衆議院

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第2号 平成26年11月6日(木曜日)

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平成二十六年十一月六日(木曜日)

    午前八時五十分開議

 出席委員

   委員長 吉野 正芳君

   理事 岸  信夫君 理事 齋藤  健君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 鈴木 淳司君

   理事 牧原 秀樹君 理事 辻元 清美君

   理事 椎名  毅君 理事 赤羽 一嘉君

      金子万寿夫君    川田  隆君

      菅家 一郎君    菅野さちこ君

      佐々木 紀君    斎藤 洋明君

      白石  徹君    新開 裕司君

      新谷 正義君    助田 重義君

      高木  毅君    高鳥 修一君

      津島  淳君    中村 裕之君

      額賀福志郎君    細田 健一君

      細田 博之君    宮川 典子君

      宮澤 博行君    簗  和生君

      奥野総一郎君    菅  直人君

      田嶋  要君    寺島 義幸君

      吉田  泉君    若井 康彦君

      今井 雅人君    小熊 慎司君

      濱村  進君    樋口 尚也君

      今村 洋史君    西田  譲君

      柏倉 祐司君    笠井  亮君

      青木  愛君

    …………………………………

   経済産業副大臣      山際大志郎君

   内閣府大臣政務官     福山  守君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 兵谷 芳康君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   平井 興宣君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           田中 正朗君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           土井 良治君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           吉野 恭司君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁次長) 高橋 泰三君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            木村 陽一君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      多田 明弘君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 奥主 喜美君

   政府参考人

   (原子力規制庁長官官房核物質・放射線総括審議官) 片山  啓君

   政府参考人

   (原子力規制庁長官官房審議官)          山田 知穂君

   政府参考人

   (原子力規制庁原子力規制部長)          櫻田 道夫君

   参考人

   (東京電力株式会社常務執行役)          姉川 尚史君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月六日

 辞任         補欠選任

  斎藤 洋明君     宮川 典子君

  助田 重義君     新開 裕司君

  荒井  聰君     菅  直人君

  田嶋  要君     吉田  泉君

  中野 洋昌君     濱村  進君

同日

 辞任         補欠選任

  新開 裕司君     助田 重義君

  宮川 典子君     斎藤 洋明君

  菅  直人君     荒井  聰君

  吉田  泉君     寺島 義幸君

  濱村  進君     中野 洋昌君

同日

 辞任         補欠選任

  寺島 義幸君     田嶋  要君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 原子力問題に関する件


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     ――――◇―――――

吉野委員長 これより会議を開きます。

 原子力問題に関する件について調査を進めます。

 この際、原子力規制委員会の活動状況について説明を聴取いたします。田中原子力規制委員会委員長。

田中政府特別補佐人 おはようございます。原子力規制委員会委員長の田中俊一でございます。

 衆議院原子力問題調査特別委員会における御審議に先立ち、原子力規制委員会の活動状況について御説明申し上げます。

 原子力規制委員会は、原子力利用に対する確かな規制を通じて、人と環境を守るという使命を果たすべく、さまざまな政策課題に取り組んでおります。

 まず第一に、東京電力福島第一原子力発電所の安全確保です。

 事故を起こした原子炉の放射線リスクを低減するため、引き続き、昨年八月に認可した実施計画に即した適切な対応が行われているかについてしっかりと監視し、安全を確保してまいります。また、早期かつ安全な廃炉や汚染水対策の実施に向け、規制当局として、今後とも技術的助言を積極的に行ってまいります。

 また、事故原因の究明は、原子力規制委員会の重要な業務の一つであり、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会の報告書において、今後規制当局による実証的な調査、検証が必要であるとされた未解明問題について、先月初めに、規制当局として中間報告書を取りまとめました。今後も、継続して事故原因の究明に取り組みます。

 第二は、改正原子炉等規制法に基づく、原子力施設の新しい規制基準への適合性審査です。

 原子力規制委員会では、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえ、地震、津波に耐え得る性能の強化や重大事故対策を盛り込んだ新しい規制基準を制定しました。この新規制基準への適合性審査については、これまで、発電用原子炉については十の電気事業者から二十基の発電用原子炉に係る申請が、核燃料施設等については八つの事業者から十四の施設に係る申請が出されており、順次審査を進めております。このうち、発電用原子炉については、九州電力川内原子力発電所一号機、二号機に係る設置変更許可申請について審査を行った結果、新しい規制基準に適合していると認められたことから、九月十日付で許可したところです。

 今後も、新規制基準に基づく適合性審査や検査について、厳格かつ適切に取り組んでまいります。

 第三は、原子力災害対策の充実強化です。

 原子力規制委員会では、原子力災害対策特別措置法に基づき、原子力災害対策を重点的に実施すべき区域の設定や、緊急時に防護措置を直ちに実施するための方針を示した原子力災害対策指針を策定するとともに、緊急時におけるモニタリング体制を整備、強化するための取り組みを進めております。

 また、災害対策基本法に基づき関係自治体が定める地域防災計画については、現在、内閣府の原子力防災部門を中心に、政府を挙げて各自治体の取り組みを支援しております。原子力規制委員会としても、技術的、専門的な観点から支援してまいります。

 第四は、国際的な連携の強化です。

 我が国の原子力規制を向上させるためには、海外の原子力規制に係る経験や知見を取り込むとともに、積極的に情報交換を進めていくことも重要です。

 本年九月には、東京で第七回日中韓上級規制者会合、TRMを開催し、原子力安全に関する地域協力のあり方を議論しました。今後も、継続して協力関係を強化してまいります。加えて、アメリカ、フランス、イギリスなど、世界各国の原子力規制機関との間で引き続き情報交換を進めてまいります。さらに、国際原子力機関、IAEAによる総合規制評価サービスの受け入れに向けた準備を進めるなど、国際機関との連携についても積極的に取り組んでまいります。

 以上、原子力規制委員会の活動状況について御説明いたしました。

 我が国の原子力規制に対する信頼の回復は、まだ道半ばにあります。原子力規制委員会では、与えられた職責を踏まえ、真の安全文化を構築し、原子力利用の安全が確実に担保されるよう、今後とも努力してまいります。何とぞよろしくお願い申し上げます。

吉野委員長 以上で説明は終わりました。

    ―――――――――――――

吉野委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として東京電力株式会社常務執行役姉川尚史君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府大臣官房審議官兵谷芳康君、内閣府政策統括官平井興宣君、文部科学省大臣官房審議官田中正朗君、経済産業省大臣官房審議官土井良治君、経済産業省大臣官房審議官吉野恭司君、資源エネルギー庁次長高橋泰三君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長木村陽一君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長多田明弘君、環境省大臣官房審議官奥主喜美君、原子力規制庁長官官房核物質・放射線総括審議官片山啓君、原子力規制庁長官官房審議官山田知穂君及び原子力規制庁原子力規制部長櫻田道夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

吉野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

吉野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木淳司君。

鈴木(淳)委員 おはようございます。

 田中委員長、きょうは早朝からお出かけを賜りまして、まことにありがとうございます。本日は、午後に園遊会並びに本会議も入っているようでありますので、早目に質問に入らなきゃいけませんので、よろしくどうぞお願いします。

 まず最初に、先ほどの報告にもありましたけれども、十月八日付の「東京電力福島第一原子力発電所 事故の分析 中間報告書(案)」につきまして、その取りまとめの経緯の説明並びに今後の取り扱いについて、お尋ねをいたします。

山田政府参考人 東京電力福島第一原子力発電所の事故の分析につきましては、原子力規制委員会の重要な所掌事務の一つでございます。長期にわたる原子炉内の調査等も踏まえつつ、技術的な側面から分析を継続いたしまして、必要な知見を安全規制に取り入れていくことが重要であると考えてございます。

 このため、原子力規制委員会では、平成二十五年三月二十七日に、東京電力福島第一原子力発電所における事故の分析に係る検討会の設置を決定いたしました。

 この検討会は、平成二十五年五月から、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会、国会事故調の報告書において「今後規制当局や東電による実証的な調査、検証が必要である」とされました未解明事項について議論を開始いたしました。

 これまでに検討会を六回、現地調査を九回実施いたしまして、平成二十六年十月八日に、原子力規制委員会として中間報告書を取りまとめたところでございます。

 この報告書につきましては、同日、原子力規制委員会のホームページにも公開をいたしてございます。

 今後とも、中長期にわたる原子炉内の調査等も踏まえまして、引き続き、技術的に解明すべき課題について検討してまいりたいと考えてございます。

鈴木(淳)委員 ありがとうございます。

 改めて確認をしたいと思うんですが、今回の調査検討委員会ですが、これは国会事故調のいわゆる指摘、要請を受けて設置したのであるか、あるいは独自の権限のもとで設置したのか。それはどちらでしょうか。

山田政府参考人 原子力規制委員会設置法には、先ほど申しましたとおり、その所掌事務として、原子力事故の原因究明が規定をされてございます。東京電力福島第一原子力発電所事故の分析は、原子力規制委員会の重要な所掌事務の一つであると考えてございます。

 今回、中間報告書で検討した項目につきましては、これも先ほど申し上げましたとおり、国会事故調報告書において「今後規制当局や東電による実証的な調査、検証が必要である」とされた未解明問題ということでございます。

鈴木(淳)委員 ありがとうございます。

 では、今回のこの中間報告が持つ意味について少しお尋ねをしたいと思うんです。

 この報告書が既にホームページに公開されていますけれども、これをもしIAEAに送付となれば、これはある面で我が国の原子力規制当局として初のいわゆる事故原因の分析、公表になると思うんですね。これが果たして国際的ないわゆる評価にたえるものになるのかどうか。つまり、内部の調査でありますが、ピアチェックにたえられるか。この辺についての御認識をお願いいたします。

山田政府参考人 本中間報告書の作成に当たりましては、調査分析計画案の作成、現地調査、分析評価案は原子力規制庁の職員みずからで行ってございます。計画案、分析評価案につきましては、原子力規制委員会のもとに外部専門家等から成る検討会を設置して議論を行いました。

 原子力規制庁職員が行う現地調査の際には、現地調査の項目に対し知見を有する外部専門家の同行をお願いしたり、その評価に当たって意見を伺うなど、外部の意見も聞きつつ検討を行ってございます。

 さらに、IAEA等の国際的な会合において、検討の進捗状況を説明し、意見交換を行ってきておりまして、それをまとめたものとなってございまして、これは英訳の上、IAEA等に送付をしているところでございます。

 今後とも、調査分析に当たりましては、専門家の意見を聞きつつ適切に行ってまいりたいと考えてございます。

鈴木(淳)委員 改めてお尋ねしますけれども、今回、中間報告の内容は、原発事故は一義的には津波災害だということになっていますね。巨大津波の襲来までは既存の施設は壊れていないという判断になろうかと思うんですが、これは当局が事故原因を津波と断定したというふうに理解してよろしいんでしょうか。

山田政府参考人 中間報告に書いてございますとおり、現時点、そのように判断しているところでございます。

鈴木(淳)委員 ありがとうございます。

 実は、今回、かつて事故調査にかかわった方々の複数の方から、このたびの中間報告をまとめる段階で、いわゆる原子力規制委員会の姿勢に対する疑問というか、少し懸念の声が上がったんですね。

 今回は規制委員会の中での調査、検証だ、いわゆる外部の目にさらされていない、また、外部の目での検証が不可能な中での調査であって、規制委員会の独立性を担保する透明性とか公開性がないのではないか、あるいは、もしこれが調査委員会の提言から始まったものであるとするならば、そのいわゆる調査権限のもとになった、今調査委員会はありませんけれども、そのもとになった国会との対話も不足ではないか、こんなような指摘があったんですね。

 今回、私も、ここに至る前に担当の方から説明を受けました。大変高い線量の中で、本当に頑張って調査をやっていただいていますね。ただ、そうした努力がもしひょっとして正しく評価されないとするならば、これはある面で、調査の中身の問題ではなくて、取りまとめに至るまでの初期段階、着手段階から、あるいは途中過程において、少し関係者とコミュニケーションが不足をしているのではないか、こんなことを私は思うんですね。

 そこで、規制委員会と外部のコミュニケーションの問題を少し議論したいと思うんです。

 今回、先ほど申し上げたように、かつての調査にかかわった方々からも少し懸念の声がありますし、また、議事録の公開等はもちろん逐次、本当に詳細にされていますね。ただし、そこの部分ではなくて、根源的な、いわゆる規制委員会のあり方、姿勢について、やや実はコミュニケーションの不足が問題なのではないか、こう思うんです。よく、独立と孤立は違う、こう言われますけれども、ある面で、現状は、他者との接触をかたくなに断った形で、孤立に近い状態の中でいろいろなことが進んでいるのではないか、実は私もこういう懸念は少し持つんですね。

 あの過酷な事故を受けて、まさに新しい規制文化をつくっていくんだというところ、ゼロベースから原子力規制への信頼をつくり出していくんだという過程、その努力の中で、原子力規制委員会が、そうした外部との接触や連携をことごとく断って、ある面で外部の意見や懸念に余り耳をかさないで独自で進めるというふうにもしとられたら、これは得策ではないと思うんですね。せっかく現場スタッフが頑張っているにもかかわらず、それがそういう形の評価ではなくて、コミュニケーション不足がゆえにその疑念が持たれたら非常にもったいない、残念なことだと思うので。

 私は、規制委員会、まあ委員長ですが、外部とのコミュニケーションのとり方というのをどうすべきとお考えなのか、現状のままでいいのか、あるいは改善余地があるのか、ある面で最高責任者たる委員長の御見解をお尋ねしたいと思います。

田中政府特別補佐人 先生御指摘のとおりでありまして、当委員会としても、国内外の多様な意見に耳を傾けて、孤立と独善を戒めることは大変重要であるという基本的な考えを持っております。規制委員会の組織理念の中にも活動原則として掲げているところでございます。

 ただ、規制の独立性ということも大変重要でありまして、そことの兼ね合いにおいて、いろいろ、先生御懸念のような事態が、意見もあるということも十分承知しておりまして、この点については、徐々に改善を図っていく必要があると思います。

 具体的には、個別施策の検討に当たっては、原子力事業者あるいは有識者との意見交換の場を設けてきております。また、事務方と事業者との面談についても何ら規制はしておりません。ただし、面談をした場合には、そのことについての報告は公表する、面談記録を公表するというようなこともしております。

 今後とも、委員会が孤立し独善的な判断に陥ることにならないよう十分に留意しつつ、科学的、技術的な議論を深めてまいりたいと思っておるところでございます。

鈴木(淳)委員 ぜひそういうふうにしていただきたいと思うんですが、やはり今回の取りまとめ段階でも、かつて調査に非常に深くかかわった方々の中にそうした懸念を持たれるということもありましたし、また、本規制委員会を三条機関として非常に独立性が高い、そういう機関として発足させた方々、これは前政権下でありますが、その方々にも、実を言うとこの部分を懸念する声が非常に強いというふうに私は承知をいたしております。

 本来、極めて独立性が高い、あるいは強い権限を付与された規制委員会だからこそ、ある面で、他者に会えばその独立性を疑われるというような、そうしたことをむやみに恐れないで、逆に、こうしたいろいろな方々と会って、それで、ステークホルダーもそうだ、あるいは自治体もそうだ、あるいは議員もそうだ、フランクに接すればいいと私は思うんです。

 しかし、さっきおっしゃったように、その際しっかり記録を残しながら、仮に彼らあるいはいろいろな方に会ったとしても、その意見を聞いても、最後は決然と御自分で判断をする権限をお持ちなわけでありますから、私は接触を断つことが独立とは思わないので、多様な意見を聞く中で、最後はみずからの価値観であり理念で決然と判断されればいいわけでありますから、ぜひそうした形の規制委員会になっていただきたいな。

 いろいろな方と接点を持とうが、最後はのりを曲げない、自分の信念でやるということでいいと思うので、ぜひそんな形でお願いをしたいというふうに思います。

 それで、実はこの問題については、昨年の十二月に我々自民党も、原子力規制に関するプロジェクトチーム、PTというので提言を出しました。この提言は幾つか項目はありましたけれども、果たしてこれは規制委員会にあるいは規制庁にどう受けとめられて、どこがどう改善されたということでしょうか、その具体例をお知らせください。

田中政府特別補佐人 提言の中には幾つかございましたので、全てではなくて、お答え申し上げたいと思います。

 一つは、まず一番大事なことは、まさに今先生が御指摘のように、コミュニケーションをきちっととりなさいということです。

 それで、具体的には、先月末に九州電力の瓜生社長と意見交換を公開の場でやらせていただきました。これは、やはり安全を守る上では事業者の責任というか自覚が大事だということで、特にトップマネジメントということについて意見を交換させていただいて、今後とも、毎月一回ぐらいのペースで各社のトップと意見交換をしていくというようなことを考えております。

 それから、国際的な交流も含めて国外の多様な意見も取り入れるべしということで、これは、例えばIRRS、IAEAのミッションを受け入れてきちっと活動について点検してもらうようにという御提言もいただきまして、これについては今準備を進めておりまして、来年ぐらいをめどにIRRSの評価を受けるということを今考えております。

 そういったことを踏まえながら、我々の規制活動の改善を図っていきたい、そんなふうに思っております。

鈴木(淳)委員 ぜひその方向でしっかりと進めていただきたいと思うんです。

 先ほどの活動状況報告の中に、国際的な連携の強化というのがうたわれておりました。今回の福島第一原発の事故は、本当に、本当に残念な事故でした。また、本当に地域に申しわけない事故でもありました。この事故は、もはや日本の事故だけではなくて、ある面で世界全体の共通課題だというふうに思うんですね。

 事故当事国とはいえ、日本だけで抱え込む問題ではなくて、世界の共通課題として実は捉えていく中で、課題を世界の規制関係者と共有しながら、そこに外部、海外の人材も入れて、知見も入れて、そしてまた、日本の規制関係者もそこでまじり合う中で、共通課題としてそれに取り組む中で、そうすれば、ある面で日本の閉鎖性ということもなくなるでしょうし、あるいは、規制人材の交流の中で力もつくでしょうし、そうした形で、これは本当に、世界と共有ということが実は大きなテーマだというふうに思うんですね。

 規制委員会の責任感は非常によくわかりますし、個々のスタッフの方々の努力はよくわかります。ただ、今の委員長のお話もありましたように、これを一歩進めて、さらに、もちろん独立性は必要でありますし、開いた形で、課題共有する中で、ぜひ日本の規制、新しい規制文化をつくっていただきたいと思うんですが、ぜひ委員長の御決意のほどをお聞かせいただければありがたいです。

田中政府特別補佐人 今御指摘がありましたように、福島第一の原子力発電所の事故の教訓を世界で共有するというのは大変重要だと思います。

 私どもとしても、先ほどは所信のところで、アメリカ、フランス、イギリスと申し上げましたけれども、具体的には、スウェーデンとかドイツそれからスペイン、最近ではリトアニアとかトルコとかいろいろなところと安全に関する情報交換の協定を結んで、向こうも福島の教訓を学びたいというところがありますので、私どもも積極的にそこにかかわっていきたいと思います。

 IAEAとかOECD・NEAとかそういったところはもちろんのことですが、UNSCEARとかそういったところに、いわゆる放射線防護の分野においても積極的に協力していただいておりますし、海水の汚染の問題については、IAEAのモナコ研究所から定期的に来ていただいて我々の測定を見ていただき、また、我々の測定結果も定期的にIAEAに報告するなど、できるだけ今御指摘のような趣旨に沿って努力してまいりたいと思っております。

鈴木(淳)委員 ありがとうございました。

 ぜひその方向で頑張っていただいて、福島第一の事故、本当に過酷な事故があったからこそ逆に、ここから日本の新しい規制文化が生まれた、あるいは世界の規制文化が生まれた、こうしていただきたいと思いますので、ぜひ頑張っていただきますようによろしくお願いして、質問を終わります。

吉野委員長 次に、樋口尚也君。

樋口委員 おはようございます。公明党の樋口尚也でございます。

 田中委員長、早朝から大変お疲れさまでございます。

 私は、原子力規制委員会による世界一厳しい規制をクリアした原子力発電所については、地域住民の皆様の深い御理解を得た上で、順次再稼働を進めるべきだ、こういう立場でございます。

 本日は、原子力の問題をめぐる政府そして国の役割、そして、その現状について幾つか質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 さて、資源に乏しい我が国において、エネルギーの安定供給は至上命題でございます。我が国は、いわゆるエネルギーミックス、最適な電源構成によって安定供給を実現していくほかに道はありません。我が国のエネルギー政策は、今、大規模な調整局面に入っております。そういう現状の中で、新たなエネルギーミックスを策定することが急務となっておりますが、四月に示された、策定をされたエネルギー基本計画においても、諸般の事情を踏まえて速やかに示すと記されているにすぎません。

 エネルギーミックスが策定され、将来の電源構成に占める原子力発電の具体的な割合、目標値が明示をされない限り、安全性に関する地に足のついた議論は困難だと考えます。拙速な議論になったり、あるいは議論のための議論になったり、あるいは堂々めぐりの議論になってしまう、そういう危険性があります。

 今日まで、エネルギーミックスの具体的な数値、電源構成比率を策定できない理由をまずお聞かせください。

吉野政府参考人 お答えいたします。

 エネルギーミックスにつきましては、エネルギー基本計画を踏まえまして、原発の再稼働、再生可能エネルギーの導入、COPなどの地球温暖化問題に関する国際的な議論の状況などを見きわめまして進めていく必要があると思っております。

 現在、総合資源エネルギー調査会におきまして、省エネルギー、新エネ、原子力に関してそれぞれ小委員会を設置しておりまして、産業、業務、家庭、運輸、各部門における省エネルギーの取り組み、それから、再生可能エネルギーの導入可能性の検証と拡大策や、国民負担の抑制も踏まえた固定価格買い取り制度のあり方、それから、原子力に関しましては、廃炉の円滑化や競争環境下における原子力事業のあり方といった、エネルギーミックスのそれぞれ要素となる政策についての検討を進めているところでございます。

 いずれの小委員会も、非常に難しい課題に対しまして腰を据えた検討が必要と考えております。しっかりと議論を深めていく必要があると思っておりまして、こうした小委員会の検討の成果も活用しながら、現実的かつバランスのとれたものを設定していきたいというふうに考えてございます。

樋口委員 現実的でバランスのとれたものを策定するということですが、この策定の時期について明確にお答えをいただきたいと思います。

吉野政府参考人 お答えいたします。

 現段階では具体的な時期については申し上げられませんが、いずれにしましても、エネルギーミックスについては、エネルギー基本計画を踏まえまして、原発の再稼働、それから再生可能エネルギーの導入、COPにつきましては来年末にCOP21が控えておりますので、おのずと急ぐ必要もございます。そうしたところもございますので、できるだけ早く策定をしていきたいというふうに考えてございます。

樋口委員 福島の大変な、悲惨な事故がありまして、火力発電のウエートが激増しております。一日百億円とも言われますが、毎年何兆円という燃料費が海外に流出をしている。景気の回復に足踏みが見られる中で、こうした巨額の国富を流出させ続けることはまことに残念なことでもございます。

 また、昨今、世間を騒がせている再生可能エネルギーの買い取りをめぐる問題についても、再生可能エネルギーの将来における具体的な数値目標が示されない中で根本的な解決が可能なのかどうか、大変疑問に思います。入り口は決めましたけれども、出口が決まらない。出口を決めなければ、なかなか解決ができないのではないかと思います。

 こういった問題を早急に解決する上でも、政府は、困難な作業ではありますが、目をそらさずに、一刻も早く具体的な電源構成比率を国民の皆様に示す必要があるというふうに考えます。

 まさに、今おっしゃったCOP21が来年末ということでありますが、めどはそれまでにということでよろしいんでしょうか。答弁をお願いします。

吉野政府参考人 お答えいたします。

 COP21に向けまして、いずれの国もできるだけ早く約束草案をお出しするということでございますので、それに向けまして、エネルギーミックスに関しましてもできるだけ早期に策定をするということで努めていきたいと思っております。

樋口委員 ぜひ具体的な、そして実効性のあるエネルギーミックスの策定をお願いしたいと思います。

 続きまして、原子力規制委員会による新規制基準の適合性審査に関して、原子力発電所敷地内の破砕帯調査、評価に関する有識者会議のあり方について質問をさせていただきます。

 破砕帯調査の結果、耐震設計上考慮する活断層と評価をされれば、適合性審査はストップすることになるわけですから、この破砕帯の評価は極めて重要な問題であります。その評価には、公正性、公平性、透明性が強く求められるところであります。

 この破砕帯調査を、実質上、有識者会議が行っているというふうに伺っております。実質上と申し上げましたのは、最終的にはもちろん原子力規制委員会が判断をするわけでありますが、この委員会の判断の前提となる調査、評価を有識者会議が行うという意味で申し上げたわけであります。

 原子力規制委員会は合議制で、原子力に造詣の深い先生方が十分な議論を踏まえて判断されることになっていることはもちろん存じております。しかし、委員の先生方にもそれぞれ御専門があると思いますし、極めて専門的な分野の判断を行う場合に、委員会の場に用意された資料や評価などを細大漏れなく評価することはなかなか難しいのではないかと思います。そのために、事務局にて用意された調査資料などの内容にその判断が大きく左右される可能性もあります。このようなことから、有識者会議の役割は極めて重要であります。

 ところが、この重要な判断を行う有識者会議の位置づけがはっきりいたしません。メンバーの先生方の選考、会議の運営方法も明確ではありません。そもそも、具体的な法律の位置づけがないように思われます。

 そこで、お伺いをいたします。

 有識者会議の位置づけが不明確であることから、公正性、公平性、そして透明性の観点に照らして、調査結果、評価等に疑義が生ずるおそれはないのかどうか、お答えをお願いします。

櫻田政府参考人 ただいま原子力発電所の敷地内の破砕帯調査の有識者会合についてお尋ねがございました。

 この会合は、今先生からも御指摘ございましたように、破砕帯の問題は、最終的には原子力規制委員会が判断を行うわけでございますが、その判断を行うに当たって、参考として、活断層の調査等に関する専門的な知見を有する外部の有識者から御意見を伺う、このようなために設けたものでございます。この設置に当たりましては、そのメンバーや役割について、あらかじめ原子力規制委員会で議論をしていただいて、了承していただいているところでございます。

 その有識者の選定でございますが、予断を持たずに科学的、技術的知見に基づく客観的な評価を行っていただくということが必要ですので、過去の審査に携わっていなかった有識者にお願いをしてございます。その際、日本地質学会など関係の四つの学会から推薦を受けておりまして、その受けた方から選定をしているということで、幅広い専門家が確保できているのではないかというふうに考えてございます。

 それから、議事運営の公平性、公正性、透明性のお尋ねもございました。

 議事運営に当たりましては、有識者の間で議論をするということが基本でございますが、事業者やその調査に協力をしていただいている専門家からの意見聴取も行うというような形で、科学的な観点からの議論を深めるということに努めてございます。

 また、透明性の観点でございますけれども、会合は全て公開で行っておりますし、また、事業者との事前の打ち合わせの概要の公表でありますとか資料の公表とか、そういった透明性の確保にも努めているところでございます。

 今後とも、公平性、公正性、透明性の確保等に留意して進めてまいりたいと考えてございます。

樋口委員 田中委員長は参議院で、破砕帯の評価、活断層か否かの判断基準は、一概に定量的に明確な基準を設けるということは大変難しい、事業者が実施した調査の内容の妥当性を科学的、技術的に、もう一言言えば総合的に評価するものだと御答弁をされています。

 このような、判断基準が明確に設定できないのであれば、なおさらのこと、有識者会議は、公正公平かつ透明性のある組織、そして法律的な位置づけのある組織とするべきであります。

 原子力規制委員会は、その設置法十三条に基づき原子炉安全専門審査会が置かれ、さらに、同審査会には専門委員も置くことができることになっています。有識者会議をこうした組織に衣がえをして、透明性の高い公平公正な組織にする必要があると思います。

 なぜ有識者会議を従来の曖昧な位置づけのままにしているのか、この際、法律的な位置づけのある組織にするべきだと考えますが、いかがでしょうか。

田中政府特別補佐人 先ほど櫻田の方からもお答え申し上げましたように、敷地内の破砕帯調査の有識者会合については、原子力規制委員会が判断を行うに当たって、その参考として、活断層の調査等に関する専門的知見を有する外部の有識者からの御意見を伺うために設けたものでございます。その設置に当たっては、メンバーあるいは役割についてあらかじめ原子力規制委員会で十分議論し、了承しております。

 これらの会合は既に議論が進んでいるため、検討の途中で会合の位置づけを変える必然性は今はないと考えています。有識者会合での評価を参考としつつ、規制当局としての判断については、原子力規制委員会が科学的、技術的に厳格に行ってまいるという所存でおります。

 炉安審とか燃安審というのは、かつての規制の一つの仕組みでありました。そこに任せたことによって、こういった福島の事故のような伏線になりましたので、そういったことのないように、我々は、基本的には、先ほど申し上げましたように、独立性を担保するということで、最終的には私どもが責任を持って判断するということにしております。

 もちろん、その上で、判断するに当たっては、さまざまな分野のいろいろなテーマがございますので、その都度、適切な有識者の御意見を伺うという仕組みを今維持していこうというふうに考えているところでございます。

樋口委員 必要ないということですけれども、国民の皆様から見てわかりやすいということはすごく大事なことだと思いますので、ぜひ法的位置づけを明確にしていただけるよう求めたいというふうに思います。

 最後に、防災計画について一問だけ聞きます。

 東日本大震災では、平常時からの備えとして収集されていた高齢者や障害者の災害時要支援者に関する情報が、個人情報保護法制との関係で十分に活用されなかったという現実もあるわけであります。

 そこで、昨年、災害対策基本法を改正して、第三者の支援が欠かせない住民の名簿づくりを市町村に義務づけ、現在、全国の自治体がこの作成作業に取り組んでいます。

 災害時に、消防や警察、民生委員の皆様が支援に当たることになりますが、その実効性を高めるためには、事前に個人情報を提供していく必要があります。そこで各自治体は、要介護認定や障害認定を受けている方に、平時から、避難支援などに当たる関係者に個人情報である名簿を提供していいかどうかという同意のための確認作業を行っている。郵送で行っているところもあります。一部には、作業が大変難航しているという自治体があると聞きます。

 時間の関係で、一点だけ提案をさせてください。

 新規に要介護や障害の認定を申請された方には、その時点で職員が丁寧に説明をし、その場で同意のお願いをしてはどうかというふうに思うわけであります。自治体の職員が的確に対応ができるように、情報提供、仕組みづくりをしっかり行うべきだと考えますが、内閣府の見解を伺います。

兵谷政府参考人 お答えいたします。

 災害対策基本法に基づき作成されました避難行動要支援者名簿を第三者に提供する場合の同意を確認する方法につきましては、市町村が地域の実情等を踏まえて決めているところでございますが、内閣府といたしましても、その取り組みの参考となるよう、昨年八月に「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」を策定するとともに、取り組みの参考となる事例集をまとめまして、その周知徹底を行ってまいりました。

 委員の御指摘も踏まえ、この要支援者名簿の作成や活用がさらに進むよう、地方公共団体の担当者との会議の場等も活用しながら、市町村への情報提供をしっかりと行ってまいります。

樋口委員 防災、減災に全力で取り組むことをお誓いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

吉野委員長 次に、菅直人君。

菅(直)委員 まず、冒頭、吉野委員長を初め各党の理事の皆さんに、お願いというか提案があります。

 今お手元に資料をお配りしておりますが、本委員会は、国会事故調が終了するときに七つの提言をされまして、その提言一に、国会にこういった委員会をつくってほしいということがあり、それを受けて設置されたものと考えております。

 また、この提言の七番目には、さらに、その中に民間人を中心とした専門家の会議をつくってほしいということが提言をされております。

 そして、平成二十五年一月二十四日の議運の理事会において、三項目めに、この特別委員会において、「有識者・専門家の知見を求めるため、諮問機関(アドバイザリー・ボード)を設ける。」これが決定されたのが、合意されたのが、もう一年九カ月前であります。しかし、残念ながら、これまでこの委員会にそういったものが設けられたということは、残念ながらお聞きをいたしておりません。

 どうか、こうしたことについて、ぜひ、この合意に基づいたアドバイザリーボードを設けられるように進めていただきたいと委員長にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

吉野委員長 理事会で議論をしていきたいと思います。

菅(直)委員 といいますのは、きょうの田中委員長の冒頭の話にもありましたように、この国会事故調が終了した後に、まだまだいろいろな未解明な部分について新たな知見が見出されております。

 私も、当時、例えば一号機がメルトダウンを始めたのはどの時点だったか。当時はまだ、当日の夜まで水があると言われていたんですが、最近の検証では、実は水位計が壊れていて、当日の夕方の六時四十分か五十分ごろ、つまり、地震からわずか四時間後に、既に水が燃料棒のトップまで下がってメルトダウンが始まった、そして、翌日の十二日の早い段階でメルトスルーしていたであろう、そういうことが言われているわけです。

 そういったこともきちんと検証するためには、国会議員だけのこの委員会では、話を聞くことはできても、なかなか細かい検証は難しいですから、ここで言われる、まさに合意をされたアドバイザリーボードを設けていただきたい。理事会での御検討をいただけるということですので、よろしくお願いを申し上げます。

 そこで、少し本題の方に入ってまいります。

 現在、川内原発の再稼働について、いろいろと規制委員会を中心に議論がされております。報道では、何かもう決定されたかのように、あるいは合格したというような報道がなされているわけですが、どうも事実関係とは違う報道ではないかと思っております。

 そこで、皆さんのお手元に、これは規制委員会自身が出されている、審査の進め方についての資料であります。

 現在、川内原発については、たしか九月の十日に、上の欄でいえば一番左、下の欄でいえば一番上の設置変更許可、この許可がなされたのが九月の十日であって、これに引き続いて、工事計画認可、さらには保安規定認可、さらには起動前検査、さらには起動後検査、これらが全部合格というか承認された後に最終的な決定になると。

 ですから、この中身でいえば、まだ一番最初の設置変更許可が出された段階で、その後のことはまだこれからだ、今その審査を進められている、こういうふうに私は理解しているんですが、委員長、そういう理解で間違いないでしょうか。

田中政府特別補佐人 御指摘のとおり、間違いありません。

菅(直)委員 お聞きしますと、この二つ目の工事計画認可というのは数万ページに及ぶ文書だということを聞いておりまして、そういったこと、あるいはその後のいろいろなことを考えると、まだ審査に相当の時間がかかるのではないかと思いますが、委員長に見通しについてお伺いします。

田中政府特別補佐人 御指摘のように、まさに、一号機、二号機、それぞれ一万ページを超えるような工事認可書類でございます。

 ですから、審査には、今職員が鋭意努力しておるわけですけれども、相当期間はかかります。かかると思いますが、今、いつの時点でそれが終わるかどうかということについては、まだ明確にお答えするのは難しい段階でございます。

菅(直)委員 これは報道の責任を委員長に申し上げるのは筋違いかとは思いますが、少なくとも私が目にするいろいろな報道では、あたかも、もう審査は終わりました、規制委員会の方についてはもう合格したんですという報道がなされていますので、少なくとも規制委員会として、そういう報道を目にされたときには、それが正確でないとすれば、規制委員会からも、それは正確ではありませんということをきちんと言っていただきたい、そのことをお願い申し上げておきます。

 きょうは、実は九州電力の社長に参考人としておいでいただきたいとお願いしたんですが、それがかなわなかった中で、だからというわけではありませんが、東京電力はもちろん、事故を起こしただけではなくて原子力事業者としての立場があります。そこで、この原子力事業者たる電力会社というものがどういう責任と権限を法律上課せられているのかということについて、少しお聞きをしたいと思います。

 現在、炉規制法と原子力災害特別措置法に、原発再稼働に関係する規定が幾つかあります。

 まず、炉規制法では、原子力規制委員会の審査に合格した後でなくては原発を使用してはならない、つまりは、規制委員会に合格することが一つの条件になっております。

 他方、原子力災害対策特別措置法では、原子力規制委員会が原子力災害対策指針を定めるとして、その指針に従って地元自治体が、地域住民の安全な避難とか帰還ができる地域防災計画をつくることになっております。

 そこで、まずあえて、原子力事業者である東電、きょうは常務においでをいただいておりますが、電力会社は、この原子力災害対策指針に基づく防災計画、避難とかそういうものを含んだ防災計画についてどのような責任を負っているのか。法律的にどのような責任を負っていると理解されていますか。

姉川参考人 御回答いたします。

 電力会社は、原災法におきまして、自治体の方が定めます地域防災計画、ここの中に、原子力事業者が何をすべきかということが定められております。それと調整する、協調する、整合する形で、我々自身が原子力防災として定めております事業者の原子力防災業務計画、その中に、緊急時のモニタリング、住民の方の汚染の有無の測定、そういったことに協力することが明記されております。そういったことを円滑に、定めに従って実行していくことが我々の責務だと考えているところでございます。

菅(直)委員 今、協力といった言葉を使われました。ということは、事業者はみずからのいわば工場といいましょうか施設である原発が事故を起こしたときに、周辺住民が安全に逃げられるか、あるいは安全に帰ってこられるかということについて、最終的な責任を負っているわけではないと。つまり、協力はする、しかし最終的な責任は事業者は負っていない、そういう理解でいいんですか。法律的にですよ。気持ちを聞いているんじゃないですよ、法律的にです。

姉川参考人 お答えいたします。

 法律的にの理解でございますが、当社のような原子力事業者は、自分たちの防災業務計画をつくるということが責務というふうになっています。義務でございます。それを、県及び立地市村、我々では市村なんですが、そちらの方が定める地域防災計画と整合させるという義務がございます。そのように我々は理解しております。

菅(直)委員 正確に私は聞いているつもりなんです。ですから、皆さん方が防災計画をつくるとか、あるいはそれが地域防災計画との整合性をとるとか、そういうことは当然でしょう。その上で、地域住民ですよ。

 サイトの中の職員のことは当然電力事業者がやられるでしょう。サイトの外の地域住民の皆さんが安全に避難をし、あるいは安全に帰還できるかということについて、最終的な責任を負っておられるのか。それとも、最終的な責任はなくて、協力をするという責任だけで、最終的な責任は負っていないのか。どちらなのかをはっきりお答えください。法律的にですね。

姉川参考人 御回答いたします。

 防災業務計画におきましては先ほどお答えしたとおりでございますが、原子力の事故が発生した場合においては、これの事故の収束、それから周辺の拡大防止という観点においては、原災法におきまして、その事業者の役割として明記されていると私は認識しておりまして、その点で我々の義務が発生している、責任が発生していると認識しております。

菅(直)委員 ちゃんと質問しているので、ちゃんと答えてください。

 今言われたのは、事故が起きたときの収束とか拡大防止。それは、収束のために、福島の場合は水を入れるとかベントするとか、それは事業者の責任だということはよくわかります。いろいろ努力をされました。あるいは、拡大防止のために、新規制基準では、いろいろなもの、放射性物質が外へ流れるのを、水をかけて何とか少しでも抑制しようとかということもあるというのは聞いております。

 私が聞いているのは、そうではなくて、周辺に住んでいる皆さん、それは、間接的に、もちろん放射能が出ることを防げばその人たちに対する悪い影響も少なくなることは確かですが、周辺に住んでおられる皆さんの安全な避難がちゃんと確保できるかどうか、そういうことの責任。あるいは、安全に、そう遠くない時期に帰ってくることができるかどうか、その責任をきちんと事業者が負っておられるのか。いやいや、そこまでは負っていませんというのか。そのことをはっきり、法律に基づいての認識をお聞きしているんです。

姉川参考人 お答えが的確でなくて申しわけありませんでした。

 避難については、我々の認識、法律の理解は、地方自治体の方が責務を負っていると思っております。

 先ほどから申し上げたのは、それに対して我々が最大限の貢献をする、協力をするという観点でお答えしてしまいました。

菅(直)委員 もう一度確認します。

 今、自治体がと言われましたが、少なくとも、原子力事業者である電力会社が最終的な責任を負っているわけではない、負っていない、そういう意味ですね、今、自治体がと言われたのは。はっきり答えてください。

姉川参考人 御回答いたします。

 御質問の範囲が、住民の方の避難、そして、その後の帰還を的確に行う責任、義務ということでしたので、それについては自治体さんが法律上も責務を負うというふうになっているというのが私の理解でございます。(菅(直)委員「だから、事業者としてはないということですね、責任は」と呼ぶ)事業者の一義的な責任ではないと思っております。

菅(直)委員 まさにそうなんですよ。事業者の一義的責任ではないんです。

 そこで、お聞きします。炉規制法で、規制委員会のいろいろな手続、審査に合格した後でなくては原発を使用してはならないという規定は、これは委員長にお聞きした方がいいんでしょうか、合格すれば電力会社は独自の判断で再稼働できるという意味なのか。それとも、今の話のように、幾つかの条件、少なくとも二つですね、いわゆる新規制基準に基づく判断は、よく委員長が言われるように規制委員会がやるけれども、避難の問題とかについては、もう一つのそうした条件。

 ですから、ここの炉規制法で言うのは、あくまで必要条件、幾つかの条件の中の必要条件として、合格しなければ、合格した後でなくては原発を使用してはならないと書かれているのか、いや、もう合格したら後は事業者の判断でやってもいいという理解なのか、委員長の見解を伺います。

田中政府特別補佐人 まず、我々が俗に言う適合性審査というのは、よく深層防護が五つ、五段階あると。五つ目がいわゆる住民の防災、避難計画でございます、その四段階までは私どもがやります。それで、五段階のいわゆる住民の防災、避難計画については、これは、国の定めでは、県あるいは当該地方自治体が行うことになっております。そういったものがきちっとできた上でないと、現実的には稼働という段階には入らないというふうに認識しております。

 これは私も再三申し上げておりますけれども、私どもは、再稼働については申し上げる立場にはないということで、結局、事業者だけではなくて、そこの地域の住民の方々を中心とした、そういった関係者の御理解、御同意が得られなければ稼働はできないだろう、できないはずであるというふうに思っているところで、そういうふうにお答えしているところでございます。

菅(直)委員 もう一度重ねてお聞きします。

 自主的にとかという表現は、やや曖昧です。法律に基づいてどう判断するかです。

 ですから、今の委員長の発言は、四層まで、四段階目までは規制委員会が見る、しかし、そういう避難とかなんとかについては自分たちは判断しない、しかし、その部分についてもきちんと何らかの、これで大丈夫だという決定がなければ再稼働はできないというのが全体の体系だ、五層目についても、何らかの決定がなければ、これで大丈夫とか、これでオーケーだ、適合しているとか、それがなければ稼働できない、これが全体の法体系だ、そういう理解ですか。

田中政府特別補佐人 住民の防災、避難計画についての法の定めというんですか、それは地方自治体が責任を持って策定するということになっていますので、そのことが法の定めであろうかと思います。

菅(直)委員 いや、ですから聞いているんです。ですから、その部分が法の定めということは、そこがきちんとなっているという何らかの決定とか手続がなされない限りは、炉規制法の方はあくまで必要条件の一つであって十分条件ではない、そういう理解、全体の法の理解はそれでいいわけですね。

田中政府特別補佐人 そのとおりだと思います。

菅(直)委員 ということは、その部分は一体誰が決めるんでしょうか。

 先ほど東電の常務は自治体と言われましたけれども、自治体が決めると。ということは、自治体が、ある意味では承認もできるけれども、拒否権も持つということになります。そういう拒否権を自治体が持っている、あるいは決めることができるという法律を私は知りませんが、どなたか知っている人はいますか。経産省でもどこでもいいですよ。

山際副大臣 今の御質問に対しての直接なお答えにはならないかもしれませんけれども……(菅(直)委員「いや、直接でなきゃ結構です、時間がありませんから。直接に答えさせてください、役人に。質問通告していますから。時間をとめないと」と呼ぶ)

吉野委員長 いえ、政府参考人の要求がきょうはございません。(菅(直)委員「経産省は来ています」と呼ぶ)でも、政府参考人として理事会で承認しておりませんので、ここにおられる方々だけです。(菅(直)委員「じゃ、いいですよ。どうぞ」と呼ぶ)

山際副大臣 避難、地域防災計画については、これは地方自治体が定めなければいけないというふうに義務づけられておりますので、定めなくてもいいというようなことはないんだと思います。

 ですから、地方自治体がつくるということでございます。

菅(直)委員 いや、全く答えになっていません。

 私は、地方自治体がつくることを否定しているわけじゃありません。地方自治体がつくることになっているんです。そのなっている自治体が最終的にこれで大丈夫と判断するのか、いや、これではだめだと判断するのか、そこに判断の権限を与えているんですかと聞いているんです。答えられますか。

山際副大臣 法令上のという話でございますので、地方自治体がつくった地域防災計画、それがどのようなものであるかということを法令上、審査をするということにはなっておりません。

菅(直)委員 まさにそのとおりで、審査をすることになっていないということは、それを最終的に決める手続がないということじゃないですか。

 現実に、川内原発の周辺では、三十キロ圏の自治体の中でも、確かに議会で、薩摩川内市のように再稼働に賛成する決議も出されています。しかし、他のいちき串木野市とか姶良市のように、場合によったら廃炉まで求めている決議も出ているんです。これは同じ三十キロ圏の自治体です。

 そうすると、今のお話ですと、自治体がだめだと言ったときに、それを、いや、自治体がたとえ言おうとも、それでやれるんだと言える法律はないということですよね。

 そうすると、ちょっと東電の常務には気の毒ですが、もう一つだけお聞きします。

 最後に事実行動として再稼働するかどうか、簡単に言うと、制御棒を抜いて反応を始めるかどうかという、それはスイッチなのかレバーなのか知りませんが、それは事業者がやることになります。そのときに、今のような問題が曖昧なままでやることができるんですか。それとも、何か政府からの明確な手続に基づく命令とか指示とかがなければやれないということなんですか。どうですか。

姉川参考人 御回答いたします。

 法律についての理解は先ほどお答えしましたけれども、我々事業者が制御棒を抜いて稼働するという準備のためには、地域防災計画が定まっていることが必要ですし、我々の事業者防災業務計画はそれに整合するものでなければなりませんし、これを定めるに当たってはガイドラインを規制委員会からも定めておりますので、それに従ったものになっている必要があります。

 したがって、それに即した防災計画が地域と我々でできていれば、できていればという条件ですが、防災についての一定の対応ができているのではないかと私は理解しております。

菅(直)委員 そうすると、例えば三十キロ圏のある自治体が、とても安全に逃げられる条件がない、だからそれは困ると言えば稼働できないという理解ですね、今の話は。

姉川参考人 現在、法律で定めている地域防災業務計画の義務があるのは立地している県と立地されている地方自治体と理解しておりまして、その三者の地域防災計画が定まっていることが条件だと私は理解しております。

菅(直)委員 その理解はちょっとおかしいんじゃないですか。

 つまり、原子力災害対策指針を出されているのは原子力規制委員会ですよ。そこでおおむね三十キロというUPZを指示して、そういう自治体にも地域防災計画をつくるようにという指示が出ているんですよ。指示が出ているのは、立地市と立地県だけじゃありませんよ。今のは、もともとの根っこが間違っているんじゃないですか。

姉川参考人 失礼いたしました。

 私の回答を訂正いたします。地域防災業務計画は三十キロ圏のものでございます。

菅(直)委員 ということは、先ほどのことと重ねて言うと、三十キロ圏の自治体がこれでいいと言わないとスイッチは押せない、そういう理解でいいんですね。はっきり言ってください。

姉川参考人 地域防災計画が定まっていない、すなわち御理解いただいていないということであれば、我々事業者としては、条件が十分でない、再稼働の条件が十分でないというふうに認識しております。

菅(直)委員 大変重要な返答を事業者からいただきました。

 つまり、なぜこういうことをずっと言うかというと、一部に、規制委員長もよくおわかりでしょうけれども、規制委員会が合格を出したら、後は電気事業者なり原子力事業者が自由に、それに任せられたんだというような言い方をする役所の説明が時々あるんですね。それを本当に言えるのと言うと、いや、それはちょっと国会では言えませんと言って大体撤回しますが。

 ですから、私は逆に、そういうふうに最後の最後、電力事業者が、原子力事業者が判断したんだというふうになるのではないかと心配したわけですが、少なくとも今の東電常務の認識、原子力事業者の認識は、そういった三十キロ圏の自治体がきちんと了解したということがない限りはやらないということを言われたので、これは大変大きな一つの、この問題での大きな発言として受けとめておきたいと思います。

 以上で終わります。

吉野委員長 次に、椎名毅君。

椎名委員 椎名毅でございます。

 本日、二十八分間という若干中途半端な時間ですけれども、質疑時間をいただきましたことを感謝申し上げたいと思います。

 冒頭、質疑に入ります前に、自民党の鈴木先生それから民主党の菅先生から、それぞれ国会事故調について御指摘いただきましたので、ちょっとそれについて言及をさせていただきます。

 まず、鈴木先生から御指摘いただいた、東京電力福島原子力発電所事故の分析中間報告書案というものに対してという話なんですけれども、これに対して、私は黒川さんとこの間お会いしまして、規制庁の方から黒川さんに対して、元国会事故調委員がコメントを求められているということで、コメントを求めたということがあるそうですけれども、では、それは法的性格はどういう性格なのかと言われると、それは私的文書ですという扱いだったそうです。それに対する理屈の説明としては、一応、国会事故調は既に解散しておって法的組織ではないということだということで、私的文書としてお願いをすると。

 それに対して黒川さんから説明を求め、たかだか一カ月ぐらいでその報告書に対する回答を検証して出すことはできない。というようなことをすると、いろいろルール、手続があって、結局、元国会事故調のメンバーの方々から意見を聞かずに今回の報告書案が公表されているという事態が起きているという話は私も聞いております。

 国会事故調という組織は、出した報告書の中身に実は意味があるわけではなくて、出した報告書ではなくて、国会事故調という組織そのものに実は意味があるんですね。これは何なのかというと、民主主義的な意味なんです。

 それは何かというと、日本は議院内閣制なので、特に自民党の皆様方、公明党の皆様方が与党として政権に入られているので、何となく国会、立法府と行政府は分離していないように見えるわけですけれども、一応役割は別なんですね。立法府は、行政府に対する監視、監督と、それから法律という形で枠組みを設定することが立法府の枠組みなわけですね。行政府に対する監視、監督をするというのが、それはすなわち国政調査権なわけです。今まさに私、我々がここで質疑をしているのも、国政調査権の発露なわけですね。

 そういう立法府の役割をより充実させるという意味において、国会事故調という組織を立法府の下に諮問機関として設けたということそのものにすごい意味があるわけですね。

 今まで、議院内閣制という制度の中で、さらには五五年体制が続いている中で、政権交代がない中で、立法府と行政府が事実上一致してきたわけですね。そういう中で、立法府による行政府に対する監視、監督というのが、国会の外、要は自民党の中で行われてきたわけですけれども、そういう構図とは違う構図をつくることに意味があったわけです。定期的に政権交代がもしかしたら起きるだろうという事態の中で、立法府の機能を改めて新しく提示をすることに国会事故調の意義があったわけですね。

 そうだとすると、元国会事故調の委員というのは、確かに、もう既に解散していて委員ではないので、要するに一市民なわけですね、何の意味もない一市民なんですけれども、一応、国会の議長の名前で委嘱状をいただいて、国会から立法府の諮問機関としてこの委員会を設置したわけですね。そうだとすると、プロセスとしては、やはり、これは、民主主義の中で、国会による行政府の監視という機能を持っていた機関であるということに対する尊重が必要だと思うんですね。

 だから、規制庁から、この東京電力福島原子力発電所事故の分析中間報告書案を元国会事故調の委員に対して見てもらうということであれば、国会を通した、立法府を通したプロセスを通じて委嘱をして、それでチェックをしてもらうという手続が必要だと思うんですね。

 さらには、これは科学的な報告書かと言われると、確かにそうではないんですけれども、一応、アメリカの科学アカデミーが同じように福島の原子力発電所の事故についてレポートを出しているわけですけれども、それも、委員長は科学者ですからよくおわかりだと思いますけれども、論文を書くときに、科学的な論文を一流の雑誌に出すときに、ピアレビューを経るわけですよね。当然だと思います。これと同じ手続をやはり経るということが必要であって、透明性、公開性に対してそれなりに疑義が生じかねないという、先ほど鈴木先生から御指摘いただいた話というのは、それなりにやはり意味のあることだと思って、規制庁の方はぜひちょっと頭に置いてほしいんですね。

 もし仮に元国会事故調の委員の方々から意見を聴取するのであれば、やはり立法府を通じてやるというのが正しいプロセスなんじゃないかなと私は思います。それが立法府と行政府の役割分担という意味そのものであり、それが国会事故調を設置したという意義なんだろうというふうに思っております。

 先ほど菅委員から、国会事故調が提示した提言の話がありましたけれども、それも全くそのとおりで、特に、この委員会に常設の、一般人というか科学者から成る諮問機関をつくるという提言そのものは何かというと、我々はしょせんやはり原子力に対する素人ですが、この委員会は、原子力規制のあり方と原子力規制のプロセスそのものについて、国会が国政調査権を行使する役割を持った委員会であるということなので、我々はしょせん素人ですから、原子力のテクニカルなことはわからないので、それに対して参考になる組織をつくるべきであるという問題意識から、諮問機関をつくってほしいという提言を出したんです。

 それは、やはり、議運の申し合わせにもあったとおりですけれども、これはぜひとも真摯に受け取ってほしいというのが、私、国会事故調の元事務方ですけれども、先ほど菅委員が出した提言書とかも事実上、下書きとかをしている、そういうメンバーだった人間からの、私からもお願いをさせていただきたいというふうに思います。

 さて、本題に入ります。

 川内原発の再稼働に関して、菅委員から、私が従前から指摘をしてきたいわゆる政治的無責任の構図というものを今の質疑であぶり出していただいたので、そこから入ろうかと一瞬思ったんですけれども、一応やはり質疑通告どおりにいきます。

 IAEAの五層の防護というのがございまして、事故発生の防止に関する一層目から三層目、それから、シビアアクシデント対策、事故影響の緩和という四層目から五層目ということで、従前、事故前から、特に事故前は三層目までしか定められていなかったということで、今回の新規制基準で四層目についても一応対応するという形になっていることについては、非常にそれは評価できることですけれども、五層目の、放射性物質の放出を想定して放射線の影響、周辺住民に対する影響緩和というところについては、非常に重要であるにもかかわらず、これは、法律の名宛て人が違うとかいろいろな理屈に基づいて、炉等規制法とその施行規則の中には基本的には定められていないということなんですね。しかし、一応、この五層目については、原子力防災訓練と避難計画の整備、この二つが基本的には非常に重要だと思っています。

 何が言いたいかというと、原子力防災訓練について伺います。

 さきの週末、十一月の二日、三日、石川県の志賀原発で原子力総合防災訓練というのが行われております。私も、志賀原発に行きまして、そのテレビ会議の様子等を含めてですけれども見てまいりました。田中委員長は官邸からということで御参加をされていて、現地対策本部長という形で小里副大臣が参加をされていらっしゃいました。

 できれば、やはり参加をされた小里副大臣に来ていただきたかったんですけれども、環境委員会が参議院でやられているということで、きょうは福山政務官にいらっしゃっていただいております。本当にありがとうございます、お忙しい中。

 やはり、防災訓練というのは非常に重要だと思うんですね。今回参加をした中で一点疑問があったのが、今回の防災訓練の想定というのが、これは本当に最も過酷な事故を想定して、それで避難をするということを、リアリティーを持って想定したものなのかというのは、やはりすごい疑問があったわけです。その点について福山政務官にお答えいただければと思います。

    〔委員長退席、齋藤(健)委員長代理着席〕

福山大臣政務官 椎名委員の方から御質問いただきました。

 私も、二日当日に、総理官邸の方に入っておりまして、副担当として、いろいろ、朝九時半から二時までやっておりました。小里副大臣が行かれた石川の方に行かれたということで、本当にいろいろお世話になりました。ありがとうございます。

 ただいまの質問でございますけれども、今回の訓練の想定が最も過酷な事態であるかどうかは一概には言えないんですけれども、初日は、短時間で、志賀原発から半径五キロメートルのPAZ圏の住民が避難する全面緊急事態に至るという厳しい想定で訓練を実施いたしました。

 また、おおむね五キロメートルから三十キロメートルのUPZ圏内においては、初日の屋内退避訓練とともに、二日目は、放出された放射性物質が広範囲に沈着し、約四万四千人の一時移転が必要になるという状況での訓練を実施いたしました。

 さらに、オンサイトでの訓練については、外部電源の喪失、原子炉への全ての注水機能の喪失など、準備している対策が次々と失敗し、全面緊急事態に至るとの想定で訓練を実施いたしました。

 このように、各段階で厳しい想定を行った上で、できるだけ実践的な訓練を実施するよう工夫をした次第でございます。

椎名委員 ありがとうございます。

 この志賀原発というのは、炉の型式でいうとABWRといって、福島で使っていたものと似ているわけですね、それよりちょっと新しい。要するに沸騰水型の原子炉で、そうだとすると、福島の事故と同じような挙動が起きることが想定されていて、福島の事故をベースにしたシナリオを書きやすい、そういうものだったと思うんです。

 先ほど、事故当時に総理だった菅さんから、結局、事故の当時に何があったかというと、二時四十六分でしたか、地震がありまして、夕方の六時ぐらいにはメルトダウンし始めていたというようなお話だったと思います。

 でも、今回の想定は、ちょっと記憶で話をしているんですけれども、たしか、八時に地震があって、いろいろあって、避難を全部終えた後に、五時ぐらいに燃料棒のトップに水が到達して、夕方の六時ぐらいから損傷が始まるというような想定で、ちょっとやはり時間的にも、一番厳しい事態を想定していたわけではないなというのが、見ていて正直な私の感想だったんですね。

 やはり、本当に再稼働するのであれば、最悪の事態を想定するというのがやるべきことの一つなんだと思うんですよね。

 特に、今回の避難訓練は非常にいい部分もたくさんあって、一般の市民の方々をたくさん巻き込んで避難訓練をやっていたということで、一般市民の方々を巻き込む以上、何か急なことをお願いするというのはなかなか難しいというのは確かにそのとおりなんですけれども、でも、やはり、大きな問題が起きること、リスクを考えたときに、それに対して備えておくということで、最悪の事態を想定しておくということは非常に重要かなというふうに私自身は思った次第でございます。

 二点目。今回、現地は非常に大雨だったんですね。雨が降ったりやんだりで、船を通じての広報とか防災行政無線を通じての広報とかというのが実は余り機能していなかったんじゃないかというふうに思っていたりします。

 やはり、災害というのは時を選ばないですし、地震以降、福島の原発事故まで、雨が降ったり雪が降ったりというような事態が結構あった中で、住民への広報とか避難訓練への協力依頼とか、さらには、実際にオフサイトセンターからオンサイト、それから官邸、そして各市町村、都道府県、こういったところもテレビ会議でつないでいったわけですけれども、現実、回線がつながらないとかでうまくいかなかったことも幾つかあるということですね。

 さらには、当初の想定では、地震によって道路が崩落をして避難ができない人がいるということで、海を通じて逃げるという話だったんですけれども、結局、荒天によって船が出られないということで、やむなくですけれども、シナリオを割と都合よく書きかえて、道路をすぐ補修したというシナリオに書きかえて、バスで避難したわけですね。

 そういうあたりが、複合災害というものの想定とか、シナリオのBプランとかCプランとか、二重三重に考えていくというところがやはり少しうかがえなかったなというのは思いますけれども、今後どうやって避難訓練の実効性を高めていくかというところについて、改めて政務官の御所見をいただければと思います。

福山大臣政務官 ただいま椎名議員がおっしゃったような、特に石川の方は天候不良で大変厳しい状況の中の訓練になりまして、いろいろな点でちょっと変更点がございました。

 そういう点で、先ほどおっしゃったとおり、テレビ会議の接続不備、あるいは先ほど申しました天候不良による自衛隊ヘリを活用した緊急輸送訓練の中止、及び海上保安庁船舶や漁船による海上避難訓練の中止、こういうものがございました。

 これらの明確な課題については、原因の究明や代替手段の検討を今後進めてまいりたいと思っております。また、石川県や富山県、関係市町、関係省庁、関係機関に対してアンケート調査などを行い、訓練参加者の意見についても把握する予定にしております。

 これらを踏まえ、年内を目途に改善点を整理した上で、国や自治体の訓練実施方法や防災計画、国の原子力災害対策マニュアルなどに反映することにより、実効性や対応力の向上を図ってまいりたいと思っております。

 よろしくお願いします。

椎名委員 ありがとうございました。

 避難訓練の実効性を持たせるというのはすごく難しいんですけれども、シナリオを特定の人しか知らないで、その他もろもろの人は突発的にそれに対応するとか、いわゆるブラインド訓練というものですけれども、そういったようなことをやりつつ、やはりリアリティーを追求していくというのはぜひお願いしたいところでございます。

 ちょっと時間も余りないので幾つか飛ばしていきますけれども、こういった防災訓練の実施というのは、実はアメリカの原子力発電所の中では、いわゆる安全基準に相当する、NRCの定めている10CFRという規制ですね、NRCによって、その10CFRの中には、二年ごとの定期的な訓練とか、実際にそれのモニタリングとかいろいろな、要するに、政府の危機管理担当の部署とそれから事業者がいろいろやりとりをしながら評価をする、それを結構定期的にやるということが、もう原子力規制の中、原子力事業者に対する規制の中、そのものに書き込まれているわけですね。

 原子力規制そのものを所管している規制委員会の委員長にぜひ伺いたいんですけれども、再稼働を実際、仮にするとすると、やはり、よその国でやっているプラクティスとして、要するに事業者の中での防災訓練とか、それに対する政府のレビュー、それを定期的にやるとか、何年かに一回は大きな防災訓練をやるとか、そういうことを規制の中に盛り込むということ、それで事業者をきちんと縛っていくということ、こういったことの積み重ねが事業者の安全文化をつくっていくんじゃないかと思うんですけれども、ちょっと委員長の御所見をいただきたいなと思います。

田中政府特別補佐人 再稼働という観点で私から何か申し上げることはないんですけれども、ちょっと繰り返しになりますけれども、防災基本計画とか原子力災害対策指針を踏まえて、地域の実情に応じた地域防災計画を策定するというのが地方自治体の役割であります。

 実は、先ほどの議論にもありましたけれども、例えば今回の地域防災計画については、原子力災害対策会議、総理が主宰します、そこに報告をいただいて、適正であるというふうな判断もさせていただいておりますし、多分、事業者が再稼働するときには、経済産業省の許可を得なければ再稼働には至らない、我々だけではなくて。そういうふうになるんだろうと思います。

 いろいろな御意見があると思います。地域防災計画そのものの実効性についてまで評価して、それを条件とすべきかどうかというところ、これは、我々国がやるのが本当に適切かどうかということについて少し議論がありまして、やはり地域の実情をよく御存じの自治体が責任を持ってやる方が適切な避難、防災計画ができるのではないかという今我が国の判断でございますので、そういうことでやらせていただいておりますし、訓練についても、大体、年に一回はほぼやることになっておりますので、そういった訓練を通して、改善すべきところは改善していかなきゃいけないというふうに思っております。

椎名委員 ありがとうございます。

 これは防災計画の話もそうですし、避難訓練の話もそうなんですけれども、つかさつかさみたいな話は、それはある一面そのとおりなんです。誰が一番適切かと言われると、自治体がやるのがいいだろう、地域の実情を知っている、それはそのとおりなんです。

 ですが、やはりこれが、今まで原子力の規制行政そのものの政治的無責任の構図をつくり上げ、事実上、要するに、例えば自治体に拒否権を与えないとか、周辺住民が何を言っても一応稼働できるようにとか、そういう運用で原子力発電所を今まで運用してきた構図そのものが法体系の中にあらわれているわけですね。

 でも、民主主義というのはコストのかかるもので、コストというのはここは時間的コストという意味なんですけれども、やはり適正な手続を法的に定めていくというプロセスそのものが実は大事だと思っていて、防災訓練もそう、防災計画の整備もそう、それから公聴会、それから住民の同意のプロセスもそう。

 でも、住民の同意は法的根拠に基づいていないですよね。それから、防災訓練についても、先ほど菅委員が質疑をるるしていましたけれども、要は、自治体の責任であって、それは自治体が整備をすればいいわけですね。要するに、それが稼働の条件とはなっていないわけですね。事実上稼働の条件にしてはいるけれども、最後の最後、要は、整備をしなくても稼働できるような法的なたてつけにしているんですね。

 要は、だから、もしかしたら革新自治体とかがあって、変な人たちが原子力の稼働をとめようと思ったときに、それをとめられないような構図をつくっているわけです。でも、これは、今まで日本の民主主義をうまく運営してきた、効率に基づく法的な構図なんです。

 でも、これからの時代はやはりそうじゃないんです。法律の明文、それから規則の明文にそれぞれ手続を入れていって、それでも稼働する必要があるし、やらなきゃいけないということを明示していくことが、やはり民主的に原子力というエネルギーをコントロールしていくプロセスそのものなんじゃないかなと僕は思っていて。

 だから、先ほど申し上げたように、アメリカで実例があるので、10CFRとかに実例がある以上、やはり、例えば防災訓練の実施とかをちゃんと規則の中に明文化するとか、避難訓練を規制委員会と、アメリカだとFEMAですけれども、NRCとFEMAがチェックをすることが稼働の条件になっているとか、そういう法的な条件づけというのをしていくというのが、これからの原子力規制のあるべき姿じゃないかなというふうに思うので、私は提言をしたいと思います。

 時間も余りないので幾つかちょっと飛ばして、川内原発の再稼働についての、まず自治体の同意のプロセスの話について、経済産業省、参考人にいらっしゃっていただいているので聞きたいと思います。

 今般、薩摩川内市それから鹿児島県がそれぞれ、原子力発電所の稼働を賛成する陳情に対して採択をするということをしたわけですけれども、同意を得るプロセスというのは法的にはどこにも定められていないんですね。

 さらに言うと、どこの自治体から同意を得るかとか、どういうプロセスなのかというのは、何にも書いていないんです。だから、ただ、総理はずっと、それから茂木前大臣も予算委員会等々で、住民の同意を得ることが条件であるとずっと言い続けてきたわけです。しかし、事実上、諸所、るるいろいろ地域の実情があるのでと言って、要するに、それを定めないで来たわけです。

 これは、今後の原発の再稼働のプロセスそのものが、要はこれがリーディングケースとなって同じプロセスになるのか、それとも、先ほど来指摘されて、三十キロ内、いわゆるUPZの中まで全部同意をとるという手続が必要なのか、それをやるのか、さらには、それをやるとすると、やはり法的手続として炉等規制法なりなんなりの中に入れておくということが必要なんじゃないかと思うんですけれども、今後どうされるおつもりなのか、ちょっと教えていただければと思います。

    〔齋藤(健)委員長代理退席、委員長着席〕

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、地元自治体の同意ということは、法令上、原発の再稼働の要件にはなってございません。ただ、私ども、原子力政策あるいは再稼働を進めるに当たりましては、地元の理解を得つつこれを進めていくということが大変重要だと考えてございます。

 その進め方につきましては、それぞれの地域の事情がさまざまでございますので、国の方から一方的、一律にその進め方を決めるということではなくて、各地域の実情に応じて、地域とよく相談しながら対応していくことが重要であると考えてございます。

 私どもとしては、引き続き、立地自治体などの関係者とコミュニケーションをとりつつ、適切に対応してまいりたいと考えております。

椎名委員 ちょっと、ごめんなさい、やはりよくわからないんですけれども、では結局どこの同意をとるんですかという話ですよね。立地町と、それを含む県だけで本当にいいんですか、多分そういう問いなんだと思います。

 いや、例えば、PAZ、五キロ圏内、それからUPZ、三十キロ圏内、定めたら定めたでハレーションが起きるのは間違いありません。だからといって、定めないで運用でやるというのは、いささかやり方がこそくなんじゃないかなとやはり思うんですね。

 だからそれが、もしかしたら役所の通達でもいいのかもしれませんけれども、こういう方針でやると明言して、どこの自治体から同意をとるとか、では逆に言うと、どこから外はとらないとか、そういうのを明言する気はないんですか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 自治体の同意自体は、私ども、法令上の要件にはなってございませんので、ただ、政策を進めるに当たっては、理解を得つつ進めていくことが必要でございますので、各地域の実情に応じて進めてまいりたいと考えております。

椎名委員 時間が来たので終わりますけれども、これを、だから政治的無責任の構図と私は呼んでいるわけですね。

 ぜひ、ちょっといろいろ議論したいと思いますが、どうぞ引き続きよろしくお願い申し上げます。

吉野委員長 次に、今村洋史君。

今村(洋)委員 次世代の党の今村でございます。

 それでは、早速質問いたします。

 平成二十六年四月にエネルギー基本計画というものが閣議決定されておりますけれども、この中では原子力を重要なベースロード電源というふうに位置づけておられますけれども、この中にも、「原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。」というふうになっております。

 それで、この新安全基準をクリアできる原発というのは、どれだけ必要なのか、何基必要なのか、何キロワット必要なのかというところを、もし想定されているものがあればお答えください。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、十三原発二十基につきまして、電力事業者の方から原子力規制委員会の方に適合性審査が出されている状況でございます。

 独立した原子力規制委員会の方で審査が行われている状況でございますので、その見通しにつきまして私の方からコメントするのは差し控えさせていただければと考えております。

今村(洋)委員 ええ、当然そうでしょうね。

 僕が答えを求めているのは、エネルギー安全保障上、ベースロード電源に寄与する原子力がどれだけ必要なのか、どれだけ必要だと思っておられるのか、そこをお聞きしたいんです。

多田政府参考人 ただいまの御質問に関しましては、政府として、エネルギーベストミックス、これを議論していく中で検討されていくものと考えております。

今村(洋)委員 そうしますと、エネルギー基本計画という閣議決定されたものはあくまでも基本中の基本ということで、詳細はこれから検討していくという理解でよろしいですか。

多田政府参考人 御質問が原子力の件でございましたけれども、エネルギー基本計画、さまざまな内容を盛り込んでおります。私ども、総合エネルギー調査会の方で、原子力は原子力小委員会、あるいは省エネはどうやっていくのか、それから再生可能エネルギーはどうやっていくのか、あるいはまた資源、燃料をどうするのか、こういったことを、さまざまな場をつくりまして、エネルギー基本計画の方向に従ってどのように政策を具体化していくのか、現在検討を重ねているところでございます。

今村(洋)委員 わかりました。

 エネルギーにおける安全保障というものは、これは国家でしかなし得ないものですので、政府としても、今後きちんと具体的な数字を落とし込むところまで詰めていただきたいと思います。

 それで、今、原子力発電というものが安全保障上どれだけ必要かという観点からお話を申し上げていますけれども、世の中には、脱原発、卒原発、あるいはフェードアウトといったような、原子力発電をとりあえずなくしていこうというお考えと、また反対に、稼働ありきだ、今国家の経常収支も悪くなっているということにおいて、原子力発電はもう再稼働ありきなんだというような意見があります。

 私は、先ほどからお聞きしているのは、国家にとって、エネルギー安全保障上原子力がどれだけ必要なのか、再稼働できる原子力発電所、そういったものがどれだけ見込めるかというところは早急に見当をつけて、これは規制委員会の方の判断ということもあるでしょうけれども、ある程度これぐらいは必要ですねという、政府として、国家として必要量というものは認識しておく必要があるだろうと思ってお聞きしました。

 次の質問に行きますけれども、現在原子力発電が日本では停止しておりますけれども、この法的根拠というものはどこにあるのか、お教えください。

櫻田政府参考人 ただいま全国の原子力発電所が停止している法的根拠についてお尋ねがございました。

 現在の状況でございますが、法律に基づいて原子力発電所の停止などを命じているものではございませんけれども、全ての原子力発電所は原子炉等規制法に基づく定期検査を行うための運転の停止という状況にございます。また、原子力規制委員会といたしましては、施設の運転の再開までに新しい規制基準への適合性を判断する、こういう方針としておりますので、現在、原子炉が停止した状態が続いている、そういう状況と考えてございます。

今村(洋)委員 そうしますと、定期検査を受ける、それは、先ほど申し上げた新安全基準といったものをクリアしてもらわなきゃいけないから今全国の原子力発電がとまっているんだということでございますね。

櫻田政府参考人 委員の御指摘のとおりでございます。

今村(洋)委員 今の日本の原子力発電というのは、もちろん既存からある施設なんですけれども、委員長の田中私案という、バックフィットという語を今用いておられると思いますけれども、これによって、原子力発電所が今、定期検査で新安全基準をクリアするために待機しているということで理解してよろしいですか。

櫻田政府参考人 新しい規制基準は昨年の七月に施行されてございまして、現時点での法的な義務としては、原子力発電所を運転するためにはこの基準に適合することが必要である、こういうことになってございますので、したがいまして、運転の再開をするまでに、新しい基準に適合しているかどうかというのは原子力規制委員会としてきちんと判断をしていく必要がある、そういう考えでございます。

今村(洋)委員 では、やはり安全を追求して、いわゆる既存不適格といったような扱いはしないということですね。

櫻田政府参考人 繰り返しになりますけれども、新しい規制基準は昨年の七月に施行されてございますので、この基準が現在適用されている基準であるということでございますので、既存の原子力発電所に対してもこの新しい基準が適用されるということでございます。

今村(洋)委員 わかりました。ですから、いわゆる世間一般にあるような、建築、ビルとか、そういったものに適用される既存不適格といったような扱いはしないという理解をいたしました。

 次の質問に移りますけれども、十一月三日に宮沢経産相と鹿児島県知事との会談が行われて、知事は、国が最終的な責任を持つというお言葉を確認したと報道されています。

 一方、宮沢大臣は、万が一事故が起こった場合、国が責任を持って対処するというふうにおっしゃっておられますけれども、この文言というのはエネルギー基本計画にそのまま載っている文言でして、エネルギー基本計画には「万が一事故が起きた場合には、国は関係法令に基づき、責任をもって対処する。」ということが書いてあって、これをそのまま発言されたのかなというふうに思っております。

 私は、この記事を読みまして、知事と大臣の、ここにある責任という言葉、これはちょっとニュアンスが違うんじゃないかというふうに思いましたけれども、そこをお答えいただけませんか。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の宮沢大臣と伊藤知事との会談でございますが、十一月の三日に行われました。その際、宮沢大臣の方からは、川内原発の再稼働を進めるという政府の方針を説明する中で、万が一事故が起こった場合には、国が関係法令に基づき、責任を持って対処する、こういう御発言があったということでございます。

 これを受けまして、伊藤知事の方では、面談後の記者会見の場におきまして、事故が起こった場合など、国が最終的な責任を持つという言葉も確認をしたとの発言をされた、このように承知をしております。

 伊藤知事の方は、この宮沢大臣からの御発言を踏まえまして、宮沢大臣と同様の御趣旨で発言をされたもの、このように認識をいたしております。

今村(洋)委員 自治体の長、知事が、そういう、大臣と同じ趣旨で、国が責任を持ってくれるからという理解をされたとなると、再稼働に関しては、国家が、政府が再稼働を責任を持って判断するということでしょうか。

 僕は、規制委員会の方は、いわゆる新安全基準にかなっているかどうかの判断はするけれども、再稼働については規制委員会が判断、決断するものじゃないですよね。これは委員長がお答えください。

田中政府特別補佐人 はい、そのとおりでございます。

今村(洋)委員 そうすると、先ほどからるる各委員が質問していますけれども、再稼働に関して誰が決断して、国が最終的には責任を持つと言っていますけれども、再稼働に関しては事業者が決断するということですか。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 法令上、個々の原子力発電所につきまして、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、実際にその再稼働を行いますのは事業者でございます。したがいまして、あえて申し上げれば、再稼働を行います一義的な責任は事業者が負っているというふうに考えております。

 政府といたしましては、四月の十一日に閣議決定されたエネルギー基本計画の中におきましても、「原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。」としております。政府は、この方針に基づきまして再稼働を進めるということを行っているものでございます。

 この点につきましては、九月の十二日に、当時の小渕経済産業大臣の方から、鹿児島県知事からの求めに応じまして、この政府の考え方というものを文書の形で発出いたしておりまして、その文書の中でも、今申し上げましたこと、さらには、先ほど御質問のありました再稼働後につきましても、政府は関係法令に基づいて責任を持って対処する、こういった点も含めまして、文書でお示しをしているところでございます。

今村(洋)委員 今おっしゃることを聞きますと、事業者に最終的には決断してもらう、そこに、良心というかそういったところに期待する。まるで憲法の前文のような曖昧なお話だと伺いました。

 先ほど規制委員会の方がおっしゃいました、第一義的には事業者が決断するというか、責任を持つと。同じような言葉が原子力災害対策指針というものにも書かれていまして、「原子力事業者が、災害の原因である事故等の収束に一義的な責任を有する」と書かれているわけです。

 先ほど宮沢大臣の方が、最終的には、事故等が万が一起きたときは国が責任を持つというふうに書いてありますけれども、原子力災害対策指針の方では、一義的には事業者が責任を有するというふうになっています。

 ここはちょっと話が食い違っているような気がしますけれども、どなたかお答えいただけますか。

多田政府参考人 先ほど、小渕大臣からの文書の中でもお示ししたと。それから、エネルギー基本計画の中でも書いてあることでございますが、再稼働後におきましても、政府は関係法令に基づき責任を持って対処する。では、具体的に、関係法令に基づき責任を持って対処する中身は何なのか、こういうお尋ねかと思います。

 その点につきまして、例えばでございますが、原子力災害発生時の対応、今先生の方から御指摘もありましたけれども、こちらにつきましては、政府として、原子力災害対策本部を設置する、あるいは地方公共団体等に必要な指示を出す、あるいは、こういったことが実際起こらないようにとも思いますけれども、自衛隊の派遣要請をする、あるいは避難指示区域を設定する、あるいは被災者に対して避難指示をする、こういったことは国の方で責任を持って対処することとなろうかと思います。

 また、災害対応だけではなく、損害の賠償、こういう点につきましても、これも一義的には、原子力損害の賠償に関する法律、いわゆる原賠法に基づきまして、賠償の責任は事業者が負うことになっておりますけれども、これにつきましても、事業者の賠償すべき額が一定額を超えた場合、事業者が円滑な賠償を行うために必要な資金の交付等について政府が必要な支援を行うという規定がございます。これに基づきましていわゆる原賠機構がつくられました。その法律をつくった上で原賠機構法をつくり、そして、今は廃炉が加わりまして原子力損害賠償・廃炉等支援機構になっておりますが、この機構を通じまして、現在東京電力に対して支援を行っている、こういった状況にございます。

 こういった対応が現在の関係法令に基づき定められておりますので、今後このような、類似のことがないように世界で一番厳しい規制基準に基づいて審査が行われているかと思いますが、このような内容を、関係法令に基づき責任を持って対処する、これが文書の中で示された内容と認識をいたしております。

今村(洋)委員 原子力災害対策マニュアルの方は、読みますと、一義的な責任は事業者にあるといいながら、原子力事業者の応急措置に係る命令、(ベントの実施)等というのは委員長が行う、指示をするというふうになっていまして、原子力事業者の応急措置に係る支援確保については内閣総理大臣が行うというふうになっています。

 これをずっと読み込んでいきますと、つまるところ、政府は原子力規制委員会に、技術及び専門的な知見に基づく判断の内容にかかわる事項については、自分たちの権限じゃなくて委員会に任せるというふうに書いてあるわけですね。

 もう一つ、内閣総理大臣は主務大臣へ必要な命令をすることができる規定が削除されているんです。むしろ責任からは遠ざかっているような印象を受けます。

 事業者の方は、責任を持って再稼働して、事故が起きたときは責任をとるというふうになっていますけれども、委員長もそういう考え方で、あとは規制委員会の方でイニシアチブをとって対応はしていくよという読み込みでいいですか、これは。

田中政府特別補佐人 先生の御質問を少し分けてお答えさせていただきたいと思うんです。

 まず、原子炉の事故が起きたときに、それをいかに収拾しておさめていくかということについては、第一義的にやはり事業者の責任、要するに、プラントをきちっと抑える。

 先ほどお話がありましたベントをするということになりますと、これは敷地の外、サイトの外に出てまいります。そういう場合には、原子力災害特別措置法の規定に基づいて、原子力規制委員会から内閣総理大臣にその状況に関する必要な情報の報告を行うことになります。

 その報告を受けて、総理大臣は、原子力緊急事態宣言を行って、内閣府に原子力災害対策本部を設置し、それで、総理の、いわゆる本部長のもとでいろいろな関係各省が動く。

 私は、原子力災害対策副本部長として、専門的立場からその災害対策本部に参画し、また、私ども規制庁の職員は、全てその構成メンバーとして、さまざまな役割を担っていくということになっております。

今村(洋)委員 時間が来ましたので、質問を終わります。

 私が言いたかったのは、やはり、こういう重要な、エネルギーの安全保障にもかかわってくるような事業というのは、政府は逃げないできちんと対峙してほしい、決断を政府がやってほしい、そういうふうに考えております。

 どうもありがとうございました。

吉野委員長 次に、柏倉祐司君。

柏倉委員 みんなの党の柏倉でございます。よろしくお願いをいたします。

 きょうは川内原発の再稼働のところを中心に皆さん聞かれておりますが、きょう、私は、地元で今一番問題になっている放射性物質を含む指定廃棄物の最終処分場の問題をまず冒頭でちょっとお伺いしてから、今、凍土遮水壁がいろいろと取り沙汰されております、こちらの問題を聞かせていただきたいと思います。

 私の地元栃木県に、塩谷町というところに、放射性廃棄物を含む指定廃棄物最終処分場がつくられようとしております。

 地元では、当然のことながら、大反対でございまして、尚仁沢湧水という、環境省から名水百選に選ばれたような、そういう湧水源を全くなきものにしてしまうという、非常に危機感を持って反対運動を進めているわけでございます。

 北関東、そして宮城、そういったところに最終処分場をつくるという、一県一つつくるんだという国の方針がございますが、それに積極的に反対をしているところ、当然我々の塩谷町もそうですけれども、宮城県でも最近かなり本格化してきておりまして、政権与党からも、自民党さんからも、その特措法の見直しについて言及があるような状態にまでなってきているということがあります。

 これは、環境委員会で、地元の加美町の自民党代議士なんですけれども、最後、このような締めをしております。

 きょうは、地元の例を具体的に質問させていただきましたけれども、今度の指定廃棄物の最終処分場の建設については、最も段階としては進んでいる宮城県でもこれだけの問題なり疑義が生じているわけです。他の四県についても同様でありますし、今後、さらなる大きな問題が次々と現出してくることが考えられるわけです。そこで、震災から三年七カ月過ぎたわけではありますけれども、平成二十三年の放射性物質汚染対処特措法、またそれに基づき閣議決定された基本方針も、やはりもう一度見直すということも視野に入れるべきではないかなと思うんですねという、これは自民党さんの代議士がおっしゃっております。

 自民党の、宮城県の最大会派、県民会議も、これは福島に持っていくべきじゃないかというような発言まで出ている。

 政権与党からこういう声が地元から上がっている。こういうことに関して、政府はどのように考えるのか、特措法の見直しも含めて見解を聞かせてください。

奥主政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のように、指定廃棄物の件でございます。

 指定廃棄物が多量に発生し、特に保管状況が逼迫している宮城県や栃木県などにおいては、処理施設を確保すべく早急な対応が必要となってきております。一方で、指定廃棄物を各県ごとに処理するのではなく、他県、例えば東京電力福島第一原子力発電所の敷地内やあるいはその周辺に集約すべきという御意見もあるということも聞いておるところでございます。

 しかしながら、福島県に集約して処理することにつきましては、原発事故により最も大きな被害を受けている同県に対しまして、これ以上の負担を強いることは到底理解が得られないというふうに考えております。また、今避難されている方々が再び地元に戻ることを望んでいる人々もおられます。そういった御意見を無視することはできないというふうに考えているところでございます。

 こうした状況の中、各地の指定廃棄物を福島県内の一カ所に集約して処分を行うことは困難というふうに考えております。

 環境省といたしましては、関係地方公共団体とも協力し、各県における指定廃棄物の処理を進めるべく取り組みを進めているところでございます。特別措置法に基づく基本方針において定められました指定廃棄物の県内処理の考え方を見直す予定ということはございません。引き続き、その方針に従って取り組む姿勢でまいりたいと考えております。

柏倉委員 これは我が党の議員が予算委員会で安倍総理にも質問させていただいた内容で、お答えは同じだったわけでございます。

 そのリスクというものをやはり各都道府県に分散してしまう、果たしてそれでいいのかなというような声もあるのは事実です。福島の方の心情を察すれば、もうこれ以上負担をかけるのは忍びないというその気持ちは確かにわかります。ただ、一方で、その指定廃棄物を新たに持ってこられるところ、特にその地点において名水百選に選ばれたような財産、これが危険にさらされる、そういった自分たちのアイデンティティーの喪失につながりかねない指定廃棄物の最終処分場の選定に今回なっているわけでございます。

 そこのところは、もう政権与党の自民党さんからも、これは代議士さん、県連最大会派からそういう声が出ているんだというところも真剣に考えていただいて、拙速な対応は厳に慎んでいただきたいということを申し添えたいと思います。

 それでは、汚染水対策、凍土遮水壁についてお伺いしたいと思います。

 汚染水対策の根本的なものとして、凍土遮水壁が福島で今つくられようとしているわけですね。もとから、根っこから断つ、地下水を流入させない、建屋へ流入させない、その原理は確かによくわかるところでございます。ただ、これは世界的にも当然初めてのことでして、チェルノブイリ、スリーマイルでもこういったことはなかったわけでございます。

 そこで、この凍土壁の技術について、二、三お伺いします。

 これは地下鉄工事などで利用されている技術だというふうに聞いています。ただ、地下鉄工事でそう長くこの凍土壁が使われているということはないというふうに聞いております。その造成量も、今回とちょっと比較すると、かなり地下鉄の方は少ないんだというふうに聞いています。

 これは、汚染水対策においてはどれぐらいの期間、凍土遮水壁を用いていくのか、造成量は問題ないのか、それについてお答えをお願いします。

土井政府参考人 お答え申し上げます。

 日本において、地下鉄などの実績があるわけでございますけれども、凍土造成量に関しましては、地下鉄工事で一件当たり約三万八千立米の実績があります。また、その維持期間に関しましては、電気ケーブルの敷設工事で一件当たり二年四カ月程度という実績がございます。

 一方で、福島第一原発に設置をしようとしております凍土壁に関しましては、その造成量については約七万立米でございます。また、その凍結期間は約七年程度を予定しております。

 以上でございます。

柏倉委員 造成量がかなり、倍近いわけですね。あと、七年ということなんですけれども、これは実証実験等でどれぐらいまでいけるというところはわかっているんでしょうか。

土井政府参考人 本凍結方法を福島第一原発敷地内の地盤に適用するに当たりましては、建屋周辺の地盤中で、実際の深度、これは地下三十メートルでございますけれども、そこに凍結管三十九本の小規模試験を実際行いました。その結果、実際に凍結することを確認しております。

 それからまた、万が一でございますけれども、未凍結部分が発生するというような場合には、グラウト注入によって地盤中の間隙水の流れを抑制するというような補完的な工法がございます。

 そのような重層的な対策を行うことによりまして、凍土壁の構築に万全を期してまいりたいというふうに思っております。

柏倉委員 具体的に小規模実験をされているということなんですけれども、一号機から四号機までずっと外周を囲む、それだけの造成量、しかも七年、これは未知数なわけですね。理論的には可能なわけだけれども、まだまだそういったところは世界で類を見ないということだと思います。非常にチャレンジングだということですね。この技術に関してはもう確立されたものなんでしょうけれども、やはりこの七年という期間、これが果たして耐えられるのかどうか。さまざまな危機管理をやっていかなきゃいけないと思うんですね。

 そこで、この凍土壁維持にはかなりの電力が必要になるというふうに聞いているんですが、どれぐらいの電力が必要になるんでしょうか。さらには、地震なんかがあったとき、電源が落ちて、補助電源も使わないと凍土壁は壊れてしまうわけですから、そういったところは想定しているんでしょうか。

土井政府参考人 お答え申し上げます。

 福島第一原発における凍土壁の維持に関しまして、その必要な電力量は年間四千四百万キロワットアワーというふうに試算しております。これは、標準家庭の電気料金を仮定いたしまして試算いたしますと、年間十数億円相当に当たると東京電力が試算しております。

 ただ、凍土壁の維持に必要な電力に関しましては、他電力会社から購入するということではなくて、東京電力が自社で発電した電力を使用するということでございまして、必ずしも先ほど試算したような金額が発生するわけではなく、恒常的に賄うことができるというふうに聞いております。

 それから、仮に地震等の災害が発生しまして冷凍機などの電源が喪失するという場合も想定され得るわけでございますけれども、凍土壁が解けて機能を失うまでには少なくとも三カ月程度の期間を要するということを私どものフィージビリティースタディーで確認しております。したがいまして、このような期間に、凍土壁が解けて機能を失う前に電源を復旧して凍結を再開するということは十分可能であるというふうに考えております。

柏倉委員 先ほど実証実験しているということをおっしゃいました。いろいろな記事を読みますと、トレンチの部分の汚染水除去が非常に苦労しているということなんですけれども、これはどれぐらいまでにしっかりと除去できるんでしょうか。来春には凍土壁をしっかりとつくらなければいけないわけですけれども、それの見込みも教えてください。

土井政府参考人 建屋海側のトレンチを止水するということと地中に凍土壁をつくるということに関しましては違う対策でございますけれども、ただ、トレンチにつきまして、建屋とトレンチの間を止水した上、汚染水を除去し、トレンチ内を充填、閉塞するという計画に関しましては、本年四月より凍結をさせ止水する工事を開始いたしましたけれども、いまだ凍結に時間を要して凍結していないというのは事実でございます。

 そのため、東電は、原子力規制委員会の検討での議論も踏まえつつ、凍結を促進するための間詰め材の投入などの追加的な措置を実施してきておりまして、また、完全に止水をしなくともトレンチ内の汚染水を除去できる手法の実施も検討しております。

 凍土壁に関しましては、年度内の凍結開始ということを目指しておりますので、早期にトレンチ内の高濃度汚染水を取り除くよう東電を適切に指導していくとともに、凍土遮水壁について、きっちり凍結を開始し凍結が完了できるよう、全力を傾けてまいりたいというふうに思っております。

柏倉委員 最後に、トリチウムのことを聞きたいと思います。

 今、汚染水処理、ALPSを増設したり、パワーアップ、機能アップしたりして、必死に汚染水をきれいにしているわけですけれども、最終的には、トリチウム、正直言って、毒性は余り高くないけれども三重水素ですから、分離してきれいな水にするというのは非常に技術的に難しいということを聞いております。それをやっているところもあるようですが。

 IAEAは勧告で、基準値以下のトリチウムは放出しても構わないんじゃないかというようなことを言っているわけですけれども、当然、地元の漁連の皆様の反対はあるわけですね。これはやはり、しっかりとトリチウムの除去を絶対するんだということで政府の方針は変わりはないでしょうか。

土井政府参考人 トリチウム水の取り扱いに関しましては、汚染水対策の中でも非常に重要な課題の一つであると認識しております。

 ただ、そのトリチウム水の処理方法に関しましては、現在、さまざまな選択肢について検討を進めている段階でございまして、方針はまだ決めておりません。

 具体的には、昨年十一月末に来日したIAEAの調査団からは、あらゆる選択肢をまず検証するべきであるというような助言があったことも踏まえまして、議員御指摘の分離技術のみならず、トリチウムの長期貯蔵や放出等のリスク、それから、環境に与える影響、費用対効果といったことを総合的に今検討しているところでございます。

 これらの検討は、汚染水処理対策委員会のもとにトリチウム水タスクフォースという専門家の委員会を設けまして、昨年十二月より検討を加えているところでございます。

 このタスクフォースでの専門的な評価も受けまして、今後、さまざまな選択肢の意義とか効果とか、メリット、デメリットなどを整理いたしまして、わかりやすく説明を行っていくということが社会的な合意形成の基盤というふうに認識しております。

 いずれにいたしましても、トリチウムの分離技術というのは、これら選択肢の評価の一環でございまして、しっかりその成立性は検証していきたいと思っております。ただ、現時点で分離や処理の方法を決定したという段階ではございません。

柏倉委員 確認しますけれども、しっかりとこれは分離するんだ、基準値以下だからといってそのまま放出することはないということでよろしいんでしょうか。

土井政府参考人 先ほど御説明申し上げましたように、分離するということの成立性を今検証している段階でございますので、最終的に、分離して処理してどのような形で放出するのか等に関しましては、引き続き検討を続けてまいりたいということでございます。

柏倉委員 時間が参りました。

 政府は、トリチウム除去で三つの会社と契約を結んで今やっているわけですね。ただ、実際、キュリオン社などというところは、まだまだ年間二十トンぐらいしかトリチウム除去サービスのキャパシティーがないということです。達成するまでは非常に道遠いという印象がございます。

 ただ、本当にできるのかできないか、これは政府がしっかりとどこかできっちりアナウンスメントをして、しかるべき対処をとるべきだと思います。科学的に無理なら無理と言うところは言うべきですし、できるならできるとやはりきっちりと伝えて、予算を使うわけですから、そこの方針をできるだけ明確にしていただきたいと思います。

 これで終わります。ありがとうございました。

吉野委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 田中原子力規制委員会委員長に、まず、去る十月三十日の衆議院予算委員会での私の質疑にかかわって質問いたします。

 九州電力川内原発の再稼働をめぐる巨大噴火の予知について、どういう科学的知見があると認識しているかという私の問いを、安倍総理自身の認識ということで安倍総理に質問したのに対して、安倍総理が答えられるんじゃなくて、田中規制委員長がみずから手を挙げられて、挙手されて、私の方から答えさせていただくというふうに答弁されました。

 原発の再稼働を進めると明言している総理の認識を私は聞いたのに、なぜ規制の立場にある田中委員長がかわりに答弁されたのか。これは不適切だったというふうに思われないですか。委員長、いかがですか。

田中政府特別補佐人 先生の御質問は、いわゆる巨大噴火、川内の姶良カルデラの巨大噴火についての判断の基準をお尋ねになられたので、私の方からお答えさせていただきました。

笠井委員 私は、規制委員会の知見、判断の基準を聞いたんじゃなくて、そういうことを受けて、規制委員会が判断されたのを受けて、総理自身がその予知について知見をどういうふうに承知されているかを質問したんですね。

 しかも、そういう場面というのは一度だけじゃなくて、さらに、火山学の専門家が把握もできていないと言っているものを九電ができるとしているのは科学的と思うかと、これも重ねて推進の立場にある総理の認識を聞いた際にも、かわりに田中規制委員長が成りかわって答弁されたんですよ。

 だから、いつから推進の立場になっちゃったのかなと私は率直にそのとき思ったので、限られた時間でしたから、その部分をやったらまたほかのをできなかったので、そういうことでそのままになったんですが、これはやはり、推進と規制の立場の違いをわきまえていらっしゃるかにかかわる根本問題になってきているというふうに思うんです。

 本来、推進の立場で総理に成りかわって答弁するのは、委員長ではなくて経済産業大臣のはずであります。原子力規制委員会設置法の第一条、目的の中には、「一の行政組織が原子力利用の推進及び規制の両方の機能を担うことにより生ずる問題を解消するため、」ということも明記して、「その委員長及び委員が専門的知見に基づき中立公正な立場で独立して職権を行使する原子力規制委員会を設置し、」というふうにあるわけでありまして、田中委員長、ぜひ、この立場に厳格に立って国会においても対応していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

田中政府特別補佐人 先生おっしゃるとおりで、科学的、専門的な判断について私の方からお答えさせていただいたということで、御理解いただきたいと思います。

笠井委員 私の問いをあのときよく聞いていただければ、そういう判断をしたことに対して総理はどういう認識をしていますかと聞いたので、そこはきちっと対応してもらいたいというふうに思います。いずれにしても、厳格に対応するということで今後は当たっていただきたい。

 そこで、火山をめぐる問題でありますが、九州電力の発電本部原子力管理部長が、本年九月三十日の鹿児島県議会原子力安全対策等特別委員会において、こういうふうに発言しています。破局的噴火の兆候というのが規制委員会の審査会合の中でも議論になりましたが、数十年のオーダーの前にわかるであろうというふうに考えてございます、そういったところから、こういった停止、燃料の搬出についての手順を整えていく、計画を整えていくというところを考えてございますと発言しております。

 つまり、数十年のオーダーでわかるので、そういうところからいろいろ手だてをとっていくんだというふうに県議会の場で発言しているんですが、田中委員長は、こうした数十年のオーダーの前にわかるという認識については、どういうふうに思われるでしょうか。

田中政府特別補佐人 今議論の対象になっておりますいわゆるカルデラ噴火、これは、仮にそれが起こると、九州全域を壊滅的、ほとんど全ての方が亡くなってしまうような破局的な噴火が起こるということであります。

 地下の、そういったカルデラでのマグマの状況とか過去の噴火履歴等を総合的に検討した結果、川内原発の運用期間、大体、現実には、仮に延長しても三十年、さらに、燃料の運び出しとかそういうことを考えると最大でも三十五年とか四十年ですけれども、その間にそういったことが発生する可能性は十分小さいというのが私どもの判断でありまして、それは、九州電力に言われたからそう判断したのではなくて、御退任されましたけれども、島崎委員を中心にそういった議論を重ねまして、そういう判断をさせていただいたわけです。

 ただし、念には念を入れて、やはりそういった破局的噴火ということについては、可能性は十分小さいということではありますけれども、現在の状況がどのように変化していくかということについては継続的に確認しておいた方がいいだろうということで、火山活動のモニタリングを事業者に求めていくということでありますし、私どもとしても、別途、火山のそういったカルデラ噴火の状況を調査する専門家チームを発足させて検討して、事業者の判断についてもきちっと見ていくということにしております。

笠井委員 数十年のオーダーの前にわかるという九電の認識について伺ったんですが、そのことについてきちっと科学的な答弁を伺いたいんですよね。

 一方でいうと、火山学者の意見は、仮に巨大噴火の前兆はあっても、噴火の時期や規模を予測することは現在の火山学では極めて困難で、無理だと言われている。そして、核燃料の搬出に間に合わせるために、数年あるいは十年という単位で予兆現象は見えるものではないというものであります。

 田中委員長も予算委員会の答弁でも認められているように、巨大噴火は予知できないというのが現在の到達だと思うんですが、いろいろ言われましたけれども、それに照らして、九電が、数十年のオーダーの前にわかる、前兆や予兆がわかると言うことについては、科学的なものかというふうに認識されているか、その一点を端的に、科学的だと思われるか、いや、それはちょっと、数十年というのはどうかというふうに、その点、端的にどうですか、あれこれ言われなくていいですから。

田中政府特別補佐人 火山予知連の藤井先生も言っておりますが、破局的な噴火に至るには、地下に巨大なマグマだまりができますので、何らかの前駆現象が相当前から発生する可能性が高いという認識を示しております。

 このマグマの量は、山手線の広さでスカイツリーぐらいの深さのマグマの量になりますので、一定の前駆現象が出るというのは、専門家もそういう認識はしております。いわゆるそれが予知……(笠井委員「数十年ということではどうかということですよ」と呼ぶ)

 長期的に、そういったことをこれから変化を見ていくということになると思います。

笠井委員 長期的に見ていくというだけで、数十年のオーダーでできるということについては、できるというふうには言われないわけですから、そういう問題なんですよ。

 日本火山学会の原子力問題対応委員会、去る十一月二日に、噴火予測の可能性、限界、曖昧さの理解が不可欠とした上で、原子力規制委員会の火山影響評価ガイドの慎重な検討、報道は見直しと言っていましたけれども、ここに書いてあるのは、慎重な検討と言っている、これを求める提言を発表したわけで、田中委員長は、昨日の定例記者会見で、それを、今さらのごとくそんなことを言うのかというふうに批判されましたが、とんでもないと私は思うんです。

 そういう提言が当該の学会から出ること自体が、専門家とよく相談してこなかったということじゃないか。こうした知見こそ重く受けとめて、不断に見直しをすべきだということを強く申し上げておきたいと思います。

 そこで、今委員長も言われたことに関連するんですが、原子力規制委員会は、火山のモニタリングを行って、異常を観測したら原子炉を停止し、核燃料の搬出をするということで、そういうことが原子炉設置変更許可申請にあるので、九電がそういうことを言っているので、火山の影響に関する規制基準、つまり火山影響評価ガイドをパスしているというふうにしたわけですが、しかし、予算委員会でも指摘しましたが、九電の設置変更許可申請にも保安規定変更申請にも、モニタリングをどのようにするのか、核燃料をどのように、いつまでに、どこに輸送するかなど、肝心なことについては一切記述がないと思うんです。

 原子力規制委員会は、そうした具体的なことについて九電から説明を受けて、わかっておられるんでしょうか。つまり、モニタリングをして、どのようにするのか、それから核燃料をどのように、いつまでに、どこに搬送するのか、輸送するのかということで、そういうことについては九電から説明があって、了解している、了承しているのかどうか。いかがですか。

田中政府特別補佐人 九電、事業者の方は、このモニタリングをきちっとすることの重要性を認識して、火山の専門家の助言を得ながらモニタリングをしていくと。そのモニタリング結果については、私ども随時報告を受け、また、私どもに設けた、火山学者を中心としたチームでそれを評価していくということを行って、必要があれば、命令によって炉をとめさせて、そういった対策をとるということにしております。

笠井委員 具体的にどうかということについてはお答えになれないんだ。ないんでしょう。つまり、詳細はわからないということで、手順書の審査もあり得るというような後の位置づけでなくて、手順書を厳正に審査して、実効ある具体的な記述がなければ審査はオーケーにならないというのが当然じゃないかと思います。

 もう一つ、重大事故対策の問題でありますが、原発の重大事故の際に格納容器が破壊されるなど大きな被害を出さないことを、電力会社はコンピューターでシミュレーションしていると。その結果について、規制委員会として、電力会社のものとは別のソフトウエアで解析をして妥当性をチェックするということで、クロスチェック解析を行ったかどうかについて、私、この委員会でも再三にわたって委員長に質問してまいりました。

 直近では、八月七日の質疑では、メルトダウンした燃料と格納容器底部、底にあるコンクリートが直接接触して大量の水素が発生して水素爆発の危険をもたらす溶融炉心・コンクリート相互作用の、これについてのクロスチェックをやったかどうかをただしました。田中委員長はそれに対して、「クロスチェックはきちっとやらせていただいております。」「クロスチェックをした評価の結果については、」「近々レポートとして報告させていただきます。」こうはっきり言われたんですが、そう答弁されたということは間違いありませんね。

田中政府特別補佐人 はい。間違いありません。

笠井委員 そのレポートを、私も、その後、どんなことが書いてあるかと思って、ぜひ読んでもらいたいというお話だったので読んでみましたが、どこを見てもクロスチェック解析のことは触れておりません。それどころか、このレポートには、私がただした溶融炉心・コンクリート相互作用は「本技術報告の検討対象からは除外した。」、検討対象から除外したとまで逆に書いてあるわけであります。

 このレポートの表紙の裏側にも書いてあるとおり、原子力規制庁が安全研究等の成果をまとめたもので、いわば技術的参考資料の一つにすぎず、田中委員長が答えられたようなクロスチェックをした評価の結果を報告したものになっていない。これを見たらわかる、読んでほしいとおっしゃったんだけれども、そういうものになっていないと思うんですけれども、八月七日の委員長の答弁と明らかに違うんじゃないでしょうか。どうなんでしょうか。

田中政府特別補佐人 いわゆる溶融炉心とコンクリートの相互作用であるMCCIに至るシビアアクシデントの事象進展に係る解析については、MELCORというような総合的な大きな計算コードがありまして、これはプラントを対象とした解析を行っております。MCCIそのものの解析については、これは、そこの、御持参されたNRAの技術報告に記載されているとおり、MELCORでの解析は行っておりません。

 実は、このMCCIは極めて特殊な現象でありまして、現状の解析コードでは、クロスチェックをしたからといっても、必ずしもそれが正確に評価できるものではないということで、そういうこと、MCCIによる大きな事故の進展につながることを防ぐために、その下にあらかじめ、そういった炉心、圧力容器をメルトするような状況が起こりそうなときには、水を十分に張っておいてそれを防ぐとか、そういうことを規制基準として、規制の方として要求しております。性能要求として要求しております。

笠井委員 ですから、その説明になりますと、八月七日に田中委員長は、私が聞いたのは、溶融炉心・コンクリート相互作用の問題で、クロスチェック解析をやっているんですかと言ったら、やっているとおっしゃったんだけれども、やっていないと今御答弁されたんですね。

 つまり、私が理解しているのでいえば、溶融炉心・コンクリート相互作用に至る前の段階、つまり炉心損傷についての解析は、MELCORという規制委員会が持っている、規制庁が持っているもので解析をしたということをやったんだけれども、その後起きる可能性がある事象全体を、現象全体をクロスチェック解析したのかと私が聞いたのに対しては、八月七日には、やっているとおっしゃったんですよ。それで、読んでくれと言われたんだけれども、今答弁されたら、いや、実はそれはやっていないんです、その先端はやったけれども、その後に至る問題についてはいろいろ問題があるので、そこまではという話になっているわけで、これは明らかに答弁が違うんですよね。

 八月から、もうきょうは十一月ですから、その間、つまり、国民や委員会、国会に対して違う説明をしていた、間違ったうその答弁をしていたという話になる。これは本当に重大な問題だと思うんですよ。

 異なる解析コードを使ってクロスチェック解析して、異なる結果が出たら、つまり、審査に時間がかかって、電力会社にとって都合が悪い。それで、クロスチェック解析をやらずに単なる九電の結果をチェックしただけなのに、それにクロスチェック解析をやったなんて言って、ある意味、ごまかされたんじゃないですか。ごまかして言われたんじゃないですか。

 九電はMAAPというコードを使って解析をやっている。規制委員会としてはそれと違うコードで、MELCORで再計算したのかということを、この事象についてあるいは全体について聞いたのに、八月七日には、やっているんですよ、読んでくださいと言われた。書いていない。今聞いたら、やっていないという話でしょう。これをどういうふうに考えればいいんですか。虚偽答弁になりますよ。

田中政府特別補佐人 シビアアクシデントは、一つのことでなくて大きい流れの事象の中で起こります。

 それで、先生御指摘のように、事業者の方はMAAP、私どもの方はMELCORというものでやっております。

 最後の段階で、MCCIという事象でありますけれども、先ほど申し上げましたように、解析コードでやるというのは非常に不確かさが大きいというのが現状でありまして、幾つか実験がございます。そういった結果を踏まえまして、審査の過程でいわゆるチェックをしているという意味でのクロスチェックはやっているということでございます。

笠井委員 不確かさが大きいと言われるけれども、九電は少なくともMAAPというものでやっているんだったら、そのことについてだって、不確かさというのはまたその後の話で、クロスチェック解析というなら、別のコードで独自に規制委員会としてやられるのが当たり前で、それに対してさらに不確かさがあるからどうするかというので、さらに厳密にどうするかという話があってもいいけれども、やっていないんですよ。手抜き、ずさんという話になってくる。国会で、やっていないことをやったなんという答弁をしたのは重大だと思います。

 それだけじゃなくて、川内原発の審査書案へのパブリックコメントでも、クロスチェック解析に関する意見は多数だったけれども、回答でも、結局、レポートを見てくれという話だったわけですよ。

 火山の影響についても、重大事故対策についても、厳正どころか手抜きという話になってきて、そんなことでひな形になって、ほかもやっていくということになったら、また電力会社のとりこという話になってくる。

 委員長、九州電力の問題、そして規制委員会がそれに対して申請を審査しているということですので、川内原発の再稼働をめぐる問題、国会としてきちんとただすために、九州電力の瓜生道明社長を当委員会に参考人として招致、お呼びいただきたい。理事会で協議をお願いしたいと思います。

吉野委員長 理事会で協議をいたします。

笠井委員 時間になりましたので終わりますが、こんな審査が厳格だということで再稼働を進めるということは断じて許されない、川内原発。このことを申し上げて、きょうの質問を終わります。

吉野委員長 この際、政府より発言を求められておりますので、これを許します。資源エネルギー庁電力・ガス事業部長多田明弘君。

多田政府参考人 先ほどの菅直人委員の御質問に際しまして、原発の再稼働につきまして、原子力規制委員長及び東京電力から答弁があった件に関しましてでございますが……(発言する者あり)

吉野委員長 答弁してください。

多田政府参考人 委員長からの御指名をいただきましたので、答弁させていただきたいと思います……(発言する者あり)

吉野委員長 呼んでいないです。ただ、発言を求められておりますので、私の責任で許しました。(発言する者あり)私の責任で仕切ります。発言を聞いてから、その問題点は、理事会で議論していきたいと思います。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

吉野委員長 速記を起こしてください。

 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木でございます。

 本日、初めての質問に立たせていただきますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 きょうは、原発の再稼働についてと老朽原発の廃炉への判断について、また、再生可能エネルギーの電力の買い取りの制度について、それぞれについて何点かお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 まず、原発の再稼働についてでございますが、これまで原子力発電を進めてきました結果、現在、我が国には、使用済み核燃料の一部は高レベル放射性廃棄物という形で保管をされております。ただ、その処分先は決まっていないという状況にございます。こうした見通しがない中で、さらなる廃棄物をふやす原子力発電所の再稼働を進めることは、大変無責任な姿勢ではないかというふうに考えます。

 既存の原子力発電所にあります使用済み核燃料も、約一万七千トンが使用済み燃料プールに貯蔵されておりますが、その貯蔵容量に余裕のない発電所も存在をいたしております。半数以上の原発で十年以下、最も短いところでは三年でプールが満杯になると言われております。この三年でプールが満杯になる原発についても、現在再稼働の申請がなされているというふうに伺っています。

 政府は、エネルギー基本計画の中で、「発電所の敷地内外を問わず、」「中間貯蔵施設や乾式貯蔵施設等の建設・活用を促進する」というふうにされていますけれども、この中間貯蔵施設の建設については、その調査から操業開始まで約十年以上の期間を要するという報告もございます。仮に中間貯蔵施設を受け入れる自治体が出てきたといたしましても、この施設の建設は間に合わないというふうに考えられます。

 この点について、どういう具体的な見通しのもとで今この再稼働が検討されているのか、お伺いをいたします。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ございましたように、我が国には、今約一万七千トンの使用済み燃料が保管されております。このうち、各原発には、一万七千トンのうちの約一万四千トンが貯蔵されております。御指摘ございましたけれども、各原発の貯蔵容量でございますが、全体で約二万一千トンございまして、一定の貯蔵の余地は確保されていると思います。

 ただ、御指摘もございましたけれども、容量に余裕のない原発も確かに存在をいたします。したがいまして、使用済み燃料貯蔵対策の充実あるいは強化をするということは大変重要な政策課題の一つであると認識をいたしております。

 したがいまして、先ほどエネルギー基本計画のことも引用いただきましたけれども、使用済み燃料プール、現在あるプールの貯蔵能力を高めること、あるいは中間貯蔵施設、さらにはサイト内に乾式貯蔵施設をつくる、こういったさまざまな方策によってこの容量の拡大というものを図っていかなければいけないと思っております。

 既に、例えば貯蔵能力を高めるということにつきましては、リラッキングという作業の準備をしているところもございます。また、中間貯蔵施設につきましては、むつ市の方で建設がされておりまして、事業開始に向けて手続を踏んでいるという状況にございます。また、乾式貯蔵施設につきましても、例えば浜岡原発のサイト内で検討がされている、こんなような状況になってございます。

 こうした状況でございますけれども、今後も、使用済み燃料の貯蔵施設につきましては、新たな地点の可能性の幅広い検討を初め、各電気事業者の積極的な取り組みや、電気事業者間の共同あるいは連携による事業の推進の検討、あるいは政府の取り組みを強化する、こうしたことをやっていかなければならないと思っております。

 なお、先生の方から、時間がかかるのではないか、こういった御指摘がございました。リラッキングといった作業、あるいは中間貯蔵施設をつくる、乾式貯蔵施設をつくる、それぞれかかる時間は違います。

 中間貯蔵施設、例えばむつの場合につきましては、御指摘もありましたけれども、調査を始めた段階から十二年程度かかる状況になってございますが、他方で、サイト内につくります乾式貯蔵施設、こちらにつきましては七年ほどであります。それから、ラックを増設するのは三年、あるいはリラッキングは四年、こういった形で、それぞれの取り組みにつきましては要する期間も異なっているという状況でございます。

 いずれにいたしましても、こうした取り組みをしっかりと着実に推進しながら、いかなる事情よりも安全性を最優先して、新規制基準に適合すると認められた場合にはその判断を尊重して原発の再稼働を進める、こういった考え方で臨んでいるところでございます。

青木委員 我が党といたしましては再稼働には反対の立場をとっておりますけれども、少なくとも、このごみの処理の明確なめどが立たない以上、再稼働というのはなかなか厳しい状況にあろうかというふうに思います。

 先ほども質疑の中にございましたが、川内については、設置変更許可の部分だけがまず決定されたということであって、これからさらに審査が続くということでもございましたので、また規制委員会としての役割はあろうかと思いますけれども、やはり、廃棄物の処理の問題は、川内、九州の問題だけではなくて、日本全体の課題であり、世界の課題であります。廃棄物の処理についての明確な答えが出せない中で、さらに廃棄物をふやすという再稼働はまず考えられないということを指摘しておきたいというふうに思います。

 続きまして、老朽原発の廃炉への判断についてお伺いをいたします。

 原則として、原発の運転期間は四十年ということが法律で明記をされています。しかし、原子力規制委員会の許可を得られれば、最長二十年間延長できるということでございます。

 全国の原発四十八基のうち、老朽化をした七基について、その申請のリミットが来年の七月末だというふうに伺っています。その前に早期に申請するよう、政府からも、また委員会の方からも電力会社に注意喚起をしたというふうに承知をいたしております。

 そこで、何点かお伺いをいたしますが、この七基について、まず、申請がない場合は廃炉ということでよろしいのでしょうか。また、申請がある場合は、審査の決定がおりるまでどの程度の期間がかかり、古いがゆえの観点もあろうかと思いますが、どのような観点から判断をされるのか、お伺いをいたします。

櫻田政府参考人 原子力発電所の運転期間の延長の認可について御質問をいただきました。

 委員の御指摘のとおり、原子炉等規制法、改正された新しい法律におきましては、原子力発電所を運転できる期間を四十年とした上で、その期間の満了までに特別の認可を受けた場合には、一回に限り二十年を上限として運転期間を延長することができるというふうになってございます。

 ただ、前提といたしまして、私ども、先ほど来お話が出ております新規制基準を施行してございますので、こういう延長をする前の前提として、新規制基準への適合をする必要がございます。

 先ほど来お話がございますが、そのためには、適合性審査の申請をしていただき、審査を終えて、さらに、残る手続でございます検査、これを受けて合格した原子力発電所は稼働できることになりますが、さらに、四十年を超えるようなものについては、今申し上げたような運転期間の延長という認可を得なければその後の運転ができない、こういうことでございます。

 御質問の、認可の申請がなされない原発についてはどうなるかということでございますけれども、これは、基本的には廃炉手続に進むのではないかというふうに考えられますが、具体的にどのように進めるか、段取り等につきましては、事業者に委ねられるということになります。規制当局といたしましては、適切な安全確保がなされるように、廃止措置の終了の確認という段階に至るまでは原子炉等規制法により規制を行うということになります。

 それから、延長の認可の処分決定にどのくらいの期間を要するのかという御質問がございました。

 この認可のための申請は、実は申請の期限を定めてございまして、四十年を迎える一年三カ月前から一年前までの間に申請をするということを求めてございます。認可の可否の判断は、この申請を受けまして、その後、四十年の運転期限までの間、すなわち一年余りの間に審査をして判断する、こういうことになるということでございます。

 それから、その判断の基準はどういうことなのかという御質問がございました。

 これは、四十年の延長認可の基準は、既に原子力規制委員会規則において定めてございます。延長期間中において想定される材料の劣化も加味いたしまして、それでも技術基準を満たすことを求めるということが基準でございます。

 そのためには対象機器の経年劣化の評価を行う必要がございますが、これに当たりましては、原子炉圧力容器の母材の部分など、通常の点検では確認しないような設備や部位についても詳細に確認をする特別点検というものを行っていただきまして、その結果も提出いただき、これを踏まえて判断していくということになります。

 以上でございます。

青木委員 ありがとうございます。

 仮に延長が認められた場合、その後の二十年におきまして国費など立地自治体への交付金等が考えられるわけですけれども、仮に二十年延長になった場合、投入される額というのはどの程度になるのでしょうか。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 電源立地地域対策交付金、こちらは、発電用施設の設置、運転の円滑化を目的といたしまして、基本的には、発電実績などに基づきまして算定された額を交付する仕組みとなってございます。

 委員の御指摘、お尋ねの件につきましては、今後二十年間の当該原子炉の発電実績等が現時点では不明でございますので、将来の交付額を算定することは困難であると思っております。

 なお、御参考までに申し上げますと、委員御指摘の七基分、今回お尋ねのありました七基分につきまして、過去の実績という点で申し上げますと、例えば平成二十二年度の発電電力量の実績をもとに算定をいたしました平成二十四年度の交付額について申し上げますと、七基合計で年間二十五億円程度という状況でございます。

青木委員 電力会社は廃炉費用というものを積み立てているというふうに承知はいたしておりますけれども、電力会社が今後廃炉を円滑に進められるようにするためには、やはりさまざまな環境整備が必要だというふうに思っております。

 また、交付金がなくなる立地自治体の地域経済に対する影響ですとか、また雇用の問題ですとか、やはり国としても考えていかなければならない点があろうかというふうに思っています。この辺の対策について、具体的にお考えはございますでしょうか。

多田政府参考人 御指摘のございました個別の原発の廃炉、これを事業者が円滑に進めていく上では、廃炉の判断に伴いまして一括で多額の財務的な損失が発生する、こういった点、あるいは、立地地域におけます雇用あるいは経済への影響など、さまざまな課題があると認識をいたしております。

 廃炉を円滑に進めるための環境整備につきましては、先月の原子力小委員会の場におきまして、財務、会計等の制度について、専門家による詳細な検討が必要である、こういうことになった次第でございます。

 また、交付金制度につきましても、これは私ども事務局の方から原子力小委員会の場に対しまして、多くの立地自治体においては、電源立地地域対策交付金、固定資産税収入など、原子力関連の歳入の割合が高い、限られた国の財源の中で、電源立地地域対策交付金の制度趣旨、これは発電用施設の設置、運転の円滑化ということでございますが、こうした制度の趣旨や現状をどう認識し、将来に向けたバランスのとれた展望をどう描くか、こういった論点を提示させていただきまして、御議論をいただいているところでございます。

 今申し上げましたとおり、原子力小委員会などの場で現在検討をいただいているところでございますので、現時点で何か具体的な対応策が決定しているわけではない状況でございます。

青木委員 ぜひ、廃炉が円滑に進められるように、国としても積極的な環境整備に取り組んでいただきたいというふうに考えております。

 最後の質問になりますけれども、再生可能エネルギーの電力の買い取り制度についてお伺いをいたします。

 御案内のとおり、この制度は、小規模事業者やまた個人が太陽や風力などでつくる電力を安定的に買い取ることを大手電力会社に義務づけた制度でございますが、大きな抜け道があり、電気の円滑な供給の確保に支障が生ずるときには接続を拒否できるとございました。国を信じて、銀行の融資を受け、設備投資に数億円もかけたが、わずか二年で買い取りの拒否に遭ったという農家の方のニュースも放送で拝見をいたしました。

 この買い取り制度について、どのような欠陥があり、今後どのような見通しでもって考えておられるのか、経産省の所見をお伺いしたいと思います。

木村政府参考人 再生可能エネルギーの最大限の導入でございますけれども、我が国にとって非常に重要な課題でございまして、まず、固定価格買い取り制度は、このための原動力として、やはり導入拡大に非常に大きく寄与しているということは基本認識としてございます。実際、平成二十四年の制度開始後、再生可能エネルギーの導入量、これはキロワットベースで見まして五割以上拡大をしているという実績がございます。

 他方、電力系統が受け入れられる再生可能エネルギーの接続の可能量、これに上限があるのではないかとか、あるいは、太陽光発電にシフトした導入が進んでいって、国民負担が将来的に上昇していくのではないか、そういった懸念が明らかになっているということは事実でございます。

 国民の御負担で支えられている制度でもございますので、こうした指摘にはやはり真摯に向き合っていく必要があるというふうには考えてございまして、固定価格買い取り制度のあり方につきましては、最大限の導入というのがあくまでも前提で、その上で、国民負担を抑制しつつ、費用対効果の高い導入というのを目指していく、そういった方向から、現在、新エネルギー小委員会で御議論をいただいているところでございます。年内を目途にできるだけ論点等について整理することを目指して、精力的に検討を進めてまいりたいと考えてございます。

青木委員 九州電力の再生エネルギー導入量は三百万キロワットということで、計画量の四分の一にすぎないと言われておりまして、まだまだ十分に余裕があるのではないかというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、原発依存のない、また、地球環境対策としても、地球の温暖化対策といたしましても、この再エネの役割は大変大きいというふうに考えております。ぜひ、民間の意欲の腰を折ることがないよう、今後とも取り組んでいただきたいということをお願い申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

吉野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十九分散会


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