衆議院

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昭和五十二年十二月二十七日提出
質問第六号

 川内原子力発電所にかかわる安全審査に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十二年十二月二十七日

提出者  村山喜一

          衆議院議長 保利 茂 殿




川内原子力発電所にかかわる安全審査に関する質問主意書


 内閣総理大臣は、原子炉安全審査会の審査に基づいて原子力委員会の答申を受けて川内原子力発電所の設置を認可したが、安全審査会が判断した内容について問題があるので、次の事項について質問する。

一 敷地及びその周辺地域の基盤岩類について
  審査会は、原子炉建家が置かれる場所の基礎岩盤を阿久根・川内古生層に属するものとしたのは、各種の文献(特に橋本勇、速水格、野田直秀「鹿児島県久見崎の古生層・中生層」―九大教養部地学研究報告第一七号、一九七二年三月)に示された見解及び現地調査の結果を総合的に判断したことによるものといつている。そして、橋本らの研究及び現地調査の結果によると、久見崎層から発見された化石及び変化程度などからみて、本敷地付近の基礎岩盤は確実に秩父帯に属し、また、同帯を構成する地層のうち橋本らによつて古生層と認められている部分は、阿久根市及び月屋山にみられる古生層にほぼ相当するものと判断されるといつている。
 1 「秩父帯」の定義を問う。また、ここにいう「帯」とはいかなる概念の地質学的用語か。
 2 ある地層が「秩父帯」及び「四万十帯」のいずれに属するかは、化石で決められるものか。
   「帯」の区別は化石で決められるという説をとる学者はだれか。
 3 「化石および変化程度などからみて……」とあるが、「変化程度」とはなんのことか。
 4 橋本らによつて久見崎層から発見された古白亜紀の化石から、同層は確実に秩父帯に属するものということがなぜいえるのか。
 5 久見崎層産の化石の一種であるプテロトリゴニア・ホッカイドアナ(Pterotrigonia, hokkaidoana)は、橋本らによつて四万十層群の堂が奈路層から産する標本によく似た形態を示すものであることが明らかにされているが、このことは、久見崎層が四万十層群の一部であることの証拠となるものとは考えられないか。
 6 「阿久根・川内古生層」という地層名は、鹿児島県地学調査研究会が編集した二十万分の一鹿児島県地質図(新版)で初めて用いられたものと思われるが、川内川南岸の「阿久根・川内古生層」の大部分は橋本勇らの久見崎累層に属し、同累層の年代は、化石から古白亜紀(宮古世)に属することが明らかにされている。そして橋本らが古生層とみなしたものは、川内川南岸には極めて狭い範囲に分布しているに過ぎない。このように、川内川南岸の「阿久根・川内古生層」の大部分は中生層であることが明らかにされた現在、この地層名を原義のまま使用することは不適当となつたが、審査会は、この地層名にいかなる定義を与えたうえで使用しているのか。
 7 二十万分の一鹿児島県地質図(新版)を作成した鹿児島県地学調査研究会の一員である露木利貞鹿大教授は、一九七四年三月に鹿児島県企画部開発課から発行された土地分類基本調査の「西方」及び「羽島」で、工業技術院地質調査所発行の五万分の一地質図幅「西方」及び「羽島」に示された見解に従い、敷地及びその周辺地域の基礎岩盤を中生代の四万十層群に属させた。
   従つて露木教授は、「阿久根・川内古生層」という地層名を自ら廃棄し、二十万分の一の鹿児島県地質図(新版)に示した見解を撤回したことになるが、原命名者が自ら廃棄した「阿久根・川内古生層」という地層名を審査会がわざわざ復活させ、使用したのは、いかなる理由によるものか。
 8 九電が昭和四十九年三月二十四日に川内市漁協に示した原子力発電所建設計画の資料中の「川内原子力地点地盤説明資料」によれば、「敷地を構成する地層は主として秩父中生層(約一億年前)に属すると見られる堆積岩、安山岩および一部凝灰岩であります。この堆積岩は久見崎層と呼ばれ、礫岩、砂岩、頁岩からなり……」となつているが、ここにいう「久見崎層」が審査会のいう「久見崎層」と同一のものであるならば、九電は昭和四十九年三月段階では、原子炉建家が置かれる場所の基礎岩盤を中生層と考え、古生層とは考えていなかつたことになる。この辺の事情について審査会は、いかには握し、理解しているのか。
 9 審査会が「久見崎層」と呼ぶものは、橋本らの「久見崎累層」と同一物と理解して誤りないか。
 10 橋本らは、「久見崎の古生層は、阿久根 ― 牛の浜 ― 月屋山に分布する地層よりも構造的にはもつと西側の地層を代表することが予想される」としているのに、審査会が久見崎の古生層を「阿久根市及び月屋山に見られる古生層にほぼ相当するもの」と判断したのは、いかなる理由によるものか。
 11 工業技術院地質調査所は、従来、久見崎地区の四万十層群として取扱つてきたものを、その後の調査結果に基づいて、秩父帯に属する地層として取扱うことにしたというが、この点に関連して次の諸問に対する回答を伺いたい。
   a 「その後の調査結果」とは、いつ、だれによつて行われた調査の結果か。
   b 地質調査所が発行した二枚の五万分の一地質図幅(西方及び羽島)に示されている見解を変更するからには、新しい見解に基づく地質図が当然作成されていると思われるが、事実はどうか。
   c 地質調査所が見解を変更した理由はなにか。変更に当たつては、西方図幅の作成者である神戸信和、大沢(注)両技官及び羽島図幅の作成者である太田良平技官と十分な討議を行つたか。
   d 昭和五十一年六月十日の衆議院科学技術振興対策特別委員会で、私の質問に答えて小林勇地質調査所長は、川内川をはさんで南岸の久見崎地区には四万十層群、北岸の月屋山地区には秩父古生層が分布するという従来の見解を変更する理由はないと言明したが、小林所長の発言は現在は撤回したものと理解してよいか。
 12 同一業者が行つた同一地点のボーリングによる調査の結果をみても、原子炉建家の基礎岩盤には同じ礫岩のなかにもコア長のかなり長い部分と、かなり短い部分とが存在しているので、こうした長短の差は施工業者の技術の差によつて生じたものとはいえず、やはり岩質の硬軟の差によつて生じたものと判断せざるを得ないことになるが、それでも原子炉建家の基礎岩盤は安定しているといえるのか。
 13 また、原子炉建家の基礎岩盤の岩盤等級は、大部分がC ― D級であるが、それでもこれが安定しているというのは、いかなる基準によるものか。
 14 審査会は「なお基盤の強度については、単に岩盤区分によるのではなく、岩石物性の試験によつて得られた実際の物性値をもとに解析を行つて判断しているものである」といつているが、いかなる試験を実施したか。
 15 もし、一軸圧縮強度及び単位体積重量の測定値が出されているならば、それぞれについて測定値のバラツキの状態をヒストグラムで示せ。バラツキの状態を考慮に入れても、原子炉建家の基礎岩盤は安定しているといい得るのであれば、「安定している岩盤」の基準はどうなつているのか。

二 敷地及びその周辺地域の断層について
 (一) 新第三紀火山岩類を切る断層について
    1 審査会は南九州地方に分布する新第三紀(ないし第四紀)火山岩類は断層で切られていないといつているが、橋本らは「本地域周辺のこれら火山性岩類中には新期生成の断層が若干認められる」と述べている。審査会の見解はこれと食い違つているが、この点について審査会はどう考えるか。
    2 五万分の一地質図幅羽島にも、四万十層群(中生代)と天狗鼻角閃石安山岩(新第三紀)との境界を画して、断層が存在するように図示されているところがあるが、審査会は、当該断層の存在を否定するような証拠をみつけたのか。
    3 串木野市の串木野鉱山などで、新第三紀の串木野輝石安山岩の裂罅を充填している金銀鉱脈が多くの断層で切られていること、従つて串木野輝石安山岩の噴出後に断層運動が起こつたことは、すでにあまねく知られている事実だと考えるが、この事実を審査会は認めるのか、認めないのか。
      もし、認めるとするならば、南九州地方には新第三紀の火山岩類に影響を及ぼした断層がかなり顕著に発達していることになり、審査会の見解とは異なることになるが、この点について現在、審査会はどう考えるか。
 (二) 古生層と久見崎層とを境する断層について
    1 審査会は、阿久根・川内古生層と久見崎層とは断層で境されるものと判断し、この断層は「五万分の一羽島図幅羽島に記載のある断層と同定した」といつているが、橋本らによると、古生層と久見崎層とを境する断層は北東―南西方向に走つているのに対して、五万分の一地質図幅羽島に記載のある断層は北西―南東方向に走つている。このように、両者は互いに走向が異なつているが、それにもかかわらず、審査会が両者を互いに同定されるものとした根拠はなにか。
    2 審査会が、阿久根・川内古生層と久見崎層とを境するものとした断層の位置を五万分の一地質図上で示せるか。
      また、この断層の推定落差はいくらであるか、地質断面図で示せ。
    3 五万分の一地質図幅羽島に記載のある断層は、四万十層群の粘板岩層(南西側)と砂岩、礫質砂岩及び礫岩層(北東側)とを境する断層として図示され、その南方延長部では四万十層群の粘板岩層(南西側)と新第三紀の天狗鼻角閃石安山岩(北東側)とを境する断層として図示されているが、審査会は、この断層の西側の地層を古生層とみなしているため、この断層の構造地質学的意義は、五万分の一の地質図幅羽島の作成者(太田良平)が考えていたものとは比較にならないほど大きなものとなる。
      すなわち、審査会のいう古生層と久見崎層とを境する断層は、約三億年前の地層と約一億年前の地層とを境する断層ということになるので、その構造地質学的意義を軽視することは許されないと思うが、このような断層の存在が原子炉建家付近に推定されていることについて、審査会は特別の検討を行つたのか。もし行つたとすればいかなる事項について検討したのか。また、この断層の存在が原子炉の安全性をおびやかすことにはならないものであると判断した根拠はなにか。
 (三) 川内川沿いの推定断層について
    1 橋本勇らは、「久見崎地域と月屋山の間には著しい転位量をもつた断層の存在が予察される」として川内川沿いの断層の存在を肯定しているが、審査会は、右のような見解をどう評価したのか。
    2 審査会は、川内川沿いの推定断層の問題に関連して「川内川両側の地層の年代に相違がみられる」としているが、両側の地層とは具体的になにをさしているのか。
    3 川内川南岸では、新第三紀の火山岩類が断層運動の影響を受けていることについて、審査会は、この断層は火山活動に伴つて生じたものであるかのようにいつている。しかし、この断層の生成運動は、川内川沿いの断層の活動に伴つて行われたものという可能性は考えられないか。
 (四) 仏像線について
    1 審査会は、敷地及びその周辺地域の基礎岩盤は四万十帯には属さず、秩父帯に属するとの断定のもとに、仏像線は敷地の東方に位置するものとし、これは敷地の西方と甑島との間の海底に位置する可能性があると考えた生越忠和光大学教授の見解を全面的に否定しているが、審査会は敷地の西方と甑島との間の海底には秩父古生層と四万十層群との境界を画すると思われる断層、すなわち、仏像線と思われる断層は存在しないことを示す証拠を見出しているか。
    2 久見崎層が四万十層群の一部である可能性も絶無でないとすれば、審査会が、阿久根・川内古生層と久見崎層とを境する断層としたものは、実は仏像線の南端部の一部であるという可能性もあることになるが、審査会の見解はどうか。
    3 敷地及びその周辺地域の基盤岩類は秩父帯に属するものと断定し、それに基づいて仏像線は敷地の東方にしかあり得ないとする審査会の見解の有力な根拠となる地質学的資料には、いかなるものが存在するのか。

 右質問する。



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