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   雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 

 政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

一 六十五歳までの高年齢者雇用確保措置が全ての企業において確実に実施されるよう事業主に対する周知を強化するとともに、違反事業主に対する指導等を通じて、六十五歳までの希望者全員の雇用確保が図られるように努めること。

二 事業主が複数の高年齢者就業確保措置を講ずる場合において、個々の労働者の意思を十分に尊重することを指針等で明確にし、その周知徹底を図ること。

三 創業支援等措置による就業は、労働関係法令による労働者保護などが図られないことから、以下の事項を指針等で明確にすることを検討し、その周知徹底を図ること。

1 事業主は、当該措置を選択する理由を書面等により過半数労働組合又は過半数代表者に十分に説明すること及び当該措置を適用する労働者に対しても丁寧に説明し納得を得る努力をすることが重要であること。

2 事業主が当該措置のみを講ずる場合は、過半数労働組合等の同意が必要であること。また、継続雇用制度の導入に加えて当該措置を講ずる場合であっても、過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいこと。

3 当該措置により就業する者について、同種の業務に労働者が従事する場合における労働契約法に規定する安全配慮義務の内容も勘案しつつ、委託業務の内容・性格等に応じた配慮を当該措置を講ずる事業主が行うことが望ましいこと。

4 高年齢者雇用安定法の改正の趣旨が七十歳までの雇用・就業機会の確保であることを踏まえ、当該措置を講ずる事業主は、七十歳まで継続的に労働者を支援することが求められること。

四 創業支援等措置による就業について、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」を参考とするよう周知・広報すること。また、就業する者が被災したことを把握した場合は、当該措置を講ずる事業主が厚生労働大臣に報告することを検討することとし、同種の災害の再発を防止するための対策の検討に当該報告を活用すること。

五 高年齢期においては、労働者の体力や健康状態その他の本人を取り巻く状況がより多様となることから、事業主がより柔軟な労働条件を整備できるよう適切に支援すること。

六 六十五歳以降も働くことを希望する全ての労働者が個々の意欲及び能力に応じて働くことができる環境整備を図るため、施策の充実に努めること。

七 雇用政策に対する政府の責任を示すものである雇用保険の国庫負担については、改正後の雇用保険法附則第十五条の規定に基づき、早期に安定財源を確保し、本則に戻すこと。また、今回の時限的な国庫負担率の引下げ措置の継続については、令和三年度までの二年度間に厳に限った措置とすること。

八 失業等給付と異なる給付体系に位置付けられる育児休業給付について、給付額が増加傾向にある状況を踏まえ、中長期的な観点から国庫負担割合も含めた制度の在り方を検討すること。

九 求職者支援制度について、雇用の安定化の必要性が高い者に対し十分な支援が行き届くよう制度運営の充実に努めるとともに、雇用政策に対する政府の責任を示す観点から、国庫負担割合の在り方を検討すること。

十 企業による六十五歳までの雇用継続を下支えしている高年齢雇用継続給付について、今回の給付率の引下げに当たって、働き方改革関連法の「同一労働同一賃金」に基づく高年齢者の不合理な待遇差の解消に取り組む企業に対して十分な支援を行うこと。その上で、今後の給付の在り方については、六十五歳までの高年齢労働者の雇用の進展状況を十分に踏まえ、中長期的な観点から検討すること。

十一 複数の事業所に雇用される六十五歳以上の労働者に対する雇用保険の適用について、施行後五年を目途に、懸念される逆選択やモラルハザードといった事象も含め、適用による行動変化や財政への影響等を十分に検証し、必要に応じて、マルチジョブホルダーに対する雇用保険の適用の在り方を検討すること。

十二 新型コロナウイルス感染症により我が国経済は大きな影響を受けており、今後雇用への影響の拡大が懸念されることから、雇用の維持に向け、雇用安定資金も活用して、雇用調整助成金をはじめとする雇用保険二事業により十分な支援を行うこと。

十三 労災保険の複数事業者に係る改正事項を確実に実施するとともに、特別加入制度について、働き方が多様化し、雇用類似の働き方も拡大していることから、労働者に準じて保護することがふさわしいとみなされる者の加入促進を図るため、制度の周知・広報を積極的に行うこと。また、社会経済情勢の変化を踏まえ、その対象範囲や運用方法等について、適切かつ現代に合ったものとなるよう必要な見直しを行うこと。

十四 大企業における中途採用比率の公表に当たっては、企業の実態や入社後のキャリアパスなどの情報も中途採用を目指す労働者にとって有益であることから、様々な情報を総合的に公表しやすくするための支援を検討すること。

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