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昭和五十八年九月三十日提出
質問第五号

 日米農産物交渉に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十八年九月三十日

提出者  寺前 巖  野間友一  藤田 スミ

          衆議院議長 福田 一 殿




日米農産物交渉に関する質問主意書


 牛肉、オレンジを中心とした日米農産物交渉は、九月中旬の東京での協議に続き、十月上旬にもワシントンでの協議が再開され、十一月のレーガン米大統領の訪日を前に大きなヤマ場を迎えようとしている。
 この交渉がどう決着するかは、我が国農業の将来に大きな影響を及ぼすとともに、国民の食生活や地域経済にも密接に関連してくるという点で国民全体が注目しているところである。
 今年一月、この問題で内閣に主意書による質問を行つたが、交渉が重要な段階を迎えている今日の時点に立つて、再度以下の点について質問する。

一 交渉に臨むアメリカ側の態度について
  アメリカ側は先日の東京交渉で、かさねて「自由化時期の明示」を迫るとともに、牛肉、オレンジの輸入枠拡大案を提案した。その内容は、来年度から高級牛肉で現行枠の六割を、オレンジで三割を毎年増やすよう求めたと伝えられているが、いまもつて公表されていない。日本農業の死活にかかわる問題であり、直ちに公表すべきである。
  伝えられるとおりであるとすれば、その内容は、金子農水相が「ムチャクチャだ」(九月十六日閣議後の記者会見)と認めるように、高級牛肉では、来年一年の輸入増加量が一万八千トンと過去五年で増加した量一万四千トンを大幅に上回り、オレンジでは、これまで毎年五千トンずつ拡大してきたものを来年だけでも二万五千トン増やすよう迫るもので、我が国の農業生産や農家経済の実態を無視した、とうてい受け入れ難いものである。しかも、アメリカは、自国の食肉輸入規制をほおかぶりして、日本の牛肉の一元輸入制度の見直しを迫るなど、まつたく身勝手な態度をとつている。
  このようなアメリカの態度は、対等平等の外交交渉に臨む態度とはとてもいえず、マスコミでも「カサにかかつて我を通そうという恫喝戦法」(「朝日」九月二十二日)と指摘しているほどである。
  政府は、アメリカの高飛車な姿勢を厳しく批判すべきだと考えるがどうか。また、今回の交渉の場で批判したのか、しなかつたのか。
二 交渉に臨む中曽根内閣の基本姿勢について
  中曽根首相は、今臨時国会の衆議院予算委員会の場で、日米農産物交渉について「農業を守るという線はつらぬくが、一方で対米関係があり、これに目を開く段階にきている」とか、「貿易黒字が膨大になつている。……がまんできるところはがまんし、……(アメリカ側と)合理的調整が必要だ」と答弁している。
 1 アメリカは、「自由化時期の明示」や「ムチャクチャ」な枠拡大を迫つてきている。このアメリカとの関係に「目を開き」、「合理的調整」をはかるとは具体的にはどういうことか。この発言は、結局輸入枠の大幅拡大にならざるを得ないと考えるがどうか。
 2 日本の農民は、「自由化はもちろん、これ以上の枠拡大は農業の崩壊につながる」として反対運動を全国的に繰り広げている。しかし、中曽根内閣の対米外交姿勢からみて結局は輸入枠の大幅拡大という形で、またしても農民が犠牲にされるのではないかとの不安感を持つている。
   政府は、全国の農民の叫びを、「対米関係に目を開く」との名のもとに、無視してもかまわないと考えているのか。そうでないというなら、農民の不安を解消するためにも輸入枠拡大も一切応じられないと明言すべきだと考えるがどうか。
 3 「対米貿易黒字が拡大している」(中曽根首相)、「日本は貿易立国であることも考えなければならない」(金子農水相)として、政府は、農産物の市場開放を貿易摩擦の解消策の一つにしようとしている。
   しかし、アメリカの要求を受け入れ、農産物の残存輸入制限品目のすべてを自由化したとしても、アメリカの貿易収支の改善は十億ドルにも満たず、対日貿易赤字百二十二億ドルのほんの一部に過ぎないことはアメリカ自身が認めていることである。
   そもそも、日米間の貿易摩擦の日本側の最大の原因は、自動車、電機など一部大企業製品の輸出に依存した経済構造にある。もし、真に日本の貿易全体のことを考えるなら、輸出偏重型の日本経済の根本的転換をこそはかるべきだと思うがどうか。
   それとも、経団連が、九月二十七日発表し政府に申し入れた「自由貿易体制の維持・強化に関する見解と提言」にあるように、牛肉、オレンジなどの自由化が、中曽根首相のいう「国益を守りつつ、大局的立場」に立つた貿易摩擦の解消策と考えているのか。
三 かんきつ類の市場開放問題について
 1 東京ラウンドの日米農産物合意(一九七八年)でオレンジの輸入枠が大幅に拡大されたことにより、輸入量は、一九七七年の二万二千四百九十九トンから一九八二年の八万二千四百二十一トンへと三・六七倍になつている。ところが、同期間の国民一人当たりのかんきつ類購入数量は、総理府家計調査によれば、二十・七キログラムから十六・五キログラムへと二割も低下している。そのため、温州みかんは、七九年より今年まで、全国的に二割減反を余儀なくされたところである。
   この五年間のかんきつ類の消費や生産の動向は、輸入量を三・六七倍にも伸ばすような余裕がまつたくなかつたことを示していると思うが、政府はどう認識しているか。
 2 これまでの生産調整にもかかわらず、みかんの過剰傾向は解消されず、来年度から三年間でさらに一割の作付転換が実施されようとしている。しかも、今年は豊作年に当たるため、生産農民は、このままでは価格暴落は避けられないとして、国の援助も得て四十万トンの摘果を実行しているところである。
   こうした事態のなかでオレンジの輸入枠をさらに拡大することは、国内の果実生産を一層圧迫し、生産縮小に追い込むことは明らかである。
   政府は、前回の質問主意書に対する回答のなかで、「市場開放にあたつては、国内農産物の需給動向を踏まえ……」対処するとしていたが、今日の温州みかん及びかんきつ類の需給状況をどうみているか。オレンジの輸入枠を増やせる余裕があるとみているのか。むしろ現在の需給状況は、輸入量を減らすべきことを求めているのではないか。
 3 先日の日米交渉の直後、政府がグレープフルーツジュースの輸入自由化を決断したと報じられ、かんきつ類の生産農民や関係業者に大きな不安を与えている。
   果実飲料に対する需要が停滞し、大量の在庫を抱えているなかで、グレープフルーツジュースの自由化は、かんきつ類の果汁のみならず、リンゴやブドウのジュースをも圧迫し、さらに国内果実生産全体の縮小をもたらすものである。
   グレープフルーツジュースの自由化を決断したというのは事実か、もし事実でないというなら、このさい、今後一切自由化も枠拡大もしないと明言すべきと考えるがどうか。
四 最近の農産物市場開放措置について
 1 政府は、国会の場で農産物の市場開放はしないとたびたび言明しておきながら、アメリカの圧力の前にそれを何度となく破つてきた。例えば、昨年五月十三日の参議院農林水産委員会で下田京子議員にこたえて、田沢農水相(当時)は「残存輸入制限品目については、自由化も、この枠拡大もいたしません」と言明しながら、二週間後に三品目の枠拡大を決めている。また、金子農水相も、昨年十二月二十三日衆議院農林水産委員会で「自由化に移行する方針とかあるいは枠の拡大等については、これまで以上に強い姿勢で反対をおしきつていく」と言明しながら、その翌日に六品目の枠拡大を決めている。
   これは国会軽視もはなはだしい行為と考えるが、政府はこれをどう説明するのか。
 2 金子農水相は、今年二月の衆議院農林水産委員会で、六品目の枠拡大は「小さな問題」と答えている。
   しかし、六品目の一つ、トマトジュースの枠拡大は、過去の実績の六倍以上に拡大されたこともあり、長野などの主産地で、それを口実として加工トマトメーカーが農家に契約面積の縮小を迫るという形で影響がでている。加工用トマトは水田転作の奨励作物の一つとして地域農業の振興に欠くことのできない重要な役割を果たしている。他の品目も同じである。
   政府は、これら六品目の枠拡大は現在でも小さな問題であり、国内生産への影響は少ないとみているのか。

 右質問する。





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