衆議院

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昭和五十四年四月十九日提出
質問第二五号

 合成洗剤の安全性等に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十四年四月十九日

提出者  島本虎三

          衆議院議長 (注)尾弘吉 殿




合成洗剤の安全性等に関する質問主意書


 合成洗剤は、その安全性についてかねてより数々の疑問が提起されているが、これに対していまだ十分な解明がなされていない。さらに使用状況によつては皮膚等に障害を生ずるなど、具体的な健康影響の事例が見受けられるとともに、種々の疾病、難病の原因として多くの研究報告が発表されているところである。
 また、合成洗剤は生活排水となつて河川、湖沼、海域に流入し、水道水源などの水質環境の悪化に寄与するなど、公害対策並びに環境保全の面からも種々の問題を提起している。
 特に、その含有する燐分は、閉鎖性水域の富栄養化を促進するとともに赤潮の発生をもたらし、漁業、中でも養殖漁業に大きな被害を与えるに至つている。
 従つて、合成洗剤については、これら問題点に関する対策が急がれているとの観点から、先に第八十二回国会の昭和五十二年十月二十六日、合成洗剤の安全性等に関する質問主意書(質問第八号)を提出し、同年十一月十一日、政府から答弁書を受理したところであるが、答弁内容及びその後のこの問題に対する政府の施策からは、具体的、積極的に取り組む姿勢が全くうかがうことができないので、改めて次のとおり質問する。

一 合成洗剤の毒性に関する調査研究の評価について
 1(1) 柳沢文徳 (東京医科歯科大学難治疾患研究所疫学部門教授)
       「食品薬品公害」(有斐閣)
       「食品衛生とは何か」(医歯薬出版)
  (2) 柳沢文正 (柳沢成人病研究所長)
       「日本の洗剤・その総点検 増補版」(績文堂)
       「合成洗剤の科学」(学風書院)
  (3) 三上美樹 (三重大学学長)
       「昭和四十八年度 中性洗剤特別研究報告書」
       「昭和四十九年度 中性洗剤特別研究報告書」
      右に列挙した著作等におけるデータは、合成洗剤の人体に対する有害性を証するものとは考えられないとの答弁であるが、右の著作等における動物実験は、すべて人体への使用を予想して行われたものである。しかるに答弁において理由を明示することなしに「人体に対する有害性を証するものとは考えられない。」としていることは、全く説得力を欠くものと言わざるを得ない。
       「有害性を証するものとは考えられない。」とする理由及びその根拠となる論文等を明らかにされたい。
 2(1) 電子顕微鏡写真による肝細胞壊死等の病変の確認
       「合成洗剤による肝障害の超微形態的研究」(合成洗剤研究会誌No.1)
         名古屋市立大学 渡 仲三 他
      右論文について、一般に合成洗剤の慢性毒性試験においては、肝障害は発現しないことが確認されているとの答弁であるが、その根拠となる資料名及び試験内容を明らかにされたい。
  (2) 動物実験における胎仔奇形及び胎仔末梢血中の白血病細胞の確認
       「昭和四十八年度 中性洗剤特別研究報告書」
       「昭和四十九年度 中性洗剤特別研究報告書」
         三重大学 三上美樹 他
      右報告書について、報告者を含む四人の研究者により昭和五十年に実施されたLASの催奇形性に関する合同研究では、催奇形性は認められないとの結論を得ているとの答弁であるが、これは、合同研究ではなく四人別々の研究であつて、合意のうえでの結論は得られていないと思うがどうか。また、答弁では「その実験条件は合成洗剤の人体に対する有害性を判定する上において、適切なものとは考えられない。」とも述べているが、その理由を明らかにされたい。
  (3) バクテリアの変型
       「合成洗剤が細菌の発育に及ぼす影響」(日本公衆衛生雑誌23巻10号・24巻9号、合成洗剤研究会誌No.1)
           川崎市衛生研究所 小林 勇 他
      右論文について、毒性を評価するために利用できないとの答弁であるが、微生物への毒性は、人体への生理毒性を示す指標であると思うがどうか。
      また、答弁において「毒性を評価するためには利用できない。」とする理由を資料名をあげて明らかにされたい。
  (4) 人間の精子変型
       「界面活性剤がヒト精子に与える影響」(合成洗剤研究会誌No.1)
         川崎市衛生研究所 小林 勇 他
      右論文について、毒性を評価するために利用できないとの答弁であるが、精子に対する致死作用は、合成洗剤による細胞毒性の現れであると思うがどうか。
      また、三重大学三上美樹氏による合成洗剤の皮膚塗布試験の結果から精子に対しても有害性のあることが指摘されているが、この指摘はどう考えるのか。
    (注)「消費者リポート」No.303 一九七七年十月二十七日号 日本消費者連盟 参照
  (5) 血液中の赤血球細胞膜の溶解作用
       「洗剤汚染」(合同出版)
         川崎市衛生研究所 小林 勇 他
      右著作について、溶解作用に関する記述には、その根拠が示されていないため評価することができないとの答弁であるが、以下の点についてその見解を明らかにされたい。
     @ 東映の教育映画「合成洗剤は安全か」では、人の赤血球の溶解が映し出されているが、このような合成洗剤による赤血球の溶解作用を認めるか。
     A 石けんは、経口摂取した場合、胃によつて分解されるが、合成洗剤はこのような分解作用を受けず、血液中に混入し、赤血球を溶解させるため、貧血症の原因となつているという柳沢文正氏らの警告をどう評価するのか。
     (注) 「日本の洗剤・その総点検 増補版」
          柳沢文正(績文堂)35頁参照
  (6) コレステロールの増加による高血圧症患者の増大
       「日本の洗剤・その総点検 増補版」(績文堂)
         柳沢成人病研究所 柳沢文正
      右著作について、その根拠とされている実験からABSにコレステロール値を上昇させる作用があるという結論が得られるとは考えられないとの答弁であるが、柳沢文正氏、柳沢文徳氏らが行つた実験において、ウサギ等の血清中のコレステロール上昇が確認されているにもかかわらず、「そのような結論が得られるとは考えられない。」とする根拠を明らかにされたい。
    (注) 「日本公衆衛生学会誌」 柳沢文徳 他 20 ― 10(一九七三) 参照
      また、ソ連のモジャエフ氏の研究でもコレステロール値の上昇が報告されているが、これをどう評価するか。
    (注) MOZHAEV,E.A,etal:Vestn,Akad.Med NRUK,SSSR.27.42(1972)
  (7) 化学物質が界面活性剤と共存した場合における腸壁からの吸収増加による化学物質の複合影響
       「日本の洗剤・その総点検 増補版」(績文堂)
         柳沢成人病研究所 柳沢文正
      右著作について、高濃度の界面活性剤共存下では腸壁から吸収される化学物質の量が増加するとのものであり、合成洗剤の人体に対する有毒性を判定する根拠とはならないとの答弁であるが、高濃度下での化学物質の吸収促進は、低濃度下での吸収を証明するものではないか。
      また、この答弁は、現在医薬品に吸収促進剤として界面活性剤の添加を認めている厚生省の方針と矛盾しないのかどうか。
  (8) いわゆる川崎病の原因としての合成洗剤による慢性アレルギー
       「小児科臨床」(22巻11号)
         名古屋大学 坂本 陽 他
      右論文について、現在のところ学界において大方の賛同は得られていないとの答弁であるが、学界において大方の賛同を得られていない学説は無視するということでなく、国民の生命と健康を守るため少しでも安全性に疑問を投げかけている学説は、これを検討していくという基本的態度が必要ではないのか。
      また、川崎病の原因究明研究班が当初から合成洗剤原因説のみを排除して発足した理由、同研究班の調査研究結果及び今後における川崎病の研究に関する具体的な方針を明らかにされたい。
  (9) 水中のLAS等による魚類の体表面の粘液分泌、エラ呼吸等の阻害、魚類の舌の味覚細胞を破壊することによる水中汚染物質摂餌の助長及びウニ卵の死滅
       「界面活性剤の魚に対する作用について」(日本水産学会誌 一九七四・四十巻十二号)
         ライオン油脂 富山新一
       「Detergents; effects on the chemical senses of fish Ictaturus natalis」
       (Science. VOL 148. 1965 p1605)
           Bardach JE. Fujiya M
       「ウニ卵の発生による洗剤類の急性毒性実験」(合成洗剤研究会誌No.1)
         鳥羽市水産研究所 石川貞二
      右論文は、室内実験に基づき合成洗剤の水産生物に与える影響を述べたものであり、直ちに自然界における影響を示すものではない。しかし、これらの論文でも指摘されているように、合成洗剤の影響として実験上、卵稚仔の発育及びエラ呼吸機能に対する阻害作用等が知られているところであるとの答弁であるが、室内の生物実験に基づく成果を「直ちに自然界における影響を示すものではない。」として軽視することは許されない。
      実験上、合成洗剤の卵稚仔の発育及び魚のエラ呼吸に対する阻害作用を認めるならば、早急にこれに対する対策を講ずべきではないか。
  (10) 皮膚浸透性
       「洗剤の恐怖」(新時代社)
         門奈仁之
      右著作について、厚生省が行つた合成洗剤の経皮吸収に関する実験によれば、吸収される量は極めて微量であるので健康上問題はないとの答弁であるが、健康上問題ないのであれば、どうして厚生省は合成洗剤について使用濃度及び一日許容吸収量を定めたのか、その理由を明らかにされたい。
      また、厚生省は一般家庭における合成洗剤の使用に当たつて、このような使用濃度及び一日許容吸収量が守られるようにどのような措置を講じているのか。
    (注) 昭和四十八年四月二十八日 厚生省告示 第九八号参照
       日本公衆衛生学雑誌 VOL10 ― No.1 (阿部勝馬) 参照
  (11) おむつかぶれ
        「近年急増した乳児寄生菌性紅斑の疫学的調査」
          (第三回山形県公衆衛生学会資科) 牧野好夫 他
      右論文について、乳児寄生菌性紅斑は合成洗剤がその発症要因であるとは考えられないとの答弁であるが、次の点についてその見解を明らかにされたい。
      右論文の調査は、四千人余りの赤ちやんを追跡した皮膚科専門医、保健婦等による大々的な疫学調査である。この調査によれば、特殊なおむつかぶれである乳児寄生菌性紅斑は、二十年前に比し約二百倍に増加していることが確認されており、合成洗剤を粉石けんに変えて洗たくすることで患者は減少し、二十年前と同じレベルに戻つている。
      この疫学調査の結果を見ると、合成洗剤が同疾患の発症要因であるとは考えられないとの答弁は、科学的な事実に基づぐものとは思われない。従つてこの疫学調査の反証となる事実を明らかにされたい。
      以上のことから合成洗剤の人体に対する安全性について、調査研究を行う考えはないとの答弁は、国民の健康に責任を持つ厚生行政としては、全く怠慢のそしりを免れないと思うがどうか。
二 合成洗剤の安全性に関する厚生省の考え方について
 1 LASの安全性の根拠及びLAS等の許容量等については、内外の実験結果に基づく総合的判断からその安全性が確認されており、通常の使用方法による場合は問題ないと考えているとの答弁であるが、内外の実験結果の内容を提示するとともに、総合的判断及び通常の使用方法とは、具体的にどのようなことか明らかにされたい。
   また、許容量の数値、性差、年齢差、個体差、胎児毒性等について一切触れていないので、これらの点についての考え方を明らかにされたい。
 2 科学技術庁から委託された合成洗剤に関する研究の研究結果については、厚生省はその一部をまとめとして発表しているが、すべての研究結果はいつ発表するのか明らかにされたい。
三 合成洗剤等の製造、販売、使用等の規制について
 1 赤ちやんのおむつかぶれについては、合成洗剤がその発症要因であるとは考えておらず、従つて、実態調査を行う考えはないとの答弁であるが、合成洗剤がその発症要因であるとは考えられないとする根拠は何か明らかにされたい。
   スモン病、サリドマイド等の薬害及び水俣病等の公害病も問題になつた当初は、一般的に
   その原因物質が発症要因とは考えられていなかつたので、これら深刻な健康被害の実態調査が行われなかつた。そのために被害の拡大を招く等の重大な事態を引き起こすに至つたのであるが、このような過去の経験にかんがみ、早急に実態調査を行うべきであると思うがどうか。
 2 市販の新型合成洗剤の安全性については問題はないと考えているが、さらに各種の毒性試験を実施し、その安全性の再確認に努めているとの答弁であるが、安全性の再確認のための各種毒性試験とは具体的にどのような内容か明らかにされたい。
 3 台所用合成洗剤については、野菜・果物洗いに使用しないように行政指導を行う考えはなく、また、皮膚障害の防止については使用上の注意事項の表示義務付け等所要の措置を講じているとの答弁であるが、以下の点についてその見解を明らかにされたい。
  (1) 合成洗剤が予想以上に野菜、果物、食器に残留し、その結果、合成洗剤が経口摂取されるという問題があるが、合成洗剤の野菜、果物、食器への残留についてどう考えるか、また、残留した合成洗剤が経口摂取された場合の人体への影響についてどう考えるのか。
  (2) 野菜、果物洗いにおいて水洗いと洗剤洗いとでは、その洗浄効果においてほとんど差はなく、東京都衛生局長の通達(昭和四十八年五月二十八日、48衛環食第二〇七号)では、野菜、果物洗いに合成洗剤の使用を推奨する必要はないとしているが、これについてどう考えるのか。
  (3) 五〇%を超える家庭の主婦に皮膚障害があるという事実をどう考えるのか。
    (注) 「合成洗剤についてのアンケート調査」全水道広島水道労組 参照
        「ひろがる合成洗剤追放運動」合成洗剤追放全国連絡会編 収載
  (4) 皮膚障害防止のための所要の措置とは、具体的にどのようなことか。
      また、所要の措置を講じているということは、合成洗剤が皮膚障害の原因であることを認めたものであり、通常の使用方法では安全であるという答弁と矛盾すると思うがどうか。
  (5) 以上のことから政府は、台所用合成洗剤の使用禁止等の措置を講ずべきであると思うがどうか。
      また、もしその考えがないとするならば、合成洗剤による手荒れ被害等の治療費、慰謝料等を一切補償すべきであると思うがどうか。
 4 卵殻を卵洗浄用洗剤で洗浄処理することにより、コレステロールが多量に吸収されるとは考えられないので、同洗剤の規制を検討する考えはないとの答弁であるが、コレステロールが多量に吸収されることは考えられないとする根拠、資料名及び論文名等を明らかにされたい。
 5 高級アルコール系等のシャンプーについては、内外の実験結果に基づく総合的判断からその安全性に問題はなく、被害の実態調査を行う考えはないとの答弁であるが、以下の点についてその見解を明らかにされたい。
  (1) 三重大学三上美樹氏、坂下栄氏らの研究によれば、ラットの背中へのシャンプーの塗布実験で著しいただれや脱毛等が確認されている。この実験結果についてどう考えるか。
    (注)「合成洗剤の生体障害性に関する研究、知見補遺」(3の3)三上美樹他 参照
         三重大学医学部解剖学教室業績集第24集 収載
  (2) 皮膚刺激性の強い高級アルコール系等のシャンプーを長期間にわたり頭頂部に振りかける使用法は、脱毛の増加を招くと思うがどうか。
  (3) 新潟の星野正夫氏による実験結果によれば、高級アルコール系等のシャンプーから石けんシャンプーに代えた女性の毛髪が、七カ月後に細い赤毛から三〇%程度太い黒い毛髪に変わるとしているが、この実験結果についてどう考えるか。
    (注) 「シャンプーは髪を荒す ― 合成洗剤シャンプーの髪への影響 ― 」星野正夫 参照
        第二回合成洗剤研究会講演要旨集 収載
  (4) 近来、乳幼児の頭髪が以前に比べて細く、赤毛が増えていると言われている。これは、高級アルコール系のシャンプーの使用に起因するものと考えられるが、この事実を認めるか。
    (注) 「シャンプーは髪を荒す ― 合成洗剤シャンプーの髪への影響 ― 」星野正夫 参照
        第二回合成洗剤研究会講演要旨集 収載
  (5) 答弁における内外の実験結果について具体的に明示されたい。
 6 リンスについては、内外の実験結果に基づく総合的判断からその安全性に問題はなく、被害の実態調査を行う考えはないとの答弁であるが、リンスに皮膚刺激性はないと考えるのか。
   また、リンスには皮下浸透、経口侵入等による急性毒性及び慢性毒性はないと考えるのか、安全性に問題がないとする根拠を明らかにされたい。
 7 高級アルコール系の歯みがきについては、内外の実験結果に基づく総合的判断からその安全性に問題はなく、被害の実態調査を行う考えはないとの答弁であるが、皮膚刺激性、急性毒性のある界面活性剤を高濃度に含有する歯みがきを口腔中で使用することははなはだしく問題である。以下次の点を明らかにされたい。
  (1) 高級アルコール系の歯みがきの使用後、みそ汁等食事の味が変わるということは、舌の味蕾細胞の脂質が取り去られることによるものであるが、この事実をどう考えるのか。
    (注) 「歯ミガキ剤投与による生体への影響」坂下栄 参照
        第二回合成洗剤研究会講演要旨集 収載
  (2) 高級アルコール系界面活性剤は粘膜吸収性が強く体内の代謝も不明であるが、それでも安全性に問題はないと考えるのか。
  (3) 練歯みがきに界面活性剤を添加しても、むし歯の予防効果はなく、かえつて健康上いろいろ問題があるので、界面活性剤の添加を禁止すべきではないか。
  (4) 答弁における内外の実験結果を具体的に明示されたい。
 8 柔軟剤については、現在のところその安全性に問題はなく、従つて、使用禁止等の措置を講ずる考えはないとの答弁であるが、柔軟剤使用布の吸収性能テスト(「暮しの手帖」二世紀18号)によれば、吸収性能が1/6近くに落ちることは明らかである。
   水をほとんど吸わないオムツはその用をなさないと思うが、「暮しの手帖」社が行つた柔軟剤使用布による吸水性能テストをどう評価するか。
   また、柔軟剤の使用等の規制について、政府は何らかの措置を講ずべきであると考えるがどうか。
 9 合成洗剤に含まれる増白剤、青味剤等については現在のところその安全性に問題はなく、従つて使用禁止等の措置を講ずる考えはないとの答弁であるが、本来洗剤とは、繊維に外的に付着した異物を除去することを目的とするものであり、刺激性、アレルギー性、毒性等が懸念される種々の化学物質を吸着させ、又は残留させることは、洗剤本来の目的にはなはだしく反するものである。従つて、増白剤、青味剤等については、その使用を規制すべきであると考えるがどうか。
 10 螢光剤については、現在のところその安全性に問題はなく、従つて使用禁止等の措置を講ずる考えはないとの答弁であるが、以下の点についてその見解を明らかにされたい。
  (1) 螢光剤として繁用されているジアミノ、スチルベン、ジスルホン酸は発がん性を有することが判明している。従つて、螢光剤は、薬事法ではガーゼ、脱脂綿、包帯への使用が禁止されており、食品衛生法では昭和四十五年に食品、紙ナプキン、食品包装紙への使用を禁止している。さらに通商産業省は、よだれかけや肌着等の乳幼児用製品にはできるだけ使用を避けるよう行政指導(昭和四十八年十一月二十四日)を行つている。これらの法律等に基づく規制が行われているということは、螢光剤の安全性に問題があるということではないのか。
  (2) 現在、ほとんどの合成洗剤に螢光剤が助剤として添加されており、このため洗たく後の乳児用よだれかけ、肌着、おむつ等から強い螢光反応が確認されている。
    (注) 「北海道消費者協会調べ」 一九七八年四月七日付 婦人民主新聞 参照
      さらに、合成洗剤の使用によつて病院の包帯、食堂や家庭の布きんにも螢光剤が残留している。このことは、合成洗剤の使用によつて法律等に基づく規制に反した布きん、包帯、おむつ等を消費者が日常使用したり身に着けるという結果を招いていると思うがどうか。
  (3) 以上のことから螢光剤の洗剤へのビルダーとしての添加、衣料品の加工処理への使用について、即時使用禁止又は大幅な使用規制の措置を講ずべきであると思うがどうか。
 11 スプレー洗剤の販売禁止については、フロンガスに関する米国の一部学者の主張する理論がいまだ結論を得るに至つていないこと、また、有機溶剤及び非イオン系界面活性剤に起因する健康被害例を承知していないことにより、そのような措置を講ずる考えはないとの答弁であるが、メーカーのジョンソン社は、日本消費者連盟の質問に対する回答文の中で、フロンガスの毒性をはつきり認めており、成分を自主的に切り替えているほどである。
    有機溶剤及び非イオン系界面活性剤による被害については、スプレー洗剤「カラクリン」による皮膚障害が起こつているとの苦情が大阪府消費生活センターに寄せられていることからも明らかであるが、これらの事実をどう考えるか。
  (注) 「大阪府立消費生活センター 消費生活ニュース No.93 昭和五十二年四月号」 参照
      また、このような事実にかんがみ、スプレー洗剤は当然販売禁止すべきであると思うがどうか。
 12 家庭用品品質表示法に基づく石けん、洗剤の表示については、石けんに三%未満の他の界面活性剤が混入しているものを含めることとした理由として、石けんと洗剤を同一の設備で製造する場合には、微量の洗剤の混入を防ぐことが技術的に困難であることをあげているが、最近の市販の粉石けんの合成洗剤混入率テストによれば混入しているものは極めて少ない。
    石けんと合成洗剤を同一の設備で製造しているメーカーが何社あるのか、明らかにされたい。
  (注) 千葉県消費生活課発行 「豊かな消費者No.45」参照
 13 合成洗剤の広告及び表示における不当表示については、業界に対し公正競争規約の設定を指導中であり、この規約において不適切な表示は使用しないようにする方向で検討しているとの答弁であるが、現時点における公正取引委員会の具体的な指導状況及び指導内容を明らかにされたい。
四 その他について、
 1 厚生省は、合成洗剤が衣類に残留することはないという見解を示したことはないとの答弁であるが、これは厚生省が、合成洗剤は衣類に残留することを認めた趣旨と解してよいのか。
   また、残留すると認めるならば、どの程度の数値のものが残留すると考えるのか明らかにされたい。
 2 レストラン、食堂、学校給食等における食器に台所用合成洗剤が残留しないようにするための監視、指導については、食品衛生法に基づく使用基準を定め、従来から監視、指導を行つているとの答弁であるが、使用基準を守れば残留しないと考えているのか。
   また、どのような監視、指導を行つているのか明らかにされたい。
 3 水道水の水質基準については、陰イオン系界面活性剤についての水質基準の安全性は十分に確認されており、その他の界面活性剤についても、その安全性につき特に問題はないとの答弁であるが、水質基準の安全性を確認しているとする根拠及び他の界面活性剤について問題はないとしている理由を明らかにされたい。
 4 学校教育において合成洗剤の有害性、使用上の注意等及び石けんの使用方法等を取り上げることについては、小学校の家庭科、中学校の技術、家庭科等で合成洗剤の使用上の注意等は取り扱われているとの答弁であるが、以下の点についてその見解を明らかにされたい。
  (1) 合成洗剤の有害性及び環境への悪影響を取り上げていないが、このことは、真実を知らせる教育の目的に反するのではないか。
  (2) 少なくとも、合成洗剤の問題点は児童、生徒に知らせるべきであると思うがどうか。
  (3) 洗浄力が合成洗剤より優れている粉石けんの洗たく方法について、教科書が触れていないのは片手落ちであると思うがどうか。
  (4) 石けんを使用する家庭が増えているにもかかわらず、合成洗剤のみを使用する生活を前提として学校教育が行われていることは、洗剤メーカー保護のための学校教育と言われてもしかたないと思うがどうか。
 5 学校給食における石けん用洗浄機械の導入によつて合成洗剤の使用を止めさせることについては、合成洗剤を使用する場合には、液の濃度、浸漬時間、すすぎの方法等に留意して使用するよう指導しているとの答弁であるが、これは、学校給食において有害性を前提として合成洗剤を使用していると理解してよいのか。
   また、合成洗剤使用の給食現場調理員には、手荒れ、ただれ、つめ割れ等の身体被害を訴える者が多いが、これらの者は、すべて労働災害として認定すべきものであると思うがどうか。なお、政府は、これら被害者に対して損害賠償責任を負う考えがあるか。
 6 繊維の加工処理に当たつて使用される化学薬品の製造及び販売の規制については、繊維の加工処理以外の目的にも広く使用されているため、製造及び販売段階で一律に規制を行うことは適当でないとの答弁であるが、繊維の加工処理以外にどのような目的に使用されているのか。
   また、繊維の加工処理に使用される化学薬品は、衣料品の販売段階ではどの程度残留しているか、その実態を十分把握しているのか。
   さらに、これら衣料品に残留する化学薬品の人体に対する安全性について問題はないと考えているのか、もし、安全性が十分に確保されているとするならば、その根拠となる論文名、資料名を明らかにされたい。
 7 界面活性剤の食品、化粧品及び医薬品への使用制限については、これらに使用される界面活性剤は、いずれもその安全性は十分に確認されているとの答弁であるが、キノホルム、サリドマイド、AF2等による悲惨な被害は、いずれもその安全性の確認が十分に行われなかつたために招来したものではないか。これらの経験に照らしても、なおかつ、界面活性剤の安全性は十分に確認されたと断言し得るものであるのか。
   界面活性剤の安全性確認の具体的根拠を示されたい。
 8 赤潮発生の原因物質の一つである燐に関する諸対策の実施及び赤潮による漁業被害の補償については、燐の排出源について総合的な対策が必要であること、合成洗剤中の燐酸塩についてさらに一層、低減化するよう行政指導を行うこととしていること等及び赤潮による漁業被害の救済について、養殖共済契約の赤潮特約に係る掛金を全額公費負担としていることを内容とする答弁があつたが、合成洗剤は貴重な鉱物資源である燐を多量に含有しており、この燐が河川や海に排出されて富栄養化、赤潮のひん発の原因となり、沿岸漁業に甚大な被害を与えているのが現状である。よつて以下の点を明らかにされたい。
  (1) このような貴重な輸入鉱物資源である燐を海や川にたれ流して公害を発生させていることは、資源有限時代に極めてふさわしくないと思うがどうか。
  (2) 洗剤メーカーは、燐酸塩の含有量を自主的に規制すると称しているにもかかわらず、昭和五十二年の東京都消費者センター調査(昭和四十八年十一月〜昭和五十二年五月)によれば、全調査商品の四四%が自主規制値を超えており、政府の行政指導は十分実効をあげていない。政府は、メーカーに対しいかなる行政指導を行つているのか、その内容を明らかにされたい。
  (3) 政府が実施している排出源の実態、排出水の水質レベル、処理技術の実態、規制の効果等の調査について、その進行状況を明らかにされたい。
  (4) 洗剤メーカーは、赤潮による被害の救済に関していかなる費用も負担していないが、汚染者負担の原則(PPPの原則)にのつとり、沿岸への排出水中の燐分の割合に従つて洗剤メーカーにもその費用を負担させるべきではないか。
  (5) 三重大学安達六郎氏らの研究によれば、LASは、海水中低濃度ではかえつて赤潮の原因となるプランクトンの異常な増殖を助長するということであるが、この研究報告をどう評価するか。
    (注) 「洗剤汚染とプランクトン」三重大学水産学部 安達六郎 参照
        「合成洗剤追放をめざして」合成洗剤追放全国連絡会編 収載
 9 合成洗剤を含む生活排水による農業被害対策については、取水源の転換等を実施するとともに、長期的対策として下水道の整備等により生活排水による水質汚濁の防止に努めているとの答弁であるが、マンモス団地の生活排水が流入する河川の下流域等では、高濃度のLAS等が水田等に流入して被害を発生させているので、このようなマンモス団地等においては、とりあえず合成洗剤の使用規制が必要であると思うがどうか。
   また、答弁によれば、生活排水による農産物被害は窒素過多によるとのことであるが、LASによる農作物の生育阻害等の現象をどう考えているのか。
   また、三重大学谷山鉄郎氏らの実験では、合成洗剤は水稲の生育をはなはだしく阻害するが、石けんは、かえつて稲の栄養分となり成長を促進することが確認されている。この実験結果をどう評価するのか。
   このようなことからも、合成洗剤の使用を規制し石けんの使用を促進すべきであると思うがどうか。
 (注)「各種洗剤と水田の生態反応(1)」三重大学 谷山鉄郎 他 参照
    第二回合成洗剤講演要旨集収載
 10 合成洗剤に代わる石けん等代替品の開発及び普及の促進と洗たく機等洗浄設備の改善については、石けんを使用する場合には有機物汚染量が増加する恐れがあること、牛脂等石けん原料資源に限界があること等の難点があることから、全面的に石けん等の代替品への移行を促進する必要はない、また石けんの生産販売等消費者の需要にこたえるよう配慮しているとの答弁であるが、以下の点についてその見解を明らかにされたい。
  (1) 石けんの使用によつて有機物汚染量が増加する恐れがあるというが、石けん分(脂肪酸ナトリウム)は、ベンゼン環、硫酸基等を含まず、環境中に排出された場合には、速やかに水と二酸化炭素に分解されて有害物質を出さない点に着目すべきではないか。
  (2) LAS、燐酸等による環境汚染等の状況を考えれば、石けんのもたらす環境への負荷の方が少ないと思うがどうか。
  (3) 政府は、牛脂、植物油脂等の石けん原料に限界があるというが、現在石油危機等が懸念されており、有限の資源であり合成洗剤の原料である石油に比べれば、動植物油脂は石けん原料としてその生産、供給ははるかに安定していると思うがどうか。
  (4) 給湯式等の粉石けん用洗たく機の普及により、粉石けんは年間十〜二十万トンで済むので、現在の合成洗剤による環境汚染、人体への被害をなくすため、速やかに粉石けんの使用の促進とその使用に必要な洗たく機の普及を図るべきであると思うがどうか。
  (5) 石けんの生産、販売等に関して政府は、具体的にどのような配慮をしているのか。
 11 家庭廃油を石けんの原料として利用できるよう回収する措置を講ずることについては、回収、精製等に多額の費用が必要であることから、工業的規模で家庭廃油を原料として製造することは、極めて困難な状況にあると聞いているとの答弁であるが、家庭の台所の残り油を流しに捨てた場合、冷えた油分がじんかいと混じり、公団、マンション等集合住宅の排水管の内壁に付着し、層を作り、管を詰まらせること、この結果建物の耐用年数を低下させること、下水処理場の処理能力をはなはだしく低下させること等のデメリットを考慮すれば、家庭廃油を回収、精製して再利用を図ることは社会的利益にかなうものである。廃油脂の1/4ほどが回収されれば、石けんの原料はまかなえるといわれているので、政府は率先して廃油の再資源化を図るべきではないか。
 12 油脂原料資源の確保を図るための菜種等の作付けの奨励については、菜種油は将来とも直ちに石けん原料として使用されるとは考えられないが、菜種についてはその生産振興に努めているとの答弁であるが、菜種油のみでなく大豆、米ヌカなどの植物油脂、魚脂などの動植物油脂はみな石けんの原料となるものである。
    石油は、いつかは枯渇する有限な資源であるが、動植物油脂は作付け、飼育の継続によつて永遠にこれを得ることができる無限の資源である。よつてこの無限の資源の開発に政府は全力をあげて取り組むべきであると思うがどうか。

 右質問する。



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