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昭和五十九年三月一日提出
質問第五号

 保育料値上げに関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十九年三月一日

提出者  中島武敏

          衆議院議長 (注)永健司 殿




保育料値上げに関する質問主意書


 昨年十二月二十一日東京都特別区児童福祉問題審議会は、「保育所の運営経費の負担のあり方と保育料の改定について」という答申をまとめ、特別区長会に対し提出した。この答申を受けて、東京二十三区の特別区は本年四月一日より四七パーセントにのぼる大幅な保育料値上げを行おうとしている。
 同審議会の答申は、保育料値上げの必要性について「国の定める保育所徴収金基準額は毎年度改定されており、また他の大都市や都内市町村においても定期にあるいは随時に改定を行つてきているので、これらと比較した場合に、特別区の保育料は所得の高い階層にかなり低い水準にある」と述べ、国の定める保育所徴収金基準額に比較して東京都特別区の保育料が低い水準であることを値上げの重要な根拠の一つとしている。
 周知のように、児童福祉法はその第一条第二項で「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。」として、国及び地方公共団体の児童育成の責任を規定している。
 さらに同法第二十四条では、市町村に対して保護者の労働又は疾病等により、保育に欠ける児童を保育所に入所させて保育しなければならないと義務付けているのである。
 すなわち保育所は、児童が心身ともに健康に育てられ、同時に保護者の労働権をも保障するものであるといわなければならない。
 とりわけ近年、婦人就労者の数は千四百八万人に達し、全男女就労者の三分の一を占めるに至つている。中でも家庭婦人就労者(有配偶及び死別・離別)の数は九百六十四万人で女子就労者の六八・五パーセントを占めている。
 このように、増大している家庭婦人就労者の労働権を保障するうえでも保育所は欠かせない存在となつていると同時に、保育所もこれら家庭婦人就労者の動向に大きく制約されているといわなければならない。
 以上のような点から、何らかの経済的事由によつて児童に必要な保育の機会が妨げられてはならない。しかしながら近年、国の指導により東京都特別区を始めとして全国の市町村で、保育料を国の徴収基準額に接近させる方向がとられている。
 そのため、一般勤労者が負担できないはどの高額保育料になつているところも多く例えば東京都の小平市においては、現行保育料は、月額の最高額で三歳未満児が四万三千九百円、三歳児が二万二百円、四歳以上児が一万七千円に達しており、しかも平均年間所得推計約四百三十三万円(小平市の場合D10階層)に最高額が定められているため、平均的な勤労世帯が最高額の保育料を徴収されるという事態となつている。このため同市では、保育料の滞納が急増するとともに、高額保育料の結果としての保育所離れが進行し、定員ワレ状況が続いている。
 昭和五十六年九月の行政管理庁調査(保育所に関する調査結果報告書)によつても、入所辞退児の辞退理由は「保育料が高いため」が最も多く、二〇・九パーセントに達している。
 以上のような状況をみるならば、国基準保育料接近を理由に年々値上げされる保育料は、経済的事由によつて児童の保育を受ける機会を奪つているというべきであり、これは、児童福祉法の理念や保育に欠ける児童に対し保育条件を保障するという同法の趣旨に著しく反しているといわなければならない。しかも、国の措置費は大都市の保育需要の実態からかけ離れて低いため、国基準値上げをしても、「特別区の負担割合は、公費負担総額の八十パーセントを占め特別区の財政にとつて大きな圧迫要因となつている」(特別区児福祉答申)のである。
 東京都特別区の保育料値上げが四月一日から実施されようとしている状況にかんがみ、以下の点について緊急に質問するものである。

一 六年間連続減税見送りによる実質増税、賃金抑制、さらには公共料金値上げによつて、保育料の家計に占める割合も年々大きくなつている。このような中での保育料の大幅値上げは、勤労者の生活を著しく脅かすものであることはいうまでもない。先に指摘した、児童福祉法による「保育に欠ける」児童への国、地方公共団体の責任という点を考えるなら、利用者が負担すべき保育料は、国民の保育所利用を制約しない程度の低廉なものであるべきだと思うがどうか。保育料の在り方についての厚生省の基本的見解を明らかにされたい。
二 また、保育料値上げによつて保育所離れが進行し、安価で条件の劣悪なベビーホテルに児童が追いやられるような事態が各地で起こつている。厚生省はこれを好ましいことと思つているのか。そうでないとすれば、どのような対策を今後とるのか。また、そのために実態調査を行う必要があると思うがどうか。
三 さらに、保育料値上げは結果的に婦人の就労機会を奪うことになり、婦人の地位向上、労働権の確保のうえからも看過しえない問題であると思うが、労働省はどのように考えるか。
四1 厚生省は、国の徴収金基準額は自治体と国との予算の決済基準であり、家庭から実際に徴収する徴収金は地方自治体の独自判断であることを認めている。現に昭和三十九年から四十七年までの毎年の通達で、「保育単価又は徴収金基準額は、国庫負担の対象となる基準を示したものであるから、各市町村がその独自の負担において保育単価以上の額を支弁し、又は徴収金を軽減する等児童の福祉を図ることは差しつかえないことであるから、これらについて積極的な努力を払うよう指導されたい」(児童福祉法による保育料措置費国庫負担金の交付基準について)としていたことからも明らかである。現在でも国の徴収金基準額の性格をこのように考えられているのかどうか、明確にされたい。
 2 自治省は毎年「地方財政の運営について」という事務次官通達を出し、使用料や手数料について自治体に対し指導しているが、保育料は使用料と解してよいのか。そうであるとするならば、保育料徴収については地方自治法の使用料に関する規定が適用されることになり、同法第二百二十八条第一項により条例を定めなければならないことになる。とりわけ保育料の決定に際しては、地方自治の原則に基づき、広く住民監視のもとにおくためにも条例事項とすることが必要となる。自治省はこの点どのように考えるか。
 3 保育料徴収事務は機関委任事務であるから条例化する必要はないという見解もあるが、同徴収事務については地方自治法別表4に何ら規定がなく、したがつて市町村の事務であると考えられるがどうか。
五 特別区児童福祉問題審議会答申によつても、「児童福祉法には公費負担の十分の八は国の負担であるかのような定めをしているが、これは形式的な規定でしかなく」、「特に東京という巨大都市を構成する特別区においては、保育需要の質的変化や多様化が激しく、特例保育、零歳児保育、夜間保育、延長保育などきわめて高い水準の保育を実施しなければ対応しきれないのが実態である」とした上、(国の)「措置費の積算基準で示されている保育水準ではとうてい区民の納得のえられる保育サービスを確保することができない」としている。以上のような状況を踏まえ、大都市における保育需要に見合う保育水準が確保できるよう措置費の内容の大幅な改善が必要であると思うがどうか。保育の多様化に対して過去にどのような対策をとつてきたか。今後どうするのかを含めて明確にされたい。

 右質問する。





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