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電気事業法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 

 政府は、電力システム改革を着実に推進するため、本法施行に当たり、以下の点に留意すること。

 

一 電力システム改革の目的である「電気の安定供給の確保」と「電気の小売に係る料金の最大限の抑制」の実現のため、原子力発電の稼働が進んでいない中で海外からの化石燃料の輸入が増加し、国民負担の増大が懸念されていることにも鑑み、第三段階までの法的措置の期限を待つことなく、スマートメーターの普及、発電所の環境アセスメントの緩和等の施策を引き続き検討し、可能なものについては可及的速やかに措置を講じること。特に、電力が市場に十分に供給されることが市場における競争環境上重要であることに鑑み、平成二十八年を目途に電力の小売全面自由化の実施が予定されていることを踏まえ、必要となる電力の需給状況の安定が確保されるための有効な措置を講じるべく努めるものとすること。

 

二 原子力政策の抜本的見直しが求められる中、競争環境下における原子力発電の在り方及び我が国における核燃料サイクル政策の位置付けについて早急に検討の上、電力システム改革と同時並行的に適切に措置を講じること。また、原子力事業者において今後国内において増加する原子力発電所の廃炉の円滑な実施や新規制基準への対応、使用済核燃料の処理、地球温暖化対策及び電力安定供給への貢献等の課題への適切な対処が可能となるよう、事業環境の整備に向けて、平成二十八年を目途に電力の小売全面自由化の実施が予定されていることを踏まえ、必要な措置について速やかに検討し、遅滞なく実施するものとすること。

 

三 昨年成立した改正電気事業法附則第十一条第四項の趣旨を踏まえ、今後、第三段階の法的措置の実施を通じて達成するものとされている「送配電部門の中立性の確保」及び「電気料金の全面自由化」は、競争促進の効果と電力の使用者の利益を併せて実現する観点から同時に実施することを原則とすること。また、これらの事項を含む今後の電力システム改革の詳細な制度設計及び実施については、当該改革に当たっての課題検証とその結果に基づく課題克服のために必要な措置を講じて進めるとともに、今年策定された新たなエネルギー基本計画の内容と整合性をもって第三段階の改革まで着実に進めるものとし、関係方面に十分な説明を行うものとすること。

 

四 電力市場における適正な競争を通じて、電力システム改革の目的の一つである「電気料金の最大限の抑制」が確実に達成されるために必要な措置を講じるものとし、規制料金の撤廃は需要家保護の観点からその時期を十分に見極めて行うとともに、新規参入事業者が公平な条件で競争できるような価格形成が図られるようにするなど、適正な電気料金の実現のための措置を講じること。

 

五 電力の小売全面自由化に伴い、新規事業者に対する送配電網への公平な接続の保証や需要家情報の共有等を通じて、新規事業者が電力小売市場に参入することが阻害されることなく、現在の一般電気事業者と公平に競争できる環境を整備すること。また、新規事業者の電源調達を容易にするため、引き続き、地方自治体による電源の売り入札の促進に加え、電力会社における余剰電力の供出の促進等を通じ、卸電力市場の活性化に向けて必要な措置を講じるものとすること。

 

六 再生可能エネルギーによる発電を利用する新規事業者の電力市場参入を促すための送配電網の整備や参入手続における一層の規制緩和等の措置を講じるとともに、再生可能エネルギーによる発電が健全かつ着実に行われるための制度を整備することにより、我が国においてその導入が最大限促進されるよう努めること。

 

七 電力の小売全面自由化に伴って電力の安定供給が損なわれることのないよう、昨年の電気事業法改正によって法定された広域的運営推進機関の機能の適正な行使等を通じて、必要な供給予備力が常時確保されることなど、電力システム改革の目的である「電力の安定供給の確保」が達成されるための万全の措置を講じるものとすること。また、発電事業者、小売電気事業者をはじめ、電力市場に参加する事業者が連携して電力の安定供給のための責任を果たす上での仕組みについて十分な検討を行い、適切な措置を講じること。

 

八 電力システム改革の遂行に際しては、今日まで電力の安定供給を支えてきた電力関連産業の労働者の雇用の安定や人材の確保・育成、関連技術・技能の継承に努めるとともに、改革の過程において憲法並びに労働基準法に基づく労使自治を尊重するものとすること。また、当該労働者について一定の形態の争議行為の禁止を定める「電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律」については、自由な競争の促進を第一義とする電力システム改革の趣旨と整合性を図る観点から、電力システム改革に関する法体系の整備に併せ、所管省庁において有識者や関係者等からなる意見聴取の場を設けその意思を確認し、同法の今後の在り方について検討を行うものとすること。

九 電気事業の規制に関する事務をつかさどる独立性及び高度の専門性を有する新たな行政組織は、実効性のある送配電部門の中立性の確保、電気の小売業への参入の全面自由化等の電力システム改革を推進する上で、必要な電気事業の規制に関するモニタリング、電気事業への参入の促進、市場における適切な競争環境を阻害する要因の除去、対等な競争条件の確保等を実施するための必要最小限な組織とし、肥大化は極力避けること。また、この観点から、新たな行政組織への移行が平成二十七年を目途に着実に措置されるよう、引き続き詳細設計に向けて検討を進めるものとすること。

 

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