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昭和五十三年二月二十七日提出
質問第一五号

 台湾人元日本兵士の補償問題に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十三年二月二十七日

提出者  横山利秋

          衆議院議長 保利 茂 殿




台湾人元日本兵士の補償問題に関する質問主意書


 台湾人元日本兵士の補償問題に関する対策は緊急を要すると考える。
 かつて日本人であつた台湾人が、日華条約締結によつて瞬間的に日本国籍を失い、台湾人になり、そのため、日本政府に対する請求権が一切消滅したかの態度を日本政府がとつている。
 そのため、この人々を中心として、旧日本人であつた戦没外国人の遺族等に対する給付について関係者から次の要求が提起されて久しいものがある。
(1) 台湾、朝鮮、樺太、南洋群島等の住民であつて、戦時中日本の軍人、軍属として、公務上死亡した者の遺族(戦傷病死を含む)又は公務上負傷した者に対し、国として弔慰の意を表する趣旨で、それら遺族及び戦傷者の国籍の存する外国政府の了解の下に一時金たる給付金を支給するものとすること。
(2) 戦時中の日本の軍人、軍属としての未払い給与及び軍事郵便貯金を本人に支払うものとすること。
(3) 受給資格の立証については、旧軍隊における上司又は同僚であつた日本人の証言等を活用する方途を講ずるとともに、外国政府又は日本国内に存する外国人団体への調査依頼等の方法をも講ずるものとする。
(4) 給付金の交付手続については、日本国内に在住する者については厚生大臣が市町村長を通じて交付するものとし、外国に在住する者については外国為替などによつて受給権者に直接送付する方法を講ずるものとする。
 右について昭和五十年二月二十八日衆議院外務委員会における厚生省、郵政省並びに宮澤外相の答弁は次のとおりであつた。厚生省援護局業務第二課長並びに郵政省貯金局第二業務課長の答弁は「台湾人元日本人軍属の給与の未払い分は四万七千百六十九件、金額で六千五百五十八万二千八百四十四円。遺族に支払うべき遺骨埋葬料等は一万四千九十三件、金額で千六百三十四万三千四十六円。それぞれ東京法務局に供託してある。遺族扶助料は恩給法の上で(外国人だから)支払わないことになつている。郵便貯金は二種類ある。軍事郵便貯金(野戦郵便局で預入)は日本にある原簿によれば、現在高七十四万口座、金額で十三億六百九十万円。ただし、日本人の分も一緒になつていて、台湾人の分だけを出すことはできない。台湾記号の郵便貯金は原簿が台北にあるため正確な計数はできないが、おおむね現在高二百四十二万口座、金額で七千百七十万円、これも日本人の分などと一緒になつていて、台湾人の分だけを出すことはできない。」であり、宮澤外相の答弁は「日本政府が債務を持つていることは明らかで、債務者としての責任は果たすつもりである。果たすための方法は積極的に考えていかなければならない。」である。
 しかるに、政府のその後の事態解決への誠意がないので、関係者は、台湾人戦死傷補償請求事件として、補償額約七千万円とし「被告は原告らに対し各金五百万円を支払え、訴訟費用は被告の負担とするとの判決及び仮執行の宣言を求める」旨の訴えを東京地裁に提出した。
 昭和五十二年十一月十八日衆議院法務委員会で私の質問に答えて、郵政省は次のとおり答弁した。
 「その結果はつきりいたしましたのが、台湾の方の軍事貯金につきましては、口座数で五万九千五百七十七口座、約六万口座ございます。そしてその方の二十一年三月末の現在高というものがはつきりいたしました。それは五千四百二十七万円でございます。これはその当時の一口座当たりにいたしますと九百十一円という金額になります。それにつきまして全部利子盛りをいたしております。利子盛りをいたしました形の中で、五十二年三月末現在という形でいきますと、一億六千二百十九万円、一口座当たり二千七百二十二円という郵便貯金というものを現在お預かりしております。」、「ただ、郵便貯金の支払える状態をつくるということにつきましては、関係各省庁といろいろ打ち合わせはしたのでございますけれども、やはり台湾住民のすべての財産権の請求処理問題の一環としてこの郵便貯金の問題というのが現在は取り扱われておる。そうすると、そういう形の中で、郵政省だけでこの郵便貯金の支払いをするわけにはいかないような状態でございますので、そういうような情勢というものが早く――この問題について台湾の方に速やかに決済いたしたいと存じておる次第でございます。」
 厚生省は、未復員者給与法について田中説明員が次の答弁をした。
 「厚生省の未復員者給与法に基づきます未復員者給与でございますが、これは先生が御指摘なさつた件数、金額で、現に法務局に供託してございます。したがいまして、この支払いについての件でございますが、やはり、ただいま郵政省の説明員から御説明ございましたとおり、私どもも軍事郵便貯金あるいは恩給と並びまして未支給給与につきましては、これの債務履行についてはいろいろ複数省庁の債務履行という問題も絡みますので、したがつて統一的な方式によつて履行するという見地から考えておるわけでございますが、いまだ結論を得ていない状況でございます。」
 右の答弁中の支払える条件、あるいは統一的な方式によつて履行する ―― という問題について外務省は田島説明員が次の答弁をした。
 「外務省は条約上の見地からどういうふうにこれを処理するかという面で担当をしてまいつたわけでございますが、現在台湾との間に政府間で特別取り決めを行つて処理するということが不可能になりましたので、その他の方法でどういう解決する方法があるかということにつきまして関係省庁、ただいまの郵政省、厚生省、各関係者の方々と鋭意相談をいたしてまいつてきております。」
 しかし、本問題について責任をもつ主管の省及び大臣はだれかとの質問に対し政府委員は協議の上後日、大臣から答弁する旨答弁があつたが、今日にいたるも回答がない。はなはだしく政府の誠意を疑うところである。
 以上の経過から次のとおり質問する。

一 本問題について責任をもつて処理に当たる省はどこか。大臣はだれか。
二 政府間取決めが不可能であり他の方法で解決する方途を各省で協議する ―― という答弁は実行されたか。結論はどうなつたか。
三 冒頭の関係者からの要求四項目について、政府の考えを明らかにせよ。
  明治二十八年我が国が台湾を領有していらい五十年間、我が国はいわゆる皇民化政策をとり、台湾人は日本国民として第二次大戦を迎えた。
  実に二十一万人あまりの台湾人が日本軍の兵士・軍属として大戦に参加し、厚生省の調査によつても、三万千人の人たちが戦死し、戦傷者はおびただしい数にのぼつた。戦死者の遺族と戦傷者は、戦後今日にいたるまで一文の弔慰金も、遺族扶助料も傷痍年金も支給されず、かつての敵軍であつた蒋政権の下で身をひそめ、人目をしのんで生活し、次第に老いて中には世を去りゆく人も少なくない。
  政府は国家としての責任を痛感し誠意をもつてこの問題の速やかな解決に全力を尽くすべきではないか。

 右質問する。





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