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東日本大震災復興予算の使途に関する決議

 

未曾有の被害をもたらした東日本大震災からの復旧・復興を早期に実現していくことは、喫緊の課題となっており、被害を受けた被災地の一刻も早い復興のためには、復興に真に役立つ必要な施策を、被災地の要望に基づき、速やかに実施しなければならない。このため、政府は、東日本大震災関係経費として、平成二十三年度第一次から第三次の補正予算及び平成二十四年度予算において、将来の増税による国民負担等を財源にして多額の予算を計上し、復興関連の各事業を実施しているところである。

本委員会は、予算の計上及び執行の適正について徹底した検証を行うために行政監視に関する小委員会を設置し、第百八十回国会閉会中の十月二十三日に同小委員会を開会して、東日本大震災復興予算のうち、国内立地推進事業費補助金及び中小企業組合等共同施設等災害復旧事業、地域医療提供体制の再構築、鯨類捕獲調査安定化推進対策、東日本大震災に係る復旧・復興関連事業(道路関係)、庁舎の耐震改修、アジア大洋州地域及び北米地域との青少年交流、被災地域における再犯防止施策の充実・強化、国立霞ヶ丘競技場災害復旧事業について、集中的に討議し、その内容を精査した結果、被災地の事業再建や医療に係る予算措置が円滑には執行されず、復興に支障が生じている一方で、被災地以外を対象とした事業など被災地の復興に直接役立つものとは認められない事業が、関係各省において様々な形で実施されていることが明らかになった。これらの不適切な予算執行は、事業を所管する各省の被災地との関連が弱い事業への予算要求と財務省の形式的な査定結果に加え、政務三役の監督不行き届きから生じたものであり、次のとおり改善を求めるべきとの結論に至った。

政府は、この結論を重く受け止め、被災地の現状を的確に把握した上で、復興庁の総合調整機能及び財務省による厳格な予算査定等を通じ、復興関連のすべての事業を総点検し、優先順位及び予算の配分を抜本的に見直すべきである。その上で、不適切と認められた予算の執行停止も視野に入れて、被災地に必要かつ十分な支援が確実に届くよう最大限の努力をするよう求める。特に、被災地において本格的に復興予算が必要になる際に、その財源が枯渇するような事態は徹底して回避すべきである。また、必要があれば、その前提としての東日本大震災復興基本方針の見直しにも躊躇すべきではない。さらに、東日本大震災が空前の規模であったことにかんがみ、現在被災地において喫緊の課題となっている地盤沈下対策や土地かさ上げに対する支援を十分に講じることなどの必要な措置を前例にとらわれることなく検討、実施することを求める。また、これらの反映状況につき講じた措置について、本委員会に対し平成二十四年度末までに報告するよう求める。

なお、今回の小委員会においても、これまでの小委員会と同様、各省からの資料提出や事業の説明姿勢は、不十分、不適切なものであった。徹底した反省を行うとともに、改善し再発防止に取り組むべきである。

 

一 国内立地推進事業費補助金及び中小企業組合等共同施設等災害復旧事業

国内立地推進事業費補助金については、その経済波及効果、特に被災地に対する詳細な定量的分析を厳密に行うとともに、補助の採択の審査基準を明確化し、本補助金が真に被災地支援に資するものであるかどうかの説明責任を果たすべきである。

中小企業組合等共同施設等災害復旧事業については、被災者からの要望に対して十分対応可能となるよう必要な予算額を確保すべきである。また、事業者の本格的な復興に長期間を要するとの事情を十分に踏まえ、複数年度にわたる事業継続が可能となるよう、繰り越しの要件の緩和、都道府県に対する基金の造成等について検討すべきである。さらに、特に大きな被害を受けた中小企業の申請者に対する支援体制の強化を図るべきである。

 

二 地域医療提供体制の再構築

  医療施設等災害復旧費補助金の民間医療機関に対する補助要件の緩和と補助対象の医療機器への拡充を早急に検討するとともに、医師等の人材確保への対応を強化すべきである。また、地域医療再生基金については、既に再建した民間医療機関に対しても遡及適用できるよう検討すべきである。さらに、地域医療の復興に向けて、創意工夫によりまちづくりと一体になって行われている取組に対しては積極的に後押しすべきである。

 

三 鯨類捕獲調査安定化推進対策

本事業については、被災地の鯨産業の復興に直接関連したものとは認められず、復興予算として支出したことに疑問がある。にもかかわらず、農林水産省による本事業の被災地の復興との関連性に係る説明が極めて不十分であったことは遺憾である。被災地の鯨産業に対する本事業の貢献について徹底した検証を行うとともに、鯨産業復興のために真に政府が果たすべき役割について再検討すべきである。

 

四 東日本大震災に係る復旧・復興関連事業(道路関係)

 道路に限らず、全国防災対策事業の予算措置に上限を設定することや全国の防災事業と被災地の復興事業について予算区分上明確に切り分けることの重要性を認識すべきである。今後被災地における復興予算が不足する事態を防止するための方策として、全国防災対策事業については、復興財源の趣旨を尊重し、緊急性等の観点から一層厳しく対応すべきである。

 

五 庁舎の耐震改修

 本事業については、被災庁舎以外に復興財源を使用せず、緊急性等の観点から一層厳しく対応することを検討すべきである。また、将来における倒壊した被災地の自治体庁舎の建て替え費用の手当てについて十分な配慮を行うべきである。さらに、本小委員会の討議の過程で、国土交通省の資料提出に不手際が見られたことについては、十分に反省し改善すべきである。

 

六 アジア大洋州地域及び北米地域との青少年交流

 本事業については、被災地の復興に直接関連したものとは認められず、復興予算として支出したことに疑問がある。また、外務省において補助対象の団体における具体的な交流の実施状況を即答できないなど、ガバナンスの欠如が認められた。本事業が真に被災地の復興に資するものであったかについて真摯な検証を行うとともに、今後の青少年交流プロジェクトについては、内容の改善、透明性の向上、効果的な風評被害対策の在り方の観点から、抜本的な見直しを行うべきである。

 

七 被災地域における再犯防止施策の充実・強化

  本事業については、復興予算として支出することの合理的な説明はなかったことから、今後、復興予算での予算要求はやめるべきである。

 

 右決議する。

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