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昭和四十九年十二月二十三日提出
質問第五号

 国営高浜入干拓事業に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和四十九年十二月二十三日

提出者  久保三郎

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




国営高浜入干拓事業に関する質問主意書


 国営高浜入干拓事業は次の理由により、その事業を中止し、本年度当該事業予算の執行を取りやめ、昭和五十年度予算要求は見合わせるべきであると思うがいかん。
一 高浜入干拓事業は、当初、農家の二、三男対策、食糧(米)増産対策として昭和三十五年度より調査が開始され、昭和四十二年度国営干拓事業に認定、現在に至つているが、すでにその目的とするところは失われ、大きく変ぼうした。本事業は、米の生産調整施策が打ち出されるに及び昭和四十六年度予算要求の段階において急きよ、そ菜、畜産基地の造成に変更し、予算を強引に要求したが、いまや休耕地が増加し、当該地周辺においても一、〇〇〇ヘクタールにも及ばんとし、茨城県下においては一〇、〇〇〇ヘクタール余にも達するとみられている。もし真にそ菜、畜産基地を必要とするなら一、二〇〇ヘクタールの高浜入干拓によるよりも、これら休耕地に資金と技術を導入することが先決であり、省資源、省エネルギーの新時代においては当然のことであり、干拓後少なくとも数年を経過せざれば、耕地として用をなさない本事業を強行する必要性はどこにも見当らない。
二 高浜入干拓事業開始の前提条件である関係漁業協同組合の漁業権消滅、特に直接干拓計画にかかる玉造漁業協同組合の漁業権消滅は、昭和四十五年二月二十六日の同漁協総会の特別決議によつて、消滅したとして漁業補償金の支払いをしているが、この総会決議は無効であるとの訴えが、干拓に反対し、漁業を引き続き営む組合員によつて提起され、現在係争中である。また、すでに支払われた漁業補償金の配分について関係者の間に、幾つかの間題ありとし、その解明が求められているが、いまだに公表されず、その配分について、指導する立場にある農林省等の責任も問われている。このように問題を紛糾させたまま、事業のみを既定計画通り進めることは無理である。
三 本事業に反対する者は、当初より強硬に反対している玉造漁協の反対組合員ばかりでなく、当該地域関係者の間に反対の意向が広がり、すでに七、〇〇〇名以上の反対署名が関係当局に提出されている。現地を取り巻く情勢は、農林省はじめ関係当局に対する不信の念強くかつ、農業の実情、霞ケ浦の現況等よりして、干拓の必要性を認めず、工事の推進に強く反対しているのが、現地の実体である。
四 高浜入は魚族の産卵地とし、あるいは養殖漁場としても利用されている格好な漁場である。しかるに、これをつぶし干拓をすることは、現に沿岸漁業にも制約が加わり、淡水漁業の振興発展が重要な施策であるべきとき、これに逆行するものである。しかも引き続き漁業を営まんとする強い意思をもつ関係者の生業を奪つてまで、この事業を敢行しようとすることは、いかにも道理に反するものである。
五 霞ケ浦より毎秒四十トンの水を確保しようとし、その周囲に堤防を築き、下流を締め切る水ガメ化が、水資源公団によつて進められているが、すでに霞ケ浦の水質は極度に悪化し、工業用水二級の環境基準をはるかに下回つており、霞ケ浦水道事務所より供給を受けている市民の間には、飲料水としてのこの水道水に不安を抱いており、重大な問題となつている。
  このような情況下において、現在、何よりも霞ケ浦の水質の浄化を図ることが、緊急最大の課題であり、水ガメ化による利水事業を先行させることは間違いであり、かてて加えて、高浜入の干拓によつて霞ケ浦の湖面を縮小することは、施策の矛盾であり、死の湖に一層拍車をかけるものである。
六 霞ケ浦は、我が国第二の湖沼として、その自然環境を保護し、後世に継承すべきものであつて、自然は一度破壊されては、その復元が不可能なことに思いを至さねばならない今日、干拓をし、あるいは水ガメ化のために堤防をめぐらせるという構想は、自然の貴重さに目を覆つた無謀な計画である。霞ヶ浦は、その水質浄化と自然環境保全を中心にした、利水治水、水産振興等の総合対策を関係住民参加のもとに、民主的に樹立し、後世に悔を残さぬ工夫が必要である。
七 本年二月、農林省は警察機動隊を導入し、反対者の運動を排除し、高浜入干拓事業の一部を強行し、かつ、長期にわたつて機動隊を待機させ、地元関係住民と対じさせた。このため地元、玉造町を中心に社会不安が高まり、住民生活に大きな影響を与え、農林省を中心とする権力と地元住民との反目、対立、増悪は抜き難いものとなつた。
  三木総理の「信をもつて立つ」は、当地にはなく、再びかかる方法によつて工事を強行しようとするならば、更に一層の混乱と不祥事が予想される情勢にあり、かかる代償を払つてまで、この事業を強行する価値はない。

 右質問する。





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