衆議院

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第9号 平成28年4月18日(月曜日)

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平成二十八年四月十八日(月曜日)

    午後二時二分開議

 出席委員

   委員長 山本 幸三君

   理事 後藤 茂之君 理事 佐藤ゆかり君

   理事 新藤 義孝君 理事 寺田  稔君

   理事 山口 俊一君 理事 篠原  豪君

   理事 宮崎 岳志君 理事 桝屋 敬悟君

      伊藤 達也君    池田 道孝君

      江藤  拓君    小倉 將信君

      大串 正樹君    大野敬太郎君

      勝俣 孝明君    菅家 一郎君

      木村 弥生君    田中 英之君

      谷川 とむ君    中谷 真一君

      野中  厚君    鳩山 邦夫君

      福田 達夫君    牧島かれん君

      宮川 典子君    山田 賢司君

      青柳陽一郎君    緒方林太郎君

      吉良 州司君    寺田  学君

      松田 直久君    角田 秀穂君

      中川 康洋君    田村 貴昭君

      宮本 岳志君

    …………………………………

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (まち・ひと・しごと創生担当)          石破  茂君

   内閣府大臣政務官     牧島かれん君

   厚生労働大臣政務官    三ッ林裕巳君

   政府参考人

   (内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局次長) 麦島 健志君

   政府参考人

   (内閣府地方分権改革推進室次長)         池田 憲治君

   政府参考人

   (内閣府地方創生推進事務局次長)         川上 尚貴君

   政府参考人

   (総務省大臣官房地域力創造審議官)        原田 淳志君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 金子  修君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中山 峰孝君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           浜谷 浩樹君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            生田 正之君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    藤井 康弘君

   政府参考人

   (林野庁森林整備部長)  本郷 浩二君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           北本 政行君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           杉藤  崇君

   衆議院調査局地方創生に関する特別調査室長     佐々木勝実君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十八日

 辞任         補欠選任

  伊藤 達也君     大串 正樹君

  小泉進次郎君     木村 弥生君

  柿沢 未途君     松田 直久君

  樋口 尚也君     中川 康洋君

同日

 辞任         補欠選任

  大串 正樹君     伊藤 達也君

  木村 弥生君     小倉 將信君

  松田 直久君     柿沢 未途君

  中川 康洋君     樋口 尚也君

同日

 辞任         補欠選任

  小倉 將信君     小泉進次郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第五二号)


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局次長麦島健志君、内閣府地方分権改革推進室次長池田憲治君、内閣府地方創生推進事務局次長川上尚貴君、総務省大臣官房地域力創造審議官原田淳志君、法務省大臣官房審議官金子修君、厚生労働省大臣官房審議官中山峰孝君、厚生労働省大臣官房審議官浜谷浩樹君、厚生労働省職業安定局長生田正之君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長藤井康弘君、林野庁森林整備部長本郷浩二君、国土交通省大臣官房審議官北本政行君、国土交通省大臣官房審議官杉藤崇君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大野敬太郎君。

大野委員 自由民主党の大野敬太郎と申します。

 きょうは、質問の機会をいただきましたこと、心から厚く御礼を申し上げたいと思います。

 まず、熊本を中心に地震の甚大な被害が発生しておりますけれども、被災された皆様には心からお見舞いを申し上げたいと思います。熊本でありますけれども、熊本中心でありますので、熊本以外の県もしっかりと対応をしていただければな、そんな思いでございますので、どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 きょうは、第六次地方分権一括法の法案の審議でありますが、本題に入る前に、まず二、三、関連する地方創生の質問をさせていただければと思います。簡潔に質問させていただきますので、簡潔に御答弁を賜れればと思います。よろしくお願いをしたいと思います。

 まず、RESASについてでありますけれども、このRESAS、政府の中でいろいろな事業というか、いろいろな政策がございますけれども、こういった細かい球に戦略という魂を入れられるようなツールとなっているんだと思います。そういった意味で、戦略という構築には非常に重要なツールになっているんだと思いますので、これについてまず質問させていただきたいと思います。

 ただいま第三期の開発のフェーズに入っていると思いますけれども、今どんなようなことがこの第三期でできるようになっているのか、これについて御答弁を賜りたいと思います。

川上政府参考人 お答え申し上げます。

 RESASについてのお尋ねでございますけれども、平成二十七年四月より、地域経済に関する官民のビッグデータをわかりやすく見える化した地域経済分析システム、いわゆるRESASを提供させていただいているところでございます。

 この狙いは、地域の現状や課題の把握、基本目標やKPI設定、PDCAサイクルの確立に活用いただくことによりまして、地方公共団体を初めとする地域における地方創生の取り組みを情報面から支援するということでございます。

 お尋ねの本年度の第三期開発についてでございます。

 このRESASにつきましては、まさに進化し続けるシステムでございまして、本年度も地方創生に役立つ、政府、民間ビッグデータを追加してまいりたいと考えてございます。

 具体的には、まず第一点といたしまして、まちづくり、医療福祉等の新たなのマップの追加、あるいは、地域の工業、商業のデータのリリース等を行ってまいりたいと考えております。

 二点目には、マップ数は既に五十を超えているところでございます。この五十を超えたマップ、複数のマップを重ね合わせまして新たな情報を得るようなマッシュアップにつきましても、新たな取り組みを進めていきたいと思ってございます。

 また、三点目といたしましては、さまざまなインターネット閲覧ソフトウエアでの閲覧を可能とすることなど、使い手の側に立ったユーザビリティーの向上ということに取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

 これらを通じまして、引き続き、RESASの魅力向上に最大限努めてまいりたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

大野委員 ありがとうございます。

 マッシュアップは本当に重要な課題だと思いますので、しっかりと取り組んでいただければと思います。

 一方で、ツールがよくなっても使っていただけないとよくないということで、これまでずっといろいろな取り組みをそれこそされているんだと思います。大変敬意を表させていただきたいと思います。実績も上がっているんだと思いますけれども。

 この中で、民間の活用、民間がこのRESASを使ってサービスを提供できる、こういう仕組みはできないものかなと。実際に今、RESASマスターの認定制度というのを御検討されているやに伺っていますけれども、例えば、今、公開されているRESASの情報、この公開の情報を使って、そして民間の方の理解度を促進して、理解をされた方には例えばブロンズとかシルバー、そういう称号を与えるということでございますけれども、この部分について、例えば、非公開の情報もよりオープンにして、オープンというかその方に提供して、その方が、会社なりあるいは業種なりといったことにコンサル業務を行える、一方で、その方にはちょっと秘守義務をかける、こんなことができないのかなと思うんですけれども、そんなことについて何か御知見がありましたら、御答弁賜れればと思います。

川上政府参考人 お答え申し上げます。

 RESASにつきましては、御案内のとおり、既に多くの自治体におきまして政策立案に活用されているほか、NPO、民間企業、あるいは学生さんを含む幅広い国民に利用され始めているところでございます。

 その中で、お尋ねのRESASマスター認定制度につきましてでございますけれども、RESASのニーズが各方面で高まっている中で、高いレベルでRESASを活用し、地域課題を議論できる専門人材を育成するために、いつでもどこでも誰でもRESASを学ぶことができるようなEラーニング制度の立ち上げということを考えてございまして、その中で、確認試験等で一定の成績をおさめた者をRESASマスターとして認定するというようなこともあわせて考えているところでございます。

 その中で、御指摘いただきました、確かにRESASのデータの中には企業間取引データなど一般に広く公開できないデータが一部含まれておりまして、これらのデータにつきましては法律上の守秘義務が課せられ、あるいは誓約書を書いていただいた自治体職員などに限定をして利用していただいているというところがございます。これにつきましては、RESASマスターについても同様の扱いになろうかと思ってございます。

 ただ、RESASのマップ数自体、昨年の四月のリリース以来、一年を経ずして、当初の二十五から五十三まで倍増以上ということになってございまして、一般公開されているマップも四十九、逆に言いいますと非公開のデータは四つに限られているところでございます。この四十九を御活用いただくことによりましても、十分に地域経済の分析を行えるようになったというふうに認識をしてございます。

 したがいまして、民間の方、地域の産業あるいは企業を支援されるような方々がこのRESASマスターということに認定された場合におきましても、RESASで一般公開をされております産業マップ等、公開の情報を十分に御活用いただくことによりまして、地域の課題解決に向けた相談に十分対応いただけるのではないかと考えるところでございます。

 まず、私どもといたしましては、このRESASマスター制度の立ち上げ、あるいは先ほどお尋ねをいただきました第三期の開発を進めまして、地域におけるRESASの活用を拡大してまいりたいと考えております。

 ICTにも御造詣の深い先生におかれましては、RESASについて御指導いただいてございますが、今後ともよろしく御指導をお願い申し上げる次第でございます。

 以上でございます。

大野委員 ありがとうございます。引き続き、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 それから、次の質問でございますが、これはどうしても触れたいなと思っているのは、地域おこし協力隊についてでございます。

 大変すばらしい制度だなと思ってございますけれども、この制度、都市部から、地方の一部条件不利地も含めて、地方への移住を促進するという目的で創設された制度だと伺っていますけれども、実は、条件不利地であればどこからでも移住してもいいよという形になっているんだと思います。

 一方で、そうじゃない地域では三大都市部のみの制度となっておるようでございますけれども、これは間違いないでございましょうか。総務省さん、お願いしたいと思います。

原田政府参考人 お答えいたします。

 地域おこし協力隊は、都市部の若者が、都市部に比べてより条件が不利とされる過疎地域等の地域に移住して、地場産品の開発、農林水産業への従事等の地域協力活動を行うものでございまして、こうした制度の趣旨から、隊員になる方の転出地や受け入れ自治体などに一定の地域要件を設けているところでございます。

 例えば、三大都市圏外の都市地域で協力隊を受け入れる場合には、隊員となる方々が三大都市圏内の都市地域や政令指定都市等から移住していただくことを要件としております。

 この際、趣旨としましては、過疎法等の地域指定を受けている地域につきましては、より隊員の受け入れが容易となるように、隊員の転出地の要件をいわば緩和しているところでございます。

大野委員 大変すばらしい制度だと思いますけれども、二つの基軸があるんだと思いますね。移住をしていただけるならどこでもいいよ、つまり、受け入れ元では、活性化すればいいわけなので、どこでもいいよという形に受け入れている。だけれども、どこでもいいというわけじゃないので、条件不利地じゃない場合は、では都市部だけにしよう、こういう趣旨だと思います。

 大して変わらない隣接地域があって、一部は条件不利地が、ほんの一部指定されているところがあるからそれを活用できるんだ、でも隣の市は何もない、町は全然ほとんど変わらないのにというので、いまいち納得感がないわけでありますが、この納得感というのは非常に重要な切り口だと思いますので、ぜひ、納得感という切り口で、いい制度になりますように、これからもお進めいただければと思います。

 ちなみに、集落支援員制度というのがあるんだと思います。これは、どちらかというと集落の、ちゃんと面倒を見ようという方に来ていただく、こういう制度だと思います。これは、地理的な条件というのは付されないという理解でよろしゅうございますか。

原田政府参考人 お答えいたします。

 集落支援員は、地域の実情に詳しく、集落対策の推進に関してノウハウ、知見を有している人材が、自治体からの委嘱を受けまして、市町村職員と連携して、集落への目配りとして、集落の巡回、状況把握等に従事するものでございます。

 どちらかというと、地域に詳しい地元の方というのが従事するケースが多かろうと思いますけれども、地域の実情に詳しくというところが要件になっておりますので、転出地の要件はあえて設けていないところでございます。

大野委員 ありがとうございます。

 いずれにせよ、先ほども申し上げましたけれども、自治体あるいは地域の納得感という切り口で、ぜひこれからも、この制度についてもどうぞよろしくお願いしたいと思います。

 次に、土地の制度についてちょっとお伺いをさせていただきたかったんですが、実はちょっと時間も随分たってしまったので、もし時間が余ったらこの質問をさせていただければと思います。

 簡単に触れておきますと、土地というのは相続登記を全然できていなくて、例えば、私の地元にため池が多うございますけれども、そのため池、もう高齢化でなかなか管理もできないから市に所有権も管理権も移転しようかと思っていたところ、実はその土地の登記は自分のひいひいひいじいさんぐらいだった、そうすると、判こを百個ぐらいつかないといけなくなってしまっている、これはなかなか動かせないねと。こういう問題、いろいろなところで発生しているんだと思います。

 これは、地方創生という観点でも、あるいは人口減少を迎えている社会にあって、民間の意思に基づく登記という制度が果たして機能するのだろうか、これは非常に疑問に思っていまして、先般、国土交通省さんが、所有者の所在の把握が難しい土地への対応方策に関する検討会ということで、ガイドラインをまとめられたそうでございます、大変敬意を表させていただきたいと思いますけれども。後ほど時間があれば触れたいと思いますけれども、これは大きく地方創生という意味で取り組んでいかなくちゃいけない課題なんだろうな、そんな思いでございますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 それでは本題に入らせていただきますけれども、第六次地方分権一括法についてでございます。

 これは、大臣、静かなる有事という表現をされました、なるほどなと思うところでございますけれども。これに対処するには、やはり地方と国が対立しないような方策をやっていかなくちゃいけないんだ、それは今のところうまく大臣のリーダーシップでやっていらっしゃるので、大変評価をさせていただきたいな、そんな思いであります。

 昨年の末に、地方総合戦略でも重要なテーマとされた地方分権改革、これは非常に柱としては重要な課題であると私は思っています。特に二年前から提案募集方式、これはすばらしいなと思っています、画期的だなと思っております、地方でも非常に評価が高いわけでありますけれども。去年は六三・七%、実際に取り入れた。ことしは二百二十八件の提案が地方からあって、その中で七二・八%の実績と申しますか、取り入れたという実績があるそうでございます。

 これはもうすごく、私のイメージよりははるかに高い数字だなと思っているんですけれども、この数字について、大臣、御所見を賜れればと思います。

石破国務大臣 数字は今委員からお話があったとおりで、昨年との比較で申し上げれば、実現するもの、一部実現するもの、一定の時期までに検討し結論を得るもの、現行規定で対応可能なもの、これが九・一ポイント割合が上昇して、七割以上のものについて、実現、対応しているものであります。

 結局、事前に私どもと提案していただく自治体との間でよく調整をして、これはどうにもなりませんねというものは最初からここは御遠慮いただかないといかないものというのはあります、分権になじまないものというのが間違いなくありますものですから、そういうものは外して。

 その上で、私は就任のときに申し上げたと思いますが、できません、なぜならばではなくて、どうしたらできるでしょうねということを私どもも一緒に考える、それが地方分権というものだというふうに思っております。

 また、関係閣僚会議におきましても、閣僚懇談会におきましてもそういうふうに申し上げました。各大臣のもとで、よきに計らえではなくて、大臣が問題意識を持ってやっていただくということもお願いをいたしました。最終的には総理大臣の御判断ということになるわけですが。

 大事なのは、何割、何割という数字だけではなくて、実際に現場で困っていることがどれだけ解決できたんでしょうね、単に数字を追うだけではなくて、現場で困っていること、そういうものはどう解決したんでしょうねということにも重点を置いたところでございます。

 そのようなことで、自治体の方々、すなわち知事会でありますとか、指定都市市長会でありますとか、そこから御評価をいただいているというふうに認識をしておるところでございます。

大野委員 ありがとうございます。実際に解決されなければならないんだ、まさにおっしゃるとおりだと思います。

 そういった意味で、中身に触れさせていただきたいと思いますが、きょうはパネルを用意させていただきました。これは内閣府さんの資料に基づくパネルでございますけれども、その中で、ハローワークについて、まずはお尋ねしたいと思います。

 ハローワーク、これはすばらしいな、よくできたなと思うんですけれども、これは全国の知事会等々、地方は非常に要望があった検討であります。ハローワークの国のシステムと地方の雇用政策とか産業政策、これを何とか結びつけられないんだろうか、こういう観点であると思います。

 当初は、やはり役所側の抵抗というかそういうのがあったり、あるいは労働者の側の抵抗があったりということでなかなか進まなかったということで、平行線でずっと来ていたということでございますが、大臣の非常に強力なリーダーシップをもってそれを実現したという意味では、相当変わってくるのではないかと私も期待をしているところであります。

 実際に、そのポイントというのは、利便性、これは使う側の利便性、例えばここのパネルの左上に書いていますけれども、求職者、求人企業、こういったものの実際の利便性ということもありますけれども、一方で、一番のポイントは、地方自治体が、先ほども申し上げましたように、雇用政策とそれから産業政策を国のシステムを使って一体的に戦略を練られるんだ、特に先ほどのRESASのようなビッグデータ解析も使えればより戦略性を持てるんじゃないか、そういうところであります。

 そういった意味で、つながっているというのは非常に重要なポイントだと思いますし、さらに官民の連携というものもこれからできるようになるのかな、それを期待したいところであります。

 このパネル、細かくは説明しませんけれども、左上が今の制度ですね、先ほど申し上げました、地方の自治体、それから国のハローワークのシステム、これがばらばらになっていたからなかなか利便性がよくないよね、こういう課題であったと思います。

 具体的にその事例といえば、右上に書いていますけれども、この場合は、子育てが一段落したAさんの場合とか、あるいは県内に工場新設を検討しているB社の場合、こういう事例がありますけれども、それぞれについて、なかなか不便だよねということを一挙に解決しようということで、左下の一体化になっているのだと思います。

 そこで、改めてお伺いをさせていただきたいと思いますけれども、国と同列の公的な立場で職業紹介ができるようになった、この具体的な中身について、まず厚生労働省から、どのように変わったのかということをお伺いさせていただきたいと思います。

生田政府参考人 お答えいたします。

 今回の法改正につきましては、地方公共団体が民間とは明確に異なる公的な立場で無料職業紹介を実施できるように、地方公共団体を民間職業紹介事業者等とは異なる位置づけと捉えまして、地方公共団体の無料職業紹介を職業安定法の独立した章に位置づけまして、これは第二章の二ですけれども、届け出要件等各種規制を緩和するものでございます。

 これによりまして、例えば、職業紹介責任者の選任義務、あるいは帳簿の備えつけ義務、あるいは事業報告書の提出義務などの規制が廃止されまして、地方公共団体はこれまでよりもより簡易な手続で、みずからの創意工夫に基づく自由な公的無料職業紹介の実施が可能になるというふうに考えてございます。

大野委員 ありがとうございます。

 繰り返し申し上げますけれども、局長がおっしゃったとおりでありますし、また、産業政策というのは表裏一体の関係であると思いますし、これについては中小企業政策等としっかりと連携ができるんだという観点では非常に評価をさせていただきたいと思います。

 一方で、オンラインの活用というのもうたわれています。それから、ついでに、雇用保険の事務手続の実施ということもうたわれていますけれども、これについて、それぞれ具体的にどんな仕組みになっていくのかということを御答弁賜れればと思います。

生田政府参考人 お答えいたします。

 まず、求人・求職情報のオンラインの関係でございますけれども、今回の改正に基づきますハローワークの求人情報の提供につきましては、地方公共団体を対象に、求人事業主の同意を得られた求人につきまして、例えば就業場所、仕事の内容、労働条件など、ハローワークの求人票と同じ情報を配信する仕組みでございます。

 それから、求職情報の提供の方ですけれども、地方公共団体を対象に、求職者から提供に同意する、例えば本人の希望する仕事、あるいは希望就業形態、あるいは希望勤務地、経験した主な仕事などの求職者の情報につきまして、氏名、連絡先等の個人情報を除いた上で求職情報提供サイトに掲載をいたしまして、地方公共団体が閲覧できる仕組みでございます。

 こうした取り組みを通じまして、国、地方公共団体をあわせた労働市場全体の求人、求職のマッチング機能が確実に強化されて、求職者の就職の実現に大いに資するというふうに考えてございます。

 それから、雇用保険につきましては、地方版ハローワークにおきまして雇用保険業務を実施するということにつきまして対応したいと思っております。これにつきましては、近隣のハローワークの職員を配置、巡回させることにより対応するということを考えてございまして、そのための必要な人員の確保に努めたいと思ってございますけれども、この職員につきましては、退職後の再任用職員も活用するということを考えてございます。

 厚生労働省としましては、各地方公共団体の希望を十分尊重して、地方版ハローワークにおきまして円滑な雇用保険の手続が行われるようにしてまいりたい、必要な体制の確保を図ってまいりたいと考えてございます。

大野委員 ありがとうございます。

 労働市場というものが地方においてどんなものになっているのかというのを地方が把握できるというのは非常に大きなポイントになってくるんだと思います。

 何回も言っていますけれども、例えばRESASにマッシュアップできるような形になれば、もっともっと幅広い観点から、俯瞰的な観点から戦略が立案できるんじゃないかというふうに期待をしておりますので、より進化をまた御検討賜れればと思っています。

 何回も繰り返しますけれども、産業政策と連携した雇用対策を国に要請、こういうことができるようになっているということでございますけれども、具体的な例とか、あるいはどんな効果が期待できるのかといったものについてもお触れいただければと思います。

生田政府参考人 お答えいたします。

 地方公共団体の長から国に対する産業政策と連携した雇用対策についての要請でございますけれども、具体的には、誘致企業の人材確保のために、その業種、職種等の特性を踏まえた就職面接会の開催を初めといたしますマッチング支援の実施でございますとか、あるいは地方公共団体が産業政策を企画立案する際に必要となる雇用情勢等に関する統計等の情報の提供など、さまざまなものが考えられます。

 地方の実情に応じまして国と地方公共団体が協力し合うということによりまして、それぞれの強みを生かした効果的な取り組みが実現できるというふうに考えてございます。

 厚生労働省としましては、今回の法改正で、雇用対策法第三十二条というふうに、法律上、地方公共団体からの要請が位置づけられたことにつきまして重く受けとめてございまして、地方公共団体からのさまざまな要請に対しましては可能な限り応えてまいりたいと考えてございます。

大野委員 ありがとうございました。

 大臣にお伺いさせていただきたいと思いますが、今のハローワークについての議論、これは大臣が本当にリーダーシップを発揮してここまで来たんだな、改めて敬意を表させていただきたいと思います。

 当初から、大臣は、利用者にとって、この場合は求職者にとって、あるいは求人者、求人企業にとって何が一番いいんですかという観点を一番重んじていらっしゃるというような話を当初より伺っておりました。そんな観点で、今の議論を通じてお聞きになったことについて何か思いがあれば、お答えを賜れればと思います。

石破国務大臣 私は必ずしもこの分野の専門家ではないのですが、話を聞いていると、何が何だかよくわからないということがあって、まず、誰もこんなことを望んでいませんという話があって、つまり、雇用する側も職を求める側もというのか、経営者の団体もあるいは労働者の団体たる連合も、こんなことをやってくださいと言っていません、ニーズがありませんとかいう話で極めて不思議な感じがいたしました。

 その次は、こんなことをやるとILOの規定に抵触しますよという話が出て、そうなんだろうかねと。そのILOの規定の有権解釈権はそれぞれの国にあるはずなのであって、それはILOに本当に聞いてみたのという話もいたしました。

 経営者も望んでいるとか望んでいないとか、連合がどうとかいう話はあるんですけれども、実際に一人一人の人にしてみると、まさしく委員が図でお示しをしていただいたように、国のハローワークというのは決して便利なところにあるわけじゃないし、地方のハローワークというのは離れているわけですけれども、それでできることは異なっておって。多分、日本国憲法の国民は勤労する権利を有するということがあるので、それを保障するのは政府の責任でしょうという話なんだろうと思います。

 ですから、国は確かにそういう責任は負うのですけれども、実際の職を求める人、あるいは人を欲しい人にとって決して満足できるような環境になっていないものですから、地方版ハローワークというものを創設する、それに対してオンラインも提供できる、国の監督権は廃止をする、しかし、地方は国に対してきちんとした要請ができるというような形で、職を求めている人あるいは人が欲しい企業、そういうものに対する利便性というものが一番重んぜられるべきではないかということで、多くの方の御議論もいただきました。そういうようなことを検討する会議もつくりました。結果としてこういうことができたのだというふうに思っております。

 厚労省の皆様方にも大変に御努力をいただき、今回の法案になっているというふうに承知をいたしておるところでございます。

大野委員 ありがとうございます。

 恐らく、まだまだこういう事例というのはあるんだと思います。そういった意味で、地域の要望、あるいは、実際にかかわる国民というか住民というか、そういった視点でこれからもどんどん改革を進めていただければと思いますが、一方で、国家というものはやはり維持しなくちゃいけない、そのバランス感覚なんだと思います。大変な仕事だと思いますけれども、これからもどうぞよろしくお願いしたいと思います。

 そして、ちょっと時間がもうなくなってきてしまいましたので、一つ飛ばしまして、この分権一括法案の中では、社会福祉法の改革も含まれていると承知をしておるところであります。

 これは何かというと、身体、知的、それから精神障害者の福祉、これまで実は、精神障害者だけ、地方社会福祉審議会で除外というか、含まれていなかったという実態があったわけでありますけれども、別扱いをされていたこの理由は何になるんでしょうか。厚生労働省さんにお伺いさせていただきたいと思います。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 現行制度のもとにおきましては、精神障害者の福祉につきまして、精神保健福祉法に基づく地方精神保健福祉審議会で取り扱うこととされてございまして、社会福祉法上の地方社会福祉審議会の調査審議事項から除かれているという形になってございますけれども、これは、精神障害者というところに着目をいたしまして、精神障害者に対する保健と福祉について一体的に調査審議をする、こういう考え方に基づきまして、地方社会福祉審議会ではなくて地方精神保健福祉審議会で調査審議をするということとされてきたものでございます。

大野委員 では、実際に、効果というのはこれでどんなようなことが期待できるのかについても、より具体的な例でお伝えいただければと思います。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法改正によりまして、条例で規定をしていただきますと、地方社会福祉審議会におきまして精神障害者の福祉に関する事項も調査審議ができるようになってまいりまして、障害福祉につきまして、身体障害、知的障害、そして精神障害、三障害を一体とした議論や施策の実施に資するものと考えてございます。

 なお、精神保健につきましては、引き続き地方精神保健福祉審議会で調査審議することとなってございまして、精神障害者の保健と福祉を統一的に議論するような必要がある場合には、地方精神保健福祉審議会で調査審議をしていただくことになってまいります。

 いずれの審議会で調査審議をしていただくのが適切なのかというところを、まさに自治体が各地域の実情に応じまして判断をされるということになってまいりますけれども、私どもといたしましては、両審議会が適切に運営されますように、制度改正の趣旨をしっかりと周知してまいりたいと考えております。

大野委員 時間が参りましたので、これにて終わらせていただきたいと思いますけれども、ちょっと戻りますけれども、先ほども触れました土地については、これからぜひ役所の皆さん、きょうせっかくお越しいただきました国土交通省さん、それから法務省さんに質問できませんでしたけれども、またの機会にお願いしたいなと思っています。バランスというのが一番大切なんだと思いますので、これからもどうぞ御尽力を賜れればと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。

山本委員長 次に、角田秀穂君。

角田委員 公明党の角田秀穂でございます。

 本日は、質問の機会をいただきましたことを心より感謝申し上げたいと思います。

 まず、冒頭、今回の熊本を中心といたします地震災害によりましてお亡くなりになられた方々にお悔やみを申し上げるとともに、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げたいと思います。

 公明党といたしましても、発災直後から災害対策本部を立ち上げ、地方議員さらには国会議員が現地において被害状況の把握、さらには求められる支援、そうしたものを踏まえまして、本当に必要な支援が行き届くよう、これからも政府に対する申し入れ等を含めしっかりと協力をしていきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 それでは、第六次分権一括法案についての質問をさせていただきたいと思います。

 私、地方議員になったのが一九九九年でありまして、その翌年の二〇〇〇年の四月から地方分権一括法が施行されて、私が一期目の大きな仕事として印象に残っているのが、この関連の膨大な量の機関委任事務の廃止であるとか、そうしたものを柱とする条例改正、これが非常に印象に残っております。

 当時は、新たなミレニアムは地方の時代である、今まで以上に、より工夫であるとか知恵であるとか行政手腕が問われる、そのほかにも、行政サービスがこれから自治体間によって格差が大きくなってくることによって人口移動も激しくなるだろうとか、いろいろとさまざま言われていたことを思い出します。

 これまでの分権改革の道のりというものを振り返ってみますと、今、いかに地方を元気にするか、そのための分権改革、こうしたことがより一層強く求められるそういう時代に入ってきた中で、しっかりと地方創生に役立つ分権改革というものを進めていく必要がますます高まってきているんだろうというふうな思いを抱いております。

 そうした観点から、今回の第六次一括法案は、提案募集方式を採用して第二弾となるものでありますけれども、まず、提案の件数を見てみますと、この方式に切りかえた初年度である二十六年度、この当初の提案件数は九百五十三件あった。これに対して、今回、二十七年度は三百三十四件と、件数自体も大きく減少をしております。二十六年度と違い、二十七年度は、提案団体に対して必ず事前に相談をすることを求めたことも影響しているのかというふうにも思いますけれども、提案自体が大きく減った要因についてはどのように分析をしているのか、伺いたいと思います。

 また、あわせて、地方分権改革有識者会議提案募集検討専門部会合同会議において、二十八年度に向けた課題として、市町村の提案が低調であると指摘されていることについて、提案を活発化させるためにどのような取り組みを考えているのか、また、この方式に変更してから明らかになった課題等があればお伺いをしたいと思います。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ございましたように、平成二十七年の提案件数は二十六年に比べまして減少しているわけでございますけれども、その主な要因といたしまして次の三点があるというふうに考えております。

 第一に、平成二十六年の取り組みによりまして、その約六割の提案が実現、対応ということになっているということがございます。

 第二に、今議員からも御指摘ございましたが、地方からの正式提案の前に事前相談を積極的に行っていただきまして、提案内容の精査を行ったということがございます。

 そして、第三点でございますが、平成二十七年は、共同提案と申しまして、同じ内容の提案を複数の団体から一緒に提出いただくことを推奨いたしまして、実際にその割合が高くなっております。こうした場合に、共同提案でなければ同じ提案であっても別々な提案として集計していたものを、共同提案では一件として扱うということがございまして、件数が少なくなったというような要因もございます。

 このように、前年と比較いたしまして提案の内容がより精緻化し、また、多くの現場で住民や自治体の職員が困っている課題についての提案をしていただいたものというふうに考えておりますので、件数が減ったことにつきまして否定的に捉えているわけではございません。

牧島大臣政務官 角田委員より、提案募集も二年目が終わり、これまでにどのような課題が明らかになったのかという御質問がございました。

 御指摘ございましたとおり、市町村からの提案団体の数が少なかったということは受けとめさせていただいております。

 よって、平成二十七年、市町村からの提案が三十九市町村であったことから、ことしは、三月から五月にかけて、市町村の職員の方を対象といたしましたブロック単位の説明会を全国十カ所で開催することにいたしました。既に九カ所で終わっておりますが、具体的な事例を交えながら、わかりやすく御説明をさせていただくように努めておりまして、市町村からの提案の掘り起こしを行っているところです。

 また、説明会の場のお声として、具体的な事例の御相談もありますし、事前相談の段階では困っていることを気軽に相談できるんだということがわかったといったような反応もいただいております。さらに、その場で県単位または市町村単位の個別の説明会の要望も受けておりますので、こちらについても積極的に対応してまいります。

 今後とも、市町村から多くの提案をいただけますように市町村に働きかけてまいります。

 さらに、平成二十六年は農地転用の許可、平成二十七年はハローワークが大きな課題でございましたが、平成二十八年の提案募集については、現在、地方創生の取り組みが具体的な事業を本格的に推進する段階に入っております。また、国、地方、事業者など関係者を挙げて子ども・子育て支援に取り組んでいるということもありますので、地方公共団体がそれらに取り組む中で直面する課題に関する提案を多くいただくことを期待しています。

角田委員 もう一点、地方創生と地方分権の連携ということに関してお伺いしたいと思います。

 まち・ひと・しごと創生総合戦略においても、「地方分権改革の推進は、地域が自らの発想と創意工夫により課題解決を図るための基盤となるものであり、地方創生において極めて重要なテーマである。」としておりますが、まち・ひと・しごと創生のための分権改革をより推進していくことが今後ますます重要であろうというふうに考えております。

 今後、地方分権改革の取り組みを地方創生にどう生かそうとしているのか。

 少し具体的に申し上げますと、例えば、訪日旅行者三千万人時代への対応は喫緊の課題と考えております。特に、アジア地域諸国の経済成長などに伴って、国境を越えてのグローバルな人の流れが今後急速に加速することが見込まれる中、日本を訪れる外国人も、一昨年の一千三百四十万人から昨年は二千万人目前までに迫り、ことしは、現在のペースで進めば二千五百万人を超えようかという状況であります。

 一方で、宿泊が東京だけに集中している今のままでは、せっかく太くなった人の流れを日本は受けとめることができずに、結果としてよそに流れてしまうことになってしまいかねません。というか、今のままでは明らかに三千万人には対応できない。これをどうするのか。

 訪日観光客の急増に対して、地方もこれをチャンスと捉えて、我が町の活性化のために積極的に知恵を出してもらう必要があると思いますが、増加の速度が余りにも速いこともあって、現状はなかなかそこまで目が向いていないのではないかというふうにも思います。

 このほか、地方創生のキーワードの一つとして、コンパクトと連携ということが言われております。

 人口の減少のもとでも生活サービスを効率的に提供するために、拠点機能をコンパクトにし、中山間地域等では小さな拠点の形成を推進していくとともに、高次都市機能維持に必要なおおむね三十万人の圏域人口確保ためのネットワーク化を図っていく、そのために広域的な連携を進めていく上で必要な分権改革というものは何なのか。

 地方創生は、行政だけでなく、住民も含めた、いわゆる産学官金労言、みんなで知恵を絞って進めていこうという中にあって、そのための分権改革の提案も活発にやはり出てきてしかるべきではないかというふうにも考えております。

 昨年、二十七年度の評価について、決して否定的に見るものではないというお話もございましたけれども、二十七年度の提案は、全国に一千七百四十一ある市区町村のうち、提案があったのは三十九団体というのは、やはりいささか寂しい気がいたします。

 地方創生の観点からも、重要な課題については積極的に提案を募るようにするなど、提案募集のあり方も工夫する必要があるのではないかと考えますけれども、こうした点も含めて、今後の進め方についてのお考え方を伺いたいと思います。

石破国務大臣 地方分権と地方創生の関係であります。

 これは昨年の話ですが、農地に関しての分権を行いました。これは五ヘクタール以上だったと思いますが、農林水産大臣の許可が要りますよということで、恐ろしく時間がかかる、非常に手間も煩雑である。ようやっと農地転用ができたときにはその商談は消えておったとか、そういう話が実は全国に山ほどありまして、これは実によろしくないねということで。私もこの週末、随分いろいろなところに行きましたが、今でも、この農地に関するお話が非常に多かったです。

 これから先、町をコンパクトにしていかねばならない、集客施設というものをつくっていかねばならない。そこにおいて、町長さんや村長さんがおっしゃるのは、それは農業の力を強くするがために農地転用をやりたいんだというお話があるわけですね。あるいは農振地域の解除とか。

 今までは、基本的に農地の転用というのは抑制的に考えてきましたし、農振地域の除外というのも極めて抑制的に考えてきた。しかし、これから恐ろしく人口が減っていく、これから二十年は不可避でございますので、その間に新しいまちづくりを考えるときに、この分権というのはかなり効果を持つのではないだろうかというふうに思っておるところでございます。

 要は、時代が変わっているというか、時代背景がいろいろ変わっていますので、その地域地域で何が課題なのかというのは、これはまさしく知恵は現場にありというのをいかに生かしていくかということに尽きるのだと私は思っております。

 もう一つ、今委員がおっしゃいました観光との関係で申し上げますと、宿泊が足りないわけですね、全然足りない。しかし、地方に行けば結構余っていたりするわけでございます。

 ここにおいて、今政府の中で検討しておりますし、また、特区という形で、大田区でありますとか、大阪市、大阪府でやっておるところでございますが、旅館業法との関係をどのように考えていくべきか、民泊というものをどのようにして活用していくべきか。

 地方の古民家なんていうのは、これは山ほどあるわけであります。これがまた、その立地の場所にもよりますが、簡易宿所というカテゴリーでやるとするならば、できない場所もある。

 そうすると、何が一番外国人観光客のニーズを満たすことなのか。しかし、世の中物騒でありますので、テロに対するいろいろな警戒もしなければならない。近隣住民の方々の生活というものも静穏が保持されねばならない。

 そこにおいて、地方分権というやり方を活用するか、特区というやり方を活用するか、それとも、旅館業法そのものということから考えていくのか。そこにおいて地方分権というものが活用できるのかどうなのかということについて、また委員と議論させていただければありがたいことだと思っております。

 外国人訪日観光客をふやす場合に、地方分権という視点から何ができるか、またよく私どもとしても検討してまいりたいと存じます。

角田委員 今大臣がおっしゃったとおり、まさにそういう知恵というものは現場にあるんだろうと思います。そうした現場の知恵をできるだけ酌み上げるような努力というものを政府としてもしっかりお願いしたいと思いますし、あわせて、この権限移譲に伴う地方の財源確保、こうしたものにもしっかり目配りをして取り組んでいただきたいということを、これは要望させていただきます。

 続きまして、少し具体の改革の中身についてお伺いをしてまいりたいと思いますけれども、まず、地方版ハローワークについて。

 国のハローワークの求人情報と求職情報をオンライン等で提供する地方版ハローワークの創設、この制度の活用によって、今地方が担っている、生活保護を受けている方であるとか生活困窮者、一人親家庭、また、若者の自立のための支援であるとか、さらには、障害者、高齢者の就労支援もより効果的に行うことができるようになるということが期待をされております。

 ただ、この仕組みを機能させるためには、何よりも利用者の利便性が向上するように、国のハローワークと、情報以外にも人材の育成であるとか、しっかりと連携がとられることが求められると思います。国もしっかりと応援していくことが必要であるというふうに思いますけれども、国のハローワークとの役割の分担、それから連携についてどのように考えているのか。また、新たな雇用対策の仕組みと地方創生の関係についてどのような期待ができるとお考えなのかということについて、お伺いをしたいと思います。

石破国務大臣 国と地方におけるハローワークとの役割分担についての御質問であったかと承知をいたします。

 これは、憲法第二十七条、すなわち、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」というふうに定めておるわけでございます。したがいまして、国民に保障されましたるところの勤労権、このために全国規模のネットワークによる雇用のセーフティーネットを確保する役割というのは、これは変わらないのだと思っております。地方版ハローワークができたんだから、国はこういうことから手を引いていいということには相なりません。これは憲法上の要請に基づくものでございます。

 一方におきまして、地方自治法第一条の二におきましては、「地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う」、こう書いてあります。法律ばかり並べまして恐縮でございますが、雇用対策法第五条は、「地域の実情に応じ、雇用に関する必要な施策を講ずるように努めなければならない。」ということになっておるわけでございまして、住民の皆様方に身近な場所で地方公共団体が提供する福祉サービスや産業振興施策と一体となった雇用政策を地方公共団体は講じる、こういう関係に立っておろうかと思います。

 法律上、こういうような形になっておるわけでございまして、国はセーフティーネットを担うという役割をきちんと果たすのだということであります。国と地方でこのような役割を分担しながら、互いに補完をしつつ効果を上げるということでなければなりませんで、実際にこの法律をお認めいただいて動かしてみて、実際にユーザーフレンドリーであるかどうか、職を求める人、求人をしている会社、そういうものに対して使い勝手のいいものかどうかというのは、動かしながらよく検証して、さらになお改めるべき点があれば改めていきたいというふうに思っておるところでございます。

 先ほど、私、農地転用について五ヘクタールと間違いを申し上げましたが、四ヘクタールでございます。失礼いたしました。

角田委員 ここで一点だけ、ちょっと確認の意味で質問をさせていただきたいと思うんですけれども、地方分権改革推進委員会の勧告においては、地方自治体が行う公共無料職業紹介事業を拡大し、それに伴って、将来的には国のハローワークの縮小を図っていくべきである旨の勧告というものもなされていることに関しまして、この地方版のハローワークが今後整備が進むことによって国のハローワークを廃止縮小することにつながっていくのではないかという懸念もありますけれども、この点について、確認の意味で伺わせていただきたいと思います。

石破国務大臣 それは先ほど申し上げたとおりで、国は国民の権利を保障しなければいけない、地方にお任せすればそれでいいでしょうということにはなりませんので、セーフティーネットをきちんと果たすという役割はいささかも減ずるものではございません。

 しかしながら、もちろん、二重行政というものがあってはならないのは当然のことでございますし、国の役割というものが本質的に変わることはございませんが、このセーフティーネットを果たすということがきちんと発現をできるという範囲内において今後工夫の余地があれば、それはやっていかねばならないものだと思っております。

角田委員 地方創生ということに関しまして、この地方創生の鍵となるのは、やはりそこで働く、また活躍していただける人をいかにつくっていくのか。その方策の一つとして、私自身、現在の職業能力開発というものを地方創生の視点から検証して、時代の要請に合った仕組みにしていくことも必要ではないのかというふうに考えております。

 例えば、今、全国に各種の訓練施設があります。例えば高校卒業者等を対象とした学卒者訓練、これは機械であるとか建築であるとか情報通信など各種の学科が設けられておりますけれども、せっかくそこで技術を習得しても、実際にそれを地元で生かせる就職先、企業がほとんどないために、県外であるとか、またその多くは東京に出ていってしまっているというケースも見受けられます。

 今、地元の市町村がどのような戦略を描いて、そのためにはどんな人材がこれから必要とされているのか、これは都道府県と市町村が連携して体制を見直していく必要があるのではないかというふうにも思いますけれども、こうした、人を育てる、また人を確保するということについて、国においても積極的な支援策というものを検討して講じていくべきではないかと思いますけれども、この点についてのお考えをお伺いしたいと思います。

中山政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、職業訓練の内容と地域のニーズを合わせることは極めて重要だと思っております。

 そのため、都道府県ごとに、地域の労使団体や教育訓練機関が参加する地域訓練協議会というものを開催しております。この協議会を通じまして、地域における求人者の動向や訓練ニーズに対応した訓練分野、そして訓練の規模の設定を行うこととしております。

 さらには、地域の創意工夫に基づく人材育成の取り組みを促進するため、従来の職業訓練の枠組みでは対応できない新たな人材育成プログラムを開発する、地域創生人材育成事業を平成二十七年度から実施しているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、今後とも、地域における職業訓練がそれぞれの地域のニーズに合ったものとなるように取り組んでまいりたいと考えております。

角田委員 地方で活躍する人づくりということに関しては、例えば地域でいかに定着をしてもらうかとか、そういった視点からの支援というものもこれからますます重要になってくると思いますし、これは地元の市町村、地方だけではなくて、国もしっかりとそういったところも考えていかなければいけない問題であると思いますが、これについてはまた改めて議論させていただきたいと思いまして、次に、建築基準法の一部改正についてお伺いします。

 現行では一律に定期点検対象となっている特定建築物及びその建築設備等について、政令で定めるものや特定行政庁が指定するもの以外の特定建築物については、建築審査会の同意を得て点検の対象から除外できるようにするというものですけれども、具体的には、人の出入りが極端に少ない書庫や倉庫などが除外の対象として想定をされているようであります。

 この提案の背景には、維持管理の負担が重いこと、コスト縮減ということもあるようですけれども、施設の老朽化などにより倒壊など周囲に危害が及ばないようになされる定期点検の除外対象が安易に拡大されることがないよう配慮が必要だとも考えております。

 建築審査会の同意ということを条件としていますが、建築主事を置く市町村は、特定行政庁、全国に現在百七十程度あるかと思いますが、点検のあり方について判断に差が出ないよう、例えば、人の出入りが極端に少ないとはどのような用途の建築物なのか、老朽化等により危害を及ぼすおそれのない建築物とは具体的にどのような建築物であるのかといったようなことについて、判断の基準というものをある程度明確にしておく必要があると考えますが、この点について、建築審査会が同意するかどうか判断する基準等を示すお考えがあるのかないのかについて、お伺いをしたいと思います。

杉藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、現行の建築基準法では、国や都道府県等に対しまして、所有する一定規模以上の公共建築物について定期的に劣化状況等の点検を義務づけておりまして、今回、公共団体からの要望を受けまして、安全上、防火上及び衛生上支障がない公共建築物について、定期点検の対象外とすることを可能とする法案ということになっておるわけでございます。

 具体的には、特定行政庁が、個別具体の建築物ごとに安全、防火、衛生のどの観点からも問題がないと認められるものであり、かつ建築審査会の同意が得られた公共建築物に限って定期点検の対象外とすることを可能とするものでございまして、先生御指摘ございましたけれども、例えば、人がふだん立ち入ることの少ない備蓄倉庫でございますとか、そういったものを想定しているところでございます。

 このような対象外となる公共建築物の選定が、建築審査会において慎重に審議された上で適切に判断されることになりますように、国土交通省といたしましても、安全、防火、衛生のどの観点からも支障がないということの目安を示しまして、それを踏まえて同意を与えることが適切である旨を周知することにより、今般の建築基準法の改正の趣旨が徹底されるように十分対応してまいりたいというふうに考えてございます。

角田委員 今回の熊本地震でも、公共施設にも少なからず被害というものが生じました。特に、老朽化の進んだ施設の安全性の点検ということは極めて大事なことであると思いますので、その点も踏まえた対応というものをお願いしたいというふうに思います。

 続きまして、高齢者の居住の安定確保に関する法律の一部改正について。地域の実情を踏まえたサービスつき高齢者向け住宅、いわゆるサ高住、私の地元ではサつきと呼んでおりましたけれども、この立地誘導等により市町村が主体的にまちづくりを推進できるよう、都道府県が策定することとされている高齢者居住安定確保計画を市町村も策定できるとするものですけれども、このような提案がなされた背景として、県の整備目標数と実際の整備数に大きな乖離が生じている、また、地域的にも偏在をしていること、サ高住が地価の安い郊外に集中し、コンパクトシティーなど目指すまちづくりと逆の方向に向かっていることなどが挙げられております。

 高齢化が急速に進む中で、高齢の単身者や夫婦のみの世帯が増加をしており、介護、医療と連携して高齢者を支援するサービスを提供することを目的として平成二十三年にこの制度が創設されて以来、年々その戸数も増加の一途をたどっておりまして、今全国では約二十万戸に達しております。

 このような提案が地方から出されていることから考えますと、供給量の増加に伴って、サ高住の立地がまちづくりの方向と摩擦を生じている事例がふえてきているのではないかというふうにも思いますけれども、このようなことは他の地方でも認められることなのかどうか、全国的なサ高住の整備状況についてお伺いをしたいと思います。

杉藤政府参考人 お答え申し上げます。

 サービスつき高齢者住宅の整備状況でございますけれども、政府としては、平成三十七年に、高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合を四%とするという目標を立てまして、整備費の補助等を通じて供給を促進しているところでございまして、今先生御指摘されましたとおり、平成二十八年三月末時点で約十九万九千戸が登録をされてございます。

 一方で、これも御指摘のとおり、このサービスつき高齢者向け住宅の立地につきましては、地域的にはばらつきが見られまして、相対的に地価が安い地域、あるいは市街化区域以外の地域に多く立地する傾向があるところでございます。

角田委員 今後、独自にそうした計画を定める市町村というのが出てくるのではないかというふうに思いますけれども、もう時間がないから端的に伺いますけれども、そうした場合の、県がそもそも立てている計画と市町村が立てた計画との関係、調整というものはどういうふうになるのかということだけお伺いをしたいと思います。

杉藤政府参考人 今回の改正によりまして、市町村の判断で市町村高齢者居住安定計画を定めて、高齢者向け住宅の登録基準の強化や緩和を行うことができるようになります。

 都道府県計画との関係でございますけれども、市町村が高齢者居住安定確保計画を定める場合には、都道府県高齢者居住安定計画が定められている場合は当該計画に基づく、それから、都道府県と事前に協議するという関係になってございます。

 このようなことを通じまして、市町村と都道府県の高齢者居住安定計画の内容の調和が図られ、かつ市町村の実態に応じた登録住宅の普及促進が図られるものと考えてございます。

角田委員 以上で質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山本委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 民進党、緒方林太郎でございます。

 きょう、地方分権の法律につきまして質疑をさせていただくことになるわけですが、我々は、TPPの特別委員会でも申し上げましたが、こういう状態で、少し落ちつかない状況での法案審議ということにつきましては、きょうは控えるべきではないかということを、これは理事レベルでも申し上げさせていただきました。

 現在、まだ避難しておられる方もたくさんおられます。二十万人近い方が避難しておられる、四十二名の方が亡くなられた、そういった状況でこういった審議をすることは本来適当でないということを申し上げましたが、理事間協議できょうはぜひやりたいということでありましたので、質問をさせていただきます。

 まずもって、熊本そして大分で被災に遭われた方にお見舞い申し上げるとともに、亡くなられた方には哀悼の念を申し上げたいと思います。

 それを踏まえて質疑をさせていただきます。

 先ほどから質疑がありましたとおり、今回、地方版ハローワークということの導入でありますが、まず一番最初に厚生労働省にお伺いをいたしたいと思います。

 今回の地方分権で地方版ハローワークを設けることによって、国のハローワーク、これの権限とか予算とか、そういったものに何らかの影響がございますでしょうか、厚生労働省。

生田政府参考人 お答えいたします。

 今回の法改正によります地方版ハローワークにつきましては、地方公共団体が民間とは明確に異なる公的な立場で職業紹介を実施できるように、地方公共団体を民間職業紹介事業者等とは異なる位置づけと捉えまして、届け出要件、各種規制を緩和することで、地方公共団体の創意工夫によって、利用者の利便性の向上に向け、自由な無料職業紹介の実施が可能となるものというふうに位置づけてございます。

 一方、国のハローワークにつきましては、憲法第二十七条において定められました勤労権保障のための最後の、そして最低限のセーフティーネットとしての役割がございまして、引き続き、国が全国ネットワークの体制で責任を持って行うことが必要であると考えてございます。

 このため、今回の改正法に基づきます地方版ハローワークの設置によりまして、国のハローワークの持つ権限、職員数あるいは設置場所等の変更をすることは予定してございません。

緒方委員 憲法の話まで出して、これは国がやらなきゃいけないんだということでありましたが、それではお伺いをいたします。

 職業紹介というのは、必ず国がそのサービスを提供しなければ、憲法二十七条のその理念を、そしてその義務を果たすことができないというふうにお考えですか、厚生労働省。

生田政府参考人 お答えいたします。

 職業紹介事業自体は、別に国がやらなくても民間でもやっておられますし、自治体あるいは学校、さまざまなところで取り組んでおられると思います。

 それが、結果として国民の勤労の場の確保に役立っているというのは事実でございますけれども、国として責任を持って最終的に勤労権を保障するというのがハローワークでございまして、民間がまずマッチングをするだとかあるいは自治体の方がマッチングをして、最終的に、やはり国で最後は面倒を見ないといけないという方につきまして対応するということで、今まで仕事をしております。

緒方委員 それは、国のハローワークがやっているサービスを地方に移管することで、憲法二十七条の規定を満たすことはできないというふうにお考えですか、厚生労働省。

生田政府参考人 お答えいたします。

 国のハローワークでやっている職業紹介につきましては、全国ネットワークで職業紹介をしておりますけれども、そういう形で職業紹介をするということにつきまして、自治体に移管した場合にうまくいくのかという問題が、まずございます。

 それから、雇用保険と組み合わせて仕事をしておるわけですけれども、雇用保険につきましては、国の制度として運営していかないと非常に運営が難しいのではないかと思っております。

 なぜかといいますと、まず、失業というのがどういう地域でどういう業種で発生するのかということにつきまして事前に予測が難しいということで、保険集団をできるだけ大きくとるという必要がございます。ですから、国の制度として保険制度自体を運営しないといけないと思うわけです。その場合に、財政責任を国が負うということになるわけですが、その失業の認定というのが雇用保険制度にとって非常に大事なわけですけれども、その失業の認定という運営の責任につきまして、財政責任と一致させる必要があるというふうに思っております。ですから、雇用保険の失業の認定というものにつきまして、国でやっていく。

 その失業の認定につきましては、職業紹介と組み合わせてやる必要があるというふうに考えてございます。雇用保険の失業の認定は、離職した人の離職状態の確認ではなくて、仕事を探している人の確認、仕事を探していることの確認をしないと給付ができないということになっているわけですけれども、あくまで職業紹介とを組み合わせる形で、実際にその人が本当に仕事を探しているのかということについて確認することが必要になってまいります。

 ですから、国の雇用保険制度の運用の中で、職業紹介につきましても同じ機関で確認をして対応していくということがないと、濫給になってしまって、厳格な、厳正な雇用保険制度の運用ができないというふうな問題点がございます。

 それからもう一つ、マッチングのときは、職業紹介で求職者の方のお相手をするわけですけれども、企業の方に対応するということも必要になってまいります。例えば、求職者の方の希望するような求人条件になっていないというふうな求人があるとして、その求人の中身を変えていただくように指導していかないといけないということがございます。

 そうしますと、求職者のいらっしゃるハローワークと求人企業のあるハローワークが全然違うときに、直接その求人企業に対して、中身を変えていただくように指導するというふうなことも必要になってまいりますが、それが日常的に発生するわけでございます。

 そういうことを考えますと、同じ組織の中でやらないとなかなか厳しいものがあるのではないかというふうに考えてございます。

緒方委員 先ほど、濫給が生じるんじゃないかという話がありましたが、これは、仮に地方移管をしたときの地方自治体を物すごくばかにしたような話ですね。地方自治体を物すごくばかにしていますよ、それは。

 雇用保険の統一的な基準を定めてそれを地方に委ねることで、それで地方は雇用保険を、自治体によってはどんどんと支給してしまって、それが問題だと言っているんですけれども、雇用保険を出すということは失業しているということですから、失業者がどんどんふえていくことを喜ぶような自治体がいるはずないじゃないですか。濫給するような、そんな自治体が出るはずないじゃないですか。それは、地方自治体を物すごくばかにした議論ですよ。

 おかしいじゃないですか、厚生労働省。

生田政府参考人 恐縮でございますけれども、地方自治体に関してそういう考え方を持っていることは一切ございませんので、まず冒頭に申し上げます。

 その上で、雇用保険制度も含めまして、いわゆる社会保険制度、年金やあるいは介護保険制度などもございますけれども、他の社会保険制度につきましても、財政責任と運営責任を一致して運用しております。それは、やはり財政責任を負うところが運営しないとうまい制度運用ができないからという考え方にのっとっているものだというふうに承知しております。

 その上で、欧米先進国、主要先進国がございますけれども、英米独仏といった国ですが、そういった国につきましては、やはり雇用保険制度につきまして、財政責任と実際に失業の認定をするという主体は一致しております。それは、国がやっている場合は国ですし、アメリカは州ですけれども、州が雇用保険制度の運営もし、財政責任も負い、失業の認定も州がやるという考え方でございます。そういった形で、財政責任と運営責任を一致させるというのがやはり社会保険制度の基本ではないかというふうに考えてございまして、そういう考え方にのっとってございます。

 それから、この仕組みにつきましては、労働政策審議会で労使からいろいろな御意見をいただいているわけですけれども、やはり、国で財政責任と運営責任を、ともに責任を持って負うべきであるというふうな御指摘をいただいてございまして、そういったお考えも尊重する必要があるというふうに思っております。

緒方委員 国で統一的な基準を定めて、それを地方に運営させることではできない、それでは絶対にこの制度は立ち行かないというふうにお考えですか。国が基準を定めて、そして地方ごとにそれをきちっと運用してもらう、そんな制度、山のように日本にありますよ。なぜこのハローワークだけは国営でなくてはいけないのかという、その理屈にはなっていないと思います。

 全国知事会も、途中から何か意見が変わったようでありますけれども、もともと、ハローワークについては地方移管してほしいというような話を言っていました。そして、今言われたような主張がたくさんございます。全国ネットワークが分断されるとか、雇用保険の適切な運用ができなくなるのではないか、スケールメリットがなくなるのではないか、全国一斉の機動的対応ができなくなるのではないか、労働者の囲い込みが生じるのではないか、そういった主張を厚生労働省がしておられる。しかし、それに対して全国知事会は、少なくとも彼らの認識として、そのような事実はない、自分たちに任せていただければしっかりやれるというふうに言ってきていたのです。

 なぜ厚生労働省は、全国知事会が、やれる、自分たちに任せていただければしっかりやると言っているのに、それを今のような理屈ではねつけるんですか、厚生労働省。

生田政府参考人 お答えいたします。

 まず、ハローワークの職業紹介なりあるいは雇用保険制度の運営につきましては、私ども、まず雇用保険制度につきましては拠出者でございますし、ハローワークの利用者でございます労使の御意見を伺うということで、職業紹介につきましてもハローワークの利用者でございます労使の御意見を伺うということで、労働政策審議会で労使の御意見を伺っております。

 その上で、両者とも、こういった形でハローワークの全国ネットワークの運営をすることについてはやはり国で責任を持ってやるべきだという強い御主張でございまして、私どもとしましては、その労使の御主張をきちんと尊重しないといけないという立場でございますので、そういった対応をしてきたということでございます。

緒方委員 もう長い議論をいたしませんが、それでは、端的にお伺いします。

 地方移管は絶対にできないというふうにお考えですか、厚生労働省。

生田政府参考人 ハローワークの全国ネットワークというものを現在の仕組みで維持するということにつきまして、労使の方、利用者の方の御意向を尊重するということでございますので、そういった考え方が変わってくればもちろん変わってくるとは思いますけれども、現段階では難しいというふうに考えてございます。

緒方委員 労使がとかそういう言いわけをせずに、厚生労働省として、ハローワークの地方移管は絶対にできない、やってはならないというふうにお考えですか、厚生労働省。

生田政府参考人 ハローワークについてどういうふうに運営していくのかということにつきましては、労使の御意見を尊重するしか私どもとしてはないわけでございまして、厚生労働省としてということで見解を表明するといたしましても、やはり労使の御意見を尊重して対応するということでございます。

緒方委員 それでは、今回のこの制度に少し入っていくわけでありますが、結局、自治体の中で二つの職業紹介の仕組みが併存することを許容しているということですね。

 これは何度も話をしていると思いますけれども、私の地元でもこれまで、どうしてもハローワークの地方移管が進まないからということで、生活保護を出す福祉事務所とハローワークをできるだけ近くのところに持ってきて、できるだけ連携する連携するということでやってきましたが、これはこれからも変わらないわけであります。

 そうすると、そこに、例えば、我が町北九州市が、うちの地域でも地方分権に基づいてやろうということになるときに、二つの同じサービスが併存することを今回の制度は許容するということになりますね。厚生労働省。

三ッ林大臣政務官 緒方委員にお答えいたします。

 国と地方公共団体については、先ほど来、生田局長からお話がありましたけれども、国は、憲法第二十七条に定められた勤労権の保障のため、全国規模のネットワークによる雇用のセーフティーネットの役割を担っております。

 地方公共団体は、地方自治法第一条の二において、「地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う」とされております。また、雇用対策法第五条におきまして、「地域の実情に応じ、雇用に関する必要な施策を講ずるように努めなければならない。」とされていることを踏まえ、住民に身近な場所で地方公共団体が提供する福祉サービスや産業振興施策と一体となった雇用対策を講じるといった役割を分担しつつ、互いに補完しながら効果を上げることを期待しております。

 二重行政になるという御指摘につきましては、地方版ハローワークは、国と地方の適切な役割分担のもとで住民の利便性向上を図るものであって、国と地方公共団体が雇用に関する協定の締結を通じて十分に協議して、住民にとって利便性が高く効率的なサービスが提供されるようになるものと考えております。

 例えば、ハローワークによるサービスに、地方版ハローワークが地域の重点分野に応じた付加的なサービスを実施するなど、二重行政とならない工夫をして実施されるものと考えております。

緒方委員 役割分担という話をよくされますけれども、役割を分担する、分けて担うというわけですから、これからは国がやる部分というのと地方がやる部分というのが分けられて担うということになりますね、分担ですから。

 では、お伺いしたいと思います。

 これから分担されて地方が担う分の事務は、今誰がやっているんですか、厚生労働省。

生田政府参考人 お答えいたします。

 現在、最低限のセーフティーネットとして、ハローワークが全国ネットワークで職業紹介等の事務をやっておるわけですけれども、それで地域の住民の方にとって十分かという際に、やはり地域の特性に合ったような対応をする必要があるんじゃないかというふうな御指摘がございます。

 そういったようなものにつきましては、ハローワークのサービスに加えまして、自治体の方でさまざまな創意工夫をしていただくということが必要になってくるのではないかというふうに考えてございます。今回の地方版ハローワークにつきましても、そういった工夫の一つになってくるのではないかと思っております。

 それから、分担の関係ですけれども、北九州市は、実は全国で初めて雇用対策協定を労働局と北九州市で結んだ第一号のところなんです。それで、協定の締結のときの考え方として、市長さんともお話ししたんですが、まず、国がここの部分をやります、自治体はこの部分をやりますという部分はあるわけですけれども、一緒になってやらないとうまくいかないところはたくさんあるわけでございまして、一緒になって取り組むものにつきまして、どんどん進化させていきましょうというふうなことで、今、協定の内容については時々刻々と進化をさせてきているということでございます。

 ですから、ばらばらにやるということではなくて、協力し合ってやるところはやるんだという形で対応していきたいというふうに考えてございます。

緒方委員 いや、そんなことを聞いているんじゃないんです。国がやる事務がここにあって、地方がやる事務がこうあって、それを分担して、分けて担うということなんです。これからは地方がやる部分が出てくるということですけれども、今これから地方がやる部分というのは、これまでの事務の中で誰かやっていたのか、やっていなかったのか。誰もやっていなかったところを新しく事務をつくるのか、それとも、何かこれまで国がやっていたところを分けるのか。これは分担と言っているわけですから、何か分けているところがあるはずですね。

 もう一度聞きますよ。地方の部分というのは誰がやっているんですか。

生田政府参考人 お答えいたします。

 必ずしも正確なお答えではないですけれども、現在自治体の方で対応していただいている事務というのはそれなりにある、現在もあるというふうに思っております。

 その上で、そういった事務内容につきまして、さらに進化させていくということになるんだと思っておりますが、まず自治体が、職業紹介につきましては、現在、届け出制で仕事をしていただいておりまして、相当の数の自治体が既に職業紹介をやっていただいております。そういうところでは既にやっていただいているんだと思いますが、地方版ハローワークという仕組みによりまして、さらにその仕事がやりやすくなって、その厚みが増してくるということなんだと思っております。

 国がやっている部分につきましては、正直申し上げて不十分じゃないかというふうに思っております。

緒方委員 どうも、ちょっと要領を得ないわけでありますが、結局、似たような事務がこれから併存していくということになるわけですね。地方が創意工夫を持ってやるとかいろいろ言っていますけれども、結局、似たような事務をやる組織が二つ重なるということになるのではないかというふうに思うんですね。それを心配するわけです。

 実は、知事会なんかの資料を読んでおりますと、地方に移管することによるメリットというのも掲げられております。例えば、生活保護の支給の事務とこれをあわせることによって、より効率的な雇用政策が行えるようになるとか、そういったいろいろなメリットもあるわけです。地方移管をせずにこういう形でやってしまうと、そもそもお互いのデマーケーションが不明確になる、そういったデメリットもあるわけであります。

 そのメリット、デメリット、いろいろあるわけですけれども、何か、厚生労働省の話を聞いていると、もう、まず国として、一体的にやるハローワークを残すことが大前提で、それはもうぴくりとも動きません、ぴくりとも動かないけれども、それに何か上に地方がのっかってくるのであれば、それは御自由ですよというふうに私には聞こえるんですね。

 厚生労働省は、一歩も譲りませんと。確かに先ほど言われたとおりです。冒頭言われたとおりで、厚生労働省のハローワークの権限、事務、これについては一切動かない、何の変化もないというふうに言った上で、今回のこれをのせてくるということは、これは明らかに二重行政じゃないですか。そうですよね、厚生労働省。

生田政府参考人 お答えいたします。

 まず、今回の地方版ハローワークにつきましては、従来から届け出制で自治体でやっていただいている部分がございまして、既に二百十一団体が届け出て、職業紹介をしていただいているわけですけれども、その仕事の仕方につきまして、十分うまくできないんじゃないかというふうな御指摘がございました。これは知事会からもあったわけですけれども。そういう中で、規制を完全に外してしまって、届け出制をなくしてしまって対応していくという中で、さまざまな創意工夫が生まれてくるというふうに、まず考えてございます。

 それから、もう一つは、自治体の要請を受けて労働局なりあるいはハローワークが動くという仕組みが今回でき上がるということでございます。自治体の方でさまざまな取り組みをされる際に、労働局、ハローワークの方でどういうことをすべきかということについて御注文いただいて、それについてきちんと対処するという中で、仕事がうまく回るようになるんじゃないかというふうに思っております。

 それで、そういう中で、労働局として、自治体のお考えをできるだけ尊重して、対応すべきことは対応するということでいきたいというのがこれからの考え方でございます。従来それが不十分だったということはあるかもしれませんけれども、今回の法律によりまして要請というふうな仕組みも新しくできまして、それに従って、自治体の御意向を十分踏まえた形で、ハローワークが自治体の関与のもとで動くというふうな形になってまいりますので、今までとはちょっと違った景色になってくるんじゃないかというふうに考えてございます。

緒方委員 少しこれまでの歴史的経緯を見ていくと、知事会だったり政令指定都市の市長会は、ずっとこの移管を強く求めてきていたんです。ただ、厚生労働省が一歩も、ぴくりとも動かないということで、去年の十一月の十二日、全国知事会から石破大臣への要請ということで紙が出て、地方版ハローワーク、もともとは「地方移管を強く求める。」と書いてあるんですけれども、その下に、「国民・雇用主にとって利便性の高い制度を実現する選択肢として、以下も含め、速やかな検討を求める。」ということで、「「地方版ハローワーク」制度を創設すること。」ということで、そういう要望が上がってきているんです。

 結局これは何かというと、ずっと地方自治体、特に県、政令指定都市なんかは移管を強く求めているんだけれども、厚生労働省がぴくりとも動かないから、だから、もうそれならしようがないねということで、地方版ハローワークという、二重行政かもしれないけれども、これで自分たちにやらせてほしいということで、逆に、もうしようがないということで折れたんだろう、私にはそう見えます。

 そうすると、これは何かというと、私の目にどう見えているかというと、国は国で、これまでの事務、権限をこれまでどおり維持することができてハッピーだ、けれども、地方自治体も、自分たちが望んでいる地方版ハローワークができるから、それでハッピーだと。お互いハッピーなんですね。これは、個別の国とか地方自治体とかそれぞれの主体からするとそれぞれハッピーなんだけれども、全体として見てみると二重行政が生じていて、個別最適は存在しているかもしれないけれども、全体最適を大きく損ねる形でこの制度ができ上がっているんじゃないかということを危惧するわけです。

 それぞれの主体がそれぞれハッピーであって、だからいいのかというと、私はこれは違うと思います。まさに、それぞれの主体が幸せであっても、全体としてそれが非効率とか無駄が生じているとかいうこと、それを見ていくのが行政改革だろうと思いますし、国の役割の一つだろうと思います。

 この点、では、石破大臣にお伺いしたいと思います。この件、個別最適を追求するが余り、全体最適が失われているのではないかというふうに思うわけですが、石破大臣、いかがですか。

石破国務大臣 ずっとお答えしていますように、実際に職を求める人にとって便利なのですか、実際に人を求める人にとって便利なのですかということが問われているんだと思っています。

 国のハローワークに行こうが地方版に行こうが、全く同じ仕事をやっているわけではありません。地方のハローワークと国のハローワークが同じ仕事をしているんだったらば、これは二重行政以外の何物でもないということになりますが、それは先ほど来、相補い合うというか補完をし合うというか、そういう役割分担、委員がその言葉にこだわりを持っておられるのをよく承知しておりますが、分担をしながらやっていくということでございます。

 利用者の利便性の向上には間違いなく資するものでありますが、では、ハローワークなるものは絶対に必要なのかということを問われた場合に、日本国憲法に定められている勤労権を保障するということができるとするならば、ほかの形態というのも私は否定できないと思っています。

 それから、組織のために議論しておるわけではございません。要は、国民に対して、国家として保障すべき権利というものをどのようにして守っていくかということについては、いろいろな工夫があるだろうというふうに思っております。実際に動かしてみて無駄がある、同じことを両方やっているね、ちっとも利用者は便利にならないねということであれば、それは大いに改善の余地はあると思っております。

緒方委員 最後のところ、本当によろしくお願いを申し上げます。

 今の話の流れですけれども、厚生労働省にもう一つお伺いしたいと思います。

 国がやるハローワークの事務と、今回、地方版ハローワークで地方自治体が担う職業紹介の事務、これは事務の分担として明確に切り分けられているというふうにお考えですか、厚生労働省。

生田政府参考人 事務といたしまして、ハローワークにつきましては、全国ネットワークで最低限の、最後のセーフティーネットとしての機能を果たすということで、理屈としては切り分けられているというふうに思っております。自治体につきましては、それを超えるものにつきまして、さまざまな創意工夫をしていただいて、利用者の利便性を高めるという効果が出るものだと思っておりますが、ただ、具体的な適用場面では、なかなか難しい問題が起きるのではないかと思っております。

 それで、先ほど雇用対策協定のお話をいたしましたけれども、そういった自治体と、それから国、労働局なりとの話し合いの過程で、そういう重複がないような工夫をしていかないといけない、これは先生の御指摘でもございますし、ちゃんとやっていかないといけないなと思っております。それから、制度運用の過程でやはり問題があれば是正していくということなんだと思っております。そういう対応をしたいというふうに考えてございます。

緒方委員 今回の地方版ハローワークができることによって、少なくとも全体として、国の財政と地方の財政ということを全体を足して見たときには、明らかに財政負担、広い意味での公費と言われるもので見たときには、明らかに公費の負担増になるわけであります。

 厚生労働省の事務、さまざまな事務とか義務とかそういったものが全く変わらないという中で、それで新しい事務が入ってくるわけですから、全体としては、国費と地方自治体の負担を考えてみると、明らかに費用がふえるわけでありまして、そうであれば、何かプラスアルファがなきゃいけないし、これをやることによる何か付加価値がなきゃいけないし、切り分けられていることが私は必要だと思いますし、重複が生じないかどうかということについては、これからもしっかりと見させていただきたいと思います。

 懸念は拭えませんが、質問を移したいと思います。

 先般も一度お伺いをいたしましたが、我が町北九州市が特区で挙げたロボットの話であります。

 介護におけるロボットの活用ということで、先般のこの委員会でも申し上げさせていただきましたが、我が町には安川電機という、ロボットで全国的に非常に有名な会社がございます。これは山本委員長もよく御存じだと思います。かつて鉄鋼の町でありましたが、今はロボットの町としても鳴らしてきておりまして、そういった観点から、介護ロボットの活用を進めたいというのが我が町の思いであります。人口減少しておりますし、政令指定都市の中で、我が町北九州市は最も高齢化率が高いという町でありまして、人材の確保、そしてロボットの技術の活用、こういった側面から、介護ロボットを特養で使わせてほしいということで提案をさせていただきました。

 今の特養での配置基準というのは一対三であります。我々が提案したのは、一対三のところを、一人プラスロボット一で四名ということで提案をしました。残念ながら、厚生労働省からは、どういうお答えかというと、本当に、極めてせつないお答えだったわけでありますが、私の口から言うよりも厚生労働省に言ってもらった方がいいと思います。

 なぜ、我が町が提案した、一対三の基準を一人プラスロボットで四人という基準にすることを、厚生労働省はかたくなに拒否しているんでしょうか。厚生労働省。

三ッ林大臣政務官 お答えいたします。

 当初において北九州市が提案されていた内容につきましては、特別養護老人ホームの職員一人に対して入所者三人を求めている人員の最低基準の緩和でありましたが、国家戦略特区ワーキンググループにおいて、必ずしも基準を緩和しなくても北九州市が希望する実証研究が実施可能であるとの議論になったと承知しております。

 また、その後、別途、介護ロボットの導入に係る実証研究について、より導入効果の発揮が検証しやすくなるよう、特別養護老人ホームに、ユニット単位ごとに設ける共同生活室を二つの小グループごとに設けられるようにしてほしいとの提案があったものと承知しております。

 そういったことによりまして、入所者三人、この基準はそのままといたしまして、介護ロボットを導入することによりましてそれがいかに有効に活用できるかどうか、その実証についてこれから検討されると思っております。

緒方委員 基準を、一対三を見直さなくてもやれると。それはやれるんです。それは、やりたければどうぞの世界でありまして、ロボットを使いたければどうぞということなんですが、こういうものは、何らかの経済的なインセンティブが働かない限りは、なかなか導入をすることができないというか、そういうものが進んでいかないんですね。

 やりたければどうぞというのは、それはやればいいわけです。けれども、そうじゃなくて、やはりこういったものが進んでいくためには、今言ったように、一対三が、一人プラスロボットで四ということになると、ああ、それであればロボットを導入してみようかなというインセンティブが働くわけですよね。

 基準を見直さなくても実証実験することができる、そんなのは当たり前なんです。そんな当たり前のことではなくて、インセンティブを働かせることがない限りは、仮にこれが全国展開するには時間がかかると思いますけれども、そもそも経済的なインセンティブがないものというのは広がっていかないです。

 なぜ、その経済的インセンティブを、実証実験でやってみようというその取り組みを、かたくなに厚生労働省は否定するんでしょうか。厚生労働省。

三ッ林大臣政務官 お答えいたします。

 職員の業務負担軽減などを通じた介護現場での生産性向上の推進に資するよう、介護ロボットの導入促進は重要と考えております。

 このため、平成二十七年度補正予算におきまして、介護施設で介護従事者の介護負担を軽減する介護ロボットを導入する費用の助成を行うとしております。

 こうした取り組みに加えまして、将来的には、基準の見直しによる対応も念頭に置いて、現場のニーズも踏まえ、介護ロボットの導入による介護職員の業務負担軽減や業務の効率化などへの効果検証を検討していくこととなってまいります。

 今後とも、介護サービスの質の向上や生産性向上を図るため、介護ロボットのさらなる普及促進を進めてまいりたい、そのように考えております。

緒方委員 政務官から一歩進んだ答弁があったと、今私は理解をいたしました。

 念頭にこれから考えていきたいということでありましたが、これはまさに特区なんですね。特区ですから、うちの町はやりたいと言っているわけですから。それは、我が町も百万都市、政令指定都市でありまして、そんな、やって大こけしたりとか、何か問題を起こしたりとか、そういうことをする町ではありません。ぜひこれぐらいは特区で一回やらせていただいて、一人プラスロボットで四人というのをやらせていただいて、もしそれでうまくいかなければ全国展開をそこでやめればいいわけですよ。

 厚生労働省の今の説明を聞いていると、いや、別にそんなことをしなくたって、実験したければどうぞというような言い方で言われても物事は進んでいかないわけでありまして、もう少しポジティブマインドが欲しいなというふうに思うわけでありますが、では、これは石破大臣、いかがでしょうか。

石破国務大臣 今政務官から答弁があったように、結局、一人プラスロボット一台で、ロボット一台を〇・三三とカウントするんだろうと思いますね。だから、一・三三掛ける三がニアリーイコール四ということになるわけで、そういう基準で本当にいいですかということなんだろうと思っています。

 これは価値観がいろいろあるんだと思いますけれども、要は、要介護の方々をロボットが介護するに当たって、一体一台を何人分にカウントしていくんだろうかということが特区になじむのかなじまないのかということも、多分厚労省の中では議論がある話だと思っています。

 ですから、挙証責任ということで申し上げれば、なぜこれがなかなか難しいんですかねということは政府の側から御説明するわけです。そこはまた得心いただかない場合にどうするかというお話になるわけですが、要は、事が人の健康に関することでありますので、そこでインセンティブがきかないじゃないかと言われるとそうなんですが、北九州の今の基準の中でもできるわけですよね、介護ロボットがそれなりの活躍をすることは。ですから、それを見ながら、それではこういう形にするかしないか、私どもとして、規制を担当します官庁がどのような形を言っているか、最終的にはそこが説明責任を負うことになるわけでございます。

 ですから、三ッ林さんの答弁の中でかなり前向きなところがあったので、また、北九州の北橋市長でありあるいは緒方議員であり、このことが、ロボットが例えば〇・三三人分の仕事をするのだ、だからこれを緩和するのだというような御議論をまた展開していただいて、そこにまたいろいろな知見が積まれてくるんだと思います、また別の局面が出てくると思いますので、どうぞまた今後とも、意欲がなえないように私どもはしていかねばなりませんが、これは経済的なインセンティブと人の健康というもののアウフヘーベンをどう図るかということだろうなというふうに思っておるところでございます。

緒方委員 先ほどの三ッ林政務官の前向きな答弁のところ、後で議事録でよく確認させていただきたいと思いますが、念頭に置きながらという言葉がありましたことを重く受けとめたいと思います。

 これは本当に、私も介護に使えるロボットというのを見たことがありますけれども、少なくとも私よりは役に立つだろうというぐらいでありまして、この表現がいいかどうかわかりませんが、相当に本当に活躍してもらえる。特に、重いもの、例えば人の体を移動させるときとか、そういったことも含めて。

 確かに、ロボットと今私は一言で言いましたけれども、いろいろなタイプのものがございます。いろいろなタイプのものがあるので、一概には一人プラスロボット一とつければ必ず四人ということになりにくいというのは、それは私もわかります。ロボットにも小さいものから大きいものまでありますし、出力が大きいものから小さいものもある、いろいろな可能性があると思います。なので、そこは細かく詰める必要がありますけれども、厚生労働省にはぜひポジティブマインドでこの件の議論に応じていただければと思いますので、これで最後になりますけれども、最後にもう一言だけ三ッ林政務官に力の、元気の出る答弁をお願いいたしまして、質疑を終えたいと思います。

三ッ林大臣政務官 緒方委員にお答えいたします。

 厚生労働省としては、北九州市はロボット技術が進んでいるということは当然承知しております。そして、介護現場にロボット技術を導入すること、そういったことで、介護士の今の現状、不足している点、そして、ただ、人の命を預かるわけですから、その辺を十分考慮して、前向きに検討してまいりたいと思います。

緒方委員 私のみならず、私の選挙区の隣であります山本委員長が厳しく見ておりますので、善処のほどをよろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

山本委員長 次に、宮崎岳志君。

宮崎(岳)委員 民進党の宮崎岳志でございます。

 質問に当たりまして、冒頭、一言申し上げます。

 本日の委員会の開催について、私どもは、熊本地震への対応に万全を期すため、委員会の延期を申し入れました。しかし、金曜に引き続いて、今回も与党側の強い希望で開催するということになりました。

 前回、木曜日の夜に発生した震度七の地震は、結果的にはこれは前震であって、本震というのはその後の十六日に起こった地震であったということであります。そして、十四日の地震よりも大勢の方がお亡くなりになっているという状況であります。

 TPPの委員会の方も開催されましたが、なかなか中長期的なことについて深まる議論はできないなというのが正直な印象であります。私どもはやはり、今、地方創生という大きなテーマについて議論をしているわけですけれども、本来であれば、ここは委員会を延期して政府には災害対応に全力を入れてやってもらいたい、そういうことを一言、遺憾の意を表したいというふうに思います。

 そして、今回の地震でお亡くなりになりました方々に心よりお悔やみを申し上げ、そして、被災されている方々にお見舞いを申し上げたいと思います。

 さて、用意した質問、法案の質問に入る前に、震災について一言御質問をしたいと思います。

 これは当然、大臣は所管外ということだと思いますので、お答えいただけるかどうかわかりませんが、問題意識のみ申し上げたいということで、できれば御対応願いたいということであります。

 今、二十万人の方々が避難所に避難をされているということであります。そして、そういう方々が、今、多くの方々は体育館の床のようなところに段ボールか毛布を敷いて雑魚寝をしている、こういう状況だと思います。

 それについて、私のところに昨日、新潟大学の榛沢和彦先生という方から御連絡がありまして、ぜひ対処していただきたい、こういうお話がありましたので、お話をしたいんです。

 今、簡易ベッドというものがございます。これはどういうものかというと、段ボールでつくる簡易なベッドなんですね。一個三千五百円ぐらいというふうに伺っております。東日本大震災のときにはまだ普及をしていませんでした。実際に、大震災の発災からしばらくたってから避難所には投入をされた。そして、その後、広島の土砂災害、東日本の豪雨災害、こういったところにはかなり活用をされているということであります。

 実は、床にごろんと横になるというのは、健康にとって必ずしもいいものではない。特に、床はかたいですし、何がしか毛布のようなものを敷いたとしても、やはり畳の上のようなやわらかさというのは得られない。かつ、温度が低いということがあります。ですから、健康被害が起きやすいという実態があります。

 どんな被害があるかといいますと、例えば、特に有名なのはエコノミークラス症候群。車の中で寝るというものについては、エコノミークラス症候群というのは結構有名な話になりましたけれども、実際に避難所で床の上に寝ている場合もこういったことが起こり得る。足の静脈に血栓ができて、それが肺に詰まるとかいうことですね、肺塞栓に悪化をする。あるいは、これは長期的に脳梗塞とか心筋梗塞ということにつながっていくというものであります。

 足の静脈に血栓ができるというのは、我々にとって一番、ある意味なじみ深いのは、町村議長が自民党総裁選に出られているときに足の血栓ができて、これはエコノミー症候群だということで御本人は説明を、たしか会見でされたんだと思います。最終的に脳梗塞でお亡くなりになったわけですけれども、そういった病気を想定していただければいい。こういうことが非常に起こりがちである。

 それから、床が低いですから、そこでほこりが立ったり細菌がいたりということで、直接吸い込むことになって肺炎が起こりやすくなる。

 それから、寝たきりになる。避難所に連れてこられたときには自分の足で歩いて避難所に入ったのに、出るときにはもう寝たきりになって歩いて出られないという方が、やはりこういう災害のときにかなり多く出るということであります。

 こういったいろいろな問題がある。そこで、簡易ベッドを入れた方がいいということなんです。

 今、段ボール業界の業界団体というようなところが供給をする窓口になっておりまして、非常に、本当に数日間で二万個とか、そういうロットで供給することが可能なんだそうです。

 一方で、これを入れるときに、防災協定を結んでいて供給した場合には、激甚災害に指定された場合などは後で国の方が全部肩がわりして予算的な面倒を見てくれるということなんですが、そういうものが結ばれていない場合は必ずしもそうではないという運用になっているようです。ちょっとこれは、私もきのうのきょうのことなので、詳しく制度的にはわかりませんけれども。それで、結果的に、今、現地の市町村とかに、ぜひこれを入れてくれ、供給できる用意はあるということを言っても、ちょっと予算的な手当てがどうなるかわからないので、だめだとか、待ってくれとか、そういうことで、非常に後ろ向きな反応が出ていて困っているということでありました。

 この榛沢先生はいわゆる心臓血管外科の専門でありまして、各地でそういった調査をやっています。国外でも、イタリアの北部地震等でも、この簡易ベッドの調査というか、床に寝た場合とベッドを使った場合の健康調査なども行われているようであります。非常に学問的な知見もあることでありますし、将来的な問題にもなってくるんだろうというふうに思います。特に、新潟大学の先生でございますので、中越地震の後十年間ぐらいかけて、当時のエコノミークラス症候群の関係の追跡調査などもやって、簡易ベッドの効果は非常に高いということで思っているようであります。

 石破大臣、所管外ではありますけれども、内閣府の大臣でございますので、ぜひそういう御担当のところにこういうこともお伝えをいただいて、ぜひ解決できるものであれば解決をしていただきたいというふうにお願いを申し上げたいんですが、いかがでしょうか。

石破国務大臣 御指摘いただき、ありがとうございました。

 あと、前回も委員の御質問にお答えをして、避難所というのは本当に行ってみないとわからぬ。私も当時政調会長でしたが、国会中だったので何日も泊まるという話にならなかったんですが、一晩泊まらせていただいただけでも、これは大変なことであると。

 一つは、おっしゃるように、非常に寝心地が悪いということがある。次は、プライバシーの確保をどうするんだという話がある。これが、ある程度、長期化という言葉は気をつけて使わなければいけませんが、そうなった場合に、これから先、梅雨が来て、夏になるわけで、ああいうところにエアコンディショナーがあるはずがないということになってきます。そういうときにこれをどうするんだというお話は、三・一一のときもありましたが、今回は発災が四月の半ばですので、もっとそれは近接したことになるんだろうと思います。

 簡易ベッドにつきましては私もある程度の知見はあるつもりなのですが、問題は、ここで、誰から先にそれを配るんですかねという行政の公平性みたいな話が出てきて、欲しい人は手を挙げてという話はまずならぬだろうてと。そうすると、全部そろうには時間がかかるんだろうよというようなお話で、これは常に、救援物資の配布もそうなんですが、ここで、公平という問題と、それでも必要としている人から、近いところから順に回しましょうねという迅速性というものをどうするかというのは、実は答えが出ていない。結果として行き渡るのが遅くなって困窮の度が増すということをどうするかというのは、もちろんここで私がお答えをすることではございませんので、そういう今の委員のお話は担当に伝えますが、この公平性と迅速性というものをどうやって解決するか。

 もう一つ、私は自民党で賃貸議連というものの会長をやっているのですが、そういう避難所よりも、賃貸物件であいているのがございますので、そこへ移っていただくということは必要なことだと思いますが、これも誰から順番にという話が出てまいります。また、これが九州全域、特に熊本、大分に広がっているわけで、ではどこの物件を提供しますかというようなこともまたお話が出てこようかと思います。

 災害に与党も野党もございませんので、また委員初め多くの方の知見をいただきながら、とにかく困っている人が一人でも早く助かるということがプライオリティーの最優先だと、私は考えておるところでございます。

宮崎(岳)委員 この簡易ベッドの件については、防災基本計画の中にも、地方公共団体は、簡易ベッド等について、その施設設備の整備に努めるということが定められております。実際、現地にお仲間が入っていての訴え、問題意識でございますので、ぜひ御担当の方にお伝えをいただきまして、善処をお願いしたいと思います。

 先ほどの災害の件でいえば、もちろん公平性みたいなこともあるんですけれども、今ぐらいの局面だと、もうえいやでやってしまうしかないんですね。細かいことを考えても無理だというふうに思います。

 本日報道されている中で、過日、松本文明副内閣相が蒲島郁夫知事にお会いになって、河野太郎防災担当相にきょうじゅうに青空避難所を解消してくれというふうに強く言われて参ったというふうに松本副内閣相が言ったら、蒲島知事が、避難所が足りなくて皆さんがあそこに出たわけではない、余震が怖くて部屋の中にいられないから出たんだ、現場の気持ちがわかっていないというふうに苦言を呈された、こういう報道がございました。

 きょうのTPPの委員会でもいろいろ問題になりました。その後、屋内でさらなる被害がいろいろ出たんですね。この発言についてもいろいろ言われておりますけれども、私が今言いたいのはそういうことではございません。やはり現場というのは、現場に行ってみなければわからないところというのがあると思うんですね。

 私も先日の質問で中越の取材に行ったときのお話をしたと思うんですが、私は入ったときに、長岡市内のある民宿に泊まりました。古い民宿で、大きな地震があれば大丈夫かなと心配になるようなところなんですね。私とカメラマンはそこに泊まったんですけれども、実は、その旅館の御主人というのは、外に車をとめて、そこの中で寝ていたんですね。もちろん、安全診断も受けて、大丈夫だよということで恐らく我々を泊めていたんだと思いますが、旅館の御主人は、自分は怖いから外で寝ていたんです。

 そして、そこには寝たきりのおばあちゃんもいたらしくて、そのおばあちゃんは当然外で寝られない。奥さんはそのおばあちゃんの世話でその建物の中に寝ておりまして、御主人だけ外で車の中で寝ているという、ちょっと奇妙な状況だったんですね。それをやゆすることもできるんですけれども、それだけある意味せっぱ詰まった状況なのかなというふうに私は受けとめました。

 いろいろ問題は次々発生して、政府の方々初め与党の方々のところにも、こういうものをもっと使ってくれとか、こういうのがもっといいとかという話は山ほどあると思うんです。さばき切れないぐらいあると思うんですが、その一つ一つがある意味真面目な訴えでございますので、できる限りそういうことにも力を割いていただきたいということをお願いしたいと思います。

 さて、法案に関しての質問に移ります。

 地方版ハローワークについて伺いたいと思います。

 今回、地方版ハローワークというものが導入されることになりました。一方で、地方自治体は必ずしも職業紹介のノウハウを持っているというわけではございません。そして、今回これをやるに当たって新たに、例えば人が配置されるとか予算がつくとかというのは、国レベルでは多分行われないんだろうというふうに思います。そうすると、自治体によっては、この職業紹介を民間に丸投げするおそれがあるんじゃないかということを危惧しています。

 民間の人材紹介会社みたいなところがあります、あるいは求人広告会社みたいなところがあります。そういうところに丸投げをしてしまうと、これは結果的に、その地方版ハローワークで、もちろん無料職業紹介でありますが、それで会社はお金をもらう、あるいは、さらにそこからその情報を他のビジネスに転用するというような可能性もある。これは、公共職業紹介制度の根幹そのものにかかわるんじゃないかというふうに思います。

 地方版ハローワークは、あくまで自治体そのものが責任を持って直接行うべきものではないかというふうに私は思うんですね。民間業者に丸投げ、例えば非常勤で職員を雇って窓口に張りつけるぐらいのことならいいかと思いますが、事務そのものを丸投げしてしまったりとかいうことはあってはならないと思います。

 逆にそこで、例えば求職者が来て、こういう会社が求人をしているということがあれば、そういう会社を選んで営業を別の会社にかけるとか、求人で、職を探しに来た人に対して、君にいい職はないけれども、こういうところで有料の紹介があるから行ってみたらどうかなんてアドバイスをするとか、いろいろな混乱が生じるおそれがあると思うんですね。

 こういったことはないということでよろしいんでしょうか。いかがでしょうか。

生田政府参考人 お答えいたします。

 今回の法改正につきましては、地方公共団体が民間と明確に異なる公的な立場で無料職業紹介を実施できるようにということで、地方公共団体がみずから無料職業紹介を行う場合に限り、届け出要件、各種規制を緩和して、地方公共団体の創意工夫に基づく自由な無料職業紹介の実施ができるようにするものでございます。

 これは、地方公共団体が公的な機関であることや、あるいは、これまで地方公共団体が届け出て行ってきた無料職業紹介につきまして、改善命令だとか事業停止命令だとかそういったことが皆無であるということに鑑みまして、従前の規制やこれに基づく指導を行わなくても労働者にとって不利益にはならないというふうな判断で実施したものでございます。

 地方公共団体が民間職業紹介事業者の方に委託して無料職業紹介を実施する場合につきましては、あくまで委託を受けた民間事業者の方が職業紹介事業の実施主体になります。このために、改正案で職業安定法第四条七項という規定がございますけれども、その規定に基づきまして、今回の改正案におきます地方版ハローワークにはこういうケースはならないということになります。

 地方公共団体から委託を受けて職業紹介事業を行う民間事業者の方に対しましては、従前と同様に職業安定法に基づきます民間事業者に対する規制がございますので、その規制が適用されまして、それに基づきまして指導監督を行っていくということになります。

宮崎(岳)委員 そうしますと、今回新たに始まる地方版ハローワークというものは民間委託はできないという理解でよろしいんでしょうか。もう一度お願いします。

生田政府参考人 今回制度化されます地方版ハローワークにつきましては、届け出制を廃止しまして、それで自由にできるという仕組みになります。ですから、職業紹介につきましては民間委託はもちろんできないわけでございますが、ただ、カウンセリングだとかセミナーだとかそういったようなものにつきましては、特段のルールはございませんので、活用いただくことは可能ではないかというふうに考えてございます。

宮崎(岳)委員 わかりました。

 職業紹介というのは、歴史的に見ると大変重いものがありまして、例えば有名な、日本最大と言われる暴力団は、最初は港湾労働者の職業紹介というところから始まっています。江戸時代から、職業紹介を有料でやるというのはいわゆる裏稼業だったんですね。ですから、逆に厳しい規制がかかってきたし、これは世界的にも同様で、人身売買の温床にもなりかねないということで厳しい規制がかかっている。こういうことを踏まえて、少々、石橋をたたいて渡るようなところも必要だということは御理解いただきたいというふうに思います。

 それから、ちょっと時間がございませんので、二点だけ確認をさせていただきたいというふうに思います。

 一点は、ハローワークの地方移管についての議論というのが地方と国の間で長年あったと思います。先ほどの緒方議員等の質問ともかぶりますけれども、今回の法律をもってその地方と国と労使の議論に一応の決着がついたものだという話も聞いております。つまり、労使と国と地方で、この話をもって議論は一応決着ということだと聞いているんですが、そういうことなのか。そうではなくて、これからさらに国のハローワークの地方移管みたいな話も進んでいくという理解なのか、これはどちらかというのが一点です。

 もう一点は、ILO第八十八号条約、職業安定組織条約というのがあります。その中には、「加盟国は、無料の公共職業安定組織を維持し、又はその維持を確保しなければならない。」「職業安定組織は、国の機関の指揮監督の下にある職業安定機関の全国的体系で構成される。」、こういうふうにあります。

 これは、国が直接職業安定機関を運営しろということを意味しているという説もありますし、自治体にこれを全て任せてしまってもいいのだという考え方も、この文面からは両方の読みようもあるような気もしますが、これについては、国が直接やることを義務づけているという理解でよろしいんでしょうか。

 この二点をもって最後の質問といたします。

生田政府参考人 お答えいたします。

 まず、ハローワークの地方移管につきまして、国と地方との間での議論がございました。

 今回の改正内容でございます地方版ハローワークの創設等につきましては、昨年十一月十二日付の全国知事会からのハローワークの地方移管に係る具体的要望事項を反映させたものでございます。それから、今回の改正内容の前提となります閣議決定を受けまして、昨年の十二月二十二日には、全国知事会から、長年の課題であったハローワークの地方移管について、今般地方版ハローワークの設置等が盛り込まれたことは地方分権改革の歩みを大きく進めるものとして評価する旨の声明が出されてございます。

 また、労使の方に目を転じますと、公労使から成ります労働政策審議会に今回の改正法案につきましてはお諮りをいたしまして、ことしの二月二十三日に、おおむね妥当ということで、全会一致の御答申をいただいております。

 そのため、厚生労働省といたしましては、ハローワークの地方移管に係る議論につきまして、今般の改正内容に基づき対応していくということで、国は勤労権の保障のため全国ネットワークによる雇用のセーフティーネットの役割を担っていくということで、地方側や労使の合意が得られたものというふうに私どもとしては考えてございます。

 その上で、ILO条約の考え方でございますけれども、これにつきましては、八十八号条約におきまして、職業安定組織につきまして、第二条で、「国の機関の指揮監督の下にある職業安定機関の全国的体系で構成される。」ことと書いてございまして、三条におきまして、各地理的区域において十分な数で、労使にとって便利な位置にある地区職業安定機関の網状組織、ネットワークから成ることということを求めてございます。

 条約の趣旨は、職業安定組織について、国の指揮監督のもとに全国的体系で構成、運営されるべきものということでございまして、我が国におきましては、その要請は、厚生労働本省それから各都道府県労働局、あと、各ハローワークの間の指揮監督、指揮命令関係において担保しているものというふうに解してございます。

 なお、今回の地方版ハローワークにつきましては、条約で要請されました国の体系の外で上乗せ付加的に実施されるものだということでございまして、決して条約に反するようなことはなく、きちんと対応していただくべきものではないか、より伸ばしていくべきようなものではないかというふうに考えてございます。

宮崎(岳)委員 議論は決着をしたのだ、そして、ILO第八十八号条約は国のハローワークの直接運営を定めたものだという御説明であったのかなというふうに理解をいたしました。

 以上で終わります。

山本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時七分散会


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