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昭和五十三年六月十日提出
質問第五〇号

 沖繩県において旧日本軍が強制収用した土地の返還に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十三年六月十日

提出者  上原康助

          衆議院議長 保利 茂 殿




沖繩県において旧日本軍が強制収用した土地の返還に関する質問主意書


 標記の件については、これまで国会でもしばしば取り上げられてきたとおり、太平洋戦争末期の戦雲急を告げる社会混乱の状況下で、旧日本軍が沖繩県民の土地をもつぱら戦争遂行目的のために、不当に強制収用したが故に、自来国有地にされたものであるので、速やかに、旧地主に返還すべきであると関係者から強い要求がなされてきた。
 政府も実情を調査の上善処するとのことであつたが、去る四月十七日に、「沖繩における旧軍買収地について」の大蔵省の報告書が明らかにされた。それによると「戦時中旧軍が取得した土地は、私法上の売買契約により正当な手続きを経て国有財産になつたものと判断される。」と結論付けている。この調査報告書なるものは、旧地主やこの問題の解決に努力を重ねてきた関係者の期待を全く裏切つたばかりでなく政府に対する不信を招く結果となつている。
 大蔵省の調査報告書によると、「宮古島及び石垣島においては、旧軍が飛行場用地を買収したことを証する直接的な資料が相当数発見されたが、沖繩本島及び伊江島においては直接的な資料はほとんど発見されていないが、これはこれらの地域で直接の戦闘が行われたため、直接的な資料が滅失したためではないかと考えられる。」として、両先島の例から類推して、沖繩本島や伊江島の場合も同様な措置があつたはずだというものである。
 これは恐るべき独断であり関係者を納得させるだけの調査報告書とはとうてい認め難い。
 なぜなら、すべて私法上の売買契約によつて買収されたものと認められるとしながら、特に沖繩本島や伊江島の場合、個々の地主と売買がなされたとする直接的な物的証拠を具体的に明示することができないまま、類推、推測による一方的判断で国有財産だと主張することは、国民の基本的権利である不動産所有権を再び国家権力で剥奪するものだと言わざるを得ない。
 また、現在国有地とされている土地はすべて、米国治政下においても一定の手続きを経て、米国民政府が国有財産として管理していたものを、復帰の際に引継いだものであるとしている。これらの土地が形式的にこのような処置がとられた経緯は否定できないが、米軍施政権下における土地所有権認定作業等が極めて不正確になされた面もあつたことを見落してはならない。
 このような見解に立つて次のことを質問する。

一 四月十七日に大蔵省が明らかにした調査報告書は政府として確認したものかどうか。
二 大蔵省報告書にかかわる裏付け証拠資料等の提出を要求したが、未だに提出しない理由はなにか。
三 大蔵省報告書の別表「沖繩の旧軍買収地」に列挙してある十八施設の当時の地主数は、それぞれ何名だつたのか明らかにせよ。
四 旧日本軍が取得した土地は、私法上の売買契約により正当な手続きを経て国有財産になつたものと判断されるとのことであるから、調査報告書の別表にある各施設のそれぞれの買収総額は当時の価格でいくらだつたのか明確にせよ。
  また、旧読谷飛行場、旧嘉手納飛行場、旧伊江島飛行場の場合、国は、当時、坪単価いくらで買い上げたのか、明らかにせよ。
五 買収当時の資料として、旧読谷飛行場については、旧陸軍の境界杭が三本発見されていることを挙げているが、境界杭の発見と正当な売買契約がなされたとすることとどう関連しているのか。
  また、発見された杭は、「用地杭なのかそれとも管理杭なのか」明確にして欲しい。
六 政府は、「昭和三十九年十二月十四日、厚生省の当時の援護局長の用地取得事情についての認定書」で、戦争が終れば土地は地主に返すとの口約があつたと述べたことを再確認できるか。
七 最近、旧読谷飛行場の滑走路中央部付近に位置する土地(読谷山村字座喜味大道千七百拾参番地)が家督相続に因る土地所有権移転登記申請書として、昭和十九年九月二十日付で、当時の那覇区裁判所嘉手納出張所において受理されていた貴重な資料が発見された。
  この登記申請書は、土地の当時の所有権者である当間平一氏の父に当たる当間平三氏が死亡したため家督相続としてなされたものである。
  この新事実の発覚によつて、大蔵省の調査報告書が、ますます説得性に乏しく納得し難いものであることが立証されたことになる。
  政府は、この新しい証拠資料を尊重して、本件を再検討すべきである。その用意があるかどうか。
八 以上指摘してきたように、旧日本軍が強制接収した土地を大蔵省の調査報告に基づいて国有財産だと断定することは、その根拠が極めて薄弱であり、多くの疑義がある。
  政府が個々の旧地主に、適正な対価を払つて取得したとする十分かつ完全な証拠等を提示できない以上、旧地主や関係者の主張と要求を否定することは不当である。これらの士地をすべて画一的に取り扱うことは、困難の伴う面もあろうが、原則として、旧地主に返還することを前提に本問題の解決策を講ずるべきだと考えるが、政府の見解を求める。

 右質問する。





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