商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)の概要
本案は、社会経済情勢の変化に鑑み、航空運送及び複合運送に関する規定の新設、危険物についての荷送人の通知義務に関する規定の新設、船舶の衝突、海難救助、船舶先取特権等に関する規定の整備等を行うとともに、商法の表記を現代用語化しようとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一 商法の一部改正
1 運送営業
(一) 陸上運送に関する第2編第8章の規定を海上運送・航空運送及び複合運送にも妥当する総則的規律に位置付けるため、運送人の定義等に関する規定を設けるものとすること。
(二) 物品運送契約及び旅客運送契約について、基本的な内容を示す規定を設けるものとすること。
(三) 危険物についての荷送人の通知義務に関し、荷送人は、運送品が危険性を有するものであるときは、その引渡しの前に、運送人に対し、その旨及び当該運送品の安全な運送に必要な情報を通知しなければならないとの規定を設けるものとすること。
(四) 旅客運送契約における旅客の生命・身体の侵害による運送人の損害賠償責任(運送の遅延を主たる原因とするものを除く。)を免除する等の特約を無効とする規定を設けるものとすること。
2 海商
(一) 船舶の衝突に基づく不法行為による損害賠償請求権(財産権侵害を理由とするものに限る。)は、不法行為時から2年間で時効により消滅するとの規定を設けるものとすること。
(二) 海難に遭遇した船舶から排出された油等により海洋が汚染され、海洋環境の保全に著しい障害を及ぼす場合等において、当該船舶の救助に従事した者は、船舶所有者に対し、その障害の防止等のための措置をとったときの特別補償料の支払を請求することができるとの規定を設けるものとすること。
(三) 船舶の運航に直接関連して生じた人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権者は、船舶及びその属具につき第1順位の船舶先取特権を有する旨の規定を設けるものとすること。
3 その他
表記を平仮名・口語体に改める等の規定の現代用語化を行うものとすること。
二 国際海上物品運送法の一部改正
船荷証券及び船舶先取特権に関する規定を削る等の改正を行うものとすること。
三 施行期日
この法律は、一部の規定を除き、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。