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昭和四十五年十二月十八日提出
質問第三号

 沖繩問題に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十五年十二月十八日

提出者  (注)長亀次郎

          衆議院議長 (注)田 中 殿




沖繩問題に関する質問主意書


 昨年十一月の日米共同声明に基づく沖繩の「七二年施政権返還」なるものは、ニクソン・ドクトリンを基本に「日本を含む極東諸国の安全をそこなわない」ことを不可欠の条件として、米軍基地をそのまま残し、日本全体をアジアの反共軍事同盟にかたく結びつけようとするものであり、沖繩県民の全面返還の要求をまつこうからふみにじるものである。
 現在、日本政府は「返還交渉は順調にすすんでいる」とくりかえしているが、その真の内容は国民の前に明らかにされておらず、そのもとで米海兵隊緊急派遣部隊が配備され、毒ガスも依然として貯蔵され、原子力潜水艦も公然と出入りするなど、沖繩の米軍基地はアジアのどこにでも出撃できるように、かえつて強化されつつあるのがいつわらざる現実である。
 このようななかで、女子高校生に対する刺傷事件、糸満町における婦人れき殺事件などにみられるように、アメリカ兵による凶悪犯が続出し、県民の不安は怒りとなつて燃えあがりつつある。
 そこで、以下、私は、さきの沖繩の国政参加選挙で示された県民多数の「核も毒ガスも基地もない沖繩の全面復帰」の声を代表し、かつ本土国民多数の沖繩全面返還の要求をも代表して、沖繩問題をめぐる政府の諸施策ならびに基本的態度について質問する。

一 去る十二月四日、レアード米国防長官は「沖繩に貯蔵している毒ガスの一部を撤去する」と発表した。それは一万三千トンといわれる貯蔵量のうちわずか百五十トンにすぎない。つづいて米陸軍は、去る十二月十一日に毒ガス撤去計画を発表した。ところが、その撤去計画の内容は「いつ行なわれ、安全確保はどうなつているのか」という、住民がいちばん不安に感じている点については、いつさい明らかにしていない。
  この問題について、愛知外相は、去る十二月八日の沖繩及び北方問題に関する特別委員会(以下沖特委)で私の質問に対して「すみやかに安全に撤去されるよう対米折衝する」と答弁しているが、どのようにして「すみやかで安全な撤去」を実現させるのか、以下の点について回答されたい。
 (1) 撤去の時期について (イ)今回の米軍の発表は、撤去の発表というよりも、撤去の時期を延長する発表であり、「来春までには大部分撤去することになろう」という、去る九月、訪米中の中曾根防衛庁長官に対してなされたレアード米国防長官の言明をも破るものであるが、政府はこれに抗議をしたのか。
     (ロ)また、愛知外相の最近の国会における答弁のなかには、安全性の確保と、撤去の時期を早める問題とが矛盾するかのような発言があり、暗に撤去の延期を合理化しているようにみられる。しかし、昨年十二月の撤去の発表でも、本年九月の中曾根防衛庁長官に対するレアード米国防長官の言明でも、ともに三、四カ月で撤去しうるむね述べている点からいえば、今後少なくとも三カ月ぐらいで撤去することは不可能ではないと思うが、アメリカに明確な期限を付した撤去要求をする意思はないか。ありとすれば、その期限をどこにおくか。
 (2) 安全性確保について (イ)米軍はその発表で「絶対安全だ」といいながら撤去作業に従事する要員及び報道人に対してはすべて防毒マスクを配布し、輸送部隊は中和剤を用意することを明らかにしている。これは、米軍が危険を予想していることを示すものであり、米軍の安全についての対策はあるが住民の安全は全く無視されているといわざるをえない。また、このことは、「米軍人、軍属、沖繩住民に同一の安全対策をとる」という発表がウソであることを物語るものである。
     アメリカには、一九六九年八月十一日に可決された「CB兵器の実験・貯蔵・輸送を厳重に制限する米上院修正案」や、「アメリカ本国における危険物の輸送上の安全基準」というものがあつて、毒ガスなどの輸送のとき住民の安全をはかるようになつていると伝えられているが、沖繩からの毒ガス撤去に際しては、少なくともこの「安全基準」程度のことは実施されるよう、政府は米国政府に要求すべきだと思うが、その意思があるか。
     (ロ)「琉球政府」は、毒ガス撤去について、沖繩および本土の技術家、専門家による安全対策を立案すべきであると提案しているが、政府にはこのとおり実行する考えがあるか。
     (ハ)アメリカの「安全基準」では、「輸送上の事故から地域住民の安全を守るために、輸送地点から最高四十八キロ、最少八キロ以内の住民を避難」させるとなつている。もし、住民が避難することになれば、それにともなう損害補償を米国政府が完全に行なうよう要求する考えはあるか。また、その際の損害補償の基準等についての政府の考え方を示されたい。
 (3) 「非致死性」ガスの撤去についてアメリカによつて撤去の発表があつた毒ガスは、「致死性」のガスに限られ、「非致死性」といわれているガスは含まれていない。しかし、最近の沖繩における毒ガスもれ事件も「非致死性」のガスであるといわれ、また現にベトナム人民の大量殺りくや、田園の荒廃に使われている化学兵器もまた「非致死性」のものである。ところが、政府は沖繩についても、本土についても、撤去の要求などしたことがないどころか、その実態すら確かめていない。政府は、この「非致死性」といわれる化学兵器について、ただちにその実態を確かめると同時に、その結果を公表し、さらにその撤去を要求すべきだと思うが、その意思はあるか。
二 沖繩における米軍人、軍属による犯罪はますます増加する傾向にある。しかも凶悪化している。女子高校生刺傷事件はまだ記憶にあたらしいものであるが、去る九月十八日、沖繩の糸満町で発生した「金城さんれき殺事件」とそれに対する上級軍法会議の判決は、県民の怒りと生命、人権に対する不安を大きくしている。軍法会議は、事件を目撃した糸満町民、糸満警察署員など十一名の証言によつて、飲酒運転、スピード違反など「重大な過失致死罪」として起訴された明白な犯罪行為を「無罪」とし、しかもその理由も明らかにしていない。この「無罪判決」に対して「琉球政府」の大城宗正警察本部交通部長は「人をひき殺して無罪とはどんな裁判をやつたのか、人道的にも考えられない。当時の現場状況からみても運転者の過失は動かせないと信じていた」と語つているが、このような不当な裁判が米兵らの犯罪をいつそう悪質化させることは明らかである。以下政府の見解を示されたい。
 (1) まず、政府はこの天人ともに許されない占領意識まるだしの犯罪人野放しの不当な判決に対し抗議する意思があるかどうか。
 (2) 沖繩県民は戦後二十五年間、米軍人、軍属の犯罪に対する捜査権、裁判権がないために人権を踏みにじられ、生命の危険にさらされつづけてきた。政府は単なる「琉球」警察の若干の米側捜査への協力などにとどまらず、日本国民である沖繩県民の人権と生命を守るためにも、米軍人、軍属に対する捜査権、裁判権を即時、完全に「琉球政府」に移管させるよう強力に対米交渉をすべきであると考えるが、政府にその意思と方針があるかどうか伺いたい。それとも、「七二年施政権返還」までは施政権がアメリカにあるので如何ともしがたいとの従来の姿勢をくずさない方針であるのか。
 (3) 政府は、沖繩県民に対するいつさいの米軍人、軍属の犯罪について、これまでの裁判の結果とその執行状況を県民に明らかにするよう対米交渉をする意思があるか、どうか。
 (4) 米軍人、軍属の犯罪による被害者に対して、当然十分な損害賠償を行なう必要がある。政府はこの問題について対米交渉を行なう意思があるか、どうか。
三 沖繩県民の願いは、いまのようなアメリカの沖繩ではなく、真に日本の沖繩県にかえることである。現在、米軍に奪われている土地、そして美しい空と海をとりかえし、核も基地も毒ガスも米軍もいない沖繩を作りたいというのが百万沖繩県民の心である。そこで
 (1) 政府は、米軍基地の重圧、生活破壊、人権無視、生命の危険にさらされながらも、なお全面復帰を求めつづける沖繩県民のこの心についてどう思つているか。
 (2) 政府は、沖繩にあるいつさいの核爆弾核弾頭およびその貯蔵庫などの撤去、ならびにF105、F4戦闘爆撃機、一五五ミリ自走砲、一七五ミリ自走砲、ナイキ・ホークなどすべての核運搬手段の撤去、原子力潜水艦の沖繩への出入り禁止を要求する考えはないか。
 (3) 政府は、日本共産党の公開質問状に対する回答のなかで、B52については「すでに撤去されたものと認められる」と述べている。しかし、アメリカ政府当局は、B52撤去の通告の際、「再配備もありうる」と言明していることは周知のとおりである。この言明について、政府はアメリカに対してなんらかの意思表示をしたことがあるか。あるとすればその内容とそれに対するアメリカの反応を明らかにされたい。また、将来再配備されるようなことが起こつた場合、これを拒絶しうる法的保障があるのか。また政府は、再配備を許さぬ旨、ただちにあらかじめアメリカに通告する意思があるか。
 (4) 基地の全面撤去は沖繩県民の要求である。ところで政府は「基地縮小」といつているが、もしそうであるならいつまでに、どういう計画で縮小していくのか、明らかにされたい。
四 日米両国政府は、「沖繩返還協定」作成交渉を国民に秘密裏にすすめている。この交渉は、昨年十一月の日米共同声明に基づいて行なわれているものであるが、「沖繩にある米軍が重要な役割を果たしている」ことを認め、極東で「米国が負つている国際的義務の効果的遂行の妨げとなるようなものでない」ことを条件に、「施政権返還」のあり方を交渉している。これは、基地の自由使用を許し、県民にはいつまでも不幸と犠牲を強制する道、「核かくし、有事核持ち込み、自由出撃返還」の道であることを指摘しなければならない。私は、沖繩県民の意思を無視して取り決められた日米共同声明の「合意」を前提とするのではなく、平和と繁栄の沖繩県をうちたてるためには、米軍による沖繩の軍事占領支配の法的根拠となつてきた不法不当なサン・フランシスコ「平和」条約第三条を撤廃して、県民の意思と要求に基づく返還交渉による無条件全面返還でなければならないことを強く主張する。そこで
 (1) (イ)政府は、「七二年施政権返還」といつているが、真に沖繩を返還するのであれば、サン・フランシスコ「平和」条約第三条を撤廃することを返還協定のなかの主な柱としていれなければならないと考える。そうでないならば、これまでの米軍の不法な占領を正当化することになるが、政府の基本的態度を明らかにされたい。
   (ロ)「返還協定」の発効と同時に「平和」条約第三条の効力はどうなるのか。失効するものとすればどのような法形式で規定するのか。
 (2) (イ)施政権の返還にあたり、米軍の軍事占領及び米軍当局、米軍関係者によつて生じたいつさいの被害、米軍によつて強制されたいつさいの不利益について、これをアメリカに完全に補償させることは沖繩県民の当然の犯すことのできない基本的権利である。政府はまず、この県民の基本的権利そのものを認めるのか、認めないのか、その考えを明らかにされたい。
   (ロ)政府は、サン・フランシスコ「平和」条約第十九条(a)項により沖繩においても請求権は放棄されている。との態度をとつている。しかし、当時日本政府は沖繩県民を代表する立場にはなく、また日本政府の「施政権」も沖繩におよんでいなかつたのであり、沖繩における損害の事実を認識することさえできなかつたのである。この沖繩県になぜ右条項が適用されるのか、その根拠を明確に示されたい。
   (ハ)いわゆる「六五年補償法」により、講和発効前補償が行なわれ、アメリカはこれにより講和前補償は解決したと称している。だが多く指摘されている通り、巨額の未補償分が放置されたままになつており、講和前補償は解決していない。
      また、講和発効後の補償についても、漁業権補償は全く行なわれておらず、補償が行なわれたものの場合も、それは実際の被害の程度と内容を全く無視した不当に僅少なものであり、補償額の決定に際して事実上なんらの救済方法もないものであつた。
      政府は今日まで、この実態をどのように調査してきたか。その結果を報告されたい。また、右に述べた補償請求について、どのような基本的態度で対米交渉にあたつているか明示されたい。また、この補償について政府としてどのような措置をとるのか明らかにされたい。
   (ニ)講和前に米軍が接収しその後地主に返還した軍用地の復元補償の請求に対し、アメリカは一九六一年七月以降に返還した分については補償要求を完全に拒否している。政府はこの問題の解決について、今日に至るも何ら明確な態度をとろうとしていないが、正しい解決は米軍に完全な復元補償を義務づけることである。政府はこのことをアメリカに要求する意思があるかどうか、明らかにされたい。
 (3) (イ)政府は沖繩における米国政府資産について有償で譲り受けるという立場に立つているが、これはその経過からみて当然日本側に譲渡すべきものである。政府はその意思を変更する考えはないか。
   (ロ)日本政府の引継資産として目下日米交渉の対象となつている米国政府事業(琉球電力公社、琉球水道公社、琉球開発金融公社)、行政用建築物、軍事基地外道路、航路通信援助施設について、アメリカは日本にいくらで買いとることを要求しているのかを明らかにされたい。
   (ハ)右について日本側の主張を明らかにされたい。
 (4) (イ)沖繩にすでに進出している外国企業の特権、返還前の所得に対する遡及課税の免除、投資認可の継続、国・県有地の借地権の継続、本土への自由進出などの措置はただちに廃止されなければならないと考えるがどうか。
   (ロ)米「民政府」は、沖繩の平安座島に進出しているガルフ社にたいして六十年間にわたる港湾管理権を付与した。この許可をただちにとり消すようアメリカに要求する考えはないか。
   (ハ)また、米「民政府」の布令、布告、指令等は返還と同時に失効し、本土法が適用されるといわれているが、ガルフ社の管理権については、肝心のこれを規制すべき法令がないことが明らかになつている。これについて、どのような措置をされるのか、具体的に明らかにされたい。
 (5) (イ)政府は、地主が「施政権返還」時に日本政府との軍用地の賃貸借契約を拒否した場合、この地主の意思を尊重するか。この場合、政府ならびに米軍は土地の使用権そのものを失い、以後は不法占領となり当然軍用地を無条件に解放せねばならない道理であるが、政府はどう考えるか。
   (ロ)また、「琉球」政府と地主との契約をそのまま引きつぐいわゆる一括契約方式もありうるかのような発言を政府は行なつているが、これは地主の意見を全く無視するものであるのみか、法理上も許されないものである。政府は、いわゆる一括契約方式はとらないことを県民の前に明らかにすべきであると思うがどうか。
   (ハ)軍用地の強制収用は絶対にすべきでないと考えるが、このことを明言する意思があるかどうか伺いたい。
 (6) 沖繩県民と本土国民は、いま政府が米国政府との間に行なつている「返還交渉」に重大な疑惑と不安を感じている。それは、この交渉が国民の前に明らかにされず、秘密に進められているところに原因がある。政府はいまただちに「返還交渉」のすべての内容を公表すべきであると考えるがどうか。
五 沖繩県民は今後の沖繩復興がどのような形でなされるかに大きな関心を寄せており、アメリカと日本の大企業本位のやりかたではなく、県民本位の立場ですすめられることをつよくのぞんでいる。また、さしあたり、緊急の復帰対策により、県民の民主的権利が尊重されるべきことを要求している。そこで以下、伺いたい。
 (1) まず戦後二十五年間、本土から切り離されてきた沖繩県の経済復興を一日も早く「他府県なみ」にするには、七二年を待たずにただちに国会において「沖繩県復興特別措置法」を制定しなければならないと考えるが政府の方針はどうか。
 (2) この「特別措置法」に基づく沖繩県復興開発計画は五カ年間に実施するとし、その計画の立案と実施についての権限は「琉球政府」主席、返還後は沖繩県知事にあたえるべきであると考えるが政府の見解を示されたい。
 (3) この復興計画を効果的に実行するためには、われわれの概算によれば五カ年間に三十億ドルの資金が必要である。全県が戦争によつて破壊され、また二十五年間も本土から切り離されて米軍の支配下に放置されてきた沖繩県の復興を短期間に達成するために、政府は十分な財政的保障を行なう当然の義務がある。山中総務長官は、私が去る十二月三日の衆議院沖特委で、五カ年間に三十億ドルの国家資金を沖繩復興のため支出すべきであると求めたのに対し、「同感である」むね答えたが、政府にこの程度の資金を支出する意思があるかどうか。
 (4) 私は、一刻も早く無条件全面返還を内容とする返還協定が結ばれるべきだと考えるが、当面さしせまつた問題のもの、また全面返還にむかつてスムーズに作業が進展するためにも緊急に次のような対策を立てる必要があると考える。そこで、(イ)「琉球政府」主席、立法院各派代表、沖繩選出国会議員によつて構成される復帰対策機関をつくり、復帰対策はすべてこの機関をつうじて県民の意思にそつて行なわれるべきであると考えるが政府はどのような方針をもつているのか。
   (ロ)国有地、水源地、河川の管理権を「琉球政府」または市町村自治体に移し、国有地は県民の利益のために民主的に利用すべきであると思うが政府はどう考えているか。(ハ)本土との渡航制限を定めた米民政府布令第一四七号を即時撤廃させ、また沖繩への渡航者への「身分証明書」の発給を規定した政令第二一九号を廃止して沖繩と本土との往来を自由にする考えはないか。(ニ)他府県との間の戸籍の転出入は、高等弁務官の許可事項ではなく、ただちに届出制に改めるべきだと思うが政府はどう考えているか。
   (ホ)米民政府布令第一四四号(刑法)、第一三二号(デモ規制法)、第六三号(総合労働法)などは、県民の基本的人権と政治的自由をいちじるしく侵害しており、ただちに撤廃すべきであると思うが政府はどう考えているか。(ヘ)アメリカ政府の財政支出削減に反対し、ひもつきでない大幅な財政支出を要求し、米「民政府」一般資金と高等弁務官資金は、「琉球政府」予算にくみいれるべきであると思うが政府はどう考えているのか。(ト)「琉球政府」が負担しているいつさいの国家事務、事業に要する経費を政府が負担すると同時に沖繩県が本来の県として当然受けられる地方交付金、国庫支出金など法令に基づく諸制度による財政支出を行なうべきであると考えるが、政府の考えはどうか。なお、財政困難のため「琉球政府」が負つている負債は、すべて政府が肩がわりすべきであると思うがどうか。(チ)各種社会保険制度の本土なみ適用と改善をただちに実行し、医者、看護婦を緊急に派遣する必要があると思うがどうか。
   (リ)基地労働者に日本国憲法で定められた労働基本権を完全に保障し、一方的首切りと配置転換をやめさせるとともに平和産業への再就職を保障しなければならないと思うが、政府はこの問題について具体的にどういう対策をたてているか。(ヌ)現行軍用地料を大幅に引き上げるとともに米軍による漁場制限の廃止を実行すること、また、戦禍と占領によつておきた土地問題の正確な調査と所有権確定のため、公選制による土地対策委員会を市町村に設置する必要があると思うが政府はこれらの問題をどう考えているか明らかにされたい。
六 政府は、坂田文部大臣の発言にみられるように「七二年施政権返還」とともに沖繩の教育委員会制度を公選制から任命制に切りかえようとしている。これは、沖繩県民がかちとつた民族的民主的教育の成果を奪いさろうとするものであり、異民族である米軍支配下において沖繩県の教育労働者、父兄がいかに苦労して「日本人としての子供を育てる」ために努力してきたかを無視する反動的なものである。当然のことながら、「琉球政府」と沖繩県民は、坂田文部大臣の発言を鋭く批判し、公選制は守らなければならないことを強く主張している。坂田文部大臣は「公選制は日本の土壌に合わない」と発言しているが、沖繩では深く県民になじまれており、公選制の教育委員会制度こそが民主主義の根本に合致するものであることをその歴史的経験は物語つている。そして、この制度によつてこそ、豊かな人間性と科学的なものの見方、考え方を育てるものであることが祖国日本を片時も忘れない沖繩の子供たちに体現されている。憲法の精神からしても、この公選制の教育委員会制度は残されるべきものであり、むしろ、さらに発展させ全国におしひろげるべき優れた制度であると確信する。
 以上の観点から次の点について質問する。
 (1) 日本人でありながら戦後二十五年間、日本国憲法を知らずに、それにも負けず沖繩の子供たちは「日本人」としてすくすくと育つている。これは沖繩の教職員の努力の結晶である。政府は、この教育のどこが悪いと思つているのか。どこをかえさせようと思つているのか。
 (2) 公選制の教育委員会制度は、沖繩県民が米軍からかちとつたものであり、そこには「日本人として立派な子供を育てたい」という県民の心がこめられているが、政府は、県民のこの心をふみにじつてでも任命制に切りかえるつもりか、どうか。
 (3) 沖繩の教育水準は、校舎、施設、備品や高校進学率、教職員の待遇など本土より十年もおくれている。私は、教育復興五カ年計画を立て、二億ドルの予算で本土との格差を早急になくしていく必要があると考えるが、どうか。
七 日米共同声明は、沖繩に安保条約及び関連諸取決めがそのまま適用されるとしているが、その適用のしかたは極東諸国の安全は日本の重大関心事であり、極東における米国の極東諸国に対する防衛条約上の義務の効果的遂行を妨げないという佐藤首相の見解表明に基づくものである。
  これは、日米安保条約の実質的な改定であり、そのもとに沖繩だけでなく本土の米軍基地の自由出撃、核基地化の道をひらき日本全土を「沖繩化」するものであると考えるので以下質問する。
 (1) 政府は、日本共産党の公開質問状への回答で「取決めの枠内で定められている既存の細目の沖繩への適用については、技術的理由あるいは沖繩の地域的特殊事情に照らして特に調整すべきものがあれば」変更することを示唆しているが、細目変更を必要とするような技術的理由とは何であるか。
 (2) 細目の変更を必要とする沖繩の地域的特殊事情とは何であるか。
 (3) 愛知外相、中曾根防衛庁長官は「施政権返還」後の地位協定改定を示唆する発言を行なつたが、どの点を変更しようと考えているのか。
八 去る十月七日に沖繩を訪れた中曾根防衛庁長官は、沖繩に自衛隊を派遣すると言明した。同時に「屋良主席は自衛隊の沖繩進出には県民世論として反対であると述べたが私はそうは思わない。黙つている大多数がいる。反対と断言するのは屋良主席の仮想である。沖繩には自衛隊に対する誤解や偏見がある」とも述べた。これは、あのいまわしい第二次大戦の戦場となつて悲惨な戦争体験をした沖繩県民の平和の願いに挑戦する発言である。
  屋良主席のみならず、自衛隊の沖繩配備に反対するのは沖繩県民にとつて常識的な考えである。悲惨な戦争体験と長いあいだ侵略的な米軍基地にさらされてきた県民にとつて、自衛隊の沖繩配備は、アメリカ軍とともにふたたび県民をあののろわしい戦争にひきずりこむ危険なものとして受けとめている。これは、沖繩県民の歴史的実感であり、生活から生れてきた消しがたい感情である。
 (1) 政府は、こうした沖繩県民の感情、反対の声をふみにじつてでも自衛隊の沖繩配備を強行する方針であるのか。
 (2) すでに発表されている陸海空自衛隊三千二百人、ナイキ部隊、新主力戦闘機F4などの沖繩配備計画は、沖繩ならびに本土における日米共同作戦を質、量ともに大幅に拡大強化するものであり、極東における重大な軍事的役割りを日本が進んで負おうとしていることを示すものであると考えるが、自衛隊の沖繩配備の目的、配備時期、配備地域、行動範囲、当初計画以降の増強計画それぞれについて具体的に明示されたい。

 右質問する。





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