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昭和五十八年七月二十二日提出
質問第六号

 奥鬼怒スーパー林道に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十八年七月二十二日

提出者  小川国彦

          衆議院議長 福田 一 殿




奥鬼怒スーパー林道に関する質問主意書


 特定森林地域開発林道・奥鬼怒線(いわゆる「奥鬼怒スーパー林道」以下「奥鬼怒林道」という。)は、奥日光の光徳(日光市)から奥鬼怒地域(栗山村)を経て尾瀬の大清水(片品村)にぬける林道として計画され、当初は観光も目的としていたが、本林道が、国立公園特別保護地区にある高層湿原の鬼怒沼附近を通過することから、自然保護団体の反対運動により、奥鬼怒の八丁の湯(栗山村)以降の路線の変更が問題となり、とりあえず、日光市光徳より八丁の湯までの改良、新設工事が昭和四十六年より実施され、八丁の湯から大清水に至る路線については未定となつていた。
 和五十五年に、鯨岡環境庁長官(当時)の裁定により、観光目的を排除し、林業専用・治山専用の林道として、路線も変更され、環境庁・林野庁・森林開発公団の三者で、延長部分の開設についての合意がなされた。
 八丁の湯までの工事は昨年までにほぼ完成し、崩壊箇所の補修工事を残すのみとなつたので、本年四月、森林開発公団は、自然公園法による協議書を提出し、七月四日、環境庁は、附帯条件をつけてこれに同意し、八月にも、八丁の湯から大清水に至る十六・二キロメートルの延長工事の着工が予想される。
 奥鬼怒地域は、我国の最高位の高層湿原である鬼怒沼を中心に、シラベ・オオシラビソ・ブナ・ミズナラなどの亜高山帯樹林として特にすぐれた原生林に恵まれ、野鳥・昆虫・草木等の貴重な野生動植物の生息する自然の宝庫である。
 奥鬼怒林道が開設され、原生林の伐採が行われるようになれば、特別保護地区にある鬼怒沼の自然は消滅し、周辺の自然環境も破壊され、貴重な緑資源を失うばかりでなく、森林の崩壊と土石流の発生により、地元に多大の被害をもたらす恐れが多分にある。
 従つて次の事項について質問する。

一 自然環境と緑資源の保全は国民の希求するところである。緑の国造りは中曽根総理も国民運動として提唱されている。
  国土の保全、水資源の涵養あるいは自然環境の保全、形成等極めて多方面の公益的な機能を果している亜高山帯の天然林を破壊することは取り返しのつかない損失である。
  目先の利益にとらわれず、国家百年の大計の見地から、奥鬼怒地域の自然環境の保全を図るべきと思うがどうか。
  総理の所見及び環境庁・林野庁それぞれの見解をただしたい。
二 奥鬼怒地域は、森林開発を行つても採算上も問題があり、かえつて、昨夏の南アルプススーパー林道にみられるような大自然破壊を惹き起こす恐れがある。
  奥鬼怒地域における森林開発をとりやめる考えはないか。
三 森林開発のメリットが極めて低く、自然破壊を惹き起こす恐れさえある奥鬼怒林道に、六十九億円もの巨費を投入することは、財政逼迫の折から、国費の浪費につながるものと思うがどうか。
四 スーパー林道(特定森林地域開発林道)は、森林開発公団法第十八条第一項第一号の二の「……その事業による受益の範囲が著しく広く、かつ、その事業の施行が当該地域における林業以外の産業の振興の見地から相当であると認められるものを施行する」に基づき認められるものである。
  しかし、さきの三者合意によれば、延長部分については、「森林の開発を主たる目的とするとともに、地域住民の生活環境の改善、災害防止等をも図るため開設するもの」とされ、「林業以外の産業の振興の見地」が排除されている。
  とすれば、奥鬼怒林道は、森林開発公団法に基づくスーパー林道としての適格性を欠くと判断されるがどうか。
五 スーパー林道事業の採択基準は、「当該路線にかかる利用区域の森林面積がおおむね一万ヘクタール以上であること」、「未開発林が大半を占めていること」、「投資効果が多いこと」等であるが、群馬県側の国有林(約六百ヘクタール)、民有林(約七百ヘクタール)とも、既に林道が開設され、伐採済みであり、栃木県側の国有林(約七千百ヘクタール)も昭和二十八年より森林開発が進められ、主要部分の黒沢団地は、昭和四十七年までに伐採はほぼ終了し、残された未開発林のうち、利用可能な森林面積は三千ヘクタール以下である。
  採算上にも問題があり、採択基準に合致しないと思われるがどうか。
六 昨年十二月十三日に、地元の奥鬼怒四湯組合は、栃木県栗山村村長と同議会あてに、「現在進行中の専用林道では地元への貢献は少なく、むしろ交通安全などの面で大きな問題があり、未着工部分の建設は見送るべきである」との陳情書を提出しているとのことである。
  地元の反対についてどう思うか。
七 林野庁は、奥鬼怒林道による森林開発にあたり、「択伐を行うので支線林道の路網密度は増えることになろう」というが、地勢等の地理的条件が極めて悪い奥鬼怒地域において、支線を含めた路網密度を増やし、森林の伐採を強行すれば、「林業と治山のための林道」が「自然破壊と災害復旧のための林道」となり、自然破壊が促進されると思うがどうか。
八 スーパー林道の幅員は四・六メートルとされているが、「将来の車両通行の増大にそなえて」という名目で、昭和四十六年より、一般道路並の七メートルに拡幅する工事が同時合併施工として実施され、その区間は既設林道部分(三十一・三キロメートル)の三分の一に及んでいる。
  国庫補助に便乗して一般道路を開設する行為は、国庫補助林道としての補助目的を逸脱するものと思うがどうか。
  このことは、「林道」に名を借りて観光バスの自由な往来のために大規模な観光道路(七メートル)を建設し、自然破壊の範囲を拡大している以外の何ものでもない。
  このような林業行政の本旨を逸脱した道路建設は中止すべきではないか。

 右質問する。





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