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昭和五十九年八月八日提出
質問第四九号

 国家石油備蓄の財政見通しに関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  昭和五十九年八月八日

提出者  川崎寛治

          衆議院議長 (注)永健司 殿




国家石油備蓄の財政見通しに関する質問主意書


 去る七月二十七日の衆議院大蔵委員会において、国家石油備蓄の財政見通しに関する質問を行つた。国家石油備蓄の建設を進めていつた場合、石特会計石油及び石油代替エネルギー勘定(以下「石油勘定」と略す。)の国家石油備蓄関係費がどのように推移していくか、また、国家石油備蓄関係費の歳出から歳入を控除した額(以下「不足額」と呼ぶ。)がどのように累積していくかを表及びグラフ(グラフについての注を含め六枚からなる資料配布)を用いて示し、立地決定済みの既存六プロジェクトを完成させた場合ですら財政破綻を招くとの試算結果を説明した。また、資源エネルギー庁と大蔵省とが、国家石油備蓄の財政見通しをどの程度先まで検討しているか、長期的検討は必要ないか、などについて問いただし、更に、資源エネルギー庁が長期的検討の試算を行い、当方の試算と突き合わせるべきであると提言した。
 大蔵委員会での主な答弁は、次のようなものであつた。
 竹下大蔵大臣「中長期的見通しはあるものと考えて国家石油備蓄の問題に臨んでいる。歳出削減は強くお願いしたい」
 大蔵省「資源エネルギー庁とは昭和六十三年度までの検討しかしていない。財政見通しの中長期的検討は必要。資源エネルギー庁が中長期的検討の資料を作成してくれば、財政部局として、検討は当然行なう」
 資源エネルギー庁「長期的検討の提出は約束できかねる。今日説明された試算結果(当方の試算)は、早急に検討させてほしい」
 資源エネルギー庁の検討結果(当方の試算についての)は、八月七日に提出された。反論が試みられてはいるものの、それらのほとんどは、当方の試算の次のような特徴についての無理解に基づくものである。
 @ 国家石油備蓄基地の完成時期を同一と見ていること……この点については、グラフの注3(配布資料)で完成時期を同一と見ても長期の財政収支を見る上では差し支えないことを証明している。一つの国家石油備蓄基地は通常三区画に区分され、区画毎に完成時期が異なるが、この場合も完成時期を同一と見て差し支えないことは全く同様に証明できる。
 A 建設期間及び建設費借入れの返済期間を最短に見ていること……それぞれの期間を短く見た方が、支払利息の合計が少なくなることは言うまでもない。当方の試算では、それぞれの期間を最短に見込んでおり、この仮定は、財政が破綻するとの結論を導き出す上で、いささかも障害となるものではない。資源エネルギー庁が当面の財政難を切り抜ける策として昨年採用した完成時期繰延べ(建設期間延長)のはうが、建中利息をかさませ、むしろ長期の財政収支を苦しくするものである。
 B 長期プライムレートを八・四%と見たこと……建設費借入れ及び油代借入れの借入れ利率は、いずれも長期プライムレートと連動する。長期プライムレート八・四%という仮定は、過去五年間の長期プライムレートの推移から見ても決して高くはない。ましてや、長期プライムレートが低くなつた場合でも財政破綻をきたすことに全く変わりはないことは、グラフの注5(配布資料)で証明している。
 以上の@〜Bを理解しさえすれば、資源エネルギー庁の反論のほとんどは根拠のないことが明らかとなる。
 なお、当方の試算で国家石油備蓄関係費の歳入を一定と見たことについて、資源エネルギー庁は、(注)将来の原油価格の動向に左右される、(注)LNG輸入量に増大が見込まれる、(注)石特会計全体(正しくは、石油税が繰入れられ、原資の大部分をそれにあおぐ「石油勘定全体」、とするべき)として各年毎の歳出需要を考慮しつつ予算が組まれる、と反論しているが、(注)及び(注)については、グラフ注1(配布資料)に掲げた表を見れば、反論たり得ないことは明らかである。ちなみに、石油税全体に占めるLNG・LPGへの課税分の割合は五%以下であり、(注)に伴う増収分は微々たるものでしかない。また、(注)にしても、石油勘定の国家石油備蓄関係費以外の項目が、増大ないし横ばい傾向であることからすれば、決して反論には当たらない。もちろん、将来の歳入を正確に見通すことは不可能であるが、明確な増大ないし減少の要因がない限りそれを一定とみなすことは、歳出がほぼ正確に見通せるだけに、長期の財政収支を検討する上では、妥当というべきでである。
 このように、資源エネルギー庁の検討結果は、反論としてあまりにも不十分なものであり、既存六プロジェクトまでの建設でさえ財政破綻を招くとの当方の試算結果は、資源エネルギー庁の検討を経ても、否定されていない。
 以上のことから、歳出削減の徹底を図る長期的検討(借入金の償還計画など)を行うなど、国家石油備蓄関係費の不足額の累積を避けるための対策は緊急を要すると考える。
 従つて、次の事項について質問する。

一 国家石油備蓄関係費の歳出削減について
  昨年八月二十二日に発表された『長期エネルギー需給見通しとエネルギー政策の総点検について』では、国家石油備蓄関係費の歳出削減策として、(注)タンカー備蓄の陸揚げの促進、(注)民間の原油タンク余剰能力の有効利用、(注)国家石油備蓄基地の完成時期の延期、があげられている。
  しかし、(注)はAで述べたように、むしろ長期の財政収支を苦しくするものでしかない。また、(注)は当方の試算でも前提としており、それでもなおかつ財政破綻を招くとの試算結果が出ている。
  そこで、
 1 国家石油備蓄基地の完成時期の延期は長期の財政収支を悪化させるだけであり、歳出削減は、着工時期の延期によつて図るべきと考えるが、どうか。
 2 「(注)民間の原油タンク余剰能力の有効利用」を積極的に進めるべき、と考えるがどうか。あくまで国家石油備蓄基地のみによる三千万キロリットル国家石油備蓄を進める方針か、また、そうとすれば、その方針は、総合エネルギー調査会でも了承済みか。
 3 「(注)民間の原油タンク余剰能力の有効利用」のほかに、具体的にどのような歳出削減策(国家石油備蓄関係費の)を考えているか。
 4 北海道共同備蓄の原油タンクには、ほとんど石油公団の油が入つているが、北海道共同備蓄を国家石油備蓄に組み入れることは考えていないか。
二 国家石油備蓄関係費の長期的検討について
 1 七月二十七日の大蔵省答弁では「長期的検討は必要」ということであつた(竹下蔵相の答弁も同じ趣旨)が、大蔵省は資源エネルギー庁との間で今後、長期的検討をどのように進め、いつ頃までに行うつもりか。また、大蔵省は、「資源エネルギー庁が中長期的検討の資料を作成してくれば、検討は当然行なう」とも答弁したが、資源エネルギー庁が資料を作成してこなければ、長期的検討は一切行わないつもりか。
 2 当方の試算(七月二十七日配布の表・グラフ)、当方の試算に対する資源エネルギー庁の検討結果及び当主意書における前段の説明を長期的検討のための資料とするか。もし、しないとすれば、これらをどのように扱うか。
三 今後の国家石油備蓄基地建設について
 1 既存六プロジェクト以外のプロジェクトに新たに着工すれば、財政事情から完成時期の延期を余儀なくされることは目に見えている。従つて、質問一 ― 1と同じ趣旨から、当分、既存六プロジェクト以外への着工はひかえるべき、と思うがどうか。
 2 六十三年度までの財政見通しの検討しか行つていない段階で新たなプロジェクトの立地決定をすることがあり得るか。もしもあり得るとすれば、財政再建、歳出削減の基本方針とどう整合するか。
 3 新たなプロジェクトの立地決定をするには、何年度頃までの長期的検討が必要と考えているか。

 右質問する。





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