衆議院

メインへスキップ



   平成三十一年度畜産物価格等に関する件

 

我が国畜産・酪農経営は、飼養戸数が減少する一方、一戸当たり飼養頭羽数は増加を続けているものの、担い手の高齢化、後継者不足は深刻さを増しており、特に経営継続の危機にさらされている中小・家族経営を強力に支援する必要があるとともに、より多くの若手が就農を目指す魅力ある労働環境づくりが課題となっている。また、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)、経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定(日EU経済連携協定)の発効が目前に迫る中、将来への懸念と不安を抱く生産者も多い。

よって政府は、こうした情勢を踏まえ、平成三十一年度の畜産物価格及び関連対策の決定に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。

                 記

一  地域農業・地域社会を支える家族経営や法人経営といった多様な畜産・酪農の生産基盤の維持・拡大を図るため、組織的な生産体制の整備、畜産物の付加価値の向上、良質かつ低廉な飼料等の供給等の取組を通じて、魅力ある持続可能な経営が実現できるよう、十分な所得を確保し得る実効性のある施策を実施すること。

二 日米物品貿易協定に関しては、適宜適切に国民に情報を開示すること。

また、CPTPP、日EU経済連携協定による我が国農林水産業への定量的影響評価については、他の参加国における試算例や各県の試算例も参考として、より精緻なものとなるよう、見直しに努めること。

三  各般の経営安定・安定供給のための備えを通じて、関税削減等に対する生産者の懸念と不安を払拭し、確実な経営安定を図るとともに、国産チーズ等の競争力強化等の体質強化対策を着実に実施することを通じて、収益力・生産基盤を強化し、我が国の高品質な畜産物の新市場開拓を推し進め、畜産・酪農の競争力の強化を図ること。その際、実施した対策の効果を検証し、適宜必要な見直しを行うこと。 また、これらの施策等により、食料自給率の向上を図ること。

四  加工原料乳生産者補給金・集送乳調整金の単価及び総交付対象数量については、中小・家族経営が中心の酪農家の意欲が喚起されるよう、再生産の確保を図ることを旨として適切に決定すること。

  また、改正畜安法の下、酪農経営の安定と需給状況に応じた乳製品の安定供給の確保が図られるよう、需給変動等に備え、万全な需給安定対策の在り方についての酪農業界全体での検討を、国は十分に支援すること。

五 肉用子牛生産者補給金制度における保証基準価格の算定方式については、中小・家族経営を中心とする現在の経営の実情に即したものとし、繁殖農家の経営努力が報われ、営農意欲が喚起されるよう、再生産の確保を図ることを旨として適切に見直すこと。

六 酪農家や肉用牛農家の労働負担軽減・省力化に資するロボット・AI・IoT等の先端技術の導入等を強力に支援するとともに、酪農ヘルパーの人材確保・育成、利用拡大に対して支援を行うこと。

七  畜産・酪農の収益力・生産基盤・競争力を強化するため、畜産農家を始めとする関係者が連携する畜産クラスター等について、中小・家族経営にも配慮しつつ、地域の実情に合わせた地域が一体となって行う、外部支援組織の活用、優良な乳用後継牛の確保、和牛主体の肉用子牛の生産拡大、畜産環境対策等の多様な展開を強力に支援すること。加えて、肉用牛・乳用牛・豚の改良等を推進する取組や、肉用牛の繁殖肥育一貫経営や地域内一貫生産を推進する取組を支援すること。さらに、生産基盤の脆弱化が特に懸念される中小・家族酪農経営については、需要に応じた生乳生産が確保されるよう地域性を踏まえた生産基盤の強化措置等を講ずること。

八  国産飼料の一層の増産と着実な利用の拡大を図り、飼料自給率を向上させるため、草地改良や飼料作物の優良品種利用の取組、ICT等の活用による飼料生産組織等の作業の効率化、放牧、国産濃厚飼料、未利用資源を利用する取組、有機畜産物生産の普及の取組を支援すること。さらに、良好な飼料生産基盤を実現させるため、大型機械体系に対応した草地整備、泥炭地帯における草地の排水不良の改善等を推進するとともに、酪農経営における環境負荷軽減の取組を支援すること。

また、配合飼料価格安定制度については、畜産・酪農経営の安定に資するよう、同制度に係る補塡財源の確保及び長期借入金の計画的な返済を促すことにより、制度の安定的な運営を図ること。

九  国産畜産物の輸出に当たっては、オールジャパンでの戦略的で一貫性のあるプロモーションの企画・実行等による海外需要の創出等に取り組むとともに、輸出拡大に対応できるように国産畜産物の供給力の強化を進めること。また、日本版畜産GAPについては、その取組や認証拡大を加速度的に進展させるため、普及・推進体制の強化の取組等を支援すること。特に、原発事故に伴って導入された諸外国における日本産農林水産物・食品の輸入規制等の緩和・撤廃を図るため、政府間交渉に必要な情報・科学データの収集・分析等を十分に行い、輸出先国への働きかけ・交渉を強力に推進すること。

十  原発事故に伴う放射性物質に汚染された稲わら、牧草及び牛ふん堆肥等の処理を強力に推進するとともに、永年生牧草地の除染対策、原発事故に係る風評被害対策に徹底して取り組むこと。

十一 畜産振興、畜産物の安定供給と輸出促進を図るため、高病原性鳥インフルエンザや口蹄疫、豚コレラ等の家畜の伝染性疾病等の発生予防・まん延防止対策を徹底し、農場の飼養衛生管理指導、診断体制の強化、野生動物の監視等の取組を支援すること。また、地域の家畜衛生を支える産業動物獣医師の育成・確保を図るとともに、家畜の伝染性疾病等に係る風評被害防止等の観点から、国民に対して正確な情報を迅速に伝えること。

十二 多発する自然災害による畜産・酪農の被害への対応に万全を期すこと。特に、北海道胆振東部地震による停電の影響により被害を受けた乳牛に対する乳房炎の治療・予防管理や非常用電源の確保等について強力に支援すること。また、乳業メーカーに対して、自家発電施設の導入など、停電等の非常時への対応を強化するよう指導すること。

 右決議する。

衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.