありますが、議員と一緒に記者会見をして、いろいろな御見解はあると思いますが、敦賀原発の直下に活断層があるのは間違いない、あるいは原電が信用できないというふうにおっしゃるような方々、党派的な活動に参加されている学者の先生方を、原子力規制委員会の活動には高い、非常に高い政治的中立性が求められておりますが、こういう方々を原子力規制委員会のその調査の委員に選任するのは問題じゃないでしょうか。即刻このお二人を委員のメンバーから解任すべきではないかと思いますが、委員長の明確な答弁を求めます。

田中(俊)政府参考人 先生御指摘の経緯については詳細に承知しておりませんけれども、一般的に申し上げますと、有識者、私もそうでしたけれども、さまざまな団体が主催する各種勉強会等に招かれて専門家としての意見を述べるということはたびたびあることであります。そのことが政治的中立性を損なうかどうかということについては、そういうものではないというふうに考えております。

 なお、敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合の専門家の選定に当たっては、関係四学会から学会内外の専門家を推薦していただいており、有識者には科学的、技術的な観点から公平公正な御意見をいただいているところであります。

 破砕帯の評価に当たっては、従来の安全審査での評価を場合によっては見直すことにつながるということから、予断を持たず新たな観点から評価を行うべく、これまでの安全審査にかかわっていなかった有識者にお願いしているところでございます。

細田(健)委員 これは、勉強会に招かれてどうのこうのというのと全く質的に違うと思います。

 社民党と当時の民主党の先生方で構成される議員連盟がある種の政治的な目的を持って視察をされている、それに同行されている、そして、一緒に記者会見をされている、これが事実なわけです。また、その技術顧問という肩書を用いて敷地内に入る許可を求めている、これも事実なわけです。これは、通常の勉強会に招かれて発言をするということとは全く質的に違うと思います。

 これ以上余りやっても多分まともな回答は返ってこないと思うんですが、ぜひ森委員長にお願いしたいんですが、この両先生をこの場に招いて、徹底的な事実確認と究明を私は行うべきだというふうに考えておりますが、ぜひ御検討をお願いしたいと思います。

森委員長 理事会で協議をいたします。

細田(健)委員 ありがとうございます。

 それでは、さらに、ちょっとこの問題について続けたいと思うんです。

 鈴木先生、ここの活動に参加しておられる鈴木先生が、今、先ほど申し上げた敦賀の破砕帯の有識者会合のメンバーに入っておられます。この報道を見ると、主に渡辺先生のようですが、敦賀の発電所の下に活断層があるというのは間違いない、あるいは、原電は全く信用できないというようなことを記者会見で累次お述べになっているようでございます。

 こういう活動に参加された方を、当該敦賀の発電所の破砕帯があるかどうかということを検討する委員会に入れるというのはどうなんだろうかというふうに考えるわけです。

 これはやはり、その政治的中立性が全く担保されていないということに加えて、初めから敦賀の原子力発電所の下には活断層があるという前提で、初めから結論ありきでこの会合が進められているのではないかというような重大な疑念を生ぜざるを得ません。

 資料二をちょっとごらんになっていただきたいんです。もう時間がありませんから詳しく申し上げませんが、委員の先生方、この記事をごらんになっていただくと、要すれば、規制委員会が事業者の意見を十二分に聞かず、一方的に議論を打ち切っている、あるいは、事業者が自分の見解を補足するための有識者を議論に参加させてほしいと言ったにもかかわらず、一顧だにしないというようなことが書かれているんです。

 これは、先ほど私が申し上げた、最初から結論ありきである、敦賀のサイトの下には活断層があるという結論が最初にあって、それを確認するためにこのような有識者会合が行われているのではないかという疑念を非常に高めるんですが、私は、委員長、この敦賀の有識者会合の検討というのは、こういう疑念を持たれているような委員の先生が参加しておられるのであれば、全く白紙に戻してゼロから検討を行うべきではないかと思いますが、規制委員会の見解はいかがでしょうか。

櫻田政府参考人 委員長の答弁の前に、事実関係の御説明を少しさせていただきます。

 委員がお配りされていらっしゃいます本日の資料の中に、報道されております、冒頭の御質問にもありました、二〇〇八年四月の調査において先生方がごらんになった活断層と言われている断層は浦底断層という断層でございまして、これは、その調査の前に、日本原電が活断層であるということを認めたものということでございます。さらにさかのぼれば、日本原電は、それ以前には活動性がないというふうに言っていたものを、二〇〇八年になって活動性があるというふうに見解を変えた、こういうようなことが事実関係としてございました。そこのところを先生方は取り上げて、従前の日本原電の資料あるいは調査においては活断層というふうな判定になっていなかったものが、改めてされた。

 そういう事実関係がございますので、今回の破砕帯の調査において規制委員会がお願いしている、活断層あるいはそうじゃないのかという、その対象となっている断層とは、この二〇〇八年四月の現地調査において先生方がごらんになったものは異なるものであるということについては御認識いただきたいと思います。

細田(健)委員 私の質問に全くお答えになっていただいていないんですが。時間がもったいないですね。

 私が申し上げているのは、政治的中立性に疑念のある委員を入れて検討を行っている、これは問題ではないか、したがって、この敦賀の破砕帯の調査については、全くゼロから、新しい委員を選任して行うべきではないかというふうに申し上げているんですが、田中委員長の見解を求めます。

田中(俊)政府参考人 ただいま櫻田部長の方から御説明がありましたように、現在行っているのは、原子炉建屋直下を通るD―1破砕帯と呼ばれるものの活動性についての調査であります。

 先ほども申し上げましたけれども、敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合の専門家の選定に当たっては、関係四学会から学会内外の専門家を推薦していただいており、有識者には科学的、技術的な観点から公平公正な御意見をいただいていると考えておりますので、これを白紙に戻すという必要はないと思っております。

細田(健)委員 これは全く議論がかみ合っていないと思うので、これも森委員長にお願いしたいんですが、敦賀の破砕帯の調査委員会、これが公正中立に行われているか、あるいは、初めから結論ありきで行われているのではないかという重大な疑念があるわけなんですけれども、これについて、ぜひ、次回の委員会でこの敦賀の破砕帯のメンバーをこの場に呼んで審議を行うように求めたいと思います。

森委員長 本件につきましても、後刻理事会で協議をいたします。

細田(健)委員 ありがとうございました。

 これはそもそも、委員長に申し上げたいんですが、この敦賀あるいは大飯の破砕帯の検討委員会のメンバーは、規制委員会設置法で法的にきちんと位置づけられて選任された方々が審議を行っているというわけではないというふうに私は理解をしております。あくまでも某委員の先生の私的諮問機関という、非常に不透明かつ公正さに欠ける手続によって委員が選任され、運営されているというふうに私は認識しております。

 したがって、もしこういうことを続けていると、委員会の政治的中立性に対する信頼性というのは全くなくなってしまうのではないかというふうに考えます。

 したがって、例えば炉安審のメンバーにこういう地質の有識者をきちんと選任して、そのメンバーによってワーキンググループをつくって、きちんと法的に位置づけられた機関で審議を行うべきではないかというふうに考えるんですが、委員長の見解はいかがでしょうか。

田中(俊)政府参考人 敷地内破砕帯調査の有識者会合については、原子力規制委員会が判断を行うに当たって、その参考として、活断層の調査等に係る専門的知見を有する外部有識者からの御意見を伺うために設けているものでございます。その設置に当たっては、メンバーあるいは役割について、あらかじめ原子力規制委員会で議論し、了承しているところでございます。

 したがって、メンバーの選任あるいは議論の進め方に関して問題があるというふうには承知しておりません。

細田(健)委員 繰り返しになるんですが、先ほどお話をしましたけれども、規制委員会が委嘱をした委員の一部が、ある政治的な主張を行う議員連盟の技術顧問として活動をされ、これは今後この場で究明が行われると思いますが、かつ、その議員団と一緒に視察をし、かつ、記者会見を行って、ある種の政治的な主張の補強となるような発言を行っていた。これを全く問題ないというふうにおっしゃるというのは、私は、これはもう本当に、規制委員会の政治的中立性というのは地に落ちたというふうに考えます。

 済みません、井上副大臣、お忙しいところ御出席いただき本当に申しわけないんですが、所管官庁の環境省として、今のやりとりを聞いておられたと思うんですが、いかがでしょうか。

 私は、ぜひ、環境省政務三役、御出席いただいたんですが、環境省サイドとしても、これは議論の中身に容喙するとかそういうことじゃございません、政治的な中立性を行政機関として担保するというのは非常に重要なことだと思うんですが、これについて、所管官庁の環境省として、ぜひ適切に規制委員会を指導監督していただきたいと思いますが、井上副大臣の御見解をよろしくお願いします。

井上副大臣 環境省としては、こういった原子力利用における安全の確保について、御指摘のような指導監督を行う立場にはありません。三条委員会である原子力規制委員会が、科学的、技術的見地から、独立して職権を行使することとするというふうに考えております。

細田(健)委員 確かに、三条委員会ということで、なかなか限界があると思いますが、ぜひこの問題について引き続き注視していただきたいというふうに考えております。

 もう一度繰り返しますが、先ほど、委員長、私は、原子力規制委員会の政治的中立性は地に落ちたんじゃないかというふうに考えていると申し上げました。

 こういうような状況を招いた委員長の責任というのは、私は重大だと思いますし、また、この場であるとか、あるいは、今席を外されているんですが、与党の塩崎先生のプロジェクトチームの場を通して、いろいろな事実究明と是正を引き続き求めてまいりたいというふうに考えておりますけれども、委員長として、こういう指摘を受けるような状況を招いた責任についてどういうふうに考えておられるのか、ぜひ御見解をお伺いしたいと思います。

田中(俊)政府参考人 私どもは、以前から申し上げておりますように、政治的な観点には立たないで、科学的、技術的な観点、中立性を持って判断するということに努めております。

 そういう意味で、先生がどのように御判断されるかは、これは私の承知するところでございませんけれども、決して、科学的、技術的中立性というものをきちっと守っているということについては、何ら恥ずべきことはないというふうに思っております。

細田(健)委員 政治的な中立性は大事だと言いながら、先ほどるる申し上げたように、それをみずから破壊するようなことをしておられるわけですね。

 特に、傘下の有識者会合に属する方が政治的中立性に全く欠けているという行動をとっているにもかかわらず、それを見過ごしておられる、問題ない、こういうふうに強弁をしておられる。この問題については、引き続きぜひいろいろな場で取り上げていきたいというふうに考えております。

 本日の質疑は以上で終わります。ありがとうございました。

森委員長 次に、菅野さちこ君。

菅野委員 おはようございます。自由民主党の菅野さちこでございます。本日は質問の機会をお与えいただきまして、ありがとうございます。

 冒頭、私なりの思いから述べさせていただきます。

 福島第一原子力発電所事故は、発生から間もなく三年五カ月がたとうとしています。福島はこれまで、国内外の方々から心温まる多くの人的、物的支援をいただきました。福島県民を代表いたしまして、改めて心から感謝を申し上げます。

 また、現自民党政権による、前民主党政権下で設定された短絡的な避難指示区域の見直し、被災地の心に寄り添った救済を目指し、少しずつ復興に向けた取り組みが形となって現実化してきたこと、そして、まず第一に、希望という文字が描けること、これが前政権下との大きな違いであります。

 しかし、福島には今なお十三万人を超える多くの避難者の方々が、厳しい環境の中で避難生活を余儀なくされています。さらには、福島と名がついているための風評被害、汚染水のトラブル、廃炉に向けた取り組み、原発事故の収束、将来にわたる健康に対する不安等、これからも大きな課題を、困難を乗り越えていかなければなりません。

 これらの諸課題を、国は原発を推進してきた責任者として、不安を改善し、県民が以前のような安心して住める県土を取り戻すこと、今後も引き続き復興を推進していただくことを強く求めます。

 私も福島県出身の議員として、本日は、十五分という限られた時間ではございますが、細田健一委員に引き続きまして質問をさせていただきます。

 まず最初に、避難生活からの早期帰還についてお尋ねいたします。

 早期帰還・定住プランが示されてから一年五カ月が経過しようとしています。福島第一原発の安全性確保、廃炉の確実な実施等、まずは環境整備、帰還準備の本格化を迅速かつ丁寧に進め、早期の帰還実現を行えるよう努めていただくこと。それと同時に、復興の確かな一歩として、住民の皆様が一日も早く帰還し、生活再建が進むように、円滑な賠償を実施していただかなければなりません。

 そこで、お伺いいたします。

 帰還に向けた現在の状況、賠償の実施状況、また、今後の早期帰還の見通しをお聞かせください。

熊谷政府参考人 お答え申し上げます。

 被災者の方々の中には、戻りたいと考えておられる方、また、戻らないと考えておられる方々、また、判断に迷っておられる方々、さまざまな方々がいらっしゃいます。

 復興庁といたしましては、こうしたさまざまな住民の声に応えるために、早期の帰還を求める地域につきましては、安全、安心対策の具体化、また、農業、商工業再開のための環境整備に努めているところでございます。また、長期にわたり避難を余儀なくされる地域につきましては、町外コミュニティーを整備し、また、新しい生活を選ぶ方には、復興拠点の整備などを通じて福島の復興に取り組んでいるところでございます。

 こうした中、例えば、本年の四月一日には田村市都路地区の避難指示が解除されましたけれども、これに続いて、現在、川内村において避難指示解除に向けた議論が進んでおります。

 川内村の避難指示解除準備区域につきましては、避難指示解除の要件がおおむね満たされたということから、帰還準備のための特例宿泊を実施しているところでございますけれども、村や住民の方々とは避難指示解除に向けた意見交換会を数回にわたり開催しておりまして、今後、これらを踏まえて、避難指示解除の具体的な時期を判断していきたいと考えております。

 また、楢葉町におきましては、本年五月、町から、平成二十七年度春以降の帰町を目指すという旨の発表がございました。七月には仮設の共同店舗もオープンしたところでございます。今後、町や住民の方々と避難指示解除の具体的な時期等について議論を進めてまいります。

 今後とも、新たに創設いたしました福島再生加速化交付金の活用ですとか、あるいは地元自治体との緊密な連携などを通じて、被災者の方々の一日も早い早期の帰還を実現し、また、生活を再建できるよう全力を尽くしてまいります。

菅野委員 ありがとうございました。一日も早く帰還できるよう、政府の力強い取り組みをお願いいたします。

 続きまして、中間貯蔵施設の問題についてお尋ねいたします。

 先月二十八日、政府から、中間貯蔵施設建設候補地の大熊町、双葉町に対し、地元要望に基づいた回答がなされましたことは周知のとおりであります。現在まで用地は全面国有化との方針でしたが、期間三十年の地上権を設定することも選択肢として示されました。将来、地元に戻る意思のある方々や、先祖伝来の大切な土地を手放さずに済むようになるなど、地元の要望に配慮された回答をいただけましたことは前進であり、評価したいと思います。

 中間貯蔵施設が着工できることで、汚染土壌等が保管され、除染のスピードアップ、ひいては住民帰還への新たなる一歩となると考えております。

 そこで、お伺いいたします。

 政府が目標とする来年一月までの着工計画はどのような状況でしょうか。また、建設合意を得られましても、その先にある汚染土の搬入計画は策定されておりません。渋滞、事故等の対策ともなる道路整備、周辺住民への被曝防止策、周辺の自治体への支援等も早急に計画を立てていただき、地元へ丁寧な説明を示していかなければなりませんが、その点の計画、進捗状況等、あわせてお聞かせください。

三好政府参考人 中間貯蔵施設につきましてのお尋ねにつきましてお答えを申し上げます。

 まず、先生御承知のとおり、現在、私どもといたしましては、県及び大熊、双葉両町に施設の受け入れのお願いをさせていただいている状況でございます。

 御指摘のとおり、先月二十八日には、住民説明会の御意見等を踏まえた国の考え方を県及び二町にお示ししたところでございますけれども、交付金の規模等まだ提示に至っていない事項もございまして、引き続き、国として具体化を進めましてお示しをしたいというふうに考えている状況でございます。

 一点目、着工についてのお尋ねがございましたけれども、着工いたすためには用地を取得し詳細設計をし工事をしていくということでございますけれども、これは当然のことではございますけれども、受け入れの御判断をいただいた上で段階的に進めていくべきものというふうに考えているところでございます。

 なお、二十七年一月搬入開始を目指しております。スケジュールが厳しくなっていることは事実でございますけれども、引き続き、政府一丸となって全力を尽くしたいというふうに考えております。

 それから二点目、輸送につきましてのお尋ねでございます。

 輸送につきましても、非常に重要な課題であると認識しております。福島県内のほぼ全域から大量に輸送することとなりますので、先生御指摘のとおり、住民の健康でございますとか、生活環境はもちろんのことでございますし、渋滞等、一般交通に対する影響を抑制しまして、安全かつ効率的に輸送を行うことが必須であるというふうに考えております。

 そのため、渋滞や事故、被曝対策などを含めた輸送に関する安全対策、効率化等について検討することを目的として有識者から成る検討会を環境省に設置いたしまして、議論を深めているところでございます。今後、できるだけ早く輸送基本計画を取りまとめたいというふうに考えております。

 さらに、実際に輸送していくためには、基本計画に基づいて、関係機関と調整しつつ、より詳細な実施計画を策定していくことが必要と考えております。関係住民にもしっかりとお示しをいたしまして、適切に除去土壌等の輸送が行えるように努めてまいりたいというふうに考えております。

菅野委員 ありがとうございました。中間貯蔵施設の進展が復興を加速化させることになると思いますので、今後も政府の力強い取り組みをお願いいたします。

 最後に、規制委員会の体制と今後の課題についてお尋ねいたします。

 各委員に専門の担当分野が割り振られており、合議制の委員会として機能していないのではないかとの御指摘をお聞きします。各委員は、それぞれ活断層や放射線防護などの受け持ちを持ち、みずから原子力規制庁の多くの職員を率いて職務を遂行されておられますが、これが縦割り型組織となり委員会の視野を狭めたりするおそれはないでしょうか。委員会は、一人一人がゼネラリストとして多角的な視点から議論を交わすことを通じ、一人では困難な総合的な判断が委員会としてできるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。日々の審査は規制庁に任せ、委員会は規制庁が下した判断を独自の視点から精査、吟味し、可否を判断する役割こそが求められているのではと考えます。

 また、専門的人材の育成システムを構築することも必要不可欠であると考えます。内外の研究機関、海外の規制機関等と緊密に連携していく仕組みづくりを求めていく必要があると考えます。高度な知識と経験にまさるものはありません。そのための中期的、段階的計画をお立てになる予定はあるのか、お尋ねいたします。

 そして、立地自治体や住民が一番心配しているのは、万が一事故が起きたときに、放射性物質が拡散しない手だてが講じられているのか、避難計画は万全なのか、損害賠償の支払い体制が速やかに整えられるのかを明確にすべきだと考えます。以上、政府のお考えをお聞かせください。

 また、自然災害以外においても、さまざまな有事による被害等へどの程度の範囲まで対応策をお考えなのかもあわせてお聞かせください。

田中(俊)政府参考人 各担当委員の専門性だけで合議制が足らないのではないかという御指摘でございますけれども、まず、もともと規制委員はある程度原子力についての専門性を持つということが要件になっております。

 そういうことで選んでいただきました委員でございます。そういった委員の専門性を生かしつつ、委員会としての議論のもととなる検討を指導していただいております。最終的には、原子力規制委員会としてのいわゆる協議をして、議論をして、判断、決定を行っているということでございます。

 その過程については、全ての議論について公開をしておりますけれども、必要に応じては、改めて国民の皆様の御理解が得られるように御説明も、要請があればそれに応じていくという基本方針でおります。

 また、ゼネラリストということでございますけれども、そういうことでございますので、ゼネラリストというのは一体どういったものかというのは、私自身もちょっと今よくわからないところもありますけれども、全体として五人の委員が協議をして決定しているということを御理解していただきたいと思います。

 また、研究機関についての御指摘がございました。

 以前から申し上げておりますように、原子力の安定した利用、あるいはこういった規制の安定した継続を行うためには、人材の育成、それから専門的知識の涵養というのは非常に重要であります。そういう意味で、私どもも、人材育成センターを設けると同時に、先般三月には、JNESという、外部にありました我々をサポートするような機関も統合しました。

 ただ、それだけでは足りませんので、今後とも引き続き、こういったことについては内外の協力を得ながら、私どもの専門的な人材と知識の涵養に努めてまいりたいというふうに考えております。

竹内政府参考人 事故に対する対策についてでございます。

 福島第一の事故を踏まえまして、昨年七月に施行されました新規制基準におきましては、重大事故、シビアアクシデントを起こさないための対策に加えまして、万一シビアアクシデントが発生した場合への対策としまして、炉心損傷の防止、格納容器の破損の防止、放射性物質の拡散の抑制のための対策を求めているところでございます。

 また、テロに対する備えといたしましては、意図的な航空機衝突などでプラントが大規模に損傷した状態においても、消火活動の実施や、炉心や格納容器の損傷を緩和するための対策を求めているところでございます。

田中(正)政府参考人 原子力損害賠償の支払い体制についてのお尋ねにお答え申し上げます。

 原子力損害賠償法は、原子力事業者が無過失でも全ての損害賠償責任を負うとともに、賠償を行うための措置として、一万キロワットを超える原子炉につきましては千二百億円の損害賠償措置を講じておくことを原子力事業者に義務づけてございます。

 これに加えまして、原子力事業者が原子力損害賠償責任を負う額が千二百億円を超えると見込まれる場合には、原子力事業者からの申し込みによりまして、原子力損害賠償支援機構が原子力事業者に対して、損害賠償の履行に充てるための資金交付などの資金援助を行うことができることになっております。

 また、被害者の方々を迅速、公平かつ適正に救済するために、原子力損害賠償法に基づきまして、原子力損害賠償紛争審査会を設置し、当該事故による原子力損害の範囲の判定の指針の策定や、賠償に関する紛争についての和解の仲介等を行うことになってございます。

 今後、万が一原子力事故が発生した場合であっても、このような制度のもとで賠償の迅速かつ適切な実施がなされることになってございまして、国としても果たすべき役割をしっかりと果たしていきたいと考えてございます。

黒木政府参考人 避難計画は万全なのかの御質問でございます。

 現在、関係する百三十五市町村のうち八十三の市町村において避難計画を策定いたしておりまして、政府としても、関係省庁挙げて、関係道府県、市町村の地域防災計画、避難計画の策定や充実化を支援しているところでございます。

 地域防災計画や避難計画は、一度策定したら終了、あるいはこれで万全なんだというものではございませんで、計画、そして訓練の実施、改善点の抽出、また計画の修正、また訓練、そして改善点の抽出、こういったプロセスを息長く継続的に行っていくことが一番重要であると考えております。

 以上であります。

菅野委員 ありがとうございました。

 一度事故を経験したからこそ、想定外という言葉だけは二度と聞きたくありません。規制委員会や関係省庁のしっかりとした取り組みを今後もお願いいたします。

 結びの言葉を用意してまいりましたが、時間になりましたので、これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

森委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 民主党・無所属クラブの辻元清美です。

 先日、原子力規制委員会は、十六日になりますけれども、再稼働を目指す九州電力川内原発が新規制基準に適合しているとする審査書案を了承いたしました。

 この後、安倍総理は、再稼働に向けて進めたいというような発言も昨日もされておりますけれども、本日は、これを了としていいのか、そして再稼働に向けて進めていいのか、多方面から、田中委員長を中心にお聞きをしていきたいと思います。

 それに先立ちまして、九州電力は当事者のお一つですから、九州電力を本委員会にお呼びして、そして、この安全基準、どのように対策をなさったのか、直接私は質問したいということでお願いいたしました。しかし、自民党の反対で九州電力をこの場にお呼びすることができなかったことをまことに遺憾だと思っております。

 引き続き九州電力の出席を求めてまいりますので、委員長、お取り計らいを引き続きよろしくお願いいたします。

森委員長 本件につきましては、さきの理事会で委員長としての判断をいたしましたので、原則として御了承願います。

辻元委員 御了承願いますということはできません。

 というのは、この再稼働をめぐる議論は、国民が非常に関心を持っております。ですから、電力会社も堂々と国会の委員会に出席して、これで万全だという対策をお出しになった当事者ですから、やはり各委員の質問にも、国民の代表者たる委員の質問にも私はお答えになるべきだと思いますので、引き続き、後でこの件は申し上げますけれども、要求してまいりたいと思います。

 まず最初に、火山の問題についてお聞きをいたします。

 この川内原発をめぐる自然災害で最も脅威となるのが、周辺に五つあるカルデラの巨大噴火と言われております。これは、他の原発とちょっと事情が違う特殊事情であると思います。

 まず最初に、田中委員長にお聞きします。

 九州電力は、今回、巨大噴火の予兆は数十年前に察知できるという前提なので、そのときに対処を検討するという方針をお出しになって、そして田中委員長も、破局的噴火は相当前から予知できるというような御発言も今までされておりますが、この認識でよろしいでしょうか。

田中(俊)政府参考人 まず、原子力発電所の火山に対する対策、これを審査するに当たっては、火砕流などの設計対応不能な事象が発電所の運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分に小さいかどうか、ないかどうかということを確認するということにしております。

 申請者によりますと、川内原発に一番近いカルデラは姶良カルデラと言われるところでございますけれども、姶良を含む鹿児島地溝での破局的噴火の平均発生間隔は九万年以上と言われています。

 最新の破局的噴火からの経過時間は約三万年でございますので、今後しばらくの間は、相当長期にわたってそういった活動はないものということでございますが、念には念を入れて、GPSによる地殻変動等の観測データとか、微小地震の震源分布、あるいは地下の地震波速度構造等について、マグマ供給の状態を随時観測、モニタリングをしていくということによって、そういったカルデラ噴火の予兆を早急に、早期に見つけるということにしております。

 そういうことで、そういった歴史的な状況も踏まえ、また今の現在のいろいろなGPS等のデータ等を踏まえまして、私どもとしては、本原子力発電所の活動中にこういったカルデラ噴火の可能性は十分小さいということで判断したところでございます。

 ただし、そうは申しましても、先ほど申し上げましたように、こういったものについては自然現象でございますので、十分にそういったモニタリングについてはきちっと行っていく、そのモニタリングのデータの解析についてもきちっとやっていく、継続的にやっていくということで対応しているところでございます。

辻元委員 今、原子力発電所の稼働中、この期間は影響が出ないだろうということですが、どれぐらいの期間を想定されているわけですか。

田中(俊)政府参考人 法律では、設置から四十年、さらに延ばして二十年ですから、最大六十年です。川内はもう三十年たっていますから、仮にこれから延ばしても、三十年ぐらいの間にはそういったことは起こらないというふうに判断しています。

辻元委員 この津波のときも、千年に一回ということで、起こらないだろうと。津波の問題についても、多くの議員が委員会でも指摘してきた。しかし、起こらないだろうということでした。

 特に、この火山の噴火について、ピナツボ火山、これは巨大噴火ではございませんけれども、あれが起こったとき、私ははっきり覚えております。クラーク空軍基地も全部使えなくなりました。ですから、この知見が、九万年だろうということが言われていますということなんですね。

 そこで、お聞きしますけれども、先ほどGPSなどを使ってということですが、委員長がおっしゃっているように、破局的噴火は相当前から予知できるというこの点についてはいかがですか、そのとおりだとお考えですか。

田中(俊)政府参考人 今、姶良カルデラの破局的噴火が起こるということになりますと、大体どれくらいの噴出量になるかといいますと、大体山手線ぐらいの広さで、深さが一キロぐらい……(辻元委員「予知できるかどうか」と呼ぶ)

 その程度の噴火が起こるということになりますと、相当量のマグマの供給がないと、そういった爆発には至らないということでございますので、そういうことを考慮しますと、マグマがそれだけたまってくれば、相当いろいろな地震も起こりますし、地形変動も大きくなってくるということで、ある程度それは予測できるのではないかというふうには判断しておりますが、今後とも、そのカルデラ噴火についての研究が十分かどうかということになりますと、なかなか、カルデラ噴火がもし仮に起こりますと、かつての歴史からいうと、九州全域がほとんど人が住めなくなるような状況になりますので、そういったことがありますので、火山学者も余り研究をそこにタッチしてきておりませんでした。

 そういうことを踏まえて、今回は、そういうことではなくて、こういう機会ですから、そういった研究もぜひプロモートしていきたい、そのように考えています。

辻元委員 今、幾つか重要なことをおっしゃいました。マグマがたまると地震が起こるんですか。今、委員長はそうおっしゃいました。そういう予兆があるという御認識ですね。

 それから、もう一点。かつての噴火のようなものがこの地域で起これば、九州全域が影響を受けるということでよろしいですね。

田中(俊)政府参考人 一般の火山でもそうですけれども、火山が起こる予兆として、マグマがたまってくると微小地震が相当頻発してくるということで、今、一般の火山についてはそういった火山予知ということが行われております。そのレベルによって、気象庁がいろいろな警報を発しているというふうに承知しております。

 それから、歴史的に見ますと、いわゆるカルデラ噴火が起こったときは非常に広範な範囲にその影響が及ぶということも、これも歴史的事実でありますので、そういったことを踏まえて申し上げたところでございます。

辻元委員 実は、この件は、私は、政府に対して質問主意書を何回も出しております。これへの政府の答弁は、六月二十七日付答弁書ではこのように答弁されています。「カルデラ噴火については、その前兆を捉えた例を承知しておらず、」かつての噴火が起こったときの「例を承知しておらず、噴火の具体的な発生時期や規模を予測することは困難である」、これは、質問主意書での政府の正式な答弁なんですよ。このとおりでいいんですか。

 そうすると、九州電力は、予兆は数十年前に察知できるということが前提なので、そのときから対応を検討すると言っていることを了としているわけですけれども、矛盾するんじゃないですか。いかがですか。政府は、予測できないと質問主意書で答えているわけですよ。いかがですか。

田中(俊)政府参考人 予測というのは、非常にいろいろな幅広い概念がありまして、あした起こるかもしれないとか、一年後か、十年後か、百年後か、そういう非常に大きなスパンであろうと思います。

 通常、気象庁等が発表しております火山予知というのは、火山活動が活発になってきましたから注意してくださいというようなことが出ますのが、大体一年ぐらい前から出ているように私は承知しております。

 そういった精度での予測ができないということを申し上げているのであって、確かに、先生御指摘のように、カルデラ火山は、先ほど申し上げましたように、そういった精度で予測できるような状況には全くないということは確かであります。

辻元委員 では、今、予測は一年ぐらい前とおっしゃって、予測はできない、しかし、予兆はある。予兆は何年ぐらい前にあると考えられているわけですか。

田中(俊)政府参考人 外国の例が一件あるだけでございますけれども、これは、相当、数十年前からそういった予兆はあるように伺っておりますけれども、そういった研究の例が非常に少ないということがありますので、今後、日本としては、やはりそういったきちっとした研究調査をしていくべきだというふうに思っています。

辻元委員 その例は、数十年前というのは、二十年前ですか、五十年前ですか。これはその後の対処方針と随分かかわってくるので、委員長はその例をおっしゃったので、数十年前というのはどれぐらい前のことを指しておりますか。

櫻田政府参考人 今、直接の御質問のありました、委員長の答弁したところのその期間について、今正確な数字を持ち合わせておりませんけれども、川内原子力発電所の審査においては、海外の知見あるいは論文等を用いまして、九州電力が、こういう知見があるというその中で、十年単位あるいは百年単位の間隔で通常の状態から外れたような状態になる、そういうような知見が紹介されたということがございました。

 私どもが今審査をしている段階で申し上げておりますのは、先ほど冒頭に委員長が申し上げました、現時点において、この発電所の運用期間中にカルデラ噴火のようなものが起きるかどうか、その可能性がどのくらいあるのか、そういう話をしているわけでございまして、実際にカルデラ噴火に至るようなことがこれから観測できるのかという話とはちょっと違いまして、現時点において、これまでの状況を見ている限りにおいて、発電所の運用期間中にカルデラ噴火が起きるような可能性は十分小さいという、その点については私どもとしては了とした、こういうことでございます。

 今後、モニタリングを進めていく。モニタリングを進めていく中で、どのような兆候を把握したときに事業者が措置を講じることにするのか、こういったことについては、今のところまだ詳細なところは決まっておりません。

辻元委員 予兆は一件しかないと。それで、今十年か百年と言ったんですよ。物すごくあやふやで、かつ、いや、九万年らしい、それで三万年前にあったらしいからないと。しかし、大噴火が起こったら九州全域が破壊されるという御答弁なんですよね。

 では、お聞きしたいと思いますけれども、今回、それは九州電力の言っていることをうのみにしていると思いますよ。というのは、お一人の火山学者にしかヒアリングしていないんじゃないですか。

 このヒアリングされた学者の方が憤っていらっしゃいます。何らかの噴火の前兆はつかめるが、それは大きな噴火か小さな噴火のままの兆候か、火山学的にはその時点ではわからない、何が起こるかわからない、いつ起こるのかもわからないと。ところが、そういう発言をしたが、大きな噴火の前兆を捉えられるという話にすりかえられてしまったというように発言をされています。

 九州電力は、予兆があるから、予兆があったときに対策をすればいいということを示しているようです。GPS、先ほどおっしゃった観測などで噴火の予兆を監視し、カルデラ周辺の地盤の動きなどで異常が確認されれば、原発をとめて核燃料を緊急輸送すると言っている。予兆があったら原発をとめて核燃料を緊急輸送する。

 それでは、委員長にお聞きしたいですけれども、核燃料を緊急輸送する場合に、放射線と高熱を発していますので、はいはい、こっちからあっちと輸送できないですよね。核燃料は、緊急輸送する際においても、何年間ぐらいプールで冷やしてからじゃないと動かせないとお考えですか。

田中(俊)政府参考人 通常の使用済み燃料の輸送の場合には、ミニマム三年、五年程度冷却してから燃料を運ぶというのが普通になっております。

辻元委員 五年程度とおっしゃいました。そうすると、予兆を観測して五年程度まず冷やしておかなきゃいけない。

 さっき、予兆の間隔はどれぐらいかといったら、十年か百年かというとても曖昧な御答弁をされましたけれども、では、これは九州電力が原発をとめて核燃料を緊急輸送するんだと言っているので、この点に絞って幾つか。

 まず、五年ですね。そうすると、この対策を了とするに当たって、万一あったとき、緊急輸送で核燃料を別の場所に輸送し終わるということは、川内原発の中にある核燃料をどこかに輸送するわけですから、受け入れてくれる相手も見つけておかなきゃいけないですよね、あらかじめ。そういうことを全て終了するまでは何年ぐらいと見ているんですか、緊急輸送が終わるまで。

 どういう計画で、どこに。もう予兆があったから冷やしておかなきゃいけないし、今からどこに輸送するかを探して相手と交渉して、それから、核燃料を輸送する際の容器というのは非常に特殊な容器が必要ですから、それを用意して、しかし、緊急輸送するということを出していますけれども、いや、起こりっこないからそこまでしなくていいよ、予兆はどうせ来ないから、予兆が来たときにやればいいよという方針なのか、緊急輸送する場合はどこに輸送するということを、火山のリスクがあるから、一たび起こったら九州全域だから、この危険性があるから今から用意をしておきなさい。どちらですか、委員長。

田中(俊)政府参考人 緊急時の燃料の搬出、輸送に関しては、燃料体の種類とかその状態、それから、数量、輸送容器の仕様等によりますので、そういったことについては検討しておく必要があると思いますけれども、今ここで、どれくらい期間がかかるかとか、そういったことについて一概にお答えすることはちょっと困難でございます。

辻元委員 なぜかといいますと、火山は特殊なんですよね。福島の教訓を生かして、津波等についてはかなり議論もされました、地震についても。しかし、火山については全く手つかずだからこそ、ここを一番手厚く議論して対応を考えておかなきゃいけない点じゃないんですか。委員長、いかがですか。

 今みたいな、いや、それは、ここでそこまで対応しなきゃいいというようなあやふやな対応で、この審査書を了としていいんですか。いかがですか。それとも、もうやはり火山の噴火はないからいいや、どっちですか。どこまでやるんですか。委員長です。ちょっと委員長、どこまでやるんですか。どこまで対応させるんですか。もう一回言ってください。

田中(俊)政府参考人 火山を含めまして、今回、初めて新しい規制基準でこういったことについての審査を始めたところでございます。

 ですから、火山はいいやというような判断は全くしておりません。火山による影響の重大性ということについても十分に審査をして、火砕流が届くような場合にはそこは立地不適当という判断をしておりますし、仮に届かない場合でも、火山灰が川内の場合は十五センチ、これまで桜島の噴火なんかで最大積もった火山灰の量が大体十二センチ程度ですので、それに余裕を見て十五センチ程度の降灰があってもきちっと安全が確保できるようにというようなことで、火山に対しては相当慎重に審査をさせていただいております。

辻元委員 火山灰の話が出ましたが、現地で私、バス会社の人とかにいろいろヒアリングしたら、火山灰が十五センチたまったら車は走れないと言っているんです。原発の構内の車は走れませんよ。それで、これも九州電力が、四十三人がたしか八交代で火山灰をかき出すんだというのを書いていますけれども、そんなことで対応できないです。

 私が申し上げているのは、緊急時に燃料棒を取り出すと、大噴火の場合の話、これは不十分じゃないかと申し上げているわけですよ。

 今いろいろ確認しましたけれども、ではどこに持っていくのかも含めて、それは予兆があってからでいい、そういう準備は事前にしなくていいということですか。もう一回確認します。委員長です。

櫻田政府参考人 先ほど予兆の時間間隔の話を申し上げましたが、先ほど私が答弁したのは、十年と言ったわけではなくて十年単位という話を申し上げました。

 今ちょっと手元に正確な資料が参りましたので、そこを一言だけ申し上げますと、九州電力が提出したその文献によりますと、これまでに観測されたカルデラ噴火について、噴火直前の約百年程度の間に急激にマグマが供給されたという推定がある、こういうようなことが一つありまして、先ほど十年単位、百年単位と申し上げましたけれども、正確には、九州電力の文献によれば、百年程度というふうに言っておりました。

辻元委員 それは、九州電力が提示した文献によれば。今までの保安院のときと一緒ですよ。それを審査するのが規制委員会じゃないですか。九州電力がこういう文献を提出しているけれどもそれは正しいのか。万一のときに、一番最悪のケースのときにどういう対応をさせるか、具体的な案を、火山について、燃料棒を緊急輸送するというならばどこにするのかということも含めて、いついつまでに決めなさい、そうじゃないと認められませんよというのが規制委員会の姿勢じゃないですか。

 九州電力の文献をうのみにして、委員長は火山の被害は大きいと言いました、それを確認する、確信を持つという作業はしていないんですか。いかがですか、委員長。委員長にお聞きしているわけです。

田中(俊)政府参考人 先ほどのお答えの繰り返しになるかもしれませんけれども、川内原発の運用中にカルデラ噴火が起こる、要するに、火砕流があの地域に押し寄せるような状況はないだろうという判断をしておりますが、念のためにきちっとモニタリングをして、仮にそういった状況が、予兆が見えた場合には適切な対応をとるということでございます。

 いろいろ御意見があろうかと思いますけれども、先生御指摘のように、そういったことはできるだけ事前に準備をしておくということも大事なことだろうと思っております。

辻元委員 この川内原発は、そもそも、五つのカルデラに囲まれて、火山のリスクが世界じゅうで一番高いと思いますよ。もともと設置基準が甘い時代に、普通であれば、厳しい基準であれば、こんなところに原発が建てられないというところに建ててしまっているわけですよ。建ててあるから、それを何とか、再稼働の申請も出ているから審査しなきゃいけない。

 委員長にお聞きします。

 このような立地条件、五つのカルデラに囲まれて、かつての大噴火で九州一円が大きな被害を受けるという場所に、新しい原発を立地したいといったら認めますか。どうですか。

田中(俊)政府参考人 先生が今御指摘のような条件というのが、やや仮定に基づいているので何ともお答えしようがないので、やはり、その場合には、そういったことも含めてきちっと考慮した上で審査をして判断することになるだろうというふうに思います。

辻元委員 先ほど、かつて大きな被害があったと。もうそれだけでここは立地不適切なところに、甘い基準時代に建ててしまった。その川内原発を一番最初に審査して、では、もしも大爆発があったら、避難計画の中身はどうかというと、いや、九州電力がこんな文献を持ってきました、それを基準に判断をしていますと。何のために規制委員会をつくったのか。

 これだと、この避難計画というか対処方針も含めて、絵に描いた餅ですよ。それで太鼓判を押していると言わざるを得ないですよ。

 では、仮に、火山の噴火等も含めて災害が起こったときの避難についてはどうなのか。これをもう一点お聞きしたいと思います。

 今回、川内原発から三十キロ圏内、これは、かつての噴火だと火砕流も届いているところ。また、地震や他の自然災害による災害が起こったとき、要援護者、特にお年寄りや病人の搬送が非常に難しいです、その避難。

 今、この鹿児島県の三十キロ圏内の、十キロから三十キロの範囲のそれら施設では、どれぐらい避難計画は立てられているんですか。

黒木政府参考人 お答えいたします。

 要援護者施設のうち、医療機関ですけれども、五キロメーター圏内に一、五から十キロ圏内に一、十から三十に八十三、合計……(辻元委員「十から三十で」と呼ぶ)十から三十に八十三施設の合計八十五施設ございますけれども、医療機関について申しますと、この二施設につきましては避難計画が策定されております。残りの八十三施設の十から三十キロメートル圏内については、現時点においてはされておりません。

 次に、社会福祉施設につきましては、川内原発から五キロメーター圏内に六、五から十には九、十から三十には百四十四施設、合計百五十九施設ございますけれども、同じく、十キロメーター圏内の十五施設につきまして避難計画は作成されておりますけれども、残りの百四十四施設については避難計画は作成されておりません。

辻元委員 残りの十キロ圏内以外の施設、これは福祉関係の施設ですが、策定されていないという現状なんですね。

 そして、さらに、鹿児島県の知事が、先日、十キロまでは作成します、私はそれで十分だと思っているんですね、三十キロまでの要援護者の避難計画は現実的ではありませんと知事が発言しているわけです。

 政府にお伺いしたいんですけれども、三十キロ圏内までの要支援者については、知事が言うように、現実的ではないし、必要ないというので政府はよろしいんですか。

黒木政府参考人 鹿児島県によりますと、十キロメートル以遠のUPZの要援護者施設の避難先につきましては、県が避難先施設を調整する仕組みを整備し、これによって対応することを基本とすると伺っております。

 これは、緊急時の対応の柔軟性を確保する観点から、複数のUPZ施設について複数の避難先候補を準備しておく、そういう方法でございまして、避難を要する施設の入所者数が一定ではない、また避難先の状態も一定ではないという中で、要援護者施設の避難について、それを適切に行うためには十分合理的な対応であると考えております。

 すなわち、十キロメーター圏内、五キロメーター圏内もそうなんですけれども、そこにつきましては、きちんと一対一対応で、一対一というか一対多対応でも十分な避難ができるような形での体制は組んでおります。

 問題は、十キロメーター以遠というのは大変多くなります。その際に、一対多あるいは一対一の対応の計画をつくったところで、現実問題としてそれはワークしないであろうというのが一つの判断であろうと思います。

 その際には、御案内のとおり、UPZの避難でございますので、若干時間的余裕もあるということもありますけれども、その際は、どこの施設に入ってほしいということを鹿児島県の方で緊急に調整する仕組みをつくるというふうな形で対応する、事前には一対一対応はしないというようなことだと思っております。

 以上であります。

辻元委員 今、事前にはしない、緊急にとおっしゃいましたが、では、事故が起こってから対応するということですか。それで県はよろしいというのが政府の認識ですか。

黒木政府参考人 避難計画といった場合には、恐らく二つの要素があると思います。つまり、避難単位と、その避難するところがどこに行くかという問題、この問題が一つ。二つ目が、それに伴って、例えば、そういった施設から、要するに、一体県のどこに連絡をするんだというふうなこと。そういった問題、二点があると思います。

 第一点目に関しましては先ほど説明したとおりでございまして、それについて、事前の段階で、そういう形の一対一の対応を一〇〇%求めておくということ自体が必ずしも合理的ではないというようなことも言えようかと思います。

 と同時に、後者の問題、つまり、誰がそういった緊急の事態に、誰に一体連絡して調整してもらうんだという仕組み、この仕組みというのはきちんと整備しなきゃいけない、これは事前にやらなきゃいけないというふうなことがあります。要するに、そういった意味での調整のメカニズムを事前に整備していただくといったところが、国がお願いしておるところでございます。

辻元委員 三十キロ圏まで広げると要援護者は一万人いるわけですね。ですから不可能だろうということですね。いかがですか。

黒木政府参考人 その点について鹿児島県の方といろいろ協議しておるところでございますけれども、基本的には、その点については、鹿児島県は乗り切れるという判断をしております。

辻元委員 その根拠は、乗り切れる。

 乗り切れると言っているので、政府としてはそれを了とするのか。それとも、政府は判断する立場にないから、鹿児島県がそう言っているし、三十キロ圏内まで具体的な計画は立てるのは無理だろうというのもよくわかるので、まあいいやということですか。政府はどういう立場にあるんでしょうか、アドバイスする立場ですか。

黒木政府参考人 政府の立場というのは、御案内のとおり、原子力災害対策指針、これは原子力規制委員会がつくっております。要するに、そことの整合性という問題が一個あると思います。

 そういった面からいうと、今の鹿児島県のスキーム自体、よくよくお話を伺いますと、今申し上げたとおりでございますけれども、なかなか、一対一対応でつくったところで、その一対一対応が現実に実現できる可能性は、これははっきり言って、原子力災害でございますので、どういうような形で展開するかわからないといった面もあります。そういうので、一対一対応をつくったところで、恐らく実現できない可能性も強いであろうと。

 現実問題、今、PAZの圏内におきましては、一つの施設に対して、その収容者に対して、かなりの余裕を持った形での避難先を用意しております。

 では、そういった形を三十キロメーター全体にできるかというと、なかなかそれは難しいということ。それをやったところで、恐らくまたいろいろと動かさなきゃいけない、調整しなきゃいけないという話が出てきますので、そういったことを考えた場合には、鹿児島県さんが言うように、それができるという前提は、恐らくそれは、話を伺う限りでは、コンピューター等々のシステムでそれはマッチングが十分可能であるという話でございましたので、それはそれで了としたところであります。

辻元委員 停電する可能性は十分あると思いますよ。

 それに備えをしていたとしても、福島のときに、要援護者の避難について死亡者も出ています。そして、これが一番難しいオペレーションだったんですよ。だから、それはやはり難しくて、混乱しているから、県がそのときになったら対応する、コンピューターシステムなどを使って、これでは全然、三十キロ圏内の人たちに対する、特に要援護者に対する避難計画が立てられている、政府は立てろと書いてあるわけですよ、そういうルールになっていますよね、その入り口にも入っていないと私は思います。

 そんな中で、特に川内原発につきましては、周辺自治体から、住民の半数が、避難計画、特に三十キロ圏内まで心配だと、これは当たり前だと思うんです、住民からとれば。福島の混乱を見て。そして、いや、それは現実的に不可能だからということを今、知事がおっしゃっただけでもびっくりしましたが、政府もそういう方針という中で、周辺自治体の住民の半数以上が、避難計画を立てるまで再稼働を認めるべきではないという声が上がっていますよ。

 きょうは政務は赤羽副大臣がお越しになっていますけれども、私は、今の答弁みたいなもので再稼働に進んでいく、そして、半数の人たちが、この三十キロ圏内の市町村で避難計画を立てるまでは再稼働を見送ってくれ、少なくとも住民が納得する計画が立てられるまで、この声は非常に重いし、私もそのとおりだと思いますが、今みたいな、いや、混乱するかもしれないしできない、しなくても仕方がないかなみたいな答弁で、赤羽副大臣、いかがですか。私は再稼働すべきでないと思いますよ。

赤羽副大臣 まず、再稼働についての政府の基本方針、よく御承知だと思いますが、四月十一日に閣議決定をいたしましたエネルギー基本計画に明確に書かれておりまして、独立した原子力規制委員会によって新規制基準に適合すると認められた場合については粛々と再稼働を進めるということが基本的には大方針でございます。

 ただし、もちろん福島第一原発という大変な教訓を得たわけでございますので、そうしたことから、再稼働に当たりましては、今御指摘のありましたように、立地自治体等の関係者の理解を得ることが重要なことは、もちろん私もそう思っております。

 ですから、説明につきましては、国としてもしっかりと説明をしていくということは当然でありまして、避難計画を含む原子力防災に関しては、内閣府が地元関係自治体としっかり詰めていくべきだ、そして理解を得るべきだというふうに考えております。

 以上でございます。

辻元委員 粛々と再稼働を進めていくと今おっしゃいましたが、今、審査が終了したらということを、粛々とやっていくと。

 どういう手順でやるんですか。最終的に誰がどう判断するんですか。政府それから関係自治体というのはどこまでの範囲ですか。知事と立地市町村だけでいいとお考えですか。それと、事業者と規制委員会の関係を整理して、どういうふうに進めていくか、説明してください。

赤羽副大臣 もちろん、辻元さん、よく御承知だと思いますけれども、法のたてつけ自体でいうと、原子炉等規制法では、事業者の判断で再稼働することは可能な仕組みとなっているわけでありますが、当然、電気事業者でも、政府や地元の自治体の関係者の皆さんの御理解なしに再稼働しようなんということは全く思っておりません。

 でありますが、政府のエネルギー基本計画の基本方針は、先ほど御答弁申し上げたように、新規制基準に適合すると認められた場合には原発の再稼働を進めるということを国の方針として明記しているということでございます。

 そして、その再稼働に当たって、やはりまずは立地自治体、当該自治体の関係者、またそこに住む住民の方に御理解をいただくように、先ほどちょっと申し上げましたが、原子力防災に関しましては内閣府が、また、今回の適合審査の結果に関しましては原子力規制委員会が、そして、それ以外に、原子力を含む我が国のエネルギー政策に関しては経済産業省が、それぞれ責任を持って御理解いただけるように精いっぱいの努力をしていくということでございます。

辻元委員 自治体の関係者とおっしゃいましたが、関係者はどの範囲ですか。三十キロ圏内の市町村の長は入りますか。市や町の長は入りますか。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御承知のとおり、立地自治体の同意につきましては、法令上は原発の再稼働の要件とはなってございませんが、今赤羽副大臣から御答弁申し上げましたとおり、再稼働に当たりまして、立地自治体等の関係者の理解を得ることが大切であります。

 その説明に当たりましては、地域の実情を踏まえて対応することが大変重要でございまして、理解を得る自治体の範囲や手続などにつきましては、各地の事情がさまざまでございますので、個々に、かつ丁寧に対応することが重要であると考えております。一律に何キロメートルといった形で判断をすることは適切でないと考えております。

辻元委員 だから、その三十キロ内の市や町は入っていないということですね。

多田政府参考人 ただいまお答えしたことの繰り返しになりますけれども、各地の事情がさまざまでございますので、個々に、かつ丁寧に対応することが重要であると考えております。

辻元委員 今、川内が目の前にありますが、先ほど申し上げましたように、市議会で決議が出たり、住民の半数以上が、避難計画もないし、再稼働反対と言っている市もあります。それらは全く意見を聞かないんですか。

 赤羽副大臣、いかがですか。原発所管ですよね。どうします。

赤羽副大臣 今、三十キロ圏内の五カ所のところで住民説明会も開く予定にしておりますので、そういった方々も含めての理解を得られるように最大の努力をしていきたい、こう考えております。

辻元委員 全国知事会が提言でこういうふうに言っています、再稼働については、「国が責任を持って判断するとともに、」ということで、国に判断してほしいと。

 結局、再稼働は、最終的には事業者が動かしますとやる。その判断に至る、では再稼働させましょうというのは一体誰だ。自治体の長の同意をとって国が判断をしてほしいと言っているわけですよ、再稼働しますと。かつてのときは関係閣僚会議を開いたりしてきました。再稼働しますと政府や自治体の関係者で最終的に決めるのは誰ですか、赤羽副大臣。知事会はこう言っているわけですよ。これをどう受けとめるんですか。どうするんですか。

赤羽副大臣 全国知事会の御提言もしっかり受けとめながら、今までは電気事業者任せですとか関係自治体任せということがあったかもしれませんが、福島第一原発の事故の反省を教訓に生かして、国の責任として行っていきたい、こう考えております。

辻元委員 国の責任として何を行うかの、何をの主語を言ってください。(発言する者あり)何をは主語じゃないな、ごめん。

赤羽副大臣 国の責任で再稼働を進めるということでございます。

辻元委員 再稼働を進めるというのは、国の責任で再稼働の判断をし、そして、していいですよというように進めるという意味ですか。

赤羽副大臣 また繰り返しになりますけれども、国は、再稼働を進める前提に当たって、先ほど申し上げましたように、原子力規制委員会によっての新規制基準に適合すると認められた場合でございますので、その前提なしに国が勝手に国の判断でということではございませんので、誤解のないようによろしくお願いしたいと思います。

辻元委員 進める条件は適合だけですか。避難や地元の同意を含めて、総合的にコンダクターがいますよね。これは、再稼働に進めるという最初の案件で今進んでいるわけです。私は、先ほど、火山やその他のこと、避難計画を申し上げて、こんな状況でするべきではないと思っていますが、国がトータルに判断して、これは再稼働だと決めるんですか。

 要するに、責任のなすりつけ合いみたいなものをやっているわけですよ。安倍総理は、きのうも広島で発言しています。世界で最も厳しい安全基準にのっとって規制委員会が審査している、安全との結論が出れば再稼働を進めたいとか、菅さんは、いや、再稼働は電力会社の判断だとかですね。

 また、自治体の長は、この鹿児島県の知事は、国に、文書で、再稼働が必要だから動かしてほしいという文書を出してくれと言っています。これを言ってきているはずなんですよ。これはどう対応するんですか。

 ですから、それぞれが、規制委員会は、後でちょっと最後に委員長にも聞きますが、いや、安全だとうちは太鼓判を押したんじゃないよと。では国は、いや、安全だと言っているから進めるんだ。今度さらに菅さんは、いや、事業者だろう。これで、政府が逃げの姿勢を打っているじゃないかと言われているわけですよ。いかがですか。

赤羽副大臣 今の官房長官の御発言ですとか安倍総理の御発言が、どのような状況の中で、どういうフレーズの中で語られたものか承知をしておりませんので、私はそれについて言及はできません。(発言する者あり)私は承知していないからそうでありまして、まず、鹿児島県知事を初めとする関係者から、エネルギー政策上の原子力の位置づけや必要性について、文書を含めた何らかの方法で政府の方針を明確にしてほしいという依頼を受けていると承知をしております。

 このことにつきましては、先ほど冒頭御答弁申し上げましたように、閣議決定をしたエネルギー基本計画に明記をしているところでございますが、鹿児島県知事を初めとする関係者からの御要望でもございますので、コミュニケーションを綿密にとりながら適切に対応してまいりたい、こう考えております。

辻元委員 今もまた、最後になりますけれども、先ほど国が再稼働を決めるんだという趣旨の発言をされて、また適切に対応してまいりたいと。

 このことをめぐっては、原子力規制委員長にもお聞きしたいんですけれども、絶対的な世界的に安全というものはないというように発言されていますね、会見などで。

森委員長 辻元君、申し合わせの時間が経過しておりますので、新しい質問は御遠慮ください。

辻元委員 はい。最後にします。

 世界で最も厳しい安全基準にのっとってやっている、これも違うと言っていますよね。ですから、川内原発についても絶対に安全だと言い切れないわけですよね。その点だけ確認したいと思います。

森委員長 田中委員長、答弁は簡潔に願います。

田中(俊)政府参考人 はい。

 今回の規制基準は、福島第一原子力発電所の事故を踏まえて審査指針、基準をつくりました。それに適合しているかどうかということを判断したわけでありまして、相当量リスクは低減化されていると思いますけれども、絶対安全だということは、これは、いわゆる安全についての、常日ごろ向上させなきゃいけない、そういうものを阻害することになりますので、そういうことは申し上げておりません。

辻元委員 答弁をお聞きしましたが、納得できません。

 最後に、総理も発言されています。官房長官の答弁だからわからないとおっしゃいました。ですから、総理、鹿児島県知事、そして原子力規制委員長、さらには九州電力などステークホルダー、関係する人を、一堂に会して、やはり本委員会は非常に重要な役割を担っています、これでもしも事故なんてことになったら私たちも責任を問われかねませんので、閉会中ですけれども、一堂に会した委員会を開いていただくようにお取り計らいをお願いいたします。それで終わります。委員長、よろしくお願いします。

 委員長、何か言ってくださいよ、理事会で協議してもらうように。さっき言っていたじゃないですか、自民党の方には、理事会で協議しますと。

森委員長 後刻理事会で協議いたします。

辻元委員 終わります。

森委員長 次に、椎名毅君。

椎名委員 結いの党の椎名毅でございます。

 川内原発の再稼働につきまして伺ってまいりたいと思います。

 今、辻元委員から、るる四十五分にわたって非常に網羅的な質問がありましたけれども、ちょっと順番を入れかえて、私自身も、同じような質問になるかと思いますが、聞いていきたいと思います。

 先日、川内原発に私も伺ってきまして、五時間ほど中を見せていただきまして、安全審査に対する対応の状況等を伺ってまいりました。その中で、現場でいろいろ聞いてきて、やはり一つ大きな問題なのが、再稼働を誰がするかという権限の話だと思います。先ほど辻元先生が、政府がやるべきだ、それから、事業者が判断する、こういう法的なたてつけと、事実上どのようにやっていくかという運用の問題について議論を一番最後にされていましたけれども、ちょっと順番を変えて、磯崎政務官に伺いたいと思います。

 先日の参考人質疑の中でも、原子力の専門家である参考人も、岡本先生という参考人ですけれども、言っていたんですけれども、やはり再稼働については最後は政府が責任を持つべきだというふうにおっしゃっておりました。

 法的なたてつけとしては、確かにおっしゃるとおりで、事業者が最終責任をとるということで、国が可能な限りのことをやるというのが先ほどの赤羽副大臣の、気持ちレベルの話なのかなというふうに思います。法のたてつけの整備そのものが適正ではないと私は思っていますが、政府の再稼働に向けての政治的な決断ということについて御所見をいただきたいなというふうに思います。

 ちなみに、一度、福島の原子力発電所の事故が起きた後に、大飯原発を再稼働するかしないかという政治的な論点があった中で、当時の野田総理が、政治的な決断として再稼働するという決断をして、それを記者会見で政治決定として発表したわけですね。それが法的に正しいかどうかと言われると恐らく正しくないだろうと思いますが、そういうことがあったわけです。少なくとも、政治家が責任をとる仕事であるとすると、それはそれなりに、やることはやったんだろうというふうに私自身は評価をしております。

 現政権において、実際に再稼働するに当たって、政治側の対応というか意思決定というか、それについて御所見をいただければと思います。

磯崎大臣政務官 お答えをさせていただきたいと思います。

 今、赤羽副大臣の方から御答弁もあったかと思いますけれども、やはり原発につきましては、いかなる事情よりも安全性を最優先して、独立した原子力規制委員会によりまして新規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重して原発の再稼働を進めていくというのが政府の考え方でございます。これは四月の十一日に制定をされましたエネルギー基本計画の中でも明記をされているということでございますので、政府としましては、原発の再稼働、規制基準に適合した場合については進めていくというのが、国としての基本的な決定ということになるのではないかなというふうに思っております。

 ただ、具体的に進めていく場合におきましては、やはり地元住民、自治体の理解を得る必要があるということで、それについては国としても最大限の努力をしていくということが、国としての基本的な考え方でございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 地元自治体それから周辺自治体の理解を得るための努力ということを言っておられます。問題は、周辺住民の方々の理解を得る努力をするというのも、これも別に法的なたてつけの中にはどこにも入っていないわけですね。

 しかし、アメリカのNRCの規制なんかを見ると、10CFRを見ると、例えば住民の側から、権利を侵害される可能性のある人たちが申し立てをして公聴会を開くとか、さらには、ASLBという名前の準司法的な機関がNRCの中にあって、そしてそこでヒアリングを行うとか、こういうたてつけが法的に整備をされているわけです。しかし、日本の現在の原子力規制に関する法規範の中には、原子力発電所を稼働させるために公衆ヒアリングを行うための法的基盤というのが必ずしも整備されていないというふうに思っています。

 こういう状況の中で、周辺住民の意見を聞くといっても、先ほど参考人の方が辻元先生に対する答弁の中でもおっしゃっていましたが、要するに、地元というのを一概に特定することなく、どの辺の範囲内の人たちの同意をとるかということについても、うまいこと、柔軟にと言いながら、結局弾力的に運用することになっているわけですね。こういったものは、一定程度法整備として整えた方がいいんじゃないかと私自身は思っています。

 今回、地元の同意を取りつけるということですけれども、どういう形でどのようにやるのかということについて、それを磯崎政務官に伺えればと思います。

磯崎大臣政務官 お答えを申し上げます。

 川内につきましては、地元の説明会、五回ほど行うということ、これは赤羽副大臣の方からお話があったと思いますけれども、やはりそれぞれ国として説明をきちんと尽くしていくということは必要だと思いますし、その中において、国としてもそれぞれ、例えばエネルギーの政策につきましては経産省が責任を負っておりますし、避難計画等々につきましては内閣府、それから安全性ということにつきましては原子力規制委員会ということになりますので、やはりそれぞれ責任を持つ分野について国のそれぞれの機関がきちんと説明を行っていく。そのことによって、当然のことながら、最終的に法律に基づいて再稼働を行うというのは事業者ということになりますので、事業者も当然のことながらきちんと説明を行っていく。こういうことをあわせて、最終的に再稼働に結びつけていくということかと思います。

椎名委員 私が九電にヒアリングした限りだと、県内五カ所で説明会を行うという話ですね。これは、説明会を行うということなので、主体は九電だと基本的には理解をしています。

 こういった説明会をした上で、その後、薩摩川内市議会の中で、原発再稼働に対する賛成陳情の採択に関する議論を行った上で採択を議会の中で行い、その後首長が最終的に稼働に対する了承をする。その後、同じように、県議会の中でそれぞれ賛成陳情の採択をし、議会の陳情採択を受けた上で知事が了承するというプロセスを事実上とるという話になっておりますけれども、こういったプロセスという理解でよろしいんですか。

磯崎大臣政務官 お答えします。

 具体的に川内についてはそういうことで漏れ聞いているところがございますが、やはり川内の場合とそれぞれの地域によって恐らく手続というものは変わってくるところがあるんだろうなというふうに思っております。

 地域の住民の方から選ばれた議会の代表ということでございますので、その議会の方できちんと決議をしてというプロセスをとる場合もあれば、そういうプロセスではなくて、別のやり方で住民の方の理解、合意を得ていくという方法もあろうかと思いますので、あくまでも、今先生の方からお話のあったプロセスというのは、薩摩川内におけるプロセスということで理解をいたしております。

椎名委員 ありがとうございます。

 そうだとすると、川内市以外のほかの立地自治体の意見というのは余り反映されないということに恐らくなるんだろうと思います。

 これが各自治体ごと、各原発ごとに決められていくという話に恐らく今の答弁を聞くとなるんだろうと思いますけれども、そういう、場当たり的というか、うまく言えば弾力的、悪く言うと場当たり的になるかなと思いますけれども、要するに、その基準もないまま、しかも法的根拠もないままこういうことをやるということに対して御意見がもしあれば、いただければと思います。

磯崎大臣政務官 お答えをいたします。

 こういう、特に明確な基準が法律上ないまま行うということにつきましては、私は地域の事情というのはそれぞれ抱えている状況があろうというふうに思っておりますので、やはり一番は、柔軟性を持った中で、一番その地域に適した決定のプロセスをとっていくということが非常に重要だと思いますので、今の法律の制度の中でそれぞれの地域に合った最大のプロセスをとっていくということが非常に適切なやり方ではないかなというふうに思っております。

椎名委員 ありがとうございます。

 柔軟にというのは、役所の方々が自分たちがうまく都合のいいようにやるようにするためのロジックだったりするので、そのあたりは、先生、気をつけていただければなというふうに思います。

 済みません、話を戻しますけれども、質問項目二点目というところに書いておいたところで、田中委員長に伺いたいんですけれども、先ほど、最初指摘をしましたけれども、アメリカだと、公衆関与の方法として、一応法的に定められた制度が存在しているわけですね。さらには、NRCの中に準司法的な機関みたいなのがあって、その人たちが一定程度中立な立場で公聴会などを行う、そういうこともあるわけですね。その上で、最後に、最終的にNRCのトップの委員の方々が政治的な決断を含めて意思決定をするというような、そういう制度設計になっているんだと思うんですけれども、私も、日本でもこういう公聴会を含めた制度設計が必要じゃないかなと思いますが、委員長の御意見をいただければと思います。

田中(俊)政府参考人 公聴会という言い方が適切かどうかわかりませんけれども、要するに、住民の方に十分に私どもの判断の根拠を説明してその御意見をいただくということについては、私どもは、要請があればそれに積極的に応じていくということを考えております。

 ただ、法的にそれが、そういうシステムが必要かどうかということについては、私どもが判断するところではございませんので、国会の方で十分御議論いただければと思います。

椎名委員 ありがとうございました。

 さらには、避難計画にちょっと話を移しますけれども、アメリカなんかでも、避難計画についても事実上審査の対象になっております。NRCの審査対象の中で、自治体のつくった避難計画についてFEMAが承認をした上で、そのFEMAが承認したものについてNRCがもう一回承認をする、そういうプロセスになっていたかというふうに思っています。

 この避難計画について、安全性とそれから実行可能性という観点から、きちんと役所の方で承認をするプロセス、独自で検証して、中身を見て実効性を検証するというプロセスをとるべきではなかろうかというふうに私自身も思っております。

 自治体がつくった避難計画をそのままにしておくだけでそれで果たしていいのかというふうには私自身思いますけれども、こういった法のたてつけ、そして、この避難計画の内容等の実行可能性の検証という意味で御所見をいただければと思います。

黒木政府参考人 避難計画につきましては、基本的には自治体がとりあえず作成することになっておりますけれども、作成過程におきまして、御案内のとおりでありますけれども、現実問題、関係省庁を含めまして国が大変大きな関与をしてつくっておるというような状況であります。

 あと、要するに、避難計画の実効性をどういうふうにチェックするんだというお話だと思いますけれども、そもそも実効性といった場合には、恐らくアメリカにおいても同じだと思いますけれども、いわゆる絶対的な意味での実効性というのはなかなか難しゅうございまして、むしろ今、現段階においては、避難計画自体の合理性みたいなことをどう見ていくかという話になると思います。その上で、訓練を重ねていって、そして実効性をどんどん上げていくといったプロセスをアメリカでもとっておるというふうに私は聞いております。

 そういった面では、恐らく、これから訓練の企画立案に当たりましては、内閣府の当室において、各関係自治体とよく連絡をとりながら、なるべく多くの課題を見出し得るような、そういった訓練を実行していって、それを通じまして実効性を上げていくといったことでございます。

 国が一方的に実効性のありなしをチェックするというよりは、国と自治体が一緒になって取り組んでいくといったような姿であろうかと考えております。

 以上であります。

椎名委員 ありがとうございます。

 国と自治体が一体となってやっていくという話でございましたけれども、実際、そういうふうに言ってしまうと、事故以前と同じように、要するに、国が原子力防災対策指針の中でつくって、そして、国がつくったマニュアルとほぼ同じ避難計画がつくられてそれでおしまいみたいなことになってしまったりしかねないわけですね。だから、実効性と合理性というお言葉をいただきましたけれども、合理的なものであればそれでいいということではなくて、やはり不断の実行可能な避難というのを追求していっていただかないといけないんだというふうに思います。

 それを法制度としてどのように整備をするかということについては、もちろんおっしゃるとおり別物だろうというふうに思いますが、せんだっても、井野参考人、西脇参考人も含めて、NRCに相当する日本で言う規制委員会がきちんと実効性を含めた避難計画を承認する、そういう制度設計が必要であろうということを御指摘いただいていたので、私自身もそれは大いに賛同するところでございます。どうぞ御検討いただきたいなというふうに思います。

 五分前なので恐らく最後になると思いますけれども、三点目です。

 参考人質疑の中で、岡本参考人が、リスクを定量化してリアルタイムにオンラインで見ることができるシステムとしてROPというシステムがあるということを指摘しておりました。リアルタイムで、各原子炉がどういう状況にあって、どういうリスクがあって、それを色で分けて表現をする。何色か、要するに、アラートが鳴ったときには、それは実際に停止をする権限をNRCが持つというような、そういう御指摘だったというふうに思いますが、こういったリアルタイムの原子炉のモニタリングというのも、これから原子炉が仮に再稼働していくとなると、こういった制度を準備しておくことが恐らく必要になると思います。

 従前、保安院時代、NISA時代に同じような制度を準備しようとして、結局立ち消えになったというようなお話があったかと思いますけれども、こういった、いわゆるROPのような、オペレーターである事業者を随時監視していくシステム、これを再稼働に向けて準備していくおつもりがあるのかという点について、委員長の意見をいただければと思います。

櫻田政府参考人 お答えいたします。

 アメリカのROP、リアクター・オーバーサイト・プロセスだと思いますけれども、このような仕組みを私どもの規制の中にも取り込む必要があるのではないか、こういう御指摘だと思います。

 私どもも、原子力規制委員会の御指示も踏まえまして、いわゆる保安検査という制度でございますけれども、事業者の保安活動を随時検査する、こういうような制度でございますが、現在の枠組みの中でどこまでできるかということ、それから、今後改善していくとすればどういうことがあるかということを検討してございます。

 この保安検査のあり方についての検討の中で、いわゆるROPのような、原子力発電所の安全に係る指標でありますとか尺度でありますとかあるいはリスク情報、こういったものを活用して、検査の中の、やり方とかあるいはその後の判断とかに役立てていく、こういう仕組みを導入する必要があるのではないかという検討をしているところでございます。

 なるべく早くこういった検討を進めて、手をつけられるところから順次手をつけてまいりたいというふうに考えてございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 原子力発電所の再稼働をするかしないかというところでまだ議論をしているので、そこまで手がついていないというのが現実なのかなというふうに思いますけれども、もし仮に再稼働するということであれば、そういったことも検討して、きちんと多層的に安全性を確保していくということが必要になるはずだと思いますので、そのあたり、御検討いただければというふうに思います。

 これで私の質問を終わります。以上でございます。ありがとうございます。

森委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 きょうは、閉会中審査ということで、この委員会、大変重要な委員会審議であると思っています。特に、川内原発の再稼働が目前に視野に入ってきているということでありますので、私も川内原発の再稼働に集中して質問させていただきたいと存じます。

 きょうは、副大臣の皆様方、それから政務官の皆様、おいでをいただいています。一部、ちょっと時間が限られていますので、特に、きょうは井上副大臣は内閣府の副大臣としておいでをいただいています、避難計画の話もぜひいたしたいと思っておりましたが、若干重複をしたところもありますので、その場合には御容赦をいただきたいと存じます。

 まず、先ほど辻元委員の方から、川内の火山の話、いろいろ指摘がありました。

 私、もちろん火山の話も重要であると思いますが、そもそも再稼働の責任者は誰なのかという点についてやはり違和感を持っています。先ほど何人かの先生方からるる御紹介があった、鹿児島県知事の発言、あるいは、総理、官房長官、経済産業大臣、文科大臣等の発言、いろいろ聞きましても、それはやはり明確じゃないんですね。

 もちろん、政府の立場については十分わかっております。副大臣の先生方、もう繰り返していただく必要はございません。エネルギー基本計画でも書いてある、こういうことはもう承知をしているわけでありますが、このエネルギー基本計画の再稼働に関する書きぶり、これは繰り返すまでもないと思いますが、ちょっと読みますと、「原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。」これが基本です。

 田中委員長、かつてこの委員会で委員長は、世界で最も厳しい水準の規制基準、この言い方を安倍総理が繰り返しおっしゃることについて、ある種の違和感をこの委員会でも表明されたことがあられます。この基本計画は、その表現を改めて閣議決定した上で、再稼働の判断についても、田中委員長率いる規制委員会の判断を尊重して進めるんだと。ある種、このトリガーを引く部分を、政治家でもない、田中委員長率いる規制委員会に委ねちゃっているわけであります。

 私は、これは政治の責任放棄であって、今の政権与党は再稼働について逃げていると言わざるを得ないと思いますが、田中委員長、エネルギー基本計画の再稼働に関するこの書きぶり、違和感ありませんか。

田中(俊)政府参考人 私の立場からエネルギー基本計画について論評することは、立場ではありませんので、御遠慮させていただきたいと思いますけれども。

 規制委は、ここでも何度も申し上げましたように、いわゆるリスクをできるだけ小さくするという立場から、新たな規制基準を設けて、それの適合性を審査してきているということで、今回の川内原発についても、その適合性について審査を終えたというところでございます。

足立委員 誤解なきようにちょっと申し上げますと、辻元委員は先ほど、再稼働に反対だ、こういうお立場でありまして、私は賛成であります。再稼働はすべきであります。すべきでありますが、この状態はいかぬだろう、こう申し上げているわけであります。

 きょう赤羽副大臣おいででありますが、ここに書いてあること、また、お配りをしている資料に書いてあることを繰り返していただく必要は全くありません。お立場はわかっています。しかしそれは、国として、経産省として、逃げていると言われても仕方ないんじゃないですか。

 田中委員長はほかの場でも、再稼働の判断に自分がコミットしているわけじゃないんだと。また、安全であるかについても、そういう立場にはないんだと。これは私は当然であると思います。規制委員会の任務、規制委員会の使命、また田中委員長のお立場を踏まえれば、田中委員長の御発言はいずれもごもっともであります。しかし、ごもっともでないのは、経産省を初めとする政府です。

 赤羽副大臣、どうですか。

赤羽副大臣 足立さんの質問の趣旨がちょっとよくわかりかねるので、はっきりしていないんですけれども。ちょっと具体的に御指摘いただいてよろしいですか。

足立委員 わからないのが、わからないというお立場がよくわかりませんが。

 要すれば、赤羽副大臣、例えば鹿児島県知事の言葉を改めて出すまでもなくて、エネルギー政策は国の責任だろう。再稼働について、先ほど、地元の同意の問題とかあるいは避難計画の問題で、るるいろいろ指摘があった。なぜそういう議論になるかというと、国が逃げているからでしょう。一義的には電力会社の責任だと言って、政府が九電や東電の後ろに隠れているからそういうことになるわけであります。

 私は、政府がもっと前に出て、前に出てというのは、言葉はもういいですよ、ちゃんと、再稼働についてその判断の責任は経産省が負う、そうはっきりおっしゃってください。

赤羽副大臣 先ほどの辻元委員の御質問に対して、私は、原発の再稼働は国の責任で進める、そういう答弁をさせていただきました。

 先ほどの答弁は、これはちょっと繰り返しになりますが、既に政府として閣議決定をしておりますエネルギー基本計画の中で書かれていることを、その基本方針を改めて述べさせていただいたものでございます。それはよく承知だと思います。

 再稼働するのは事業者でありますけれども、規制への適合性を規制委員会が確認し、立地自治体等の関係者の理解と協力を得るための取り組みについて国が前面に立つ考えでありまして、その意味で国として再稼働を進めるという考えを申し上げたもので、決して国は、電気事業者やその他の後ろになって逃げているというような認識はございません。

足立委員 抽象的に言っていても仕方がないのでちょっと具体的にやりますが、原子力事業に関する電力会社と国の責任の分担のあり方、これについては、繰り返し申し上げて恐縮ですが、支援機構法をつくったときの附則の六条に見直すと書いてあって、それは、国会で一年をめどに見直すんだ、一年をめどというのは、二〇一一年の八月の一年後をめどですから、二〇一二年の八月には終わっていないといけない見直しがまだ全くなされていなくて、やっと、その検討のためにつくったのかなという副大臣等会議なるものがことしの六月十二日になって初めて立ち上がりました。資料におつけをしているとおりであります。

 一回目は趣旨説明をして、この資料の四ページ目にありますように、世耕官房副長官の方から、この副大臣会議、すなわち原子力損害賠償制度の見直しに関する副大臣等会議については、万が一原子力事故が発生した際の原子力損害賠償のあり方について検討するんだと。

 検討を終わらないまま、再稼働が何でできるんですか、赤羽副大臣。

赤羽副大臣 足立さんはよく御存じだと思いますので、再稼働に関する政府の方針は先ほど申し上げたとおりでございます。

 万が一の事故の備えとしては、これもよく承知されていると思いますが、事業者に保険等の損害賠償措置を義務づけする原子力損害賠償法と、原子力事業者の相互扶助として賠償に充てる資金を交付する原子力損害賠償支援機構法を既に措置しておるところでございます。また、この間、ADRセンターの整備などの、福島第一原発における被害者の賠償に万全を期するための所要の措置も行っておるところでございまして、現状の、今の状況の中で対応はできる。

 しかし、かつてこの国会の議論の中で、機構法の附則等々で定められた検討の一環として、この六月でありますけれども、世耕官房副長官のもとで関係副大臣の会議が立ち上げられまして、そこで検討が始まったところでございます。

足立委員 この副大臣等会議、六月十二日にキックオフしました。次の開催はいつですか。

千原政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力損害賠償制度の見直しに関する副大臣会議についての第二回の開催でございますが、現在、開催に向けて日程調整を進めておりまして、速やかに開催したいと思ってございます。

 なお、第二回では、原子力損害賠償制度についての当面の課題及び今後の進め方等について、関係省から報告をいただくことになっております。

 第三回以降の開催は、第二回までの議論を踏まえて検討する予定でございます。

 以上です。

足立委員 いつやるかわからないということですが、今御紹介があったように、次に開くときには、櫻田副大臣と赤羽副大臣が、原子力損害賠償制度、すなわち、国の権限と責任のあり方について、当面の課題についてプレゼンテーションをしていただくことになっています。

 これはもう、いつ開かれるかわからないので、きょうここで、両先生、櫻田副大臣と赤羽副大臣、当面の課題は何か御紹介ください。

田中(正)政府参考人 当面の課題についての御質問でございます。

 今回の副大臣会合につきましては、第一回の、先生お配りいただきました資料の中で、議長でございます世耕副長官が発言されていますように、当面の課題としては、まず、CSC条約への対応ということが中心になってございます。そのCSC条約への対応のための課題といったものについて整理をするということが第一点だと思ってございます。

 その上でさらに当面の課題及び今後の進め方を整理していくということになってございまして、それについては、当然、現在進んでおります福島の損害賠償などの状況も踏まえて、今後の課題について整理をしていく、このように考えてございます。

足立委員 CSCは、これは外務副大臣から説明するんですよ。

 では、赤羽副大臣、どうですか。経済産業省として、当面の課題は何ですか。

赤羽副大臣 一回目の会合でも申し上げさせていただいたところでございますけれども、私も、福島第一原発の現地対策本部長として、今回の事故に関する賠償の現状についての御報告をさせていただくと承知をしております。

足立委員 当面の課題はないということでいいですか。

赤羽副大臣 課題はないというふうには申しておりません。現場の中で、さまざまな追加の賠償等々を行いながら、三年四カ月、五カ月たった今の大変厳しい状況の中での課題はあるというふうに承知をしております。

足立委員 もう時間がないんですが、福島の状況についてはしっかり、いや、赤羽副大臣、きょうも福島の対応でお忙しい中お越しをいただいていることについては感謝申し上げます。

 しかし、きょう申し上げているのは、川内の再稼働を迎えるに当たって、制度一般について聞いているんです。一般的な、国の権限と責任のあり方について、繰り返し申しますよ、法律の附則で速やかに見直すと書いてあるんですよ。それはなぜか。電気事業者と国の責任のあり方について見直さなあかんということが福島第一原発事故の教訓なんでしょう。それをなぜ見直さずに再稼働できるんですか。

 実際、副大臣会議を開いて、当面の検討課題についてやるんでしょう。それはCSC条約だけですか。文部科学省として、あるいは経済産業省として、課題があるのかないのか、あるなら何なのか、はっきりしてください。

田中(正)政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、CSC条約につきましても、これは条約の批准だけではなくて、当然、国内担保措置というのが必要になりますので、その関係の国内法の整備についての課題があるということを申し上げたかったところでございます。

 それから、それ以外の課題についても当然整理をして、次回の副大臣会合でプレゼンをさせていただくということになると思います。その中では、当然、これまでもさまざまな御議論がございますので、そういったものを踏まえた上で、きちっと整理をさせていただきたいと考えてございます。

足立委員 もう終わりますが、櫻田副大臣、おいでいただきましたので、ぜひ一言、きょう申し上げた点について御見解があられましたらおっしゃっていただいて、終わりにしたいと思います。

櫻田副大臣 原子力損害賠償制度のさらなる見直しにつきましては、副大臣会議等で検討していくこととさせていただきたいと思います。

足立委員 いたし方ありませんが、これは、我々のグループとしては、繰り返し申し上げます、再稼働は本来賛成です。する必要があると思っています。しかし、その前提として必要な、田中委員長はしっかりやってこられている部分が大きいと思いますが、もう一つの柱である電力会社と国の責任のあり方について放置したまま再稼働することについては断固反対であると申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

森委員長 次に、西田譲君。

西田委員 次世代の党の西田譲です。どうぞよろしくお願いいたします。

 きょうは、当委員会で初めて質問の機会を頂戴いたしました。ありがとうございます。

 初めての質問ということもありますので、若干基本的なことを中心にお伺いしてまいりたいというふうに思っておりますので、よろしく御答弁いただければと思います。

 まず最初にでございますけれども、原子力規制委員会設置法についてでございます。

 第一条でこう定めてあるわけでございますね。「目的」でございますけれども、「原子力利用における安全の確保を図るため必要な施策を策定し、又は実施する事務を一元的につかさどる」というふうに書いてあるわけでございますから、この原子力規制委員会設置法第一条「目的」の定めというのは、原子力規制委員会が、反原発の行政官庁ではなく、原発稼働のための行政官庁であるということの定めだというふうに私は解釈しているんですが、こういった解釈でよろしいでしょうか。田中委員長にお伺いしたいと思います。

田中(俊)政府参考人 御指摘の定めは、安全の確保を図るために必要な施策を策定し、実施する事務を原子力規制委員会が一元的につかさどるということを定めたものであるというふうに承知しております。したがいまして、このために、独立した立場から科学的判断を行うことが重要だと思っています。

 具体的な所掌事務については、原子力規制委員会設置法第四条で原子力規制委員会として規定しておりまして、原子力規制委員会としては、これらの事務については、科学的、技術的な見地から必要な施策を策定し、実施しているところでございます。

西田委員 ありがとうございます。

 当然、科学的立場、そして公正中立ということも書かれているわけでございますけれども、原子力規制庁が所管する原子炉等規制法、これも第一条「目的」を見てみますと、「原子力基本法の精神にのつとり、」というふうに書いてございますね。

 それでは、原子力基本法の精神、これまた原子力基本法第一条を見てみますと、こう書いてあるわけでございますね。「この法律は、原子力の研究、開発及び利用を推進すること」というふうに書いてあるわけでございます。

 ですから、今委員長がおっしゃった独立性とかそういったことは、反原発だとか原発推進だとかそういったことに対する独立ではなくて、原発推進という立場の中にあってきちんと独立性を持って科学的にやっていくということ、原子力規制委員会の行政官庁としての立場はそういうことだというふうに思いますが、改めて御答弁いただけるようでしたらお願いします。

田中(俊)政府参考人 お言葉なんですけれども、私どもとしては、原子力発電を推進するとか推進しないとかという判断にはかかわらない。

 原子力発電を行うことについて伴う安全というか、人と環境の安全を守れるかどうかという観点から、科学的、技術的に中立公正に判断をしていくという立場でございます。

西田委員 そうおっしゃいますけれども、原子炉等規制法第一条では、「原子力基本法の精神にのつとり、」というふうにあるわけでございますから、であるならば、たとえ三条委員会とはいえ、行政官庁として法治主義から逸脱することがあってはならないわけでございますね。そうすると、原子力基本法の精神にのっとるとはどういうことかといいますと、原子力利用の推進ということになるわけでございます。

 ですので、今の委員長の御答弁だと、若干私はすっと落ちてこないものがあるわけでございます。ぜひとも、ここについての基本的な考え方でございますけれども、熟慮していただきたいなというふうに思います。

 ちょっと、これから細かい質問を何点かさせていただきたいと思うんですけれども、今は当然、原発は全て定期検査中ということで、稼働していないわけでございます。

 そもそもの、稼働していないという状況の根拠となる条文というのはどこになるのか、これは櫻田部長に御答弁いただければと思います。

櫻田政府参考人 お答えいたします。

 現状は、今委員御指摘のとおり、全ての原子力発電所が定期検査中という状況で停止をしています。そういう状況にある中で、新しい規制基準というものが昨年の七月に施行されております。原子炉等規制法の中では、この基準をもとにして、原子炉施設の設置変更許可とか、工事計画の認可とか、あるいは設備をつくった後の使用前検査とか、そういった手続を経ていかないと使用することができない、こういうたてつけの構造になっております。

 定期検査中の定期検査の基準も、ある種の技術基準というものでございますが、その基準も今適合性審査を行っている新規制基準の中に位置づけられるものでございますので、したがいまして、新しい規制基準に適合していないものを運転するということになりますと、原子炉等規制法に違反した状態になる、こういうことでございます。

西田委員 今最後におっしゃった、原子炉等規制法に違反するというのは、四十三条の三の十四に違反するということでよろしいでしょうか。

櫻田政府参考人 お答えいたします。

 今委員の御指摘のありました四十三条の三の十四というのは、発電用原子炉施設を設置者は基準に適合するように維持しなければならないという条文であります。

 ここにも抵触しますし、その前に「使用前検査」という条文がございますが、これは四十三条の三の十一というのがございまして、この使用前検査に合格した後でなければ使用してはならない、こういうふうに定められておりまして、むしろ、定期検査中ではありますが、適合するためには設備を改造しなければならない、改造した後に使用前検査を受けなければならない、こういう手順になりますので、直接的にどこにその根拠があるかというと、使用前検査を受けて合格しなければいけない、こういうことかなというふうに思ってございますが、その前段階として、許可とか認可を受けなければならないという前段の規制がまた存在するということになります。

西田委員 ありがとうございます。

 それでは、ちょっとさかのぼるんですけれども、今の新基準は昨年の七月八日からスタートしたわけでございますけれども、その前も原発はとまっていたわけでございますよね。とまっていたといいますか、とめさせられていたと言えばいいのか、そこはわからないんですけれども、その根拠となる法律が何だったのか、教えていただければと思います。

櫻田政府参考人 新規制基準適用前の状態についてですが、定期検査というのはサイクルごとに行わなければならないので、ある一定の期間運転をすると、定期検査のためにとめなければならないという形になります。

 そういう形で定期検査に入ると停止するわけでございますが、停止していた原発を再稼働することについて、当時の政府の方針がございまして、これはストレステストの実施をするとかそういうようなことを定めていまして、これを事業者に求めていたということがございまして、そういう状態が平成二十五年の七月八日の新規制基準の施行まで続いていたということではないかなと思います。

 その指示を受けて、ストレステストを終了し、定期検査も終了をして稼働した発電炉というのが大飯発電所の三号機、四号機、この二つの原子炉のみはその手続を経て運転を再開した、こういうことになっていたのだろうというふうに考えてございます。

西田委員 ですので、法的根拠ということで質問させていただきました。

 政府の方針がとかいうお話がございましたけれども、ストレステストを設けて、それをクリアして、そして使用前検査ということがありましたけれども、もう一度御質問します。

 新基準適用前に原発がとめられていた法的根拠、条文ですね、どの条文を引用し、運用することでとめられていたのか、これについてお答えいただければと思います。

櫻田政府参考人 法的な手続の話だけ申し上げれば、定期検査中でございますので、定期検査を事業者が申請をして、検査をしなければいけません。その申請が提出されるに至ったものが、先ほど申し上げました件、関西電力の大飯三、四号、この二基だったということでございまして、そのほかの原子炉については、定期検査の申請が提出されなかったということでございますので、何か法律でとめていたということではなくて、申請がなかったということでございます。

西田委員 ありがとうございます。

 つまり、新基準適用前に動いていなかったのは、法的に言えば、何か行政命令とかがあったということではなくて、事業者が自主的に動かしていなかったということでよろしいでしょうか。確認でございます。

櫻田政府参考人 事業者がその申請を提出しなかった理由については、当事者ではないので断定的に申し上げるわけにはいかないと思いますけれども、先ほど申し上げましたとおり、当時の政府の方針として、再稼働する前にストレステストを行うというような、そういうことを指示していたというのがございますので、それを配慮した形であったのではないかというふうに考えます。

西田委員 ありがとうございます。

 大飯の原発がそうやって動くわけでございますけれども、それがおととしの七月から動き始めて、昨年の九月まででございますね。昨年の九月にまた定期検査に入って、そこでとまるわけですけれども、新基準が出たのが昨年の七月ということは、新基準が出た後も大飯の原発は動き続けているわけでございますね。

 原子炉等規制法を読めば、これは第四十三条の三の二十三に、施設の使用の停止についての定めがありますけれども、基準を満たさないところについては、原子力規制委員会が停止を命ずることができるというふうにあるわけですね。

 基準を満たしていないわけですから、なぜ停止を命じられなかったのか。なぜ大飯原発は新基準が出された、適用された後も約二カ月にわたり運転されたのか、お答えいただければと思います。

櫻田政府参考人 新規制基準の適用でございますけれども、これはいわゆるバックフィットというふうに呼ばれておりますが、新しい基準を既存の施設にも適用するということになってございまして、その際に、今委員が御指摘されたような条文を使って、必要があれば、適合していないものに対して、運転の停止を含めていろいろな措置を命じることができる、こういう規制の権限が与えられているという状況でございます。

 一方で、このバックフィットというのは、新しい基準をその都度既存の施設に一律に即時適用するという形になりますと、やはりそこは混乱も生じるということもございますし、また、なかなか、その改善をしていくということについてためらいが生じるというようなこともございますので、新規制基準を適用する、あるいはバックフィット制度を運用するということについて、平成二十五年の三月に、原子力規制委員会におきまして、新規制の施行に向けた基本的な方針というのが審議されました。

 その結果、新たな規制、これは新規制基準も含めてですけれども、これを導入する際には、基準への適合を求めるまでに一定の施行期間を置くことを基本とする、それから、施行までの期間が短期間である場合には、次に施設の運転を開始するまでに基準の適合性を判断する、また、施設が運転をしている状態、継続的に運転を行っている場合には、定期点検に入った段階で基準への適合を求める、こういう方針になったわけでございます。

 このため、昨年の七月に新規制基準を施行した時点、この時点で運転中であった大飯原子力発電所の三号機、四号機につきましては、定期点検に入った段階で基準への適合を求めるという考え方が応用された、こういうことでございます。

西田委員 今御答弁いただいたのは、いわゆる田中委員長私案の話だと思います、私も資料をいただいておりますけれども。

 バックフィットの運用をどうするか、物すごくこれも大事なお話でございます。再稼働もそうですし、バックフィットの規制をどう適用するかもとても大事なんですけれども、どうも、この原子力規制委員会の行政としての活動を見ておりますと、余りにも法的根拠が薄過ぎるものが多過ぎるというふうに思うわけでございます。

 言うまでもなく、行政が法治主義から逸脱するのを看過するような無責任や怠惰が立法府に許されているとは思いません。

 ですから、例えばこの再稼働にしたって、最後、先ほどから議論になっております、誰が再稼働の判断をするのか。政府なのか、事業者なのか、地方自治体なのかといろいろありますけれども、政府は今、エネルギー基本計画でも示されているとおり、また答弁されているとおり、きちんと政府の責任を持ってと言うわけでございます。であれば、原子炉等規制法の中の条文として最後に、環境大臣あるいは経済産業大臣でもよろしいかと思いますが、その承認を必要とするという一文がなければならないわけでございます。

 余りにも原子力行政が恣意的になされ過ぎてはいやしないのか。これまでの大飯の件にしたってそう、新基準ができる前のとめられている状況にしたってそう、そして今回の再稼働にしたってそうでございます。

 やはりこれは、先ほど来、田中委員長があちこちから責められて、サンドバッグのようになるときがよくあるわけでございますけれども、それもやはり法的根拠が薄過ぎる、脆弱過ぎるんじゃないか。バックフィットの件もそう、原子力賠償の問題もそう。まだまだそういう法的根拠が薄い中でやっているところに私は今の混乱の原因があるのではなかろうかと指摘をして、きょうの質問は終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

森委員長 次に、斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 私、きょうは、新規制基準及び川内原発にかかわること、そして避難計画について質問させていただきたいと思います。

 まず初めに、田中委員長に、川内原発の安全審査についてお伺いをいたします。

 川内原発につきましては、新規制基準に適合していると認められる審査書案が取りまとめられました。昨年七月にできたこの新規制基準につきましては、世界最高水準、最も厳しい基準である、このように委員会もおっしゃっておりますし、我々もそう評価しているところでございますが、ということは、この川内原発につきましては、世界最高水準の安全性が満たされている、こういうふうに考えてよろしいんでしょうか。

田中(俊)政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の審査は、先生御存じのように、東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえて定めました、昨年七月八日に出しました新規制基準への適合性を確認したものであります。ここでは、地震、津波、あるいは先ほど来議論になっております火山といった自然現象の想定、あるいは重大事故に対応するための設備及び手順等の実現可能性などを厳しく審査しております。

 この規制基準に合致したと判断できる川内原発については、福島のような事故を二度と繰り返さないことを目指した高いレベルの安全性を有するということは申し上げることができます。一方、事故は起こらないと思ってしまいますと、これは安全性向上の努力が停止してしまう、いわゆる安全神話に陥ってしまうということになりますので、そういうことは申し上げません。

 ただし、安全追求に終わりはなくて、一層の安全追求をしていく、事業者にもそのことを求めていくということで、当委員会としても不断の努力をしていくという所存でございます。その意味で、世界最高水準の安全性は担保されたというふうに考えております。

斉藤(鉄)委員 絶対安全ということは工学の世界ではあり得ないわけでございまして、今委員長がおっしゃったことは非常によく理解できます。

 その上で、少なくとも、ほかの国また過去の基準に比べて最高水準、非常に厳しい基準である、そういう基準であるということはおっしゃってきておりますし、その基準に合致した今回の川内原発の安全審査であるということについて、もう一度お答えいただければと思います。

田中(俊)政府参考人 たびたび、世界最高水準というレベルの安全審査に合致したということについていろいろな御議論がありますけれども、具体的に少し申し上げますと、いわゆる非常用電源の重層な装備、これは、世界から比べると相当長期間もつようにするとか、アメリカ等では、ベントシステムというのがBWRについておりますけれども、我が国の場合は、フィルターベント、要するに放射能をできるだけ取ってから外気に出すというようなシステムをつけるとか、非常に、そういう意味のレベルの、重大事故対策としての要求というのは厳しくなっております。

 それに加えて、先ほど来申し上げております我が国特有の自然現象の厳しさにも、きちっとそれを考慮して、耐えられるようになっているという意味で、川内原発については世界最高レベルの水準にあるというふうに判断しております。

斉藤(鉄)委員 委員長、どこかで、特に自然災害については飛び抜けて厳しい基準になっている、このようにおっしゃっておられたのを記憶しております。そこをもう少しわかりやすく我々に説明していただけませんか。

田中(俊)政府参考人 申し上げるまでもなく、今回のようなマグニチュード九を超えるような地震が起こるというのは、非常に、いわゆる原子力発電の先進国ではまれな立地地域にあります。そういったことについて、耐震性、それから地震に伴う津波についても、さまざまな条件を考慮した上で配慮しております。

 単に地震の大きさだけではなくて、立地場所については、地下の三次元構造も踏まえたような基準地震動の評価をしていくというようなこともしております。

 それから、最近、気象異変といいましょうか、かつてはトルネードというようなものは我が国にはなかったんですが、そういったつむじ風のようなものもありまして、それについても、秒速百メートル程度のものについても十分耐えられるようになっているというふうなことで、いろいろな意味で、いわゆるシビアアクシデントに対して、十分な備えを自然災害に対してできるように、耐えられるような設備を要求しているということでございます。

斉藤(鉄)委員 川内の場合、よく火山の噴火、それに対しての安全ということが言われておりますが、この点についてはいかがでしょうか。

田中(俊)政府参考人 これは先ほど来も議論がありました。

 火山についての基準は二つ設けてあります。

 一つは、火砕流のように、いわゆる設計対応ができないようなものが到達するような場所については、これは立地として認められないということが一つあります。

 それから、そういうことはないけれども、いわゆる火山灰がかなり降るということについては、川内の場合は、かつてのいろいろな実績を踏まえまして、十五センチメートル程度の火山灰が積もっても、安全上、きちっと原子炉を安全に冷温停止できる、そういうような対策ということについても、ハード的にも人的にも、いろいろな意味でその対応を確認させていただいているところでございます。

斉藤(鉄)委員 このように、世界最高水準の厳しい基準であるということを、もう少し原子力安全委員会として国民にわかりやすく説明すべき責務があると私は思います。専門家として、基準に適合しているかどうか、それだけを見ればいいんだということではなくて、やはり国民の原子力の安全に対しての関心は非常に高いものがあります。専門家の立場からそれをわかりやすく説明する義務があると思いますが、その点についてはいかがでしょうか。

森委員長 今、原子力安全委員会とおっしゃったけれども、規制委員会ですよね。

斉藤(鉄)委員 済みません、原子力規制委員会です。訂正をいたします。

田中(俊)政府参考人 先生御指摘のとおりで、私も、今回の川内原発の、パブリックコメントにかけるに当たってどういう判断をしたかということについては、一応、できるだけ私自身の口から御説明したいということで、とりあえずやらせていただきましたのは、特別に時間をとりまして、パワーポイントで私なりに、できるだけわかりやすいパワーポイント資料をつくって皆さんの前で、特にプレスの方を中心として発表させていただきました。

 今後も、多分、地元立地地域においていろいろな御要求があると思いますが、私も含めて規制庁職員、いろいろなレベルで必要な御説明をさせて、できるだけ我々の判断について御理解を賜るよう努力していきたいと思っております。

斉藤(鉄)委員 そのときに、先ほどの御質問とちょっと趣旨が違うかもしれませんが、やはり規制委員会というのは、推進、また反対、そういう立場とは違う非常に独立性の高い、専門性に立脚した組織である、その上での判断だということも、これもわかりやすく国民の皆さんに説明していただければと思います。

 私は、先ほど原子力安全委員会とつい言い間違えてしまいましたが、昔の原子力安全委員会とは根本的に違うということも、規制委員会の法律をあのときつくりましたけれども、まだ国民の間に知られていないというのも私自身実感しておりますので、この点もどうかよろしくお願いをいたします。

 次に、川内原発の避難計画について質問をいたします。

 先ほども申し上げましたように、絶対安全ということはあり得ないわけで、いわゆる安全神話に陥らないということが大事だと思います。万一事故が発生した場合にも、被害を最小限に抑えるために実効性のある避難計画を準備しておくことが重要、このように考えますが、政府としてこの避難計画をどのように考えているのか、内閣府に質問します。

黒木政府参考人 お答えいたします。

 具体的な住民の避難につきましては、例えば、どの区域ごとに避難を行うのかといった避難単位の問題であるとか、あるいは避難先をどうするのか、避難経路はどこを通るのか。その場合、一つ用意するのか二つ用意するのか三つ用意するのかというかなり具体的な内容に入ります。地域のさまざまな事情を踏まえて作成されることが適当でありまして、基本的には、法の建前としては、自治体が作成する地域防災計画、避難計画において定めることとされておりますが、政府としては、自治体が行うこれらの計画の作成、充実の取り組みを全面的に支援するために、各地域ごとに、政府の各機関も入りましてワーキングチームを設置しまして、関係省庁を挙げて支援をしてきているところでございます。

 こういったワーキングチームを通じての支援のほかに、関係自治体の検討に資する専門的、技術的事項に関する情報の提供であるとか、関係自治体が実施する訓練への積極的な参加、安定沃素剤の住民への事前配付実施への支援であるとか、そういった支援を細かに実施しているところでございます。

 また、今後の課題ではございますけれども、訓練を継続的に重ねることによりまして、避難計画あるいは地域防災計画の実効性を向上させることが大変重要な課題であるというふうに考えております。引き続き、原子力防災会議のもとで、内閣府原子力防災を中心に、関係省庁を挙げて関係自治体への支援に努めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

斉藤(鉄)委員 具体的にお聞きしたいと思います。

 事故が発生した場合、いわゆる原発から五キロメートル圏内、PAZ、プリコーショナリー・アクション・ゾーン、予防的防護措置を準備する区域というふうに呼んでおりますが、PAZについては即時避難と聞いております。そのためには、例えば援護を必要とする方々に対しては、あらかじめ、もうここに行ってくださいと、ここに行くような措置を地方自治体や例えば介護施設の経営者に対してそのように義務づけるという、避難先まで決めた避難計画を整備すべきではないか、このように考えております。

 一方、三十キロメートル圏内、UPZ、アージェント・プロテクティブ・アクション・プランニング・ゾーン、ひどい発音ですが、UPZ、緊急防護措置を準備する区域ということでございますが、ここについては、具体的に、いざ事故のときにあなたはここに行ってくださいというところまでは決めないということだそうでございます。

 この点について、なぜPAZはそこまで、避難先まで決めておくけれども、このUPZについてはそこまで決めておかないのか。そのことも含めて、ちょっと考え方を質問させていただきます。

黒木政府参考人 PAZ、UPZ、それぞれ英語の翻訳をいろいろ試みたんですけれども、ちょうどいい翻訳がありませんで、もうPAZ、UPZというふうに言いならわしておりますが、PAZの圏内というのは、基本的には、原子炉の要するにいろいろな事象の進展が急速に展開する場合に備えて、予防的にそこの住民の方については即時避難していただくといったような建前で設定しております。

 したがいまして、そういうふうな緊急の迅速な要するに避難を実現するため、即時避難と言っておりますけれども、どうしてもその場合には、原子力規制委員会が緊急事態と判断した場合には、速やかに避難を開始していただく。

 また、避難の実施によりかえってリスクが高まるような要援護者の方については屋内退避の実施を優先していただく、こういう建前ですけれども、そういった場合、やはりそういった速やかな避難を実現するためには、あらかじめ、例えば病院に入院されている方でしたら、特定の病院にすぐに移れるような形で事前に一つ線を結んでおくといったような対応をいたしております。

 そして、あと、そうではない在宅の方もいらっしゃいます。そういった人につきましては、当然のことながら、屋内退避施設でございますので、今、御予算をお認めいただきまして、いわゆる非常用というような形で、使えるような形で防護措置を施した施設がございますので、そちらに移っていただく。そして、ある程度状況が整った段階で、そこからまた移っていただくことも考えるというふうな状況を考えております。

 全て、PAZについては今申しましたように、即時に移転しなきゃいけないというような事情があるからでございます。

 UPZにつきましても、実は、一般の避難される方についても、どこに逃げるのかということについては一応全て決めております。ただ、その中の、要するに今申し上げました病院に関しましてはいろいろな事情がございまして、それを果たして事前に全部決められるのかというのが一個あります。

 もちろん、決めることも可能な部分もありましょうけれども、そもそも、UPZのうちどの部分が避難するかというのは、今申し上げましたPAZとは違いまして、現実に屋内退避をしている、そしてプルームが通過する、通過した、そして沈着を起こす、そのときの要するにさまざまな空間線量をはかって、この部分はもうまずいね、二十マイクロシーベルトというふうな基準を立てておりますけれども、その部分については一時移転をしてもらう形になっておりますので、一帯、三十キロメートル圏内の全ての病院が移転するとか、そういう状況では全くございません。

 そういった中で、どこの病院が要するに行くかわからないというような状況もございますので、そういったことを考えた場合には、発災後に、事前の計画に従って、いわゆるひもつけというんですけれども、どこの病院に行く、そういったことを決めていくことで足りるだろうというふうな判断でございます。

 繰り返しますけれども、UPZについては、今申し上げましたように、プルームの通過はとりあえず屋内退避で一回やり過ごすといったところが一番のコンセプトでございます。それから沈着を起こしてということになりますので、二十マイクロシーベルトを超える場合には、約一週間程度で避難をしていただければと思います。

 特に、病院に関しましては、福島の反省がありまして、ばたばたと慌ててやると、いろいろなまたマイナスの作用がありますので、その点については気をつけてやっていかなきゃいけないということでございます。

 以上でございます。

斉藤(鉄)委員 三十キロメートル圏内、UPZについては、状況を見ながら最適な計画を立てられるような柔軟性を持っておいた方がいいと。それも非常に理解できるわけですけれども、川内原発の場合、鹿児島県では、いわゆるPAZ、五キロメートル圏内の措置を十キロメートル以内の要援護者については準用するという形で具体的避難先を特定する避難計画を整備している、このように聞いておりますが、これは、先ほど、内閣府の方針と少し違うわけですけれども、鹿児島県の避難計画についてはどのように評価されておりますでしょうか。

黒木政府参考人 原子力災害時の要援護者の安全な避難の確保、先ほどるる申し上げたとおりでありまして、福島の事故の重要な教訓でございます。

 原子力規制委員会が作成した原子力災害対策指針におきましても、緊急時の対応として、「早い段階からの対処や必要な支援の手当てなどについて、配慮しなければならない。」であるとか、あるいは「避難場所の事前調整が必要」といった記載が見られるところでございます。

 特に、原発からおおむね五キロメーター圏のPAZについては先ほどのとおりでございますが、五キロメーターから三十キロメーター圏のいわゆるUPZと呼ばれる区域に関しましては、まず屋内退避を実施していただき、その後、緊急時モニタリングの結果を踏まえて、避難や一時移転を実施していただくというふうな建前でございます。

 鹿児島県の取り組みの場合は、UPZの要援護者施設の避難につきましては、県が緊急時に調整する仕組みにより決定するというふうにいたしております。これは県の判断でございまして、その内容を伺いますと、やはり、五キロから三十キロ、この場合、我々は五キロから三十キロでもいい、そういった仕組みでもいけるんだと思いますけれども、鹿児島としてはさらにプラスアルファ、十キロまでというふうな形でのプラスアルファの取り組みをされているというふうな理解をいたしております。

 今申し上げましたように、鹿児島県では、UPZの要援護者施設の避難先について、県が緊急時に調整する仕組みにより決定するということでございますが、行政による要援護者避難の調整の仕組みにつきましては、福島の事故の教訓を踏まえまして、政府としても県に整備を求めてきたところでございます。

 これに加えて、鹿児島県では、PAZだけでなく、十キロメーター圏の病院等についても、県が主導して、施設ごとの避難計画の整備を進めているというようなことでございます。

 こういった取り組みというのは、同県の総合的な要援護者避難対策をさらに充実強化するものであると評価いたしておるところでございます。

 以上でございます。

斉藤(鉄)委員 早口で、ちょっと頭がついていけないところがあったんですが、要するに、国の方針とは違うけれども、よりその精神を深めた形で、より詳細な、またより要援護者に対して手厚い対策になっているので評価する、こういうことでございますね。はい、わかりました。

 最後に、また田中委員長にお聞きしますが、この川内原発ですが、きょうの新聞かきのうの新聞に、大幅に予定がおくれるという記事が出ておりました。何か追加の資料が非常にまた膨大で、それを事業者が準備するのに時間がかかるというようなことが新聞に書いてございましたけれども、今の審査の状況について最後に質問をさせていただきと思います。

田中(俊)政府参考人 先日、いわゆる補正申請については一応許可を出しまして、許可というか仮免許みたいなものですが、今、パブリックコメントをいただいて、それを踏まえて正式に委員会として決定していきたいと思います。

 その後に、それに基づいて、いわゆる工事認可、この工事認可の申請が、新聞で今先生御指摘のところ、おくれるということが九州電力の方から表明されたところであります。

 できるだけ急いで出していただくようにとは申し上げておりますけれども、今回、いわゆる補正申請で求めている重大事故対策等が相当多岐にわたっておりますので、その分の工事認可の申請がかなり大きいのでおくれているという説明であります。

 それが、当初は七月中に出る予定でしたけれども、それが出てこないので、一応確認したところ、九月末ぐらいというような話を伺っておりますので、それが出てきたら速やかに私どもとしても審査を進めていきたい、そのように考えています。

    〔委員長退席、山際委員長代理着席〕

斉藤(鉄)委員 終わります。ありがとうございました。

山際委員長代理 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一です。

 原子力規制委員会田中委員長に質問をさせていただきます。

 先ほど来の質疑を聞いていると、田中委員長は大変厳しい立場だなということを感じます。原発を推進する方からも、専門家の人選が偏っているという批判もありました。反対派からも賛成派からも、どちらからも責められている、大変なお立場だと思います。事務方も大変だと思います。どちらかというと、反対派、賛成派両方から偏っているという批判を受けているのはある意味中立的なのかもしれませんが、そういった事情も含め、心中お察ししますが、きょうの質問に入らせていただきます。

 ことしの七月十八日に、東京電力福島第一原子力発電所における事故の分析に係る検討会という会が行われました。その中で、外部の専門家である奈良林直さんという北海道大学の教授の発言の一部が、ホームページ上で公開されている動画から削除されたというふうに聞いております。

 その問題とされる発言というのは、一部、国会事故調聞き取り調査で発言を強要するようなことが行われていたと聞いている、不正にも関係するので、こういった発言の正しさ、根拠、こういったものを明らかにしてもらいたいという発言だったと聞いております。

 この北海道大学の奈良林教授の発言は、国会事故調の調査のやり方がおかしかった、不正という言葉も使われているわけですけれども、そういう御指摘をされているわけです。その部分が動画で削除されているわけです。

 実際に国会事故調の調査のやり方がおかしくて、不正があったとすれば、それは大変な問題だと思います。国会事故調は、超党派で、与野党の合意の上で立法府にできた調査会でしたから、そこでの調査が不適切であったということであれば、我々も国会議員としてその点について非常に強い関心を持たざるを得ませんし、誤った調査方法で誤った結論を導き出していたとすれば問題ですから、この点はどうだったのか、しっかり見きわめていく必要があると思います。

 あるいは、逆に、奈良林教授の発言が何らかの誤解に基づくものであれば、それはそれで問題だと思いますし、不正にかかわったとされる人は、個人名は出てきませんが、誰がやっていたかというのは明白なわけで、その調査に当たった人に対して、ある意味、名誉を傷つけることにもなりかねません。

 この件、なぜ動画を削除することになったのか、その経緯と、それから、田中委員長のこの件に関しての御意見をお聞きしたいと思います。

田中(俊)政府参考人 先生御指摘の七月十八日の第六回東京電力福島第一原子力発電所における事故の分析に係る検討会において、奈良林北海道大学教授の発言については、七月二十二日に外部から問題であるとの御指摘を受けたところでございます。これを受けて、原子力規制庁から奈良林北海道大学教授御本人に確認したところ、本人より議事録から削除をいただきたい旨の連絡をいただきました。

 これを受けて、既に私どものそういった会議は、全てユーチューブ等で全面公開し、議事録も公開しておりますけれども、そういった会議映像の当該発言部分については、発言者から議事録より削除したい旨連絡があったということでしたので、その音声は消されています、そういうテロップを入れて、そこを無音化するという措置をしております。

 こういった、本人が後で議事録から削除してほしいというようなことを発言するというような、余り根拠のない発言というのは余り好ましいことではないわけでございますけれども、この発言は一委員の発言でございますので、規制委員会としてはこれ以上の追及はしていないというところでございます。

    〔山際委員長代理退席、委員長着席〕

山内委員 では、確認ですが、あれは奈良林教授御本人がその部分の発言は不適切で誤りであったということを認めたという認識でよろしいんでしょうか。

田中(俊)政府参考人 はい。そのとおりでございます。

山内委員 それでは、そういうことで理解いたします。

 ちなみに、この件に関して、国会事故調の元ワーキンググループのメンバーの方から、原子力規制庁、田中委員長宛てに抗議文が届いていて、その回答期限が八月一日だったということになっておりますが、それについては回答されたんでしょうか、あるいはこれから回答されるおつもりはあるんでしょうか。

田中(俊)政府参考人 検討会の場における外部専門家の発言の一つでございますので、その事実関係について一つ一つ確認するというのはなかなか困難でありますし、そういう立場にはないということでありますので、今回の抗議文について、その対応については私どもとしては回答を差し控えさせていただいております。

 抗議の内容については、本人が発言が不適切であったということを認めておりますので、そのことが回答の一つになっているんだというふうに私は理解しておるところでございます。

山内委員 では、幾つか質問を飛ばしまして、別の質問に入りたいと思います。

 先日、菅官房長官が、川内原発と同型炉であれば、審査の効率化は可能ではないかということを発言されています。川内原発の審査は新規制では初めてのことなので、その後の審査で、川内原発と同じ形の炉であれば、審査のノウハウを活用して効率化が図れる、そういった発言をされております。

 この発言に対しては、もう既に民間からも批判の声があります。同じ型といっても、それぞれオーダーメードでつくっているから、効率化ができないという意見もあります。あるいは、場所によっては想定される地震の規模も異なるので、同じ炉だから審査を簡略化していい、そういうものではないという発言もあります。

 そういった意味では、菅官房長官の審査を効率化できるという発言は個人的にはいかがなものかと思います。

 他方で、そもそも、審査のやり方あるいは審査の効率化ということについて、原子力規制委員会自身が決めることであって、現職の閣僚が口を挟んでいいことではないと私は思っております。

 原子力規制委員会設置法の五条において、「原子力規制委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行う。」とあります。ですから、原子力規制委員長、田中委員長も委員会も独立して判断をする必要があると思います。そういった意味では、官房長官の発言に影響されるべきではないと思うんですけれども、この件について田中委員長の御所見を伺います。

田中(俊)政府参考人 官房長官の発言がどのような状況でどのような発言をされたかの詳細については承知しておりませんけれども、一般論として申し上げますと、最初の審査の経験が後続の審査に生かされるということで効率化が図られる可能性があるということをおっしゃったということではないかと思いますし、そのことが、今先生御指摘のように、各サイトごとに、各原発ごとに違う条件がありますので、そういったことまで、いわゆる、悪く言えば効率化、悪い意味の効率化を図るというようなことは決して行わない、行うつもりはありませんので、御安心いただきたいと思います。

山内委員 ありがとうございます。

 それでは、ちょっと時間の関係で、次の質問に行きます。

 次は、資源エネルギー庁に質問します。電力価格の算出方法について質問をしたいと思います。

 私は、二〇一〇年に衆議院の経産委員会で、電源三法の審議のときに、原子力の発電コストの試算について質問したことがあります。そのときの政府の回答は、原発のコストには、運転維持費あるいは燃料費というような、発電に直接必要なコストで計算しているという回答でした。

 実際、原子力発電のコスト、福島事故の前の答弁ですけれども、事故の賠償費用なんかをおくとしても、いろいろな補助金も電力コストに当時は入っておりませんでしたし、いろいろな広報費なんかも入っていませんでした。そういった意味では、福島事故の前から、原発の電力コストは余りにも安く見積もられているんじゃないかという指摘が当時からありました。しかし、その後、福島の事故があったわけで、賠償費用もあります、それから、安全対策もより厳しくなっているので、よりコストアップしていると思います。

 そういった意味で、事故の前と後でどのようにこの電力価格の算出方法が変わったのか、それについてまずお聞きします。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問のございました原子力発電所の発電コストの件でございます。

 先生引用されております、二〇〇四年一月に総合資源エネルギー調査会のコスト等検討小委員会でまず一度検証をしております。その際には、御指摘のとおり、資本費、燃料費、そして修繕などの運転維持費、こうした純粋な発電原価をもとに試算を行いまして、当時、キロワットアワー当たり五・九円と試算をさせていただいております。

 これに対しまして、震災後、エネルギー・環境会議のコスト等検証委員会の方で改めて検証がされました、二〇一一年十二月でございますが、こちらの方では、その発電原価に加えまして、損害賠償費用、あるいは御指摘のありました電源立地地域対策交付金等の政策経費、こうした費用も加算をいたしまして、原子力の発電コストにつきましてはキロワットアワー当たり八・九円以上、こういった試算結果になっている、このようなものでございます。

山内委員 その八・九円でもやはりまだ低いんじゃないかという声がいろいろあります。もちろん賠償費用はまだ確定したわけではありませんし、例えば、日本経済研究センターという民間のシンクタンクによると、これから四十年で福島の事故の後の除染や原状回復のために百五十兆円要るというような試算もあります。いろいろな試算があって、正確な数字はもちろん出ていないと思います。あるいは、立命館大学の大島教授は、福島の事故の賠償費用、原状回復費用、廃炉、少なくとも十一兆円必要。いろいろな人がいろいろなことを言っているし、正確な数字はまだわからないと思いますので、この原発の本当の費用というのはこれからも非常に短い期間で見直していく必要があると思います。それから、バックエンドのコストの問題もまだわからない。

 そういった意味では、とりあえず今は八・九円ということになっているという話ですけれども、これはかなり頻繁に見直しをしていかなくてはいけないかもしれません。あるいは、もしかしたら技術革新で安くなる方向に行くかもしれません。

 いずれにしても、これまでみたいに、二〇〇四年に決めて、それ以来変わっていないみたいなことではもう済まないんだと思います。これからどのような頻度で、やり方で、今後コストの試算のやり方を見直していくのか、それについてお聞きしたいと思います。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、この現下のコスト、見直しが必要な状況になろうかと思います。例えば、先ほど申し上げました二〇一一年十二月、これも新規制基準ができる前の状況でございます。したがいまして、安全対策費用につきましても見直しが行われる可能性はあろうかと思います。

 他方、どれぐらいの確率で事故が起きるだろうか、あるいは事故が起きた場合の被害費用といったものがどのようなものになるか、こういったことについても、先生も御指摘されました技術革新の影響といったものも加味されなければいけないかと思っております。

 いずれにいたしましても、現時点で、どの段階で、どの頻度でということを確定しているわけではございませんが、適切なタイミングで、この発電コスト、実態をあらわすような形で検証をさせていただきたいと思っております。

山内委員 時間がないので指摘するにとどめますが、二〇一一年の後、いろいろ安全対策で、明らかに、もう何千億どころか全電力会社を合わせると一兆円ぐらいのオーダーで安全対策費がふえているといったような報道もありました。そういった意味では、この時期は非常に短い頻度で見直していくことが必要ではないかと思いますので、きちんと正確な試算ができるように御努力いただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。

森委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 原子力規制委員会が七月十六日に九州電力川内原発の一、二号機について審査書案を出したことに関連して、田中委員長は先ほどの答弁で、川内原発は世界最高水準の原発であるというふうに答弁されましたが、どういう意味で川内原発は世界最高水準の原発だと折り紙をつけられたのでしょうか。端的にお答えください。

田中(俊)政府参考人 端的にということですが、福島第一原発の教訓をきちっと踏まえ、あるいはIAEAとか外国の規制基準を参考にし、また、我が国の自然条件を考慮、勘案して、総合的に見て最も厳しい水準にあると思っています。

 具体的に申し上げますと、今回、福島の事故でいわゆる外部電源全喪失、SBOということが起こりましたので、こういったことに耐えられるように、かなり多重で多様性のある電源確保策を求めております。電源喪失期間につきましても、フランスとかアメリカでは三日程度を想定していますけれども、今回は、一週間は少なくとももつような電源の準備をしていただくというようなこと、それから、移動用の電源車も複数用意していただくというふうなことをしております。

 先ほど申し上げましたけれども、ベントについても、いわゆるフィルターつきのベントを要求していくというようなことがございます。

 それから地震、津波、これはもうある意味では我が国は飛び抜けて厳しい条件にあります自然災害、そういったところについても、そういったところを十分考慮して、それに耐えられるような、それによって重大事故を起こさないような対応を求めております。

笠井委員 私は、川内原発、世界最高水準と折り紙をつけられたことについて、本当に驚いています。福島の事故をとったって、まだ収束もしていないし原因も究明されていないのに、これで最高水準と言えるのかという話で、大丈夫と言えるのかということになってきて、今、とりわけ重大事故対策を挙げられましたけれども、伺いますけれども、九州電力は、重大事故が起きた場合の格納容器の破損に関して、MAAPという解析コードを使って格納容器の破損が起こらないという結果を提出して、原子力規制委員会は、「申請者が計画している格納容器破損防止対策は、有効なものであると判断した。」ということで、九電の評価を妥当と認めているわけです。

 では、果たしてそうか。

 九電の解析では、事故後約一・五時間、九十分で原子炉容器が破損する結果になっております。問題は、運転員による原子炉下部のキャビティーへの注水操作が約四十九分後から開始となっているので、原子炉容器破損時間が九十分よりも早く、仮に半分の四十五分であれば、原子炉容器破損部から落下してくる溶融炉心というのは格納容器のコンクリートの床と直接に接触をして、そして大規模な溶融炉心・コンクリート相互作用が生じて、そして格納容器破損に至る事態になる可能性があるということであります。そこで、原子炉容器の破損時間がどれだけかというのが一つの重要なポイントになってくると思うんです。

 田中委員長、この間もクロスチェック解析についてただしてまいりましたが、具体的に伺います。

 この原子炉容器破損時間の解析結果の不確かさの値を、規制委員会は九電が用いたものと異なる解析コードできちっと審査したのか、していないのか。どうでしょうか、このことは。

田中(俊)政府参考人 クロスチェックという考え方はいろいろありますけれども、いろいろな今の御指摘の点については、私どもは独自に一応評価をしております。ただ、計算コード、シミュレーションコードですので、いろいろ条件が少し違うところがありますので、若干の違いが出てまいりますけれども、一応、事業者からの申請のあったことについて、それの有効性についてはきちっと確認しております。

笠井委員 この問題の核心というのは、溶融炉心、溶けた炉心が落ちてくる時間が解析結果よりも短ければ大変なことになるという問題だと思うんです。昨日も、東電が公表した福島第一の三号機のメルトダウンの解析結果について、東電自身が使ったMAAPでわかることは正確でない、不確かさがあるというふうに認めているわけであります。

 今、独自の評価というふうに、規制委員会はやられていると言われたけれども、じゃ、川内原発について、九電と異なる解析コードで評価したのか、していないのか。審査したのか、していないのか。したんだったら、その解析コードあるいは独自の評価で、規制委員会の解析では原子炉容器の破損時間の値は何分、幾らになったのか。その点は具体的にどうですか。

田中(俊)政府参考人 私どもは、いわゆる炉心損傷については、RELAP5の修正版のようなもの、それからSKETCHとかTRACE5とかといった最新のコードを使って一応評価しております。

 細かいことで、それで何分、どうなったかというところまでは今私も承知しておりませんけれども、そういうことで、クロスチェックはきちっとやらせていただいております。

笠井委員 いや、チェックしたと言うんだったら、細かいことはと言うんじゃなくて、何分だから大丈夫だとかそういう話がなかったらだめでしょう。そういうことも具体的に言わないわけですよ。

 この間の答弁でも、評価レポートは後で出しますと言われているけれども、そういうふうなことをやっているんだったら、ちゃんと何でここに書いていないのか。こういうことだから妥当だというふうになぜ書かないのかという問題であります。

 まさにそういう点でいうと、その点についてよくよく聞いたら、何かいろいろな形でしっかりとやっていることはやっているんですという話をするんだけれども、そのことについて一切どこにも記述がないし、聞かないとそういうふうなことも言われない。まさにそういう形でいうと、九電が基準に適合するように出した数字を、要するにうのみにして適合していると言ったんじゃないかと言われても仕方がない話になってくるんですよ。

 もう一つ伺いますが、体制の問題。

 九電は、重大事故体制について、炉心損傷防止対策、格納容器破損防止対策、運転停止中原子炉における燃料破損防止対策と、合わせて十八の事故シークエンスを挙げております。いずれも、重大事故対策要員、それに係る人については五十二名であり、いずれの場合も対応は可能であるというふうに書いてあるんですけれども、それに対して規制委員会は、九電の評価を妥当と認めています。

 いろいろな事故シークエンスがある。でも、いずれも九電は、五十二名という数字があって、それ以内とかその範囲でできるから全部対応可能というふうに言っていることを、規制委員会も、オーケーということで、妥当と言っているわけですが、どうして、あらかじめ五十二名いればどんなシークエンスでも必ずきちんと対策ができるなどと言えるのか。

 規制委員会として、そんな九電の判断が妥当というふうに判断した根拠は何ですか。

田中(俊)政府参考人 まず、ちょっと補足になりますけれども、いわゆるクロスチェックをした評価の結果については、相当分厚いものになりますので、近々レポートとして報告させていただきます。その中に、非常に細かい、詳細な時間、経緯とか、先ほど先生御指摘のような炉心が溶ける時間とか、それに対する対応がどうなるかというようなことも、いろいろなケースについて評価しておりますので、それを参照していただければ幸いでございます。

 それから、そういった中で、いろいろな事故のシークエンスというのを想定しております。それに対してどういった対処をすべきか、どういった対処があるかということで、事業者の評価を一つ一つ評価して、今御指摘の人数がいて、かつそれなりの設備が必要でありますけれども、そういったことも含めまして評価をして、これで対処できるというような審査、判断をしているところでございます。

笠井委員 五十二名で大丈夫という根拠は何ですか。もうちょっと端的に答えてください。

田中(俊)政府参考人 先ほど先生も御指摘のように、非常にたくさんの事故のシークエンスがございます。それによってどういった機器をどういうふうに動かすかというようなことがございまして、その中で十分に事故収束に向けた対応ができるかどうかということを、一つ一つのシークエンスについて判断をして、評価をして、その結果として、最大として五十二名ということになっているということでございます。

笠井委員 私、わからないんですね、どんな事態が起こっても五十二名で大丈夫と。五十三名必要じゃないかとか六十名必要じゃないかとか、出て当たり前だと思うんですよ。福島事故の教訓を見たって、想定したっていろいろなことが起こって、想定外だ、こうだああだとなっているわけでしょう。その教訓で、どんな事態にもといってやろうという話なのに、五十二名という数字なんですよ。それ以上の要員が必要だという事態は起こらないだろうという、まさにこれも願望にすぎないんじゃないかというふうに、私、思わざるを得ない。

 もう一点伺いますが、そもそも、今回の審査に当たって、新規制基準について、政府も規制委員会も繰り返し世界最高水準と、基準そのものがそうだと言われていますけれども、一連の重要事項について、EUの基準で実施されているものすら盛り込まれていない。

 例えば、欧州加圧水型原発、EPRと日本の新規制基準を比べてみると、EPRでは、大型航空機が衝突しても破壊から耐えられるように、格納容器は二重構造を求めておりますが、日本の基準にはその要求はありません。これ一つとっても世界最高水準とは言えないんじゃないですか。どうですか。

田中(俊)政府参考人 いわゆる二重格納容器の問題、航空機衝突については、一応、バックフィットをするということで若干時間の余裕を設けておりますけれども、そういった場合でも、きちっと原子炉を安全に停止できるようにというような方法を求めております。

 ですから、いわゆる航空機について、耐えられるかどうか、二重格納容器で十分かどうかということは今後の評価も要ると思いますけれども、新しい炉をつくる場合にはそういうこともあろうかと思いますけれども、今、既存の原子炉についてそういうことですので、さらにできることとしては、きちっとそういう場合でも安全に原子炉を停止できるようにするということでございます。

 それから、先ほど五十二名と申しましたのは、緊急時にすぐにでも駆けつけられる人間が五十二名でありまして、もう少し時間を置いて、必要になれば応援を、人数をふやすということは可能だと思いますが、当面五十二名で緊急時のいわゆる重大事故対策はできるということで評価させていただいているところでございます。

笠井委員 違うんですよ。これは対応及び復旧に必要な要員が五十二名と書いてあるんですよ。緊急時にとりあえずじゃないんですよ、書いてあるのは。後で応援とかという話を書いているんじゃないんですよ。これだけあればできますと書いてあるんですよ。

 それから、今の話でいいますと、結局時間がかかる、二重構造、新しくやるならわかるけれどもと。EUのようにやるといったって、こちらは今既存だから、それは時間がかかるから今後いずれ対策と言うけれども、それでは何でオーケーと言えるのか。しかも、二重構造といったって、それは今よりも水準の高いものを求めているのになぜやらないのかという問題になって、最高水準とは言えないじゃないかという話だと思うんですよ。

 九電は、航空機落下確率について、一つの原子炉について、確率は一千万回に一回、十のマイナス七乗を超えないので、飛行機落下による防護については設計上考慮する必要はないというふうに評価して、規制委員会も、最新の航路、飛行実績等の情報を踏まえて航空機落下確率を評価し、防護設計の要否判断である十のマイナス七乗回・炉年を超えていないことから、設計上考慮する必要はないとしていることは合理性があるというふうに九電の評価を認めております。

 この確率は、軍用機を含めて、原子力施設の上は飛行はしないという運用が守られていることが大前提だと思うんですが、これまで伊方原発上空を軍用機が飛行している事実を防衛省も認めています。今、墜落事故が頻発するオスプレイの佐賀配備まで計画をされて、米軍機が日本の空のどこを飛んでも米軍の運用と物が言えないのが日本政府でありますが、運用が守られる保証は何もないと思うんです。

 そもそも、同じ確率でも、欧州基準では格納容器の二重構造を求めているのに、日本の基準にはないのに、なぜこれでも審査結果は妥当だ、世界最高水準だと言えるのか。いかがですか。

田中(俊)政府参考人 先ほど来申し上げておりますけれども、全ての点について一点の曇りもなく世界最高だということは申し上げておりません。世界最高水準のレベルにありますということでございます。

 航空機落下についても、今できることはやはり、格納容器を二重にするということはこれは不可能ではありますので、航空機落下の確率はともかく、大変低いものでございますけれども、それを認めているわけではなくて、その落下があった場合でも原子炉をきちっと安全に停止できるような対策を求めているというところでございます。

笠井委員 終わりますが、世界最高水準というのは、でこぼこがあるんじゃなくて、どれをとったって世界でやっているものよりも上以上ということでなければいけないはずなんですよ。そんなことでごまかしちゃいけないと思うんです。

 そのほかにも火山の問題、いろいろな問題がある。まさに今回の審査案というのは、このほかにも本当にそういう問題を抱えながら、まともに対応がないまま事実上の再稼働の合格証明書を出すもので、断じて認められないと思います。

 私は、今規制委員会がやるべきは、パブリックコメント、その中での国民や専門家からの批判を真摯に受けとめて、審査案を撤回する。そして、今やるべきは不合格証明書です、合格証明書じゃなくて。規制委員会としてそれを出すことだ。これが今必要だということを強く求めて、質問を終わります。

森委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーです。

 原子力問題に関する特別委員会の閉中審査に際し、きょうは私は、福島第一原発事故関連について、確認の意味を込めて質問をさせていただきたいと思います。

 質問の前に、このことを冒頭で申し上げておきたいと思います。

 東京電力福島第一原子力発電所の事故をめぐって、二〇一二年に福島県の住民らから業務上過失致死傷の疑いで告訴、告発され、昨年の九月、今回の規模の地震や津波を具体的に予測することは困難であったと結論づけて不起訴となっていた東京電力の旧経営陣らに対し、住民らがそれを不服として再審査を申し立てていたこの件について、東京第五検察審査会は本年七月二十三日付で、起訴すべきと議決しています。

 報道によりますと、この背景には、津波の発生を具体的に言い当てるのは不可能だが、原発事業者としては、津波の来襲を想定して対応をとる必要があったと指摘しています。勝俣恒久元会長に、東電の最高責任者として各部署に適切な対応策をとらせることが可能な地位にあったとしており、武藤栄、武黒一郎両元副社長へも、二〇〇八年に、最悪の場合、十五・七メートルの津波が発生するとの試算の報告を受けているが、適切な措置をとるべき立場にありながら講じていなかったとしています。

 きょうも委員会で、その責任の所在について、どこが責任を持って川内原発の再稼働を命じるのかというふうなことも再三確認の質問と、そして、政府がしっかり判断をするというふうな答弁が出ています。

 この福島第一原発の事故、甚大な災害事故を起こしていながら、法的な責任者不在とされているわけです。原告からは、加害者が不在だということはまかりならぬということも上がっておりまして、その怒りの声は現在も苦しい生活を余儀なくされていらっしゃる多くの被災者の方々を初め、国民が、この件、この責任を誰がとるのかという、今後の推移をしっかり見ておくべきであるということを、起訴すべきという東京第五検察審査会の議決から本員は思料するものであります。

 特に、再稼働についての重大な責任はどこにあるのか、所在するのか。予見可能性のあらゆる想定を含めて、私は、この委員会でさらに、その責任のありようは追及されてしかるべきであるということを再確認し、このことについて、この際、意見を申し述べておきたいというふうに思います。

 では、質問に入らせていただきます。

 まず、規制委員会の専門家会議の中間報告について質問をいたします。

 福島第一原子力発電所の事故分析を続けている原子力規制委員会専門家会議が十八日に開催した専門家会議で、福島の一号機で非常用電源が失われたのは津波が原因と結論づけ、中間報告の案を示したとされている件について質問いたします。

 今回のこの結論に至るまで、どのような経緯の調査及び検討が行われたのか、まず伺います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 東京電力福島第一原子力発電所の事故につきましては、これまで国会あるいは政府等の事故調査委員会において報告書がまとめられております。そして、基本的な事故の事象進展については整理されておるところでございますが、私ども原子力規制委員会におきましては、この福島の事故の継続的な事故分析、これを行うことは、重要な所掌事務の一つというふうにされているところでございます。したがいまして、国会事故調などで解明すべきとされている点を含めまして、技術的に解明すべき点について分析をする、このために専門家の会合の検討会を設置いたしまして、昨年の五月から議論を進めてきたところでございます。

 この検討会におきましては、まず、国会事故調におきまして未解明の問題とされ、今後規制当局によります実証的な調査、検証が必要である、そういう指摘をされている事項に関して検討を実施したものでございます。今回、おおむね検討が終了したことから、中間報告として取りまとめをさせていただいたというところでございます。

玉城委員 では、続けてお伺いいたします。

 国会事故調査委員会の報告書で指摘された、津波が到達する前に非常用電源が失われたとする、地震が原因である可能性については、この専門家会議でどのような検証が行われたんでしょうか。

山本政府参考人 先般取りまとめをいたしましたこの中間報告書の案でございますけれども、福島第一の一号機の非常用電源の機能喪失について検討を実施いたしました。

 検討に当たりましては、国会の事故調査報告書が提示された後に、新たに追加されあるいは発見されましたデータなどの分析を行いまして、非常用電源の喪失時間が一体いつなのか、あるいは津波の到達時刻はいつなのか、こういった推定を行ったところでございます。

 加えまして、私ども原子力規制庁の職員が現地調査を行いまして、電源盤について物理的な損傷がないこと、それから、電源盤内部には浸水の跡がありまして、それがどの程度であったか、そういった確認を行ったところでございます。

 これらの結果、この非常用交流電源の機能喪失につきましては、地震の影響ではなく津波による浸水によるもの、こういうふうに考えられるという結果に至ったものでございます。

玉城委員 では、その専門家会議がこの結果を出した点に関して、今後も調査を継続し、正式な報告書としてまとめるとする場合に、さきに提出されている国会事故調の報告書の内容とどのように整合性をとる報告となるのかについてお伺いいたします。

山本政府参考人 先ほどもお答えいたしましたように、まず、福島第一原子力発電所の事故につきましては、これまで国会あるいは政府などにおいて事故調査の報告書としてまとめられておりまして、基本的な事故の事象進展については整理されているところでございます。

 それで、国会事故調の報告書におきましては未解明の問題とされて、今後規制当局による実証的な調査、検証が必要であるとされております事項、これにつきまして、今回、私ども規制委員会の中間報告書案としてまとめたということでございます。

 したがいまして、国会事故調の未解明とされているところを引き継いで、私ども規制委員会で調査検討を行ったもの、こういう位置づけのものでございます。

玉城委員 ありがとうございます。

 では、その都度、それぞれの未解明の部分についてのいわゆる中間報告が何回か出ていくというふうな形になるかというふうに思います。ありがとうございます。

 では、きょうは東京電力から廣瀬社長にお越しいただいておりますので、今現在のALPSの汚染水処理の件についてお伺いしたいと思います。

 これまでに、たび重なるトラブルによって停止と稼働を繰り返しているALPSなんですが、現在の稼働状況、まず、どのようになっているのか、お聞かせください。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のALPS、多核種除去設備でございますけれども、これは、昨年の三月から、試運転という位置づけで汚染水の処理をずっと続けてまいってきております。

 しかし、何分、とにかく初めての処理ということでございまして、その間に、どうやってその設備を安定的に稼働させるか、あるいは除去能力をどうやって高めていくかということで、繰り返し、いわゆる試行を何度もやってまいってきております。

 そうした過程で、何度もトラブルがあり停止をするということで、本当に皆様に大変御心配をおかけしているというところで、本当に申しわけなく思っているところでございます。現状は、そうした過程で出てきましたふぐあいについては、全て対策を終了しております。

 現在は、ことしの三月に、いわゆる多核種を取る処理の中で前処理という工程がございますが、そこの前処理の工程、二つございますけれども、一つの工程で使われているクロスフローフィルターというもののふぐあいがありましたので、このクロスフローフィルターを、A系統、B系統、C系統、三系統とも全部交換をしております。

 ただし、今申しましたように、この前処理工程というのは二つございますので、もう一工程の方は、これは全然トラブルは起きていないんですけれども、同じようなクロスフィルターが使われてございますので、これを事前に、前もって要注意のために取りかえようということで、今、この三系統あるうちの一つを、二つ目のふぐあいのない方ですけれども、クロスフローフィルターを取りかえておりまして、今、二つの系統を動かしております。

 そのうちの一つは、もうこのクロスフローフィルターの交換は完了しておりますので、二つがこれで終わることになりまして、もう一つ、残りを九月に交換するという予定でございます。

 今後も、稼働をどうやってより安定させるかとか除去能力をより高めるということはもちろん絶えずやっていかなければいけませんが、そうしたことを踏まえて、今の予定ですと、十二月ごろに本格運転を始めたいというふうに計画しているところでございます。

 一方で、これは、今のお話は一つ目のALPSのお話でございましたが、御存じのように、高性能の多核種除去設備、さらには増設ALPSと呼ばれる第二、第三のものもこの後、戦列に入ってまいりますが、こうしたものについては、第一個目のところで得られた知見、トラブル対応等々を全部踏まえた上で、できれば最初からそうしたものをクリアした形で稼働ができるような対策を取り入れて、進めているところでございます。

 以上でございます。

玉城委員 詳しい御説明、ありがとうございます。

 報道によりますと、敷地内に保管されている汚染水が約四十七万トン、処理済みが約十一万トンとされていますが、その処理済みの水も、トリチウム以外の放射性物質が除去できていないというふうにされております。

 今説明があったとおり、三つの系統で二つを動かしながら、またさらに第二、第三のALPSを設置していくということですが、これまでは、トリチウム以外の六十二種類の放射性物質を取り除くことが可能で、三つの系統で一日当たり合計七百五十トンの汚水処理を、処理できると説明されていましたが、今の社長の説明からしますと、現在の状況からは、この汚染水処理の工程に大幅なおくれや変更が生じることが予想されます。その工程やあるいはその対応について、どのような対策をとられるものでありますか。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、私ども、より安全な形に資するべく、汚染水の処理を計画に沿って進めるべく、今取り組んでいるところでございますが、先ほどもお答えしましたけれども、いわゆるALPSの稼働の状況、さらに、もともと汚染水自身が一日四百トン入ってくるというところがございますので、その量によって当然処理すべき量が変わってきてしまいますので、そうした変動要素というのはまだまだあると思っておりますので、当然いろいろなケースを踏まえて対策を考えていかなければいけないと思っております。

 先ほど申しました第二、第三ALPSももちろんですし、汚染水処理設備についても多重化を図っていかなければいけませんし、もう一方で、入ってくる方をいかに抑制するかというのも当然極めて大事なところでありますので、御存じのように、地下水バイパスであるとか、あるいは、雨が降りますとそれが地下水となっていきますので、発電所の構内を、フェーシングということで、雨が地下水にならないようにしておりますし、御存じのとおりの凍土壁も今まさに計画をしておるところでございます。

 いずれにしましても、こうしたことを多重的に行いまして、とにかく我々としては、処理した水はためておかなければいけませんので、より安全な形、より少しでもリスクを減らす形で処理をして、皆さんに少しでも御心配をおかけすることのないように今後とも取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

玉城委員 ありがとうございました。

 廣瀬社長への質問は以上とさせていただきます。

 もう時間ですので、最後に一つだけ。作業員の被曝に関する件について、質問を一つだけさせてください。

 発電所事故直後、被曝線量が法令の上限に達する作業員が相次ぎ、事故対応を継続するために国が急遽上限を引き上げたことについて、労働問題に取り組む団体から要請されていた作業員の被曝の制度等の整備について規制庁が検討するということが報道に上がっています。

 この件について一点だけお伺いいたしますが、この制度整備の検討について、従事する作業員のみならず、国民一般の線量限度も変更する等で検討するものであるのかどうか、この一点だけお伺いしたいと思います。

櫻田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のありました緊急作業時の被曝線量限度に関する検討でございますけれども、これはまさに作業員の被曝線量の緊急時の限度に関する検討でございまして、一般公衆の被曝線量を検討するということではございません。

玉城委員 もう時間ですので終わらせていただきますが、きょうも冒頭で申し上げましたとおり、さまざまな問題には必ず大きな責任が伴います。その責任の所在をしっかりとさせていただいて、国民が一日も早く平穏な生活を取り戻せるという状況をつくっていただくよう御尽力していただくことをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。ニフェーデービタン。

森委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十二分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.