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   漁業経営に関する補償制度の改善のための漁船損害等補償法及び漁業災害補償法の一部を改正する等の法律案に対する附帯決議

 

 漁業は、厳しい自然環境の中で営まれる産業であり、資源の急激な変動や事故発生の危険性と常に隣り合わせにある。台風が常襲し、地震が多発する我が国にあっては、暴風や高潮、津波等、漁業生産にとり大きなリスク要因が存在する。

 こうした中、漁船損害等補償制度及び漁業災害補償制度は、中小漁業者の相互扶助の精神の下、国の支援を通じて、漁業再生産の阻害の防止と漁業経営の安定のため、長年にわたり重要な役割を果たしてきた。

 しかし、近年、漁業就業者の減少や高齢化等を背景として、両制度の運営環境は厳しさを増している。再び東日本大震災クラスの大規模災害に見舞われた場合でも、漁船保険組合及び漁業共済組合が漁業者に対して保険金及び共済金の支払責任を十分に果たし得るよう、効率的かつ機能的な組織運営及び事業基盤を確固たるものにしていく必要がある。

 よって、政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。

                記

一 漁船保険組織の統合一元化が円滑に進むよう、漁船保険中央会及び漁船保険組合に対し、助言その他必要な支援を行うこと。

二 新たに漁船保険組合の設立認可要件となる資産の額については、大規模災害等における支払にも十分対応できる額を定めるとともに、組合の財政状況の把握に常時努めること。

三 組織統合一元化に伴い、国と新たな漁船保険組合の二段階の再保険関係とするに当たっては、組合による責任ある引受審査を確保しつつ、大規模災害発生時に、国が担うべき危険負担を確保するため、国及び組合において適切に責任分担を行うこと。

四 漁船保険の満期保険については、高船齢化が顕著となっているため、漁船の更新が円滑に行えるよう、船齢制限の緩和と積立期間の延長を柔軟に行うこと。併せて、漁業構造改革総合対策事業等の推進を通じ、高性能漁船の導入等による新しい操業・生産体制への転換を促進すること。

五 復原性が高く転覆しにくい漁船の研究開発、衝突事故防止用の船舶自動識別装置(AIS)の普及、海中転落事故に備えたライフジャケット着用啓発等の一層の推進等、漁船操業の安全対策に必要な予算や人員を確保するなど、労働環境の整備等に特段の努力をすること。

六 水産資源の適切な保存・管理や水産資源に関する調査・研究を引き続き推進するとともに、水産基本計画における資源管理・漁業経営安定対策の加入者が我が国漁業生産額の九割を担うとの目標を達成するため、漁業共済への加入促進に向け適切に指導すること。

七 養殖共済の全員加入制度廃止に当たっては、漁業者に対する適切な国庫補助の下、一層の加入促進が図られるよう、加入の在り方を適切に検討すること。

八 特定養殖共済の掛金補助制度の要件を見直すに当たり、漁業の種類や地域の実態に応じて、基準とする漁業依存度を適正に設定し、加入促進に努めること。

九 内水面養殖業を養殖共済の対象とするに当たり、うなぎ養殖業を対象とする際には、養殖共済実施可能性検証調査事業報告書等で指摘された問題点を踏まえ、的確に保険設計を行うこと。併せて、うなぎ養殖業許可制の下で、資源管理を着実に実施すること。

十 近年の水産動植物の陸上養殖の普及実態に鑑み、ひらめ等の陸上養殖を養殖共済の対象に追加することについて、引き続き検討を行うこと。

 右決議する。

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