衆議院

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第7号 平成27年6月5日(金曜日)

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平成二十七年六月五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 今津  寛君 理事 岩屋  毅君

   理事 江渡 聡徳君 理事 松本  純君

   理事 御法川信英君 理事 長妻  昭君

   理事 下地 幹郎君 理事 遠山 清彦君

      井上 貴博君    小田原 潔君

      小野寺五典君    大西 宏幸君

      大野敬太郎君    勝沼 栄明君

      木原 誠二君    笹川 博義君

      白石  徹君    助田 重義君

      武井 俊輔君    中谷 真一君

      橋本 英教君    原田 義昭君

      平沢 勝栄君    星野 剛士君

      宮川 典子君    宮崎 政久君

      宮澤 博行君    武藤 貴也君

      盛山 正仁君    八木 哲也君

      山口  壯君    山田 賢司君

      若宮 健嗣君    緒方林太郎君

      大串 博志君    玉木雄一郎君

      辻元 清美君    寺田  学君

      長島 昭久君    青柳陽一郎君

      太田 和美君    木内 孝胤君

      重徳 和彦君    丸山 穂高君

      吉村 洋文君    伊佐 進一君

      岡本 三成君    佐藤 茂樹君

      浜地 雅一君    赤嶺 政賢君

      斉藤 和子君    田村 貴昭君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   経済産業大臣       宮沢 洋一君

   防衛大臣

   国務大臣

   (安全保障法制担当)   中谷  元君

   防衛大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    石川 博崇君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  前田  哲君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  土本 英樹君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  槌道 明宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 森  健良君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            平松 賢司君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            上村  司君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        住田 孝之君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  黒江 哲郎君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  深山 延暁君

   衆議院調査局我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別調査室長     齋藤久爾之君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月五日

 辞任         補欠選任

  橋本 英教君     井上 貴博君

  宮川 典子君     助田 重義君

  後藤 祐一君     玉木雄一郎君

  青柳陽一郎君     吉村 洋文君

  太田 和美君     重徳 和彦君

  丸山 穂高君     木内 孝胤君

  佐藤 茂樹君     岡本 三成君

  志位 和夫君     田村 貴昭君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     橋本 英教君

  助田 重義君     八木 哲也君

  玉木雄一郎君     後藤 祐一君

  木内 孝胤君     丸山 穂高君

  重徳 和彦君     太田 和美君

  吉村 洋文君     青柳陽一郎君

  岡本 三成君     佐藤 茂樹君

  田村 貴昭君     斉藤 和子君

同日

 辞任         補欠選任

  八木 哲也君     宮川 典子君

  斉藤 和子君     志位 和夫君

    ―――――――――――――

六月二日

 集団的自衛権行使のための安保法制の立法作業を中止することに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一三四五号)

 集団的自衛権行使のための立法措置を行わないことに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一三四六号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一四八二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一四八三号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一四八四号)

 同(畠山和也君紹介)(第一四八五号)

 同(藤野保史君紹介)(第一四八六号)

 同(堀内照文君紹介)(第一四八七号)

 同(真島省三君紹介)(第一四八八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一四八九号)

 同(宮本徹君紹介)(第一四九〇号)

 同(本村伸子君紹介)(第一四九一号)

 戦争参加を進めるあらゆる立法と政策措置を行わないことに関する請願(本村伸子君紹介)(第一三四七号)

 日本を海外で戦争する国にする戦争立法反対に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一三四八号)

 集団的自衛権行使のための法改正など立法措置に反対することに関する請願(阿部知子君紹介)(第一三四九号)

 集団的自衛権行使を容認した閣議決定の撤回を求め、これに基づく全ての立法や政策に反対することに関する請願(藤野保史君紹介)(第一三五〇号)

 同(堀内照文君紹介)(第一三五一号)

 同(堀内照文君紹介)(第一四三八号)

 憲法違反の集団的自衛権行使を可能にする全ての立法や政策に反対することに関する請願(斉藤和子君紹介)(第一三九四号)

 同(志位和夫君紹介)(第一三九五号)

 集団的自衛権閣議決定の法制化による海外で戦争する国づくりに反対することに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一三九六号)

 同(池内さおり君紹介)(第一三九七号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一三九八号)

 同(大平喜信君紹介)(第一三九九号)

 同(笠井亮君紹介)(第一四〇〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一四〇一号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一四〇二号)

 同(志位和夫君紹介)(第一四〇三号)

 同(清水忠史君紹介)(第一四〇四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一四〇五号)

 同(島津幸広君紹介)(第一四〇六号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一四〇七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一四〇八号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一四〇九号)

 同(畠山和也君紹介)(第一四一〇号)

 同(藤野保史君紹介)(第一四一一号)

 同(堀内照文君紹介)(第一四一二号)

 同(真島省三君紹介)(第一四一三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一四一四号)

 同(宮本徹君紹介)(第一四一五号)

 同(本村伸子君紹介)(第一四一六号)

 日本を海外で戦争する国へとつくり変える集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回を求め、立法化に反対することに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一四一七号)

 同(池内さおり君紹介)(第一四一八号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一四一九号)

 同(大平喜信君紹介)(第一四二〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第一四二一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一四二二号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一四二三号)

 同(志位和夫君紹介)(第一四二四号)

 同(清水忠史君紹介)(第一四二五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一四二六号)

 同(島津幸広君紹介)(第一四二七号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一四二八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一四二九号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一四三〇号)

 同(畠山和也君紹介)(第一四三一号)

 同(藤野保史君紹介)(第一四三二号)

 同(堀内照文君紹介)(第一四三三号)

 同(真島省三君紹介)(第一四三四号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一四三五号)

 同(宮本徹君紹介)(第一四三六号)

 同(本村伸子君紹介)(第一四三七号)

 集団的自衛権行使の立法措置を行わないことに関する請願(小宮山泰子君紹介)(第一四八一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七二号)

 国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案(内閣提出第七三号)


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     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官前田哲君、内閣官房内閣審議官土本英樹君、内閣官房内閣審議官槌道明宏君、外務省大臣官房審議官森健良君、外務省総合外交政策局長平松賢司君、外務省中東アフリカ局長上村司君、資源エネルギー庁資源・燃料部長住田孝之君、防衛省防衛政策局長黒江哲郎君、防衛省運用企画局長深山延暁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。辻元清美君。

辻元委員 民主党の辻元清美です。おはようございます。

 中谷防衛大臣とは、二十年近く、安保法制やそれから憲法の問題も議論してまいりました。昨日、憲法審査会で三人の参考人の方々をお呼びいたしまして立憲主義等についての議論があり、三人とも、本委員会で審議されている安全保障をめぐる一連の法案について違憲であるという発言が出たということは御承知のとおりです。与党と次世代が御推薦になりました長谷部恭男先生も、違憲であると言い切られたことは御承知だと思います。

 中谷大臣にお聞きしたいんですが、十五年ほど前になるでしょうか、最初、憲法調査会というのが立ち上がりました。その当時は中曽根元総理や土井たか子当時の社民党党首なども参画されていた憲法調査会、私も、初代、スタートのときの委員として憲法議論を始めました。その後、憲法調査特別委員会が立ち上がりまして、そしてその後に憲法審査会が立ち上がり、現在に至っております。

 中谷大臣も、この一連の委員会の委員として積極的に憲法に関する議論をされてきた。そして、審査会でもつい先日まで、私も委員でしたけれども、ともに憲法の議論をしてきた。そして、特に中谷大臣と私が激論を何回もその場で闘わせてきたということだったと記憶しておりますが、一連の憲法に関する国会での調査会、調査特別委員会、審査会の委員として積極的に御発言をされてきたということでよろしいですか。

中谷国務大臣 辻元委員とは、この二十年、最初にPKO、そして周辺事態、その後は九・一一のテロ特措法、本当に安全保障に関しては議論をしてまいりました。また、今は審査会になっていますけれども、最初の調査会のときから憲法の基本にかかわることにつきまして議論をしてきたわけでございます。

 私は、さまざまな角度から、さまざまな方々の御意見をお聞きしつつ自分なりの憲法に対する認識も深めてまいりましたし、自分なりに考え方を固めてきまして、非常に有意義であったと思います。現在、調査会が審査会となりまして、いよいよ憲法の中身についても議論が深まるような段階になってきたということで、非常に国会の調査会の機能というものが果たされましたし、私も有意義であったというふうに思っております。

辻元委員 有意義であったというお話です。

 そして、幹事の委員にも中谷大臣は入ってこられた。私は、現在は憲法審査会ですが、毎年、海外への調査もこなし、憲法という国の基本にかかわる案件を取り扱うということで、ここでの議論というのは非常に重いものである、他の委員会に比べても非常に重いものであると認識しておりますが、それでよろしいですか。

中谷国務大臣 この調査会からの議論を非常に丁寧に行ってこられまして、最初は大阪選出の中山太郎衆議院議員が調査会長になられまして、十年近くにわたって海外の諸制度も現地で視察をされ、またその後報告を受け、そして保利耕輔審査会長のときも非常に丁寧に各党の意見を表明しながら、また自由民主党は憲法改正に対する試案も説明しながら、幅広く議論をしてこられた。非常に丁寧に審議が行われてきたというふうに認識しております。

辻元委員 丁寧に、そしてかなり慎重に議論してきたと思います。

 自民党は憲法改正草案というものをお出しになって、これはQアンドAですけれども、この作成にも中谷大臣はかかわっていらっしゃるんですか。

中谷国務大臣 自民党の中に憲法改正推進本部がございます。この中で私は事務局長をしておりまして、この試案作成は自民党が野党のときに、やはりしっかりとした憲法を国民に提案すべきであるということで、全党にわたる議員の議論を通じてまとめられたものでございまして、そのときの事務局長をさせていただいたということです。

辻元委員 自民党の憲法改正草案をまとめる事務局長ということでいらっしゃいますから、国会の中で憲法のエキスパートのお一人であると私は今受けとめさせていただきましたので、憲法と今議論されている本委員会にかかっている法案、きのう、三人の専門家の方、先ほど申し上げましたように、与党プラス次世代推薦の長谷部恭男先生、そして民主党推薦の小林節先生、そして維新の会御推薦の笹田栄司先生、三人とも、集団的自衛権の行使やそして恒久法についても御言及されましたが、違憲であるとはっきり言い切られた。これをどう受けとめていらっしゃいますか。中谷大臣です。

中谷国務大臣 審査会で行われておられることなので、政府の人間としては立ち入るべきではございませんが、それぞれ、審査会の要望に基づいて出席された先生が御自分のお考えを述べられたというふうに思っております。

辻元委員 立ち入るべきでないと今おっしゃいましたけれども、非常にこれは大きな問題だと思います。

 今、この委員会で安保法制が議論されていて、同時に憲法審査会が、先ほどおっしゃった、丁寧に議論してきて、私は非常に重い審査会だと思いますよ。そこで与党推薦の参考人までもが違憲であると言ったこと、立ち入ってはいけないとかいう話ではなくて、これは非常に深刻な事態であるという御認識をまずされた方がいいと思いますが、防衛大臣、いかがですか。

中谷国務大臣 国会でさまざまな角度で御議論をされるべきであると思いますので、それぞれの委員会なりまた審査会でそれぞれの専門家の御意見を拝聴するということはよくあることでございまして、そういう中でさまざまな角度からの御意見が開陳をされたというふうに認識をしております。

辻元委員 実は、これだけではなくて、六月三日、おととい「安保関連法案に反対し、そのすみやかな廃案を求める憲法研究者の声明」というのが出され、記者会見もされました。これは百七十二名の憲法研究者の皆さんですが、今どんどん数がふえているわけです。

 一方でこういう事態があって、そしてその上で、きのう、三名の方が違憲と言う。違憲の法案をこの委員会では審査しているのかと。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

辻元委員 中谷大臣に聞いております。

 私は、自衛隊も含めまして、宣誓をするときに、「日本国憲法及び法令を遵守し、」これが宣誓に入っております。そして、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。」。自衛隊も、身をもって、身を賭して任務に当たるときに「日本国憲法及び法令を遵守し、」と。

 ところが、この日本国憲法、そして法令、これが違憲という声が、多数どころじゃないですよ、今。今、この集団的自衛権の行使をめぐる法案審議をめぐっても、半数以上が反対と。その大きな根拠は、憲法九条違反じゃないかということが根拠になっているということを中谷大臣は御認識されていますか。

中谷国務大臣 憲法は非常に大事なものでございまして、自衛隊や日米安保におきましても、戦後、いろいろな議論が行われておりました。当初は憲法違反ではないかとかそういった議論もありましたけれども、やはり国家にとりまして、自衛隊、日米安保、ともに憲法の範囲で活動するものであるということは間違いのないことでございます。

 こういった憲法について、どこまで許されるのかというのは従来からも議論をされておりまして、政府としましては昨年七月に閣議決定を行ったわけでございますが、この間も、安保法制懇というものの議論を通じて政府としては有識者に意見を伺って、その報告書の提出を受けて、そして与党の中で非常に濃密な協議を踏まえて行ったものでございまして、閣議決定をしたわけでございます。

 私も、自民党の中でこの憲法とこれからの安全保障法制、常々議論はいたしておりますし、また与党の中でもさまざまな角度で検討して現在の法案を政府としては決定いたしましたので、それぞれ、憲法において慎重に議論をした結果であるというふうに思っております。

 したがいまして、憲法に関していろいろな考えの方々がおられますが、私たちは、そういったさまざまな方々の意見を聞く、伺う、そういうことを通じまして現在の結論に至っているわけでございます。

辻元委員 私が申し上げましたのは、反対している人たちが半数以上いらっしゃる、この事実は御存じですね。世論調査を見て、そうじゃないですか。そしてさらに、その中核的な反対の意見が、憲法九条に違反しているんじゃないかと。そして一方、憲法学者、研究者の皆さんも二百名近く反対の声明を上げられ、今どんどんふえていっているというような事態で、そして自衛隊は、憲法審査会で呼ばれた三人の参考人の方も、非常に日本では権威のある方々です、三人とも口をそろえて違憲だと言っているそんな法案にのっとって、この宣誓、「日本国憲法及び法令を遵守し、」身を賭して行きますと。

 皆が、これは頑張ってほしい、憲法にも合致しているというものであればいいが、その根幹が揺らいでいるわけですよ。違憲かもしれない、または違憲だと断言されている、政府は合憲だと言い張っておりますけれども、そんな状況で、自衛隊員に、命をかけて戦えとか、命をかけて、我が国が攻められていなくても、他国のために戦えとか行けと言えますか。

 私は、昨日の憲法審査会を受けて、三名が違憲と言われたことを受けて、本法案は一回、政府は撤回された方がいいと思いますが、いかがですか。

中谷国務大臣 政府といたしましても、さまざまな角度から御意見を頂戴し、また現実に安保法制懇談会という、非常に著名な、見識を持った方々に参画していただいて御意見をいただきました。

 そして、その後は、やはり政府としては、国民の命とそして平和な暮らしを守っていくために、憲法上安全保障法制はどうあるべきか、これは非常に国の安全にとって大事なことでございますので、与党でこういった観点で御議論をいただき、そして現在の憲法をいかにこの法案に適用させていけばいいのかという議論を踏まえまして閣議決定を行ったわけでございますので、多くの識者の御意見を聞きながら真剣に検討して決定をしたということでございます。

辻元委員 私は、中谷大臣が、憲法調査会から一連の憲法の場で主張されている意見を覚えております。九条は憲法改正が必要だ、その意見をずっと述べてこられました。ですよね。(中谷国務大臣「はい」と呼ぶ)

 そして、こういう意見をずっと言ってこられました。これは中谷さんの御著書です。「右でも左でもない政治 リベラルの旗」という御著書の中で、「憲法の拡大解釈は限界に達している」という章でこうおっしゃっています。「現在、各政党で憲法議論が行われている。憲法を改正するかどうか、改正しなくても解釈の変更を行うべきだとの議論があるが、私は、現在の憲法の解釈変更はすべきでないと考えている。解釈の変更は、もう限界に来ており、これ以上、解釈の幅を広げてしまうと、これまでの国会での議論は何だったのか、ということになり、憲法の信頼性が問われることになる。」すばらしい意見をおっしゃっているじゃないですか。

 それでは、当時のことをお聞きしましょう。中谷大臣は一連の憲法にまつわる委員会等でもこういう御主張をされてきて、私もその場にずっといたわけですから。

 当時、なぜ、憲法の拡大解釈は限界を超えていて、そして、これ以上解釈の幅を広げてしまう、それでは国会の議論は今まで何だったのかということになる、憲法の信頼性が問われることになるというようにお考えになった根拠を教えてください。

中谷国務大臣 当時は、いわゆる集団的自衛権というものに関しまして定義がありまして、いわゆる国際的な集団的自衛権、これは憲法を改正する必要があるという認識でずっとおりました。この件は、私、自民党内でもこういった意見を主張いたしておりまして、自民党には、いえいえ、集団的自衛権は憲法で容認をされるという御意見の方もおられました。

 二、三年、非常に真剣な議論を重ねまして、そして自民党で選挙公約、マニフェストをつくる際に、では憲法と安全保障法制をどう考えていくかという議論になりまして、こういった現在の論理の帰結でございますが、従来の憲法の基本的論理を維持した中で、やはり時代の変化を踏まえ、そして安全保障環境が客観的に大きく変化をしているという中で、従来の憲法解釈との論理的整合性と法的安定性に十分留意をして、現在の基本的な論理を維持したまま、枠内で、国民の命と幸福な暮らしを守り抜くための合理的な当てはめの帰結を導いた結果、他国を防衛するための集団的自衛権ではなくて、あくまでも、我が国の存立を脅かし、そして国民の権利を根底から覆される、そういった明白な危険がある事態、それに限って集団的自衛権も容認できるという結論に至りました。

 この間、二、三年、真剣に議論をいたしましたし、また、この件につきましては、与党の中でこういった考え方も議論をいたしまして、私なりには、こういった部分におきましては、現在、日本国憲法の中で容認される部分であると理解したわけでございます。

 したがいまして、当時の私の考え方は、他国を守ることも含めた集団的自衛権、これは憲法の改正が必要であるという認識でいたわけでございます。

辻元委員 今、私は当時の認識をお聞きしたわけですね。集団的自衛権の行使についてのお話が今ございましたけれども、当時は、中谷さんは、集団的自衛権の行使について、なぜ日本国憲法のもとで行使できないとお考えだったんですか。

中谷国務大臣 当時は、集団的自衛権と申しますと、他国を防衛することも含めた、いわゆる国際的な定義による集団的自衛権であったと考えていたからでございます。

 しかし、この閣議決定まで議論もいたしましたけれども、昨年の閣議決定というのは、これまでの憲法九条をめぐる議論との整合性を考慮したものでございまして、行政府による憲法の解釈としての裁量の範囲内であると考えまして、私は、これをもって憲法違反にはならないという考えに至っているわけでございます。

辻元委員 こうもおっしゃっているんですね。これは二〇一三年ですから、ちょうど八月ですから、まだ二年もたっていないですね。なぜ今憲法改正が必要なのかという対談をなさっています。

 ここで「政治家として解釈のテクニックで騙したくない。」、大臣、「騙したくない。自分が閣僚として「集団的自衛権は行使できない」と言った以上は、「本当はできる」とは言えません。そこは条文を変えないと……。」こうおっしゃっているんですね。今までそう言ってきた限り、本当はできるとは言えませんとおっしゃっています。これは一年ちょっと前の話なんですね。

 皆さん、大臣は、この間までできないと言ってきたわけですよ。そして今、大臣がおっしゃってきたことは、きのうの憲法審査会の参考人の方が同じことをおっしゃっているわけです。

 長谷部さんはこう言いました。

 集団的自衛権の行使が許されるというその点について、私は憲法違反であるというふうに考えております。従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつきませんし、法的な安定性を大きく揺るがすものであるというふうに考えております。

 そして、小林節さん。

 私も違反と考えます。憲法九条に違反します。

 そして、笹田参考人は、日本の内閣法制局は、自民党政権とともに安保法制をずっとつくってきたわけです。そして、そのやり方は、非常にガラス細工と言えなくもないですけれども、本当にぎりぎりのところで保ってきているんだなということを考えておりました。今回、従来の法制局と自民党政権のつくったものがここまでだよなと本当に強く思っておりましたので、今回はやはり踏み越えてしまった。

 これは、大臣が一年ちょっと前まで言っていたことと同じことを三名がおっしゃったわけですね。

 もう一度お聞きしましょう。

 大臣は、政治家として解釈のテクニックでだましたくない、そして、自分が閣僚として行使できないと言った以上は、本当はできるとは言えませんと。信念ですよ、大臣の。そうすると、このときはこう思っていたけれども、信念をお変えになったということですか。

中谷国務大臣 やはり真剣に集団的自衛権というのは何かというところを考えたわけでございます。

 やはり集団的自衛権というのは国際的な定義がございまして、一九七二年、昭和四十七年の政府見解にあるいわゆる集団的自衛権というのは、国際法上、自国と密接な関係にある外国に対して武力攻撃が発生した場合に各国に行使が認められているものと同様の集団的自衛権を指しております。

 私が発言した以降、与党の中でも、この集団的自衛権に関する検討、私も与党の一員でございましたので、その中で検討いたしましたけれども、今回の閣議決定によりまして、憲法上許容されると判断するに至ったものは新三要件というものをかぶせました。

 新三要件というのは、我が国の存立が脅かされ、そして国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるということに加えまして、ほかに手段がない、そして必要最小限度、大分略していますけれども、こういった三原則を前提に、この集団的自衛権につきましては、あくまで我が国の存立を全うし国民を守るためのやむを得ない自衛の措置としての必要最小限度のものに限られるということになりました。

 これは、他国の防衛それ自体を目的とする集団的自衛権の行使を認めるものではないということでございますので、国際法上言われる集団的自衛権ではなくて、我が国の憲法上、我が国の自衛の措置を行使する必要最小限度のものに限られる、他国の防衛それ自体を目的とする集団的自衛権を認めるものではないということで、私は、この今回の法案は憲法の範囲内であるという認識に至ったわけでございます。

辻元委員 今、国際法上認められる集団的自衛権と、今、憲法解釈を変更して我が国で変えようとしている集団的自衛権の行使は、国際法上認められる集団的自衛権と違うという御答弁ですか。

中谷国務大臣 後者は集団的自衛権とは呼んでおりません。前者は、国際法上定義をされた、自国と密接な関係にある外国に対して武力攻撃が発生した場合に各国に行使が認められているものと同様の集団的自衛権を指しておりますが、今回の閣議決定によりましては、憲法上容認されるという判断に至りましたのは、昭和四十七年の政府見解の理論がございまして、憲法上武力行使が認められますよということをもとに考えてみまして、新三要件を限定することによりまして、あくまで我が国の存立を全うし国民を守るためのやむを得ない自衛の措置としての必要最小限のものに限られるんだ、その限定があるということにいたしまして、他国の防衛それ自体を目的とする集団的自衛権の行使を認めるものではないということでございます。

辻元委員 いや、私が聞きましたのは日本版集団的自衛権の行使で、国際的に言われるところの集団的自衛権の行使と違うのかと聞いたわけです、今私たちが議論しているのは。どうですか。

中谷国務大臣 そのとおりでございます。

 国際的に認められますのは、自国と密接な関係にある外国に対して武力攻撃が発生した場合に各国に行使が認められているものと同様の集団的自衛権ということを指しております。

 今回認めましたのは、我が国の憲法から見まして、あくまでも我が国の自立を全うし国民を守るためのやむを得ない自衛の措置としての必要最小限のものであるという前提の武力の行使を認めたわけでございますので、国際的な集団的自衛権の定義とは違うわけでございます。

辻元委員 七月一日の閣議決定を見ると、国際法上は集団的自衛権が根拠になる場合があると書いてあるわけですよ。そうすると、日本で言っているところの、ここに集団的自衛権が根拠になる場合があると書いてあるじゃないですか、場合もあるけれども、国際的な集団的自衛権の行使というのが当たるときもあるけれども、当たるときもないということですか。

中谷国務大臣 国連憲章には個別的自衛権と集団的自衛権というのがございまして、これは両方認められているわけでございます。

 私の考えでございますが、国際的に見ましても、集団的自衛権の範囲の中に個別的自衛権に当たるものもあるのではないかということでありまして、一般的定義としては他国も守れるものになっておりますが、我が国の場合は、自国を防衛する、それ自体を目的とする集団的自衛権を認める、他国を防衛する集団的自衛権を認めるものではないということでございます。

辻元委員 それでは、ちょっと角度を変えて聞きますが、この閣議決定で言うところの国際法上は集団的自衛権が根拠になる場合がある、どんな場合ですか、具体的に言ってください。

中谷国務大臣 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生をし、そして、三条件を記しておりますが、そういう場合に武力行使が認められるというところでございます。

辻元委員 それは、さっき言っている我が国版の集団的自衛権の行使ではないですか。国際法上は集団的自衛権が根拠になる場合がある。だから、国際的な集団的自衛権の行使と、今議論している日本版集団的自衛権の行使は違いますよと大臣がおっしゃるから、ところが「国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある。」とあるから、では、国際法上、集団的自衛権という、国際版集団的自衛権の行使になることはどういう場合を指しているのかと聞いているわけです。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

中谷国務大臣 それは、他国を守るために行使する武力行使としての集団的自衛権でございます。

 新三要件のもとで新たに認められる自衛権の行使というのは、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したということのみならず、これによって我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合との限定を付しております。

 このような武力行使は、あくまでも我が国の存立を全うし国民を守るため、すなわち我が国を防衛するためやむを得ない自衛の措置として初めて容認をされるものでありまして、世界各国に認められているものと同様の集団的自衛権、すなわち、自国の防衛と重ならない、他国の防衛のために武力を行使することができる権利として観念される集団的自衛権の行使が認められているわけではございません。

 世界各国に認められているものと同様の集団的自衛権の行使を認めるなど、憲法九条の解釈に関する従来の政府見解の基本的な論理を超えて武力行使が認められるとするような解釈を現行憲法下で採用することは困難でございますので、そのときは憲法改正が必要であると考えております。

辻元委員 「政治家として解釈のテクニックで騙したくない。」。今のをお聞きしていて、私、中谷大臣は、今おっしゃっているようなことをつらつらおっしゃること、国民をだましているように見えますよ。

 というのは、なぜかというと、この委員会で議論をしてきたこと、例えば、後で聞きますが、他国の同意や要請が必要である、これは国際法上の集団的自衛権を行使するときの要件です。

 そして、こういう答弁もずっとされてきていますね。では、ちょっと中谷大臣にお聞きしましょう。

 これは、安倍総理大臣が二月に「我が国の存立が脅かされ、」、ずっと言っておられるように、明白な危険、「新三要件を満たす場合にのみ、自衛の措置として集団的自衛権の行使が可能であること、」、よく聞いてくださいよ、「集団的自衛権は権利であって義務でなく、政策判断によって行使しないでおくことができること、」と。

 国際的に集団的自衛権は権利であって義務でないと言われているという答弁を随時繰り返してこられましたが、そのとおりでいいですか。

中谷国務大臣 これは各国に与えられた権利であるということでございます。それを全て発揮するかと聞かれれば、それは各国の国益とか状況に応じて行使をするわけでございますので、明らかに義務ではないということでございます。

辻元委員 これは、今議論しているところの集団的自衛権の行使、日本版と言われていますけれども、これにまつわる一連の議論でも、総理は、権利であって義務ではないと答弁されていますので、これが当てはまるという考えでよろしいですか。後ろから行かなくていいですよ。

中谷国務大臣 事前通告なしの質問なんですよ、これは全て、私、答弁をしておりますが。

 おっしゃったように、安倍総理は、権利であって義務ではないということを申し上げました。この集団的自衛権というのは、国際法上、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止することが正当化される権利、これをいうものでございます。

 このように、一般に集団的自衛権は国際法上国家に認められた権利であり、これを行使することが義務づけられているものではないという、一般の国際法に対する認識を述べたということでございます。

辻元委員 通告については、民主党政権のとき、自民党が質問するときにどういう態度をとられたかということをよく思い出していただきたいと思います。そのときに、通告しないと基本的なことが答えられないのかとおっしゃったので、今私も同じことを申し上げたいと思います。

 その中で、今おっしゃった定義は、今回議論されている、日本で認めようとしている集団的自衛権にも当てはまると総理は言っていますが、それでいいですか。

中谷国務大臣 権利と義務の関係で、国際法上のことを申し上げました。これは各国に与えられた権利なんですね。どの国も、与えられた権利だから全て果たすということではなくて、あくまでも、自国の主権やまた国益に応じて判断をして行使するわけですから、これは義務ではないということでございます。これは一般論。

 そして、今我々が閣議決定で行いましたのは、いわゆる国際的な集団的自衛権に照らしまして、我が国の憲法上どの範囲まで容認ができるかという議論を行いまして、先ほどお話をいたしましたが、世界各国に認められているものと同様の集団的自衛権の行使を認めるなど、憲法九条の解釈に関する従来の政府見解の基本的な論理を超えて武力行使が認められるような憲法解釈を現行憲法下で採用するということは困難であるという結論に至ったわけでございます。

辻元委員 その至った、今言われているところの、日本で今採用しようとしている集団的自衛権の行使、後半の部分です、これも、国際法上で言われるところの権利であって義務でないという原則は当てはまるのかと聞いているわけです。総理は当てはまると答弁しているから、中谷大臣にも確認をしているわけですよ。いかがですか。

中谷国務大臣 あくまでも、我が国が行使できるのは新三要件に合致をした場合のみでございます。したがいまして、権利ではあるが、その権利を全て果たすというような義務でもない。我が国は、独自で判断をして、この新三要件に合致する場合において、本当に必要かどうか、そういうことを判断した上、国が、存亡の危機にかかわります、個人の権利がもう覆される状態に至っています、そういう事態に至ったときにこれの検討を行うということでございます。

辻元委員 新三要件を満たしたときは、今おっしゃったような、国民の権利がもう根底から覆されるという状況ですよね。ところが、そういうときでも、今の大臣の御答弁ですと、権利であって義務ではないんだから、そういう場合、根底から覆されるようになっていても、今言うところの集団的自衛権の行使、新三要件が満たされていたとしても政策的に行使しない場合があるのか。これはどうですか。

中谷国務大臣 まさに、国の存立にかかわり、国民の自由、幸福追求の権利が根底から損なわれる、いわゆる国民の権利が根底から覆されるわけでございます。このような場合に、この集団的自衛権の性格を前提とした上で、実際行使するかどうかというお問い合わせでございますが、この有無については、事態の発生時の個別具体的な状況に照らして総合的に判断する必要がありますが、一般論として申し上げますと、仮に三要件が満たされると判断される場合に、政府として何もしないということは想定をされないのではないかなと思います。

辻元委員 今、何もしないということは想定されないとおっしゃったわけですが、安倍総理は「政策判断によって行使しないでおくことができる」、そういう場合もあるというような答弁をされているわけですよ。

 大臣、どういうことかというと、集団的自衛権の行使という国際的に一般に決まっているルールがあるわけですよ。それを強引に憲法解釈を変えて個別的自衛権とひっつけようとするから、これはひっつかないんですよ、結局は。なぜかというと、権利であって義務ではない。根底から覆すようになっているときに、権利であって義務ではない、さらには政策としてやらないこともある、そんなのんきなことを言うていられないでしょう。

 だから、これは個別的自衛権、私は武力攻撃事態の切迫事態とそれから存立危機事態の違いをこの間質問しましたけれども、これもなかなか、何を言っているかさっぱりわからない。

 要するに、国際的なルール、権利であって義務ではないということであるならば、行使しないときもある。しかし、一方、根底から覆される場合、自国が攻撃されていなくても他国に対しての攻撃を、自分たちも参画していくと言っているわけですよ。これは、国際的なルールを一方に抱えつつ、自国の防衛というところにつなごうとしている、ここに無理があると思いますよ。

 政策的にやらないときというのは、どういうときですか。

中谷国務大臣 いずれの国も、こういった場合においては、政府が判断する上に、やはり国会、議会の承認が要るわけですよね。そういったいろいろな判断というものはあってしかるべきだと思っております。

 したがって、先日の総理の御発言を言われましたけれども、これは、集団的自衛権の行使を認めることによるリスク等について質問があったことから、集団的自衛権の国際法上の性格について述べられたわけでございます。

 一方、私が申し上げたいのは、このような集団的自衛権の性格を前提とした上で、実際の行使の有無につきましては、事態発生時の個別的、具体的な状況に照らして総合的に判断する必要がありますけれども、一般論として言えば、仮に三要件が満たされると判断される場合に、政府として何もしないということは想定されないという趣旨を申し上げた次第でございます。

辻元委員 きのうの憲法審査会の話に戻りますけれども、与党が推薦された長谷部教授は、こうもおっしゃっているんですね。憲法の解釈、要するに、憲法九条も含めて、何ができて何ができないか、はっきりさせておかないとまずい、文言を見ただけではわかりづらいこと、わかりにくいこと、それを意味を明確にするために解釈をしているはずである、今回は解釈を変えたために意味はかえって不明確になってしまった、大臣。(中谷国務大臣「聞いています、聞いています」と呼ぶ)とおっしゃっているわけですよ。

 武力攻撃事態の切迫事態と存立危機事態、これは、一方は武力攻撃をする、一方はしないという議論をこの間しましたね。そして、どういうときに、では、米軍だったら米軍が、近隣で紛争などがあったときに攻撃されたときに行くのかという基準もはっきりしなくなっているわけですよ。

 その点も、今までは、急迫不正の侵害ということで、日本が攻撃されたという明白なときのみである。しかし、それがはっきりしなくなった、基準がわからない。自民党が推薦された参考人が、基準がわからぬと言っているわけですよ。

 どういう基準なんですか。何を目安にするんですか。もう一度答えてください。

中谷国務大臣 法律自体が前提が、法律の中で定義したのが違うんですね。つまり、我が国に対して武力攻撃が発生する前の事態を想定したいわゆる切迫事態と、他国に対する武力攻撃の発生を前提とする存立危機事態とは、武力攻撃が発生するか否かという点においては、その前提を異にいたしております。

 また、いわゆる切迫事態の定義に言う明白な危険が切迫しているというのは、我が国に対する武力攻撃が発生する明白な危険が切迫しているということを意味しておりまして、つまり、いまだ武力攻撃は発生をしていないということなんですね。武力攻撃が発生していない。

 他方、存立危機事態の定義に言う明白な危険があるというのは、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるということであります。

 このように、武力攻撃事態の切迫の明白な危険と存立危機事態の明白な危険は、危険の内容や評価の視点が異なるという意味においては前提が異なるものでございまして、両者の関係について一概にお答えすることは困難だということでございます。

辻元委員 今まさしく、両者の関係について一概に答えられない、それが武力行使の基準ですかと自民党が推薦した長谷部教授が言っておるわけですよ。

 では、大臣、あなたが自衛隊を出動させるかどうかを決める役ですよ。一概に、そのときにならないとわからないということですか。

中谷国務大臣 そのとおりでございます。

 やはりそういった事態がいかなる事態かということを考えまして、片方の武力攻撃事態というのは、我が国に対する武力攻撃がどんどんどんどん進んでいく事態でございます。一方、存立事態というのは、我が国と密接な関係にある他国が武力攻撃を受けた、その時点においてその事態が、我が国の存立が脅かされ、そして国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆されるのが明白な事態であるかという認定をするわけでございますので、前提も違いますし、また、どういう事態かというのはその時点で、先ほど説明した事態に至っているかどうかということで判断するわけでございます。

辻元委員 武力行使をするかどうかの基準というのはそのときにならないとわからないとか、それから、国民が、これは武力行使しなきゃいけないなということがはっきりしているときじゃないとしちゃだめなんですよ。それが憲法九条じゃないんですか。

 きのうの審査会で、特に長谷部さんはその点を言っているわけです。憲法解釈、憲法の解釈をするというのは、解釈を明確にしていくためにするんだと。解釈を変えたためその解釈がさらに不明確になる場合はこれはすべきでないし、憲法九条にかかわる今回の解釈変更はさらに不明瞭になっている、その点においてもこれは憲法九条違反であると言っているわけですよ。その意見について、どう思いますか。

中谷国務大臣 政府の責務といたしましては、国民の命そして平和な暮らし、こういうものをしっかり守り抜くという責務がございます。

 そのために法律というものが必要でありまして、そういった状態においてそれを防ぐための手当てを講じるわけでございまして、いかなるときに自衛隊が活動できるか、そういうことを法律で盛り込む必要がございますので、現在、憲法の厳粛な、厳格な解釈を通じて法案を提案いたしましたので、まずこの点で御審議をいただいているということでございます。

辻元委員 そのときにならないとわからない、そのとおりでございますとおっしゃいましたね。そのときとはどのときですか。

 要するに、これは急迫不正の侵害があったときとはっきりしていたわけですよ。それが、そのときにならないとわからないというような法案は取り下げた方がいいですよ。大臣、いかがですか。

 もう一回答えてください。そのときとはどんなときですか、具体的に言ってください。

中谷国務大臣 新三要件に適合されたときでありまして、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという明白な危険がある場合とは、他国に対する武力攻撃が発生した場合に、そのままでは、すなわち、その状況下で武力を用いた対処をしなければ国民に対して我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であるということを考えております。

 いかなる事態がこれに該当するかは、現実に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して客観的、合理的に判断することになるわけでございます。

辻元委員 もう一回聞きましょう。

 ということは、突き詰めれば、そのときにならないとわからないわけですか、武力行使をどうするかは。どうですか。その点、答えてください。

中谷国務大臣 まさに国民の生命財産が根底から脅かされて覆される状況でございますので、武力攻撃事態につきましては我が国に対する武力攻撃でありますが、我が国と密接に関係のある他国に武力攻撃が行われた際に、この三要件に示された内容に合致したときにこういった武力行使を検討するわけでございます。

辻元委員 私が聞いているのは、その新三要件に合致するかどうかの基準は何かと聞いておるわけです。どうですか。

中谷国務大臣 これは、基準として申し上げます。現実に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して客観的、合理的に判断することとなるわけでありまして、明白な危険というのは、その危険が明白であること、すなわち、単なる主観的な判断や推測などではなくて、客観的かつ合理的に疑いなく認められるものでなければなりません。

 そして、この判断につきましては、個別具体的な状況に即して、主に攻撃国の意思、能力、事態の発生場所、その規模、態様、推移などの要素を総合的に考慮いたしまして、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民がこうむることとなる犠牲の深刻性、重大性などから判断をすることになります。そのため、総合的判断だからといって主観的な判断によるものではなくて、客観的な判断によって行うことは当然であると考えますし、もう一点、これは政府が判断しますが、国会の承認が必要でございます。したがいまして、実際の武力行使に当たりましては、これまでと同様に、政府の判断のみならず、国会にお諮りをし、承認が必要となるということでございます。

辻元委員 だから、政府の判断基準は何かと聞いたわけですよ。

 きのう、その点が議論になっているんです、憲法審査会で。何ができて何ができないのかわからない、そしてどういう基準で武力行使するのかもわからない、こんな議論は容認できない、恥ずかしいという発言まで憲法学者からきのうは出ているんですよ。

 今のお話を聞いても、判断基準は、結局、突き詰めて言えば、大臣、そのときにならないとわからないということですか。

中谷国務大臣 先ほどお話をいたしましたが、いろいろな事態が発生します。総合的に、いろいろな事態が発生して、ああ、この事態は国の存亡を脅かす、そして国民の権利を根底から失ってしまう、そういう明白な危険が明らかになったという事態でありまして、それはどういう事態かというと、先ほどお話ししましたように、攻撃国の意思、能力、そして事態の発生場所、その規模、態様、推移などの要素を総合的に考慮して、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、可能性、国民がこうむることになる犠牲の深刻性、重大性などから判断することになります。(発言する者あり)

浜田委員長 答弁を続けてください。

辻元委員 国民がわからないまま、きのうの審査会でもそういう話も出ました。多くの憲法学者や、そして本院にお招きをした人たちも口をそろえて違憲だと言っている。これをどんどこどこどこ前に進めていこうとしている。これは立ちどまった方がいいですよ、立ちどまった方が、大臣。大臣がまさしく「政治家として解釈のテクニックで騙したくない。」とおっしゃっているじゃないですか。解釈のテクニックですよ、今おっしゃっているのは。

 明白な危険を判断する基準、これは何か。国民の誰から見てもわかる基準で我が国はきたわけです。今までは、日本が攻められたときだけですよね、大臣。それは、日本が攻められた、これは当たり前だよなと、ここでコンセンサスをとってきたんじゃないですか。それが憲法九条の解釈でしょう。

 ところが、いや、他国が攻撃されても我が国に危険が及ぶ明白な基準がある、では明白な基準は何なんだといったら、明白な基準だから明白な基準で、そのときにならないとわからない、そんなことでこの法案は成り立つと思いますか。

 そして、大臣はこうもおっしゃっています。これは後で大串さんもこの続きをやりますので。専守防衛についての今までの定義も、「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、」とあるわけですよ、武力攻撃を受けたとき。全部、憲法九条の今までの解釈のもとで、専守防衛もそうだし、全て成り立ってきた。だから、ガラス細工のようだけれども、今回はのりを越えていると言われている。

 そして最後に、大臣はこうもおっしゃっていますよ。いろいろな事態が乱立していること、そういうことについても、「武力攻撃事態や周辺事態など、わが国の防衛に関することと、紛争予防や国連平和維持活動など、国際安全保障事態に対処する活動を区別して議論しなければ、混乱して、拡散したままの議論の整理に終わってしまう可能性がある。」と御著書で言っているわけです。

 そういう、一つ一つ、どういうときに武力行使をするのか、憲法解釈を変えて、全く不明、憲法学者の皆さんが違憲だと言っている。それをまた一つの法律にまとめて、大臣そのものが、それぞれ個別に整理して議論しないと混乱するだけとおっしゃっているじゃないですか。言っていることとやっていることが全然違いますよ。

浜田委員長 時間です。

辻元委員 続きは大串さんにやってもらいますので。

 終わります。

浜田委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 民主党の大串博志です。

 続きまして質疑をさせていただきたいと思います。

 私も、引き続いて、昨日の衆議院憲法審査会での議論です。

 先ほどの質疑の中でもありましたけれども、大臣も審査会の参考人質疑の模様は確認されたということだと思いますが、三人の参考人の方、与党の方々が呼ばれた参考人の方も含めて、今回の集団的自衛権を行使可能とする安全保障法制に関しては違憲だというふうにおっしゃっている。

 まず、このことに関する大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

中谷国務大臣 憲法について、それぞれ見識を持たれた方々の御意見であると認識をいたしております。

 しかし、政府としましては、昨年の閣議決定の前に安保法制懇というものを開催いたしました。そこで、憲法や安全保障に非常に知識のある有識者の方々をお招きいたしまして、御検討いただきました。その報告書を提出いただいて、それをもとに与党で協議会を立ち上げて、濃密な協議を二十五回開催いたしました。

 この上、法案を政府で閣議決定いたしましたが、このときの憲法解釈というのは、我が国を取り巻く安全保障環境が客観的に大きく変化しているという現実を踏まえまして、従来の憲法解釈との論理的整合性と法的安定性に十分留意をし、従来の政府見解における憲法九条の解釈の基本的な論理の枠内で、国民の命と平和な暮らしを守り抜くための合理的な当てはめの帰結を導いたものでございます。

 この昨年の閣議決定というのは、これまでの憲法九条をめぐる議論との整合性を考慮したものでありまして、行政府における憲法の解釈として裁量の範囲内のものと考えており、違憲との御指摘は当たらないと考えているわけでございます。

大串(博)委員 今、御答弁がありました。

 私も、きのう参考人質疑で立たれた先生方の中の言葉を注意深く見てみると、特に気になった、注目したのは長谷部先生の言葉なんです。違憲だとはっきりおっしゃっていますけれども、その中で「私は憲法違反であるというふうに考えております。従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつきませんし、法的な安定性を大きく揺るがす」、こういうふうにおっしゃっています。

 小林参考人も似たようなことをおっしゃっていますし、笹田参考人も「従来の法制局と自民党政権のつくったものがここまでだよなと本当に強く思っておりましたので、」「今の言葉では、定義では踏み越えてしまった」ということをおっしゃっています。

 すなわち、基本的な論理と先ほど大臣はおっしゃいました、基本的なこれまでの憲法解釈の構造に沿っているのでいいんだというふうにおっしゃいましたけれども、基本的なこれまでの憲法解釈の構造とは何でしょうか。

中谷国務大臣 これは、昭和四十七年の政府見解でございます。

 憲法は、憲法九条において、同条にいわゆる戦争放棄、いわゆる戦力の保持を禁止しているが、前文において全世界の国民が平和のうちに生存する権利を有することを確認し、また、憲法十三条において生命、自由、幸福追求に対する国民の権利については国政の上で最大の尊重を必要とする旨を定めていることからも、我が国がみずからの存立を全うし国民が平和のうちに生存することまで放棄をしていないということは明らかであって、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとは到底解されないとした上で、しかしながら、だからといって、平和主義をその基本原則とする憲法が、右に言う自衛のための措置を無制限に認めているとは解されないのであって、それは、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置として初めて容認されるものであるから、その措置は、右の事態を排除するためにとられるべき必要最小限度の範囲にとどまるべきものであるというのが、政府の従来の憲法における基本的な論理でございます。

大串(博)委員 そこでお問い合わせなんですけれども、今、私、お手元に資料を配付させていただきました。ありがとうございました、委員長。

 済みません、間に合わなかったものですから二分冊になって、二分冊の二枚の方の二枚目であります。

 今大臣が言われました国会提出資料、昭和四十七年十月十四日。大臣が今お述べになりました「憲法は、第九条において、同条にいわゆる戦争を放棄し、」から、つまり私が書いた一を全部読み上げられまして、二「しかしながら、だからといつて、平和主義をその基本原則とする憲法が、」もお読みになり、この二の一番最後、「その措置は、右の事態を排除するためとられるべき必要最少限度の範囲にとどまるべきものである。」までお読みになって、これをもって基本的な論理だというふうにおっしゃいました。

 ところが、四十七年の政府見解は三があります。三において、これら一、二の論理を引っ張りながら、「そうだとすれば、わが憲法の下で武力行使を行なうことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであつて、したがつて、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とする」「集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない。」と。こういうふうに三もあります。

 三は、なぜ基本的構造から除かれているんでしょうか。

中谷国務大臣 三の冒頭に「そうだとすれば、」ということが書かれております。つまり、基本的な論理というのは一と二でありまして、三というのは帰結部分で結論でございますが、しかし、昨年の七月の閣議決定の時点におきましては、我が国を取り巻く安全保障環境が客観的に大きく変化をしているという現実を踏まえまして、従来の憲法解釈との論理的な整合性、法的安定性に十分留意をしまして、この四十七年の政府見解における一、二、基本的な論理の枠内で、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために合理的な当てはめの帰結を導いたものでございます。

 そもそも、この四十七年の政府見解のうち「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。」という部分は、昭和三十四年の砂川判決の「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。」との最高裁判所で示された考え方と軌を一にするものでございまして、これまでの憲法解釈の基本的な論理一と二を維持したものでありまして、立憲主義を否定するというものではございません。

大串(博)委員 大臣、端的に答えてください。私の質問は、一、二が基本的構造じゃないなんて言っていないんです。私が聞いたのは、三はなぜ基本的構造と定義しなかったんですか、言わなかったんですか、そこなんです。どうですか。

中谷国務大臣 三の冒頭に「そうだとすれば、」ということでございまして、これは基本的論理に基づく結論の部分でございます。これは昭和四十七年当時の、そうだとすればこのような結論だということでございますが、もうあれから何十年もたちました、国際情勢も変わりました。世界じゅうどこで起こっても我が国の安全に大変な影響が及ぶわけでございますので、基本的な論理の枠内で合理的な当てはめの帰結を導いたということでございます。

大串(博)委員 ここが一番実は大切なところで、長谷部さんも、「従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつきません」、こういうふうに言われているんです。その基本的な論理とは何かというのが今大きく問われているわけです。

 一、二、三がある。一、二が基本的構造だとおっしゃった。なぜ三が基本的構造じゃないのか、これを端的に答えていただきたいんです。どうぞ。

中谷国務大臣 「そうだとすれば、」というのは結論じゃないですか。一、二が論理を述べて、そうだとすれば結論ですということであります。

 基本的論理は一、二なんですよ。一、二を今の時点で当てはめますと、世界じゅうどこで起こっても日本の安全保障にこれは影響しますよ。商社に勤めている人も世界じゅうで仕事をしていますし、ミサイルもできて情勢が変わっているんです、安全保障の環境が変わっているんです。現時点において一、二の基本的論理を導いて、そうだとすれば今の三要件になるということでございます。

大串(博)委員 基本的構造です。論理じゃないですね。間違いない。基本的構造とおっしゃいましたからね。(中谷国務大臣「論理」と呼ぶ)基本的構造、あるいは論理でも結構ですね。論理でも結構なんだけれども、一、二ときて、三は結論だから論理じゃない、こんな日本語がありますか。一、二ときて、三ときて、一つの論理なんじゃないですか。

 なぜ三だけが論理ではない、基本的論理ではないと言えるのか、もう一度お答えください。

中谷国務大臣 先ほど御説明をいたしましたが、そもそも昭和四十七年の政府見解のうち「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。」とする部分は、昭和三十四年の砂川判決の「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。」という、最高裁判所の判決で示された考え方と軌を一にするものでございまして、これは、これまで政府が昭和四十七年の見解で申し上げておりました、武力行使が容認されるのは我が国に対する武力攻撃が発生した場合に考えられる、こう考えてきましたけれども、この状況において、武力行使について、その後の政府説明もここで示されたわけでありますが、現時点の、昨年の七月の閣議決定におきまして、改めてこの一と二を考えてみる、いわゆるこの部分が政府の基本的な論理でありまして、そうだとすれば三になるということでございます。

大串(博)委員 端的に答えてください。

 普通に見れば、一、二、三、こういうふうに、きれいな論理をつくられているんです、国会提出資料の中で。きれいに論理をつくられている。三だけが、なぜ勝手に政府がこれは基本的論理ではないと言っているのか、その論拠を答えていただきたいということなんです。

中谷国務大臣 私は何度も何度も御説明しておりますが、これでわからないというのなら、法制局長官に説明していただきます。

大串(博)委員 私がなぜ防衛大臣に聞いているかというと、まさに総理大臣が防衛出動を命ずる三要件に合致しているかどうか認める、先ほど話がありました、極めていろいろな論理の中から判断する、その場で判断するとおっしゃっているじゃないですか。それをされるのは防衛大臣じゃないですか。だから、防衛大臣がどういう認識であるか、国民全員が知りたいから聞いているんですよ。

 もう一回答えてください。なぜ第三番目が基本的論理じゃないのか答えてください。

浜田委員長 整理の意味で内閣法制局長官に答弁をさせます。よろしくお願いします。

横畠政府特別補佐人 お答えいたします。

 昭和四十七年の政府見解における御指摘の三の部分が基本的論理ではなく結論の部分であると整理しております根拠でございますけれども、これは、三の部分の冒頭にありますとおり、「そうだとすれば、」ということで結論として述べているものでございます。

 基本的論理を前提といたしまして、この結論を導く前提といたしまして、当時におきましては、この基本的論理に該当する場合として、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られる、そういう認識を前提にした結論であるというふうに考えております。

大串(博)委員 大臣の答弁も、法制局の今の長官の答弁も、私は同じだと思いました。三番目は結論だというふうにおっしゃるんですね。

 では、結論がなぜ基本的論理の中から省かれるのか、それをお答えください。

中谷国務大臣 基本的な論理による結論だからでございます。

大串(博)委員 基本的論理による結論であれば、基本的論理とともに維持するのが普通だと思います。なぜ、基本的論理一、二までが自分たちが従わなければならない規範であって、三の結論のところは私たちは今回違う考えを持っていいというふうになる、すなわち基本的論理から省いたのか、除いたのか。そのことをもう一回お答えください。

中谷国務大臣 現時点の我が国をめぐる安全保障環境を考えますと、やはりかなり状況が違ってまいります。したがいまして、この基本的論理で現時点で考えますと、そうだとすれば今の三要件が編み出されるわけでありまして、一と二の基本的論理はしっかり維持されています、全く同じです。そこで考えると、そうだとすれば、やはり我が国の安全を確保するためには、こういう条件つきの集団的自衛権による行使、こういうことも必要であるということでございます。

大串(博)委員 一、二の論理だけ整合性をとっていれば合憲であるという判断根拠はどこにありますか。

中谷国務大臣 この一、二、三をお読みいただくと、私も読んでおりますが、明らかにこれは、「そうだとすれば、」ということで結論部分なんですね。一、二を考えて、そうだとすれば三であるという結論を書いておられます。

 したがいまして、一と二の論理を維持したまま、現時点で考えますと、この結論を当てはめをいたしますと、自衛の措置としての武力行使の新しい三要件が言える、いわゆる結論でございます。

大串(博)委員 一、二の理屈だけ維持すれば、その後の世の中の変化があれば三の結論部分は変わってもいい、そういうことですか。

中谷国務大臣 四十七年に示したこの基本的論理、これは、従来の憲法の裁判でもございましたが、それと軌を一にするということで、当時の四十七年に政府が出しました基本的論理でございます。

 時代は変わります。目的はやはり、国家の存立と国民の命、権利、これを国家として守っていかなければならない。こういった憲法の基本的論理の中で一体何ができるのかということを我々は真剣に考えました。その結論として「そうだとすれば、」ということで、現在武力行使が許されるのは、新しい三要件に限って許されるという結論を導き出したわけでございます。

大串(博)委員 考えた経緯は私はもう知っているんです。そういうことを聞いているんじゃなくて、一、二だけ同じ論理を今回も用いていれば、三については時代が変わったので当てはめを変えました、一、二の論理だけフォローしていれば、同じものを採用していれば合憲ですと言える理由はどこにありますか。

中谷国務大臣 まさに一と二の部分に、政府といたしましての考え方、見解、いわゆる基本的な論理が記述されているからでございます。一と二をもって三に当てはめると、自衛の措置としての武力行使の新三要件が出てくるということでございます。

大串(博)委員 そこはきちっとお答えいただきたいんです。

 三は結論部分なので、通常は大変大事な部分だと考えるはずなんですね。一、二の理屈だけ今回同じものを使っているから、三は結論部分なので、今回、時代が変わったので全く違う結論に、つまり逆の結論になりました、しかし、一、二の論理だけ踏襲しているので合憲ですというその論拠、すなわち、一、二だけ踏襲していれば、三は時代が変わったので踏襲していなくてもいいという根拠はどこにあるんですか。

 これはまさに憲法との関係を問うているんです。憲法との関係で、なぜ一、二の論理だけ踏襲していればそれで合憲なのか、そこだけ端的にお答えいただければいいです。

中谷国務大臣 簡単に答えますと、一、二に基本的な論理が考えられて、三に結論部分が当てはめられるということでございます。

 この閣議決定は、憲法第九条のもとでも、外国の武力攻撃によって国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態に対処する場合には、例外的に自衛のための武力行使が許されるという昭和四十七年の政府見解の基本的論理を維持し、この考え方を前提として、これに当てはまる極限的な場合として、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られるとしてきたこれまでの認識を改めまして、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合にもこれに当てはまるとしたものでありまして、憲法解釈としての論理的な整合性、法的安定性は私は維持されていると考えております。

大串(博)委員 最後の、私は維持していると考えているは何度も聞いているんです。だから、その理由を聞いているんです。

 つまり、大臣の理由は、一、二の基本的論理だけを踏襲しているからいいんですというふうに言われている。私は、三も踏襲しないと、憲法の論理は踏襲し切ったことにならないと思っています。なぜ三のところを踏襲しなくても憲法違反とならないのか、その論理を教えてくださいというふうに聞いているんです。どうぞ。

中谷国務大臣 それは、結論の部分が書かれているからでございます。

大串(博)委員 結論であれば、なぜ踏襲しなくていいんですか。

中谷国務大臣 これは昭和四十七年の政府の見解でありまして、憲法で言う基本的な論理が一と二でありまして、そうだとすれば三であるということでございます。

 私の答弁で不満なら、法制局長官にお答えいただきたいと思います。

大串(博)委員 では、法制局長官に聞いてみましょう。

 結論であれば、なぜ踏襲しなくても違憲にならないんですか。

横畠政府特別補佐人 基本的な論理と言っている部分は、まさに規範の部分でございます。規範をどのように理解するかということでございます。

 そして、結論と申し上げている、しかしながらの段落でございますけれども、これは、その規範に想定される事実を当てはめた結果どうなるか、許されるか許されないかという、まさに規範を当てはめた結果の結論について述べているところでございます。

 どういう整理をしているかといいますと、御指摘の一、二の部分は規範についての理解、基本的な論理でございます。その意味で基本的な論理と申しております。今回、規範としての理解の部分は一切変えておりません。

 何が変わったのかということでございますけれども、昭和四十七年見解におきまして、その一、二の基本論理を前提といたしまして、その当てはめの結果としての三の結論を導いている。その規範と結論の間にある事実認識というのがございますけれども、そこのところが、これまでは、この一、二の要件に当てはまるまさに極限的な場合、例外としての場合は、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られると解していたわけでございます。それが事実認識でございます。

 今般、そこの事実認識を改めまして、必ずしも我が国に対する直接の武力攻撃が発生した場合に限られずに、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した場合で、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合もこの一、二に当たり得る、そういうことで結論の部分が一部変わった、そういうことでございます。

大串(博)委員 今法制局長官が答えたのも、結論が変わったということだけなんです。

 もう一度大臣に聞きます。

 一、二のところ、基本構造は同じく踏襲している。三に関しては、今法制局長官が述べたのは、時代が変わって事実認識が変わりました、よって結論を変えることにしました、こういうことです。

 私は、恐らく多くの国民の皆さんも、そしてきのうの憲法学者の皆さんも、結論部分も含めて極めて憲法の基本的論理としては大切であるというふうに考えていらっしゃるから、三だけが事実関係が変わったから変わりましたというのは腑に落ちないなと思っていらっしゃると思います。

 そこでお尋ねします。

 一、二の基本的論理は踏襲しています、三に関しては事実認識が変わりました、よって現実が変わりましたというのが今の法制局長官のお答えでした。三に関する事実認識が変わった、よって三の結論だけ変えさせていただいた。一、二の基本的論理は踏襲している、三の結果だけ変えた。

 三の結果だけ変える、これはなぜ合憲だと言えるんですか。

中谷国務大臣 私もこの文章を何度も何度も読み返しいたしました。そして、やはり一と二の部分で基本的な論理を述べておりまして、これを要約しますと、憲法は、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとるということを禁じているとは到底解されませんよねと。それで、外国の武力攻撃によって国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態に対処するためのやむを得ない措置として必要最小限の武力の行使は容認される。

 昭和四十七年はこれは個別的自衛権であるという結論でありましたが、我が国を取り巻く安全保障環境が変化をいたしております。そして、この一、二の基本的な論理を考えますと、三の冒頭に書かれておりますように「そうだとすれば、」ということで自衛の措置としての武力行使の新三要件が導き出されて、これを当てはめたということでございます。

大串(博)委員 明確な答えが私はやはりないと思うんです。

 一、二の論理は踏襲しました、三に対しては、事実関係が変わって、今や他国が攻撃されても日本がとても危なくなることもあり得ます、よって三に関しては結論を変えて、他国が攻撃された場合も日本が武力攻撃できるようにします、こういうふうに、結論だけが都合よく変わっているように見えるのが今の現状です。

 先ほど、大臣、実は非常に重要なことをこの件に関しておっしゃっていたんです。私はこれが結論かなと思っていたんです。三のところを事実関係が変わったということで結論を変えました、これは政府の裁量の範囲内だというふうに先ほどおっしゃいました。

 裁量の範囲内であるという結論に至った理由はどこにありますか。

中谷国務大臣 それは、従来述べている憲法で言う基本的な論理で、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとは到底解されず、外国の武力攻撃によって国民の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態に対処するためのやむを得ない措置として必要最小限の武力行使は容認される、これを現在考えてみますと、そうだとすればということで結論が導き出されるということでございます。

大串(博)委員 いや、一、二のことはわかっているんです。裁量の範囲内として三の当てはめが変えられる、その裁量の範囲内と考えられる根拠はどこにあるんですか、そういうことなんです。お願いします。

中谷国務大臣 憲法の論理をもちまして、政府がこれを判断するということでございます。

 やはりこういった解釈に基づく考え方は非常に大事なものだと考えておりまして、従来の憲法の識者に官邸を中心にお話を聞き、そして与党の中で一年かけて真剣に議論をいたしまして、やはりこういった結論を導き出す上においては憲法九条をめぐる議論との整合性を考慮いたしまして、そして行政府による憲法解釈として裁量の範囲内のものと考えておりまして、これが憲法違反だということは考えていないということでございます。

大串(博)委員 だから、今繰り返しおっしゃったんですね。最後におっしゃった、ぽろっとおっしゃったんですね。さっきも答弁の中でするっとおっしゃったので、私はあれっと思ったんです。ほぼ、珍しい、余りなかった答弁だなと思ったんです。裁量の範囲だと考えておりましてと。裁量の範囲と考えている理由を教えてくださいということなんです。端的にお願いします。

中谷国務大臣 基本的論理を維持いたしております。そして、憲法九条をめぐる議論との整合性、これも考慮いたしました。その結果、憲法の解釈としての裁量の範囲の中であるということでございます。

大串(博)委員 私は、実は、この憲法論はここが一番みそだと思っています。

 一、二、三とあります。ここが非常に大事な四十七年見解。これがベースになっている。

 一、二に関しては、基本的論理、規範という言葉も使われます、これを踏襲した。踏襲した、よって合憲なんだとおっしゃいます。しかし、結論部分たる三が時代の変化とともに変わったから、この結論だけ変わったということにさせていただきます、これが今回の結論。

 よって、一、二は踏襲しているから、三のことは無視したかのごとく合憲でよかろうというのが政府の考えだと私は思います。これが、先ほど申しましたように、長谷部先生もおっしゃったように、従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつきませんということにつながっていると思うんですね。

 委員長、先ほど法制局長官の答弁も許しましたけれども、法制局長官の最後の答弁の結論も、現実をそういうふうに当てはめましたというふうに言っただけのことなんです。私が質問をしました、第三番目はなぜ事実認識の変更であって基本的論理ではないのかという答えになっていません。なぜ合憲と言えるのかというお答えにはなっていません。

 ここで、委員会からの政府への統一見解要求として、なぜ第三番目のこの要件が認められない場合においても合憲だと認められるのかということに関しては、委員会から政府に統一見解要求をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

浜田委員長 理事会で協議します。

大串(博)委員 午後、質疑させていただきます。

浜田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十時三十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。大串博志君。

大串(博)委員 休憩前に引き続き質疑を行わせていただきます。

 周辺事態、重要影響事態、そして存立危機事態、重要な概念に関して確認をさせていただきたいと思います。

 資料にもお配りさせていただいておりますけれども、厚い配り紙の一番前、一枚目ですけれども、先般来議論になりました岡田委員の平成十年二月二十六日の質問です。

 当時のガイドラインの議論でしたけれども、周辺事態というものに関して、軍事的な波及というのが日本にはない、こういう場合にもガイドラインの適用になる、そういうふうに考えていいわけですねという問いに対して、当時の局長さんが、そういう事態は周辺事態には該当しないということでございますと答弁されました。これに関して、二十八日を含め、岸田外務大臣の答弁等これあり、政府統一見解を求めたわけでございます。

 政府統一見解、いただきました。いただいたものが、ここにるるありますように、三として、一番下です。周辺事態安全確保法制定に至る過程では、周辺事態の概念についてさまざまな議論がなされたと、一番上の岡田委員との議論も含めてここに書かれています。いろいろな議論がなされたが、御指摘の答弁も含め、それらは最終的にはこの同政府統一見解、この同政府統一見解というのは平成十一年に出されたいわゆる野呂田見解ですね、野呂田六類型に吸収されているということでございました。

 いろいろ国会の中でるる答弁があった上で、政府統一見解として、結局は、いろいろな議論があったけれども平成十一年の政府統一見解、野呂田六類型に吸収されたんだということでございました。いろいろな答弁はあったけれども吸収されたということであれば、一番上にあります平成十年二月二十六日の高野政府委員の岡田委員に対する、そういう事態すなわち軍事的な波及が日本にはない、こういう場合は周辺事態に該当しないということでございますという高野政府委員答弁はもう既にないものだということだというふうに思います。

 であるとすると、これを受け入れるとすると、岸田外務大臣の二十七年五月二十八日、真ん中でございます、後藤委員に対する答弁。今も変わらないかというのは、重要影響事態確保法が成立した後と今の答弁の時点が、周辺事態が今あるという時点ですね、変わらないという御質問でしょうか。現時点です、成立する前です、現行と呼ぶ。現時点では、まだ、今、現状は法律は変わっておりませんので、周辺事態法ですね、現法律のもとでのこの答弁すなわち高野局長答弁は維持されていると考えています。こういうふうにはっきり岸田外務大臣は述べられていますけれども、この答弁を撤回いただけますか。

岸田国務大臣 御質問の五月二十八日の私の答弁と高野政府委員の答弁の関係ですが、五月二十八日の答弁、まず後藤委員の方から、冒頭、現行法は周辺事態法である、この確認があった上で、この平成十年の高野政府委員の答弁について御質問がありました。

 事前通告がなく、突然の御質問だったので、よく確認してからお答えするべきだったのかもしれませんが、やりとりを続ける中にあって、御指摘の資料の真ん中にあります答弁をさせていただきました。

 そして、その答弁の直後ですが、後藤委員の方から、明確ではない、いま一度確認をしたいという、確認のための質問がありました。そして、その質問に対して、私の方から、現状の法律を前提として答弁した答弁、これは現状でも維持している、これは当然のことであります、このように一般論を申し上げたわけであります。

 そして、やりとりの結論は今申し上げた部分であります。現状の法律を前提とした答弁、これは現状も維持されている、ここが結論であります。(大串(博)委員「これを取り消すかどうかです」と呼ぶ)いや、ちょっと待ってください。ぜひ説明をさせてください。

 これが結論でありまして、そして、先ほど申し上げました突然の質問でしたので、質疑が終わった後、確認をしましたら、御指摘の平成十年の高野政府委員答弁、これは周辺事態法、現行法を国会に提出する前のガイドラインにおける答弁であった、これを確認いたしました。

 よって、五月二十八日の私の答弁における、現状の法律を前提として答弁した答弁、これにはこの高野政府委員の答弁は該当しないと考えております。

 五月二十八日の私の答弁と高野政府委員の答弁との関係はこのように整理させていただいております。

大串(博)委員 この答弁の一つ後ですね、現状の法律を前提として答弁した答弁、これは現状も維持されている、これは当然のことだと考えます、これも私はグレーだと思っているんですよ。

 だって、この答弁の後に確認するかのごとく、現状の法律を前提として答弁した答弁、これは現状も維持されている、これはまさに岡田委員に対する高野政府委員の答弁じゃないですか。岸田外務大臣の真ん中の答弁もあわせて、現法律のもとでこの答弁は維持されていると考えています、すなわち軍事的な波及がない、日本にはない、これは周辺事態に該当しない、維持されていますとおっしゃっているんですよ。政府の統一見解、一番下にある十一年見解に全て吸収されているというのであれば、この真ん中の答弁は撤回してくださいよ。

岸田国務大臣 先ほども申し上げました。現状、効力を発しているのは周辺事態法であります。その上での答弁であります。

 そして、私の方として、やりとりの結論として、これはどう言っても、もう一回確認させてくださいという確認を求める答弁があり、その上で、この結論として、私は先ほど申し上げました答弁をさせていただきました。こうしたやりとり、議論を深める上で大変重要だと思います。何よりもその結論、これが大事だと思いますし、その結論を踏まえて申し上げるならば、この平成十年の高野政府委員答弁は、私の申し上げた、現状の法律を前提として答弁した答弁、これには該当しないと申し上げております。

大串(博)委員 私が質問、お願いしているのは、その一つ前の、現法律のもとでのこの答弁は維持されておると考えております、これは取り消してください、少なくともと申し上げているんです。

岸田国務大臣 これは、国会の……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

岸田国務大臣 国会におきますこうした議論、やりとり、大変重要なことであります。議論を積み重ねることによって、お互いの言わんとすることを確認し、そして明確化する。こうした明確化をした結果、先ほど申し上げました結論を申し上げたわけであります。

 この結論が最も重要な部分であり、そしてこれを踏まえて申し上げるならば、高野政府委員の答弁は私の申し上げた答弁には該当しないと申し上げているわけであります。

大串(博)委員 質問に的確に答えていただきたいと思います。

 現状の法律を前提として答弁した答弁、これは現状も維持されている、これは当然のことだと考えます、ここを私は問うているんじゃないんです。いろいろな議論の中で議論は行われていく、それはわかります。わかりますから、あえて聞いているんです。

 これは、でも、歴史的な議論だと私は思っているんですよ。一つ一つの議論の積み重ねで法律の解釈が後にやはりつながっていく、だからこそ、一つ一つを、訂正するところは訂正し、確認するところは確認していかなきゃいけないと思っているんです。

 だから、明確な答弁をいただきたいと思っているのは、その一つ前のこの真ん中の答弁、すなわち、高野答弁を引っ張って、現法律のもとでこの答弁は維持されていると思いますというのは答弁としては不正確だった、これはもうこの答弁としては生きていないということを確認させていただきたいということを言っているだけなんです。

 確認ください。

岸田国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、やりとり、質疑をやらせていただきました。このやりとりの中で、こうした一つ一つの答弁が積み重なった上で結論に達しているわけであります。

 こうした議論があった上で先ほど申し上げました結論を申し上げているわけでありますから、その一部分だけを取り上げて評価するというのは、この議論の趣旨、この議論の意味から考えましてもこれは適当ではないと考えております。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 大串博志君、もう一度質問をしてください。

大串(博)委員 大臣、私はその次の質問をお願いしようと思って、その前提なんです。だからきっちり答えていただきたいんです。

 この三番、十一年政府統一見解に全てが吸収されているのであれば、その前の十年二月二十六日、この高野答弁を、現法律のもとでこの答弁は維持されていると考えています、この岸田外務大臣の答弁は撤回されてください。お願いします。

岸田国務大臣 その答弁の直後、後藤委員の方から、明確な答弁をいただけますか、その確認をいただいています……(大串(博)委員「この答弁をしているんですよ、直後のことなんか聞いていないんですよ」と呼ぶ)ちょっと説明させてください。説明させてください。(大串(博)委員「直後のことなんか聞いていないんですよ」と呼ぶ)いやいや、これは一連の議論でありますので、この議論の真意をぜひ受けとめていただきたいと存じます。

 ですから、その発言がありました。その後に後藤委員の方から、この答弁について明確化するようにと。答弁がありました。その上で、先ほど申し上げましたように、私の方から、現状の法律において、法律を前提として答弁した答弁、これは現状も維持されている、これは当然のことだと考えますと。そして、その私の結論部分について後藤委員の方から、これは大変重要な答弁でありますと御確認をいただいております、御了解をいただいています。このやりとりの結論はここであるということ、これをぜひ御理解いただきたいと存じます。

 そして、この質問が終わった後に確認をしましたら、この答弁自体が現行法を国会に提出する前のガイドラインをめぐる議論であったということが確認できましたので、私の申し上げている答弁には該当しない、このように申し上げております。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 それでは、岸田外務大臣から答弁を求めます。

岸田国務大臣 御指摘の答弁の後に、後藤委員の方から、もう一度明確に答弁をいただけますか、こうした答弁の要求がありました。それに対しまして、先ほど申し上げましたような答弁、現状の法律において、法律を前提として答弁した答弁、これは現状も維持されている、これも当然のことでありますという答弁、この答弁を改めて言い直した次第であります。これについて後藤委員の方から、重要な答弁でありますという答弁をいただいた、これがやりとりでありました。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 外務大臣、再度答弁願います。

岸田国務大臣 五月二十八日、やりとりの中で御指摘の答弁をさせていただきました。その後に後藤委員の方から、もう一度明確に答弁いただけますか、こうした質問要求がありました。それを受けて、その前に発言したこの発言を修正して、改めて、先ほど申し上げました発言を確認のため申し上げた次第であります。

大串(博)委員 それでは、大臣は、後藤委員のもう一回明確に答弁いただけますかという問いに対する答弁において、真ん中に述べられた、現法律のもとでのこの答弁は維持されていると考えますという答弁を修正された、これでよろしいですね。

岸田国務大臣 ただいま申し上げたとおりであります。

大串(博)委員 確認。修正されたでよろしいですね。

岸田国務大臣 後藤委員の方から発言を明確にするようにということで、この御指摘の発言を修正して、先ほど申し上げました発言をした次第であります。

大串(博)委員 なぜこれにこんなにこだわったかというと、過去のいろいろな答弁を私たちは見ます。やはりこれまでも、周辺事態法も武力攻撃事態法も、国会答弁を積み重ねる中でいろいろな規範ができ上がってきていると思うんです。その積み重ねを私たちは今この委員会の中でやろうと思っています。ですので、一つ一つの答弁を確認し、修正するものがあったら修正した上で次に進むという態度を私は持たなきゃいかぬと思うんです。それをないがしろにするというのが非常に私はおかしいと思うがゆえに、きちっと聞かせていただいた次第であります。

 なぜこのようなことを申し上げたかというと、周辺事態あるいは重要事態という概念、これから私たちはもう少し質問時間がある中でやらせていただきたいと思いますけれども、極めてわかりにくい、歯どめがどうなっているのかわからない、どのような境界があるのかわからない、こういう問題があります。これも、法律でわかっていない以上、答弁の中で確認していかなきゃならぬと思います。

 例えば、中谷大臣の答弁の中で、これは二十八日でしたけれども、いかなる事態が重要事態に該当するかということですけれども、事態の個々の具体的な状況に即して総合的に判断するので一概には申し上げることは困難でございますけれども、その判断要素については、武力紛争が発生し差し迫っている等の場合において、事態の個別具体的な状況に応じて判断していく等々の話があります。

 その一番後ろのところで、平成十一年四月二十六日の政府統一見解で示された六つの具体例、これは野呂田六類型のことですね、これは事態が生起する原因に着目して説明したものとして、重要影響事態においても当てはまるものと思います、こういうふうにみずから御答弁されています。みずから御答弁されているものだから、私はあれっと思ったんです。

 というのは、野呂田六類型、私もいろいろ勉強しましたけれども、これも周辺事態法の際には大変私たち参考にさせていただいたものであります。しかし、これが重要影響事態法のときにどのような尺度になるんだろうか。

 例えば、野呂田六類型の一つは、我が国周辺の地域において武力紛争の発生が差し迫っている場合であって、我が国の平和と安全に重要な影響を与えている事態、こうあります。これが野呂田六類型の一番最初にあるものですね。ただ、ここの中から重要影響事態にどうこれを用いてくるのか。

 我が国周辺の地域において、これはないですね、ない。我が国周辺の地域においてこれがないということになると、武力紛争の発生が差し迫っている場合であって、我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合、これは一体何を意味するのかということなんです。だから、この辺のことがよくわからないがゆえに、過去の答弁をきちんと聞きながら確認させていただきたいということでありました。

 この辺の議論は、これからもっとさせていただきたいと思います。答弁の中の一つ一つをきちんと、答弁されたことに関してさらに質問させていただいて、それを確認させていただくというのは私は国会の必要な作業だと思います。

 ですので、事前通告云々の話もありますけれども、きちんと項目を挙げてお伝えしています。そして、質問の一番最初に総括的な問いを申し上げて、それに対する答弁をいただいています。その答弁に対して、その答弁されたことはどういうことですかという質問をさせていただいております。

 すなわち、答弁された内容がどういう内容であるか本当に理解されているのであれば、きちんとその後の答弁もできるはずです。そういう答弁、質問を組み立てさせていただいております。ぜひ、これからもそういう質問をさせていただきますので、よろしくお願いします。

 終わります。

浜田委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 私も、午前中の憲法の話を少しさせていただきたいと思うんです。

 私も実は、きのうの憲法審査会の三人の憲法学者の方の違憲宣告には衝撃を受けました。午前中に出ていない大事な論点を一つ、法制局長官にお伺いしたいと思っています。

 きのう、長谷部参考人がこう言っているんですね。「集団的自衛権の行使が許されるというその点について、私は憲法違反であるというふうに考えております。従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつきませんし、」これは午前中、大串委員がやったことですけれども、次が問題なんです。「法的な安定性を大きく揺るがすものであるというふうに考えております。」と。私も、この法的安定性は非常に大事な論点だというふうに思います。

 この四十年にわたって、一九七二年の政府見解をずっと維持してきた。その結論は、集団的自衛権は憲法上認められないということでずっとやってきたわけです。それによって自衛隊は組織されてきた、運営もされてきた。御家族の皆さんも、そのことを信じて自衛官の皆さんを守り立ててきた。装備も購入してきた。つまり、国家生活全体を政府見解に基づいて律してきたわけです。

 それを、基本的論理は維持をしているというふうに先ほど来説明がありましたが、最終的な結論において集団的自衛権を認めるということに今回なったわけでありまして、そこにおける法的安定性についての担保はどのようにとられるというふうにお考えなのでしょうか。

横畠政府特別補佐人 憲法審査会における御議論につきましてコメントすることはいたしませんが、一般に憲法第九条に関する憲法学者の方々の御意見は、伝統的に、自衛隊は憲法第九条二項によってその保持が禁じられている戦力に当たり、違憲であるとするものが多いと承知しております。

 昨年七月の閣議決定は、憲法第九条のもとでも例外的に自衛のための武力の行使が許される場合があるという昭和四十七年の政府見解の基本論理を基礎としたものでありますが、その政府見解は、まさに政府の見解であり、また国会においても御議論をいただいてきたものでございます。それ自体、残念ながら憲法学者の方々の御賛同が得られているというわけでは必ずしもないと認識しております。

 今般、このような昭和四十七年の政府見解を維持し、この考え方を前提として、これに当てはまる極限的な場合として、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られるとしてきたこれまでの認識を改め、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合もこれに当てはまるとしたものであり、国際法上集団的自衛権の行使が認められる場合の全てについてその行使を認めるものではなく、新三要件のもと、あくまでも我が国の存立を全うし国民を守るため、すなわち我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として、一部限定された場合において、他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とする武力の行使を認めるにとどまるものでありまして、これまでの政府の憲法解釈との論理的な整合性は保たれており、また法的安定性は同じようにしっかりと保たれているものと考えております。

長島(昭)委員 憲法学者の大半が自衛隊違憲論であるということは私も存じ上げております。しかし、きのう、三人の憲法学者が意見をお述べになったうちの小林節という教授は私の指導教授でもありまして、私が学生時代から小林教授は自衛隊合憲論をずっと唱えていた、そういう教授でもあるわけですから。

 そういう学者も含めて、この憲法の解釈、最高法規の解釈です。そして、行政の首長が、イニシアチブを発揮してその最高法規の解釈を変更して、そして国権の最高機関である国会に対する説明を、結論の部分を翻したわけですから、これは今の説明だけで法的安定性が担保されたとはなかなか言いがたいと私は思うんですね。そのことを恐らく長谷部教授はきのうおっしゃったんだろう、こういうふうに思うんです。

 歴代政権は、ずっと踏襲してきたわけです。社会党の委員長が総理をやっていたときも、民主党の政権のときも、そして自民党の政権のときもそういうことで説明をつけて、全ての国家生活、つまりは、自衛隊を中心とする行政の部分についてはこれを維持してきたわけですね。その結論の部分を変えているわけですから、これは相当大きな、私は根本的な変更だというふうに思うんですよ。そこを、今のようにさらっと、法的安定性も担保されています、こういうふうに言われても、なかなか国民の腹にはすとんと落ちるものではないと私は思っています。

 もうこれ以上はやりません。しっかりここはこれからも議論を深めていくべきポイントだというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 それでは、もう相当時間が食い込んでしまいましたので、本題に行きたいと思います。

 皆さん、お手元の二ページ目、読売新聞の二十九日金曜日の一面を持ってまいりました。「南シナ海で掃海想定せず 首相答弁 例外ホルムズ海峡のみ」。

 この見出しが一面で躍っておりますが、私もずっとこの質疑を聞いておりまして、あるいは報道ぶりを見ておりまして、あたかも存立危機事態はホルムズに限定されているかのような、そういう印象が実は広がりつつあるんですね。私、これは大きな誤解だと思っているんです。

 法制担当大臣の中谷防衛大臣、ぜひ明確にお答えいただきたいと思いますが、新三要件に合致すれば、ホルムズ海峡であろうがどこであろうが、集団的自衛権の行使を含む武力行使の可能性を持った存立危機事態を認定することは可能ですね。いかがでしょうか。

中谷国務大臣 どのような場合にどのような武力行使が想定されるかは、実際に発生した事態の個別具体的な状況に照らして総合的に判断する必要があるためにあらかじめ申し上げることは困難でございますが、外国領域における武力行使について、ホルムズ海峡における機雷掃海のほかに、現時点で具体的な活動を念頭に置いているわけではございません。

長島(昭)委員 そういう話ではないんですよ。

 私はきょう、南シナ海の問題を正面から質疑しようと思って準備をしてまいりました。ホルムズの機雷掃海というのは、私たちから言わせると、ほとんど蓋然性のない事例なんですね。むしろ、後でずっとるる議論させていただきたいと思いますが、今の南シナ海の状況の方がよほど不安定なんですよ。南シナ海の方が存立危機事態あるいは重要影響事態が起こりやすい、地球上のどこよりも起こりやすい、そういう環境にあるんですよ。起こるかどうかわかりません。

 そういう中で、今、領域とおっしゃいましたが、領域とかは関係ないんです、公海上も含めて。ホルムズ海峡以外のところでも、数日前の総理の答弁では中東、インド洋という話が出ました。南シナ海も含めて、新三要件に当てはまるような、そういう事案が発生した場合には、存立危機事態を認定する可能性は排除しませんね。

中谷国務大臣 長島委員とは二十年来安全保障について議論をいたしておりまして、特に海賊の対策とか邦人救出とか、いろいろと現実的な政策を導くために御提言をいただいております。

 今回の議論につきましては、やはりシーレーンという我が国にとって非常に重要な場合の安全保障を議論しなければならないわけでありまして、この南シナ海のケースにつきましては、我が国の輸入の原油の約八割、天然ガスの三割が南シナ海のシーレーンに依存をいたしております。

 これは、依存度につきましてはホルムズ海峡と同様ですが、どこが違うのかというと、ホルムズ海峡というのは非常に狭隘な海峡、狭まっておりまして、本当に大事な海峡でございます。ここが寸断されますと、シーレーンがとまってしまう。

 片や、南シナ海におきましては、迂回路のないホルムズ海峡とは異なって、さまざまな迂回路があり得るというわけでありまして、ホルムズ海峡のような狭い海峡とは異なって、機雷で封鎖することは容易でないと考えられます。

 したがいまして、御指摘のような事態は容易に想定できるものではないと考えますが、いずれにせよ、いかなる事態で存立危機事態に該当するかにつきましては、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即しまして、政府が全ての情報を総合的に、客観的に、合理的に判断することになるため、一概にお答えすることは困難でございます。

 法理的には、この三要件に合致した場合は法の理論としては可能であるということでございます。

長島(昭)委員 最後の結論に来るまで相当時間がかかったんですけれども、法理的には、新三要件に当てはまった場合には事態認定をすることも辞さない、こういうことであります。それは、地域を限定するものではない。海峡が狭隘であるとか、そういうことではないですね。場合によっては、そういう事態が発生すれば存立危機事態あるいは重要影響事態を認定することも排除しない、こういう御答弁だというふうに理解をしております。間違っていたら、また後で訂正してください。

 それで、そういう判断をする枠組みが、私、実はいま一つはっきりしないんです。今、存立危機事態と重要影響事態を並べて私もお話をしたし、中谷大臣も同じように並列で答弁されましたけれども、この法案を見ても、事態認定をするときの判断プロセスについては何も書いていないんです。例えば、重要影響事態だったら、第二条、政府は、重要影響事態に際して、適切かつ迅速に、後方支援云々、こうなっているわけです。

 ですから、私が聞きたいのは、新三要件は何度もこの場で答弁をされていますので、ああ、あの三要件にはまる事案が起こったら認定されるんだなとわかるのでありますが、重要影響事態の場合、累次にわたる答弁を聞くと、当事者の意思や能力、事態の発生場所云々かんぬんで、両事態ともに、ほとんど要素は同じなんです、考慮要因は。それをどういうプロセスで判断するかということを少し詳しくお話を伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 重要影響事態に該当すると評価をされたり、特定の対応措置を実施する必要があると認める場合には、対応措置を実施すること及び対応措置に関する基本計画を閣議決定で決めた上で、閣議決定した基本計画を遅滞なく国会に報告し、自衛隊の部隊等が実施する後方支援活動、捜索救助活動及び船舶検査について、これらの対応を実施することについて、原則として事前に国会の承認を得るということでございます。

長島(昭)委員 いや、大臣、よく聞いてください。

 事態認定をするその判断のプロセスを教えてください。後で何をやるかという話はもういいんですよ。それはわかっています、ここに書いてあるんだから。

 そうじゃなくて、どういう判断をして、どんな事態、例えば、では言いましょう。周辺事態は、野呂田六類型というのを出しました。あの類型に当てはまった場合には事態認定がなされるんだなという、ある意味では予見可能性があるわけですよ。しかし、今回の場合は、重要影響事態はそのまま六類型を引き継ぐんですか。それがまず一点。それを引き継ぐとしたら、例えば具体的にどんな事象が起こったときに事態認定の判断を下すんでしょうか。それをお答えください。

中谷国務大臣 まず、重要影響事態というのは、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態であるということでございまして、事態の規模、態様、推移等を総合的に勘案して、我が国として主体的に判断するものでございます。

 いかなる事態が重要影響事態に該当するかということにつきましては、政府が全ての情報を総合して客観的かつ合理的に判断することとなるために一概に申し上げることは困難でございますが、具体的に申し上げれば、実際に武力紛争が発生し、または差し迫っている場合において、事態の個別具体的な状況に即して、主に当事者の意思、能力、事態の発生場所、事態の規模、態様、推移等を初め、この事態に対応する状況を総合的に判断して、特に、我が国に戦禍が及ぶ可能性、国民に及ぶ被害等の影響の重要性等から、客観的かつ合理的に判断するということでございます。

長島(昭)委員 いや、全然質問に答えていないですよ。

 では、外務大臣、答えてください。

 どんな事態が生じたら事態認定するんですか、重要影響事態。これは外務大臣も無縁じゃありませんよ。これは野呂田六類型というものも過去にあるわけです。そして、これからどういう事態が起こるかわからない。どんな事態が起こったら、どんな事案が発生したら、重要影響事態の認定ができるんでしょうか。

岸田国務大臣 まず、御指摘がありました六類型、この六つの具体例につきましては、重要影響事態においても当てはまると考えます。

 その上で、周辺事態では想定されなかったものですが、重要影響事態で新たに想定される、こういった事項をあえて申し上げるならば、当該六つの具体例のような場合において、日米安全保障条約の目的達成に寄与する活動を行うアメリカ合衆国の軍隊のみならず、その他の国際連合憲章の目的の達成に寄与する活動を行う、こういった外国軍隊に対する支援措置が可能になると考えております。

 そうしたことを想定しながら、具体的な事例に即して総合的に判断する、これを先ほど来安保法制担当大臣からも申し上げているところであります。

長島(昭)委員 防衛大臣、どうですか。判断の基準、どんな事象が起こったら重要影響事態を認定することができるか、そこを聞かせください。そうしないと国民はわからないですよ、全部ブラックボックスなんだから。

中谷国務大臣 あえて申し上げれば、例えば、仮に中東、インド洋などの地域で深刻な軍事的緊張状態、また武力衝突が発生した場合であって、我が国に物資を運ぶ日本の船舶に深刻な被害が及ぶ可能性があり、かつ米軍等がこうした事態に対応するために活動している状況が生じたときは、その他の状況も勘案した上で、事態が重要影響事態に該当することはあり得るものと考えます。

 そしてもう一つ、どのように決めるのかということにつきましては、これは基本計画をつくらなければなりません。それは政府で作成をいたしますので、NSC、ここなどで関係閣僚が集まりまして、こういった具体的にどうするのかということを、情報等を用いまして総合的に判断するということでございます。

長島(昭)委員 外務大臣、しっかりフォローしておいてください。今おっしゃっていただきました深刻な軍事的緊張状態が起こるとか、あるいは武力衝突が発生するとか、これは、また中東、インド洋とおっしゃいましたけれども、それに限りませんよね。これからお話をしますけれども、日本の周りで今一番そういう可能性のある地域というのは南シナ海なんですよ。ですから、そのことも念頭に置いて、政府は緊張感を持ってやっていただきたい、こう思います。

 どこまで何ができるかということがはっきりしないのが、この法案の泣きどころなんです。

 そこで、ちょっと私なりに法制局長官に伺いたいと思います。

 一枚目の私がつくった表なんですが、これは再三出ています、ホルムズ海峡と、仮に南シナ海を比較しました。

 仮に、第一要件に当てはまるような事案が発生したとしましょう。これは存立危機事態の話です。そして第二要件で、他に適当な手段がないと。ホルムズの場合はどうしようもないわけです、他に適当な手段がない、迂回ルートもない、しかし、南シナ海の場合はたくさんある、これまでこういう御答弁でありました。

 としますと、南シナ海の事案というのは、第一要件には当てはまったとしても、第二要件で、ほかに別ルートがあるから、これは三要件に当てはまらないということで、そこから先の検討にまでいかないんでしょうか。そこをちょっとお答えください。

横畠政府特別補佐人 実際のこの新三要件に当たるかどうかの判断は、現実に事が起こってからの判断ということになるので、仮定のお話になりますけれども、仮に第一要件を満たした事態であるといたしましても、第二要件、すなわちその時点で他に適当な手段がない、つまり武力を行使する以外に手段がないという場合でなければ、武力の行使をすることはできないということでございます。

長島(昭)委員 今、武力の行使をする以外に手段がないというのは、これまでの歴代内閣の答弁でいくと、ただ外交交渉で片がつくもの、こういうような答弁もあるんですけれども、そういうことを念頭に置いているんでしょうか。それとも、総理が再三使っているように、迂回ルートがあるなしが判断基準になっているんでしょうか。

横畠政府特別補佐人 御指摘のように、迂回ルートを利用することによって被害が避けられるということであるならば、第二要件は満たさないということになろうかと思います。

長島(昭)委員 そして、第三要件なんですけれども、必要最小限度。

 せんだって、玄葉元大臣が少し首をかしげておられましたけれども、外国領域における武力の行使禁止原則の例外は、誘導弾の根元をたたく敵基地攻撃、それから受動的、限定的な機雷掃海、これが例外に当たるというような答弁をこれまでされていますけれども、昭和六十年九月二十七日の政府答弁書にはこう書いてあるんですね。

 「武力行使の目的をもつて自衛隊を他国の領土、領海、領空に派遣することは、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであつて、憲法上許されないと考えている。」、これは再三私たちも聞いてきました。その後、「仮に、他国の領域における武力行動で、自衛権発動の三要件に該当するものがあるとすれば、」これは今の三要件でも生きているんだと思うんですが、「憲法上の理論としては、そのような行動をとることが許されないわけではないと考える。」これは今でも生きているんでしょうか。

横畠政府特別補佐人 今でも同じ考え方でございます。

 ただ、その例外といいますのは、実際に念頭にありましたのは、昭和三十一年に御答弁申し上げた、誘導弾による攻撃が避けられず、他に手段がない場合という極めて例外的な場合を念頭に置いているものと理解しております。

長島(昭)委員 このときは誘導弾の話も出てくるんですが、その後なんですよ、これは。「仮に、他国の領域における武力行動で、自衛権発動の三要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論としては、そのような行動をとることが許されない」、つまり、私のこの表はありますか、お手元に。「外国領域 機雷掃海のみ?」とクエスチョンマークで書いてありますが、必ずしも機雷掃海だけに限定されるものではないというのが六十年のこの政府答弁書の趣旨だと思うんですが、その趣旨を今でも引き継いでいるんでしょうか。

横畠政府特別補佐人 我が国に対する武力攻撃で、他国での武力行使をしないと防げないというものとして現実的に考えられておりましたのは、まさに我が国に対する誘導弾が多数降り注ぐような事態であろうかと思います。

 また、機雷の話は、今回の新三要件を満たす場合において、なお、他国の領域に敷設された機雷についてはそこまで行かないと除去できないわけですので、そういう意味でやむを得ない場合に当たり得る、そういう前提で議論されているものと考えております。

長島(昭)委員 今の法制局長官の御答弁は、旧三要件、つまり個別的自衛権を前提とした御答弁のように私には聞こえました。我が国に対する攻撃を排除する、だから機雷と敵基地攻撃、限定的なこれしかない。

 しかし、今度は集団的自衛権でしょう。我が国に対する攻撃ではない、他国に対する攻撃を排除するために、もちろん目的は我が国の防衛でしょう、それは再三政府が答弁をしている、したがって、少し範囲が広がるんですよ。そういう場合であっても、今御答弁があったように、機雷と、誘導弾を排除するための敵基地攻撃だけに限定されるような、その御答弁じゃおかしいじゃないですか。

 六十年の時点でも、ほかに三要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論として、つまり法理上はそのような行動、ほかの形態の武力行使もあり得ると昭和六十年に答えているんですよ。

 まさに、集団的自衛権を認めた今日にあって、今、この論理を後退させるような御答弁はおかしいんじゃないですか。

横畠政府特別補佐人 後退でも前進でもないと考えております。

 今回の新三要件のもとにおいて、国際法上は集団的自衛権によって違法性が阻却される、そのような自衛の措置というものをとれることになるわけでございますけれども、いわゆる集団的自衛権という言葉から、一般には、自国ではなく他国を守るために武力を行使する、外国まで戦いに行くのだというようなイメージが生じやすいところでございますけれども、この場でもるる御説明申し上げておりますとおり、今回のものはそのようなものではございませんで、あくまでも我が国を防衛するための必要最小限度のものにとどめるということでございます。

 第二要件で明示してありますとおり、我が国防衛のため必要やむを得ないものであること、第三要件におきましては必要最小限度ということで、従来の必要最小限度の考え方は一切変わっていないという前提でございます。

長島(昭)委員 いや、必要最小限度の考え方が変わっていると言っていないんですよ。その手段として、機雷や敵基地攻撃にとどまるものではないんじゃないですか。ほかの武力行使の可能性だって、大臣、米艦防護なんというのがもう事例に挙がっているわけですよ。可能性はあるわけですよ、ほかのことも。それは排除されないでしょう、まさか。

横畠政府特別補佐人 従前からも、我が国に対する武力攻撃が発生して、我が国が個別的自衛権を発動している場合において、我が国近海において我が国を守るために活動している米艦を守るということは、これは我が国を防衛するために必要な措置として可能であるということは、るるお答えしているところでございます。

長島(昭)委員 まあいいや。次に行きましょう。

 重要影響事態にもう一度戻ります。

 まず、基本的な質問をしたいと思うんですけれども、重要影響事態のもとでは、これはメニューとしては後方支援しか上がっていないんですが、後方支援、この法案に上がっているメニュー以外はできないと考えていいんでしょうか。

中谷国務大臣 後方支援に関しましては、法律に明記をした事項のみでございます。

長島(昭)委員 では、少し違った角度で聞きましょう。

 平時で許されているような行動は、重要影響事態でも後方支援以外でできることがあるんでしょうか。(発言する者あり)

 岩屋理事から、もう少し具体的にという話がありましたので。例えば警戒監視、例えばアセット防護、こういったものは重要影響事態下でも後方支援に加えてやることができるんでしょうか。

中谷国務大臣 それは実施できますが、あくまでも武力行使と一体化するというようなことにならないという範囲でございます。

長島(昭)委員 そうなんですね。武力行使と一体化の制約がかかってくるんですね。

 これは、私、皆さんはシームレスだ、切れ目なくと。米側にもそういう説明をされていると思います。

 ここに、皆さんのお手元にも一番最後に、ガイドラインの見出しだけつけてまいりました。「4 日本の平和及び安全の切れ目ない確保」「A 平時からの協力措置」、ここにだあっと書いてあります。海洋安全保障、防空、ミサイル防衛、アセットの防護。

 それから、一枚めくってください、最終ページ、「C 日本に対する武力攻撃への対処行動」、これは何でもできるわけですね。そして「D 日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動」、これはアセット防護、捜索・救難、海上作戦等々書いてあるわけですね。

 ところが、「B 日本の平和及び安全に対して発生する脅威への対処」、ここには後方支援のメニューしか書かれていないんです。「同盟は、日本の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対処する。当該事態については地理的に定めることはできない。この節に示す措置は、当該事態にいまだ至ってない状況において、両国の各々の国内法令に従ってとり得るものを含む。」こう書いてある。

 なぜここにアセット防護がないのかな、なぜここに警戒監視が書いてないのかなと私は不思議に思っていたんです。

 今御答弁されたように、平素できることは重要影響事態下でもできる、こうおっしゃいましたね。アセット防護もできる。アセット防護もできる、これはそれでよろしいですね。

中谷国務大臣 おっしゃるように、新ガイドラインにおいては、アセット防護、これは「平時からの協力措置」の節に記載されておりますが、「日本の平和及び安全に対して発生する脅威への対処」の節の柱書きに明記されているとおり、日米両政府は、日本の平和及び安全に対して発生する脅威への対処に当たっては、平時から協力的措置を継続するというふうにしております。

 したがいまして、日本の平和と安全に対して発生する脅威への対処に際しても、適切な場合には、自衛隊は、米軍は、平時から引き続きアセット防護を相互に実施していくということになると考えております。

長島(昭)委員 平素におけるアセット防護においては、それができるエリア、できないエリアがあるんでしょうか。つまり、どこでもできるんでしょうか、それともできなくなるようなエリアがあるんでしょうか。

中谷国務大臣 基本的には、この法律によりまして、我が国の防衛に資するということでございます。また、実施に際しましても、防衛大臣がその必要性があると認める場合に限定をいたしております。

長島(昭)委員 したがって、何度も繰り返して恐縮ですが、法理的には地球上どこでもできる、こういうことになるんですね。よろしいですか。

中谷国務大臣 我が国の防衛に資するという条件がついております。

長島(昭)委員 それでは、防衛大臣が御決断をされることになるんだろうと思いますが、例えば南シナ海で警戒監視活動をアメリカと一緒にやる、あるいは日本独自でやる、こういう可能性は排除されませんね。

中谷国務大臣 この項目は自衛隊法の九十五条の二に規定をするわけでございますが、どのような場所で適用されるかにつきましては、個別具体的な状況によって判断をされるものでございまして、あらかじめ申し上げることは困難でありますが、南シナ海におきましては、現在、自衛隊として継続的な警戒監視を行っておらず、その具体的な計画を有しているわけではございませんので、また、どのような状況になるのか判断するわけでありますが、防衛大臣としましては、我が国の防衛に資する、またその必要性が認められるという場合に限るということでございます。

長島(昭)委員 アメリカのデービッド・シェアー国防次官補あるいは海軍のトーマス司令官、お二人とも、日本と一緒に南シナ海での警戒監視活動ができたらいいな、こういう意見表明をされていますが、防衛大臣として、そのことも含めて、平素、警戒監視、あるいは場合によっては九十五条の二を適用してアセット防護、こういうことも南シナ海の海域でやる可能性は排除されていませんね。確認をさせてください。

中谷国務大臣 我が国といたしましても、現在、我が国周辺の海域等につきましては常に関心を持っているわけでございますが、警戒監視につきましては、自衛隊として、南シナ海において常続的な警戒監視活動は行っておりませんし、現在、その具体的な計画を有しているわけではございません。

長島(昭)委員 では、南シナ海の状況にいきましょう。

 皆さんのお手元、三ページ目をごらんになってください。五〇年代から中国が盛んに海洋進出を繰り返しているというこれはクロノロジーであります。

 問題は、今、南沙諸島で大変懸念が広がっておりますが、四ページ目をごらんください、海洋に関する法解釈がどうも、我が方、日本やアメリカと中国が少し異なっているんですね。

 例えば、EEZ沿岸国への配慮。我が国、アメリカは、経済上の利益を侵さないこと、こう言っているわけですが、中国は、経済と安全保障の利益を侵さない。したがって、二つ下へ行きますと、EEZにおける他国の軍事活動への対応、我が国もアメリカも規制していません。しかし中国は、他国の活動に対する規制を具体的に実施しております。

 したがって、二〇〇九年には、インペカブルというアメリカの海軍の音響探索船ですかが中国海軍によって妨害を受けたり、あるいは米海軍のEP3と中国の戦闘機が接触をしたり、こういう事件が後を絶たないわけであります。中国側は、EEZにアメリカが警戒監視であれ何であれ入ってきたらそれは規制をする、場合によっては接近してくる。

 先日の事例では、わずか六メートルまで、P8というアメリカ海軍の哨戒機、二〇一四年八月、これに中国の戦闘機が異常接近してきた。こういう危険な事例が後を絶たないわけであります。まさに一触即発と言ってもいい。

 これに対して、アメリカは最近ギアを上げてきているんですね。

 この前のシャングリラの場でも、カーター国防長官が何と言っているかというと、中国側を激しく非難して、最近行われている人工島、つまり埋め立て、この問題を非難しました。

 それと相前後して、ラッセル国務次官補は、警戒監視活動を続けていく、そして国際的な海、空域である限り、航行の自由の権利を行使すると。

 そして先月の二十日には、わざわざ米海軍はP8の対潜哨戒機にアメリカのCNNテレビのクルーを乗せてこの人工島に接近して、そして中国海軍からアラート、こちらは中国海軍だ、軍事区域に近づいている、直ちに退去せよ、こういう警告を受けている。本当に、そういう意味では、一触即発と言ってもいいような状況が今続いているわけですね。

 こういう状況の中で、先ほど重要影響事態のところでまさに大臣がお示しになった、深刻な軍事的緊張状態や武力衝突が発生した場合で、しかも我が国に物資を運ぶ日本の船舶に深刻な被害が及ぶような可能性がある場合には、先ほどるる大臣がおっしゃった、後方支援を含む協力活動をする、こういうことなんです。

 それで、大事なことを申し上げます。

 今までは米軍だけだったんです、相手は。これは先ほどたしか外務大臣が少しお触れになりましたけれども、米軍のみならず、今回の法案では、外国軍隊に対しても、国連憲章の目的を達する、実現する、そういう目的に資する限り後方支援をする、こういうことを言っておるわけですけれども、では、アメリカだけじゃなくて、アメリカを離れて、例えばフィリピンやマレーシアとこういう協力をする可能性は南シナ海であるんでしょうか。

中谷国務大臣 一般論ではありますが、特定の地域でございますので、現時点において言及することはお控えをさせていただきたいと思いますが、せんだってのシャングリラの会合におきましても、アメリカのカーター長官も、またオーストラリアの防衛大臣にしても、この海域における中国の行動等につきましては、非常に、法の支配を逸脱した、力による権益の拡大であるということで、基本的なスピーチにおきましてもそういうことを指摘いたしましたし、またその後、日米また日米豪の会談を行いましたけれども、こういった認識等につきましては、各国共通したものでございました。

長島(昭)委員 皆さんの三ページにまた戻っていただきたいんですが、一九九二年に在比米軍が撤退をしました。クラーク、スービック両基地からアメリカ軍が撤退をした。その直後、このクロノロジーには書いてありませんが、中国が領海法というのを制定するんですね。公布するんです。この中国の領海法に基づいていわゆる九段線、今、中国が盛んに人工島を埋め立てているこの地域ですね、この九段線が決められるわけですね。もっと言えば、九段線というのが先にあって、それを後追いで領海法で、これは全部うちの領域だ、こういうふうに言ったわけですが、日本政府はこの領海法のエリアが中国の領海であるということを認めているんでしょうか、外務大臣。

岸田国務大臣 九段線に関する我が国の立場ですが、この九段線に関しましては、中国側から法的な根拠等、詳細な説明は受けておりません。我が国の現在の立場は、中国側に対しまして、中国側の主張をしっかりと法的に説明するように求めている、これが我が国の現状の立場であります。

長島(昭)委員 この場で、認めていないということを断言することはできないんでしょうか。

岸田国務大臣 今現在の我が国の立場、考え方は、今申し上げたとおりであります。現状は、今、その段階にとどまっております。

長島(昭)委員 問題は、領海を形成する、あるいはEEZを形成する基線ですね。島、岩礁なら岩礁、これは国際ルールがありますよね。単なる岩で、時々出てくるような、海面から頭を出すような岩では、これは領海を形成する基線、いわゆる領海基線とは認められない、こういうことになるんですが、日本政府として、そういうルールに基づいていますよね。

岸田国務大臣 当然のことながら国際的なルールに従っているわけですが、この南シナ海における公海の有無等を判断するに当たりましては、排他的経済水域等の根拠となる地形を全て把握する必要があります。そういったことがありますので、現状においてこうした困難がありますので、公海等につきまして正確に確認するのは困難であるというのが我が国の立場であります。

長島(昭)委員 わかりました。

 なかなか外交上の理由もあって確たるお答えがいただけないんですが、例えばアメリカ合衆国。アメリカ合衆国は、この十二海里、中国が主張している人工島を中心とする十二海里の領海は認めていない、進入も辞さず、これはまさに公海だからどこの国の領海でもない、こう言っていますね。

 このアメリカの姿勢は、日本政府としては支持するんでしょうか。

岸田国務大臣 我が国として、第三国、米国等の他国の立場について解説する、申し上げる立場にはないと考えております。

 こうした米国の取り組み状況につきましては、我が国としましても関心を持ちながら注視をしております。

長島(昭)委員 これは余りごまかしていただきたくないんですね。

 つまり、先ほど法制局長官とやりとりしたように、他国の領域の中でやれること、やれないことがあるんですよ。アメリカと同盟を結んで、場合によっては、アメリカと一緒になってこの海域で警戒監視活動をやるかもしれないんです。平時にできることが重要影響事態でもできるということになれば、アセット防護をやる可能性があるんです。

 そういう中で、アメリカが認めていない十二海里、しかし、日本政府としてはなかなかいわく言いがたい、これでは、日米の間の協力作戦は、いざというときですよ、こんなことは起こってほしくないです、難しいじゃないですか。シームレスにやるなんて大見えを切っていますけれども、本当にそのように一体なるんでしょうか。そこだけお答えください。

岸田国務大臣 まず、我が国の公海等に対する立場、南シナ海における考え方につきましては、先ほど申し上げたとおりであります。公海についても正確に確認するのは困難である、これが立場であります。

 一方、米国の立場につきましては、特に米軍の軍の運用について一々申し上げる立場にはありませんが、いずれにしましても、我が国として、法の支配の貫徹という観点から、米国とも緊密に連携していかなければなりません。

 我が国の現状については、今申し上げたとおりであります。

長島(昭)委員 なかなか正面からお答えいただけないんですけれども、ただ、先ほど防衛大臣もおっしゃったように、これは、確認することは困難とか、やはり曖昧にしておいたら日米の計画策定ができないですよね。共同計画の策定、これに私は支障を来すと思うんです。だから、そういうことを含めてきちっとやっていただかなきゃいけない。もちろん、そういうことをやることがいいか悪いかについては、同僚議員からいろいろこれから質問があろうかと思いますよ。しかし、そこは政府としてきちっとした取り組みをしていただかないといけない。

 最初の話に戻りますと、ホルムズしか何か念頭にないかのような御発言を、これは今度総理と直接やりたいと思いますが、余りやり過ぎると、ほかのところはいいのか。抑止力、抑止力と言っておきながら、何か抑止力を阻害するような発言を繰り返している、政府の、大臣の皆さんが。これは私はよろしくないと思います。その点も含めて、正面から御答弁をいただくようにお願い申し上げて、質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、重徳和彦君。

重徳委員 維新の党の重徳和彦です。どうぞよろしくお願いいたします。

 今回の安保法制なんですけれども、全般的に、印象としては、やはり幾ら何でも手を広げ過ぎだという印象がございます。法理上どこまで可能かという議論と実際のいろいろな例示、当てはめ、そういう両方の議論がありますけれども、やはり法理上どこまで可能なのかという議論をする上でも、適切な事例を適切に当てはめていく、そういう議論をしていかないと、全く理解が深まらないし、質疑のやりとりも行き違いばかりで深まっていかない、こういう印象を持ちながらこれまで過ごしてまいりました。

 というのも、本来きょうの質疑は先週の金曜日に行う予定だったんですが、一週間飛んでしまいましたので、その間にいろいろな論点が、きょうはホルムズ海峡の機雷掃海について議論させていただきますけれども、さまざまな論点が出てきて、それに対する答弁も出てきていますので、それも踏まえて、きょうは、少し細部にわたって、ホルムズ海峡の機雷掃海を議論させていただきたいと思います。

 まず初めに、確認なんですが、今回、ホルムズ海峡での機雷掃海というのは、これまで憲法上認められてこなかった、禁じられてきた海外派兵の例外として唯一具体的な例示が挙がっているわけでありますけれども、例外というと海外派兵に当たるのか当たらないのかちょっとわかりにくいんですが、要は、これは海外派兵なんでしょうか、どうなんでしょうか。

中谷国務大臣 総理が述べられたのは、外国の領域における武力行使については、ホルムズ海峡での機雷掃海のほかに、現時点で個別具体的な活動を念頭に置いているものではないということでございます。

 このホルムズ海峡での機雷掃海におきましては、総理が五月二十日の党首討論において「一般にということの外」と述べたように、その実態は、水中の危険物から民間船舶を防護し、その安全な航行を確保することを目的とするものでございます。この性質上もあくまでも受動的かつ限定的な行為であり、外国の領域で行うものであっても必要最小限度のものとして新三要件を満たすことはあり得ると考えておりまして、その意味では例外と言えると考えております。

重徳委員 お答えになっていませんが、単刀直入に、海外派兵に当たるんですか、当たらないんですか、どちらですか。

中谷国務大臣 例外であると言えます。

重徳委員 例外的に海外派兵に当たるということでしょうか。ここはわからないんです、言葉としてそう表現されたことがないので。

中谷国務大臣 海外派兵の一般禁止の例外に当たるわけでございます。

重徳委員 一発で答えていただきたいんです。海外派兵に当たるなら当たるで、それを前提として議論がしたいものですから、当たるのであれば海外派兵である、何の例外か、これこれの例外だというのはわかるんですが、海外派兵であるというふうにお答えください。

中谷国務大臣 基本的には、海外派兵というのは、自衛のための必要最小限度を超えるものであって憲法上許されないと解しておりますが、ホルムズ海峡の例を挙げられましたけれども、これは例外に当たるということでございます。

重徳委員 こういうやりとりをずっと続けていても話が進まないんですよ。こんな話ばかりですよ、今回の委員会は。

 ちょっと委員長、お裁きをお願いしたいと思います。(発言する者あり)

中谷国務大臣 海外派兵に当たります。

重徳委員 通告もしておりますので、最初からお答えいただきたいと思います。

 次に、唯一の海外派兵になることになるというホルムズ海峡の機雷掃海でありますが、機雷掃海は受動的、限定的だから必要最小限度を超えないという御説明がありますが、これは、どんな場合でも、機雷掃海、他国の領海における、そして停戦合意前であっても、常に受動的、限定的であるということなのでしょうか。停戦合意後であれば、受動的というのはわかります。遺棄機雷を掃海するということだからお片づけですよとわかりますが、常に受動的、限定的なんでしょうか。能動的というふうに評価されるべきケースもあり得るのでしょうか。

中谷国務大臣 基本的に、機雷の掃海というのは国際法上一般に武力行使に該当し得るものでありますが、この実態は、純粋に水中の危険物から民間船舶等を防護し、その安全な航行を確保することを目的とするものでございます。また、掃海艦艇というのは外部からの攻撃に非常に弱い、脆弱であるために、戦闘が現に継続しているような現場におきまして機雷掃海を円滑に行うことは困難でございます。

 このように、機雷掃海というのは、その性質上、相手方への積極的な攻撃を行うものではなくて、相手によって既に敷設された機雷の除去だけを行うという意味で受動的でありまして、また、民間船舶等の安全な航行の確保という限られた目的のもとで、敵への攻撃を伴わず、機雷の除去のみを行うという意味で限定的である活動であるということで、受動的な、限定的な活動であるということでございます。

重徳委員 言葉の整理としてはそういうことになるのかもしれませんが、実際に停戦合意前、つまり全体的には戦闘が続いている状態で、戦争の当事国でもない日本が他国の領海内、ホルムズ海峡でいうとイランまたはオマーンの領海内に入ってそして機雷を掃海、掃海という活動が具体的にどういうことをやることなのかというのも、これはケース・バイ・ケースだと思うんです。

 今まで御答弁を聞いている中でも、安倍総理の答弁も含めて、線を一本一本切っていくんだという説明もあれば、機関銃で撃って破壊するんだという説明もあります。こういった態様によっても違うと思います。そして戦況によっても違うと思うんですが、これは国際法上のルールでも何でもありませんから、この受動的、限定的というのは。今回の法制をする上での解釈としてこういう言葉を持ち出しているわけですから、あくまで日本のこの国会において定めるルールでありますから、これはどんな場合でも受動的だというふうに本当に言えるのかどうか。能動的というケースは一切ないんでしょうか。その点だけお答えください。

中谷国務大臣 機雷の掃海というのは、潜水隊員が潜って爆破するケースもあれば、機械によって破壊するということで、基本的には、設置された機雷を除去するという行為でございます。

 今回、総理が、新三要件に伴いまして機雷掃海を言われたわけでございますが、あくまでもこれは我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として行うものでありまして、相手国の意図にもかかわらず、国際法上も憲法上も正当なものでありまして、近年において、機雷の掃海を行ったことをきっかけとして紛争がエスカレートしたような事例はないということでございます。そういう意味で、私は受動的な行為であると思っております。

重徳委員 国際的な活動、海外における活動、しかも先ほどまさに海外派兵だというふうにお認めになったこの機雷掃海というものが、日本国内で解釈として受動的だ、限定的だと言ったところで、関係国がどう受けとめ、そして、まさにこれは武力行使であることは国際法上明らかなわけですから、受動的だから許すとか能動的だからどうとか、そういうことを一々戦闘現場において他国が考慮してくれるはずがないと私は思うんです。

 ですから、一般にそもそも海外派兵だって禁止されている。そこを、日本が海外派兵をするわけです。そして、そこで行っている活動というのが、一本一本、見えないところで切っている活動ならまだわからないかもしれないけれども、明らかに敵国の武器を、攻撃道具を破壊するという行為ですから、これが能動的と認められることは一切ないとまで言われると、とまで今おっしゃっていませんけれども、そうなると、本当にこれをどう評価するべきかというのは、もっときちんと、文言上だけの整理じゃなくて、私が先ほどお聞きしました、能動的であることがあり得るのかどうかということも、ちょっとここできちんとお答えください。

中谷国務大臣 機雷掃海と申しますと、水中の危険物から民間船舶等を防護し、その安全な航行を確保することを目的とするものでありまして、その性質上、あくまでも受動的、限定的な行為であって、一般の方々が思い浮かべるような、敵を撃破したり、また制海権、制空権を確保するために大規模な空爆、砲爆を加えたり、敵地に攻め入るような行為とはこれは異なります。

 この掃海艦艇は外部からの攻撃には非常に弱いということで、戦闘が現に継続しているような場所では、掃海を円滑に行うことが困難ですからその場にとどまることはできないわけでございまして、敵を攻撃したり撃破したりするのではなくて機雷を除去する、また激化した場合にはそれは行動が困難になるという意味では受動的でもございますし、また、何のためにやるかといいますと、まさに存立危機の事態でございまして、我が国の存立が脅かされて国民の権利が著しく損なわれるというような事態におきまして、我が国と非常に密接な関係にある他国が攻撃をされた場合によるというようなことでございます。

重徳委員 この問いばかりやっているつもりもないんですが、これは本当に、何度も何度もやりとりするまでもないような問いについても長々と答弁されると議論が進みませんので、引き続きお願いします。

 きょう、資料を用意しましたので、資料の二番目をごらんいただきたいんです。

 これまでの議論の中で、いわゆる重要影響事態と存立危機事態の関係が一定程度整理されてきたと思います。

 これも確認ですからすぱっとお答えいただきたいんですが、存立危機事態に当たるものというのは全て、すべからく重要影響事態に当たる、つまり同心円状の関係にあって、かつ、これはA、BでいうとAの方ですね、存立危機事態の場合において日本が行うことができることと、重要影響事態において行うことができること、これは重なるわけですから、どちらも選択的といいましょうか、どちらでもやれますよということで、つまりこの図でいうとAの図という解釈でよろしいでしょうか。

中谷国務大臣 存立危機事態は概念上は重要影響事態に包含をされる、含まれるということでございます。ただし、重要影響事態と存立事態というのはそれぞれ定義がございまして、個別の法律の判断に基づくものでございますが、存立危機事態は概念上は重要影響事態に包含されるということでございます。

重徳委員 わかりました。

 それでは次に、今の御答弁を前提に、実際にではホルムズ海峡、ペルシャ湾近辺を想定した場合に、存立危機事態として、機雷掃海という名の、態様の武力行使を行いつつ、またその付近では後方支援を重要影響事態であるからということで日本が行っているというようなときに、この両者を他国から見て区別するということはできるんでしょうか。

中谷国務大臣 概念上は存立事態は重要影響事態に包含されるということでありまして、重要影響事態に対処する米軍等の後方支援を行う一方で、存立危機事態を認定してこれに対処するために武力行使を行うことは、法理論上はあります。

 その場合に、一般論で申し上げれば、これによって我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるもの、すなわち存立危機の武力攻撃に対しては存立危機事態として対処する。

 一方で、重要影響事態法に基づく後方支援活動は、現に戦闘行為が行われている現場では実施しないということなど、他国の武力の行使と一体化しないということを確保する法律の枠組みがございます。

 したがいまして、武力行使に当たる活動の現場においては、重要影響事態法に基づく後方支援活動を行うことはなくて、一体として武力行使を行っているとみなされることはないのではないかと思っております。

    〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕

重徳委員 つまり、他国から一体化しているとみなされることはないのではないかと思うというのが今の中谷大臣のお答えなんですが、いや、それが実際現場でそうなんだろうかというのが私の疑問であります。

 今までは、そうはいっても、他国の武力行使と日本の自衛隊の後方支援の区別ができるできない、あるいは一体化するんじゃないか、こういった懸念の議論があったわけなんですが、今回の場合は完全に、日本の自衛隊が機雷掃海をするその周辺、どのぐらい離れているか、ケース・バイ・ケースでしょうけれども、後方支援を行っているわけであります。

 客観的に見たら、これは後方支援ですよといいながら、一部武力行使たる機雷掃海も行っているわけで、日本は、いや、実はここで法概念上違うんですよなんということを言ったところで、同じ日本の自衛隊が、安倍さんかどうかわかりませんが、総理大臣とか防衛大臣の指揮のもとで動いていることは間違いないわけでありますから、その意味で、同じ自衛隊が行う別々の活動だといっても、法理論上は別々だといっていたって、同じ国の同じ自衛隊がやっていることなんですから、これはまさに一体化じゃないんでしょうか。

中谷国務大臣 これは本当に法理論上の話でありますが、実際に二つの対応をする場合は、それぞれ基本計画を立てまして、それぞれ国会での承認をいただいて実施いたしますし、また実施の際には実施要項、実施区域を示すわけでございます。

 特に、重要影響事態につきましては、武力の行使と一体化とならないようにしっかりと区域を指定いたしまして、武力行使と一体化とならない活動をしながら後方支援をするということで、二つの事態は法理論的には併存をするということでございます。

重徳委員 私、最初に確認をしました。今回の機雷掃海というのは、日本として初めて行うかもしれない海外派兵なんですよ。そして、その海外派兵でやっていることと後方支援という活動が、全然地球の反対側で、離れていれば理解されるかもしれませんけれども、同じ地域でそれを行われたら、これは、幾ら日本の国内の事情で、日本は憲法九条がありますからできることには限度があるんですなんと言ったところで理解されないと思うし、まさに平和憲法を持っている日本だから武力行使をしないと思っていたら、今回はするわけだし、それから、受動的だとおっしゃいますけれども、恐らくケースによっては敵の武力の能力を減退させるための破壊行動を行うわけですから、その意味でも完全にこれは、もちろん自衛権の一環ではありますけれども、しかし、それは敵方にとっては、あるいは客観的に見る国から見れば、その区別を、法理論上といっても日本の国内の法理論上ですから、国際的な軍事の場面においては一体的にしか見られない。つまり、全面的な海外派兵に見られる可能性すらあるんじゃないかと思うんです。

 この点、非常に重いところだと思いますよ。最初にお認めになった、今回の機雷掃海は海外派兵なんだと、これは非常に重要なところだと思います。これに対して我々国会議員も、そして日本国民としても、これは覚悟を持たなきゃいけないことだと思うんです。ですから、今までもやっていなかった、一体化していないよという説明を一生懸命してきたこの後方支援というものが、一体化と見られないような線引きができるかどうかというのは、非常に重要な局面だと思います。

 この点は少し、法理論上の、国内法上の説明だけではなくて、対外的にも、国際的に見て、海外が理解できるような政府としての見解が必要だと思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 存立事態というのは武力行使でございますので、これは国家としても大変重要な決定をしなければなりませんが、後方地域支援とは異なっておりまして、後方支援を行う場合には、いかなる軍隊であっても後方支援を受けている間は攻撃に対して極力脆弱な状態になるために、後方支援に関しては危険を回避、安全を確保するというのは当然でありますし、軍事的に合理性があるということでございます。これは同時に、後方支援を行うに当たっても必要なことでありまして、今回の法律に基づいた我が国が行う後方支援は、部隊の安全が確保できないような場所で行うことではなくて、戦闘に巻き込まれるようなこともないように実施をいたします。

 もとより、後方支援それ自体は武力行使に当たらない活動でございまして、さらに、実施をする場合には、他国の武力行使と一体化することがないように実施をするということでございます。

 やはり、重要影響事態法に基づいて、掃海のための後方支援活動を掃海活動現場で行うことはないわけでありますので、御指摘の図のように、存立事態の地域と後方地域の場所は明確に分けられるということでございます。

重徳委員 地域的に、今、分けられるという御説明がよくわからなかったんですけれども、明らかに全く同じ場所において後方支援活動と機雷掃海の活動をすることだってあると思うんですよ。これを明確に、対外的に分けて見てもらうようなことがあり得るんでしょうか。

 ちゃんと離れていたら別ですよ。離れて別の活動をしている、軍事活動というか別の活動をしているということが明確に何らかの形でわかるならばいいですけれども、同じホルムズ海峡、ペルシャ湾といった地域において両方の活動をしているときに、どうやって他国から理解されるような明確な線引きができるのでしょうか。

中谷国務大臣 いろいろな状況がありますので一概に言えませんけれども、基本的に、自衛隊部隊が行う他国軍隊に対するいわゆる後方支援活動と言われる支援活動自体は武力の行使に当たるものではない。そのような活動を行うものに対して武力の行使を行うことは、国際法上違法な武力行使でありまして、正当化されないわけでございますので、そういう点におきましては、国際法的なルールで後方支援を行っている国の軍隊に対しては武力行使は控えられるのではないかなと私は思っております。

重徳委員 それは今までの後方支援、つまり、日本は後方支援しかしませんという場合には、それでも何とかそこは他国から客観的に見ても理解されたかもしれないんですが、今回は日本の自衛隊自身が武力行使を行っているわけですから、そして、それと近接した地域で後方支援も行っているときに、別々ですよなんというのは理解されないと思いますよ。

 今の御説明は、後方支援はそういうものだと。これは別に、今までだってそうでしたよ。だけれども、今回は完全に一体化するリスクというのは非常に強いと思います。

 そして、なぜ一体化が問題かというと、まさにそれは、武力行使を他国領海で行わない、海外派兵を行わないと言ってきた日本が、今回、余り過剰に言うつもりもないんですけれども、しかし、いよいよ大きな一歩を踏み出すようなことにこれは海外からも受けとめられるわけですから、そこは本当に一体化しないという担保がとれない限り、この問題は極めて重要なところだと思うんです。どうやって一体化を防ぐんでしょうか。

中谷国務大臣 この重要影響事態法に基づいて、掃海のための後方支援活動を掃海活動現場で行うことはございません。

 今回、存立事態におきましても、これは三要件がありますので、必要最小限度ということでありますので、そこで行う活動も、我が国の存立を脅かし、そして国民の生命を根底から覆すような事態を排除するための必要最小限度の活動のみであります。

 そういう活動を実施している、それに並行してこういった後方地域支援などが行われている場合におきましてはそこで活動を実施するわけでありますが、そのための行動につきましては、掃海のための後方支援活動を掃海活動現場で行うことはございません。

 これは、きちんと基本計画を立てて、実施計画を定めて、国会での承認をいただいて活動するわけでございますので、地域的には明確に区別をして実施され得るということでございます。

重徳委員 この議論は今まで余りされていなかったと思うんです。

 今、中谷大臣は、掃海活動現場で後方支援活動を行うことはないとおっしゃいましたけれども、同じ海でつながっているわけですから、どこからどこまでが掃海活動現場で、どこからどこは後方活動に徹していますなんということを、旗でも立てて目印をつけるんでしょうか。

 それから、国内的には計画をつくるのかもしれませんが、存立危機事態と重要影響事態が重なって別々の目的あるいは態様で行われるというのは、法理論上、法概念上の解説が今繰り返しなされておりますけれども、実態として、本当にそれがそう見えるような、国際社会で理解されるような線引きができるのかどうか、ここは非常に重要なところだと思います。今の答弁では、私、とてもじゃないけれども理解ができません。

 この点、どうでしょうか。きちんと文書で政府の統一見解を求めたいと思うんですけれども。

    〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕

浜田委員長 とりあえず、中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 重要影響事態というのは、後方支援活動を行うわけでありますが、これは現に戦闘を行っている現場でないところでやりますので、武力行使と一体化にならないというのを担保した上で実施いたすわけでございますし、また、部隊の安全のために、ゆめゆめ、そういった武力の行使と一体化となるような行動、地域は避けるわけでございます。

 この掃海艇に対する補給等の支援は、通常、触雷の危険を避けるために、機雷掃海が行われている海域から距離的に十分離れた場所で実施をされるわけでございますので、そのために、御指摘のような事態にあって、自衛隊の部隊が現に戦闘行為を行っている現場において支援活動を行うということは想定されないわけでございます。

重徳委員 この掃海活動というものも、現に戦闘が行われていないところで、まさに戦火の中で活動するわけではないという説明も繰り返されているわけであります。本当の意味の戦闘地域で掃海活動をやっているんだったら、あえて言えば地域としても別々と言えるんでしょうけれども、基本的には同じような、政府側からの説明を受けた我々の今の頭は、機雷掃海というのも、ほぼ後方支援活動を行うところと同じような、安全の確保だとか戦闘がやんだ状態でやっている、そういう理解をしております。

 ですから、そういう中でなおかつ線引きができるものなのかどうかということについて、政府の統一見解を求めたいと思うんです。いかがでしょうか。

浜田委員長 理事会で協議をいたします。

 質問を続けてください。

重徳委員 お願いします。

 それでは……(発言する者あり)では、答弁をお願いします。

浜田委員長 では、中谷防衛大臣、しっかり答弁願います。

中谷国務大臣 掃海艇に対する補給等の支援は、触雷等の危険を避けるために、やはり機雷掃海が行われている海域から十分距離的に離れた場所で実施されるのが通常でございますので、そういう点で、機雷掃海が実施されている現場で後方支援をするということは想定されないということでございます。

重徳委員 では、今の御答弁も踏まえて理事会の方で御協議をいただくということでよろしいでしょうか。

浜田委員長 理事会で協議させていただきます。

重徳委員 それでは、経産大臣に。

 今回の機雷掃海を行うに当たりまして、これは繰り返し質疑のやりとりがありますけれども、機雷がホルムズ海峡に敷設をされ、その結果、原油の輸入が滞り、その結果、日本国民にとって死活的な状況が生まれるがゆえに、それに対応した集団的自衛権の発動、行使が許される場合があるという御説明があります。

 その国民的に死活的な状況を招くのは、ひとえに、物資、とりわけ原油の輸入がとまるからということなんですが、であれば、それを本気で想定するのであれば、原油の備蓄の日数が約半年分、百六十九日分あるというのは事前にお聞きしております。これについて、実際に第二要件でも、他の適当な手段がない、これはどこまでのことを想定しているのかわかりませんけれども、直ちにホルムズ海峡に出かけるのではなくて、その前に、非軍事的なことも含めて、あらゆる他の適当な手段を模索しなければならないと思うんですが、今の特に原油に関連いたしまして、化石燃料の輸入に関連しまして、経産大臣、どのような対応をするのでしょうか、お答えください。

宮沢国務大臣 まず、原油についてお話しいたしますと、今、原油につきましては、全体として一次エネルギー供給の約四割を占めておりますけれども、その約八割がホルムズ海峡を通過して調達されております。そして、委員御指摘のとおり、備蓄については、官民合わせて百六十九日分の備蓄が行われております。

 万が一我が国への原油輸入途絶の事態が生じた場合には備蓄の放出を行い、備蓄の放出によってもなお石油の大幅な供給不足が生ずる場合は、石油需給適正化法に基づく供給調整を実施することといたします。

 他方、原油以上に我が国の経済に直ちに影響を与えるのは、実は天然ガスでございます。天然ガスにつきましては、約四分の一がホルムズ海峡を通過して調達されております。

 LNGにつきましては、気体という性格上、備蓄は不可能であります。仮にホルムズ海峡が通航不可能という事態になりますと、我が国における一次エネルギー供給のうち直ちに六%の供給に甚大な支障を生じますし、また、御承知のとおり、都市ガスはLNGがほとんどでありますし、また、電力の発電にも今四分の一以上LNGを使っているということがありますので、かなり大きな影響があると思います。

 そして、それに対してどういう手を打つかという御質問でありましたけれども、まず、備蓄を増強すべきということでありますと、例えば百日分の備蓄を国家備蓄でふやすとなると恐らく五兆円程度のお金が必要になりますが、百六十九日ではだめで二百六十九日なら大丈夫という保証もないわけでございまして、なかなかこれをふやすという選択肢はないのではないかと思っております。

 一方で、原油の調達先につきましては、この多角化を今進めてきております。その結果、例えばアブダビにおきまして、本年四月に国際石油開発帝石が、世界屈指の規模を誇る陸上油田の権益獲得にアジア企業として初めて成功しております。

 この原油につきましては、ホルムズ海峡を回避した輸出が可能でございます。二〇〇三年にクウェートで失った油田の権益量にほぼ相当するかなり大きなものでございます。

 また、天然ガスにつきましても、いわゆるシェールガスの輸入につきまして、二〇一六年以降、我が国へのアメリカからの輸出が開始されるということであります。

 もう一つ、ホルムズ海峡の外にパイプラインで直接運び出すという方法もございますけれども、サウジアラビア等々にもありますけれども、正直言って、容量についてはかなり小さいし、大変な危機的な事態が起こったときには我が国にどれだけ回ってくるかというような問題はかなり、そう多くは恐らくそこを通って我が国が輸入できるということにはならない、こんな状況でございます。

重徳委員 時間が迫ってまいりますが、冒頭申し上げましたように、この法案の法理上の枠組みというものについて説明をいただくに当たって、やはり適切な事例をもって適切な当てはめをしていただかないと、本当にこれはどういう状況を想定しているのかということが非常に理解しづらいです。

 そして、この備蓄、これは百日分で五兆円ということでもありました。本当に五兆円もかかるのかどうか、これも検証しなくちゃいけないと思いますし、百六十九日が不十分ならどこまでふやすのか、これも必要な検討だと思います。

 そして、そうやって一定期間持ちこたえることができるのであれば、その具体的な事態が発生した上で、国会で改めて具体的な状況に合わせた法制的な検討を、審議を行うべきと私は思います。

 今から、何だかわからないけれども、いろいろなことを想定して、いつでも何でもできるように法律を用意するんですなんという審議では深まりませんので、このあたり、中谷大臣、最後にコメントをお願いします。

中谷国務大臣 やはり政府としましては、国民の生命そして平和な暮らしを守らなければなりません。

 きのうも、民間の、中東からの船舶を運営する商社の方に会いましたけれども、本当にこのホルムズ海峡というのは、日本の活動を見てみますと大事なところでありまして、こういったところに支障がある場合には本当に大変な事態になってまいります。

 将来におきまして、法律がないからできないというのではなくて、やはりそういった存立にかかわる場合には、きちんと法律を定めておいて、しかるべき条件に当たる場合には対処していく、そういうことが安全保障ではないかと思っております。

重徳委員 法律がないからできないという事態にならないように、そういう事態が生じたらしっかりそれは議論しますよ、国会においても。だけれども、実際にそれまでどのぐらいの期間持ちこたえられるのかとか、そういうことについても真剣に、他の適当な手段という要件だってあるわけですから、そういうことも踏まえた上で、今回、ちょっとまだ議論不足ですけれども、また議論をさせていただきたいと思います。

 以上です。

浜田委員長 次に、吉村洋文君。

吉村委員 維新の党の吉村でございます。よろしくお願いします。

 本日、私は、米軍等の武器等防護について、自衛官が武器を使用できるという九十五条の二について議論したいと思います。

 この九十五条の二でございますけれども、なかなかこの委員会の場でまだ議論が尽くされていないのかなというふうに思うんです。

 今回、この九十五条の二については、併論的に、集団的自衛権の話の流れでそういった規定があるのかなというふうに思うんです。また、よくよく考えると、そもそも、この九十五条の二、外国軍のための武器等防護、そのために自衛官が武器を使用するというのがどうして憲法上許されるのかなという根源的な問題。それから、それがどういった要件のもとで果たして認められるのかという幅の問題。それから、先ほども少しありましたけれども、南シナ海に関して、やはりこれは非常に大切なところになってくるんだろうな。そういう意味で、この九十五条の二についてお伺いしたいというふうに思っております。

 まず、その前提として、九十五条、自衛隊自身の武器等防護、旧来からある規定でございますけれども、これについて、憲法上許される根拠とかを整理した上でないと九十五条の二がなぜ許されるかという議論にならないと思いますので、ちょっとそこをさせていただきたいと思うんです。

 まず、九十五条の規定がございます。これについては、この条文の特徴的なところがあるなと思うのが、まず、我が国に対する武力攻撃の発生といった自衛権行使の要件が満たされていないような状態においても、自衛隊の武器等が外国軍から攻撃を受ければ当該外国軍に対する武器の使用が認められるという条項です。

 法律上は、武器の使用に、大臣の命令とか許可であったり、そういうものが不要だということ。つまり、シビリアンの判断を介さずに、現場の自衛官のまさに判断で外国軍を攻撃する、武器使用をするということができる条文でございます。その対象についても、武器についても護衛艦であったり戦闘機であったり、そういったものも含まれるということになるわけです。

 これは、いわゆる平時の事態において、シビリアンの判断なく、現場の自衛官の判断だけで外国軍を相手として武器を使用することができるという、そして地理的な限定もないという条文でございます。ですので、ある意味非常に幅の広い規定だというふうに思っておるんですけれども、これがなぜ憲法九条、特に一項、武力の行使に当たらないと言えるのか。まず、その理由を教えていただきたいと思います。

深山政府参考人 まず、事務方から解釈を申し上げます。

 現行の自衛隊法九十五条による武器使用は、自衛隊の武器等という我が国の防衛力を構成する重要な物的手段を破壊、奪取しようとする行為からこれらを防護するための極めて受動的かつ限定的な必要最小限の行為であるという観点で、憲法第九条で禁止された武力の行使に当たらない、したがって、御指摘のように平時から適用できるという考え方でございます。

中谷国務大臣 あと、御質問で、いつでも武器を現場が使えるという御指摘がございましたが、一応、防衛省におきましては、この九十五条の規定を実施するために防衛大臣が武器等の防護に関する訓令を制定しておりまして、警護任務の付与、警護要領、武器の適切な運用を図っているところでございます。

吉村委員 先ほど、必要最小限の行為ということで憲法九条に違反しないという御説明がございましたけれども、そもそも、もともとPKO法の審議のときに、同法の二十四条にあるんですが、なぜ海外において武器使用が認められるかという議論がされておりました。

 そのときになされておった議論は、平成三年九月二十七日の「武器の使用と武力の行使の関係について」ということで見解も出されておりますけれども、自己または自己とともに現場に所在する我が国要員の生命または身体を防衛することは、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものであるから、そのために必要な最小限度の武器の使用は憲法九条一項で禁止された武力の行使には当たらないという説明がされているんですね。

 ですので、なぜ憲法に違反しないかというと、憲法も実体法ですから、憲法の前の概念として自然権的な権利、すなわち人であれば誰しもが持っている権利、それが憲法の上にあるわけですから、それを行使するのがPKO法の二十四条、だからこれは憲法九条一項に違反しないんだというのは非常にわかりやすい論理かなというふうに思います。

 それに対して、先ほどおっしゃっていたようないわゆる必要最小限度の行為ということですけれども、それがどうして憲法に違反しないということになるのか、その論理性がわからないんですね。この自然権的権利という解釈で自衛隊法の九十五条が説明できるのであれば、私はそれで合憲であると説明すればいいと思うんですけれども、そういった整理ができないのはどうしてなんでしょうか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、先生が御指摘されました平成三年九月二十七日の政府見解では、現行の国際平和協力法第二十四条に基づく武器使用につきまして、自己または自己とともに現場に所在する我が国の要員の生命または身体を防衛することは、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものであるから、そのための必要最小限の武器使用は、憲法九条で禁止された武力の行使には当たらないとしております。

 他方、冒頭御質問のありました自衛隊法九十五条に基づく武器の使用は、こちらは平成十一年四月二十三日の政府見解でも述べておりますが、自衛隊の武器等という我が国の防衛力を構成する重要な物的手段の破壊、奪取をしようとする行為からこれらを防護するのは認められているものということでございまして、PKO法審議のときに申し上げました自然権的なもの、自衛隊員という人の生命または身体を防衛するための自己保存の武器使用とは異なるという点がございます。

 このため、従来から、自衛隊法第九十五条に基づく武器の使用については、自己保存のための自然権的権利ではなくて、自衛隊の武器等という我が国の防衛力を構成する重要な物的手段を防衛するための極めて受動的かつ限定的な必要最小限の行為という整理で、憲法第九条で禁止された武力の行使には当たらないと申し上げているところでございます。

吉村委員 なぜ憲法に違反しないのかということの説明だと思うんですよね。結局、自然権的権利で説明ができないから、突如として、極めて受動的かつ限定的な必要最小限の行為だから許されると。だから、そこになぜ憲法九条一項に違反しないのかという根拠が全くできていない、なっていないというふうに思うんですね。

 これについて、平成十一年三月二十六日の日米防衛協力のための指針に関する特別委員会で議論がされております。九十五条の武器使用が認められる根拠についてのやりとりがされているわけでございます。

 これによると、大森政府委員の答弁になります。岡田委員の方から、自然権的な権利で説明できなければ、どうやって説明するんだというような質問がありまして、大森政府委員が答えていることなんですが、こういうふうに言っています。

 我が憲法九条によっても否定していない自衛権、すなわち我が国の平和と独立を守るための自衛権、これは素手では行使できないわけでございまして、どうしても物的手段が要る、それが、いざというときにその効用を消滅してしまっているということじゃいかぬわけでございますから、いざというときのための物的手段を保全するというのは、これは当然の認められる手段ではなかろうか、そういう意味では、自衛権を行使するための物的手段の保全というのは人命を防護するための自然的権利に匹敵する重要な基本的な権利であろう、これでおわかりいただけるんじゃないでしょうかという答弁をしています。

 これは今もお考えに変わりはないのかについてお伺いします。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘の、平成十一年三月二十六日の当時の大森法制局長官の答弁は承知しておりまして、私が前に申し上げた政府の考え方のよって来るところを御説明したものであると考えておるところでございます。

吉村委員 先ほどおっしゃった政府見解、では、その根本はどこにあるんですかということの理由について岡田委員から突き詰めて聞くと、結論として、いわゆる人命を防護するための自然的権利に匹敵する重要な基本的な権利、それが背景にある、だから憲法に違反しないんだ、そういうロジックかなというふうに思っております。それ自体が自然的権利そのものではないので、非常にわかりにくい、かなり苦しい答弁だとは思うんですが、いずれにせよ、そういった極めて限定的な根拠に基づくことによって憲法に違反しないというふうに今までは答弁されてきたんだ、この九十五条についてはそういった議論がされてきたんだろうというふうに思います。

 九十五条の解釈がその自然的権利からどんどんどんどん広がっていったらいけないんじゃないのかということが懸念されるわけでございまして、それについても過去のやりとりがあります。

 平成十五年六月十三日の外務委員会でそのやりとりがされているわけですね。九十五条の解釈が自然的権利からどんどんどんどん広がって、際限なく広がるんじゃないか、どこでとめたらいいんでしょうかということの議論がされているわけでございます。

 ここで山本政府参考人がそれに対して答えている言葉、このように言っています。

 いわゆるPKO法、それからテロ対策特別措置法におきまして、自己または自己とともに現場に所在する他の自衛隊員、もしくはその職務を行うに伴い自己の管理のもとに入った者の生命または身体の防衛のため、その防衛の武器の使用を認めておるわけでございます。

 これは、御指摘のとおり、まさにいわば自己保存のための自然権的権利というものでございますので、そのために必要な最小限度の武器の使用というものは、いかなる場合も憲法九条一項の禁ずる武力の行使に当たらないという考え方に基づいてやっております。

 このように、武器の使用が全て九条一項の禁ずる武力の行使に当たるとはもとより言えませんけれども、政府は、武力の行使とは、基本的には国家の物的、人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいうというふうに解してきておりますので、その相手方が国、または国に準ずる組織であった場合でも、ここからが大事だと思うんですけれども、憲法上の問題が生じない武器の使用の類型といたしましては、従来の自己等を防衛するためのもの及び自衛隊法九十五条に規定するもの以外にはなかなか考えにくいというふうに考えております。

 つまり、自然権的な権利、それによって憲法に違反しないよというところの派生からひもといていくと、自己防衛のためのもの、それからいわゆる自衛隊法九十五条、自国の武器を使っている人を守るために自衛官が武器使用をする、この九十五条に規定するもの以外はなかなか考えにくいというふうに答弁されているわけでございます。

 今回、では、九十五条の二でどういうふうに新たな提案がされているかというと、まさに外国、アメリカ合衆国の軍隊も含めそれ以外の国、防衛義務がない国も含まれるわけでございます、そういった国の武器等を防護するために日本の自衛官が武器を使用するということになっているわけですね。これは本質的に、自然権的権利あるいは自然権的権利に匹敵する重要な基本権、そういったところでは説明がつかない領域に入ってきているというふうに思っているわけでございます。

 そういう意味で、先ほどの平成十五年六月十三日の答弁、自己を防衛するためのもの及び自衛隊法九十五条に規定するもの以外にはなかなか考えにくいという答弁と矛盾する今回の規定じゃないかと思うんですけれども、それについて御見識をお伺いしたいと思います。

中谷国務大臣 御指摘の答弁は、武器使用の相手方が国または国に準ずる組織であった場合でも憲法上の問題が生じない武器の使用の類型としては、いわゆる自己保存型の武器使用の場合か自衛隊法九十五条による場合以外にはなかなか考えにくいという旨を述べられたものでございます。

 他方、今回新設する自衛隊法九十五条の二、これは、あくまでも武力攻撃に至らない侵害に対処するために設けるものでございます。条文上も、現に戦闘行為が行われている現場では行わない旨明記をいたしておりまして、本条により国または国に準ずる組織による戦闘行為に対処することはなくて、自衛隊が武力の行使に及ぶことはないようにしております。

 このため、今回の法律の改正により自衛隊法九十五条の二を新設することと御指摘の答弁は相反するものではないと考えております。

吉村委員 九十五条と九十五条の二というのは私は本質的に違うなというふうに思うのは、あくまでも外国軍の武器等を防護するということなんですよね。自国のものではない。

 自国のものに関しては、もともとはそういった自然権的権利から派生した、あるいはいろいろ本当に厳格な中で認められてきた。その認められる場面についても、当然これは武力攻撃に至らないいわゆる平時の場面であることは承知しておりますし、逆に言うと、集団的自衛権の行使の要件なんかが検討されない段階の状態のことなんですよね。

 米国あるいは外国からの要請に基づいて防衛大臣が派遣を決めるわけですけれども、実際に武器を使用するかどうかというのは、当然要件があるのは存じておりますけれども、自衛官が判断するということ、そうすると非常に有事が発生する可能性も当然高くなると私は思っていますし、本来的な自己保存の権利であったり、あるいは自国のものであれば自然権的権利というものに基づいて憲法に違反しないというのはわかるんだけれども、今回は、外国からの要請に基づいてみずからこっちから出向いていって、守るべきものも外国軍の武器。そして、自衛官が武器を使用するというのはやはり根本的に違う。

 憲法に違反しないという根拠が全くわからないんですけれども、その辺についてちょっとお伺いしたいと思います。

中谷国務大臣 大変重要な御指摘ありがとうございました。

 この九十五条の二の武器使用は、自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に現に従事している米軍等の武器等を武力攻撃に至らない侵害から防護するための、極めて受動的かつ限定的な必要最小限の行為でございます。条文上も、現に戦闘行為が行われている現場では行わない旨明記しておりますし、また本条により国または国に準ずる組織による戦闘行為に対処することはなくて、自衛隊が武力の行使に及ぶことはしないようにいたしております。

 そこで、いかにこれを規定するかというと、まず、国際的な武力紛争が発生しておりませんので、また周囲にその兆候も認められない状況において、突発的に戦闘行為が発生することは考えがたいところでございます。また、防衛大臣が警護の実施の可否について判断するに当たっても、あらかじめ自衛隊と米軍等が連携して行うことになります活動の目的、内容のほか、戦闘行為が行われるおそれを含む周囲の情勢等を踏まえて、現に戦闘行為が行われている現場において自衛官が米軍等の武器を警護することがないように、客観的かつ合理的に行うことになります。

 しかしながら、万が一、状況の変化によって戦闘行為が発生するおそれがあると認めるに至った場合には、本条により戦闘行為に対処することがないように、防衛大臣は速やかに本条による警護の中止を命ずることが規定されておりますので、本条による武器の使用が武力行使に当たることはないと考えております。

吉村委員 武器の使用が武力行使に当たらないというのはもうわかっていることでして、その武器の使用をきっかけとして当然相手からも反撃してくるわけですから、そういった武力行使の場面、要はそういった機会を誘引する可能性が非常に高いというふうに思いますし、私がお聞きしたのは、なぜ憲法上許されるのか、そこをお聞きした。それに対して答えがないわけです。

 例えば、自国の防衛設備、防衛武器、それは外国の武器とも同視できるんだ、だから許されるんだというならまだわかるんだけれども、そういう説明でもない。

 二十六年五月二十二日の外交防衛委員会で我が党の小野委員が質問しておりますけれども、我が国の護衛艦とそれから外国の軍艦、それは同列に論じることができるのかという質問、それに対しても、答弁としては、いや、それは別物ですよというふうに答弁をされているわけですね。

 だから、やはり自国の武器等の防護と外国から要請されて警護に当たって外国の武器等を防護する場合というのは本質的に違うと思うんです。それに対する憲法上の説明が全く理解できない。おっしゃっているのは受動的かつ云々という説明ですけれども、それがなぜ憲法上許されるのかという説明になっていないと思うんですよね。そのあたりについて御説明をお伺いしたいと思います。

黒江政府参考人 新設します九十五条の二の規定の考え方でございますけれども、ただいま先生御指摘になられました、なぜ外国の軍の部隊の武器等を自衛隊の武器と同じように扱えるのかということでございます。

 これにつきましては、条文上、現に我が国の防衛に資する活動に自衛隊とともに従事をしておる、そういう要件がかかっておるわけでございます。この意味は、先ほど来御議論がありましたけれども、自衛隊の武器の場合には、我が国の防衛力を構成する重要な物的手段であるということを理由といたしまして、憲法上これは許される、武器を使って守っても許される、そういう論理を採用してきておるわけでございます。

 ここで申し上げたいのは、現に我が国の防衛に資する活動に自衛隊とともに従事している、そういう外国軍の武器であれば自衛隊の武器と同視し得る、そういう考え方でございます。

 したがいまして、いわば現在の九十五条の考え方を参考といたしまして今回の九十五条の二の規定ができておる、そういう関係でございます。

吉村委員 自衛隊の武器と同視できるということでございますけれども、ちょっと指摘させていただきます。

 二十六年の五月二十二日、参議院ですけれども、外交防衛委員会で政府参考人はこう答えています。いわゆる僚艦の護衛艦、つまり自衛艦の、こういう艦隊も当然武器に入るわけですけれども、他の部隊に対する防護の問題と、それから外国籍の特に軍艦といったもの、これを同列に論ずることはできないわけでございますというふうに答弁されているんですね。だから、それを同視するというのはちょっと余りにも乱暴な議論だというふうに思います。それで憲法上許されるというのは理屈にならないだろうというふうに思います。

 それから、防衛に資する活動、これの定義についてちょっとお伺いしたいと思います。

 ここの九十五条の二というのは防衛に資する活動というのが一つの要件になっているわけなんです。例えば我が国を防衛するための活動をしてもらっているようなとき、例えば防衛義務に基づいて我が国を防衛するための活動をしてもらっているようなときであればこれはわかるんだけれども、防衛に資する活動というのでは余りにも範囲が広くなるんじゃないのかなというふうに思うんです。この防衛に資する活動というのは何を指すんでしょうか。

黒江政府参考人 御指摘の我が国の防衛に資する活動ということでございますけれども、これは、我が国を実力をもって守ることに資する、そういう活動ということを意味しております。

 ちなみに、これに当たり得る活動といたしまして我々が考えておりますのは、例えば、我が国の安全に重要な影響を与えるような事態におきまして行われる輸送であるとか補給といった活動を行っている、あるいは情報収集、警戒監視の活動といったものをともに行っている、あるいは共同訓練といったものが考えられるというふうに我々としては捉えております。

吉村委員 警戒監視も含まれるということなんですけれども、実際の今の状況、世界的な動きを見ると、やはりこれは私は南シナ海なんじゃないのかなと思います。例えば、今回の一連の法制も、もし我が国が何もしないで安全保障について放置しておれば、南シナ海で起きることは東シナ海でも起きるんじゃないかというような危惧も含めて、こういった防衛についての整備をいろいろされているんだと思うんですね。

 南シナ海で、今、米国が中国の軍事目的での埋め立てについて警戒監視活動をして、日本はまだしているわけではないですけれども、これについて、先ほどの法文でいくと、九十五条の二の防衛に資する活動ということを大臣が判断すれば、米国から警護についての要請があった場合は参加する場合があり得るというような事態は想定し得るんでしょうか。

中谷国務大臣 現在は、我が国周辺、特に東シナ海におきましては警戒監視を重点的に行っておりますが、南シナ海におきましては現在自衛隊として常続的な警戒監視活動を行っておらずに、またその具体的な計画を有しているわけではございません。

 新設する九十五条の二がどのような場所で実施されるかにつきましては、具体的な状況によって判断されるために、あらかじめ申し上げることは困難でございます。

吉村委員 先ほどもあって、なかなか具体的なことはおっしゃいませんけれども、可能性としては当然これは将来的にあり得る話だと思うんですね。

 そうすると、米軍の要請に基づいてこちらが監視活動、防衛に資する活動をともに行うというような場合、中国とは言いませんけれども、武力攻撃に至らないような侵害行為を受けた場合、日本は米軍を守るために、武器を守るために武器使用が認められる、そういうことがあるということの規定だと思うんです。そうすると、当然、敵国としては、それに対して反対の攻撃をするわけでございます。

 となると、結局、この九十五条の二の武器等防護については、集団的自衛権か個別的自衛権か、その場面はともかくとして、外国の要請に基づいてこちらが行って、外国軍の武器を守るためにこちらから武器使用をする、そして結果的に自衛権を行使せざるを得なくなる、そういった状況に、この日本がそういう事態になってしまう可能性が広がる条文がこの九十五条の二ではないかと思うんですけれども、その点についてはどうでしょうか。

中谷国務大臣 ただいま御発言がございましたように、警護の実施につきましては、米軍等から要請を受けて、防衛大臣がその都度、米軍等の部隊の活動の目的、内容、当該活動が行われる状況等を踏まえまして警護の必要性について判断することとなっておりまして、自衛隊の武器等を警護する場合よりも、より限定的な運用となることは明らかでございます。

 また、あくまでも武力攻撃に至らない侵害に対処するために設けるものでありまして、条文上も、我が国の防衛に資する活動から現に戦闘行為が行われている現場で行われる活動を除くことによりその旨を明らかにしておりまして、この点においても現行の第九十五条とは異なるわけでございまして、十分に厳格な要件が定められておりますし、防衛大臣も、そのような意味で、不測の事態とかいうのを招かないように十分留意して運用してまいる所存でございます。

吉村委員 問題なのは、時の防衛大臣の運用でこれは決まってくるんですね。

 現場においても、実は、防衛大臣が指揮するわけではなくて、現場の自衛官が武器を使用するかどうかの判断をするわけです。どの戦争もそうですけれども、最初はそういった小さなところから始まる。そういった意味で、この九十五条の二というのは、なぜそれが憲法に許されるのかということも含めてですけれども、行使要件については非常に厳格に考えないといけないんじゃないのかなというふうに思うわけですね。

 しかも、対象となる国なんですけれども、これについてはアメリカ合衆国の軍隊その他の外国の軍隊というふうに言われているわけです。これは防衛義務があるアメリカ合衆国でも私は問題かなと思うんだけれども、防衛義務がなくても、その他の外国の軍隊でこれは法文上は当てはまる、これは際限なく広がるんじゃないかという危惧もあるわけです。

 ここの外国の軍隊というのは何を指すのか、どういった基準に基づいてこの九十五条の二の外国の軍隊の認定がされるのかについて、御意見をお伺いしたいと思います。

黒江政府参考人 条文上の外国の軍隊に当たり得る国でございますけれども、もとより、この国につきましてあらかじめ特定するということはいたしておりませんし、これをすることはなかなか難しいということでございます。

 他方、条文上、先ほども御紹介いたしましたけれども、自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に現に従事する、そういう外国軍でございますので、これは当然その際にお互いに武器等の警護をし合う、あるいはこの条文で言えば、自衛隊にみずからの武器の警護を依頼する、そういう国であります。

 さらに、情報共有を初めとしまして緊密な防衛上の関係がなければそういうことというのは実際にはできない、現実的にはできないわけでございますので、この対象となる国につきましてはおのずから限られるというふうに考えてございます。

吉村委員 私の質問のとき、なかなか大臣の出番が少ないような気がするんですが、前提事実じゃなくて、これは理念というか基準について私はお聞きしているので、大臣にお答えいただきたいと思うんです。

 では、どこの外国まで含まれるんですかという、そこの価値判断というか、今は基準がないとしても価値判断というのはあると思うんだけれども、これはアメリカ合衆国だけに限ればまだわかるんですけれども、その基準というのはどこにあるんですか、考え方として。

中谷国務大臣 基本的には、条文に書かれておるように、我が国の防衛に資する活動をしている国でございます。この件につきましては防衛大臣が判断をするわけでございます。

 委員御指摘のように不測の事態とか万が一が考えられるわけでございますが、状況の変化により戦闘行為が発生するおそれがあると認めるに至った場合には、本条により戦闘行為に対処することがないように、防衛大臣は速やかに本条による警護の中止を命じるということになります。

 この件につきまして先ほど私は規定をしていると発言いたしましたが、法には規定されていなくて、運用上中止を命ずるということでございます。ここは訂正させていただきます。

吉村委員 現状でいえば、例えばオーストラリアは入るんですか。

中谷国務大臣 あらかじめ特定国を明示することはよろしくないと思っております。

吉村委員 だから、結局その範囲が非常に不明確なんです。私が一番最初に九十五条についてなぜ時間をかけて議論したかというと、やはり憲法に違反しない根拠というのが九十五条の二は極めて薄いと思っているんです。そういう意味でも、非常に限定的に解釈しなければならない中で、その条文の基準も決まっていない、そのまま大臣で判断できるというのはちょっとどうなのかなというふうに思っております。

 それから、九十五条の解釈で、武器を使用できる、行使の要件を定められていますよね。十一年四月二十三日の解釈において定められているわけです。それは自衛隊法九十五条だけれども、九十五条の二においては九十五条の行使要件がそのまま並列で横になるのか、あるいは新たな要件があるのか、それはどうなんですかね。

中谷国務大臣 まず一問目の、先ほどのオーストラリアの件でございますが、米軍以外の外国軍隊の部隊の武器等であっても、自衛隊と連携して行われる我が国の防衛に資する活動に現に用いられているのであれば、我が国の防衛力を構成する重要な物的手段に相当すると評価できます。

 条文上、米国以外の国についてはあらかじめ特定しておりませんが、自国の武器等の警護を自衛隊に依頼するという事柄の性質を踏まえますと、情報共有を初め防衛分野において我が国と密接な協力関係にある国におのずから限られると考えております。

 あとの質問につきましては政府委員の方から答えさせていただきます。

黒江政府参考人 新設します九十五条の二の適用の行使の要件ということでございますけれども、これは、先ほど御質問がありましたように、平成十一年の四月二十三日の政府見解で現行の九十五条の適用につきまして厳格な要件を示してございますけれども、この要件と同様であるというふうに考えております。

吉村委員 その要件の中にこういった要件があるんですね。武器等の退避によってもその防護が不可能である場合など、他に手段のないやむを得ない場合でなければ武器を使用できないことというふうにあります。

 我が国の自衛隊であれば武器等の退避をするとかいったことを主導的に当然できますけれども、外国の軍隊の武器を退避、誰がどのような判断でされるのかどうか。それから、それによっても防護が不可能な場合であるのかどうか、あるいはほかに手段のないやむを得ない状態であるのかどうか、それは、外国の武器で外国軍がオペレーションをやる以上、こちらとしては判断できないんじゃないかというふうに思うんですけれども、それはいかがですか。防衛大臣に。

黒江政府参考人 武器の行使について、自衛隊としてそういった行使の判断というのは難しいのではないか、そういう御質問だと思いますけれども、九十五条の二の規定に基づきまして仮に自衛隊が米軍等の部隊の武器等を防護するということになりますと、当然のことながら、最初に大臣からもお話がございましたけれども、先方からの要請といったものがまず前提になるわけでございます。なおかつ、そこに至るまでの間には、当該外国の軍隊と自衛隊との間で緊密な調整を経た上でないと、すなわち先方の外国におきましても我々のこういった九十五条の二の規定の性格といったものをきちんと理解した上でないとこれについて合意ができない、まずそういう制約がございます。

 また、現場におきましても、これはお互いに、武器を使って相手を守るということでございますので、極めて緊密な連携がとれていないといけないということでございます。そういった連携をとった上でこの規定を実施していくということでございますので、したがいまして、これがアプリオリに自衛隊では判断ができないということではなく、緊密に調整しながら実施をしていくということであると考えてございます。

吉村委員 結局、外国軍との緊密な連携をとらないとこれが行使できないということ。事態としては、武力攻撃に至らない事態、あるいは弾が飛んでくるような事態かもわからないけれども、実質これは集団的自衛権の行使とほぼ同じような状況ですよね。そういった中で、その要件が厳格に定められていない、それは非常に問題だろうというふうに思っています。

 外国の武器等防護の要件は、これは憲法に違反するんじゃないかという懸念もある中で、非常に厳格に規定していただかないと、単に自衛隊の九十五条の場合を準用するとかではなくて、しっかりとした基準をつくっていただかないと、やはりシビリアンコントロールが及ばない異常な状況の中での武器使用になるわけですから、それが将来的に自衛権を行使するといった場面に発展する可能性がある、そういったところであると思うので、そこは厳格にやっていただきたいというふうに思います。そのあたりについて、最後。

中谷国務大臣 本日は、大変重要な点を御指摘いただきまして、本当にありがとうございました。

 大前提は武力行使にならないことでありますし、この法律も武力攻撃を受ける前までの対応であり、戦闘行為が行われていない現場で実施をいたしますし、また運用等につきましても、連絡調整を通じまして、我が国の警護を行う自衛隊において主体的かつ的確に判断をしてまいりたいと思っております。

吉村委員 本日質問させていただきました武器等防護については非常に重要な論点であると思います。これが憲法に違反しないという根拠をしっかりと示していただきたいと思います。その基準をしっかり定めていただきたいと思います。

 平成十三年十一月八日の参議院の外交防衛委員会でも、そういった中で、自衛隊が警護任務を行うときの憲法九条との関係を問われているときに、十分慎重な検討が必要であるというふうにも答えています。

 十分慎重な検討が尽くされていると私は思わないですし、その点については本当に非常に重要な点であると思いますので、政府としての統一見解を文書で委員会に提出していただきますよう、委員長からも要請をお願いしたいというふうに思います。

浜田委員長 理事会にて協議させていただきます。

吉村委員 以上で私からの質問を終わります。

浜田委員長 次に、木内孝胤君。

木内(孝)委員 維新の党、木内孝胤でございます。

 本日は、日米ガイドライン、そして国家安全保障会議に関連する法案について質疑をさせていただきたいと存じます。

 本日で審議時間が約三十時間となります。先週末にありました世論調査におきましても、なかなか審議の内容がわかりづらいと。私も連日、テレビやあるいは議事録等で全ての審議をフォローさせていただいておりますけれども、連日参加している私ですらなかなかわかりづらい部分が正直ございます。

 こうした中で、私が一番大切にしておりますことは、やはり国民に対するわかりやすさだと思っております。全体観の議論も大変大切ですし、木の議論も大切ですし、きょうもずっと審議がありました枝葉の細かい議論の積み上げ、これも大変重要でございます。

 ただ、よく言われますのが、ちょっと枝葉に入り過ぎると時々わからなくなるので、時々全体観を一回示してほしいというようなことで、ちょっと基本的なことについてお伺いをしたいと思います。

 資料を用意したんですが、今回、日米安全保障体制の強化ということで議論をさせていただいておりますが、改めてお伺いいたします。戦後七十年間にわたる日本の平和と安全を守ってきたもの、これは何だとお考えでしょうか。防衛大臣にお伺いいたします。

中谷国務大臣 まず、戦後七十年、日本の平和と安定が守られた理由には、憲法の平和主義がございます。そして国民の意識。戦後、日本の安全保障としてしっかりと自分の国は自分で守るんだという意識、そして自衛隊と日米安保。こういったものが機能し、抑止力をきかせてきたのも、もう一つはこういった在日米軍と自衛隊の存在であろうと思います。

 特に、自衛隊の諸君が日夜訓練に励み、しっかりと日本の国土を守っていくとの強い意思を持って任務に当たってくれていることによって、戦後の日本は平和を享受することができました。

 もちろん、外交によって多くの国々と友好関係を構築してきた、このことも日本の平和と安定に大きく寄与したものだと考えております。

木内(孝)委員 こうした中で、今、日米安全保障体制を強化、深化させることというのは、私も従来から強く問題意識を持っておりまして、いろいろなハードルを越えながらこれを実現していかなければならないと思っております。一方で、ここの深化に重点を置く余り、ほかのことがおろそかになっているのではないかという問題意識を持っております。

 具体的に言いますのは、例えば外交。これは世界秩序の中の日本の立ち位置ということで、日米同盟の強化は私は大変重要なことだと思っております。しかしながら、今我々が目指しているのは日米対中国という新冷戦でないことは明らかでございます。にもかかわらず、米議会演説の後の安倍総理の演説の中では、総理は北朝鮮と同列に中国を引き合いに出して、だから日本の防衛力を強化しなきゃいけないんだ、抑止力を強化しなきゃいけないんだ、そういう文脈で述べていらっしゃいました。

 私はある意味これは異次元の政策転換だと考えておりまして、他国が非常に慎重に見ているさなかに配慮が欠ける。先日のやじ等について申し上げる気はございませんけれども、非常に国民に対しても配慮が欠けている。

 こうした微妙な話を扱っているわけですから、私は岸田大臣とは外務委員会等でも質疑させていただいている立場で、大臣は比較的といいますか非常にそういうことを配慮する大臣だなとは考えておりますけれども、こうした軽率な発言、これは大臣として総理にぜひ、今後はしないようにというか、総理に対して御指導ということはなかなかお立場上難しいかもしれませんけれども、軽率な発言はぜひ控えていただきたい、そのように思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 外交におきまして、さまざまなバランス感覚は大変重要であります。我が国の国家安全保障戦略の中にあっても、外交を通じてまずは好ましい国際環境をつくっていかなければならない、これが明記をされています。

 その際に、注目しなければならない点、配慮しなければならない点、本当にさまざまな点があります。その中で、日米同盟はもちろん重要であります。しかし、あわせて、国際社会のパワーバランスの変化、あるいは経済外交のありよう、あるいはさまざまな国際機関の枠組み、こういったものを俯瞰しながら、我が国の国益を守るためにはどうするべきなのか、こうした外交を進めていかなければなりません。

 具体的に演説の部分を取り上げられましたが、基本的に、今申し上げましたさまざまな観点に配慮しながら、バランス感覚を持ちながら我が国にとって好ましい国際環境をつくっていく、こういった外交を進めていくことは大変重要なことであると基本的に考えております。

木内(孝)委員 一回発言した内容はなかなか撤回できません、消すことはできません。しかしながら、今後につきましては、ぜひそうした配慮を十分にお願いしたいと思います。

 続きまして、防衛大臣に憲法観についてお伺いをしたいと思います。

 きょう午前中の質疑でも出ておりましたが、防衛大臣の御著書の中で、私も、右でもない左でもないという御著書を拝見いたしました。大臣は明確に、憲法解釈には限界があるということを述べていらっしゃいます。

 今回の解釈の変更は、異次元の解釈の変更だとお考えでしょうか。

中谷国務大臣 私も、当初は、集団的自衛権はこの憲法から認められないという立場でございました。

 しかし、この点は、我が党の中でもう十年近く議論を重ねております。今回、与党の中でも議論をいたしました。そういう中で、今回の集団的自衛権におきましては、他国を防衛するためのいわゆる国際的な集団的自衛権ではなくて、あくまでも我が国を防衛するため、必要最小限度の範囲の中の集団的自衛権であるということでございます。その論理にしましても、昭和四十七年に政府が、憲法における武力の行使が容認されるための基本的な論理、これは一切変更していない。

 この基本的な論理は、昭和三十四年に戦後ただ一回だけ最高裁で憲法の判決が下されておりますが、この中で「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。」とする考え方と軌を一にするものでありますし、また、新三要件の中で許容されるのはあくまでも自衛の措置としての武力の行使に限られており、我が国または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生が前提でございます。また、他国を防衛すること自体を目的とするものではございません。

 このような考えのもとに行われる今般の法整備におきましては、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢である専守防衛について、その定義、そしてそれが我が国の防衛の基本政策であることにいささかの変更もない。そのため、解釈改憲との批判は当たらずに、平和国家としての日本の歩みはこれからも決して変わることではございません。

 その歩みをさらに強いものにするために、憲法の解釈に基づいてこの法律をつくったということでございます。

木内(孝)委員 解釈改憲ではないという話ですけれども、いろいろな解釈の変更につきましては、内閣法制局が大分スタンスを変えたという理解でございます。今までだめだったものがよくなった部分というのも一部ございます。

 内閣法制局の見方も大分変更があったというのは、大臣のお考えに影響はございましたでしょうか。

中谷国務大臣 これは、正確に言いますと、去年の今ごろ実施されておりました与党の安全保障法制に関する協議会の中で、今の日本の安全保障を考えまして、現状で対応できないケースを十五事例挙げて、ではどうしたらいいのかという議論の中で、与党で議論を重ねた結果、憲法上容認できる場合はどういうケースなのか、そして憲法的にどういう見方をするのか、これは与党の議論を通じてつくられたものでございまして、あくまでも政党であり政治家同士の話し合いの中で積み上がってきた議論、解釈ではないかと私は思っております。

木内(孝)委員 先ほどは、憲法の法的安定性という話がございました。

 もともと私の理解では、安倍総理は第一次安倍内閣のときに集団的自衛権行使容認を実現させようとしていた、しかしながら当時の内閣法制局の抵抗に遭ってこれを断念した。二回目、総理に就任したときに、このままこれを進めても、集団的自衛権行使容認、これの解釈を変更することはままならないだろう。その結果、安保法制懇の主たるメンバーであった小松氏を法制局長官に任命した。

 この人事への政治介入によって、私は、日本の憲法というのは一内閣、一政権によって解釈を変えることができるという極めてあしき前例をつくったという理解でおります。そう見ない方もいらっしゃるかもしれませんけれども、私は極めて悪い前例をつくったと思います。

 私は、安保法制懇の答申の是非については、評価している部分もたくさんございますし、別に、だめだとか、いいとかいうことではなくて、そこの中核メンバーである方をいきなり法制局長官にするというのは、今後、将来新しい内閣がどうしても解釈を変えたい場合は、そうできる前例をつくってしまったと思っております。

 この点につきまして防衛大臣の御意見を伺います。

中谷国務大臣 人事案件につきましては私が言及できる立場にはございませんが、事実といたしまして、憲法のあり方につきましては非常に時間をかけて、六年以上かかっておりますけれども、割とオープンに物事を進めてきております。政府の中の審議会もそうであります。

 しかし、これの解釈を決定いたしましたのは政府だけではございません。与党の中で非常に濃密な熱心な議論をして、現行の憲法の中でどういった点が容認されるのか、これは相当な作業量を通じて今の結論に至ったわけでございますので、政府また総理周辺が独断で決めたということではございません。これはしっかりとした議論に基づいて築き上げたものであると私は確信をいたしております。

木内(孝)委員 そこの中身につきましては、ある意味ブラックボックスな部分もございますので、これ以上追及はいたしませんけれども、私は、憲法九条、日本の平和国家というアイデンティティーは極めて重要であると考えております。

 大臣におかれましては、この九条を非常に強く尊重する立場であるという理解でおりましたけれども、やはり今回の法案の審議を見ていますと、どうしても、憲法をやや軽視しているのではないかと思われる事例が散見されます。ぜひ、この平和国家あるいは専守防衛、こうした諸外国との信頼等につきましてきちんと丁寧な議論を続けていただきたい、そのように思っております。

 続きまして、新ガイドラインについてお伺いをいたします。

 ガイドラインの中身、まだその合意をした段階で、中身については細かいところはわかっていないところがたくさんございます。しかしながら、一つ明確にわかっていることは、非常に任務の範囲が広がるということでございます。

 私は、この任務の範囲が広がるということを評価している立場でございますので、それは率直に評価したいと思っておりますが、いろいろな任務が広がるということは、それ相応の予算の確保ということも重要になってくるわけです。

 今の段階では何も申し上げられないということになるかもしれませんが、これだけ大きな合意をする中で、合意は現時点では法的拘束力はないということは承知の上で、やはりこれだけ任務の範囲が広がると相応の予算がふえる。予算がふえるということは、これは国民にどういう形で、いつごろお示しできるのか。あるいは中期防衛計画もございます。この中期防衛計画を前倒しで見直したりするのか、あるいは防衛大綱を前倒しで見直したりするのか。そこの点につき御開示いただければと思います。

中谷国務大臣 今回、日米で新しいガイドラインを合意いたしました。これは十八年ぶりに改定するわけでありますので、現在の国際情勢に合わせていこうというところでございます。

 あらゆる事態に対応できるようなシームレス、宇宙、海洋等も含めたグローバルに対応する、そしてより機能的にということで同盟メカニズムといった問題、この三つの柱を中心にいろいろなことをお話ししましたが、やはりアメリカも財政的な問題があります、日本も財政的な問題がございますので、こういう点を踏まえて、より機能できる日米協力を培おうといたしておりまして、今度のガイドライン、新たな法制によって自衛隊の役割はより一層重要になってくる。

 これによって新しい装備が要るのではないかとの御指摘がありますけれども、基本的に、装備の大増強が必要になるということではございません。

 自衛隊の装備や予算につきましては、今回のガイドライン、法整備とは別途、一昨年末に防衛計画の大綱、中期防が閣議決定いたしておりまして、厳しさを増す安全保障環境を踏まえて、自衛隊の体制の充実強化を図っておりますし、また中期防におきましては、五カ年の防衛費の総額を明示し閣議決定となっていますが、五年間、実質平均〇・八%の防衛費を伸ばす計画になっております。

木内(孝)委員 これだけ任務の範囲を広げながら予算の規模等を明示しないということは、私は国民に対して不誠実ではないかと思いますけれども、では、この〇・八%という枠内で今後全てを実現していくという御答弁でよろしいでしょうか。

中谷国務大臣 現在の防衛力の整備は大綱、中期防で示されておりまして、それに従って実施をいたしております。

 また、予算等も折衝を通じて国会にお出しして、審議をお願いするということでございます。

木内(孝)委員 今回、ホルムズ海峡の機雷除去に焦点が当たっておりますが、これはある意味有事の話でございますので、いつ起こるか起こらないかわからない。でも、起こらないかもしれないことに関しても全て法整備をしなきゃいけないということはよく理解する一方で、米国は七十五兆円ぐらいの国防費の予算がございます、これを喫緊の課題としてかなりのスピード感を持って減らさなきゃいけない。今、財政崖法というのがございまして、相当強いプレッシャーでこの軍事費を落とさなきゃいけない。七十五兆円というのは非常に大きな金額です。

 では、この〇・八%程度で、米国との信頼関係を損なわずにきっちり遂行できるという合意ができているという理解でよろしいんでしょうか。

中谷国務大臣 日本の安全保障というのは、日米同盟もございますが、基本的には我が国が主体的に日本の防衛をしっかりやっていくということでございまして、周囲の安全保障環境の変化に応じて自衛隊の体制移行、これは、民主党時代から自衛隊の新大綱の作業を始めましたけれども、統合機動防衛力ということで、現在ある自衛隊の装備、機材、能力をいかに効率的に運用するかという点にシフトしておりまして、そういう体制ができるために所要の予算を要求して整備しておりますが、基本的には今の大綱、中期防に従って防衛力を整備しているということでございます。

木内(孝)委員 きのうも、アキノ・フィリピン大統領が来日されていらっしゃいました。共同宣言の中で、南シナ海の南沙諸島で海洋をめぐる紛争を国際法に従って解決する重要性を確認したとしています。

 この南シナ海、平時で協力できる共同訓練あるいは警戒監視等、こうしたことをやる必要はないのか、あるいはやる予定はないんでしょうか。

中谷国務大臣 今起こっている現象につきましては関心を持ちながら注視をしていく必要がございますが、しかし、我が国にとりましては東シナ海という大変広い海域をしっかり守っていかなければなりませんので、ここだけは警戒監視を重点的に行っております。

 現在、南シナ海におきましてこういった警戒監視を行う計画は持ち合わせておりませんが、こういった地域においては関心を持っているということでございます。

木内(孝)委員 私は基本的に一部のエリアでは逆にふやすべきという立場でございまして、もう既に何回もいろいろな方から論点になっているホルムズ海峡の機雷除去につきましては、新三要件に該当するというロジックが、どうしても、何度聞いても理解できません。恐らく同じ答弁だと思いますので、ここについては今お伺いをいたしませんけれども。

 このホルムズ海峡の機雷除去の新三要件、私は、こういう雑な解釈を一つでもやってしまうと、要するに、いつでも、どこでも、何でもと、歯どめが全くきいていないというふうにどうしても受け取ってしまうんです。これは国民の多くも受け取っております。

 例えば、新三要件があるからとか、あるいは国会承認の歯どめがあるから大丈夫なんだという説明があります。自民党さんのチラシをたまたま先ほどいただいたので見てみますと、「「新三要件」や国会承認などの厳しい歯止めがあります」となっております。国会承認がある、これは非常に大切なことだと思っております一方で、重要影響事態あるいは存立危機事態、こうしたものは緊急時には事後承認でいいという理解でおりますけれども、そこの緊急事態という定義はどなたがどういう形で決定されるんでしょうか。

中谷国務大臣 これは政府が判断をいたしますので、最終的には総理大臣が御判断をされますが、基本的には、国会の事前承認、これが原則でございますが、緊急事態、いとまがないという場合におきましては、法律によりまして事後承認という規定を設けているわけでございます。

木内(孝)委員 そうしますと、例えばホルムズ海峡の場合は、石油が入ってくるか入ってこないかということを判断するわけですから、ある意味そこまでの緊急事態ではないのではないかと推察されます。

 では、ホルムズ海峡で機雷除去をする際の認定をする場合のやり方においては、これは緊急事態だというみなし方はしないで、したがいまして事後承認という形はとらないという理解でよろしいでしょうか。

中谷国務大臣 我が国や国際社会の平和と安全が違法な武力の行使により脅かされているというような場合に諸外国が行う正当な武力の行使を支援することは、その事態の拡大を防止して事態の収拾を図るためのものでございまして、我が国と国際社会の平和及び安全の維持のためには極めて重要でございます。

 一方で、このような外国の軍隊への支援を行う場合には、民主的統制の観点から国会の関与が極めて重要と考えておりまして、国際平和支援法においては、国際の平和及び安全に寄与する目的で自衛隊を海外に派遣するための一般法であることに鑑みてやります。そのときは例外なく国会の事前承認を行いますし、重要影響事態におきましても、即時の対応が必要と判断されるような時間的な余裕がない場合も想定されるから、現行法と同じく、緊急の必要がある場合には事後承認ということにいたしております。

 原則は、対応措置の事前、前に国会の承認を得なければならないということでございまして、国会の承認に係る判断は、憲法と法令に従って、我が国の国益に照らして主体的に行ってまいりたいと思っております。

木内(孝)委員 結局、事後か、事前承認が必要かということが全く明確でございません。これは非常に大きなポイントだと思っております。ぜひもう一回、簡潔に御答弁をお願いいたします。

中谷国務大臣 先ほどにつきましては重要影響事態の国会の手続でありましたが、存立事態につきましては自衛隊の防衛出動でございます。

 これはあくまでも事前に国会の承認を求めることが原則でございまして、仮に御指摘のような活動を行う場合におきましては、基本的には事前に承認を求めるということでございますが、緊急の場合におきましては法律の規定に従って判断をするということでございます。

木内(孝)委員 今、国民の最も大きな関心事の一つは、こうしたいろいろなことを、中身はわからないけれども、一定の歯どめがかかっているんだという安心感があるから、百歩譲って、仕方ない、応援するかという方も大勢いらっしゃると思うんです。

 ただ、例えばこれは自民党さんのチラシですけれども、事前、事後の話は一切書いてございません。これは事前承認が必要なのか、事後承認が必要なのか、緊急時という定義も一切入っておりません。こんな乱暴な説明を国民にしているというのは、私は不誠実だと思います。

 そこの答弁、いま一度お願いいたします。

中谷国務大臣 基本は事前でございます。

 例外といたしまして、特に緊急の必要があり事前に国会の承認を得るいとまがない場合に限って事後承認でございますが、原則は事前の国会承認でありまして、国会の御判断というのは最も大事なものだと認識しております。

木内(孝)委員 緊急時と判断されて事後承認の場合、該当する情報は特定秘密に該当いたしますか。

中谷国務大臣 それは国会で御承認をいただくということで、政府としては国会に基本計画等もつくった上でお話をするわけでございまして、あらかじめ、そういうことにつきましてはいろいろなケースがあるわけでございますので、この時点でその点についてお答えすることは控えさせていただきます。

木内(孝)委員 特定秘密に当たるんでしょうか、当たらないんでしょうか。

中谷国務大臣 政府といたしましては、海外における活動を含めて、自衛隊の活動に関しては国会また国民の皆様に適切に情報公開を行い、その理解を得ていくことが極めて重要でございます。

 このため、国会や国民の皆様に必要な情報が適切に公開されるように努力をしてまいりたいと思っております。

木内(孝)委員 いずれにしましても、事前か事後かという基準が極めて不明確ということはわかりましたが、結局、ホルムズ海峡につきましても……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

木内(孝)委員 これが事前なのか事後なのかということが、全く御答弁いただいておりません。

 ホルムズ海峡は事前承認となるんでしょうか、それとも事後承認となるんでしょうか。

中谷国務大臣 基本的には、事前の承認を求めるということになると想定いたしております。

木内(孝)委員 では、事後もあり得るという理解でよろしいですね。

中谷国務大臣 基本的には、事前に国会の承認を求めることになると想定しております。

木内(孝)委員 ホルムズの機雷除去におきまして、事後承認もあり得るんでしょうか。

中谷国務大臣 具体的にどういう状況であるのか、これは将来の話でございます。

 やはり原則は事前に国会の承認をいただく、そして例外に、特に緊急の必要があり事前に国会の承認を得るいとまがない場合につきましては事後の承認ということでございます。

木内(孝)委員 では、ホルムズは事後もあり得るということで理解をいたしました。

浜田委員長 中谷防衛大臣、もう一度答弁願います。

中谷国務大臣 事前に国会の承認を求めることになると想定しております。

木内(孝)委員 今のは、ホルムズ海峡においてということでよろしいでしょうか。

中谷国務大臣 ホルムズ海峡の事例におきましては、事後に国会に承認を求めるということは想定しておりません。

木内(孝)委員 想定しているということで理解しました。

 本件の今の答弁において……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

木内(孝)委員 今の答弁、はっきりしていないと思います。理事会でぜひ協議いただけないでしょうか。

 もう一回お伺いいたします。事後承認もあり得るんでしょうか。

中谷国務大臣 事前に国会の承認を求めることになると想定しております。

木内(孝)委員 事後承認があり得るのかということを聞いております。

中谷国務大臣 事後承認であるということは考えておりません。

木内(孝)委員 それを最初から明快におっしゃっていただければと思っております。

 時間も押してまいりましたので、集団的自衛権行使容認の発動時の指揮命令系統についてお伺いをいたします。

 時間も今なくなってまいりましたので、最後にお伺いしますが、きょうの質疑を聞いていましても、あらゆることが非常に不明瞭だと思います。地域はわからない、三要件もわからない、あるいは事前か事後かも不明確、もちろん、なかなか……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に。

木内(孝)委員 はっきりとできるもの、できないものがありますけれども、明らかに不明確な諸点が浮き彫りになっているという点でございます。ぜひ、その点につきまして今後明確にしていただければと思っております。

 以上で質問を終わります。ありがとうございます。

浜田委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、国際平和支援法案について質問をいたします。

 この法案は、米軍を初めとする外国軍隊への補給や輸送などの軍事支援を可能とする法律であります。これまでの時限立法にかえて、恒久法、一般法として整備するものです。

 まず、中谷大臣に実施の要件について伺いますが、第三条の定義を見ますと、国連総会または国連安保理の決議が存在することを要件に挙げています。二つの項目に分けて規定しておりますが、まず一つ目の、当該外国が当該活動を行うことを決定し、要請し、勧告し、または認める決議というのは、具体的にどのような決議を指すのでしょうか。過去の具体的事例を含めて示していただけますか。

中谷国務大臣 赤嶺委員から、当該外国が当該活動を行うことを決定し、要請し、勧告し、または認める決議はどのような決議かというお尋ねでございます。

 御指摘の決議は、我が国の支援の対象となる外国の軍隊等の活動について具体的に規定をし、その活動の根拠となり得る決議を指すものでございます。

 それぞれ文言の意味について申し上げますが、決定については、国連みずから、また国連加盟国のとるべき活動が定められる場合等に用いられるということを想定しておりまして、法的義務を伴うものが多いということです。

 要請につきましては、加盟国に具体的な措置をとることが求められる趣旨の内容であって、これは、多くの場合においては法的義務とまでは言えないものと想定をされています。

 勧告につきましては、加盟国に対して行われる任意の措置の呼びかけを想定しています。

 認めるにつきましては、加盟国が特定の措置または必要なあらゆる措置をとる権限を与えられる、または許可される場合に用いられることを想定いたしております。

赤嶺委員 それで、つけ加えて、過去の具体的事例で示していただけますかというのも質問であります。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 過去の事例ということで、今先生御指摘の、それぞれの文言を含む国連決議の例として紹介させていただくとすれば、まず第一点目の決定するというものの例といたしましては、一九九九年に採択されました安保理決議一二四四が、コソボ紛争の収束後、コソボにおいて、国連の傘下で国際的な文民、軍事プレゼンスが展開することを決定したケースが挙げられます。

 二つ目の要請するの例といたしましては、二〇一一年に採択された安保理決議一九七三が、加盟国に対して、リビアに対する武器禁輸措置を徹底するため、同国を出入りする船舶、航空機に対する検査を要請したケースが挙げられます。

 三点目の勧告するの例といたしましては、一九五〇年に採択されました安保理決議八三が、北朝鮮による韓国に対する武力攻撃に関し、国連加盟国がこれを撃退し、地域における国際の平和及び安全を回復するために必要な支援を韓国に供与することを勧告したケースが挙げられます。

 最後の認めるの例といたしましては、一九九〇年に採択されました安保理決議六七八が、イラクによるクウェート侵攻に関し、関連安保理決議の実施及び平和の回復のために、加盟国に対して、武力の行使を含む必要なあらゆる措置をとることを認めたケースが挙げられます。

 以上でございます。

赤嶺委員 政府あるいは与党の協議の中で、この条項に関して、例えば授権のケース、あるいは要請のケースということで、授権のケースで湾岸多国籍軍について、要請のケースでソマリア海賊対処について挙げてありましたが、それは入るんですか、入らないんですか。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 今私が申しました四つの例というのは、それぞれの文言を含む国連決議を例として紹介させていただいたということでございますが、いずれにしましても、先生御指摘のこの第三条第一項第一号の、当該外国が当該活動を行うことを決定し、要請し、勧告し、または認める決議というものの趣旨は、いわゆる当該外国の活動が国連決議に基づくもの、その国連決議に基づくというものについて、国連決議上の文言として決定、要請、勧告、または認めるというものが、過去の立法事実的にもこういうような規定がございましたので、このような条文にさせていただいたという趣旨でございます。

赤嶺委員 それで、私が聞いた授権のケースあるいは要請のケースはいかがですか。

土本政府参考人 失礼いたしました。

 今御指摘の授権及び要請ということでございますが、授権というものがこの認めるということであり、要請というのは、この文言上も要請しということでございますので、いずれにつきましても、国連決議に基づくケースということで整理されると思います。

赤嶺委員 せっかく政府参考人の答弁も認めているんですから、審議をスムーズにしていこうということですからね。

 それで、防衛大臣の答弁はありました。それに加えて、私が、過去の具体的事例を含めて示していただけますかということで、幾つかの事例が示されました。

 なおそれに加えて、授権のケースの場合は湾岸多国籍軍、要請のケースの場合はソマリア海賊対処、入るんですか、入らないんですか、このことを聞いています。

土本政府参考人 該当するということで結構でございます。

赤嶺委員 該当するという答弁をするまで、私、何回立ったり座ったりしているんでしょうか。政府参考人も答弁に立たせるという大きな配慮がこんな形になると、また私の堪忍袋の緒も切れてしまいます。

 私は、もう一つ聞きたいことがあるんですよ。

 イラク特措法の根拠とした二〇〇三年五月の国連安保理決議一四八三号、これは該当しないんですか。

土本政府参考人 御指摘の安保理決議一四八三につきましては、全ての加盟国に対し、一部省略させていただきますが、食糧、医薬品並びにイラクの経済インフラの復興及び復旧に必要な資源を提供することによって、イラク国民の人道上その他の要請を満たすよう支援することを要請するとございますので、該当するということでございます。

赤嶺委員 イラク特措法の根拠となった一四八三号、これも内容に入っている、該当すると。

 それで、二つ目の、当該事態が平和に対する脅威または平和の破壊であるとの認識を示すとともに、当該事態に関連して国際連合加盟国の取り組みを求める決議、これはどのような決議を指すのですか。

中谷国務大臣 御指摘の国連の決議でございます。

 我が国の支援の対象となる外国の軍隊等の活動を具体的に決定等をするものではありませんが、まず、当該事態を国際社会が対処すべき脅威であることを権威ある国際連合の機関が認定することに加えて、その脅威に対して国際社会が共同で取り組む必要があることを国連が裏づけるものでございます。

 このような決議は、国際平和共同対処事態の構成要件である、我が国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要につき判断する前提条件となります。

 このような要素を含むと考えられる決議の例としましては、二〇〇一年九月十一日、ニューヨーク、ワシントンDC、ペンシルベニアで発生したテロ攻撃について、安保理決議第一三六八号が、国際の平和及び安全に対する脅威であると認めるとし、国際社会に対してテロ行為を防止し抑止するための一層の努力を求めたケースがございます。

赤嶺委員 今大臣から、二〇〇一年の九・一一テロ後に採択された安保理決議一三六八を挙げられました。

 しかし、この決議は、加盟国に対して軍事的措置をとることを求めたものではありません。テロ攻撃の実行者や支援者を法に照らして裁くために共同して取り組むこと、国際テロ対策条約などの完全な実施によって、テロ行為を防止し抑止するための一層の努力をすることを国際社会に求めたものであります。国連憲章第七章にも触れておりません。

 国連が軍事的措置をとることを求めていない決議を根拠に日本が軍事的措置をとることができる、そういうことですか。

土本政府参考人 今先生御指摘の国際平和支援法案第三条に規定するロの決議の関係でございます。

 ロの決議につきましては、冒頭御質問がありましたイの決議のように、我が国の支援の対象となる外国の軍隊等の活動の直接の根拠となるものではございません。

 九・一一のケースであれば、アメリカは自衛権ということで、国連決議に基づく活動ではないということはまさに先生御指摘のとおりでございますが、この安保理決議一三六八は、まさに国際社会が共同で対処する事態について、国連が決議という公式な形で、平和に対する脅威または平和の破壊であるとの認識を示しつつ、当該事態に関連して加盟国に何らかの取り組みを求めると明確な要件が課せられておりますので、政府といたしましては、国際的な正当性を確認する上でも十分なものだと考えているところでございます。

赤嶺委員 一三六八には、いわば軍事的措置をとることは求めていないわけですね。それでも、日本が軍事支援できる。

 ここで改めて確認しますが、ここで言う国際連合加盟国の取り組みを求める決議、この取り組みというのは、軍事的措置とは限らない、非軍事的措置の場合も含まれる、そういうことですか。

土本政府参考人 第三条の関係で申し上げれば、先生御指摘のとおりでございます。

赤嶺委員 そうすると、決議は非軍事的措置を求めているにもかかわらず、その決議を根拠に軍事的措置もとることができる、この法律では認められる、そういうことになってしまいませんか。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生は第三条の関係の御指摘をされているところでございますが、国際平和支援法第一条は国際平和共同対処事態を定義しておりまして、この第一条におきまして、国際社会が国際社会の平和及び安全を脅かす事態の脅威を除去するために国連憲章の目的に従って共同して対処する活動を行う、こういう規定をしているところでございます。

赤嶺委員 ですから、聞かれたことにちゃんと答えてください。

 それで、その要件になっているロのところでは、九・一一の一三六八も入るという確認がありました。これは軍事的措置を求めていない国連決議であるにもかかわらず、これがこの法案の中に入るということは、非軍事的措置を求める国連決議で軍事的措置をとれる、この法律の中でそう読めるようになりますが、それはそういうことじゃないですか、いかがですか。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 ロの決議の関係でございますが、ロのような国連決議は、我が国の支援対象となる外国の軍隊等の活動そのものが国連決議に基づいている場合以外にも、国際法に照らして適法と判断される活動が存在する、こういうことに鑑みまして、そのような活動に関して我が国が対応措置の実施を検討するに当たって国際的な正当性を確認する、こういう効果を持つということでございます。

赤嶺委員 国際的な正当性を安保理決議一三六八は持っているということですよね。

土本政府参考人 お答えいたします。

 この法律におきましては、先生御指摘のとおりと考えております。

赤嶺委員 しかし、一三六八は軍事支援には触れられていない。だけれども、何でこの法律で軍事支援ができるんですか、そういうことを聞いているんです。

土本政府参考人 先ほど御答弁させていただいたところでございますが、我が国の支援対象となる外国の軍隊等の活動そのものが国連決議に基づいている場合以外にも、この法律は国際的な正当性を確認するという観点から一三六八のような安保理決議を一つの要件としている、そういうことでございます。

赤嶺委員 ちょっと、同じことの繰り返しで、何を言っているか、私も答弁を聞いてわからないですね。しかし、ここは非常に大事なところだと思いますから、今の答弁、もう一度繰り返していただけますか。

土本政府参考人 お答えいたします。

 先生御案内のとおり、国際法上適法な軍隊の活動というのは、国連決議に基づく場合以外に、いわゆる自衛権に基づく活動及び領域国または旗国の同意に基づく活動、こういうものがございます。

 したがいまして、この法律第三条の御指摘のロの規定につきましては、例えば九・一一のときのように、自衛権に基づいている、または状況によっては領域国の同意に基づいているときに、何らかの諸外国の軍隊が活動をしている、そのときの国際的な正当性を担保するためにこの第三条の御指摘のロの規定を設けたということでございます。

赤嶺委員 国際的な正当性、九・一一の場合には自衛権だからということですか。自衛権ということで国際的な正当性はある、アメリカの自衛権ということで考えているのか。そうしたら、違法な武力行使を支援するということはないのか、この点、答えてくれますか。

土本政府参考人 この法律の第一条におきまして、まず、国際社会の平和及び安全を脅かす事態であって、その脅威を除去するために国際社会が国連憲章の目的に従い共同して対処する活動を行うと。ここのところの、国連憲章の目的に従い共同して対処する活動を行う、これがいわゆる国際法上の適法性の担保となっているというところでございます。その中には、当然、正当な自衛権の行使というのが考えられるところでございます。

赤嶺委員 国連安保理決議にこだわっているわけではないというのが今の答弁の中でも認められると思います。

 そこで、次に、もうちょっと議論を深めていきたいんですが、ISIL、IS、イスラム国を名乗る過激派組織との関連で伺います。

 中谷大臣は二日の参議院外交防衛委員会で、法案とISの関係について、安保理決議二一七〇号及び二一九九号は、ISILを国際の平和及び安全に対する脅威であると確認する旨の言及があり、かつ加盟国に対してISILに対する措置をとることを求めていることから、これらの安保理決議は、同法の三条一項一号のロ、先ほど議論したところですね、ロに規定する決議に該当し得る、このようにみずから答弁されております。

 外務省に伺いますが、この決議二一七〇号、二一九九号は、具体的にどういう措置を求めた決議ですか。

平松政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御指摘のありました国連安保理決議第二千百七十号でございますけれども、二〇一四年八月十五日に採択された決議でございます。内容につきましては、ISILその他のアルカイダ関連組織等への外国人戦闘員の参加防止、あるいはテロ行為の扇動への対処及び武器やテロ資金の提供防止の要請等を内容としております。

 もう一つの決議、国連安保理決議第二千百九十九号でございますけれども、これは二〇一五年二月十二日に採択された決議でございまして、ISIL等による石油や文化財の密売等による資金の獲得を防止すること等を内容としております。

 いずれの決議におきましても、ISIL等を国際の平和及び安全に対する脅威であると認識する旨の言及があるとともに、国連憲章第七章のもと、全ての加盟国にISIL等に対する措置を要請しているものでございます。

赤嶺委員 この今の決議の中に、第七章の話はありましたが、国際社会に対して軍事的措置を求める規定はありますか。

平松政府参考人 お答えいたします。

 先ほどのとおり、第二千百七十号についてはテロ資金防止等の要請を内容にしておりますし、二千百九十九号については資金の獲得の防止等を内容としておりまして、特に武力の行使等についての言及はございません。

赤嶺委員 この決議の中に、自衛権への言及はありますか。

平松政府参考人 自衛権についての言及はございません。

赤嶺委員 外務省が今答弁されたように、これらの決議は、ISを初めとするテロ行為の実行組織、資金提供している全ての個人、集団を法の裁きにかけること、外国人テロリストの流入の抑制や武器の供給、資金調達の防止のための措置をとることなどを求めたものであります。軍事的措置を求める規定も、自衛権への言及もありません。

 これらの決議を、なぜ軍事的措置の根拠とすることができるんですか。

中谷国務大臣 法案のロの規定でございますけれども、当該事態が平和に対する脅威または平和の破壊であるとの認識を示すとともに、当該事態に関連して国際連合加盟国の取り組みを求める決議があるからでございます。

 しかし、この二つの決議のみならず、この法案には、我が国の対応措置を実施するために要件となるのは、国連の決議の存在のみならず、国際社会の平和及び安全を脅かす事態に関して、その脅威に対して国際社会が国連憲章の目的に従って共同して対処していること、そして国連決議の存在を前提に、我が国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があると認められること、この要件をともに満たす必要がございます。

 現時点で、これらの要件を満たしているかどうかは判断しておらず、またその判断を行う必要があるとも考えておりませんので、現在、我が国は難民、避難民支援、また周辺国に対する人道支援など軍事的貢献でない形で可能な限りの支援、協力を行っていく考えでありまして、軍事的な有志連合等による空爆等に対する後方支援を行うことは考えていない。これは申し上げたとおりでございます。

赤嶺委員 大臣、私が聞きましたのは、二日の参議院の外交防衛委員会で、今るる述べられましたISILに関する国連決議、これらの安保理決議はこの今の法律の三条一項一号のロに規定する決議に該当し得ると大臣は述べておられるんですよ。そこには、しかし、軍事的措置をとることは何も触れられていない。軍事的措置をとることが触れられていないにもかかわらず、そういう国連安保理決議を根拠にして軍事的措置に出ることも可能である、今まだ判断はしていないということですが、法理的には可能である、そういうことをおっしゃっているんじゃないですか。

土本政府参考人 先ほども御説明したかもしれませんが、まず、基本的にこの法律のたてつけ、考え方を御説明させていただきたいと思います。

 我が国が国際社会の平和及び安全の維持のために活動する外国に対して支援を行うためには、その当該活動が十分な国際的な正当性を有していることが非常に重要だというのが、この法律案、国際平和支援法の基本的な考え方でございます。

 その正当性の判断を行うための基準として、関連する国連決議の存在を条件にする、そういうことといたしまして、その具体的内容としまして先生御指摘の第三条第一項第一号のイとロ、この二つの決議があるというところでございます。

赤嶺委員 安保理決議に軍事的措置をとることを求めていなくても軍事支援に出ることができる、そういう仕組みがこの法律の中には入っているわけですね。

 そこで、ちょっと疑問に思うことがあるんですが、これらの決議を根拠として日本が軍事的措置をとった場合、これは国連の集団安全保障措置ということになりますか。

平松政府参考人 お答えします。

 国際法上これは後方支援ということでございますので、いわゆる国連の第七章における集団安全保障措置というふうにはみなされないというふうに思います。

赤嶺委員 後方支援であっても軍事的措置だ、ごまかすなというのが、きのうの憲法審査会での三名の憲法の先生方の強い怒りのこもった発言でありました。

 軍事支援であることには間違いないわけですよ。しかし、その軍事支援は国連の集団安全保障措置になり得ないんですね。だって、軍事的措置をとるという国連決議はないわけですから。あり得ないんですよね。いかがですか。

平松政府参考人 先生御案内のとおり、武力行使の違法性の阻却のためには、国連憲章五十一条における個別的、集団的自衛権、七章下における集団安全保障措置でございまして、今議論をしておりますのはあくまでも武力行使でない後方支援の話でございますので、したがいましてこれは武力行使に当たらない、したがいまして集団安全保障措置にも当たらない、こういう整理になると思います。

赤嶺委員 今の答弁で大事なのは、後方支援だから、軍事的措置に当たらないから集団安全保障の議論の枠内にはまらないという答弁でしたが、今のような法律の流れからいくと、我々が後方支援が軍事的措置だという立場に立つかどうかというこの議論は今おいておいても、これだけの軍事支援をやるのに、集団安全保障措置とは言えないような、軍事行動に踏み込んでいく恒久法、一般法になっているということを言わざるを得ません。

 それで、もうちょっと事態を共有するために質問しますが、アメリカを初めとする有志国連合は、イラク、シリア領内への空爆を継続しています。その国際法上の根拠について、アメリカ政府はどのように説明していますか。

上村政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、イラク領内におけるISILへの空爆につきましては、米国は、米国民を保護するため、また、厳しい状況に置かれたイラク市民を保護する部隊を支援するため、イラク政府の要請に基づいて行ったものだと説明しております。

 シリア領内における空爆につきましては、米国は、昨年九月二十三日付の国連常駐代表発国連事務総長宛ての書簡におきまして、イラクがシリア領内のISILから攻撃を受け、しかもシリア政府がISILの活動を取り締まることができない状況の中で、イラクが米国にシリア領域内のISILを攻撃するよう要請を行ったと説明するとともに、加えまして、国連憲章第五十一条に規定される自衛権にも言及をしております。

赤嶺委員 結局、この法案というのは、アメリカが、国連決議もなく、そして個別的自衛権、集団的自衛権を口実にして一方的に軍事介入を行う場合に、日本がそれを支援することを可能にするものであります。あたかも国連決議を根拠とするような装いを法律全体としてはとっておりますが、実際には決議と関係なく軍事支援を行うことを可能としているもので、極めて重大だと言わざるを得ません。

 さらに伺います。

 中谷大臣は一日の本委員会で、周辺事態法には該当しないものの重要影響事態法案には該当するケースを問われて、テロ特措法、補給支援法に基づいて行った洋上における燃料補給を挙げました。

 テロ特措法あるいは補給支援法に基づく給油活動は国際平和支援法案にも重要影響事態法案にも該当する、そういうことですか。

中谷国務大臣 重要影響事態法につきましては、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態でありまして、国際平和協力支援法につきましては、国際社会における平和と安全に重要な影響を与える事態という法律の目的がございます。これに該当するかどうかでございます。

赤嶺委員 重なるということですね。

中谷国務大臣 先ほど、一三六八というお話がございました。

 これは、国連決議が存在する中で、テロ特措法、ほかの関連の決議も含めまして、国連憲章の目的を達成する活動を行っている諸外国の軍隊等に対して、我が国を含む国際社会の平和、安全に資することを目的として支援活動を行ったわけでございます。

 ある事態が我が国の平和、安全に重要な影響を及ぼすか否かは、この事態の規模、態様、推移等を総合的に勘案して判断することとなるために、ある事態が重要影響事態に当たるかについてはあらかじめ申し上げることができませんが、仮に、我が国がテロ特措法に基づく対応措置や補給支援特措法に基づく補給支援活動を実施していたと全く同じ状況が生起する場合には、重要影響事態法ではなくて国際平和支援法に基づいて対応するものと考えておりまして、このことは、周辺事態法によらずにテロ特措法を制定するとした過去の対応とも符合するわけでございます。

赤嶺委員 当時は、事態として周辺事態を認定しなかったわけですよね。しなかったわけですよ、当時は、テロ特措法、国連決議に基づいて。

 しかし、今回大臣がおっしゃったのは、あの洋上における補給支援活動は、今の法律の国際平和支援法案にも該当するし、場合によっては、事態の進展によっては重要影響事態法案にも該当するということをおっしゃっているんじゃないですか。

中谷国務大臣 重要影響事態というのは我が国の平和及び安全に重要な影響を及ぼす事態でありまして、それか否かというのは、事態の規模、態様、推移等を総合的に勘案して判断するということで、ある事態が重要影響事態に当たるかということについてはあらかじめ申し上げることはできないということでございます。

赤嶺委員 あらかじめ申し上げることはできないというおっしゃり方なんですが、一日の本委員会で、給油支援活動、これは周辺事態法には該当しません、しかし、重要影響事態法案には該当するかどうかというケースを問われて、テロ特措法に基づいて行った洋上における燃料補給は重要影響事態法にも該当するとおっしゃっているわけですよ。

 ですから、私が聞いているのは、国際平和支援法案にも重要影響事態法案にも洋上での給油支援は、もう周辺事態法じゃありませんから、重要影響事態ですから、そういうことで、二つに該当するということですねと、大臣の答弁を押さえた上で申し上げているんですが。

中谷国務大臣 仮に、我が国がテロ特措法に基づく対応措置や補給支援特措法に基づく補給支援活動を実施していたときと全く同じ状況が生起する場合におきましては、重要影響事態法ではなくて国際平和支援法に基づいて対応することとなるものと考えられます。

赤嶺委員 あの答弁は、それでは何だったんですか。この委員会で、重要影響事態法にも給油支援活動は該当し得るかと聞かれて、該当し得るとおっしゃっているんですよね。それは何だったんですか。

中谷国務大臣 答弁は確認をしてまいりますが、きょう申し上げることは、全く同じ状況が生起する場合においては、重要影響事態法ではなくて国際平和支援法に基づいて対応することとなるものと考えられるということでございます。

赤嶺委員 それでは、お互いに答弁を精査した上で、今の議論は続けていきたいと思います。

 次は、日米新ガイドライン、これについて伺います。

 平時から緊急事態に至る日米間の共同計画を策定、更新するとしております。共同計画の対象に国際テロへの対処は含まれますか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 新しいガイドラインのもとで日米両国が平時において共同計画策定メカニズムを通じて策定する共同計画の対象は、ガイドラインにございますが、日本の平和と安全に関連する緊急事態ということになっております。

 まことに申しわけありませんが、それ以上の共同計画の内容等詳細につきまして、またどういう事態が入るか入らないかにつきましては、緊急事態における日米両国の対応にかかわるものでありますことから、お答えを差し控えさせていただきたいと考えております。

赤嶺委員 これは、法律は説明できませんという態度ですよ。国際テロへの対処は含まれるかどうか、今の日本を取り巻く国際情勢を見た場合に極めて大事な話じゃないですか。これ以上説明ができませんということであれば、これ以上審議できませんということになりますよ。この法案を出し直してこいということになりますよ。ちゃんと答えてください。

深山政府参考人 繰り返しの答弁になりましてまことに申しわけありませんが、共同計画の内容の具体的な詳細につきましては、先ほども申し上げましたように、緊急事態における日米両国の対応にかかわるものでございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと考えております。

赤嶺委員 国際テロについて日米両国がどんな共同対処をしているかというのは、我々も報道等でいろいろ知り得る立場にあります。ガイドラインの中で共同計画を平素からつくると言っている。これは、ガイドラインの中の一番目を引く部分でもあります。その中に、共同計画の対象に、対象にですよ、共同計画にどんな国際テロ対処方針をつくっているかじゃないんです、共同計画の対象に国際テロへの対処は含まれますかと。これはごく常識的な質問じゃないですか。国民みんなが思っていることじゃないですか。それに答えられないというのはおかしいじゃないですか。答えてください。

中谷国務大臣 新ガイドラインのもとで日米両国が平時において共同計画策定メカニズムを通じて策定する共同計画の対象は、日本の平和と安全に関する緊急事態でございます。

 これ以上、共同計画の内容等の詳細につきましては、緊急事態等における日米両国の対応にかかわるものでございますから、事柄の性質上、お答えは差し控えさせていただきたいということでございます。

赤嶺委員 全然説明する態度ではありません。

 共同計画というのは、今までのガイドラインと明らかに位置づけが変わってきております。周辺事態法と同様に、新ガイドラインでも我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態について地理的制約が取り払われておりますが、共同計画も地理的制約はなくなるということでよろしいでしょうか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 共同計画の対象、共同計画と申しますのは新しいガイドラインのもとでの計画でございますが、この対象は、先ほど申し上げましたように、日本の平和と安全に関連する緊急事態でございます。これは、あくまで事態の性質に着目した概念であって、当該事態が地理的に生起する場所等についてあらかじめ定めたものではございません。

 付言いたしますと、旧ガイドラインでは周辺事態に対応するものとして相互協力計画というものがございましたが、これは地理的な概念ではない、周辺事態に際してのものであったということでございます。

 いずれにいたしましても、共同計画の策定は、新ガイドラインに明記されているとおり、国際法に合致するとともに、憲法及びその時々の適用のある国内法令並びに国家安全保障政策の基本的な方針の範囲内で行われるということになります。

赤嶺委員 非常に事態を難しくして、国民が理解しにくいように説明をする。聞かれたことには答えない。

 周辺事態法のときは、確かに相互計画というのがありました。でも、今のガイドラインは共同計画一本なんですね。地理的範囲を一見示していたかに見えた相互計画というのはなくなっているんです。

 ガイドラインというのはいわば地理的制約が取り払われているわけですから、共同計画も地理的制約はなくなるという理解。普通に考えたら、この理解。おっしゃるとおりでありますという答弁じゃないですか。いかがですか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 今申し上げましたとおり、共同計画の対象範囲というものは決めておりません。ですから、どこそこの地域に限って対象となるという性格のものではございません。その点に関しましては、先生の御指摘のとおりでございます。

 私がもう一点付言いたしましたのは、周辺事態におきましても、政府におきましては累次周辺事態というのは地理的概念ではないということを申し上げてきましたので、先生から、今回新たに地理的な制約が取り払われるのかという御指摘がありましたので、それに関しましては、従来の周辺事態も我々としてはそのような地理的な概念ではないということは累次御答弁申し上げてきたということを付言いたしたものでございます。

 以上でございます。

赤嶺委員 前回は、周辺事態法のときには相互計画があり共同計画がありということだったんですが、今回、地理的制約が取り払われている共同計画一本になっている。そのことの持つ意味については、これから今後議論していきたいと思います。

 ただ、今、アメリカは、圧倒的な軍事技術を背景にして、パキスタンやアフガニスタンやイラク、イエメン、ソマリアなど、世界各地で無人機による攻撃を繰り返しています。その根拠に挙げているのが自衛権です。アメリカは、九・一一以降、自衛権を行使し続けているのであります。

 現在の国際テロをめぐる状況は、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態、アメリカが自衛権で乗り出しているこの事態、これは我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態に該当しますか。

黒江政府参考人 今先生御質問になられました重要影響事態ということにつきましては、現に自衛隊を動かして対処しないといけないような必要が出てくるかどうかといったことを勘案しながら、その事態に即しまして判断をするということでございますので、現時点で、政府としまして、個別の事態に対しまして、現在起きております国際テロといったことを御指摘になられましたけれども、その点について判断はいたしておらないということでございます。

赤嶺委員 同じ答弁を繰り返しておりますが、中谷大臣は、ISへの対応について、政策判断として、難民、避難民支援や周辺国に対する人道支援などの軍事的貢献でない形で可能な限りの支援、協力を行っていく、こう述べております。

 中谷大臣、どういうお考えで非軍事の分野での支援を行うと判断したんですか。今まではよくおっしゃっていたじゃないですか、軍事と非軍事は車の両輪だと。今度は、どうして非軍事の支援を行うと判断しているんですか。

中谷国務大臣 これは、政府全体が判断をしたことでございます。総理もこれを明言いたしましたけれども、ISILの脅威に対抗するためには、ISILによる資金調達を阻止したり人道危機への対処をするなど、各国がそれぞれの強みを生かして、国際社会が協力して幅広い分野で取り組みを集結させることが不可欠であり、日本としては、難民支援、周辺国に対する人道支援など、これまで培った知見と経験が生かされる非軍事分野で国際社会と連携して貢献を行っていく考えである。これは、総理が状況を判断して決めたことでございます。

赤嶺委員 非軍事支援、私たちはかねがね、いろいろな紛争や事態について日本のそういう活動が大切だと申し上げてきましたが、今度は、判断している理由について、例えば日本政府としては空爆などへの軍事支援はやるべきではないと判断しているのか、それともそういうニーズがないからやらないと判断しているだけなのか、判断の根拠を聞かせていただけますか。

中谷国務大臣 総理が最終的に決断されることでございますが、現時点において、ISILの活動等に対する後方支援を考えていることは全くないと思います。

赤嶺委員 明快な答弁が得られませんでしたが、大変関心が高いんですよね。何で非軍事的な支援になっているのか、今後軍事的支援はとるのかとらないのか、そこの根拠を聞いたんですが、これも引き続きの議論にしていきたいと思います。

 ただ、いろいろ質問してきたわけですが、九・一一テロ以降の対テロ戦争、イラク戦争が何をもたらしたのか、そこが全く忘れ去られているのではないかと指摘せざるを得ません。

 イラク戦争の検証の問題について伺いますが、五月二十八日の質疑で、我が党の志位委員長の質問に対して、大量破壊兵器の有無については厳粛に受けとめるとしながら、問題の核心は大量破壊兵器が存在しないことをみずから証明しなかったイラクにあるというのが政府の答弁でありました。しかし、これは、二〇一二年十二月に外務省が公表した検証結果の内容を繰り返したものにすぎません。

 外務大臣に伺いますが、今回の法案を作成、提出するに当たって、国際法違反の戦争を支持し、自衛隊を派遣して、無法な戦争と占領に加担した当時の政府の対応は検証しなかったということですか。

岸田国務大臣 イラク戦争につきましては、今引用されました答弁の中にもありましたように、我が国外務省としまして検証を行っております。その結果として、この問題の核心は、たび重なる安保理決議をイラクが、積極的に守りそしてみずから大量破壊兵器が存在しないことを積極的に証明しなかった、こういったことである、こうした結論を示しております。

 このように、イラク戦争の核心、要は武力行使を支持するに至った当時の問題の核心は、安保理決議六七八、六八七、一四四一、こうしたものに求めております。

 我が国としまして、国際法に違反するような行為に対して後方支援を行う、こういったことは全く考えられませんし、可能ではないと考えております。

赤嶺委員 今の答弁は前回のものを踏まえてのものですが、私が伺いましたのは、今回の法案を作成し、提出するに当たって、イラク戦争をめぐる当時の政府の対応について改めて検討を行ったという事実はないということですね、先ほどの答弁からすると。

岸田国務大臣 政府としましては、既に外務省で行った検証によって、イラク戦争において武力行使を支持するに至った当時の問題の核心について説明をしております。改めてイラク戦争について検証を行う、こういったことは考えてはおりません。

赤嶺委員 当時の政府の検証というのは、これは民主党政権時代に行われたものです。しかし、イラクの開戦を支持し、自衛隊を派遣したのは自民党政権です。みずからの過ちを何ら検証しないで、何の責任もとらないで、民主党政権時代の検証結果をそのまま繰り返しているだけであります。

 イギリスでの検証委員会では、ブレア首相やストロー外相が証言に立ちました。ところが、日本では、政治家は一切その責任を問われていません。

 これまで、自民党政権としてこの問題を検証したことはあるんですか。一切ないんじゃないですか。

岸田国務大臣 政府としましては、外務省としてイラク戦争について検証を行いました。政府としての検証につきましては、政府として、歴代政府でしっかり責任を負わなければならない課題、問題であると考えております。その中で、問題の核心について御説明をさせていただいております。

 こうした検証については、今の政権においてもしっかりと引き継いでいるところであります。これに基づいて、さまざまな政策を考えてまいります。

赤嶺委員 皆さんは、民主党政権を批判、攻撃するのもなかなかすさまじいものだなと思いますけれども、今回、イラクの検証については民主党政権でやったものを引き継いでいるというのは、何か矛盾を感じます。

 私は、民主党政権時代のあの検証がよかったものとは思っていません。あれは検証に値しないと思っています。しかし、戦争に加担したのは自民党政権なんですよ、始めたときに。それを、政治家は誰も責任をとらないで、今度また戦争支援法案みたいなものを出してくる。

 こういうものは徹底審議の上で廃案にすべきですが、また引き続き、この続きの議論をやっていきたいと思います。

浜田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十三分散会


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