衆議院

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第2号 平成27年12月3日(木曜日)

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平成二十七年十二月三日(木曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

  内閣委員会

   委員長代理理事 田村 憲久君

   理事 秋元  司君 理事 亀岡 偉民君

   理事 谷川 弥一君 理事 中山 展宏君

   理事 泉  健太君 理事 高井 崇志君

   理事 高木美智代君

      青山 周平君    石崎  徹君

      岩田 和親君    小倉 將信君

      越智 隆雄君    大串 正樹君

      大隈 和英君    神谷  昇君

      木内  均君    北村 茂男君

      小泉進次郎君    白須賀貴樹君

      助田 重義君    高木 宏壽君

      武部  新君    谷川 とむ君

      長尾  敬君    ふくだ峰之君

      牧島かれん君    松本 洋平君

      宮崎 政久君    若狭  勝君

      緒方林太郎君    近藤 洋介君

      佐々木隆博君    津村 啓介君

      山尾志桜里君    小沢 鋭仁君

      河野 正美君    升田世喜男君

      輿水 恵一君    濱村  進君

      池内さおり君    塩川 鉄也君

  農林水産委員会

   委員長 江藤  拓君

   理事 あべ 俊子君 理事 小里 泰弘君

   理事 宮腰 光寛君 理事 吉川 貴盛君

   理事 渡辺 孝一君 理事 玉木雄一郎君

   理事 松木けんこう君 理事 石田 祝稔君

      井野 俊郎君    伊藤信太郎君

      池田 道孝君    今枝宗一郎君

      加藤 寛治君    勝沼 栄明君

      瀬戸 隆一君    武井 俊輔君

      武部  新君    谷  公一君

      中川 郁子君    中谷 真一君

      西川 公也君    橋本 英教君

      古川  康君    前川  恵君

      宮路 拓馬君    八木 哲也君

      簗  和生君    山本  拓君

      金子 恵美君    岸本 周平君

      小山 展弘君    佐々木隆博君

      福島 伸享君    井出 庸生君

      村岡 敏英君    稲津  久君

      佐藤 英道君    斉藤 和子君

      畠山 和也君    仲里 利信君

    …………………………………

   農林水産大臣       森山  裕君

   国務大臣         甘利  明君

   総務副大臣        松下 新平君

   文部科学副大臣      義家 弘介君

   厚生労働副大臣    とかしきなおみ君

   農林水産副大臣      伊東 良孝君

   農林水産副大臣      齋藤  健君

   内閣府大臣政務官     牧島かれん君

   内閣府大臣政務官     高木 宏壽君

   外務大臣政務官      山田 美樹君

   厚生労働大臣政務官    太田 房江君

   農林水産大臣政務官    加藤 寛治君

   農林水産大臣政務官    佐藤 英道君

   経済産業大臣政務官    星野 剛士君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (内閣府規制改革推進室次長)           刀禰 俊哉君

   政府参考人

   (文化庁長官官房審議官) 磯谷 桂介君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         佐藤 速水君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         大澤  誠君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房統計部長)          佐々木康雄君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  奥原 正明君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           竹内 芳明君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)       渡辺 哲也君

   内閣委員会専門員     室井 純子君

   農林水産委員会専門員   奥井 啓史君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 内閣の重要政策に関する件(TPP等)


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     ――――◇―――――

田村(憲)委員長代理 これより内閣委員会農林水産委員会連合審査会を開会いたします。

 先例によりまして、私が委員長の職務を行います。

 内閣の重要政策に関する件、特にTPP等について調査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武部新君。

武部委員 自由民主党の武部新でございます。

 本日は、内閣、農林の連合審査会、TPP等につきまして質問をさせていただきたいと思います。

 十月五日に米国アトランタにおきまして、TPP閣僚会合で協定の大筋合意がなされました。世界の約四割を占める、かつてない規模の経済圏域におきまして経済連携がスタートするというわけでありますけれども、これによって、我が国の大企業のみならず、中堅・中小企業においても海外に展開して経済成長に資する、あるいは地方創生に連結していくということを我々はしっかりと後押ししなければなりません。

 一方で、関税が撤廃されたり、あるいは引き下げられたりした品目もございます。農林水産業の生産現場あるいは地方からも不安の声が聞かれております。特に、私の北海道は重要五品目等の主要産地でございまして、心配をする声も大変多くございます。

 政府におきましては、TPP総合対策本部が設置されました。我が党におきましても、TPP総合対策実行本部を設置いたしまして、TPPキャラバンを全国十五カ所で開催させていただいて地域の声を聞いてまいりました。また、各団体、特に若い生産者の皆様方の声も聞いてきて、その声を、国内対策の提言についてまとめさせていただいたところであります。

 そこで、十一月二十五日に政府におきまして、総合的なTPP関連政策大綱が決定されました。この概要について御説明をお願いしたいと思います。

    〔田村(憲)委員長代理退席、江藤委員長着席〕

甘利国務大臣 御指摘のとおり、党内でも議論を重ねていただきまして、政府との連携もとりながら、TPPの関連政策大綱を決定したわけであります。

 具体的に言いますと三点構成になっておりまして、まず第一は、いわゆる新輸出大国を目指すということであります。

 これは、大企業はもちろんなんでありますけれども、中堅・中小企業にとってどういうメリットがあるんだという指摘があります。

 実は、TPPを契機に海外展開を行おうとする中堅・中小企業、これが一つのチャンスになるわけなんでありますけれども、これを支援していく。鉱工業製品のみならず、農産品、食品、さらにはサービスであるとか、それからインフラの輸出を促進して、冒頭掲げました輸出大国を実現するための施策を推進するということであります。

 ルールが統一化をされます。そうしますと、いわゆる商売をやっていく上での予見性が確保されます。

 現状、国によっては、パフォーマンス要求が後を絶たない。例えば、法人税を下げますからどうぞいらっしゃい、ウエルカムですと。投資をして、もう足が抜けなくなったときに、悪いけれども技術移転をしてくれと。当然ノーと言いますけれども、それでは優遇措置はやめさせてもらうとか、あるいはローカルコンテンツで、うちの部品を何割以上使ってくれと。いや、製品の精度の上からいうと日本から輸入したものを使わないとこの精度は確保できないと言うと、それなら優遇措置は悪いけれどもやめねとか、あるいはソフト会社にとって致命的なのはソースコードの開示要求です。これは設計図の開示ですから、致命傷になるわけですね。それをやらない場合には、では法人税の優遇はやめねみたいなことがかなり横行している。そういうのはTPPの域内では禁止行為であります。それを破ったら、企業が国を訴えられて、第三者機関で裁定がされるISDSという項目に持っていけるわけでありますから、いろいろな予見性ができる。

 中小企業にとって、例えばサービス展開をする際に、国によってはその自国内にサーバーを設置せよという相当な投資を要求される。それもしなくていいということになりますから、ネットを通じてEコマースが自由にできるとか、中小企業や小規模企業にとって有利な環境ができる。あるいは、コンソーシアムを組んで進出を応援するという体制もとる、各国が中小企業を支援する窓口をつくるとか、いろいろな方法がとられています。

 第二は、いわゆるグローバルハブにしていくということです。

 そこの国が拠点として魅力があるかというのは、そこの国から海外に展開していく際に、どれくらい大きな範囲で関税が低いとかないとか、ルールが統一されているかというのが魅力になるんですね。ある国から輸出する場合には輸出先が全部関税がある、日本から輸出されるものには輸出先の関税がない、そうすると日本は魅力的になります。あるいは、投資をする際に、研究開発拠点として魅力があるということは投資拠点になる。こっちからも行くし外からも入る、いわば拠点化するという魅力をつくろうということであります。

 それから、第三はやはり農業です。

 農政新時代というのは、これを機会に農業者も意識転換をしよう。それから、政治の側もそういう姿勢で臨もうと。

 農業というと、守る。もちろん、不安に寄り添うというのは大事なことですから、それをやります。それと同時に、ポテンシャルを引き出すということですね。不安に寄り添うだけでは、現状維持以下にどんどんなっていっちゃうわけです。

 日本の農産品というのは、海外の評価は非常に高いです。海外でも物すごくそれを痛感します。ただ、価格で勝てない。価格で勝てないのを、規模拡大だけして価格で勝てるようにしていくというんじゃなくて、違ったマーケットを狙うんですね。高品質で高味覚で高安全なものの消費層というのはありますから、そこにうまくつなげるというのがマーケティングです。そういう、不安に寄り添うというのとポテンシャルを引き出すという両方で農政の新時代というのを掲げていこうと。

 やはり農業後継者の人はそういう守る部分よりも攻める部分で農業の将来像、夢を感じるわけですから、そこをしっかり展開していくということが三つ目の視点であります。

 ほかに、食の安全ですとか知財ですとか、具体的な項目が幾つもあります。それらをしっかり見える形にして、支援それから後押しをしていく体制を組んでいきたいというふうに思っております。

武部委員 ありがとうございます。

 TPPを契機に、日本のポテンシャルをどんどん引き出していくということだというふうにお聞きしました。

 自民党のキャラバンをやりまして各地でいろいろな声を聞いてまいりましたが、その中で、TPP大筋合意の内容、中身と、我々、衆参で国会決議をいたしました、この決議の整合性について結構いろいろな御意見がございまして、そういった声もありました。しかし、大変厳しい交渉を甘利大臣にしていただきまして、この国会決議があったからこそ、ぎりぎりの交渉の中で国益を守ることをやっていただいたんだと私は認識しています。

 改めて、衆参における国会決議がTPPの交渉の中でどういう意義があったかということをお聞きしたいと思います。

甘利国務大臣 よく、国会決議の縛りがあるからTPPで交渉がやりづらかったでしょうと言われる方がいます。実は、本音で言いますと、そうじゃなくて、後ろ盾になってもらいました。

 というのは、それだけ日本というのはほかの国に比べて農業のセンシティビティーが高い。その高いことを具体的に裏打ちしているのが衆参の国会決議で、衆議院でも参議院でも、そういう懸念をしっかりフォローしてくれという決議がなされた。

 私が交渉するときに、農産品でも完全自由化というのが目標なんですね、日本が入る前にホノルル合意というのがあって、関税はゼロにするということが、首脳間でゼロを目指すということが決められているんです。ゼロを目指すという中でゼロにしないと言うのはなかなか大変なんですけれども、その発言の後ろ盾として、国会決議でこれくらいの懸念が示されている。ということは、それを無視したものは国会に出しても通りませんよ、通らないものを交渉してもしようがないじゃないか、だから、我々が通せると思うぎりぎりのところは守らせてもらわないと交渉になりませんからということで、正直言いまして、各国とやり合った私としては、あの決議があったからここまでになったという気持ちはあります。

武部委員 ありがとうございます。

 最後の質問になりますけれども、農業分野につきまして、攻めるべきは攻めてまいりますけれども、しっかりと経営安定対策を充実させて、TPPの影響を抑制するということも大事だと思います。また、今、攻める分野で申し上げますと、やはり生産力強化、競争力強化について、総理の補正予算の指示もございましたけれども、やれることはできることからどんどんやっていくということが必要だと思います。

 その意味では、土地改良事業ですとかあるいは共同施設、強い農業づくりですね、北海道からも産地パワーアップ事業を新しくつくってほしいという声をいただいています。全国から前向きな声もしっかりと聞かされておりますので、この機会にしっかりと生産力を強くしていくことが大事だというふうに思います。

 農林水産分野のTPP対策につきましてどのように進めていかれるお考えか、森山大臣の意気込みをお聞きしたいと思います。

森山国務大臣 武部委員にお答えをいたします。

 御承知のとおり、TPP交渉というのは保秘義務がかかっておりましたので、国民の皆さんへの情報提供がなかなか難しい課題がございました。大筋合意をいたしましたので、農林水産省でも地方説明会を四十六回開催させていただいて現場の声をしっかりと聞かせていただき、そのことが今回の関連政策大綱に生かされていると思っております。また、与党の方でも御努力をいただいたことには敬意を表したいと思います。

 その大綱の中で、攻めの農林水産業へどう転換をしていくかというところが一つあるだろうと思います。経営マインドを持った農林漁業者の経営発展に向けた投資意欲を後押しするいわゆる競争力の強化と体質強化対策を集中的に講ずるべきであろうということが一つの考え方であります。

 もう一つは、経営安定、安定供給のための備えとして、関税の削減等に対する農業者の皆さんの懸念と不安を払拭しなければなりませんし、TPP協定発効後の経営安定に万全を期するため、協定発効に合わせて経営安定対策の充実等の措置を講ずることとしておりますので、そのことをしっかりやらせていただきたいと思います。

 また、今、補正予算の編成に向けて具体的な作業を進めているところでありますが、スピード感を持ってしっかりした補正予算をつくらせていただきまして、今委員の御指摘のとおり、やるべきものはスピーディーにやるということが大事だろうと思います。

 また、我々としては、補正予算が決定をいたしましたら、農林水産省として、新農政キャラバンと銘打ちまして、全国にさらに御説明を申し上げ、また二十八年の秋までに検討を進めるということでございますので、新たな御意見等も伺ってまいる努力をさせていただきたいと考えております。

 以上でございます。

武部委員 森山大臣、ありがとうございます。

 我が党におきましても、小泉農林部会長を中心に「農政新時代」、将来に希望と意欲を持って取り組んでいただけるようにしようということで、新たなビジョンをつくって、そして着実に実行していくことをしっかりと政府と力を合わせてやってまいりたいと思いますので、ぜひとも御努力をいただきますようにお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

江藤委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久でございます。

 通告に従いまして順次伺ってまいりますが、きょうは連合審査ということで、特に総合的なTPP関連政策大綱におけるいわゆる国内対策について具体的に伺っていきたいな、このように思っております。

 その前に、まず甘利大臣にお伺いしたいと思っております。

 今回、TPP大筋合意に至った経緯の中でさまざまな紆余曲折があったというふうには思いますけれども、その結果については、私は、大臣を初め関係者の方々の御努力は大変なものがあった、このように率直に評価をさせていただきたいというふうに思っております。

 一方で、一次産業の生産者初め関係団体の皆様からはさまざまな不安あるいは疑問の声もあって、いまだに、この先どうなるか、そうした声もあるのも事実でございます。そういう中で今般の政策大綱が出されたわけですが、私どもも、公明党として、全国各地、生産現場を歩きまして、懇談をさせていただいたり、現場の声を聞いてまいりました。きょうはその声を背景に伺っていきたいと思っております。

 まず初めに、TPPの再協議等について甘利大臣にお伺いしたいと思っております。

 TPP交渉について、アメリカ主導で協議が進められたという批判が一部ございます。いわゆる、日本をアメリカに売り渡すようなTPP交渉はノーだという意見だと思います。しかし、日本は、交渉の局面ではやはりその都度主導権を発揮してきた。交渉結果も、日本経済にメリットがある。もちろん、これは守るべきものは守るということが前提ですけれども。

 こうしたことについて、この認識に間違いはないのか、また、アメリカの方から再協議の声が出てまいりまして、それに対して国内的にも再協議を心配する声もありますけれども、どのように御認識されているのか、甘利大臣の見解をお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 交渉の終盤でも、私に直接幾つかの国の大臣から、日本のおかげですということを、随分お礼を言われました。大筋合意が終わった後、また別の国の大臣から私宛てに礼状が来ました。日本が入ってくれたおかげでここまで持ってこられたという長い感謝状が書いてありました。

 日本が入る前までは、アメリカ対その他全部という関係だったんですね。日本が入ってきて、やはり経済規模の大きさというのは発言力の大きさにつながるということを痛感した交渉だったんです。

 そこで私が言ったのは、ホノルル合意ということをすぐ持ち出すわけですね。日本はこれを承知で入ったんでしょうと。日本が入る前にホノルルで首脳が合意しているのは、関税撤廃を目指す、ゼロにする、それを承知で入っておきながら関税を残せとは何事だという議論と戦った。入って最初の戦いはそれだったんですね。

 私が主張したのは、農産品では日本はセンシティビティーが多いです、しかし工業製品はどこよりもみんな開放しているじゃないか、即刻日本と同じことができますかと。あるいは、ルールについては日本は優等生だと思いますよ、WTOのルールを完全に履行していますよ、日本と同じことができますかと。アメリカに対しても、では地方政府は政府調達を日本と同じようにできますかと。できないんですから。地方は地方の意思があると。

 ですから、これは、農産品の関税がゼロになっていないのはけしからぬというのではなくて、農産品と工業製品とのバランスだってあるでしょう、あるいは物品の市場アクセスとルールのバランスもあるじゃないですか、全部を見てバランスのとれたということをいうんじゃないですかと。あるいは、途上国には先進国と同じようなペースでできないという事情だってあるでしょうと。途上国と先進国のバランスがある。だから、全体のバランスを見ながら、部分的にここだけがけしからぬという議論はおかしいということを言いましたら、甘利大臣の発言に賛成というのが四カ国だあっと続きました。そこから初めて、バランスのとれたという言葉がそこに入ったんです。最後まで入りました。

 でありますから、日本の果たした役割というのは非常に大きいと思いますし、アメリカに対して五分に物を言えるのは日本だということをほかの国は痛感してくれましたから、そのとおりやってきたというふうに思っております。

 再協議につきましては、日本もアメリカも再協議はしませんということを申し上げています。

 TPP交渉というのは、いろいろなバランスでできているんですね。二国間の物品とそれ以外とのバランスとか、二国間の協議がほかに与えるバランスとか、一個を引き出すとがらがらと崩れちゃうものですから、そういう仕組みでできていますから、どこか特定なものに関して再協議ということはできませんから、はっきり申し上げています。

 もちろん、でき上がった後、交渉が進んでいくに従って、この部分はもっと早くできるんじゃないのとか、この部分はこうできないかというのは、二国間で合意すればそれはやっていいことになっているわけでありますけれども、全体をこれでかちっと決めるというときに、この部分が気に入らないから再協議ということはあり得ないと思っています。

稲津委員 ありがとうございました。

 それでは、これから先は、TPP関連政策大綱について森山農林水産大臣に、少し具体的な話になりますけれども、お伺いしたいと思っております。

 まず、牛肉、豚肉、乳製品の国内対策についてということで、三点ばかり伺いたいと思っています。

 一つは、牛・豚マルキンの法制化のことと、それから加工原料乳の生産者補給金の見直し、いわゆる液状乳製品を対象にするということ、生産者が安心してこれができるように、協定の発効に先立ってこれらを実施すべきというふうに思っておりますが、検討のスケジュールについてまずお伺いしたいと思います。

 それから、畜産クラスター、これは現場で非常にニーズがあって喜ばれているんですけれども、必要十分な予算額を確保するということが一つ大事なのと、私どもも、各現場を歩いておりますと、家族経営等、いわゆる小規模な事業者も利用できるように要件を見直していただきたいという声を背景にして、先般、十一月二十日に官邸に参りまして、公明党としての提言を取りまとめて出させていただきましたが、その中にも書き込みました。そういったことを今後ぜひ検討していただきたいということ。

 三つ目は、これは予算のことなんですけれども、結局、畜産関連の補助金というのは輸入関税を原資としているものが多い、したがって、関税率の引き下げを今後行う中でしっかりとした財源確保ができるのか、そういう心配材料もあります。

 以上三点、まずお伺いしたいと思います。

森山国務大臣 私の方から二点お答えをさせていただきたいと思います。

 牛・豚マルキンの法制化につきましては、TPP協定の批准と関連法案の改正のスケジュールと歩調を合わせて行わせていただきたいというふうに考えております。そこを基本としながら、今後スケジュールを進めてまいりたいと考えております。

 あと、関税が削減をされますので、関税で入ってきた分の財源をどう求めていくかということでありますが、そこは懸念をしていたところでありますけれども、今回の関連政策大綱において「既存の農林水産予算に支障を来さないよう政府全体で責任を持って毎年の予算編成過程で確保する」ということになっておりますので、このことをしっかりと守っていくことが大事なことであろうというふうに考えております。

 以上でございます。

齋藤副大臣 委員から、加工原料乳生産者補給金の話がございました。

 今回のTPP対策におきましては、経営安定対策の充実の部分、ここにつきましては協定発効に合わせて措置をするのが基本だというふうに考えておりますが、一方で、相対的に高い乳価で販売でき、今後も需要の伸びが期待できる生クリーム等への生産転換を早期に促すことが望ましいと考えておりまして、この観点から、加工原料乳生産者補給金の充実につきましては、準備が整い次第、協定の発効に先立って実施をしたいと考えております。

 ただ、本対策の実施に向けましては、生クリーム等向け生乳の取引価格や数量等を新たに把握していくということが重要になってまいりまして、したがって、新しく調査、情報収集を実施して、適切な単価設定を行うということが必要になってまいります。この調査におおむね一年程度時間を要するということでありますので、二十八年度からの実施は困難かなと考えておりますが、できる限り準備を急いで、二十九年度からは実施できるようにしたいと考えております。

 また、畜産クラスターにつきまして御質問をいただきました。

 御案内のように、クラスター事業は、地域の関係者が連携をして、地域全体で収益性の向上を図るという観点から、地域において中心的役割を担う生産者等の取り組みを支援する事業であります。小規模な生産者や家族経営でありましても、モデル的な取り組みを率先して行い、その成果を地域に波及していくような場合や、市町村や生産者団体が行う生産性向上に向けた地域的な取り組みに積極的に貢献する場合など、これまでも事業の対象としているところであります。

 今後とも、地域で連携を図りながら収益性向上に向けた取り組みを行う生産者であれば、小規模な生産者や家族経営も含めて支援対象としていく考えでありまして、収益性向上の取り組みが的確に支援されるよう、必要な事業の見直しは検討してまいりたいと思っております。

稲津委員 ぜひ、今御答弁いただいたことをしっかり具体化していただきたいなと思っています。

 けさの日本農業新聞にも、和牛の子牛の平均取引価格がついに七十万円台になったということで、現場はやはり相当大変な状況ですから、その払拭をぜひお願いしたいと思います。

 次に移ります。

 次は、合板、製材の国際競争力の強化ということで伺いたいと思います。

 今回の合意では関税撤廃の期間が十六年ということとセーフガードもつけたということで、一応の評価はできると思うんですけれども、しかし、やはり林業関係者の先行き不安の声というのはいまだに拭えないものがあります。

 私は、こういうことを踏まえた上で、やはり今回の政策大綱に書かれておりますいわゆる合板、製材の国際競争力の強化ということは非常に大事だと思っていまして、具体的には、例えば効率化、省力化を図るための工場整備ですとか、あるいは間伐材生産、路網整備を一体として取り組むことが必要だと思っていますが、この財源措置も踏まえてどのように検討されるか、大臣の所見を伺います。

加藤大臣政務官 関税撤廃による合板、製材についての御質問についてお答えをいたしたいと思います。

 合板、製材等の林産物につきましては、現在の関税率が一〇%以下となっている中で、長期間の関税撤廃期間の設定やセーフガードを措置したところであります。

 したがって、TPP合意による影響は限定的と見込まれるわけでありますが、他方、長期的には国産材の価格の下落も懸念されるわけでありますので、このため、今般決定した総合的なTPP関連政策大綱においては、合板、製材の生産コスト低減等により国際競争力を強化していくこととされておるところでございます。

 具体的には、大規模、高効率の加工施設の整備、そしてまた原料供給のための間伐、路網整備など、川上から川下に至る対策に取り組んでまいる考えでございます。

 このため、必要な予算の確保についてもしっかりと取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。

稲津委員 時間が参りましたので、もう一問と思っておりましたが、意見だけ述べて終わらせていただきたいと思います。

 米のところは、国別枠の輸入量に相当する国産米を買い入れるということがありましたけれども、一方で、根源的な問題としては、やはり生産数量をどうするかという問題があって、ことしは、主食用米については、十六年の開始以来初めて過剰作付解消ということで、価格もちょっと上がって一安心なんですけれども、ここはやはりしっかりそれに取り組んでいくためにも、水田活用の直接支払交付金、それからそれぞれの県で独自に取り組んでいける産地交付金、ここの予算はしっかり確保して現場の不安を解消していただきたい、そのことを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

江藤委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 民主党、緒方林太郎でございます。

 内閣委員会そして農林水産委員会の連合審査会ということで質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 まず、質問に入ります前に一言、臨時国会が開かれていないことに対して強く抗議をいたしたいと思います。憲法五十三条に基づいて我々が要求しているにもかかわらず臨時国会が開かれないということは明確な憲法違反であるということを述べた上で、質問に移っていきたいというふうに思います。

 まず、通告をいたしておりませんが、森山大臣に一つ質問をさせていただきたいと思います。

 我々内閣委員会で、先般、北海道の帯広の方に視察に参りまして、その際、池田町というところで十勝ワインの現場も視察をさせていただきました。国産のワイン製造業者は本当に頑張っています。こういった国産のワインを、例えば内閣総理大臣官邸であるとか外務省の飯倉公館であるとかそういったところ、さらには在外公館であるとかいろいろな場所でもっともっと使って、そして国産ワインの振興に資していただきたいというふうに思うわけでありますが、森山大臣、一言お願いします。

森山国務大臣 緒方議員にお答えをいたします。

 私は焼酎党でございますからワインのことはよくわかりませんが、ただ、ワイン通の方々の話を聞きますと、国産ワインは非常にレベルが高くなったという話はよく聞きます。いいブドウをつくっていただく努力というのが成果を生んでいるんだろうと思います。

 御提案のことについては、大変大事なことでございますので、農林水産省としても外務省等にもよくお願いを申し上げて、今、国産米をしっかり使っていただくようにお願いをしておりますが、ワインについてもしっかりした取り組みをさせていただきたいと思っております。

緒方委員 ありがとうございました。

 それでは、TPPに関して質問に入っていきたいと思います。

 まず、TPPについて、先ほど甘利大臣からは国会の決議に反していないという答弁がありましたが、我々としては、どう読んでもあの決議と今回の結果についてはそごがある、そのように思います。これは明確な国会決議違反であるということを前提に、質問していきたいと思います。

 まず、パネルの一つ目、資料の一枚目であります。

 TPPの結果、どういう影響が国内の農業に生じるかということにつきましては、最近も内閣官房そして農林水産省の方からさまざまな試算が出ておりますが、その前に、交渉に入るときに試算を出しています。今このパネルに掲げているものでありまして、たくさんございますが、この平成二十五年三月の影響評価というのは現在でも有効でしょうか、森山大臣。

森山国務大臣 条件が、関税を全て撤廃するという前提で今委員のお示しの資料はつくられていると思いますので、大筋合意をしたこととは少し違っていると思います。

緒方委員 では、この資料については、政府として自信を持って出したものだというふうに思われますか、森山大臣。

森山国務大臣 当時は関税を撤廃するという前提で資料を作成し、提出したものだと理解をしております。

緒方委員 関税を撤廃する、ここに並んでいるさまざまな品目について関税を全て撤廃すれば、米については三二%、一兆百億円の生産量減少が生じるとか、その他いろいろ、たくさん書いてございますが、生産額が四兆一千億、自給率は減少する、多面的機能についても三兆七千億の減少が出る、全体として七兆九千億の損害が出る、そういう試算でございました。

 もちろん交渉結果とはこれは違いますので、そこは今大臣の言われたとおりだと思いますが、しかしながら、この品目の中で、実際に関税を撤廃しているものがございます。例えば落花生、加工用のトマト、リンゴ、生果用のパイナップル、鶏肉、鶏卵、こういったものについては実際に関税を撤廃しております。それらの品目について限定するのであれば、この試算というのは正しいというふうにお考えになりますか、森山大臣。

森山国務大臣 落花生等につきましては、輸入はほとんど関割りの範囲内のものでありますし、為替の問題もこれありですから、一概に言えないのではないかというふうに理解をしております。

緒方委員 しかし、この平成二十五年三月に出された試算では、例えば落花生のところは、殻つきは残り、むき身は全て置きかわるというふうに書いてあります。この認識は間違っていたということですか、大臣。

森山国務大臣 落花生につきましては、国産と外国産との間に大きな品質格差があるということは御承知をいただいているとおりでありますが、国産と外国産を比べますと価格が四倍以上違いますので、現在は差別化されているのではないかというふうに思っております。

 今回の合意では、枠外の関税がキロ当たり六百十七円と決まっておりまして、それを段階的に八年で撤廃されることになっておりますけれども、現行の輸入量は、関割りが七・五万トンでございますけれども、平成二十六年度の輸入実績は二・八万トンでございまして、先ほども申し上げましたとおり半分にも満たっていないということでございますから、中国等のTPP参加国以外の国からの輸入がアメリカ等のTPP参加国からの輸入に切りかわるのみだというふうに考えておりまして、特段の影響は見込みがたいというふうに理解をしています。

緒方委員 そういうことを聞いているんじゃないんです。ここでの試算で、むき身については全て置きかわると政府が出した資料で言っているんです。それと今大臣の言っていることは全然違うじゃないですか。

 交渉に入るときの、平成二十五年三月の農林水産省が出した試算についてはそもそも間違っていたという認識でよろしいんですか、大臣。

森山国務大臣 全て間違っていたという認識には立っておりません。それは、先ほど申し上げた為替のこともあるでしょうし、消費者の嗜好の問題もあるでしょうし、しかし、時代によって少しずつは変わってくるものだというふうに理解をしています。

緒方委員 それでは、平成二十五年三月と現在において何が変わったから、ここに書いてある試算と今回農林水産省が出した試算というのが変わったというふうにお考えですか、大臣。

森山国務大臣 御通告をいただいておけばもうちょっと詳しく調べておくところでしたけれども、よく調べさせていただいて、後ほど答弁をさせていただきたいと思います。

緒方委員 通告はいたしております。

 それ以外にも、例えばここで書いてあることと全く違うことが今回の試算で書いてあるものがあるんですね。

 例えば、トマトの加工品。ここでは「ケチャップ等のトマト加工品は品質格差がなく、すべて置き換わる。」というふうに書いてございます。そして、今回の試算の結果として、今回の影響評価として何を言っているかといえば、これらの品目については、日本人の味覚に合わせて製造しているので、競合するところはないというふうに書いてございます。全く違うことを言っているんです。

 大臣、この資料と今回の試算、全然違うことを言っているんです。大臣、おかしいと思いませんか。

森山国務大臣 トマトの問題につきましては、近年、健康志向や安心、安全志向の高まりも相まってきておりますし、少しそういう動きが出てきているのではないかというふうに思っておりますが、いずれにいたしましても、もうちょっと詳しく調べて御返事を申し上げます。

緒方委員 健康志向が強まったから、本来全て置きかわるというものが日本人の味覚に合わせて製造するというふうになったというのは、全然説明になっていないですよ。大臣、おかしいじゃないですか。ここにある資料と今回の影響試算というのは全く異なります。

 もう一度聞きます。誰が間違っていたんだというふうに思いますか、森山大臣。

森山国務大臣 精査をさせていただいて、御答弁を申し上げます。

緒方委員 平成二十五年三月のペーパーはうそを言っていたペーパーだというふうに私は思うんですけれども、大臣、どう思われますか。

森山国務大臣 うそを言っていた資料だとは考えておりませんので、精査をして、お答えをいたします。

緒方委員 ということは、この二十五年三月の資料も有効だ、そして今回出てきた資料についても有効だということになると、全く異なる資料を農家の方は目の前に突きつけられているわけです。どう判断したらいいんですか、大臣。全く異なるものを突きつけられて、さあ、どちらが正しいんですかというふうに言われたときに農家は困りますよ。大臣、どう思われますか。

森山国務大臣 農家の皆さんの御不安があることは承知をいたしておりますので、よく御理解をいただけるように、精査をさせていただいて、答弁をいたします。

緒方委員 いや、理解することは難しいですよ。全く違うことが書いてあるんです。

 今回、いろいろな品目、先ほど申しました落花生、加工用トマト、リンゴ、生果用のパイナップル、鶏肉、鶏卵、さらには、水産品でいいますとアジ、サバ、イワシ、ホタテガイ、タラ、イカ、カツオ・マグロ、サケ・マス、こういったものはここで大体、相当程度の生産減少が生じる、だから大変なんだということを二年半前に言われているんです。そして、その資料が決して間違っていないと言っている。

 しかし、今回何と書いてあるかというと、落花生については特段の影響は見込みがたい、加工用トマトは限定的だ、リンゴも限定的、生果用のパイナップルは特段の影響は見込みがたい、鶏肉は限定的、鶏卵も限定的、水産品については限定的、長期的には価格の下落も懸念されると。全く違うことを書いているんです。農家は困っていますよ。

 大臣、これを精査されると言われました。しっかりと精査した上で、もう一度委員会の場で議論をさせていただきたいというふうに思います。

 それでは、質問をかえたいと思います。

 個別品目に移りまして、豚肉の問題であります。

 最初に少し小難しい話をいたしますが、私は外務省時代にWTO協定というのを担当しておりまして、しかも農業交渉担当でありました。

 豚肉の関税制度というのは差額関税制度です。WTO農業協定第四条二項には、最低輸入価格制度、これを禁ずるということが書いてあります。どう見てもこれは最低価格制度だと思うんですけれども、条約違反だと思いませんか、大臣政務官。

山田大臣政務官 お答え申し上げます。

 WTO農業協定第四条二の規定は、加盟国は、通常の関税以外の国境措置であって交渉の結果関税化されることとなったもの及びこれに類する措置を維持し、導入し、あるいは再び導入してはならないとの趣旨でございます。

 豚肉差額関税制度は、我が国に輸入される豚肉に対し、関税暫定措置法の関係規定によってあらかじめ定められた暫定税率で課される関税の組み合わせの制度でありまして、通常の関税の形式をとるものであります。

 したがって、本制度は、WTO農業協定第四条二が禁止している、通常の関税以外の国境措置であって交渉の結果関税化されることとなったものには当たらないということでございます。

緒方委員 いや、どう見たって最低輸入価格制度ですよ。

 だって、実際に、最初少し斜めになっているところというのは、こんな安い価格で輸入するはずないんですよ。こんなところでは輸入実績ゼロですよ。ということは、ここにある差額関税の部分以下で輸入されることはないわけですから、どう考えてもこれは最低輸入価格制度だと思いますけれども、もう一度答弁をお願いします。

山田大臣政務官 御質問は、実質的には第四条二の注に列挙された禁止措置に該当するのではないかという問いかと思いますが、WTO農業協定第四条二は、従来さまざまな非関税措置によって農業貿易が阻害されてきた状況を踏まえて、国内農業の保護のためには専ら関税による保護のみが認められるとして、貿易障壁をより透明なものとし、農産品についての市場アクセスを改善することを目的とした規定でございます。

 その上で、第四条二の注は、第四条二の規定を踏まえ、関税化することとされた非関税措置にかわって、同様の輸入制限効果を有する措置をとることも禁止するという趣旨でございます。

 豚肉差額関税制度は、我が国に輸入される豚肉に対し、関税暫定措置法の関係規定によってあらかじめ定められた暫定税率で課される関税の組み合わせの制度でございますので、したがって、この注を含む農業協定第四条二の規定により禁止される、非関税措置に相当するような不透明で輸入制限的な措置には当たらないということでございます。

緒方委員 お答えになっていませんでしたけれども、この件は小難しいので、ここで終わります。

 豚肉のこの表を見ていただきたいと思います。中身に入っていきたいと思います。

 豚肉の差額関税制度のこの図を見ていると、差額関税の部分とその下の部分を見てみると、余り変わらないのかな、大して差がないのかな、この図だけを見るとそういうふうに見えると思います。

 しかしながら、パネルをかえてください、資料三枚目であります。私の方で先ほど並べたパネルというのは、実はあれは縮尺が極めて恣意的にできております。いかにも保護効果が大して変わらないかのようにできているわけでありますが、私の方で国立国会図書館に依頼をして、縮尺を正しくつくってくださいというふうにお願いをしたところ、実際はこうなんです。この資料なんです。ほとんど保護効果なんかここはないじゃないですか、見てみれば。関税削減後の税金を課す部分というのは、本当に薄い部分ですよ。

 先ほど出した二枚目のパネルの資料というのは明らかに、豚肉の生産農家に対して、大したことないんですよ、そういう錯誤を与えるような資料ではないかというふうに思うわけですが、森山大臣、いかがでしょうか。

齋藤副大臣 説明において、わかりやすさを強調するためにそういう図を使わせていただきました。先生の御指摘もございますけれども、我々、数字も含めてきっちり説明をさせていただきますので、御理解いただけたらと思います。

緒方委員 いや、数字を含めてと。確かに数字は書いてありますよ。しかし、そんな細かいところまで人は見ないわけです。

 先ほど見ると、税金の部分の分厚さというのは、何かあたかも大して変わらない、ちょっとだけ削れたかなというふうに見えるわけでありますが、縮尺を合わせて見たときには全然、本当に物すごく薄いところにしかならないわけですね。

 これを見たときに、明らかに印象操作をしているじゃないか、政権の資料は印象操作をしているというふうに私は思うわけですが、これは明らかにおかしいですよ。農家の人に誤解を与えていますよ。農林水産大臣、いかがですか。

齋藤副大臣 御指摘、ごもっともな点はあると思います。丁寧な説明をこれから、数字を含めてさせていただきたいと思っています。

緒方委員 では、率直にお伺いをいたします。

 こういうふうな制度に変わっていくときに、保護効果は明らかに下がっている、かなり下がっているというふうに思うわけですが、これは農林水産大臣お答えください。

齋藤副大臣 保護効果の話がありましたけれども、我々、既に公表しておりますように、価格に影響は出るのではないかというふうに影響分析をしております。したがいまして、きちんとした対策を組みながら万全を期していきたいというのが私どもの考えでございます。

緒方委員 これまでは豚肉についてはコンビネーション輸入ということをやっているから、だから問題ないのだ、そういうふうに説明している与党の議員の方もたくさんおられます。しかしながら、この状態であれば、もうコンビネーション輸入ではなくて、五十円税金を払って安い豚肉だけを輸入する、そういう事業者が出てくると私は思うんですね。

 普通の豚肉メーカーであれば何も、本来必要としていない高いところの豚肉を買って、そして安いところとあわせてコンビネーション輸入して、これまでであればこの五百二十四円のところにできるだけ合わせるようにして、一番関税が少ないところに合わせるようにして輸入して、関税を一番少ないようにしていくということでやっていたわけでありますが、もうこんなに薄くなってしまったらコンビネーション輸入なんかやる動機はないですよ。そう考えてみると、安い豚肉がどんどん輸入されてくることはないということは、絶対にそう言えないと思うんですね。

 それについて、農林水産大臣、農林水産大臣は鹿児島、黒豚の御地元ですよ、大臣に答弁いただければと思います。

齋藤副大臣 先に私の方から御答弁させていただきます。

 御案内のように、新しい制度に転換されたもとでも、この分岐点価格における輸入による課税額は最小となるということであります。確かに薄くなるのは委員御指摘のとおりでありますが。したがいまして、基本的にはコンビネーション輸入が引き続き行われるのではないかというふうに我々は想定をしております。

 ただ、長期的には、御案内のように、従量税の引き下げに伴いまして、国産豚肉と競合する低価格部位の一部がコンビネーション輸入によらずに輸入される可能性というものは否定できない、それに伴いまして国産豚肉の価格の下落も懸念されるのではないか、それは先生御指摘のとおりでございます。

 したがいまして、状況をよく注視していく上で、それに加えまして、先般取りまとめられました総合的なTPP関連政策大綱に基づきまして、省力化機械の整備等による生産コストの削減や品質向上など国産の優位性の確保等の体質強化対策に加えて、先ほど議論になっておりました豚マルキンの充実等の措置をしっかり講じてまいりたいと思っております。

緒方委員 コンビネーション輸入というのを今回も行うということでありますが、歴史的経緯に鑑みれば、そもそも高い豚肉と安い豚肉をあわせて、そして現在の制度でいうと五百二十四円に近いところであわせて一番税金が安くなるように輸入するような形をなぜとらなきゃいけないかというと、これは差額関税をやっているからです。非常にこれは差額関税制度の部分を広くとってあります。しかし、今回、見てみると、はっきり言って、コンビネーション輸入するだけの差額関税の部分がほとんどないわけですよ。

 コンビネーション輸入というのはもう一つ弊害がありまして、コンビネーション輸入をやることによって何が生じているかというと、実際には闇ポークと言われている脱税をして、脱税の温床となるような制度の原点なんです。その差額関税制度があるからコンビネーション輸入がある、そしてコンビネーション輸入をやるから脱税が生じるということなんです。

 そして、差額関税制度がこれだけ薄くなったときに、これ以上コンビネーション輸入をやる、脱税を促すような制度をこれ以上やり続けることは余りに合理的ではないのではないかと私は思うわけですが、森山大臣、お願いします。

齋藤副大臣 お答えいたします。

 御案内のように、そもそも差額関税制度は、輸入価格が低い場合には基準輸入価格に満たない部分を差額関税として徴収をして国内養豚農家を保護する一方で、価格が高い場合には低率な従価税を適用することによりまして関税負担を軽減して消費者の利益を図るという、生産者の利益と消費者の利益のバランスに配慮した仕組みでありまして、これは引き続き重要な政策だと考えております。

 ただ、御案内のように、薄くなるという御指摘もありますので、今後、よく注視をしながら、対策を含めて考えていきたいと思っております。

 また、脱税の話につきましては、税務当局と連携を図りながら万全を期していきたいと思っております。

緒方委員 差額関税を悪用した脱税というのは本当に、毎年十億円とか二十億円とか、非常に大きな金額の脱税が生じるんです。それは差額関税をやっていたからです。そして、差額関税があるから、それによってコンビネーション輸入をやる、そういったことが全部相まって脱税を促すような制度だったわけです。

 今回、こういった形で、差額関税なんか本当に薄いですよ。コンビネーション輸入をやる理由なんかどこにもないはずですよ。何でこんな制度を残すんですか。私は疑問でしようがないと思います。ただ、この件はまた次の機会に質問させていただきたいと思いますので、次の質問をしたいと思います。

 次は、小麦のマークアップについて質問をしたいと思います。

 小麦のマークアップ、売買差益が、今回四五%削減で、四五%削減の結果、キロ当たり九・四円になる、そういうことでございました。現在の小麦のマークアップの上限は四十五・二円であります。何%の削減になりますか、森山大臣。

齋藤副大臣 ちょっと手元で計算しなくちゃいけないんですが、我々は、現在実行されておりますマークアップ、キロ十七円、これをベースに今回四五%削減というふうに公表させていただいております。ちょっと計算し直さないとわからないので、その点は御容赦ください。

緒方委員 実際には、これは八〇%近い削減なんですね。上限が四十五・二円で定められていて、確かに実行が十七円かもしれないけれども、私も外務省で通商交渉をやっていました、通常の通商交渉で、実行ベースから削減して、そして実行ベースの削減のところで何%という、そんな表現を見たことは私はこれまで一度もありません。通常の通商交渉では譲許ベース、テクニカルタームですけれども、譲許ベースであるところの四十五・二円から何%削減したのか、これで表現するのが常であります。

 今回、農林水産省から出てきた資料は四五%削減ですと書いてある。何の前提もなく、ただマークアップは四五%削減すると書いてある。普通の通商交渉になじんだ人であれば、譲許ベース、上限の四十五・二円から四五%削減するというふうに判断するわけです。これは農家をだます行為じゃないですか、農林水産大臣。

齋藤副大臣 今回の交渉において、実際に交渉相手である輸出国が削減を求めてきた、そして交渉の中でどの数字をベースに議論をしてきたかということで申し上げますと、WTOに譲許している上限値ではなくて、実際に入札において国が設定する最低マークアップ水準、これをどうするかというふうに交渉を行ってまいりました。したがって、そういう実態も踏まえてその引き下げ幅というものを公表させていただいたわけであります。

 なお、私も通商交渉には携わってまいりました。

緒方委員 では、今回、農林水産省がさまざまな資料で何々を何%削減したというふうに書いてございますが、いろいろなところに関税を例えば何%削減した、マークアップを何%削減したとありますが、この中で、譲許ベースでなくて実行ベースで削減の数値が書いてあるものというのは、この小麦とか大麦のマークアップ以外で、そんな表現でやっているものがほかにありますでしょうか。ないはずです。ないと思いますよ。

 資料にはそんな前提はどこにも書いていないわけです。どこにも書いていない。単に関税を何%削減した、マークアップを何%削減したと。けれども、それは裏をひっくり返して見ると、これは譲許ベースです、これは実行ベースです、それを見抜かない限り、農林水産省の説明は人にはわからないということですよ。余りに不誠実な資料じゃないですか、農林水産大臣。これは農林水産大臣がお答えください、大臣。

森山国務大臣 いずれにいたしましても、農家の皆さんに御理解をいただける親切な資料であるべきだと考えておりますので、今申し上げたような考え方で説明をさせていただきたいと思います。

緒方委員 農林水産業をやっている方にわかりやすい資料をつくってわかりやすく説明したいということでありましたが、これは、私が指摘しない限り、誰もわからないんです。

 資料に、例えばこれは譲許ベースでやりました、これは実行ベースでやりましたと書いてあるのであれば、それはそうです。けれども、私の地元は福岡県です。福岡県の筑後平野には小麦をつくっている農家の方がたくさんおられます。小麦の農家の方と話をしていて、緒方さん、これは四十五・二円から四五パーを切るんじゃないのと聞かれて、どうですかね、普通で考えればそうだと思いますけれどもと。聞いてみたら、全然違う。四十五・二円ではなくて、十七円から四五%削減と聞いて、小麦の農家の方は驚いていましたよ。そんなばかなことがあるか、うそ資料じゃないかと。こんなとんでも資料を突きつけて、これで理解を得ようなんて考えが甘いというふうに私は言われました。

 余りに今回の、きょうはいろいろ資料を出させていただきました、影響試算の資料、そして豚肉の図の資料、そして小麦のマークアップの問題、どれ一つとして国民そして農林水産業をやっている方にすとんと落ちるような説明になっていないと思います。そして、説明をそのまま読む限りは誤解をするような資料がどんどんと政府側から出てきています。この件、改めていただきたいと思いますが、森山農林水産大臣、お願いいたします。

森山国務大臣 農林水産業を営んでおられる方々に正しく御説明を申し上げることは本来やらなきゃならないことでありますので、今の御意見を踏まえて対応させていただきたいと思います。

緒方委員 最後に一言だけ。

 私、きょうは結構質問を準備してきたんですが、三十分でやろうと思ったんですが、大体半分でした。まだまだ質問したいことはたくさんございます。臨時国会の開会を求めて、質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

江藤委員長 次に、佐々木隆博君。

    〔江藤委員長退席、田村(憲)委員長代理着席〕

佐々木(隆)委員 民主党の佐々木隆博でございます。

 この議論をしていますと、今の質問者のようにだんだん声が大きくなるわけでありますが、できるだけ冷静に議論をさせていただきたいというふうに思います。

 我々は、このTPPの問題というのは大変多方面にわたり、しかも地方にとっては大変大きな出来事でありますので、臨時国会をずっと求めているわけでありますので、きょう一日で全ての課題が国民の皆さん方に理解できるというふうにはとても思わないわけであります。ぜひ、その点は私の方からも臨時国会の開会を求めておきたいと思います。

 最初に、国会決議について、まずは甘利大臣にお伺いをいたします。

 TPP交渉の参加のときに、総理はセンシティビティーについては確認されたと言って交渉参加したわけであります。

 WTOの交渉のところを振り返りますと、農業については独立した位置づけをWTOの中では持っていて、そして、その中で日本は多面的機能というものをずっと主張してきたわけであります。モダリティーでは、四%と言われたものに対して、日本は八%ということを最後まで交渉で主張し続けたという経過があります。TPP交渉においては、このような主張というものはされたのかどうなのか。また、このモダリティーのような位置づけというものはあったのかどうなのか。

 それから、先ほども質問の中にありましたが、国会決議では、除外、再協議の対象になるようにというふうに求めています。また、聖域の確保を最優先し、それが確保できないと判断したときには脱退も辞さないものとするというふうに国会決議では求めているわけでありますが、これらについて、この国会決議とどう考えても整合はしていないというふうに思うんですが、何をもって国会決議は守られたというふうにお考えなのか、甘利大臣にお伺いします。

甘利国務大臣 日本がTPPに参加するときに、まずルールとして、既参加国全ての了解をとらなきゃならないというルールがあります。そのルールをとるべく、各国間でやりました。

 ほとんどの国は、無条件で日本に入ってもらいたい、ウエルカムということがありましたけれども、ごく一部の国で、事前に明らかにしておきたいことがあるという国がありました。その一番はアメリカであったわけです。

 その際に、日本は聖域なき関税撤廃を前提とする交渉であるならば入りません、最初から有無を言わさず一〇〇%関税撤廃だという交渉だったら入りませんからねということで、首脳間で交渉したわけであります。

 それはそうではない、最初から一〇〇%関税撤廃が前提、そうでないと参加できないという交渉ではありません、ただし、全ての品目は例外なくテーブルの上にのせます、その結果、交渉力によってこれは関税撤廃をしなくてもいいということが結果として決まることはあると思います、それはあなたが交渉力を発揮してかち取ることですということが言われたわけであります。

 その際に、既にホノルル合意ということがありました。ホノルルで、当時の参加国の首脳が集まって、関税撤廃の野心についての協議をして、関税はゼロにすることを目指すということが共有されたわけであります。その前提の中で我々は入って戦ってきたわけであります。そのことは、委員も含め全ての方は、公表されていたわけですから、御存じだったと思います。その上で、その前提を御存じの上で決議ができたんだと思います。そんなもの知らないよと言われても、公表されていたわけですから、こういうことで我々は入っていきますよと。

 交渉結果で整合性がとれるようにしていくということで、重要五品目というその後の衆参農水委員会での皆さんの決議がありましたから、それに整合性をとるように、全てをテーブルの上にのせた上で、これは撤廃ができませんという交渉を食い下がってやってきたわけであります。これは正直言って血の出るような作業であります。

 結果として、農産品について言えば、日本以外の国は関税撤廃しない率は一・五%です、日本以外の国は。日本は一九%です。突出をしております。

 でありますから、農水委員会の決議で背中を押していただいて、しかし一方で、入るときに、最初からこれは例外ねというルールはないですよ、全部テーブルにのせて、交渉次第では全部なくなることもあるし、交渉力によっては残せるものもありますよ、だからあなたの交渉力次第ですねということで戦ってきたわけであります。

 ホノルル合意というのは基本的には全部撤廃を目指すんだということを、たびたび我々は突きつけられました。しかし、そのときに、交渉力によってかち取るという権利はあるじゃないか、一〇〇%撤廃が前提だとは言われていないですよ、目指すということだけれども。だから、交渉力を発揮して、国会決議を後ろ盾にして、最大限かち取ったというふうに思っております。

 あとは、我々の血の出るような努力の成果をどう評価いただけるかは、国会の判断です。

佐々木(隆)委員 TPPの場合は包括的かつ高い水準というものを目指すのは、それは私も認識をしています。その中にあって、それを踏まえて国会決議というものがあったんだということでありますので、そこで、森山大臣にお伺いいたします。

 委員会決議をされた二〇一三年の当時、森山大臣は農水委員長さん、のもとでこの決議がなされた。その後、大臣は、即時撤回を求める会の会長、自民党の中でですが、それから国益を守り抜く会の会長、それからTPP対策委員長を歴任されていて、これを見る限り、一貫して慎重と反対の立場で貫いてこられたというふうに思うんですが、今、農水の責任者としてこれを貫かれておりますか。これまでの政治家としての活動と含めて、今日の状況をお聞かせいただきたいと思います。

森山国務大臣 佐々木委員にお答えをいたします。

 今、私の役職等については、委員のおっしゃるとおりでございます。私が自民党の議連の会長を務めさせていただきました当時は、ホノルル宣言に基づいてということが前提でございましたので、聖域なき関税撤廃を求められるような交渉であるとすれば、それは参加をしてはいけないという強い思いがございました。その後、オバマ大統領と安倍総理との会談があり、先ほど甘利大臣がお述べになられましたような状況の変化がありましたので、議連は国益を守り抜く会というふうに名前が変わりまして、では、いかに交渉の中で国益を守っていくのかということに変わってきたと思います。

 その後、私は、TPPの対策委員長として仕事をさせていただきましたが、私の考え方に最初からずっと流れておりますのは、やはり、国益をしっかり守り抜くということと、日本の農林水産業をしっかり守り抜いて成長産業化させていくことができるのかどうかということが一つの私の考え方の起点であります。また、多面的な機能を農山漁村は果たしておりますので、そこをどう活性化していくのかという産業政策と地域政策を車の両輪として進めていくべきだというのが私の基本的な考え方でございます。

佐々木(隆)委員 私には三十分しか与えられておりませんので、私もできるだけ簡潔に質問したいと思いますが、答弁の方もよろしくお願いをいたします。

 次に、甘利大臣、このTPPの交渉について、今までのWTOあるいは日豪EPAと比較して、余りにも性急だったのではないかという気がいたします。

 WTOは、御存じのように、新ラウンドですが、二〇〇一年から開始をされて、今日までいまだ合意には至っておりません。それから、EPAは、〇七年から交渉が開始されて、ことしようやく発効、八年間を要しております。これに対して、TPPは、交渉参加から二年二カ月で大筋合意であります。私もアトランタへ行っておりましたけれども、あのところで各国の人からささやかれたのは、なぜ日本は、日米とも言えますが、日本が何でこんなに急ぐんだということをよく聞かれたわけでありますが、なぜこんなに急がなければいけなかったのか。そこについて、できるだけ端的にお願いいたします。

甘利国務大臣 これは、長引けば、それぞれ交渉の中身が出ます。各国のステークホルダーから、これじゃだめだ、あそこも変えろといろいろなものが出ます。議会の圧力にもなります。そうすると交渉はまとまりません。漂流をいたします。

 WTO交渉は、私は経産大臣として七カ国の少数会合も出ました。あれは、百数十カ国が集まって、それから総会があって、グリーンルーム会合で三十ぐらいに縮めます。二日間議論をしたけれどもまとまりませんから、WTOの事務総長が、この中から少数国を絞って、自分に任せてくれと。日本は、徹底的に根回ししましたから七カ国に残りました。そこで十日、午前三時ぐらいまでやり合いました。

 しかしながら、参加国が多いところの交渉というのは、レベルをよっぽど下げるか、どうでもいいレベルまで下げるか、あるいは上げるとしたら、物すごく多数国の利害が交錯しますから、時間がかかってまとまらない。結局、スタックをしました。その結果、各国は、WTOはなかなか難しいということで、地域、エリアごとのEPAにばっと走り出したわけであります。

 日本は正直おくれをとったと思います。しかし、TPPで、世界最大規模ですから、NAFTAよりもEUよりも大きい、世界の四割、ぎりぎりの野心を求めて、しかもルールまで、投資の可能性まで見通せるようなものをつくったんです。

 これは物すごく大きなインパクトで、今ウエーティングサークルに、私のところに非公式に言ってきている国だけで五つの国と地域があります。これが四十五を超え五十になれば、雪崩現象になっていきます。

 そこのルールメーカーに我々はなれたんです。後から入ってくる人はそれに合わせなきゃならないんです、全部。それをやれたというのは、最大のインパクトを与えたと思いますよ。私がヨーロッパを回りましても、真っ先に言われたのがTPPおめでとうございますということです。よその、ヨーロッパのある国でも勉強会が始まりました。そういう大きなインパクトを与える、アメリカとともに主役になれたというふうに思っています。

 長引けば長引くほど、まとまりません。どこの交渉を見ても一緒です。

 日豪がなぜ進んだかというのは、オーストラリアがつくづく私に言っていましたけれども、私は日豪のEPAの担当者じゃないですけれども、いろいろな相談をオーストラリアから受けました。日本が、農水省がこんなに本音でまとめようということでカードを切ってくるというのは、すごい意欲を感じると言われました。

 それは、日豪EPAをまとめると、TPPに対するプレッシャーになるんです。こっちがずるずるまとまらない、あるいはむちゃくちゃな要求をしてきたら、日豪はスタートするんですから、オーストラリアから安い牛肉も乳製品もどんどん来ますよという話です。これは、正直な話、アメリカにとってはショックだったわけであります。だから、こっちを早くまとめて、そしてこっちを有利に運ぶということです。

 ここで日本の戦略をぺらぺら言うと、この後の交渉に余りいい影響を与えないでしょうから。かなり戦略的にやったつもりです。

佐々木(隆)委員 二人のときにまたゆっくり聞かせていただきたいと思います。

 私は、確かに、長引けばいろいろな要素が出てくるということは、それはわかります。ただ、このごろの交渉で非常に難しくなっているのは、それはWTOであれEPAであれ、TPPも同じなんですが、ルール分野あるいは文化にかかわる、そこの国の商取引の分野まで経済が入り込んでいくから、だから非常に難しくなっているのであって、単なる関税の交渉であれば、それはもうちょっと、譲るか譲らないかという話で交渉しやすいと思うんです。

 であるから、そんなに急いでやる必要があったのかということを先ほど質問したのであって、国の数が多くなれば難しくなるのもよくわかります。ただ、今回は、三十一章にもわたる非常に広い分野ですから、そういった意味での、いろいろな意味での問題点を残してはいないかということについては、今後いろいろとまた検証させていただきたいと思います。

 そこで、もう一つ。今回の合意は、先ほど大臣は、高いレベル、関税ゼロと言っていましたが、高いレベルというのは、当初から、五年前のときからですが、九五%ラインというふうに言われていました。その高いレベルということで考えますと、今回はまさに全体としてはその九五%になったわけでありますが、これまでの、例えば日・フィリピンで八八・四、日豪八八・四、これから見ると非常に高いわけであります。

 もう一つは、実は、関税撤廃率なんですが、農産物の自由化率というのを出したくて農水省に資料はないかと言ったんですが、これはないらしいんですね。これをぜひつくっていただきたいと思うんですね。農産物だけに関した自由化率というのがない。これをぜひ出していただきたいと思うんです。

 そこで、どうも私はこの交渉を見ていて、九五%ありきでやってきたのではないかという気がしてならないわけであります。それは、きょう皆さんのお手元に資料を配付させていただいてございますが、その資料にあるように、これは日本農業新聞の資料でありますけれども、全体としては九五%であります。

 ここで注目していただきたいのは、関税撤廃をしたことのある農林水産品が千四百九十四、鉱工業製品が六千六百九十。これを足し合わせて、それを総数九千十八で割りますと九一%になるんですね、タリフラインの数で。関税撤廃率を九五にするためには三百八十三品目足りないという計算になるわけです。

 この足りない三百八十三を、関税撤廃をしたことのない農林水産品五百八十六、そのうちの重要五品目は二百四十八ですので、先ほどの三百八十三から五品目の二百四十八を引くと百三十五。この百三十五は関税撤廃をほぼいたしました。それでもまだ足りないということで、結局五品目に手をつけざるを得なかったのではないかという計算が成り立つわけなんですが、このことについて、できるだけ端的にお願いいたします。

甘利国務大臣 最初から何%というのを目指したわけじゃないんですが。

 委員おっしゃるように、過去のEPAでは九〇%弱ぐらいが最高値です。今回は、ホノルル合意で物品は一〇〇パーを目指すんだという首脳間の合意がありましたから、それと戦わなきゃならないので、九〇を切ることは不可能だろうということは誰しも感じたわけであります。

 その中でどこまでで戦えるかということでやったわけですけれども、私にとってもう最大のショックだったのが、そこまではできないだろうと思っていたベトナムが一〇〇パーのカードを切ってきたんですね。一〇〇%やりますと。そうすると、日本が後ろを振り返ったら誰もいない状態になるなということで、この場面で正直どうしようかと思いました。

 日本の後ろにもそんなにカードを切れない国は必ずあるはずだと思っていた。だって、先進国から途上国まであるんですからね。それが、その中のベトナムが一〇〇%というカードを切りました。もちろん、ステージングをがっちり保って。彼らの考え方は、その間にいろいろ構造改革をやれば立ち向かえるという判断をしたということと、かなり戦略的な判断をしたと言っていましたけれども。

 そこで、正直言って頭を抱えるようになりまして、五品目のコア部分を中心に絶対守らなきゃいけないものはどうやって守っていくかと。そこで、物品の関税は日本は一〇〇パーにはできないけれども、しかしほかでは頑張っているじゃないかとか、各国の弱点を見つけて、これはおまえのところはできていないじゃないか、中央政府はともかく、地方政府は全然できていないじゃないか、日本は政令市まで開放しているぞ、では同じにしろとか、そういうのをやりながら物品の確保をしていくということに作戦を展開してやっていったわけでありまして、全体で九五というところにとどめるのは、正直言って相当苦労しました。

佐々木(隆)委員 甘利大臣がよく難しい方程式と言っていたんですが、こうやって考えると、余り難しい方程式ではなくて、ただの引き算だったのかという気もしないではないのでありますが。

 特にその中でも一番影響が今心配されているのが牛肉、豚肉、そして米なのでありますが、済みません、ちょっと時間がなくなったので、ここはまた改めて農水委員会か何かで御質問させていただきたいと思うんですが、牛肉、豚肉も、今の理屈でいきますと、結局五品目に手をつけた。牛肉、豚肉で残ったのはどこかといったら、肉本体だけなんですね。タリフラインのあとの部分は全部渡しちゃったんです。肉の部分が幾らか残っている、本体だけがという状況です。

 米については、これだけ端的にお答えいただきたいんですが、米については国別枠にしたわけです。その見返りとして備蓄米の作付をふやすということを大臣はおっしゃっておられて、しかも、味が変質するので備蓄を三年間とするというふうにも発言されているんですが、この備蓄は棚上げ備蓄にしてあるはずなんです。既にそういう運用になっています。三年間で戻すということは回転備蓄に変わるということになるわけで、これは農家の方にとっては非常に、市場に出回ってくるということになりますから、大変大きな不安に今なっているので、ここの点について端的にお答えいただきたいと思います。

森山国務大臣 現行の政府の備蓄制度は、米穀の生産者の減少によりまして供給が不足する事態に備えて、必要な数量の米穀を在庫として保有することを目的としております。大凶作や連続する不作などにより民間在庫が著しく低下するなどの米が不足する場合には、政府備蓄米を主食用として国民に提供することとしております。

 一方で、主食米として放出を必要とするような事態が発生しなければ、一定期間備蓄後に、加工用、それから援助米、飼料米といった非主食用として販売をしているところであります。

 今回の政府備蓄米の運営の見直しは、政府備蓄制度の目的等の基本的な枠組みは維持した上で、適正備蓄水準のもとで国別枠輸入相当の国産米を政府が追加的に備蓄米として買い入れることとして、保管年数はそれに応じて決まってくるのではないかというふうに考えます。

 大綱にも記載をしてありますように、「消費者により鮮度の高い備蓄米を供給する観点も踏まえ、」との記述は、あくまで大凶作等により米が不足する場合に、より保管年数が短く鮮度の高い米を消費者に提供できるようにするという趣旨でございますので、よろしく御理解をいただきたいと思います。

佐々木(隆)委員 そういうことであれば、説明は非常に不親切です。

 これを聞けば誰だって、三年で回転備蓄で市場に回ってくるというふうに思うんです。不測の事態のときに回すというのは、備蓄米は当たり前の話です。そのために備蓄しているんですから。だから、味が変質するので三年でと言われたら、それは市場に回ってくると誰だって思っちゃいますから、違うのであれば、修正というか、ちゃんともう一回説明を農水省としてしていただきたいというふうに思います。

 時間がなくなってまいりましたので、一つ甘利大臣にお伺いしたいのは、国益ということをよく使われるんですが、国益というのは一体何なのかということは、誰もまだ説明を受けていません。森山大臣もかつて、国益を守る会の会長さんだったようでありますが。

 安倍総理が二〇一三年十月の本会議で、息をのむほどの美しい田園風景、国民皆保険を基礎とした社会保障制度、これらの国柄を私は断固として守ります、このときに初めて国益というものについて触れられているんですが、息をのむほどの美しい田園風景と言われても、農民の皆さんは、それで安心しろと言われても、どんな国益だか全くわからないわけです。

 この間のJA大会でも総理はこの表現を使われました。ちょっとざわめきました、そのときに。これをぜひわかるように、臨場感を持ってやはり説明する責任があるというふうに思っております。

 これは本会議答弁ですから、閣議でも多分確認されているんだと思うんですよね。そういう意味での、試算も出る前に、今もはや対策が出てくるということについても我々は非常におかしいと思っておりますが、そのことについて。

 それから、もう一つあわせてお伺いします。森山大臣、今、農家の不安が広がっているといって、一番不安が広がっているのは何かというと、将来見通しなんです。このことによってどうなるんだ、我々はと。だから、今必要なのは、将来に向かってこういう農政にするんだということを言う必要がある。それには何かというと、ことしの春に基本計画を立てました。そのときに、TPPは断固これには想定していないんだといってつくったわけですね。その後、農協法が変わり、TPPがこういう状況。私は基本計画を見直すべきだと思うんです。そうすることが農家に対する不安に応えることだというふうに思うんですが、あわせてお伺いします。

田村(憲)委員長代理 甘利国務大臣、持ち時間が経過しておりますので、簡潔に答弁をお願いいたします。

甘利国務大臣 国益は、わかりやすく言うと国民益です。国民益というのは、例えば、国民が享受して、いい制度であるとか、いい状況である、それは守って、さらに日本の強みをもっと大きくしていくということが国民益です。

 社会保険、社会保障の制度は全く切り込まれておりませんし、そういう規定はありません。基本的に日本は全てを社会保障、社会保険制度については留保しておりますから、そこをどうこうされることはありません。

 田園風景というのは、米を中心に、総理は、みんなで協力して隣を助け、そして成果を共有するという、言ってみれば、瑞穂の国の資本主義というのは株主資本主義ではなくてマルチステークホルダー資本主義をおっしゃっているんだと思います。

 日本のよさを国内の消費だけじゃなくて海外に知らしめようということで、海外に展開をします。その際のルールの整備もいたしました。あるいは、検疫でそれが阻まれているときには専門家間でそれをきちんとしたものにするための協議の体制も入りました。あるいは、通関手続も短縮化されました。最短六時間で通関をする。これは、生鮮食品については輸出にとっていいことだと思います。

 そういうもろもろのことをして、日本の強みを国内だけではなくて国際的に伸ばしていく。全て国益だと思います。

森山国務大臣 農林水産業のビジョンにつきましては、先生御指摘のとおり、ことしの三月にまとめられました食料・農業・農村基本計画に定められているところであります。

 この計画につきましては、今回のTPP対策の進捗状況も踏まえて、その取り扱いについてはよりよく検討してまいりたいと考えております。

佐々木(隆)委員 時間ですので、終わります。ありがとうございました。

田村(憲)委員長代理 次に、福島伸享君。

福島委員 民主党の福島伸享でございます。

 きょうはTPP交渉について、主に、私は農林水産委員会にふだん属しているものですから、甘利大臣を中心にお話をお伺いさせていただきたいと思っております。

 先ほど来大臣の方からお話がありますように、大筋合意に至るまでさまざまな御苦労を重ねて取りまとめられたことに一応敬意を表させていただきたいと思っております。

 政府の資料を見ますと、アベノミクスの成長戦略の切り札だとか、総理の大筋合意の後の会見でも、新しいアジア太平洋の世紀、いよいよその幕あけですというような言葉が躍っているんですけれども、これまでTPPを求めてきた経済界とかあるいは自動車業界なども含めて、驚くほど私は熱が低いんじゃないかというふうに思っております。

 「エコノミスト」という雑誌はずっとTPP、TPP万歳と言ってきましたけれども、十二月八日号の「そうだったのか!TPP」というものの中の大体のトーンは、まあTPPをやっても悪くはないけれども、大して変わらないよというトーンのものが多いように見えております。

 経団連などの経済団体も、歓迎のコメントはコメントとして出しておりますけれども、さあこれでどんどん稼げるんだ、アジア太平洋の新しい世紀が開かれるんだというようなわくわく感というのはないんじゃないでしょうか。

 この「エコノミスト」にも載っていましたけれども、中間決算の場でトヨタ自動車は、どのくらいの利益になるかわからないと、そっけない態度を示していますし、キッコーマンの社長は、もともと関税率は高くなくて、基本的に現地生産、販売を進めているから大きな影響はないと言っておりますし、大手家電メーカーの社長は、今さら関税が下がっても関係ない、政治のおもちゃにすぎないというふうにおっしゃっているといいます。

 私自身も一期目のときに、民主党政権のときにTPPが議論になったときに、ある電機メーカーの経営者の人といろいろ意見交換をさせていただきましたけれども、その人はTPP推進と言っていました。ところで、おたくの会社はTPPになると何かメリットはありますかと言ったら、いや、別にありませんよと言うんですよ。では、何でTPP推進と言うんですかと言ったら、経産省も言っていますし、経団連のおつき合いですよという程度であって、結構、経済界の皆さん方は冷静に見ていて、メリットになればそれはそれで結構だし、でも、これで何か抜本的に変わるということは考えていないように思います。

 それはそうなんですね。既に多くの鉱工業製品は、多くの国で関税は著しく低率化、下がっておりますし、関税があるのであれば、その関税があることを前提としたアライアンスを組み、あるいは生産体制を組みということをやっているわけですから、企業は今ある中で合理的な行動をしていて、関税撤廃があったから何か劇的に利益が上がるなんという幼稚なことを考える経営者はいないわけです。

 一方、被害がある人は、これは明確に被害を受けるわけですから、猛烈に反発をし、不安に思っている人たちがいます。

 一つは、先ほど緒方さんが言った養豚農家。私の地元もローズポークというのが盛んでして、養豚農家が多くて、家族経営で、息子さんをわざわざドイツに留学させてソーセージづくりなんかを学ばせたりしながら、六次産業化、耕畜連携をやっている農家さんはいらっしゃいますよ。今ちょうど農業祭りの時期ですから、いろいろなところへ行くと、そのベーコンなんかを売っているわけですけれども、温厚な人が、この人かと思うぐらい猛烈な勢いで怒っていますね。だまされた、絶対に許さないというふうに言っている人は結構いますよ。農村は不穏です。

 つまり、メリットがある人は、そんなにメリットもないし、デメリットがないからいいやという程度の、その程度の受けとめ方で、一方で、デメリットがある人は明確だから反対している。医療関係者とかは、TPPはお化けだみたいな論もありますけれども、医療などのほかの分野は大きな問題はないと言っておりますけれども、これは、協定文だけじゃなくて附属書、サイドレターを見ると、ちょこちょこと、後で時間があれば議論いたしますけれども、いろいろなことが書いてあるんですね。漏れ伝えるのを聞くと、本当に医療とか労働とか環境とか、そういうところに何の影響もないのという不安はあると思うんですよ。

 私は、その理由の一つが、広報の仕方もあると思うんですね。きょうは参考資料で、ちょっと汚いんですけれども、USTRのホームページを持ってきました。カラーで見て、これはホームページですから、ずっと上から下におりるものをやっているんですけれども、「レベリング ザ プレーイング フィールド フォー アメリカン ワーカーズ アンド アメリカン ビジネス」というので、いろいろなメリットをわあっと書いてあります。

 この「エクスプロワー ザ オーバー 一八〇〇〇 タックス カッツ イン TPP」みたいなものを見ると、どこの国のどの関税がどうなくなりますよというのがぱっと一覧になるようになっていたり、当然、全協定文、附属書、二国間のサイドレターは、ここから全部一覧で出るようになっておりますし、何がどの企業にとってメリットがあるのかという、まさに現世利益を書いているんです。現世利益と言うと言葉は悪いですけれども、あなたにはこれだけの利益がありますというのを事細かく並べているんですよ。残念ながら、サプライチェーンがどうだといっても、そんなのは全然響かないんですね。

 私は、まず一つは、一刻も早く全文を日本語で公開すべきだと思うんです。これはいつ日本語の文を公開するんですか。

山田大臣政務官 お答え申し上げます。

 十一月五日のTPP協定の英語による暫定案文などの公表に当たりましては、協定内容について一層の御理解をいただくために、日本語による全章の概要資料や国別附属書の概要などをあわせて公表いたしました。また、関税交渉の結果などのデータにつきましても、十月五日の大筋合意後、できる限り詳細な説明を行ってまいりました。

 一方、TPP交渉参加十二カ国による協定条文の法的精査は最終段階にありますが、現在もなお続いております。最終的な協定条文はまだ確定しておりません。

 政府としましては、関連情報の提供、説明に最大限努めていく考えです。協定条文の和訳を直ちに公表できないというのは、情報を出し渋る意図では毛頭ありません。交渉参加各国は、今月中にも法的精査を終了させようとの意気込みで取り組んでおりまして、法的精査の作業が終了した後、ほかの交渉参加国の了解も得て、できるだけ早く仮訳を公表できるように努力したいと考えております。

福島委員 もうアメリカとかニュージーランド、英語が言語の国は全文出ているんですよ、法的精査もしない前に。では、法的精査が今月中に終わったらすぐ和訳は出せるんですか。

 概要を出しても信頼されないんですよ。先ほどの緒方さんの資料の話であるように、何かごまかしているんではないか、隠しているんではないかと、信頼されないんですよ。だから全文をちゃんと出した方がいいと思うんですよ。

 これまでも党内の議論をしましたけれども、いや、法制局審査が終わらないといけないとか、あげくの果ては、大外務省の幹部の方が、いや、日本語と英語では言語構造が違うから和訳がおくれているんだとか。そんな恥ずかしいことを言わないで、大臣、私は、日本語で仮訳でもいいですから、仮訳で今後正式な訳が来ると、注でもいいから、今月中に日本語で全文出されたらいかがですかね。どうですか。

甘利国務大臣 リーガルスクラブというのは、法律用語に直してくるとこの言葉はこういう整合性をきちっと持つかということが大事ですから、時間をかけているわけであります。

 英語というのは世界共通語でありますから、この種の条約を結ぶときには、日本とどこかの国との二国間協議、二国間協定でも日本語が使われない、英語ということもあります。

 このTPP協定では英語とフランス語とスペイン語ですが、これはいろいろ解釈問題が生じたときには英語が優先するということになっています。ですから、スペイン語、フランス語でやっても、この主張はこうだとおっしゃっても英語解釈が優先するということになっております。

福島委員 いや、日本語を公表するかしないかということを聞いているのであって、そういうことは聞いていないつもりなんですけれども、その答えだからそのことについても言いますけれども、確かに正文に日本語は入っておりません。

 フランス語が入っているというのは、恐らくこれはカナダのこだわりなんじゃないですか。私が行った国際交渉でも、カナダの人は、わざとワンセンテンス、ワンセンテンス、英語をしゃべって、フランス語をしゃべって、英語をしゃべって、フランス語をしゃべってと、一連の発言を二カ国語でやるような人もいるぐらい、カナダ人の中にはフランス語にこだわる人がいるから入れているんですよ。

 何の言葉で書くというのは、単に英語が国際公用語だからそれでいいという問題じゃないと思いますよ。さっきから森山大臣も甘利大臣も国益、国益と言っているのであれば、このTPP協定のGDPの多くを占めるのは日本なんですから、なぜ日本語を正文にせよと交渉もしないんですか。しないのはいいですよ。ましてや、英語は世界公用語だから、ほかのアメリカとかが英語でホームページに出しているんだから日本人はそれを読めばいいんじゃないかというのは、私はそれは違うと思いますよ。

 正文にしないのであればなおさらのこと、仮訳でもいいから日本語で出して国民的な議論を巻き起こすのが日本国の政治家としての役割じゃないですか、どうですか。

甘利国務大臣 仮訳の部分については、この協定が署名される、それに合わせてできるものは出したいと思っています。

 さっき申し上げたのは、例えば、フランス語の解釈と英語解釈で違ってきた場合には英語が優先するんです、これは。(福島委員「それはわかっています。でも、フランス語は出るわけじゃないですか、正文として」と呼ぶ)出ますけれども、それはではどういう解釈の違いだと競ったときには英語を優先するという協定になっているんですね。(福島委員「全然その話はしていないです」と呼ぶ)いや、それは大事な話ですよ、本当に。

福島委員 結局、その日本語の訳は出されるんですか、出されないんですか。いつ出されるんですか。

甘利国務大臣 仮訳で作業が進んでいるところについては、できるだけ署名がなされたときに仮訳を……(福島委員「署名がなされたときに」と呼ぶ)だって、署名がなされなければ国会に出せないじゃないですか。(福島委員「それは仮訳じゃないですよ、それは正訳です、仮訳じゃないです」と呼ぶ)とにかく、日本語で出せる部分については、作業はさせてみたいと思います。

福島委員 署名のときに出すのはちゃんと法制局のチェックを通った正式な訳だと思いますので、その前にぜひ仮訳を出されたらいいかと思いますし、そのこと自体で議論することが、私は国民の皆さんにとって疑念を呼ぶことになると思いますので、ぜひ前向きな対応をお願いしたいと思います。

 それでは、次の話に行きます。

 総合的なTPP関連政策大綱を見ると、TPPの普及啓発をするということを書いていますが、先ほど申し上げたように、国民の間になかなかそのメリット、イメージが湧くメリットというのが広まっておりません。総理はTPP大筋合意の後の会見で、例えば眼鏡のフレームの関税がゼロになって鯖江のブランドの眼鏡が世界に広がっていくとか、陶磁器の関税がゼロになって美濃焼とか有田焼とか、それはそれですばらしいことだと思うんですが、例えばお茶の話は先日予算委員会で玉木委員が指摘したように、もう主要輸出国の関税はゼロになっていて、ペルーやチリにお茶を輸出するのがどれほど魅力かというと、それほど魅力的じゃないんですね。何が魅力なのか、何がメリットなのかということをもうちょっと具体的におっしゃった方がいいんじゃないかというふうに思っております。

 ルール分野も統一化されたとよく言うんですけれども、例えばこの間、玉木さんは盆栽のことで言っておりますが、私の地元では、米を輸出しようとすると、薫蒸せよとか、それぞれによって貿易のために要する措置が違って、そこで大体ひっかかって輸出できないことが多いんですよ。

 では、今回のTPPで、それが何か日本から交渉で持ち出されて、議論して、どこかの国のルールを変えることをとってきたかといえば、それも、いや、もしかしたら入っているのかもしれませんけれども、よく見えない。ルールの統一というのは、本当に、食品安全とか、具体的なもので統一されているのかというのがないんですよ。アメリカのUSTRのホームページを見ると、そこはどこどこの国のどの規制がどう変わります、そういうのを書いて、だからあなたたちはメリットがありますというのがあるんですね。抽象的なルールの統一とかそういうことでは、なかなかメリットというのは感じていただけません。

 甘利大臣、結局、一体、TPPで具体的にイメージが湧く形で、今までの説明はよくわかりました、議事録でも何度も確認しております、そういう抽象的な話じゃなくて、誰が具体的にどうメリットがあるのか、中小企業できょうも油にまみれて物づくりをやっている地元の中小企業の人たちにどういうメリットがあるのか、そういう具体的な話を幾つかしていただけませんでしょうか。

甘利国務大臣 現状でも、例えばアメリカやカナダその他の先進国で、少なくとも工業製品は先進国だから関税はゼロなんだろう、日本はゼロだと普通はみんな思っていますよ。ところが、何十%も残っているんです。これが現実です。それが即刻相当数ゼロになり、時間をかけて全てがゼロになるんです。

 それから、検疫の話もありました。日本の食品安全の制度を変える必要はない、これは明確に申し上げます。不安はありません。遺伝子組み換え食品についてもきちんとしたルールでやっています。今までのルールを変えません。そして、日本の優秀な農産品が輸出できるのに、よくわからない検疫でとまっている。それについては両国間の専門家同士で話し合うというシステムができましたから、だから即撤廃されるというわけではないですけれども、問題提起をして、理不尽なものについては解決する道ができる、そういうルールだってつくったんです。

 何よりも、投資の予見性をしっかり確保しています。知財だって、ACTA以上に厳しい取り締まりになりました。大体、日本のコンテンツというのは、ポケモンでも四兆円稼いでいると言われますけれども、その裏には三倍のまがい品があると言われています。だとしたら十二兆円日本は損しているわけですから、それをきちっと法整備して取り締まりをするという義務が相手国にもかかってくるわけです。

 こちらから攻めていく部分だってたくさんあるわけです。私は、今、世界じゅうのメディアから非常にTPPの多くの取材を受けます。それだけ注目されています。

 そして、間接的にも、アメリカが経済を通じて東アジアに入ってくるわけであります。安全保障の安定性にだって必ず間接的には資するわけです。戦略的に物を考えていただきたい。

 そして、国内の市場が人口減少で小さくなっていきます。外を見なけりゃなりません。外に打っていかない限り、現状維持以下になるんです。

 そして、工業製品でいえば、製品を構成する累積制度が、原産地規則というものができました。ということは、その域内にいる者はその利益を一〇〇%受けられるんです。外にいる人は受けられないんです。だから、みんな入ってこようとしているんです。

福島委員 しかし、この政府の出しているTPP協定の全章概要というのを見ても、ほとんどのルール分野の条文というのは、これまでのFTA、EPAで見たようなものばかりなんですよ。

 一つすばらしいものをとってきたなというのは、特定措置の履行要求の禁止。これは、今回のTPPで一番の大きく宣伝していいところだと思うし、画期的なところだと私は思います。ここはいいと思います。でも、ほかの部分は、知財のところだって厳しくなると言いますけれども、今の条文を見る限り、どこの条文を引っ張ってみたらそれがそうなるのかわからない。

 運用次第というのはあるでしょう。あるいは、相手の国の検疫で何か問題があれば言うシステムがあると言うけれども、それは今でも言えるわけですよ、条約に基づかなくても。言えるにもかかわらずやっていない部分もあるわけですよ。

 TPPだからこれだけ画期的なものというのは特定措置の履行要求の禁止ぐらいであって、あとはほぼこれまでのEPAでもやっているし、必要があれば、TPPなんという枠組みを使わなくても二国間でもできるし、これまでの二国間のFTA、EPA協議でも十分できるものだったと私は思いますよ。

 何でそれを言うかというと、日本の交渉というのは、私がいたときもそうですけれども、民間との関係というのは、アメリカは交渉の現場にいつも民間の人が来ますよね。この間のアトランタにも、医療関係の人たちが押し寄せていろいろなことをやっていましたよね。日本というのは、大体反対する業界は行くんですけれども、何々をとってこいという業界はなかなか行かないんですよ。

 交渉をやっている現場の役人の人は、確かに、国会決議とかこれをとるべしという政府の対処方針に基づいて交渉はするけれども、それが具体的にどういうビジネスに基づいて、あるいはどの人の要求に基づいてやるのかというのがなかなかないのが日本の経済交渉の現状だと私は思うんですね。

 アメリカは、USTRの中に貿易諮問委員会というのをつくって、交渉の途中からその委員の民間人は協定のテキストも見ることができるし、USTRに意見も言うことができるわけですね。もっともっとそうした具体的な要求を、枠組みはTPPじゃなくてもいいと思うんですよ、できるような仕組みというのをつくった方がいいと思うんですけれども、お笑いになっている甘利大臣、いかがですか。

甘利国務大臣 アメリカとやっていまして、極めてわかりやすくて、極めて露骨ですよ。どこどこの製薬業界が何々議員にプレッシャーをかけて、これをやらなかったら応援しないぞと。日本で同じことをやったら、あした新聞沙汰だと思うんですよ。なかなか同じようにはできません。

 アメリカは議院内閣制じゃないですから、一人一党ですから、この人は何とかの業界の代表、この人は何とかの代表、それがかなり露骨に圧力をかけます。日本で同じことをやれといったら、ちょっとそれはできないと思います。

 ですから、業界全体の全体益を踏まえてどう取り組んでいくかということはやっているつもりですけれども、個別、何とか製薬会社からこういう要求を受けて、ではこれを強くやりますということはなかなか、同じようにはしづらいと思います。

福島委員 私は、それがあっていいと思うし、それをやらなければ通商交渉にならないと思いますよ。

 かつて、生物多様性条約で遺伝資源の利益配分の議論をしていたときがありまして、名古屋議定書というのが先日できましたけれども、そのときに、日本の製薬メーカーはあるルールをつくったら絶対不利になるときがあったんですよ。不利になるからあなたたち意見はないのと言っても、製薬会社は何も言ってこないんですよ。

 ルールができたら、それを守ることは一生懸命やっても、ルールづくりに関して、特に日本のルールじゃないですよ、よその国や世界共通のルールをつくるときに日本の民間企業が関与するという仕組みはあってしかるべきだし、アメリカと議院内閣制度が違うからだめだという問題じゃない。私は、もっと本質的な問題がこのことにはあると思っているから一言申し述べさせていただいたんです。

 きょうは時間がないのでまた先に進めさせていただきますけれども、時間があれば、このことをまた議論させていただきたいと思います。

 いずれにしても、メリットがあると明確に感じている人は少ないんですよ。デメリットがあるという人は明確に痛みを感じているんです。だから、今このようなことになっているんですね。

 先ほど来、国会決議の議論がありますけれども、国会決議を見直してみると、「米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。」と書いてあるわけです。それで「十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めない」と書けば、普通の生産現場の皆さんは、これまでのEPA、FTA、WTO交渉と同じように除外または再協議になると信じて、TPP、ぶれない、うそをつかない、断固反対、自民党というポスターを見て投票したんじゃないかと思いますよ。

 除外または再協議の対象になっていなければ、厳密に読めば、恐らく決議違反です。普通の国民が読めばそう読みますよ。十年を超えた関税撤廃も含め認めない。

 例えば、酪農のホエーとか幾つかのチーズは関税撤廃になっていますよね。これを見て国会決議が満たされたと言う人は、私は少ないんじゃないかなというふうに思いますよ。

 ある有識者の先生は、酪農は余り言われていないけれども、この影響がどうなるかわからない、今抱き合わせ関税で国産品と抱き合わせで輸入をやっているものが、事実上関税のゼロになる部分が生じることによってそれができなくなっちゃうから、アリの一穴で、全ての日本の今の酪農を支えている制度が有名無実化するんじゃないかと言う専門家の先生もいます。

 そこで、酪農地帯を抱える伊東副大臣、今回の決議が守られていると堂々と地元で皆さんに言えますか、どうですか。

伊東副大臣 ただいまの福島議員の御質問であります。

 私の地元北海道は、米、麦、乳製品、さらに肉、甘味資源作物等々、この農産重要五品目の大産地であります。TPP交渉の結果やその国内への影響について説明をさせていただく中で、現場にはなお不安の声があることは承知をいたしているところであります。

 しかしながら、TPPにつきましては、甘利大臣を初め交渉団の皆様方が国会決議を重く背負って、後ろ盾に交渉をしてきたもの、こう思いますし、関税撤廃の例外を確保するとともに、重要五品目を中心に、国家貿易制度あるいはまた枠外税率の維持、さらにまた関税割り当てやセーフガードの創設、長期の関税削減期間の確保など、有効な措置を認めさせることができたところでありまして、交渉結果としては最大限の努力をした結果と私は受けとめているところであります。

 ホエーの話も出ました。チーズの一部輸入も認められたところでありますけれども、例えばホエーは、将来関税撤廃になってもその現国産使用量の十分の一程度という形でありますので、本当に、農家の経営が行き渡らなくなるというか、そういったような深刻な事態ではないだろう、このように思うところでもあります。

 また、ぎりぎりの交渉を行いました結果、生乳の需給調整に重要な役割を果たすバター、脱脂粉乳の国家貿易制度を維持することができたところでもあります。

 政府としては、国会決議の趣旨に沿っているものと評価していただける、このように思う次第であります。

福島委員 時間がないので、手短に答弁をお願いできればと思います。

 佐藤政務官にお聞きしますけれども、今の政調会長の石田先生を初めとして公明党の農政というのは非常にバランスがとれたものだと共感する部分が多いんですけれども、北海道も水田地帯なども抱えている中で、どう思われますか。国会決議は満たされていると自信を持って、地元に帰って言えますか。端的にお答えください。

佐藤大臣政務官 御指摘のように、私も北海道でございまして、北海道におきまして、生産者の方々、懇談をするたびにさまざまな御意見をいただいております。

 確かに、不安の声があることも事実であり、そのこともよく承知をしていることであります。しかし、今伊東副大臣も答弁されたとおり、このたびの国会決議を後ろ盾に交渉し、関税撤廃の例外を確保するとともに、重要五品目を中心に有効な措置を認めさせることができた、交渉結果として大きな結果であったと私も承知をしているところであります。

福島委員 この国会決議につきましては、衆議院の農水委員会で決議したものでありますから、私は、真摯にこの自分たちがつくった決議を読んだ上で、議院として、政府の皆さんは政府の立場がありますから今の答弁のようになると思います。改めて院としてどう判断するかというのは、国民の目線に立って、生産者の感覚に立って、改めて議論すべきだと思っております。

 時間がないので、最後、太田政務官にいらしていただいておりますので、重要なことは、結構、協定本文ではなくて附属書とか二国間レターにある部分があります。医療は関係ないと言われていて、この資料の二の二というものがあります。

 環太平洋パートナーシップ協定の全章概要、医療のことはこれだけ簡単に書かれておりますが、実際の附属書は、この後の四ページにわたる英文の文書になっております。こういうふうなことだから、日本語の全文を早く出してほしいんですよ。概要だけにするとわからないんです。

 その九行目の、パラグラフ二十六のA四というのがあります。そこで、A四で、他の締約国から書面で協議を求められた場合には三カ月以内に協議を行わなければならないと、一ポツで大体概要、そういうことが書いてある。二ポツで協議は所管省庁を入れなければならないなどと規定されていて、国民皆保険を変えろとか、そういう条文はさすがに入っていないですけれども、医薬品の価格決定とかに協議に応じろとか、そういうことをする余地がある条文は入っているんじゃないかと思うんですけれども、その点はいかがですか。

太田大臣政務官 お答えを申し上げます。

 今議員が御指摘になりました医薬品及び医療機器のための透明性及び手続の公正に関する附属書、これは、我が国の政府が運営をいたしております医薬品等の保険給付における価格決定手続の透明性確保を目的とする規定でございまして、委員も御指摘のとおり、我が国の国民皆保険制度そのもののあり方に言及するものではございません。

 そして、議員御指摘のサイドレターでございますけれども、これは附属書に関連をいたしまして、日本国政府と米国政府との間で取り交わすこととしている、法的拘束力を持たない文書でございます。このことを前提にした上で、このサイドレターの中では、日米は、関連する将来の保健制度を含め、附属書に関するあらゆる事項について協議する用意があるというふうに確認されているわけでございます。

 これも議員御指摘でございますけれども、この附属書、そしてサイドレターは、医薬品等の保険給付における価格決定手続の透明性確保という範囲内でのやりとりでございまして、これを超えるものではない、あるいは無限定に医療制度全体について協議するものではないということでございますから、国民皆保険制度そのものは、私ども、守るべくして守っていこうと考えております。

 なお、この中に記載されております医薬品の価格決定に関する透明性確保等のTPPで取り決められた条項につきましては、私ども、真摯に対応してまいる所存でございます。

福島委員 時間がありませんけれども、先ほど甘利大臣は、アメリカは一人一人に業界がついて交渉すると言っていましたよね。だから協議という場にこだわるんですよ、彼らは。医療関係者には、かつてのMOSS協議というのが悪夢のような思いとして残っているんです。とにかく、アメリカと協議をしたらいろいろ要求を突きつけられて、身ぐるみを剥がされるという印象が強いんですね。

 ですから、こうした協議をするという条文も、その影響はどうあるかというのはしっかりと議論をしなければならないと思っております。そうしたことを議論するためにも臨時国会を必ず開いていただくことを最後にお願い申し上げまして、質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

田村(憲)委員長代理 次に、井出庸生君。

井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。

 質問の機会をいただきまして御礼を申し上げたいところですが、私からも、臨時国会が開催に至っていないことについて、まず冒頭で強く抗議を申し上げたいと思います。

 私からは、TPPのことを質問する前に、今喫緊の課題となっております平成二十八年度税制改正要望、農林水産省の方で、耕作放棄地等使われていない農地について課税を強化することを求めていると。これは十一月ぐらいから各新聞などでも報道されておりまして、今喫緊の課題であるということで、質問をさせていただきます。

 いろいろ新聞記事を見ておりますと、例えば十一月二十六日の日農、これは政府を主語に、政府が検討しているのは、農業委員会が所有者に農地中間管理機構との協議を勧告した農地のみを対象とすると。もう少し読むと、その対象は遊休農地の一部であるというような書きぶりになっているんですが、一方で、十一月三十日、読売新聞の夕刊、ここでは耕作放棄地について課税を約二倍、一・八倍にするというような報道も出ております。報道によれば、二〇一七年から適用になるとも報道されておりまして、もう余り時間がないのかと思うんです。

 まず、農林水産省の方で求めている農地の固定資産税課税を強化する部分ですね。農地もいろいろな名前があるんですが、現段階でどの農地を頭に置かれてこの要望を出されているのか、伺いたいと思います。

奥原政府参考人 農地の税制の関係でございます。

 農地につきましては、農地中間管理機構を活用して、耕作放棄地の解消と担い手への農地利用の集積、集約化、これを進めていくことが、農業の成長産業化を図る上で極めて重要な課題でございます。

 このために、本年六月三十日に閣議決定をされました「日本再興戦略」改訂二〇一五でございますけれども、この中におきましても、農地中間管理機構の機能強化の観点から、「農地の保有に係る課税の強化・軽減等によるインセンティブ・ディスインセンティブの仕組みについて、本年度に政府全体で検討し可能な限り早期に結論を得る。」というふうにされているところでございます。

 このことを踏まえまして、農林水産省といたしましては、二十八年度の税制改正要求の中で総務省に対して要望を出しておりまして、その中身は、基本的に、農地法に基づきます遊休農地、この遊休農地を放置している場合の固定資産税の強化の話と、それから農地中間管理機構に貸し付けた場合の固定資産税の軽減の話、この二つをセットで要望させていただいているところでございます。

 今現在、政府・与党の中で調整をしておりますので、まだ中身の決定には至っておりません。

井出委員 この問題は、今実は、TPPの合意を受けて地元の農家の方と国会議員で、私も断続的に意見交換する場がある中で、TPPの話が一段落するといつも最近出てくる話題なのでお聞きしたいのです。

 今、遊休農地ということに言及されましたが、遊休農地というものは農地法に定義をされておりまして、農水省で発表しておりますその定義を見ますと、遊休農地というものは、現に耕作の目的に供されていない、かつ、引き続き耕作の目的に供されないと見込まれる農地、その農業上の利用の程度がその周辺の地域における農地の利用の程度に比し、著しく劣っていると認められる農地と定義され、遊休農地に関する措置を講ずべき農地のことであると。ここがポイントなんですけれども、耕作放棄地と遊休農地を比較すると、遊休農地の方が対象とする農地の範囲が広くなっていますが、本マニュアルでは云々と。これはPDFで、農水省のホームページからとらせていただいたんですけれども、耕作放棄地より遊休農地が広いということをここで言われているんです。

 耕作放棄地は、今、最近の数字ですと、富山県ぐらいの四十二万ヘクタールの規模になってきたという発表もありましたが、遊休農地というものはそれ以上の面積があるという理解でいいのか、教えてください。

奥原政府参考人 この関係では言葉の定義がいろいろございまして、ちょっと混乱を招くかもしれませんけれども、農地法の中に書いてございますのは、農地の定義と遊休農地の定義があるだけでございます。

 一方で、耕作放棄地、一般的な言葉として使っているものは別にしまして、農林省の政策の中で使っておりますのは、農林省が五年に一回やっております農業センサスの中で耕作放棄地の調査というものがございます。このときの耕作放棄地というのは、農家が見て主観的に自分が耕作放棄をしているというところを集計しておりますので、客観的に見た耕作放棄地ではございません。

 政策の対象としては、あくまで農地法の中の数字を見ていかなきゃいけないと思っておりますので、農地法の農地の中できちんと使われていない遊休農地、これが今回の政策の対象となるものというふうに我々は考えております。

 数字で申し上げますと、今現在、遊休農地に該当しますのは、一号農地の方で十三万二千ヘクタール。これは、いわゆる荒廃農地という調査があるんですけれども、市町村と農業委員会が一緒に調査をしている調査ですが、この中で再生可能な農地として集計されているものが十三万二千ヘクタール。それとは別に、農地として一応使ってはいるけれども余り使い方がよくない、低度の利用にとどまっているというのが二号の遊休農地としてございまして、こちらの方が二万三千ヘクタールぐらいございます。

 今回、税制の方で対象にしようとしておりますのは、農地法の遊休農地に該当するものの中できちんとした対策を打とうとしていない部分、その部分を対象にしよう、こういう発想でございます。そういうことからしますと、センサスの耕作放棄地よりは面積的にはかなり小さいということになってまいります。

井出委員 センサスの統計用語の耕作放棄地より遊休農地の方が少ないというお話が今ありましたが、そうしますと、私が農水省のホームページで見つけましたこの「「耕作放棄地」と「遊休農地」を比較すると、「遊休農地」の方が対象とする農地の範囲が広くなっています」というところ、ここは少し後で検討をしていただきたいと思います。

 きょうお手元に資料を配っておりまして、資料の真ん中の棒状のグラフのようになっているものを見ていただきたいんですが、「農地・荒廃農地について」ということで、農地のうち耕地が平成二十六年の数字で四百五十二万、今はもう少し少なくなっております。荒廃農地が二十七・六万ヘクタール、このうち再生可能の十三・二万ヘクタール、平成二十六年推計値、この黄色い部分が今局長がおっしゃられた遊休農地で、その中の一部について課税の強化を検討している、そういうことかと思うんです。

 ただ、どうしても、農地の問題を見ますと、耕作放棄地が埼玉県分になりました、富山県分になりました、何とかしなければいけません、そういう話が新聞で最も目につくんですが、耕作放棄地は、この黒い点線の矢印で示されているんですけれども、大分広い範囲、これは局長がおっしゃったように、農業センサスで、農家が自分の意思で、耕作の意思がない、そういうところが一つの基準になるかと思うんですけれども、私は、使っていない農地に課税を強化していくのであれば、やはり使っているものと使っていないものとをしっかりここで整理しなければいけないと思っているんです。

 そういう意味で、耕作放棄地という言葉が今必要なのかどうか。必要だから一九七〇年代からこの言葉が出てきたと思うんですけれども、これは今必要性があるのかどうか、伺いたいと思います。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 耕作放棄地の調査につきましては、農業経営体等の自己申告による主観的なデータということではございますけれども、委員から御指摘いただきましたように、昭和五十年から調査を始めてきたものでございます。

 農家が経営している面積を把握する際に、所有している耕地から実態上は作付していないものを引いて、貸し借りの関係を差し引きした形で把握しているという過程で、耕作放棄地というデータも捕捉されてきたというふうな経過がございます。出てきた結果につきましては、農地の利用形態の推移でありますとか今後の動向予測等に使われてきたということは当然あったというふうに認識をいたしております。

 毎回、農林業センサスの調査内容を決定します際には、その時々の行政ニーズでありますとか、あるいは学識経験者等の有識者の方々の御意見などを踏まえて決定して調査を実施してきているところでございまして、今後のあり方についても、そういう手順をしっかり踏みまして適切に対応してまいりたいと思っているところでございます。

井出委員 森山大臣に伺いたいんですが、今、これから使っていない農地に課税していくことを検討されていると。そうであれば、私は、使っている農地と使っていない農地というものをきちっと整理し直すべきだろう、そういうことを申し上げまして、遊休農地十三・二万ヘクタール、その中のどれぐらいが適用になるかわからないが検討しているが、そこまではやるという話がありました。

 ただ、農地は、使っていない農地と思われるような言葉が、今申し上げました耕作放棄地ですとか荒廃農地というものもあれば、遊休農地、法律で決められている唯一の言葉だと思うんですが、もし課税の強化をするというのであれば、これを機に農地の再定義といいますか、使っているものと使っていないものをどういう基準で分けて、課税の対象をどうするのか、そのことにここできちっと向き合わなければいけないと思いますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。

齋藤副大臣 これから課税を強化するということになりましたら、当然それははっきりとした定義で、誰の目から見てもはっきりとわかるものでなくちゃいけないと思っております。

 なお、定義におきましては、それぞれの使用目的に応じて定義されているものでありますが、課税についてはそのようにはっきりさせたものにしたいと思っております。

井出委員 大臣からも一言伺いたかったんですが、恐らく同じ話かなと思いますので、進めていきます。

 農地法で、遊休農地についてはしっかりと措置をしなければいけない、農業委員会が毎年利用状況の調査をして、遊休農地に当たるとなればそういう通知を行って、通知を受けた所有者は、その通知のあった日から六週間以内にその遊休農地をどうするかということを農業委員会に届ける、そういうことになっておるかと思うんです。

 総務省が行政評価の中で調べたところ、例えば平成二十二年度の大阪・富田林市農業委員会なんですが、管内農地面積六百八十六ヘクタールのうち三・六ヘクタールしか毎年の調査をしていない、調査実施率は〇・五%だと。総務省はこのときに、二十八の農業委員会を全国から抽出して、平成二十二年度の調査がきちっと行われているか、そういう調査をしているんですけれども、それをちゃんとやっていないところがこの富田林も含めて十ある。

 ですから、今まででも、農地法で定められたことを農業委員会がきちっとやっているかどうか、そういうところに総務省が行政評価の中で疑問を投げかけていて、課税を二〇一七年、今一五年ですから、一七年からするとなると、かなりここの部分、人なりエネルギーを傾瀉してやらなきゃいけないと思っておりますが、そのあたりの対策といいますか、そのあたりまできちっと考えていただいているのか、伺います。

奥原政府参考人 今先生から御指摘いただきましたように、農地法の中ではこの遊休農地についての手続がきちんと決まっております。

 まず、毎年一回、農業委員会の方でその管内の農地の利用状況を調査して、ここが遊休農地であるということを確認いたします。その上で、その遊休農地の所有者に対して農業委員会の方から、所有者の方がその農地をどう使いますか、自分で耕作をされますか、あるいはどなたかに貸されますか、特に農地中間管理機構に貸されますか、そういうことを伺いまして、意向の調査をいたします。例えば、自分が耕すということを答えられても六カ月たってもそのとおり耕作をされていない、人に貸すと言われてもその後も貸していないという場合には、農業委員会の方から所有者に対しまして農地中間管理機構と協議をするという勧告までする、こういう制度になっております。

 この制度は、基本的に農業委員会が必ずやっていただく制度として法律の中に書いてあるわけでございまして、これをやっていただくことが制度の基本だと思っております。今御指摘いただきましたように、一部の市町村で一〇〇%できていないところがあるのは事実でございますけれども、ここをしっかりやっていくということが非常に重要でございます。

 さきの通常国会で農協改革とあわせて農業委員会の制度改革も通していただきましたけれども、その中で農業委員会がきちんとした仕事ができるように体制整備を図ってきたわけでございますので、農業委員会の制度改革とあわせてこの点がきちんとできるように、これからも十分留意してやっていきたいと考えております。

井出委員 課税がもし二年後に実現されるのであればきちっとそこをやらなければいけないんですが、今、農業委員会もさきの法改正で変わったという話がありました。

 変わった法律によりますと、例えば農業委員会の管内の農地が一千三百ヘクタール以下であれば、これまで農業委員会の上限は二十人だったんですね、その上限が十四人になる。そのかわりに、その十四人とは別に農地利用最適化推進委員というものを設ける。これは、百ヘクタール当たり一人置けると書いてありますので、恐らく十三人。

 ですから、二十人いた農業委員で今まで現場の調査といろいろな物事を決定してきた。それが、これからは十四人の農業委員、これは法律改正によって決定を主に行っていく。推進委員が現場調査をやる。これが十三人しかいないんですよ、最初二十人いたのが。果たしてこれで二年後の課税に、今まで二十人いても一部の農業委員会ができなかったものが、推進委員で、現場に行く人数が減って、できるのかどうかというところを私は非常に危惧しておりますが、いかがでしょうか。

奥原政府参考人 この点は、農業委員会の法改正のときにもいろいろ御説明した点でございますけれども、今回の農業委員会法の改正は、従来農業委員の方がやっていた仕事を二つに大きく分けております。会議体として、委員の方、複数の方に集まっていただいていろいろなことを決定する行為と、それから、それぞれの現場でもって、耕作放棄地が発生していないか、あるいは農地の出物が出たときに中間管理機構を使って担い手をどういうふうに集めていくかという、現場の仕事と会議体としての決定の仕事を大きく二つに分けるという発想で制度を改正しております。

 特に、農業委員の本体の方は会議体としての決定の方に集中をしていただいて、推進委員の方の方が、これは担当区域が決まりますので、担当区域を点検していて、耕作放棄地が発生しないか、あるいは発生していればその解消に向けて働きかけをしていただく、こういうことでございます。

 このときに、推進委員一人で大体どのくらいの面積を見られるかということも関係の団体ともいろいろ相談をしてまいりまして、一人大体百ヘクタールぐらいであれば見ることができる、そういうことの結果として百ヘクタールをめどとして推進委員を置いていくということが決まりましたので、これがきちんと動いていけばきちんとした耕作放棄地の解消の手続はできるものというふうに考えております。

井出委員 今、きちんとできるというお話がありましたが、私が質問の中で申し上げましたように、これまでは二十人の農業委員がいて現場調査と決定をやってきた。それが、法改正によって、十四人の農業委員、これは決定に主にかかわっていく、現場には行かない。現場に行くのは十三人の推進委員。まず人数が減ってしまう、私はそこを非常に危惧しているんですね。

 それと、もう少し大ざっぱな話をしますと、農業委員会の皆さんは、特に一生懸命今まで仕事をしてきた農業委員会ほど、今回公選制じゃなくなった、人数も減らされた、大分、言葉は悪いですけれども、かなりへそを曲げていますよ。それで果たして税制に向けて、農地のどれを課税してどれを課税しないか、はっきりしたことがこの一年、二年の間にやれるのかどうか、そこをもう一度伺いたいと思います。

奥原政府参考人 この法改正につきましては、八月の終わりに国会で通していただきまして、その後我々も、ブロック別それから県別あるいは地域別に分けて相当丁寧な説明をやってきております。今度の農業委員会の制度改正についても相当御理解をいただいていると我々は思っておりますので、さらにこの周知徹底を強めていきまして、現場できちんと動くようにしていきたいというふうに考えております。

 それから、人数の点でございますけれども、従来の方式ですと、二十人いらっしゃったとして、その方々は、農業委員として会議体に出ていって決定する行為と現場の仕事、この両方をやられていたわけでして、従来、どちらかといえば会議に出ていろいろな要請事項を決めるようなことに力点が置かれていた農業委員会がかなり多いと我々は思っております。

 その結果として、さっき大阪の事例が御指摘ございましたけれども、現場での耕作放棄地についての点検が必ずしもできていない、そういう農業委員会もございましたので仕事を分けてやった方がここのところは進みやすくなるというふうに我々は考えておりますので、今回の制度改正をきちんと末端に徹底して、きちんと動くように我々も十分留意してやっていきたいと考えております。

井出委員 この課税については農業委員会が引き続き大きな役割を果たしますし、もっと言えば、制度の中心になってくるのは農地中間管理機構だ、そこに土地を貸し付けることを促していくということなので、非常に大事だと思うんです。さきの法改正の中で、農業委員会と中間管理機構はよく連携していくんだ、そういうお話が何度も出ましたが、この税制をやるというのであれば、ぜひその連携という言葉をもっともっと具体的なものに落とし込んでいっていただきたいと思います。

 この税制についてはもう一つ、価格、これから一・八倍の価格になるという話もあって、大臣は、課税強化については、たしか就任後の記者会見で、大臣御自身がずっと地方議会にいらっしゃって税の関係をされていて、農地の場合、仮に課税が二倍になっても徴収の方がコストがかかってしまうから余り効果がないんじゃないか、そういうようなお話をされているんですが、それは今も変わらない、今この課税強化についてどういうスタンスをお持ちか、改めて伺いたいと思います。

森山国務大臣 私がその発言を申し上げたのは先生おっしゃるとおりでありますが、そのときは、課税をする農地を市町村長が調査して定めなきゃならないのではないかという考え方がありました。そうしますと、課税対象を決定するに当たってかなりのコストがかかるのではないかということを懸念いたしました。

 また、農地そのものが余り、一ヘクタール当たり大体千円前後のものでございますので、そのことを懸念して申し上げたところでありますが、今議論が進んでおりますのは、課税をする農地の選定の方式が少し変わってきておりますので、それであるとすれば、やはり中間管理機構で農地を集約していくという方向性に合致するのではないかというふうに理解をしているところであります。

井出委員 今、十アール当たり千円に満たないというところのお話だったと思いますが。

 私は、この価格の設定についても、今まで土地の売買価格の五五%にとどめるというインセンティブがあって、それがなくなるから一・八倍になるということなんですけれども、当然土地の評価額が地域によって違いますから、課税を強化しても、思ったように集約の進む地域と進まない地域、安いところだったら別に二倍になったって変わらないしと思う方もいらっしゃるかもしれませんので、どうなるかわからないんですが、ぜひ、私が申し上げた土地の問題に関しては、遊休農地だからといって全部課税強化されたらたまらぬという声はもう既に上がってきておりますので、そこのところはしっかりと検討をしていただきたい。それがないと、私も、状態のいいものを使っていないというのであれば農地に対するインセンティブを続ける必要はないと思うんですけれども、それをやる以上は、しっかりそこの線引きというものに取り組んでいただかない限りはこれはなかなか難しいのではないか、そういうことを申し上げたいと思います。

 最後に、TPPのことで、今、現場の懸念を一つ伝えておきたいんです。

 国会の決議が守られたかどうか。それは、私と農家の方と与党の方と話していますと、まず、守られた、守られていないで大きな食い違いが既に議論の中であって、もっと申しますと、この後の影響ですね。政府は、私の地元長野でいえば、例えばリンゴは影響が限定的だというようなことをおっしゃっていて、長野県のJAはそんなことはないというような試算も出されているんです。

 ぜひお願いをしたいのは、これから恐らく政府もいろいろな試算を出されるのではないかと思うんですが、ただ、農協とかいろいろなところの試算を、その前提条件もよく勉強していただいて、一つの意見もあると思うがそれは違うとはねるんじゃなくて、それぞれの調査、推計の前提条件、どういう設定でやっているのか、そこも含めて丁寧に声を聞いて議論していただきたい。そのことをお願いして、質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

田村(憲)委員長代理 次に、高井崇志君。

高井委員 維新の党の高井でございます。

 私からも、先ほどから続けて申し上げていますとおり、やはり臨時国会、これが開かれないということは本当に言語道断である、許されないことであると思っています。憲法違反であるということももちろんであります。

 そして加えて、内閣改造が十月七日行われたわけでございます。にもかかわらず、新任の大臣は所信的発言や所信表明がされていない状態が続いている。

 私、ちょっと過去を調べました。十年間調べました。小泉内閣からこの十年間で七人の総理がかわっておられ、そのたびに内閣改造も行われて、一人の総理が内閣改造を複数行ったということもあります。そのいずれのケースでも、一番長くて麻生内閣のときに二カ月所信表明がなかったということがありますけれども、それ以外は一カ月ないし二カ月以内の間で所信が述べられているわけでありますが、今、もうすぐ十二月七日、二カ月たちますが、そういっためどは立っていません。このまま臨時国会が開かれなければ、来年の通常国会、一月まで、そして一月四日と言われていますけれども、しかし、ではすぐに所信表明があるのか。そうすれば、三カ月以上、大臣が全く所信を述べることなく、かつ、それに対して我々が質疑をするチャンスもないということであります。

 特に私は内閣委員会でございますので、例えば一億総活躍社会、これは安倍内閣の目玉でもあるといって世間も大変注目をしておりますけれども、しかし、加藤大臣に至っては、ではどこの委員会の所管になるのか。この内閣委員会じゃないかなとも思いますが、そういうことも決められないから、きょうだって本当は加藤大臣に御質問したいんですけれども、それができない。これは本当にゆゆしき事態であると思います。

 ですから、臨時国会を開いていただきたいし、百歩譲って臨時国会が開かれないのであっても、閉会中審査でしっかりそういったことをやるべきである。きょうも実は我々野党は七時間要求をしておりますけれども、結局、半分の三時間半ということでございます。

 そして、きょう以外にも、内閣委員会はTPP以外にもマイナンバー、先ほどの一億総活躍社会、あるいはテロ、今大変な国民的関心事であります。あるいは、行政改革、河野大臣、注目されていますけれども、では一体どこが所管してやるのか。

 そういったことが全然はっきりしないまま、議論もされないまま国会が開かれない、このことは非常に重要なことであると思いますので、引き続き、閉会中審査で、内閣委員会を初めほかの委員会もしっかりとさらに開いていただくことを強く委員長にも要望したいと思います。

 本当は大臣からちょっと思いを聞こうかと思ったんですが、私も三十分しか時間がなくて、きょうはいっぱい聞きたいことがありますので、最後に時間があれば大臣からも今のことについてお気持ちを聞かせていただこうと思いますが、質問に入りたいと思います。

 きょうはTPPなんですが、先ほど申しましたように、今非常に国民的関心の高い話題である一億総活躍社会、これを聞く場がありませんから、私は、きょうまずそのことをちょっと質問を、加藤大臣は呼べませんけれども、厚労省から副大臣に来ていただいていますので、少し聞きたいと思います。

 十一月二十六日に一億総活躍社会の緊急対策が発表されました。私は、この一億総活躍社会が目指す中身、目標、これは一定の評価をしております。特に希望出生率一・八あるいは介護離職ゼロ、こういった社会保障の分野に目を向けてきた。これは実は民主党政権のときにずっと民主党がやろうとしていたことでありますが、ようやく今、安倍政権でも取り組み始めたということで、私はその方向転換は評価したいと思います。

 しかし、その具体的中身、華々しく目標を掲げるのはいいですけれども、その進め方に問題がある、具体策に問題があると思っています。

 まず一つは、介護施設、保育施設、このハード整備。施設の整備量というのをそれぞれ五十万人分ということで、合計すれば百万人分。非常に聞こえはいいわけですけれども、施設整備をやって本当に、待機児童の解消であったり、あるいは介護を受けたい人が受けられるようになるのかという問題は解決しないと私は思います。

 それはなぜかというと、実はこの問題の本質は、介護で働く人それから保育の現場で働く人のなり手がいないということが最大の問題であります。現に、平成二十六年の賃金構造基本統計調査によりますと、全産業平均が約三十三万円に対して、介護、保育の職員の給与は二十二万円、十万円以上開きがある。加えて、労働環境も非常に厳しいということで、東京都の社会福祉協議会の調査では、四七%の介護施設が職員不足であるというふうに答えている。このことを解決しない限り、この問題は解決しないと思います。

 これは厚生労働省が所管かと思いますが、しかし、一億総活躍社会の方で出して、その連携もどうなっているのかということも非常に気になるわけでありますけれども、今私が申し上げた介護、保育職員の待遇改善の問題をいつまでにどのように改善する計画であるか、お聞かせください。

とかしき副大臣 お答えさせていただきます。

 今、高井委員におっしゃっていただいたように、まさに、施設の充実だけではなくて、そこで働く方をしっかり確保していくこと、これがとても重要であります。その中で一番大きな要素となりますと処遇改善ということになりますので、ここはやはりきちっと対応していくことがこれから重要だ、このように考えております。

 介護職員の処遇対応におきましては、平成二十七年の介護報酬改定におきまして、一人について、御存じのように、月額一万二千円相当の処遇改善加算をさせていただいております。ということで、平成二十七年に行いました後でございますので、次期の介護報酬改定に向けて処遇の改善について取り組んでいきたい、このように検討していきたいと考えております。

 先ほど委員がおっしゃっていただきました数字でございますけれども、産業別に見ましても、確かに十万円低いという実態もあります。

 ただ、ここは、ちょっと勤続年数を見ますと、全産業ですと十二・一年が平均でございまして、ホームヘルパーや介護員の平均が大体五・六から七ということで、勤続年数の差によってまた差が出てきているかと思うんです。ただ、勤続年数も少ないわけでありますから、なかなか処遇が厳しい、仕事の内容が厳しいなということは容易に想像できますので、この辺もしっかりと対応していきたいなというふうに考えております。

 あと介護の人材確保の件は重要でございますので、このほかには、介護管理改善を行う介護事業主への支援の助成の拡充とか、そして介護福祉士を目指す学生の皆さんに返還免除つきの学費をお貸しできるような制度も、この対象も大幅に広げていこうとか、こういうことを考えております。

 次に、保育の件、これも全く同じ状況でございまして、保育士の獲得、これも喫緊の課題でございます。

 ということで、保育士の資格の新規取得者の確保、あと離職者の防止、おやめになって、なかなか戻ってきていただけないということもありますので、こういったところを対応していこうということで、まずは保育士試験を二回実施していこうというふうに考えております。あと保育士の雇用についても、処遇の改善、環境の改善、そして離職した皆さんに戻ってきていただけるような支援を考えております。

 ということで、これらに加えて、希望出生率が一・八、さらに介護離職者をゼロにしよう、こういう目標を一億総活躍の方で訴えさせていただいておりますので、しっかりと処遇改善の方もこれからも何とか対応できるように、消費税の財源を活用して、三%相当の改善を前回も行いましたので、こういった形でこれからも処遇改善に取り組んでいきたい、このように考えております。

高井委員 今の質問で、私、いつまでということをもうちょっと明確に教えてほしいんです。

 というのは、今いろいろ細かな政策は挙げていただきましたけれども、しかし、二十万円と三十万円、五〇%の増加ですよね。数%、一万円上げましたとか、保育の方も三%を五%にしますとか、そういう説明は事務方からありましたけれども、そんな次元では全然足りない話をしているわけで、これを、春までに一億総活躍プランというのをつくるというのは聞いていますけれども、そこまでにそういった解決策が出てくるのか。

 事務方に聞いたら、介護の分野は、三年に一遍、そういった賃金の改善の審議会が開かれるから、三年後だというような話も漏れ聞くんですけれども、三年後にそれをやるなんていうのでは、とてもじゃないけれども、華々しい打ち上げ花火を上げたけれども、具体策は何もないということになります。

 もう一度、いつまでにということを明確にお答えください。

とかしき副大臣 お答えさせていただきます。

 いつまでにとなかなか明確にお答えできぬのは、結局、先ほど言いましたように、介護報酬の今度の改定の時期、そのタイミングに合わせたり、保育のときも同じようにその時期に合わせるということになりますが、ただ、今回、一億総活躍の中をごらんになっていただきますと、この中に介護とそして保育のことについては積極的に取り組んでいきたいということが入っておりますので、これからの予算の中にそれをどうやって反映させていくのか。もちろん、お財布の中身のある話でございますので、その中のやりくりになりますけれども、国の方向性としては力を入れていきたい方面でございますので、十分に検討の余地はあるのではないか、このように考えております。

 満足いただける御回答ができないかもしれませんけれども、努力させていただきたいと思っております。

高井委員 今の御回答ですと、ですから、さっき言った三年後なんですね、次の処遇改善の時期が。恐らく加藤大臣はそんな生ぬるいことは考えていないと私は思いますが、しかし、では一億総活躍大臣と厚生労働大臣でしっかりそういう話し合いができていて、合意の上でこのプランが出ているのかといえば、私はそうではないという感覚を受けます。

 ですから、次の春までにつくるというときには今の問題が一番肝だと思いますから、しっかりそこを明示していただくように強く要望したいと思います。

 続いて、これは少し小さな話かもしれませんけれども、実際に保育の現場の声を聞いてこのプランをつくっているのかというのを感じる事例があります。

 それは、百五十以上の保育園をずっと回って歩いたというある若者から私は聞いたんですけれども、今回、保育園のIT化、事務負担を軽減するためにITを導入しましょう、それが盛り込まれたのは私は評価します。しかし、その中身を聞くと、事務負担、書類をただIT化するというだけだ。

 それだけではだめで、実は保育園では何が一番困っているかというと、親、お父さん、お母さんと保育園の連絡がいまだに電話と紙。きょうちょっとうちの子は行けません、おくれますと電話をする。そうすると、電話番でずっと保育士さんが待っている。しかも、電話がつながらない、お母さんは出勤の途中に必死に電話をかける。電車の中ではかけられませんよね。ですから、これをスマホにして、スマホできょうは欠席しますとかいうふうにやりとりすれば、受ける側も電話を待つ必要がないし、一遍に把握できる、管理ができる。

 そういったことまでは今回まだ考えていないようですけれども、しかし、これから制度をつくり、恐らく補正予算を要求するということになると思いますので、ぜひ、今回IT化をするのであれば、単なる事務負担の軽減、しかも大きなパソコンを買って、サーバーをどんと置いて百万円とかそんな支援をやるのではなくて、クラウドでいいんですよ。サーバーなんか要りませんから。そして、スマホを保育士さんはみんな持っています。それから、お父さん、お母さんもみんな持っています。ですから、スマートフォンでやりとりできるような仕組みを考えるべきだと思いますが、いかがですか。

とかしき副大臣 お答えさせていただきます。

 高井委員がおっしゃるまさにそのとおりでありまして、これからはICT化をどれだけ進めていくかというのがとても重要になってまいります。

 今は、もちろん業務を効率化して、なるべくお子さんと接していただける時間をふやしたり、あと御両親とのコミュニケーションをとっていただけるように、そのためにICT化をうまく活用していただけたらな、このように思っております。

 ということで、もう既に業務でお使いになっていらっしゃるところも出てきておりまして、保育活動の様子を保護者の方がスマートフォン等で把握できるように、そういう例もございますので、そういう意味では、これから効率化ということ、そして一億総活躍の中でもICT化をどんどん積極的に進めていきたいというふうに盛り込んでおりますので、これから活用を進めていきたい、このように考えております。

高井委員 これから補正予算を要求すると思うので、副大臣、事務方任せだと平凡なものに終わる可能性がありますので、きょうの話、同意見だとおっしゃっていただきましたので、ぜひ事務方に指示を出して、この点、検討していただきたいと思います。

 それともう一点、今回これも私は評価しているんですけれども、不妊治療助成の拡充というのが打ち出されました。

 実は私、最近結婚いたしまして、不妊治療に取り組んでいる一人でございますが、この不妊治療は、やってみないとわからない苦労というか、随分多くの人がやっているんだなというのを、なかなか余りふだん話しませんけれども、やっているという話をすると、ああ、俺もやっていた、私もやっていたと。非常に数が多いと思います。

 ただ、非常にこれは高額になります。体外受精になると一回五十万円から六十万円かかる。しかし、今の現行制度は助成金は十五万円であります。しかも、平成二十六年度には、十回まで助成を受けられたのが、六回に減らされました。それから、平成二十八年度には、年齢制限がなかったのが、四十三歳未満と限定されているんですね。

 この間限定してきたことを今回もう一回拡充するということですが、これは正直言って、もとに戻すぐらいの話では看板倒れというか、国民の皆さんに期待をさせておいて、全然中身はないじゃないかということになると思います。

 本来、こんな高額な値段でもあり、そしてまた、恐らく十五万人が支給を受けていますけれども、七百三十万円の所得制限があるんですね。だから、私は、所得がある方はもっともっと受けていて、その倍とか三倍の方が不妊治療を受けていると思いますので、そういったケース、保険の適用も検討すべきではないかと考えますけれども、この不妊治療助成の拡充の具体策をお聞かせください。

とかしき副大臣 お答えさせていただきます。

 不妊治療の経済的負担の軽減を図っていこうということで、高額な医療費がかかる配偶者間の体外受精に関する費用の一部を助成する事業を今させていただいております。これは結構、本当に体も負担ですし経済的にも負担ということで、私も経験がありますけれども、大変なことだと思います。

 ただ、年齢別の不妊治療における、どれぐらい妊娠するのか、その辺の医学的見地に基づいて、平成二十六年から対象の年齢や助成金の回数の見直しを行わせていただきましたので、今回、対象の範囲を見直し前に戻すということは、残念ながら考えておりません。

 ということで、不妊治療の助成の拡充について、幅を広げていく、いろいろな対象を広げていく、これは、医学的見地を踏まえながら、これからも経済的負担を軽減するという観点から具体的に考えていきたいと考えております。

 あと保険の適用にというお話もございましたけれども、これはなかなか、保険の場合は、疾病等に対する有効性とか安全性とかがある程度確立されて、こういう方法で治療しようよという方向性がわかったときに保険適用の対象とさせていただいております。ただ、不妊の場合は、これは疾病が原因なのか。いろいろな要素が入ってきて、不妊が果たして治療の目的なのかというと、ちょっとそこは違うのではないかということで、現段階では保険の適用を考えてはいないという状況でございます。

 以上です。

高井委員 本当に、これは看板に偽りがありにならないように、もとに戻すよりもさらに低いレベルで終わって不妊治療支援をやりましたなんて言われたのでは、我々はそこは徹底的に問いただしたいと思います。加藤大臣ともよく相談していただいて、しっかりと中身のあるものにしていただきたいと思います。

 それで、なかなかTPPに入れないんですけれども、もう一つ大事な問題、マイナンバーのことをお尋ねしたいと思います。

 これは本当に今配達がおくれていて、ある意味国民の関心事になった、マイナンバーを知らない人はほとんどいないぐらいマイナンバーが知れ渡ったわけでありますが、しかし、この混乱というのは、一方ではやはりマイナンバーに対する不安を非常にあおっている。

 私は、マイナンバーというのは非常に必要な、いいシステムですからスムーズに導入していただきたかったんですが、配達のおくれが出ています。しかし、これは郵便局のせいではないと私は思います。最初からこの計画に問題があった。

 五千七百万通を簡易書留で送るというのは、郵便局が一年間に送るのが二億通ですから、その約三割を一カ月で送れと。しかも今、一通でも誤配をしたら記者会見で幹部が謝る、そんなシーンが毎日繰り返されて、より慎重にならなければならない。そういう状況の中で、この短期間のうちに、そして一月から制度がスタートするわけですから、そのときまでに通知をされていなければならないのが、まだされていない。

 こういった事態は、私は、本当に政府の計画が甘かった、責任が大きい、郵便局とも十分相談していたのかということをお聞きしたいと思いますが、いかがですか。

松下副大臣 お答えいたします。

 私も、マイナンバーの担当になりまして最初に確認したのが、委員御指摘のスケジュール感でありました。もちろん、天候の問題とかがありますから、スケジュールには余裕を持って実際はスタートいたしました。結果としては、委員御指摘のとおり、現在では九割強、残りがまだ初回の配達ができていないという状況でありまして、このことは率直に認めております。

 なぜこういうことになったかと私も分析いたしました。これは、総務省と地方公共団体情報システム機構、国立印刷局そして日本郵便、この四者でずっと協議して、もう一年前から発表しているわけですけれども、やはり縦割りの弊害でありますとか官民の文化の違いとか、そういったものが出てしまったのではないかなと反省をしております。

 今後のことなんですけれども、十二月はお歳暮のシーズンとか来年の年賀状の準備がありますので、何とかそれにかからない、十五日までには大方の初回の配達が終わるように、少なくとも二十日までには準備が整うという日本郵便の回答もございますので、一緒に取り組んでまいりたいと思います。また、問い合わせも今多くなっておりまして、コールセンターも増員をして体制を整えてまいります。

 いずれにしても、正確に、間違いのないということが一番ですので、全国の配達の皆さんは本当に頑張っていただいておりますので、その方のプレッシャーにならないように、しっかり取り組んでまいりたいと思います。

高井委員 今おっしゃっていただいたように、問い合わせが郵便局に殺到しているんですね、うちはまだ来ないと。これが郵便局の業務をさらにまた妨げることになっていますから、そこは、今、官民の連携がとおっしゃいましたけれども、やはりこれは国の制度ですから、郵便局は民間会社でありますので、そこに配達をお願いする以上、向こうの郵便局の仕組みというのをちゃんと聞いた上で無理のない計画をきちんと立てるべきだった。これはもう過去のことというか、反省しなきゃいけない点ですけれども、これからしっかりやっていただきたいと思います。

 もう一つお聞きしたいのは、これは、そうすると、十二月二十日にと言っていますけれども、私は、いろいろな諸般の事情でさらにおくれるというケースもあると思います。結局、来年一月から制度がスタートするんですけれども、では、それぞれの個人が個人番号カードを手にすることができるのは一体何月何日からなのか。

 一番最初の人はお答えになれるかもしれませんけれども、最後の人というのは、いろいろトラブルがあった人は仕方ないにしても、十二月二十日までに通知が来て、すぐその申し込みをその日のうちか翌日にした人が、では一体、最短でいつ、何月何日にこれが受け取れるのか、欲しい人がいつ受け取れるのかをお答えください。

松下副大臣 お答えいたします。

 交付申請書で随時受け付けておりますけれども、最初の交付は一月中旬を見込んでおります。御質問にございました、仮に十二月二十日、最後の初回の通知が届いた方についてなんですけれども、順調に進みますと、二月中旬を今予定しているところであります。

 このシステムは、今、交付申請書を出していただいて、そして市区町村の委託によって地方公共団体情報システム機構が一括して受けているわけですけれども、一月一日から、正月を返上してこの作業に取りかかるようになっております。

 このシステムは、いただいたものを順番に対応していくわけですけれども、整ったら、市区町村にまず個人番号カードと書類を一緒に送りまして、それで役所の方で確認して、それから申請者の方にお渡しする、そして窓口で手続をしてもらうということになっておりますので、いろいろ御心配をおかけしますけれども、この目標でしっかり取り組んでまいりたいと思います。

高井委員 きょうはマイナンバー担当の甘利大臣も来ておられますので、ちょっとつまずいてしまいましたけれども、私は、これは本当にいい制度だと思います。ぜひメリットをもっとPRしてください。コストが何千億かかったとか、そっちばかり取り上げられますけれども、やはり税の公平を図ることによってでは幾ら税収がふえるんだとか、そういうシミュレーションも出したらいいと思うんですね。税の不公平だったものがこれだけ改善されるということをもっとPRしていただきたい。これは要望しておきます。

 もう時間はないんですけれども、TPP。きょうはたくさん用意して、著作権の問題が多々あると思っていますが、これはまたぜひ次回も引き続きお聞きしたいと思うんです。

 では、最後に一つ。TPP大綱の中で、クールジャパン、コンテンツの海外輸出、放送コンテンツの海外市場売上高を二百億円にするという目標が掲げられています。

 しかし、私は前から疑問に思っているんですけれども、放送コンテンツというのは、コンテンツの海外輸出額のたった一・七%です。あと、よくアニメとか映画とか音楽の分野がクールジャパンに出てくるんですけれども、アニメは一・五、映画は一・〇、音楽は〇・五%にすぎません。では、九五%は何が占めているかといえば、ゲームです。ゲーム分野が九五%、五千億円以上を占めている。しかし、政府として、このゲームというのがなかなか支援の対象の中に、今回の大綱にも明示されていません。

 さらに具体的に言えば、例えばクールジャパン推進会議という三十四人のメンバーの中に、今言った放送、アニメ、映画、音楽の委員はたくさんいるんですけれども、ゲーム業界は誰もいない、そういう実態であります。

 政府として、ゲームを国策としてもっと支援すべきと私は思いますけれども、いかがでしょうか。

星野大臣政務官 お答えさせていただきます。

 経済産業省といたしましては、ゲーム産業をクールジャパン推進の重要な分野の一つと位置づけておりまして、その海外展開を積極的に支援しているところでございます。

 具体的には、コンテンツ海外展開等促進事業、いわゆるJ―LOP事業と申しますけれども、この事業において、ゲームの翻訳等の現地化や海外見本市への出展等のプロモーションも支援をさせていただいております。これまで、採択件数の一〇%以上に当たる四百七十三件がゲーム関係でございます。

 また、本年度、ゲームをアニメや音楽と同様に重要なコンテンツ分野の一つと位置づけて、コンテンツ産業の海外展開戦略を調査分析しているところでございます。

 政府全体といたしましても、クールジャパン戦略推進会議のもとに、官民及び異業種間の連携を推進する場であるクールジャパン官民連携プラットフォームの立ち上げを準備しておりまして、ゲーム業界からも複数名の参画をお願いしているところでございます。

 今後も、知的財産戦略推進事務局等の関係省庁としっかりと連携をとりまして、ゲームの海外展開を力強く後押ししてまいりたいと思っております。

 以上です。

高井委員 済みません。きょうは著作権を、義家副大臣に来ていただいたのでたくさん質問を用意していたんですけれども、機会を改めて、非常に問題が多いと思っていますので、また質問させていただきます。

 ありがとうございました。

田村(憲)委員長代理 次に、畠山和也君。

畠山委員 日本共産党の畠山和也です。

 TPPの大筋合意が発表されて二カ月近くたちますが、まだ国会には何の報告もありません。一方で、政策大綱が発表され、補正予算まで検討されている中で、憲法の定めに基づいて野党から臨時国会開催を要求したにもかかわらず、それに政府・与党は応じようとしてきませんでした。

 国民の負託を受けた私たち国会議員の責務と、最高法規である憲法の定めを何だと思っているんでしょうか。この場からも改めて臨時国会の開催を要求いたします。

 TPPは、批准したわけではもちろんなく、また、既成事実のように進めるということも許されません。日本共産党はこれまで、TPP交渉からの撤退を要求してきました。それは、日本の経済主権や食料主権が脅かされるということを理由にしてのものでした。

 資料をごらんください。一枚目ですが、これは内閣府による二〇一三年三月十五日の試算で、これはもちろん全て関税撤廃という前提のものでありましたが、そのもとでは、農林水産物の生産額が三兆円も減少し、農業の多面的機能の喪失は一兆六千億円に上ると示されました。このような試算をもとにして、これまでTPPの論議をしてきたのではなかったのでしょうか。しかし、今回はまだTPPによる影響試算は出されておりません。限定的などの言葉がありますが、それでは農家も、理解も納得もできません。

 初めに甘利大臣に伺います。政策大綱や対策予算がこういうふうに決められるという状況の中で、しかし、今言ったように影響試算も出ていないし、私たちには薄っぺらな概要ということだけでは、全然その根拠がわかりません。概要のみで全容が把握できないで、そんな国会審議でいいんでしょうか。

 審議の大前提として、全文をまず日本語訳として出すべきであることを要求したい。そして、何を根拠にして対策と補正予算などの検討がされてきたのか、その根拠を示していただきたいし、甘利大臣、結局、全文は英語で読んだんですか、日本語で読んだんですか。あわせてお聞きします。

甘利国務大臣 内容については、それぞれ所管が英文で全部読んでおります。そして、所管ごとに概要の説明を私が受けておるということです。

 今いろいろ、法的整合性とか、各国が確認作業を統合してやっております。そういう過程で、概要で出せるものは出していこうと。基本はこの協定の中で言われている国の言葉で行っていくということになっているわけでありますから、その中で日本の作業がどのぐらい進められるかということだというふうに思います。

 それから、TPP協定の大筋合意後。今、署名に向けて作業が進んでいる中で、総合的なTPP関連政策大綱というものを打ち出したわけであります。これは、大筋合意後、各地で説明会を開いております。その説明会を開催しますと、まず、中小企業の方々から、TPPを活用して海外展開の準備を始めたいと。TPPの発効というのは、まだ、署名後、国会手続を終えてですから、巷間言われているのは一年半とか二年かかってしまうかもしらぬということを言われていますけれども、その前から準備することが必要であるということ。それから、農林水産業につきましても、体質強化に向けた施策を早期に示してほしいと。それが現場から大分寄せられているわけであります。

 それに応える必要がありますからこの大綱を取りまとめたところでありまして、これは、実際に影響を受けて補填をすべき必要性というのは、具体的な動きが始まるのはまだ先でありますけれども、現時点で、その政策に沿って必要な施策というものを明らかにしたものであります。これは、対策というよりも政策ということの御理解をいただきたいと思います。

 そして、中小企業等の海外展開支援、それから国内産業の生産性向上、それからさらには農業の成長産業化などについては、申し上げたように、対策というよりは、いずれにしても待ったなしで必要な政策でありまして、いわゆる影響試算を前提にするものではないということであります。

 なお、農林水産業につきましては、政策大綱の検討過程において、農産品等への影響についての農林水産省による分析結果を提示してきておりまして、それを踏まえつつ必要な政策の検討を行ってきたところでございます。

畠山委員 政策大綱が対策でなくて政策だということなんですか。端的にもう一度確認します。

甘利国務大臣 対策というのは、具体的に、その政策を受けて必要な施策を検討して、それを予算化していくわけです。ですから、それは予算編成過程の中でどういう政策が必要かということを示しているわけです。その政策をとっていくためにはどういう施策が必要で、それが予算に今年度はどう反映していくか、いや、この施策は今すぐやるわけではないからもう少し先だとか、この施策は強化策だから今から始めようというのが予算編成過程で決まっていくわけです。

 今から全予算をいきなりとって、使わないでずっと置いておくというわけにはいきませんから、タイムスケジュールと合わせて、向かっていくべき方向性を具体的な施策にして、それを予算化していくという手順をとっていくということです。

畠山委員 ちょっと角度を変えて、では中身で確認します。それでは、これは森山大臣に伺います。

 政策大綱の中にも、「経営安定・安定供給のための備え」という項目があります。経営安定にそれで万全を期すとあります。しかし、この備えのところは、協定発効に合わせて措置を講ずるというふうにあります。

 TPP前提ですよね。それでは、協定が発効しなければ措置しないということになるんですか。どうなんですか。

森山国務大臣 畠山委員にお答えをいたします。

 大綱に掲げてあります「経営安定・安定供給のための備え」につきましては、一つは、主食用米の需要、価格に与える影響を遮断するために、国別枠輸入枠に相当する国産米の政府備蓄米としての買い入れが一つあります。もう一つは、牛や豚のマルキンを拡充していくという措置を講ずることとされております。これらは、TPP発効に伴い、関税削減等への備えであることから、TPP協定の発効に合わせて措置することが適当ではないかというふうに考えております。

 なお、協定の署名及び発効に向けて、各国が国内の支持を取りつけて、必要な国内手続を速やかに進めることにつきましては、各国の首脳間でも確認がされているところでありますので、TPP協定の早期発効に向けて、政府としてできるだけ早く国会の承認をいただけるように努力をしていくこととしておりまして、TPP協定の発効に合わせて措置する対策を明らかにすることは、政府として当然のことではないかと思っております。

畠山委員 いや、わからないですよ。

 ちょっともう一度聞きますよ。

 それでは、マルキンの法制化ですとか、これは農家が本当に前々から望んでいたことは、大臣御存じのことですよね。TPPがあろうがなかろうが、農家の支援は大事だということをずっと農水委員会では議論してきて、これはTPPをやらなくてもやるべきことですよ。

 それなのに、協定発効に合わせて措置を講ずるなら、協定発効しなかったらマルキンの法制化とかはしないということになるんですか。

森山国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、協定の発効に伴いまして、関税削減等への備えとして法制化等についての考え方が示されているところでございますので、現段階におきましては、TPP協定の発効に伴う措置として考えているということでございます。

畠山委員 これはTPP前提ですよ。それでは今の農家の苦しみに応えていないじゃないですか。

 日本の農家は、これまでも農産物の輸入拡大の波に耐えてきて、コスト削減も大規模化も、ずっと政府の示したとおりやってきた方々がたくさんいらっしゃいます。そして、生産仲間と相談しながら地域を支えた方々もいる。ウルグアイ・ラウンド、WTOなどの波もこうやって越えてきた農家から今、大きな不安や批判が聞こえているじゃありませんか。

 根拠も、対策はどこから示してきたかわからない、そして日本語訳もまだはっきり出ていない。委員長、これは、連合審査ですけれども、それぞれの委員会ということになると思いますが、日本語訳の提出をお願いしたいというふうに思います。

田村(憲)委員長代理 ただいまの件は理事会で協議をいたします。

畠山委員 それで、重要なことは、農業への打撃はTPPで終わらないということになります。

 このTPPの後に、これは甘利大臣、言い続けていますけれども、RCEPとか、FTAAP、日中韓FTA、日・EU・EPAなどなど、それから、TPPに新たな国が加わることも歓迎するという中に、今後、これらの交渉についてはTPPのルールや基準を標準とするという趣旨の話をされてきたというふうに思います。

 TPPのルールを標準としていくのなら、さらに、今回と同じように、日本の農林水産業に危機的な状況が生まれ得るという可能性はあると思うんですが、甘利大臣、いかがですか。

甘利国務大臣 TPPというのは、一つの側面として、チェーンリアクションの側面がある。つまり、連鎖反応を起こすということですね。

 今、経済連携というのはどうも停滞しています。WTOはもうスタックしていますし、RCEPも延々として続いている、FTAAPはもう何年やっているんだろうと。それは、多くの国が集まると、それぞれの主張に部分的に合わせていくと、結局、自由化レベルは極めて低くなってしまう、WTOと大して変わらないじゃないか、だったら急ぐ必要がないとか、いや、こういう、自由化をもっと上げろという強い主張があると反対する国があるというので、なかなか難しいんですね。

 TPPはルールのたたき台になるということを申し上げております。TPPのルール、まあ、関税は、多国間でも、二国間を積み上げていくということになりますし、そして基本的な部分は全面展開をしていくというやり方をやるわけですね。それがどこまでそれ以外の国に参加してもらえるかということはあるんですけれども、それは必ず全く全ての国が同じじゃなくて、国ごとに事情は違う部分も確かにTPPはあるんです。それはあると思います。

 ただ、ルールについては、投資の透明性とか、知財をちゃんと守るとか、これは絶対にとった方がいいものです。途上国においてそういうルールが守られない、模倣品、海賊版が横行して、それを訴えても取り締まるルールがないとか、日本の知財コンテンツが本当に被害を受けているということですから、これはそのとおりやった方がいいと思うんです。

 投資のルールでも、先ほど来申し上げているように、技術を移転しろと強要されたり、あるいはソースコードを開示しろと。そんなことをしたら、ソフトウエアの企業はもう終わりですよ。そういう要求をされる、それができなくなる。これをよそに展開していくということは絶対に有利なんですね。

 TPPの中でつくったルールというのは、十二カ国が承知をしてつくっている、十二カ国にとって受け入れやすい、そして自由度の高いルールなんです。それをよそに展開していくということは、我々の庭先のルールを展開していく面積が広まるということですから、絶対にいいことなんですよ。そういう意味では、このTPPのルール、あるいは関税の方針を理解して入ってくる人はそれに合わせていただくわけですから、我々の庭先がどんどん広がっていくということは十二カ国にとっても非常にいいことであろうというふうに思っています。

畠山委員 私は農林漁業に影響があるかということを質問したんですから、それに正面からお答えいただきたい。

 攻めの農林漁業で一兆円の目標を掲げて前倒しで進めるということなども言ってきました。今、正面からお答えになりませんでしたけれども、否定をしなかったということじゃないんですか。

 資料の二枚目をごらんください。その目標一兆円でも、攻めの農林漁業にしても、幻想であるんじゃないか。

 例えば、みそ、しょうゆ一千六百億円を筆頭にして、清涼飲料水、菓子で一千四百億円、即席麺、レトルトで二千億円と、これだけで半分を占めます。みそ、しょうゆの原料となる大豆の国内自給率はわずか今七%です。清涼飲料水や即席麺などがどのように国内農家の経営に関係するんでしょうか。今でも原料は外国産農産物を使って加工されているという状況もあります。これで農家の所得がどうして上がるのか、全く合理的な説明はされていない。攻めの農林漁業なども含めて、そのような形で対策をすることに幻想があると思いますよ。

 それで、ちょっと時間がありませんので、甘利大臣にこのことも伺いたい。

 先日、十一月二十四日の第十九回経済財政諮問会議の場で、希望を生み出す強い経済実現に向けた緊急対応策(案)というのを大臣の名前で出されました。その中で、「攻めの農業の構築」という中に、海外輸出はチャンスだから、農地の集約化、農業の企業経営化、六次産業化、農林水産物の付加価値向上などにより農業の生産性を高める政策を進めるとあります。

 日本のように中山間地が多くて手間がかかる中で、食料生産と地域社会を支えてきたのは家族経営。そして、私が選出されている北海道も一戸当たりの規模は大きいわけですが、その北海道といえども主力は家族経営です。

 先日訪れた北海道の酪農家はこう言っていました。家族経営の意義を政府は理解すべきだ、大規模にしたら、その農家がやめたときに農地を引き継げない、機械も大規模にしないといけないし、それだけ負債も大きくなるからリスクも高まる、小規模、中規模の家族経営の方が天変地異にも強いんだ、こういう農家こそ励ます政策をしてくれれば生産の意欲を持って取り組めるという声です。

 今、農家の経営が大変だ、所得を上げることが必要だと言うのならば、こういう声に応えるべきです。

 そこで、甘利大臣、希望を生み出す強い経済というのであるならば、農業分野では、今言ったような方向に進むべきだと私は思います。しかし、この緊急対応策のように、家族経営をやめて企業型にすべきだと言うのか、あるいは企業参入もすべきだというふうに甘利大臣は考えるんでしょうか。強い経済の実現のためには、家族経営は必要ないとでも言うのでしょうか。

甘利国務大臣 日本の人口は、残念ながら減っていきます。国内だけに頼れば消費力は減っていくわけです。現に、ガット・ウルグアイ・ラウンド以降、数兆円の対策を投じましたけれども、生産額は十兆から八兆に減りました。手をこまねいているんですか。家族経営といえども、例えば、中小企業、零細企業はどうしますか。いいものだけをつくっていれば誰かが売ってくれる、そんなことはないと思います。

 ここは経営感覚で、どういう層を狙っていこうか、うちはグローバルニッチだとか、そういう経営計画があるんです。農業産品に戦う力がなければそれは言えないかもしれません。しかし、日本の農産品は、海外での評価というのは非常に高いです。もっと自信を持って、農家に、農業に経営感覚を持ち込むことが大事なんです。

 随分前ですけれども、九州経済連合会の麻生会長、麻生セメントの会長が私のところに来られました。

 何の用で来られたかといったら、九州経済連合会は、九州の農家と連携をしてたしか香港に売り込みをしていますと。前回は一生懸命やったけれども売れ残りました、今回は全部はけました、年契約もとれました、売った作物は同じものです、売りに行った人も同じ人です、何が違うと思いますかと私は聞かれました。

 何が違うんですかと。前回は、売り手百人、買い手、バイヤー二人、ですから買い手市場で買いたたかれました、売れ残りました。一計を案じて、経済連合会が支援するんだからということで、根回しをしてバイヤーの数をうんとふやしました。そうしましたら、売り手対買い手がタイになりました、取り合いになりました、年契約もとりました。売っているものは同じものです、売っている人も同じ人です。違いはそこです、バイヤーをふやした、これは商売人の感覚なんだと言われたんです。私は非常に勉強になりました。

 つまり、私が言いたいのは、日本の農家はいいものをつくっているんです、評価も高いんです、安全性の信用もあります、ただ、売り方を、同じ価格帯で、安いところの価格帯で競って、規模を拡大しないと価格で勝てない、別のところで勝負したらいいじゃないですか。マーケティングでそこの層を狙って、そういう感覚が大事だから。だから、家族経営は大事ですよ。経営感覚を持ち込みましょうよ、企業だったら、中小企業だったらどうするだろうかと。それを助ける体制を持っていかない限り、国内のシュリンクしている市場で、あなたが行きなさい、後を継ぐ人はいますか。

 我々は、後継者に夢を持たせたいんですよ、自信を持たせたいんですよ。だからやっているんです。

畠山委員 ことし農林水産委員会で農協法を議論したときに、この家族経営の問題について私もよく議論させていただきました。自発的に六次産業化を進められている農家の方ももちろんいらっしゃいます。しかし、もちろん全ての農家ができるわけでもありません。

 ある農家の方から話を聞きました。その地域では本当に先進的で、経産牛を百頭ぐらい持って、本当に地域の商業モデルだというふうに言われている酪農家の方は、ビジネスと百姓は違うんだと明確に言われました。なぜか。

 森山大臣に伺いたいと思うんです。

 自由貿易とはいえ、国民の命と生活を守る食の分野まで不安定な状況に追い込むべきではないと私は思います。

 資料の一枚目を、戻ってごらんください。

 食料自給率との関係で、先ほど言ったように、この一枚目は、全てを関税撤廃し何の対策も講じないという当時の前提でも、カロリーベースで食料自給率は四〇%当時から二七%に下がり、生産額ベースでも七〇%から五五%まで下がると試算しています。安い農産物の輸入拡大は自給率を下げることになると認めてきたわけです。

 そこで、TPPでは、農産品二千三百二十八品目中千八百八十五品目の関税は撤廃されます。それでは、森山大臣、現状では食料自給率がどれくらい下がると想定されますか。

森山国務大臣 自給率がどれぐらい下がるかというお尋ねでありますが、今それを予測することは難しいと思っております。今からいろいろな対策をどう講じていくかということもありますので、それは自給率が大事なことはもう重々承知をしておりますから、自給率が下がることのないようにしっかりした対策をさせていただくということが大事であろうと思います。

畠山委員 政府として目標を四五%に先日決定したわけですよね。

 そこで、食料・農業・農村基本法を改めて見れば、第二条二項に「国民に対する食料の安定的な供給については、世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を有していることにかんがみ、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行われなければならない。」このように書かれています。

 森山大臣に伺います。

 自給率を向上することが大事だと今、答弁されました。そうであるならば、この法律に反するような条約は結ぶべきではないと私は思いますが、そう思いませんか。

森山国務大臣 結ぶべきではないという考え方には少し私は同意ができません。

 基本法は大事でありますし、自給率を高めていくということは我々農林水産省に課せられた最も大事な課題だと思っておりますので、それに向けて政策をしっかりとつくり上げて、予算を獲得し、自給率を上げていくという努力を今後も真摯に続けさせていただきたいと思います。

畠山委員 これまで食料自給率が下がった歴史を振り返れば、農産物輸入の拡大が反映して、それが符合してきたと私は思うんですよ。TPPというのは、結局この国をどうするかということにかかわると思います。

 そこで、これは事務方で結構ですが、国連の世界人口白書二〇一三年版には、世界人口は二〇五〇年に九十六億人にまで達すると予測されていて、農水省も、二〇五〇年における世界の食料需給見通しというのを出しています。世界全体の食料需要は五十年間でどれだけふえるのか、その規模について端的にお答えください。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十四年六月に公表いたしました二〇五〇年における世界の食料需給見通しでございますが、需要面で、世界の人口や経済成長、バイオ燃料の見通しを、供給面で、気候変動ですとか単収の増加、収穫面積の動向をそれぞれ勘案して予測をいたしました。

 この予測では、世界人口が九十二億人に増加する中で、特に開発途上国ですとか中間国で食料需要が増加すると見通しておりまして、それに対応するため、世界の食料生産を二〇五〇年には二〇〇〇年の一・六倍の六十九億トンまで引き上げることが必要という結果が得られております。

畠山委員 森山大臣に改めて伺います。

 このような国際情勢のもとで、基本法に書かれているとおり、世界の食料の需給及び貿易には不安定な要素を有しているということは認めますね。

森山国務大臣 不安定な要素はそのとおりだろうと思いますが、そういうことにならないように対応をしっかりさせていただきたいと思います。

畠山委員 先ほどの二〇五〇年における世界の食料需給見通しの結びにも、我が国として食料自給率の向上ということが必要だと書いてあります。自給率を下げるようなTPPなら、食料の安定供給という国の責任は果たせないということは強く指摘しておきたいと思います。

 最後に、国会決議に関しても一言伺います。

 国会決議では、重要五品目について、「引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと。」とあります。

 米、小麦、脱脂粉乳、ホエー、バターなどの乳製品、てん菜糖などの糖類は、これまでのEPAにおいても除外以外の対応をしたことがありませんでした。除外としてきたのは、日本の食料を安定的に供給する上で必要なものだったという認識からだったのではないのでしょうか。

 しかし、タリフラインで五百八十六品目中百七十四品目、三割の関税が撤廃されることになり、豚肉でも高価格部位は十年間で関税をゼロにするなど、国会決議を改めて読んでみても、どうしても決議違反だとしか私は思えません。

 しかし、森山大臣は、就任会見で、今後の対策の必要性をつけ加えた上でもということですが、決議は守られたと述べました。私は理解できません。守られたという根拠を示してください。

森山国務大臣 TPPにつきましては、国会決議を後ろ盾にして、しっかりした交渉がなされたと思っております。

 農林水産品の総タリフラインは二千三百二十八ラインでありましたけれども、このうちの四百四十三ラインを関税撤廃の例外とすることができましたし、また、重要五品目を中心に、国家貿易制度や枠外税率の維持、関税割り当てやセーフガードの創設、長期の関税削減期間の確保等、有効な措置を認めさせることができましたので、交渉の結果としては最善なものになったのではないかというふうに考えております。

 一方、保秘義務がかかった交渉であったことからも、現場になお不安の声があることは私もよく承知をしています。

 先般、総合的なTPP関連政策大綱がまとめられましたので、意欲のある農林水産業者が確実に再生産できるように、さらに将来に向けて希望を持って経営に取り組めるように、交渉で獲得した措置とあわせて、政府全体で責任を持って万全の国内対策を講じてまいりたいと考えております。

 最終的には国会で御審議をいただくことになりますけれども、政府としては、国会決議の趣旨に沿っているものと評価をしていただけると考えております。

畠山委員 時間ですので終わりますが、JAグループ福岡が、先日の県大会で、重要五項目の関税維持を求めた国会決議を守っていないとの特別決議を上げ、同じように、秋田の県大会でも、国会決議の内容を逸脱しているとの指摘の特別決議が上げられて、そういう思いは生産者にあふれています。

 大筋合意はまだ決定ではもちろんありません。徹底的に議論するために、改めて臨時国会の開催を重ねて要求し、引き続き論戦に挑む決意を最後に表明して、私の質問を終わります。

田村(憲)委員長代理 以上で本連合審査会は終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午後一時五分散会


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