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昭和五十一年五月十四日提出
質問第一八号

 大阪国際空港周辺整備事業に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十一年五月十四日

提出者  村上 弘 木下元二

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




大阪国際空港周辺整備事業に関する質問主意書


 「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」の一部改正により大阪国際空港周辺整備機構(以下「整備機構」という)が発足してから二年が経過したが、空港周辺整備事業については、種々の問題点が指摘されている。
 以下、空港周辺整備事業に関し次の質問をする。

一 大阪空港周辺整備事業の規模、進捗等について
  大阪空港周辺整備事業における移転補償、宅地買取り、代替地造成、民家防音工事、緑地帯整備、再開発等について次の諸点を明らかにされたい。
 @ 移転補償、民家防音工事の現在までの事業進捗状況(各世帯数及び進捗率)。また、事業達成を予定しているのは何年度か。
 A 予定している代替地造成面積、区画数と現在までの進捗状況(面積、区画数及び進捗率)。
   また事業達成を予定しているのは何年度か。
 B 緑地帯整備、再開発の進捗状況及び事業達成を予定しているのは何年度か。
 C また、以上の各事業達成までの年次計画と財政計画。もし、これらの計画がない場合、その理由と計画作成の目途についても明らかにされたい。
二 共同住宅の建設、促進について
  本整備事業においては、借家人の移転用に共同住宅の建設、促進が計画されているが、「整備機構」発足以来、予算は計上されながら、全く執行されなかつたものである。しかし、大阪空港周辺地域では、借家人の比率が高く(豊中市―七割、伊丹市―六割、川西市―五割)、共同住宅への要求には、極めて強いものがあるが、次の二点について見解を示されたい。
 @ 住民の切実な要求に答え共同住宅の建設を促進し、その建設場所や家賃等の問題も含め取組みを抜本的に強化すべきであると考えるが、未執行の理由を明らかにするとともに、今後の対策を示されたい。
 A 五十一年度においてはどのような計画を持つているのか明らかにされたい。
三 民家防音工事の改善について
  現在、大阪空港周辺整備事業による民家防音工事は、一世帯一室、五人以上の世帯二室であるが、次の三点について見解を示されたい。
 @ このような防音工事の水準では、例え夜九時から翌朝七時まで国際便以外の航空機による騒音がなくとも正常な家庭生活を送ることは困難と思うが、政府はどう認識しているのか明らかにされたい。
 A 「整備機構」による指定区域内の住民に対するアンケートでも、防音工事を希望しない世帯の理由のうち「一世帯一室ずつの防音工事では不十分だから」という回答が一位(二五・二%)を占めている。ところで、一世帯一室、五人以上の世帯で二室という防音工事の水準は新幹線沿線の防音工事が三人世帯まで一人一室、四人以上の世帯四室という水準にあるのに比べても、なお不十分なものである。空港周辺の民家防音工事を実態に合つたものに改善する必要があると思うが政府の見解を示されたい。
 B 空調器の維持費などの関連費用も国庫負担とすることが必要と思うがどうか。
四 代替地造成について
  昭和四十九年三月一日の衆議院運輸委員会において、寺井政府委員(当時、運輸省航空局長)は、代替地造成に関し「代替地をできるだけ安く造成して移りやすい仕組にしていく必要がある」旨答弁しているが、現実には、代替地の分譲価格は、移転補償額に比べなお高額である。現在、分譲中の代替地の価格は、最高が二千二百万円台、最低でも七百万円台、平均で一千三百万円ぐらいであり、代替地を買つて移転する場合、移転補償費は、用地費として費やされてしまうのが実情である。
  このため、昨年五月以来、分譲に出された二〇九区画のうち、本年四月一日現在で売却済みとなつたのは、わずか十二区画に過ぎない。そもそも、このような移転は、本人の自発的な意志によるものでなく、騒音により余儀なくされたものであることを考える時、分譲価格に公共負担分までが上乗せされるということは、全く不当であり、公共部分は、当然全額国庫補助とすべきであると考えるが政府の見解はどうか。また、代替地造成事業費全体に対する国庫補助を大幅に増やし、移転する住民の負担を少しでも軽くする必要があると思うが政府の方針を明らかにされたい。
五 移転補償について
  空港周辺地域における航空機騒音は、住民に重大な影響を与えている。WECPNL九〇以上の第二種区域に居住する住民に対して移転補償の制度が適用されている。
  騒音激じん地域においては、騒音の影響により、住民の日常生活の正常な遂行が妨げられている。このような地域では、日常生活を送る場としての効用に大きく欠けるため、周辺の類似地にくらべ、地価が相対的に低下せしめられてきた。
  ところで、第二種区域のWECPNL九〇以上という騒音は、昭和四十八年十二月二十七日に告示された「航空機騒音に係る環境基準」を大きく超えるものであり、ここに言う「環境基準」が「人の健康を保護し及び生活環境を保全するうえで維持することが望ましい基準」(公害対策基本法)である以上、このような地域においては、騒音による被害が生じていること、その一例としての他価の低下があることは十分に予測しうるところである。事実、昨年十月十五日付の自治省固定資産税課長名による「固定資産評価についての取扱通達」においても、騒音、振動、日照阻害等により地価が低下する事例が存在することが公式に確認されている。しかし、現実には、騒音による地価の低下はないものとされ、全く補償されていない。次の二点について政府の見解を示されたい。
 @ 昭和四十九年三月一日の衆議院運輸委員会の席上、木下元二委員による大阪空港周辺の騒音激じん地域における騒音による地価低下分の補てんについての質問に対し、当時の徳永運輸大臣は、「いま御指摘の議論は確かにあると思います。検討してみたいと思います。」と答弁したが、政府部内においては、この大臣答弁に基づき、どのような検討がなされたのか、その経過と内容について明らかにされたい。
 A 騒音激じん地域における移転補償(宅地買取り)において、補償価格を実態に即したものに是正すべきであると考えるが、政府の見解はどのようなものか。
六 移転跡地の「再開発」について
  本事業における移転跡地の「再開発」とは次のようなものである。つまり、国、「整備機構」が買い取つた移転跡地を「整備機構」が自己資金と「機構債」発行により導入した民間資金をもとに、「再開発」造成し、騒音に耐えることのできる生産流通施設の用地として売却し、もつて投下資本を回収するものであり、財政的には「独立採算」を原則としている。
  しかし、本事業における跡地「再開発」は、公害対策事業の一環である以上、財政的には、原因者負担とするのが当然であり、まして、「市街地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図る」(都市再開発法)市街地再開発事業や「公共施設の整備改善及び宅地利用の増進を図る」(土地区画整理法)土地区画整理事業とも根本的に性格を異にするものである以上、これらの事業の財政原則である「独立採算」制度を本事業の「再開発」に適用するのは妥当でない。また、跡地「再開発」の事業内容においては、騒音から地域住民と地域社会を保護し、環境の改善に資するものでなくてはならない。以下、跡地「再開発」に関し次の三点を明らかにされたい。
 @ 本事業の移転跡地「再開発」の財政原則を、昭和四十九年三月の「公共用飛行場周辺地域における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」の一部改正案の委員会可決に際し、衆・参両運輸委員会での附帯決議(全会一致)でも明確に指摘されているとおり、原因者負担に早急に改めるべきであると思うが、政府の見解を明らかにされたい。
 A 運輸省の同法改正案の説明書では、跡地の利用(再開発)は倉庫、野外自動車置場等とされているが、移転跡地の利用は、関係住民のための環境改善の方向でなされるべきであり、倉庫、野外自動車置場等の生産流通施設中心でなく、公園、緑地、スポーツ施設等の生活関連公共施設中心とすべきであると考えるが政府の方針を明らかにされたい。
 B 跡地「再開発」においては、地元自治体への財政負担について十分配慮を行うとともに、「再開発」区域内での自治体による公共事業については、特別の補助制度を採る必要があると思うがどうか。
七 大阪空港周辺整備事業の性格について
  大阪空港周辺整備事業は、その対象とする地域の広さ、人口数において極めて大規模なものである。
  例えば、豊中市の場合、WECPNL八五以上の第一種区域の人口は、二万世帯五万五千人(大阪府調べ)であり、同市の人口の一四%にも及ぶ。また伊丹市での第一種区域内の人口は、六千九百世帯二万七千人、同じく川西市の場合では、四千世帯一万三千人(大阪府調べ)である。東京、博多間の新幹線騒音対策による移転、防音工事の対象戸数が一万八千戸であることと比べても、本事業の規模の程を知ることができる。また、本事業は、その規模とともに騒音対策を中心とした地域社会の再編成ともいうべき性格を持つものである。
  しかし、現実の事業遂行においては、このような点は考慮されず、個々の事業手法が総合的な計画の裏付けのないままバラバラに執行されているに過ぎない。また、跡地「再開発」、代替地造成において見られるように独立採算制、住民負担の財政制度が押し付けられ、事業の円滑な進行も極めて困難となつており、現地では、地域社会の崩壊ともいえる状態が生まれつつある。
  地域住民は、「自分達の町はどうなるのか」という不安と焦りの中で毎日を送つている。本整備事業の性格に関し次の四点について明らかにされたい。
 @ 本事業が、地域社会の崩壊、住民追出しとならないようその規模と性格について認識を改め、住民参加による総合計画(空港周辺整備計画)策定が円滑に進むよう自治体に協力し、事業遂行においては、住民の要求を十分尊重し、関係自治体とも一層協議を緊密にすることが必要と思うが政府の考えはどのようなものか。
 A 指定区域内においては、移転による人口減少により商店、公衆浴場等の経営が困難となり、すでに廃業、転出のやむなきに至つた事例さえ生まれている。このことが現地の生活環境を一層悪化させ、住民に不安と不便を与えている。このような商店、公衆浴場等の経営についても、経営者、住民に不安、不便を与えないよう政府は必要な助成措置等を行うべきであると思うがどうか。
 B 第二種区域内においては、かなりの移転跡地が見られるが、防犯上、衛生上の被害が住民に及ぶことのないよう、跡地管理をさらに改善することと、必要に応じた跡地の住民への開放についての政府の見解を示されたい。
 C 本事業は、財政的に公害対策事業であるにもかかわらず、財源の大部分を政府、民間からの借入金によつているため、住民への負担の上に立つて、事業体として収支のバランスを図らなければ、制度的に成り立たなくさせられているため、代替地造成事業、跡地「再開発」などに顕著に見られるように、被害住民に大きな負担を強いたり、この事業の本来の性格に反する方向での事業化がされたりしている。
   被害住民、関係自治体に負担をかけないような方向での事業の速やかな進捗のために、原因者負担の原則に立つた財政制度の抜本的改革が必要と思うが政府の見解はどのようなものか。

 右質問する。





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