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昭和五十八年十月十四日提出
質問第七号

 さとうきび最低生産者価格引き上げ等に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十八年十月十四日

提出者  (注)長亀次郎

          衆議院議長 福田 一 殿




さとうきび最低生産者価格引き上げ等に関する質問主意書


 沖縄県農業の基幹作物であるさとうきびの毎年の作柄や価格動向は、生産者農家の経営と生活を左右するだけでなく県経済に影響を及ぼす。
 昭和五十八年産さとうきびの最低生産者価格の告示を十月末に控え、県内の農業団体はさとうきび価格の引き上げについて、適正な農業所得を保障し再生産が十分確保できるものにすることなど六項目の要求を掲げ、要請行動に立ちあがつている。
 日本共産党は、一九七六年四月「甘味資源作物の生産を振興し、砂糖価格の暴騰を防ぐための立法提案」を行つた。そのなかで、価格については「都市勤労者なみの労賃にもとづく生産費を補償する」ことを提起し要求してきた。
 しかるに政府は、農産物自由化政策をとり砂糖を完全自由化したうえ、甘味資源であるさとうきびの買入価格や賃金を考慮せず、価格を低く抑えてきたのである。
 沖縄県のさとうきびの生産量が昭和三十九年次の二百四十三万五千トンから昭和四十九年次には百十五万六千トンに激減したのも、それが大きな要因の一つになつている。
 昭和五十年以降、増加の傾向にあるとはいえ生産基盤の立ち遅れ、台風干ばつ、病害虫の被害の外、肥料、農薬、農器具などの値上がりと相まつて、そして軍事基地の圧迫も加わつてさとうきび作農業は一段と厳しい状況にある。
 特に、最近のさとうきび最低生産者価格は、さとうきび作農家の切実な要求とはほど遠いものとなつているばかりか、現行の価格制度さえ守つているとは言い難い極めて低い額となつている。
 従つて、生産者農家の切実な要求に応えその実現を図る立場から、次の事項について質問する。

一 昭和五十七年産さとうきび最低生産者告示価格二万五百八十円は、農業パリティ指数の上昇率一・五三パーセントで算出した額二万六百二十円よりも下回つている。
  また、農家手取り価格(生産奨励金を含む。)でも昭和五十六年産がトン当たり二万千四百十円、五十七年産は二万千四百五十円で対前期〇・一八パーセント、トン当たりわずか四十円の引き上げである。
  砂糖の価格安定等に関する法律第二十一条第一項に、最低生産者価格は「農業パリティ指数に基づき算出される価格を基準とし、物価その他の経済事情を参酌し、甘味資源作物の再生産を確保することを旨として定める」と規定している。
  昭和五十七年産さとうきび最低生産者告示価格は、この規定の趣旨にさえ反しているものと言わざるを得ない。
 1 昭和五十七年産さとうきび最低生産者告示価格が、農業パリティ上昇率一・五三パーセントで算出した額にも満たないのは何故か。
 2 昭和五十七年四月から八月までの那覇市における消費者物価の上昇率は、四・四パーセントである。本来、農業パリティ指数に基づいて算出された価格に消費者物価の上昇率など、上積みで考慮されるべきである。これでも消費者物価上昇分については「参酌」したと言うのか、明確に説明されたい。
二 昭和五十七年産さとうきびの農家手取り価格(生産奨励金を含む。)は二万千四百五十円であるが、これは農林水産省が公表した生産費(昭和五十七年産)二万四千八百九十三円よりも三千四百四十三円下回る額となつている。
  さとうきび最低生産者告示価格については、農林水産省が公表する生産費さえ償えない状態が復帰後毎年繰り返されてきている。このため生産者農家の経営は苦境に立たされている。
  生産費も償えない価格で「再生産を確保」できると考えているのか。生産費を割つている事態を改善すべきと考えるが、どうか。
三 さとうきび作農業の振興は生産基盤整備による生産性向上とあわせ、価格対策が重要であり、そのいずれかが欠落しても目的は果たせない。
  昭和五十八年産さとうきび最低生産者価格について、沖縄県農業協同組合中央会は「適正な農業所得を補償し、再生産が十分確保できるよう、生産奨励金を織り込み、トン当り二六、〇〇〇円以上」とすることを要求している。
 1 この二万六千円という価格は生産費、全国三十人以上規模の製造業の平均賃金の上昇率、さとうきび生産に係る物材の上昇率などを基礎に算出したものであり、最低限の要求である。政府は少なくとも二万六千円以上の価格にすべきだと考えるが、これに対する見解を伺いたい。
 2 生産者農家が、他産業に従事する労働者の賃金並みの家族労働報酬が得られるように価格を大幅に引き上げることが、再生産を確保することであり、さとうきび作農家の経営を安定させることにもなる。
   このことについて検討する用意があるか。
四 さとうきび作農業の振興について、昭和五十二年十月二十七日の衆議院農林水産委員会で、当時の鈴木農林大臣は「(価格について)再生産が確保されるように、また価格だけでなしに生産対策、基盤整備その他の施策につきましても(中略)、これは沖縄にとつて大事な問題でございますから最善の配慮をしてまいりたい」と答弁している。
 1 しかし、沖縄県のほ場整備率は一六・五パーセント(昭和五十七年度)で、全国水準の三六パーセントに比べても著しく立ち遅れている。
  また、かんがい排水事業にいたつては達成率はわずかに一〇・六パーセントで、今回の宮古、八重山地方の干害もこの遅れが災いしたものである。
  立ち遅れの現状についてどう考えているのか。これまでいかなる対策を講じてきたのか明らかにされたい。
 2 例えば、沖縄県が実施するさとうきび生産振興対策事業に対する国の補助額についてみると、昭和五十五年度十一億二千万円であつたものが、五十七年度九億四千万円、五十八年度には六億七千万円と年々削減されている。
  また、さとうきび病害虫防除対策事業については、国の補助額は昭和五十五年度五千万円であつたものが、五十七年度四千万円、五十八年度二千六百万円と減少している。
  本来、国はこれらの事業を拡充するために積極的に助成策を講ずるべきである。にもかかわらず、何故削減するのか。
  これまでの政府の言明とも矛盾すると考えるが、どうか。
五 昭和五十九年度の予算概算要求で、沖縄開発庁一括計上の沖縄振興開発事業費は対前年度比マイナス〇・七パーセント、第二次沖縄振興開発計画で重点施策とされている農業基盤整備費についても、わずか五・五パーセント増にしか過ぎない。
  政府は「行政改革」、「財政再建」の名の下に軍事費を突出させながら、他方農業基盤整備費を抑え、さとうきび作農業の振興に係る事業費への国の補助金を削減している。このようなことは絶対に認められない。
  第二次沖縄振興開発計画並びにこれまでの政府の言明に基づき、基幹作物であるさとうきび作農業の振興について、国が積極的に対策を講ずる責務がある。
  沖縄県におけるさとうきび作農業の振興について現状をどうみているのか。今後、そのためにどのような施策を講ずるのか、政府の明確な見解を求める。

 右質問する。





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