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昭和五十六年三月二十八日提出
質問第二一号

 沖繩県における伊江島射爆場の返還問題等に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十六年三月二十八日

提出者  (注)長亀次郎

          衆議院議長 福田 一 殿




沖繩県における伊江島射爆場の返還問題等に関する質問主意書


 伊江島射爆場は一九七六年七月八日第十六回日米安保協議委員会で返還が合意されているにもかかわらず、今日に至るも一向に具体化される状況にない。
 しかも重大なのは、土地所有者をはじめとする沖繩県民の反対を押し切つて昨年十二月十五日、防衛庁と防衛施設庁は同射爆場を引き続き米軍の演習場として確保するために、現行の「沖繩における公用地等の暫定使用に関する法律」(以下「公用地等暫定使用法」という。)が一九八二年五月十四日に効力が切れるのに備えて、未契約土地所有者の土地に対して「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法」(以下「米軍用地特措法」という。)、いわゆる「米軍用地特措法」による強制使用のための手続を開始した。
 広く知られているように、伊江島射爆場は他の沖繩の米軍基地や自衛隊基地と同様、アメリカの軍事的全面占領の中で県民の意思を無視して米軍が銃剣とブルドーザーで強奪したものである。それを一九七二年の沖繩施政権返還に伴い、「公用地等暫定使用法」による強制使用を経て七七年五月十四日、同法の五年目の期限切れによつて「合法的」使用の根拠を失いながら、四日間の空白ののち不法・不当に同法の延長を強行し再び強制使用の継続をしてきたのである。今回の「米軍用地特措法」による強制使用を許すならば実に四回目の土地強奪であり、平和と人権を守る立場から絶対に容認することはできない。
 さらに、伊江島射爆場での核模擬爆弾の投下訓練をはじめとする米軍の射撃演習事故や騒音による基地被害は、住民の生命と安全を脅かし、いまや耐え難いものとなつている。
 この二月五日の米海兵隊ヘリコプターによる住民地域への“銃撃事件”は、改めて危険な実態を示したものである。
 政府は、直ちに米軍の一切の軍事演習を中止させると共に「米軍用地特措法」による強制使用の手続を撤回し、伊江島射爆場を全面的に返還するための適切な措置を講ずべきである。
 従つて、次の事項について質問する。

一 伊江島射爆場の返還問題について
  昭和五十六年二月十日の衆議院予算委員会で、日本共産党の野間友一議員の質問に対して鈴木総理大臣は、「早期にこれが実現、解決を見るように努力をしていきたい」と答弁している。
 1 鈴木総理自ら伊江島射爆場の返還について「早期実現に努力する」と言明したが、具体的にはどのような措置を講ずるというのか。
   また、いつごろまでに返還させると考えているのか。
 2 鈴木総理の「早期返還」の答弁とは裏腹にその一方で防衛庁、防衛施設庁は、同射爆場を引き続き確保するために契約を拒否する土地所有者に対して「米軍用地特措法」の手続を強行した。このことは、総理の言明したこととは矛盾するのではないか。そうでなければ、「米軍用地特措法」の手続を撤回し関係する土地所有者に軍用地を返還するための措置をこそ講ずべきと考えるが、どうか。
   本当に伊江島射爆場を早期に返還させる意思があるのかどうか、改めて見解を聞きたい。
 3 伊江島補助飛行場(射爆場も含む)の黙認耕作地部分については、聞くところによると返還されるということが言われているが、そのとおりか。
   もし、これが事実ならば黙認耕作地部分については全部を返還するのか、それとも一部を返還するということか。
   併せて、現在、黙認耕作地部分の面積及び土地所有者数並びに返還される黙認耕作地面積及び土地所有者数を明らかにされたい。
二 軍用地問題について
 1 伊江島射爆場において、沖繩復帰前の一九七〇年六月三十日に土地所有者に返還されたはずの土地がその後、賃借料はもちろん補償費も支払わず米軍演習場の一部として不法・不当に使用ざれている事実がある。
   この土地は、伊江村西江上一、六三一、平安山良有さん(四十九歳、農業)が同村字西江上具視堅原一、一四三に所有する一四六平方メートルである。一月十四、十五日の日本共産党の調査でも同地が射爆場ゲート内に存在し、通称パトロール道路の一部になつており、いまなお使用されていることが明らかになつている。
   このことについて、一月十六日「米軍用地特措法」に対する意見書を提出した際、関係土地所有者の指摘に対し現地の那覇防衛施設当局者も認めた。
  イ かかる事態が発生した原因と事実経過について明らかにされたい。
  ロ この事実は、防衛庁、防衛施設庁が当該土地について使用権原の取得のないまま一九七〇年六月以降、米軍の射爆場として使用してきたことを意味すると考えるが、どうか。
  ハ 当該土地について、直ちに原状回復し、土地所有者である平安山さんに返還すべきであると考えるが、その意思があるか。
    また、当然のこととして一九七〇年以降、賃借料、補償費を支払わず不法・不当に使用してきたのであるから、それに対する補償措置を講ずべきと考えるが、どうか。
 2 伊江島飛行場(射爆場を含む)で、契約土地所有者の軍用地を買い取つた土地所有者が引き続き米軍演習場として使用されることに反対し、契約を拒否している当該土地について、防衛庁、防衛施設庁は賃借料はもちろん補償費も支払わず、いまなお米軍演習場として不当に使用している事実が判明している。
   この土地は、伊江村西江上一、九五二、友寄隆常さん(五十歳、農業)が同村西江上カネクラ原に所有する一、三三〇平方メートル(登記は昭和五十一年九月二十八日)、さらに伊江村西江上一、六三一、平安山良有さん(四十九歳、農業)が同射爆場内の同村西江上ヤ ― 原一、九二四の二に所有する一三三平方メートル(登記は昭和五十三年七月十一日)及び同村西江上中スメカ原二、四五一に所有する六二二平方メートル(登記は昭和四十七年五月二十二日)合計二、〇八五平方メートルである。
  イ このことについて、那覇防衛施設当局者はすでに認めているが、事実経過を明らかにされたい。
  ロ 那覇防衛施設当局者は、「元の土地所有者と交わした契約書には他人に譲つた場合の承継義務がうたわれている」という趣旨のことを述べたと報じられているが、そのとおりか。
    元の土地所有者との承継義務、借用期間など契約内容はどのようなものか明らかにされたい。
  ハ 友寄さん及び平安山さんが、農用地の確保ということからも米軍演習場として使用されることに反対し、契約を拒否するのは当然のことである。これに対して那覇防衛施設当局者は、「契約を拒否しているので賃借料は払えない」、「契約すれば支払う」などと契約を強硬に迫つているということである。
    契約を拒否していることを理由に、賃借料はもとより補償費さえも支払わないということは許されるのか。
    しかも、それを手段として契約を迫るのは、脅迫であり国家権力による財産の強奪に通ずるものと言わざるを得ないが、これについての政府の見解を求める。
  ニ もし、元の土地所有者との契約書に借地権の承継義務規定があるとしても、新土地所有者はこれを知らず所有権を譲り受けた場合、どうして借地権設定を承継することになるのか。仮に新土地所有者が借地権設定を承継したとするならば、政府は民法第四百九十四条(供託による免責)に基づき法務局に地料相当額の供託をする方途があるはずだが、弁済供託をしたか、どうか。
  ホ 仮に、元の土地所有者と那覇防衛施設局との契約書に借地権の承継義務があつたとしても弁済供託をしていないということは、借地権原は消滅していると考える。
    従つて、使用すべき法的根拠は失われており、不法占有していると指摘せざるを得ないが、どうか。
    もし、ありとするならばその法的根拠と理由を明らかにされたい。
  ヘ この関係土地について、地主の要求に基づき不法・不当使用してきた期間の補償措置を講ずべきと考えるが、どうか。
    また、原状回復し速やかに返還すべきと思うが、どうか。
 3 憲法第二十九条は第一項で「財産権は、これを侵してはならない。」、さらに第三項で「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。」と規定されている。
   さきに指摘した二つの軍用地問題に関する事案は、いずれも防衛庁、防衛施設庁が法的な根拠もなく、しかも正当な補償措置を講じないで米軍演習場として使用してきたものである。このことは、憲法第二十九条に規定する財産権の侵害であると言わざるを得ないが、政府の明確な見解を求める。

 右質問する。





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