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昭和五十一年五月二十日提出
質問第二五号

 米軍基地跡地利用の「三分割有償処分方式」とキャンプ淵野辺の跡地利用に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十一年五月二十日

提出者  増本一彦

          衆議院議長 前尾繁三郎 殿




米軍基地跡地利用の「三分割有償処分方式」とキャンプ淵野辺の跡地利用に関する質問主意書


 大蔵省は、昭和五十一年二月六日、在日米軍からの返還財産―米軍基地跡地―の処理方針について、国有財産中央審議会返還財産処理小委員会の審議に付した。大蔵省が同小委員会に示した処理方針によると、(一)一〇ヘクタール以上の基地跡地については、原則として三等分して、地元地方公共団体が三分の一、国や政府機関、特殊法人などが三分の一、残り三分の一は処分を保留して大蔵省が普通国有財産として留保する。(二)処分価格の基準は、公園用地の場合は、面積の二分の一を時価売却、残りを無償貸し付けとし、学校・病院・公民館などの建設用地の場合は時価の二五パーセント減額で売却する、というものと伝えられている。そして、大蔵省によれば、当面、この「三分割有償処分方式」の対象にしている基地跡地は、府中空軍施設(大部分)、キャンプ朝霞(南地区の大部分、二八一・七ヘクタール)、立川飛行場、大和空軍施設(三四・〇ヘクタール)、関東村住宅地区、ジョンソン飛行場(住宅地区の大部分)、水戸対地射爆撃場(一、一四七・八ヘクタール)、キャンプ淵野辺(六六・〇ヘクタール)、横浜海浜住宅地区、北富士演習場(一部、一、六八二・〇ヘクタール)の一〇施設に及んでいる。
 言うまでもなく、国有財産は国民の財産であつて、立地条件や社会・経済条件の許す限り広範な国民生活向上のために活用されなくてはならない。特に、それが、米軍基地跡地である場合、その基地周辺住民を始め、関係地方自治体が被つてきた基地による深刻な被害とそこから当然生れる住民感情はもちろんのこと、住民と関係自治体が粘り強く進めてきた米軍基地返還の世論と運動の結果、今日、返還財産として国の手に取り戻すことができたという大きな貢献の事実などを正しく評価して、地元地方自治体による利用を優先させ、その活用を図ることが何よりも重要であると言わねばならない。
 しかるに、今回の大蔵省の処理方針は、地元住民や関係地方自治体の要求や跡地利用計画構想などを積み上げてきたこれまでの努力と経過を全く無視して、一方的に天下り的な処理方針を押しつけようとするものであつて、これらの基地跡地周辺住民や関係地方自治体からこの大蔵省の処理方針に反対する意思が表明されているのは、極めて当然である。
 よつて、次の諸点について、政府の見解を質したいと思う。

一 大蔵省が、前記小委員会に提示した米軍基地跡地の処理方針の具体的内容の詳細を明らかにされたい。
二 「三分割有償処分方式」を具体的な跡地の立地条件や返還に至るまでの歴史的経過、基地周辺住民や関係地方自治体による跡地利用計画構想のコンセンサスの成熟などを無視して一律に適用しようとする理由がどこにあるのか。政府の見解如何。
三 「三分割有償処分方式」の理論的根拠はなにか。合理的根拠を詳述せよ。
四 「三分割有償処分方式」を一律に適用することは、第一に、基地跡地の立地条件、基地返還に対する地元住民や関係地方自治体の世論と運動の歴史的経過、地元の跡地利用計画構想の成熟度、基地跡地の面積の差異、基地跡地所在地域の人口過密度などを全く考慮しないものになつて、国有財産の民主的で公平な利用の原則を踏みにじるものになると考えるが、どうか。政府は、基地跡地をめぐる個別具体的条件や地元関係自治体の意思をどのように配慮するか。
五 「三分割有償処分方式」を一律に適用することは、第二に、地元住民や関係自治体の意思に沿わない国又は政府機関、特殊法人の施設や事業を、地元地方自治体への三分の一の有償提供と引き替えに押しつけることになつて、今日まで基地による深刻な被害で苦しめて来た地元住民と地方自治体を再びじゆうりんすることになるが、どうか。政府は、基地周辺住民や関係地方自治体の深刻な被害や労苦をどのように考えているのか。
六 さらに、「三分割有償処分方式」は、国有財産法及び国有財産特別措置法にも違反するものではないか。すなわち、右各法律によれば、緑地・公園・ごみ又はし尿処理施設・人口急増地域の小中学校・保育園などの用地については五割以内を減額した対価での譲与を定めているが、これは貸し付け又は譲与を受ける地方自治体などの財政状況や予定されている施設などの計画実現の緊急性や必要性を、処分の都度具体的にしやく量して決める法意である。それを一律の有償処分方式を決めて前記各法律の具体的な適用を排除することは、前記各法律の法意を踏みにじつて、行政官庁による国有財産の恣意的な処分を放任するという重大な誤りを犯すものではないか。
七 神奈川県相模原市のキャンプ淵野辺の場合、相模原市及び神奈川県の跡地利用計画では、ここに小・中学校各一校、高等学校三校と運動公園の用地として利用することとして、小・中学校用地と運動公園については無償貸し付けを、高校用地については半額譲与を求めてきたが、この「三分割有償処分方式」によると、利用面積が三分の一になつてその事業計画規模も三分の一に減縮されたうえになお七二億円と、国有財産法や国有財産特別措置法の定めに基づいて関係地方自治体の要求する処分方法として算出される二六億円の地元負担額の三倍を超える高額の財政支出を強いられることになる。深刻な地方財政危機と人口急増による生活関連施設の整備促進の要請の中で、政府が地方自治体にその求める土地の三分の一を三倍の価格で処分しようとする政策の具体的な妥当性はどこにあるのか。明確な答弁を求める。
八 キャンプ淵野辺は、特定国有財産整備計画に基づき、同特別会計より米軍施設移転費として、昭和四十八年度ないし同五十年度で合計二三億七、四〇〇万円が支出されたものであつて、右特別会計によれば、その処分によつて支出額に見合う収入が得られればその目的を達するものである。この点からも、前記国有財産関係二法の具体的な適用によつても、国庫に何ら損失を与えることなく、しかもその法律の目的を達することができるものである。それを関係地方自治体に高額の財政負担を強いる有償処分の基準を設ける必要と理由は何か。特別会計の制度をもわい曲するものではないか。
九 政府は、キャンプ淵野辺の国又は政府機関の利用部分に、住宅公団の住宅建設を構想していると言われているが、その具体的な計画を明らかにせよ。
一〇 住宅公団法によれば、地元関係自治体との協議が整わない限り公団住宅の建設は不可能と考えられるが、地元関係地方自治体の協力の得られぬ状況で政府の住宅公団の進出の可能性があると考えられるのか。
一一 以上のように多くの重大な矛盾と問題のある「三分割有償処分方式」を撤回すべきだと考えるが、どうか。

 右質問する。





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