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   平成二十二年度畜産物価格等に関する件    

 

 リーマンショック以降の世界的な金融危機に端を発して、我が国の経済は低迷を続けている。そうした中で、我が国畜産・酪農経営は配合飼料価格の高止まりに加え、畜産物の需要と価格が低迷し、全国で離農が相次ぐなど、かつてない厳しい状況にある。

よって政府は、こうした情勢を踏まえ、畜産物の需要を喚起するとともに、困難に直面する農家が将来を展望できる畜産・酪農政策を確立するため、平成二十二年度の畜産物価格及び関連対策の決定に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。

               記

一 WTO農業交渉及びEPA交渉に当たっては、平成十八年十二月の本委員会決議の「日豪EPAの交渉開始に関する件」の趣旨を踏まえ、我が国の畜産・酪農が今後とも安定的に発展できるよう、適切な国境措置等の確保に向けて、確固たる決意をもって臨むこと。

二 牛乳は、昨年三月の飼料価格の高騰を受けた価格の引き上げで一息ついたのも束の間、牛乳並びに乳製品の需要の低迷で、低価格の成分調整牛乳への傾斜と乳製品の在庫が膨らんでいる。

  ここで、牛乳の生産を低下させることになった場合、これまで培ってきた努力を崩し将来に禍根を残すことになりかねない。今回の決定に当たっては、現行の生産レベルの維持を基本に、需要の拡大対策を強化するとともに、加工限度数量及び補給金単価を適正に決定すること。

三 国民の食における牛乳の重要性にかんがみ、学校給食への供給対策をはじめ、消費拡大対策を強化すること。

  また、チーズや生クリーム等液状乳製品の供給拡大を図るための対策を継続実施するとともに、都府県における加工を拡大するための乳業工場の再編等、加工施設の整備対策を強化すること。

四 肉用子牛生産者補給金等対策については、保証基準価格を適切に設定すること。また、我が国の貴重な財産でもある黒毛和種については、重層化している事業を簡素化するとともに、生産コストを賄える支援水準を確保すること。

五 肉用牛肥育対策については、「マルキン事業(肉用牛肥育経営安定対策事業)」・「補完マルキン事業(肥育牛生産者収益性低下緊急対策事業)」・「ステップ・アップ事業(肥育牛経営等緊急支援特別対策事業)」等の対策が講じられているが、平成二十一年度までの事業であり、これらの仕組みを一本化した肥育経営のセーフティネット対策として、わかりやすい仕組みに見直し拡充すること。

  また、その場合、農家負担の軽減を念頭に置いた対策を講ずること。

六 養豚対策については、必要に応じ(独)農畜産業振興機構による買い上げや調整保管を機動的に実施するとともに、平成二十一年度までの事業である肉豚価格差補てん緊急支援対策事業を抜本的に見直し、肉豚マルキンともいうべき全国的なわかりやすい事業として拡充すること。

七 配合飼料価格安定制度については、飼料価格が高位水準にとどまっている現状のような場合、価格安定対策としては機能しないことから、発動要件等について検討を行うこと。また、農家負担軽減を図る観点から、借り入れにより対応してきた資金の償還について支援対策を講ずるとともに、家畜飼料特別支援資金等の継続・強化対策を図ること。

八 自給飼料対策の重要性にかんがみ、草地基盤整備事業の拡充や、コントラクター、ヘルパー、TMRセンター、リース事業等の十分な予算の確保に努めること。さらに、耕作放棄地・畑地における自給飼料生産による活用や循環型農業推進に向けた堆肥施設や流通体制の整備を抜本的に強化すること。

九 畜産の担い手育成の観点から、きめ細かな新規就農対策の充実や、子ども酪農体験学習等消費者との交流活動の強化に取り組むこと。

十 食の安全と消費者の信頼の確保を図るため、加工食品と外食の原料原産地表示の義務対象の拡大を早急に検討するとともに、米国産牛肉の輸入条件については、科学的根拠に基づき慎重に対応すること。

  併せて、景気の悪化で生じている、国産の食肉や鶏卵、牛乳、乳製品の消費拡大対策に取り組むこと。

十一 平成二十三年度以降の畜産・酪農に係る経営安定対策等については、畜種ごとの実態等を十分に踏まえ、生産者・消費者等関係者の意見を聴きながら、幅広い観点から現行対策の検証を行い、平成二十二年度中を目途に制度や基金の在り方について明らかにすること。その際、沖縄の本土復帰時に特別措置として認められた牛肉調整金制度が消滅し、その代替として設けられた沖縄食肉価格安定基金について、価格差や県外移出の必要性等沖縄の特殊要因に十分配慮すること。

 右決議する。

 

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