衆議院

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第1号 平成26年4月3日(木曜日)

会議録本文へ
平成二十六年四月三日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

  内閣委員会

   委員長 柴山 昌彦君

   理事 関  芳弘君 理事 平  将明君

   理事 橘 慶一郎君 理事 西川 公也君

   理事 平井たくや君 理事 近藤 洋介君

   理事 松田  学君 理事 高木美智代君

      青山 周平君    大岡 敏孝君

      鬼木  誠君    勝俣 孝明君

      川田  隆君    小松  裕君

      新谷 正義君    田所 嘉徳君

      田中 英之君    高木 宏壽君

      豊田真由子君    中谷 真一君

      中山 展宏君    長島 忠美君

      根本 幸典君    福山  守君

      宮崎 謙介君    山田 美樹君

      吉川  赳君    後藤 祐一君

      若井 康彦君    遠藤  敬君

      杉田 水脈君    中丸  啓君

      輿水 恵一君    浜地 雅一君

      大熊 利昭君    赤嶺 政賢君

      村上 史好君

  厚生労働委員会

   理事 あべ 俊子君 理事 金子 恭之君

   理事 北村 茂男君 理事 とかしきなおみ君

   理事 丹羽 雄哉君 理事 山井 和則君

   理事 上野ひろし君 理事 古屋 範子君

      赤枝 恒雄君    今枝宗一郎君

      大串 正樹君    金子 恵美君

      神山 佐市君    小松  裕君

      古賀  篤君    白須賀貴樹君

      新谷 正義君    田中 英之君

      田畑 裕明君    高鳥 修一君

      高橋ひなこ君    豊田真由子君

      中川 俊直君    永山 文雄君

      船橋 利実君    細田 健一君

      堀内 詔子君    松本  純君

      三ッ林裕巳君    宮崎 政久君

      村井 英樹君    八木 哲也君

      山下 貴司君    中根 康浩君

      長妻  昭君    足立 康史君

      清水鴻一郎君    輿水 恵一君

      中島 克仁君    井坂 信彦君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       田村 憲久君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   内閣官房副長官      加藤 勝信君

   厚生労働大臣政務官    高鳥 修一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  中垣 英明君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  菱山  豊君

   政府参考人

   (内閣府日本学術会議事務局長)          田口 和也君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  原  徳壽君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  佐藤 敏信君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            今別府敏雄君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           石川 正樹君

   参考人

   (独立行政法人理化学研究所理事長)        野依 良治君

   内閣委員会専門員     室井 純子君

   厚生労働委員会専門員   中尾 淳子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 健康・医療戦略推進法案(内閣提出第二一号)

 独立行政法人日本医療研究開発機構法案(内閣提出第二二号)


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     ――――◇―――――

柴山委員長 これより内閣委員会厚生労働委員会連合審査会を開会いたします。

 先例によりまして、私が委員長の職務を行います。

 内閣提出、健康・医療戦略推進法案及び独立行政法人日本医療研究開発機構法案の両案を一括して議題といたします。

 両案の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付の資料をもって説明にかえさせていただきますので、御了承願います。

 これより質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤洋介君。

近藤(洋)委員 おはようございます。民主党の近藤洋介であります。

 本日は、健康・医療戦略推進法案及び関連法案について、内閣委員会、厚生労働委員会の連合審査であります。どうぞよろしくお願いいたします。

 戦後、我々は、世界で最も長生きする、長生きができる国を築いたわけであります。これはこれで大変すばらしいことであります。これからは、健康で長生きができる社会をつくる、これが課題なわけであります。人口構成が変わり、かつ、財政の制約、制約というよりも壁と言った方がいいかと思いますが、この壁が立ちはだかる中で、これをどう実現するか。

 我が国は国民皆保険という世界に誇る制度を持っておるわけでありますが、医療分野を、ただ単に税金や保険料に頼るコストセンターとだけ見るのではなくて、技術革新やイノベーションを進めることで世界最先端の医療を実現し、かつ、それによって雇用を生み出し、さらには外貨を稼いで、産業としても発展させる。近江商人の言葉じゃないですけれども、適切かどうか、売ってよし、買ってよし、世間よし、三方よしの産業としても医療分野を育てていくということが大事だ。

 この政策の方向性については、我々民主党政権下でも、最初に打ち立てた成長戦略の中で、グリーンイノベーション、エネルギー・環境分野、そしてライフイノベーション、この二つで日本を立て直すということで打ち出しをさせていただきました。現政権下における新たな日本再興戦略、ここで打ち立てておるこの方向感、大きな流れというのも、我々と流れを一にするものだ、こう受けとめさせていただいております。

 その上で、きょうは、この健康・医療戦略を進める上で非常に重要な土台、インフラともなる臨床、治験といった、特に臨床の分野についての議論で両大臣にお伺いをしていきたい、こう思うわけであります。

 委員長のお許しを得て資料も配付させていただいておりますが、まず最初に官房長官にお伺いをしたい、こう思うんです。

 我が国の生命科学領域における研究不正、いわゆる論文の捏造や改ざん、盗用等が大変増加をしているわけであります。このことは、国際的な信頼性にも大きく影響をしております。

 ごくごく最近では、STAP細胞の件がございました。この件については、また同僚議員の長妻議員がお伺いするかもしれないので省きますが、事件となったものについて言いますと、大手製薬メーカーのノバルティス社による高血圧治療剤の臨床研究でも大がかりなデータ不正が発覚し、これは、東京地検特捜部が同社の日本法人や大学を強制捜査するということまで発展をしておるわけであります。いずれにしろ、研究開発の段階、かつ、それだけではなくて、臨床という分野も含めてこうした問題が浮き彫りになっております。

 いわゆる日本版NIH構想、健康・医療戦略を進めるに当たって、こうした研究から、さらには臨床に至るまでの、物によっては不祥事、まだ調査中のものもございますが、というのは、やはりこういった構想を進める上で足元を揺るがす大きな問題と考えますが、まずは官房長官、大臣としてこうした問題についてどのように認識されているか、お答えいただけますか。

菅国務大臣 まさに健康長寿というのは、国民全体あるいは人類の夢であります。そうしたものを実現するために、私ども国政の場で全力を挙げるというのは、これは与野党を問わず、委員から御指摘がありましたけれども、当然のことだというふうに思っています。そういう中で、政府としては、この健康・医療戦略に基づいて、革新的な医療技術の実用化に向けて大胆で積極的な戦略を今進めているところであります。

 その取り組みの前提となる臨床研究の中で、今御指摘のありましたノバルティス社を初め、こうしたある意味で研究成果の信頼性を揺るがすような事件が起きているということは、極めて遺憾だというふうに思っています。

 こうした問題を受けて、政府として、不正事実の公開など、不正を事前に防止する取り組み、あるいは不正を働いた組織への管理責任の追及、さらに研究機関に対するモニタリング体制の強化などの対策を講じているところであります。また、こうした事件を契機として、厚生労働省において、きょう大臣が出席されていますけれども、立法措置を含めた再発防止の今検討をしているということを承知しております。

 我が国の臨床研究に対する信頼回復に向けて、しっかりとした対応をとることが必要だというふうに考えています。

近藤(洋)委員 続いて大臣にお伺いをします。

 今、官房長官からお話があったとおり、このノバルティスファーマ社の臨床研究の不正問題を受けて、厚生労働省において検討委員会を開催され、再発防止策を検討したと伺っております。

 今後、この検討委員会の結果を踏まえてどう対処する御計画なのか、また、そもそもなぜこのような問題が起きたのか、この最大の要因はどこにあると大臣は受けとめられているのか、お答えいただけますでしょうか。

田村国務大臣 おはようございます。

 今、委員がおっしゃられましたノバルティスファーマ社のディオバン、一般名バルサルタンという薬でありますけれども、高血圧治療薬であります。今般のこの案件を受けて、検討会を昨年の八月に設置いたしまして、いろいろな議論をしていただきました。

 まず、事実がどうであったかということ、実態解明までは至らなかったんですが、一定程度事実というものを確認させていただきながら、また、日本の臨床研究自体の構造上の問題も踏まえていろいろな議論をいただきました。

 中には、例えば倫理審査委員会の強化も必要であるというような御意見もいただきましたし、また研究責任者の方々の責務の明確化でありますとか教育や研修の重要性、やはりこのような改ざん等々の防止策はどうあるべきか、そして、データ自体の管理体制というものも大変重要である、いろいろな御議論をいただいたわけでありますが、やはり日本の国の臨床研究の質の確保と透明性の確保と被験者の保護、これが大変重要であるというような御意見の中で、今、ちょうど指針というものをつくり直しております。

 この指針の中にこういうものを盛り込んでいこうということと同時に、あわせて法制化をすべきではないかという御意見、さらには、法制化を進めると逆に臨床研究自体を阻害する可能性もある、両方の御意見がございましたので、この四月から、今月からでありますけれども、法制化をするかどうか、する場合にはどういう問題点があるか、やるのならばどういうところが重要かというような検討会を立ち上げて、ことしの秋をめどに結論を出して対応してまいりたいと考えております。

 当然のごとく、利益相反という問題、これは大きな問題、今回のことにも大きく絡む要因であろうというふうに思いますし、やはり企業のガバナンスの問題が大変大きい。

 実は、ノバルティスファーマというのは、また今も話題になっておるような問題を起こしておるわけでございまして、こういう問題でありますとか、ちょっと今回気になったのは、データ解析する人材が研究機関に余りいなかった、ですから、それをノバルティスファーマ社の社員にさせていたという問題がありまして、これは研究機関の質の問題もあるのかなと。

 こういうさまざまな問題があって今回このようなことが起こったというふうに考えておりますので、先ほど言いました、いろいろな法整備も含めて、再発防止、どうあるべきか、しっかりと議論をして結論を得てまいりたい、このように考えております。

近藤(洋)委員 ありがとうございます。

 秋までに何らかの方針をきちっと出す、こういう御答弁でございました。

 委員長のお許しを得た配付資料の最後のページなんですが、細かい字で恐縮ですが、各国の比較を出させていただいております。米国、英国、フランス、日本。結論から言うと、日本の場合は、いわゆる治験、薬の開発については、薬事法で相当厳しく、厳しくというかきちっとチェックをし、臨床データの品質管理が求められている。ところが、臨床研究については法的なものが整っていないというのが日本の仕組み。各国、それぞれでありますけれども、大概法的な措置がとられておる、ざくっと言うと、そういうことであります。

 これは、今大臣に御答弁いただいたように、全部がちがちにやれば全て済むものでもないというのは、研究の促進という意味から見ると両面あるわけでありますが、ただ、日本の現状が余りに不整備であることだけは課題としてあるということではないかと私も認識しておるわけですね。

 そこで、厚労大臣に引き続きお伺いしたいんですが、今回の事件を受けて、日本学術会議が三月二十七日に、我が国の研究者主導臨床試験に係る問題点と今後の対応策という提言をまとめております。配付資料の二ページ目に抜粋を書かせていただいておりますが、この提言には、国による臨床研究推進部門、仮称の設置ということを提言しておるわけであります。

 下線を引いておるところだけちょっと読ませていただきますけれども、国は、医薬品の臨床研究を推進するための組織を例えば独立行政法人医薬品医療機器総合機構のような既存の公的組織内に新たに整備してこれに充てる。その原資には、透明性を確保した上で、関連する製薬企業等からの民間資金の活用を図るべきである。さらに、臨床研究の公正さを担保し、研究データの信頼性を確保するため、米国の公正局の機能を想定した部門を、今回審議になる法案、構想中の独立行政法人日本医療研究開発機構の中に一部門として整備し、不正の監視及び防止に役立たせることが望まれる、こういうことが書いてあるんですね。

 今回のノバルティスファーマ社事件の一つの問題は、臨床研究の費用、寄附が製薬会社から出ていた、研究室がそれを取っていた、お手盛りでやっていた、まさにひもつきであった。これは、この問題の根源にあるわけですね。

 そこを遮断するために、まず、寄附というもの、民間のお金を一括してある部門に設けたらいいんじゃないかという提言が一つ、あと、公正監視の機関を新たな機構に設けたらいいんじゃないか。私は、これは一つの傾聴に値すべき提言ではないかと思いますが、厚生労働大臣、この提言についていかがですか。

田村国務大臣 今般の不正事案は、企業と研究者の関係という問題と、また、研究者自身の倫理観、透明性、こういう問題が両方とも介在していると思うんですね。

 今、お話をお聞きしていて、お金の流れというものをしっかりとチェックしていく、これは重要でありますが、そもそも、奨学寄附金、何でも使えるというような、お金の流れが非常に不透明であった。私は、そこのところをどう考えるかというのは、これからしっかり議論をしていかなければならないというふうに思います。

 そんな中で、日本学術会議みずからがこのような御提言を出していただいたということは、大変意義があるというふうに私は思うんですね。その上で、今言われたような臨床研究の不正、こういうものに対しての再発防止策でありますとか、またはどのような形で監督していくか、こういう問題というものは大変大きなところがあると思います。

 この独立行政法人日本医療研究開発機構の中にそういうものを入れるかどうかということに関しては、ちょっとこれは私の所管ではなくて、官房長官にお聞きをいただければありがたいというふうに思うわけでありますが、いずれにしましても、民間の企業、製薬企業からのお金と臨床研究のあり方、さらには、どのような形で監視するのか、防止をしていくのかというようなことに関しては、この防止策に関しましては、今言いました検討会が四月から立ち上がりますので、この中でしっかりと議論をいただきながら、どのような対応をしていくのか、これを検討させていただきたい、このように考えております。

近藤(洋)委員 大臣が今御答弁いただいたように、寄附の、お金の流れが極めて不透明だというのがやはり事の本質だと思うんですね。ここをきっちり遮断し、整理する。もちろん臨床には大変なお金がかかる、そこは事実です。それを全部税金で賄おうと思ったら大変であります。そこは製薬会社が出してもらう。だけれども、そこは一定の遮断をして使ってもらう。国のお金でいえば、ひもつき補助金じゃなく、一括交付金型にする。これが大事なんだろうと思うんですね。

 そこで、まず事務方にお伺いしたいんですが、本機構法案、新しい機構をつくる法案になっておるわけですが、この学術会議の提言を実現するためには、今の内容を本法案の法の枠の中で実現できるかどうか、お答えいただけますか。

中垣政府参考人 今、委員が御引用されました、日本学術会議の提言の中で引用されています米国の研究公正局というものは、連邦保健福祉省の公衆衛生庁の一部局として、同局が配分する研究費により実施される研究についての研究不正対策を担っている部局ということで承知いたしております。

 また、この研究公正局による調査は、研究不正の申し立てを端緒といたしまして、第一義的には、研究不正を行ったとされる研究者の所属機関が行う調査活動のチェックを基本とし、重大な事案等に限りまして研究公正局みずからが調査を行うものと聞いております。

 今回提案させていただいております日本医療研究開発機構におきましても、みずからが配分する研究費によりまして実施される研究に対しましては、専門の部署を置いて、公正かつ適正な実施の確保を図ってまいりたいと考えておるところでございます。

 また、もう一つ御指摘になりました民間資金の問題でございますけれども、民間の資金を原資として機構が研究費の配分を行うということは、仕組みとしては不可能ではありませんけれども、ただ、その場合には、関係者のコンセンサスでありますとか、あるいは機構における人員の確保、人材の確保というのが必要でございまして、民間資金によります臨床研究推進部門というのを機構に置くことは、現時点では考えていないところでございます。

近藤(洋)委員 現時点では考えていないけれども、法律の枠組み上はできる、こういうことでよろしゅうございますでしょうか。

 要するに、できるということの中で、そこで、官房長官、ぜひお答えいただきたいと思うんです。

 やはり、せっかく新たな機構をつくるのであれば、まさにこの配付資料の一ページ目に、これは内閣官房と厚労省につくってもらった資料ですが、この新たな日本医療研究開発機構は、臨床研究、治験、それぞれについてお金を出します、国の予算を出します、機構が、自分が出したお金の部分の事業については不正をチェックすることはできます、こういうことのポンチ絵なんですね。こういう紙をつくってもらいまして、ここでノウハウを蓄積できます、こういうことも事務方は思いを持っているようであります。

 だとするなら、やはり、さらにもう一歩進めて、民間の出されたお金もこの機構でプールをして、そこできちんといわゆるクリーニングをして出す、その上で人材も育てていく。

 先ほど厚労大臣から、解析する人材もなかなかいないんです、不足しているんですというお話がございました。さまざまな人材が必要だと思うんです。そういう人材育成の資金にも充てる。機構みずからが育ててもいいですし、それはちょっとこれからまたナショナルセンターの議論をさせてもらおうと思うんですけれども、いろいろ国の体制整備に役立てるということがあってもいいのではないか、こう思うわけであります。

 この新しい機構を、不正防止のチェックをする機能も含めて、さまざまなことを研究するということはあってもいいのではないかと思うんですが、官房長官、所管大臣としていかがでしょうか。

菅国務大臣 今、政府委員から申し上げましたけれども、みずからの配分する研究費については、専門部署をしっかりつくらせてもらいたいというふうに思います。

 それと同時に、先ほど厚労大臣からの答弁にもありましたけれども、現在、この問題を含めて、厚生労働省で立法措置も含めた対応策を検討しているということでありますから、そこはしっかり連携しながら、やはり不正というんですか、このことによって信頼がなくなってきていますから、臨床研究について、信頼回復というのは急がなきゃならないことでありますので、二度と再びこうしたことがないようにしっかり対応していきたいと思っています。

近藤(洋)委員 ぜひ官房長官、新しい機構がファンディングの機能だけのための機構だったら意味がない、私はこう思っているんです。お財布をただくっつけただけというのであれば、この新たな機構をつくった意味がどこまであるのか、こう言われると思うので、やはりきちっとしたそういうチェック、お金を配った先の中身もチェックする、さらにはそういう不正行為についてもチェックをする。

 今、臨床の不正行為についてのデータを保管する義務もない、こういう状況なわけですね。それは厚労省において検討するということでありますけれども、それとあわせて、この医療戦略の中で新たな機構ができるわけですから、一歩踏み出すわけですから、どういう役割が果たせるか前向きに考えていただきたい、こう思うわけであります。

 続いてお伺いしますが、配付資料の四ページ目でありますけれども、医療分野の研究開発に関する総合戦略という資料、抜粋をさせていただいています。これは内閣官房の調査会が一月二十二日にまとめたペーパーでありますけれども、このペーパーは、結論的に言うと、この閣法が通れば、政府がつくるであろう、医療戦略にかかわる、閣議決定するであろう基本計画の土台になる、もとになる紙であるという認識でよろしいでしょうか。

菱山政府参考人 御指摘のように、健康・医療戦略推進本部に対しまして専門的、技術的助言を行います医療分野の研究開発に関する専門調査会において、本年の一月二十二日に、その総合戦略の報告書が取りまとめられたところでございます。法案が成立いたしましたら、法定の健康・医療戦略及び医療分野研究開発推進計画を策定することになっておりますので、その際には本報告書の内容を適切に反映させていただきたいというふうに考えております。

近藤(洋)委員 ですから、これは、恐らく政府のこの本部の土台になる大事なペーパーだ、ただの調査会の、研究調査会はいろいろ政府内にありますけれども、ただのと言うと大変失礼ですけれども、レポートではないという位置づけだ、こういう認識でこの紙を見ていきたい、こう思うわけであります。

 そこで、まず厚労大臣、この中で、いわゆる臨床研究、この三ページ目にも書いていますが、要するに、国立がんセンターであるとか成育医療研究センター、そういったナショナルセンターも含めて、あとは中核の大学病院も含めて、それぞれの中核大学病院とナショナルセンターがきちんと臨床研究として連携をしているのかという問題点が指摘をされているかと思うんです。ぜひ、医療機関同士の連携がさらに必要だと思いますが、それについてお答えをいただきたいということが一つ。

 あともう一つ、官房長官、あわせて伺います。この報告書には、国際水準の質の高い臨床研究、治験が確実に実施される仕組みが求められている、特に、我が国の研究開発におけるナショナルセンターのあり方をさらに検討する必要がある。ナショナルセンターというのは、がんセンターであるとか、そういった六センターでありますけれども、大学病院とはまた違ったいわゆる国立のナショナルセンターでありますが、あり方の検討をさらに深めるべきということをこの総合戦略に書いています。

 こちらの部分については、厚労省所管のナショナルセンターでありますが、あえてこの部分のあり方論については担当大臣としての官房長官に、それぞれお答えをいただきたい、こう思います。

田村国務大臣 日本の国で健康長寿社会を実現していく、その中には世界最先端の医療が受けられるようになる、これは大変大きなことだと思います。臨床研究、そして医師主導治験といいますか、それをしっかりやれる、それも国際水準のものが受けられるような体制をとっていかなきゃなりません。

 あわせて、ファースト・イン・ヒューマン、世界に先駆けて初めてその薬物を使って治験等々が行われる、こういう体制を組んでいかなきゃならぬわけでありまして、平成二十三年から早期・探索的臨床試験拠点というものを五病院、これは整備しました。その後、二十四年、二十五年と、臨床研究中核病院という形で、十病院、これをしたわけでありまして、こういうところを中心に大規模な連携をとって進めてまいらなきゃいけないと思っております。

 ちょうど今般、医療介護総合確保推進法というものを提出させていただいております。この中に、臨床研究中核病院、法的な位置づけもさせていただいたわけでありまして、委員がおっしゃられますその意義というものをしっかり我々も認識しながら、体制を整えてまいりたい、このように考えております。

菅国務大臣 臨床研究において中核的な役割を担う医療機関における環境の整備を図っていくことは極めて重要だというふうに思っていますし、今回の健康・医療推進法の一つにも指定をしているわけであります。そういう意味合いからも、委員から御指摘がありましたナショナルセンターについては、そこは前向きに考えていきたいと思います。

近藤(洋)委員 最後に、ぜひ官房長官、ですから、そうした臨床一般の話、これは非常に大事なんです。やはり、大学の研究室での研究を実際に使って、正しいデータを集めて、解析をして、そして実用化する。実用化というのでしょうか、実際市場に出すまでの、まさにそこの世界が日本は一番弱い、こう言われているところでありまして、そのために中核的な臨床を担う病院が必要であり、また、ナショナルセンターがやはりきちんと役割を果たすことは非常に大事だ。そのためには、やはり人材も必要である。また、国民の皆さんの理解も必要だと思うんですね。要するに、これは、一つ間違うと、誤解を恐れず言うと、自分はモルモットと思われては困るわけでありまして、そうではない、そのために国民的な理解も必要な世界だと思うんですね。

 この臨床にかかわる体制をきちんと整備するということは非常に大事で、これがうまくいくかいかないかが、この健康・医療戦略が、実際にファンディング、資金は配分したけれども、物になるかどうかの肝になる、僕はこう思っているんです。

 最後にお伺いをしますが、まさにもう一度伺いますけれども、この臨床分野の環境整備について、残念ながらこの法案には明記されていないんですけれども、ある程度年限を区切って体制を整備するといった旨のことをきっちり示すべきではないか、こう考えるのですが、いかがでしょうか。そのことを伺って、私の質問を終わります。

柴山委員長 それでは、質疑時間が終了しておりますので、短く御答弁を願います。

菅国務大臣 まさにこの法案の目的がそうですから、基礎研究、臨床研究、そして実用化、こうしたものをシームレスに行うことというのが一つの大きな目標になっていますので、そうしたことは、当然、先ほども申し上げましたけれども、前向きに考えていきたいというふうに思います。

 以上です。

近藤(洋)委員 終わります。

柴山委員長 次に、杉田水脈さん。

杉田委員 日本維新の会の杉田水脈です。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 まず初めに、安倍政権の成長戦略の柱の一つである医療分野の研究開発支援のための機関、いわゆる日本版のNIH創設の構想については、私ども維新の会も非常に期待をしているところなんです。

 まず、今さまざまある研究支援体制を一元化するということで、これから効率的にもっと医療分野の強化が図られていくのではないかと思われるんですけれども、この具体的なビジョン、そして、これができることによってどのようなメリットがあるのか、それを最初にお伺いしたいと思います。

菅国務大臣 これまで、我が国が実施する医療分野の研究開発というのは、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、それぞれの省及びその所管をする独立行政法人等についてそれぞれ支援をしていたために、基礎から実用化までの切れ目のない支援というのが不十分であって、すぐれた基礎研究のシーズが必ずしも実用化と結びついていない、また時間がかかるというのが現状であります。

 そうした中、今回、内閣に司令塔となる健康・医療戦略推進本部を設置し、そのもとに国が研究費の配分機能を集約する日本医療研究開発機構を設置し、今までの問題でありました基礎から実用化までの切れ目のない研究開発、戦略が推進できるようにしたいという思いであります。

 メリットでありますけれども、こうしたことを集約することによって、研究者にとっては、研究費の配分がワンストップサービス化され、基礎から実用化までの切れ目のない支援や申請等に係る事務負担も大幅に軽減されると思います。さらに、専門的な知見を有する者によって、研究支援や知的財産の取得、さらには企業とのマッチング等の実用化に必要な支援、こうしたものが受けられるというふうに考えています。

 そして、我が国においては、医薬品だとか医療機器というのは二兆円を超える輸入超でもありますので、こうしたさまざまな問題から、何とかここはしっかりと対応していきたいと思っています。

杉田委員 ありがとうございます。

 今現在、基礎分野が文部科学省、臨床研究は厚生労働省、それから、これを産業化していくところは経済産業省という形で、所管が分かれています。まさしく縦割りという形になっているんですけれども、これを一元化していく。特に、予算の一元化というのは必要不可欠だというふうに考えておるんですけれども、それは可能なんでしょうか。

 実際に、これを一元化して効率化していくための具体策、そして、今現在そのように省庁でばらばらに分かれている部分を、例えば人員配置なんかも含めてどのように統合していくか、そのような考えがあるのかどうかをお尋ねしたいと思います。

菱山政府参考人 健康・医療戦略推進法案におきましては、内閣に健康・医療戦略推進本部を設置いたします。その法律案第二十一条第三号に掲げます資源配分方針等に基づきまして、この推進本部は総合的に予算要求配分調整というのを行うこととしております。各省は、その方針に基づきまして所要の予算要求を行うということになっております。その上で各省が、新しく設立されます日本医療研究開発機構に対しまして補助金等を交付するということで、機構におきまして各省の補助金等を集約いたします。そして、機構が研究費等を一体的に配分することで、国の戦略に基づき、基礎研究から実用化まで切れ目なく医療分野の研究開発を推進するということになっております。

 このように、まず、総合的な予算要求配分調整を行う健康・医療戦略推進本部、それから研究費の配分機能等が集約されます日本医療研究開発機構が一体となりまして、医療分野の研究開発を戦略的に推進してまいりたいというように考えております。

 それから、機構の具体的な人員とか組織につきましては、法律の成立後、理事長となるべき方がそのあり方について検討して、必要な体制の確保を図るということになっております。

杉田委員 各省から補助金という形でこの独立行政法人の方に出して、そこの中で一元化して予算を執行していくというような御答弁をいただいたんですけれども、これは使い勝手が悪いとか、そういうふうなことはないんでしょうか。

菱山政府参考人 現在、今先生が御指摘のように、研究者の方たちから、ある段階で文科省から研究費を獲得した方が、次いで、フェーズが進んで厚労省に行って研究費をいただこうといたしますと、例えばの話でございますが、文科省では使えた経費が厚労省では使えない、そんなような例がございますので、そういったことにつきましては、この機構におきましてお金の使い方などを統一的にする、そういったことをしたり、あるいは、今申し上げましたように、あっちの役所に行ったり、こっちの役所に行ったりするのではなくて、ワンストップサービスができるような形にしたいというふうに思っております。

杉田委員 わかりました。どうもありがとうございます。

 国立がん研究センターの堀田理事長が「「日本版NIH」構想に向けて」というような資料をまとめてくださっているんですが、その中に、今現在、さまざまな研究機関で医療とかライフサイエンスの研究が行われていて、先ほども私、各省に分かれているということを指摘させていただいたんですが、すごい数の独立行政法人があるんですよ。

 では、今後、この中で、新しい独法ができることによって、どのようにこれが廃止されたり、統合されたりとかいう形になるんでしょうかという質問をしようと思ったんですが、この議論は今後の独立行政法人改革の中でということで、今回はこれではなくて、今現在もこういうふうにさまざまな医療関係の独立行政法人があるんですね。この既存の独立行政法人と今回創設される新しい独立行政法人、日本医療研究開発機構なんですけれども、どのようにこれとの役割分担がなされるのか、すみ分けをどのように行うのかということについてお尋ねしたいと思います。

菱山政府参考人 日本医療研究開発機構は、これまで各省及びそれらの所管する今先生が御指摘された独立行政法人などが行ってきました医療分野の研究開発のうち、それぞれの独立行政法人がみずから実施します、いわゆるインハウス研究というものと、それから研究者の自由な発想によって行うボトムアップ型の研究を助成いたします文科省の科学研究費助成事業、こういったものを除いた事業を全てこの機構に集約して、研究費の配分、研究管理・支援等を一体的に行うということになっております。

 今先生のお示しした図でいきますと、こういった大学病院等に対する助成、臨床研究に関する助成につきましては、この法人から補助あるいは委託、そういった形で研究を進めるということになります。

柴山委員長 杉田さん、理事会で了承していない資料はお示しできませんので、御注意願います。

杉田委員 済みませんでした。

 こういうふうな形でたくさん独法があるということをちょっと皆さんにお示ししたかったということで持ってきただけなんですけれども、やはりこういったことの効率化ということも今後考えていかなければいけない。当然、独立行政法人改革の中で議論をしていくことだと思うんですけれども、医療分野が効率化していくに当たって、そういったことも必要不可欠だと専門家の方が指摘していらっしゃるという点がありますので、今後、このあたりもきちっと考えていっていただきたいというふうに思います。

 それでは、次の質問に移ります。

 山中教授に代表される基礎研究レベルというのは、日本は非常に高いレベルがあるんですけれども、この研究なんですが、例えば、大学の研究成果が企業と連携して製品化されるまでに、日本は特に時間がかかっている。ほかの国に比べて、そこの部分に無駄に時間がかかってしまうというようなところが問題点として挙げられると思うんです。

 今後、新しい独立行政法人もできてくるわけですから、研究が製品化されるまでのそういうところの時間も短縮されて効率化が見込まれると思うんですけれども、新しい独法をつくってという今回のこの改革において、どのような効果をもたらすと考えていらっしゃるか、お尋ねしたいと思います。

菅国務大臣 委員御指摘の点が今非常に問題になっていまして、ここを解決するために今回この法案を出させていただいているというのも、大きな理由の一つであります。

 そういう中で、先ほど来議論がありますけれども、この日本医療研究開発機構においては、日本の弱みでありました点を改善するために、プログラムディレクターの目ききを生かした基礎から実用化まで一貫した研究マネジメント、さらには、知財の専門家による知財管理、知財取得戦略の立案支援や臨床研究をサポートする専門のスタッフ、こうした専門人材というものを配置して研究を支援する。

 こうしたことによって、基礎から実用化まで切れ目のない研究が可能になり、医療分野の研究開発が戦略的、効率的に推進されていくようになるだろう、このように思っていますので、新たなことについて対応したいと思っています。

杉田委員 今、官房長官の御答弁の中で人材確保の話が出ましたので、ちょっと質問の順序が前後するんですけれども、レベルの高い人材確保についてお尋ねをしたいと思います。

 先ほどの官房長官の御答弁の中にもプログラムディレクターというのが出てきたんですけれども、プログラムオフィサー、プログラムディレクターというものの存在が欠かせないというようなことが、この前の総合科学技術会議の中でも、こういった制度をきちっとしていかなければならないというようなことが出てきております。

 例えばプログラムオフィサーなんですけれども、研究課題管理者ということで、継続的にきめ細かく研究の動向を把握する中心人物というふうな定義づけがなされるかと思うんです。

 では、一体、どういった方がこのプログラムオフィサーになられるのかというと、自然科学系の博士号を持っており、当然、御自分が担当していらっしゃるプログラム、研究分野の高度な専門知識を有していること、それから、そこで一定の期間、研究をしたという経験があること、それに加えて、高度な判断力、皆さんと議論をする能力、それからもう一つなんですけれども、これも難しいと思うんですが、広い人的ネットワークを持っていることが条件とされるというふうになっておるんです。

 研究者の方というのは、研究の分野にはすぐれていらっしゃったとしても、人と議論をしていく力だとか、ましてや広い人的ネットワークを持っていらっしゃる方というのは、これだけのものを全て兼ね備えた方というのはなかなかいないんじゃないかなというふうに思うんです。

 ただ、本当に、レベルの高い人材確保というのが一つの肝であると思うんですけれども、全体的にバランスのとれた高度な能力、研究分野だけではなくて、専門知識だけではなくて、高度な能力を有している、レベルの高い人材確保を一体どのように行っていくのか、具体的な方法を教えていただきたいと思います。

菱山政府参考人 そういったさまざまな能力を持っている方というのは、見つけるのが大変難しいというのは私どもも存じております。

 ただ、最近、専門だけではなくて、幅広くマネジメント能力を持つようなことが必要だというふうに言われておりまして、そういった方がだんだん出てきております。そういった方をこの法人に、機構に結集いたしますとともに、それから、この機構のマネジメントをしていただく中で経験を積んでいただいて、その層を厚くしていこうというふうに考えております。

杉田委員 具体的な方法ということを質問したんですが、いまいち具体性に欠ける答弁だったと思うんです。

 ここに来てから研さんを積んでいかれるんですか。

菱山政府参考人 失礼いたしました。

 既にそういった経験を持っている方もいらっしゃいますので、先生が御指摘いただいたような能力、それから今までの経験を持った方がいらっしゃいますので、そういった方に結集していただくのが一つ。

 それから、まだそういった方の数も少ないので、さらに経験を積んでいただくということも考えております。

杉田委員 そういった方に結集していただくという御答弁だったんですが、どうやって結集していただくのかというのをお聞きしているんですけれども。

菱山政府参考人 研究のプロジェクトでマネジメントをしている方が既にいらっしゃいます。そういった方にこちらに来ていただこうというふうに考えております。

 既に各省のプロジェクトなどでもマネジメントを担当している方がいらっしゃいますので、まずは、そういった方にこの法人が進めるプロジェクトを担当していただくということが適切ではないかというふうに考えております。

杉田委員 今、さまざまな機関で既にそういうマネジャー的、リーダー的なことをしていらっしゃる方を発掘してくるというような御答弁だったかと思うんですが、各大学に出向いていったりとか研究機関に出向いていったりとか具体的にしていって、誰がそういう任務を担うのか。それから、誰が、この人がそういう能力があるというのを判断する形になるんでしょうか。

菱山政府参考人 まさに、この法人の職員は、そういったことを見出す力がある方にまず来ていただくということがあります。そういった方が各大学や研究機関の情報を集めまして、各大学の先生方、あるいは研究所でそういったマネジメントをしているような方、そういった方々を集めていくということになるのではないかと思います。

 いずれにしても、責任といたしましては、当然ながら今度の法人の理事長がそういった人事の責任を持つというふうに考えております。

杉田委員 この法案が通ってしまえばもうこの独法ができてしまうわけですから、具体的にどのように人材集めをするのかということをしっかり持っていないと、幾らこういう高度な人材を集めてきますというようなことを言っても、絵に描いた餅になってしまうのではないかというふうなことを思いましたので、ちょっとそこのところを具体的にということでお聞きさせていただきました。その部分が、本当にきちっとした高度な方が集まるようなことを努力していっていただきたいなというふうに思います。

 では、ちょっと順序が逆になってしまったんですけれども、予算のことについてお尋ねしたいと思います。

 先ほどから申し上げています基礎研究の分野なんですけれども、日本は研究レベルが非常に高いということなんですけれども、なかなかこれは出口の見えにくい研究だと思うんですね。一つのプロジェクトがあっても、それが成果を上げるまで非常に時間がかかってしまったり、途中で支援が打ち切られたりするようなこともあります。そこでいろいろな基礎分野を研究していらっしゃる方というのは、常にそういうことに不安を抱きながら研究をしていらっしゃるというふうにお聞きしています。

 ですので、さまざまな研究分野があると思いますが、研究分野によって予算措置の偏りが出ないようにきちっとしていただきたいというふうに研究者の方々は切に望んでいらっしゃると思うんですけれども、大臣はどのように考えていらっしゃいますか。

菅国務大臣 まず、今回、機構に集約される、そして配分される予算というのは、国が定めた戦略に基づくトップダウンの研究を行うために、研究者や研究機関に配分する予算であります。

 一方、将来における学術的な知見だとかイノベーションの芽というのは、ここは極めて大事だというふうに思っています。

 やはり、研究者の方が自由な発想で自由な研究、こうしたことができる環境を整えていくこと、ここは、そういう意味の重要性というのは、政府は理解をしておりまして、このための文部科学省の科学研究費助成事業、こういうものについては従来の仕組みをそのまま維持いたしております。

 いずれにしろ、ここで集約されたものと、いわゆる基礎研究の自由な研究費というのは、これはしっかり分けて考えていきたいと思っていますので、研究者の皆さんの基礎研究に支障を来すようなことはないということは申し上げたいと思います。

杉田委員 基礎研究の分野というのは、今いろいろな話題があるんですけれども、これは日本が本当に世界に誇れる分野じゃないかというふうに思っておりますので、どうか、研究者の方々が、そういう予算などの心配をしないで、ずっと研究をし続けていけるような環境というのをお願いしたいというふうに思います。

 もう一点、予算の確保についてお尋ねしたいんです。

 今は、研究分野とか、おのおのの研究に偏りのないような形で予算確保をお願いしたいということだったんですけれども、先ほども言いました、今度新しくできますこの独立行政法人に集約してきて予算を確保するということなんですけれども、この新たにできる独立行政法人の長期展望、そこにどのようにずっと予算を確保し続けるのかといったことについて、お尋ねをしたいと思います。

菅国務大臣 今回のこの医療研究開発については、中期的な方針、これはおおむね五年を考えておりますけれども、ここに定めた医療分野研究開発推進計画に基づいて、戦略的に推進していくための予算確保を行ってまいります。

 平成二十六年度予算において、日本医療研究開発機構の設立に先立って、同機構への集約対象となる予算としては、対前年比四割増の一千四百億円を確保いたしております。

 こうした中で、やはり中長期的な観点に立ってしっかり対応していきたいと思います。

杉田委員 せっかくできる新法人なわけですから、途中で予算がとまってしまうというようなことがないように、なかなか先が見えにくいというところがありますけれども、きちっと予算確保をして、日本のその研究がとまってしまわないような形で、支援がとまってしまわないような形でお願いをしたいと思います。

 それでは、次の質問なんですけれども、私たち日本維新の会なんかでも常々思っていることなんですけれども、日本では大学や研究機関というのが首都圏に集中しています。どうしても中央にないと心配だというような日本人のメンタリティーがあるのかもしれないんですけれども、いざ世界に目を向けてみると、研究機関とか、そういう研究で著名な大学というのは地方都市にある場合が多いんですね。

 アメリカのシリコンバレーなんかもそうなんですけれども、英国のケンブリッジ大学とかオックスフォード大学とかもそうですし、割と地方都市にそういう研究所があって、必ずしも首都に集中しなければいけないというようなことは、ほかの国では見られないと思うんですけれども、この新機構、どこに設置される予定なんでしょうか。

中垣政府参考人 日本医療研究開発機構の本部機能でございますけれども、独立行政法人日本医療研究開発機構法第四条におきまして、「機構は、主たる事務所を東京都に置く。」というふうに規定されておりますので、東京ということでございます。

杉田委員 そうなんです。もう最初から、法案の中に東京に置くということが規定されているんですよ。これはどうしてなんでしょうか。

 例えば、今回、特区が指定されたことが数日前の新聞とかにも載りまして、私の地元は兵庫なんですけれども、関西圏のところで再生医療とかの拠点整備に期待ができる、そういう新聞報道もなされたわけですよ。

 では、この新しい研究機構、独立法人を特区に持っていく、関西に持っていこうという発想があっても私はいいんじゃないかと思う。何も東京にないと研究ができないということはあり得ないと思いますし、そういうふうなことを考えて、最初から法案の中に東京に設置するというのを書き入れるのは、私はそこのところに非常に疑問を感じるんですが、このあたり、どうして最初からそこを東京と限定してしまうんでしょうか。

菅国務大臣 今回、スタートするに当たって、いわゆる人材の確保だとかさまざまな点を考えた中で東京という形にさせていただきました。もちろん、関西、特に大阪にはこうした医薬品の産業が多くあり、また研究機関もあるということは私も承知いたしておりますので、そうした機能はこれからもしっかり残して、支障を来すことがないように配慮をする中でこのように対応させていただきました。

 国家戦略特区では、まさに地方の代表である養父市というものも指定させていただきました。

杉田委員 ちょっと違う議論になってくるかもしれませんが、今、とにかく、さまざまな機関とかそういったものが東京に一極集中しているという問題意識、これは与党、野党問わず共通の問題意識じゃないかと思うんですね。

 与党の方が提唱しております国土強靱化というものも、そもそもは、一極集中している機能をもっと地方に分散させて、例えば今東京に大地震が起こってしまって全部なくなってしまうと、それでもう日本の機能はとまってしまうんじゃないかという問題意識から出てきているのではないかと私は思いますので、最初から法案の中に東京に設置するというのは、私は本当にこの研究機関が東京にある必要はないと思いますし、関西でも九州でも北海道でもできるんじゃないかと思うんですね。

 新しくできるところから、そういう集中機能を分散させていくというようなことが検討されていってもいいんじゃないかと思っております。これは今後さまざまなことについて言えることだと思いますので、最初から東京というのはどうかというようなことの問題意識を皆さんにも持っていただきたいと思います。

 最後の質問になります。

 医療分野に国境はないと言われているように、今、さまざまな日本の高度な医療について、首相がみずから東南アジアや中近東に売り込みを行ったりとかしておるんですけれども、この医療の国際展開、医療のグローバル化について、どのような展望を持っていらっしゃるのか、これをお尋ねしたいと思います。

中垣政府参考人 委員御指摘の医療の国際展開は、新興国の医療の発展に貢献しつつ、再生医療等、我が国の医療技術、サービスが発展する裾野を広げる成長戦略の重要な柱の一つと考えております。

 具体的には、相手国の実情に応じまして、これまで外国でしか受けることのできなかった高度な医療サービスが自国内で受けられるようにするということで、日本式の医療拠点を設立するでありますとか、それから医療人材の育成事業でありますとか、さらには保険制度の構築を支援する、そんなことが考えられるのではないかと思っております。

 昨年の四月に、医療技術、サービスの国際展開を支援するために、医療関係者でありますとか医療関係企業が集まって設立されました一般社団法人メディカル・エクセレンス・ジャパンというものがございますが、これを支援するとともに、関係府省が連携して取り組むために、昨年の七月に健康・医療戦略推進本部のもとに医療国際展開タスクフォースというものを設置したところでございます。

 具体的な成果といたしましては、例えば、カンボジアで救急病院の設立を初めとする案件の組成等が今進展しつつございます。

 今後とも、医療の国際展開を着実に推進いたしまして、新興国の医療の発展に貢献するとともに、日本の医療技術、サービスの高度化を実現してまいりたいと考えております。

杉田委員 今後は、医療で日本が世界に貢献をするというような方向性で、しっかりとこの高度な医療を世界に広めていくことも視野に置いていっていただきたいというふうに、そこの部分も私は非常に期待しておりますので、よろしくお願いいたします。

 以上で私の質問を終わります。きょうはどうもありがとうございました。

柴山委員長 次に、清水鴻一郎君。

清水(鴻)委員 日本維新の会の清水鴻一郎です。

 きょうは、この新しい法案に質問させていただく機会を与えていただいて、また、菅官房長官そして田村厚生労働大臣に御質問させていただく機会を与えていただきましたことをまずお礼を申し上げて、質問に入らせていただきたいと思います。

 やはりこの法案に対しては、私の友達なんかも、学者でずっとやっている人がいるんですけれども、大変期待は大きいです。今までとは違って、一元的に予算が執行してもらえるということに対しては、すごくすばらしいなということであります。

 ただ、本会議でも質問があったので少し重複するところはあるんですけれども、仕組みを見ていたり、お役所からもらったこの説明あるいはポンチ絵とかを見ていても、総合科学技術会議があります、これは五年に一遍ですか、基本方針を決めて、そして毎年チェックをしながら日本の科学技術の基本的な政策を決めていくということで、これはまた総理が本部長で、官房長官も入っておられるという形のものです。

 今度、このポンチ絵を、もらったものですけれども、この参考資料の六ページなんかにあるのでは、その上に、医療分野の研究開発ということで、健康・医療戦略推進本部が今回乗っかっている。これは総合技術会議のいわば下というか上というか、その中に包含されているというふうにとるのか、それとも、これはばんと切り取って、これはもう別のもので、ここは特別大事だから、いわば総合科学技術会議とは切り離した形で運営していくというふうな理解でいいのか。

 その相互の関係がしっかりしないと、内閣官房の中に医療分野の戦略室とかいうのもあるわけですね。そうすると、同じ、総理がいらっしゃって官房長官がいらっしゃったら、そこを強化すれば、ここをわざわざ切り取って、また独法もつくってということになると、ある意味で屋上屋を重ねないのかなという点。それはそうではなくて推進力になるというところを、もう一度だけ説明していただきたいと思います。

    〔柴山委員長退席、関委員長代理着席〕

菅国務大臣 委員は、医療関係分野については極めてすばらしい知識経験の上でこれを御質問されているんだろうというふうに思っています。

 総合科学技術会議は、科学技術そしてイノベーション政策全体の推進のための司令塔というふうに考えています。そして一方、今回の健康・医療戦略推進本部は、医療分野の研究開発に関する総合調整を行いたいというふうに思います。

 なぜここが、総合科学技術会議とそこが抜けるような形になったかということでありますけれども、これについては、まず、医療分野の研究開発というものを戦略的に推進することで世界最高水準の医療を実現したい。現に、現在は二兆二千億円の輸入超過となっています健康・医療産業を戦略産業として育てていく重要性というのはあるだろうということであります。

 そしてまた、医療分野の研究開発というのは、ほかの研究開発と違う部分、例えばこれは人を対象にしておりまして、被験者の健康に悪影響を及ぼし得る試験も伴い得る臨床研究が必要だということ。あるいは、薬事法に基づく承認審査など、他の研究分野にない過程というものを必ず通らなきゃならないという特殊性がある。

 そういう考え方から、総合科学技術会議と基本的な整合性を図りながら、この医療分野の重要性、特殊性、そうしたものを踏まえた形の中で、今回、健康・医療戦略推進本部、これを策定させていただいて、健康・医療をさらに推進していこうという考え方であります。

 いずれにしろ、この二つの機能でありますけれども、安倍内閣の主要政策を実現するために、相互に緊密に連携しながら、互いに協力して取り組んでいきたい、こういうふうに思います。

清水(鴻)委員 確かに今まで、私が大学におりましたときも、基礎研究、基礎医学なら基礎医学の先生は本当に、臨床応用ということは全く考えずにそこを真っすぐ行く、臨床の方は臨床で行くということで、もちろん基礎というのは基本的にそういうもので、それがある点で臨床にうまく結びつくときもあるし、そうでないこともあるということなんだと思うんです。

 確かにそういう傾向はあって、この間を結びつけるようなものがないのかなというふうに思って、僕も臨床薬理というものを少し勉強したり、お薬も、お薬の研究だけあるんですけれども、そこから臨床に応用するのが非常に難しい。シカゴ大学にいたときは、臨床薬理教室に行きまして、脳医学関係の薬がそこから臨床応用ができるように何とかならないのかなというふうに思って取り組んだこともあります。

 そういうことも踏まえて、今回、非常に機能的にそれが動くということに対しては、大変期待はしているわけであります。

 ただ、今回、その中で非常に重要になってくるのは、今度つくる独法の開発推進計画なんかで見ましても、まず独法をつくって、そしてそこは、医療分野の研究開発あるいはその環境整備、その成果を普及して活用を促進する。それから医療分野の研究開発、その環境整備を助成するということ、あとはその附帯業務をするということです。

 要するに、今度の、日本版NIHと言っていいかどうかわかりませんけれども、のところは、アメリカのNIHみたいに、ある程度自前でやる、二十七の研究所を持って、自前で研究もやるし、国策的なことも自前でやるということについて、日本は日本の独特の独法もありますし、そういうものを使いながら、いわばそこは、お金を配ると言うとちょっと何かあれですけれども、どちらかというと、そういう、研究費を配ることが主目的になる独法というふうに考えていいわけですか。

菱山政府参考人 今度設立を考えております日本医療研究開発機構につきましては、先生御指摘のとおり、研究費を配分することを主な業務とする法人ということでございます。

清水(鴻)委員 となると、先ほども議論がありましたけれども、いわゆるPD、それから事務局機能というのが非常に重要になってくるんだろうなと思うんですよね。先ほどもありましたけれども、PDの、やはり適任とか、それから役割、それからPDの機能を発揮しているかどうかを判断する専門委員会みたいなものを設置されると思うんですけれども、あるいは評価委員会というのかもしれませんけれども、そういうものについての仕組み。つまり、PDが一旦、先ほどありましたけれども選び方の問題、選ばれて、それが実行していくときに、そのことを評価していく、そういうものについての体制というのは今もうお考えでしょうか。

菱山政府参考人 具体的な仕組みといたしましては、日本医療研究開発機構が設立されて、その中で考えていくことになると思いますけれども、しっかりとしたプログラムディレクターに来ていただき、さらには、今先生おっしゃったような専門家の御評価といったものを得るような形にしていくことになるというふうに考えております。

清水(鴻)委員 そうはいうものの、そう簡単に、めちゃくちゃスーパーマンみたいな人はそうおらぬのですよね。PDは基本的にはそのプロジェクトには一人ということですから、かなりその人の、ある意味で力が強くなるし、そこのところを、よほどやはり評価委員会なり、そのものをしっかりしておかないと。それから、今、名があり地位がある学者さんが今の時代に適合したPDかどうかというのも、大変難しいものもあるわけですよね。

 そういうものを選出する選出委員会といいますか、そういうものについて何か公平性を担保できるようなものはお考えでしょうか。

    〔関委員長代理退席、柴山委員長着席〕

菱山政府参考人 まだ日本医療研究開発機構は設立されておりませんので、はっきりしたことは申し上げられませんけれども、そういったPDの適格性につきましても、しっかりその中で理事長を中心に御判断をしていただくということになると考えております。

清水(鴻)委員 ちょっと何か心配やね。まだこれから、キーポイントを握る、一千四百億とかそういうものを。アメリカNIHに比べれば四%ぐらいの予算ではありますけれども。向こうは三兆円を超えるお金を使っているわけです。

 それにしても、日本としては頑張っていくけれども、その辺のところの、一番肝心なPDについても、まだその構想は、これはもちろん法律ですから、通ってからだというけれども、その辺の見通しがついていないということはちょっと何か危ういような気がします。

 決まっていないものは決まっていないと言われればそのものなので、今度、決まってからよっぽどその辺のところを、やはりきちっとするということをまずはお約束していただきたいと思います。もし大臣、あれでしたら。

菅国務大臣 委員御指摘のとおり、このPDの役割というのは、今回極めて重要になります。そして、今まで我が国の基礎研究、臨床研究、実用化までの中で一番欠けている分野がこの分野だというふうに思いますので、新たにこのPDのほかに、専門的な人材確保、これは知的財産の話を先ほどさせていただきましたけれども、そうした人等も含めて、ここのPDの方を確保するということは極めて大事なことだというふうに思います。

 ですから、先ほど来答弁されていましたけれども、さまざまな研究分野の中から、まず人材スカウトあるいは公募とかいろいろな、ありとあらゆることを駆使しながら、ここはしっかり体制を整えていきたい。それと同時に、また、こうした人を、将来日本にとって大事ですから、育成することも考えていきたいというふうに思っています。

 それと、今の体制でありますけれども、健康・医療推進本部の中に、例えば専門的、技術的助言をもらう専門調査委員会というのがあります。そこで具体的な方針というものを決めてもらう。あるいは、健康・医療戦略参与会合というのもあります。そうしたところとしっかり連携しながら、そこは対応できるようにしていきたいというふうに思います。

清水(鴻)委員 今、官房長官がお答えいただいたように、要するに私が言いたかったのは、専門調査会等でしっかりとそこは担保するということ、それはもう決まっているということですよね、そこまでは。わかりました。

 それから、やはり研究費が配分されていきます。それのいわゆる公平性あるいは適正性の判断、そのものに対するチェック。それから、アメリカの場合、NIHが、例えば三カ年計画とか五カ年計画とか、ファンドをとるんですね。私もシカゴ大学のときにそのチームに加わっていましたけれども、NIHビジティングといって、要するにその中間でチェックに来るわけです。研究がちゃんと予定どおり進んでいるかどうか、かなり厳しくて、そこで予定どおりいっていなかったら減額されたり、あるいはもう中止になることもある。それぐらい厳しいので、NIHビジティングが来るというと、もう大学の研究室がぴりぴりする。

 それでまた、向こうのいいところは、教授であっても准教授であっても、准教授の方がいいファンドをとっていれば、そこの方が予算がたくさんありますから、たくさんのアシスタントを雇用して、そこが元気が出て。必ずしも、いわゆるカースト制度みたいな、教授、准教授、講師というようなものが、その下の講師でもすごいファンドをとれば、人を教授以上にたくさん雇ってやれる。そういうところはすごく、ある意味で。

 日本だと、いい仕事はどうしても教授の名前でしか。僕も研究して、これは一番よくできたなと思うのは、教授が、僕の名前をファーストオーサーにしようみたいな形で、そのかわり君はこっちの方の、ちょっとできの悪そうなものを、清水君、これをファーストオーサーで君がやったらいいよみたいな話で、いや、これはどっちも頑張ったんですけれどもみたいな話が実際あるので、そういうことに余りならないような形になるんだと思うんです。

 だから、今後も、要するに研究費の適正性と後のフォローアップ、そこをきっちりしないと無駄になってしまうこともある。研究ですから当たり外れはありますから、もしだめな場合は、やはり貴重なお金を途中ででも、これはだめだ、あるいは減額する、そんなことも含めたフォローの体制というのはどんなふうにお考えでしょうか。

菅国務大臣 例えば、がんだとか難病だとか、どの研究領域に重点的に配分を行うか、こうしたことについては、内閣に置かれる健康・医療戦略推進本部が有識者の意見を聞きながら決定をします。

 そしてまた、その方針を踏まえて個別の研究費が配分されるわけでありますけれども、それについては、この機構における本部が作成する医療分野研究開発推進計画に基づいて配分をされ、PDのもとで、専門家の評価も得ながら、具体的な研究テーマを決定して配分していくという仕組みを考えております。

 そして、当然、その事後チェックもできる体制というものはしっかり整えたいと思います。

清水(鴻)委員 できてから、そういうことをいろいろ仕掛けをしていかないといけないと思います。

 ただ、一つ、いろいろな提言や、あるいは新聞記事もありますしいろいろなもので、ちょっとだけ心配されているのは、実はNIHも成果は上げています、それは三兆二、三千億ですか、使っていますから。それはインハウスの、インハウスといいますか直属の予算も含めてなんですけれども。

 ただ、今回の場合で、一部、産業化ということが、もちろんこれが製品になっていくというようなことは非常に大事で、日本の場合だと、今までだと、例えば製薬の研究とかでも、いいところまで日本で行くんですね。行くんですけれども、そこから先、物すごい時間がかかるので、世界じゅう競争しているので、日本でやっていたら、どうも後出しで来ているアメリカに途中で抜かれる。

 だから、今はトップを走っているから、この段階でもうアメリカに売ってしまって、最後の完成品はアメリカでできる。そうすると、パテントはアメリカのものになる。だけれども、その段階だったら、一番トップですから、それなりのコストでそのプロジェクトが売れる。そういうことを実際に薬品会社とかもやっているんですね。

 つまり、せっかく日本でここまで来ていて、日本がもっとスピードアップできて、完成品までできる、特許まで取れる形がスピーディーであれば、日本の特許であるはず。つまり、日本の創薬の力というのは、源泉はあると思うんです。あるんですけれども、いろいろな壁が、いい意味では慎重、悪い意味では遅い。

 でも、やはり特許、パテントとかは競争ですから、ペーパーでももう、本当の話が、自分がつくっていて、アメリカのところに投稿して、審査員に見てもらっている間に、その審査員のところからそれに似たような論文が出るということもあるぐらいで、絶対に日本の雑誌にしか出さないという人もいるぐらい、それだけ情報競争なわけですよね。

 だから、そういうことについて、日本で完成できればそれにこしたことはないわけです。ただ、心配されているのは、やはり今度の場合は、日本に欠けていた、製品といいますか、そういう経済性みたいなものなので、本当の意味の基礎研究。NIHでも、実は三兆幾らのうちの半分、ほぼ半分は基礎研究なんですよね。

 その辺のところの、基礎研究がおろそかになるんじゃないか、そういう心配も一部、ノーベル賞受賞者の日本の方なんかからも上がっているし、また、一部そういう学者さんからも上がっている。その辺についての担保といいますか、その辺のところについては、官房長官でもよろしいですので、お答え願いたいと思います。

菱山政府参考人 今回、日本医療研究開発機構に集約される予算につきましては、トップダウンの研究ということで、基礎から実用化までということで考えております。

 ただ、一方で、ボトムアップの、研究者の自由な発想の研究というのも非常に重要だということで、それは文科省の科学研究費助成事業ということでございまして、それはしっかり文科省の予算として担保されているということです。基礎研究から出てくるシーズは非常に重要だと思っておりますので、しっかり基礎研究も重視していくという体制になってございます。

清水(鴻)委員 そのために文科省の科研費は別途扱いにしたという理解でいいわけですね。

菱山政府参考人 ボトムアップの基礎研究は非常に重要だということで、そのような形にしております。ただ、そこから出てくる成果はしっかり日本医療研究開発機構につないでいくという体制にしたいというふうに考えております。

清水(鴻)委員 この図解でもらっているものにもそんな形になっています。

 あともう一つ。日本の場合は、アメリカみたいに直属の、直接の研究機関は持たないんですけれども、それに類したものとして、いわゆるインハウスの研究所があると思うんですね。

 今までインハウスの予算についても一定、この私がもらっている資料でいきますと、七百五十億とかいうものがインハウスのところに書いてあるんですけれども、競争的なトップダウンのものが一千四百億、ボトムアップの、いわゆる科研費が六百五十億、そういうふうな形になっているんです。これは、インハウスに対しては七百五十億を担保して、そこで使わせるということですか。

 それで、インハウスの中でも、いわゆる国策として、つまり、目立たないかどうかはともかく、持続的にやっていかねばならない国としての仕事がありますね。統計処理もそうでしょうし、そういうものと、インハウスの中でも、いわば当然ながら新しい研究にトライしていくものもある。その辺のインハウスの位置づけあるいはインハウスの予算についてどういうふうに整理されるのか教えてください。

菱山政府参考人 インハウスの研究というのは、先生今御指摘の研究所、例えばナショナルセンターの研究所、あるいは理化学研究所、産業総合研究所、そういったところでの医療研究開発のことをインハウス研究と言っております。その予算につきましては、やはり、事前にというか、健康・医療戦略推進本部でしっかりとした調整をしていくことになっております。

 そのインハウスの研究の中に何が含まれるかでございますが、基本的には、それぞれ、国の独立行政法人や国立研究所でございますので、国の政策に沿った研究が行われているものでございます。

清水(鴻)委員 いや、それはわかっているんですよ、それはわかっているんですけれども、要するに、インハウスの中でも、いわゆる義務的経費といいますか、国としてこれはやってもらわなければいけないというものと、やはりいわゆる競合的、競争的な研究もやるわけですよね。やるんですよ。インハウスの人は、何か国から言われた、統計処理するとかなんとかだけじゃなくて、がんの研究でも新しいトライアルをやはりやっていくわけですよ。

 そういうことについて、つまり、インハウスの中で、いわば自分たちが継続的にやらなければいけない費用を新しいものに費やさなければいけないような状況になると、国から言われていた仕事が十分機能しなくなるのではないのかという心配を、インハウスの人はインハウスの人でしているわけですよ。その辺の仕切りをきっちり、インハウスの人もしっかり仕事ができるようにということをしてもらいたい。

 官房長官、インハウスの人もやはり本当にそういうことをちょっと心配していて、そういう義務的な経費を減らされて、競争的なものにふさわしいものとふさわしくないものがある、ふさわしくないものもインハウスはやっていかねばならない、そういう義務を負っているので、そこのところはしっかりやってもらわないとということを、私の元同僚なんかも、今そういうところで総長とかやっている人もいるので、そういうところを少し心配されているということで、官房長官から、そういうことはないということをしっかり言っていただければありがたいと思います。

菅国務大臣 当初からそのつもりでおりましたし、今確認もしましたけれども、間違いありません。

清水(鴻)委員 官房長官からそう言ってもらうと、私も友人に心配せぬでやれというふうに言えると思います。ありがとうございます。

 あと、ちょっとアメリカのNIHとの違いとかいうのも聞こうかなと思ったけれども、これは大分違うので、これはこれで、日本は研究所も直接持たないし、独法を利用しながらと。時間がないので、これはまた次のステップのところでもう一回やらせてもらって。

 あと、医療特区がありますよね。医療特区においては、新しい、例えば関西の先端医療の、そういうところでの研究みたいなものも今回のところにアプライしてくるというようなこともあるんですか。医療特区ならでは、つまり、ほかではできないけれども医療特区ならではのことをやろうとしたときにも、この予算とかに対してアプライできるということになるんですか。

菱山政府参考人 一般論として申し上げますれば、特区でやるかどうかにかかわらず、国の定める戦略に従って実施するプロジェクト型の研究につきましては全て研究費の配分の対象になるというふうに考えております。

 ただ、個別の採択課題の採否につきましては、医療研究開発機構の中で判断されるということでございます。

清水(鴻)委員 それは当然、特区から出れば全部通す、そんなことはないのはわかっています。ただ、特区のところも一応その競争の中に、競争できるというか。だけれども、ある意味ではほかのところはできないものを出してくるわけですから、ちょっと公平性ということについては、ほかのところでできない、特区ならではのものが出てきたときも同じレベルで競争するのかなということ。これはまた、実際にできてから詰めていったらいいと思うので。時間がちょっとないので。

 あと、まだ法案として出てきませんけれども、今回予測される中で、例えば難病対策とかについても今後取り組んでいこう、そして、今までの数を、五十何ぼを、五十六だったか五十三かを三百程度にして、難病にも広く取り組んでいこう。そこにも、今度の、予定されているもの、まだ出ていませんが、その中に、研究開発も推進していくというような文言があるんですね。

 つまり、今回、難病対策は総合的に、そういうところに、難病の方々も、研究もしていくということを今度の法案には書いてあるし、非常にありがたいというか、それを期待しているということ。そういう難病に対する研究費みたいなものと今回の独法の中での予算とはリンクするんですか。

佐藤政府参考人 今議員の御質問の中にございましたように、現在国会に提出されております難病の患者に対する医療等に関する法律の中でも、難病の発病の機構とか、あるいは診断、治療方法に関する調査研究を国が推進することとなっておりまして、これまで以上にその充実、推進を図ってまいりたいと考えております。

 今、御質問の中にもありましたように、難病を含めた医療分野の研究開発については、新しい独法におきましても総合調整がなされることとされております。

 ただ、平成二十六年度の予算につきましては、新独法の設立前ということもありますので、各省等が実態としては連携をして実施して、難病克服プロジェクトという形で九十三億円を盛り込んで研究を実施していくということになりますし、新独法の設立後におきましては、新独法と連携をしながら、必要な予算を確保しつつ、難病の克服に向けた予防、治療、診断、そういったものの研究開発を推進してまいることになります。

柴山委員長 清水君、質疑時間が終了いたしました。

清水(鴻)委員 ちょうど時間になりましたのであれですけれども、いろいろな報道では、大分、日本版NIHの構想がしぼむとか何か書いてありますけれども、しかし、実際には、第一歩、新しいものをこういうふうに一元化してつくっていく、必ず日本で成果を上げていくということなので、いろいろな報道はありますけれども、最後、官房長官にその決意だけをお伺いして終わりたいと思います。よろしくお願いします。

菅国務大臣 まさに世界最高水準の医療、それと同時に、健康・医療産業を戦略的に海外にも展開をしていきたい、そういう思いの中で、まさに人類の夢であります健康長寿、そういう社会を実現するために全力で取り組んでいきたいと思います。

柴山委員長 質疑を終了します。

清水(鴻)委員 ありがとうございました。よろしくお願いします。

柴山委員長 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻でございます。

 先ほど近藤洋介理事の質問に、菅官房長官から、この独法が、基礎研究から、臨床研究から、そして実用化というお話がありましたけれども、この独法は基礎研究もする、ファンディングするということですか。

菅国務大臣 基礎研究から臨床、そして実用化の一体性がなかったわけでありますから、そうしたものをこの独法において連携をしていこうというのがこの独法の基本的な考え方です。

長妻委員 私がきょう質問するに当たって役所の担当者の方からレクを受けると、この独法では基礎研究は対象外だということで、基礎的な研究はするけれども、いわゆる基礎研究は文科省に残ったままであるというようなお話があったんですが、これはもう政治判断で基礎研究も担当させるということでよろしいんですか。

菅国務大臣 私が意図して発言をしたのは、我が国というのは、基礎研究、それと臨床研究、それと実用化、そうしたものが連携をしていなかった。そういう中で、基礎研究の成果、それと臨床研究、そして実用化、そうしたものを連携することができるものとして、今回私たちは設立を目指しているわけでありますし、現に、この新しい機構には研究施設を実は持たないわけであります。

長妻委員 そうすると、基礎研究はこの独法ではやらない、ファンディングもやらないというふうに聞いているんですけれども、そうではなくて、基礎研究もこの独法で、ファンディングも含めて、進行管理も含めて、PD、POの監督のもと、基礎研究もやっていく、こういうことで本当によろしいんですか。

菅国務大臣 私は、この機構で基礎研究をやるということを申し上げたつもりは、近藤委員に対してもなかったというふうに思っています。

 ですから、基礎研究と臨床研究、そして実用化というものをしっかりとこの中でつなぐことのできる、そうしたものをこの独法の目標にしているということであって、ですから、この機構には研究施設もないということを申し上げたのであります。

長妻委員 ちょっと微妙に答弁が変わっているような気がするんですが。

 この機構には研究施設はないですよ。ファンディングと、POとかPDを置いて進行管理をする、マネジメントする、こういう機能だけなんですね、どの研究でも。それはわかるんですが、そうすると、基礎研究はそのファンディングとか進行管理の対象外というお話ですよね、今。

 そうすると、いや、これは大きい問題なんですね。私、最大の課題の一つだと思いますよ。基礎研究が担当外だと、今回の独法が。アメリカのNIHは、研究費の半分が基礎研究に充てられているんですね。実際に研究もされていますし。ただ、こちらは、ファンディングも含めて基礎研究が除外されている。これは、私、最大の問題で、いろいろな有識者の方も、それはいかがなものかというふうにおっしゃっている方もいるので。

 菅官房長官は、基礎研究が除外をされているけれども、基礎研究と臨床研究とのつなぎ役もこの独法の役割だということなんですが、ファンディングが除外されている基礎研究、これは文科省が担当なんですね。それとつなぐ役割もこの独法が担っていくというのは条文のどこにあるわけですか。

菅国務大臣 先ほど来申し上げていますけれども、基礎研究というのは文部科学省にそのまま残しておくわけであります。しかし、その基礎研究の中で成果が出てきた部分については、やはりこの新しい機構の中で臨床研究、実用化に向けてそこは連携していくというのが今回の考え方であります。

長妻委員 そこが難しいというのが、私の理解では長年の課題なんですね。文科省の基礎研究で、そこで芽が出た、実用化に結びつきそうだという判断があったものが、今までは、それが厚労省に結びついていない。連携がうまくないということで、これは大きい問題だということで、どうしようということだったと思うんです。

 今回の独法も基礎研究は担当外なので、結局、文科省と基礎研究、この独法が芽が出たものを結びつける。ここの連携のところは、厚労省がこの独法に変わっただけで、文科省は残る、二つが並立するわけです。だから、そこの課題をどういうふうに克服するかというのは、これはぜひ問題意識として、いや、笑っておられないで、問題意識としてちゃんと持っていただかないとと思うんですね。

菅国務大臣 私の表現が悪いんですかね。私は、基礎研究というのは極めて大事。それぞれの研究者の皆さんが自由な発想で行うことは、そこからいろいろなことが出てくるということも事実じゃないでしょうか。

 ですけれども、医療に関して、その基礎研究の中から、成果が上がるものについて、臨床研究と実用化、そこに対して連携をさせる仕組みをこの機構の中でしっかりつくっていきたいということでありますから、それは長妻委員の言われていることと全く同じことじゃないでしょうか。

長妻委員 そこが不十分だと。文科省と厚労省が並立して、基礎研究と臨床研究の橋渡しで、連携不足で今までほぞをかんだことがいっぱいあるんですね。外資にとられちゃった。外国に、結局、芽が出た研究が実用化の段階では向こうの方に、保険収載も含めて、そういう形になってしまったということが何度も起こっているんです。結局、文科省と厚労省の連携が悪い。

 今回も、基礎研究は文科省ですから、文科省と今回の独法と二つあるので、そこの連携を本当に、これは事務方の方もいらっしゃるので、密にしていただきたいということを申し上げているところであります。

 そして、もう一つは、移籍元に資金が引っ張られないようにしていただきたいということです。

 この配付資料の四ページでありますけれども、これは結局は、先ほど近藤理事も財布が一つになっただけじゃ意味がないというふうにおっしゃいました。

 確かに、ファンディングという意味では、今まで、独法四つ、あるいは厚労省、経産省でファンディングをしていましたけれども、それを一つにまとめるということなんですが、当然、この四つの独法も、今までは独自にファンディングもしていたわけでございますし、かつ、研究を実施しているわけでありますので、ここの独法の方々が今議論している独法に移籍をしていくわけですね。

 そうしたときに、きちっと透明性を高めて、ファンディング、どこに資金をつけるかの基準なり選定委員会を、透明性を確保しないと、結局、自分の出身の独法に資金を持っていくということになりはしないかというふうに私自身も懸念がありますので、これは厳にそういうことは慎むように、公正に資金配分は決定をしていく、自分の親元に持っていく、ひいきをするということはあってはならない仕組みをつくるということを明言いただきたいんです。

菅国務大臣 まず、委員御指摘の、研究の公平性だとか信頼性を確保していくということは当然のことでありますから、そのために、利害関係者が想定される出身団体とのかかわり、いわゆる利益相反については、透明性が確保され、適正に運営が行われるというのは、これは当然のことだというふうに思っています。

 現在、研究費の助成を行っているそれぞれの法人については、職員の職務上の利益相反が生ずる可能性に対して、国民の疑惑を招くことがないように、それぞれ今ガイドラインはつくって対応をいたしておるわけであります。

 いずれにしろ、この機構が設立された場合も同様の対応は行いますけれども、さらにそこは踏み込んだ形で、そうしたことがないような仕組みはしっかりつくっていく必要があるというふうに考えます。

長妻委員 そしてもう一つは、新しい独法の理事長とか、あるいはPD、POをこれから募集するというか任命するわけでありますが、これは外国籍の、優秀な方であれば理事長、PD、POに任命するという可能性もあるわけでございますか。

菅国務大臣 外国籍でも構いません。

長妻委員 これはいろいろ議論があるところだとは思いますけれども、きちっと雇用契約を結ぶわけでありますから、特許は当然、ルールとしてどこに帰属するというのは、これは日本人だろうが外国籍であろうがあるわけで、私個人の意見としては、本当に世界の頭脳でトップレベルの方がそういう職をやってもいいというふうにおっしゃれば、かなり幅広く、国内のみならず見ていくということも必要だと思うんですが、それについては官房長官の御意見はいかがですか。

菅国務大臣 いずれにしろ、公募という形で選定していく方向になってくるだろうというふうに思います。そこで、今、外国籍の方も排除しないということは、そうしたことも含まれているというふうに考えていただけるんだろうと思います。

長妻委員 基礎研究の話を申し上げましたけれども、私自身が感じるのは、基礎研究というのは何に役立つかわからないまま好奇心で始めていく研究、私は、そういう研究の方が、最終的に実用化に結びついて、非常に大きな影響が出る研究があるのではないのかと。

 これは実用化に結びつくという前提で始めた研究というのは意外に物にならない、あるいは物になったとしてもそれほど大きなインパクトのない研究ということが多いと思います。

 特に、もう実用化目前の研究というのは、民間企業がこぞってやりたいやりたいということで手を挙げるわけで、基礎研究、何に役立つかわからない研究こそ、それはどこの企業もお金を出さないわけでありますから、そういうものに本当は特化して、政府としてファンディングを集中的に、戦略的にやっていただくというのが本筋だと私は思うんです。

 今回、残念ながら、この独法は基礎研究はタッチしないということなので、これはちょっと長期的課題としてぜひ認識をいただきたいと思います。

 そして、先ほど近藤理事も質問されていましたけれども、不正防止でありまして、科学技術振興機構という独法、今回もその独法から移籍をされますけれども、そこが調査をすると、一九七七年から二〇一二年まで不正と見られる百十四件の研究を調査すると、盗用が六割ぐらい、捏造、改ざんが三割ぐらい、こういう不正があります。配付資料にもございます。

 そして、学術会議の提言も、先ほど近藤理事がおっしゃいましたけれども、今議論している独法の中にアメリカの研究公正局の機能を想定した部門をつくって、厳しくいろいろ研究論文をチェックすべきだ、研究不正の監視及び防止に役立たせるべきだ、こういう提言もございます。

 そして、今回議論している推進法の十二条にも、「医療分野の研究開発の公正かつ適正な実施の確保に必要な施策を講ずるものとする。」と条文もあるんですね。

 ぜひ不正防止についてもこの独法がかなり中心的な役割を持つべきだと思うんですけれども、それが実はないわけでございまして、これから議論するということであります。

 そこで、具体的事例として、きょうは理研の野依理事長にもお忙しいところお出ましをいただいております。

 STAP細胞が今大きな問題となっておりますけれども、いろいろ細かい話をお伺いするつもりはございませんで、私が知りたいのは、STAP細胞ができた、これがうそだったのか、本当にできるのか、ここの一点に私は関心があるわけであります。

 STAP細胞というのが本当にああいう手順で、途中の経過はいろいろずさんなところがあったにせよ、できるということなのか、絶対STAP細胞というのはできない、こういうふうに考えておられるのか。そこについてちょっと教えていただければと思います。

野依参考人 STAP細胞が存在するかどうかという科学的な問題については、最終的には第三者によって検証されるべきだと思っております。

 しかしながら、理化学研究所は科学論文を発表したものですから、まずみずから真摯にその検証をしてまいりたいと思います。そして、第三者が検証したいというお申し出がありますれば、技術的あるいは情報的に最大限のお手伝いをさせていただきたい、そういう姿勢でございます。

長妻委員 そうしましたら、STAP細胞というのはインチキで、これはできないものだというふうには断定されておられないという趣旨の御答弁だと思いますけれども、本当かどうかわからないというレベルだと思いますが、STAP細胞の再現実験、再現研究というのは、第三者はするにしても、理研そのものはされないのでございますか。

野依参考人 まず、いろいろ問題になっております、理研の研究者が発表した論文の不正問題、これが科学社会の信頼性を損なう事態を引き起こしたことに対しておわびを申し上げておかなければならないと思います。

 まず、科学論文の発表は、研究者がみずからの活動に基づいて自立的に行っておりまして、その責任は基本的に著者が負うべきものでございます。

 一方、所属機関は、こういった研究が円滑に行われ、そしてまた不正行為を抑止するための組織の管理責任を負っておるわけでありまして、私の立場といたしましては、こうした問題が再び発生することのないよう十分な対策を講じてまいらなければならないと強く認識しておるわけであります。

 今回の事案を真摯に受けとめまして、理研に何が一体不足していたのかということについて、外部有識者による委員会を立ち上げて再発防止策を早急に取りまとめてまいりたいと思います。

 一方で、科学的な検証につきましては、先ほど申し上げましたとおり、理研も真摯に検証を進めてまいりたいと思います。しかしながら、最終的には、外部と申しますか第三者の検証をもって、STAP現象があったかどうかということが初めて検証されるものとなる、こういうふうに思っております。

長妻委員 そうすると、本丸の話として、やはりSTAP細胞、世紀の発見があるのかないのかという、これが最大のものでありまして、それはまだわからないと。

 これは私は日本独特とは言いませんけれども、空気が一つつくり上げられると、わあっとそちらの方に引っ張られてしまう。STAP細胞を発見したといったら、日本じゅうがこぞって、マスコミも含めてすばらしいとなって、今回は、何かおかしいとなると、全部おかしいとそっちに流れて、今度またSTAP細胞が、私もわからないですよ、本当に実は再現できるということになると、すばらしいと。本当に忙しいと思うのでございますが、そういう、余り決めつけでこっちとこっちに世論がぐっと動いていくというのも、私も非常に不思議というか違和感があるわけであります。

 ちょっとうがった見方をしても失礼なのでございますが、理研は、特定国立研究開発法人に指定をしてほしいということで、四月中旬に向けていろいろ活動をされておられるというようなことも聞いているんです。それに間に合うようにかなり急いで今回発表したというようにおっしゃる方もいるんですが、やはり四月中旬の指定ということも視野に置いて、今回、一昨日ですか、発表されたということでありますか。

野依参考人 そういうことが報道されておりますけれども、私どもは、一義的には、この問題が社会的に大きな関心を呼んでおりますので、できるだけ早く調査結果が出ればいい、そういうふうに思っておりまして、三十一日に調査結果を受けまして、直ちに四月一日に公表したことでございます。

長妻委員 理研は、御存じのように一般会計で一年間に八百億円の税金が入っている、国民の血税のもとに運用されている研究所でございます。

 理事長にもう一点お伺いしたいのは、今回のような、再発防止といいますか、いろいろずさんなところがあったのは事実だと思いますので、この再発防止というのを、例えば今議論している新しい独法、日本医療研究開発機構、A―MEDというふうに呼ぶらしいんですが、こういうところにそういうチェック機能を持たせていくというようなことが必要だと思われるのかどうか、あるいは別のやり方でずさんな研究をチェックする体制が必要だと思われるのかどうか、そういう御感想をいただければと思うんです。

野依参考人 私は、研究不正の問題が世界的に蔓延していること、これをゆゆしき問題であると憂慮してまいりました。私は、科学社会全体で研究論文のチェック体制についてやはり改善すべき点が多々あろうかと思っております。

 私ども理化学研究所といたしましては、文部科学省が定めました研究活動の不正行為への対応のガイドライン、これを踏まえて規定を整備して、不正防止に取り組んできたところでございます。

 にもかかわらず、理研の研究者による研究不正が生じたことを真摯に受けとめておりまして、私どもは、理研において外部識者による委員会を立ち上げて、そして規定の見直しあるいは改善などを含めて再発防止を早急に取りまとめていくところでございますけれども、私は、研究不正が起こる背景には多様な要因があるように思っておりまして、またそれに多様に対応していかなければいけないと思っております。

長妻委員 これはぜひ、ノーベル賞を受賞された理事長でございますので、確かに、おっしゃるように、個人が単純な動機で不正というよりは、研究成果が非常に早く求められるとか競争が熾烈だとか、いろいろな背景があると思うんです。

 理事長が考えられる、これは理研のみならず、全世界、日本のほかの研究所にもメッセージを発するとすれば、どういう背景が非常に大きい問題なのか。国会でも我々がやらなきゃいけない仕事がその中にあるのかどうかも含めて、どういう問題が本質的に一番大きな背景にあるのか、そこを教えていただければと思います。

野依参考人 私は、やはり研究倫理の問題が一番多いと思います。したがって、やはり若いときからしっかりと研究倫理というものを教えていかなきゃいけない、そういうことが一点あろうかと思います。

 それから、もう一つ大きな問題は、最近の研究というのは、一人でするものではなくて、共同研究になっております。一つのグループの中でも五人とか十人がかかわります。それから、グループ同士で共同研究をやります。さらに、一機関ではできませんで、機関を超えて協力する。さらに、今回も、日本とアメリカという国を越えて機関が協力するということがございます。

 一体、そういった共同研究、分業ですが、その分業の役割をどういうふうに明確にするのかということが非常に今後とも大きな問題になってくるかと思います。今までは、性善説で互いを信頼しながらやってきたところでございます。これは研究にかかわらず、あらゆる共同作業がそういう面があろうかと思います。

 これを今後、公正性、それから事柄の正確性、正当性というものをどういうふうに担保していくのか、これはやはり研究社会全体で考えていかなければいけないと思っておりまして、先生方にも御指導を賜れればというふうに思っております。

長妻委員 そしてもう一点、野依理事長にお伺いしたいんです。

 理事長の立場を離れていただいても結構なんですが、基礎研究あるいは臨床研究を含めて、日本国の研究に対する課題、課題はいっぱいあると思うんですが、一番大きな、日本の基礎研究、臨床研究における最大の課題というのはこういうところなんだというのをぜひ教えていただければと思います。

野依参考人 世界の研究者たちは、医療、公衆衛生、水、エネルギー、食料、資源等の問題を中心として、文明社会の持続的発展のための科学技術イノベーションを開拓していかなければいけないというふうに思っております。

 そのためには、従来の分野縦割り型の科学ではなくて、例えば、生物科学と物質科学あるいは数理情報科学、そういった分野横断型の新たな取り組みが必要になってきております。それが、先ほど申し上げたような共同研究というものの重要性でもあります。

 こういった分野横断型の新しい取り組みが求められておりますので、そのためには、私は、教育と研究の両面からシステム改革が必要だ、そういうふうに思っております。

長妻委員 どうもありがとうございました。

 今回の議論をしている独法の中で、基礎研究と臨床研究の橋渡し機能が私は弱いと思いますので、今の理事長のお話もありますから、連携の機能を強化していただきたいというのと、あとは、アメリカにあるような研究公正局、研究をチェックする機能をきちっとやはり持たせていただきたいということを強くお願いしたいと思います。

 きょうは厚生労働大臣も来ておられますけれども、これは厚生労働省も非常に大きく関与する独法でございますので、ぜひ、厚生労働大臣、経産大臣、文科大臣、官房長官、連携をして、よりよい日本の医療技術を開発いただきたいと思います。

 健康寿命が日本は非常に短いと言われております。平均寿命の前、大体男女とも十年ぐらいが健康でない寿命、不健康寿命と言っていいのではないかと思いますが、そういう時期を過ごされる。それを少しでも長くするということに資する研究というのは、これは国民の皆さんも待ち望んでおられると思いますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 以上であります。ありがとうございました。

柴山委員長 次に、新谷正義君。

新谷委員 自由民主党の新谷正義と申します。

 本日は、質問の機会をいただき、まことにありがとうございます。

 私は、議員となる前、医者をやっておりましたが、医薬品や診療の道具で、特に高価なものは外国製が多いことに日々残念な思いがしておりました。世界的に医療市場は毎年成長を続けており、現在、五百兆円を超えるほどの巨大市場となっておりますが、一方で、我が国における医薬品、医療機器を合わせた輸入超過は今や二兆円を超えており、我が国の医療産業の競争力強化は待ったなしの課題と言えると思います。

 医療産業の競争力強化には、研究開発、特に臨床における研究の強化が必要です。今回、健康・医療戦略推進本部の立ち上げに続き、その法制化、そして、新たな独立行政法人として日本医療研究開発機構を設立されますことを、本当にすばらしいことと認識いたしております。

 この新たに誕生する日本医療研究開発機構を中心に本日は質問させていただきますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 この日本医療研究開発機構は、よくアメリカのNIHと比較して予算規模が小さいなどの指摘が出てきておりますが、アメリカは医療制度や人件費の支給のされ方も異なっており、単純比較はできません。しかし、アメリカのNIHから学ぶことも多いはずで、なぜNIHが有効に機能しているかを考える必要があります。

 私は、我が国の体制と比べて、アメリカのNIHの際立った特徴は、グラントと呼ばれる、いわば競争してかち取らせる研究費の制度と、二段階で申請を審査する制度にあると考えております。

 まずはグラントという制度ですが、グラントは、NIHに所属していない若手研究者にも直接個人に支給することのできる研究費で、総予算の約八割もがこのグラントとして提供されております。グラントには、結果を得られる可能性の高い研究に対するものや、確実性は低いものの革新的な研究に対するもの、あるいは実績の少ない若手研究者を支援するものなど、多種多様できめ細やかなメニューが整備されていると聞いております。

 リスクが大きいものも含まれておりますが、本当に革新的で有用な医療技術が生み出す付加価値はさらに膨大なものですので、非常に理にかなっております。私は、アメリカの研究の独創性、創造性や若手研究者の養成は、このグラントという制度に支えられていると言っても過言ではないと考えております。

 我が国でも、どの研究に資源配分をしていくか、その選別が大きな課題となりますし、若手の優秀な研究者にも十分にチャンスを与え、育てていく配慮がなくてはならないと考えております。

 研究費の配分を行うに当たり、内閣官房副長官に、今後の取り組みに関してお伺いさせていただければと思います。

加藤内閣官房副長官 新谷委員にお答えしたいと思います。

 御指摘のとおり、医療分野の研究開発を推進するに当たって、創造性や独創性に富んだ若手の研究者が機会を得て、その力を十分に発揮していただくということは大変重要な課題であります。

 一つには、いわゆる科研費の中で若手研究者の自立支援ということも実施をしているところでありますけれども、この日本医療研究開発機構では、そうした若手にチャンスを与え、育てることも大変大事だということも踏まえながら、ここの中におりますプログラムディレクターなどの目きき機能、こういうものも十分活用しながら研究費の配分等を行っていきたい、そうした点に配慮した配分を行っていきたい、こういうふうに考えております。

新谷委員 ありがとうございます。

 私が考える、アメリカのNIHが有効に機能している理由の二番目としまして、先ほど、二段階の審査制度を挙げさせていただきました。

 NIHにおいて、申請された研究は、まずピアレビューが行われ、利害関係のない専門分野ごとの一般研究者集団によって、創造的なアイデアのない、成果の上がらなそうなものは却下されます。それをくぐり抜けても、さらにNIH機関での二次審査が待っておりまして、研究は厳しく審査されているようです。

 このたび、日本医療研究開発機構を設置するに当たり、プログラムディレクター、プログラムオフィサーを配置すると先ほどおっしゃいました。これらがマネジメントに当たるとともに、研究の審査に関しては、分野ごとの専門的な知識が要求されるため、また別の専門家の評価も得ながら進めると伺っております。

 我が国では、臨床に近い革新的な研究を強化していく必要がありますが、審査に工夫をしないと、特定の専門研究者の審査方針が尊重されることとなり、結果として、従来と変わらず基礎研究寄りで保守的な研究に偏ってしまう可能性があるのではないかと考えております。

 今後、この新独法において、新たに申請される研究に対してどのように革新性を確保していくのか、そして、ピアレビューのような審査の機能をどのように確保していくのか、政府にお伺いしたいと思います。

    〔柴山委員長退席、平委員長代理着席〕

菱山政府参考人 個別の研究費につきましては、日本医療研究開発機構におきまして、健康・医療戦略推進本部が作成する医療分野研究開発推進計画に基づいて、同機構に置かれました、研究マネジメントに秀でた、今御指摘のあったプログラムディレクターのもとで、専門家による評価、いわゆるピアレビューを得ながら、具体の研究課題等を決定して配分するということになると考えております。

 このPDといたしましては、研究現場の第一線で活躍された研究成果や、あるいは研究プロジェクトのマネジメントに十分な実績と経験のある方についていただくのがふさわしいものと考えております。

 それから、プログラムオフィサーにつきましては、PDのもとで、個別研究課題の選定、評価の実務、それから研究や予算執行の進捗状況等を担う方でありますので、そうした職務の経験と実績のある者についていただくのがふさわしいものと考えております。

新谷委員 ありがとうございます。

 ぜひ、革新性を持った研究に取り組んでいただければと考えております。

 今回、新独法に関しまして、各省庁の予算をまとめて縦割りを排したのも、研究者が研究に専念できるようにするためと認識いたしております。

 一方で、実用化、産業化までの一気通貫で研究を支援していくには、特許など知的財産権に関しても、的確に、戦略的に助言していく必要があると考えております。せっかくの有用な研究でも、ほかとの特許の兼ね合いで実用化できないなどの事態が生じてはならないと考えております。

 しかし、知的財産権に対して研究者がみずから調べて取り組んでいては、研究に注ぐ力がそがれてしまいます。今回の新独法は、知的財産戦略に関しても研究者を支援していく必要があると考えておりますが、その方針を政府にお伺いさせていただければと思います。

菱山政府参考人 医療分野の研究開発の実施に当たりましては、今先生御指摘のとおり、特許権を含めました知的財産の管理が非常に重要な課題だというふうに認識しております。

 そのため、日本医療研究開発機構におきましては、専門家による知財戦略の策定とか、特許等の知的財産権の取得や管理、そうしたものについて、基礎段階から実用化までの総合的な支援を実施していきたいというふうに考えております。

 まさに知的財産管理の重要性が非常に増大している中、知財に対する適切な支援を通じまして、医療分野に関する産業競争力の向上や強化にも貢献していきたいというふうに考えております。

新谷委員 ありがとうございます。

 医薬品では、最後は実際の患者さんを対象とした試験である治験で成果が出せないと、臨床に向けて実用化することはできません。これに対する配慮も出口戦略としては欠かすことができないと考えております。

 現在、我が国では、別の独法でありますPMDA、医薬品医療機器総合機構が医薬品、医療機器の審査を行っておりますが、このPMDAは、人員の増員、強化が進んでおりまして、治験に対する体制整備が進んできております。

 PMDAは薬事戦略相談というアドバイスにも取り組んでおりまして、新しい中期計画でもこの薬事戦略相談は大幅に拡充するものと伺っております。

 実用化までの一気通貫で研究を支援するに当たりまして、今回の新しい独立行政法人もこのPMDAと連携していくことが欠かせないと考えておりますが、今後、PMDAとどのように連携していくのか、加藤官房副長官にお伺いしたいと思います。

加藤内閣官房副長官 医療分野の研究開発については、今御指摘ありますように、人を研究対象とするわけでありますし、被験者の健康に悪影響を及ぼし得る試験も伴い得る臨床研究、あるいは薬事法に基づく承認申請、こうした、他の研究分野にないステージ、過程を必ず経なければならない、こういう特殊性があります。

 そのため、今度新しく設置を予定しております日本医療研究開発機構においては、医薬品の承認に当たって、事前に相談を行う薬事戦略相談を活用するなど、治験に入る前からPMDAとの連携を強化することによって、研究成果をより早期に実用化していく、こういうことにしっかりと取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。

    〔平委員長代理退席、柴山委員長着席〕

新谷委員 ありがとうございます。

 まさに、別の独立行政法人としてPMDAは、ドラッグラグ、デバイスラグ解消に向けて人員の強化がなされてきたところでございます。そのPMDAが強化されているのが、連携がうまくいかないと、非常にちょっと、もったいないところになると思いますので、ぜひ独法同士、連携をとっていただいて、さらに有効に機能させていただければと考えておる次第でございます。

 医療に関しましては、年々増大する医療費への対処が喫緊の課題となっております。これは一方で、視点を変えてみると、国内に巨大な医療市場があるということにもなります。この巨大な市場をばねにして、海外に医薬品、医療機器を売って、輸入超過を輸出超過にひっくり返していくぐらいの気概やたくましさが現在、我が国に求められていると考えております。

 物づくりの力、基礎研究の力は、現在の我が国には十分にあります。今後も基礎研究の力を維持していかなければならないと思いますが、一方で、スマートフォンなどのように、基礎技術がありながら、付加価値の高い部分を最終的に海外に持っていかれるということはあってはならないと考えております。

 日本の医療産業の競争力強化に、今回新たに生まれる日本医療研究開発機構が大きな起爆剤となり、そしてまた、今後、大きく育っていくことを心より期待申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございます。

柴山委員長 次に、輿水恵一君。

輿水委員 公明党の輿水恵一でございます。

 本日は、このような質問の機会を与えていただきまして、心より感謝を申し上げます。

 私も、日本における世界最高水準の医療提供に資する研究開発について質問をさせていただきたいと思います。

 まず、きのうに引き続きの質問でございますが、健康・医療戦略のあり方について確認をさせていただきたいと思います。

 先ほど来、委員の皆様からありましたとおり、日本は、医療機器や薬などが、輸出に対して輸入が約二兆円超過をしている、こういった現実がある。まず、この現実についてどのような分析がなされているのか、お聞かせ願えますでしょうか。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、創薬という意味では、アメリカ、スイスに次ぐ世界第三位の地位を占めております。また、医療機器につきましても、診断系機器は輸出超過の傾向にあります。ただ、その一方で、御指摘のとおり、物の動きとして見た場合には、医薬品と医療機器合計で約二兆三千二百億円の輸入超過となっているところでございます。

 その要因は、日本は製造立地としての魅力に課題があるため、製造拠点を海外に移し、現地製造の製品をそのまま海外で販売しております。これは、統計上は輸出には含まれないところでございます。我が国の製薬産業、日本企業で見ますと、国内売り上げが約五兆円に対しまして、海外での売り上げは約三兆円ございます。この部分の三兆円というのは輸出にはカウントされないということになりますので、そういう統計上の問題も一つはございます。

 ただ一方で、最近非常に伸びております、がん領域における医薬品、あるいはバイオ医薬品については、非常に日本企業は弱いということも指摘されております。先ほど申しましたが、医療機器につきましても、侵襲性が高い治療系の機器もやはり輸入に依存しているということが挙げられると思います。

 いずれにしましても、医薬品、医療機器産業の発展のために、研究開発から実用化に至るまでの各ステージへの途切れることのない支援を進めていきたいと考えております。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 創薬について、日本は結構進んでいるんだけれども、生産というか、製造面で海外に移転してしまっている、そんなケースもあるということもよくわかりました。技術的には日本はトップレベルだということで、それをいかに生かしていくのかが今後の課題だと思います。

 そこで、国内の市場と同時に、国際市場の開拓、またその推進が必要だと思うんですけれども、開拓だけではなくて、今後はやはりある程度のシェアを獲得するための取り組みが重要と考えます。

 そういった意味で、開発途上の国と先進的な国、そういった部分でのやりとり、若干違うかと思いますが、その辺の戦略についてどのように考えているのか、お聞かせ願えますでしょうか。

中垣政府参考人 我が国発のすぐれた医薬品、医療機器、あるいは再生医療製品等を世界に先駆けて開発するとともに、これらの成果をいち早く世界に輸出し、世界で拡大するマーケットを獲得するとともに、日本の医療技術、サービスの国際展開を推進するということは非常に重要なことだと考えております。

 こうした国際展開を推進するために、昨年四月に医療関係者でありますとか医療関係企業が集まりまして設立された一般社団法人メディカル・エクセレンス・ジャパンを支援するとともに、健康・医療戦略推進本部のもとに医療国際展開タスクフォースを設置いたしまして、関係府省、関係機関が一体となって、途上国や新興国の特性に対応した日本方式の医療技術、サービスの採用の促進でありますとか、個別の医療機関等の構築、運営支援、人材育成などの取り組みを進めることといたしております。

 具体的成果といたしまして、カンボジアの救急病院の設立を初めとして、いろいろな案件の組成が今世界各地で進展しつつあるところであると思っています。

 このように、健康・医療戦略推進本部を司令塔といたしまして、産学官の緊密な連携のもとで、医療の国際展開を着実に推進して、新興国の医療の発展にあくまで貢献するというものとあわせまして、日本の医療技術、サービスの海外市場の獲得を戦略的に推進していきたいと思っておるところでございます。

輿水委員 ありがとうございます。

 まさに新興国へのしっかりとした早目の医療の支援というものが将来のシェアにもつながってくるし、貢献もできてくる。また、先進国においては、やはり、先ほどもあったかと思いますが、共同の開発、そんなものも視点に入れながら、ウイン・ウインの関係をつくり、そして、さらなる繁栄と発展を目指していく、そのようなことが必要なのかなと私も感じております。

 昨日の議論の中で、まさに健康・医療戦略推進本部が、知見的な助言あるいは政策的な助言を受けて方針を決めて、そして計画を策定する。そして、その策定したものを、今度は開発機構の方で受け取る。その中で、ここで重要な方がプログラムディレクター。その目標、計画を達成するために、その要素、要因をしっかり分析しながら、それぞれの機関に、どういったものをどれだけの予算でいつまでにやるか、そういったことを丁寧に出しながら、そしてそれを支えるプログラムオフィサーが、そういったものが円滑に進むようにしていく。そして、ある程度の技術といったものが確立をされてくる。

 そのようなイメージで、私も、まさに今回の機構と推進本部、大変に期待をしているわけでございます。

 そこで、先ほどの二兆円の輸入超過の問題の中で、まさに心配しているのが、国内でいい技術が開発された、また、将来的にやはり国内で生産をしていく、そして国内で雇用を生み出していく、国内でサプライチェーンをつくっていく、そういったことがある意味成長戦略として大変重要な課題であり、これは推進本部の戦略としてもしっかりと考えていかなければいけない、そういった内容だと思うんですけれども、技術が確立して、最終的にコスト競争になってしまったときに、海外に移転することがないような、そういった技術、また産業としての定着をどのように考えていくのか、お聞かせ願えますでしょうか。

加藤内閣官房副長官 輿水委員にお答えしたいと思います。

 今回の推進法の中にも、例えば基本理念の中で、健康長寿産業の創出、活性化により、我が国経済の成長に資するものとなることを旨とするということを明記させていただいているところでございます。

 実際、産官学が密接に連携して、我が国発の最先端の医療技術の開発をする、そこで終わったのでは次には進まないわけでありますので、それを、我が国の持っている物づくりの高い技術を継承、発展させていく、こういうことによって新たな産業を根づかせていく、そして、それによって雇用を創出していく、そういう循環をしっかりつくっていくことは極めて重要だというふうに思います。

 それからもう一つ、新たな雇用や産業を創出するためには、やはりベンチャー企業の役割も大変重要だというふうに認識をしておりまして、創薬等に係る投資促進を図るべく、バイオベンチャーなどの出資に実績のある産業革新機構に対する出資金を措置するなど、リスクマネーの供給を通じたベンチャー企業の支援に取り組んでいるわけでありまして、そうしたことを通じて、新たな企業が起こり、また雇用が創出されていく。

 そうしたことを今の御指摘も踏まえながらしっかり取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 私も、もともとそういった製造メーカーに勤めておりまして、量産品というのは海外に行く可能性があるんですけれども、日本のこういった繊細な、いろいろなところに気がきく、あるいは一つ一つに対応する、小回りがきく、そういったサプライチェーンをつくりながら、オーダーメードの医療機器とかオーダーメードの医薬品、最近、乳酸菌も一人一人の個人に合った乳酸菌が開発されている、それで個人個人の健康を本当に効率的に、そういったものもあるようでございます。

 日本は、そういった研究開発の段階で、あらゆるものを一つにまとめるというよりも、あらゆる要素技術を日本が持って、そしてそれぞれの要望する方に合った組み合わせの中で、オーダーメードのそういった製品を提供することによって、高付加価値、また国内の産業、国内の雇用、国内へ人材が集まるような環境ができるのかな、そのように感じておりますので、こんなことも検討していただきながら、海外への生産の移転がないような、そんな取り組みをぜひ戦略的に進めていただければと思います。

 そして、ここで、産業だけに目を向けるのではなく、もう一つ大事なことは、医療分野研究開発推進計画の策定のあり方について、やはり難病等の治療方法の研究開発も大変重要だと私は思っております。

 難病というのは、とかく患者さんの数が少ないという部分では、産業にそのまま結びつくものではない。ですけれども、私たち、いつ難病になるかわからない、国民にとっては非常に大事な課題であると思います。ただ単に、産業を意識していく、成長戦略だけではなく、そういったところにもしっかりと気を配って研究開発を進めていくべきだと考えますが、その点についての見解をお聞かせ願えますでしょうか。

中垣政府参考人 医療分野の研究開発予算につきましては、平成二十六年度におきましても、機構の設立に先立ちまして、九つの各省連携プロジェクトを立ち上げて、重点化を図っておるところでございます。その中で、難病克服プロジェクトというものを連携プロジェクトの一つとして位置づけておりまして、これは、各省合わせまして九十三億円の予算額を計上しておるところでございます。

 閣議で決定いたします健康・医療戦略、あるいはその戦略に基づいて策定する医療分野研究開発推進計画におきましては、先生御指摘の難病等に係る研究の重要性というものを踏まえながら、難病に関する研究開発というものをしっかり位置づけて推進してまいりたいと思っておるところでございます。

輿水委員 ここで大事なこととして、一つだけお願いしたいことがあるんです。

 先ほど、戦略を立てる上で、また計画を立てる上で、専門的な知識を持った方の助言と、さまざまな産業界の政策的な助言、と同時に、やはり難病等の当事者の皆さんの意見等もしっかりと踏まえながら、一体何が一番求められているのか、また、どんなことをしっかり進めるべきなのかをしっかり捉えて研究開発すべきだと思うんですけれども、その点につきましての見解をお聞かせ願えますでしょうか。

中垣政府参考人 医療分野研究開発推進計画の策定に当たりましては、患者さんも含めまして、関係各層から幅広い意見を伺った上で立案して、その実施を推進していきたいというふうに思っておるところでございます。

 現在、がんあるいは難病等の疾病対策につきましては、厚生労働省におきまして、患者の立場からの意見も伺い、治療、予防、研究開発など、総合的に検討する場が設けられておるというふうに承知いたしております。

 私どもといたしましては、こうした場も活用するなど、具体的な仕組みにつきまして、ぜひこれから関係各省と十分連携しながら検討してまいりたいと思っておるところでございます。

輿水委員 ありがとうございます。ぜひ当事者の皆さんの意見も大切に、計画の策定をお願いしたいと思います。

 それでは、残された時間で、研究開発成果の国際展開支援について聞かせていただきたいと思います。

 例えば、HALのような生体信号を受け取って動くロボットスーツ、これは今、もう国内のいろいろな施設でも活用されている。さらに、ドイツでも保険適用されて、治療等にも使われ出している。

 そういった、ある程度技術が確立をして、そして今進んでいるものもあるんですけれども、しかし、私は、確立してそれで終わりではなくて、ここからが勝負だというふうに考えます。ここからどうやってその製品の機能また用途をふやしながら国際展開をしていくのか、そして新しい産業として日本に根づかせていくのか、この取り組みが重要だと思うんですけれども、その点についての見解をお聞かせ願えますでしょうか。

石川政府参考人 お答えさせていただきます。

 今御指摘ありましたような新しい医療関係の機器などの国際展開でございますけれども、これにつきましては、政府の方の、昨年六月策定されました健康・医療戦略におきましても、新興国などのニーズに応じまして、新しい医療技術とサービス、それから医療機器のようなものをパッケージ、一体で展開していくというような方針をお示しいただいております。実際に、新興国などにおきましても、医療機器が単体で使われるというよりは、やはりいろいろな医療サービスとの連携の形で使われることが多いというふうに伺っております。

 したがいまして、経済産業省といたしましても、関係省庁と連携しながら、医療機関と医療機器メーカーなどが一体となって、日本型の医療サービス、機器を拠点をつくりながら展開していくという取り組みをさせていただいております。

 こういった取り組みのために、新興国などで事業性調査などもさせていただいておりまして、既に、成功事例といたしまして、昨年五月にはウラジオストクで日本式の遠隔画像診断センターというものを設立していただいたり、また、昨年十一月に総理がカンボジアを訪問されましたときには、その国初の高度救急救命センターを日本の企業等の資本で設立をするという取り組みをさせていただいております。

 こういった方向で、ぜひ政府一体で進めてまいりたいというふうに考えております。

柴山委員長 質疑時間が終了しております。

輿水委員 ありがとうございました。

 まさに健康・医療戦略、今言われたように、機器だけではない、サービスとして、全体として、いかに一人一人の健康また長寿に寄与していくのか、そういった視点で今後期待をしてまいりたいと思います。

 本日は、まことにありがとうございました。

柴山委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 みんなの党の中島克仁です。

 本日も時間をいただきまして、ありがとうございます。

 昨日も内閣委員会で質問をさせていただきまして、菅官房長官には御丁寧に答弁をしていただきました。

 きのうの質問から、我々のスタンスは、私自身も医師でございまして、医療・健康分野の研究開発を戦略的に推進することは大変重要なことだというふうに認識しておりますし、医療分野の開発を促進して健康長寿社会と経済成長の実現を目指すことには大いに賛同しておるところです。

 そして、先ほども言いましたが、私も、医学部を出て、その後研究にも、途中でドロップアウトしたんですけれども、携わった経験もございます。そして、そのような趣旨の中で、本日は、厚生労働委員会と内閣委員会の連合審査ということで、大熊委員にお願いをして、きのうもきょうも私は立たせていただいた。本来であれば、そういう経験をもとに、医者らしく、少しアカデミックな話をしたいというふうに思っていたわけです。

 一方で、昨日も質問いたしました、新たにつくられる独立行政法人日本医療研究開発機構について、きのうの質問、答弁の中でも、今後の予算規模、事業計画、全て法案成立後に、その進捗状況に従ってということで、明確にはなっていない。全ては法案が成立後、その後の状況で決められるということ。我々は、独立行政法人、きょう厚生労働大臣にも来ていただいておりますけれども、JEEDの問題も含めて、そのあり方そのものに対して、大変課題があるのではないか、そのように認識を持っておるところでございます。

 資料の三枚目なんですが、きのうの菅官房長官初め、多くの方々からの答弁をもとに、その予算規模、組織、人員規模、事業計画というのをまとめた日本医療研究開発機構の概要というものになるわけですが、これも後でちょっと触れさせていただきたいと思うんです。

 またかと思われるかもしれませんが、菅官房長官にまず冒頭に、内閣の中にある健康・医療戦略本部とは別で、なぜ、研究開発支援、予算配分を行うために改めて独法を一つつくらなければいけないのか、改めてもう一度お聞きしたいと思います。

菅国務大臣 健康・医療戦略本部のもとに、医療分野の研究費の配分機能を集約するために、今回、今委員御指摘の機構を設置することにいたしました。

 機構においては、プログラムディレクター、いわゆるPDの目ききを生かした基礎から実用化までの一貫した研究のマネジメント、さらに、知財の専門家による知財管理、知財取得戦略の立案支援や臨床研究をサポートする専門のスタッフなどの専門人材による研究支援、こうしたことを実施することによって、基礎から実用化まで切れ目のない研究支援が可能となるなど、医療分野の研究開発が戦略的に推進されていくものというふうに考えています。

 そういう意味合いにおいて、この健康・医療戦略本部のもとにこの機構を設置させていただいたということであります。

中島委員 大変重要な役割だということはきのうもお聞きしましたし、今のPDに関しても、先ほどちょっとテレビで答弁を聞いておったんですが、清水議員の質問に対して、重要な役割を負っているPDに関しては、今後、公募も含めて、日本のためにこういう人材を育てていきたいというような菅官房長官からの御答弁もございました。

 そして、きのうの答弁から、資料の三枚目なんですが、その予算規模、組織、人員規模については、理事長に加え、理事一名、監事二名、そのようになっておって、人員規模に関しては、いわゆる定年制職員は百二名を想定、そして、これに加え、二百名程度の専門人材等を業務経費により有期で雇用して、大体三百名規模ぐらいというふうになっております。

 一方で、予算規模に関しては、二十七年度以降に関しては、一千三百九十億円、これがベースになって、その後は事業計画自体の進捗状況によってというふうなことになっております。

 理事長については、きのうも言ったんですが、やはりこれは国家プロジェクト、昨年の日本再興戦略で、この医療・健康分野を成長分野としてしっかりとやっていくんだ、健康長寿社会に資する、この日本にとって大事な位置づけなんだと。それで、日本版NIHというような大きなことで報道された。

 その一方で、やはり、理事長についても、先ほど言ったPD、大変大きな役割を果たすんだと思うんです。それも今後育成していくというような感じであって、これは、全ては、括弧書きにありますが、通則法という中で、要するに独立行政法人の法に従ってということになっておるわけですね。その大事な役割、今も官房長官から御答弁ございました。大事であればあるほど、なぜそれを独立行政法人、内閣から外に出してやらなければいけないのか。

 そして、これはちょっと資料では出していませんが、昨年の六月十四日、日本再興戦略のときの閣議決定の内容なんですが、「革新的な医療技術の実用化を加速するため、医療分野の研究開発の司令塔機能を創設する。」具体的なことは成長戦略としてしっかりとやっていく、その趣旨まではいいんです。ただ、もうそのときには、「一元的な研究管理の実務を担う独立行政法人を創設する。」と最初からうたっているわけですね。

 そもそも、この成長戦略に資する日本版NIHとも言えるようなものに対しては、スタートラインから、独立行政法人が必要なんだというスタートから入っているんです。私自身は、何度も言うように、JEEDの問題もございます、その体質そのものが問題視されておると。

 なぜその大事な機能の部分を内閣の中で一元化してやっていかないのか。これは、外に出して独立行政法人としてしまうと、要するに、国の管轄外、一応ですよ、公的な部分とはいいながら、大臣権限の問題、要するに、その通則法自体に、大臣権限、警告はできるかもしれないけれども処罰できないとか、そういったことになってしまう。

 そういう中で、やはりこれは、スタートラインから、どうして、そもそも独立行政法人でそんな重要なことをやらなければいけないのか。これもきのうから堂々めぐりのようになってしまっておるんですけれども、官房長官から、これは重要な役割なんだ、PD、POも含めてですけれども、そういった方々がそうやって担っていくんだと。

 日本版NIHという言葉ではないというふうになっておるわけですが、本場のアメリカでは、研究所と研究所以外の施設を合わせて二十七の施設、事務局とで構成されておる。今回の機構に研究機能を集約しないということになっております。ただ、今後、きのうも言いました、小さく産んで大きく育てると。その到達点というのは、これは本会議の答弁でもあったんですけれども、日本の研究情勢とか、いろいろな分野の中で、日本らしいものをということはわかるんですが、将来的には、こういうマネジメント分野とか研究開発部門を集約した、アメリカ、本場のNIH、そういったものを目指すのかどうか、その辺についてはいかがでしょうか。

菅国務大臣 まず、委員に御理解をいただきたいんですけれども、この機構の中で全てを決めていくということではないんですね。健康・医療戦略推進本部、これは総理が本部長ですから、総理、本部長のもとに全閣僚が出席をして、また有識者、専門家、そうした人たちから意見を集約して、重点政策をまず決めるわけです。そうした決定したものについて機構で、今申し上げましたけれども、PDを初め、さまざまな専門家の人たちも集めて実行に移していく。

 やはり、従来我が国で一番欠けていると言われている、基礎研究分野は世界でも四番とかそれぐらいの位置ですけれども、臨床研究分野というのは、ここはなかなかうまくいっていない。そして、実用化まで時間もかかる。そういうものをシームレスに、せっかく日本の基礎研究ででき上がって、そして成果が上がったものを実行に移す、そういう機構というものを私たちは考えているわけであります。

 そして、そのことによって、世界に冠たる長寿社会を私たちはこれからもつくる。それも健康な長寿社会をつくろうとしておりますし、そして、この健康・医療分野の医薬品だとか機器というのは二兆二千億円の輸入超になっていますから、そうしたこと全体を踏まえた中で、この機構で、今私が申し上げたような目的の達成のために実現をしていきたい、そういう思いでこの機構も当初からつくらせていただいたわけであります。ただ、スクラップ・アンド・ビルドの法則の中で、今まである厚生労働省の所管の独法については一つ減らさせていただいたところでもあります。

 委員は専門家でありますから、そうしたことも踏まえての質問だろうというふうには思いますけれども、アメリカとは違って、やはり日本は日本独自の、そして、それぞれの大学だとか研究所でしっかりと成果も上げていますので、そういうものに配慮しながら日本型のものをつくり上げていきたいということであります。

中島委員 きのうも丁寧にお答えいただきまして、今も丁寧に答えていただきました。

 冒頭にも言いましたように、医療分野、そういったものに対する革新的なものを育成していく、そういうプロジェクト自体を否定しているわけではありません。その大事な予算配分を含めて、それを担うのがなぜ独法でなければいけないのか。

 どうしてもということで、この資料にも出しました、きのうも出したように、スクラップ・アンド・ビルドの原則ということも今官房長官からもございました。あしたは厚生労働委員会でその二つの独法についての審議もございますので、続きはそちらでやりたいと思うんですけれども、一方では、健康・栄養研究所は人員規模は非常に少ない、そこを基盤研究所と統合させて、スクラップ・アンド・ビルドの原則に基づいてこちらは一減ということになるわけですが、昨年の再興戦略、既に最初のスタートラインから、新しい独法をつくるんだ、それが盛り込まれているわけですね。

 そういう中で、今回そういう、スクラップ、何度も言ってちょっと口が回らなくなってくるのであれなんですが、要するに、どうしてスタートラインからそういう感覚になってしまうのか。先ほど言ったように、それだけ重要であれば、重要性は大変認識しているわけですから、だからこそ、それを国の管轄から一歩出て独立行政法人で担わなければいけない理由が私にはいま一つ納得できない。

 先ほど言った、それとは違う観点でいけば、厚労の二つの所管の独法が一つになる、一方でこうだと。文科のJST、経産のNEDO、厚労の基盤研、これはやはり、研究開発から出口戦略までということであれば、一つになって、まさに今、文化によって、日本の状況も違うということでございましたが、アメリカのNIHにまさるとも劣らないものをつくるんだということであれば、本当に一体化して、まさにそれが、縦割りを取っ払って、日本の成長戦略として育成していく、そういうためのものではないかなという問題意識を持っております。

 時間になってしまいましたので、続きはあした厚生労働委員会で厚生労働大臣とさせていただきたいと思いますけれども、我が党としては、何度も言うように、このプロジェクト自体には大変賛同しております。ただ、そのたてつけ自体に非常に問題意識を持っておるということはきょうも言わせていただいて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

柴山委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 結いの党の井坂信彦です。

 本日は、時間も限られておりますので、本件と総合科学技術会議との関係、一点に絞ってお伺いをいたします。

 日本再興戦略に基づき、司令塔機能を発揮し、府省の枠を超えて基礎研究から実用化、事業化まで見据えた研究開発を推進、そして、方針を定めて予算を重点配分し、重要課題ごとに研究計画や出口戦略を策定するPD、プログラムディレクターを置く。実は、これは、本家日本版NIHではなく、先月国会で可決された総合科学技術会議の科学技術イノベーション創造推進費五百億円の説明資料を今読ませていただきました。目的もやり方も、うり二つに見えるわけであります。

 先ほど、維新の清水議員の質問に対して、総合科学技術会議は全体の司令塔だ、そして、今回の本部は医療分野の総合調整だ、相互に緊密に連携しながらやる、こういう官房長官の御答弁がありました。

 はっきりしないのは、この健康・医療戦略推進本部と総合科学技術会議の組織的な上下関係であります。前段の答弁は既にいただきましたので、お伺いいたしますのは、この日本版NIHは、屋上屋なのか、中二階なのか、それとも隣に立った新築の家なのか、両者の上下関係に絞ってお伺いをいたします。

菅国務大臣 まず、上下関係ではないということです。

 表現の仕方、今言われた中でいえば、同じ敷地内に新築ができたんじゃないかなと思います。

井坂委員 そういう表現をいただきますと、どちらが母屋でどちらが離れなのか、こういう気もしてくるわけでありますが、それでは、具体的に、どういうふうに物事が動いていくのか、予算要求の仕組みについて伺います。

 各省庁や、それからインハウスと言われている国立の研究所、この医療分野における研究費の予算要求の際には、総合科学技術会議と今回のこの本部と、どちらの方針に従って予算要求をするのか伺います。

菅国務大臣 まず、この医療分野の研究開発の予算の総合調整は、総合科学技術会議が定める科学技術イノベーション政策全般に関する基本的な方針との整合を図りながら、医療分野の特殊性を踏まえて、健康・医療戦略推進本部が行うものであります。総合科学技術会議の事務局と健康・医療戦略本部の事務局は、日ごろから常に意見交換を行うことで、双方の方針に整合性が確保されるように調整をすることになります。

 いずれにせよ、関係研究所等も混乱がないよう、政府としてしっかり取り組んでいきたい。そういう意味で、私は同じ敷地内という話をさせていただいたんです。

 この健康・医療推進本部において重点項目というものを決定して、医療分野、これは九分野ですか、決定をしたものについて、新たに総合科学技術会議と連携をしながら進めていくということでありまして、そこを機構が、そうした方針に基づいてしっかりと実行に移していただいて、PDも含めて新たな専門的な分野の人材も確保しながら、基礎、臨床、そして実用化というものを切れ目のないように行っていくという思いであります。

井坂委員 連携とか相互に調整ということで、まさに、だからこそ、同じ敷地に建った二つ目の家なんだ、こういうことであります。

 更問いの形になりますが、私、今のお答えを聞いておりまして、やはり疑問に思いますのが、もともと文科省、厚労省、経産省、これはまさに安倍総理のもと、同じ敷地に建った家同士だったんだと思うんですね。そういうところのまさに連携や総合調整が非常に難しかった、気持ちはあったけれども、現場でなかなかそういうことができてこなかった、だから総合科学技術会議のような場所ができ、そしてさらに、そこに独自の五百億の予算がつき、プログラムディレクターを置き、こういうふうに進んできたと思うんです。

 ところが、今のお答えでは、また同じように、総合科学技術会議と、そして今回できる日本版NIHの本部が同じ敷地の別の家としてやっていく。総合調整、連携、こういう話になってくると、何か同じことをまた繰り返しかねないのではないか、こういう懸念を持つわけですが、もう一度お答えいただきたいと思います。

菅国務大臣 まず、先ほども申し上げましたけれども、総合科学技術会議、これは科学技術とイノベーション全体の推進のための司令塔である。そして一方、健康・医療戦略推進本部は、医療分野の研究開発に関する総合調整を行う。

 なぜこうしたかということであります。委員はその部分が一番疑問だというふうに思いますが、その背景には、医療分野の現状を考えるときに、まず、世界最高水準の医療を実現したい。さらに、現在日本は、医薬品だとか、あるいは医療機器の輸入超が二兆二千億円であります。そういう中で、世界最高水準の医療を実現すると同時に、戦略性を持って健康・医療産業というものを海外にも展開していきたい。

 それと同時に、医療については、人を対象として、健康に悪影響を及ぼしてしまいかねない試験を伴う臨床研究がある。あるいは、薬事法に基づいての承認審査がある。他の研究分野にはない過程を必ず経なければならないという特殊性もあるわけであります。

 そういう中で、さらにこれから、この長寿社会の中でますます比重が大きくなってくるということも事実じゃないでしょうか。予算規模、あるいは将来、さまざまなことを考えた中で、やはりここは健康・医療に特化した、そうした推進本部というものが必要だという判断をしたわけであります。

井坂委員 分野の重要性、だから特化、ここはわかるのであります。しかし、この特化した部分ともとの部分が上下関係ならわかるんですよ、上下関係なら今のお答えで私も一定納得できるんですが、別建てだと。結局、そこにあるのは連携と総合調整だということになると、この三省庁ができなかったこと、難しさがまたそこに新たに生じるんじゃないか、こういう懸念を持つわけです。

 もう一つ具体的にお聞きしたいと思いますが、総合科学技術会議では、五年ごとに科学技術基本計画を策定して、その中で最重点アクションプランとか、その下の重点施策パッケージ、この対象になった予算要求は財務省査定で事実上切られにくい仕組みになっている、こういうふうにこれまで説明を受けてきたわけであります。

 既にあるこういった仕組みと、今回の本部の行う総合的な予算要求配分調整と書いてありますが、この関係については実務上どうなっておりますでしょうか。

菅国務大臣 まず、従来の厚生労働省、経済産業省、それに文部科学省、その縦割りというものを排除して、ここをシームレスにするためにという話をさせてもらいました。今までと同じじゃないかなということですけれども、今回は、総理大臣を本部長とする健康・医療戦略本部というのをつくりまして、それに全閣僚が参加をし、そこで重要事項を決定するということでありますので、そこは従来の三省とは全く違うということをぜひ御理解いただきたいと思います。(井坂委員「総合科学技術会議とは」と呼ぶ)

 ですから、総合科学技術会議との違いは、先ほど私申し上げましたけれども、健康・医療については、今のような形で、本部の中で、総理が本部長、全閣僚が出席をして重要事項を決定するという仕組みでありますから、まず従来の縦割りは排除される、ここはそのように考えています。そして、健康・医療に関するものについては、今度新しくつくるところでそうした分野については基本方針を決めていきたいということであります。

菱山政府参考人 総合科学技術会議は、科学技術イノベーション政策全般にかかわる基本的な方針を定めるということは御指摘のとおりでございます。その方針との整合性を図りつつ、医療分野の特殊性を踏まえまして、健康・医療戦略推進本部は医療分野の研究開発に関しまして医療分野研究開発推進計画というものを策定いたします。これにのっとりまして、本部が総合的な予算要求配分調整を実施するということにしております。

 なお、総合科学技術会議は、平成二十六年度予算につきまして、平成二十六年度アクションプラン対象施策に医療分野を、重点対象の一つに位置づけております。この分野につきましては、健康・医療戦略推進本部の総合的な予算配分調整のもとで取りまとめられた各省連携プロジェクトをアクションプランの対象施策というふうにしております。

 具体的にはこのようにして、相互に連携をしていっているというものでございます。

井坂委員 今の実務の割り振りをお伺いすると、何かやはり上下関係があるのかなというような聞こえ方はするんですね。

 今回、本当に私がお聞きしたいのは、この目的は大賛成なんです。府省の縦割りを排して基礎研究から実用化まで橋渡しもしっかり、プログラム的に予算配分をしていく、これは大賛成なんです。ただ、もともと総合科学技術会議が、まさに総理をトップに置いて、確かに全大臣じゃない、だったら全大臣入れたらいいじゃないかと逆にさっき思ったぐらいなんです。

 ただ、本当にそういう目的でやっておられて、今回またその中から医療分野が完全に切り出されて、総合科学技術会議は、官房長官の御答弁では、総合、ただし医療・健康分野を除く括弧閉じるみたいな、そこは完全に切り離されたようにも聞こえましたし、でも、今、実務のお話を伺うと、やはり総合科学技術会議の予算重点があって、ここの部分はうちに任されているんだ、こういうふうにも聞こえましたので、いま一つわからないわけであります。

 ちょっと最後に、通告どおり一点だけ官房長官に伺いますが、これはある種、頭の体操的になりますが、本部を仮に置かずに、科学技術会議の戦略的イノベーション創造プログラムの四分野の一つにもう既にこの分野は位置づけられていて、ただしこの分野だけは実際プログラムディレクターを科学技術会議側が置かずにこちらに任せている、今こういう感じになっていると思うのですが、置かずに、科学技術会議そのものが本部の役割を担ったら何か不都合があるんでしょうか。最後にお伺いしたいと思います。

菅国務大臣 まず、一点訂正をさせていただきたいのですけれども、総合科学技術会議の中に医療も全体の中の一つとしては入っています。ただ、そこの中の総合調整の中から、健康・医療分野については今度新しい本部でやるということでありますので、完全に医療がなしということではありません。ですから、その説明で今委員に誤解を与えたとすれば、そこは申しわけないというふうに思いますので、訂正をさせていただきたいと思います。

 これは、先ほど来申し上げましたけれども、医療分野というのは、ほかの研究分野、宇宙とかそういうものと違って、特殊性ということがあることであります。こうした特殊性も踏まえた中で、やはり予算というのは総合的に健康・医療の中で行うというふうに考えています。

 現時点において、総合科学技術会議における戦略的イノベーション創造プログラムにおいては既に四分野の一つにこれは位置づけをされておるわけでありますけれども、その特殊性というものを考える中で、今回、このような仕分けをさせていただいて、この法案を提出させていただくことになったものであります。

柴山委員長 井坂君、質疑時間が終了しております。

井坂委員 わかりました。

 時間が終わりましたので、以上といたします。どうもありがとうございます。

柴山委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 早速質問します。

 日本版NIHの創設は、昨年六月十四日の日本再興戦略の中に、医療分野の研究開発の司令塔機能として位置づけられました。

 とはいえ、職員一万八千人、三兆円を超える国家予算と自前の国立研究所を傘下に持つ米国NIHとは違い過ぎる、日本版NIHと呼ぶべきではない、そういう議論がされてきたと思います。

 ただ、米国だって、最初は、自由の女神がある島に、ヨーロッパからの移民や一般大衆を対象にした海軍病院と医師一人、顕微鏡一台の検疫所が前身だったというわけですから、規模で比較する問題では本当はないんだろう、私はこのように思っています。

 そこで、中身でいうところのアメリカのNIHとの違いは何でしょうか、今回の構想と。

菅国務大臣 私どもも、規模だけということはなくて、やはり日本とアメリカの歴史、そうしたものが違うというふうに思いますし、日本の中で一番効率的、実用的な形をとらせていただいたということであります。

 アメリカのNIHというのは、研究領域ごとに分権された二十七の研究施設があります。各研究所で研究開発を実施するとともに、研究費の配分も全ての研究所の中で完結できるような仕組みになっておりまして、その二十七の独立した上に全体があるというようなのがアメリカだというふうに私どもは認識をいたしております。

 一方、我が国の体制でありますけれども、今日までの研究開発推進体制を考えるに当たって、我が国の実情というものも十分に勘案しながら、今回、この機構を設計させていただいたということであります。医療の研究、医療機関の連携を十分に図ることで一体的な組織にしたい、また、自前の研究所を持たずに、研究費の配分、研究管理・支援等に特化した法人としたものであります。

 こうした形にしたというのは、我が国においては、これまで大学や研究所等において医療分野のすぐれた研究が行われてきたという実績があります。また、そうした中にあって、これらの既存機関の能力及び機能を最大限活用して、機構が一体的に研究管理・支援などを実施することが最も効率的で効果的な方法だろうという中で、このような制度設計をさせていただいたものであります。

高橋(千)委員 米国NIHが自前の研究所を持っていると同時に、八割が基礎研究であることやボトムアップ型の研究であるということと、日本の場合は、トップダウンの、戦略を持っての研究の配分ということが一番の違いなのかな。また同時に、政治や官僚からの独立ということも一つ大きな課題なのかなと思っています。ちょっと時間の関係でその議論はできないんですけれども。

 そこで、次に進むんですけれども、初年度は、各省が持っている予算千二百十五億円を集めてスタートをするわけであります。四分野、九つの領域を健康・医療戦略推進本部のもとで行うということになるわけですけれども、これらは、あらかじめ決められた答えを導き出すのに五年で結果を出せというイメージなのか。

 それから、インハウス、国の研究機関は七百五十億円、ボトムアップ型の基礎研究と呼ぶ科研費の部分は六百五十億円、このバランスが今後どうなっていくのか。重点がトップダウン型にいずれは集中していくということなんでしょうか。伺います。

菱山政府参考人 まず、九つの連携プロジェクトの件でございます。

 健康・医療戦略推進本部は、医療分野の研究開発の基本方針として、おおむね五カ年計画であります医療分野研究開発推進計画を作成いたします。

 この計画は、中長期的な展望を踏まえた上で、今後五年程度の期間中に集中的かつ計画的に実施すべき研究開発を定めるというものでございます。大体、連携プロジェクトの取りまとめなどによる予算の重点化というのはこの計画に基づいて行うもので、したがって、中長期的な展望の中での今後五年程度の期間を想定したものでございます。

 したがいまして、必ずしも五年といった期間中に結果を求めるようなものではありませんが、ただ、適切に進捗状況を評価するという観点から、一定期間ごとにマイルストーンを設定して、適時適切にその到達度について評価をしたいというふうに考えております。

 それから、もう一つの御質問である、ボトムアップの基礎研究、機構におけるトップダウン型のプロジェクト研究、それからインハウス研究のバランスと、その予算の拡大についてはどうかという御質問でございます。

 先ほど申し上げました医療分野研究開発推進計画に基づきまして、この推進本部は、医療分野の研究開発の司令塔といたしまして、実用化を見据えたトップダウン型のプロジェクト研究と、それから、運営費交付金等の財源措置によって運営されています独立行政法人がみずから行う、いわゆるインハウス研究に関しまして、総合的な予算要求配分調整を行うということでございます。

 この本部の調整におきましては、国の戦略を実施に移す上で、適切なバランスを保ちつつ、必要な予算を確保していこうということが重要であるというふうに認識しております。

 それから、ここで今申し上げました点とは別に、将来における学術的な新知見やイノベーションの芽を絶え間なく育んでいくために、研究者の自由な発想に基づくボトムアップ型研究の基礎研究も非常に重要なものだというふうに認識しております。

 この観点から、文科省の科学研究費助成事業につきまして、機構への集約の対象とはせずに、引き続き日本学術振興会等を通じて配分するということになっております。

 以上でございます。

高橋(千)委員 五年が一つの区切りなわけですけれども、結局、結果を急ぐことが、今回の理研の問題のようにさまざまな問題を起こすわけですから、そうではないということを確認したいなと思うのと、バランスがすごく大事でして、トップダウンに集中していくとやはり違うだろうということを確認したかったわけであります。

 そこで、難病患者が研究に寄せる期待というのは非常に大きいわけであります。

 昨年八月八日の毎日新聞で坂口元厚労大臣が発言をされておりましたけれども、難病治療研究振興財団を設立された、その中で、確実で成功が見込まれる既存医薬品の適応拡大を提唱されています。莫大なコストと時間のかかる創薬だけが道ではないということを指摘されて、非常に重要だなと思っているわけです。

 これまでも、関係団体や患者団体などからの要望を受けて適応外薬の承認に取り組んできたと思いますが、どの程度の疾患が承認に結びついているのか、簡潔にお願いします。

今別府政府参考人 御指摘の適応外、それから、外国で承認をされて日本では承認をされていない未承認薬、この二つにつきましては、二十一年の六月から二カ月間にわたりまして、患者団体や学会からの要望を取りまとめをいたしました。

 それを受けまして、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議におきまして評価を行った上で、製薬企業への開発要請あるいは開発企業の公募を行って、結果といたしまして、百四の御要望について医薬品の承認までこぎつけたところでございます。それから、二十三年の八月から、また同じようなことをいたしまして、これで結果的に十三品目の承認が追加をされたということでございます。

 また、昨年の八月からは、従来二カ月に限って募集をしておりましたけれども、そういう期限を設けずに通年で募集をするということにいたしました。

 難病患者の方々の御期待に沿えるように、引き続き努力をしてまいります。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 やはり革新的創薬だけが道ではないんだということで、患者の皆さんは、例えばアメリカの成果ですとか、本当にいろいろ研究をされて、こういう道もあるんじゃないかということをさまざま提案されている。そういうこともしっかりと取り上げていただきたいというふうに思って、今確認をさせていただきました。

 今、難病の問題、これから新法ができるわけですけれども、希少性という要件ではじかれるとか、診断基準を満たさないために、いまだに病名もつかない、そういう疾患がたくさんあります。こうした方たちの一縷の希望が研究班の調査研究であります。新機構への移行で研究費確保が困難になるのではないかと大変心配をされているわけですが、むしろしっかりと予算を確保していくべきと考えますが、厚労大臣に伺います。

田村国務大臣 今委員から新法のお話がありました。この新法において、難病の発症の機構でありますとか、それから診断、さらには治療、こういうことに国としても力を入れるというふうに書いておるわけであります。

 この新独法ができますと、総合調整をするという中において、この難病も入ってくるわけでありますが、そこは九つのプロジェクトということでございまして、この中に難病克服プロジェクトというのもあるわけでございますから、ここはしっかりやっていくわけでありますが、二十六年度も九十三億円予算を確保しております。あわせて、先ほどの診断でありますとか、また発病の機構等々を含めて、厚生労働省の中にも十八億円ほど予算を確保いたしております。

 いずれにいたしましても、難病対策は大変大きな課題でございますので、これからも新独法と協力しながらしっかりと進めさせていただきたい、このように思っております。

高橋(千)委員 しっかりとということをお答えいただいたと思うんです。

 最後に、官房長官にもう一度質問したいと思うんですが、健康・医療推進法案の目的が、世界最高水準の医療の提供に資する研究開発等により、健康長寿社会の形成に資する、こういうふうにあるわけですけれども、そこに、新たな産業活動の創出、活性化と一体で重点化を図ると書いているわけですよね。

 そうすると、研究の成果を誰に還元するかという問題があると思うんです。今お話ししてきたように、やはり難病患者の皆さんが本当に待ち望んでいて、そこに還元をされていくというように、やはり最後は保険に収載されることで国民の負担を軽減して広く喜ばれる道を目指すべきだと私は思っているわけですけれども、高度な先進医療がどんどんどんどん進んで、医療ツーリズムですとか、そっちに重点が行くというのでは困るわけですが、そこのすみ分けというんですか、どこに還元するべきかということで、官房長官に伺いたいと思います。

菅国務大臣 どこに還元するかということであれば、それは国民に還元するという形に尽きるわけであります。

高橋(千)委員 予想以上にシンプルな答えでありましたけれども、国民に還元する、これは簡単なことですけれども、実はなかなか実態はそうなっていないということがあって、指摘をいたしました。

 もう質問はしませんが、米国のNIHが、だって、実際は米国は皆保険ではないわけですから、一番これで助かっているのは製薬会社なわけですよね。製薬会社が世界で活躍をしている基礎研究の部分を、一番お金がかかる部分をNIHが支えている、そこに学んじゃ困るんだよということが言いたかったわけでありますので、続きは厚労委員会でやりたいと思います。

 終わります。

柴山委員長 次に、村上史好君。

村上(史)委員 生活の党の村上史好でございます。

 もう私が最後ということで、主な論点も出尽くした感がございます。私は、ニッチな部分について、また納得がいかない御答弁に対して質問をさせていただきたいと思いますけれども、そのすき間さえなくなってしまったという感で、大変苦労をしております。

 まず、この法案の目的、基本理念についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 この法案は、産業競争力強化法、産業競争力の強化に関する実行計画から具体化をするということ、経済成長の実現に資するということ、また、健康長寿社会の実現、健康寿命の延伸に資するためにということで法案が提出をされておりますけれども、昨日も疑問の声がありました。それは、人の健康また医療を経済成長あるいは成長戦略の中に入れるのは違和感があるという声がございました。

 私自身も、健康の問題あるいは医療の問題というのは、人の人生観にもかかわる、あるいは死生観にもかかわる問題だと思っております。そういう面で、あえてこの法案の中で健康長寿社会の実現ということを強調されている理由をお聞かせください。

菅国務大臣 我が国は、先輩の皆さんの御努力によって、世界で最も長生きをすることのできる長寿社会を迎えることができました。さらに、そういう中にあって、やはり健康寿命というのが極めて大事なことになってきていることも事実ではないでしょうか。そうしたことの中で、やはり、長生きをしたことがよかった、そういう社会をつくっていくのは極めて大事だというふうに思います。

 それと同時に、我が国がなし得たことを、やはり世界各地に我が国の健康・医療というものをしっかりと戦略的に進出していく、このことも大事だろうというふうに思っています。

 そうした観点の中から、今回、そういう目標の中でこの法案を提出させていただいたところであります。

村上(史)委員 まさに健康寿命社会を実現する、これに対して誰も反対する人はいないと思います。単に長寿だというだけではなくて、健康で幸せに暮らす社会を実現していく、そのための研究開発であって、今回の機構であるということだと思います。

 ただ、私は疑り深いものですから、ちょっとお聞きしたいんですけれども、かつて、勤労者の福利厚生を向上させるためにという誰も反対しないような大義名分のもとで、厚労省の管轄の特殊法人が、やたらグリーンピアという施設をつくりまくって、大赤字を出したということもございました。これは別に厚労大臣に申し上げているわけではないんですけれども、事ほどさように、誰もが反対できないことを前面に出すことによって、肥大化するおそれがある、不必要な予算までついていくんじゃないかという危惧を持っているんですけれども、その点に対して御見解はいかがでしょうか。

菅国務大臣 そこは、委員のような皆さんから国会で厳しくチェックを受けるわけでありますし、私どもも、総合本部の中で閣議決定をして堂々と国会に予算として提出をするわけですから、そこでしっかりした御議論をいただいて、もしその方向性と違うということであれば、批判をしていただいて、是正をしていくというのが当然のことだというふうに思います。

 ただ、いずれにしろ、健康長寿社会、そして、今、我が国の得意分野だと私は思っていますけれども、医薬品とか医療機器が輸入超になっているということであります。基礎研究は優秀だ、しかし、なかなかそこが実用化まで結びついていかない。そういうことについては、この法案を成立させていただくことによって、しっかりと目的を果たすことができるというふうに考えております。

村上(史)委員 もちろん、国会がそういう問題点についてはチェックしていく、それは当然なんですけれども、ややもすると、独立行政法人というのは、その名のとおり独立した法人でございますので、国会のチェックがききにくいという部分もありますので、その点はきっちりとやはり押さえていかないといけないのかなというふうに思います。

 それでは、日本版NIHについて、名称にこだわるわけではありませんけれども、安倍総理は、わざわざ施政方針演説の中で、日本版NIHを創設するんだと強い決意で全国民に対して発表をされました。

 しかし、出てきたこの法案については一言も日本版NIHという言葉がないということで、昨日もそのことについて若干の言及がございましたけれども、単に言葉がなくなっているということだけではなくて、今回の機構そのものに、いわゆるアメリカのNIHと似て非なるものになってしまったから、もうとても日本版という名称をつけられないというのではないでしょうか。いかがでしょうか。

菅国務大臣 それこそ疑い深いなというふうに思うところでありますけれども、ぜひ素直に受け取っていただきたいというふうに思います。

 当初、日本版NIH、そういうふうに私ども呼んでいたことは事実であります。ただ、この組織が、どうしても米国のNIHと、ひとり歩きをする危険性が出てきましたし、私どもも、今回、今御審議いただいていますこの二法案について、健康・医療戦略推進本部、あるいは日本医療研究開発機構という名称を定めたということもありまして、日本版NIHという呼称は使用しないということになっているところであります。

 また、本件については、私が取りまとめた骨子に基づいて、昨年の六月に、日本再興戦略において、医療分野の研究開発の司令塔機能の創設を閣議決定し、具体的には、司令塔の本部として、内閣に、総理大臣、担当大臣、関係閣僚から成る推進本部を設置する、さらに基礎から実用化まで切れ目のない研究管理の実務を行う独立行政法人を創設する、こういうことを決定させていただきまして、それに基づいて体制を着実に進めて、今回、法案提出になったわけであります。

 ですから、呼称につきましては、日本のよさ、日本の現実的な選択の中で、このような体制の法案を出させていただいたということです。

村上(史)委員 一応、納得をさせていただきます。

 それで、毎回、官房長官と議論することですが、いわゆる内閣府の膨張の問題、肥大化の問題です。

 実は、今回の医療分野を総合科学技術会議の司令塔機能から外した形で提案をされているということについて、わざわざ独立行政法人をつくるということに対する質問をする予定でありましたけれども、もう既に井坂委員、また中島委員からも何度もそのことが指摘をされておりましたので、若干視点を変えまして、いわゆる肥大化の問題として捉えたいと思います。

 田村大臣、このことについてちょっと御感想を後でお聞きしたいと思いますので、通告しておりませんけれども、後ほど大臣にお聞きしたいと思います。

 今、内閣府で、総理大臣並びに官房長官が主管する合議体、会議体が五十九ございます。そして、そのうち二十が、安倍内閣が発足してからふえた合議体、会議体でございます。

 今回の法案も、健康・医療戦略推進本部からこういう形で法案が提出をされたということで、先ほど、委員とのやりとりの中で、同じ敷地内で建物がたくさん同居しているんだというお話がありましたけれども、同居にも限界がございまして、現住所にたくさん人が集まり過ぎて、もうこれ以上許容できないというところまで進んでいくのではないか、そのことは何度も官房長官ともお話をさせていただいております。

 今回、新たに日本医療研究開発機構という独立行政法人をつくるわけであります。確かに、一元的に管理をし、そしてまた各省庁間に横串を刺して、政治主導で物事を進めていく、この考え方は全く間違いではないけれども、しかし、余りにも重た過ぎれば、仕事もだんだん重くなってしまって、動きが悪くなってしまう、そういうおそれがあると思います。

 本来、こういう組織が軌道に乗れば、やはり本籍に帰っていただくということも必要だと思います。今回の法案については、厚労省の方に、本籍地へ帰っていただくということも将来的にはどうかなと私は思うんですけれども、帰すべきではないかというふうに思いますが、まず菅官房長官、そして田村大臣の御見解をお伺いして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

菅国務大臣 この法案がそれぞれ政党の皆さんの御理解をいただいて成立する、そして動き始めた後に厚労省ということでありますけれども、まず、内閣府全体として余りにも肥大化し過ぎている、このことは私自身も痛切に感じています。ここは整理をしていかなきゃならないというふうに思います。

 ただ、この機構について、所管が厚生労働省というのは、私は正直言っていかがかなというふうに思います。やはり、大事でないから帰すというわけではありませんけれども、高齢化社会が進行する中で極めて大事な分野です。これは、予算規模からしても、あるいは高齢者の方がどんどんふえるわけでありますから、そうしたことを考えた中で、やはり縦割りを排除できるところに置いておく必要があるだろうというふうに思いますけれども、他の分野で役割が終わったものも数多く内閣府に残っているというふうに私は思っていますから、そういうものは不断の見直しが必要だと思います。

田村国務大臣 厚生労働省も巨大省庁でございますので、他の役所のことをとやかく言うわけではないわけであります。

 それぞれの内閣で必要な会議体をおつくりになられて、安倍内閣でもつくられておるんだと思います。そのときそのときで、必要がなくなったものに関してはまた整理をされていくんだと思います。

 この機構に関しましては、やはり、文科省は文科省で強いところがある、我が省は我が省で強いところがある、そして経産省は経産省で強いところがある。シーズからニーズにつなげるまで、それぞれの役割というのがあります。ただ、それが縦割りという形でなかなか機能しないという中において、うまく連携しようという形で今般の機構をつくっていただくということでございますから、これをうまく生かしながら強みをそれぞれ伸ばしていく必要があるのではないか、このように考えております。

村上(史)委員 ありがとうございました。終わります。

柴山委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午後零時二十九分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

 健康・医療戦略推進法案

 独立行政法人日本医療研究開発機構法案

は内閣委員会議録第八号に掲載


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