質問本文情報
昭和五十八年十一月九日提出質問第二二号
経済援助に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
昭和五十八年十一月九日
提出者 野間友一
衆議院議長 福田 一 殿
経済援助に関する質問主意書
政府が、「西側の一員」を強調しながら進めている経済援助は、アメリカの世界戦略を補完し、ますます「戦略援助」化してきている。本来、経済援助は、平和・平等・互恵の原則に基づいて発展途上国の経済自立に貢献すべきものであつて、こうした政府の経済援助政策は早急に正されなければならないと考える。
従つて、次の事項について質問する。
1 中曽根首相は、六月十九日熊本市内において行つた演説でASEAN諸国への経済援助についてふれ、「サミットで私がとくにいつたことは、北の先進工業国が南の発展途上国の問題をよくみて共産主義が入らないようにする、ということだ」と述べている。
政府が、「西側の一員」として強化しようとしている経済援助の目的には、首相が述べた「共産主義が入らないようにする」ということが含まれているのか。だとすれば、それは政府見解か。
2 昭和五十八年版外交青書は、「安全保障問題を含め、政治・経済上の事象は全般にわたつて世界的に密接な関連を有している」と述べているが、政府は経済援助を西側の安全保障を確保する見地で進める方針か。
だとすると、「西側」に同調しない諸国については経済援助を拡大強化しないのかどうか、明確にされたい。
3 同外交青書は、経済援助が「中長期的に見て、国内の混乱や外部からの干渉を排することにもつながり、地域の平和と安定にも貢献する」と述べているが、「国内の混乱や外部からの干渉」とはどういうことを意味するのか。これが民族解放運動を意味するのであれば、それは民族自決の運動を敵視するものに外ならない。明確にされたい。
二 アメリカの対日援助要請について
1 五月十一日のパリにおける安倍外相、シュルツ国務長官会談の際、アメリカ側から、文書で国名をあげての経済援助拡大要請が行われたのは事実か。事実とすれば文書を公表しその詳細を明らかにされたい。
2 アメリカが経済援助拡大を日本に要請している国を示されたい。
報道によれば、アメリカの文書があげた六つの地域と国名は以下のようなものである。ギリシャ、ポルトガル、スペイン ― NATO南端地域、カリブ・中米諸国 ― 米国の南方航路沿い地域、パキスタン、スーダン、モロッコ、チュニジア、ソマリア、ケニア ― ペルシャ湾周辺地域、サハラ以南の諸国 ― 南アフリカ地域、イスラエル、エジプト ― 中東地域、韓国、フィリピン、インドネシア、タイ―太平洋の重要地域、これらが要請されているすべてかどうか。
3 前述外交青書は、「タイ、パキスタン、トルコといつた紛争周辺国を始め、エジプト、スーダン、ソマリア、ジャマイカ等、世界の平和と安定の維持のため重要な地域に対する援助」と具体的国名をあげているが、「等」に当たる国をあげられたい。2にあげた国々がそれに相当するのか、明確にされたい。
4 アメリカの経済援助についての対日要請は、ウォルター・J・ステッセル米国務副長官が、「特にタイ、パキスタン、トルコ、スーダン、エジプト、ペルシャ湾岸諸国などの戦略的に重要な諸国に対する日本の拡大する対外援助計画に大きな関心を持つている。」(一九八二年六月十日の米上院外交委員会における証言)と表明したことでも明らかなように、「戦略援助」である。前述外交青書は3で記したような例示を行つているが、これはアメリカの要請をそのまま受け入れたものではないのか。
三 紛争国への援助について
1 政府は、タイ、パキスタン、トルコを「紛争周辺国」として援助強化を行つているが、紛争国それ自体への援助についてはどう考えているのか。
2 東カリブ海六カ国(ドミニカ、アンチグア・バーブーダ、バルバドス、セントルイシア、セントビンセント、ジャマイカ)はアメリカとともに極小国グレナダを侵略した。これはいかなる弁明の余地もない国連憲章違反の蛮行である。侵略国に対する経済援助はやめるべきではないか。
3 エルサルバドルの政権への経済援助は、民族解放運動を抑圧する同政権へのテコ入れとなつている。
昭和五十六年三月の国会決議は、「紛争当事国に対する経済・技術協力については、その紛争を助長するがごときものは行わないこと」と決議している。
民族解放運動の抑圧を助長させる経済援助も当然やめるべきではないか。
4 報道によれば、ニカラグア政府が日本政府に経済援助を要請したが、「日本政府は『米国などと足並みをそろえた』との理由で、断つている」(六月二十日付「朝日」夕刊)とのことである。
事実かどうか。
また、社会主義を目指すことが気に入らないといつて、経済援助を拒むなどあつてはならないことだと考えるが、政府の所見はどうか。
右質問する。