衆議院

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第10号 平成27年6月15日(月曜日)

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平成二十七年六月十五日(月曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 今津  寛君 理事 岩屋  毅君

   理事 江渡 聡徳君 理事 松本  純君

   理事 御法川信英君 理事 長妻  昭君

   理事 下地 幹郎君 理事 遠山 清彦君

      赤枝 恒雄君    秋元  司君

      石原 宏高君    小田原 潔君

      小野寺五典君    大西 英男君

      大西 宏幸君    大野敬太郎君

      鬼木  誠君    加藤 鮎子君

      勝沼 栄明君    門  博文君

      木原 誠二君    木村 弥生君

      笹川 博義君    白石  徹君

      武井 俊輔君    中谷 真一君

      中村 裕之君    橋本 英教君

      原田 義昭君    星野 剛士君

      宮川 典子君    宮崎 政久君

      宮澤 博行君    武藤 貴也君

      盛山 正仁君    山口  壯君

      若狭  勝君    若宮 健嗣君

      渡辺 孝一君    緒方林太郎君

      大串 博志君    後藤 祐一君

      辻元 清美君    寺田  学君

      長島 昭久君    青柳陽一郎君

      今井 雅人君    太田 和美君

      初鹿 明博君    丸山 穂高君

      伊佐 進一君    岡本 三成君

      佐藤 茂樹君    浜地 雅一君

      赤嶺 政賢君    宮本  徹君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   防衛大臣

   国務大臣

   (安全保障法制担当)   中谷  元君

   防衛大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    石川 博崇君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  前田  哲君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  土本 英樹君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  槌道 明宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岩井 文男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 滝崎 成樹君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            平松 賢司君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    冨田 浩司君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  黒江 哲郎君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  深山 延暁君

   衆議院調査局我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別調査室長     齋藤久爾之君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十五日

 辞任         補欠選任

  原田 義昭君     鬼木  誠君

  平沢 勝栄君     石原 宏高君

  山田 賢司君     木村 弥生君

  青柳陽一郎君     初鹿 明博君

  太田 和美君     今井 雅人君

  佐藤 茂樹君     岡本 三成君

  志位 和夫君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  石原 宏高君     赤枝 恒雄君

  鬼木  誠君     中村 裕之君

  木村 弥生君     渡辺 孝一君

  今井 雅人君     太田 和美君

  初鹿 明博君     青柳陽一郎君

  岡本 三成君     佐藤 茂樹君

  宮本  徹君     志位 和夫君

同日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     秋元  司君

  中村 裕之君     原田 義昭君

  渡辺 孝一君     大西 英男君

同日

 辞任         補欠選任

  秋元  司君     若狭  勝君

  大西 英男君     門  博文君

同日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     加藤 鮎子君

  若狭  勝君     平沢 勝栄君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 鮎子君     山田 賢司君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七二号)

 国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案(内閣提出第七三号)


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     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官前田哲君、内閣官房内閣審議官土本英樹君、内閣官房内閣審議官槌道明宏君、外務省大臣官房審議官岩井文男君、外務省大臣官房参事官滝崎成樹君、外務省総合外交政策局長平松賢司君、外務省北米局長冨田浩司君、防衛省防衛政策局長黒江哲郎君、防衛省運用企画局長深山延暁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長島昭久君。

長島(昭)委員 おはようございます。民主党の長島昭久です。

 本委員会の議論も三十時間を超えて、いよいよ法案審議の深掘りをしていこう、こういうところだったんですが、そのやさきに、六月四日の衆議院の憲法審査会で、三人の憲法学者から、この法案そのものが憲法違反である、こういう指摘を受けまして、議論は約一年前に逆戻り、フィルムが巻き戻されていく、そういう感じに、振り出しに戻りました。

 しかし、国権の最高機関であるこの国会で、違憲のそしりを受けるような法律を成立させるわけにはいきません。これからこの問題は絶対避けて通れませんので、私はできれば法案の中身についての議論をもっともっと深めていきたいと思っておりましたが、きょうは、この憲法問題についてまずお尋ねをしたいというふうに思います。

 私は、正直に申し上げますと、政府の憲法解釈というのはもう少し柔軟なものだというふうに思っていました。時の与野党の勢力バランスとかあるいは国際的な諸情勢、こういったものを勘案して、憲法の規範のぎりぎり許される範囲で、政策判断としてその時々で出されてきたのが政府解釈だというふうに私は実は理解していたんです。

 もともと吉田総理が制憲議会で御発言になっていた、自衛戦争も許されない、こういった議論はその後覆されましたし、自衛隊が創設される前までは、九条二項によって禁止されている戦力とは近代戦争を遂行する実力だ、こう言われていた。しかし、さすがに自衛隊をつくって、それが近代戦争も戦えないようじゃしようがないから、苦肉の策で、必要最小限度に満たないものは許されると。こうやっていろいろ、時代の変遷、国際環境の変化の中で可変的なものではないのか、私はこういうふうに実は思っていたんです。

 しかし、今回政府は最高裁の権威まで持ち出して、法制局長官を中心に詳細な法理を駆使してそういう説明を試みておられますので、私も当然のことながらそれをフォローせざるを得ません。政府には国民の皆さんが十分納得できるような説得力ある説明をぜひしていただきたい、このように考えております。

 まず第一点、最高裁の砂川判決の位置づけについて。きょうでぜひ砂川判決に関する議論はもう終わりにしたいと私は思っているんです。

 砂川判決の概要は、皆さんのお手元の一ページ目、二ページ目。これは国会図書館の資料をそのままコピーしてまいりました。

 実は、砂川というのは私の地元なんです。立川市、昔は砂川町と言われていましたけれども、私の地元でありまして、ここで米軍が立川基地というのを戦後保有しておりました。昭和三十年に、この立川基地を他の基地とともに横田も含めて拡張するということが米側から要求されたんですね。そのことによって、この砂川地域の皆さんが、それは困る、それは許せないということで立ち上がったのをいわゆる砂川闘争というんです。

 これは有名な言葉があって、土地にくいは打たれても心にくいは打たれない。こういうスローガン、全国的にも有名になりました。とにかく測量とかでくいを打たれていくわけですけれども、いや、我々の心にまでくいは打たれないんだということで非暴力でずっと抵抗していたんですけれども、この十四年間の砂川闘争の最中には時折流血の惨事もありました。しかし、この闘争の結果、昭和四十四年、土地収用認定の取り消しが行われて、この闘争は終息をいたします。

 今では、三分の一を昭和記念公園、三分の一を陸上自衛隊の立川駐屯地、そしてあとの三分の一を官公庁のスペース、こういうことでみんなで共有しているわけですけれども、私は砂川を地元とする国会議員としてもこの砂川判決をこれ以上もてあそばれるのは忍びないわけでありまして、きょうぜひこの問題は決着をつけたい、こういうことであります。

 砂川判決は、今さら私が申し上げるまでもなく、裁判で問われたのは、駐留米軍が憲法九条二項で言う戦力に当たるかどうかですね。最高裁の判決は、この九条二項で禁じられた戦力とは我が国の指揮権や管理権を行使するものであって、外国軍隊はそれに該当しないと判示したんです。しかし、その駐留米軍の合憲性については統治行為論で判断回避をした、こういうことであります。

 したがいまして、この最高裁判決は、自衛隊の合憲性も自衛権の内容も、ましてや集団的自衛権についても判断していないんですね。これが、専門家はもとより、私たち法学を少しでも勉強した者のまさに一般常識に近い理解だろうというふうに私は思うんですが、法制局長官、いかがですか。

横畠政府特別補佐人 まず、一般論として、最高裁判所の判決、裁判で示された判断のうち、厳密に当該具体的な事件を解決するために必須の判断で裁判の結果に反映されている部分と、必ずしもそうとまでは言えない部分とがございます。

 この後者の部分でございましても、憲法第八十一条により違憲立法審査権を与えられた最高裁判所が当該裁判の結論に至る判断の過程の中で考慮し、あえて法廷意見として裁判書の中で憲法の解釈について言及している場合、そこで示された法理には厳密な意味での判例としての法的効力まではないわけでございますけれども、それなりの重みがあり、権威ある判断として尊重すべきものと考えられます。

 この点は、裁判所法第十一条によって、最高裁判所の裁判書に表示される各裁判官の意見、補足意見、意見、反対意見とございますけれども、それらが当該裁判を理解する上での参考になるということよりも重く、また下級裁判所が当該事件を解決するために必要ではない事項を裁判所の判断として裁判書に記載した、いわゆる単なる傍論と言われるものとも異なるというふうに理解されるところでございます。

長島(昭)委員 今、法制局長官は、それなりの重みがある、こういうことをおっしゃいました。

 それでは、過日、憲法審査会で自民党の高村副総裁が御意見をお述べになって、最高裁の砂川判決で集団的自衛権というものを根拠づけているんだという趣旨の御発言をされましたが、重く受けとめるという今の御発言と、最高裁砂川判決によって集団的自衛権というものが許容されているんだ、あるいは根拠づけられているんだ、こういう世間の誤解が広がっているんですよ。その点についてもし事実誤認があるならば、きちっとこの場で正してください。

横畠政府特別補佐人 まさに、どのようなものとして重く受けとめるかということが重要でございます。

 そこで、砂川事件に係ります昭和三十四年十二月十六日の最高裁判所大法廷判決は、まさに旧日米安保条約に基づくアメリカ合衆国軍隊の駐留が憲法第九条第二項前段に違反して許すべからざるものと判断した原判決を誤りとして破棄したものでございます。その判断に至る過程におきまして、次のようなことが示されているわけでございます。

 一つとして、憲法第九条についてでございますが、「同条は、同条にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているのであるが、しかしもちろんこれによりわが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、わが憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではないのである。」との判示でございます。

 二つ目ですが、「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。」との判示でございます。

 これらは、自衛隊の合憲性や我が国による武力の行使の可否そのものが争点となった事件について示されたものではないわけでございますが、その判断の過程においてあえて考え、かつ判決書にも法廷意見として記載されているということでございますので、その意義をどのように評価するかということでございます。先ほども申し上げましたが、その部分は厳密な意味での判例としての法的効力を持つものではないことは当然の前提でございまして、その上で、最高裁判所の権威ある重い判断であるとしてどのように受けとめるかという問題であろうかと思います。

 ところで、砂川判決は、今御紹介したとおり、固有の自衛権というのみでございまして、個別的自衛権、集団的自衛権という区別をして論じていないわけでございます。このことは、国際法上、国際連合憲章において両者の区別があるわけで、その区別があるものの、憲法におきましてはそもそも自衛権についての規定がなく、その区別自体が憲法上のもの、憲法に由来するものではないということと整合するものと理解されます。

 実は、今日におきましては、自衛権といいますと、個別的自衛権にしろ集団的自衛権にせよ、武力の行使を正当化する権利として整理されておりますが、当時におきましてはややそれよりも広かったのではないかとうかがえます。すなわち、他国の軍隊に駐留を求めることや基地の提供なども自衛権の問題として議論されていたことがうかがわれるわけでございます。

 現に、昭和三十四年の砂川判決の翌年に当たりますけれども、昭和三十五年三月三十一日の参議院予算委員会において当時の林修三内閣法制局長官が答えておりますが、「密接な関係のある他の外国が武力攻撃を受けた場合に、それを守るために、たとえば外国へまで行ってそれを防衛する、こういうことがいわゆる集団的自衛権の内容として特に強く理解されておる。この点は日本の憲法では、そういうふうに外国まで出て行って外国を守るということは、日本の憲法ではやはり認められていないのじゃないか、」「そういう意味の集団的自衛権、これは日本の憲法上はないのではないか、」と言った上で、「現在の安保条約におきまして、米国に対して施設区域を提供いたしております。あるいは米国と他の国、米国が他の国の侵略を受けた場合に、これに対してあるいは経済的な援助を与えるというようなこと、こういうことを集団的自衛権というような言葉で理解すれば、こういうものを私は日本の憲法は否定しておるものとは考えません。」と答弁しているところでございます。

 その上で……(発言する者あり)大事なところ、極めて大事なところでございます。

浜田委員長 静かに。

横畠政府特別補佐人 その上で、岸内閣総理大臣におきましても「いわゆる集団的自衛権というものの本体として考えられておる締約国や、特別に密接な関係にある国が武力攻撃をされた場合に、その国まで出かけて行ってその国を防衛するという意味における私は集団的自衛権は、日本の憲法上は、日本は持っていない、かように考えております。」と答弁しておるわけです。

 判決に言う自衛権は、武力の行使を正当化する権利として整理される厳密な意味での自衛権に限定されず、かつ個別的自衛権、集団的自衛権という国際法上の区分に立ち入ることなく、憲法の観点から、広い意味での自衛のための措置をとる権利を意味するものとして用いられている概念であると理解されます。

浜田委員長 長官、できるだけ答弁は簡潔に願います。

長島(昭)委員 長官、私、何を質問したか覚えていないですよ。忘れちゃった、本当に。

 私は、今の岸内閣の集団的自衛権の考え方というのは、昔から勉強して、非常に興味深く思いましたよ。集団的自衛権という概念を、これは佐瀬昌盛さんの言葉ですけれども、中核概念を定めて、それ以外はできるんだと。したがって集団的自衛権そのものを全部否定しているわけじゃないんだという岸総理の答弁もありますよ。

 だから、今回、そういうロジックから援用してきて、これぐらいの集団的自衛権なら認められるじゃないか、そういう導き出し方だったら私もわかる、理解できるなと思っていたんです。しかし、全くそういうロジックではなかった。

 しかも、私が聞きたかったのは、長官、この砂川判決で集団的自衛権が根拠づけられたのかどうか、その一点なんですよ。これを聞いているんです。これはイエスかノーかでお答えください。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

横畠政府特別補佐人 まさに、集団的自衛権という言葉で何を理解するかというのが前提でございます。そういう意味で、先ほど、ちょっと長くなりましたけれども、前提として申し上げました。

 その上で、砂川事件の判決は、「決して無防備、無抵抗を定めたものではない」、あるいは「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のこと」と述べていることからすると、あくまでも我が国自身の防衛としての自衛について論じているものと理解されます。

 そうだとすると、その判示の射程について、あえてですが、国際法上の個別的自衛権、集団的自衛権という区分を前提として申し上げるならば、自国防衛のために武力の行使をする個別的自衛権を読むということは容易でありますけれども、他国防衛のために武力を行使することが権利として観念される国際法上のいわゆる集団的自衛権、フルセットの集団的自衛権と呼んでおりますけれども、その全体にまで及んでいるとまで言うことはなかなか難しいと考えられるところでございます。

 しかしながら、ここが重要なのでございますけれども、今般の新三要件のもとで認められる限定された集団的自衛権の行使、すなわち他国に対する武力攻撃の発生を契機とするものであることから国際法上は集団的自衛権として違法性が阻却される武力の行使ではありますが、あくまでも我が国の存立を全うし、国民を守るため、すなわち我が国を防衛するために必要やむを得ない自衛の措置につきましては、砂川判決において論じております我が国自衛のための措置を超えるものではなく、同判決に言う自衛権に含まれるというふうに解することが可能であると考えております。

長島(昭)委員 今、法制局長官、この判示の射程に集団的自衛権は含まれると。(発言する者あり)限定的な。含まれるが、それはフルサイズではない、こういう言い方をされましたね。

 つまりは、その砂川判決を根拠に、その後、半世紀、今日に至るまで、どこかのタイミングで法制局として、その限定的なる集団的自衛権を場合によってはお認めになる余地があったということですか。

横畠政府特別補佐人 今回の新三要件でお示ししました限定的な集団的自衛権という考え方そのものが昨年の七月以降に整理された考え方でございまして、それ以前において集団的自衛権と呼んで議論していたものは、フルセットの集団的自衛権について議論していたということでございます。

長島(昭)委員 いやいや、そんなことない。安倍総理が幹事長のときだったかな、量的概念、質的概念というところで限定的な集団的自衛権の行使については議論されていますよ、既に何度も国会で。去年の七月から始まった議論じゃないですよ。

 つまり、はっきりさせましょう。砂川判決で集団的自衛権の一部は昭和三十四年の段階からずっと認められる余地があった、この御答弁でよろしいですか。

横畠政府特別補佐人 まさに、論理的な可能性といたしましては、自国防衛に限定する、しっかりと限定するのであれば含まれ得るという理解が可能であったということになろうかと思います。

長島(昭)委員 にもかかわらず、当の高村外務大臣は当時、集団的自衛権について問われたときに、砂川判決を引用してきて限定的な余地はあるんだけれども今は国際情勢の事情からそれはとらないとかなんとかという答弁ではなく、フルスペックの集団的自衛権の話なんかしていないんですよ。

 ですから、ちょっと法制局長官に確認したいのは、我が国の政府が集団的自衛権をフルサイズの、フルスペックの集団的自衛権と観念し始めたのはいつからですか。

横畠政府特別補佐人 集団的自衛権というものは、先ほどお話ししたように、武力の行使が正当化される根拠でございまして、基本的には国際法上の概念でございます。

 その意味で、本来、集団的自衛権といえば、他国防衛を本質とするとかいろいろな言い方がございますけれども、フルセットの集団的自衛権というのはまさに他国を防衛するということに当然及ぶ、その場合、当該外国まで出かけていって戦うということも含んでいる、そういうまさにフルセットの集団的自衛権、それについて当初から議論していたわけでございまして、限定的なという考え方で切り出そうということになったのは昨年七月以降ということでございます。

長島(昭)委員 今、法理的なことを聞いているんです、法理的なことを、長官。集団的自衛権をフルで、フルサイズで観念し始めたのは、この前の説明ですと、四十七年の政府見解のときはそうだった、こういう話をされました。

 昭和三十四年の砂川判決のときはどうだったんでしょうか。

横畠政府特別補佐人 砂川判決自身は集団的自衛権という言葉を使っていませんので、まさに言及していないわけですから、砂川判決自身がどう考えていたかはわかりません。

長島(昭)委員 いやいや、砂川判決が触れなかったけれども、そこで言う自衛権に集団的自衛権も含意されているという見解なんでしょう。そうじゃなかったら、その後の論理が立たないですよ。

 含意されていると言いたいんじゃないんですか、長官。

横畠政府特別補佐人 先ほど御答弁申し上げたとおり、フルセットの集団的自衛権まで含意するということを考えているわけではございませんで、あくまでも自国の防衛という意味での自衛権ということで砂川判決は議論しているので、その限りにおいて、国際法上は集団的自衛権ということで違法性が阻却されるわけでございますけれども、その実態、本質は、我が国を防衛するための必要やむを得ない、必要最小限の措置というものには及ぶのではないかということをお答えしているわけでございます。

長島(昭)委員 では、今、砂川判決の当時はフルサイズの集団的自衛権は観念していなかった、こういうふうにおっしゃいましたね。

 そして、四十七年の政府見解を整えたときには、フルサイズの集団的自衛権を観念し、それを拒否した、こういう理解でよろしいですか。

横畠政府特別補佐人 昭和四十七年の政府見解は三つの部分からできておりまして……(長島(昭)委員「いや、それはもう書いてあるからいいです」と呼ぶ)省略します。

 いわゆる一の部分というのは、砂川判決の趣旨と軌を一にするということを申し上げているわけです。自衛権は否定していない、無防備、無抵抗を定めているわけではない。

 二の部分は、そうだといっても、自衛のためといえば何でもできるということではなくて、やはり憲法上の制約があるだろうということで、その要件をきっちり書いているわけで、そこにおきましてポイントとなるのは、外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態に対処するという、まさに究極の場合、ぎりぎりの場合に限って武力の行使ということが自衛のためといっても許される、それに限るという、そこまでの考え方でございまして、そこの基本的な考え方は現在も全く変わっていないし、それは砂川判決と軌を一にする、そういうことを述べているわけでございます。

長島(昭)委員 法制局長官もたびたびおっしゃっていますけれども、集団的自衛権という概念は国際法上の概念だ、したがって、これはもうフルサイズで観念する以外にないんだと。四十七年の見解はそれに基づいているわけですよ。

 ですから、それを砂川判決のときにだけ何か限定的な意味で理解していたというのは、ちょっと私は腑に落ちない。私たちはみんな、自民党の皆さんも含めて、腑に落ちないのはなぜかというと、何となく、この砂川判決の……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

長島(昭)委員 砂川判決の法理というのが後知恵に聞こえるんですよ。だから、これだけ、私でもこんなにこだわって法制局長官に質問しているわけですね。このことを本当にもう少し、長官、しっかり御答弁をいただかないとなかなか納得されない、こう思いますよ。

 もう一つ聞きます。

 六月十日の本委員会で、民主党の辻元委員の質問に答えて法制局長官はこういうふうに言ったんですね。さっき法制局長官が言った一と二の基本的論理に基づいて、現下の安全保障環境の変化というものを当てはめて結論を導き出した、こうおっしゃった。

 当てはめて変えたということであれば、これは質問です、当てはめて変えたということであれば、また安全保障環境が変われば当てはめを変えていいということですね、そして、場合によってはこれはしぼむということもあるんですか、一回拡大したものをもう一回また縮小することもあるんですね、こう問いましたところ、そんな場合は、そういう厳しい環境がないのだということになったとするならば、仮定ではございますけれども、それは、一、二に当てはまるものとしては、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られるということに、またもとに戻ります、こういう御答弁をされているんです。

 これは本当に、よくよく考えられて答弁されたんでしょうか。政府の憲法解釈というものは法規範そのものなんですよ。

 六月十二日の朝日新聞に、憲法学者が二人いて、一人は私の友人なんですけれども、駒村圭吾慶応大学の教授が「憲法は、その条文だけでなく、実務的な解釈の集合体として存在する。その意味で、一九七二年の政府見解はすでに「憲法の重み」を持っていると言える。」こう言っているんです。つまり、国会での議論の積み重ねの中で憲法解釈というものは確定している。

 それが、安全保障環境が厳しくなったら拡大し、厳しくなくなって緩んできたらまた縮小する。こんな伸縮自在の憲法解釈があり得るんですか。これが本当に法規範なんでしょうか。お答えください。

横畠政府特別補佐人 前提として、そんなユートピアみたいなものがあらわれるとは考えておりませんということはお答えしたとおりでございますけれども、あくまでも論理的な問題としてお答えしたつもりでございまして、昭和四十七年見解の一、二の部分は変えようがない、変えることができない、憲法改正をしなければ変えることのできない、まさにそういうものである、基本原理と申し上げていますけれども、であると。

 それで、三の部分、つまり我が国に対する武力攻撃が発生した場合でなければ絶対に、外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態というものが起こり得ないのかというと、そこはやはり現実の認識というものが当然踏まえられるべきものであろうというふうに考えているわけでございまして、そういう意味で、変えることのできない解釈、ルールではなくて、まさに現実を踏まえて、それがどのようなものというふうに理解するかということを述べたのが三の部分ということを述べたつもりでございます。

長島(昭)委員 長官、憲法解釈というのはぎりぎりの幅を示すんでしょう。今の長官の御答弁は政策判断の話ですよ。外部環境が変わったらその当てはめが変わる、それは政策判断として変わるんですよ。

 今まで内閣法制局は、ずっとこの間、集団的自衛権は法的禁止ということで説明してきたんですよ。しかし、私は、最初に申し上げたように、いや、そうじゃないんじゃないかと。憲法は、規範のぎりぎり許される範囲内で政策判断として、政策判断が伸縮するのは私も理解できますよ、しかし、憲法解釈の限界を画した今回の政府解釈がまた外部環境が変化すると縮小していくなんということは、とてもとても本委員会で認めるわけにいかないですよ。明らかにおかしい、法解釈として。法規範を形成している、そういうやはり自負がおありでしょう、法制局長官にも。

 だから、中曽根総理も言っておられるんですよ。国際情勢とか国内情勢の変化によってそういう解釈が変更されるというのは、法制局の見解が法律論ではなく政策論だということを示している、法制局は政策論を法律論にすりかえている、そんなものに政治家や立法者が乗ってはいけない、そうすると、個別的自衛権は必要最小限度の中にあるから行使できるが集団的自衛権は必要最小限度を超えるから行使できないという法制局の見解も実は政策論であって、そういう判定自体が間違いだというのが私の考え方であるという、これは中曽根さんの考え方なんですよ。私も相当程度これを共有します。

 今法制局長官がおっしゃったような、法解釈としてその限界が伸縮自在に動くなんということを、私は到底受け入れるわけにはいきません。そのことだけ申し上げておきたいと思います。

 先に行きたいと思います。今回の当てはめの議論で大事なのは、安全保障環境の変化、そうですね。この安全保障環境の変化に当てはめて今回政府解釈を変更した、こういうことであります。そうなると、どうしてもひっかかる。

 中谷大臣に伺いたいんですけれども、冷戦期はどうだったんだろうか。

 私、きょう、皆さんのお手元に資料を幾つか用意してまいりました。五ページ目「アフガン、親ソ派クーデター」。これは、後にソ連がアフガニスタンを侵略、侵攻したということになっていますね。実は私はこの事件が、国際政治をやりたい、そういう政治家になりたいと志した原点でもあるんですけれども。

 それに対して、次のページ。アメリカはオリンピックまでボイコットしています。そして海軍力をいよいよ、アメリカがもう一回巻き返して、ロールバックでソ連に対して海軍力を優位にしていこう。優位にしようということは、それまでは劣勢にあった、こういうことであります。

 それから、次のページ。極東のソ連軍が脅威だということで、既に五十個師団に増強されている、こういうことで日米の間で合意をした。極東のソ連の脅威は相変わらず拡大していると国務副長官が言う。中曽根総理になって、日本を不沈空母化しよう、四海峡封鎖、こういう政策、そして千海里シーレーン防衛が防衛白書に初めて載った、これが昭和五十八年のことであります。そして、きわめつけは大韓航空機撃墜事件、こういうこともあった。

 私は、今日の日本を取り巻く国際環境は厳しい厳しいと言われていますけれども、当時の、つまり一九八〇年以来の新冷戦と言われている、そういう当時の国際環境、日本を取り巻く環境の方がよほど厳しかった、こう思うんです。

 なぜそのときに今日のような集団的自衛権限定行使という、当時も中曽根総理のもとでこの集団的自衛権の問題というのはしばしば議論になっていました、当てはめが今回行われたというのであれば、当時なぜそういう当てはめが行われなかったのか。当時の政府として厳しい国際情勢をどういうふうに把握されていたのか、見ていたのか。見解を伺いたいと思います。

中谷国務大臣 長島委員とは、二十一世紀の日本の安全保障を確立する若手議員の会、お互いに共同代表で、もう十五年以上議論をしておりまして、安全保障環境というのは今変わってきております。

 冷戦と比べまして、やはり当時は、アメリカとソ連という二大国の力の均衡によりまして、世界秩序、民族とか宗教とか地域紛争とか、そういうところが力のバランスによってコントロールされて、世界的な平和と安定がこの力の均衡によってできていたということでございますが、冷戦構造が終えんしたことによって、各地の地域紛争や民族とか宗教といったことで、中東を初めいろいろな国々でもこういった紛争が起こるようになりました。

 我が国周辺を見ましても、次の変化として、太平洋のグローバルなパワーバランスが変化しました。例えば、北朝鮮の弾道ミサイルは、一九八九年にはノドンもゼロでしたけれども、二〇一四年には約二百発ありまして、発射回数も二〇一四年までに十回以上、日本が射程に入るミサイルを六発撃っております。

 そして、中国。中国も非常に軍事力をつけておりまして、東シナ海、南シナ海における活動の急速な拡大、活発化をいたしております。例えば、新型のフリゲート艦を一九八九年にはゼロであったのが四十六、そして新型潜水艦も八九年までゼロだったのが今四十五、戦闘機も九一年はゼロだったのが六百八十九機ということで、非常に中国のパワーバランスも変化している。

 これにあわせて、アルジェリア、シリア、チュニジアなどにおいても邦人が犠牲になったテロ、そして海洋、宇宙、サイバーなどの自由アクセス妨害のリスクが拡散、深刻化しまして、脅威は容易に国境を越えてやってくる、もはやどの国も一国のみで平和を守ることができないということで、昭和四十七年当時と大幅に時代が変わったということでございます。

長島(昭)委員 昭和四十七年当時とは確かに、あの当時はデタント真っ最中ですから、あの当時に比べたら今回が厳しいのはわかります。

 その前に、一九八〇年代に新冷戦と言われている、今私が資料を使ってずっと描写をさせていただきましたけれども、そういう時代がありましたよね。そのときは確かに力の均衡が米ソの間であったといいますけれども、それは米ソの直接対決がなかったというだけであって、極東の軍事情勢は物すごく緊迫していたんですよ、我が国を取り巻く情勢は今の北朝鮮や中国の比ではないですよ。

 それは、十三ページの軍事費の比較を見ただけでもよくわかると思います。当時は、米ソは本当に抜きつ抜かれつのぎりぎりの軍拡競争をやっていたわけです。だから、日本だって中曽根政権のもとである程度の軍備を拡張せざるを得なかった、そういう状況でしたよ。今と比べたって少なくとも遜色はないですよ。そういう状況の中でも政府は憲法解釈を変えることなくやってきた。

 皆さん疑問に思っているわけですよ、なぜ今回、どこがどう新冷戦のときと比べて厳しくなったからどうしても個別的自衛権だけでは足りないのかと。私は、ここのところをしっかり説明していただかなければならぬと思うんです。

 例えば、よくこういうことを言う人がいるんですよ、アメリカの力の相対的な低下が最近はあるじゃないかと。しかし、これを見ていただいたらわかるように、新冷戦の一九八四年、八五年、まさに米ソはぎりぎりの闘いをやっているわけですよ、軍事費で。今日はどうかというと、十三ページの下の図を見てください。中国、ロシアを足したってアメリカにかないませんよ。一番最後のページを見てください。中国以下ドイツまで、全部足してもアメリカの方が上ですよ。圧倒的な力をまだアメリカは保持している。そういう中であるにもかかわらず、なぜ今、憲法の解釈の当てはめまでして集団的自衛権の行使をしなきゃならないのか。

 ここのところの説明をしっかりやっていかないと、私はともかくとして、納得できない人は国民にたくさんいますよ。しっかりお答えください。

中谷国務大臣 私のときから、長島委員も御存じだと思いますが、米ソ冷戦構造というのは、力の均衡によっていろいろな紛争また対立が抑止されてきたわけでありまして、一九八四年は米ソの力の対立がまさに均衡していたということですが、九〇年にソ連が崩壊して力の均衡がなくなってしまった、これによって各地においていろいろな紛争や脅威が出現したという変化がございます。

 残りは外務大臣からお答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 基本的には今防衛大臣からお答えしたとおりですが、加えまして、一九八〇年代と今日の安全保障環境、我が国に対するさまざまな危機、リスクに関しましては、簡単に申すならば、質的な変化があるのではないかと考えています。先ほど申し上げましたようなパワーバランスの変化ですとかあるいは北朝鮮の動きですとか、さまざまなものがあります。

 そういったものに加えて、例えばアルジェリアやシリアやチュニジアにおける邦人へのテロ等、テロあるいは宇宙、サイバー、こうしたさまざまな新しい脅威が発生しています。国境を容易に飛び越えてくる脅威が存在する、こういった時代でありますので、どの国も一国のみではみずからの平和や安定を守ることができない、これが今や国際的な常識になっています。

 よって、我が国を守る際にもそういった視点を重視しなければならない、加えて、どの国も一国のみで平和や安定、繁栄を守ることができない。これは常識になりつつあるわけですから、我が国としましても、国際社会において責任ある立場に立たなければならない、責任を果たしていかなければならない。

 そういった観点も含めまして、我が国として今のこの平和安全法制がどうあるべきなのか、こういった議論をお願いしていると認識しております。

長島(昭)委員 私は、率直な感想を申し上げますと、やはり今の安全保障環境の当てはめも意外と相対的なものなんですよ。それがまず一点。それから、憲法解釈の変更のロジックをつくる際に、高村さんも法律家、公明党の北側さんも法律家、法制局長官も法律家、法律家が寄ってたかっていろいろつくり上げたものだから、相当複雑になっちゃって、すとんと国民の腹に落ちないんですよ。だから、そういうところがありますので、今後やはり政府も相当心して説明していただかなきゃならないということを申し上げておきたいと思います。

 ただ、現実の対応は必要です。今両大臣から御説明があったように、私はやはり法制度をきちっとやっていかなきゃいけないと思っています。法制度の細かいところについてはいろいろ異論があります。

 私、この前たまたま小野寺さんとある番組に出て議論を闘わせたときに、小野寺さんがこうおっしゃったんです。すごく印象的だった。国民の平和と安全を守るための法案なのに、何で理解されないのかと。これは何で理解されないと思いますか。理解がなかなか進まない。

 手を広げ過ぎたとか、あるいは急ぎ過ぎだとか、安倍さんに対する不信感があるとか、いろいろ理由はあると思いますけれども、私は、日本国民が七十年前の戦争に負けた、敗戦のトラウマというのが物すごく根強くあるんだろうと思っているんです。ですから、こういう議論も、そのトラウマをもう一回乗り越えるような議論をしていかなきゃいけないと私は思っています。

 トラウマは二つあるんですよ。一つは、二百六十万の同胞を失った、惨たんたる敗戦なんです。この敗戦の余りにも悲惨だったがゆえに、そのことがトラウマになっているんです。

 それから、もう一つは政府不信なんですよ、政治不信。しっかりとした情報も与えられないまま、どんどん引きずり込まれていった。四千人もの若い有為な人材が特攻で死んでいった。外地で命を落とした兵士の皆さん、六割、七割は餓死ですよ。こんな戦争指導で引きずり回されて、そして国を荒廃に陥れられてしまった、そのことのトラウマを今でも引きずっているんです。

 だから、今回の安保法制、ホルムズの機雷掃海だ、やれ他国の戦闘に対する後方支援だといきなり言われても、我が国の平和と安全に直接かかわるようなところだったら、今御説明いただいたように、北朝鮮の脅威がある、中国の海洋進出もある、そういうことに対しては領域警備も含めてしっかりやっていこうねということは、恐らく多くの国民は共有していると思うんですよ。

 国民の皆さんが持っている不安、もっと言えばトラウマ、敗戦のトラウマ、これをきちっと乗り越えられる、そういう皆さんも納得できるような時間がやはり必要なんですよ。だから、衆議院で八十時間をめどにしてどんどん急いでやっていけ、こういうやり方ではだめです。

 私は、与党も野党もだめだと思っています。相互不信があるんですよ。野党側には、与党がどんどん説明を適当にしてばんばん進めていくという、前のめりになっていることに対する不信感が物すごくあるんです。与党は与党で、どうせ野党は最後は反対するんだろう、ただただ時間を引き延ばしているだけじゃないか、そう思っておられるんでしょう。私は、この大事な議論は与野党ともにこの相互不信感を乗り越えたところで本当に真摯に行われなきゃだめだ、そう思っていますよ。そうでなかったら、恐らく、憲法改正ですっきりやった方がいいという議論に負けますよ。

 だから、私も、まだまだやりたいことがたくさんありますから、真摯にこれから議論していきたいと思いますけれども、今のような説明と今のような曖昧な形では、とてもとても日本人がこれまで経験してきたトラウマを乗り越えることはできません。

 そのことだけ申し上げて、しっかりと審議をしてこの結論を得ていく、こういう姿勢を貫いていただくことをお願いして、質疑といたします。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田です。

 長島先輩に引き続き、砂川判決のことをお伺いしたいと思っています。

 一問目なので、軽く大臣にちょっとお伺いしたいんですが、私も土曜日、日曜日に地元に帰りまして、いろいろな方とお話をしました。やはり否定的な考え方の方が多いです。

 その中で言われたことの一つが、いろいろな人がいろいろなことを言っていて、何を信じていいかわからないということでした。目下、この砂川判決自体がクローズアップされていますので、それに対する言及がさまざまな方からされていて、有権者の方々にしてみると何を信じていいのかわからないということを言われていました。

 政府・与党という立場の中で、この砂川判決に関して一番言及をされているのは高村副総裁だと思います。この間、きのうですか、「日曜討論」にお出になられてお話をされていました。

 簡単な話ですが、大臣は「日曜討論」をごらんになられましたか。

中谷国務大臣 しっかりと拝聴させていただきました。長妻委員の御意見も聞かせていただきました。

寺田(学)委員 ごらんになられたのであれば、憲法審査会で高村副総裁が言われたこと、そしてまたきのう「日曜討論」でお話しされたことと、今回、法案提出者である中谷大臣、個人的ですけれども、以前は集団的自衛権を違憲だと思われながら今回合憲に考え方を変えられた方として、ぜひ説得力ある御説明をいただきたいということで、中谷大臣の憲法観、砂川判決についての憲法観、そして法案との関係をお伺いしたいと思います。

 まず、砂川判決自体は判決文において何を定めたのか、定めていないのかということを整理しなきゃいけないと思います。

 るる出ていますが、まず、一番単純なところとして、高村副総裁も、砂川判決はということで、憲法審査会で「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。」と言って、自衛権は砂川判決が認めているというようなお話をされました。

 この高村副総裁のお考え方と、中谷大臣、何か違うところはありますか。

中谷国務大臣 砂川判決で最高裁判所は、我が国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなくて、我が国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとることは、国家固有の権能として当然のことと言わなければならないという判定をいたしまして、固有の自衛権を有することは言及をしております。

 高村副総裁が言われましたけれども、それは、我が国の、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとり得るということで、集団的自衛権、これを排除しているものではないと言われましたけれども、そのとおりだと思っております。

寺田(学)委員 冒頭申し上げましたけれども、ごらんになられている国民の方は、何を信じていいかわからない、政府とそれ以外の方が言われていることの違いがあるかどうかということも確認をしたいんだと思います。

 ですので、理由があるとすれば後ほどお伺いしますので、まずは違うかどうかということを聞きたいと思って、自衛権は砂川判決で認められているということに対して、高村副総裁のお考えと違うところはありますかということをお伺いしたいんです。どうですか。

中谷国務大臣 全く違うものはございません。

寺田(学)委員 同じでよろしいんですよね。

中谷国務大臣 同じです。

寺田(学)委員 自衛権そのものは認められると砂川判決が判決の中で認めたということは、高村副総裁のお考えと中谷大臣のお考えは一緒だということでした。

 それでは、その自衛権の範囲ということに関して何かしら砂川判決は言及をし、そして何かを定めているというふうに中谷大臣はお考えですか。

中谷国務大臣 砂川判決は、個別的自衛権また集団的自衛権の区別をつけずに、我が国が自衛権を有することに言及した上で、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとり得ることを認めたものであると認識しております。

寺田(学)委員 それでは、先ほど長官がお話をされている中にもありましたが、この砂川判決の中に集団的自衛権の合憲性に対する言及はありますか、ありませんか。

中谷国務大臣 個別の自衛権を有することを言及したものでございます。

寺田(学)委員 質問に答えてください。集団的自衛権の合憲性に対する言及はありますか、ありませんか。

中谷国務大臣 先ほど個別のと言いましたけれども、固有の自衛権を言及したものでございます。

 これにつきましては、個別的自衛権も集団的自衛権も両方言及はしておりませんが、集団的自衛権を排除しているものではないと私は認識しております。

寺田(学)委員 いやいや、私の質問は、集団的自衛権の合憲性に対する言及は砂川判決の中でありますかということですので、あるかないか。あるとすれば、そのある部分をおっしゃってください。ないとすれば、ないと御答弁ください。どちらですか。

中谷国務大臣 固有の自衛権を有することは言及をしております。個別的自衛権、集団的自衛権、両方言及はしておりません。(寺田(学)委員「言及があるかないかですから」と呼ぶ)両方言及をしておりません。

寺田(学)委員 では、もう一度お伺いします。集団的自衛権の合憲性に対する言及はありますか。

中谷国務大臣 何度も御答弁させていただきましたが、両方言及はしておりません。

寺田(学)委員 それでは、言及がないが、言及がないことを今回の法案の限定された集団的自衛権の合憲の根拠と解釈されますか。

中谷国務大臣 直接言及しておりませんが、昭和四十七年の話になりますけれども、そこの基本的論理、これと軌を一にしたものでございます。

寺田(学)委員 もう一回聞きます。

 言及はしていないということでした。合憲性に対する言及は砂川判決ではないと。(発言する者あり)

浜田委員長 静かに。

寺田(学)委員 合憲性に対する言及は砂川判決ではないということでした。まず、これは確定です。

 その上で、言及がないことを今回の限定された集団的自衛権が合憲であるという根拠にされますかというお話をお伺いしました。もう一回御答弁ください。

中谷国務大臣 砂川事件の判決は、先ほども申しましたけれども、個別的自衛権と集団的自衛権との区別をつけずに、我が国が主権国家として持つ固有の自衛権を有することに言及いたしております。

 その上で、この判決は、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとり得ることを述べておりまして、これは、これまで政府見解の基本的な論理において「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。」としていることと軌を一にしております。

寺田(学)委員 一個一個整理していっているんです。

 砂川判決に集団的自衛権を合憲であるという言及はないと。言及はないけれども、今回法案として出されている限定的な集団的自衛権を合憲と、根拠とすることはこの砂川判決からありますかと聞いているんです。この砂川判決を今回の限られた集団的自衛権が合憲であるという根拠にされますかという話を聞いたんです。

中谷国務大臣 その根拠というのは昭和四十七年の見解の基本的論理でありまして、この中に「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。」。これは砂川判決の中の同じ文章です、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとり得ることは、国家固有の権利として当然のことと言わなければならない。まさに同じ内容の文章がこの四十七年に書かれているわけでありまして、私たちは軌を一にするものだと考えております。(寺田(学)委員「イエス・オア・ノー。イエス・オア・ノーです」と呼び、その他発言する者あり)

浜田委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣、答弁願います。

中谷国務大臣 砂川判決につきまして、今回の新三要件は砂川判決そのものを根拠としたものではありませんが、その後、国会でいろいろな議論がありましてこの昭和四十七年の政府見解がつくられたわけであります。その基本的論理の中にこの砂川判決の部分を記述されまして、その論理の中から導き出したものでございます。

寺田(学)委員 改めて、ごらんになられている方にわかりやすいようにお伺いします。

 もう一度お伺いしますが、集団的自衛権に関して、合憲である、その合憲性に対する言及はこの砂川判決の中ではないということは、大臣がお答えになられました。

 それでは、言及はないけれども、今回の、政府が認めようとしている限定された集団的自衛権が合憲であるということを、この砂川判決に政府は求められているんですか、中谷大臣はそう解釈されているんですかというお伺いです。イエス・オア・ノーですので、それを御答弁ください。

中谷国務大臣 先ほど答弁しましたが、新三要件は砂川判決そのものを根拠としたものではありません。あくまでもこれまでの政府見解の基本的論理から導き出したものでありまして、その上で申し上げますと、砂川事件の判決は、憲法の解釈を最終的に確定する権能を有する、違憲立法審査権を与えられた憲法の番人である最高裁判所大法廷が判断をしたものでございます。

 そこで、この判決が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとり得ることを述べておりまして、これは、これまでの政府見解の基本的な論理において「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。」ということと軌を一にしておりまして、砂川判決に言及をしているのは、このようなことを説明したものでございます。

寺田(学)委員 もう一度お伺いします。それでは、今回の限られた、限定された集団的自衛権が合憲であるという根拠をこの砂川判決には求めていないということでよろしいですね。(発言する者あり)

浜田委員長 内閣法制局長官、簡潔に。

横畠政府特別補佐人 委員お尋ねの、根拠を求めるという意味のいかんによろうかと思います。

 厳密な意味で最高裁の判断が判例として法的拘束力を持つ、そういう意味での根拠というものはもともとないということは当初来申し上げている意味でありまして、そのような意味での根拠として用いているものでないことが前提でございます。

 その上で、先ほど申し上げたような、最高裁判所があえてその判断の過程で考慮したことを判示しているということ、それにそぐうものか、沿うものか、その範囲内かという意味でその根拠かというお尋ねでありますれば、今回の限定された集団的自衛権というのはその根拠たり得る、その範囲におさまっているものである。別の言い方をすれば、個別的自衛権の行使が今回の砂川判決を根拠とするのかといって、それがイエスであるならば、今回の限定的な集団的自衛権の行使もイエスである、そういう意味でございます。

中谷国務大臣 その根拠について申し上げますと、厳密な意味での判例、拘束力を持つ意味はないものの、非常に重いものでありまして、今回の政府の論理におきましては、その範囲におさまっているものでございます。

寺田(学)委員 政府の説明、これからの説明の姿勢をちゃんと整理したいんです。

 この改正法案が合憲だ、違憲だという議論が、今本当に、有権者の中、国民の中にもあります。それを政府がどのようにして、いや、合憲ですと説明するのかというところを聞いているんです。高村さんは高村さんで独自の御自身のお話をされているのかもしれませんが、中谷大臣、法案提出者としてどのように捉えているかということを聞いたんです。

 それで、整理してわかりやすいように答えてください。根拠とはしないんですね。重要な何とかと言いましたけれども、この砂川判決を今回認める集団的自衛権が合憲であるという根拠にはしないということは、まず、いいですか。

中谷国務大臣 この最高裁の判決で何が言われたかというと、憲法九条の自衛権との関係についての考え方を示した唯一の最高裁の判決であります。そして、憲法前文が確認する国民の平和的生存権も根拠として、憲法九条の規定によって我が国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなくて、我が国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとり得ることは、国家固有の権能として当然であるというものが最高裁から示されましたので、その基本的論理の中にそのことを記述したということでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 では、速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 もう一度申し上げます。

 新三要件は、砂川判決そのものを根拠としたものではなくて、あくまでもこれまでの政府見解の基本的論理から導き出したものでございますが、そのものとこの砂川判決というのは軌を一にしたものでございます。

寺田(学)委員 新三要件の砂川判決との関係を聞いているのではなくて、合憲性というものを政府が証明しようとする中において、この砂川判決を合憲の根拠とされるんでしょうかということを聞いているんです。新三要件の話は聞いていません。

 この法案が、限られた集団的自衛権が合憲であるということを政府が主張する上において、この砂川判決を根拠とされますか、されませんかということを聞いているんです。新三要件ではありません。

中谷国務大臣 まず、この砂川判決というのは、固有の自衛権を有することを言及しております。今回示された限定された集団自衛権というのは、このほかに三つの要件というものを課せられております。これをもって憲法の範囲の中であるというふうに解しております。(寺田(学)委員「委員長、さすがにちょっと僕ももうつらいです」と呼び、その他発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣、答弁の方をお願いいたします。

中谷国務大臣 根拠、これはあくまでも昭和四十七年の政府見解の基本的論理でございます。(寺田(学)委員「砂川判決ではないのなら」と呼ぶ)

 砂川判決を直接の根拠としているわけではございませんが、砂川判決はこの基本的な論理と軌を一にするものでございます。

寺田(学)委員 直接の根拠ではないということでした。わかりました。

 それで、今、軌を一にするというお話がありましたので、確認の答弁をちょっとお願いしたいんですが、ことしの六月九日、最近の参議院の外防ですけれども、軌を一にするとは、いわゆる四十七年見解の基本的論理一、二、そして当てはめの三がありますが、軌を一にするとは、この基本的論理一、そしてプラス二と軌を一にしているのか、はたまた違うのか、それはどうですか。

中谷国務大臣 これも過去に答弁させていただきましたが、一の部分でございます。

寺田(学)委員 基本的な論理一、必要な自衛の措置をとることを禁じているとは到底解されない、まさしく砂川判決でお答えをされた部分だと思います。

 なので、基本的論理二、とはいえ、しかしながら、自衛のための措置を無限定に認めているわけではない、必要最小限の範囲にとどまるべきであるということは軌を一にしていないということでよろしいですね。(中谷国務大臣「えっ」と呼ぶ)丁寧に言ったつもりです。

浜田委員長 もう一回。済みません。

寺田(学)委員 基本的な論理一、基本的な論理二というのが、政府見解、四十七年見解というものであります。基本的な論理一、必要な自衛の措置をとることを禁じているとは到底解されないということと軌を一にしているんだという御答弁でしたので、それでは、基本的な論理二に当たる自衛のための措置を無限定に無制限に認めているとは解されない、必要最小限度の範囲にとどまるべきであるということは、そこは軌を一にしていないということでいいですね。一を認めると言った以上は、大臣も答えなきゃだめですよ。

横畠政府特別補佐人 昭和四十七年見解の一の部分が、まさに砂川判決で判示されていたことと軌を一にする、つまり、政府も全く同じ考え方に立っているということでございます。

 昭和四十七年見解の二の部分は、冒頭「しかしながら、だからといつて、」と申し上げているとおりでございまして、やはり砂川判決によるだけでは大変漠としている、我が国を守るための自衛権というだけで漠としておりますが、憲法九条のもとでどこまでの武力の行使が許されるか、そういう観点から絞り込んであるのが二の部分でございます。

寺田(学)委員 長官から御答弁いただきました。

 では、大臣、それを受けてしっかり答えてください。

 基本的論理一、二の一は軌を一にしているということでしたが、基本的な論理二というものは砂川判決と軌を一にしているわけではないということでよろしいですか。

中谷国務大臣 二の部分は絞り込みの部分で、限界のことを言っています。

 ここでは三つの限界を言っておりまして、しかしながら、だからといって、平和主義、これを基本とする憲法が、右に言う自衛のための措置を無限定に認めているとは解されないということで、それは、あくまでも外国の武力攻撃によって国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態に対し、これらの権利を守るためにやむを得ない措置として初めて容認をされるものであるから、必要最小限の範囲にとどまるべきものであると、三つの限界を定めております。

 これは、一によって示された砂川判決の基本的論理と軌を一にするものに対して、憲法上の三つの限界を示したものでございます。

寺田(学)委員 軌を一にしていないということですね。

中谷国務大臣 一をもとに、憲法で言う限界を絞り込んだものでございます。

寺田(学)委員 総理が六月八日、ドイツで記者会見をされて、同じように質問されたときに、砂川事件に関する最高裁判決の考え方と軌を一にするものでありますとお話しされていますが、当然ながら、大臣のお考え方、整理と同じでよろしいですよね。

中谷国務大臣 先ほどから答弁しているとおり、一の部分が、砂川事件の「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。」との最高裁で示された考え方と軌を一にするものでございます。

寺田(学)委員 だから、総理と同じで、総理と大臣のお考えは一緒でよろしいですよね。

中谷国務大臣 確認でございますが、まず、法整備に……(発言する者あり)

浜田委員長 答弁を続けてください。

中谷国務大臣 総理と同じでございます。

寺田(学)委員 総理と大臣と、当然、砂川判決と四十七年見解の整理は同じであるということでした。そこはあっさり確認できるものだと思ったんですが。

 それで、きのう、「日曜討論」をじっくりごらんになられたとお話しになりました。

 高村副総裁は、今回の限定的な集団的自衛権の根拠、合憲であるという理由を、集団的自衛権、個別的自衛権と分けて言及していないという理由をもって、今回、限定的な集団的自衛権は砂川判決が合憲と認めているんだというような御発言をされていました。それと大臣の認識は一緒ですか。

中谷国務大臣 はい、一緒でございます。

寺田(学)委員 今回の限られた集団的自衛権、それを高村さんはテレビ報道の中で、いやいやいや、明示的に集団的自衛権と個別的自衛権を分けていない、だから、今回の限定的な集団的自衛権というものは憲法の番人たる最高裁が認めておるんだという御趣旨で御発言されました。それと一緒だとすると、今までの議論が全てひっくり返るんです。

 限られた集団的自衛権、今回法案を提出されているものは、砂川判決が合憲と認めている旨の御趣旨の御発言がありました。それとお考え方は一緒ですかと聞いているんです。

中谷国務大臣 砂川事件で言われたことは、主権国家として持つ固有の自衛権を有するということでございますので、この自衛の範囲の中だと思っております。

寺田(学)委員 それでは、大臣の、高村さんの御発言をどのように捉えているかをちょっと整理させてください。

 高村副総裁は、私が聞く限りにおいて、「日曜討論」も憲法審査会もそうですが、個別的自衛権、集団的自衛権と分けてこの判決では言及していないのだから、今回の限定的な集団的自衛権が合憲である、否定はされていない、そのような御発言がありました。根拠として認めているわけですよ、否定はされていないと。(発言する者あり)認めていないんですか。

 高村さんが、今回の限定的な集団的自衛権が違憲ではないか、合憲ではないかという議論の中で、いやいやいや、判決文の中で集団的自衛権、個別的自衛権と分けてしゃべっていない、言及していない、だから排除はされていないんだ、今回これが合憲だと認められていることは排除されていないと。

 先ほど、直接的な根拠ではないと政府としてお認めになられましたが、では、間接的な根拠になり得るという政府の立場になるんですか、今度は、同じだということであれば。

 高村副総裁はどのような御趣旨で御発言されたかということをもう一度お伺いします。どのように大臣はお考えになられましたか、御発言で。

中谷国務大臣 高村副総裁の発言の細かいところにつきましては確認をしてお答えさせていただきますけれども、私もそれを聞いていまして、個別の自衛権を有することをこれは言及しているものだと。したがって、個別的自衛権とも集団的自衛権とも区別をつけずに、両方言及をしていないものでございますので、集団的自衛権を排除しているものではないということで、自衛の範囲の中だということでございます。

寺田(学)委員 高村副総裁の考え方の基本は、判決文において明示的に個別と集団を分けていないからこそ、個別にせよ集団にせよ、何かしらが認められないということではないでしょうというお話をされていると思うんです。

 先ほど、砂川判決自体が今回の限定的な集団的自衛権の直接の根拠ではないという答弁はいただきましたので、そこはそこで整理しますけれども、憲法一般論でお伺いしますが、憲法の条文または具体的な事例によって導き出された判決で明示的に否定されない限り、それは合憲の余地があるんですか。委員長の采配に任せます。

横畠政府特別補佐人 裁判の拘束力というのは、あくまでも司法の判断ということで、当該具体の事件に及ぶのみでございまして、最高裁判所の判断には判例としての拘束力というものももちろんございますけれども、それにつきましても、当該事件の解決のために必要なものとして示した判断の限りであろうかと思います。

寺田(学)委員 御丁寧に御答弁いただけているんですが、もう一回繰り返します。

 とすれば、憲法の条文そしてまた最高裁判所の判決に明示的にそれは禁止されていると言われない限りにおいて合憲の余地というのがあるわけではない。難しいですね、言い方が。明示的にそれは禁止だと言われたこと以外は許されているということではないですよね。

横畠政府特別補佐人 ちょっと難しい御質問で答えにくいんですけれども、具体の事件と申しますと、砂川事件ではなくて、例えば自衛隊が違憲であるかどうかということが直接の争点になって、それに対して違憲であるという判断を仮に、もちろん仮にですが、最高裁判所が判断をしたとするならば、それは拘束力があるということで、政府としては何らかの対応というものが求められることになろうかと思います。

寺田(学)委員 自民党さんのビラになってしまうので、自民党さんの考え方を代弁される方はこの中には資格的にはいないので難しいですが、政府のお考え方でもいいです。

 「徴兵制も、決してありません。」という文言があります。徴兵制は、憲法の条文でも判決の中でも明示的に禁止はされていません。徴兵制は、政策的にしないのか、それとも憲法として認められていないのか。どのようにお考えでしょうか。

横畠政府特別補佐人 徴兵制は、憲法で保障されています基本的人権の重要なものでありますところのまさに強制的な苦役というものに当たる、当たり得るということで、憲法上禁止されているという理解でございます。

寺田(学)委員 そのような、徴兵制は苦役に当たるという、憲法の明文にはありませんけれども、判決はあるんですか。

横畠政府特別補佐人 先ほども申し上げたとおり、裁判所は具体的な事件を前提に判断をいたします。そもそも徴兵制などというものは論外でございますので、そのような事件もありませんし、ゆえに裁判所の判断もないであろうと思います。

寺田(学)委員 憲法の番人たる最高裁判所の判決が出るには、徴兵制がしかれて、それに対して訴える方がいて判決が出ない限り出ないので、なかなか難しいと思います、憲法の番人が判断するのは。だからこそ、高村さんが言われる、いや、憲法に明示的に書いていないから認められる余地があるんじゃないかという論法は、私は不誠実だと思っているんです。

 ちなみに、現在担当閣僚ではありませんが、石破大臣が、「徴兵制についてですが、徴兵制をとるかとらないかはその国の政策判断だと私は思っています。」「日本の国において、徴兵制は憲法違反だと言ってはばからない人がいますが、そんな議論は世界じゅうどこにもないのだろうと私は思っています。」「徴兵制は憲法違反、なぜですかと聞くと、意に反した奴隷的苦役だからだと。国を守ることが意に反した奴隷的な苦役だというような国は、私は、国家の名に値をしないのだろうと思っています。」というようなことを憲法調査会の中でお述べになられているので、ここは疑義があるのかなと思いまして、質問をいたしました。

 私は、憲法上明示的に言われることは今、当然ながらないのであれですが、憲法上禁止されているという御答弁はわかりました。

 それで、残り十分ですけれども、高村副総裁はこのようにも述べられているんです。意図的、便宜的な憲法解釈ではなく、違憲だという批判は全く当たらないと、今回の七月一日の閣議決定を含め一連のことを言われているんですが、中谷大臣、今回の憲法解釈は意図的、便宜的なものだと思われますか。

中谷国務大臣 これは、憲法九条の解釈といたしまして、従来から政府が一貫して表明してきた昭和四十七年の政府見解の基本的論理、これに沿ったものでございまして、憲法違反ということではございません。(寺田(学)委員「意図的かあれじゃないかと聞いているんです」と呼ぶ)論理的整合性を持ったものでございます。

寺田(学)委員 高村副総裁の言葉にのっとって議論した方が整理しやすいと思ったので聞いたんです。意図的、便宜的な憲法解釈ですか。

中谷国務大臣 そうではございません。論理的整合性に基づいた判断でございます。

寺田(学)委員 そうではないということであれば、大臣のお考えになる意図的、便宜的な解釈というのはどのような解釈なんですか。

中谷国務大臣 今回の憲法解釈におきましては、政府が一貫して考えてまいりました昭和四十七年の政府見解、これの論理的なものを整合性を持ってしっかりと判断したということで、意図的、便宜的という意味がどういう意味で言われるかわかりませんけれども、論理的にしっかり考えたということでございます。

寺田(学)委員 それは一問前の答弁ですよ。

 大臣が、意図的、便宜的な憲法解釈ではないと否定されたので、大臣のお考えになる意図的、便宜的な解釈というのはどのようなものなのか。ないと言っている以上、その規範を教えてほしいということです。

中谷国務大臣 国際法上各国に認められていると同様の集団的自衛権の行使を認めるなどの、憲法九条の解釈に関する従来の政府見解の基本的な論理を超えて武力行使が認められるような解釈を現行下で採用することは困難でありまして、そういうときは憲法改正が必要でございますが、今回は、現行の憲法の中で論理的に考えまして、その範囲内で考えたということでございます。

寺田(学)委員 高村副総裁が言われているわけですよ。これが合憲であるということの理由の一つとして、意図的、便宜的な憲法解釈じゃないと言われた。大臣にお伺いしました。今回の憲法解釈、高村さんはこう言われていますけれども、意図的、便宜的な解釈だと思われますかと言ったら、違うと。

 では、違うというのであれば、大臣が考える意図的、便宜的な憲法解釈というのはどのようなものなんですか。特別難しい話を聞いているわけじゃないです。大臣のお考えを聞きたいんです。

中谷国務大臣 憲法で言う論理的な考え方を逸脱するものが、おっしゃることであると考えます。

寺田(学)委員 考え方を逸脱する。意図的というのは、ある種の意図を持って御自身の都合のいいように解釈することかなと、私は辞書を調べながら思いましたけれども、そういうのが意図的というんですかね。どうでしょう。

横畠政府特別補佐人 では、意図的、便宜的な解釈というのは何だというお尋ねでございますが、具体的に言いますと、例えば、これは決して法制局の解釈ではございませんけれども、昭和四十七年見解の一、二の部分を変えるような解釈であろうかと思います。

 例えば、一でいいますと、我が国にとって有益である、あるいは便利である、そういう理由で、他国防衛のために積極的に集団的自衛権を行使することができるというような解釈に及ぶようなこと。

 二でいいますと、まさに国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという究極の事態、そうでないのに、あらかじめ、もっと事前に武力の行使をしてもいいのだというような解釈をするというようなことであろうかと思います。

寺田(学)委員 ちょっと時間がもうあれなので進めますが、きょう、お手元に一枚だけ資料をお配りしました。砂川事件最高裁判決の抜粋で、一字一句、今お話ししたいところを抜きました。いわゆる統治行為論です。高村副総裁が、きのうのテレビでも乱発をされていましたし、憲法審査会でも統治行為のことをお話しされていました。

 憲法審査会を例にとって言うと、砂川判決自体が、先ほどからさんざん議論しましたけれども、合憲である理由というのは集団と個別を分けていないからだというお話をした上で、集団的自衛権が認められるか認められないか、憲法が許しているか許していないかという議論の中で、「そして、その上で」という順接を用いながら、「砂川判決は、我が国の存立の基礎に極めて重大な関係を持つ高度の政治性を有するものについては、一見極めて明白に違憲無効でない限り、内閣及び国会の判断に従う」とお話をされました。言葉を最高裁の判決から引用されているので、一字一句同じ部分が出てきています。

 ただ、この砂川事件の最高裁判決は、高村副総裁が意図されているような、集団的自衛権が憲法上認められるかということを政治的に統治行為論として内閣及び国会に任せているという論理展開ではなく、ここに書かれているとおり、「本件安全保障条約は、前述のごとく、」ここから引用するんです。「主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係を持つ高度の政治性を有するもの」、ここで切っちゃうんです。その後に書かれている「その条約を締結した内閣およびこれを承認した国会」という、本件安全保障条約を議論しているという前提で書かれているものを、意図的なのか忘れてしまったのかわかりませんけれども、いきなり下から五行目の「一見極めて明白に違憲無効」、憲法審査会では、「であると認められない限り」というのを「無効でない限り」、「右条約の締結権を有する内閣およびこれに対して承認権を有する」というところを飛ばして「国会の判断に従う」べきだと言っていると引用されているんです。

 これは、どこをどう読んでも、統治行為論そしてまた判決文の法的効力、読み方という基本からいって、統治行為論を述べているのは、本件安全保障条約、問われていたものであって、勝手に、集団的自衛権が認められるかどうかは一見極めて明白に違憲無効と言われない限り内閣及び国会の判断に委ねられているんだというのは、極めて恣意的だと私は思います。大臣、いかがですか。

中谷国務大臣 これは、戦後、憲法と自衛権との関係におきまして、最高裁が考え方を示しました唯一の最高裁の判決でございまして、この前文が確認する国民の平和的生存権も根拠といたしまして、憲法九条の規定によって、国家固有の権能として当然であるというものを記述されておりますので、これは非常に最高裁の判決として重いものだと認識しております。

寺田(学)委員 そのような御見識があるのであればお伺いしますが、この統治行為論は、集団的自衛権がどのように認められるかということを国会ないしは内閣に委ねたものだという読み方でよろしいんですか。

中谷国務大臣 資料で提出されたその判決の抜粋内容、このとおりだと思います。

寺田(学)委員 高村さんの言われる、集団的自衛権の自衛の範囲というものは高度に政治性を有するものだから内閣及び国会の判断に委ねられているというお話でしたが、大臣は、同じように、集団的自衛権の自衛の範囲というものは極めて政治性が高いということで内閣及び国会の判断に従うべきというふうに最高裁は言われているとの解釈でよろしいですか。

中谷国務大臣 高村先生が言われているような、憲法九条と自衛隊の関係においての最高裁の記述でございますが、これは今回の最高裁の判決を導くための論理的な根拠として述べられたものでございます。統治行為論におきましては、その理由として、その判決で述べられた内容でございます。

寺田(学)委員 この統治行為論、砂川判決で言われた、「本件安全保障条約は、」ということで承認した国会、条約を締結した内閣ということで限定されて、当然ながら、本件の安全保障条約について説かれた結論だと私は思っていますけれども、大臣は、一般的に、主権国として我が国の存立の基礎に極めて重大な関係を持つ高度の政治性を有するものは一見極めて明白に違憲無効ではない限り内閣及び国会の判断に委ねられているというお考えでよろしいですか。

中谷国務大臣 私は、安全保障条約に関して最高裁が判断を示されたということで、この安全保障条約についての御判断だと思っております。

寺田(学)委員 時間が来ましたので、統治行為論について、高村副総裁が非常に恣意的にこの判決文をもって乱用されていることは、大学の後輩ではありますが、本当に残念でありますし、何とかしてほしいなと私は思いますので、そのことを今後も議論することをお伝えして、終わりたいと思います。

 以上です。

浜田委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 緒方林太郎でございます。

 三回目のバッター立ちになります。大臣、よろしくお願いを申し上げます。

 これまで三十数時間にわたる質疑が行われまして、地元に私も帰りましていろいろな方と、それこそ与党支持者の方ともお話をしておりますと、よくわからない、何が議論されているかもよくわからない、だけれども憲法学者の方が何かだめだと言っている、あれはだめなんでしょうというふうに言われる機会が非常に多かったです。それは別に私が恣意的に話す方を選んだわけでも何でもなく、与党の支持者の方についても同じことを言われました。

 そういった中で、私、高村副総裁が言われたことの中に非常に深刻だなと思うことがありました。憲法学者は字面ばかりにこだわると。あたかも、憲法学者は字面だけにこだわって、そんな人間の言うことを聞く必要はないんだと言わんばかりの姿勢でありました。

 大臣、憲法学者は字面ばかりにこだわる、この認識を共有しておられますか。

中谷国務大臣 そんなことはございません。憲法を研究されて見識を持たれる方の御意見でございますので、私たちはしっかりと拝聴する必要がございます。

 ただ、国会において憲法をどう解釈して政策をつくるのか、これは国会議員に与えられた責務でございまして、幅広くいろいろな方々から御意見を聞いて、自分としてこう考えるんだということを固める上におきましては、いろいろな方々の御意見を聞く必要があろうかと思っております。

緒方委員 憲法学者の人がいろいろ意見を言えば、それに対して、字面ばかり追っているという声が与党から返ってくる。そして、与党経験者の重鎮の方々が異論を唱えれば、それに対して、もうバッジをつけていない人間だ、全く影響ないと言われる。

 今、政権は、誰のどういう異論であれば耳を傾ける余地を持っているんでしょうか。何を言おうが、それは自分たちは知らない、関係ない、聞く必要ない、影響ないと言われるけれども、誰のどういう意見であれば、その異論に対して耳を傾けるんでしょうか、大臣。

中谷国務大臣 国会での審議もそうですけれども、いろいろな考え方に基づいて誠実にお答えをいたしておりますので、私も、考え方が違う方々におきましても丁寧に論理的に説明をするように心がけているわけでございます。

緒方委員 今の政権のそういう姿勢、私は国民に大きな不安を与えていると思います。異論を挟もうが、それに対して、それを全部排除していく。もっともっと耳を傾けていただきたいということを申し上げて、具体的な中身に入っていきたいと思います。

 前回も質問いたしましたけれども、順序を追ってわかりやすく説明していきたいと思いますので、真摯な答弁をお願いいたします。

 まず、前回も質問いたしましたけれども、一九九六年、台湾海峡で緊張事態が起こった、そして二〇〇九年、北朝鮮で核実験が行われた。これらについては周辺事態だと政権は認定しませんでしたね、大臣。

中谷国務大臣 周辺事態法ができたのは九八年でしたので、台湾はその前。北朝鮮につきましては認定をしなかったということでございます。

緒方委員 北朝鮮で核実験をしたことが周辺事態ではなかった、それは我が国の平和及び安全に対する重要な影響がないというふうに判断したからということでよろしいですね、大臣。

中谷国務大臣 当時もそうですけれども、ある事態が周辺事態に該当するかどうかにつきましてはその規模とか態様等を総合的に判断するものですが、北朝鮮の核実験については、その当時の状況に照らして、それが我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態には該当しないという判断をしたということでございます。

緒方委員 二〇〇九年、北朝鮮の核実験については周辺事態に当たらない。これは確認でありました。

 前回も申し上げましたけれども、周辺事態でないというところから存立事態までの距離なんですけれども、周辺事態でないところから周辺事態であるというところに一つハードルがあります。そして、その周辺事態の中でさらに危機の度合いが高いものとして存立危機事態というのがある。我が国が攻撃を受けたときとの関係で照らし合わせると、存立危機事態というのは我が国が攻撃を受けたときには武力攻撃事態と同等であるということで、大臣、よろしいですね。

中谷国務大臣 前提がまず一つ違うんですね。武力攻撃事態というのは我が国が攻撃を受けたというのが前提で、存立事態というのは我が国と密接な他国が武力攻撃を受けたということで、その認定につきましては、武力を用いた対処をしなければ国民に我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな事態ということでございます。

緒方委員 もう一度確認ですけれども、武力攻撃が生じたときというのと存立危機事態というのは、スタートのところが違うけれども、結果として効果のところでは同じぐらいの重要な影響が生じている事態だという理解でいいですよね、大臣。これは確認であります。

中谷国務大臣 まず、異なる観点から評価をいたしますが、いずれの事態にも該当する場合は両方の事態を認定いたしますし、現実の安全保障環境を踏まえれば、存立危機事態に該当するような状況は、同時に武力攻撃事態にも該当することが多いということでございます。

緒方委員 大臣、私、そういうことを聞いておりません。

 武力攻撃が生じた事態というのと存立危機事態というのは、もちろんスタートのところは我が国が攻撃を受けたときか、それとも我が国と密接な関係にある他国が攻撃を受けたときかという違いがあるけれども、結果としての効果については全く同等の水準のものである、そういうことでよろしいですねと聞いているんです。

中谷国務大臣 先ほどお話ししましたけれども、存立事態の考え方は、武力を用いた対処をしなければ国民に我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であります。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 緒方林太郎君。

緒方委員 もう一度質問いたします。

 武力攻撃が生じた事態、武力攻撃事態の中でも切迫事態ではなくて、武力攻撃が発生した事態というのと存立危機事態というのは、その損害の度合いにおいて全く同等ですよねということを聞いているんです、大臣。

中谷国務大臣 同等ではございません。

 武力攻撃事態と存立事態は、それぞれ異なる観点から評価される概念である一方、存立が脅かされて国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆されるという根幹においては共通する考え方に立脚するものでありますけれども、現実の安全保障環境を踏まえれば、存立危機事態に該当するような状況は、同時に武力攻撃事態にも該当することが多いと考えられます。

緒方委員 そうすると、私、実はこれは、一緒だという返事が返ってくることを前提に考えていたんですが、昭和四十七年の見解というのは、外国から武力攻撃を受けた場合と書いてあって、その後に、我が国の存立が脅かされ、そして幸福追求の権利等々が根底から覆されると書いてあって、別に、集団的自衛権と個別的自衛権なんかに分けていないわけですよ。分けていないわけですよ。

 四十七年見解においては、個別的自衛権も集団的自衛権であっても、それがどういう区分であろうが、起こった事象に対して、外国からの武力攻撃が起こったことに対して、こういうときがあれば自衛権を行使できるとしか書いてないんです。ということは、効果が違うということは、それはおかしいじゃないですか、大臣。おかしいでしょう、大臣。答弁ください。

中谷国務大臣 最も違うところは、我が国が武力攻撃を受けた場合なのか、それとも我が国と密接な関係にある国が深刻な武力攻撃を受けた場合、これは違います。前提が違いますし、異なる観点から評価される概念であります。

 さっきもお話ししましたが、国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという根幹においては共通する考え方に立脚するものでございます。

緒方委員 その根幹というところなんですけれども、七二年見解は、外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される急迫不正の事態に対処し、そのために自衛権が認められるというふうに書いてあるわけですよね。ということは、そこにどっちを当てはめようとも、起こっていることは、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される急迫不正の事態が生じているということですよね。

 ということは、個別的自衛権であろうが集団的自衛権であろうが、それによって起こった結果、そしてその効果、影響というのは同等でなきゃおかしいじゃないですか、大臣。答弁ください。

横畠政府特別補佐人 委員御指摘のとおりでございまして、昭和四十七年の政府見解の二の部分で言います「外国の武力攻撃によつて国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」というものに従前は我が国に対する武力攻撃が発生した場合が当たり、それしかないというふうに解してきたわけですけれども、今般は、新三要件の第一要件で書いておりますけれども、新三要件を満たす場合、そういう場合もこの事態に当たるんだ、そういう認識のもとで新三要件というのを組み立てておりまして、その状況というものを御説明すべく、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるという新三要件の第一要件につきましては、他国に対する武力攻撃が発生し、そのままでは、すなわち、その状況のもと、武力を用いた対処をしなければ国民に我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかであるという御説明をさせていただいております。

緒方委員 では、大臣、答弁を間違えておりましたね。訂正をしてください。

中谷国務大臣 先ほどの答弁も、国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆されるという根幹において共通する考え方に立脚するものであるということで御答弁させていただいております。

緒方委員 我が国に生じる損害の度合いは、先ほど、違いますというふうに言われましたね。大臣、そう言われましたね。

 大臣、間違っていると思いますよ。訂正ください。

中谷国務大臣 同様な深刻な事態というお問いでございました。

緒方委員 大臣、答弁を訂正された方がいいと思いますよ。大臣の答弁と法制局長官の答弁、全然違いますよ。

 武力攻撃が発生した事態と存立危機事態が起こったときの、それによって起こる効果、影響、さらには損害の度合い、そういったものが同等であるでしょうというふうに聞いたときに、大臣は、いや違いますと言われました。しかし、内閣法制局長官は、同様だ、損害の度合い、そう言われましたよ。

 答弁が違うじゃないですか、大臣。訂正ください。

中谷国務大臣 私が違うと言ったのは、直接武力攻撃を受けるか、密接な国に対する武力攻撃を受けるか、そういう違いがあると言いましたけれども、その一方で、国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆されるという根幹においては共通する考え方に立脚しているというふうに申し上げたものでございます。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣、答弁を願います。

中谷国務大臣 申し上げます。

 私は委員の御質問を受けたときに、存立事態とは何かということで、それは、他国に対する武力攻撃が発生した場合において、そのままでは、すなわち、この状況のもと、武力を用いた対処をしなければ国民に我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であるとお答えをしております。

 その上、委員が、効果が同等ですかという御質問でございました。それについては、被害が起こる、また明らかな状況である。やはり武力攻撃事態と存立事態というのは、被害が起こったということと存立事態というのは、まだ発生する被害が及ぶことが明らかな状況というところで違うのではないかということでございます。そこで、同様な深刻な被害が及ぶことが明らかな状況と、同様な深刻なという意味では同じということでございます。

緒方委員 少し質問の仕方を変えようと思います。

 第一要件のところで、我が国に対する武力攻撃が発生したこと、これまでも個別的自衛権のところでも存在していた部分がありますね。これが起こることは、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される急迫不正の事態、我が国に対する武力攻撃が生じれば当然そうなるということでいいんですよね。基本的に、我が国に対する武力攻撃が発生したことというのは、その後の存立危機事態に書かれている、その効果と同じ効果が生じるということでいいんですよね、大臣。

中谷国務大臣 我が国に対する武力攻撃が発生しというのは、武力攻撃が発生し、着手という意味でございます。

緒方委員 それによって生じる影響、効果、損害の度合い等いろいろ言い方はあると思いますけれども、我が国に対する武力攻撃が発生したことは、やはり同じくこの存立危機事態にある、我が国の存立が脅かされ以降の部分の効果を当然持っている、基本的にそれは同じなんだということでいいんですよね、大臣。確認であります。

中谷国務大臣 四十七年見解で「外国の武力攻撃によつて国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」と。これは、新三要件の一、我が国に対する武力攻撃が発生したこと、または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があることでございます。

緒方委員 後でまた、議事録を見ながら確認させていただきたいと思います。

 そういった意味での存立危機事態、武力攻撃事態とほぼ同様の効果、影響が生じるような状態であるところの存立危機事態ということですが、武力攻撃が生じたときというのは、とてつもない戦禍が日本に生じているわけですよね。戦の災いのみならず、恐らく戦の火と書く方の戦火も日本に影響が及んでいるはずであります。武力攻撃が生じた事態ですね。それと比べて、ホルムズ海峡の機雷掃海がそれとほぼ同等の効果を持つと。

 日本にとてつもない戦火が、戦の災いのみならず、まあ領海でかもしれないけれども、戦の火が生じている、その状態と同等の、ホルムズ海峡に機雷が敷設されるというのはどういうことなんですか。多分、国民はここが想像できないと思っているはずなんです。実際にどういう状態になれば日本に武力攻撃が発生して、実際に戦火が生じている、それと同等の効果が生じるホルムズ海峡の機雷敷設というのはどういうことか。

 定義の規定を使うことなく、定義の規定で存立が脅かされとか根底から覆されとか、そういうことではなく、大臣、ビビッドに説明ください。

中谷国務大臣 どういう状況かというのは、それぞれの個別的な状況が発生しますので、こういう場合だというのは非常にそれぞれのケースがありますが、一般に我が国に戦禍すなわち災いが及ぶ蓋然性があるということでありまして、これは我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生しが前提で、武力攻撃によってその影響や被害が我が国に及ぶ蓋然性を意味するものでありますが、単に我が国が爆撃の対象となるというような場合に限られるものではございません。

緒方委員 ホルムズ海峡に機雷が敷設されるというのは、先ほども申し上げたとおり、例えば二〇〇九年の北朝鮮の核実験、これは周辺事態でない、これよりも少なくともハードルが二つ高いわけですね。ハードルが二つ高い。では、それがどういうものなのか。もっと言うと、武力攻撃事態が日本に生じているときと同等の効果が生じている、それが何なのかということを国民は想像することが相当に難しいと思います。

 大臣、今、個別具体的に答えられないと言いましたけれども、この絵姿をはっきりと示してもらえないと、なぜホルムズ海峡の機雷掃海が存立危機事態に当たるのかということを国民に理解されないですよ。いつまでたってもされないですよ。大臣、答弁ください。

中谷国務大臣 武力攻撃事態におきましても法律の定義によるものでございますが、存立事態におきましても法律の定義がございます。やはり具体的な状況に即して、主に攻撃国の意思それから能力、事態の発生場所、事態の規模、態様、推移などの要素を総合的に考慮して、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民がこうむることになる犠牲の深刻性、重大性などから客観的、合理的に判断をするということです。

 ホルムズ海峡の御質問がございましたけれども、これは我が国に対する武力攻撃の発生を前提といたしまして、例えば石油などのエネルギー源の供給が滞ることによって、単なる……(緒方委員「大臣、間違えましたよ、答弁」と呼ぶ)ありがとうございました。我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生を前提として、例えば石油などのエネルギー源の供給が滞ることなどによりまして、単なる経済的影響にとどまらず、生活物資の不足や電力不足によるライフラインの途絶が起こるなど、国民生活に死活的な影響、すなわち国民の生死にかかわるような深刻、重大な影響が生じるか否かを総合的に評価して、状況によってはホルムズ海峡での機雷敷設を契機として存立事態に該当する場合もあり得ると考えております。

緒方委員 国民は理解しなかったと思いますよ。

 しかし、午後に質問がまたありますので、この続きは午後にやらせていただきたいと思います。

 質問を終えさせていただきます。ありがとうございました。

浜田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。緒方林太郎君。

緒方委員 午前中に続きまして質問させていただきます。

 午前中も言及いたしましたが、今回の新三要件の第一要件、存立危機事態のところについて御質問させていただきます。

 第一要件のところに、我が国に対する武力攻撃が発生したこと、これは個別的自衛権の分ですね。または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃、これが集団的自衛権の分ですね。しかしながら、一九七二年の見解というのはこの二つを分けていないですね。分けていないですね。「あくまで外国の武力攻撃によつて国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」というふうに書いてあるだけです。

 一九七二年の見解でこう書いてあるにもかかわらず、法律のところで武力攻撃事態というのと存立危機事態というものを分けている、その理由は何ですか、大臣。

中谷国務大臣 昭和四十七年当時は個別的自衛権のみでございましたが、今回の閣議決定によりまして、個別的自衛権と限定された集団的自衛権の一部、これをこの第一要件の中で必要があると判断したからでございます。

緒方委員 そうであれば七二年見解をそのまま書けばいいわけでありまして、外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される急迫の事態が生じたときというふうに第一要件に書けばいいじゃないですか。

 なぜそれを個別的自衛権分と集団的自衛権分に分ける必要があるんですか。おかしいじゃないですか、大臣。

横畠政府特別補佐人 個別的自衛権の前提となります我が国に対する武力攻撃が発生した場合、それは言わずもがな、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態に対処する場合であるということで、これまでもそこのところは書いていなかったわけでございます。

 今回は、他国に対する武力攻撃の発生を契機とする武力の行使ということでございますので、単に国際法上の要件となっています自国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したことというだけでは大変広過ぎるということでございまして、昭和四十七年見解の基本論理に適合する範囲に限定するというために、このたびの新三要件におきましては、他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合という形に限定したものでございます。

緒方委員 今、言わずもがなということでありました。

 つまり、先ほど、午前中に私が質問しましたとおりですが、武力攻撃事態、武力攻撃が生じたときというのと存立危機事態というのは、最終的な損害の度合いであるとか影響であるとか効果みたいなものというのはもちろん同じもの、それはそうですよね、一九七二年の見解がベースにあるわけで。ただ、何で最初の我が国への武力攻撃が発生したことの後にそういう事例を続けていないかというと、それは今長官が言われたとおりです、言わずもがなだからです。

 けれども、これは分ける必要はないわけですよ、今の理屈でいえば。外国の武力攻撃によって我が国の存立が脅かされというふうに続けていけば、それで事足りるはずですよね。事足りると思います。あえて七二年見解にない個別的自衛権と集団的自衛権を分けるような作業というのは、本来必要ないはずです。何で分けているんでしょうか、大臣。

中谷国務大臣 昭和四十七年の政府見解によりまして、いわゆる武力行使の三要件というものができました。その第一要件に我が国に対する急迫不正、武力攻撃が発生したと記述をいたしておりますが、その第一要件に新たに、我が国と密接な関係にある他国に対する云々、これが加わったからでございます。

緒方委員 一九七二年見解でこういうふうに書いているものをあえて分けて、これは本当は分ける理由はないんですよ、「外国の武力攻撃によつて」としか書いてないわけでして。そして、これをこれまでは個別的自衛権と解してきたけれども、若干加わった部分があるというのが今の政府見解ですね。

 分ける必要はない。これを分けていること自体が一つの解釈であり、そして何か一つの効果をもたらしているというふうに思うんですけれども、なぜ分けているんですか、大臣。

横畠政府特別補佐人 個別的自衛権、集団的自衛権というのは国際法上の概念でございます。

 それで、我が国に対する武力攻撃が発生した場合については、言わずもがな、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態であるという前提は言わずもがなですので、言わずもがなのことについてあえてさらに限定するということには意味がございません。

 このたびの集団的自衛権につきましては、限定されたものであるということで、どのような観点から限定されるかということを書かなきゃいけないということで、まさに四十七年見解の二の要件そのものを書き込むということが必要であったということでございます。

緒方委員 今のは答えていないですよ。「外国の武力攻撃によつて」としか書いてないものだから、七二年見解にそのまま従うのであれば、第一要件は外国の武力攻撃によってとだけ書けばいいわけであって。

 限定する必要があると言われました。しかし、その限定は、その後の、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるのところで十分限定されているわけです。だから、別に、個別分、集団的分と分ける必要がないというふうに私は思うんですよね。

 なぜこういうふうに分ける必要があるんですかと聞いているんです、大臣。

中谷国務大臣 四十七年見解によりまして、以前の三要件というものを書いておりました。それは、我が国に対する武力攻撃が発生しとしかなかったわけでございます。

 その基本的論理を維持いたしまして、今回、我が国を取り巻く安全保障環境が変化したということで、今後他国に対して発生する武力攻撃であってもその目的、規模、態様によっては我が国の存立を脅かすことも現実に起こり得るということがございますので、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、しかもそこに条件をつけて限定したということで、第一要件に新しく加えたからこのような記述をしたわけでございます。

緒方委員 外国からの武力攻撃をそういうふうに分けるということですけれども、先ほど長官は、言わずもがなであり、我が国に対する武力攻撃が発生したことイコール我が国の存立が脅かされ幸福追求の権利が根底から覆されるというのは言わずもがなだというふうに言われました。しかし、午前中の質疑でもなかなか大臣の答弁は揺れ動くところがありました。

 実は、個別的自衛権におけるところの我が国の存立が脅かされるという事態と、存立危機事態のところで脅かされるものが、分けることによってそのグレードに差をつけようとしているんじゃないかというふうに見えるわけですよ。

 個別的自衛権のところは明らかなわけです、これは武力攻撃が発生したとき。それが、それイコール存立危機事態なわけですよ。我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される急迫不正の事態であるというのは言わずもがななわけです。

 同じ文言を個別的自衛権のところは厳しく解し、これは武力攻撃が生じたときですから。けれども、実は、分けることによって、この存立危機事態の方を打ち出の小づちのように、いかようにも使えるようにしたいというふうに見ることができる、そしてそれの典型例がホルムズ海峡ではないかというふうに聞いているんです。大臣、そういうふうに思われませんか。

中谷国務大臣 思いません。

 これは一般原則を書いているわけでございまして、どのような場合に我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したときに適用されるのか、その限界を書いているわけでございます。

 わざわざ分けたというのは、これまでの三要件には、我が国に対する武力攻撃が発生しということしかなかったわけでございます。しかしながら、今後他国に対して発生する武力攻撃であってもその目的、規模、態様によっては我が国の存立を脅かすことも現実に起こり得るということでございまして、基本的論理から導き出したことを記述したわけでございます。

緒方委員 分けることによって、実は起こる効果が異なってくるんじゃないか。私は実は、このホルムズ海峡の例が入ってくることによって、皆さん方が精緻に組み上げられたこの理屈が壊れかかっているんじゃないかというふうに思うわけですよ。

 我が国に武力攻撃が生じた事態、先ほど言ったように、戦火、戦の災いのみならず戦の火がやってくる、そんな事態と同等の効果が生じる事態がホルムズ海峡に機雷が敷設されたことによって生じるというのは、国民感覚からすると相当なずれがあると思いますよ。ホルムズ海峡のことが入ってくることによって存立危機事態というのを実は個別的自衛権のときよりも緩く解して、そしていかようにも使いこなせるようにするためにこの二つに分けたんじゃないかというふうに思えるから、私はこれを聞いているんです。

 本来、そういうことが起こらないようにするためには、外国の武力攻撃によってということで、第一要件を二つに分けない方が国民の疑義が生じないし、そしてその適用においても誤解が生じることがないというふうに思うわけでありますが、大臣、いかがですか。

中谷国務大臣 存立事態というのは、累次御説明している定義また判断基準でございます。

 ホルムズ海峡の例を挙げられましたけれども、これはあくまでも我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生が前提でありまして、例えば石油などのエネルギー源の供給が滞る、これによって、単なる経済的影響にとどまらず、生活物資の不足、電力不足、ライフラインの途絶、こういうことが起こることなど、国民生活に死活的な影響、すなわち国民の生死にかかわるような重大、深刻な影響が生じるか否かを総合的に判断し、状況によってはホルムズ海峡で機雷敷設などを契機として存立危機事態に該当する場合もあり得ると考えておりまして、これは直接我が国が武力攻撃をされるとか、そういうことではございません。

 こういうことで、明らかに存立事態というのはこのようなケースのときに考えられるということでございます。

緒方委員 今のお話を聞いて本当に、存立危機事態というのがどう運用されていくのかということについて、私は強い疑義を抱きました。やはり武力攻撃が生じた事態よりもちょっとグレードが下がる、いや、かなり下がるんじゃないかと思う事態でもこれを発動しようとしているんじゃないか。このホルムズ海峡の例が挙がってくるから、せっかく皆さん方が精緻に組み上げた論理というのが、途中であれっと、そういうふうに思っている。

 実は、内閣法制局長官経験者の中にも、存立危機事態のこの定義が本当に適用されるのであれば、それはもしかしたらいいのかもしれないけれども、ホルムズ海峡の話が出てくるから、だからこの件はやはりだめだというふうに言っておられる法制局長官経験者もおられる。

 大臣、もう一度確認であります。

 この存立危機事態を緩く解して、武力攻撃が生じたときと同等であるときにしか、それぐらいの同様の水準の危害の度合いとか影響とか効果が起きているときでなければ、日本に武力攻撃が起きているときでなければ絶対にやらないということを、大臣、答弁ください。

中谷国務大臣 申し上げますが、個別的自衛権が発動されるのは、我が国に対する武力攻撃が発生した場合です。

 憲法上、集団的自衛権に当たる武力の行使が許されるのは、第一要件に言う、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合であります。

 すなわち、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したのみでは足りずに、これに加えて我が国の存立が脅かされるといった事態、明白な危険がある場合でありまして、このように両者は要件の内容そのものが異なっているので、両者を比較してどちらが緩いかというようなことを言うことはできません。

 いずれにしましても、新三要件のもとで、個別的自衛権の場合も集団的自衛権の場合も、十分かつ限定された厳格な要件で武力の行使が許容されるということになっております。

緒方委員 大臣、また午前中の質問に戻っているような気がするんですけれども。

 今大臣の言った存立危機事態の説明というのは、我が国と密接な関係にある他国に対する攻撃が生じたことによって日本に生じる効果、影響、危害の度合いというのが日本に武力攻撃が発生したときと同様だというふうに理解していいんですよね。それぐらいのことが起きない限りはこの存立危機事態は発動しないということでいいんですよね、大臣。これは確認であります。

中谷国務大臣 存立危機事態の判断基準といたしまして、他国に対する武力攻撃が発生した場合において、攻撃国の意思とか能力、事態の発生場所、事態の規模、態様、推移など総合的に要素を判断、考慮し、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民がこうむることになる犠牲の深刻性、重大性などから客観的、合理的に判断をするということでございます。

 したがいまして、存立危機事態というのは、我が国に対する武力攻撃がまだ発生していない、しかしながら密接な国に対する武力攻撃が発生したというところで前提と視点が異なっておりますので、そういう判断をするわけでございます。

緒方委員 存立危機事態が日本に及ぼす危害の度合いとか影響とか、そういうものがありますよね。それは当然にして、日本に武力攻撃が発生した事態によって生じる危害の度合いとか影響とか、そういったものと同様ですよね。さっき長官は言わずもがなと言いましたよ。大臣、それを確認してくださいと言っているんです。もう一度。

中谷国務大臣 そのままでは、すなわち、その状況のもと、武力を用いた対処をしなければ国民に我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であるということを申し上げます。

緒方委員 ここまで来るまでえらく時間がかかりました。

 しかしながら、大臣、私が思うに、そこまで言っておきながらホルムズ海峡の例が挙がってくるというのは、国民からしても非常に違和感を持っていると思います。私は、このホルムズ海峡の例というのは、存立危機事態を説明する例として、国民の皆様の理解を得るのに必ずしも適切な例ではないというふうに思うんです。必ずしも適切じゃないと思う。大臣の御見解を伺いたいと思います。

中谷国務大臣 安全保障環境というのは非常に変わったということを申し上げましたけれども、そもそも、法律を規定するということにつきましては、国民の命や幸せな暮らしを守り抜くためのあらゆる事態、これを想定して切れ目のない備えを行うということで今回法律を制定したわけでございます。安全保障に関しては危機が起こるというのを待っていては遅いわけでございますので、国民の命と幸福な暮らしを守り抜くために、今回の法整備を通じて切れ目のない備えをつくっていくということが必要だと考えたわけでございます。

緒方委員 私が今聞いたのは、この例は、存立危機事態を国民の皆様に説明するに際して適切な例ではないと思うけれども、大臣はどう思いますかと聞いているんです。

中谷国務大臣 累次説明を申し上げているとおり、石油の輸入が滞って国民生活に影響を及ぼし、また死活的な状況になるという事態、これを定義しまして、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆されるという事態でございますので、このような事態ということを説明しているわけでございます。

緒方委員 では、存立危機事態を説明するのに、このホルムズ海峡の例は適切な例だというふうに思いますか。

中谷国務大臣 これは総理が想定をしているということを申し上げておりますので、総理が言及されたように例示だということでございます。

緒方委員 適切だと思いますか。もう一回。

中谷国務大臣 存立事態の定義から、私はこの事例というのは適切だと思っております。

緒方委員 ここで、公明党の遠山理事がメディアに対して発言したものがございます。「ザ・ページ」という雑誌でありましたが、私は、公明党の遠山理事が言っていることは物すごく正しいと思います。ホルムズ海峡の例というのは、起こる可能性がゼロとは言えませんが、極めて可能性が低い事態なので、この存立危機事態を説明する例としては国民の皆様の理解を得るのに余り適切だとは思っていないというふうに言っておられます。

 私、この間「日曜討論」を見ておりましても、高村正彦さんと北側副代表が出ておられて、高村さんは何と言っておられたかというと、法律の解釈についてはばちっと一致している、連立与党間でぴたっと一致しているんだ、しかし、それが個別の具体例でどう適用されるかについては若干の違いがあると。

 まさに今、大臣は、存立危機事態を説明するのに適切な例としてホルムズ海峡の例を言われました。しかし、連立与党のもう一つの公明党は実はそう思っていない可能性が非常に高いわけですよね。閣内不一致じゃないですか、大臣。もう一回答弁ください。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

中谷国務大臣 事実、石油の八割近くが中東からやってきております。私もせんだって、海運会社の方とお話をしたときに、まさにこのホルムズ海峡というのは日本にとって大変重要なところでありまして、ここで輸入が滞ることによりまして日本には大変大きな被害が生じるでしょうと言われておりました。

 やはりこういった事態を想定して政府として対処しておく、事態が発生したときに法律がないから対処できないということでは我が国の存立にかかわるわけでございますので、いかなる事態が発生しても国民がそういう意味で存立の危機に至らないようにしておくということは必要なことだ、私はこう思います。

緒方委員 私は、比較的この公明党の見解というのは非常にリーズナブルにできていると本当に思います。

 公明新聞についてもよく読ませていただきました。遠山理事が言われたことと大体同じことがずっと書いてあります。ホルムズ海峡の例については、基本的に存立危機事態を説明するのに余り適当な例ではない、適切ではないと。こういうことが問題なんじゃないですか。

 実際に、法的な解釈がびたっと一致していても、それを適用する具体的な事例が違えば、もしかしたらこの法律が通った後に、あしたにも、あさってにも事例が生じるかもしれない。そのときに、閣内で意見が違うということになったとき、問題じゃないですか。

 大臣、閣内不一致ですよ。もう一回答弁ください。

中谷国務大臣 そういうことではございません。やはりあらゆる事態に対応しておくということは必要なわけでございまして、ホルムズ海峡につきましては、総理といたしまして例示、想定し得る例として挙げたわけでございます。

 このほかの事態も、例を挙げると次のようなものが考えられます。

 例えば、我が国近隣において、我が国と密接な関係にある他国、例えば米国に対する武力攻撃が発生した。その時点では、まだ我が国に対する武力攻撃が発生したとは認定されないものの、攻撃国は、我が国をも射程に捉える相当数の弾道ミサイルを保有しており、その言動から我が国に対する武力攻撃の発生が差し迫っている状況。他国の弾道ミサイル攻撃から我が国を守り、これに反撃する能力を持つ同盟国である米国の艦艇への武力攻撃を早急にとめずに、我が国に対する武力攻撃の発生を待って対処するのでは、弾道ミサイルによる第一撃によって取り返しのつかない甚大な被害をこうむることになるのが明らかな危険があるといった場合も考えられまして、こういった事例等もございます。

 私が申し上げたいのは、国家が存立の危機を招かないように、あらゆる事態に対処できるように、法律をつくってしっかりきちんと整備しておかないと国の安全また国民の暮らしというものは保たれないということでございます。

緒方委員 ホルムズ海峡の話をしたら、全然違うところで、最後、はぐらかし答弁で終わりました。大臣、本当に不謹慎ですよ。こういう答弁は絶対だめですよ。

 またこの件は質問させていただきますので、私の質問はここで終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、後藤祐一君。

後藤(祐)委員 民主党の後藤祐一でございます。

 今、ホルムズ海峡のお話を緒方林太郎議員が相当議論しましたので、ちょっとこの話をきょうはまず詰めていきたいと思います。

 お手元に、湾岸戦争の際のペルシャ湾への掃海艇派遣の経緯というものを配付させていただいております。

 一九九一年二月二十七日にブッシュ大統領が戦闘行為停止を発表し、三月三日に国連安保理六八六を受諾ということで、事実上の停戦が成立しております。それで、四月の十一日に国連安保理の議長が停戦発効を宣言し、これが正式な停戦とされておりまして、ここから、現行で言う自衛隊法八十四条の二、当時の九十九条ですが、この話が始まっていくんです。四月の十六日に防衛庁長官から海上幕僚長に対して準備指示、そして二十四日に、先ほど申し上げた隊法八十四条の二に基づく掃海艇派遣を閣議決定ということになりまして、二十六日に出港、五月二十七日にドバイ到着、大体一カ月かかるわけですね、六月五日から三十四個の機雷処理に入っていく、こういう経緯をたどったわけでございます。

 まず、この経緯、これは正しいでしょうか。これは岸田外務大臣にお願いします。

岸田国務大臣 資料をただいま拝見いたしました。

 手元の資料と比較する限り、今拝見させていただいた限りにおいては、経緯はこのとおりであると認識をいたします。

後藤(祐)委員 ありがとうございます。これは事前にも確認をいただいております。

 次、二ページ目でございますけれども、これは、いわゆるどの段階から現行法、自衛隊法八十四条の二で機雷掃海が可能になるのかという議論をする中で、紙で出していただいたんです。

 表題はちょっと気にしないで、まず、現行の解釈のところですね。どの段階から現行法では機雷掃海が可能になるのかということについて、そこの真ん中のところ、「平成三年四月十六日に「遺棄された機雷と認められるためには、その地域において戦闘行動状態が完全に終結し、いわば平時の状態に復したにもかかわらず敷設者がみずからそれを除去しない、それを放棄したものと認められることが必要であろう」とご説明しているところです。」というふうにありますが、この解釈は、現時点でも同じ解釈でよろしいでしょうか。

 つまり、現行法八十四条の二に基づいて機雷掃海するためには、遺棄機雷でなくてはならず、かつ、遺棄機雷の判断というのは、平成三年四月十六日のときのこの判断ということでよろしいでしょうか。この紙は六月十二日に私がいただいた紙でございますので、同じ解釈だと理解しておりますが、念のため、岸田大臣、お願いします。

岸田国務大臣 八十四条の二に基づく機雷等の除去についての御質問ですが、御指摘の部分につきましては、そのとおりだと認識をいたします。

後藤(祐)委員 ありがとうございます。

 そこで、「その地域において戦闘行動状態が完全に終結」というものの解釈が問題になってくるわけでございますけれども、一ページ目に戻っていただけますでしょうか。

 湾岸戦争のときは、掃海艇を出すということ自体が、朝鮮戦争のときの話を別とすると初めてだったので、国民の中でもこれに対する厳しい御意見もあって、相当慎重に判断されて、正式な停戦、四月十一日よりも後に準備指示が出されている。これはこれで当時の状況としては理解をいたしますが、今、正式な停戦後に少なくとも機雷掃海の掃海艇を出すことについては、国民の理解は相当あると思うんですね。

 これより前に出せるかどうかというのは議論がいろいろあると思うんですけれども、今の時点で、どれぐらい前で出せるか。現行法ですよ。自衛隊法八十四条の二でどれぐらい前に出せるかという問題意識で見た場合に、正式な停戦、四月十一日まで待たなきゃいけないのか。それとも、事実上の停戦、当時であれば三月三日ですね、こういった事実上の停戦がなされた後であれば、現行法に基づいて、隊法八十四条の二に基づいて機雷掃海はできると。

 もちろん、そのときの外交の状況ですとか、実際、本当に実質的な停戦になっているのかどうか、当然そのときの状況にもよると思いますけれども、当時の戦闘の状況、湾岸戦争のときは、実質停戦の後、事実上の停戦の後は戦闘は行われていませんので、当時の状況を前提で結構でございます。そのとき、もっと早くすればよかったということを言っているのではありません。掃海艇派遣に関して、少なくとも停戦後に関しては国民的理解が当時よりは今の方が進んでいるということを前提にして、ただ、戦闘の状態ですとかいうことについては当時の状況を前提で結構でございますから、先ほどの解釈であります「その地域において戦闘行動状態が完全に終結し、」というものの解釈として、正式な停戦の後でなければならないんでしょうか、それとも、事実上の停戦の後であれば、現行の自衛隊法八十四条の二で掃海艇は掃海作業ができるんでしょうか。

岸田国務大臣 武力攻撃の一環として敷設された機雷を除去する行為は武力行使に当たり得るものであります。そして、正式な停戦合意が発効した後であれば武力攻撃の一環として敷設された機雷に当たらない、これは確定的に述べることはできます。

 しかし、その前、ですから事実上の停戦が存在するのみの場合には、個別具体的な状況によって判断せざるを得ません。

 そして、御指摘の一九九一年の経緯を振り返りますと、四月十一日の正式な停戦発効前に、フランス、ドイツ、イタリア等が掃海部隊の派遣を決定しています。その際に、フランスあるいはイタリア等は、安保理決議六七八、要は武力行使を含むあらゆる対応を認める決議を引用しているわけでありますし、ドイツも、その際に安保理決議六七八を引用していると承知をしております。

 このように、正式な停戦前につきましては具体的な状況により判断せざるを得ない、各国とも、今申し上げましたような安保理決議を引用する形で正式な停戦合意前は対応しているという状況であります。

後藤(祐)委員 個別具体的な状況で判断せざるを得ないのはそのとおりだと思いますが、少なくとも、先ほどの「その地域において戦闘行動状態が完全に終結し、」という状態に必ず当てはまってしまう、つまり、正式な停戦がないと絶対に掃海はできないというわけではなく、個別具体的な状況の判断次第では、事実上の停戦がなされていれば、正式な停戦前でも掃海作業はできる余地はあるというふうに考えてよろしいですか。

岸田国務大臣 御指摘の部分につきましては、議論があると承知をいたします。

 事実上の停戦が存在するのみの場合、個別具体的な状況により判断せざるを得ない、よって、各国とも、正式な停戦合意前につきましては、先ほど申し上げましたような形で違法性の阻却を考えなければならない、こういった対応をしているということかと考えます。

後藤(祐)委員 そうしますと、実際の掃海作業は確かに相当個別具体的な状況を見なきゃいけませんが、先ほどの一ページ目にある、例えば四月十六日の防衛庁長官からの準備指示ですとか、掃海艇派遣の閣議決定そのものですとかいうのは、実際の作業そのものではないわけですね。行くのに一カ月かかるわけですから、これは様子を見ながら行って、早い段階でこの四月十六日の準備指示とか四月二十四日の閣議決定はやって、実際の掃海作業をするときはまた相当丁寧にいろいろな状況を見てという判断も可能だと思うんです。

 質問をします。ここで言う防衛庁長官から海上幕僚長に対する準備指示ですとか、あるいは隊法八十四条の二に基づく掃海艇派遣の閣議決定という作業は、これも個別的な状況を見なきゃいけないというのはもちろんでありますけれども、これは少なくとも正式停戦より前、事実上の停戦より後に行うことは、絶対に問題ないというわけではなくて、個別具体的な状況を見て可能なこともあり得るというふうに見てよろしいでしょうか。

中谷国務大臣 いずれにしても法律に基づいて対応しますけれども、一般に、遺棄された機雷など外国による武力攻撃の一環としての意味を有しない機雷の除去につきましては、自衛隊法八十四条の二の規定に基づいて海上自衛隊が実施することはあります。

 他方、設置された機雷が遺棄されたものとまだ認められない、自衛隊法八十四条の二に基づく行動の前提がない段階で、事前に自衛隊を現場付近に派遣することを含め、いかなる準備が可能かにつきましては、慎重な検討が必要であり、一概に申し上げることは困難です。

 前例といたしまして、私の場合もテロ特措法が成立してから指示を出しましたし、浜田委員長の場合も、海賊対策におきましても、法律が成立した後、準備命令を出したということでございます。

後藤(祐)委員 海賊のときは、海賊法ができる前に海上警備行動でとりあえず出して、法律が施行になってから法律へ切りかえたんですよね、委員長。ちょっと今の答弁はいかがなものかなと思います。

 少なくとも、実際の掃海作業でない準備指示ですとか閣議決定というものは正式な停戦より前にすることが、個別具体的な状況にはよりますけれども、場合によってはあり得るということでよろしいですか。それとも、全くできないんですか。どちらですか。中谷大臣、もう一度お答えください。

中谷国務大臣 どのような状況になれば遺棄された機雷と認められるための状態となるか、すなわち、平時の状態に復し、また敷設者が機雷を放棄したものと認められるのかについては、個々の事例によりケース・バイ・ケースで判断をすることになりまして、一概に申し上げることは困難でございますが、その上で申し上げれば、一般に、事実上の停戦状態となっていたとしても、正式な停戦合意がなされる前であれば、他国に対する武力攻撃の一環として敷設された機雷を除去する行為は武力行使に当たり得ます。このため、正式な停戦前において自衛隊法第八十四条の二に基づく機雷の除去を行うことは困難であると考えております。

 なお、平成三年に自衛隊がペルシャ湾において除去した機雷は、湾岸戦争においてイラクが敷設したものであると承知しておりますが、正式停戦が成立し、湾岸地域に平和が回復された状態において、当初の目的を失い、海上に遺棄されたものであると認められたところでございます。

後藤(祐)委員 質問にお答えいただきたいんですが、まず、武力行使の話はしていません、現行法ですから。

 現行法でやるにしても、実際の掃海作業をする前の段階の準備指示だとか閣議決定というものはとりあえずまずやっておいて、近くまで行って、例えば正式停戦になってから実際の作業をするとかいうことをすれば、かなり早く船を出せるわけじゃないですか。実際このときは、国際貢献という側面もかなりあって、できるだけ早く行かなきゃいけなかったわけですよ。先ほど岸田大臣がおっしゃったように、各国が出している中で日本の貢献として行ったわけですから。

 ですから、こういった準備指示だとか閣議決定という、実際の作業そのものでない、前の段階のことというのは、正式な停戦前でも場合によってはあり得るということについて答えをいただいていないんです。もしこういう判断ができないんだとすると、急いで国際貢献するとか、そういったことが全くできなくなっちゃうじゃないですか。場合によっては、個別具体的な事例にもちろんよりますけれども、そういったことはあり得るのか、あるいは一切できないのか、もう一度はっきり答弁いただけますでしょうか。

中谷国務大臣 この遺棄機雷の規定でありますが、自衛隊法八十四条の二の規定に基づいて海上自衛隊が実施することは可能でございます。

 敷設された機雷が遺棄されたものとまだ認められていない、こういう自衛隊法八十四条の二に基づく活動の前提がない段階で事前に自衛隊を現場付近に派遣することを含めて、いかなる準備が可能かにつきましては、慎重な検討が必要でありまして、一概に申し上げることは困難だということでございます。

後藤(祐)委員 お答えいただけないようですが、慎重な検討が必要ということは、可能性はゼロではないというふうに受けとめました。

 次に、では存立事態の話をしましょう。

 まさにこのホルムズ海峡での機雷掃海が集団的自衛権の行使の典型的な例として挙げられているわけでございますけれども、仮にこれが今回の法律で可能になるとした場合に、どれだけ早い段階でできるんでしょうか。

 先ほどから議論のある、正式停戦より後はもちろんなわけですけれども、事実上の停戦以降正式な停戦までの間にできるのか。あるいは、事実上の停戦より前、これは場合によっては戦闘が行われている可能性も大いにあるわけですけれども、ただ、戦闘行為がないということが、先ほどの二枚目の紙の「その地域において戦闘行動状態が完全に終結」しているような状態であれば、事実上の全体としての停戦がなくても、場合によっては集団的自衛権の行使の場合は行けるという判断があるのでしょうか。

 つまり、この話というのは、現行法でできることから集団的自衛権の行使で可能にすることによって、どれだけ早い段階で出せるかということでしかないんです。なので、どれだけ早い段階から出せるのかということについて、まずは、先ほど物を決定する段階の話をしたので、ちょっと混乱するとあれなので、現実に機雷を掃海する現場での作業というものがどの段階でできることになるのか。

 これはちょっと時系列の話なので、では、岸田大臣に統一してお答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、先ほど申し上げましたように、正式な停戦が確認される前は個別具体的な状況により判断せざるを得ないということで、各国とも、これは武力行使に当たる可能性もありますので、違法性を阻却するためにいろいろと説明をしている、こういった状況にあります。

 ですから、今おっしゃったように、存立危機事態において我が国が武力行使に当たる機雷の除去を行えるかどうか。これは、まずしっかり、新三要件に該当するかどうか、それを確認しなければならないわけですが、当てはまる場合に、武力行使に当たる機雷の除去というのも認めることはあり得る、こういった説明を今までもさせていただいております。

 そして、実際いつから機雷の除去をやるかということにつきましては、今申し上げました法律上の整理がありますが、現実問題、具体的に機雷の除去を安全に行えるかどうか、こういった問題も考えなければなりません。

 掃海艇というものにつきましてはこれまでも中谷大臣がたびたび御説明をさせていただいておりますが、掃海艇というものは、機雷に反応しないように木製であったりプラスチック製である、あるいは自己防護用の装備さえ持っていない、要は機雷処分用の機関銃しかない、こういった特徴があります。こうした掃海艇が安全を確保して活動する、これが実際できるのかどうか、こういった判断がもう一つあると思います。

 こうした両方の観点に立って、いつから我が国としてこうした対応がとれるのかどうか、これを個別具体的に判断すべき課題であると認識いたします。

後藤(祐)委員 質問にお答えいただいていないんですが、存立事態を満たす場合、新三要件を満たす場合に、正式な停戦より前で事実上の停戦より後に機雷掃海はできるのかというのが一つと、あとは、先ほどの二ページ目にある「その地域において戦闘行動状態が完全に終結」しているような状態の場合は事実上の停戦より前にもできるのかということを明確に先ほど質問したんですが、それについてお答えいただけますか。

岸田国務大臣 新三要件を満たした場合には、正式な停戦合意前について、要は武力行使と評価されるような行動についても、三要件をあくまでも満たした場合でありますが、それは法理上可能になるというふうに考えます。

 しかし、実際に行うかどうかにつきましては、機雷掃海という行動の特性にも鑑みて、安全に行えるかどうか、しっかり目的を果たすことができるかどうか、こういった観点からもしっかり議論して、いつから行うのか、これを判断していくことになるのではないかと考えます。

後藤(祐)委員 そうしますと、大まかにこういうことなんでしょうか。現行法では、正式な停戦以降は明らかに機雷掃海ができます。正式停戦より前で事実上の停戦後については、現行法では、個別に見る必要があるけれども、慎重に考えなきゃいけないと先ほど答弁がありました。

 一方で、集団的自衛権でやった場合には、正式な停戦後は間違いなくできます。事実上の停戦後、正式な停戦の間は、もちろん状況を見なきゃいけませんが、ここで戦闘が行われていないというようなことが確認された場合は、先ほどの現行法だと慎重に判断しなきゃいけないけれども、集団的自衛権の場合はかなりの場合できるというところに差があるというふうに考えればよろしいんでしょうか。つまり、事実上の停戦後、正式な停戦前における判断が若干その二つにおいて違ってくるというふうに理解すればよろしいんでしょうか。

岸田国務大臣 まず、武力攻撃の一環として敷設された機雷を除去する行為は武力の行使に当たります。ですから、先ほども申し上げましたように、正式な停戦合意前、実質的な停戦合意後、この部分においては武力行使に当たるという可能性があります。

 よって、先ほど申し上げましたように、御指摘の一九九一年の例でいきますと、フランスもドイツもイタリアも、これは武力行使を含むあらゆる対応を認める安保理決議六七八を引用して対応しているということであります。

 ですから、その部分についてはその可能性がありますので、現行法においてはこれは対応することができないわけですが、存立危機事態等を認めるという新しい体制においては、法理上はその部分についても認める余地はある、そういったことはあり得る、これはそのように考えられるとは存じます。そして、それとあわせて実際に機雷掃海というものが現実的に行えるかどうか、こういった観点からも見た上で現実の対応を考えていくということだと思います。

後藤(祐)委員 大体認識は同じかなと思うんですが、それでは、集団的自衛権で行く場合に、事実上の停戦になる前に手続的にはどこまでできるんでしょうか。

 つまり、存立事態で実際に船を出すためには相当いろいろなことが必要になるわけでありまして、対処基本方針をつくらなければなりません。そして、国会承認を得なければなりません。それと並行してなのか、どっちが前後かわかりませんが、先ほどのような準備指示、具体的なオペレーションの方の話もしなければなりません。

 質問します。この事実上の停戦より前に対処基本方針はつくれるんでしょうか。そして、国会承認の手続を開始することはできるんでしょうか。岸田大臣、お願いします。新三要件を満たす場合ですよ。

岸田国務大臣 具体的な手続に入るタイミングについて御質問いただきました。

 これはやはり個別具体的に、まず新三要件を満たす状況かどうか、この判断というものがあるのだと思います。その判断に基づいて、個別具体的に対応していくものだと考えます。

後藤(祐)委員 たしか、事前に聞いた説明だと、この事実上の停戦前は難しいんじゃないかというような御説明を伺っていたんですが。

 この新三要件を満たすような状況になっていたとしましょう。それで、事実上の停戦より前に対処基本方針が本当につくれるんですか。はっきりお答えいただけますか。実際にこういうことが起きた場合にはこのアクションから始まっていくわけですから。私は、事前の説明では難しいんじゃないかというふうに事務的に伺っていますけれども。

岸田国務大臣 まず、法理上は、新三要件を満たしていれば認められるというのが考え方だと思います。

 ただ、事実上の停戦前ということであるならば、機雷の除去というものが可能なのかどうか、これはしっかり考えなければいけない、判断しなければいけないポイントだと思います。

後藤(祐)委員 実際、事実上の停戦前にまだ戦闘が行われているような場合には、なかなかこの対処基本方針をつくるのは難しいわけですよ、筆頭理事もうなずいておられますし。

 そうしますと、集団的自衛権の行使で行く場合と現行法で行く場合というのは、事実上の停戦と正式な停戦の間、つまり、この場合でいうと三十九日間の差があるかないかという話なんです。

 しかも、現行法においても、先ほどのような準備指示を出したり閣議決定したりというのは、事実上の停戦が行われた後、正式な停戦より前に手続をして早く船を出す。実際に掃海作業に入るのは、正式停戦を待ってもいいんですよ。それは武力行使との関係で、慎重を期すという判断があってもいいんですよ。むしろ、集団的自衛権の行使の場合がそこから前倒しするのはなかなか難しい中で、現行法の場合は、正式な停戦前でも準備作業はできる可能性が大いにあるんです。それは先ほど認められましたよね。そうしますと、余り差がなくなってくるんじゃないんですか。

 実際、船がドバイまで行くのに一カ月かかっています、このときも。ですから、事実上の停戦の後、仮に、この三月三日の事実上の停戦の直後、三月四日に準備指示を出したとしましょう。そうすると、このケースでいうと四十三日間の前倒しが可能になって、四月十四日には船が着くんですよ、ドバイに。そうしますと、実際の正式停戦の直後ぐらいになって、ちょうどいいタイミングで着くんですね。

 ですから、やるべきは、事実上の停戦があったら、できるだけ早く現行法における準備指示ですとか八十四条の二に基づく閣議決定をして船を出す決定をして、実際に掃海作業をするかどうかは、一カ月あるわけですから、その後の状況を見ながら、戦闘が継続されていないかどうかをよく慎重に考えながら、最後の判断はその間にできるわけですよ。

 私は、これは国際貢献の観点からしても現行法で十分可能なところであって、もしこれが可能であるとするならば、よほど事実上の停戦より前に集団的自衛権の対処基本方針がつくれない限り、時間差がほとんどないというふうに考えますが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、このたび、我が国としましては、我が国が国民の命や暮らしを守るために武力行使をする、その際に新三要件という厳密な要件を定めました。

 この新三要件に該当するかどうか。一九九一年の段階においてはその該当するかという視点で情報収集したわけではありませんので、これをそのまま当てはめてどうかという議論はなかなか難しいと考えております。

 そして、現実問題、どう対応するかということにつきましては、やはりあくまでもこの新三要件に該当するかどうか、その観点から準備を進めるということでありますし、先ほども申し上げましたように、正式な停戦前におきましては機雷掃海は武力行使として認定される、そうした可能性があるわけでありますので、これは慎重でなければならないわけですので、今、こうして御議論をお願いしていくことは意味がある御議論ではないかと思っております。

後藤(祐)委員 今、岸田大臣がおっしゃったように、新三要件に当てはまるかどうかを判断するのはすごく難しいんですよ。国会承認も得なきゃいけないんです。まず、国会承認にどれだけかかると思いますか。今まで国会承認をしたのは、テロ特措法のときに九日間、イラク特措法のときに二十二日間かかっています。これも相当かかりますよね。

 かつ、現地の状況はどうかといったときに、現行法で行けば、これは遺棄機雷かどうかということだけを考えればよくて、イラクの意思ですとかあるいは実際の戦闘が続いているかどうか、このぐらいを見ればわかるわけですけれども、存立事態で行く場合は、これで半年間とまって寒いところで凍死者が出るかどうかとか、国際貢献の観点からするとほとんど関係ないことを調査して、調べて、国会でそれがちゃんと答弁できるかどうかと、緊急性の観点からすると、ほとんど無駄だと思われる作業をしなきゃいけないんです。

 そんなことをしているよりも、早く八十四条の二で閣議決定して船をとりあえずドバイまで出して、ドバイの近くでいいですよ、それで正式停戦になったらすぐ入れるようにすることの方が早く行けるんじゃないですか。下手すれば、この存立事態に当てはまるかどうかをこんなところで議論している間に、どんどん各国は掃海艇を出していく。日本は何をやっているんだという話になりますよ。

 さらに言うと、史上初めて集団的自衛権の行使で掃海艇を出しましたといって非常に雄々しく行ったら、途中のコロンボあたりで正式停戦が成り立って、ああ、これは現行法でもできる話でしたといったら、自衛隊員の士気はどうなるんですか。本当に恥ずかしい思いをしますよ。しかも、その前提としてここで大議論をしているわけですよ。

 ですから、これは、だったら早く準備行為をすればいいのではないかということについて、先ほどからの答弁ですと、うまく説明できていないと思います。

 現行法でどれだけ早くできるのかということと、存立事態の場合に、国会での決議、そして日本の凍死者がどれだけ出るかだとか、こういったことも含めた作業、こういったものが存立事態の場合どのぐらい時間がかかるのか。このペルシャ湾への掃海艇派遣の日付の場合で、仮にこのときに存立事態をやっていたら、どのぐらいの、どのタイミングでどうなっていたかということを整理して紙にして、この委員会に提出していただけますでしょうか。委員長、お計らいをお願いいたします。

浜田委員長 理事会で協議します。

後藤(祐)委員 これは精緻に、まさに説明責任とはそういうことだと思うんです。集団的自衛権の行使の典型的な例としてこのホルムズ海峡を挙げたわけですから、現実にオペレーションとして何が必要になってくるかと考えたときに、これをもう少し精緻に、公明党の先生もうなずいておられますけれども、ぜひこれは精緻な紙を出していただきたいというふうに思います。

 しかも、これが成り立たないという話になると、立法事実がないという話になりかねないんですよ。そういう意味でもこれは大変重要ですから、ぜひお願いしたいと思います。

 ホルムズの関係でもう一つ、今まではっきりした答弁をいただいていないのは、ホルムズ海峡における新三要件を満たす存立事態、集団的自衛権の行使の場合、その密接な関係にある他国、外国というのは一体どこのことなんでしょうか。それはオマーンのことなのか。つまり、領海を持つオマーンのことなのか。あるいは船籍国、そこを通る船の国のことなのか。どちらなんでしょうか。あるいはほかの国なんでしょうか。これは岸田大臣、よろしくお願いします。

岸田国務大臣 密接な関係にある他国、これにつきましては、外部からの武力攻撃に対し、共通の危険として対処しようとする共通の関心を持ち、そして我が国と共同して対処しようとする意思を表明する国、このように説明をさせていただいています。

 そして、まず沿岸国としては、御指摘のようにオマーンそしてイランが、ホルムズ海峡の場合あります。それに加えて、各国の船舶がこの海域を通過しているわけでありますし、また、この地域においては米軍が、第五艦隊の司令部を初め、さまざまな拠点を持っております。

 こうした状況でありますので、密接な関係にある他国、これは武力攻撃を受けた国ということになるわけですが、その、武力攻撃を受け、そして我が国に対して要請なり同意を与えた国が、密接な関係にある他国、先ほど申し上げましたような定義に該当する国なのかどうか、これを個別具体的に判断していくものであり、事前にこの国と指定しておくものではないと考えます。

後藤(祐)委員 船籍国に関しては、触雷した船に限るんでしょうか。それとも、例えばホルムズ海峡が封鎖されて、湾内にいる船はもう出られなくなっちゃいますから、この湾内にいる船は触雷していなくても含むんでしょうか。あるいは、もっと広く、これから行こうとしていた国、世界じゅうのオイルタンカーみたいなものは含むんでしょうか。船籍国の範囲というのをはっきりしてください。

岸田国務大臣 我が国と密接な関係にある国が武力攻撃を受けるということが要件として定められています。

 ですから、計画的、組織的な武力行使がなければ武力攻撃ではありませんので、単に機雷に接触したということでは、これが組織的、計画的な武力行使として認定されるかどうか、これを全体の状況を判断して決定するということになるんだと考えます。

後藤(祐)委員 触雷しても入らないということですか。国、国準が置いた機雷だと仮に仮定した場合に、触雷した船は当然、先ほどの説明だと入るということかなと思ったんですが、むしろそれ以外も、触雷していない船についても潜在的可能性としてあり得るということなんでしょうか。はっきりしてください。あと、触雷した船は入るということなんじゃないですか。それも入らないんですか。国、国準が前提です。

岸田国務大臣 船舶の触雷も含めて、全体として、組織的、計画的な武力行使が行われて、それを受けた国から要請、同意を受ける、こういったことが必要であると考えます。

後藤(祐)委員 こういうところで時間をかけるのは本当に嫌になってしまうんですが、組織的な攻撃、今おっしゃった攻撃を受けたという船については、実際触雷をしていなくても、湾内に閉じ込められたタンカー、あるいは湾外のこれから行こうとしている国も入り得るということでしょうか。

岸田国務大臣 あくまでも我が国と密接な関係にある国が組織的、計画的な武力行為を受けなきゃいけない、武力攻撃を受けた上で考えていく課題だと思っております。

後藤(祐)委員 お答えになっていただいていないんですが、もともと日本と密接な関係がなきゃいけないんでしょうか。そうしますと、オマーンはもともと密接な関係があるんですか。あるいは、その船籍国に関しても、アメリカのように、触雷の関係とは別に、機雷の関係とは別に、もともと密接な関係がある国に限定されるのか。あるいは、この問題で、実際に機雷が置かれて湾内に閉じ込められた、日本も協力してくれというような依頼が日本に来た場合には、その行為をもって密接な関係が成立することになるんでしょうか。

岸田国務大臣 まず、武力攻撃を受けた国から要請あるいは同意を得なければなりません。そして、武力攻撃を受けた国が、先ほど申し上げましたように、共通の危険として対処しようとする共通の関心を持っている、あるいは共同して対処しようとする意思を持っている、こうした意思あるいは関心を表明する国であるかどうか、これが判断されることになると考えます。

後藤(祐)委員 表明すればなり得るということですね。そうすると、潜在的には世界じゅうの国がなり得るということですね。表明すれば、世界じゅうの船籍国がこの集団的自衛権の行使の前提となる密接な関係にある外国になり得る、潜在的な可能性として。これを御確認いただけますか。

岸田国務大臣 先ほども申し上げましたように、密接な関係にある他国、これは事前に定めておくものではありません。個別具体的に判断するわけでありますが、先ほど申し上げましたような国、共同して対処する興味あるいは関心、こうしたものを表明する国であるかどうか、これを個別具体的に判断することになると考えます。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 岸田外務大臣。

岸田国務大臣 まず、基本的には、あらかじめ定めておくものではありませんし、個別具体的に判断するものであります。

 そして、該当するかどうかにつきましては、今まで答弁させていただいている中身を再確認させていただきますと、同盟国である米国は基本的にここに当たるであろう、このように考えております。

 そして、それ以外の外国がこれに該当する可能性につきましては、現実には相当限定されると考えられますが、いずれにせよ、個別具体的な状況に即して判断される、このようにお答えしております。(発言する者あり)

浜田委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 岸田外務大臣。

岸田国務大臣 全ての国が該当する可能性があるかということでありますが、今確認しましたら、総理の答弁として、北朝鮮につきましては全く考えられないわけでございます、こういった発言はされておられます。

 そして、それ以外の国につきましては、先ほど米国のお話につきまして答弁をさせていただきました。現実には相当限定されると考えられますが、個別具体的にこの法を適用する、三要件を適用する、こういったことにつきましては、あらかじめどの国を排除するということはないと考えております。

後藤(祐)委員 北朝鮮を除いてあらかじめ排除することはないということは、潜在的には北朝鮮以外の国はあり得るという御答弁だと承りました。これは非常に重要な答弁だと思います。それでいいんですね。

岸田国務大臣 今申し上げましたように、米国以外につきましてはかなり限定されるかと思いますが、個別具体的に判断することになります。

後藤(祐)委員 これで時間をかけるのはもうやめたいんですが、まだ曖昧なことを言うようでしたら、紙で出していただけるよう、委員長にお取り計らいをいただきたいと思います。理事会で御検討いただけますでしょうか、今の御見解を、はっきり答えられないので。

浜田委員長 理事会で協議します。

後藤(祐)委員 紙がなかなか出てこないんですが、たくさんの政府見解をしっかり紙で出してほしいという中で、ようやく一つぽろっと出てきたものが、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性でございます。

 これは、存立事態を認定する上で、長いのであれしませんが、今配られていると思います。「我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民が被ることとなる犠牲の深刻性、重大性などから客観的、合理的に判断することとなる。」これは存立事態の認定のある意味基準みたいなものだと思いますが、私は、五月二十八日に、新三要件を満たすのかどうか判断するときに、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性がゼロであっても存立事態になることはあり得るのかと聞きました。それに対して、この返ってきた紙で、肝のところはここだと思うんですが、「「我が国に戦禍が及ぶ蓋然性」は、存立危機事態と判断するために必要な要素である。」と書かれております。

 これはつまり、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性がゼロである場合には存立危機事態にはならないということを意味していると考えてよろしいでしょうか。

中谷国務大臣 おっしゃるとおりでございます。

後藤(祐)委員 非常に重要な答弁だと思います。

 ホルムズが我が国に戦禍が及ぶかどうか、この前、戦と禍を分けるような議論がありましたけれども、これについては引き続きやっていきたいと思います。

 続きまして、昭和五十六年五月二十九日の稲葉議員の質問に対する答弁書、これは配付資料に添付しておりますけれども、まず、集団的自衛権の定義がここでなされております。「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもつて阻止する権利」であるというふうに定義しておりますが、再度確認します。岸田大臣、この定義でよろしいでしょうか。

浜田委員長 後藤君、恐縮ですが、もう一度。

後藤(祐)委員 配付資料をそのまま読んだだけですよ。三ページ目です。

岸田国務大臣 資料三の、国際法上、集団的自衛権についての定義が記載されていますが、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもつて阻止する権利」、この記述につきましては、政府としましての、集団的自衛権、フルセットの集団的自衛権の理解と一致をしております。

後藤(祐)委員 フルセットのと限定をつけましたけれども、フルセットのものであろうが限定的なものであろうが、集団的自衛権の定義としてこれでよろしいでしょうか。

 ちなみに、安倍総理も、平成十六年一月二十六日の衆議院の予算委員会で、今確定しているのは八一年、つまり昭和五十六年の政府答弁でありますと言っているんですね。

 そもそも、昭和四十七年見解が今話題になっていますけれども、八一年、昭和五十六年のこの答弁書というのがその後、一番ベースになっていると私も理解しております。

 これは一番基本的なところを聞いたんですが、フルセットであろうがなかろうが、集団的自衛権という言葉の定義がこれで正しいかどうか、もう一回確認していただけますか。

岸田国務大臣 国際法上、集団的自衛権の解釈、ここに書いてあるとおりであります。

後藤(祐)委員 国際法上というのは「権利を有している」にかかるんです。

 集団的自衛権の定義として、国際法上であろうが、国内における議論であろうが、国内法上であろうが、この定義で間違いないですか。

岸田国務大臣 ここにも書いてありますように、これは、国際法上集団的自衛権は何かということについての定義であります。そうした国際法上の定義として、ここに書いてあるとおりであるとお答えをしております。

後藤(祐)委員 国際法上という言葉でこれからもめるのであれば避けたいので、集団的自衛権の国内法上の定義を述べてください、ほかにあるのであれば。

岸田国務大臣 集団的自衛権とは何かということにつきまして、我が国政府としまして、国際法上このような定義に当たります、このように説明をしております。

 そして、国内的には、新三要件に当たる行為、我が国が武力行使を認められる場合につきまして、それを集団的自衛権の限定的な集団的自衛権として評価される部分がある、このように説明をしていると承知をしております。

後藤(祐)委員 定義から揺らいでくると議論の前提が狂ってしまうんですが、国際法上でない、国内法上の定義をはっきり文書で出していただきたいと思いますので、委員長にお取り計らいを願いたいと思います。

浜田委員長 理事会で協議させていただきます。

後藤(祐)委員 その上で、この稲葉先生の質問書に対する答弁書の後ろの部分、「憲法第九条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであつて、憲法上許されないと考えている。」

 これは一番有名な答弁なんですが、今のところの集団的自衛権という六文字に、フルセットの集団的自衛権だけではなく、今回認められる新三要件を満たす限定的な集団的自衛権というのはこの六文字に含まれますか。含まれないとすれば、どうやって解釈してそれは含まれないというんですか。御説明いただけますか。

 つまり、限定的な新三要件を満たす集団的自衛権に関してこの答弁を引き継ぐかどうかということについて、前回曖昧な答弁だったので、これについて岸田大臣に御答弁いただきたいと思います。これは前回も質問しておりますから、大臣に正式な答弁をお願いしたいと思います。

横畠政府特別補佐人 御指摘の昭和五十六年の質問主意書でお答えしている趣旨は、先ほど外務大臣からも御答弁申し上げたとおり、ここに言う集団的自衛権は、国際法上の集団的自衛権丸ごと、フルセットの集団的自衛権のことでございます。

 その意味で、御指摘の部分も、「我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきもの」、それを超えるものとしての集団的自衛権を行使すること、つまり端的に言えば他国防衛のために武力を行使するというその部分は当然、ここに言う「我が国を防衛するため必要最小限度」を超えるんだろう、そういうことでお答えしているわけでございます。

 ここに言う集団的自衛権の行使といいますのは、まさにフルセットの集団的自衛権の行使をすることを考えておりまして、新三要件のもとで限定的な集団的自衛権の行使、我が国防衛のためにまさに限定した、本当に必要やむを得ない、必要最小限度の我が国防衛のための自衛の措置というものが国際法上は集団的自衛権によって違法性が阻却されるというものであったとしても、それは、我が国を防衛するための必要最小限度にまさにとどめた、とどまるものでございますので、ここに言う集団的自衛権を行使するのは、その範囲を超えるというものとは別の事柄でございます。

後藤(祐)委員 限定された新三要件を満たす集団的自衛権の行使に関し、この稲葉議員の質問主意書に対する答弁書は引き継ぐのかどうか。先ほどの集団的自衛権という言葉の中に、今回の限定的な集団的自衛権が入るのか。入らないとすれば、この中、この言葉だけを見てフルセットのものしか入らないと解釈することは極めて難しいわけです。

 もし、この言葉を見てフルセットのものだけだと言える論拠があるのであれば、そのことも含めて紙で政府見解を提出していただくよう、委員長にお取り計らいをお願いします。

浜田委員長 理事会で協議をさせていただきますが、できれば、今後は、質疑の中でしっかりと答弁させますので、よろしくお願いいたします。

 時間が来ておりますので、終わってください。

後藤(祐)委員 終わります。ありがとうございました。

浜田委員長 次に、今井雅人君。

今井委員 維新の党の今井雅人でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 きのう「日曜討論」に出させていただきまして、高村副総裁ともいろいろ議論させていただきました。世論調査が最初に紹介されていましたけれども、やはり国民の理解がなかなか得られていないという現状があるなということをきのう確認したわけなんです。それで、どうしてそういうことが起きているのかということなんですけれども、いろいろ理由はあると思います。

 ただ、私が大きいと思うのは二つあると思っておりまして、一つは、やはり議論が難し過ぎる。もちろん、国会でいろいろな法律論を議論することはこれからの積み上げですから、とても大事なことです。私は、それはだめだと言っているのではなくて、この今の議論はとても重要だと思います。しかし、一方で、こういう議論を聞いていても、国民の皆さんは何のことを言っているのかさっぱりわからないと。地元に帰ってもそう言われます。

 それともう一つは、核心をついた質問になったときに、変化球を投げられてその部分に答えていないというときも散見される。本当はそこが一番聞きたいのになというときに、なかなか答えていただけないという場面もあるように思います。

 きょうは、私はちょっと趣向を変えまして、できるだけ単純化して、小中学生でもわかるようなものを目指して質問をやってまいりたいというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 きのう朝日新聞に、リスクという言葉がこの国会にたくさん出てきているということで、リスクという言葉の意味が余りにいろいろな意味で使われているので、ごちゃごちゃになっていてわかりにくいんだという記事がありまして、もっともだなというふうに思いましたので、少しここで整理をさせていただきたいというふうに思います。

 まず一つあるのは国民のリスクですね。新三要件の第一番目に当たるようなものだと思います。国民の生活が脅かされる、そういうリスクです。そういうリスクに関連するものは、まず一つは抑止力ということなんだというふうに思います。

 五月二十七日の長妻委員の質疑の中で、安全保障のジレンマというのもありますよねということで総理に質問をされました。

 そのときの総理の御答弁はこういうふうだったんです。安全保障のジレンマというのは、基本的に、これはまさに、抑止力をきかせるためにこちらが軍事力を増強していくことによって、いわば相手方も反応していくことになっていくわけでございますと。これは正しい解説ですね。

 その後に、だからといってまさに抑止力を全くきかせなくていいことではないわけでありましてと答えられるので、それは長妻さんも別に抑止力がなくていいと言っているわけではなくて、そういう考え方に対して政府はどういうふうに整理をされますかという質問をされていたと思うんですけれども、そこは全然お答えにならなかったんですね。こういうところが、私は一つやはり誠意がないというふうに思います。

 その上でお伺いしたいんですけれども、実はその後、総理は一つの考え方をお話しになられました。こういうことです。いわば抑止力のジレンマについて言えば、これは相手方がいろいろな疑念を持ってくることにもつながっていくわけでありますが、我が国の場合は透明性を持っていますと。つまり、一〇〇%全部開示しているので、相手に疑念を持たれないから抑止力のジレンマは起きないんですという御説明をされておられましたけれども、中谷大臣はこの総理の御見解について御同意をされますでしょうか。

中谷国務大臣 昭和三十二年に国防の基本方針というのが出ております。これは国民の愛国心であり、また外交努力、そして自衛隊、安保、国連という形であるわけでありますが、特に外交の面におきましては、他国からの信頼を得るという点におきまして、我が国の防衛力の透明化を明示することによって外交の信頼を得るという意味では非常に重要なことではないかと思っております。

今井委員 そういうところをしっかり答えていただきたいんですけれども、透明性が確保されていれば抑止力のジレンマというのは起きないということでよろしいでしょうか。総理はそういうふうにお答えになっているんですけれども、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 我が国の防衛政策は、防衛白書等を通じまして透明性を確保してまいりました。このような透明性の確保等につきましては、他国に対しても我が国の安全保障政策の取り組みについて十分説明をするわけでございまして、外交的には安心、安全につながってくることでございます。

 一方、抑止力というのは、我が国の実力組織でございます自衛隊、日米安保体制がございますが、これがより機能して強化するということによりまして相手国からの侵略を未然に防ぐという点におきまして、抑止力として機能させていかなければならないということで、両面必要ではないかと思っております。

今井委員 真っ正面から答えていただけないんですけれども、私の持っている問題意識は一般の方の思っていることだと思います。

 よく、中国が今軍事費を急速に拡大している、脅威になっているということを御説明されますね。これは透明性が確保されていないということを言っているのではなくて、軍事費がどんどん拡大していっているから脅威だというふうに言っているわけです。(発言する者あり)脅威と言っているときもあれば、表現はともかく、そういうニュアンスのことをおっしゃっているわけですね。

 ですから、先ほど御紹介した総理の答弁というのは、日本は透明性が確保されているから抑止力のジレンマが起きないというのは、これは僕はちょっと不十分というか、こういう説明をしちゃいけないと思うんですよ。そういうものはあるけれども、政府としては、抑止力のジレンマよりも、これはこうこうこうだから抑止力が高まるということをきっちり説明していただければ、なるほどとなると思うんです。よく例に出されています中国の軍事費が拡大しているということもあるということも、これは一つやはり考慮すべきなんじゃないでしょうかね。いかがですか。

中谷国務大臣 抑止力が必要ということと外交努力を通じて平和を追求していくこと、これはいずれも大事なことでございまして、しっかりとした抑止力を持ちつつ、外交努力を通じて透明性を図って理解をしていただくということでございます。

今井委員 私のお伺いしているのは、今回の法整備によって抑止力が高まるとおっしゃっておられますから、それはどういう理由なんでしょうかということです。

中谷国務大臣 あらゆる事態に切れ目のない対応ができるようにということで、これまで安全保障の法制をいろいろとたくさんつくってまいりましたけれども、これを一体的に見直し、検討することによりまして、あらゆる事態に切れ目のない対応ができる。

 つまり、日米安保におきましてもより機能的に発揮し得るように、自衛隊の活動等につきましてもより迅速的確に対応できるようにする。国際貢献にしましても、より国際社会に貢献する。このようなことを可能にするために今回の平和法制を通じて抑止力を向上させるという意味は、それぞれの機能を強化させるということでございます。

今井委員 それでは、抑止力のジレンマが起きない、抑止力が高まるということはどうして言えるでしょうか。どういう理由でしょうか。

 これは抑止力のジレンマにはなりません、安全保障のジレンマと、二度言っていたんですよ。最初は総理は安全保障のジレンマと言って、二度目のときは抑止力のジレンマとおっしゃっていました。言い方を変えておられましたけれども、同じ意味で二度おっしゃったんだと思いますので、その点について教えていただきたいと思います。

中谷国務大臣 総理が言われましたのは、安全保障のジレンマというのは、一方の国が防衛力を増強し、それに対する抑止力を強化しよう、もう一方の国が防衛力を強化することによって相手国が不安感を覚え、さらに相手国の防衛力が増強されるという理論と承知をいたしております。

 今回の安全保障法制は抑止力の向上に資するものであるが、これによって防衛力、すなわち自衛隊の人員、装備、予算等の体制を増強することにはならずに、一般的には安全保障のジレンマというのは防衛力、軍事力の強化が行われた際に起こり得るものであると認識しておりまして、今回の平和安全保障法制が必ずしも安全保障のジレンマの要因になるのではないと考えております。

 そこで、諸外国に対して自己の安全保障についての透明性を確保することが重要であるということで、我が国はそれぞれの自衛隊の体制等について説明を行ってきた、また今般の平和安全法制についても我が国の活動等を条文で明文化しておりまして、国内外に対して透明性は確保している。

 せんだってもシンガポールで、韓国の国防大臣に我が国の平和安全法制について説明をさせていただきました。率直に韓国側からいろいろな意見も聞きまして、丁寧に答えていったわけでありまして、このように透明性が確保されることによって周辺国からも信頼を得ているということでございます。

 結論としましては、安全保障のジレンマがあるからといって抑止力が不要になるということにはならない、しっかりとした抑止力を持ちつつも、外交努力を通じて平和を追求していくということが重要だということでございます。

今井委員 ちょっと見解が違う部分もありますけれども、きちっと説明していただいたと思います。

 その上で、ちょっと資料の二枚目を見ていただきたいんですが、これは内閣官房のホームページから印刷してきております。

 問いの三十二というのを見ていただきたいんですが、「今回の閣議決定によっても、結局戦争を起こそうとする国を止められないのではないか?」という質問に対して、こういう答えになっています。「日本自身が万全の備えをし、日米間の安全保障・防衛協力を強化することで、日本に対して戦争を仕掛けようとする企みをくじく力、すなわち抑止力が強化されます。閣議決定を受けた法案を、国会で審議、成立を頂くことで、日本が戦争に巻き込まれるリスクはなくなっていきます。」と書いてあります。

 なくなっていくという日本語は、消えるということですから、ゼロになるということです。ゼロになる。この法案を成立させたことで日本は戦争に巻き込まれるリスクはゼロになっていくんでしょうか。

中谷国務大臣 ゼロになるとは言っておりません。なくなっていく方向で、少なくなっていくということでございます。

 これは、今持っている数量的なものをより、法案が成立することによって、訓練をしたり各国と協力をしたり、そういうことで日本の安全保障、防衛を実質強化するということでありまして、言うなれば抑止力を強化することによって日本の安全が図られるという意味でございます。

今井委員 私が小学校、中学校にわかりやすいと言ったのはそういう意味なんです。ゼロを目標に、目標に向かっていく表現だと後ろの方でも皆さんおっしゃっていますが、なくなっていきますという言葉を普通に聞けば、それはゼロになっていくんだろうなというふうに感じるのが普通の感覚です。

 私は、リスクが低減していくとか低下していくとか、そういう表現であればなるほどと思うんですけれども……(発言する者あり)いやいや、小学生に難しかったら、少なくなっていくでいいじゃないですか。少なくなっていくでいいと思うんですけれども、国民にしっかりわかるようにするためには言葉の使い方はとても大事だと思うんです。だから、こういうところは、政府は実はそういう意味で言っているんじゃないんだということを説明する必要もない、もっとはっきりとした表現にした方がいいと思うんですね。

 言葉尻と言われますが、言葉は大事なんです。言葉は大事なので、こういうところは、やはりそういう誤解を招くような表現は私は改められた方がいいと思うんですよ。いかがでしょうか。

中谷国務大臣 御指摘ありがとうございます。

 リスクを一層下げていくとか、そういう意味でございますが、政府としては、やはり国民の安全保障、安全にかかわることでありますし、日本の平和にかかわることでございますので、それを目指して、なくしていくということでございます。

今井委員 私は、政府に訂正させたとか、かち取ったとか、そんなことは全然誇りにも思いませんし、ちゃんと直していただければいいと思うんですね。

 ですから、ぜひこういうところも含めて御検討いただきたい。御提案をしているので、その点はいかがですか。

中谷国務大臣 今後、質疑を通じて政府をただしていただいて、我々も対応してまいりたいと思っております。

今井委員 では、この点においてもぜひ検討していただきたいと思います。誤解を招く表現は必要であれば直す、そういう真摯な姿勢で臨んでいただきたいというふうに思います。

 次に、「日曜討論」のときにもう一つ出たアンケート結果で、自衛隊員の皆さんのリスクが高まるかどうかという質問で、七二、三%ぐらいの方が高まるんじゃないのということを言っておられました。ここもずっと今まで議論してきていますが、なかなかかみ合っていないので、ちょっとここで決着をつけたいというふうに思っております。

 まず、五月二十七日の質疑のところで、高村副総裁が、あらゆる自衛隊の活動にはリスクが伴うというふうにおっしゃられました。大臣も同様な答弁をされていると思いますけれども、もう一度確認したいと思うんですね。あらゆる自衛隊の活動にはリスクが伴う、そういうことでよろしいでしょうか。

中谷国務大臣 そのとおりでございます。

 訓練するにしても、災害派遣で対応するにしても、PKOをするにしても、いずれにしてもリスクが伴うということでございます。

今井委員 では、次です。

 自衛隊のこれまでの任務がありますけれども、今回も新しい法案の中で公明党さんの肝いりで安全確保というのが入ったようであります。これまでの任務も当然最大限の安全確保をしてやってきたと思うんですが、その点は大臣はどういうおつもりでこれまでやってこられましたか。

中谷国務大臣 私のときも、テロ特措法に基づいてインド洋に自衛艦艇を派遣いたしました。現在もPKOや海賊対処におきまして自衛隊を派遣いたしておりますが、安全第一、必ず自衛隊の行動については全ての面で安全に気をつけて、事故や事件が起こらないように、くれぐれもそれを要望し、各対応等につきましても各級指揮官がこれを念頭に全力で対応していると認識しております。

今井委員 当然ですね。この法案に限らず、今までもそういうことをやってきておられたというのは当然だと思います。

 それで、もう一度確認したいんですけれども、これからも今までと同様、とにかく自衛隊の皆さんの安全確保を最大限守っていくということでよろしいでしょうか。

中谷国務大臣 そのとおりでございます。

 自衛隊というのは国を守るための組織でありまして、国民の皆様方のあらゆるニーズに的確に応えていくように日々能力を向上させていただいておりますが、この法律によりまして新たな任務に伴う新たなリスクが生じる可能性がございますけれども、それは今後派遣される地域の状況、活動の内容によってさまざまでありまして、具体的な派遣検討におきまして評価がされるわけでありますが、派遣が可能だと判断される場合には、さらに任務の実施に伴うリスクを極小化いたしまして対応するということでございます。

 そして、もう一つ言えるのは、この法律に伴いましていろいろな訓練ができます。また、装備も必要になってまいります。情報も入手して、各国との協力ができる。訓練をすることによってリスクを下げていく、それに対処する能力を向上させていく。そういった危機管理や安全に対して、この法律を制定することによって対処が可能になってくるということでございます。

今井委員 ちょっと今のところはよくわからなかったんですけれども、この法律を成立させると従来業務のところのリスクが下がるということをおっしゃっているんですか。低下するという意味ですね。

中谷国務大臣 新たな任務に伴う新たなリスクが生じる可能性がございますけれども、こういったリスクにおきましては、それぞれ派遣されるまでにいろいろな準備もいたしますし、訓練もいたします。また、運用等につきましてもリスクが極小化する努力を行うというようなことでございまして、それで対応してリスクを極小化して運用するということでございます。

今井委員 わかりました。今のは新たな任務に関しての御答弁だったことが今わかりました。

 それで、六月十日の質疑のところでうちの高井委員から、今もお話がありましたけれども、もう一度確認したいんです。そこの場で、新しい任務の拡大がある、今回も新しい分野の任務というのが追加をされますということをおっしゃいましたけれども、それはそのとおりでよろしいですか。

中谷国務大臣 はい、そのとおりでございます。

 自衛隊の実施には必ずリスクがありまして、新たな任務に伴う新たなリスクが生じる可能性があることは国会の場におきまして累次御説明しているとおりでございまして、御指摘の六月十日の委員会における私の発言も同様の趣旨のことを述べたものでございます。

 また、累次御説明しているとおり、任務の実施に伴うリスクの程度は実際に派遣されている地域の状況、活動の内容によりさまざまであり、具体的な派遣検討において評価され、派遣が可能だと判断される場合には、さらに任務の実施に伴うリスクを極小化する努力を行うということでございます。

今井委員 新しい任務に関してリスクはあるんだけれども、それを最大限の努力をしてできるだけ少なくしていく、今はそういう御答弁でよろしいですか。

中谷国務大臣 十日の発言につきましては、隊員のリスクにつきましては、先ほどお答えしましたがという前提でお話をいたしておりまして、先ほどの発言というのは、自衛隊の任務の実施には必ずリスクがある、新たな任務に伴う新たなリスクが生じる可能性があるということで、その趣旨を述べたものでございます。

今井委員 ありがとうございました。

 ここからは小学校の算数の世界です。

 今までの任務というのがあります。今までも一生懸命安全確保をしてまいりました。それでもリスクはなくなっていなかったわけですから、そのときにあったリスクをAとしましょう。そして今回、新しい任務によってリスクが生じました。これは最大限下げていきますけれども、ゼロにはなりません。少なくともマイナスじゃない、プラスですね。A足すBイコールCです。A足すBイコールCですね。Bがプラスであるということであれば、CはAより大きいんですよ。(発言する者あり)じゃ、中学生ならわかりますね。いや、そうじゃないですか。

 今の理屈で言うと、今の中谷大臣の答弁は、今までも最大限リスクを縮小するために頑張ってきました、でもリスクはありますよ、これから新しいものも最大限リスクを下げていきますけれども、でもふえましたよと。それを足したら今までよりふえるというのは当たり前じゃないですか。

 これは当たり前の話なんですよ。なぜこの当たり前のことが言えないのか。だから、みんな、うさん臭いと思っちゃうんですよ。(発言する者あり)まあ、この辺では言っているとおっしゃっていますが。

 では、明確にそれをもう一度答弁していただきたいんです。リスクが高くなったって、やらなきゃいけないことがあるんだったら、それは向かわなきゃいけないわけですよ。いつも質問する人が言っていますけれども、それでも行ってくれ、みんなのために、やはりそういうことだと思いますから。

 私は、この問題に決着をつけたいので今申し上げているんです。これ以上この議論は、もうここでやめたいんです。だから、もうここははっきり言いましょうよ。それを言っていただければ、よし、そうだと次の議論に行けるわけですけれども、ここで堂々めぐりしているわけじゃないですか。だから、そこをぜひ言っていただきたいと思います。

    〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕

中谷国務大臣 本当に隊員のことを思っていただいた御発言だと思いますが、実際、自衛隊の運用をしておりますと、通常の任務においても相当高いリスクというものを要求されます。例えば、天候が悪いときに患者搬送をする、これは判断しなければなりません。御嶽山の救援に向かう、これもぎりぎりの判断をしなければなりません。パイロットも、また潜水夫も本当に高いリスクを抱えながら、実際にやるかやらないか、これはやはり組織としてきちっと事故が起こらないようにさせるわけでございまして、こういうリスク管理というものはやっております。したがって、今でも大変高いリスクに基づいて自衛隊というのは訓練し、また勤務をしている。

 そこで、法律によって新しい任務が伴いますが、これは国会でお答えさせていただきましたが、新たな任務に伴う新たなリスクが生じる可能性、これはあるというものは認めます。

 ただ、実際これを本当に行うかにつきましては、いろいろな状況を判断して、政府が計画を立てて閣議決定をして、そして国会にお諮りをして実際に行うわけでございますし、実際に実施する場合においては現場の指揮官が最大限リスク管理をして、それを極小化して無事に任務を果たさせるわけでございますので、新たに伴う新たなリスクが生じる可能性はございます、しかし、実際に対応する場合におきましては任務に伴うリスクを極小化させて実施させるということでございます。

今井委員 それなりに答えていただいているので、もう一度確認しますけれども、新たなリスクがふえる可能性があるということは、リスクがふえる可能性もある、全体的にリスクがふえる可能性があるというのと同じだということでよろしいですね。確認、もうこれで終わりますから。ここに答えていただいたら、この話は終わります。

中谷国務大臣 これも維新の委員の方から御質問がありまして、新たな任務に伴う新たなリスクが生じる可能性があるということは申し上げております。

 実際の任務の実施に伴うリスクの程度は、実際に派遣される地域の状況、活動の内容によってさまざまでありまして、こういった派遣検討によって評価が派遣可能だと判断される場合に、さらに任務の実施に伴うリスクを極小化する努力を行うということでございます。

 新たな任務に伴う新たなリスクが生じる可能性、これはあるということは認めております。

御法川委員長代理 速記をとめて。

    〔速記中止〕

    〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 今井雅人君。

今井委員 最後にしたいと願っておりますが。

 先ほど、従来業務のリスクは今までと変わりません、今回新しいリスクがふえますということをおっしゃられましたので、それは全体としてふえるということと同義で、リスクがふえるということと同じですねということの確認です。いかがでしょう。そうですか、そうじゃありませんか、どっちかです。

中谷国務大臣 新たな任務に伴う新たなリスクが生じる可能性はあるということでございます。今でもリスクはあります。これからもリスクはあります。ゼロにはなりません。

 自衛隊は、やはり国土防衛、治安維持、災害派遣、こういった我が国を守るという任務を遂行する間にそれなりの実力をつけ、そしてリスクに対する対応の能力もつけて、いわゆる危機管理のプロとして現場現場で状況を判断しながら、隊員の安全を確保しながら任務を遂行するということをしておりまして、平成二年以降、実質は四年からですけれども、PKOや邦人輸送、周辺事態、警護出動、イラク、国民保護法、弾道ミサイル、海賊対処、このように新しい任務がどんどん積み上がってきております。

 しかし、こういった任務をきちんと遂行できるだけの実力を持ちながら実施をしているわけでありまして、こういったリスクをしっかり持ちながらも管理していくという中で、新しい任務に対応していくということでございます。

今井委員 リスクはあると言いながらリスクがふえる可能性があると言って、あると言ったり、可能性があると言ったり、何か、どっちなのかよくわからないんですけれども。

 とにかく、では、これは全体的に新しい任務でリスクがふえるんですから、全体でふえるということでよろしいですね、そういうふうに理解しましたので。(発言する者あり)いや、そういうことですよね。今までが一緒で、新しい任務はリスクをゼロにはできないということですから、ふえるということで、今それと同じ答弁をされたというふうに理解しましたので、リスクは全体的にふえるということでいきたいと思います。(発言する者あり)違うんですか。今、違うというあれがありましたので、違うなら、ちょっと私、結局、答えてもらわなきゃだめだ。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

中谷国務大臣 申し上げます。

 新たな任務に伴う新たなリスクが生じる可能性があるということは述べたとおりでございますが、任務の実施に伴うリスクの程度は、実際に派遣される地域の状況、活動の内容等によりさまざまであり、具体的な派遣検討において評価され、派遣が可能だと判断される場合には、さらに任務の実施に伴うリスクを極小化する努力を行って、実際に任務を遂行させるということでございます。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 今井雅人君。

今井委員 大臣、では、もう一度。済みません、もう一度。新しい任務が追加されます、それにはリスクはあります、その分だけはふえますということの理解でよろしいですね。

中谷国務大臣 新たなリスクが生じる可能性はございますが、実際やるときには安全対策を講じて実施させます。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 今井雅人君。

今井委員 では、もう一度。新たな任務によるリスクがふえる可能性があるということは、リスクがふえるということでよろしいですね。新たな任務でリスクがふえる可能性があるということでよろしいですね。

中谷国務大臣 新たなリスクが生じる可能性はございます。

今井委員 それでは、今までのリスクは変わらないで新たなものがふえる可能性があると先ほどおっしゃったので、全体がふえるという明確な答弁をいただいたということで理解をしておきたいというふうに……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。不規則発言は慎むように。

今井委員 次に行きます。余り時間がなくなってしまいましたので、いろいろ聞きたかったんですけれども。

 この間こちらの委員会で一度目の質問をさせていただいたときにちょっと尻切れトンボになった機雷掃海の件なんですけれども、先ほど後藤委員もちょっと質問しておりましたが、もう一度確認したいんです。

 あのとき私が申し上げたのは、いわゆる経済的な理由ということを機雷掃海で今おっしゃっている、原油全体の八割がホルムズ海峡を通ってくるので、あそこが通れなくなってくると我々は本当に生活が大変になりますから、自国の存亡にかかわる事態だということですよね。ということであれば、あそこに機雷が敷設されている状況は、誰が敷設しようが、どんな状況であろうが、それは日本にとっては同じですよね。タンカーが入ってこない、タンカーがそこを通れないから石油がもらえないということですから。

 誰が主体的にそれを敷設したとしても、日本にとっては全く同じ状態ですねということをこの間お伺いしたんですけれども、あのときは総理しかお答えになりませんでしたので、大臣に改めてお伺いしたいと思います。そういう理解でよろしいですよね。

中谷国務大臣 機雷をまくということは武力行使でございます。それがいずれの目的かはいろいろありますが、いずれにしましても、我が国が武力行使を行い得るというのは新三要件全てを満たす場合に限られるということでございます。

今井委員 いや、つまり、個別の事案はいろいろおっしゃらないと言って、ホルムズ海峡、唯一個別の事案をおっしゃっているんです、今までの議論の中で。だからあえてお伺いしているんですけれども、ではどういう理由で新三要件に適用するんですかと言ったら、石油が入ってこなくなるからだ、日本は備蓄が何カ月かしかないから、その後大変だから機雷を掃海することもあります、かみ砕いて言えばそういうことをおっしゃっているわけですよね。

 ということは、どの国がそれを敷設しようが、そこを通れなくて石油が入ってこなくなれば、これは新三要件に適用してしまうわけですよ、どれでも。(発言する者あり)では、あれですか、この間も、ちょっと済みません、今また不規則発言に反応してしまいましたけれども、物すごい、石油も入ってこなくてもう日本が潰れそうだと言っているのに、いや、これは密接な国じゃないからここは掃海に行きません、諦めます、そういうこともあり得るということですか。

中谷国務大臣 これはあくまでも新三要件に該当する場合でありまして、その新三要件の一番上に、我が国と密接な関係にある国に対する武力攻撃が発生したときということでございます。

 ある他国に武力攻撃が発生した場合であっても、その他国が我が国と密接な関係にない国である場合には、エネルギー源の供給が滞るなどして我が国の国民生活に死活的な影響が生じたとしても新三要件を満たすことはなくて、我が国が武力行使に当たる機雷の掃海活動を行うことは憲法上許容されないということでございます。

今井委員 ちょっともう時間がなくなりましたので、最後、一つだけ聞きたい。この話、まだしっかり答弁していただいていませんよ。ですけれども、これだけちょっと聞いておきたい。

 資料のところに英語のものをつけております。これは俗に言うアーミテージ・レポートなんですけれども、アーミテージ・レポートのところに、レコメンデーション・フォー・ジャパンというのがあります。そこに線を引いてありますが、ここで、ホルムズ海峡の機雷を日本はやるべきだというふうにアメリカから要請しています、アーミテージ・レポートでは。マインスイーパーですから、機雷の掃海です。

 そこでお伺いしたいんですけれども、今回立法事実をいろいろ確認しなきゃいけないんですけれども、これまでアメリカから、このホルムズ海峡の機雷掃海をぜひ日本にやってほしいという依頼、要望が来ているんですか、来ていないんですか。米政府から来ていますか。(発言する者あり)過去ですね、これまでで。

岸田国務大臣 アメリカから御指摘のような要請が来ているかどうかということですが、要請というのはどういう形で、どういうものを指すのか。もし質問に正式にお答えするということであるならば、これは一度確認しなければならないと思います。

今井委員 これは実はこの議論をするのにとても大事な話なので、委員長、ぜひ引き取っていただきまして、しっかりとした文章で出していただきたいと思います。

浜田委員長 理事会で協議します。

今井委員 ちょっとこれから怒号が飛ぶかもしれませんが、最後に意見を申し上げたいと思うんです。

 我々はやはり必要な自衛権の拡大というのはやっていかなきゃいけないと思っているんですが、どうもこのホルムズ海峡の機雷掃海だけは、なぜこれだけがぽこんと出ているのかというのにとても違和感があるんです。さっき後藤さんも言っていましたけれども。

 それはなぜなんだろうかと考えると、私は、このアーミテージ・レポートを見ている限り、これはアメリカなのか諸外国なのかわかりませんが、そういうところから強い要望が来ているんじゃないかと思うんですね。それに応えるためにはどうしたらいいかといろいろ理屈を考えて、経済的な理由というのを編み出して、それに応えられるようにしようとしたというふうに、少しうがった見方で見てしまうわけです。だから、これだけがぽこんと、違和感があって、横にいるんじゃないかなというふうに思うんです。

 最後、多分もう時間がないので、お伺いします。

 海外派兵を伴う武力行使は一般としては認められないけれども例外があるとおっしゃっていまして、この機雷掃海は制限的、受動的であるので例外であるというふうにおっしゃっておられますが、日本以外の国で、機雷掃海だけは受動的あるいは制限的というふうに言っている国はほかにあるんでしょうか。

岸田国務大臣 我が国は、憲法との関係において、認められる武力行使は新三要件に該当するもののみであるという整理をしています。その一部に集団的自衛権と評価される部分がある、こういった説明をしていますが、我が国が憲法との関係において認めようとしている限定的な集団的自衛権を初めとするこうした制限は、国際的に見てもこれは極めて限定的な歯どめであります。

 よって、我が国の基準に従って判断する、こうした物差しで判断する他国の例というのは我が国以外には考えにくいのではないかと考えます。

今井委員 時間が来ましたので終わりますけれども、今の話を伺っていると、日本には憲法九条の制約があって、それを一生懸命読んでいくと、こういうちょっとほかとは違う独自の解釈をしないと機雷掃海もできないんだという、私はちょっとこの理屈に無理があるというふうにやはり感じざるを得ないということを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございます。

浜田委員長 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 維新の党の初鹿明博です。

 午前中から四時間たっておりますので、私の質問しようと思っていたことが随分先に質問をされていますので、少し追いかけながら、後追いの質問もさせていただきたいと思います。

 ところで、中谷大臣、一日二十二人、この数字は何だか御存じでしょうか。

中谷国務大臣 ちょっと想像がつきません。

初鹿委員 これは、昨年の十一月十一日の日に、米国のベテランズデーという復員軍人の日に合わせて反戦イラク帰還兵の会が発表した、復員軍人における自殺者の数だそうです。一日に二十二人。戦死者が大体六千八百人ぐらいだというふうに聞いておりますが、八千人ぐらいの方が自殺をされているということです。

 先ほどリスクのお話がありましたけれども、あのときに話していたリスクというのは、現場の業務に行った場合のリスクだったと思うんですけれども、実は、リスクはもう一つ私はあると思います。それは何かといいますと、派遣をされた隊員が戻ってきてPTSDになってさまざまな問題を抱える、そういうリスクが私は非常に大きくあるというふうに思っております。

 この委員会の質疑の中でも明らかになりましたけれども、イラク戦争等に行った自衛隊員の自殺者の数というのが発表になったと思いますけれども……(発言する者あり)イラクに派遣された自衛隊員ですね。〇三年から〇九年までの間に、在職中に自殺したと認定された隊員は二十九人だということです。うち四人はイラク派遣が原因だった、これははっきりしているということであります。そして、〇一年から〇七年のテロ特措法でインド洋での給油活動に参加した隊員のうち、同様に自殺と認定された隊員は二十五人。インド洋とイラクに派遣をされた隊員だけでも合わせて五十四人がみずから命を絶ったということが、今回のこの委員会での質疑の中でも明らかになっているわけであります。

 これまで、武力行使を伴わない後方支援の活動だとか人道支援の活動だけでも、これだけの自殺者が出ているということであります。これが、では実際に武力行使を行うような活動に自衛隊員が派遣をされていったときに、PTSDを発症する、そういう可能性が高まらないとは私は言えないと思います。

 実際に、ベトナム戦争での帰還兵の約一割がPTSDに苦しんだということが研究の調査でもわかっておりまして、このPTSDというのは、本人のパニック障害であったりとか、さまざまな問題を起こすと同時に、場合によっては犯罪を犯してしまうというケースもあるし、先ほど申し上げたように、自殺に至ることもあるということであります。

 こういうリスクが高まるという認識は、大臣、おありでしょうか。

中谷国務大臣 自殺の要因につきましてはさらに分析をしてまいらなければなりませんが、これまで、海外に自衛隊を派遣する際には、派遣前から自衛隊員の精神的な管理また健全性等につきましては配慮をし、また帰国した後もそれぞれの隊員についてのケアも実施をしてまいっております。

 そういう意味におきまして、こういった隊員の精神的な問題につきましても、今後しっかりと対応してまいりたいと思っております。

初鹿委員 私が聞いたのは、今回、武力行使を伴うようなそういう集団的自衛権の行使を容認して、そこに隊員が派遣をされた場合に、帰還してきた方々の自殺リスクまたPTSDを発症するリスクは高まるのではないか、今まで以上に高まるのではないかということを今質問したんです。いかがお考えでしょうか。

中谷国務大臣 恐縮ですが、現在も、我が国に対する武力攻撃に対して、非常に練度の高い訓練を実施いたしております。それなりに隊員も緊張感を持ちつつ、使命感を持って勤務をいたしておりますので、こういった通常の訓練においてもそういうリスクを抱えながらやっているということでございます。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 これまでも、海外における自衛隊の活動は実施してまいりました。新たな任務に伴う新たなリスクが生じる可能性はございますが、特に、やはり海外派遣におきましては過酷な環境での活動が想定をされます。派遣隊員の精神的な負担は相当大きなものであると考えられることから、メンタルヘルスケアについて十分留意をすることも必要でございますし、派遣に際しましては、ストレスへの対応、ストレスの軽減に必要な措置を講じるとともに、メンタルヘルスチェックを常に行いながらやってまいりたいと思っております。

初鹿委員 では、派遣をされている間にメンタル上の問題が生じた隊員は帰還をさせるということでよろしいんでしょうか。

中谷国務大臣 当然のことながら、隊員の健康管理等には十分配意をして実施してまいるということでございます。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 もう一度答弁させていただきます。

 海外派遣は、過酷な環境での活動が想定をされ、派遣隊員の精神的な負担は相当大きなものが考えられることから、メンタルヘルスケアについては十分留意をして対応させてまいりたいと思っております。

初鹿委員 いや、対応するのは当たり前の話であって、私が聞いているのは、派遣された隊員が今まで以上に厳しい現場を見るわけですよね。目の前で人が殺される、場合によっては自分が武力攻撃をして相手を殺すこともあり得る、そういう行動をこれから自衛隊員にしてもらおうというのがこの法案なわけです。今まで以上に、今までにはない任務を行って帰ってきた、その帰還した自衛隊員がPTSDを発症する、もしくはその結果として自殺をする、その可能性が高まるんじゃないんですかということを聞いているんです。

 高まるのか高まらないのかを聞いているのであって、安全対策をしっかりやる、メンタルヘルスケアをしっかりやるということを聞いているんじゃないんです。高まるのか高まらないのか、そのことを聞いているんです。お答えください。

中谷国務大臣 実際に活動させる場合においては、しっかりと安全に活動できるということで計画をつくります。そして、閣議決定をし、国会の承認もかけます。

 そして、実際に活動させる場合には、地域の状況、活動の内容等さまざまでありまして、具体的な派遣検討において評価をいたしまして派遣が可能だと判断される場合に、さらに任務の実施に伴うリスクを極小化いたしまして実施をさせてまいります。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 初鹿明博君。

初鹿委員 もう一回聞きますね。派遣された隊員が戻ってきたときにPTSDを発症する、その可能性が高まるんではないですか。大臣、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 海外派遣は、過酷な環境での活動が想定され、派遣隊員の精神的負担は相当大きなものと考えられます。その結果、PTSDを含む精神的な問題が生じる可能性はありますが、メンタルヘルスケアについては十分留意をして実施させます。

初鹿委員 真っすぐ正面から答えてもらっていないなとは感じるんですが、ちょっと次に進ませていただきます。

 ところで、大臣、戦場に行った兵士がPTSDを患う原因、主に三つ挙げられるんですが、御存じでしょうか。

 一つは、長時間にわたって死の恐怖が長く続くということにより、精神が不安定になってヒステリー状態を起こすというのがまずあります。そして二つ目は、自分に対する死の恐怖ではなくて、敵の兵士や味方の兵士や民間人など他人の死を目撃することによって、自分の死の恐怖と他人の死の凄惨な光景が相まってそれがストレスになる、そういうケース。そしてもう一つは、戦場に余りにも順応し過ぎて、安全な本国に帰還してから心身に不調を来すというケースがあるということであります。

 ところが、ベトナムから帰還した兵士のPTSDを発症した原因の一番多い理由というのは、その三つではないということが言われています。御存じでしょうか。ベトナム帰還兵、彼らがPTSDを発症するのに最も原因となったもの、それは、大臣、おわかりになりますか。

中谷国務大臣 通告されておりませんので、ちょっと調べる時間がございませんでした。

初鹿委員 これは実は、帰国後、帰ってきた兵士が、ベトナム戦争というのは、御存じのとおり猛烈な反戦運動が起こった、そういう戦争でありました。つまり、自分は正義の戦いだと思ってアメリカのためにベトナムに行って戦って、過酷な任務を負って、帰ってきた。ところが、帰ってきたら自分が今度は批判をされる的になってしまった。つまり、自分が評価をされない、否定をされた。そのストレスがPTSDを引き起こすことになったということが言われております。

 それで、今回のこの法整備なんですけれども、国を二分するような大変な問題となって、今こうやって議論がされているわけですね。多くの国民が反対をしている。そういう状況の中で、この法律が通って、そして任務を遂行させるように派遣していくわけでありますから、この重みというのは非常に大きいと思います。

 このように多くの国民が反対をしている中で、大臣は、まあ大臣の時代に派遣を決めることには恐らくならないというふうに私は思いますけれども、将来の大臣が派遣をするときに、このようなリスクも考えてきちんと新三要件の要件を判断していくことが私は重要だというふうに思いますが、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 今回の法律を協議する際に大事にした三原則がございまして、それは、まず国際的な正当性、そして国内における統制、そして最後は隊員の安全ということで、それぞれ、法案につきまして、こういうことは盛り込んでいるわけでございます。

 実際に派遣する場合におきましては国会の承認をいただくわけでございまして、テロ特措法のときも、当時の民主党は、法案には反対をされましたけれども、実際の派遣につきましては賛同いただきまして対応したわけでございます。このような形で御理解をいただいた上で、正々堂々と任務が遂行できるような環境をつくらなければならないと思っております。

初鹿委員 ぜひ、このPTSDを発症する隊員がいるということも忘れないでいただきたいと思います。

 今、新三要件のお話がありましたけれども、もともと旧三要件がございました。この旧三要件というのは、まず一つが我が国に対する急迫不正の侵害があること、そしてこの場合にこれを排除するための他に適当な手段がないこと、そして必要最小限度の実力行使にとどめることとなっていたはずでございます。

 それが、今回、新三要件ということで、この急迫不正の侵害があることということが変わりまして、我が国に対する武力攻撃が発生したこと、または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があることと、変わっております。

 旧三要件にありました急迫不正の侵害があることというのが今回の新三要件では落ちているんですけれども、これは、急迫不正の侵害があることという要件は必要がなくなったということでいいんでしょうか。

横畠政府特別補佐人 ちょっと先ほど来の御議論で気になっているところがございまして、海外派遣という前提でいろいろそのリスクは議論されておりますけれども、防衛大臣がお答えしていますのは、重要影響事態等による派遣を前提にしてお答えしているように私は理解しております。(発言する者あり)

 存立危機事態における新三要件を満たす場合におきましても、海外に派遣いたしますのは、一般的に海外派兵は許さない、許されないという原則は維持しております。そこはちょっと申し上げたいと思います。

 その上で、お尋ねでございますけれども……(発言する者あり)その上で、お答えいたしますけれども、急迫不正の侵害という言葉は……(発言する者あり)

浜田委員長 静かに。

 答弁中ですが、ちょっととめてください。

横畠政府特別補佐人 いつもお答えしていますけれども、正当防衛の要件で用いられている言葉で……

浜田委員長 長官、ちょっととまってください。とめてください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 一言、委員長から申し上げます。

 法制局長官、先ほどの発言について、防衛大臣の発言に対してコメントされましたが、その件については、指摘がございますので、その点について長官の方からそれを取り消していただければと思いますので、よろしくお願いします。

 内閣法制局長官。(発言する者あり)

 静粛に願います。

横畠政府特別補佐人 大臣の御答弁は大臣の御答弁でございまして、私の口から大臣の御答弁の趣旨を申し上げたことは出過ぎたことであると思いますので、撤回して取り消させていただきます。

 先ほどの御質問の点でございますけれども、急迫不正の侵害という言葉は正当防衛の要件として用いられている言葉でございまして、集団的自衛権あるいは個別的自衛権という国際法上の武力の行使の要件についての議論におきましては、厳密には武力攻撃の発生ということを要件としておりますので、今回の新三要件におきましては、その本来の用語に統一したということでございます。

初鹿委員 ちょっとよく意味がわからないんですけれども、自衛権の行使のウエブスター原則によれば、急迫不正の侵害があることというのは要件に入るんじゃないんですか。何か今、正当防衛の要件だという言い方をされていましたけれども、それはどういう趣旨でおっしゃったんでしょうか。

横畠政府特別補佐人 急迫不正の侵害という言葉は、現行法におきましては、刑法の第三十六条にございます。「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。」という規定でございます。それとの類似性ということから、この急迫不正の侵害という言葉を従前使っていたということを申し上げたのでございます。

初鹿委員 よくわかりませんけれども、では、今回の新三要件では、自衛権を発動するのに、急迫不正の侵害がなくても個別的な自衛権を発動するということになるんですか。どういうことですか。

横畠政府特別補佐人 もちろん、急迫不正の侵害がなければ自衛権の発動はできません。その実質を変えるわけではなくて、どういう言葉で記述するかという問題でございます。

初鹿委員 よくわかりませんけれども、つまり、新三要件の中に、我が国に対する武力攻撃が発生したことの中には急迫不正の侵害が行われたということが含まれている、そういう理解でよろしいんでしょうか。

横畠政府特別補佐人 従前の自衛権発動の三要件の第一要件におきましては、我が国に対する急迫不正の侵害があること、すなわち武力攻撃が発生したことというのが正しいというか正規の言い方でございまして、まさに、その同じ事態を急迫不正の侵害と呼ぶか、武力攻撃が発生したことと言うかという、そこの違いでございまして、実質を変えるということでは全くございません。

初鹿委員 武力攻撃が発生したことだけが急迫不正の侵害なんでしょうか。例えば、武力攻撃せずに尖閣諸島などにどこかほかの国が上陸したことは、急迫不正の侵害に当たらないんでしょうか。

横畠政府特別補佐人 外国の武力攻撃と申し上げているとおりでありまして、まさに国家レベルのといいますか、国家の意思、国準でもいいんですけれども、そういうものの意思に基づいて、組織的、計画的なまさに武力の行使に及ぶ、そういう侵害をするということを武力攻撃と呼んでおりまして、まさにそういうものに限定されているという意味でございます。

初鹿委員 いや、よくわかりませんけれども、要は、島に上陸をする、武力を使わずに例えばどこかの国または国に準ずる組織が上陸をする、武力攻撃をやっていなくて、それは急迫不正の侵害にならないんですか。先ほどの答えだと、武力攻撃の中に急迫不正の侵害は全て含まれるというお答えですから、武力攻撃以外のものはここには想定されないように聞こえるんですけれども、どっちなんでしょうか。

横畠政府特別補佐人 単に急迫不正の侵害といいますと、まさに国家の意思を受けたわけでない、私人による急迫不正の侵害というのも当然あるわけで、そのようなものが自衛権の発動の要件になっているわけではないということでございまして……(初鹿委員「そんなことはわかっていますよ」と呼ぶ)

 ならば、まさに武力攻撃に該当するかどうかということが要件でありまして、それに当たれば武力の行使ができますし、当たらなければできないということでございます。

初鹿委員 では、武力攻撃に当たるかどうかが要件だと今言ったと思うんですけれども、私が言っているのは、島に上陸するだけで武力攻撃をしていない場合は急迫不正の侵害にならないのかということを聞いているんです。わかりますか。長官、答えてください。

横畠政府特別補佐人 一般論で申し上げれば、武力攻撃に当たらない行為という前提でのお尋ねでございますけれども、武力攻撃に当たらないのであれば急迫不正の侵害に当たり得ないのかといえば、そうではございません。

初鹿委員 今、ちゃんと明確に答えていただきましたけれども、つまり、急迫不正の侵害というのは、武力攻撃以外のものも含んでいるわけですよね。この単語があえてここで落とされていることはちょっと不可解だなというのを私は思っているわけですよ。きちんと今までの要件として急迫不正の侵害があって、自衛権というものを発動できるというのが国際法上の理論なわけですから、それがなくなるというのはいささか不可解だな、急迫不正の場合じゃなくても自衛権を発動するのかなというのを感じるわけであります。

 そうじゃないということでよろしいんですよね。よろしいんですよね。

横畠政府特別補佐人 まさに、自衛権を発動いたしますのは、新三要件を満たす場合に限られます。

初鹿委員 新三要件を満たすものに限りますと言いましたけれども、先ほどのホルムズ海峡の議論を聞いていて少し感じたんですけれども、集団的自衛権を発動する、新三要件を満たすということですが、まず、攻撃を受けた国があることが大前提ですよね。それで、その攻撃を受けた国から要請があるということも前提になってくるわけですよ。

 要請が仮にない、存立危機事態ではあるけれども、どこの国からも要請がない場合の対処は、大臣、どうされるんでしょうか。

中谷国務大臣 国際法上の要件でございますので、対応できないということでございます。

初鹿委員 では、存立危機で、本当に日本の存立が危ぶまれているのに、要請がないと、座してそのまま待つしかないということですよね。そうなると、今までこの法整備は切れ目のない安全保障環境をつくるということをずっと言ってきたわけですが、切れてしまうんじゃないんですか。違いますか。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

中谷国務大臣 ありとあらゆる外交手段を通じて対処いたしますが、やはり我が国の対応につきましては、国際法上の正当性がないとできないということでございます。

初鹿委員 では、今の外交上の努力ということですけれども、ということは、要請がない場合に、どこかの国に要請してもらうように働きかけて要請してもらう、そういうことですか。それ以外に、存立危機事態で、我が国がその状況を解消する方法というのはあるんでしょうか。

中谷国務大臣 あらゆる努力を実施してまいります。他国が対応する場合もございますが、あくまでも我が国が対応できるというのは三要件に合致をする場合でございまして、その際、攻撃を受けた密接な国からの要請があるということは必要なことでございます。

初鹿委員 ここで、今の答弁ではっきりしているのは、この法制ができたからといって、完全に切れ目がなくなるとは言えないということだと思うんですよ。

 今、ホルムズ海峡だけの話をしましたけれども、それ以外の地域で存立危機事態になったときに、我が国と密接な関係にある国というものの定義もはっきりしていないわけで、事態が起こって個別的、具体的に判断をすると先ほど言いましたけれども、どんな事態が起こるかわからない、そして攻撃をされた国が我々と本当に密接な関係にある国かどうかもわからないわけでありますから、本当に我々が集団的自衛権を発動したいと思っても発動できない場合が、余地が残っているということだと思うんですけれども、違いますか。

中谷国務大臣 あくまでも憲法から自衛の措置としての武力行使の新三要件をつくったわけでございますので、当然、憲法の範囲内で対応するということでございます。

 また同時に、重要影響事態も法律で規定をいたしておりますので、こういった法律を適用いたしまして、憲法の範囲内で対応していくということでございます。

初鹿委員 今、重要影響事態もあると言いましたけれども、存立危機事態と重要影響事態だと、やれる活動が変わりますよね。変わりますよね。存立危機事態でやらなければならないような事態なのに、それを重要影響事態だけで乗り切ろう、今そういう答弁に聞こえたんですけれども、そういう答えでよろしいんでしょうか。

中谷国務大臣 例えばということでございますが、いずれにしましても、新三要件に合致しない限り、存立事態の認定を行うことはできません。あらゆる事態を想定しまして、政府として対応するということでございます。

初鹿委員 今、かなりここは穴があいているということがはっきりわかったと思いますが、この穴があいたままで本当に大丈夫なのかと、私は今答弁を聞いていて非常に心配になりました。

 密接な関係にある国というのが、では日本の国とどういう関係にある国かというのを、岸田大臣は先ほど、明確に今は決められないという答弁をされていましたよね。先ほどホルムズ海峡の例のときに、ではそこを通る船はどうなのかというようなお話がありましたけれども、なかなか通るだけじゃ決められないというお話もありましたよね。

 このように、相手が誰になるのかもわからない状態でこの法律というのは決められていくわけですよ。私は、非常にここが不安でなりません。

 ですから、時の政府の判断によって、また事象が起こったことによって、どこの国でも密接な関係の国として選べるということになるわけでありますから、ここは一線をやはり引いておいた方がいいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、先ほど来の議論を聞いておりまして、我が国が武力行使を認められるのは、自国の国民の命や暮らしを守る必要最小限のものであるとして、憲法との関係において、新三要件に該当するものだけと整理をしています。

 そして、当然のことながら、国際法を遵守しなければなりません。国際法上求められている要件、武力攻撃を受けた国からの要請、同意、これがなければなりません。

 我が国は、国民の命や暮らしを守るために必要最小限の武力行使を考える際にあっても、憲法との関係において、また国際法との関係において、しっかりと限定した形で、ここまではやっていこうということで説明をしています。

 そして、その上でさらに、先ほど防衛大臣から説明がありましたように、外交努力もあれば、それから重要事態での対応など、さまざまな方策を講じて切れ目のない対応を考えていく、これが我が国の対応であります。

 密接な関係にある国につきましても、先ほど来説明しておりますように、新三要件の関係そして国際法の関係、これを厳密に我が国は守った上で厳密に適用し、そして我が国の対応を考えていかなければならない課題だと思っています。

初鹿委員 では、ちょっと話題をかえて、今度は密接な関係にある国に移ります。

 先ほど後藤議員の質問で、北朝鮮は明確に入らないと答弁されましたが、それ以外の国は排除しないということでしたが、それでよろしいんでしょうか。

岸田国務大臣 先ほど答弁させていただきましたように、北朝鮮以外の国につきましては、日米同盟の現状等を考える際に、米国は密接な関係にある他国に入る可能性は高いと御説明をさせていただきました。それ以外につきましては、極めて限定的ではありますが、個別具体的に判断していくことになると考えております。

初鹿委員 国交があるかないかというのは判断材料になり得るんでしょうか。

岸田国務大臣 国際法上、自衛権を行使するのは国でありますので、密接な関係にある国というのは国家であります。その国家につきましては、従来、未承認国あるいは分裂国、こういった国も入るという説明をしていたと承知をしております。その範囲内で密接な関係にある他国を考えていくことになると考えます。

初鹿委員 未承認国や分裂国も入る。

 では、具体的に聞きますが、台湾は入るということですか。

岸田国務大臣 密接な関係にある他国につきましては、今申し上げましたように、自衛権を行使するのは国でありますので、国家が該当し、そして未承認国あるいは分裂国家も入る、このように説明をしております。

 そして、その上で、台湾について御質問をいただきました。台湾につきましては、我が国として説明する際に慎重を要するということ、これは外交についてお考えを持つ委員であるならば十分御案内のことかと思います。

 我が国は、サンフランシスコ平和条約第二条によって、台湾に対する全ての権利、権原及び請求権を放棄していますので、台湾の法的地位に関して独自の認定を行う立場にない、このように我が国としましては説明をさせていただいております。

 台湾につきましては、以上でございます。

初鹿委員 質疑時間がもう終わりになったんですが、最後に一つだけ聞きます。

 では、仮に北朝鮮で内乱が起こって二つに分裂をしたとします。片方の勢力から我が国に対して応援をしてくれと要請があった場合は、この場合は密接な関係にある国ということに当てはまるんでしょうか、当てはまらないんでしょうか。

岸田国務大臣 密接な関係にある他国につきましては、先ほど来説明させていただいておりますように、外部からの武力攻撃に対しまして、共通の危険として対処しようとする共通の関心を持ち、我が国と共同して対処しようとする意思を表明する国としております。

 今、北朝鮮が分裂した場合とおっしゃいました。仮定の話、さらには具体的な状況が全くわからない中で、これを当てはめることは難しいと考えます。あくまでも個別具体的な状況に即して判断していくことになると考えます。

初鹿委員 今の答弁だと当てはまる可能性も否定はしていないというふうに私は理解しましたが、質問時間が来ましたので、これで終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

浜田委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 維新の党の丸山穂高でございます。

 私からも、党を代表しまして、本法案につきまして質疑させていただきます。

 私からは、質疑を進める中で我が党の考え方と閣法の違いというのが徐々にですけれども明らかになってきた、例えば三要件については、我が党としては、もっとこれは厳しく見ていかなければいけない、特にホルムズ海峡というのはおかしいんじゃないか、例えば領域警備法みたいな部分に穴があるんじゃないかといった意味で、いろいろな違いが見えてきたところなんですけれども、その中の一つとして武力行使の一体化の議論の部分、特に名古屋高裁判決が平成二十年に出ておりますので、そのあたりとの関連でお伺いをしていきたいと思います。

 大臣のお答えをお聞きするときもありますし、むしろ正確性や数字をお聞きするときに政府参考人等にお伺いすることもあると思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 まず、私、今回、この委員会では二度目、立たせていただいて、ただ、ずっと見させていただいたりお聞きしていて、一つ、まだわからない部分が、今回の法案で、現に戦闘を行っている現場ではやらないというのが明記されています。そして、今までは、戦闘地域ではやらない、非戦闘地域でやっていくというのがありました。逆に、この違いの部分を何度かこの委員会でもお聞きされているんですけれども、なかなか明確な答弁が出てきていないように思います。

 大臣の答弁を確認しますと、この二つ、安全性においては相違はないというお言葉はあるんですけれども、でも、この現場や地域という言葉は地理的な要件、言葉でございます。地理的な要件であるにもかかわらず、安全性においての相違はないというお答えはあるんですけれども、これまでと地域的に違うのかどうか、それが広がるのか狭まるのかという観点を含めて、明確にこの辺は御答弁がないんです。

 少しややこしいのでもう一度質問を整理しますと、今、我が国が後方支援をできない地域というのが、戦闘地域ではできません。一方で、今回の法案では現に戦闘行為を行っている現場ではできないということになっていると思いますけれども、これはこれまでよりも地理的範囲として広がっているのか狭まっているのか、この点をお答えいただきたいと思うんです。

横畠政府特別補佐人 これまでのいわゆる非戦闘地域でのみ後方支援を行うという考え方でございますけれども、まさにその活動を行う期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域ということで、相当程度の将来予測が入っておりまして、かつ、その運用といたしまして、派遣の期間を通じてそういう戦闘行為が行われないということが見込まれるというような運用がなされていたと聞いております。

 今回やろうとしていることは、派遣の期間全体ではなくて、個々の活動ごとにいわば実施区域というものを定める、そういう仕組みに変えて柔軟性を持たせようということだと聞いております。

 その意味で、実際の部隊あるいは要員が支援に出向くというときにおいてどんなところに行くかということにつきましては、まさに戦闘行為が行われることがない、そういうところにしか行かないということで、同じでございます。

丸山委員 済みません、今、最後、同じだという言葉がありましたけれども、今までの戦闘地域の中でも、これからは行けるようになるんじゃないんですか。逆に言えば、これまでの非戦闘地域の中でも行けないところが出てくるんじゃないですか。それとも、さっき最後、同じとおっしゃいましたけれども、同じなのかどうか。もう一度明快に、短目に御答弁いただけますか。

横畠政府特別補佐人 ちょっと中間省略で結論を述べてしまったのでわかりにくかったかもしれませんけれども、従前はその要件を全て法律に書き切っていたわけでございます。今回は、一体化しない、一体化を回避するための要件としては、簡単に言うと戦闘現場では行わないというルールを明定しました。

 その上で、どこに行くかというような実施区域というものは従前と同じように防衛大臣が指定するということになっておりまして、その指定の際に円滑かつ安全に活動ができるというところで定めなさいとこれまた法律に明定してございますので、別の言い方をすれば、まさにそこで戦闘行為が行われている、あるいは行われるんだということが予測されるような、あるいは、逆に言えば、戦闘行為が行われないんだということが確認できないのであれば、行っても実際に後方支援はできません。また、安全も確保できません。

 ですから、実施区域の指定というところにおきまして、円滑かつ安全に業務が行われるという縛りがかかっておりますので、実質、行くときにおいて、安全である、あるいは武力行使が行われないということは担保されておりますので、その意味で同じだということをお答えしたわけです。

丸山委員 聞きたいのはもっと単純で、これまで行けたところで行けなくなるところがあるのか。逆に言えば、これまで行けなかったところで行けるようになるのか。広がるのか狭まるのかというお話を聞いているんです。地理的概念の話です。

横畠政府特別補佐人 失礼しました。それは、先ほど柔軟性を確保するという点でお答えしたとおりでございまして、これまでの要件であるならば、派遣の期間を通じて全部戦闘行為が行われないというふうに認められる場合、そのエリアしか活動しない。その場合には、一週間は絶対大丈夫だという想定にかかわらず、とにかく全部が派遣期間を通じて戦闘行為が行われないということが要件として運用されていた。

 今回は、実際の活動、個々の活動の期間を通じてということになるわけですけれども、その間戦闘行為が行われない、そういう要件にするということでございます。

丸山委員 何度お聞きしなきゃいけないのか。きちんとお答えいただきたい。大事なところだと思います。

 これまで行けなかったところにも行けるようになるということでいいんですね。お答えください。はいかいいえで答えられる範囲だと思います。

横畠政府特別補佐人 つまり、派遣の期間が例えば一年だとします。そして、六カ月の間は戦闘行為が行われないということが認められるとしても、一年間は保証できないというときには行けなかったわけです。それに対して、活動の期間が六カ月なら、六カ月間戦闘行為が行われない、安全だということであるならば、そこには行けるということでございます。

丸山委員 行けるということですね。広がるのかどうかというのをお答えいただきたいんです。

横畠政府特別補佐人 柔軟に行けるようになるということでございます。

丸山委員 本当に答えていただけないなというのを感じます。

 聞いていることは単純で、広がるかどうかという話を聞いているのであって、これまで行けなかったところに行けるかどうかを聞いているんですけれども。防衛大臣、お願いします。端的にお願いします。

中谷国務大臣 端的に。

 一概に言えないということでありますが、今まで非戦闘地域という概念で、今回、現に戦闘行為が行われている現場で実施しないということで、共通しているところは現に戦闘行為が行われていないというところですが、非戦闘地域は、それに加えて、活動の期間を通じて戦闘行為が行われないと認められるという必要があります。そこは柔軟にいたしておりますが、具体的にどういう活動を行うかについては、それぞれの状況によって定めるわけで、個別具体的に決まるわけでありますので、単純に活動範囲が広がるかどうか、狭まるかについては、一概にお答えすることは困難でございます。

 そこで、安全性が一緒という理由は、防衛大臣は、この活動の実施に当たって、円滑かつ安全に実施をすると……(発言する者あり)聞いてください。安全に円滑に実施するということは法律に書いておりまして、それに基づいて、この活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる地域、これを実施区域に指定するわけでありますので、従来と安全面は変わらないということでございます。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 憲法上は、現に戦闘地域でない場所ということで、戦闘地域は行けません。ただ、憲法上は、戦闘地域以外なら行けます。今までは非戦闘地域ということで、その期間は行われていないというところがありますので、そこは違うんですけれども、しかし、法律で円滑かつ安全にという項目をかけておりますので、安全上は、その期間を通じて戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を区域に指定するということでございます。

丸山委員 全然答えていないんですよ。これは最初の最初に必要な答弁だと思うんですけれども、これまで行けないところに行くから今回法改正をして、そして文言も変えているわけでしょう。だから、これは行けますで終わりだと思うんですけれども、それさえ言わないのは本当に不誠実だと思うんです。もう一回お答えください。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 お答えします。

 これまで行けなかったところが、現に戦闘地域でなければ行けますが、非戦闘地域以外のところであり、安全が確保できれば行けるということです。

 言いかえますと、今まで行けるところは、現に戦闘地域では行けませんが、非戦闘地域の外で、戦闘地域以外なら行けるということでございます。

丸山委員 つまり、今までの非戦闘地域じゃないところでも、戦闘地域のところでも、現に戦闘を行っている現場でなければ行ける、広がるということでいいんですね。はいかいいえで、最後、答えてください。

中谷国務大臣 はい、憲法上はそのとおりでございます。

丸山委員 ようやく聞きたい答えが。でも、これは、私の想定では最初の最初にお聞きしたいお話がこんなにかかってしまっているというのは、本当に残念でなりません。何も揚げ足取りをしたいんじゃなくて、最初に確認すべき本当に単純な部分なのにこのお答えしか出てこないというところがやはり国民の皆さんの理解が深まらないというところに通じているんじゃないかと思いますので、明快な御答弁をいただけるように、本当に重ねてお願い申し上げます。

 次にお伺いしたいんですけれども、イラク特措法で行われたいろいろな任務があると思います。例えば、C130H、いわゆるハーキュリーズを四機か三機か向こうに送って輸送任務をされていると思います。このイラク特措法で行われた任務は、本法案でも全て行えるということでいいんでしょうか。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の国際平和支援法におきましては、いわゆる協力支援活動として行う物品、役務の提供の一つとして、輸送というものが規定されております。

 したがいまして、仮に我が国がイラク特措法に基づき多国籍軍に対して輸送任務、ただ、イラク特措法の場合は人道復興支援活動及び安全確保支援活動、二つございましたが、先ほど言いましたように、国際平和支援法におきましてはいわゆる後方支援でございますので、イラク特措法に言う安全確保支援活動ということに該当すると思いますが、この輸送任務を実施していたときと全く同じ状況が生起する場合には、国際平和支援法に基づき対応することが可能ということでございます。

丸山委員 もう少し具体的にお伺いしたいんですけれども、先ほど最初に申し上げた名古屋高裁判決で、種々、イラクで行われた活動についての言及があります。

 具体的には、平成十八年七月から平成十九年三月まで、輸送回数が百五十回、輸送物資の総量は四十六・五トンあり、そのうち国連関連の輸送支援として、輸送回数が二十五回で、延べ七百六人の人員及び二・三トンの事務所維持関連用品等の物資を、クウェートのアリ・アルサレム空港からバグダッド空港にC130Hで輸送したというのを、安倍総理の答弁で、平成十九年に答えられている。

 ただ、一方で、先ほど申し上げたように、百五十回中二十五回は国連の輸送支援ですけれども、残りの百二十五回についての言及は、総理も含めて政府は、これは多国籍軍や国連からの要請によって明らかにすることができないと言っています。しかし、この判決では、そういう要請があって、それ以外の大多数は武装した多国籍軍、主にアメリカ軍の兵員であると認められるという形で兵員の輸送をやっているという判決が出ているんですけれども、これは、基本的に、先ほどお話のあったように、イラク特措法で行えたもの、今回の法案でもできるものだと思います。

 一方で、問題はここからなんです、先ほどの、本当に大事な地域性の問題です。

 先ほど政府から明快な御答弁をいただくのにすごく時間がかかってしまった地域性のお話で、イラクのバグダッドについて、この場所について、政府は、イラク特措法に基づいて送っているので、つまりは非戦闘地域だとおっしゃって送っているわけですね。

 でも、一方で、この判決文を見ても、種々の新聞報道等を見ても、この時期のイラクのバグダッドがどうだったか。

 平成十七年五月二十九日から、アメリカ軍約一万人、イラク軍四万人を動員して大規模な掃討作戦が行われて、バグダッドに集中して掃討作戦を行っている。イラク治安部隊と共同で行った過去四十五日間、平成十九年一月二十二日までの掃討作戦で、シーア派民兵に対して五十二回、スンニ派の民兵に対して四十二回の掃討作戦を実施した。バグダッドですよ。そして、イラク戦争以来、過去最大の作戦を、同年の二月十四日に九万人投入して、法の執行作戦と名づけられた掃討作戦をやっているわけですよ。これは、現実、報道もされているし、やっているんですね。

 その地域に、そのすぐそばですよ、中心部からバグダッド空港は十五キロぐらいしかないです、東京では、東京の中心部から羽田空港より近いですね、その距離にある空港に他国の兵員を輸送していることに関してこの判決は、ここの部分に関して違憲だという判決を名古屋高裁が出しているわけですね。

 この点、確かに政府の過去の答弁、質問主意書への回答を見ていますと、付随する部分で、メーンの部分ではないからという御答弁があります。でも、現実面、高裁で司法の判断としてこういう部分が出てきている中で、これについて政府としてどう考えているのか。

 まず、二つお伺いしたい。一つは、このときのイラクが、国際的な武力紛争が行われている地域ではなかったのかどうか。つまり、非戦闘地域だと言い切るのかどうかというのが一つ。そして、この判決についてどう思われるか。簡潔にお答えいただきたい、いつも長くてこれで終わってしまうので、政府参考人。

深山政府参考人 まず、当時の解釈について申し上げますと、活動を行います際にイラク全土について戦闘地域か非戦闘地域かという区分けは必ずしも行っておりませんが、当時我々が活動しておりましたバグダッド空港につきましては戦闘が行われている区域ではないということで活動を行っていたということでございまして、当時の政府は、バグダッド空港についてはそのような判断をしておったということでございます。

丸山委員 これは政府答弁です。参議院外交防衛委員会で、バグダッド空港の中であっても、外からロケット砲等が撃たれる、迫撃砲等に狙われるということもあって、そういう緊張感の中で仕事をしている、そういうふうな形で答弁されているじゃないですか。クウェートから飛び立ってバグダッド空港でおりる、バグダッド空港から飛び立つときもロケット砲が来る危険性と裏腹にあると答弁されているわけですよ。

 だから、何を申し上げたいかというと、政府の地域性の判断が、現に戦闘行為を行っている現場かどうか。これまでであれば、戦闘地域であるかどうか、この判断が非常に重要で、この判断が、政府が言うことと国民の皆さんが思っていること、そして憲法上の、最後は最高裁判所の違憲立法審査ですけれども、それが一致していなければ、これは違憲にもなりかねないし、国民の皆さんからしたら見えないし、政府からいったらいつまでも隠さなきゃいけない、そういうものにもなりかねないということなんです。

 そういった意味で、最初の御答弁からしても、まだまだこの部分、私は本当に政府の方で不誠実な答弁が続いていると思いますので、時間がなくなってきましたが、これは引き続きお伺いしていきたいと思います。

 最後、これだけお伺いしておきたいと思います。

 この間、今回、兵員だけじゃなくて、弾薬の提供と、戦闘行為のための発進準備中の航空機に対する給油、整備ができるという御答弁がありました。武器は憲法上は可能だけれども、ニーズがないので今回は除いているという御答弁もありました。明快だと思います。

 一方で、最後、武力行使を直接支援するための偵察活動だとか情報の提供。情報の提供は大きいと思うんですけれども、攻撃指示などとか、あとは軍事作戦上の指揮命令の範疇にある情報提供については、これはできないというのでよいんでしょうか。その他、情報提供は、今申し上げた分はできないけれども、ほかはできるというのでよろしいんでしょうか。お答えいただけますでしょうか。

中谷国務大臣 一般的な情報提供の一環としての情報提供は、一般論としては実力の行使に当たらないということで、憲法九条との関係では問題がありません。

 しかし、情報収集につきまして、従来から、例えば特定の国の武力の行使を直接支援するために偵察活動を伴うような情報収集を行い、これを提供する場合のように、情報の提供に特定の行動が伴う場合には、例外的に他国の武力の行使と一体となると判断される可能性があると考えております。

 ここで言う特定の行動とは、従来から、我が国が、ある国から特定の戦闘行為の実行を直接支援するために特定の情報を特に戦術的にとってほしいと頼まれ、そのために情報収集活動を行うようなことを指すと解しております。また、ある目標に南緯何度何分、角度何度で撃てというような行為は、情報提供にとどまらない軍事作戦上の指揮命令の範疇に入るものでありまして、憲法上問題を生じる可能性がありまして、このような活動を行うことはございません。

 以上です。

丸山委員 大事な答弁だと思います。

 いずれにしましても、時間が来ました。維新の党は何が何でも反対だというわけではないんですけれども、しかしながら、きちんと御答弁いただけないものに対してはおかしいと申し上げますし、そして、余りにも御答弁いただけないのであれば、それは我々としても受け入れられないというふうにしっかり申し上げていきますので、今後ともしっかりとした御答弁をいただけますようお願い申し上げまして、私の質疑を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 政府が六月九日に提出した見解について質問をします。

 見解の内容は、これまでの政府の説明を繰り返したものにすぎません。いろいろ書いていますが、憲法解釈変更の根拠として挙げているのは、結局のところ、安全保障環境の根本的な変容という抽象的な言葉だけであります。午前中からの議論でも、変化の中身についていろいろと議論がありましたが、具体的な説明はありませんでした。

 そこで、政府が集団的自衛権行使の具体的な事例として挙げている、ホルムズ海峡における機雷掃海の問題で聞きます。

 まず、この議論自体は今に始まったものではありません。イラン革命以降、イラン政府がホルムズ海峡の封鎖に言及したことは数え切れないほどあります。しかし、実際に封鎖したことはありません。イラン自身の石油輸出に致命的な打撃を与え、みずからの首を絞めることになるからです。

 中谷大臣に伺いますが、ホルムズ海峡の問題をめぐって具体的にどのような変化があったんですか。

中谷国務大臣 一九七〇年代の半ばに日量約五百万バレル弱あった原油の輸入量は、オイルショックを契機とした石油代替政策また省エネルギー政策の推進によりまして、一九八〇年代の半ばには日量約三百二十万バレルまで減少しました。その後、一九八〇年代後半には原油価格の下落に伴って原油輸入量は増加に転じましたが、一九九〇年代の半ば以降は石油の代替エネルギーの利用進展などによりまして減少基調で推移いたしました。

 二〇一〇年代には日量約三百六十万バレルとなっておりまして、石油需要は近年減少傾向にありますが、今後もその傾向は続くと考えておりますが、非常に我が国にとりましては中東に対する原油の依存度は高いままで来ているということでございます。

赤嶺委員 いや、私が聞いたのは原油の話じゃなくて、ホルムズ海峡をめぐって、イランは機雷の封鎖ということは今まで何度も言ってきたけれどもそれを実行に移さなかった、なぜならイランにとっても自分の首を絞めることになるからだと。安全保障の環境の変化と言うのなら、何があったのか、どんな安全保障上の環境の根本的な変容があの海峡であったのかということを聞いているんです。

中谷国務大臣 現在も、中東情勢というのは混沌といたしている現実がございます。

 冷戦のときは、アメリカとソ連という超大国の力のバランスによって、いろいろな地域紛争、宗教紛争、民族紛争、こういうことは如実に出なかったわけでありますが、冷戦が崩壊した途端に湾岸危機が発生をいたしました。また、グローバルなパワーバランスも変化してきておりますし、弾道ミサイルの配備、中国の台頭、そしてアルジェリア、シリア、チュニジアにおきまして邦人が犠牲となった国際テロの脅威などが挙げられるし、海洋、宇宙、サイバー空間に対する自由なアクセスなどいろいろなリスクというものが深刻化しているということで、こういった国際情勢が変化をしてきているということでございます。

 現に湾岸戦争が発生したときは、イランはクウェート、イラクに対して機雷をまいたという事実もございます。

赤嶺委員 私がホルムズ海峡の安全保障環境をめぐる根本的な変容は何かと聞いたら、宇宙、サイバーの話まで飛び出してくるものですから。私が聞いているのは、ホルムズ海峡に機雷が設置されて、日本が集団的自衛権を行使して機雷の掃海に至るような根本的な変容。まさにあの海峡にとって。中東の話でもないんです。やはりイランをめぐる国際社会の話だと思うんですよね。

 今、イランの情勢認識について言いますと、ISILをめぐってアメリカとイランの関係は接近している、このように言われていますが、これはいかがですか。

岸田国務大臣 イランとアメリカの関係について御質問をいただきました。

 イランとアメリカの関係を考えますときに、今最大の懸案事項として核問題が存在いたします。イランの核問題については、EU3プラス3、要するに米国、英国、フランス、ドイツ、そしてロシア、中国、この六カ国とイランとの間において協議が行われ、今現在、六月末、今月末を目指して最終合意に向けて交渉が行われている、このように承知をしております。国際的な不拡散体制強化の観点から、あるいは中東の安定という観点から、最終合意の形成と完全履行が重要であると認識をしています。こうした協議が米国を初めとする関係国とイランの間において進められております。

 我が国としましても、こうした交渉の進展をしっかり後押ししなければならないということで、我が国はもともと、イランとは伝統的な友好関係を持っています。私自身もイランのザリーフ外相と四度会談しておりますし、私自身もイランを訪問しております。こうした伝統的な友好関係を生かしながら、今御紹介させていただきました国際的な交渉をしっかり後押しするべく役割を果たしていく、これが我が国の立場であります。

赤嶺委員 まさにイランと日本の関係についても述べましたが、国際社会が懸念していたイランの核問題についても今前向きの方向で取り組みが進んでいる、日本も役割を果たしたいということでありますが。核開発の問題をめぐっても前向きの動きが進んでいる。ISILの台頭によってアメリカとイランとの関係も近づいてきている。

 中谷大臣に伺いますが、むしろホルムズ海峡の問題というのは今前向きの変化が生まれているということではありませんか。もともとホルムズ海峡の封鎖はほとんど考えられない上、核開発の問題も解決に向けた動き、そういう状態があるにもかかわらず、何で集団的自衛権の行使という話になるのか。ホルムズ海峡の問題をめぐる根本的な変容とは何なのか。これは何だという挙証責任は皆さんにありますから、具体的に示していただけますか。

中谷国務大臣 ペルシャ湾におきましては、二度、機雷の敷設がございます。一つはイラン・イラク戦争、このときはイランがまきました。二度目は湾岸紛争のときにイラクがまきました。それから、二度のオイルショックが起こっているんですね。このときは非常に日本の経済も大混乱になりました。

 これは経済的な話でございますが、ある海運会社の経営者の方に聞きますと、ホルムズ海峡というのは本当に日本にとって大事なところでありまして、ここで船舶が通らないということは、本当に日本は大変な事態になるよというお話がございました。したがいまして、このホルムズ海峡というのは日本のエネルギー安全保障上ずっと潜在的な危険性があるということで、非常に日本にとりましては大事な地域であるということでございます。

赤嶺委員 潜在的な危険ということで現に今私たちに事例を出して、安全保障環境が根本的に変わった、そういう証明をできる話はないわけですね。

 昔、イランがあのホルムズ海峡で対応しました、イラクが対応しました。しかし、現に今、アメリカとイランとの関係、イランと日本との関係は前向きな方向であります。イラクが以前のようにあの海峡に機雷を設置するというような情勢は考えられません。

 ただ、根本的な変容というわけですから、あれから根本的に変わったわけですよね。何が変わったんですか。どんな危険が今あるんですか。

中谷国務大臣 外交というのは良好であってほしいと思いますし、そのような努力を全力で挙げるものでございますが、現実にはシリアにしてもイラク国内にしても非常に混沌な状況が続いておりまして、この先どういう状況が生じるのか、それはわからない状況でございます。しかし、日本の国民にとりまして、生活の安全、暮らしを守る、そして国の存立を維持する、こういうことにつきましては、やはりいざというときにしっかりとこれを確保するための手段というものは持っておかなければなりません。

 ですから、そのときのために法律はしっかり制定しておいて、国の存亡にかかわるような事態におきましてはこういった機雷を除去できるようなことも必要になるため、その根拠というものはしっかりとつくっておかなければならないということでございます。

赤嶺委員 私が聞いていることに大臣は答えておりません。私が聞いているのは、ホルムズ海峡に機雷が設置されるほどの安全保障環境をめぐる根本的な変容とは何か、これを聞いているんですよ。イラクがどうだとか、そんなことは聞いていないんです。

 まさにホルムズ海峡の問題で安全保障環境が根本的に変わった、だから憲法解釈の変更が許される、こう言っているわけですよ。それほどの根本的な変容とは何なのか、ホルムズ海峡の問題をめぐって何が根本的に変わったのか、これをきちんと説明してくださいということなんですよ。

 ほかの話ばかりやって、ホルムズ海峡で何が変わったかということは言わないで、憲法の解釈を変えるほど大きな出来事が起こっておりますと言っても、これは説明にならぬですよ。もう一回きちんと説明してください。

中谷国務大臣 冷戦後の四半世紀、二十五年を見ましても、やはり明らかに世界的なパワーバランスの変化というものがございます。

 当時は米ソの冷戦によって強大な軍事力が均衡していろいろな紛争がとめられてはいたわけですが、冷戦が崩壊した途端に湾岸戦争が始まったり、またその後いろいろな民族問題、宗教問題が発生してきておりますので、大きな変化といえば、私は、パワーバランスが変わってしまったということが挙げられるのではないかと思います。

赤嶺委員 答えていないことは非常にはっきりしていると思うんですね。ホルムズ海峡の根本的な安全保障環境の変容は何だと。

 環境の変容によって憲法解釈を変えたんだというわけですから、ホルムズ海峡について答えなきゃいけないですよ。パワーバランスの変化なんて聞いていないですよ。ちゃんと答えてください。委員長、お願いします。

中谷国務大臣 ホルムズは事例の一つでございますが、グローバルなこのパワーバランスの……(発言する者あり)聞いてください。変化や大量破壊兵器などの脅威等によって我が国を取り巻く安全保障環境は根本的に変容し続けておりますけれども、もはや、脅威が世界じゅうのどの地域において発生しても、我が国の安全保障に直接的な影響を及ぼす状況になってきております。ホルムズ海峡を擁する中東地域におきましても、ISILの勢力の拡大、大量破壊兵器の拡散懸念、イエメン情勢の混乱など、近年、安全保障環境はますます厳しさを増してきております。

 このような中東地域の安全保障環境の変化が直ちにホルムズ海峡の航行に悪影響を及ぼす危険があるというわけではございませんが、仮に、我が国が輸入する原油の約八割、天然ガスの約三割が通過する、エネルギーの安全保障の観点から極めて重要な輸送経路でありますホルムズ海峡に機雷が設置された場合には、我が国に深刻なエネルギー危機が発生するおそれがあります。

 我が国には石油備蓄は約六カ月ありますけれども、機雷が除去されなければ危険がなくなりません。ずっと機雷が設置されたままで、中東から石油が入ってこなくなるんです。ですから、六カ月備蓄はありますけれども……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に。

中谷国務大臣 こういったものに対してきちんと対応していく必要がございます。こういう中で、ホルムズに機雷が設置されたことあるいはエネルギー源の供給が途絶されたことのみをもって新三要件に該当するわけではありませんが、新三要件を満たす場合にはホルムズ海峡において武力行使に該当する機雷の掃海を行うことが可能になってくるということでございます。

 では、どういう事態が存立事態かというと、るる御説明しているように、国民生活に死活的な影響、すなわち国民の生活にかかわるような深刻、重大な影響が生じるか否かを総合的に評価して判断をするわけでございます。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 ホルムズ海峡でそのような危機が発生するかというような御質問でございますが、ホルムズ海峡を擁する中東地域におきましても、ISILの勢力の拡大、大量破壊兵器の拡散懸念、イエメン情勢の混乱など、近年、安全保障環境はますます厳しさを増しております。現に、核、ミサイル、テロ、こういった問題もございます。

 こういったことでございますので、我々といたしましては、直ちにホルムズ海峡の航行に悪影響を及ぼす危険性があるというわけではございませんが、将来こういったことに端を発してホルムズ海峡に機雷がまかれるというようなことも想定する必要があるのではないかということでございます。

赤嶺委員 直ちにホルムズ海峡に機雷が設置されるような情勢にはならないがというようなお話であれば、情勢の根本的な変容によって憲法の解釈まで変える、その場合に、集団的自衛権は限定的だからホルムズ海峡の機雷の掃海だけだ、これは日本国民の命と安全にかかわっているからだというのが全部うその説明になるじゃないですか。

 ホルムズ海峡にかかわって直ちに機雷の掃海の危険はないというわけですから、これは全然納得できません。もう一回ちゃんと説明してください。

中谷国務大臣 ホルムズ海峡というのは、あくまでも海外派兵の例外でございます。やはり国の安全保障というのはあらゆる事態に備えて対応をしておくということでございまして、そういった事態に際して我が国としてとり得ることが可能であるような条項をつくっていくということが、国の安全保障につながるということでございます。

赤嶺委員 全然答弁になっておりません。

 ISILの危機も持ち出しましたが、もちろんISILの活動は絶対に許せるものではありません。しかし、ISILの台頭で、今まで懸案であったアメリカとイランの関係というのは、むしろこの問題をめぐって共通の利益を共有するようになって近づきつつある。核問題でも先ほど外務大臣がおっしゃったように国際情勢の前向きな変化が起こっていることはわかるんですが、憲法の解釈まで変えなきゃいけない根本的な変容というのは起こっていないということを強く申し上げたいと思います。

 外務省のイラン大使だった駒野欽一さんという方がこう述べています。

 イランが、機雷によるホルムズ海峡封鎖というラストカードをみずから切ることはほぼないだろう。この海峡はイランにとっても重要な生命線だからだ。

 石油の大半はホルムズ海峡経由で輸出される。イランは海峡を封鎖すれば自分の首を絞めて経済的に破滅することを深く認識している。

 イランがペルシャ湾に機雷を敷設するといった想定がひとり歩きして、あたかもそういう事態があり得るとの前提で議論が進んでいるように見える。ペルシャ湾の現実はもっと複雑だ。

 昨年誕生したロハニ政権は融和的な政策を打ち出し、制裁強化をきっかけに核開発問題の交渉にも弾みがついた。時間はかかるが、日本は国際社会とともにじっくりと地域の安定に取り組むべきだ。こう述べております。

 きょうの答弁にもありましたが、中谷大臣が繰り返し、このような安全保障の環境の変化、これが直ちにホルムズ海峡の航行に悪影響を及ぼす危険があるというわけではないと述べてきました。結局、憲法解釈の変更というのは現実の国際政治の動きと無関係に行われた、そういうことではありませんか。

中谷国務大臣 今、現実の国際政治というお話がありましたが、私が一番強烈に印象に残ったのはやはり一九九〇年の湾岸紛争でありまして、私は現にクウェートへ行きました、イラクとの国境まで行きました。あの石油の油井に火をつけた、また戦車が残骸としていっぱい残っている、これが冷戦の終わった、世界に平和が来ると期待した時代に現実に起こったことでございます。

 確かに外交においてこういったことが起こらないように努力すべきでありますが、安全保障というのは万が一そういうことが起こった場合に国民生活をどう守っていくかということでありまして、現実に、二度にわたってオイルショックというものがありました。そして、二度にわたってペルシャ湾に機雷がまかれた、こういう事実もございます。

 もちろんこういうことは起こさないように国際社会で努力をいたしますが、現実にこういう事態が起こった場合に、では日本のエネルギー源である石油が入ってこなくなったらどうなるのかというようなことも考えた措置、対応ということも、私は国家の安全保障の一つだと思っております。

赤嶺委員 憲法解釈を変える話をしているときに、憲法解釈の変更の根拠に国際情勢の根本的な変容というときに、あの海域で、ホルムズ海峡で今、平和の流れが、動きが、国際社会の努力が始まっているときに、現に直ちにホルムズ海峡に機雷敷設の危険はないと言いながら、しかしそれを根拠に憲法の解釈を変えて集団的自衛権を行使できるようにする、これは私は全く説明になっていない、このように思います。万々が一という、そんな発想で憲法解釈なんかを変えるべきではないということを強く申し上げたいと思います。

 それで、いつも持ち出される議論ですが、政府はこの問題をめぐって、原油の八割、天然ガスの三割が通過する極めて重要な輸送経路だと強調しているわけですね。

 資料を見ていただきたいと思います。一九七〇年代の二度の石油ショックを受けて、エネルギーの中東依存度を下げる方向で政府は対応しました。一九六七年には九一・二%だった依存度は、一九八七年には六七・九%にまで下がりました。ところが、その後再び上昇し、二〇一二年には八三・二%になっています。

 中東依存度が再び上昇することになったのはなぜですか。その間、政府はどういう対策をとったんですか。

中谷国務大臣 お話しのように、一九七〇年代前半に約八割強だった中東の原油の依存度が、中国そしてインドネシアからの原油の輸入の増加など、輸入先国の多様化によって一九八〇年代後半には約七割まで低下したということでありますが、その後これらのアジアの産油国内の石油需要が増加いたしまして輸出が減少したために、結果として再び中東の依存度が上昇したということでございます。

赤嶺委員 今のお話を聞いていても、結局、新興国からの輸入が難しくなった、そしてコストの低い中東産原油に回帰したと。

 私は、そういうことであれば、幾らでも対処の仕方があると思います。現在の政府のエネルギー政策を前提にしたとしても、調達先の多角化を進めたり、海峡を迂回するパイプラインを建設したりすればいいことであります。しかも、今、シェール革命だとか、そういうことも言われているわけです。日本全体のエネルギー需要も今後は縮小していくことは経産省の資料でも明らかです。

 なぜこれほどホルムズ海峡の問題に議論を集約させようとするのか。政府のエネルギー政策をめぐっては私たちもいろいろと意見はありますが、要するにこれは経済政策、産業政策の問題であって、集団的自衛権の問題ではありません。石油の確保の面からいっても立法事実はないということを強く申し上げておきたい、このように思います。

 よくわからないのは、何で政府がこれほど機雷掃海にこだわるのかということであります。

 四月末に合意された新ガイドラインを見たら、機雷掃海という言葉がガイドラインのあちらこちらに出てまいります。日本に対する武力攻撃が発生した場合、あるいは日本以外の国に対する武力攻撃が発生した場合、グローバルな日米協力などの分野で機雷掃海が明記されております。

 中谷大臣にさらに伺いますが、新ガイドラインにおいて機雷掃海が日米間の軍事協力の項目として各所に位置づけられているのはなぜですか。

    〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕

黒江政府参考人 日米のガイドラインの中で機雷の掃海についての記述が多いということでございますけれども、日本としまして、その種の掃海能力、極めてすぐれた掃海能力を持っておる、これはペルシャ湾における機雷の掃海という湾岸戦争後の活動ということでも実証されておる、そういったことを踏まえた記述であるということでございます。

赤嶺委員 大変すぐれた機雷掃海能力を日本は持っていると。

 私は、海上自衛隊の幹部学校が定期的に発行している海幹校戦略研究という論文集がありますが、ここにアメリカ海軍大学の研究者の論文が翻訳されて掲載されているのを目にいたしました。

 そこでは、確かにおっしゃっていますように、日本の掃海部隊について、近代的かつ有能な対機雷戦部隊を保有している、このように高く評価しています。一方、米軍については、掃海部隊については脆弱、このように指摘しておりまして、その理由として、歴史上、海軍の計画、運用の年間全予算の一%にとどまっていることを挙げております。

 アメリカの機雷掃海能力と日本の機雷掃海能力、なぜアメリカが脆弱と言っているのか。中谷大臣の認識はいかがですか。

黒江政府参考人 ただいま先生御指摘のアメリカの研究者の見方について、我々としてその理由といったものを承知する立場にはございませんけれども、単純に隻数の比較ということを仮にいたしますれば、現在米海軍では、アベンジャー級と言われます掃海艦、これは上空からの機雷の対処であるとか水上、水中といったものそれぞれについてバランスよく運用ができるという艦艇でございますけれども、これを全米海軍合わせまして十一隻保有しておると聞いてございます。

 他方、海上自衛隊につきましては、現在、自衛艦隊に所属しております掃海隊群及び五つの地方隊のもとに、合計で掃海艇等計二十七隻という規模を持っております。

 そういったことで、単純な隻数の比較ということからすると、かなり日本の海上自衛隊の掃海艇の数というのは米軍と比較して多いということは言えるんだと思います。

赤嶺委員 私が読んだその論文というのも、海上自衛隊の幹部学校が定期的に発行している雑誌の論文ですから、まさに今の答弁のとおりだと思うんですよ。

 私はここで疑問が起こるんです。何であれだけの国家予算を軍事費に投入するアメリカで、掃海部隊には予算を振り向けないのだろうか。いろいろ考えていくと、既に同盟国の軍隊が依拠できる掃海部隊を持っているから、それに振り向ける必要がないということではないだろうか、このように考えますが、大臣、いかがですか。

黒江政府参考人 米軍の考え方といったものにつきまして、これを我が方として解釈するというのはなかなか難しいということだと思いますけれども、先ほど先生御指摘になられました日米のガイドライン、新しいガイドラインの中でも、実際にどのような支援業務を行うのかというのはそれぞれの政府が判断するということが明記をされてございます。

 ですので、仮に先生御指摘の論点といいますのが米軍が当然に日本の支援を当て込んでいるという御趣旨であるとすれば、そういうことではなく、それぞれの協力支援というのはあくまでも、我が国でありますれば我が国政府の判断によるものであるということでございます。

赤嶺委員 日米関係で日本がアメリカの軍事要請を主体的に考える、こんなふうな答弁をされたら、さんざん安全保障体制、日米関係を議論してきた我々としては納得できるものではありません。あれだけの軍事費を投入しているわけですよ。でも、掃海部隊には予算を振り向けないから、同盟国を組み込むことをあらかじめ前提にしているとしか考えられません。

 ガイドラインには、自衛隊による機雷掃海が先ほど申し上げたように各所に位置づけられているのであります。何らかの事態が発生して必要が生じた場合には、ガイドラインに沿って、日米の軍事協力の指針に沿って、日本は必ず掃海部隊を派遣することになると思います。

 ならないというお答えが先ほどありました。それでは、過去の事例はどうだったか、見ていきたいと思います。

 自衛隊の海外派兵に風穴をあけたペルシャ湾への掃海艇派遣に関して、アメリカ政府の公文書が公開されてきています。原典を資料としておつけしてお配りしてありますが、これは二〇一二年六月、ジョージ・ワシントン大学の国家安全保障アーカイブが、一九九〇年八月のイラクによるクウェート侵攻を受けて日米両首脳間で行われた電話会談の記録を入手し公開したものであります。

 侵攻から十日ほどたった八月十三日夜、当時のブッシュ米大統領は海部首相に電話をかけ、次のように求めています。

 英国、フランス、オランダ、オーストラリアは海軍部隊を提供することに同意した。スペインとイタリアも同様の対応をとると思う。私がぜひともお願いしたいのは、日本が経済面と軍事面でできる限りの支援を行うことだ。多国籍海軍部隊への直接的な支援を検討してほしい。日本の戦後史における分岐点になることはわかっているが、何とかなるのであれば、日本が西側同盟の完全な一員であることをはっきりと示すことになるだろう。このように述べまして、具体的な協力事例として、機雷掃海やサウジアラビア向けの海上輸送を挙げているわけです。

 イラクによるクウェート侵攻後、アメリカ政府が自衛隊の派遣、とりわけ機雷掃海部隊の派遣を要求した事実があるのではありませんか。

    〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕

岸田国務大臣 まず、御指摘の資料ですが、政府として、米国において公開された米国政府作成文書の中身について、一々コメントすることは控えなければならないと思います。

 そして、このやりとりに該当する電話会談ですが、平成二年八月十四日、海部総理とブッシュ米大統領の電話会談につきまして我が国において公表されています概要を見る限り、大統領より、できるだけの協力をしてほしい、日本の協調姿勢を示してほしいと述べた、このようにあります。

 しかし、いずれにしましても、これは我が国の対応ですので、我が国が主体的に判断して我が国の行動を決定する、これは当然のことでありまして、そうした観点から我が国の対応が決定されたものと承知をしております。

赤嶺委員 私は、我が国も合意してきたガイドラインのあちこちに機雷掃海の話が日米の軍事協力として出てきて、非常に役割分担が明確になっているわけですから、そういえば湾岸戦争のときもブッシュ大統領は海部首相に対して機雷掃海の要請をしていた事実があるのではないか、このように聞いたわけであります。

 この文書では、ブッシュ大統領の要求に対して海部首相は次のように述べています。

 大統領が触れた軍事面については、憲法上の制約と国会決議のために軍事分野に直接参加することはほとんど考えられないというのが、この問題での国是と言ってもいい。直ちに多国籍海軍部隊に参加することはできない。このように述べているわけですね。憲法九条と海外派兵を禁じる国会決議を挙げて、どうにか当時のブッシュ大統領の要求をかわそうとしたのであります。

 その後、政府は国連平和協力法案を提出し、国民の反対の声で廃案になりました。それでも政府は、アメリカの要求に応えるために、当時、法律もつくらないで、政令によって湾岸戦争後の機雷掃海活動に自衛隊を派遣したのであります。

 今回、憲法解釈を変えて存立危機事態の仕組みをつくれば、当時はできなかったような多国籍海軍部隊への参加が可能になるのではありませんか。いかがですか、防衛大臣。

中谷国務大臣 今回の法案というのは、我が国の安全保障を考えまして、あらゆる事態に切れ目のない対応ができるという観点で考えてきたところでございまして、あくまでも我が国の安全保障、防衛を自主的にやっていくという判断に基づくことでございます。

赤嶺委員 これはもう否定できないと思うんですよね。新三要件というのは非常に極めて曖昧であります。

 やはり当時は、湾岸戦争のときから話を起こしました中谷大臣の説明もありましたが、あのときは多国籍海軍部隊への参加も結局はできなかった。しかし、今回は政府の判断次第、こういうことになっていきます。米軍が軍事行動をとる場合にはいつでもどこへでも自衛隊の掃海部隊を派遣し、米軍の補完部隊として危険な掃海任務を担うことになるということです。

 政府は、日本が戦争に巻き込まれることはない、このように言いますが、九〇年から九一年にかけてアメリカ政府からどういう要求があり、どういう協議が行われたのか、当時の会談記録は公開すべきであります。外務大臣はアメリカ政府の公文書で知らないようなお話でありましたが、あれだけのやりとりです、日本政府の側にも探せば必ず残っているはずでありますし、日米間の会談記録はそれにとどまるものではありません。

 私は改めて、政府に対して、イラクによるクウェート侵攻以降の自衛隊派遣をめぐる日米交渉の全ての会談記録を提出するように求めたいと思います。委員長、よろしくお願いします。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

赤嶺委員 それでは、次に、日米新ガイドラインの問題について伺います。

 六月四日の憲法審査会で小林節参考人は、今回のガイドライン、安保法制と日米安保条約の関係についてこう述べておられます。「日米安保条約というのは、これまでの私の理解では、アメリカと日本が一緒になって世界の警察をやるという話ではなかったと思うんですね。もっと事項とか地域に制限があったはずなんです。それをどうオペレーションするかのガイドラインでありまして、本体が変わっていないのにガイドラインで世界警察に広げてしまうというのは、これは全く筋違いだと思います。」

 小林節先生のこの発言、外務大臣はどのように受けとめていますか。

岸田国務大臣 ガイドラインにつきましては、従来のガイドラインにおいても日米安全保障条約及びこの関連の取り決めの具体的規定に直接の根拠を置くものもありましたが、それ以外にも、それらの規定に直接根拠を置かない協力も定められておりました。こうしたグローバルな協力も従来のガイドラインにおいてしっかり定められているからこそ、今日まで我が国としましても、ソマリア沖の海賊対策を初めさまざまなグローバルな協力を日米間で行ってきました。

 今回、新ガイドラインにおきましても構造は同じであります。日米安全保障条約とその関連取り決めの具体的な規定に直接根拠を置くもののほかに、グローバルな平和と安定のための協力、それら規定に直接根拠を置かないこうした協力も含んでいるということであります。こうした構造は今までのガイドラインも新ガイドラインも変わらないということを申し上げたいと思います。

赤嶺委員 安保条約を超えたガイドラインになっている、こういうことをお認めになるということですね。

岸田国務大臣 新ガイドラインも今日までのガイドラインも同じ構造になっているということで、グローバルな協力をしていくという部分につきましては従来のガイドラインも新ガイドラインも同じであるということを申し上げております。

赤嶺委員 アメリカはそうは言っていないですよ。アメリカのカーター国防長官は新ガイドラインについて、日米同盟を一変するものだ、こう述べているわけですよ。外務大臣はそういう認識ではないということですか。

岸田国務大臣 今も申し上げましたが、ガイドラインの基本的な構造は、従来のガイドラインも今回の新しいガイドラインも同じであります。日米安保条約とその関連取り決めの具体的規定に直接根拠を置くもの以外に、グローバルな協力について定めています。それがあるからこそ、例えば二〇一〇年のハイチ地震への対応あるいはソマリア沖・アデン湾への海賊対策における協力、こういった実績を積み重ねてきたわけであります。

 従来のガイドラインもそういった構造だからこそこういったグローバルな協力を行ってきたわけですので、新ガイドラインにおいてもこうしたグローバルな協力を行うことができる、基本的な構造は同じであると申し上げております。

赤嶺委員 アメリカの方は、日米同盟を一変する新ガイドライン、このように言われているけれども、日本の外務大臣は、どこも変わっていない、こうおっしゃっているわけですね。私は、この新ガイドラインというのは、日本政府が主体的な判断をするんだという体裁をとりながら、結局は、盛り込まれた内容が実施される仕組みになっていると思います。

 具体的に聞きます。

 今回のガイドラインは、グローバルな日米協力に関する規定を盛り込んでいます。これまでのインド洋、イラクでの米軍への兵たん支援活動は、テロ特措法、イラク特措法、時限立法に基づくものでありました。しかし、今回の規定は、日米間の軍事協力の基本にグローバルな日米協力を位置づけるものです。海外派兵の一般法、恒久法も提出をしております。

 日米間の軍事協力の基本にグローバルな日米協力を位置づけるということは、日米安保条約の基本的な性格を変更する、そういうことではありませんか。

岸田国務大臣 まず、先ほども申し上げましたように、ガイドラインの基本的な構造は変わっておりません。

 そして、これはガイドラインの中にも明記されているわけですが、日米安保条約及びその関連取り決めに基づく権利義務関係は変更されないとされています。そして、このガイドラインはそれぞれの国の憲法、法律に従って実行される、こうした当然のことも明記をされています。あくまでも我が国の憲法、法律の範囲内でこうした協力が行われるものと承知をしております。

赤嶺委員 改めて確認しますが、今度のガイドラインというのはグローバルな日米の軍事協力を日米間の基本に位置づけたもの、そういう認識でよろしいですね。

中谷国務大臣 新ガイドラインにおける協力を含めて、自衛隊の派遣につきましては我が国としてみずからの国益に照らして主体的に判断するものでありまして、我が国の平和及び安全の確保、国際社会の平和と安定への貢献とおよそ関係なく自衛隊を派遣することはあり得ません。

 また、その際、自衛隊が特定の活動を行うためには根拠となる法律が必要であることは当然でございまして、したがって、我が国による対米協力が無制限に広がるという御指摘は当たらないと思います。

赤嶺委員 日米軍事協力の基本にグローバルな軍事活動を入れて、無制限にそれが行われるものではないという答弁ですけれども、そもそも多国籍軍への活動、これは今までだと、イラクだとイラクの問題に即して特措法がつくられました。アフガンも同じであります、その事態に応じた対応というのがありました。

 しかし、今回のガイドラインのように、あらかじめグローバルな軍事協力、こう位置づけてみても、そもそも多国籍軍の活動というのは、その場所も、それからどういう国々が参加するかという参加国もそのときになってみないとわからない、あらかじめ計画が立てられるような性格の活動ではないと思います。にもかかわらず、グローバルな日米の軍事協力をわざわざガイドラインに書き込んでいるのか。そのことを答えてください。

中谷国務大臣 先ほど外務大臣がお答えになりましたけれども、日米両国は、日本の平和と安全のみならず、例えば二〇一〇年のハイチ地震、二〇一三年のフィリピンの台風災害、このような人道支援、災害救援における協力、またソマリア・アデン湾での海賊対処、こういった協力に見られるように、地域とグローバルな平和と安全のための協力を実際に積み重ねてまいりました。

 このような活動というのは非常に地域にも感謝され評価されていることでございまして、このような地域における課題に対して実効的な解決策を実行するための協力を、ガイドラインにおきましては、日米両国のおのおのの主体的な判断によって、アジア太平洋そしてそれを越えた地域の平和と安全のために国際的な活動に参加することを決定する場合の協力について協議をして、やはり地域にとって価値のあることにおいては日米で協力していきましょうという考え方でございます。

赤嶺委員 今まではイラクでアメリカが無法な戦争を起こしたときに、アフガニスタンで戦争を起こしたときに、今回の安保法制というのは恒久法、一般法となって、いつでも参加できるような仕組みをあらかじめつくっておくわけです。そういうような無法な戦争にこれまでも巻き込まれてきた、今からは恒久的に、いつでもいいですよ、こういう体制をつくっている。

 ここに、具体的なガイドラインの表現ぶりですが、「日米両国は、アジア太平洋地域及びこれを越えた地域の平和、安全、安定及び経済的な繁栄の基盤を提供するため、パートナーと協力しつつ、主導的役割を果たす。」というわけですから、主導的な役割を果たす国が、いやいや、これは待ってくださいというわけにはいかぬだろう。アメリカの戦争にいつでもどこでも参加していくという仕組みがつくられているということは、今後またこの委員会で議論していきたいと思います。

 時間が来ましたので、終わります。

浜田委員長 次回は、来る十七日水曜日午前八時四十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十一分散会


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