衆議院

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昭和五十年四月七日提出
質問第一六号

 新東京国際空港建設事業に係る土地収用法の発動(事業認定処分)に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十年四月七日

提出者  金瀬俊雄

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




新東京国際空港建設事業に係る土地収用法の発動(事業認定処分)に関する質問主意書


 去る二月二五日の予算委員会第五分科会において、土地収用法の解釈と運用、とりわけ、事業認定処分に係る諸点につき、建設中とされる新東京国際空港(以下「成田空港」という)で、現実に発生している事態を具体的に示して、建設大臣の見解を問うたが、本件につき、三月二七日に、建設大臣宛に公開質問状が石橋政次氏や瀬利誠氏ら地元農民(二期工事用地内の地権者)から提出されたとのこと(三月二八日付毎日新聞朝刊三面)なので改めて政府の見解を質したい。

一 田中(注)榮、前内閣総理大臣は、昭和四九年四月二六日、衆議院議員久保三郎氏提出の「新東京国際空港公団が犯した農地法に係る違法行為に関する質問」に対し、答弁書(内閣衆質七二第一九号)を寄せ、その中で「緊急を要する公共事業であつても、法手続を無視してよいとする理由はなく、法手続の簡略化については明文の規定が必要であることはいうまでもない」と回答しているが、
 (1) 政府は右回答につき、現在どのような見解をもつか。
 (2) こと改めて政府の見解を問うが、成田空港建設事業などの公共事業はなぜ法手続(法令による規定)に従つてなされなければならないのか。
 (3) 右公共事業をなすに当たり、法手続が、不備の場合、法令の完備をみた上で、法手続を完成し、その上で、はじめてかかる事業は、所定の手続に従い実施に移されるのが適法であると思料するが、政府の見解はいかん。
二 建設大臣は、成田空港建設に係る新東京国際空港公団(以下「公団」という)による事業認定の申請に対し、土地収用法第二〇条により、同認定処分をなし、昭和四四年一二月一六日、同法第二六条に従い、建設省告示第三八六五号をもつて公示したが、
 (1) 建設大臣はかかる処分をなすに当たり成田空港の建設が公団法や、航空法などの定めるところにより、行われねばならないということを承知していたか。
 (2) その際、建設大臣は成田空港の現実の建設過程が公団法や、航空法などの規定や手続に完全に従つてなされてきたものであると判断したのか。その根拠は何か。
 (3) 右判断をなすに当たり、必要にして十分な正確な情報を建設大臣に提供する責務が、運輸省や公団にあると思料するが、政府の見解はいかん。
 (4) 運輸省や公団は、右情報を建設大臣に提供したといえるか。その根拠は何か。
三 成田空港の「四千米」滑走路南端(34側)に、既に設置されている進入灯が航空法施行規則第一一七条第一項第三号ハで定められる正規のもの(以下「正規の進入灯」という)ではなく、このため34側からの進入着陸には、「四千米」滑走路は、三、二五〇米長のものとしてしか機能し得ないこと、同進入着陸には当初予定したカテゴリーIIではなく、それより性能が一段劣るカテゴリーI運用とせざるを得ない状況にあること、そしてかかる事態の発生は、運輸大臣も法的に承認(航空法施行規則第一一七条第二項に基づく公団宛の昭和四七年六月二九日付及び同じく昭和四八年九月四日付文書により、仮設進入灯の設置を承認)していることなどが、衆議院議員木原実氏提出の「成田空港と航空の安全に関する質問」に対する答弁書(昭和四九年四月五日付内閣衆質七二第一四号)及び「同再質問」に対する答弁書(昭和四九年五月二八日付内閣衆質七二第二三号)において明らかにされている。一方過日の予算委員会第五分科会において、右正規の進入灯が設置できないのはそれに必要な用地が確保できないことを唯一の原因とし、このため公団が任意買収によりかかる用地の取得について、現在「最大の努力」をしていると公団理事角坂仁忠氏が明らかにしている。
  右が、現在開港に向けて鋭意努力しているとする公団が、その場内施設の建設は完了したとする成田空港の現実の姿なのである。しかも運輸大臣までが承認しているのである。
  ところで公団が事業認定を申請した昭和四四年九月一三日の段階で、進入灯の設置は予定されていなかつた。従つてそのために必要な用地の取得は予定し得なかつたのであろうか。
  右事業認定の申請に当たり、運輸省ないし、公団は、建設大臣に対し、
 (1) 昭和四一年一二月一二日運輸大臣が空飛監第二一四号の三として公団に指示した基本計画(設置されるべき航空保安施設の種類として、飛行場灯火の中に進入灯が含まれている)を提示し、説明したか。
 (2) 昭和四一年一二月一三日、公団より空公計一第二号として運輸大臣に提出し、翌年一月二三日運輸大臣より認可された「新東京国際空港工事実施計画認可申請書」を提示し、かつ、成田空港は「計器着陸及び夜間着陸の用に供する」飛行場として建設されると説明したか。
 (3) 右「工事実施計画認可申請書」にある設置予定の航空灯火一式の中に進入灯があることを説明したか。
 (4) 公団による昭和四四年六月三〇日発行の「新東京国際空港の計画」と題するパンフレットを提示し、成田空港への進入着陸はカテゴリーIIの精密進入(現用の東京国際空港では、これより性能が一段劣るカテゴリーIの精密進入)を行うと説明したか。
 (5) 右パンフレット(18・19頁)により、成田空港へ設置される「進入灯は、進入着陸の過程において、滑走路中心線、滑走路末端からの距離、航空機の傾き等の視覚情報を与える灯火で、方式は長さ九百米の標準進入灯にカテゴリーIIに必要な赤色灯列を付加し、また低視程時にすぐれた識別性を有する連鎖式せん光灯を併設する」と説明したか。
 (6) 右パンフレット(19頁)にある飛行場灯火施設配置図を示したか。
 (7) 航空法施行規則第一一七条にある飛行場灯火の設置基準(成田空港の進入灯に係る工事実施計画の認可基準として準用される)を示し、精密進入を行う計器着陸用滑走路では、進入灯の設置が義務づけられていると説明したか。
 (8) 右設置基準では、精密進入を行う計器着陸用滑走路については標準式進入灯を設置しなければならないと説明したか。
 (9) 右設置基準では標準式進入灯は着陸帯及び進入区域内を滑走路末端からおよそ九百米にわたつて灯火を配置し、更にカテゴリーII用ならば滑走路末端から三百米に限り、灯火をより詳密に配置することになつていることを説明したか。
 (10) 航空法施行規則第七九条にある飛行場の設置基準(成田空港に係る工事実施計画の認可基準として準用される)を示し、着陸帯の長さとは、「滑走路の表辺を両短辺の側にそれぞれ六十米に延長して得たもの」と、着陸帯の長さと滑走路の長さとが一意的に定められていることを説明したか。
 (11) 航空法第二条を示し、着陸帯とは単に地表の一部を加工して囲つたものとしてあるのではなく、離着陸の用に供するものとして定義されていることを説明したか。
 (12) 精密進入を行う計器着陸用滑走路はかかる方式による進入着陸の用に供するためには、正規の進入灯と一体でなければならないことを説明したか。
 (13) 右精密進入を行う計器着陸用滑走路を含む着陸帯は、正規の進入灯と一体でなければかかる方式による着陸の用に供せないことを説明したか。
 (14) 成田空港「四千米」滑走路を含む着陸帯は、正規の進入灯と一体でなければ、そもそも着陸帯(特定の方向に向かつて行う航空機の離陸又は着陸の用に供するために設けられる飛行場内の短形部分)たり得ないことを説明したか。
 (15) 公団の事業認定申請書に添付された事業計画書5・(2)・(a)・(c)には「超大型機の導入に対処し、その離着陸の安全を確保するとともに滑走路能力を可及的に大にするために、高度な計器着陸方式を採用しなければならない。このため、滑走路の中心線から片側三二〇メートルの範囲を空港敷地とする必要がある。」とあるが、かかる「高度な計器着陸方式」が「カテゴリーIIの精密進入を行う計器着陸方式」であると説明したか。
 (16) 右において「高度な計器着陸方式を採用するためには、滑走路の中心線から片側三二〇メートルの範囲を空港敷地とする必要がある」理由について航空工学技術的にどのような内容の説明を与えたか。
 (17) 右において「滑走路の中心線から片側三二〇メートルの範囲を空港敷地とする必要がある」としたにもかかわらず、滑走路両端の進入区域側の空港敷地について、とりわけ言及していないことをどのように説明したのか。
 (18) 成田空港「四千米」滑走路南端から空港敷地の境界までの距離(滑走路中心線の延長上)を三百米としているようであるが、これを三百米とした根拠につきどのように説明したのか。
 (19) 右において正規の進入灯の設置のために必要な用地が、起業地内に一部しか含まれていないことをどのように説明したのか。
四 土地収用法第一七条は、「航空法による飛行場又は航空保安施設で公共の用に供するものに関する事業」につき事業認定処分の権限を建設大臣に与えている。
 (1) 右権限を誠実に行使するには、建設大臣は「航空法による飛行場又は航空保安施設」につき、正確な識見を有さねばならないとしてよいか。その理由は何か。
 (2) 昭和四四年一二月一六日付建設省告示第三八六五号により公示された成田空港に係る事業認定処分を行うに当たり、質問三で提起したような説明が、運輸省ないし公団により与えられた場合、建設大臣にはこれらを正確に理解する能力がなければならないとしてよいか。その理由は何か。
 (3) 当時の建設大臣に右能力はあつたか。
 (4) 右事業認定処分を受けるに当たり、運輸省ないし公団は質問三で提起した類の説明を建設大臣に対し行つたか。
五 成田空港建設事業の起業地の設定について
 (1) 土地収用法上、成田空港の起業地の中に正規の進入灯の建設用地のすべてを含めてはいけない理由があれば法的根拠を添えて明らかにされたい。
 (2) 土地収用法第三条第一二号には、土地収用法が適用できる事業として「航空法による飛行場又は航空保安施設で公共の用に供するもの」とあるが、この「又は」は排反を意味する「又は」なのか。例えば「飛行場」の中に「航空保安施設」を設置すべき用地を含んではいけないということなのか。
 (3) 成田空港の起業地内に、進入角指示灯、滑走路灯、滑走路末端灯、滑走路中心線灯、接地帯灯、滑走路距離灯などの飛行場灯火が設置されているが、このように「飛行場」内に「航空保安施設」を設置することが、なぜ土地収用法上許容されるのか。
 (4) 公団法第二〇条は、公団の行う業務につき定めているが、成田空港の建設に当たり、第一項各号の業務に関し、各号の業務ごとに別の案件として土地収用法が適用(事業認定処分に係る起業地が別々に設定)されねばならないとする理由があれば、法的根拠を添えて明らかにされたい。
 (5) 事業計画書では設置する施設及び区域の概要の中に、公団法第二〇条第一項第一号及び第三号で定められる業務の遂行のための用地が含められているが、なぜ、同項第二号に相当する「航空保安施設区域」が含められていないのか。
 (6) 右「航空保安施設区域」が起業地内に含められていないにもかかわらずなぜ飛行場灯火などの航空保安施設が起業地内に設置されているのか。
 (7) 土地収用法第四条は相異なる事業につき起業地が部分的にしろ、オーバラップする場合について規定しているが、この条文にある「特別の必要」とは何か。
 (8) 右「特別の必要」とは、関係する事業相互の公益の程度を比較し、より大きな公益性をもつ事業を優先するとしてよいのか。
 (9) 右「特別な必要」による優先性はだれが判断するのか。またその法的根拠は何か。
 (10) 航空法施行規則第一一七条第一項第三号ハ(二)aのc図によれば、カテゴリーII用の正規の進入灯は着陸帯内へ入りこむことが示されているが、着陸帯と進入灯設置用地とは、どちらが優先されるのか。その根拠は(「特別な必要」)は何か。
 (11) 成田空港「四千米」滑走路南端に設置されるべき正規の進入灯の建設事業と成田空港建設事業(既に事業認定処分を受けている事業)とを別立てとする場合、起業地の一部がオーバラップすることはないのか。
 (12) 右においてオーバラップする場合どちらの事業を優先させるのか。その根拠(「特別な必要」)は何か。
 (13) 右において進入灯建設事業を成田空港建設事業より優先させるとは、あるいは逆の優先順位とするとは、いかなることなのか。両者の優先順位が同じになるということではないのか。その理由は何か。
 (14) 右において、優先順位が同じであるとすれば、進入灯建設事業は成田空港建設事業に含まれる。従つて成田空港建設事業の起業地の中に正規の進入灯の建設用地も含めねばならないということにならないのか。その理由は何か。
 (15) 昭和四四年九月一三日付空公用管第二三号として公団より提出された事業認定申請書で示される起業地の中に、他の飛行場灯火については、含めたにもかかわらず、何故、正規の進入灯の建設用地を含めておかなかつたのか。進入灯の建設用地だけを別にしなければならない理由があれば、合わせて明らかにされたい。
 (16) 成田空港「四千米」滑走路南端に設置されるべき正規の進入灯が設置されず、34側からの進入着陸に対し三、二五〇米長のものとして、「四千米」滑走路が機能するよう進入灯の仮設を運輸大臣が承認したということは、更に公団が任意買収により正規の進入灯の設置のための用地の取得につとめているということは、運輸省ないし公団が、右用地は、本来成田空港建設事業に係る起業地の中に含めておくべきであつたということを認めたということになるのではないのか。そうでないならば、その根拠、理由は何か。
六 土地収用法第二〇条は、事業認定の条件を定めている。第二号は「起業者が当該事業を遂行する充分な意思と能力を有する者であること」また同三号は、「事業計画が土地の適正且つ合理的な利用に寄与するものであること」となつている。公団が、昭和四四年九月一三日付で提出した事業認定申請書に添付された事業計画書では、設置する施設の一つとして長さ四千米滑走路を含む長さ四、一二〇米の着陸帯を設置することになつている。
 (1) 34側からの進入着陸に、「四千米」滑走路(「四、一二〇米」着陸帯)が三、二五〇米長の滑走路(三、三七〇米長の着陸帯)とならざるを得ない理由が、正規の進入灯のための用地の未取得を唯一の原因とする以上、成田空港建設事業の起業地の設定が「適当かつ合理的」ではなかつたと結論できるが政府の見解はいかん。理由を添えて明らかにされたい。
 (2) 起業地が、従つて、事業計画が「適正かつ合理的」でないとすれば、かかる「事業計画が土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものであること」にはなり得ないが政府の見解はいかん。理由を添えて明らかにされたい。
 (3) 内部矛盾(事業計画で意図したことが、それに係る起業地の設定が適正かつ合理的でないゆえ実現できないこと)があるような事業計画しか作定できない起業者に「起業者が当該事業を遂行するに足る充分な意志と能力を有する者である」という条件が欠落していると結論できるが政府の見解はいかん。理由を添えて明らかにされたい。
 (4) 起業者公団による成田空港建設事業は、以上述べてきたことからして事業認定の条件の第二号又は第三号もしくはその両号が欠落していることにならないか。根拠、理由を添えて政府の見解を明らかにされたい。
七 昭和四九年四月五日付内閣衆質七二第一四号別図二によれば成田空港「四千米」滑走路南端の滑走路末端灯が七五〇米北側へ移設されているが、滑走路末端灯の定義及び機能からして「四千米」滑走路の16側より離陸する場合の滑走路長は、三、二五〇米とはならないのか。根拠、理由を添えて明らかにされたい。
八 以上提起してきた質問事項からかんがみるに、公団法、航空法、土地収用法などに従い設置されているとされる成田空港の現実の建設状況に関し、運輸大臣は自らが、「法令を遵守し、自己の職務を誠実に履行している」といえるか。その根拠は何か。
九 公団と地元農民との土地をめぐる争いは、公団法、航空法、土地収用法などの関係法令を「行司役」とした民事紛争であるとしてよいのか。根拠、理由を添えて政府の見解を明らかにされたい。

 右質問する。



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