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   原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 

 政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。

 

一 原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下「機構」という。)における積立金制度の運営について、機構における廃炉等積立金の額の決定、廃炉等実施認定事業者による積立て、廃炉等積立金の厳格な資金運用や区分経理、取戻し、実際の廃炉等作業に関する使用等の各段階における状況を公開・説明する等、制度運営に関する透明性の確保に万全を期すよう監督すること。

 

二 法律第五十五条の四に定める廃炉等積立金の額は、当該事業年度の前後の廃炉等の実施状況、東京電力ホールディングスの経営状況、廃炉等積立金の使用状況及びそれらの見込み等を勘案して、合理的な額を柔軟に設定するとともに、その設定方法を定める法律第五十五条の四第二項に基づいて主務省令で定められる基準を予見可能な明確なものとすること。

 

三 機構は、今後の廃炉等の実施の管理・監督を行う主体としての責任を果たすことが求められていることから、廃炉等の技術に係る機構職員の専門人材の育成等、今後の廃炉工程の進展等を踏まえて組織体制の一層の充実・強化を図るよう指導すること。

  また、廃炉等の技術について、政府が積極的に研究開発支援を行う等、政府、機構、東京電力ホールディングス、原子力企業等による密接な連携の下でそれぞれの役割を果たし、今後の廃炉工程の一層の進展が図られるよう取り組むこと。

 

四 東京電力ホールディングス及び政府は、レベル七の原発過酷事故を受けての事故廃炉という、人類が経験したことの無い困難な課題を克服する上で、国民負担の現状と今後の見通し、技術的解決策の開発状況や展望、燃料デブリ取り出し・廃炉のロードマップ更新をはじめ、可能な限り、国民と国際社会とに対する正確な情報開示・情報発信に努めること。

 

 

五 廃炉の確実な実施のためには、廃炉作業に当たる関係作業員の高い意欲と認識が必要不可欠である。安全第一を基本とする作業員の労働環境の充実と確立に努めること。

  また、東京電力ホールディングス及び政府は、事故廃炉・燃料デブリ取り出しを今後実行して行くに際して、遠隔ロボット等を最大限に活用しつつ、作業員等の被曝対策と安全管理・健康管理には万全を期すこと。

 

六 東電改革の成否は、今後の福島第一原発事故の対応に係る道筋に極めて大きな影響を与えることから、政府、機構において、東京電力ホールディングスの改革の取組状況については、定期的に評価を行い、筆頭株主としての責任を貫徹し、必要に応じてその立場を最大限に活用する等により、改革の完遂を図ること。

  なお、改革の成果が、東京電力ホールディングス株式に対する市場の評価に繋がるよう、市場関係者に対する十分な情報提供を図ること。

 

七 託送原価を低減した場合の託送料金の設定について、電気事業法上の諸規定と整合性を保ちつつ、他の送配電事業者の託送料金とも公平性を担保しながら、託送原価の低減努力が着実に廃炉等費用の捻出に繋がるような明確なルールを設定すること。

 

八 大胆な経営改革による合理化は、事故廃炉に取り組む東京電力ホールディングスはもとより、自由化を受けて全ての旧一般電気事業者に期待されていることに鑑み、政府は、今後の東京電力ホールディングスの改革の取り組みをベンチマークとし、電気料金や託送料金の引き下げなどにより、国民・需要家に対して改革の果実が十分にもたらされるよう、当該事業者の適切な対応を促すこと。

 

九 今般の廃炉等費用の試算額については、今後の廃炉等工程の具体的な進展に伴い変化する可能性もあることから、廃炉等工程の進展具合や廃炉等積立金の使用状況等も踏まえて必要に応じ適時適切に見直し・公表することとし、今後の着実な廃炉の実施等の観点から、処理済水の取扱い方法についても決定し、その費用の合理的見積りを行い、電力需要家のみならず国民に対して十分な説明責任を果たすこと。

 

十 一般負担金に係る過去分の回収にあたっては、その事実を需要家に確実に伝えるための措置を講ずるとともに、過去分回収に係る考え方や回収額等について需要家がより具体的な情報が得られるよう、政府及び送配電事業者等により提供されるよう措置すること。

  なお、新電力からの回収については、本来事故とは関係の無い第三者に対して政策実現に係る義務等を負わせることとなるため、政府において新電力に対して十分な説明を行うとともに、所要の支援措置等を講じること。

 

十一 送配電会社の託送料金に上乗せして回収する措置について、賠償の備えの不足が生じた中での政策上の要請があるとしても、今後同様の措置が安易に導入されること等が無いよう、措置に係る十分な情報公開を行う等、第三者によるチェックが可能となるよう措置を講じるとともに、福島第一原発事故の対応に要する資金の確保に関し、国の財政負担のあり方について検討すること。また、「公共財」的性質を帯びる送配電網が過少投資にならないよう政府が必要な措置を講じること。

 

十二 原子力損害賠償支援機構法附則第六条第一項に基づく「原子力損害の賠償に係る制度における国の責任の在り方、原子力発電所の事故が生じた場合におけるその収束等に係る国の関与及び責任の在り方」について、本年秋までに検討を加え、その結果に基づき、財務健全性や自律的な事業運営が可能となるような国の関与の在り方や、費用負担等のルールをすみやかに整備すること。

 

十三 低レベル放射性廃棄物の処分場確保にあたっては、発生者責任の原則の下、事業者が実施するが、その際、地域の理解の増進など、国としても責任をもってその確保に協力すること。

 

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