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防災・減災等に資する国土強靱化基本法案に対する附帯決議

 

 国土の特性として自然災害が数多く発生する我が国においては、東日本大震災をはじめとする過去の教訓に学び、平時から、大規模災害等への事前の備えを行うことが重要である。政府は、従来の防災の範囲にとどまらず、国や地域の経済社会に関わる分野を幅広く対象にして、経済社会のシステム全体の抵抗力、回復力の確保を目的とした、いわば国民生活の安全保障としての総合的な対応を行うことが必要であることを深く認識し、特に次の事項の実現に万全を期するべきである。

 

一 東日本大震災からの復興が喫緊の課題であり、地域の実情や事前防災及び減災に配慮しつつ、迅速な復興に努めること。

 

一 災害時に迅速な救助活動等を行うため、警察災害派遣隊の対処能力の向上及び装備資機材の整備・高度化を図るとともに、第一線警察活動に不可欠な警察施設の耐災害性の強化や災害時における交通の安全と円滑の確保に必要な交通安全施設等の整備を着実に進めること。

 

一 地域防災力の中核であって、現場の最前線で日々使命感を持って危険な業務に従事している常備消防及び消防団の体制・装備・訓練の充実強化等により地域防災力の充実強化を図るとともに、緊急消防援助隊の機能強化及び他の実動部隊との連携強化、消防防災施設の耐災害性の強化等により、消防防災体制の強化を図ること。

 

一 首都直下地震、大規模津波等様々な災害から住民を守るために、避難所となる施設の耐震化(吊り天井等の非構造部材対策を含む)、老朽化対策及び防災機能強化を加速化させること。

 

一 国は、自力避難が困難な者が多数利用する社会福祉施設及び医療施設について、地震発生時においても必要な機能を維持できるよう、引き続き耐震化を推進すること。

 

一 高度成長期に整備したインフラが、今後急速に老朽化していくことから、中央自動車道笹子トンネル事故のような惨事を二度と繰り返さないよう、インフラの維持管理・更新に重点的に取り組むこと。

 

一 ライフライン施設の耐震化や老朽化対策は、国民生活の維持に不可欠であり、引き続き取り組んでいくこと。

 

一 災害時などで救援の道を塞ぐおそれや、景観の観点からも電線類の地中化、無電柱化を進めること。

 

一 事前防災及び減災その他迅速な復旧・復興においては、地域の特性に応じて、自然との共生及び環境との調和並びに観光地としての魅力ある景観の維持に配慮すること。

 

一 自然との共生及び環境との調和に配慮する上で、安全な地域づくりの推進等に支障を及ぼすことがないよう、関係法律に基づく許可等の事務を迅速かつ的確に処理するよう努めること。

 

一 情報通信は、国家及び社会の重要な機能であることに鑑み、大規模災害等が発生した場合においても情報通信の確保を可能とするとともに、災害等に関する情報が地域住民に正確かつ速やかに伝わるよう、災害に強い情報通信基盤の整備に努めること。

 

一 エネルギー安定供給や重要産業の拠点である石油コンビナートについては、国は防潮堤等の老朽化対策等を迅速に進めるとともに、民間企業による護岸の耐震化、製油所等の強靱化や国際競争力強化に資する投資を促すべく、財政上や税制上の支援、規制の見直しを推進すること。また、危機時の石油供給を円滑化するため、関係省庁は非常時の物流を円滑化すべく制度運用の見直しや合同訓練を通じ、協力体制を強化すること。

 

 

一 南海トラフ巨大地震等の未曾有の災害に備え、国土軸を越えたエネルギー供給補完を可能とするエネルギー・ネットワークの検討を進めること。

 

一 大規模災害時に大量に生じる廃棄物を速やかに処理するため、地方公共団体との連携の下、計画的な廃棄物処理施設の更新や長寿命化を行うとともに、広域的な処理体制の確保等により廃棄物処理システムの強靱化を進めること。また、想定される自然災害の特性を踏まえ、地方公共団体との連携の下、地域住民の合意形成に努めつつ、地域ごとの生態系のもつ防災・減災機能を活用した土地利用を推進すること。

 

一 災害が多い脆弱な我が国の国土において、守るべきは守るとの考え方のもと、持続的な観点に配慮しつつ、施設の耐震化やリダンダンシーの確保など必要なハード整備を進めるとともに、訓練・防災教育等のソフト対策を講じるなど総合的な防災・減災対策を推進すること。

 

一 我が国製造業の製品や部素材等の多くが、国内はもちろん、世界的にも、サプライチェーンの要となっていることを踏まえ、中小企業・小規模事業者をはじめとする我が国企業における、原料や部素材等の調達先の複線化、緊急時電源の確保等を盛り込んだ、大規模災害時にも円滑な事業継続を可能とする事業計画の策定・見直しを促すとともに、老朽設備の更新や耐震強化のための投資等を促進すること。

 

一 大規模災害時における食料等の安定供給機能を維持するため、生産から加工・流通にわたる食料等のサプライチェーンの災害対応力の強化を図ること。また、国土の大半を占める農山漁村における地域社会の維持・発展や、そこでの農林漁業活動を通じた国土保全機能の維持等が国土強靱化に資することを踏まえ、農山漁村の防災・減災や農地・森林の保全等に係る施策の効果的な実施を図ること。

 

 

一 木材の利用が森林の適正な整備に寄与し国土の保全その他の森林の有する多面的機能の持続的発揮に貢献することに鑑み、木材の積極的な利用を促進すること。また、土木工事における木材利用を促進するため、木材を利用した工法の技術開発・試験研究を進めること。

 

一 我が国が東日本大震災をはじめとする災害被害から学んだ教訓及びその復興を通じて得られた知識・経験を諸外国と共有することにより、各国の防災意識の向上を促し、その災害対応能力の強化に貢献すること。

 

一 我が国の力強い復興に向けた取組とその成果、また安心・安全な国とのイメージの発信を通じて、諸外国における「風評被害」の解消に努めること。

 

一 大島町における土砂災害の教訓を生かし、市町村が、災害が発生する前の「おそれ」の段階から事前の体制を整え、避難準備情報等の対応を行い、また、避難勧告、避難指示を適時的確に発令することができるよう、国として適切な支援を行うこと。

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