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   平成三十年度畜産物価格等に関する件

 

 我が国畜産・酪農経営は、高齢化、後継者不足などにより、飼養戸数、飼養頭数が減少するなど生産基盤の弱体化が懸念されており、畜産クラスターの取組等による生産基盤の強化を通じた経営の安定と競争力の強化、労働負担の軽減が喫緊の課題となっている。また、日EU経済連携協定及び包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)については、畜産物の輸出国との間で厳しい競争を余儀なくされる生産者には、将来への懸念と不安が広がっている。

 よって政府は、こうした情勢を踏まえ、平成三十年度の畜産物価格及び関連対策の決定に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。

                 記

一 地域農業・地域社会を支える家族経営や法人経営といった多様な畜産・酪農の生産基盤の維持・拡大を図るため、組織的な生産体制の整備、畜産物の付加価値の向上、良質かつ低廉な飼料等の供給等の取組を通じて、魅力ある持続可能な経営が実現できるよう、十分な所得を確保し得る実効性のある施策を実施すること。

二 政府が公表した本年七月の日EU経済連携協定の大枠合意、本年十一月の包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)の大筋合意についてその詳細を検証し、国民に情報を開示するとともに、適切な定量的影響評価を行うこと。

三 各般の経営安定・安定供給のための備えを通じて、関税削減等に対する生産者の不安と懸念を払拭し、確実な経営安定を図るとともに、体質強化対策を着実に実施することを通じて、収益力・生産基盤を強化し、我が国の高品質な畜産物の新市場開拓を推し進め、畜産・酪農の国際競争力の強化を図ること。その際、実施した対策の効果を検証し、適宜必要な見直しを行うこと。

  特に、国産チーズ等については、その競争力を高めるとともに需要を確保するための措置を講ずることにより、生産者が将来にわたって安定的に生産に取り組める環境を整備すること。

四 加工原料乳生産者補給金制度については、平成三十年四月一日からの新制度における年間販売計画の審査等を適正に実施し、生産者間の不公平が生じない公正な補給金制度の確立を図るとともに、生産現場等に対しては新制度の周知徹底を図ることはもとより、生産者等が行う各種事務手続の変更については、現場に混乱が生じないよう、相談、指導を適切に行い、円滑かつ迅速に事務処理が進むよう指導すること。

五 加工原料乳生産者補給金の単価、総交付対象数量については、酪農家の経営努力が報われ、営農意欲が喚起されるよう、再生産の確保を図ることを旨として適切に決定すること。また、集送乳調整金の単価の決定については、条件不利地域における集送乳が、安定的かつ確実に行われるよう十分留意すること。

六 酪農家の労働負担の軽減のため、搾乳ロボット 、 ミルキングパーラー、哺乳ロボットをはじめとする省力化等に資する機械・装置の導入をはじめ、乳用後継牛預託施設、集合搾乳施設、家畜排せつ物処理施設の整備等を図ること。また、酪農ヘルパーの人材確保・育成、利用拡大に対して支援を行うこと。

七 牛肉・豚肉の安定価格及び肉用子牛の保証基準価格等については、需給動向、価格の推移、子牛価格の高騰等を十分勘案し、畜産農家の経営安定に資するよう、再生産の確保を図ることを旨として適切に決定すること。

八 肉用牛肥育経営安定特別対策事業(牛マルキン)・養豚経営安定対策事業(豚マルキン)の補塡率の引上げ、豚マルキンの肉用牛並みの国庫負担水準引上げ及び肉用子牛の保証基準価格の算定方式の見直しについては、畜産農家の経営状況等を踏まえ検討を加え、その結果に基づく所要の措置を早期に実施すること。

九 畜産・酪農の生産基盤の強化、とりわけ肉用子牛の繁殖基盤の強化と乳用後継牛の確保を図るため、地域の関係者が連携・協力し、地域全体で畜産の収益性を向上させる畜産クラスター等について地域の実情に合わせた多様な展開を強力に推進すること。また、高能力な家畜を生産するための家畜改良や、牛の個体識別情報活用の効率化・高度化の推進、肉用牛の繁殖肥育一貫経営や地域内一貫生産への支援を更に強化すること。

  また、生産基盤の脆弱化が懸念される都府県における酪農については、需要に応じた生乳生産が確保されるよう地域性を踏まえた生産基盤の強化措置等を講ずること。

十 配合飼料価格安定制度については、畜産・酪農経営の安定に資するよう、同制度に係る補塡財源の確保及び借入金の計画的な返済を促すことにより、制度の安定的な運営を図ること。

十一 輸入飼料への過度な依存から脱却し、国産飼料生産基盤に立脚した力強い畜産・酪農経営の確立を図るため、飼料用米・稲発酵粗飼料を活用した耕畜連携、草地改良の推進、TMRセンター・コントラクターの機能高度化、放牧の推進、子実用とうもろこし等の生産・利用の推進、エコフィードの利用の拡大等へ財源を十分に確保し、支援を更に強化すること。

十二 国産畜産物の輸出に当たっては、オールジャパンでの戦略的で一貫性のあるプロモーションの企画・実行等による海外需要の創出に取り組むとともに、輸出先国・地域の衛生条件を満たす食肉処理施設の整備促進や畜産GAPの取得の推進、輸出先国・地域の多角化のために動物検疫協議等を戦略的に実施すること。特に、原発事故等を要因とする各国・地域による輸入規制については、その撤廃・緩和を強く申し入れること。

十三 原発事故に伴う放射性物質に汚染された稲わら、牧草及び牛ふん堆肥等の処理を強力に推進するとともに、牧草地の除染対策、原発事故に係る風評被害対策に徹底して取り組むこと。

十四 畜産経営に大きな被害を及ぼす口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザ等の家畜の伝染性疾病等については、飼養衛生管理基準の遵守に向けた指導、迅速かつ正確な診断体制の整備、野生動物における伝染性疾病の監視、水際での防疫措置等による発生予防・まん延防止対策を徹底すること。また、獣医師の職域・地域偏在を解消するため、産業動物獣医師の処遇改善方策の導入支援や臨床研修の充実等により、その確保及び資質の向上を図るとともに、家畜の伝染性疾病等に係る風評被害防止等の観点から、国民に対して正確な情報を迅速に伝えること。

 右決議する。

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