衆議院

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第19号 平成27年7月10日(金曜日)

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平成二十七年七月十日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 今津  寛君 理事 岩屋  毅君

   理事 江渡 聡徳君 理事 松本  純君

   理事 御法川信英君 理事 長妻  昭君

   理事 下地 幹郎君 理事 遠山 清彦君

      石原 宏高君    小田原 潔君

      小野寺五典君    尾身 朝子君

      大隈 和英君    大西 宏幸君

      大野敬太郎君    勝沼 栄明君

      木原 誠二君    木村 弥生君

      黄川田仁志君    工藤 彰三君

      笹川 博義君    白石  徹君

      新谷 正義君    武井 俊輔君

      中谷 真一君    中山 展宏君

      原田 義昭君    平沢 勝栄君

      藤井比早之君    古川  康君

      星野 剛士君    細田 健一君

      宮内 秀樹君    宮川 典子君

      宮崎 政久君    宮澤 博行君

      武藤 貴也君    宗清 皇一君

      盛山 正仁君    山口  壯君

      山田 賢司君    若宮 健嗣君

      緒方林太郎君    大串 博志君

      岡田 克也君    後藤 祐一君

      辻元 清美君    寺田  学君

      長島 昭久君    細野 豪志君

      青柳陽一郎君    井上 英孝君

      小熊 慎司君    太田 和美君

      落合 貴之君    篠原  豪君

      松浪 健太君    村岡 敏英君

      吉田 豊史君    吉村 洋文君

      伊佐 進一君    上田  勇君

      佐藤 茂樹君    浜地 雅一君

      赤嶺 政賢君    穀田 恵二君

      宮本  徹君    本村 伸子君

    …………………………………

   議員           大串 博志君

   議員           柿沢 未途君

   議員           小沢 鋭仁君

   議員           大島  敦君

   議員           緒方林太郎君

   議員           後藤 祐一君

   議員           今井 雅人君

   議員           丸山 穂高君

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   外務大臣         岸田 文雄君

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   防衛大臣

   国務大臣

   (安全保障法制担当)   中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当)       遠藤 利明君

   防衛大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    石川 博崇君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  前田  哲君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  土本 英樹君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  藤山 雄治君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  槌道 明宏君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   秋葉 剛男君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  黒江 哲郎君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  真部  朗君

   衆議院調査局我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別調査室長     齋藤久爾之君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月九日

 辞任         補欠選任

  丸山 穂高君     吉田 豊史君

同月十日

 辞任         補欠選任

  小野寺五典君     黄川田仁志君

  大西 宏幸君     宗清 皇一君

  大野敬太郎君     木村 弥生君

  武井 俊輔君     中山 展宏君

  橋本 英教君     尾身 朝子君

  原田 義昭君     宮内 秀樹君

  平沢 勝栄君     石原 宏高君

  辻元 清美君     細野 豪志君

  長島 昭久君     岡田 克也君

  青柳陽一郎君     松浪 健太君

  太田 和美君     篠原  豪君

  吉田 豊史君     吉村 洋文君

  浜地 雅一君     上田  勇君

  志位 和夫君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  石原 宏高君     平沢 勝栄君

  尾身 朝子君     大隈 和英君

  木村 弥生君     大野敬太郎君

  黄川田仁志君     小野寺五典君

  中山 展宏君     武井 俊輔君

  宮内 秀樹君     工藤 彰三君

  宗清 皇一君     大西 宏幸君

  岡田 克也君     長島 昭久君

  細野 豪志君     辻元 清美君

  篠原  豪君     村岡 敏英君

  松浪 健太君     井上 英孝君

  吉村 洋文君     小熊 慎司君

  上田  勇君     浜地 雅一君

  宮本  徹君     本村 伸子君

同日

 辞任         補欠選任

  大隈 和英君     古川  康君

  工藤 彰三君     原田 義昭君

  井上 英孝君     青柳陽一郎君

  小熊 慎司君     吉田 豊史君

  村岡 敏英君     落合 貴之君

  本村 伸子君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  古川  康君     藤井比早之君

  落合 貴之君     太田 和美君

  穀田 恵二君     志位 和夫君

同日

 辞任         補欠選任

  藤井比早之君     細田 健一君

同日

 辞任         補欠選任

  細田 健一君     新谷 正義君

同日

 辞任         補欠選任

  新谷 正義君     橋本 英教君

    ―――――――――――――

七月九日

 集団的自衛権行使を容認した閣議決定の撤回を求め、これに基づく全ての立法や政策に反対することに関する請願(近藤昭一君紹介)(第三三七五号)

 集団的自衛権行使のための法改正など立法措置に反対することに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三三八六号)

 集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定を撤回し関連法律の改正等を行わないことに関する請願(本村伸子君紹介)(第三四三一号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第三四七九号)

 同(逢坂誠二君紹介)(第三五一一号)

 同(近藤昭一君紹介)(第三五一二号)

 同(清水忠史君紹介)(第三五一三号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第三五一四号)

 同(横路孝弘君紹介)(第三五一五号)

 集団的自衛権行使のための立法措置を行わないことに関する請願(本村伸子君紹介)(第三四三二号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第三五〇七号)

 日本を海外で戦争する国にする戦争立法反対に関する請願(本村伸子君紹介)(第三四三三号)

 集団的自衛権閣議決定の法制化による海外で戦争する国づくりに反対することに関する請願(池内さおり君紹介)(第三四三四号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第三四三五号)

 同(大平喜信君紹介)(第三四三六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三四三七号)

 同(斉藤和子君紹介)(第三四三八号)

 同(清水忠史君紹介)(第三四三九号)

 同(島津幸広君紹介)(第三四四〇号)

 同(田村貴昭君紹介)(第三四四一号)

 同(畑野君枝君紹介)(第三四四二号)

 同(藤野保史君紹介)(第三四四三号)

 同(堀内照文君紹介)(第三四四四号)

 同(真島省三君紹介)(第三四四五号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三四四六号)

 同(宮本徹君紹介)(第三四四七号)

 同(本村伸子君紹介)(第三四四八号)

 日本を海外で戦争する国にする戦争法案反対に関する請願(池内さおり君紹介)(第三四四九号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第三四五〇号)

 同(大平喜信君紹介)(第三四五一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三四五二号)

 同(斉藤和子君紹介)(第三四五三号)

 同(清水忠史君紹介)(第三四五四号)

 同(島津幸広君紹介)(第三四五五号)

 同(田村貴昭君紹介)(第三四五六号)

 同(畑野君枝君紹介)(第三四五七号)

 同(藤野保史君紹介)(第三四五八号)

 同(堀内照文君紹介)(第三四五九号)

 同(真島省三君紹介)(第三四六〇号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三四六一号)

 同(宮本徹君紹介)(第三四六二号)

 同(本村伸子君紹介)(第三四六三号)

 同(大平喜信君紹介)(第三四七七号)

 同(本村伸子君紹介)(第三四七八号)

 平和憲法を踏みにじり、海外で戦争をするための戦争法案廃案に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三四七五号)

 戦争立法反対に関する請願(藤野保史君紹介)(第三四七六号)

 戦争参加を可能にする、いかなる立法や条約・協定の締結も行わないことに関する請願(阿部知子君紹介)(第三五〇四号)

 同(近藤昭一君紹介)(第三五〇五号)

 同(吉川元君紹介)(第三五〇六号)

 憲法違反の集団的自衛権行使を可能にする全ての立法や政策に反対することに関する請願(照屋寛徳君紹介)(第三五〇八号)

 集団的自衛権の行使を可能にする全ての立法や政策に反対することに関する請願(照屋寛徳君紹介)(第三五〇九号)

 戦争法案である国際平和支援法案と平和安全法整備法案を廃案とすることに関する請願(照屋寛徳君紹介)(第三五一〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七二号)

 国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案(内閣提出第七三号)

 自衛隊法等の一部を改正する法律案(江田憲司君外四名提出、衆法第二五号)

 国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する人道復興支援活動等に関する法律案(江田憲司君外四名提出、衆法第二六号)

 領域等の警備に関する法律案(大島敦君外八名提出、衆法第二七号)


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     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。岸田外務大臣。

岸田国務大臣 七月一日及び三日の当委員会において、機雷掃海における第二要件について、それぞれ岩屋毅委員及び後藤祐一委員の御質問に対し、他国の掃海艇により機雷が掃海されることをもって第二要件を満たされるということはない旨申し上げましたが、この趣旨は、他国が掃海艇を派遣する場合であっても、我が国が武力の行使に当たる機雷掃海を行う以外にほかに適当な手段がない場合がある、すなわち、そのような場合でも第二要件を満たし得るというものです。

 したがって、他国の掃海艇により機雷が掃海されることをもって第二要件を満たさなくなるということはないと答弁すべきでありました。

 さきの答弁を訂正し、おわびを申し上げます。

     ――――◇―――――

浜田委員長 内閣提出、我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案並びに江田憲司君外四名提出、自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する人道復興支援活動等に関する法律案並びに大島敦君外八名提出、領域等の警備に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官前田哲君、内閣官房内閣審議官土本英樹君、内閣官房内閣審議官藤山雄治君、内閣官房内閣審議官槌道明宏君、外務省国際法局長秋葉剛男君、防衛省防衛政策局長黒江哲郎君、防衛省人事教育局長真部朗君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野寺五典君。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。

 きょうは、民主党、維新の党の皆さんの提出法案を審議するということで、日ごろ厳しい質問をされる皆様がきょうは質問を受けていただけるということで、大変感謝を申し上げます。

 この委員会、五月二十六日に始まり、きょうまでで九十五時間既に審議をしております。きょうの委員会が終われば百時間を超えるという大変な審議時間となります。

 私もずっとその議論を聞いておりましたが、憲法解釈の議論とか内閣法制局の解釈とか、論点が拡散しています。だから国民の皆さんにもわかりにくいんだと思います。本来、政治は、厳しさを増している安全保障の現実に向き合い、必要優先の議論をするのが役割です。

 実は、先日の参考人の方が同じような指摘をしております。六月二十二日、この委員会の参考人質疑における小林慶応大学名誉教授の発言です。小林先生は、民主党、野党側の推薦の方です。小林教授はこのように発言をしております。御紹介をさせていただきます。お手元に資料がございます。

 政治家というのはそれぞれ現実と向き合っています。ですから、国会にもたくさん法律家たる政治家がおられますけれども、その方たちは政治家として言動をしておられますよね。だから、やはり必要優先の議論をなさる。それに対して、過去、現在、未来にわたって一貫した法治国家でなきゃいけないという点から法制局の方たちもお話しするし、我々も、我々は、逆に言えば、利害を超えた世界の、坊主みたいなものでありまして、大学というところで伸び伸びと育ててもらっている人間ですから、利害は知りません。ただ条文の客観的意味はこうなんですという神学論争を言い伝える立場にいるわけです。

 それは当然参考にしていただかなきゃ困るので、事実として、そうか、神学でいくとまずいんだ、ではもとから変えていこうというふうに政治家が判断なさることはあると思うんですね。

 そういう意味で、我々は字面に拘泥するのが仕事でありまして、それが現実の政治家の必要とぶつかったら、それはそちらで調整なさってください。我々に決定権があるなんてさらさら思ってもいません。

こういうことなんです。そうなんです。実は、役割が違うんです。

 小林先生の言葉をかりれば、憲法学者の皆さんは、字面に拘泥するのが仕事であります。歴代の法制局長官は、過去、現在、未来にわたって一貫した政府の解釈を守るのが仕事であります。

 憲法学者は憲法の条文に照らして解釈を行う、内閣法制局は過去の答弁との整合性を判断する、それぞれの立場から今回の法制について評価をする。そして政治は、そのような評価を受けとめた上で、さらにそれを乗り越えて、現実と向き合い、必要優先の議論をする。役割が違うんです。

 私たち政治家は、現在の厳しい安全保障環境の中で国民をどのようにして守り抜くのかという本筋の議論をするのが役割です。ここにいる私たち国会議員は、憲法学者でも法制局の職員でもありません。私たちがやるべき仕事は、厳しさを増す安全保障環境の中で国民をどう守るのかを真剣に議論することであります。そのことを民主党が推薦された小林先生も指摘されているんだと思います。

 実は、このようなことが過去にもありました。昭和二十九年の自衛隊の創設です。

 当時も、これは憲法第九条に明確に違反しているという声が、憲法学者からも世論からも圧倒的でありました。しかし、そうした議論を乗り越えて、政治の責任として、自衛隊は設立されました。

 それから六十年が過ぎました。今や自衛隊の必要性を否定する方はほとんどおりません。世論でも、最も信頼できる政府機関の第一位は自衛隊です。その存在は九〇%以上の支持があり、そして、六十年にわたって我が国の平和が保たれてまいりました。

 今回の法整備も、さまざまな御意見はしっかりと受けとめた上で、最後は政治の責任としてしっかり議論し、決断をする。国民の平和な暮らしに責任を持つのは私たち政治なんです。そして最後は、私たちが選挙を通じて国民から審判を受けます。

 総理にお伺いします。今回の平和安全法制を整備するに当たりまして、政治としてなすべき議論のあり方、そして、この平和安全法制がなぜ必要なのか、改めてお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま小野寺委員から、いわば憲法学者がきわめているものは何か、彼らは何を責務と考えているのか、そして政治家の責務とは何か、大変わかりやすく御説明をいただいた、このように思います。

 PKO法案を審議し始めた平成三年において、これは朝日新聞が憲法学者の皆さんに行ったアンケート調査でありますが、その際も、八割の方々が、自衛隊を海外に派遣する、PKO活動とはいえそれは憲法に反する、こう答えているわけであります。あれから時を経て、まさにPKOの活動は評価に値すると、これはほとんどの新聞の社説もそうなっているわけであります。

 あのとき我々の先輩はどう判断したか。国際社会の平和と安定は、まさに我が国の繁栄にもつながってくることであり、その責任を果たしていく必要があるだろう、こう考えたのだろうと思います。

 そして、私たちは、あの砂川判決が示した必要な自衛の措置とは何か、これを常に、とことん考える。この砂川判決の示した自衛の措置、これは合憲である。最終的な判断をする最高裁の示した法理と言ってもいい。この中に入るものは何か。

 その時々の安全保障環境を考えながら、国民の命を守る、幸せな生活を守るのは、まさに私たちの、政治家の使命であります。その中において、国際情勢をしっかりと分析をする中において、我々は、必要な自衛の措置のためにそれをどう解釈していくか、憲法をどう解釈していくか。もちろん、憲法の範囲を超えてはならない。その中において、この砂川判決と軌を一にする一九七二年の政府の見解、この見解の基本的な理念の延長の中において、まさに当てはめとして、今回、限定的に、国民の命や幸せな生活を守るためであれば使うことができる集団的自衛権の部分もある、我々はそう判断したところでございます。

小野寺委員 私ども政治の役割は、国民の暮らしを守ること、そのために何が必要かということ、そして、それをこの国会の中で議論すること、そのことだと思います。

 きょうは、初めて、こうして民主党そして維新の党の皆さんが法案を提出いただきましたので、そちらの方のことについてお伺いをしたいと思います。

 まず、民主党の安全保障法制についてのスタンスについてお話を伺いたいと思います。

 今回、民主党は、維新の党と共同で、いわゆる領域警備法を提出されました。これは、現在海上保安庁や警察が担当しています領海や離島の警備を自衛隊も行うことができるという内容だと理解をしております。

 今回、民主党さんは、この領域警備法だけしか実は提出しておりません。しかし、岡田代表は、先月十七日の党首討論におきまして、「周辺事態法も中身を充実させることを提案」すると述べておられますし、また、有力な民主党議員からも、朝鮮半島有事を想定して、集団的自衛権を容認せざるを得ないとの発言も出ています。自民、維新が自衛隊法改正を含めた多数の法案を出し、この法案をもってこの国を守ろう、そういう提案をしている中で、民主党はこの領域警備法だけしか出しておりません。

 民主党の担当者にお伺いいたします。

 民主党は、この厳しさを増す安全保障環境の中で、我が国の国民と平和な暮らしを守り抜くための必要な法整備、この領域警備法だけで十分であるのかどうか伺いたいと思います。警備法の内容については私どもよく存じ上げておりますので、この領域警備法だけで我が国が守れるのかどうかをお伺いしたいと思います。

大串(博)議員 小野寺委員にお答え申し上げたいと思います。

 民主党は、先ほどおっしゃいました、憲法学者の皆様は憲法の世界をお守りいただく、政治家が国際情勢の変化を踏まえて政治的な、現実的な判断を行っていく、私たちも全く同感でございます。そういった意味で、野党とはいえ、責任のある安全保障政策を打ち出していく、これは当然のことだというふうに思います。

 そういった中で、私どもも、昨年来、長く、憲法との兼ね合い、集団的自衛権のあり方、そして安全保障政策全体のあり方、これを検討してまいりました。その結果、四月二十八日、民主党の安全保障に対する考え方というのをまとめさせていただきました。この内容は、全部で十数ページに及ぶものでございまして、この中に網羅的に、現在の安全保障政策はどうあるべきかということを書かせていただいております。

 その中で、領域警備法に関しては、昨年の十一月に我が党単独で国会に提出したこと、そういう経緯もありまして、その後、維新の皆様と合意できる部分はないかということで議論を重ねてきた、こういった経緯もこれあり、すり合う部分も多くありました。こういったこともあって、今回、領域警備法を先に国会に共同提出させていただいた、こういう経緯でございます。

 その以外の、例えば集団的自衛権に関することをどう考えるのか、周辺事態をどう考えるのか、あるいは特措法、恒久法をどう考えるのか、こういったことに関しては、この民主党の安全保障に関する考え方に全てきちんと書き込んでございます。

 例えば集団的自衛権に関しましては、やはり、今政府が事例として挙げていらっしゃる、ホルムズ海峡、あるいは周辺の海域における米艦船に対する防護等、これらに関しては、切迫性あるいは緊要性、現実性が乏しいのではないか、こういった思いから、私たちは、今、憲法解釈の変更をしてまでこれを認めるというこの方針には、私たちは考え方を異にするということを明確にしておりますし、周辺事態に関しても、周辺概念を、周辺事態を取り払うといったことに関して、私たちは、それは違うのではないか、まず身近を現実的に対応していくというのが大切なことではないかというようなことを考えております。

 こういった考え方をしっかり示して、それを国会にどうお示ししていくか、これは国会上の対応の仕方もいろいろあろうかと思います。まず、私たちとしては、この国会に提出されている与党の考え方、政府の考え方に対して、その問題点を指摘し、現実問題を確認していく、そういう立場からこの審議に臨んでいるところでございます。

小野寺委員 お話を伺いますと、領域警備法だけは出せるけれども、ほかについてはまだ考えがあるだけだ、そして、政府が出したことについて、どうそれについて反応するかということを考えてからやると。

 ですから、もう一度お伺いしますが、この領域警備法だけでこの国の平和と安全が守れるとは考えていらっしゃらないということですね。端的にお答えください。

大串(博)議員 我が党の考え方は、四月二十八日、この安全法制に関する民主党の考え方にしっかりまとめさせていただいて、これをお読みいただくと明確にわかると思いますけれども、例えば周辺事態に関しては、周辺概念を維持しながら、いろいろな支援のメニューに関してはニーズを踏まえながら考える、あるいは、集団的自衛権の問題に関しても……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

大串(博)議員 着手の問題をどう考えるのか、こういった点をしっかり見直していこうといった点も示させていただいております。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。不規則発言は控えるように。

大串(博)議員 こういった私たちとしての考えを示しておりますので、国会での議論、十分な議論ができるものというふうに思っております。

小野寺委員 私たちがお伺いしているのは、考えを自分たちの心の中で思うことは自由ですが、政治家ですから、それを法案として出さないと何も形にできてこない。今回の領域警備法だけで、私はずっと聞いていて、守れない、そのように伺えます。

 それからもう一つ伺うと、実は、これは昨年まとめた法案とほとんど一緒です。であれば、なぜ、この五月から始まる国会の冒頭に出してくれなかったのか。もう百時間になるぎりぎりのところに最後に出すのか。これは私は、むしろ何か、議論を遅くするためにわざわざこの時点で出してきたとしか思えない。中身は去年と同じものを、なぜこの時期に出すのか。そして、これだけで守ることができないとすれば、なぜここで、そうしてわざわざ答弁に立つのか。

 私は、本来、提出するのであれば、しっかりとした責任感と自信を持って、これで、この法律でこの国を守れるんだ、そして十分な審議時間があるんだということをやるべきだと思います。大変残念だと思います。

 それでは、続きまして、維新の党の皆さんへ質問、少しお伺いをしたいと思います。

 維新の党の、これは今回、武力攻撃危機事態という内容について提出をされました。法案を提出されたことは私ども高く評価をしますし、これだからこそ、それぞれの法案の比較をして、より内容が深く理解できると思います。

 維新の党の案では、武力攻撃危機事態において、外国の部隊を守るために我が国が武力を行使できるという内容のものと理解しています。

 武力攻撃危機事態の定義を見ますと、第一要件、「条約に基づき我が国周辺の地域において我が国の防衛のために活動している外国の軍隊に対する武力攻撃が発生し、」とあります。ただし、「(我が国に対する外部からの武力攻撃を除く。)」とあります。ですから、我が国に対しての武力攻撃はありません。

 次に、第二要件、「これにより我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険があると認められるに至つた事態」。ですから、ここでも我が国への武力攻撃事態がありません。

 これは、我が国に対する武力攻撃の発生がない事態ということであるので、集団的自衛権に当たると私は考えますが、維新の党の提出者に伺います。

 この法案は限定的な集団的自衛権の行使容認であると考えますが、そのような御認識でよろしいんでしょうか。

柿沢議員 御質問ありがとうございます。

 今お尋ねをいただきましたが、我が党のつくりました武力攻撃危機事態というのは、まず、現行憲法への適合性、このことに意を用いて設定をさせていただいた、そうした概念でございます。

 もともと、二〇〇三年五月の秋山法制局長官の答弁として、我が国周辺で我が国の防衛のために活動する例えばアメリカの艦船が武力攻撃を受けた場合、それが我が国に対する武力攻撃の着手と認められ得る場合がある、そのときは我が国を守る自衛権の行使ということは認められる、こういうふうな御答弁があります。

 この国会答弁の考え方を基礎といたしまして、条約に基づいて我が国を守るために活動しているアメリカの軍隊、そのアメリカの軍隊、同盟国の軍隊に対する武力攻撃が発生をした場合、これは次の瞬間に日本に対する直接的な武力攻撃に波及する可能性が高い、そのときに座して死を待つわけにはいかない、こういう考え方で、我が国を守る自衛の措置として武力の行使を含めた自衛権の行使を可能にする、こういうことでございます。

 これについて、憲法の専門家また法制局長官のOBからも、憲法適合性についてしっかりと太鼓判を押していただいています。

 このことが個別的自衛権あるいは集団的自衛権に当たるかということは、ある意味では国際法の世界で問題になることはあろうかと思いますけれども、我が党の考え方の整理としては、このような考え方でこの武力攻撃危機事態を規定させていただいた、こういうことでございます。

小野寺委員 秋山答弁につきましては、ごくわずかな、本当に、例えば、日本を攻撃するぞと言って攻撃に着手する中で、目の前にたまたま米艦がいたときに、そこを初めに攻撃した、そういう極めて限定的な話で、基本的に秋山答弁というのは、私ども、過去の政府答弁と変わらないと思っています。

 それでは、今、維新の党の答弁のことでございますが、これは、国際的な視点から見た場合、個別的自衛権になるのか集団的自衛権になるのか、そこを判断されないということでありますので、改めて、外務省の国際法局長に、この維新の党の案というのは今回は個別的自衛権なのか集団的自衛権なのか、国際法の観点から見てどうなのか、お伺いいたします。

秋葉政府参考人 お答えいたします。

 維新の党の案につきまして有権的に何か申し述べる立場にはございませんが、そういう前提で、国際法の観点から一言述べさせていただきます。

 委員御指摘のとおり、武力攻撃危機事態におきましては、我が国に対する武力攻撃が発生していない状況において、外国に対する武力攻撃に対処するために武力を行使することとなると考えられます。

 この点、国連憲章第五十一条に言いますところの個別的自衛権とは、自国に対する武力攻撃を実力をもって阻止することが正当化される権利をいうと解されているところでございます。したがいまして、我が国に対する武力攻撃が発生していないにもかかわらず行う武力の行使を個別的自衛権によりまして正当化することはできないと思います。

 したがいまして、結論的に申し上げれば、こうした武力行使を正当化するには、集団的自衛権、または武力行使を容認する安保理決議に基づく集団安全保障措置によって正当化する必要があると考えられるわけでございます。

 ちなみに、この維新の党の自衛隊法等の一部を改正する法律案という説明紙がございます。ここで、武力攻撃危機事態の説明のところで、個別的自衛権同様の厳格な要件下の存立危機事態で防衛出動と書いてございます。もし個別的自衛権そのものであれば、同様という言葉も不要かと思われますので、このこと自体、個別的自衛権以外の国際法上の根拠を示唆しているとも見受けられる次第でございます。

小野寺委員 要約すると、これはどう見ても国際法上は集団的自衛権になってしまうということなんです。

 そして、集団的自衛権になってしまう内容において、我が国が独自に、これは個別的自衛権ですよ、個別的自衛権ですよ、このことでもし武力を行使してしまったら、これは国際的に見たら、外形的に見たら、先制攻撃、こうなってしまいます。先制攻撃をする国ともし国際的に評価されたら大変なことになる。

 そして、もしこの行為が集団的自衛権ということで認めていただければ、自民党と同じように一部の行使容認、限定的容認といって認めてもらえれば、これは国連憲章で認められた権利であり、国際的にも十分理解されます。

 危ないのは、集団的自衛権と海外では見られるのに、自分たちが独善的に個別的自衛権だと強弁すること、これがむしろ、先制攻撃をする国だ、独善的な国だ、このような形で評価をされてしまう。

 しかも、維新案には、外国からの要請のことの要件については書いていません。ということは、要請されないのに勝手に出ていく。これは、戦前、私たちが反省をしなければいけない、過去の事例そのものだと思っています。

 ぜひ、個別的自衛権なのか集団的自衛権なのか、端的に明確に、この外務省の答弁を聞いた上で、改めてお伺いしたいと思います。

柿沢議員 御質問ありがとうございます。

 政府案においても、武力攻撃を受けた他国からの要請は法文上明記されておりません。その点においては我が党の案も同じであります。

 加えて申し上げると、国連憲章五十一条の上で自衛の措置をとった場合に国連安保理に報告をする、そのときの国連安保理への報告というのは、どの事例を見ても、個別的自衛権あるいは集団的自衛権に基づいて報告をしている、こういうことは行われておりません。

 つまり、私たちは、まさに自衛権の再定義ということを行って、今、軍事技術、ミサイル技術、そういうものの発展によって、個別的自衛権と集団的自衛権の重なり合う部分が出てきていると思っています。つまり、他国に対する武力の攻撃であったとしても、その次の瞬間に我が国に対する武力攻撃に転化、波及し得る場合がある。そのときに座して死を待つわけにはいかない、第一撃を受けるまで反撃できないというわけにはいかない。こういう考え方の整理をさせていただいているところでございます。

小野寺委員 短くお話をしますと、今のお話ですと、やはり、自分たちが勝手にこれは個別的自衛権だと思い込んで武力行使を行う、これは私、最も危険なことだと思っています。国際的な視点から見られることによって行わなければ、これは国際法上にも認められない大変な考え方、ぜひこのような危険な考え方だけはやめていただきたい。

 そして、ぜひ、この安全保障の法制をしっかり議論する中で、私たちは、法のすき間を埋めて、抑止力を高めて、結果として、七十年間平和国家日本、これを八十年、九十年、百年と続けていきたいんです。きょうここにいる若い先生方、百年目のときにも恐らくいらっしゃると思います。私はいないです。そのときに、ぜひ、平和国家日本、この法案によって百年間守られた、そのことを胸を張って言えるように最後までこの議論をして、最後は決断をしていただきたい、そう思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、上田勇君。

上田委員 おはようございます。公明党の上田勇でございます。

 先日、この委員会で質問に立たせていただいたときには、安倍内閣の外交、安全保障政策の総論的なお話について中心に質問させていただきましたけれども、きょうは、一昨日、維新の党及び民主党から法案が提出をされました。これまでの当委員会での内閣の法案、それに関する審議を踏まえまして対案を提出された、その御努力については大いに敬意を表したいというふうに考えております。

 きょうは、それらの法案が提出をされたということを踏まえて、提出者と、それから政府に、これは内閣提出の法案も含めてでありますけれども、質問させていただきます。私たちに与えられている時間は非常に限られておりますので、ぜひ簡潔なやりとりをしたいというふうに思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 まず最初に、先ほどの小野寺委員の質問とも関係をいたしますけれども、内閣提出法案の存立危機事態と、それから維新提出法案の武力攻撃危機事態、これの関係性についてお伺いしたいというふうに思います。

 内閣から提出をされました法案は、昨年七月の一日に閣議決定が行われましたけれども、それに基づいて、政府と、それから自民党、公明党の与党で協議をして、それを経て作成、提出をされたものでございます。したがって、そこの解釈というのは、あるいは評価というのは、閣議決定に書かれているのがそのとおりなんだというふうに考えております。

 まず最初に、内閣提出法案にある存立危機事態の定義は、パネルに今表示をさせていただいております。この内容はこれまでも何回もこの委員会でも取り上げられていますので、内容を御紹介することは省略をさせていただきますが、その評価、閣議決定文書の記述について御説明、ちょっとお話をさせていただきます。

 閣議決定文書には次のように記述をされております。国際法上の根拠と憲法解釈は区別して理解する必要があるということ。国際法上ではどういう根拠に基づくのか、それと国内の憲法解釈というのは、これは別の基準で考えられるということ。二点目が、国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある、存立危機事態についてですね。最後に、憲法上は、あくまでも我が国を防衛するやむを得ない措置として初めて許容されるんだ。そういう考えのもとで存立危機事態が定義をされております。

 集団的自衛権や個別的自衛権という言葉、これは憲法や国内法にはあらわれてきません。国連憲章、すなわち国際法の世界の用語であります。

 法案に規定する存立危機事態というのは、憲法解釈や国内法としては従来からの基本理念の枠内にある、国際法上は個別的自衛権ではなく集団的自衛権を根拠としている、そういうふうに評価される場合もあるという理解であります。フルスペックの集団的自衛権ではない、国連憲章に認められているフルスペックの集団的自衛権ではない、極めて限定的なものではありますけれども、国際法上はこのように評価されるというのが我々のこの立法に当たった理解であります。

 それで、維新の党提出の法案に規定されております武力攻撃危機事態、これは先ほど小野寺委員の方から御説明がありましたので、内容は省略をさせていただきますが、定義はこのパネルに書かれているとおりでございます。

 政府案の存立危機事態と維新案の武力攻撃危機事態、内容はごらんのとおり異なります。共通点というのは、我が国が直接攻撃はされていないという場合でも、他国が攻撃をされた場合に自衛権の行使を限定的に認めるという内容、そこは共通点だというふうに理解をしています。

 一昨日の委員会の質疑、また先ほどの小野寺委員との質疑の中でもちょっとわかりにくかったので、改めて、こういう評価を我々はしてきたということを踏まえた上で、維新の党の提案者に、武力攻撃危機事態というものの国際法上の根拠について伺いたいというふうに思います。

 国際法上は、私の理解としては、限定的でありますけれども集団的自衛権の行使というふうに評価される場合もある、少なくとも場合もあるというふうに理解をしておりますけれども、見解を伺いたいというふうに思います。

小沢(鋭)議員 ありがとうございます。

 まず申し上げたいのは、集団的自衛権に関するいわゆる定義とか範囲の問題は国際法上も種々あるというのが私たちの認識でございます。この委員会でも我々の江田委員がこの点に関してはかなり専門的な質問をさせていただいて、外務省ともやり合ったのは皆さん方も御案内のとおりでございます。ですから、我々が、まさに自分たちが勝手に、個別的自衛権だ、こう言い張っているのではないということをまず一点申し上げたいと思います。

 大事な点は、現在の国際情勢を考えたときに、やはり我が国の平和と安全を守るためには、いわゆるチームとしての活動というのが不可欠だ。チームとして活動してくれているいわゆる条約上の同盟軍が我が国防衛に資するための活動をしている、その部隊に関しては、攻撃を受けたときは我々も守ってあげなければ、とてもじゃないけれどもやっていられない。これは事実として、先ほど上田委員がおっしゃったとおり、共通な点でございます。

 同時に、やはり憲法適合性というのを我々はきちっと考えなければいけないということでございまして、そういった意味では、存立危機事態と我々の武力攻撃危機事態の最大の違いは、まさに武力攻撃の可能性があるかどうかの話でありまして、経済的危機は含みません、政府が言うように。ですから、そういった意味で、武力攻撃危機事態というふうに名称も変更させていただきました。

 さらに、最後に、上田委員が、国際法上はそういうふうに認められる場合もあり得るのではないか、こういう御質問がございました。そこに関しては、我々は、国際法上は集団的自衛権の行使であるという評価を受け得ることを否定するものではございません。

 以上です。

上田委員 ちょっとわかりづらい言い方ではあったんですが、今のは、政府案に対する政府の見解と同じように、集団的自衛権として国際法上は認められる場合もあるという御答弁だったというふうに受けとめました。

 ただ、ちょっと今、国際法上の解釈というのはいろいろあるというふうなこともおっしゃったんですけれども、ここは学説を議論する場ではないので、これは改めて外務省に確認をさせていただきたいんですが、一昨日も岸田外務大臣から答弁があったんですが、改めて確認のためにお伺いをしたいと思います。

 国際法上は、国連憲章において、いわゆる国連軍による集団的安全保障措置というのがありますが、その場合を除くと、武力行使が容認をされるというのは個別的自衛権または集団的自衛権であって、その二つは重なることがなくて明確に分かれている、分けることができる概念であるというふうに理解をしています。また、今私が申し上げたことというのは国際的にも確立している考え方だというふうに理解をしておりますけれども、外務省の見解を伺います。

秋葉政府参考人 御答弁申し上げます。

 端的に申しまして、委員御指摘のとおりでございます。自国に対して発生した武力攻撃に対処するものかどうかという点において、明確に個別的自衛権と集団的自衛権は区別されるものでございます。

 この点は、先日私からも御答弁申し上げましたが、ニカラグア事件判決、ICJの判例におきましても、まず、個別的自衛権の場合、当該国が武力攻撃の被害国となっていることが条件であると明確に述べた上で、集団的自衛権の場合は、支援国に対して被攻撃国から要請が必要であると明確に区別して述べているところでございます。

 そして、政府も、この考え方と全く同様な考え方をとっている次第でございます。

上田委員 私は、維新の党の提出をされた法案も読ませていただきました。そして、今、そこの点について質問をさせていただきまして、その法案に規定をされている武力攻撃危機事態、これは、いわゆる国連憲章で認められているフルスペックの集団的自衛権ではない、かなり限定されたものではあるけれども、やはり集団的自衛権を根拠とするものだというふうに理解をいたしました。先ほど提出者からも、もう一つはっきりしませんでしたけれども、そういう御答弁もあったところでございます。

 法案提出者から、独自の勝手な解釈をしているわけではないんだというふうにおっしゃいましたけれども、どうも今のお話を聞いていると、かなり独自のお考えで解釈をされているんじゃないのかなということに受けとめました。

 こういうやり方だと、やはりなかなか、これは対外的、国際社会からは信頼が得られづらいんじゃないのかなというふうに受けとめます。これからこの委員会でもまたさらに議論が進むものだというふうに思いますので、きょうはちょっと感想だけ申し上げたいというふうに思います。

 次に、いわゆるグレーゾーンに関する事項について御質問させていただきます。

 我が国の離島あるいはその周辺の地域で非常に緊張感が高まっている事態が発生をしています。周辺国等の動向を見ますと、さらに緊張が高まるというおそれもある。こうした事態というのは、これは平時ではない、しかし、その一方で、有事とは言えない事態でありますので、白でもない、黒でもないことから、灰色ということでグレーゾーンというふうに称されているわけであります。

 こうしたグレーゾーンへの対応については、私たち政府・与党でも昨年来協議を行ってまいりました。結論として、法改正は行わず、海上保安庁などの警察機関と防衛省の連携強化、あるいは海上警備行動等の発令手続の迅速化、そういった運用改善で対応することが適切であるというふうに判断をいたしました。

 改めて、総理に、こうした対応が適切だと判断した理由をお伺いしたいというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 我々、この十数年、いろいろな経験をいたしました。かつて、北朝鮮が工作船を日本に派遣し、それに対して海上保安庁の船が対応し、最終的にはこの工作船は爆沈をしたのでございます。

 その際、当初は漁船を装っていた、しかし、その後は蛇頭を装うということを繰り返したわけでございます。その際、大切なことは、漁船であったり蛇頭であれば、これは海上保安庁が対応するのが適当である、しかし、中身を後でよく見てみたら、相当の重武装であったわけでございます。というときには、いわば海上自衛隊が対処することも当然望ましい。

 つまり、そのときには、そういう判断がなされれば、あるいは近傍に既に海上保安庁の船とともに海上自衛隊が配備をされつつ直ちに海上警備行動を発令できるという態勢が整っていれば、これはスムーズな対応、まさに切れ目のない対応が可能ではないかということを我々は経験から学んだところでございます。

 そこで、政府においては、五月十四日、武力攻撃に至らない侵害に際し、いかなる不法行為に対しても切れ目のない十分な対応を確保するため、海上警備行動、治安出動等の発令に係る手続の迅速化のための閣議決定を行ったところであります。また、さまざまな不法行為に対処するため、警察や海上保安庁などの関係機関がおのおのの対応能力を向上させ、相互の連携を強化するほか、各種の訓練を充実させるなど、各般の分野における取り組みを一層強化していくこととしております。

 つまり、例えば海であれば、海上保安庁と自衛隊が日ごろから密接な連携をしている、あるいは共同の訓練を積んでいくということではないかと思います。これらによって、現下の安全保障環境において、武力攻撃に至らない侵害に際し、いかなる不法行為に対しても切れ目のない十分な対応を確保するための体制を整備したところでありまして、現時点では、新たな法整備が必要であるとは考えていないわけでございます。

上田委員 現行法のもとで運用を改善することによって、今我々が懸念をする事態に対しては十分対応可能であるという政府の方針は理解をいたしました。

 やはり、今総理からの御答弁があったとおり、あくまで海上保安庁などの警察機関が前面に立って対応して、それを原則として、万が一警察機関だけでは対応ができないときには、海上自衛隊とも平素からいろいろな連携を強化していくことによって迅速な対応が可能になってくるという、今回のそういう手続面での改善も評価できるというふうに考えております。

 そして最後に、次の課題でありますけれども、米軍等の武器等の防護についてお伺いをしたいというふうに思います。

 政府提出法案では、自衛隊法九十五条の二を新たに設けて、自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に現に従事している米軍等の武器等を防護することができるようにすることといたしております。これは、有事のときではなくて、あくまで平時における対応である、したがって、自衛権の行使に当たるものではなくて、すなわち正当防衛、緊急避難の措置として位置づけているものであります。

 現在の自衛隊法にも九十五条がありまして、自衛隊の武器等の防護を行う規定はありますが、同様の趣旨、まさにそういう武器等というのは防衛力を構成する基盤でありますので、それを同様の趣旨で防護の対象として広げるというものが今回の趣旨だというふうに理解をいたしております。

 北朝鮮が弾道ミサイルを発射する、そういう実験を行う事案なども頻発をしております。我が国を取り巻く安全保障環境というのは大変厳しくなってきているわけでありますので、今後しばらく、残念ながらそうした状況というのは継続をするものだというふうに思われます。

 そうした中で、自衛隊と米軍が共同して警戒監視あるいは情報収集、そうした活動に従事するということはこれから増加していくのではないかというふうに思われます。また、米軍等との共同訓練の機会もふえていますし、今後ともふえるのではないかというふうに考えております。

 こうした活動を行っているときに米軍が不意に攻撃を受けた、そうした場合に、現行法では、共同して活動している自衛隊が米軍を防護することはできない。攻撃するのは、他国軍隊に限らず、海賊やテロリストという場合もあれば、その場では特定できないというようなこともあろうというふうに思います。最小限の防護ができるということにしておくことは、日米同盟の信頼感を維持向上させる上でも重要な課題だというふうに考えております。

 実際に、米軍が攻撃を受けて、それを自衛隊が武器を使用して防護するケースというのはそう多く想定はされないんだろうというふうに思いますけれども、しかし、共同で行動するわけですから、そういった機会が多くなってくる中で、相互に防護できるようにしておくということは、不測の攻撃を未然に防ぐという意味が大きいというふうに考えております。

 改めて、この規定を設ける意義それから必要性について、総理の御見解を伺いたいというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 我が国を取り巻く安全保障環境は間違いなく厳しさを増しているわけでございまして、その中において、米軍と自衛隊がともに活動することによって抑止力を高め、結果として地域の平和を守っていくことができると思います。

 その中において、今後、平素から自衛隊と米軍等が連携してさまざまな活動を行う機会は一層増加していくものと考えられます。その重要性も一層増していくわけでありまして、そのような際に、米軍等に対して武力攻撃に至らない侵害が発生した場合、これは武力攻撃に至らない侵害が発生した場合、自衛隊と米軍等が緊密に連携して対応していくことが我が国の安全にとって大変必要であります。万が一その対応にすきがあっては、我が国に脅威が及ぶことを防止できないおそれがあります。

 改正後の自衛隊法第九十五条の二は、このような認識のもとで、自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に現に従事している米軍等の部隊の武器等を武力攻撃に至らない侵害から防護するために必要最小限の武器の使用を認めるものであります。法律上も、「現に戦闘行為が行われている現場で行われるものを除く。」と明記することにより、自衛隊が武力の行使に及ぶことがなく、また、武器の使用を契機に戦闘行為に発展するということもないようにしています。

 また、新ガイドラインにおいても装備品等の防護を平時からの協力措置の一つとして明記しているとおり、自衛隊が米軍のアセットの防護を行うことは平時における日米防衛協力の重要な要素であります。これによって、自衛隊と米軍による連携した警戒体制等の強化につながり、日米同盟の抑止力、対処力は一層強化されることになる、このように考えております。

上田委員 以上で終わります。

浜田委員長 次に、岡田克也君。

岡田委員 民主党の岡田克也です。

 まず、きょうは最初、重要影響事態それから国際平和共同対処事態についてお聞きしたいと思います。

 この重要影響事態法と国際平和支援法、目的はもちろん違うわけで、「我が国の平和及び安全の確保」と、平和支援法の方は、「国際社会の平和及び安全の確保」ということであります。

 ただ、重要影響事態法では国連決議が必要ない、しかし国際平和支援法では国連決議が必要である。国会承認についても、国際平和支援法の方は、例外なく事前承認ということになっております。

 まず、総理にお尋ねします。この二つの法案で、国連決議の有無でありますとか、国会承認、事前承認を必ず求めることにしているのか、あるいは、それは原則であって場合によっては事後でもいいということにしている、そういう違いが生じている理由をお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 重要影響事態法に規定する重要影響事態とは「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」であります。我が国に対する影響であります。一方、国際平和支援法に規定する国際平和共同対処事態は「国際社会の平和及び安全を脅かす事態であって、その脅威を除去するために国際社会が国際連合憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い、かつ、我が国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があるもの」であります。その点がまず大きな違いである。

 ある事態が、影響重要事態及び国際平和共同対処事態のいずれの要件にも該当することもあり得ますが、その場合には、法律の適用については、当該事態が我が国の平和及び安全に重要な影響を与えるものであり、その観点から優先的に対応する必要があることから、まずは重要影響事態法の適用を検討し、重要影響事態法の適用のない場合にのみ、国際平和支援法の要件に該当するかを判断することとなります。

 したがって、まずは、一つの事態に両方の法律が適用されることはない。この違いは先ほど説明したとおりでありますが、これが同時に適用されることはない、このことを押さえておく必要があると思いますが、この趣旨は国際平和支援法に規定をしています。

 そしてさらに、国会との関係においては、それぞれが規定しているとおりでございまして、そして同時に、今申し上げましたように、それぞれは目的が違う、そしてその目的が違うことによって、それぞれ国会承認との関係が定められているとおりでありますが、そしてまた同時に、同時にこの両方の法律が適用されることはない、これは申し上げたとおりでございます。

岡田委員 総理、聞かれたことについてだけ簡潔にお答えいただいた方が国民にはわかりやすいと思うんですね。

 それで、国会承認についてちゃんとお答えいただけなかったんですが、なぜ国際平和支援法では例外なく事前承認を求められ、重要影響事態法では原則事前承認となっているんでしょうか。もう一回お答えください。

安倍内閣総理大臣 まさに重要影響事態、これは、我が国に対して、先ほど御説明をいたしましたように、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態でございます。そして、当然これは緊急を要する、我が国の国民に重要な影響を与えるわけでございますから、これは緊急な対応も必要になる場合もある、こういうことになるわけでございます。他方、国際平和共同対処事態につきましては、これは国連憲章の目的に従い対応していくわけでございまして、その違いがある。これは、お話を聞いていただいた皆さんにはおわかりいただいている。

 まさに我が国事態そのものである、そして、他方は国連憲章の目的に資する活動であるという違いがある、こういうことでございまして、この点からも、いわば国会の承認が関係してくるわけでありますが、ある事態が、その中において、まさに重要影響事態に該当すると評価され、特定の対応措置を実施する必要があると認められる場合には、政府は、閣議決定した基本計画を遅滞なく国会に報告するとともに、後方支援活動等の実施については国会の承認が必要であるわけでありまして、このように、重要影響事態法におきましても厳格な手続のもとで運用されるということにつきましては全く同じことであろう、このように思います。

岡田委員 もう少し簡潔な答弁をお願いしたいと思います。

 実は、私の理解するところ、この国際平和支援法で、国会承認、例外なく事前承認にしたのは、これは与党協議の結果なんじゃないですか。私の理解では、公明党がこの点を強く主張してこうなったというふうに理解していますが、太田大臣、いかがですか。

太田国務大臣 私は、現在公明党を代表して答弁するという立場にもありませんし、主管大臣でもありませんから、お答えすることは適切ではないと思いますが、私の聞き及ぶところでは、公明党は、自民党はどうか私はわかりません、公明党は事前承認を求めたということは事実だったと思います。

岡田委員 私の理解するところ、公明党が強く与党協議の中で主張されて、ここは最初は必ずしも事前承認ということではなかったけれども、例外なく事前承認になったというふうに私は理解をしております。

 それはそれで一つの公明党の成果だと思うわけですけれども、ただ問題は、この重要影響事態と、国際平和支援法におけるこの事態、国際平和共同対処事態、この垣根は結構低いと思うんですね。

 先ほど総理の御答弁の中でも、両方重なったときには基本的には重要影響事態法で対応するということだと思うんですね。総理はいつも言っておられますよね、世界の平和と安定なくして我が国の平和と安定なしと。そういう論法を使っていけば、ほとんど、国際平和支援法の世界ではなくて重要影響事態法で対応する、できるということにもなりかねないと思うんですね。要するに、世界の平和と安定に影響を与える、そういう事態があったとしても、それは日本の平和と安定にも重要な影響を及ぼすんだということになれば、それは重要影響事態法でまず対応しようと。

 つまり、私が申し上げたいのは、公明党がいろいろと御努力されて、例外なく事前承認というふうに入れられたけれども、実際には、この法案の適用される余地というのは、それは政府の考え方次第ですけれども、これは狭くて、例えば、国会の事前承認が難しいということになれば重要影響事態法の適用だとして、重要影響事態法の適用になれば、原則事前承認ですから、例外ありですから、そういうふうな運用によって、公明党の御努力というのは結局無に帰してしまうんじゃないかというふうに私は思うわけですが、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 これは、もちろん我々は公明党の皆様と、与党で何回も議論を重ねました。その中において、自民党と公明党が完全に一致をしたものが今回の法制でございまして、我々も、今出しているこの国会承認との関係においては全くそのとおりだと思っているからこれを出しているわけでございます。

 つまり、重要影響事態と国際平和支援法とはまさに要件が違うわけでありまして、先ほど申し上げましたように、我が国に対する事態でありますからこれは緊急を要する場合があるということでありまして、原則とするということを申し上げたところでございますが、国際平和支援法では、まさに先ほど申し上げましたように国際の平和、目的が違いますから、こちらの方が使い勝手がいいからこちらを使うということはあり得ない。

 日本は法治国家でありますから。これは明確に法文上も違うわけでありまして、重要影響事態法は、重要影響事態に際し、我が国の平和及び安全の確保に資するため我が国が実施する対応措置等を定める法律でありまして、一方、国際平和支援法は、国際社会の平和及び安全のために国際社会が共同して対処している事態に際し、国際社会の平和及び安全の確保に資するため我が国が実施する対応措置等を定める法律でございまして、まさにこれは全く、そもそも違う。

 しかし、先ほども申し上げましたように、これは重なる場合がありますけれども、重なる場合においては、例えば、国際平和支援法の対象であったものがまさに我が国に直接かかわってくると判断される場合は、当然それはあり得るわけでありまして、そのときにはそちらを適用するということになるわけでございます。

 しかし、今、岡田委員が引用されました私の言葉、例えば、世界の平和と安定は我が国の平和と繁栄にとても重要である、こういうことを申し上げたわけでありますが、これは恐らく多くの方々には賛同いただけるのではないか。それがすなわちまさに重要影響事態となるということを私は申し上げたことは一度もないわけでありまして、そこと重要影響事態は明確に切り分けて考えなければならない、このように皆様に理解をしていただきたいと思っているところでございます。

岡田委員 総理、私が最初に聞かないのに、両法案重なる場合があるということでるる説明されたんですね。

 ですから、結局、違う面から見ているかもしれないけれども、結構垣根は低い。やることは一緒なんですよ、外国軍隊に対する後方支援ですから。入り口が違うんですね。入り口、一方は非常に厳しくしているけれども、実はその垣根は低いということを申し上げているんです。

 もう一つ、最近、私非常に興味深いと思ったのが、五月二十八日のこの委員会の質疑で、重要影響事態法の定義のところが議論になったんですね。この定義で、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」、これが重要影響事態の定義ですが、この赤で書いてあるところの最後の「等」ですね、この意味が議論になりました。

 公明党の北側委員は、この例示の意味というのは単なる例示ではありません、こうした例示と同等なもの、匹敵するもの、こういうものの例示として挙げていると。つまり、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」と同等なものでないと重要影響事態じゃありませんねというふうに北側さんが言われたわけですね。質問者です。それに対して、内閣法制局長官は、どのような事態を法律が想定しているかの理解を助けるために、代表的な具体的事例を例示したものであると。

 単なる例示ではありませんね、同等のものですねと北側さんが言ったのに対して、代表的な事態を例示したものですというふうに長官はお答えになりました。

 これに関して、緒方委員が六月二十九日に、あくまでも例示であって、定義そのものに全く影響を与えていないということでよろしいですね、こう問うたところ、中谷長官は、委員御指摘のとおり例示でございます、こういうふうにお答えになりました。

 つまり、これは単なる例示だという理解で、中谷さん、いいんですね。

中谷国務大臣 御指摘の、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等」という例示部分は、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態の意味するところを例示的に丁寧に説明をしたということでございまして、これは、現在の安全保障環境に照らしてみましても、この例示は最もわかりやすい典型的な例であるということで、丁寧に説明したものであります。

 そのやりとりにつきましては、民主党の委員から、「等」ということで、六つの事例が挙げられておりまして、その事例について、これは類型ではないかというような御質問がありましたので、この事例の六つの例におきましては、この事例がされたときに政府の統一見解が出ておりまして、この六つの事例につきまして、具体例をあらかじめ包括的に示すことはできないが、例えば次のような場合があるということで六つの事例を挙げたということで、あくまでも事例であって、全てを網羅的にしたものではないということでお答えした部分でございます。

岡田委員 委員長もちょっと笑っておられると思うんですが、このやりとり、違うんですよ。六つの事例が出てくるのは、その後、このやりとりの後出てきた話なんですよね。

 そして、私が聞いているのは、定義そのものに全く影響を与えていないということでよろしいですねという問いに対して、御指摘のとおりというふうに言っているわけですよ。だから、これは定義に影響を与えるものではなくて、単なる例示であるという認識でいいですねと確認しているわけです。

 もし違うなら、前の答弁を修正しなきゃいけませんよ。どうですか。

中谷国務大臣 先ほどお話ししたように、そのまま放置すればという部分におきましては、例示的に丁寧に説明をするというものでありまして、現在の安全保障環境に照らしてみても、この事例は最もわかりやすい典型的な例ということで、例示を丁寧に説明するものとして挙げた。また、今度の法案についても引き続きそれは挙げております。こういう意味であることは事実でございます。

岡田委員 つまり、北側さんが言われた、単なる例示ではない、こうした例示と同等なもの、匹敵するもの、こういうものの一つの例示として挙げているという解釈は間違っていたということですね。いかがですか。

中谷国務大臣 そのときいろいろな議論が、やりとりがありまして、「等」ということで、六つの事例の話も出ておりましたので、それは事例である、包括的なものでないというようなことをお答えしたつもりでございます。

岡田委員 中谷大臣、言うに事欠いて、全く関係ない答弁をしないでもらいたいと思うんですね。

 いずれにしても、普通に考えれば、それはそうかもしれません。ここに書いてある「等」は単なる例示だと。だから、私、北側さんの言われたのは少し言い過ぎていると思うんですよ。

 ただ、恐らく与党協議の中で、公明党は何とかこれを少しでも縛りたいということでいろいろ御努力された、そのあらわれだと思うんですが、先ほどの国際平和支援法の入り口を絞ることといい、この重要影響事態の定義を限定することといい、いずれも成功していないということなんですよ。それが受け入れられていないということなんですよ。

 これ、だって、単なる例示ですということになっているじゃないですか、政府の答弁は。だから絞り込んでいないんですよ。重要影響事態というのは、北側さんが言うのは、単なる例示ではなくて同等なもの、つまり、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある」、これと同等なものだと。そうじゃなくて、それは単なる例示ですから、もっと幅広いものだというのが政府の答弁ですよね、中谷さんの答弁も含めて。だから、それはうまくいっていないということですよ。絞り切れていないということなんです。

 北側さんがいろいろ言われたこと、あるいは公明党が努力されたこと、それは実は成果を結んでいないということを私は申し上げたいわけです。もし反論があるなら言ってください。

安倍内閣総理大臣 まさに自民党と公明党で議論をしてきたわけでありますが、重要影響事態とはどういう事態かということを、これは端的に、わかりやすく、典型的に示す例としてここに挙げたわけであります。ただ、同時に、典型例ではありますが、これ以外にも、いわば事態というのは相手があることでもありますし、国際状況が変遷していく中においてこれだけということは言えないというのは、これは共通認識であります。

 しかし、今考え得る典型的な例は何か、単なる例ということではなくて典型的な例として、しかも明示的にこれを挙げているわけであります。だらだらだらと挙げて、この一つですよということではなくて、まさにこれは典型例として、特にこういうことはまさにわかりやすい例として典型例ですねというところで特記しているわけでございますので、これこそ、まさに自民党と公明党の考え方にそごはないと、今の御議論を聞いていて、私はそのように思ったわけでございます。

 先ほどの、お話をさせていただいた、国会承認との関係におきましても、まさに目的が違うわけでありますから、それを、恣意的に使いたい方を使えるというたてつけには全くなっていないということもぜひ御理解をいただきたい、このように思います。

岡田委員 典型例という言葉を総理は使われましたが、問題は、ですから、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」と同じレベルの、かなりの事態ですからね、これは。同じレベルの事態でなければ重要影響事態にならないのか、それとも、ここまで至らないような、もう少し緩い概念で重要影響事態ということになるのかということが議論になっていて、典型例だというのは、やはりそれは、これと同じレベルでなければならないという話ではないですよね、代表例とか典型例というのは。そこに満たないようなレベルのものも含まれているということになるんじゃないですか。

 もし、総理がそうでないと言うなら、委員長、ここの整理をぜひ政府にお示しいただきたいと思います。この二つの考え方、この「等」の意味ですね。そのことについて、きちんと政府の見解を示していただきたいと思います。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

中谷国務大臣 私の発言でございますが、そこの文章の例示部分は、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態の意味するところを例示的に丁寧に説明をするものであります。

 重要影響事態というのは、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態でありまして、現在の安全保障環境に照らして考えてみても、この例示は最もわかりやすい典型的な例である、したがって、重要影響事態の意味するところを例示的に丁寧に説明するものとして、引き続きこの文章は残されたということでございます。

安倍内閣総理大臣 まさに、今、中谷大臣から答弁をさせていただいたように、これは典型例として挙げたわけでありますが、しかし、重要影響事態という事態は、これはまさに、我々は常に国民の命や幸せな生活を守らなければいけないという観点からも、この重要影響事態という概念を定めて、それに対応しなければならない、こう考えているわけでございます。

 その中の典型例としてお示しをしましたが、起こり得る事態を最初から固定的に定めていくということでは、こういう安全保障上の対応については、それはなかなか難しいわけであります。今の段階で典型例として申し上げられることはこの例だなというところでございます。

 しかし、国民の命を守らなければならない中において、我々は、典型例としてお示しをしましたが、これが全てではないという考え方を持っておく必要が常にあるんだろうと思うわけでございます。例として一例を挙げさせていただいたわけでございますが、これはもうまさにポジティブリストとして全部挙げるということは、なかなかこれは困難である、こういうことでございます。

岡田委員 全部例を挙げろとか、そんなことは全く言っていないし、総理が今言われたように、これだけだということも私は全く言っていないわけです。

 「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」と同じレベルのことが重要影響事態なのか、もっと幅広いものなのかということを聞いているわけです。

 もう一回、政府答弁を、後で理事会で御協議いただきたいと思います。

 なぜこういう議論が出てくるかというと、やはり重要影響事態、その概念そのものが非常に曖昧、我が国の平和と安定に重要な影響を及ぼすというのはかなり幅広い概念だということだと思います。

 従来の周辺事態法にも同じような定義がありましたが、周辺事態法は一応周辺事態。あの法律をつくったときに我々の念頭にあったのは朝鮮半島有事、そのことを念頭に置いて法律をつくった。地理的概念ではないとかいろいろな議論がありますが、しかし、やはり周辺という言葉が使われているので、おのずとその範囲には限定がかかっていた。

 それからもう一つは、日米安保条約の「効果的な運用に寄与」するというのが法目的なんですね。だから、日米安保条約というのはその適用範囲も決まっていますから、その効果的な運用に寄与すると言えば、おのずとそこに限定はあった。今回は、それも基本的に取り去られて、日米安保条約の「効果的な運用に寄与することを中核とする重要影響事態に対処する外国との連携を強化」するものだということで、安保条約そのものじゃなくなっているんですね。

 だから、わかりやすく言えば、世界じゅうどこでも、米軍あるいはその他の軍も含めて、自衛隊が後方支援できる法案であるというふうに考えるわけですね。重要影響事態であればそうできるということだと思うんですね。

 なぜそこまで広げる必要があるのかということを非常に疑問に思うわけです。自衛隊の能力にも限りがある、予算的にも限りがある、そして我が国の周辺の事態は、周辺環境は厳しくなっている、そういう中で、なぜそこまで幅広く後方支援というものを展開していかなくてはならないのか、そこは私は非常に疑問なんですけれども、総理、お答えありますか。

安倍内閣総理大臣 周辺事態安全確保法も、これは地理的概念ではありません。その点においては今回と同じでございます。しかし、周辺という言葉も使われているということもございまして、いわば地理的概念と誤解される可能性もございますので、今回は、重要影響事態という、いわばまさに事態に着目をしているということを明確にさせていただいたわけでございまして、その点は変わりがないということを御理解いただきたい。

 と同時に、では日本に重要な影響を与える事態が生じるのは専ら日本近海だけなのかということでございますが、それはやはりそうではない。大きく安全保障環境も変わりましたし、武器等も進歩を遂げているという状況の中において、これはいわば、まさに日本の繁栄というのは世界との交易の中で成立をしているわけでございますし、また多くの日本人が海外で活動をしている、海外にたくさんの日本の拠点が存在するという中において、これは日本の近傍だけに限られるわけではもちろんない。

 これはもちろん周辺事態安全確保法においてもそうだったわけでございますが、今回は、周辺という、いわば誤解を与える名前を、これは、あのときも事態に着目するということは明確にお答えをしているのでございますが、今回はまさに事態に着目をする、重要影響事態、このような形にしているということでございまして、かつ、これは日本の近傍に限られたわけではないということにつきましては多くの方々にも御理解をいただけるのではないか、このように思います。

岡田委員 私は、日本周辺の安全保障環境が変化している、その認識はかなり共有するわけですが、そうであれば、やはりそういった事態にきちんと備えられるものとして、周辺事態法、従来の枠組みを残しながら対応すべきであるということを申し上げておきたいと思います。

 そして、従来から地理的概念ではなかったということですが、総理答弁はありますよね、インド洋、中東までは行かないんだと。ですから、どう考えても周辺というのは地理的概念ですけれども、政府の地理的概念ではないという答弁にもかかわらずそういう総理答弁もあるわけだし、日米安保条約の実効性確保という限定もかかわっていたわけですから、それを全部外しているというのは、私は、必要のないことだし、かえって我が国の平和と安全という観点から見ても問題の大きい、そういう案だということを申し上げておきたいと思います。

 次に、存立危機事態における防衛出動についてお話をしたいと思います。

 総理とこれは何回も議論してきましたが、なかなか煮詰まった感じが出ないので、国民の皆さんもなかなか理解しにくいと思うんですね。少し整理をして、この、総理がみずからパネルとして掲げられた案件、日本人の母子を乗せたアメリカの船が攻撃を受ける、そういうときに守れなくていいのかということを総理は言われました。

 ここに、この前の党首討論などの議論を踏まえてもう一要件ちょっと加えておきますが、つまり、攻撃国が日本を攻撃するという言動を繰り返し、そしてミサイル発射の準備状況から我が国にも武力行使が行われかねない状況にあるという要件を一つ加えた場合に、この前申し上げたのは、最初にまず、攻撃国と被攻撃国との間で戦争が始まる、そして米軍も攻撃国と既に戦闘に入っている。二番目に、その攻撃国は、我が国に対してミサイルを撃ち込む、そういう意図の表明があったり、あるいはそれを示唆するような表現があったり、あるいはそれに近い行動が見られる。三番目に、米艦が攻撃国から攻撃を受ける、その米艦には日本人が乗っている。

 そういうケースで考えて、どの時点で、時系列的にいうと今申し上げたような時系列になると思うんですが、時系列でいうと、どこまでいけば存立危機事態という認定がなされるとお考えなんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 まず、今、岡田委員からいろいろな例示がなされました。(岡田委員「一つだけですよ」と呼ぶ)いろいろな例示というか、幾つかの条件が、例示は一つでありますが、条件が付されたわけでございますが、基本的には三要件に当たらなければならないということでございます。

 三要件の三番目については、これは必要最小限の実力行使にとどまるべきことということでありますし、二番目には他に適当な手段がないということでありますが、第一要件ということであろう、このように思うわけでございます。

 まず、米国への攻撃が発生している。つまりこれは、第一要件の我が国と密接に関係のある国でありますから、これは満たしているということであります。そして同時に、我が国への攻撃が切迫をしているという状況もあるということを今岡田委員の方から示していただいた。これは、切迫事態であるか予測事態であるかはまだ今ここで明言することはできませんが、諸々の状況によればこれは予測事態であり、また、いろいろな状況が加わってくれば切迫事態なんだろう、こう思います。

 そういう状況があるという中において、邦人輸送中の船、あるいはミサイルの警戒に当たっている米艦、これは両方、どちらでもいいんですが、今例として挙げられているのは邦人輸送中の船でありますが、その米艦が攻撃をされる明白な危機という段階におきまして、これはまさに根底から覆される明白な危険が存在する、つまり存立危機事態の認定が可能である、このように考えているところでございます。

岡田委員 そうすると、私の言った三段階という、総理は私との前回のやりとりでもそういう御答弁だったんですが、米艦が攻撃を受けるということが存立危機事態の認定の要件だということになると、米艦が攻撃を受けることが、なぜ、我が国の存立が揺らぎ、我が国国民の権利が根底から覆されるということになるんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 これはもちろん総合的な判断になるんですが、まず、米国への攻撃が発生しているということ、それと、今岡田委員が挙げられて議論を行ったのでございますが、日本に対して攻撃が切迫している、あるいは予測事態であるという条件が重なっているということもあります。その上において、米艦に対する攻撃ということについては、これはまさに我が国の、いわば国民の生命そして自由や幸福追求の権利が根底から覆されるおそれにつながっていくということになります。

 これはまさに、例えば、朝鮮半島にいる多くの日本人を含めて外国人はまずは日本に避難、エバキュエーションの計画はそうなっているわけでありますが、これは、米艦といっても、さまざまな米艦があるわけでございまして、軍艦だけに限られないわけでございますが、それを攻撃するということは、まさに、日本海において、近隣諸国は全面的に日本との船の行き来に対して攻撃をしている、このようにも解されるわけでありますし、何といっても、多くの例えば日本人が乗っている可能性が十分にあるにもかかわらず、それを攻撃するということについては、これはもう既に日本を攻撃する意図がかなり、十分にうかがわれるということであります。

 そして、それを我々がいわば守ることができるという状況においてそれを守らないということは、まさにこれは国民の生命や自由や幸福を追求する権利を守ることを放棄するということにもつながっていくわけでございまして、まさに今申し上げているとおり、第一要件にこれは当たり得る、こういうことになるわけでございます。

 御党においてはそれは全く放置しておけということかもしれません。現在ではできないわけでありますが、それに対応する法案を……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 私と岡田代表とのやりとりにおいて、党首討論においても、この際どうするんですかということを、これは政治家同士としての、お互いに党を代表する者同士としての問いの投げかけに対して、残念ながらお答えはいただいていないわけでございますが、最初に申し上げましたように、第一要件に当たり得るのは今御説明したとおりでございまして、これは十分に御理解をいただけるだろう。

 まさに米国に対して攻撃が与えられている、しかも、日本に対する攻撃が予測されている、切迫している、そういう状況の中にあって、いわば日本に逃れようとする人々を運ぶ米艦を攻撃する。それはもうそれだけではなくて、多くの船を攻撃しているという状況の中で起こることでありまして、それが全く、国民の命を守ったり、自由や幸福追求の権利を根底から覆していないと岡田さんは考えているのかもしれませんが、我々は、それを覆す明白な危機である、こう考えているわけでございます。

岡田委員 総理、聞かれたことにきちんと答えられたらどうですか。

 総理の論理を追っていって私でも頭が混乱してしまいますから、国民の皆様は全くわからないと思いますよ。だから理解が進まないんですよ、こういう答弁を繰り返しているから。だから、もっと真摯に答えてもらいたいんですよ。

 まず、民主党がどうするかというのは、前にも一度、昨年もお答えしていますが、我々は、これは警察的な行動として、米艦防護ということではなくて、日本人を守るという観点で、どの船に乗っていようと、例えば朝鮮半島有事があって五万人の日本人が逃げてくるということであれば、それを運ぶ船に対して、海上警備行動を発令して、あるいはそれに類似したものを発令して、そして守るということを、これは防衛出動じゃありませんよ。守るということを申し上げているわけです。そして、それで攻撃を受ければ、最低限の武器の使用で排除はできる、これが本来の流れだと思うんですね。

 では、総理の今言われたことで一つ聞きますが、ここで米輸送艦防護の要請というのがアメリカ政府からあると。これは、どういうタイミングであるんですか。

安倍内閣総理大臣 今の警察権というお話でございますが、相手は既に武力攻撃をしています。米国に対して武力攻撃をしている中で、そうした武力攻撃の一環で武力攻撃をしている中で、とても警察権で、これはとても警察権で対抗はできないという事態であるということは、ミサイルに対してまさにピストルで対応するようなものでありますから、これは極めて現実から遊離した立論であろう、こう思うわけでございます。

 その上で、ということを申し上げた上で申し上げれば、これはもう先ほど来申し上げているとおり、まさに明白な危険がある中において我々はそう判断すると先ほど申し上げた。

 つまり、タイミングはいつかということでありますが、まさにタイミングというのは、事態をそう判断するのは、どういう事態が起こった、それを、タイミングといえば、それはそう認定したことがそのタイミングでありますが、その認定する要件としては、要件としては、まさに米軍に対する武力攻撃が発生していて、我が国に対する攻撃が切迫、あるいは予測と言ってもいいんですが、という状況があって、そしてその中で、例えば日本を警戒する米艦艇、あるいは日本に邦人を初めそういう人々を運んでこようという船に対する武力攻撃があるということが明白な段階においては、これはまさに我々は事態を認定するということになるわけであります。それがそのタイミングとなるわけでありまして、これは明確ということを申し上げておきたいと思います。

岡田委員 先ほど私が申し上げたことで総理言われましたが、日本に対しては武力攻撃はないんです、まだ。日本に対して攻撃はされていないんですよ。そういう中で我々は、みずから武力行使をせずに、その前の段階で警察行動として自衛隊を動かすと。それは全く問題のない話、無理のない話だと私は思います。

 今、総理が言われた明白な危険とは、そうすると、米艦が襲われる前でもいいということですね。明白な危険があればやる、そういうお答えですか。

安倍内閣総理大臣 これはもちろん集団的自衛権ですから、まず、我が国と密接に関係のある国に対して武力攻撃が発生していることでありますから、先ほど来申し上げておりますように、まずは米国への武力攻撃が既に発生しているということであります。その中において、武力攻撃が発生している中において、そしてさらに我が国への攻撃が切迫をしているということであります。同時にこういうことがある。この二つの条件があります。そして三番目に、ミサイル警戒、例えばミサイル警戒に当たっている米艦が攻撃される明白な、この米艦に対しましては明白な危険という段階で、これは存立事態という認定をすることができる、こう考えているわけであります。

岡田委員 先ほどまでは攻撃されたらと言っておられたような気がするんですが、その前に、明白な危険があれば発動する、こういうお話でした。

 私、総理の答弁をお聞きしていてよくわからないのは、これは個別的自衛権のときには、防衛出動という概念がありますね、しかし防衛出動即武力行使ではない、武力行使するためには相手方の武力攻撃の着手がなければ武力行使できないと、二段階になっていますよね。では、こういう存立危機事態における攻撃の着手という概念は、何が、アメリカに対するものなんですか、日本に対するものなんですか。それとも攻撃の着手という概念はそもそもこの場合にはないんですか。ちょっと明確にお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 これは、まずは武力攻撃が発生していることということであります。これは、三要件においては、まずは我が国に対する武力攻撃が発生していること、これであれば個別的自衛権でいくわけでありますが、と同時に、我が国と密接にある他国に対する武力攻撃が発生したことでありますから、先ほど私が答弁をさせていただいたとおり、岡田委員も例示として挙げられたとおり、米国への武力攻撃が発生していなければなりませんが、例として、これはもう武力攻撃が発生をしているわけであります。

 そこで武力攻撃が既にもう発生している中において、そしてさらに我が国への攻撃が切迫していると認識し得る状況であるということについて、もう武力攻撃が発生しているんですが、そしてその先においては、その一環として、その中において、先ほども明確に答弁をしておりますが、例えばミサイル警戒に当たっている米艦が攻撃される、先ほど来これは一貫してこう答弁をしているんですが、明白な危険の段階で、我々は、存立危機事態に認定をし得る、こう考えているところであります。

 いずれにいたしましても、これは総合的に判断をいたしますから、今挙げた例示が全てということではないわけでありまして、つまり、事態というのは最初から全て予測できるということは、これはできないというのが国際常識でありまして、その中で、今からそれを想定して、これ以外ではできませんと言うのは、極めて現実から遊離した議論になっていくということは申し上げておきたいと思います。

 その中において、今、一つの例として挙げられましたから、その例をもとにお答えをさせていただいているところでございます。

岡田委員 今の総理の御答弁を私なりに整理しますと、まず、着手の概念というのは、最初に、米国が攻撃を受ける、それが着手であるという考え方ですね、私はそう理解したんですが。

 それからもう一つは、米艦に対する攻撃、そこに明白な危険があればそこで日本は武力行使できるということですか。明白な危険というのは、これは存立危機事態において防衛出動する要件ですよ。

 防衛出動する要件は武力行使の要件とは本来は違うはず、少なくとも個別的自衛権では違う概念。しかし、今、明白な危険があればそこで日本は武力行使できるというふうに総理は御答弁になったと私は理解しましたが、そういうことですね。だから、存立危機事態に基づいて防衛出動したら、即、いつでも武力行使できますと。もうそこで明白な危険があるということは認定をされているわけですから。そういう理解でいいですね。

安倍内閣総理大臣 いや、我が国に対する武力攻撃事態、これは個別的自衛権で対応する事態と、我々が限定的に認定した集団的自衛権で対応する存立危機事態は、これは事態が違う事態でありますから、まさにこれは別の概念ということで御理解をいただきたいと思います。

 まず、我が国事態においては、防衛出動に至る上において、切迫事態においては防衛出動ができますが、しかし、それは武力攻撃を我々はできないわけでありまして、我々が武力攻撃を受けなければならないということになるわけでありまして、しかし、武力攻撃を受けるときに、その武力攻撃はどこで発生したかということでいえば、着手ということになるんだろう、こう思うわけであります。着手した段階で武力攻撃が発生した、これは今まで答弁しているとおりでございます。しかし、当然それは、着手については非常に限定的になっていくのはもう御承知のとおりであろうと思います。

 一方、我が国が攻撃をされていないにもかかわらず、我が国と密接に関係のある他国に対する攻撃があった、これはまさに攻撃があった中において、そしてさらに、我々は今回は限定的に集団的自衛権の容認をしておりますので、さらに我が国への攻撃が切迫をしているという事態が加わっていくわけであります。米国への攻撃が発生して、そしてさらに我が国への攻撃が切迫をしているという状況が加わるということでありまして、そして、その上に当たって、米国の艦艇が日本を警戒している、この米国の艦艇に対してはまさに攻撃される明白な危険があるという状況をいうわけでございまして、ここではもう着手とかそれはもう、ここにおいては我々は、明白な危険がある中において武力行使をするということでございまして、これはまさに今まで答弁をしているとおりでありまして、よく法案を、また今までの私の答弁をずっとちゃんと読んでいただければ、これは一貫をしていることでございます。

 皆さんは、個別的自衛権と集団的自衛権を混同されておられる方がここにいらっしゃるようでありますが……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 そうではないということでありまして、まさに最後に申し上げましたように、密接に関係のある他国が武力攻撃を受け、さらには攻撃が切迫をしているという中において、ミサイル警戒に当たっている、あるいは邦人輸送中の米艦が攻撃をされる明白な危険の中において存立危機事態と認定をする、こういうことでございます。

岡田委員 ですから、総理、存立危機事態の認定の要件、確かにそこに明白性は出てきますよね。しかし、それは防衛出動をするための存立危機事態の認定なんです。

 そのことと、自衛隊が武力行使する、個別的自衛権の場合には明らかに概念が分けられているわけですね、着手がなければ武力行使できませんと。では、この存立危機事態の場合は、その個別的自衛権における着手の概念に当たるものは何なんですか、どこまで来たら自衛隊は武力行使できるんですかということを私は聞いているわけですよ。非常にシンプルな問いですから、シンプルに答えてください、時間もありませんから。

安倍内閣総理大臣 まさにこれはもう繰り返し答弁させていただいていると思いますが、新三要件においては、我が国に対する武力攻撃が発生したこと、また我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したことでありまして、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること、こう申し上げているわけであります。

 まず、発生したことということについては、先ほど来申し上げておりますよね、米国に対する武力攻撃が発生した、これは御理解いただけます、発生していますね、発生している。つまり、三要件の第一要件で、発生をしています。そして、その後、我が国に対して危険が切迫をしているということでありますが、同時に、その後、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険ということが先ほどの段階で起こっているということでありまして、これはまさに定義の根底でありますから、これはそのとおりでございます。

岡田委員 申しわけないですけれども、全くわからないんです、説明が。ですから、政府で少し整理をしてもらって、これは文書で示してください。これは根幹の部分でしょう、法案の。つまり、防衛出動をするかどうか、そして自衛隊が武力行使するかどうか、そういう根幹の部分なんですよ、これは。

 そして、総理は、国民の命と暮らしを守るためにこういう法案が必要だと言われますが、防衛出動をする、武力行使をする、いわば戦争を始めるわけですよ、日本も。ですから、そのことによって、国民の命や暮らしもさまざまな影響を受けるんですよ。守られないかもしれないんですよ、逆に。

 そういう非常に重要な概念だから、私は明確性が必要だということを前から申し上げているんだけれども、総理の答弁を聞いていて、そもそも、着手と、自衛隊出動のための存立危機事態の認定の話、ここもごちゃごちゃになっているし、よくわからないんですね。こういうことで本当に国民の命と暮らしを守ることになるのかということを私は申し上げているわけであります。

 もう同じ答弁なら私は必要ありませんから、次に参ります。

 まだ時間もありますからやりたいんですが、後方支援について、総理は、後方支援、非戦闘地域をやめたことについて、自衛隊は機敏に活動することができないという経験を積んできたというふうに言われました。

 そこで、私は、後方支援について、今まで、インド洋における給油、それからイラク、サマワでの活動は人道支援に近いと思いますが、バグダッドにおける航空自衛隊の輸送、これが後方支援に近い概念だというふうに思うわけです。

 このバグダッドを中心とした航空自衛隊の輸送活動について、一体どのような事態だったのかという情報が開示されていないんですね。非常に危険なこともあったんじゃないかというふうに思うわけですけれども、なぜそういったことについてきちんと情報開示されないんでしょうか。

中谷国務大臣 イラクの活動が終わった段階で国会の方にはその報告をいたしておりますけれども、こういった活動等につきましては、防衛省の中では総括はいたしております。

岡田委員 例えば、国会で、平成十九年六月、参議院の外交防衛委員会で、当時の久間大臣は、バグダッド空港の中であっても、外からロケット砲などが撃たれる、迫撃砲に狙われるということもあり、そういう緊張の中で仕事をしている、身の危険が非常にあるわけですということを、国会の答弁で当時の大臣が述べておられるわけですね。そして、民間の輸送会社にミサイルが命中したとか、あるいは米空軍の輸送機が攻撃されたということも報道されたりしています。

 日本の航空自衛隊についてそういった危機的な状況というのはなかったんでしょうか。

中谷国務大臣 御指摘の久間防衛大臣の答弁というのは、航空自衛隊が活動する地域はいわゆる非戦闘地域、これの要件を満たしているものの、テロ等の可能性もあり、派遣部隊及び隊員は安全面に細心の注意を払いながら緊張感を持って任務を遂行したことを述べたものでございます。

 この空輸の活動中につきまして、こういった状況の中で、隊員は非戦闘地域という概念を確認しつつ任務を遂行したということでございます。

岡田委員 非戦闘地域であったかどうかは今は議論しません。私は、バグダッド全体は非戦闘地域ではもちろんなかった、空港だけ非戦闘地域だったというのは詭弁だと思いますが、そのことを今議論しようと思いません。

 自衛隊は、一体この活動の中でどういう状況だったんですか。国民の皆さんも知りたいと思っているんですよ。我々だって知りたいですよ。どういう状況、危険な状況があったのか、そういうことをきちんと把握した上でないと、今度概念を変えるわけですから、非戦闘地域をやめるわけですから、そういう概念を変えることの議論ができないじゃないですか。

 あるいは、これはもともと輸送ということだったんですけれども、四万六千人を自衛隊機で輸送したということですが、そのうちの三万人は多国籍軍関係者だったということが報告されていますね。

 武装した米兵等の軍人を運んだという実績はどのぐらいあるんでしょうか。そのことも含めて御答弁いただきたいと思います。

中谷国務大臣 事例等につきましてきょう御質問をいただいたわけでございますが、基本的に、当時のイラクの情勢につきましては、離発着する航空機に対して携帯型の対空ミサイル等による攻撃が発生して、その結果、固定翼航空機、これが被弾した事案も発生したということは承知をいたしております。

 このため、イラクの活動等につきましては、C130等の飛行に際しまして、念入りに安全対策をした上で運航をいたしたわけでございまして、装備、部隊の運用等について入念に検討、工夫をするとともに、日々の運航に際しては、着陸予定の航空機が攻撃を受ける可能性等もその都度考慮した上で運航の可否を判断することとしておりまして、予定した運航を取りやめたということもございます。

 こういった状況で五年間活動をいたしましたけれども、安全確保に努めながら、五年間の期間は無事任務を遂行したということでございます。

岡田委員 米兵等、武装した軍人を運んだ、その人数を聞いているんです。

中谷国務大臣 航空自衛隊は、平成十六年三月から平成二十年十二月までの間に、クウェートのアリ・アルサレム飛行場を拠点として、タリル空港、バグダッド飛行場、エルビル飛行場との間で、C130H輸送機によって、任務運航延べ八百二十一回、人数延べ四万六千四百七十九名、貨物延べ六百七十二・五トン、これを空輸いたしました。

 米兵につきまして、実績におきまして、米軍人二万三千七百二十七名、これは延べでございますが、これを運航したということでございます。

岡田委員 私は、最初のイメージと全然違うんですね。これを考えたときに、武装した兵士も中にはいるかもしれないけれども、それはむしろ例外で、物資も生活必需品のような物資を運ぶんだというふうに私は思って政府の説明を聞いておりましたが、現実には、武装した米兵をかなり運んでいる。しかも、それはバグダッド空港に運んでいるわけです。一歩出れば、バグダッドは、いつテロが起きても不思議ではない、いわば戦闘地域に近いようなところ、そういうところに武装した兵士を送り込んでいたと言われても仕方がないかもしれないですね。だから、実態がそういう実態だったら、我々が事前に聞いていたことと全然違うわけです。

 だから、正直に示してもらいたいんですよ、どういう現実があったのか。その現実を知らずして、この後方支援の議論、非戦闘地域をやめるという議論はできないですよ。だからその情報公開をちゃんとすべきだ。

 あのインド洋における給油活動について、私は野党で、資料要求したときに驚いたんですが、政府から出てきたのは真っ黒でした、墨で全部塗り潰されていた。しかし、アメリカから出てきた情報公開は、ほとんど詳細にわたって事実関係が示されていましたね。もうあれから十年たつんですよ、イラクに飛行機を送ってから。もう十年たって、今出せない理由はないはずですよ。隊員の身に危険が及ぶとかいろいろなことを言われましたが、今はもう終わっているんですから。

 だから、長官、約束してくれませんか、これ。総理、どうですか。きちんと情報公開する、そのことが、この後方支援について新たな概念を入れて議論する前提であるというふうに私は思いますが、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 まず、この任務につきましては、イラク国内において復興支援または治安維持のいずれかの活動に従事していたという米兵でございます。

 人数等につきましては、ただいまお答えしたとおりでありまして、輸送機によって、任務運航延べ八百二十一回、人員延べ四万六千四百七十九名、貨物六百七十二・五トン、これを輸送したわけでございます。

岡田委員 質問に全然答えていただいていないので、ここもぜひ理事会で協議していただきたいと思います。

 きょうの六十分の議論を通じて、私は難しいことは全然聞いていないんです。基本的なことしか聞いていないんですけれども、それに対するまともなといいますか、きちんとした御答弁は、総理も含めて、私はほとんどなかったと思うんですよ。だからこそ、国民の八割はいまだにわからないと言っている。そして、やればやるほど、月次ごとに調査をメディアなどがやっていますけれども、法案に対する反対、あるいはこの法案の趣旨について賛同するかどうかということについて反対、必要ないという意見がふえていくんですよ。

 いろいろなことが今言われていますけれども、ぜひ、しっかりと国民に説明責任を果たして、国民の多くが理解をするという状況をつくった上での採決ならわかりますけれども、こんな状況で採決を急ぐ、強行に採決するということは、これは全く許されないことですから、そのことを最後に申し上げておきたいと思います。

 終わります。

浜田委員長 次に、細野豪志君。

細野委員 民主党の細野豪志でございます。

 私からは、民主党の安全保障に対する考え方を御説明しながら、政府の法案、さらには我が党を含めて提出をされました領域警備法について聞いてまいりたいと思います。

 我が党の安全保障法制についての考え方は、近くについては現実的に対応する、そして遠くについては抑制的に対応する、そして人道復興支援については積極的にやる、こういう考え方でございます。

 そうした考え方に基づいて、まず、我が国の安全保障上の最大の懸念は何かということを考えれば、それは明らかに島嶼防衛である、特に尖閣を中心とした離島の防衛が緊急課題であるというのは、恐らく多くの国民の皆さんが賛成をしていただけるところではないかというふうに思います。

 この離島の防衛でありますけれども、従来は、例えば軍の艦船が直接に侵略をするというようなことを想定した時代もありましたが、今は、現実的には、例えば武装した漁船が上陸を試みるであるとか、不審船がやってくるであるとか、そういったことが想定をされる。

 政府もこの領域警備法については随分検討されたようです。閣僚の皆さんからも必要だという声が出ていた中で、最終的には閣議決定の手続を簡略化することで済まされた。私は、国民の皆さんが持っておられる現実的な懸念から考えれば、この対応は無責任だというふうに思います。

 その中で、まず民主党の提案者にお伺いしたいと思うんですが、私は、政府が言っている、例えばペルシャ湾のような遠くでの集団的自衛権を議論するよりは、近くの領域警備に万全を期すことが最優先だというふうに考えますが、改めて、この法律を提出するに至った理由というのをお聞かせいただきたいというふうに思います。

大島(敦)議員 お答えをさせていただきます。

 今、細野委員が申したとおり、我が国の周辺の海域、あるいは周辺の島嶼部、島々におかれましては、今国民の皆さんが御関心を持っているように、安全保障環境が大きく変化をしております。

 その中で、先ほど細野委員述べましたとおり、武力事態まではいかないんですけれども、その前の段階をどうするかということ、これについては、今回、我が党としては領域警備法を提出をさせていただいております。

 なぜ法律かということなんですけれども、国の行政機関は法にのっとって仕事をしています、法にのっとって。自衛隊、あるいは海上保安庁そして警察という、このように、指揮命令系統をしっかり整えて、行為、その抑止を行う機関というのは、なかなか相互の交流というのが、合同訓練をされているということは承知をしておりますけれども、相互に情報を共有して同じ作戦、行動を行うというのはなかなか難しいところがあります。

 今回の領域警備法の中で、法律をつくったその中に、警察、自衛隊その他の関係行政機関は、「正確な情報を共有する等相互に緊密な連携を図りながら協力しなければならない。」というこの一条があると、例えば、何か有事があったときに、そしてその後この国会で審議されたときに、防衛大臣、国家公安委員長、そして国土交通大臣に、しっかりと正確な情報を共有して密接な連携を図りながらしっかり行動したんですかという質問があります。それを前提としながら各行政機関は状況を整えていきますから、法律をつくるということは極めて意味があることだと考えております。

細野委員 政府がこの法案を出せなかった一つの理由は、やはり、防衛省と、海上保安庁や、あとは警察という治安部隊との、この行政に溝があったんだろうというふうに思います。

 それと同時に、閣議決定によって例えば海上警備行動を発令する、こういうやり方については、幾つかの恐らくすき間が出てくるであろうというふうに思います。一つは、すぐに思いつくのが時間のすき間ですね。どういうタイミングで出すのかということについての対応。そして、仮に平時においても本当に必要なところについては自衛隊は行動できるということになると、その自衛官の職務がどこまで権限が確保されるかというこの問題。そして三つ目に、武器の使用がどこまでできるか。

 この溝がきちっと埋まっているかどうかが法案のポイントだと思いますが、この点についてどうお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。

緒方議員 御答弁申し上げます。

 委員御指摘のとおりでありまして、時間のすき間、武器使用のすき間、そして権限のすき間、この三つが、現行の法制度と、そして我々が本来やるべき領域警備のあり方の中にすき間があるということでございます。

 本法案では、警察機関の配置や本土からの距離等の事情によりまして不法行為等に対する適切な対応をすることが難しいというような高い蓋然性がある場合には、領域警備区域を定めまして、自衛隊が平時から情報の収集、不法行為の発生予防及び対処のための領域警備行動を行うことが可能となっております。

 領域警備行動を行う自衛隊の部隊に対しましては、平素から、警察官職務執行法さらには海上保安庁法の、警察機関に与えられます権限を与えることによって、権限と武器使用のすき間を埋めること、これを目的といたしております。

 さらに、治安出動または海上警備行動に該当する事態が発生する場合に備えまして、あらかじめ領域警備基本方針及び対処要領を定めておくことによって、改めて個別の閣議決定を要することなくこれらの出動を下令することにより、時間のすき間を埋めること、これを可能といたしております。

 これら、時間、権限、武器使用、この三つのすき間を埋めることによりまして切れ目のない対応を行うことができるようになり、国民の生命財産、我が国の領土、領空、領海を的確に防衛していくことが可能になるというふうに考えております。

細野委員 こういうやりとりは政府との間でも何度かやってまいりましたが、そのたびに政府からは、こういう批判というか懸念というものが表明をされてきました。それは、平時から自衛隊が行動するということになると、事態をエスカレートさせてしまうのではないか。この懸念には、やはりきちっと提案者としても答える必要があるというふうに思います。

 すなわち、警察や海上保安庁と自衛隊との役割分担をどのように考えているのか、これもあわせて伺いたいというふうに思います。

後藤(祐)議員 お答え申し上げます。

 役割は明確に分担されておりまして、離島等の陸域については警察、海上については海上保安庁、そして、これらでは対処し切れない、そんな状況になった場合には、手をこまねいているということは不適切ということになりますので、この場合に自衛隊に出ていただく場合があり得るということで、ここは明確になっておりますし、あくまで第一義的には警察、海上保安庁ということは法案にも明記させていただいているところでございます。

 むしろ問題は、ここの権限争いがやはり役所の中にあって、なかなかこれを法案として出すことが難しかった。これは与党の皆様方の方がおわかりじゃないかと思います。

 この点については、高村自民党副総裁が平成二十六年七月三日にこのように述べておられます。「これは、軍と警察の百年戦争だ。今回の整理で」、すなわち政府側の閣議決定ですね、「五十年ぐらいに縮まったが、これ以上突っ込んだら大変なことになる」というふうに語ったそうでございます。つまり、この領域警備法で自衛隊の権限がふえると警察と海上保安庁の権限が減ってしまうのではないかということで、これは役所の中の縦割りの権限争議ゆえにこの法案がなかなか出てこなかったのではないか。

 その証拠には、実は自民党の先生方も、この領域警備法の必要性については相当述べておられまして、まず、中谷大臣は、平成二十五年十月二十五日の衆議院本会議の質問で、「領域警備の権限と体制を、国際法に基づいて法整備する必要」があるというふうに述べておられますし、石破大臣も、平成二十六年一月二十八日の衆議院本会議で、「各省庁連携のもと、早急に法を整備し、」というふうに述べておられますし、下村大臣も平成二十三年二月二十四日に同様に発言しておられます。

 それどころか、二〇一二年十二月の衆議院選挙の自民党の政権公約には、「「領海警備法」の検討を進めます。」こういうふうに明示されているわけですね。

 これで、政権交代を受けて最初に防衛大臣になられたのが小野寺防衛大臣であります。きょうの朝も御質問がございましたけれども、小野寺防衛大臣は、政治家がしっかり議論し、最後は決断するというようなことをおっしゃっておられました。

 尖閣を初めとした離島を守るということについては、恐らく党派性はないと思うんです。むしろ、役所の縦割りでこういった法制ができてこなかったということについて、ここは党派を超えて、立法府でこの法案の必要性をぜひ議論していただきたいというふうに思います。

細野委員 与党の側でもさまざまな検討がされたけれども、法案の最終的な提出には至らなかった、そこを野党の側から、さまざまな問題を総合的に考慮して、すき間のない案を出したということだというふうに思います。

 次に、近くについては現実的に対応するという意味で、私は、島嶼防衛に続いて考えなければならないのが、非常に残念なことでありますけれども、やはり朝鮮半島有事という極めて深刻な危機だというふうに思います。

 ここは外務大臣にまずお伺いしたいんですが、韓国には、在住者に加えて旅行者を加えると、五十万人ぐらいの日本人がいる、さらにそれを超えるかもしれないというふうに言われている、休みの期間であれば。この邦人をどのようにしっかり守って日本に帰国をさせるのか。

 総理が例示をされた、南北朝鮮の戦争が始まって、これは具体的には例示をされていませんが、米艦に乗って日本人がそれこそ逃げてくる、それを、日本の自衛隊が集団的自衛権を行使するかどうかというような例は、これは現実的には極めて非現実的もしくはレアなケースであって、通常は、戦争が始まる前であるとか危機的な状況において日本人が大量に逃げてくる、例えば釜山港から日本の九州を目指すというようなことについてどう対応するか、これだと思うんですよ。

 政府はそういった問題にどのように法的に対応しようとしているのか、御答弁をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、政府におきましては、朝鮮半島において在留邦人の保護あるいは退避が必要になった場合、こういった場合を想定しまして、平素から関係省庁間の連携のもと、対応の方策を検討しております。

 仮に、朝鮮半島有事において邦人等の退避を必要とする事態に至った場合ですが、順番を追って申し上げるならば、これは現状でもできることでありますが、まずは、民間定期便が利用可能なうちに出国または安全な地域への移動を勧めます。そして、民間定期便での出国等が困難になった場合には、個別具体的な状況に応じて、政府のチャーター機あるいは船舶の派遣、さらには、米国を初めとする友好国との協力の可能性、こういったことも検討しながら、最も迅速かつ安全な手段を活用し、邦人の退避支援に最大限努めるということになります。ここまでは現状でもできる部分であります。

 その上で、今回の平和安全法制は特定の地域を想定したものではありませんが、今回の平和安全法制の中には、所定の要件が満たされていることを条件に、自衛隊が、邦人の輸送のみならず、警護や救出等を含む保護措置を実施することを可能とする自衛隊法の改正案が含まれております。諸般の事情を勘案し、邦人の安全確保のための手段として必要と判断される場合においては、改正自衛隊法第八十四条の三あるいは八十四条の四、こうした規定に基づきまして、政府として、自衛隊による在外邦人の保護措置または輸送の実施を検討する、こういったことになります。

 そして、さらには、存立危機事態に至った場合においては、自衛隊による、邦人退避に使用されている船舶の防護活動も実施可能になる。

 こうしたことが今回の平和安全法制の中で可能になると考えております。

細野委員 政府の法案には本当に数え切れないほどの問題点があります。ただ、その中において、この邦人保護の部分については我々も検討しなければならないと思っているんですね。

 ただ、この八十四条の三の部分は、これは、大臣、海上警備行動でやるというわけでもないんですよね、例えば朝鮮半島から逃げてくる場合は。この保護措置そのもので自衛隊が行動できるということになるわけですね。これはちょっと、余りに漠然として、邦人保護という名目で相当自衛隊を自由に動かせるという規定になる懸念があるんじゃないかというふうには私は思います。

 そこで、我々民主党は、周辺事態法、これは周辺事態という概念を守った上で、その中でしっかりと邦人を守って日本に無事帰国させることができるように、そういう備えをするべきだという考え方のもとに政策を提案しているということを申し上げたい。

 ここから、日韓関係に少し話を移していきたいと思うんです。

 今大臣も答弁された、八十四条の三の中でもはっきり書かれているのは、これは、派遣をする先の国がしっかりとそれについて了承するということが前提になっているわけですね。すなわち、このケースで想定をされるのは韓国ということになろうかと思います。

 総理、ちょっと目をあけていただいて、ちょっと横道にそれるんですが、日韓関係を考えるときに、一つのエピソードをお話ししたいと思いますので、聞いていただけますか。

 総理は、李垠殿下という名前を聞いたことはありますか。質問はしませんよ、クイズじゃありませんので。御存じですか。李垠殿下です。多分御存じないと思います。私は、三島で活動するようになって、この名前を非常に印象深く頭の中にたたき込んだんです。

 この李垠殿下というのは、李氏朝鮮、李朝の第二十七代の国王である高宗の第七皇子でありまして、十一歳のときに、一九〇七年に日本に来た。連れてこられたというのが正確かもしれません。

 その中で、お住まいになっていたのが、私の地元の三島市の、駅の南側に楽寿園という風光明媚な公園があるんですが、そこにお住まいになっていた。そこで三島市民と李垠殿下が非常にさまざまな心の交流をしたというのが今でも三島市には残っていまして、それで私は非常に印象深く記憶をしているんです。

 この李垠殿下が日本に来たのは一九〇七年、皇太子として来られました。しかし、一九一〇年には皇太子ではなくなったんですね。そして、準皇族という扱いになった。これはもう総理もおわかりになると思うんですが、一九一〇年の日韓併合によって韓国の国王は廃止をされた。それに伴って李垠殿下は皇太子ではなくて準皇族になり、そしてその後の運命というのは、正直言って、なかなか、本当に大変な苦労をされた方でございまして、日本の陸軍に入って日中戦争にも参加をする、そういう経験もされています。

 私は、李氏朝鮮について、それこそ韓国の方と何度か話をしたことがありますが、いろいろな評価があるのは事実。しかし、五百年以上にわたって続いた李氏朝鮮王朝が日韓併合によってここでついえたという、この韓国、朝鮮半島のアイデンティティーの喪失というのは、私は、非常に日本人が忘れている部分じゃないかというふうに思うんですね。

 総理は、過去に村山談話などについては非常に厳しいコメントもされてきた。総理に戻られてから若干コメントは、継承すると、基本的にはこれまでの考え方を継承するという言い方に変わってはいますが、やはり、我が国が朝鮮半島のアイデンティティーを奪い、そしてそのことによって大変な苦労をかけたという認識はしっかり持った上で七十年談話というのはつくらないと、仮にそれが総理の個人的な談話であっても。

 総理、ちょっと考えてくださいよ。七十年前ですけれども、王を廃止されて、創氏改名もありましたね。これだけの、本当に、言うならば文化的な収奪を受けたということについて、七十年たったといっても、ここについてはしっかり我々は頭にたたき込んで談話を出すべきではないかと思いますが、総理はどのようにお考えになるんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 談話につきましては、我々、まさに七十年前、二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない、この誓いのもと、その後の日本の平和国家としての歩みがあるわけでございます。

 つまり、痛切な反省、そして、それに至るまで、二十世紀という世界はどういう時代であったか、その中で日本がどういう行動をとり、どこに課題があり問題があり反省点があるのかということについて、まさに、現在有識者の皆様に御議論をいただいているわけでございます。

 そして、戦後の歩みは、まさに今申し上げた反省の上に立つ歩みであり、そして自由で民主的で、そして人権を守り、法の支配を貫徹させる、そういう価値観を世界とともに共有する国として、地域やアジアの発展のためにも貢献をしてきた。そのことについては我々は誇りを持つべきであろうということについても、きのう、あるシンクタンクのセミナーにおいて述べたところでございますが、そうしたこと等々について今御議論をいただいているところでございまして、この御議論を踏まえた上において七十年における談話を発出していきたい、このように考えているところでございます。

細野委員 総理から朝鮮王朝についてはコメントがありませんでした。

 単純比較はできませんよ。もちろん歴史も違うし、それぞれ国民の理解も違う、しかし、我が国は天皇家を持ち、それが国家のアイデンティティーとして非常に継続している。それは一つ非常に大きいですよね。途中、苦しい時代もあったけれども、そのときも天皇制をしっかり守ってきた。保守の政治家であれば、他国のものであっても、そういったものについてしっかりと見識を持って、そういう判断を日本がしたということについては、これは反省をするという姿勢がないのは非常に残念ですね。

 そのことを指摘した上で、私は、この日韓関係というのを考えたときに、そういう歴史認識はしっかり持ちながら、我が国は、国際的なルールに基づいて、さまざまな言うべきことは言っていかなければならないというふうに思います。

 そこで、先日の世界文化遺産登録についてのやりとりについて、これは日韓関係を考える上でも非常に重要だと思いますので、外務大臣にお伺いをしていきたいというふうに思います。

 まず、ちょっとパネルをごらんいただきたいと思います。これは、七月の五日、世界文化遺産登録が決まったときに、我が国のユネスコの政府代表部の大使が発言をした、声明と言ってもいいものだというふうに思います。

 英文で発表されておりますので、それをそのまま読みますと、「ブロート アゲンスト ゼア ウイル」、これは意思に反してということですね、「アンド フォースト トゥー ワーク アンダー ハーシュ コンディションズ」、これは厳しい環境の下で働かされたというふうに日本語では訳されている。

 後段の部分をもう一度確認したいんですが、「フォースト トゥー ワーク」というのは、これは受け身で「フォースト」、強制力が働かされたというふうに読めますね、このまま読むと。それに「トゥー ワーク」という、これは動詞でそれを継いでいるだけで、これをそのまま、フォーストを形容詞にしてワークを名詞形にすると、フォーストワーカーとなるわけですね、そのまま、英文でいうと。

 そして、ILOにおける強制労働の記述というのはフォーストレーバーとなっている。

 これを、違うんだと言って、強制労働について日本は認めたのではないという主張を日本政府としてはしているんです。私は認めるわけにはいかない、認めるべきではないという考えですよ、もちろん。しかし、この説明は、もう少しきちっとしてもらわないと、なかなか国際的に通用しないんじゃないかと思うんですが、まず、外務大臣に、どういう理屈でそういうことになるのか、簡潔に御答弁いただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、御指摘いただきました日本政府代表団の声明文ですが、この中にあります「フォースト トゥー ワーク」という部分ですが、対象者の意思に反して徴用されたこともあったという意味で用いています。

 これは、一九四四年九月から一九四五年の八月、終戦までの期間において、朝鮮半島に適用された国民徴用令に基づいて、朝鮮半島出身者の方も徴用された、こうしたことが行われたことを記述したものであり、まずもって、これは従来から我が国が申し上げていることについて何ら新しい内容を含むものではないということを説明させていただいております。

 そして、ILOの用語との区別について御指摘がありました。その部分について申し上げますならば、国際条約において、強制労働ニ関スル条約という条約が存在いたします。その中で、フォーストレーバーあるいはコンパルソリーレーバー、こうした強制労働というものはまずもって禁止をされています。しかし、その中にあって、この第二条の二項という部分において、戦時中の徴用などは含まれていないとされています。よって、我が国がこの声明文の中で使っている言葉、これは国民徴用令に基づく対応を述べているわけですから、国際条約上、強制労働に当たるものではないと整理をしております。

 そして、日韓の間における条約ということを考えますときに、朝鮮半島出身者の徴用者を含め、日本と韓国との間の財産及び請求権の問題は、一九六五年の日韓請求権そして経済協力協定、この条約によって完全かつ最終的に解決済みである、こういった立場には全く変わりがないということであります。

 これが我が国の立場でありますが、今回の日本側の発言についてですが、従来の我が国の政府の立場を踏まえたものであり、強制労働があったことを認めるものではないと繰り返し述べているわけですが、これは韓国側にも明確に伝えておりますし、そして、韓国側とのやりとり、外交上のやりとりを通じて、韓国政府は今回の我が国代表の発言を日韓間の請求権の文脈において利用する意図はない、このように理解しており、このことを韓国政府との間においてハイレベルで確認しているということであります。

細野委員 大臣、韓国の外交部のホームページを見ますと、強制的に労働というふうに書いてあるんですよね、今回の声明について。はっきり書いてあります、そういう表現で。ですから、請求権の文脈において利用する意図はないというのは、それは何らか確認する文書などはあるんですか。

 加えてもう一つ、徴用工の問題というのは訴訟になっていますね。仮に韓国政府がそこは利用しないと言ったとしても、そういう訴訟において利用される可能性について、ないと言い切れますか。

岸田国務大臣 だから、先ほど申し上げましたように、この国際条約、強制労働ニ関スル条約における整理をまずさせていただいております。そして、その上で、一九六五年の日韓請求権・経済協力協定の中で、これは明示的にこの部分について完全かつ最終的に解決済みである、こうしたことが確認されていると我々は考えております。この部分について、こうした考え方、立場について全く変更がないということをまず申し上げたわけであります。

 そして、そのことについて、韓国政府との間において、やりとりはもう今までもさまざまなやりとりが行われているわけですが、我が国の立場、これは明確に伝えています。

 そして、今回のやりとりの中にあっても、その外交上のやりとりを通じて、韓国政府側として、今回の我が国代表の発言、これを日韓間の請求権の文脈において利用する意図はない、このことをハイレベルで確認したということであります。

細野委員 ちょっと、大臣、短目に答弁をお願いしたいんです。

 裁判にもなっているわけですね、個別の。そこで利用されないということについて、間違いなくそれはないというふうに大臣として言い切れますか。

岸田国務大臣 まず、韓国政府とはハイレベルで確認しているわけですが、何よりも、これは国際条約、そして日韓間における協定、条約においてこの部分は確認されています。

 条約を誠実に履行する、これは両国における当然果たさなければいけない義務であると我々は考えています。

細野委員 裁判については何も御発言はありませんでしたね。

 世界文化遺産登録は確かに大変いいことですよ。しかし、非常に大きな代償を払った可能性があるのではないかと私は思います。

 総理、この言葉を改めてちょっと確認していただきたいんですが、この「アゲンスト ゼア ウイル」という言葉は、これはどこかで聞いたことがあるなと思っていろいろ調べたら、実は、河野談話の従軍慰安婦のところで二回使われている言葉なんです、意思に反してというのは。

 ですから、徴用工と従軍慰安婦の問題を、多分、総理は非常に河野談話というのを、これまで、どちらかというと批判をしてこられた立場ですから、その河野談話よりも徴用工の問題が、同じ言葉が使われているのがまず一点。

 そして問題は、河野談話以上にと申し上げたのは、フォーストという言葉は河野談話の従軍慰安婦のところにも出てきません。このフォーストという言葉を、徴用工という、一九六五年の日韓基本条約が締結をされたときに、全てもう明らかになっていて、請求権をもうここで放棄したという明確な外交上の事実があることについて、これだけ踏み込んで言った、これは私は問題だと思いますよ。

 ちょっと時間も限られていますが、総理、簡潔に御答弁いただけますか。

安倍内閣総理大臣 簡潔にまず申し上げますと、明確に、河野談話のときと混同させようという意図を感じるんですが、明確に、明確に違います。

 なぜ明確に違うか。

 意に反してという言葉については同じであります。河野談話についてはそうであります。今回も、確かに意に反して。これは、徴用工においても、みんな、工場や何かで働きたい、もちろんそういう人もいたかもしれませんが、そうでなくても、これは徴用されますから、いわば国内でもそうだったわけでありますから、これは徴用されますからそうであります。そして、慰安婦のときにも、これはみんな、自分の意思ではなくて、さまざまな、経済状況等も含めて、意に反する場合もあっただろうということであります。

 しかし、あのときは、河野さんが、それは強制連行も認めているんですねという質問に対して、そう捉えていただいて結構ですとお答えされたわけでございます。

 今回は、まさに外務大臣が直ちに、直ちに記者会見の場において、これは強制、フォーストレーバーを意味しないということを明確にし、かつ、これは六五年の基本条約においての取り決めを覆すものではない、そして、かつ、それをいわば徴用工の裁判等でこれは利用することもないということを明確にしているということをちゃんと記者会見で述べているという点において、これはまさに全く違うということは申し上げておきたい、こういうことでございます。

 そして、日本政府代表団の声明文にある、働かされた、「フォースト トゥー ワーク」とは、対象者の意思に反して徴用されたこともあったという意味で用いているわけでありまして、かつ、それは先方にもそう伝えているわけでありまして、この岸田大臣の記者会見等に対して、それは違うということを、今韓国側政府は、岸田外務大臣の記者会見における発言は間違っているということを今まで一度も言っていないということは、まさに、これは確認された証左だろう、このように思うわけでございます。

 なお、これは今、徴用されたということは、まさに一九四四年九月から一九四五年八月の終戦までの期間に朝鮮半島に適用された国民徴用令に基づき朝鮮半島出身者の徴用が行われたことについて記述したものであって、何ら新しい内容を含むものではないというのが日本の立場であり、それは先方にも伝えているわけでありまして、繰り返し大臣もそう答えているわけであります。

 そして、まさにそれに対して、それが間違っているということを、今の表現については間違っているということを韓国側は表明していないということでございます。

 そういう中で、新聞はいろいろ書いていますよ。韓国側の新聞はいろいろ書いておりますが、そういう韓国側の新聞の論拠において、今細野議員はそれに質問をされているんだろう、このように思うところでございます。

細野委員 二つだけ指摘をしたいと思います。

 一つは、今総理は、フォーストという部分については何ら答弁されませんでしたね。ここは河野談話を超える言葉なんです。それは幾ら日本語で取り繕ったところで、フォーストに強制性というのが形容詞にしたときに出てくるのは、これはそういうふうに読まれても仕方がない部分もありますよ。そのことを御答弁されなかった。

 もう一つ申し上げると、韓国政府は、政府としては、これは徴用工の問題について利用しないと言ったかもしれませんが、個別の裁判において韓国人が言うことについて制約なんかできないですよ。裁判所はまた別の判断をしますよ。

 そこも含めて、確かにこれは、世界文化遺産登録をしたかったというのはわかりますけれども、私は、代償は大きかったのではないかというふうに思います。しかも、それを、さんざん河野談話を批判してきた安倍政権でやったということは、総理、しっかり認識をしていただいて今後対応していただきたいという趣旨でこの質問をさせていただきました。

 そして次に、問題を少しかえまして、もう一度、我々の考え方に基づいて質問を再開していきたいと思います。

 我々は、近くは現実的に、そして遠くは抑制的にと考えています。その理由は、我が国の自衛隊がやることができる役割というのは、これは自国の防衛だけでも非常に重要、それに加えて、自然災害などもあるし、そして、これまでPKOを初めとした海外での訓練もしてきた。

 まず、中谷大臣にお伺いしたいんですが、今、自衛隊員が約二十五万人ですね。そして、これは国民の皆さんの中で余り御存じない方もおられるかと思うんですが、毎年、例えば今年度であれば一万三千人の自衛官が新たに採用されている。そのうち八千人から九千人ぐらいは任期つき自衛官ですね。期間限定、二年とか、延長して四年とか。そういう方々が頑張っておられるから、この役割を果たすことができている。

 大臣にまずお伺いしたいと思いますが、我が国の自衛隊が担っている役割を考えると、この自衛官の数をこれから減らしていくというのは非常に難しいのではないか。今後どのようにこの自衛官の数を確保するかということについて、防衛省として今持っておられるスタンスをお伺いしたいと思います。

中谷国務大臣 これは、防衛計画の大綱また中期防において人員の定員等を定め、また将来計画も持っているわけでございまして、これに従って募集等を重ねてまいりますけれども、目的は我が国を防衛することでございまして、この大綱水準を達成するために必要な人員を確保してまいりたいと思っております。

細野委員 ちょっとパネルを見ていただきたいと思うんですが、我が国の自衛隊の役割については相当絞り込んでいかなければならないと思う一つの理由は、我が国の人口にあるんですね。

 さっき一万三千人ということで申し上げましたが、これは、棒グラフが我が国の新成人の男性の数です。この数というのが、二〇〇五年からずっと書かれていますが、二〇一五年、ここぐらいまでは減り方は比較的少ないんですが、ここから急激に減ってくる。今大体六十五万人強の新成人がいますが、ここがぐっと減ってきて、二〇三〇年にはもう六十万人を切ってくる、二〇四〇年には五十万人を大きく切ってくる、こういう数字になるわけですね。

 大臣、ちょっと数を頭に入れていただきたいと思うんですが、二〇一五年、一万三千人の自衛官を確保するために、この新成人の中で何人が最終的に自衛隊に入るかという計算をすると、五十人に一人が自衛隊に入っている計算なんですね、新成人のうち。それが二〇三〇年には、人口が減りますから、同じ自衛官を確保するためには四十人に一人、自衛官にならなきゃなりません。そして二〇四〇年、十年後にはまたぐっと減りますから、三十人に一人です。そして、二〇六〇年には二十五人に一人ですよ。もうクラスに一人、自衛隊員になるぐらい入らないと、一万三千人を確保できないんですね。

 これは、大臣、どうやって確保しますか。

中谷国務大臣 自衛隊員の募集等につきましては、景気や雇用に左右されるわけでありますけれども、ここ数年、倍率が七倍で続いておりまして、特に集団的自衛権を閣議決定した昨年度もこれは七倍を上回っております。

 これは、少子化や高齢化が進む中においても、自衛隊の募集環境、おっしゃるように厳しくなる中でも、その中でも、やはり優秀な若者が自衛官を志していただいておりまして、非常に優秀な隊員が多いわけでございまして、非常に自衛隊に入っていただける状況は続いてきておりますので、将来も、このような状況の中で、優秀な隊員が募集に応じてくれるというふうに考えているわけでございます。

    〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕

細野委員 非常に楽観的な見通しを述べられたわけでありますが、現実に半分になりますからね。半分になっている中で二十五人に一人が自衛隊員ということになった場合に、民間で活躍する優秀な人も含めて、人のとり合いになりますよ。

 その上に、多分大臣はそうは御答弁されないんでしょうけれども、これまでの役割は残るわけですね。別に日本列島が狭くなるわけじゃありませんから、防衛のためにも人が要るでしょう。ハイテク化して若干絞り込むことができたとしても、ほかの業務が新たに加わりますね。集団的自衛権も行使をする、そして周辺事態を重要影響事態ということで世界じゅうに広げる、PKOについてもやっていく、恒久法もつくる。当然、訓練も含めて、この数はふえてくる可能性がありますね、自衛隊員の。

 この確保というのは極めて困難だということを考えたときも、やはり自衛隊の役割については、近くについては現実的に対応する、すなわち、島嶼防衛については万全を期す、国土の防衛ということについては全てをしっかりやる。その上で、朝鮮半島についてもしっかり備えるけれども、そのほかについては人口構成上も抑制的にならざるを得ないのではないかということを指摘したいんですね。

 そこで、私がこれからあり得るのではないかということについて、一つ聞いてまいりたいと思います。

 今、自衛隊には、私は実はこれを調べるまで知らなかったんですが、貸費制という制度が、大臣、ありますね。これは、在学中の一年間、月五万四千円を支給されて、理科系の大学や大学院に行って、その後、自衛隊に入るという制度ですね。これは何人今もらっているのかということを調べましたら、実はわずか十六人。月五万四千円で一年間ですから、極めて限られていますね。

 こういう、人口が急激に減ってくるということを考えると、進んで自衛隊に入って我が国のために頑張ろう、こういう人が出てくることを私も望みたいですよ、望みたいけれども、現実はなかなか厳しい。そのときに、こういう奨学金のようなものを拡大していく。行く行くは、例えばアメリカのように、実動部隊に入った後、学校に行けますよというようなことについても検討しなければならないような状況が、自衛隊の活動が拡大すればするほどあるんじゃないかということについては、私は現実的にあり得ると思うんですよ。

 そこで、法制局長官にお伺いしたいと思います。

 いわゆる徴兵制については憲法違反だという議論がもう既になされていますから、これは聞きません。こういう経済的なアドバンテージを学生に与えて、そして自衛隊に入ってもらう、このやり方は憲法違反ではありませんね。憲法違反ですか。

横畠政府特別補佐人 まさに志の高い有能な人材を確保するというのは、公務員全てについての重要なテーマであると認識しております。また、公務員になろうとする人をどのように確保するのかというのは、まさに公務員全体の制度の中で考えるべき事柄でもございます。

 御指摘のような自衛官の確保ということに特化してどのようなものが考えられるかということであろうかと思いますけれども、やはり具体的にどのようなものを考えるかということによるわけでございまして、いきなり憲法に違反するかどうかという問題というよりも、公務員制度全体の中で整合するようなものであるならば可能であろうかと思います。

細野委員 およそ感覚はわかりましたが、もう一度、長官、確認ですが、これは憲法十八条以外には憲法違反というような可能性はないですね。ですから、憲法十八条違反には当たらない、そういう御答弁ですね。確認をさせてください。

横畠政府特別補佐人 強制ではないので、十八条の問題ではなかろうかと思います。

細野委員 与党の皆さんからは建設的な提案だという話があったんですが、私は、ここはぐっと、ちょっと迷うわけですね。迷うというよりは、むしろ懸念を持つわけです。

 今の自衛官はみずから志願してきていますね。私の地元も自衛官がたくさんおられる。士気旺盛で優秀な方がたくさんいる。本当にありがたいなと日々思っていますよ。しかし、我が国は今所得の格差も広がってきている。そういう中で、学費を工面するのに苦労している御家庭というのはたくさん出てきていますよね。そういった皆さんが、みずからはもしかしたら志願していないかもしれないけれども、経済的理由で自衛隊になるということをどう考えるのか。これは質問しませんが、これは本当に考えにゃいかぬと思いますよ。

 ですから、私は繰り返し申し上げているんです。基本的には、自衛隊の役割をしっかり絞り込んで、そしてその中で我が国がやれることをしっかりやっていく、その自衛隊の確保は基本的には志願によってなされるべきだということを申し上げておきたいと思います。

 ですから、徴兵制の議論をめぐって、やや、現実的か非現実的かというような、そういう、非常に机上の空論に近いようなやりとりがなされたところがあるので、それは我々も余り望みません。しかし、この人口の動態を見たときに、我が国が自衛隊をどう確保していくのかというのを考えなきゃならぬという現実だけは、ぜひ中谷大臣には頭に入れていただいて対応していただきたいというふうに思います。

 時間がなくなってまいりました。最後に一点だけ伺って終わりたいと思います。

 先日、私の委員会での質問の中で、中谷大臣は、ISILに対して国際社会が行動する場合に、我が国が後方支援で自衛隊を派遣することについては法的に可能かという質問に対して、「法律的にはあり得るということでございます。」という答弁をされました。

 もう一つお伺いしたいのは、二〇〇三年に起こったイラク戦争なんですが、イラク戦争では、国連決議六七八を初めとした正当性の根拠があるということで、我が国政府はそれを支持しましたね。そういった経緯も踏まえて、これは外務大臣にお伺いした方がいいと思います、この六七八というのは、今回の、政府が提出をされた恒久法の国連決議、国際平和支援法ですか、あれの国連決議に当たるというふうに考えていいですか。すなわち、イラク戦争の後方支援についても派遣可能だというふうに考えてよろしいですか。

    〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕

岸田国務大臣 まず、安保理決議六七八ですが、この決議は、三条第一項第一号イに規定する「認める決議」に該当はし得るとは考えます。

 ただし、国際平和支援法のもとで我が国が協力支援活動の対応措置を実施するためには、単に国連決議があるだけでは可能ではありません。決議に加えて、我が国が国際社会の一員として主体的かつ積極的に寄与する必要があるかを含め、三つの要件がこの法律の中で定められています。こうした法律に定めた要件を満たすか否か、これを具体的に判断する必要があると考えます。

 そして、その際に、国民の理解を十分に得つつ、民主的統制を確保する観点から、例外なく国会の事前承認を得ることとなっております。

 こういった形で、我が国として独自に、主体的に対応を判断するということになっております。

細野委員 時間が来ましたので、これを最後の私の発言にします。

 六七八、これはイラク戦争の根拠になった国連決議ですが、これは、我が国の、今回政府が提案しているこの法案上、該当し得る決議であり、派遣をし得る、そういう答弁ですね、後方支援で。さらには、ISIL、今イラクとシリアで大変なことになっていますが、その地域にも派遣をし得ると。

 すなわち、この二つの例から明らかなのは、少なくとも、ここ十年、二十年、世界でさまざまな紛争が起こっていますが、基本的には、国連決議がほとんどのものについて何らかの形でありますから、そういったものについては全て日本が後方支援という形で参加し得るということなんですよね。そこが我が党と政府では全く違う。

 すなわち、近くについては現実的に対応するけれども、遠くについてはしっかり抑制的に対応することによってそのほかの道を探るべきだというのが我が党の考え方であるということを最後に申し上げて、質問を終わりたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 民主党の大串博志でございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 この安全保障特別委員会、審議をしてまいりました。そういった中で、最近、報道等で聞こえてくるのは、審議時間が何十時間に及びつつあるのでそろそろ機は満ちつつある、来週の半ばぐらいにはもう採決の時期だというような、出口のことがもう言われている、こういう状況にあります。

 私は、何十時間という審議時間が判断材料じゃなくて、審議を尽くしているか、各重要ポイントに関して国民の皆さんが納得されているような審議は尽くされているか、ここだと思うんです。

 いろいろな世論調査等々を見ましても、まだまだ反対という声が多い、さらには、理解できないという声が八割近い、これがふえているという状況を踏まえると、さらにこの議会内で議論を尽くしていく必要があると思うんです。

 ちょっと振り返らせていただきますと、今どういう議論の状況にあるかといいますと、これを見てください。これは、政府がつくられた資料を前提に、これが今回の法制の全体像ですね、振り返ってみましょう。

 この右の方、武力攻撃事態、存立事態、それから重要影響事態、この辺は議論の集中しているところです。しかし、それでも、けさの議論までありましたように、どういう事態が存立危機事態なのか、あるいはどういう事態が重要影響事態なのか、まだまだ定義がはっきりしない。答弁も揺れているように聞こえる。だから、まだまだこれは議論が必要だという声が多い。しかも、そもそも違憲であるかどうかということに関しても、違憲だという声の方がまだまだ強い、こういう状況です。

 では、それ以外はどうか。

 左の方を見てみますと、例えば、左の上の方、在外邦人等の輸送、これは、ここで議論が出ているのは三回しかないんですよ。例えば、次、武器等防護、これは六回ですよ。その下に行くと、物品、役務の提供、これは二回ですよ。さらに下に行くと、平和協力活動、あるいは国際平和共同対処事態における協力支援活動に関する法律、これは七回、十三回とあります。十三回ありますけれども、これはほとんどが実は後方支援、武力行使との一体化に関することなので、上の重要影響事態と重なっているんですね。さらに下の方を見てみると、NSCの役割分担に関してはゼロですよ。あるいは、グレーゾーン、まさに今問題になっている尖閣等も含めてグレーゾーンに対する対応に関してはゼロ回。こういった中で、来週の半ばに採決に至れるのかということなんです。

 さらに、これは法律の形だけじゃありません。(パネルを示す)一つ一つの法律の論点についても、私が隠れてしまいそうなぐらいに大きくなりました。一つ一つの条文も含めて論点を精査していくと、これは、私たちが仲間と一緒に論点を、この数日間で大急ぎで暫定的に挙げているんです。これは、さらにもう少し詰めていくと、もっともっと論点が出ていくんですよ。この数日間でざっと挙げただけですから。これは八十七項目あるんですよ、八十七項目、ざっとこの数日間で挙げただけでも。もっともっとこれは議論をしていかなければならない論点が多くあるということがもう明らかなんですね。こんな大きな図にしなきゃならない。

 さらには、この委員会の中でいろいろ答弁が二転三転するものですから、この委員会の中で、政府統一見解を出してくださいと多く要望が出されています。(パネルを示す)これだけ多くの、政府統一見解を出してください、あるいは資料を出してください。これは、色づきの部分が回答されたもの、色づきでないところは出ていない。これは半分ぐらいしかまだ出ていないんですよ。この中で、来週半ばに審議を打ち切って採決、あり得ますか。

 しかも、この下の方、来週の頭に仮に出てきたとして、ぽんと出てきて、もう審議できないじゃないですか。こんな状況で、来週半ばに審議を打ち切って採決、私は、ちょっとあり得ないんじゃないかと思うんです。

 総理、どうでしょうか、私は議論をさらに尽くすべきだと思いますが、総理の御見識をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいまの大串さんの御説明の時間を使って三問ぐらいは法制についても質問できたのではないかと思いますが、これはまさに委員会において御議論をいただき、深められ、そして委員会において時期が来れば採決をするということがまさに民主主義の基本ではないか、このように思うわけでございます。

 そもそも、繰り返し申し上げているとおりでありますが、我々は、二〇一二年の総選挙において政権を奪還する際にも、また、その翌年の参議院の選挙、そして昨年末の総選挙においても、平和安全法制をしっかりと整備していくということを明確にしてきたところでございます。その上において、昨年、閣議決定を行い、今般、法律をこの通常国会に提出させていただいたところでございます。

 その上で、我々も誠実に答弁をさせていただいているわけでありまして、あとは、委員会において御決定をいただければ、審議が深まったかどうかということにつきましても、委員会において御決定をいただければ、こう思うところでございます。

 今、大串委員も、何については何回、何回というふうにお話をされていたわけでございますが、我々は質問を受けたことについて答えをさせていただくということでございますから、質問がないところは、もしかしたら皆さんがここは問題がないというふうに考えておられたのかもしれませんし、また、領域警備については、我々、法整備の中には入れていないわけでございますから、その観点から恐らく質問がなかったのであろう、こう思料するところでございます。

 いずれにせよ、委員会においてしっかりと議論をしていただき、そして、時が来れば、決めるときには決めていただきたい、このように思っているところでございます。

大串(博)委員 先ほど来申し上げましたように、審議は、これまで、存立事態あるいは重要影響事態、この答弁も二転三転するものですから、しかも、はっきりしないものですから、あるいは、憲法に関する疑義、極めて重要な問題があったものですから、かなり議論してきています。しかし、それでもはっきりしていない。なぜそのほかの論点に話が及んでいないかというと、とてもまだまだ基本的な入り口の議論が整理され尽くしていないので、個別論点にまだ行き着けていないというのが今の現状だと思うんです。そういう中で、来週の半ばに採決、私はこれはあり得ないと思います。

 さらには、国民の皆さんが理解をされているか。いろいろな世論調査で、先ほど申しました、八割の方々が理解されていないというふうなことを言われている状況の中で、本当に政府は説明責任を尽くしているか。私は、国民の皆さんの理解を上げていくためには、この審議をさらに尽くして、皆さんが納得したという状況をつくっていく、ここに最大の鍵があると思います。

 さらには、私たち、この安保法制の審議時間等ということでこの資料をつくりましたけれども、例えばこれまでの法案だと、それぞれ何十時間と議論して、例えばここに挙げているこれまでの法案だけでも三百三十時間ぐらい議論し、さらには、一つの国会で終わっていないんですね、二国会、三国会かけて議論してきている。

 さらには、例えば私たちの政権のときに大きな課題であった社会保障と税一体改革、この右側に書きましたけれども、国民の皆さんの理解を得るのが大変大事だと思い、難しくもあった。だから、私たちは、三年前ですけれども、法案を出す前から、全国でシンポジウムを開いて、閣僚が全国に散って、七十四回にわたって座談会を開いたんですよ。タウンミーティングを開いたんですよ、二十四年の八月まで。これは法案の成立は八月十日ですから、法案の成立そのときまで全国を歩いて、説明して回ったんですよ。

 このような努力をされてこなかったじゃないですか。閣議決定、七月一日のときも、今回の取りまとめのときも、そして法案が出たときも、全く説明されていなくて、この国会の中だけで、しかも、短い時間で議論をしてしまおうというスタンスじゃないですか。

 総理は、今、この中で、カフェスタですか、インターネットテレビによる中継を少し前から始められて、三回やられましたかね。きょうもやられるというふうに聞いております。これが悪いとは言いません。こういうこともやっていただきたいと思いますが、むしろ、今やるべきことは、この場で法案を決めてしまうということを考えるのではなくて、一旦撤回して、ワンテンポ置いて、ワンテンポ置いて、こういった全国を地道に歩き回って、全国を地道に歩き回って、国民の皆さんの声をもう一回聞いて、シンポジウムでもタウンミーティングでも対話集会でも、閣僚の皆さんが全国を歩き回って、その上で、声を聞いた上で、納得を得た上で進めていく、こういう手続じゃないでしょうか。いかがですか、総理。

安倍内閣総理大臣 今委員は、私の存立事態等に対する概念の答弁が二転三転して撤回したとおっしゃったけれども、私、撤回したこと、ございませんよ。私の答弁が二転三転したこともございませんし、一度も撤回をしたことはないということを申し上げておきたい。

 私は一回も、今、大串委員は、私が答弁を撤回したとおっしゃったけれども、私の答弁は撤回をしていない。事実認識が違いますから、はっきりと申し上げておきたい。

 撤回していないことを撤回したとおっしゃることが、そういう誤解を申し上げているわけであります。二転三転もしていないわけであります。二転三転していないから撤回する必要もなかった、これは明確であります。

 そういう誤解を与えることはお互いに言うのを、こういう大切な議論ですから、述べるのはやめた方がいいのではないかということを申し上げておきたい、このように思います。

 そして……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 済みません、少しおとなしくしていただけますか、静粛に。

 そして、当然、委員会においてしっかりとした議論がなされる、正確な事実に基づいて冷静な議論をしていく。国民の命と幸せな暮らしに結びつくことでありますから、冷静な議論をしていったり、レッテル張りをしない、あるいは、ないことをまるであるかのごとくレッテルを張る、徴兵制がやってくるとか、そういうことは厳に慎みながらいく、そのことによって初めて、そのことによって初めて議論は深まっていくということではないかと思います。

 そして……(大串(博)委員「採決のタイミングですよ」と呼ぶ)採決につきましては、これはまさに、このようにずっとのべつ幕なし大きな声を出される、そういう形で議論をするのはやめた方がいいのではないのかなと思いますが、そして、冷静な雰囲気の中で議論を尽くし、尽くされたら、尽くされたと委員会において判断されれば、これは決めるときには決めていただく。

 いずれにいたしましても、しっかりとした議論がこの委員会でなされることを期待したいと思います。

大串(博)委員 議論が尽くされたらということは誰も否定していないんですよ。ただ、尽くされているのかということなんです。しかも、それは、議会の中だけでなくて、議会の外でも政府は行う、理解が進むような努力を行う必要があるのではないですかということを申し上げているんです。

 総理、カフェスタをやられています。私もいいことだと思うんですよ。インターネット中継で全国の皆さんに発信される。こういうこともやっていただいて、しかし、地道に歩いていただきたいと思う。

 かつ、カフェスタ、いろいろなことが言われています。軽いとか、そういうふうに言われていますけれども、それはいろいろ評価はあると思います。ただ、国会でしゃべられたことと違うことを言うのは私は問題だと思います。

 例えば、きのう、おととい、自衛隊のリスク、自衛隊員のリスクに関する話がありました。この自衛隊員に関するリスクは、長い時間をかけてここでも議論してきて、最初はリスクがないとおっしゃったことに関してさらに議論を詰めて、六月十日の質疑において、やっとですよ、やっと中谷大臣から「新たな任務に伴う新たなリスクが生じる可能性はありますが、これを、法律上及び運用上、安全確保の仕組みの措置によりまして極小化、また局限化をいたしまして隊員を派遣いたします。」、こういうふうな大体決まった答弁に落ちついていた。私たちもそれはそういうものかなというふうに聞いていたんですね。聞いていた。

 ところが、昨日総理がカフェスタで言われたことは、隊員のリスクは減ります、少なくなりますと明言されているんですよ。何でかというと、特措法じゃなくて恒久法にするから、訓練ができるから少なくなる。これ、一点おっしゃいました。もう一つは、PKOにおいて、基地の宿舎の共同防衛をする、共同防衛をするから、一緒に守るようになるからリスクは少なくなる。この二つ、おっしゃいました。

 後者の方は、実はこれは、他国の基地、一緒の基地にいるほかの国が攻撃されたときにも日本の自衛隊の人が守りましょうという話ですから、逆に危なくなる話だと私は思うんですね。にもかかわらず、こういった事例を二つ取り上げられて、隊員のリスクは少なくなると明言されました。

 しかも、おとといはどういう日だったかというと、おとといにまさに、政府統一見解、「自衛隊員のリスクについて」という政府統一見解が出ているんです。その政府統一見解には、先ほど中谷大臣が答弁いただいた定型の答弁、「法制の整備によって付与される新たな任務も、従来どおり、リスクがある」「そのため、法制の中で、隊員のリスクを極小化するための措置を規定している。」この答弁ラインが書かれているんです。少なくなるなんて一言も書かれていないんですよ。

 隊員のリスクが少なくなるなんて一言も書かれていない。それを、カフェスタの中では言い切っていらっしゃる。一カ月半かけて議論してきたことを、国会の外で全く違うことをおっしゃる。こんなことをしていると国民の理解が進むわけないじゃないですか。

 そこで、委員長にお願いします。

 ここに書かれているように、「法制の整備によって付与される新たな任務も、従来どおり、リスクがあるものである。」が、「法制の中で、隊員のリスクを極小化するための措置を規定している。」ということであるにもかかわらず、これが政府の答弁であるにもかかわらず、隊員のリスクが訓練やあるいは共同基地防衛によって少なくなるという根拠を、紙で統一見解として提出していただくように、理事会でお取り計らいいただきたいというふうに思います。

浜田委員長 総理がいらっしゃいますので、一旦答弁させてください。

 安倍内閣総理大臣。

安倍内閣総理大臣 私の発言をちゃんと全部聞いて、かつそれを紹介していただきたいと思います。

 私はこのように申し上げたわけでありまして、つまり、木を見て森を見ない議論はだめですよ、一足す一足す一が三になるという話ではありませんね。この法制全体をまず見てください。そして、国民のリスクがどうなるかということを考えてください。国民のリスクが上がっていく中において、そのリスクを下げていくために、まさに自衛隊の皆さんはリスクを負っていく。そして、任務は確かに、権限がふえていきますから任務もふえていきますね。その任務にはそれぞれリスクが当然伴いますよ。今、全然紹介されなかった発言ですが、私はこう申し上げています。

 しかし、その中において……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 済みません、少し、ずっとやじり続けるのはやめてくださいよ。

 そこで……(発言する者あり)今、おまえに注意する権限はないという、そういう言い方は、少し品のいい言い方に変えていただけませんか。

 そこで、一つ一つの……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 一つ一つの権限や任務が加わるわけでありますから、それに伴うリスクも高まっていくわけでありまして、それを低減させていくことが大切ですね。

 ですから、例えば、恒久法になることによって、あらかじめさまざまな情報収集活動もできますね、海外から情報も収集できるし、共有できるし、その対応もできますね、それに伴う訓練もしっかりとできますねという話をして、そうやって低減させていくことができますとお話をした。

 そして、例えば、今までは、邦人を救出したり、あるいはまた他国の部隊を駆けつけ警護することができなかった、NGOを助けることができなかったけれども、その中で自衛隊員の人たちは、これは私の発言ではないんですが、インタビュアーの発言なんですが、自衛隊員がまさに、守らないわけにはいかないので、みずから近くに行って、いわば自己保存型、まさに正当防衛型の武器の使用をできるような形にして守るということもあったんですよという話があったんです。

 しかし、今度は、任務としてそれが与えられますから、あらかじめ、救援する、そして警護する、あるいは守るということを任務としてやるわけでありますから、ちゃんとその訓練をするわけですよ。そして、他国の部隊とともに、お互いに守り合うという訓練もするし、連絡も強化をしていくことになりますから、当然これは安全性は高まっていきますねという判断をして、ここにおいては、ではリスクは下がっていくのではないですか、そういう全体を見ていくべきだと私は申し上げたわけでございます。

 自衛隊のリスクが下がるというのは、この話の部分において、この話の部分においてそのように申し上げたわけでございまして、全体を見なければいけないわけでありまして、まさにPKO等々においてNGO等の方々を守ることは今までできなかったのでありますが、今度は守ることになるので、そのための訓練が前もってできている場合と、そうでないのに、今の自己保存型において何とかそれをできないかとすることにおけるリスクを考量すれば、まさにそれは下がるということも考えられるのではないか、こう申し上げたわけであります。(発言する者あり)

浜田委員長 簡潔に願います。

安倍内閣総理大臣 それがまさに、新たな任務に伴う新たなリスクを軽減させていく、あるいは全体を見る、これが私は正しい議論ではないか、こう申し上げているわけでございます。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 安倍内閣総理大臣。

安倍内閣総理大臣 先ほど来ずうっと、年がら年じゅうやじり続けている方がおられますが、その中において、その中において、おまえがとか、あんたがと言われて、事実としては、おまえがではなくて、あんたが、あんたがということであったということでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 委員長から一言言わせていただきます。

 総理からの発言がありましたが、これは、議場が大変うるさく、そして、言葉の認識もできないままに総理が勘違いをされたのだと思いますが、この点については、総理も冷静に今後対応していただきたいと思いますし、そしてまた、年がら年じゅうという言葉もありましたが、これはまた、それが年がら年じゅうどっちからも出ていますので、そのことに関しては各委員の注意を求めたいと思います。

 そしてまた、今、一番前面で座ってお話をしている方がいらっしゃいますが、逆に言えば、我々の委員として今までここに来ていらっしゃらなかった方でございますので状況がわからないのかもしれませんが、少々発言の回数が多いような、不規則発言の回数が多いように思いますので、厳に注意を求めたい、このように思う次第であります。

 以上であります。

 それでは、大串博志君。

大串(博)委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 最後に、遠藤大臣にお尋ねしたいと思いますけれども、この法制でテロのおそれがふえるのではないかという議論もここでございました。

 そういったことも含めて、東京オリンピックを成功させるために大変重い任を負っていらっしゃる大臣でいらっしゃいます。所信の中でも、テロ対策をしっかりするというふうにおっしゃいました。

 その大臣とこれからも議論をさせていただきたいと思いますが、その前に、先般の報道の中で、実質企業献金に当たるのではないかと思われる献金が四名からあったということがあり、私も収支報告書で確認させていただきました。この点に関し、きちっと説明責任を果たしていただきたいというのが一つ。

 もう一つ、二十四年の十一月、御自分の資金管理団体から二百万円の寄附を遠藤大臣御個人に受けていらっしゃいますね。これは、資金管理団体から個人への寄附は、献金じゃなくて寄附ですね、寄附は禁じられています。これはどういうものだったのか、これに関しても説明をいただきたいというふうに思います。

遠藤国務大臣 大串委員にお答えを申し上げます。

 まず、七月八日付の産経新聞の記事は全く事実無根であり、遺憾に思っております。弁護士らとも相談をし、対応するように事務所に指示いたしました。

 平成二十五年六月八日、畜産会社の会長から百五十万円、社長から百五十万円、社長の配偶者から五十万円、会長の配偶者から百五十万円、合計五百万円の個人献金を受け入れております。これらの献金につきましては、畜産会社に事務所で確認をしたところ、いずれも個人献金であり、原資は会社から出ていないと回答があったと聞いております。

 また、私が農水委員長だったときの法案成立の見返り献金ではないかとの指摘もありましたが、農水委員長だったのは平成二十年から二十一年ごろであり、私がこの畜産会社とおつき合いをするようになったのは平成二十五年でありますから、見返りであるはずがありませんし、畜産会社も同様の回答をしているというふうに聞いております。

 そしてもう一つ、今、平成二十四年十一月十四日に私が代表を務めております新風会から私個人へ寄附がされている、政治家個人への寄附を禁じた政治資金規正法に違反するのではないかということで問いがありました。

 平成二十四年十一月十四日に私の資金管理団体から私に二百万円が寄附されたことは収支報告書に記載しているとおりであります。そして、その二百万円は、同日、選挙運動費用として選挙運動費用収支報告書に資金管理団体からの寄附として適正に記載しております。

 委員御存じのとおり、政治資金規正法二十一条の二は、政党以外の者による公職の候補者への寄附制限を設けておりますが、選挙運動に関する寄附についてはこの制限の例外とされているところであります。

 したがって、御質問の寄附につきましては、適正な寄附であり、何ら問題がないものと確信をしております。

大串(博)委員 しっかり説明責任を果たしていただくことをお願いしつつ、繰り返し、来週の、来週の強行採決みたいな、審議打ち切りは絶対にあり得ないということを改めて申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

浜田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 本題に入る前に、東シナ海の問題にちょっと触れたいというふうに思います。

 七月の六日の産経新聞、桜井よしこさんのコラムをお読みになって衝撃を受けた国民の皆さんは多かったと思うんです。皆さんのお手元にも配ってありますが、「東シナ海の日中中間線にぴったり沿って、中国がガス田を開発し、プラットホーム建設を急拡大している確かな情報が私の手元にある。」「平成十年十一月時点で白樺、樫、平湖、八角亭の四カ所だった中国のガス田開発は昨年六月までの十四年間で六カ所に増えた。 それがこの一年間で十二カ所へと急増した。」「完成したプラットホームは作業員の宿舎らしい三階建ての建物や、精製工場、ヘリポート、掘削装置を据えた立派なものだ。」こういう一文であります。

 まず、外務大臣にお伺いいたします。このことは事実でしょうか。

岸田国務大臣 まず、政府としましても、二〇一三年六月以降も、中国側が東シナ海の中間線中国側で新たな海洋プラットホームの建設等を行っていることを確認しております。

 中国側が東シナ海の境界未画定海域において新たな海洋プラットホームの建設を含めた一方的な開発を進めていることにつき、我が国から中国側に対し、繰り返し強く抗議するとともに、作業の中止等を求めてきております。

長島(昭)委員 総理、墨俣の一夜城じゃないんですから、ある日突然十二個にふえているわけではないんですね。徐々に徐々に積み上がっていった。しかも、南シナ海に我々が目を奪われているそのすきにつくられているんですね、ほぼ同時期に。

 今、外務大臣おっしゃったように、繰り返し抗議をすると同時に、作業の中止を求めていますと。総理、こんな対応で本当にいいんでしょうか。こんな悠長なことをやっているから、南シナ海ではあっという間に人工島が七つもできて、二千エーカー、つまり八平方キロ、東京ドーム百七十五個分、国際法上疑わしい、こういう人工島が幾つも幾つもつくられた。ほぼ同時期に、日本のまさにお膝元、足元でこういう行為が行われている。

 この問題、きょうは本題ではないので深く突っ込みはしませんけれども、大事なことを防衛大臣に伺いたいと思います。

 この桜井さんの一文の中にも書いてありますが、この急激な中国のガス田のプラットホームを拡大する動き、これは安全保障上の懸念は全くないのかどうか。普通に考えれば、ヘリポートもつくられている、そして、あのプラットホームにもしレーダーでも据えられたら、日本や、日本の自衛隊あるいはアメリカ軍の動き、全部筒抜けじゃないですか。水中にソナーを落としたら潜水艦の動きまでとれると言う専門家もおります。

 防衛大臣から御答弁いただきたいと思います。

中谷国務大臣 あくまでも一般論でございますが、中国がこれまで設置してきた油田、ガスのプラットホーム、これを安全保障の観点から利用する可能性、これは考えられます。例えば、プラットホームにレーダーを配備する可能性があります。中国が設定した東シナ海防空識別区、これには、現状、地上レーダーの覆域、範囲、届かない区域がありまして、早期警戒機等による補完にも一定の制約がありますので、プラットホームのレーダー配備によりまして、地上レーダーの覆域を補完することが可能となると考えられます。また、プラットホームをヘリパッドとして活用して、空中偵察等のためにヘリコプターや無人機の展開拠点として利用する可能性もあります。

 中国がこうしたプラットホームの安全保障面での利用を進めた場合に、東シナ海における中国の監視警戒能力等が向上して、自衛隊の活動等が従来よりも把握される、この可能性があると考えております。

長島(昭)委員 総理もお聞きになっていただいたとおり、安全保障上大変深刻な懸念があるわけです。

 一年間抗議だけで済ませてきましたけれども、もちろん日中関係は大事ですよ、総理も今、日中関係改善のために御努力されているのはよくわかりますよ。しかし、事は安全保障の問題ですから、しかも、我々の近くの問題、足元の問題ですから、何か具体的に有効な手だて、中国のこの動きをとめる有効な手だてをお考えですか。

安倍内閣総理大臣 この東シナ海における油田の問題については従来からずっと日中の間で交渉を続けてきたところでございますが、これは私が官房長官のときも、あるいはまた首相時代にも、この問題について交渉を始め、福田政権時代に一定の合意がなされたわけでございます。こうした合意から鑑みても、我々は、こうした中国の活動について、新たなプラットホームの建設を含めて一方的な開発を進めていることについて、我が国から中国側に繰り返し強く抗議をしているところであります。

 我々も外交上の努力を展開しながら、しっかりとまた情報の収集等に努めながら、こうした大きな安全保障環境の変化に対応すべく、まさにしっかりと切れ目のない対応を可能にしていくことも必要であろう、こう考えているところでございます。

長島(昭)委員 残念ながら、今の総理のお答えではなかなか納得しかねるところであります。

 私どもは、午前中に細野政調会長からも話がありましたように、こういった近くの問題は徹底的にやる、現実的に対応する、しかし、遠くの問題については抑制的にやる。今の政府のお話を聞いていると、ホルムズ海峡をやるとかあるいは後方支援を世界じゅうでやるとか、何か遠くの問題にはやけに熱心でありますが、近くの問題がちょっといいかげんな、私は、そんなニュアンスを感じていますので、ぜひそこはしっかりやっていただきたいと思います。

 その、近くの問題の最も大事な課題の一つが領域警備であります。五月二十八日の質疑の際にも、直接総理に、この点たださせていただきましたが、今回はようやく民主党と維新の党との間で領域警備法案の共同提出という運びになりました。一瞬冷やっとする場面もありましたが、両党、これまで本当にしっかりと、丸山さん、おられますけれども、両党の間でこの領域警備法案を一緒につくってきたという経緯がありましたので、私は、提出することができて本当によかったというふうに思います。

 問題はここからです。この領域警備法案を、何としても、この委員会できちっと質疑を、審議をしていただいて、そして成立をさせる、こういう方向でこれからも努力をしていきたいというふうに思います。

 これはテレビをごらんの皆さんも恐らくもうお気づき、御理解いただいていると思いますが、武力攻撃に至らない侵害行為があった場合には、第一義的には警察機関がこれに対処する、しかし、相手の規模が想定を上回ったりする場合には、しかも事態が急変して拡大したような場合には、自衛隊が出動して事態のエスカレーションを抑止する、こういう対処をしていかなければならない。特に、危機が拡大した場合の問題は、警察機関から自衛隊への対処行動の移行、これがどれだけスムーズにできるかというところが非常に肝心な部分になるわけです。

 この点、総理、政府の対策は、一つは関係機関間の情報共有、連絡、連携の強化をする、そしてもう一つは閣議決定の迅速化をする、この二つだけなんですね。現行法制はそのままにして、運用の改善だけなんですね。

 これは私、一カ月前に指摘させていただきましたけれども、関係機関間の情報共有を一生懸命やりましょう、しっかりやりましょうというのは、十四年前の不審船の対処の事案以来ずっと政府の中で繰り返されてきた話なんです。もうほとんど精神論に近い。

 もう一つの、閣議決定のタイミングを迅速にするという点は私は一歩前進だというふうに評価をしていますが、これも、海上警備行動、治安出動の発令のタイミングを若干早めるというだけですから、私は、限定的な効果にとどまる、こういうふうに思うんですね。

 さて、法案提出者に伺いたいんですが、現行法制をそのままにして単に運用の改善だけでこの問題を解決しようとする政府の姿勢で、本当に、いわゆるグレーゾーン、武力攻撃に至らないそういう事態に対処することに十分なんでしょうか。

大島(敦)議員 ただいま長島委員から御質問のありましたとおり、長島委員が防衛省の政務三役のときに、動的防衛力という考え方で防衛配備のあり方を大幅に変えました。それまでは冷戦を前提とした固定的な配備を、動的に柔軟に運用できるようにして、そして南西地域について重点的に配備するという現状認識を持っております。その現状認識を維新の党の皆様と共有をして、今回、法律として提出をさせていただいております。これが一つです。

 やはり法律は物すごく重いものです。法律を提出するためには各府省全ての了解を得なければいけません。今回のように、自衛隊、警察、そして海上保安庁、それぞれがプライドを持って、名誉を持って仕事をしている、そして、各それぞれがしっかりとした指揮命令系統でその対応を行う、このような組織においてはなかなか横の連絡はとれません。一緒に共同の訓練は行ったとしても、スムーズに行えるとは考えておりませんので、今回は法律で明確に規定をさせていただいております。

 一点が、これは、警察機関、自衛隊が、正確な情報を共有する等相互に密接な連携を図りながら協力しなければならない、これが一点です。もう一つ、これは基本方針の中でなんですけれども、「警察機関の能力強化のための基本的な事項」ということで、こういうことを設けると、能力強化ですから、予算的な裏づけも、法的にこれは後押しすることになるわけです。

 ですから、私たちとしては、この領域警備に当たっては、しっかりとした法律を出し、それを今回通していただいて、我が国の周辺海域におけるしっかりとした対応を心がけていきたいと考えております。

 以上です。

長島(昭)委員 皆さんにはこのパネルをごらんいただきながらこのやりとりを聞いていただきたいと思うんですが、今、明確に、法律、立法化することの重要性。政府と同じことを基本的にはやるんですよ、情報共有を強化していく、あるいは、警察の能力あるいは海上保安庁の能力を強化していく。これを全部立法化することによって初めて、省庁に対する、ある意味でいうと非常に大きな力が働いていく。それを誠実に遵守するのが結局行政機関ですから。しかも、先ほどの話で出ていましたね、警察と、それから自衛隊との間では非常にいろいろな権限をめぐる争いがこれまでも行われてきた、こういうことを解決するのは、やはり立法の力というのは非常に大きいんだと思うんです。

 そこで、法案提出者に重ねて伺いたいと思いますが、今、立法化の必要性は皆さんに十分御理解をいただいたと思うんですが、内閣法六条というのがありますね。この内閣法六条には、「内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。」こういうふうに書かれているんです。これは非常に大事な条文です。

 しかし、今回の民主党と維新の党が出した、共同提出をした法案には、閣議決定を要しない。これは、領域警備区域というものをあらかじめ設定して、そこでの自衛隊の行動について、治安出動やあるいは海上警備行動の発令をするわけですけれども、その際の閣議決定を省略する、こういうことであります。

 内閣法六条の「閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。」という条文と、今回の、閣議を要しないということとした関係を、ぜひ国民にわかりやすく整理をしていただきたいということが一点と、そして、これで本当にシビリアンコントロールは貫徹できるかどうか、ここは非常に大事なポイントなので、しっかりお答えいただきたいと思います。

後藤(祐)議員 お答え申し上げます。

 これについては、現行でも類似の前例がございます。

 国際法上、領海内を航行する潜水艦は海の上を航行しなければいけないということになっておるんですが、これを守らずに、海の中を潜没して航行する場合、これを浮上させる、あるいは国旗を掲揚させる、領域外に退去させるということを要求するわけです。このためには、防衛大臣が海上警備行動を発令する必要があって、その際には、閣議決定を経て内閣総理大臣の承認を受けるというのが本来なのでありますが、そんなことをしていると潜水艦はどこかに行ってしまうので、現行、平成八年十二月二十四日の閣議決定で、あらかじめ、個々の事案が発生したときに、そのときに個別の閣議決定をする必要なく、包括的に平成八年のこの閣議決定でもって、海上警備行動の承認を内閣総理大臣が個々の閣議決定を経ることなくできるというようなものが既にございます。

 これと似たような考え方でもって、この法案においては、個別の事案が発生したときの治安出動あるいは海上警備行動について、個別の閣議決定ということをしていますと大変時間がかかってしまうおそれがあるということで、これを不要としております。

 ただ、これはやはりきちんとした民主的コントロールが必要なわけでございまして、事前の手続として、あらかじめ国会承認を経て指定された個々の領域警備区域、それぞれ違うわけです、これは国会承認が必要です。この領域警備区域ごとに個々の対処要領というものを作成することになりますが、その際に、閣議決定を経て内閣総理大臣が承認することになります。すなわち、各領域警備ごとにきちっと閣議決定をしているわけです。というのをあらかじめやっておいて、実際、いざ何か具体的に起きた場合には個々の閣議決定は必要ないという形になっております。

 これは、先ほど申し上げた潜水艦のような、類型を限ってあらかじめ閣議決定しておいて、緊急を要する個別事案ごとの個々の閣議決定は不要とするという考え方の延長線上にあって、内閣法六条の趣旨及び民主的コントロールという観点からは問題ないというふうに考えております。

 むしろ、政府案では、ここを、電話で閣議をやるから少し早くなると。我々、そもそも個々には閣議決定は必要ないとしているわけですから、我々の方が早いんですが、政府案で、電話閣議、でも、電話は通じない場合がありますよね。その場合は、「連絡を取ることができなかった国務大臣に対しては、事後速やかに連絡を行う。」というふうにされておるんですが、重要な大臣の連絡がとれなかった場合、事後承諾になっちゃうんでしょうかね。こちらの方がむしろ問題があり得るのではないかなというふうに思います。

長島(昭)委員 新しい法案に対する答弁とともに、政府案に対する危うさも浮き彫りにしていただいたというふうに思います。

 それで、これを見ていただいたらわかると思うんですが、政府の案では、法案はありませんけれども、運用の改善では、時間のすき間については、これは確かに埋まると思います。

 しかし、問題なことは、もう一つ、対処行動の移行、警察ではもう持ちこたえられなくなった、では自衛隊に出てきてもらいたいといったときの、対処行動の移行がどこまでスムーズにできるか。この上の部分の、権限と、そして武器使用、ここのすき間というものもきちんと埋めておかなければならない。わかりやすく言えば、治安出動や海上警備行動の発令前にどこまで自衛隊ができるかということが非常に鍵を握るんです。やり過ぎてもいけないんです、もちろん。やり過ぎてもいけないんですが、ここが、どれだけこのすき間を埋められるかということがポイントなんです。

 そこで、防衛大臣に改めて伺いたいんですけれども、特に陸上自衛隊の場合は、平時のとき、これは、グレーゾーンというのは、有事でもない、しかも平時とも言い切れない、有事と平時の間のグレーな期間においてどうするかということですけれども、このグレーゾーン事態というのは、法的にはまだ平時ですね。この平時の段階で、陸上自衛隊の場合は特にですけれども、駐屯地の外で武装して部隊行動をすることが厳しく制限、規制されているんです、規制されている。

 例えば、治安出動下令前には、駐屯地から武装した部隊、これは実弾訓練以外は出られませんね。それから、治安出動下令前の情報収集、こういう規定がありますけれども、これは自己保存のための武器使用しか許されない、部隊行動を想定していません。せいぜい警察の人たちとの情報交換ができる程度。

 それから、事前展開できる規定が唯一あります。警護出動。しかし、この警護出動も、対象は自衛隊施設かもしくは在日米軍の施設・区域に限られています。したがって、原発とか、あるいはこういう中央省庁の重要施設というものについては、不意急襲的な攻撃に対して対応することは困難です。

 防衛大臣に伺います。現行制度、こういった、今私がるる申し上げた現行制度をそのままにして、権限と、それから武器使用基準、これを伴った対処行動のスムーズな移行というものは実際に行えることになるんでしょうか。

中谷国務大臣 十四年前のお話をされましたが、その後やはり、海上保安庁と自衛隊との連携とか、警察との連携も進みまして、情報の共有化も進んでおりますし、また、官邸にNSC、これが設けられまして、事態対処等も早く判断ができて、スムーズに移行できるというような体制に移行しております。

 制度的な話がありましたが、今、自衛隊法七十九条の二に規定する治安出動下令前に行う情報収集の発令を受けて、武器を携行して情報収集を行うことができるということで、こういった情報収集につきましては可能になってまいりますし、もう一つは、治安に関しまして、テロ等が行われるおそれにつきましては、自衛隊法八十一条の二に規定する警護出動、これの発令を受けて、自衛隊の施設、米軍の施設が警護できます。

 平素から自衛隊に認められている権限の範囲内であれば、自衛隊に行動が命ぜられていない場合であっても、特定の駐屯地への移動等、所要の態勢を整えるために必要な措置を講じることができるために、事態に遅滞なく対応することは可能でありまして、今後、関係機関とよく連携をして、スムーズに移行できるようにしてまいりたいと思っております。

長島(昭)委員 ですから、大臣、平素自衛隊に認められている権限の範囲内でおぼつかないから新しい法律が必要なんじゃないですか。私たちはそういう提案をしているんですよ。

 治安出動前の、下令前の情報収集だって部隊行動ではないでしょう。武器は携行できるけれども自己保存だけでしょう。だって、事態はもしかしたらその間に悪化しているかもしれないんですよ、機動隊で持ちこたえられなかったような事態に。そこがスムーズに対処行動が移行できるかどうか、ここが本当に決め手なんですよ。

 事態をこれ以上拡大させないためには、そういう準備行動のようなものが自衛隊にできないと適時適切な対処ができない、私はこのように思うんですが、その点、法案提出者に伺いたいというふうに思いますが、皆さんがお出しになっている領域警備法案では、今、私と大臣がやりとりした部分、どのように解決しようとされているんでしょうか。

緒方議員 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおりでありまして、我々の基本的な問題意識といたしまして、既存の権限の継ぎはぎで対応するのではなくて、今回の法律の中で規定しておりますように、領海等及び離島等のうち、やむを得ず実力の行使を伴う対処が必要になり得る場合において、警察機関の配置の状況とか本土からの距離とかその他の事情を勘案してどうしても適切な対処をすることが難しい、そういう区域を領域警備区域として指定をし、その区域内では、自衛隊に、平時から「情報の収集、不法行為の発生の予防及び不法行為への対処その他の必要な措置を講じさせることができる。」というふうにしております。

 新たな領域警備行動という自衛隊の行動類型を創設し、領域警備行動を行う自衛隊に対し、平素から警察官職務執行法さらには海上保安庁法の権限を付与することによって、権限のすき間を埋めて、そして海上警備行動や治安出動発令前でも領域警備区域において一定の警備行動が可能になるということでございます。

 その際、武器使用において、警察官職務執行法第七条を準用する形で可能にしております。すなわち、危害許容要件は、原則として正当防衛、緊急避難。そして、この法律におきましては、海上保安官に認められております不審船対処のための船体射撃については、これを認めないということにしております。

 もっとも、これらの規定というのは、あらかじめ慎重な手続を経た上で、いざというときに自衛隊が迅速に行動する際の選択肢をふやす、そういうものでありまして、指摘されてきた、時間、権限、武器使用、この三つのすき間を解消するものでありまして、いたずらに自衛隊を早期に出動させるというものではないということを申し添えたいと思います。

長島(昭)委員 つまり、治安出動や海警行動の下令前に、警備の補完のようなことができるんですね、警備区域内に限ってですけれども。そのことによって、対処における移行がスムーズに行われる、こういうことであります。明快な御答弁、ありがとうございました。

 今度は逆です。

 これは実は、五月二十八日、私の質疑のときに総理が漏らされた疑問なんですけれども、確かに、時間的なすき間を埋めようとする余り、過度に自衛隊が先走って前に出てくることのリスクというのも我々は考えておかなければならない。総理はこうおっしゃっていましたね。「あらかじめ、」「自衛隊が警察権を海保にかわって持って併存するという形においては、ミリタリー対ミリタリーの衝突が直ちに起こってしまうという危険性がある」、こういうふうに述べておられる。

 実際、二〇一二年の四月、フィリピンと中国が南シナ海のスカボロー礁でにらみ合ったときも、フィリピンの方が、中国の政府公船に対してフィリピンは軍で対応しようとして、国際社会から十分な支持が得られなかった。逆に、それを逆手にとって、中国がスカボロー礁を占拠した、こういう事案がありました。

 時間的及び権限上のギャップを埋めるということは非常に大事なポイントではあるんですけれども、ミリタリー・トゥー・ミリタリー、ミリタリー対ミリタリーの衝突が起こる危険が高まるのではないか、こういう懸念に対しては、法案提出者はどのようにお答えになりますか。

後藤(祐)議員 お答えいたします。

 海上保安庁やあるいは警察による対応だけでは外国船舶等による離島への侵略等を防ぎ切れないといったときに、自衛隊を出すか出さないかというのは大変重大な決断だと思います。これを出すことによって日本の領域を守らなきゃいけないという考え方と、これによって軍対軍という関係になってしまうのではないかというリスクと、これは本当に、現行においても、そしてこの法案が成立した後においても、常に悩ましい問題だということがまず前提だと思います。

 我々民主党そして維新の党の案というのは、ただ単に早い段階で自衛隊を出すというものではありません。あくまで警察、海上保安庁が対応することを基本にするということを大前提としながら、まず、さまざまな起こり得る状況に対して多様な選択肢を用意するということと、いざ決断したら迅速に自衛隊を出せるようにするということと、あとは自衛隊と海上保安庁、警察の間のコミュニケーションを改善する、この三つでこの問題を解決していくべきではないかという考え方に立っています。

 具体的には、先ほど来議論があります治安出動、海上警備行動という、これは大変強い権限です、いざとなったら相手に危害を加える艦砲射撃までできるわけですが、こういった強いものの手前のところで、領域警備行動という新しい選択肢を用意します。

 それと、治安出動、海上警備行動を発令する際には、先ほど申し上げたような、個別の閣議決定を不要として迅速に対応できるようにするということと、コミュニケーションについては、領域警備基本方針というものを策定して、自衛隊と海上保安庁、警察の間に、協力、円滑な対処を可能にする。これによって、合同で訓練したり、あるいは職員の相互交流を可能にしたりすることによって、ふだんから着実な連携の強化を進めていくことが可能になると思いますが、政府案には若干こういった配慮が足りないのではないかなというふうに思います。

 いずれにせよ、この我々の法案によって、軍対軍の関係になって緊張を高めてしまうということなく、真に必要な場合に限って、多様な選択肢、そして迅速な自衛隊の対応を可能にするものと考えます。

長島(昭)委員 御答弁ありがとうございます。

 今るる論じてきたように、ミリタリーとミリタリーが衝突する危険を回避しながら、しかし適時適切に警察機関から自衛隊への対処行動の移行というのをスムーズにする、この二つを両立するために編み出されたのが、最後に質問をさせていただきます領域警備区域の指定なんです。

 これは、今言った、このすき間を埋めるという制度を全部に普遍的に適用するのではなくて、ある一定の区域にこれを適用させる、こういうアイデアなんですが、これをやりますと、素朴な疑問として、区域の内側と外側、区域指定外のところとの間に対処の差異が生じてしまうんじゃないか。

 逆に言うと、ここを区域に指定しますよということは、ほかは指定しないということですから、そこに、侵害をしようという人たちからすれば、ああここじゃないところから入っていこうかみたいな話になりかねない。あらかじめ我々の大事に思っているところは、指定すれば、ああ日本が大事に思っているところはこのエリアなのかということを相手側に知らせてしまう、そういう逆効果もありますので、その点を、法案提出者、領域警備区域を設定する意義と、そして、そこに伴うリスクにどう対処しようとしているのか、御答弁いただきたいと思います。

緒方議員 御質問ありがとうございます。

 今回の法制度におきましては、先ほどから累次説明しておりますとおり、不測の事態が発生する可能性が高いエリアを領域警備区域として指定することにより、この区域内で領域警備行動を行う自衛隊に対して、警職法さらには海上保安庁法の権限を与えることが可能となりまして、より迅速かつ的確な対応が可能になります。これが領域警備区域を指定することの意義でございます。

 一方で、長島委員御指摘のとおり、区域を設定することによって、その内外において対応に差が出るのではないか、そういう指摘があることについては承知をいたしております。

 そのため、本案では、領域警備区域以外の海上においても、国土交通大臣からの要請があった場合には、海上保安庁の行う警備を補完するための行動をとることができる、海上における警備準備行動というものを新設いたしております。こうした行動を事態に応じて適切に実施することによって、領域警備区域の内外において万全なる対応が可能になるというふうに考えております。

長島(昭)委員 これで終わりたいと思いますが、総理、聞いておられて、反論したくてうずうずされていたようですが、もっともだと思います。私たちが今、一方的に我々の法案の紹介をするような形になりましたから。与党の皆さんも、きょうは大体重要な論点を私はほとんどカバーできたと思っていますが、ぜひその点、まだまだ何十時間もやることになるだろうと思いますので、そういう質疑の中で、この法案も十一本の政府提出法案と並べてしっかり質疑をしていただくことをお願い申し上げて、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 辻元清美です。

 私は、まず菅官房長官にお聞きしたいと思います。

 官房長官にはこのところ、例えば憲法学者の方の御意見が出た折や、また、元内閣法制局長官の意見が出た折や、また、先日は沖縄での皆様の御意見をどのようにお考えかということを伺ってまいりました。

 いよいよ本日は、きのう、元最高裁判所の判事の方がこのようにおっしゃっています。今の国際情勢で憲法解釈を変更するのは法律的にも政治的にも認めがたい、見通しもほとんど不可能だ、メンツや党利党略は別として、私たちの子孫が幸せに生きていくために何が必要かを前向きに、柔軟に対応してほしいということで、これは、院内集会がきのうありまして、発言がございました。もうお一方、元外務省にいらした最高裁の判事も、慎重に対応すべきだという御発言も、これはテレビでも私、拝見したんですね。

 今まで官房長官は、憲法学者のときは数じゃないとおっしゃって、憲法の番人は最高裁だとおっしゃいました。そして、元内閣法制局長官や政府の方が参考人で慎重な対応を求められたときも、参考人の一人の方の意見ですと。そして、自民党の重鎮の方の御意見も、バッジを外された方だと。何かもう、聞かない、聞かないみたいに思えて仕方がないわけです。

 いよいよ、憲法の番人は最高裁だとおっしゃった、そこにいらっしゃった判事の方も、憲法違反ではないかという発言が出た。このことについて、今度は、憲法の番人をやられた今は一般人の方ですということで済まされるのかどうか、官房長官の御意見を伺いたいと思います。

菅国務大臣 私は、辻元委員の発言に対していろいろ答えてきましたけれども、まさに憲法については、砂川事件の判決、そしてまた今日までの政府見解、まさに私たちは、現憲法の論理的、基本的範囲の中で今回新たな三要件というものをつくらせていただいて、憲法に、間違いなく合法であるという決意のもとに、今回、法案を提出させていただいているところであります。

辻元委員 ところが、砂川判決も含めまして、一九七二年見解も、今まで歴代の内閣が集団的自衛権を論じるときに一切出てきていなかったわけですよ。それで、元最高裁判事の方も、これはちょっと後づけで、無理があると。

 私、どうも安倍政権の姿勢を見ていますと、異論とか批判とかを受け付けない。もう今までと違うということも申し上げました。あのPKOのときとは違う話も前回官房長官といたしました。PKOやイラク特措法を推進してきた人までも、ぎりぎりの憲法との議論を担ってきた人までも、今回は懸念を表明している。全く深刻さが違うのではないか。でも、今の御答弁、また同じなんですね。

 私、これを見ていますと、今回の安保法制について、国民だけではなく専門家の声も聞こうとされていないように見える。これは、さっき私ニュースで見たんですけれども、オリンピックの新国立競技場の話、今問題になっていますね、この問題への安倍政権の姿勢と重なって見えるんです。どういうことかといいますと、両方の案件とも、専門家や国民の多数から、どうも理解できない、どうして安倍政権は突き進もうとしているのかしらと、これは両方、非常に不信感になっていると思います。

 私、安倍総理に、この新国立競技場、後で安保の話は伺いますけれども、今被災地もまだ大変ですし、私は、オリンピックの競技場は質素でも、やはり被災地の支援とか、日本はお金がかかるからということで、見直しをされた方がいいんじゃないかと思うんですが、どうもこの安保法制を押し切ろうとしている姿と新国立競技場に突き進もうとする姿、両方ダブって私には見えるんですね。

 安倍総理、どうですか、この競技場、見直された方がいいんじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 さすがに辻元委員ですから、我々が突き進もうとしているというイメージをうまく描いておられると思いますが。

 この新国立競技場につきましては、これはまさに、オリンピックを誘致する際に国際コンペをやって、そしてザハ案というのが決定されたわけでございますが、そのときに、国際コンペをやるということを約束し、そしてその中で、監修権ですかね、質問通告がないので、ちょっともしかしたら用語が間違っているかもしれませんが、監修権等をザハさんに与えるということが既に決定されて、それが二〇一二年の十一月だったと思います、これは我々が政権につく前の話でございました。これは、事実として述べますと、民主党政権時代にこのザハ案でいくということが決まりまして、そして、これでいわばオリンピックを招致するということが決まったのでございます。

 しかし、その後、検討を重ねていく中において、確かに費用がかさむというのは今辻元委員がおっしゃったとおりでございます。そして、今辻元委員がおっしゃった気持ち、これはもしかしたら多くの国民の皆様がそう思っておられるのではないかなと、私もそう思います。

 そこで、ではこれを変えることが可能かどうかということについて我々も検討をしているところでございますが、いわば国際コンペをして決めて、監修権も与えたものをどのように保護するか。これはIOCとの関係もございます。

 そしてまた、工期自体の関係もございまして、今それをやめた、しかし、では国際コンペをやるということについては約束をしておりますから、これを一旦、やはり余りにも費用がかかるから、やめて、では、国際コンペをやって、さらに新しいものを決めてという、デュープロセスをとって新たな国立競技場をつくるということが工期として可能かということも、当然ございます。

 それも当然考えた上において、既に官房長官が答弁をしている点でございまして、私も、辻元さんがおっしゃったような思いも持ったこともございます。そして、率直にどうなんだということも、繰り返し事務方にも投げかけてきたところでございますが、今私が申し上げたような答えが現在のところ返ってきており、そして官房長官が答弁をしているということでございます。

辻元委員 総理、そうしますと、見直しも含めて、まだ検討もされているというようにとってよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 現段階においては、これは、いわばこれから国際コンペをやって、新たに新しいデザインを決めて、それで基本設計をつくっていくということでは、時間的に間に合わない。それはつまり、二〇一九年のワールドカップラグビーには間に合わないということになるわけでございまして、オリンピックについても、二〇二〇年にも間に合わない可能性が高いという報告を受けているところでございます。

辻元委員 私は複雑な総理の心境を久しぶりに伺ったような気がいたしました。

 私は厳しい質問を総理にいつもしております。それは、どうも自民党の中にも、これはあえて私は申し上げますと、官邸翼賛会ではないですけれども、やはり総理に対して物を言えない、そんな気がするんです。総理大臣が裸の王様になっては困るから。何かハリネズミみたいに見えるんですよ。この安保法案にしても、意見をはねのける、レッテルを張っていますとか。

 ですから、私は、本当にこの両方は、国民の皆さんにとって非常に懸念で理解ができないという人の数がどんどんふえていますので、きょうはしっかり、厳しく、総理にも法案の中身をお聞きしたいと思います。(発言する者あり)いや、私が厳しくしないと誰が厳しくするんですか。私はこれは大事だと思うんですよ。

 総理、後方支援についてお聞きしたいと思います。

 この後方支援で、総理は、この委員会で、細野議員とのやりとりで、細野さんがこう聞きました。他国の部隊と一緒に活動していて、自衛隊だけ途中で撤収するということ、それはできるんですか、本当にそれで海外の国に対して責任を果たせるんですかという質問をされたんですね。それに対して、総理は、「まさに戦闘現場となってしまったら直ちに撤収するのは当然のことであろう、それを前提に自衛隊は活動をするわけでございます。」とおっしゃっているわけです。

 でも、私はやはり、これは国際社会では全く通用しないのではないかと思いますし、そんな国とはなかなか活動できないなと思われかねないと思うんですが、いかがですか、総理。

安倍内閣総理大臣 これはもう、我々は、そういう運用で今回法律をつくっているわけでございますから、当然これは、確かにそういう状況になれば自衛隊は撤収をするわけでございます。後方支援をやめる、戦闘現場になれば。ですから、補給を受ける方にとっては、確かに辻元さんがおっしゃったような意味合いもあるかもしれません。しかし、これは、私たちの法律によって定められている、まさに運用の基本的な考え方でございます。

 そして、まさに我々は、後方支援ということについては、武力行使と一体化しない。我が国独自の憲法との関係の一体化論もあるわけでありますから、これを理解した上においての後方支援しか当然行えないということになりますし、かつて、PKOについても、ゴラン高原については、我々は五原則がございますから、これにのっとって我々の自衛隊は撤収をしたという事例もございます。

辻元委員 これは、先日私がお示しをした安倍総理と百田尚樹氏の対談、あの後、私、拝読いたしました。そうすると、この中にこういうくだりがあるんですね。三十六ページあたりなんですが、ASEAN諸国に総理が行かれて、そして安保法制懇の説明を各国の首脳とするというようなくだりがございまして、ここで総理がこうおっしゃっています、対談で。

 サマワの例を挙げていらっしゃるんです、オランダ軍と一緒に活動して。そして、「「日本は「ここは戦闘地域になったので、私たちはこれから撤退します。お先に失礼しますが、オランダ軍の皆さん、どうか頑張って下さい」と言い残して帰国することになるんです」と。 このように個別案件の説明をすると、ASEANのどの国のリーダーも大変驚かれます。」。これに対して百田さんが、「国際社会では全く通用しないことですね。」。これに対して総理、「通用しません。そんな国とはともに活動したくないと思われて当然です。」「インドネシアのユドヨノ大統領にも、このような話をしました。」と書いてあるんですよ。

 そうすると、今回出していらっしゃる法案、国内では撤退すると言い、インドネシアの大統領にこのようにおっしゃったとここに書いてあるわけですけれども、外国では、全く国際的には通用しない、そして、そんな国とは一緒に活動したくないと思われるという御認識を示されたということでよろしいですか。これ、もしもよろしければどうぞ。

安倍内閣総理大臣 今、辻元委員のおっしゃっていることは、述べていることはPKOについて……(辻元委員「いやいや、サマワのオランダ軍。ちょっと見てください。イラクの」と呼ぶ)ああ、イラクのですね。いや、それは結構です。

 イラクのオランダ軍につきましては、それは基本的に後方支援活動ではないということでございますから、いわば武力行使をしているところの後方支援活動ではございませんから、それはまさに、これはPKO活動ではございませんが、いわば人道復興支援の活動になるわけでございます。

 いわば、人道復興支援という文脈において、私は、それを使ったことは、いわば駆けつけ警護的な、そこではちょっと、若干正確性は欠けますが……(辻元委員「だから、ちょっと拝見」と呼ぶ)いや、それは結構ですが、いわばPKOにおける、PKOにおける駆けつけ警護ということも念頭に置きながら、念頭に置きながら私はそれを述べたわけでございまして、今回は、例えばPKO活動において駆けつけ警護等は可能になるわけでありますから、その点は相当改善された、こういうことになるわけでございます。

 先ほど私が答弁いたしましたのは、まさに、これは後方支援活動でございますから、後方で支援をする、戦闘現場になるかならないかという文脈で申し上げているとおりであります。

 いずれにいたしましても、今、私は総理大臣として、この新たな法制について申し上げているところでございますから、今までのたてつけとは変わり、新たなたてつけの中において私が申し上げていることは、その申し上げているとおりでございます。

辻元委員 ここで総理はイラクでの、サマワでの活動のことをおっしゃっていて、この法案も途中で撤退することになっているんです。そのことをとって、これは国際的に通用しない、そして、そんな国とは一緒に活動したくないと思われても当然だとおっしゃっているんですね。今回の後方支援も、これは同じたてつけになっているわけです。(安倍内閣総理大臣「いや、それはちょっと違う」と呼ぶ)同じですよ。これは法案の根幹なんですよ。

 総理は、本心では、途中で活動をやめることは国際的に通用しないなと思っていながら、法案は、そう思って、そんな国とは活動したくないと思われて当然と思っている中身の法案を今回お出しになっているのか。そして、総理大臣がそう思っている法案に従って、自衛隊員の皆さんが命がけで海外に出ていくんですか。

 私は、これを読んで愕然としました。今、PKOだとかいろいろおっしゃったけれども、全部言いわけだと思います。今回の法案も、途中で活動をやめるわけでしょう、前と同じで。同じでしょう。そうすると、ここでおっしゃっているように、国際的には通用しない。

 ですから、総理、もしも通用しないと思っていらっしゃる、しかし憲法の制約があるからこうしかできないんだとおっしゃるんだったら、そうおっしゃったらいいですよ。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 まさに私の念頭にあったのは、基本的に、他国部隊が襲われたときには……(辻元委員「違う、違う、よく見てよ」と呼ぶ)いや、私の念頭にあったことでありますから、他国部隊が襲われたときに、その部隊から助けてくれと言われても、それは襲われたという状況になったことを鑑みて、我々は失礼します、助けに行くことはできません、そして、かつ危険な状態になったので、私たちは失礼しますということになりますよという意味のことでございます。

 そこにおいて、今度の法改正においては、まさに駆けつけ警護はできるようになった。その駆けつけ警護そのものを皆さんは否定をしているわけでございますが、それはできるようになったということでございます。

 そして、それとは別に、まさに武力行使をしているところに対する後方支援でありますから、これはサマワにおける人道復興支援活動とも全く根本的に違うわけでございまして、人道復興支援活動は、限りなく、いわば平和維持活動にかなり近づいていく活動であります。ただ、これは国連の決議に基づくPKO活動ではないという形であった、こういうことでございまして、それを述べていることと、いわば後方支援活動を混同させるべきではない。

 事実、PKOについてもそうですが、またこの後方支援活動についても、そういう状況になれば撤収するのは当然のことであり、PKOについても、先ほど申し上げましたように、ゴラン活動においても私たちは撤収をしているということであります。

 そもそも法律の中においてできることしかできない、これは当然のことで、遵法精神のもとにおいてそれを行うということは当然のことであろう。私がどう思うか思わないかは全くかかわりのないことでありまして、これはまさに法律そのものを見ていただきたいということでございます。

辻元委員 苦しい答弁だと思います。

 ここに、これはイラクですよ、「日本は「ここは戦闘地域になったので、私たちはこれから撤退します。お先に失礼しますが、オランダ軍の皆さん、どうか頑張って下さい」と言い残して帰国する」、これは国際的に非常識だと総理がおっしゃっているわけですよ。

 私は、今回、この法案は無理があるし、私たちはこの点をずっと指摘してきたわけですよ、途中で中断できますかと。できないでしょう。特に、イラクのサマワよりもっと危険地帯に、後方支援というのは弾薬も運ぶんですよ、そこに送るということで、今の自衛隊。そして、途中で撤収するというところまで踏み込むのは、だから憲法違反だと言われているんです、武力行使と一体化すると。

 それでは次に、そのことについてお聞きしたいと思います。

 ここに、イラク復興支援活動行動史という、陸上幕僚監部がつくった、これは内部文書です。イラク派遣の成果と教訓をまとめたものと言われています。これは、ジャーナリストの布施祐仁さんという人が情報公開で入手されて、私も防衛省から入手をいたしました。

 これを見ますと、さっき撤収の話、私は、先ほどの総理の姿勢は、海外で言っていること、本で言っていることと、法案、全く違うことをおっしゃって、国民や自衛隊の皆さんに対して不誠実だと思います。

 では、イラクでどうだったかということです。これを見ていただいたらわかりますように、きょう岡田委員も、イラクの活動の内容の検証をしっかりしないと、やはり今回後方支援に出すというのは無理だという話があって、これを見ていただいたらわかるように、どんどん黒いんですね。

 中谷防衛大臣、第一次イラク復興支援群長の番匠幸一郎さん、この方は中谷大臣と防衛大学校で同期じゃないでしょうか。この方を中心に、これは前書きも番匠さんがお書きになって、私は、とても誠実な、一生懸命イラクで活動された方だと思うんですが、この審議に当たって、この黒塗りの部分は公開していただかないと、この法案の実のある審議ができないと思いますが、防衛省として公開していただけますか、いかがですか。

中谷国務大臣 その文書は、イラク特措法に基づく陸上自衛隊の活動に関する活動実績等において、各種研究とか、また教育訓練の資とすることを目的としてまとめられたものでございます。

 番匠さんは私と同期でありまして、レンジャーも一緒に訓練をしたこともございますが、非常に優秀な隊員で、第一次の支援隊長として派遣をされて、大変すばらしい仕事をされたと思っております。

 今後の参考にとしてまとめられた文書でございますが、この公表等につきましては、適切に情報を公開して、しっかりとした議論を行うことが重要だと考えておりまして、これまで不開示としていた部分の公表につきましても検討を始めておりまして、速やかに結論を得ておきたいと思っております。

辻元委員 今、速やかに公表の検討をして、結論を得たいとおっしゃいました。

 これ、イラクの問題をしっかり検証しないと話にならないですよ、この委員会で。そう思いませんか、皆さん。

 委員長、この審議中にしっかりと、この衆議院の本委員会に黒塗りのところを公表していただくことを理事会で協議してください。お願いいたします。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

辻元委員 中谷大臣、これを読んでいきますと、死亡した方への処遇とか、それから精神疾患を患う方の処遇とか、それから、それ以外にもいろいろ出てきます。

 そして、活動内容なんですけれども、これを見ていきますと、イラクの中で非常に厳しい状況にあったということがわかります。例えば、三夜連続の陸自宿営地に対する砲撃、そして、二〇〇五年に入ると、一月十一日に陸自宿営地にロケット弾が着弾する事案が生起し、この後です、敵対勢力が存在した、そして、陸自車両に対する爆弾事案が発生した、陸自部隊は復興支援活動を一時自粛する、ロケット弾五発が陸自宿営地に向けて発射されたとか、非常にリアルなんですね。

 この番匠さんがどうお書きになっているか。この前書きです、「イラク人道復興支援活動は、純然たる軍事作戦であった。」と報告されています、内部文書で。我々がいかに幸運に恵まれてその任務ができたかと。

 大臣、今回、このイラクの人道復興支援、これは、学校をつくったり道を修復したりなんですよ。今度は、弾薬を運んだり、要するに、兵たん、ロジスティクス、軍事行動の一環と見られかねないことをやるわけです。

 ちょっと大臣、これを見てください。「イラク人道復興支援活動は、純然たる軍事作戦であった。」。今度の後方支援は、イラクでそうであるならば、純然たる軍事作戦になるんじゃないですか、大臣。

中谷国務大臣 私も、その文書、番匠さんの教訓、読みました。(辻元委員「読みましたか」と呼ぶ)ええ。その後に、

  私はサマーワで、隊員たちによく「ロバとライオン」の例え話をした。我々の任務は、戦闘を主体とするものではないし、人道復興支援は一見非軍事の、軍事組織でなくても実施できる「ロバ」の仕事のように思えるかもしれない。では、なぜ「ライオン」である陸上自衛隊がこの仕事をするのか。それは、イラクでは「ライオン」の構えと能力があるからこそ「ロバ」の仕事ができるのであって、その逆はない

と語っております。

 自衛隊は、日ごろからいろいろな訓練を重ねておりまして、リスクに対する管理とか、そういう厳しい状況下での仕事ができるようになっております。そこでいろいろな任務が与えられても、隊員の安全を確保しつつ任務をするという能力を持っておりまして、そういうもので全ての力を総合して、いろいろなケースを考えて、いろいろな心配を考えて、彼なりに仕事をしたという話だということでございます。

辻元委員 ごらんになっていただいたらわかるように、サマワというのは、一番激戦地のファルージャから二百三十キロ離れたところ、東京がファルージャなら、名古屋ぐらいで活動していたんです。それでもこの事態ですよ。

 そして、今度は、非戦闘地域を外して後方支援に行く。そして、この本では、総理が、国際的に全く通用しないとか言っている、そういうところに自衛隊の皆さんを出すんですか。

 これは、最後、こうお書きになっているんです。この「本行動史の最後に「国家・国民の心の支えこそが我々隊員の士気の根源」であることを付け加え、まとめとする。」と。

 総理、私は、自衛隊の皆さんは、本当に、災害のときもそうだし、イラクで頑張られたと思いますが、今回、集団的自衛権の行使で任務もふえますし、それから、後方支援、これは総理がおっしゃっているのを取り上げましたけれども、活動ももっと危険度が増すんですよ。私は、自衛隊の服務の宣誓をもう一度しっかり皆さんにしていただくこと、そうでないと、士気の問題にもかかわると思います。

 服務の宣誓、もう一度自衛隊の皆さんによく説明して、していただくべきだと思いますが、いかがですか。総理。

中谷国務大臣 一言申し上げたいんですが、これは何のためにやったかというと、イラクの復興支援なんです。その写真にもあるように、道路ができたり水を運んだり、本当に地元の人に喜んでいただく問題でございまして、非常に評価をされております。

 立派な仕事でもありますし、この任務は、自衛隊の任務である国を守る、そういう中で培った能力、国にとっては財産ですよ、そういうことをなし遂げる力を国際貢献に果たしたものでありまして、あくまでも我が国を守るという宣誓のもとに自衛隊員は日々訓練を続けておりますので、こういった宣誓を見直すというような必要はなく、やはり国を守るという能力、力によっていろいろな活動をなし遂げたということでございます。

浜田委員長 安倍内閣総理大臣。

辻元委員 いや、もう総理は結構です。

 私は、これはなぜ申し上げるかというと、やはり無理があるんです、今回の法制は。

 憲法学者の方が違憲だと言うような武力行使の一体化の問題もそうだし、ジュネーブ条約で、自衛隊員が拘束されたらこれは適用外だという話もあって、総理は、適用外の人たちはテロリストだという答弁をここでしているわけですよ、相手に拘束されたら。していますよ。していますよ。ですから無理があるんです。

 それで、これは、日本は過去の戦争の反省のもとに来ています。談話の話がありました。きょう、細野さんも話が出ました。過去の戦争をどう見るかの反省のもとですよ。過去も大本営発表でどんどんいったんです。

 太田大臣にお聞きしたいんですが、村山談話をつくったときは、自社さ政権、社民党の総理でしたが、自民党等とよく調整をして談話をつくりました。当たり前だと思います。ですから、私は、自公でしっかりと、これは閣議決定であろうがそうでなかろうが、しっかり調整をして出すべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

太田国務大臣 これは、政府としてという以上に、安倍総理御自身が判断をされる、適切に判断されることだと思います。

辻元委員 前もこのパネルを出しましたが、歴史認識の部分は一部で、それを引き継いで、そしてその他はそれぞれの思いを出しているんです。

 ですから、総理、ここで総理がどういう行動をとられるのか、日本の国益にも大きくかかわりますので、私は、過去の歴史認識をしっかり引き継いだものを出していただきたい。

 といいますのは、最後に、実は、私の父方の祖父は太平洋の島で戦死しております。私自身は祖父の顔も知りません。遺骨も返ってきておりません。私は、総理がよく岸元総理のことをおっしゃって、すごくうらやましいです、そういう意味では。

 過去の戦争はどうだったか。これは、資料をお配りしておりますけれども、開戦の詔書です。ここにも、国の存立の危殆、存立の危機なんです。これは岸元商工大臣として東条英機内閣でサインされています。

 日本の国は、我が国が攻められたときだけにしよう、自国防衛と言い出したら、ホルムズだとか存立の危機だと言い出したら、これは拡大した歴史があるから、その反省のもとに、我が国に攻められたときだけにしよう、これが日本国憲法だったんですよ。

 ですから、今回憲法違反だと言われるだけではなく、日本の、やはり過去の戦争で亡くなった、やはり戦死者を出すと大変です。うちの両親も苦労しました。私も苦労しました。三代ぐらい続くんです。ですから、その反省のもとに今来ているということを心した七十年談話をつくるべきだと私は思います。いかがですか、総理。

安倍内閣総理大臣 まさに、日本は、七十年前、二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない、この決意のもとに平和国家としての歩みを進めてきたところであろうと思います。そして、自由で民主的な国をつくり、基本的人権を守り、そして法の支配をたっとぶ国をつくり上げてきた、こういうことではないか。この歩みは今後も変わることはございません。

辻元委員 談話というのは、総理大臣の発言というのは、戦争に駆り出した側の立場に立つのではなく、駆り出されて殺された、被害を受けた側に立って、その人たちが心の痛みを癒やすことができる、そういう発言を総理大臣がされること、私はこれが一国の総理の役割だと思っております。

 最後になりますけれども、私自身は、総理と相性が悪いのかいいのかよくわかりませんが、大分立場が違うんですよ、どうも。

浜田委員長 時間が来ております。

辻元委員 でも、これは、おじいさんが戦争に行かせたという話だけれども、行った側、行かされた側の孫が立法府でともに議員になって議論できていることは、戦後民主主義、そして日本国憲法のおかげだと思っております。

 終わります。

浜田委員長 次に、松浪健太君。

松浪委員 維新の党の松浪健太であります。

 いや、偶然とはいえ、同じ大阪十区で競っている辻元議員の直後というのは少しやりにくい気がしますけれども、大分、私の方は辻元議員ともスタンスは大きく違うかと思いますが、その分、きょうは総理からはやじられることもないと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まずは、ちょっと一問。

 先ほど新国立の話も出ていたので、安保の話ではないんですが、お昼過ぎにニュースが入ってまいりました。今、参議院で合区の話が進んでいるわけでありますけれども、この合区、私は、公明さんは十合区だというので、その方がずっといい案だなと個人的には思っておりましたけれども、昨日は二合区ということでありましたけれども、中谷元防衛相初め四閣僚がこれに反対姿勢を会見で示した。報道ですけれども、中谷元防衛相は、少なくとも都道府県から一名代表者を出すべきだ、賛成しかねるとおっしゃったというわけでありますけれども、これは事実でしょうか。

中谷国務大臣 これは現在党内でも議論をされている最中の問題でございますが、こういった参議院の合区問題におきましては、地元高知県といたしましては、長い歴史も文化もありますし、知事を立てて、一つの地方自治体として県民が共同社会をなし遂げてやっておりますので、参議院には少なくとも各県から一名出てほしいというようなことで、地元の自由民主党の高知県連におきましてもそういうことを決定されたものですから、私なりの意見を申し上げているということでございます。

松浪委員 明治維新のころ、廃藩置県では、明治四年に三府三百二県は、その年のうちに三府七十二県になった。これも我が国の歴史でありますので、私は、今回の流れはこれから加速しなければならないと思いますけれども、安保委員会ですので、この質問はここまでにしておこうと思います。

 さて、本日の国会、私は非常に歴史的な日だと思いますよ、国会で野党案がテレビ入りでこれだけ議論されて。通常、与党は野党の案なんて無視をします。しかしながら、きょうは午前中から、自民党の小野寺議員、そして公明党の上田議員におかれては、わざわざ野党案との対照表のパネルまでつくっていただいた。私は、今まで国会でこのような姿を見たことがない。ある意味、国会が進化をしているということを感じます。

 しかしながら、今回、まだ百時間、もうすぐ百時間になりますけれども、議論を聞いていて、不毛だなと思うことがあります。相も変わらず、個別的自衛権を拡大している、集団的自衛権の限定行使だと、同じようなことをずっと、言い方の違いで、学者の世界もそうです、政治家の世界もそうです、同じことを違う形でずっとずっと、表現の違いだけでもめている、そんなイメージがあります。

 先日、我が党の江田憲司議員がこの表をもって示しましたけれども、集団的自衛権、個別的自衛権、これは国連憲章五十一条に定められるものでありますけれども、この国連憲章ができた一九四〇年代、兵器は今と違いました。大砲しかない時代、明らかに、個別的自衛権、集団的自衛権を区分けすることは可能であった。しかしながら、今、ミサイル技術がどんどん発達をして、大陸弾道弾も飛んでくる。最初に、例えばよく日本海に浮かぶ米艦船のことが出されますけれども、この米艦船を狙えば、基地のある日本もすぐに狙われる、これは直結をする話だと思います。それゆえに、我々は、集団的自衛権、個別的自衛権、これが重なり合う部分が出てくる。

 そして、さらに、我々も指摘をさせていただきましたが、自衛権、個別的、集団的の有権解釈、解釈権は日本にあるわけではありません、これはあくまで国際司法裁判所にあるわけでありまして、それが、午前中から言われている外務省の見解とさらにずれているんですね。ただの二重の眼鏡がくっついているだけじゃなくて、この眼鏡もずれている。これで国民の皆さんに判断をしてくださいと。余りに専門的で細かくて、判断ができるものではないと思います。

 そして、やはり根本は、私は、憲法で自衛隊を規定していないことだと思いますよ。

 もう一つ、今回、国会で、決定的にきょうはいい日だなと思うのは、憲法に自衛隊を規定しようという勢力が与野党ともにあって、安全保障を議論する、私はきょうは初めての日ではないかな。このように違いを出して、こうしてテレビで、対案を出しながら、そのポリシーを持った政党がやり合う、これは本当に新たなステージに我が日本の国会は踏み込んでいるものと思っております。

 そうした中で、自衛隊を憲法に規定する。自衛隊はもともと憲法に規定をされていなかった、昔は違憲だった。これが、保安隊になり、自衛隊になり、吉田内閣で憲法解釈をごろりと変えた、自衛隊は合憲ですと。自衛隊は合憲です、そこからやはり集団的自衛権、個別的自衛権の解釈等も、これは確かに民主党の枝野幹事長も何か本で指摘をされておりましたけれども、集団的、個別的がこんなに議論になっているのは日本の国会だけであります。この不毛な論争に私たちは終止符を打ちたいと思っております。

 こうした中で、国民の理解がなかなか進まない。きのうの東京新聞なんかは、安保法案を憲法学者が九割違憲だと。でも、この憲法学界では、自衛隊は違憲の期間が随分長かった。主に学者が自衛隊は違憲だと。国民の意思と本当に離れているわけですよ。我々は、こうした中で安保法制をいじっていくということは、非常に理解するのは難しいと思います。

 総理、国民の理解が進まない。大阪都構想では、橋下代表は六百五十回タウンミーティングをやって、毎回二時間ですよ、千時間以上ですよ。それだけやっても厳しい問題。なかなか国民の理解が進まないのは、私は、憲法をしっかりと正面から、まず自衛隊だけは規定しましょうよというコンセンサスをとってから議論すべきだと思うんですけれども、そのあたり、いかがお考えですか。

安倍内閣総理大臣 なかなかこの議論がわかりにくいのは、憲法に、いわば自衛権があるかどうかという明文規定がないわけでございます。

 そこで、砂川判決、昭和三十四年に、自衛権については、自衛権の行使については、「必要な自衛のための措置」は「国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。」という強い形で、全員の判事が、自衛権はある、こう明確に示した。しかし、ここに、個別的自衛権と集団的自衛権があるわけでございまして、それについては言及がないのでございます。しかし、国連憲章には五十一条に明文規定があるわけでございまして、これを前提に、恐らく判事の頭の中にもあるわけでありますが、しかし、その判決の中にはそれぞれ書かれていないという中において、我々は、一九七二年に解釈をしたところでありまして、必要な自衛の措置とは何かという解釈をしたわけであります。

 しかし、こうした、それぞれ明文化されていないという中において、解釈の積み上げでいくしか、これは国民の命と幸せな生活を守ることができないわけでございますが、そこに説明の難しさは存在するんだろう、こう思うわけでございます。

 そこで、そもそも憲法に自衛隊の存在を明文化する、これは多くの国々がそうです、その国を守る軍隊とかシビリアンコントロールについて明文化している。我が国にはありませんから、自民党案においてはそこをはっきりと、谷垣総裁時代につくった憲法草案では明文化をしている、こういうことでございます。

 しかし、憲法改正につきましては、国民の幅広い、深い議論が必要でありますので、しっかりと議論を、幅広く、多くの国民の皆様に参加をしていただくように努力をしていきたいと思っております。

松浪委員 ただ、これほど大々的に、新聞でも九割違憲だと言われている中で法案を通していくというのは並大抵のことではないと思います。

 そこで、我が党、これは政府案の対案であります。出てくるのが遅かったというのは申しわけないですが、これも今までの議論の積み重ねを随分と反映したものであります。

 午前中に小野寺議員が最初に引用されました小林節先生の新聞記事を私はきょうは皆さんにお配りいたしました。維新案を評価するという内容であります。これでは違憲性はないと。

 今維新案がなぜ違憲性がないという声が広がっているか。これは、先ほど私が不毛な議論から出ろという話をしました。個別的自衛権で考える学者の方は個別的自衛権として合憲だ、そしてまた、集団的自衛権でありながらも明確に自衛措置のもとにとどまっているというような、双方の違う考え方が両方維新は合憲だと。まさに維新案というのは今回憲法について合憲である、我々は、憲法適合性というところがまさに維新案の大きな売りであります。

 これについて、維新提出者に、ちょっと一度じっくりと国民の皆さんの前で答弁いただきたいと思います。

今井議員 どうもありがとうございます。

 非常に重要な部分ですので、少しちょっとお時間をいただいて御説明をさせていただきたいと思います。

 我々は、今松浪委員が御指摘のとおり、あくまでも日本国憲法の九条の枠内に入っているかどうか、この点を非常に重要視しているところでありまして、あくまでも憲法九条は我が国を守るための自衛権ということの理解でおります。

 それで、政府の新三要件も、政府はこれは合憲と解釈をしている、そういう見解でありますけれども、残念ながら、多くの憲法学者、あるいは法の番人であられた元法制局長官の多くの方が違憲であるというふうにおっしゃっておられます。

 この点を踏まえまして、我々は、自分たちだけではなくて、多くの専門家の皆さんも合憲だと言っていただけるような案をつくるべきだということで、この議論を積み重ねてまいりました。

 それで、我々のできた案を、複数の元法制局長官、あるいは、この間、憲法審査会で違憲の御意見を述べられたような憲法学者も含めた複数の憲法学者の皆様に見解をお伺いしました。八名の方から御見解をいただきまして、全員が維新の案は合憲であるというような御評価をいただきました。

 その際に、政府の案がどうして違憲なのかという御意見もありましたので、少し御紹介したいと思います。これは、集団的自衛権だとか個別的自衛権だからということで違憲だというふうに言っているのではなくて、要は、構成要件の問題であるということなんですね。

 例えば、大森元内閣法制局長官はこうおっしゃっています。政府案に対しては、現実的にはほとんど制限的作用を果たさない、まやかしの要件を設定したにすぎない、歯どめもないのも同様、こういうふうにおっしゃっておられます。

 また、阪田元法制局長官は、集団的自衛権そのものが違憲だというわけではないけれども、政府の要件は余りに広がり過ぎているので、これは違憲であるというふうにおっしゃっておられます。

 それから、憲法審査会で違憲の表明をされました小林節教授はこうおっしゃっています。政府案の存立危機事態はなぜ違憲と判断されるかということに対して、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険の要件は、我が国に向けられた武力攻撃を指す、示す概念であり、それ以外にはない、物資の不足による経済危機など武力攻撃以外の事態まで含まれるという解釈は誤りである、そのような理由づけによる集団的自衛権は到底これまでの合憲判断の論理の枠内または延長線上にあるとは言えない、具体的にいかなる事態を想定した構成要件か、政府の説明を聞いてもなおはっきりとしない上に、余りにも曖昧過ぎる、国家の作用の中で最も厳格であるべき軍事力の発動要件が、その時点における政府の総合判断という名目のもとに権力者の一存に委ねられている、こういう構成要件の曖昧さをもって違憲というふうにおっしゃっておられるわけです。

 ですから、先ほど松浪委員が御指摘あったように、個別だの集団的だのという問題ではなくて、いわゆる歯どめがしっかりきいていて、あくまでも我が国の自衛のための措置になっているかというところを、我が党案としてはそこの部分をしっかり遵守しているということでございます。

    〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕

松浪委員 ありがとうございました。

 非常に、今までの国会の議論を超えて、そしてその上で国民の理解を得る、それから学者の皆さんの理解も得るというのが今回何よりも大事なことでありまして、その点、まさに我々は憲法適合性というものをこれからも国民の皆さんに大きく訴えていくべきだと思います。

 そして、現状、日本を取り巻く状況は非常に厳しくなっております。厳しい厳しいと皆さんおっしゃいますけれども、本当に冷戦後大きく状況が変わっている。オバマ大統領は、既に、世界の警察官をやめるということで、同盟に対するシフトの表明を大きくされているわけでありますし、特に経済力、日本は中国にもう経済力で抜かれて、そして二〇二〇年代には中国はアメリカにも追いつく、二〇五〇年には倍ほどになる。そのとき日本は、試算によれば、日本の経済力は中国の数分の一ということも考える中で、これから我々はやはりこの同盟に軸足を、重きを置いていかなければならないというのは、これは我々のコンセンサスであろうというふうに思います。

 その中で、今回の法制、我々の法制も、現行よりも非常に踏み込んでいると思います。特に国際平和対処事態の活動というのは、国連決議に基づく多国籍軍等には我々は参加ができる、これを恒久法で定めていくわけでありますけれども、冷戦後、幾つあるかと私数えてみますと、この七章決議に基づく多国籍軍は、実に、湾岸戦争から始めてもう二十四にも上っているわけでありまして、これだけでも大変な数であります。

 政府案との違いは、国連総会の決議を含めるかどうかということにあるかと思いますけれども、時間も押していますので、提案者にこの政府案との違いをまず伺いたいと思います。

今井議員 今、松浪委員が御指摘ありましたように、同じような恒久法という形で出させていただいていますが、一つの大きな違いは何に基づいてこれを行うかということで、我が党案は、あくまでも国連憲章の第七章に基づく、あるいは安保理決議と同等と認められた平和のための結集決議、これに限定しているわけでございます。政府の場合は、国連総会の決議等さまざまな決議を根拠としてこの支援活動ができるというふうになっております。これは我々としては、あくまでも国連憲章の第七章に基づく決議を根拠にして支援活動を行うということにさせていただいております。

松浪委員 ありがとうございました。

 また、今回争点になっているのは、やはり武力行使との一体化という点については、テロ特措法等との関係で、今まで、現状、政府が維持をしてきた非戦闘地域という概念を我々は引き続き持っていくべきであろう。

 しかし、今回の政府案では、現に戦闘が行われている現場では実施しないというだけでありまして、ただし、捜索救助活動等はこの限りではないとされているんですけれども、こうなると武力行使の一体化の可能性は当然ながら高まると思います。

 今の現状、国もしくは国に準ずる組織というものが非常にいろいろ多くなっているわけでありまして、これまで非戦闘地域と思われていた地域が一瞬にして戦場になるということもあろうかと思いますけれども、この点、総理、端的に、自衛官がこうやって武力行使との一体化、こういう、憲法に禁止される交戦状態になるというような状況になり得ないのかどうか。

 では、防衛大臣、本当に手短にお願いします。

中谷国務大臣 重要影響事態また国際平和支援法ですね、後方支援について、一体化しないという規定は、まず、現に戦闘行為が行われている現場では実施しないということ。そして防衛大臣は、実施区域を設定して、その期間、活動を円滑かつ安全に実施することが困難であると認められる場合は速やかにその指定を変更して、そこで実施されている活動の中断を命じなければならない。また、活動区域におきましても、円滑かつ安全に実施できるということで、その活動の期間に戦闘が行われる見込みがない地域を指定するなど、非戦闘地域と同様の安全規定を設けているということでございます。

松浪委員 非戦闘地域と全く同じであればこの文言をつくる必要がないわけでありまして、私はやはり危機は高まると思いますけれども、これについて同様に提出者に伺います。

今井議員 後方支援活動などの活動を行うに当たっては、これは言うまでもありませんけれども、憲法上の武力行使との一体化を避ける、回避するということに十分配慮をするということがまず大事なことだというふうに思います。

 その上で、もう一つ申し上げたいのは、法制をつくるに当たりましてはやはり立法事実というのが必要であって、従来は、武力行使の一体化を避けるために非戦闘地域という概念をつくっていたわけでありますが、今回、政府は、現に戦闘行為が行われている現場以外のところではできるというふうに表現を変えているわけですけれども、御答弁の内容をいろいろ聞いておりますと、運用上は、実際は非戦闘地域のようなところで活動をするというような御答弁をされていると私は理解しておりますので、であれば、なぜこの表現を変えなければいけないのかというのは理解に苦しみます。

 現状の法制度の中で十分私は支援活動はできると思いますので、武力行使の一体化を避けるためにも、非戦闘地域というのを維持して、これに限定するという考え方でございます。

    〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕

松浪委員 今、提出者の方から、現状と同じ危険性であればこれを変える必要はないという見解が述べられたわけでありますけれども、これについてもう一度、防衛大臣、お願いします。

中谷国務大臣 これは、これまでの経験とかに鑑みまして、より柔軟に、そして安全性にもつながるようなことでございます。

 というのは、非戦闘地域といたしますと、定められた期間、戦闘が行われていない場所ということでありますので、相当長い期間そこが固定をされるわけでございますが、現状を見てみますと、本当に安全かどうか、これはやはり、現場を見ながら逐一判断をしながら、防衛大臣がその実施区域を指定しながら、現に戦闘が行われている現場では実施しませんけれども、こういった区域においては安全そして円滑に実施できるということで、より柔軟、機動的に区域が変更できるようにした方が、日ごろからの調整もできますし、また的確な実施区域も指定できる、こういうことを考えて、従来の非戦闘地域よりも柔軟かつまた的確に区域が指定できるようにしたわけでございます。

松浪委員 柔軟に出るということは、それだけこれまでよりも一歩踏み出るということでありますから、ここで、今までの御答弁では危険性が高まるということをなかなかお認めにならないと思うんですけれども、これは、柔軟性が出て、それが出るとやはり危険は高まるということを素直にお認めになった方がいいのではないですか。

中谷国務大臣 この点につきましては、防衛大臣が、活動区域において円滑かつ安全に実施できるという規定で実施区域を指定するということで、今現在戦闘行為が行われていないというだけではなくて、自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為がないと見込まれる場所を指定するわけでございます。

 攻撃を受けない安全な場所で活動を行うということについては、いわゆる非戦闘地域の概念を設けていた従来と変更がないということでございます。

松浪委員 ストレートにお答えになりませんが、やはり、自衛官の皆さんには、これまで以上に機動的ということは、それだけいろいろな立場で危険な目にも遭うということはお認めになってやらないと、国民の理解はなかなか私は得られないと思いますよ。

 そして、こうしたことに鑑みて、現場の自衛官の皆さん、危険に身をさらすことは変わりがないわけでありまして、国外犯規定というのを、今回、私、ちょっと取り上げさせていただこうと思います。

 国外犯の処罰規定でありますけれども、防衛出動命令下におきましては七年以下の懲役または禁錮となっておりますけれども、さまざまな状況に応じては、自衛官の皆さんも、場合によっては日本国内で裁かれるから殺人罪に問われるというようなこともあるわけであります。

 ほかの国では、例えば軍法会議がある国、それから、軍刑法があるけれども、軍法会議ではなくて一般裁判所で裁く国、こうしたものを我々は精査した上で、自衛官の皆さんが現場でどのようなシチュエーションに置かれるのかということを精査しておかないといけないと思うんですけれども、私は、この間も防衛省を呼んで、どういうふうに精査しているのかと。こうした仕組みを全くやっていないというのが現状で、私は、こんなのは、防衛省は専任の人がいるわけですから、調査なんかは基本のキだと思うんですけれども、こういうこともしていなくて法案をつくっているということ、これは私は問題だと思うんです。

 その点、こうした各国のシステムを防衛省が精査していないということ、これは問題じゃないですか。

中谷国務大臣 軍法会議につきましては米国などが設置していると承知しておりますけれども、我が国におきましては、通常の裁判体系と切り離された軍法会議、これは憲法第七十六条二項によって禁止されている特別裁判所、これに当たることから、現憲法下においてその設置は認められていないと承知をしております。

 また、現時点において、設置する必要があるというふうには我々は考えていないということでございます。

松浪委員 中谷大臣、自民党所属でいらっしゃいますよね。自民党の憲法草案をお読みになったことはありますか。

中谷国務大臣 はい。我々党員がつくった草案でございます。読んだことはございます。

松浪委員 自民党の憲法草案、確かに憲法七十六条二項で特別裁判所の設置については認めていない、これも自民党の憲法草案でありますけれども、そのかわりに、これは、下級審において軍法会議のようなものを置くというのは現行の制度でも可能だという考え方もあります。実際、自民党の日本国憲法草案の、しかもこれは第九条の中に「審判所」と言って、自民党自身が審判所と言って軍法会議を置こうということを考えているのに、与党がそう考えているのに、防衛省がそんなことも調べていないというのは、これはおかしくないですか。

中谷国務大臣 まず、ほかの国々は憲法裁判所もあるわけでございますが、各国の軍隊等の制度につきましては、関係省庁と連携して、必要に応じて調査研究を行ってまいりたいと思っておりますが、今、政府の、閣僚の立場で、それが必要だということは言及を控えさせていただいているということでございます。

松浪委員 私も先ほど憲法にしっかり自衛隊を規定していこうということを野党の立場からも申し上げたわけでありますけれども、そうした中で、与党が行おうとしていること、これは、与党が今政権を持っているわけですから、どこの国が、例えばドイツはありません、NATOのもとにありますので軍法会議は持っていない、オランダではこうだということを類型立てるぐらいは、これは基本のキだと思うんですけれども、それぐらいの調査はこれからもしないんですか。

中谷国務大臣 他国軍隊の制度については当然研究をしてまいり、また調査もしてまいりますが、この制度におきましては、憲法の問題でございますので、基本的には、各政党間での協議、また国会におきましての御議論によって決定をされるべき問題であるというふうに認識しております。

松浪委員 本来であれば、上官に命令をされた自衛隊員が発砲して民間人を殺傷したとか、そういう場合を細かく細かくやはり精査をしてやっていかなきゃいけない。そのときに、日本の裁判所の裁判官は、軍について、また戦場について知らないわけでありますので、せめて各国のシステムを、我が国は幸いにしてそのような状況になったことは余りないとは思いますけれども、そのあたり、しっかりとこれからやっていただくことをお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、村岡敏英君。

村岡委員 維新の党、村岡敏英でございます。

 きょうは平和安全特委で質問させていただくことを感謝いたします。

 そして、私は二十八年前、この世界に秘書として入りましたけれども、この姿には感激いたしております。政府が提案したものに野党がしっかりと対案を出す、この姿というのはなかなかなかった。政府の閣法に反対ならば審議拒否、採決拒否という中で、そして強行採決、これは野党に責任回避がある。しかしながら、野党がしっかりと対案を出して、そして政府の、総理初め答弁者、そして我々の党、維新の党、また民主党がしっかりと答弁する、こういう姿こそが国会で必要だ、こう思っております。

 そして、特に野党が対案を出したときには、野党の方は対案をしっかりと国民に説明する、そして、与党はしっかりと審議時間をとって、この法案を国民にわかってもらう、その上で採決ということがあれば、これが新しい国会の姿であり、こういうふうに国会を進めていかなきゃいけない。

 しかし、もし野党の対案に対してしっかりとした審議時間をつくらないということであれば、これは与党の責任回避です。そこは、しっかりと審議時間を十分とって、国民にわかりやすいように、そして、どちらの案が今のこの安保法制、日本の状況を囲む環境の中で大切なのか、そこをしっかりと国民に見てもらうことが大切だ、こう思っております。

 そこで、総理にお聞きします。

 私が六月十八日、予算委員会で、総理に、我々は独自案を出すと言いました。大変敬意を表したい、しっかりと議論することによって国民にわかってもらう、このようなことをおっしゃいました。私がさっき言った、与党の責任として、我々の独自案にしっかりとした審議時間をとって、国民にそれぞれの案を説明する機会、またわかってもらう機会をつくるということをここでお約束していただけますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今回、対案を出していただいたことに対しては敬意を表したいと思いますし、村岡委員が対案を出しますよとこの委員会でお約束をされたことを実行したことを多としたいと思います。

 もちろん、もうちょっと早く出していただければなという思いはありますよ。しかし、きょう出していただいたおかげで、きょうの審議で、どのように維新案と我々の案がそれぞれ特徴があって、何が違うのか、どういう観点から議論されているかということは、相当これは理解は深まったのではないかな、こんなように思うような次第でございます。

 いずれにいたしましても、維新の皆様の案と政府案、それぞれの案を比べながら審議が深まり、しかし同時に、国民を守っていくという責任は村岡委員も私たちも負っているわけでありますから、どこかの時点で、決めるべきときには決めていただきたい、このように思っているところでございます。

村岡委員 総理、早く出してほしかったと言いましたけれども、私が言ったのは、この姿は自民党が野党のときにもなかったんです。我々がしっかりと対案を出したことによって、これが初めての姿なんです。そこは強調しておきたい、このように思っております。

 そして、国民にはなかなかわかりにくいということがあります。

 まずは、なぜ安全法制をしなきゃいけないのか。この議論も相当されました。もう一回振り返ってみると、日本の周辺を囲む状況が大変今までと違って厳しい環境になった、状況が変わった、だからこそ安全法制をしなきゃいけない。これは多分、政府も我々維新も共通の認識であり、そして国民も同じ認識だと思うわけです。

 しかしながら、政府の今進めている安全法制に対してなかなか理解が進んでいない。この状況は、決して国民が安全保障に関して関心がないわけではありません。最初の、どんな目的でこの安全法制を進めていくのか、これがわかりにくいから、やはり国民が、どんどん審議するたびにわからなくなっている。

 そこで、これは維新の提案者にお聞きしたいんですが、維新はこの状況の中でなぜ安全法制をやらなきゃいけないのか、それを、しっかりと政府との違いを説明していただければ、こう思います。

今井議員 ありがとうございます。

 今、村岡委員が御指摘のとおり、日本を取り巻く環境は確実に変化をしているということであります。尖閣諸島の問題もございましたし、それから南シナ海の方で埋め立てが行われている、あるいは北朝鮮が核兵器を保有しているというようないろいろな状況の変化の中で、当然我々もしっかりと防衛力を強化していかなきゃいけないという認識は、これは恐らく共通なんだと思います。

 我々は、あくまでも自国を守るため、そして、アジア太平洋とか、自分の周辺の安全を確保するため、あくまでも自国の防衛、安全を確保するために法整備をしていくという考え方でやらせていただいておりまして、島嶼防衛には領域警備法、そして、それ以外の有事等に関してもその他の法案ということで、三法案を出させていただいておりますが、全てやはり自国防衛のためということに限定をさせていただいているということでございます。

村岡委員 まさにそのとおりだと思うんですね。私は、国民にわかりにくいのは、自国防衛ということをしっかり述べていくということが大切だ、こう思っています。

 特に、なぜかというところの中でいきますと、今、アメリカ一国だけでは日本の安全保障もしっかりできなくなる、そして日本も一国だけではできない。やはり日米安保があるわけですから、しっかりとチームワークを結んでいかなきゃいけない。その中で、今の法制ではとても日米の協力関係がうまくいかない、だからこそ法制を変えなきゃいけない、ここが一番のポイントだ、こう思っております。

 そのときに、維新は、自国防衛ということで、周辺事態のことをしっかりやろうとしています。しかしながら、政府の方は、ホルムズだ、地球の裏側だ、新三要件によってしっかりと何かそれに対応していくようなことを言っていますが、現実には国民はやはり自国防衛をまずやってほしい、そこが一番だ、こう思っております。そして、取り巻く環境も、アジア周辺、日本を取り巻く環境が一番厳しいという状況を国民はみんな見ています、尖閣にしても、いろいろなアジアの国の情勢にしても。

 そこがわかりにくい。だからこそどんどんわからなくなっている。存立の危機という、この言葉自体の、全部は読みませんけれども、そこがなかなかわかりにくい。そこのわかりにくさが、新聞でそれぞれアンケート調査をとっても、どんどんわからない人がふえてきている、私はそう思っています。

 そこに関して、維新提案者にお聞きします。

 やはりしっかりと国民に説明していく、我々はきょう初めて法案を出しましたので、よく、詳しく説明していただければと思います。

柿沢議員 お答えいたします。

 まさに村岡委員の御指摘のとおりであろうと思います。自国防衛に関する不安を国民は多く抱えている。尖閣諸島の問題、あるいは小笠原諸島のサンゴの密漁の問題、我が国の領海域周辺において他国の船が入ってきて日本の領土、領海、領空が脅かされているのではないか、こういう不安を持っていると思います。そのために、領域警備法案をつくらせていただいて、そして、我が国の離島を含めたさまざまな領土、領空、領海を守っていく、そのための万全な体制をしく、これを提案させていただいているところであります。

 一方で、政府案を拝見いたしておりますと、新三要件ということで、武力行使の要件として、いわゆる存立危機事態というものを設定いたしているわけでありますが、我が国と密接な関係にある他国が武力攻撃を受け、それにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態、これは非常に主観的な要件になっております。

 我が国と密接な関係にある他国はどこか、答弁を聞いておりますと、北朝鮮以外の国はあらかじめ排除されない、こういう答弁になっております。そして、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態、これは一体何かといえば、これこそまさに主観的に認定できる要件でありまして、累次の答弁では、燃油の途絶はもとより、例えば原発の燃料の途絶、また食料の途絶等々によって死活的な状況が生まれれば、我が国が攻撃を受けていなくても武力の行使ができる、こういうものになってしまっているわけです。

 これは、自国防衛と遠い事態でも、主観的な要件を時の政権が満たせば、そこに出ていって、武力の行使を、みずからが攻撃を受けていなくてもできる、こういうものになってしまっている。その拡大解釈の余地の大きさがある意味では大きな不安の要因になっていて、また、憲法学者も、また法制局長官の皆さんも、ここに強い懸念を示されているわけです。

 ですから、私たちは、まさにこの部分を直していく。つまりは、自国防衛にかかわる、今、日米安全保障条約が、日米同盟が日本の安全保障の基軸になっておりますので、我が国周辺において日本を守るために活動している米軍の艦船等々が攻撃を受けた場合、これは次の瞬間に我が国に攻撃の危機が及ぶ可能性が高い、こう認定できる場合が多くあると思います。この場合は、座して死を待つわけではなくて、みずからを守るためにアメリカと共同で武力行使を含めた事態対処を行う、この限りにおいてみずからが攻撃を受けていなくても武力の行使を認めるというのが私たちの武力攻撃危機事態であります。

 これは、まさに我が国に戦火が及ぶ蓋然性が高い。戦火というのは、戦の火と書いて戦火であります。存立危機事態、政府案の場合は、この戦火のカが火ではなく災いという字になっていて、つまりは、直接攻撃でなくても、経済的な被害が甚大になる場合は武力の行使に踏み切ることができる、こういう要件の設定になっているわけであります。

 自国防衛に特化をし、そして、みずからが直接の攻撃にさらされる可能性が高いときに、まさにその反撃として武力行使をできるということで、今までの憲法が規定をしている専守防衛の枠内にとどまる、憲法適合性も担保される、こういうものであります。

 憲法適合性を確保し、また、自国防衛に対する国民の不安に応える、まさに十全かつ行き過ぎのない、歯どめのかかった内容に維新の党の独自案はなっていると自負をいたしております。

村岡委員 やはり、自国防衛ということになると国民に明快にわかるんです。存立危機事態というのが、どこまで一体日本は行くんだろうということで、なかなかわかりにくい。やはり維新の党の案の方がきっちりと限定して、そして自国を防衛するという部分がわかりやすい、私はそのように思っております。

 そして、やはり法案というのは思想や趣旨がなければなりません。

 三番を見ていただきたいんですが、維新案の趣旨は自国防衛。国際平和支援法では世界貢献をしっかり行います。存立危機事態、重要影響事態においては自国防衛に徹するという思想です。そして、自国防衛の範囲でチームワーク、日米の条約に基づいて防衛力を強化していく。日本をしっかりと安心、安全で守っていくという姿勢は示しています。

 しかし、政府案は、同じ防衛であっても、世界貢献みたいな、非常に広い、世界の警察がなかなかアメリカ一国でできなくなった、それを補完するような感じに国民に思われている。いわゆる政府の言う積極的外交というのは、別にこの軍備力だけではありませんけれども、国民には、何かアメリカの世界警察の補完をするんじゃないか、このような不安があります。

 総理、そこでお聞きします。このような不安はないんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 三要件が、先ほど柿沢委員がこれは曖昧、不十分という趣旨の御発言をされましたが、まさにこれは明確だろう。つまり、我が国の存立が脅かされるわけでありますし、これは我が国でありますし、そして、日本の国民の命と自由とそして幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険でありますから、これはかなり私ははっきりしているんだろう、このように思います。

 先ほどの、一番最初の村岡委員の説明の前半の部分は我々と全く考え方が同じだろう、このように思うわけでございます。

 そして、やることも、例えば、我々は米国だけに規定していないのは、もちろん日米同盟、これは基本であります。しかし、例えば、今や、日米豪で合同演習をするということもあるわけでありますが、それ以外にどんどんどんどん広がっていくということは基本的にないわけでありまして、日米が中心でありまして、それ以外はかなり限られてくるわけでありますが、完全に最初から排除することはできないという考え方でありますが、しかし、維新の皆さんとこれは全く違うということでもないんだろうと思います。

 そして、まさに日米同盟において、脅威があったときに、日本の防衛のために警備に当たっている米国の艦船に対する攻撃を、日本もともに守るべき、これも同じなんですね。

 しかし、私たちは、我が国に、そのやる行為については同じなんですが、それは個別的自衛権では行けずに、これはやはり国際法的には集団的自衛権という整理になるという考え方のもとに、制限的に、しかし、三要件で我が国防衛とほぼ近い集団的自衛権の行使は行うということであろう、このように思います。

 そこで、では、アメリカに要請されて、アメリカのためにやるか。これは、我が国に対する、国の存立が脅かされていたり、自由や生命や幸福追求の権利が根底から覆されてしまうということがなければやらないということが明確であるということは申し上げておきたいし、この説明はしっかりと私は訪米の機会にも米国側にもしておりますし、この説明をした上において新しいガイドラインも決定をされているということでございます。

村岡委員 総理、でも、そこが国民になかなかわかりにくいんです。総理が十年も二十年もやっていたら、そのとおりなんでしょう。しかし、内閣はかわっていきます。そのときに、国民は、やはり規定が曖昧だと思っているから、なかなか説明がわからない、ここが問題なんです。

 ですから、維新案の中ではしっかりと、周辺、そして条約によって米国、明確なんです。そこがやはり、同じ要件の中でこの法案があって、そして思想も近い部分もあります。しかし、やはり限定をはめなければ、よく国際法上とか憲法上とか、ここは日本国です、そしてここは国会です、憲法に適合していなきゃいけない。我々は、ここは、憲法に適合するためにやっている委員会であり、国会であります。そこがわかりにくいということが大きな問題だと思います。

 今の総理の発言に対して、提案者の方からお願いします。

今井議員 先日、自民党の高村副総裁と、我が党の案について御説明をさせていただきまして、意見交換をさせていただきました、公明党の北側副代表も御一緒でしたけれども。

 高村副総裁の方からは、まず一つは、非常に単純化すれば、維新さんの場合は日本に武力攻撃がある場合に限定しているんですね、我々は武力攻撃に限定していなくて、それ以外の場合もあるというところが違いですねということで整理をいただいたので、非常に単純に申し上げれば、その点は違うんじゃないでしょうかということを申し上げたということです。

 それと、そのときお話ししている中での私の印象は、政府・与党案というのは、ある程度幅を広げておいて、だけれども、政府のそのときの判断で、ある程度、そこの中でしっかりと限定をしていくというような基本的な考え方、我々は、広げようの余地のない、限定したものを法文の中にしっかり落とし込むというアプローチ、恐らく、ここの基本的な哲学の違い、これが政府と維新の案の違いなんじゃないかなというふうに私は感じております。

村岡委員 まさにそこなんですね。

 総理が言われるように似通っている、しかし、国民にわかりにくいのは私は今政府案だ、こう思っております。自国防衛にしっかりと重きを置いて、その中で国民に説明すると国民はやはりわかりやすいんです。そして、多分違うのは、大きく言えばホルムズだとか地球の裏側に行くとか、そういうことがなければ、しっかり自国防衛に置いていただければほぼ同じであり、総理が賛成していただいたら、維新案のまま通った方がこれは国民に一番わかりやすい。

 しっかりと安全保障を、守るんだということを、総理はどう思われますか。

安倍内閣総理大臣 村岡委員は説明が大変お上手なので、それをそうだなと思う方もおられるかもしれません。

 しかし、例えばホルムズについても、これは別に他国を防衛するためにやっているのではなくて、国際法上他国も防衛する形になりますから集団的自衛権の行使に当たりますが、あそこに頼っているのは、世界で最も頼っているのは日本になるわけでありまして、あそこから石油の八割も来て、ガスの四分の一以上が来るという中においては、人が亡くなる、大変寒い時期には、病院にも、車の移動にも、あるいは電気そのもの、家や人を暖める器具が停止をしていく危険性もあるということが起こっていったときに、私どもは、これは人のためにやるのではなくて、まさに私たちのために、形式的には集団的自衛権の行使に当たるけれども、限定的な要因として、場所は地球の裏側ではありますが、ずっとタンカーも通ってきますから、近くのところだけでやるのも遠くでやるのも同じことということにおいて説明をさせていただいているところでございます。そこのところもどうか御理解をいただきたいと思います。

 そして、まさに維新の会の皆様は明文化をしていくということでありますが、我々は、まさに三要件ということは事実上法文の中にも書き込んでいるわけでございますし、そこのところはさらに、これはやはり、繰り返しになりますが、国際法上は個別的自衛権には我々は当たらないという考え方で、やるべきことは、日本近海においては大分似通ったことを行っていくわけでありますが、そこは限界事例的な個別的自衛権でいけるかもしれない、しかし、これは大体自国に攻撃がなければ個別的自衛権と言えないわけでありますから、私たちはそう整理をさせていただいているということでございます。

村岡委員 総理も御説明が大変やはりわかりやすかったんですけれども、最後、そこのところ、自国防衛ということが国民はやはりすとんと落ちるんです。そこがやはり大事なんです。

 そこで、維新の提案者にお聞きいたします。

 総理が今言った、経済的危機だとかそういうのでも存立にかかわるという、私はちょっと違う、それは違う解決方法がしっかりある、こういうふうに思っています。ぜひ、維新の提案者にお聞きいたします。

小沢(鋭)議員 総理の発想と我々はかなり違うなと思いながら聞かせていただきました。

 具体的に申し上げたいと思います。

 まず、総理は明文化をしたい、こうおっしゃっていましたが、例えば、存立危機という言葉はわかりません、なかなかわかりません。武力攻撃危機、日本が攻撃をされるおそれがあるという話はわかります。全く違うと思います。

 それから、いわゆる支援国は現時点では決めていない、こういう話になっておりますが、我々は、同盟上の軍隊あるいはまた部隊、こういう言い方をしていて、はっきりとわかります。アメリカだけではないだろうというのであれば、現在において防衛協定とかそういったものを結んで、そしてその中に入れればいいわけですから、そういった意味でも歯どめがききます。

 それからもう一つ。これは午前中の審議でも私申し上げましたが、我々のまさに武力攻撃危機事態には、経済的危機は含まれておりません。経済的危機まで含めれば、どこまでいってもそれは広がっていってしまうという危険を国民の皆さんは感じていると思います。

 そういった意味で、今三つの分野で申し上げましたが、決定的に違う、こう思います。

村岡委員 それと、総理がお答えになっていないんですけれども、憲法の適合性、ここのところは、先ほどの質問にお答えになっていないんですが、これはやはり大事なことじゃないですか。総理はどう思われますか。

安倍内閣総理大臣 我々は、憲法の適合性は、これはもちろん基本だと思います。まさに、従来より御説明をさせていただいておりますように、砂川判決があって、これと軌を一にする四十七年見解があって、その基本的な論理を維持しつつ、この論理の安定性もしっかりと維持をしながら、今回、我々は、当てはめにおいて、三要件の中で、我が国を守るため、国民の命や幸せな生活を守るためには行使できる、集団的自衛権をそのためにのみ行使できるという当てはめを行ったところでございまして、その点においては御理解をいただきたい。

 確かに、例えば歴代の法制局長官はさまざまなことを述べておられるわけでありますが、しかし、国際法との関係においては、有権解釈を行うのはまさに外務省、法制局ではなくて外務省が行うわけであります。憲法との関係においては、専ら法制局が政府の一部局として審理を行ってきている。

 憲法学者の方々との関係におきましては、これは残念ながら、かつては自衛隊も違憲というのが大勢でありました。そして、PKOも違憲である、これが大勢だったということもあるわけでありますが、我々は、必要な自衛の措置とは何かということを考え抜いた末、今回の法案を提出させていただいたところでございます。

村岡委員 維新の提案者にお聞きしたいんですが、憲法適合性、最も大事なことだと思うんです。この点をちょっとお聞きしたい。

柿沢議員 大森政輔元内閣法制局長官は、今回の政府案の存立危機事態、つまり、我が国と密接な関係にある他国が武力攻撃を受け、それにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態、この存立危機事態について、現実にはほとんど制限的作用を果たさない、まやかしの要件を設定したにすぎない、歯どめはないも同然である、こういうふうに話されておられます。横畠現長官にとっても上司であったはずの大森元内閣法制局長官のこの言葉は大変重いというふうに思います。

 そういう意味で、私たちは、できることはしっかりやらなければいけない、しかし、憲法適合性の枠を飛び越えるわけにはいかない、こういう考え方から、自国防衛、つまり、我が国に攻撃の矛先が向かう、戦火が私たちの国に及ぶ、そうした蓋然性が高い場合に武力の行使を同盟国である米国の軍隊と共同で行うことができる、こういう武力攻撃危機事態という概念を設定させていただいたわけであります。

 この憲法適合性の問題は、私たちの維新の党案の武力攻撃危機事態においてより明確にクリアされるというふうに認識しております。

村岡委員 もう時間もないので最後になりますけれども、もう一度繰り返します。我が党の案は、自国防衛、ここに思想そして趣旨、重きを置いて、そしてしっかりと周辺事態、さらには日本の安心、安全、安全保障を守っていく、この考えです。

 国民に、必ずこれはしっかりとした審議時間を確保していただいてやれば、やはり国民が、自国を防衛する、周辺事態をしっかりする、こういうことが大切だと思います。

 私は、ぜひ総理にこの案に賛成していただければ、新聞のいろいろなアンケート調査をすれば、よくわかった、こうなるはずだということを最後に申し上げて、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

浜田委員長 次に、井上英孝君。

井上(英)委員 維新の党の井上英孝です。

 この特別委員会、きょうで百時間を超えるというような長きにわたって、本当に各委員の先生方もお疲れさまでございます。

 その中で、やはり先ほどから申し上げているように、もちろん政府案があり、そしてまた、我々は今回独自案ということで、対案という形で提出をさせていただいて、こういう特別委員会でこのように、政府案とそして我々維新案と比較をしながら、建設的な委員会運営というか議論ができるというのは非常にいいことだというふうに改めて申し上げたいと思います。

 そういう中で、平和安全法制に関して、政府案に続いて我が党も提出をさせていただきましたので、本日は、政府案と我が党案の比較をするという質疑をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、自衛権の行使要件についてでありますけれども、先ほど村岡議員から憲法の適合性というのも議論がありました。午前中の質疑の中にもありました。

 政治家の役割、それから法制局の役割、そして憲法を専門に勉強されておられる憲法学者の先生方の役割、やはりそれぞれあるかと思います。そういう中で、どこかが崩れてしまうような案というのにはやはり不備があるんじゃないかというふうに言わざるを得ないと思います。

 多くの憲法学者の方がこれはやはり違憲じゃないかという議論を、もちろん、政治家の責任と大局的な判断でその時々に判断するということを決して我々は否定しているわけではありませんけれども、やはりそこは慎重に、憲法の適合性というのを明確にして、歯どめのきいた、そしてこの国際状況下に対応できる、そういう安保法制というのを我々はしっかりと考えていきたいと思っております。自衛権の行使要件につきまして、事例に即して、政府案と維新案だとそれぞれどうなるのかというのをお尋ねさせていただきたいと思います。

 まず、重要なシーレーンとなっている中東ホルムズ海峡が機雷で海上封鎖をされ、日本への石油輸入が途絶える場合、国民の生命を脅かす深刻な事態に陥れば、自衛権の行使要件を満たし、自衛隊を派遣して機雷を掃海させることができるということになっているかと思いますけれども、改めまして、何度も重複した議論になっているかと思いますけれども、可能になるということを確認させていただきたいと思います。

中谷国務大臣 今回の法整備に当たりましては、昭和四十七年の政府見解の基本的論理、これは全く変わっておりません。この基本的論理において、「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。」としているのは、これは砂川事件に関する最高裁判所の判決の考え方と軌を一にするものでございます。

 そこで、平和安全法制の整備に当たりましては、集団的自衛権の行使を一部限定容認いたしましたが、それはあくまでも自衛のための必要最小限の措置に限られる。集団的自衛権の行使一般を認めるものではなくて、そして他国の防衛それ自体を目的とする行使は認められない。あくまでも国民の命と平和な暮らしを守ることが目的でありまして、極めて限定的なものでありまして、この点は、新三要件、三つの要件が明確に示しておりまして、憲法上の明確な歯どめとなっております。

 その上で、今回の法制では、この新三要件は全て法律の中に盛り込んでおり、法律上の要件になっている。したがって、憲法の枠内ということで、我々は御指摘には当たらないと認識しております。

井上(英)委員 機雷掃海がその新三要件さえ満たせばできるということであるかと思いますけれども、その新三要件も含め、ずっと答弁をしてこられております。我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険というふうに今おっしゃられているんですけれども、先ほど維新の提案者の答弁では、やはりその構成要件が非常に広い、歯どめがきいていないというふうな議論もありました。

 そういう意味で、我が党といいますか、法案提出者の考え方をお聞かせいただけますでしょうか。

丸山議員 お答えいたします。

 政府案によりますれば、いわゆる新三要件、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される状態というのが、先ほど来さまざまな委員の先生方から指摘のあるように、非常に曖昧であるということでございます。

 しかしながら、この幅広く読めてしまう条文によって、政府案では、今委員御指摘のホルムズ海峡での機雷掃海が可能であるというふうに答弁されております。ここが非常に国民の皆さんにとって理解をなかなか得られない、なぜなんだ、読みづらいんじゃないかというお声があるところでございます。

 これに対しまして、我が党の武力攻撃危機事態におきましては、このホルムズ海峡の機雷掃海はオマーンの領海内における武力行使に該当するため、海外派兵を禁止する憲法の趣旨からも、そもそも不可能ではないだろうかという考えであります。

 そして、法案上の構成要件の当てはめ、この武力攻撃危機事態においての構成要件ですが、「我が国周辺の地域において」とまず限定がかかっております。そしてさらには、「我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険」がなければこの自衛権の発動ができないと書かれておりますので、御指摘のような場合においては自衛権の行使はできないと考えます。

 以上です。

井上(英)委員 今お答えをいただいたように、やはり三要件を満たせば、また、先ほど維新の提案者からの答弁でもありましたように、主観的な判断でその三要件を満たしているというふうになれば、極端に言うとホルムズまで行ける、機雷を掃海しに行けるという状況よりも、やはり、我が国の自衛のための場合、そういったしっかりとした限定をかけた制約のある我々の案、また、我が国周辺の地域におけるという制約的な文言も入っております。そういう意味での、我々、武力攻撃危機事態というのには当たらないということで、ホルムズの掃海はできないというふうになっております。

 では次に、防衛出動の承認についてお聞きさせていただきます。

 防衛出動は、まさに今から自衛権を行使するために出動するという状況下で、現行法で最もハイレベルの防衛行動というふうになっております。

 日本国憲法下においては過去に防衛出動が行われたことは当然一度もないわけでありますけれども、しかし、集団的自衛権を閣議決定で認めて、さらに、今後、もし平和安全法制について政府案が成立することになれば、防衛出動の機会がふえていく可能性が非常に高いんじゃないかというふうに考えております。

 もしそうであるとすれば、国会承認などの手続を進める上でも、やはり慎重に、特に慎重な手続的配慮というのが必要だというふうに考えておりますけれども、まず、政府案においての防衛出動についてお答えいただけますでしょうか。

中谷国務大臣 そもそも、存立危機事態と申しますと、我が国の存立を脅かし、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態であります。政府としては、このような国家の存亡にかかわるような極めて重大な事態、これが今後発生することがふえるなどという認識は全く有していません。今回の法整備はあくまでも抑止力の強化が目的でありまして、国家の存亡にかかわる事態の発生を未然に防止できるようになると考えております。

 また、万が一事態が発生した場合には、自衛隊の防衛出動の可否という、国家の存亡と国民の生死を左右する極めて重い判断をすることになります。このような判断に国会がなれてしまって、慎重に検討しなくなるということはおおよそ考えられないことでございまして、今回の法改正による国会承認の手続も、十分に慎重を期して判断されるものと認識をいたしております。

 また、存立危機に至ったときの政府につきましては、事態の経緯、事態が存立危機事態であることの認定、そして認定の前提となった事実、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がなく、事態に対処するため武力の行使が必要であると認められる理由等を記載した対処基本方針を閣議決定して直ちに国会に承認を求めることにいたしておりますので、このような国会承認というしっかりとした民主的プロセスを経た上で、防衛大臣が防衛出動をかけるということになるわけでございます。

井上(英)委員 それでは、この件、防衛出動に関して、維新の提出者はいかがでしょうか。

丸山議員 お答えいたします。

 政府案によれば、先ほど中谷大臣の御説明にあったように、存立危機事態に基づいて集団的自衛権の行使を新たに認めるという場合においても、そもそも、国民の権利が著しく制限される最大限の行政の行為として防衛出動というのが出される。そうした中で、国会の承認の手続も、非常にこれは慎重に進めるべきものであるというふうに我が党としては考えております。

 しかしながら、政府案では、国会承認の手続については、従来どおりのまま、防衛出動時に「国会の承認を得なければならない。」とする記載のみで、これを新たに慎重な手続を踏む等の配慮もありませんし、また、その手続の中身についても必ずしも明らかではありません。先ほど、辻元委員の御指摘で、黒塗りの資料がございました。特定秘密の扱いをどうするのかも見えません。

 我が党の案は、防衛出動の国会承認が形式的、儀式的な手続にならないように、しっかりと国会でチェックができるように、承認手続を実質化する策としまして、この法の施行時までに必要な整備を進めるという旨を書き込みつつ、国会が十分な情報に基づいて判断ができるように、特定秘密を含めまして必要な情報をできる限り提供できるようにしていくこと、そして、我が党としては、防衛出動の要件を審査する専門委員会もしくは専門の審査会のようなものを設置するということを予定しております。

 以上です。

井上(英)委員 今答弁いただいたように、防衛出動に関しましても、やはり、しっかりとした歯どめという意味では、我々の提案しております法案の方が、十分な情報に基づいて、特定秘密も含めて必要な情報をできる限り提供する、さらには防衛出動要件を審査する専門の委員会というのを設置するということになっています。

 国会承認の手続だけということになりますと、当然、政府、そしてまた今の政府と与党もそうですけれども、やはり一定一体感がある関係にあるわけであります。先ほども言われたように、主観的に判断して新三要件を満たしているということになって、政府が国会に審議を求めて、国会が過半数でそれをオーケーだというふうになると、結果的には、それは非常にできレース的なものになってしまう。

 そういう意味では、やはり、もっと専門委員会等も含めた専門性の高いレベルで判断ができるような機会がある方が、我々はしっかりと歯どめがきいているんじゃないかというふうに思うわけであります。

 次に、重要影響事態……(中谷国務大臣「ちょっと訂正」と呼ぶ)はい。

中谷国務大臣 政府の方も、できるだけ国会に対しては情報を提供してまいる所存でございます。

 一点、先ほど、防衛出動を命じるのが防衛大臣がと申し上げましたが、これは内閣総理大臣が防衛出動を命じるということで、訂正させていただきます。

井上(英)委員 それは、もちろん総理だと思いますけれども、やはり内閣として、総理大臣が当然国会に求めたら、与党とは一体型ですから、先ほどの言っている指摘は、総理になろうが防衛大臣になろうが変わらないと思います。そういう意味では、やはり、歯どめのきいた法案を選択していただくことがいいんじゃないかというふうに我々は思います。

 次に、重要影響事態についてお聞きをいたします。

 総理は、これまでの答弁で、中東やインド洋などで深刻な軍事的緊張状態や武力衝突が発生し、我が国に物資を運ぶ日本の船舶に深刻な影響が及ぶ可能性があり、米国などがこうした事態に対応するために活動している状況が生じたときは、重要影響事態に該当することはあり得るという説明がありました。

 やはり、この審議を聞いておられる国民の多くの方々も、最終的に、周辺事態から周辺という言葉がなくなって、地理的限定というのをかけていない、今までもそういう概念ではないという一連の今日までの審議の経過も踏まえておりますけれども、そういう面で、どこにでも行けてしまう、どこでもそういうことが行われてしまうんじゃないかというふうに思っておられる国民の皆様方もたくさんおられるだろうと思いますし、実際どこにでも行けるというふうになっているわけでありますけれども、改めて政府にお聞きをいたします。

中谷国務大臣 維新案につきましては、周辺事態、この定義そのままで、支援の対象を米軍に限定しているわけであります。

 しかし、現在の安全保障環境を考えてみますと、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態、これが発生する地域から特定の地域をあらかじめ排除することは困難である、やはりこれを重要影響事態として改める必要があるというのが一点。

 それから、もう一つは、国際社会において、対テロ活動や湾岸戦争などの例にも見られるように、事態の拡大を抑制し、またはその収拾を図るといった取り組みが広く多国間の枠組みで行われてきているようになっておりまして、この重要影響事態に際しても、米国だけに限らず、そうした枠組みにより対処することが現実に想定をされるというようなことで、この重要影響事態に、米軍に限らずに、我が国の平和と安全のために必要な活動をしている外国軍隊等に対しても必要な後方支援を行うことが我が国の平和と安全にとって必要である、必要不可欠であるということで、我々は規定をしているということで、二点が大きな相違点だということでございます。

井上(英)委員 では、それに対して、法案提出者、お願いします。

小沢(鋭)議員 結論から申し上げますと、我が党案はこの重要影響事態法を認めておりません。

 理由は、今も井上委員からもお話がありましたが、私は、これが一番、とにかく幅が広くて、本当に歯どめがきいていない、まさに危ない法案だというふうに思っています。

 理由を四つ言います。まず、定義が余りにも広いですね。要は、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態。これはもう何だって、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態ですよ。まず定義が、余りにも幅が広過ぎる。それから、今話がありましたが、地理的要件、これが全く一切考えられていない。それから、三番目。国連のいわゆる決議等、何も要らない。いわゆるアメリカ主導の多国籍軍とか有志連合とかいう話に対しての支援がやれる形になってしまう。四番目。いわゆる外国の部隊、外国との連携、こういう話になっておりますが、これもあらゆる国が想定をされる。

 以上四点を考えてみただけでも、この重要影響事態というのは極めて大きいと私は思います。

 ここのところは、まさに我が党の案は、先ほど来話が出ているように、自国防衛はちゃんとやります。それから、国際協調主義のもとで、国連のいわゆる決議のもとでの活動もきちっとやります。この真ん中のところは従来の周辺事態法できちっとやります。

 しかし、それをなぜ重要影響事態に変えたのか、全く理由がわかりません。ということで、我が党はこの重要影響事態法を認めておりません。

井上(英)委員 今お答えをいただいたように、周辺事態からわざわざ周辺という言葉を取って地理的限定をかけていないというのが、やはり歯どめがきいていないというふうに我々としては言わざるを得ないというふうに思います。

 我々は、やはり条約に基づいて、日米安保条約に基づく米国ないし米軍をサポートするということは一定必要だというふうに判断もしていますし、その支援をするというのみだけのものであり、そしてまた、我々、自国をもちろん当然自衛するための法であるというふうに考えております。

 そういう意味でも、やはり、ではなぜ周辺を外して、極端な話、日本から見た地球の裏側まで行けるようにする必要があるのか、そこは非常に疑問な点がございます。

 そういうことを含めても、非常に歯どめのきいている我々の法案の方がいいんじゃないかというふうに思います。

 次に、重要影響事態における後方支援活動についてお聞きをいたしますけれども、中東やインド洋などで深刻な軍事的緊張状態や武力衝突が発生し、先ほど申し上げましたけれども、我が国に物資を運ぶ日本の船舶に深刻な影響が及ぶ可能性があり、米国などがこうした事態に対応するために活動しているとき、我が国の自衛隊が、米軍等に対して、弾薬の提供や、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油をすることというのは可能なのか。また、場所が我が国近海であった場合もあわせて、改めて、まずは政府案をお聞きさせていただきます。

中谷国務大臣 現行の周辺事態法の制定時には、弾薬の提供、そして戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備については、具体的なニーズがなかったために、支援内容には含めなかったというところであります。

 しかし、その後、日米防衛協力が進展をし、そしてガイドライン見直しが進められた中で、米側から、これらを含む幅広い後方支援への期待が示された。また、政府としても、重要影響事態に対処している外国の軍隊に対して我が国として実施できる範囲で必要なあらゆる支援を行うことが、我が国の平和と安全を確保するために重要であると認識をいたしておりまして、今般の平和安全法制の整備に当たって、改めて慎重に検討した結果、現に戦闘行為が行われている現場では支援活動を実施しないことにより、武力行使と一体化の問題は生じないと判断をし、弾薬の提供、そして戦闘作戦行動のための発進準備中の航空機に対する給油及び整備についても、後方支援活動として実施できることとしたものでございます。

井上(英)委員 法案提出者は。

小沢(鋭)議員 後方支援の支援の内容も、先ほど四点、重要影響事態法の問題点を挙げましたが、これは五番目の大変大きな問題です。

 結論から申し上げますと、一言で言えば、国際法上、今中谷防衛大臣からお話があった弾薬の提供、あるいは発進準備中の航空機への給油、これは完全に武力行使だとみなされているからです。

 日本は、戦争状態に近いところで、あるいは戦争状態にかかわるような状態のもとで、そういった武力行使はできない、これが我が国のある意味では憲法上の制約だ、こう思っています。

 戦闘地域に近くないと言いますが、発進準備中の飛行機なんというのはずっと遠くから飛ぶわけですから、当然、だから、そんなものはかなり遠くから行くのは当たり前の話でありまして、これまでの周辺事態法でなぜそれをやっていなかったのか、それは歯どめであったからです。その歯どめを取っ払うということであるから、我々は、大変危険であって反対である、こういうことです。

井上(英)委員 今お答えをいただいたように、やはり後方支援活動においても一定の歯どめというのをしっかりとかけているというのが、我が党の提出させていただいた法案の中身であります。

 時間も限られていますので、法案についてはまたこの後、我が同僚の小熊議員からも質疑があるかと思いますけれども、あと、総理に一つ最後にお聞きをしたいのは、先ほど村岡委員の質疑にもありましたように、やはり対案を出したことに対して敬意を表するというお言葉もありますし、丁寧に真摯に議論をしていくというふうにお答えもいただいておるんですけれども、おとつい八日に我々はこの法案を提出して、少しおくれましたのは非常に御迷惑をかけているかと一定思いますけれども、八日に出して来週十五日にこの特別委員会で採決するんじゃないかというような、きな臭い話も漏れ伝わってきております。

 そういう中で、もちろん、行政府のトップであります総理に具体的に答えてくれと申し上げないですけれども、ただ、丁寧に議論するということが、八日に出して次の週に、一週間で採決を求められるということが丁寧なのかどうか、客観的にお答えをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まさに今回、維新案を初めて議論したのでございますが、政府案と維新案の違いは大変明確になったと思います。

 そして、維新の皆様が、いわば政府案を、ずっとこの審議を通じて、まさに八十時間を大幅に超える審議を通じて指摘をして議論が深まったからこそ、まさにその深まった議論を土台に維新案が出てきた。ですから、相当、今聞いていて、大分違いは明らかになり、かつ、維新案はこういう考え方だ、しかも、先ほど既にパネルを使って違いをわかりやすく説明もしていただきましたから、これは国民の皆様も、この短期間の間に相当理解は、それは、今まで八十時間という積み上げがあったことは間違いない。その間、委員を初め、下地委員からも大変厳しい御指摘等々もいただいてきている中での維新の案だな、こんなように思います。

 いずれにいたしましても、委員会において十分に審議がなされたという御判断をいただければ、決めるときには決めていただきたい、このように思うところでございます。

井上(英)委員 もちろん、対案を出すことになっているわけですから、中身に溝があるのは当然ですし、それをこれから詰めていくのに、今は、政府の閣法は二法案で、我々は三法案出させていただいて、二法案で百時間を超えているわけですから、三法案を審議するとなると、もうちょっと、一週間というのはちょっと乱暴なんじゃないかなという気がいたしますので、それをお願いして、私の質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 維新の党の小熊慎司です。

 まず初めに、国際平和対処事態における復興支援活動について、維新提出者と、そして政府と、それぞれお聞きをしたいというふうに思います。

 国際平和対処事態における武力紛争時の後方支援活動が行われた後、紛争が終結すれば、そのまま人道復興支援活動に移行することになると考えられますが、人道復興支援活動は国際平和協力法に基づく活動ですから、同法に基づいて改めて自衛隊を派遣する手続が必要となるのかどうか、まず維新の方からお伺いをいたします。

小沢(鋭)議員 結論から申し上げますと、維新は恒久法で一体でございますので、その手続は不要であります。

 中身を少し説明いたしますと、政府案は、御案内のとおり、今回の新法と、それから人道復興支援は国際平和協力法に基づいて行う、こういう二つの法律にまたがっておりますので、自衛隊の派遣手続が新たに必要になるというふうに私どもは理解をしております。

 しかし、我が党は、この問題に関しては、今小熊委員が御指摘にもなりましたように、まさに、いわゆる後方支援でそういった紛争が終わった、その後の人道復興支援、直ちに入ればいいじゃないか、こういう話でありますから、我々は恒久法の中でそれを処理しておりますので、一切、二重の手続は要らないという意味で、簡潔に人道復興支援には入っていける、そういう体制をとっております。

小熊委員 政府の方にも同じ質問を。

中谷国務大臣 政府の国際平和支援法といいますと、これは国際平和共同対処事態と申しますけれども、我が国が実施する諸外国の軍隊等の活動に関連した協力支援活動を定めた法律でございます。

 この国際平和支援法には、対応措置に、被災民の支援等を内容とする人道復興支援、これは含まれておらず、国際平和共同対処事態においては、国際平和支援法に基づいて人道復興支援活動を実施することはできません。

 しかし、PKO参加五原則が満たされている状況であれば、改正PKO法に基づいて人道復興支援活動を実施することが可能ですけれども、その際には、当然、改正PKO法に基づく手続、これが必要でございます。

小熊委員 手続が必要なのか、一連の復興支援活動がスムーズにいけるかどうかという意味でも、この維新案の方が私はすぐれていると思います。

 ただ、一点、維新の方にもう一度確認をしたい点があります。

 支援活動はスムーズに行うことが必要ではあるんですけれども、停戦合意がなされていないような状況の中でも復興支援活動をしなければいけない状況というのも可能性として考えられます。この場合、その安全策といったもの、歯どめをかけるものといったものは、この維新案の中にはどういうふうに盛り込んでいますか。

小沢(鋭)議員 そのとおりでございまして、維新案の中には、停戦合意のない状況下で支援活動が行われる危険性を回避する必要のために、自衛隊の部隊が人道復興支援活動を円滑かつ安全に実施することが困難であると認める場合には、防衛大臣が活動の中断を命じることとするなどの安全策、安全弁を設けておるところでございます。

小熊委員 この維新の案について、では、防衛大臣にお聞きいたしますけれども、我々の方が一連の活動をしやすいことになっている、なおかつ、危険な場合も回避する仕組みも入っているということに関して、大臣の見解をお聞きしたいと思います。

中谷国務大臣 今回、平和安全法制の整備に当たって、やはり国際的な平和協力活動をこれまで以上に支障なく実施できるためには、活動を行う区域の安全の確保、これが必要な場合があると考えております。また、そのような場合には、他国軍隊に安全確保を依存する形ではなくて、みずから安全確保の任務を行うということが適当であると判断をいたしております。

 この安全確保業務を実施するためには、任務遂行型の武器使用が必要となるために、停戦合意を初め、参加五原則ですね、これと同様の厳格な原則、領域国等の受け入れの同意の安定維持といった要件を満たすことが必要であるわけでありますので、PKO五原則がある中の枠組みですけれども、これと同じ枠組みのもとに置いたということでございます。

小熊委員 両方の答弁者の話を聞いても、やはりスムーズに、実際、実効性、また実行してしっかり成果が上がるというのは、どうしてもその手続を入れてしまうことによってその目的が達成されない、そういう印象を私は受けていますので、これはやはり維新の案の方がいいなというふうにしっかり確認をさせていただきました。

 次に移りますけれども、国際平和対処事態における後方支援活動についてです。

 恒久法である国際平和支援法をつくることで、国際平和共同対処事態においては特措法をつくらなくても戦闘中の他国軍に後方支援ができるようにするわけですが、この後方支援活動に当たっては、弾薬の提供や戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油というのはできるのかどうか。

 これは、まず維新の方からお答えをお願いします。

小沢(鋭)議員 結論から申し上げますと、維新案ではできません。

 それは、理由は、先ほども重要影響事態のときに申し上げましたように、今お話がありましたいわゆる弾薬の提供、それから戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油、整備は、国際法上、武力行使、こうみなされることになっておりまして、我が国はそういった武力行使との一体化を禁じている、こういうことでございますから、我が党では、それはこの国際平和支援法においてもできない、こういう形をとっております。

小熊委員 では、政府の方にも同じ……。

中谷国務大臣 政府といたしましては、国際社会の平和と安全、そのために活動する他国の軍隊に対して、我が国として実施できる範囲で必要なあらゆる支援を行うことができるように法的措置を講じておくということが重要であると認識をいたしております。

 過去の特措法の制定時においては、具体的ニーズが想定されなかったために、弾薬の提供、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油、整備、これについては内容から除いておりましたが、その後、日米防衛協力の進展、またガイドラインの見直しで日米間で協議をいたしまして、幅広い後方支援の期待が示されたということで、これらも含まったということでございます。

 また、実際、一昨年に、南スーダンPKOに参加している陸上部隊が、国連からの要請を受けまして、韓国部隊のために弾薬提供を行ったことがございます。

 こういった想定外の状況によって弾薬を融通する必要が生じる場面も現実にあるわけでございますので、そのため、今回の国際平和支援法におきまして、諸外国の軍隊等に対して、弾薬の提供及び戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備、これを行うことを可能にしたということでございます。

小熊委員 再度、政府に聞きますけれども、武力行使の一体化というか、武力行使に当たりますか、これ。当たるわけですね。(発言する者あり)当たらないという判断ですね。

 維新の方では、これは武力行使の一体化のおそれがあるということでよろしいですか。では、もう一度、答弁をお願いします。

小沢(鋭)議員 これは、国際法上、武力行使というふうにみなされると我々は判断しています。

 また、憲法審査会で、さきの六月四日の憲法審査会で三人の憲法学者の皆さんが今回の法制全般が違憲であると言ったことの理由は、一つは、先ほど来話題になっている集団的自衛権の問題でありますが、もう一つは、この後方支援の問題でありました。

 この後方支援はまさに国際法上武力行使であるので、それを我が国はやることはできない、こういう意味で憲法違反と言ったわけでありまして、このことは意外にこの中でも余り問題にされておりませんが、さきの憲法審査会で憲法学者の皆さんが違憲だと言った理由の大きな二番目の柱でございます。

小熊委員 これは、先ほど来、我々、同じパネルでありますけれども、まさに維新案が憲法適合性がある、政府案については憲法適合性が疑わしいという点の、まさに象徴の一つですよ。

 細かなようで、これがまさに大事な点、憲法に合致しているのかどうかということは大事なことですし、例えば、こういうので国会の事前承認が必要であるといっても、違憲性のあるものを、国の最高機関で、国権の最高機関の国会が違憲のものを承認するかしないかということ自体が非常に問題を大きくすることでありますので、ここはしっかり、武力行使との一体化でないという客観的な見解もしっかり政府はつけなきゃいけないと思うんですよ。

 総理、どうぞ。

安倍内閣総理大臣 それは明確でございまして、武力行使とは一体化しないということでございまして、武器弾薬の提供が武力行使と一体化するという政府の見解を示したことはもちろん一度もないわけでございます。先ほど中谷大臣から答弁をさせていただいたように、そういうニーズがないということでありましたので、そもそもそれは入れていなかったということでございます。

 しかし、今回は、米側から、ガイドラインの見直しを行った結果、日米協議の中でも、米側からこれを含む幅広い後方支援の期待が示されているわけでございます。

 また、先ほど小沢委員から国際法上という話がございましたが、弾薬を提供することが武力行使だということが国際法上定められているわけではもちろんなくて、憲法との関係において、憲法との関係において武力行使と一体化するかどうかというのは、これは日本のみの議論でございます。憲法九条があるから、日本で、果たして一体化するかどうかという議論が行われているわけでございまして、その中の整理において、我々は、今回は弾薬でありますが、弾薬の提供については一体化しない、こういうことでございます。

 これは、かつてさまざまな議論がございました。例えば医療行為も一体化するのではないかという議論もあったわけでございまして、やはりそれは当たらないだろうということになっているわけでございます。かつてはさまざまな議論があったのでございますが、今は、まさに私が申し上げたとおりで整理されているということでございます。

小熊委員 ちょっと答弁が長かったんですが。

 こうした点も、維新も案を出したということで、今後も議論、九十時間、百時間、参考人まで、百時間、きょうで超えるというふうに聞きました。だけれども、維新案が出たことによって、また対比するものができて、ここからまさに国民的理解が深まっていくということであれば、きょう一日で、これでわかりましたねという話じゃないです。今の問題も整理されていない。国民の多くの皆さんがまだまだ理解が深まっていないということがございますので、これはまさにここから本格的な質疑を始めなきゃいけないというふうに思っています。

 質問が盛りだくさんですから、次の質問に移りますけれども、これは日本が……(発言する者あり)では、小沢さん。

小沢(鋭)議員 総理から先ほどの国際法上の話が出ましたので、ちょっと整理をさせてください。

 まず一つは、弾薬の提供、それから給油、これが国際法上武力行使かどうかという話は、これは憲法審査会の場面で、私がきちっとそれをそういう聞き方をして、そして小林先生が、イエスであります、こう答えていますね。ですから、そういう答弁が憲法学者からあったということをきちっと申し上げて、我が党もそうした判断をしております、こう申し上げました。

 それからもう一つ。問題は……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

小沢(鋭)議員 憲法の問題、いわゆる武力行使であるかどうか、それから一体化の議論は我が国憲法の問題でありまして、これはまた国際法の問題とは違うということは、これは整理として持っておかなければいけない。

 それから、先ほどの中谷大臣の、弾薬の提供は韓国から要請があったという話は、あれは完全にPKOですから、紛争が終わった後の話でありますので、今回のように紛争中の話とは全く違うということを混同してああいう答弁をされると、国民は恐らく間違うと思いますね。

 以上です。

小熊委員 ありがとうございます。

 これをずっとやっていても切りがないので次に移りますけれども、二年前、平成二十五年の暮れに国家安全保障戦略が閣議決定をされました。これは、積極的平和主義、この理念に立って日本が世界平和の中でどういう役割を果たすかということが、この理念が規定されているわけでありますけれども、この方向性というのは私は否定するものでもありませんし、国際社会の平和といったものは、軍事的な側面だけではなくて、人間の安全保障とか、そもそも紛争とか戦争とかといったものは、世界の貧困やそういったものを解決していかなければ、根本原因を絶たなければ世界の平和を保てないという点においては、こうした、自衛隊がどうだ、自衛権がどうだということも非常に重要でありますけれども、私は地元で消防団の団員をやっていて、活動はちょっと振るってはいないんですが、そういう中でいろいろな体験をしていくと、消火活動をしっかりやるというのももちろん大切なんですけれども、やはり消防団員の皆さんが日夜やっていることというのは予防消防ということです。

 これを、まさに国際平和ということになれば、何か起きたときにどういうふうに対応するかということも大事ですけれども、そうしたことが起きないための外交努力というのが必要であります。

 ことし、戦後、終戦から七十年、私の地元では戊辰戦争から百四十七年という数え方をしていますけれども、国連ができても七十年です。この秋、国連総会が行われて、来年日本が非常任理事国入りするというのは、これはもうほぼ確定されています。そしてまた、安保理改革として、日本が常任理事国入りをしよう、こういった取り組みも私は評価をするところです。

 しかしながら、一方で、常任理事国たる国としての責務といったものに、こうした人間の安全保障にしっかりと関与していく、かかわっていくということが必要なのでありますけれども、現状、たびたび外務委員会で岸田大臣とは議論していますけれども、今、GNI比、国民総所得の中で日本は世界三位ですけれども、GNI比でODA予算を見ると、もう十八位になっちゃっているんです。こういう現状で、世界の平和に貢献します、積極的平和主義ですと言っても、これは総合力として、常任理事国、そうした条件を満たす国というふうにみなされないんじゃないですか。

 ぜひ、こういうところも、ODAもしっかりやっていく、そういうことも国際貢献を果たしていくということが、まさに世界の平和と安全、そして、そういった根本原因をなくしていく、戦争、紛争をなくしていく、テロをなくしていく、まさにその根本原因に関与していくということが、こういう国際貢献、ODAをしっかりやっていくということにもつながるというふうに私は思います。

 この件についてはどうですか。

岸田国務大臣 委員御指摘のように、ことしは戦後七十年になります。この戦後七十年にわたりまして、我が国は平和国家としての歩みを進めて、平和構築ですとか開発、あるいは軍縮・不拡散など、さまざまな分野において積極的に貢献をしてまいりました。そして、今後は、ぜひ安保理の常任理事国にもなり、これらの分野でより一層貢献するべく、G4の諸国とともに、アフリカですとか、あるいはカリブ諸国、こういった多くの国々とも協力しながら、安保理改革実現に向けてリーダーシップを発揮していきたいと思います。

 そして、その際に、御指摘のODAでありますが、GNI比でのODAの量を〇・七%にする、こうした国際的な目標が国際社会にも掲げられており、我が国もコミットしております。ぜひこの目標を念頭に、国際協調主義に基づく積極的平和主義の考えに基づいて、我が国の外交における大変重要なツールであります開発協力、これをしっかりと活用しながら一層積極的に貢献していきたいと考えています。

 そして、御指摘のように、我が国のODAは、昨年、対GNI比〇・一九%、これはDAC加盟国中十八位にとどまっております。委員の方からも、ODAに関しましては、選択と集中、そして拡大、この三つをたびたび強調していただいております。この〇・七%目標、我が国もこれまでもコミットしているわけですから、ぜひこれを目標に最大限努力をしていかなければならないと考えております。

小熊委員 ODAというのはまだ国民的な理解もなかなかないというのが私は事実だというふうに思います。国民の多くは、国家の安全保障とか世界の安全保障とかという観点で捉えるんではなくて、ODAというのはチャリティーだというふうに捉えている人たちが多いので、日本が大変なときにODA予算をふやすのはどうだという意見があるというのも事実でありますけれども。

 この間も私は、参議院時代にODAの特別委員会で大変お世話になった、お亡くなりになった中村博彦さんの墓参りに徳島まで行ってきましたけれども、そのときに、墓前に手を合わせたときにいろいろ中村先生から御指導いただいた点も振り返って、きょうこの質問をしているわけであります。

 総理も、この法案がどうなるか、これからの国会の審議ですけれども、秋の国連の、七十周年というのは国連にとっても節目のときです。来年は非常任理事国入りをする、確実視されているという中で、やはり国際社会の中でも日本の国際貢献、ODAのあり方、残念ながら、結果としてはこの数字なんですよ、この予算なんです。まさに選択と集中と拡大、それで充実をしていく、積極的平和主義を推し進めていく、そうした発言をすることが必要だと思いますよ。総理、どうですか。

安倍内閣総理大臣 この二年半、GNIが急成長しておりますので、その点、このGNI比については残念ながらだんだん順位が落ちてきているということもございます。限られた財源の中で我々も国際貢献を果たしていきたいと思います。

 小熊委員が指摘をされたように、なかなか国民的に、私も地元でミニ集会等をやりますと、安倍さん、私たちだって大変なのに何で外に出すのという議論がございます。そういうときにいつも私も申し上げることは、実は、日本の新幹線も東名高速道路も黒部第四ダムも、みんな世界銀行からお金を借りて、お金がなかったからお金を借りて投資をしたんですよ、まさに世界の支援によって、ODAとはちょっと違いますが、しかし、世界からお金を貸して、低利の融資をしてもらってつくった結果、日本は成長し、そして今やODAを出す側に回った。ということは、我々もしっかりとODAを行っていくことによってそういう国々が成長していく、それは日本にとっても経済的な利益になるし、世界が安定することによって日本は繁栄していくんだというお話もさせていただいているところでございます。

 そういう観点からも我々は努力を重ねていきたい、このように考えております。

小熊委員 努力を重ねてしっかり結果を出すということですから、年々縮小していって、あと、微増ぐらいでODAは何とかなっていますということではなくて、しっかり形を示していただきたいというふうに思います。

 あと、きょう、やっとこういった維新の案が出てきて、国会の審議もこれから深まっていくと私は思いますし、私の地元でも、地元紙とテレビ局がアンケートを最近とったんですけれども、全国紙がとっている以上に、非常に、わからない、反対というのは多いです。私も地元に帰ってさまざまな人と意見を交換すると、わからないというのがまだまだ多いわけであります。

 維新の対案が出ているわけです。このことによってわかりやすくなっている。政府案がどの点が問題点があるのか、疑念があるのか、その理解が進んでいるのか進んでいないのかというのは、維新が対案を出したことによってやっと国民の皆さんにこれが明らかになってきている。であれば、ここからまたさらに議論を進めていかなければならないというふうに思います。

 きょうはもう時間がないので触れられないんですけれども、これは現実には憲法改正に近い大きな法改正です。ということであれば、今、自衛隊の皆さんも公務員としての服務の宣誓をしているわけでありますけれども、これもこのままでいいのか。新たな服務宣誓をしてもらう必要があるんじゃないか、これだけ大きく変わるんだから。

 そして、昔でいえば、保安隊からこの自衛隊に変わるときも何千人もやめているわけですよね、大きくその活動内容が変わるからということで。この政府案で成立すればこれは大きく変わるわけですから、こうしたこともやらなきゃいけない。

 そして、まして我々国会議員も、憲法五十一条で表決とか発言の免責事項はありますけれども、これは国会議員自身も、日本のあり方をどうしっかりとやるのかということで背負っていかなきゃいけない問題です。そういう意味では、この国民の理解が深まらない時点、これをしっかりと進めていかなきゃいけないという時点においては、場合によっては国民に信を問うことも局面によってはあるということを御指摘申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 非戦闘地域と自衛隊の武器使用の問題について聞きます。

 今回の安保法制は、自衛隊による米軍への補給や輸送など軍事支援活動について、これまでの非戦闘地域という枠組みを撤廃して、現に戦闘が行われている現場でなければ支援活動を実施できるとしています。政府は、この点について、これまでの非戦闘地域で活動を行うという考え方と基本的には同じであり、今までの経験等をもとに整理し直したと説明しています。

 そこで、今までの海外派兵の経験をどのように検証し、教訓にしてこの法案を出しているのかについてただしたいと思います。

 自衛隊のイラク派兵では、陸上自衛隊の宿営地が少なくとも十四回、二十三発のロケット弾や迫撃砲弾による攻撃を受けました。車列が群衆に取り囲まれ、ミラーが壊されることもありました。航空自衛隊のC130輸送機はバグダッド空港などに米軍の兵員や物資を輸送する活動を行ったが、バグダッドの上空で携帯ミサイルで狙われていることを示す赤ランプが点灯し、警報が鳴り、攻撃を避けるための回避行動を頻繁にとっていたことが報じられています。

 総理に聞きますが、非戦闘地域とした場所でも自衛隊は攻撃の対象となり、戦闘に至る寸前だった。自衛隊が活動する場所が戦闘現場になる可能性があるというのがイラクの経験が示したことだったと私は考えます。総理は今回の法案を提出するに当たってこの点をどう検証したのか、述べていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 我々、イラクにおける復興支援活動の経験を生かしながら今回の法制を行ったところでございます。

 かつての非戦闘地域につきましては、いわば自衛隊がそこに所在する間は戦闘行為が行われない、例えば半年という期間、サマワはそうである、このように認定したわけでございます。

 しかし、実際は、さまざまな場所で活動するわけでございます。例えば、サマワの中でも一定の地域で活動する場合、そこで二週間活動する場合は、その二週間を通じて戦闘現場とならないということが見込まれるというのが今回の考え方でございます。そうした柔軟性を持ちながらこの判断をしていくべきだろう、このように整理をさせていただいたところでございます。

穀田委員 大体、戦闘行為が行われないと見込まれる場所を指定するというのが繰り返されておられるわけですね。しかし、現にイラクでは、非戦闘地域とされた自衛隊の宿営地に対する攻撃が繰り返され、そして、そのことを実際何の検証もしないで当時と同じような説明を繰り返しているというのが私は許されないと思うんですね。

 では、具体的に当時のイラクでの自衛隊の活動がどのようなものだったのか、サマワに派兵された陸上自衛隊の活動を例に取り上げたい。

 ここに私持ってきましたけれども、イラク復興支援活動行動史、これは黒塗りではありません。あります。二〇〇八年五月に陸上自衛隊の陸上幕僚監部がイラクでの活動の教訓についてまとめた内部文書です。二分冊で四百ページ以上に及ぶものです。

 中谷大臣、これはどういう文書なのか、性格についてお答えください。

中谷国務大臣 イラク復興支援活動行動史、これは、イラク特措法に基づく陸上自衛隊の活動に関する活動実績等につきまして、各種研究そして教育訓練の資とすることを目的として、平成二十年五月に作成された文書でございます。

 当該文書は、第一編と第二編から構成をされ、主な内容としては……(穀田委員「それはまだ聞いていないんです」と呼ぶ)はい。では、五月に作成された文書でございます。

穀田委員 だから、研究だけじゃなくて、審査会の答申書によると、「陸上自衛隊が実施したイラク人道復興支援活動に関する教訓資料」と、わざわざ発表しているわけですね。教訓資料だということが大事なんですね。だから、陸上自衛隊の各級の指揮官の間で、今後の活動に生かす教訓資料として共有されているものであります。だから、単なる経験談とは違うんですよ。

 文書の冒頭には、これですけれども、二編のところの一番最初に、第一次イラク復興支援群長を務めた番匠氏が巻頭言として言葉を寄せています。この中で番匠氏は、イラクでの自衛隊の活動についてどのような任務だったと述べているか、報告ください。

中谷国務大臣 御指摘の質問は、イラク復興支援活動行動史に掲載された番匠第一次イラク復興支援群長のコメントの一部でございます。

 御指摘の部分を読み上げるわけでございますが、

  その第一は、「イラク人道復興支援活動は、純然たる軍事作戦であった。」ということである。隊旗授与式において、小泉総理は「自衛隊の諸君にしかできない任務」と訓示された。派遣準備から、イラクへの展開、指揮・幕僚活動、人事、情報、兵站、復興支援活動、広報・対外連絡調整、撤収まで、振り返ってみれば、イラク派遣は、派遣部隊と本国の陸幕・関係機関・部隊等、国家と陸上自衛隊の総力をあげて行われた、本当の軍事作戦であり、我々が平素から訓練を重ね本業としている軍事組織としての真価を問われた任務だったと思う。

また同時に、番匠群長は同じコメントの中で、

 我々の任務は、戦闘を主体とするものではない

とも述べております。

穀田委員 だから、今のところで大事なのは、純然たる軍事作戦だったということと、軍事組織としての真価が問われた任務だったとまで述べているわけですね。だから、非戦闘地域での人道復興支援活動、これは建前だったけれども、実態は軍事作戦そのものだったと総括しているのがその最大の特徴なんです。(発言する者あり)皆さん見ていないから平気なことを言っているんだけれども、私は全部見ているんです。

 では、具体的にどのような軍事作戦だったのか。

 まず、確認するけれども、イラク特措法は、自衛隊の活動地域を非戦闘地域に限定し、戦闘が行われるに至った場合や戦闘行為が予測される場合には、現地部隊の指揮官が活動を一時休止し、避難すると規定していた、それはそういうことでよろしいですね。簡単に。

中谷国務大臣 先ほど、ちょっと一言補足をいたしますが、その文章の後に、番匠隊長は、隊員たちによくロバとライオン……(穀田委員「それは先ほど聞きました。テレビで見ました」と呼ぶ)ですから、そういうことを実施するために、やはり安全に万全を尽くす、全ての神経をもって隊員の命を守る、それだけの心構えを言ったわけでございます。

 御質問につきましては、御指摘のように、法律に従って、活動を一時中断するということでございます。

穀田委員 もう一点確認します。

 自衛隊が武器を使用できるのは、みずからを守る場合か、自分の管理下、管理のもとに入った民間人などを守る場合に限定し、相手に危害を加えることができるのは、正当防衛、緊急避難に限られるとしている点、その点も確認できますね。

中谷国務大臣 イラク特措法におきましては、いわゆる自己保存型の武器使用が認められておりまして、正当防衛または緊急避難に該当する場合には人に対して危害を与える射撃を行うということで、自己保存型の武器使用ができるということでございます。

穀田委員 ところが、実際はどうだったか。

 この文書には、イラクへの派兵に備えて自衛隊がどのような事前訓練を行ったかということが書かれています。どんな訓練を行ったか。そこには、「至近距離射撃等を重視した訓練」という項目があります。具体的には、派遣部隊は、「至近距離射撃と制圧射撃を重点的に練成して、射撃に対する自信を付与した。」と書かれています。

 これは事実ですね。

中谷国務大臣 はい、事実だということです。

穀田委員 これは、黒塗りのところが事実だとお認めになった。

 では、中谷大臣、もう一度聞きますけれども、制圧射撃というのはどういうことを指すのか、お答えください。

中谷国務大臣 御指摘の制圧射撃につきましては、自衛隊で確立をされた定義があるわけではございませんが、一般に、隊員が連射で一定時間、複数または単数の目標に対して射撃を行うことをそのように言う場合があります。

穀田委員 それは定義があるわけじゃないと言いますけれども、「防衛省規格」という中の「火器用語」の「射撃」という防衛省の用語集を見ると、制圧射撃というのは「敵に損害を与え、その戦闘力の発揮を妨害するための射撃」と定義しています。機関銃で敵に間断なく連続射撃を加え、火力で圧倒し、文字どおり敵を制圧する射撃のことであります。

 だから、自衛隊の活動地域は非戦闘地域に限定し、戦闘行為が行われる場合には、活動を一時休止し、避難する、武器を使用する場合にも、危害射撃が認められるのは正当防衛並びに緊急避難に限られるというのが当時の説明でした。しかし、当時の説明と全く違うことを現場の部隊は想定して訓練したということになるじゃありませんか。その点、いかがですか。

中谷国務大臣 派遣された隊員の命を守るために、装備を準備し、また、武器をもってルールのもとに隊員の安全を守るということは、これは当然のことでございまして、先ほど申し上げましたとおり、イラク特措法においては自己保存型の武器使用が認められているということで、自己保存型の武器使用であっても、自己等の生命または身体を防衛するために、法律の要件を満たす場合であれば、先ほど申し上げたような形での武器使用、ここで言う制圧射撃、これを行うことも可能でございます。

 例えば、一例を申し上げれば、突如、武装グループが武器を搭載した車両で自衛隊の宿営地を一斉に襲撃してきた場合に、警備の自衛官の呼びかけや警告を無視して宿営地に突進してくるような場合、その足をとめるために、当該武装グループに対して連射で一定時間武器を使用するといったことが考えられるわけでありまして、やはり派遣に際しては、武器使用権限を含めた隊員個々の行動の基準についてまず教育を行い、法令に基づいた適切な武器使用が行われるように徹底した訓練を行い、またルールを定めて派遣をしたということでございます。

穀田委員 法令に従ってなんてなっていませんよ。制圧射撃というのは、敵をせん滅する、そういう意味の中身になっているということも含めて言っているわけですよ。

 それは、なぜそういう訓練をしたかといったことまできちんとこれは書いています。それはやはり、今までは近距離でそういう射撃をしたことがない、しかも、今お話があったように、突然来る可能性もあるということで、今までにない訓練をしているわけですね。

 しかも、当時のイラクで繰り返し起こっていたのは市街地での戦闘でした。市街地の建物の中や物陰から住民に紛れて突然発砲がある、誰が敵かもわからない、そうした中で身を守るためには、間断なく撃ちまくるしかないということなわけですよね。

 みずからを守るとかなんとかという話じゃ、そういうことだけでなくて、実際そういう想定をし、敵がある、そして制圧射撃の訓練を行ったということじゃないんですか。

中谷国務大臣 あくまでも自己保存のための武器使用の範囲でございまして、派遣された以上、やはり隊員の安全を確保するために部隊としてどうすればいいのかというようなことで、あらゆる状況、リスクなどを想定いたしまして、そういう際の隊員の安全を確保するということはルールとしても事前に定め、訓練をし、そして装備を準備して、行って対応したということでございます。

穀田委員 それは違いますよ。自己保存という問題と、今お話ししたように、今防衛省の規格でもあるように、先ほどお話ししたように「敵に損害を加え、その戦闘力の発揮を妨害するための射撃」ということになっているわけですよね。それは防衛省の規格であるわけですね。だから、そういう意味でいうと、このような武器使用が自己保存のための必要最小限度の武器使用であるはずがないんですよ。

 制圧射撃などという武器使用が、当時、一切説明されていないんじゃないですか。そういう説明をされていましたか、大臣。

中谷国務大臣 イラク特措法においては、いわゆる自己保存型の武器使用が認められておりまして、正当防衛、緊急避難に該当する場合には、人に対して危害を与える射撃を行うことができるということでございます。

 先ほど一例を挙げましたけれども、突然、武装グループが武器を搭載して大量に押しかけ、そして車両等で宿営地を一斉に襲撃した場合に、警備の自衛官の呼びかけ、警告を無視して宿営地に突進してくるような場合に、その足をとめる、そのために、当該武装グループに対して連射で一定時間武器を使用するといったこと、これは、この自己保存型の武器使用に認められる範囲であると私は思っております。

穀田委員 今、宿営地の話をされました。では、どんなことをやっていたかということについて、この資料に基づいてもう一度言いましょう。やはり、今私が言った制圧射撃というのは、実際に、先ほど述べたように、極めて危険なことまで発生する状況があった。

 二〇〇五年十二月四日、自衛隊が管理、指導してつくった養護施設の竣工式で、近くに駐車してあった自衛隊の車列が群衆に取り囲まれ、車両ミラーが壊されるという事態が発生しました。そのとき現地の部隊がどう対応しようとしていたか。文書にはこう書いています。

 ルメイサのサドル派事務所付近において、群衆による抗議行動、投石等を受け、車両のバックミラー等が破壊された。この際、小隊長以下警備小隊の隊員は、投石する群衆の他に銃を所持している者を発見し、これに特に注意を払う等、適確に現場の状況を把握しながら冷静に行動した(銃を所持している者は部隊に銃口を向けることはなかったため、弾薬装填は実施せず。)。

と書いているんですね。

 つまり、自衛隊が現地でイラク人を殺傷する寸前までいっていたということじゃないんですか、この事態は。

中谷国務大臣 これは報道にもあったような記憶がございますが、イラク派遣当時、サマワ北部にあるルメイサ市内におきまして、養護施設の補修事業の竣工式の準備のために駐車中の自衛隊の車列に対して、現場付近のサドル派事務所のメンバーと思われる者が抗議行動等を実施して、車両のミラーが破損されたということはありますが、武器の使用、これは確認をされておらず、隊員にけが等の異状もありません。

 防衛省・自衛隊としましては、イラク特措法に基づく活動につきましてはいろいろな努力をいたしております。情報収集、また十分な装備、教育訓練、地元住民との良好な関係の維持構築に努めて、一つ紹介しますが、スーパーウグイス作戦といいますけれども、住民の皆さんにやはり信頼をしてもらう。(穀田委員「それは知っています。ウグイス作戦でしょう。そんなの知っています」と呼ぶ)GNNも知っていますか、義理、人情、浪花節。このように住民の皆さんから信頼を得る努力をしつつ、安全を確保してこの実施をしたということで、非常に、結果的に一人のけが人も出さずに、また地元の住民に発砲もせずに、立派に私は任務をなし遂げたというふうに思っております。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

穀田委員 聞くことに答えてくれなあきませんで。そんな長々と違うことをしゃべって、さっきしゃべったことを、私がしゃべったことを復唱せんかてよろしいわな。

 それで、私が言っているのは、やはりイラク人を殺傷する寸前までいっていたのと違うのかというところを聞いているわけですやんか。もし、銃を保持していたイラク人が少しでも部隊に銃口を向けるそぶりがあれば、実際に殺傷する事態に至っていたのではないかということを私は危惧しているんですよ。しかも、それは、さっきもあったように、制圧射撃という場合はその一人だけ狙うわけじゃないわけですから、こうずっとやるわけですからね。当然それは可能性はあるということになるじゃないですか。

 しかも、文書には、「多くの指揮官に共通して、最初の武器使用が精神的にハードルが高いのではないかとの危惧があった。」「最終的には「危ないと思ったら撃て」との指導をした指揮官が多かった。」と書かれているわけであります。

 現地の状況は混沌としていた、いつ、誰が、どこから発砲してくるかわからない、そうしたもとで攻撃を受けた場合、誰が敵か、どう対応すべきか考えていたのでは逆にやられてしまう、だから、現場の指揮官は危ないと思ったら撃てと指導し、派遣される隊員に覚え込ませたということではないのか。いかがですか。

中谷国務大臣 この事件におきましては、武器の使用は確認しておらず、隊員にけがの異状もありません。

 そして、事実として、五年間の活動でしたけれども、一発の銃の発砲もなく、立派に全員無事任務をなし遂げたわけでありますが、これは努力なくしてできません。やはり、事前に情報を得て、訓練をして、装備を構え、そして地元の住民の方と良好な関係を保つ、本当に大変苦労しながら安全に任務を遂行したということでございます。

 それから、もう一点。武器使用におきましては、あくまでも自己保存の武器使用、これの基準に従って実施をしたということでございます。

穀田委員 同じく基準を何回述べてもだめですよ。実際に起こっている事態について言っているわけですから。

 しかも、では、なぜ安全のために一発も撃たなかったかという問題について言うならば、さらに文書はこう書いているんですよ。

  安全確保のための施策に関し、はじめに強調すべき事項として適切な活動地域と任務の選定がある。それはサマーワという地域において人道復興支援活動を実施するという任務が付与されたことによって実は、派遣間の終始を通じる安全確保の基盤が形成されたのである。

このように述べているわけですよ。

 だから、当然これは、少なくとも、今、何でこれは安全だったかというと、撃たなくて済んだかというと、そういういわば任務と地域の設定があったからだと言っているわけではないですか。そんなことわかっていますよ、私は。だからそういうことだと。

 問題は、自衛隊のイラク派兵というのは非戦闘地域での人道復興支援活動が建前だった、ところが、それでも現場の部隊はこうした危険な状況を想定して訓練を行っていた。

 大臣、総理大臣、政府は、今回の法案審議でも、危なくなったら活動を休止し避難する、武器の使用は正当防衛、緊急避難に限られると説明しています。イラク特措法のとき、全く同じ説明を繰り返しているわけですよ。

 しかし、今回の法案は、非戦闘地域の枠組みをなくし、戦闘現場以外での米軍への兵たん支援を可能とするものであります。しかも、治安維持活動まで実施可能とし、自己保存にとどまらず、任務遂行のための武器使用まで認めている。こうなりますと、殺し殺される状況になる危険は明白だと私は思うので、その点からいっても憲法九条を真っ向から否定する武力行使そのものだと私は思うんですが、総理はいかがですか。

中谷国務大臣 一言申し上げますが、これは何のためにイラクに行ったかということなんです。

 これは、やはり国連の決議もありました。イラクの復興支援もありました。国際社会への貢献でございます。そういう中で隊員が非常に苦労して任務を遂行したということであります。

 今回の国際平和支援法も、国際社会の平和安全を脅かす事態であって、国連憲章の目的に従って共同する活動を行う。やはり、日本として国際平和そして国際社会に寄与する、貢献する、そういうことも我が国の安全にとりましては大事なことであるという認識で、そういう目的で活動しているということでございます。

穀田委員 なぜそんな全然違う話をするんですか。私が言っているのは、非戦闘地域でのいわばイラク派兵というのは人道的支援、復興支援が建前だった、それでもこれだけ大変だったんだと。あなたは、何か言うとすぐ、一発も撃たなかったと。一発も撃たない、そういう安全なところ、任務がそうだったという話をしているわけじゃないですか、それは私が言っているんじゃないですか。

 問題は、それを広げたら危なくなるじゃないか、そういう問題についてどうなんやということを総理に聞いているわけですやんか。

安倍内閣総理大臣 これはまさに整理をし直したわけでありまして、先ほど申し上げましたように、戦闘地域と非戦闘地域という考え方について、一定の期間、自衛隊がそこにとどまる期間は、その地域、例えばサマワは、これは非戦闘地域であるという認定をしたのでありますが、今回の経験から、サマワの中においても安全な場所もあるし、サマワから外れた場所においても安全な場所がある。しかし、例えばそれは、そこを半年とか区切るのではなくて、活動を行う二週間なら二週間、その地域は戦闘行為が行われない、この二週間の間は行われないと見込まれるところについては行おう、こういう柔軟な形で、今までの経験を生かして見直しをするということでございます。

 そしてまた、自衛官の皆さんは、イラクの人道復興支援の活動におきましても、厳格ないわば武器の使用の制限についても、これは訓練を重ねてきたわけでございます。ですから、むしろ自衛隊においては、そういう非常に制限的な武器の使用を訓練した自衛官が、例えば我が国事態のときには、これは積極的に我が国のために武力行使をしなければいけませんから、ある意味、そちらはそちらでもう一度訓練をし直さなければならないぐらいに極めて制限的な武器の使用をするということでございますから、ただいま穀田委員が御紹介されたような緊張状況になったときも、自衛隊は正しい判断をして、弾を発射することなく、まさに誰も死傷させることなく、同時に、こちら側も誰も死傷せずに帰ってきたということでございます。

 今後も、こうした形で、しっかりと訓練をしながら正しい判断ができるようにならなければならない、このように思っております。

穀田委員 私は、二つ間違いがあると思いますね。

 そういう訓練というのは、先ほど述べたように、制圧訓練、制圧のための制圧射撃などというものは、当時、この特措法の議論のときには全くなかった問題です。しかも、これが今明らかになったということであります。二つ目に、その経過を通じて、こういうところでも危なくて、寸前のところまで行っていた。こういう事態からすれば、一層これは、広げた場合は危険がある。この二つのことを言っているわけですよ。

 私は、この機会に、今言いたいんですけれども、私はこうやって開示の資料を見ましたよ。ところが、先ほどは黒塗りの資料があると。

 そうすると、委員長、これははっきりしてほしいんだけれども、なぜその二つの資料があるのか。国会に対して、なぜ、いつ、全部開示している資料が出て、黒塗りの資料が出たのか。これは、審議の途中にこういう事態が、安保法制の、戦争法の議論があったからこそこういうことをやったんじゃないのかということについてはっきりしてほしい。

 私は、その点で、二つ言っておきたいと思うんです。

 その白黒、経過をはっきりしろということと、あわせて、この審議をする上で、こういった事態でイラクで何が起こっていたか。少なくとも特措法の議論になかったことが起こっていたということについて、全議員に資料を提示する必要がある。

 ですから、開示を改めて求めたいと思います。

浜田委員長 理事会で協議をいたします。

穀田委員 では次に、ホルムズ海峡の問題について質問します。

 集団自衛権の行使の唯一念頭に置いている実例として、繰り返し、中東ホルムズ海峡の機雷封鎖が挙げられます。

 そこで、岸田大臣に聞きます。

 二〇一二年に、米軍主催のペルシャ湾での国際掃海訓練が行われました。その訓練には海上自衛隊も参加しているが、その際、外務省がまとめた「イラン情勢(ホルムズ海峡をめぐる動き)」と題する資料があります。これです。

 この資料には、次のように記されています。

  イランには一時的に同海峡を「封鎖」ないし通航を妨害する能力はあるが、外国の軍事対応がある「封鎖」は長期間維持できないと見られる。また、経済的に得策でもない。イラン原油輸出は同海峡経由で行われており、海峡「封鎖」はイラン自らの経済活動を封殺するもの

すなわち

 (イランの外貨収入の七割以上が原油輸出)であり、ホルムズ海峡「封鎖」は、イランにとっても重大な決断を要するもの。

と明記されています。

 このように、外務省では、ホルムズ海峡の封鎖はイランにとってもみずからの首を絞めかねないもろ刃の措置になると分析したのではないでしょうか。それとも、こうした分析を外務省は変更したんですか。

岸田国務大臣 済みません。御指摘の資料ですが、ちょっと事前に通告がありましたので、その資料が手元にありませんし、私自身、拝見しておりません。ちょっと、今の御質問にお答えする材料を今手元に持っておりません。

穀田委員 私は、ホルムズ海峡をめぐる一連の動きについて、何をしていたかということを聞いています。

 では、その問題について、確かに取り扱い厳重注意という資料ではありますけれども、中身を隠してはいけないんですね。その文書があるかないかという問題はさておいて、イランにとっても、そういう決断をしていてもろ刃の措置になると分析を外務省は現にしているんじゃないのか。

 では、どういう分析をしているんですか、逆に聞きましょうか。

 もう一遍言いましょうか。先ほど言ったように、イランにとっても重大な決断を要する場合には、これはもろ刃の措置だから大変だという分析を外務省はしているんでしょう。それはいいでしょう。

岸田国務大臣 資料を離れて、外務省の判断について御質問をいただきました。

 二〇一二年以降、イランにおいては、幾度かにわたって、軍関係者がホルムズ海峡の封鎖について述べたことが報じられております。こういったことを承知しております。

 他方、二〇一三年七月に誕生したロウハニ政権は、国際社会と建設的に協調していく姿勢、これを鮮明にしております。二〇一三年十一月、私もイランを訪問させていただきました。その際に、イランのザリーフ外相と日・イラン外相会談を行いましたが、その共同声明におきましても、「両外相は、ペルシャ湾と太平洋とをつなぐシーレーンにおける法の支配の尊重並びに制限のない貿易及び航行の自由の意義を強調」する、こうした宣言を行っております。

 このように、イランとの間においては、我が国は、ホルムズ海峡をめぐる状況についてこうした認識を持っております。

穀田委員 今、岸田外務大臣からお話があったザリーフ外務大臣は、昨年の三月、記者から日本を訪問したときのことを問われて、米国の星条旗新聞には、イランはいまだにホルムズ海峡封鎖を考えているのかという質問に対して、対立は避けたいと強調しているわけですね。その意味で、また、この間一連の問題を考えますと、イランの核問題をめぐっても、現在、包括的な合意に向けた外交的解決の努力が行われている。

 こうした事実を冷静に見れば、ホルムズ海峡の封鎖を憲法解釈の論拠にすること自体、既に私は破綻していると思っています。

 そこで、機雷掃海の性質について少し聞きたいと思うんですね。

 政府は、機雷掃海は性質上あくまでも受動的かつ限定的な行為との説明を繰り返しています。これは、国際法上、機雷除去のような戦闘行動を、受動的、限定的な武力行使として他の武力行使と区別して扱っている事例は存在しますか。大臣、お答えください。岸田大臣。

岸田国務大臣 まず、機雷掃海というもの、これは武力の行使に該当いたします。

 その実態は、純粋に、水中の危険物から民間船舶等を防護し、その安全な航行を確保する、こうしたことを目的とするものであります。また、掃海艦艇というものは木製あるいはプラスチック製でできております。そして、自己防護用の装備すら持っておりません。こうしたことでありますので、円滑にこうした作業を行う際には、戦闘が現に行われていない、こうした現場において行うことになっています。

 受動的あるいは限定的なものであるということにつきまして、我が国は、こうした機雷掃海の実態や性格に着目して、このような考え方を持っているところでございます。こうした考え方につきましては国際的にも理解されるものであると考えます。

穀田委員 よう聞いておいてほしいねんね。

 要するに、後ろからペーパーをもらって一般論をずっとしゃべったらあきまへんで、それは。

 私、聞いているのは、限定的だとか受動的だとかいって、武力行使として他の武力行使と区別して扱っている事例は世界に存在するかということを聞いているんですよ。

岸田国務大臣 先ほど申し上げましたのは我が国の考え方でありますが、他国が機雷掃海についてどのように評価しているか、どのように扱っているかということにつきまして、網羅的に把握しているものではありません。

穀田委員 では、網羅的に把握していないということは、知らぬということになりますやんか。それは困りまっせ。

 要するに、極めて厳しくやっているとか、日本の考え方だという話じゃなくて、国際法上、結局のところ、機雷除去のような戦闘行動を、受動的だとか限定的な行動だったという理屈は存在しないということなんですよ。

 一方、日本の特有の解釈によって、先ほど、他国に例がないとか、憲法だとか言ってはりますけれども、要するに、あたかも歯どめがかかっているようなことを言われていますけれども、では、聞きたいと思うんです。

 一九九一年に行われたペルシャ湾での機雷掃海作戦には、日本のほか米国など九カ国が参加したと言われています。先ほど、私、資料で引用しましたけれども、二〇一二年の米軍主催の国際掃海訓練には、日本などから、二十カ国以上が参加したと言われています。

 では、これらの参加国の中で、機雷掃海を受動的、限定的な行動などとしている国はありますか。(安倍内閣総理大臣「ちょっと」と呼ぶ)いや、まず、それを聞いているんですよ。話はあるわけだから。後で聞きますから。

浜田委員長 岸田外務大臣。後に安倍総理大臣。

岸田国務大臣 御指摘の点において、受動的、限定的にという評価をしている国ということについては承知をしておりません。

安倍内閣総理大臣 そもそも国際法的に、先ほど答弁したように、これは武力行使とし、そしてそれは集団的自衛権に当たる、こう言っているわけであります。

 なぜ受動的、制限的という説明をさせていただいているかというと、これは、日本国憲法との関係において、必要最小限度を超えるという関係から我々はそういう説明をさせていただいているわけでありますが、他の国は全部集団的自衛権を行使できるわけでございますから、そこでそういう切り分けをして説明する必要がそもそも生じていないということではないかと思います。

 ですから、まさに、我々は、憲法との関係でこれは制限的、受動的であるからという説明をさせていただいているということで御了解をいただきたいと思いますし、また……(穀田委員「もうそこからは聞いてないです、もういいです。あなたに質問してないです、私」と呼ぶ)

 いやいや、これは先ほどの質問にちょっとかかわるんですが、二〇一五年の三月の三日に、ファダヴィ革命ガード海軍司令官が、米国の介入はホルムズ海峡の封鎖の要因になり得る、こういう話はしているということでございます。

穀田委員 そこで、結局、今岸田大臣がおっしゃったように、そのような国があるとは明示できないと。

 防衛省が提出した、統合幕僚監部の機雷戦教範というのがあります。この教範によれば、統合幕僚監部では、機雷によって敵の艦船を撃破し行動を制約するため海域に機雷を敷設することを機雷敷設戦と呼び、敷設された機雷を除去、無能化することを対機雷戦と呼んでいるようです。

 同盟国の米国では、こうした機雷戦についてどう位置づけているか。これは、アメリカが発行した、アメリカ海軍省のドクトリンがあります。これを見ると、米軍では、機雷戦を攻撃的機雷作戦と防御的機雷作戦の二つに分類し、これらをともに法的な戦争行為と位置づけている。同盟国である米国の、あなた方が同盟国、同盟国と言っておられる米国のことですから、中谷大臣は、このことはよく承知していますよね。

中谷国務大臣 御指摘の点は承知しております。

 その米軍の資料によりますと、米軍においての機雷処理を、機雷が敷設される前に敵の機雷敷設能力を排除する攻勢的機雷対処と、既に敷設された機雷に対して各種手段により対抗する防勢的機雷処理とに分類をしており、こうした攻勢的機雷処理は、通常、機雷戦部隊によっては行われないものと承知をしております。その上で、米軍においては、攻勢的機雷処理を、機雷の探知や回避等、物理的な措置を伴わない受動的機雷処理と、機雷の除去という物理的な措置を伴う能動的機雷処理とに分類していると承知をしております。

 我が国としましては、機雷処理は、その性質上、相手方への積極的な攻撃を行うものではなく、相手によって既に敷設された機雷の除去だけを行うという意味で受動的であると認識しておりまして、米軍においても、機雷処理は、既に敷設された機雷に対抗するために行う防勢的機雷対処に分類しており、その認識においては我が国と何ら異なることがないということでございます。

穀田委員 最初の説明を私がしているわけだからそこは省いてくれないと。ちょっと違う話をしているんですけれども。

 要するに、最後の結論は何かというと、結局戦争行為として位置づけているんですよ、法的には。そこが大事なんです。前の方を読んだだけではだめなんです。後ろの方にそう書いているんです。アメリカにとっては機雷の除去というのは戦争行為であって、そして、決して受動的なものではなく、極めて能動的な作戦だということなんですね。

 だから、受動的、限定的な活動などという理屈は、機雷除去は戦争行為とされる国際的な戦闘の場面では全く意味をなさない、通用しないということだと私は思います。

 そこで、総理はあれこれ言っていましたけれども、私は、機雷の除去は、相手方から見れば、相手国から見れば、受動的でも限定的でもない、まさに攻撃対象となる、そこで戦争に発展する可能性をはらんでくるんじゃないかと。それはいかがですか。

安倍内閣総理大臣 機雷の除去にもいろいろあるわけでありまして、いわば機雷を敷設して軍艦が進入するのを防ぐ場合、例えば、米国は、その機雷を除去して、さらにその後、戦闘行為に入っていくということを考え、それはまさに能動的に機雷を除去して、さらに相手を撃破していくということはあり得るでしょう。

 しかし、他方、ホルムズ海峡の例しか私は念頭にないと申し上げましたのは、ここに、海峡に敷設をしたということはどういうことか。しかし、それに対しての我々の掃海を行うことのできる条件というのは、事実上の、事実上の停戦合意がなされている、しかし、国際法上は、停戦合意がなされていなければ、武力の行使、集団的自衛権の行使とみなされるから、その中においてこれを除去する上においては集団的自衛権の行使に当たるけれども、しかし、これは事実上の停戦が行われている中において我々の自衛隊の掃海部隊は、これはまさに掃海を行う上において、戦闘行為が行われていないところにおいて黙々と事実上危険物である機雷を処理していくということである、これはまさに受動的、制限的であろうということを述べているわけであります。

 そこで、しかし、ここから石油そしてガス等々が入ってこなければ、これは相当の被害をこうむる、経済的な被害だけではなくて人的な被害をこうむる可能性もあるということを我々は述べているわけでございます。

穀田委員 それは、いろいろお話があったけれども、停戦の問題については後で言いますけれども、やはり一番大事なのは、相手国から見れば除去はどういうことなのか、それを聞いているわけですよ。相手国からしてみれば、敷設しているわけだから、それを除去するということは、少なくともそういう点でいえば受動的も限定的もない、攻撃対象になるじゃないかということを言っているわけですやんか。だから、大体そういうことをやる場合に、米軍だって常に掃海活動中に攻撃を受けることを想定していろいろなことをやっているということから明らかだと思うんですね。

 私はついでに聞いておきたいと思うんですが、中谷大臣、大臣は、近年において機雷掃海を直接のきっかけとして紛争がエスカレートした事例はないと言いますけれども、敷設された機雷に触雷したことをきっかけに紛争がエスカレートした事例があるんじゃないですか。知りませんか。わかりませんか。(中谷国務大臣「わかりません」と呼ぶ)

 やはり、何でこんなことを私は言っているかというと、いいです、いいです、わからないならわからないで、教えてもらわなくてもいいんです。私の方が言いますし。

 イラン・イラク戦争で、停戦合意がされるわずか四カ月前の一九八八年四月、ペルシャ湾で米海軍のフリゲート艦がイランの敷設した機雷に触れ、破損をした。当時、米軍は、これに対する報復として、イランの石油プラットホームを攻撃、破壊した。これに対し、イランはミサイルで応戦し、米石油会社が操業するアラブ首長国連邦の油田や航行中のイギリスのタンカーを海上から攻撃する事態にエスカレートした、こういう事例があるんですね。だから私は言っているわけですよ。

 そこで、岸田大臣に聞きますけれども、掃海艇による機雷掃海は、先ほど総理大臣からありましたように、戦闘が現に継続しているような現場で行わないと、るる、いつも説明されます。そこで、聞きますけれども、正式な停戦合意が行われる前の段階で、第三者である日本が、どの時点で事実上戦闘行為が終結したと判断し、機雷の掃海活動を開始するのかという点についてお答えいただきたい。

岸田国務大臣 事実上の停戦があり、そして正式な停戦があり、その間において、どの時点で遺棄機雷と認定されるか、これが今の御質問の線引きになるかと思います。その判断というのは、現実においては大変難しいものがあります。

 よって、湾岸戦争のときの実態を振り返りましても、実質的な停戦が行われてから正式な停戦が行われるまで、この間に、フランス、ドイツ、イタリア、こういった国々が機雷の掃海を行っておりますが、これらの国は全て、安保理決議六七八を援用して、武力行使を含めて全ての行為が許される、こうした安保理決議を援用することによって武力の行使と認定された場合にも備えて機雷を掃海したというのが実態であります。

 かくのごとく、実質的な停戦から正式な停戦の間において今御指摘のような線を引くというのは大変難しいのが現実でありますので、こういった事態に備えるためにも、武力の行使と認定される場合においても対応できる体制を考えることが必要ではないか、こういった議論をお願いしているわけであります。

穀田委員 これを聞いてわかる国民はなかなかいないと思うんですけれども、やりたい人はそれはわかるのかもしれぬけれども。大臣だって難しいと言っているんですよ。本当にこれは難しいんですよね。

 だから、機雷を敷設した相手国による通知や通告などの意思表明のほかに、相手国のそういう意思表明のほかに、事実上戦闘行為が終結したというふうに判断できるものはありますか。もう一遍言いましょうか。

岸田国務大臣 ですから、先ほど申し上げました、実質的な停戦合意、そして正式な停戦合意、この二つがあります。その段階で機雷の除去が武力の行使として認定されるかどうか、この境目は、先ほど言いました遺棄機雷として認定されるかどうか、ここにかかってくると思います。

 しかし、現実問題、どの時点でこれを遺棄された機雷だと判断するのか、これは大変難しいというのが現実でありますので、武力の行使として認定されたとしても国際法上違反にならない、こういったことのために、各国もこうした安保理決議をしっかり援用して、国際法上説明できる、こういった体制を備えたというのが過去の例でありました。

 我が国も、そういった過去の例をしっかりと振り返りながら、我が国として、現実、何をしなければならないのか、国民の命や暮らしを守るために何をしなければいけないのか、こうした体制をつくる際に、しっかりとした法整備をつくっていかなければならないと考えています。

穀田委員 遺棄と判断するのは難しい、他の国は武力行使としてやっているということですから、簡単に言うと、やはり本質的に、敷設国によるいわば停戦終結の意思表明以外に、第三者である日本が事実上戦闘行為が終結したというのが判断できる確かなものというのはないということなんですね、本質的に。そこははっきりしていると思っています。

 中谷さん、ついでに聞いておきますけれども、一九九一年四月二十三日の参議院外務委員会で、防衛庁の畠山防衛局長は、機雷を敷設した国はその相手国をいわばやっつけようと機雷を敷設しているわけで、その機雷を除去する行為はそれに対する敵対行為とみなされるということに相なろうかと答弁しています。

 この答弁は依然として生きていて、否定されませんね。簡単に。

中谷国務大臣 武力行使の一環だと認識しております。

穀田委員 先ほどお示しした二〇一二年の国際掃海訓練に関する外務省の資料、これですけれども、総理大臣、ちょっと聞いてほしいんですけれども、ここには、「対イラン関係の留意点」という記述がありまして、「イランにとっての敵国である米主催によるペルシャ湾での掃海訓練への参加は、イラン側からの強い反応を惹起し得るもの。」と書かれています。

 このように、機雷掃海の訓練への参加でさえ、イランからの強い反応を惹起しかねないということが懸念されているわけですから、ましてや戦時下の機雷掃海となれば、イラン側からの無用な反発を招きかねないと思うんですが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 これはまさに、先ほど来申し上げておりますように、いわばイランが機雷を敷設した段階において、地域には米軍の施設等々もございます、例えばここで交戦状態になっているようなときには、これは当然掃海も行えませんし、このときに掃海をすれば、これは当然、いわば純粋なる敵対行為として武力攻撃を受ける可能性というのは排除できないであろう、このように思います。

 私たちが行うのは、事実上の停戦合意がなされているわけでありますから、事実上もう交戦は行われていない。しかし、これは国際法的には停戦が行われていないものでありますから、国際法上はこれを除去することはいわば武力行使に当たるけれども、イランとしては、これはいわば、例えばイランという国を挙げておりますが、例えばイランが停戦に向かって進んでいくという中において、日本の船を、敷設をしてしまった機雷を除去している日本の船に対する攻撃は、これはおおむねなかろうという状況を確認する中において、我々はホルムズ海峡の、イランの、掃海を行うということであります。

 いずれにいたしましても、現段階では外相会談も行っておりますし、私もロウハニ大統領との会談も行っておりますし、昨年のダボスでの私のスピーチにも、ロウハニ大統領は、わざわざ本人が私のスピーチを聞きに来て、握手を交わしているわけでございます。

 そのような外交努力を重ねるだけ重ねながら、そういう事態に至らないための努力は最大限今後も行っていきたい。こうした事態を外交努力によってなくしていく、あるいはまた、米国とイランとの今交渉が行われておりますが、成功裏に交渉が成立をすることを我々は希求しているところでございます。

穀田委員 一番最初にその前提を私は言ったんですよ。そこは聞いてくれなあきまへんで。先ほど言ったように、うちの赤嶺議員が既にその蓋然性はないと、そして私は切迫性もないと、そういうことを言っているわけですよ。そして、外交努力が必要だ、これは我々は一貫して言っているわけですよ。

 今質問しているのは、そういう、戦時下になれば、訓練に行くということでさえ、惹起するような事態ということに対して、これは危ないんじゃないか、戦時下になってやるんだったら無用の反発を招きかねないんじゃないかということを聞いたわけですよ。そこに答えてくれなくちゃ。一般論について言うなら、先ほど一番最初に私は考え方を言っているわけですから、それは必要ないですよ。

 その意味でいいますと、一九九一年にペルシャ湾で実施された機雷掃海作戦で海上自衛隊派遣部隊の指揮官を務めた落合氏が、五月二十七日付の河北新報で次のように述べています。

  最悪の事態に備え、棺おけも作れるように木材を船に積み込み、乗組員には氏名、血液型を書いた金属製の「ドッグタグ(認識票)」を配った。タグによって、隊員が死亡した際に個人識別が可能になる。

  「当時、海自にはそういう習慣はなかったから、みんな受け取った瞬間、うっとなっていた」

と。

 「ただの迷子札だ」と説明するのが精いっぱいだった。

このように語っておられます。

 安倍総理は、この一九九一年にこうしたことがあったことは御存じでしょうか。

安倍内閣総理大臣 掃海部隊は私の地元の吉見というところにおります。そこで私は毎年ここの新たな入隊式等に出席をしておりますから、そうしたさまざまな出来事については話を伺っておりますが、機雷掃海の仕事そのものが触雷の危険性もあるわけであります。私、その訓練も何回か拝見したことがあるわけでありますが、まさにこれは命がけの仕事であるということは十分理解をしております。

穀田委員 最後に一言言いたいんですけれども、この湾岸戦争の正式な停戦成立後に行われた機雷掃海でさえ、指揮官が自衛隊員に犠牲が出ることを想定して、先ほど述べたことをやらざるを得なかった。しかも、その後に、帰った方々の中で自殺者が二人も出ておられるということになっています。ですから、派兵された自衛隊員の精神的、肉体的な負担は、今後、まして戦時下での機雷掃海となれば一層増大するのは明らかであります。

 私は、その意味で、戦後最悪の違憲立法の戦争法案の廃案を強く求めて、きょうの質問を終わります。

浜田委員長 次回は、来る十三日月曜日午前八時四十分理事会、午前九時公聴会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二分散会


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